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1966-06-23 第51回国会 参議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二十三日(木曜日)    午後零時九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木内 四郎君     理 事                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 森 元治郎君     委 員                 笹森 順造君                 杉原 荒太君                 高橋  衛君                 廣瀬 久忠君                 岡田 宗司君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 曽祢  益君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君    政府委員        外務政務次官   正示啓次郎君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省欧亜局長  北原 秀雄君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省国際連合        局長事務代理   滝川 正久君        農林省水産庁次        長        石田  朗君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        外務省大臣官房        外務参事官    内田  宏君        外務省条約局外        務参事官     大和田 渉君        大蔵省大臣官房        財務調査官    堀込 聰夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○アジア開発銀行設立する協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  アジア開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、これより質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 このアジア開発銀行設立がきまって、それでどこに本店を置くかという問題で、日本といたしましては、日本に置きたいという主張を持っておった。ところが、これはフィリピンにしてやられたと。あのころのいろいろ政府当局の話を聞いてみると、まず日本に来ることは確実だ、こういうようなことだったのですがね。あれがフィリピンに取られたことはまさしく日本外交の失敗であったと思うのですが、このフィリピンに取られた真の理由はどこにあったのですか。
  4. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはりアジア開発銀行は低開発国地域に置くのが適当であるという議論と、それから、どうも一日本本店も取り、総裁もねらっているようだというような宣伝相当に奏功したのではないか、こういうことを言われておりますが、とにかく、あたかも非常に意欲を燃やしておったフィリピンマニラ準備会合が開かれたということも非常に向こうにとっては都合のいいことであったように思われます。そういうことで、一票の差でマニラにきまったと、こういうわけであります。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは表向きの経過ですけれども、あれだけ意気込んでいて、しかも、相当他の国に働きかけて、そして勝つであろうということを大々的に宣伝しながら負けたというのには、最後になってフィリピン側各国に対して大いに口説いたのだろうと思うのですけれども、ただそれだけじゃないと思うのですが、フィリピン側が口説いて勝利を得たということの真の原因ですね。日本側が一票でも負けたということは、ただ勝つであろうという、日本が二億ドル出資をするんだから日本に来るであろうという甘い考え方で手を尽くさなかったということも一つあるのじゃないか。それから、フィリピン側がそれだけ積極的に動くについては相当いろいろな手を使ったということが言われておるのですね。そこいらのところはどうなんですか。日本とすれば油断をした。つまり、こっちから出ていった日本側委員が、あるいはまた、出先の日本側人たちが、それだけの手を尽くさなかったということはなかったのですか。
  6. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうに派遣された日本側人たちも非常なベストを尽くしたと思われます。それから、外務省としても外交ルートを通じて相当説得を試みたはずでございますけれども、まあ、選挙みたいなものでですね、どうも意外に向こうのいろいろな工作が功を奏したと、こう言わざるを得ないと思います。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 向こう工作が功を奏した、その選挙での買収から始まっていろいろな工作があるので、その工作のうちで、向こうが功を奏した工作というのは何ですか。
  8. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私も詳しく研究しておりませんからどうもよくわかりませんが、いろいろのことをやったらしいです、ちょうど向こうに行っておったものですから……。それから、アジア開銀を設置するということと本店を持ってくるということと、これは一応区別して、やっぱり基本的には、とにかくアジアの一角に必ず本店は所在をしなければならぬものだ、これはわかっておるわけですが、どこへ持っていかなきゃ設立のの趣旨が成り立たぬという、そういうものではないのですから、あまりこれに血道を上げて限度を越えるようなことは、これは日本として差し控えたわけでございます。正当な説得がなかなか通らない、こういう状況でございました。それからまた、それに集まってきた人たちも、必ずどっちに投票せよというような本国から指令を必ずしも受けておらなかったように私は聞いております。でありますから、かなり現地におけるいろいろな工作相当成功する余地がかなりあったように思われます。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまここへ来ておられる局長の方で当時マニラに行っておられた方がおられると思うのですが、その事情をもう少し詳しく説明してもらえないでしょうか。
  10. 内田宏

    説明員内田宏君) お答え申し上げます。  私、代表団の随員として参っておりましたが、ただいま椎名大臣が御説明になりましたように、銀行本部後進国に置くべきだという意見が非常に強くて、それがむしろ感情的なものにまで高まっておりました。それが典型的なのは、マニラ本店がきまりまして、その最終日本部に石を置くわけでございますが、そのときにやりましたエカフェの事務局長のウ・ニュンの演説の中にも、これは近代のお寺であり、パゴダであるというような感じ、すなわちパゴダとかお寺後進国に置かなければならない、そういうような気持ちが非常に強かったということで、わがほうは、銀行ビジネスとしては東京が最適だということでございましたけれども後進国一つパゴダ——アジアの人民のあこがれの象徴として置きたい、こういうことが非常に強うございました。  それから、先ほど申されましたように、やはり日本総裁本店と両方取るのじゃないかという危惧、そういうことが非常に強かったので、われわれといたしましては、そういう銀行運営のためには東京というものが非常にいいのだということを日夜を分かたず努力した次第でございますけれども、まあ、ああいう選挙でございまして、結果といたしまして結局マニラに置かれた、こういうような経緯でございます。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 いや、私がこの問題を質問するのは、あのときの状況から見ると、フィリピンのやり方が功を奏したと、しかも、その功を奏するにあたっては、単なる説得だけでなくて、もっとそれ以上のいろいろな手が使われたということを聞いておる。そうすると、これはまああるいは後進国にありがちなことであろうと思うのですけれども、そういうようなことがやすやすと行なわれるとすると、これからのアジア開銀運営にもいろいろ問題が起こってくるのじゃないか。特にこのプロジェクトがきめられて、それに対して開銀融資をするというようなときに、そのプロジェクトをきめることをめぐって、あの開銀本店争奪戦のときのようなことが行なわれると、これはアジア開銀設立した趣旨に反するような事態も起こる。それで私はこの問題をいまお聞きしているわけです。今後そういうようなことが起こらないと保証できますか。
  12. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今度の本店の位置を決定するのは、いわば各国代表団の投票によってきまったわけでございます。今度は、銀行設立されていろいろな事業に融資をするとかいったようなことは、またこれはもう全然本質的に異なった形態で行なわれる。すなわち、総裁以下この銀行執行の任に当たる人たちの判断によってこれが決定されるのでありまして、判断するについては多少周囲の空気というようなことも、まあ参考にはするでしょう。それは、あくまでその融資なら融資というのが十分に効果をあげるかどうかということを中心にする参考としてのものであって、ただ、借りるほうの連中の頭数をそろえて無理やりに融資をさせるというような、そういうことは絶対に行なわれないたてまえになっております。そういう御心配は、私は、ないのではないかと、こう考えております。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 後進国政府のいろいろな経済機関——銀行を初めとしていろいろな経済機関ですね、そういうものには非常に腐敗がつきまとっている。で、今度の開銀執行機関にもそういうところがら人が選ばれてくるんで、そして、なかなか、近代的なビジネスということがはたして行なわれるかどうか、私はもう非常に疑問に思っているんです。で、それをチェックする方法というものが、この銀行には特に意を用いなければならぬところだろう、世界銀行や何かよりも、もっとそういう点で、私は、意を用いる必要があるんじゃないかと思うんです。それらの点について、やはり、もし日本が今後総裁を取るといたしますならば、よほどその点を日本としてもはっきりした態度でもろて臨まぬと、このアジア開銀というものは非常にまずいことになると思う。その点を一つ申し上げておきたいと思います。  それから、第二にお聞きしたいのは、これはほんとうは大蔵大臣だのなにかに聞いたほうがいいんですけれども、まあ外務省のほうでお答え願いたいんですが、十億ドル——実際には五億ドルですね、で、その五億ドルのうち、日本が一億ドルになるわけですが、これは五年間に払うわけですから、二千万ですね。実際、アジア全体は相当広いし、たくさんの国があるし、仕事はたくさんある。一体、実際に、この最初に払い込まれる五億ドル、しかも、それが五年間ですから一年に一億ドル、これでどれだけの仕事ができるか。それから、もしこのうちから銀行経費を差し引くというと、それこそもっと少なくなって、たとえば、そのために、特にたくさんの国からいろいろな要求が出る、そうすると、それをこまかく分けて貸し付けなきゃならぬということになると、一プロジェクト当たり貸し付けというものははたしてどれぐらいになるか。こういうことを考えてみますと、一体これだけの金額でいいのかどうか。それから、特別基金の問題もありますけれども、それは一体どれくらいを予定しているのか。それは業務を開始するまでに集められ得るのか。これも長期にわたってぼつぼつ来るんでは、初めから大きな仕事もできないと思うんですが、そこらのところはどうなっておるのか、大体の計画をお示し願いたい。
  14. 堀込聰夫

    説明員堀込聰夫君) 払い込み資本によります融資は、御説のとおり、五億ドルが五年間に行なわれまして、それが逐次貸し付けその他に運用されてまいるという形になろうかと思うんです。また、信託基金につきましては、現在までのところ、どういう規模で、どういう形のものが行なわれるであろうかという点は、現在のところ、まだはっきりしておりません。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、ずいぶん宣伝はやられているけれども中身はたいしたことないということになるんですがね。しかも、国の数は非常に多いですね。それから持ち込んでくるプロジェクトもたくさんあるでしょう。その上に、毎年の一億ドルがまるまる使えるわけじゃない。銀行自体経費というものも相当かかるわけですよ。その銀行自体経費を除いて、毎年、一体どれくらい貸し付けられることになりますか。
  16. 堀込聰夫

    説明員堀込聰夫君) 先ほどの払い込み資本によります五億ドル、信託金によります特別基金のほかに、法定上はやほり借り入れ金という規定がございますので、これが、銀行発足後いろいろな情勢を勘案せられて、借り入れによる資本も調達するという事態も、いっかの段階において参るというふうに考えます。それから、ただいま御質問の経費の点でございますが、銀行の、ただいままで準備委員会等議論しております過程を申し上げますと、やはり少数精鋭主義ということを非常に各国が考えておりまして、非常に少数の精鋭な者を集めて、経費はできる限り少なくしていくということが考えられております。そういった形をとりますときには、払い込み資本によります運用の利益というものが、利子収入その他がございますので、おそらく、はっきりした見通しはわかりませんけれども銀行経費といいますものは大体そういった収益によってまかなわれて、元本というものは全部運用に回し得るというのが大体の見通しかと考えます。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、低利で貸す長い年月で貸すことになるんですが、大体、世界銀行、第二世界銀行と比べて、たとえば、利率とか、償還年限とか、そういうものは一体どういうふうになるということが、申し合わせ、あるいは取りきめになっているんですか。
  18. 堀込聰夫

    説明員堀込聰夫君) この点につきましては、まだ具体的に——やはり銀行発足後におきましていろいろ検討される問題だと思いますけれども、いままでの準備委員会その他における議論の常識的な線を集約いたしますと、やはり性格としては、世界銀行IADB——米州開発銀行等の線に乗りまして、世銀金利——最近は金利が上がりまして六分くらいになっておりますけれども、まあ、そういったような線が、一つの線として、みなが、議論はしておりませんけれども、描いておる線ではないかというふうに考えられます。また、償還年限等につきましても、同じように、世銀IADB等、いろいろございますけれども、二十年ないし三十年といったような線が、一つのみなが頭に描いておる線としてあるんではないかと思います。もっとも、これは通常の財源によります貸し付け運用でございまして、先ほどの信託基金による財源による貸し付け、並びに、払い込み資本のうち一割を特別基金に繰り入れますけれども、こちらのほうは、やはりもっと条件のゆるやかな、金利も非常に安く、また償還年限等も非常に長いもので運用されるということが、みなの、各国の期待の常識として考えられておる線ではないかというふうに考えております。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど、信託基金によるもののほかに借り入れということを言われたんですが、アジア開発銀行は大体どこから基金借り入れることができるのか。また、それは可能なのかどうか。相当な額の借り入れが可能なのか。
  20. 堀込聰夫

    説明員堀込聰夫君) これは非常にむずかしい問題で、銀行設立しました以後どういりふうに運用するか、非常にむずかしい問題であると思いますけれども、現在の国際金融機関におきましては、世界銀行世銀債を、ドルを中心の形でかなり発行しております。また、米州開発銀行もいろいろな形で借り入れ金を持っております。そういったような従来の実績を見まして、やはりアジア開発銀行としては資本金のほかに借り入れ資本を調達してアジア開発を促進するという考え方をとっているわけでございますけれども、現実問題としましては、そういった世界資本市場資本発行市場等、いろいろ限界もございますし、そういったものの資本市場の環境の中においてどういうタイミングにおいてどういう形のものを調達ししていくかは、今後総裁中心に一番重要な問題として議論されていくし、また、しかしながら、それをぜひやっていきたいというアジア各国考え方かと思います。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほどからお伺いしていると、借り入ればできる、それから信託基金相当基金が払い込まれて、それをその貸し付けに回す、それから経常収入は利息だけでやっていけるだろう、たいへん話はうまくとんとんにいけそうなんですが、もう少し突っ込んで見ると、どうも借り入れもなかなかむずかしい。それから信託基金もどれだけ集まるかはこれからの話だ、こういうことでかなり不確定要素が多いのですね。それは努力にもよるところでしょうけれども、そういう不確定要素が多い。たとえば銀行債を発行するにいたしましても他と競合するところが多い。資本市場はそう金がだぶついているわけではないからなかなかむずかしいと思う。そうかといって、この銀行出資をしている国々、特にアジア地域国々ではこの銀行債を引き受けられる国は少ない。結局、ヨーロッパなりアメリカの金融市場に求めるということになると、競合するところが多い。そういう甘い見通しで、借りられますからいいじゃないかというわけにいかぬのじゃないですか。どうですか、その点は。
  22. 堀込聰夫

    説明員堀込聰夫君) お説のとおり、借り入れ資金世界資本市場で調達いたします問題ほかなりむずかしい問題があろうことはお説のとおりかと思います。まあしかしながら、アジア開発促進という旗じるしのもとにいろいろな形で努力が払われて、その調達というものはいろいろ資本市場の繁閑もございますし、そういったものも考えながら推進されていくということだと思います。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ、開銀が賃し付けをやる、その際には、もちろんその国の支払い能力ということは十分に検討されて相当支払い能力がちゃんとしているところに貸し付けをしていくことになるのでしょうが、しかし、アジアの国においては政治的な不安定な状況がよく起こるわけです。たとえばインドネシアで九月三十日事件が勃発したようなことがどこの国にもないということは言えないような事態、そういう場合に、たとえば償還がストップをするとか、あるいはプロジェクトの遂行さえむずかしくなる、それで損失が生ずるようなときに、その損失というものはどういうふうにしてカバーすることになっているのですか。そういうとりきめはまだできてないのですか。
  24. 堀込聰夫

    説明員堀込聰夫君) まあ、一国の、アジア開銀貸し付けをやります場合に、当該プロジェクトのある国の支払い能力と申しますか、そういったものを十分見通しながら協定にあります安全確実の原則によって運用されていくというのが根本の原則かと思いますが、条文的には、そういった、一ぺん貸し付けました貸し付け償還に滞りが出るというふうな場合には、規定の十八条におきましてこの償還期限等を修正をし直すというふうな規定ができるようになっております。また現に、実際に、従来の例ではないと思いますけれども、また将来もそういうことがあっては困ると考えますけれども、実際に貸し倒れが起きたというような場合には、それぞれ経理方法によりまして準備金の取りくずしその他一般の経理原則に従ってそれを償却をするような規定が置いてございます。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、これは多くの国々関係することですが、この開銀に金を払い込む、そしてまた開銀から金を借りる国というのは、それぞれの仲が悪くてトラブルがあるようでは困る。そういう点で、これはただの銀行の貸し借りとはずいぶん違う。国際関係が複雑にからんでくると思うのですが、その前提として、やはり国同士の間が円滑にいっておる必要があろうかと思いますが、そういう点について各国政府とこの銀行との関係というものが円滑でなければならないわけですが、その点について、今度の開銀は機構的に何かそういう各国間の関係をよく維持していくためのくふうがこらされておりますか。
  26. 堀込聰夫

    説明員堀込聰夫君) 銀行協定上は特にそういったことをうたっておる規定はないと思いますが、貸し付けを受ける国はおのおの銀行の株主でございまして、銀行に対して総務として関与をいたしておりますし、また、当該国を代表する理事というものが理事会に出ておるわけでございます。総務の総会における銀行運営についての審議、あるいは理事会における各国間のあれといったような問題は、やはりそういった常設の、銀行に置かれましたそういった機関によりまして運営していくというふうな考え方になるのではないかと思います。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 簡単に一つだけ伺います。  昨日、一部報道機関の伝えるところによると、外務省としては東南アジア農業開発基金を新たにアジア開銀を活用して設立するという構想が伝えられております。これは、去る四月、日本で開かれた東南アジア閣僚会議で問題になった東南アジア農業開発に関連をしておる問題だと思いますが、新聞報道によると、かなり具体的に、金額からその他いろいろ条件も示されて、外務省構想として出ておるようでありますが、これについて一応の御説明を承りたいと思います。
  28. 西山昭

    政府委員西山昭君) 昨日でしたか新聞に出ました記事は、私どもとしましては根拠のない記事だと考えております。現在、開発閣僚会議の結果、農業会議をやることになっておりまして、いろいろ関係省におきましてその準備を考えておるわけでございますが、農業開発につきましていろいろの具体的な問題を検討しておることは事実でございますが、条件とか、あるいは金額とか、あるいは信託基金だとか、そういうものについての構想が固まったという段階には至っていないのでございます。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 それじゃ、条件全額等は固まっていなくとも、外務省がそういう構想を持っておればこそ報道されたと思うのですよ。したがって、内容はとにかく、おおよそ考えておることはどういうことなのか、それを御説明いただきたい。
  30. 西山昭

    政府委員西山昭君) 現在考えておりますのは、関係各国農業関係者会合、あるいは訪問いたしまして、もう少し各国が当面しておりまするいろいろの問題を詰めまして、そういうものを基礎にしまして、具体的な方針を検討したいという段階でございまして、私どもは先ほど申し上げましたように、非常に具体的な内容について結論に達しておるということはまだないのでございます。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、その内容はいま申し上げたとおりいいのですよ。それはまた構想が固まってからでよろしいのです。だから、その構想でいけば、独自の新しい機関をつくることになると思うのですが、その場合の資金アジア開銀を利用しようということが伝えられておるわけですね。それでそのアジア開銀をかりに活用しないとするならば、そういうものには相当な金がかかることですから、それはどういうことを考えておるのか、それから、その東南アジア開発閣僚会議が具体的な成果を示そうとするなら、何らかの形でこの機関をつくられなければならないことになることはこれは必然であると思うのです。ですから、それが日本独自でいわゆる後進国の援助をやるという行き方もあるでしょうが、それを非常に大規模にやろうというのならば、いまの構想は固まらないにしても、大よそ外務省が考えておるようなことになるかと思う。ですから、具体的に一体日本独自だけでやろうとしておるのか、あるいはアジア開銀を活用して別途の何らかの基金制度といいますか、そういうものをつくろうとしておるのか、その辺はどうなのですか。
  32. 西山昭

    政府委員西山昭君) 農業開発、食糧の増産等の問題は、非常に多額の資金が必要とされることは十分予想されるわけでございまして、私どもとしましては、もちろん日本一国でそういうものを全部できるとは思っておりません。しかしながら、農業開発の問題につきましては、資金の面のみならず、政策の面もございましょうし、運営の面もございましょうし、そういうものを全部をいろいろ調べまして、そして各国が積極的にそういう開発に進むという機運を醸成する必要もございますし、そういうものを合わせまして、結論を具体的に改善に向かって行く方向を探りたいというのが目下検討しておる内容でございまして、そのためには、先ほど申し上げましたような、日本のみならず、関係国がそういう趣旨でいろいろ問題を出して打ち合わせをしようというのが、農業開発会議趣旨でございまして、この結論を待って私ども日本としての考え方も固まっていく、こう考えております。したがいまして、このアジア開発銀行のいわゆる信託基金というものを使いますか、あるいはどういう形になりますか、そういうものは現状におきましてはまだ何ら結論が出ていないのが実情でございます。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 これは大臣に伺いますけれども、いまの問題と関連して、さきの東南ア開発閣僚会議の結果として、日本独自の東南ア開発の計画というもの、それは資金援助かあるいは別の形の農業開発か、何らかの形で、会議を開きっぱなしということはないと思うのです。ですから、会議の結果として、かなり時間もたってきておるし、今後これにこたえなければならないことになるだろうと思うが、それはおおよそどういう形に固まりつつあるのか、来年の会議が開かれるまでに結論を出すということなのか、そんなゆうちょうなことじゃないと思います。ですから、何らかの一応の成果の取りまとめというものをせなければならぬはずだと思うのです。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり東南アジア開発の前提は、やっぱり食糧が足りないという現状及び見通し、これを何とか落ちつけなければいかぬ、こういうことで問題を出してみたんですが、みなもこぞって賛成でございます。その結果、専門家を入れた農業開発会議というものを別途つくり出す、こういうことになっておりまして、関係省と相談した結果、今年の末ごろを目途に一切の準備を整えて農業開発会議を開くということになっております。そこで、どういう結論になりますか。まずどういうことをやるかということがはっきりして、しかる後にその所要資金の調達の方法を考えるということになると思います。でありますから、アジア開銀基金制度を活用することになるのか、それとも二国間というわけにはこれはいきませんから、日本だけでこれは背負うわけにはいかない、その場合に、ほかのやはり興味を持っておる国も入れて、そうして共同の債権者——債権国会議というものをつくって、ちょうどメコン河の開発みたいな形になるか、まあ、いろいろあると思います。いずれにしましても、生産事業でありますから、たとえそれが非常にゆるやかな条件であっても、とにかくペイしないということはないのでありますから、これは借款の形になる、こういうことになると思います。それからまた、この基金制度というものを活用することになるか、これはだいぶ先のことでございます。それから、農業以外の問題は、たとえば海産物の開発であるとか、あるいはまた、経済開発に関する総合的なセンターをつくりあげるとか、いろいろな問題を背負っております。そういうような問題は、いま特に急いでやるということでなしに、次のマニラにおける会合までに相当準備を整えてこれらの問題を審議すると、こういうことになっております。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 これで終わりますが、きょうと言っては無理ですが、本来、できるならば、いまの大臣の御説明になったような問題を具体的にやった場合に、たとえばビルマに対しては何が問題で、どうしようとするのか、タイに対してはどうか、あるいはインドネシアはどうするとかと、それぞれその国の経済状況農業の現状に応じた具体的な対策が立って、これが望ましき姿であると、それをこちら側、向こう側ともよく相談した上で最終的な決定がなされるには違いないにしても、日本としてはおよそこういうものが考えられるのではないかということがあると思うのです。それで、当時、会議のときに論議された討論のあれは、私ここにみんな持っております。持っておりますが、一応のこれは討論されたそのままの問題ですから、それをさらに発展させて、どうするならば具体的に実効があがるのか、その場合に日本農業にはどういう影響があるか、それをチェックする方法は何か等々を、これは外務省か農林省かわかりませんけれども、その辺を一度説明する機会をつくっていただくと非常にいいと思うのです。
  36. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはもちろん、日本としても十分に勉強して、考え方をちゃんと立てなければいかぬと思いますが、各国に相談しないうちに、おまえの国はこうだ、おまえの国はこうだというふうにきめることは、非常に礼儀に反するのでありますから、多少ちゃんと根回しをして、そうして大体の了解点に達したものでないと、なかなか発表するということは、非常にあとでいろいろなトラブルが起こるおそれがあります。慎重に扱いたいと思いますので、御了承願います。
  37. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう国会もあと幾日もないんで、ちょっと一、二点急いで伺います。  なんといっても、いまのイシコフ漁業相が来ての北洋安全操業問題で、ソ連側からのちょっと予期しない提案が出たようであります。この提案というのは、日本側は甘いことばかり放送しておったが、がく然としたような、水をかけられたような感じがあるんですが、御気分はいかがですか、大臣。(笑声)
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、国と国との折衝でございますから、そう簡単に、小ぎれいにいくはずはございません。しかし、事柄は規模は小さいのですけれども、その中身というか性格が、かなり思い切った面がちらついておる、こういうふうに考えるわけであります。領海であるとか専管水域だとか、そういったようなことを全然抜きにして、そしてこれこれのところはもう理屈抜きにして認めようじゃないかというような、かなり範囲は狭いけれども、くだけた調子で来ておるということは、私は従来のとの漁業交渉の中にあまり見られなかった例であろうと思います。たったこれだけじゃちょっと困る、それからどういうふうにほぐれていくか、そういうことは今後の問題であります。そうきめてかからぬでもいいじゃないかと思います。
  39. 森元治郎

    ○森元治郎君 この対ソ外交というのはなかなかこれ渋い外交でしてね、向こうが、芸術でも何でもそうですが、思わざる、なかなか大きなスケールで、大きいこと出てくるんですね。こっちが安全操業だ、漁船員の釈放だ、船を返せという、もう北海道のちょっと隣あたりの地図ばっかり見ているうちに、がさっと日本近海、こう出てきたわけですね。ちょっと事務的な頭じゃ対応できないのですよ、大臣、事務的な頭じゃ。大きくこれ見ていかないと。そこで——私、時間は十分というつもりでやりますから——日本近海というのは、どこを一体これはさすのかですね。それから、これは一つ条件なんだと、赤城試案なんという、択捉、国後くらいまでの接岸漁業をねらっておった日本に対して、こういうふうに出てきたことは、もし、この条件がいれられなかったならば、水晶島の領海三海里以上に日本船を入らせるということすらも言うことを聞かないと言う。だから、日本近海とはどこを指すのか、向こうの意図は。それから、この対案をのまなけりゃ水晶島三海里もお断わりなのか。それから、日本の港に自由に入るということ。近海の幅がきまればおのずからわかるでしょうが、どことどこの港を言うのか。一体この提案の底にあるものは何と認めるのか、何が想像されるのか。この四つを一つ一つお伺いします。
  40. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 直接折衝に当たった局長からお答えいたします。
  41. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) 四点御説明申し上げます。  第一の日本近海とは、実はこれは新聞に意図せずして出ましたので、非常に新聞に出た記事が誤解を生んだかと思います。日本近海というようなことは、全然向とうも使っておりませんし、そういうことを議論したこともございません。そこで、この四点につきまして総合的にお答え申し上げますが、先方の言うのは、何がねらいかということでございますが、イシコフ大臣としては、自分は漁業相であり、漁業の担当大臣であるから、自分の権限内でのできる限りの提案をしたいということで、最もこの安全操業の問題をめぐる従来の日本の主張の大きな点が零細漁民の救済にある。で、その観点からして、この地方の零細漁民の救済のために、水晶島周辺の漁労を許可しようという提案を行なったわけであります。ただ、この安全操業問題のもう一つの片面である一応この領土問題に関連してのより大きな問題については、自分は折衝する権限がないので、これは上級の会談にひとつ移したいということを申したわけでございます。それが向こうのねらいで、それから、この水晶島周辺の漁労を許可するということと日本の港にソ連の漁船が入るということでありますが、これは実はいま事務的にこれから詰めるところでありまして、内容をはっきりと申し上げるまだ段階にないわけでございます。先方が一応提案をして説明いたしましたのは、日本のある特定の港に漁船が入ってきて、そこで主として冷凍船への積みかえを行なわしてもらいたい。これは一応国際的に、漁業上各国間でしょっちゅう交渉の対象となる問題でございますが、今回ソ連としては初めてその問題を持ち出してまいりました。いろいろこういう問題を持ち出してまいりました裏面には、ソ連側のいろいろな事情があるのだろうと存じます。  それから、非常に、あまりに小さいのではないかという点でございますが、これも先方の考えは、要するに、自分の権限内での提案を一ついたします、で、それを今後の上級会談、もっと大きな観点からする解決のための一つ準備段階として考えてもらいたいというまあ言い方をしているわけでございます。この点、今後の問題の取り上げ方及び進展いかんによるものと存じます。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 いまの説明でちょっとわからぬところがあるから、ちょっと聞かしてください。  イシコフ漁業相の権限外の問題だからといういまお話があったのですが、イシコフさんは漁業問題については全権限があるのじゃないですか。それが上級機関でやってくれということは、領土問題との関連ということはどういうことを意味しているのか、それをもうちょっと聞かしてください。
  43. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) 漁業相として漁業問題の権限がある、これは当然でございますが、先方の言い分は、いわゆる日本側の言う安全操業の問題というのは、領海の幅員の差から来る両方の摩擦でございます。もう一つは、わがほうが当然日本の領土と考えております歯舞、色丹、国後、択捉というこの領土権の主張というものとがかみ合っているわけでございます。そこで先方は、領海すなわち領土の問題だと、その場合には、自分の権限だけではどうにもならない……。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 わかりました。
  45. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) 今回の水晶島の提案についても、イシコフも申しておりましたが、漁業大臣として当該地方官権とも折衝の結果、この提案にこぎつけたいということでございます。
  46. 森元治郎

    ○森元治郎君 私へのお答えがないのだが、このわれわれの提案に対して向こうが対案を出してきたと、日本近海という文字は入ってないと、そこで私がお尋ねしたことのお答えがないのは、これを認めなければわがほうの希望はいれないのだという取引になっているのかどうか。
  47. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) この点はインコフ漁業相滞在中も、二十七日、二十八日、あとまだ会談やることになっておりますが、先方の言い分は、一応滞日中に必ずしも右、左きめていただかなくても、これを基礎に今後とも話し合いを進めるという用意は十分先方にあるというふうに私どもは見ております。
  48. 森元治郎

    ○森元治郎君 これは非常におもしろい提案だから、日本も南千島と言わず、安全操業の広い見地と日ソ親善のために、自由にひとつ千島、サハリンに出入できる、冷凍船の積みかえも根室まで帰ってこなくてもいい。向こうの領土に入って。そのくらいの取引はやってもいいのですよ。やるお考えはないですか。
  49. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本としてはあらゆる場合を主張したいと思っております。
  50. 森元治郎

    ○森元治郎君 とにかく、大きく出てくれば大きく出るのですよ。大きく出れば小さく出てはだめなんです、外交というのは。そこで、総理大臣は、イシコフに、せっかくの御招待だからソビエトを訪問したい——時期に対しては何も言っていないようですが、これだけ、総理大臣がせっかくの御招待だから訪ソしたいと言った以上、これは思いつきじゃないのですね。大臣この点はどうかということと、南へ行くのが是か、北が是か、ハムレットのようなことを言っておりましたが、どっちにきまりましたか。北が先か、モスコーが先か、東南アジアが先か、総理大臣は。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだそこははっきりきまりません。御本人にやはりきめてもらわないといかぬと思います。
  52. 森元治郎

    ○森元治郎君 御本人というと総理ですね。総理大臣がおきめにならなければならぬという……
  53. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうです。
  54. 森元治郎

    ○森元治郎君 そういうときの応答は、御招待、御厚意まことにありがとうだけでけっこうなんですよ。ぜひ訪ソしたいなんとよけいなことを言わなくてもいいのですよ。  もう一つ大事なことは、総理大臣が、相手は魚しかわからないという人に、日本は平和国家で——新聞によると——日本自身が平和的に存在したいということであると同時に、世界の平和を念願しているということでもある。」、コスイギンかブレジネフに言うようなことを魚屋の大臣に言っている。そうしたら向こうの大臣が、「基本的な問題についてはわれわれも十分理解していると考える。」、これが朝日新聞の書き方であります。ここで感ずることは、大臣もソビエトに行かれていろいろ御苦心の交渉をされた、その中で、日ソ親善友好、平和提携ということばはたくさん出てきたと思うのです。コミュニケを見てもそうですね。そうしますと、もしそうであるならば、中ソ不可侵条約というものの前段には、日本の侵略がまた復帰してくるかもしらぬ、悪いやつと手を組んでまたやるかもしらぬということをおそれたということがうたってある。中ソ同盟条約の大目標は、ソ連側からはそういう点は今日はないのだということを私証明すると思うのですが、いかがですか。
  55. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 実情はおよそそういうこととは遠い状況に進展している、こう考えております。
  56. 森元治郎

    ○森元治郎君 遠い状況というのは何ですか。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中ソ同盟条約の目標には日本という名ざしまでしてある、そういうようなこととは実際の状況は遠ざかっている。
  58. 森元治郎

    ○森元治郎君 変わりつつあるのですか。遠ざかりつつあるのですか。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうです。
  60. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、存在はするけれども、現在、締約国の一方では、少なくとも一日本に対しては、日本の平和的な政策については十分に理解しているのだということになりますと、たいへんな、荷が軽いような情勢が極東にあるわけですね。私、時間の約束は守りますから、これをよく取り上げて大外交をひとつ展開してもらいたいと思うのです。  時間をあらためて、ゆっくりやることにします。
  61. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど大臣申しましたように、二国間の話し合いですから、いろいろな複雑な問題を含んでいると思います。日ソ漁業条約の話し合いについて少なくとも赤城試案が全面的に後退して、まだ話し合いの日にちが一両日残されているわけです。そこで話を煮詰めて、また七月末に予想されているグロムイコ外務大臣との話し合いにおいて、根本的な領土問題までも含めて、この北方漁業問題を解決する意図があるかどうか、その辺、大臣お考えいかがですか。
  62. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) グロムイコ外相来訪の際にどういう問題を取り上げるかということは、まだ実は内部でもそうはっきりきまっておりません。しかし、話に出す出さぬは別問題にして、従来の日本の主張は変わっておりません。対ソ問題に関する限りにおきまして、日本の従来の主張を変えようという気持ちはありません。
  63. 黒柳明

    ○黒柳明君 漁業条約は、ソ連側はよい結果をもたらしているので継続することが望ましいと、こう発言しているらしいですが、外務大臣、との日ソ漁業条約、はたしてソ連の言うようによい結果をもたらしているかどうか。また、単純延長したいと、こういう意図があるようですが、これに対していろいろネックがあると思うのですが、その辺いかがでしょうか。
  64. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 漁業条約はただ単純に延長するのでなくて、相当従来実施した状況にかんがみ、改定すべき点も一ございますので、ソ連側と十分に協議をして改定をしたい、こう考えております。
  65. 黒柳明

    ○黒柳明君 どのような点を改定するお考えですか。
  66. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) この十月、十一月にわたりまして改定交渉を行なうことに大体合意を受けております。具体的にどういう点を取り上げるか、まだはっきりきめたわけではございません。しかし、従来日本といたしましてこの漁業条約をめぐりまして非常に遺憾、不満としてまいりました点、すなわち、年々規制区域が広がってきている。それから、規制の措置がいろいろ種類がふえてきておる。こういう点が日本側から大いに主張すべき点だと思いますが、しかし、いずれにせよ、根本ははっきりした科学的な資源調査、資源論というものがやはり交渉の最初において非常に大きく出てまいると思います。
  67. 黒柳明

    ○黒柳明君 カムチャッカ半島、数年前ですか、実際調査したことがありますけれども、わが国として自主的な資源調査をできるようなそういうものにして——いまも条文にそういう条文があるわけですが、それが実際的に行なわれていないわけですね。それを自主的なものにしていくと、こういうようなことですが。
  68. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) 御指摘の点、ごもっともと思います。そういう点は、また運営の改善という面で大いに重視していくべき点多々あると思いますから、十分そういう点も考慮に入れて交渉いたしたいと思います。
  69. 黒柳明

    ○黒柳明君 海難救助のほうも、提出したものを全面的にソ連が認めた。さらに話し合う用意があると、このように書いておりますが、どんな点が——改善すべきほうに提出した内容はいかがでしよう。
  70. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) 十年前に締結いたしました海難救助協定では、お互いの応急救援を頼むときの無電のポストでございますが、これも双方一つずつ、わずかに一つだけ指定しておったわけでございます。これがやはり現実的にはうまく運営されない大きな原因だったと思います。そこで、今回は少なくとも三つ、さらに補助の電信局を三つ、それから周波の数でございますが、これもやはり一つだけ指定しておったわけでございますが、これもある程度広げてみたい、こういう点がおもな点でございます。
  71. 黒柳明

    ○黒柳明君 それに対してわが国の海難救助に対する処置、たとえばヘリコプターを釧路に置くとか、あるいは船足の早い巡視艇で絶えず領海を巡視させるとか、このような措置はいかがですか。
  72. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) 海上保安庁の管轄の件と存じますが、一応調整をしております外務省といたしまして御答弁申し上げます。確かに、応急の場合には船では間に合わないので、必ず日本側にも飛行機を派遣することをソ連側に要請した事例がございますが、いまだに不幸にしてこれがうまく運営されていないわけでございます。今回の改正点につきまして、飛行機の点も入っております。日本側でこれの飛行機を持ち、あるいは日本側でさらに速度の早い船を補強するというような点については、わがほうの問題としておそらく取り上げることになるだろうと思います。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 それを釧路に置くとか、そういう点も考慮しておりますか。
  74. 北原秀雄

    政府委員(北原秀雄君) 釧路という点、私まだ聞いておりませんが、いずれにせよ、今後の問題として検討いたしたいと思います。
  75. 黒柳明

    ○黒柳明君 十二海里説ですが、アメリカでまた可決する可能性が相当強いわけですが、それに対してわが国の態度はどうですか、大臣。
  76. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一方的に領海として十二海里説をとるということは、日本としては認めない方針であります。その国との合意があればまた別問題であります。一方的宣言というのは、これは通らない。
  77. 黒柳明

    ○黒柳明君 一方的に専管水域をつくっておることは国際法上違法であるという点は一貫して変わらないと思うんですが、すでに四十カ国の国が一方的に宣言しておりますし、また、ニュージーランドも、いま提訴がなかなかもたついて合意に達しない。アメリカも、さらにソ連もと、非常に日本の漁業自体がどんどんワクの中に閉じ込められて苦しい作業をしなければならない。こういうような状態になっているわけですから、これに対して何か近海漁民あるいは零細漁民に対して大きく保護の手を差し伸べなければならない、このように思うんですが、そういう保護対策についてはどうでしょう。
  78. 石田朗

    政府委員(石田朗君) お答え申し上げます。ただいま外務大臣からお答えいたしましたように、各国で独自にその国限りで何海里水域というものを設定いたすということにつきましては、日本側はこれを認められないという立場をとっているわけです。これに対しまして、たとえば、ただいまお話がございましたが、ニュージーランドの漁業水域設定等に対しましてニュージーランドとも話し合いをいたしまして、これを国際的な裁判の手にゆだねる面等を現在推し進めております。かつ、その間における両国間の漁業関係その他につきましては、相互に、相互の立場を尊重しながら取り進めていくということで進めておるわけであります。したがいまして、この問題につきましては、日本といたしまして世界の海の各方面に出漁いたしておりますので、これについては十分な関心を持たなければならないことであります。これに対しましては、一面におきまして外交場裏、そういう面において適切な交渉を行ないますとともに、漁業資源の開発という面におきまして、さらに一そう推進を必要とするというふうに考えております。
  79. 黒柳明

    ○黒柳明君 具体的な北方海域における零細漁民、北海道近海における零細漁民、そんなところに対しての保護政策は、具体的な政策は特別にはないわけですか。
  80. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話しございましたが、いまのアメリカあるいはニュージーランド等におきましては、いわば太平洋を越えました向こう側における日本の漁業の操業の問題でございます。いまお話しございましたのは、北海道の沿岸漁民、この動きであろうかと存じますが、それにつきましては、水産庁といたしましては、いわゆる沿岸漁業の構造改善という政策を推進いたしておりまして、これにつきましては新たに魚礁を投下いたしまして、魚が寄りやすくするとか、その他各種の施策を講じまして、沿岸漁民の振興に資しておるわけでございます。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 ソ連との交渉は、これから今後の問題だと思うんですけれども、たとえば、ソ連のサンマ船を日本の三陸沖沿岸からボイコットするために日本も十二海里説をとる、こういうような考えは将来においてないでしょうか、大臣。
  82. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 三陸沖、かなり陸の近くにソ連船が来ることもあるということは承知しております。ただそのサンマ漁につきまして、直ちに、たとえば十二海里なら十二海里というような日本の漁業水域を設定するということについては、先ほどから御指摘のありました北方水域における漁業の問題、あるいはニュージーランド、アメリカの漁業法の問題そういうものをすべて関連させて考えざるを得ないと思います。かりに日本が三陸沖に十二海里の漁業水域を設定したと仮定いたしますと、それがほかにおけるわがほうの主張を弱めるような結果にもなりかねないということでございますので、いま直ちに三陸沖にそういう水域を設定するという考えは持っておりません。
  83. 黒柳明

    ○黒柳明君 ニュージーランドの場合にしても、合意に達して、やがて提訴になるんですが、現実問題として、漁民は十二海里から、六海里から入って漁業できないわけです。アメリカの場合も若干話し合う余地はあるにしても、非常に窮屈になります。また、ソ連の場合においても、御存じのとおり。ともかく、そういう話し合っているうちに、現実問題としては漁民はますます苦しい立場に追い込まれていくわけですが、そういう将来に対しての対外国との見通し非常に暗いものがあるわけです。その報復手段といいますか、四十ヵ国がそういう処置をとっているわけですから、一方的にわが国も少なくともサンマの漁獲をやっている漁民を保護するためだけにでも、何らかそこに十二海里の宣言をやれば、プラスがあるんではないか、こういうように思うわけです。いま話し合いをしてどの程度話し合いが開けていくか非常に疑問だと思います。また、三海里説なんというのはもう古いと、領海説そのものも考え直さなければならない、そういう時期も来ているのではないかと、こういうようなことも言われるわけですが、将来ともども十二海里と、こういうような方向に向かう余地がないのかどうか、いかがでしょうか。
  84. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 私申し上げましたのは、先ほど申し上げましたように、現在ニュージーランドとの問題あるいは北方水域の問題あるいはアメリカで漁業法が可決されたというような事態がありますが、現時点におきましては、直ちに三陸沖にそういう十二海里の漁業水域を設定するということは考えておりませんということを申し上げたわけでございます。ただ御指摘のように、世界の趨勢と申しますか、かなり十二海里の漁業水域を設定するというような国がふえつつあることも事実でございます。ただ、わが国の基本的な立場といたしましては、そのような水域は一方的に設定し得るものではない、利害関係のある国との合意によってのみそれは認められるもんだという基本的な立場を持っております。  以上でございます。
  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 現在の漁業交渉の経過ですけれども、何か先ほどから話がありましたが、ちっちゃいところから大きいところに行こうとしているんですが、もろと大きく千島あるいは樺太を含め、もしそれがだめであったならば、国後、択捉、色丹、水晶島、こういうふうな範囲に徐々に配慮してくるなら、こういうことならいいと思うんですが、水晶島から始まって、当然やがては領土問題に発展せざるを得ない。何か交渉のしかたが逆なように思うんですけれども、その点大臣いかがでしようか。
  86. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私直接その漁業交渉、折衝に当たっておりませんが、十分に御意見のところは参考にいたしたいと思います。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 十分に私の意見を参考にしていただかなければならない理由は、現在時点において十二海里にどんどん漁民は実際問題としては入って漁をしませんと食べていけないわけです。実情は非常に苦しいわけです。海図か何かをたよりにして十二海里の外だと言うてみても、ソ連は、十二海里の中に入っていると言って拿捕されるということで、御存じのように、実際相当数漁船あるいは漁民が拿捕されている。今度の交渉にあたって若干釈放して、非常にソ連としては演出がうまい。先ほど言ったように、日本は演出がへただと思うんですが、そういう点、理由がないそういう拿捕漁船、拿捕漁民を即時釈放しろと、こういうことを今度の機会に強く要求したかどうか、この点いかがですか。
  88. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その点は直接総理からも要望しておる次第でございます。
  89. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは要望すると同時に、先ほども言いましたように、ともかく船足が早い、あるいはレーダーを備えている向こうの巡視艇に近海漁業の船が対抗できるわけでもないですよ。日本政府としてはこの安全操業を守る、ただ単にソ連との政治的話し合いだけでなくて、こちらが十二分にそういう設備をしたほうが早いんじゃないか。北方の安全操業を実現するためには、こちらも十分ヘリコプターにしろ、あるいは巡視艇にしろ船足の早いものを整え、あるいはヘリコプターも函館から行くんじゃなくて、もっともっと釧路あたりに置いて、無電があったらすぐ上空から写真をとるとか、そういうような手段を講すれば安全操業がいま以上に確保されるんじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  90. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いずれにしましてもやはり話し合いによって漸次合理的な取りきめを進めてまいりたいと、こう考えております。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 ちょっといまの点に対して一つ。  サンマの問題ですが、三陸沖で日本がとるサンマが二十二、三万トンですか、それに対して昨年はソ連がすでに二十万トンぐらいとっているんですが。新式の漁法で。これからどんどんとっていく可能性がある。そうなってきますと、日本近海からサンマがいなくなってしまう。ソ連の漁をとめるわけにはいかない。そこで、やはり今後サンマの資源保護という問題が起こってくるんです。これは早くから話し合いをつけないと、私は話し合いを始めるころになくなったんじゃ困る。その点についての用意はあるんですか。
  92. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話ございましたが、日本のサンマの漁獲というのは最近は多少減っておりますが、非常に多獲性の魚でございます。ソ連がどの程度とっておりますか、必ずしも明確ではございませんが、三十九年におきましては、大体五万トン程度であったというふうにいわれております。これがサンマ資源に与える影響及びサンマ資源全体の問題を急速に確実に把握いたしませんと、これは先生おっしゃるとおりでございます。サンマ資源の問題につきましては、わが国におきましては、東北の水産研究所を中心にいたしまして非常に研究を進めております。かつ、ソ連もまたこのサンマ資源の問題に非常に関、心を持っていることも事実でございます。このサンマ資源の問題につきましては、やはり国際的な調査を必要とする段階であるというふうに思うわけでございますが、今後日ソ間におきまして、漁業の技術協力等の問題が推進されてまいるかと思います。その場合にサンマ資源の把握というようなものを共同で進めてまいるというようなことがやはり一つの問題となってまいります。これは先生おっしゃるとおり、急速に確実な把握をいたさなければならないというふうに考えております。
  93. 羽生三七

    羽生三七君 いまのに関連して。この前当委員会でいまの問題に関連をして、アメリカの現在上院を通過したバートレット法のことをお尋ねした際に、政府当局は、まだ上院を通過しておらぬ、大統領の署名もないというお話でしたが、いま上院は通過しましたが、そういう場合にはどうするんですか。最終的にはどういう折衝をなさるんですか。これは大臣としてどうお考えになりますか。
  94. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) バートレット法の内容につきましては、かねてわが国から先方に対しまして、日本としての立場はこうであるということはすでに申し入れ済みでございます。実際に上院を通過し、有効に成立するという事態になりました際も、あの法律にはたしか利害関係国との間についての条項があったと思います。したがいまして、日本の漁業であの国内法に影響される部分につきましては、わが国としては利害関係国になりますので、わが国の利益を守るような合意に達するように先方と交渉する必要があると思います。
  95. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、それが成立する前に日本から一応の申し入ればしたにしても、もっと何らかの合意に達するようになった結果としてその法案が成立したというならわかりますが、成立してしまってからのあとの合意というのはどういうことなんですか。
  96. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) わが国の立場としましては、かりにあの国内法が成立しまして、その結果、あのバートレット法による十二海里の範囲内でかりに合意の前に日本の船がつかまるというような事態がありましたら、われわれの考えでは、それは明らかに違法行為と認められますので、当然抗議を申し込むことになると思います。それから、合意ができましたあとでは、その合意に基づいてわれわれもその合意の範囲内で先方の何がしかの漁業に関する権限を認めるという立場になるわけでございます。
  97. 羽生三七

    羽生三七君 それでは、結局、合意するということは、それより前に、日本が合意する前に拿捕されては困るということだけで、その実害をチェックするために、何らかの日本とアメリカ当局との話し合いの場は持たれないのかどうか。大統領署名前の話ですよ、それは。
  98. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 御承知のように、アメリカの場合、いまのバートレット法の場合、上院先議でございます。上院は通過しておりますが、下院はまだの情勢でございます。実際には、近く行なわれます日米貿易経済委員会でも、この法律を議題にのせる予定になっております。
  99. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他に御発言がなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度にいたしたいと思います。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十分散会      —————・—————