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1966-03-02 第51回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二日(水曜日)    午前十時二分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       荒舩清十郎君    川崎 秀二君       倉成  正君    竹内 黎一君       古井 喜實君    伊藤よし子君       河野  正君    小林  進君       田口 誠治君    中村 重光君       西宮  弘君    華山 親義君       帆足  計君    八木  昇君       吉村 吉雄君    受田 新吉君    兼務 山下 榮二君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         国 務 大 臣 上原 正吉君  出席政府委員         内閣法制局参事         官       関  道雄君         (第一部長)         総理府事務官         (恩給局長)  矢倉 一郎君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      今竹 義一君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         厚生政務次官  佐々木義武君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚生技官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚生技官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚生技官         (医務局長)  若松 栄一君         厚生事務官         (医務局次長) 渥美 節夫君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (社会局長)  今村  譲君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英男君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君         社会保険庁長官 山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  加藤 威二君  分科員外出席者         総理府技官         (経済企画庁水         資源局参事官) 池田 迪弘君         法務事務官         (入国管理局総         務課長)    菅沼  潔君         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  黒田 端夫君         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    中橋敬次郎君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    徳宣 一郎君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部長)    中川理一郎君         建設事務官         (河川局次長) 青木 義雄君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      鎌田 要人君         自治事務官         (消防庁教養課         長)      村山 茂直君     ————————————— 三月二日  分科員小松幹君及び今澄勇委員辞任につき、  その補欠として伊藤よし子君及び永末英一君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員伊藤よし子君及び山花秀雄委員辞任に  つき、その補欠として田口誠治君及び吉村吉雄  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員吉村吉雄君及び永末英一委員辞任につ  き、その補欠として華山親義君及び受田新吉君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員華山親義委員辞任につき、その補欠と  して西宮弘君が委員長指名分科員に選任さ  れた。 同日  分科員西宮弘委員辞任につき、その補欠とし  て河野正君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  分科員河野正君及び田口誠治委員辞任につ  き、その補欠として中村重光君及び帆足計君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員帆足計委員辞任につき、その補欠とし  て小林進君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  分科員小林進君、中村重光君及び受田新吉君委  員辞任につき、その補欠として小松幹君、山花  秀雄君及び今澄勇君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  第五分科員山下榮二君が本分科兼務となつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算厚生省労働省  及び自治省所管  昭和四十一年度特別会計予算厚生省労働省  及び自治省所管      ————◇—————
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計及び昭和四十一年度特別会計予算中、厚生省所管を議題といたします。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑の持ち時間は、本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員になられた方は三十分程度にとどめることとなっておりますので、御協力をお願いいたしたいと存じます。なお政府当局においても、質疑時間が限られておりますので、答弁は必ず的確に、要領よくかつ簡潔に行なわれますよう、特に御注意申し上げておきます。  これより順次質疑を許します。伊藤よし子君。
  3. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 昨年、かねて私たちの非常に長い間の待望でございました母子保健法政府から提案をされましたが、その内容はたいへん私たち期待に反してお粗末なものでございまして、がっかりした次第です。しかし、法の精神は、私たちもたいへん賛成でございますので、今後その精神に従って内容を充実強化させていきたいという大臣のおことばもあって、ぜひそうしていただきたいと思うのでございますけれども、そういう意味で私たちはこの法案には賛成したわけでございますが、ことしの予算などにおきまして、まず厚生大臣にお伺いしたいのでありますけれども母子保健法精神に従って何か強化されたことがございますか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この母子保健法の中で、私ども妊産婦乳幼児栄養、健康を増進いたしますために、無償ミルク支給することにいたしておりますが、その支給範囲昭和四十年度よりは四十一年度におきましては拡大をいたしまして実施いたしたい、かように考えております。
  5. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 その点でございますけれども、私たちもこの法案と直接は関係がございませんけれども母子保健法制定に伴って、母子栄養強化のために、新鮮な牛乳を一本低所得階層妊産婦並びに乳幼児支給するということがございまして、非常に大きな期待を持ったわけでございます。私たちの主張から言えば、所得の制限なしに、すべての妊産婦乳幼児にぜひこの新鮮な牛乳が渡るように、それを念願したのでございますけれども、昨年の予算によりますと、一部の階層にだけ新鮮な牛乳を一本あて支給するということでございましたが、四十年度の予算ではこれが一億八千六百七十万円でございますか、そういう予算無償牛乳に対して組まれておったと思いますが、その予算消化状況がどういうことになっておりますか。ことしになりましてから各地新聞などに、無償牛乳大あくびとか、あるいは無料ミルク予算が宙に浮くというような記事がたいへん出ておりまして、どういうことになりましたか、その予算消化の結果というのですか、どういうことになっておりますか、御説明をいただきたいと思います。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 その数字的なことは政府委員のほうから御説明申し上げますが、若干予算が残ったのでございますけれども、それはどういうことかと申しますと、各地方団体がすでに当初予算を組んだあとでこのミルク支給の問題が決定をいたしまして、おくれて通知をしたというようなことで、地方団体予算措置が各市町村で順調に行なわれなかった、こういうことも一つ原因であろうか、こう思います。それから、傾向といたしましては、大都市におきましてわりあいにこれがスムーズに実施に移されなかった、と申しますことは、大都市において牛乳単価の面からいたしまして、その差額を地方団体負担をしなければならないという事情がありまして、そういうことが、積極的に、進んでこれの実施を行なうということを渋った一つ原因ではなかろうか。いろいろ原因調査いたしておるのでございますが、しかし大部分府県におきましては、地方団体はこの施策を非常に歓迎をし、喜んで今後やろうという傾向にあります。
  7. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 今年度のミルク予算消化状況でございますが、四十六都道府県のうちで、今年度見送った県が二県ございます。これは埼玉県と和歌山県でございます。あとの四十四都道府県はこれを実施いたしております。予算総額から申し上げますと、一億一千万円各府県予算を組んでいるわけでございます。なお対象市町村でございますが、全国の市町村が三千三百七十四ございますが、これを実施いたしました市町村は、二月二十日現在におきまして千二百八十二でございますので、約三分の一強の市町村実施をいたしておる、こういう状況でございます。対象の人員につきましては四万八千人でございますので、そういった市町村の数が減っておりますので、対象自体見込みの三分の一強、こういうような状況でございます。
  8. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 ただいまの大臣の御答弁は、大多数のところではよかったとおっしゃったのですけれども、たしか昨年のお見込みでは十三万何千人ということでございましたね。それに対して四万八千人というと三分の一でございますね。それは実施がおくれたからとか、準備ができなかったということだけでございましょうか。事務費の点はどういうふうになっておりましたか。非常にたくさんの事務費がかかって、そういう点も市町村負担になったのではないかと思いますけれども事務費は組んでございましたかどうか、それらの点も含めて、どういうところに具体的に欠陥があってそういうことになったか、もう一度……。
  9. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 先ほど大臣から申し上げましたように、実施がおくれましたのは、これにつきましての法律の関係もございまして、公布の、実際に実施する通達というのが非常におくれた関係がございます。そういう関係がございまして、大体十月以降になりまして大部分市町村実施をしたという点がございます。  それから第二は、先ほど大臣が申し上げましたように、単価の問題で市町村当局あるいは牛乳関係業界との話し合い、こういった点が特に大都市においておそくまで時間がかかりましたので、大都市のほうが非常におくれたということでございます。  それからミルク事務費につきましては、補助金としまして二百六十万組んでございます。この事務費は単に事務を処理する、たとえば台帳をつくるとか、そういった費用でございまして、やはりこういったミルク実施につきましては事前の啓蒙、宣伝と申しますか、この趣旨をよく理解してもらうということが必要だと思うわけでございます。そういった点にやはり最初のことでございますので、ふなれな点があったのじゃないか、かように思います。
  10. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 そういたしますと、一口にいってたいへん不準備であったということが一つでございますね。  それから、これは新聞記事なんかによりますと、県、市町村長会なんかでは、非常に繁雑な事務事務費補助がなかったといっているのですけれども、ただいま局長の二百六十万というのはどういうところに流れましたのか、その点をもう一度伺いたい。  それから支給の基準が非常に複雑であったために、このままではもう、せっかくきめのこまかい政府政策効果期待できないというようなことを市町村長会などがいっているということがございますけれども、その点はいかがでございましょうか。  それからもう一つは、やはり問題なのは、十五円の単価がいかにも少ないので、生活保護家庭で十分の八の国家補助で、あと市町村と県で十分の一ずつでございましたか、それから非課税世帯では国家補助が二分の一でございますね。ですからそういうところにも地方負担が、先ほどおっしゃったように非常に大きいということが、せっかくいい政策をおとりになっても受け入れられないというたいへん大きな原因があるのではないかと思いますが、それらの点について……。
  11. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 事務費につきましては、これは先ほど申し上げましたように台帳をつくりまして、対象市町村民税非課税世帯ということになっておりますので、非課税世帯であるかどうかという照会が必要であるわけでございます。そういった面で、中都市以下につきましてはほとんど問題がないのでございますが、大都市につきましてはそういった非課税世帯であるかどうかという確認の問題で内部的に事務が繁雑である、こういうことかと思います。そういった面につきましては、さらに検討、改善を加えてまいりたいと考えております。  それから第二点の単価の問題でございます。単価につきましては十五円ということでございますが、実際に実施しておる状況を見ますと、十五円以下でやっておるところもございますが、大部分が十五円から最高は二十二円、こういうような状況でございまして、地方によって非常に差がございます。そういった点の市町村負担しなければならないという問題がございまして、御指摘のようなことになったわけでございます。
  12. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 そこでそういう欠陥が出てまいったわけでございますけれども、今年度の予算においては、先ほど大臣も言われたように支給範囲を広げたというような唯一のそういうことをおやりになったようでございますけれども、ことしの予算はどういうことになっておりますか。
  13. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 今年度の予算につきましては、対象拡大では市町村民税均等割り世帯について範囲を広げたわけでございます。しかしながら、均等割り世帯と申しますのは、市町村住民の約四分の一くらいに当たりますので、その中でも特に栄養上問題があるという妊産婦乳幼児、たとえば妊娠中毒症にかかっているとか、そういった方々にミルク支給したいということで、その対象につきましては約二万三千人を見込んでおるわけでございます。
  14. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 先ほどの大臣のおことばにもありましたように、母子保健法強化についてただ一つの具体的な政策としてこの無償牛乳の問題があげられて、しかもそれの対象をふやしたとおっしゃるのでございますけれども、いま局長のおことばによると、均等割り世帯の、しかも妊娠中毒症など、あるいは栄養の不十分な人にだけというので、それが二万三千人というのですけれども、これはあまりにみみっちいと思うのでございます。せっかくの善政でございますから、せめて均等割り世帯全体くらいに渡るようにならないものかと思いますけれども、この点についてひとつ大臣のほうから、これでいいと思っておいでになりますか、お伺いしたいと思います。
  15. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは何ぶん昭和四十年の年度途中から具体的な実施の段階に入ったというようなことでありますので、いろいろ改善すべき問題点があると思います。私はこういう施策は年次を追うてだんだん強化をし拡大して、着実に伸ばしていったほうがいいのではないか、かように考えておりますので、今後は、ただいま伊藤さんから御提案になりましたような方向で、逐次拡大していきたい、こう考えております。
  16. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 ぜひそうしていただきたいわけでございます。それで単価の点は昨年と同じ十五円でございますか。それと事務費の点は今年度はどういうふうに組んでおいでになりますか。
  17. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 単価の点につきましては昨年と同様でございます。事務費も同じでございます。
  18. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 事務費はどれだけ組んでおいでになりますか。
  19. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 二百六十万円であります。()伊藤(よ)分科員 事務費の二百六十万円というのはどういうことでございますか。先ほどちょっと申し上げましたように、市町村長会などは事務費が一銭もないといっているのですけれども、そこの点はどうでございましょう。そちらが間違いでございますか。
  20. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 二百六十万円自体総額として少ないという問題がございますが、これは市町村事務費を組んだ場合には県は補助する、こういうことになっております。
  21. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 その点は、こういうことが出ておりますし、今回消化し切れなかった原因の中にも、この事務費の問題が一つの大きな問題になっておりますので、これは同じではなくてもっと強化なすって、いまおっしゃるように事務費を組めば必ず支給できる、ぜひそういうことにしていただいて、今度もまたそういう事務費等の問題が不十分であるために、せっかくの政策がまた効果がないというようなことがないように、この点をぜひ御努力を願いたいと思うのです。  それからもう一つは、いまの単価が十五円で相変わらず変わらないという点につきましては、これは私はたいへん大きな問題だと思うのです。昨年十五円で、やはり事務費負担が多いために、その点も先ほど大臣もおっしゃいましたように、消化し切れなかった一つの大きな原因になっているのに、しかも昨年よりことしは牛乳ども上がっていると私は思うのです。全体としてその単価は上がらないかもしれませんけれども、困難になってくるのではないかと思うのです。ですから、その点を改善して単価でも上げるようにしないと、やはりことしもせっかく対象範囲拡大なすっても、また消化し切れないというような事態も起こりかねないのじゃないかと思うのです。そうすると、むしろ低くなって実質的には低下されたということにもなりかねないと思うのですが、その点いかがでございますか。
  22. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 単価の問題につきましては、予算の他の部面におきましても、実際に実施されておる単価補助単価というのが必ずしも一致していない状況でございますので、私どものほうといたしましては、この点につきまして業界協力を得たいということで現在交渉いたしておる次第でございます。
  23. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 たいへんくどいようでございますけれども、この無償ミルクというのは新鮮なミルクを、牛乳をみんなにやるというのが最初の非常に大きな宣伝でもございましたので、ぜひ牛乳以外の何かまざった、粉乳を入れるとかそういうことでなくて、新鮮な牛乳が渡るということを原則にして、ぜひそういう方向で、具体的にもわずかな人にも渡りますように、一そうの御努力をお願いを申し上げて、特に、最後でございますけれども大臣のそういう方面の御努力に対する御決意を伺っておきたいと思います。
  24. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 このミルクにつきましては、ただいまお話がありましたように、新鮮な牛乳を配給したい。そこで、これは地方牛乳生産状況また流通の状況等に応じて実施の可能なところもあり、しからざるところもあるわけでありますが、できるだけ新鮮な牛乳栄養が確保されるように指導してまいりたいと考えております。
  25. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 まだちょっと時間があるようでございますから……。私はいずれまた社労委員会でこまかい点はお尋ねしたいと思っておるわけですが、ただ保育所関係一つだけお伺いしたいと思います。  毎年働く婦人の数が多くなっておりますが、特に最近物価が高くなっておりまして、どうしても家計費補助あるいは家計費を得るために、ますます内職を含めて働く婦人が多くなっております。それにつれて、私たち各地へ出ますと、保育所増設を望む声が非常に強いのでございます。私は、昨年の予算分科会におきましても、その問題について御質問申し上げたのでございますけれども地方におきましては保育所増新設がなかなかできないのが実情でございます。昨年、四十年度でございますか、どれだけ新増設ができましたか、また今年はどういう計画になっており、そういう方面に対してどれだけの予算をお組みになっておりますか、それをまず承りたいと思います。
  26. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 具体的な数字の問題は政府委員から後ほど御報告をいたしますが、保育所整備の問題は非常に大切な問題だと私も考えておりまして、最近におけるかぎっ子の問題でありますとか、あるいは農山村地帯、僻地におけるところの子供保育の問題でありますとか、いろいろ社会、経済的な情勢の変化に伴いまして、子供保育の問題がさらに重要になってまいっております。  そこで、こういう団地その他に対する保育所あるいは子供の遊び場の設置の問題、あるいは僻地保育所あるいは季節的な保育所設置、そういう点にも十分配慮いたしまして、整備拡充努力をしてまいりたい、かように考えております。具体的な数字につきましては局長のほうからお答え申し上げます。
  27. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 四十年度におきまして保育所新増改築でございますが、新築は百六十八カ所でございます。新改築は四十カ所、増築が六カ所、それから乳児分増築、これが十カ所以上のような状況でございます。四十一年度につきましても昨年以上の個所数を確保したいと考えております。
  28. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 それで昨年の質問のときにも御答弁があったのでございますけれども、これだけの個所で何人くらいの児童保育所に収容できるか。そしてまた、現在全体としては、そういう保育所に入れなければならない児童の数がどれだけ残っておりますか。それからいま一つは、昨年全国的に見て、まだ保育所のない町村がたしか九百七十カ所でしたか九百二十カ所でしたかあるというような御答弁があったと思いますが、そういう点はどういうことになっておりますか。
  29. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 三十九年の調査でございますけれども保育所に入れなければならないという児童の数といたしましては、約三十二万ほど現在あるということで、その保育所の数は約四千六百くらい要るのではないか、こういう調査があるわけでございます。これに基づきまして保育所整備をはかるわけでございますが、何と申しましても未設置市町村が九百幾つもあるという状況では困りますので、未設置市町村をなくするというのを一番の重点に考えまして、昨年の実施におきましても、約百カ所はそういった未設置市町村に充てたわけでございます。したがいまして、未設置市町村あと八百二十くらい残っておる、こういう状況でございます。
  30. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 ただいまお伺いしたところによっても、せっかくの増設新設も、全体の三十二万に対してはまだまだわずかの数でございますし、政府のお調べによっても四千六百でございますけれども、私たちいろいろな調査によると、三十二万人ではなくて、まだ百万人近い必要な数があるのではないかと思うのでございまして、全体としてはまだまだたいへん少ないのでございますね。この点は私は一ぺん昨年もお尋ねしたのですけれども地方市町村保育所をつくりますときの国家補助でございますけれども、その定額が、現在建築費等がたいへん高騰いたしておりますので、実際には一保育所に対して五百万円以下ではできないのではないかと思うのです。それに対して、昨年、何ですか国家補助は七十万くらいでございましたか、ことしはそれがどういうことになっておりますか。そのほうの定額が上がりましたかどうか、その点ちょっと……。
  31. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 三十九年までは一カ所の定額七十万という補助金であったわけでございますが、昨年度、四十年度は六十人から八十九人までの規模の保育所について七十万円、九十人以上について百万、二つの段階を設けたわけでございます。四十一年度はまだ決定いたしておりませんけれども地方の超過負担という問題もございますので、できるだけ高い単価をとりたいということで現在検討いたしておる次第であります。
  32. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 この点はすべての社会福祉施設などに共通の問題でございまして、いま申し上げましたように、建築費は去年だけでもどんどんまた高騰しておりますので、同じ額の補助であっては、ますます地方負担が多くて、貧弱な町村ではできないということが、私は一番大きな問題ではないかと思うのです。昨年は百六十カ所なり増設あるいはその他の多少のあれが見られたのですけれども地方で希望が出ているのに、それを全部補助なさるのか、これから、四十一年度でございますね、それとも希望が出てこないのか、そこら辺の点はどうでございましょう。
  33. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 昨年の状況から見ましても、保育所につきましては五百カ所近い要望が出ておるわけでございます。したがいまして、実際に割り当てるにつきましては、希望があってもなかなか実施できないという状況でございます。なお、都道府県ではさらにそれ以上に希望があるのをしぼってきているわけでございまして、そういう面では、ほかの施設関係と比べますと、保育所が何と申しますか、一番競争率が高い、こういうことになっておるようであります。
  34. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 大臣もいまお聞きのとおりな状況でありますので、せっかく先ほどお話がございましたけれども保育所の問題は、いま私ども地方へ参りますと、働く婦人の中で一番要望されているところで、特に乳児保育を望む声が非常に大きいのであります。同じ状態では進歩がないのでございますから、いま伺っても定額を特にお上げになったということは本年度はないようでございますので、社会保障関係予算が一般の予算の伸び率よりは多いようでございますけれども、一番弱いこういう方面について、もっと格段の御努力をいただきたいということを強く御要望を申し上げて、これで大体質問の時間もまいりましたから終わりますけれども、最後に一つ、たいへん小さい問題でございますけれども、二月十六日か何かの毎日新聞にちょっと投書があるようでございますが、こういう問題が出ているのです。これは千葉の人のようですけれども、市役所から厚生省の通達により昨年九月一日から保育料がどれだけ上がったから、差額の五カ月分を出せという通達がきたというのですね。これを読んでみますけれども、「……旨の紙切れが届きました。どうして値上げするのか、どうして前にさかのぼるのか、何の説明もありません。知りたければ「厚生省の通達」を見ろとでもいうのでしょう。定価百円のカレーライスを百円払って食べたら、半年後にあれは百二十円にしたから、もう二十円払え、なんて道理が一般社会で通るのか」ということを書いております。聞くところによると、昨年九月から公務員のベースアップがあったので、それに伴うものであるとのことだと書いているわけですけれども保育料の算定がどういうふうな仕組みになっておるかとこの人は言っておるわけですね。そういう通達がございましたか。たしか保母さんたちのベースアップがございましたので、それをさかのぼって厚生省としては取れという御通達をお出しになったかどうか、この点ちょっと伺います。
  35. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 保育料につきましては、最低基準を維持するに要する費用というものについては、利用者と申しますか入所者の保護者からいただく、こういうことになっておるわけでありますが、そういった点で、昨年の九月から保育単価と申しますか、こちらから補助する基準が上がりましたので、市町村はそれに従っておそらく徴収の基準を上げたのではないか、かように考えるのであります。私、ちょっと通達の内容はいま承知いたしておりませんが、従来は大体事務費と申しますか、こういったベースアップがあった場合にはそれは利用者からいただく、こういうことになっておりましたので、おそらく従来の方針に従ってやったのではないか、かように考えます。
  36. 伊藤よし子

    伊藤(よ)分科員 いま私が申し上げましたように、またこの人の投書にもありますように、少なくとも五カ月さかのぼってあとから取るというようなことは不自然だと思うのです。大体根本的に言えば、保育単価が上がるにつれて保育料にリンクして上げていくということは、私は直していかなければならないと考えるのですけれども、特に給与が上がったからと言ってまたさかのぼって保護者のほうから、あとから取るというような点は、これはたいへんおかしいことだと思いますので、こういう点がないように、少なくともその翌月から上げていくというならともかく、さかのぼって五カ月も払えということは、この方が言っておるように、事実厚生省がそういう御通達をなすったとすれば、こういう点がないようにしていただきたいと思うのですが、その点をお願い申し上げまして私の質問を終わりたいと思います。最後に、その点を御調査を願っておきたいと思います。
  37. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 国の予算でございますので、予算が通過しなければ実施できない、こういうような状況と、先ほど人事院勧告の問題で、さかのぼって適用する、こういった問題がこの問題にはからんでおると思うわけでございますが、そういったさかのぼって何カ月も徴収するということは適当でないように考えますし、十分事務的にも、また予算のほうともできるだけ検討させていただきたいと思います。
  38. 大橋武夫

    大橋主査 古井喜實君。
  39. 古井喜實

    ○古井分科員 私は健康づくりの問題と医療費の問題について、若干私の愚見も申し上げたり、それから厚生大臣の御所見も伺いたい、そう思うわけです。  今日の政治の主題は経済の問題でありまして、それからもう一つは、やはり平和の問題、二つが今日政治の主題のように思うのであります。しかし、景気をつくり出しますのも、それからまた戦争したり、あるいは平和を確立したりいたしますのも、だれがやるかといえばこれは人間でありまして、やはり主体は人間でありますからして、経済の家来になった人間とか、環境世界の情勢の家来になった人間ということでは、主客転倒であろうと思うのであります。そこで、やはり人間という問題がもっと真剣に考えられて、政治の上でもこれが大きな問題にならなければならぬはずだ、こういうふうに私は思うのであります。それにつきまして経済の問題を考えても、そのほかの問題を考えても、何より強いたくましい人間をつくる、強健な国民をつくるということが非常に重要だと私は思うのであります。すなわち、暑さ寒さに対しても強いし、病気に対しても強いし、労働に対しても強いし、また文明に対しても強いし、あるいはまた苦難や邪悪に対しても強い、そういう心身ともに強健な人間をつくることを考えないといけないのだ、こういうことを思うのであります。そうして、そういう努力を積み重ねて、こいねがわくは、一朝一夕にはいきませんけれども、二十一世紀になれば日本人は欧米人に追いついて追い越すんだ、それくらいのところまでいく、そういう長期の大きな考え方を持たなければならぬのだと思うのであります。そのためには、日本を世界一のスポーツと健康の国にしたらどうか、できぬこととは思いませんので、それくらいな大きな気持ちでこの問題に取り組む必要があるんではないか、そういうことをかねがね思うのであります。  私一個の経験から申しましても、健康づくりということを提唱しましてこの四月でちょうど五年になりますけれども、よほど全国的にそういう機運が上がってきましたけれども、しかしさっきのような理想というか夢から考えますと、まだまだ距離が遠いようなもどかしさを感じておる現状であります。それに関連して具体的に一つ二つのことを申し上げて、御所見も伺ってみたいと思うのであります。  一つは、全国津々浦々、町という町、村という村に小規模の屋内屋外の体育運動場を普及する。どこにでも小規模でも体育場がある、あるいは屋外の遊戯運動場がある、そういうふうなことに一体できないものだろうか。大規模の体育場や運動場はだいぶんできました。これも十分じゃありません。けれども東京に大きな体育場ができましたところで、多数の国民から見ると非常に縁の遠い、距離の遠い存在であります。国民の身近に小規模でもいいから、いまのような施設をすみからすみまで全国に普及することはできぬものだろうか、こういうことをかねがね思うのであります。  しかし、さらばといって、国費を投じてそういうことをやっていくということもなかなかむずかしいでしょう。体育場の問題にしても、国費を投ずるとすれば、学校の体育場をもっとつくっていきたいとか、プールもつくっていきたいとか、あるいは公立のりっぱな体育場をつくりたいという問題がまだ残っておりますからして、いま申すような庶民的な小規模のものをたくさんつくっていくというようなところまで、国費はなかなか余裕がなかろうという気がするのであります。そうしますと、かつて河野国務大臣が、そういうことのために競馬の益金を使ったらどうだというようなことを言われ、その問題はまだそのままになっておりますけれども、消えてはいない。何らかの方法で財源も考えたりして、そういうことができぬものだろうか。われわれもまだこの問題をあきらめ切れませんし、それからまた国会の関係方面の方にも、その問題が今日もまだ続いて、どうしたものかというところでおるわけであります。前のときには、競馬の益金を一体何に使うのか、使途がはっきりしないじゃないかという、こういうふうな問題もありました。使途がはっきりしないでただ金を取ってくるのは本末転倒でありまするし、考えるならば使途をはっきりしてこういうことにということにいたして、しかもこれを管理し配分する機構なども公正なものにして、どこから見てもこれなら心配はない、よいものだという安心のつくようなかっこうで実行すべきものだと思うのであります。すっきりした形でもって実行するというような問題を、これはみんなで考えたらどうだろうかと関係の者で寄り寄り昨今も話しておるところであります。それにつきまして過去のいろいろな経過もございますけれども厚生大臣にもぜひひとつこれは理解を持って考えていただきたい、こう思うのであります。そして、そういうふうな考え方が発展するなら、一方では年金積み立て金の運用の問題などもありますから、そういうことも抱き合わせて考えていただくとか、こういうことで前向きにこの問題を進めることについてぜひ御考慮を願いたいと思っておりますが、この辺について何らか御所感がありますれば伺っておきたいと思うのであります。
  40. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国民の体位を向上させる、そしてあらゆる面で日本人が大きく世界の人々に伍して活躍できるようにすべきであるという御意見につきましては、私も全然同感であり、政府も国民も一体になってその方向に力強く努力すべきものだと考えております。  そこで、厚生省といたしましては、かねて古井先生などとも御相談をいたしまして、栄養の問題と体育の問題を相互に関連づけながら国民の体位を向上させる方向に持っていくということにつきましても、いろいろ栄養研究所の今後の課題といたしましても私ども考えておるところでございます。ただいま具体的な御提案として全国津々浦々に屋内、屋外の小運動場をたくさんつくるというお話がございました。またさらに一つ提案としては、全国の小中学校に水泳のプールをつくったらどうかという御提案もございます。こういう面につきまして、いま厚生省関係では児童公園を除きましては補助金が出ておりませんが、国民年金の還元融資でこういう施設を広げていくということにつきましては、年金融資の際に、私はこれを一つの重点事項として今後取り上げていったらどうか、こう考えております。  それから、閣議の際におきましても、健全な子供の遊び場をつくったり、あるいは河川敷を青少年のために運動場としてこれを使わせる、開放するという問題等につきましても、ぜひやろう、こういうことで建設省等とも連絡をとっておる次第でございまして、御意見の方向に今後及ばずながら厚生省としても力をいたしてまいりたいと考えております。
  41. 古井喜實

    ○古井分科員 どうぞひとつ、庶民的な小規模の屋内、屋外の体育運動場の普及の問題について御考慮を願いたいし、お力をお貸し願いたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  次に健康づくりの問題で大切なのは、母親とおなかの中の胎児と乳幼児、これが非常にたいせつだと思うのであります。健康づくりは一生がかりの仕事でありますけれども、やはり年をとってからではいわば手おくれでありまして、人間の生まれる一番初めのときから、早いときから始めるほど健康づくりは成果が大きいのでありますからして、生まれてからどころじゃない、おなかの胎児のときから、したがって、母親と胎児と、ここから健康づくりは始めるべきだと私は思うのであります。その意味で妊産婦とか乳幼児というものの栄養の問題、これについては、この四十年度からでありますか、低所得の人にミルクを配給するという政策も行なわれております。たいへんけっこうです。けれども、これは低所得の人だけの問題じゃない。なるほど公費を出して援助するのは、そういう範囲の人でありましょうけれども、しかしそういう人だけでなしに、どんな家庭でもやっぱりこの問題をもっともっと考えさせる必要があると思う。これは一つの行政指導の問題として力を入れなきゃならぬ、そう思うのであります。一つ栄養の問題であります。そういう積極的な栄養指導の問題についてぜひ考えてもらいたい、もっと力を入れてもらいたい、そう思います。  それからいま一つ、昨今妊産婦体操というものを、テキストをつくったりして普及を始めておりますが、全国に非常に大きな反響を起こしまして、そのテキストなるものも五十万部ばかりつくったものがもう羽がはえたように飛んでしまって足らないくらいな状況であります。欧米ではイギリスが初めで、御承知のように三十五年前に、この妊産婦体操というものをお医者さんや体育指導者が一緒になってつくりまして、これを普及し始めたのであります。イギリスが初めで、欧米の国ではどこでもやっておる。お産が軽くなるし、産後の回復が早いのみならず、胎児の発育に非常に大きなよい影響がある。これはすでにイギリスなどではある種類の実績についての統計もあるようであります。これは金がかかることじゃないし、何でもないことなんですから、こういうことを指導いたしますれば、これはもうみんなが喜んでやるし、効果がある、こういうふうに思うのでありまして、この一年ばかりの経験から見まして、非常にこれは発展性があると思っておるところであります。一年に百八十万人、百九十万人生まれる子供を全部りっぱな人間につくり上げるために、生まれるそのときからして、こういう方面ももっともっと力を入れたらよかろう、こういうふうに思うのであります。さらに生まれたあとの赤ちゃん、それから幼児、こういう段階も学校に行ってからよりもっと大事なんですからして、栄養と、それからいまのようなからだを鍛える、両方の方面にぜひこれは力を入れていかなければなりぬものだ、こういうふうに思うのであります。このことは御意見を伺うまでの必要もないことでありますけれども、ぜひひとつよくお考えおきを願いたい、こう思うのであります。あとでもし御意見があれば次の問題と一緒にあわせてお伺いしたいと思います。次の問題は、平素の健康管理という問題であります。治療から予防へ、予防から積極的な健康増進へと申しますが、病気になってこわれてしまってから騒ぐのはほんとうはおそい。平素の健康管理ということをもっとみんなが認識していかなければならぬと思うのでありますが、それについていままでいろいろな種類の健康検査が行なわれてわるわけであります。妊産婦の健康検査、三歳児の健康検査、学童の健康検査、そのほか職場などの健康検査、その上に老人福祉の関係でこのごろなわれているあの健康検査、たくさんの健康検査が行なわれておりますし、今度はまた性病予防というわけで、結婚のときに健康検査をして健康診断書を交換しろ、こういう立法化も企てられているようであります。いろいろ行なわれておりますけれども、実績はどうだろうかといいますと、必ずしもみんながみんなせっかくやっておる健康検査を受けていないと思うのであります。問題はそこであります。今度の、たとえば結婚のときの健康検査の法律をつくりましたところで、一体どれだけこれは実際にその健康検査を受けるだろうか、問題はそこなんです。一片の法律をつくれば、それであるいはよいと思っておられる人もあるかもしらぬが、これじゃ何にもならない。実績をあげることを考えなければならぬ、こういうふうに思うのであります。一ぺんティピカルな健康検査について、わかっておれば実績を聞いてみたい。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕 つまり、妊産婦の健康検査、三歳児の健康検査、老人の二年に一ぺんの健康検査について対象人員の何%ぐらいが事実この健康検査を受けているのか、わかればひとつお答えを願いたいと思います。
  42. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まず最初に、この妊産婦あるいは乳幼児の健康の増進、これが人間の一生の健康の基礎づくりであるので、この面の保健指導を十分やるべきであるという御提案でございますが、私は最近の日本の人口構造の推移を見ておりまして、いまのお話はまことに適切な御意見であると思うのでございます。非常に全般として寿命が伸びてまいっておりまして、現在では平均いたしまして七十歳以上になっておるのでございますが、一面まだ新生児、乳幼児の死亡率は欧米先進国に比べまして必ずしも改善されていない現況にあるわけでございます。そこで、今年一月から母子保健法実施に移されたことでもあり、私はこの法律の内容も逐次各方面の御意見を伺いながら充実強化してまいりたいと考えておりますが、この母子保健法の制定実施を契機といたしまして、妊産婦乳幼児の保健、健康増進の問題につきましては、政府としても一そう力を入れていきたい、このように考えております。そのためには、妊産婦乳幼児の健康診断の問題あるいは栄養の問題、いろいろございます。栄養の問題につきましては、低所得階層に対しまして無償ミルク支給する、こういう施策を昨年からとっておりますことは御承知のとおりであります。また保健所等を通じまして家庭における栄養向上のための栄養の指導、そういうことを今後力を入れていきたいと存じます。  さらに、古井さんから妊産婦の体操を大いに奨励したらどうかというお話がございましたが、この点につきましても、私は非常な成果がある、大きな効果をおさめておるというお話も伺っておりまして、今後保健所のほうを通じまして、この保健衛生指導、健康増進の指導の一環としまして、この妊産婦体操の普及ということにつきましても力を入れてまいりたい、このように考えております。  それから、各種の、三歳児あるいは妊産婦あるいは老人その他の健康診査の問題でありますが、これは病気が健康の破綻ということを考えますと、平素の健康管理ということが非常に大切である、こう思うわけでございまして、そういう意味合いから、各種の検査をあるいは公費負担等によりましてこれを国民各層に奨励をする、普及をするということに力をいたしておるわけでありまして、その実施状況、実績等につきましては、政府委員のほうから数字的に御報告を申し上げたいと思います。
  43. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 妊産婦乳幼児につきましては、現在義務的な実施をするのは三歳児健康診断だけでございまして、妊産婦乳幼児の保健指導というものは、公的な保健所あるいは市町村実施するものと、それからみずから進んで医療機関に訪れ、あるいは助産婦のほうに訪れる、こういったような二つの態様がございます。したがいまして、私のほうでいま把握しておりますのは、市町村あるいは保健所で実施をいたしましたものだけの数でございますが、あらかじめ御了承いただきたいと思います。  まず、妊産婦の保健指導につきましては、昭和三十九年度の実施状況としましては、妊婦については八十八万件の保健指導を行なっております。産婦につきましては十九万七千、こういう状況でございますので、妊婦につきましては約五〇%強、産婦につきましては八〇%強、こういうような状況でございます。  それから乳児の保健指導につきましては、三百六十一万でございますので、零歳あるいは一歳までを考えますると、大体一人一回は実施しておる、こういうような状況でございます。  それから三歳児の健康診断でございますが、これは都道府県、政令市で実施いたしておりますが、三十九年度は対象人員百五十二万六千に対しまして七十六万二千という数字でございますので、大体五〇%の実施率でございます。
  44. 中原龍之助

    ○中原政府委員 結核のほうにつきまして御説明を申し上げますと、結核の健康診断の対象はほぼ全国民ということになっております。これの実績を見ますと、昭和三十九年におきましては、受診率が、パーセントでいきますと、全部で三九%でございます。しかしながら、これを中で分けてみますと、定期の分と定期外がございますが、定期分が三九%でございますが、多いのは学校でやる学校の生徒でございます。これにつきましては七六・三%ということになっております。それから施設におきましては六七・七%、あと市町村長が行なうものにつきましては二八・五%、それから使用者が行なうものにつきましては二三・六%、この部分が若干低くなっております。それから定期外のもの、これは患者家族その他でありますが、これが三八・八%、大体このようになっております。
  45. 今村譲

    ○今村政府委員 老人福祉法に基づく健康診断につきましては、四十年度の実績はまだまとまっておりませんが、三十九年度の実績で申し上げますと、先ほど申されましたように三年に一回というふうな計算で六十万人を一般健康診断を予定しましたのが、実績は七十五万二千人ということで上回っておりますし、精密検診は、一般検診の六十万の二割、十二万というのが十三万一千人というふうに上回っております。ただ問題は、この当時は三年に一回ということでございましたのが、四十年度からは二年に一回というふうに直してもらいましたので、四十一年度は一般検診が九十六万、それから精密検診が約十九万、こういう数字になりますが、この実績は大体オーバーするのではないかというふうに考えております。
  46. 古井喜實

    ○古井分科員 いま健康検査の実績を聞いてみますと、老人の関係は非常に実績がよいのでありますね。しかし、そのほかの関係は非常に実績が悪い。これでは健康検査をやっておりますといえない程度の悪い成績だと私は思うのです。やはりやっている以上は、対象人員にみんなこれを励行させるようにしたいものだ、そう思うのであります。それにつきまして、私の関係しております体力づくり国民会議でも、これはみんなに健康検査を受けようじゃないかという自覚を促す、そういう国民運動をやりたいと思っておるのであります。健康検査はそれぞれの筋でやることでありますが、受けるほうの側が、これを受けようじゃないかというそういう受け入れの機運を醸成したい、大々的に国民運動をやりたいと思っておるのであります。どうか厚生省のほうも、むしろ先に立つくらいなお考えで、そういう機運を高めることに御尽力を願いたいと思います。ぜひこのことをお考えを願いたいと思うのであります。  なお、健康検査に関連して、残っている分野について一、二申し上げて、御所見を伺いたいと思うのであります。  成人式というものが行なわれておりますが、成人式のあの機会に、強制するわけにはいきません。しかし希望者には健康検査をしてあげる。そしてそこで健康手帳をくれてあげる、こういうようなことをやる問題を一ぺん検討してみたらどうだろうか。これは誤解があってはいけませんが、徴兵検査のように強制してやる意味ではございません。希望しない者は無理にやるわけにはいきませんけれども、希望があればあの機会に健康検査をしてあげて、健康手帳をくれてやる、こういうことをやりますと、これは人生の一つの記録としましても、個人個人にとっても非常に意味が大きいと思うのであります。この問題について一ぺん研究していただいたらどうだろうか、こう思うのであります。健康検査をいう以上は、この機会をひとつ考えてみる必要があるのじゃないかと思いますので、この点御研究を願いたいと思うのであります。  もう一つ、昨今、御案内のように、子供の虫歯が非常にふえて、歯が悪くなっておる。これは小さいようで非常に大きい。学校の生徒の検査を見ても、前よりもだんだん虫歯がふえておる。これは数字に出ておるはずでありますが、栄養にも関係してくるし、健康に非常に関係があるのであります。幼児の歯の定期検査という問題をもっと考える必要があるのじゃないか、これは年をとってからでは取り返しがつかぬのであります。この幼児の歯の定期検査の問題について、何かお考えがあればこれも伺いたいと思うのであります。  それからもう一つ、個人個人が健康検査を受けますについて、職場とかなんとかそういうところは集団的にやってくれていいのですけれども、自分の都合のよいときにお医者に行って検査をしてもらう、こういうふうな予防検診を健康保険の保険給付に取り入れる、こういう問題は研究の価値があると思うのであります。治療のための給付だけでなしに、予防検診を保険給付に取り入れるという大きな問題ですけれども、この問題は私は研究の価値があると思うのであります。この問題について何かお考えでもありますか。  さっきの成人式の際における健康検査の問題、それから幼児の歯の定期検診の問題、それからいまの予防検診を保険給付に取り入れる問題、この問題について御意見を伺いたいと思います。
  47. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 成人式の際に健康検査をやり、手帳を交付する問題、この問題につきましては、お説のとおり、世間に誤解を与えないような配慮が必要であると思いますし、十分慎重に研究してみたいと思います。確かに、一生の健康管理をいたしますために、健康手帳を国民が持っておる、そしてしばしば国等できめられた検査の機会もあるわけでありますし、また進んで定期的に健康診断をするということは、健康管理上、健康増進の上からも非常に大切な、有効な問題と思いますので、これはひとつ研究してみたいと思います。  それから、幼児の歯の検査の問題でございますが、これは三歳児の健康診査をやります際にあわせて実施いたしております。そういうことで、将来は三歳児だけでなしに小学校に進んだ子供に対するところの歯の検査ということも大いに促進するようにやっていきたいと思います。  それから、予防検診、診断を医療保険のほうで取り入れたらどうか、保険給付で取り上げたらどうかという御提案でありますが、これは一つは診療報酬体系を今度検討することになっておりますので、その際に診療報酬の中へ組み込むように前向きで検討を進めたいと思います。
  48. 古井喜實

    ○古井分科員 どうぞひとつ御研究を願いたいと思います。  それから、幼児の歯の検診の問題は三歳児のときに一ぺんやればいいというものではないと思いますので、一年に春と秋と二度とか、何か定期的に検診してやるというようなことを考えられないかという意味でありますので、御研究を願いたいと思います。  それでは次は、医療費問題と、それから医道の高揚という問題で、残った時間、私の意見も述べ、御所見を伺いたいと思います。  医療費がとめどなく増高しておる、これは私がきょう申す必要もありません。もうすでに一兆一千億をこしてしまった。国民所得の五%が医療費に使われている。一兆一千億といいますと、米に換算してみると、石一万五千円とすれば八千万石の米に当たる。日本の総生産量に当たる金額であります。しかも、医療費はまだこれからどんどんふえていくものだろうと思うのであります。その結果保険財政が参ってしまって、先はどうなるものかどころじゃない、この一年をどうしてしのぐかというような窮状におちいっておるわけであります。しかし、社会保障のうちで医療保障は非常に進んでもおり、これはいま非常な意味を持ってきておる大事な政策でありますから、何とか保険財政がつぶれないように財政を確立して守っていかなければならぬ。つぶすわけにはいかぬ問題であります。それについて考えますのは、医療費の支払い側の負担がそれにつれてふえましても、どうしてもこれを維持していくためにやむを得ぬものならば、ふえていってもしかたがない、保険料が高くなってもこれは負担しなければならぬ。つぶすわけにはいかぬのであります。ところが支払い側のほうから見ますと、医療費がふえておるについては、やむを得ない原因もあるけれども、そうとばかりいえない、得心のいかぬ事項もある。ここに問題があるのであります。医学や医術が進歩する、薬が高級なものができる、つまり医療内容が向上するために医療費がふえる、これはやむを得ぬ。また受診率が向上するために医療費がふえる、これはやむを得ない、むしろいいことである。また給付率が上がる、そのためにふえる、これも悪いことじゃない。そういうことのためにふえるのはしかたがない。これは負担しなきゃならぬのであります。ところがそうでなくて、どうもこれは納得がいかぬと言っておる問題が幾つかあるのであります。これは私があらためて申すまでもありませんけれども、たとえば乱診乱療、たとえば十割給付であります。保険では、かからぬでもいいのまでかかる、つまりこういう乱診乱療のような一面もありはしないかということも言い得る。それからまた、診療報酬体系の関係もあるかもしれぬけれども、薬を使いさえすればよい、こういうので薬の使い過ぎという問題も言われておる。またお医者さんの請求がときに水増しだ、架空の請求が行なわれているということも言われる。言われているどころじゃない。現に事件になった問題さえあるのであります。こういうことのために医療費がふえるというのでは、支払い側はなかなか納得がいかぬのであります。それからまた薬価基準を適時に改定すべきであるけれども据え置きにされて、下げてもいい場合でも、下げないで置いておかれる、この政治に対しても支払い側は納得がいかぬのである。それからまた、医療費の引き上げの問題についても、支払い側から見ると、ときおり納得のいかぬときがある。それは医学、医術も進みますし、そのために診療報酬も上げなきゃならぬ面もありましょう。それからまた物価や賃金も上がるのですから、医療費を据え置くことがよいとは思わぬ。適当に上げなきゃならぬ。それからお医者さんの側が、立場上医療費の引き上げを強く要望するのも無理はない。だから医療費を上げることが悪いとは言わぬのであります。けれども政府あるいは厚生省の側では、さればといって合理的な根拠もなしに、また引き上げのためのルールも守らないで引き上げる、こういうことでは、負担する側は納得がいかぬのであります。こういう政治のあり方に対して不満があるのであります。これはこの一、二年の経過を見ましても御承知でありましょう。そこで、当然の医療費の増加に対して文句を言うことはできませんけれども、得心のいかぬ方面については、やっぱりこれは負担する側に得心のいくような策をとらなきゃいかぬと思います。昨今の医療費の紛糾の原因の中には、政治のあり方に対する不信があると私は思う。合理的な根拠を示せ、ルールを守って上げろということを言っている。これはあたりまえのことを言っているのです。それが守られていないところに問題がある。政治不信があるのであります。私はこれはいかぬと思う。医療費は上げることはよいけれども、やっぱり筋は通して処理しなきゃいかぬ、こう思うのであります。それともう一つ、また負担側のほうから見てのさっきのいろいろな問題から見まして、診療側に対する不満、不信もあるのであります。さればといってこの診療側に対して役所が官権でもって——審査や検査を徹底的にやる、そういうことがなかなかやれるものじゃない。実態調査をやるといったって、これもなかなか実行がむずかしいことは御承知のとおりであります。これはやはりお医者さんの社会において倫理を確立する、よいお医者としてよい診療をしよう、こういう倫理を確立する、その医道を高揚する、こういうことがだんだん起こってきませんと、役所のほうで権力的にこれに臨みましたところで、私はうまくいかぬと思うのであります。医療費のもつれについて思うことは、それは支払い側に対する不満や批判の点もありましょうけれども、今日は支払い側はひどく追い詰められて抵抗しておる。抵抗しておるのは何かといいますと、政治の姿に対する不信と、それからやはり診療側に対する不満と不信とが根底にある、私はそう思うのでありまして、これをだんだん改善していくことを考えないと医療費問題の紛糾はますます深刻になる、こういうふうに私は思うのであります。医療費の引き上げについての政治のあり方ですけれども、これは厚生省だけが背負いなさいというのはむずかしいので、これは大きく自民党にしても、社会党にしても、政治が全体として責任を負わなければならぬ問題だと思いますけれども、さればといって一番の衝に当たる厚生省は、やはりこれは圧力があるからといって筋を曲げるというようなことをやってはいかぬと思います。筋を通さなければいかぬと思います。そうでないと医療費の争いに油を注ぐ、むしろ紛糾を助長することになってしまう、政治が紛糾を助長することになる、私はそういうふうに思うのであります。その辺については、十分おわかりのことでもありますけれども、ひとつよくお考え願いたい、こう思うのでございます。  なおまた、医道の高揚の問題は、よそから医道の高揚などをお医者さんという社会的地位の高い人に説教することではありません。それよりもむしろその社会の中に医道を高揚しようという機運が起こってくることを期待すべきだと私は思う。現にそういう機運が起こっておるのであります。この起こっている機運に水をかけるようなことをしてはいかぬ、私はそう思う。具体的な問題を言うのではありませんけれども、たとえば、去年の夏ごろできました日本医学協会などは、どうして医道を確立するか、医道を高揚するかということを一つの大きな目標にして発足している、こういう機運は伸ばすべきだと私は思う。そういう機運は幾ら起こってもよい。そういうことをやる団体が幾つできてもいいことだと私は思うのであります。こういうことにびくびくして逆の方向を役所がとってはいけない、私はそう思う。  そこで、いまの医療費の紛糾の深刻な問題を見るにつけまして、政治のあり方の問題厚生省の考えなければならぬ問題点、それからまたこいねがわくば、いまのような医道の高揚というようなことを助長するというような問題、そういうことについて御考慮をわずらわしたいし、御所見が伺いたい、こういうふうに思うのでございます。
  49. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医療問題につきまして、古井さんからいろいろ御意見を拝聴したわけでありますが、御指摘のとおり近年受診率の上昇、また給付内容の改善等々いろいろな要因から急激に保険財政が悪化をいたしておるのであります。私は、今回の保険三法の改正案をつくります際に、できるだけ行政面でむだな医療費等の膨張が行なわれるようなことがあってはいけない、できるだけこれを適正なものに改善する必要があるということで、乱診乱療だとか、あるいは薬の使い過ぎだとか、あるいはいろいろなしばしば発生いたしますような不正事故等につきましては、各県に配置しておりますところの保険関係の係官を督励をいたしまして、保険医療が適正に行なわれるように指導をいたし、鞭撻をいたしてまいったところでございます。また支払い基金におきましても、レセプトの点検を十分励行するとか、いろいろ努力をいたしておりまして、今回の四十一年度の健康保険の財政対策におきましても、行政努力として相当改善がなされるような措置を進めてまいりたい、こう考えております。  またさらに、薬の使い過ぎの問題につきましては、昭和三十五年以来いろいろな医療問題の紛糾等で薬価基準の改定ができなかった。保険に収載されておる薬価と実際の薬の値段の間にはこの数年の間に大きな開きができておりますことは御承知のとおりでありまして、これを薬価基準を改定をして実勢薬価と同じようにするということが必要であり、これをすることによって、薬の使い過ぎということが大きく改善されるのではないか、こう思うわけでございまして、先般、ようやく薬価基準の改定ができまして、今後は少なくとも毎年一回、また必要に応じて薬の値段に変動がございました際には随時薬価基準の改定をやって、そうして実勢薬価と同じように近づけるようにすべきである、こういうことを今後は励行してまいりたい、こう考えておるわけでございます。  それから、いろいろこれから根本的な医療問題の改善策を講じます場合に、何といっても、これは役所の権力や法律一点ばりでできることではございません。支払い者側も診療者側もみな国民の医療という大きな立場から協力し合う、理解し合うということが一番大切な問題でございまして、その面からいたしまして、過去におけるこの両側の意思の疎通というものは必ずしも十分でなかった、むしろ相互不信感というものが根底にありまして、そのために話し合いできめられるような事柄が実際にはなかなか行なわれない、こういうことであったと思います。こういうことが払拭をされますれば、私は医療問題はおのずからそこに解決点が開けてくるのではないか、こう思うわけでありまして、就任以来この診療者側、支払い者側の相互不信感というものを払拭するために私も苦労してまいりましたし、また中央医療協議会の会長に御就任を願った東畑会長等にも非常なお骨折りをわずらわしておるところでございます。今後は、まずそういう両者の相互理解というものを造成をいたしまして、そういう基盤の上に根本的な診療報酬体系の適正化であるとか、あるいは各種医療保険制度の総合調整なり一本化というような根本的な問題の改善に取り組んでいきたい、このように考えておるわけでございます。  それから、日本医学協会の問題につきましては、事務当局でいま審査を進めておりますので、事務当局のほうから御報告をさせたいと存じます。
  50. 若松栄一

    ○若松政府委員 日本医学協会の社団法人の認可の申請の件でございますが、これは、この法人が、ただいま先生もおっしゃいましたように、医師、医学者がその使命と職責にかんがみまして、医道の高揚、確立をはかるというような趣旨に出ております。したがって、その趣旨はまことに私どもも全面的に賛意を表するところでございますし、そのような事業が円滑に行なわれますことは日本の医療問題の解決あるいは改善のためにぜひ必要なことであると存じております。しかし、一方従来から日本の医師の大多数をもって組織しております日本医師会におきましても、その目的の第一に「医道の振作、昂揚に関する事項」という問題を掲げております。そういうような意味からいたしましても、ほぼ同種の、しかも全国的な規模で仕事をしていこうという団体が幾つもできるということはこれはいかがであろうかということをまず第一に考えております。もちろん、いいものは幾らできてもいいということは基本的にはあると思いますけれども、実態から申しますと、この事業をやっていきます上にいろいろ不便を生ずるだろうということが予想されるわけでございます。卑近な例で申しますと、たとえば日本WHO協会という世界保健機構に協力する団体が同時に日本全国の規模で仕事を行なおうとして、二団体からほとんど一緒に法人の認可申請が出てきたことがございます。これも両方の趣旨はまことにごもっともでございますけれども、この際一つの団体に一本化してやることがより合理的かつ効率的ではないかということで、ほぼ二年近い経過を見まして一本化して発足したという事例もございます。一方、病院関係の団体といたしまして従来日本病院協会というものがございまして、さらにそれが全国の病院を必ずしも代表するものではないということから全日本病院協会が発足いたしました。そのほかにも従来からあります結核療養所協会、精神病院協会あるいは公立病院協議会、さらには現在計画されておりますような公私立病院連盟というような、いろいろな、ほぼ似通った目的、あるいは目的の中の一部分ずつを目的とする各種の団体ができてまいりますと、はたしてその相違がどこにあるかということの把握がきわめて困難でございまして、そういうことが医療問題等の解決のためにもいろいろ障害になるという例もございます。そういうような意味からも、りっぱな目的を持った団体は数多くあればいいという理論的な問題と、なるべくは一本化して強力なものに意思が統一されるようにという実態的な願望と、両方がございますので、そこら辺のところをいかが調整するかということが私どもの検討の課題でございまして、またもう一つの問題といたしましては、日本医師会も日本医学協会も日本の医師であるものを会員にするという点で相互共通した基盤に立っております。しかもこの共通した会員がほぼ同じ目的で、しかも二つの団体をつくるというようなことは、やはりその運営上、目的達成上あるいは事業の進展という面から見ても、将来なかなか円滑に行なわれ得ない点が出てくるのではないかということを心配いたしております。またもう一つ、全く事務的な問題といたしまして、現在法人申請の計画とそれから現在までの実態が、私ども調査いたしておりますが、たとえば当初七千名程度の会員で発足し、さらに一万数千名になり、二年後には二万数千名に会員を増大していくというような御計画でございますが、これがはたしてそのとおりにいくであろうかどうか。もしもそのとおりにまいりませんと、資金計画等の事業面からもこの事業の破綻が起こるのではないかというようなことも考慮されまして、それらのいろいろ理論的な問題と実態的の面を考慮いたしながら、現在なおもう少し様子を見よう、経過を見て、そうして最終的な判断をいたそうというような段階にあるわけでございます。
  51. 古井喜實

    ○古井分科員 それでは、時間が来ましたからこれでやめますけれども、いまの診療側と支払い側の相互不信という、先ほど大臣もおっしゃった問題には、政治が相互不信を助長しておる面があるということを考えなければいけない。つまり公正な立場を政治がとるならば、いまのような相互不信は起こらないという場合もあったと私は思う。圧力に屈して片一方に加担をするようなきらいがあるからして、いま一方のほうが強く抵抗してきだしておる、そういうふうに私は思うのですからして、筋を通して正しい立場をとっていくという問題は考えなければいかぬと私は思うのです。  それから、医学協会のことはいろいろ伺ったが、これを私はきょう聞く気はない。ないけれども、それならば一体どうする気だ。阻止することが一体できるのか、どういう根拠で公益的なものを阻止できるのか。それから現在の実情からいって、今日のままで一体日本の医道はこれでよいと考えるのか。何ぼ文章を書いておったって、実情が実情である。このままではいけないという機運は私はもっともだと思う。ほんとうに医療の内容についても、りっぱな医業としてやろうじゃないか、そういう機運を起こすことは現状から見て必要だと私は思う。そうでないですか。いまのやれ薬の使い過ぎだのなんだのと言われたり、それから請求が正しくないだのなんだのという問題を起こしたりする、この事実を何と見るのか、役所の取り締まりではまずいと私は言うのだ。みんなの自覚でもってそういうことがないように進むのが一番よいと思う。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕 それには、やはり医の倫理の確立、医道の高揚ということが現状からいって必要じゃないか、私はそう思う。この必要を否定するのかどうか。いまのままでけっこうでありますというのか。そうと聞こえる。まさか政治的な圧力が背後にあるとは思わぬ。それほど腰の抜けた役所とは私は思わぬ。思わぬけれども、よくよく公正な立場でものを考えるように、ぜひしてもらいたい。これを希望しまして、たいへん延びましたが、終わりたいと思います。
  52. 大橋武夫

  53. 田口誠治

    田口(誠)分科員 きょうは、私は、最も日の当たらない日陰の谷間におるところの心身障害者の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  その前に、一つだけお伺いをいたしたいと思いますことは、進行性筋萎縮症の関係でございます。御承知のとおり、この病気は、百年ほど前から、病名はつけられておりますけれども、まだ今日になりましても完全に治療ができるということにはなっておらないようでございまして、この病気に一たんかかりますと、その病気で死ななければならないというのが現在の実態でございます。御案内のとおり、この筋萎縮症という病気は、手や足がやわらかく、くにゃくにゃになって、ほんとうに身体障害者としては気の毒な人たちでございまして、しかも、これが十八歳未満の者にも相当あるわけなんでございます。したがって、病院に入院をいたしておりましても、筋肉はだんだんとなくなっていって、最後には、せき一つやっても、たんを一つ出すのでも、たいへん汗をかいて、苦しんで死んでいかなければならない、こういう病気でございますが、いまだに、こうした病名の病気を全快させることができないということは、これは今日までの医療の研究の不足であるのか、それとも、専門的に研究を十分にやっておっても、まだそれに至っておらないのかどうか、まず、この点から伺いたいと思います。
  54. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 進行性筋萎縮症は、ほんとうに気の毒な病気でございまして、私どもは、そういうような子供さんを持った御家庭の御労苦に対しましても、また、本人そのものに対しましても、まことに同情にたえないところでございます。いまお話がございましたように、この治療法というものが、まだはっきりと確立をされていないというところに問題があるわけでありまして、文部省におきましては、昭和三十九年から学問的な研究を進めております。その成因、実体についての研究を学問的にやっておるわけでございます。それから、厚生省におきましても、全国八カ所の国立の療養所——大体ブロックに一カ所ずつ筋萎縮症の患者を収容しておりますので、そこの国立療養所におきまして大学と緊密に連絡をとりながら、この臨床的な治療の面の研究を実は進めておるわけでございます。私どもは、一日も早くこの筋萎縮症の成因なり、また、これに対する臨床的な治療の方法を究明いたしまして、このような気の毒な病気が発生しないように、また、早く治療ができますようにしたいものだということで、せっかく努力をいたしておるところでございます。
  55. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいまの答弁のように、三十九年から研究に取りかかっており、全国八ブロックに療養所を設けて、それぞれ専門的な病院として治療をいたしておるということでございます。それはそれでよろしいのですけれども、この八ブロックということになりますると、東海・北陸の場合は鈴鹿にあるわけなんです。これはベッドは四十だと思いまするが、非常に足りないわけです。そういう点は把握されておるかどうかということを、まず、お聞きしたい。  それから、この病院は、結核病院のあき室を借りて、そうして、これを部屋に仕切ったり、天井を張ったりして一つの病室ができておるわけなんですが、国立のものとしてはきわめて貧弱そのものであり、いかにも、こういう病人はやむを得ないから、こうした八ブロックに病院を設けて治療をさしておるんだというようなかっこうになっておりまするので、もう少しこうした施設を改善する考えがないのかどうか。なお、今年は、この八ブロックに対してのベッドの数等をどのようにふやす措置をされておられるのか、お聞きをいたしたい。
  56. 若松栄一

    ○若松政府委員 筋萎縮症のベッドを三百床八ブロックにつくりましたけれども、この場合は、非常に緊急といいますか、準備不十分のままで発足いたしましたために、従来の古い病棟に若干の手直しをした程度で収容をいたしております。これに引き比べまして、明年度から発足いたします重症心身障害児の収容施設は、かなりの準備ができておりましたために、新しい不燃性の建物をつくりまして、それができ上がった後に新たにその収容を開始するという手順を踏んだわけでございます。そういう意味で、筋ジストロフィーの場合は、今度発足いたします重症心身障害児の場合に非常に似た患者でございますので、将来それらの収容施設についても逐次整備をはかってまいりたいと存じております。ただ、非常に整備費等が窮屈でございますために、一挙に改善するということがなかなか困難でございますが、できるだけ努力をしてまいりたいと存じております。
  57. 田口誠治

    田口(誠)分科員 昭和四十一年度の予算の中には、どのように改善、拡大をされる予算が組んであるか。
  58. 若松栄一

    ○若松政府委員 昭和四十一年度に新たに百二十床を増床するという計画でございます。
  59. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで、ここへ入院できるのは、原則として、十八歳未満のいわゆる成人になっておらない人が対象になっておるのです。中には、病床があいておったために、おとなの入っておるところもあると思いますけれども、まあ、十八歳未満ということになっておる。ただし、十八歳以上の方でこの病気にとりつかれて非常に苦しんでおられる方があるのですが、こういうおとなの収容をどういうように考えておられるか。私は、おとなも、同様にこうした専門病院に収容して、そうして、専門的な治療をしてもらうことが一番大切ではないか、かように考えておるので、その点をお伺いをいたしたい。
  60. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この筋ジストロフィーの患者は、子供さんが多かった関係から、子供さんを中心に当初収容いたしまして、そうして、療育をしながら学校の教育等もやってまいったわけでございます。しかし、田口さんお話しのとおり、十八歳以上の者につきましても収容いたしておるのでございまして、今後、子供と十九歳以上を区別する考えはございません。できるだけこういう患者は施設に収容してめんどうを見ていきたい、かように考えております。
  61. 田口誠治

    田口(誠)分科員 百二十ベッド、今度、新年度予算予算化されておるということでございますので、その対策に力を入れていただいておることはけっこうですが、全国的にはどのくらいあるかわかりませんけれども、岐阜県で、この種の病気で身体障害者の手帳を持っておる者は九十八名ありますが、その他の者がまだ百五十名ほどあるわけなんです。こういう計算でいきますと、全国的に、おとなも相当あるということに数字的に出てくるわけなんです。そういうことから、十八歳未満だけでなしに、おとなの入院治療も可能にさしていただくようにお願いをいたしたいと思います。現在のところでは、原則として、これは子供ということになっておりまするが、おとなの場合は全く少ないわけでございますし、おとなのほうからの強い要請もきておりますので、その点を今後の運営の上でひとつ御配慮をいただきたい、この点を強く要望を申し上げておきます。  それから次に、精薄児関係でございますが、御承知のとおり、佐藤総理はじめ、人間尊重、社会開発ということを政治の目標にしておられまするし、この精薄対策というものは、社会問題として当然政治的に解決をしていかなくてはならない問題であろうと思います。特に日本の憲法においても、また児童福祉法においても、児童憲章においても、こうした内容強化していかなければならない点が明文されておりますので、政治として解決していくならば、当然これの年度計画というものを立てなければならないと思うのです。  そこで、私は、それをお聞きする前にちょっと予算書を見ておかしく思いましたことは、重度精薄児に対する扶養手当でございます。この扶養手当の予算が、昨年より五千四百万円今年は少ないわけなんです。多くなってくるならわかるけれども、昨年よりも五千四百万円も少ないということは、力を入れておらぬのではないかという、こういう反論が出てくるわけでございますので、その点を、ひとつ御解明をいただきたい。
  62. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 重度精神薄弱児扶養手当の予算の減につきましては、四十年の予算対象といたしまして、当初、二万一千五百五十九人という人員を見込んだわけでございますが、実際には、数がそれだけ出なかったということであります。昨年、身体障害者実態調査を行ないましたときに、重度の障害者、精神薄弱児についても併合の分について調査いたしましたが、そういった面から見てまいりますると、実際にはそれだけいないのじゃないかという問題が一つございます。また、所得の制限その他の問題も関連してまいるわけでございますが、そういう点を考慮いたしまして、今年度は、従来の実績あるいは調査の結果によりまして、従前の、つまり二万一千五百五十九人に該当する人員を一万三千百人、こういうふうに減少して数を見込んだわけでございます。そのほかに、改善されまして範囲を広げた分、つまり重度身体障害児の分が六千二百五十五人でございます。合わせまして一万九千三百五十五人という数字になるわけでございます。そういった対象の減ということと、増加した分については四カ月の予算でございますので、御指摘のように五千万円余りの金が昨年より減った、こういうことでございます。
  63. 田口誠治

    田口(誠)分科員 対象人員の数の誤差から出てきた問題のようでございますので、その点は了解をいたしまするが、了解して了解しにくいのは、身体障害者あるいは精薄児の強度から中度、軽度、こういうものの調査というものは毎年なされておりますね。
  64. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 その調査は、毎年度はやっておりません。大体五年ごとに実施をしておる状況でございまして、先ほど御指摘がございましたように、精神薄弱児の調査につきましては、従来の結果について問題が出ております。たとえば、重度が多かったのじゃないか、こういう問題がございますので、本年度、精神薄弱児の実態調査実施いたしまして、いま申し上げましたような問題が残らないようにしたい、かように考えております。
  65. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ちょっと参考にお聞きをしたいと思いまするが、この重度精薄児と認定をする基準は。大体指数はどんなところに置いておるのですか。
  66. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 IQ、知能指数で申し上げますと、三五以下ということになっております。
  67. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうしますると、精薄児と認定する者は、どの程度に基準を置いておりますか。
  68. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 いろいろ説はあるのでございますが、私どものほうの行政的な取り扱いとしましては、知能指数七五以下というのを全体的な精薄児というふうに考えております。
  69. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それで、数字がすぐ答弁できなければ、あとからでもよろしいですが、いわゆる七五以下の人で、これは精薄児だという分類に入る人数、小学校から新制中学、いわゆる義務教育に該当する年齢層にはどの程度おりますか。義務教育というとむずかしいかもわかりませんが、いずれにしても一歳から新制中学三年生まで、この辺のところでわかりませんか。それがわからなければ、高等学校までの年令のところでもよろしいです。
  70. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 先ほど申し上げました七五以下ということを一応精神薄弱児というふうに考えておるわけでございますが、その中で、主として軽度の者が、ただいま先生のお話にございました特殊教育の対象になるというふうに考えております。しかしながら、だんだん教育のほうでも、そういった子供たちを取り扱うということにつきましては技術的な向上を見ておりますので、だんだんそれが下に下がってきつつあるというのが現状でございます。
  71. 田口誠治

    田口(誠)分科員 こまかく説明ができなければ、大まかでよろしい。何名おるのだ、この程度でもよろしいのです。具体的に説明してください。
  72. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 特殊教育の対象になります児童と申しますのは、約七十四万人ほどだと思います。
  73. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで、七十四万人おるわけですが、いま、公立、私立いろいろ施設がございますね、その施設に収容されておる人数は何名くらいですか。
  74. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 七十四万人は特殊教育の対象でございますので、学校教育の対象ということでは、私どものほうでは正確な数字は把握いたしておりません。
  75. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その七十四万人というのは軽度なものであって、これは学校では特殊教育をさせる人数なんですか。
  76. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 さようでございます。
  77. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それでは、特殊教育をさせなければならない七十四万人というもの、これは特殊教育をさせておるかどうか。
  78. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 現在、文部省のほうで、七十四万人全員に対して特殊教育の、実施をしておるというふうには聞いておりません。
  79. 田口誠治

    田口(誠)分科員 人数は、もちろんわからぬでしょうね。
  80. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 さようでございます。
  81. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それから、今度は重度精薄児の数は、精薄児、児だから十八歳未満にしておきましょう、何名くらいおるのですか。
  82. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 約一万六千人ほどだと思います。
  83. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この一万六千人というのは、重度ということですから、いまの扶養手当の対象にならなければならないというような聞き取り方ができるのだが、数字が合いませんけれども、その辺はどうなんですか。
  84. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 これにつきましては、先ほど申し上げましたように、所得制限の問題もございますので、全部が全部入るものではないわけでございます。実際に実施いたしました状況から見ますると、現在のところでは約九千人あまりが児童手当の対象として手当をもらっております。
  85. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうしますと、軽度なものは学校で特殊教育を受けておる。重度の人たち家庭にいたり、またそれぞれの施設へ入っておるのだが、重度の手当をもらうような人は、この施設にはあまり入っておらないと思うのです。そこで、中度の者が施設に入るわけですが、これは幾分教えれば知恵がつく、こういう子供たちだと思うのです。その人たち対象人員は、全国でどのくらいありますか。
  86. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 施設に収容を要するという精神薄弱児については、約四万八千人でございます。
  87. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それは中度精薄児というように受け取っておいてよいのですか。
  88. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 四万八千人は、収容を要するということでございますので、中度及び重度も入るわけでございます。
  89. 田口誠治

    田口(誠)分科員 中度というのは、総員数からいって四万八千ばかりではないと思うのです。そこで、いま施設に収容されておる員数は何名ぐらいになっておりますか。
  90. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 精神薄弱児施設に収容されております人員は、一万三千四百七十人でございまして、そのほかに、精神薄弱児の通園施設がございますが、そこに二千百十一人収容されております。
  91. 田口誠治

    田口(誠)分科員 次には、扶養手当の関係でございますが、この基準は、いま三五ということでございます。この幅をもう少し広げて、そして扶養手当の金額も上げる必要があると思うのです。大体、こういう手当にしても、未亡人の手当にしても傷痍軍人の遺家族の手当にしても、恩給法が上がった率で右へならえということを大体やるわけなんだけれども、そうしますると、この重度精薄児の扶養手当というのも上げていかなければならないわけです。ちょっと、私、予算書を全部目を通しておりませんでわかりませんが、今年度は上がるようになっておるのですか。
  92. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 重度精薄児に対する扶養手当は、四十年と同じように、月額千二百円でございます。いろいろこれの改善策につきましても考えたのでございますが、重度精薄児だけでなしに、重度の肢体不自由児あるいは重症心身障害児という、重度精薄児に近い、あるいはそれに劣らないお気の毒な子供さん方も他におるわけでございます。そういうことで、昭和四十一年度におきましては、今度は重症心身障害児、重度の肢体不自由児という子供さん方にまでその範囲を広げたのでございます。また、その支給にあたりましての所得制限も引き上げた次第でございまして、扶養手当の千二百円というものは、昭和四十一年度は据え置いたということでございますが、私は、これで決して十分だとは思っておりません。今後も、できるだけ手当の増額につきましては努力していきたいと考えております。
  93. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私の申し上げておるのは、毎年とか、三年おきとかに恩給法が改正になって給付金が引き上げられると、労働省関係しておる諸手当、それから厚生省が受け持っておるいろいろな諸手当は、これは右へならえで、上がっていくわけなんです。そうしますと、昨年の通常国会で、恩給法の場合は平均二割という引き上げがなされておる。そうしますと、この重度精薄児の場合も、それに右へならえをしていった場合は、千二百円に二割増額しなければならない、こういうことになるのですが、この問題だけでなしに、その他厚生省のそれぞれの給付金は、やはり恩給法が改正になったときに、法案が出されて、引き上げられておるわけです。これだけどうして上げられぬのか、こういう疑問が私には出てくる。その点どうですか。
  94. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 重度精神薄弱児扶養手当の性格といたしまして、所得保障の面と、それから介護料的な性格のものと、両方入っておるわけでありますが、そういった面で、従来からその性格の問題がいろいろ出てきたわけでございます。  私どもの考えといたしましては、重度精神薄弱児扶養手当というものは、扶養という特別なものでありまして、所得保障というよりは、むしろ介護料的な性格を持つものであるというふうに考えます。また、そういった方向に今後進めるべきではないか、かように考えておりまして、範囲拡大の問題、あるいは所得制限の緩和でありますとか、公的年金の併給、こういうものをあわせ行ないまして、金額の問題よりは、そういった性格論として、介護料的な性格を出していきたい、かように考えておりますので、今年度は、必ずしも所期の目的は達しなかったわけでありますが、今後そういった方向努力いたしたい、かように考えております。
  95. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それは努力していただかなければ、どうも均衡がとれません。  それで、深く突っ込んで質問したいのですが、時間がありませんので、飛び飛びになってまことに悪いのですけれども、御承知のとおり、非常な物価高に応じて、施設に収容されておる人たちの食糧費というものが足りなくなっておるわけなんです。現在のところでは、一日に一人百三十二円で、調味料と間食費がちょいと加わっているという程度なんですが、こういう点の引き上げは、今年の予算でなされたんですか。
  96. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 本年度、御指摘のように、飲食費その他の改善を行なったわけでございますが、児童一人当たりの費用で申し上げますと、精神薄弱児施設につきましては、従来、年額十九万六千八十五円でありましたものが、四十一年度は二十四万一千七百四十円、約四万五千円ほどの年額の増加になっております。
  97. 田口誠治

    田口(誠)分科員 施設は足りないんです。施設をつくっても、職員が足りない。それで、その職員の補充をどういうように考えておられるかということ。  それから、職員の足りないということは、待遇が悪いということです。しかも、これは特殊な勤務ですから、特殊勤務手当なんかの場合には、いま一五%くらい出ておりますけれども、これは、さしあたり倍くらいに引き上げてもらわなくてはならない問題であろうと思うのです。そういう点の配慮を、どういうようにしておいでになるかということ。  それから、施設をつくる場合に、国の補助、県の補助ということはきまっておりますけれども、これは坪五万円でできるというのが七万円でできてみたり、でなければできなかったりして、いまの給与費にせよ、いろいろな運営にせよ、非常に金が足りないから、それぞれ父兄なり篤志家からの寄付でまかなっておるわけです。  そういうような状態であるから、今度は大蔵省のほうに答弁をしてもらいたいことは、こういう寄付をする金品については、これは当然免税にすべきであると思うが、どうか。  あなたのほうの回答だけいただいて、私の質問を終わります。
  98. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 御指摘の施設に対します寄付金についての課税の問題であります。これにつきましては、現在、私どものほうとしては、法人税におきまして指定寄付金の制度がございます。ある種の寄付金につきまして、大蔵大臣が指定をいたしますれば、それは法人税の計算上、全額損金に落ちることになっております。その指定が行なわれますれば、同時に、所得税では、個人の所得税におきましても、ある一定の制限のもとに税額控除が行なわれるという構成になっております。それでは、どういうものが大蔵大臣の指定寄付金となるかということでございますが、ただいま御指摘の施設に対します寄付金については、過去におきましても、これからも、私どもとしては、いわば社会福祉事業の第一種事業に当たるものにつきましては指定をいたしておりましたし、今後も続けてまいりたいと思います。ただ、この寄付金等につきましては、その支出が緊急を要するということに法律もきまっておりますので、経常的なものにつきましては、これまでも指定をいたしておりませんし、今後も、それにつきまして指定をいたすということは無理でございます。施設そのもの、設備そのものにつきましての寄付金は、私どもとしては指定をいたしておりません。
  99. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 職員の処遇改善の問題につきましてお答えいたしたいと思います。  現在の職員の処遇につきましては、たとえば、他の養護施設以外のこういった職員につきましては、先ほど先生御指摘のように、処遇が上がっておるわけでございます。それから、来年度予算におきましても、労働条件の緩和ということで受け持ち人数の緩和をはかったわけでございますが、さらに、なかなか人手が集まらないという問題がございますので、重症心身障害児施設の調整号俸という問題がございます。そういった問題と関連いたしまして、こういった、特に苦労のかかる人たちを取り扱う職員の待遇には、今後とも十分努力いたしてまいりたいと考えております。  それから、先ほどの、成人の問題でお答えいたしましたが、現状は、児童福祉法に準じまして、十八歳以下の児童について予算措置がなされておるわけでございまして、現在のところは、成人の問題は予算措置はされておりません。成人の問題は、緊急な問題でもございますので、次年度の問題として、これは私どもも十分検討いたしたいと考えております。
  100. 大橋武夫

  101. 吉村吉雄

    吉村分科員 制限された時間ですから、ごく端的にお伺いをしていきますので、答弁のほうは、ひとつ的を射た答弁をしてもらうようにお願いをいたします。  私がきょう質問をしようとするのは、旧軍人にして、軍歴七年未満者の問題で、これらの方々の社会保障、なかんずく所得保障、諸制度間におけるところの不均衡の問題について、厚生大臣あるいは総理府等の意見をただしたいと思うのです。  初めに、恩給局上長にお伺いしますけれども、旧軍人の恩給法上の扱いは、七年以上十二年までの方々については一時恩給、十二年以上の方々については恩給、こういうことになっておりまして、七年以下の方々については、現在までのところ、国が特別の措置をしたということになっていないと思いますけれども、その理解でよろしいですか。
  102. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいまの先生の御質問のとおり、実は七年未満につきましては、かつては一時恩給の支給がございましたが、この問題につきましては、現在におきましては、特別ないわゆる戦務加算、抑留加算ということで含まれてくる場合は別といたしまして、一般的には先生のお説のとおりでございます。
  103. 吉村吉雄

    吉村分科員 恩給局のほうに、前の国会で私は要請をしておきましたけれども、この七年未満の一般的な加算は別にして、七年未満の軍歴を有する方々で、地方公務員、公務員あるいは公共企業体職員、こういう身分を保有されておる人数と、社会保障制度から区分けをしますと、国民年金の適用を受ける一般農民、自由業者、それから厚生年金保険の適用を受ける方々、これの区分を人数的に調べてもらいたい、これは調査をするということになっておりましたけれども、どのぐらいの人数になっておりますか。
  104. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 実は、その数字につきましては、恩給局といたしましては、現在、恩給法の対象人員になっておりません関係上、明確な数字があるかという点については、実は大体の数字としてつかんでおりますのは、ほぼ百二十七万人ぐらいの人数になろうかと思いますが、そのそれぞれの年金の適用別の数字につきましては、手持ちの資料としては持っておりません。
  105. 吉村吉雄

    吉村分科員 私が国会で、前任者であったと思いますけれども、お尋ねした際には、概略約三百万という答弁であったのです。それで私は、概略三百万ではどうもつかみようがないからして、したがって、できるだけこの数字を明らかにしてもらいたい、こういうことを申し上げましたところが、総理府のほうとしては、十分これは検討させていただきます、こういうことでございました。   〔主査退席、竹内主査代理着席〕 いま、特に私がお尋ねしたいのは、地方公務員、公務員あるいは公共企業体職員のほうは、それぞれの共済組合で人数を把握することができますけれども、その他の関係者の方々については人数の把握ができ得ないので、特に国民年金の適用者、厚生年金関係の適用者の人数を明らかにしてもらいたい、こういうふうに要請しておいたわけですけれども、この人数も明らかになりませんか。
  106. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいまの数字につきましては、それぞれ厚生省所管でございまして、総理府関係としましては、恩給対象人員としてのものをつかむ以外に資料的には用意がございませんので、それぞれの省庁への御依頼がございますれば、それぞれによって明らかにされる数字ではなかろうかというふうに考えます。
  107. 吉村吉雄

    吉村分科員 私は、軍歴七年未満の方々の社会保障、特に所得保障制度における不均衡の問題を取り上げようとしているのです。恩給局のほうでは、恩給を受給できる人以外の問題は取り上げない、こういうことであるとするならば、かつて、私は、第一分科会で、その他の関係を扱うところの分科会で議論をしたことがあるのですが、その際には、あなたのほうの答弁は、この数字は明らかにしたいということを回答しておるのです。いまだにそれをやっていないというのはどういうわけでしょうか。
  108. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 調査対象といたしましては、恩給局で調査できます範囲というのは、やはり恩給受給者としてつかめる人数でございませんと、その調査が困難でございますので、それぞれの関係の向きで、あるいはその点についての数字が明らかではなかろうかと考えるわけでございます。
  109. 吉村吉雄

    吉村分科員 だとしますならば、各関係の省でそれが掌握されているとするならば、あなたのほうが国会の中で言明をしたのでありますから、それを集約しておくぐらいの作業は当然あってしかるべきじゃないですか。特に、あなたも御存じのとおり、いま、軍人恩給連盟というのですか、軍恩連と一般にいわれる団体では、三年以上の方々について一時恩給を支給させなければならないという運動があったことは御存じだと思うのですよ。その種の問題というのは、当然にあなたのほうに提起されておったはずだと私は思うのです。ですから、そういう意味合いにおきまして、いま、三年以上の方々に一時恩給を支給したとしても、三年以下の方々の問題が残る。ですから、私は、今日の日本の状態の中で、この問題を不均衡なく処理するためにはという考え方で問題の提起をしたところが、その際に、あなたのほうでは、大体その意向に賛意を表された。したがいまして、この点については、国民年金の関係者あるいは厚生年金関係者、言いかえますと、何の恩典も受けていない方々の人数というものを掌握するようにするという回答であったのでありますけれども、いまだに何もしていないということは、これは全く国会を無視した、軽視したやり方だと私は思うのです。これではどうにもならないと思うのです。なるほど、各省庁がその人数を把握しているということはわかりますよ。しかし、問題を集約するという意味であなた方が答弁をしたならば、それに沿った作業というものを忠実にやっていかなければ、議論をするわけにはいかなくなってまいります、そうじゃありませんか。
  110. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 確かに先生の御指摘の点は私もよくわかるわけでございますが、ただ、お答え申し上げておりますのは、旧来、実は軍人恩給連盟等のそういう団体から、三年以上七年未満の者についての一時恩給を支給してもらいたいという総理府側への話し合いが、陳情という形で出ておることは事実であります。したがって、私たちの処遇のしかたとしては、いま申し上げましたような点で、さような方々に、いわゆる恩給として処遇することの可否の問題が、直接的な課題としてわれわれの課題になりますので、この面についても、実は、昨年二月の分科会における先生の御質問、この点につきましても、私たちは、それなりに十分尊重いたしまして、その内容についての検討を続けてまいったわけでありますが、ただ、それらの対象の人たちが現在それぞれの面においてどのような処遇をしてもらっているかという点については、実は、残念ながら恩給局の資料としての用意ができませんので、この点につきましては、さらに先生の御意向も——実は、旧来の委員会で、そういう数字を明確にするという答えをしたという点については、昨年の委員会資料を調べてみました結果では明らかではございません。あるいは私の前任者からの引き継ぎが必ずしも十分でなかったのかとも存じますが、実は、さような旧来の分科会における話し合いのもとにおける数字の調整ということが、残念ながら、今日申し上げられないことを私なりに感じ取っております。
  111. 吉村吉雄

    吉村分科員 それでは、この百二十七万人という概算された数字、これは七年以下の軍歴者全体の数字ですか、それとも、現在何らかの処遇を受けている人を除いた数字ですか、どちらですか。
  112. 矢倉一郎

    ○矢倉政府委員 ただいま申し上げました百二十七万人と申しますのは、三年以上七年未満という、いわゆる関係団体から、ぜひ一時恩給としての制度的な是認をしてもらいたいという数字でございます。
  113. 吉村吉雄

    吉村分科員 そうしますと、私が申し上げました七年以下全部ということになれば、前々国会ですかの答弁におけるところの約三百万という数字になる、私は、大体こういうふうに予想できる気がします。しかし、これはあくまでも予想で、間違いがあるかもしれませんが、こういった問題について、特に団体を構成して運動をしているということではないので、あなた方は軽視をしているかもしれないと思うのですよ。しかし、社会保障という観点から見ますならば、軽視すべき問題ではない。圧力団体があろうとなかろうと、国は、やはり不均衡の点に気がついたならばこれを直していくという熱意がなくてはならぬだろう、こういう考え方に立って指摘をしてまいったわけですが、ぜひこの点は、あなた方のほうとしては十分考慮の中に入れて、そうしてこれから善処をしていただくように、特に要請をしておきたいと思うのです。  次に、厚生省関係ですが、この所得保障制度は、大臣もあるいは事務当局も御存じのように——所得保障制度ばかりではありませんけれども、現在の日本の社会保障制度というものは、各制度がばらばらにつくられた、そういう歴史的な事情もあって、給付その他きわめて不均衡な点が非常に多い、こういうことが現在問題になっております。それは、制度上の問題もありますし、その制度の中におけるところの適用のしかた、運用の問題、こういう点にも原因があるだろうと思うのです。本来、社会保障の一環として考えていくとするならば、これらの問題全体については厚生省が所管をするか、あるいは一省を独立させて、社会保障全般の問題を監視していく、こういう制度でなくてはならぬだろうということが、長い間議論をされておりますけれども、現在そこまで至っていない。こういう中で、いま、私が指摘を申し上げましたところの地方公務員法の適用者、国家公務員法の適用者あるいは公共企業体の職員、それぞれの共済組合に所属をする方々で、七年未満の軍歴を持った方々はどういうふうになっておるか、年金局長、御存じでありましたら答弁願います。
  114. 伊部英男

    ○伊部政府委員 直接所管でございませんので、理解に誤りがあるかもしれませんが、昭和三十六年四月一日、通算年金通則法が施行された時点において共済組合員であった方につきましては、結局、通算対象期間になるものと了解しております。
  115. 吉村吉雄

    吉村分科員 年金局長、その答弁自体は間違いではないと思いますけれども、もう少し勉強してもらいたい気がするのです。私がいま質問しているのは、旧軍人で七年未満の方々が、たとえば、公共企業体の職員は公共企業体共済組合法の適用を受けておる、そういう職員の場合にはどうなるのか、地方公務員の場合にはどうなるのか、こういうことをお尋ねをしておるのです。
  116. 伊部英男

    ○伊部政府委員 地方公務員及び公企体も同様な扱いになるものと思います。
  117. 吉村吉雄

    吉村分科員 同様ということは、それぞれの共済組合員期間として軍歴期間が通算されておる、こういう意味ですか。
  118. 伊部英男

    ○伊部政府委員 そのとおりでございます。
  119. 吉村吉雄

    吉村分科員 大臣、国民年金法、それから厚生年金保険法、これは厚生省の所管をする制度でございます。共済組合法関係は、それぞれの者が現在のところ管理をしておるという状態になっております。ところが、同じ日本国民であって、同じ天皇の召集に応じて軍隊に行った者、これらの方々が地方公務員や国家公務員、公共企業体職員の場合には、それぞれの共済組合員期間として通算をされる。現在の所得保障制度というのは、御承知のように、その組合員期間というものが基礎になって、それぞれの年金額というものがきめられる、こういう状態になっております。そういたしますると、公共企業体の職員、地方公務員、国家公務員の場合には通算をされて、国民年金適用者やあるいは厚生年金適用者は通算をされないというこの状態について、厚生大臣社会保障の責任者として一体どう考えますか。
  120. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 共済組合の組合員は、これは吉村さんも御承知のように、掛け金を、保険料を拠出しておるわけでございます。そこで、昨年の厚年法の改正で、そういう保険料、掛け金を納めておりますところの共済組合員は期間を通算するというように改正をいたしました。また、今度の国会に提案をし、御審議を願う国民年金法の改正におきましても、その点ができるように、この問題も改正をする所存でございます。  そこで、軍人恩給の問題でございますが、軍人恩給の場合には、国が軍人恩給というものを支給した過去の歴史的なことからいたしまして、これは国と軍人との間の権利義務である、だから、社会保障のような自分からも保険金をかけて、それを積み立てて、その規定の年月保険料を納めた者が給付を受けるというものとは本来は違うものだ、こう私は考えております。そこで、共済組合等のように、保険金を拠出してやってきた組合員と厚年や国年の期間を通算するというようなことは、厚生省としても、積極的にこの問題を処理するということで法律の改正をしていきたいと私は考えておりますが、軍人恩給と国年、厚年との期間の通算という問題は、私がいま申し上げたようなことで、公的年金制度全体の今後の運用の問題に関係のある問題でございますから、慎重に今後検討していきたいと私は思います。
  121. 吉村吉雄

    吉村分科員 私のいまの質問に対して、いまの大臣答弁答弁になっておりますか。
  122. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 補足させます。
  123. 吉村吉雄

    吉村分科員 あなたがいま答弁されたことは、共済の関係については共済組合費というものを納めておる、軍人期間というものは、国とその軍人との権利義務関係である、こういう答弁でございました。私の申し上げているのは、あなたの表現をかりれば、国とその当事者の権利義務関係であるところの七年未満の軍歴を有する者、これは、国民年金適用者であろうと厚年適用者であろうと共済組合法の適用者であろうと、この権利義務関係は同じでしょう。そこに何らの差異もないでしょう。しいて言おうとするならば、これは共済組合費を納めたかいなかの問題だということで強弁をしようとすると思うのですよ。私が申し上げたいと思いますのは、それでは公共企業体職員、地方公務員、国家公務員で軍隊に行った者が、その期間、共済組合費を納めておりましたか、わかっていますか。
  124. 伊部英男

    ○伊部政府委員 大臣の御説明を補足申し上げますが、御案内のとおり、恩給法と共済組合長期給付とは、いわば親類関係でございます。従前、いわゆる恩給法の適用対象者も、共済組合の長期給付に切りかえるという時点におきまして、過去の恩給期間をも組合期間に通算するというたてまえをとったのでございます。その点でまいりますと、厚生年金あるいは国民年金の制度は、民間の自営業者あるいは被用者中心の長期保険でございまして、若干建て方を異にしておるのでございます。ただ、通算年金制度全体の問題として考えてみますと、通算年金制度全体につきましても、いろいろ改善の御要望が出ておるわけでございます。これらの問題の一環として、さらに慎重に検討してまいりたい、かように考えておるものでございます。つまり、たとえば、通算制度発足前において厚生年金で脱退手当金を受け取って、被保険者の資格を喪失した方、これらの方は、年金制度の上で、現在のところ全然考慮が払われておらないわけでありますが、しかし、この辺の取り扱いは、共済組会と比較をいたしますと、若干不均衡になるわけでございます。また、昭和十七年六月、厚生年金が始まってから以後の問題として考えてみますと、当時、戦争という特殊な事情によって厚年の被保険者の資格を得ることができなかった方——軍人もその一例であろうかと思いますが、こういった問題につきましては、通算制度改善の一環として慎重に考えてまいりたい、かような趣旨でございます。
  125. 吉村吉雄

    吉村分科員 どうも苦しそうな答弁なんですけれども、ひとつ、非は非として率直に認めて、直すところは直すようにしていきませんかね。いま、あなたは、先ほどの大臣答弁を補強するような趣旨の答弁をしましたけれども、私は、具体的な例を申し上げましょうか。とにかく、公共企業体職員あるいは公務員であった方々が軍人になるという場合には、一たん退職をされて軍人になった、そういう例もあるのです。それから、その期間応召軍人の場合には、共済組合費を納めたままで戻ってきたという方もあるのです。幾つかの例があるのですよ。しかし、そういう軍歴期間というものは、全部今日では共済組合期間として通算をしておるという状態になっておるわけです。あなたのいまの答弁の中で、私の言っておることと少く違うのは、旧軍人というものは恩給法の適用者であった、したがって、当時国家の機関であったところの公共企業体職員あるいは地方公務員、国家公務員の期間、こういうものは通算ができたけれども、民間の場合には通算ができ得ない、こういうお話でございます。それは制度の発足の当時から考えると、そういうことが理由の一つとしてあげ得ることができると思うのです。問題は、角度を変えて議論をしてみたいと思うのですが、国民皆年金とか国民皆保険になったというのは、一体どういう意味なんですか。従来は、確かに官尊民卑的なものの考え方がありましたよ。国家の機関あるいは県の機関等で働かなければ年金なり恩給はもらえないという、そういう時代もありました。しかし、それではいけないというのが今日の社会保障制度に対する考え方でしょう。すべての国民は、年をとったならばその生活が保障されなければならない。ですから国民皆年金制度になってきたと思うのですよ。農民も一般自由業者も強制的に入らなければならない国民年金制度というのをつくったのは、そういう趣旨でしょう。どんな仕事に従事していようと、どんな地域に生活しようとも、とにかく、老後の生活は国が保障する、そういう制度を、曲がりなりにもつくっていこうとしてつくられたのが、国民年金制度であると思うのですよ。厚生年金については、これは言うまでもありませんから、ここでは触れません。いま、私どもが必要だと考えまするのは、国民皆年金というその制度下において、ある特殊の職域にある者は国の恩典を受ける、ある特殊の職域にあった者は何らの恩典も受けてない、こういう状態のままで放置することが一体社会保障制度上いいのかどうか、こういうことを議論してみなければならぬというふうに思うのですよ。  根本的な問題は、共済組合がそれぞれの形で独立をし、運営をしている。だから、その共済組合で資金があれば、これは通算ができたということでしょう。通算措置を認めたということは、その組合の財政上の理由によって認めたと私は思うのですよ。国が管理をしておるところの国民年金やあるいは厚年の場合には全然何の恩典もない、そういう制度のままに放置していいという理由はない。社会保障全般の責任者である厚生大臣は、そういうところにもし問題があるとするならば、これをなるたけ不均衡をなくするようにしていく、こういう心がまえがなくてはならぬだろうと私は思うのですよ。単に、従来のあり方に対しての強弁だけで済むのだったら、私は、議論をする必要はないと思います。ですから、あなた方も何回か答弁をしておるように、しかも、いまも答弁をされましたが、去年の厚生年金の改正にあたっては、旧海軍、陸軍の工廠につとめておった期間は厚生年金期間として通算をするという改正をしたでしょう。それは、他の公的年金制度との関係でそうしなければ不均衡がある、少しでも近づけようという意図を持ってやったという説明もしました。あるいは私の質問に対して、この不均衡というものは何とか是正をするように検討をするという答弁も、いままでにあなた方はしておるのですよ。ところが、時がたってしまうと、もういまのように、問題がまたもとに戻ってしまう。こういうことでは、私は、いけないだろうと思うのです。私は、従来から主張しておりましたけれども、検討したとするならば、その検討の結果は一体どうなのかということを冒頭に聞きたかったのです。大臣もかわった直後でもありますから、それはお尋ねを遠慮したのですけれども、何回かそれはあなた方のほうで約束しておるのですよ。こういう点を十分考えてもらわなければいけないと思うのです。  さらに、通算年金制度のことをあなた方はたいへん強調しますが、通算年金制度があればあるほどに、この不均衡はもっと表面化してくると思うのです。通算年金制度というのは、従来は、国鉄なら国鉄に二十年つとめなければ年金がもらえなかった。今度は、十年つとめて民間の厚生年金制度に入っても、この十年と十年をプラスして二十年になれば年金はもらえるという制度にしたわけでしょう、そうでしょう。そうすると、ある旧軍人の方々は、その共済組合によって、軍人期間が通算になっておる。共済組合に五年しかいないのだけれども、軍人期間が五年あったために十年になっておる。その人が民間に行けば、あと十年つとめれば年金の受給資格が生まれる。ところが、今度は、厚生年金の関係にいた人が官庁に行った場合、これは全く逆な結果が出るでしょう。こういうようなことで、通算年金制度というものができて現在あればあるほどに、この不均衡は表面化してくる。やがて、そういう事態が起こってくる。ですから、そういうことが予見をされるという状態の中で、特に、すでにもう不均衡であることが明瞭でございますから、そういう点については、不均衡にならないように、制度というものをできるだけ同じような状態にしていく、そういう配慮があってしかるべきではないか、こう思うのです。大臣、どうですか。
  126. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 まず、前提を冒頭に申し上げておきますが、私は、実はこの問題は、初めて御意見を承ったのでございますから、前向きで検討いたします。このことをはっきりお約束を申し上げておくわけてあります。  だいぶ吉村さんからおしかりをこうむったわけでありますけれども国家公務員や地方公務員等でつくっております共済組合、これは古い公務員に対する恩給制度から発展的に変わっていった制度である。そこで、軍人恩給と公務員の恩給というような関係で通算の問題が早く処理された、解決された、こう私は思います。ただ、一方、厚年なり国民年金なりというのは、本来が、拠出年金制度として被保険者が保険料を拠出し、積み立てて、これで老齢その他事故によって給付を受ける、こういうことになっておる関係でございますので、軍人や公務員に対する恩給と出発点も違う。さっき申し上げたように、国と旧軍人なり公務員なりの権利義務の関係でなしに、純然たる所得保障、社会保障として行なわれた制度であろう、こういうようなことから、いま吉村さんが御提案になっております旧軍人との通算の問題も、共済組合の場合のように早く処理されなかった、解決されなかった、そこに大きないろんな研究の問題点があったのだろう、こう私思うわけであります。しかし、ただいまよく御意見を伺いましたので、今後前向きで至急研究を進めたいと思います。
  127. 吉村吉雄

    吉村分科員 きわめて誠実にして、実行力のある鈴木厚生大臣が、前向きで十分検討するという回答を得ましたから、これ以上私は申し上げません。鈴木さんのその言を信じて、実現をすることを期待したいと思うのです。  最後に申し上げたいのは、これは、一般の農家の方々なんです。自由業者の方々です。それから民間の会社、工場につとめている方々です。特に農家の方々の場合を考えますると、大体七年以下という方々はどういう人かということを考えてみると、相当年配になって応召した方々だ。こういう方々が全国に相当数いるのですよ。しかも、これらの方々は、国家公務員や地方公務員あるいは公共企業体職員の方々と仲間同士で軍隊の生活をやってきた。ところが、帰ってきてみたら、国家機関で働いている人たちはそういう恩典を受けている、おれは百姓だから何の恩典も受けない、こういうようなひがみといいますか、そういうような声が当然にして出ているといわなければならないのです。私は、この問題をだれから言われたという問題ではないのですよ。制度を調べている中で、当然そういう問題がある。聞いてみたら、まさにそのとおりです。ところが、いまの政治というのは、何か圧力団体でもあって、そうしてわいわい騒がなければ実現をしない。こういうようなことであったのでは、私はいけないと思うのです。ですから、これはいけないと思うこと、不均衡だと思うことについては、率先してこれを均衡のとれるような姿にしていく。特に社会保障制度というものは、そういうあたたかい配慮がなければ、政治に対する信頼感というものが失われていく、こう思います。それから、三年以上の方々についてだけ一時恩給をやる、こういう制度をかりに実現をしても、三年以下の問題が残る、こういうふうになりますので、今日的なこの問題の処理としては、所得保障制度の中にこれを包含した形で解決する、これ以外に道はないであろう、具体的には、厚年なりあるいは国民年金なりに、各共済と同じような措置をとっていくということによって、相当この問題についての不満なりあるいは不均衡というものは解消できるはずだというふうに考えて申し上げておるわけでございますから、ただいま前向きな姿で検討するというきわめて前進的な答弁を得ましたので、ぜひ、ひとつ、大臣在任中にそれが実現するしないは別にして、とにかく、何らかの形で答えを出すような、あるいは審議会等において十分審議を尽くすとか、そういうような方向努力してもらうことを、さらに要請して質問を終わります。
  128. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 次に華山親義君。
  129. 華山親義

    華山分科員 時間がございませんので、私もここに出て質問をいたします前には、相当勉強してきておりますから、もうこまごましたことはよろしゅうございますので、結論だけを簡潔におっしゃっていただきたい。なお、補足しなければいけないようなことは、私のほうで厚生省に伺いますから、その際に説明をしていただきたいと思います。  一つお伺いしたいことは、端的に伺いますけれども、私に一つの請願書が来まして、紹介者になってくれというのが参っております。政府の請願に対する取り扱いというものは軽いのでございますので、お伺いいたしたいのでございますけれども、その中身は実は私を驚かした。それは、国立結核療養所のある病院でございますけれども、患者が二百二十人、この患者の二百二十人に対して、院長さんが一人、お医者さんが一人おりますけれども、その人は結核菌が目に入ったということで、長い療養をなさっていらっしゃって、かわりに一月の間に十日だけほかの病院からおいでになる。一人と三分の一で二百二十人の患者を見ておられる。こういうふうな実態で、私は驚きまして、それがほんとうなのかどうか初め疑った。それで私は人を派しまして、その実態を見てもらいましたところが、そのとおりでございますが、こういうふうなことはあり得るのでございますか、どういうことなんですか。ほかの病院にもそういうことがあるということでございますが、あまりにひど過ぎるのではないか、一体どういうところからこういうことがあるのか、どうなんですか。
  130. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま先生御指摘の療養所は、左沢療養所のことかと存じます。まことに残念ながら、現在国立療養所の医師の定数は年々減っておりまして、現在、総体としては約九〇%充足しております。しかし、その九〇%も比較的大きな地の利のいいところは十分充足しておりますけれども、比較的僻地の——僻地といいますか、交通の便の悪い地域では、医師の充足状態は非常に悪くなっておりまして、最近にそのような事例が出たことはまことに遺憾でございます。できるだけ療養所相互間等のやりくりをやりまして、そのような事態の解決に努力してまいりたいと思います。
  131. 華山親義

    華山分科員 私は、こういう場所でございますから、具体的な名前は申し上げなかった。何もその病院のことだけを言っているのじゃない。そういうところがほかにもあるようでございますね。青森県あたりに参りますと、そういうところがあるし、僻地にはそういうところがある。しかし、こういうふうなことはほとんど考えられない。それで、その院長さんが一人で、あと一カ月に十日おいでになるお医者がありますけれども、院長の仕事から何から全部しなければいけない。患者の連中ははらはらして、あの院長さん持つかどうかということを見ている。根本的に欠陥があるのではないか。私はこの病院だけを取り上げているのではございません。医者の月給が安いとか、何かひどいことがあるのではないか。
  132. 若松栄一

    ○若松政府委員 これほどひどくなくても、院長が一人になってしまったという比較的小さな療養所はほかにもございます。そういうところも近隣等の療養所からお互いに繰り合わせまして、できるだけのことをやっておりますが、ただいまお話にありました左沢療養所は特に不便なところでございまして、医師に行ってくれと言いましても、ちょうど僻地療養所のような形で、なかなか行っていただけないということで、やむを得ず臨時的な応援の医師で間に合わせざるを得なかったという実情であります。
  133. 華山親義

    華山分科員 弁解はよろしいのでございますよ。そういうふうなことがあってはいけないのではないか。二百二十人も患者がいまして、お医者さんが一人三分の一で見ているということはとんでもないことじゃないか。あるいは、そういう僻地のお医者さんに対する手当が悪いのか。現在いろいろなほかの関係が脚光を浴びております。もう結核の治療というふうなことは医療行政の中の陰に隠れてしまったのか。そういう点をどうしても直してもらわなければいけないと思うのです。それから、その病院でございますが、それはあなたのおっしゃるとおり、酷寒のところでございます。それで暖房が一つもない。これは暖房をたくということが治療上悪いからたかないのか。患者の方方はほおかぶりして毛布をかぶって寝ているのですよ。そういうことは治療上から出るのか、経営上苦しいからやっているのか、どちらなんでしょうか。
  134. 若松栄一

    ○若松政府委員 ここ二十年以前くらいの、いわゆる結核の特殊治療薬ができます前は、結核の治療というものは大気、安静、栄養療法というのが基幹でございましたために、現在の国立療養所になっております、その前身の傷兵保護院あるいは軍人保護院の療養所等も、すべて暖房は設備しなかったのが原則でございます。その後、近代の化学療法が発達してまいりましてからは、大気、安静、栄養ということをそれほど厳重にいわなくても、化学療法でやれるということで、近代的な病院はだんだん暖房設備をするようになりましたけれども、古い病院でなお依然としてそういう暖房の設備もないところが多数残っておることは遺憾でございまして、逐次改善いたしたいと存じておりますけれども、なかなか数が多くて手が回りかねるというのが実情でございます。
  135. 華山親義

    華山分科員 二百二十人の患者がいつお医者に見てもらえるかわからない。そして古い建物の中で酷寒の地で寒暖計なんか一つも下がっていない。そういうところでほおかぶりして寝ていなければならぬということは、私は国立病院としてやるべき態度じゃないと思う。何か私は、厚生省の結核療養所というものに対するものの考え方が薄くなって、予算の組み立て方、そういうものがおろそかになっているのではないか、こういうふうな気持ちがいたします。お答え願わなくてもよろしいのでありますが、私は左沢の病院だけを言っているのではない。全般についてもっと予算的な措置というものを考えていただきたい、こういうことを申し上げます。大臣、ひとつお答えを願いたい。
  136. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 結核対策は過去の疾病対策のうちでも最な成果をおさめた対策であると私は思います。そのために、今日結核患者が非帯に早期に治療したり、治癒したり、あるいは数もだんだん減ってきております。しかし、いまが非常に大事なときでございまして、結核対策から手をゆるめるようなことがありますれば、また逆転するおそれもあるということで、私は、結核対策から厚生省が熱意を失ったとか、手をゆるめておるとかいう気持ちは全然ございません。空床等もありまして、それを精神病であるとかあるいは重症心身障害児のほうに転換をするというものもありますけれども、これは無理に結核のほうを減少して、そしてやるのではない。そういうことで、今後も結核対策につきましては、従前に変わらない熱意を持ってやっていきたい、こう思います。  それから、病院や国立療養所の整備の問題につきましては、もう御指摘のとおり、旧陸海軍の病院を引き継ぎまして、それを療養所としてずっとやってきておる関係もありまして、非常に施設も古い、また老朽化しております。これを近代的なりっぱな病院、療養所に建設をするという問題は、焦眉の急であります。過去におきましても、第一次年次計画で若干の国立病院等を整備いたしましたが、近く私は第二次の整備計画を立てまして、そうして計画的、年次的に年次計画をもってこの整備をやりたい、かように考えておる次第でございます。
  137. 華山親義

    華山分科員 大臣に、とにかくそういうふうな実態がございますから、そういうふうな実態のないように、きめこまかくということばがこのごろはやりますが、そういうことでやっていただきたいと思います。  次に伺いますが、このごろ差額ベッドということをよく言われる。それで、現在大臣も御承知のとおり、名医といわれるような人が開業をなさる。健康保険ではない。そうしてそういう人が健康保険には関係のないような人を治療していられる。そういう傾向がだんだん強くなってきている。それから、いろいろな私立病院におきましても、差額ベッドが多くなってしまって、一般の健康保険で入るような人が入れなくなってきている。私は憂うべき現象だと思うのです。それで、そういうふうなことまでどうするかということになりますと、また別問題でございましょうけれども、公立病院あるいは国立病院、そういうふうなものにつきましても、経営の内容をよくするために差額ベッドを使う、そういうふうなことがございますか。
  138. 若松栄一

    ○若松政府委員 国立病院、療養所というものは、合理的な経営をやることは当然でございますけれども、これによってどうしても収支を合わしていこうというつもりはございません。したがって、できるだけ国民の妥当な医療需要に即応していくという努力をいたしております。現実に国立病院におきましても、現在国立病院八十七病院で、五十病院は差額ベッドを持っております。しかし、これも経営収支をよくしようという努力よりは、むしろ地方における医療需要に即応するという考え方で、その地方における有力者であるとかいろんな方々が、やはりいい医療を受けたい。しかし、入院中もいろんな社会的な接触があるために、どうしても相当な個室がほしいという要望も現実にございます。また、そういう要望のために、院長が個室をむしろあけなければならぬという苦労をする例もしばしばございます。そういう意味でへ最小限度必要な個室を認める。したがって、現在国立病院におきましては、大体八・八%の個室を差額ベッドといたしております。
  139. 華山親義

    華山分科員 同様な方針が——厚生省で指導なさるわけですけれども、一般の公立病院、府県等の病院につきましても、同じような精神で指導なさると思いますが、いかがでございましょうか。
  140. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 差額ベッドの問題につきましては、三十九年の七月に私のほうから各県知事あてに、差額床につきましての取り扱いの通牒を出してございます。考え方は、ただいま医務局長が申し上げたと同じような趣旨でありまして、公立病院につきましても、特殊な場合を除いて、原則としてはやはり差額徴収ベッドは多数にのぼるべきではない。おおむね全病床数の四分の一ないし五分の一程度はやむを得ないだろう。しかし、公立病院のたてまえからいって、なるべく差額ベッドの徴収のないような指導が望ましいということで、通牒、指導をいたしております。
  141. 華山親義

    華山分科員 議論が長くなりますからここでやめますけれども、五分の一、四分の一なんてどこから計算されるのか、私は多過ぎると思いますね。どうもこのごろ公営企業の独立採算制ということが強くなったために、自治省あたりは、差額ベッドをつくれという指導をしている。私はたいへん間違っていると思いますが、ここでは論及いたしませんが、五分の一、四分の一は少し多くなりませんが。簡単に言ってください、まだ聞きたいことがありますから。
  142. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 ちょっとことばが足りませんで補足いたしますが、一般の病院を含めまして大体その程度にとどめるべきであるということを申し上げておりまして、当時の全国の調査によりますと、公立病院につきましては、差額ベッドを徴収いたしておりますベッド数は大体一四%程度でございまして、まあ一割をちょっとオーバーする程度でございます。ただ、実態が相当、半分以上やっているようなところもあるという実態をつかんでおりますので、これはすみやかに是正するように、県衛生部のほうにやかましく私のほうから言いまして、逐次改善の計画をとった上で是正するという措置を強力にとりたいと思います。
  143. 華山親義

    華山分科員 問題がちょっと変わりますが、日韓の条約によりまして、韓国民の法的地位と待遇に関する両国の間の協定へそれからこれに関する合意議事録、またこれに関する討議の記録等によってみますと、来年の四月には国民健康保険が韓国民に適用されるというふうなことに了解されますが、そのとおりでございますか。
  144. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 永住権を取得いたしました韓国人は、省令の改正で当然加入するようになるわけでございます。その他の永住権を取得しない韓国人なり、その他朝鮮人といわれる方々は、他の外国人と同様に、従前どおり、条例では、各町村が国民健康保険加入を認めた場合において加入をする、こういうことになるわけであります。
  145. 華山親義

    華山分科員 外務省の方からお答え願っても、あるいは法務省の方からお答え願ってもいいのでありますが、こういうふうに韓国の人に国民健康保険ということについて認めるということをいたしました。これは韓国から要求があってこういうことを認めたのでございましょうけれども、これを日本が認めるからにはそれだけの理由がなければいけない。どういう理由で、韓国民に対しまして健康保険を適用するということを合意に達したのでございますか、その理由をお伺いしたい。
  146. 黒田端夫

    ○黒田説明員 御説明申し上げます。  法的地位協定そのほかによりまして、日本政府は義務として健康保険を与えるための必要な措置をとるわけでございますけれども、その理由といたしましては、こういった人々が健康上も憂いのない生活を営むことは、現状のわが国の社会にとっても望ましいことであり、このような観点から、さらに、外国人に対する適用を制度上配慮していない国民健康保険の加入を認めることとしたわけでございます。これはもちろん御指摘のとおり韓国側の要望もあったという事情もある次第でございます。
  147. 華山親義

    華山分科員 私、たいへんわからないのでございますが、それは日本のためにやった、そういうふうな外国人は韓国だけじゃないでしょう。ほかにも外国人はたくさんいる。そういう外国人が健康に生活するということが日本に望ましいことであるならば、すべての外国人に認めたらいいじゃないですか。どういうわけなんですか。
  148. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 いわゆる医療保険といいますか、疾病保険につきましては、わが国の制度から申しますと、雇われておる者、いわゆる被用者保険につきましては、外国人、日本人を問わず、全部適用いたしております。問題は、ただ国民健康保険についてのみ、韓国人についてどのような取り扱いをするかということだけでございまして、現在の実態から申しますと、市町村の大体三分の一が外国人につきまして国民健康保険の適用をいたしております。これは条例で適用することになっておりますが、条例で適用する以外に外国人は原則としては適用しないけれども、条例で適用する場合にはいい。しかしそれ以外に、たとえば日本人に対しまして、外国において内国人と同じような均等待遇を与えておる国に対しましては、やはり適用する、こうなっております。したがいまして、今度改正の場合には、これに韓国の場合は追加されるわけでございまして、やはり今度の日韓条約の、先ほど外務省の方が言われました、永住権を認められた韓国人に対しましての特別の待遇ということで、強制適用をやろうという趣旨に相なったわけでございます。
  149. 華山親義

    華山分科員 生活保護は南の朝鮮人ばかりじゃなくて、全朝鮮人に認めている、これはどういうわけでございますか。
  150. 黒田端夫

    ○黒田説明員 これも条約上の義務といたしましては、協定上の永住許可を受けた者は、従来どおり当分の間生活保護を受けることができるというわけでございます。
  151. 華山親義

    華山分科員 いままでどいうわけで全部の朝鮮人に対しまして生活保護を適用しているのかという理由を聞きたい。
  152. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私からお答えいたしますが、やはり生活に困窮しておる外国人に対しましては、人道的な観点に立ちまして生活保護を与えておるわけです。
  153. 華山親義

    華山分科員 そうしますとインド人でもだれでもそうですか。
  154. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 生活に困窮している者は同様でございます。
  155. 華山親義

    華山分科員 私は考えるのでございますけれども、先ほど外務省のお答えは、健康で暮らしてもらったほうがいいのだということでございます。これは韓国人だけじゃないんじゃないですか。すべての外国人がそうあってほしいんじゃないですか、なぜ韓国人だけ認めているのです。
  156. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この医療保険の問題は、地域住民が市町村単位でつくっておる相互扶助の気持ちも加わった制度でございます。そういう関係でその地域住民の間に溶け合った関係に立って、この方々も入れてやったほうがいいというようなことで各市町村が自発的にこの条例でもって加入を認めておる、こういうことであるのであります。今回特に永住権を取得いたしました者につきましては、はっきりと長い間日本に居住をし、将来ともに日本に永住をいたしたいというような特定の資格を持った者に永住権を与えたわけでありますから、この人たちに対しましては条例によらなくともよろしい、これは国として当然これを加入させるように措置しよう、こういうことにいたした次第であります。
  157. 華山親義

    華山分科員 そういうふうなことで、永住という認識が日本におきましてはあるかもしれません。しかし、とにかく考え方といたしましては、朝鮮の人たちが日本に戦争中ああいうふうな状態で来た。そうして非常につらい思いをさせた。そうしていまでは日本の地域的な一つの共同社会の中にある。そういうふうな意味で、これはひとつ日本人と同じようなものの考え方から処理しよう、これが本則じゃないのでございますか。そうでなければ理屈がつかぬでしょう。そうでなければなぜ韓国人だけそうするのか、外国人と比べてなぜ韓国人だけそういう特殊な扱いをするかわからないでしょう。そういう理屈があるから韓国人に対しては特別に認めている、こういう観念から発しておるのじゃございませんか。
  158. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 申し上げるまでもなく、朝鮮の人々と日本の関係というものは、ほかの外国の場合とは違う特殊な関係にあるわけでございます。したがいまして、今回国交を正式に正常化しましたところの韓国との間には、いまのような特典を与えることにいたしたのでございますが、しからば北鮮の人たちやなにはどうするかという問題でございますが、これは今回の措置によっていままでよりも悪い条件になったということではございません。従前どおりの条例によって加入はできるということでございまして、決してそのために待遇を悪くしたということではございません。また、将来北朝鮮と国交がもし回復をされました場合には、当然韓国との均衡の上からいたしまして、その永住権者に対して同様の身分を与えるべしという要求が出てくるかもしれません。これはそういう北鮮と国交正常化、国交回復というような問題が起こった際、私どもは慎重に検討したいと考えております。
  159. 華山親義

    華山分科員 私はそれは違うと思いますよ。とにかく朝鮮民族があの当時は分かれておらなかった。その朝鮮民族に日本に来てもらって、あれだけのことをしてもらった。そうして今日まできている。何も朝鮮民族の中で北と南とを分けられる必要はない。これを認めたのも、そういうふうな今日の地域的共同体の中で、共同生活圏の中に両方とも入っている——個人個人は何も違わないでしょう。そういうことからでなければこの協定というものは了解できない。それだったならば、北朝鮮と南朝鮮とを人間として区別する理由は私はないと思うんです。人道的立場からこれをおやりになったのだと言われる。そうだったならば区別する理由はないじゃありませんか。なぜ区別なさるのですか。
  160. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたように、生活の困窮をされておりまする方々に対しましては、人道的な関係から北も南も区別なしに、またその他の外国人であろうと、現実に生活に困っていられる方には生活保護を与える、これは正しいやり方だと思います。ただ、国民健康保険等の日本国民がお互いに助け合ってやるという隣保共助の精神からつくっておりますところの医療保険制度というものに対しましては、これは条件をつけてよろしいと思います。そういう意味で、各府県でそれぞれ条例で認めるところもあり、そうでないところもあってよろしい。また今回韓国とああいう協定をやった。それによって韓国人に実施をする、また、これは遺憾ながら現実でございますが、北鮮との間にはまだ国交が回復してない。だから、国交回復のときまでは韓国と同じような処遇をするというわけにまいらないのであります。これは華山さんとは立場が違い、考え方が違うのでございますから、幾ら議論しても平行線だと思いますけれども……。
  161. 華山親義

    華山分科員 これは混乱を起こすだけですよ。  そういうふうなことで、ちょっと外務省の方に伺いますが——あと十分くらい、よろしゅうごさいますか。
  162. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 なるべく簡潔にお願いします。
  163. 華山親義

    華山分科員 簡潔にいたします。外務省の方に伺いますが、今度領事が韓国からおいでになります。領事は、これは外交官じゃございませんですね。したがって、個別の問題について問題が起きたときには、交渉の相手は地方官憲、市町村長、これは国際法上明白だと思いますが、何か私の言っていることが間違えていたら訂正していただきたい。
  164. 黒田端夫

    ○黒田説明員 御説明申し上げます。  領事館の国際法上の地位というものは、あまり確定した面はございませんけれども、領事館は中央と話をしない。地方で自分の国民の保護とか通商の振興に当たるということは大体確立しておることでございます。中央とは話をいたしません。
  165. 華山親義

    華山分科員 国民健康保険は、私から言うまでもなく、いろいろなところで非常に問題の多いところでございますが、領事がおいでになって一つの権利として韓国の人は今度は主張ができるわけです。市町村長はそういうふうなことについて領事との交渉にたえ得るだけの能力があるとお思いになりますか。これは厚生省にお伺いしたい。
  166. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 国民健康保険の適用につきましては、これは四十二年の四月から厚生省令を改正することによりまして、当然強制適用になるわけでございます。したがいまして、永住権を許可されました韓国人につきましては、当然強制適用、したがいまして保険料の徴収その他も市町村のほうでやっていただかなければならない、こういうことになるわけであります。  問題は、北鮮系の場合でございまして、これはやはり、特に大都市等におきましては、韓国人と同じようになぜわれわれも適用しないかという要求は出ると思います。それにつきましては、これは条例で市町村長の判断でやっていただく、こういうことになろうかと思います。
  167. 華山親義

    華山分科員 そういうことをお聞きしたんじゃなかったのです。おっしゃるとおり、東京都はいまやっておりませんね。それですから東京都の条例で、南朝鮮ばかりでなくて北朝鮮にも適用するんだといったって差しつかえないわけでしょう。そういうことについて厚生省は、大臣のおっしゃったとおり、それはおかしいなんて言わないでしょうね。どうでしょうか大臣。いまでは条例でやっているわけです、三分の一ほどのところは。やっておらないのが、大体都会なんですよ、大都市なんです。そして今度条例でやろうと思えば北朝鮮の人にも適用できるわけです。それでその条例をつくろうというときに、政府がそういう条例をつくるのはいけないとかなんとかいって牽制なさらないでしょうねということを聞いている。
  168. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それは当然のことでございまして、いままでどおり指導してまいるつもりでございます。自主的にやるように指導してまいります。
  169. 華山親義

    華山分科員 自主的に北朝鮮に適用いたしましても、これから新しく条例で適用してもいいわけでございますね。
  170. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 さようでございます。
  171. 華山親義

    華山分科員 先ほど私お聞きしたこととはちょっと違うようなんですけれども、個々のトラブルが起こるでしょう。トラブルが起きたときに今度は権利として韓国の人が持っておるのですから、しかも、それが先ほど外務省からの御答弁のとおり領事というものの背景でやるわけですよ。領事というものは厚生省には行きませんから。領事を背景とするような、そういうふうなトラブルの処理に対しまして、市町村長は、——たくさん市町村長がいられるわけですけれども、そういう煩にたえ得るかどうかということなんです。
  172. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 華山さんのお尋ねが私よくわかりませんのであるいは的がはずれるかもしれませんが、まず強制適用の前提は永住権の取得でございます。この永住権が取得できるかできないかの問題は、法務省のほうで出入国管理令等に照らしてきめる問題であり、そこで永住権さえ獲得されればこれは当然加入をするということでありまして、町村長や何かがそこでトラブルを起こすという問題でなしに、法務省との間に永住権の資格を得るか得ないかの問題になろうかと思います。
  173. 華山親義

    華山分科員 私のお尋ねのしかたが悪いのかもしれませんが、まあそういうことになりますね。その際に、具体的に問題が起きる場合だってあるわけですね、金が少ないとか多いとか適用するとか、しないとか、そういう権利を持っていたって、一般のときだってあるでしょう。おまえは金を納めてないとか納めたとかいう問題が起きるでしょう。それはいまその人とその役場でやっておるわけです。今度は韓国の人とやらなければいけないわけですね。その際に今度は韓国の人には場合によっては領事というものがついてくるわけですよ。そういうふうな煩にたえるだけの能力が、いまの市町村長にあるかということなんです。
  174. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 そういうトラブルが起こった場合の取り扱いといたしましては、外務省と韓国大使館との間で話し合いをするということで、現地でそれに伴う外交上のトラブルにつきまして市町村長は直接当面の責任者になるということはないというふうに私ども思います。
  175. 華山親義

    華山分科員 あなた間違えておりますよ。先ほど外務省で言ったでしょう。個人の権利を擁護するのは、これは領事の責任なんです。大使館のやることじゃないです、やってもいいでしょうけれども。その際領事は、外務省や厚生省とは交渉できないですよ。相手は地方官憲なんです。それは国際法を読んでごらんなさい。そうなんですよ。ですから、その際には領事は役場に行って市町村長へ交渉するということになる。そういうふうなことに対して市町村長がその煩にたえないで適用を曲げたり何かするようなことが起きるのではないかと私は心配したのです。
  176. 黒田端夫

    ○黒田説明員 補足して御説明申し上げます。  この健康保険を与えますことは、これは法的地位の協定その他の条約上の義務として与えるわけでございまして、それで、領事が文句を言う筋合いのものではございませんので、中央政府が大使館と話し合いをする問題でございまして、領事自身はそのものにつきまして何か文句を言ってくることはできないと思います。その個人が文句を言ってくる場合に、それは言えると思いますけれども、領事が領事の資格でそういう文句を地方に言ってくることはできないと考えるのでございます。
  177. 華山親義

    華山分科員 長くなりましてすみません。  私言っておるのはそういうことじゃないのです。そういう資格があるかどうかの問題じゃないんですよ。いざこの法律を施行して韓国人に当てはめた場合に、——しょっちゅう問題は起きておりますよ。市町村にいたって個人とその市町村当局との間に個々の問題について問題が起きる。その際に個々の問題を解決するために領事が出てくる場合があるんじゃないですか。その際に領事が相手にするのは市町村長じゃないか、こういうことを聞いているのです。
  178. 黒田端夫

    ○黒田説明員 領事がそういうことを言ってきました際には、それは外交の問題だから外務省と大使館で話し合えというぐあいに了解できるのではないかと思います。
  179. 華山親義

    華山分科員 あなたはよく国民健康保険のことをおわかりにならない。国民健康保険で何ぼの税金を取られた、これは高過ぎる、そんなことはないかもしれないが、これは高過ぎる、市町村がどうしてもきかない、領事館のところにかけ込んだ、そうすると、ある村のある何とか太郎兵衛が税金が高い、そういうことを外務省で処理なさるのですか。
  180. 黒田端夫

    ○黒田説明員 いま健康保険で日本政府が韓国側に対しまして何らかの義務を負っているといたしますれば、それは——日本側が負っている義務というのは条約の規定に基づく義務でございまして、個々の適用の問題につきまして韓国の官憲である領事が市町村に文句を言っていける筋合いのものではないと考えます。
  181. 華山親義

    華山分科員 それならばわかりました。私は領事の経験もございますけれでも、自分の国民の権利が侵害された場合には、その官憲に対して文句を言っていた、それは間違いだということでございますね。そういうことについて、個々人の問題について外交官、領事というものがタッチすべきものじゃない、こういうことですね。
  182. 黒田端夫

    ○黒田説明員 いまの健康保険を与える義務につきましては、これは条約に基づく義務でございますので、その点で領事が直接市町村に文句を言っていける筋合いのものじゃない、こういうふうに考えております。
  183. 華山親義

    華山分科員 そういうことを言うから、私はまた聞きたくなる。問題が起きたらどうするかということなんですよ。個人について問題が起きた場合にどうするかということなんです。領事には権限がないのですか。たとえばある診療を拒んだ、あるいはこのことについては薬は出すべきじゃないというふうに診療を拒んだというふうな場合に、領事というものはこの韓国人のAなる者に対する権利の侵害じゃないか、こう言ってこれないのですか。
  184. 黒田端夫

    ○黒田説明員 熱心な領事はそんなことを国民の保護のためにいろいろ言ってこられると思いますが、市町村の側で受け入れる義務がない。つまりこれは外務省に大使館を通じて言ってくれ、そういうぐあいに言うことができるという意味でございまして、向こうが全然取り上げないということを申しているのではございません。
  185. 華山親義

    華山分科員 少し外交の方法が変わったようですね。私は領事の経験がございますけれども、個人個人の問題、そういう問題については私はほとんど自分で取り上げて、そしてそのトラブルを解決することにあちらの官憲と協力して努力した。そういうことはしないんだということであれば、私はもうお聞きいたしません。そういうことがあったらひとつそのときにお聞きいたします。  それから一つ御注意申し上げておきますが、私の言うことをいまここで具体的に申し上げますと、いろいろ差しつかえがあるといけないから言いませんけれども、私はこの国民健康保険というものは、朝鮮の人、あるいは韓国の人を入れた場合には相当財政上の問題が、負担が増してくるんじゃないかと思うのです。これは一つの小さなところはいいのです。わずかばかりいるというところはいいのですけれども一つの村に伝統的にたくさんの朝鮮の人がいるところがある。そういうところではいまから恐慌を起こしています。それからこれは私の言うことが当たっているかどうか知りませんけれども、人々の言うことでは、現在の朝鮮の人がこの条約に望んでいることは、考えていることは、今度は病気したらただでなおしてもらえるのだということなんですよ。国民健康保険税とか国民健康保険料というものは、払わなくちゃいけないのだとは、多くの人は考えていませんよ。何かそういうことが韓国系のPRの原因しているかどうか、そういうように考えていますよ。必ずトラブルが起きます。そうしてその村の健康保険には影響があります。調整程度じゃ間に合わないのじゃないかと思います。これは国の責任において始めたことなんですから、この対策につきましては国が特別の財政をもって措置しなければいけないと私は思うのでございますけれども、そういう考慮がございますか。
  186. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 日韓条約の議事録の検討の際に、そのようなことを問題にいたしまして、国民健康保険の適用を受けるならば、当然強制適用になって、保険料も納めてもらわなければならない。これにつきまして今後どうするかということで政府部内でも検討いたしたわけでございます。やはり保険料の徴収は、これはもし違反があった場合には滞納処分その他でやりまして、厳重に私どもは徴収をいたす予定にいたしております。しかし、現実に非常に貧困者の場合には、国民健康保険におきましても減税の措置をとるというところの考え方をとっておりますので、そういった場合には財政調整交付金の中でこれを考慮するといったふうな考え方もとっておりますし、その場その場に臨みまして、四十二年度以降市町村の財政の実態とにらみ合わせまして適当な措置をとってまいりたいと思います。
  187. 華山親義

    華山分科員 これで終わりますから……。  財政の実態に応じてと言って、そういうことじゃないでしょう。こういうことを条約できめて、国の責任でやったのだから、そのためにたとえどんな金持ちの財政であろうとも、影響を及ぼした以上は、これは国が始めたのだから、国が持つべきじゃございませんか。
  188. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 その点は市町村の保険料並びに保険税の徴収の実態をよく見なければならないと思いますし、いまのうちからこうなるであろうという予想のもとに、こういうふうな財政措置をとるということを申し上げることは、いささか時期尚早だと思いますので、四十二年度以降実態をよく見きわめた上で、財政措置をどうするかということは検討していく必要があるのじゃないか、こう思っております。
  189. 華山親義

    華山分科員 私と考えが合わないようでございますが、私は朝鮮人、韓国人に対するところのこの保険の財政の問題、これは全面的に国が負うべきだ、こういうふうに考えます。  それから大臣に申し上げておきますけれども大臣、とにかく北朝鮮の人たちに対しても同じ民族なんだ、同じ境遇で日本に来ているのです。南朝鮮と何ら区別すべき理由はない。南朝鮮についてそういうふうな恩典を与えるならば、条例によって規定するということであるならば、そういうふうな条例をできるだけつくって、そうして北朝鮮にもこういうことの適用のあるように御指導を願いたいと思います。いかがでございましょうか。御答弁がなければそれでよろしゅうございます。
  190. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 午後二時半より再開することとし、休憩いたします。    午後一時四十九分休憩      ————◇—————    午後二時三十四分開議
  191. 大橋武夫

    大橋主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西宮弘君。
  192. 西宮弘

    西宮分科員 私は、上水道の問題についてお尋ねをしたいのでありますが、劈頭、大臣にお尋ねいたしたいと思いますことは、上水道をどういうふうに認識をしておられるかということであります。つまり、これは要するに個人個人が、ほしい人が金を出して飲む、いわば個人の経済力にまかせておる、そういう筋合いのものであるのか。あるいはそれとも、生活のため、生命のために必要なものであるというふうな認識であるか。もし前者であるならば、いまやっておることを適当にそのままほうっておいてよろしいと思うのでありますが、もし、後段であるとすれば、まず第一に、水道料金なるものも、あくまでも公平な原則で算定されなければならぬし、さらにまた一歩進んで、できるだけ市民の負担を軽減するという考慮が必要だと思うのでありますが、まず最初に伺いたいと思うのは、そういう点で、上水道に対する大臣の認識はどうであるかということです。
  193. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 上水道は、地域住民の生活環境を整備いたします上からきわめて重要なことでございまして、生活に密着したものでございますから、それだけ非常に公共性の高いものだと私は考えておるわけでございます。地域住民の生活を文化的に、さらに住みよい快適なものに向上させる上からいたしましても、上水道の整備ということが必要である、かように考えております。ただ、料金の問題につきましては、御承知のように、上水道の料金は、合理的に経営をされ、そして適正な原価計算の上に立ってきめられなければならない、こういうことになっております関係で、地方地方によりまして上水道の料金というものはきまってくるわけでございます。またいろんな、それを建設いたしました過去における経済事情等等からいたしまして、すでに償却ができて、相当安く水道料金を定めておるところもあると思います。しかし、最近におきましては、拡張、建設等のために相当の資金が要るということで、全般的に水道料金は高くならざるを得ない。また、公営企業としての水道の経営は、相当苦しくなっておるという実情にあると私は認識をいたしておるわけでありまして、そこで政府といたしましては、特に厚生省は、国民年金の還元融資でありますとか、また、地方債につきましては、御承知のように、償還年限を二十五年から三十年に、五カ年間延長いたしました。また、公営企業金融公庫におきましては、十八年を二十三年に年限を延長いたしたのでございます。また、簡易水道の場合におきましては、従来、補助金が一律に四分の一でありましたものを、財政事情を勘案して三分の一の補助まで出せるように、昭和四十一年度においては考えていこう、こういう対策を立てておりますのも、冒頭に申し上げましたように、上水道というのは、地域住民にとっては相当公共性の高いものであるという認識の上に立ってやっておるのでございます。
  194. 西宮弘

    西宮分科員 非常に短い時間でありますので、続いて問題点を指摘をして企画庁にお尋ねをいたしますが、私、きょうここで水道の問題と申し上げたが、特に申し上げたいのはアロケーションの問題なんです。したがって、問題をその一点にしぼってお尋ねをしたいのです。  企画庁はいまアロケーションの問題について、委員会をつくって作業をしているということを聞いておりますけれども、その作業の日程なりあるいは基本的な考え方はどういう考え方で臨んでおるのか、できるだけ簡明にひとつお願いいたします。
  195. 池田迪弘

    ○池田説明員 特定多目的ダムにかかります各事業の費用負担は、特定多目的ダム法、電源開発促進法に基づく身がわり妥当支出法により算定することになってきております。現行アロケーション方式によりますれば、便益は昭和二十九年時の係数を用いております。したがって、これ以後の物価の変動、社会、経済情勢の変化に伴って各事業の経済評価の基準が違ってきております。したがって、現状にそぐわない点も生じております。また、上水、工水部門両部門につきましても、昭和二十九年当時総合開発事業に占めるウエートがわりあい低かったという関係もありまして、その当時便益算定方式は各省申し合わせ事項としてきめられなかったのであります。このため、事実上、上水、工水両部門ともプロジェクトごとに各省が協議をいたしまして、慣行的な方法によって運用してまいりましたが、先ほど申し上げましたように、その後の物価の変動等に伴いまして運用が困難となっており、早急にこれらの便益算定の方法を固める必要を生じてきたのであります。  以上のように、現行アロケーション方式にはいろいろ問題点が出てまいりましたので、これらの点を検討すべき時期に参っておると考えまして、昨年末、関係行政機関でアロケーション問題協議会を設置いたしまして、今年末を目途に現在改定作業を進めておる段階でございます。これは、各事業が実情に沿って促進されるよう努力したいと思っております。  なお、協議会におきます協議事項でございますが、いままでに一応取り上げましたのは、現行アロケーション方式の問題点の整理、それから各事業部門の実態調査、これは採択基準だとかあるいは資金調達だとかあるいはまた料金制度だとかいうふうな点を実態を調査したのでございます。今後はアロケーション方式の検討に入るわけでございます。先ほど申し上げましたように、大体、今年末を目標にして一つの新しい様式を出したい、こういうように考えております。
  196. 西宮弘

    西宮分科員 端的に伺いますが、いわゆる原水二円で計算するという方式は企画庁の方針ですか。
  197. 池田迪弘

    ○池田説明員 これは、先ほど申し上げましたように、一応工業用水と工水のほうは各事業のアロケーションの各省の申し合わせというものに二十九年当時上がっていなかったということで、その後は、実情にと申しますか、その時期のいわゆる料金なり、あるいはまた基準料金のいまの二円でございますが、そういうふうなものを使って基準にする、また、身がわり建設費の安いものは、それを取り上げていくというふうなことでやっております。
  198. 西宮弘

    西宮分科員 時間がありませんので、端的にお答え願いたいと思うのでありますが、それでは、建設省にお尋ねしますが、いわゆる原水二円というのは、最近の実績は、全部原水二円ということになっていますか。
  199. 青木義雄

    ○青木説明員 そのようになっております。
  200. 西宮弘

    西宮分科員 原水二円という根拠は、今日までの実績、たとえば大倉とか愛知用水とか、あるいは矢木沢、下久保、豊川その他等々、そういう実績からはじいたのだということを私は聞いておりますが、このいわゆる原水二円というのは、原水、つまりダムにおける値段、だと思うのだけれども、それをつかまえておるわけですか。あるいは、別な言い方をすれば、たとえば、途中の専用施設の費用とか、そんなものを計算に入れての考え方ですか。
  201. 青木義雄

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  二円といたしましたのは、大体先ほど申し上げましたように、三十五年に全国原水費調査をいたしまして、企画庁が中心となってほぼ平均に近いものということで採用したというふうに了解いたしております。ただいまお尋ねの点でございますけれども、水道の場合、先生の言われますように解釈せざるを得ぬのじゃないかと考えております。
  202. 西宮弘

    西宮分科員 私の言ったようにというのは、途中の専用施設は計算に入っていないと見るべきですか。  ついでにもう一つお尋ねしたいと思うのですが、いわゆる二円というのは、上水についてだけですか。たとえば、工業用水なり発電用水なり、その他あらゆるものが二円だということですか。
  203. 青木義雄

    ○青木説明員 水道の場合は入っておらないというふうに解釈しております。工業用水等の場合は、末端価格で計算いたしております。
  204. 西宮弘

    西宮分科員 つまり、こういうことですね。いわゆる原水二円という計算は、上水についてだけの原価計算あるいは実績の数値だということと、途中の専用施設などは含まれておらない、こういうことですね。もしそうだとすれば、私は両方とも問題があると思うけれども、上水についてだけ計算をして、工業用水等は末端の価格から逆算してくる、こういうことだといういまの御説明であったわけですが、そうだとすると、非常にいろいろ不公平な問題が出てくるのではないかと思います。  それから、専用施設の計算をしておらないということだと、専用施設はそれぞれみな違うわけですね。だから、そういうみな違うものがオミットされてしまうという点に非常な不合理が出てくると思うのですけれども、その前に、これは一般的な問題ですからぜひ明らかにしておきたいと思うのですが、少なくとも、山元でダムにたまっておる水そのものは、何に使おうとも値段は同じであるべきだ。発電に使おうが、何に使おうが、値段は同じだというふうに理解をすべきだと思うのですが、その点いかがですか。
  205. 青木義雄

    ○青木説明員 ダムにたまった水がすべて同じ値段であるべきだという考え方は、必ずしも私どもはとっておりません。発電の場合、工業用水の場合、あるいは上水道の場合、それぞれ同じ水ではございますけれども、水の価格というものは必ずしも同一でなければならないとは考えておりません。
  206. 西宮弘

    西宮分科員 発電の場合は例外としてもいいと思います。たとえば、水位の高さの問題があるから発電は別問題としてもいい。けれども、工業用水と上水の場合は区別があるはずはないと思う。少なくとも理論的にですよ。ただ、工業用水は末端価格で押えておる、そういうことで、いろいろ政策的にあとからそれを修正していくというようなことは、これは当然あってしかるべきだと思います。けれども、少なくとも山元では、山元のダムにたまった水そのものは、発電は別にしますが、少なくとも工業用水と上水は全く同じだというのが理論的だと思うのですが、どうですか。
  207. 青木義雄

    ○青木説明員 水道と工業用水の場合につきまして、工業用水は末端価格で押えているということで、それにつきまして、いろいろな費用の点が、水道の場合と必ずしも一緒じゃないということで、したがいまして、値段はもとのところで一緒であるべきだという論は、私は必ずしも一緒じゃないと思うのです。
  208. 西宮弘

    西宮分科員 それはたいへんに違うと思うのです。私はそういうことを聞いているのじゃない。途中でかかる金があったら、末端価格で押えているからそういう問題も起こってくるけれども、山のダムにたまっている水そのものは、いわゆる水に違いがあるじゃなし、そこには何の区別もないじゃないですか。それが少なくとも理論的じゃないですか。それがわからないのじゃ問題にならぬと思うのだ。
  209. 青木義雄

    ○青木説明員 たまった水は、おっしゃいますように同じ水でございます。したがいまして、それ自体としては、水道に利用しようと、工業用水に使おうと、使い方はあるわけでございますが、しかし、それをどう引くか、あるいはどういうふうな使い方をするかということによって値段が必ずしも一緒でないというふうに考えますので、それが水道の場合であろうと工業用水の場合であろうと、同じでなければならないということには必ずしもならぬじゃないか思います。
  210. 西宮弘

    西宮分科員 そんな理屈はないでしょう。あとでどう使うかは別問題ですよ。使った結果が高過ぎる、それじゃ政策的に安くする、こういうことを私はいま言っているのじゃない。それは大いにやってしかるべきだと思う。しかし、山にたまっておる水そのものは、これから何に使おうと、ただ発電は、これは水位が問題になるから別問題としていいですけれども、工業用水、上水との間に変わりがあるはずがないじゃないか、もう一ぺん確認しておきます。
  211. 青木義雄

    ○青木説明員 そのたまった水が水道とかあるいは工業用水に使われることは別として、水そのものは同一性があるということは、おっしゃるとおりだと私は思います。
  212. 西宮弘

    西宮分科員 全くそのとおりだと思うのであります。したがって、その点大事な問題でありますから、通産省の御意見も伺っておきたいと思うのですけれども、ただ、お断わりをしておるように、私は、たとえば工業用水等はいろいろ政策的な問題がありますから、あとでそれをいろいろ修正をしたり、そういうことがいけないというようなことを言っておるのじゃ絶対にない。ただ、基本的な認識として、山にたまった水そのものは工業用水でも同じであるべきであるということが当然で、これは少なくとも常識的であると思う。それならばわれわれしろうとでも全くわかるのだが、その点だけ一応確認をしておきたいと思うので、通産省の御意見を聞きます。
  213. 中川理一郎

    ○中川説明員 私どもは、他の利水面の状況はよく存じておりませんので、あるいは間違いがあるかもしれませんが、上工水、農業用水等、いろいろあると思いますが、私ども工業用水を考えております場合には、ある地域における工業用水というものは、水を引っぱった場合どれくらいの価値のあるものかということを一つの目安にしているわけでありまして、これは地盤沈下の場合でございましても、地域開発の場合でございましても、どれくらいの料金なら水道を用意するに値するかということを考えておるわけでございます。そこで、多目的ダムのような治水、利水、総合してなさる工事に対しまして参加いたしますときには、はたして私どもの考えている料金基準で、国庫補助も含めましてでございますけれども、それで参加するに値するかどうかということを考えておるわけでございますので、もとの費用が幾らであるということだけできまるのではないんじゃないか。ただ、上水の場合は、おそらく末端での最終価格について統一的な基準をお持ちになっていないから、そこのところがもとへ戻るよりしようがないという考え方になっているんじゃなかろうがと思うわけです。その辺が違いじゃなかろうかと考えております。
  214. 西宮弘

    西宮分科員 参加に値するかどうかという問題は、いわゆる妥当投資額を計算する場合の問題だと思います。私が聞いているのは、それではなしに、少なくともダムにたまっている水そのものは、これから先何に使おうと、これに区別があるべきじゃない、こういうことを言っているので、そこだけ簡単に答えてください。それだけ答えればあとはいいですから。
  215. 中川理一郎

    ○中川説明員 ダムにたまっている水とおっしゃいましたけれども、 ダムに水をためるのは上工水がそれに参加するかしないか、それがきまらなければ、ダムに水はたまらぬじゃないかと思います。
  216. 西宮弘

    西宮分科員 全く別のことを言っている。いわゆる妥当投資額の計算のしかた考えている。そのあとのこと、いわゆる末端価格が押えられるという問題に論及することをおそれてそういう御答弁をされているのだと思うのです。それでは、それ以上追及いたしません。  さっきの建設省の答弁で、途中の専用施設は計算してないのだということだけれども、そういうことになると、これは非常な不公平が出てくるのは当然だと思うんです。専用施設に何ぼかかるかということが非常に重大な問題なんだけれども、原水二円というふうに押えてしまうと、そういうものは計算外だということになると、これは非常に重大問題だ。つまり、一方は専用施設を完全に見ていく、そして専用施設にたっぷり経費を計算するということになれば、それを分け合う場合には、そのしわ寄せが当然上水にくるということは避け得ないと思う。それは非常に不合理じゃないですか。
  217. 青木義雄

    ○青木説明員 水道に対する考え方でございますが、水源から施設をいたしまして引く場合もございましょうし、あるいは、比較的近いところで地下水を取るという場合もございましょうし、平均的に山元の場合の全国の原水費を調査いたしまして、そうして、おおむね二円というふうに一応きめておるわけでございます。したがいまして、工業用水の場合と一律に比較もできないのではないかというふうに考えております。
  218. 西宮弘

    西宮分科員 私は、別に工業用水と比較しろということは質問していない。ただ、そのいわゆる途中の専用施設費ですね。それを見てないで計算するということになると、その二円というのは、さっき私が申し上げたように、五つ、六つのダムを平均して、そこから出てきた数字だと思うのです。だから、一方は途中の専用施設の費用を計算する、他方は計算しない。そういうことになれば、それは非常におかしいと思う。その原水二円が、途中の専用施設も見てずっと計算していった結果がそういう数字になったのだというのであれば、それでいいと思う。しかし、さっきの私に対する答弁ではそれは入ってないというのだから、入ってないのならば、それを一方はたっぷり差し引く、一方は全然差し引かない、こういうことでは結果が非常にアンバランスになるのはあたりまえだと思う。もう一ぺん答えてください。
  219. 青木義雄

    ○青木説明員 いま工業用水の場合との比較じゃないということでございますが、水道の料金の場合、繰り返し申し上げますように、全国の原水費を調査いたしまして、そうしておおむね平均値といいますか、そういうものを押えた、こういうふうに承知いたしておるわけでございます。
  220. 西宮弘

    西宮分科員 それは私が説明したので、何べんも何べんも繰り返しているんですよ。そんなことを聞いたのじゃないですけれども、それ以上進展しないならば、お尋ねをしたいと思うのだけれども、法の原則は、いわゆる身がわり妥当支出法というのが少なくとも原則だと思う。例外はありますよ。例外はあるけれども、それが原則だと思うけれども、これからはその原則を中心にしていくのかどうかということです。
  221. 青木義雄

    ○青木説明員 この多目的ダム法の中には、身がわり妥当支出の計算方法を基準として制定されております。ただし、特別の場合には、あるいは、この基準によることが著しく不適当であるという場合には、優先身がわり妥当支出法というふうなことで、関係官庁と協議いたしまして、別の方法をとることに定めておるのでございます。今後につきましても、一応この考え方でまいりたいと思いますけれども、先ほど企画庁からお答えがございましたように、この算出方法につきまして、現在企画庁を中心にいたしまして各省が協議をする機関がございます。したがいまして、その機関の中で十分相談いたしまして、結論が出ますれば、その方針に従っていきたいというふうに考えております。
  222. 西宮弘

    西宮分科員 今後もこれでいきたい、少なくとも原則としてはというお話には私も大いに賛成ですから、ぜひそうやっていただきたいと思う。しかし、さっき企画庁からお話があったように、非常にむずかしい問題なればこそわざわざ委員会までつくってやっているのだろうから、非常に困難であることは私も重々承知はしております。承知はしているけれども、少なくとも原則だけは明確にして、しかも、最も合理的な——完全無欠とはいえないかもしれないけれども、最も合理的な方法を案出してもらうということを特に要望しなくてはならぬと思う。そこで、一番問題になるのは、まず原則をそろえるべきだと思うのです。末端価格でいくのかあるいは原水でいくのか。これは、少なくともその点はまず原則をそろえなくちゃお話にならないと思うのです。ですから、工業用水の場合に比べると、上水道の場合はおおむね単価が三倍から四倍ぐらい違っておるわけです。そういう事実は認めませんか。
  223. 青木義雄

    ○青木説明員 個々の場合、全部当たっておりませんので、必ずしもそうだとは申せないと思いますけれども、先生のおっしゃいますような場所が皆無ではないというふうに存じております。
  224. 西宮弘

    西宮分科員 そういう差が出てくるのは非常に困ると思うのですが、これは、要するに、言うまでもなく工業用水のほうは末端価格を政策的に押えて、これはもう固定しておる、それから逆算していくのですから。それから逆の、上水のほうはそうではなしに原水の価格で押えていくのですからそういう結果が出るので、これは当然どうしても改めなければならぬと思うのです。  そこで私の意見を申し上げるならば、これはやはり工業用水が末端価格でいくならば、上水も同じように末端価格を押えて、そこからスタートすべきだと思う。ただしかし、そのいわゆる末端価格といっても、それが現実離れをした、実情を無視したそういう価格がかってにつくられておるということが現にあるわけでしょう。たとえば、私のほうに近いところに大倉ダムというダムがありますが、そこの実例などを見ると、当時収入のほうは十三円五十五銭であったものが十七円五十銭に見られておる。あるいは、経費のほうは七円かかっておるのが六円にしか見られていない。工業用水のほうは、さっき言ったように、末端で四円と押えておるから、経費の二十八銭四厘を引いて三円七十一銭六厘という計算で押えている。これはしかも大倉だけではなしに、北九州とか福岡とか、そういうところに同じような実例があるようであります。こういう結果が生まれてくるので、そういうことであっては絶対にいけないと思うのです。  以上の点でも明らかになったように、たとえば、工業用水は末端の価格を押えておく、あるいは農業用水は歴史的、沿革的な事情があって、優先的に扱うということかあろうし、あるいは発電——いまの大倉ダムの実例などを見ると、発電などは途中から強引に割り込んできたわけです。それで非常な不合理を来たしている。そうなると、結局、結果として一番抵抗力の弱い上水道にしわ寄せになっている、そういう印象をぬぐい切れないと思うのです。  そこで、時間がありませんから、最後に大臣に所見をお尋ねしたいと思いますが、いまのようにこの料金の算定は全く不合理な、あるいは不公平な原則によっているわけです。そうして、それがまずおのおのの割り当てをきめて、そのきめた結果、いわばそこから逆算をしてそれぞれの負担額をきめる、こういうことになっていることは現実だと思うのです。したがって、水道にしわ寄せしてきている、上水道に大きくしわ寄せしてきているということになるのだけれども、要するに、水道の場合は、料金を上げさえすればよろしい、そういう考え方かあるから——あるいは工業用水は四円とか五円というようにはっきり国の大方針がきまっている、ところが、上水道はそうではないから、もし足りなければ料金を上げればいい、そういう安易な気持ちからきているのではないかと思う。私は、そういう点は逆なんで、工業用水ももちろん重大ですから、決してそれを軽視はいたしませんが、これは、いわばこれを元手にしてこれからもうけていこうという一つの手段ですが、上水はいわばこれは生命なり生活なりのささえになるべきものです。そういう点を考えると、その点に非常に不合理があるのではないか。工業用水の場合には非常にばく大な補助金が出されておって、その始まった昭和三十一年当時に比べると、補助金で四十九倍、起債は四十六倍というような非常な膨脹を示しております。これに比べていまの上水道の場合は——自治省の御意見を伺う、時間がなくなってしまいましたが、公営企業がきわめてピンチに立っているということは常識化している。さらに、工業用水道の基本的性格について、通産省は「工業用水の基本的性格」という意見を発表して、きわめて強固な意見を述べているわけです。私は、これはこれとしてけっこうだと思うのだけれども、少なくとも、生命をささえる上水道についても、厚生省のこういう態度が当然あってほしいと思う。ぜひその点について、厚生省もこれに負けないくらいの重大な決意を持ってこれに対処してもらいたいということをお願いしたいと思います。
  225. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 多目的ダムのアロケーションの問題につきましては、ただいまいろいろ御審議をいただきましたように問題点があると思います。政府におきましても、不合理は是正しなければならないわけでありまして、アロケ−ション協議会を設置いたしまして、関係各省間でこれを目下鋭意検討中でございます。ただいまの御発言等も十分参考にいたしまして、今後検討していきたいと思います。  さらに、住民の生活を守る一つの大きな問題でございますので、厚生省といたしましても、ただいま公害審議会の水道部会で上水道のあり方につきまして検討を進めておるところであります。その答申を待ちまして、上水道に対する厚生省としての施策を今後強化前進をさしたい、かように考えております。
  226. 西宮弘

    西宮分科員 先ほどの企画庁のお話だと、ことしの年末を期して作業を進めているということでありますが、年末を待たずに、現実に問題になっている点がいろいろあるわけです。したがって、いまここで論議をされたようなたくさんの問題があるわけですから、それを整理をされて、あくまでも合理的な、あるいは公平な分担ができるような、そういう方法を、当面の問題になっておるケースにも適用して、具体的な解決をしてもらいたい。年末まで待っておったのでは間に合わない問題が現にあるわけなんですから、ぜひそういうふうにしてもらいたいと思う。水道は今日全国民の七〇%にまで普及をしているということでありまするので、そういうことになると、いま大臣が言われたようなまことに重大な問題だと思うので、私は、ぜひともそういう点を十分に認識をされて、根本的な問題の解決に当たっていただきたいということをお願いをいたしておきたい。私は、人の一人として、この問題には重大な関心を持って、今後も厳重な監視を続けていきたいということを考えておるわけです。ぜひそういう点は十分考えていただきたいと思います。
  227. 大橋武夫

  228. 河野正

    河野(正)分科員 私は、きょうは現在人道的な問題でもございますし、また、社会的な問題でもある、いわゆる輸血血液の問題について、しぼってお尋ねを申し上げてみたいと思います。  御承知のように、輸血血液の問題は、一つには、血液量が非常に不足をいたしておるということ、そからもう一つは、黄色い血といわれておりますけれども、良質の血液を求めることが非常にむずかしいという、この二つの点が問題となっているというふうに考えます。ところが、医術の進歩に伴いまして、最近は外科手術も非常に発達をいたしてまいりました。それからまた、交通量も非常に激しくなりましたので、したがって、交通事故、そういった災害というものも非常に増加をいたしてまいったわけです。そういうことから、現状というものは血液の需要量がどんどん増加をしてきた、こういうことに相なろうかと思います。  そこで、国の方針としては、そういった情勢に応ずるような良質の輸血血液というものを早急に、しかも大量に確保しなければならぬ、これが、何と申し上げましても、この血液問題を論ずる場合にはきわめて重要な点でございます。ところが、実際の実情を見ておりますると、この血液の供給量の大部分を占めるものは保存血液である。そうして新鮮な血液というものは、多少はふえつつありますけれども、むしろいまの需要に応じて、そのテンポに応じて増加するという傾向にない。私、いろいろ資料を見てまいりましたら、厚生白書も若干古いので——昨年若干この輸血者等に対する予算の投入がございましたから、多少厚生白書も進歩しておると思いますけれども、しかし、厚生白書の資料を見てまいりますと、保存血液の製造量は、昭和二十六年を一として——これは血液銀行ができましたのが昭和二十六年ですから、そこで昭和二十六年を一として、昭和三十五年は二七九、昭和三十六年は三一四、昭和三十七年は三三九、こういうように、実は保存血液だけが、ずっと急速に伸びてきた。ところが、保存血液にはいろいろ起こっておりますような弊害があるわけです。そこで、この黄色い血の被害というものは、これは御承知のように、血清肝炎、非常に恐ろしい病気でございますが、こういう問題等も起こってまいっておるのでございますので、やはり新鮮血が大量に確保されることが望ましいことは当然だと思うのです。ところが、なるほど血の確保量というものは少しずつふえてまいりました。しかし、いま申し上げまするように、必ずしもいい傾向ではない。これが今日の厚生白書の数字の示す実態だと思う。こういう状況では、いま社会問題化いたしておりますし、人道的な問題といわれておりまする血液問題の解決というものはなかなかほど遠い問題ではないか、こういうことを私どもは心配をいたすわけでございます。そういうことで、今日の輸血血液の実情に対してどのようにお考えになっておりますのか、この点、大臣からひとつお答えをいただきたい。
  229. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 輸血用の血液の確保が、最近需要の増大に伴いまして非常に大きな問題になってきております。特に、血清肝炎だとかあるいは黄色い血の問題が大きな社会問題になってまいりましてから、政府といたしましても、血液問題と積極的に取り組まなければならないということで、献血運動を強力に推進をするという方針のもとに、献血者の増強でありますとか、あるいは血液銀行の設置でありますとか、そういう面で努力を重ねておるのであります。昭和三十八年当時、おおむね献血によるものは七%余りでございましたが、昭和四十年には献血によるものが二七%、預血によるものが一三%、こういうぐあいに、逐次成績をおさめておるのでございます。私は、今後ますます献血運動を国民の皆さんの御理解のもとに強力に進めて、少なくとも、早く半分以上を新鮮な献血によって確保したいということで努力をいたしておるわけであります。  さらに一面、そういうぐあいに国内における血液が不足をいたしておりまするのに、血液からとりましたところの乾燥血漿というようなものが国外に輸出され、流出するというようなことは、これは看過できない事態でありますので、関係業者に警告を数次にわたってやってまいったのでありますが、どうしても十分な効果が上がらなかったのでございますので、先般通産省と協議をいたしまして、そして、これを輸出をする際には許可制にする、事実、私どもは、先ほど申し上げましたように、国内で血液が足らないということでございますので、許可はしない。実質的に輸出を禁止するという措置を講じた次第でございます。  なお、具体的な数字その他につきましては、政府委員のほうから補足説明を申し上げたいと存じます。
  230. 河野正

    河野(正)分科員 逐次、献血あるいはまた預血によって新しい新鮮血の確保の状況というものがよくなっておるというふうな御意見であるけれども、もともと、非常に出発がおくれておるというのが日本の現状でございます。そこで、私どもが一番心配いたしますのは、いまのような対策だけで需要量に応ずるというのは、これは困難でございますが、それはさておいて考えてまいりましても、やはり、さらにわれわれは積極的な——それはもう一度後ほど触れますが、対策を立てなければ、それは一面においては血清肝炎だとか、一面においては、輸血する血液がないためにあたらとうとい生命を失わなければならぬという、こういう人道的な、社会的な問題がなかなか解消する状態にはないと思うわけです。そこで、いま大臣から、乾燥血漿については輸出を禁止する、こういう御発言、これは私どもも、大体昭和二十五年ごろから朝鮮に輸出され、あるいは最近ではベトナムあるいは香港、あるいはまたサウジアラビア、こういうふうにどんどん輸出されるということでございますから、したがって、そういう輸出を禁止されることは、これは当然のことだと思うのです。そこで、私は、これは後ほど触れようと思ったわけですけれども、そういう法の規制をやるならば、当面、やはり完全に禁止しなければならぬ。ところが、今度の場合は、要するに、政令の改正によりまして、血液製剤を輸出する場合は通産大臣の承認を受けなければならぬ、こういう一項が捜入されたわけです。そこで、私は、これは人道上の問題でもございますから、日本の絶対量というものを確保されて、さらに輸出し得るという状態がくれば別ですけれども、現在の時点というのは、なかなかそういう状態がくるということは考えられない。それにもかかわらず、この政令の改正というものは、通産大臣の許可を受ければ輸出することができる。私は、こういう姿勢には問題があると思うのです。それは少なくとも、将来の問題は別として、現時点においては、完全に輸出を禁止するということが望ましかったというふうに私は考えるわけでございますが、その点いかがでございますか。
  231. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 輸出を押えるというやり方にはいろいろあると思います。河野さんの言われるように一刀両断で禁止をするという方法もございますが、また、今回のように、通産大臣の許可を要するようにいたしまして、通産大臣は、こういう医薬品等につきましては厚生大臣にすべて協議をすることに相なっております。そこで、厚生省としては、現在、国内においても血液が不足を告げておるというような状況等からこれを禁止する、実質上輸出はさせない、こういうたてまえを堅持いたしておりますから、河野さんのおっしゃるように、やり方につきましては、形式はちょっと違いますけれども、実質的には輸出を禁止する、こういうことでございます。
  232. 河野正

    河野(正)分科員 その辺が私はわからぬのです。実質的に禁示するなら、なぜ政令の改正の中で実質的に禁止するような改正が行なわれないのか、何かそこには、事と次第によっては輸出することができるという道を残すのは、何か裏にはいろいろ事情があるのではなかろうかという疑惑をわれわれは残念ながら持たざるを得ない。実質的に禁止するということならば、一刀両断、ぴしっと禁止して、世間にいろいろな疑惑があるわけですから、そういう疑惑を解消することが厚生大臣の任務じゃないか、こういうように考えるわけです。
  233. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは、輸出貿易管理令に基づいて行なう政令の改正でございます。そういうようなことで、実質的に輸出を禁止いたします場合におきましても、そういう形で従来からやっておるのでございまして、決して御心配なさるような、何らかの意図やそういうことはございません。
  234. 河野正

    河野(正)分科員 絶対に輸出させぬということなら、絶対にさせぬのだというように管理令の条項を改められることが、私は、一番適切な方法だと思う。ですけれども、どうもいろいろ——管理令は通産大臣かどうか知りませんけれども大臣も御遠慮なさっておるようでございますし、他に問題もございますから、これは重ねて追及いたしません。  御承知のように、先ほども申し述べましたように、わが国の血液事業というものは、これは売血制度を基盤としてだんだん発達しているという歴史的経過があるわけであります。そういうことで今日いろいろな弊害が起こってまいったわけです。これは、売りにいけば、すぐ金になるということでいろいろな弊害が起こっているわけですが、いずれにしても、今日までの日本の血液事業というものは、いま私が御指摘申し上げましたように、売血制度を基盤として発達している、こういう歴史的な経過がある。そういう過程を踏んでまいりましたために、最近いろいろな弊害の一つとして、たとえば、採血適格率、それは比重が非常に低くなって、血が薄い、この傾向というものがだんだん強まっている。たとえば、昭和三十一年が五六%、三十二年が五七%、飛びまして三十六年においては四九%、三十七年は四九%、こういうように適格率がぐっと下がってきた。売血はくるけれども、薄い血ばかりが多くなった。一つは、なかなか新鮮血が集まらぬ。一つは、売血はくるけれども、この血が薄くてものにならぬ。このどっちもの弊害ができておる。そういう意味で、私は、今日の供血対策、これは一つの壁にぶつかっているというふうに考えるわけです。その壁を破る方策として厚生省はどういうことをお考えになっておるか、その点について御意見を伺いたいと思います。
  235. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは専門家の河野さんにもいろいろ御意見を伺いたいと思っておりますが、献血や預血の運動を推進いたしますと同時に、実は新たに昭和四十一年度の予算で血液型の登録に対しまして助成をするという措置を講じようといたしておるのであります。私は、これを地域及び職域の組織に血液型の登録をやってもらう、これを拡大していくということによりまして、職域等におきまして、けがをした、あるいは大きな手術をするというような場合に、その登録された血液型によって身近な人々が献血をするというようなことは、きわめて有効な方法である、かように考えておるわけです。今後この組織を全国的にひとつつくっていきたい。  それからもう一つは、いま河野さんからお話がありましたが、血液がだんだん薄くなって、適格性がなくなるというようなお話がございましたが、また一面、いろいろな健康の問題も考えまして、売血の際には、月一ぺん二〇〇cc限度に採血を許す、こういうようなぐあいに改善をすることにいたしたのでございます。今後は一そう献血等のPRを大いに進めて、また受け入れ態勢を整備する、あるいは献血車等の整備をはかりまして出張採血等も積極的にやるというようなことで、血液の不足をできるだけ解消するようにつとめていきたいと思います。
  236. 河野正

    河野(正)分科員 私ども専門的な立場から見ておりますと、どうも役所でやられることは役所仕事で、ほんとうに血液問題の解決ができるというようなお考えでやっているのかという点が多々ございます。私は、そういう意味で建設的にいろいろ意見を申し上げたいと思うのですが、たとえば、いま大臣からPRのお話が出ました。知識の普及をはかって、それで国民の協力を得ていくということは確かに必要です。その際に、献血の問題、それから預血の問題これは非常に実効をあげたか、あげないかは別として、かなりPRされた。ところが、もう一つは返血の問題ですね。返血方式、これについては、私はある意味においては片手落ちになると思うのです。ですから私は、献血の問題あるいは預血の問題と並行して——これは役所だけでできぬことなんです。これこそ大学とかおもな病院の協力がなければこの返血の運動はできません。これは、いままでその仕事が役所仕事に終始してきたというところにこの返血の問題が非常に片手落ちになってきた、こういういきさつがあると思うのです。私は、預血、それから献血、それと返血ですね、これは三つの柱として今後進めなければ、これだけでいいとは言いません。言いませんけれども、具体的な例を申し上げますというと、九大の第二外科では、この返血運動というものを非常に強力に推進しておる。たとえば、Aという人が手術をするとします。そうしてその人がよくなりますと、その人、あるいはその友人とか家族とか、そういう人がお返しをするわけですね。新鮮で良質な血液をどんどん確保できる。これは役所仕事ではできないのです。ですから私は、なるほど献血のPR、あるいは預血のPRというのは必要でありましょうが、もう一つやはり返血方式というものを強くPRしていく、私は、これが血液を確保する三つの柱にならなければならぬと思う。こういうように考えるわけですが、この返血方式というのはほとんどPRされていない。これは役所仕事ではできませんよ。これはやはり大学病院とか、主要な県立病院とか、主要なところの皆さん方の積極的な協力を得てやれば、私はかなり——これはやはり一命をとりとめてもらったという感謝の気持ちがございますから、患者あるいはその家族というものは、やはりこの際御協力申し上げるという機運がある。そういうわけで、具体的に非常に成功した例がございますから、今後はこれはやはり三つの柱として推進されることが必要だと思うのですが、この点いかがですか。
  237. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 献血、預血及び返血の問題でございますが、まことに有益な御意見でございます。私どももかねがね、ただいまやっております献血運動を推進するためにどのような有効な方策があるかということをいろいろ研究はいたしておるわけであります。その際、ただいま先生から御指摘のありましたような献血制度及び預血制度あるいは返血制度、いろいろのやり方が外国等においても従来から行なわれておるということも十分承知しております。したがいまして、そのようないろいろな制度のそれぞれの利害得失等を十分研究いたしまして、これを一定のルールに乗せてやっていくことが必要かと思います。ただ、現在のわが国で言われておりますいわゆる預血制度あるいは返血制度というものは、若干観念の混淆がございます。これはまた実際上の具体的な取り扱い方もいろいろ混乱しておるというような現状でございます。したがいまして、ただいま御指摘のございましたように、現在の献血制度のほかに預血制度あるいは返血制度というようなもの、これは正しい意味の預血制度あるいは献血制度というようなものを今後十分私どもはその実態を検討いたしまして、これを行政なり何なりの線に乗せていく、こういうことが必要じゃなかろうかと思うのであります。したがいまして、まず、とりあえず私どもは、現在行なわれております預血制度あるいは献血制度と言われておりますものを、先生御指摘のような正しい意味の預血制度なり献血制度に早く戻す、そうなった暁におきまして、献血制度に並びまして、預血制度なりあるいは返血制度というものを今後の対策の中にとり入れていくことが必要ではなかろうか、かような考え方を持っておるわけであります。したがいまして、御指摘のような御意見は、私ども十分かねがね承っておりますので、それなりに研究はいたしておるわけでありますが、現在の全国的な実情を見ますると、どうもそこらあたりが混乱をしておる、観念なり実態が混乱しておる、だからその混乱を一刻も早く正しい姿に戻すような指導をする、そういう指導をした後において、このような制度を一定のルールに乗せて活用していく、このようなことが現在考えられる方法じゃなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。
  238. 河野正

    河野(正)分科員 預血制度と返血制度というのは、おのずから性格が違いますね。預血というのは、あらかじめ預血しておいて、そうしてまた自分が必要なときにいただこうというのです。返血制度というのは、自分がとうとい一命をとりとめてもらった、そして健康になったので、この際恩返しにひとつ献血しよう、それからまた、その周囲の家族なりあるいは子弟なり、友人なり、そういうものがたいへんお世話になった、そこで感謝の気持で献血しようということでありますから、これは普通の献血とはおのずから性格が異るのです。しかも、すでに具体的にそういうことで非常に成功しておるケースがあるわけですから、私は、そういう点はすなおに受け入れて、ただそれは大学でやっておるのだからいいじゃないかというようなことでなくて、そういう成功したケースがあるならば、そういうケースをだんだん広げていく必要があるのじゃなかろうかということを申し上げておるのですから、そのようにひとつ御理解願って、なかなか血が足らないわけですから、その血の確保のために、今後さらにひとつ努力してもらいたいということにとどめます。  それからもう一つは、この良質血液の供給源を確保するためには、いま若干触れましたけれども、いろいろな方法があるわけですが、これは私もかねがね主張しておるわけでございますし、それからまた行管のほうでも勧告したということでございますけれども、血液法を制定する必要が私どもあると思うし、また、厚生大臣のほうでは、この血液法の制定についてどういうふうにお考えになっておるのか、ひとつお答えをいただきたい。
  239. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、現在採血及び供血あっせん業取締法というのがございますが、これはいま河野さんが御提案になっている血液法とは全然違う別の角度からの献血、預血、返血とか、あるいは血液型の登録であるとか、そういうようなものを中心とした法令の整備ということだと思いますが、今後私どももよく研究してみたいと思います。
  240. 河野正

    河野(正)分科員 行管でも勧告しておるわけですし、私どもも今日まで主張をしてまいりましたし、それからまた、これはおのずから問題が違いますけれども、いずれ近々国会に性病予防法の一部改正が御提案の御予定ですね。これは婚姻をするときに血液検査の結果をそれぞれ交換することを義務づけられる。私はそれも若干似かよっておると思いますけれども、たとえば、いまのあっせん業者の問題でなくて、満二十歳になりますと成人式を迎える、その際に、それぞれ成人式を迎えた健康な若人男女が献血をする。あるいはまた、交通事故は車があって起こる交通事故ですから、車がなければ交通事故は起こらぬわけで、今日のように車が非常にはんらんをして、車があるために交通事故が起こってくるわけです。そういう意味で、たとえば、運転免許を取得するとき、あるいはまた運転免許を更新するとき、そういうときに献血なり預血をやる、そういうことを内容としてやればかなりの血液が確保される。そういう意味で、私は血液法の制定が必要じゃなかろうかということを考えました。また、今度厚生大臣も近近性病予防法の一部改正を提案なさるわけですが、その中にもやや似たことが提案されておるわけです。ですから私は、その意味での確信を非常に持ったわけです。そういう意味で、この血液法の制定というものがぜひ必要な問題ではなかろうか、こういう意味でお尋ねをしておるわけでございますので、その点に対する見解をもう一回お聞かせいただきたい。
  241. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在、成人式にあたって献血車を配置いたしまして、そうして、成人式に臨む若い人たちに進んで御協力を願う、こういうようなことを具体的にやっております。そういうようなことを制度的に、法制的に、いろいろな機会があると思いますので、そういう点もよく研究してみたいと思います。
  242. 河野正

    河野(正)分科員 その研究ということでなくて、これはきわめて新鮮な血液を確保するためには最もよき方法だろうと私は思うのです。研究しなければいい方法かどうかわからぬ、そういう意味でございましょうか。
  243. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の性病予防法の改正にあたりましても、法制的にもいろいろ各方面から意見がありました。しかし、現在の性病の蔓延傾向に対処いたしまして、ああいう婚姻の際の血液の検査、これを義務づけるということに踏み切ったわけでございますが、この献血の問題をそういうふうに義務づけることができるか、あるいは勧奨規定にするか、また成人式の際にやるか、これは徴兵検査等の連想等もありまして、やはりいろいろなことを慎重に考慮する必要があると思いますので、御趣旨は私十分了解しておるつもりでありますので、前向きで検討を進めたいと思います。
  244. 河野正

    河野(正)分科員 時間もございませんから、だんだんはしょって結論を急ぎたいと思いますが、先ほど売血の問題から血清肝炎の問題に触れてまいったわけであります。ところが、現在、大体十秒間に二百グラムの輸血が行なわれておる、こういう実情です。しかも、極端に申し上げますと、その中の五〇%が大なり小なり血清肝炎を起こすケースになっておる、こういうことがいわれておるわけです。そこで、この血清肝炎は、御承知のとおり、大臣もお聞きになったと思いますが、非常に患者も苦しみますし、また本人も非常に苦痛を感ずる病気ですし、それからまた、ときによりますれば、この血清肝炎のためにとうとい命を失う、何のために輸血をしたかわからぬというふうな実情も出てくるわけでありますから、血清肝炎という問題は重視しなければならぬ。ところが、なぜ血清肝炎ができてくるか、起こってきたかということをたずねてまいりますと、それはやはりいまの日本の売血制度があったためにそういうような血清肝炎が起こってきた。これは、正常な血液でございますれば血清肝炎は起こらぬわけですから、いまの売血制度を認めてきたというところに血清肝炎が起こってきた理由があるわけです。そこで、この血清肝炎でいろいろ障害なり苦痛を受けたそういう患者については、国が補償の責任を負うべきではなかろうかというふうに考えるわけですが、その点どうお考えになっておりますか。これは深刻な問題でありますから、ひとつこの際御意見を承りたい。
  245. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 売血を現在直ちにやめられないというような血液事情にありまして、私どもは、献血、預血、先ほどの返血あるいはは血液型の登録等等を通じまして、一日も早くこの売血制度に依存せざるを得ない血液事情から脱却したい、こう考えておりますが、現在血清肝炎、そのために起こる罹患率は一五%程度、こういわれておるのでございます。ただ、この補償の問題につきましては、直接に政府が補償するというような形はいまのところとっておりません。医療保険による治療を進める、あるいはまた、生活保護法による医療をやるというような既存の制度を活用いたしまして、そして血清肝炎の治療を行なうということに努力をしていきたいと思います。
  246. 河野正

    河野(正)分科員 いまの答えでは私納得できない。それは、血清肝炎の発生率が、私どもは大なり小なり五〇%、大臣はいまのお話だと一五%ということだ。それは、いろいろここでやりとりいたしましても、水かけ論ですから申し上げません。ただ、私どもがちょっと納得いかぬのは、それならば、血清肝炎の防止策について国がどれだけの対策を講じておるか。これは行管が勧告しておるのですよ。ほとんど血清肝炎を防止するための研究というのは行なわれておらぬ。私は、国が売血制度を認めてきたために血清肝炎が起こったということであるとするならば、当然そういう制度を認めた国に責任があるわけだから、補償をやりなさい、こう言った。ところが大臣は、それはできぬとおっしゃる。それならば、血清肝炎を防止するところの対策というものが行なわれてきたかというと、これは行管が勧告しておるのです。私どもが言うのじゃない。行管が、何ら組織的な研究が行なわれておらない、これはいかぬと勧告しておるのです。それならば、厚生省はそれらの血清肝炎を防止するたのめ方策をなぜおとりにならぬのか、これはいかがですか。
  247. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 血清肝炎の予防対策についてでございますが、私ども、従来からいま御指摘のように、いわゆる売血による血清肝炎というものが叫ばれておりましたので、いろいろ私どもは私どもなりに検討なり、研究を進めてきたわけでございます。  やや具体的に申し上げますと、まず第一点は、私どものほうにおきまして血清肝炎の実態なり、あるいは予防法、治療法、こういうものが、まだ先生御存じのように世界的に学問の世界においてそういう点が確立していないということが実態でございます。したがいまして、そういうような実態に立脚いたしまして、私どもは従来から日本の輸血学会に研究を委託いたしまして、三十八年度以来三十九年度、四十年度、それから明年度四十一年度におきましても、この血清肝炎の研究費を計上いたしてやっております。ただ、御承知のように、なかなか学問的にも非常にむずかしい分野でございますので、早急に結論が出てまいらぬわけでございますけれども、ただ、私どもとして一番血清肝炎の予防方策として大事な点であろうと考えておりますのは、供血者のいわゆる選別方法でございます。この選別方法の実用化というものが完全に確立いたしますならば、血清肝炎の予防策は相当な効果をあげるんじゃなかろうか、こういうふうに確信しておるわけでございます。したがいまして、目下輸血学会等と相談いたしまして、この供血者のスクリーニング制度は早急に実用化の方向に持っていくように極力お願いをして、研究を急がしておる、こういう実態でございます。したがいまして、そういうようなものが学問的にやや確立されるような状態になってまいりますと、これを行政の分野に取り入れることによりまして、ただいまの血清肝炎の問題は相当な効果があがるんじゃなかろうか、こういうふうに考えている次第でございます。
  248. 河野正

    河野(正)分科員 委員長から御注意がありましたからこれでやめますけれども、そのかわり、答えは誠意あるお答えを願いたいと思うのです。  いま輸血学会等に研究委嘱をしておるというお話でございます。私も指摘いたしましたように、この血清肝炎を防止するための組織的な研究体制というものができておらぬ、これが行管の勧告です。ですから、輸血学会に委嘱しておるんだから、その結果待ちというような御見解では納得することができない。だからこれは、いままで、たとえば一酸化炭素なら一酸化炭素の中毒があった、これは熊本大学も長崎大学も久留米大学も九大も一体となって組織的に検討を進めておるわけですね。ですから、輸血学会でやったらそれでいいじゃないか、こういうことでは実効というものはあがってこない。行政運用というものは、そういう研究結果が出てきて後に受けて立つわけですから、だから、実際に政策に出す場合にはおくれてくるわけです。当面やらなければならぬ急務というものは、やはり血清肝炎の実態というものを学問的につかむということです。それに対する対策というものが非常に欠けておる。それじゃ実際の行政の運用というものは何年先のことかわからぬじゃないか。世界的に血清肝炎の正体というものはわからぬ、世界的にわからぬでも、これは日本が発見すればいいわけですからね。ですから、そういう意味において行政管理庁も勧告をしておるわけです。これは人道上の問題で、単に社会問題じゃありません。ですから、やはりそういう点は、率直に、謙虚に聞き入れて、きょうからでもおそくはございませんから、ひとつ早急にそういう体制というものを確立をされる、そういうことが望ましいと思うのです。私はきょうはすべてやかましく言っておるのじゃなくて、建設的に申し上げたのです。そういう意味で、大臣から最後に御答弁いただきたい。  委員長の御注意がありますから、これで終わります。
  249. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いろいろ血液問題につきまして示唆に富んだ御意見を伺ったわけでございますが、ただいまの最後の血清肝炎の研究の問題につきましても、さらに一そう努力をいたす所存でございます。
  250. 大橋武夫

  251. 中村重光

    中村(重)分科員 いろいろお尋ねしたいことばかりですが、時間の関係で省略しますけれども、結核患者の医療対策について伺ってみたいのです。  専門語は私よくわからないが、結核菌をまだ保持している排菌患者というのですか、これの命令入所というのをやっているようです。ところが、なかなか審査がむずかしい、入れない、そういった実情があるようです。たまたま県庁のほうに連絡をし、それからそれぞれの保健所に連絡をして調査が行なわれる、そういう場合に、同一家庭の中でかりに排菌患者が二人おりますと、二人とも入るということがなかなかできない、そういったふうなことが事実あるようでございますが、私はこれはたいへんなことだと思う。たとえ同一家庭から何名の排菌患者があろうとも、またそういったような家庭の者こそなおさら一日も早く入院をさせて、そうして完全治療というものが行なわれなければならないのじゃないかということ、それからいま一つは、いろいろ病床の関係あるいは予算関係等もあろうと思うのでございますけれども、また患者は療養したいという場合にでも退院を求められるといったような点があるように聞くのであります。この点も、私は同じ問題であると思います。また退院後のアフターケアの問題は、これは申すまでもないところであります。さらに、重症患者と軽症患者との扱いの問題も、いろいろ私伺っておりまして、問題点があるというように思うわけであります。詳しくは時間の関係がございますから申し上げません。局長さん方はこれは専門家でございますから、多く私のほうから申し上げる必要もないと思いますが、重症患者に対するいわゆる完全看護といったような面もそういうことになっておりましょうが、どうしても看護婦が不足しているということから、現実には完全看護というものが行なわれていない。さらに、看護婦が不足をいたしますと、責任を持つような婦長であるとかあるいは主任であるといったような連中は、全く二十四時間勤務です。結核療養所に勤務しながら、過労のために看護婦自体が倒れるといったような事例が非常に多い。これも私は問題であると思うわけです。さらにつけ加えて申し上げさしていただきますと、離島がこの点が非常に問題であると思います。離島の結核療養所というものは、離島が非常に不便である、さらに物価が高い、あるいは文化的にも非常におくれているということから、どうしても離島に行くことを、医師にしてもあるいは看護婦も好まない。看護婦は、これは主として離島は離島の地元からということになってまいりましょうけれども、なかなかそう簡単にはいくものではないということ等、私は結核療養者のそうした療養対策、または完全看護の立場からの措置、それから、医師、看護婦の不足ということに対してもっと積極的な対策が必要であるというように考えておるわけでございますが、それらの点に対しての対策をお聞かせ願いたい。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕
  252. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私から大筋をお話をいたしまして、あと政府委員のほうから補足説明させます。  結核対策につきましては、政府においては非常に力を入れてまいったところであり、私は、わが国の結核対策は非常な成果をおさめた、かように考えております。今後もこれに甘んじることなく、さらに結核対策は強化をしていかなければならないと考えております。  そこで、命令入所を要するような、菌を盛んに排出をしておる患者を、療養所が、ベッドが不足しておるからとか、あるいは医者や看護婦が不足であるからとか、あるいは予算の観点からとかというようなことで、当然措置入院をさせるべきものをさせないというようなことはないのでございます。むしろ、政府といたしましては、医師等と緊密に連絡をとりまして、そういう患者につきましては通報をしていただいて、そしてこれを命令入所をさせるというような措置を積極的にとっておるのでございます。また、予算の面につきまして、命令入所等のために予算の不足を告げたという場合には、これは義務費でございますから、補正予算でいつでも補正をしておるという実情でございますから、予算上のためにこれを抑制をしておるというようなことはございません。今後もますますそういう危険な患者の収容につきましては積極的にやっていきたい、かように考えておるわけであります。  それから、完全看護の問題に関連いたしまして、離島等においては医者や看護婦さんが非常に不足を告げておる、十分な看護ができないという御指摘でございますが、確かに、離島とかあるいは僻地とかというところに医師や看護婦の不足が現実にございます。私どもは、できるだけこれをカバーいたしますために、他の国立療養所、病院、あるいは大学等と連絡をとりまして、医者の配置転換なり充足なりにつきましてできるだけの努力をいたしておるところでございます。また、看護婦につきましては、看護婦は全般的に不足を告げております。結核の療養所だけでございません。大体いま現役で働いておる看護婦さんは二十万人くらいおられるのでありますが、二十三万人程度は必要である。だから、三万人ぐらいの不足がそこにございます。そこで、看護婦の養成機関に対しまして助成をいたしましたり、また、文部省の高等学校に看護学科を新たに設けてもらったり、いろいろな努力をいたしておりますし、国立の病院、療養所等では看護婦の養成にもつとめておる状況であります。全般的には、そういう対策をいたしまして、年間二万人程度の養成をいたしておりますが、結婚するとか、いろいろな事情で現役の者がやはり一万人くらいやめていくというようなことで、差し引き一万人くらいずつしか増強ができないというような状況にございますので、さらに看護婦の確保対策には努力をする必要がある、かように考えます。  また、もう一つは待遇改善、処遇がよくなければならぬのでございますから、この面につきましても、人事院の勧告を尊重いたしまして、先般の給与改定にあたりましても、一般の公務員よりもより高い上昇率をもちまして処遇の改善にも努力をいたしておるところでございます。
  253. 中村重光

    中村(重)分科員 詳細な御答弁をいただきまして了解できるわけですが、たてまえとしては、大臣お答えのとおり、完全な排菌患者であるとかいうことがわかっておって、それが入院することを拒むということは、私もないと思うのです。思うのですけれども、そこまでの過程に問題があるわけです。自宅療養しているそういう排菌患者が積極的に入院をしようというような、そういう動きをやってないという点もあるのかもしれません。それに対しては、私は患者自体にも責任があると思う。しかし、同時に医者もわかっているはずだ。そこで、いま大臣お答えのとおり、通報してあることですから、積極的に保健所等もそういった患者を入院させるというような取り組みが必要であろう。そこいらに、大臣のお答えのような形に現実問題として行っていないという点があるようです。私もこういった質問をしたり、指摘をするということは、事実を承知して申し上げておりますが、時間の関係がございますから、その点は、いま大臣の御答弁が積極的な形で実現されることを期待をしておきたいと思います。離島のほうも、百八十人くらいの患者を二人くらいの医師がおってやっているというようなこと、これではどうにもなりますまい。看護婦も大体そういうような傾向にあるようでございますから、ひとつ格段の御配慮を要請をしておきたいと思います。  次に、原爆の問題でお尋ねをしたいのですが、どうも毎年毎年原爆の問題ばかり御質問をする、こういうことになりますが、そう毎年こういった問題が取り上げられないように、抜本的な対策というものが一日も早く確立されることを私は期待をしているのですけれども、なかなか現実はそうはいかない、こういうことであります。昨日、倉成委員からも御指摘があり、質問があったと思うのですが、戦時中に、私どもは総動員法であるというふうに考えておったわけですが、昨日の質問に対しては防空法というようなことである。私自身もいわゆる警防団員というのでそれに従事をした。幸いにして、私は、命はこうしてまだ保っておりますけれども、家族はみんないかれてしまった。私自身も傷ついたというみずからの経験を持っておるわけですが、この防空監視員にいたしましても、あるいは当時警防団員にしても、その他衛生関係の救護作業に従事しておった人たち、これは命令によって出動し、作業をしておったということは間違いないわけです。それが今日まで顧みられることなく放置されておったということは、私は問題である。総動員法によるところの学徒動員あるいは挺身隊、これはそれぞれ援護措置というものが講じられておる。だけれども、総動員法によっていないんだからというようなことでこれが放置されておったとするならば、私はこれはきわめて不親切であると思います。防空法としましても、これは当然戦争遂行のためにそうした特別の法律というものがつくられた。それによって動員をして、そして、動員された防空監視員あるいは警防団員あるいはその他の従事者というものは、これは自己の意思にかかわらず、命令によってやったということは間違いないわけですから、そういったような人たち、犠牲になった人たちを、できるだけ何らかの措置を講じてこれを救済していく、そして、なくなった人の遺族というものに対して援護の措置を講じていくということが私は当然でなければならないと思います。ただ、これは総動員法によっていないんだからというようなことで放置するということは、適当ではないと思うのです。先般、援護局長、あるいは関係課長その他に対しての遺族会代表の陳情もあったのでありますが、当時の事情というものはさらに詳しくお聞きになって、そうして認識をあらためられたものであると私は思っております。上京して陳情して帰りました人たちも、非常に親切に好意的に接してくれた、今度は何とかしてもらえるのだというので、実はたいへんな勇気を持って喜んで帰ったようであります。それから相当の期間もたっておることでございますし、研究もされておることであろうと思います。だから、端的にお尋ねをいたしますが、そうした人たちに対して、遺族に対してどのような措置をおとりになるか、依然として従来のような態度で終始しようとされるのか、その点、ひとつはっきりお聞かせを願いたいと思うのです。
  254. 実本博次

    ○実本政府委員 お尋ねの点でございますが、われわれのほうでいま遺族援護法の関係で、準軍属として処遇してまいるということからこの問題を解決していくといたしますと、いまの法律のたてまえからいいまして、当然総動員法系統の命令によって動いたというふうな事実がない限りは、この法律での処遇ができないということでございます。  長崎医大の生徒さん方のなくなられたときの事情でございますが、いまわれわれのほうで長崎県当局あるいは文部省とも協力いたしまして、その総動員法系統の関係からの措置ができているかどうか、できておれば、これは処遇ができるということで、その事実の有無を中心といたしまして調査いたしておるわけでございます。いままでの調査の経過から申し上げますと、そういった事実が積極的に明らかにされていないわけでございまして、その点から申しますと、今後援護法の対象、準軍属としての取り扱いをすることが困難になっている状態でございます。ただ、なおそういった事実につきまして、何さま二十年以上前のことでございますから調査が非常にむずかしゅうございますが、そういった総動員法系統からの協力要請が出ておる事実につきまして、さらに調査を進めるようにいまいたしておるわけでございます。まだ若干事実関係につきまして究明すべき分野が残っておりますので、その点について、今後もう少し調査究明を続けてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。もしいま先生のお話のように、防空法関係のことで処遇する方法がないかというふうなお話もあったわけでございますが、昨日も倉成先生のお話がございましてお答え申し上げましたように、防空法の関係ではいまの援護法の関係とはちょっと系統が違っておりますので、これはこれでそれ自体また別途措置を講じなければならないというふうなことに相なります。ちなみに、防空法の関係では昭和十六年に勅令が出ておりまして、防空従事者扶助令というふうなものによりまして、二十一年まではそういった防空関係の活動をしておられる方で傷害を受けられた方については、傷害扶助金といったようなものが出ておる事実がございますが、二十一年にこれは廃止されておりますので、その後はそのままになっておるような状態であります。
  255. 中村重光

    中村(重)分科員 いまあなたの御答弁から伺われることは、総動員法によったかどうか、そういう調査だろうと思うのですね。私は、それはそれなりにおやりになる必要はあると思うのです。ですけれども、この問題が取り上げられたのは去年やことしのことじゃございません。約二十一年間になんなんとするその間、国会におきましてもこれは取り上げられてきた。したがって、調査というものはなされておると私は思う。いま調査を始めるんだというようなことでは、私は怠慢だと思うのですよ。今度上ってきた人たちは遺族会というものを今度つくった。従来原水協、原水爆対策協議会というものだった。ところが、原水協がどうもおかしなところに突っ走っているような感じがするというところから、純粋に原爆の問題を取り上げる、こういうことで実は遺族会というものができた。しかし、この遺族会の人たちも、新たに関係のない人たちが遺族会を組織したんじゃない。原水協の中で相当、それこそ二十年間被爆者対策のために積極的に取り組んでおった人たち、終戦直後中心になっておった人たち、それには長崎医大の教授連中ももちろん入っています。そういう人たちが従来もやっておったのだけれども、今度は遺族会という形でもってあなたのほうに陳情したわけです。だから、いまごろ調査をするんだというようなことであってはならぬと私は思う。おそらくあなたもそうおっしゃるけれども、これは総動員法によって、夏休み返上という形で救護作業に従事したものではないと思っていらっしゃるのだろうけれども、しかし、ずいぶん前からあなたのほうでも、あなたの前の局長その他関係者の人たちも取り組んでいたでしょうし、引き継ぎもあったと思う。だから、総動員法によるものでなかったとしても、当時の長崎県知事をしておった永野若松、それから当時の医大の学長角尾さんはなくなったのでございますけれども、その後医大の学長をした古屋野さん、あるいはいまの知事あるいは当該長崎市の市長その他関係の人たちが当時の状況というものをつまびらかにしている。そして、証言もこうして全部やっているのですね。さらに、当時の長崎県知事をしておった永野若松さんは東京におられる。この人たちがこういう証言をしている。「当時戦争苛烈下緊急措置令に依り、一日を早く出陣せんがため、医学の修練に夜を日につぎ夏期休暇すらも返上して登校し、而も空襲警報下学業を放擲し教職員と共に医療救護の為に待機中忽然として斯かる悲惨な犠牲となった」のだということも書いてある。その他全部の証言に、当時の状況が命令であったということが書いてあります。総動員法によると、いわゆる学徒動員であるとか、艇身隊ということになりましょう。しかし、実態は同じなんです。だから、そういう人たちを何らかの形で救済をしていくという考え方の上に立つと、おのずからあなた方の取り組みだって変わってくる。また、変わってこなければならぬと私は思います。それを、総動員法によっておるかどうかをいま調査をするのだ、こういうことであっては、私は原爆という人類共滅の、こういった国際法に許されないような兵器を使用してとうとい生命を奪い去る、四百六十七名という学生の生命を奪ったこの事実に対して、もっとあたたかい気持ちを持って取り組まれる必要があったのではないか、また、そうあるべきであると私は思います。だから、その点に対して、もっと形式的な答弁でなく、今日まで取り組んでこられたどこに問題があるのか、どうすればこういう人たちを救済できるのか、遺族を援護していくことができるのか、そういうことで取り組み、またお答えも願いたいと思うのです。
  256. 実本博次

    ○実本政府委員 先生のおっしゃいますように、この問題につきましては数年来御陳情があったわけでございますが、最初厚生省の援護局のほうに話がまいりました事情からいたしますと、夏休みを返上して勉学にいそしんでいた際に、不幸原爆を受けて四百六十何名の学生さんがなくなられた、こういう事実に対して、これは何とか、学徒動員と同じような扱いにならないかというふうに陳情されたわけでございます。その際に、ただそれだけ、夏休みを返上して勉学にいそしんでいたといった際にこの原爆を受けて死んだという事実だけでは、これはどうにも国のほうとしては手が出しようがないんで、そういった夏休みの期間にかかわらず、そういったところで待機したようなかっこうで集まっておられたのではないのだろうか。だから、そういった事実があるなら、そういうものからまず調査してかかろうじゃありませんかということで、まずその調査が始まったわけです。そういう関係でまいりますと、やはり当時の総動員法系統の関係でできておりました学徒勤労令のほうから、文部大臣または地方長官がそういった命令を出し得るという権限がございますので、永野若松さん、当時の長崎県知事のほうにも、そういうふうな事実がないかどうかを確めてみたり、文部大臣のほうからそういった命令が出ているかどうかといったようなことを調査してきたわけでございます。これにつきましては、厚生省だけでなくて、県当局あるいは文部省のほうもずいぶんこの問題について調査し続けてまいったわけでございまして、決してこの関係において同じような調査を繰り返しているということでなくて、そういった意味での調査——何とかしてこれか拾い得ないものだろうかといったふうな方向調査を続けてまいったわけでございます。現在のところでは、そういった系統のほうからの出動命令、その他そういった出動要請の事実でもないだろうかということで調査いたしておりますが、なかなか積極的にそれが明らかになる事実が出てこないものでございますので、さらにこの調査につきましてはなお二、三調査し残しているところがございますから、そういう意味で、もう少しその残された部分についての調査をやってみたい。もしこの調査によってどうしてもそういった系統の措置ができてなかったということになりますれば、また、昨日も鈴木大臣から倉成先生の御質問に対して御答弁がありましたように、その段階においてこういった人の処遇について考えてみたい、こういうふうな所存でおるわけでございます。
  257. 中村重光

    中村(重)分科員 いまのは医大の学生だけのことですが、先ほど触れました防空監視員あるいは警防団員等、その他出動しておった人たち、これに対してはどういうことなんですか。これはよろしいでしょう。
  258. 実本博次

    ○実本政府委員 防空法の関係で活躍されました旧警防団令によります警防団員あるいは防空監視所といったような人たちについての処遇でございますが、これは、先ほど申し上げましたように、一応旧防空従事者扶助令というものによりまして障害扶助金だけは処遇されておるわけでございますが、その他の関係につきましては、二十一年からとだえております。そういった人たちについて、やはり援護法におきます学徒動員と同じような実態にあったものについて、形式的にはひっかからないんだが、実際上のそういった処遇をするかどうかというふうな問題につきましては、もう少し慎重に検討いたしまして、その対策を考えていきたいと考えておる次第でございます。
  259. 中村重光

    中村(重)分科員 先ほど申し上げましたように、この遺族会の代表が上ってきました当時、金子代議士あるいは田口長治郎代議士、倉成代議士、私、その他の長崎県の代議士は一緒に実はあなた方と話をしたい、こういうことでしたが、党大会その他いろいろな関係であなたのほうには田口代議士から電話連絡をして、そして遺族会代表は行った。ところが、あなたがたいへん親切に、何とかしてやらなければならない、前向きで取り組むんだというので、親切に応待をして接しられたわけですね。それで、もう非常に喜んだ。二十一年間さんざん苦労してきたけれども、いま初めてほんとうに政府があたたかくこの問題に取り組んでくれるということがわかった、今度の上京はいままでの上京の中で一番収穫があったといって、涙を流して喜んで帰っていっております。だから、いまのあなたのお答えの中からも、若干抽象的な答弁というものもありますが、こういった委員会等の席上でございますので、ある程度抽象的にならざるを得ないだろうと、私はその点は善意に理解をいたしておりますけれども、しかし、実際に取り組むときは、いまのあなたの最後の結びとして何とかしたいというようなお答えがあった点を十分生かして、そして、形式にとらわれることなく、実態をつかんでもらわなければならぬと思います。総動員法にはよっていなかったにしても、先ほど触れられましたように、戦争遂行のために個人の意思というものは無視されて、これに引き出されて、そのために、傷害ではなくて、生命を奪われてしまっている人たちだから、その遺族に対しては何とかしてやらなければならない、援護法の中でこれを救済していくことでなければならぬと私は思う。だから、そういうことで取り組んでもらいたいということを強く要請をいたしておきます。  そこで、大臣にひとつ申し上げたいことは、実は、一昨日文部大臣にも私はこのことで医大の学生の問題については触れましたが、総動員法がどうあろうとも、実態をつかんで、何とかこれを善処したい。ことばは善処ということばではなくて、もっと積極的な前向きの答弁でありました。あなたとその点話し合いをやって、何とかこれを措置するようにしたいという答弁でございましたが、何といっても、厚生大臣が担当大臣でございますから、あなたのほうでこれを何とかしなければならぬ、こういうことで取り組みをしてもらいさえするならば、私はこの問題は解決すると思います。だから、ひとつこの際、あなたの考え方を率直にお聞かせを願いたいと思います。
  260. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 援護局長からるるお話を申し上げたことでもおわかりになろうと思うのでありますが、厚生省といたしましても、何とかこの問題はしてあげなければならない、こういう気持ちでいろいろ努力しておることは、御理解ができたと思います。これを、言を左右にして逃げを打っていることでなしに、何とかひっかかりになるようなことでもあれば、そういうようなことを十分調査をして、そして、そこに理由づけを求めて、何とかこれに援護の手を差し伸べるようにしたい、こういう気持ちでやっておりますことは、ひとつ御了承を賜わりたい、こう思うわけであります。ただ、いまのところ遺族援護法というあの法律のたてまえからまいりますと、なかなかむずかしい事情にありますことは、もうすでに御承知のことだと思います。しかし、適用する法律はいずれであろうと、何とかこの問題は処理したいという気持ちを私も持っております。今後そういう気持ちでこの問題と取り組んでいきたい、こう考えております。
  261. 中村重光

    中村(重)分科員 時間がございませんから先に進めさしていただきますが、この被爆者の実態調査について伺いたいと思います。  時間がありませんから私のほうから申し上げますが、この実態調査は、基本調査、生活調査、健康調査をおやりになったわけですね。ここで死亡調査をどうしておやりにならないか、これは問題だと思います。国会の中で援護強化に関する決議というものが衆参両院ともなされていますが、私どもの考え方は、医療法だけではだめなんだから、援護法を制定してもらわなければならない。だから、全会一致でやる決議でございますから、援護法の制定ということまでは、これは与野党の中で一致しなかったが、援護を強化する、被爆者というよりも被害者——原爆の被害者の援護を強化するということでもって妥協ができて、あの決議というものになった。特に「被爆」を「被害」としたということは、遺族ということを念頭に置いて、生活保障等も念頭に置いてああいった決議ということになっておるのでございますから、どうも死亡調査というものがなされなければ、この援護を強化するというための基礎的な調査ができないと私は思う。単に生存している被爆者たち調査あるいは健康の調査、それからそういった人たちの生活を調査する、それから基本的な調査をする——最近は抜き取り調査もおやりになるというように、非常に前向きの形はあるようでございますけれども、やはり死亡調査というものが私は一番根本でなければならぬと思う。それをどうしておやりにならないか。大体、今度の調査というものを集約して、これで終わりだというふうに片づけようとお考えになっておるのか、そうではなくて、この調査を契機として、さらに被爆者対策を強力に進めようという考え方でお取り組みになったのか、まずその点を伺っておきたいと思います。
  262. 中原龍之助

    ○中原政府委員 現在、先生のおっしゃるとおり、実態調査については一部のものは終了しておりますけれども、一部のものは調査中でございます。この調査につきましては、お説のとおり、現在生存しておる者についていろいろの調査が行なわれておるわけでありまして、死亡者についての調査は行なわれておりません。なぜ死亡者についての調査が行なわれなかったかということになりますと、当時の死亡者についての調査は非常にむずかしいということがございまして、そういう意味で、結局、現在現に生存しておられる人、それについていろいろ調査を進めていくということに相なったと考えております。
  263. 中村重光

    中村(重)分科員 死亡調査がむずかしいなんて、何がむずかしいのですか。できないことはありません。だから、死亡調査をおやりになると、動員学生——いまの医大の学生の問題であるとかあるいは防空監視員の問題であるとか、警防団の問題であるとか、この放射能云々といったような問題だけでなくて、当時の死亡状況等々いろいろな形が出てくるのです。だから、どうしても援護を強化していこうとするならば、死亡調査というものが基礎になる。原爆白書をおつくりになる考え方であるというので、あと大臣からまとめてお答えが願いたいと思うのですが、原爆白書をおつくりになるにしても、死亡調査をおやりにならなければ、ほんとうの原爆白書なんというものはできないじゃありませんか。だから、むずかしいからやらないと、頭からそれをやらないということじゃなくて、この実態調査というものが、そういったすべての点を調査して、しかも基礎になる調査をやらなければならぬと私は思う。だから、その点はどうお考えになるのか。どうもいまあなたのお答えでは、生存者のことだけをやろうということで出発をした、こういうことでございますが、そうすると、援護ということを、援護法を制定する必要というものをお考えになっておられないのか、その点はどうなんですか。
  264. 中原龍之助

    ○中原政府委員 実は、原爆被爆者の調査といいますか、現在原爆被爆者に対して医療の面につきましては特別のいろいろのものが行なわれておりますけれども、それがなぜ行なわれておりますかということの趣旨は、原爆被爆者というものの特殊性にあるわけでございまして、それで、その特殊性といいますものは、その被害が現在までに及んでおるし、また将来まで健康の上に及ぶであろうというような意味がございます。単に死亡という面だけでございますと、一般の戦災者の死亡というものと比べて特別の——これはまことにことばが悪いですけれども、死亡した人につきましては、結局同じである、ほかの、戦災でなくなった者も同じであるというような考え方も一つはありまして、そういう考え方のもとから、現在生存しておられる方々についての特別のいろいろの保護、医療上の保護というものが現在行なわれておるのであります。
  265. 中村重光

    中村(重)分科員 どうもお答えがはっきりしません。ともかく、政府調査するのは今度が初めてですよ。いままで二十一年間調査をしたことはない。いままでやったのは、原爆の長崎県とか広島県というのをやったことが一回ある。それからもう一回ありますけれども、それも政府ではない。今度初めて政府がおやりになる。ならば、やはり死亡調査等もやろうとすればやれないことはない。しかも、国会の援護強化という決議の趣旨を生かして、それを尊重するということで取り組まれるならば、当然死亡調査等もやって、そして遺族に対するところの補償であるとかあるいは生活援護であるとかいったような、そういうところまで積極的な取り組みをするという態度でなければならぬ。私どもはそういうことを期待しておるわけです。必ずやってもらえるだろう、こう考えておった。前の神田厚生大臣にも私は質問をいたしておりますが、神田厚生大臣答弁も、私の質問の線に沿うたお答えがなされております。白書についても、そのとおりいたします、つくりますということをはっきり答弁をしておるわけです。だから、あなたのほうでは三つの調査をおやりになって、なおそれでは不十分であるということで、最近抜き取り調査をおやりになるということも聞いております。一応この調査調査として、いままでやったのはできるだけ早くまとめられ、同時に、この調査をもって将来の援護を強化していくという形で取り組んでいこうとされるならば、死亡調査といったようなことも、初めてやることでございますから、それもやる、こういうことでなければならないと思いますが、それらの点に対して、まず大臣のお考え方を聞かせていただきたいと思います。援護強化を含めましてお答えを願います。
  266. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 原爆被爆者に対する援護の問題につきましては、私は、医療援護に関する限りは、昨年特別被爆者の範囲拡大いたしましたりいたしまして、私どもが考えて、できるだけのことは医療援護としては国としてやっておるのだ、こう思っておるのであります。   〔倉成主査代理退席、竹内主査代理着席〕 ただ、残されておりますのは、そういう被爆して健康を害したために生活に困窮をしておるというような方々から、医療援護だけでなしに、生活援護についても考えてほしいという御要望が相当出ております。また、国会の決議等も尊重いたしまして、それではまず実態調査をやって、実態調査の結果を見て、さらに医療援護のほかに生活援護まで広めていくかどうか、それをひとつ検討しようということで調査をやっておるのでございます。いま中村さんがおっしゃるように、さらにそれを今度は原爆でなくなられた遺族の援護、軍人や軍属の遺族に対する援護のような、そこまで広げるというような御趣旨になってまいりますと、これは長崎、広島だけでなしに、各地において焼夷爆弾であるとか、いろいろそういうようなことによって、不幸にして戦争の犠牲になってなくなられた方もたくさんあるわけでありまして、その人たちとの均衡の問題等もあると思います。私どもは、そういう意味合いで、まず可能な範囲の医療援護、生活援護、そういうようなものを、実態調査の結果によって対策を立てていきたい、こういう気持ちでやっておるのでございます。
  267. 中村重光

    中村(重)分科員 いまの一般戦災者との均衡という問題については議論があります。いままでも議論をしてきたわけでありますが、私は、一般戦災者の問題も考えなければならぬけれども、原爆による死没者というものは、おのずからこれは区別して考えなければならないと思う。国際法的に許されないサンフランシスコ条約において、日本がとった態度、その犠牲となった被爆者、いわゆる損害補償の要求等もできないような状態に置かれておる被爆者に対して、これはやはり区別して考えるべきものであるという考え方を実は持っております。しかし、あらためてこのことについてはまた大臣の考え方も聞かしていただきましょうし、私も申し上げてみたい、こう考えております。  さらにまた、これは大臣ことばじりをとるのじゃ決してありません。前段に言われたとおり、いわゆる医療だけではいけない、援護までも拡大をしていかなければならぬというようなことで考えておるということでございましたが、それまで広める必要があるのかどうかということばもありましたので、ちょっと気になります。だから、その点は、前段にお答えになったように、国会の院の決議を尊重して、援護を強めていく、こういう方向でやってもらいたいということをさらに強く要請しておきたいと思います。  さらにまた、ことしの原爆関係予算というものは全然問題にならないのです。葬祭料もだめになり、健康管理センターもだめになり、また、一昨年は予算に計上した原爆病院の病床を拡大する、あるいは養護老人ホーム、これも四十年度でございましたか、予算を計上して、そしてこれは広島、長崎とも消化されていない。しかし、消化されていなかったことが、地元の熱意がないということで一方的に片づけられることは、問題があるのであって、どうして消化できなかったかということは、これは、原爆に対する措置としては高率補助が行なわれてきた、ところが、人ホームにしても補助費は一般の老人ホームと同じである。したがって、この補助額も非常に低いけれども、一般の老人ホームと同じであるならば、原爆の老人だけをこれに収容するということも、法的に問題があるであろう等々、これは負担の問題解釈の問題、そういうことで広島、長崎もこれを受けることができなかったわけです。だからして、せっかく予算化したものを地元が消化しなかったのは、これは熱意がないのだ、こういうことから今度は健康管理センター等も問題にしないということは私は問題だと思う。私どもも、この養護老人ホームの問題あるいは原爆病院を拡大するということについては努力をしてまいりました。それが消化されないということに対しましては、補助率が非常に低いということについての政府に対する不満もあります。同時に、広島、長崎の地元自治体に対するところの不満もあるわけです。あるけれども、そういった実情というものを十分とらえて、そしてやはり原爆というものの特殊性を考えて、そういう施設にはいわゆる高率補助の格段の配慮が行なわれてしかるべしと、かように私は思う。にもかかわらず、それがほったらかされるというのはどういうわけか。また、今後これをどうしようとお考えになっておられるのか。これは、大蔵省もお見えでございますから、大蔵省からもお答えを願いたいと思います。
  268. 中原龍之助

    ○中原政府委員 お説のとおり、四十一年度予算につきましては、額といたしましては前年度に比較しまして十六億から約二十三億という、ふうに増額しておりまして、医療や健康管理の面についての充実をはかるようにしておりますけれども、新規のものは確かに見当たりません。ことし行なわれている実態調査の結果等をも勘案いたしまして、できるだけ考えてまいりたい、こう考えております。
  269. 平井廸郎

    ○平井説明員 原爆被爆者に対する対策につきまして、本年度新規事業がないという御指摘でございますが、私どもといたしましては、健康管理センターを認めなかったという趣旨ではございません。ただ、先生ただいま御指摘のように、補助率を上げるという問題は実は処理いたしておりません。一般の社会福祉施設の一般的な補助率を適用いたしまして二十九億を計上いたしまして、社会福祉施設関係補助金の中で消化をしていただく、そういうたてまえで予算を計上いたしておりますし、そういう点については厚生省にもお伝えしておる次第でございます。
  270. 中村重光

    中村(重)分科員 原爆というものに対しては、国会でも特別に決議等をやって積極的な取り組みをやっているんですよ。だから、病床の問題にしても、あるいは養護老人ホームにしても、あるいは健康管理センターの問題にしても、これは当然高率補助というものを行なうべきです。それをあなたのほうでは、一般と同じような扱いをするというところに問題があるわけです。あなたのほうでは、四十年度は必要からお認めになって予算を計上した。それならば、四十一年度の中におきましてもやはりそういった取り組みをやって、そして補助金の問題等については解決をしていくという取り組みでなければならぬと私は思います。四十一年度はもう予算は編成してしまったことでございますから、いまではどうにもなりませんが、あらためてこの点については補正の道もあるわけでございますから、十分検討して、実情に即するように、高率補助対象にするようにやってもらいたいと思います。  最後に、原爆特別地域の拡大について、厚生省並びに大蔵省の考え方をひとつ聞かしていただきたいと思います。先ほど大臣からもお答えがございましたように、確かに三キロ拡大するということで厚生省が非常に積極的な取り組みをせられたということは十分認めております。この図面を見ておわかりと思うのですが、これが爆心の中心地、これが三キロのところです。この前ここを長崎の場合は拡大をした。広いところは五キロ、六キロぐらいになっている。ところが、ここが長崎市の新中川町というところですが、ここをほったらかしておる。当然入れなければならぬここだけを入れてないのです。こういうような矛盾がある。これは大蔵省は特に見てもらいたい。ここが入れてないのです。どうしてここだけ残したのか。これは、ことし是正されるだろうと思います。こういう矛盾したところは直されるだろうと思います。これは直すならはっきり直す——また、直さなければならぬのですから、はっきり直すとお答えを願いたい。そう言えば心当たりもあると思うのです。私は、全体に三キロとかなんとかいうことをことし撤廃をしてしまえとは言いません。言いませんが、実態調査をやっていることでございますから、この際、ひとつ区域を拡大をするということについても再検討をしていただきたい。そうせぬと、いろいろな矛盾があります。とりあえず、ことしはこういう矛盾したところを直す、こういうことでやってもらいたいと思います。この点に対してお答えを願いたい。
  271. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 実態調査の結果をよく検討いたしまして、善処したいと思います。
  272. 中村重光

    中村(重)分科員 実態調査というのは、具体的には何ですか。私は新中川町という一つの特別の町を言ったわけです。これは四十一年度でできることですから、それは、考え方はまとまっているでしょう。
  273. 中原龍之助

    ○中原政府委員 特別被爆者の範囲拡大につきましては昨年の十月から行ないました。三キロ以外の区域の部分にあったもののうち、一定の区域のものを加えることにいたしたわけであります。これは残留放射能の線量が、当時の気象状況の特殊性から、放射能の影響が三キロ以内の区域内に準ずる程度であったと認められるものをやったわけでございまして、これにつきましては、長崎は長崎市当局と、それから広島は広島市当局と十分に打ち合わせの上やったのでございます。
  274. 中村重光

    中村(重)分科員 あなたもよく事情を知っておられるでしょう。去年、これは矛盾しているということを、当時の松下課長に指摘し、確かにこれは矛盾がある、だから、これは四十一年度の中で直すということについて、私も話をしておったことなんです。全般的なことについては厚生大臣の御答弁でやむを得ないと思います。これは、絶えず、三キロとか四キロとかいうものは撤廃をしてもらいたいということが、広島、長崎のたっての要求だ。ですけれども、こういう極端に矛盾したところは、予算範囲、是正できることです。だから、これをぜひやってもらわなければいけない。
  275. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  276. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 速記を起こして。
  277. 中村重光

    中村(重)分科員 まだいろいろありますけれども、時間も過ぎましたので、あらためてまたお尋ねいたします。
  278. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 次に、山下榮二君。
  279. 山下榮二

    山下分科員 私は、先ほども問題になっておりましたが、水道、ことに簡易水道の問題についてお伺いいたしたいのと、もう一つは下水道の問題について、すなわち、終末処理についてお伺いいたしたいと思うのであります。  最初の水道の問題は、御承知のとおり、水は生命維持にとってきわめて必要欠くべからざるものでございます。したがいまして、特に家庭用の水道についてはその料金をきわめて安く、かつ、できることなら全国的に平等にするように政府は指導されるべきではなかろうか、こう考えておるのであります。たとえば、通産省は、工業用水についてはトン当たり四円ないしは六円以下でなければならぬ、こういうふうに規制をしておるのであります。こういうたてまえからいたしまして、水がいかに生命維持の上に必要であるかは論ずるまでもないのでございますからして、政府の水道料金に対する基本的なお考えを伺っておきたい、こう思うのであります。
  280. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 環境衛生施設の整備、下水道の終末処理でありますとか、あるいはし尿処理、ごみ処理、あるいは上下水道等の整備につきましては、御承知のように、整備五カ年計画にのっとりまして着々整備を進めておるのでございますが、その中で、し尿処理の施設は、ほかのごみ処理等に比べまして相当順調に進捗をいたしてきております。すでに地方におきましては、このし尿処理については工事着工の計画申し出というものがだんだん減ってきておるのでございます。そういうようなことからいたしまして、昭和四十一年度は、おくれておりますごみ処理等をさらに重点的に施行するというようなことで、全体が均衡のとれた形で進められるようにやってまいりたいということで、予算編成の際にそのような配慮をいたしておるのであります。  さらに、上水道の料金の問題についてのお尋ねがございましたが、水道の料金を決定いたします際には、山下さんもすでに御承知のように、合理的な経営のもとにおきまして、適正な原価計算によって水道料金はきめるのだ、こういうことになっております。そこで、これは理想からいえば、全国なるたけあまり格差のないように水道料金がきまるということが理想だと思いますけれども、いろいろの地方の諸事情等によりまして、あるいは古くからやっておって、原価計算等もすでに終わっておる、あるいは終わりに近いほど減価償却が進んでおるというようなところと、最近始めますところの料金を同一にするというわけにもまいりません。そういうようなことで、水道料金については、合理的な経営、しかも適正な原価計算のもとに住民が納得できる線できめていくということになるわけでございます。しかし、最近におきましては、拡張工事あるいは人口が急増したために水源の開発もしなければいかぬというような特殊事情下にあります大都市等に対しましては、私どももその実情はよくわかりますので、起債あるいは公営企業金融公庫からの融資の場合におきまして、融資の条件等について国としてもできるだけ御協力をする方向努力をいたしておるのでございます。起債につきましては、二十五年の償還でありましたものを三十年に延長する。また、公営企業金融公庫におきましては、十八年のものを二十三年に延長する、五カ年ずつ償還年限を延長いたしております。また、金利の面につきましても、これを引き下げるようにいたしたのでございます。そういうように政府としてもできるだけの努力をいたしておりますし、また簡易水道につきましては、従来均一に四分の一補助でやっておりましたものを、財政事情によりましては三分の一まで補助率を引き上げることができるというようなことを、四十一年度予算におきまして実施いたす方針でございます。
  281. 山下榮二

    山下分科員 いま料金の原価計算についての大臣のお話がございましたが、私は、一昨昨年でしたか、これを取り上げて質問を申し上げまして、いま申されましたように、起債において五年据え置き、二十五年償還というところに、ようやく政府が踏み切ってもっていっていただいたのであります。私が当時質問申しましたのは、水道の鉄管の耐用年数というのは大体五十年である。したがいまして、耐用年数と償還年数を合わせるべきではないかということを実は質問申し上げたのであります。そういうところにも、やはり水道料というものの原価計算に大きなウエートがあるのではないか、かように考えておるのであります。  もう一つ私が伺ってみたいと思うものは、いま行なわれている上水道というのは、各市町村各個ばらばらであります。水資源というものがいかに貴重なものであるかということは、いま世界各国とも一つの大きな政治上の問題であります。したがいまして、水資源開発法等ができまして、水というものをどう利用し、どうするかということがいまわが国においてもやはり議論の中心であります。したがいまして、電力と同じように水資源開発を中心にして、たとえば関東で申し上げますならば、利根川水系を中心としてりっぱな水源地をつくり、ひとり東京のみならず、近郷の各都道府県に水道を供給する、あるいは水道公団といいますか、水道企業団体といいますか、のごときものをつくって、これが統一した料金でなるべく安く供給できるようにすべきである。あるいは関西においては淀川水系を中心にする。各地方地方に大きなそれぞれの川があるようでございまして、日本ほど雨量の多い国はないのでありますから、これをフルに活用するという体制をとって、電力と同じような体制に持っていきますならば、水道料というものの格差を是正することができるのじゃなかろうか、こう考えておるのであります。これに対して大臣は、一体いかにお考えでしょうか。
  282. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 山下さんの御意見に対しましては、私も大体同感でございます。そこで、ただいま厚生省設置しております公害審議会の水道部会で、そういう一つの構想も一つのテーマにいたしまして、せっかく専門家の間で御審議を願っております。私は、その答申が出ますれば、そういう広域的な、あるいは水系を中心とした広域的な水道行政というものを実現する方向努力していきたい、こう考えております。
  283. 山下榮二

    山下分科員 一例として水道と電気料金とを比較してみますると、私は水道料の統計をとってみたのですが、十立方メートルあたり大阪で百三十  円であります。神戸で百九十円、東京が百四十円、名古屋も百四十円、横浜が百三十円、京都が百十五円、これが六大都市で一番安いようであります。私のところの尼崎は百七十五円、西宮が百六十五円、長崎が非常に高いようでありまして同じ十立方メートルで二百五十円、一番安いところで長野県の岡谷市が同じ十立方メートルあたり五十円、下諏訪町が七十円、こういうぐあいに非常に料金の高いところと、安いところの差がひどいのです。高いところでは、秋田県男鹿市では六立方メートルで四百円、十立方メートルで七百円、岡山県の興除村が八立方メートルで六百円、十立方メートルで七百五十円、同じ岡山の藤田村というところでは八立方メートルで六百十円、こういうふうに非常にばらばらの料金制度であります。  これを電気にとってみますと一体どういうことになっているか、こう申し上げますと、電気は非常に合理的だと私は思っておるのであります。電気は、御承知のとおり九電力会社があるわけですが、これの平均を一〇〇として考えました場合に、一番高いところで一一五であります。低いところは九〇であります。平均をいたしまして十二円になります。それだけ非常に全国平均との差が縮まっておるのであります。申すまでもなく、東京都あるいは大阪というような、電柱一本から何百個も何千個も電灯がつくようなところでも、相当山奥で電柱一本から十個か二十個しか電灯がつかないようなところでも、料金というものが案外統一されておるのであります。  私は、これと同じように水道というものも、さきに申し上げたような構想のもとに、もっと国がこれに本腰を入れて、電灯以上に水というものが生活上必要でありますからこれを統一する、こういう方向にやはり持っていくべきではないか、こう考えておるのであります。したがいまして、公団なりあるいは公社なり、そういうような方式で行なうならば、あるいは電力と同じような比率に持っていくことができるのじゃなかろうか、私はこういう考え方を持っております。  いま大臣は、厚生省の中にもそれらしいテーマのもとにいろいろ考えがあるというお話でございますが、これはひとり厚生省ということだけではなくして、大きく申し上げますならば、国策として、国の政策として政府が取り上げるべき問題ではなかろうか、私はかように考えておるのであります。そういうことに対して、一体大臣はいかようにお考えになりますか。
  284. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたように、水系を中心にして、そして広域的な視野で水道行政というものをやるという考え方、これは方向としてはそういう方向で計画を進めるべきだ、私はこのように考えておるのであります。それを具体的に実施いたします場合にどうしてやっていくかという問題につきましては、厚生省としても審議会にお願いして検討しておりますが、なお自治省でありますとかあるいは建設省でありますとか、関係各省もあることでありますので、政府全体として大切な問題でありますから、よく方針を練りまして、水道の料金に非常な格差があるというようなことが、だんだん是正されまするように努力していきたいと思うわけであります。
  285. 山下榮二

    山下分科員 最近各都市で、水道料の値上げ問題について非常に問題を起こしていることは御承知だろうと思うのですが、本年になりましても水道料値上げが、厚生省のほうに申請というのですか、相談をなさっている市町村も相当あるようであります。これは私は、はなはだ言いにくいことであるけれども、佐藤内閣が正月早々から米の消費価格の値上げだとか、私鉄だとか国鉄運賃、こういう公共料金を上げるものですから、便乗値上げとは申し上げませんが、各市町村ともそれぞれ財政が苦しいという関係等もありまして、どこもかしこも水道料の値上げを申請する、こういうかっこうにあるのじゃないかと私は心配をするのであります。したがいまして、こういう場合に対して、厚生省は一体どういう指導をされようとしておるのであるか。先ほど、償還年限の問題、あるいは古くからあってもうすでに耐用年数の終わった、償還されたところ、いろいろまちまちだからという話はありました。しかし、それにいたしましてもこういうことが行なわれて、市町村会ではとかくの議論をかもして相当もめておるのでありますが、これはやはり市町村独立採算制のたてまえから、企業がいかに公益性が高くとも、いかに公共性が高くともやむを得ない、こういう立場におられるものでありますか、それとも水道あるいは電気というような公益性の高いもの、公共性の強いもの、こういうものに対してはある程度政府として規制をしていかなければならぬ、こういうお考えを持っておられるものでありますか、その辺を伺いたいと思うのであります。
  286. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 水道料金の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、まず経営の合理化をやっていただかなければならぬと思います。そういう合理的な経営のもとに適正な原価計算にのっとって料金が定められる、またその際に建設費その他に相当の資金が要るわけでございますので、その際におきましては、政府としてはできるだけ長期低利の資金を融資することによって、あるいは起債を認めることによって住民の負担を軽減するように協力をしていく、めんどうを見ていく、こういうことで進んでおるのでございます。  具体的な最近における事例等につきましては、政府委員のほうから御説明をいたしたいと思います。
  287. 舘林宣夫

    舘林政府委員 確かに、御指摘のように、電力料金の値上がりの率は水道に比べてはるかに少ないわけでございまして、昭和八年を一といたしまして、今日わずかに一〇〇にすぎない。それに対しまして水道料金ははるかに大幅な値上がりを見せておりまして、おおむね各市町村とも四年に一度ずつは改定をいたし、値上げをいたしております。したがいまして、全国で約千ほどの水道がございますと、一年に平均二百五十市町村が値上げをするというのが平均の姿でございます。したがいまして、公共料金の値上げ抑制によりまして一年間抑制をいたしました影響もありまして、今日、非常に値上げをする市町村が多いという現状でございます。先ほど先生が仰せられましたように、起債の償還が非常に大きな部分を占めておりまして、全国平均で、水道の経費の中の三六%ほどは起債の償還の部分でございます。もちろん都市によって違いまして、東京都等は、七〇%が起債の償還に当たる部分でございます。したがいまして、たとえば東京都の明治以来布設いたしてすでに償還の済んでおります水と、新たに開発する水との差が非常に大きなものでございまして、最近利根川から開発する水は十トン当たり五百円にもなる。従来の古い水は、今日十トン百四十円で家庭に配給いたしておるということでございますので、そのような新しい水の開発の影響によって、どうしても値上げせざるを得ないという実態に追い込まれてくるわけでございます。その新規開発分の値上げの財源というのは非常に大きな財源でございますので、どの都市も一般会計からの繰り入れという措置がとうていとり得なくて、どうしても料金にはね返ってくるということになるわけでございます。これに対しまして政府としましては、ただいま申しました水道の経費の中の大きな部分を占め、しかも最近値上がりの最大の原因となっております起債の償還部分を、いかにしたら少なくできるかということに重点を置いて措置いたしております。したがいまして、先ほど来大臣から申し上げておりますように、起債の利率を下げたりあるいは償還期限を延長したりいたしまして、少しでもその影響を引き下げようとはかっておるわけでございます。従来も漸次利率を下げ、あるいは償還期限も延ばしてまいりましたが、今後ともその方針で努力をしてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  288. 山下榮二

    山下分科員 時間がないようでございますから飛び飛びに質問を申し上げますが、ことしの簡易水道の財源措置を見てみますると、昭和四十年度が二十一億九千何がしであったものが、四十一年度は十六億九千百二万五千円ということに下がっております。政府は口に農村の近代化を唱え、あるいは文化生活を唱えながら、これが下がってきたということの理由はどういうわけでありますか。いま大臣は、四分の一から三分の一に補助率を上げた、こうおっしゃっておられる。なるほど上がっている。これは財政非常に困難な町村に対して三分の一に上げる、こういうことになっておるようでありますが、もともとの本予算のほうで大きく下がってきたということの理由は那辺にあるのでありますか。
  289. 舘林宣夫

    舘林政府委員 従来簡易水道の補助金は増加の一途をたどってまいったわけでございますが、近年に至りましてかなり予算消化が困難を生じてくる実情でございまして、本年度は予算消化額不十分な実態を来たしたわけでございます。その原因が、この補助率が少な過ぎてつくりたがらないのか、あるいは補助単価が悪くてつくりたがらないのか、あるいは設置場所が非常に難工事で、だんだん水源を求めることがむずかしくなってまいりまして、設置個所が減ってまいるという実態もありましょう、それらが混然としてこのような影響を来たしておろうかと思っております。したがいまして、明年度十六億を計上したものの、はたしてこれがまた全部消化できるかどうかということは、やや懸念をしておる状況でございます。私どもとしては、各市町村の需要は十分満たす方針で予算を組んだわけでございますが、なお今後に残された問題は、単価を十分見てやる、あるいは補助対象を十分見てやる、非常に財政状況の苦しいところは三分の一に引き上げるというようなことで、できるだけ財政的な援助は続けてまいるつもりでございますけれども、それでもなお技術的にむずかしいというところもかなり出てきておりますので、今後の推移を見まして、また必要に応じて予算額の増額をはかってまいりたい、かように考えております。
  290. 山下榮二

    山下分科員 それでは過去の実績等にかんがみて予算が少なくなった、こういうことに理解をしていいと思います。水道ばかり申し上げておっては次がなくなりますから、私はこの際、希望を申し上げておきたいと思うのであります。  工業用水、簡易水道にはそれぞれ政府補助金がございます。上水道には、御承知のごとくございません。したがいまして、利用者のいわゆる料金値上げで採算を立てていかなければならぬ、こういう結果になるのは当然のことであります。したがいまして、私は、水というものがいかに人間生活に必要であるかということを、厚生省自身お考えになっておるでありましょうから、補助金の制度を、工業用水、簡易水道と同じように、公益性、公共性というものを中心にしてお考えになるか、もし補助金という制度がとれなければ、利子補給という制度を考えていただくか、何らかの方法を考えていただきたい。いまの金利は、申し上げませんが、公募債あるいは地方債、それぞれまちまちでございますが、地方債等においても、なかなか安い金利ではありません。したがいまして、計画造船にすら利子補給をやるのでありますからして、こういう公共性の高い、公益性の高いものに対しては、そういう道もお考えになっていただきたいということをひとつ要望を申し上げておきたいと思うのであります。  次にお伺いいたしたいと思うのは、先ほど大臣の触れられましたし尿処理、あるいは終末処理、下水道、こういう一連の環境衛生に関する問題であります。これも多少予算が減っておるようであります。おそらく都市の美観を保つためには、また、生活の文化の向上をはかるためには、いかに上水道だけつくっても、下水道が完備しなければ、これは町の美観も衛生上の完ぺきも期することができぬことは当然であります。したがいまして、下水あるいは終末処理あるいはし尿処理、こういうものが、いま大都市、中都市を問わず、きわめて重要な問題になっておる。ことに、し尿処理の問題等については、各都市とも頭を悩ましております。これに対して、一体厚生省はいかように処理されようとお考えになっているか。  時間がございませんから一緒に固めて申し上げますが、たとえば建設省が道路をつくる場合には、共同溝等をともにつくって下水の管を入れる、こういうようなことがいち早く先手を打って行なわれていなければ、道路はできたが、また今度は下水道のために道路を掘り返さなければならぬということばかりを、日本の道路やいろいろなことの政治は行なっておると思うのであります。したがいまして、厚生省は、やはり将来を見越してそういうこと等に着目され、推進されていくべきではないか、私はかように考えておるのであります。したがいまして、建設省等と連絡をとられて、新しくできる道路、国道あるいは県、市道等に対して、共同溝等の構想があるのかないのか、一体それをやられようとしておるのか、下水道をつくろうとするなら、一体道路以外に別にまたつくろうとお考えになっておるのか、その辺を伺いたいと思うのであります。
  291. 舘林宣夫

    舘林政府委員 昭和三十八年度を初年度とする五カ年計画によりまして、し尿処理及びごみ処理の衛生的な当面の施策をやったわけでございます。その施策が目下順調に進んでおるところでございまして、予算がし尿処理について減少いたしておりますのは、もはやし尿処理施設をつくる場所は山を越したわけでございまして、ただいま先生のお尋ねのこれから下水道へ重点を注ぐ、こういう段階になったわけでございます。下水道の終末処理場は、約三割ほど予算並びに起債ワクはふやしてございます。問題は、これをいかように進めていくかということでございます。ただいま先生仰せられましたように、最も能率的に、河川を利用できるものは河川を利用する、河川の流域につくってこれが各工場の排水の浄化槽にもなるというような措置も考えられますし、いま一つは、団地のような離れた、多数住民のおる場所に、そこはそこで独立した下水の処理をさせるというような、今日の都市の容態に応じた下水のつくり方を進めてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  292. 山下榮二

    山下分科員 共同溝等は考えておらないのですか。
  293. 舘林宣夫

    舘林政府委員 できるだけ共同処理ができるようには考えてまいりたい、かように思っております。
  294. 山下榮二

    山下分科員 時間がまいりましたから私は質問はやめますが、最後にお願いだけを申し上げておきます。  水道料金のことについては、先ほども申し上げたのではありますが、私はここに諸外国の統計等も持ってまいったのであります。水道料について、イギリス等は家賃とマッチさせているところもあるようであります。きわめて合理的な考え方が行なわれておるようであります。こういうこともあわせ考え、あるいは、いま申し上げましたし尿処理が終末処理、下水道に切りかわっていく、これがほんとうなんです。そう行なわれねばほんとうの処理にならぬ。各戸各戸に御承知のごとく水洗便所をつくっても、自分のところにあの浄化装置をつくらなければならぬ、こういう結果になるのでありまして、これは個人的にも国家的にもきわめて大きな不経済な話であり、一日も早く下水道が完備をいたしまして終末処理が行なわれるということが、きわめて適切でなければならぬのであります。  私は、さようなことを、一日も早く、大都市、中都市を問わず、建設省と関係を持たれまして、厚生省当局が各市町村を督励し、指導されることを希望申し上げまして、私の質問を終わります。
  295. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 次に、帆足計君。
  296. 帆足計

    帆足分科員 私は、国会に議席を置きまして十七年この方、ほとんど外務委員会に所属しておりまして、平和と貿易の方面の仕事に専心いたしておるものでございますが、しかし、国民大衆の一員といたしまして、切れば血の出るような切実な問題はおおむね厚生省所管の仕事でございまして、しかもその厚生省所管のお仕事が、皆さまの努力にもかかわらず、必ずしも十分な成果を生んでおりませんし、また、インフレーションその他の影響を受けまして、予算の裏づけも十分でございません。今日の状況をもってしますれば、庶民の生活の痛みは、黙っておれない、石も叫ぶというような切実なことが山積しておる事情でございますから、私は、厚生大臣を御激励し、また、おおむね党派を越えた課題が多いのでございますから、御協力し、御努力を一そうされていただきたい、こういう気持ちで参ったのでございます。  各予算分科会にそれぞれ分担いたしまして出席いたしますと、各議員の申されることは、まことに粛然としてえりを正して傾聴いたすべきことが多いのでございます。私は、国会において、特に予算分科会において、かくも熱心に、しかも具体的に問題が論ぜられておりますのが、イギリスのロンドンタイムスのように、パーラメント、国会という大きな欄があって、そのすべてが国民に報ぜられないこと、まことに残念に思うのでございまして、スポーツ面には一ページまたは二ページをさく五大新聞が、国会開会中に、しかも重要なる予算審議の各論に、そのページすらさかないという今日の実情を残念に思うのでございます。五大新聞のうち、せめて一新聞でも、この予算委員会の間だけは、一ページを全部国会論議の紹介に充てるというような勇断を示す新聞がなきものかとすら思われるのでございます。ここで私どもは、別に大声疾呼して大臣をおしかりする権限が何らあるわけでもありませんし、また、国民の立場からどうしても必要なことを互いに語り合って、乏しい財政の中から何とかやりくりし、運営上実行し得るものは実行したいという思いで、こうしておそくまで論議をしておる次等でございます。その点、イギリスの国会はさすがにみごとである。質問の通告を前日しておきましたのを、すっかり当局は目を通しまして、そして大体その方向は取り入れたらよかろうという結論になりましたのは、多かれ少なかれ取り入れられまして、半年後には実現する。しかるにわが国の実情では、ここで大いに主張いたしますけれども、国会が済めばおおむね忘れられてしまいまして、しかもいま審議しておりますときはもう予算の大綱がきまってしまったあとで、すべてはあとの祭り、汽車は出ていく、煙は残る、残る煙がしゃくの種、そういう環境のもとにおいていま論議が行なわれる。これは私は、どこかにやはり欠陥があるのではないかと思います。   〔竹内主査代理退席、主査着席〕 御承知のように、人類の進歩は、長い間銃剣を交えた闘争で、戦争で、内乱で行なわれてきましたけれども、民主政治になりましてから、国民の意思と言論と投票によって行なおう。それにはたくさんのまだるっこいこともあり、欠点もありますけれども、とにもかくにも、かりにジグザグデモがあろうと、国会内の牛歩戦術があろうと、お互いにざんごうを掘って市街戦で争うというよりもはるかにいいことは間違いないのでございまして、「鞭声粛々夜河を渡る」などと言って酒のさかなにするならば、それも楽しいことでございますけれども、現実に市街で鞭声粛々になったらたいへんなことでありますので、議会政治というものは、保守、革新を問わず、私はこれを最大限に活用し、育成してまいらねばならぬということを痛感いたします。しかし、十七カ年の議員生活を顧みますと、おまえは何をしたかと言われれば、もちろん野党ですから十分なことはできませんでしたが、ストレプトマイシンの生産に対して、六億円の補助金を出すことをやっと御了許を得たことと、八万五千人の朝鮮人の諸君をふるさとに送るのを赤十字に加勢したくらいのことが、わが孫に誇り得る自分の業績でございまして、他は、ほとんど一体何をしたのかと思うとじくじたるものがあります。こういうことならば、むしろ社会党などに入らないで、経団連の専務理事をしておって、二、三十億ももうけて、からだの弱い子のために、託児所でもつくったほうがよかったのではないかというような思いすらするくらいでございます。  私は、そういう気持ちで、ただいま厚生大臣に幾つかの問題を、時間もございませんから要約して申し上げますが、どうか各位におかれましても、私どもの主張でそれは正当であるとお考えくださることは、施策の中に取り入れていただきたい。実は昨年も予算分科会に出まして、たとえば特にオリンピック関係のことは議員からも適切な注文もあり、政府当局も御努力なさいまして、建設関係のことはもとより、風紀の問題に至るまで、まことにみごとに切り抜け得たのであります。これは行政当局はもとより、やはり私は、国会の業績として誇り得べきものであったと思いますが、たとえばテレビ、ラジオ、映画などについての各議員の非常に熱心な要望などというものは、まだほとんど取り上げられておりません。結局言いっぱなしになりまして、そうして時期は過ぎてしまう。できれば九月ごろ——九月の初めは暑いですから、九月の中旬から予算の予備審査のようなものがあって、十分論議して、それが予算に取り入れられる。そうして一月になりましてその仕上げが論議されて、予算というものは二、三割組みかえが可能なものであるというようなことでやらなければ、一体議会というものは何のためにあるか、私はみずから十七年も議員をしておりまして、その議員みずから、私が疑問に感ずるくらいでございますから、庶民がもし議会に絶望したならばどうなるか、まことに深憂にたえない次第でございます。  さっそく本論に入りたいのでございますが、まず、今日諸悪の根源は、私はインフレーションであると思っております。かつて私が財界におりましたときに、銀行家たちは、インフレーションから通貨の安定を守るためには、井上準之助氏にしても、また政界の浜口雄幸氏にいたしましても、みな命を賭してこれと戦って、高橋大蔵大臣のごときは多少のリフレーションには賛成しましたけれども、断じて消費生活を脅かす悪性インフレになってはならぬという主張のために、彼もまた歴史の犠牲になって倒れたことは皆さま御承知のとおりでございます。今日、下からはインフレーション、上からは重税、中産階級は没落し、生活の底の浅いこと、そうして住宅難、教育地獄、まさにこのような状況で一体——昨日も文部大臣に申し上げたのですが、インフレーション、住宅問題、試験地獄を解決しなければ、人間形成を説いたところで、これはほとんど役に立たないのではあるまいか。特にこのしわ寄せは、ことごとく皆さん、厚生省所管の仕事にしわ寄せがまいっておるのでございますから、逐次この問題の解決策につきまして問いただし、そうして御奮励を希望いたしたいのでございます。また、一国の政治があるというゆえんのものは、これは富士山の上に雪を積みアイスクリームを売りに行くために政治はあるのではなくて、むしろ谷間の日の当たらないところにあたたかい涙を注ぎ、そして意気阻喪したところに勇気を与え、力を与えるのが、私は政治の仕事であろうと思うのでございます。そういう点から考えまして、たとえば安全保障ということば一つとりましても、安全保障とは国土と人の命と人間の福祉の安全を守ることでございます。だとするならば、今日の安全保障ということは、私はむしろ防衛庁ではなくて、安全保障庁に当たるのは、その中核は厚生省ではあるまいか。現に、わが歴史に問題になりました業績を残したかのダレス氏は、中共兵に殺されたのでもベトコンに殺されたのでもなくて、ガンに倒れてしまいました。彼はガンに対する防衛を怠ったとも言えるでしょう。あるいはわが敬愛する、なき池田首相、この人もベトコンにやられたのではなくて、やはりガンにやられたのであります。だとするならば、厚生行政に使う経費と、今日の原爆の時代における防衛庁に使う経費との間には、合理的なバランスがなくてはならぬ。原爆一発の時代に、日本の安全のあり方はどういうものであるか。これは原子科学とロケットの観点からおそらく考えねばならぬ課題でしょう。いわんや朝鮮の例を引きましても、朴政権に三千億円払って——私は朝鮮の平壌で幼年時代育ちまして、父は平壌で産をなしました。朝鮮にはばく大な財産を、しかも個人の財産までも、国際法の従来の慣例を破りまして全部置いてまいりました。その後灰じんに帰したのは南北戦争のためでありまして、われわれは朝鮮にばく大な財産を置いてきました。東北、過去の満州において、中国の周恩来首相は、とにかく東北が傷つかずに残ったのであるから、旧怨を忘れて、もし日本があたたかい友情の手を差し伸べ、過去の植民地主義というような妄想をお捨てになるならば、賠償の問題は私たちはたぶん言わないであろう、こういうふうに周恩来首相が語ったのを覚えております。そういう朝鮮でありますのに、三千億円の賠償金はあっという間に払ってしまった。私は三千億円でなくても、三十億円も朴さんに払えば十分であったのにと思ったのでありますが、同じようなことは、南ベトナムに百二十億円、これは鶏三羽の犠牲に払ったのでありますが、もらったゴ・ジン・ジェムも、アメリカのフルブライト外交委員長が言うように、張作霖と同じように暗殺されてしまいました。残った金の一部は、坊さんのバーベキュー事件を起こしたあの魔女が、パリに持って逃げたという風評さえ聞くぐらいでございます。さらに驚くべきことは、タイのサリット首相のときに貸したはずの約二百億円の経済協力金を、賠償金に振りかえてしまった。私どもはさりとは情けないと言ったのですが、その後タノムという首相があらわれまして、頼む頼むと言われるから、こういう落語のようなことで国帑、大きな国の経費が安っぽく使われている傾向がありはしないか。もし私どもがほんとうに朝鮮を愛し、過去の宿命にいざなわれた植民地政策を清算して、朝鮮によい技術、そして合理的な貿易をするならば、低利資金や輸銀を使うことによって朝鮮の福利民福に十分に寄与し得るわけであって、三千億円なんという賠償金は、偶然によって得たものは偶然によって失われる。ただでもらったものでこれを守ることはむずかしいのでありまして、私はむしろ、経済的に低金利の金をお貸ししたほうがよかったのではないか。そういうことも深く論ぜられないうちに、厚生省のさいふはもうからになってしまっておった、まあこういうことではないかと思いますが、つい外務委員をしておりますから、話が余談に移りまして恐縮でございます。日もたそがれ始めましたから、皆さんのおなかもすいたことと思いますから、本論に急いで入りたいと思います。  まず第一に、命の安全保障という点から申しますならば、私は、今日ガンの対策は最も重要であると思います。量子顕微鏡によれば、ガンはすでにウイルスの一種であろうと推定されておるということでございますが、おおむね三十年前、ちょうど結核の薬ができたらなあ、こうわれ人ともに嘆いたあの時代に今日のガン対策の状態が非常によく似ていることは、厚生省の医療行政に当たる皆さんが直観的に気づかれているところではないかと思いますが、同時に、心臓病、高血圧に対する対策、この二つができたならば、今日女性の平均寿命は七十二歳、男性のわれわれは、ちと夕方ごろから心がけが悪いので、五十七歳ぐらいと言われておりますが、しかし、これも、この二つの問題が解決したならば、まず九十歳、偕老同穴の天寿を全うし得るのではあるまいか。人の命ほどとうといものはありませんから、安全保障という意味が人の命を守るということであるといたしますれば、命の防衛庁こそは厚生省当局ではあるまいか。大いに皆さんの奮起を促したいのであります。一体宮中席次などは、皆さん第何位になっておられますか。まごまごしているからばかにされるのでありまして、みずから卑しめる者、人これを卑しむ。いまこそ新日本の基盤は厚生省であるという気概をもって、せっかく大臣をお助けくださらんことを行政官庁の幹部の方にお願いしたいのでございます。  そこで、先日も私は上野の博物館に参りまして、平安朝時代の観世音菩薩の像を見てまいりました。あたたかいまなざしを見ながら、何百万、何十万の善男善女がこの像によってその植物的神経をなだめられたことであろうと思いましたけれども、すでに空洞結核になっている患者やらい病患者や梅毒患者は、いかにおすがりしても、これはなおることは不可能です。それに比べるとズルファミン剤の進歩、ペニシリン、ストレプトマイシン、パス、ありとあらゆる化学療法の進歩などは、ほんとうに頭の下がるほどの大きな功績でございます。私は、祭日をつくるならば、三笠宮殿下まで御反対になっている神話を再びかつぎ込むのではなしに、医学の進歩に感謝し、医師の努力に感謝し、健康をお互いに守り、ことほぐ祭日が一日くらいあってもいいのではないかという思いすらするのでございますが、厚生大臣の御感想はいかがでございますか。最近の医学の進歩はすばらしいものである。これを国民のものにすると、残ったものはガン、血管関係、心臓関係くらいのものでございます。しかるに、ガンの研究費がだいぶふえましたけれども、見てみると削られておりますし、非常に足りない。一体池田前首相のああいう痛ましい御最期を厚生大臣は残念に思っていないのか。厚生大臣の原案を削ったやつはだれか。その削った人を連れて来て、私は、池田さんの奥さんに頭を下げさせたいと思うくらいであります。ガンの研究に対して、それから世界各国の進歩に対して、十分資料を早く集める必要があると痛感いたします。また、榊原博士が中心になりまして、昨年厚生省当局の非常にあたたかい御配慮、御理解などもあって、財界からの寄付金も多少集め、心臓及び血管に関する総合研究所をつくられておりますが、私は、これももう一段ひとつ政府に助けていただきたいと思います。  本論に入ります前に、鈴木厚生大臣には私も初対面でございますから、まずお気持ちのほどを先に伺って、それからあとは一瀉千里に本論に入りたいと思いますので、ごあいさつを申し上げた次第です。
  297. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 帆足さんからお話しがありましたように、日本の医学あるいは日本の医療制度、これが欧米先進国に劣らない発達、整備を遂げてまいりまして、国民の栄養の問題その他と相まちまして、日本人の寿命が戦後になりまして非常な長寿になった。長生きをした。ただ成人病としてのガン、あるいは脳卒中、あるいは高血圧、そういうような成人病等が十分対策が講ぜられていないということが、今後わが国の医療に課せられた一つの大きな課題であります。と同時に、ガンの発生源の究明等は、世界の学者共通のやはり大きな課題であろうと、こう思うわけでございます。  そこで、ガン対策につきましては、お触れになりました研究費につきましても、厚生省関係で二億円、文部省関係で二億五千万円と、昨年の研究費に比べまして相当大きな増額を見ておるのでございます。文部省、厚生省、科学技術庁等と連絡を緊密にいたしまして、この研究補助費が有効に、効果的に成果をあげられますように、これを運営してまいりたいと考えているわけであります。  また、ガン対策といたしましては、国立の中央がんセンターを中核といたしまして、国立、公立あるいは民間等、体系的にこれを全国的に整備してまいる必要があると思うのであります。そのための予算措置を、四十一年度におきましても、できるだけのことをやったつもりであります。また、そういう専門の医療機関の整備と相まちまして、専門の医師あるいは技術者の養成確保ということも大切であります。さらに、現在の段階では、早期発見、早期治療ということで、集団検診ということが効果的である、こう考えられますので、全国の都道府県に検診車各一台、それに運営費をつけまして、できるだけ国の助成のもとに集団検診が、患者の負担が軽くこれが行なわれるように措置したいということで、そういう施策を講じたのでございます。  ガンのウイルス説につきましてのお話がございましたが、一部の学者によりまして、ガンの病源体はビールスではないかというようなことも提唱されておることも承知いたしておりますが、これが完全にビールスのしわざであるということが究明されておるとは、私はまだ信頼すべき情報を持っていないのでございますが、いずれにいたしましても、あらゆる角度からガンの制圧のための施策を、総合的かつ強力に進めていく必要があろうかと存ずるのであります。  それから、全般的な問題といたしまして、安全保障の仕事は厚生省だという御鞭撻があったのでございますが、社会開発の中心の仕事をいたしておりますのが厚生省でありまして、医療保障あるいは所得保障、さらに社会福祉施設、環境衛生、公衆衛生等の諸施策を進めて国民の健康を守る、そして健康な生活がおくれるようにしたいということで、私ども微力でありますが、努力をいたしておるのであります。  昭和四十一年度の予算におきましても、そういうふうな観点で、全体の伸び率は一七・九%ということでありますが、厚生省予算は、御承知のように二〇・四%というようなぐあいに、政府全体としても厚生省予算には力を入れておるところでございます。私どもは、今後御鞭撻をちょうだいいたしました方向で、さらに努力をしていきたいと思います。
  298. 帆足計

    帆足分科員 ガン対策、それから心臓病対策につきまして、一段の御努力をなさり、また予算も必要に応じて獲得されるというお気持ちと私は拝承いたしまして、一そうの御努力をお願いいたします。  次に、健康保険の問題。十年一日のごとき状況でありますが、私は、この際、良識を持って、勇断を持ってこれは阻止せねばならぬ課題であると思っておるのでありますが、大企業におきましては、健康保険か、一面予防医学の徹底もあり、また健康診断の普及もありまして、やや楽でありますが、一般の国民健康保険とまた日雇い健康保険等の間に格差ができております。これはわが親愛なる友人の中にも、特に労働組合、大企業出身の方などには御異論のあることも承知しておりますが、私は、若干の特殊性は認めましても、やはり社会福祉という点におきまして、日雇いも、国民健康も、大企業の健康保険制度も、その運営におきましては今後統一していくべきではあるまいかと思っております。そば屋のでっちさんが、そのおっかさんの病気のために流す涙も、焼き鳥屋の小娘が、弟の夜学の学資のために苦労する汗と涙も、総評の太田さんが苦労するその努力も汗も、とうといことにおいて私は同じであると思うのでございます。したがいまして、将来統一の方向に進むべきである。私は、宇都宮君と同じように、社会党の中の一匹オオカミなどと言われますが、決してオオカミではございません。気のやさしい小羊でございますが、かように思うのでございます。われ思うがゆえにわれありでございまして、思うのでありますからこれはいたし方のないことであります。しかし、その思うことに合理性があるならば、そういう方向に行くべきではあるまいかと思いますが、大臣はどのようにお考えですか。
  299. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のように、わが国の医療保険制度は、いろいろな発達の過程、経緯等がございまして、それぞれの発展を遂げてきたのでありますが、そういう関係からいたしまして、各種医療保険制度の中に、御承知のように、給付の面におきましても、また、被保険者の負担の面におきましても格差がそこにある、非常なアンバランスがあるということは、私も承知をいたしておるのであります。そして、それぞれの保険制度の中の財政の面にも大きな内容の開きがございます。こういう給付及び負担、また保険財政、こういう格差がある、アンバランスがあるのでございますから、これを総合調整をする、あるいはさらに進んでこれを一本化するというようなことが、国民医療の前進をはかる一つの大きな研究の課題であるということは、私もさように考えておるのでありまして、この問題につきましては、一方における診療報酬体系の適正化とあわせて、これをびしびしするような方向努力してまいる所存でございます。
  300. 帆足計

    帆足分科員 そういう方向に進んでいただくとして、たとえば長年会社に在職した方が、今度会社をやめますと、大体三年たてば関係がなくなります。こういう点につきましても、在職者同様というわけにはいかないでしょうが、長い間保険金を払ってきたのでございますから、そういうことについても、私は、統一の方向に向かうときに若干の考慮が必要ではあるまいか。  それから、時間がありませんから、逐次申し上げますが、支払い基金事務所を私はこの前見学してまいりました。驚きましたのは、御高齢の博士たちが、まるで近ごろ流行のパンチ娘のように書類をひもといておる姿を見まして、これはたいへんなことだ。医師残酷物語という随筆を書いたのでございますが、一体どのくらいの報酬を払い、一月に何日ぐらいこれらの方に御努力を願っておるのか、ひとつ、時間がありませんから簡単にお願いします。
  301. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大体年間、支払い基金の請求件数が二億数千件ございますが、審査いたしますのは、月の初めから大体一週間程度。報酬といたしましては、月四千五百円程度の報酬でございます。
  302. 帆足計

    帆足分科員 私は、これはインターンと並ぶ二大現代奴隷残酷物語だ、こう思いますが、しかし、やむを得ない一時的現象であろうとしましても、私は、これを改革する方法がないことはないと思うのです。皆さんは仕事に追われて、そして思ういとまもなくもう仕事が始まってしまって、こういうことになったのでありましょうけれども、むしろ私どもしろうとが見ましても驚いてしまうということは、一体どういうことか。しかもこれに、さらに補助員のような方が、医師の方で相当おられると聞いておりますが、それはお医者さんですか、それとも臨床と関係のない監察官みたいな人でしょうか、要点だけでけっこうです。
  303. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 審査事務に当たっておりますのは全部お医者さまでございます。
  304. 帆足計

    帆足分科員 これを簡素化する方法が私はあろうと思います。最近におけるファイリング及び整理整とんの技術というものは非常なもので、私は審査請求書ももっと簡素化し得るし、審査の方法も、たとえば小口のものは抽出検査にするとか、その他方法があろうと思います。これにつきましては幾つかの論文、試案なども出ておりまして、たとえば私が読みましたのは、東京歯科医師会で非常な勉強家の歯科保健部長の山本さんの書いた論文など、非常に参考になると思います。したがいまして、御研究くださって改善なさるという意思がおありかどうか、これを承っておきたい。  それから、その補助員、検査官の人たちが、これは税務署においても同じことですけれども、やはり検査はしますから、検察官のような態度で迫まるのでなくて、やはり助言者のような態度でやってもらいたいと思うわけです。今後そういうお心持ちでおいきになるお考えがあるのかどうか。行き過ぎでもって何となしに不安におびえるというような気持ちを——これは税務署ですら私はいけないと思うのです。警察官ですら、こいねがわくはそうであってもらいたくないと思うくらいです。かってウィスコンシンの警察学校を見学しましたときに、民衆から石を投げられてがまんする練習をしておりました。私はその姿を見て、これはたいへんとうとい開拓者精神であると思いました。いわんやこの医療審査においては、これは根本は自治制度でしょう。したがって、検察官的態度よりも助言者としての態度で、そして医療制度を公正ならしむる。ただいまのこと二つ、お答えを願いたい。
  305. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 基金の審査事務の能率化につきましては、御指摘のとおり非常に膨大な請求書が出てまいりますので、基金当局におきましてもいろいろとくふうをいたしまして、改善に努力をいたしております。具体的な例をあげるのは、時間の関係がございますので省略させていただきますが、能率化、簡素化につきましては積極的に現在取り組んでおりまして、逐次改善をやるつもりでおりますし、現実に着手した部面もございます。  それから、御指摘の権力的な取り扱いをしておるのではないかという点につきましては、そういうことのないように今後とも基金当局に話をいたしまして——私はそういうふうな話は聞いてはおらないのでございますが、よそから見ると、あるいはそういうふうに映る場合には、これは積極的に是正するように十分注意いたしたいと思います。
  306. 帆足計

    帆足分科員 御答弁をいただいて満足ですが、そのような方針が下まで浸透いたしますように、また万一それに反しますようなことがありましたときには大臣なり局長にお伝えいたしますから、ひとつそういうことのないように御善処願います。  時間がありませんから進みまして、医師の年金制度がいま研究されておりますようですが、老齢のお医者さんを格づけするわけにもなかなかまいりません。すなわち、大名医だからといって、診察料を高くするということもむずかしいことでしょう。医師の年金制度に対して、政府は好意ある態度をもって促進すべきであると思います。また、現在の医療担当制度、すなわち制限医療の問題につきましては、医療の日進月歩によりまして、いろいろの支障があることは御承知のとおりでございます。この点もさらに研究をしていただきたい。と申しますのは、現在自由経済のもとにおいて共同主義を行なおうというのでございますから、ここに無理があるわけであります。私どもの要求も、たとえば社会党政権ができて十年もしてからの要求と、過渡期においての要求との間には、やはりニュアンス、方法の違いがあるべきでなかろうかと私は思っておりますが、今日の情勢のもとにおいて医師がその天職に専念し、そして患者も喜び、公正に行なわれるというのには、統制と自由の中間の道を進まねばなりませんから、やはり官僚的でなくて、しかも昔きめた医療担当制度については、私は再検討していただく面が多多あると思います。具体的実例は皆さんもお持ちでしょうが、時間がありませんから省きます。委員長は、もうぼつぼつ注意しなさるようなお顔つきでございますから、急ぎます。  この医療制度の改善は、一つ方面からだけでは不十分でしょう。財政が足りません。したがいまして、いろいろの方面から、医は仁術なりという古くして新しいことばが、ほんとうに安定した基礎のもとにおいて行なわれるためには、私は、お医者さんのビルディングなどについてはもう冷暖房すべきときであろうと思います。したがって、長期低利の資金を供給すべきである。最近、げたばきアパートなどには、もう五十年年賦の資金すら提供されている状況であります。そして固定資産税は、少なくとも医療に対しては、少し現在考慮されておりますけれども、全廃するくらいにやるべきではあるまいか。先日、ある国立病院に入院いたしましたら、私が戦争のある部分に反対いたしまして、国事犯として巣鴨の刑務所に入りましたそのときのことを思い出しました。あの日のことがなつかしくなったくらいです。それくらい病室というものは貧弱でございます。これではいけないのでございまして、すなわち病院の不燃化、その進歩のためには、個人で蓄積した資金には限界があります。それにたよると医者の勉強する費用も、看護婦さんの福利施設の費用もなくなってしまうわけです。それを利益金処分として計算をするならば、長期にわたる低利資金として支出いたさねばならぬ。  それから、看護婦さんの待遇改善のことは、さっきも議員が叫んだとおりです。  インターン学生対策に至っては、きのう文部大臣にもよく申しておきましたが、中村文部大臣は非常にものわかりのいい人ですから、ひとつ鈴木大臣と相談してくれ。私の長男も、いつになったらおとうさんのすねをかじらなくなるか、見当もつかぬ。これも現代における奴隷制度の一つでございます。インターン学生対策はもうできたかどうか、おやりになりつつあるのか。  それから一面、大学院及び博士課程における奨学資金などは、もう少しふやしていただきたい。そのくらいの金は、日韓会談で朴政権にパクられた、いわれなき賠償金等三千億円のことを思えば、何でもないことではありませんか。  最近、医師会で制限診療緩和についての、改善についての妥当な意見書が出ておりますが、御存じでしょうか。特に私が敬服したのは、幼児の歯科対策について歯科医師会が叫んでいる点でございます。子供のときに虫歯をなくしよう。虫歯をなくせば、大きくなってお医者にかかる者がなくて、歯科医師は自縄自縛ではあるまいかとお考えでしょうが、私はこの態度こそまことにりっぱな態度で、子供のときに歯をなおす、そのためには特殊技術も必要ですし、それについての医療単価の問題も必要でしょう。私はこの問題を取り上げるべきである。財政的には、子供のときにたくさん金をかける、しかし、おとなになってから減りますから、全体として国家財政の負担はふえやしないと思うのです。かかる態度こそ医師会らしいみごとな態度である。この「幼児むし歯予防対策」、お読みになっていらっしゃらないならば差し上げますから。  学校における校医の待遇については、きのう受田委員から質問がありました。これも政府からの御答弁がはっきりしておりません。  校医、それから歯科医、それから心理学コンサルタント、これは厚生省として念頭にとどめておくべき問題であろうと思います。  さらに、発言をとめられないうちに結論だけ申しますが、先日、世田谷と杉並のちょうど境に交差点があります。そのスモッグ調査の結果が発表されましたが、何と驚くべし、ワシントンの十倍だということです。ワシントンならばこれは交通制限をするくらいである。ことしの秋からヨーロッパ及びアメリカにおいては大型自動車には防除装置をつけるということです。子供がマスクをして学校に通うという姿を見て、一体厚生省の皆さんはどうお考えでしょう。子供の肺ガンでもふえてきたとき、一体皆さんはどういうようにお考えでしょうか。どうか、党派のことではございませんから、私どもの発言をたてにいたしまして、そしてスモッグ対策について至急各省連携して対策を立てていただきたいと思います。  それから最近児童の死亡率の中で、御承知のように交通事故による死亡が非常にふえておるのでございます。立体交差を奨励する、その立体交差の場所にげたばきマンションをつくれば解決することでございます。こんなことはやろうと思えば何でもないのです。オリンピックの道路すら、わずか二年であんなすばらしいものができたではありませんか。昭和六年、私が東大を出たとき、二百万トンであった日本の鉄が、いまでは四千万トン、世界第三位です。しかるに東京のまん中で、すし屋に行ってみると、まだまだ素盞鳴尊がものしたもうたようなくみ取り便所が圧倒的です。これは食料品店だけでも私は水洗便所に早くかえるべきだと思いますが、どう考えましょうか。  それから老人の自殺率がふえております。これもあとで死亡別率を承りたいのですが、その理由の大部分は、住宅対策貧困のため世をはかなんだというのが非常に多いのでございます。さらに青年の自殺がふえております。私は昨日、孟母三遷の教えを例に引いて、建設省に注意を促しましたが、孟子のおっかさんといえど、公団のくじに当たるまで十年かかるので、血気盛んな孟子はもうそのころは非行少年になってしまうでしょう。したがって住宅問題の解決こそは、厚生省が建設省に進言すべき、共同で責任を負うべき最大の問題であり、その解決なくして、何とか人格白書というような、そういうむだな作文はやめてもらいたい、そんなものは住宅ができてからのことにしてもらいたいと言いたいくらいでございます。身体障害者のために、せめて都営住宅なり国営住宅をつくって保障してやる。私はめくらの人たちに会いまして、目があいているわれわれですら世をはかなむ世の中に、目が見えないのによくぞやっておると思う。あの人たちにどうして住宅の優先確保ができないか。もちろん身体障害者に対する皆さんの御努力によって、職業の選択、強制規定もできましたが、これも不十分で、徳川時代ですらあんまさんはめくらの独占物にされておりました。そういう幾つかの職業がありますから、あの身体障害者雇用促進法をもっと強化していただきたい。外交委員たるわれわれが思いあまってここへ来て言うわけでございますから、記憶にとどめて、そして御努力していただきたい。  それから、妊娠中絶が依然として多い。この数はあとでおっしゃっていただきたいのですが、発表しにくければこれはあまりいいことじゃありませんからプライベートでもけっこうですが、実際はその何倍と言われております。避妊についての研究が行なわれておりますが、せっかく御研究中だということでございますから、私はそのほうの専門でありますけれども、きょうはお答えいただかなくて、むしろ最近の進歩の状況を、ひとつせいぜいよく「リーダーズダイジェスト」などもごらんください。  それから最後に、人間にはレクリエーションというのが重要でございますが、先日私はいわゆる昔の外食券食堂、大衆食堂で食事をしましたが、あれが秋田風の民芸建築であったならばこんなうまいものはないと思って食べました。そういうところでまじめに働いているおじさんやおばさんたちを助け、そういうところには低利資金でも出し得るというような政治のあり方があってよいものではないかと思いましたが、レクリエーションというのは非常に重要でありまして、大衆食堂、それからバーですらときには必要だと私は思います。上役とけんかしたりしてむしゃくしゃしたときには、ちょっと一ぱい飲んで、ワンクッション置いてうちへ帰るのが一家和合の秘訣であるという一面もあること、今日人情紙のごとき時代に、ときには酒も飲めば心も晴れ、かみしもも脱げて、友だちと語ることも、誤解を解くこともできるわけです。ところが、そのバーたるものが、価格表示制度も何もなくて、ものすごい値段。私はギリシャに行きまして、ギリシャのアテネの裏町にある暴利バーを見てほんとうに驚きまして、あのオリンパスの記念碑のもとでこういうバーがあるギリシャに対して、非常に悪い印象を持って帰りました。最近の新聞を見ますと、同じことが銀座裏、新宿等で行なわれておりますが、一体監督当局はどこであるかとお尋ねしたら、厚生省が衛生面でちょっとなにするけれども、値段のことまでとやかく言えない。ではだれがやっているか、警察か、そのやっている方に来てもらってくれと言ったのですが、とにかく価格表示制度を行なって、そしてすし屋にいたしましても、バーにいたしましても、ローマ字でもよいからやはり値段を書いてそれを守る。それから注文しないものを、フルーツいかがなどと言って、たちまちにして一万円取る。もちろん大会社ですよ。
  307. 大橋武夫

    大橋主査 帆足君にお願いいたしますが、簡単に、結論を急いでください。
  308. 帆足計

    帆足分科員 それは交際費から。交際費の総額は、まさに社会福祉費の総額に匹敵するようになっていることは御承知でしょう。こういうことはやはり厚生省の所管であって、ほんとうは簡単にしたくないのですけれども、規則は守らねばなりませんから、ひとつ厚生省は衛生だけでなくて、そちらのほうの価格の取り締まりのほうとも御相談くださって、日本のレクリエーションの場所をほがらかなものにしていただきたい。  その他ありますけれども、われわれが選んだ主査でございますから、主査の議事進行を守りまして、以上各項につきまして、ひとつ御答弁だけ簡単に正確にいただいておきたい。
  309. 若松栄一

    ○若松政府委員 医師の年金制度の問題は、現在、医師会、歯科医師会等でそれぞれ検討中のものでございます。医療制度について、保険の支払い制度と関係がある医療制度の問題として、医師の自主性その他を確保し、医療の内容をよくしていくという努力をする必要があると存じております。  医療施設の整備につきまして、低利の資金をというお話がございましたが、これはすでに数年前から医療金融公庫を設けて……。
  310. 帆足計

    帆足分科員 金利が高いのです。期間も短い。
  311. 若松栄一

    ○若松政府委員 期間の問題も、いま五十年というようなお話もございましたが、将来とも実情に沿って努力してまいります。  看護婦の待遇、インターン制度並びに大学病院の博士課程等における、それぞれ待遇改善の問題であろうと思いますので、それも関係方面と協議の上……。
  312. 帆足計

    帆足分科員 やっておりますか、相談をしておりますか。
  313. 若松栄一

    ○若松政府委員 インターン制度につきましては、手当の問題は今回は解決しておりませんが、その他のインターン周辺の内容改善あるいは施設の整備ということについては、本年度からかなりの飛躍をいたしたつもりでございます。  歯科に関して、幼児の問題等がございましたが、お話の歯科医師会の出しております公衆衛生対策に関する書物がございまして、拝見いたしまして感銘をいたしております。
  314. 帆足計

    帆足分科員 感銘だけですか。
  315. 若松栄一

    ○若松政府委員 この点大体同感でございますので、今後ともその方向で進んでまいります。
  316. 今竹義一

    ○今竹政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のありましたバーにつきましては、これが風俗営業の対象である場合及び深夜営業——深夜と申しますのは午後十一時以後でございます、深夜営業の場合には、風俗営業等取締法に基づく各都道府県の条例におきまして、料金または税額を見やすいところに表示することという規定並びに客の求めない飲食物を提供しないことという規定がございます。これに基づいて現在取り締まりを行なっております。四十年の上半期、一月から六月でございますが、三百四十件ばかりの取り締まりを行なっております。なお今後ともそういうものについての取り締まりを強化してまいりたい、かように考えます。
  317. 帆足計

    帆足分科員 そのことはもう見るに忍びない、見るに忍びない程度になっておりますから、表に表示するぐらいにしていただきたいと思います。でもあなたのほうは、下のほうの人は給料も安いものですから、ついおかみとなじみになってしまって、そして十二時過ぎて、つい酔えば一時ごろになっておしかりを受けることになる。そっちのほうは罪が軽いと思うのです。しかし、女の子供がかってに飲んでしまったり、少しぐらいはかわいらしいのですけれども、やまたのおろちが酒を飲むように飲んだり、それからフルーツなどといういかがわしいものに何千円もとったり、そういうことはあなた方がぼやぼやしているからそうなるのです。とくとひとつ表示をしてもらいたい。そして人情の機微をもって保護すべき点は、大目に見るところは緩急よろしくやっていただかないと、われわれもちょっと飲み過ぎたりしたときに都合が悪いのですから、そこは良識でやっていただきたい。しかし、見るに見かねるようなきたないこと、残酷なこと、それからきたならしいことはひとつやめていただきたい。  それから、先ほど公衆衛生関係の御担当の御答弁をいただきましたが、とにもかくにも大臣をお助けくださって、ただいま御答弁なさったことは、一歩なり二歩なり前進して、そして日本を明るい国にするように、特に医療行政が暗いようなことでは困りますから、切に実行面において、あれは帆足のやつが言うだけのことを言うて帰ったというのでは困るのでありまして、私はおそらく途中特別委員として厚生関係委員会に出していただいて、その後どうなったかしつこくお尋ねします。来年はまた速記録を持ってきて必ずやりますから、これで済んだなどとは夢にもお考えにならないように。そして原則としては、私は皆さんが好きなんですから、厚生省の皆さんは、いいファンがおるとお考えくださって実行していただきたい。委員長も聞き及びのとおりですから……。
  318. 大橋武夫

    大橋主査 わかりました。記憶にとどめます。  次に、小林進君。
  319. 小林進

    小林分科員 限られた時間でございまするし、私はもう社労では十何年めしを食っているのでありますから、一言言えば、大臣以下幕僚も私が何を問わんとしておるかということはよく察知していただけると思いますので、なるべく冗漫なことばは避けて、項目だけ簡単に申し上げて御答弁をいただきたいと思います。  まず第一番に大臣にお伺いいたしたいのは、現在保険行政を進めていく上において医師の数がどれくらい不足をいたしておるか承りたいと思います。
  320. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  321. 若松栄一

    ○若松政府委員 医師の数は現在十万ちょっとでございますが、医師が現在不足しておるということは間違いないと思います。と言いますのは、昭和三十年ごろまでは大体一人の医師が二十ベッド程度担当しておりましたが、今年度におきましては、ベッドの伸びに対して医師の伸びが少ないために、現在の統計では一人の医師当たり二十五ベッド程度まで増加いたしております。したがって、このままでいけば、医師がかなり不足してまいると思われます。それに対しましてここ三、四年の間に医師の学生の入学を相当増加いたしておりまして、五年ほど前に二千八百人程度でありましたのが現在三千四百人程度に増加しております。さらに今後も若干ずつ増加いたしまして、将来人口十万対百程度の医師を置く。ここ数年の間に百二十程度くらいになるのではないかと推定をいたしておりまして、いまの調子でいけば、募集増加した学生が卒業するころになりますと、かなり緩和するのではないかというふうな見通しを持っております。
  322. 小林進

    小林分科員 私は、そんなことを聞いておるのじゃないのです。それだから私は先ほどから余分なことは言いませんから、なるべく要領よく返答してくれとお願いしておるのはそのことなんです。医師の数なんてちゃんと書いてある。私が教えてあげましょうか。三十九年度末現在で十万八千百二人、三十九年度末でふえた医師の数は千六百人、あなたの説明を聞かなくても、そんなことは医療関係新聞を見ればみんなわかることなんだ。私はそれを聞いておるのではない。現在の各種の健康保険をいわゆる皆保険の形で完全に進めていくためには、一体医師の数は何名不足しておるかということを聞いておるのです。言いかえれば、あなたは皆保険だ、あるいは国民全部に医療保障を完全に実施したというけれども、至るところに医師は不足しておるじゃありませんか。診療所があったって医師のいない診療所があるじゃないですか。至るところに無医村地区があるじゃないですか。僻陬地があるじゃないですか。そんなものは形式上の皆保険であって、医師の不足というのは全国民の世論ですよ。市町村長をつかまえてごらんなさい。市町村長の重大な仕事の一つは、かねや太鼓をたたきながらお医者さんを探すのが重大な仕事の一つになっておる。そういう方面における医師の不足は幾らですかと聞いておるのです。あまりよけいなことをしゃべらないで、要領よくぱっぱっと説明してくださいよ、限られた時間ですから。
  323. 若松栄一

    ○若松政府委員 医師の需要というものを正確に算出することはきわめて困難でございます。そういう意味で私は現在と将来の見通しを立てて、現在はこうであって将来がどの程度緩和できるかということを申し上げておりまして、医療法の規定といいますか、そういうようなものだけで現実の医師の不足云々というものを数字の上で的確に何名不足というようなことはきわめて困難でありますので、先ほどのような答弁を申し上げたわけであります。
  324. 小林進

    小林分科員 あなたはそれであなたの答弁は済んだと思うけれども、そんなのは答弁になつていませんよ。一体医師一人当たり何人の国民——たとえて言えば、現在医師は十万八千人おる。人口は一億だ。そうすると医師一人当たりに対して千人と若干だ。ただ、それだけで医師の過不足が出ますか。社会主義国家や計画的に医療を管理する国ならば、あるいは計画的に配置するから、ソ連のように五百人に対して医師一人というのなら、それは全国どこへいったって過不足の勘定はできるだろうが、わが国では医療は自由なんだ。国家管理ではないのですから、勤務員になっておっても、あしたからやめて私は開業しますと言えば、それをとめることはできない。医者の行動は自由なんだ。だからわが日本には、十万八千の医者がおるといえども、医者は決して計画的に配置されていない。都市に偏在いたしております。医者にも生活がある。経済がある。娯楽もあれば文化もある。家庭生活もあるのだから、それが成り立たないようなことはしたくない。わが国の医療制度では成り立たないですよ。だから、一年間に三千人の医師がふえる、五千人になる。それで医者の需給関係が完全にいくなどと甘っちょろいことで医療行政をやってもらったのではたまったものではない。一体、去年の一年間で開業医はどれだけふえておるのですか。それから保健所の医者がどれだけふえて、その比率が何%になっているか、ちょっと教えてください。
  325. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在私の所持しておりますのは三十九年度末の医師数あるいは施設数はございますが、昨年との増減については現在申し上げられませんので、資料を後ほど整えて申し上げたいと思います。
  326. 小林進

    小林分科員 三十九年度のあなたの持っている資料ならわかる。この新聞に載っているのだ。聞かなくてもよろしい。三十九年度末の資料だけでも確かに医者は千六百人ふえているけれども、その内容を見れば、開業医、いわゆる病院の開設者は一年間で二・七%も増加している。開業医が一一・七%もふえているということは、都会に医者がふえたということなんですよ。けれども、その反面、一体診療所——ほんとうに国民の皆保険を、末端において責任を持って健康を保持しているいわゆる診療所勤務者というものはどういうふうになっているか。四・一%も減っている。あなた方が言われているわが日本のいわゆる皆保険というものは、残念ながらこの医師の一年間の動向をながめてみれば、だんだん皆保険と逆の方向へ進んでいるということだ。これは医療保障の逆転現象を医師の動向からながめることができる。三十九年にはこれほど診療所勤務の医者が減っている。それが四十年になってどんな形に出ているかということをあなたに聞きたいために、最初はそのものずばり質問したのだけれども、ちっとも回答になっていない。わかりますか。
  327. 若松栄一

    ○若松政府委員 四十年度の点がわかりませんので、現在私どもが得ております速報は三十九年度の資料でございます。三十九年度における三十八年度との比較はわかっております。それで先ほど先生、診療所の医師は一一・七%とおっしゃいましたかと思いますが………。
  328. 小林進

    小林分科員 そんなことは言わない。それだからたいへんなんだ。冗談を言いなさんな。病院の開設者が一一・七%増加している。そして診療所の勤務者が四・一%減っているというのだ。これはたいへんなことだと私は申し上げている。あなたは全く逆にとっている。
  329. 若松栄一

    ○若松政府委員 診療所の開設者が三十八年から九年にかけまして一・七%増加いたしております。そして診療所の勤務医師は二%増加いたしております。病院の勤務医師は一・八%減少いたしております。診療所の開設者並びに診療所の勤務医師は若干ふえております。
  330. 小林進

    小林分科員 あなたの資料と私の資料が違うようだから、あなたにこれをやりますから、これを見てどっちが間違っているか………。
  331. 若松栄一

    ○若松政府委員 失礼をしました。いま歯科医師のほうを………。
  332. 小林進

    小林分科員 何ですあなたは。委員長、すわっておってそういうことばかり答弁させるから時間を食ってしまう。そして時計を見ながら、もう一時間たったから小林君やめなさいと必ず言うのでしょう。これだから質問にならない。
  333. 大橋武夫

    大橋主査 問答をされるのは委員と政府委員の間でございまして、委員長はそれを公平に拝聴いたしております。
  334. 小林進

    小林分科員 委員長の人格を信じてやりますが、いま申し上げましたように、私はもうあなたとは問答はいたしません。いたしませんからいま一度資料で整えて、ひとつ四十年度まで含めてこういう勤務医と開業医の動向、動勢等をいま少しつまびらかにして提出をしていただきたい。  私は大臣にここで申し上げたい。私どもの問答をお聞きになりましたように、あなたは一生懸命に皆保険に力を入れて、医療行政や医療社会保障がうまくいっておるようにおっしゃっておりますが、内容はかくのごとくです。内容はかくのごとく、いわゆる僻村地区を守っておるのはほとんど診療所なんですから、その診療所における勤務医というものはだんだん減って、いわゆる皆保険の形がくずれているのですよ。したがってそういうところにこの医師を充実するということが私は当面にとって一番重大な問題だと思っておる。またこの問題はあなたも経験されておるでしょうけれども、私も経験しておる。地方に帰ってどの地区に行っても町村長や末端の行政官に必ずくどかれることは、自分たちの部落や町における医者をいかにして確保するかという問題なんです。これは重大問題であります。あなたはこれに対して一体どういう所信をお持ちになっておるか承りたいと思います。
  335. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も僻地をたくさんかかえております岩手の出身の者でございまして、農村や山村僻地におきまして、診療所等ができましても医師の確保が非常に困難であるという事実をよく承知をいたしております。  そこで就任以来、僻地医療対策につきましては事務当局を督励いたしまして、そうして地元の病院でありますとかあるいは医師会方面とよく連絡をとりながら医師のごあっせんを願ったり、あるいはまた巡回診療であるとか、あるいは患者輸送車の増強であるとか、いま直ちに医師の確保を全面的にすることが困難な事情にありますことは御指摘のとおりでございますので、それを補完する施策もあわせて僻地の医療対策を進めてまいりたい。また先ほどお話がありましたように、そういう地方に長くとどまっておりますと医学技術の面でもおくれをとるというようなこと等も、僻地に参りますことを非常にいやがっておる原因一つにもなりますので、研究費等についての助成をするとか、そういう面につきましても配慮をいたしておる次第でございます。今後とも、不十分な点をよく承知をいたしておりますから、引き続き努力をしていきたいと考えております。
  336. 小林進

    小林分科員 この問題はきょうやきのうの問題ではございませんで、歴代厚生大臣が全部一応あなたのように答弁をした問題であります。その答弁のつどに、若干研究生に幾らかの補助金をくれる、あるいは僻地の地区にヘリコプターを持っていく、あるいは船を持っていく、あるいは交通の便をはかる、そういうようなことでこの問題をうっちゃらかして——うっちゃらかしたと言っては悪いけれども今日に至っておる。ちっとも問題の解決になっておりません、おらぬのです。あなたの答弁でもわかっておるように、この問題はそんなことで解決できる問題ではございません。もっと基本的に、もっと掘り下げて根本的にやってもらわなければならぬ問題です。  まあ一つの例として医者を一人養成する、入学資金だっていまのところは三百万円も五百万円もかかる、これはやみ価格であるかどうか知りませんが。普通の大学卒業生の倍以上も年数がかかる。出てきてからも多年の研さんの時を払わなければならない。その医者がつとめてみればわずかの金だ。これは全部ではありません。そういうことも含めていまこそ根本的に取り組まなければならない問題があるのです。だれもそれをいじろうとしない。そんなことではこの問題の解決にはならないと思う。いま少し真剣に考えてもらわなければ、国民は健康保険料だけである。あとでも言いますけれども、だんだん値上げをされて、金だけ取られるけれども、病気になったときには一つも生命の保障は受けていない、そんなかたわな医療保障をやってもらっているという現状です。いまの医療保障というものは中間層から金持ちだけだ。健康保険を活用してかからぬでもいいのに健康保険を乱用してどんどんかかっていて、貧乏人のほうは医療費だけで苦しめられる。僻地の住民は医療費の重圧に泣かされておって、ちっとも医者の恩典にも浴し得ない。最も貧乏人の僻地にいる者に恩典を加うるべき医療保障が、逆保障の形になっておるというこの現象は、まだまだあなたの答弁の中にはこれを根本的に解決しようという基本的な腹がまえが残念ながら見えない。残念至極でありますけれども、何しろ短時間でありますから大いに善処をお願いいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  第二番目に、今年度の生活保護費はどの程度お上げになりましたか。
  337. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 小林さんすでに御存じの一三・五%でございます。
  338. 小林進

    小林分科員 大体三十九年度が二%の値上げをされておる。四十年度が一二%の値上げをされており、今年度は一三・五%。経済企画庁その他の発表によりますと、わが日本の消費物価の値上げは近年一体どういうふうになっておりますか。ちょっとここ数年来の物価の値上げ率をお聞かせ願いたい。四十年度ほど激しく物価の値上がりをした年はないでしょう。経済企画庁長官は四十年度の物価値上げは四%に押える、三%に押えるというふざけたことを言って国民をだましておきながら、四十年度の物価の値上がりなどは八%をオーバーするじゃないですか。七・八%と言っておるけれども、七・八%にしたところで例年の物価の値上がり率から見たらどうですか。一番値上がりの率が多いでしょう。どうですか、多くないですか。一々それを見なければ覚えていられないという、そんな頭の悪いことだからなかなか問答が浸透しない。いやしくもそれを専門の局長ぐらいになったら右から左にぱっぱっと返事ができるようにならなければいかぬ。それを答弁する者はいないのか。
  339. 今村譲

    ○今村政府委員 四十年度の経企庁の見通し七・七%という計数は持っておりますが、三十九年度以前のものについてはここに持ってきておりません。
  340. 小林進

    小林分科員 それがいけないんだ。大体私が質問するというのはこういうことが質問に出るだろうと、十年以来私の質問の内容はわかっておるはずなんだ。なぜ持ってこない。三十五年からずっとやってみますと、政府の統計においてもまだ七・七%と、そんなに大幅に値上げしたのはありません。それくらいインフレの年なんです。あなた方が内輪で見た物価の中でもものすごく値上がりをしておる、そういう状況の中にこの生活保護費——最低生活にあえいでいる者に対してたった一三・五%というのは大臣どういうことです。もっと物価の値上がりをしないときでも、一二%も一三%も前年度、前々年度上げている。これほど大幅に上げておるときに、前年度や前々年度と大差のないような上がりにしておくことは、いよいよ生活保護者に対しておまえたちは死んでしまえと言うのと同じ結果ではないかと申し上げたい。いかがですか。
  341. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 四十一年度の生活保護費の一三・五%を決定いたしましたのは、この生活保護費は、一般の生活消費水準と見合ってこれを計算いたすのでありますが、それを見てまいりますと、経済企画庁の経済見通しによると一〇・二%程度の上昇ということに相なっておるのであります。そこで私は大蔵大臣との折衝にあたりまして、一三・五%に御決定を願ったのでありますが、これによっていまの消費水準の上昇の一〇・二%を埋めてなお格差を縮めることができるというような判断で一三・五%にいたしたのでございます。社会保障制度審議会におきましては、昭和三十五年度の実績を基礎といたしまして、四十五年度までに実質三倍程度に改善をすべきであるという答申がございます。現在昭和四十年度までに、名目で二倍、実質で一・五二倍というようなところまできておりますが、さらに昭和四十一年度で一三・五%へ前進をいたすわけでございますが、私は今後もさらに努力をいたしまして、この目標に到達するように引き続いて努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  342. 小林進

    小林分科員 昭和四十年度の消費者物価の値上がりは幾らですか。
  343. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 消費者物価の値上がりのことを申し上げておるのではありません。この一三・五%を決定した根拠はどうかということをお尋ねでございますから申し上げた次第でありますが、一般の国民の消費水準の上昇は、経済の見通しによりますと一〇・二%上昇することになっております。でありますから、低所得者のほうに対しましては、それを上回る一三・五%といたしまして格差をさらに縮めるように努力をしたということを申し上げておるのであります。なお昭和四十一年度のこの生活保護費の決定にあたりましては、昭和四十一年度における物価値上がりの見通しである五・五%値上がりというものを計算の中に考慮いたしておりますことは当然のことであります。
  344. 小林進

    小林分科員 私は、一般の生活水準の上昇が一〇・二%という経済企画庁の推定数字を信用していないのです。だけれども、ここであなたと論議してもしようがありませんからその論議はやめにいたしましょう。あなたの説明によると、そのほかに経済企画庁が今年度の物価上昇推定の五.五%も含んでおいて今日一三・五%上げたことは、一般の生活水準との格差をむしろ縮めて非常に成功した数字であるというふうな説明でありました。それではお尋ねいたしますが、最初厚生省が大蔵省に生活保護費として要求せられたのは幾らでありましたか。一六%ではございませんでしたか。
  345. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 一六%でございます。これはもっともっと格差をかけ足で縮めたいという考えでございましたが、財政全般の関係からいたしましてその程度にとどまった次第であります。
  346. 小林進

    小林分科員 そうすると、一六%はあなたはやまをかけたわけだな。一三・五%でも成功したと言われるんだが、山をかけられた。鈴木厚生大臣は謹厳実直にして山をかけられる方だと思ってなかったのですが、山をかけられたのですか。
  347. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 小林さんも御承知のように、社会保障制度審議会におきましても、先ほど申し上げましたように昭和四十五年度を目標に、実質で昭和三十五年度の三倍程度に改善をすべきであるという勧告もちょうだいしておりますから、できるだけ私どもはその目標に到達をするように、そういう努力をいたしておるのでございます。しかし、一般との関係はいまのように一〇・二%でございますから、それは充足できる。その上に格差を解消するために私は当初大幅に一六%アップ、こう考えたのでありますが、一三・五%ということで決定を見た次第でございます。
  348. 小林進

    小林分科員 これも時間がないから、私は結論だけを申し上げておきます。  生活保護法、そこには何とあるか。生活保護の基準は厚生大臣がこれを定むと、こういう規定がございまして、その生活保護基準の扱いというものは非常に厳格に法律できめてある。といって、日本の法律は別にいたしましても、先進国、外国の例を見るとどうなっておりますか。これは生活保護の基準を定めるためには、特別の第三者の機関、審議会というものを設けて、そこであらゆる資料、あらゆるものを客観的に調査をしながら、一体この国に人間として生きるためには最低どれだけのものが必要であるかという、そういう最低の人間として生きる基準を定めてあるわけです。そこで初めてその数字政府に具申をする、それを受けた担当大臣は必ずその上申どおりにそれを実施する、こういうたてまえになっておる。なぜかならば、生活の基準というものは一般の予算と違うんだ。いわゆる生活保護法の第一条にもあるように、これは憲法二十五条に定める人間として文化的な最低生活を営むに足るものを支給するという、人間が人間であるための最低の基準をそこで定めるんだ。大蔵大臣厚生大臣が魚釣りに行くようにぴくぴく引っぱったり、浮きを浮かしたり沈めたりで、あなた方の手わざによってきめられるような他の一般のものとは扱いがおのずから違う、また、それが生活扶助をきめる基準でなければいけません。いまだってあなた方のさじかげん一つによって生活のほとんどどたんばに遭遇している、生きるか死ぬかの気の毒な人たちが百六十万も二百万もいるんだ。この物価の値上がりの中に、生活保護を受けているのは幾らですか、百六十三万、百六十五万、そのまた陰にはボーダーライン層が何百万もいるのです。四百万も五百万もいるのです。その人たちの運命を、人間として救っていくか、あるいは突っ放すかの境目は、この生活保護基準の問題なんですから、それをあなたは幾らかでも近づけばよろしいから、まあまあともかく一六%要求したけれども、大蔵大臣に少しまけて一三・五%になったけれども、これはしかし格差を縮めるべきものだと言う。それじゃお聞きしましょう。一般の水準の中におけるこの生活保護基準というものは、生活扶助費でよろしい、約四人家族の標準で、第一級地で二万何ぼになりましたか、そして一体一般の勤労家庭の平均の生活水準の何十%にいっておりますか。
  349. 今村譲

    ○今村政府委員 四十一年度予算におきます一級地の四人の標準家庭で、四十年度一万八千二百四円というのが二万六百六十二円というふうに上がります。それで、これはたとえば昭和三十五年には……
  350. 小林進

    小林分科員 それは要らない。四十一年度における一般の生活水準に対して何%か。
  351. 今村譲

    ○今村政府委員 ですから、四十一年度の推定を申し上げますと、一般の家庭の水準に対する約四九・二%、これは推定でございます。というのはFIESがまだ四十年、四十一年が出ておりませんから……。
  352. 大橋武夫

    大橋主査 小林君に申し上げますが、科学技術庁の上原国務大臣がお見えになっております。
  353. 小林進

    小林分科員 それはお待ちかねでございましょうから、急ぎましょう。
  354. 大橋武夫

    大橋主査 あなたの時間はもう済んでおりますが、せっかく見えておられますので、この機会に御質問を願います。
  355. 小林進

    小林分科員 そうですか、それでは委員長も言われましたから、あなたはここで委員長の発言で救われましたけれども、いまどこの先進国へ行ったって一般の勤労世帯の生活水準に対して生活扶助費の基準が六〇%以下の国なんかありませんよ。普通の勤労者の平均の生活が一年間で五万円といえば、生活保護費というものはその六〇%、大体三万円、それ以上くれているのが先進国の例だ。何ですか、あなたの説明だって、日本はその一般生活水準の中で四九・二%、これは推定だと言うけれども、半分以下じゃないですか。普通の人間がいわゆる健康にして文化的な最低水準の生活を営む、その生活水準の半分にも至らないではないですか。こんなことで人間が生きていけますか。新憲法のもとでやっていけるものですか。やっていけると考えるところに、大臣、まだあなたの甘さがあるのです。こういうようなところはひとつ根本的に改めて、いま少し、日本の所得倍増だの、高度成長政策なんといったら、そんなに上のほうばかり高めて二倍も三倍もするように——上原さん、よく聞いてください。そんなに多額納税者議員ばかりつくらなくてもよろしいから、下のほうの生活を引き上げるというところに問題の重点を集めてもらわなければ、特に厚生省はそれに重点を置いてもらわなければ、とてもこんな物価高の世の中で最低水準で生きている人は生きていけませんよ。もっと真剣に考えていただかなければならないのでございまして、私は今年度のこの生活保護基準につきましては、何といっても四十年度の消費物資の上昇七・八%で、例年よりも大幅に物価が上がっているにもかかわらず、それに対抗するような上げがないということが私は問題だと思う。  それから不況下における物価の値上がりですが、それもこの生活保護費の中に反映していないということ、それから四十五年度までには制度審議会の答申に基づいて実質三倍にするということ、その三倍の目標に向かっては決して到達するような引き上げの幅ではない。こういう三点において残念ながら賛成することができませんし、同時にもっと根本的な問題は、この生活保護基準のきめ方について、まじめさがないということだ。法律に準拠して、これはもっと厳格に考えて扱っていくという、そういうまじめさがない。これが資本主義の政党の一番悪いところだ。まじめさがない。ほんとうに生きるか死ぬかで苦しんでいる者に対する真剣な取り組み方がないということは、賛成できない。  それでは第三点に移りまして、これはひとつ上原さんにお伺いいたしましょう。  あなたは科学技術庁長官でいらっしゃいまするが、いわゆる内閣に列する実力大臣として、まずあなたの御心境を承りたい。あなたは昨年はわが日本における多額納税者としての最高であらせられた。私はやきもちをやいて言うのではないのです。最高であらせられた。そのあなたがつくっておられる、あなたが主宰をしておられた、いまは社長ではありません、大正製薬、その大正製薬でつくっている薬が、昨年の春の感冒の盛んなるときに、いわゆるかぜ薬アンプルというものをあなたがお出しになった。そのアンプルによって数名の人が生命を失ったのです。死んだのです。死にましたから、われわれはこの問題は重大であるというので、昨年の五月の三十一日に、あなた方の製薬団体の連合会の会長の武田長兵衛、それから薬事審議会の新薬特別部会長の佐々貫之、三共製薬の常務取締役の福地言一郎、エスエス製薬取締役社長の泰道三八、日本薬剤師会の専務理事の谷岡忠二君等々を参考人として来ていただきまして、そして、この問題を追及いたしました。ところが、そのときの追及に基づいても、一番薬を飲んで一番死んだ比率の多い大正製薬のかぜ薬アンプルをつくっておるあなたの会社からお見えになっておりません。あなたの会社に来ていただくことは後日に延ばそう、場を改めていま一回大正製薬の責任者も来てもらって、事の真相を明らかにしていただこうということで留保せられている。留保せられているうちに、上原さん、あなたは多額納税者になり、あるいは閣僚のいすを占められた。巷間世人は何と言っておるか。一将功成って万骨枯るるというようなことで、上原さんが閣僚になる限りは根もないわれわれはこうして死んでいかなければならないという怨嗟の声がちまたに満ち満ちています。あなたは一体この問題をどういうふうに考えて閣僚のいすにすわっていられるのか、まずそこからひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  356. 上原正吉

    ○上原国務大臣 私は科学技術庁長官として勤務いたしておりまして、いまお尋ねの事柄は実は私の管轄以外でございますので、ここで御返答申し上げることはお許しをいただくようにお願いする次第でございます。
  357. 小林進

    小林分科員 私どもは管轄、不管轄の問題じゃない。あなたは閣僚でいらっしゃる。国民の上に君臨する閣僚なんだ。閣僚としての心境を承るに、管轄であろうとなかろうと私は何の問うところではない。しかも、この場所は厚生委員会です。あなたの関係していられる薬事行政等に対して私はどうしても問題を解明していかなければならない。その前哨戦としてあなたに承るのに、管轄の問題以外だから国務大臣として答えられないなんということは、あなたは問題を起こして——あなたは間違えているのじゃないですか。いまこそ、こういう薬を審議する、厚生行政を審議するこの場所にこそ、あなたは自分の信ずる所信を明らかに述べて、国民の前に、あるいは自己の信ずる道を明らかにする、あるいはあやまるところがあればあやまる。それが閣僚として国政を運営している者の正しい態度じゃないですか。間違っていられるのじゃないですか。それじゃいま一回申し上げましょう。  昭和四十年二月十一日、千葉県、男、五十五歳、十日から寝込み、強力パブロンアンプル(大正製薬)を午後六時十分服用、医師の往診直後死亡。死亡診断はピリンショックによる心臓麻痺。同じく昭和四十年二月十五日、千葉県、女、十五歳、十三日かぜぎみ、十四日午前十時パブロンアンプル(大正製薬)一本服用、午後九時二本目服用、十五日午前二時——三時ごろ頭痛、嘔吐、午後七時医師が往診に来たときは死亡。死亡診断は心臓麻痺。二月十六日、静岡県、女、三十九歳、十五日午後三時半頭痛、医師の診療を受けダン等を注射。十六日午前零時解熱せず強力パブロンアンプル(大正製薬)一本服用、午前六時医師往診。ビタミン剤その他を注射、病院に運ぶ途中死亡。死亡診断は急性心臓麻痺。二月十六日、新潟県、男、四十六歳、十六日パブロン(大正製薬)一本服用、三時間後呼吸困難。二月十八日、静岡県、女、二十八歳、十五日強力テルミック(大正製薬)一本、十六日強力テルミック(大正製薬)一本、十七日午後一時医師の診断を受け、ウインタミン(塩野義製薬)等注射し、梅毒、精神分裂症の疑いで入院をすすめる。しかし、A病院を断わられ、B病院に行く途中昏酔状態となる。B病院でも施療はしたが入院拒否、C病院へ行き施療するも十八日死亡。二月二十日、千葉県、女、二十二歳、十九日午後六時半強力パブロンアンプル(大正製薬)一本、同九時一本服用、二十日午前三時嘔吐、同十時診療所へ行き絶命。死亡診断は急性不全。まだ読みましょうか。二月二十一日、愛知県、二十九歳、十九日午後八時かぜぎみで強力パブロンアンプル一本(大正製薬)、二十一日夜同じく一本服用後気持ちが悪くなり入院、これは珍しくも二十二日回復になっております。まことに救われた気持ちであります。
  358. 大橋武夫

    大橋主査 小林君にお願いいたしますが、まだたくさん質疑の通告がございますので、時間も過ぎておりますからあとできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  359. 小林進

    小林分科員 委員長の御注意がありましたので、まだ例が続きますけれども、ここで中断をいたしますが、こういうふうにあなたが発売をせられている薬を飲んでこれだけの人が死んでいる。死んでいるのですよ。それに対してあなたは管轄外でありまするからお答えにならない。責任をお感じにならないというならばそれでけっこうでございます。どうぞ。
  360. 上原正吉

    ○上原国務大臣 薬を飲んでなくなられた方にはほんとうに心からお気の毒だと存じます。しかし、薬務行政は私の管轄でございませんので、この点は私から御説明申し上げたり、御回答申し上げたりするのは——私は、閣僚の心境を問うとおっしゃれば、ほんとうに微力でございますけれども、心から御答弁申し上げる次第なのでありますが、薬務行政に関しまするところはお許しを得ますようにお願いを申し上げます。
  361. 小林進

    小林分科員 もしそれは国務大臣としてお答えできないというならば、厚生大臣にお尋ねいたします。  これくらい一特定の製薬会社によって、いま私が読み上げたようにみんな死んでいる、こういうものに対してだれかがこういう家庭に補償する必要は一体ないのかどうか。厚生省はこういうれっきとした事実に対して、こういう被害者の事後処置に対していかなる処置をおとりになったのか、おとりにならぬならばならぬでよろしい、お聞かせ願いたいと思うのであります。
  362. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 当時の薬を服用いたしましてからの状況等薬務局において調査をいたしたと思いますから、薬務局長から御報告をいたします。
  363. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 ただいま大臣も申し上げましたように、この問題についてはいろいろ先生申し上げられましたように、薬の問題とそれから本人の特異体質の問題、いろいろ原因があるようでございます。したがいまして、簡潔に申し上げますと、なくなった遺族の方々に対して、厚生省として特別の手当てをしているということはございません。
  364. 小林進

    小林分科員 特別の手当をしていない、死んだ者は死に損か。そういう薬を製造している製造元の責任者は、時めく日本一の多額納税者になって、国務大臣になって、位人臣をきわめている。薬を飲んだ人は死んでいるが、一銭の補償料もない線香料を上げない。そのまま殺しっぱなしか。
  365. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 なくなった遺族の方に対しては、それぞれ県当局を通じてしかるべく丁重なお悔やみもしておりますけれでも、経済的な問題につきましては、特に政府として特別な手当てはしておりません。
  366. 小林進

    小林分科員 私は、そういうあなた方のやり方に対して義憤を感じるのだ。私は憤りを感じているんですよ。それだから、厚生省の薬務局なんというものは、みんな薬屋のエージェントだと申し上げている。これはもうここでは申し上げませんけれども厚生省の薬務局の中からみんな定年になってやめていけば全部——全部と言っては語弊がありますけれども、大半は薬会社に買われて行っている。そういうような根性で、現役のあなた方までもみんな薬会社に奉仕しているから、死んだ者に対しては気の毒なという考えはない。そのまま犬死にだということになる。時間がないから私はこの問題は攻めていきませんけれども、しかし、まことに奇怪千万だ、まことに残念しごくだ。  そこで、時間もないから私は急ぎますけれども、現在わが国が世界じゅうで一番多いのは薬でしょう。一体、専門薬、家庭薬、保健薬を込めて、厚生省で認可している薬は何万種類ありますか。
  367. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 はつきり調査はいたしておりませんが、大体六万から七万件ぐらいが製造認可をした薬でございます。そのうち、現実に現在市販しておりますのは、大体二万から三万ぐらいだ、そのように推測しております。
  368. 小林進

    小林分科員 六万も七万も、それほどの種類の多い薬を何で一体許可しておかなければならぬのか。何でそれを整理しないのか、それが第一ふしぎでたまらない。同時に、一体最近の薬行政は何です。  私は、薬というものは、病気になつた者が治療用に飲むものだと思った。ところが、ここ数年の薬のやり方は何です。薬は病人が飲むのじゃないのです、健康な者が飲むのだ、じょうぶな者に飲ませるのが薬なんだ、健康体の者が薬を飲む。ほほう、健康体の者が薬を飲むのかと思った。特に近代の薬の行政なんかをながめていると、そうじゃない、薬は飲むものにあらずして食うものだ。健康体の者に薬を食わせる、そういう形の薬行政が行なわれている。まるで、朝起きてめしを食う前に、まずテーブルの上に家庭薬とか保健薬を並べて、薬を食わせる。あの、人を食った乱売方式、あの不当なる広告のあり方。それをあなた方は何も取り締まろうとしない。しかもそのうちに、ああいう被害が出ている。一体、美人になるための美容目薬、この薬をつけると美人になる——美容の目薬とは、これは薬ですか。あなたは薬と思っているか。薬じゃないのか。
  369. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 美容目薬という薬品につきましては、私どもそういうような名称の薬を許可してはおりません。ただ、遺憾ながら先生御指摘のように、はでな宣伝なりをやっております関係上からして、そういう名称をつけておるわけでございます。私どもが許可しておりますのは、美容目薬というものではなくして、医学的な見地から、いろいろな、目の充血とか、あるいは目の障害等を予防あるいは治療するための目薬、こういうものを許可しておる、こういうことでございます。
  370. 小林進

    小林分科員 美容目薬でも、しろうとに聞かせれば薬は薬だろう。  それから整形医学なんといって、人の鼻をひっぱったり、ほっぺたをひっぱって、ふくらましたり縮めたりするのは何だ。あれは美顔術なんですか、医術なんですか。一体どっちなんだ。薬務局長、どうなんですか。
  371. 若松栄一

    ○若松政府委員 やはり医術のうちの一つであろうと思います。
  372. 小林進

    小林分科員 それでは頭にくるやせ薬なんというのは何だ。これは美容術なのか、薬なのか。女性の被害者がふえておる。「甲状腺ホルモン剤市販後、副作用わかる」などという被害が続出しておる。昨年は全国の大学病院からアンケートをとったところ、二、三年前からこのようなやせる薬を買って飲んだ異常患者が百人以上もあった。これを愛用しておる女性は、全国的に相当な数にのぼっておるだろうと思うのですが、これも一体薬か、美容術か、どっちなんですか。
  373. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 俗称やせ薬といわれておるものは、私どものほうで許可しておる医薬品でございます。ただ御指摘のように、ここ数年来非常に障害が出てきております。このやせ薬といわれておる医薬品は甲状腺ホルモンの製剤でございますが、これを乱用する結果、極度に体重が減ったり、いろいろな障害が出てきております。新聞に出ておりますように、これは要指示薬として取り締まる一方、広告等についてやせ薬というような広告は一切禁止するということで、つい最近から取り扱いを厳重にやっておるということであります。
  374. 大橋武夫

    大橋主査 小林君、結論を願います。
  375. 小林進

    小林分科員 結論を急ぎます。急ぎますが、いやしくも何々薬といって使っておる薬の中に、あなた方が許可した薬もあれば、われわれ関知しない薬もあるといっても、一体それを服用したり、それを使用したりする国民はどうなるか。ほかの化粧品やほかのものならば、それは似て非なるものがあってもいいけれども、日本国民の常識からいえば、薬といえば、少なくとも人間の健康と生命に関係あるものだ。扱いはほかのものとは別個に考えなくちゃいけない。それをあなた方は、薬といえは、食わせる——まるで家庭薬、専売薬だ、薬屋に言われるとおりに、みんな新薬を出して、そしてめしより先に薬を食わせるというような驚くべき薬行政をやりながら、なおそれでも足りなくて、今後は薬という名前を使いながらあなた方の監督のないような、ああいう怪しげな薬まで乱売させておるということになるならば、これは国民は、全く交通禍なんというものではありません、狂犬にかまれたよりも危険な薬の中に生きているといわなければならない。  そこで私の結論として申し上げたいのは、薬ということばをひとつ厳格に使用する。そういう薬の行政を抜本的に改めてもらわなくちゃならない。大臣、聞いておられますか、眠っているのじゃないですか。——薬というのは、たいへんな問題なんですよ。薬ということばをそんなにやすやすと使わせない。いいですか、そういう至厳な、そういう革命的な制度というものを私は申し上げたい。大正製薬の親方がここにいらっしゃいますけれども、大体薬を家庭の中に入れて、保健薬として健康体に食わせるなどということが、これがわが日本の国民生活にどれだけ弊害をなしておるか、たいへんなものです。日本は世界一の薬の乱売国だ。そうしてそれは国民の健康を助長しておるよりも、むしろ弊害が多いというのは、それをあらわした学者の本だけでも、いま時間があれば全部あなたに読み上げて、私の研究の成果を見せるつもりだった。学者はかくのごとくいわゆる家庭薬、保健薬の乱売の危険を鼓を打ち、太鼓を鳴らして説いていますが、何もあなた方は処置をしない。いやしくも薬というものは、医者が診断をして、医者の処方せんによって扱うものが薬だ、それ以外のものは薬じゃない。家庭薬などというものはもう薬ということばを持たない。薬と一般の健康剤との区別は、医者が診断をし、医者が処方せんを書くか書かないかによって、薬と薬ならざるものとの区別をする、こういう至厳なる法規をつくってこれを規制をしなければ、私は薬の乱売から国民が救われることがないと考えております。そこまで徹底しておやりになる勇気と決断が一体おありになるかどうか、ひとつお聞かせ願いたい。
  376. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 薬の乱用あるいは薬の副作用によっていろんな健康を害する問題、こういう問題は、私どもかねてきびしく薬業界にも警告をいたしておるところでございます。また薬事審議会等におきましても、製造許可にあたりましては、慎重の上にも慎重に、従来以上のデータ等を整備いたしまして、審査をやることにいたしておるのであります。  薬の取り扱いにつきましては、要指示薬でありますとか、そういう取り扱いを厳重にいたしまして、医師の指導によって、服用のしかたによっては副作用の生ずるようなものにつきましては、十分医師の指導によって服用するように指導していきたい、かように考えております。
  377. 小林進

    小林分科員 もう時間がありませんから、これ一問で終わります。私は非常に残念ですけれども、これで終わりますが、ともかく医師の指導ではなくて、家庭薬あるいは保健薬などといっているようなものは、少なくとも薬という名前は使わせない、そんなものは剤でよろしい、家庭剤、保健剤ということにして、薬という名前を使用するものはそのつどやはり医者の健康診断を受けて、医者の調剤、いわゆる処方せんによるものでなければならないというふうに画然と区別をしてもらわなければならぬ。ここまで薬務行政がいかない限り、私はこの問題は何千べんも繰り返して、これが実施せられるまで執拗に戦います。  それからいま一つですけれども、いまの保険財政の赤字の中に、保険局長、あなた助かった、あなたに一番質問しようと思ったのだけれども、もう委員長やらせないものでありますから、最後に言いますけれども、大体四十年度に総医療費が一兆一千億円、その中に占める薬の量が大体四千億、三千八百億円くらいになっているはずだけれども、それはやはり医者の処方せんに基づくいわゆる専門薬、専門薬の値段が一兆一千億の総医療費の中にどれだけを占めているか、それ以外に家庭薬、保健薬と称して、飲んでも飲まなくてもいいような、むしろ弊害が出るような、たとえていえばアスパラCだとか、あるいは何だねこれは、こんなのがたくさんあって、これは全くどうも、リポビタンDなんて、大正製薬の、こんなものは何だ、飲んでも飲まなくてもいいようなものが山ほどあって、こういうものが一体国民の中に占めている総医療費というものは幾らなのか、私は保険財政の赤字の根本の理由は、この薬行政の放漫にあると思っている。あなた方保険財政が赤字だ赤字だ、困っているというけれども、またことしあたりは、去年あたりから、各市町村は保険財政を七割も八割も上げたばかりなのに、本年度の新年度において、各市町村はみんなまた二割か三割保険財政を上げなければならない。これが一般の地方財政を食って、市町村財政が成り立たないほど国民健康保険のために苦しめられているが、その国民健康保険のこれほどの赤字の苦しみというもののフアクターの一番中心をなしているものは薬行政の散漫です。だから厚生省の中では、薬務局が一番悪い。その薬務局の一番悪いのは、いわゆる薬屋資本と結びついている、こういうところが循環的になって、みんな国民にはね返って、国民は苦しんでいる。一体薬の総量は幾らになっているか。処方せんに基づく専門薬、一般の家庭に流す薬の総合計は一体幾らですか。それをひとつ徹底的にしぼりとるというところに革新的な厚生行政を進めてもらわなければならぬと私は思う。
  378. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 私のほうから申し上げますが、薬の三十九年の生産額は約四千三百億ぐらいになっております。毎年毎年三十六年ぐらい以降二〇%ぐらいずつ増加してきております。三十九年はいま申しましたように四千二百億ぐらいの生産高になっております。
  379. 小林進

    小林分科員 私の質問はこれで終わりますけれども、これはほんの序の口でございまして、こういう大きな問題をこれから徹底的にひとつ追及いたしまして、根本的な改革をしていただくまで断々固として小林進戦うことを宣言をいたしまして、私の質問を終わります。
  380. 大橋武夫

    大橋主査 竹内黎一君。   〔主査退席、八木(昇)主査代理着席〕
  381. 竹内黎一

    ○竹内分科員 私は所定の時間内において血液問題について大臣並びに事務当局の見解をただしたいと思うのです。実は先刻河野正委員によりまして、血液問題はある程度質疑もありましたので、私はダブらない範囲で伺いたいと思うのです。  先ほどの説明で、大体献血、預血というものが四〇%ぐらいまできた、これは私は非常にすばらしい数字だと思うのでありますが、何といたしましてもいわゆる血清肝炎という悲劇を避けるためには、できることなら献血一〇〇%で日本の血液需要をまかなうというところまでいきたいものだと念願するわけでございますが、率直に申しまして献血五〇%に到達するまでに、一体いまの御計画であとどれぐらいかかるのか、その辺の何か目安を事務当局お待ちかどうかを伺いたい。
  382. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 お答えいたします。いま先生も御指摘のように、三十九年の八月閣議決定をいたしまして、全国的な基盤におきまして献血運動を推進したわけでございますが、それ以来国民の方々の御協力によりまして、現在献血のほうだけ見ますると二七%前後のところまできている。これに預血の量を合わせますと約四〇%前後のところまでまいってきておるわけでございます。残りの六〇%ぐらいはいわゆる売血というもので占められているわけでございます。お尋ねのように献血だけで五〇%というような段階がいつになったらくるかということでございますが、私どもとしましては、今年度、昭和四十年度におきましては、当初三〇%を目標に献血運動を推進してまいったわけでございます。したがいまして、五〇%ということになりますと、さらに一段の努力をしなければならぬわけでありますが、大体現在のわれわれの考え方としましては、大体五〇%目標をここ二年ぐらいの間に貫徹いたしたい、こういうことでいろいろ施策を講じている、こういう現状でございます。
  383. 竹内黎一

    ○竹内分科員 いまの御説明で、あと二年ぐらいたてば五〇%にいくんじゃないか、こういうお話ですと、残る五〇%というのは依然として残念ながらまだ売血制度にたよらざるを得ない。かりに預血が一〇%だとしますと、残り四〇%くらいは依然として売血にたよらざるを得ない。そうしますと、非常に安全な血液をいかにして売血の中から得るかということは重大問題だと思うのです。その意味におきまして、最近いろんな専門学者が指摘していますことは、やはり血液状況の改善の一環といたしまして、献血を伸ばすと同時にやはり肝機能の検査といいますか、スクリーニングを相当にやる必要があるのではないか。こういうことを指摘をしています、そして先ほど坂元薬務局長もそれに触れられて、近いうちにそういうことをやりたいというような御意向のようにも承ったの、でありますが、あらためましてもう一度そのスクリーニングの御計画につきまして承りたいと思います。
  384. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 血清肝炎の防止策としましていろいろな方策があるわけでございます。これは先生十分御存じのとおりでございます。そこでいま御指摘のように肝機能検査というものをもう少し学問的に確立いたしますならば、御存じのように、この血清肝炎というものが相当に防止できるのじゃなかろうかというのが現在の日本の学説でございます、私ども行政当局としましてもそういうようなことをかねがねから頭に入れまして、先ほど来申し上げておりますように、数年前から日本輸血学会に委託をいたしまして、その血清肝炎の診断方法並びに予防方法というようなものについての学問的な研究をお願いいたしているわけでございます。そこでただいま先生御指摘のような肝機能検査のうちで、供血者の選別方法の確立ということがいま私どもの一番当面の大きなテーマとしまして、このことについて鋭意研究をお願いいたしているわけでございます。何と申しましても現在献血なりあるいは売血をやる際に、そういうような肝炎ビールス菌を保有しているような供血者を以前にチェツクできるということがかりに確立いたしますならば、非常に大きなプラスになるわけでございますので、現在私どものほうから日本輸血学会の先生方にお願いしまして、鋭意このスクリーニングの方策を学問的に究明して、一つの方策を確立していただくということをお願い申し上げているところでございます。先生方も行政当局のそういうような実情をよく御理解願って何とかして近くこのスクリーニングの方法を確立したいということで、現在鋭意研究をしておられる、こういう状況でございます。
  385. 竹内黎一

    ○竹内分科員 いま輸血学会のほうにそういうスクリーニングの方法の研究を依頼しているというお話でございますが、私は幾つかの文献を読みますと、肝機能検査ではS−GOT、S−GPTというようなこういう検査方法はかなり有効である、そういうぐあいに指摘をする先生方が多いようでございます。これに対して異論を唱える方もあるようでありますが、大かたの方はその有効性は認めておるようでございまして、おそらく私は想像いたしますのに、そういうスクリーニングの方法としてやはりS−GOTというものの採用が予想されると期待をいたすのですが、そう考えてよろしゅうございますか。
  386. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 肝機能検査につきまして、いろいろな方法があることは先生も御存じのとおりでございます。世界の学者もいろいろとそういう肝機能検査の個々の方策を使いながら、肝機能の検査をやっているわけでありますが、これという学問的なきめ手が現在まだ確立していないところに大きな悩みがあるわけであります。そこでいま先生御存じのように、いろいろな肝機能検査の中で特に私ども一般化して現在使用されておるといわれておるものは、GOTとかあるいはGPTというような検査方法でございますが、こういうようなものがほんとうに学問的に確立いたしますならば、相当な実績が上ってくるのではなかろうか、こういうふうに思っております。その点は先生と同感でございます。
  387. 竹内黎一

    ○竹内分科員 いまのS−GOT、S−GPTについては、私はあまり専門家でないから詳しく知らぬのでございますけれども、ただそういった肝機能検査というものを単に実行するというだけでなくて、むしろ法制化すべきである、それが大切である、こういうことを述べる学者もあるのでございますが、その点についての御見解はいかがでございますか。
  388. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 現在の健康診断の方策の中に、先生御存じのように、肝機能検査というものが法文化されていないわけでございます。これは先ほど来申しておりますように、学問的にまだ未究明だということから法文化を避けているわけでありますが、私どもはできるだけ早くそういうような有力な肝機能検査、しかも的確な肝機能検査が見出し得られるならば、早急に法制化したい、こういう気持ちでおるわけでございます。
  389. 竹内黎一

    ○竹内分科員 ここで大臣にお尋ねをいたしたいのですが、やや質問の角度がかわるわけでございますが、はたしてわれわれの生命の一部であるこの血液を、いわば薬品として売買の対象としていいものかどうか、私は個人として非常に疑問を覚えるものでございます。また御承知のように、現在健康保険制度でこれが千六百五十円という値段がついておる。そういった値段がついているばかりに、たとえ自分は預血をしないあるいは献血をしなくても、健康保険で幾らでもふんだんに利用できる、そういう値段がついておるばかりにかえって献血の普及率をはばんでいる事情があるのではないか、こういうように私どもは考えるわけでございまして、大臣にはたしてこういう血液を売買の対象としていいものであるかどうかという点についての御見解を承りたいのであります。
  390. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 お説のとおり、私は血液は売買でなしに、みんなの善意、協力によって必要な方に提供する、そういうような体制になりますれば非常に好ましい姿だと思います。しかしながら、日本は売血制度をもって血液対策として今日までやってまいりました関係からいたしまして、一挙にこれを変えることはなかなか困難な問題であるわけであります。そこで献血運動によりまして血液事情等を十分国民に御理解を願い、十分PRをし、そうして献血運動を推進いたしてまいりまして、われわれの目標とする献血でもってすべての血液がまかなわれるような方向に持っていきたい、かように念願いたしておるわけであります。
  391. 竹内黎一

    ○竹内分科員 一挙にいまの売血をなくすわけにいかぬという事情は私もよくわかるわけでございます。その意味におきましては一日も早く献血というものが少なくとも国民になじみ、もっともっと普及することを期待するわけでございますが、その議論はさておきまして、ただいまも千六百五十円という金額のことを申し上げたわけでありますが、御承知のように今日血液問題がかかえているものに例の五百円というものがあるわけであります。もう申し上げなくてもおわかりだと思いますが、その五百円というものの処理が、またある意味においては日赤に対する非難というかっこうで献血の普及をはばんでいるような事情もあるように思いますので、この五百円の問題についてはどういうお考えかを承りたいのであります。
  392. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は現在五百円のうち三百円が血液を提供された方の処遇費のようなものに使われ、あとの二百円が地方の献血の推進母体になっております機関に交付されておるわけでありますが、これが献血に対する国民感情を非常に阻害しておるというように感じておりまして、早急にこの五百円を撤廃をいたしまして、そして千百五十円で献血の分は提供できるように改善をしたいということで、いまその方向で話し合いをいたしておる次第でございます。
  393. 竹内黎一

    ○竹内分科員 その五百円を撤廃するということになりますと、明らかにここに血液については二重価格制というものが出てくるわけです。これはいわゆる窓口事務などの相当の繁雑さが当然に予想されると思いますが、それを承知の上でもやはり千百五十円を貫きたいという御意思であるかどうかあらためて確認しておきたいと思います。
  394. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 やはり献血者の意思というものを生かすということが献血を推進する原動力でございますので、ぜひそうしたい、かように考えます。
  395. 竹内黎一

    ○竹内分科員 私は大臣のその御意思をたいへんうれしく思うものでございますが、そこで続いて大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、世界の先進国といわれる国のいろいろな血液事業を見ておりますと、少なくとも血液事業については一元化と申しますか、一本化と申しますか、国営でやるとか、あるいは赤十字がやるとか、こういうぐあいに一元化しているところが大体うまくいっているように私は見受けるわけでございます。ところがわが国の場合には御承知のように血液銀行あり、また日赤のほうの血液センターありという、こういう事情でございますが、いますぐは無理としましても、やはりこの事業の一元化ということについてもう考えておく時期が来ておるのではないか。たとえば私個人の構想では血液事業団というものでもできたほうがかえって効率的ではなかろうか。またそういった二重価格制の問題もなくなるのではないか、こう考えるわけでありますが、この点について大臣の御所見があれば承りたいと思います。
  396. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたように、売血という制度がまだ今日残存いたしております関係で、商業的な血液銀行等もあるわけでございます。しかし御指摘のようにこれを一元化して、そして配給のルートを正しくしていく、整理をしていく、整とんしていくということが私も必要である、こう考えておりまして、そういう方向に向かっていろいろ改善策を考えていきたいと思います。
  397. 竹内黎一

    ○竹内分科員 この問題は事務当局からお答えを願ったほうがいいかと思うのでございますけれども、御承知のように東京弁護士会が昭和四十年十二月にこの血液問題について建議書を出しておるわけでございます。その中においていろいろと述べておるわけでございますが、その一つといたしまして、一回の採血量について現在は規定がない。これは一回二百CCとして、そういうぐあいに規定したほうがいいのじゃないかという意見を述べておるわけでございますが、この点についての所見がありましたら……。
  398. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 お話のとおり、そういう建議がございました。そこで買血業者等とも話し合いをいたしまして、自発的自主的な協力も得ることにいたしまして、法でもって規制はいたしませんけれども、現在すでに月一回二百CCに採血の限度をとどめるというようなことを実行に移しておる次第でございます。
  399. 竹内黎一

    ○竹内分科員 供血者の健康を考えましても、一回の採取壁が二百CCで月一回ということは私は好ましいことだと思うのです。そこでただちょっと心配になりますのは、残念ながらいままでかなりの部分を売血にたよってきた。ところが今回そういった決議を通じましても、こういうようなことを施行していきますと、そこに一ぺん供給量のはなはだしい減少というものが予想されるのではないか、こう思うわけです。そこで事務当局から御説明をいただきたいのですが、現在のそういった血液の需給関係、特に地方においてそういうような血液不足の心配があるような事情は出ていないかどうか、御説明を願いたいと思います。
  400. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 ただいま仰せのとおり一回の採血量を買血業者のほうで二百CCに半減いたしました関係上、全国的にながめますと、一部の地域において若干血液の不足状態を生じているという向きがあるようでございます。特に地域的に申し上げますと、東北あるいは四国等の一部の府県においてそういうような事実が局部的に起こっている、こういう状況のようでございます。
  401. 竹内黎一

    ○竹内分科員 そういう血液不足がすでに予測される地帯、いま東北地方というお話でございますが、それに対しては厚生省としては何か手を打っておいででございますか。
  402. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 実は民間の血液銀行に東京弁護士会の勧告がありましてから、二百CCの問題をいろいろ相談しているところから、すでに私どもとしましては全国的に必ず血液の需給のバランスがくずれてくるというような情勢をはっきりつかんでおりました関係上からしまして、本年の初めぐらいから各県のほうに早急に対策を講ずるようにということをかねがね何回も連絡をし、またそういう方向へ強い指導もしてまいってきたわけでございます。したがいまして、ただいまいろいろ局部的に一部の府県で血液の不足状態が起きておりますが、そういうような県なり地方におきましては早急に対策を講ずるようにということで現在私どもが県当局と相談をいたしております。  方策としましては、現在の血液センターなりあるいは移動採血車というような、こういうものの活動が必ずしも十分でないような地域がある。そういうような向きにおいては、このセンターなり採血車の活動というものをもうちょっとフルに動かしていく。たとえば移動採血車の活動でございますが、最近の傾向を見ますと、大体月に十二日ぐらい動いているというのがおおよその全国平均の状態でございます。これをもう少し月に少なくとも十五日以上から二十ぐらいの間の活動をするようにもっと督励していくというようなこと。それからまた、現在は一部の県あるいは一部の血液センターで行なわれているわけでありますけれども、出張採血というような方向でございます。これを、一部の県、一部のセンターに限定しないで、もうちょっと全国的な基盤に置いて、しかるべき能力を持っている県なりあるいは日赤の血液センター、そういうようなものをもうちょっとフルに活用していくというようなこと。それから第三番目の方策としましては、現在東北の福島県等でやっておりますが、日赤の血液センターの本所のほかに支所というようなものがございますが、こういう支所的な役割りを演ずる採血所というものを、都道府県の必要な地域にある県立病院等の公立病院に設けまして、そして採血をやっていくというようなこと。そういうようないろいろな対策を講じながらこの血液不足の事態を回避していくということで現在県当局と相談していく、そういうような対策を講じながらいろいろ施策を講じている、こういう状況でございます。
  403. 竹内黎一

    ○竹内分科員 少なくとも血液不足でもって大騒ぎが起こるというようなことがないように、ひとつ十分にお願いしたいと思うのです。  さて東京弁護士会の建議書の第二項に指摘しております例の、採血及び供血あっせん業取締法第三条第二項ただし書きは削除すべきである、こういうぐあいに建議しております。内容は申し上げるまでもなくすでにおわかりだと思いますが、この点についてはどういう御意見か承りたい。
  404. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 法律の第三条第二項のただし書きに書いてありますことは、血液製剤の製造等に伴って副次的に生産されるものとかあるいは血液の保存期限を経過しましたいわゆる期限切れの血液でございますが、そういうようなものから血液製剤を製造する場合は排除しているわけでございますが、何と申しましても昨今の献血運動を推進していく上において、いろいろな、国民の間に正しい献血運動についての理解が出てまいることは当然でございますが、逆にいろいろな疑惑なり誤解があることもまた残念ながら事実でございます。したがいまして東京弁護士会等でいろいろ勧告もございましたし、また国会等でもいろいろこの点については強い御忠告をいただいているわけでありますので、もうちょっとこういう点については学会等の意見も十分に聞きまして、慎重にこの規定を削除するかどうかについては検討を進めてまいりたい、かように思っているところでございます。
  405. 竹内黎一

    ○竹内分科員 慎重に検討したいというお話でございますが、先ほど河野委員も指摘されましたように、例の血液の比重検査、これに合格しなかったものも、この用途には供し得るという道は残っているわけでございますね。そういう点につきまして、私どもはやはりこれはすっぱりと、もう建議どおりに削除しちゃったほうがよろしいのじゃないか、非常に勘ぐりになるかもしれませんが、そういった名目のもとに、そういった原材料の確保をはかるというように利用されやしないかという懸念を持つわけでございますので、その点もう一度お答えを願いたい。
  406. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 このただし書きの趣旨は、正当な運用をしておりますと、必ずしも誤解を招くようなことはないかと思っているわけでございますが、現在のいろいろな民間血液銀行等のやっていることをながめますと、必ずしもそこらあたりが法律の当初の趣旨どおりに運用されてないという面も、片一方においてあるやに見受けられます。国会の先生方からもいろいろ強い御批判をいただいておりますので、この点についてはもうちょっと時間をかしていただきまして、学会等の意見も十分聞き、また関係方面とも相談しまして、この問題の取り扱い方を進めてみたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  407. 竹内黎一

    ○竹内分科員 そこで、いまお話で検査監督のこともちょっと触れたようですが、この東京弁護士会の建議書を読んで私どもが驚きますことは、東京都の例としてあげているわけでございますが、おそるべく検査が形式的だ、要するに検査官が来る日と来ない日ではがらりと違っている、こういうことを建議書は指摘しておるわけです。ほかに、たとえば鉄分を飲むというようなごまかしをやっているというようなことも書いてあるわけでございますが、一体こういった実態というものについて、特にこの間血銀協会のほうでも自発的に一回二百ccというああいう自粛的なことをやったというあれ以後において、厚生省において何かこういった実態の調査をしたことがあるかどうか、その辺をまず承りたいのです。
  408. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 東京弁護士会の勧告を受けましてから、私どもとしましても早急に血液銀行の実態を調査する必要があるというようなことからしまして、実は私も都内の血液銀行を、あの直後数カ所抜き打ち的に調査いたしたわけでございます。言われておりますように、若干われわれのいわゆる血液銀行の業務監視が形式的に流れている点は、私自身体験をいたしたわけでございます。したがいましてあの勧告以来、早急に全国の衛生部長会議も開きましたし、それからまた関係府県の担当官も集めまして、民間の血液銀行に対する従来以上の徹底的な監視、指導を強化していくように、強い指示をやっているわけでございます。近くまた第二発としまして、関係府県課長を招集しまして、この血液銀行の監視強化を含めまして、先ほどの血液不足問題も当面の問題としまして相談をしながら、全国的な指導態勢をつくり上げていきたい、このように考えているわけでございます。
  409. 竹内黎一

    ○竹内分科員 もうぼつぼつ時間のようですから、最後に一点お伺いしておきたいのです。何といたしましても理想は一〇〇%献血によることでございます。その方法の一つとして、厚生省のほうにおいても、いわゆる登録制度といいますか、国民登録制度と申しますか、そういう構想をお持ちであるというようなことを、私何か新聞で読んだような記憶があるのでございますが、もしそういうお考えをお持ちでしたら、この際その構想を御説明いただきたいと思います。
  410. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 実は献血制度をおととしの八月に閣議決定いたしまして推進する際にも、この登録制度というものは真剣に厚生省内で研究をいたしたわけでございます。ただ当時におきましてはいろいろな事情がございまして、登録制度というのは今日まで実行はされていないわけでございますが、私どもの考えとしましては、できるだけ早急にこういう登録制度というものを実行に移してみたい、かような考え方を持っているわけでございます。その一環としまして、幸いに明年度の血液関係予算の中に、血液型の登録の予算が若干計上されておりますので この血液型の登録毎度というものを、逐次全国民を対象にして、漸進的に実施してまいりますと、おのずからそこに献血のいわゆる登録者というものができ上がってまいるのではなかろうか、またそういうふうなものにしたいということで、明年度そういうような予算の計上もお願いをいたしたわけでございます。したがいまして、先生御指摘のように、諸外国のほうでいわれておりますように、登録制度というものは献血制度なり供血制度を推進していく上において、非常に有力な推進母体になっているわけでございますので、わが国におきましても早急にそういうような、血液型登録というようなものを足がかりにしまして、この制度を実行に移していきたい、こういうことで現在いろいろ各方面の御意見も聞きながら、その研究を進めていく、こういう段階でございます。
  411. 竹内黎一

    ○竹内分科員 それでは最後に、いま薬務局長のおっしゃいました血液型の問題で、一言だけお伺いいたしたいと思います。私ども昔学校で習った血液型、A、B、Oの知識というものは、実はあれはたいへんあやふやなものであるということが最近いわれているわけでございます。O型万能で、だれにでも輸血ができるのだというぐあいに私どもは習ったのでございますが、最近の研究によりますと、必ずしもそうではない。それから、最近頻発する交通事故等を考えますと、国民一人一人が自分の血液型をあらかじめ知っておくということが非常に大切だと思うのです。そういう意味におきまして、私は、小学生あるいは中学生の段階において、一ぺんそういうような血液型の検査を受けておくことが非常に大切ではないか、こうも考えますし、また、ときどき世間を騒がせるRhマイナスという問題もあるわけでございますので、ひとつ今回は血液型登録の対象がどれくらいでございますか、できるだけこれは拡大していくことが望ましいと思いますので、厚生大臣におかれましては、この血液型登録というものをできるだけすみやかに広く普及するように、一そうの御尽力をいただきたいと最後に要望して、私の質問を終わります。
  412. 八木昇

    ○八木(昇)主査代理 次に、大橋武夫君。
  413. 大橋武夫

    大橋分科員 おそくなりまして皆さんお疲れのところ、恐縮でございます。一つの問題だけでございますので、簡単に御質問を申し上げたいと存じます。  まず最初に、法制局の御見解を承りたいと存じますが、御承知のように、各省の関係で民法三十四条の法人の設立認可の処分が行なわれつつあります。ことに厚生省は、その仕事の性質上、この種の処分が非常に多いのでございます。この法人の設立許可の行政処分というものについて、従来から、これは行政官庁、主務官庁の自由裁量にまかされたる行為であるというふうな解釈もございまするし、また一部の学者は、これは行政官庁の自由な裁量の行為ではなく、一定の要件にかなった場合においては、当然行政官庁としては許可すべきものであるというふうな考え方もあるように承っておるのでございます。特にこのうち私が問題といたしたいのは、社団法人の設立認可でございますが、御承知のように、日本国憲法におきましては、国民の奪うべからざる基本的権利の一つといたしまして、結社の自由というものを認めておるのでございまして、結社の自由というものは、多数人が共同の目的を達するために団体を設立するということでございます。この結社すなわち団体というものは、ただ団体をつくったというだけで目的を達するものでなく、団体をつくる以上は、おのずからその団体の持っておる目的というものを達するために、団体としての社会的活動が必要になるわけでございまして、   〔八木(昇)主査代理退席、竹内主査代理着席〕 結社の自由というものは、その団体の持つ社会的活動というものを尊重するということにまで進まなければ、単に結社をつくるのはよろしい、しかし活動は自由を妨げられる、これでは結社の自由という憲法の精神を達成するゆえんではないと考えられるのでございます。したがって、結社の自由を認めまする以上は、その結社が目的を達成するために必要なる行動力というものをもあわせて承認するということでなければ、首尾一貫しないように私には思われるわけなのでございます。特に、今日ある団体が社会的に活動するということになりますると、必ずそれには財産上の権利義務の能力というものが伴うのでございまして、これなくしては団体の自由なる活動というものは期待することができません。したがって、結社の自由ということは、同時に、その結社が社会的活動を行なうために必要な権利能力をも与えられるということと表裏一体のものである。これが私は結社の自由についての考え方ではなかろうか、こう思うわけなのでございます。そういうふうに考えてまいりますると、この民法三十四条の社団法人の設立の認可ということは、これはすなわち結社に対して権利能力を付与するという行為でございまするから、この行為がなければ結社の自由の原則が完全に社会的に保障されておるということは言えないのでございます。したがって私は、民法の社団法人の設立の認可にあたりましては、明らかに公益を害する場合は、これはもとより行政官庁がそれを理由として認可を拒否するということは当然でございます。しかし公序良俗に反しない、公益を害しないという場合におきましては、他の要件が備えられたならば、できるだけすみやかにこれに許可を与えるということが、行政上の運用の原則として承認されなければならぬものではなかろうか、こういうふうに私は思うのでございまするが、この点についての法制局の御見解を明らかにしていただきたいと存じます。
  414. 関道雄

    ○関政府委員 いま大橋先生の仰せられましたとおり、結社の自由というものを憲法が保障しております。その結果といたしまして、実は法人格を与えるかどうかということが、直ちに憲法の結社の自由そのものに含まれているかどうかということにつきましては、いろいろ議論もあろうかと思いますが、少なくとも、いわれなく法人格を与えることを拒むというようなことでありますれば、結局結社の自由を保障いたしました憲法の趣旨にもとるようなことになるということにおいては同感でございます。  そこで、結局そういう背景のもとでこの民法三十四条をいかに解するかということがお尋ねの中心であると存じますが、この三十四条を見ますと、「祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務管庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得」ということになっておりまして、結局は主務官庁の許可にかかるということでございます。  そこで、この主務官庁が許可を与えるにつきましては、その出願をいたしました社団または財団が、そこに掲げてあるような公益に関するものであるかどうかという判断をまずしなければなりません。次に、その社団または財団が、その目的を十分に達成するだけの実質を備えておるかどうかということを判断すること、これまた当然でございまして、その上で、この三十四条が一定の行政の分野を担当しております主務官庁にその許可権を与えている精神から見まして、それはその主務官庁の担当する行政の分野から見てのその許可をすることの公益性というものを判断をするということに相なると思います。そこで、その公益性を判断するにつきましては、いわゆる公益判断といわれる判断でございますが、それにつきましては、事の性質上、明文をもって条件を明確に法令の上に書くことのできないような判断でございますために、そういう条文が書いてないわけでございますので、その点を見て、しばしば民法の教科書等においてこれを自由裁量の処分であるというようなことを書いてあるのを見るわけでございますが、自由裁量といいましても、結局いまの公益の判断というものの範囲を逸脱することができないわけでありまして、公益に支障がない、公益に適合するということが判断されまして、なお許可を拒否するというようなことは、ただいまの意味の自由裁量の範囲を逸脱するものとして、時に違法というそしりを受けるということに相なると思います。
  415. 大橋武夫

    大橋分科員 そういたしますると、法制局の見解におきましても私と同様に、社団法人の設立の許可ということが、これは憲法上の結社の自由ということに明確に包括されておるかどうかは別として、少なくとも結社の自由と密接なる関係のある事柄であるということはお認めいただいたと解釈してよろしゅうございましょうか。
  416. 関道雄

    ○関政府委員 そのとおりでございます。
  417. 大橋武夫

    大橋分科員 しからばこの法人の許可ということは、これは基本的人権と非常に深い関係にある重要な事柄であるということになったわけでございまするが、憲法第十一条によりまするというと、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」と、かように書いてあります。したがって、いま申されました社団法人の問題も、少なくとも憲法のこの規定に近い考えをもってこの許可に際しては考慮に入れられるべきものと、こういわなければならぬのでございます。第十三条によりまするというと、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」したがいまして、基本的人権の関係のあるこういう問題につきましては、国政運営においても最も尊重しなければならぬ事柄だと思うのでございます。ことに憲法十四条によりまするというと、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会関係において、差別されない。」こういうふうに規定をされておるのでございますから、この法人の許可にあたりましては、やはり憲法のこれらの条項を少なくとも考慮に置いて運用すべきものである、こういうふうに考えてよろしいかと思いますが、この点はいかがでございましょう。
  418. 関道雄

    ○関政府委員 そのように考えます。
  419. 大橋武夫

    大橋分科員 ただいま法人の許可についての法制局のお考えすなわち政府の公式のお考えを明らかにしていただきました。  次に、私は鈴木厚生大臣に承りたいと思うのでございます。自由民主党の基本憲章の第一に人間の尊重ということが掲げられております。「人間は、その存在が尊いのであって、つねにそれ自体か目的であり、決して手段であってはならない。したがって、われわれは、すべての人の自由と人格をこそ、民主主義の基本的価値として尊重し、これを軽視するいっさいの権力主義、全体主義に反対する。」かように基本憲章にうたってあるのでございます。私は、佐藤総理を総裁にいただいておる自民党の基本憲章でございまするから、佐藤自民党内閣もこの精神で国政を運営されるものと思いますが、いかがでございましょう。
  420. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私も自民党の党員でございますので、その精神を十分体してやっていきたいと思います。
  421. 大橋武夫

    大橋分科員 厚生大臣から明確な御答弁をいただきまして、私も心から満足の意を表する次第でございます。基本的人権の尊重ということにおいて、この内閣は最も力をいたし、またこの内閣のもとで厚生大臣をつとめられておられます鈴木国務大臣は、この基本的人権の尊重において最も熱意を有しておられるものと考えておるのでございますが、この点についてのお考えをさらに明確にお願いしたいと存じます。
  422. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、いま大橋さんから言われましたように、憲法の上におきましても、また自民党の党の憲章の上におきましても、そういう点を強調いたしております。私もそれを信奉いたしておるのでございますから、そういう精神でやっていきたいと考えております。
  423. 大橋武夫

    大橋分科員 ところで、政府委員にお尋ねをいたしますが、私詳しいことは存じておりませんが、聞くところによりますと、医師の一部の方々が何か医学研究の目的を持ちまして、社団法人の設立の許可を申し出ておるそうでございますが、事実でございますか。
  424. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ただいまお尋ねのことと存じますが、昭和四十年八月二十三日に厚生省にて受け付けております社団法人日本医学協会の許可申請が厚生大臣あて提出されております。
  425. 大橋武夫

    大橋分科員 それについての御調査は、どの程度まで進行いたしておりますか。
  426. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 社団法人の認可申請書が参りますと、その書類の手続的な審査を実施しております。たとえば法人の定款でありますとか事業計画書でありますとかその他予算書、そういった点につきまして審査をいたしております。
  427. 大橋武夫

    大橋分科員 今日までの御審査の結果、事務当局の御意向はこれに対してどういうふうに処理されようということでございますか。お漏らしいただければ、たいへんしあわせに存じます。
  428. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ただいま申し上げましたように、この申請内容が実際実態に即応したものであるかどうか、こういった点につきましてもさらに審査を続けておるところでございます。申請書によりますと本年度つまり昭和四十年度の事業計画におきまして、会員数が約一万三千ということでございまして、こういう規模によりまして本年度の事業計画が遂行されるということでございます。ここらにつきましてなお申請者の代理の者に問い合わせをする等の審査をさらに継続しておるわけでございますが、先ほど法制局第一部長の御意見にありましたように、厚生省、私のほうにおきまして、この許可をする、しないの問題につきましては、民法三十四条にございます公益に関する財団または社団で、営利を目的としていないという実態的な判断の上に、さらに厚生省自体の行政の円滑な運営というような点もあわせまして、現在検討をしておるところであります。
  429. 大橋武夫

    大橋分科員 ただいま政府委員のおっしゃったことは、少しおかしいように思うのであります。この法人というものは、これは厚生省自体の行政の運営のために設立者が申請しておるのではございません。これはあくまでも憲法によって保障された個人の自由という立場において、申請者が申請者自身の権利として要求をしておるんです。それを厚生省の行政上の運用の都合いかんで審査をするというのは一体何事でございますか。
  430. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ただいま私が御説明いたしましたのは、まずこの申請されました社団自体が、その事業目的なりあるいは事業の内容が公益性があるかどうかという判断と、さらにこの申請の団体自体がそういった公益性のある事業をおやりになる実態を備えるものであるかというふうな点についての審査をしておるということでございます。
  431. 大橋武夫

    大橋分科員 目的によればどういうことになっておりますか。公益性があるかないかの判断ですが、どういうことを定款には規定いたしておりますか。
  432. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 定款の第三条に、「本会は医学者及び医師の使命と職責にかんがみ、医道の昂揚・確立、医学教育の進歩・充実、医学・医術の研鑽・琢磨、医療の向上・医療制度の改善を期することを目的とする。」かようになっております。
  433. 大橋武夫

    大橋分科員 それをあなたは審査しなければ公益に合致するかどうかわからないんですか。そのくらいのことが……。
  434. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 この目的自体につきましては、公益性のあるということについては問題はないと考えております。
  435. 大橋武夫

    大橋分科員 それじゃこれ以上何を調べるんですか。
  436. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 問題は、こういった目的及び、さらに第四条におきましては、「本会はその目的を達成するに必要な調査・研究及び施薬の樹立並びにその実現のための諸活動を行なう。」となっております。したがいまして、こういった目的事業につきましての会益性については問題はない、かように考えておりますが、実際この事業を実施するに必要な会員なり、あるいはむしろその財政的な基礎というような点が、今後法人が実態的に活動するのに適当であるかどうかというようなことを審査しております。
  437. 大橋武夫

    大橋分科員 申請によりますと、財政的基礎はどうなっておりますか。また会員のことについてはどうなっておりますか。
  438. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 申請書類の内容によりますと、第一年度の予算案といたしまして、昭和四十年七月から四十一年三月三十一日までの会計年度の予算案が提出されております。収入といたしまして寄付金が百万円、会費収入が一千八百万、合計一千九百万。この会費収入の内容は会員が一万三千名でございまして、その会費収入が千八百万。支出におきましては事務費調査研究費、出版費、会議費等合計、収入と見合いました千九百万が計上されております。なお第二年度の予算案におきましては、つまり昭和四十一年の四月一日から昭和四十二年の三月三十一日に至ります一年間の会計年度でございますが、収入といたしまして、寄付金がゼロ、会費収入が四千八百万、これは会員の総数が二万五千名と、かように相なっております。支出は第一年度と同様な項目におきまして、四千八百万円の支出になっております。
  439. 大橋武夫

    大橋分科員 じゃあなたはそのうちのどこをどういうふうに調べているんですか。不審に思われるところをこまかくひとつおっしゃってください。
  440. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 私たちこういった社団法人の申請がございますと、その内容を審査する場合に、この設立代表者の方あるいは代理者の方等につきまして事務上のいろいろな御質問を申し上げるわけでございますが、いま私のほうで一つ問題になっておりますのは、この収入の第一年度、つまり本年三月三十一日までの会計年度でございますが、会員の数が一万三千という御申請があるわけでございますが、電話その他により代理人の方等の御説明を伺いますと、当初設立申請書が出てまいりましたときの会員の数は、五百十七名を予定されているというお話でございまして、その後本年の一月現在では千三百三十一名というお話を聞いているわけでございます。そういたしますと、この申請されました予算案に記録されております一万三千名と相当な隔たりがあるのではないか、かようなことで……。
  441. 大橋武夫

    大橋分科員 そうすると会員が千人じゃ許可にならぬ、一万三千人なければ許可ができないと言うのですか。
  442. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 そういうことではございません。
  443. 大橋武夫

    大橋分科員 そういうことでなければ、そういうことは調べる必要はないじゃないですか。一人も会員がないというのなら、これは許可すべきものではないでしょう。十人や二十人ならばそういう事業は成り立たないというのでは、これも許可すべきものでもないでしょう。しかし、少なくとも千人以上の人が寄って、その人たちが自分たちの共同の活動を行なうために結社をつくる、そうして結社の活動に必要な法人格を与えてくれという要求があった場合に、お前のところは一万三千人ないからこれは許すわけにいかぬのだ、こう言うことはそもそも私はおかしいと思う。それを、一万三千人あるかないかということをあなたのほうが調べるということは、事務当局としててんでなっていない。どういうことを調べるべきか。まず千人あれば、一人もないというのならこれは調べる必要はありません。しかし少なくとも千人か二千人あれば、細々でもスタートできるだろう、そのうちにだんだんこの団体も大きくなるかもしれない、予算というものはこれができて、そうしてだんだんの将来を考えてつくっておる。だから、私はこの問題についてはなるべく早く許可をしてやったらどうか、こういって去年の暮れにあなたに言ったことがある。あなたのほうでこれをずるずるやっているもんだから、予算のとおりにはできませんよ。予算というものはやはり一定の条件を前提にして予算を組んである。遅滞なくあなたのほうで許可をしておれば、一万三千人はできないかもしれないが、千人が三千人、四千人にいまなっているかもしれないじゃないですか。そういうふうなやり方というものは、これは先ほど法制局から言われた趣旨と全く食い違っている。それがあなた人権尊重の佐藤内閣、また人権尊重の鈴木厚生大臣のもとの官僚としてのやり方として正しいと思われますか。この点ひとつはっきりあなたお考えを願った上で御返事をしていただきたい。
  444. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 まずただいまの一万三千名に対しまして、千三百人という問題でございますが、いままで私のほうで扱っておりました点につきましては、もちろん許可がおくれているというようなお話もございますが、(大橋分科員「そこ、そこ、それが一番大事な点です」と呼ぶ)この一万三千人の基礎におきまして事業の基礎となる財政的な基盤ができるということでございますので、そういった点は多少あります。
  445. 大橋武夫

    大橋分科員 私は伺いたいんだが、社団法人の設立を許可するときに、一年後、二年後、三年後の予算について、あるいは会員数について、はっきりそれが把握されなければ許可ができないというような性質のものだともしあなたがお考えになっておったとしたら、それは大きな間違いだ。私は厚生省の前身である内務省の社会局から厚生省にかけて十二年間おりました。この十二年間に私は法人設立許可を扱ったことは数百件になっているでしょう。しかし、私どもはいろいろ研究した結果、そういうことを言っていたら法人なんかできるものじゃありませんよ。とにかく全体を見て、これは公益に役立つものであるかないかということでもってやった。あとは行政官庁の指導によって幾らでもできるものです。会員の募集についても、厚生大臣がその気になって大いに応援してやれば、一万人が二万人でもできます。あなた方がこの団体をいいと認めたならば、すみやかに許可して、そうしてこれを助成していくべきだ。  聞くところによりますと、この申請に対しては一部の医師から反対があるそうです。その反対の勢力に制圧されて、厚生省がこの許可を延ばしておるということが言われておるけれども、反対の勢力から何らかの動きをあなたは実際体験しておるでしょう。お答えいただきたい。
  446. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 ございません。そういうお話は聞いたことはございますが、私直接伺っておりません。
  447. 大橋武夫

    大橋分科員 だれから話を聞きました。
  448. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 特にだれということではございません。そういうことが耳に入ったわけでございます。
  449. 大橋武夫

    大橋分科員 特にだれということはないとは、一体君何を言っているのだ。ここは国会ですよ。あなたが言ったことについて、私はあなたの責任あるお答えを聞きたいから聞いている。特にだれということはないというならば、大ぜいいるでしょう。その大ぜいいる人の名前をあげてください。——お答えはいただけないのですか。
  450. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 そういうふうな話を耳にしたことはございますが、その者がだれだということをいまちょっと記憶いたしておりません。
  451. 大橋武夫

    大橋分科員 あなたうそ言ってはいけませんよ。記憶にないじゃないのでしょう。言えないのでしょう。——言えないなら言えないでよろしい。言えないと言いなさい。記憶にないなんて、でたらめを言う人がありますか。——答えはないのでしょう。あなたの言ったのは間違いでしょう。忘れているなんということは、ほんとうに忘れているのですか。だれかれもなしに大ぜいから聞いたことを一人も思い出せない、全部忘れているなんということは、あなたそれだけ忘れっぽい人に、こういう大事な基本的人権に関する許認可なんということを扱う価値ありますか。あなたもあなただ。十年、二十年前のことならいざ知らず、去年の八月に申請になってそれ以来のことじゃないですか。それを忘れているようでは、一体何をやっているのかということになる。もう少し責任のある答弁をしていただきたい。覚えているけれども言えないのか、それとも忘れたのか。ほんとうに忘れたということなら、これは私は重大問題だと思うのです。はたしてあなた高級官僚としての精神的能力が十分かどうか鑑定を要する。
  452. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 先ほど先生のお話にもございましたように、何か党のほうでそういうふうなお話があるというようなことを先生はおっしゃいましたけれども、そういうようなことを伺ったわけでございます。
  453. 大橋武夫

    大橋分科員 党のほうでそんなことがあるはずないです。党は党の基本憲章で、さっき言われたとおり、党の方針というものは明らかなんですから。基本的人権というものはどこまでも尊重するんだ。党からそういうことはありませんよ。
  454. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 その問題、いろいろと御質問ございますが、私たちの取り扱いといたしましては、そういった問題につきましては、行政庁の行政処分とは関係ないことでございますので、それをもってどうということは毛頭考えておりません。
  455. 大橋武夫

    大橋分科員 それは行政庁の処分と関係ないということを承って、私もたいへん喜びます。そうすると近々許可があるものと期待していいと思うのですが、この上、さして重要でない点についてもいろいろ手続なりお取り調べがあるでしょう。これは当然のことでございますが、結局においてこれは許可になるべきものと期待してよろしいですな。
  456. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 先ほど御答弁申し上げ、また法制局のほうからも答弁されましたように、公益性の判断の中では、厚生行政の担当者として、実際に許可することが公益に適合するかどうかというふうな判断をいたしたい、かように考えております。
  457. 大橋武夫

    大橋分科員 許可することが公益に適合するというのはどういうことなんです。公益に適合するということはどういうことなんです。もう少し具体的におっしゃってください。
  458. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 繰り返して申し上げますけれども、この社団法人の事業目的が公益に適合するか、これは先ほど申し上げましたとおりでございます。  それからいま審査いたしておりまする、この実態が公益に適合する事業をやるに足りる団体であるかどうかということを申し上げました。それからさらに、先ほど……。
  459. 大橋武夫

    大橋分科員 ちょっと待ってください。その点でちょっと確めておきたいのですが、つまり目的が公益に適合するということは、これは厚生省としてもわかった。  次に、この事業がはたしてやれるかどうかということをいまお取り調べ中だ、こういうわけですね。事業がやれるかどうかということは、これだけの予算、これだけの計画を、持って出してきておる。その計画なり予算なりが一〇〇%できるかどうかということは、いまお取り調べだと思うのです。そうするとあなたのほうでは、点数による標準をきめて、少なくとも五十点以上でなければいかぬとか、百点でなければいかぬとか、そういうお考えでこの事業を処理するとしたら、これは基本的人権の問題に関するのでございますから、非常に間違いだと言わなければならない。少なくともその方向に向かって一歩でもこの団体は前進できるような能力ありと認めたならば、それは公益に適合するのですから、そこのところをよくあなたは頭に入れて判断していただかなければならぬ。逆に、定款では公益性のようなことはあるけれども、中を見ればさっぱりだ、むしろ逆行だ、マイナスだというならば、これは公益に支障ありです。しかし公益の、百点満点とれるかあるいは十点しかとれないか、十点じゃけしからぬというので、これは許可しないというのは、この法人の設立許可等の考え方としては、これは全く先ほど法制局から言われたところによると間違っている、こういうことになるわけです。その点はおわかりですね。
  460. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 お説のとおりと思います。
  461. 大橋武夫

    大橋分科員 そうするとその点は、それでマイナス点であるかあるいはどうかということを調べている、そうするともう一つは何ですか。
  462. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 いまの点でございますが、先生の、満点であるか五十点であるかというお話、それから、当然将来満点になるであろうというようなお話がございましたけれども、現在のところ、先ほど申し上げましたように、一万三千に対し、その一割ということにつきましては、もう少しがんばっていただけないかという感じを持っておるわけでございます。
  463. 大橋武夫

    大橋分科員 その点はさっき私が言ったように、いやしくもその方向に向いて何点かでもとっておれば、マイナスでない限りは、逆でない限りは、許すべきものなんだ。そういう私の見解に対してあなたは同感の意を表せられているのですから、その問題はそれで解決済みです。あなたは、一万八千人が千人でも、とにかく少しでもそれで事業ができぬということはない、幾らかでもやれるのだ、こう認められたのだから、その問題は終わりだ。及第だ。あと残った問題は何ですか。——もう残った問題ないじゃないですか。それではもうさっそく許可してください。
  464. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 先ほど法制局のほうからのお話がありましたように、さらにその主務官庁の所管に属する行政自体効果的に運営されるというようなことも、一つの判断の材料になるのではないか、かようにも考えております。
  465. 大橋武夫

    大橋分科員 冗談じゃないですよ。その法人をつくる場合に、これが自分の役所の役に立つからというので許す、役に立たぬからというので不許可にする。これでは個人の自由なり個人の権利というものがどこにありますか。そんなばかなことがありますか。そういうものがどこにあります。憲法のどこに書いてありますか。そんな個人にあなたそういうことを期待しようといったって、それは無理だ。少しでも公益の役に立つ。——あなたはさっき、目的から見て役に立つ、こう言われた。それ以上何のさわりがありますか。  ただ、私が申し上げたいのは、この問題については現在お医者さんの中で二つの派閥が対立しておる。その道具にこれが使われて、賛成だ、反対だといわれておる。そこであなた方もその間に立って弱っておられるというのが実情でございましょう。私は、この法人は、憲法、法律の趣旨からいって、これを厚生省が押えるということは法律的に無理がある。したがって、そういう無理をやるということは、厚生省の態度としてよくない、こう私は思うのです。しかしそれはこの申請者に一〇〇%ひいきをするという意味ではございません。そういう、大事なお医者さんの中に、二つの派閥が対立するというようなことは、厚生行政上からいって大いに弱ることしょう。だから、その問題については、たとえこれを許可されましても、今後この団体の運営について十分あなた方が責任をもって指導して、そうしてこれが医学界全体の大きな利益に合致するようにしていただきたい。そのことはむろんお願いしなければならぬ事柄であります。しかし、そのためにこの許可を押えるというような、法律上違法なやり方をするということは私は認められない。だから、許すべきものは許し、そのかわり今後厚生省が全責任を持って関係団体を指導していく。そして、どうかこの医学界の派閥的な対立というものを根本的に融和させる、こういう考えに立って今後やっていただきたい。あなた方に言わせると、いや、そのために許可を押えているのだ、こう言われるかもしらぬが、許可を押えるということは、これは法治国の、ことに人権尊重の鈴木大臣のもとの官僚として、考えるべき事柄ではございません。佐藤内閣としても、そういう官僚が一人でもおるということは、これは内閣の根本方針に反する、まことに獅子身中の虫であると言わざるを得ない、そういう考え方があったとするなら。だからその辺をひとつ心得て、今後すみやかに処理すべきものは処理する、そうして別にまた関係者に対しては、適当な指導を通じまして、お医者全体が融和されるような、そういう措置をとっていただきたいこう思うのであります。  つきましては、すみやかに御処理を願いますとともに、今後ますます医学界の、医療関係者の指導に当っていただきたいと思うのですが、厚生大臣のこれについてのお考えをこの機会に承りたいと思います。
  466. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来いろいろ大橋さんの御意見を拝聴いたしておるのでありますが、一々ごもっともでございます。ただいま事務当局で、法人の申請の代理の方と、いろいろ申請書を中心にお話し合いをいたしておるようであります。私は、できるだけ早く事務当局の審査を終えまして、私の判断の段階になりました場合には、十分これを検討をいたしましてやってまいりたいと思いますが、はっきり申し上げておきたいことは、私は、決して、医師の一つの団体があるからそれ以外は許可してはいけないというような考え方は持っておりません。事務当局の審査が終わりますれば、私の段階でよく判断をしてきめたいと思います。
  467. 大橋武夫

    大橋分科員 大臣のお考えには基本的に私満足いたすのでありますが、どうぞひとつ、そういうお考えをもちましてすみやかに御処理をいただきたいと思います。医師会の問題はまた別途にお考えいただくべき重大な問題だ、こう思うのでございまして、この問題につきましては、ひとり厚生省の皆さんばかりでなく、われわれ国会議員としても、医療問題に関心を持っておる以上は、あらゆる考慮をめぐらしても、この問題に基本的にメスを入れる、またすみやかに円満なる解決に事態を導かなければならぬ、かように思っておる次第でございます。どうぞ大臣は、この上とも事務当局を督励されまして、おことばどおりすみやかに許可をお出しくださるようにお願いをいたします。  聞くところによると、医師会の会長選挙でも済んだら許そうかというようなことも、聞いたこともないでもございませんが、私はそういうことは信じません。そういうことに関係なく、一日も早く処理されるということを大臣のおことば全体から感じ取りましたので、今日の質問はこれで終わることにいたします。
  468. 竹内黎一

    ○竹内主査代理 以上をもちまして、昭和四十一年度一般会計予算及び昭和四十一年度特別会計予算厚生省所管労働省所管及び自治省所管に対する質疑は全部終了いたしました。   〔竹内主査代理退席、主査着席〕     —————————————
  469. 大橋武夫

    大橋主査 この際、おはかりいたします。  昭和四十一年度一般会計予算及び昭和四十一年度特別会計予算厚生省所管労働省所管及び自治省所管に対する討論採決は、先例によりまして予算委員会に譲ることとして御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  470. 大橋武夫

    大橋主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これにて第三分科会の議事はすべて終了いたしました。  分科員各位の御協力を心から感謝いたします。  これにて散会いたします。    午後八時四十九分散会