○
岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっている
昭和三十八年度
一般会計歳入歳出決算外三件の承認に反対するものであります。以下簡単にその理由を述べます。
まず第一に、本決算は、自民党池田内閣のいわゆる所得倍増政策第三年目の
予算執行のまぎれもない足跡であり、その正体を示しています。
昭和三十八年度
予算提出にあたって池田総理は、日本は自由主義陣営の三本柱の
一つにならねばならぬと力説し、大国主義をあおり立てるとともに、海外進出の意図を明らかにし、あわせて人つくりを強調しました。当時、高度経済成長政策は、その行き詰まりから、ようやく国民の前に馬脚をあらわし、過剰生産恐慌は深刻となり、物価はウナギ登りになりました。また、国際的には、主要資本主義諸国の経済発展の停滞から、市場争奪が激しくなり、貿易為替の自由化や関税の一括引き下げを行ないました。
政府はこの自由化をてことし、日本商品に対する差別撤廃を
要求して海外進出をはかったが、進出どころか、反対に、国内市場がアメリカやEECの進出に脅かされ、重要産業や農業の合理化、体質
改善を急速に強行せざるを得ない結果となりました。こうして自民党池田内閣第三年目の経済政策は、対米従属のもとで独占本位の資本蓄積、集中強化を断行し、帝国主義、軍国主義的復活をはかるとともに、その一切のしわを国民に押しつけ、ウナギ登りの高物価、重税低賃金、首切り、合理化、弾圧と収奪体制を強化しました。そうして、これはまた、アメリカの中国封じ込め政策に従い、アジアにおける反共軍事同盟の重要な一翼をになうとともに、日韓会談を推進し、アメリカのベトナム侵略戦争準備に一役を買うための経済的、物質的基礎でもあったのであります。現に、三十八年二月には、アメリカの国防次官ギルバトリックが日本に来て、一、日本をアメリカの核のかさに入れること、二、安保条約を長期固定化すること、三、日米共同作戦を具体化すること、四、近く予想される中国の核実験に対応して、日本の防衛体制を強化すること、五、そのための三次防の経費を国民総所得の二%にすること等を押しつけたと言われております。こうして自民党池田内閣は、アメリカの新たなる核戦略構想に、日本の国土と国民をあげて編入する新たなる体制に突入する、そのための国内の戦争
協力体制を再編強化することが重要な課題であったのであります。三十八年度
予算は、まさにこのような中心目的を遂行するために運用されたのであります。現に、三十八年六月には、日米共同作戦を根幹とする三矢計画がつくられ、また、同年度には二次防第二年度として、ナイキ、ホーク大隊の設置をはじめとする自衛隊の装備強化、防衛費の増加が行なわれ、今日の三次防計画に引き継がれているのであります。
本
委員会における一カ年にわたる連日の審議が、むろんこの観点からだけ運用されたとは言いません。しかし、それらの片りんが至るところにつめ
あとを残しているのであります。たとえば税収奪の問題があります。
政府は、大衆収奪のための徴税
機構をファッショ的に強化し、水増し更正決定を押しつけ、とことんまで国民をしぼり取りました。ところが、その反面、大資本に対しては、数々の租税特別措置や、利子配当所得の優遇強化の
方法などで、大幅に減免税を行ない、また、なれあいで大口の脱税を見のがしています。
指摘事項の中には、申告所得の徴税不足として三百七十七件、二億二百三十四万円が
指摘されています。ところが、昨年の本
委員会の追及でも明らかなように、森脇事件の脱税額は、多年にわたり百億とも八十億とも言われています。
政府はいすだにその脱税額を明示していませんが、明らかにそれを
指摘し得なかった背後には、自民党、政界と高利貸しとのなれあいや、醜悪な取引
関係が伏在していることは、いまや公然の秘密であります。しかも、
政府は、一方ではこのような大がかりな脱税はのがしておきながら、中小零細企業に対しては、自主申告をすら常に無視して、有無を言わさず、更正決定を強行しているのであります。かかる措置がはたして許されるであろうか。
また、本
委員会の審議では、
国有財産の食いつぶしや不正運営が精力的に取り上げられました。その背後には、いつも政界のボスや顔役がからんでいます。甘い利権に群がる醜悪な顔々、その様相はまさに亡国のきざしと言わなければなりません。国庫
補助金委託費の乱脈な運用がまた数限りなく
指摘されました。国民の利益どころか、なけなしの生活保護費や厚生福祉費、労働保護費の中にさえひそむ不正の数々、しかも、これらの
指摘は九牛の一毛にしかすぎず、大口は常に見のがされて、小口だけが摘発されているにすぎないのであります。
時間の
関係から、私はその詳細を
指摘することはやめますが、それなら、これら不正腐敗汚職の根源はそもそも何であるかという問題です。結論的に言って、私は、その根源を、安保体制下の自民党
政府の政策そのものにあることを断ぜざるを得ません。アメリカナイズされた対米従属の半植民地的支配の体制が根源であります。
政府みずからの政策が過酷な徴税、大衆収奪によって得た血税を、公共投資や財政投融資の名で、アメリカの戦争
協力と独占擁護に奉仕し、独占との腐れ縁をますます深めています。この腐れ縁を断ち切り、その資金を国民の生活擁護、厚生福祉、社会保障、教育文化向上のため使わない限り、不正腐敗の
あとを断つことはできません。いわば汚職は、安保体制下の不正不義の半植民地的経済に咲いた悪の花であります。幾ら
政府が声を大にして綱紀粛正を唱えても、この大もとを変革しない限り、汚職はやまない。みずからのよこしまを棚上げにしておいて、他を顧みてものを言うのは、まさに天につばするのたぐいであります。
最後に私の
指摘したいことは、
会計検査院の
機構、運営の問題であります。決算
報告書には、防衛費、対外援助費、警察費、内閣広報室、公安
調査庁に対する
指摘はほとんどないかあってもきわめて微弱です。公安
調査庁の
調査費のごときは、全くの秘密で、
会計検査の立ち入りを許さないのが現状である。
検査はまことにずさんをきわめていると言わねばなりません。これは一体何を意味するでしょうか。これらの官庁
機構は権力の直属機関であります。権力によって任命された
会計検査官が、権力
機構や弾圧
機構に対して全く弱く、その機能をすら十分に発揮できない現状であります。むろん、
会計検査院そのものの
機構の脆弱さ、人員の不足等にも問題はありましょうが、問題はより以上にその性格にあります。
会計検査院を名実ともに強化して、真に人民の利益に奉仕させるため、いかなる権力の支配からも独立した存在たらしめることを私は強く
要求するものであります。
最後に、最近の本
決算委員会の運営が単なる事務的審議にとどまらず、漸次政策審議の場に高められつつある現状に心から賛意を表して、私の反対討論を終わります。