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1966-02-24 第51回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十一年二月十九日(土曜日)委 員会において、設置することに決した。 二月二十三日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       荒舩清十郎君    大橋 武夫君       川崎 秀二君    倉成  正君       竹内 黎一君    古井 喜實君       小松  幹君    八木  昇君       山花 秀雄君    今澄  勇君 二月二十三日  大橋武夫君が委員長指名で、主査選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 昭和四十一年二月二十四日(木曜日)    午前十時七分開議  出席分科員    主査 大橋 武夫君       川崎 秀二君    倉成  正君       竹内 黎一君    田原 春次君       只松 祐治君    八木 一男君       八木  昇君    山田 耻目君       山花 秀雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         労 働 大 臣 小平 久雄君         自 治 大 臣 永山 忠則君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         労働事務官         (大臣官房長) 辻  英雄君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     上原誠之輔君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (婦人少年局         長)      高橋 展子君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業訓練局         長)      和田 勝美君         自治事務官         (大臣官房長) 松島 五郎君         自治事務官         (大臣官房会計         課長)     芦田 一良君         消防庁長官   松村 清之君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         厚 生 技 官         (大臣官房統計         調査部統計調査         官)      角田 厲作君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     森   清君     ――――――――――――― 二月二十四日  分科員小松幹君、山花秀雄君及び今澄勇委員  辞任につき、その補欠として田原春次君、山田  耻目君及び受田新吉君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  分科員山田耻目君委員辞任につき、その補欠と  して只松祐治君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員松祐治委員辞任につき、その補欠と  して八木一男君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田原春次君、八木一男君及び受田新吉君  委員辞任につき、その補欠として小松幹君、山  花秀雄君及び今澄勇君が委員長指名分科員  に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算厚生省労働省  及び自治省所管  昭和四十一年度特別会計予算厚生省労働省  及び自治省所管      ――――◇―――――
  2. 大橋武夫

    大橋主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  私が第三分科会主査をつとめることになりましたので、皆さま方の御協力をよろしくお願いいたします。  本分科会は、昭和四十一年度一般会計予算中、厚生省労働省及び自治省所管並びに昭和四十一年度特別会計予算中、厚生省労働省及び自治省所管につきまして審査を行なうことになっております。  審査の順序は、お手元に配付いたしました日程により進めたいと存じます。あらかじめ御了承願います。  それでは、昭和四十一年度一般会計予算中、厚生省労働省及び自治省所管並びに昭和四十一年度特別会計予算中、厚生省労働省及び自治省所管を議題といたします。  これより順次説明を求めます。  まず、厚生省所管について説明を求めます。鈴木厚生大臣
  3. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 昭和四十一年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案概要について御説明申し上げます。  厚生行政につきましては、日ごろ各位の御協力をいただき、逐年予算増額を見、厚生行政進展がはかられつつありますことはまことに喜ばしいことでありまして、この際あらためて厚く御礼を申し上げたいと存じます。  さて、昭和四十一年度厚生省所管一般会計予算における総額は五千八百二億四千二十二万四千円でありまして、これを補正第三号後の昭和四十年度予算五千七十八億九千八百八万八千円に比較いたしますと、七百二十三億四千二百十三万六千円の増加と相なり、前年度予算に対し一四・二%の増加率を示しており、また、前年度当初予算に対しましては二〇・四%の増加と相なっております。  なお、国家予算総額に対する厚生省予算の比率は一三・四%と相なっております。  以下、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一は、生活保護費関係経費であります。  生活扶助費につきましては、その基準額を一三・五%引き上げることといたしており、また、教育扶助出産扶助及び葬祭扶助につきましても基準引き上げを行なっております。  このほか、保護施設職員待遇改善を行なうなど、生活保護費として総額一千二百四十億一千八百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、百七十二億五百余万円の増額となっております。   第二は、社会福祉費関係経費であります。  まず、児童保護費でありますが、収容施設等飲食物費日常諸費等改善するほか、保育所及び収容施設職員待遇改善をはかるとともに、職員の増員を行ない、また、新たに民間施設経営調整費を計上いたしております。  また、重症心身障害児(者)の保護対策強化をはかるため、新たに国立施設を設けて収容保護充実をはかるとともに、在宅重症心身障害児(者)の指導強化をはかるなどの所要経費を計上するほか、母子保健衛生対策強化並びに身体障害児結核児童等療育対策に必要な経費をそれぞれ増額するなど、児童保護費として三百十億六千四百余万円を計上いたしております。  また、保護施設児童福祉施設等各種社会福祉施設整備に必要な経費として二十九億円を計上いたしております。  このほか、身体障害者保護費老人福祉費世帯更生資金児童扶養手当経費をそれぞれ増額するとともに、重度精神薄弱児扶養手当の内客を改善し、その支給対象範囲重度身体障害児にまで拡大するなど、社会福祉費として総額五百十一億六百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し七十一億八千九百余万円の増額となっております。  第三は、社会保険費関係経費であります。  まず、国民健康保険助成費についてでありますが、昭和三十九年度以降四カ年計画をもちまして進められている家族に対する七割給付実施につきまして、昭和四十一年度は第三年目として計画どおりこれを行なうとともに、療養給付費補助金につきましては、財政調整交付金に含まれておりました世帯主給付改善費交付金と、世帯員七割給付実施のための療養給付改善特別補助金を統合いたしまして、世帯主分はすべての市町村世帯員分は七割給付実施を認めた市町村について四〇%を国庫より助成するほか、事務費補助金基準単価を大幅に引き上げるなど、国民健康保険助成費として一千四百五十一億六千四百余万円を計上いたしております。  次に、社会保険国庫負担金でありますが、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計への繰り入れに必要な経費として、政府管掌健康保険財政健全化に資するための百五十億円を含め四百三十億八千七百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し百七十一億七千三百余万円の増額となっております。  また、国民年金につきましては、給付水準大幅引き上げ中心とする改善措置を行なうことといたしました。すなわち、拠出制国民年金につきましては、年金額を二倍半程度引き上げ、二十五年拠出老齢年金額月額五千円とし、夫婦で月額一万円の年金を実現するとともに、障害母子年金等最低保障額月額五千円に引き上げ障害範囲拡大支給要件緩和等制度の各般にわたって改善することとし、国庫負担金として百七十三億七千八百余万円を計上いたしております。  福祉年金につきましては、各年金額月額二百円ずつ引き上げるとともに、扶養義務者所得制限等支給制限緩和をはかるなど、福祉年金給付費として四百八十一億一千七百余万円を計上し、国民年金国庫負担金として七百五十三億八千五百余万円を国民年金特別会計繰り入れることとし、社会保険費として総額二千六百五十億五百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し三百六十二億二千四百余万円の増額となっております。  第四は、保健衛生対策費関係経費であります。  まず、ガン対策経費でありますが、専門医療機関整備充実をはかるとともに、ガン研究のための助成費強化し、さらに、新たに医師等専門職員の研修及び集団検診推進等を行なうための所要経費を計上いたしております。  また、性病対策経費については、婚姻をしようとする者に血液検査を受けることを義務づけ、その費用を公費で負担するとともに、性病予防重点地区における予防思想普及の徹底をはかるための所要経費を計上するほか、保健所職員給与費単価改善に必要な経費法定伝染病予防費等保健衛生諸費として八十億五千七百余万円を計上いたしております。  このほか、結核医療費として三百五十五億六百余万円、原爆障害対策費として二十三億八千七百余万円、精神衛生費として二百七億五千百余万円、また、国立療養所に必要な経費として三百二十八億四百余万円をそれぞれ計上するなど、保健衛生対策費として総額一千五十六億七千八百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し百五億八千九百余万円の増額となっております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護費でありますが、新たに遺族範囲拡大障害年金支給範囲拡大等を行なうとともに、準軍属に対する遺族給与金等の額の引き上げを行なうこととし、必要な経費百三十九億六千二百余万円を計上いたしております。  このほか、戦傷病者特別援護費として七億七千六百余万円、留守家族等援護費として三千六百余万円をそれぞれ計上するなど、遺族及び留守家族等援護費として総額百四十九億四千九百余万円を計上いたしており、前年度に比し十八億四千四百余万円の増額となっております。  第六は、生活環境施設整備費であります。  明るい生活環境を実現するため、特に環境衛生施設整備をさらに強力に推進することとし、新たに簡易な下水道終末処理施設整備費を計上するほか、ごみ処理施設について大幅な増額をはかる等、清掃施設整備費補助金については三十一億五千二百余万円、下水道終末処理施設整備費補助金については四十億六千三百余万円を計上し、また、簡易水道等施設整備費補助金については十六億九千百余万円を計上するとともに、市町村財政事情に応じて、従来一率四分の一の補助率を三分の一まで引き上げる道を開くこととし、生活環境施設整備費として総額八十九億六百余万円を計上いたしております。  以上、昭和四十一年度厚生省所管一般会計予算案について、その概要を御説明申し上げました。  次に、昭和四十一年度厚生省所管特別会計予算案の大要について御説明申し上げます。  まず第一は、厚生保険特別会計についてでありますが、一般会計より四百十五億四千六百八十一万八千円の繰り入れを見込みまして、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  第二は、船員保険特別会計についてであります。  船員保険特別会計につきましては、十五億四千五十二万九千円の一般会計よりの繰り入れを行ない、歳入二百五十八億三千八百五十八万二千円、歳出百八十九億八千七百七十七万円を計上いたしております。  第三は、国立病院特別会計についてでありますが、一般会計より四十四億八千五百三十四万円の繰り入れを見込みまして、歳入歳出とも三百四十五億七百九十一万五千円を計上いたしております。  第四は、国民年金特別会計についてでありますが、一般会計より七百五十三億八千五百二十七万四千円の繰り入れを見込みまして、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  最後に、あへん特別会計についてでありますが、歳入歳出とも七億四千六百七十万七千円を計上いたしております。  以上、昭和四十一年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計予算案につきまして、その概要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案成立につきましては、格別の御協力をお願いいたす次第であります。     ―――――――――――――
  4. 大橋武夫

    大橋主査 次に、労働省所管について説明を求めます。小平労働大臣
  5. 小平久雄

    小平国務大臣 昭和四十一年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきまして、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管一般会計歳出予算額は一千十五億五千百六十八万円でありまして、これを前年度当初予算額九百八億六千百三十六万三千円に比較いたしますと、百六億九千三十一万七千円の増加となっております。  次に、そのおもな内容について、概略を御説明いたします。  その一は、積極的な雇用対策推進に必要な経費であります。  最近の雇用情勢は、経済の停滞を反映して雇用増勢鈍化が続いておりますが、他面、若年労働者技能労働者については、依然として労働者不足の状況にあります。しかし、同時に、中高年齢失業者等の就職困難、地域間、産業間における労働力需給の不均衡等の問題があるのであります。  かかる事態に対応して、当面の景気動向を慎重に注視しつつ、就職困難な労働者に対しては機動的な雇用促進対策を講ずるとともに、さらに、今後の産業及び労働面における構造的変化に対処するため、雇用に関する基本的方策を策定して、労働力需給質量両面にわたる均衡促進することとし、これが実効を期するため、職業転換等円滑化をはかるための給付として、広域求職活動費職業訓練受講者のための移転費特定職種訓練受講奨励金等給付新設するとともに、訓練手当等、従来の給付拡充し、また、中高年齢失業者等に対する就職指導転職訓練推進など、職業転換対策充実をはかり、さらに、労働市場センター整備とその業務の全面的開始公共職業安定所の機能の強化移転就職者用宿舎大量建設雇用促進融資拡大等措置を講ずるとともに、中高年齢労働者雇用促進中小企業における労働力確保労働者がその能力を有効に発揮できるようにするための対策充実など、積極的な雇用対策を展開してまいることとし、これらに必要な経費として百八十四億八千五百五十一万四千円、また、財政投融資計画中に雇用促進融資として百億円を計上いたしております。  また、当面の問題に対処するための雇用政策といたしましては、さきに申し述べましたように、中高年齢失業者等に対する就職促進のための対策充実強化するとともに、炭鉱離職者につきましては、就職促進手当最高額引き上げのほか、就職指導転職訓練等就職促進対策移住資金雇用奨励金支給などの援護対策及び炭鉱離職者緊急就労対策事業を引き続き実施することとし、これらに必要な経費として四十六億八千二百七十三万円を計上いたしております。  次に、港湾労働対策につきましては、港湾運送に必要な労働力確保するとともに、港湾労働者福祉の増進をはかるため、港湾労働法に基づき港湾雇用調整計画の策定、日雇い港湾労働者の登録及び雇用調整手当支給技能向上のための訓練実施などの措置を講じ、さらに、港湾労働者福祉センター簡易宿泊所建設雇用促進融資活用等福祉施設拡充をはかるとともに、関係公共職業安定所における職業紹介体制充実強化をはかるなど、総合的な港湾労働対策実施することとし、これらに必要な経費として六億三千四百二十三万七千円を計上いたしております。  なお、大学、高校卒業者及び身体障害者雇用促進をはかるとともに、出かせぎ労働者雇用安定をはかるための対策を進めることとし、これらに必要な経費を計上いたしております。  その二は、失業対策推進に必要な経費であります。  失業対策につきましては、失業対策事業に就労する者に対し、雇用奨励制度中心として一般雇用への復帰を引き続き促進するとともに、失業対策事業については、その事業費単価改善などを行なうこととし、これらに必要な経費及び失業保険国庫負担金に必要な経費として七百六億三千百二十七万七千円を計上いたしております。  その三は、技能労働者の育成と技能水準向上に必要な経費であります。  本格的な開放経済のもとで技術革新進展に対応し、技能労働者確保することは現下の喫緊の要務であり、特に中小企業における技能労働者不足は深刻なものがあります。かかる事態に対処するため、事業内職業訓練については中小企業重点を置き、補助対象となる訓練人員五万人を五万七千人に拡大し、施設融資増ワクをはかる等、その助成強化するとともに、公共職業訓練については、総合職業訓練所五カ所、一般職業訓練所十カ所の新設を行なう等、積極的に技能労働者養成につとめるとともに、就職困難な中高年齢失業者等に対する職業訓練実施してその雇用促進をはかり、さらに、技能検定職種拡大をはじめ、民間実施する技能競技大会に対する積極的な指導援助を行なうとともに、職業訓練大学校に生産技能講座新設し、監督的な技能者養成を行なうほか、通信技能講座の開設など、技能水準を一そう向上させるための施策を積極的に推進することとし、これらに必要な経費として九十一億一千五百九十二万三千円を計上いたしております。  その四は、労働災害防止対策及び労働条件近代化対策推進に必要な経費であります。  労働災害防止につきましては、従来から鋭意努力を重ねてきたところでありますが、最近における新技術の導入、新原材料の採用等の急速な進展に伴い、新しい種類の労働災害があらわれつつあり、その中には、一たん発生すると予想外に大規模化するおそれのあるものも少なくありません。  かかる現状に対処し、人命尊重基本的観点から、これらの労働災害防止をはかるため、労働災害防止に関する諸施策を強力に展開することとし、特に昭和四十一年度においては、第一線監督指導機関強化するほか、産業安全研究所屋外実験場設置労働衛生研究所中毒実験部新設等研究体制拡充整備するとともに、労災防止会館建設安全衛生施設に対する融資制度の創設、労働災害基本調査等実施中小企業災害防止活動促進監督指導及び検定検査強化など、科学的、総合的労働災害防止対策強化することといたしております。  また、産業構造近代化の過程における労働条件に関する問題の合理的な解決をはかるため、賃金等に関する所要調査実施最低賃金制に関する計画推進と基本的な検討、賃金制度改善指導、長時間労働の排除などの施策を積極的に推進し、さらに、家内労働対策社内預金管理指導勤労者財産形成に関する調査及び啓蒙をはかることとし、これらに必要な経費として十二億六千三百四十三万六千円を計上いたしております。  その五は、中小企業労働対策推進に必要な経費であります。  中小企業労働条件等は逐次改善されつつありますが、最近における中小企業の深刻な労働力不足等事態に対処するため、事業内職業訓練及びその施設設置に対する助成拡大して、中小企業における技能労働者養成確保とその技能水準向上をはかり、また、中小企業労働面における近代化を一そう推進するため、中小企業集団に対して助成拡大し、その労務管理改善自主的活動促進するとともに、労働力確保労働条件改善労使関係の安定、労働福祉向上等に関する行政指導を統一的、一元的に実施することとし、さらに、中小企業レクリエーションセンター設置勤労青少年ホーム及び働く婦人の家の増設福祉施設に対する融資拡大中小企業退職金共済制度普及最低賃金制推進小規模事業場に対する労災保険及び失業保険への加入促進等福祉対策充実をはかるなど、中小企業労働対策を総合的に推進することとし、これらに必要な経費として二百三十七億九千六百三十二万三千円を計上いたしております。  その六は、合理的労使関係の樹立に必要な経費であります。  国民経済の繁栄と民主主義の発展のため、労使相互信頼協力精神を基調とし、平和的、合理的な話し合いを通じて労使問題の解決をはかるという慣行を樹立するため、労働教育等指導啓蒙に意を用いるとともに、労働紛争議予防とその円満な解決につとめることとし、これらに必要な経費として三億百六十四万四千円を計上いたしております。  その七は、婦人及び年少労働者対策に必要な経費であります。  婦人及び年少労働者対策といたしましては、婦人労働力有効活用をはかるとともに、家事サービス職業訓練実施内職相談施設拡充等婦人職業対策充実をはかり、あわせて、勤労青少年ホーム及び働く婦人の家二十カ所の増設年少労働者産業カウンセリング制度普及年少労働者集団活動健全化等婦人及び年少労働者福祉対策強化するほか、出かせぎ労働者留守家族対策推進など、農村婦人に対する指導援助婦人地位向上対策を進めることとし、これらに必要な経費として三億二千七百五万一千円を計上いたしております。  以上のほか、国際労働行政充実、その他一般行政事務費等に必要な経費を計上いたしております。  次に、労働者災害補償保険特別会計について御説明いたします。  この会計歳入及び歳出予算額は、ともに一千百七十八億九千九百三十二万七千円でありまして、歳入のうち、保険料収入は七百五十四億九千七百八万四千円で、また、一般会計よりの受け入れは十五億八千六十三万八千円であります。また、歳出のうち、保険金に必要な経費として労災病院等施設整備拡充のための労働福祉事業団出資金に必要な経費として二十九億九百八十五万四千円を計上いたしております。  最後に、失業保険特別会計について御説明いたします。  この会計歳入及び歳出予算額は、ともに一千八百三億四千九百四十八万円でありまして、歳入のうち、保険料収入は一千三百二十三億五千四百万円であり、失業保険国庫負担金受け入れは三百六十四億六千三百万円であります。また、歳出のうち、保険給付に必要な経費として一千四百四億二千二百万円、総合職業訓練所整備拡充移転就職者用宿舎建設中小企業レクリエーションセンター設置等のため、雇用促進事業団に対する出資金に必要な経費として百三十七億二千六百十九万七千円を計上いたしております。  なお、最近における日雇い労働者賃金の実情にかんがみ、日雇失業保険金日額引き上げ等を行なうことといたしております。  以上、昭和四十一年度労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして、概略説明申し上げたのであります。  何とぞ本予算成立につきまして、格段の御協力をお願い申し上げる次第であります。     ―――――――――――――
  6. 大橋武夫

    大橋主査 次に、自治省所管について説明を求めます。永山自治大臣。
  7. 永山忠則

    ○永山国務大臣 自治省関係の昭和四十一年度の歳入歳出予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十一年度の自治省所管一般会計予算は、歳入三千二百万円、歳出八千五十二億一千一百万円であります。  歳出予算では、前年度の当初予算額七千三百三億四千三百万円と比較して七百四十八億六千八百万円の増額となっており、前年度の補正後の予算額七千三百一億五千六百万円と比較し、七百五十億五千五百万円の増額となっております。  この歳出予算額を組織に大別いたしますと、自治本省八千三十七億六千五百万円、消防庁十四億四千六百万円となっております。  以下、この歳出予算額のうち、おもな事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  まず、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れるために必要な経費であります。その総額は七千九百二十二億八千一百万円でありまして、前年度の当初予算額七千一百六十二億一千一百万円と比較し、七百六十億七千万円の増額となっております。  この経費は、昭和四十一年度における所得税、法人税及び酒税の収入見込み額のそれぞれ百分の三十二に相当する額の合算額に、昭和三十九年度における地方交付税でまだ交付していない額並びに昭和四十年度において借り入れる借入金にかかる昭和四十一年度分の利子の支払いに充てるため必要な額を加算した額七千五百八億八千一百万円と昭和四十一年度における住民税の減収等を考慮し、地方財政の健全なる運営を確保するために地方公共団体に交付する臨時地方特例交付金四百十四億円とを合算した額を計上いたしたものでありまして、すべて交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れられるものであります。  次に、選挙の常時啓発に要する経費でありますが、その総額は四億五千三百万円であります。この経費は、正しく明るい選挙を強力に推進し、かつ、国民の政治常識の向上をはかるために必要な経費であります。  次に、永久選挙人名簿の調製に必要な経費でありますが、その総額は四億九千一百万円であります。この経費は、永久選挙人名簿制度を採用するための基礎調査として、選挙人の全国一斉調査を行なうため必要な経費であります。  次に、奄美群島振興事業関係経費であります。  まず、奄美群島振興事業費補助及び指導費等補助につきましては、十六億五千九百万円を計上いたしております。この経費は、昭和三十九年度に策定された奄美群島振興五カ年計画に基づき、産業の振興及び公共土木施設整備等を行なうために必要な経費であります。  次に、奄美群島振興信用基金出資金につきましては、五千万円を計上いたしております。この経費は、奄美群島における産業振興に必要な金融の円滑化をはかるため、奄美群島振興信用基金に対する追加出資に必要な経費であります。これにより、同基金に対する昭和四十一年度末における政府の出資総額は五億二千万円となります。  次に、国有提供施設等所在市町村助成交付金につきましては、十五億円を計上いたしております。この経費は、いわゆる基地交付金でありまして、米軍及び自衛隊が使用する国有提供施設等の所在する都及び市町村に交付するため必要な経費でありますが、前年度に比し一億円を増額しております。  次に、公共土木施設及び農地等の小災害地方債の元利補給金につきましては、十四億二千一百万円を計上いたしております。この経費は、昭和三十三年以降昭和四十年までに発生した公共土木施設、農地等の小災害にかかる地方債に対する昭和四十一年度分の元利償還金相当額の全部または一部を当該地方公共団体に交付するため必要な経費であります。  次に、市町村民税臨時減税補てん債の元利補給金につきましては、四十八億六百万円を計上いたしております。この経費は、市町村民税の課税方式の統一等に伴う市町村民税の減収を補てんするため、昭和三十九年度及び昭和四十年度に発行された地方債及び昭和四十一年度新たに発行される地方債に対し、昭和四十一年度分の元利償還金の三分の二に相当する額を関係市町村に交付するために必要な経費であります。  次に、地方公営企業の財政再建につきましては、一億五千万円を計上いたしております。この経費は、地方公営企業の財政再建を促進するため、赤字公営企業を経営する地方公共団体が起こす再建債の利子の一部について国が補給金を交付するために必要な経費であります。  次に、新産業都市等建設事業債調整分の利子補給金につきましては、二億四千七百万円を計上いたしております。この経費は、新産業都市の建設及び工業整備特別地域等の整備促進をはかるため、建設事業債の特別調整分について国が関係道府県に利子補給を行なう経費であります。  以上のほか、住居表示制度整備に必要な経費として四千六百万円、地方財政再建促進特別措置に必要な経費として一千九百万円、固定資産税特例債の元利補給金に必要な経費として五千八百万円等を計上しております。  なお、公営企業金融公庫に対する政府出資金増額するための経費二億円が、別に大蔵省所管産業投資特別会計に計上されております。  以上が自治本省関係の一般会計歳出予算概要であります。  次に、消防庁の予算概要を御説明申し上げます。  まず、消防施設整備費補助に必要な経費につきましては、十億七千二百万円を計上いたしております。この経費は、化学車、はしご車、救急車、ヘリコプター等、科学消防力の強化並びに消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ、防火水槽等の消防施設整備及び無線通信施設整備等について、地方公共団体に対して補助するために必要な経費であり、前年度の当初予算に比し一億一千四百万円の増額となっております。  次に、退職消防団員の報償に必要な経費につきましては、一億六百万円を計上いたしております。この経費は、非常勤消防団員が多年勤続して退職した場合にその功労に報いるため、国が報償を行なうのに必要な経費であります。  次に、消防吏員及び消防団員に授与する賞じゅつ金につきましては、一千万円を計上いたしております。この経費は、消防吏員及び消防団員が職務を遂行したことにより災害を受け、そのために死亡し、または不具廃疾となった場合において、功労があったときに賞じゅつ金を授与するため必要な経費であります。  次に、消防団員等公務災害補償等共済基金に対する補助につきましては、四千万円を計上いたしております。  この経費は、基金が行なっている非常勤消防団員等に対する公務災害補償及び非常勤消防団員に対する退職報償金制度実施に必要な事務費を補助するために必要な経費であります。  次に、科学消防等の研究に必要な経費につきましては、四千万円を計上いたしております。この経費は、科学消防技術の開発向上をはかるため、消防研究所の行なう経常研究、特別研究及び委託研究に必要な経費であります。  以上のほか、消防研究所の庁舎を新築するため一億三百万円が、建設省所管官庁営繕費に計上されております。  次に、特別会計予算概要を御説明申し上げます。  自治省関係の特別会計といたしましては、大蔵省及び自治省所管交付税及び譲与税配付金特別会計がありますが、本会計は、歳入八千八百七十億九千二百万円、歳出八千八百七十億九千二百万円となっております。  歳入は、一般会計から地方交付税交付金等の財源として受け入れる収入、地方道路税、石油ガス税及び特別とん税の租税収入並びに前年度の決算上の剰余金の見込み額を昭和四十一年度において受け入れる収入、借り入れ金その他であります。  歳出は、地方交付税交付金、臨時地方特例交付金、地方道路譲与税譲与金、石油ガス譲与税譲与金及び特別とん譲与税譲与金並びに前年度における借り入れ金の元利償還金及び一時借り入れ金の利子の合計額を国債整理基金特別会計繰り入れるための経費その他であります。  以上、昭和四十一年度の自治省関係の一般会計予算及び特別会計予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  8. 大橋武夫

    大橋主査 これをもちまして全所管についての説明は終わりました。  午後は一時より再開し、労働省所管について質疑を行なうこととし、これにて休憩いたします。    午前十時五十一分休憩      ――――◇―――――    午後一時十三分開議
  9. 大橋武夫

    大橋主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。  これより各所管について順次質疑を行なうこととなっておりますが、この際、分科員皆さま方に申し上げます。  議事進行の円滑をはかるため、質疑の持ち時間は、一応本務員は一時間程度、兼務員もしくは交代して分科員となったお方は三十分程度にとどめていただきたいと存じます。  なお、質疑者も多数あることと思われますので、各位におかれましては、開会時間を厳守するよう特に御協力をお願いいたします。  それでは昭和四十一年度一般会計予算及び昭和四十一年度特別会計予算中、労働省所管を議題といたします。  質疑の通告があるので、順次これを許します。八木昇君。
  10. 八木昇

    八木(昇)分科員 私は、先般の予算委員会の総括質問の際に、時間の関係で質問を留保いたしておりました雇用対策法に関しまして、若干の質問をいたしたいと実は思っておるのです。  最初にお伺いいたしたいのでございますが、お読みだと思いますが、一昨日の各新聞が報道しておるのでございますが、今回の雇用対策法についての政府の原案について、総評を中心とする労働団体から非常に痛烈な批判が出ておるようでございます。たとえば一昨日、二十二日の朝日新聞によりますと、この法案については反対だという態度を総評は幹事会で決定をし、社会党に対しても、もしこの法案が国会へ提出をされた場合には、あくまでも成立を阻止するように強く要請をした、こういう記事が実は出ておるのでございます。  雇用対策法というようなものは、労働者の生活にとってきわめて重大な関係を持つものでございますから、労働者の団体である総評の態度というものについては、当然政府も十分にこれをしんしゃくして対処しなければならぬというふうに私は考えるのでありますが、一体政府としては、今後こういう情勢に対処してどういうふうにやっていこうと考えておられるのか、まずその辺のところを聞かしていただきたいと思います。
  11. 小平久雄

    小平国務大臣 労働省としましていま考えております雇用対策法でございますが、これは申し上げるまでもなく、われわれは、今後――現在も含みますが、主として今後の雇用情勢等を見渡して、それに対処するために、こういった法律が必要ではないか。それも終局的には労働者諸君がその持っている力を十分に発揮して、結局労働者の地位を高めていけるようにということをわれわれは心から願って、こういう案を考えておるわけでございますが、いまお話しのとおり、直接関係のある労働組合等の意見は、もちろん十分われわれは尊重していきたい、こういう考えのもとに、実は内々ではございましたが、事務当局等からも組合のほうにも御説明を申し上げ、そちらの意見等も徴してまいったのであります。  元来がこの法案は、御承知のとおり、内閣の雇用審議会の答申を骨子としましてつくったものでございまして、その審議会自体がこれまた御承知のとおり組合の代表等も入っておられるわけでございます。そういう関係もございますので、今度の案の大綱につきましても、目下審議会におはかりをいたしておるのでありまして、審議会はすでに小委員会等もおつくりになられて、その大綱をいま御審議をいただいておる。その委員の中には組合の代表の方もお入りになっておられる。こういうことでございますので、今後ともこの正式の審議会の場で大いに組合側の御意見もお述べいただきまして、もちろん使用者側あるいは公益側も入っておるわけでございますから、その間で十分議を尽くしていただきたい、かように私ども考えておるのであります。  組合関係では、いまお示しのように、総評関係の幹事会で一応反対の決議をされたというふうには聞いておりますが、その他の組合では、目下のところ正式と申しますか、何と申しますか、反対だというほどの意見はまだ実は伺っておりません。いずれにいたしましても、こういういわば雇用関係における基本法というと、やや大げさになるかもしれませんが、いわば原則とでも申しますか、通則とでも申しますか、むしろそういう性格の法律でございますから十分議を練っていただき、またわれわれも虚心にそういう御意見についてはこれを尊重していく、こういう立場で私は臨みたいと考えておるわけでございます。
  12. 八木昇

    八木(昇)分科員 これは担当局長でけっこうでございますけれども、今回の雇用対策法というのは、内容はともかくといたしまして、労働省としては相当画期的な法律の制定をもくろんでおられると思うわけでございます。当然、非公式に、こういう政府原案が一応でき上がります以前に、関係方面、特に現実に日本の労働連動の中核をなしております総評方面とは相当接触が当然なされてきたと考えますが、しかるにもかかわらず、いよいよ政府原案というものができて雇用審議会にその原案の諮問をしたところ、こういう形で総評がこれに反対だという幹事会決定をするというような形になっておるということは、どうもわれわれ客観的に見ておりますと、非常に不手ぎわな感じがするわけでございますが、一体その辺の経過、簡単でけっこうですから、どういうことであったわけでしょうか。それは必ずしもその労働団体の意見を一〇〇%受け入れなければならないということは考えておりませんし、私どもも政党として総評の主張をうのみにするつもりはございません。しかし、それにしましてもこういうふうに正面から反対だというような態度がいま出てくるということについては非常に奇異の感を抱きます。すでに本年度予算案に、この法律に関連する予算が組まれておるということであれば、なおさらそういう感じに打たれますので簡単に御説明願いたいと思います。
  13. 有馬元治

    ○有馬政府委員 若干言いわけになって恐縮でございますが、この政府案を作成するにつきましては、組合側、経営者側、それから政府部内の産業官庁、こういった各側と非常に密接に連絡をとりながらこれを作成していくという基本方針でまいったのでございますが、その間におきまして総評はじめ同盟、それから日経連、この第三者につきましてもこの原案を説明をいたしまして、それに対する感触も数度にわたって打診をして最終的な労働省原案の成作をいたしたわけでございますけれども、その間において、この雇用対策法の考え方については、先ほど大臣からもお話がありましたように、昨年末の雇用答申の趣旨を尊重して作成しておりますので、この法案それ自体について非常に基本的に反対だというふうな感触は実は受けなかったわけであります。  御承知のように、二十二日の朝刊の反対といいますか、雇用対策法に対する総評の態度というものをごらんになったと思いますが、これを見ましても、この対策法自身の問題も若干ございますけれども、それよりもこれに関連する、あるいは前提となるような諸問題、これについて積極的な態度を示すべきではないか、こういうことが一番大きな中心課題になっておるように私どもは理解いたしております。もちろんこの雇用対策法自体で完全雇用というような大目的を達成するという大それた気持ちは当初から持っておりません。これも一つの大きな推進役は果たすと思いますけれども、関連する経済施策あるいはその他の労働、社会政策万般にわたって前進をしていかなければ所期の目的は達成されない。この総評側の言い分も十分わかりますので、これらの御意見は、先ほど申しましたように審議会の場で十分討議をされて審議会の答申として打ち出されました場合に、われわれの労働省原案は、この答申の趣旨をさらに織り込んで最終的な成案を得たい、かように考えておる次第であります。
  14. 八木昇

    八木(昇)分科員 すでにこれは審議会にかかっておるわけでございますから、審議会の答申によっては、当然その答申の線に沿って政府原案もむろん若干の修正をされた上で提案をされるものと思いますが、これは希望として申し上げておきますが、やはり審議会の中には労働者代表が出ておるとは言いましても、数的にはごく少数でありますので、これはやはり総評方面等の意見というものにつきましても十分これを配慮して、最終的な政府原案の確定については慎重に対処してもらいたい、こういうふうに思っておるわけであります。その点、ちょっとお伺いしたいと思います。
  15. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほども申しましたように、私どもは審議会を中心とし、もちろん組合等の御意見に対しても虚心に私どもは耳をかしていきたい、こういう心がまえでおるわけでございますので、いま先生の御注意の点は十分今後とも心得て対処してまいりたいと考えております。
  16. 八木昇

    八木(昇)分科員 ところで、私といたしましても若干の批判をこの政府原案に対しては持っておるわけであります。まず、雇用対策法というようなものを制定するにあたっての労働省としての基本的なかまえ方といいますか、姿勢といいますか、そういうものについて若干伺いたいと思うのですが、基本的には労働省としては、労働者の生活権を守るという立場に立って、いかに雇用を安定させていくか、そういう具体策を法制化する、こういうことでなけらねばいけないと私は考えるわけですが、どうも印象として産業界の要請にこたえて若年労働力不足に対していかに対処するか、そうして一方では余った中高年の労働力をいかに安く流動化してこれを活用するか、そういう観点に立っておる法案であるという印象を受けるわけであります。これでは、通産省あたりがそういうふうなことを考えるのはしごくもっともだと考えますが、労働省の立場としてはそういう観点に立たれては困る、それは企業の要請にこたえて、いかにうまく今日の労働力を配分し、その企業に提供していくか、こういう形になりかねない、そういうふうに考えるわけでありまして、ほんとうは労働省として打ち出すならば、いかにして労働者の立場に立って雇用を安定させていくか、さらに完全雇用ということに近づけていくか、こういう姿勢でなければいかぬと思うのですが、その点どうお考えでございますか。
  17. 小平久雄

    小平国務大臣 今度の雇用対策法につきまして、私どもが考えておりますことは、冒頭にもちょっと申し上げましたが、基本的には、労働者の地位の向上をはかるようにということをねらいといたしておるわけでございまして、ただ現実の雇用情勢なりあるいは今後の予見される雇用情勢というものを考えますときに、ただ現状のままでほうっておいてよろしいかとなりますと、私はさようではなかろう。この間も、あらためて申し上げるまでもなく、若年労働者不足するとか技能労働者不足するとか、特に中高年については、逆になかなか就職が困難であるとか、あるいは地域的に見ましても相当需給のアンバランスがあるとか、いろいろそこに問題があるわけでございます。しかし全体として考えましても、そう遠からずわが国の労働力というものは、むしろ不足の基調に移るであろう、こういうことが想像されますので、質の面であるいは量の面で、全体として雇用というものがバランスがとれますように、一言にして言えば、そういう環境づくりをやっていくということが、結局、先生のおっしゃる労働者全体の生活を守るということにもつながるわけでございまして、そういう意味から申しまして、労働者諸君全体が、いわば安定した職場を得て、その生活権を守ることができるように、当然それをわれわれはねらいといたしておるわけでございます。またそのことが、もちろん産業のことを考えましても、現状のまま放置するということが、わが国の産業の発展という点から考えましても決して適当ではなかろう、このような施策をすることが、日本の産業の発展にもどうしても必要である、こういう見解に立っておるわけでございまして、決して一方的に、単に産業界にサービスするためとか、特に産業団体の言い分だけを聞いてとか、そういう気持ちは毛頭持っておらないのであります。
  18. 八木昇

    八木(昇)分科員 しかしいまの御説明を聞きましてもそういう印象をぬぐいがたいんですが、たとえば昨年の暮れ、十二月の新聞等を読みますと、日経連の五十嵐専務が座長をつとめております中央雇用対策協議会で労働省がこういう説明をしておるのですね。「最近の不況から余剰労働力の処理をどうするかという問題と、不況にもかかわらず技能労働力不足が深刻化しているという二つの相反した問題が論議された。この二つをつなぐものとして労働省雇用対策法を考えているわけである。」一言に言えば、こういう説明がなされたようですね。一言に言えば、この雇用対策法の一番中心的な点はそこだ、こう言えるのですか。そうだとするならば、労働者の生活は、失業に出あったり、あるいはけがをしたり、資本主義である以上、景気変動のたびごとに労働者は非常な苦境に立つ。そういう場合、そういう労働者の生活というものは、最終的には国が生活権を保障してやるというたてまえに立つ積極面というものは、この法律の中からはそのにおいをかぐことができないと言わざるを得ないのですが、一言にして言えば、私がいま申し上げたような、新聞で報道されたような内容のものがこの法案でしょうか。
  19. 有馬元治

    ○有馬政府委員 前段で御指摘の中央雇用対策協議会での私どもの説明の内容でございますが、これはたしか不況下の相矛盾する現象といたしまして、一方では過剰雇用という問題がいろいろ論議されておる。一方では、私どもの調査では技能労働者が依然として百八十万に及んで足りない、こういった矛盾する現象が今日の状態として出てきている。これらを考えてもやはりその間のバランス、均衡をはかっていくということは、どうしても考えなければならないのではないか、こういう趣旨の説明をしておったと思います。しかし、雇用対策法の究極のねらいというのは、先ほど大臣からも御説明ありましたように、やはり労働者の社会的、経済的地位の向上ということを第一義に置いて、と同時にあわせてと言いますか、産業の発展に資するという考え方でございますので、その辺の考え方の基本は、やはり労働者の側に立って雇用政策を展開していくという基本の考え方は変わりないと思います。
  20. 八木昇

    八木(昇)分科員 当然そうあってもらわなければならない、こう考えるのですが、そういう観点に立ちますると、この法案の内容というのは非常に不十分だと言わざるを得ないのであります。  そこで二、三伺いたいと思うのですが、実際労働者の立場からいまの資本主義の社会というものを考えますと、資本主義には多かれ少なかれ必ず景気変動が伴います。そうしますと、景気のいいときには労働者に利益を還元しないで、企業家は設備を拡大したり、それからいろいろな面での蓄積に金をどんどん回す、そして企業そのものの内容の充実拡大発展というところへ持っていく。ところが一たび若干不況がきますと、ある意味では生きものが一番処分しやすいのですね。いろいろな生産財やその他は一ぺん買い入れて工場へ据えつけてしまったら、少し機械が余ったから処分しようといったってただのような値段でしか処分できない。ところが生きものの人間が賃金を切り下げたり、いろんな形で、ある意味では一番処置がしやすい。そこで、不況がくると何にまず手をつけるかというと、労働者の首切りであるとか、その他そういったふうな措置にまず出てこようとする、こういうことであっては労働者はたまらぬわけですね。そこでこれは将来を展望すれば私がこれから言うことは少しく古い型だとは思いますけれども、しかし日本のいまの資本家のあり方という実態からいきますと、そんなに簡単に人間を首切ったり、あるいは一時帰休とかいうて帰らしたりするようなことというようなことは、法律もしくは政府の行政的な措置によって相当規制されなければいかぬのじゃないか。まあ簡単に言えば解雇制限といいますか、そういったふうな措置というようなことが考えられなければいかぬのじゃないか。ところが日本ではそういう点は、労使の問題には介入しないという理屈を変に適用いたしまして、そういう安易なる労働者の首切りというようなものにブレーキをかけるような、何らかの国家的な保護、そういった措置がないわけですね。こういう点についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  21. 小平久雄

    小平国務大臣 いま先生からお話のございました、どうも景気がいいときにはその利益を労働者に均てんさせずにおいて、不況になると、生きものが一番処分しいいという意味で労働者を解雇するとか、解雇まで至らぬでも、一時帰休をやるとか、そういうことをどうしてもやりがちである、こういうお話でございますが、私の受けておる感じからいたしますならば、以前はそういう傾向が確かに相当あったと思うのですが、最近の情勢から申しますならば、確かに一部に一時帰休ということが行なわれたことも事実ではありますが、特に不況だからといって、直ちに人員整理を行なうというような傾向は、少なくとも以前ほどではないし、そう激しく安易にそういうことをいまの事業主がやっておるとは、私は実は考えておらないのであります。それにはいろいろ事情もあると思いますが、すなわち、なるほど目下は不況ではございますが、基本的には人手は足らぬ。したがって、景気回復の際には、なかなか人員を確保することが容易ではないということ、あるいは労働者側が昔のように力が弱いということはなくて、それぞれ組合等が相当な力を持っているというようなことももちろんあると思います。それやこれや、これは経営の面から言っても、あるいは組合側の事情等から申しても、経営者としてもそう簡単にあるいは安易に、不況だからといって首切りをするというようなことは私はそう行なわれてもおらぬし、またもちろん行なうべきでもないと、かように考えておるのであります。  そこで第二段の、一時帰休あるいは解雇というようなことについて、法的に規制すべきではないかという御趣旨と思いますが、こういう点につきましても、少なくとも解雇については基準法上予告その他の規定は現在ございますが、しかし解雇そのものについて、法でこれを規制するということは、ただいまの法制では言うまでもなくこれはないわけであります。そこで、そこまで法で立ち入ることがはたして適当かどうか、しからば、いかなる場合にこの解雇を制限することが適当であるかというようなことは、これは実際問題としてはなかなか、法律的にこれを律するというようなことは、事実上これはもう相当困難が伴うような気が私はいたしますし、また個々の企業で実際問題としてこれはもう千差万別であろうと思うのです。ですから、それを法律でどういう形にしろ解雇規制ということになると、なかなか実際問題としてはむずかしいのではなかろうか、そういうことよりも、やはり一面におきましては、使用者あるいは経営者と申しますか、そういう人たちに社会的な責務というようなことも、十分理解し、また実践してもらうように、そういう方向でわれわれはつめていくということのほうが、むしろ原則としてはよろしいのじゃなかろうか。個々の解雇をどうするというような問題は、これは労使間でその実情に即して話し合いをして解決をしてもらうということがやはり本筋ではなかろうか、目下のところ私はさように考えておるわけでございます。
  22. 八木昇

    八木(昇)分科員 時間がありませんから先に進みますが、要するに労働省の姿勢として、どうも資本陣営側に積極的にものを言わなければいかぬというような場合でも、非常に遠慮がちだという印象をわれわれは持っているわけなんです。それで、そういう首切りなんかが行なわれている場合でも、銀行からのその企業の借金はちゃんちゃんと返済はしている。株の配当も多少配当率を落とすけれども、やはり一割ぐらいの配当をちゃんとしている。それから各種資材代や税金やその他も一応払っている、そういうことをもしやらないと企業の信用にかかわるから、これらは最優先的にともかくやるんだ、そして手をつけやすいところは労働者であるから、不急不要の人間をこの際若干やめてもらう、こういうような措置というのが相当安易に行なわれている。それで、今後の情勢としては、労力不足という一般的な情勢でありますけれども、個々の企業の場合になりますと、必ずしもそういう情勢ばかりを考えて対処するわけではありませんから、ごく客観的に考えてこれはひどいというようなことが、もうでんとした大企業でさえも行なわれるのですね。たとえば、二年ほど前の八幡製鉄なんかに例をとりますと、若手の労働力不足してしまうというので、新規高校卒予定者をたくさん採用だけしておいて、そして卒業を三月にしてしまっているのにまだ出社には及ばず、自宅待機せよ、いずれ通知が来たならば出社してください。こういうことで七カ月も八カ月もほっぼらかしておいて、そのためにほかのところへ就職することもできなかった。そうして一年たっても出社してこいという通知が来ない、遂に自殺をした気の毒な高校卒業生等が九州では話題になりました。そんなふうなことが野放しで許されているというようなことは、私はけしからぬと思うのです。こういうことについて労働省として打つべき手がないとはいえないと思う。どうお考えでしょうか。
  23. 小平久雄

    小平国務大臣 私、昨年のその八幡の例の話、労働省がどういう処置をとったか実は存じませんので、局長から御説明申し上げます。
  24. 有馬元治

    ○有馬政府委員 大きな事例としまして、御指摘の八幡のケース、それから引き続いて国鉄の大阪管理局のケース、それから東洋レーヨンのケース、大きな例が三つあったと思いますが、私どもとしましては、新規学卒の採用の問題でもございますので、これらいずれの場合についても雇用主側に予定どおり、約束どおり早期に正式採用するようにという申し入れをいたしまして、会社側もそれに応じてできるだけ採用の時期を早めて採用したということで、この事態に全然無関心であったというわけじゃなくて、採用者側には十分警告を発した次第でございます。
  25. 八木昇

    八木(昇)分科員 非常に巧みなあの手この手というものを企業側としては考える。企業の立場からすれば、それは同情すべき点なきにしもあらずですけれども、事態が起こってからそういうことするのでなくて、あらゆる場合が大体想定されますから、そういうようなことが許されぬのだという立場から、やはり各経営者のいろいろな団体がありますので、そういうものを通して労働省はもっと積極的にやはり措置をしてもらいたい、こう思います。  それから第二の点ですが、これは先ほど労働大臣がおっしゃられたとおりに、これからの将来の展望としては労働力不足の状況に入っていくわけですね。したがいまして、今後の労働省としての積極的施策としては解雇制限ということよりは、むしろそのこともむろん一方において必要ですが、もっとやってもらわなければならない点は、解雇になった場合、職を失った場合、次の職を得るまでの間の生活を何らかの形でこれが保障されるという、そういう制度ですね、社会保障の制度、こういう施策が今後積極的に打たれなければならぬという情勢に実はなってきていると思うのです。その点、当然この失業保険制度というようなものの内容がもっと抜本的に改められていかなければならぬ、こう思います。ところが、日本の実情では、御承知のとおりに、首を切られたならば最高九カ月間しか失業保険金がもらえない。しかも働いておった間じゅうの収入の最高六割でしょう。そうなりますと、好むと好まざるとにかかわらず、自分が望まないところに非常に安い賃金でも、泣く泣く今度はどこかに職を求めていかざるを得ないというのが今日特に中高年齢層の悲惨な状態だろう、こう思うのです。生涯をその企業にささげて、そうして生活をしていこうと思っていた人が中高年齢層になって企業が倒産をしていまのような状態――先ほど説明をいたしましたような状態に追い込まれた場合、ほんとうにこれは哀れです。それにもかかわらず、いま雇用対策法を政府はここに提案するといいながら、一方では失業保険制度というもののむしろ改悪が強行されておるということは、これは矛盾じゃありませんか。ヨーロッパやその他の例を引くまでもございませんが、特に西ドイツあたりは非常に充実しておると聞いておるのですが、失業をした場合、次の職につくまでの間の生活は国と企業が全体の連帯責任として保障する、こういう点が充実されておると思うのですが、その点についての今後の対処のしかたについて具体的にお考えを述べていただきたいと思います。これは大臣でも局長でもどちらでもけっこうです。
  26. 有馬元治

    ○有馬政府委員 現在の失業保険制度は先生御指摘のように前職賃金の六割水準の給付をいたしまして、再就職までの生活の保障をはかるという趣旨でできておりますが、この六割水準自体は国際的な水準から考えても最高の部類に属すると思います。もとになる賃金自体が低いという基本的な問題がございますので、これは保険の問題では実はないのじゃないかと思いますが、水準自体としては国際的に見て最高の水準に達しておると思います。しかし現実の問題として、特に中高年の場合には再就職が保険の給付期間を過ぎてもはかられないという場合が相当想定されますので、私どもとしましては、この雇用対策法の中に職業転換給付制度というものを確立いたしまして、失業保険が切れてさらに再就職をはからなければならぬという場合には転換給付金を支給しながら再就職に万全を期する、こういう考え方でこの対策法を考えておりますので、非常に不十分なところは随所にあろうかと思いますけれども、おいおい制度充実していきたいという基本的な考え方でございますので、この点はひとつ御了承いただきたいと思うわけでございます。
  27. 八木昇

    八木(昇)分科員 この程度のことではほとんど対策法と言えないと思いますね。それでやはり企業にももう少し金を出させるようにして、そして国庫助成措置をすることにしまして、少なくとも中高年齢で企業の事情のために職を失ったというような人については三カ年間くらいは次の職業選択のある程度ゆとりある自由を持ち得るように、期間はでき得れば少なくとも三カ年くらいの間、しかもつとめておった当時の収入を下回らない程度のどういう形でかの生活保障がなされ得る、そういうようなシステムにまで前進してもらいたい。だからといって、そういう制度があるから一回首になったらもう三年くらい遊んでおこうというふうなことに決してなりはしませんです。だが、いかなる場合でも特定の例外はございます。ですから、そういう考え方というものを今後相当強力に推し進めてもらわないというと――これは資本主義そのものを守っていく立場からも必要だと思うのです。そういう点を十分心がけていただきたいと思います。  次に、具体的にいま非常に問題になっておりますレイオフの問題について若干質問をいたしたいと思います。  先ほど来申し上げましたように、一方ではむちゃくちゃな解雇がなされないような、ある種の解雇制限というような実際上の行政措置がある。他方においては失業をした場合でも次の職を得るまでの間の相当充実した生活保障制度がある。こういう二つの制度が完備した上に立ってレイオフというものが中間的な措置として一般的に行なわれるという状態であるならば、このレイオフ制度というのは相当合理性があると思うのです。しかし、そのレイオフ制度実施される前提となるべき二つの点、解雇制限さらに失業中の生活保障ということが全く不十分ないまの日本の情勢の中でレイオフというような措置が企業によって非常に安易に行なわれ、これが一般化するという状態は、私どもとして必ずしも賛成できないのです。企業の状態、労働者の状態によって、個々のケースで事情が相当違いますから、一方的にレイオフという制度そのものを全面的に否定するところまでは私ども言い切れませんけれども、しかし少なくともいまの日本の実情でこれが一般化することについては相当危険性がある、こう考えるのですが、この点、大臣どういうふうなお考えでございましょうか。
  28. 小平久雄

    小平国務大臣 実はこの点、たぶん本会議であったかと思いますが、一度お尋ねがありましたので、その際もお答えしたのでありますが、日経連などでレイオフ制というものを検討しておるのだということは新聞その他で私も承知をいたしておりますが、実はその内容が具体的にどういうものなのか、われわれの聞いておるところではまだ結論までも至っておらぬように聞いておりますので、具体的な内容というものは実はまだよくわからぬのです。したがって、今日の段階においてレイオフというものはどうもいいとか悪いとか、これにとかくのことを私のいまの立場から申し上げるのはむしろ御遠慮しなければならぬ、私はそう心得ているわけでございますが、いずれにいたしましても、先生のお話の中にもありましたとおり、確かに日本の雇用制度というものに弾力性とでも申しますか、そういう面が非常に欠けておるということも私は率直に言って事実だろうと思います。もちろん、そうだからといって、先ほど来申しますように、安易に解雇等をやるというようなことは、これは私はいかぬと思います。しかしまたあまり極端に弾力性がないということも、ある意味においては、労働者諸君にとっても必ずしも望ましいことでない場合も私は起こり得ると思うのです。しかし、それはそれとしまして、いま日経連が考えているというようなレイオフというものは、先ほど来申し上げるとおりでありまして、まだ内容もよくわからぬものですししますから、今日のような段階で、先生の御指摘のような前提があってのことならこれまた何でしょうが、もちろん先生御指摘の前提となる一つの条件も確立してないことも事実でしょうから、そういう段階でどういうことを一体やられるのか、私はまだ今日批判すべき立場にはない、こう申し上げるよりいたし方ないと思います。
  29. 八木昇

    八木(昇)分科員 日経連が考えておる考え方というものは非常にずるいのです。そして、ヨーロッパやその他の各国でも、こういうレイオフというようなものが非常に効果的に働いているというようなことをアッピールしようとしておるようですが、しかしこれらの国においては、一方においては社会保障制度が相当充実しているわけです。それを抜きにしてレイオフというものを持ってきて宣伝しておる。しかも今度は同じレイオフといいましても、このレイオフのやり方の中身がイギリスやアメリカでやっているのと違う、その逆をいく中身を考えておるようです。すでに御承知だと思いますけれども、日本的レイオフというか、この彼らが考えているやつをあえて名称をつければそういうふうな呼び方ができると思いますが、日本的レイオフというものの内容は非常にけしからぬのです。アメリカでは勤務年限の短い者からこの対象者を選び出し、今度は逆に職場へ復帰してくる場合は、勤務年限の長い者のほうから早く復帰できるというように考えられて実施されているわけです。日本の場合には、若年労働力が非常に不足しているものですから、むしろその逆を考えていますね。しかも、アメリカでは賃金の一・五%というものをふだんから積み立てているわけです。そして失業保険金とともにちゃんと差し出しているわけですね。イギリスあたりに例をとりますと、工場労働者離職手当法というものがちゃんとあって、これに中央基金があり、資本家がかねて積み立てをしておりまして、レイオフ――一時解雇をやった場合、少なくとも一年間の期間は二十一歳以下の人には給料の半額をこれで保障する。むろん失業保険金も別途もらえる場合もあるわけでしょう。それから四十一歳以下は給料をもらっておった当時の額の全額をもらえる。それから四十一歳以上はむしろ逆に五割増しをもらうというわけですね。一・五倍をもらう。こういうふうに私は聞いておる。したがって、その内容は全く違うわけです。そういう点はひとつ十分に、今後労働省が対処する場合に腹の中に入れて対処してもらいたい、大体内容は御承知だと思いますが。  あとの質問者がまだお見えになっていないと思ってのんびりやっておったのですが、来ておりますから、あとははしょりたいと思いますが、十分ぐらいで終わると思います。  そこで、当面このレイオフにどう対処するか、資本陣営の側では一時解雇をやった場合には当然失業保険を適用してもらいたい、こういうふうに強く要請してくることが予想されますから、どういうふうに対処されますか。
  30. 小平久雄

    小平国務大臣 現在の失業保険法から申しますならば、申し上げるまでもなく、失業という事実が発生して適用になるわけでございますので、いわゆるレイオフというものの実態がほんとうに解雇なのかどうか。もっぱらそこが失業保険金を払わなければならぬかどうかという分かれ目であろうと思うのです。どういう場合にしからば解雇と認めるかという道は、いろいろ考え方もあろうかと思いますが、ほかにも社会保険もあるわけですし、さらに社内的にもほんとうに解雇の手続がとられたのかどうか、あるいは基準法などにも解雇については規定があるわけですから、そういうものが一切、法的にもあるいは社内の就業規則なり何なりの定めるところに従って、ほんとうに要するに解雇という実態が備わっておるかどうか、こういうことでありまして、これは実際そのレイオフと称するものが行なわれた場合に、その実態をよくとらえて判断する以外なかろうと思うのです。その結果これは確かに解雇なんだ、こういうことになれば、一般の失業者と同様にその後は取り扱っていくということでありまして、一時解雇というようにまた必ず採用するのだという取りきめなり何なりがかりにあるにしましても、安定所のほうの態度はどんどん職業紹介活動ももちろんしなくてはなりませんし、そういうことでありまして、もっぱら、一言にして言えば解雇の実態があるかないか、これによって失業保険の適用をするかしないかということがきまる。抽象的でありますが、まあ現在のところはさように考えております。
  31. 八木昇

    八木(昇)分科員 どうも労働省の態度もまだ固まっていないようで、だいぶ動揺があるような印象を受けているのですが、たとえば、去年の九月二十三日の毎日新聞によると、これは相当大きな見出しで出ておりますが「一時解雇に失業保険小平労相表明、帰休は対象外」こうなっております。この内容によりますと、どうも一時解雇というような場合はやむを得ない事情から一時解雇をしたというふうに、やむを得ない事情というのが一体どういう場合を言うのかわかりませんけれども、「やむをえない事情から解雇した場合は、一時解雇でも当然失業保険支給する。」どうもこういう態度のように聞いておりますが、ところがその後、昨今の報道によりますと、ややニュアンスが違うという感じを受けております。そこで私は、やはり原則としては、こういう一時解雇というものにつきましては、失業保険の適用ということについては相当困難性があると思いますが、しかしこれはやはりケース・バイ・ケースで、全面的に、右とも左とも軍配をあげがたいという非常にデリケートな事情があることは私も認めます。でございますので、そういった点は十分に考えながら、使用者側が偽装的な解雇で失業保険に便乗していくというやり方は、少なくとも野放しにならないように対処してもらいたい。よく紡績企業なんかで若い女の工員さんをたくさんかかえておるようなところでは、こういう巧みなやり方をやるおそれが非常に強い。労働者自身も抵抗力がありません。そういった点は十分に考えて対処していただきたいと思います。  最後に、スト規制法について若干質問をいたしたいと思います。  新聞の報道では、これはことしの一月の毎日によりますと、「電気・石炭のスト規制法労働省、再検討始める」こういうことで記事が出ておりますが、何らかの再検討をしておられるわけでございましょうか。
  32. 小平久雄

    小平国務大臣 このスト規制法の問題につきましては、池田内閣の当時以来、池田総理が、あるいはあれ以来の労働大臣が考え方を申し上げておるわけでありまして、それは簡単に申しますならば、スト規制法ができて以来、電気事業界あるいは石炭業界において、この規制法が規制しておるような労働争議も幸いにない、こういう事態ではありますが、しかし、国民の安心感という点から考えて、これをいま直ちに廃止するという考えはどうもとれない、しかし、もちろん基本的な労働権に関する問題でもあるししますので検討はいたしましょう、大体そういう趣旨で歴代の労働大臣も臨んでおられたように承知をいたしておるわけでございます。このことは、私も従来のいきさつを伺いましたり、また、現状についてもいろいろ考えてはおりますが、しかし、いま直ちに歴代の大臣がとってこられた態度を変更するというところまでは、私も実はいまのところ至っておらないのでございます。大体歴代の労働大臣が表明してまいりました態度を踏襲して、やはり慎重に検討を続けていく、こういう考えでございます。
  33. 八木昇

    八木(昇)分科員 私はこの新聞を見て、この記事に書いてある内容について必ずしも全面的に賛成なわけではありませんけれども、非常に喜んでおったわけです。いまの答弁を聞いていささかがっかりせざるを得ないのですが、御承知のように、スト規制法というのは、電力、石炭の労働者に対してのみストライキ規制をやっておる。しかも、この法制定がされるときには非常に難産であったことは御承知のとおりでございます。当時、保守党のほうも二つに割れておりまして、保守党の片一方は必ずしも賛成しなかったのです。しかも、それは昭和二十八年から三カ年の時限立法であったわけでありますが、時限が切れましたところが、これを恒久立法に切りかえて、なお今日に及んでおる、こういうことでありますので、これはもうぜひひとつ撤廃という方向で検討をしてもらいたいと思います。火のないところに煙は立たないと私は思いますので、すでに若干の検討がなされんとする姿勢にあるのではないかと私は善意に解釈をしております。これはぜひひとつやっていただきたいと思います。炭鉱の場合には、保安関係についてのストライキができないということになっております。これにつきましても、私人が経営する炭鉱施設の保持を、公共の福祉の名のもとに強制して、ストライキを労働者がやることができないようにするということにも問題がありますし、それから、このスト規制法で電源ストというようなものを禁止しておりますが、しかし、スト規制法制定以前の裁判の判例を見ますと、そういう電源ストにつきましても、スト行為として違法だという判例はないわけです。そういう点からいきましても、このスト規制法は無理がありますし、それからまた、第三の点は、昭和二十七年秋の、当時の電産、炭労の長期ストということのあった直後にこのスト規制法がつくられておりますが、すべての社会情勢、労働事情というものも今日では事実変化しております。その点も十分勘案してもらわなければならない。それからさらに、この法律はスト規制ということになっておりますけれども、しかし、この規制法に違反したからといって別段これに罰則があるわけじゃないですね。ですから、労働組合があくまでもやろうという決意で断行した場合、十分このスト規制法というものの効力があるとも考えられないという面もあると私は考えておるわけでございます。しかるにもかかわらず、一方、法の条文面からだけ言いますと、電気の正常な供給に支障を来たすような行為は一切いかぬというのですね。そういうことを言いますと、電気の正常な供給には、もう一切の電気労働者の仕事は関係があります。ですから、会社の本店に中央給電指令所というのがあるが、そこが職場放棄をすれば正常な電気の供給はできない。あるいは各支店やその他電力所等にあります発変電課とか、配電課とか、送電課とか、いろいろありますが、そういうところの人たちが職場放棄をすれば、もうそれも正常な供給はできない。各発電所、大きな変電所を統括しておる電力所というのが全部運転を指示しておるのですから、そこの机上勤務者が職場放棄をすればこれも正常な供給ができない。末端の一営業所におきましても、電気の放障やその他の受付等をやっております営業係の事務屋が職場放棄をしたって、正常な供給が妨げられるわけです。これは非常にずさんな一夜づけの法律でございますから、こまかく内容についてもう少しく質疑したいと思いましたが省略をいたしますが、そういう点を十分考えられまして、ひとつ対処していただきたい。その場合、現在、電気労働者の大部分は電労連という組織で同盟会議に加盟しておりますけれども、当事者の組合の意見を聞くだけでは不十分であると思います。日本の労働運動の中心であります総評方面やその他の意見も十分に徴した上で対処してもらうように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  34. 大橋武夫

  35. 山田耻目

    山田(耻)分科員 春闘という一つの呼び名がございますことしの賃上げ要求の時期がきたわけでありまして、予算委員会などでもいろいろな御論議がされまして御答弁いただいておるわけでありますが、御存じのように、昨年一年の物価は、四・五%という政府の上昇率押えのかまえというものが、実際には八%近い物価の上昇が起こってまいることは間違いございませんし、労働者の生活も非常に苦しさが増してきております。政府のほうも、一月の一日で配給米を八・六%値上げなさいますし、自来、私鉄の運賃、地下鉄あるいはいま参議院で問題になっております国鉄の運賃、あるいは国民健康保険の本人負担が二倍、郵便の小包が三〇ないし四〇%、七月になりますと手紙が五〇%、はがきが四〇%、こう値上げが出番を待っているようなかっこうです。これは政府なりあるいは公企体経営者などのお手盛りによってそういう値上げ、公共料金の引き上げというものがされていくわけでありますが、労働者の生活というものは一段と窮迫の度を深めているわけです。こういう一連の情勢の中で、経営者の総本山である日経連のほうは、不況という名を前面に押し出しまして、賃上げに対しては非常に消極的である。ことしの春闘、賃上げというものを考えてまいりますと、この間の海員組合の争議の長期化などとも並べて考えますと、非常に心配される向きが多いようでございます。近く、この春闘共闘会議という労働組合の団体の代表者と官房長官を窓口として労働大臣もお会いになって、ことしの政府の姿勢というものを何らかの形でお示しになるものだと私理解いたしておりますけれども、一体、ことしの労働者の賃上げ要求に対して、政府としては、あるいは労働大臣としては、いまの物価値上げ等の一連の動きを見てどのようにお考えになっているか、考え方をひとつお聞かせいただきたい。
  36. 小平久雄

    小平国務大臣 春闘に際して労働大臣としてどういう態度で臨むかという御趣旨と思われますが、先生の御指摘のとおり、昨年中相当大幅な消費者物価の値上がりがあったということ、あるいは各種の公共料金の値上げがすでに行なわれたものもありますし、また今後予定されているものもあるということもすべて事実でございます。そこで、基本的には、労働者諸君の賃金というものが、物価の上昇等も考慮に入れられてその生活が確保されるということは、当然これは基本的に私は考えなければならぬことだと思います。ただ、そうだからといって、現在の法制の立場からいたしまして、具体的に春闘においてどのくらいにいわゆる相場がきまることが適当であるかというようなことを、労働大臣の立場にある者が具体的な意見を表明するというようなことは、私は必ずしも適当ではないんじゃないか、かように考えておるわけでありますが、抽象的に申しますならば、いま申しますとおり、一般、特に消費者物価等の値上がりも当然考慮に入れられるべきでありましょう。しかし、一面、また基本的に、これを経済の成長というようなものも当然考えなければならぬでしょうし、あるいは国民各層の所得の均衡をとるということも必要でございましょうし、そういういわば国民経済的な立場というものも十分労使ともに考慮していただきたいと思いますし、さらに具体的に申せば、企業によっていろいろ事情が違う、力も違うということがございましょうから、そういうことにつきましても、これまた労使双方ともよく理解し合って、両者が自主的に話し合いによって妥当な線を出していただく、こういうことが、はなはだ抽象的ではございますが、やはり私はそういう御希望を申し上げ、また、そういう私の考え方というものを各方面にできるだけ申し上げておきたい、さように考えておるわけでございます。
  37. 山田耻目

    山田(耻)分科員 まあ、労働大臣として、政府の側としてはごもっともな答弁であると思います。特に前提として配慮していかなければなりませんのは、昨年の物価上昇というものが大体八%くらいにはなっていくでしょうけれども、少なくとも、実質賃金が下回っていき、生活が非常に苦しくなっていく、こういうふうな形に労働者の生活が落ち込んでいくということは、所管大臣として好ましくない。そういう経済事情の中で日本経済をささえておる勤労者というものの生活が正しく守られていくように、ことしの春闘の中では、労働大臣としての立場はそのような方向でひとつ貫いていただく。これからの経済閣僚懇談会なりあるいは春闘共闘の人々とお会いのときには、そういう立場を私はみごとに貫いていただきたいということを、あなたの立場は苦しゅうございましょうが、一つ要望いたしておきたいと思います。  それから二つ目の問題でありますが、昨年の予算委員会でも私申し上げて、当時労働大臣は石田さんでございましたけれども、大蔵大臣も御同席いただいて、当事者能力の問題について一応の解明をいたしたつもりであります。特に、この春闘の中で比較的大きな数を占めておりますのが公労協でございますが、すでに賃上げで団体交渉を重ねてきておるようでございますけれども、予算委員会での労働大臣なり大蔵大臣の答弁は、いわゆる自由裁量権というものを法の許す限り拡大をして、団体交渉が円滑に実を結ぶように十分なる指導をやりたい、こういう御答弁があったわけです。そのときに、特に指摘をしておきましたのは、これは公社事業法に、どこの公社にも明記してございますが、給与準則というのがありまして、資金上、予算上不可能なものの支出についてはできないとか、この給与準則の持っているウエートと、それから労働者諸君の社会的、経済的地位の向上を対象として行なわれる団体交渉の範囲が公労法八条に定められておりますけれども、この公労法八条によって団体交渉を行なっていった場合に、妥結すれば労働協約の締結が当然なされてきます。この労働協約の締結が、資金上、予算上不可能な金額を締結した場合においては、国会で承認を求めなくちゃならない、こういうふうになっておるわけです。だから、公労法八条というものと、十六条に言う国会の承認というものとは、八条の団体交渉権の保障というものが優先をしておる。それが資金上、予算上こえた締結であった場合には、十六条によって解消していく手続があるのだ、このことも確認をされたと思います。したがいまして、当然ことしの公社と各労組の諸君の団体交渉は、その当時明らかにされた筋に従って交渉がされていかなくちゃなりませんし、その交渉が混乱をより増大するということは私はないと思っておりますので、そこらあたりについて今日まで具体的な御指導がなされておれば、どのような指導をしておるというふうにお答えをいただきたいと思います。
  38. 小平久雄

    小平国務大臣 三公社五現業の当事者能力の問題でございますが、これは以前からだいぶ論議の的となり、また、いろいろ検討されておるところでございます。この点は、また基本的には、御承知のとおり、今回できました公務員制度審議会で検討されておるところでございますが、その結論の出るまでの間、政府としても従来どおりのあり方でよいとは考えておらないわけでありまして、これはたぶん昨年一月の次官会議であったかと思いますが、いわゆる当事者能力というものを、現在の法制のもとにおいても各三公社五現業の理事者諸君にできるだけ発揮してもらおうという決定をいたしまして、政府はそれを認めておるわけでございますので、従来、私どもといたしましても、各理事者が非常に積極的に交渉に臨む、こういうことを期待をいたしておるのでございます。率直に申しまして、従来の交渉にあたってのいわゆる最初の回答なども、あまり常識的に考えるというか、世論から見てどうかと思うような回答をしたり、ああいうことは、実は私自身もどうかと思っておるのでありまして、もう少し真剣に、もちろん、当事者能力が無制限に現在においてあるわけではございませんが、それにしても、理事者というものが、その責任においてもう少し積極的にやることが望ましい、私はさように考えておりますし、政府としてもそのように考えているわけです。今度の春闘にあたりましても、おそらく理事者の諸君は十分承知しているはずでありますから、従来以上に積極的に団交を進めることだ、さように期待をいたしておるのであります。あるいは法律関係で何でしたら、局長からまたお答えいたさせます。
  39. 山田耻目

    山田(耻)分科員 おっしゃったように各公社の責任者がやっていたら、いままでのような混乱は事前に起こらなかったわけです。だいぶ整理されてはきておりますけれども、この際思い切って――独立採算制をやっている事業ですし、しかも、政府の特別会計の中にある事業体ですから、ある意味では当事者能力というものは何らかのかっこうで制限はあると思う。だから、当事者能力と団交の問題というものは切り離されて十六条は制定されているわけです。ですから、この際、もう当事者能力のことは考えずに、どんどん団体交渉で金額をまとめろ、そのまとめた金額が給与準則を上回っているときは、十六条によって国会の承認を求めるのだよ、こういうふうに御指導なすったら混乱は全然起こらない。一ぺんそういう御指導をこの春闘でおやりになるという気持ちはありませんか。これをやられれば、どこも悪くはないですよ。当然のことなのです。各公社経営者も、それをやられたからといって腹が痛むわけではなしに、おしかりを受けるわけではなしに、こうして出すときには十六条によって国会へ出して、国会の承認を求めなさいよ、その承認を得なければその協定は無効ですよと書いてある。その手続をことしは思い切っておやりなさい、そうして、労使は積極的に団体交渉をやりなさいと指導をなさるのが一番混乱をなくしていくやり方だと思いますが、これは特に行政官庁としてあなたの所管でありますから……。
  40. 小平久雄

    小平国務大臣 先生のお話も一応わかるのでありますが、これはあらためて申し上げるまでもなく、団交の段階できめてしまって国会に持ち出すというのも、これも一つの筋道かもしれませんが、公労委という機関もあるわけでございますから、これは話のつかぬ場合のことですが、一挙に団交の段階で、それからもう国会というよりも、せっかく公労委という機関もあることですから、これを十分活用していただくというほうが、ものの順序として大体よろしいんじゃないかという気がしますが、その間のことは、実は私もよく検討していませんから、先生のお話、よく検討してみたいと思います。
  41. 山田耻目

    山田(耻)分科員 あなたのおっしゃる順序は逆なんです。あなたのさっきのお話で、ことしの賃金協約はむずかしい、だから労使双方がまじめに話し合いをしてまとまってほしいと言っておる。私は、まじめに話し合ってまとまってほしい筋をいまここで教えておるわけです。だから、公労委なんというものはほんとうは開店休業であったほうが望ましいのです。あれはけんかの仲裁機関ですよ。できるだけあそこに持っていく前に労使双方で話して、団体交渉で協約がされていく労働運動の育成というほうが私は正しいと思う。だから、ここでは当事者能力という問題がたまたまひっかかっておって、びた一文出せません、早く公労委へ持っていこうじゃありませんかという変則状態が日本の労働運動の中に生まれてきたのは、当事者能力というものをしっかりと押えておった大蔵省にほんとうは責任があるのですよ。あれが日本の労働運動をゆがめちゃったのです。だけれども、大蔵省が、今度は私の予算委員会の質問に対しては、そうですと答弁しているのですから、ここで今度は労働省がゆがめちゃいけませんよ。労働省は、本来の日本の労働運動が健全に発展していくように、まず団体交渉を大切にして、そこでまとまって労働協約が結べるように、ことしの春闘ではひとつ模範を示していただきたい。小平さんはりっぱな方でありますから、ここでひとつ模範を示す労働大臣として、当事者能力にあまりウエートを置かずに、労使で、団体交渉で協約しなさいよ、こういう指導をぜひともやっていただきたい。これは法律上から見ても、運動上から見ても、行政上から見ても誤っていることじゃないと私は思います。これはひとつどうかお約束いただきたいと思います。
  42. 三治重信

    ○三治政府委員 当事者で労働協約で新しい賃金協定を結べるように公労法ではなっておりますが、ただ、いままでの事情もございますし、ことし直ちにそういう方向で指導しろ、こういうふうなことでございますが、やはり三公五現の当局それぞれも自分たちの考えを持っておられますので、従来みたいな当事者能力を制限するというふうなことは、昨年も、また今年においても、逐次これは合理的な運用をはかるというふうに、昨年の一月政府としてはきめたわけですから、したがって、各公社、現業当局がどういうふうに判断するか、それをこちらのほうが、あくまで労働協約で妥結するようにしなさいよというのも、あまり一律的にはいかないのじゃないか。それは、いままでのワクを逐次離れていけば、公社当局としても、自分たちの営業あるいは対労組の対策上いろいろの条件がそれぞれかみ合って逐次改善されていく、一挙に、今度は解除したからここまでいけというふうに、あまり強制的にやらぬほうがいいんじゃないか、こういうふうに考えております。
  43. 山田耻目

    山田(耻)分科員 労政局長がそういう答弁をしては、私は非常に心外なんです。時間がないのであまり言えないのですけれども、当事者能力のワクをできるだけ広げるのは、三公五現の人々が、よろしい、これだけ出そうと、出せる力を広げようというのです。いま、よし出そう、出せる力で――年間八%も一割近くも物価が上がっていくのに、これに対処していくような賃上げがうんと出せるものではない。それほど当事者能力はありませんよ。だから、ここで言っておりますのは、団体交渉を規定した八条というものと、そうして予算の支出に関する十六条の問題と、正しく法律として生かしていくのが労政局長の仕事でしょう。だから調停、仲裁に持っていって、たとえば仲裁の裁定が出たとしても、これは直ちに効力は生まれないのですよ。国会へ持ってきて、国会の承認を得なくちゃならぬ。労使双方で団体協約を結んで、その結んだのを国会に持ってこなければ効力を発しない。だから、労働法上のたてまえから言うと、片一方は拘束性を持っておりますし、片一方は両当事者同士でお互いに拘束性を持っておる。ウエートは同じですよ。その同じものを国会に持ってきて承認を経なければ効力を発生しないのですから、両当事者間でさせていくほうが公労法上のたてまえから正しいというので、いま私は団体交渉の筋を推しなさいと言っておるのです。当事者能力とは直接関係ない。私は、当事者能力の議論が前回も今回もかなり進んでおったし、大臣もおっしゃるように、公務員制度審議会でもやられておる、それが公労法の八条、十六条とは直接関係はないのです、過程では関連が起こってきますけれども。だから、ここで言う三公五現という国営企業が、資金上、予算上をこえて支出するそれぞれのものについては、労働協約ないしは仲裁裁定を受ける。このいずれも国会の承認を経なければならない。この前者のほうがいままで一度もやられてない。前者のほうが労使自主的に解決していく健全な道なんだ。この道を推し進めていってくださいよ。これは当事者能力のいまの問題とは直接関係ございません。労働運動のあり方として健全な道をそこに見つけようとしておるのですよ。それが、ことしもう少ししたら激突の種になるかもしれませんよ。そういうことをやらしておったのでは行政担当者としての皆さんの立場も少しおかしく見えるので、ことしははっきりしておるからひとつやってくれというのですから、労政局長みたいな答弁をしないでください。いま私が言ったような方向で指導していっていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  44. 三治重信

    ○三治政府委員 いま先生のおっしゃった筋というものを私は曲げて言っておるつもりはございません。ただ、ことしは労働協約で賃金をきめるようにしなさいとまで積極的に直ちに政府が言うべき立場ではないのではないか。いままでは調停、仲裁といった方式のものが、今度は民間方式である労働協約できめる方式に直ちにやれというふうにまで政府が言う必要はないのではないかということだけは申し上げておきます。
  45. 山田耻目

    山田(耻)分科員 その点については、いずれまた直接の指導の問題ですから、場所をかえて相談するところがあるだろうと思います。  次に、ILOの条約八十七号が昨年批准をされましてたいへんおめでたいことだと思うのであります。そして、大臣が批准書をジュネーブに持参されましていろいろとモースさんなりあるいはジェンクスさんとお話をなさったことだと思いますが、そのときに、百二号の条約の問題、百五号の条約の問題、これらの早期批准についてILOの事務局のほうからお話があったと現地の報道は、伝えておりますけれども、どういうふうな話があったものかお聞かせいただきたいと思います。
  46. 小平久雄

    小平国務大臣 私が八十七号条約の批准書の寄託に参加いたしましたおりに、寄託した当日でしたか、その翌日でしたか、事務当局の皆さんを昼食会にお呼びいたしました。その際、ジェンクス次長から、これはもちろん非公式な話でございますが、日本が今後さらに百二号、百五号、百十一号、これらの条約の批准の促進をしてほしいというお話が確かにございました。私は当時就任早早でもございましたので、実はこれらの条約についての従来のいきさつ等も詳しく存じておりませんでしたから、いずれにしても、帰国の上で関係各省ともよく相談をして、できるだけ努力はいたしましょう、こういう返事をいたしておいたわけでございます。
  47. 山田耻目

    山田(耻)分科員 いまILOへ日本関係問題が百七十九号事件というものによって分厚い提訴がされておるわけでありますが、この結社の自由委員会に関する提訴内容というのは、八十七号条約を批准したことによって消滅したものではない。ケース百七十九号の中には、百二号に関するもの、百五号に関するもの、幾つかあるわけです。したがいまして、提訴側から言いますと、そのうちの一部の八十七は批准されたけれども、百二ないし百五号というものは依然として係争中である、こういう気持ちというものは消えうせておりませんし、なお強まっていると私は見ております。したがいまして、ジュネーブの事務局も一日も早く批准をしてほしいということの督促があったものだと思うのでありますが、あなたも聞き置かれたという程度のものであってはなりませんし、むしろ日本は、そのことのためにいろいろ国際信用を失っている部分があるのでございますから、一体、担当大臣として百二号なり百五号の取り扱いをこれからどのように具体的に進めようとなさっておるのか、あるいはその日程についてどのような展望をお持ちになっておるのか、これについて一応お答えをいただかないとちょっといけないと思うのでありますが、お答えいただきたいと思います。
  48. 小平久雄

    小平国務大臣 これらの条約のうち、まず百五号の関係でございますが、これは申し上げるまでもなく、強制労働に関する条約でございます。これにつきましては、わが国の国内法のうち、国家公務員法あるいは地方公務員法等の規定するところが、特にその政治的行為を制限しているというような関係から、これがこの条約にはたして抵触することになるのかどうか、この点は、実はILOにおける解釈自体も、直接これは照会したわけではないようでありますが、どうもまだはっきりいたしておらぬ、こういうような事情にもあるようでありますので、いずれにしましても、この間の事情等を十分今後検討いたしてまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。  なお、百二号の関係は社会保障に関するものでございますが、これも、労働省でおあずかりしておる失業保険の関係あるいは労災補償の関係等は、大体条約の規定しておるところに適合しておるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。ただ、もう一つ、これは御承知のとおり三項目該当せぬといかぬのだそうでありまして、もう一点が、これは大体わが国の所管からいえば厚生省の所管になると思いますが、その点がどうもまだはっきりいたしませんので、それらの点は、従来からそうでありますが、厚生省ともよく打ち合わせをいたしまして、私としては、できるだけ早く、こういう国際的な条約というものは批准ができるようにつとめていきたい、こういう気持ちで目下おるのであります。
  49. 山田耻目

    山田(耻)分科員 八十七号の条約も、十六回も十七回も勧告をされて批准をしたのですけれども、いまの百五号にいたしましても百二号にいたしましても、国際的な問題でありますだけに、何べんも何べんも外国からも言われて、日本の国内では一大騒動が起こって、それから政府が腰を上げていくというふうな、うしろ向きのやり方というものはぜひとも改めてもらわなくてはいけないと思います。こういうものに積極的に取り組んでいただきまして、むしろ、国際的な信用回復をしたり、国内労働行政において信頼をかちとっていく、こういう立場というものが、少なくともいま具体的に示されていく段階ではないだろうかと思うのでありますけれども、たまたまあなたがジュネーブへいらっしゃいまして、そういう話を事務局の方となされたと聞きまして、ひとつこの際腰を据えて、これを爼上に乗せるようにぜひとも御努力を願っておきませんと、すでに御存じと思いますけれども、スト権奪還特別委員会というものが総評にございます。その一連の動きというものは、ある一時期を画して基本権をどうしても返してほしい、こういう要望が非常に強まってまいっております。もちろん、片側で公務員制度審議会で相談をしておる模様でございますから、それはそれなりに一つの土俵設定がされておるので喜んでおりますけれども、やはり労働大臣として、もう一つの土俵であるILOの各条約の批准というものについても積極的な熱意を示していただきませんと、歯車の歯が食い違うと、とんでもない音を立てたり故障を起こしたりしますから、そこらあたりは、ひとつしっかりと気持ちを据えて取りかかっていただきますようにお願いをいたしておきたいと思います。  いま一点、時間もございませんので急ぎますが、昨年の一月二十三日にエリック・ドライヤーさんが日本にお見えになりまして、いろいろと御心配をかけたわけであります。これはいい恥さらしになったわけであります。それほど日本の労使関係というものは後進性を持っているのですからいたし方がないと私は思うのです。そのドライヤーさんが二十三日に示した提案というものが、私がいま前段で申し上げたことを言っておるわけなのです。この提案を政府はおのみになって、総評のほうは、少しのんで少し注文つけておる、こういう態度であったかと思うのですけれども、いずれにいたしましても、政府はお受けになり、その後、労使間の信用を回復する具体的な措置のあらわれとして定期会談というものが持たれてきたわけです。きょうも日教組がこの院内で文部大臣と会って、第三回目の会合をしておった模様でございますけれども、たいへんけっこうなことだと思うのです。ただ、労使間の信用回復というものがもちろん幾たびかあって、お互いの気持ちを知り合うということは人間同士ですからこれは大切なことです。しかし会って、話して、お茶を飲んでおるということだけでは、一つの目的を持っておりますだけに、私は究極的に労使間の信頼は回復したことにはならぬと思う。そこで総評の方が言っておるのは、失っておる基本権というものをほんとうに法制の上に具現化してくれ、こういう注文をきびしく当時つけていたと私は思っておるわけであります。ところが今日まで三回持たれました中で、この定期的な会談というものは一体どういうふうに友好を高めてきたのであろうか、その効果というものをひとつお話しをいただきたいと思います。  それからもう一つは、あのドライヤーの提案の終わりから七、八行のところに、いわゆる総理がイニシアチブをとってこの会談を進めていくということのねらいと、それからそこで相談をされていく中身というものがおそらく法律敏正を必要とする中身に触れるのではないだろうか、こういうことも両方かけ合わしてドライヤーさんが書いたのではないかと私思いますけれども、その会談の経過と結果を国会に報告しなさいと書いてあるのです。これはお忘れじゃないと私思います。国会というのは御存じのように立法の府でございますから、法律の事柄との関連を私はそこに見出しているのでありますけれども、三回おやりになってまだ一度も報告がないのでございます。一体その報告を正式に国会でおやりになる日はいつごろでございましょうか。おやりになるとすればどういう委員会に報告なさるのでしょうか、その点をひとつお述べいただきたいと思います。
  50. 小平久雄

    小平国務大臣 定期会合の成果がどうか、第一点はそういうお尋ねでございますが、従来三回やったと思いますが、定期会合を総評側とも、あるいは同盟側ともやってまいりました。その会合のたびに、いまちょっとここに資料を持っておりませんが幾つかの議題がございましたが、その間で直ちに結論的なものが出て実現をしたというのは、いまもお話の出ました文部大臣と日教組の代表との話し合いというようなことも、定期会合で話題になったことが、若干の紆余曲折はありましたが実現をいたしてまいった一つの大きな成果だろうと思います。その他、必ずしも会合の場において結論まで至りませんでも、それをさらに事務当局におろして話をいたして、ある程度の結論を得たという問題もございます。労働省の関係におきましては、たとえば三池の例の収容患者に対する処置の問題などについても、総評の代表の諸君と労働省側と相談をいたしまして、少なくともとりあえずの処置ということについては一応の合意に達しておるわけであります。それから定期会合の席上で出ました、これは正式の議題ではなかったように私、記憶しますが、何の議題でしたか、ちょっといまはっきり記憶しませんが、たとえば労使の間でよく賃金問題その他で問題が起こるわけでございますが、どうも統計の解釈のしかた等についても、あるいは組合員側、あるいは使用者側等で必ずしも一致をいたしておちぬ。したがって、いわば同じ前提に立ち、同じ土俵の上での話し合いでなくて、どうもすれ違った話ばかりになってしまう。したがって、統計等も両者が少なくもその解釈のしかた等は一致したところに立って話をすることが望ましいのじゃないか、そういうことで、これはもちろん第三者機関にも入っていただいて、そして少なくとも統計等は労使ともに同じ解釈の立場に立って話し合いするということが、やはりこの労使問題を解決する上に大きな意味があるのじゃないか、そういうこともしてみたらどうだろうという話も出まして、この点は日本労働協会のほうにお願いをしました。役所が直接これをやることもどうかということもございましたので、日本労働協会のほうにお願いしまして、中山伊知郎先生に主としてお骨折りをいただくことにして、使用者側もまた組合側もこれに参加をして研究をしよう、こういうこともお話がつきまして、現にその仕組みがすでにできた、こういうことでございます。その他いろいろ問題がありますが、たとえば、いまお話しの労働基本権等の問題は、もちろんこれは重大な問題でございますが、会合の席上で、それではこうするとか、ああするとか、なかなか一挙に結論はもちろん出ない問題でございまして、これは公務員制度審議会で御検討願っておる、こういう次第でございます。  それから、第二のドライヤー調査団の勧告で、国会に報告しろ、こういうことになっておったがどうしたかということでございますが、この点は実は私もうっかりいたしておりましたが、いま局長から聞きましたところ、これは別段報告書というような形ではなく、国会における質疑等を通じて御報告を申し上げることになっておる、こういうことでございますが、その間の事情は局長から詳しくまた御説明申し上げたいと思います。
  51. 三治重信

    ○三治政府委員 確かに当時のドライヤー氏の提案の中に、国会への報告という一項がございました。そのときの労働大臣はたしか石田労働大臣だと思いますが、それはどういうことだというふうなドライヤー提案の質疑がありましたときに、石田労働大臣は、それは国会の開かれている間に質疑があって、その質疑で当然成り行きは答弁しますし、また政府が積極的に何らか報告を必要と認めた場合には報告することもありましょうが、一般的には国会の質疑を通じてその状況は国会へお知らせをする、それでいいんじゃないか、こういうふうな答弁になっております。われわれとしては、いままでのいきさつからいえば、政府側も特別に委員会に報告をする必要を今日まで認めてなかった、こういうことでございます。
  52. 山田耻目

    山田(耻)分科員 時間がなくなりましたのでなんですが、それは労政局長、ちょっと違うのですよ。いわゆるイニシアチブは最高のレベルの政府がとれ、でなければ総理がとれということですね。そうして二番目に言っている特徴は、条約八十七号を批准したからといって、これは最終ではなくて最初なのである、労使間信用を回復する最初なのである。そうして三番目に言っているのが、いまの定期的な会談、具体的にいわれている定期的会合で話された内容など、結果についても国会は随時通報を受けるべきである、こう書いてあるのです。随時国会は通報を受けるべきである、こういう立場で第三点が明らかにされておりますので、必要によって、あなた方の意思、判断で、かってに言いたいことは言うわ、何か用事があるときは、国会のどこかの委員会で聞いてくれ、こういう意味のものじゃない。総理がイニシアチブをとるべきである、これが最後のものではなくて最初のものなんだ、そうして国会が通報を受けるべきである、こういうふうに整理されておるのでございますから、しかるべきときに社労か何らかの委員会で――この定期的会合というものは労使間の意思で生まれたものじゃなくて、ドライヤーの勧告提案の中から生まれてきたものでございますだけに、やはり私は尊重してやっていただきたいし、そういう報告書を必要なときには出していただきたい。やはりそういう積極的意思をお持ちにならなければいけないのじゃないか。私たちとしても片側で通報を受けていく権利があるような気がいたしますから、これは一々含んでいただいて今後の運営の中に生かしていただきたいということをお願いする次第であります。  いろいろとあるのでございますが、ほんとうに時間がございませんので、これで終わります。ありがとうございました。
  53. 大橋武夫

    大橋主査 只松祐治君。
  54. 只松祐治

    ○只松分科員 現在のわが国の社会には、たくさんの矛盾欠陥等々を内包いたしております。   〔主査退席、倉成主査代理着席〕 そういう中で、ある面では、最大の欠陥と申しますか、一番大きな欠陥といっても過言ではないものがあります。ある意味では、あまりにも大き過ぎるがゆえに問題化されない問題に定年制という問題があるわけであります。今度地方自治体関係で多少政治の舞台にクローズアップされてきましたけれども、これは一地方公務員のそういう問題ではなくて、日本のこれは資本主義たると社会主義たるとを問わない、単なる社会制度の問題ではない重大な問題でございます。そこで、こういう日本の定年制を論ずるにあたって、労働省のほうでもいろいろ御研究だと思います。日本も世界の資本主義国の一員であり、経済成長率は世界一である、あるいは資本主義国家として三本の柱の一つであると、佐藤さんはこのごろ言わなくなりましたが、池田さんは年じゅうそういうことを言っておったのですが、ひとつ先進資本主義国のこの定年制の状況というものをお知らせいただきたい。
  55. 辻英雄

    ○辻政府委員 定年制という意味につきましては、日本におきます場合と諸外国におきます場合とはやや意味合いの違っている点もあろうと思われます。大体諸外国の一般の定年と申しますのは、本人がその年齢になったらリタイアするというようなものをさしている場合が多くて、強制的にリタイアさせられるという要素は比較的少ないように考えられるわけでございます。その年齢の実態につきましては国によって異なっておりますが、私どもの調査いたしました範囲では、西欧諸国では六十、六十五、ある国では七十というようなものがあるように存じております。
  56. 只松祐治

    ○只松分科員 あとで厚生省がお見えになったとき正確にお答えいただいてもけっこうでありますが、いまお答えになりましたように、定年は大体最低六十、これはアメリカの公務員退職法の第五条あるいは西ドイツ等各国をずっと見ても――それから最高は七十五歳というものがある。ところが日本では事実上五十五歳ということで世界にその例を見ないという状態です。ところが日本の平均余命は一体幾らか。諸外国と日本の平均余命と対比して幾らか、ぴしっとわからなくても常識でけっこうです。
  57. 辻英雄

    ○辻政府委員 わが国におきます平均寿命は、最近の統計によりますれば、大体男子六十九歳、女子七十歳くらいというように了解いたしております。
  58. 只松祐治

    ○只松分科員 男子で大体六十八歳を過ぎております。女子で七十三歳ということであります。これは平均余命ですから実際上はもっと長く生きておるわけであります。三年くらいそれより長く生きておる。そこで大臣、どうしてこういうふうな――世界のことはおっしゃいませんでしたが、大体いま世界の平均余命に近づいており、平均余命はほとんど変わらない。あるいはさっき言ったように経済成長率は世界第一だと呼号していらっしゃるが、しかし日本の定年制というものは世界的にきわめて低い、ずば抜けて低い、こういうことは一体どこに原因があると思いますか。大臣からひとつお答え願います。
  59. 小平久雄

    小平国務大臣 このことは、基本的には日本人の平均寿命が従来低かったという問題だと思います。われわれが子供のころには人生わずか五十年といわれたくらい非常に短かったわけでありますが、今日ではただいまお話がありましたとおり、男子でも六十九歳何カ月、女子の場合ですと七十歳何カ月ということになっていて、正確な資料は持っておりませんが、戦後おそらく平均寿命が十年以上男女ともに延びたのではないかと思います。こういう平均寿命そのものが示しておりますように、お尋ねのなぜ低かったかという基本的なことは、一つにはもう日本人の寿命そのものが短かった、これが基本的だろうと思いますし、また、第二には、何と申しましても、日本では、従来労働力というものが余っておった。そういう関係からして、特に若い者の職場を確保するというような意味合いから高年齢者がある年齢に達した場合には引退をしてもらう、こういう考え方がどうしても強かったのではないか、かようなふうに思っております。
  60. 只松祐治

    ○只松分科員 それでは、官公吏のことはあとにいたしますが、最近における民間の定年制の延長状況といいますか、あるいはこれに関するその他の状況の統計等がありましたらおっしゃってください。
  61. 辻英雄

    ○辻政府委員 いろいろ統計がございますが、労働省といたしましても重要な問題でございますので、三十九年にこのための調査実施いたしたわけでございます。約四千の事業所につきまして調査の対象といたしております。これによりますると、定年の制度を持っておるところ、おらないところとあるわけでございますが、規模の大きい一例をとりますると、五千人以上の企業ではほとんど全部の企業が定年制を採用いたしております。一方、規模の比較的小さいほうでは、定年制というものの採用の割合は相対的に低くなっておりまして、たとえば、三十人から百人未満の規模の企業をとってみますと、約四〇%の企業が定年制を採用いたしております。  定年の年齢の問題でございますが、現在のところ、定年をきめておりますところでは五十五歳というのが全体の七〇から八〇%程度、さらに、五十五歳以上、五十六歳、五十七歳というのをきめておりますのが、大企業では約一〇%、中小企業では六十歳というのをきめておるのが約二〇%、そういう状況でございます。ただ、なお最近の状況といたしましては、企業も最近における諸般の事情等を考慮されたことだと思いますが、逐次定年制を延長するという傾向が出ておるように存じております。
  62. 只松祐治

    ○只松分科員 その延長あるいは再雇用、そういう状況はどういう状況でございますか。
  63. 辻英雄

    ○辻政府委員 延長をいたしますものの内容でございますが、一つはお話のように定年制の年齢そのものを改めます場合でございまして、その場合は、大企業の場合五十五歳から五十七歳へ延ばすというのが比較的多い。中小企業では六十歳に延ばすというのが比較的多いというようになっております。さらに、そういうように定年制そのものを延長いたすということには至りませんので、勤務を延長する、定年制は定年制として置いておるけれども、特定の労働者につきまして勤務を定年を越してもさせるという制度を採用しているところがございます。これは大体四〇%から六〇%程度、規模、産業等によって違いますが、そういうものを採用しておる企業が存在をいたしております。さらに、一回解雇をいたしまして再雇用するというシステムがございます。その場合には、一般には職務内容その他が変わる場合が多いと存じますが、そういう制度のございますのは、調査いたしました企業の六、七〇%はさような制度を持っておるという実情でございます。
  64. 只松祐治

    ○只松分科員 いまお聞きのとおり、世界的に日本人の平均寿命はほとんど変わらない。厚生省の方がお見えになりましたら、あとでひとつそれをお知らせいただければと思いますが、それから、日本の資本主義の発展度合いというのも非常に高度になってきておる。ところが、日本の民間の定年制というのはほとんどが大体五十五歳前後である。さらにまた、いまお聞きのとおり若干定年制延長の機運がある。特に昨年まで高度経済成長を謳歌されたときにはだいぶ定年延長の動きが出て、中小企業では一〇%、大企業では二〇%定年制の延長がなされた。さらに再雇用は、その企業の七〇%程度が再雇用を行なう、こういう状況にきておる。私は去年も定年制の問題を論議いたしましたし、できるまで毎年論議しようと思っておるのですが、多少そういうふうにいわば好転といいますかよくなってくる、こういう状況にある。ところが、ことしに入って経済界の不況ムード、そういうことでせっかく延長へ向かおうとしておった定年制というものがまた再び逆行しかねまい、こういう状況にあるわけです。  そこで、労働省のほうで、これは民間でございますから、直接それぞれ指揮命令は下せないと思いますけれども、これもあとでお聞きしますが、去年私が聞いたときも、石田労働大臣は相当の公約をなされておるわけなんです。議事録をお読みになればわかりますが、努力するということを明確にしておる。しかし、私はその努力のあとを見ない。特にいま逆行しかけているこういう状況のもとにおいて、何か具体的に定年制延長を、官のほうは別として、民間のほうに努力をなすったかどうか、お尋ねしておきたい。
  65. 辻英雄

    ○辻政府委員 定年制の問題の全体の動向はただいま申し上げましたが、先生もお話ございましたように、これは職種の内容なり、あるいは当該地域の労働事情なり、あるいは労働者の種類なり、いろいろ事情が異なっておると思います。ただ、全体の流れとしましては、先生御指摘のように、定年制を延ばすような条件がだんだんにふえてきておるわけでございまして、そういうことの事実は、私どもとしては調査研究のPRその他によってやっておるわけでございます。  なお、あるいはそれと賃金との関連というような問題につきましては、学識経験者でつくられております賃金研究会等で賃金制度一般あるいは労働事情との関係というようなことも御検討は願っておるわけでございます。ただ、労使がはたして具体的にどう処理するかということは、あくまでも労使の話し合いによってきまることでございますので、特定のケースについていかがいたすべきだということはいままでも申しておりませんし、今後ともその点はなお慎重に扱うべきだというように考えております。
  66. 只松祐治

    ○只松分科員 抽象的なお答えでわからないわけですが、たとえば、去年私がいろいろ質問した中で石田さんは、いわゆる社会保障制度のすべての年金や何か六十五歳になっておる、しかし五十歳で首切りになる、こういうことで少なくとも社会保障の関係の開始時期と退職とを結びつけるように政府のほうで努力をしたい、こういうことを言うておるわけです。いまお答えを聞いてもそういうことは別にない。いま賃金の問題なんかで多少研究しているという話ですけれども、もちろん賃金の問題とも関連いたしますし、あるいはこういう年金その他とも関連いたしますし、ほんとうに皆さん方が定年制の問題を取っ組もうとするならば、私から言うように、きわめて大きな欠陥であるということは、きわめて大きな問題なのですから、したがって、ただ単にちょいと何かできるという問題ではない。十分な調査研究、また、いま言う社会保障の問題と関連しましても、どうやっていくかというきわめて大きな問題があるわけです。したがって、これは民間のほうに要望していく、あるいは指導していくということにつきましても、そういう問題について、やはり政府のほうでも十分な調査と、そういうものに対する諸関連事項について一体どういう関係を持ってくるかということを準備していかなければならぬわけなんです。私は、特に民間の場合、すぐ来年からできる、再来年からできると思っておりません。そこで毎年質問するということを言っておるわけなんですが、どうやってこの社会保障制度と結びついていくか、それに要する費用が大体どういうふうにかかっていくのかということをひとつ皆さん方のほうで準備をしていただかなければならぬ、こういうふうに思っている。たとえば、役人の天下りというのは年々何百人か、特に高級官僚がいろいろな民間会社に天下っている。どうかすると四十五歳から五十歳の間で大蔵官僚等は、――私は大蔵委員をやっているわけですが、局長をちょっと一、二年つとめれば専売公社の副総裁だ、何だかんだと全部横すべりしていく。なぜか。六十歳まで定年があれば、いま高級官僚といっても六十歳ぐらいになれば大体人間も事終われりということになりますが、五十五歳じゃ力があり余っておるわけなんです。個人的にも力があり余っておるし、あるいは家庭的に見ましても、いま晩婚の夫婦が多いし、あるいはちょうどその年齢に達する人は戦争に行っておりまして、戦争から帰ってきて子供ができた、こういうことでその定年の年に達しても、極端な人は小学校、まあ大体中学校か高等学校の子供をかかえておる。五十五歳になって、課長や局長なんかやっておって、あっさり首になって行く先を格下げして行くよりは、売れ口があるうちに早く移ったほうがいい、こういうことで天下りというものができる。その他官たると民たるとを問わず、この五十五歳という定年のためにどれだけ社会の混乱事態というものが起こっておるか。こういうことをひどいことばで言うならば、昔うば捨て山というやつがあったわけですが、いまはうば捨て山じゃなくてじじ捨て山だと私は思う。じじ捨てじゃなくて、じいさんにならぬうちに、壮捨て山というか、壮年のうちに社会がほうり出してしまう。こういう状態が笑いごとではなくて現実に出ておる。しかも、高級官僚やあるいは民間会社でもある程度の地位についているのは、まあ多少格下げになっても横すべりができますけれども、そうでない一般の労働者というもの、あるいは役職のない官公吏というものは、実に退職後非常な悲惨な状態、これはまあ高度経済成長の失敗からくる年金その他の貨幣価値の下落等によるあるいは退職金の相対的下落による生活の不安、こういうものを考え合わせるならば、実にはかり知れない一種の恐怖状態というものがこの定年退職者にはあるわけです。こういうことがいまどういうところに原因があるんだといったら、大臣のほうから簡単なお答えがありましたけれども、私は原因はそういうことだけではないと思いますけれども、とにかく依然として放置されておるということは現実だと思う。したがって、私は繰り返し要望いたしますけれども、すぐ来年や何かできるとは思わない。しかし去年あたりは政務次官会議等もこの問題を取り上げて、あるいは五十七歳にするか五十八歳にするか六十歳にするか、政府としても具体的な論議まで行なわれている。ところが去年労働大臣が私に対しても明確に約束しておきながら、その後一年間全然そういうようなものをなされておらない。まして私の言うような調査研究というものが行なわれておらない。大へんな私は職務怠慢だと思う。あるいは委員会や何かちょっとその場だけ答弁しておけば事なかれ、そういう精神じゃないか。しかしこの問題はそういうきょう一日だけ私の答弁をごまかしたから解決する、こういう問題じゃない。皆さん方自身もお互いの問題なわけです。政府のほうで誠意を持って今後どういう調査、研究準備に当たられるかお伺いしておきたいと思う。
  67. 辻英雄

    ○辻政府委員 実は私ども、お話のような御趣旨と同じような趣旨で、三十七年につきましては定年についての一般的な調査をいたしたわけでございます。その資料等は広くできる限り交付したつもりでございますが、さらに申し落としましたけれども、同じときに労働科学的に見たら人間の労働能力というものは、最近の経済状態の改善やそれに伴う国民生活内容の改善に伴ってどのようになっておるのか、あるいは仕事によりましてさらにどういうふうに考えていったらいいのかというようなことにつきましては、その同じ時期に私のほうの労働衛生研究所で検討に着手していただいておるわけでございます。これはなかなか専門的な問題でございますので、三十九年から、まだその結論は出ておりませんのですが、引き続きやってもらっておりまして、そういうものもさらに急いでやるようにいたしたいと思います。また先ほど申しましたように、一昨々年から賃金研究会というのをつくりまして、中山さんはじめ学識経験者の方に賃金雇用、いまの問題を含めて、その中のテーマとしては定年の問題等も当然含めて御検討願っておりまして、御趣旨のようなことをやっておるつもりでございますが、さらに不十分な点につきましては御趣旨のあるところを伺いまして十分に検討を進め、積極的に取り組んでまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  68. 只松祐治

    ○只松分科員 私は、現在働いておるいわばそういう労働生活環境というか、そういう面から申し上げているのではなくて、むしろたとえば、退職する人の八〇%は再雇用を望んでおる、さらに残りの二〇%も何らかの形で労働を望んでおるわけです。人間はすぐ五十五歳で隠退しようと思っておらない。したがって、そういう人々がどういう職についていくか、あるいは一年後、三年後、五年後、どういう状態にあるか、これはたとえば国鉄なら国鉄に例をとりますと、国鉄は労働組合でもその年に退職する方々を集めて激励会、慰労会みたいなことをやっております。したがって、それを通じてやれば、どういうところに就職するか、あるいは一年後どういう生活状態になっているか、そういうことはすぐわかります、知ろうと思えば。たいへん困難だと通常ならおっしゃるけれども、先に私はおっしゃらないように言っておきたいと思うけれども、電通なら電通、そういうところに聞いてもらえばすぐわかる。熱意と若干の費用さえあればできる。そういういわば現在働いておる人々よりもむしろ退職後にどういう状況になっておるか、その社会保障の開始時期と数年間のずれがあるわけです。五十五歳退職というのは五十四歳のときにすでに退職勧告をされて、そのときに退職しておるわけです。だから、五、六年のずれがあるわけですから、その間の社会保障制度との関係、こういう人にどれだけの費用が大体要るんだとか、そういう問題全部を含んで、私はひとつ調査研究それから行政、立法準備が要るならばそういうことをしてもらいたい、こういうことを言っておるわけなんです。そういう努力をひとつ大臣のほうからもすることをお約束をいただきたいと思います。いかがですか。
  69. 小平久雄

    小平国務大臣 定年制の問題は、とにかく先ほども申し上げましたとおり、日本人の寿命そのものが戦後十年も延びておることなんですし、また労働力という立場から考えましても逐次労働力不足していく、こういうことがもう展望される際でもあります。また、いま先生お話しの中にもありましたとおり、五十五歳ぐらいで定年だといってやめるような者も、おそらくそれであと職につかずにおるという者はなくて、中高年の再就職というものは非常に現に大きな問題になっておる、こういう関係もあります。さらには社会保障制度との関連においても、これもお話のとおり、ギャップが数年ある、こういったような事情にあるわけでございますから、私は従来の定年五十五歳というようなことは、これはもう社会経済的な環境から申しても当然考え直さなくちゃならぬ時期に来ておる、こう日ごろから考えておるのであります。そこで、先生がお示しのように、この定年制をめぐる福祉の問題というものは十分これは研究し、検討いたしておかなければならぬ問題であろう、私もさように存じます。役所のほうでもすでに一部検討に着手をいたしておるわけでありますが、いませっかくのお話でもございますし、意のあるところを体しまして積極的に福祉の検討なり研究なりをやっていきたい、かように考えております。
  70. 只松祐治

    ○只松分科員 大臣と官房長が約束されたのだから、来年までには少しは前進すると思いますが、ぜひお願いしたいと思います。  それから公務員には、これも私が申すまでもなく、定年というのは法律上ないわけです。勧奨退職――慣習上と申しますか、勧奨退職しかないわけです。いまのようなお考えならば、ひとつこれも一挙に日本の官公吏の退職を事実上六十歳まで上げる。これは上げるのが私はほんとうだと思う。それでこそ近代的な資本主義国家だと私は思うのだけれども、そうでなければインチキな資本主義国家ですよ、世界的に見れば。だけどなかなかそう一挙に理想に近づくわけにまいりませんから、たとえば五カ年計画なら五カ年計画で、初年度に一年、五十六歳までにする、次年度五十七歳までにするとか、こういう多年度計画というようなものを立ててやる方法もあるだろうし、いろいろな方法があると思いますが、そういうことの具体的な実践方法として、官公吏もあまり無理な勧奨退職をしないで、それも一挙に地方自治体まで六十歳というふうに野放しにするということもなかなか容易でないと思いますが、多少希望者なり、あるいは家庭の生活環境なり何なりではどうしても小学校や何かへ子供が行っておる、こういう人がおれば、その職場の中でたとえば一割なら一割とかいうような形で若干ずつでもやはりそういう状況に応じて残していく。こういう形が地方自治体においてはすでにあるわけです。だから、逆に今度は定年をしこう、こういうことになってきておるわけですが、官公吏の場合においても、そういう家庭の状況その他から私はそういうことをするのがいまおっしゃられた精神に沿うものだと思います。そういうことをするお考えがあるかどうか、それが一点と、それから、大体定年制を考えるならば、私は短くとも六十歳だと思うのです。世界的には大体平均が六十五歳ですから、私は短くても六十歳、六十五歳が望ましいものだと思うのですが、日本においては大体何歳くらいが望ましい定年であるとお思いになっておるか、ひとつお考えをお聞きしておきたいと思います。
  71. 辻英雄

    ○辻政府委員 公務員の問題につきましては、先生御指摘のようにただいま定年制という制度はないわけでございます。これにつきましては、私どものやや個人的な意見――労働省直接の所管でございませんが、私どもから見ますと、逆にそのためにどういう効果が出るかというような問題等もございます。あるいは公務員制度全体との関連もございます。たとえば、非常に公務員の人事が一挙にやると行き詰まる。先生も御承知のような問題もあろうかと思います。あれこれ含めていろいろ問題があろうかと存じますが、民間の一般の定年の動き等につきましては、政府部内の公務員担当のところには十分資料等を渡しまして、そちらのほうを中心にして必要な検討をしていただくべきだと存ずるわけでございます。
  72. 只松祐治

    ○只松分科員 何歳くらいが望ましいか。
  73. 辻英雄

    ○辻政府委員 何歳が適当であるかを言いますことは、先ほど来先生種々御指摘のように、諸外国の場合あるいは日本の場合、あるいは日本の中でも私申し上げましたようにいろいろな形のものがあるわけでございます。これは一つには仕事の問題で、仕事の種類あるいはその他先ほど先生御指摘の地域におけるいろいろな労働上の条件その他が違っておりますので、一がいにどの程度が適当だということを判断するような資料はいまのところ得られないのじゃないかというように考えておるわけでございます。
  74. 只松祐治

    ○只松分科員 御承知のように、外国では国家公務員や何かは法律で定年をきめているのですよ。日本が、これだけの先進国家と自負している国が、何で法律できめられないのですか。ぼくはそこまできょうは言っているのじゃない。しかし何歳が望ましいということが言えないなんてばかなことはない。もう少し真剣に考えているのならば、何歳ぐらいが望ましいかということを言ったらどうですか。
  75. 辻英雄

    ○辻政府委員 そういう御議論になってまいりますと、日本の場合は、定年延長の基本的な発想になっております寿命の変化というのが戦後非常に短期間に急激に行なわれたわけでございます。その点は、諸外国のように相当長期間にわたって逐次平均寿命が延びてきておる国の場合とやや異なりまして、自然年齢の延長自体が非常に短期間に急激に行なわれたということが一つあろうと思います。それからもう一つには、経済の成長が戦後昭和三十年当時まで急激に戦前状態にまで回復をして、その後、先生先ほど御指摘のように、年率一〇%という急激な成長があったわけでございます。一方、そういう過程で労働力事情が非常にまた変化をいたしております。そういう点を含めまして、はなはだ私ども不敏でございまして、そういう状況の変化が激しいので、いまの段階で何歳が適当かという点につきましては確信を持って申し上げるような条件にございませんので、御了承いただきたいと思います。
  76. 只松祐治

    ○只松分科員 そういう理屈を言えば――時間が三十分前後ですから、私が調査したことや何かを言ってお聞きしているわけです。平均寿命だって、幼児の死亡率や何かが下がっているから急速に延びたかっこうをとっているのであって、壮年期以後の平均寿命はそんなに急速に延びているのじゃないのですよ。だからいままでよりそんなに急速に延びているわけじゃない。人口構成の下のほうがアップされているのだ。そういうことだけで私は理屈を言うのじゃない。よしんばあなたが言うような立論の根拠だとしても、そういうふうに延びて十年たっているでしょう。十年一昔と言うけれども、社会主義国家においては五カ年計画で着々とものごとを解決していくのですよ。自民党だって七カ年計画、中期計画だといってつくって、その中に一つも定年制の延長が織り込まれてきていないでしょう。その努力をしておられない。だから、私はしていただきたいということを言って、あなた方はするということをきょうは約束したわけです。だから、あなたが言うとおりの理論的な面があるとしても、なおかつそこまで急速に延びて十数年たっている。高度経済成長を謳歌して十年になっているわけですから、この間にもう少し努力してもいいですよ。しかし、そういう面については努力をされてきておらない。しかも、これが弱い者といいますか追われていく者の立場ですから。新しく入ってくる者は強いですよ。社員なんか。それで、引かれ者の小うたじゃないけれども、そのことを強く言わないで、何とかしてやめないで少しでもいい職にありつきたい、ありつかしていただきたいということで黙って引き下がっていっている。だから、日本の政治というものはさか立ちしているのがたくさんあって、税金もそうだけれども、やっぱり弱い者のための政治というものが行なわれていない。そういうものの一つの典型的なものとして、弱い者の立場におる者は定年制の発言というものには力がないわけです。たとえば、いまから労働組合に入ってやっていくそういう立場の人はいい。もっとも、労働組合の中にもやっぱり日本の社会の欠陥のひずみがそのまま移ってきて、労働組合としても強くまた取り上げ得ない。また、最後に聞きますけれども、それをあまりやれば地方公務員のほうも制限をされる、こういうような関連もあって、そこいらから、あまり言わないでくれということもあって、恥部に融れるようなことがあって、しかし実際問題としては一番大きな社会問題なわけです。こういうふうに平均寿命が長くなっている、それから全部が高等学校以上の教育を受けている、こういう形になってまいりますと、子供が中学を出てすぐに家庭の収入にならない。こういうふうな段階では、五十五歳の定年というものはきわめて大きな問題になっていると私は思う。あなたたちがなってみればわかる。ぼくもそこまでまだきてないけれども。そういうことをやはり政治というものは解決していく。その衝に一番当たられる労働省というものは、そういうものに対する注意を喚起していくし、そういうもののやはり準備をしていくということが必要なわけです。私はそういうことを言っているわけですから、もう少しそういう面についてはお互いの悩みとして誠意のある答弁をしていただきたい。  最後に、時間がございませんから急ぎますが、そういう状態で、むしろいまから長くしていかなければならないというのにかかわらず、今度は地方自治体においてはひとつ定年制を設けよう――いままで私が述べてきたこと、皆さん方がお答えになったこととは逆行する動きというものが出てきておるわけなんです。これは労働省としてはいままでの考えからいけばたいへん不本意でしょう。確かに教員なりあるいは役場、市役所なんかにいわば七十歳をこえてお働きになっているような方も、中になきにしもあらず、こういうことでもなかなか勧奨退職が困難だ。こういうことに今度の地方公務員に対する定年の発想の一つの原因もあるように私は思いますけれども、しかし、いわゆる公務員全体あるいは労働者全体の定年を長くしていこうというときに、しかも仄聞するところでは、五十五歳以下にはしないような法律をつくろう。これはまあすべての商取引その他においても御承知のとおり、それ以上安く、たとえば五十五円以下にしないということは、五十五円になってしまうのです。五十五歳以下にしないということは、いまの社会の状態、そういう中から五十五歳になる危険性というのはほとんど一〇〇%近くある。だから、こういう意味の法律をつくらせるということは、先ほどから言うように全く時代逆行の法律になる。むしろそれこそつくるならずばりと六十歳なり六十五歳なり――だから、つくるなら何歳が定年として望ましいかということを聞いたのもそういうことにある。あなたたちがすっとぼけて変な答弁しかしないけれども、やはりそういうものを労働省としては一つの指向方法として出していく。いまのこの社会ではさっきから言ってきたように平均余命だって長くなっている、高度経済成長だって達成できているというふうに見るならば、これは当然六十歳、六十五歳というものを指向しなければいかぬ。ところが、いま五十五歳という線が逆に出てきている。六十七歳、六十八歳という線もうわさされているようでございますが、そういうことはたいへんな時代錯誤だと私は思う。ひとつこういうことはしないとお約束をしていただきたいと私は思うのですが、そういう断言も自治省との関係があってなかなかできないかと思うが、自治省の方がお見えになっていたら、大体どういう方向に動いておるかということをお答えいただきたいと思います。また労働省としては、さっきからのお答えからいくならば、そういうつくり方というのは望ましいことではない。もっと望ましい方向にやはりしていただきたい、こういうお答えがしかるべきだと私は思う。そういうお答えがいただけるかどうか。
  77. 森清

    ○森説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の地方公務員についての定年制でございますが、ただいま検討中でございます。成案を得次第、今国会に提案をいたしまして御審議を願いたいと思っておるわけでございます。  ただいま省内で検討いたしております案は、条例で定年制を設けることができるという根拠を置きまして、定年制を必要とする地方団体がその自主的な判断で定年制を設けるということにいたしたい。その次には、これは実は昭和三十一年にも提案いたしたのでございますが、そのときの国会の論議あるいはその後の状況を考えまして、先ほど御指摘の、若く定年を定めるということができませんので、公務員についてのいわゆる共済退職年金というものの受給資格を五十五歳を下ってはいけないということを法律に書いたほうがいいのではないか、こういうふうに考えて検討いたしておる次第でございます。
  78. 小平久雄

    小平国務大臣 私は自治省で考えておられる地方公務員の定年制の問題、これはただいま初めて伺ったようなわけでありまして、まだ私どもの段階まで実はまいっておりません。ただいまの自治省の説明によりますと、特に地方自治体という関係もありましょうが、各種の地方的な事情もございましょうし、それらになるべく合ったやり方を自主的にきめるように、こういうことのようでございますが、先ほど来いろいろ御論議がございましたが、現在の傾向というものは、もう定年制云云は、いま申しましたが逐次年齢が延長される、こういう方向に自然にもそうなるでしょうし、また社会環境からすればそういう方向にわれわれもっとめていかなければならぬ、こういう段階と思いますから、よく自治大臣にもわれわれの考えを申し上げまして、考慮してもらうようにいたしたいと思います。
  79. 只松祐治

    ○只松分科員 労働大臣のほうからは意のあるお答えをいただいたわけでございますが、自治省のほうでは私が指摘したように五十五歳を下ってはならない、こういうことが中に入るということですが、私がさっきから言っておりますように、最低価格をきめた場合にはそれが最高価格になる、これは繰り返しくどく言わなくてもわかると思います。そういうきめ方をされることは、地方自治体において五十五歳の定年制をつくることになる。そうすると、さっきから言っているように、別の面から、慣習を重んずるという面から見るならば、地方自治体においては六十歳くらいです。だから私は五十五歳というものはぜひ取っていただきたいと思うし、われわれは断固反対しますけれども、よしんば百歩譲ってそういうことをするとしても、現在の慣習を重んずるということは、この条例をつくるならそれを明記しておかないことには、この慣習も何も全部そういうことは無用のものとして、ただ今回できた条例だけを中心にやっていくなら五十五歳でばっさばっさやられるということになれば――これは、かく論ずる私は別にそういう公務員になろうと思っておりませんから、そういう意味では私個人は痛くもかゆくもありません。政治家なんかは五十五歳なんて若い、働き盛りだ。六十歳だってまだ若い。衆議院には六十歳くらいの定年制をしくべきであると社会党では盛んにいっておるのですけれども、七十歳になったってやめない。自民党もしかり。ところが公務員と労働者だけを五十五歳にするということは全くナンセンスです。ほんとうは諸外国の国会ならばここで論議するだけでも恥ずかしいことだと思う。そういうことをいまさら設けるべきじゃないと私は思う。きょうは自治大臣はお見えになっておりませんけれども、労働大臣からそういう意のあることをおっしゃられたのだから、労働大臣のほうからもちろん言われると思いますが、あなたも帰られてそのことを強く要望していただきたい。それからいまの慣習を重んずるということを明確に入れていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  80. 倉成正

    倉成主査代理 田原春次君。
  81. 田原春次

    田原分科員 私の質問は大別して二つありまして、一つは主として大臣に御答弁を願いたい同和問題と労働問題であります。第二は官房長または職安局長に、技術者の海外移住の問題であります。  第一の同和対策でありますが、きょうの新聞で見ますと各大臣ことごとく賛成の意をきのう予算委員会で表明しておられます。大臣は部落問題をどういうふうにお考えになっているか。部落はどういう歴史で発生したか、御存じならばお知らせ願いたいし、御存じなければ私のほうで申し上げます。
  82. 小平久雄

    小平国務大臣 私は部落の歴史というようなものについて、特別勉強したことも正直ございませんで、よく存じません。ただ、先般来八木先生から非常に御熱心にその間の事情等もお話がございましたので、私も熱心に伺っておったわけでございます。そういうことで特段の知識はないわけでございますが、たまたま昭和三十六年に、私が総務長官の職にありました際に、同和対策の審議会を発足させる、こういう問題が当時ございまして、これは社会党の皆さんにもたいへん御協力をいただいて、この審議会の発足は私の総務長官の時代にいたしたようなわけでございます。そんな関係から、同和問題には私なりのやはり関心を持って今日に至っておる、こういうことであります。
  83. 田原春次

    田原分科員 同和問題、つまり部落の問題は日本の一種の恥部でありまして、民主主義の原則からすれば最大努力を払って解決しておかなければならぬ問題であります。部落の歴史を見ますと、日本の歴史が二千六百年としますと、最初の千九百年の間は部落民の差別はなかった。いまから七百数十年前に鎌倉幕府ができて、封建制度が確立するとともに身分的な差別が起こっているのです。したがって、別のことばで言いますと、封建時代における軍事上の落後者ということに尽きるわけです。封建軍閥がおりますうちで、負けたほうについておって、敗軍の兵または使用人であったためにみな殺しになったり、またそれがこわいから山間僻地に逃げたりしたことが事の起こりであります。その後いろいろな事件や事故があって部落に流れ込んだ者もあります。和歌山県あたりでは、あるりっぱな士族でやはり事故を起こして村に逃げ込んだ者もあるし、福岡県の私のほうにもそういう例がある。そういうわけですから、これは人種とか民族が違っておったのではない。封建時代の境遇が違っておったわけです。封建制度のなくなった今日、もう百年になりますから、この辺で身分差別だけはなくさなければならないというのが、おそらくあなたが総務長官時代に同和対策審議会が発足した一つの理由であったと思うのです。ようやく数年間かかって審議が進み、きのう八木君の質問の中にもあったと思いますが、一つの結論を出す段階になっております。その中で労働省関係のことを希望的な意見も加えて質問したいと思うのですが、依然として民族が違うような、人種が違うような偏見を持っていて、就職の機会均等がないのです。昨年の一月でしたか、京都で優秀な高等学校卒業の娘さんが、ある会社の採用試験に合格になった。ところが部落出身であるということのために不合格になった。それを恨んでこの娘さんは自殺しておるのです。それから私のほうにも北九州に井筒屋というデパートがありますが、ここは採用試験をして採用しても、部落の娘であるということがわかると、あとで何となしにやめさせてしまうのです。そういうことでは日本の民主主義を言う資格がないと思うのです。いま確かに社会党や共産党が部落解放運動をやっております。しかし、自由民主党のほうも同和会という運動をやっておるのですね。これは思想、信条を離れて、身分上の差別を撤廃していきたいというのです。それが一番具体的になるのは結婚と就職なんです。  きょうお尋ねしたいのは就職なんですが、就職に対するはなはだしい差別のある現在、これをどういうふうに労働政策でお考えになるか。才能、手腕、力量のある者を、先祖が八百年前に差別されたからといって、それでせっかく高等学校を、中には大学を出た者を採用せず、泣き寝入りさせるということは、これは全くわれわれの納得いかぬことです。したがって、労働省として部落民の就職問題をどういうふうにお扱いになるか。特別の局なり課を設けておやりになるか、あるいはお扱いになっておるか、それともほおかぶりしておくか、そういうことをお伺いしたい。
  84. 小平久雄

    小平国務大臣 雇用対策審議会の御答申を、昨年八月でございましたか、ちょうだいしまして、その中で同和地区の出身者についての雇用の問題、職業の問題等について、その考え方なりあるいは具体的な施策なりについて、多くの御答申をいただいたことは承知いたしております。そこでその中にもございますが、先生の御指摘の就職に際して差別的な扱いを受けるとか、あるいは就職はしたが後々に差別的な扱いをするとか、そういうことはもちろん法の上でもこれは禁止をいたしておるところでございますし、あってはならないことだと私どももかたく信じております。  職業紹介の点につきましては、各紹介所等に対しましても極力使用者側の啓蒙につとめさせまして、特に募集の条件等で不当なものがあるというような場合においては、もう紹介を受け付けない。あるいはもちろん紹介を拒否する、こういうこともできるたてまえになっておりますから、それらの点を厳重に守らせておるわけでございます。  また待遇等につきましても、労働基準法自体にも社会的身分というようなことで待遇を異にするというようなことは、厳にこれを禁止しておるところでございます。したがいまして、そういう事実がかりにありますならば、これを十分監督し、取り締まっていく、こういう方針で役所としては臨んでおるわけでございます。  ただいまのところ先生のお示しの、特に同和地区の出身者のための部を設けるとか、課を設けるとかいうことはいたしておりませんが、もう役所全体として、いま申しますようにそういう差別的な待遇、あるいは処理などは絶対せぬように、もし世の中にそういうことがあるならば、これを改めさせていくように心がけさせてやっておるところであります。
  85. 田原春次

    田原分科員 いまの御答弁も大体においては了承できますが、その具体策ですね。差別のために就職を拒否された場合に、これを取り締まると言うけれども、それは起こった場合のことなんです。起こさぬためには、やはり一つの方法としては定期的な講習会のごときものを、地方の職安単位で、そこの勤労課長等を集めて、学者はたくさんおりますから、そういう学者から公平な歴史上の話をさせて、ものの考え方を変えさせておかなければ、採用に際して問題にならぬ範囲内において不合格にされたのではどうにもならぬと思います。そういう将来の具体策をひとつ聞きたいと思います。
  86. 小平久雄

    小平国務大臣 先生のお話のような使用者側の責任者等を集めての講習会と申しますか、そういうことも現にやっておるようでありますが、実情は局長のほうから詳しく申し上げたいと思います。
  87. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘のような事例が今後起きないように、私どもとしましても、新規学卒の就職指導の場合には、同和地区出身者の就職指導に万全を期するという体制でやっておりますが、これにつきましては、特に昨年の九月都道府県知事あてに通達を出しまして、同和地区新規中学校卒業者に対する職業紹介要領というものを指示いたしまして、一つは、いま大臣から御答弁がありました求人者に対する啓蒙指導、これをまず徹底させる。それから二番目には採否の確認、それから不調の場合の理由の把握というふうなことを励行させまして、徹底した差別扱いを払拭させる方法を講じていきたい、かように考えております。
  88. 田原春次

    田原分科員 関連して八木一男委員から質問があると思いますから、この問題はこの程度にしておきます。  第二点は、技術者の海外移住に対する労働省の方針であります。御承知のように、人口は間もなく一億になるし、一億にとどまらず、一億二千万も三千万にもなっていくと思うのですけれども、狭いところで、食糧問題や、住宅、交通等を考えますと、人口問題ということになるわけです。厚生省の人口問題というのは赤ん坊を殺すことなんですね。年間に三百万人くらい首をねじって殺しておるのです。そういう消極的な人口問題ではなくて、積極的に、生まれてきた以上は、これをこの人類社会に役立つような方向に消化していかなければならぬと思うのです。最近、御承知のように中小企業の倒産が、負債一千万以上のものに限ってみても、約六千件になっております。それ以下のものを合わせますと、八千件にもなるんじゃないかと思います。一つの会社にかりに三十人つとめておるといたしましても、六千件ですと十八万という人が、街頭に失業者としてほうり出されておるわけです。多くは中には中高年齢層もありまして、ほかの会社も使いません。そこで、まことにみじめな生活をしなければならぬというどたんばになってきておるわけです。ところが、一方海外各国は、日本の優秀なる技術者をほしがってきております。たとえば、隣国のカナダのごときは移民大臣がわざわざやってきまして、職種はたしか五百八十六種類かにわたって、旋盤工、フライス工だとか、あるいは電子工だとか、あるいは女中に至るまで希望してきておるのですけれども、そのほかアルゼンチンも、私の知る限りでは三十一種類かにわたって求人がきておるのです。ブラジルも百種類くらいきておるのです。また東南アジアを見ますと、これは移民ではありませんけれども、長期技術指導員として相当数の者が行っておるし、今後も行くわけです。そうなりますと、一つのネックになるのが職業安定法ですか、はっきりした法律は覚えておりませんが、就職等について労働省が関与する部分があるわけです。それは非常にめんどうな、非常にむずかしいことを言って、たとえば海外移住事業団でせっかく就職のあっせんをしようとしても、ちょっと待ったということになる。それで結局行かない。行かなければ、職業安定所としてはそれでいいかもしれませんけれども、国内で多数の失業者をかかえながら、また海外では優秀なる日本人をほしいとお思いになっておるのに、法律のゆえをもってこれを阻止されているということはまことに残念だと思います。もしそういう法律があるならば法律を改正して、進んで労働省の中にも国際職業あっせん課のごときものをつくるとか、あるいは関連省や関連政府機関にあれば、そこに積極的に乗り出していくとか、そうやって、国内では、中等学校、高等学校あるいは短大あるいは大学等で、まだまだ技能者養成する機会もあるわけで、若手が出てくるわけですから、それを国際的にも広げていく。このことを、労働省労働省だけで考えておるというのじゃなくて、広い視野からいってもらいたいと思うのです。たとえば、南米のある国に技能者が行きますと、日本の機械を輸入させるのですね。テレビ、ラジオあるいは時計、カメラ等にしましても、そういう技能者が行きますと、買うなら日本の物を買えということになる。したがって、これは、大はプラントから小はカメラ等に至るまで海外進出の機会になるわけです。したがって、単なる労働問題ではなくて、日本の貿易の問題になる。人をまず送ること。この間メキシコに行きますと、メキシコの職業紹介所長がイタリア系なんですね。イタリア人だけをよけい入れようと思いまして、採用の方法なり、それからプラントの輸入の方法なりは、イタリア中心になっているわけです。何とも文句の言いようがない。日本からもメキシコに特殊技術者が行けるのでありますが、それに対する努力が足りない。この点は、労働省がもしそういう方針があったならば改めて、積極的な協力で、海外各地に行けるように、特に中高年層の人が家族ぐるみ行けるようにしてもらいたい。これは大きな方針なんだから、官房長なり局長なりのほかに、大臣の見解を聞いておきたい。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕
  89. 小平久雄

    小平国務大臣 技能者等の海外移住という問題は、これは確かに原則的に考えますならば、国際親善という点から考えても、あるいは経済協力という点から考えましても、さらには、大きくいえばわが民族の発展という点から考えましても、きわめて望ましいことでありますから、これに労働省も積極的に協力をいたしてまいるべきである、かように私は考えます。ただ、そうは申しましても、私はこういう問題も多少あるんじゃないかと思うのです。というのは、現にわが国におきましては、先生御承知のとおり、技能労働者につきましてはわが国自体が非常に不足をいたしておるわけですね。昨年末の調査であったと思いますが、現に百八十万から不足しておる、こういわれておるわけでございます。したがって、先進国といわれる方面にまで、相手方から希望されるとかということだけで、自由に、あるいは積極的にこれを奨励してまで派遣する、あるいは単なる派遣でなく、移住させるというところまでいくことがはたして適当であるかどうかということは、私はよほど検討を要するのじゃないかと思います。技能者ばかりでなく、現に技術者といわれる、あるいは学者といわれる優秀な頭脳がどんどん海外に行きがちだということが、よく世上これでいいのかという御議論もあるようでございますし、まあ先生のお話は学者、技術者ではないようでありますが、いずれにしても技能者ということについて考えましても、やはり同様の問題もあるのじゃなかろうかと思います。しかし、いわゆる開発途上にある国々、これらに対しましては、これが経済開発にわが国が協力をしていくという国際的な当然の義務もあるものと思いますから、そういう方面に対しましてはできるだけ積極的に技能者等も送り出していく、こういうふうにいくことが適当ではなかろうかと考えておるわけであります。従来の経過等につきましては、安定局長あるいは訓練局長から御説明を申し上げたいと思います。
  90. 有馬元治

    ○有馬政府委員 海外移住の問題につきましては、大臣から御答弁がありましたような考え方に基づきまして、私どももできるだけ国際親善と移住者の職業の安定という見地からこれに御協力を申し上げておる次第でございます。現に海外移住事業団には私のほうから責任課長を出してもおりますし、非常に連絡は密に行なっておると思っております。また現地の職安と各県の事務所との提携の問題でございますが、これも私どもが現在報告を受けているところによりますと、最近非常に緊密に提携が行なわれておるというふうに判断をいたしておりますが、なお不十分なところもあろうかと思いますので、今後海外移住については一段と努力をしてまいりたいと思っております。
  91. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 私どものほうの職業訓練関係から申し上げますと、いわゆる技能労働者の交流の問題と、技術的な面におきます国際協力の問題があるわけでございます。主として、大臣のお話のように、開発途上にある国々につきましては、雇用促進事業団職業訓練大学校というものを経営いたしております。この中に国際協力部という部がございまして、発展途上の技能習得のために来る人を受け入れまして職業訓練をする、あるいは発展途上の技術援助のために、こちらから技術援助をするのに必要な能力を持った人を養成するコースを設けるというようなことで、技能労働力につきましての便宜供与方をやっておる次第でございます。それ以外では、海外移住事業団が技能労働力につきましてはそれぞれ御努力をなさっておるわけでありまして、先生十分御存じのとおり、カナダとかアルゼンチンとかブラジルとか、こういうところに技能労働力の移住問題で事業団が御努力をなさっておりますが、これに対する協力をいたしますために現在実行しておりますのは、神奈川県の秦野にあります一般訓練所を利用いたしまして、事業団がこういうような人間でこういう技能の人を出したいということについては三十七年度以降御協力をいたしておる、こういうような状態でございます。
  92. 田原春次

    田原分科員 両局長の答弁は一応了承できますが、大臣の御答弁の中にも、日本国内でも百八十万から技能労働者が足らぬからという、これはちょっと気になることばです。そうであろうけれども、これは年々ふえる人口でまた養成しまして、現に行きたいという人があった場合に、おまえは職安局の許可を得なければやらぬということでなくて、行きたい者は行かせる、その欠員は補充していく、訓練所もあるし職安もあるのですから、そういう前向きで考えてください。前段の答弁はよかったが、あとがちょっと気持ちがよくないから、そういう意味で百八十万足りないなら二百万くらいつくり、そしてあと二十万くらいは海外に出すというくらいに、ほんとうに前向きでやっていただきたいということを希望して質問を終わります。
  93. 小平久雄

    小平国務大臣 私の答弁がやや舌足らずであったかと思います。御趣旨を体して善処していきたいと思います。
  94. 大橋武夫

  95. 八木一男

    八木(一)分科員 労働大臣や政府委員におもに部落解放問題、同和対策の完全解決の問題について、昨日の一般の質問に続いての御質問を申し上げたいと思います。  昨日、一般質問のときに各国務大臣から前向きの御答弁をいただきました。その間で大蔵大臣も御答弁になったわけでございますが、この問題を解決するために、いままでの法律、政令あるいはしきたり、慣習、政治上のそういうものを乗り越えたやり方で強力にやらなければならないという点について、大蔵大臣も御同意になったわけでございます。そこの具体的な問題について伺いましたところ、各省からその点について要求がありましたならば、その精神に従って十分にそれをやっていくというふうに財政当局のほうでは述べておられるわけでございますが、各省にお願いしたいことは、財政当局もそういうことを理解をし、賛成をしておられるので、これから大蔵省でなたをふるわれるというような恐怖心は一切抜きにして、強力にそういう問題について邁進をしていただきたいと思います。その点について総括的にひとつ大臣から伺いたいと思います。
  96. 小平久雄

    小平国務大臣 ただいま先生からお話のありました点は、昨日大蔵大臣からも考えを述べましたし、私どもも私どもの考えを披瀝いたしたわけであります。したがいまして、大蔵省に予算を削られるからというような退嬰的な立場ではなく、積極的に進めてまいる、こういう考えでございます。
  97. 八木一男

    八木(一)分科員 この問題を進めていただくには、政治上のやり方と予算の裏づけと両面が必要だと思いますが、これから両面にわたる問題を、たいした長い時間ではございませんが、集中的にお伺いをいたしたいと思います。  まず、先ほど田原委員から御質問のあったことと同じ方向の問題でございますが、それから昨日一般質問でも幾ぶん質問をし、御答弁をいただいておりますが、新しく世の中に出ようとする若い青年に対する就職の差別の問題であります。前に戻りますが、部落問題の解決の一番大事な問題は、雇用の問題と労働条件の問題が中心だろうと思います。その問題の中で、新しく社会に出る人たちの雇用労働条件を完全によくするという問題と、現在の中高年齢層のその問題を解決するという問題と、そのために雇用の差別をなくする、雇用対策をよくする、あるいは臨時工、社外工等でやらされている非常に劣悪な労働条件を一般的になくしていくということが必要でありますし、その問題の解決がつかない間の一つの問題として、失業対策事業などの適用の条件を緩和するとか、内容をよくするというような問題があろうかと思います。それからまた、技能を訓練する問題とか、その他職業のあっせんを強化する問題とか、いろいろの問題があるわけであります。その第一の出発点の、これから社会に出ようとする人たちの就職の問題でございますが、現にあらゆるところで就職の差別がございますので、先ほどの田原さんの御質問に対する御答弁や、この前の私の質問に対する御答弁に前向きの方向もうかがわれますが、具体的に申し上げたいのは、具体的にそういう問題について強力に推進をしていただきたいということであります。まず、各官公庁あるいは地方自治体、公共企業体、このようなところで地方採用の職員があるわけであります。特に関西とか中国とか四国とか九州、そういうところで具体的に差別が実際にはあるという状況であろうと思いますので、そういう官公関係のすべての役所にこのようなことがあってはならないという厳重な指令と監督をしていただきたいと思うわけであります。その点について労働大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  98. 小平久雄

    小平国務大臣 官公庁等において同和地区出身者に対する差別待遇というような事実があるとは私聞き及んでおりませんが、もしそういうことがかりにもあるとしますならば、これは特に公の機関でございますから、民間に比べてもより一そう重大な問題だろうと私思います。したがいまして、今後もそういう点は十分注意をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  99. 八木一男

    八木(一)分科員 その差別というのは、前に非常に糾弾闘争が進んでおりますから、明らかに出ないのです。おまえは部落出身だから採用しないぞ、あるいは等級を上げないぞというようなことは絶対に出てこない。暗々裏にあることがあるわけであります。あってはいけないので、いま言ったような諸官庁に周知徹底していただきたい。採用条件に個々に――ほんとうを言いますと、私全部は存じません。ですから、たとえば、電電公社なり日本国有鉄道なり専売公社なり、そういうところでおのおのの採用基準でとっておると思うのです。地方自治体は公務員としての試験で、それから後に採用の順序を定員に応じてやっておられると思うのです。そしてたとえば、自分の親たちの経済的な状態、そういうものを採用条件の一つに入れたならば、必ずそこで差別が起こる、これは公務員関係でとる場合は、その仕事に適切な条件をその青年自体が備えているということのみに限らないと、民間の商社にあるように、親の身元引き受け能力が幾ぶんその条件を左右するということがあると、必ず具体的な差別になるわけです。その青年の家は必ず貧しい、そういうことになりますので、そのような官公庁で家の経済能力というものを採用条件にいささかでも――これは公共企業体で少し心配なんですが、そういうところで、ないと思いますけれども、そういうようなことがないように、やはり厳重にそういう間違いの起こらないように指導をしていただきない。もしあったなら、これはいかぬというようなことをしていただきたいと思うわけです。  それから民間のほうに対しては、民間の経営者に対する指導をしていただきたい、そういうことをするという前向きの御答弁をいただきました。それについて先ほど田原さんから具体的にはどうするのだということで、非常に前向きな御答弁を伺っておりましたからけっこうでございますが、ひとつ強力にその指導をする、具体的にやる。それからこの間申し上げましたように、それに従わないところは、労働省の権限あるいは労働省から連絡をして、たとえば、通産省なり大蔵省までも連絡をして、そういうようなけしからぬ企業に対しては、制裁を与えることによってそういうことが完全に遮断される、そのようにしていただきたいと思います。総括的にひとつ。
  100. 小平久雄

    小平国務大臣 先生の御注意の点、十分心してやりたいと思います。
  101. 八木一男

    八木(一)分科員 それでは、やや具体的な問題に移りたいと思います。  青年の場合も中高年齢層の場合も、職業に適応する訓練をするとか、それから紹介をするとか、そういうことが非常にみんな大事だと思います。労働省予算説明を伺いますと、かなり前向きに、今度少し前進をしておいでになるわけでございますが、たとえば一般職業訓練所新設、同和地区出身者が入所に便利な一般職業訓練所を一カ所新設計画をしている、設置したい、都道府県補助率二分の一というのが出ております。前に出ておらなかったので、出た点は非常にけっこうだと思いますが、たとえば都道府県に一つ置けば――部落に関係のある都道府県はかなりたくさんございます。このペースでいくとそれが全部置かれるのには二十年ほどかかる。もちろん加速度的なペースでやられる御予定だろうと思いますが、それでも十年かかるということになる。このような問題を完全に解決することは――戦前の内閣の計画でも十年間で完全に解決をした。そうなれば職業訓練をして、そうして定職について解決の一つの大きな方向を打ち出させるためにも、そういう訓練が少なくとも五年以内に完了しなければならない。そうなると、訓練所の設置は、それ以前に三年か四年以内に完了しなければならないということになります。そういう点で、芽を出していただいたことはけっこうでありますけれども、何といいますか、非常にスピードが弱いわけです。これは今年度の予算でございますから、先ほど言ったように大蔵省は、労働省協力して、それ以上の熱意を込めると福田さんが言っておられるのですから、労働大臣はそれ以上、この倍くらいの熱意を込められてひとつ――これは一つの例でございますが、こういうものがたくさん急速に内容の充実したものが置かれるようにしていただきたいと思います。その他項目が、就職促進費やあるいは職業安定協力費の費用、いろいろ前向きのものが少し出ておりますが、すべて量とスピードが問題を完全に解決をさせるためにまだ不十分でございますから、これを強力に、来年度はぐっと伸ばす、そのような決心で当たっていただきたい。大臣からひとつ。
  102. 小平久雄

    小平国務大臣 お話の職業訓練所につきましては、四十一年度は全体で十カ所認められたわけでございます。そこで、その中の一カ所はぜひ同和地区出身者が入所しやすいようなところに設けたい、設ける方針でおります。今後これが設置をもっと促進しろ、こういうことでございますが、労働省としては、もちろん、今後さらに努力をいたしまして、できるだけ御期待に沿うようにいたしたいと思います。ただ、こんな調子じゃ二十年もかかるじゃないかというお話でございますが、従来も同和地区に近いところで大体五十四カ所から現存する訓練所もあるわけでございます。これら全部がはたして適当に利用されておるかどうか、私いまつまびらかにしませんが、いずれにいたしましても、従来あるものも含めまして、また今後さらに努力をいたして、極力増設もして、皆さんに御不便をかけないようにいたしてまいりたいと存じます。
  103. 八木一男

    八木(一)分科員 それではもっと具体的に伺いたいと思います。失業者に対して職業安定法、緊急失業対策法というような法律で労働省は特に職安関係で対処しております。そのほかに石炭離職者に対しての臨時措置法というものがあります。これは大体似たものでございますが、部分的には石炭離職者に対する臨時措置法のほうが金額的にも内容的にも厚みがかかっておるわけであります。石炭鉱業がああいうような状態でございますから、失業者がたくさん出る。それに対して手厚い措置をとられることは非常によいことで、これでもまだ不十分だと思っておりますが、それと同時に、それ以上に長年、半失業の状態にあって、それから再就職が非常に不便な、やりにくい状態にあるという部落関係の失業者に対しても同様な厚みをかけた内容の法律を制定するなり法律改正をするということが、していただかなければならないことの一つであろうと思います。それについて労働大臣のお答えをいただきたいと思います。
  104. 小平久雄

    小平国務大臣 炭鉱離職者と大体同じように同和地区の方々にできるようにせよ、こういう御趣旨と思いますが、炭鉱離職者について特別な処置をいたしておりますことは、もうあらためて申し上げるまでもなく、石炭事業というものがわが国産業に占める地位も非常に重要でございますし、それがかなり急速に整理の段階にあった、一時に多数の失業者も出た、こういうようなこと、あるいは地域的にも大体限られておるというようなところから、今日のような特別な処置をとっておるわけでございます。そこで、同和地区の御出身の方々に対しましても、たとえば就職促進の処置等につきましては、これは一般的には中高年齢者を対象といたしますので年齢制限等もあるわけですが、同和地区の出身者に対しましては年齢制限などをいたさないで就職促進措置ができる、こういうような特別な計らいもいたしておるわけでございます。今後、審議会の御答申もいただいたわけでございますから、この御答申の趣旨を十分尊重いたしまして、できるだけ炭鉱離職者等との権衡も考えながら善処してまいりたいと思っております。
  105. 八木一男

    八木(一)分科員 大体前向きな御答弁でけっこうでございますが、さらに強力な前向きな態度でひとつやっていただきたいと思います。いままでいろいろやっていられたことを私は善意で解釈したいと思います。善意で前向きにやっていられたけれども、こういうような答申が出て、それでほんとうに内閣全体が、国民全体が取り組もうという時点でございますから――前には予算で取れなかった、前には権衡上議論があったといっても、それ以上の次元の高いところで絶対やるという決定があったわけでございますから、その点で、ことしの予算をすぐいじくるとしてもこれはむずかしいと思います。無理なことは申しませんけれども、来年度において飛躍的にこれを増大するというようなことをぜひ推進をしていただきたいと思うわけです。現に炭鉱離職者の臨時措置法の就職促進手当というようなものがございます。ことしの予算では、日額最高五百七十円、扶養加算が配偶者及び第一子が二十円、その他第二子未満が十円ということになっておるわけでございます。去年度より少しふえておりますが、たしか一般的な手当がことしの予算では一万二千百二十円、日額にしまして四百四円という内容ではなかったかと思うのです。私のその数字が間違っていないかどうか。
  106. 有馬元治

    ○有馬政府委員 石炭の就職促進手当につきましては、現在日額四百五十円が最高でございますが、これを来年度から改正いたしまして五百七十円に引き上げようと思っております。それから指導手当でございますが、指導手当は、今年度が御承知のように平均で月額一万九百五十円でございますが、来年度は一万二千百二十円というふうに改善をいたしていく予定でございます。なお、訓練手当も同じように、ことしが月額一万四千四百十円でございますが、これを来年度は一万五千八百十円というふうに改善をいたす予定でございます。
  107. 八木一男

    八木(一)分科員 何といいますか、いま申し上げた、四十一年度の予算で調べたことを申し上げた私の数字と同じでございました。ですから、片方のほうが五百七十円、それに扶養加算、片方のは四百四円ということになるわけです。だいぶ差があるわけです。そういう点について――これは両方とも四十一年度です。四十二年度で先ほど申し上げた答申に従って、とにかく石炭離職者の臨時措置法のほうももっと高めていただいたほうがいいと思いますが、それのベースにあわせて、少なくともそれと同じものに、同和地区のこういう人たちに対して手当をふやすというような措置をぜひ前進をしていただきたいと思います。  それから、今度は失業対策、失対法のほうに入りますけれども、先ほど御説明にありました部落地区に対しましては、中高年齢層をもっと弱年層まで及ぼしていく特別な措置をとっておられる。これは前から存じております。大橋先生が労働大臣のときに通った法律で、そのときいろいろ伺って、それから各労働大臣がやっておいでになるわけでございますが、ここでたしかそのころに、大橋先生をはじめとして、その後の労働大臣にもいろいろ確認をしたところでありますが、その問題は、失業多発地帯の認定については、現在、失業保険の受給率が一般の平均よりも、率は忘れましたが、倍ぐらいだったと思いますが、倍以上のところを失業多発地帯とするというようなことで運営をされているように思います。ところが、それは失業保険基準にいたしておりますので、たとえば部落の人たちは、失業保険の強制適用事業所である五人以上の事業所に就職の機会がない場合がほとんど大部分であります。大体五人未満の三人の企業にも就職できなかった場合がある。ですから、失業保険適用事業所という概念は、部落の地区では非常に妥当でないわけです。非常に失業者が充満しておっても、失業保険基準とした失業多発地帯というやり方であれば、これは該当地区に入らないことになります。それは非常にいけないので、その当時以来の各労働大臣にも、それから所管局長にも何回も申し上げて、これに対しては、失業多発地帯として部落地区は自動的に認定を受けるということを何回もお約束いただいているわけですが、これがほんとうに十分に実際にやられていないというきらいがあります。その点について、労働大臣と職安局長と両方から御答弁願いたいと思います。
  108. 有馬元治

    ○有馬政府委員 失業多発地域の指定につきましては、先生が御指摘のようないろいろな特殊事情もございますので、かつて大橋主査労働大臣時代にも、今後地域の指定については検討するというふうな御答弁もございました。私どもも鋭意、現在の指定地域がこれで実情に合っているかどうかという観点から、前向きで検討をいたしておるのでございます。失業行政といたしましては、逐次改善をされていると思いますけれども、なお不十分な点もございます。地域指定の従来のやり方が唯一最善の方法であるというふうには私どもも思っておりませんので、先生のいま御指摘の点を考慮に入れて、地方側の御意見も十分尊重しながら検討いたしてまいりたい、かように思っております。
  109. 八木一男

    八木(一)分科員 職安局長の御答弁は、それはそれとしまして、労働大臣にその問題について重ねて伺っておきたいと思います。いま職安局長が、職安局のいままでの行政の立場からそういうように考えて、大橋労働大臣以後ずっと労働大臣が御処理になったことについて検討していられるのはわかるが、検討ではいけない問題なんです。失業者の問題というのは即刻必要な問題です。即刻やらなければならない問題であります。そこで、いままでのことを別に追及はいたしませんが、これは行政措置ですから、すぐ直せると思うのです。即座に直していただきたいと思う。特に労働大臣に御答弁を願いたいのですが、さっき申しましたように、失業保険の受給者がほかのところよりも倍以上のところは失業多発地帯とする。ところが、失業保険というのは、五人以上の事業所でなければ強制適用じゃありませんから、そういうところに関係のない人たちの場合には、失業状態が非常に多くても、そういう算定方法では失業多発地帯にはならない。だから、何回もこの前から申し上げておわかりと思いますが、そこに半永久的な非常な失業状態があるときには、これは自動的に失業多発地帯にするということをぜひ決心を固めていただいて、これは行政措置でできると思いますので、即座にやるという御決心をしていただいて、御答弁していただきたいと思います。
  110. 小平久雄

    小平国務大臣 この問題につきましては、歴代の労働大臣も非常に関心を持たれてまいったところと承知をいたしております。また、いま有馬局長からも御答弁申し上げたとおりでございまして、私も、特に同和問題というものを大きく取り上げて善処させようと、こういう際でございますから、実情を具体的に至急よく調査をさせまして、できるだけ先生の御趣旨に沿い得るように努力をしたい、善処をしたい、かように考えております。
  111. 八木一男

    八木(一)分科員 私は、社会労働委員でございまして、労働大臣とは御質問する機会がたびたびございます。いま予算でほかの委員会が少し半休みのようなかっこうでございますけれども、非常に重大な問題でございますので、この予算委員会で部落問題を引き続き質問させていただいております。いま言っていま即刻というのは、これは御無理でございましょうから、次かあるいはごく短期間の間に社会労働委員会で労働大臣に御質問いたしますので、そのときに満足さしていただけるように、私が満足するのじゃなくて、そういう関係者が、政府がよくきめていただいた、よくやられたというような答弁をぜひひとつしていただくように、至急に前向きに実現のための御検討というよりは、もう事務手続みたいなものを考えておいていただきたい。そしてそのときにはっきりしたことを御答弁をいただきたいと思います。  それからもう一つ、失業者の認定の問題であります。失業者の認定問題については、非常にこれは同和問題にも関係がありますし、一般的にも関係があるわけであります。失業者の認定には、誠実かつ熱心に就職活動をするということでないと、失業者として認定をされないで、そしてこの就職促進措置の適用を受けられない、手当も受けられないし、訓練も受けられないということになる。失業者の認定が非常にきびし過ぎるわけです。まず第一に、誠実かつ熱心に就職活動をするという条件、その条件で、たとえばどういうところが就職希望だというと、このくらいの給料がほしいということを当人が言うと、それは高過ぎる、そういう高過ぎる給料を望むような者は、ほんとうに就職を希望していないということで、適格者からはずしてしまって、就職促進措置が打ち切られるということが現実に方々にたくさんあります。それからもう一つの安定雇用をするということで、この職安二法ができ上がったわけでありますが、安定雇用ということを非常に労働省は狭く解釈をしておられるところが多い。期間の定めのないところ、そういうところに就職をすればいいというやり方で指導処置をしておられるわけです。期間の定めのないということは臨時工ではない。ずっと続けて働けるというように善意に甘く解釈をすればいいわけでございますが、二名や三名の中小企業、非常に労働条件の悪い中小企業で、期間を定めているところはないわけです。ですから、期間を定めないところに就職させればそれは安定雇用だとか、常用雇用だというような考えで労働省はやっておるわけでありますが、実際はそのような文言だけでごまかされておる。前の就職よりもずっと労働条件の悪い、そして賃金の少ない、そして社会保険などがないような、そういうところに就職あっせんをしておられることが多い。そこに就職あっせんをして、そこへ行けと言ったら、そこは条件が悪いから、ほかに行きますと言ってこれを断りますと、せっかく世話をしてやったのにそこに行かないのか、そういうことであれば、熱心かつ誠実に就職活動をしていない、だから措置を打ち切るということで、低賃金の条件の悪いところに無理やりに強制労働の形で就職をさせる。そういうような向きになっている点があると思うのです。そういうことではほんとうの労働者保護の方針と逆になる。労働者保護の方針、労働省労働者のための労働省でございます。ところが、逆に使用主が安い賃金労働者を雇い、そこにぐずぐず文句を言わせないで、悪い労働条件労働者を供給する。やり方によってはそういう作用をすることになります。全部が全部そうだとは申しません。しかし、その失業者の認定、誠実かつ熱心に就職活動をするということの中に、そういうふうに向く点が多い。また、部分的には明らかにそうなっておるという話もたくさん聞いております。たくさん聞いておりますが、全部がそうだとは私は断定いたしませんけれども、そういう点があるわけです。そういう失業者の認定についての過酷な条件、熱心かつ誠実に就職活動するということについての過酷な条件、これが労働者保護から逆に労働者虐待、強制労働につながる問題であります。失業者を多数かかえておるこの部落地区においては、特にそういう問題が悪い影響になる点が多いわけです。そういう点で、たとえば就職させるところを安定雇用――ほんとうの意味の安定雇用ですね。ずっと続くということと、賃金がある程度の水準にある、それから社会保険が適用されておる、そういうように、つぶれるようなところではなく、ちゃんと一生懸命やっておればずっとそこで働ける、実際にそういうところに就職できるようにしなければならない。本人がそういうところはいやだと言って一回断ったら、お前は就職に熱心でないから、就職促進措置は、手当は打ち切ると言われる。手当がなかったらその間困るから、泣き泣きそこへ行くというようなことにならないように、安定雇用とか、常用雇用とかいうように使っておることばは、ほんとうの意味の安定雇用、ほんとうの意味の常用雇用ということでなければならない。そういう考え方で一貫をして――末端の監督署のほうの人たちが功を急いで、ただ数だけ就職させたということで、自分の表面上の組織の成績が上がるということで、ほんとうの労働者のしあわせが阻害されておるということになってもいけないので、そういうようにならないよう強力な指導と指示をしていただきたい。それについての労働大臣のお考えを伺いたい。
  112. 小平久雄

    小平国務大臣 先生の御注意、まことにごもっともだと存じます。そういう点は、十分注意しながらやっておることとは思いますが、中には、あるいは御指摘のような場合もあるのかとも思いますし、今後とも十分実際事務を取り扱います現地の安定所の人に、われわれの考えを十分伝えまして、遺憾なきを期してまいりたいと考えております。
  113. 八木一男

    八木(一)分科員 実は、これから失対事業の問題に入ります。失対事業にいま紹介するのは、一般的にそのような就職促進措置が済んで、それで安定雇用につけようと思って、なかった場合に、失対事業に紹介するという方針になっておる。それとともに、失業多発地帯においては直ちに紹介をするということになっておる。ところが、失業多発地帯の認定で、さっきのような問題がある。一般のコースをたどっての失対事業の紹介については、そのような行政上のやり方によるチェックがあって、実際に紹介がされていないという状態にある。ただ、この問題については、北海道の夕張から始まりまして、そのときも大橋先生が労働大臣でいらっしゃいました。そこで、一般の指導課程を経てからのものが、初めて何十名か失対事業に新規に紹介されました。その後、四国や九州で始まっておりまして、ある程度の、失対事業に対するあの失対二法以後の紹介がございますけれども、これは非常に少ないのであります。失対事業というものは、本来の意味で雇用政策が完全に行なわれ、また老齢保障が行なわれ、それから遺族保障が行なわれて、そういうようになれば、失対事業というものは必要ないものでございますけれども、残念ながら、日本の老齢保障というものは七十歳からだ。千何百円というようなことでは老齢保障にならない。それでは食べられないということであるから、やはりどこかで働かなければならないことになる。遺族保障がないために、失対事業に女の人が一生懸命働かなければならないという問題が起こるわけです。雇用が完全に十分にいかないためにそういうことになるわけです。そうなれば、労働大臣、現実の事態としては、失対事業というものは非常に有効な働きをしておるわけです。これは雇用対策としても、社会保障対策としても、それを本来の理念みたいな――現実に解決をしていないのに、そういうものは別に本来的に必要でないという観念的な問題と、もう一つは、失対事業に組織された自由労働組合が、いろいろと本来の当然の要求であります要求をやることについて、手当の要求などにおいて、地方自治体の人たちに強力な交渉をする。自治体の人たちが、それについてあごを出して、何とかしてもらいたいというようなことが起こったりいろいろなことで、私どもの考え方によると、労働組合対策というような意味で、その人数があまりふえないようにしたいというような感じがどうしてもするわけです。そういうふうにしたいと労働省が暗々裏に考えている、そういうふうに思う。そういうことはほんとうにいけないことで、末梢的なことであります。いま雇用がうまくいってなくて、老齢保障がなくて、母子対策がうまくいってなくて、失業手当制度もないということになれば、具体的に、失業対策事業というものは、憲法に従った条章をわずかにカバーして、そういう気の毒な不運な人たちの生活をささえているということになろうと思う。でございますから、失対事業はこれを拡大して、人員もふやし、賃金もふやし、その他の諸条件もよくしなければならない状態にあると思う。ほかの対策が完全にでき上がったらそれは解消してもよろしいですけれども、ほかの問題が完全に解消しない期間においては、適用する条件も緩和し、人員もふやし、賃金もふやし、手当もふやし、諸条件もよくするというふうにしなければならないと思うわけであります。それについて、ぜひひとつそういう考え方で問題を対処していただきたい。ことに、関西以西の失対事業に入っている労働者の八割方は――私どもの奈良県では八割が部落出身であります。関西はほとんど七、八割そうであります。その人たちは、前々から申し上げているように、日本の政治のすべてのひずみのためにそういうことになった。しかも、その失対事業に行くことが一番の望みで、それに入れないで困っている人がいるわけです。それに入れないで困っている人は、同じくそのような雇用政策や社会保障政策がなくて、失対事業で働いてそれで生活をすることが必要な要件にあるわけでございますから、それをめんどうくさがって、少なくしたいとかなんとか、そういうことでなしに、いま言ったような同和対策を徹底的に取り上げるという現時点においてその失対事業を拡大し、一般的に賃金を上げ、そして、部落地区には失業多発地帯を直ちに適用して、その人たちが入れるようにするというふうにしていただきたいと思う。それについての労働大臣の、ぜひ前向きな確固たる御決心をひとつ伺わしていただきたいと思う。
  114. 小平久雄

    小平国務大臣 失対事業につきましては、労働省といたしましても非常にこれを重視いたしておるわけでございまして、特に失対事業の賃金等につきましても、できるだけわれわれも努力をいたしたわけでございます。すでに先生御承知と思いますが、平均賃金におきましては、四十年度が五百六十一円二十銭でございましたが、四十一年度は六百二十九円二十八銭、約一二%の引き上げをいたしたわけであります。それから一方、ワクの問題でございますが、四十一年度は一般失対が十五万九千、それから特失が六千、全部で十六万五千ということで、前年に対しまして、合わせて八千減、こういうことで予算はできておるわけでございます。  昨年度はどうであったかと申しますと、昨年度は、両者合わせまして全体のワクが十七万三千でございましたが、三十九年度に比べますと二万一千減であったわけであります。それから三十九年度は、全体のワクが十九万四千でございまして、三十八年度に比べますと一万九千の減、こういうことで、絶対数から申しますと、四十一年度も四十年度に比べて八千減、こういうことになっておりますが、減少の割合から申しますと、前年あるいは前々年に比べてはるかに少なくいたしたわけでございます。この点は、御承知のとおり、一方においては必然的な減少というものもありましょうし、さらに積極面から考えますと、四十一年度におきましては、特に公共事業等に十分力を入れて、しかも早目にこれをやろう、こう言っておる際でございますので、まずまずこの程度のワクでやっていけるのではなかろうか、こういうことで十六万五千というワクで予算をきめたようなわけでございます。これは、同和地区に対してどうというワク的な区別は別段ございませんが、全体としてはこういうことになっておるわけでございます。  そこで、失対事業を拡大して、これに自由にと申しますか、たくさん希望者が入ってくるようにするというのも一つの考え方かも存じませんが、何と申しましても、やはり安定した職場にできるだけお世話をしていくことが、雇用の面からいえば本筋ではなかろうかと私ども考えておるわけでございまして、まず、それに極力努力をしていく、そして、どうしても通常の雇用ができない、就職ができないという場合には、やむを得ませんから失対事業に吸収をしていく、そういうことが、ものの考え方と申しますか、方針としては妥当なのではなかろうか、さように考えております。いずれにしても、失業者が非常にふえたとか特別の事情が発生すれば、これは考えなければならぬことでございましょうが、われわれは、一応は先ほどから申しますような賃金、ワクにおいて今年はやっていけるであろう、こういう見通しに立っておるわけでございます。
  115. 八木一男

    八木(一)分科員 こまかいことはまた社会労働委員会で申し上げますけれども、いまおっしゃったことについて、ちょっと私、善意は認めますけれども、反論をしておきたいと思います。  というのは、減るのは少し減った、減る率は減った、だけれども減っていることは確かだ。減っているというのは、失対事業からほかに出ていく人もある、なくなった人もある、新しい者をあまりとらないから減っているわけです。ところが雇用情勢は、前より、失対二法のときより悪くなった。特に中高年齢層の場合には悪くなった。全般的に青少年の若年労働者が足りないという状況がありますけれども、これはここ数年間の問題で、景気が悪くなって不況になって、最近は零細企業がつぶれるという点でいよいよ失業者がよけいになり、中高年齢層はよけいにまためんどうになってくる。そういう状態で、前の制度であれば失対事業で働いてもらえる人が、今度の制度でそういうふうにきびしくなっているから働いてもらえない状態になっているということのために、減ってきている。そうなれば、この失対事業があったら働かせてもらいたいのにと思う人が、それだけ失対事業に働かせてもらえないという状況がある。それを失業者全体のために、また非常にその部類に該当する人が多い部落の人たちのためにぜひ考えていただいて、減り方が少なかったからいいということじゃなしに、これはいまの時点としてふやさなければならぬ問題です。将来の時点で安定雇用が完全にできてこれが減るのはかまいません。ところが、それができない間にそれが減るということは、これは間違いだと思う。  それから賃金の問題にしても、賃率を去年に比べて御努力になった事情はわかる。しかし、大体基盤の賃金が少ないのですから、上げる率が、ほかの一般の情勢がちょっと下がっているところを、ことしだけそれをオーバーしたということはあっても、それまでの上がり方が足りないし、その前の、率をかける場合の賃金が安いということなのですよ。失対事業の場合と生活保護の場合と比べますと、一人の失業者だと、生活保護費のほうが安い。ところが二、三人の家族をかかえていたら、失対事業で働くより生活保護のほうが多くなるということになる数字も、場所によっては出てくるわけです。それではぐあいが悪い。非常な病人とか、老人とか、あるいはまた子供とか孫とかをかかえて働いている人の賃金が、働かないで生活保護を受けているよりも少ないような勘定も出てくるところもあるということだったら、これは話にならない。ですから、前の少ない賃率という問題ではなしに、いまの生活自体がどうであるか、人間として健康で文化的な、最低でもけっこうですが、健康で文化的な最低の生活をするのにどれだけ要るかという問題を勘案して賃金をきめていただかないと、賃率や何かということよりも、それのほうが大事じゃないか。そういう観点からいえば、今度の賃上げのほうも、これは非常に乏しくて実態に合わないということになろうと思います。  それから安定雇用の問題でございます。これは安定雇用についたほうがいいのです。だから、安定雇用というのを、さっき言ったようなほんとうの安定雇用ではなしに、無理やりに強制されて悪いところにつけるような安定雇用であってはならないということであります。それからもう一つは、失対事業につけてからでも世話をして上げればいいわけです。失対事業よりも条件のいいところがあれば、それはどんどん行くと思うのです。そういう就職の紹介をしておられるのに失対事業に入りたいという人が多いのは、それより条件の悪いところに世話をしておられることが多いということになる。ですから、安定雇用はほんとうは目的でございますけれども、その安定雇用の中身がまやかしもののことが多い。それを待っている間の生活の根源が立たないということがございます。そういうことで、実際にそういうことが多いために、失業多発地帯において直通して紹介するという条件になっている。そういうことができるという条件になっている。ですから、それと同様、いや同様より以上の失業状態にあるこの部落地帯に対しては、失業多発地帯のように直通にしていただきたい。これは前向きに御検討になっていただきたい。安定雇用精神はけっこうでございますが、その前に、そんな手続をとらなくても失対事業に一生懸命に働いて、それで食っていてもらって、その間にいいところがあれば紹介をしても差しつかえないわけです。ところが、いま紹介してくれるけれども、何か言えば紋切り型で、前のことをやってからでなければとかいうことを言う。そうなると、強制事業のほうにかり立てよう、失対事業をつぶそうという方向に行政上は措置されるが、そうではなくて、失対でどんどん働かしておいて、それで安定雇用に紹介したら、前にそういう階段をきちっと分けなければならぬことは一つもない。そういうようなことに疑いを持ったようなことがなければけっこうです。しかし、あれば変えていただかなければならぬ。その変えていただく方法は、失対事業を希望する人にはすぐ働かせる中で安定雇用がどんどん進んで、失対事業がなくなるというならちっともかまいません。これができてこないので、小平労働大臣にも、ぜひそれを考えて、申し上げたようなことを進めていただきたいと思うのです。  時間もかなり進みまして、各分科員の方も、政府委員の方も、報道陣の方もお疲れだろうと思いますから、もうちょっとにいたしたいと思います。そのこまかいことは社会労働委員会で詰めますが、ぜひ多発地帯の問題なり失業の認定の問題でこまかいことをこの次に御質問したときに、よく御決定をいただいたという御答弁をぜひそれまでに準備をしておいていただきたいと思います。  それから、一般的な問題として部落問題の解決、一般の労働問題の解決の中の一番大事な問題として最低賃金法の問題がある。臨時工、社外工あるいはまたいまの問題として離れた一般的に日雇い形態の労働条件などという問題をなくしていかなければこれはいけないと思うわけです。それは直接関係があるかどうかわかりませんが、また基準の問題で、これは農林漁業を基準法から適用を除外されておるというような問題が、一般の労働問題としても、この問題の関連としても、やはり問題に考えていかなければならないことではないかというふうに思う。その前の問題で最低賃金法については、これは全国一律の最低賃金、それで少なくともこれは一万八千円とか、そういうようなものにしていかなければ、低賃金労働者はどうしてもそれより低くなります。部落からやっと就職できた人も、はるかに少ない賃金でやっていかなければならない。これでは、ほんとうに労働者として立ち入って社会に貢献して自分の生活をやるという条件にならないと思うのです。最低賃金法の問題を、これも大きな問題ですから、社会労働委員会等において衆参で論議をされると思いますが、いままでの政府の態度に固着をされないで、とにかくりっぱな最低賃金法をつくるということで御努力を願わなければならない。それから臨時工と社外工、特に社外工の問題などは、これは実にけしからぬ問題で、これは労働省のほうでこういう同じ仕事をして片方が賃金がうんと安い、労働条件がうんと少ないという問題を、企業形態が間接だからということでそうなっておりますが、それをさせない。同じ労働については同じ賃金であって、同じもの、その中には技能の差はありますけれども、ベースとして同じ賃金であって同じ労働条件でなければならない。そういう社外工というような、請負をさしてこうやるようなことをさしてはいけない。労働行政と通産行政と両方関係があると思いますが、そういうことを急速に強力な方向で、社外工というような状態がなくなるようにやっていただかなければならないと思います。そういう点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  116. 小平久雄

    小平国務大臣 まず最賃制の問題でございますが、これは先生御専門ですからよく御承知でございますが、昨年八月以来中央最賃審議会に基本的なあり方について御検討をいまいただいておるところでございます。  それから社外工、臨時工の問題でございますが、この問題は基本的にはわが国の雇用の事情なり、あるいはさらにさかのぼればわが国の産業構造の問題なり、そういうところに起因すると思われますので、これを急速に絶滅するということも実際問題としてはなかなかむずかしいかと思いますが、しかしいま先生もお話しのとおり、労働賃金等におきましても大体常用に比べますと、一般的に低い。そういう事情もございまして、われわれといたしましても、極力こういった、いわば例外というか、不規則というか、そういう形態での雇用というものはひとつ減少させていきたい、将来なくなることを目標に努力をしていきたい。最近の実情からいたしますと、逐次減少は現にいたしておるようでございますが、なお今後とも努力をいたしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  117. 八木一男

    八木(一)分科員 いまの社外工、臨時工、日雇いの問題ですね、これは法律のほうでもう考えていただけば解決の道ができる方法もあると思うのです、非常にむずかしい問題ですけれども。たとえばこれは部分的にはあると思いますけれども、日雇いである程度払ったら、これを継続してやっていたら、これは常用工と同じようなものとしなければいかぬというような、そういうものを、これは規定いじくりは非常にむずかしいですけれども、そういうようなことについて労働省なり、基準局なり、そういうところが法律でもって社外工、臨時工、日雇い工が常用工と同じ条件になるというような前向きな立法をひとつ考究をしていただきたいと思います。そういうことをひとつお願いいたしておきます。
  118. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘の点、先ほど大臣が御答弁なすったとおりでありますが、ただ社外工、臨時工、日雇いと申しました場合に、多少質的に差があろうかと存じます。これは先生御承知のとおりでございますが、臨時工とか、日雇いにつきましては、たとえば季節的必要性、業務の繁閑、いろいろな必然的なやむを得ない事情によりまして、そういった雇用形態をとるということも少なくないと存じます。問題は、実態的には常用でありながら、あくまでも形式的には臨時工として扱われ、労働条件が低いというところにあろうかと存じます。したがいまして、法的に臨時工なり日雇いという制度が指定さるべきだというふうなたてまえから全部処理するということについては、私どもかなり問題があるのではないかと存じますが、ただ社外工、なかんずく貸し工といわれるものにつきましては、親企業の作業現場で、子会社あるいは下請の労働者が実質的には全く親会社の労働者と同様に働いておる、ややもすれば中間搾取であるとか、基準法上の問題も直接発生する、こういう種類のものにつきましては、私ども従来とも監督上かなり送検した例もございますが、これは基準法上の問題であるということで、直接かつきびしく監督をし、かつ今後も徹底をしてまいりたい、かように考えております。  なお、先ほど来先生御指摘の同和問題につきまして、このような、たまたまわが国の産業構造上存在するこういった制度に便乗して差別待遇をするということは、御承知のように労働基準法第三条から見ましても違反でございます。問題は、いかなる手がかりによりまして、そういった事実を発見し、監督を適正にするかという点に実は心を悩ましておるというような状態でございます。今後さらに先生の御教示を賜わりまして指導の徹底を期したい、かように存じます。
  119. 八木一男

    八木(一)分科員 社会労働委員会でまたやる問題がたくさんありますから、いまのは臨時工、社外工の問題、最賃の問題、また私どもの考え方を十分に御披瀝しまして、それで政府の前向きな措置を要望したいと思います。  きょうはこれで打ち切りにいたしたいと思いますが、同和問題は同和問題自体として対処をしなければならないと同時にボーダーライン層のすべての労働者の問題とつながっておる問題であります。労働省としては、このような条件の悪い労働者を保護する、普通の労働者と同じようにするという点であらゆる面で努力をされる必要がありますし、この問題が部落問題解決の一つの大きなかぎになる。しかし、それとともに、いま非常に難儀な問題でございますが、どんどん一般的な問題を進めるとともに、部落問題について訓練だとか、いまの職業紹介だとか、失対事業の問題だとか、それをやはり強力にやっていただかなければならぬと思います。一方の根本問題が解決すれば部落問題はなくなりますけれども、それを待っているわけにはいかないわけです。両々相まってこの点について最善の方法をとっていただきたいと思います。労働行政上の問題もありますし、大蔵省との関係の予算の問題もありますから、どっちの問題でもいままでも努力をされたかと思いますけれども、数百年の問題が解決する方策が十数年の努力でいま出たときでございますから、いままでの概念を全部乗り越えて、予算にしたならば、これは十倍、百倍になってもちっとも差しつかえがない。それから措置にしたならば、いままで行政措置で何とかやっていたのを法律化するのが当然である。そういうような意味で、すべての点で強力な措置を前進さしていただきたいと思います。  なお、個々の問題については委員会なりあるいは総理大臣からお約束をいただきましたように、与党、野党考えたことはすぐ御連絡をすることになっておりますので、こういう席上じゃなくても、御連絡になったことはそのまままっすぐお取り上げを願ってやっていただきたい。部落問題については、これが有効であろうというものを比較検討するのじゃなしに、有効であろうというものを全部やるということでもまだ足りないことになる。有効であろうと皆さんがお考えになりわれわれが考えたことを全部急速に、完全にやるという立場で前向きな御努力を願うことをお願いいたしまして、労働大臣の前向きの御決心をもう一回伺って、それで終わりたいと思います。
  120. 小平久雄

    小平国務大臣 先生の御熱心な御主張、御要求は私どもよくわかりますので、最善を尽くしたいと思います。
  121. 大橋武夫

    大橋主査 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十五日午前十時より開会し、労働省所管に関する質疑を続行することとし、散会いたします。    午後五時二十五分散会