○柴田(護)
政府委員 たくさん質問がございまして、多少お答えが前後するかもいたしませんが、簡単にお答えを申し上げます。
公営企業の赤字の
実態でございますが、ここ四、五年の間に非常に悪くなってきておりまして、
昭和三十五年ごろには六十一億円ぐらいの累積赤字でございましたが、それが三十九年度決算では六百五十八億円、約六百六十億円になっております。何が一番ひどいかといいますと、交通
事業が一番ひどうございます。交通
事業につきましては、たとえば、バス
事業で言いますと、三十八
事業が赤字で、十
事業が黒字であります。それから路面電車につきましては、黒字
事業は一
事業で、あとは全部赤字であります。地下鉄はこれまた全部大体赤字、しかし、この中でも黒字経営の
事業もあるわけでございまして、先ほど黒字
事業はどうなっているかというお話でございましたけれども、御
承知の札幌市の経営いたします交通
事業は、軒並み赤字の中で唯一の黒字であります。これはどういうことに原因があるかといいますと、職員
構成が非常に若い、したがって、交通
事業につきましては、労務管理が非常に重要でありまして、ほとんどが人件費でありますけれども、この人件費率が非常に低いわけでございます。それから、交通機関といたしましては、あの
都市ではまだ東京のように混雑をいたしておりません。路面電車としても運行価値が十分ある、こういった問題が常に好条件として働いておるというように思われます。
水道等につきましては、水道
事業も、最近は悪くなっておりまして、
昭和三十九年度決算では、累積赤字額は百三十七億円でありますけれども、その大
部分は東京の水道であります。四十年度に入りましてから、料金の手直し等をやりまして、大体水道料金の赤字というものは、東京都等、大きな
都市などを除きますれば、収支は若干よくなっておりはせぬかというように考えるのであります。要するに、これらの赤字というものは、いろいろ考えてまいりますと、その企業それぞれの置かれた状況によって違うのでございますけれども、ごく大ざっぱに申し上げますと、最近、やはり原価が上がってきておる。水道で言いますならば、動力でございますとか、あるいは人件費、こういった問題が上がってきておるにかかわりませず、料金のほうにつきましては非常に上げにくい事情がある。この中には公共料金ストップ令というものも一つかみ合うわけでございますけれども、それやこれやの事情で、費用と
収入というもののバランスがくずれてきているというところにあるわけでございます。また、企業内部において経営の合理化をやっておる団体もあるわけでございますけれども、団体によりましては、その経営の合理化というものが不徹底であるということにも基因するわけでございます。これにはやはり法制上の問題もからむわけでございます。私どもといたしましては、そういうような問題は、事こまかに公営企業制度
調査会の答申の中に書かれておりますので、したがって、その趣旨を尊重いたしまして、
地方公営企業法の
改正を考えておるわけでございます。大かたの企図といたしましては、将来赤字が出ないような
措置をいろいろ考えるとともに、すでに生じました赤字については、債券
措置を講じまして、短期の赤字を長期の安定債務に振りかえる、それについて利子補給を行なう、こういうことで計画的に消してまいりたい、こういうやり方であります。
それから、料金でございますけれども、料金につきましては、東京都の水道料金の一例を見てもおわかりかと思いますけれども、私どもは、料金というものはそう簡単に
地方で上げ下げできるものではない、なかなか抵抗がありまして、特に
住民に近づけば近づくほどこういうものはむずかしい問題だと考えます。むしろ、
住民から遠い中央でぱっとやるほうがはるかにやりやすいのでありまして、
住民に近づいている
市町村にいけばいくほど、料金というものはそう簡単に上げられるものではないのであります。事実、あれほど経営が苦しくなっても、料金というものは、水道料金等をつかまえましても、なかなか思うように上げられないというのが実情であります。しかしながら、何も好きこのんで料金を上げるのではございませんで、私どもといたしましては、経営の合理化を徹底をして、極力その内部で利益その他を生み出していく、そしてそれを料金にはね返すことは絶対避けねばならない、こういうことは言っております。しかし、適正原価を償うに足らないということになってまいりますれば、最小限度の料金の改定もやむを得ない、こういう態度をとっておるわけでございます。
それから、経営委員会の問題でございますけれども、そういう意見はございました。
調査会にもございましたし、また私どもの内部にもないことはございませんけれども、やはり経営の基本的な問題は、
住民の代表でありますところの議会で議論をすべきものであります。個々のものに議会があまりタッチをいたしますると、かえって経営の合理化を害するというようなこともあるかもしれませんけれども、やはり、基本の問題というものは、
住民の代表であるところの議会でなすべきであって、それにかてて加えて経営委員会というものが加わったらいかがなものであろうかというように考えている次第でございます。