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1966-02-26 第51回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十六日(土曜日)    午前十時九分開議  出席分科員    主査 井出一太郎君       丹羽 兵助君    福田  一君       水田三喜男君    八木 徹雄君       稻村 隆一君    神近 市子君       田中 武夫君    野原  覺君       山中 吾郎君    兼務 栗原 俊夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         検     事         (矯正局長)  布施  健君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君         厚生事務官         (援護局長)  実本 博次君  分科員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    加治木俊道君         通商産業事務官         (企業局次長) 両角 良彦君         通商産業技官         (公益事業局技         術長)     藤波 恒雄君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    青木勇之助君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    藤繩 正勝君     ————————————— 二月二十六日  分科員賀谷真稔委員辞任につき、その補欠  として稻村隆一君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員稻村隆一君委員辞任につき、その補欠と  して田中武夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田中武夫委員辞任につき、その補欠と  して神近市子君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員神近市子委員辞任につき、その補欠と  して多賀谷真稔君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  第五分科員栗原俊夫君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算法務省所管      ————◇—————
  2. 井出一太郎

    ○井出主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十一年度一般会計予算中、法務省所管を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。稻村隆一君。
  3. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 私、最近の検察庁態度について、石井法務大臣に所信をお聞きしたいのですが、法というものは、適用においてはやはり平等でなければならぬが、社会的地位ある者に対して、最近検察庁態度が非常に手ぬるい。普通の人に対しては厳格にやることを、社会的地位ある者に対しては全くあいまいな態度をとって、ろくに調べもしないというふうな問題がありますので、そのことに対しましてお聞きしたいと思います。  第一は、新潟県の知事選挙の問題。この知事選挙の問題はむろん地方検察庁は徹底的に調べているようですけれども、しかしまだ、われわれから言うならば、明瞭な事実に対して起訴をしていないということ、それが第一。それから第二は、これは国士館大学暴行事件です。実は私、石井さんにはこういうことをはなはだ申し上げにくいのですけれども、しかしこれは私情をもって公の問題を取り上げないというわけにいきません。この国士館大学は、あなたも顧問団の会長をしておるはずですが、この学校における学長暴行事件です。この二つの問題について、私は率直にお尋ねしたい、こう思っているのです。  第一は、新潟知事選挙の問題ですが、最近選挙界の腐敗は実にひどい。それがために金がかかる。金がかかるから政治家汚職をやるというふうなことになるわけなんです。中には一億も使ったなんという人が現にあるわけです。これは単に自民党だけじゃない、社会党その他一切の政党の立場からいっても、選挙に金がかからないようにするのがやはり政治を正しくする根本だと私は思うのです。選挙に金がかかってはどうしても何か金もうけのために汚職をやらざるを得ない、こういうことに往々にしてなるわけですから、そういう意味からいって、選挙にそんなに金がかからないようにするために、やはり検察庁においては厳重に取り締まりをすべきであると思うのですが、どうも最近買収違反等は犯罪でないように思われているような考えがだいぶ世間に行きわたっている。これは検察庁取り締まりが非常に手ぬるいのじゃないかと私は思うのですが、この点について石井法務大臣の御意見を承りたいと思っております。
  4. 石井光次郎

    石井国務大臣 新潟知事の問題についてのお尋ねでございますが、この問題につきましては、この予算委員会においても数回お尋ねを受けたことでございまして、そのたびにお答え申しておったのでございますが、検事局関係が手ぬるいじゃないかといういまお尋ねでございますが、私は必ずしもそうとは思ってないのでございます。私は選挙前にはみんなに訓令を発しまして、選挙問題につきまして厳正な態度で臨むべしということを検察官に訓示をいたしまして、そのとおりにやってくれていると確信をいたしておるのであります。しかし、厳正にやるということは、何も急いで何でもかでも迅速に片づけてしまえということを言うているわけではありませんで、慎重にするものは慎重に、そうしてなるべく早く片づけることは望ましいことでありますけれどもあとでああしまったというようなことのないように、問題が大きく取り扱われたものほど十分慎重に取り扱うということは、これは検察当局としては当然やるべき問題だと私は考えておるのであります。どういうふうな方向に、どういうふうな方法をやっておるかという内容を私は詳しく知りませんけれども、現に新潟知事の問題にいたしましても、知事だけでも、私が知っておるだけでも、九回か、九回以上調べたということもありますし、いまだにこれは調べが残っておるとみえて、いろいろやっておるようでございます。慎重な態度をとってやっておるのだなと思って、私はじりと見ておる状態でございます。必ずや厳正なる態度によって、そうして、ものがそろいましたら、そこでしっかりした判断が下される、あまり遠くないときにそれが下されるだろうというように私は想像しておるわけでございます。
  5. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 たとえば、やはり新潟知事選でありますが、これはわれわれのほうの違反でありますけれども、文書をまいただけで留置されて取り調べられて起訴されている事実がある。ところが塚田知事さんのほうは、中元または功労金と称して四十七人の県議会議員に二十万円以上の金を贈っている。これはもうだれが見ても——一人や二人に贈ったというなら、それは中元とか功労金とかいう理由もつくかもしらぬけれども、四十七人の人に中元を贈った。しかも選挙塚田知事並びにもう一人の候補である吉浦という人が立候補の意思を表明してから、その前後において四十七人の人に中元を配る、こういうことは常識上あり得ないので、だれが見てもこれは買収であることははっきりしている。これはどうもまだ補充捜査が必要であるというふうなことをいって、十一日の朝日新聞でありますが、地方検察庁は強硬な態度をもって、そうして起訴をするつもりで高検相談にきたわけです。高検はまだどうもこれは裁判にするには資料が足りない、こういうのでもっと補充捜査をやれ、こういうふうなことで帰っていっておるわけです。まだ起訴されておらない。これは起訴が延びれば延びるほど証拠は隠滅されるのですから、これは私は実際補充捜査も何もないと思うのです。捜査内容につきましてわれわれしろうとが立ち入っていろいろ憶測をして言うのは慎まなければならぬけれども、だれが見たって、四十七人の人に二十万円以上中元として、功労金として贈るなんという、そういうふうなことは明らかに買収であり、現に調べられた者の中には、選挙を頼むといってもらったという陳述をしている議員もたくさんあるわけですから、そういうものをまだ起訴か不起訴決定していない、いつやるかわからない。あれからもうだいぶ長くたっている。そういうふうなことはどうも私は疑わざるを得ない。世間では、知事は辞職を表明した、それと引きかえに起訴猶予処分にするのじゃないかというふうな評判が立っているわけであります。しかも、前からうわさは流れておる。塚田さんは石井法務大臣と同じ派閥に属するから、圧力がかかっているのじゃないか、こういうふうな評判があるわけです。むろん、それはうわさでしょうけれども、どうも私はこういうふうな明瞭な事実に対して、まだ起訴もしてないというふうなことは、これは私はどういう事情があるのか知らぬけれども、どうも私は疑わざるを得ないのですが、そういう点に対して、政治的な工作あるいは圧力というふうなものを、最高検察庁大臣のほうから加えているというふうな事実は、うわさだろうと思うけれども、あるかないか、率直に私はお聞きしたいのです。
  6. 石井光次郎

    石井国務大臣 その問題は、さっきも申しましたように、当予算委員会においても幾たびかお尋ねを受けました。全然そういうことは考えてもおりませんし、いたしもいたしません。私が法務大臣地位にある限り、法務大臣の職責を厳に守っていくつもりでございます。友人友人職務職務とはっきりと区別をいたすつもりでございます。また、いま内容をいろいろお話しになりまして、こういう内容のものを、はっきりしておるじゃないか、早く片づけてしまうべきじゃないかとおっしゃいましたが、これは捜査の途中にある問題でございまして、そういうふうなことをずっと調べ、それをどういうふうに運んでいくかという証拠固めの途中であるわけでございまして、それについて私ども、どうだこうだと言うことは差し控えたいと思っております。
  7. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 しかし、ただ法務大臣に対して検察庁のほうから報告があるはずです。こういう問題は全国的な問題になったことですから。いつごろ決定するかまだわかりませんですか。
  8. 石井光次郎

    石井国務大臣 まだいつごろということは、はっきりしたことは聞いておりませんでございます。
  9. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 刑事局長おいでですか。——これはもう詳細に刑事局長など知っておいでになると思うのですが、こういう問題をまだ起訴、不起訴をきめない、処分決定をしないというのはどうなんですか。明瞭な事実なんですよ、だれが見ても。新潟検察庁高検にもうすでにいろいろな相談に来ているわけですが、それに対して高検のほうで、まだ資料が足りない、補充捜査をしろというふうなことをいろいろ言っているわけなんですが、これは事実はどうなっているのですか。
  10. 津田實

    津田政府委員 新潟県知事に関する事件は、昨年の十月二十五日の告発によりまして捜査を開始したものでございます。そこで、先ほど法務大臣が申しましたように、当人につきましても相当回数の取り調べをいたしております。それで一応の取り調べをいたした後、種々の事実問題、法律問題、証拠関係につきまして高等検察庁と打ち合わせたということは承知いたしておりますが、その打ち合わせの段階において、さらに事実問題、法律問題、証拠関係価値判断等についていろいろな問題点が指摘されて、それにつきましてさらにこれを明確にするための補充捜査を行なうというのが現段階でございます。選挙違反関係事件につきましては、非常に明瞭なものもございますけれども、なかなかめんどうなものもございまして、これが一審なり二審なりにおいてしばしば無罪判決を受けるというような事態が出てまいっておることは御承知のとおりであります。したがいまして、検察庁といたしましても、そういう資格に関する重大問題でもありますので、かりにこれが一審とか二審とかで無罪になるというような事実を起訴いたしたということになりますと、これは当人はもとより一般的に非常に影響が大きい問題でございますので、そういう意味におきまして、証拠上あるいは法律問題上間違いがないという確信を持って、しかも起訴に値するものについて起訴をいたすということにいたしておるわけでございますので、外見からごらんになりますと、あるいは明瞭であるというふうな事件もあるようでございますけれども、これを捜査いたしました場合には非常にむずかしい問題が出てまいることはしばしば私ども遭遇いたしておるところでございますので、そういう意味におきまして、本件はさらに必要な捜査を行なって遠からず結論を出すということになることになっておるわけであります。
  11. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 刑事局長、いろいろ検察庁立場を弁明されておりますが、それももっともだと思うのですが、しかしこれは先ほど私、法務大臣にも申し上げたように、四十七人の人に二十万円以上の金を中元もしくは功労金として贈るなんということは、常識上そんなことはあり得ないのですよ。これをほかの人がやったらたいへんですよ。一ぺんですよ。酒一升持って、これは何かの見舞いだと言って選挙の最中持っていってもみな引っぱられる。酒一升でもって留置されて、しかも選挙権が停止されているのです。中元なら一万や二万、品物でやるとか、そういうことはあるでしょう。しかし二十万以上ですからね。そういうものを四十七人に配っている。しかも県会議員の中には選挙を頼むと言ってもらったと言っている人が事実たくさんあるのですよ。その本人からも私聞いているのだ。そういうものを、まだ証拠が足りないとかなんとか言ってぐずぐずしているというようなことは、どうしたってこれは検察庁態度を疑われますよ。地方検察庁それ自体は疑わない。権力をおそれないでよくやったと思うのです。しかし、これが最高検高検にくると、どうしても高検最高検意見が入って、どうも資料が足りない、もっと補充捜査をしろなんというのは、これは政治的圧力が加わったのではないかと疑うのはあたりまえですよ。明瞭じゃないですか、あなた。いまだかつてそんな露骨な買収事件というのはないですよ。四十七人の人に二十万以上の金を配ったのですから、中元とかそんなばかなことはない。功労金というなら、それは一人や二人の人に対してはあるだろうけれども、四十七人全部に配っているのですから、そういうものに対して、まだ証拠が足りないとか、公判においてどうもあぶないというようなこと、これは理屈であって、どうもそこには検察庁において何らか塚田知事立場を有利にしようとするような政治的配慮が加わっているのではないか、こう私は疑うのですが、そういうことはないですか。実際どうもおかしいですよ。
  12. 津田實

    津田政府委員 御承知のとおり、検察庁法におきましては、検事総長以下の検察官にある程度の独立の地位を与えられておりまして、法務大臣が特定の事件について検事総長意思に反して指揮をするというようなことは従来からないところでございまして、そういう意味におきまして、法務大臣が一々個々の事件について意思表示をするということはございません。検察庁関係事項につきまして、必要事項刑事局におきまして報告を受けておりますけれども刑事局といたしましても何らの意思表示もいたしておりません。ただ、検察庁捜査の具体的な進行を見守って、適正にされるようにということを常に考えているだけの問題でありまして、このことに限らず、すべて検察権の行使に関しまして、具体的事件について法務大臣指揮をするというようなことは全然ございません。その点は御了解を願いたいと思うのでございます。
  13. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 こういうことはなかなかはっきりお答えできないと思うのですが、塚田知事の問題は近いうちに決定しますか、処分決定をする予想ですか、どうですか。
  14. 津田實

    津田政府委員 先ほども申しましたように、高等検察庁段階におきまして補充捜査をするという結論が、新潟地検検事正等との間に話し合いでできております。したがいまして、新潟地検におきます補充捜査進行いかんによることでございます。捜査進行そのものは、検察庁といたしましては常に迅速を旨としておるわけでございますけれども取り調べを受ける方の都合とかいろいろなことでやはり延びることもございます。しかしながら、これは急速に行なうことにいたしておるようでございますので、遠からずそれらのものがそろいました場合に最終結論を出すということになると私は判断いたしております。
  15. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 私は決して捜査内容にいろいろ立ち入ってかれこれ言うわけじゃないですけれども、もうあなた、知事も何度も調べ県議会議員の方ももう何度も調べているし、私どもから見ると、大体の証拠はそろっていると思うのですが、補充捜査なんて一体何があるのですか。これはほとんどないだろうと私は思っているのですよ。私は、これはもう当然起訴すべき段階に立っているだろうと思うのですが、まだそんなに補充捜査なんて、一体何をやるかわからない。それで何を捜査するのか。新潟知事選内容を大体知っている私どもにとっては全くふしぎに思うのですけれども、まだまだその補充捜査に時間がかかるのですか。まだこれからどのくらいこれはやるのですか。
  16. 津田實

    津田政府委員 先ほど申しましたように、捜査進展状況によるわけでございますので、具体的にいつの日ということは申し上げかねるわけでありますが、一応荒捜査を終わりまして問題点について検討をいたしたわけでありますので、そんなにあと長くかかるとは私は考えておりません。
  17. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 新潟県知事選の問題に対してはこれぐらいにいたしまして、次に、私は国士館大学学長暴行事件につきまして法務大臣お尋ねしたいと思うのです。  私は、国士館大学の校長の柴田徳次郎氏もよく知っている人ですし、実はこういう問題に触れたくないのですが、たまたま同大学関係の人から何度もいろいろ陳情がありまして、その内容調べますというと、実に黙認できない重大な要素を含んでいるわけなんです。この学校は、しかも多くの名士顧問になっている。岸信介さん、佐藤総理、それから福田大蔵大臣椎名外務大臣松野防衛庁長官、それから石井さんもやはり顧問をしておられる。顧問団の団長をしておられる。これは福岡の人ですからね。ずいぶんこの人は苦学力行した人で、いわゆるやり手な人であり、私はこの人の人となり、生涯を知っておりますから、一面において私はこの人はなかなか偉いところがあると思うのですが、しかし教育者としての態度において許すべからざる多くの問題がある。そこでお尋ねするのですが、石井さんはこの大学顧問をしておることは間違いないでしょう。
  18. 石井光次郎

    石井国務大臣 私が顧問ということになっているようでございますが、実はあそこの柴田君とは同郷の関係でございます。いつごろからか交友があるわけでございます。あの学校に関しまする関係におきまして、初めの時分は、何か行くと、顧問とは言わず、何かほかの名前を言うておったように思うのですが、また、あるとき行ったときは顧問、このごろは卒業式なんかに私呼ばれて、卒業生にあいさつを頼まれて行ってするというようなときに石井顧問というようなことを言うております。顧問という名前をつけることに相談を受けたこともなく、また書面でそれを頼まれたこともないのでありますが、別に私が、それならそう言われて、あれはおれは言われたけれどもそういうことをやってないぞと別に取り消したこともないわけで、黙認しているようなかっこうになっておりますが、私はあそこには、卒業式のような集まりの場合に行って生徒に演説をするというような場合に行く以外にほとんど何も行ったことのないものでございます。そういうときに、そう言われてそうでないと言うこともないと思いまして、まあ雅号みたいなつもりで、石井顧問と言われたら石井顧問であり、石井相談役と言われたら石井相談役で、平気でしゃべっておるというような関係でございます。
  19. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 この国士館大学に非常に奇怪な事件があるんですね。これは私は近いうちに内閣委員会において徹底的に追及したいと思っているのですが、ただ、ここでは刑事事件だけに限ってお尋ねしたいのですが、それは昭和三十九年の十月、国士館大学の校庭において、同校体育学部教授医学博士佐藤英夫氏が同校学長柴田徳次郎氏のためにステッキでなぐられ、くつでけられて全治二カ月の重傷を負わされた。佐藤教授はその現場から。パトカーに助けられて世田谷署に運ばれた。それで学長暴行罪で訴えているのです。それで世田谷署同校教授及びパトカー、警察官から状況を聞いて、柴田学長検察庁に書類送検した。現在、事件東京地検岸野検事の手によって取り調べ中となっているのですが、この事件は、事件が起きてから一年四カ月たっておる。それをまだ、話に聞くところによると、被告調べていないかもしれぬという。あるいは一回ぐらい調べたかもしれぬが、これはどうなっているのですか。こういう事件が一年四カ月たってもまだ片づかないなんて、これはもう純然たる現行犯ですよ。これはどうなっておりますか。これは刑事局長お尋ねします。
  20. 津田實

    津田政府委員 この事件は、昭和三十九年の十月に起こった事件でありますことはただいま申されたとおりであります。ただ、この事件告訴そのものは非常におくれておりまして、昨年の四月ようやく警察から検察庁に送付された事件になっております。その後、検察庁におきまして関係者取り調べをいたしておりますし、被告訴人取り調べもいたしております。ただ、この事件がそういうふうに事件が起こってから告訴があるまでかなりの日時がたっておることにつきましては、いろいろいきさつもあるようでございますし、本件被害者の傷害の内容等についてもいろいろ問題になる面があるようでありますので、現在その点につきましてさらに捜査をいたしております。  なお、御指摘のように、昨年四月送致を受けましてからすでに十カ月ぐらいになるわけでございますので、その点おくれておるという御批判はございましょうが、実はこれは御承知のとおり在宅の事件でありますし、昨年来東京地検におきましては、参議院選挙その他種々の相当大きな事件をやっておりまして、担当検事がそのほうに手をとられたというようなこともございまして、延びておるわけであります。この事件の延びておること自体につきましては、そういう意味におきまして、地検において申しわけないということを考えておりますが、おくれた事情は、ただいま申し上げましたように、参議院議員選挙その他の主要事件捜査当該検事が手をとられたということにおもな原因があるようでございます。ただし、ただいま申し上げましたとおり、関係者並びに被告訴人取り調べはもちろんいたしておりますが、なお取り調べるべきものがまだ相当数ある予定でございますので、その取り調べが終わり次第結論を出すことになると思っております。
  21. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 柴田学長取り調べましたか。取り調べておらぬじゃないですか。
  22. 津田實

    津田政府委員 取り調べております。
  23. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 何回調べましたか。
  24. 津田實

    津田政府委員 一回取り調べております。
  25. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 あなた、これは現行犯ですよ。ほんとうなら、普通の人なら留置して取り調べるのがあたりまえですよ。社会的地位があるから手かげんしたのでしょうが、パトカーで運ばれて全治二カ月の重傷を負うているのだから、普通の人間ならすぐ現行犯として留置されて調べられるでしょう。参議院選挙で忙しかったなんということは私は口実にならぬと思うんだ。司法権の権威なんてまるで地に落ちるじゃないか、こういうことをやっておったら。学長である、多くの名士と知っている、権力者である、権力者関係がある、こういうことで、明瞭な現行犯をほうっておくじゃないですか。教育者が人前でステッキでたたいたのですよ。人のいないところならまだしも、ということはないが、大ぜい百人もいる前でステッキでたたいた。学生の前で全く侮辱を加えている。学生の前で、いやしくも教授で医学博士号を持つ人をステッキでなぐるなんということはさたの限りです。教育者というものは全く子供の教育も何もできなくなってしまう。そういうふうなことをやっている現行犯をいままでほうっておく。しかも、警察のパトカーで運ばれたのですからね。そういうふうな怠慢な話が一体どこにあるか。検察庁態度は、参議院選挙があったとかなんとか言って、何だかんだ弁解をしておられますけれども、これは重大な問題ですよ。そんなことは理由にならないでしょう。しかもその間に証拠隠滅をして、学長はおれはなぐった覚えはない、あれは酒飲みだからどこか二階から落ちてけがをしたんだろうなんというふうなことを言って、長くなればだんだん証拠が隠滅されるし、それからひっかからないように弁解の方法も考えるわけですから、私は検察庁の怠慢は許すことができないと思うのですが、どうですか、刑事局長、その点につきまして。
  26. 津田實

    津田政府委員 この事件は、先ほど申しましたように、昭和三十九年十月の事件でございますが、その当時パトカーが来たということはあるわけでありますが、これは逮捕する必要があったかどうかということは、当該警察官の判断によることでございまして、検察官としては現場にいるわけではございませんから、その逮捕すべき理由があったかどうか、逮捕の必要性があったかどうかということは、もっぱら警察官の判断によることでございます。  そこで検察庁へこの事件が警察から、告訴事件でありますから送付をしてまいったのでありますが、それが昨年の四月十九日でありますが、すでに事件から六カ月近く経過しておるわけであります。そのように告訴事件当時から非常におくれたということにつきましては、いろいろ事情があるようでございますので、そこに問題がやはりあろうかと思うのであります。そういうような点もございますので、検察庁といたしましては、送付を受けてから後の取り調べを開始したわけでありまして、その後、先ほど申し上げましたように約十ヵ月を経過しておるということにつきましては、先ほど申しましたような事情がございますけれども検察庁の手に参りましたときにすでに六カ月を経過しておるということを御理解願いたいと思うのでございます。
  27. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 それでは、その当時は検察庁に対して、警察からそういう現行犯について全然連絡がなかったわけですか。
  28. 津田實

    津田政府委員 この種の暴行あるいは傷害事件というものは、東京管内におきましては毎日非常に多発しておるわけでありまして、とても一々報告はございませんし、また警察は、御承知のとおり独自の捜査権を持っておるわけでありますから、警察の判断で最初には処理をするわけであります。ただし、将来検察庁において事件処理上問題になるような事件は、発生と同時にもちろん検察庁報告がございますけれども、この種の事件と言っては悪うございますが、暴行あるいは傷害というような事件につきましては、通常は警察において第一次には処理をいたしておるわけでございます。
  29. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 とにかく二カ月もの重傷を負わされた事件を、これはどこでも起きておるからそういうものは一々検察庁報告しないなんて、そんなばかな話はないだろうと思うんだ。それではあなた、どうしてわれわれの人権が守られますか。それは手が不足だとかなんとかいういろいろな理由はあるだろうけれども、普通の暴行事件じゃないですよ。しかも、学長が教授を生徒の前でステッキでなぐって二カ月の重傷を負わしたなんという事件ですから、これは大事件ですよ。教育に悪影響を及ぼすこと、これくらい大きなものはないのです。そういう事件を、暴行事件はしょっちゅうあるから、こういうものは一々報告しないなんという、そんなばかな話が一体ありますか。それは警察のほうに聞いてみなければならぬと思いますが、きょう警察のほうは来ておられませんね。この次、いずれ私はこれは内閣委員会で提起したいと思っておりますから……。刑事局長、そんな話はないでしょう。あなた、こういう暴行事件を一々報告なんかするはずがないなんて、そんなことで国民の基本的人権が守られますか。そういうことを言っておれば、まるで暴力団の世の中になってしまうじゃないですか。どうなんですか、あなた、いまのいろいろな暴力団の事件のばっこに対しては、あまり多いので、もう手の出しようがない、こういう答弁じゃないですか、あなたの答弁は。
  30. 津田實

    津田政府委員 ただいまお尋ねのようなことを申しておるわけではございません。御承知のとおり、全国に多数の警察官が配置されておりますので、その警察官が日常刑事事件を取り扱うわけでございます。したがいまして、検察庁は警察から送致を受けたものにつきまして、その証拠を集め、これが起訴するに値するかどうかを判断し、起訴しあるいは不起訴にするということをする職責を持っておるわけであります。第一次の犯罪の捜査権は、いずれにいたしましても膨大な手足を持っておる警察官に属することでございます。御承知のとおり、戦前は司法警察職員は全部検事の指揮を受けることになっておりましたけれども、現在の司法警察職員は独立して捜査権を持っておるわけでございます。したがいまして、検察官と警察との間のつながりは、警察から送致してくることによって初めてつながりを生ずるわけでございまして、一々検察官が警察の捜査に介入することはただいま許されておりません。ただ、検察官捜査を始めたものについて警察に補助をさせることはできますけれども、警察が独自に捜査しておるものについて検察官が容喙することはいまの刑事訴訟法では認められておりませんので、これは戦前と非常に違っておるわけでございます。そういう意味におきまして、全国あるいは東京の周辺あるいは日常市井に起こる犯罪につきましては、一々検察庁報告のある性質のものではございませんし、また、検察官といたしまして警察官にさような報告を要求することは現在いたしておりませんし、また法のたてまえ上、これを要求することにはなっていないわけでございます。
  31. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 犯罪を防止する上からいっても、治安を維持する上からいっても、警察は迅速に検察庁に連絡することが、法律はどうなっていようとも、常識上あたりまえですよ。そうでなければ、われわれの人権が守られるかというと守られませんよ。そういうふうな関係になっておるから、戦前と違うからというようなことで、もう一年四カ月もたっている、しかも警察を通じて告発してきたのは、書類送検したのは去年ですか。そんなことで、あなた、犯罪の防止だとかそういうものが一体できますか。あなたの言うのは、法律的な理屈であって、あたりまえですよ。こういう現行犯は、警察から検察庁に迅速に連絡するのがあたりまえなんですよ。それは、法律の内容はこうなっておるということは理屈であって、現実に合わないですよ。あなた、どう考えますか。
  32. 津田實

    津田政府委員 検察官は全国にもちろん配置されておりますが、検察官の職責は、その法律家の本質から出てくる職責でありまして、先ほど申し上げました、証拠判断し、起訴価値があるかどうか、起訴した場合に有罪の判決が得られるかどうかということを判断する、こういう主たる職責を持っております。しかしながら、検察官といえども、もちろん捜査をすることができるのでありまして、警察が捜査をしないもの、あるいは警察が捜査をするのにいろいろ問題があるというようなものにつきまして、検察官が独自の捜査をいたしますことがしばしばあることは御承知のとおりでございますけれども、一般市井に起こりますところの主として暴力的事件につきましては、やはりこれは実力が必要でございますので、その実力を担当しておる警察が主たる任務を持っておる。ただし、暴力団の掃討等につきましては、これは検察庁と警察庁は十分協力いたしまして、いろいろな方面においてその知識を交換してやっておることは御承知のとおりでございますけれども、日常個々に起こる暴行事件というようなものにつきましては、警察官に第一次の捜査権を渡しておいて、それによってまとめたものを送致を受けるということにしないと、とても検察官としてさようなところまで手が伸びないわけです。全国に検事はわずか一千人ぐらいしかおりませんので、そういうものに一々各種の事件を聞き、あるいはそれについて警察に相談をさせるということは不可能なことでございます。そういう意味におきまして、警察が、将来法律問題があり、証拠の価値判断上問題があるという事件は、事件が起こりましたときに直ちに連絡をしてまいりますけれども、その他の事件につきましては、必ずしもさような体制になっていないわけでございます。
  33. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 いずれこれは警察のほうにいろいろお尋ねしなければならぬと思いますから、私、いずれ内閣委員会でもう一度この問題を政府当局にお尋ねしたいと思っておりますので、まあきょうはその問題についてはこのくらいにいたします。  さらに柴田学長というのは、いろいろ調べてみますと、暴行の常習犯なんですね。昭和三十八年六月十六日、国士館大学と日本体育大学との間に行なわれた水泳対抗競技大会においても同大学水泳部長、体育学部教授三隅一成氏を衆人環視の中でステッキでなぐっておるわけです。こういう事実がある。これは現に教授をやっている本人もはっきりそう言っているのです。うっかり何か言えばすぐ首にしちゃうのです。  なお、柴田学長の学生たちに対するビンタは日常茶飯事で、昭和三十九年九月一日、一学年生の約二千名を集めて行なわれた終業式の訓辞で一時間半訓辞をやったが、横を向いた学生を壇上に呼び出して、数十回にわたって顔面に平手打ちを食わしている。それから四十年十一月二十九日にも政経学部の学生を満堂の中でなぐっている、こういうことがもうたくさんあるわけです。柴田学長の学生に対するいろいろなやり方にはいろいろな問題があるわけです。そういう問題に対して、人権擁護委員会に訴えが出ているはずでありますが、この前、志賀委員がお尋ねしたときに、まだ調査中であるというふうな御答弁をしているようですけれども、その後調査しておりますか。
  34. 石井光次郎

    石井国務大臣 私はそれを承知しておりませんし、まだ関係の局長が来ておりませんから、後ほど御答弁申し上げます。
  35. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 こういういろいろな問題のある学校顧問に、石井法務大臣をはじめとして政府の当局者がなっているようなことは、これはおやめになったらどうですか。
  36. 石井光次郎

    石井国務大臣 さっき申しましたように、私は顧問を命ぜられたわけでもないものでありますから、雅号みたいなものですから、これはやめるもやめぬもないものですから、その心持ちでおります。
  37. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 それはやめるべきだと思いますが、最後に一点だけお尋ねして私の質問を終わります。  きょうの新聞を見ますと、中国の廖承志氏が社会党といろいろ意見交換のために日本に来るということが出ておりましたが、それに対して外務省が、どうせ廖承志氏が来れば、いろいろ政治問題に触れて内政干渉にわたるようなことをやるにきまっているから、入国を許さないつもりであるというふうなことが新聞やテレビに出ておりますけれども、これは石井法務大臣の管轄でありますが、法務大臣は、この問題につきましてどういうふうにお考えになっておりますか。
  38. 石井光次郎

    石井国務大臣 廖承志氏のことは新聞でただ承知しただけで、まだその話を正式にどこからも聞いておりません。また、外務省の意見というものも聞いておりませんが、そういうものが具体化しましたら、よく関係官庁と相談いたしまして、慎重にきめようと思います。
  39. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 渡航を許さない問題は私は非常に不当だと思います。ようやく中国問題が解決とはいかぬまでも、解決の方向に向かっていっている、貿易も伸展しているというふうなときに、そういうことは間違っていると思う。言論は自由ですから、それがたとえ多少政治問題に触れても内政干渉にはならぬと思いますが、あなたの考えはどうですか。入国させないなんというふうなことは間違いだと思いますが、あなたはどう思っておりますか。そう考えませんか。入国を許さぬつもりですか。まだ、そういうことははっきり考えておらぬのですか。
  40. 石井光次郎

    石井国務大臣 まだ何も考えておりませんが、昨年、南漢宸氏の一行の入国問題があったときに、私は内政干渉的な言動になるとか、あるいは日本と友好国との関係をそこなうような言動はされないで、おいでになったら、ほんとうに日本との友好関係をよくするという心持ちだけで滞在し、言動してもらいたい。そうでないと、その次からおいでになる方にはわれわれの取り扱いが非常に渋くなるかもわからないというおそれがある。そのとき二十三名でございましたか、一昨年は十五名許しておりましたが、今度は二十三名申し出がありましたときに、私は、この際は、私が初めて法務大臣になって、一名も値切らないで、全部許したわけです。そのかわり、いまのような心持ちで、ほんとうに日本との友好関係ということだけ考えて来ていただきたい。それを頭に入れていただくことをお願いするということを言っておったのでありましたが、結果はまことに残念な言動がありました。そういうことがございましたので、ことしは、いろいろな入国の場合に、中共のおえら方の場合でも、十分なお話し合いをしなければ、しっかりした了解といいますか、こちら側の腹もきまらないというような問題等もあり得るということなんです。それで、おいでになることはたいへんけっこうだ。いままでもずっとおいでになっておる方ですから、なるべくおいで願うことはけっこうだと言いたいところでありますけれども、そうここで簡単にけっこうでございますということは言えないというか、よく相談をいたしてという段階でございます。まだ考えておりません。
  41. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 それでは私は終わります。
  42. 井出一太郎

    ○井出主査 次に、栗原俊夫君。
  43. 栗原俊夫

    栗原分科員 ごく小さな問題のように見えますけれども、最近土地の所有権に対していろいろと制限が行なわれる。こういう制限に対して抵抗が起こっておるわけです。もちろん法律的に制限してくる、こういうことで、そういうあり方については十分理解しておるのですが、そういう中でも納得がいかないというような問題が地方でいろいろ起こっておりますので、幾つか問題を取り上げて、どういうぐあいに当局では考え、指導するのかということを明らかにしてもらいたい、こう思うわけです。  まず最初の問題は、昨日も第五分科会のほうでいろいろ論議しておったようでありますが、高圧電力線の問題と土地の問題であります。御承知のとおり、高圧線の下には建物は建てられないということになっておるようでありますが、そういうことによっていろいろ問題が発生するので、特に新しく高圧線を引こうということになりますと、いろいろと抵抗があります。私のところでは、そういう抵抗の中で東電が土地収用法を発動するというような問題が起こってきておるわけですが、問題は、収用法によって鉄塔を建てる、電柱を建てるところは収用できると思いますけれども、線を引く空中は一体どういうことになるのか、この問題をひとつ明らかにしてもらいたいわけです。もちろん、その線下を全部収用して買い取るなら、これは収用法の対象として話はわかるのですが、鉄塔を建てるところだけ収用しても、空中の線を引くところは一体どういう法的な立場に立つのか、どうも私にもわからぬのです。空中収用法というのはまだ聞いたこともありませんし、一体これはどういうことになるのか。この点を、これは企業局長のほうですか、どなたが説明してくれるのですか。
  44. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 ただいまお話しのようなケースがだんだんと多くなってくるのではないかと思うのでございますが、御承知のように、土地の所有権というものは、地上と地下に及んでおります。したがいまして、空中を利用いたします場合にも、これは土地の所有権を利用するというのが原則でございます。ただ、いまお話しのように、鉄塔を建てます場合には、地面を利用いたしますので、これは収用とかあるいは賃貸借、あるいはまた地上権の設定ということで、そこの部分は解決いたすわけでありますけれども、架線の通っております空中部分だけをどうするかということになりますと、これはその土地の所有権を電気事業者が取得して、その上に高圧線を通せば問題ないわけでございます。  ところが、必ずしも土地そのものを利用するわけではございませんので、そこに実は問題が出てくるわけでございます。この場合に、架線の通ります下の土地の所有者と電気事業者の話し合いによりまして、その部分について、これはやはり所有権の一種の制限になりますので、土地の賃貸借をやったり、あるいは地上権を設定したり、地役権を設定するということで、その利用の対価を電気事業者が払って、高圧線を通すということになっておるのではないかと私は思うのであります。  実際これを担当しておりますのは通産省でございますので、そちらのほうでお答えになるのが相当であろうと思いますけれども、法律的に申し上げますと、そのように土地の利用からまず始まっていく。したがって、その土地の利用関係について所有者と電気事業者の間の話し合いがなされるのが相当であろうと考えております。
  45. 栗原俊夫

    栗原分科員 お話はよくわかっておるんです。問題は、架線の下の土地の所有者と架線をしようとする事業体との間で話し合いがつけば問題はないわけです。話し合いがつかない場合に、なおかつ通ろうとする方法があるのかないのか。もちろん抵抗を考えて、土地収用法を適用する事業体ということに電力会社はなっておるわけですが、さて土地収用法だけで、いまいう鉄塔を建てる、電柱を建てるところは収用できる。また架線をする下を全部収用するのならまだ話はわかるけれども、架線の下を収用せずして、なおかつ架線が可能な法的な方法があるのかないのか。ここのところが問題なんです。
  46. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 空中部分だけを収用するということは、これは現在の法制上は不可能であろうと私は思います。そうは申しますものの、まさに、いまおっしゃいますように、電機事業者の立場になりますれば、その空中部分だけあれば用を足すわけであります。この点が法律上の欠陥と申しますか、足りない点ではなかろうかと思っております。  そこで、これはちょっと先ばしったことを申し上げるようでございますが、実は私のほうで、現在法律の改正を準備中でございます。まさに、いまおっしゃいました例が適例ではないかと思うのでございますが、地面を使わないで、単に空中の部分だけを使う場合とか、あるいは地下の一定部分だけを使うという必要がだんだん生じてくるわけでございます。そこで、それに対処いたしますために、現在の地上権の制度を改めまして、空中の一定部分についてだけ地上権を設定する、あるいは地下の一定部分についてだけ地上権を設定するというふうにいたしますれば、いまの問題は解消するわけでございます。そのような方向で、現在私のほうで法律の改正を検討いたしておりますということを申し上げておきます。
  47. 栗原俊夫

    栗原分科員 企業局の次長も見えておるようでありますが、ただいま民事局長のほうから、地上権そのものを現時点で持たずに空中を占用するということは法的に問題がある、こういうようなことで、これから新規は高圧線等を引く場合には、そういう観点に立っていろいろと折衝が続けられていくと思うのですが、現に引かれておる高圧線について、新しい線を引くところでいろいろと問題が発生したのを契機にして、線下補償という問題がいろいろと起こりだしてきておるわけです。こうなると、端的に言えば、おれは別に地上権を与えてもおらぬ、それだのにおれの土地の上空を高圧線が通っておる、そのためにその下は建築制限を受けて、したがって、土地の売買もできないし、また自分の建物も建てられない、あれはひとつ撤去してもらおうではないかというような、これは勇ましい議論と思うのですが、議論も出てくる。こういうものに対してどのような指導をしていかれようとするか、また、法的にはどう考えるべきか。平穏にして公然と十年二十年ちゃんと引いてあったのだから、そういう権利を取得したのだという議論もできましょうが、それではその年限に達しない部分は一体どうなるのだ、いろいろ議論が錯綜し始まっておるわけですが、これらについてどのような御所見か、ひとつお伺いいたしたい、このように思います。
  48. 藤波恒雄

    ○藤波説明員 お答え申し上げます。  ただいまのお話のとおり、たいへんむずかしい、問題でございますが、既存の送電線につきましても、それを建設する当時におきまして、それぞれ、債権契約とか、あるいは地上権の設定とか、あるいは口頭による契約とかということによりまして、地元のその土地の所有者の了解を得た上で建設されたものでございまして、それぞれ相応の補償を要する場合にはその補償をした上で建設されているというものでございますので、その後特段の状況の変化がない限りにおきましては、あらためてその補償ということは出てまいらないかと思いますけれども、非常に状況が変わって、どうしても下に家を建てなければならぬといったような場合が出てきたような場合におきましては、ケース・バイ・ケースにその当事者同士で話し合いをつけてもらう、こういうぐあいに現在やっておるわけでございます。
  49. 栗原俊夫

    栗原分科員 きわめて常識的なお話なので、常識的に行っているときは決して問題ないのですよ。問題は、ほんとうに角突き合わせた場合にどうなるかということ。私たちもそれを心配しながら相談にも応じるわけなのですが、ただいまおっしゃるとおり、確かに現実に引けておるのは当時話し合いか何かがあったからこそ引けたのだ、こういうことは想像できますが、さて、当時の話し合いなるものが、いわゆるごあいさつ程度であったのか、あるいはきっちりと書類をつくって契約をかわして、永代一時金、この金で空中を占有することを契約してあるというようなところまでいっておるのか、この辺はきわめて不明確です。もちろん、事業主体である電力会社は万抜かりない書類をおそらく取っておるのだろうとは思うのですけれども、さて具体的にどうだ、こういうぐあいに開き直ってこられたときに、もしも、そうではないんだ、このとおりというものを持っていないと、これは問題が発生する余地があると思うのです。こういう点について、いままで線は張ってあるのだ、しかも了解があるから張れたのだと、かりに手元にどのような書証も何もなくても、現にあること自体がそういうことを立証しているのではないかというようなことで言いのがれ切れるのかどうか、このあたりはどういうぐあいにお考えですか。
  50. 藤波恒雄

    ○藤波説明員 お話のように、過去のものにつきましては、その契約の方法がいろいろありまして、中には、はっきりした登記までするような権利の設定をしてないところもあるわけでございます。そういうところは主として山林原野等でありまして、線下の利用、土地の収用を妨げる度合いがきわめて少ない場所にそういうところが多いのであるわけでございますが、最近、都市周辺等におきましては、過去に施設いたしました送電線の線下におきましても、いろいろ宅地造成化してくるというような部分につきましては、現に事情が著しく変わってきておると認めざるを得ない部分もできてきておるわけでございまして、これらにつきましては、電力事業者におきましても、その事情を考慮いたしまして、逐次その土地の所有者と協議して新たなる権利の設定をやり、それに伴う対価を支払うというようなことを行なっておるような現状でございます。
  51. 栗原俊夫

    栗原分科員 これは、具体的な問題を持ち込まなければ、ケース・バイ・ケースと、こうおっしゃるし、また私もそう思いますので、煮詰まりませんが、一ついま非常に困っておるのは、実は私は群馬県ですが、東邦亜鉛がマイロンという新しいものをつくるということで工場を設定したわけなのです。ところが、東電がどうしてもそこへ電気を送らなければならぬということで電気の路線を設定しなければならぬ。ところが、ある部落が絶対反対ということで抵抗を試みて、ついに土地収用を行なう事業認定を出して土地収用にかかってきたわけなのです。ところが、その抵抗の中心になる者が法律をかじっておるものですから、いま言うような論議で、空中収用はできないという議論を始めて、なかなか難航をしておるわけです。先ほど民事局長はいろいろと、所有権に対して法律によって制限することができるという根拠に基づいて、地上権といいますか、地下権といいますか、空中権といいますか、土地に対するいろいろな権利を分離した中で新たな一つの制度を考えておるようでありますが、やはり、空中に架線されるということは、線下の一番重大な建物を建設する権利を制限されるということで、これは、軌道の場合は、確かに地上に軌道を敷設するのですから土地そのものを収用していくわけですけれども、空中架線であっても、土地所有の内容として大きな建物を建てるというような権限を完全に排除されるという制限を持つ高圧線の布設というようなもの等については、実際から言えば、線下を土地収用をして、そしてかけるものはかけるということがより合理的なように思いますが、いま民事局長のお話のように、空中だけを特別占有するという土地収用にも似たような空中強制収用権とでもいうようなものができてくると、これはなかなか容易ならない問題だと思うのですけれども、この辺はどんなぐあいになっていくものでしょうね。なかなかこれは私にもよくわかりません。わかりませんが、確かに空中の制限というものはたへんであり、現に、こういう問題のほかにも、東京都内あたりでも、先般できた電波法の改正で、マイクロの通るところは、永久的ではありませんけれども、マイクロが適当な位置に去るという一つの譲歩の条件はついておりますけれども、高層建物を建てるのを待てというような制限とか、いろいろあるわけなんです。そこで、一体こういう形でほんとうに抵抗されたら、制度が改正される前は電線というものは具体的に引けないのかどうか、こういう点についてはどうなんでしょう。いまの制度下で徹底的に抵抗されると、土地収用法で土地までは収用できるけれども、土地を買わない限りは、単に空中はとても引き切れないのだという実態なんですか。この点はどうでしょうか。
  52. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 空中のみを使用する必要がある場合におきましても、これはやはり現行の制度から申しますれば土地所有権の利用の一つの形態であろうと思います。したがいまして、現在の法制のもとにおきましては、収用で空中を使用しょうという場合には、土地そのものを収用いたしませんと、地上の利用権が発生いたしませんので、現行法のもとにおきましては、やはり土地を収用するほかはないと思います。  私、先ほど申し上げましたのは、収用というところまではまだ考えておりません。これは民法の問題でございますので、話し合いによりまして、地上権、従来の地表を利用する意味におきまするこの地上権のほかに、さらにその上に空中部分だけの地上権が設定されてしかるべきじゃないか。これは新しく空中の利用権を取得する人と地上権者あるいは所有権者との話し合いによるわけでございますが、民法の中に取り込む制度といたしましては、収用ということとは別問題といたしまして、一応話し合いによってそういう地上権を設定できるようにしたらいかがなものかというふうに考えております。
  53. 栗原俊夫

    栗原分科員 技術長に申し上げますが、ただいま民事局長からお話がありましたとおり、確かに、電気事業は公益事業で、土地収用法を適用されておる事業体ではありますけれども、だからといって、公共性を振り回して、そうして一般の大衆の土地所有権というものの上にのしかかる、こういうことはやはりきびしくいましめねばならない、このように思うわけです。したがって、こういうことにつきましては、問題はおそらく絶対反対というのと条件反対というのと二つが出てくるわけなんです。幾ら金を出しても通さぬぞという場面があります。しかし、そんな金では通さぬぞという場面もあります。こういうところを十分間違いのない指導をしていただきたいということが一点と、いま一つは、既設のものについても、もうすでに引いてあるのだ、現に架線はしてあるのだということの上にあまりにあぐらをかいておると、なかなか容易ならない問題が起こりますから、こうした機会をとらえて、この時点においてしかるべく納得のいく配慮というものはやはり必要だということを警告し、指導していただきたい、このように思いますが、御所見を承っておきたいと思います。
  54. 藤波恒雄

    ○藤波説明員 御承知のように、電気事業者は、その事業を遂行する上には、どこかの土地の上に送電線をつくらしてもらわなければ事業は遂行できないということでありますが、お話のとおり、その解決をするにあたりましては、やはり、あくまで話し合いを尽くして行なうということが第一であろうと考えておりますので、御指摘の点、よく念頭に入れまして、関係業者を指導していきたいと考えております。
  55. 栗原俊夫

    栗原分科員 問題をほかへかえますが、総理府の経済企画庁で国土調査というものを行ないました。国土調査の中で、特に河川沿岸については区画が不分明になる。こういうことで、調査の結果は、公図の上では区画が不分明であり、したがって、白地図という姿で公図ができる、こういう形になっておるわけです。登記簿のほうでは、そういう姿ですから登記閉鎖になっておる。しかし、これは、所有権の存在することは認めておるけれども、区画が不分明だ、したがって、地番ごとの区画を明らかにした抄本は出せない、謄本は出せない、こういう姿になっておるわけです。したがって、個人としては、持っておることは持っておるのだけれども、その土地を売買の対象にするとか、その他抵当権の設定とか、そういういろいろな権利行使をすることができない。こういうのが今日の実態なのですが、このように、所有権がその地域にあることは明らかであり、その面積も明らかであるが、ただし区画がわからない。こういうものについて今後どういう取り扱いをなさっていこうとしておるのか、この点について御所見があったらお伺いいたしたい、このように思います。
  56. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 所有権の区画が明確でないとか、あるいはまたその面積がはっきりしないとかいうことでございますと、登記所のほうではちょっと手の打ちようがございません。御承知のように、登記所で登記いたします際には、所有者のほうから申請がございまして、かくかくの土地が自分の土地である、面積も境界もはっきりいたしたものを申請してくるわけでございます。登記所のほうでは特に積極的にこの土地はだれの土地であるとかいうことを認定して登記する権限はございませんので、これはやはりその権利者のほうでこの土地は自分の土地であるということを確定いたしませんと、登記所のほうでは動きようがないというふうなことになっております。
  57. 栗原俊夫

    栗原分科員 お話はよくわかるのでありますが、国土調査をやって、現状を確認するということで現状確認をした。その結果が、区画が分明でない。しかし、従来の登記簿には地番、地積があって、その境界というものが明らかでない。こういう姿なんですが、じゃこれをこのままほっておいていいかというと、そうもいかないと思うのです。何とか所有権を持っておる者が所有権を所有権として行使できるような状態に持っていくにはどうしたらいいか、こういう一つの指導がなくてはならない、このように思うのです。私は、白地図になったところは、区画は不分明ではあるが、そこにだれそれの所有地はある、その地番は何番であり、面積は幾らだ、こういうことが明らかである以上は、何とかできないものであろうか。白地図になっておるようなところは、もう率直に言えば、姿は荒れ地であり、河川状況になっておるところでしょう。だからといって、これはなくなったものでなくて、現にそこにものはある。こういうところでありますから、本来的にはやはり国が買い上げて河川敷に編入するのが一番いいとは思うのですが、こういう議論を建設委員会等でいたしますと、金がかかってとてもやりきれぬ、こういう話をしております。私は、金がかかるのではなくて、河川債でも出せば、これは何もすぐ現金を出さなくてもいいではないかというような話もするのですが、そういうことができないならば、やはり大きな区画にでも分けて共有地的な姿にでもして、何とかその所有権というものを生きた姿にしてやらなければなるまい、こう思うのですが、所有者がみずから自発的に何とかするまで黙って指導もなしにじっと待っておるのは、政治としてはいささか怠りである、怠慢である、こう思うのですが、何か特に積極的な御所見等はございませんか。
  58. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 ただいま申し上げましたように、登記所の立場といたしますと、確定した土地というものがございまして、その土地の所有者がかくかくの土地が自分のものだということを特定してまいりませんと、登記所の権限としてはそれ以上のことはできないわけでございます。一般論といたしまして、ただいまお話しのように、従来の登記簿には、一応形としては面積も地番もはっきりしておるのだけれども、新しく行なった国土調査の結果によるとどこにあるかわからないというふうなことになってまいりますと、ともかく従来その特定の人が一定の土地を持っておったということは一応登記簿面からうかがえるわけでございますので、新しく国土調査をいたしましたその地域の中で、明白にどこそこの土地はだれが持っておるということがはっきりいたしておりますところを基点にするとか、あるいは道路とか池沼とか、そういった特定のものを目安にいたしまして、その点からいま不明確になっておりますものの所有地がどこにあるということをきめていくと、これがむろん所有者一人だけの措置できまるものじゃございませんので、隣地の所有者の協議も必要でございましょうし、そういう手順を踏みましてこれが間違いなく自分のものであるということが証明できますれば、これは登記所のほうは受け入れることは可能でございますが、登記所のほうから、ここがだれそれの土地であるぞ、またここはだれそれの土地であるぞということを積極的にきめてまいるわけにはちょっとまいらないわけでございます。
  59. 栗原俊夫

    栗原分科員 国務大臣としての石井法務大臣お尋ねするわけですが、いまお聞きのとおり、国土調査で現状を確認するという調査が国土調査法によって行なわれておるわけです。しかし、この法律が、言うならば点睛を欠くというか、現状調査がそうした白地図になるところばかりやるわけではありませんから、点睛を欠くとまでは言えないかもしれませんけれども、白地図が出るということを一応予想するにしてはちょっと舌足らずの法律のような気がするのです。白地図のような場面が出た場合にあとどうするんだということについての制度的な取りきめが国土調査法の中にはうたってありません。しかし、調査をして、もちろんこの調査が全般的に行なわれておるわけではありませんけれども、現に、主として調査をするところはいろいろと現時点で明確にしなければならぬ場所ということになると、そこからは白地図地帯というものがかなり出てくる。河川沿岸地帯というものが調査の対象にあげられておる。そして白地図が現に出てきておる。その白地図は、所有権があるということはわかるけれども、どこがそれだか、おれのものだかわからない。個人のものだかわからない。こういう権利があるけれども、その権利は浮いてしまったというような形になっておるわけなんです。これをどう処理していくかということについて、国土調査をやったあとのアフターケアといいますか、事後処理についての何らか積極的に指導する立法なり制度の必要性を感ずるのですが、大臣としてはどんな御所見でございますか。
  60. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまのお話を承って、まことにもっともな問題点だと思うのであります。法務省の問題ではないと思いますけれども、これは国務大臣としてお聞きいたしたいということでありますから、お聞きして、何とかしなければならぬ問題だというばくたる感じがするわけでございます。これはひとつよく関係者相談いたします。
  61. 栗原俊夫

    栗原分科員 お答えいただきまして、直接法務大臣としてはその所管内ではないかもしれませんが、たまたまお聞き及んだ国務大臣の一人として、何とか、やはり国民の権利を守る、こういう立場に立って積極的な御推進を願いたい、このように思います。  さて、次にやはり権利問題なんですが、昨年新しい河川法ができまして、従来の河川の付近地というものが保全区域という形に変わりまして、そうして、保全区域は、ちょうど先ほどの線下のように、河川管理上の建物制限という制限を受けておるわけであります。もちろん、堤防の中、川のほうは、なかなかこれは建てられない場合もあるかもしれませんが、堤防を守るという意味で、堤防から五十メートル以内は建てられない、こういうような制限が出てまいりました。もちろん、こういう制限は当然ではあると思いますけれども、言うならば、そこに土地を持つ特定人が所有権の制限を受ける、こういうことになるわけです。東京都内全般に所有地の建蔽率は幾らだということは、東京都内お互いが全部ひとしく受ける制限ですから、これは無償でそういう制限があっていいと思いますけれども、この河川の保全区域に入ったものは、これは特定人の特定所有地が全般の利益のために制限を受ける。これが実は無償で制限を受けておる。はたしてこういうことでいいのかどうかという議論なんですが、特定人が特定の土地について一般人のために制限を受ける。公共のためだから制限を受けることはやむを得ないけれども、しかし、それが無償でいいかどうかということについて、これはどなたにお聞きしたらいいか、国民の権利を守る立場にある民事局長にひとつお答えを願いますかな。
  62. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 たいへんむずかしい御質問でございまして、私も自信をもってどうだということを申し上げかねますが、東京都内で一般的に公共の福祉のために土地の利用制限を受ける場合と、いまお話しのような保全区域というのでございますか、河川とその周辺の土地を守るために一定の地域をそういうふうに所有権の使用を制限していくということと、私は同じじゃないかという感じがいたします。と申しますのは、その河川の流域を守るために特定の者が持っておる特定の土地、こういう御意見でございますけれども、特定の者が持っておる特定の土地ということになりますと、都内の特定の土地を特定の者が持っておる場合と同じではないかという感じがするわけでございます。ただ、その権利を制限する趣旨がどの辺にあるかによって、これは違いが出てくるとすれば出てくるのでございまして、制限を受けることにおいてはいずれも同じではあるまいか。これは公共の福祉のためにそういう制限を受けるのだとすれば、特段に区別する理由がちょっと見出せないような感じがするわけでございます。自信はございませんが、そのように思います。
  63. 栗原俊夫

    栗原分科員 どうも民事局長と私とは意見が違うのですが、一方は、東京都内に住んでおる人がすべてその土地に制限を受ける。ところが、河川の場合は、堤防に五十メートル近づいたところにある者が制限を受ける、その他の者は制限を受けない、こういうことになると、そこにあるがゆえに、しかもそこにある制限は、その他全般の利益のために制限を受ける、こういうことになると、特定の制限ということになると私は考えるんですよ。もし局長のようなお考え方ならば、では、川の近所にあるならば全部それは制限したらいいじゃないか、こういうことになるのだけれども、五十メートルの中にあるがゆえに制限を受ける、しかもそれは、その土地を守るためではなくて、その堤防によって守られる全部のために制限を受ける、こういうことになるから、そうした特定の人が特定の地域に土地を持っておる、そのために制限を受けるというものは、これはどうもただで制限するのは行き過ぎではないか、このように私は考える。金額の多寡は別ですよ。趣旨から言えば、これはやはり制限料というものを支払ってしかるべきだ、こう思うのですけれども、いま一度ひとつ御所見を……。
  64. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 栗原先住の御意見は、河川の流域に持っておる特定の者の特定の土地が制限を受けるという観点からごらんになっておられると思います。私は、むしろそうではなくて、五十メートル以内の地域にある土地は、その土地を特定しなくても、その五十メートル以内の土地は全部制限を受ける、こういうふうになっているのじゃないかと思いますが、そうだといたしますと、東京都内の土地全般が制限を受けると同様に、五十メートル以内の土地はだれが持ってる土地であっても同じような制限を受けるのではないかと思うのであります。そういたしますと、これはやはり特定の者の持っておる特定の土地についての制限ではございませんで、一般的な制限だというふうに観念すべきではないかと思うわけであります。
  65. 栗原俊夫

    栗原分科員 この議論はいずれあらためてすることにいたします。  最後にいま一点。きょう厚生省から援護局長さん見えておりますか。——これもやはり権利問題なんですが、戦争未亡人の扶助料の問題です。法律婚をしておる戦争未亡人は当然扶助料を受けるはっきりした根拠があるわけですが、たまたま内縁関係にある、事実婚関係にあるというものも給与を受けることができる、こういうことになっておると思うのですが、そのことは、今度は同じやいばが返す刀で、戦争未亡人で再婚した者は当然給与が切れる、しかし、そればかりでなくて、内妻関係、事実婚関係にある者もやはり給与が切られる、こういうことになるのですか。この辺はどうなんですか。
  66. 実本博次

    ○実本政府委員 お尋ねの事実婚関係のあります妻につきましては、やはりそういう事態が発生いたしました場合には失権事由にいたしております。
  67. 栗原俊夫

    栗原分科員 給与を受ける場合の内妻関係、事実婚関係というものはどういう形で立証するのですか。
  68. 実本博次

    ○実本政府委員 本人の届け出なりその他受給権調査によりましてその事実をこちらで確認する、これによりまして権利を与える、こういうことになっております。
  69. 栗原俊夫

    栗原分科員 給与を受けるときの権利の主張は、もちろん本人が、私は法律的には届け出はありませんけれども実際に内妻関係にあります、あるいは事実婚関係にあります、また、その主張に基づいて客観的ないろいろな資料が整えられる、こういうことだろうと思うのですが、さて、今度は切るほうの場合ですね。切るほうの場合に、もちろん本人が、私は内妻関係ができましたから、事実婚関係ができましたから、いままでいただいておりましたけれどももう要りませんよと言えば、これは文句はないと思うのですよ。本人がそういうことを言わないのに、そして、むしろ消極的というか否定的であるのに、なおかつ切ることができるか、もし本人が否定しておるのに切ることができる場合の立証はどういう立証の方法で切れるのか、こういう点をひとつ御説明願いたいと思います。
  70. 実本博次

    ○実本政府委員 支給しております遺族年金等を停止あるいは失権させます場合につきまして、まず、失権の場合は、もちろん婚姻の解消ということが失権事由になっておりますが、それをどうやって確認するか、失権する措置としてどういうふうな調査をし、どういうふうに行なうかというお尋ねの趣旨と思いますが、まず、失権事由に該当すると思えば、本人から届け出てもらって、そして証書を返還していただくということは法律には書いてございますが、そういった本人からの働きかけのない場合にどうやって整理するかというお尋ねの趣旨でございますが、届け出その他返還が出てまいりません場合につきまして、厚生大臣のほうで法律上定められております受給権調査というものを行なっております。これは大体定期的に行なっておるわけでございますが、その受給権調査を行なうことができるわけであります。そのやり方といたしましては、まずその人の身分関係等につきましての必要な書類の提出をお願いする。その場合に提出していただけない場合は、これは罰則はございませんですが、その身分関係が明らかになりません間は支給の一時差しとめをする、これも法律上そういう措置が許されております。そういった経過で書類が出てまいりました際には、この書類と申しますのは大体戸籍関係の書類あるいは住民票の謄本等の書類をいただくわけでございますが、それをいただきまして、それからその書面審査を行ないます。その書面審査をしました結果事実婚関係に入っているということがわかります場合、たとえば住民票調査には、項目の中に世帯主であるとか、ない場合には世帯主との続柄というふうな項目がございますから、そういったところに、これは事実婚関係に入っているというふうな疑いが出てまいりました場合には、さらにその事実を調査いたしまして、そしてこれによりまして事実婚の事実を確認いたしましたときに初めてそこで失権措置を行なう、こういうことになっておるわけでございます。
  71. 栗原俊夫

    栗原分科員 これは、本人が内縁関係にあるとか事実婚関係にあるということを主張しない限り、法的手続がないのをおまえは夫婦だと言うのは、これはなかなかむずかしいと思うのです。これは、ほんとうに争っていくと、おそらく本人がそうでないと言う限り、夫婦だということは立証できぬと私は思うのですけれども、この辺はどうなんですか。
  72. 実本博次

    ○実本政府委員 御意見のように、非常にむずかしい問題でございます。あまり強制的にやることにはいろいろな問題がございますので、われわれのほうといたしましては、先ほど申し上げましたように、やはり事前に書面審査その他事実上の調査をやる。この辺の都会地におきますとその点がよけい困難なことでございますが、地方のほうのあまり人口過密でないような場所に参りますと、大体地元の民生委員さんとか、古くから住んでおられる人たちの御意見なり、事実聞き込みによってそういった同棲関係なりなんなりはわかるわけでございますが、そういった事実確認につきましては慎重に、念を入れてやらしておるわけでございます。  これは御承知かと思いますが、そういった確認をいたしました上で失権措置をやりました場合に、救済関係は例の不服審査の請求があり、あるいはさらには司法上の裁判所へ持っていけるというふうな救済措置はもちろんございますのですが、やります場合にはとことんまで事実の確認をいたしましてやる、こういうことになっておるわけでございます。
  73. 栗原俊夫

    栗原分科員 これはなかなか問題を生む案件だと思います。したがって、本人に利益がある場合にはできるだけ解釈をゆるやかにする、本人に不利益な場合には峻厳にするという方法をとるべきだと思うのですよ。したがって、法律上届け出がない男女の二人を客観的な状況から見て夫婦だときめつけることは、法廷で争ったらとてもそれは夫婦だと言うほうが勝ち切れないだろうと思うのですよ、この問題は。だから、たとえ一緒に住んでいなくても、遠くへ離れておっても入籍しておる者は妻として扱っておりますが、一つの屋根の下におっても、子供ができたって、おれは夫婦じゃないと言うかもわかりませんからね、実際言って。だから、こういう点はひとつ非常にデリケートな問題でありますから、そうべらぼうに困難な問題がたくさん出てくるとは思いませんけれども、十分思いやりのある、あたたかい処遇をしていただきたい、このように思います。  以上、要望を述べて、時間も来たようでありますので、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  74. 井出一太郎

    ○井出主査 次に、田中武夫君。
  75. 田中武夫

    田中(武)分科員 法務大臣に会社更生法を中心として若干の質問をいたしたいと思います。実は、先日の予算の一般質問で中小企業倒産を中心にして質問をいたしまして、そのときに会社更生法に触れるつもりでおりましたのが、時間の関係で触れられなかったので、きょうこの分科会で御質問いたしたいと思います。  会社更生法が、昨年山陽特殊鋼の倒産あるいはその前にサンウェーブとか東発の倒産等で大きくクローズアップしてまいりまして、結局は会社更生法は親を助けて子を殺す法律である、こういうことでだいぶん世論もわきまして、委員会においても、予算でもあるいは商工、大蔵でも取り上げられた問題であります。そのときに、当時の閣僚は、改正を検討いたします、こういうことでございまして、現にいま法制審議会の会社更生法特別部会でそれが検討せられておるやに承っておりますが、法制審議会に対して法務大臣として会社更生法に対して改正の必要ありやという諮問を出されて、そういう特別部会が持たれたのでございますが、まずそうではなかろうかと思うのですが、その辺のいきさつをひとつお伺いをいたします。
  76. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまお話しのように、近年会社がいろんな問題で破産に瀕するような状態で、ただしこれは、力を入れてやれば更生する見込みありというものは会社更生法によるということになっておるわけでございます。しかし、会社更生法を適用してみると、いろいろな点においてもう少し改めるべきじゃないかという点が各条項に出てくるのでございます。それで、これの研究をしておる者あるいはまた実際に当たっておる者からこれの改正の意見が出、法務省におきましても、その必要を感じまして、法制審議会の議にかけて、そうしてこれの改正の案をひとつ練ってもらおう。これは、必要ありやいなやというよりも、必要あると思うが、こういういろいろな項目について御研究願って、なるべく早い機会に御答申をわずらわしたいというような、積極的な意味をもってお願いしておるわけでございます。
  77. 田中武夫

    田中(武)分科員 先日第一回の会合が持たれたようでありますが、法制審議会に対して法務大臣が諮問をした場合に、単に抽象的に、会社更生法を改正する必要ありと認めるがいかんという態度なのか、会社更生法中、この点、この点、この点についてどうかというように具体的に出されたのか、その内容を明らかにしていただきたいと思います。
  78. 石井光次郎

    石井国務大臣 諮問の要旨といたしましては、さっき申しましたような趣旨で、「会社更生法運用の実情にかんがみ、早急に同法を改正する必要があると思われるが、その要綱を示されたい。」ということを出しました。そうして、こういう二枚にわたりますいろいろな問題点、こういう点はどうであろうか、こういう点はどうであろうかということを考えて、そういうものを主として、そのほかでもお考え願えればけっこうであるが、少なくもこういう点は一応お考え願いたいというので出しておるわけでございます。
  79. 田中武夫

    田中(武)分科員 その具体的な内容、全部でなくてもいいが、おもな点を……。
  80. 石井光次郎

    石井国務大臣 おもな点は、「会社更生法の適用範囲」といたしまして、たとえば、「株式会社のうち一定規模または一定業種の会社にのみ適用すべきか。」とか、あるいは「株式会社以外の会社にも適用するものとすべきか。」、あるいは「中小会社については簡易な更生手続を設けるべきか。」というような、一つの適用範囲の問題がまずありまして、それから、次は、裁判所の補助機関として、更生手続に関しまして裁判所だけではどうもいろいろやるのには少し無理じゃないか、これには各方面からの援助を得た補助機関を設ける必要があるのではないかというので、これには相当力を入れて考えていただきたいと思っておるのでございます。それから、保全処分の問題といたしまして、「下請企業の有する債権等の弁済を禁止してはならないものとすべきか。」というような問題、それから、更生債権、更生担保権及び共益債権等につきましていろいろな項目をあげておるのでございますが、たとえば、「次の債権について法律上特別の扱いをすべきか。」というので、ここにおもな問題、これが一番中心なものだと思うのでありますが、「手続開始前六月分をこえる給料」、第二に「社内預金」、第三に「退職金」、第四に「電気、ガス、水道、電話および通運等の独占企業の有する債権」、第五に「下請企業の有する債権」、第六に「小額債権」、第七に「申立後開始決定までの借入金」等のものを特別扱いをするかどうかというような問題というものが中心でございます。その他いろいろございます。
  81. 田中武夫

    田中(武)分科員 昨年の通常国会に社会党が会社更生法の改正案を提案いたしました。その内容は御承知と思いますが、法制審議会に諮問をせられるにあたって、われわれ野党の改正案をどの程度参考にせられたか、あるいは全然そんなものは考えていない、こういうような態度でやられたのか、お伺いいたします。
  82. 石井光次郎

    石井国務大臣 この前の通常国会のときに、四十八国会でしたかに、社会党からお出しいただきました、たいへん参考になる問題がたくさんあるのでございます。その内容はあなたのほうのことですから申し上げませんが、それらのいろいろな問題が今度の審議会におきましても十分審議検討の資料になると思いまして、それを出してあります。そして、そういうものも十分検討の中に入れてやるということでお願いしておるわけであります。
  83. 田中武夫

    田中(武)分科員 われわれが改正案を出しまして、それは一応継続審議になったのだが、年末の臨時国会で審議未了になったと思うのです。そこで、われわれはもう一度出したいと思っておるのですが、現に政府のほうで法制審議会に諮問し、会社更生法特別部会ができて、そこで協議をしているといいますか、答申を急いでおるというならば、その推移を見てもいい。こう考えておりますので、そこでわれわれの意見の二、三につきまして、法務大臣の御意見を伺いたい。あるいは法務大臣は、現に諮問をしたのだから、あとは法制審議会の特別部会にまかしておるのだから、ここで意見を述べることはできぬ、こういうことであるのかどうか。もしそうであるとするならば、また違った方面の質問をしなければいけないのですが、まず第一点といたしましては、会社更生法適用で一番そのしわ寄せを受けるのは、そこに働いておる労働者、さらにその下請企業あるいは無担保債権者、それらに働く労務者です。そこで、会社更生手続開始申請がなされる際には、大きな商社あるいは主力銀行等は相談にあずかるといいますか、むしろ商社なり主力銀行等の意見によって会社更生法適用申請に持っていくのが多いのであります。しかし、いま申しましたような労働者とか無担保債権者、下請企業、こういうのは会社更生手続開始申請が現実になされてから後でないとわからないという事態が多いのです。よく例に出しますが、山陽特殊鋼の場合は、その申請する朝に下請から物を納めさして、二百五十万円でしたかの手形を払っておる。そのときには、会社更生手続開始申請書をおそらく裁判所に時間的には持って行っているような時刻に受け取っているわけです。それで手形で支払っている。こういう事態もあるわけなんです。そこで、そういうことを防ぐために、言いかえるならば、下請企業あるいは労働者等を保護するために、会社更生手続開始申請にあたっては、そこに働いている労働者あるいは下請の代表、大きなところでは下請の組合もあろうと思いますが、そういう人たちの意見書を添付せしむる、あるいは会社更生手続がなされて保全命令の出るまでの間にその意見を聞く。現行法でいいますと、手続開始申請がなされて、そして三回にわたって債権者集会とか何かが持たれる、その段階において意見を述べる機会はあるとしても、保全命令が出てしまう段階において事は決すると見たほうが現実であります。したがって、会社更生手続開始申請時か、あるいは申請から保全命令の出るこの間において、労働者なり下請企業の代表の意見を聞く、あるいはそれらの人に意見書を提出せしむるといったようなことについては、どう考えておられますか。
  84. 石井光次郎

    石井国務大臣 私は、さっき社会党の法案の内容は申し上げなかったのでございますが、私が考えておりますその第一番目にいまの問題を取り上げておるわけでございます。これは法制審議会のほうにも伝えまして、これをひとつ審議してもらう題材にしておるわけであります。これを取り上げたいと私は思っております。
  85. 田中武夫

    田中(武)分科員 会社更生手続開始申請がなされて、そして開始決定がなされる。この開始決定がなされてから起算して前六カ月間の賃金、これについては会社更生法百十九条によって共益債権だ、こういうことになっておりますが、会社更生手続が出されて開始決定がなされる間においてやめていく者、あるいは会社更生手続開始決定がなされて後にやめていく者、こういう者に対して、賃金は必ずしも万全に保護せられておるとは言いがたいと思うのですが、そういう点については、現行では手続開始決定前六カ月の賃金ですね。ところが、多いのは、実際は申請をして決定をせられるまでには、まあ二、三カ月——あるいは一カ月ぐらいのものもありますが、あるわけです。その間にやめていく者あるいは希望退職、いろいろな者がおるわけです。その者については、開始決定がかりに一月になされたとしたら、十二月なり十一月にやめた者は、六カ月ということなんだが、三カ月ないし四カ月の保障しかない、こういう結果になるのではないですか。そういう点については、賃金を少なくとも六カ月は保護しようという考え方からいって、いかがでしょうか。
  86. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 お説のように、申し立てがございまして開始決定までの期間に長短がございますので、それによって、その間に退職する者の受けるべき給料が、会社によってはまちまちになる場合も確かに考えられるわけでございます。どの程度のもの、どの範囲のものを従業員の給料債権として更生手続上保護してやるかということは、確かに非常に重要な問題でございます。したがいまして、そういった点も今回の法制審議会の審議の議題にしていただく予定にむろんいたしております。社会党から提案なされておりました法律案にもその点が書いてございます。これも一つの重要な参考意見として審議願おうという態度でやっておるわけでございます。ただ、実際の取り扱いといたしましては、いろいろ調べておりますが、給料債権にいたしましても、退職金にいたしましても、ほとんどそういった種類のものについては優先的に支払ってきているというのが実態であるように承知いたしております。おそらくそういった実情も十分法制審議会の審議にも反映されるのではないかと思います。ただいま政府といたしましてどういう方向でやるかということを、いま申し上げるのは控えさせていただきますけれども、大方の御意向も、おそらくそういった点は十分考慮されるものというふうに考えております。
  87. 田中武夫

    田中(武)分科員 それから退職金ですね。現在では退職金は優先しておりませんですな。
  88. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 退職金につきましても、法律上特に全部についての保障はございません。明文の保障はございませんが、これは御承知のように会社更生のために退職するというふうな事例が非常に多いと聞いております。これはむろん共益債権として正面から一般規定によって保護できると思いますし、さらに、そうでないものも商法の一般先取り特権の規定の適用を受けますので、優先的な債権として取り扱われておるというのが実情であろうと思います。
  89. 田中武夫

    田中(武)分科員 実際、その後開始申請と決定の間にやめていく場合、やめていく者に直ちに優先してそういう措置がとられておるというけれども、現実に金が出るのはそのときでないのが多いですな。労働省は、労働基準法から見て一週間以内に現金で清算しなければならない。こういう基準法の関係と現実の姿はどう理解したらいいのです。
  90. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 現実に金が支払われます時期につきましては、私まだ十分に承知しておりません。あるいはいまお説のような事態もあるかもしれません。これはやはり会社更生手続を申請した会社の立場といたしまして、すぐにはその金が間に合わないというような場合も実際問題としては起きるんじゃないかと思います。これは事実上の問題でございます。法律制度としましては、これはやはり労働基準法にあるように持っていくのが相当であろうと思いますけれども、そういう窮境にある会社の問題でございますので、一律にそれができるかどうかということは、具体的な問題として処理されるのも、やはりある程度やむを得ないのではあるまいかという感じがいたすわけでございます。
  91. 藤繩正勝

    藤繩説明員 お答え申し上げます。賃金及び退職金を含めてでございますが、労働者の生活のかてでございますから、おっしゃいますように、できるだけ早くこれを支給しなければならぬことは申すまでもございません。そこで一般賃金につきまして二十四条、それからいま御説の退職金についても基準法二十三条の規定があるわけでございます。ただ一般的に、必ずしも二十三条で規定しているように、七日以内にきちんきちんと支払われていないじゃないかというお話でございますが、この点は、できるだけそのように持っていかなければならぬと私ども監督指導上心得ております。ただ、法律的に議論をしてまいりますと、賃金につきましては二十四条で毎月一回以上の定期払いということがございますけれども、退職金につきましては、就業規則その他できまっておる弁済期が到達しておるかどうかということが一つの論点になりまして、弁済期の到達しているものにつきましては、二十三条で七日以内に支払わなければならないというふうに解釈をいたしておるような次第でございます。
  92. 田中武夫

    田中(武)分科員 退職金の弁済期を、たとえば退職後一カ月後とかというものもあるかもしれぬが、そんなものはほとんどないですよ。したがって、債権の発生は退職の事実が発生したときだと思うのです。そうなると、実際は基準法が適用せられない結果になる。そこで、これは結局保全命令を出しておる裁判所が特別に許せばいいわけなんですね。裁判所と法務省は独立した機関ではあるけれども、そういうことに対して、法務省なり、ことに労働省からも、裁判所に対して具体的裁判をやっておる人にということはどうかと思うが、基準法、これも法律なんです。裁判所が法律を守るのは当然なんだから、そういう問題に対して、優先的に解除をして支払うように措置をとることが望ましいというか、そういうことに対する意思表示を裁判所に対してしてもらいたいと思うのですが、両省いかがです。
  93. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 これは実は裁判所の裁判事件として手続が進行してまいりますことは田中先生もとくと御承知のことでございます。したがいまして、行政庁であります法務省あるいは労働省から一応希望を申し述べるということは、これは一般論といたしましては差しつかえないと思います。ただ、これも限度がございますので、裁判所に対して具体的にそういうことを言っていいかどうか。むしろ、最高裁判所を通じて、一般の空気がこうだ、希望がこうだということを伝えることは、これはある程度可能だと思います。もちろん、裁判所のほうにおきましても、私の承知いたしておりますところでは、そういった債権をなるべく早く弁済しようというので、保全処分の場合におきましても、その種の債権につきましては、個別的に裁判所が許可を与えて支払いをしておるという例もあるやに伺っております。裁判所も十分その辺は心得て運用いたしておるというふうに承知いたしておるわけであります。
  94. 藤繩正勝

    藤繩説明員 一般に倒産というような事態になりますと、先生おっしゃいますように、更生手続決定あるいは破産宣告後の処理ということは実際問題としてなかなかむずかしくなるのが実情でございますので、労働基準監督機関としては、できるだけそういう手続に入る前に労働者の賃金、退職金等の処理を進めるようにということを、一般的な方針として現地にも申しておる次第でございますが、いまのように事件が裁判所に係属した場合につきましても——まあ、あらゆる場合に行政機関からそういう措置をとることの是非については議論もありましょうけれども、先般の山陽特殊鋼のごとき事件につきましては、これはおっしゃるように当然意思表示をすべきだというふうに考えておりまして、現に山陽特殊鋼の場合には、兵庫の基準局長から裁判所に対して意思表示をいたしたような次第でございます。
  95. 田中武夫

    田中(武)分科員 下請企業の実態を言いますと、親会社から材料を支給されて、それに加工をして納める、したがって下請代金とはいいながら加工賃である、こういうのが多いのです。そうしますと、その下請代金すなわち加工賃の大部分は賃金なんです。したがって、親企業の労働者に若干の配慮が払われるならば、当然同じ配慮が下請企業の労働者、これはすなわち下請代金になるわけですが、払われてしかるべきだと思うのです。この点についてはいかがでしょうか。
  96. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 確かに下請代金の中身は下請事業者の労働賃金に回っていくというのが実情であろうと思います。そういう趣旨におきまして下請代金を共益債権にすべきではないかという御意見も出ておるわけでございまして、ことに下請事業者の使っております労働者は、ただ雇い主が下請事業者であるというだけであって、親企業の労働者と実質的に差別はないじゃないかという御意見もあるわけでございまして、そういう観点からの御意見だろうと思うわけでございます。ただ、下請企業だけに限定することがはたして可能かどうか。ことに原材料納入業者とか運送業者、 こういった中小企業も親企業の周辺にたくさんございます。こういったものとの均衡というものもまた考えていかなければならないわけでございまして、いわゆる下請企業というものを非常に狭く解してまいりますと、そこに若干の問題があるやにうかがわれるわけでございます。こういった点も、もちろん先ほどの法制審議会の問題点として提起してございますので、十分御審議願うつもりでおります。
  97. 田中武夫

    田中(武)分科員 もちろん、会社更生法は株主、債権者の公平ということを一つの目的にしているわけなんです。しかし、私が言っているのは、無担保債権者、物品納入業者いろいろありますが、しかし、特に賃金が大部分をなしておるもの、しかも現に更生法は給与については特別の配慮を若干ながらやっておるということなら、賃金という上に立って同じ扱いをしていいじゃないか、こういうことなんですよ。いかがです。
  98. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 実質が賃金であるから更生会社の労働者と同じに扱うべきだ、こういう御意見だと思います。まあ、そういう理屈も一面においては成り立つかもしれませんけれども、いま申し上げましたように、下請代金というものがまるまる全部賃金に回るものとも考えられませんし、その限度は一体どの辺に置かれたらいいものかという問題もあるわけでございます。ことに法律的に見ますと、下請代金債権は労働賃金とは言い切れない面もございますので、法律制度としてこれを考えます場合に、非常にむずかしい問題が出てまいるわけでありまして、その辺の問題を研究した上で結論を出したいというふうに考えております。
  99. 田中武夫

    田中(武)分科員 半時間や一時間ではできませんから、いま法律論をやろうと思っていませんが、しかし、現に更生法自体が給与というものに対して特別な配慮を払っておるなら、同じ趣旨でやったらいいじゃないか、こういう意見なんです。ぜひひとつ検討してもらいたい。  と同時に、先ほど法務大臣は、法制審議会に会社更生法適用範囲について諮問をしておる、こういうことなんです。そこで、親会社が会社更生手続の申請をして開始決定をなされた。もちろん、その場合には下請の親会社に対する依存度というものが問題になろうと思いますが、たとえば山陽特殊鋼の場合は特殊でありますので、下請業者も山陽特殊鋼の仕事でなければ、ほかへは向かないという設備をしておるわけです。すなわち依存度一〇〇%とでもいいますか、親会社の指示というか、方針にのっとっての設備をしておるわけなんです。そういうようなものに対しては、親は会社更生法で逃げ込む。しかし苦しむのはそういった下請企業である。そこで依存度ということが問題になりますが、親企業が会社更生手続開始申請をなし決定をなされた。ならば、依存度一〇〇%といくのか、あるいは何%でいくということは問題があるとしても、自動的に、その親企業でなくてはやっていけない実態の下請企業は会社更生法の手続が及ぶというような考え方はいかがですか。   〔主査退席、丹羽(兵)主査代理着席〕 あなたが、会社更生法の適用範囲について考え、どうすべきかを諮問しておられるなら、その適用範囲の中に、そういう考えはいかがでしょう。法律論じゃなしに政治論としてあなたから御答弁願います。
  100. 石井光次郎

    石井国務大臣 どういうふうな範囲にまで進めてもらうかの問題でございますから、そういうふうなこともあわせてひとつ研究してもらいましょう。
  101. 田中武夫

    田中(武)分科員 ちょうどいま諮問しておるから、全部そこで研究するということなら、これは議論にも何もならないわけですがね。  それからもう一つ、諮問の中に、裁判所だけで判断をする、しかしこれはいわゆる経済的な要素というか実体的なものもたくさん含まれておるので、その補助機関として財界の代表者を入れるべきかどうか、すなわち補助機関を置くということの討議がなされておるといいますか、諮問がなされておる。そこで、その補助機関の中に財界代表というのは、どういうものを考えておられますか。
  102. 石井光次郎

    石井国務大臣 裁判所では不十分だろう、それを助けて、うまく更生の仕事の判断をよくやっていくというにはどういう人を推したらいいかという問題になって考えるのでございます。さて、どういう人にするかというところまではまだ具体的には考えていないのでございます。そういう広い意味で考えてみようと思っております。
  103. 田中武夫

    田中(武)分科員 裁判所が会社更生手続開始決定をなすにあたって第三者の意見を聞く、これはいいと思います。したがって、常設の補助機関を置くということには賛成です。ただし、その中にはぜひ関連下請企業の代表、労働者の代表を入れてもらいたい。それをいまここで推薦いたします。いかがでしょう。
  104. 石井光次郎

    石井国務大臣 承っておきます。
  105. 田中武夫

    田中(武)分科員 承るだけじゃちょっと困るのだがな。はっきりできませんか。
  106. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいま申しましたように、あなたのおっしゃるように審議会にかけておる最中に、あなたと私と内容をきめるのはおかしなものでございます。まだ内容はきまってないと申しております。その中に、頭をそういうほうに向けて考えるということにしていきたいと思います。
  107. 田中武夫

    田中(武)分科員 あとで申し上げますが、いま私がここで言っておることやら議論しておること、それは全部特別部会に反映してもらいたいと思ってやっておるのです。そうでなかったら土曜日にこんなことはやりませんよ。  そこで今度は罰のほうですが、どうも昨年は御承知のように史上最大の倒産が出ました。山陽特殊鋼のごときはこれはもう代表的なものである。調べてみると、計画倒産あるいは経営者の怠慢、過怠、こういうことにより倒産に追い込んでいって自分だけは助かろう。現に山陽特殊鋼は社長なり重役個人に追及権が及んでおるようでございますが、そういう例が多いわけでございます。  そこで、会社更生法では詐欺更生罪というのがあります。また第三者更生罪というのがあります。しかし経営者、当事者の過怠に基づくものに対しては触れてはいない。破産法には過怠破産罪があります。もちろん破産と会社更生は違うと思いますが、しかしその結果、第三者及び労働者等に及ぼす影響は、破産法も会社更生法もたいして違いはありません。若干共益債権とか何とかというのがありますが、破産財団にしたって同じようなことがあるわけです。そうしますと、更生罪にも過怠更生罪を必要とするのじゃないか。経営者のモラルというか、人を使う者の道徳というか、社会的責任が云々せられている今日、過怠更生罪を設置することが必要と思うが、どうでしょう。
  108. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまのような問題がございますので、さっき申し上げませんでしたが、今度の諮問の中にも、過怠破産罪ですか、破産法第三百七十五条ですかに対する過怠更生罪を設けるべきかという諮問をいたしております。
  109. 田中武夫

    田中(武)分科員 まだいろいろあるのですが、答弁はそれしかないと思う。  そこで、もちろん諮問したら、答申は法制審議会が、あるいは特別部会が出してくるわけですが、それには関係者としてあなた方も入っておるし、通産省もみな入っておるわけなのです。そこで役所の関係者全部に答えていただきたい。いま私が言っていることを特別部会に反映するよう努力するかどうか。特別部会のメンバーに入っている人、そこにおられる人、何人かおるでしょう。
  110. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 私も実は法制審議会の総会の幹事でございます。事務当局の世話をいたしておるわけでございまして、資料等も民事局で作成いたしまして、法制審議会の御審議の材料にしたいと思っております。その中に、社会党から御提案になりました、かつての法律案ももちろん含めてございます。これも一つの重要な参考資料になるという趣旨で、資料として提供してございます。こういった国会の審議におきまして、いろいろ御意見が出ますれば、もちろんこういう御意見があるということを法制審議会にも反映いたしますように、私としてはやりたいと思っております。
  111. 両角良彦

    ○両角説明員 お答えいたします。通産省といたしましても、法制審議会の会社更正法特別部会には、企業局長が委員として参加をいたしておりまして、ただいま御指摘のございました事項並びに当省としましていろいろ検討をわずらわしたい事項につきまして、当省の見解を申し上げまして、各委員の御審議の材料に提供しまして、法制審議会として公正な結論を得られるよう期待いたしたいと思っております。
  112. 田中武夫

    田中(武)分科員 そこでこの会社更生に関連してですが、労働省にお伺いいたします。時間の関係があるので一括して申し上げます。  まず第一点としては、会社更生手続開始申請から決定に至る間、その会社の経営者、まあ社長ですね、これは労働問題についての当事者能力があるかどうか。ということは、開始申請でもう世の中は倒産だと、こういうわけですね。しかし、決定がなされて管財人が選任せられるまではまだ会社の代表者です。実体としてはこの中で労働協約なり労使の交渉が行なわれるわけです。当事者能力は法律的にはあろうと思うのですが、いかがでしょうか。  それから、そこできめられた労働協約、これは開始決定後管財人を拘束するかどうか。さらに労働協約でなく会社の内規、たとえば退職金等は労働協約によってなされている場合もあるし、会社の内規の手続によって、会社の規則の手続によってなされている場合もあります。あるいは就業規則の中でも、基準法に反するものは別として、基準法を越えたことが就業規則なり会社の規定できめられておるのがある。そういう会社規則といいますか、内規といいますか、こういうものが管財人を拘束するかどうか。言いかえるならば、管財人は会社更生決定以前の労働協約あるいは会社内規を守らねばならない義務があるのかどうか、簡単にお答えいただきます。答弁いかんによっては分けて議論もいたしますが、きょうは時間の関係でどうなるかわかりませんが、ひとつお答え願います。
  113. 青木勇之助

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  まず第一点の、更生手続申請から開始決定までの間における社長の当事者能力の問題でございますが、当然団体交渉の相手方、労働協約締結の当事者になり得るものと考えております。  それから第二点についてでありますが、会社の社長が開始決定前に適式に締結いたしました労働協約、これは先生御存じのとおりに会社更生法の百三条四項で破棄できないというふうに相なっておりまして、当然管財人を拘束するものと思います。  それから第三点の就業規則等の内規の問題でございますが、退職金が協約で締結されておりますれば、当然これは拘束されます。それから就業規則等につきましては、これはもちろん変更されない限りは、やはり就業規則としての効力を持っておるわけでございまして、これまた変更されない限りは当然拘束性を持つ、こういうふうに考えております。
  114. 田中武夫

    田中(武)分科員 きわめて明快な答弁です。ところが、実際がそうではないので弱ったのです。そういうような場合をあげていろいろ議論したいのですが、時間の関係でやりませんが、そういうときに、たとえば社長がそう言ったか知らないが、もうこんな状態だからごめんこうむりたい、こういうことなんです。そこで組合側は、けしからぬということで労働争議になるとか紛争に持ち込むわけです。そういうときは、いまの答弁がそのまま労働省の指導方針となって実際の紛争を——それは労働省が争議になったときに介入するのはどうかと思うが、指導で管財人までもやってもらいたいと思います。一言でよろしいから……。
  115. 青木勇之助

    ○青木説明員 お答え申し上げます。労働省といたしましても、常々労働協約の重要性についての認識から、今後の具体的紛争についてどうこうしろというようなことは言っておりませんけれども、一般的に教育指導も常々行なってお珍ますし、さらに具体的な事件が起こりまして相談等がございました場合は、そういう指導をかねがねいたしておりますし、今後もそういう点について留意してまいりたいと思います。
  116. 田中武夫

    田中(武)分科員 次に社内預金について簡単にお伺いします。  この社内預金の会社側からいう目的は、一たん賃金なり給与で渡したものを、社内預金という名目で回収するのが一つのねらいです。それには一般の金利水準よりか若干多くしないと、労働者はやらないから金利を少しよくする。もう一つは、御承知のように最近労働金庫の活躍といいますか、これが相当大きな役割りを果たしてきております。そこで労金よりか高い金利によって、労働者が労金に貯金をしないというようなねらい等々があろうと思います。そこで労働基準法第十八条は、最初は禁止をしておる。原則は現在でも私は禁止だと思うが、しかし、次のような条件を満たしたときには許されるという立場をとっておるものだと思います。昨年労働省と大蔵省がこの社内預金について通達を出しておられます。それを一々ここでは読み上げもいたしませんが、あの通達はおおむね私は賛成です。たとえばあれによると、会社役員なりあるいは使用者側に立つべき者のやつは社内預金ではない、こういうような趣旨の通達が出ているようです。しかし、山陽特殊綱の場合は、千阪という専務が、自分の預金だけを八百万円とか一千万円とか持って出てしまったことによって問題を起こした。そういうことに対しての回答が出たと思う。しかし、これはいろいろの問題があります。会社更生法百十九条では、私は社内預金は共益債権と見るべきであると思うし、現在学者あたりもそういう意見のようです。ところが、実際に当たると問題があるようです。社内預金を無担保消費貸借だと考えておる向きもあるようです。しかし、会社更生法では、私は問題なく共益債権になると思うのですが、それじゃその他の場合、破産だとか事実上の倒産等の場合には何ら保護がないわけです。   〔丹羽(兵)主査代理退席、主査着席〕  そこで、まず大蔵省にお伺いしたいのですが、会社がそういうことで基準法第十八条で、一定の条件のもとに許されておるということであろうと思うのだが、金利の問題について、いわゆる一般的な金利政策の上からいって問題があろうと思うのです。それからもう一つは、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律からいって、はたしてそういう会社が預金業務ができるのか、こういう面もありますが、それについて、もちろん基準法十八条で許されておるからできるという解釈であろうが、この出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、及び金利政策の上からいって、大蔵省は社内預金をどう考えますか。
  117. 加治木俊道

    ○加治木説明員 私、証券局のほうを所管いたしておりまして、私限りで責任を持って御答弁できませんが、問題の点、関係局に直ちに伝えまして、至急に検討するようにいたしたいと思います。
  118. 田中武夫

    田中(武)分科員 労働省、将来社内預金は禁止すべきだ、禁止の方向へ持っていくことについて、基準法十八条についてどう考えておるか。  それから法務省、一般的に社内預金は無担保消費貸借だという学説があるようですが、社内預金の法律的性格をどう理解しておりますか。これが更生法以外の倒産の場合に、やはり優先権があるのかないのか。先取り特権の問題を含んで——民法にもある、ことに商法の先取り特権等からいってないのじゃないかと思うのです。そんなことについてどう考えておられますか。
  119. 藤繩正勝

    藤繩説明員 お答え申し上げます。社内預金につきまして、山陽特殊鋼の倒産その他種々問題がございまして、先生ただいま御指摘のとおり、大蔵省との共同通牒も出したわけでございますが、その後、問題が解決しませんので、昨年の三月に中央労働基準審議会に諮問をいたしまして、この一月十八日に答申をいただいております。その答申の中身は、ただいま御指摘にありましたような、たとえば預金者の範囲、預金の額、それから金利、特に保全の方法というようなことについて、かなり具体的な中身のある答申でございます。しかしながら、いま最後にお話がございましたように、基本的にこの問題をどうするかということにつきましては、審議会も結論を出しませんで、なお今後引き続いて検討をする、こういうことになっております。一月十八日の答申は、しかしながら当面そのままでは放置できませんから、こういう措置をとれ、こういう答申をいただきましたので、私どもといたしましては、労働基準法施行規則の改正も行ないまして、四月一日からこの答申の線に沿った強力な行政指導をやっていきたいと思っております。基本的な方向につきましては、そういう段階にございますので、審議会の慎重な御審議の結果を見守りたいと考えております。
  120. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、いわゆる社内預金の法律的性格といたしましては、これは消費貸借ではなくて消費寄託であろうというふうに解釈いたしております。それから商法の先取り特権が及ぶかどうかということでございますが、商法の規定によりますと、会社と使用人との間の雇用関係に基づく債権関係ということになっておりまして、これは雇用契約から直接出てくる債権債務ではない。当然に雇用契約から発生する債権債務ではございませんので、商法の先取り特権の規定は適用がないのではないかと考えます。
  121. 田中武夫

    田中(武)分科員 消費寄託、貸借、どっちでもいいけれども、いずれにしろ、先取り特権が及ばないということだけは確かですね。しかも無担保である。そういう性格からいって、社内預金は禁止の方向をとるべきである。大蔵省には、先ほど申しましたような金利の政策、あるいは出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、こういう面からいって問題がある。労働省においても、労働政策上最初禁止せられたのが、どういうわけで十八条が改正になったのかということをつぶさに知りませんけれども、やはり最初の方針を貫かれるほうがいいと思います。現在考えておられる社内預金の対象者は、労基法九条の賃金を受ける者だという範囲は、現段階においては正しいと思いますが、禁止の方向へそれぞれの関係者において持っていってもらいたい、そのことを強く要求をいたします。  時間もないようですからこれで終わりますが、私、いま申しましたことは、別に議論のためにやったのではなくて——議論はまた別の場でやりましょう。法制審議会に諮問しておられるとか、あるいは中央労働基準審議会に諮問しておられるという段階であるので、いまの私の言っておることがそれらの審議会に反映すれば幸いだと思うのです。各関係者は反映するように努力をしてください。  以上で終わります。
  122. 井出一太郎

    ○井出主査 次に神近市子君。
  123. 神近市子

    神近分科員 私は、きょうは主として人権の問題について大臣に少し御質問申し上げたいと思います。  昨年の七月四日に、南原繁、松本清張というような人たちの下山事件研究会というところで、本郷の学士会館で、常磐線の三河島のところで死体になって出られた前の国鉄総裁下山定則氏の事件を扱ったようでした。この下山事件研究会というようなものは、南原繁さんと松本清張というフィクションを書く人との合同の主催でございますけれども、この南原繁さんほどの方が問題を取り上げようとなさる動機はどんな動機であるかということを、大臣はどういうようにお考えになっているか、それを伺わしていただきたいのです。南原さんは御存じであろうと思うのですけれども、あれだけの人がこの下山事件の研究会あるいは究明会、そういうものを発起された考え方をどういうように御理解になっておるか、伺わしていただきたい。
  124. 石井光次郎

    石井国務大臣 下山事件につきまして、南原先生なんかが研究会ですか、それをお開きになった、そういうことを私承知いたしませんが、刑事局長に聞きましても承知いたしてないそうでございます。したがいまして、私ども意見がございません。
  125. 神近市子

    神近分科員 私の考えでは、これは占領軍がありまして、占領中の裁判のあり方についていろいろ疑惑を持っておる人がたくさんございます。南原さんは、直接そういうことにいままでおそらく御関係はなかったと思うのですけれども、ある意味で人道主義的な考え方から手をおつけになって、そしてほんとうに占領中の裁判——これは一件ではございませんよ。たくさんありますから、そういうものの性格をどういうものか、究明しようというようなお考えであったろうと私は思うのです。この国鉄総裁の下山さんの死体鑑定をした、いまは横浜市立大学の桑島直樹という方が、当時は東大におられまして、下山さんの自殺ということに一応言われていたところの鑑定をよくなさったのが発表されております。桑島さんは、下山さんは自殺ではなくて死後轢断ということをはっきりこの間は発表されております。こまかい医学的なことは私にはよくわかりませんが、いろいろ発表されておりますけれども、列車で受けた傷には一つも出血がない。反対に、皮膚の表面には何も傷がないところに皮下出血がある。場所は、その出血が外には出てなくて死因になったろうと思うものは、咽喉部の右側、それから右乳の下、それから左右の手の甲あるいはひじまで、そういうところに皮下出血があるというふうなことをおっしゃって、これは他殺の結果であることは、一プラス一は二ぐらいにはっきりしているということを発表されております。  私がこの問題をここに出しますのは、こういう事実があったということに対して、他殺ということがこういうようにはっきりされたときに、これをどういうようにお考えになるか。この問題は一度法務委員会で、この時効にかかったときに、この時効後も究明するというようなお約束があったと思います。その点で、このお約束をお守りくださいというのではなくて、私は、大臣が、下山さんが他殺、しかも自殺を示すようなやり方で発見されたということは、どういう動機によったか、お考えがあれば、それを伺いたいと思います。
  126. 石井光次郎

    石井国務大臣 その当時から、自殺であるとか、他殺であるとかいうことがしきりに問題にされたことが私記憶にあるのでございますが、いまもう時がたちまして、今日、他殺であると言われまして、それじゃそのとおりであるということを私が御賛成申しても、私としてはどうしようもない。非常に冷淡なようでございますけれども、ちょっと私としてそれ以上のことを、いまこれに対する扱い方を承知いたしてないのでございます。そういうふうなうわさがあり、そういう声があって、そういう場合にどうするかというような問題等の一般的な扱い方等につきましては、刑事局長から一応申し上げまして、それから私がまた申し上げてもよろしゅうございます。
  127. 津田實

    津田政府委員 下山事件につきましては、御承知のとおり、死因についていろいろ鑑定の結果が出ておりまして、捜査当局も十分捜査をいたしましたが、不幸にして犯人というものも発見することができず、また、そのこと自体が何であったかということについてもいろいろ論議があって、きめ手がなかったということにもなるかもしれないと思うのであります。  御承知のとおり、あれは昭和二十四年の事件でございますので、昭和三十九年に十五年の期間が経過いたしております。一応の形は、公訴時効の期間が経過したことになるわけでございます。ただ、公訴時効につきましても、特殊の場合は公訴時効期間が除外される場合もありますので、そういう意味におきまして、今後もこの問題については常に十分見守っていきたいという考え方でおることは、すでに法務委員会等で法務省側から御説明申し上げているとおりでございます。現在はまさにそういう状況にあるということでございます。
  128. 神近市子

    神近分科員 これはもうかなり過去のことであるし、死んだ人のことであるし、究明なさっても、たとえば家族に対する扶助とかなんとかいうようなことで、これは問題の外でございますけれど、南原さんたちの究明会の動機がどこにあるかということは、まだ残っている問題がたくさんあるので、それで私はこの問題を持ち出したのです。  もう一つは、松川事件というものもあります。これももう過去のことになって、全員無罪ということになっておりますから、何もここで問題にすることはないだろうということだろうと思うのですけれど、その過程に私どもはいろいろ考えなくてはならないことがあるのではないか。二、三日前に、三鷹事件の竹内景助の家族の人が法務大臣に陳情に来たとかいうことで、会館のどこの部屋だかに来られたという話を伺いましたけれども、それは事実でございますか。
  129. 石井光次郎

    石井国務大臣 私も刑事局長承知をいたしておりません。
  130. 神近市子

    神近分科員 この三鷹事件というのもちょうど前後して起こった事件でして、それで私が人権の問題でぜひ大臣に訴えたいと思うことは、三鷹事件のほかに、八海事件、松山事件、帝銀事件、島田事件、北海道の白鳥事件というように、まだたくさんあると思うのですけれど、たくさん問題が重なってきて、しかもその中には、死刑を宣告されて、死刑を待つばかりの人が何人かいるのでございます。私がこういう問題をあなたに御相談申し上げるということは、占領中の裁判というものがどんなものであったかということを考えさせられているわけです。  もう一つ、福岡で中国人のブローカー殺し事件、福岡事件といっておりますが、これは大臣の地元のできごとでございますけれど、このことはお聞き及びが何かございますか。古川泰龍というお坊さんが、前に教戒師をしていた人ですが、その人が、もう五、六年、この事件の究明に寝食を忘れ、貧乏な生活に甘んじて、しかもこの寒いときに托鉢して歩いて費用をかせいでこの救命運動をやっておられる。これは御存じでございますか。
  131. 石井光次郎

    石井国務大臣 はなはだ申しわけありませんが、承知いたしておりません。
  132. 神近市子

    神近分科員 地元のことで、福岡で起こったことを御存じないということは、私には納得ができないのですけれど、地元であれば選挙地でありますから、地元の問題はもう少し頭を使ってもいいことで、いまみなの質問を聞いておりますと、みな自分たちの地元か何かに関することです。それを御存じないというのならば、私が申し上げます。  この関係者は七、八人おりますけれど、全部戦争に行って帰ってきた人たちでございます。二十二年のできごとでございます。そしてその当時は、軍の物資というものが佐世保あたりにたくさん蓄積されていて、軍服だとか、シャツとかズボンとか、そういうものがたくさん隠してあって、これが盛んに福岡で取引されていたということ、この関係者は全部戦争に行ってきた人たちであるということ、それから非常に食糧不足のときで、そしてやみ物資が非常に盛んであったということ、そういうことを背景にして起こっているのでございます。その死刑囚の西武雄という人は、ラバウルかどこかに長く行ってそして帰ってきた人なんで、人柄がちょっとよかったようでございます。そして前に芸能社をやっていまして、みんな娯楽に飢えているので、若い者や村落の人たちにその芸能を見せて歩いていた。ところが、持ち逃げか何かされて芸能社がやっていけなくなって、トラック業をやっていた。野田俊作という方が知事選挙をやられたときに、トラックを持っていたものですから、応援することになって、そこに出入りしているうちにいろいろ問題が起こってくるのです。結局は、この人の顔がいい、みんなに愛されているというので、やみブローカーの熊本というのに頼まれて、自分がやみ取引をするから顔だけ貸してくれ、前の取引のときにやくざに入り込まれて、そしてもうけをだいぶとられたから、それを防ぐためにこの西という人の顔を貸してくれ、こういうことになって、そして軍服を千着取引することになったときに、問題が変なことになるのです。松川事件でもあるいはほかの事件でも、みんなそのときの警察がつかまえるのは十九歳ぐらいの青年です。そしてこれをだましたり、すかしたり、おどしたり、なでたりしてそしてしゃべらせる。それが白状ということになって、起訴の根拠になる。そういうようなことで、このときは、本名ははっきりしませんけれども、一応黒川というチンピラの変な青年がつかまって、そして松長次郎という検察事務官がこれを締めつけて、そしてべらべらべらべら、あることないこと言わせたというようなことで、そして石井健次郎というもう一人の死刑囚はどういうことだったかといえば、陸軍少佐をしていた人からピストルの売り込みを頼まれて、そのピストルを持っていたが、売れないので、一発間違って若いものが発砲するものですから、これはあぶないと思って返しに行った。返しに行ったけれど、その人がちょうど留守だったから、ピストルを持って帰るところを、さっきの黒川という青年が、やくざのけんかに——福間というところの競馬場の場所争い、それでけんかが久留米と福岡の親分の間に起こりそうだからというので、この西という人が、親切だったとみえて、そんな日本刀なんか持っていってもしようがないぞというので、ピストルをさがしてやろうというところだったのです。そのピストルを預かっていた石井健次郎というのが、返しに行って、いなかったから持って帰るところをちょうどつかまって、そしてピストルなら買いましょう、売りましょうということになっているうちに、お金がない、五万円くらいのお金をもらわなければならない、ピストルを先に渡してはこのお金がとれるかとれないかわからない、人のものだからというので、お金と引きかえにというので、西だの熊本だの黒川だのというのについて歩いている。そのうちに、何だかお金の取引があるだろうと思うところに、中国人の王という人ですが、この人の様子をこう見ていると、何かけんかが熊本との間に起こって、取引の品物が出ないというのか、あるいは倉庫か何かの門があかないというのか、王というのがおこって、そして何だかけんかをやっている。それで、暗いところでこう見ていると、何だかピストルを出しそうな感じがして、こっちが先に撃ってしまう。そういうような、もうばかばかしい、調べてみればほんとうに、誤って撃ったということになっておりますけれど、そういう事件なんです。そして西武雄という人は、手付は十万円預かってそして受け取ったけれど、その事件が起こった場所にはいないで、はっきりとどこかで向こうの仲間と——その王の仲間がほかに五人来ていまして、それが集まって、取引が済んで一ぱい飲んで待っているところに、片方の現場ではその殺傷事件が起こった、こういうことなんです。それで、本人たちは間違って撃ったのであって、西という人はほんとうに何にも知らない。だけれど、でっち上げといいますか、こしらえ上げた事実としては、謀略、千着で七十万円——そのときの七十万は、今日の一千万か二千万に当たるそうです。それだけの金を取引するということで、十万円先に手付をもらって、現場で品物を渡しましょうといって、その現場でそういう考え違いから——そばに立っていて、お金を受け取ったらピストルのお金をもらおうと思って立って待っていると、何だかけんかが始まって、そしてここからピストルを中国人が出しそうな気配がして、撃たれると思ったから撃ったということになって、この人は確かに二人殺しているんですから、私は、この人がある程度罰を受けるということはやむを得ないだろうと思います。死刑に当たるかどうか知りませんが、意識的にやったんじゃない、間違ってやったというところに私は考慮の余地があると思うんです。——きょうは人権無視の問題なんですけれど、女の人権というものはこのとおりでございます。一番おしまいにされまして……(「いや、ぼくもある」と呼ぶ者あり)私は簡単に言いますよ。簡単なつもりでやっているのだけれど……。  こういう下山事件、松川事件、それから、いまの福岡事件と呼んでおります事件、それから三鷹事件、八海事件、松山事件、帝銀事件、私は、こういうような問題が起こった根底はどこにあるかということを大臣に一番考えていただきたいのです。松本清張はフィクション・ライターということになっておりますよ。だけれど、彼のこのごろの作品は知りませんが、初期の作品を見ますと、私はフィクションを書けばもっと売れるということはよくわかる、だけれど、今日の占領中の歴史というものは、おそらく二十年、三十年、あるいはもっとたたなければはっきり書けないだろう、その材料に私は残しておきたいというようなことを書いておりますから、この事件に関したものは単純なフィクションということに受け取っては、私は間違いだと思うのです。それでこの古川泰龍という人がいろいろなところに陳情をして、自分の生活をなげうって、もう食うか食わないか借金だらけで、奥さんの着物はみんな質に入れさせたり売り払わせてやっていらっしゃるというところに、私はもうちょっと同情的な考え方を持っていただきたいと思うのが、今日のこうやって大臣に特別にお願いする、あるいはお尋ねする事態ですけれど、そのときのことは実に言語道断なのです。私は役人の悪口は言いませんよ。そのとき役人が法律どおりの生活をしていらっしゃるなら——あのとき判事さんでしたか、名前を忘れましたけれど、飢え死にした人がありました。ですから、法律どおりにやみ物資を食べないと言って飢え死にした判事さん、これは私りっぱだと思うのですけれど、現実的ではないというふうに考えます。だから、そのとき中国人がやみ物資をたくさん持ってきて、その仲間を殺されたという憤りから、警察にたくさんシナ料理、食べものを持って、チップを持ってきて、そうしてやっているというようなこと、それは私やむを得なかったろうと思うのです。ですけれど、いま名前はちょっと忘れましたけれど、第一審のときに、裁判長が死刑を二人に言い渡した。ところが、中国人が一ばい傍聴席に来たのを、その判決を言い渡したあとに法廷に入れて、そして、ともかく七人ともみんな死刑にしろ、死刑にしろと中国人が言うところを、二人死刑にしたのだからこれでがまんしてくれと言ったというようなことを考えれば、そのときの裁判というもの、あるいは松川事件であれ、あるいは三鷹事件であれ、ともかくそういうような変な圧迫のもとに裁判が行なわれたということ、この過去の現実だけは、私は大臣に認めていただかなくちゃならないと思うのです。  この平和条約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律、これは法律ではあるが、平和条約以前につくられたものですから、大臣御存じなかろうと思うのですけれど、これなんか読んでみると、連合国の人は自分の国の国民を守るのに実に賢明だと私は思うのです。これは、昭和十五年ですから、戦争が起こる前から、日本で受けたところの裁判、刑事あるいは民事両方ともに、それに対して不当だと思う者は、平和条約発効後一年間は、連合国人は、法人もそうでありますけれど、再審を頼むことができる、こういう法律をちゃんとつくって帰っていった。私はそういう意味からも、もし駐留軍の権力によって行なわれた裁判があるならば、これを是正するということが今日必要ではないか、やるべきではないかと思うのです。この材料は、私がいまべらべら申し上げただけですから、あるいは御納得がいかないかと思いますけれど、駐留軍の圧迫によって行なわれたという事実はたくさんあります。私はまた別の日に法務委員会で御報告申し上げ、また御考慮を願おうと思うのですけれど、ともかく、万一、駐留軍のいた間の権力の圧迫によって裁判が行なわれ、どこかで——ちょっと名前はいまなにしましたけれど、松川事件のときなんかはっきり言っているのですよ。ポリシーじゃない、工作だ、政治ではなくて、われわれがいまやっているのは工作だと。これはG2とか、CICとかいう関係者の発言ですけれど、それを食っているかわいそうな人たちがたくさんいるということをお考えになれば、これは自国の国民を守るために、特別の再審を考慮していただく余地があるのでないかということを私考えるのです。大臣はいままで法務のほうにはあまり御関係はなかったかもしれませんが、こういう事実の前にどういうように、もしそういうことがあったならばという仮定の上でもけっこうでございますけれど、どういうようにお考えになるか。
  133. 石井光次郎

    石井国務大臣 いまいろいろお話のありました問題等々でございますが、占領治下におきまして、日本の裁判官が間違った判断によって、自分の心にもないような方向に決定をしたというようなことは、なかったと私は思うております。そのほかの方面で、行政の面で、行政指導をどんどん占領治下でやられたというようなことはあり得たと思うのでございます。それが間違っておったというようなこともあるかと思うのでございますが、事裁判に関する限りにおきましては、その裁判内容に入ってのいろいろな指揮命令等はなかったはずでございまするし、また、そういうことを聞いたことも私はありませんし、そういう考え方でやったというような話も、うわさにも聞いたことはございません。もしそれが間違ったような判決だということであれば、それは結果的にそういうふうに思えるのであって、その裁判官は正しいと思うて判決を下したものだと私は思うております。それに対しまして、もっと違う方向に考える人たちがありましたならば、それはいまの状態のもとでできる道が、どういう道がありますか、いろいろな道があるだろうと思うのでありますけれども、私はこまかく、こういう道もあります、ああいう道もありますと、お教えするようなことを知りませんけれども、さまざまな道があるだろうと思うのでございます。あなたがもし何かおやりになるならば、われわれのほうの関係の者で御相談に応ずる者もあっていいと思いますが、間違いがあるとお思いになるならば、できるだけ回復する道を講ずるということは、人権擁護というような看板を掲げております法務省としては、そんなものはもう済んだことだと決して申しませんけれども、私は、裁判官の昔の問題につきましては、真実そう思うております。
  134. 神近市子

    神近分科員 法務大臣として、裁判官が変なことがあったということはお考えにならないとおっしゃるのは、これはただいまの地位として当然のことだと思います。けれど、さっき申し上げたように、そのときはやみ物資を食べなければ飢え死にするという時代ですよ。そういう変わった時代があったというときに、裁判官がやはり生きていらっしゃるところを見れば、やみの物資も食べていらっしゃったということになる。それから、さっき申し上げたように、第一審の裁判長が、傍聴席にいた中国人を十何人法廷の中に呼んで、この七人とも死刑にしろ、死刑にしろと言うのに、二人死刑にしたんだからまあがまんしてくれ、一体こういうことがあり得るかどうかというようなことについて、私は頭をかしげるわけなんです。神聖な法廷でですよ。だから、それは信じないとおっしゃるけれど、戦勝国の人たちに戦敗国としての日本が、平和条約ができるまでどんなにかってにやられたかということが私は言えると思うのです。下山事件出したこと、松川事件出したこと、こういうことはその証明として、もう時効にかかった過去のことだから、差しつかえなく大臣がお考えをお述べになることができると思って、わざわざ下山事件と松川事件とこの事実を——一つは、たった諏訪メモが出たことによって、二十何人かの人が全員無罪になる、こういうような、まるでどんでん返しのようなことが、たった一本の諏訪メモ、そのときに東芝の委員長が合議に出ていない、そういうようなことが立証されたときに、すっかりひっくり返ってしまった。そういうことを考えれば、そのときの検察官全部が全部、これは吉田石松を無罪にした方のような、すぐれた勇気と正義感を持っていた人たちばかりとは私は言えないと思うのです。その点でほかのことは、十五年服役したろうがあるいは十三年服役したろうが、その人たちのことは、私はもうしょうがないと思うのです。だけれど、二十年もあるいは死刑の宣告を受けて十六年も監獄に入っている人たち、この死刑囚という人たちのことを考えれば、この古河泰龍というお坊さんが、身命をなげうって、そして自分の寄付だのあるいは自分の托鉢の費用で実に克明に、福岡事件に関する限りは、この人は警察官よりもよく調べております。遠いところまで行って釈放された人に会って、そのときの場所をちゃんと確認して、ちょっとした警察官が負けるぐらいよく調べております。だから、私はこの人の調査の事実は、ちょっと信用していいのではないかということを考えるのですが、大臣はそのことも御存じないということだったら、私はそのうちに読みものを御提供しますから、秘書にでも読ませていただくということをお願いしたいと思うのです。  例を一つあげますと、松川事件という事件が起こった日の翌日、政府のほうでは官房長官が、これは共産党の策謀に違いないというようなことを言われた。そうすると、ジョージ・グレーというG2の指揮者は、仙台だか福岡だかの支部で、あれは日本人じゃないとちゃんと言っているじゃありませんか。自分の個人的な仲間には、あれは日本人ではないんだぞというようなことをちゃんと言っている。私はそういうところをやはり気にして、そしてぜひ死刑囚だけは、われわれ全部の責任で何とか助けてあげなければならないのではないか。出せとおっしゃれば、私は資料は幾らでも出してきます。占領中の裁判がどういうものだったかということを申し上げるために、私は幾らでも材料を持ってまいりますから、ひとつこの点を考えていただきたい。  私は、昨年の国会で暫定法をつくろうとしたのです。再審の問題であります。それで再審制度小委員会を法務委員会でつくりましたけれど、これはうやむやで、しつこい質問が何度かあったくらいで、これはものにも何にもなっていない。私が刑事局長にお願いしたいのは、いま帝銀事件とか福岡事件とか、いろいろ占領中の死刑囚の問題で再審をお願いしている。これが何回出て何回はねられたかということをひとつ調査していただきたい。私は暫定法を、昨年党の了解を得て用意いたしましたけれど、どうも法務大臣ほど検察の方々に全面的な信頼ができなかった。仲間が裁判したことを、今度次の人がこれをひっくり返すということは、よほどの勇気がないとできないのです。それは皆さん官僚の方々はよくおわかりだと思うのです。ですから私は、これは何とか別の方法でなければならないというので勉強してみました。趣旨はみんな与党の人たちも賛成してくださるのですけれど、この法律の作成に非常に難路があった。私が検察官僚に支配されてはだめだと考えたものですからできなかったということになるのですけれど、それにはどう考えても大臣に嘆願するよりほかはないので、きょうは実は御迷惑だったと思うのですけれど、この事実の認識の上に——南原さんを御信用になるならば、なぜあの人があの下山事件を究明しようと、もう二十年も前のことをおやりになるかということをお考えになれば、やはりたくさんそれにつながっている無辜の死刑囚、こういうことが頭にあって、それでおやりになると私は信じているのであります。お目にかかったときにその話は伺わなかったのですけれど、私は、これはだれかがやるべきことではないかということを考えているわけであります。  それから、この問題につきましては、たった一つだけ、私は再審の制度の暫定法でけっこうですから。いまの再審法ではどうにもならないのです。私も、再審法についていろいろな人に会って聞きますと、刑事訴訟法の四百二十五条、これの六が大体使われているようであります。そして、これで結局再審のなにははねられている。これは、刑事局長よく御存じだろうと思うのです、どこが隘路になっているかということを。どうしてもこの再審法をある程度手直ししなければ、これにかけることができないということが一点。それから、もしこれを改善するということが、いま刑法は書き直されているところですから、急速にはこれはできないということだったら、やはり暫定法をこの国会でつくってくださるか、そして超党派的に通していただくということを考えていただくか、でなかったら、検察庁法の第十四条、これは大臣指揮監督によって行なうことができる。そういうことになれば、この死刑囚の再審ということができるのではないか。これは大臣のお心持ち一つですよ。私はこの間、犬養法務大臣のときに、造船疑獄という問題のときに、犬養さんはどうなさったかということを私は調べてみたのであります。これはごく簡単なようになさって——その決心まではずいぶん時間がかかったのですけれども、もうほんとうに一晩のうちに話はついたというように考えられた。これは非常に問題にされておりますけれど、私は、こういうのはやはり憲法の人権を守るというために使われるべき性質のものではないかと思う。いまの検察庁法は憲法の人権を守るために使うことができるものじゃないか。日本の国民は、この検察庁法の規定は何か悪い意味にだけしか使えないもののように考えているようです。これは憲法に準拠して使えるものだということを、やはりいまの場合示しておおきになるべきだ。そして国民が、正、不正の境い目に立って国民全体がぐずつくときにはこれが使えるということを、正義のためには使えるということを示しておおきにならなければ、あの指揮権というものは悪い意味にだけしか使えないというような印象をみんなが持っているのはばかばかしいことだ、これはたいへんな誤りだと私は考えます。その点で、いまの検察庁法の第十四条も、いまごらんになっているようですから、私はきょう御決心をというわけにはいかないと思うのですけれど、これは御一考願うということで、他日また、御考慮いただいたかどうかということを法務委員会で伺いたいと思います。次の質問がありますから私はあまり長くお時間をとるまいと思いますけれど、ともかくも、この問題はあなたが知らないということで、これはあるいは政界に長くおいでになると、ものを御調査されるとかごらんになるという機会が少ないのか、ともかく私は幾らでも材料は提供いたしますから、この人権の問題だけはひとつ御考慮願っておきたいと思います。たくさんの人が小さな金を集めてこの救命運動をやっているということを考えると、私は自分の無力なことがいても立ってもたまらないような感じがするのです。そして、きょう総理大臣もお出になればいいなと思っておりましたが、これは他日またどこかでお願いをいたしますけれど、ひとつ御考慮願いたいと思うのでございます。大臣のお気持ちを伺いたいのです。
  135. 石井光次郎

    石井国務大臣 いまの神近さんの非常な御熱心なお気持ちよくわかりました。私ども法をあずかっている者といたしますと、法規の範囲内においてどう動くか、それをできるだけ活用していただく。法が忘れられていて、そのために、ああそんな法があったのか、そういう規定があったのか、それならばそれを適用するのだったというような場合がよく世間にあるようでございます。知られないために用いなかった。現にいまあなたの名前をあげておられます死刑囚の一員が、死刑の判決を受けてずいぶん長い間そのままになっておるのはどういうわけかというと、いろいろな規定によっていろいろな手続をとって、それによって調べが続いておるから命が延びておるわけで、その判決が間違っておるということで延びておるわけじゃない。間違っておるかどうかということを調べてくれという問題を取り上げて長い間いろいろな規定を用いて話し合いをしておったというようなわけであります。そういうふうな道、あるいはそうやってなるほどという道が開けるのもあるでございましょう、あるいはどうしてもいかないという場合も出てくる、さまざまな場合があると思いまするけれども、私どもとしては、そういういろいろな道を開いてあるものはできるだけこれを用いていただいて、そしてその人が間違って、ああいう道があったのにそれを使わないでその罪に服したのは残念だったと本人も思い、友だちも思うというようなことのないようにすることが一番大事なことでございます。いろいろな規定のある限りのものを御利用願うということは、御熱心にやっておられまするその問題の人、また、そのまわりの人たちが気をつけてひとつやっていただく、それには私ども協力を惜しまないつもりでございます。そういうことを申し上げておきたいと思います。
  136. 神近市子

    神近分科員 私、大臣のいまの御心境には満足いたします。ともかく、御存じなかったということは事実でございますから、これからたくさんまた資料を出して御考慮願いたいと思います。  この福岡事件の第一審のときの裁判長が、中国人を呼び入れて、二人死刑にしたからがまんしろと言ったというようなあほうなことが一体あったのかということです。そしてそのときの状態を、私が駐留軍の圧迫があったということを申し上げたのは、いま大分で弁護士をしていらっしゃる松井さんという人の談話が出ておりますし、それから、そのときの第一席は小木さんといって、いま東京で弁護士をしていらっしゃって、前にここの調査室にいらした方で、私どもはよく知っております。ですから、こうやって実証する人があるわけです。駐留軍が来て、早くあの問題を解決しろ、早くやってしまえということで毎日のように来るので、裁判長が困って、そしてやったということは、松井さんという陪席判事の談話があります。そういうことも御考慮なさって、この第一審がいかなる条件のもとで行なわれたか、それから第二審は——第二審の人はだいへん元気のいい勇気もある人で、何か問題をよく調べていたのだけれど、最終審のときになって、この人はぽんとどこかへ連れていかれてしまって、筒井さんという人がやってきて、一審も開かないでいきなり判決をしてしまった、こういうことになっております。私は、そういうことも御配慮いただいて、ぜひこれは考えていただいて、どの方法か、再審法を暫定法でつくるか、あるいは検審庁法の第十四条を考慮していただくか、どちらかでひとつ究明していただきたいと思います。
  137. 井出一太郎

    ○井出主査 次に、丹羽兵助君。
  138. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)分科員 きょうは土曜のことで、十二時前後にはこの分科会の審議を終わろうじゃないかということになっておりました。ところが、あまりにも御熱心な御審議のために、つい時間が延びまして、大臣はじめ関係者並びに同僚の議員、事務局の方々にも、まことに人権を侵したような、たいへん御迷惑をかけておりますので、私は、たくさんお尋ねしようと思いましたが、きわめて簡単に一、二点だけをお尋ね申し上げて終わらせていただきたいと思います。  政治的な議論と申しますか意見は私はたぶん述べません。ただ、どのようになっておるかということだけをお聞かせいただければけっこうでございます。  お尋ねしたいその一つは、法をお守りくださる大臣のもとで、自由が奪われて、犯した罪のために服役をしておる諸君、やがては罪に報いて世に出て更生する人でありましょうが、また、そのために懲役もある、そうした服役をしておる諸君が、きわめて人情豊かな石井法務大臣でございますけれども、そういう服役者がどのような状態のもとに、どういうものを食べつつ服役をして、早く世の中に出たいと努力しておるか、一体こういう服役者がどういうものを食べて、また、どういう医療保護のもとに服役しておるかということをお考えくださったことが大臣にあるかどうかということをひとつ聞いておきたいと思います。ただいま申し上げましたように、私どもの先輩としてきわめて御人情の厚い大臣のことでございますからして、常に部下にお尋ねはいただいておるであろうと思いますけれども、重ねてその点を聞いておきたいと思います。  それはなぜかと申しますると、ただいま予算の審議でございますからして、私は予算の点だけを先日来ちょっと目を通して、特にあなたのほうの事務当局からいただいて、服役者が一体毎日どんなものを食べておるのか、そうして、その間において健康を害して、出てきたときに、社会人として働くだけの体力を保っていくだけの食料をとっておるかどうかということを心配をして調べてみたのです。お尋ねして調べていただきましたが、四十年度では少年院なんか三十三円七十二銭、四十一年度では三十六円八十六銭というのが予算で要求された。これは、特に若い方々で罪を終えればりっぱな体力を保って出てこなくちゃならぬ、それが四十一年度におきましても、今日のような物価高において三十六円八十六銭では一体ほんとうに、もちろんこれは主食は別で、副食代だけでしょうが、刑を終えて出てくる子供たち、このいま発育の盛りの者が一体そんなことでいいのかどうかということを私は心配するのです。それから、受刑者でございますが、これは四十年度が二十九円四十九銭、四十一年度では三十二円二十三銭を要求しておる程度だ。常識的に考えて、一体一日三十二円ばかりの副食代でいけるだろうかということを私は心配するのです。そういうことで、その点でお尋ねをするわけであります。  なぜ、こういうことを申し上げたかというと、私も罪を犯す者がいい人であるとは考えませんけれども、やはり罪を終えて出てくるときには更生をしていこう、こういう考えを刑務所の中で十分訓練されて修養されて出てくるのですから、やったことは悪いでしょうが、出てくる上は社会人として更生しょうという心がけに生まれかわって出てくるのですね。だから、そのおる間にこんなものを食わしてという感じになる。私も前に百日ぐらいお世話になったことがございます。何とネギのかわりにタマネギの、地方では捨てるところ——地方ではタマネギはまるいところより食べない。青いところは捨てるのですね。あの青いところを刑務所の中ではネギと称して食わしておるのですよ。これは大臣、お知りにならぬでしょうが、三十二円やそこらでやろうとすれば当然それをやらなくちゃならぬ。私はそんなことを批判するわけではございませんが、とにかく三十二円や三十六円でこれからからだができようとする少年、こうした子供の罪は罪として、発育していくに支障はないか、こういうことは大臣お尋ねするよりも、御心配を願っておりますところの局長さんか、あるいは、局長さんでなくてほかの方でもけっこうでございますが、私はそういうことを心配しつつお尋ねするのであります。  次に、もう一つ、ついでに、私は時間の関係で一ぺんに聞いておきたいのですが、やはり服役しておる諸君でも早く出てきたいし、健康なからだで帰ってきたいということを念願しておる。ところが、刑務所に入っておりますると、医療というのですか、こういう関係は全くゼロなんです。鼻の先に何ができたって薬を塗ってくれるわけじゃなし、かぜを引いたってなかなか見てもいただけない。薬はもちろんくれない。それはかわいそうなものなんです。もっと極端なことを申しますと、夏なんか全部の者が皮膚に発しんというのですか、ああいうものができます。ところが、それの手当ては全然しない。ふろなんかもちろん湯でない、水に入れるのです。手ぬぐいを頭の上に載せましてみんな用意どんでどぼんと入り込むのです。そのふろも水ぶろなんですが、ときに代議士だとか、参議院の先生方とか、あるいは法務省の監督者がそういうところへ御視察になるということになりますると、きたないふろの中に入れておけばおしかりを受ける。どうやってごまかすかと申しますと、どろ水のようなふろの中へ六一〇ハップを入れるのです。そうして水をかき回して、私どもの前で、実はみんな発しんが出ておるから、数日来薬ぶろに入れてその予防をし治療をしておるのだ。うその話なんです。どろ水のようなきたないふろの中に毎日入れておるのですけれども、監督者がいらしたときには薬を入れて、そして水をかき回して、ちょうどいなかの温泉のようなふうにして、こういうのに入れて治療をしており、予防しておりますと言って、私どもに服役者の前で平気で話していらっしゃる。こういうような一事を見ましても、いかに刑務所の中の医療施設というものが十分でないかということも私はわかっていただけるのではないか、こう思いますから、罪は罪でございますけれども、食わせるものはもう少し親切にしていただきたい。そうして、みんな人間として生きようとして努力するのですから、健康管理の問題も、地方のようなわけにはいかぬでしょうけれども、もう少し考えていただきたい。感謝はして出ぬでしょうけれども、おったときの恨みを持たずに出ていくような処遇をひとつしてやっていただきたいと私は思うわけであります。  それからもう一つ、ついでにお答えを願っておきたいのですけれども、あの中に働かれる監視と申しますか、看守でございますか、これは実に無味乾燥な中で、家から来るとあのへいの中に入って何にも見られぬ。中でつき合う連中は酒に酔ったようなやつばかり、悪いやつばかりなんですから、これは仕事とはいいながら全く世間離れした仕事をしていらっしゃる。だから、普通の公務員と同じようなわけに私はいかぬと思うのです。だからこういう看守に対しては、私は、特別な待遇等を考えていただかないと、せっかく更生しようとして服役しておる者にも看守の不平な気持ちがうつっていくということで、国家のためにならない、こういうように思います。私どもがこの目で見たり、この耳で聞いたり、世間で聞いておりますのは、看守が近ごろ非常に少ない、看守をやる希望者がない、やめたらもうあとの補充ができないというようなことで、こうした方々を監視していくにも不都合な点があるのではないか、私はこう思いますので、いま看守が足らぬと申しましたが、そのやめたのをどの程度補充しておられるか。いま大臣の所管のもとにある全国の施設の管理をしていかれる上に看守の不足というものはないか。地方で非常にこれに困っておる事実を私は知っておりまするので、こうした三点をお尋ね申し上げた次第であります。決して批判的な考えで私は申し上げたのではない。あくまでこうした方方があたたかい服役のもとに早く刑を終わって出て、りっぱな社会人として更生させたい、それには政府としても、一日三十三円でおかずが買えるのだという考え方は、そしてどぶ水のようなところに——えらい人が来たときには六一〇ハップを入れて、毎日温泉に入れておりますなんというようなことを、罪を犯した者の前で、監督者が監督者に報告する、犯罪を教えておる、うそを言うことを教えておるという点を申し上げて、もしこれに対するお答えがいただけたら私はたいへんしあわせだと思います。  私はそのお答えによってまた質問をしようとは考えておりません。ただ、お答えのみを要求いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  139. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまお尋ねの第一番目の食料問題でございます。これは大体においてみんな若い者が多いと思わなくちゃなりませんし、働けばよけいおなかもすくでしょうし、働きぐあいによってとらすカロリーの量を考えてやろうというような式にやっておるようでございます。金額はおっしゃったように少のうございますけれども、お話の中にありましたように、野菜の自給自足であるとか、あるいは大量購買とか、その他栄養士の指導によって、わりあいにカロリー量の多いものを支給するというような調理方法を教えるとかいうようなこと等で、値段の割りにはカロリー量の多いものをやっておる。標準のカロリーは、ただいまのところでは成人では副食を除きまして、平均三千カロリー、そのうち副食は五百カロリー。またこの最高は三千五百カロリーということになっております。それだから、一番上のほうは相当上で、下は、仕事につかない者は千八百カロリー、それから幾つも階段があるというのが基準でございます。そういうふうになっておるかどうか、実際上の問題はいろいろありましょう。基準はそういうことになっております。  それから少年のほうは、平均三千カロリーで副食が六百カロリー、成人よりも百カロリー多いということになっておるようでございます。多分そうだと思っております。これは記憶でございますから、違っておったらあとで直してもらいます。  これが基準でございますが、どういうふうにいっておりますか、経験者のお話でございますから、私どもあやしいかもわかりませんが、年々よくなりつつある、少しずつよくなりつつある、こう思うております。  それから中の待遇の問題、おふろなんか、私一番それを心配するのでありますが、私の見たのが少しいいところしか見ていないものですからどうも比較にならないと思いますが、私、法務大臣になって見たのは、郷里に帰ったとき、福岡の刑務所で、最近できた非常にりっぱな刑務所でございますから、少しよ過ぎるところを見ておるのですから、これは比較にならない。これで全般を推すわけにはいかぬと思います。もっとはかのところを見なければならぬと思いますが、これは非常にふろ場なんかもりっぱにできております。水だけじゃありません、お湯もちゃんと出るように、いろいろやっておるようでございます。ここよりもほかはもっと悪い状態であるだろうと想像できます。しかし、衛生状態をよくして、健康状態をよくして、中におる間に、仕事もしなかった者が仕事も覚えて、外に出てまた再犯しないようにすることが一番大事なことでございますし、ほがらかな社会人になってくれることがねらいでございますから、中に入ってかえって悪くなっていくようなことでは目的を達しないのでございますから、そういうふうな心持ちで待遇等に非常に心しなければならぬというつもりで私は見ておるつもりでございます。まだまだ至らぬ点が相当あると思うのでございますが、いまのような点に力をいたしてみたいと思います。  それに関連しまして、やはり第三におっしゃった、それを世話しておる看守の諸君の心持ちが非常に響くものだろう、特に若い連中を指導していくのでありますから、これの響きが大雪いだろう。福岡の例をとりますと、福岡のずっと町からはずれました宇美という町にあるものですから、そこらに集団的に看守諸君は住んでおります。どういうふうにしておるかといいますと、集団的におるために、家族的のつき合いもよくて、非常に気持ちよくお互いにつき合いなんかし合っておる。空気もいいし、生活状態も非常に楽で、落ちついたいい生活、ただ少しさびしいだけだというようなことをその諸君も言っておりました。こういうような集団生活をして、非常に気持ちよくやっておるというようなことを聞いておりまして、そういうようなことがいいのか、町の中に溶け込んでおるのがいいのかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、この人たちが気持ちよく仕事についてくれて、そうしてみんなを導いてくれるということがほんとうに大事なことだと思います。いまの三つのお話のことは一体になって考えなくちゃならぬ問題だと思うのであります。もっと詳しく、またもっと実情に即した話は局長からひとつ申し上げます。
  140. 布施健

    ○布施政府委員 ただいま大臣から申し上げましたことにつきまして、多少補足さしていただきます。  まず収容者の食料の問題でございますが、これはこまかく申し上げますと、ただいま国会で御審議をいただいております予算案が通りますれば、菜代につきましては、被告人につきまして、一人二円五十五銭、それから成人の受刑者が二円七十四銭、少年受刑者と少年院及び婦人補導院、これらが三円十四銭、それから少年鑑別所、これが三円三十五銭という値上げとなるわけでございます。これは前年度の四十年度に比較いたしまして九・三%の増ということに相なります。  なお、主食につきましては基準量がきまっておりまして、米麦の値上がりに伴いまして八・六%の増ということで予算案に盛られてあるわけでございます。これによりまして、先ほど法務大臣から申し上げましたように四十一年度の給食を実施していくわけでございますが、その摂取いたしますカロリーにつきましては、ただいま法務大臣から申し上げましたようなことになりますが、刑務所におきまして平均が三千カロリーでございます。少年院も三千カロリー、それから少年鑑別所で二千九百カロリー、婦人補導院二千五百カロリー、このうち刑務所それから婦人補導院、これらの副食での摂取カロリーがそれぞれ五百カロリー、あと少年院につきましては六百カロリーということに相なります。したがいまして、先ほど法務大臣から申し上げました中に千八百カロリーというのが出ましたが、これは刑務所における成人受刑者の主食の最低のものでございまして、これに副食の五百カロリーがつけ加わる。したがいまして、最低が二千三百カロリー、最高は三千五百カロリーということに相なるわけでございます。
  141. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)分科員 一人当たり金額にしては……。それだけ取るのについて金額は私の申し上げたのと違いがあるわけです。
  142. 布施健

    ○布施政府委員 一人当たりの副食費は、ただいま申し上げましたような金額になるわけでございます。主食の一人当たりの金額、ちょっとただいまここへ数字を持っておりませんので御了承願いたいと思います。これは基準量がきまっております。これらの増額が認められますならば、法務大臣から申し上げましたように、自家生産の野菜あるいは大量購入によるコストダウンといったようなものを活用しますとともに、なお給食の技術面、栄養士による指導といったようなこととあわせて、今後、ただいま申し上げましたようなカロリーを摂取するのに事欠くことはなかろうと存じておる次第でございます。  その内容につきましては、その中にたん白質、これは全部で刑務所では一日三十八グラム、それから動物性たん白質が十八グラム、脂肪十七グラム、少年院につきましては六百カロリーの熱量の中に全たん白質四十五グラム、動物性たん白質が二十グラム、脂肪が十七グラムこれが入っておるように食料の標準栄養量というものをきめまして、これがそのまま行なわれますように指導いたしておるわけでございます。  したがいまして刑務所におきます受刑者の健康状態等につきましては、もちろん入所時に健康診断をいたしますし、その他申し出があった場合に診断、治療を施すということにいたしておるわけでございます。それらにつきまして医療器具、器械、こういうものはできるだけ整えてまいりましたが、昭和四十一年度の予算におきましては、薬代、これは消化器系消化薬、それから精神病薬、これらにつきまして合わせて四百五十八万三千円の増額が認められておるわけでございます。  刑務所におきます医者の配置につきましては、ただいま定員が二百二十名でございます。そのうち二百十四名を充足しておるわけでございます。各刑務所につきましては、各本所には最低一人の医官、医者がおる。それから支所につきましては非常勤の医者を頼みまして、必要のつど来てもらうという措置を講じておるわけでございます。ただ、このお医者さんのほうは、どこもそうでございますが補充が非常に困難でございますので、地域によりましては必ずしも医療が思うとおりに十分にいかないといううらみもないわけではございません。したがいましてそれらのものにつきましてはなるべく医療の充実した施設へ移して、長期療養を要するような者はそういう施設へ移して療養させるというような措置を講じておるわけでございまして、今後なお医療の施策の充実を期待し得るように、たとえば大学の所在地、医科大学の所在地、そういったようなところにつきましてこの医療設備を充実していきたい、かように考えておる次第でございます。  刑務所におきます健康管理の問題から、ただいまここに資料としまして病死による死亡者数の統計だけ持っておりますが、これによりますと昭和四十年の死亡者は、受刑者が七十五名、それから拘置所等がございまして全部で八十五名となっております。その前の年の昭和三十九年は全部で九十七名ということに相なっております。その数の多いおもなものは結核、これも肺結核でなくなるものだけではなくて、その他のものが多いように見られますが、それからガンとか肉腫、それから脳出血、心臓疾患、胃かいようといったような病名によるものが数が多いわけでございます。この死亡率は、比較するものがないものでございますからいかがかとは存じますけれども、大体刑務所に在監しております者二十歳から六十九歳ぐらいまでと見まして、厚生統計協会の統計に載っております死亡者の中からその同年齢二十歳から六十歳ぐらいの死亡率を拾ってみますると、昭和三十八年の統計しかございませんが、刑務所においては千人について一・五人、それから一般の社会におきましては千人について四・九人というような数字が出てまいります。これが必ずしも適切な比較であるかどうかは疑わしいと存じますが、比較するものがございませんのでそのようなものを参考にし、医療、健康管理につきまして私どもといたしましても懸命に努力いたしておる次第でございますし、また今後とも努力してまいりたいと存じております。  次に、刑務所の看守の問題につきまして御理解あるおことばをいただいたのでございますが、刑務所の看守の定員は、ただいま一万二千八十九名でございます。それに対しまして、本年二月一日現在の欠員六十五名ということに相なっております。これを充足いたしますについて、応募者、これは御指摘のように従来非常に少なかったと思うのでございますが、本年は、勧奨退職等もございますし、これらによってやめてまいりますのが全国で大体五百名ぐらいと見まして、それに対しまして、三千名をこえる応募者があるわけでございまして、その補充につきましては、本年は特に心配することはないように考えておるわけでございます。  その勤務が非常に過激であるために応募者がないのではないかというような御指摘もいただいたようでございますけれども、勤務につきましては、これは日勤と昼夜勤とあるわけでございます。昼夜勤につきましては、これは保安看守でございますが、一週間の拘束時間五十一時間というふうになっております。そのほかに、非番のときになお勤務しなければならないというようなときのあることも事実でございまして、刑務所におきましては、祝祭日あるいは日曜といったようなときを使って、社会教育あるいはいろいろなレクリエーション行事等をいたすわけでございます。そのようなことのために時間外の勤務を余儀なくされる場合があるわけでございます。これに対しましては、看守一人当たり月三十二時間の超過勤務手当をつけていただいておるわけでございますが、保安職員のほうが非常に多忙であるということで超過勤務がふえれば、事務職員のほうを減らしてもそちらを十分にまかなっていきたいという方針で指導しておるわけでございます。  以上のようなことに加えまして、待遇改善の一助といたしまして、本年度は、人事院と折衝いたしまして、看守は、公安職俸給表(一)というのがございます。それの七等級だけでございましたが、本年度からはそのうち五百七十五名につきまして一つ上のランクの六等級の定数をいただくこととなり、それを期待しておるわけでございます。  以上のように、看守の勤務条件等につきましてもできるだけ努力いたしますとともに、そのほかにも、宿舎の手当てといったようなことに努力して、待遇を改善していく、そして質のよい看守を採用していきたい、かように念じておるわけでございます。
  143. 井出一太郎

    ○井出主査 これにて法務省所管についての質疑は一応終了いたしました。  明後二十八日月曜日は午前十時より開会し、文部省所管についての質疑を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時十四分散会