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1966-06-02 第51回国会 参議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二日(木曜日)   午前十時二十九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木内 四郎君     理 事                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君     委 員                 笹森 順造君                 杉原 荒太君                 高橋  衛君                 林田悠紀夫君                 岡田 宗司君                 加藤シヅエ君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 曾祢  益君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君    政府委員        外務省アジア局長 小川平四郎君        外務省条約局長  藤崎 萬里君    事務局側        常任委員会専門員 瓜生 復男君    説明員        外務省経済協力局        外務参事官    吉野 文六君        外務省条約局外務        参事官      大和田 渉君     —————————————   本日の会議に付した案件アジア開発銀行設立する協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  アジア開発銀行設立する協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。 本件の提案理由説明はすでに聴取いたしておりますので、これより補足説明を聴取いたします。大和田外務参事官
  3. 大和田渉

    説明員大和田渉君) アジア開発銀行設立する協定補足説明を申し上げます。  この銀行目的といたしまするのは、エカフェ地域におきまする経済成長経済協力助長並びにエカフェ地域内の後進国経済開発を促進するということを目的としております。このような地域内の金融機関がほしいということは、かねがねこの地域内の後進国の間で言われておりましたのでございますが、具体的には一九六三年、地域内の経済協力閣僚会議というものでアジア開発銀行設立計画というものが採択されて、それから、その後、作業部会諮問委員会等、草案の作成、構想を練るということの作業が進められまして、最終的には昨年の十月末、域内閣僚会議、その後引き続き行なわれました域内域外両方を含めました全権代表会議で最終的にこの協定の案が採択されたわけでございます。  この銀行の特色といたしまするところは、「基本的性格においてアジア的である金融機関」であるという点でございます。この点は協定の前文にもうたわれておりますが、具体的には、総裁は域内加盟国の人から選ばれるということ、それから、この銀行執行機関性格を持ちまする理事会でございますが、これは十人によって構成されますが、その十人の理事のうち七名は域内から選出されるという点、さらに、この銀行資本構成は、少なくとも六〇%は域内国応募株数によって占められていなければならないというような規定、それからさらに、この協定効力の発生というのは、域内の十カ国を含めました十五カ国の批准書の寄託によって効力を発生するというような点、非常にアジア的な色彩ということが言えるのじゃないかと思います。  さらに、この銀行のいわば普通の市中銀行と違う点についての特色を申し上げますと、この銀行には、一般銀行のローンということのほかに、特別基金信託基金という制度が設けられております。これが、先ほど申し上げた、この銀行設立目的である経済協力助長という点に大いに寄与するのではないかというふうに期待されております。現在までに域内十九カ国、域外十二カ国、合計三十一カ国が署名しております。  この銀行授権資本は十億ドルでございまして、日本は二億ドル応募する予定でおります。二億ドル分応募することにつきましての国内法の整備につきましては、別途国内法をこの国会に上程しております。  以上簡単でございますが、補足説明を終わらしていただきます。
  4. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 以上をもちまして説明は終了いたしました。  これより質疑に入りたいと思います。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 このアジア開銀内容についての詳しい質問は順次今後お尋ねいたしますが、きょうは、とりあえず低開発国援助に対する基本的な考え方、これを最初にお伺いをいたしたいと思います。  実は、前置きが長くなってはなはだ恐縮でありますが、先日アメリカの人でロバート・L・ヘイルブロンナーという人の低開発国援助に関する論文、これは高橋正雄教授の翻訳で出ているものでありますが、これを読んだのでありますが、これによると、たとえばその中にこういうことを言っております。「もしわれわれが経済開発の問題を青白い経済学のワク内だけで考えるならば、われわれは思いちがいをしていることになる。偉大なる上昇過程が動きだすのは徹底的な社会的および政治的転形を通じてだけ可能である。そして、この上昇エネルギーはそれ自身でさらに社会的および政治的変化を生みだしていくであろう。」と言って、さらに、この「開発過程の深部には革命可能性が潜んでいる——それは、産業革命のときに起こったような権力と富の分配関係の漸進的な変化という意味での革命ではなくて、フランス革命ロシア革命のときのような根本的、急激な、そして、苦痛にみちた再分配という意味革命である。」、こういうことを先に述べて、そうして、低開発国の今日の現状を、たとえば住宅問題、あるいは人口問題、食糧問題、道路問題、あるいは水道の問題、あるいは技術の問題、生産性の問題等々、あらゆる分野にわたっていろいろな角度から論証をして、そうして一番最後のところに、この人は結局、「歯に衣を着せずにいえば、われわれは、経済および政治的体制のモデルとしての民主主義的資本主義は、西方世界の境界の彼方では」これは低開発国のことを言うと思うのでありますが——「少なくともわれわれの時代には、——影響力を及ぼしそうもないということをハッキリ前提した上で外交政策を立てるべきである。」、こう述べております。一言に言いますと、いままでの低開発国援助は人道的なもの、あるいはその後変化して世界的な規模でいろいろな援助が行なわれるようになりましたが、それは多くひもつき、政治的な意図によるものが非常に多い、しかるに、低開発国自体は非常に大きな革命的変革エネルギーを包蔵しながら新たなる発展方向に向かっておる、しかも、その方向が、先進資本主義諸国の好むような現在のこの民主主義的資本主義体制の中にはたしてこの低開発諸国がとどまるかどうか非常に疑問である、しかし、それにもかかわらず、なおかつ、この低開発国援助ということをやらなければならないし、そのやることが今日の先進国といわれるものの任務ではないかという意味のことを、これは非常に広範囲にわたって述べている本であります。  この人はもちろんアメリカ人でありまして、また、アメリカ政策を批判したものでありますから、それを直ちにわれわれは最上のものとは考えておりませんが、しかし、かなり示唆に富む論文のように見受けました。そこで、そういう角度から低開発国問題を見る場合に、一体、日本政府としてはどういう立場でこの低開発国援助問題というものを見ておるのかという基本的な問題があります。それからもう一つは、この低開発国とは一体何かという問題、その基準というものは一体何か。アジアで言うならば、これは全部がそうなのか、あるいはそうでない国があるとすれば、それはどれなのか、そういう問題もあると思います。また、これを援助するとなると、日本国内における低開発地域幾らもあるのに、はたして国民所得の一%を毎年援助することが可能であるのかどうか、しかしまた、可能ならしめなければならないような世界的な要請もあるという、非常に複雑多岐の問題を含んでおると思います。そういう意味で、このアジア開銀内容に入る前に、まず、日本としてはこの低開発国問題の開発の意義をどういうふうに考えておるのかという具体的な認識の問題からひとつ大臣から伺わせていただきます。
  6. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) たいへんむずかしい御質問でございます。まあ、アジアの新興国が概してこの低開発国という範疇に属するのではないかと考えております。それで結局、政治的に独立はしたけれども、経済的あるいは文化的にまだ独立したという実質を備えておらないのではないか、こう考えるわけでございます。でありますから、これに経済的な自主性を与えることが独立を完成する意味で必要である、そういうことによって初めて先進国の長期的な観点からやはり互恵の結実を得ることができるのである、こう考えております。日本といたしましては、特にこのアジアのうち東南アジア、これは世界の低開発地域の中で日本に最も地理的に近い、それからまた、経済的な関係においても非常な関係を持っておるのでありまして、日本自身経済発展のためにも、この地域をもっと強化することが日本経済的な利益にもなり、それがまた政治的な安定につながる問題である、こういう意味で、日本といたしましては低開発国経済協力ということがきわめて緊切な問題になっておる。それ以上にイデオロギーの問題につきましてはいろいろな見方があると思いますが、われわれは具体的な政策として、以上申し上げるような取り上げ方をいたしておる次第であります。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 大臣もお話しのように政治的には独立したけれども、経済的にはまだ困難な情勢下に置かれておるこの低開発諸国発展をうながすために低開発国援助問題が取り上げられ、特に国連貿易開発会議プレビッシュ報告が出まして、大いにこの問題が非常に大きな問題としてクローズアップされたことは言うまでもありませんが、さて、今度のアジア開銀でありますから、アジア地域に限定して問題を考えましても、なかなか問題が多い。しかし、それをもしかつての一部先進国考えておったように、自分の国の援助が、つまり援助国の好む態勢に被援助国がならなければ援助をするとかしないとか、こういう考え方でもし低開発国援助問題を考えておったならば、これは正しい考え方と言えないじゃないか。もちろん、全く自分意図に反するような政策がとられる、しかも、自分の国には多くの問題をかかえて財政的にも必ずしも豊かでないのに、その金を使って援助する場合に、相手の国が全く相反するような方向へ行くのを無制限に援助といっても、これはなかなかむずかしい問題だと思いますが、さりとて、あまりにも援助国自分の好きな範疇に属する国だけ、あるいはそういう形の国をつくるために、そういうことにもし低開発国援助というものを考えておるならば、私は誤るのではないかと思うし、また失敗するのではないか、いままでの歴史がそれを証明しておると思うのです。ですから、そういう意味で、たとえばこのアジア開銀にいままでインドネシア参加していない。たとえば共産圏は、これはエカフェ加盟国参加国だけがアジア開銀参加ということになっておりますから、共産圏はやむを得ないとしても、インドネシア参加しておらぬというようなことは問題だと思うのですが、今度のクーデター事件関連をして、近い機会国連復帰あるいはこのアジア開銀参加ということも起こるかもしれません。そういうことはありますが、それにしても、あまりにも自分の、援助国目的意識を中心にする低開発国援助にとらわれ過ぎてもいけないんじゃないかという感じを持ちますが、その点は大臣どうお考えになりますか。
  8. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その点は、全く御指摘のとおりだと思います。しかし、実際問題として、あまりに度はずれたことは、対国内問題からいっても、なかなか政府としては実行しにくいのでありますから、かなり長期的に見て、そして、さしあたりはこっちにマイナスであるけれども、結局、低開発国を益することによって、さらにそのはね返りが援助する国にもまた返ってくるという長期的な観点から、思い切った経済協力をすべきである、こう考えております。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 これは政府委員の方でもよろしいのですが、低開発国と言う場合の基準というものはどこに置いてあるのか。アジアについていえば、先進国といわれるものは日本だけなのか、あるいは台湾なども低開発国を脱した国として数えられているのか、その辺はどうなんでしょう。
  10. 吉野文六

    説明員吉野文六君) 「低開発国」の定義というものは、一定したものはございません。ただし、一応の基準としては、貿易だけで自立ができない国、すなわち、輸出と輸入が恒常的に外国援助を得なければ収支が償わない国というようなことが一応考えられると思います。で、事、アジアに関する限りは、一応日本を除けば、すべてが低開発国であるということになっておりますが、たとえば台湾のごときは、最近いわゆる経済離陸状況に達したということをいわれておりまして、他の外国援助を得なくても貿易だけで経済が成立していくという一応の見通しが立ちまして、低開発国の域を脱しつつあるというようにみなされております。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 ちょうどいま台湾国府のことが出たついでですが、いま急に思いついたのですが、前の一億五千万ドル援助というやつは、あれはどうなったんですか、台湾の。実行しておるわけですか、いま。
  12. 吉野文六

    説明員吉野文六君) 一億五千万ドルはいま実行に移りつつあります。で、この一億五千万ドルはもちろん勘定に入れて台湾が徐々に離陸状況に達しつつある、こういうことでございます。ですから、一億五千万ドル日本が与える前に台湾離陸できたということではございません。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは、とりあえずアジア開銀に手をつけた、こういうことでその問題について質問したわけですが、あと順次アジア全体についての御質問が他の委員の方からおありのようなので、内容的には深く立ち入りません。それで、この機会についでに二、三お尋ねしておきたいことは、実は日本フィリピンとの通商航海条約ですね。これは大臣御存じありませんが、実は数年前に当委員会でこれを批准するときに、われわれ外務委員一同念を押したんですね。ガルシア大統領は当選するかどうか、非常に見通しがあぶないんじゃないか、しかし、その場合に、批准できるかどうかというわれわれの質問に対して政府側は、断じて当選する、批准間違いなしというお答えでございましたが、結果は、マカパガル大統領が当選し、そうして現在のマルコス大統領になりまして三代目になったが、依然としてフィリピンはこれを批准しておらない。どこに問題点があるのか。しかも、最近になりましては、黙っておるだけでなしに、向こうは、批准は困難だとすら某高官が語っております。これはどういうふうにお考えになりますか。
  14. 吉野文六

    説明員吉野文六君) フィリピン側通商航海条約批准しない理由の一番大きなものは、何といっても、フィリピン国内経済現状日本経済力に比べまして断然弱い、そこで、万一通商航海条約を結んだ結果日本の企業が大幅にフィリピンに進出してきたような場合にはフィリピン国内産業が痛めつけられる、そういうようなことを主として考慮して批准をいままで延ばしてきたんではないかと考えられます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 しかし、そういうことは、そういう条件が急激に変化したわけでもないのでありますから、当時そういうことも十分考慮の上で少なくとも日本の国としてはこれを批准したわけなんです。それがこんなに長い間、もう何年になりますか、六年か七年このまま放置されて、しかも、向こうでは批准しないようなことを平気で言っておる。こんなことでいいんですかね。これはむしろ事務当局お答えよりも、大臣として、日本の国としてこの議決したものをいつまでもほっておくなんということは……。
  16. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この間ロペス大統領が来訪いたしました際に、ほとんどまあ公式の場と言ってもいいぐらいの場所でこの問題を向こうから言い出しまして、新しい政権は必ずこの懸案を解決してみせる、自分は非常な決意を持ってこの問題の解決に当たる、こういうことをロペスは言っておりました。なお、引き続いて両者の——私との対談の際にも、この問題を約束して帰って行ったような状況でございますので、この問題の解決は今度こそ実現するんではないかと、こう期待しております。なお、外交ルートを通じましてこの問題の解決のために今後も努力したいと思っております。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 二、三日前の新聞でありましたが、政府佐藤総理外遊と直接の関連性は持たせないように、場合によったら並行して経済閣僚アジア地域に随時送ると、そして、まあ佐藤総理外遊計画の、あるいはソ連訪問というようなことになる場合もあってかと思いますが、それをカバーするために、経済閣僚を通じてアジアとの接触を深めるというような記事も出ておりました。そういう考えがあるのかどうか。また、そういう考えを持っておる場合に、たとえば、まあマレーシアインドネシアとの和解もほぼ妥結に近いところへ来ておるようですし、それから、インドネシアの動向も、最近はいま国連復帰条件を検討しておるようでもあるし、あるいは近くアジア開銀参加ということも起こるかもしれない。そういう情勢になってきておる際、国内経済閣僚アジア全体歩かれるという場合に、軍事的な意味なんかもちろん私たちはないものと思っております。そんなことは毛頭予測しておりませんが、単なる経済的な接触を深めるということだけなのか。日本としてのアジア外交というものをどういうふうに考え接触を深められようとするのか。純然たる経済的な接触だけ——貿易を拡大してくれろとか、そういうことだけで行くのか、あるいは、低開発国援助についての条件等に触れて問題を考えておるのか、そういう点はどうなのか。全然そういう意図も何もないというならこれは別でありまするが、しかし、そういうことも一部では考慮されておる、経済閣僚各国に派遣して接触を深めるというようなことも言われておるので、この機会にひとつ伺ってみたいと思います。
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは具体的にそういう計画があるというのではございません。のではございませんけれども、大体もうそういう気運になっております。この間の東南アジア経済開発閣僚会議によって、大体政府部内の意思も統一されております。そうして、経済閣僚はもうやっぱりそれぞれにその現地について十分に確かめてみたいというような問題もずっと浮き上がってきておるんでありまして、そういったような気運が期せずして反映したのがこの間の新聞記事となってあらわれたのだと思いますが、ああいう申し合わせをしたり、計画を立てたりしておるわけではございませんが、そういう気運というものが期せずして紙面に反映したと、こう私は見ております。当然、もちろん御指摘のように、軍事的な、あるいは安全保障的な意味でなしに、この間会議をやっただけでも、すでにそれぞれの経済閣僚としてある程度の問題はもうすでにかかえたかっこうになっております。そういう点について現地について確かめて、そうして、的確な手を打っていくということが私は必要であろうと考えております。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 それで、いまの問題、さきに開かれた東南アジア開発閣僚会議等の結果から見て、最近の援助問題ですね、この間参加した諸国に対する援助問題は何らかの形で具体的に進行しておるんですか。そういうことを各国と相談しようというのか。ある程度のプランは日本でできているのか。その辺はどうですか。
  20. 吉野文六

    説明員吉野文六君) この間の閣僚会議とは別個に、すでに東南アジア各国から日本に対して、それぞれの国の開発援助してほしいという要請はいろいろ出ておりました。閣僚会議の際にも、各国代表がそれぞれ日本関係閣僚に会いまして、具体的な問題について、あるいは一般的に援助してほしいというような要請もありました。で、われわれはこれらを、いまの日本経済現状や、あるいはそれらの国の優先順位その他を考えまして、逐次できる限りの援助をしていきたいと、こういうような方向で目下検討しております。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 いや、それはもうわかっておるんです。わかっておるが、この間の会議の結果から見て、もう具体的にどこの国は何千万ドルとか、援助の形式はどういう形をとるのか、あるいは輸銀を使うのかとか、援助物資はどういうものなのか、そういう点についてまでの作業は進んでおるのかどうか、こういうことなんです。
  22. 吉野文六

    説明員吉野文六君) 一般に申し上げますと、具体的な案件が出てきまして、たとえば、ダムをつくってほしいというようなことになりまして、それに対してわが国は、それが幾らぐらい金がかかってどの程度の援助が必要だというようなことがはっきりするまでは、われわれとしては、先方に対してこのような条件でやってやるというようなことはきめておりません。一般的に、たとえばマレーシアが五カ年計画遂行のためにこのくらい金が要る、そのうち日本からも応分の援助をしてほしいと、このような要求がありまして、これに対しては、われわれが、具体的な案が出てきたらひとつ具体的に考慮しよう、こういうように先方に対して述べている次第であります。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、先日のこのアジア経済閣僚会議親睦会議で、具体的に内容的にはたいしたことはないということですね、一口に言えば。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こう開発担当閣僚が参りまして、そうして全般的な会議は、もちろん、今度は具体的に問題をかかえておる個々の問題について、それぞれ会議の前後において日本関係閣僚に会談をいたしました。そうして、いま吉野参事官から申し上げたように、具体的にまだ最終的な結論は見ていないけれども、そういう問題についての認識相互に深め、そして、それに対する全般的な見通しを与えて、   〔委員長退席理事増原恵吉君着席〕 向こうはその見通しを得て帰っておると、こういう状況でありまして、何が何やらわからぬ間に引き揚げたというようなことではもちろんないのであります。  それからまた、そういう具体的な問題もありますが、たとえば、東南アジアで新しく日用の雑貨製品、あるいは軽工業製品、そういうものはもう全部ほとんど他の地域から輸入しておる状況であります。やればやれる。やればやれるんだが、そしてまた、それに対する原料、材料等も相当そろっておるけれども、さて、工業を適当な規模で起こそうとすると、市場が狭い。どうしても他の国に向かって市場の開放を要求しなければならぬ。そういうようなことで、いまのような人口一千万か二千万前後の国がずっと隣り合っておりますので、こういう状況でばらばらにやっておったんじゃろくな軽工業も発達しないというようなことが非常に熱心に力説されました。これにはやはり各国がみな協力して、そしてお互いえてえてで分業を認め合って、それに対する市場を提供する、あるいは関税その他の税制上の考慮を払うというような相互援助組織をこれから盛り上げていかなくてはならぬというようなことが熱心に論ぜられたのであります。それはいずれ次回に具体案を持ち寄ってそうして検討しようということになっております。その他、各国が、人口だけふえるけれども、食いものは年々足りなくなる。これではだんだん半飢餓の状態におちいる。それで、日本農業技術経験というものを生かして農業問題をやろうじゃないかというような議も持ち上がりました。これも半年か一年の間には農業開発会議、エキス。ハートを入れた会議を起こし、これを続けていこうというようなことになっております。かなり具体的な収穫がありましたことをつけ加えて申し上げておきます。
  25. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ちょっと関連大臣にちょっとお伺いいたしますけれども、この経済会議が始まる前に、私外務委員会で発言いたしまして、その機会には、経済の成長率と人口の自然成長率のバランスがとれるようにいろいろと進言していただきたいということを申し上げましたところが、大臣は、全く御同感でございますという御答弁があったのでございますが、そのことについて何か御発言がございましたでしょうか。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それに関連して、家族計画についての御質疑がございました。これは、まあ表面に議題としては出なかったわけでありますが、人口と食糧とのアンバランスの問題が相当強調されました。まあ、宗教上の理由もあると思いますが、とにかく家族計画については表面議題にはのぼりませんでしたが、なお、この問題について、人口、食糧のアンバランスについては、もっと研究すべきであるというような点が強調されたことは事実でございます。
  27. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 もう一つで……。ただいま大臣は宗教の問題ということを申されたのでございますが、いつもこの問題が出ると、アジアの国々におけるそれぞれの宗教の観点から、非常にデリケートであるので、まあ、なかなか、あんまり率直に大胆に提言することはむずかしいというような御意見がいつも出るのでございますけれども、今日はそういう段階はもう過ぎておりまして、現に経済援助をして、その結果が、いま私が申し上げたような人口の自然成長率のほうがあまりにも過大であるために、目的をいつも達していないから、もう少しこのことについては強くいろいろ進言する必要があるのではないか。ことに、国際連合のほうにおきまして、もう二年ほど前からそういうことについて、もっと大胆に進言をするという方針がきまっているように私は報告を受けておりますので、そのこともよくお考えになって、今後機会があるたびにいろいろとおっしゃっていただきたい。それからその際に、まあ人の国にあまりたくさん人口をふやすなというような言い方は、これはもうもちろん言えないことでございますけれども、日本産業革命を経過して、そうして今日ここに至ったというその経過において、経済成長率と人口の成長率とのバランスがどういうふうになっていたか、そのために資本蓄積ができてこういうところまで来たということは、これはアジアの人たちがみんな認めている生きた例でございますから、日本としては、そういうことをそういう観点から強く言うことが非常にいいのではないかと、この前もそのように申し上げたつもりでございますが、どうか、そういう観点から、厚生省の人口問題研究所あたりでは十分な資料も持っておることと思いますので、御参照の上、さらにこういうことについては今後あらゆる機会に強力な進言を日本としてはしていただきたい、このように思いますけれども、いかがでございましょうか。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはもうごもっともでございまして、機会を見て十分に趣旨を徹底して考えてもらうということにしたいと思っております。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 他の方の御質問がありますので、問題だけひとつ出して打ち切りたいと思いますが、いま大臣がお話しのあった、東南アジアとの経済協力の中で、農業開発会議ですか、これらも半年後開かれるようですが、これについても一体日本農業にどういう影響があるのか、あるいは、あっても、それを最小限にチェックして踏み越えていかなければならないのか、非常に重要な問題があると思いますし、それから先般、私はここに外務省からも、それから農林省からも、かなり詳しい資料をもらいました。それで、これはもういつかの当委員会でも申し上げたように、いま日本が外貨保有高二十億ドルこしておる程度ですが、農産物の輸入が現在でほぼ年間二十億ドル、日本の外貨保有高全部を農産物輸入で食ってしまう。十年後にはこれが五十億ドルになるのではないかともいわれている。そういう条件の中で、はたして低開発諸国の第一次産品をどの程度日本が受け入れることができるのか、また、それを受け入れないとするならば、一体具体的に、アジアに限りませんが、低開発国援助というものは、はたして可能なのかどうか、あるいは、日本に及ぼす影響等たいへん問題があると思いますので、これは十分資料を整えて、今後の委員会へひとつ備えていただきたい、こういう要望だけいたしておきます。
  30. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まず、低開発国援助に関する基本的な問題を二、三お伺いいたします。第一は、低開発国援助が効果をあげるための条件。まあ、最近各国の国民総所得の一%を低開発国援助に出すというようなことが一つの傾向になってきております。日本といたしましても、おそらくいまの〇・五、六%を一%までに高めていかなければならない状況に置かれている。現在でも一%出しますというと、おそらく六億ドル以上になりましょうから、近い将来においては、それは十億ドルという非常な巨額な金を出さなければならないことになってまいります。そうすると、日本ももちろんでありますが、世界各国が低開発国援助にかような巨額な金を出して、それが効果があらわれないといたしましたならば、これはまことに悲劇だと言わなければなりません。そこで、低開発国援助が効果をあげるための条件は何かということが重大な問題だと思うのであります。もちろん、まず第一に援助を受ける国々が政治的に安定しておる、そしてまた、援助を受ける国々の間に戦争とか、あるいは国家間に緊張がないことが必要でありましょう。また、ある程度の経済的安定の見込みのあることも必要である。さらにまた、そこの国々が適当な経済計画を持ち得る能力を持っていることが必要でありましょう。すなわち、それにはやはりそれだけの、その経済計画を立てて推行するだけの政治家なり、あるいは経済学者なり、あるいはそれを推行する行政官なり、あるいは経済に従事しておる人なりというものが必要でありましょう。また、この計画を実施して効果をあげるための技術者あるいは優秀な労働者、そしてそれらを供給するためのある程度の教育の高さということも要求されるのでありましょう。こういうような条件があって初めて経済援助は効果をあげ得ると思うのであります。ただ、いまの低開発国が非常に状況がよくない。これを助けなければならない。経済的に発展させなければこれが世界の政治不安、あるいはひいては世界平和にもいろいろと支障が起こってくる。こういうことでやるといたしましても、やはり成功させるための条件というものを整えていかなければならないと思うのでありますが、この低開発国援助が成功するための条件、それを外務大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  31. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり自分から意欲を起こすということが、一番大ざっぱに申しまして——人からただ与えられる、与えるほうも何も考えずに、ただ恩恵を施すというような、そういう関係ではどうもやはりほんとうの経済開発というものにはならない。そういうことを考えまして、まずこっちが相談相手になって東南アジアの連帯感を強め、そうして相互協力を大いに固めて、態勢を固めて、そうすることがまず経済開発の先決条件であるというので、この間、そういうところをねらって開催を呼びかけたつもりでございます。問題は、しかし、どの国もまだ十分な技術というものは備えておりませんし、まずそういうものを持つ前に、非常に活発な意欲をふるい起こさせるということが私は大事じゃないかと考えたわけであります。いろいろ話してみますというと、みな関係担当大臣だけありまして、いろいろな活発な意見が出て、私は、期待した以上にこの会議が非常に内容のある活発な実績を示したものと、こう考えているわけでございます。まあ、どういう開発をどの国に当てはめて考えるかというようなことは、これはまあいろいろむずかしい具体的なこまかい問題になりますので、それには触れないことにいたしますが、相当なやはり意欲があると私は考えます。あとはまあ、いろいろな資源の賦存の状況であるとかいうような点から、無理のない、軽工業あるいは農産加工業、そういうものからだんだん手をつける、そして、まあ何といっても根本は農業開発ではないか。これは相当やはり意欲があるのでございますけれども、技術上の問題、あるいは資金的な問題、そういうもので行き悩んでいる。そういうことに首脳者が案外また冷淡であって、一向そういう方面に従来は手をつけなかったというような点もある国もある。でございますから、そういうことのいろいろな面について率直な意見の交換をやれば、相当私は土台はだんだん固まっていくのではないかと、こう考えております。
  32. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いま私は、低開発国援助が効果をあげるための一般的な条件は何かということをお伺いしたのですが、直接それに対するお答えがなかったわけですが、それでは逆に、いままでの低開発国援助は、これは日本ばかりではない、各国が行なっておりまして、もちろん成功している面もありますけれども、ずいぶん多額の金を使って実は失敗に終わっている例もあるのです。この失敗に終わっている例を私は研究して、何が一体失敗の原因であったかということを突きとめることが、将来この低開発国援助の効果をあげるために必要な点だろうと思うのでありますが、日本に限って言いますならば、日本もいろいろな形で低開発国援助に金を出しております。もちろん、感謝もされておるし、あるものは効果もあがっておるわけでありますが、中には効果のあがっておらないものがある。そういうような効果のあがっておらないものについて、その効果のあがらない原因を日本といたしましては十分に検討をしただろうか、その検討の結果、一体どういう点において効果があがらなかったのかということについて、いわゆる自己批判と申しますか、あるいは将来のために備えての検討といいますか、そういうものをされたことがあるかどうか、また、されたとすればそれはどういう点にあるのか、その点、外務大臣が御存じだったら外務大臣、また、御存じなければ、担当の方からお伺いしたい。
  33. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 非常に簡単に言うと、純然たる政治資金、ある特定の首脳者に対して政治資金を提供するというようなことは、これは一番害あって益なし、こういうことでございます。それからあとは、はでな営造物、そういうようなものだけに精力を使って、そうしてほんとうに落ち着いた国民の生活の実質に触れるような問題はそっちのけにしておったというようなのは、これはいずれもどうもあまり金ばかりかかって効果があがらないということになりはしないか。それから、たとえばメコン川の開発なんというものは、ほんとうにこれをやろうとするなら、ダムの建設をしたならば、それに電力の設備をつけ加えるとか、あるいは、かんがいの施設を末端までやってやるとかいうようなことをしないと、ただダムをつくった、それからかろうじて電力の設備はつくった、しかし、どうも電力の使い道がないとか、あるいは、幹線だけはできたけれども、それに連なるかんがいの細部が一つも手がついていないというような、そういうような点もやはり十分に行き届くような方法をとらないと、金ばかりかかって、たいして効果がないと思うのです。そういうような点、観察すると、国によっていろいろ際限がないと思うのであります。しかし、細々ながら、日本農業センターであるとか、医療センターであるとか、あるいは中小企業の家内工業に毛のはえた程度のものについての指導をするセンター、そういったようなものにつきましては、それ相当に効果をあげつつある。ただ、遺憾ながら金がかかりますので、どうも規模も小さい、それから、それの運営についても少し微弱である、数も少ない、こういうようなのが現状ではないかと考えております。いま、建設に協力する青年の海外派遣ということが始まったばかりでございます。こういう問題ももっと思い切ってやれば、そうたいした金がかからずに、相当にかゆいところに手の届くような経済協力ということができるのではないかといろいろ考えております。私はまだ十分に現地について勉強しておりませんので、ただ思いつくまま申し上げました。
  34. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、低開発国援助をやりました場合に、低開発国というのは第一次産品の生産地でありますが、ここでたとえば経済発展を促進しようとすれば、これらの   〔理事増原恵吉君退席、委員長着席〕 国々の第一次産品の消化、すなわち、国内で消化し切れないものを輸出するという問題が起こってくるわけであります。で、日本の場合ですと、近くの東南アジア諸国からそうたくさんバナナを買うことができない。米の買い付けにしても、もちろん、これからかなりふえてはまいりますけれども、向こう側の要求するほどたくさん買い付けをやることはできない。そこで、ここでいろいろ問題が起こるわけであります。これを日本としては解決しなければならない。また、低開発国において第二次産業、特に軽工業が発達してくる。そうなると、日本からその国に輸出をしておりました軽工業品というものがやはり競争することになる。もし日本のほうが工業力にまかせてどんどんと安いものを輸出するということになれば、そこの国のせっかく発展しだした産業というものを脅かすことになる。そうすると、関税を高める、あるいは輸入を制限する措置をとるというような事態が起こってくるわけであります。つまり、競合が起こるわけであります。また、それらの国々の工業がもう少し発展していきますと、今度は日本との間に市場獲得競争も起こってまいるのであります。そういうことから、せっかく低開発国援助してそうして工業なり農業なりを発展させても、われわれのほうとそこに摩擦が起こるという事態も起こってくるわけであります。もちろん、こういうことはどんな場合でも多少免れないが、やはり低開発国援助する場合に、将来こういうことが起こることを予想いたしまして、それに対して将来摩擦をできるだけ避けるということを考えつつやっていかなければならぬというふうに考えられるのですが、その点はどういうふうに考えられるか。  第二に、日本アジア域内における唯一の先進国であるということで工業が発展しておりますが、この工業は、結局重化学工業に移っていっておるわけでありますが、もし、その重化学工業が日本において発展した場合において、そうして日本の重化学工業の供給し得るものがそれらの国々における需要を満たすという場合でありますれば、そういう摩擦はない。日本の重化学工業の発展の程度と、それから低開発国における工業の発展のテンポというものとの関係というものも、将来日本の低開発国援助計画にやはり影響するところが大きい。それらの点についての考慮というものも、全体としての低開発国援助計画を立てて促進するために重大だと思うのですが、それらの点についての日本側の基本構想というものがどういうふうになっておるのか、これは外務大臣、あるいは経済協力担当のほうの方からお答えを願いたい。
  35. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 米の問題は、東南アジアの国でできる米は細長い米で、日本人は、相当輸入しておりますけれども、工業原料に使って、食糧にはこれは用いられておらない。したがって、輸入する数量に限度がある、まあこういう状況でございます。で、日本米によく似たものは、カリフォルニアであるとか、スペインであるとか、朝鮮、台湾はもちろんのこと、そういうようなところから飯米は輸入しておる。で、そういう状況でありますから、それを準内地米にだんだんかえて、東南アジア農業を興するというようなことは、これはもうあまり回りくどくて、何年かかってそれが達成されるかわからぬし、また、そういう日本米のようなものは向こうの人が好まない。こういうことで、これは農林省でも全然問題にならない。ただ、向こうで食べる食糧が足りないのだから、それで、まず経済開発の前提が十分に腹をこしらえるということなんで、それをひとつやってやろうじゃないか、こういうことになったわけでございます。しかし、同じ農産物でも、トウモロコシであるとか、あるいはその他の油脂原料というものは、多々ますます弁ずで、日本の酪農の発達の状況から見ると、もうここに幾らつくってもらっても日本が引き受ける、こういうような意気込みでございます、農林省は。そういうわけで、日本との競業は、農産物についてはさしあたり心配する必要はないようでございます。  それから軽工業は、これは日本自身としても、いまだんだん重化学工業に移行しつつあります。中小企業も、重化学工業の下請であるとかあるいは部品のメーカーにだんだん転換しつつあります。し  かし、多少の摩擦はもちろんありますが、しかし、東南アジア地域で、軽工業その他農産加工工業というものが興れば、結局日本の重化学工業にやはり依存する部分ができてくる、そういうわけでございまして、運搬あるいは動力、それから機械、設備、そういったようなものも、当然日本の重化学工業に依存するという関係になってまいります。これは私は、適当な調整の方法をとれば問題はない。軽工業の分野において過渡的には相当摩擦が起こるかもしれませんけれども、日本としては、いつまでも軽工業の分野に跼蹐すべきものではない、こう考えております。
  36. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 特に第一次産品のうち、工業等の原料を開発する問題があります。今日日本といたしましても、あるいは鉄鉱石、あるいは石油、木材等々各地でやっております。しかし、日本経済成長から見ますというと、これはもっともっとアジア地域において促進されなければならぬし、また、それが促進されることは、それぞれの国における経済発展に寄与するところも多いわけでありますが、従来は個々に行なわれておりましたけれども、十分日本経済の成長と関連さして計画的に行なわれておらなかったように思うのであります。もちろん、個々の国との関係あるいはそれらの国々におけるいろいろな諸条件が違いますから、なかなか統一的なそうして長期にわたる計画というものもむずかしかったと思うのであります。しかし、今後日本といたしましては、やはり原料のない国としてそれらの国々から多くの工業原料を得るといたしますならば、長期にわたった、長期的な相当大きな構想の開発計画が持たれなければならぬと思いますが、そういうものを今後持って、そうして、それを各国と話し合いをつけてやっていく方針をお持ちになっているのかどうか、いままでのように、単に個々の企業がそれぞれまあ手をつけていくというような状態でこのまま進められていくのか、あるいはもっと国が、政府がそれに積極的な計画を持って、また相当低開発国に対する資金の援助というものと結びつけてやっていくのか、その点についてどういうお考えを持っているかお伺いいたします。
  37. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは御指摘のとおりだと思います。ただ企業本位でこれらの問題にただもうかるからというので協力するというようなことでは、やはりぐあいが悪いと思います。でありますから、今度はまあ従来より以上に日本としてはこういう問題に力を尽くすということになりますので、御指摘のような長期にわたる開発計画というものを想定してそれに協力するというたてまえをとることはきわめて適当であろうと考えます。
  38. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もう一つお伺いしたいのですが、それはいままで、もちろん政府各国協定を結んでそうして政府資金をもって貸し付けるという形も行なわれてまいりましたけれども、しかし、多くは日本開発援助を私企業がやっているという形もとられてきているわけであります。しかし、今後日本が相当巨額の金を各国にいろいろな形で援助するということになってまいりますというと、単に私企業を通じてだけでは、とうてい国民総所得の一%という額にも達しません。またなかなか効果があがらない。そういうことで、結局、政府政府資金を貸し付ける、あるいは贈与するというような、いろいろな形で行われるようにならなければならない。その比重がふえていくのではないかと思うのです。ソ連その他の共産国の援助は、これはまあ政府が一手にやっているような形でありますが、いわゆる資本主義国におきましても、漸次そういう形がとられてくると思うのですが、日本政府としては、今後この低開発国援助は、政府自身がやはり政府の資金を出す、こういう形で行なうほうに移行するのか、それとも、現在多少はそれをやるけれども、多くは私企業に、開発なんかで私企業にまかしていくという方針をとるのか、その点はどういうことになるのか、基本的にどうお考えになっているかお伺いしたい。
  39. 吉野文六

    説明員吉野文六君) 理想としては、私企業が自分の資金で外国へ出ていってその国と提携するなりあるいは投資するというのが最もいい形でないかとわれわれは考えておりますが、しかしながら、私企業が後進国へ出ていくにつきましては、いろいろの不安な問題がある。そこで政府もお手伝いして財政投融資資金の一部をそのほうへ回すということもやっていかなければならないと思います。そこで、見通しといたしましては、後進国現状のような状況にあり、私企業がなかなか自分から出たがらないというようなところには、政府がやはり援助意味で出ていかざるを得ない。しかしながら、私企業だけが出ていって安全に利子や元本を十分回収できるというようなところには、私企業が出ていって十分ではないかと思います。で、このような比重は、後進国が次第に先進国になっていく段階によっても異なりますし、国によっても現在いろいろ異なっておる、どういうような現状であります。
  40. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 わが国がアジア諸国経済協力として出している金額——一九六〇年以降の大体の金額を教えてください。
  41. 吉野文六

    説明員吉野文六君) 一九六二年、六三年、六四年の実績を申し上げますと、二国間の賠償ないしは贈与、あるいは技術協力協定その他によってアジア地域に出しておるわが国の金額は、六二年に七千三百万ドル、六三年に七千五百万ドル、それから六四年に六千七百万ドルでございます。それから、二国間の長期信用供与、すなわち借款その他をさすわけでありますが、それによって日本アジア諸国に出しておる金額は、一九六二年に四千四百万ドル、六三年に七千九百万ドル、六四年に一億一千三百万ドルでございます。
  42. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうしますと、総額は六〇年以降はどうなっておりますか。六五年までもうわかっているでしょう。——私が調べたのでは、六一年が三億七千百万ドル、六二年が二億八千二百万ドル、六三年が二億六千五百万ドル、六四年が二億四千五百万ドル、六五年が四億一千四百万ドル。で、これを国民所得との比率において出しますと、六一年が一%、六二年が〇・六六%、六三年が〇・五四%、六四年が〇・四五%、六五年が〇・六三%、こういう実績になっておる。ここからうかがえることは、六五年度を別とすると、六一年度から六四年度までには総額自身が、絶対額自身が減少している。したがってまた、国民所得との比率はずっと下がってきている。これは一体どういうことが原因しているのか。それから、六五年になると少しこれがかえって四億台になっておるが、これはどういう事情に基づくのか。それから、今後これがどういうふうに発展をしていくと見通されるか、どうすべきだとお考えになるか、その辺の御説明を願います。
  43. 吉野文六

    説明員吉野文六君) ただいまの数字は、わが国が全世界の低開発国に対して行なった援助の実績だとわれわれは承知いたしておりますが、援助の額が六五年にかけまして下がってきた原因の一つは、いろいろ複雑な要素がございますが、一つは、賠償などが次第に減ってきておる。それから二つは、民間投資がふるわなかった。これは、民間投資はそのときの事情によりまして、国内の景気や、あるいは外国市場状況によりましてふえたり減ったりするわけでありますから、そういうことが一つある。それからもう一つは、後進国に対する輸出入銀行の提供する延べ払いによる輸出が必ずしも進捗しなかった。その原因は、後進国のほうで購買力がないとわが国の輸出が減っていく、こういうこともあるわけであります。  見通しといたしましては、わが国は一%に到達すべく、経済協力の総額をふやすように努力しておりまして、政府の資金による援助が増額すれば、勢いその方向に動いていくわけであります。第二は、賠償の額も、たとえばビルマに対する新たなる経済協力が去年から動き出したというようなこともありまして、少しずつ必ずしも減っていかない。それから、輸出入銀行の信用も、条件が緩和されますと、やはりそれに伴って輸出がふえていく、こういうような事情でありますから、先行きは、今後二、三年はふえていく傾向にあると思います。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと途中ですが、いまの御説明の中に、賠償ということを言われたのですが、賠償も含まれているのですか。
  45. 吉野文六

    説明員吉野文六君) そうです。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 それはおかしい。
  47. 吉野文六

    説明員吉野文六君) いまの、日本のみならず世界的に認められた援助の額というのは、五年以上の輸出入銀行の延べ払いを含むあらゆる先進国から後進国に対する資金の流れというふうに定義されておりまして、その中には賠償も含まれることになっております。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 しかし、それはおかしいので、賠償が減った部分だけ実際は援助をふやせるわけで、賠償を経済援助の勘定の中に入れているというのは、少し筋が違うのじゃないですか。——まあ、これはよろしいです。
  49. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ほど申し上げましたように、絶対額も比率も減っているのですが、この間の東南アジア閣僚会議では、これに対して日本は一%まで引き上げることを約束をされたようです。これはどのくらいの年次を経て一%程度にするという目標なのか。それらの経緯はどういうふうにお考えになっているのか。御説明願いたい。
  50. 吉野文六

    説明員吉野文六君) 大体見通しといたしましては、三年ないし四年ぐらいには国民所得の一%くらいにわが国の後進国に対する経済援助がいくんではないか、こういうような見通しでございます。しかしながら、具体的な計画はまだ立っておりません。
  51. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 三、四年後というと、国民所得をどれくらいと見、したがってその援助額をどれくらいというふうに見通しておられるのですか。
  52. 吉野文六

    説明員吉野文六君) この点につきましてもいま作業中でございますが、大体の見通しとして、たとえば三年後くらいには八億六千万ドルくらいの額が後進国援助として、もし一%に到達するならば、出てくるんじゃないか、こういうように考えておりますが、詳しい数字は目下なお作業中でありまして、あと数カ月かかるのではないかと見られております。
  53. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それから、わが国の援助条件が非常にきびしいといわれてるんですが、大体条件はいままではどうなってるのか、今後このきびしいのをどういうふうに緩和されようとしているのか、その辺をひとつ。
  54. 吉野文六

    説明員吉野文六君) わが国の経済協力に関する条件は、従来のところ、国によってまちまちでございまして、たとえばインドに対する円借款は十五年から十八年、五・七五%というようなことでございまして、それから、韓国に対する有償の経済協力協定条件は、二十年、三・五%というような条件でございます。で、国際的な要請は、なるべく早く条件を緩和しろということでございまして、一つの基準によりますと、期間は二十五年以上、利子は三%以下というような基準が一応出されております。
  55. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 一九六五年は、わが国の経済協力は四億一千四百万ドルと、こうなっているようですが、各国別に見ると、どれくらいずつになっていますか、これは。
  56. 吉野文六

    説明員吉野文六君) わが国が各国に与えた援助の内訳ということになりますか。
  57. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ええ、そうです。
  58. 吉野文六

    説明員吉野文六君) わが国が各国に与えた国別の援助の数字は、いまここに持ち合わせておりませんが、州別、すなわちアフリカだとか、南米、アジアその他に対する州別の内訳、またアジアにつきましても、極東、南アジア、中近東に対する内訳、そういうものは持ち合わせておりますが、それでは……。
  59. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それをちょっと言ってください。
  60. 吉野文六

    説明員吉野文六君) たとえば二国間、政府ベースの援助によりますと、極東地域には一億七百万ドル、南アジアには九千八百万ドル、中近東には二十万ドル、アジアに対する合計は二億五百万ドル、こういうような数字が出ております。それから、政府の贈与及び政府の貸付を見ますと、政府贈与は、極東につきましては、これは賠償を含むわけでありますが、六千七百万ドル、南アジアに対しては一千三百万ドル、中近東には二十万ドル、合計八千万ドル、こういうことになっております。それから政府の貸付は、極東については一九六五年には四千万ドル、南アジアにつきましては八千五百万ドル、中近東では実績なしで、結局アジア全体で一億二千五百万ドル、こういうような数字が出ております。
  61. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それらもあとで資料にして出していただきたいのと、同時に、資料にして、世界各国アジアに対してどういう援助額をしているのか、それの各年の趨勢、それらも資料にして出していただきたい。  それから、アジア開発銀行を中心にして今後われわれが経済協力をする場合に、このアジアの開銀を通じての経済協力が東西冷戦の要因になる、冷戦を激化する要因になるというようなことは避けて、むしろ、南北の協力の要因になるというような努力をしなければならないと思いますが、それに対してどういう用意があるか、これは外務大臣にお尋ねをしたい。
  62. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 経済の問題を離れてどういう効果があるかという御質問のようでございますが、この間東南アジア閣僚会議をやった例に徴しましても、ああいう国際的な協力がだんだんでき上がってまいりますと、ただ、まあ国境を侵したとか侵さんとかいったようなことでいざこざをしていることがいかにつまらないことであるかというふうに認識が変わっているんじゃないかというような私は気がいたしました。これが非常に大きな資源を侵したとかいうようなことじゃなしに、国境線をちょっと出たとか出ないとかいうようなことでいざこざを起こしているようでございますが、そういったようなことはほとんどなくなっていくのではないか、こういうふうにも考えられます。でありますから、直接政治的な目的を持ちませんでも、純粋に経済開発を国際協力組織によってだんだん高めていくということが、やがて政治的安定というものに非常に大きな貢献をしてくるのではないか、こう考えます。
  63. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 南北協力の要因にするための唯一のかぎは、このアジア開銀にソ連をどう協力させるかということが一番重要な問題だと思うのですが、これについてどうお考えになるか。どういう努力をしようとしておられるか。これも外務大臣に。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。  ソ連とともにフランスも参加していないわけです。だから、ソ連、フランスが参加していない理由先進国の中で。それから、それを今後どうしようとするのか、あわせて。
  65. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはソ連がエカフェのメンバーでもございますし、それから、この会議が数次開かれたのでございますが、かつてソ連から出席があったこともあるようであります。でありますから、おそらくソ連としては非常にこれに参加する可能性があるのではないかということをわれわれは期待しております。
  66. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ソ連との間に最近日本は非常に協調ムードが高まっておるようでありますが、近くソ連の外務大臣も来るとかということも伝えられております。そういう機会にこの問題を積極的に取り上げていただきたいと思います。これは希望としてお願いをしておきます。  それから、ジョンソン大統領が一九六五年の四月でしたか、   〔委員長退席理事増原恵吉君着席〕 東南アジア開発構想なるものを表明をして、十億ドルの金を出すことにやぶさかでないというようなことを言ったようでありますが、この構想はその後どういうふうに進展をしておるのか。この構想とアジア開銀との関係をどういうふうにお考えになっておるか。
  67. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはまだ一種の構想を発表されたにとどまるのでありまして、具体的な計画を立てて、そうして東南アジア関係諸国に呼びかけたというようなところまでもちろん来ておらないのでありますから、まあ、そんな程度でございます。それで、アジア開銀の問題に関連して、二億ドルの出資金というものは一体十億ドルの構想の中に入っておるのか。それからまた、二億ドルのほかに一億ドルの信託基金アメリカ考えておるようでありますが、これが大体十億ドル構想の中に入っておるのか。その点は確かめる必要も特にございませんので確かめておりませんけれども、まあ、そんな程度でございます。
  68. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ジョンソンはその構想を発表したときに、北ベトナムに対しても援助をすることにやぶさかでないというようなことを言ったように記憶しておりますが、こういう態度は推し進められるべきだし、特に日本あたりがイニシアチブをとってそういう方向に持っていくことが、東西を激化せしむるのでなくて、東西を協力の方向に持っていく非常に大きなかぎになると思いますが、これについて外務大臣はどうお考えになりますか。
  69. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういう、別に政治的な線を引くものではないという構想を述べたにすぎないのだろうと私どもは考えております。まあ、お互いに戦争をやめようじゃないかと言っても、なかなか北越がこれに賛成しないと、こういう状況で、金のところまで話が行きますかどうですか、はなはだ疑問だと思います。
  70. 増原恵吉

    理事(増原恵吉君) どうですか。よろしゅうございますか、きょう。
  71. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 あるのだけれども、時間がないのですか。
  72. 増原恵吉

    理事(増原恵吉君) きょう、ちょっと外務大臣が十二時から外交上の用で……。
  73. 曾禰益

    ○曾祢益君 この次発言します。
  74. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 委員長、ちょっと資料の点ですが、このアジア開発銀行の問題を論議するということになりますというと、アジア諸国経済協力、特に日本アジア諸国との関係貿易、あるいはいま言った経済援助関係、そういうものについての資料が必要なんです。ところが、そういうことについて外務省のほうでは相当いろいろな資料ができておるにかかわらず、積極的にお出しにならないのですね。これは、こういうものはぜひいただきたいと思うのですよ。たとえばここに東南アジア開発閣僚会議用の基礎参考資料が二冊ありますけれども、このほかにも、経済協力国のほうから、先ほど佐多君の質問したような問題についての資料が出ておること私知っております。そういうものをぜひ御配付願いたいと思うのです。どうでしょうか。
  75. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 承知しました。
  76. 増原恵吉

    理事(増原恵吉君) いいですね。それじゃ提出をさせます。  他に御発言もなければ、本件に対する質疑は本日はこの程度にいたし、これにて散会いたします。    午後零時五分散会      —————・—————