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吉田忠三郎君
航空の再編成の問題がいま前田委員からいろいろ質問されました。私も関連で若干伺ってみたいと思います。
一つは、三月の五日の日経新聞に出ているものです。いろいろ
大臣は、去年の十二月の答申に対して、ただいまも繰り返して、尊重してまいりたい、こういうような
答弁をされております。私は、ことばだけで尊重してまいりますと言っても、問題にならないと思うんです。なぜかというと、
航空業界のほうは、いまも前田委員が指摘したように、簡単に再編成というものはできません、しかも急いで強行すべきものではないと言っておりますね。それよりも当面は不振の打開が先決である、だから再編成というものは、その促進はそのあとだ、こう言っているんです。具体的にこの新聞の内容を見ますると、「松尾日航社長が国内幹線三社による共同運航方式の採用を全日空に要請することになったのは」、
一つは、「
航空審議会の案通り、業界がただちに再編成するのは国内
航空の赤字問題などからむずかしい」、こういうことを申し入れているんです。それから二番目に、「不況に加え、全日空機墜落事故により、
航空旅客が減少、当面幹線が赤字状態となっている」、三、「共同運航を実現すれば、業界の過当競争がなくなり、運航コストが下がる」、四、「過当競争防止により、安全運航が確保される」、こういう内容を申し入れて、これに対して全日空の岡崎社長は、共同運航には全面的には反対しないけれども、国内
航空が
主張する無制限の共同運航方式には反対である、こういう意見をここで申し述べているわけであります。この申し入れをした松尾社長は、この案でまいりますれば、「共同運航に伴い、部品などの共同購入や施設の共同
使用による経費削減を全日空に申し入れる」、このことについては、今度は岡崎全日空社長も賛成の意向を明らかにして、問題のいま指摘された国内
航空の管野社長は、「これが実現すると「当社の経営再建につながるほか、業界全体のプラスとなる」」、こう言っています。ですから、どうもこの新聞の内容をすなおに見ても、
運輸省がいま進めようとしている再編成というものとは方向がちょっと違っているのじゃないか、こういう気がするので、これに対する
考え方をひとつ聞かしていただきたいと思うのです。私もしろうとでありますけれども、いままでいろいろ当委員会で、事故のあるたびに、あるいは機会あるたびごとにこの問題を取り上げてきた一人でありますから、そういう立場で
考えてみると、そう簡単に私は再編成というものはできるものではないと思うのであります。それはなぜかというと、各企業の経営状態がそれぞれ違っておるということです。しかも経営の内容は、御承知のように、国策会社である日航、そしてまた全日空は、最近でございますけれども、若干経営基盤というものは確立をされつつある、こういう状態ですから、この
二つの会社を除いた他の
航空企業を営んでおる会社というものはまことに経営状態が国内
航空をはじめとしてよくないということは十分知っておられると思うのであります。したがって、職員の待遇といいますか、労働の条件、あるいはその他の施設の状態、あるいはまたそれぞれの株主の
関係等々の構成もすべて違っています。これはたびたび申し上げますけれども、国内
航空の場合は地方自治団体がかなり出資しています。そういうように内容が違っている。ですから、これを
運輸大臣が申されたように再編成を急ぐということになりますればどういう結果になるかというと、もとより株主に多大に犠牲を負わす、こういう結果にもなる。しかも、いまのような状態でこのことをさらに強行するとすれば、それぞれの企業に所属しておる職員の動揺等々、これが関連をいたして安全問題まで悪影響を及ぼしていく、こういうことになるのじゃないかと私は思うのです。したがって、なぜこういう問題が今日起きてきているか、ここに
運輸大臣並びに
運輸省の局長以下幹部の諸君が目を向けなければならぬのじゃないか、こう私は思うのであります。で、事故があるたびにいろいろ再編成、集約化等々というものがそれぞれ論ぜられますけれども、しからば一体それが具体的に政治の場なりあるいは行政の場で施策として実行されてきたかというと、私は、全くないとは言えないけれども、皆無に近い、こう言わざるを得ない。ですから、私から言わしめれば、完全に、いま前田委員も指摘したように、政府自体に
航空政策がない、こういうところに結論づけられるんじゃないか。ですから、あらゆる角度から今日
日本の
航空政策というものは不在である、こう言われているゆえんもここにあるんじゃないかと思う。私どももいままでいろいろこの問題を取り扱ってきてみて、政府並びに
運輸省の
航空局がやっています実態というものは明らかに場当たり的である、計画性がちっともない、こう私は言わざるを得ない。ですから、迷惑をこうむるものは
航空業界の人々だけなんです。端的にある新聞にも出ているけれども、政府に政策なんというものは全然ありませんと、飛行機のつくり方
一つ見たってわかるじゃないか、こういうことを言っておる。ために、飛行場のたとえば建設についても、政治家につつかれて、おととい
報告されたように、いまだに飛行場ができたけれども定期運航もできないような松本飛行場等々がこれはいい例だと思います。先般本委員会が指摘した三宅島の飛行場においてしかり――等々がここに書かれて私はいるんだと思うけれども、こういう点が私は問題じゃないか、こう
一つ思います。
それから、たいへん
航空審議会の答申を尊重する、こう
大臣は何か宝を求めたようなものの
言い方をしておりますけれども、一点
航空審議会というものの権威はどこらあたりに
位置づけられているのか、非常に私は疑問だ。前田委員も指摘したように、この内容を見ますると、答申をしたものは、将来の
日本の
航空事業のあり方というばく然とした答申のしかたをしたんです。ですから、出てくる答えは、わずか一カ月足らずで審議したわけですから、満足な答えはもとより、ばく然とした答申をしているわけですから、どうせばく然としたものしか出てこない。どんなにまじめにこれを読んでみても、つかみようのない答申なんです。あえてこの中でつかみ得るものは、将来国内運航は一社にして、
国際線を一社にする、当面とにかく
関係各社間において、飛行機の機数、あるいは便数の調整、運賃のプール制等々を実施したらいいんじゃないか、こういうものが貫かれているように思うんですね。私はこれは何か、伝家の宝刀のように、たいへん尊重していきますなどと言っても、どこを尊重してどういうことをやるのかつかみ得ない。具体的にどういう面で尊重をするということは
大臣は
答弁しておりませんから、私つかめません。そこで私は、これらの問題は、たいへん
やり方としては幼稚な
やり方ではないか、こう思うんですね。今日、
日本の
航空事業そのものは一体将来に向けてどうあらねばならないかという基本の問題は、何としても
航空事業の将来がどうなるのかという基本問題をやはり論じなければ、これを抜きにしては私は政策というものは出てこないと思う。
具体的に申し上げますけれども、たとえば、今日パイロット養成についてどうこう言われておりますけれども、先般の委員会で申し上げたけれども、一体こんなに少ない教官、人の
関係です。あるいはこんなに少ない機材でいいのかという問題が
一つある。これはイギリスの国立の
航空大学の例を引っぱってみますと、機材については、二十六機も持っている。オランダの場合は三十機も持っている。わが国の大学で持っている機材というのは、わずか単発が七機、双発が四機、こういう状態なんですね。こういう問題を一体どうするのかということが
一つあります。
それからその次に、いまも前田委員から指摘されたように、今日のローカル飛行場というのはきわめてお粗末なものだ、滑走路も短い、こういう問題はたびたび指摘をされているところなんだ。これを一体具体的にどうするかというものがない。
それからもう
一つは、
気象庁長官がおりますけれども、非常に
航空気象情報がおくれている、ややもするとおくれがちである、こういう問題もありますね。こういう問題を一体どうするのかということも論じてみる必要がある。
それからさらに、管制官の人手の問題、それから
人間としての能力の問題、それから待遇あるいは労働条件等々の問題、これをカバーするために一体どう機械化していくかという問題だってあると思う。
さらに、再三指摘されているように、安全性と関連させて過当競争の問題がある。こういう問題だって一体どうするのかということが、この答申の中に、機数、便数の調整をやりなさいと、運賃のプール制の実施をやったらいいじゃないかということを言われている程度で、具体的に一体
運輸省の
航空局がこの過当競争についてどういう施策でこの業界の指導監督に当たろうとしているかということが出ていない。こういう問題、やはりこれは掘り下げてみる必要がある。
それからもう
一つはパイロット、
航空事故が起きるたびにほとんどそれぞれの統計を見てもパイロットのミスによるものが多い、こう言われたり、書かれたりしているので、そのパイロットは、これはだれでもパイロットをやるというわけにまいりませんから、それぞれの
資格要件を整えて、国家試験を受けてパイロットになるのだと思うが、そのパイロットを試験する試験官の問題だって私はあると思うのです。現在
航空局にいらっしゃる試験官の方々が、こんなに大型化してまいったりあるいはジェット機になったりしているわけですけれども、実際問題としてその
資格要件を持っていない人が検定官になっている、試験官になっている。だから、それは技術的にはそういうものが必要なくて、法規、慣例その他を熟知しておれば試験官として用が足りるということであれば別でありますが、まずこういう問題がある。
それからもう
一つは、
運輸省自体に、
運輸大臣も先般答えられたけれども、予算が全く不足している、人手がない、こういう問題がありますね。たとえば、
一つ試験官の問題で指摘しておきたいと思いますが、ジェット機の
資格要件をとるための試験というものは、アメリカまで行かなければならないわけでしょう。今日サンフランシスコでやっていますね。そうしますと、その間の旅費というのは二十二万円幾らより予算がない、私の調べたところでは。一体
航空局の試験官がアメリカへ往復するのに二十二万円で行ってくることができますか、
運輸大臣、できないでしょう。何をやっておるかというと、完全に試験を受けなければならないいわゆる学生の側のほうからお金をちょうだいをして、援助していただいて、試験官が年に二十数回アメリカに渡って試験をしている、こういう実態でしょう。この中に一体何か情実がないか、これはやはり懸念される問題じゃないですか。
向こうへ行ってホテルの宿泊代からあるいは往復の
航空運賃がみんな会社持ちだ、
日本航空あるいは全日空の会社が出す、こういうばかげた予算体系にしているところに、
運輸大臣、根本的な問題があると思うのです。こういう問題を抜きにして、一体この集約、統合であるとか、再編成を論じてみても、これは明らかに、日航社長が言っているように、再編成促進なんというものは経営改善の次の問題だ、こう言われる結果になるのではないかと思うのですよ。
それから、おとといのこの委員会でも、事故発生後に
運輸大臣はかなりのきつい警告も出した、そしてまた
関係者と集まって安全の誓いをした、こら
答弁されました。たいへんけっこうなことだと思うけれども、こういう問題を解決しないで、ことばだけで事故が起きるたびに安全の誓いをしたからといって、一体安全というものが確立されるかどうか、こんなものはどっかの宗教のお題目と同じようなものではないかと思うのです。
大臣、一体こういう基本の問題、
運輸大臣は今度のつまり
航空再編成の問題とからめてどう具体的に対処していかれるのかということをやはりこの際明らかにしていただかないと、たいへんわれわれとしても、いままでいろいろな問題を取り上げてきたけれども、実のらないような気がする。ぜひ責任ある明快な
答弁を求めておきたいと思う。