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1966-02-24 第51回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十一年二月十九日(土曜日)委 員会において、設置することに決した。 二月二十三日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       相川 勝六君    愛知 揆一君       赤澤 正道君    上林榮吉君       登坂重次郎君    野田 卯一君       勝間田清一君    高田 富之君       中澤 茂一君    加藤  進君 二月二十三日  愛知揆一君委員長指名で、主査選任され  た。     ————————————— 昭和四十一年二月二十四日(木曜日)    午前十時十二分開議  出席分科員    主査 愛知 揆一君       相川 勝六君    赤澤 正道君       上林榮吉君    木村 剛輔君       登坂重次郎君    河野  正君       小林  進君    高田 富之君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       加藤  進君    兼務 田原 春次君 兼務 玉置 一徳君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣 松野 頼三君         内閣法制局参事         官         (第一部長)  関  道雄君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     鹿取 泰衛君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (中近東アフリ         カ局長)    力石健次郎君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君  分科員外出席者         検     事         (入国管理局次         長)      中村 正夫君         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    内田  宏君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         会計検査院事務         総長      白木 康進君     ————————————— 二月二十四日  分科員野田卯一君及び勝間田清一委員辞任に  つき、その補欠として木村剛輔君及び楢崎弥之  助君が委員長指名分科員選任された。 同日  分科員楢崎弥之助委員辞任につき、その補欠  として河野正君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員河野正委員辞任につき、その補欠とし  て小林進君が委員長指名分科員選任され  た。 同日  分科員小林進委員辞任につき、その補欠とし  て勝間田清一君が議長の指名分科員選任さ  れた。 同日  第三分科員田原春次君及び第五分科員玉置一徳  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算中、会計検査院、  防衛庁外務省及び大蔵省所管  昭和四十一年度特別会計予算大蔵省所管  昭和四十一年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 愛知揆一

    愛知主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査をつとめることになりましたので、よろしく御協力をお願い申し上げます。  本分科会は、会計検査院防衛庁大蔵省及び外務省所管につきまして審査を行なうことになっております。審査の順序は、お手元に配付いたしました日程により進めたいと存じますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  それでは、昭和四十一年度一般会計予算会計検査院防衛庁大蔵省及び外務省所管昭和四十一年度特別会計予算大蔵省所管昭和四十一年度政府関係機関予算大蔵省関係を議題とし、順次関係当局より説明を求めます。  まず、大蔵省所管説明を求めます。福田大蔵大臣
  3. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまから昭和四十一年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入予算額は四兆三千百四十二億七千万円でありまして、これを前年度予算額三兆七千四百四十七億二千五百万円に比較いたしますと、五千六百九十五億四千五百万円の増加となっております。  以下、歳入予算額のうち、おもな事項について内容を御説明申し上げます。  第一に、租税及び印紙収入総額は三兆一千九百七十七億一千百万円でありまして、前年度予算額に比較いたしますと一千六百九十億八百万円の増加となっております。  この予算額は、現行の税法によって見積もった場合の租税及び印紙収入見込み額三兆四千六十六億六千六百万円から、今次の税制改正に伴う所得減税企業減税及び物品税等減税による減収見込み額二千六十三億九千百万円及び関税率改定等による減収見込み額三十一億一千二百万円を差し引き、これに租税特別措置調整合理化による増収見込み額五億四千八百万円を加算したものであります。  次に、各税目別におもなものを申し上げますと、  まず、所得税につきましては、今次の税制改正に伴う中小所得者負担軽減に重点を置いた基礎控除配偶者控除扶養控除給与所得控除専従者控除及び生命保険料控除引き上げ並びに課税所得三百万円以下の所得階層に適用される税率緩和等による減収額一千三百四十四億三百万円を見込み、一兆四百三十九億八千五百万円を計上いたしました。  法人税につきましては、今次の税制改正に伴う留保分に対する法人税率引き下げ、建物の耐用年数の短縮、同族会社留保所得課税軽減等企業体質改善特に中小企業経営基盤強化等に資するための措置による減収額三百八十一億一千九百万円、特別措置新設に伴う現行特別措置調整合理化による増収額五億四千八百万円、差し引き減収額三百七十五億七千百万円を見込み、八千九百四十七億二千八百万円を計上いたしました。  相続税につきましては、今次の税制改正に伴う相続税の遺産にかかわる基礎控除引き上げ及び配偶者控除新設夫婦間贈与贈与税軽減並びに相続税及び贈与税税率緩和による減収額四十九億八千九百万円を見込み、四百三十億三千九百万円を計上いたしました。  物品税につきましては、今次の税制改正に伴う課税の廃止、免税点引き上げ税率引き下げ及び課税合理化による減収額二百八十七億一千三百万円を見込み、一千三百三十五億四千四百万円を計上いたしました。  関税につきましては、今次の関税率改定等による減収額三十一億一千二百万円を見込み、二千三百七十六億八千万円を計上いたしました。  以上、申し述べました税目のほか、酒税四千六十八億五千万円、砂糖消費税三百十三億五千六百万円、揮発油税二千八百三十二億八千九百万円及びその他の各税目並びに印紙収入を加え、租税及び印紙収入合計額は三兆一千九百七十七億一千百万円となっております。  第二に、専売納付金は一千八百十三億七千七百万円でありまして、前年度予算額に比較いたしますと百十九億八千二百万円の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計納付金において八億三千四百万円減少いたしますが、日本専売公社納付金において百二十八億一千六百万円増加することによるものであります。  第三に、官業益金及び官業収入は百七十三億三千八百万円で、前年度予算額に比較いたしますと三億四千万円の増加となっております。  これは、病院収入において三億一千七百万円減少いたしますが、印刷局特別会計受け入れ金において六億五千八百万円増加することによるものであります。  第四に、政府資産整理収入は二百六十四億九百万円で、前年度予算額に比較いたしますと二十五億八千九百万円の増加となっております。  この収入のうち、おもなものは国有財産売り払い収入百六十五億三千九百万円地方債証券償還収入九十一億八千九百万円等であります。  第五に、雑収入は一千五百六十一億三千二百万円で、前年度予算額に比較いたしますと二十三億四千五百万円の減少となっております。  この収入のうち、おもなものは、日本銀行納付金四百三十二億三千五百万円、日本中央競馬会納付金八十七億四千百万円、特別会計受け入れ金六十億八千四百万円、懲罰及び没収金二百六十二億三千五百万円、外国為替資金受け入れ百四十二億九千二百万円、農業近代化助成資金受け入れ二百八十一億四千三百万円等であります。  第六に、公債金は七千三百億円で、前年度予算額に比較いたしますと四千七百十億円の増加となっております。  この公債金は、財政法第四条第一項ただし書きの規定により、公共事業費出資金及び貸し付け金財源に充てるため発行する公債収入を見込んだものであります。  最後に、前年度剰余金受け入れにおきましては、昭和三十九年度決算によって同年度に新たに生じた純剰余金二百三十九億六千七百万円のうち、昭和四十年度補正予算に計上した百八十六億六千六百万円のうち、昭和四十年度補正予算に計上した百八十六億六千六百万円を控除した五十三億百万円を計上いたした次第であります。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は三千九十七億九千三百万円でありまして、これを前年度予算額二千四十二億七百万円に比較いたしますと、一千五十五億八千六百万円の増加となっております。これは、国債費において三百五十八億四千七百万円、政府出資金において六十九億一千万円、特殊対外債務処理費において八十七億七千九百万円、産業投資特別会計繰り入れにおいて四百四十億円、予備費において二百億円を増加いたしましたが、他方、海運業再建整備日本開発銀行交付金において十八億七千三百万円、国際通貨基金及び国際復興開発銀行出資諸費において二百十五億三千四百万円の減少を見たこと等によるものであります。  この歳出予算額を、まず組織ごとに分けますと、大蔵本省二千三百八十六億五千四百万円、財務局七十億四千百万円、税関六十六億三千百万円国税庁五百七十四億六千五百万円となっております。以下、この歳出予算額のうち、おもな事項について内容を御説明いたします。  まず国債費につきましては、四百八十八億五千六百万円を計上いたしておりますが、この経費一般会計負担に属する国債償還国債利子及び大蔵省証券発行割引料支払い並びにこれらの事務取り扱いに必要な経費でありまして、国債整理基金特別会計繰り入れるものであります。このうち、国債償還財源に充てる額につきましては財政法第六条及び附則第七条の規定に基づき三十九年度決算上の剰余金の五分の一に相当する額として四十六億六千六百万円を計上いたしております。  公務員宿舎施設費につきましては、七十二億三千八百万円を計上いたしておりますが、この経費は、国家公務員に貸与する宿舎設置に必要な経費でありまして、公務員宿舎充足がなお不十分である現況にかんがみ、前年度に比し十三億一千五百万円を増加し、その充足をはかろうとするものであります。  政府出資金につきましては、住宅金融公庫等機関に対し、一般会計から出資するために必要な経費として二百億円を計上いたしておりますが、そのおもなものは、中小企業信用保険公庫七十五億円、海外経済協力基金七十五億円、森林開発公団三十八億円、新東京国際空港公団十億円等であります。  海運業再建整備日本開発銀行交付金につきましては六十九億九千三百万円を計上いたしておりますが、この経費は、海運業再建整備に関する臨時措置法に基づき、日本開発銀行が、整備計画を実施中の会社に対し、外航船舶建造融資にかかる利子支払いを猶予することに伴い、その猶予利子相当額日本開発銀行に交付するものであります。  特殊対外債務処理費につきましては、三百十四億九千百万円を計上いたしておりますが、その内訳は、賠償等特殊債務処理特別会計法第一条に規定する賠償等特殊債務処理に充てるための財源を、同会計繰り入れるために必要な経費百八十四億円、日本国ビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費四十二億一千二百万円、及び財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定に基づいて負担する債務処理に必要な経費八十八億七千九百万円となっております。  産業投資特別会計繰り入れにつきましては、四百四十億円を計上いたしておりますが、この経費は、産業投資特別会計において行なう産業投資支出財源に充てるため、一般会計から同特別会計繰り入れるものであります。  アジア開発銀行出資につきましては、三十六億円を計上いたしておりますが、この経費アジア開発銀行を設立する協定第五条及び第六条の規定に基づき、同銀行に対し出資するため必要な経費であります。  予備費につきましては、予見しがたい予算の不足に充てるため六百五十億円を計上いたしております。  以上が、大蔵本省に計上された歳出予算額のおもなものでありますが、財務局税関及び国税庁につきましては、その歳出予算額の大部分は、これらの機関人件費その他事務処理に必要な経費であります。  次に、当省所管特別会計としましては、造幣局特別会計をはじめ十一の特別会計のほか、新たに地震保険特別会計設置を予定しております。これら特別会計のおもなものにつき、その概略を御説明いたします。  まず、造幣局特別会計におきましては、歳入歳出とも七十四億八千九百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも十七億七千五百万円の減少となっております。歳出減少のおもな理由は、補助貨幣製造枚数減少による製造経費及び施設関係経費減少等によるものであります。  印刷局特別会計におきましては、歳入百五十四億三千六百万円、歳出百四十億五千万円、差し引き十三億八千六百万円の歳入超過であります。歳出におきましては、前年度予算額に比し、一億五百万円の減少となっておりますが、これは、日本銀行券等製造経費増加しましたが、工場施設等整備経費減少したことによるものであります。  資金運用部特別会計におきましては、歳入歳出とも三千五百四十六億一千九百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも、六百二十七億九千万円の増加となっておりますが、これは、主として歳入においては、資金運用に伴う利子収入歳出においては、預託金に対する支払い利子に必要な経費がそれぞれ増加することによるものであります。  国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出とも六千四百五十二億三千四百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも一千五百六十九億七千百万円の増加となっております。これは、国債償還に必要な経費においては減少いたしましたが、短期証券償還借入金返還国債利子及び大蔵省証券等短期証券割引料等に必要な経費において増加をみたことによるものであります。  外国為替資金特別会計におきましては、歳入歳出とも二百十億九百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも二十一億六千五百万円の増加となっておりますが、これは、主として歳入においては、外国為替資金運用による収入歳出においては、外国為替資金証券発行増加による利子支払いに必要な経費がそれぞれ増加することによるものであります。  また、本年度外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案規定に基づき、この会計資金から一般会計歳出財源に充てるため、百六億九千二百万円、アジア開発銀行に対する出資財源に充てるため、三十六億円をそれぞれ一般会計繰り入れることとし、一方財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国大韓民国との間の協定に基づき、本会計保有清算勘定残高の一部十六億四千六百万円について、大韓民国からの賦払い金支払いがあったものとみなされることにより、外国為替資金に生ずる損失を同資金の金額から減額して整理することとしております。  産業投資特別会計におきましては、歳入歳出とも八百六十五億三千二百万円でありまして、前年度予算額に比し、いずれも、一億八百万円の減少となっております。  この会計投資計画のうち、出資金につきましては、日本輸出入銀行ほか九機関に対し、総額四百七十九億五千万円の出資を行なうこととし、その出資財源に充てるため、一般会計から四百四十億円を受け入れることといたしております。また、貸し付け金につきましては、本年度五千万ドルの外貨債を発行することとし、その手取り金百七十億円をもって、日本道路公団への貸し付けを行なうことといたしております。  地震保険特別会計は、地震保険に関する法律案に基づく、地震保険事業に関する政府の経理を明確にするため本年度新たに設置する予定でありますが、歳入歳出とも十二億一千七百万円でありまして、主として歳入においては再保険料収入歳出においては再保険費であります。事務費一般会計から繰り入れを受けることとしております。  以上申し述べました各特別会計のほか、貴金属、経済援助資金余剰農産物資金融通賠償等特殊債務処理及び国有財産特殊整理資金の各特別会計につきましては、お手もと予算関係書類によりましてごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算につきまして、簡単に御説明いたします。  まず、日本専売公社におきましては、収入五千六百二十一億一千百万円、支出四千三百二十二億八百万円、差し引き一千二百九十九億三百万円の収入超過であり、専売納付金は一千八百一億円を見込んでおります。  これを前年度予算額に比較いたしますと、収入は五百七十三億九千九百万円、支出は四百八十三億三千二百万円の増加であり、専売納付金は、百二十八億一千六百万円の増加を見込んでおります。  なお、専売公社事業のうち、たばこ事業につきましては、本年度製造たばこ国内販売数量は前年度に比し百十二億本を増加し、一千八百八十四億本を見込んでおります。  次に、国民金融公庫、住宅金融公庫農林漁業金融公庫中小企業金融公庫北海道東北開発公庫公営企業金融公庫中小企業信用保険公庫医療金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行の各機関につきましては、収入支出予算は、主として、これら機関事業の運営に伴う貸し付け金利息収入並びに借入金支払い利息及びこれらに必要な事務費等を計上したものでありますが、前年度に比し、各機関とも事業量増加を見込みましたことに伴い、収入支出とも増加いたしております。  これら各機関収入支出予算額及び前年度予算額に対する増減等につきましては、お手もと予算関係書類によりまして、ごらんいただきたいと存じます。  以上をもちまして、大蔵省関係予算概略について説明を終ります。     —————————————
  4. 愛知揆一

    愛知主査 次に、会計検査院所管説明を求めます。白木事務総長
  5. 白木康進

    白木会計検査院説明員 昭和四十一年度会計検査院所管歳出予算について御説明申し上げます。  昭和四十一年度会計検査院所管一般会計歳出予算要求額は、十三億四千八百二十八万八千円でありまして、これは会計検査院日本国憲法第九十条及び会計検査院法規定に基づいて、会計検査を行なうために必要な経費でございます。  いま、要求額のおもなものについて申し上げますと、職員千二百十二人分の俸給給与手当等として十一億三千二百二十九万八千円を計上いたしましたが、これは総額の八四%に当たっております。  職員を現地に派遣し、実地について検査するための旅費といたしまして、一億百二十七万九千円を計上いたしました。  なお、外国旅費として二百七十六万四千円を計上いたしましたが、これはオーストリア共和国ウイーンにおいて開催されます最高会計検査機関国際事務局理事会に出席する経費及び沖繩援助費実地検査に要する経費でございます。  事務上必要な備品、消耗品通信運搬印刷製本光熱水料等庁費関係経費として七千三百七十九万六千円を計上いたしました。  次に、庁舎施設整備関係経費といたしましては、エレベーター増設工事費として八百十万円、書庫及び付属室書架増設工事費として一千四百九十七万三千円、電話交換機器増設工事費として四百二十三万四千円及び庁舎屋上漏水改修工事費として五百二十八万一千円、合計三千二百五十八万八千円を計上いたしました。  なお、検査を強化するため、参事官一人、上席審議室調査官一人の定員内振りかえ設置を計上いたしました。  次に、ただいま申し上げました昭和四十一年度歳出予算要求額十三億四千八百二十八万八千円を前年度予算額十四億三千九百十万二千円に比較いたしますと、九千八十一万四千円の減額となっておりますが、その内訳について申し上げますと、増加分といたしましては職員俸給給与手当等において一億八百九十四万二千円、実地検査旅費において二千五十九万円、庁費関係経費において一千百四十三万円、庁舎施設整備経費において一千八百十三万三千円、その他の経費において十万円、計一億五千九百十九万五千円でありますが、前年度計上いたしました庁舎増築経費二億五千万九千円が減額となりましたので、差し引き九千八十一万四千円の減額となっております。  以上、はなはだ簡単でございますが、昭和四十一年度会計検査院所管一般会計歳出予算要求額概要の御説明を終わります。よろしく御審議のほどお願いいたします。     —————————————
  6. 愛知揆一

    愛知主査 次に、防衛庁所管について説明を求めます。松野防衛庁長官
  7. 松野頼三

    松野国務大臣 昭和四十一年度防衛庁予算案説明を申し上げます。  昭和四十一年度防衛庁予算案につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、防衛本庁について申し上げます。  昭和四十一年度防衛本庁歳出予算総額は、三千百九十六億五千二百九万一千円でありまして、これを昭和四十年度歳出予算額二千八百六十九億七千百四十六万三千円に比べますと、三百二十六億八千六十二万八千円の増加となっております。  このほか、国庫債務負担行為として、航空機の購入について九十九億八百二十三万三千円、器材の整備について三百五十二億二千二百三万五千円、弾薬の購入について五十二億六千六百四十二万六千円、施設整備について七億一千三百六十九万四千円、艦船の建造について十二億六百九十三万二千円、計五百二十三億一千七百三十二万円を計上し、さらに継続費として、昭和四十一年度甲型警備艦建造費について四十一億五千七百十五万五千円、昭和四十一年度甲II型警備艦建造費について七十二億九千六百四十五万二千円、昭和四十一年度潜水艦建造費について四十一億七千十四万九千円、昭和四十一年度練習艦建造費について三十四億二千百五十一万八千円、計百九十億四千五百二十七万四千円を新たに計上しております。  また、職員定員につきましては、防衛本庁昭和四十一年度職員定員自衛官二十四万八千二百二十二人、自衛官以外の職員二万七千八十三人、計二十七万五千三百五人でありまして、これを昭和四十年度に比べますと、自衛官において六百三十人の増、自衛官以外の職員において一人の減、計六百二十九人の増加となっております。  次に、防衛本庁予算案内容について申し上げます。  基本方針といたしましては、昭和四十一年度は、第二次防衛力整備計画の最終年度であると同時に第三次防衛力整備計画へつながる年度であるという考え方で、防衛力の整備を一段と推進し、今後における防衛体制の基盤を確立するという見地から、国の防衛力を実質的に強化するための各般の施策を着実に実施することを主眼といたしまして、特に次の諸点に重点を置いております。  すなわちまず、防衛意識の高揚をはかり、自衛隊に対する国民一般の理解を深めるとともに、隊員の士気を高揚し、かつ、自衛官充足対策の強化をはかるため、広報活動の強化、募集施策の推進、老朽隊庁舎の改築、宿舎の増設、その他隊員の処遇及び生活環境の改善整備を強力に推進することとしております。  次に、第二次防衛力整備計画の線に沿って、自衛隊の装備の充実、近代化を促進することとし、陸上部隊装備の充実、艦船建造の推進、航空機の増強、弾薬の確保、ナイキ、ホーク関係部隊の整備、バッジ建設の推進等に必要な経費を計上することとしております。  また、研究開発につきましても重点事項の一つとして特にその推進をはかることとし、前年度にき引続き対潜飛行艇等の試作を行なうほか、新たに中型輸送機の開発等に着手することとしております。  なお、基地問題を円滑に処理するための騒音防止措置、飛行場周辺の安全措置等の諸施策につきましては、昭和四十一年度から自衛隊関係及び駐留軍関係を通じ、関連諸施策の一元化を一段と推進するため、関連経費を後ほど御説明申し上げる防衛施設庁に原則として一括計上することといたしております。  以下機関別に内容を申し上げます。  陸上自衛隊につきましては、歳出予算におきまして一千五百億四百二十七万二千円、国庫債務負担行為におきまして百四十八億六千四百七十二万四千円となっております。  その主要な内容について申しあげますと、ホークの導入に伴なう関係部隊の改編を行なうほか、隊庁舎等施設整備、戦車その他の部隊装備品の充実更新、ヘリコプター等航空機の購入による機動力の増強等により防衛力の内容充実を一段と推進することとしております。職員定数につきましては、昭和四十一年度自衛官は前年度と同様十七万一千五百人、自衛官以外の職員は一名の減で一万三千六百二十九人、計十八万五千百二十九人でありますが、予備自衛官につきましては、三千人の増員を予定しておりますので、昭和四十一年度における予備自衛官の定数は三万人となります。  なお、航空機につきましては、昭和四十一年度において新たに小型ヘリコプター七機、中型ヘリコプター十機、大型ヘリコプター六機及び連絡偵察機一機の購入を予定しておりますので、これにより陸上自衛隊の昭和四十一年度末における保有機数は三百十一機となる見込みであります。  海上自衛隊につきましては、歳出予算におきまして七百五十億九千九百七十二万九千円、国庫債務負担行為におきまして百三十四億三千九百八十四万五千円、継続費におきましては冒頭に申し上げましたとおりであります。  その主要な内容について申し上げますと、まず、職員定数につきましては、昭和四十一年度において艦船の新規就役等に伴いまして自衛官三百八十人を増員することとし、これにより職員定数は、自衛官三万五千九百四十一人、自衛官以外の職員五千三十五人、計四万九百七十六人となります。  次に艦船につきましては、新たに警備艦二千トン型一隻、同三千トン型一隻、潜水艦千六百トン型一隻、練習艦三千五百トン型一隻、掃海艇二隻、支援船九隻、計十五隻、一万一千五百七十一トンの建造を予定しております。これにより、昭和四十一年度末の保有艦船は、五百三十六隻、約十七万四千四百トンとなる見込みであります。  また、航空機につきましては、昭和四十一年度において新たに対潜ヘリコプター四機、双発練習機一機、救難用ヘリコプター一機及び輸送機一機の購入を予定しております。これにより海上自衛隊の昭和四十一年度末の保有機数は二百四十機となる見込みであります。  航空自衛隊につきましては、歳出予算におきまして八百五十三億三千七百十三万七千円、国庫債務負担行為におきまして二百十一億八千二百四十万一千円となっております。  その主要な内容について申し上げますと、新潟救難隊の新編及び自動航空警戒管制組織要員の増強等に伴い、自衛官二百五十人を増員することとし、これにより職員定数は、自衛官四万七百三人、自衛官以外の職員五千三百五十六人、計四万六千五十九人となります。  また、航空機につきましては、昭和四十一年度において新たに救難用ヘリコプター四機及び救難用捜索機二機の購入を予定しておりますので、これにより航空自衛隊の昭和四十一年度末保有機数は一千八十八機となる見込みであります。  内部部局、統合幕僚会議及び付属機関につきましては、歳出予算におきまして九十二億一千九十五万三千円、国庫債務負担行為におきまして二十八億三千三十五万円となっており、職員定数におきましては、昭和四十一年度の増員はなく、前年度と同様自衛官七十八人、自衛官以外の職員三千六十三人、計三千百四十一人となっております。  次に防衛施設庁について申し上げます。  昭和四十一年度の防衛施設庁の歳出予算総額は、一二百九億八千三百三十八万三千円で、これを昭和四十年度歳出予算額百八十三億九千八百一万九千円に比べますと、二十五億八千五百三十六万四千円の増加となっております。このほか、国庫債務負担行為として、提供施設整備について二億一千万円、提供施設の取得について三十億円、計三十二億一千万円を計上しております。  また、職員の定数につきましては、防衛施設庁の昭和四十一年度職員定数は、前年度と同様三千三百八十七人であります。  次に防衛施設庁の予算案内容について申し上げます。  昭和四十一年度予算案の重点といたしましては、まず、基地の安定的使用を確保し、基地周辺の民生安定に資するため、前年度に引き続き、騒音防止措置と飛行場周辺の安全措置等の諸施策の推進をはかるとともに、特に基地周辺整備助成措置の強化に配慮する等基地対策関連経費の充実をはかることとしております。  なお、基地問題を一そう適切、かつ、円滑に処理するため、従来防衛本庁に計上しておりました自衛隊関係の騒音防止対策事業費補助金、飛行場周辺の安全措置関係経費等を昭和四十一年度から駐留軍関係経費とあわせて防衛施設庁に一括計上することとしております。  次に、駐留軍要員の適正な労務管理をはかるため、離職対策の強化、健康保険組合の財政の健全化等の措置を講ずることとしております。  以下各項ごとに内容を申し上げます。  施設運営等関連諸費につきましては、自衛隊及び駐留軍の基地対策関連経費百円十二億七千六百三十八万一千円を含めて百六十二億六千七百二十六万円となっております。  調達労務管理事務費につきましては、離職対策費一億一千二百五十四万五千円及び駐留軍要員健康保険組合臨時補助金七千万円を含めて、九億四千三百五十一万三千円となっております。  その他、相互防衛援助協定交付金四億一千五百四十万円、防衛施設庁費三十三億五千七百二十一万円を計上しております。  以上をもちまして防衛本庁及び防衛施設庁の予算案概略説明を終わります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛成くださるようお願い申し上げます。     —————————————
  8. 愛知揆一

    愛知主査 次に、外務省所管説明を求めます。椎名外務大臣。
  9. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 外務省所管昭和四十一年度予算説明を申し上げます。  予算総額は二百八十七億二千三百七万七千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、科学技術振興費九千二百七十五万四千円、遺族及び留守家族等援護費三百七十二万三千円、貿易振興及び経済協力費六十一億二千五百二十一万円、その他の事項経費二百二十五億二百三十九万円であります。また組織別に大別いたしますと、外務本省百四十三億八千九百六十六万一千円、在外公館百四十三億三千三百四十一万六千円であります。  ただいまその内容について御説明いたします。  まず外務本省。第一、外務本省一般行政に必要な経費二十四億八千九百四十八万三千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び附属機関である外務省研修所、外務省大阪連絡事務所において所掌する一般事務処理するため必要な職員千五百六十一名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営の充実に必要な経費六億七千万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種の条約、協定を締結する必要がありますが、これらの交渉をわが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三、アジア諸国に関する多交政策の樹立及び賠償実施業務の処理等に必要な経費二千二十二万円は、アジア諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整並びに賠償実施の円滑、かつ統一的な処理をはかるため必要な経費であります。  第四、対米加外交政策の樹立に必要な経費四百六十二万八千円は、対米加外交政策の企画立案及びその実施の総合調整等を行なうため必要な経費であります。  第五、中南米諸国に関する外交政策の樹立に必要な経費一億三百八十八万七千円は、中南米諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整等を行なうため必要な経費と社団法人ラテン・アメリカ協会補助金三千三百九十六万円、日秘文化会館建設費補助金三千二百万円及び日ボ文化会館建設費補助金二千五百二十万円であります。  第六、欧州諸国に関する外交政策の樹立に必要な経費一千七百八十三万円は、欧州諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整等を行なうため必要な経費と社団法人北方領土復帰期成同盟補助金四百万円であります。  第七、中近東、アフリカ諸国に関する外交政策の樹立に必要な経費一千五十二万六千円は、中近東、アフリカ諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整等を行なうため必要な経費と社団法人アフリカ協会補助金四百八十万円及び財団法人中東調査会補助金二百二十万円であります。  第八、国際経済情勢の調査及び通商交渉の準備等に必要な経費四千三百五万二千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  第九、条約締結及び条約集編集等に必要な経費一千九百三十二万三千円は、国際条約の締結及び加入に関する事務処理並びに条約集の編集、条約典型の作成、条約、国際法及び先例法規の調査研究等のため必要な事務費であります。  第十、国際協力に必要な経費三億五百五十五万九千円は、国際連合等各国際機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な経費及び各種の国際会議にわが国の代表を派遣し、また、本邦で国際会議を開催するため必要な経費と財団法人日本国際連合協会補助金一千六百六十万五千円、社団法人日本エカフェ協会補助金九百九十四万四千円及び財団法人日本ユニセフ協会補助金四百二十一万七千円であります。  第十一、情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費十億二千六百四十万円は、国際情勢に関する国内啓発、海外に対する本邦事情の啓発及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに財団法人国際学友会補助金五千六百五十九万七千円、財団法人国際文化振興会補助金一億四千四百十八万七千円、財団法人国際教育情報センター補助金一千六十三万四千円、社団法人日本新聞協会国際関係事業補助金一千万円及び啓発宣伝事業委託費二億八百八十三万円であります。  第十二、海外渡航関係事務処理に必要な経費七千六百十九万円は、旅券法に基づき、旅券の発給等海外渡航事務処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費三千九百十六万二千円であります。  第十三、海外経済技術協力に必要な経費三十億五千八百三十二万五千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施の総合調整を行なうため必要な経費とコロンボ計画等に基づく技術者の受け入れ、派遣及び日本青年海外協力隊の派遣、各種技術訓練センターの設置並びに医療協力事業技術協力の実施に必要な委託費二十六億三千七百九十一万六千円及び海外技術協力事業団交付金三億九千三百三十万七千円等であります。前年度に比し十億二千五百十六万五千円の増加は、主として海外技術協力実施委託費及び海外技術協力事業団交付金の増加によるものであります。  第十四、海外技術協力事業出資に必要な経費一億一千万円は、海外技術協力事業団大阪研修センターの建設に要する資金として同事業団に対し出資するため必要な経費であります。  第十五、国際分担金等の支払に必要な経費二十一億六千七百九十九万二千円は、わが国が加盟している国際連合その他各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十六、国際原子力機関分担金等の支払いに必要な経費九千二百七十五万四千円は、わが国が加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十七、貿易振興及び経済協力関係国際分担金等の支払いに必要な経費二十五億九千三百五十五万二千円は、わが国が加盟している貿易振興及び経済協力関係各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十八、移住振興に必要な経費十五億七千六百六万六千円は、移住政策の企画立案及び中南米諸国等に移住する者千五百名を送出するため必要な事務費並びに移住者渡航費交付金五千七十九万六千円及び海外移住事業団交付金十四億一千三百三十三万二千円等であります。  第十九、旧外地関係事務処理に必要な経費百十五万一千円は、朝鮮、台湾、樺太及び関東州等旧外地官署所属職員給与、恩給等に関する事務処理するため必要な経費であります。  第二十、旧外地官署引揚職員等の給与支給に必要な経費二百七十二万三千円は、四十一年度中の旧外地官署所属の未引き揚げ職員の留守家族及び引き揚げ職員に対し俸給その他の諸給与を支給するため必要な経費であります。  在外公館、第一、在外公館事務運営等に必要な経費百十一億一千二百二十三万一千円は、既設公館百十七館、三代表部千五十名と四十一年度中に新設予定の在グァテマラ及び在ブルガリア両大使館、在高雄、在ナホトカ及び在パース各総領事館、在エドモントン領事館設置のため新たに必要となった職員二十二名並びに既設公館の職員増加六十四名、計千百三十六名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営の充実に必要な経費十三億三千万円は、諸外国との外交交渉をわが国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三、輸入制限対策等に必要な経費三億二千二十八万一千円は、諸外国におけるわが国商品の輸入制限運動等に対処して啓蒙宣伝運動を実施する等のため必要な経費であります。  第四、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費二億七千五百六万九千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流を行なうため必要な経費であります。  第五、在外公館営繕に必要な経費十二億九千五百八十三万五千円は、在イタリア大使公邸ほか一カ所の付帯工事、在フランス大使館及び経済協力開発機構日本政府代表部合同事務所ほか二カ所の継続工事その他事務所及び公邸の諸工事に必要な経費と在メキシコ大使館ほか七カ所の公邸及び在スウェーデン大使館事務所の不動産購入費であります。  以上が、ただいま上程されております外務省所管昭和四十一年度予算の大要であります。慎重御審議のほどお願い申し上げます。
  10. 愛知揆一

    愛知主査 以上をもちまして、本分科会所管予算説明は全部終了いたしました。     —————————————
  11. 愛知揆一

    愛知主査 引き続いて、昭和四十一年度一般会計予算外務省所管について質疑に入ります。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度、兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめ、議事進行に御協力願いたいと存じます。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に、要領よく、簡潔に行なうよう特に御注意申し上げます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  12. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 時間がございませんから、きょうはお伺いをしたいことだけにとどめたいと思います。  まず、せんだっての予算委員会でも問題になりました核のかさの問題でございますが、政府は統一見解を出されたわけです。その統一見解の中では、国際的通念での核のかさという意味は核抑止力の及んでいる状態をいう、したがってそういう意味では、日本はアメリカの核のかさの中にあるという見解を出されたわけでありますが、このことは、日本政府が、現在の日米安保体制はアメリカの核のかさのもとの安保体制であるということをあらためて明確にされたと解してよろしゅうございますか。
  13. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 元来、核のかさというのは非常にあいまいな意味を持っておるように思われますので、こういうものは特別に使わぬでも、とにかく日米安保体制は、いかなる形の攻撃を受けようとも、アメリカは日本の安全のために十分な責任を負うということを言っておりますので、このかさというようなあいまいなことばは従来使っておりませんが、しかし、この表現をもし使うとすれば、いま御指摘のとおりなことになると思います。
  14. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そこで、現在の安保体制は、核のかさのもとにおける安保体制であるということを政府が積極的に認知されたと私どもは解するわけであります。  そこで、さらにお伺いしたいのですが、日本の防衛もしくは安全保障のために核抑止力は必要であると外務大臣は思っておられますか。
  15. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういうものを排除するものではない。昨年の一月、佐藤・ジョンソン会談において、ジョンソン大統領から言明した点を共同声明において発表しておりますが、日本がいかなる形の外部からの攻撃を受けようとも、アメリカはあらゆる努力をして日本防衛の責任を果たす、こういうことを言っておるわけでありますから、もともと核であろうと核でなかろうと、とにかく日米安保体制の趣旨は、すべての外部の攻撃に対して安全をあくまで保障する、こういう意味であります。
  16. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、いまの御答弁では、日本の安全保障のためには核抑止力も必要とする、そういう意味も含まれておるというふうに御答弁になったものと解釈いたします。  そこで、現在日本政府は、核兵器は持ち込まない、核の持ち込みはしないという政策をとっておられるようですが、そうしますと、いまの外務大臣の御答弁からいきますと、核抑止力は防衛のためには必要であるが、日本自身は持たない、政策的に持たない、そういうことになりますね。
  17. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本はみずから核兵器を製造しない。また他から譲り受けてこれを持つということもしない。また日本に核兵器をアメリカが持ち込む場合には事前協議の対象になる。しかし、日本の方針としては、さような場合には持ち込むことに同意しない。こういう方針には変わりはございません。
  18. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いま事前協議の問題が出ましたので、ちょっと私は法解釈の点で明確にしていただきたい問題があるわけです。条約第六条の実施に関する交換公文、この中で「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」の下にカッコがつけてあって、「前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。」というこのただし書き的な削除条項は、これは前の文章の全部にかかるのでございますか、それともそのカッコの前の「戦闘作戦行動」だけにかかるのでございましょうか。
  19. 安川壯

    ○安川政府委員 第五条の場合を除外しておりますのは戦闘作戦行動の場合だけでございまして、重要な装備の変更、重要な配置の変更という場合には、第五条の場合を除外しておらないわけであります。
  20. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、この安保条約の第五条でございますが、第五条の中の「武力攻撃」という意味は、これは明らかに武力攻撃が行なわれると想定をされる事前行動も含みますか。
  21. 安川壯

    ○安川政府委員 ちょっと恐縮でございますが、意味がよくつかみかねますので、もう一回……。
  22. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは裏からいきますと、これは武力攻撃が現実に発生をしたときということに限定をされておりますか、それとも明らかに武力攻撃が行なわれると思われる事前行動をも含むのかどうか。かつて木村防衛庁長官のときには、そういう意味のことをおっしゃったことがありますから、あらためて念を押しておきたいと思います。
  23. 安川壯

    ○安川政府委員 私が了解いたしますところでは、要するに第五条は、その事前協議との関係を申しますと、日本に武力攻撃が行なわれた場合には、当然その第五条に基づきまして、米国側は日本の防衛の措置をとるわけであります。その場合に、日本の基地を戦闘作戦行動に使います場合には、その第六条に関する交換公文の事前協議の規定の適用がございませんから、日本に対する武力攻撃が現実に行なわれた場合に、それを防衛するために米軍が日本の基地を戦闘作戦行動に使います場合、事前協議の必要はないわけであります。
  24. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、武力攻撃が現実にあったときに、もしアメリカが核を使う場合には、これは事前協議の対象になりませんか。
  25. 安川壯

    ○安川政府委員 そのときにかりに米軍が日本に核兵器を持ち込みまして、そして相手方に核攻撃をするということを仮定しました場合には、その持ち込む時点におきまして当然事前協議の対象になる。ただ、日本の区域の外から日本を防衛するために核を使用するという場合には、これは事前協議の対象にならない。
  26. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっといま意味がよくわかりませんでしたから、もう少しわかりやすく……。
  27. 安川壯

    ○安川政府委員 第五条が働きまして、日本がかりにどこからか武力攻撃を受けたという場合に、米軍がそれに対して、日本を防衛するためにかりに核兵器を日本の領域内に持ち込みまして、そしてそれを使用するという場合を想定いたしました場合には、その持ち込みます段階において事前協議の条項が適用になりますから、第六条がそこで働くわけであります。重要な装備の変更ですから、そこで事前協議が行なわれるわけであります。ただし、日本の領域の外から米軍が日本を防衛するために核を使用するという場合には、これは何ら事前協議の対象にならないわけであります。
  28. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 わかりました。それでは、中国の核武装の展望を前にして、日本の安保体制と核政策の問題が非常にやかましくなってまいりました。そこで、たとえば昨年の十一月一日、ハンフリー米副大統領が朝日新聞の秦外報部長に答えた中で、アメリカにとって核戦力と核政策のため友好国を含めるべきときがきた、日本もこの討議に加わるべきだと思う、あるいはラスク長官が同じく昨年十一月の五日に記者会見を行ないまして、核政策について友好国と協議することはジョンソン政権の中心的流れに沿うものだというような発言をされておるわけです。こういう話し合いは、具体的には何か新しい一つの機関を考えて、そこで話し合うというようなことを考えておられるのでしょうか。
  29. 安川壯

    ○安川政府委員 ハンフリー副大統領、それからラスク長官は、別に何か具体的な計画があって、その計画について日本と協議しようという趣旨ではないと、私は了解しております。もちろん特別の機関をつくるというようなことをアメリカ側が考えておるとは考えておりません。また、現にそういう話は現在ございません。ただ、現実にやっておることを申し上げますと、御承知のように、核不拡散条約という問題が現実の問題になっておりますので、そういう核不拡散条約問題につきましては、普通の外交チャンネルを通じて常時連絡はとっております。
  30. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、たとえば安保条約の第四条による随時協議と申しますか、そういった範疇の中で普通の外交ルートでやられるというわけですか。
  31. 安川壯

    ○安川政府委員 現実に話題になっておりますのは、いま申し上げましたように、軍縮と申しますか、具体的に現在当面問題になっておりますのが核不拡散条約でありますから、そういう問題は通常の外交チャンネルを通じて話すべき問題でございます。これは、安保条約とは直接の関係がございませんから、たとえば核軍縮というような問題は、安保協議会で取り上げるべき問題ではないと思います。
  32. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、たとえば二十三日に、きのうですか、下田次官とバンディ次官補が会われましたですね。核問題が相当論議になったようでございますが、そういうきのうみたいな話し合いも、このラスク長官なりあるいはハンフリー副大統領が言っておるような範疇に入る話し合いになるわけですか。
  33. 安川壯

    ○安川政府委員 ラスク長官とハンフリー副大統領がどういうことを意図していたかは、これは御本人でないからわかりませんけれども、しいて言えば、協議の中に入ると考えても差しつかえないと思います。
  34. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それではこの問題はこれくらいにしたいのですが、いずれにしましても、問題はアメリカの核の抑止力にはたよる、しかし核の持ち込みはしないというあなた方の態度は、非常に私は論理が一貫しないと思うのです。何らかの理由で核の持ち込みをしないというのであれば、やはり核の抑止力にたよるということもやめなくてはいけない。やめなければ論理が一貫しないわけですね。そういう点で、そういった矛盾の点を一体どのように外務省はお考えになっておるのでしょうか。
  35. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一向矛盾を感じないのですが、とにかく日本の問題は、日本の安全をはかることがわれわれは一番大事です。でありますから、日本がこの安全に全然脅威を受けないという情勢が一番いいのです。ところが、普通の兵器のほかに核兵器というものが非常に発達している。やはりそれの攻撃を受けるという可能性も大いにある。それに対してやはり安全という見地から、その場合にはどうすればいいかということは当然考えなければならない。しかし、日米安保条約体制下にあるために、いかなる形の攻撃を受けても、それが核兵器であろうがなかろうが、とにかく日本の安全というものに対しては万全の責任を果たす、こういう約束がすでにもう取りつけられておるのですから、これはもうあくまで日本としてもこれに対応する義務はもちろん当然果たさなければなりませんが、アメリカのこの責任に対しても、日本はこれをもって日本の安全というものが保障される、こう考えております。それと国内に核を持ち込むことと平仄が合わないじゃないか、やはり持ち込むのがほんとうじゃないか、こうあなたおっしゃるのでしょう。(楢崎分科員「そうじゃない」と呼ぶ)核の技術からいって、何も日本国内に持ち込む必要はない。十分に核の抑止力というものにわれわれはたよっていけるのだ、こういうことなんです。一つも矛盾がない。ただ、持ち込まないというなら、今度は核の抑止力をたよりにするなということなら、これはたいへんな話です。日本の安全が何といったって最優先でありますから、それをわれわれは度外視するわけにいきません。
  36. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 大臣はそんなにおっしゃいますけれども、下田次官は訂正されたかどうか知りませんが、アメリカの核のかさで守ってもらおうというような考え方は間違いだと言っておられるのですね。それで、私は時間がありませんから議論いたしませんが、いずれにしても核で守ってもらいたい。しかし、核は持ち込まないというのでは、論理は一貫しませんよ。やはり核を持ち込まないということは、核の抑止力そのものを否定する方向へいかなければ、これは論理は一貫しないと思うのです。これはもう議論はいたしません。  そこで、次にお伺いしておきますが、原子力潜水艦の日本入港については、横須賀と佐世保だけにしか入港させないという協定を結んでおられるという御答弁があったわけです。エンタープライズ、原子力空母を含む原子力機動艦隊、これの入港については、やはりそういう考え方で協定を結ばれますか。
  37. 安川壯

    ○安川政府委員 この間、協定とは私申し上げなかったのです。了解ということばを使っておったのでございますが、厳密な意味の協定というのは不適当だと思いますけれども、アメリカ側と取りかわしました文書の中には、横須賀と佐世保に入港する、こう書いてあります。それから原子力空母は、これはまだ正式な申し入れはございませんから、申し入れがあった上で、どこに入港するということも当然あらためて了解することになると思いますが、まだ申し入れがございませんから、何とも申し上げかねます。一応常識的に考えますと、横須賀、佐世保以外の港に原子力空母が入るようなことはまずないというふうにお考え願いたいと思います。
  38. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、確認をしておきますが、原子力機動艦隊の場合も、やはり原潜と同じように横須賀あるいは佐世保という範囲で入港の了解文書をつくられるわけですね、そういう御予定ですね。
  39. 安川壯

    ○安川政府委員 これは、まだアメリカ側から申し入れがございませんと、アメリカ側がどういう希望であるか、聞くほうが先であると思いますので、それに先立って、こちらとしてどこに入港させようということは、まだきめる段階じゃないと思います。
  40. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 アメリカがどこに入港を希望しようと、もし向こうから入港を希望してきたならば、日本としてはこういう考えがあるという考えは、日本政府は持たなくちゃいかぬでしょう。どうでしょう。
  41. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それはすぐきまることでございまして、そう長く審議をして、そうしてきめるということじゃないので、いま北米局長も、おそらく従来の原潜と同ずような場所に落ちつくのじゃないかと、こういうことを観測として申し上げておりますけれども、私もあるいはそんなところじゃないか。しかし、そう二カ所も要らない、一カ所でいいと言えば、何も二カ所にしてくれとこちらから言うことはありません。
  42. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は、政府の考えだけを一応聞いておきたいと思ってお伺いしたのです。  それでは、時間がありませんから、最後に、けさの報道にも出ておったのですが、例の国連決議協力法案は大体どういうことを考えておられるのか、ちょっと説明をしておいていただきたい。
  43. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国連出兵とかなんとかいうことじゃなしに、国連のほうで、たとえば国際的にはたに迷惑をかけておるような事態には、その国に対して貿易あるいは運輸通信、そういうような国際的な協力を差し控える、そういったような事態がよく出てくるのであります。そういう場合に、国内法であらかじめそういうことを規定しておらないとやりようがない。各国の事例を見ましても、たいていの国は、国連の、特に安保理事会ですけれども、そういう国連の申し入れがあった場合に、これにすぐ協力ができるような法制をしいておる。日本はそういうことがないために、今般のローデシアの問題、あれを経済封鎖によって命脈を縮める、そういったような措置について国連の申し出がありますけれども、日本ではそのまま端的にそれに応ずるという体制になっていない。でありますから、非常に回りくどいことをして、効果が十分じゃないけれども、商社のほうに、すでにもう契約をして船積みするばかりになっておる、それを何とかやめてくれ、こういったようなかけ合いで、ようやくある程度の効果をあげておる。ところが、ちゃんとした法制がある国では、それがぴしゃっといく。そういうようなことから考えまして、日本としても、やはり国連加盟国としてそういう体制を整える必要があるのではないかというので、研究を始めたところなんです。それが非常に大げさに新聞に報道されまして、みんなどういうことだろうというような不安を持たれたようでございますが、内情はそういうことでございます。
  44. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いろいろ重要な問題があるわけです。直ちに協力法案という単独法案をつくられること自体について、まだ内容が十分わかりませんから、私はここで意見を言うことは差し控えますけれども、非常に重要であると思う。また国内法の他のいろいろな法案との競合関係もあろうと思うのです。あなた方の見通しとしては、いつごろまでにやられる見通しですか。
  45. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この国会にはもちろん間に合いません。
  46. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは私はこれで終わります。
  47. 愛知揆一

  48. 河野正

    河野(正)分科員 時間の制約も若干ございますから、要領よく何点かについてお尋ねを申し上げたいと思いますが、きょうお尋ねを申し上げようと思いまする趣旨は、終戦処理の問題についてでございます。御承知のように、過ぐる大戦というものは、われわれ国民に対しまして非常に多大の惨禍と犠牲をもたらしたものであります。軍人、軍属、準軍属、いろいろございますが、いずれにいたしましても、今度の戦争によって戦没した者、あるいは傷病を受けた者の数というものは二百万人をこえる、こういう実情であります。軍人、軍属、準軍属等が二百万でございますから、その遺族等関係者を含めますると、その犠牲者の総数というものは非常にばく大な数に達するということが考えられるわけであります。しかも、戦後二十年を経過したわけでございますから、本来からいいますならば、一切の戦争犠牲者の問題というものは解決しておらなければならぬということだと思いますけれども、しかし、なお未解決の問題も非常に多いわけです。その未解決の問題のあれもこれもというわけに時間の都合でまいりません。そこできょうは、終戦処理の中における未帰還者、まだ外地から帰ってこない、あるいはまたすでに戦没しながらその遺骨が返ってこない、こういうケースがあるわけでございますから、特にしぼって未帰還者の問題と遺骨処理の問題についてひとつお尋ねを申し上げたい、かように考えておるわけでございます。  そこで、これはいままで援護法その他の関係からいろいろ論議されたこともございます。しかし、今日残された問題の中では、外交上の問題として解決しなければならぬ問題が多々ございますので、そういう意味で今日の実情なり、また今日とっておられまする方針なり、そういうものについてひとつ大臣から御見解を承りたい。
  49. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 方針は、いずれ申し上げようと思っておりましたが、先に申し上げておきます。  未帰還者の大部分は、すでに現地に定着しておると認められる人ではないかと思います。しかし、その中にもやはり帰還したいという希望を持っておって、それが十分に政府のほうにはっきりわからない面もあるかと思います。希望を申し出ておる人に対しては、現地の公館においていろいろ連絡をとって、その希望にかなうようにやっておるのでございますけれども、なおそういう希望が十分に政府のほうに反映しないという面があるかもしれません。そういう点については、今後気をつけて注意してまいりたいと考えております。  遺骨の問題については、これはもう非常にむずかしい問題でありまして、十分に効果をあげたとはもちろん申し上げにくい状態であります。今後十分にその点については努力してまいりたいと考えます。  なお、詳細の経過につきましては、アジア局長からお答え申し上げます。
  50. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいま大臣の申されましたとおりでございます。私も現地に行っておりまして、まだ残留しております日本人が相当ございますけれども、この人たちは、現地に溶け込みまして、生活をそのまま続けていきたいという者が大部分でございます。中には帰りたいという者も出てまいります。そういう人たちにつきましては、帰還の手続をとりまして、あと援護その他は厚生省と連絡しております。  遺骨の問題につきましては、現在までマラヤ、シンガポール、ビルマ、フィリピン、インド、インドネシア等に厚生省から遺骨収集団を派遣いたしまして収集を行なっておりますけれども、何ぶんにも非常に広い現地でございますし、また戦争地域が特に僻地であったというようなこともございまして、もちろん全部の遺骨を収集するわけにはまいりません。収集しました数は、実際の遺骨に比べますれば非常に少ないわけでございますけれども、これにつきましては、計画ごとにできるだけ現実的に集中的に行なっていこうということでございます。今後の遺骨収集につきましては、厚生省等の意見を聞きまして、その資料に基づきまして、地点がきまりましたらば先方と折衝するということにしたいと思っております。
  51. 河野正

    河野(正)分科員 若干お答えはあったわけですけれども、たとえば中国、ソ連、これらについては、外交上の問題で非常に解決のむずかしい面があるやに承っております。そこでそういう点については、いままでしばしば言われておりますことは、赤十字ルートを通じていろいろ交渉あるいは解決の道がはかられてまいったということでございます。ところが、ずっといままでの経過を振り返ってみますと、ややもすれば政府よりも民間側のほう、いわゆる国民外交と申しますか、国民外交の筋によってこの問題の解決がはかられた、あるいは促進された、こういうケースが非常に多いようでございます。そこで、そういうような国民外交の強化なり推進によって解決されるケースが多いということのために、若干政府が力を抜くといいますか、この問題に対して熱意をなくすと申しますか、そういうような傾向が出てまいっておるのじゃないか。終戦処理はすみやかにやらなければならない。特に日本人の国民感情からいいましても、遺骨が返ってくる、あるいはまた生存した人がおりますならば、そういう生存した人が故国の土を踏む、そこに初めて国民感情としてほんとうに終戦処理ができた、こういう線が出てくると私は思うのです。ところが、いまも若干指摘いたしました、具体的に後ほど指摘いたしますけれども、この遺骨問題、あるいはまた未帰還者の問題等について、若干政府が熱意をなくしておるのじゃないか。すみやかにこの終戦処理を果たしていくというためには、もっと政府が熱意を持つべきではないか。こういうふうに考えるわけでございますが、その点、大臣いかがでございますか。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 遺族の心情等を察しますと、難きを征服してあくまでこれは収集につとめなければならぬと考えますが、十分の成果をあげていなかったことは、まことに遺憾でございます。その点につきましては、今後十分努力してまいりたい、こう考えております。
  53. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいまの大臣のお答えにさらに補足いたしますれば、御指摘のとおり、国民外交によってこういう問題を処理するという考えもあるわけでございまして、たとえば遺骨問題などは、特に宗教的なものがからみますものですから、ある部分におきましては、たとえば仏教の方が行かれまして感情を解きほぐすというようなところで役に立つことも、間々あるわけでございます。しかし、基本的には、こういう遺骨を収集して持ち帰るというような点は、やはり先方の政府の非常に明確な了解を得まして協力を得ませんとできない点でございますので、お手伝い願えるところは、私ども喜んでお手伝い願いますが、基本的には政府が正面に立って交渉し、計画を立てるということでいきたいと思っております。
  54. 河野正

    河野(正)分科員 いまお答えになったように、やはり基本的には政府が力を注いでやるべきであって、そして民間のいわゆる国民外交でいくということは従属的でなければならぬ。こういう基本方針でぜひ貫いてほしいと思いますが、その点——この間長く出かけてまいりましたが、最近の状況を見てみますと、やや欠ける点があるのではないかという感じがします。たとえば、戦後外地から復員あるいは帰国した者は大体六百三十万、こういうふうにいわれております。ところがなお八千五十七名、八千余りの人々が消息を断ったまま未帰還になっておる。中国は六千五十、ソ連は千島、樺太を含んで七百七十四、南方諸地域で八百五十五、北朝鮮が三百七十八、地区別に見ますとそういう状態でございます。ところがそこから先が問題でございますが、八千名余りの未帰還者が一応わかっておる。ところが、いまいろいろ民間、特に国民外交と申しますか、宗教団体その他の協力、あるいはまた今日日本に帰ってきた人たちの協力、そういう国民側の、民間の協力によって、なお未帰還者でございまする人々の消息がわかっておる点もございます。ところがなお四六%ということでございますから、約半数ですね。実数としては三千七百四名、これが生存しておることがはっきりしておる。ところが四千三百五十三名、この四千三百五十三名というものは生きておるか死んでおるかさっぱりわからぬという状態でございます。そうすると、民間の協力によって約半数近い三千七百名の方々の生存はわかっておるけれども、半数以上は全くわからぬ。これらの点について今後どういうお考えでその消息を確認しようと考えておられるか、その方策がございましたら、ひとつお聞かせを願いたい。これは遺族にかわって申し上げます。
  55. 小川平四郎

    ○小川政府委員 先ほど、私ちょっと御質問の趣旨を取り違えたと思いますけれども、主として南方地域の遺骨収集につきまして申し上げた次第でございます。  ただいま御指摘のありました生存者、あるいは行方不明者の数等につきましては、御指摘のとおり大部分が中国でございまして、南方その他のわが国が外交的に話のできるところの地域の人たちは比較的少ないわけでございまして、主として中国の問題になってくる。この数字につきましては、実は厚生省の引揚援護局の調査によるものと思いますが、私も正確な数字を持っておりませんが、ただいま御指摘のとおり大体生存あるいは死亡の不明者と、それから生存が確実になっておる者が分かれておると思います。それも両方とも大部分が中国であろうと思います。中国につきましては、直接私どもがすることはなかなかできませんので、従来も日赤あるいはその他の個人的なルートでいろいろ中共側に資料の提出その他を求めておるわけでございます。過去におきまして一回政府におきましても直接に中共の出先にこの問題を依頼したことがございましたけれども、そのときには何らの効果も見ませんでした。したがいまして、外交関係のあるところにつきましては、私どもが直接にいろいろ資料その他を提示いたしまして促進をはかりますが、外交関係のない地区につきましては、やはり日赤その他の民間の力に依頼することが第一であるというふうに考えております。
  56. 河野正

    河野(正)分科員 南方が少ないというのは、もともと行った数が少ないわけですね。ですから、数が少ないからということで軽視するわけにはいかない。パーセンテージは低いわけではない。中国の場合は、行った数が多いわけですから、残っておる数も多い。こういうことですから、南方の未帰還者の数が絶対数が少ないからということで軽視することはできないということは、これは当然のことだと思うのです。  そこで私は、やはり国民外交というか、民間の協力によってかなりそういう情勢というものはつかめておるわけですから、むしろ政府がそれにまかせるのではなくて、政府の指導のもとにさらに一そう民間外交の実があがるように力を注ぐべきではないか、私はこういうふうに考える。要するに協力するから協力を受けるということではなくて、一そう協力を強化していくという努力をして、やはりこの消息不明の人の消息を早くつかむ、そうして終戦処理の幕を引くということを早急にやることが望ましいというふうに考えるわけです。そういう意味では、民間の協力の実があがってきたということでございますから、この際やはりこの問題を一刻も早く処理する意味において、民間協力をさらに一そうやってもらうという措置をとるべきだと思うのですが、その点、大臣、いかがでございますか。
  57. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お説のとおり、中共との関係は御存じのとおりの状況でございますので、日赤等を動かして、その力によってできるだけこの方面に力を注いでまいらなければならないと考えております。また南方のほうは数が少ないからといって別に軽んじておるわけではないのでございまして、今後この点は政府といたしまして十分力を尽くしたいと考えております。
  58. 河野正

    河野(正)分科員 この点は、単にことばで民間の協力をさらに強化していきたいということだけでなくて、やはり財政上の問題が伴うわけです。伴わなければ、これはただ精神的に協力協力ではどうにもならないことであって、私がこういうことをお尋ねしておるのには根拠があるわけなんです。最近の未帰還者の問題、あるいは遺骨の問題の処理について、いろいろ振り返ってみますと、もう政府は熱意がないので、とるに足らない、そこで民間の手によってやるべきだというようなことで、民間人が独自の立場でこの問題の処理に当たるという一つの傾向が出てきた。やはり戦争の責任は国にあるわけですから、民間がやることもけっこうですけれども、やはりその責任は国が持たなければならない。ですから、民間がやるとするならば、この民間の運動に対して、やはり国が財政上も助成措置をやる、こういう方針が私は望ましいという意味でお尋ねをしておるわけです。その点についてひとつ。
  59. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 未帰還者の問題については、厚生省において予算措置等をとっておるわけでありますから、厚生省のほうからひとつ。
  60. 河野正

    河野(正)分科員 その点は、厚生省が持っておられることは私は承知しておるわけです。ですけれども、そういう現状ではこの事態の早期解決は非常に困難な見通しでございますから、そこでやはり外交上の問題として、外務大臣からも極力その面に対する配慮というものが必要じゃないか、こういうことを私は申し上げているのです。これは遺骨収集その他で厚生省が予算を盛っているのは知っているのです。それは知っていますけれども、これでは問題があるということで、民間が、もうわれわれ独自の手でやるのだ、こういう運動が次々と具体的に出てきているわけです。やはり終戦処理というものは国の責任でやるべきだ。民間が協力することはけっこうですけれども、民間が政府の前に出ていくというよりも、私はやはり政府が前に出て民間の協力を得るということが望ましい方向だ、そういう意味で大臣も今後ひとつ温情ある措置といいますか、血の通った措置を施してほしい、こういう意味で申し上げておりますので、そういう意味でお答えを願いたい。
  61. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 特別に外務省においてさような予算措置をとっておりませんので、まことに申しわけないのでありますが、しかし、外務省の認められた範囲のあらゆる力を動員いたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  62. 河野正

    河野(正)分科員 一つ具体的な例についてお尋ねするわけですが、一昨々年の暮れ、グアム島でもと日本兵が出たというようなことで、この当時厚生大臣にいろいろお尋ねした経緯がございます。ところがその後、アメリカの元太平洋信託統治の高等弁務官でございますホセ・A・ペニテスという人が、この太平洋の島々には、グアム島だけじゃなくて、グアム島以外にもたくさんな生き残りの日本兵がおる、こういう発表をいたしておるわけです。特にこの信託統治領の中のパラオ諸島等におきましては、多数のもと日本兵が残っておる、こういうことを高等弁務官が談話として発表しておる。グアム島の場合は、これは政府からも捜索隊が出たが、そのほかにたくさん残っておる、こういう情報があるわけですが、この点について御承知でございますならば、ひとつお聞かせをいただきたい。
  63. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘のグアム島以外の諸島における日本人の生存者については、的確な資料がございません。厚生省にもないようです。
  64. 河野正

    河野(正)分科員 これは新聞でも報道されたわけですけれども、この信託統治のアメリカの高等弁務官の談話等については、その真相を問い合わせるとか等の措置は当時とられなかったものかどうか、そういう報道は単にうわさだという程度で黙殺されておったのかどうか。これは遺族にとってもたいへんなことだと思うのです。この辺はいかがですか。
  65. 安川壯

    ○安川政府委員 当時のことは、私自身はちょっとその職におりませんでしたので承知しておりませんが、調べてみます。
  66. 河野正

    河野(正)分科員 簡単に調べてみますなんていまおっしゃるけれども、やはり遺族の方々にとってはたいへんな問題だと思うのです。おぼれる者はわらをもつかむの心境ですから、そういう新聞報道をなされれば、あるいは自分の家族が、自分のむすこが南太平洋の諸島において生き残っておるのじゃなかろうか、こういう切実な感情を持っておられると思うのです。それが一年も二年も経た今日、全然知らぬで、いまから調べてみようということでは、遺族は浮かばれぬと思うのです。もちろんその高等弁務官の談話が真相を伝えておるかどうか、それは別として、いやしくもそういう情報が新聞にも報道されておるわけですから、その真偽のほどについてぐらいの調査については、私は当然行なわれておるべきだと思うのです。それが私はその遺族なり戦争犠牲者にこたえるゆえんだと思うのです。ところが、私どもでさえそういう新聞記事について非常に重大な関心を持っておるのに、戦争を起こした国が、政府が全然そういう報道について無関心である、あるいは放任しておる、そういうことは、人道上許されませんよ。それは、その消息が誤っておるならば誤っておるでけっこうですよ。それは誤報ということもございましょう。あるいはまた誤って伝えられたということもございましょう。それはそれでけっこうだと思います。しかし、そういう報道というものは、遺族にとってはわらをもつかむ心境でしょう。これは船の遭難が起こってもそうです。自分の子供だけは生き残っておるのじゃなかろうかと思う。今度の全日空の事故でも同じことだと思うのです。それを外務省が、そういう大々的に報道された新聞記事についても全然無関心でおられるということは、まことに遺族にとって申しわけないことだと思います。この点、大臣いかがですか。
  67. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、全く遺族にとっては、あるいは生存しておるかもしれぬという希望的な期待と申しますか、そういうものを持つのは当然でございます。それにこたえる意味でも十分に真相を究明する必要があると思いますので、できるだけのことをいたしたいと思います。
  68. 河野正

    河野(正)分科員 そこで、戦後二十年を経ましたので、その未帰還者の家族あるいは戦没者の遺家族からはいろいろな不満というものが出てまいっておると思うのです。これは私どもはしょっちゅう聞かされるのです。そこで、なるほど政府も——特にこれは厚生省関係で、私も社会労働委員ですから、厚生省関係はその方面でお尋ねする機会がございますから、きょうは特に外務大臣の御見解を承って、外務大臣の御協力をいただこうということで建設的に申し上げているわけですが、戦後歳月がたってきたものですから、いろいろ国民の中にもあせりがある、遺家族の中にもあせりがあると思うのです。もうこの辺でという気持ちが出てまいりますのは、これは当然な感情だと思うのです。  そこで、いまから二、三具体的な問題についてお伺いをしたいと思うわけですが、この太平洋で特に激戦地といわれたサイパン、ペリリュー、アンガウル、こういうところには政府の慰霊団が渡って、そうしてすでに遺骨を収集する収骨作業というものが終了したということになっておるわけです。ところが、最近、太平洋戦史研究家でございます児島襄氏という人があちらのほうを回った。これは、仏教界でもそういう意見があるわけですけれども、あちこち回って原住民からいろいろ意見も聞くし、現地も見てきた。ところが、もうすでに収骨作業が済んだといわれておる南太平洋においても、いま申し上げたように、サイパン、ペリリュー、アンガウル、こういう島々においては、なお多数の遺骨と遺品が散乱をしておる、こういう状態をまのあたりに見てきて、これは全く人道上の問題だというようなことが言われるわけです。これは、さっきもちょっと大臣からもお答えがありましたように、たとえば治安が悪い、あるいはまた主として戦争が行なわれた。これは後ほど申し上げまするけれども、非常に奥地のためになかなか遺骨収集が困難だというようなところもあると思うのです。ところが太平洋戦史研究家が現地に行ってみると、まのあたりで見えるところに遺骨なり遺品というものが散乱しておる、こういう事実が報告をされておるわけですが、こういう点についてどういうふうにお考えになりまするか、ひとつ率直にお聞かせいただきたい。
  69. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう遺骨あるいは遺品が散乱しておるというような状況を現に目で見てきたというような事態がある以上は、これは一応遺骨収集が終わったといいましても、これはもちろん完全に終わったわけじゃないのでありますから、よくそういう点を的確に確かめまして、必要な措置をとるように外務省にしても協力したいと思っております。
  70. 河野正

    河野(正)分科員 これは厚生省にもお伺いをしたいと思いますが、そういう報告がなされた。したがって、国民側においては、政府の手で慰霊団が派遣されたが、政府の慰霊団というものは、一体現地で何をやってきたんだというふうな不平なり不満というものが現在国民の側から非常に強く出てきておる、こういう事実があります。ですから、とにかく政府というものが、これはもう最終責任があるわけですから、したがって、極端にいえば一人の未帰還者もない、一体の遺骨も現地に残っておらぬ、こういうところまでやって初めて終戦処理というものが完結できるというように私どもは考えておるわけです。ところがいま言うように、これはもう奥地だとか、あるいは治安が悪いということは別ですよ、これは別としても、いま一戦史研究家が現地に行ってみても、ごろごろ残っていたということになると、国民側としては、感情的にも、一体政府はやったというけれども、何をやったんだ、こういう感情が残っておりますし、そういう不平、不満というものがあり、現在これは戦後二十一年になったものですから、国民の側、遺族の側にも非常にあせりがあると思うのです、もうこの辺でという気持がありますから。  そこで、私どもはこの問題と長い間取り組んでまいりましたが、最近ではそういう声というものが非常に強まっておる、こういうことでございますが、その点について、いま外務省はさらに努力するとおっしゃっているが、厚生省は一体どういうお考えであるか、率直に聞かせていただきたい。
  71. 実本博次

    ○実本政府委員 先先のお話のように、遺骨収集につきましては、戦後二十年以上たちますし、一応政府といたしましては、講和発効後、二十八年以降、五カ年計画で遺骨収集を政府の責任において全戦域にわたって行ないました。ただ何ぶんにも非常に広範な地域に非常に数多い戦没者が眠っておられますので、なかなか先生のおっしゃったように、もうすみずみまで全部一骨も残らないようにしてしまう、収集して内地の遺族にお届けするということ、理想的にはそうすべきでございますが、なかなかそういった面まで、物理的に非常に努力いたしましても不可能な面がございます。ただ、いま先生のおっしゃったような、一応は済んではおりますが、なお特にこういう地域についてはこういった数多い遺骨がそのままにさらされているじゃないかというふうな的確な情報がまいりました部分につきましては、政府といたしましては、先ほど外務大臣からもお答えがございましたが、政府の責任においてそういうところへ再度収集なり慰霊に参るというふうなことにいたしまして、とりあえず来年度、四十一年度は、そういう情報の入っておりますところのうちから、大体いまの予定といたしましてはペリリュー島とそれからニューカレドニアのほう、そういったところにつきまして、政府からの遺骨収集団を派遣するというふうな事業予算を計上いたしておるような次第でございます。なお、そういった意味での御注意なり情報収集がある程度のものが出てまいりますれば、またそういった意味での処理を今後も続けてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  72. 河野正

    河野(正)分科員 私はやはり建設的に申し上げているわけですから、無理なことは申し上げません。そこで、非常に治安が悪い、あるいは奥地である、あるいは戦後二十数年たっているわけですから遺骨が風化をしておる、そういうことでなかなか遺骨収集がむずかしいという点について私どもは了解をしておるわけです。ところが、現実にいまのような情報があって、収集が可能だというような材料なり情報というものが提供されておるということになると、遺家族にとってはやはりなかなか満足のできぬ面が出てまいろうと思うのです。そういう意味で私は申し上げておるのですから、その点、さらにひとつ努力を願いたい。  そこで、もう一つ具体的な例をあげておきたいと思います。私もフィリピンに行っておったわけですが、フィリピンは大体六十三万の将兵が派遣されておった。しかも四十七万が戦没をした。こういうことなんです。フィリピンもこれは群島ですから、あちらこちらばらまかれて軍隊が駐屯しておった、あちらこちらで戦争が続けられた、こういう実情なんです。ところがそのうちルソン島だけで約二十万というふうにいわれておる。政府は、いま局長が御報告になったように、五カ年計画の最終年、三十三年にフィリピンにおいても遺骨収集団が現地に派遣された。ところが実際収集をいたしました遺骨数というものは二千五百六十一体ですね。四十七万の将兵が戦没をして、若干決戦前に帰ってきた者もあると思うのですけれども、政府の派遣した遺骨収集団の収骨作業の結果というものが二千五百六十一体、こういうていたらくでは、実は私ども現地の事情を知っておりますから、こんなことでいいんだろうかという、遺族の方々の心情というものが目に浮かんでくるようです。ですから、これは関連でまた申し上げますが、さらに情報があったならばというようなことでございますけれども、こういう実態についてどういうふうにお考えになっておるのか。これは、特にあとで私は申し上げますけれども、大臣もちょっと聞いていただきたい。こういう実態について、いわゆる出先、フィリピンの大使館がございますが、その出先においては今日どういう作業をやっておるのか、これは、ひとつ大臣からも御見解を承っておきたい、こういうように思います。
  73. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはどうもあまりに実績があがらない数字だと思いますが、こういう問題については、なおフィリピン政府とも十分に了解をつけて、さらにこの方面に一段と成果のあがるような方策をとらなければならぬ、こう考える次第でございます。
  74. 実本博次

    ○実本政府委員 先生のいま御指摘の、フィリピンのケースでございますが、それを例にとりますと、三十三年に実施いたしまして、御指摘のように御遺骨を二千五百六十一体おおさめしたわけでございます。それから約十年もたってまいっておりますが、今後やはりこういう遺骨収集の仕事をやります場合に、やはり遺骨収集団だけがそのときに行って集めてまいるというようなことは、もちろんそれが中心になりますが、外務省その他の御協力を得まして、また相手国の御協力を得て、事前にいろいろな情報を提供していただくなり、あるいはその辺の事前工作を十分していただきまして、今後やります場合につきましては、もっと成果のあがるようなやり方をやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  75. 河野正

    河野(正)分科員 答弁を求めますと、非常にりっぱな答弁をなさるわけですけれども、現実にどういう状態に置かれておるかということを私は一例をあげて申し上げます。  これは援護局の調査課長の談話によりますと、当時の陸海軍の分布状態から遺骨の存在場所は大まかにつかんでおる、しかしながら、最近では風化をしたり、いろいろ交通が不便であるとか、そういうことで収集がしにくいものが残っておる、その他これには非常にばく大な経費がかかる、巨費がかかるという表現ですが、そこで、今後は政府としてはやらぬ方針だ、こういうことを援護局の大野調査課長は新聞談話で発表しておる。これは、ばく大な金がかかるからやらぬのだという。一体戦争を起こしたのはだれですか。政府でしょう。戦争にはばく大な金をかけてやりながら、国民にはばく大な被害をこうむらせながら、犠牲をしいながら、今度は遺骨があっても収集しにくい、たくさんの金がかかる、だからやらぬのだ。これは大臣の答弁、あなたの答弁を聞いても全く矛盾しています。あなた方は委員会では適当な答弁をなさるけれども、実際衝に当たる課長というものはそう認識をしておる。こういうことで国民に申しわけが立ちますか。こういうふうに直接の担当者というものはそういう認識をしておるわけですよ。ここで大臣や局長からりっぱな答弁をいただいても、当事者である課長がこういう談話を発表するということでは、私どもは満足いたしません。そういうことでは絶対にないのだ、そういう課長に対しては厳重に処置するというくらいのことをここで言明していただかないと、いまの大臣やら局長の答弁では、はい、そうですかと下がるわけにはいきませんよ。これはいかがですか。
  76. 実本博次

    ○実本政府委員 一応先生のいろいろなお話がございまして、政府といたしましても、そういった長年各方面から要望されておりました南方地域におきます遺骨収集の事業予算化されましたことで実施していきます場合に、いろいろないままでの御注意、あるいはわれわれのほうでいままで御指摘のようなことがありましたとすれば、そういった意味での態度を改めさせまして、そしてせっかくやりますチャンスが与えられる場合には、そういったおしかりを受けないようなやり方をやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  77. 河野正

    河野(正)分科員 これはチャンスが与えられるのじゃなくて、チャンスをつくる責任があるわけなんですよ。そういう姿勢に私は問題があると思う。  それから、私は現地フィリピンに行ってまいりました。それで、大使館の皆さんといろいろお話をしたわけですけれども、ざっくばらんに言って、外務省に熱意があるというふうな印象を受けなかったわけです。そこで、最近ではもう政府はとるに足らぬ、民間でやろうじゃないか、こういう声が出てまいっております。私は、それはそれでけっこうですけれども、しかし、終戦処理の責任というものは政府にあるわけですから、やはり政府が前面に出るべきであって、そして、これに対して国民が十分に御協力なさるというならば協力を受ける、こういう姿勢でなければならぬということは、これは当然だと思う。  そこで私は、これは新聞記事ですから、それがそのとおりかどうかわかりませんけれども、たとえばある人が最近フィリピンに参りまして、そして、この遺骨の分布状態その他についてはフィリピンの大統領が非常に協力的であるから、そこでよく打ち合わせをして、その資料に基づいて四月、五月ころまでにはたくさんある遺骨を収集して帰ってきたい、こういうことを新聞に語っておられる。私は、それは個人でおいでになって、そしてできるだけ国民の立場から遺骨を収集しようということについて政府に御協力なさるのはけっこうですけれども、しかし、政府との打ち合わせなり交渉というものは個人でやるべきではなく、やはり政府がやるべき筋合いじゃないかと思います。ですけれども、こういう意見が具体的に出てきておるということは、ことばをかえて申し上げますと、やはり政府に熱意が足りぬということに私は尽きると思う。ですから、政府間の交渉というものはやはり政府がやるべきであって、民間でやるべきではない。これは、中国のごとく外交権がないということになりますと、赤十字社のルートを使うとか、あるいは民間の外交ルートを使うというようなことになりましょう。ですけれども、国交が回復しておる地域についてはやはり政府がやるべきであって、その資料に基づいて民間がやるならやるということでけっこうですけれども、政府におやりになる御意思があるのか、熱意があるのかないのか私は知りません。知りませんけれども、もうすでに国民の側からそういう意見が出てきておる。これはまことに申しわけないことだと思います。ですから、私は、この際政府がもう一ぺん反省していただいて、そうしてもう戦後二十一年になることですから、終戦処理については格段の努力をしていただく、特に援護問題については厚生省が前面に出てきていただきたいという期待がございますけれども、国内の問題についてはそれでけっこうです。しかし、遺骨の収集、あるいは夫帰還者の問題等についてはやはり外交上の問題ですから、外務大臣が先頭に立って、それに厚生省が一体となって協力する、そのことによって初めてこの問題の早急な解決があり得る、こういうふうに私は確信を持っております。例はたくさんございます。長年私はこの問題に取りかかってまいりましたからたくさんございますが、ひとつ遺族のためにも国民のためにも、この終戦処理というものが一日も早く完結するように、そういう立場から今後大臣も厚生省も一体となって最大の努力をしていただく。私は具体的に二、三例を取り上げて申しましたが、そういう国民の不満をかわって申し上げて、そして、今後の善処をお願いしたいと思いますが、その点について大臣からも厚生省からもそれぞれ御見解をお聞かせいただきたい、かように思います。
  78. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまお話しのうちにあった、大統領がこの問題に対して協力をするという姿勢を示しておるということは、非常に力強いことだと思います。厚生大臣と必ず十分に協議をいたしまして、そして、その上で出先の大使を通じて十分なフィリピン政府の了解あるいは協力というものを求めまして、できるだけの手を尽くしたい、こう考えております。
  79. 実本博次

    ○実本政府委員 あくまで遺骨の収集につきましては政府の責任において行なうことが原則でございまして、もし民間に御協力をいただくことにいたしましても、その大筋なり根本問題は政府間で話し合いをして進めてまいるというふうに処理していきたいと思います。
  80. 愛知揆一

    愛知主査 それでは小林進君。
  81. 小林進

    小林分科員 私は大臣に数点についてお伺いをいたしたいと思います。初めは処女のごとく、あとは脱兎のごとしというようにまいりますから……。  まず、ひとつやわらかいところからお伺いをいたしたいと思うのであります。ことしの一月十六日に大臣はソ連を訪問されました。航空協定やら経済、貿易の問題等についてそれぞれお話をなされてきたようでありますが、その中で、日ソの領事館協定を促進をしようではないかという話し合いもあったかに聞いておりまして、その後、この話が相当に具体化しているということでございますが、現在まではどういう進行状態を続けておるのか、お聞かせを願いたいと思うのであります
  82. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日ソの領事条約の話は、昨年の十月からモスクワで協議が行なわれております。非常に順調な進行状況でございまして、一、二カ月の間に大体最終の結論に到達するのではないか、こう考えております。
  83. 小林進

    小林分科員 一、二カ月の間で最終の結論が出るということになりますと、その間に相互に設置せられる場所がまず定められなければならないと思うのでございますが、彼我両国で予定せられております領事館でありますか、総領事館でありますか、その資格の問題もあわせて、総領事館ならば総領事館、領事館ならば領事館の予定候補地がどこであるかをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  84. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 領事館とか総領事館の設置は、領事条約ができ上がった後に、具体的にどこそこへつくるというようなことが進行するわけであります。いまのところ、まず条約をつくろうというのでやっておるわけであります。
  85. 小林進

    小林分科員 どうもあなたのお話は、いつも半分まじめで半分とぼけているようで、どうも私ども、あなたに半分からかわれているような気がしてしかたがないのでありますけれども、大臣、ひとつ、だれが聞いても大臣はまじめな返答をしているというように、相手に誠実の映るような答弁をしていただきたいと思うのでございまして、私どもの聞いた情報によれば、昨年の十月から話を進められておる。最初は相互に三カ所ばかりひとつ設置をしようじゃないかという話があった。ところがその話の過程において、三カ所というものが一カ所にしぼられた。領事館というのを総領事館にいたしまして、日本の適当な場所に一カ所、ソ連の適当な場所に一カ所、こういうふうに話が固められてきておりまして、もはや日本政府がソ連側に設置をいたします場所はやや確定をいたしておるかに承っております。ソ連側が日本に設置をいたしますその場所については、外務省筋の希望個所があるそうでありますけれども、まだ最終決定には至っていないという話です。こういうところまで私どもは情報をキャッチいたしておるのであります。これが間違いなら間違いでよろしい。事実なら事実、私どもの知る範囲以外に、いま少し誠実なる答弁を大臣はしていただかなければならない。笑いごとじゃありません。あなた、そう言うとにやっと笑うけれども、笑いごとじゃありません。委員長、まじめに答弁をするように言ってください。
  86. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私はまじめに答弁しておるわけでございますから、誤解のないように……。いま申し上げたように、条約成立後に具体的に領事館設置の場所等については相談をして確定する、こういうことだと思います。場所については、まだいまのところは両方で相談をしておりません。
  87. 小林進

    小林分科員 確定は条約交換文書の調印後でよろしいけれども、候補地というものはもうわかって、相当に進行しているはずでありますが、大臣、それをお聞かせ願いたいのであります。候補地です。
  88. 北原秀雄

    ○北原政府委員 大臣より御答弁のとおり、ソ連側とは事件についてまだ具体的な折衝に入っておりません。ただ予定されます設置の時期との関係がございまして、本国会に外務省設置法の改正案を提出いたしておりますが、その中では、日本側としては一応ナホトカを予定いたしまして、設置法が通りました際には、ソ連との折衝を条件として、われわれはそれを確定するという方針でおります。
  89. 小林進

    小林分科員 それで若干話が具体化して、その程度にお答えいただかなければ、やはりわれわれもここまで来て質問したかいがない。  そこで、日本の領事館の設置場所はナホトカを予定して、その考え方で設置法の改正を国会に提出せられておる。かわりにソ連側は、それの対抗上の場所として日本に予定せられている場所は一体どこか、これもあわせてお聞かせ願いたい。
  90. 北原秀雄

    ○北原政府委員 ソ連側とは正式の話し合いに入っておりません。その意味で、私どもはいまだに先方のしかとした意向は承知しておりません。
  91. 小林進

    小林分科員 こればかりに時間をとるわけにいきませんから、そのものずばりで言いますが、外務省のほうでは、何か大阪にソ連側は設置することを希望していられるやに聞いておりますが、この点はいかがでしょう。
  92. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、あくまで設置するほうの希望に基づいてきめるべき性質のものでございまして、こっちがどこそこへ設置しろと言うのは筋違いである。向こうのほうがどこを希望するか、まずそれをよく聞いて、そして差しつかえない限りにおいてはその希望を達成するように話をまとめていく、こういうわけであります。
  93. 小林進

    小林分科員 それで大体お話もよくわかりました。いま私どもの情報では、ソ連側はまだ積極的に希望候補地を日本側に通告してこられるまでには至ってない。日本政府のほうは何か大阪を予定していられるということを伝えられているから、それでお尋ねした。同時にこの際つけ加えておきたいことは、日本の希望予定地はナホトカだ。ナホトカというのは日本海の対岸でございまして、あすこは人口十万前後でございましょう。そういうところへ日本の総領事館が設置をされて、今度は相手の設置の場所がもしかりに大阪とするならば、大阪というのは日本第二の都会でございまして、ソ連で言えばまずレニングラード。御承知のとおり数年前には、大阪とレニングラードがひとつ姉妹都市の約束をしようじゃないかという話が持ち上がりましたが、当時は政府が反対をいたしまして立ち消えになったようであります。こういう国際間においては相手国の希望を第一にいたしまして、こちらの事情を申し添えるというかっこうになりましょうけれども、おのずから国際間の均衡というものが保たれなければならないと思うのでございまして、片方がナホトカなどというソ連国内における百番目か三百番目かの沿岸の小都市に領事館を設置したにもかかわらず、日本がレニングラードに相匹敵すべき大阪を領事館の候補地に提供したなどというようなことは、これはどうも国際慣行、国際均衡の面からいっても少しおかしいじゃないか、私はこう考えておる。幸いにして外務省のほうにそういうようなお考えがないというならば、私はそれでよろしい。  それから第二番目には、国内における候補地は適当でなければいかぬ。相手がナホトカならば、やはりそれに相対峙して最も近距離にある、日本で言えば北陸一帯の一番近いところから適当な候補地を選ぶ、これくらいの配慮が外務省になくてはいかぬと思いますが、この点はいかがでしょう。大臣、私の申し上げているところに無理がございましょうか。
  94. 北原秀雄

    ○北原政府委員 日ソ間将来の総領事館設置の場所につきましては、これは相当現在から近い将来、すなわち数年間のお互いの領事館設置の必要の度合い、意義というものと同時に、でき得れば五年、十年先の日ソ間のあらゆる経済、文化交流等の観点をもすべて勘案いたしまして、そこで双方の希望に従いまして、両政府間の話し合いによってきめるということになるわけでございます。もともとこの話を始めます前に、私どもといたしましては政府部内で広く見解をまとめまして、その上でソ連側との折衝に入るつもりでおります。全部の数がはたして一つになるのか二つになるのか、あるいは三つになるのか、そういう点につきましても、全くこれは両政府間でまだ話しておりませんので、御質問の趣旨に対しましては、現在われわれの設置法に出しましたナホトカというのは、近い将来におきましては、日本側の立場から見ました場合にはナホトカが一等緊急の必要があるという趣旨でございます。
  95. 小林進

    小林分科員 あなたの御説明で一カ所にしぼったということも、どうもいまのお話では一カ所ではなしに、まだ二カ所、三カ所も可能性があるということでございます。それはそれでけっこうでございまするが、日本から見たソ連の候補地がナホトカということになれば、やはりその対岸、あなたたち外務省から見た日本国内における適地というものも、おのずからそこに限定せられなければならないと思う。ナホトカまで行くのに五十九時間かかって大阪の港を出ていくのか。一番近い、たとえば新潟港なんというのは一衣帯水で、さっとナホトカまで行ける。この新潟港が適地であるかどうか、これは言わずしておのずから明らかでありましょう。そういうところを十分御勘案あって、一、二、三と候補地がある場合にはまた何をか言わんやでありますけれども、やはりその候補地の第一位は新潟である、これは私は地域代表として言うわけではない。全国民的な視野において勘案すると、明らかに新潟が一番の候補地と思いまするので、この点はひとつ十分大臣御勘案をいただきまして、この国会における論議を特に尊重していただきたいと思うのでございまするが、尊重の御意思ありやなしや、承っておきたいと思うのであります。
  96. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはやはりソ連の御意思を一番尊重しなければいけない。(小林分科員「その次は」と呼ぶ)その次といっても、大体ソ連の意思を尊重して、差しつかえない程度においてその希望に沿う、こういうことであります。
  97. 小林進

    小林分科員 まあ私は陳情ではございませんので、これはひとつ国会の場において、国民の立場から適当なる候補地を私みずから推薦をいたしまして論議をしたわけでございます。また陳情の必要ある場合には、これはあらためて暮夜粛然とあなたのお宅を訪問することもあると思いますから、その節はどうぞよろしく……。これはひとつ正々堂々と議論をして、よきものをよしとし、あしきものをあしとせよという行政官庁に対する正義の要望でありますので、この点はひとつ十分御勘案をいただきたい。  次に、私は非常にたくさんの質問がありまするが、まずお伺いしたいことは、きょうも委員会の週報等を見ましたら、外務委員会でも若干論議をせられておるようでございまするので、重複を避けたいと思うのでございまするが、どうしてもお伺いしておきたいのは、ソ連の日本に対する抗議書の問題です。これはあなたがソ連に行かれない前の話ならともかく、一月十六日から二十数日まで滞在をせられて、何か両者のほうで非常に意気投合したかのようなお話があるにもかかわらず、あなたが日本に帰ってこられてまだ一カ月もたたないうちに、クズネツォフ・ソ連第一外務次官が中川駐ソ大使に対して、対日抗議書というものを出しておられる。その第一は、日本政府は再三ベトナム問題の正常化に努力する用意があると言明をしておきながら、——この言明というのは、あなたが訪ソされたときに、直接向こうの外務大臣にもお話ししたことをさしているのだと私は思う。そういうことを言明しておきながら、最近は米軍の兵たん基地として、かえって米国の侵略拡大に努力をしておるではないか、こういう攻撃をいたしておるわけであります。その具体的な論拠として、米国のベトナム侵略拡大に日本の領土、工業、人的資源を利用せしめているではないか。明解な攻撃であります。第二番目には、ベトナム問題解決のためのジュネーブ協定、北ベトナムの提案、ベトコンの計画を基礎において日本の影響力を行使すべきであるにもかかわらず、これに対して日本の政府はただアメリカの核のかさの下に入って、アメリカの代理店みたいなまねばかりしていて、いささかも日本政府独自の見解を明らかにしようとはしない、こういうようなことを言っておりまするし、日本はアメリカのベトナム人民に対する侵略の終結、さらにジュネーブ協定の厳格な尊重、同協定に完全に合致する北ベトナム政府の提案及び南ベトナム民族解放戦線の綱領に基づくベトナム問題解決等にその影響力を行使することができる立場にあるにもかかわらず、それをやらない。しかるのみなず、日本は、米国が一月末に再開した北ベトナムに対する野蛮な爆撃を非難しなかったばかりか、橋本官房長官が一月三十一日に行なった声明から判断すると、日本の政府は、この行為、アメリカの北ベトナム爆撃の再開を正当化しようとさえしている、こういう非難をしているのでありますが、一体あなたはソ連に行かれて何の話をしてこられたのですか。外務委員会で報告されたようでありますが、この問題に限定をしてお聞かせを願いたいと思うのです。
  98. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日ソ航空協定と貿易協定の調印、それから、その機会に、両国の関心のある国際問題、あるいは日ソ間の懸案問題、これらの問題について話し合ったわけであります。両国の関心を有する問題の中には、ベトナムに関する問題もある。これは、アメリカの北爆停止とその後における和平工作というものがきわめて熱意のこもったものであって、アメリカの真意は終局はそこにあるということがわかった、ついては、戦争は、一人で戦争しておるわけじゃない、北ベトナム及びこれに連なるベトコン、これの側においても、武器をおいて、そしてすみやかに和平の会談に入ることが残された唯一の問題である、であるからして、ベトナムに影響力のあるソ連として、ぜひそういう影響力を行使して、アメリカの和平工作に対応して、戦争行為をやめるというふうにひとつ指導してもらいたい、こう言ったのです。これはもちろん日本の独自の立場において言うのであって、アメリカの依頼とか、そういう趣旨のものではもちろんない。日本はとにかく極東の一国であって、東南アジアがああいうふうに戦乱のちまたになっておるということは、日本としては、政治的にも経済的にもあらゆる面において非常に不利である、であるからして、独自の立場から、和平を持ち来たすように、ソ連の影響力をひとつ行使してもらいたい、こういうことを言ったのであります。これに対してソ連側は、われわれの判断では、アメリカはあくまで侵略をやっておる、侵略戦争だ、だからして、一番いいことは、あの侵略をやめて軍隊を撤退することだ、こう言っておった。それから、私はそれに対して、日本の見解は違う、しかし、この問題についていま議論しに来たのではないので、とにかくああいう状態に置くということは、特殊の国は非常に利益を感じているかもしれぬが、あとの国は全部やめたほうがいい、戦争は収拾すべきだ、その収拾すべきだという立場にソ連自身もお立ちになっているのじゃないかと思う、あれをやって利益を感じておられるというようなことはないと思う、それならばひとつ和平を持ち来たすようにソ連としても努力すべきではないか、こういうふうに話したのですが、ソ連としては、アメリカのあれは一方的侵略である。しかし、私のほうはそういう見解はとらない。だけれども、ここでお互いに議論することは、時間もないからやめておく、ただああいう戦争状態をやめて、そして平和な話し合いというものに入るという、そのことについてだけひとつ取り上げようじゃないか、それについてはお互い共通な立場に立っておるはずだ、こう言って私は主張したわけであります。結局ソ連は、調停の立場にないということを言いました。それからまた、なお直接北ベトナムあるいはベトコンというものとアメリカと話し合いしたらいいじゃないか、まず両方で話し合うことだ、こういうようなことでありました。  以上のようなことでございまして、何も行って、すべてソ連の主張も日本の主張もお互いもうやらないで、ただ仲よくいこうというような、そういう話し合いをしたわけじゃない。やっぱり折り目切り目はちゃんとつけて、両方の立場は立場として——ですから、こういったようなことをソ連が言ってくることに対して、一向私はふしぎだとは思わない、しょっちゅうこういうことを言ってきているのですから。これに対して、ソ連は少し思い違いをしている節が多分にある。日本は別にベトナムの戦争で、アメリカの軍事行動に特に力をかして、そして軍事行動の仲間に入っておるというようなことを言われる覚えは一つもない。日米安保条約というものによって、日本に基地を持っておる。それから物の買い付け、これなんかも、これは商売上の問題であります。何を買おうと差しつかえない。それを韓国に運んでいるのか、フィリピンに運んでいるのか、あるいは沖繩に持っていくのか、ベトナムに持っていくのか、それはわからない。しかし、とにかく兵器弾薬は入っていないことは確かであります。弾薬は、日本の製造能力は自衛隊の分をみなまかなうにも足りない。それから、その他の殺戮兵器というものは日本ではつくっておりません。これは法律上からいうと一向差しつかえない。差しつかえないけれども、そういう兵器弾薬を買い付けてもしベトナムにやるというようなことであれば、これは政治的に問題にすればなるということになるわけでありますが、いまはそういう痕跡は一つもない。また不可能である。日本でつくっておりませんから、また能力もないから、そういうことはない。こういうわけでありまして、ソ連の言い分はだいぶん見当違いである、こういったような点をはじめとして、われわれの主張をはっきりさして、ソ連に御返事を差し上げたい、こう考えております。
  99. 小林進

    小林分科員 私はあなたのその考え方に無理があると思う。それは、日本にいましたら、外務大臣、あなたは俗称おとぼけ大臣で、とぼけて、まあ何でもいいからひとつ仲よくしようじゃないか。それはあなたの長い処生訓であったかもしれないけれども、国際情勢の中では、それは通りませんよ。アメリカが侵略国家であるかないかという基本的な問題を、時間がないからさわらぬでいこう、ともかく平和は好ましいからうまくやろうじゃないかというようなことで、国際上の交渉がうまくいくはずがないです。そこにあなたがソ連まで行かれて問題の中心をぼかしてこられた根本的な誤りがあると私は思う。一九五四年のジュネーブ協定を破壊したものは一体だれなのか。あれをじゅうりんしたものはだれなんです。それでは、そういうような問題で、あなたがいまアメリカは平和愛好者だというような精神を説いても、日本人の中だって、大衆はだれでも、あなた方の言うことを信用している者はいませんよ。私どもは率直に国民に聞いているのです。アメリカが、一体親戚でもなければ身内でもない、隣国でもなければ従属支配関係にもない南ベトナムに、十九万、二十万、二十数万の軍隊を駐とんせしめるその理由は、一体君、わかるなら教えてくれや。だれか一人でもいい、その理由を知っている者があったら教えてくれ。だれも教えてくれる者はいませんよ。私はだれに聞いてもわからない。  この前、たまたま私が郷里の長岡から東京まで来る五時間半の間、前外務大臣の大平正芳君と一緒だった。車の中で聞いた。アメリカが縁もゆかりもない他国へあれだけの軍隊を持っていけるその理由と根拠をひとつ教えてくれないか。小林君、簡単だ、頼まれたから行ったんだ。南ベトナム政府から頼まれたから軍隊を派遣していったんだ、こう言われた。これでよろしゅうございますか、外務大臣。
  100. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それでよかろうと思います。
  101. 小林進

    小林分科員 おそるべきことだと私は思う。それだから、私は大平さんにも言ったんだ。日本には、頼まれれば人殺しに行く殺し屋という商売がある。あるいは、頼まれればけんかしに行くけんか屋という商売があるけれども、国際場裏の中に、頼まれたからといって戦争しに行くという戦争屋がいるとは思わなかった。それでは、あなたの議論でいけば、アメリカという国は、よその国から頼まれれば戦争しに行く、来てくれと言われればどこにでも戦争に行く国ですか、頼まれたらどこへでも戦争しに行くということが国際法の中にあるのですか、国連憲章の中にあるのですか、アメリカは国際的な戦争屋だ、こうきめつけてよろしいのですか、そうなるじゃありませんか。どうです、御答弁をいただきたい。
  102. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 やはり主義主張を同じくするから、頼まれれば、南ベトナムの政治的独立と終局の平和のために軍事行動に出ておる、こう思います。やはり根本においては、主義主張が一致しないとだめなんです。日米安保条約も大体そういったような趣旨でつくられておりますが、やはり日本も条約上の義務は果たす。向こうも、日本の国家の安全というものに対して非常な脅威を受ければこれをあくまで守る、こういう責任を果たそうとしておる。別に頼まれたから越後からもちつきに来るというのじゃないのです。
  103. 小林進

    小林分科員 あなたは重大なる発言をしておられますよ。主義主張が合えばアメリカは世界中に戦争をしかけていく、それが正しいんだというあなたの見解は、これはたいへんな主張ですよ。だから、アメリカはあなたの主張に基づいて、頼まれたんじゃない、頼まれなくても、ドミニカまで行って戦争をしている、キューバまで行って火をつけている、南アフリカまで行って戦争している、コンゴまで行って火をつけている。みんなあなたの言われるような、いわゆる主義主張が同じなら、世界じゅうどこへでも軍隊を持っていって、そうして火をつけて火事を起こしてもいいという、こういう論法だ。そんなことがこの国際場裏の中で通用するなんということになったら、世界正義なんかはありませんよ。あなた、主義主張というのは何ですか。キリスト教も主義主張だ。仏教も主義主張です。あるいは創価学会も主義主張です。日蓮宗も主義主張です。自分がそう信ずる主義主張をどこで宣伝しようと、どこでしゃべろうと、それは言論の自由だ。だから、日本にかつて仏教が入ってくるときには、さも侵略者のごとく、神道の蘇我入鹿なんかと戦争をした。いまああいうようなことを仏教の侵略だなどといって、だれもそんなことを真剣に考えている者はいません。キリスト教が日本に入ってきた。キリスト教だって、教えが正しいと思えば世界征覇を目ざしていますよ。言論の自由と思想の正しきをもってキリスト教の世界征覇を目ざす。しかし、それが世界の侵略宗教であるといわれますか。それが入ってくるときに、天草四郎のあれでも、日本はそれを暴力で阻止しようとしたけれども、いまはそれをもって、キリスト教の主義主張は日本を侵略した、仏教は日本を侵略したなどというばかな論議に立つ者はありません。いまは仏教やキリスト教の伝来と同じような考え方に立って、マルクス・レーニン主義がさも——私はマルクス・レーニン主義者じゃございませんよ。けれども、主義主張は別にしても、それを世界に宣伝することがいかにも世界の征覇を目ざしている侵略者であるかのごとく、そのために軍事力を用いてそれを征覇し、暴力で征覇することが正しいなどというような、そんな主義主張を外務大臣が持っているなんということは、それこそ危険思想ですよ。実におそるべき危険思想なんだ。まあ、私をして言わせるならば、失礼だが、頑迷固陋だから、とてもあなたに説いてもわからぬけれども、せめてソ連に行ってこられたので、いま少しはものの考え方がわかると思って期待を持ってやったんですが、やはり変わらない、だめだ。  そこで、私は申し上げるが、これに対して、あなたじゃなくて官房長官が、直ちに反論のことばを出されているのであります。日本は米国の北爆を正当化していると非難しているが、これは著しい曲解である、こう官房長官は新聞談話を発表された。どの点が曲解であるか、内閣の統一見解でありましょうから、ひとつあなたからお知らせいただきたい。  第二番目に、ソ連は、米国は日本領土をベトナム戦争に使用しているというが、在日米軍基地から飛行機や船が直接ベトナムに出動した事実はない、こう言っておられる。事実はないかもしれませんけれども、あるかないか。一体沖繩に寄ってベトナムへ行くことが直接であるとは言えないのかどうか。それから、ベトナムの特需が急増しているようなことはないと官房長官は言っている。在日米軍が国内で物資を調達することは禁止されておらぬ。先ほどあなたは、法律的には禁止されておらぬと言われたけれども、それは、いやしくも同じアジア人、同じはだをし同じカラーをしたものがきょうも非戦闘員として、気の毒なおばあさんや子供たちがこの日本でつくった兵器弾薬のために殺されていることなんだ。それが法律で禁止されてないからよろしいなどという見解は、一体正しいのか正しくないのか、それをお聞かせいただきたい。  第三番目には、安保理事会で日本が議長国として米国を支持した点は、日本が公平に処置している結果であるなどと言っているけれども、松井大使のあの国連の安保理事会における動き、あれが一体公平なのかどうか、以上の点においてひとつあなたの所見を承りたい。
  104. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ベトナム特需の問題でございますが、これは全般的に数量あるいは金額が急に膨張したというようなことはございませんし、それから兵器弾薬は入っておりません。これはもうはっきり申し上げられる。それから、それ以外の物資は従来とほとんど変わりはないと思いますが、その内容については、いま手元に資料を持っておりません。しかし、これを米軍の調達係が調達をしてどこにこれを運んでおるか、これはどうもはっきりしない。方々に運んでおるだろうと思います。これをかりに南ベトナムに輸送いたしましても、これは通常の事柄でありまして、そのために日本がベトナム戦争に特に協力するとか、戦争を支援しているとかいうようなことは全然当たらない、そういうことを言うことは間違っておる、こう思います。もし、これが兵器弾薬であるならばまた別でございますけれども、その場合も、いま申し上げたように、別に法律上、条約上抵触するというようなことはない。しかしながら、そういう場合には政治的な問題にはなり得る。しかし、なり得るような問題はいまは事実上発生しておらない、こういうわけでありますから、これではっきりすると思います。  それから、北爆を正当化する云々ということばでありますが、北爆を停止しておって、それが再開せざるを得なかったということは、四十数日間の北爆停止にかかわらず、北からの浸透は依然としてやんでおる傾向はない、南における国内の破壊活動というものは停止しておらないというようなことから考えて、北爆をこれ以上、停止して和平の工作をしても、これはむだであるというので北爆を再開したわけでありますが、再開せざるを得なかった基本的な事情について、まことに遺憾であるという意思を官房長官は表明しておるといわれますが、そのとおりで私はいいと思います。  それから、松井大使が何か非常に不公平なことをやっておると言うのですが、これは非常に公平な、りっぱな議長ぶりを示しておる、こう考えております。
  105. 小林進

    小林分科員 時間もありませんから、私は時計を見ながら言うのですが、いま北ベトナムから南ベトナムに侵略が行なわれておったところで、南において依然としてベトコンの介入があったところで、これは朝鮮と同じだ。十七度線というのは国境線ですか。ベトナムは一つでございましょう。その一つの国の中で内乱が起きたにすぎない。それに対して、一体外国の侵略軍というのが入っておりますか、アメリカ以外に。それは、韓国や、オーストラリアか、ニュージーランドか、アメリカの思想に基づいた協力者は入っておるけれども、反対側の北ベトナムに一体外国の軍隊が入っておりますか。いないはずだ、一つも。思想宣伝は先ほどから言っているように別です。だれの国を支援し、だれの国に協力し、だれの国のどの軍隊、どの派閥のやることに共鳴を感じているかということは、これはおのおの好みによって行なうことだ。それは同じベトナム内における内戦で、その十七度線——休戦の線でありまするから、そんなのは何ら国境線でもないわけです。それを他国の侵略があったごとく北爆を開始して、無辜の住民を虐殺して、それで正しいと思うなどというようなこと自身に、私どもは日本政府の考え方を非常に疑わざるを得ない。これはわれわれだけではないのです。日本国民は全部疑っております。  それから、いまもおっしゃるように、日本の政府がほんとうにベトナムの戦争に協力したかどうか、われわれは残念ながら資料がないのです。だから、あなたがそう言われればそうかと思うだけなんでありまするけれども、ここに北京政府が発行した資料がある。これが間違っていたら間違っていると言ってください。あなた方がちっとも資料をくれないものだから、私もこれを確認する余地がないのだ。それによれば、こういうことが書いてある。「事実上、日本は早くからアメリカ帝国主義のベトナム侵略戦争の軍事基地、兵站(たん)基地となっている。これはもはや秘密などというものではない。」、こうきめつけている。「日本にあるアメリカの二百余の軍事基地は、みな面接アメリカのベトナム侵略戦争に奉仕している。アメリカの侵略艦隊は、横須賀、佐世保などの日本の港から南ベトナムにむけて出航している。アメリカの空の強盗は日本の基地から発進して、ベトナム人民を爆撃し虐殺している。アメリカの侵略軍と兵器弾薬は、たえまなく日本から南ベトナム戦場におくりこまれている。さらには、東京の民間空港すらアメリカのベトナム侵略に使われている。」これは事実ですね。これは私も経験しました。現に羽田の飛行場で、ベトナムへ行くアメリカの軍隊が民間飛行機に乗っていった。これはわれわれも確認しているのです。「沖繩にいたっては、なおさらいうまでもない。今日の沖繩は、アメリカがベトナム侵略をおこなううえでの、海、陸、空三軍のもっとも主要な、もっともぼう大な前線基地、中継ステーションとなっている。日本の小泉純也前「防衛庁」長官は日本の基地がアメリカのベトナム作戦に「ひじょうに役立っている」ことを公然と認めている。そればかりではない。日本はまた、歩兵銃、手投げ弾、軍用トラック、戦車、対戦車ロケット砲、小型艦艇、 ヘリコプター、通信機材など、大量の兵器と作戦物資をどんどんアメリカ侵略軍と南ベトナムかいらい軍に提供している。アメリカ帝国主義が南ベトナム人民を虐殺するために使っているナパーム弾や毒ガスも、大部分は日本が提供している。」どうですか、これは。ナパームと毒ガスの九割七分がわが日本で製造されているということは明らかでしょう。違っておりますか。さらに、「ベトナム作戦に使われているアメリカの飛行機や艦艇も日本で検査、修理されている。」修理されていることは事実でしょう。ベトナム戦争で負傷したり古くなった艦艇や飛行機が、戦争の機材が、戦争の物資が日本で修理されていることは事実でしょう。この問題はどうですか。なお、「佐藤政府はさらにアメリカのベトナム侵略のため、大量の後方勤務要員を提供している。伝えられるところによると、」これは「伝えられるところによると」と言って若干ぼかしておるのですけれども、「アメリカのLSTに乗りくんでいる日本人だけでも、千二百名をこえているという。」云々、こう言っておる。違っておるならば違っておることの解明をひとつしてください。
  106. 安川壯

    ○安川政府委員 全部一つ一つ正確に記憶しておりませんけれども、いまお述べになりました事実の中で明らかに事実と反すると考えられますものを、私の記憶の範囲で申し上げておきます。  日本の基地から直接ベトナムに戦闘作戦の目的で飛行機なりその他米軍が発動したという事実はございません。それから、いろいろな物資の調達につきまして、いまのように、ナパーム弾を日本で調達した、あるいはタンクであるとか、小銃であるとか、手榴弾、その他武器弾薬類等たくさんお述べになりましたが、これは、先ほど大臣が申されましたように、一切そういう事実はございません。
  107. 小林進

    小林分科員 そういう飛行機などが日本の空港から直接ベトナムへ行かないで、一応クッションを置いて沖繩へ行くとか、あるいはグアム島を通るとか、フィリピンを通るとかいうことをあなた方は一つのいい口実にして、直接飛んで行かないから侵略ではない、攻略ではないという子供だましのような議論をしているのです。そんなことで日本国民はだまされますか。私はそんなこまかい形式論を言っているのではない。行っていることは事実じゃないですか。修理していることも事実じゃないですか。傷ついた飛行機が日本に飛んできた、帰還していることは事実じゃないですか。ナパーム弾はほんとうに日本でつくっておりませんか。毒ガスはほんとうに日本で提供していませんか。いま一度言ってください。
  108. 安川壯

    ○安川政府委員 ナパーム弾、毒ガスをつくっているという事実はございません。
  109. 小林進

    小林分科員 私は、時間がないから、この問題であなたに恥をかかせてやりたいと思うのですけれども、これは後日の楽しみにして、あとに譲ることにして次に移ります。  私は、この委員会を通して国民に真実を知らせなければいけないのですから、——私は中国の代表でもなければソ連の代表でもないんですよ。日本国民を代表して言っている。あなたも日本国民を代表しているなら、いま少しまじめに答えなさい。国民はおそれていますよ。私は一月から各紙の論調を見ている、みな読み上げましょうか。国民がいかにこのベトナムに対する政府協力体制におののいているか。私が言うんじゃないですよ。私は毎日切り抜いている、読み上げましょうか。外務省なんというのは何も知らないのだ。高文を通って役人になると、あとはみんな早く局長になりたい、大臣になりたい、外国に行きたいなどと考えていて、血の通ったほんとうの国民の気持ちはわからないんだ。切ない気持ちはわからないんです。どんなに国民がおののいているかわからない。笑いごとじゃないですよ、ほんとうに。少ししっかりしなさい。  そこで聞くのですけれども、次は国連問題だ。あなた方は国連に協力する。やはりわれわれも国連の憲章を支持し、国連の理念を支持するにおいてやぶさかではありませんが、それと、現在もそのまま運用せられておる国連の実際の姿を認めること。私は、問題は二つに分けて考えなければならぬと思っておる。いいですか。日本においても、社会党はあくまでも議会政治は守るけれども、現在の自民党が主導権を握っておる今日の議会のあり方は、われわれ全くがまんができない。多数横暴、議会政治に名をかりた独裁政治だ。それと同じように、いまの国連におけるあり方も、国連憲章の精神が失なわれておる。大国の支配の形があらわれておる。これは、それぞれの国が批判しておるようでありますけれども、大国の支配の形が如実だ。その証拠に、私はあなたにお聞きしたいのでありまするが、現在ベトナムにおいて大規模な毒ガスと、それから化学薬品、人間を殺傷する薬品が多量に使用せられていることをあなたは認めますか。お認めになるでしょう、これだけは。
  110. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は詳しくは知りませんが、催涙ガスは多少使っているようでありますが、毒ガスとかその他の有毒な化学兵器ということについては、私は知りません。
  111. 小林進

    小林分科員 大体日本の外務省というのは、全くけしからんのだ。アメリカや自分たちの都合のいいようなところの資料ばかり、ほしくもないのにどんどんわれわれのところへ送ってきて、こういうような現実に関するような資料を一つも送らない。そして、いまお話を聞けば、催涙弾くらいは少し使っているようだけれども、あまりたくさん使っていないというような、そういうような回答しかされないから、私どもは非常に外務省そのものの良心を疑わざるを得ない。だから、やむを得ぬ、やはり反対国側の資料をもとにしてあなた方に真実を問う以外にはやむを得ないということになるのでありまするけれども、これは中国の外交部の資料だ。あなた方のところにもいっているでしょう、こういうのは。北京周報は外務省にいっているでしょう。これは私だけが見るんじゃない、あなた方も見ている。その中に書いてあるじゃないですか。これは違ったら違うと言ってください。「ベトナム民主共和国外務省は、」これは北ベトナムです。「一九六六年一月十一日声明を発表し、いま南ベトナムでまったく非人間的な「焦土政策」と「三光政策」に拍車をかけているアメリカ帝国主義の犯罪行為を、大量の事実をあげて暴露した。」それは何かといえば「アメリカ帝国主義が南ベトナムで大規模に毒ガスと化学毒薬を使用して虐殺と破壊をおこなっていることを暴露している。」こういうことをいっているのであります。その具体的な例として「昨年末いらい、アメリカ侵略者は、南ベトナムでこれまでにみられぬほど大規模に毒ガスを使用している。タンアン、チョロン二地区における八日間の「掃討」で、アメリカ軍はつづけざまに大量の毒ガスを使用した。軍用機は低空飛行をおこない、たばにした毒ガス入りの手投げ弾をつぎつぎと投下した。地上部隊も同じような毒ガス入り手投げ弾を使用した。アメリカ軍とかいらい軍八千人は、一月一日からサイゴン西北の「鉄の三角地帯」で「掃討」をおこなったとき、婦人、子供、老人にさえ毒ガス弾を発射した。南朝鮮かいらい軍が、一月四日フーエン州のトイホア地区で「掃討」をおこなったとき、米軍用機はこの地区に毒ガス弾を投下し、南朝鮮かいらい軍も地下道に毒ガスをまいた。アメリカの戦争犯罪人たちは、声を大きくして、彼らが使用しているのは、人間を死にいたらしめない程度の毒ガスであるといいふらしているが、これはまったくデタラメである。一月十二日サイゴン発ロイター電は、オーストラリア兵七人が毒ガス使用中に中毒し、すぐ病院にかつぎこまれる羽目となった。そのうちの一人、R・ボウテル伍長は、ついに命を落とした、と伝えている。米機は、化学毒薬を南ベトナムの住民地区で広範囲にまき散らしている。十二月二十七日、米機はバリア州ロンハイ村に化学毒薬をまいたが、翌二十八日にもカントー州に化学毒薬をまき、四千人を中毒させ、一万余ヘクタールの農作物を枯死させた。元旦から一月三日までの三日間、つづけざまにビンロン州とサデック州の広大な地区に化学毒薬をまき、多くの住民を中毒させ、あたり一帯の農作物をめちゃめちゃにした。」云々。まだずっと続いておりますけれども、一例をあげたのであります。これを調査されましたか。あなたたちもこの資料をとっておられるでしょう。この事実を確認されましたか。調査されましたか。
  112. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それはごく限られた人に配付しているんじゃないでしょうか。市販されておらぬし、外務省にもそういう資料は来ておりません。
  113. 小林進

    小林分科員 それならば私があなたに、行っていると思うのでありますけれども、ないならば差し上げます。どうかひとつそれに基づいて即刻に調査をして、真偽のほどをこの委員会で報告することを確約してもらいたい。  いま少し伺います。これは「ラッセル卿が告発、アメリカの戦犯を裁け」これも真偽のほどがわからぬでしょうから、あわせて調査してもらいましょう。読み上げましょう。これによると「イギリスの著名な哲学者バートランド・ラッセル卿」、こうなれば、いかに知能のない私もこの名前は知っておりますし、日本国民はだれでも知っているでしょう。このラッセル卿は「さる一月十四日声明を発表し、アメリカ帝国主義が南ベトナム侵略戦争で化学毒薬と毒ガスを使って大虐殺をおこなっていると非難した。ラッセル卿は、「アメリカは戦争犯罪裁判でさばかれるいっさいの暴虐行為を犯した」、「最初にかれらは強制収容所をつくり、八百万人(南ベトナム)を強制労働を条件として監禁した。その後、一般住民にたいして化学毒薬とナパーム弾を使った、」「ベトナムにおけるアメリカ帝国主義の野蛮行為のもっとも新しい例は、……シアン化物と毒ガスを使ったことである」とのべている。ラッセル卿はさらに、アメリカ政府は一貫して「恥知らずにも、これらのガスは無毒である、とデマを飛ばしている」が、防毒面をつけたオーストラリア兵がガス使用中に、中毒で死んだというニュースは、「アメリカ当局の不誠実さを決定的にあばいたものである」と指摘している。ラッセル卿は「ジョンソン大統領、ラスクおよびマクナマラを戦犯として告訴しよう」、「ベトナム人民の民族闘争を断固として支持しよう、」と全世界の人民に呼びかけている。」こういう事実があるかどうか、これもあわせて即刻調査の上に、あらためて委員会に御報告していただきたいと思います。いかがでございましよう。
  114. 小川平四郎

    ○小川政府委員 ただいまお読みになっておられますのは、すべて北京周報に載っているものだと思います。そういうようなことは、放送その他にも同種類のことは出ておりますので、中共ないしは北ベトナムがそういうことを言っておることは承知しております。しかし、事実は、先ほど大臣からお答え申しましたとおりに、警察用ガス等を使っている事実はありますけれども、、その他のガス、あるいはそこに書いてありますような行為があったとは私どもは承知しておりません。
  115. 小林進

    小林分科員 あなた、調査してそういうことを言われるのですか。先ほどは調査をされないと言った、そういう資料がないと言われた。それを、北京や何かの放送で聞いただけで、使ってないということはどこで言明できるのですか。
  116. 小川平四郎

    ○小川政府委員 私どもは、ベトナムの内部の調査を、そういう現地まで参りましてすることはできません。ただいま私が申しましたのは、ただいま先生のおっしゃいましたのは、中共がその放送あるいは北京周報で申しておるだけのことであるということを申したわけであります。
  117. 小林進

    小林分科員 あなたに言わせれば、アメリカの言うことはすべて正しいが、北京政府の言うことはそれだけだから真実ではない、あなたはこうおっしゃるのでございますか。
  118. 小川平四郎

    ○小川政府委員 私どもは事実を調査する手段を持たないということを言っております。
  119. 小林進

    小林分科員 持たないから、やってないとおっしゃるのはおかしいじゃないですか。調査ができないから、その真実の可否はわからぬというのならわかるけれども、そういう事実はないとは一体何事ですか。そういうことは取り消しなさい。
  120. 小川平四郎

    ○小川政府委員 私は、その北京放送あるいは周報で言っているのは、中共あるいは北ベトナムの言っていることであって、私どもには事実を確認する手段がないということを言ったわけでございます。
  121. 小林進

    小林分科員 それならばいい。あなたはさっき何と言った。その事実がないと言ったじゃないですか。そういうドグマ的なものの言い方をするからみな国民の前途を誤らせるんだ。それがあなたたち外務官僚の一番悪いところだ。失敬千万なことを言うな。そういうばかなことを言うから時間がかかる。  次にまいります。そこで外務大臣、そういう事実が多方面に放送せられている限り、いわゆる正義と世界の平和と安全を標榜する国連という舞台があるのですから、その舞台の中でその真偽を確かめるくらいの手当てや発言があってしかるべきだと私は思う。国連の中でこういう問題が取り上げられたことがありますか。ナパーム弾やそういう毒ガスを使用していることが、国連の場において取り上げられたことがありますか。ないでしょう。
  122. 星文七

    ○星政府委員 そういう事実はございません。
  123. 小林進

    小林分科員 ぼくはそれを言う。しかし、この問題はいま始まったことじゃありませんよ。この問題は、単に北京周報だけではない、日本のブルジョア新聞全部が報道したじゃありませんか。そこで、現にわれわれ社会党は、あるいは佐々木委員長を先頭にし、あるいは成田書記長を先頭にして、アメリカ大使館に、こういう毒ガスやナパーム弾を使用することは国際法にも国際的人道にも反するからおやめになったらどうですかと抗議に行った。私は数回抗議に行っています。われわれの抗議に対しては、日本の大衆は全部支持しましたけれども、さすがにアメリカのライシャワー大使はわれわれに会わなかった。会わなかったけれども、一等書記官ですか、参事官ですか、その人に会って、私どもはその人に抗議を申し込んだ。私ども社会党は、うその事実をもってアメリカ大使館に抗議に行ったとあなたはおっしゃいますか。それでもその事実がないとおっしゃるのですか。あるけれども、しかし、アメリカのやることだからおっかなくて国連の場においてはそういう問題は取り上げなかった、こうおっしゃるのですか。なぜ一体それを取り上げないのか、その理由をひとつお尋ねしたい。
  124. 星文七

    ○星政府委員 国連の総会でも安保理事会等でも、そういう問題を提起した国はいままでのところございません。
  125. 小林進

    小林分科員 それだから言うのですよ。国連は平和と正義の殿堂だというようなことを言いながら、こういうような現実の事実、日本の国内においても大衆がみな問題にしているようなこういう問題を、なぜ一体正義の立場から国連で問題の提起ができないのか。ここに現在の国連のあり方に対する国民の不信感がある。アメリカに追随している日本政府の良心を疑う問題が足元にころがっている。だれがやろうと、悪いことなら悪いと言ったらいいじゃないですか。  それじゃ、いま一つ聞きましょうか。いま国際的な人道問題として問題になっているのは人種差別の問題でしょう。昨年ロスアンゼルスにおいて、いわゆる黒人暴動という実に世界の人民を震駭せしめるような恥多き問題が起きた。ロスアンゼルスに起きたあの黒人の問題は、人種差別に原因がありましょう。あれは一体国際連合の場において取り上げられたことがありますか。
  126. 星文七

    ○星政府委員 取り上げられたことはございません。
  127. 小林進

    小林分科員 なぜ取り上げないのですか。なぜ日本の政府だけでも、こういう人種差別のような恥多き問題を取り上げなかったのです。これこそ国連で取り上げる重大な問題じゃないですか。なぜ取り上げなかったのです。これはあなたに聞いているのじゃない。私は外務大臣に聞いているのです。
  128. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは何でも国連が取り上げるというものじゃないので、国際間のいろいろな紛争であるとか、そういう国際的な問題はいろいろ軽重順序がありましょうが、それに従って取り上げるのだろうと思いますが、純粋な国内問題は国連の場においては取り上げません。
  129. 愛知揆一

    愛知主査 ちょっと小林君にお願いいたしますが、時間もだいぶ経過いたしましたので、御協力をお願いいたします。
  130. 小林進

    小林分科員 私は、協力しようと思って一生懸命努力しているのです。それじゃ私はこの問題ももうやめて、あと一、二問で終わります。  こういうような具体的な、しかも全世界の人民が腹の中から憤りを感じているような問題、その黒人問題は国連で取り上げてない。取り上げているじゃありませんか、よその国のアフリカの問題は人種差別の問題を取り上げるけれども、アメリカがやっているそういう問題になると、黒人問題も取り上げない、ナパーム弾の問題も取り上げない。そこに国連がいわゆる大国を中心とするいわゆるひずみのある運営のしかたをされているということを大衆が疑っている根本の理由がある。ほんとうの独自的な外交、ほんとうに国連の権威を高めるという気持ちがあるならば、そんなアメリカの壁を乗り越えていま少し自主的な動きをしたらどうか、私はそれを申し上げている。  時間がありませんから、外務省は時間で救われるようなものだ。私は時間があればどこまでもやりますけれども、しかたがないから、次に私は外務大臣に申し上げます。これも情報ですから、間違っていたらよろしいのですよ。あなた方に秘密にしておく必要はないから、あとで全部お貸ししますから、あとで検討して結論を出していただきたい。間違っていれば幸いだ、間違っていることを実は私は祈っている。  いままでアメリカが中国の領土を航空機で侵犯したことが百数十回ある、領海の侵犯だといって、第七艦隊から派遣せられて中国の領海をアメリカの武装した潜水艦その他が侵害したことが三百有余回に及んでいると北京側は報道している。真実はわからぬが、こういうことを発表せられている。現にこれも具体的な例として、一九六六年の二月七日午後アメリカの無人偵察機一機が中国西南地区の上空に侵入し、中国人民解放空軍部隊に追撃され撃墜されておる。林彪副総理兼国防部長は功績を立てた空軍部隊をたたえるために表彰令を発した云々と、こういうような具体的な例も掲げて、今日に至るまで百数十回ですか二百数十回、これは無人機でない普通の人の乗っている飛行機が追撃された例も北京側の発表にある。あなた方はこれを調査されたことがありますか。それに対して一体あなたの言われる中国——中国といったっていわゆる国府ではない、北京政府のほうが反対にアメリカの領空を侵した、アメリカの領海を侵したという例が一つでも二つでもありますか。これもあわせてお聞かせを願いたいのであります。
  131. 小川平四郎

    ○小川政府委員 北京がそういうことを申しておるということは承知しております。その事実を調査したことはございません。それから北京がアメリカの領空を侵したという事実は聞いておりません。
  132. 小林進

    小林分科員 私どもは大体国と国との関係で——ラスク長官も言われた。アメリカは決して世界の警察国家ではない、どこどこでも好んでみずからが他の国の問題に介入して、それを治めていこうなどという思い上がった気持ちはないということを言われた。けれどもそのあとがわからない。さすがにラスクさんも、日本の外務大臣よりはやはり時代の動きがわかっているから、頼まれたから南ベトナムに兵隊を持っていったなどという、そんな無鉄砲な理屈は言われなかった。先般の公聴会には、いわゆるSEATOの協定に基づいてわれわれは南ベトナムに軍事行動をしているのである、SEATOに対してはアメリカのいわゆる国会は一人を残して全員が賛成してくれたではないか、それにもかかわらず、いまここへきてアメリカの南ベトナムの出動を云々するのはつれないじゃないか、こういうふうにラスクさんが国会に対して泣き言を言っている。それはそうだ。またアメリカ国会放送としては一応の理屈は成り立つけれども、アメリカは頼まれた戦争屋でございます。南ベトナムに戦争に行きました、そういうばかな理屈は言わなかった。頼んだゴ・ジン・ジェムもぶっ倒れてしまって、もういない。今日そういう古典的理屈をいっているのは実に笑止千万であります。それはそれとして、かくのごとくアメリカが警察国家ではないと言いながらも、一体何の権限があって他国の領空をこのように無鉄砲に侵害をして、飛行機を飛ばしたり、あるいは他国の領海を侵犯しておるのか、こういう行為がすなわち侵略行為ではないのか。これが世界の平和、アジアの平和を乱しておる根本の理由ではないか。私はそれについてお聞かせ願いたい。どうですか、外務大臣、これが世界の平和、アジアの平和を乱しておる根本の理由ではないか。
  133. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国境ではないけれども、十七度線はやはり事実上二つの政権の間に設けられた相侵すことのできない線であるという了解のもとに敷かれた線である。その南ベトナムのほうで、北からの支援によって民族解放戦線、いわゆるゲリラ部隊の国内の破壊行為というものでなかなか政治的な独立が達成されないというので、その協力を要請されてアメリカはこれに軍事行動を起こしておるというのが現状でございまして、問題は、要するに同じ民族の間だからほかのものが介入するなというのではなしに、やはり南と北にそれぞれの政権があって、そうして武力によって政治的な自由、独立というものを侵すという事実があるので、それを有効に防ぐためにアメリカがこれに軍事協力をしておる、こういうのでありまして、そういう前提からまず話を説き起こしていかないと話がややこしくなって間違うのです。
  134. 小林進

    小林分科員 そういう前提をわれわれは認めるわけにはいかない。その前提をあなたは信じておるが、その理屈が、結局、あなたがAA諸国を回っても、ナセルさんはじめ、アメリカのお使いで来たんだろうといって、初めはみな警戒せられた根本の理由ですよ。あなたが意気投合したということを言っても、だれもアジアの国々は信用しませんよ。だんだんAAの中で孤立の道を進んでおるじゃありませんか。あなたはわからないのですか。あなたのようなそんな理屈はだめです。通用しない。  そこで、最後に私はお聞きするのだけれども、これはもうこの前の日韓条約の委員会でも聞いた。私は、あなたの言われる、あるいは総理大臣の言われる、あの中国が世界的な侵略、征服の意図を持っておると言われることがどうしてもわからない。私どもは政治を論じておるんだから、宗教や信念やその人の考え方を論じておるのではない。それは、中国が共産主義国家だ、マルクス、レーニン主義をもって世界を統一したいという、そういう考え方、この思想でもって世界を統一したいという考え方が一体侵略と言われるのかどうか。私は先ほども触れたが、キリスト教徒はキリスト教をもって世界を統一したいと思っており、仏教徒は仏教をもっておのおのが信ずる道が正しいと思っておるから、これをもって世界を征服したいと思っており、いまの創価学会の信じておる日蓮正宗は、日蓮正宗が世界で一番正しいから、この教えをもって世界を統一したいと思っておる。しかし、この思想をふえんし宣伝することによって、それが何で一体政治的侵略行為と言われるのか。侵略と銘打つためには、それを裏書きする具体的な強力な行動が伴わなければいかぬだろう。暴力行為、実力行為が伴わなければならぬだろう。中国はみずからの信ずることばを世界に向かってかたくなに宣伝しておるけれども、それが自己の信ずる思想、自己の信ずる政治的考え方を宣伝することにおいては、他国に一体何の被害があるか。それを具体化するためにみずから実力を用いて他国に武力侵略をした、実力で圧力を加えたというときに初めて政治的に侵略をしているという侵略者の形が生まれてくるはずだ。一体中国は北朝鮮に兵隊の一人も進駐させてこれを占領しておりますか、北ベトナムに武力進駐しておりますか、ソビエトや日本へ兵隊を、あるいは圧力を加えて実力行使をいたしておりますか。一体あなたの言われるその中国の侵略というのはどういう形のものを侵略と言われるのか、それが一つ。明確に答弁ができなければ私は何回も繰り返さなければならない。  それからいま一つは、この問題に関連してあなたはソ連に行かれたでしょう。そして、ソ連との交渉の過程において、日本の日韓会談に対して、日本を誹謗したり悪口を言うことをやめてくれ、こういうことを言われたが、軽くあしらわれた。日本と韓国の結んだ日韓条約に対して、ソ連は、それは好ましいことではないと言った。ソ連は、ソ連の意向を海外に向かって宣伝し主張することが何で悪いか、おれたちのかってじゃないかとあなたは軽くいなされたじゃないですか。そのことばはそのまま私は中国にも当てはまると思う。日本の日韓会談はけしからぬとソ連も言えば中国も言う。そういうことに対して、あなたも口を並べて、ソ連や中国を罵倒すればよろしい、大いに非難すればよろしい。しかし、それは、侵略国家である、世界を侵略、統一しようとしているというレッテルを張りつけることとは私はおのずから別だと思うのです。明確にひとつあなたの侵略の定義論を述べていただきたいと思うし、対ソ連の回答、それもあわせてお聞かせを願いたいと思います。
  135. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 だいぶ基本的に考え方が違うので、ここで短い時間で問答しても無用だと思うのです。ただ武力革命というものを信奉しておる有力な国家であるということは、これはだれしも否定できない事実であると思います。ソ連は、核兵器を極端に開発して、そして核兵器所有国、有力な所有国同士というものはやればやられる、ここまで発達すると決して武力征服ということはあり得ない、それで、平和共存という一つの政策にだんだん徹しつつある。しかし、それは中共から言わせると、あれは修正主義である、堕落である、マルクス・レーニン主義の非常な堕落であるということを言って、これは非常に非難をしておるわけです。すなわち、自分はやはり武力革命というものを信奉しているんだということをみずから表明している。だから、これが一体ほんとうの平和愛好国といえるかどうか。これ以上は申しません、これ以上はあなたとだいぶ考え方が違うようだから。  それからソ連の放送が、日本語の放送で日本に向けていろいろ批判をしておる。それでおのずから、日韓会談なら会談というものを中心にして、日本の考え方とソ連の考え方が違うのは当然なんです。違っていかぬということじゃないのです。ただ、それは、日本向けに日本語で放送するということは少し控えたほうがいいのではないか、両国がだんだん親善友好のムードを高めようとしているのだから、その点は控えたほうがいいと思うということを言ったのです。別にコスイギン首相に返事を求めようというわけではなかった。あれは、たしかグロムイコ外務大臣にそういうことを話した。(「断わられたのだろう」と呼ぶ者あり)断われたと言われるが、向こうは向こうの所信を、こっちはこっちの所信を述べて、それで一致しなければしかたがない。別に断わられたとかなんとかいう、そういう変な言い草はせぬほうがいい。そういう次第でございましたから御了解を願います。
  136. 愛知揆一

    愛知主査 小林君、簡単に……。
  137. 小林進

    小林分科員 わかりました。これで終わりますから…。  平和共存を否定するのではないのですよ。ただし、現状のままではまだ支配、被支配の関係がある。それは、核兵器をもっぱら独占している国と持っておらないでねらわれておる国との間が、現状のままでの平和共存では、強いものはだんだん強くなっていき、弱いものは弱いものの姿でいくということになる。平和共存は互恵平等であるべきだと思う。他国を侵略せず、その国民を驚かさず、領土も侵略せずというほんとうの相互平等の形の中でならば平和共存といえるでありましょうが、あなたの平和共存は、他国の支配をそのまま認めておる平和共存でありますから、それは間違いだ。それは、あなたといまここで議論しようとは思わない。ただ政治的に見て、思想問題は別です、考え方は別です。現実に中国が国境問題で、インドは別だけれども、現実にどこの国を実力で侵略しているか、どこの国に対して膨張政策をとっているかという具体例をひとつお聞かせを願いたいと思います。さもなければ、政治的にそれは侵略国家だとはいえないじゃないですか。思想を論じているのではない、政治を論じているのです。現実に一体日本のどこに対して侵略をやったか、日本の領土のどこを奪ったか、どこに対して実力を行使をしたかという政治的な具体例を示してもらいたい。さもなければ、あなたはいたずらに根もないことで他国を誹謗しているというようなことになり、国民を説得する根拠を失ってくる、私はそれを言っておる、具体的な例をお聞かせ願いたい。
  138. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 侵略ということばにもいろいろな意味があって、直接侵略もあれば、間接侵略もある……。(「間接侵略をどこにしたか」と呼ぶ者あり)間接侵略というのにはいろいろなものがあって、たとえばゲリラ部隊をやったとか、あるいは思想的な第五列というものを送り込んで、それで国内の政治思想の撹乱をするということ、これは間接侵略の一つの形体でありますが、そういう具体的な問題については、いまここでお話ししないほうがいいと思います。
  139. 愛知揆一

    愛知主査 午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十八分休憩      ————◇—————    午後三時一分開議
  140. 愛知揆一

    愛知主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管に対する質疑を続行いたします。田原春次君。
  141. 田原春次

    田原分科員 私の質問は三つありまして、第一は外交官の使用用語別の件、第二は現地公館の補助員の待遇の件、この二つは主として官房長及び人事課長にお答えを願いたいと思います。大臣に対しては、第三に中国問題に対して簡単に質問したいと思います。  第一の使用語の問題ですが、日本に駐在します大、公使館で、たとえば代表的なのはアメリカ大使館のライシャワー大使、あるいはエインスウオース書記官等は非常に日本語がたんのうであります。それからソ連大使館のほうもチェルノフ一等書記官、コーノフ書記官等は非常に日本語がたんのうであります。あるいはチェコスロバキア大使館のハドリッチカ大使も非常に優秀であります。そのほか、私よりも外務省のほうが知っていると思うのですが、このむずかしい日本語を赴任前に勉強して、そして駐在しております。そのことが、その国を代表する外交官としては任地において仕事がやりやすいからだと思うのです。しかるに、この間も聞いたことでありますが、日本の外交官は英、独語、フランス語、その一つ、二つ、または三つは優秀な者が多いのですけれども、第二外国語と申しますか、ロシア語、あるいはアラビア語、あるいはインドネシア語については、高級外交官には通ずる者がまことに少ない。したがって任地においては、一等書記官、二等書記官、三等書記官、あるいは理事官等をして通訳を代用にやらせておるような現状であります。これではほんとうに腰のすわった外交ができるとは思いません。どうしても現地におけることばを知っておらなければいかぬと思うのです。外務省のキャリア外交官の任用、配置方法について何か足らぬところがあるのじゃないかと思うのですが、従来語学別に見て、その国の語学に通じない者で大使、公使になっておる者がどのくらいあるか、まずお知らせ願いたいと思います。
  142. 高野藤吉

    ○高野政府委員 田原先生いま御指摘のとおり、英語、フランス語、ドイツ語につきましては、大体その任国でそれぞれのことばを話しておるところでは、その大使は大体その任国のことばができるわけでございます。そのほかのロシア語、中国語、スペイン語、イタリア語となりますと、これは非常に少ないのでございますが、しかし、若い大使では、中国語、ロシア語、イタリア語ができる人はだんだんふえてきております。今後ますますいわゆるキャリアディプロマットでも、そういういま申し上げたことばについて習熟している人がだんだん出てくるかと思います。それから、それ以外の、たとえばアラビア語とか、インドネシア語とか、ヒンズー語とか、ギリシャ語等々につきましては、その現地語をほんとうに勉強して任国に行くということは、現在の制度ではいろいろほかの勉強することがございまして、なかなかそこまで手が及ばぬではないかと思います。その場合には、御指摘のとおり、その任国のことばの得意な書記官ないしは理事官を配置いたしまして、その不便を補うというシステムになっておるわけでございます。
  143. 田原春次

    田原分科員 それは従来のありきたりの、いままでちっとも改まらない方法なのでありまして、それを是なりとしてこのままいくことはよろしくないと私は考えるのです。したがって、これが改良方法を考えるときが来ているのじゃないか。ついては、外交官試験に通った者に研修所における英独仏以外の語学の研修をやらせているかどうか。  それから、留学生等で海外に行っている若手の者は、現在、英独仏を話す国以外にどのくらい出しておるか、これはわかっておると思いますから、ひとつ聞きたいと思うのです。
  144. 高野藤吉

    ○高野政府委員 現在上級試験を受ける人は、大体語学は英仏独、中国語、ロシア語がございまして、入りましてからはそれ以外にスペイン語等を初めから研修させております。  次に、語学研修員、昔の留学生でございますが、これは、先ほど申し上げましたおもなことば以外ほとんど各国語を網羅しておりまして、申し上げれば、ヒンズー語、ウルドウ語、それからアラビア語、イタリア語、スウェーデン語、ノルウェー語、スペイン語、ポルトガル語、実用になっている特殊語学はほとんど研修しております。それから、研修所で勉強して任地に参りますと、そこでまた仕事のかたわら勉強し、ないしは語学手当を与えまして、特別に事務の時間をさきまして勉強するという奨励策をとっておる次第でございます。
  145. 田原春次

    田原分科員 第一の点の研修所は、そういうかっこうで第三語学というか、少なくとも三カ国語くらいやらせるようにしてもらいたい。  第二点の語学研修性の問題であります。各国に行っておりますが、いよいよ修業して本官になり、その語学別の国に駐在するわけでありますけれども、これは、外交官試験を通っていないために待遇が非常に低い。いかにことばが上達しておりましても、最高の地位というものは大体低いと思います。従来、外交官試験に通らない者で、語学研修生であって、そして在外公館の場合、最高どのくらいまでいっておりますか、理事官、書記官、公使等を合わせて。
  146. 高野藤吉

    ○高野政府委員 外交官試験を通らずに現在までの最高と申しますか、これは、現在まで大使がスペイン語の方が二名ございます。それ以外に、外交官試験を通らずに大使になっている方が、英語のほうの方ですが一名ございます。それ以外に、試験は通らなくても、総領事ないし領事、それから参事官、公使等になっている方は相当ございます。
  147. 田原春次

    田原分科員 海外に一生語学を専門にして真剣になって働く人の立場から見れば、やはり肩書きだけでも優遇すべきものではないか。このことはかつて岡崎外務大臣の時代に私が質問いたしまして、それがそのころは是認されなかったけれども、後日実現しております。私は大使を一等大使、二等大使、三等大使と、名前はとにかく、そういうふうにして規模や予算も前例にかかわらず、相手が大使というならこっちも大使にしたらいいじゃないか、そう言いましたら、非常にむずかしい問題ですが実現に努力しましょうということで、間もなくいま実現しておるのです。したがって、これに準じて、外交官試験に通らざる者でも、優秀な者については、なるほどラテンアメリカではボリビアの大使等に例は開けております。しかし、重要なアフリカ、中近東であるとか、東南アジアに対しては、まだ大使としての処遇を受けるような例が出ておりません。これは日に日に外交官の数もふえなければならぬし、大公使交換の国もふえるわけですから、その際に間に合わせに、単に外交官試験に通っておるからというだけで、その国の語学に通じない者を大使にする順繰り人事ではなく、やはり抜てき主義でいくならば、こういう不便な土地で勤務している者に励みがつくと思うのです。そういう方針をとられるかどうか。これはやはり明らかにしておく必要があるのではないかと思います。
  148. 高野藤吉

    ○高野政府委員 先生のおっしゃる趣旨はよくわかっておりますし、外務省としても、その方向で検討していきたいと思います。ただ、大使という場合に、語学だけではなく、それ以外の情勢判断ないしは相手の国との交渉能力その他等々のファクターがございますので、もちろん語学は一つの大きなファクターでございますが、その他のファクターを加味いたしまして、大使の適格者がおりましたら、もちろん試験は通っておらなくても今後もどしどし採用していくということは、人事管理上きわめて妥当な方向ではないかと考えております。
  149. 田原春次

    田原分科員 関連して次の問題に移りますが、現在外務省審議官が何名おって、主としてどういう任務をやっておるか。それから各局別の参事官等は何名まで認められておって、どういうふうな仕事をやっておりますか。
  150. 高野藤吉

    ○高野政府委員 現在本省におきまして審議官というのは二つありまして、外務審議官、これは特別の職でございまして、次官補という肩書きになっておりますが、あと、ただの審議官と申しますとちょっと変でございますが、いわゆる審議官、これは現在五名か六名ありまして、これは局長をやりまして外国に行く間、待機中に審議官という名前でおり、それから外国から大使で帰ってきて、また待機中一年間以上たちますと審議官となりまして、いずれにしろ待機中でございまして、その間は特定の事務はやっておりませんが、国際会議に出るとか、相手国との国内におけるいろいろな交渉事に当たるという、そういう職に当たっておりまして、具体的な局長とか、そういう一年中同じような仕事をするというような制度にはなっておりません。それから、在外公館に参事官もございますが、本省にも参事官のポストがございまして、各省には各局に次長という制度がございますが、現在の外務省におきましては、これは経済局だけでございます。それ以外の局におきましては、参事官の名におきまして次長の仕事をさしておる次第で、これはきまった仕事を全部やっておる次第でございます。参事官の数は、本省におきましては十八名でございます。
  151. 田原春次

    田原分科員 これは一つの思いつきの案ですけれども、審議官の数をもっとふやす、それから本省における参事官の数をもっとふやす。このことは語学別にあらざる現在の任命、赴任方法の是正策として、そして一たんイギリスやアメリカの大使をやってしまうと、帰ってきてしばらくおって、退職してどこかの会社へ入るのでなくて、一生やらせるには、多少遊ばせると言ってはことばが悪いが、時事問題、特に内政問題等を勉強さして、その優秀な性質を使うようにしたらいい。これは予算としてもたいした人件費にならぬと思うので、もっと大幅にそれをふやす必要がある。その中に外交官試験に通らざる者で特に優秀な者を入れて、本省で高級教養というか、時期を待たして、必要とあらばユダヤ語であるとか、ギリシャ語であるとか、フィンランド語であるとか、あるいはポーランド語であるとか、ユーゴスラビア語であるというような、いまあなたの答弁の中に出なかった他のことばの国に対して、臨時大使として、あるいは特派大使として行っても十分太刀打ちできるような、語学から見た優秀な者を残す必要があるのではないか、このことは予算にも関連がありますけれども、やはり世界各国を相手として外交をやる上においては、その任地のことばをマスターしておるということが絶対的条件じゃないかと私は考えるのです。将来において審議官、参事官等、そういう新しいワクをつくってふやしていく必要はないか、従来のしきたりで上がっていくのがあるいは十八名であり、あるいは五名であっても、そのほかの問題を考慮する時期が来ているのではないかと思います。これに対するお考えはどうですか。
  152. 高野藤吉

    ○高野政府委員 外務省といたしましても仕事のボリュームがだんだんふえまして、審議官及び参事官並びに次長、各局における次長をふやしたいということで本年度も要求いたしましたのですが、行政管理庁といたしましては、審議官ないし参事官をふやすというのは、課以上、局まではいきませんが、それと同じくらいな抵抗を感ずるということで、なかなか審議官並びに参事官をふやすということはむずかしいのでございますが、外務省といたしましても、そういう方向で来年度も大いに努力していきたいと考えております。  それから語学の点でございますが、外務省における語学の重要性はもちろんでございまして、あらゆる制度と機会を利用いたしまして、主要語学ばかりでなく、特殊語学も大いに勉強させ、各国との交流に支障なきようにしていきたいと考えます。
  153. 田原春次

    田原分科員 本省の参事官、それから本省の審議官等の増員について行政管理庁その他の抵抗があるとすれば、かわるべき他の方法を考えて、あるいは参与であるとか、何々局付とかいうこともあり得るのじゃないかと思います。ということは、まだまだ海外各国で大公使館の新設が少のうございます。兼任が相当多いのです。兼任で私はルーマニアの例を知っております。それからホンジュラス、グアテマラ等の例も知っておりますが、たとえばグアテマラはメキシコの大使が兼任しておって、独立記念日かなにかで行くぐらいで、あとは書記官にやらしており、それからルーマニアには今度新設しますが、その前は長くソビエトの駐在大使が兼任しておって、年に二回くらいしか行かない。そういうことで貿易、外交もできるはずがない。したがって必要なる国々は全部大公使館をつくっていかなければならない。そうすると、人が足らぬということになるが、そういう場合には特任将校というか、特進職員といいますか、名前はとにかくといたしまして、そういう新設国はほとんど英独仏以外の国が多いのですから、したがって英独仏語以外のことばのできる者を本省に置いて、内政問題をよく勉強させるとか——はなはだしきは、旅行しますと、社会党と共産党の区別がつかない大使がおる。あなたは共産党でございましたか、こうなると、こっちで返事ができない。そういうふうにまことに日本国内の勉強が足らぬ人がおります。ただ外交官試験を通ったというので、ぐるぐる定年までどこかを回って、何も仕事をしなくても首にはならぬということではおかしいと思いますね。したがって平和外交をやる上においては、優秀なる外交官を集中的に使う必要があるから、ポストの都合で行けない者は本省にしばらく遊ばしておいて勉強さしておく。そうして、今度はまた他のポストにやるようにしたらいいと思うのです。これはぼくの意見なんですが、私の意見に対してひとつ御答弁ができますか。
  154. 高野藤吉

    ○高野政府委員 先生の御指摘の点はわれわれも常に悩んでおる点でございまして、独立国がどんどんふえる、と同時に、相手の国からは大使を送ってくる、こちらからはなかなか返せないということで非常に苦慮しております。また公館を開きましても、人がだんだん足りなくなってくるということで、今後とも日本の国際的地位の向上に伴いまして、外務省員の量と質との向上には格段の努力をしていきたいと考えております。よろしく御鞭撻のほどをお願いいたします。
  155. 田原春次

    田原分科員 次は在外公館の現地補助員の待遇向上の問題であります。これは私の自論で、外務省には労働組合がないだけに、労働組合をもって交渉した結果得られる条件と同じようなものをやはり考えてやらなければいかぬ。特にその国限りの人は先が見えておるのです。たいてい五十、六十までやっても、内地から来る若ぞうの外交官補あたりにあごの先で使われて、よくことばがわからぬのに、いばるだけいばって、少し文句いえば首にする、それじゃ落ちついて仕事ができないと思うのですね。これはおそらく皆さんはあまり気がつかぬことだと思う。現地においてそう抵抗しているわけじゃないのです。だから、たまに旅行しますと、われわれに親しげに話をするのはそういう待遇問題です。全然上がらぬとは言いません。多少上がっているようですけれども、それは給与の点についてで、あとの身分の点については、先ほど申しましたように、理事官にするとか、あるいは三等書記官にするとか、最高は大公使館の参事官にするくらいの、あるいは練達たんのうな者は領事にする。領事なんか最もうまいと思うのです。現地の日本人社会から重んぜられて、そうして、ことばができるので在外公館の職員になっている人が多いのですから、そういう意味において、今後とも待遇の改善を考えていく、待遇とは給与並びに身分ですね、こういう点についての方針がありましょうか。この際明らかしておいていただきたい。
  156. 高野藤吉

    ○高野政府委員 在外公館におきまして、公館員が少ない、ないしは現地のことば、事情が通じないという場合に、現地における補助員、現地補助員、これは二世の場合、それからその国の国籍の人と二つあるわけでございますが、これの待遇につきましては、落ちついて在外公館で働いていただくためにかねがね苦慮しているわけでございまして、現に三十八年度におきましては、上級補助員、書記とかタイピスト等につきましては、給与引き上げを行ないました。四十一年度におきましては、事務所の雇い人、公邸の雇い人につきまして、約二七、八%の給与を上げたわけでございまして、この現実の待遇改善につきましては、今後とも甘んじて職務を奉じられるように俸給の面で考えていきたいと考えております。  それから身分的なことでございますが、これは非常にいい現地補助員がございましたら、正式の在外公館員にすることも可能でありますし、現にした場合もございます。ただこれが長くつとめて、相当優秀で、かつ日本に来て研修所なり、日本においてある程度の訓練をいたしましたら、今後は相当上のほうまでいけるかと存じますが、現状におきましては、大体理事官級くらいでとどまる、いままではそうでございますが、今後は非常に優秀な人が来まして、これの訓練等々万全の措置ができれば、だんだん道が開けるのではないかと思います。
  157. 田原春次

    田原分科員 将来そういうものは上進の道を開いておいてもらうことを希望して、その問題は打ち切ります。  次は椎名さんにお尋ねいたします。椎名さんも在職すでに二年にして、間もなく外務大臣を退職されることと思います。そんなに長くやっておらぬと思います。したがって、在職中の最大な事業として、中国問題の解決をお考えになってはどうか。中国問題をどういうふうにおやりになるのか、なろうとしておるのか、まずそれをお尋ねしたいと思います。
  158. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中国問題といえばおそらく代表権の問題だろうと思います。今日の台北政権にかわって中国全般の代表権を中国に与える、こういう問題ではないかと思いますが、もし違いましたら……。
  159. 田原春次

    田原分科員 私の聞きたいのは、隣国日本として大陸中国と台湾中国との仲直りの時期を見きわめて動いてはどうかということなんであります。割れておるものは必ず将来一緒になるであろうことは、東ドイツ、西ドイツの例におきましても、どちらも激しい対立はしておりまするが、アインドイチュラントといって、行ってみますとどちらもやはり統一を考えておるわけですね。どちらが優位になるかは別として、一つのドイツ人になりたいという考えは持っております。それから南北ベトナムは、コースや目標は違うにしても、平和的に解決して一本になろうとしておりますし、現実の問題として考えております。台湾と中国も非常にお互いに憎しみと不信を持っておるようでありますけれども、将来何百年間にわたって大陸中国と台湾中国が別個であり得ましょうか。私はそうではないと思うのです。その場合に、だれかが仲裁しなければならぬ。国連に入っておりませんから、国連の仲裁というわけにはいかぬと思うのです。そうすると、おそらく香港の関係からイギリスか隣国の関係の日本かが仲裁をしなければならないのではないか。その意味においてはあなたは適任者の一人ではないかと思うのです。自分ではどう思っているか知りませんけれども、ヌーボーとして多少とぼけたりして、やるところを見れば、やれるだけやれるのじゃないかと思う。したがって、代表権のようなこまかい問題ではなくて、基本的には方々に使いをやるとか、あるいは政府側ができなければ民間で出すとかして東京会談を開くとか、努力すべきではないか。どうもいま新聞やテレビやラジオで政府側の言動を見ておりますと、アメリカのほうばかり見ているようなかっこうで、アメリカがどう思うだろうか、アメリカが怒るだろうか。アメリカも怒らぬと思うのです。私は第三次国共合作の荒筋を、端のほうをちょっと動いたことがあるのです。アメリカも始終中国には密使をやっております。公式に調べれば、そういうものはやっていないというに違いない。したがって、いつやるであろうかということについては、ワシントンの日本大使館でさえも心配しているのです。ぼやっとしておる間に、方々気がねしておる間に、ある日夜が明けたらアメリカは中国を承認しておったということになるのではないかということを先走って心配しておる者もあります。これは、出先が心配しておるように、本省にもそういう空気があるのではないかと思う。したがって、あなたの在職中の最大の仕事として、中国と台湾と無条件で再統一するようなあっせんをする。どちらも文句を言うと思います。中国側も文句を言うでしょう。台湾側も文句を言うと思います。またアメリカもイエスとは言わぬと思います。しかし、この辺が仲裁の時期だと見きわめをつけたら、これを一也懸命やることが日本民族一億の希望であり、そして、それは世界の平和につながるものだと思うのです。どちらだけを勝たせるのではなくて、何かの条件によってできるのではあるまいかと思うのですね。これは私の願望なんでありますけれども、あなたはどういうふうにお考えになるか。中国と台湾問題についてどういうように扱えばいいか。国連の代表権のような問題はあと回しにして、基本的に考えてもらいたい、そういうことです。
  160. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あなたの言われるように、大陸中国と台北政権との統一という行き方もあるでしょう。しかし、これはおのおの基本的な政治上の行き方、主義が違いますので、ただ単なる権力の争いではないという点からして、なかなかむずかしいだろう。さればといって二つの中国、いわゆる現状、大陸は中共、台湾は中華民国政府、こういうふうに二つの中国をお互いに承認するということも、これまた非常にむずかしい問題である。しかも、これは中国の国内問題ではなくてもはや重要なる国際問題でもある、こういう点からいいまして、きわめてむずかしい問題であると思います。これは、ただ解決のために一国や二国が動くというのではなしに、やはり国連の舞台において、あるいはしからざる国際的な他の舞台において、国際的な世論というものを背景にして、問題が漸次落ちついて、落ちつくところに落ちつくということになる以外に私は解決のしようのない問題であると考えますので、しばらく国際世論の動向を待って、そうしてこの問題に手を染めるということになるのではないか。これは急に急いでやったからといって、なかなか落着するものではない、かように考えておりますので、やはりこの際は、現状のままにこれが推移いたしまして、そして、おもむろにその機会を待つということであろうと考えております。
  161. 田原春次

    田原分科員 ことばじりをとるようで恐縮ですけれども、大臣のいまの御答弁の中で、三点私は議論をしたい点がある。第一は、非常にむずかしいということなんです。しかし、不可能を可能にするのが外交でありまして、むずかしいものをやらなければ外交じゃないと思うのです。だから、むずかしいことにめげず、どうこれをほぐしていくかということの方法、あるいは情報の収集等をやるべきじゃないかと思います。  それから第二点は、国連を舞台にするとおっしゃいました。確かに国連を舞台に中国の加入問題は議題にのぼりつつあります。年々ふえつつあるじゃないですか。数年前とは雲泥の相違であります。もうこの辺で日本が踏み切って、四十七対四十七になったときに、一票こっちが加えることができるならばやるべきでありまして、国連を舞台にするという意味を私が解釈するならば、近い将来に大臣も踏み切る、こういうふうに解釈できるのでございますが、どうでしょうか。  第三点、国際世論の背景と申しますが、最近のベトナム闘争等を見ましても、やはり中国が入らなければ話にならぬ。いまアメリカはそう言っておりませんけれども、もうイギリスにしてもフランスにしても、やはり中国打診の段階に入っております。したがって国際世論は、万国すべて国連に入り、必要な問題はこの舞台で取っ組み合いしてもいいからやれということでありまして、国連の内におるものと国連の外におるものと武力を交えてはいかぬということでありますから、いまのあなたの三つのことばからするならば、私は椎名さんは近く踏み切るのじゃないかと解釈できるのでありますが、この際明瞭に率直に世界に呼びかけるつもりで、中国問題は日本にまかせろ、日本民族は必死の努力を傾けてアジアにおける平和問題をやるのだというくらいに勇ましい、正しい、公平な議論を出してもらいたいと思うのですが、そういう踏み切りはいかがでしょうか。
  162. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 むずかしいからといって手をこまねいて、情勢の好転をただ無為にして待つというのではございません。やはりあらゆる情報、あるいは世界の世論の動向、あるいはまた特に関係の深い国々の意見を徴する等、絶えずこの問題に関して十分に注意、観察を怠らない、そしてきっかけを見つけてだんだん解きほぐすということであろうと思いますが、これはいわゆる有言実行といいますか、あらかじめそのスケジュールをつくったり、あるいはいたずらに揚言をして片づくというような問題ではないと思いますので、十分にお説のあるところは参考にいたしまして、今後ともこの問題の解決の糸口を探索する、また国際世論の動向も十分に観察する、こういうことにいたしたいと考えております。
  163. 田原春次

    田原分科員 非常に重要なる御答弁をいただきまして、意義深い問答だと思っております。すなわち、私の意のあるところを十分参考にして、国際世論を見きわめつつ糸口を見つけたいというのでありますから、これは前向きの姿勢であると思わなければならぬ。問題は最後の決断であります。どうか決断をされて、椎名外相在職中の一大事業として、後年に永久に感謝されるように、何となしにうやむやに退任されるのではなくして、ひとつ一石を投じてもらいたいことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  164. 愛知揆一

    愛知主査 それでは、玉置一徳君。
  165. 玉置一徳

    玉置分科員 私は、まず椎名外務大臣に国連軍の派遣協力についてお伺いを申し上げたいと思います。  自衛隊の国連軍への参加問題は、御承知のとおり、松平国連大使が、ちょうど三十六年だったと思いますが、オブザーバーとしてでも国連警察軍に自衛隊を派遣すべきであるということを申されてから、今日までいろいろと論議が戦わされてきたわけであります。昨年椎名外相も国連総会に出席されました際に、自衛隊の国連軍参加を検討すべきだと申されたのも事実だと思います。そこで、去る十二月に日本が国連の安保理事会の非常任理事国に当選して、政府として、アジアにおける大国として日本が今後世界の平和維持に相当な責任を持っていくためには、国連に協力するあり方につきまして、国連軍の派兵の問題を具体的に検討すべき時期にきたと判断されておるように思いますが、外相の御意見を伺います。
  166. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国連軍の派遣協力と申しましても、非常に内容に幾段階もあると思うのであります。たとえば、国際協定ができて、二国間の紛争がまたよりが戻らないように両国とも自制するのはもちろんのこと、第三国あるいは国連のほうから特別の監視機関を派遣して、そして再び紛争の起こらないようにする、そういうような場合に監視機関に入る、国連の監視機関というものに加入する、参加国として何がしかの人員を出してこれに参画する、こういうような場合から、それからいわゆる国連警察軍と申しますか、そういうような平和維持のための、国際社会の秩序を維持するというような意味の国連警察軍、そういうものに相当の兵員を出して参加するというように、その中間もいろいろあろうと思いますが、幾段階もございます。一番簡単な形としては、監視機関に人を送って参画する問題であろうと思いますが、そういったような場合に、やはりこれは、そういう監視機関に入るには入るだけの専門的な知識がなければならぬ。そういう場合には、どうしても適格者は日本でいうと自衛隊において訓練をされた人、そういう人が適格性を持っているわけであります。そういったような点からだんだん高次の形態に至るまで、いろいろ情勢の推移によっては具体的に研究を進めていかなければならぬという情勢が来たりつつある、近づきつつある、かように考えるわけでございます。ただ、その程度が進むに従いまして、自衛隊法の問題はしばらくおくとして、基本的に日本の憲法というものがはたしてどの程度のことを許すのであろうかというような、そういう調査研究を進めていかなければならぬ、そういう情勢がだんだん近づきつつあるのではないか、こう考えておる次第であります。
  167. 玉置一徳

    玉置分科員 ただいま外相は、各種類の軍事制裁というものがある、したがって、一がいに全部をどうということは言えないけれども、何らかの意味で国連協力のために軍事的制裁にも協力する場合に、憲法との問題がどうなるかということを考えざるを得ない場所に近づきつつある、こういうようなお話であります。  そこで、いまのお話を聞いておりますと、国連の監視員あるいはオブサーバーあるいは警察軍あるいは韓国に派遣されておるアメリカを主とするような国連軍。南ベトナムにおいても同じであります。こういう問題を具体的に考えなければいかぬのだということは前からもお話があったわけでありますが、わが国が協力をし得る対象としてお考えになるような国連の軍事的制裁措置というようなものは、具体的にどういうものが想定し得るかどうか、大臣じゃなくて当局でもけっこうですが、お答えをいただきたい。
  168. 星文七

    ○星政府委員 ただいま国連の軍事制裁ということをおっしゃったのですけれども、その軍事制裁ということが一体どういう形をとるかということははっきりいたしかねますので、ちょっとここで御答弁いたしかねます。
  169. 玉置一徳

    玉置分科員 かねてから椎名外相がおっしゃっておりますのは、国連の派遣ということも時と場合によるのだ、ケース・バイ・ケースだというお話がありました。このことは、おそらく国連軍を提唱されておりますのにも、スカンジナビア諸国の提唱もあれば、昨年のソ連からの提唱もあれば、たとえば韓国の問題のときのアメリカの国連軍式のものもあれば、いろいろあるということであり、また内容としては、オブザーバーもあれば、アフリカ諸国へ行っております監視員、あるいはキプロスその他のところに行きましたほんとうの狭義の警察軍と思われるもの、あるいは今度のインド、パキスタン両国の衝突を排除するために中間地帯に入りました国連軍、その他ベトナム、韓国における国連軍、こういう態様があると思うのです。椎名外相のおっしゃるような、いろいろなことを検討すべき段階に近づいてきたと思われるということを前提に置きますと、そういったうちのどういうような態様のものがわが国の国連軍参加としての対象となり得るか、こういう質問であります。
  170. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 軍事的な制裁措置といたしましては、第四十二条に準ずるようなものとしては、いまいろいろおあげになりましたうち、朝鮮動乱の場合の国連の措置があるだけでございます。そのほかはいずれも軍事的な制裁措置の性質のものではございませんで、当事国の要請に基づきまして、国連として治安維持、あるいは監視その他の目的で軍事要員を出したわけでございます。したがいまして、ケース・バイ・ケースで研究するよりほかないと申す場合には、いずれも軍事的制裁措置でない、それより性質の違ったものを念頭に置いて言っておるわけでございます。
  171. 玉置一徳

    玉置分科員 椎名外相にお伺いしたいと思います。  外務大臣が先ほどお話しなすったのは、要するに軍というよりは監視員、オブザーバー、直接戦闘に巻き込まれずに、国際平和を企図する狭義の警察軍というような御意向だと思うのですが、そうでありますか。
  172. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 非常に低い段階であるということで申し上げたのは、つまり再び紛争が起こらない、また起こりかけた場合にどういう措置をすべきかということについて、あらかじめ現地に派遣して情勢を監視する、こういうのは必ずしも日本の憲法に違背するものではないと思います。もっと段階が進んで、一体兵員を出して協力し得る限界はどの程度かということになりますと、いま条約局長からも申し上げたとおり、どうも適当な実際のケースがきわめてまれなのでございまして、あるいは該当するような実際のケースがなかったということを言ったほうが適当かもしれません。そういうぐあいで、定型としてこういう場合ということを言うことはなかなかむずかしいのではないか。ただ言えることは、日本は憲法において国際紛争の当事国として武力を行使することはみずからやめております。憲法で禁ぜられておりますから、そうじゃない、こういう趣旨に該当しない国際紛争があったような場合に、いずれかの当事国の味方をするというようなことじゃなしに、高い見地から国際社会の秩序を維持する、もしこういうような趣旨の措置が国連によってとられるような場合には抵触しないのじゃないかというように私は考えておりますけれども、これらの問題につきましては、法制局を中心にしていろいろ研究しておるような段階でございまして、これだというような結論はまだ出ておらないような状況でございます。
  173. 玉置一徳

    玉置分科員 外務大臣は、憲法においては武力をもってその当事国として事をかまえることはいかない。そうじゃない、国際平和を維持するために常時局地に派遣をしておくようなものは憲法の違反にはならない、こういうように自分は考える。この問題についてはいろいろ法制局その他でいま検討中だ、こういうお話でありますが、在来そういう同じ見解で国連軍としてなら違憲ではないが、政府の方針として当面派遣は考えないということでずっと終始してこられたわけです。ところが今回安保の非常任理事国に当選した現在の地位からして、憲法の違反にならないそういった警察的な——警察軍とはいわない、国際平和に寄与する警察的な措置にはある程度配慮をめぐらさなければならないというところへ来たのじゃないかと検討しておる、こういうお話だと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  174. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 研究としては、違憲にならざる限度において、たとえば監視機関というようなものに参加すべき人員を派遣するというようなことは、自衛隊の現在のたてまえからいって、いかなる場合でも海外に兵員を出すということは、その数のいかんを問わず、それから目的のいかんを問わず、海外に派兵はしないというたてまえでございますから、もしやろうとすれば自衛隊法の改正をしなければならぬ。しかし、自衛隊法に違背するかしないかは別問題にして、憲法上どうであるかということになれば、それは法制局のほうで一つの考え方を固めておるようでございますから、ちょうどここに法制局の第一部長が見えておりますので、第一部長のほうからお答えしたほうが適当かと思います。
  175. 関道雄

    ○関政府委員 ただいまの件でございますが、これは歴代の法制局長官が再三お尋ねにあずかって御答弁申し上げておるところでございますが、先ほど来大臣及び条約局長から御答弁申し上げましたように、確実にこれは憲法上差しつかえないと申せることは申すまでもないことでございます。派遣されていく国連の監察団と申しますか、国連軍と申しますか、それがその任務としてある目的を実力を行使しても達成すべしというような、そういう任務を与えられているものについては憲法上問題があるが、そうでないものについてはいかなる協力でも可能である、これはまず間違いない。  それから、先ほど来国連軍、国連軍ということで問題になっておりますが、これは先ほど国連局長のほうからもお答えになったかと思いますが、いろいろの極数がございまして、一がいには申せませんが、いやしくも武力といいますか、実力といいますか、要するに武力である目的を達成するという任務を与えられたものを国連軍と申しますとすれば、そういうものにわが国が参加をするということはこれは憲法上非常に慎重にならざるを得ない。そこで憲法の趣旨といたしますところでは、さしあたってはまず九条でございますが、九条は御承知のとおり、日本国が主体として武力を行使したり威嚇したりするということを禁じているわけでございますから、国連が主体となって何かをやるというようなときには、さしあたりその九条にまっこうからぶつかるということはないわけでありますけれども、九条が置かれます趣旨というものを憲法の前文その他から判断をいたしますと、ただあの条文をくぐればいいというわけではなくて、よほどのことがなければ、自分たちが直接の当事者である場合についてさえかくのごとき慎重な規定を置いておる憲法でありますから、それ以外の、たとえば国際連合が何かそういう行動をとるという場合に、参加すべきかどうかという判断はなかなかむずかしいわけでございます。この点につきましては、歴代の法制局長官がお答えしておりますように、何か夢のような話だというふうな御批判を受けたこともございますが、国際社会が一つの理想的な形体に達しまして、それがちょうど一国におけるがごとく、その中の秩序というものが世界の平和への秩序であるという認識が世界的な認識となる。そこにおきまして、その国際社会が自分の意思で自分の実力を備えまして、それによってその秩序を乱すものを制裁して、その秩序を回復するというような体制ができましたならば、そこにわが国が人員を参加させることは憲法上差しさわりがないということは一応いえるのではないかというところまではいっておるわけでございますが、ただいまの国際連合の現状がそういう国際社会の実を備えておるかどうかということにつきまして、まだ確信を得がたいという状態でございます。
  176. 玉置一徳

    玉置分科員 いまのを要約いたしますと、外務省並びに法制局のほうの見解は、結局憲法そのものは日本が当事国として武力を行使することをいうておるのであるから、自衛隊法その他の関係はあるだろうけれども、国連軍に派兵することそのものを禁止しておるのではない。しかしながら、憲法の前文その他の精神からいうて、もちろん解釈としてそういうことは慎重にならざるを得ない。現状においては国連軍という武力をもって軍事制裁をするようなところは慎まなければならない。ここまでは憲法論だと思います。  そこで、先ほどの外相のお話のような、監視員その他を国際平和の維持のために出すことは、憲法との抵触はないということになると思います。そこで教名の、あるいは十教名、あるいは数百名ぐらいの範囲内の監視員その他を出す場合においても、それが日本の自衛隊員である場合には自衛隊法を改正する必要があるかどうか、この点、外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  177. 関道雄

    ○関政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、自衛隊法を検討いたしますと、直ちにいまのような任務が遂行できるだけの権限を与えておるかどうかは、私ちょっといま具体的な条文を持っておりませんのでわかりませんが、いままでの例を申しますと、たとえばオリンピックの支援をいたしますとか、あるいは南極の観測について輸送の支援をいたしますという場合にも、一々法律の改正をお願いしておるようなのが実情でございます。それに照らして考えますと、そのような、たとえば国連の監察団等に技術的な奉仕をするために人員を派遣する場合には、おそらく自衛隊法の改正が必要であろうというふうに考えております。
  178. 玉置一徳

    玉置分科員 当面考えられるような国連警察軍の協力は、憲法の解釈その他国内法の問題もありまして、非常に制限された、きわめて狭義な警察維持と治安維持的な要素であるというようにいまのお話を総合いたしますと考えられるわけでありますが、ただいまの法制局の見解に従って最小限のそういう治安維持のための監視員、オブザーバーというようなものを政治的に派遣をすることを検討しなければならないというような政治的な配慮があるかどうか、それから、それがあるとすれば国内法、自衛隊法の改正もあわせて検討しなければならないと思われるかどうか、外務大臣にお答え願いたいと思います。
  179. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 現実問題として、まず自衛隊法を改正するという点があるのでございますが、ただいまの日本の自衛隊は一切そういうことを予想しておらないというのでございまして、この点の改正はただ字数をある程度加えるとかいうような簡単な問題ではないと思います。たとえ憲法上それが許されることであるにしましても、従来の自衛隊法のたてまえを相当大きく変えるということになるのでありますから、簡単ではないと思います。しかし、国際情勢はどうか、そういうことを必要とするような事態が起こり、さらにまた日本といたしましても、国際連合加盟国の一員としてこれにいつまでも無関心ではいられないということがあるかどうかということになりますと、その問題はやはり起こり得る情勢にあるのではないか。そのときは間に合わないのですから、そろそろ検討しておかなければならぬのではないか、こういうふうに考えております。
  180. 玉置一徳

    玉置分科員 自衛隊法はそういうことを想定していない、したがって、そういう場合は自衛隊法を改正しなければいかぬ、軍事制裁を加えるような大きな軍隊を派遣しようという気持ちは毛頭ない、憲法上もこれはいかがかと思われる、しかしながら、監視員程度の警察治安維持のための派遣にも自衛隊法の改正が要る、要るけれども、それは相当大きな政治問題になるから、いま急にやろうという決意はなかなかつきにくい。しかしながら、国連の相当な責任ある地位についた日本としては、そういう場合ができたときには大いに考慮しなければいかぬ、そのときでは間に合わぬからいまから考えなければいかぬと、非常にお苦しい立場をそのまま聞かしてもらったわけです。  そこで、もう一つ聞いておきたいのですが、そういう場合に安保理事会の決議によるのか国連総会の決議によるのか、どちらが正しくてどちらが間違いですか。
  181. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まあ安保理事会ということになると思いますが、総会がこれにかわって、平和のための結集決議という形においてこれに関与することも可能である、こういう解釈でございます。
  182. 玉置一徳

    玉置分科員 この解釈はいろいろございますが、安保理事会の決議によるということのほうがあぶなげはないのじゃないだろうか。多数決による場合に、若干いろいろな問題が出てくるような感じがいたしますが、まあ将来の問題でございますので……。  そこでもう一つ、もし国連軍が直接各国の国民を雇用いたしまして国連警察軍を編成した場合、日本から直接それに応募した場合は、憲法上、政治上どんな問題が起こってくるか。
  183. 星文七

    ○星政府委員 ただいまおっしゃいましたような事態は、現実の問題として私は起こり得ないのじゃないか。つまり安保理事会なりあるいは総会において、そういう国連軍といいますか、国連が平和維持活動を起こした際には、おそらく事務総長から各国に対して、政府として国連に協力してくれということであって、個人に呼びかけるというようなことはちょっと私は考えられないのじゃないか。また従来もそのような例はないと思います。
  184. 玉置一徳

    玉置分科員 各国の了解を得て一個連隊ぐらいの人間を国連事務総長なりあるいは理事会が直接雇用して編成をした場合に、各国はそこへ金を出すわけなんです。そういう場合はどうか、こういうことなんです。
  185. 星文七

    ○星政府委員 私が先ほど申しましたように、部隊の大小、多いかあるいは少ないかを問わず、各国が別々に出してそれを国連軍の監督下に置くということではなくて、やはり政府としてこういう部隊を出すという形をいままでとっておりますし、また今後そのたてまえはくずれることはないだろう、こういうふうに申し上げたわけです。
  186. 玉置一徳

    玉置分科員 まあ、いまのは仮定でございますので、その程度にしておきます。  軍事制裁の次は経済制裁でございます。過般のローデシア問題でもずいぶん非難を受けたわけでありますが、今後安保理事会の勧告によりまして経済制裁を勧告された場合に、これを忠実に履行するお気持ちがあるかどうか。それから、それは具体的にどうなるのだろう。したがって、そこに商社その他の損害を受けるものがあり得ると思いますが、それに賠償する責任ができてくる。これは国内法というようなものをつくらなければ問題だと思うのですが、一体どういうようにされるか、お伺いしたいと思います。
  187. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  経済制裁の場合につきましては、現在のわが国の法体制のもとでは、貿易及び外国為替管理法、それからそれに基づきました例は、大体貿易振興を主としておりまして、この国連決議がありました際に、その輸入禁止あるいは輸出禁止というようなことを主目的としておりません。それで非常に不便な点がございまして、現在ローデシアの問題のような場合には、通産省におかれまして商社と話し合って、納得づくでやっていただいておるという形でございます。  それからもう一つは、この省令改正という形もびほう的にはございますが、それは非常に時間を要しますので、もっぱらいまのところは商社と話し合いの上でやっておるということでございまして、玉置委員の御質問の補償措置につきましても、法的な点が固まっておりません。その点については関係省庁と共同で研究いたしております。
  188. 玉置一徳

    玉置分科員 最後にまとめてもう一度お伺いしておきますが、去る一昨年の七月に、参議院の予算委員会におきまして椎名外相は、国連協力についての統一見解を今度の国会、現在の国会までに出す、こういうことを約束されております。その後私も二回にわたりましてこれについての質問をいたしましたが、いまだ政府の見解は固まっていないということに終始されておりましたわけです。本日やや具体的に、こういう場合にのみ考える対象となり得る、しかも、それはなかなかむずかしい政治的な問題だから急速に自衛隊法の改正もし得ない。しかしながら、責任上は、国際的地位からいえばするようなところへ考えなければいかぬ羽目にきているんだ、こういうところでございましたが、おとといかきのうかの新聞に載っておったような、海外派兵のための国連協力法案なんというものをにわかに出そうというような意思はないということ、並びに自衛隊法の改正は今国会で提案するような意思はございません、並びに経済制裁に伴う国内法の改正もことしはいたしませんということを言明できるかどうか。
  189. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ研究に入ったばかりの過程で新聞に大きく出ましたが、これはなかなか重大な問題でございまして、今国会に提案する段取りにはなっておりません。
  190. 玉置一徳

    玉置分科員 それでは最後に、全然ほかのことになりまして恐縮ですが、外国船員の上陸時間あるいは上陸地を制限しているのは、海運国の中では日本だけだそうであります。第二十八回の国際運輸労連大会で非常な攻撃を受けたわけであります。出入国管理令施行規則で七十二時間、出入国港の存在する市町村に限る、こういうことになっております。日本の船員が海外へ参りました場合は非常に自由にしていただいておるわけであります。これをすみやかに改正をすべきだと思いますが、その意思があるかどうか、法務省の関係官の方から御答弁をいただきたいと思います。
  191. 中村正夫

    ○中村説明員 現在出入国管理令の改正を考慮中でございますが、その際には、日本の船員が向こうへ行って報復的な目にあうようなことがあっても困りますので、前向きの姿勢で改正を検討中でございます。
  192. 玉置一徳

    玉置分科員 すみやかに、前向きどころではなしに、よその国でやっていただいておるとおりに改正をしていただきたいと思うのです。  なおもう一つつけ加えて最後にお伺いしておきますが、日本の海外漁業が非常に活発になりまして、漁船員の多数の方々が海外で長い時日そこを基地にいたしまして漁業に従事しておりますが、去年はラスパルマスに領事館を設置していただきまして、非常に関係者が喜んでおりますが、なおその他サモア、フィジー等にも急速に領事館を設置することが無理であれば、せめて文官なり駐在員なり、こういうものを置いていただきまして、安んじて海外の漁業に従事できるように、なおまた品位その他を落とすことによって現地の人々と紛争が生じたりいたしまして、日本の漁業の進出を制限されることのないように措置をすべきだと思いますので、今後ともこういった駐在員、文官その他保護の任に当たれる機関設置をお願いいたしたいと思います。これにつきまして御所見を……。
  193. 高野藤吉

    ○高野政府委員 日本の海外の漁業のことにつきましては、外務省としましても重大な責任を感じ、努力を傾けておるわけでありまして、昨年はラスパルマスに領事館を置きましたが、御指摘の点につきましても、今後御指摘の方向に従って前向きに検討してみたいと思います。
  194. 玉置一徳

    玉置分科員 質問を終わります。
  195. 愛知揆一

    愛知主査 本日の質疑はこの程度にとどめ、明二十五日午前十時より開会し、外務省所管について質疑を続行することといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十五分散会