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1966-02-28 第51回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十八日(月曜日)    午前十時八分開議  出席分科員    主査 愛知 揆一君       赤澤 正道君    上林山榮吉君       登坂重次郎君    藤尾 正行君       山本 勝市君    大出  俊君       高田 富之君    中村 重光君       平林  剛君    八木 一男君       山田 長司君    吉村 吉雄君    兼務 川俣 清音君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (大臣官房長) 村上孝太郎君         大蔵事務官         (大臣官房会計         課長)     瀬戸山孝一君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (関税局長)  谷川  宏君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      松永  勇君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   津吉 伊定君         印 刷 局 長 遠藤  胖君         通商産業事務官         (通商局国際経         済部通商関税課         長)      井川  博君         通商産業事務官         (中小企業庁計         画部長)    荒玉 義人君         自治事務官         (行政局振興課         長)      遠藤 文夫君     ————————————— 二月二十八日  分科員相川勝六君及び勝間田清一委員辞任に  つき、その補欠として藤尾正行君及び中村重光  君が委員長指名分科員選任された。 同日  分科員藤尾正行君及び中澤茂一委員辞任につ  き、その補欠として山本勝市君及び山田長司君  が委員長指名分科員選任された。 同日  分科員山本勝市君及び山田長司委員辞任につ  き、その補欠として相川勝六君及び平林剛君が  委員長指名分科員選任された。 同日  分科員平林剛委員辞任につき、その補欠とし  て吉村吉雄君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員吉村吉雄委員辞任につき、その補欠と  して八木一男君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員中村重光委員辞任につき、その補欠と  して大出俊君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員谷口善太郎委員辞任につき、その補欠  として林百郎君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員大出俊君及び八木一男委員辞任につき、  その補欠として勝間田清一君及び中澤茂一君が  委員長指名分科員選任された。 同日  第四分科員川俣清音君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算大蔵省所管  昭和四十一年度特別会計予算大蔵省所管  昭和四十一年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 愛知揆一

    愛知主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計予算大蔵省所管昭和四十一年度特別会計予算大蔵省所管昭和四十一年度政府関係機関予算大蔵省所管を議題とし、質疑を行ないます。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代として分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力願いたいと思います。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、要領よく簡潔に行なうよう特に御注意申し上げます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。藤尾正行君。
  3. 藤尾正行

    藤尾分科員 四十一年度予算におきまして、大蔵大臣予算を編成されるにあたりまして三千六百億にのぼります思い切った減税案を示されました。そうして今日の不況克服という問題に非常な決意をお示しになりましたことに対しまして、心から敬意を払うものであります。しかしながら、私どもいろいろと減税案というものを拝見をいたしまして検討をいたしておるのでありまするが、その中身におきまして、いろいろと批判もございまするし、その批判の中では、私どものどうも納得がいかないというような内容のものも中にはある、私はかように思っております。  そこで、まず大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、大蔵大臣は、この減税案作成をされるにあたりまして、この減税による消費増大策といいますものがはたして所期の効果をあげ縛るという御決意を、あるいは御自信を当初からお持ちになっておられましたかどうかという点をまず最初にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 間接税のいきさつをちょっと申し上げておきますが、初めは三千六百億減税というほどの大幅なことを考えていなかったのです。もう少し低い線で考えておったのですが、その段階ではとても間接税までは及ぶまい。ところが減税幅がだんだん大きくなり得る可能性が出てきましたので、そうすると、間接税のほうを考えろという声が起こることを想像しておったわけです。なぜ間接税の声が起こるかというと、間接税につきましては、物品税につきましては何年目になりますか、もうしばらく動かしていないのです。その間、もう一つの問題がありますのは、自動車につきまして逓増税率がきめてありまして、これが今日の不況に対して、一体逓増のままでほうっておくのがいいかどうか。これは相当自動車界影響があるだろうというような批判意見等もありまして、さあ物品税をどうするか、ことに減税幅が大きくなった場合には物品税をどう扱うかということは頭痛の種だったわけです。と申しますのは、一たび物品税をやる、こういうことになりますと、これはたいへんな要請があるわけなんです。どこで線を置くかということが、とても政治的にさばききれないくらいな困難な問題であろうというふうに考えまして、ある段階では、物品税についてはこれをいじくらざるを得ないとは考えながらも、物品税はいじくりません、こう言ってきたんですが、物品税というものは申し上げるまでもなく、一つには価格引き下げのほうの影響があるわけです。現に自動車なんかそういう引き下げをやるだろうと思います。と同時に、物品税中小業者相当の手間ひまをとらせる税目が多いわけです。それから売れ行きにも相当影響がある、そういうことを考えまして、消費の刺激という面、それとまた中小企業者負担軽減という両面につきましては、もう理論的にもまた実際的にも相当効果があるだろうということは予期しておったわけです。
  5. 藤尾正行

    藤尾分科員 ただいま大蔵大臣から、物品税をこの減税案の中に取り入れざるを得なかったという事情についてのお話があったわけであります。私ども承知いたしておりますところによりますと、この物品税減税方針といいますものは、政府に置かれました税制調査会減税答申にはたしか入っていなかったはずであります。これが、調査会答申をいたしましたあとで、大蔵省大蔵原案といいますか、税制改正大綱という段階に入ってこれが取り入れられてきたということでございます。初めから大蔵大臣は多少予期をしておられたということでございまするけれども、その経緯について、これは主税局長にお伺いいたします。
  6. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税政府税制調査会においてどの程度取り上げられたかという問題でございます。確かに現在の税制につきまして非常に問題が多いのでございますが、いつも私どもが耳にいたしますのは、何と申しましても所得税法人税あるいは相続税といったような、直接税の減税が中心的な論点になるということでございます。しかしながら、一方間接税も決して問題がないわけではない、税制調査会におきましても議論になっておるととろでございます。しかし、昭和四十一年度税制改正方向といたしましてどの程度これを盛り込むか、税制調査会におきましても議論がございましたが、結局所得税法人税相続税あるいは租税特別措置と申しますか、こういった論点に力点が置かれまして、間接税につきましてはこんなふうに述べておるのでございます。  昭和四十年十二月に答申されましたところの税制調査会答申の中では「国民生活の安定を図り、生活水準の向上に資するための租税政策として、所得税相続税負担軽減とならんで、間接税負担軽減についてもまた検討されるべきであろう。また、間接税については、間接税制全般的見直しを行なった昭和37年度以降の諸般の情勢の推移にかえりみ、現時点においては、改善を図る余地も認められる。しかし、今回のわれわれの審議においては、限られた時間の制約」云々というわけで、法人税を優先的に取り上げたというようなことをいいまして、なお大臣が申されましたように、「なお、昭和41年中に期限の到来する物品税暫定的軽減または非課税措置については、期限到来とともに本来これを廃止すべきであるが、当面の経済政策等との関連を考慮しつつ、政府において適切な措置を講ずることが適当である。」こんなふうに申しまして、時間はなかったけれどもこういった問題点がある。特に四十一年に期限の到来する物品税暫定措置、ほうっておきますと税率が上がってまいりまして値段を上げなきゃならぬ。しかし、こういった不況状態価格転嫁があるかどうか、こんなところが問題である。この点等につきましては、政府において十分検討して慎重な措置をとるべきであろう、こんなふうな答申を受けたのでございます。このような答申に基づきまして、過去四年間の私どもの常に聞いておりますところの物品税問題点をその後十分論議いたしまして成案を得ましたのが今回の物品税改正案でございます。
  7. 藤尾正行

    藤尾分科員 ただいま主税局長お話でございますると、税制調査会段階においても種々討議があったんだ、答申にはなかったけれども、時間がなかったためにそれは答申に入れられなかったのであって、その討議内容というものをあわせ考えて、大蔵当局において十二分に考慮した上で、今度の物品税減税方針というものをお出しになった、こういうことでございますね。そういたしますと、ここでいろいろ考えてみなければなりませんのは、今度出されました物品税減税内容というものにはあなたは十二分に自信を持っておられる、こういうことでございますね。
  8. 塩崎潤

    塩崎政府委員 十二分の自信という意味でございますが、私どもでは、現在におきまして考えられる案といたしましては最善なものと考えております。しかし、物品税につきましては、複数の品目でございますし、さらにまた政策的にも種々議論が出ているものであることは御存じのとおりでございます。そういった意味では種々の論議があり、批判があり、また別な方向改正意見もあることは十分存じております。
  9. 藤尾正行

    藤尾分科員 それでは、これからその物品税中身について、あなたにいろいろお話を承ってみたい。  この物品税は、平年度合計三百四十七億四千七百万円ですか、初年度二百八十七億千三百万円という内容のものでありますけれども、その内容新規減税分と、それからいままでの暫定措置といいますものを延長するという二つの部面に私は分かれておると思う。その中で、新規減税が非常に大きな課題の一つでありますけれども、これは大体四つ分類をされておるはずであります。その四つ分類をされております合計二百三十余億円の中身といいますものの中で、あなた方が最大の重点を置いておられるというものはこの第三類であります。第二種物品の第三類、その二番目が第二種物品の第四類、第三番目が第二種物品の第二類というようなことで、それぞれの方針をお立てになっておられるようであります。第二種物品といいますのは、これは製造業者に対する課税であります。しかもその中の第三類、第四類という大部分に属します減税内容といいますものは、そのほとんどがマスプロの製品であります。といたしますと、今度の新規物品税減税内容といいますものは、一体何をねらっておるかということが問題になると思うのでありますけれども、あなたは一体どのようにお考えになっていますか。
  10. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税の性格に関する基本的な問題についての御質問のように承りました。  非常に特殊な商品に対しまして、消費税製造業者あるいは工業者という消費者消費する前の段階におきまして課税すること自体いかなる意味を持つか、これはむずかしい問題でございます。私はいつも申すのでございますが、製造業者に対しまして課税すること自体、おそらく私の考えでは、消費税というものは製造者商品価格を通じて消費者転嫁されておる、こういう考えのもとででき上がっておるものと思うのでございます。おっしゃる意味は、それを減税することが大企業に対する企業減税ではないか、物品税減税するならば、まだまだ零細企業者免税点、あるいは零細企業者が納めなければならない物品税税率引き下げ、こんなところに重点を置かれるべきではないかとのお話でございますけれども、私は、やはり商品価格を通じて消費者転嫁しておるというのが前提ならば、消費需要喚起し、さらにまた輸出振興観点から、国内の消費市場拡大をはかりまして、大量生産の基盤をつくりまして、コストを下げて外国輸出をねらっていくということも物品税軽減一つの大きなねらいになろう、かように見ております。したがいまして、必ずしも第二種物品税率引き下げ自体が、消費者負担軽減が中心的なねらいではありますけれども企業負担軽減ということが特にねらわれておる、こういう意味ではない、こういうふうに考えております。
  11. 藤尾正行

    藤尾分科員 はなはだ奇怪な御答弁を承りました。ただいまの御答弁内容は、私の調べておりますところと非常に違っております。大体この物品税減税といいますものを各国の内容で見てまいりますと、今度の四十一年度におきまする物品税減税内容といいますものは、そのほとんどがアメリカの一九六五年五月に遡及適用されましたジョンソン大統領消費減税第一ラウンドといいますものに非常に似ております。その内容検討いたしてまいりますと、アメリカのこの消費減税内容自体、この第二種物品というようなものに対しまする減税効果という面が、少なくとも価格引き下げというような面には効果がなかったという調査が出ております。あなた、御存じでございますか。
  12. 塩崎潤

    塩崎政府委員 アメリカジョンソン大統領の行ないましたところの消費減税、十分存じておりますし、これが今年度の教書によりまして延期になっておることも存じております。価格への効果につきましては、私はまだつぶさにどういうふうになったか、一般的な若干のうわさ等は聞いたことがございますが、こまかい検討資料は現在のところ持っておりません。
  13. 藤尾正行

    藤尾分科員 これは、大蔵省主税局が出しておられます税制主要参考資料集昭和四十年の二月に出ておるものでございます。それから経済企画庁調査局海外調査課が出しておられます海外経済月報昭和四十年の八月というものの内容を見てみますと、この消費減税といいますものが小売り業者に対する賦課の場合には、その価格に対する効果というものは非常に出ておる。しかしながら、これが第二種物品というような製造業者に対しまするものでは、製造業者自体が、大資本が持っておりまする関係もあり、競争がそこで減殺をされておるというようなこともあるので、製造業者にほとんどがある程度以上吸収されておるという結果が出ております。そうなってまいりますと、結局あなた方のおやりになっておられますこの物品税減税といいますものは、少なくとも物品政策観点から行なわれたものでなくて、全く企業を助けるためにおやりになったんだ、かように私どもは理解をしてよろしゅうございますか。
  14. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほど来私が申し上げたのは、物品税は、やはりねらいは消費税といたしまして、商品価格転嫁を通じまして消費税消費者負担されておる、こういう立場をとらないと消費税は成り立たないと思うのでございます。そういった意味では、今回の消費税は、たとえそれが第二種物品製造者課税減税でございましても、やはり消費者価格引き下げが行なわれまして、これを通じて消費者負担軽減され、消費需要は起こるであろう、こういうふうな考え方をとらなければ今回の改正案は理解できない、かように考えております。
  15. 藤尾正行

    藤尾分科員 私は、そのあなたの考え方はおよそ甘い考え方だと思います。今度の物品税に含んでおります主要なものは、電気製品あるいは光学器械というようなものを中心にしたものが多い。これが主要なものになっておる、これはあなたもお認めでございますね。——それで、こういったものにつきまして、今度のあなた方が御作成になった減税案というものを検討いたしまして、その一品目品目に対しましてどれだけの減税効果があったかということを、あなた御存じでございますか。
  16. 塩崎潤

    塩崎政府委員 今回、物品税の減収のウエートが、藤尾先生のおっしゃるように、大企業の製造するような耐久消費財相当置かれておることは事実でございます。しかしそのねらいは、先ほど申し上げたとおりでございますし、現在の物品税が、過去何回かの改正によりまして、零細企業のつくるようなものにつきましてはほとんど課税がはずされておるというのが実情でございます。したがいまして、残されております物品税は、多分耐久消費財になってくる。しかもその税率は、アメリカ等に比べまして非常にまだ高いのが実情であることは御存じのとおりでございます。そこで、今回の減税が行なわれるようになったわけでございますが、私どもは、それによりますところの価格引き下げ程度、これは十分知っておりますし、業界も将来の減税を期待し、また過去の減税の経験から見まして、その程度物品税引き下げに応じますところの値段引き下げは、おそらく大部分業界において行なわれる。これを通じまして有効需要拡大——少なくとも減税が行なわれ、その部分だけ消費者ゆとりができた部分は、そのものではなくても他のものにも及ぶこともあり、そういった意味では減税効果の波及の程度は、数字的にはなかなかむずかしいのでございますが、そういった意味での需要喚起をする効果はあろうと考えております。
  17. 藤尾正行

    藤尾分科員 あなたは実態を御存じない。製品というものを定価で買っているばかはいま日本国中におりません。それで、この物品税減税額といいますものを、値段を下げさせるとあなた言われるのだけれども、それだけしましても、これは現実に売られている電気製品なら電気製品光学機械なら光学機械というものの値段と比べてみまして、いまの値段のほうがはるかに安いのです。それは御存じですか、あなた。
  18. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も電気製品が普通の建て値よりも安く売られておりますことを存じておりますし、私どももそういったものをときどき買うこともございます。しかしながら、その物品が税をしょっておる限り、私は今回の減税がそういった建て値以外の価格で販売されるものにも何らかの形で及ぶのではなかろうか、かように考えておりますので、そういった意味で今回の物品税軽減は評価できるのではなかろうか、かように考えております。
  19. 藤尾正行

    藤尾分科員 私はいま実は電気製品をみんな値段を調べてあるのです。五十品目全部調べました。その卸売り価格から仕切り値段小売り価格全部調べました。そんなことは意味がない、あなたの言っておられるようなことは。それはもうはっきり出てきておる。しかし、これを一つ一つ議論をしているひまはありませんからかんべんしてあげますけれども、こういったことにつきまして、たとえばそれを小型自動車なら小型自動車に移しましても、今度は暫定一六%を一五%に下げて、一%下げました。それで価格が下がりますのが大体四千円だということになっておるわけですね。そうすると、自動車を買う人間にとって、四千円の値段が下がるということは一体どういう意味を持つのですか。あるいはルームクーラーを買う人間にとって、それだけの減税額はどのように及ぶのですか。
  20. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに物品税の現在の税負担は、自動車におきましては一六%でございます。今回の減税案ができますれば一五%になって一%下がり、先生のおっしゃるごとく四千円の引き下げになる。四千円引き下がったことによって自動車需要がどの程度喚起するかという御質問だと思います。確かに四千円程度ではたして需要喚起されるかどうか、それは人の所得状態であり、多分にそういった影響がないとは申しません。しかしながら、自動車が四千円引き下がることによりまして、軽減になる金額は、全体で三十億ぐらいでございます。これだけの消費者負担軽減されますれば、その消費者のほうで出しましたゆりはどちらのほうにいくであろうか。もちろん貯蓄に回るかもわかりませんが、その一部分自動車に向かわなくても何らかの形の消費に向かう。こんなようなことが、現在政策的に重視されておりますところの全体の有効需要喚起方向に大きな影響を及ぼすのではないか。物品税全体はそのような軽減が積もり積もりまして平年度三百四十何億の減税でございますので、個々の減税されたものの需要が直ちに起こるということもございますし、同時に消費者に与えられましたゆとりがまた別のほうの消費に向かう、こういうことも期待されるのではないか、かように考えておるのでございます。
  21. 藤尾正行

    藤尾分科員 私は一々議論をしておりますと非常に長くなりますので、非常に残念なのでありますけれども……。  およそ、そういうことは、私はおかしいことが一ぱいあると思うのですね。たとえば自動車の場合、あなたはこれで四千円引き下がって、それがほかに回ったらいいだろうというようなことを言っておられる。しかし、一方において、この自動車減税をやられましても、現実自動車に対します地方税といいますものは、これは上がっておるのですな。自動車税は、そうでしょう。そんなものは、あなたの言われるように消費者にちっとも還元していませんよ。あなたが言われるように、まあほかのものでもいいですわ、こういう減税によって物がどんどん売れていくというようなことがかりにあっても——そんなことはありはしませんけれども、かりにあったとしても、いまの社会制度自体、あるいは公共施設自体がそういうものを許容し得るような状態ではないのです。いま以上に自動車がぽこぽこふえちゃったら、これは道路も困りますし、都市も困ります。そういうことにまるっきり一貫性を欠いているのですよ、あなた方の減税案というものの内容が。そういう点を検討せられたことがありますか。これは経済企画庁、どうですか。
  22. 中西一郎

    中西政府委員 お話、よくわかる点もあるのですが、物品税減税というのが、物価を引き下げ一つの要素であるという効果はできると思います。ただ、それがいろいろな各種団体各種業種によって端的に響くのかどうかという点については、たとえばカルテル化されておるところへ競争条件を導入するとかいうような他方の政策が伴って初めて実現し得るので、もろもろの条件を整える必要があるというふうに考えます。  なお、都市計画等に関係するような大きなお話がありましたが、それらについてはいろいろ気づいておる点はあるのですけれども、全体をまとめてずばりとした結論を出すというところまでは、現在はまだいきかねているのが現状です。
  23. 藤尾正行

    藤尾分科員 同じようなことばかり言っていてもしようがありませんけれども、私はほんとうにこういうことで品目別に一つ一つ検討するとめちゃくちゃなんですな。たとえばルームクーラーとか自動車のカークーラーとかいうようなものに重きが置かれておって、扇風機の下がり方はきわめて少ない。一体どっちが国民生活に密着しているんだということを疑いたくなるような面が非常に多いのですよ。そういう点は全然ないなんという考え方は、——全然ないなんてあなたも言っておられるわけではないけれども、非常におかしいのですね。こまかい配慮が全然行なわれていない。私は時間があれば、これはほんとうにみっちり一日だってあなたとやりたいと思っておるのですよ。いずれ日をあらためて大蔵委員会でもみっちりやらしてもらいますが、その内容がめちゃくちゃなんですな。私はこういうことを考えますと、これは大蔵大臣にもお伺いをしたいのですけれども、こういった物品税といいますものは、今回こうやって出てまいったものでありますし、その考え方、ねらいといいますものも決してよこしまのものでなくて、ただ単に出てきたものが非常に検討不十分で、アンバランスが非常に多いというだけのことでありますから、私はひどくこれについてどうのこうのということも言えないようにも思いますけれども、むしろこういう物品税減税を三百四十億もおやりになるなら、どうしてこれを所得税減税というような形で一般化されなかったのか。今度の四十一年度予算の中におきましてこの減税額が果たしておる物品税減税の量と言いまするものも、もっといろいろ国家国民のために考えていけば、ほかに振り向けようが幾らもあったはずです。私はそう思うのです。そういった点を今後十二分にひとつ御考慮をいただきたいということを最後に大蔵大臣に申し上げて、大蔵大臣の所感をひとつお聞かせを願いたい。ちょうど時間がきましたので……。
  24. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 たいへん御熱心なお話を承りまして、非常に参考になりますが、税というのは、ある一本でいくと、またこれが片寄る点がある。ことに物品税につきましては、数年来動かなかったのです。これは非常に要望が強かった点なんです。それから所得税につきましても、税率改正というもの、これも数年間要望があったが、いじくるだけの余裕が実はなかった。それから相続税も同じようなこと、今度大幅な減税をするものですから、そういう国民の要望のさわりさわりにこたえたいと、こういうことから物品税減税も取り上げたわけであります。御議論はとくと拝聴いたしましたから、今後の施政の上に重要な参考にいたしたいと思います。
  25. 愛知揆一

    愛知主査 次に、山本勝市君。
  26. 山本勝市

    山本(勝)分科員 三十分ということでございますから、問題を提起して十分考慮を願う、こういうことにいたしたいと思います。  問題は、御承知の三十九年一月から施行されました農地の生前贈与の租税特別措置という、農地だけを生前に贈与した場合に、贈与税を一応かけるけれども、延期願いを出せば、納税を延期しておいて、そうして死んだときに相続税として扱う、こういう特例を設けられたわけです。これは実際問題として、農家の方は非常に困っておるという現状であります。今回の国会で改正法が出まして、これまでは、贈与を受けた者が贈与した者よりも先に死んだ場合には、そのときには一定の期日を置いて取り消し、生前贈与の恩恵を与えないということになっておったのを、今度先に死んだ場合には、その贈与税は免除する、こういうことの改正が出たわけです。その点はもう当然のことでけっこうだと思うのですけれども、そのほかにいろいろな点で、この法律に不備があったので、実は三十九年度においてあまり農村に徹底してなかったから、生前贈与を受けようというケースも少なかったと思いますけれども、そろそろ徹底してまいりまして、これはありがたいということで、方々でこの生前贈与を受けようという手続をやってみますと、至るところに障害が起こる、こういう実情にあるわけです。そのいろいろな点で問題になっておるところを、私は実は国税庁のほうにも申し上げました。そうして実際問題としてかなり弾力のある処置をとってもらって、できるだけは解決してもらっておるのですけれども、しかし事が農家を対象にしたものですから、大蔵省はむしろ受けてこういう法律をつくったのだろうと思う。農政当局のほうでイニシアをとってこられたものと思うものですから、それで、これを直すには農政当局にたださなければいかぬと思いまして、実は土曜日の分科会で、農林大臣及び農政局長にこの問題点を提起しました。しかし、なかなか頭がかたくて、いろいろな事情があって、それを改めようという意思がないのですね。聞きますと、昨年の十月ごろから、私は知らなかったのですけれども、全国の農業会議所とか農業関係から、その問題を実は持ち込んでおるようです。何とかしてもらいたい。ところが、それについていろいろ検討をした結果、いかぬという返事をしてしまった。だから、打ち明けたところ、いまさらちょっとそれを考えましょうということは言えぬというような状況になっておるようです。しかし、私はそんなことでそういう解決をすべきではなくて、悪い点があれば検討して直すというのがほんとうだ。野原君が来たから、野原君もひとつ聞いとってもらいたい。それは、一つ大臣も頭へ入れておいて、これはなるほど変えにゃいかぬとか、考慮せにゃならぬということになってもらいたいと思うのですが、一つは、三年間継続をして農業を営む者、農業に従事しておる者に生前贈与をやれる、こういう規定になっておるわけです。ところが、その営むということばが出先の税務署で問題になった。営むというのは、国税庁の解釈では、まず第一に所得税を申告しておる者、これが営む者だ、こういうのが営む者の代表的なものになっておるわけです。ところが実際農村の実情を申しますと、おじいさんはまだ達者でありましても、また寝込んでおればもちろんでありますけれども、大体もう相当、四十、五十になった子供がありますと、その子供のほうがその所得税の申告者になっているのです。そうしますと、所有権はおじいさんにある、しかし営む者は所得税を申告しておる子供だ。そうすると、おじいさんが子供に生前贈与をして、自分が死んだときでも、親類じゅうから寄ってきて、兄弟が寄ってきて均分相続のごてごてが起こらぬように、子供が安心して百姓のできるようにしてやりたいと生前贈与しようというのに、実は営む者はもうすでに子供である、おじいさんではないから、ここに一つのジレンマが生じてくる。これは、具体的な私が提案した事例では、国税庁で営むということを非常に広く解釈して、かりに自分ですきくわをとってやらなくても、指図しておるくらいでも営むだ、だから、なるほど所得税の申告者が営む者の代表であるということは通達しておるけれども、必ずしもそう限らぬことにしているということでありますが、しかし、実際は三年も四年も寝ておる場合があるのですよ。そのときにはそれを言って、農業委員会が証明を書いてくれればそれでいいんだ、農業委員会は何とでも書いてくれるという解釈をしておるようですけれども、しかし、農村の純朴なところに行って、実際に寝込んでおる者を、指図しておったんだという証明書をとってくればやってやるなんというようなことは、私はおもしろくない。だから、あの営むということばを、何とかそういうことではなくて、もし所得税を申告しておる者が営む者で、法で贈与する側の条件であるとするのなら、もうすでに贈与はしてしまっているようなものです。あとは、戸籍や登記は形式だけだ、こういうことになるわけであります。だから、その辺が非常にあやしくなっておるから、この営むということばは、少なくともはっきりしないと、あるいは国税庁の通達も再検討しないと、出先ではいろいろ問題を起こしておる。これはどういうふうにしたらいいかという案が私にはありますけれども、それはもう時間がありませんから申しません。  それから第二点、これが非常に重要なんで、これは行政措置だけでいかない。それは、この生前贈与の条件としては、農地、つまり田畑の全部または草を取る採草放牧地の三分の二を贈与する場合だけが適用されるのであって、かりに田畑の中で一坪でもそのおやじが贈与しないで手元に残しておいたら、この恩典にあずかれない。この間具体的に起こった事例は、ミスで、実は全部のつもりであったやつが一筆漏れた。そうしますと、最初九反歩の相続を受けたところが、九畝歩、一割残っておった。それで追いかけて贈与の手続を県にして許可を得たのですが、そうすると税務署のほうでは、それは前の分の九反歩は全部でないから適用できない、あとのほうの九畝歩だけが残っておる全部であるからこれに当てはまる、こういう解釈なんです。しかし、これもいろいろ具体的には国税庁でもんでくれた結果、ミスだからということで、実は二回に分けておっても一つに認めようというので、その事例は片づいたのですけれども、しかしミスでなくても、実は御承知のとおり、民法では均分相続ということになっておる。しかし、それでは農家がこまかくなってしまって困るとか、あるいはあと取りが安心して百姓ができないというような不都合があるものですから、こういう特例を設けたわけです。それはわかりますけれども、しかしすでに民法で均分という大原則を改めていないのでもあるし、それから牧場の場合は、三分の二でいいんだということになっておる。ところが田畑だけは全部でなければいけない、一坪残っておってもいかぬということは、私は実際の農村の実情から申しますと、おじいさん、おばあさんが今後何年生きるかわからない、子供のことを考えて、安心して百姓ができるようにしてやりたい、だから、生前贈与はしたいけれども、しかし全部子供にやってしまって、畑一反歩も足元に残せないということでありますと、自分自身の老夫婦の将来のことも、一々小づかいから何から全部子供にたよらなければならないし、それからまだほかにも子供がある。まだ中学や小学校に行っておる子供なんかあったような場合に、それのことも多少考えてやらなければならぬから、せめて一割ぐらいは、宅地の周辺の畑ぐらいは残しておいて、そこで老人の手に合う野菜でもつくっていきたい、こういう希望が非常に多いわけです。ところが、そういうことは許さぬということになっておる、全部でなければいかぬ。これはあと取りむすこも、全部でなくても、八割、九割いただくことになれば十分安心してやれるのだから、おじいさん、おばあさんにも、まる裸にならなくても幾らか残しておく、これは分割して贈与するというのではありません。子供にやった残りを自分のところへ、手元へ残しておきたいというだけの話であって、みんなに分けてやるというわけじゃないのです。自分がいつ死ぬかわからぬから、死ぬまで、そう一ぺんにやってしまうと心細いというのがじじばばの気持ちで、これは無理もないと思う。ことに贈与を受けた者が二割まではよそへ売ってもいいということになっているのです。二割以上売った場合は生前贈与の恩典は取り消されますけれども、贈与を受けた人間が他人に二割まで売ってもそれで生前贈与の恩典は消えないということになっておるのに、贈与をするおとうさんあるいはおじいさん自身が自分の手元へせめて畑一枚でも残しておきたいということを犠牲にしてまでも全部ということを突っぱる理由は私はないと思う。ところが、農林省は全部を突っぱる。全部というのでなければいかぬ。その理由は、農家のあと取りが少ないから、それが安心してやれるように、また農地の細分化はしないようにという趣旨だから、その趣旨に反するというのですけれども、しかし、私がいま申しましたように、すでに贈与を受けた者は、他人にすらも二割までは売っても差しつかえないようになっておる。それから、何も田畑のまるまる全部でなくても、八割、九割もらえばあと取りは安心して、喜んでやれる。おじいさんも安心しておられる。みんな家族円満にいくのですよ。それをどうも全部でなければいかぬ。牧草地の場合は三分の二でいいという規定が初めからあるところを見ますと、田畑についても、二町歩持っておる者がせめて一反歩くらいはじいさんが自分のもとの名前にしておくということは——ところが農林省の考え方では、全部一ぺんやって、もう一ぺん二割以内をおじいさんに売ったらいいじゃないか、こういうふうなことをいわれる。しかしそんな二重の手間をして——一ぺん全部やっておいて、二割までは売っても差しつかえないのだから、おじいさんに無償で貸すか売ったらよい。しかし、そういうことは私は政治じゃないと思う。そんなことをするなら、初めからおじいさんの所有者が——またくどいようですけれども、先三年生きるか四年生きるかわからないから少し残しておいて、自分も安心して小づかいなどもそこでかせぎたいし、またほかの子供にも多少のことはやりたい、こういうことで、この全部ということについては絶対に変えられないといういまの農政当局の態度に対して、むしろ大蔵省のほうで大局的に考えて、——現に農業関係から猛烈な陳情が来ておるのです。  ほかにもまだいろいろございますが、先ほどの営むという場合などは、具体的に申しますと、おじいさんが九十で、おとうさんが六十で、そして孫が農学校を卒業してもう三十五、六になっておるというような事例があります。そういうような場合、おとうさんが営むことになっておるのですが、子供は、贈与を受ける資格は二十歳以上と法律になっておりますから、三十五、六にもなっておれば当然もらう資格があるわけですが、そういう場合に営む者からやる。営む者とは所得税を申告しておる者だということになれば——これはおとうさんから孫に譲って、孫が安心して百姓ができるようにしてやるのがむしろ立法の趣旨に合っておる、なるべく若い者が百姓に落ちつけるようにしようという趣旨からは。とにかくこの法律は、民法の均分相続に基づく弊害を救おうとして、農家のためにつくられたことは疑いをいれませんけれども、その結果が実は農家がただ困るだけではなくて——畑を残しておいてたんぼだけ全部やってみた。そうして登記した。ところが、これは分割しておるからだめだということになって取り消すことになりまして、登録税全部損をした。こういうふうなことで取り消したら——しかも、これは初めに贈与を受けたときには、何も生前贈与ということで受けておるわけじゃなしに、普通に贈与を受けておいて、後に所得申告をするような場合に、生前贈与の扱いをしてもらいたいと延納の願いを出して、そこで初めて税務署がこれを認めるか認めぬかがきまるわけです。だからその間に贈与を受けて県知事から許可を受けた、そのときにもう贈与は確定しておる。それから後に登記したりいろいろなことをやって、後になってから今度は税務署へ行って、これはいかぬというような判決を受ける例があるものですから、それでは親切につくった法律がかえって非常な不満を呼んでおる。これが全国の農家から陳情を猛烈にやっておる理由だろうと思う。問題はそういうことです。私は何も責めるつもりはない。大蔵省にお願いするだけでございますが、考慮に値する問題だ、こういうふうに信じて申し上げるわけなんです。
  27. 塩崎潤

    塩崎政府委員 非常に実際的また技術的な問題にからむことでありますので、私からお答え申し上げます。  まず第一の、農業を営む者の解釈の範囲でございます。先生が土曜日に、農政局長ともずいぶん御議論された結果も私承っておりますし、この規定の趣旨を十分御理解されての御質問だと思いますので、くどくど申し上げません。私も、農業を営む者という解釈は、この制度の目的に照らして解釈すべきであって、所得税という別な税目の見地から、農業を営む者を、農業所得を申告する者に限る必要もないと思うのでございます。ただ税務署の便宜といたしましては、農業を営む者といえば、まず農業所得を申告していただく方に限っておくのが便利であろうということから、第一義的にはそういう解釈をしておるのでございますが、おっしゃるように、目的でありますところの田畑の所有権は、まだおじいさんに留保されているというようなときには、農業の後継者育成、あるいは農地の細分化防止の見地からでき上がりましたこの規定の趣旨から解釈してまいりたい。そういう意味で、おっしゃるように弾力的な、もう少し別な角度からの検討も必要じゃないかと思っておりますし、現にそんなような解釈で進めておるのでございます。  第二の問題は、一番むずかしい問題は、農地、田畑なら全部じゃなくて九割くらいあるいは八割くらいでいいじゃないかという御質問でございますが、これは、土曜日に農政局長と御議論された結果からおわかりのとおり、なかなかむずかしい問題でございます。租税特別措置法の七十条の四の規定自体が、外国にもない全くめずらしい、日本の農業の特殊性からきた規定でございますし、その趣旨は、先ほども申し上げました農地の細分化防止と農業の後継者育成、この二つの観点からでき上がっておると思います。往々にいたしまして、相続税が現在の民法の法定相続分課税の趣旨に即応しているために、農地が細分化されるではないか、これが前からの悩みであったのでございますが、その悩みを解消する意味でこの規定ができ上がっております。そういった意味で、簡単に、田畑の幾らかの部分を留保して、大部分でいいじゃないかということもいけないというのが農政当局の悩みだろうと思います。ことにまた留保された財産につきましては、その留保した方々の相続の際には、だれが相続されるか、いまの民法ではまた均分課税に戻るようなことは、これがだんだんといきますと、農地の細分化の結果を招来するという点が心配だろうと思うのでございます。そんなようなことを考えますと簡単にいきませんが、確かにおっしゃるような点もございますし、ただおっしゃるような点の中で、二割は受贈者が売ってもいいではないかということでございますが、その際には贈与税を清算することになっております。御存じのように、特殊な物件についての贈与税の税負担は、相続税よりも比較的高めでございますので、そんなような関係で、贈与税を払わなければならぬという点が責務になっておりますから、私ども考えるところでは、おそらく贈与された田畑を直ちに売るということはめったにない。こんなようなことを予想いたしまして、贈与税の圧力でそういうことが防がれておる、かように考えておるのでございます。相続まで待ちますと、今度の相続税改正案は、千万円までは免税点になりますから、贈与税は結局は清算されまして、全く納めなくて済むというところにこの制度の大きな特色があるわけであります。こんなような大きな特色ででき上がっておりますので、簡単に田畑の全部という条件をはずすということも危険もございましょうが、これは、土曜日に農林大臣から御発言がありましたように、農民の家庭の中の種々の問題も考えますと、この政策目的と農民の中の残されたおじいさん、おとうさんあたりの生活の問題との関連、親子間の愛情とか、いろいろな問題もございましょうから、そのあたりも加味して、今後慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  28. 山本勝市

    山本(勝)分科員 大臣、どうですか。私が申し上げたことをひとつ真剣に検討してもらう価値はありますか。
  29. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま御指摘の生前贈与の特例措置は、農地の細分化を防ぐ、こういうところに主眼点があるわけです。なるべく包括的な承継が行なわれるようにということをねらっているわけです。しかし、ただいま主税局長からお話しのように、いろいろのまた他の角度からの事情もある。しかし、これが農家の感情にぴしゃりと合わなければならぬというような、お話のような事情もあります。そういう点、なお今後の検討問題としてよく考えてみたい。かように思います。
  30. 山本勝市

    山本(勝)分科員 結局は、相続税になった場合は、事実払わぬでもいい。相続税のいろいろな控除その他から、贈与税を一ぺんかけておいても、事実上は払わぬでもいいことになる実情だ。それは、ほかの子供が相続権を放棄するというのが一般に行なわれておるから、それで払わぬでもいいことになる場合が多い。トラブルが起ることも多いけれどもということなんですが、私の言うのは、じいさんばあさんがいつ死ぬかわからぬ場合に、やる人間——しかも、ほかにも子供がある場合に、あと取りのことも考えなければならぬが、自分のことも今日考えなければならぬし、ほかの子供のことも幾らか考えなければならぬから、まるまる全部やってしまわなければいかぬということにしなくてもいいのじゃないかという私の気持ちなんです。そういうことで、十分御検討願いたいと思いますが、おそらくいま手元にないかもしらぬが、一体どのくらい生前贈与の申し出があり、また全国でどれくらいのトラブルがいま起こっておるか、わかりますか。
  31. 塩崎潤

    塩崎政府委員 三十九年にこの七十条の四ができまして、初めはなかなか農村の中にしみ込まなかったのでございますが、現在だんだんとこの制度の内容が浸透いたしまして、その件数はふえておる状況でございます。現在のところ、件料は三百四十五件、全国でございます。今後この制度の趣旨が十分理解されていき、また先生が御指摘されたように、手続、その他についても種々問題がありましょうが、この手続の簡素化等を合わせましてやっていくならば、確かに生きているうちに農業後継者に土地を渡しまして、相続の際にこれが細分されることをいまから防いでいこうという御趣旨の精神が生きてくるのじゃないか、かように考えております。  なお、トラブルは、若干の種々の問題は聞いておりますが、トラブルの件数が幾らあるかということはしさいに承知しておりません。
  32. 山本勝市

    山本(勝)分科員 それからもう一つつけ加えておきますが、今度は、死んだ者は免除するということになりますでしょう。こういうことは初めからわかりきっておるのに、実はこの法律というものがいかにあまり検討してなかったかという証拠だと思うのですが、今後非常に問題になるかもしらぬのは、二割以上売った場合は取り消される。取り消されれば、すでにかけておる贈与税をそこで取られる。生前贈与だと思うから生前贈与を受けておるにかかわらず、今度は二割をちょっとこした、あるいは二割を売ったというために、全部今度は贈与税がかかってくるということになりますと、これはしかたないと思いますが、よほど農家の方にあらかじめ、あなた方は贈与を受けても今度は絶対二割は売れないのですよ、売ったらとたんに今度は前の贈与税をぽんとかけられるんですよということを徹底しておかないと、うっかりすると農家の方がそういうことを知らないで二割あるいは二割以上売る場合が起こる。売った場合には特典が取り返されて、そうしてべらぼうな税金がかかって、そのような税金がもしかかるのなら初めから贈与なんか受けずにおきたかったというような者が出てきますから、よく農家の方に、いろいろなルートを通して、あなたは贈与を受けた場合は、二割以上は絶対今後は売れないんですよ、おとうさんが死ぬまでは。売ったらたいへんな損害を受けますよということを知らしておく必要がありますね。知らしておかぬと、あと知らなんだということで抜きさしならぬことが起こってきますから、それを申し上げて……。
  33. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃる点、ごもっともでございまして、よく周知させるようにつとめたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知主査 次に中村重光君。
  35. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣、時間が三十分だそうですから、問題点を簡潔に質問します。あなたも簡潔な答弁をお願いいたします。  まず第一に、政府からいえば、国債発行というのは正統派的なものだろうと思う。そこで、従来からやってきました政保債に対してどうお考えになりますか。これを中止する考え方であるかどうか、まずその点をお伺いしたい。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府保証債ですか。これは廃止する考えは持っておりません。
  37. 中村重光

    中村(重)分科員 その点はあとでまた時間を見まして……。  そこで、政保債を続いて発行するということになってまいりますと、国債は、日銀の考え方では、一年間を縮めて六カ月くらいにして買いオペの対象にする、大臣は一年以内に買いオペの対象にするということは適当ではないという考え方、そこで、政保債に対してはどういうお考えをお持ちですか。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国債につきましても、私は適当でないというふうには考えていないのです。国債は日本銀行のオペレーションの対象としては非常にいい種なんであります。これはオペレーションや、あるいは担保貸しの対象にするということを考えなければならぬというふうに考えております。ただ、今度初めて国債を発行するということになります。そこで世間では、この国債が日銀の持ち込みになるんじゃないかという心配をする向きがあります。そういう心配に対してお答えをするというような意味におきまして、この新規公債はこの一年間はオペレーションの対象にはいたしません、また国債担保貸しのその担保にも使いません、こういうことを申しておるわけでありまして、政保債につきましては、従来どおりの扱いをしていく、こういうことに相なります。
  39. 中村重光

    中村(重)分科員 次にお尋ねするのは、金融機関の支店設置は、四十一年度は原則として認めない、こういう方針を、これは新聞報道でございますが、伺っております。その考え方をこの際はっきり聞かしていただきたい。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金融機関の店舗は、この数年間非常にふえた。私が昨年六月に大臣になったときは非常に経済界のむずかしい時期であり、大蔵省は全体として不況対策と取り組まなければならぬ、そういう段階であったわけであります。金融機関の店舗設置というのはなかなかうるさい問題でありまして、さあ許すというような方針だというと、やっさもっさやってきまして、私どももその応接の煩にたえないというような状態になるわけです。私は、そういう仕事からは開放されたほうがよろしい、全力をこの不況問題に傾倒する。それからもう一つの問題は、これは一がいにそういうふうにはいえませんけれども、金融機関が店舗を設置する、それには当然土地が要る、地価の引き上げの誘因になるということがよくいわれる。現実にそういう傾向もあったと思います。それからもう一つは、この不況に当面して貸し出し金利の低下、それには金融機関の合理化をはかっていかなければならぬ。そういう毎度から考えた場合に、店舗をふやすのは一体どういう影響があるか一これは預金吸収というような預金量をふやす上のプラスの影響もある。しかし同時に、銀行の資産を寝かすわけでありますから、マイナスの影響も大きい。そういうようなことも考えなければならぬ。  そこで私は、就任早々、しばらくの間、つまり不況に対して一つのめどがつくまでの間は、金融機関の店舗は、特別の事情のない限り、これは差し控えたがよかろう、こういうふうに考えまして、銀行局長にもそういうふうに申してきたわけです。しかし、そういう方針がいつまでも続き得るとは考えません。つまり、地域的な経済の動きがずいぶん変化が起こってくるわけです。その変化に応じて金融機関の配置というものも考えなければならぬ。そういうことから、この予算国会でも一段落した上におきましては、今後の店舗行政をどういうふうにしていくかということを総合的にきめて、秩序正しくやっていきたい、かような考えでございます。
  41. 中村重光

    中村(重)分科員 その点いろいろ議論があるところでしょうが、しかし、大臣考え方はそれなりに肯定される面があるわけです。従来の金融機関の支店設置基準なんという点については非常な無理がある。たとえば預金高ということでその金融機関の地歩を判断する、そういうところから擬装預金というのが特に決算期なんかには非常に多かった。そこいらに無理があり、歩積み両建てというようなものも、債権保全ということだけでなくて、支店設置、いわゆる銀行の信用力ということを日銀、大蔵省に対して十分評価させるといったような、いろいろな面があった。そういう点に弊害も出てきた。  しかし、時間の関係がありますので、それらのことはいずれまた別の機会にお尋ねしたいと思いますが、ただ私がこの際大臣考えになる必要があると思いますのは、離島であるとか僻地であるとか、そういった後進地域におきましては、建設計画だけではだめだということです。道路をつくり港湾をつくるといったこと、それ自体これは非常に重要であるけれども、同時に、経済計画ということが並行していかなければならぬ。経済計画と並行していくということになってまいりますと、どうしても裏づけには金融機関というものが必要になってくる。離島、僻地というところは金融機関というものが非常に少ない。ありましても一行というところが非常に多い。地域独占的な形になっている。そこで、いわゆる政府資金も、代理貸しということでその一行が独占して扱っている。そういった点についても非常な弊害がある。だから、離島であるとか僻地であるとか、いわゆる後進地域に対しては、銀行から支店設置の申し出があった場合はこれを認める、むしろそれを促進していくという一面がなければならない。そうした点について大臣のお考え方はどうなっているか、この際はっきり伺っておきたい。
  42. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 後進地域の振興について特別の配慮をしなければならないことはもちろんであります。十分そういう点も考えてやるべきものだと思います。
  43. 中村重光

    中村(重)分科員 あわせて私は政府の、中小企業の場合でいいますと三公庫、これが支店とまでいかなくても出張所というのは当然設置すべきである、こういうことを私どもはいままで強調してまいりまして、また議論をしてきた。ところが民間の金融機関と同じように実績主義ということを盛んに主張されるわけです。ところが実績というものは、そういった金融機関というものがあって初めてこの実績というものができるのであって、なかなか無から有が生ずるものではない。だから進んで政府関係の金融機関というものは、そうした後進地域の開発という面からいいましても、できるだけ進出をしていく。支店、出張所等をつくって、そして実績をつくっていくという形のものでなければならぬと思う。大臣としてはそういう前向きの考え方があるかどうか、伺っておきたい。
  44. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 後進地域といっても、どういうスケールの後進地域かに問題はかかるのだと思いますが、政府関係金融機関は広く代理店を持っておるわけであります。離島というところについて見ましても、既存の金融機関がある、そういう場合におきましては、それを政府機関の代理店として機能を発揮させるということもできるわけでありまして、問題は、離島がどういうスケールのものであり、政府関係機関まで出す必要があるかどうか、出すまでには至らぬが、代理店を出すというところまでは考えられるかどうかというところにあると思うのです。離島というような後進地域について特別に前向きの考慮をしなければならない、これは同感でございます。
  45. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣実情御存じない点が私はあると思う。ここ数年前のことですが、人口七、八万、そうした地域に対して国民金融公庫の直貸しが一件もなかったという事実がある。代理貸しが行なわれておる。その点は普及徹底がされていないというような点も私はあると思うのだけれども、やはり積極的に進出をしていく、そしてできるだけ離島の経済発展に寄与していくという態度でなければならぬと私は思う。代理貸しということだけではだめだ。やはり直貸しというものに積極的に取り組んでいくという態度でなければならないと思います。その点に対しましては、またいずれお尋ねすることにします。  次に伺いたいのは、国債発行に中小企業の専門金融機関、たとえば相互銀行あるいは信用金庫、これもシンジケート団の中に入っているわけですね。私はこの点が中小企業の金融を圧迫するという形になってくる可能性があると思う。このシンジケート団に入るということに対しましては、大蔵省がそれを慫慂したのか、あるいはシェアの関係その他によって、そうした金融機関自体が進んで加盟をしたのか、その点はよくわかりません。しかし御承知のとおり、信用金庫とか相互銀行というもののいわゆる資金コストというのは非常に高いわけですね。そこで国債を引き受けるということになってまいりますと逆ざやになる。そうなってまいりますと、中小企業に対してできるだけ貸し出し利率を下げようしても、経営が困難になってくるということになると、これを下げることができない。中小企業が求めておるところのいわゆる低金利貸し付けというものが行なわれないことになってまいります。その点に対しては大臣はどうお考えになっておるのが、まずその点を明確にひとつ伺っておきたい。
  46. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 目下の中小金融の大きな問題は、これは金融機関における資金の量というよりは、中小企業における担保力の問題にあるのです。そう判断いたしまして、信用保証制度を改正するというようなことをしておるわけです。本国会にも法律案の御審議をいただておるわけなんですが、資金量の問題といたしましては、中小金融機関では資金量が相当豊富にあるのです。これを使い切れないものですから、いままではコールに出す。現在でもコールに相当出しておるわけです。そういうところに、コールよりもやや高利回りの国債がいく、これはコールに出すという場合に比べましてかえって有利になるわけです。それから一がいに信用金庫、相互銀行といえども、国債との間に逆ざやになるという関係でもないのです。合理化され、近代化されて能率のいい運営をしているところは、六分台の資金コストでやっておるところもかなりあるわけであります。私どももこれから中小金融機関をどういうふうにしていくか、やはりこれを指導する道は、近代化、合理化、そしてコストを安くして中小業者に安い貸し出しをなし得る状態に持っていくことだ、こういうふうに考えまして、そういう方向に努力をいたしていくようにいたしたいと存じます。国債を出したからといって、これが中小企業の金融を圧迫するというようなことに相なりますれば、これは国債を出した意味もないわけでありますから、その点はそういうふうにならないように、できる限りの努力をいたすつもりであります。
  47. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣は、ならないようにとおっしゃいますが、現実にはなる。そこで相互銀行、信用金庫等の平均の資金コストというものは七・六%、当然これは逆ざやになってくるわけです。おっしゃるように、確かにコールというものは非常に最近下がったが、資金というものは流れていかない。そこで資金というものは遊んでいるということになる。なるのだけれども、相互銀行、信用金庫というものが極端な選別融資をやっておることも大臣御存じだろうと思う。そうすると、大臣が前段にお答えになっ信用補完制度も、これまた信用保険公庫に対する政府の出資あるいは財投というものも、そうゆとりがあるような形で行なわれているわけではない。ここにも資金的の限界というものがある。さらには信用補完制度というものによって保証協会が保証するという場合、銀行局のほうでは、保証協会が保証するということは、その企業自体がたいして信用力の強いものではないということはわかるのだけれども、保証することにおいて信用力がついてくる。いわゆる優良企業という形になる。したがって、金利というものは下げなければならない。保証料だけ金利を下げていくことが当然である。そういうことをできるだけ指導すると言っておられるのだけれども現実にそういう指導が行なわれて、そういう成果があがったということを私たちはあまり知らない。そういった点から、大臣がお答えになったような点も、御答弁としてはなるほど筋が通っておるようだけれども現実にはなかなかそういう形になっていない。だからして、中小企業の金融というものが、国債引き受けという形において、相当な貸し付けに対する圧力を受けていくということは間違いないのだ。そういう点を現実問題として、大臣は十分これをとらまえて是正をしていかれる必要があると私は思う。同時に、私がいま指摘した中にもありますように、保証協会が保証した場合、その保証料だけ銀行の貸し付け利子というものは当然下げていくということを義務づけていくような形が必要である。この点も含めてひとつお答えをいただきたい。
  48. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中小金融の問題点は、これを合理化してその資金コストを下げて、そうして貸し出し金利を下げる、こういうことにあることは先ほども申し上げたとおりである。あなたもそういうふうに申されておる。そういう方向であらゆる努力をしますが、特にあなたが指摘されます信用保証協会の保証がついたという企業は、これは安全な企業である、したがいまして、それに貸し出す場合には特別の低利なものにすべきである、こういうお話ですね。これはそのとおりに思います。現にそういう指導をやっておりまして、相当成果もあげておるわけなんです。しかし、ますますそういうふうに、信用保証制度の改正というようないい機会でありますから、その方向が進むように指導をしていきたい、かように思います。
  49. 中村重光

    中村(重)分科員 そこで、中小企業の専門金融機関に対して資金コストを下げるということは、どうしても日銀との信用取引ですね。いま東京相互銀行にだけ貸借契約がなされておると思うのですが、そうでなくて、もちろんそれは信用力の問題等、慎重でなければならぬことはわかりますけれども、できるだけ日銀との直接取引を拡大をしていくということが必要ではないかと私は考えるのですが、その点はいかがでしょう。
  50. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 よくそういうことを言われる人が多いのですが、いま日本銀行から信用の供与を受けなければならぬという相互、信金の状態じゃない。金は実は相当持っておるわけなんです。そういう状態ですから、日銀とかりに信用の道がつきましても、すぐお話のような状態に結びついていくかというと、そうはならないと思いますが、しかし、私は一般論として、中小金融機関といえども、日銀と関係を持つという状態に逐次持っていくべきである。ことに今度は国債を発行する、相互、信金も進んでそのシンジケ−トの団体の構成メンバーとなる、こういうような事態になってきておるわけです。でありますから、この機会に道だけはひとつつけておこう。すぐは結びつきませんが、しかし道だけはつけておこう、こういうふうに考えております。
  51. 中村重光

    中村(重)分科員 私が申し上げるのは、資金コストの点から申し上げておるのですね。それは、中小企業の金融に対してできるだけ貸し付け利率を下げていくということでなければならないわけですね。正直にいって、大企業より中小企業は金利が高い。強い大企業が金利が安くて、非常に弱い中小企業が金利が高いということになってくると、いわゆる格差解消というものはなかなかできない。そういうことになってまいりますから、できるだけ中小企業者に対して安い金利でもって貸し付けをしていくということについては、日銀とのいわゆる信用取引というものがそこに必要になってくるのじゃないか。そこで資金コストを下げていくという形になってまいりますから、その点を積極的にお考えになる必要があるのではないか、こう申し上げておるわけです。  次に伺いますが、環衛公庫ですね。これは四十一年度はお取りやめになったようでございますが、四十二年度にはこれを設置するというお考え方を持っておられるのかどうか、その点を伺います。
  52. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 環境衛生融資をもっぱら担当する金融機関をつくれ、こういう意見が自由民主党の中でも相当強いわけであります。また、その他の各方面でそういう意見がある。しかし私は、政府三機関というものがすでにあるのです。そこへもっていってまた特殊の目的を持って別の機構をつくろうかという、その場合に、能率がどういうふうになるだろうかと考えますときに、既存の金融機関を使って同じ目的を達し得る。いま環境衛生問題は非常に大きな問題であります。消費者物価という問題を考えましても、一つは農産物の問題にある。もう一つの問題はサービス料であり、そのサービス料の中において、クリーニングだとか床屋とか、そういうもののウエートが大きいわけです。そういうことを考える場合に、どうしても環境衛生諸施設の近代化、合理化をしなければならない。そういうことは特別に考えねばならぬと考えておりますが、それを実現するための金融として新しい機構をつくることが能率的であるかというと、必ずしもそう考えていないのです。そこで、四十一年度予算では、国民金融公庫がいままでもそれに密着をしておるということから、国民金融公庫の中に、それを行なう使命を持たせるという機構をつくりましたり、あるいは別ワクをつくりましたり、あるいは特別の償還期限を設ける、あるいは特別の貸し出しワクを設ける、つまり拡大をするというようなことでやってみたいと思っております。これが私は一番実際的なやり方である、そういうふうに考えております。
  53. 中村重光

    中村(重)分科員 確かに政策金融的なもの、これはあまり拡大をすべきではない。それなりに金融体系をくずしていくということに私は問題があると思う。しかし、いままでそれでやってきた、したがって零細性が非常に強い、そういう環境衛生団体の業態、業者というものに対して、いままで政府関係金融機関からの貸し付けも制約があった。そこで、環衛公庫をつくってもらいたいという要求が強く出てきたのだと私は思っておる。時間の関係がありますから私から触れますが、国民金融公庫が従来二千億程度の貸し付けワクに対して、環衛団体に対しては三十九年度の実績が百四十億、中小企業金融公庫が四十五億、商工中金が九十五億といったような実績があるようです。そこへ今度別ワク二百億ということになってまいりますと、従来の実績の上にこの二百億を積み重ねる、こういうことになるのかどうか、まずその点をひとつ佐竹さんからでもけっこうですから……。
  54. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 この二百億は、ただいま大臣からお答えがございましたように、今回厚生省が特に重点を置いた環境衛生業の近代化、合理化ということのための指定施設というものに関する融資の目標額でございます。したがいまして、これは今回新たに特別にいこうという話であります。そこで、大臣は実はそう言われたわけであります。そのほかに、つまりそういうもの以外のもので環境衛生業から貸し付けの申し込みはないかと申しますと、これはおそらくあるだろう。そこで、そういうその他の環境衛生業の資金需要につきましては、これは従来どおり受付けをいたしまして、そうして、一般の貸し付けと同じように取り扱ってまいる、かように考えております。
  55. 中村重光

    中村(重)分科員 確かに需要はあるはずです。ところが、別ワクということになってくると、環境衛生団体というのは二百億別ワクなんだから、それだけ貸し付けにゆとりが出るであろう、したがって、いままではなかなか貸してもらえなかったけれども、これからは貸してもらえる道が開けてきたのだ、そういう期待を持っていると思う。また、少なくとも環衛公庫設置を見送った、そして国民金融公庫に二百億の別ワクをつくったということになってくると、政府としても、従来以上に二百億というものが環衛団体に対して資金がなめらかに貸せるのだということでなければならぬと私は思う。そういう面から、従来の実績の中にこれを入れるということになってくると、百四十億が三十九年度の実績である。そうすると、資金の絶対量がふえているのだから、当然昨年度が百四十億であるならば、ことしはそのままで、別ワクをつくらなくたって百七十億なり二百億近いものが貸されなければならない。そうなってくると、それは二百億というものを別ワクにしなければ、それに上積みしなければ、別ワクをつくったという意味がないわけなんだから、そういう点は、ごまかしでなくて、はっきりされる必要があると思う。だから、従来の実績に上積みするのかしないのか、明確にそれをお答え願えればけっこうなんです。
  56. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点は、厚生省との間で詰めまして、意思全く妥結しました点をそのまま申し上げております。それは、環境衛生業の近代化、合理化のための指定施設に関する融資の目標額を二百億とし、その他の環境衛生業の資金需要については、従来どおり貸し付けの申し込みを受けて、一般貸し付けとして取り扱う、こういうことでございますから、先生の御心配のような、二百億できたからあとのものはどんどん削ってしまう、あるいは受け付けない、そういうことではない。つまり、特別なものとして二百億ある、特別でないその他のものも従来どおり扱っていく、こう申しておるわけでございます。
  57. 中村重光

    中村(重)分科員 その点はわかりました。  そこで問題になるのは、国民金融公庫に二百億の別ワクをつくったということになってくると、国民金融公庫の貸し出しはそれだけふえなければならぬわけです。そうでしょう。そうならなければ、別ワクを二百億つくったんだから、その別ワクを含めて従来の伸び率であるというならば、これは問題になりませんよ。ところが現実はそうなっているでしょう。どうなんです。二〇%の伸び率ですよ、別ワクを含めて。そうすると、中小企業金融公庫も二〇%の伸び、商工中金も二〇%の伸び、しかも昨年度もこれは同じなんだ。そうなってくると、別ワクをつくった意味はないじゃありませんか。別ワク分だけ一般の中小企業の金融を圧迫することになってくるじゃありませんか。中に食い込むのですよ。そこに問題がある。その点はどうなんですか。
  58. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ですから、申し上げておりますように、いわゆる指定業種の指定施設というものは、その二百億の中でまかなうわけでございます。つまり今回新たに指定業種、指定施設となって出てくるようなものも、従来におきましても普通の要求の中に当然あったわけでございますね。しかし、そういうものは、今度はこの二百億の中でまかないます。こういうことを申しておるわけであります。
  59. 中村重光

    中村(重)分科員 それならば二百億だけ、それだけ国民金融公庫の貸し付け原資がふえなければいけない。ふやしておらぬところに問題がある。そうでしょう。大臣もそれは御存じなかったんじゃないかと私は思う。いわゆる別ワクをおつくりになったならば、それだけ資金のいわゆる貸し付け原資というものをふやしていかなければいけないのですよ。従来とこれは同じなんです。昨年も二〇%の伸び。昨年も大体この三金融機関の伸びは同じなんです。ことしも同じなんですよ。だから、別ワクをそれだけつくったんだから、国民金融公庫だけはその貸し出しワクというものを拡大されなければいけない。どうしてもそこに問題があるわけですよ。佐竹局長はいわゆる指定団体とおっしゃったが、そういう指定団体に対して特別の貸し出しをやるんだから、それをやるために一般の中小企業の貸し付けに食い込んできてはだめなんです。ところが、今度は食い込んでくる。私はあえてそれがごまかしだと言うのです。そういうことをおやりになっちゃいけない。だから、二百億の別ワクをおつくりになったならば、二百億円だけ伸び率を拡大をしていく、いわゆる貸し付けワクを拡大をしていくということでなければいけない。その点はどうしておやりにならなかったのか。
  60. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは、いま申し上げておりますように、つまり従来のものの中で、同じ対象施設が二百億の中に移行するものもございましょう。しかし、その以外のものもあろう。したがって、それ以外のものを受付をいたしませんとは申しておらない。これは、従来並みの扱いはいたします。ただ問題は、どのくらいそういうものが今度の二百億のワクでカバーされるのか。これは、実は厚生省もなかなか見当がつかない面があるのです。だから、そこは実際やってみないと、実効を見ながら、実績を見て、大蔵省としては、そういう一般の中小企業金融の圧迫になるようなことはよくないということを重々考えておりますので、その辺は、今後の実績を見ながら、将来において必要があれば十分調整していく、こういうことだろうと思います。
  61. 中村重光

    中村(重)分科員 いずれにしても納得できませんが、いずれあらためて別の機会でお尋ねすることにします。  最後に大臣伺いたいのですが、歩積み両建ての問題が非常にやかましく論議されておりますね。ところが、私はこの問題の本質というものは、歩積み両建てそのものもこれは問題であるし、これは是正されなければならないんだけれども、それよりもより重要な問題は、企業間信用というものが非常に高度に展開されておるわけですね。企業間信用が拡大をするということは、手形割引というものが非常に拡大されてきたということです。ところが、この手形割引というものが預貸率にそのまま影響してきている。いわゆる単名貸付というものと手形割引というものが一緒になって、金融機関としては預貸率をきめて、金融機関に言わせれば、債権保全という立場から三〇%は必要である、こう二、三日前の金融懇談会の中でも主張しておられる。ところが、単名貸付という場合に預貸率が三〇%あるいは二〇%というならば、これは債権保全という立場からも、その率は別として、ある程度は必要であるかもしれない。しかし、企業間信用は、どんどん拡大をしてきておるじゃないか、手形割引はそれに伴って非常に積極的に展開されてきているじゃないか。しかも手形割引というものは、その手形自体が担保になる。にもかかわらず、この預貸率の二〇%あるいは三〇%の中にこれを含めるということに、私は中小企業の金融を圧迫するきわめて重要な問題点があると考えておる。この点に対して大臣はどうお考えになっておるか。この預貸率の中に、単名貸付だけじゃなくて、手形割引まで含めることが適当であるとお考えになっておるのかどうか、まずその点をひとつ伺っておきます。
  62. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 預貸率というものは、それが直ちにどういう具体的な影響を及ぼしてくるかという問題じゃないと思うのです。問題は、私はこういうことにあるんじゃないかと思うのです。企業の自己資本軽視というか、自己資本でない、他人資本で仕事をするという風潮が今日非常に高まった、それが企業間信用というところに出てきたんだろう、こういうふうに思います。また裏を返して言うと、国の経済の実力以上に金融が利用され過ぎたというところに、問題の本質があるように、思うわけであります。そういうようなことを考えて、今後企業の蓄積というところから掘り下げていかないと、ほんとうに企業間信用の問題は根本的には解決されない、こんな感じを持ちながらやっているんです。ただ、さればといって、当面の企業間信用問題を放置しておくというわけにはまいりません。そこで、大蔵省、日本銀行、通産省が寄って、寄り寄りその解きほぐしをどうするか、こういうことを相談しておるのですが、率直に申し上げまして、なかなかむずかしくて、成果ははかばかしくはない。しかし、最近は金融緩和の傾向なんかを受けまして、業種によりまして相当の改善を見つつあるところがあるわけです。しかし、これをほんとうに本質的に解決するには、じっくりと、長い目をもちまして自己資本の充実という線を大きく出していくというほかはないように思っておるわけです。
  63. 中村重光

    中村(重)分科員 企業間信用の取りくずしについて、何かの機関でもつくって積極的な取りきめをされる御意思がありますか。
  64. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま大蔵、通産、それから日銀と、企業間信用問題協議会というものをつくりまして、努力はいたしておるわけです。
  65. 中村重光

    中村(重)分科員 そこで、先ほどお尋ねしましたようにいわゆる歩積み両建てという形で議論されている、いわゆる銀行は自粛基準というので三〇%にとどめる、こういうことなんですね。ところが、この点は私が申し上げましたように、単名貸付ですね、それだけでなくて、手形割引を含めておるということなんですね。大臣も御承知のとおり、いまは親企業と下請関係企業の取引というのは、ほとんど全部といっていいくらいに手形でしょう。そうすると、その手形を割引をする、その手形自体は担保になるんですよ。これをいわゆる預貸率の中に入れる。銀行でいえば、いまいっている三〇%の中にこれを含めるということです。そうすると、手形割引を受けた。しかし、親企業と下請企業との間の取引で、下請企業は利潤をどの程度見ているか、一割程度しか見ていないでしょう。かりに一割五分見ておったとしても一おそらくそれだけしか見ていないと思う。そうすると、それだけの利益しかない。それを銀行に持っていくと、割り引いて、二〇%、三〇%がいわゆる定期預金であるとか、あるいは歩積みであるとか、いろいろな形において拘束される。そうなってくると、その下請企業はどうなりますか。資金的に全く行き詰まってしまうじゃございませんか。私はこれがいけないんだと言っているのです。だから、銀行がいう預貸率の中には手形割引を含めるべきではない、こういう主張なんです。この点はどうお考えか。
  66. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 技術的な点でございますから、私からお答え申し上げます。  これは、先生がおっしゃるのは、要するに手形の割引をやる場合に、いわゆる歩積み預金というものを大蔵省はある。パーセンテージ認めておるじゃないか。これはまさにおっしゃるように、例の自粛通達が三十九年に出されました際に、手形割引の極度額の一〇%ないし三〇%を歩積みの適当なものと考えるという趣旨のことが出ております。しかし、問題は、先生がいまおっしゃる銀行の預貸率の計算のときにそういう割引手形を入れるとか入れないとかいうことではなくて、むしろその一〇%なり三〇%と申しておる歩積みの率、これが非常に高過ぎるかどうかという問題だと思います。  そこで、当委員会においても一昨日お話がございましたが、通達でそういうふうに一〇ないし三〇というと、普通の金融機関のほうは、三〇まではいいんだ、こういう気持ちになって、みんな三〇%預金を拘束されるのは困る、こういうことでございます。私どもも、これはあくまで手形の内容なり取引先の信用度によってその率を変えていかなければならないもので、したがって、不当に積んでおりますものは、検査のつど、発見すればびしびし是正をいたしております。今後ともそういうことのないように指導をしてまいりたい、かように思っております。
  67. 中村重光

    中村(重)分科員 私が言っているのは、そのこと自体もよくないのだけれども、いわゆる割引手形の場合に、いまいう一〇%とか二〇%、三〇%という形でこれを抱束するということがいけないのだと言っておるのです。そうでしょう。銀行自体が、優良手形であれば、どうぞ私のほうで割り引いてください、どうぞ私のほうで割り引いてくださいと運動するのです。そうしてそこで割引をさせる。そして今度は、私はあえて預貸率とこう言っているのだけれども、どうしても二〇%なら二〇%、三〇%なら三〇%程度は積んでもらわなければ困るのだ、こう言う。これがいけない、こう言っているのです。商手という、しかも銀行が運動までして割引をするような有力な担保があるじゃないか。にもかかわらず、なおかつその割引の場合に、そういう一〇%とか二〇%、三〇%というような預金を求める。その預金を求める方法は、歩積みもあるでしょう、あるいは定期預金でもって、前からそういうことを予想して、ずっと定期預金をやらせているのです。この点は案外議論されておりません。ところが、その定期預金は、手形を割引する場合にずっと計算をしてみて、そしてその預貸率の限界は、私は二五%程度で押えていると思うのですが、それ以上になってくると、本店の都合がありますから、どうかひとつもっと定期預金をふやしてください、あるいは税務署から疑われます。裏預金をしているのじゃないか、それでどんどん貸し付けをしているのじゃないかとにらまれます。どうかもっとたくさん定期預金をしてください。こういうことで銀行は要求しているじゃないですか。だから、単名貸し付けのそういう貸し付けだけでなくて、優良手形というような担保もあるものを含めて、そういうような預金を要求するということはよろしくないと言っているのです。だから、これを一緒にすることが適当であるとお考えかどうか、この点をひとつ、公取もおいでですから、公取のほうからもお答え願いたい。
  68. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ちょっとその前に、先生御承知のように、やはり手形がどんどん回ってまいります。優良なものもございますし、そうでないものもある、いろいろ実は千差万別なわけでございます。したがって、それに対する担保というものを考えておかなければならぬ。これは、通常の商慣行としてもあるわけでございます。それが通常の慣行を越えて不当に積まれるところに私は問題があると思う。これは全然積んじゃいかぬと言われますと、ちょっと従来の商慣行から申しましても、そこに無理があるのじゃないかと思いますので、ちょっと補足させていただきました。
  69. 竹中喜満太

    ○竹中(喜)政府委員 歩積み両建て預金につきましては、中村分科員も御承知のように、これが独占禁止法に該当するということで、従来私のほうで独占禁止法違反の疑いで取り上げたこともございますし、また現在、御承知のように、歩積み両建てを金融機関についての独占禁止法上の不公正な取引方法として、特殊指定をする準備をいたしております。
  70. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣、お聞きでおわかりだと思いますが、なるほど手形も千差万別でございましょう。優良手形もある、あるいは、不良なものは頭から割引はしないから、比較的信用力の弱いものもあるでしょう。しかし、優良手形であっても、あるいはその手形が優良と判断できないような手形であっても、事実上定期預金あるいは歩積みというものを求めるのだから、そうすると、大臣、これはたいへんですよ。親企業と下請関係企業の取引というものは、一切手形でしょう。そうすると、その手形を割り引くために、そうした預金を要求される、歩積みを要求されるということになってくると、中小企業の経営ができますか。それほどゆとりのある取引をしていると大臣はお考えになりますか。これは、私は従来の商慣習とかなんとかということでなく、そういう商手を担保にするところの手形割引というものは、従来銀行が言っておったいわゆる歩積みというものの中に含めるべきものではなかろう、それでなければ中小企業の経営、下請企業というものは成り立たない、こう言っておる。これを区別して扱うべきである。従来の商慣習でいう、いままで議論されてきた歩積みあるいは両建ての単名貸し付けというものの中に、この手形割引は含めるべきではない、こう言っておる。その点を大臣、明確にお答え願いたい。
  71. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 単名貸し出しの場合に歩積みをしてはいかぬ、こういうお話のようだが、ちょっと真意はよくわかりませんが、単名でその貸し付けを受ける会社が、単名の貸し出しを受ける力はあるが、しかし信用が多少あやしいという場合に、根担保として幾らか積んでおく、こういうことは間々あり得るのではないか、そういうふうに思います。
  72. 中村重光

    中村(重)分科員 そうは言っておりませんよ。私は、単名貸し付けの場合に、大臣の言われるような点がある程度——従来の商慣習というものを離れて、常識はずれの金額を、三〇%とか幾らかというようなことを求めることはいけない。それ自体も問題はあるのだけれども、手形割引も含めることは適当でないと言っている。手形割引というものは、商手自体が担保になっておるじゃないか。にもかかわらず、債権保全とかいろいろな名目をもって二〇%とか三〇%というように、その手形が千差万別であって、優良手形であろうとそうでないものであろうとも、歩積み、定期預金を求めることは適当ではないじゃないか。これはおのずから単名貸し付けと手形割引は区別すべきものだ、こう言っているんです。その点はどうなんですか。
  73. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わかりました。今度は手形割引の場合ですね。割引の場合の手形は、いろいろな人が債務者として関係していると思うのです。裏書きをした発行人全部が関係するわけです。その中のかりに一人に債務者として非常に担保力のある人がいる。安心じゃないか、それを信用してやれば歩積みの必要なんかないじゃないか、こういうお話のようでありますが、手形の債務というものはなかなか複雑なものでありまして、その手形の債務者が何人かある中で、その確実な債務者に資力がある場合におきましても、その人に全部の保証を求め得るかというと、これは法的にむずかしい事態になるということは御了解願えると思うのです。簡単に債務の保証がなし得るという、その手段の一つとして歩積みということが発生してきているのだ、こういうふうに思うわけです。つまり、私が申し上げることは、手形債務者の中に一人の有力なる人がおりましても、それだけで万事安心できるかというと、なかなかそういうような状態ではないのであるということを申し上げておるわけです。
  74. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣、時間を取りました。これで終わりますが、大臣答弁を伺っておりましても、銀行の側の立場からのみものを考えておられる。それは適当ではない。さっきから私がくどいように言っておるように、手形の割引というのは、優良手形になれば、銀行から私のほうに割ってください、割ってくださいといって猛運動ですよ。そして、手形割引をやるのです。優良手形ということになってくると、これは、まあこういうところで一々申し上げなくても、政府のテコ入れによって、つぶれるような企業じゃあございません。これは絶対につぶれないような企業だ、そういうものから出される手形というものも、みずから運動して割引をしながら、いま言ったように一〇%とか三〇%というような歩積み、いわゆる定期預金、そういうようなものを求めている。そういうことでは中小企業、なかんずく下請関係の中小企業などというものは成り立たないのだ。だから、信用貸し付けの場合と、それから手形割引というものはおのずから区別して考えなければならない。だから、大臣もこうした問題については慎重に取り組んでいこう、検討をしようということならば、それはわかるけれども、何かしらん、そういうことをやっておることが当然だというように判断されるような答弁をされることは、私は銀行の立場のみをお考えになって、ほんとうに中小企業というものの置かれておる立場というものをお考えになっておらない、それは適当でない、こう申し上げておるわけです。最後にお答えを願っておくわけであります。
  75. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歩積みばかりでなくして、両建ての問題等につきましても、ただいま国会でもいろいろな角度からの御議論が行なわれております。また、大蔵省としてもいろいろな措置を講じて今日まで至っておりますが、それらを総合検討いたしまして、なるべく、中小企業者を含めて、企業の金利負担が実質的に軽減されるように努力をしていきたいと思います。
  76. 愛知揆一

    愛知主査 次に山田長司君。
  77. 山田長司

    山田(長)分科員 私は、接収されておりますダイヤの処分について今後いかなる処置をされるのか、きょうは伺っておきたいと思います。  過日本会議で自民党の押谷議員も、これを本年は処理する年になるのじゃないかという意味のことを発言されておりますけれども、これは、国民ひとしくどう処理するだろうかということについては関心を持って見ているところでございます。ダイヤの解除後、再三業者の鑑定等がありまして、そのつどいろいろわれわれは関心を持って見ておるわけですが、最初このダイヤにつきましては、駐留軍が世界的権威者と目される人たちで鑑定をいたしまして、九十二種類に分類がされております。そのダイヤが何ゆえに業者によって混合して八種類に分けられたものであるか、まず最初にこのことを伺います。
  78. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員にお答えさせます。
  79. 松永勇

    ○松永政府委員 駐留軍時代に分けましたのは九十二種類になっております。これは、色とか形等によって九十二種類に分けたのでございますが、その後、三十七年に政府でこの鑑定をいたします際に、九十二種類というのは非常に種類が多いし、日本の現在の市場でプリベールしている種類よりも非常に多いので、実際の認定返還の事務を行なう際に、もっと日本でプリベールしている種類ぐらいに分けたらどうかというので、八種類に分けたのであります。この点については、山田先生に決算委員会でもお答えいたしましたように、分け直したと申しましても、一つ一つの封筒は従来どおりにあるわけであります。ただ、私たちの集計上、つまり机の上の種類分けをしたということでありまして、現実にダイヤモンドが九十二種類に分けられていたものを一緒に混合してしまっているということではないわけであります。机の上での種類分けをしたということでございます。
  80. 山田長司

    山田(長)分科員 いま言われた三十七年当時の鑑定者の経歴等を見ますと、これはいずれも業者です。ほとんど業者でない人はいない。こういう状態の人たちが鑑定したのであって、払い下げの価格等についても、どうもしろうとのわれわれとしては納得できない点があるのです。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕 それで、ややもすると払い下げを有利にするためにそういう値段をつけたのではないかというふうなことが流布されております。この鑑定に当たった人たちが、しからばこれから先も、今度の鑑定に——当局に資料要求しますと、全然きまっていないように聞いておりますが、すでに業者の間では、鑑定人はきまっているといいます。その点、業者の間では鑑定をする人の名前がきまっているというのに、一体、どこでそういう選定がなされたものかわかりませんけれども、鑑定者の名前はわかっているのですか。
  81. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほどお話しございましたように、従来の評価がだいぶ違ってきておる。そこで、しばしば申し上げているように、今回は売り払いを前提とする予定価格をつくる評価をやりたいということで、今回三月中旬からその売り払いを前提とする予定価格をつくる評価をいたすことにいたしておりまして、鑑定人を依頼することにいたしておりますが、まだ最終的に鑑定人は決定いたしておりません。ただ決定いたしておりますのは、最初の、米軍の管理下においてこの鑑定に当たった外国人、具体的に申しますとヘンダーソン、この方は外国人でもございますので、事前に手配をいたしましてその承諾を得ております。それ以外の点につきましては、従来の評価が業者に片寄っておったということは事実でございます。そういうことで、今回はそういう業者の方のほかに、学者あるいは卓識経験者、そういう者を相当数入れて、いわゆる価格のチェックをする。従来五人でやりましたものを今回十人程度にふやしまして、価格のチェックをやりたいと思っております。現在まだヘンダーソン氏以外は確定いたしていないので、これから早急に確定してまいりたいと思っております。
  82. 山田長司

    山田(長)分科員 当時、駐留軍から日本にダイヤを渡したときには、十一冊の書物による識別の、あるいは等級別の文書が出ているやに伺っております。この十一冊を参考にして今度の場合もおそらく鑑定されるものと思われますけれども、この書類はあるでしょうね。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕
  83. 松永勇

    ○松永政府委員 十一冊かどうか正確に知りませんが、米軍からの資料はすべて引き継いでおります。従来、米軍時代の評価七十二億の当時の資料も持っております。今回は具体的に個々のダイヤを見て、それぞれの鑑定人に鑑定していただくということで、もちろんそういう過去の資料も参考にはいたしますが、現実には、そのダイヤそのものを見て評価をしていただくということになっております。
  84. 山田長司

    山田(長)分科員 前回の鑑定のしかたは、肉眼を中心とした形の鑑定のしかたなんですが、戦後、これを引き継いでからというものは相当の歳月がたっており、だんだん科学的に判定することができるような段階にきておると思います。その道の世界の人々に伺いますと、別に鑑定者を要しなくても機械をもってすればわかるといわれるような世の中になっておるようです。そういう事実につきまして、今回の鑑定人は、機械によるものか、肉眼によるものか、どちらなんです。
  85. 松永勇

    ○松永政府委員 鑑定につきましては、機械、肉眼、それぞれを使ってやられるようでございます。私も実はダイヤの鑑定のことはそれほどよく知ってはおりませんが、現に、ヘンダーソン氏は機械を非常に重視される方のようです。この方に依頼する際に、アメリカと往復いたしました際にも、こういう機械をそちらで貸してもらえるかというようなことをいろいろ問い合わせが来ております。したがいまして、私のほうもそういう機械の準備をすることにいたしておりますが、いずれにしろそういう機械、肉眼等を通じて評価をなされるというふうに考えております。
  86. 山田長司

    山田(長)分科員 前回鑑定をする場合に、ヘンダーソン氏のほかに、ワシントンの国立博物館の地質部長であり、鉱山学者のホーシャングという人が来ておられるようですが、この人は、今回はどういうために頼まないのですか。
  87. 松永勇

    ○松永政府委員 私たちもこの評価をやります際に、そういう学識経験者の方——業者だけですと、いろいろとかくの評判もあろうかと思いまして、学識経験者を相当数入れるということでいたしております。現に日本のそういう方々にお願いしようと思っておるわけですが、外国の方につきましては、このヘンダーソン氏一人にいたしました。これは経費等の都合もございます。かつてヘンダーソン氏が中心になって米軍当時の鑑定をしたということで、ヘンダーソン氏で十分であろうというふうに考えてそういうふうに措置いたしたわけであります。
  88. 山田長司

    山田(長)分科員 私は、前回も本予算委員会のときに質問し、決算では実はたびたびこの問題について質問しておるわけですが、この日銀のダイヤにつきましては、宝石であるからみな関心を持っておるんだろうと思うのでありますが、とかくいろいろ問題があるようであります。大蔵省の人たちは、この日銀の地下へ入るときには決して一人では入らないということがいわれております。だが昭和二十六年に十人の人たちが百六十六回入っております。それから二十七年には三十一名の人が四百七十七回入っておる。三十六年には十四名で二十六回入っておる。三十七年には七人が四十四回入っている。三十八年には十五名の人たちが五十九回入っている。三十九年には十五名の人たちが五十三回入っておる。それから四十年には十九名の人が五十回入っておる。合計八百七十五回入っておる。それだけの回数の人が入っておる。これは調査をする必要の名目から入っておるのだと思いますけれども、それだけの人がどうして入る必要があるのか。特に私疑問に思いますのは、大蔵省の報告書に従っても、その中へ一人で入っている人がおる。これは三十六年の十一月でありますが、一人の人が入っておる。私は金庫の地下室へ実は数回にわたって調査に行っておりますが、そのつど位置が変わったり、そのつど出し方の場所が変わって見せられたりしますので、この入った状態のことを伺うのですが、何でこのことを伺うかというと、いつか百万円の紛失があって、これがいまだに明らかになっていない。この百万円の札束が置いてある個所とダイヤが置いてある個所が同じ金庫の中であって、私はその現場を見ておりますので、これは、中から何びとかが出したものであろうと思われるが、大蔵省から日銀の地下室へ行かれる場合に一体これは出張命令が出るのか、それからさらに写真や印鑑——印鑑はいつも金庫に封をしてあって、入ったときに判が押してございますから、行った本人に間違いないことは考えられるのですが、場合によると、それがいまから十四、五年前に私が査察に行ったときには、どうもそんなに厳重にやっていなかったような印象を持っておったのです。だから、あの百万円の紛失がいまだに発見されずにいるのではないかという印象を持つわけでありますが、この出入りの人たちはいずれも大蔵省の人及び国会関係者等の視察によるものだと思いますけれども、一体これだけの人が行って調査をしなければならないほどの調査の必要があったのですか。
  89. 松永勇

    ○松永政府委員 日銀の地下にいつどういう人が出入りしたかということは、決算委員会でそれぞれの資料を求められまして、昨年の八月以降、その資料を提出いたしております。これに一人で入ったという事実はございません。  それから、その調査の必要がなぜあったかと申しますと、接収貴金属等の処理に関する法律が三十四年に成立して以来、御承知のダイヤモンド以外の金、銀、白金等の認定、返還の事務をやってまいっております。やっと来年の上半期をもってダイヤモンド以外の貴金属については認定、返還を終わるという事態になっております。これは、御承知のように、この法律で設けられました審議会に一件一件の議案をかけて、その議に基づいて処理をいたしております。そういう関係で、このダイヤモンドだけを見るためではなくて、個々の接収貴金属の処理をはかります際の調査に入ってまいったのでございます。  それから、なおこの日銀の地下の金庫の厳重な管理をいたしておりますことは、しばしば委員会で御説明申し上げたとおりでございまして、この金庫に入ります際には、職員につきまして、この職員が今後この金庫にまいります。日銀にまいります人間はこれだけの人間に限定いたしますということをあらかじめ国有財産局長名をもって日銀の局長に正式に通知してあります。そのほかに具体的に個々の、金庫をあける必要が生じました場合には、国有財産局長名をもって、何月何日、日銀にこういう用務をもってこういう人間が行きますから金庫をあけていただきたいという趣旨の公文を出すことにいたしております。この公文によって、日銀はその人間と立ち会いでその金庫に入るということにいたしております。この手続は非常に厳格に措置いたしております。先ほど先生がおっしゃいましたような、いかがわしいということは絶対にないと確信いたしております。
  90. 山田長司

    山田(長)分科員 大蔵当局の入庫者調べにも、いまあなたは全然一人で入ったことはないと言われるけれども、その書類によっても一人で入っていることがあるじゃありませんか。名前までわかっている。ほかにはないようですけれども、とにかく二十六年の十一月には一人で入っていることがあるのですよ。この書類は大蔵省で出している書類ですから。
  91. 松永勇

    ○松永政府委員 この資料を出しました二十六年の六月に確かに一人の人が入ったようになっております。この期間、二十六年の六月というのは、これはまだ占領中でございます。この期間に、この名簿を私たちが調べましたところでは一人の人が入ったようになっております。これにつきましては、現実には日本銀行の人と立ち会いで入っておりまして、この人一人がその当時そこに入ったという事実はないことを確認いたしております。
  92. 山田長司

    山田(長)分科員 大蔵省の人が、その入るときにはいつも入っているというふうな意味のことですが、地下金庫のこのダイヤは大体六個の木箱の通貨保管の中に入れてあって、地下金庫、四号保管金庫の入り口のかぎは日銀の出納局長が保管しているはずですね、どうですか。
  93. 松永勇

    ○松永政府委員 日銀と大蔵省との関係はこういうふうにいたしております。地下の日銀の構造物である金庫、これの金庫は日銀が管理する、管理すると申しますか、日銀がその金庫のかぎを管理しているわけです。その中にダイヤその他の接収貴金属もございますが、ダイヤにつきましては、さらにちっちゃな金庫を五つ備えております。その金庫の中にさらにちっちゃな箱、これは密封されており、それには、開けば常に印鑑の割り封がしてございまして、わかるような組織になっております。さらにその中に封筒に入れてダイヤがございます。この封筒もさらに印鑑で封印されておるわけであります。日銀はその地下金庫のところまで管理をする、その中にございます五つの大きな金庫につきましては、大蔵省が管理をする、こういうふうに責任の分担をいたしております。
  94. 山田長司

    山田(長)分科員 そこで、日銀と大蔵省関係というのはダブルチェック制であるが、箱の中のダイヤの調査大蔵省の係官だけしか独自に扱えないようになっているのじゃないですか。
  95. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほど申しましたように、中のダイヤそのものは大蔵省だけの責任でございます。大蔵省だけがこれを管理しているのでございます。
  96. 山田長司

    山田(長)分科員 そうすると、この仕事に従事している人たちは中へ入ってこれを自由に扱うことができるわけじゃないですか。
  97. 松永勇

    ○松永政府委員 地下金庫に入りますところに日銀の職員と一緒に参ります。そこで、日銀の職員はその中に入っておるわけです。その中の作業は、大蔵省が管理しておりますから、大蔵省だけでやりますが、日銀の職員もそこにおるわけでございます。中の作業は、もちろん大蔵省の金庫自体を管理し、これを操作し、あるいはこのダイヤを調べるということは、もちろんおっしゃるとおり大蔵省だけでございます。
  98. 山田長司

    山田(長)分科員 なぜ私が疑問を持つかといいますと、それはマレー大佐が、占領下であったでしょうけれども、持ち出したダイヤモンドは五百二十個、そのうち十八万カラットのものがあったりなどしますが、これは日銀に返還されておりますか。
  99. 松永勇

    ○松永政府委員 マレー大佐事件につきましては、これは、御承知のとおり、占領中の事案でございまして、占領下のときは、米軍が管理している間の問題でございます。日本政府に返還を受けてからの問題ではございません。そういうマレー大佐事件があったということは承知いたしております。CPC記録等にもその名がうかがえるわけでございます。マレー大佐が持って帰ったというものについては、おおむねそれがもとへ戻されたというふうに聞いております。が、日本政府が管理している時代のことでございませんので、正確に私たちがどれとどれが確実に返されたものであるということはわからないわけでございます。
  100. 山田長司

    山田(長)分科員 戦時中各百貨店において買い上げられた数量というものは、十四万二千五百六十七カラットあったはずです。ですから、このダイヤが当時国費で買い上げられた金額というものは、一億六千四百五十五万七百六十八円、これが現在ですと、物価高から数百倍になるだろうと想像できます。そこで、業者が判断いたしまして、査定の結論を常に発表しまするのは、六十五億とか七十二億とかいう金額を出されておりますけれども、これが時価に見積ったならば九百八十七億くらいになるのではないかといわれていますが、業者の発表する価格と、それから時価価額の金額とにだいぶ差があるように見受けられるのです。  そこで、いまのマレー大佐事件についてのお答えでは、ばく然と入っているように聞いているということですが、そうではなくて、この五百二十個は入っているのかいないのか、もっと明確にお答え願えませんか。
  101. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほどお答えしましたように、このダイヤモンドについては、米軍から日本政府が引き継ぎを受けたというか、日本政府に返還を受けたところから日本政府の責任と権限が発しております。その以前のときにマレー大佐事件があったということは承知しておりますが、それで、その中に相当もとのものが返されたというふうに聞いております。CPC記録等からそういうことが推定される点はございます。しかし、幾らマレー大佐が持っていって、どういうダイヤモンドを持っていって、そうして、それは現実に返ったかということを確実に私たちが知り得ることは、現段階においては不可能でございます。先ほど申しましたように、そういうものも相当返ったと思われるものが日本政府に返還を受けた。返還を受けたときから日本政府の責任と権限が始まる、こういうことでございます。
  102. 山田長司

    山田(長)分科員 接収ダイヤは駐留軍より講和発効と同時に日本に返されたのでありましょうか、それじゃ、これは大蔵省に引き渡されたんですか、最初は外務省に引き渡されたんですか、この点はどちらです。もしそれがわかれば月日を教えてください。
  103. 松永勇

    ○松永政府委員 引き渡されましたのは、二十六年の六月二十一日付のスキャッピン七四四三のAというので日本政府に引き渡されたのでございますが、現実には、当時の理財局長と米軍金庫管理官、この間で受領書の署名がしてあります。
  104. 山田長司

    山田(長)分科員 当時の理財局長の石田さんが引き継ぎを受けたのは、私の調べでは二十六年の六月二十八日です。当然外務省を通ずべきにかかわらず、これが外務省ではなくて大蔵省に移管されたことは、マレー大佐の横領事件があったためではなかったのですか。それで、実は管財局長でなく理財局長が受領したのは、それじゃどういうわけなんですか。
  105. 松永勇

    ○松永政府委員 当時、貴金属の処理は理財局で処理いたしておりました。管財局ではこれは処理いたしておりません。その後大蔵省内の組織の変更によって、この仕事を管財局が処理することになったのでございます。
  106. 山田長司

    山田(長)分科員 それで、当時引き渡された数量というのは、マレー大佐が裁判の結果出したというのは出さなくて、実際の数というものは十万六千三百五個であったのではないですか。それで、カラット数も、それがために十六万一千三百十二カラットになったのではないかと思うのですが、その点はいかがなんですか。
  107. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほどのお話の二十六年の六月二十八日——二十一日はスキャッピンの日付でございますが、二十八日に現実に引き継ぎを受けたのございます。その数量は十六万一千二百八十三カラットということでございまして、マレー大佐の分がその中に入っているというふうに、実は保管されているというふうに推定はいたしておりますが、先ほど言ったように、具体的にどのように保管されておるかということは、米軍時代の問題でよくわかりません。
  108. 山田長司

    山田(長)分科員 これは、とうといダイヤのことですから……。それでは、マレー大佐の裁判の終わる前に引き継ぎをされていると私は思うのですよ。そうすると裁判後に、判決がおりたときには、その品物は日本に戻ってこなければならないはずなんです。そうすると、それは数が五百個なんですから、たいへんな金額になると私は思うのです。その点の、裁判と引き継ぎをされたときのギャップはどこのところにありますか。いつ裁判されて、裁判の判決後はいつ品物は渡されているのですか。このときは品物が引き渡されたあとのはずですよ。
  109. 松永勇

    ○松永政府委員 ちょっと、マレー大佐の裁判がいつあったということは調べておりません。ただ、先生に申し上げたいのは、なるほどあるいは裁判がそのあとだったかもしれませんが、マレー大佐は、私の聞くところによると、サンフランシスコに帰ったときに当時の米国の官憲にその問題で逮捕されております。その状況下でマレー大佐の問題が米軍の間にいろいろと処理され、その現物は相当返っているのじゃないかというふうに推定されます。  なおマレー大佐の裁判の状況がいつであったかということは、ちょっと手元ではわかりません。しかし、いずれにしろ日本政府としましては、二十六年の六月の二十八日に渡された、引き継ぎを受けたその後から、先ほど申しましたように、責任と権限が発生しておるのでございます。その以前の状態の米軍のことはよく一わからないし、また責任もないという実情なんであります。
  110. 山田長司

    山田(長)分科員 そうしますと、五百二十個のダイヤについては、マレー大佐の裁判の結果、日本に戻ってきたのかこなかったのか、きたろうと思われるというお答えなんですか。
  111. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほど申しましたように、正確にはわからないというのが実情でございます。ただ、私たちは、CPC記録等から相当数戻っているのではないかというふうに推定いたしております。
  112. 山田長司

    山田(長)分科員 戻っているとするならば、引き継ぎを受けたときの十六万一千というカラットにプラスさるべきものと思われますけれども、この点はどうなっておりますか。
  113. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほど来申し上げましたように推定でございまして、推定で返っておるであろうと思っておりますが、その返っておるものが中に入って十六万一千カラットというものになっておるのであろうというふうに考えております。だから、この六月の二十八日以降米軍からあらためて日本政府に、そのほかにダイヤモンドの引き継ぎを受けたことはございません。この二十八日に返還を受けたダイヤモンドの中に入っているであろうというふうに思っております。
  114. 山田長司

    山田(長)分科員 それでは、もう一つあらためて伺いますが、皇室から下賜されたダイヤは、その中へ入っておるのですかいないのですか。
  115. 松永勇

    ○松永政府委員 皇室から下賜されたダイヤモンドについても、種々新聞雑誌等でにぎわったようでございまして、そのことを承知しておりますが、この中にそれがはっきり現在あるのかないのかということは、よくわかりません。
  116. 山田長司

    山田(長)分科員 入っているか入っていないのかわからないというのはちょっとおかしな話で、実は私は、行監でこの問題については質問をした記憶があるのだが、当時、皇室から下賜されたダイヤは、宮内庁へ一度返還された、宮内庁でこれを紛失した。その紛失したかぎの保管職員小林某は消えちゃっているのです。ですから、この中に宮内庁の下賜された分というものは入っていないのがほんとうじゃないですか。どうなんですか。これは、その当時宮内庁が下賜されたものは入っていないという結論を私は持っておるのですが、ずいぶん古くなっておりましても、その点不明確なものですから、私自身も大蔵省当局に聞いておきたかったわけです。
  117. 松永勇

    ○松永政府委員 委員会等においてもその点がいろいろ御質問があったように聞いております。しかし、結論的に申しまして、宮内庁のダイヤモンドがこの中にあった、それはどれかということはわからないというのが実情でございます。先ほど来申し上げてありますように、二十六年六月二十八日に米軍から日本政府が返還を受けたダイヤ、そのダイヤのままで現在ある。その中に皇室のダイヤモンドが入っているのか入っていないのかということは、わからないというのが実情でございます。
  118. 山田長司

    山田(長)分科員 実は御下賜のダイヤの数が三千五百九十一個、百十一カラット八五、白金が百十一匁、それで宇佐美次長は、当時の行監特別委員会に二十七年の二月十九日かに出席されて、会議録の五号の八ぺ−ジで、この中に入っていなければならぬと言っておるのです。ですから、私は、これは入っているか入っていないのかということは、いろいろ処理する段になってくれば、個数にえらい違いが出てくると思いますので、伺うわけですが、当時の宇佐美次長の証言がほんとうであったのか、うそであったのか。その記録のものが大蔵当局の保管の個数の中に入っているかいないか、この点を伺っておきます。
  119. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほど来申し上げてありますように、ダイヤモンドは交易営団、中央物資活用協会で国民の供出を仰いで、そこで買い上げて、そしてその買い上げられたダイヤモンドが米軍に接収されて、その接収をされたダイヤモンドは一括米軍がこれを管理し、それを現在のような九十二種類の区分別に分けてあるわけでございます。したがいまして、個々のダイヤモンドに名札が書いてあるわけではございません。実際にその中に入っているのか入ってないのかという点につきましては、公式には皇室から供出されたダイヤモンドがどれであって、それが現にどこに入っているのかということが確認できないわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、そういうダイヤ、国民全体の個々から集められたダイヤ全部がいまのようにされて、そして私たちに引き継がれ、返還をされたのが十六万一千カラットあるということでございまして、以上の説明の中から、具体的にその中に入っているのか入ってないかということについては、確固として、入っている、あるいは入ってないということが申し上げにくい事情をおくみ取り願いたいと思います。
  120. 山田長司

    山田(長)分科員 それでは、大蔵省は、大蔵省自身に何ら所有権のないダイヤを、中央物資活用協会にその当時の時価で約十億に匹敵するものを無償で出して、当時行監で摘発されて、局長は国会であやまった、こういうことが当時あったのですが、これは、その中に入っていたダイヤじゃなくて、別なダイヤにこれは出したものですか。
  121. 松永勇

    ○松永政府委員 ダイヤモンドにつきましては、先ほど申し上げましたように、日本政府に返還になりましてから、接収貴金属等の処理に関する法律によってこの処理をはかっております。米軍の時代、あるいは戦争中等にこの供出を受けたダイヤが軍のために若干は使われたという事情、それから占領中に米軍がこれを接収した後、このダイヤの一部を外国に略奪物資として返還をしたということはございます。それからなお日本の経済、民生の安定のために、一部工業用ダイヤをレリーズするというような措置を講じたことは聞いております。しかし、大蔵省自体が、返還があった後にダイヤを無償で人にやるというようなことはございません。
  122. 山田長司

    山田(長)分科員 では、昭和二十年の三月まであった、銀座の松屋の六階か七階かと思いますが、交易営団の本部を清算したときの資料というのは、大蔵当局は引き継いでいるのですか、引き継いでいないのですか。
  123. 松永勇

    ○松永政府委員 交易営団につきましては、日本政府は全然引き継いでおりません。日本政府が引き継ぎましたのは、先ほど来申し上げておりますように、米軍から二十六年六月二十八日に返還を受け、引き継いだということでございます。なおこの法律のたてまえは、もういまさら申すまでもなく、交易営団、中央物資活用協会の所有であるということでございますが、この貴金属の処理法律によって、それは国庫に帰属する。ただし国は供出時に払った代金に相当するもの、それにプラス若干の諸経費というものの金額を交易営団に支払う、こういう法律のたてまえになっておること、御承知のとおりであります。
  124. 山田長司

    山田(長)分科員 交易営団には、当時国の仕事を移管してやらしておったはずだと私は記憶しておりますが、その交易営団が、政府の代理としてダイヤモンドを買い上げる役割りをしていると思うのです。それで、さらに全国の百貨店にこの機構が買い上げを依嘱をしたと思っております。そこで、この交易営団が終戦のときに清算をされる場合に、政府が関与しなかったという事態が理解されませんけれども、これは、どういう関係政府は関与しなかったのですか。
  125. 松永勇

    ○松永政府委員 交易営団は財団法人であったと思います。すなわち政府とは別個のものでございます。ただ戦争遂行中に、そういう財団法人をして政府のいろいろな施策の一端をになわしたということは事実のようでございますが、しかし、政府そのものではなくて、別個の法人格を持つ財団法人であった。したがいまして、この交易営団が供出を受けたその段階で米軍に接収されたもの、これの所有権は、民法の考えから申しますれば、財団法人交易営団のものでございます。ただ、実質的に、国民から供出を受けたものは一財団のものではないという趣旨から、この三十四年につくられた接収貴金属等の処理に関する法律という特別法をもちまして、実質上このダイヤモンドの所有権を国に帰属させる、ただし、それに相当する償いを国から出すという先ほど申しました法律がつくられた次第でございます。なお交易営団は、終戦後閉鎖機関に指定され、現在その清算を続行いたしておりますが、近いうちにこの処理を完了することになっております。閉鎖機関の主たる残った収入というのは、先ほど言ったダイヤモンドを国庫に帰属するということにしました関係上、国はそれに若干の金を支払う、その支払いを受けて清算を結了する、こういうことになっております。
  126. 山田長司

    山田(長)分科員 ダイヤモンドの処理と並んで、やはりこの資料はできるものなら要求をして私は見せてもらいたいと思います。  次に伺いたいことは、交易営団は、終戦と同時にこれを全部一まとめにして、ダイヤは群馬県の桐生のほうに持っていった。この桐生から今度は三井信託、三菱銀行の貸し金庫の中に持ってきた。それから占領軍に接収されて日本銀行へ持っていった。こういう経過があって、中には略奪物資等もあって、返還したものもあるようですが、いずれにしてもこれはいろいろ桐生のほうに持っていったり、三井信託へ入れたり、三菱銀行へ入れたりしている期間中に、いろいろよからぬうわさなど立ったのだろうと思うのですけれども、とにかくそういう経過で接収されたダイヤというものが日本銀行の地下に現存しているようでありますけれども、このダイヤの処理にあたりましては、学者とか、あるいは専門家の人たちに委嘱をされるようでありますけれども、あくまで私は肉眼によるものではなくて、この当時と違って機械力が発達しておりまして、実は私は、その機械を先ほど見てきたのでありますが、その機械によりますと、ダイヤの区別はちゃんとしろうとの事務員の女の子でできるのです。何で高い金を払って昔の専門家を雇うのか私にはわかりませんけれども、機械力でどんなダイヤでも一応わかるようであります。また、その鑑定者の人たちが、鑑定人なんてりっぱな人は必要としないのだということを言っております。はたしてそれがどうか、私にはまだまだ疑問がありますけれども、いずれにしましても顕微鏡で見て、肉眼でこの前区別をつけたようにいろいろむずかしく査定をしなくてもできるようです。前のときの種類分けをした状態というのは、御承知のことと思いますが、A、純粋絶対の無色のもの、B、業者の鑑定によってやや色のあるもの、C、専門家の肉眼ではっきり色のあるもの、D、しろうとにもはっきり色が見えるもの、E、その上もっとはっきり色が見えるものというようなぐあいに色別を分けて査定をしたようでありますが、今度は私はぜひ機械力を十分御活用願いたいと思うのです。これはいかなる方法で処理するのか、大臣にひとつその所見を伺っておきたいと思うのであります。この間大蔵省に資料の要求をしましたら、前回の人の名前と経歴だけが出てきて、今度処理しようとする鑑定人の名前が一人も出てきていないのですけれども、今度処理するのは、いま松永局長からお話を伺ってみますと、相当権威のある人にお頼みになるようでありますが、機械力を相当活用された形のダイヤの鑑定というものが私は必要だと思うのです。大臣の御所見を伺います。
  127. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私も機械力で鑑定をするがいいかどうかというところまでは承知はいたしておりませんが、このダイヤは非常に大事な意味を持つものでありますから、その評価にあたっても適正にこれをしなければならぬ、同時に、これが売り払いも適正に行われなければならぬ、それで、競争入札で大体やっていく、こういう考え方でございます。ガラス張りで万事処理する、こういう方針であります。
  128. 愛知揆一

    愛知主査 この際、山田君に申し上げますが、質疑時間もだいぶ経過いたしましたし、次の質疑者もお待ちのことでありますので、結論をお願いいたしたいと存じます。
  129. 山田長司

    山田(長)分科員 だいぶ時間が過ぎているという御注意がありましたから、ごく簡単にあと一、二点を伺っておきます。  当時この問題を、十三、四年前になりますが、私は衆議院の行監の委員の一人といたしまして、鑑定の経験のある貴金属商の卸の手伝いをしていた人であるとか、卸のお店の御主人とかいう人に来て鑑定していただいたのでありますが、当時ダイヤか砂かわからぬというようなことを言っていた人もいた。それからこの間またある大臣が、吹けば飛ぶようなダイヤということを言っていた。一体そんな簡単なものじゃないということで、当時のことについては昭和二十八年三月四日の行監の会議録十号に、これは相当な価額のものだから、この査定にあたってはしっかりしたことをやらなくちゃならぬという結論も当時出ております。それで、これを社会福祉のために使うべきであるという結論が出まして、その法案もまさに国会を通ろうとしたときに、ばかやろう解散でとうとう衆議院を通過しなかった。もしこれが通過をしておれば、当時の行監の決議を尊重されて、これが福祉事業等に使用されたことだったろうと思うのです。残念でありますが、当時解散になってしまって、でき上がった法案は水泡に帰しました。今度のこのダイヤにつきましては、一般会計に入れるんじゃなくて、売り上げはひとつ社会福祉のために使ってもらいたいと思いますが、大臣はどう考えますか。
  130. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この財源を特定いたしますことは、財政の弾力性の上から見ていかがかと思います。しかし、お話しの十数年前の国会の動きは私もよく承知しております。こういう性格のものでありますから、国民全体の福祉に返っていくという形になることがよろしい、そういう気持ちでこの金の使途は考えていきたい、さようなつもりでございます。
  131. 愛知揆一

    愛知主査 山田君、もう一問くらいで……。
  132. 山田長司

    山田(長)分科員 それではもう一問というよりも、希望を申し上げておきましょう。  ただいまの大臣のおことばを伺ってたいへんうれしく感じます。どうかいまの御答弁の趣旨にのっとりまして、社会福祉のためにこの売り上げ金をお使いくださいますように——私は、実はこのことについて十数年取り組んでまいった一人といたしまして、しかも当時社会福祉のために使うという法案まできめられて、出そうとしたときに、それが水泡に帰したという前例もあるのでございますから、十分これをそんたくしていただいて、これを社会福祉のためにお使いくださいますように切にお願いをいたします。——おじぎだけでなくて、もう一ぺんお答えをいただきたいと思います。
  133. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 さようなつもりでおります。
  134. 愛知揆一

    愛知主査 次に、平林剛君。
  135. 平林剛

    平林分科員 私は、四十一年度特別会計予算の中で主として印刷局に関する問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  初めに、大蔵大臣から総括的な見解を伺っておきたいと思うのであります。私はこの四十一年度特別会計予算で、各省各庁の予算の編成をされ、あるいは査定をされるときには、その官庁の事情というものは相当検討されて、特に職員の給与の問題であるとか、あるいは重要な労働条件に関するようなことにつきましては、慎重にひとつやってもらいたい、いきなり予算の査定で、従来の慣行とか、それから労使の間における協定のようなものを否定するような形の査定、ばっさり査定というようなことはおやりにならないでもらいたい、たぶんそれが今日までの大蔵省予算の編成の方針であり、査定するときの基本的な考え方にあるんじゃないかと思うのですけれども、その点をまず最初に確認をしておきたいと思うのであります。
  136. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算の査定の仕事は、これはもう夏から始まるわけです。それで、ことしのごときは一月までかかっちゃったわけなんですが、その間要求省と大蔵省との間に、ずっと話が続くわけであります。それで、一年の計は予算にありといっても差しつかえないくらい、総合的に国の一年の計画が予算の中に盛り込まれるわけであります。その盛り込む盛り方は、大蔵省の思いつきでばっさりやるというようなことでなくて、相当のいきさつと話し合いを経て盛り込まれておるわけであります。これは予算の性格上当然のことであります。
  137. 平林剛

    平林分科員 十分話し合いをする、それから意見も聞くということは当然おとりになると思うのですけれども、しかしその過程において、いきなりばっさりやってしまう、そういうことは労使の重要な問題についてなるべく避けたほうがいいというお考えですか。
  138. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 労使の問題でありましても、これは役所だけできめる問題もあるし、あるいは組合側の意見を聞いてきめる問題もあります。組合側の意見を聞いてきめるべき問題につきましては、当然最終段階までのある何らかの段階で話し合いをしなければならぬ、こういうふうに考えます。
  139. 平林剛

    平林分科員 大臣、大体私の考えと同じような方針を持っておられると思うのでありますけれども、印刷局長にお尋ねをしたいと思うのであります。  今回印刷局では、従来の印刷局における表彰制度というものを根本的に変えるという提案を職員側になさったという話を聞いておるわけでありますが、いろいろ調べてみますと、これは、明治四十二年に印刷局の勤続者表彰規程というものが制定をされまして、今日まで約五十七年間続いてまいりました一つの慣行を、今度根本的に改正しようとする提案をなさった。これは長い歴史のものでございますから、職員に与える影響というものは非常に大きいということは想像できます。しかも、従来の歴史から見ると、職員としてはこれが年間における一つの楽しみでもあり、また同時に印刷局における一つの勤労意欲といいますか、それにも影響されるものでもあるし、評判もなかなかいいということで、今日まで伝統的に継続されてきたと思うのでありますが、これを改正をされるという理由は一体どこにあるのか、これをひとつ聞かせてもらいたいと思うのです。
  140. 遠藤文夫

    遠藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま明治以来五十七年間という歴史を持っておるものを根本的に直そうとしておる、その理由はどうかというお尋ねでございました。先生お示しのとおり、若干の変遷はございますけれども、現行の印刷局の表彰制度と申しますものは大正四年から存続をいたしております。しかし、その後印刷局の業務の内容、あるいは規模といったようなものもだんだんと変わってきておるわけでございます。今日になりますと、さように歴史のある制度でございますし、また現在までの歴史の中で、いろいろいま御指摘のように、職員の働く意欲というようなものにも非常に貢献をしてまいったと思っております。したがいまして、その制度そのものについての評価につきましては、私どももさように考えておるのでございますが、ただ今日になってみまして、これをいわゆる表彰制度として見てまいりますと、他の公社でございますとか、あるいは他の現業部門等で行なわれております表彰制度と比べましてかなり違った部面があるわけでございます。したがいまして、その違った部面というものが、先ほど申しましたような業務の内容とか、あるいは人員数の変化とかいうようなものとからみ合わせて考えてまいりますと、将来このまま続きますといろいろ影響を生ずる面があると考えられるわけであります。したがいまして、私どもといたしましては、これを一挙にというわけでもございませんけれども、漸次表彰制度としての一般的なものに近づける、かように考えておるわけでございまして、したがいまして、さような意味合いにおきまして、異なります部面がいろいろございますが、そのうちで、私どもから見ますと基本的に違っておると思われる面を今回改めようということを考えておるのでございます。
  141. 平林剛

    平林分科員 印刷局というのは、表彰制度をつくる意義というものはどこにあるのですか。今日まで五十七年間表彰制度があって、それを実施しているのはどこに理由があるのですか。今度あなたが根本的に改正しようというのは、それにプラスするのですか、マイナスするのですか。
  142. 遠藤文夫

    遠藤説明員 表彰制度を今度直すのは、従来あったものについてプラスであるか、あるいはマイナスになるかというお尋ねでございますけれども、これは事柄といたしまして、プラス面あるいはマイナス面というのは、やはり制度全体として見ましたときには、部分的に、あるいはまたたとえば職員に対する影響、あるいは制度そのものとしてのプラスとかマイナスとかいうことがあるので、プラス、マイナスを一がいに言えないと私は思うのでございます。現実にいままでやってきたものを、かりに金額に換算をいたしますならば、それは職員にとってマイナスの効果があると言わざるを得ない。ただ私どもは、他の例と非常に違っておる点が大きな、といいますか、全体として見ますと将来マイナスの面にも転化しかねない、かように思いますので、基本的な部分につきまして、多少の日月をかしていただき、これを漸次一般的なものにしていく。そうして、制度のもともとの本来の趣旨をなるべく永続的に生かすようにしたい、かように考えておるのでございます。したがいまして、必ずしもマイナスにしようということでやっておるのではございません。
  143. 平林剛

    平林分科員 印刷局長は、企業の管理者として、表彰制度がどういうものであって、それが今日までの歴史的な過程でどういう功績があったかということをよく玩味して物事を判断していかなければだめじゃないですか。私は、いまあなたの話を聞いておると、金額的に多くなるからというようなお話で、一体どういう点にマイナスが出るのかと言ったら、金額の点でマイナスが出てくる、プラスはどこにあるかと言ったら、その点についてはあいまいもことしたお話なんですね。管理者として職員全般の人心を掌握し、そうして勤労意欲を伸ばしていくということに一生懸命にならなければならぬ立場の人のお話とは受け取れない。どういう点にプラスがあって今度の改正をしようとお考えになっておられますか。
  144. 遠藤文夫

    遠藤説明員 ただいまどういう面のプラスと申し上げますのは、多少抽象的な申し上げ方になって恐縮でございますけれども、つまり制度そのものをあまり他の一般のものと違わないという形で永続せしめていくための努力だという意味においてプラスだ、かように思っておるわけであります。
  145. 平林剛

    平林分科員 一般的と違う、印刷局だけにあるからこれは一般的なものにするために直すのだ、金額的にも議論があるから、これはもうマイナスということを承知で直すのだ。あなた、それは印刷局長の答弁なのか、大蔵省の、査定したほうの側の話をしているのか、ちっともわからないじゃないですか。私はいつも言っているんだ。国鉄の総裁は、あのようにがんこおやじだけれども、国鉄の職員の問題については、国会へ来ても堂々と意見を述べる。そうして、その条件が少しでも悪いことになれば、人のほうはどうでも、おらほうのものだけは何とかしてくれという、ああいう企業に対する愛情というか、職員に対する愛情があっていろいろな大きな仕事もなし遂げられるので、私は、国鉄総裁の態度というものに対しては、そういう意味では敬意を払っている。あれだから国鉄職員はついていくんですよ。あなたは、いま自分個人の考えを言っているんじゃないのですか。私も印刷局の職員、あるいは管理者の立場にある人、いろいろな人の意見を聞いております。しかし、少なくとも今度の表彰規程の改正については、あなたの考えは孤立していますよ。あなた自身の独断で仕事をやっているような感じさえする。これは、私はおそらくあなたの本意でもないだろうと思うんだけれども、この表彰規程の改正をするその前提として、大蔵省からこうしろという示唆があったんじゃないですか。私はその点を問題にするのです。大蔵省からこういうふうにせい、こういうことを言われて、そしていまのような提案をよんどころなくおやりになっているのですか、その点はどうですか。
  146. 遠藤文夫

    遠藤説明員 印刷局も大蔵省でございまして、この問題は、大蔵省内での印刷局特別会計予算の案をつくります過程において生じた問題ではございます。問題を生じた過程において、私が大蔵省の職員と同時に、また印刷局の事業の責任の立場にある者として全プランを考えて判断をいたしたわけでございます。
  147. 平林剛

    平林分科員 私は、他にあまり例がないから、こういう表彰制度を直すとかいうのは、印刷局長の考え方とは思われないのです。それから金額的にもふくらまるおそれがあるからこれは直すというのも、どうも印刷局長として、職員の従来長い間続いてきたものを改正していくときの理由とも考えられない。そうなると、大蔵大臣、私はこの中に大蔵省の何らかの示唆というか、そういうものがあって、印刷局長はどうも大蔵省考えに抵抗できなくて、屈服しているというような感じを受けるのですけれども大蔵大臣はこんなお考えを持って印刷局長に何か示唆をされておるのですか。もしそうでないとすれば、この問題について、ぜひひとつ大蔵大臣も総合的立場に立って再検討して善処してもらいたい、こう私は思うのですが、いかがですか。
  148. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もこのいきさつをよく承知しないところがあるのです。それで、よく勉強をして御答弁したいと思います。
  149. 愛知揆一

    愛知主査 速記をとめて……。   〔速記中止〕
  150. 愛知揆一

    愛知主査 速記を始めて……。
  151. 平林剛

    平林分科員 それでは、ただいまの問題については、大蔵大臣にひとつ御検討いただきまして、私の意のあるところをおくみ取りの上、午後にひとつお答えをお願いいたしたいと思います。  それから、もう一つの問題は、大蔵省の印刷局において、最近一部ですけれども、機構改革をやろうという計画があるわけであります。そこで、大蔵大臣に伺っておきたいのですけれども、たしか私の記憶では、臨時行政調査会というのができまして、そうして、その臨時行政調査会において、いろいろ各官庁の行政機関について検討が加えられて、一応の結論を出して、昨年九月解散をしたことを私承知しておるわけであります。したがって、政府もしばしばこの臨時行政調査会の結論については、なるべくその意に沿うて直していくが、しかし、その意向にないものはなるべく機構改革しない、むだないじりはやらい、こういう御方針のように私は承知しておったのでございますが、その点はいかがでしょうか。
  152. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そのとおりでございます。
  153. 平林剛

    平林分科員 印刷局長にお尋ねしますけれども、印刷局では最近印刷局小田原工場の機構をいじるということを私は聞いておるのでありますけれども、どういうふうにその機構を改正しようと考えておるのか、承りたいと思います。
  154. 遠藤文夫

    遠藤説明員 お答えいたします。印刷局の小田原工場は、御案内のように銀行券を中心にいたしました証券類の印刷作業と、それから用紙製造の二つの作業を行なっておる工場でございます。現在印刷部門は作業員が約千九十名、敷地が約二万坪、製紙部門は従業員約六百三十名、敷地約四万坪という、印刷局といたしましてはかなり大規模な工場になっておるわけでございます。これを印刷部門の工場、製紙部門専門の工場、二つの工場に分割していきたい、かように考えておるわけであります。
  155. 平林剛

    平林分科員 いまあなたのお考えでは、印刷局の小田原工場を、印刷部門の工場長を一つつくる、そうして製紙部門の工場長を一つつくる、こういうふうに工場長を二つにして、そうして運営をしていこうといろ考えなんですか。
  156. 遠藤文夫

    遠藤説明員 さようでございます。
  157. 平林剛

    平林分科員 大体、小田原の印刷局の工場というのは、私の承知しておるところでは、従来いろいろな歴史的な過程がありまして、印刷部門と、それから製紙部門とを統合してやることが日本の紙幣印刷には理想的なんだ、日本の紙幣の印刷は、私に言わせると、世界的にも技術が優秀である。私は世界各国回って歩いていろいろな紙幣を手にしたり、印刷、特に絵はがきなどを見たりするのですが、日本の印刷技術は非常にすぐれておると見ておるわけであります。特に、日本紙幣の印刷につきましては遜色がない。この遜色のない歴史的な効果をあげてきたのは、製紙部門とそれから印刷部門との総合的な調整がうまくいって、これが効果をあらわしているものだ、印刷局小田原工場もそういう歴史的な背景を受けてこの部門を統合して運営をしている、そこにまたうま味があるし、こういう点が一つの理想的な企業形態として今日まで存続されてきた、こう思うのでありますけれども、あなたのいまのお考えは、従来の考えをまた根本的に変えるということになるのじゃないですか。
  158. 遠藤文夫

    遠藤説明員 ただいま平林先生お示しのとおり、戦時中に軍票等の製造で印刷局の業務量が非常に膨張しました際に、他の工場を幾つかふやしたのでございますが、その一環として小田原に製紙と印刷の一貫工場という目的のもとにできたものでございます。ただ私が今日いろいろ聞いておるところでは、これが一つの理想的な形態だということの確信を持ってやられたといいますよりは、一つの実験的な意味もその当時多分にあったというように聞いておるのであります。その理由、証拠に、現在印刷局に紙幣関係の工場といたしまして七工場程度ございますけれども、製紙と印刷の一貫工場という形のものはこの小田原の工場一つでございまして、他はいずれも印刷の工場、製紙の工場ということで今日までまいった。それからまた世界各国の紙幣関係の工場を見ましても、製紙工場と印刷工場とを同一の工場で運営しておるという例は、若干製紙工場で簡単な印刷をやっているものはございますが、ほとんど例を見ないというような状況でございます。さような点で、必ずしもこれが理想的な姿であったということでもない。ただ御指摘のうちで、製紙と印刷というものが両々相まって初めて紙幣なら紙幣のりっぱなものができるということは全くお説のとおりでございまして、その点は、私ども今日においても製紙部門は全く印刷局外に出して、そうして印刷だけをやっていればいいのだというような考えは持っておらないのであります。ただ工場として考えてみましたときには、やはり昔と変わりまして、だんだん技術的にも複雑になっております。進歩してきております。その中で、方々の工場で製紙なら製紙、用紙なら用紙も全く同じ品質の用紙ができ、そうして印刷の面でも同じような印刷ができる。全国を通じて同じような印刷ができるということが、でき上がりました紙幣としての公の信用を維持するに必要なことだと思っておりますが、さような点からいたしますと、各工場がいろいろ違う生産工程でやる、——昔は若干そういった各工場ごとに技術を競い合うという傾向があったのですが、今日では必ずしもそういうことではございませんので、本局の製造部において、技術課というようなもので製紙と印刷の両面を技術的に総合的に調整しておる。あるいはまた研究所でも製紙と印刷の両面にわたって検討していくというようなことで、生産の現場であります工場は、製紙なら製紙としての一貫した統一がある工程によりまして、製紙工場として専門に製紙の生産に従事していく。印刷のほうは同様に印刷としての統一ある形で各工場がなるべく技術を向上する。かようなことが目下技術的にも要請をされておるし、さような方向考えてまいりました場合に、やや小田原工場の場合には、製紙から印刷までの一貫工場ということが必ずしも当初考えられたほどのメリットがない。むしろ基本的に二十四時間の三交代連続作業でやっております製紙と、それから八時間労働を基準といたします印刷工場というような非常な異なる労働条件、それから製紙と印刷という基本的に技術的に異質なものが一つの工場として、一人の工場長で管理されるということは、やはり今日の時代ではあまりふさわしくない、かように考えて、ただいまのようなことを考えておるわけでございます。
  159. 平林剛

    平林分科員 その点、私は印刷局長と全く見解を異にするのです。これは、あなたは専門家だけれども、どうも私はあなたのお考えにまかせておけないという気持ちがするのです。というのは、小田原工場が昭和十六年に製紙から印刷に至る一貫総合工場として建設されて、当時としては画期的な試験工場でありましたけれども、その後の経過を見ると相当の成果をあげておる。そして、技術者もそうした誇りを持って仕事をしています。私はその実情もいろいろ聞いてみた。では、今度機構改革をしなければならないほどそうした技術的な問題について欠陥が出たかというと、出やしない。そういう欠陥があるならあげてごらんなさい。そんなことはありませんよ。少なくともそうした技術関係の部門を担当している人の意見を聞いても、そういう傾向はございません。第一いままでの部門は、あなた御承知のとおりに工場長があり、その直属に製造部、それから印刷部、管理部の三つがある、工場長の下に製造部長、印刷部長、管理部長、三つの機構があって、これを工場長が統合しておられたわけでしょう。あなたの機構改革は、この製造部長、印刷部長というのを分けて、おそらく二つの工場長をつくる。じゃ二つの工場長をつくるということが、いま実験工場としてやられたことについてどういうふうに逆転するような成果があらわれるのですか、私はそれははなはだ疑問だと見ておる。工場長を二人つくって、そうすればいまの技術的な問題についても著しく改善があるなんていうふうにお考えになって、あの機構改革をおやりになるのですか。
  160. 遠藤文夫

    遠藤説明員 いまの機構の面は、御指摘のように、小田原工場の現状を申し上げますと、管理部長——いまは総務部長と名前をつけておりますが、総務部長という全般の管理部門がありまして、それから印刷部長と製紙部長、三人部長がおります。これは、二年ほど前は作業部長と管理部長、つまり製造面で申しますと、作業部長という一人の部長でやっておったのでございますが、これが漸次先ほど来私が申し上げておりますような意味合いもございまして、作業部を二つに分けまして、印刷部長と製紙部長になったのでございます。したがいまして、今度製紙部門を独立した工場にしようと言いますのも、そういった作業部という一括した形でなしに、印刷部と製紙部を二つに分けた、その一つの発展というふうにお考え願ったらいかがかと思うのです。  それではいまの、一人工場長をふやしたら技術的にどれくらいのメリットがあるかという点でございますが、これは技術の性質上、あしたからはなはだしくメリットがあがるといったものでもないかと思いまするけれども、しかし現在の技術の管理なり、あるいは施設管理なり、労務管理というようなもろもろの管理業務で考えてまいりますときに、製紙は製紙としての一つの専門に製紙工場を担当する工場長があり、それからまた印刷は印刷としての工場長がいたほうが、——一人の工場長ではいずれかに片寄るわけでございます。多少とも専門的な知識なりが片寄るわけでございますので、それよりは全般の管理面でいいじゃないか、かように常識的に考えております。
  161. 平林剛

    平林分科員 二つの独立工場を設置するということになりますと、結局印刷工場、製紙工場、それぞれに管理部をつくる。もちろん職員課も、会計課も付属しなければならないでしょうし、区分をするためには、それだけ管理者がふえなければならぬし、食堂なども変えなければならぬし、そういうような結果になってくるのでございまして、私は、いまのお話大臣もお聞きになっておったと思うのですけれども、もう少し事情を精査する必要があると見ておるわけです。そしてまた不要不急と呼ばれる施設の増加、人員、厚生施設、宿舎、事務分掌、それから管理課部門を二分していく、複雑なことをやる必要があるのかどうか、こういう点を、先ほど大臣が総括的にお答えになりましたように、顕著なものがない限りあまり機構いじりはしないという方針と私は違っておると思うのです。印刷局長、これは行政管理庁のほうにも相談してみましたか。
  162. 遠藤文夫

    遠藤説明員 これは、工場をつくりますという点は、私のほうは現業でございまして、かつまた職員の給与その他も給与特例法に相なっておりますのと、それからこの工場をつくりますのは、現在の法令のたてまえから申しますと、省令の段階の事項に相なっておりまして、行政管理庁には若干の管理職定数というようなものの関係でいま御相談申し上げておりますけれども、機構をつくる、つくらないという問題は、行政管理庁と、直接にお願いをいたしておるわけではないわけであります。
  163. 平林剛

    平林分科員 昨年の臨時行政調査会でも、印刷局の機構については、当然検討されたわけですが、そこに入っていませんでしょう。そして、もうそれは解散をされたわけです。こうした問題については、政府の基本方針があるわけですから、行政管理庁と相談をしておるのかおらないのかということです。もうすでにあなたのほうは、そういうふうにするというふうに具体的に発表されているじゃないですか。だから、私ここで聞いているのです。事前に行政管理庁とも相談されたかと聞いておるのです。
  164. 遠藤文夫

    遠藤説明員 ただいま申し上げましたように、定数その他の関係で、内々に担当の行政管理庁の方に御説明をいたしましたりした事実はございますけれども、正式に機構をつくることについて、行政管理庁と折衝をしたわけではない、またそれは必要ではないという考えで仕事を進めておるわけでございます。
  165. 平林剛

    平林分科員 臨時行政調査会でも、そういう重要なものなら、当然検討されているはずです。しかし、そういうことはない。行政管理庁のほうだって、この問題についてはまだ触れてはいません。政府の基本方針は、単なる機構いじり、それからいまのように設備、人員、厚生施設、いろいろな面について相当の経費がかかるというような部面についてはなるべくしないというときに、その方針を知っていてあなたはそういうことをおやりになるのですか。それほどの必要性があるのですか。
  166. 遠藤文夫

    遠藤説明員 経費も若干かかる。もちろん当然工場を二つにすればかかる。同時に、その点につきましては、私ども考えは、いまの小田原工場は相当広大な敷地を持っておるわけであります。考えようによりましては、これをきれいに、特に製紙関係部分は工場、建て屋等も相当老朽化しておりますので、漸次、いずれにしても何がしかのこういった施設改善ということはしていかなければならぬ。そういうような一環のうちに入るのであるというふうに考えるのでございます。それから同時に、確かに何名かの工場長なり何なりのポストが増加するわけでございますけれども、これは印刷局総定数の範囲内でやるたてまえになっております。その面では、はなはだしく多額の経費なり手間なりを費やしてやるというふうには考えておらないのでございます。
  167. 平林剛

    平林分科員 その辺がおかしいのですよ。どうしてもそれが必要であるならば、工場を二つにして、施設なりその他で当然問題が起きてきますよ。そんなあなた、ちょこちょこといじるようなものなら、おやめなさいよ。工場の職員施設も、あるいはそれを管理する部門も、いろいろな面についても相当の経費を必要とする。それは、当然独立工場としてやる上には、そうしなければならない、その必要があっておやりになるならば。私はその必要はないと見ておるのですよ。私は、少なくともあなたよりは詳しい、悪いけれども。だから、こういう問題を取り上げているのですよ。それで、小田原の工場長は、行政管理庁の大体認可を得た、こういう話をしておるのですけれども、ほんとうですか。
  168. 遠藤文夫

    遠藤説明員 小田原の工場長がどのような発言をいたしましたか、私聞いておらないのでございますが、行政管理庁の認可云々というのは、何かもしそういう表現をいたしたとすれば、ただいま申し上げましたような行政管理庁とのこういった機構問題についての権限関係なり、責任関係なりというものを、多少誤解をして言っておるのではないかと思います。
  169. 平林剛

    平林分科員 いやしくも一つの工場を預かる責任者が、そんなことを誤解するはずはないですよ。私もその点、非常に政府方針に反することをおやりになるから、ふしぎだと思って行政管理庁にもただしてみた。そうしたら、行政管理庁の責任者いわく、いや、印刷局のほうから現場をひとつ見てくれないかという話があるので、私も一度も見たことがないから一度視察しなければならぬと思って、行ってみた。ところが、その話は、工場長は、もうすでに行政管理庁からの認可は、こういうふうにしろという示唆を受けているから、今度の分割はやむを得ないのだというような言い方をしている。私は、大臣お聞きのとおり、一つ、二つ、それぞれ問題があると思うのです。政府の基本的な考え方方針と比べてみて、それほど今日二つの工場に二分することが必要であるかどうかという点については疑問は持っておるわけです。これらはみな一貫して今日の印刷局の局長の、私に言わせると個人的な一つ考え方に基づいて、少し独走しているのじゃないか。しかも、それが印刷局部門というものへの行政的な勧奨ということではない。別な部門をあまり露骨にされて、勇み足的なことが多いのだ。逆にいえば、労務政策的な考え方からこうした問題をいじろうとしておる。そこに問題があるのじゃないかと思うのです。大蔵大臣、ひとつ先ほどの問題は、これは検討していただいたあとでお答えをいただくということになっていますけれども、あとの問題は、これは機構の問題でございます。すぐに結論が出るというような問題でありません。しかし、きょう私がここで質疑応答したことを十分頭の中に入れて、あなたはあまり、ただ局長の言うことだからといって判こを押さないで、省令なんか出さないでもらいたい、こう思うのです。その間にはよく事情を調査された上でひとつおやりになっていただきたいということを希望したいのですが、大臣の御見解を聞きまして、私の質問は終わりたいと思います。
  170. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま平林さんから非常にきめのこまかいお話を承りましたが、私は、いまこれだけの人数をかかえた小田原工場が、しかも工場の中に全く異質の二つの仕事が行なわれておる。これをさい然と分離するということが、私は、工場の能率を上げ、また工場長が職員に対してきめのこまかい労務行政なんかをやっていくというふうになるのじゃあるまいかというふうに思うわけでありますが、なお、あなたのいまのお話のこまかい諸点につきましては、十分配意いたしましてやってみたい、かように思います。
  171. 平林剛

    平林分科員 大蔵大臣もお立場上いろいろお考えがあって、いまのお答えをなさったと思いますのですけれども、十分精査をして、その上でこの結論をお出しになっていただくように重ねて要望いたしまして、あとの質問は午後に回したいと思います。
  172. 愛知揆一

    愛知主査 午後二時二十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  173. 愛知揆一

    愛知主査 休憩前に引き続き会議を開きます。大蔵省所管について質疑を続行いたします。この際、午前中の平林君の質疑に対し、大蔵大臣より発言を求められております。福田大蔵大臣
  174. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 午前中平林さんから、印刷局の今度の表彰制度の改正は大蔵本省において指示したものであるか、こういうお話でございましたが、これは、大蔵省、印刷局相ともども相談したものであります。  ついででありますから、この改正について申し上げますが、長い間の伝統ある表彰制度でありますが、これが公社五現業の中において、まあ非常に特異性を持った存在である。まあ近代化、合理化という線から言うと、これをだんだんとならしていくべきじゃないか、こういう考え方なんです。しかし、非常に長い間の伝統から今日まで立ち至っておる制度でもありますので、その伝統また経緯、そういうものを十分尊重して善処いたしたい、かように存じております。
  175. 平林剛

    平林分科員 ただいま大蔵大臣から、長い間の制度であるからこれを十分尊重して善処したいというお話、私はたいへん御理解のある御答弁としまして受け取っておきたいと思います。この問題につきましては、そういう線で印刷局においても善処せられんことを希望いたします。  なお、機構改革の面については、先ほど午前中における大蔵大臣答弁は、私まだ納得できない点があります。第一に、印刷局の機構改革については全般的に臨時行政調査会において検討いたしたのでありまして、そのときにはその問題は出ておりません。したがって、臨時行政調査会において結論のなかったものがいきなりここに頭をもたげてくるという点については、私は非常に議論が存するところだと思います。それから同時に、この問題につきましては、私が冒頭大蔵大臣に、機構改革などについては、その不急不要のもの、そしてまた経費の増大を伴うようなものについては政府としても積極的に取り上げない方針であるかという質問に対し、そのとおりでございますと答えられておるわけでございます。私の質疑応答と経緯から見ましても、その最初の答弁と、最後に、大体これは必要じゃないかと思っていますという御答弁とは食い違いがございますので、この点は最初言明なさった線に沿って解決をしてもらいたい。内容にわたりましては、先ほど議論をしましたとおり、私はこれを変えることが決してよい結果にはならない、技術的に見ましても、せっかくの総合工場として出発した点をよく考えられて、この点についてもひとつ大蔵大臣は十分御検討いただきたいと考えておるわけでございます。これは希望でございますけれども大蔵大臣に何か御見解があればお聞かせをいただきまして、質問を終わっておきたいと思います。
  176. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 機構の分割につきましては、これは行政調査会やあるいは行政管理庁との関係につきましては、公社五現業の問題でございますので、そういうふうな制約があるというふうには考えておりません。しかし、ただいまお話しの諸点、それぞれ重要な意義のあるお話と承っております。そういうような次第でありますので、どうも分割をしたほうが能率的だというふうには考えておりますが、その制度の改正にあたっては、御指摘の諸点を十分生かしていくように、さように心がけていきたいと存じます。
  177. 平林剛

    平林分科員 きょうは印刷局の問題について私はこれで終わります。機構改革の点については、別の大蔵委員会がこれを所管をしておりますから、私その理事をつとめておりますので、そこでいずれまた後日の問題として取り上げることにいたしまして、きょうはこれで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  178. 愛知揆一

    愛知主査 次に、吉村吉雄君。
  179. 吉村吉雄

    吉村分科員 大蔵省令が合併地区の地域住民の利益といいますか、そういうものに反しているという事例がありますので、この点について大臣に、そして地方自治を所管をする自治省の関係者、こういう方々に見解を承っておきたいと思うのです。  私が指摘をする大蔵省令というのは、昭和三十年に出されました大蔵省令第十五号、これは題名を見てみますると「支出官等が隔地者に支払をする場合等における隔地の範囲を定める省令」、 こういう表題の省令が出ておるのですが、この省令を出しておる目的は一体何なんですか。まず初めに、事務当局でもいいですからお尋ねをします。
  180. 津吉伊定

    ○津吉説明員 お答えいたします。  御承知のように、国の歳出金の支払いにつきましては、支出官が、日本銀行の所在地におります債権者に対しましては小切手を交付いたしまして、日本銀行に持ってまいりまして現金化されるというのが原則でございます。  それから、いま先生が御指摘なさいました隔地を定めるということで、隔地としてきまっておりますところは、これはいわゆる送金の方法によりまして、日本銀行から他の銀行店舗、あるいは郵便局等で支払いをするという制度になっております。いま御指摘のありました省令は、そういう意味での隔地を定めておるわけでございますけれども、市町村合併の結果、非常に交通不便なところが合併されまして、いま申し上げました日本銀行所在の市町村の区域内に入ってしまったというときには、従来の送金の方法を実質的にはとり得るように、隔地につきましての特例を認める。結局、日本銀行の所在地でありますけれども、隔地の取り扱いをするということもあわせて指定しておる次第でございます。
  181. 吉村吉雄

    吉村分科員 すると、その隔地という表現があるとすれば、隔地以外のものは法律上は何というのですか。
  182. 津吉伊定

    ○津吉説明員 当地というわけでございます。
  183. 吉村吉雄

    吉村分科員 そこでお尋ねをしたいのですけれども、そうしますと、隔地として指定をされた地域につきましては、日本銀行支店、出張所等がない場合については、郵便局を通じて国の支払い、こういうものが行なわれるということでございますけれども、この国の支払いが行なわれるという支出の範囲は、項目的にいってどういうものが入りますか。
  184. 津吉伊定

    ○津吉説明員 およそ国の歳出金全般につきまして対象になっておるわけでございます。ただし、特段の年金、恩給につきましては、これは若干取り扱いの差異がございまして、送金という方法ではなくて、いわば郵便局の系統そのものが日銀的な働きをいたしまして、本省で郵政省に資金交付をする。その資金が末端まで流れていきまして、郵便局で払われる、こういうシステムになっておりますが、それを除きましては、およそ国の歳出金は全部会計法の原則によりまして、いま先生のおっしゃいましたような支払い方法になっております。
  185. 吉村吉雄

    吉村分科員 それで、具体的な問題になりますけれども、町村合併というのは、広域行政を推進をしていくというたてまえから政府のほうでもあるときはこれを推進し、相当町村合併が行なわれてまいりました。町村合併が行なわれるということになりますと、いまの説明から考えられますることは、従来は隔地において郵便局から社会保険その他国の支払いを受けておった個人あるいは団体、こういったところにつきましては、合併以降は日本銀行の支店あるいは出張所の所在地、そこまで行かなければ今度は国の支払いを受けることができ得ない、こういう問題になってきたと思うのであります。そうしますると、合併によって地域住民は非常に不利益を受ける、こういう事態になってきたと思うのですが、合併はずっと以前から国のほうでも奨励をしたり、あるいはそれぞれの自治体の中で相当広範に合併が行なわれておりますから、この省令のあることによって特別扱いを受けた地域以外の地域住民は、合併によって非常に不便な状態におちいっている、こういうことが概括的に指摘できると思うのですけれども、その私の理解、指摘に対して、そういうことがあり得るというように考えられますか、ないというふうに考えられますか。
  186. 津吉伊定

    ○津吉説明員 まことに御指摘のとおりでございまして、いま申し上げましたように、国の歳出金全般が原則的にはいわゆる当地支払い、それから隔地の場合には隔地払いという方法によるわけでございますし、その際、市町村の区域というのが基準になっておりますので、合併の結果そういう事態があり得るということは、御指摘のとおりでございます。
  187. 吉村吉雄

    吉村分科員 いま一点、事務当局でいいのですけれども、合併は、先ほども申し上げましたように、ずっと以前から行なわれておった。この省令の十五号は特別扱いをすることができるようになっております。特別扱いをして、大蔵大臣が認めた地域については、特別に郵便局等を通じて従来どおりの支払いができるということになるわけです。そうしますると、この特別扱いをされておる地域、これは一体いままでの間にどのくらいになっておりますか。
  188. 津吉伊定

    ○津吉説明員 その地域は、すでにお調べになっておりますように、大蔵省の告示で、「支出官等が隔地者に支払をする場合等における隔地の範囲を定める省令の規定により大蔵大臣が特別の事情があると認めて定める区域を指定」する告示、こういう告示が出ておりまして、北海道、岩手、福島、栃木、新潟、石川、愛知、三重、京都、兵庫、奈良、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、香川、高知、福岡、佐賀、長崎等の県の中で、特別に交通事情あるいは日本銀行との間の距離、こういうものを総合勘案いたしまして、バランスがとれる状態でその特例扱いを認めるというふうに、区域を指定しておるのでございます。
  189. 吉村吉雄

    吉村分科員 その特別扱いを最後に大蔵大臣が認定をして、この地域は特別扱いにする、こういう認定を最後にやったのはいつの時期ですか。
  190. 津吉伊定

    ○津吉説明員 三十八年におきまして、北九州市の成立に伴いまして、その合併の結果不便となる地域、これを手直しをいたしておりまして、三十三年から告示をいたしております告示の内容は、その点を除きまして変更はございません。
  191. 吉村吉雄

    吉村分科員 自治省の行政局長、おいでになりましたか。
  192. 愛知揆一

    愛知主査 吉村君に申し上げます。ただいま遠藤振興課長が参りました。
  193. 吉村吉雄

    吉村分科員 じゃ、自治省の局長はお見えにならないそうですから、責任ある答弁をしてもらいたいと思うのですが、いまあなたはおくれて来たので、前のことはよくわからないと思うのですが、実は町村合併というものが相当全国的に行なわれております。すでに行なわれた地域もあるし、現在まだ新産都市との関係もあって進められている地域もございます。この町村合併というのは広域行政の効果をあげる、こういうことでございますから、当然行政執行者の仕事もやりやすい面も出てくるだろうと思うのですが、最もねらいとするものは、この町村合併によって、そこに住んでおる地域住民というものが何らかの恩典といいましょうか、そういうものを多く享受できる、こういうことについては十分配慮をなさって指導をなされていると思うのですが、この点は一体どうでしょうか。
  194. 遠藤文夫

    遠藤説明員 御存じのように、市町村合併につきましては、昨年、市町村の合併の特例に関する法律が制定されたわけでございますけれども、この法律の趣旨に述べられておりますように、市町村行政の広域化の要請に対処いたしまして、具体的な地域の事情に即応しまして、最も住民、市町村が適切な行政が行なわれるように、おっしゃるような趣旨によりまして指導いたしております。
  195. 吉村吉雄

    吉村分科員 時間がありませんから具体的に問題を提起しますけれども、実はついこの間ですが、私の手元へある人から陳情書が入りました。どういう内容かといいますと、私のところは今度新たに町村合併によって村から市に編入をされました。従来は私が障害年金けい肺病の方でございまして、傷病手当金というものをもらっておった。その支給のあり方というものは、郵便局を通じて直ちに自分のうちに支給になっておった。ところが、今度合併になりましたら、先ほど主計官が説明をされましたように、日本銀行の支店の所在地まで行かなければもらえないということになりました。町村合併というものは地域住民の利便のために行なわるべきであろう、こう考えておったのですけれども、ところがそうでなくなって、数多くの方々、特にこの場合には病人ということになるでしょう。こういう方々がそれぞれ一定の定められた日にちにそれぞれの監督官庁、この場合には労働基準監督署ということになりましょうが、労働基準監督署に行って証明をもらって、そして日本銀行支店に行って金をもらう、こういう形になりました。一日がかりでございます。これではとうてい不便でかなわないので何とかなりませんかという、そういう話を官庁にしましたところが、官庁のほうでは、これは大蔵省令第十五号によってそういうことはできませんと一蹴されました。こういうことなので何とかならないでしょうかという、そういう趣旨の陳情といいますか、書簡をいただいたわけです。私はこの書面を見て、実はこれはこの人だけの問題ではないというふうに考えました。しかもまたこの地域だけの問題でもないというふうに考えたわけです。町村合併はずっと以前から行なわれてきておる。これらに対して、町村合併というものは行政効率をあげると同時に、当然地域住民に奉仕する、地域住民の福祉に貢献をする、こういうものでなくてはならないはずだと思うのですが、各官庁の意思が疎通し合っていないためにこういう問題も起こっているということについて、どうしてもここは改めなければならないという気持ちを深めたわけでございますけれども、いまいろいろお話を伺っておりますと、特別扱いをすることができるとなっておる。これは大蔵大臣が認可をするということになっておる。町村合併をすれば当然にしてそういう問題が起こるというととは、政府自体が掌握をしてしかるべきではないか。特に自治省においては、そういう問題について、地域住民の利便というものを考え、福祉を考える立場に立っておるとするならば、そういうものは十分事前に掌握をして、このような不便を生じせしめないような対策というものを確立をして初めて広域行政というものは効果があがっていくはずだ、こういうふうに私は考えるのです。そういう点について、この大蔵省令第十五号は一つの例にすぎないと私は思うのですけれども、ここで大蔵大臣にお尋ねをしたいのですが、こういった問題で、大臣は、地域住民の利益というものについて、どういうふうにこの行政効果というものを調和させていくかということについて、どのようなお考えを持っておられるか、ひとつお尋ねをしておきたいと思うのです。
  196. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 町村合併は、それによって広域運営ができるようになり、地域の住民の福祉が向上するということをねらいとしておるわけでありまして、それによって不便が生ずるという事態を予想しているわけじゃないのであります。ただ、ただいま御指摘がありますような問題、これは聞いてみますと、隔地扱いができないということでだいぶ不便が出てきておるというふうに聞いております。いま政府関係省では、これをどういうふうにするかということを相談中のよしでありまして、新年度、四月になるまでの間に隔地送金のそういう不便に対しまして、大蔵省の告示の改正を行なうという準備を進めておる、こういう段階であります。
  197. 吉村吉雄

    吉村分科員 これはこまかい問題のようでありますけれども、私の知っている一地域だけでも何百人という方々がこの省令のために不便をこうむっておるのです。一日がかかりで出てこなければならない。出てきてやかましい手続をしなければならない、そしてまた帰らなきゃならない。積雪地帯のごときは二日がかりになってしまう。こういう状態なんですから、これから検討するということ、これはけっこうなことだと思うのですが、私が特に注意を申し上げたいのは、この種の問題は自治省も、あるいは関係の、この場合でしたら、社会保険の関係でいうならば厚生省もそうでしょう。事前にわかっておったはずだと思うのです。合併をすればこういうふうになる、大蔵省令の関係でこういうふうになるということは、それは当然にしてわかっておらなければならないはずだと思うのです。ところがそういうことについて何ら事前に手を打たないで、単に合併だけを推進していく、こういうようなあり方については、政府全体として反省をしてもらわなきゃいけない、こう第一番目に申し上げたいのです。  その次は、とにかくそういう不便というものが招来される、予見される、そしてまたそういう不便が起こった地域につきましては、できるだけ早くその不便をなくしていくような努力をしていくのが、これまた政府の責任だと思うんですよ。いまお聞きしますと、三十八年までの分については行ないました、こういうお話でございます。もちろんこれは、しさいに検討していったとしまするならば、おそらく全部の地域が従来どおり隔地者としての便利を享受できるというかっこうではないだろうと思うのです。不便になったところも非常に多いだろうと思うのですよ。これから検討をされるという場合につきましても、この種の問題は早いところからわかっているはずなんですから、早急に不便というものがないようにしてもらわなきゃいけない、こう思います。それで、四十一年度から実施できるようにしたいというお話でございますから、あと一カ月ということでございます。ぜひ従来と同じような適用が受けられるように、そして従来隔地にあることによって不便であったところは、新しい日銀の支店なり出張所に行ったほうがいいというところについては新しい方途を講じられるように、こういうことをしてもらわなければいけないと思うのです。全国ではおそらく相当の数の人がこれによって迷惑をこうむっているわけでございますから、事は大蔵省令ではありますが、関係各庁にまたがった問題、こういうことになるだろうと思います。いずれにしましても、私はこれが分科会の問題かどうかは非常に迷ったのでありますけれども、最終的には大蔵省令によって金の支払いというものがなされている、こういうことなので、ぜひひとつ大臣のいまの答弁どおり四月からこういうようにしていただきたいと思うのですが、そういう確言はできますか。
  198. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 承知いたしました。
  199. 吉村吉雄

    吉村分科員 それでは、ぜひそのことを実行してもらうことにいたしまして、これは十分監視をするつもりですから、そのとおり実行してもらうようにお願いをします。終わります。
  200. 愛知揆一

    愛知主査 次に八木一男君。
  201. 八木一男

    八木(一)分科員 大蔵大臣に、同和問題とそれに関連した大蔵省関係の問題について御質問を申し上げたいと思います。  先日、予算委員会の一般質問で同和問題の御質問を申し上げましたところ、非常に理解の深い御答弁をいただきまして、その点非常に心強く存じているわけでございます。その問題について、時間が三十分しかございませんからたいした質問はできませんけれども関係の方にもう少し掘り下げてみたいと思うわけです。  本年度予算で同和関係が、私、こまかい数字持っておりませんが、三十億をちょっとこえる同和関係予算を組まれておる。昨年度は二十億二千万円、それから各省の同和関係予算の要求が四十億二千万円という状態でございます。一般の予算の伸び率の一八・九に比べますと約五割ちょっとこえるくらい進んでおりますので、その点で、大蔵省としてはかなりこの問題を重視して御配慮していただいたことはわかるわけでございます。しかしながら、この前も予算の総括、一般で私が御質問申し上げまして、総理大臣大蔵大臣から御答弁いただきましたように、問題は非常に重大でございまして、この程度予算ではほんとうにスズメの涙ということになろうかと思います。四十一年度予算を決定されるときには、同和対策審議会の答申は出ておりましたけれども、この問題について国会を通じてのかなり掘り下げた論議がまだ行なわれておりませんでしたが、御承知のとおり、政府のほうは強い決意をお示しになったわけでございます。この問題を大きく推進をしなければならないわけであります。今年度予算についてそうこまかく申し上げるわけではございませんけれども、今年度予算で四十億の要求を三十億に削減をされたというようなお気持ちを今後払拭して、そういう出てきた予算は一切そのまま認める、むしろ各省の要求が少なければ、こういう大事な問題について各省は取り組みが少ないじゃないかというようなことを大蔵省から忠告をされるというぐらいの熱意でぜひやっていただきたいと思うわけです。この点についてひとつ大蔵大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  202. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 同和予算が三十億だというお話ですが、これは特別同和対策と銘打ってやっておるものがそれだけなんであります。ひとしく地域住民でありますから、特に国の社会保障施設、あるいは環境衛生に関する施設だとか、そういうものは、銘は打ってなくても自然よけいに配分せられる、こういうふうに考えますので、表面上の金額だけにはそうこだわらないようにお願いしたいと思います。  なお、この間あなたの非常に御熱心なお話を承ったわけでございますが、今後とも同和問題は非常に重大な問題であるという気持ちで取り組んでまいります。
  203. 八木一男

    八木(一)分科員 大蔵大臣の御説明のとおりであります。その点は私も理解をするわけでございますが、一般の行政でしなければならないというほかに、特別な措置をしなければならないということは、もはや論議をしなくても大蔵大臣御理解のとおりだと思います。そういう点で、いままでに気がついた問題について各省から要求があった。これからは同対審の答申に従ってもっと広範にいろいろな問題を取り上げていかなければならない。また広範だけでなしに、いままでやってきた問題ももっと充実して取り上げていかなければならないということになろうかと思うわけであります。大蔵省として五割を少しオーバした増をされたことについては、今年度の査定についての善意、好意あるいは熱意、これを私お認めをしたいと思いますけれども、しかしあのように論議が展開されて、大蔵大臣も御決心くださり、総理大臣も御決心くださった状態において、今後はひとつ必要な経費が各省から要求がありましたら、それを削減をされないで、ぜひ予算に組まれて、この問題が早く進むように、完全解放が早くできるように、そういうお気持ちでやっていただきたいと思うわけであります。重ねてその点についてひとつ。
  204. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 同和対策の重要性を十分認識いたしまして、できる限り努力いたします。
  205. 八木一男

    八木(一)分科員 前向きの御答弁をいただいたので、その問題についてこれ以上私から言及する必要はないようなことでございますが、一般的に大切な問題でございますので、ひとつ御意見を伺っておきたいと思います。  と申しますのは、前の大蔵大臣の田中さんの時代から、予算要求については、最初の要求を各省五割増し程度にとどめてほしいという状態が続いておりました。福田さんが大臣になられましてから、最初の要求を三割増し以内にとどめてくれと言われました。五割、三割の数にこだわるわけではございません。五割がいい、三割がいいというのは、これは時の財政事情によるわけでありまして、そういうことに私は固着はいたしません。いたしませんけれども、初めから予算のワクを各省で何割以内とおきめになることは、主計局としていろいろ予算案をつくるための御準備をなさるのに、これは非常にやりいい方法であろうと思う。大蔵省としてそういうことを閣議で御要求になるのは、大蔵省の立場としてはそういうこともありなんというふうに私どもは思うわけでございますけれども、私はそこで弊害が起こると思うわけであります。と申しますのは、その三割なり五割なりワクをつけるということになりますと、結局各省は、閣議でそれがきめられましたならば、このワク内で操作をしなければならぬ。そうなると、ある省によっては、その省の中で分割している各局各課が、すべてがすべて新しい時代に即応しなければならない問題点をかかえているところがあれば、全部がその新しい問題を進めなければならないというときに、総ワク三割ということで省内の局内局内ておのずからブレーキをかけるということになろうと思う。そこで第一次要求が出てくるわけであります。大蔵省は、その中にはっきり緩急の差がある、重要度の差があるということで、査定について一律に、たとえば最初三〇%要求だからといって、今度一八・九%増に予算ワクをきめられたからといって、一律に一八・九にしておいでにならないという点は私も知っております。その中の重要度、緩急の度を考えていろいろと折衝をなさり、最終的に閣議でおきめになる点は心得ているわけでありますが、そのときに、大蔵省としては財政のワクにおさめなければならないから、もちろん削減しようという立場でいろいろ努力される。各省は、自分のところの省の仕事をやりたいから、削減をしないでほしいということで努力されることになるわけであります。それはかまわないわけでありまして、それはそうしなければならないし、各省は各省として、自分の責任のある行政を進めるために必要な予算を要求なさるのは当然であり、大蔵省は全体の財政経済政策から見て、ある程度のワクにおさめなければならないということで折衝なさるのは当然なことだと思うわけでありますが、その前に、最初に何割、三割なり五割のワクをかぶせられると、各省内自体で、そのワク内におさまるような自分でブレーキをかけなければならないことになる。そうすると各者内、各局内で、新しい時代に備えて前向きにしなければならないところを、自律制御で三割に押える。どこの省とは申しませんけれども、ほかの省では、それほどいまの時代に緊急ではない問題ばかりかかえておる省もある。ところがそこも三割のワクなら三割まで要求することになる。そうすると、緩急度のほんとうの調整が、最初にワクをきめることによって、ほんとうに必要な方向がゆがめられてくるおそれがあろうと思う。大蔵省としては、各省三割でおさめたらどうか——三割でおさめたほうが操作が楽だと思いますが、大蔵省ではりっぱな公務員がたくさんいらっしゃるし、非常に頭脳明晰の方がおられるわけでありますから、操作の困難ぐらいは、国家のために大事であると思えば乗り越えていけると思う。そこで大蔵大臣に、いままでの慣例がありますから、福田さんだけがそういうことをやったわけではございませんけれども、さらにほんとうの意味での財政計画を立てるという意味で、最初にワクなどつけずに、各省が、あるいはその下の各局が必要だと思うものを思い切ってみんな出す。それをやはり予算のワクの中におさめなければならないから、おさめられるものはいいが、そのブレーキをかけない原案について、各省と大蔵省と御相談になり、また閣議で御審議になって、どれは重要である、どれは少し待ってもいい、それからまた、ほんとうにお金を使うなら一度にしなければならないもの、こういう問題は逐次やっていってもいい、いろいろな問題点があろうと思いますが、そういうことをしていただくのが、最後はむずかしいけれども、財政計画を立てられる意味において一番いいのではないかと思うわけであります。そういう意味で、最初の三割のワク、あるいは田中大蔵大臣みたいに五割のワクということは非常に——非常にというわけではないが当を得ていないというふうに私は思う。非常にむずかしい問題でありますが、それをすぐやめるという御答弁はなかなかむずかしいと思いますが、ほんとうの意味での財政計画をつくられる福田大蔵大臣として、そういった弊害のおそれがあることをお考えいただいて、全部なまで出して、それを各省と相談をしてきめるという方針に変えられるように、ひとつ御検討になる必要があろうと思う。その問題についての福田さんの御意見を伺いたい。
  206. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 せっかくの御意見ですが、ほうっておきますとたいへんな額の要求をする。各省大臣としても、とてもこれは通りそうもないというものまでも、世間が言うから、あの人から頼まれたからということで持ち込むのです。そこを三割増しだ、あるいは二割増しだという程度のワクを設けますと、各省大臣が責任を持つわけです。各省大臣がまず各省の段階において整理をすることになります。私はそこが非常に重要だと思うのです。三割、五割というところよりは、各省大臣がほんとうに検討をして、これは責任を持って自分がやるのだ、大蔵大臣とひとつ勝負をするのだという腹がまえがそこでできてくるのだろうと思う。かりにそういう制限がなければ、人から言われたものをずっと何でもかんでも取り入れてくるということになり、それを一々説明も聞かなければならぬ、またお相手もしなければならぬということになり、国政の浪費が非常に大きいだろうと私は思います。そういうようなわけで大ワクを設けるわけですが、それでは弊害があるかというと、これはありません。かりに三割といっても、各省全体を通じての三割でありますから、ことしは各省大臣がその責任においては同和対策を大いにやりたいとおっしゃれば、そういうことになれば同和対策は伸ばすでしょう、ほかのところは多少減らすことになる。現にことしでも、住宅対策の年だというと、住宅対策はたくさん持ってまいります。また大蔵省でも、三割なんというものにはこだわりません。財政投融資等を通じてみまして五割増しくらいやっているわけです。同和対策もそうだというようなことで、決して弊害はありません。やはりある程度の責任を各省大臣が持って、取捨してくれるという精神は持ち続けていくべきじゃないか、こんなふうな感じがしております。
  207. 八木一男

    八木(一)分科員 ちょっと同和問題と離れて一般的になりまして、最初申し上げたことと違いまして恐縮ですが、私はずっと社会労働委員を十二、三年やっております。労働省と厚生省、両方の政策が審議の対象になる。労働省のほうは比較的予算が省としては少ない。厚生省のほうはかなり大きいわけです。厚生省のほうのすべてが国費を非常にたくさん必要とする部門が多いわけです。生活保護費しかりでございます。国民健康保険費しかり、まあすべてそうであります。たとえば生活保護費が非常に大事ということになっても、やはり大蔵省が三割ということになると、生活保護に重点を置けば医療保障のほうが少し遠慮をするということになる。医療保障を大いに充実すると所得保障のほうを遠慮するということが起こる。その三つをある程度主張しようとすると、残されている心身障害者や何かの福祉対策を少しかげんをするということになるわけです。各省大体このように偏在しているところはないと思いますが、たとえば厚生省のような省は、これは歴代の内閣、特に本佐藤内閣においても、今度の予算編成方針の三本の柱の中に社会保障というものが入っている。社会保障というものは、まあ労働省に関係もありますけれども、厚生省に大部分が集中して、それは特に一般財政支出で非常に膨大な支出が必要なものでございます。したがって、金額にしてみればずいぶんふえるということになるけれども、率にしてみたらそうたいしたことはないわけです。そこで、やはり金額がわあんと百億単位とか千億単位ふえますと、大蔵省がこれはふえ過ぎると言われると、人間ほんとうは本筋の自分の任務に向かって、大蔵省の主計局が何と言われても断じて信念に向かって邁進しなければならないけれども、やはり大蔵省という財政を調整するほうでも、いろいろな立場で意見を言われますので、つい弱気になるということがあります。つい弱気になるということ、それが伝統的になっております。ですから、結局最初の三割というものを最後まで守らなければならない。私の考え方では、全部財政が十分に出せるようになって行政をどんどん充実するようなことができるときは、これは三割にこだわらずに、五割、六割にふやしてもいいと思いますけれども、そういう状態ではございません。状態ではございませんから、財政をふやすについてもある程度のものにとどめなければ、これは非常にインフレが起こってぐあいが悪いと思いますが、しかし、その中でほかの省では、たとえば最終的に一割八分九厘が基準とするならば、片方の省では四割ふえてもいい、片方の省ならこれは五%くらいでも、いまの状態ならがまんしてもいいじゃないかという省がある。省にその特徴があるわけであります。省が全部同じように新しく進める仕事と、前からの継続という意味でなくて——継続でもふやさなければならぬものもありますが、大体いろいろなことが完成しているものを扱っているところと、そういうもののバランスがとれていればたいして悪影響が及びませんけれども、私は必ずしもバランスがとれていないと思う。そこで、一律にこうやることによって、全部を進めなければならない省が、やはり自分のところの要求金額が多いために遠慮がちになって、ほんとうに国民の幸福のために主張していいものを遠慮してしまう。また大蔵省のほうも悪意なしに、他意なしに、やはり金額が大きいからそこを率を押える。そこで率をたとえば五%押えれば、その金額がほかのところよりもうんと大きくなりますから、だからそこに押える重点がかかるということになるんじゃないか。そういう点で各省一率ということは弊害が起こる。その弊害をなくそうとするならば、大蔵省のあらゆる方、あるいは各省のあらゆる方、そういうような慣例とか、そういうような財政総ワクに対する無言の圧力、そういうものを感じないで、全部がほんとうの意味の査定、ほんとうの意味の協議ができればそういうことは起こらないと思いますけれども人間でございますから、これは必ずそういうことが起こる。そういうことを人為的に起こさせないために一率三割というんじゃなしに、極端に言えば、厚生省の肩を持つわけじゃありませんが、社会保障というような内閣の大きな柱のものをおもにしょって立っているところのものは、これは四割までの要求はよろしい、あまりそうでないところは、これは二割五分まででよろしいというように、最初のそういうところでアクセントをつけないと、弊害が起こるように思う。その点についてなおひとつ御検討をいただいて、ほんとうの意味の財政が立つようにしていただきたいと思うわけでありますが、どうかその点についてひとつ……。
  208. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 なお考えてみますが、ただいまの意見は先ほど申し上げましたとおりでございます。
  209. 八木一男

    八木(一)分科員 もとに戻ります。先ほど大蔵大臣から、あれほど前向きの御答弁をいただいたわけでございますから、同和対策についてのその心配は、大蔵大臣の御決心を伺って、ないと思いますけれども、そこで大蔵大臣のお考えが各主計局の皆さんに全部浸透しておりませんと、同和対策のように四百年の大問題であって、関係各政党の十年の努力で糸口が今度できたというときに、飛躍的にふえるわけでございますから、率で考えるとするとずいぶん多過ぎはしないか、金額からしたら、四兆の予算から見ればそれほどたいした金額にならないですけれども、そういうことが起こると思います。それで、大蔵大臣のいまの御決心を主計局の全員の方にぜひ浸透しておいていただきたいと思うわけであります。大蔵大臣は全部お考えになりますけれども、膨大な支出ですから、非常に有能な大蔵大臣でも、全部積算のもとまで見てこうしろという御指導はなかなか物理的に困難だろうと思います。主計局の中にも、東日本に生まれて、この問題について善意の理解をしようと思ってもほんとうの理解がなかなかできないという方があろうと思いますから、ぜひこのお気持ちを十分に浸透させていただいて、各省からこういう予算が出たときに、少なくともこの問題についてはそうした比率的な意味のブレーキ、削減ということがないように、ひとつ全面的に大蔵省で取り入れるようにぜひしていただきたいと思います。一言ひとつ……。
  210. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算の各項目は事の重要性できめますから、一律機械的なことは絶対にいたしません。
  211. 八木一男

    八木(一)分科員 首を縦に振っておられましたから、私のいまの質問の趣旨は全部御賛成だと理解して、先に進みたいと思います。  その次に、今度は幾ぶん一般的な問題に移りますが、生活保護費の問題であります。生活保護費の問題は、先ほど大蔵大臣がお言いになりました、一般の行政の中から同和対策に有効なものが出ているというものの中の一つであろうと思います。いろいろなものがありますが、これは一般的に生活保護法によって出るわけであります。ところが、その保護世帯の率が全国で三倍に近くなっております。したがって、部落の人たちの中の一番運の悪い人の中では、生活保護費の多寡ということが非常に影響が多いおけであります。生活保護費については本年度二二・五%お上げになったわけであります。二二・五%というと、十二月ごろの予算の査定中の状況を見ておりますと、今年度大蔵省としてはなかなか苦しいところを相当英断をふるってなさったというような状況を報道されました。陰ながら伺っておりましたけれども、ほかの問題と違って、これはある程度の御努力、あるいは相当の御努力というものだけであってはいけない問題だと思うわけであります。と申しますのは、憲法第二十五条に従った、健康で文化的な最低の生活をする権利を全国民が持っているという条章をまともに受けた法律が生活保護法でございます。これは釈迦に説法でございますが、生活保護法にも一条と二条の規定にそういうことをうたっております。そこで、健康で文化的な最低生活というものをどのように考えるかということが問題になろうと思うのでございますが、それについては、世の中の生活水準がどんどん上がれば、これは上がってくるものというのがすべての学会の定説になっております。ただ物価の水準だけでなしに、全体の生活水準が上がったら上がってこなければならない。たとえばいまの生活保護の人が食べているものも、終戦後すべての、たとえば収入を持ち、資産を持つ人が配給米しか食べられなかった、ジャガイモしか食べられなかったという時代から見れば、これはいまの生活保護の内容でもかなり健康を保てるということになろうと思いますが、そういう状態から離れて、一般生活水準が上がったように、健康で文化的な生活というものは漸次その一般の生活水準に従ってスライドしていかなければならないというように私ども考えております。そうあらゆる学者も考えております。そこで、それはそうでございますけれども、一定の時点における一定の地域におけるものは客観的なものがなければならぬということ、これもほぼ定説になっているわけであります。一定の時点における一定の地域における健康で文化的な最低生活、この問題を客観的に出すためにほんとうに公平な機関でこれをきめなければならないのを、いまは残念ながら見積もりできめられておるような状況でございます。見積もりできめると、結局憲法の条章の健康で文化的な最低生活が見積もりで上下するということになれば、これはほんとうの憲法の規定、それから法律の規定とはちょっと相反すると思う。ですから、厚生省がこの問題に責任を持つならば、厚生省は生活保護に対して要求をなさったならば、これは一文も削られてはいけないと思う。削られたならば、厚生省は出した問題について、健康で文化的な最低血清についてもほんとうの確信を持たないで予算要求をされたということになろうと思う。大蔵省はまたこれを査定されたならば、これを健康で文化的な最低生活というふうに認識をされたならば、大蔵省か厚生省かどっちかが、これは一番大事なことについて認識を誤り、あるいはそう認識していながら健康で文化的な最低生活を下回ってもいいというふうに考えたことになるわけでございます。これは大蔵省か厚生省かどちらかが憲法の条章をじゅうりんしたということになろうと思います。非常に重大な問題であります。そこで、そういう問題については、ほんとうにこの問題を検討して、そういうような民主的なところでこれをきめて、その問題に関する限りは大蔵省は削減をされないという方式を、いますぐとは申しませんが、至急に整えられないと、憲法の条章が守られないということになろうと思います。この生活保護費については、社会保障制度審議会が昭和三十八年に答申と勧告をいたしております。そこでは、昭和三十六年度の生活保護基準を昭和四十五年度までに少なくとも実質三倍にしなければならないという強力な明確な答申、勧告をいたしておるわけであります。年々その後生活保護費の水準が上がっておることは私も心得ております。十数%ずつ毎年上がっております。しかし、その間において物価の騰貴がございましたから、十数%というのは実質的には単位が一つ少ないものになるわけでございます。そうなりますと、実質三倍にするには、年率十数%ずつ上がらなければ実質三倍にならないわけでございますが、物価の点で、そういう点でほんとうは数%ずつしか上がっていないわけであります。そういう点は、一つの基準になる勧告を離れている。そういう主張を厚生省は大蔵省に対して断じてなさっていかなければならないのですが、厚生省の主張なり、それからその中の説明なりが不十分であるか、あるいはまた大蔵省がこの問題について十分に理解をなさらないのか、あるいは理解をなさっても財政総ワクという点で縛られて、最低の健康的な生活はこのくらいでいいということで積まれたのか、その事情の奥深いところはわかりませんが、厚生省にしても大蔵省にしても一体の政府でございますから。そのような健康で文化的な最低のものの積み方が昭和二十八年には比率が五四%でございましたのが、ぐんと下がって、昭和三十二、三年にはあまりほったらかしにしたので三九%まで比率が下がりました。その後年々上げてはおりますけれども、前の比率に近づいているだけで、二十八年の基準をはかるにまだ下回っているわけであります。そういうことを考えますと、生活保護というものをぜひ大蔵省としてはもっと理解をされまして、もっと高率で上げていかなければならない。その上げることについて、恒久的にそういう間違いが起こらないように民主的なところできめて、この問題については決定どおりやって予算は削減しないという方式を将来急速にとられる必要があろうと思う。  短い時間で早口でしゃべりまして恐縮でございましたが、聡明な大蔵大臣でございますから、申し上げたことは全部御理解いただけると思いますが、その点についてひとつ前向きな御答弁を承りたいと思います。
  212. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 生活保護費は、わが国では社会保障体系の中で非常に重大な地位を占めるわけでございまして、日の当たらない低所得者に所得を保障しよう、こういう考え方です。ただ、その保障さるべき所得の限度はどうだ、こういうと、これは日本の経済力の変化、成長に従ってこれもふえて水準が高くなっていくべきものである、こういうふうに考えます。であればこそ、毎年毎年それを引き上げてきておるわけで、ことに四十一年度なんかは、私ども消費者物価の上昇は五・五だ、こういう想定をしておるわけですが、それを一三・五%ふやそう、こういうことでありまして、実質的にも非常な増加を期待しておるわけなんであります。まあ、政治の最終の目標は日陰の人を救うということも非常に大きな課題の一つでありますから、今後とも十分努力してまいります。
  213. 八木一男

    八木(一)分科員 いまおっしゃったようにふえてはきておりますが、物価の点を政府の計算によって減らしても一つ単位が下のものになりますし、それからわれわれの計算によると、もっと下のものになりますので、もっとふやしていただきたいと思います。この点については十分御承知のことでございますが、一昨年の生活保護水準で私が計算をいたしましたところ、その中の食料費の一人当たりの平均、それから一食当たりの平均、これは食料費を三十で割って、それをまた三で割るという一食当たりです。その平均をやったわけです。これは地域により年齢により性別によってみな違いますし、非常に複雑でございますから一つ一つ言えませんけれども、そこで出てまいりましたのは、一番少ない地域の一番少ない人は一食十九円の計算になります。多い人は三十円ちょっとこす、そういうことであります。ある裁判所で犬の食費を払わなかった者に対して判決があって、犬の食費一食分として五十円を支払えという判決が出ております。犬については五十円が至当であるということが出ているときに、一昨年の数字ではありますけれども、そのような平均二十八円というような数字が出ているわけであります。この食費二十八円というのは、もちろん料理屋で食うわけではございませんで、自分のうちで煮たきをして食うわけでございますから、非常に単価の安いものになろうと思いますけれども、それではやはり八十まで生きられると思っている人は、その食事をずっと続けていけば五十でもう老衰をしてしまうというような、自分の健康を縮めてやや生活するに足るという水準にしかすぎないわけであります。かなり上がってきてそうでございますから、これをほんとうに健康的なものにするためには飛躍的にふやさなければならないと思います。また文化的にするためには飛躍的にふやす。それから生活保護法第四条の非常に過酷な規定を緩和をしなければこういうことにならないわけであります。これはおもに厚生省に申し上げることを大蔵大臣に申し上げて恐縮でございましたが、厚生省にはいまの時間の数百倍をかけて、いまの声の三倍くらいの大きな声でいつも毎年毎年申し上げましても、厚生省は十分に問題を推進していない。おそらく大蔵省のほうにそれに対する幾ぶんのブレーキの力があるのではないかということで、いつか大蔵省の方に正式の委員会の場でそれを申し上げたいというふうに考えたわけであります。まだ時間が足りませんので十分に言えませんけれども、これはほんとうに申し上げれば二、三時間かかりますし、それから相当大きな声で申し上げてしかるべき問題でございますから、ひとつそれをお含みいただきまして、厚生省のしりをたたいて予算要求を今後するように私ども推進をしたいと思いますが、大蔵省では削減をしないようにひとつお願いをいたしたいというふうに思うわけでございます。  少し横道にそれまして、本題の同和問題の時間が足りなくなりましたが、内閣委員会で関係の法律も審議をされておりますし、またいろいろな機会で大蔵大臣に御質問を申し上げたいと思います。ぜひ先ほども申された前向きのお気持ちで対処をしていただきたいと思います。主計局あるいは主税局、銀行局、いろいろ変わられると思いますから、大蔵省全員の方々にそういう問題を浸透しておいていただきたいというふうにお願いいたしまして、質問を終わります。
  214. 愛知揆一

    愛知主査 次に、大出俊君。
  215. 大出俊

    大出分科員 通産省の方がまだお見えになっていないということですが、最近のエコノミストなどを見ますというと、下請、再下請、つまり一時下請、二次下請、三次下請という形の下請業者の方々が、「最近の不況」という中で「もの言わぬ下請業者」と、こういう表題で相当詳しく実情が述べてありますが、私の耳にする、あるいは目にする範囲で調べてみまして、それがこの際、国有財産の払い下げとからんでおりますので、下請代金が取れないということで、子供を学校をやめさして、会社をほうり投げて、みずからがつとめに行っている、そういう気の毒な諸君がたくさんいますので、いろいろな行政措置の面で、たとえば山一にしても、あるいは大井証券にしても、政府のほうでは相当本腰を入れてやっておられるわけですけれども、この種のきわめて零細な段階になりますというと手がついていない。こういうことなんで、その辺のところについてひとつ伺っておきたい、こう思うわけです。  最初に二つばかり法律的な質問を申し上げておきたいのですけれども、国有財産法の規定の中で、用途指定が付されているのでございます。この用途指定をめぐりまして、国有財産法の三十条の末尾のほうでございますけれども、「指定された期間内にその用途を廃止したときは、当該財産を所管した各省各庁の長は、その契約を解除することができる。」こういうふうになっておりますが、この「廃止したときは」という解釈は、具体的に例をあげて、どういう場合をさすのかという点をひとつお示しをいただきたいわけであります。  それからもう一つ、ついでに御質問申し上げますが、旧軍港市転換法という法律がございますけれども、この旧軍港市転換法なる法律には審議会が設けられまして、委員十九人、こういうことで、大蔵事務次官以下が全部出ておられる、通産関係も出ております。こういうことになっているわけでありまして、これは報告の義務がこの法律には幾つも規定をされておるわけでありますけれども、こういう法律であるとか、あるいは国際港都建設法などというものもありますが、とかくこういう法律は軽視されがちでありまして、たとえば横浜にも、横浜国際港都建設法という昭和二十五年にできた法律があるのですけれども、これも国会への報告義務、あるいは総理への報告義務等がいろいろ規定されておりますが、なかなか実行されていない。こういう例がございいますので、この旧軍港市転換法の報告義務については、この法律が示すとおりに行なわれているのかどうか、この実情についてひとつ、国有財産法とからみますので、合わせて御答弁を承りたい。
  216. 松永勇

    ○松永政府委員 まず第一点の国有財産法三十条の解釈の問題でございますが、これは、御承知の二十九条で用途指定をし、その用途指定に違反をした場合、その場合の規定で、契約を解除することができる。なお、この条項に相当しますものは、詳しく個々の売り払い契約書の中身に、契約解除をなし得る場合を規定いたしておりまして、契約書の条項として、契約解除を行ない得る場合には契約解除を行なうということにいたしております。  なお御参考に、この二十九条の用途指定本文の規定が付せられましたのは、一昨年の国会の修正による法律改正でございます。  それから第二点の、旧軍港市転換法でございますが、これは、他に十六都市ばかりの特別建設法がございますが、この旧軍港市は、旧軍港の四港が中心になりまして、議員立法でできました法律で、審議会も設けられておるという特別のものでございます。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕  なお、この条項による国会報告は、旧軍港市振興協議会事務局のほうから毎年出しているようでございます。
  217. 大出俊

    大出分科員 契約書はここにございますけれども、したがって、御質問いたしますが、横須賀の追浜に関東工機株式会社という会社がございまして、これが倒産をしたわけでありますが、三十五年の七月二十八日に国有地の払い下げをこの会社が受けております。このときに七十社あったものを、たしか二十社ぐらいに選別をしたはずでありますが、それが三十八年の十二月の十二日に第二会社が設立をされまして、これは関東機械株式会社、こういうふうに登記簿面はなっております。ところで、非常に納得しかねる、解しかねるという点は、まず、この第二会社になるときに、関東工機株式会社なるさきの会社から土地、家屋等の移転登記をするために、横須賀の関東財務局横須賀出張所に書類提出をいたしておるわけでありますが、これを書面審理ということで認めておるわけなんですが、これは、だいぶ中身と相違があるわけであります。つまり、この用途に従ってブラウン管等をつくるわけなんでありますけれども、そういう意図がほとんどない状態で第二会社のほうに引き継がれている。したがって、実際に調べてごらんになれば一目りょう然、わかったはずだと思うのでありますけれども、そこのところは単なる書面審査で認めてしまった。こういう経過がまず一つあるわけであります。詳しいことはこのあとで申しますけれども、その辺の経緯について御存じかどうか。知っておられるとすれば、どういうふうに国有財産局のほうではおとりになっているかという点を、時間長くは御答弁は要りません、簡単にお答えいただきたい。
  218. 松永勇

    ○松永政府委員 ちょっとその前に、御承知のように、この旧軍港市の転換法に基づく国有財産を処理いたしますやり方としては、先ほど申しました審議会に一件ごと議案をかけまして、その議決を得てやっております。なおその審議会の議決を得る場合には、地元公共団体、本件の場合には横須賀市でございますが、市の副申書をとって審議会に提出して処分する、こういうやり方をとっております。  なお、この追浜地区の解除がございまして、その地区の国有財産を売るに際しまして、結局申請七十三社ばかりあったものから、市及び財務局両方が中心になりましていろいろと七十三社の選別をやりまして、その中から第一次には二十七社、結局その後も含めまして、四十六社ばかりのものを追浜地区に対して転換をして、売り払いをしたわけでございます。そのうちの一つのこの関東工機が、先ほどお話のありましたように経営的に行き詰まってきたということがございまして、そして第二会社、正式には第二会社ではございませんが、第二会社ともいうべき関東機械をつくって、国に対する用途指定の義務を引き継ぐという事態になったわけでございます。本件につきましては、当時、この状況は書面にも残っておりますが、同時に会社等からもしばしばおいでになるし、それから関東財務局としても当時担当の課長以下数名の班をつくりまして調査に参り、この関東機械の会社のほうの新しく社長になる方とも、今後の経営等についてもいろいろお話し合いをした結果、新会社の関東機械に引き移っていくのもやむを得なかろうということで承認をした次第でございます。
  219. 大出俊

    大出分科員 時間がございませんから、事こまかには申し上げませんが、中心点をひとつ御回答いただきたいわけなんです。私がこの話を聞いて、昨年の十月ころですけれども、関東財務局の追浜にございます横須賀出張所に電話を入れまして、こういう会社が倒産をして、下請代金が取れない方々が、六千万円くらいの額でありますけれども、十数社ございまして、たいへんなことになっているのだが、一体どういう審査をしたのだということで連絡をしたところが、実情と違うということに最近になって気がついたというわけであります。というのは、第二会社価できましたが、格納庫みたいに、中の機械はみな売っちゃって、ない。そういうことですから、どうも用途指定に従って仕事を引き継ぐとは見えないわけであります。そういうふうな実情がわかってきた。だから書面審査でやっているのだけれども、いうならばその会社の諸君にペテンにかけられたということになる、こういう意味のことを担当の方がおっしゃっておりまして、なかなか実情を調べるに至らないものですからというお話だったわけです。ところが、関東財務局から何か言ってくるのかと思ったところが、大蔵省国有財産局の第三課長さんから再三連絡があるというので、聞いてみた。地元はどんなぐあいだというので、たいへん下請の諸君が騒いでいると言ったところが、まことにこれは困ったことだ、何とかあまり大きな騒ぎにならぬようにしなければならぬというお話があったので、そこで私のほうも、実情御存じならばもう少しこれは手の打ちようがあるんじゃないか、こういうふうに思って、それから、会社の社長その他を呼んで調べたかと言ったところが、事業の継続について数回催促した。ところがさっぱりどうも継続をしないので、社長に出てこいと言っているのだけれども、来ない、こういうようなお話であります。後ほど聞いてみると、私のほうからいろいろ何回か大蔵省国有財産局に連絡をいたしましたので、関東財務局を中心にして、社長を最終的に二回ばかり呼び出して継続方を話したけれども、なかなかどうもそれが継続されない状態で困っている、こういうお話なんです。私は、さっき申しましたように時間がありませんので、るるこまかい経過は申しませんけれども実情は、こういう問題の結果として、第二会社に引き継ぐときに債権者の方々を集めて、第二会社の社長さんは山口幸男さんという方なんですけれども、つまり第二会社に引き継ぐときに、君たちの債権が、第二会社をつくるのに賛成をしなければパーになりますよということで、しぶしぶ、しかたがなしに下請の方々は判こをついたというわけなんです。ところが、その後さらに発注をして、二次下請になっておりますけれども、下請会社に品物を納入させて、そのときに、当時の債権については二つに分けて、現金と手形とでいつ幾日までに返すから、こういう話をしていたわけなんです。当時百万ばかりの債権者が、この第二会社が設立をされて、それに引き継がれて、さらに発注を受けて納入をした関係で、今日では八百万にもなってしまったなどという下請会社もあるわけです。その下請の方々十数人にお目にかかって、直接お話を聞いたんですけれども、夜も寝られぬ、ペテンにかかったということでたいへんな激高のしかた、中には学校に行っている子供さんも全部やめさして、この代金がとれないためにみずからがつとめに出て、泣く泣く働いているという方々もある。こういう実情がわかってきたわけなんです。私の申し上げたい中心は、この第二会社の責任者である、社長になられた山口幸男さんという方が第二会社が倒産をする、経営的に行き詰まったどたんばでどういうことをしたかというと、三十九年の七月十八日に社長をやめたわけです。登記面を見ますと、資格喪失によりと、こうなっている。もう全く無関係だという形のやめ方をしたわけですけれども、あとで中出さんという人を社長にしているのですけれども、この中出さんという人は、同じ三十九年のわずか半年足らず前、四カ月前の三月二十七日に取締役に就任をさせている。後継社長は取締役に就任して三カ月余り、そうして、この山口という人がやめて中出という人を社長にした。下請の方々に聞いてみると、この中出さんという人は山口さんの直系だ、こういうわけでありますけれども、そうしておいて、何と三十九年七月二十三日に、——十八日に社長をやめておいて二十三日に正式に、——これは、登記面を見ると二十一日になっているのですけれども、二十一日に所有権移転の登記を山口幸男さん個人でしているわけですね。個人の仮登記の形になっている。そうなりますと、みずからが社長でやってきて、しかもこの山口という人は、その前の関東工機株式会社の重役でもあったわけですね。こういう形で、これは日を追ってまいりますと、きわめてみごとに移り変わって、手を引いて、個人の名義で仮登記をしておる、こういうわけですね。しかもさらにもう一つ、その後になりまして、自分の債権が幾ら幾らあるからということを念書の形にして仮登記の理由を立てておられるように見えるわけなんです。この辺の事情について、単なる書面審査ということだけでものごとを認めるという形で終わってしまっているということになると、事、国有財産の扱いなんですから、これがとんでもない方向にいってしまう、こういう危険を感じられるわけなんです。このあたりのことについて、先ほどのお話によると、何べんか社長さんを呼んだり何かして、よくお目にかかってお話もしたというのですから、よくおわかりかと思うのです。そこらの点について、私がいま指摘した点について、御存じなのかどうかということをまず明らかにしていただきたい。
  220. 松永勇

    ○松永政府委員 先ほど来、大出先生のおっしゃることは大体承知いたしております。結局、御承知のような形で、との会社は現在営業を停止した状態になっております。国といたしましては、延納の支払いを認めて払い下げましたが、現段階においては、すでに延納代金も国としては全部取ってしまっておるわけでございます。しかしながら、この国有財産を用途指定をして売り払った、その用途指定の期間が五カ年。五カ年のうちもうすでに四カ年ほどは経過して、あとの一カ年くらいのところでいまのような経営状態になっている。もちろんこういう状態で国有財産の用途指定がそのまま実行されないということは、国の側としても望ましくない事態でございます。当初用途指定をした目的のためにこれが使われるということが望ましい。そのためには、この会社が現在の休業状態から脱して操業を続けていただくような状態になることが望ましいわけです。そこで、昨年来この会社に対しまして、今後の操業見込み、再建策と申しますか、そういうものを求めて、今後どのように会社が再建され、また、したがって国有財産が当初の目的に使われるようになるかという点にしぼって私どものほうは関心を持ち、いま会社のほうに対してその再建策を求めておる状況でございます。しかしながら、昨年来、会社のほうからはいろいろと言って参ってはいるようでございますけれども、正式の文書をもってこのように再建をしていくということは、まだ申し出てきてない状況なんです。しかしながら、私たちとしましても、いま債権者の方々も非常に迷惑をこうむっておるようでございます。この会社が何らかの方法によって再建し、事業の経営ができ、そして債権者の方々にも迷惑のかかることがより少なく、国としても国有財産がその用途に供せられる、あと一年ということを望みたいために、いろいろと指導してまいるということで当該会社といま話し合っております。
  221. 大出俊

    大出分科員 つまり国有財産局の担当の諸君なり出張所のほうの言いっぷりからすると、一つは、手続的な不備がある。というのは、書面審査だからということで実情を全然見ないで認めるという形をとるということになると、実情は全く違った状態になっていたということになると、用途指定がついているんだから、その用途に供するような会社でなければならぬのですけれども、そうでなかったにもかかわらず、書面審査の上ではそれが出てこないから認めた、ここに一つの問題があるのですね。これは、金額は大小さまざまありますから、一がいには言えませんけれども、いやしくも国有財産であることに間違いない。だとすると、その取り扱いが最近、さっきもやかましく言われているわけですから、なおのこと、このあたりについて、もう少し皆さんのほうでそういう間違いが起こらないような、抜け道ができないような実情の調べ方などというものも、これは皆さんのほうで規定化していただかないと、とんでもないことになってしまう。これは悪意に解釈すれば——私はできるだけ下請けの方々を生かしたいわけですから、これを読みながら善意にものを解釈する努力をしている。悪意に解釈したらきりがない。ということは、御存じのように、仮登記というやり方は、ある意味では債権のがれでもあり、かつまた売却するときに、仮登記の時点までさかのぼって対抗要件になるわけでありますから、そうだということになると、これは個人名義で仮登記している、会社でないから、しかも、これはやめたばかりの社長——やめて三日目なんですね。しかも隣の日産なんという大きな会社からは、売ってくれという矢の催促のような形になっている事情ですね、このときは。ということになると、なかなかりっぱな弁護士さんがついているそうなんで、一つ間違って売ったら、さあ、どこも手が出ないということになると、これは、国有財産の用途指定までくっついているものが一体どうなったんだということになる。これは大きな責任問題だ、いま売ってないからいいけれども、そういうことさえ考えられる。やってできなくはない。いろいろ私も相談するところは、調べるところは調べてみましたが、そういうふうに考えられる。ということになると、なおのこと、未払い代金があるのならまだいいのですけれども、やめて仮登記をするときに、残金、延滞金を含めて、この山口さんという人がぽんと払ってしまうということになると、金が全くなかったということにはならぬ。そうなると、下請に一銭も払わぬでおいて、しかも第二会社をつくって雪だるま的に債権をふくれ上がらしておいて、初めからつぶす気でなかったのかという悪意での解釈さえできる。しかも財産だけは、土地その他も個人がいただく、こういうことも考えられる。ということになると、そういう意味では、これはたいへんなことだと私は思う。しかも、念書というのがございますけれども、これは四十年十月二十日、この中身を見ますと、中小企業金融公庫から千六百万円借りているというところから、七つばかり債権額その他が記入されて、これだけ個人の債権があるんだからということで、念書をつくってあるわけなんですけれども、この内容だって疑えばきりがない。ということになると、これは、そういう債権を主張をしてこの土地をみずからのものにする、こういう意図がなかったとは、疑えば言いきれないわけです。ということになると、どこから考えても、国有財産局の担当の課長さんのほうは、道義的責任がございますと電話で私に言いましたけれども、単なる道義的責任などというものではなくて、その一番最初の書面審査云々のときから私は問題があると思いますが、そこらあたりをあなたのほうでどうお考えになりますか。
  222. 松永勇

    ○松永政府委員 御指摘のような国有財産がもしかりに転売をされるというような事態が従来も予想され、いろいろ御指摘を受けていると思います。実は従来の国有財産は、時価で売り払った場合には用途指定はつけないというたてまえでずっと全部まいっております。先ほど来の法律改正は、一昨年の国会修正によってつくられた。そこで、昨年来いろいろ御指摘を受けましたので、中央審議会にも諮問いたしまして、こういうことに対する措置をいろいろ検討いたしました結果、従来は、要するに売り払ったものが第三者に転売された場合には、物件的に契約解除して国に戻すということはできないわけであります。しかし、第三者のほうが優先するということになっておりましたので、今後は、売り払った場合には国が先に売買予約の登記をいたします。もし契約解除をいたしまして、違反があったために国へ取り戻すという必要が生じた場合には、その売買予約を実行することによって、すなわち契約なかりし状態、国に物件を戻すという措置を講ずることにいたしまして、新年度からこの措置を実施することにいたしております。本件につきましては、まだそういうことの行なわれていない以前の三十四年の売り払いでございましたために、いまのような事態になっております。それから実際の、この前の会社、関東工機が経営が行き詰まったような状態のもとでいかに措置するかということは、ケース・バイ・ケースによって判断をし、認めるべきものは認めるということでまいっておったわけであります。その際に、関東へ機械の譲渡、そういうものも、これ以外にやむを得ないであろう。また当時としましては、債権者皆さん方がこの会社が生き延びていき、さらにそれによって過去の債務を支払い得るというためには、関東機械という新会社をつくっていく以外にやむを得ないであろうということで、そのときの社長山口さんという方が、債権者の輿望をになって社長になられた方だと当時におきましては聞いております。そういうことで、いろいろこちらでも審査いたしました結果、従来のブラウン管の製造を続けるということであるし、さらにまた、事業の発展で若干追加した業種もやるということでいくので・当時としてはやむを得ないであろう。また、それで期待できるのではないかということで承認をしたということになっております。しかし、結果がこういう結果になったことは、先ほど申しましたように、何らか債権者の方々にも迷惑にならぬように、やはり再建計画というものをこの会社につくらせて、そして迷惑のかかる範囲をできるだけ少なくしていきたいということで、いま指導を始めているところでございます。
  223. 大出俊

    大出分科員 とかくこういう処理の場合に、大きなところに回っていって、二次下請以下のようなところはほとんど切られてしまうというのが一般の例なんですが、そういう形であっては、これはいま国有財産問題等でひっかかっておりますから、非常にまずいと私は思っておりますから、ここでいま答弁をいただいた点についてもやりとりしたい点が何点もあるのですが、時間がございませんから、あらためて大蔵委員会なり何なりで事の経過いかんでは質問させていただこうと思っておりますけれども、いま指導されている面で、再下請等の方々、つまりそういう零細な債権者の方々、さっき私が例にあげましたような方々にも十分に手が伸びていくような計画をぴしっと御指導をいただいて、もし再開するのだということであるとするならば、そこまでのきめのこまかな指導のしかたをしていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  それから通産の方々にお願いをしておきたいことがあるのですけれども、こっちのこれは通産ではないと思うのですが、従業員が七十何名おりまして、その退職金も取れない、あるいは給料もなお残っている、不払い、こういうふうなものがあったり、六千二百五十万の下請代金があるわけなんですけれども、会社は更生法の申請も何もしていない。何となくうやむやのままになってしまっているというケースなんですが、これらについて、いまここでしゃべっておりましたから事情は大体おわかりだと思います。それらについてとるべき方法というか、それらの点について、最近特に多いわけなんですけれども、御意見を聞かせておいていただきたい、こういうふうに思います。
  224. 荒玉義人

    荒玉説明員 一般に倒産関係の問題につきましては、中小企業庁といたしましては各地にございますので、大体通産局限り、場合によっては県を中心にいたしまして本来再建していくことがまず先決問題でございます。再建のためのいろいろの努力をしていくというのがまず第一にとっておる方法でございます。ただいまの問題につきまして、実は残念ながら私はっきりした事情をつかんでおりませんが、あるいはさっきからのお話がございますように、国有財産を中心とした再建計画が進められていくことと思いますので、そういったことと密接に連携をとりながら、われわれとしてもできるだけ再建できるように進めていきたい。それで全部いけるのか、あるいはいけなかった場合には下請その他のあっせん、あるいは必要な最小限度の金融措置考える、こういった個々の企業に合った手を打っていきたいと考えております。ですから、一般的には再建と、それから必要な金融、下請あっせん、そういう措置を講じていきたいと存じます。
  225. 大出俊

    大出分科員 この関東工機あるいは関東機械の下請で未払い代金がたくさんあって、そのことのゆえをもって相当左前になってしまったり、ほうり出してしまったりというところがあるわけですが、そういうところに対する金融措置その他の面で、私どももまた努力をしますけれども、こういうケースについてはできるだけ御努力をいただきたい、こういうふうに思うわけです。  いま簡単に申しましたから、おわかりいただきにくい面があったと思うのでありますが、担当の方々はわかっておるわけでございますので、これは大臣一つ伺っておきたいのですけれども、目に余るほどたくさんこの種のケースが、いま私横浜ですけれども、至るところにあるわけです。それを、手のつけられるものは極力救っていくという努力をやはり皆さんでしていただかなければいかぬと私は思うのでありますが、そういう意味で、どうかひとつ督励をしていただいて、事の出発点の書面審査等の場合も何らかの措置をお考えおきいただかぬと、問題が別な方向にいってしまう危険性がございますから、そういう問題と合わせて御努力いただきたいと思います。
  226. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中小の方は、いま不況が長引いておるために特別困窮しておると思います。政府は、あらゆる部面から中小企業者の立場を考えて処置するように努力をいたします。
  227. 大出俊

    大出分科員 時間がありませんから、いまの点はあらためて事の成り行きいかんでまた質問をさせていただきます。  もう一点だけ簡単に承っておきたいのですが、昨年の十二月の十五日からだと思いますけれども、関税定率法の第十九条だと思いますが、あそこに輸出品の減税、免税、戻し税という条項がございます。新戻し税制度、これが従来の指定品目から拡大をされて、OECD加盟その他の関係などで輸出奨励金的なものに変えたのだろうと思いますけれども、これをめぐりまして、横浜税関に新港分館というのがございまして、これは輸出中心でございます。輸入ももちろんやりますけれども、この輸出の中で受け付け、あるいは為替、あるいは検査、こう流れていきますね。実際に輸出貨物の鑑定をやっているのですね。この職場は、私行ってみて、とにかく目が回るほど忙しいのです。しかも、審査と分けてやっていたのを全部一緒にして組にしておりますから、全く手あき時間がない、こういう状態。一日に一つの組で千件も千五百件もやらなければならぬことになる。月末、月頭の集中配船などの関係もありまして、非常に見るに見かねるような状態なんです。そこで、新しいこの制度が持ち込まれて、前からある制度のワクが拡大をされた、こういうわけで、職場の中はそれこそたいへんな恐慌状態を来たしておるわけです。幸い正月早々はまだそれほどの件数が出てきていないということで救われた面があるわけでありますが、管理者の方々にお目にかかって聞いてみましても、何とか人の措置を上局に申し上げたい、しかしおそらく無理だろうと思うのだという話が出てきておる。したがって、その種の見かねる労働条件、そこにこの種の制度が持ち込まれる。ここらあたり、人の問題を含めまして、どういうようにお考えになっているか。それから特に百五十四名ですか、忘れましたが、ここに資料がありますけれども、今回全体としてふえる関税局の定員の問題がありますけれども、これを調べてみると、欠員がだいぶあるわけですね。ですから、実際にふえた人間というものは十何人ということになる。そういう形でこれをやらせるということは、機械化などという計画も知らぬことはありませんが、あれは申告税制に変えていくわけですから。しかも東京都その他の例からいきまして、必ずしもあれはうまくいっていない、機械になれないためにおくれておる点もある。それなどを回答として持ち出さないで、現実にああなっている実情をどうするかという点に重点を置いてお答えをいただきたい。
  228. 谷川宏

    ○谷川政府委員 いま仰せのとおり、昨年の十二月十五日から新しい戻し税の制度を発効したわけでございますが、まだ実行したばかりでございまして、全国的にどの程度の戻し税の申告が出てまいりますか、一番早いのが四月以降でございますが、その戻し税の申告の件数等を十分に考えて、全国的な視野から見まして、定員の配置を慎重に検討してまいりたいと思います。ただ申し上げられることは、それまでの間、たとえば今度の新しい制度のもとにおきまして輸出物品を製造する工場を承認する、あるいは製造報告書、証明書の確認という仕事がございますが、ただいままでのところ、私どもが予定しておりました件数に比べますと、まだまだ利用の状況が少ないようでございます。  いま御指摘の横浜税関の新港分館の問題でございますが、ただいま百二十人ほど職員が勤務しております。御承知のとおり、貿易の増加に伴いまして相当税関職員の仕事量がふえてまいっておりますけれども、地域によりましては多少ゆとりがあるところもございます。私どもは全税関を通じまして、税関業務をいかにして合理的に、計画的に、重点的にやるかということをいま慎重に考えておるのでございまして、新しい業務を実行するかたわら、それ以外の業務におきまして手を省ける分野も相当あるわけでございますから、税関業務全体を通じまして人員の適正配置を行ないまして、職員が労働過重にならないように十分に配慮をいたしてまいりたいと思います。
  229. 大出俊

    大出分科員 その全体の配慮というのですが、なかなかその配慮が新港分館にいかないということでは困るので、ちょっとここで指摘をしておきますが、昭和二十七年に、これは人と処理件数との割合からいきますと、定員で五千百六十名、これが三十九年に六千四百九十八名、一・四五倍になっているわけですね。ところが同じ昭和二十七年を一〇〇とする数字をとって、昭和三十九年との輸出額における相違を調べてみると、五二四、これは輸出です。輸入のほうで三九一、だから輸出ではおおむね五倍、輸入では大体四倍、こういうふうになっているところへ、人のほうは一・四五倍、こういう数字が出てきているわけです。まことにもってこれは忙しくなる、たいへんだという職場の声が出るのはあたりまえだと、その点私は思う。だからそこのところを、いまのようなことでなしに、そのものずばり、どう処理するか、これははっきりさしていただきたいと思うのです。  そこで戻し税制度のものを調べてみると、一月が四百九十七件、二月が八百二十四件、ただし二月は二十四日までですから、月末に集中しますからまだふえると思います。ですから、ようやくいて一日平均五十件ですか、それだけのものが明らかに定員がないところに出てきているわけです。だから、そこのところをいまから手を打たなければ間に合わぬ、間に合わぬというよりも、いますでにこういう新しいものがなくたって、定員をふやさなければいかぬ状態にあると私は思います。なかなか平準化ができないという面があると思いますけれども、そこのところがいまの御答弁じゃ私は納得しかねるのです。どういう状態になっておりますか、ひとつ承りたい。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕
  230. 谷川宏

    ○谷川政府委員 税関の業務の量が年々増加してまいっておりますことは御指摘のとおりでございます。それから同時に、職員の定員の数が昨年までは年々相当数ふえてまいったわけでございますが、四十一年度予算の過程におきましては、必ずしも私どもが希望しておりました数字には達しませんけれども、これは、政府全体の公務員の定数をどうするかという問題の一環として、税関の定数の増加についても検討が加えられまして、ことしは全国で十八名税関職員がふえるわけでございます。一方、先ほど御指摘のとおり、欠員が百五十名程度ございますので、これを関係部局にお願いいたしまして、欠員不補充の原則の例外として補充してもらうということになりまして、いま申したような数字を定員よりもふやすことができるわけでございます。全国的に申しますと、仕事の量はふえておりますが、各税関の実情を見ますと、それほどふえていないところもございますので、それを全国的に重点的に職員を適正に配置いたしたい。たとえば御指摘の横浜税関の場合におきましても、相当程度職員をふやしまして、一方仕事の内容におきましても、合理化を要する面が相当ございますから、合理化すべき点は相当合理化いたして、あるいは機械の導入等につきましても、相当思い切って措置をするということによりまして、職員の労働負担、またはお客さんに対するサービスの向上等についても欠けることがないように善処してまいりたいと思います。
  231. 大出俊

    大出分科員 この点も時間の関係でこまかく申せませんので、あとでやりとりしたいと思っておりますけれども、いまの点、私も詳しく調べてみたら、百六十人ばかり採用されております。欠員と自然退職などを入れていきますと、これは御指摘のように純増十八人ということですね。横浜のほうとおっしゃるけれども、私は実際に二回も職場を歩いて、詳しく説明を聞いて、仕事の流れも全部調べて、資料も全部持っておるわけです。とてもじゃない、おいでになれば一ぺんでわかると思うのですが、どうにもならぬ。そういうことでなしに、だめ詰めはしませんが、ひとつ御配慮いただくということにしていただきたいのです。  それから、いま言われる合理化の一人一貫体制というものを私も調べてみている。だけれども、これはまた労働密度の面から見るとたいへんなことになると思っているわけです。だから、それらを含めた——機械化はさっき触れましたから再び触れませんが、それも調べてみたわけです。いろいろなところから調べてみて、どこからいっても無理がある、こういうふうに私は考えるわけです。そこで、定員算定の基準みたいなものはおわかりだと思うのでありますが、それを一ぺん私は承りたいと思っております。それで、それなりにまたひとつ詳しく当ってみたいと思いますけれども、そういうことでひとつ御配慮をいただきたいわけです。あまりにひどい職場事情で、私もいささかあきれているわけですよ。私も郵便局の出身ですから、年末の忙しさなんというものは百も承知なんだけれども、毎月毎月あれじゃ、とてもじゃないが、たまったもんじゃないという気がするわけです。労働組合が先鋭化する云々などということを管理者の方がよく税関関係で言われるけれども、これも私、昔税関の組合をつくった官公労事務局長当時、一生懸命やって全国の税関を歩いてよく知っていますけれども、あんなにひどいことにしておいては、これはとてもじゃない、皆さんが管理体制などと言ってみてもおさまりがつかぬ面がどうしてもあると思う。だから、そういう点は皆さんのほうで前向きに直していくということにしていただかぬと困る、こう思うわけです。
  232. 谷川宏

    ○谷川政府委員 税関の職員の充足問題でございますが、長期の問題といたしましては、ことし四十一年度予算から中型の電子計算機の導入が予算的に認められました。これが全国的な規模で完成するには二、三年かかると思いますが、人手にたよらないで、機械によって処理できる面が相当ございますので、そういう点はどしどし合理化していく。人の頭で処理しなければいけない事柄につきましては、この問題につきましても、従来の状況あるいは実績等を十分考えるとともに、新しい目でこの税関業務をどうやって合理的にしていくかというようなことを、目下真剣に考えておるわけでございます。長期的に見ますとそういうような方向で処理いたしますが、事務の分量が全国的にアンバランスになっておる面もございますから、さしあたりの問題といたしましては、そういう事務が非常にふくそうしている部局に対しましては、比較的事務量の増加の少ない部局から配置がえをする等によりまして、限られた人員でできるだけ合理的に、能率的に配置することによって税関業務の緩和を期してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  233. 大出俊

    大出分科員 どうもきわめてそつのない答弁をなさるのですが、それは、いま定員がきめられているのだから、そういう言い方しかできないだろうと思うのです。とにかくこれは一見にしかずでして、ごらんになればわかると思います。したがって、その答弁答弁として、配置転換だなんというとまたこれは問題になるけれども、この合理化、機械化そのものに問題があるので、組合がとにかく存在をする限りは、どこの官庁の職場でもやっておるとおり、管理される皆さん方と組合側の間と相当いろいろなやりとりが行なわれるわけですから、それは私は別な問題として伺っておきます。あまりにもひどい状態というものは解消をしていただかぬといけない。さっき数字であげましたように、経済の高度な発展伸張と見合って、これだけ輸出貨物が増大をしておる時期に、定員が一・四倍ちょっとだなんということでは、おさまりがつかぬと思うわけです。だから、輸出五倍、輸入四倍などとふえておるのに、人のほうは一・四だなんという、しかもいまの機械化の話にしたところで、まだ三年くらいかかるという。こうなると、その間ぶうぶう言っておるのはしようがない、定員がないから黙っておけ、こういうことにはならないので、その点はひとつ皆さまのほうでも十分善処していただかなければ困る、こう思うわけです。  もう一点聞いておきたいのです。通産の方もおられると思うのですけれども、今度はどの程度戻し税制度によって工場の指定をされるわけですか。何工場ぐらいになっておるかという点です。  それからもう一点承っておきたいのは、たとえば繊維なんかでいえば、繊維の原料そのものは対象にならぬ。つまり顔料なら顔料で、それが輸出によるものだという場合に、そこに戻し税制度が生きるということになるわけですね。たとえば自動車の場合でも、日産なら日産が輸出をする。日産というところは戻し税制度の対象になる。ところが実際には、その下請が自動車部品をいろいろ組み立ててつくっているわけです。その過程で輸入した製品が入ってきているわけです。そうすると、本来ならば輸入したそれらのものはその下請のところにいっているわけですね。日産はやっていないわけです。ただ日産はでき上がった自動車を輸出する、こういうことですね。そっちに重点がいってしまって指定されていて、下請は全部落ちている。こうなると、輸出振興という名のもとに、また大企業だけがいただくものはいただいておきます。こういう結果になる。私は皆さんが出しておられる解説書その他もずっと読んでおりますから、ここに持っておりますから、詳しく内容を知っていますから、内容に触れていただく必要はございません。ございませんが、まことに不公平きわまることになる。つまりつくっているところはそっちのけで——部品なんですから、下請なんですから。そして、その親会社のほうだけが対象になっているという形が方々で出てきているということは納得しかねるので、その辺のところは、指定個所とあわせて御説明をいただきたい、こういうふうに思います。
  234. 谷川宏

    ○谷川政府委員 御承知のとおり、今回の新しい戻し税制度の対象になる輸出物品の数は六十一でございます。その製品をつくっておりまする工場を、戻し税の対象工場として承認するわけでございますが、最近の数字によりますると、約三千近くの工場を承認しております。私どもの見込みでは、一万工場近く出てくるのじゃなかろうかと考えておりますが、現在のところはその程度でございます。  次の問題は、下請企業が関税の戻し税の恩典に浴しないのじゃないかというお尋ねでございます。輸出物品の原料品の関税を排除する、それによって輸出物品価格を国際競争上不利じゃないようにしていこうというねらいでございまして、私ども輸出振興ということについて、今後一そう制度的にも改善をはかってまいりたいと考えております。  下請企業との関係でございますが、輸出製品の原料品で、輸入されたものをはたして使っているかどうかという確認をいたしませんと、払い戻しすべからざる関税を払い戻すというような事態になっても困りますので、関税の払い戻しでございまするから、厳格に処理する必要があるわけでございます。ところで、現在のたてまえが、輸出物品を製造する最終工程の工場を承認工場として承認するというたてまえになっておるのも、そういう考え方で、厳格に戻し税の額を確認するという立場からそういう制度になっておるわけでございますが、いま御指摘の部品におきましても、物品を形づくっておる原料品の中で、輸入物品がある場合もございます。それはどうするかということになりますと、なかなか複雑な関係になりますので、今回の制度は、平均的な戻し税率を指定しておるわけでございまして、最終工場、親工場と下請企業との関係は、親工場が戻し税の承認工場として承認された場合において、その親工場が戻し税を受けました場合に、下請との関係を内部的にどう調整するかということになるわけでございます。現在のたてまえにおきましても、下請工場が受けるべき戻し税の金額について、親工場とよく相談しまして、戻し税の金額の中の下請工場が受け取るべき分については、その恩典に浴することができるようなたてまえに一応なっておるわけでございますが、今後、いま戻し税の対象とする物品の数であるとか、あるいは戻し税の率であるとか、あるいはいま言ったようなことを、今後実施の過程におきまして十分慎重に検討いたしまして、改善すべきものがあれば逐次改善してまいりたい、かように考えます。
  235. 大出俊

    大出分科員 良心的な大企業の場合は、あるいはおっしゃるような、内部的に当然やるところへはやるということになるかもしれませんけれども、なかなかそうばかりいかない。下請というものは弱いですから、また小さいですから。したがって、支払いの代金も未払いになったり、延びておったりということになっておりますから、したがって、そこのところは何かやはり一つはっきりした規定を設けておいていただかないと、あったってなかなかやらない大企業ばかり多いのですから、そのあたりも、金額的にはそれほど多額なものでなくても、やはり公平を欠いては困ると私は思うので、そういう点はまことにきめこまかく、中小企業にまで手が伸びていくように、大企業だけの指定ということをしないで、規定、手続的なものを明確にしておいていただきたい、こういうふうに思うわけです。特に大臣に、税関のいまの業務と人の関係はさっき申しましたが、極端過ぎますから、ここのところはひとつ大臣の立場で、それらしいやはり前向きの善処をお願いをしておきたいと思うのです。足元にあるので、年じゅう私職場を見ているのですけれども、あまりこれはひどいので、文句の出るのはあたりまえだと私は思いますから、その辺のところをひとつ御配慮願いたいと思います。
  236. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 十分注意してまいります。
  237. 谷川宏

    ○谷川政府委員 御指摘のような関係で、下請企業が戻し税の恩典に実際問題として浴することが非常にむずかしいかどうかという点につきましては、今後十分検討してまいりたいと思いますが、一方、先ほど申しましたように、戻し税の金額の確定につきまして、税関当局におきましても、相当取り締まり、検査を厳格にやる必要がございますので、輸出振興の立場から改善すべき点は改善いたしますけれども、一方、税関職員の人手が非常に要る仕事をやることについては、御指摘のとおり、税関職員はいま非常に忙しくやっておりまするので、そういう税関職員の数との見合いで、今後戻し税の制度の改善についてどうしていったらいいか、あまり人手をたくさん食うようなやり方につきましては、全体の問題としていかがかと思いますけれども、今後一そう改善に努力してまいりたいと思います。
  238. 大出俊

    大出分科員 税関職員の方々が非常に忙しいという現実をお認めのようですから、ひとつその辺のところは、さっき大臣もおっしゃっているように、極力努力をしていただくということにしていただきたいと思います。  たいへん時間をとりまして、どうもすみません。
  239. 愛知揆一

    愛知主査 次に、川俣清音君。
  240. 川俣清音

    川俣分科員 きょうは分科会でございますので、大臣を要しない点も多いのですけれども大臣を要する点を先にいたしましょうか、あと回しにしましょうか。——大蔵大臣、少し耳の痛いところが多いのですが、これは大臣としての責任だと思うのです。ときたま少しは各省の予算などを削った報いも出てくるでしょうから、痛いところから始めなければならぬと思うのですが、私、数年来、高級役人が営利企業に就職をすることについていろいろ警告をしておったのですが、わざわざ国家公務法百三条を改正いたしまして、国会に報告するようにいたしたのでございます。これは、在職中に監督をされる側に対して手かげんをするおそれがあったり、あるいは就職先を在職中に見つけ出す等の悪例もありましたのでこういう法律をつくったわけですが、例年からいいますると、運輸省が非常に多くその職を利用して就職しておったのですが、だいぶんやかましく指摘を受けまして、四十年度におきましてはたいへん減って、三分の一の十九件になりました。農林省も十一件と減ってまいりました。通産省は大体三十件前後が二十八件で、減った。大蔵省はだんだん多くなりまして三十件、最高でございます。従来大蔵省は、主として地方の銀行等に指導的役割りを果たすというか、そういうところに就職されておったのでございますが、最近はだんだんと会社等に就職先を見つけておるようでございます。この就職先が問題がなければ別ですけれども、税法上の問題で取り調べられているようなところにあとから就職するというようなことが行なわれますると、非常に国民の疑惑を招くおそれが出てくるのじゃないかと思うのです。名前を出すと非常に悪いのですけれども、名前を出しましょうか。三十人もおるのですから、一番問題があるようなところからやっていってもいいと思いますが、日本運輸株式会社というのがございまして、これが、陸海貨物の運送をやっておる会社ですが、とかく経理について問題がありまして、税務署からきびしい取り調べを受けたわけでございます。それを緩和する意味かどうかわかりませんけれども、国税庁東京国税局横浜南税務署徴収課長、品川税務署管理課長、戸塚税務署総務課長、徴収部特別整理第四部門総括主任をしておられた人が、名前は控えますが、今度監査役になって入った。日本運輸株式会社に入られること自体も、これが税法上とかくの問題があったということで、緩和してもらおうという意思で就職させるということになりますると、非常に暗いうわさが立つのも無理はないのじゃないかと思うのですが、大臣がお認めにならなければ就職するわけにはいかぬ。調査事項によりますと、法人税法に基づく国税の更正または決定をする地位にある。本人は離職前五年間に同社を所管する官職に在職しなかった。在職しなかったことは事実ですけれども、監督するつもりで、同僚が摘発をして問題を明るみへ出したということも、これは事実です。そこへ今度入っていって、これはいい意味の監督をする意味もありましょう。しかし税務署から突っ込まれちゃ困るから、防波堤をつくろうということだったとしたら、これはどうなりますか。大臣、どうですか。
  241. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 法が、単純、無条件に公務員のいわゆる天下りをしてはならぬと禁止いたしておるということは私もよく承知しておりますし、まさにそういうふうでなければならない、こういうふうに存じます。そういうようなことから、職務上の影響力が天下った会社と関連を持つことがないようにというので、公務員につきましては、天下りの際には人事院のほうへ相談をいたしまして、人事院が公正に判断いたしまして、これでよかろう、こういう際にのみ承認せられるわけなんであります。大蔵省でも金融の関係なんかへ幾らか人が行っておりますが、非常に少ないです。たくさん出ておるのは公社、公団であります。これは、政府と一体の関係がありますので、そのほうが便利であり、そのほうが有効に仕事ができる、こういうようなことでやむを得ないのじゃないかと思いますが、大事な点でありまするから気をつけてまいりたいと考えます。
  242. 川俣清音

    川俣分科員 これは私的企業でございますから。公社、公団の分は私的になっていないわけです。一応人事院の監査を受けて許可したものでありますけれども、許可について無条件で了承の理由を一応添えております。これは適格であるか、法律に直接触れるか触れないかということなんです。離職前五年間にこういうものの監督の地位にあったかなかったかというだけのことです。しかしながら、自分の同僚及び組織が動くのですから、個人が動くのでないのですから、それによって監督を緩和しようという意思で入るとすると、これはやはり綱紀粛正上問題だと思う。銀行なんかにも入られた人がいますよ。私は必ずしも悪いとは思いません。だけれども、歩積み両建ての問題が起きて、こういう大蔵省の銀行局から入った人が歩積み両建てをしていないかといえば、やっているじゃないですか。これはおかしいのですね。銀行局から、自分がおったときには、そういうことをさせてはならないという指示を与えた。自分が入ったら、やってもいいということになるのはおかしいですね。そう思いませんか。これは私の常識ですけれども大臣の常識はどうなんですかね。
  243. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 役所におるころ悪いと言ったことは悪いのでありますから、天下ったらちゃんとそれを粛正しなければならないと思います。
  244. 川俣清音

    川俣分科員 そうすると、これは何のために入ったか。銀行を善導するために、大蔵省方針のように指導するために入ったならば、これは指導のために入ったのだ。就職じゃなくて指導のためである。給料をもらうことも差しつかえない。私はそのとおりだと思う。入ったとたんに、いままで自分が通達をしたことと反することをやらせておるのは、何のために一体銀行へ行ったか、寛大にしてもらうために入ったと言うよりほかに道はないのじゃないですか。どう考えますか。これが私の常識なんです。私のほうが常識はずれなのか。大蔵省の人たちの常識とわれわれの常識と少し違うのかもしれませんが、大臣、少し御説明願いたい。
  245. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 何か押し売りして銀行あたりへ入っていくようなことをおっしゃられますが、そういうことは絶対にありません。これは非常に少ないケースでありますが、民間銀行に行くようなことがあります。これは異例であります。その際は、いろんな関係から懇望されて行くというようなケースなんであります。もし自分がそういうお役所におったとき、こうすべきだと言って主張したことがあるならば、民間に移ったらみずから進んでえりを正す、これが私は常識と思います。
  246. 川俣清音

    川俣分科員 私も押し売りで入ったとは思わない。向こうから、大蔵省に対する防波堤として価値がある。このくらいなものは捨て金しておいてもいい、こういうことなんで、人物を必要としたのか、防波堤をつくるためのセメント工事のようなつもりで就職さしたのか、これが問題なんですよ。その人物が銀行経営の上にぜひ必要だという手腕を買われるなら、まだいいところがあるんですよ。そうじゃない。大蔵省の監査がうるさいから、あれを一人採用しておけば無難に過ぎるというようなことで採用するとするならば、綱紀粛正上これは見のがすわけにはいかない、こう考えるのですがね。売り込んだというのじゃない。むしろ向こうからこれを引っ張っておけば、大蔵省なとは何とかなるだろう、——みんなそうですよ。特に税務署の役人を採用するなんというのは、おもにそうです。税務署から来て査定されるときにうまくやってもらえるとか、帳簿をつくろうとか、おもにそうでしょう。そういうことは綱紀粛正上遺憾である。そのことが禁止しているゆえんだと思う。自分で売り込むなんというのはたいしたことはないでしょう。売り込みに行く者を採用するなんということはあまりないのじゃないでしょうか。むしろ会社のほうで利用価値がある者を採用する。自分の会社の欠陥を是正しよう、完ぺきにしようということでしょう。だから、なるべくにらまれないように、営業に打撃を与えないような人を選ぶと、こういうことでしょう。それじゃ税金といい何といい、不公平にならざるを得ないのじゃないでしょうか。そういうことで、ひとつもっと粛正する必要があるのじゃないか。確かに大蔵省の人は優秀な人材ばかりです。どこへ持っていっても一人前の人であることには間違いない。りっぱな人であることには間違いない。しかし、採用するほうが人物を採用するのじゃないのです。大蔵省へにらみのきく者を、利用できるような者を選ぶというところに問題があるのじゃないか。この指摘なんです。大臣、初めから耳が痛いでしょうと言ったのはそこなんです。これは、しかし言わざるを得ないですね。どうぞ御答弁願いたい。
  247. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その利用というのがいろいろ意味があろうと思いますが、これを国家社会、また会社のために有益に利用しようというなら、これは私は何も非難さるべきことはないと思うのです。つまり正しいことをするという限りにおいては、非難の余地はないと思う。ただその利用というのが、その人によってしてはならないということをやるという意図でもって利用するのだということであれば、これは非常に問題です。そういうことがないように、今後とも慎重にやっていきたいと思います。
  248. 川俣清音

    川俣分科員 私は、福田さんのときには慎重にやろうということになりましょうけれども、やはり大蔵省から民間企業に入った人が非常にふえてきている。最近大蔵省の利用価値が高まったということになるのですね。いままで売れ行きがよくなったのに急に高まったというのは、一つは利用価値があるということです。利用価値というのはどういうことかというと、いろいろと歩積み両建ての問題がやかましくなったり、やかましくなればなるほど利用価値が出てくる、こういうところに問題があるのです。大蔵行政を強行しようと思うと、逆な手が動くという点に問題があることを指摘したいのです。まだありますけれども、みんな名前をあげると悪いでしょう。もしも抗弁されるなら一々あげて、こういう人はどうですかと言わざるを得なくなるのですが、大臣、大体いいでしょう。おわかりでしょう。  そこで、次にお尋ねしたいのは、予算項目の職員の旅費、庁費の中に出てまいります予算で、項目6諸謝金の中で米の実収高調査立会謝金というのが三百二万円ございます。次に同じく8税務調査旅費で、米の実収高調査日額旅費二百四十三万六千円、もう一つ、9庁費で、やはり米の実収高等調査費三百七万円ございますが、これはことしの米の調査でございますね。昨年と非常に変わっておりますか、大体同じような予算になっておりますか、この点をお尋ねしたいと思います。  大臣、お急ぎのようですから、それでは大臣にもう一問だけお尋ねします。  大臣には農村のことは十分御存じでしょうから、ぜひ考えてほしいと思います。あるいは法律案を出したいと思っておる点がございます。それは、最近農村で果樹栽培が非常に盛んになりました。非常にけっこうなことだと思います。しかし果樹は毎年連作をすると翌年はならない。その次はまた結果が非常にいいということが続くのが果樹の本質でございます。そこで、収穫が非常にふえたときにどうして保管するかということで、冷蔵庫になにする、あるいは加工にこれを回すわけですが、これはシナの時代から、熊澤蕃山時代から、その加工に一番簡易な方法として、アルコール漬けと申しますか、果樹酒をつくることがシナから日本に伝わってきている。これは日本でも徳川時代からやっておるわけですが、この果樹酒をいまの税法上、酒税法上、そうやかましく取り締まる必要もないのじゃないか。あるいは酒であるから課税対象にするということになってもけっこうですが、それほど高い酒税をかけなくともいいのじゃないか。販売するものは別にして、家庭で貯蔵を兼ねた酒をつくることについては課税をしないでもいいのじゃないかと思うのですが、大臣、どうでしょうか。
  249. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 果実酒を自由にしたらどうかというのが第一点のようです。これは自由にしたら、なかなか競争が激甚で、とても成り立っていくような状態にはなりますまい。現に、果実酒にもずいぶんありますが、おそらく国税庁のほうでは、普通の酒に比べまして果実酒のほうはゆるやかにしていると思います。しかし、なかなか経営が困難です。そううまくはいっていないように思います。  それからさらに進んで、もう全然無税でおっ放したらどうだ、こういう第二のお話でございますが、これは酒類が国の非常に大きな財源であるという中におきまして、果実酒だけを自由にしてしまう、無税にしてしまう、しかも製造を自由にするということは大きな支障がある、こういうふうに思います。
  250. 川俣清音

    川俣分科員 自分でつくったものを、自分で加工して、それで税金を取られなければならないというようなことは、これはなかなか国民は納得しないと思う。納得しないものを取り締まるから問題ができるんだと思う。御承知のとおり、これは日本だけでないでしょう。アフリカでもブドウ酒の税金を取るというので、暴動が起きているのです。政府を転覆するだけの騒動が起きている。それほどまでして税金を取らなければならぬということじゃないじゃないですか。もっとはなはだしく不当なのは、農民からいうと、自分でつくったものを自分で手がけてアルコールが発生したからといって税金を取られるということは、何としても納得できない。もっとはなはだしいのになると、どうですか、アルコールとしての税金を払ってしょうちゅうを買ってきて、これをブドウにつけたり、あるいはイチゴにつけてイチゴの生命を長くする、しかもうまく残しておこうという、こういうことをやっても酒税法に触れるんだ。どうしたことなんだ。一つはアルコールの税金を払っているわけでしょう。課税対象になるのはアルコール分なんですね。一ぺん払っているんですよ。これはへ理屈を言うにきまっているから大臣に聞くんです。——じゃ一ぺん聞いてからにいたします。
  251. 塩崎潤

    塩崎政府委員 酒税法の仕組みに関します技術的なことでございますので、若干私からお答え申し上げます。  おっしゃるとおり、果実酒とそれ以外とで税率が違うことは御存じのとおりでございます。果実酒というのは、御存じのように、主として農民の単純なる生産物という観念が昔から強うございまして、したがって、税率は、たとえば清酒二級が一リットル八十五円八十銭でございますが、果実酒につきましては二十四円、こんなふうな税率になっておる。こういうことによりまして差をつけております。しかしながら、この果実酒というのは、いまも川俣先生の申されましたように、単純なる果実酒のつもりでございまして、昔から果実酒は、果実酒に砂糖を一定限度入れてアルコール分を高くする、あるいはまたこれにアルコールを添加いたしましてアルコール分を上げるというときに、これを私どもは雑酒といっておりましたが、現在は種々の名前をつけておりまして、課税対象にいたしております。これは、一つの工業生産物と見まして、税負担を果実酒と違った高いものに求めております。そんなような関係で、私どもは果実酒に対しまして、アルコールを添加いたしますれば内容が高度になったものという考え方のもとに、税率を高くしておる。税率を高くしておると申しますよりは、むしろ当初予想いたしていた果実酒とは別の種類の酒類ができ上がった、こういう考え方をとっておるのでございます。おっしゃるとおり、果実酒につきまして腐敗防止、あるいは貯蔵の見地から免許を認めろというようなお話もございます。しかしながら、いま申し上げておりますように、過去に酒税を全く課税しなかった時代が果実酒につきましてはございました。しかし、免許はそのときでも必要といたしておりました。しかしながら、そのときに私どもがやはり取り締まり上悩んだ問題は、果実酒ならば一定限度以下砂糖を使わなければならない。アルコールは当時は認めておりませんでしたが、アルコールを添加いたしましたときには、これは雑酒になるから、新しく免許を要するというようなことで、取り締まりが非常に繁雑でございましたし、またそのためにトラブルが起きて、結局は現在のような免許制度を採用しておるのでございます。しかし、ブドウ酒等果実酒の場数は、他の種類と違いましたこれまでの免許方針をとっておりますので、比較的大目に免許されておるようでございます。
  252. 川俣清音

    川俣分科員 昔から一番国民から税金をしぼりよかったのは酒なんです。嗜好品に税金をかけるのは一番取りやすいのです。これは何も税務署なんか必要としない。近代でも必要としない。一番取りやすいものから取るなんということは、ほんとうから言えば何も税務署を要しないことなんです。シナの時代でも、日本の時代でも、昔からこれが一番取りやすかった。それが一番悪弊を生んで、ついに当時の為政者は、常に多くの犠牲を払って倒れざるを得なかった原因にもなっている。いまの税務署は安閑としておられるけれども、あぶないですよということを警告しながら、酒税法を変えましょうか、こういう提案をしている。こんなことを黙ってやっていたらたいへんですよ。私はそう思う。取りにくいけれども、必要があるから取るということならわかりますよ。農民がかいてきた果物を、自分の労力で自分のところでつくり上げたものを少し発酵させたから——しかも砂糖を入れるということは、砂糖は税金を払っているのですよ。税金を払ったものを入れたから、もっと大きい税金を払えなんて、そんな話がどこにありますか。税金を払った砂糖を使って発酵したから、それにまた税金を払え、そんなのがどこにありますか。無税のものを使ったから有税にするというならわかるけれども、税金を払ったものを使って発酵させた、それだからまた税金だなんというのは、それは税務署の役人のもののわからない人たちの話ですよ。世の中にそんなことはどこに行ったって通じませんよ。聞いてごらんなさいよ。それはむちゃな税金だ。税金というものは、国民から反感を受けるようなもので取ってはならないというのが税の原則じゃないですか。そういう意味から言って、これからだんだん出てくる梅酒ですね、梅を買ってアルコールを添加すれば酒税法違反だなんて、アルコールの税金は払っている。酒税法の税金は何かと言えば、アルコールじゃないですか。その税金を払ってアルコールを買って、そうして梅を入れると税金を払えと言う。イチゴを入れると税金を払え、砂糖を入れれば税金を払え、そんな税金はありますかと言うのです。だから、あなたはそういうふうに抗弁するでしょうけれども、一体大臣はどうですかと、今度大臣に聞かなければならぬ。世の中に通じないことで税金を取ろうとすることは、これは通じないことなんですよ。みんなが納得することでなければ税金の意味をなさない。大臣、どうですか。
  253. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 川俣さん、何か誤解があるようですが、われわれが家庭でアルコールに梅を入れる、いわゆる梅酒ができるわけですね。これは別に課税をするようなたてまえになっていないのです。何かそれが税がかかるのはけしからぬというようなお話でしたけれども、そういうふうにはなっていないのです。
  254. 川俣清音

    川俣分科員 けっこうですが、新聞にやめたといったり取るといったり出しておるでしょう。それが一度取り出した。それからだいぶ反感が出て、今度はやめたとも言っておるが、はっきりしないのです。それで大臣答弁を要求したのです。もっと声明する必要があるでしょう。不安の中でやらせるということはよくないですよ。取らないなら取らない、取るなら取るで、根拠はどうなんだ。
  255. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほど来酒税の仕組みを申し上げましたが、工業生産物といたしまして果実酒的なもの、あるいは洋酒的なものをつくれば課税しますが、先ほど来川俣先生御指摘の、家庭におきましてしょうちゅうを買ってまいりまして梅酒をつくる場合、氷砂糖などを入れますが、この際には酒税法の規定によりまして、消費者消費のためにつくるものにつきましては、慣行上でき上がったということで、現在のところ、もう四年くらいになると思いますが、免許も要らないし、課税をすることもいたさない、こういうふうに取り扱っておりまして、もうだいぶ周知徹底した、かように考えております。
  256. 川俣清音

    川俣分科員 もっと周知徹底させる必要があると思う。地方の税務署あたりに至っては、まだはっきりしないで、どっちなんでしょうというところがある。あなたの通達が悪いからです。  さらにもう一歩進んで、いまの説明だと、家庭でとれたブドウを保存する上から発酵させることもそう困難じゃない。これは昔からあるところの、唾液でつぶしたものを入れると発酵するわけです。人を頼むんじゃないのですよ。自分の唾液で、かんで、そして発酵したものに税金がかかる。口で動かして唾液を入れると税金を取る。国会でやかましく言うから税金を取るなら、それは私はがまんしますが、家庭で口を動かしてつばができた、それを入れたところが税金を取られる。どこからその税の財源を出さなければならぬのですか。そういうのを販売するなら別です。それは利益が生まれるから、あるいは幾ぶん税金を取れということもある。これは昔からやってきたことです。大体戦国時代から多くやってきたことです。豊臣秀吉なんか、これをやってきた。みんなやってきた。いまになってだめだというのはどういうことなんです。弊害があるか。何にもない。ただ税金がほしいというだけです。それ以外にないでしょう。しかし、そのくらいの税金を見出すことが不可能かというと、いま不可能じゃないでしょう。それならあえて税金を取らないでもいいじゃないですか。政務次官、どうですか。それがそんなに大きな影響を与えるか。そうたいしたものじゃないですよ。それを無理して税金を取らなければならないという根拠にはならないじゃないですか。しかも農家や家庭が自分の庭でとれたブドウを発酵させたからといって、商売にするのではなくて、家庭の中で飲むものを課税の対象にしなければならないというのは、それほど大蔵省というのは貧弱な役所かどうか、私は疑問なんです。こういうものしか取れなければ、ほかに能力がないのだというなら、能力のない大蔵省として認定するから、これは別です。ここに皆さんおられて、みなそうですよ。家庭でとれるブドウを発酵させたから、砂糖を添加すれば——御承知のとおり、砂糖といいましても、ことにざらめ類を添加すると発酵するのです。あなた方、砂糖といっても、これはざらめなんです。染色にも発酵させるときざらめを使うのです。そのざらめを入れたから発酵した、それで税金の対象になるなんて、もう一ぺんひとつ考慮しませんか。私は今度の国会で酒税法改正を出そうと思っているのですが、わからなければ、改正するよりしようがない。理解されるならば、あえて酒税法の改正までしなくったっていい。
  257. 塩崎潤

    塩崎政府委員 なぜ酒税にそんなに収入を期待するかという最初の御質問がございました、まさしく酒税は、現在一般会計の租税収入中一一%ばかりの割合を占めております。こんなふうに酒税の収入が多いこと自体先生がおっしゃる問題でありますが、少なくとも現在の租税制度と、さらに全体の国民の納税意識のもとにおける租税制度では、やはり私は酒税に対しまして相当大きな期待をせざるを得ない。税率相当高いわけでございます。そこで、そのうちの少なくとも果実酒につきましての、しかも農民のつくる果実酒につきまして、免許を不要とし、さらにまた酒税を不要としたらどうか、こういう御提案でございますが、先ほど来基本的に申し上げましたように、酒税の収入に対する期待が大きいことが一つあります。さらにまた、やはり現在酒税が高くて、一般の消費者にはその負担をしていただいておるのでございます。ブドウ酒につきましても同様なことが言えるかと思います。さらにまた農民からは米を原料といたしましてつくるどぶろく、あるいは清酒についても、やはり免許を不要にし、さらに酒税を不要にしたらどうかというような声もございますが、これは、現在の酒税の高さのもとにおいては、まだ容易に実現できそうにもないことだと思うのでございます。そこでもう一つ、それではなぜしょうちゅうを添加したところの梅酒を非課税にし、免許を要しないことにしているのか。これは先生がおっしゃったように、確かにしょうちゅうにつきましては、すでに相当高い税金が課税されております。酒税が課税されております。そこで単純に梅としょうちゅうとを添加いたしまして、本来酒税法上では価値の高い甘味果実酒、あるいは洋酒的なものができるのでございますけれども、少なくとも一ぺん、先生のおっしゃるように砂糖も課税されておりますし、しょうちゅうも課税されておる。そんなような関係で、二重課税はしないということではずしておる。したがいまして、全く課税を受けていない原酒の生産段階におきますところの農家の醸造過程について酒税をはずすということは、これは現在の酒税に対する期待の大きさ、また税の高さ、酒税の本質といたしまして一般消費者にも負担を願っております現在におきまして、特に農民だけに無税のブドウ酒を飲んでいただくということは、少し現在の税制ではむずかしい、かように考えております。
  258. 川俣清音

    川俣分科員 私は酒税を国の大きな財源にするということは、好ましくないと考えるのです。なぜかというと、税金を取って人を殺すということになるのですね。税収入が大きいほうがいいというのは、死ぬほうがいい、病気で死ぬやつが多いほうがいいということになる。そうでしょう。税を奨励するということは、酒を飲めということでしょう。酒を飲んでおまえ早く死ねというようなことだ。税が必要だということで、酒で財源を確保したいということは誤りだ。取りやすいということならそのとおりです。しかし、これで財源を確保するのだという考え方は誤りではないかと私は思う。しかし、現在やっておることであります。これが乱造されても困ることでありましょうから、いまあるのを私、必ずしも否定しません。しかし大きな財源になるのだという、酒の税金を財源の唯一のごとく考えられることについては誤りだ、こういうことを指摘しただけですが、そのほかのいわゆる農家、家庭の果実の醸造なんかについては、もっと寛大にしたほうがいい。それが日本の果樹栽培を盛んにし、果実酒の改良等に——御承知のとおり、フランスのブドウ酒は全部家庭酒であったのが、だんだん進歩して、いまの程度の高いブドウ酒になった。イタリアでも同様です。初めから醸造販売が目的じゃないのです。家庭酒の改良があれほど高いブドウ酒の製造になってあらわれた。日本の酒類の改善の上からも、家庭でつくらせて、だんだん進歩発展させていくこともまたいいことではないかと思う。ただ見つけて、税金だけ取ればいいなんて、そんな能のない話はない。大蔵省の役人は有能だというが、これでは有能ではない、無能ですよ。できたものを取ってやれなんて、まことに無能だ。もっと収入をあげさせて、それから取ってやろうというのがこれは有能な税務官吏だ。私はそう思うのですよ。目先のやつだけすぐ取ってやれなんて、これは最も無能なんです。さらに日本の産業を発展させて、発展の中から税を見つけるということが最も好ましい税の取り方だと私は思うのです。こういう意味でもう一ぺん再考しませんか。どうしてもわからなければ法律として出すよりしかたがないと言っておるのです。出すというとあなた方反対するから、いまのうち念を押しておきます。
  259. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに外国におきましてブドウ酒、あるいはビールにつきまして、免許を要しない、あるいは一定限度までは非課税という制度があることは十分承知しております。しかし、その制度自体多分にその国で非常に税率の低いもの、あるいはまた沿革的にそういうことが昔からあったということが強いようでございます。さらにまた、外国の酒税は、先生のおっしゃるごとく確かに税収中に占める割合は日本ほど高くないのが実情でございます。わが国でも、御存じのように明治三十一年までは自家用酒を認めておったのでございます。明治の初めはほとんど無制限でございましたが、やはり非常な弊害もあり、単に税収を失うという見地だけでなしに、保健衛生上の弊害もございました。そこで、直接国税幾らというようなむずかしい条件をつけて自家用酒の製造を認めてやってきたのですが、それがどうしても取り締まりがうまくいかないということで、明治三十一年に自家用酒税法を廃止した経緯がございます。こんなような関係で、現在のところは、お説でございますけれども、自家用酒につきまして免許を不要とし、さらにまた酒税をなくするということは、現在の酒税の地位からできないのではないか。私どもは酒税によって、酒を大いに飲まして酒税収入を上げるということを特に目的としておるわけではございません。確かに酒税の背後には、やはりアルコール分から生まれてまいりますところの弊害に着目いたしまして、普通の税に見られない高い税金をかけているのは、そこに社会的な感情がバックに入っていることも間違いないところでございます。したがいまして、お説のように収入が伸び所得が伸びて、個人所得税あるいは相続税がふえてくるということが理想でございますが、現状におきましては、先生御指摘のように、簡単にもまいらない実情でございます。したがいまして、この問題は、酒税の高さ、酒税に対する私どもの財政上の期待がどの程度にあるかということと密接な関係がございますので、これらとあわせまして今後の検討の問題だ、かように考えております。
  260. 川俣清音

    川俣分科員 検討していただけるならば、改正案は来年でもけっこうだと思います。ほんとうです。家庭の果実酒だけくらいはもう少し緩和していいのではないか。税率で緩和するか、あるいは自由にするか、そこまでは言いませんけれども、もう少し何らかの形で緩和して、果実の保存的な意味からも、あるいは家計費の節約の意味からも考慮してしかるべきではないか、こういうことですから、御検討くださるならば、あえて法律案を出す必要もない。どうせあなた方は、出すと当然猛反対するにきまっている。私は当たってみると、与野党とも大体賛成がとれそうです。三分の二の賛成はとれそうです。政務次官など、まっ先に反対するでしょうけれども、とれそうなんです。しかし、はたしてそう無理してやったほうがいいかどうかということは、私もちゅうちょぎみであるから、あえてあなたに質問して、やる意思があるなら一年延びてもがまんできるじゃないか、そういう方向で御検討くださるなら時期を待つ、こう申し上げているのです。どうです。ほんとうに検討しますか。
  261. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私が申し上げておりますのは、現在すぐ実現性があるという意味ではなくて、やはり酒税の置かれました位置あるいはウエート、これらとの関連で、慎重に検討する必要があろうと申し上げたつもりでございます。私は、現在の取り締まり、あるいは酒税の高さから見まして、すぐにこれが実現できるような状況にいまないような感じがするのでございます。やはり何と申しましても、砂糖をどの程度入れるか、あるいはまたこれが販売にどこまで向けられるか、なかなか保証もされない状況でございますし、そのために家庭にまで税務署の官吏が検査に行くというようなことになりますと、またこれも弊害がございましょうから、このあたりよほど慎重に検討してまいらないと、むしろ弊害の出る面もございましょうから、慎重な検討を要するのではないか、こんなような感じがするのでございます。
  262. 川俣清音

    川俣分科員 いま密造を取り締まろうとしても、なかなか取り締まれないばかりでなく、ときに大きな犠牲を出すようなこともあって、地方においては社会不安を起こしておりますから、果実酒をつくるということにいたしましても、非常な困難はあると思います。したがって、これは減税をするというようなことで取り締まりはなかなかむずかしいのではないか。それでは自然醸造を許せるかというと、なかなかそこまでいかぬということで問題があるだろうと思います。最近の流行語でいう前向きの検討をするということで、私は農林省とも打ち合わせて御検討願いたいと思うものであります。農林省では果実酒は大体賛成です。これは反対などと言えないわけです。しかし、それでは賛成だけれども大蔵省を説得してまで持っていけるかというと、自信がないそうでございます。そういうことで御検討願う必要があります。どういう結論が出るかは別にして、ほんとうに真剣に検討してほしいと思います。これから東南アジアに対しても外交の手もだいぶ伸びて、未開発国に対する外交の手も伸びていきます。やはりこういう点から、国内ではこういう問題をどう解決するかということにもなると思いますので、一そうの御検討を願うということで、これに関する質問は終わります。  次にいきます。先ほどお尋ねした米の実収高並びに協力費などの予算が昨年と——私金額はちょっと忘れましたが、昨年も同様な予算が出ておったはずです。昨年の実績はどうなっておりましょうか。実際の調査はどうなっておりますか。
  263. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 国税庁の事務費で米の実収高調査経費というのがございます。お尋ねの点は、おそらくこの経費のことだと思いますが、これは、前年度予算額が千六百四十五万八千円でございます。それが今年度は八百七十万三千円となっております。この経費は、諸謝金と税務調査旅費並びに庁費でございます。これらは、従来は税務署におきまして、各税務署ごとに地元の農業委員会あるいは農業協同組合等の立ち会いによりまして、いわゆる坪刈りその他の調査をいたしまして、米の各地域別の標準率をきめておったわけでございますが、これは三年ほど前から、実際全国あらゆる税務署でやるという方式を変えまして、地元の府県あるいは市町村の当局と一緒になりまして、合同しまして、大体県によりましては中心の県庁所在地署とか、そういったところが中心になりまして、お互いにその標準率をきめるということになりました。なぜそういうことになったかということは、農業所得に対します課税のウエートが総体的に非常に減ってまいっております。課税農家というのは非常に少数になったのでございます。これに対しまして、市町村民税等は相当幅広く課せられますので、市町村当局と国税当局が合同で標準率をきめよう、そういう方式に三年ほど前から切りかえております。他方予算のほうは、従来からほぼ千八百万程度の金が毎年毎年ついておったのでありますが、これは、実績においてあまり支出されておりませんので、これをこの際実績程度まで下げるという趣旨で、八百七十万三千円というふうにいたしたのでございます。
  264. 川俣清音

    川俣分科員 非常に弁解されたのですが、私は、この調査が不当だとかやるべきじゃないということじゃないんです。また、その必要性に疑義があるわけでもない。せっかくこれだけ金をかけたからには、どんな実績が出ておりましょうか。昨年もやられたはずだし、今年もほぼ同じぐらい、あるいはそれ以上の予算をかけられて調査されたせっかくの実績があるのじゃないでしょうか。昨年度の実績を資料で出していただけばけっこうです。いま一々お伺いしなくても。
  265. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 この実収高調査というのは、米によります農業所得課税するための資料でございまして、これは毎年課税資料というものを国税庁でつくっております。これは、地域別によりまして、土地柄としては三種類に分けまして、傾斜地、平地、低地とかいうふうに分けて、そうした三種類の地域別の各税務署ごとの所得率をつくる、そのための調査でございますので、総体に、米の実収高が幾らであるということを直接これで出すものではございません。その実収高は農林省のほうにおまかせしてあるわけでございまして、農林省の資料を使いまして、こちらのほうは金額的にこの地域は反当幾らの利益があがるであろうかということの算定に使うために、いろいろ調査をするという意味でございます。でございますから、実収高自体というより、むしろ農家の所得調査というふうにお考えくださって——その実績というのは、標準の反当所得の一覧表のようなものができるわけであります。
  266. 川俣清音

    川俣分科員 所得の基礎調査としての実収高であることは、税務署としては当然そうなんでしょう。いわゆる農林省流の実収高でないことは私どもも認めているんですよ。所得課税の基準となるべき実収高だ、これはもうはっきりしておる。しかし、そこに問題があるんですよ。なぜかというと、普通の実収高と、所得を見るための実収高とは、非常に差があるということなんです。農業統計からいうと、これが米として売られるものであれば、たとえばいわゆる砕米であろうとも所得になる。ところが農家の収入の場合には、砕米は所得にはならないですね。そこで、どんな調査をしておられますかを私は見たい。私は所得にならないものまで所得として計算しておられるのではないかという疑問を持つので、これをあえてお尋ねしておるわけです。そのつもりで資料をお出し願いたい。あんまり用心するとわかりますよ。
  267. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 ただいま直税部長が参りましたならば、直税部長から御説明すると思いますが……。
  268. 川俣清音

    川俣分科員 昨年の実績の調査資料を出していただければけっこうです。
  269. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 それも直税部長から出すかどうかを……。
  270. 川俣清音

    川俣分科員 そんなばかなことはないよ。
  271. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 いや、調査のやり方とかなんとかいうものでしたら、いつでも御説明に参上させます。
  272. 川俣清音

    川俣分科員 この予算を使ってどういう実態調査をしたか、その資料を出しなさいというんですよ。それをどう批判をするかは別問題ですよ。国費をこれだけかけて調査されたのなら、その経過を資料として出しなさいと言ったって何も悪いことはないじゃないですか。やってないなら別問題ですよ。やっているなら出しなさい。ことし予算を要求したのも、必要だということで出したのでしょう。だから、去年の実績がこうということを出されても、何もさしつかえないじゃないですか。政務次官、どうですか。この費用を使った実績がどうですかということを聞いているだけですよ。
  273. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 実績ということになると、調査の結果ということだろうと思いますが、いわゆる所得の標準率自体ということをおっしゃっているのかどうかということで、その所得の標準率という問題は、公表するかしないかということをいつも国税庁のほうでは申すものですから、そういうことは、いま直税部長が参りますから、直税部長が出しますということを言うだろうということを申し上げたわけが、私は何も隠すつもりはございません。私のほうは予算の当局でございますから……。
  274. 川俣清音

    川俣分科員 政務次官、時間を食うから出させなさいよ。それで私は終わりますから……。
  275. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 いま御指摘の資料の問題は、後刻直税部長に話しまして、できるだけ御趣旨に沿うように進めるよう努力をいたします。
  276. 川俣清音

    川俣分科員 質問を終わります。
  277. 愛知揆一

    愛知主査 これにて大蔵省所管に対する質疑は終了いたしました。  明三月一日は午前十時より開会し、防衛庁所管について質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会