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1966-02-24 第51回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十一年二月十九日(土曜日)委 員会において、設置することに決した。 二月二十三日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       井出一太郎君    小川 半次君       丹羽 兵助君    西村 直己君       福田  一君    水田三喜男君       八木 徹雄君    多賀谷真稔君       野原  覺君    山中 吾郎君 二月二十三日  井出一太郎君が委員長指名で、主査選任さ  れた。 ――――――――――――――――――――― 昭和四十一年二月二十四日(木曜日)    午前十時十二分開議  出席分科員    主査 井出一太郎君       小川 半次君    丹羽 兵助君       福田  一君    水田三喜男君       八木 徹雄君    坂本 泰良君       中嶋 英夫君    野原  覺君       山中 吾郎君    兼務 川俣 清音君 兼務 受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         総理府事務官         (賞勲局長)  岩倉 規夫君         宮内庁次長   瓜生 順良君         総理府事務官         (宮内庁長官官         房皇室経済主         管)      並木 四郎君         科学技術政務次         官       田川 誠一君         検     事         (大臣官房経理         部長)     勝尾 鐐三君         検     事         (刑事局長)  津田  實君  分科員外出席者         衆議院事務総長 久保田義麿君         衆議院参事         (庶務部長)  大久保 孟君         参議院参事         (管理部長)  佐藤 吉弘君         裁判官弾劾裁判         所参事         (事務局長)  内田 喜一君         裁判官訴追委員         会参事         (事務局長)  中川  衞君         国立国会図書館         副館長     岡部 史郎君         最高裁判所事務         総長      岸  盛一君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      岩野  徹君         判     事         (最高裁判所事         務総局家庭局         長)      細江 秀雄君     ――――――――――――― 二月二十四日  分科員賀谷真稔委員辞任につき、その補欠  として坂本泰良君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員坂本泰良委員辞任につき、その補欠と  して中嶋英夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員中嶋英夫委員辞任につき、その補欠と  して多賀谷真稔君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  第四分科員川俣清音君及び第三分科員受田新吉  君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所内閣総理府防衛庁及び経済企画庁  を除く)、法務省及び文部省所管  昭和四十一年度特別会計予算文部省所管      ――――◇―――――
  2. 井出一太郎

    井出主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  私が本分科会主査をつとめることになりましたので、よろしく御協力をお願い申し上げます。  本分科会は、皇室費国会裁判所内閣総理府防衛庁及び経済企画庁を除く)、法務省及び文部省所管並びに他の分科会所管以外の事項について審査を行なうことになっております。  本分科会審査日程は、一応分科員各位のお手元にお配りいたしてあるとおりでございます。  それでは、昭和四十一年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所内閣防衛庁及び経済企画庁を除く総理府法務省及び文部省所管昭和四十一年度特別会計予算文部省所管を議題といたします。  順次関係当局より説明を求めます。  まず、皇室費説明を求めます。並木皇室経済主管
  3. 並木四郎

    並木政府委員 昭和四十一年度皇室費歳出予算について、その概要を御説明いたします。  本歳出予算に計上いたしました金額は四十三億九千九百八十五万二千円でありまして、その内訳は、内廷費六千八百万円、宮廷費四十二億九千二百十七万二千円、皇族費三千九百六十八万円であります。これを前年度予算に比較いたしますと、四億八千二百三十九万九千円の増加となっております。  そのおもなものについて事項別に申し述べますと、内廷費は、皇室経済法第四条の規定に基づき同法施行法第七条に規定する定額を計上したもので、前年度と同額となっております。  宮廷費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上いたしたものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費一億八千七十五万七千円、前年度より仕上げ工事に着手いたしました宮殿の新営及びこれに関連する施設等に必要な経費三十三億四千二百九十七万一千円、皇居東側地区整備に必要な経費三億五千九万二千円、その他皇室用財産管理等に必要な経費四億一千八百三十五万二千円でありまして、前年度に比較いたしますと、四億八千百四十六万九千円の増加となっております。  皇族費は、皇室経済法第六条の規定に基づき同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上いたすことになっておりますが、前年度より九十三万円の増加となっております。これは、独立の生計を営まない親王のうち成年に達した者に対する年額を改めることによるものであります。  以上をもちまして、昭和四十一年度皇室費歳出予算概要説明を終わります。よろしく御審議あらんことをお願いいたします。     ―――――――――――――
  4. 井出一太郎

    井出主査 次に、衆議院予算説明を求めます。大久保庶務部長
  5. 大久保孟

    大久保参事 昭和四十一年度衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  昭和四十一年度国会所管衆議院関係歳出予算要求額は六十六億六千二百六十八万二千円でありまして、これを前年度予算額七十五億千三百九十七万六千円に比較いたしますと、八億五千百二十九万四千円の減少となっております。  次に、この要求額を各事項について御説明申し上げます。  まず第一に、国会運営に必要な経費といたしまして六十二億二百九十六万円を計上いたしております。これは議員関係の諸経費及び事務局法制局所掌事務を処理するため必要な経費でありまして、これを前年度予算額に比較いたしますと、一億九十二万四千円の増加となっております。  第二は、衆議院営繕工事に必要な経費といたしまして四億五千二百七十二万二千円を計上いたしております。これは委員会庁舎及び国会記者事務所の新営並びに議員会館駐車施設増築等に必要な経費でございます。  第三に、国会予備金に必要な経費といたしまして、前年度と同額の七百万円を計上いたしております。  以上、簡単でございますが、衆議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。     ―――――――――――――
  6. 井出一太郎

    井出主査 次に、参議院予算説明を求めます。佐藤管理部長
  7. 佐藤吉弘

    佐藤参議院参事 昭和四十一年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  昭和四十一年度国会所管参議院関係歳出予算要求額は四十億五千七百九万二千円でありまして、これを前年度予算額四十二億一千六百四十六万三千円に比較いたしますと、一億五千九百三十七万一千円の減少となっております。  次に、この要求額を各事項について御説明申し上げます。  まず第一に、国会運営に必要な経費として三十七億四千七百九十四万七千円を計上いたしております。これは議員関係の諸経費及び事務局法制局所掌事務を処理するため必要な経費であります。前年度予算額に比較いたしますと、四千三百九十四万五千円の減少となっております。  第二は、参議院営繕工事に必要な経費として三億四百十四万五千円を計上いたしております。これは電話交換所の新営及び議員会館駐車施設増築等に必要な経費であります。前年度予算額に比較いたしますと、一億一千五百四十二万六千円の減少となっております。  第三に、国会予備金に必要な経費といたしまして、前年度と同額の五百万円を計上しております。  以上、簡単でありますが、参議院関係概要でございます。     ―――――――――――――
  8. 井出一太郎

    井出主査 次に、国立国会図書館予算説明を求めます。岡部館長
  9. 岡部史郎

    岡部国立国会図書館館長 昭和四十一年度国会所管国立国会図書館歳出予算について御説明申し上げます。  まず、昭和四十一年度歳出予算要求総額は十七億一千一百七十六万九千円でございまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、六億五千六百十二万四千円の増加となっております。  次に、要求のおもな事項について御説明申し上げます。  第一に、国立国会図書館維持管理に必要な経費といたしまして八億六千二百五十万四千円を計上いたしております。これは人件費及び一般事務処理庁舎維持等に要する経費でございます。  第二に、業務運営に必要な経費といたしまして二億三千四百五十六万一千円を計上いたしております。これは、図書館資料を購入するための経費一億四千九百二十八万円をはじめ、立法調査業務図書館資料の収集・整理・利用、目録・書誌の作成写真複製業務印刷カード作成業務図書館間協力業務科学技術関係資料整備等に要する経費でございます。  第三に、営繕工事に必要な経費として六億一千四百七十万四千円を計上いたしております。これは国立国会図書館庁舎第二期工事の初年度に必要な経費でございますが、建築の主体工事に要する経費につきましては、別途国庫債務負担行為として十四億一千五百四十六万九千円を要求いたしております。これによりまして、国立国会図書館庁舎第二期工事昭和四十三年度中に完成する予定となっております。  以上、はなはだ簡単な説明でございますが、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  10. 井出一太郎

  11. 中川衞

    中川裁判官 訴追委員会参事 裁判官訴追委員会予算につきまして御説明申し上げます。  裁判官訴追委員会における昭和四十一年度歳出予定経費要求額は千七百三十三万四千円でありまして、これを前年度予算額千五百五十五万三千円に比較いたしますと、百七十八万一千円の増加となっております。  この経費裁判官訴追委員会における委員長職務雑費及び事務局職員給与に関する経費並びに訴追事案審査に要する旅費その他の事務費でありまして、前年度に比し増加となっておりますもののうちおもなものは、職員俸給等増加によるものであります。  何とぞよろしく御審議いただきたいと存じます。     ―――――――――――――
  12. 井出一太郎

  13. 内田喜一

    内田裁判官弾劾裁判所参事 昭和四十一年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係歳出予算の御説明を申し上げます。  昭和四十一年度裁判官弾劾裁判所予定経費要求額は一千八百八万九千円でありまして、これを前年度予算額一千六百七十九万五千円に比較いたしますと、百二十九万四千円の増加となっております。  次に、この要求額事項別に御説明申し上げます。  まず、裁判官弾劾裁判所運営に必要な経費として一千七百八十一万七千円を計上いたしております。これは裁判長職務雑費委員旅費及び事務局人件費事務処理費等でありまして、増加額のおもなものは、職員俸給等増加によるものであります。  次に、裁判に必要な経費として二十七万二千円を計上いたしております。これは裁判官弾劾法に基づく裁判官弾劾裁判に直接必要な旅費庁費等であります。  以上、簡単でありますが、裁判官弾劾裁判所関係概要でございます。     ―――――――――――――
  14. 井出一太郎

  15. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 昭和四十一年度裁判所所管予定経費要求額について御説明申し上げます。  まず、昭和四十一年度裁判所所管予定経費要求額総額は三百十五億五千七百二十六万一千円でありまして、これを前年度予算額二百八十三億七千十万六千円に比較いたしますと、差し引き三十一億八千七百十五万五千円の増加になっております。この増加額内訳を大別して申し上げますと、人件費において二十一億二千百七十三万円、営繕費において四億八千四百六十八万九千円、裁判費において三億九千六十二万九千円、その他司法行政事務を行なうために必要な旅費庁費等において一億九千十万七千円であります。  次に、昭和四十一年度予定経費要求額のうちおもな事項について御説明申し上げます。  まず第一に、臨時司法制度調査会意見実現経費であります。昭和三十九年八月、臨時司法制度調査会が決定した意見を実現するに必要な経費として、最高裁判所裁判官退職手当増額に要する経費二千五百八十七万五千円、執務体制確立に伴う施設整備に要する経費二億五千九百二十五万八千円、補助機構充実として地方裁判所調査官六人の増員に要する人件費五百三十七万六千円、裁判事務処理に要する能率器具自動車等整備経費八千四百六十八万七千円、裁判所配置改善に要する経費百三十万四千円、新任判事補補修に要する経費百五十三万一千円、合計三億七千八百三万一千円が計上されました。  次に、裁判官等増員に必要な経費でありますが、高等裁判所における事件処理正常化と訴訟の促進をはかるため、判事二十七人、裁判所書記官二十七人の増員に要する人件費六千三百四十四万一千円、家庭裁判所事件処理につき家庭裁判所調査官二十五人の増員に要する人件費一千二百三十五万三千円、合計七千四百七十九万四千円が計上されました。  次に、営繕に必要な経費でありますが、まず、裁判所庁舎継続工事二十四庁舎新規工事庁舎の新営工事費として二十五億一千百三十九万一千円、その他、法廷の増築庁舎補修等施設整備費として二億二千百十七万五千円、庁舎新営に伴う敷地買収のための不動産購入費及び換地清算金として四千二百四十六万円、以上の諸経費と、前に申し上げました臨時司法制度調査会意見実現経費のうち執務体制確立に伴う施設整備に要する経費とを合わせまして、合計三十億三千四百二十八万四千円が計上されました。また、このほかに、最高裁判所庁舎敷地取得のため、十五億円を限り、昭和四十二年度において国庫負担となる契約を、昭和四十一年度に結ぶことが認められました。  最後に、裁判に必要な経費であります。これは、裁判に直接必要な経費でありまして、国選弁護人報酬、証人、調停委員等の日当、その他裁判に直接必要な旅費庁費等として二十三億一千六百九十二万七千円が計上されました。なお、この経費には、執行吏国庫補助基準額増額するに必要な経費として二百七十四万八千円、国選弁護人報酬を約一〇パーセント増額するに必要な経費として二千六百三十三万五千円、計二千九百八万三千円が含まれております。  以上が昭和四十一年度裁判所所管予定経費要求額の大要でございます。よろしく御審議のほどお願いいたします。     ―――――――――――――
  16. 井出一太郎

    井出主査 次に、内閣及び総理府所管説明を求めます。安井総理府総務長官
  17. 安井謙

    安井国務大臣 昭和四十一年度における内閣及び総理府所管歳出予算案について、その概要を御説明いたします。  内閣所管昭和四十一年度における歳出予算要求額は二十四億八千二百八十一万九千円でありまして、これを前年度歳出予算額十九億三千二百七十六万一千円に比較いたしますと、五億五千五万八千円の増額となっております。  内閣所管歳出予算に計上いたしましたものは、内閣官房内閣法制局、人事院及び国防会議事務執行に必要な経費であります。  次に、総理府所管昭和四十一年度における歳出予算要求額は七千百七十一億八百二十九万四千円でありまして、これを前年度歳出予算額六千三百五十八億一千八百六十二万三千円に比較いたしますと、八百十二億八千九百六十七万一千円の増額となっております。  総理府所管歳出予算に計上いたしましたものは、総理本府のほかに、公正取引委員会国家公安委員会土地調整委員会及び首都圏整備委員会の四つの委員会と、宮内庁行政管理庁北海道開発庁、防衛庁経済企画庁及び科学技術庁の六庁の外局に関するものでありますが、このうち、防衛庁に関する歳出予算計上額三千四百六億三千五百四十七万四千円、経済企画庁に関する歳出予算計上額二百六十六億二千九百五十二万四千円につきましては、他の分科会において御審議を願っておりますので、それ以外のおもなる経費について、以下予定経費要求書の順に従って事項別に申し述べますと、総理本府に必要な経費一千八百七十八億三百五十九万八千円、警察行政に必要な経費二百七十七億五千四百九十九万八千円、行政管理庁に必要な経費三十五億六千四百九十六万二千円、北海道開発事業に必要な経費一千八十二億六千九百二十一万五千円、科学技術庁に必要な経費二百五億八百十三万二千円等であります。  なお、総理本府に必要な経費は、総理本一般行政等に必要な経費五十二億九千七百九十万五千円、恩給支給に必要な経費一千七百六十五億五千二十六万三千円、沖繩財政援助等に必要な経費五十九億五千五百四十三万円であります。  次に、その概要を御説明いたします。  総理本一般行政等に必要な経費は、行政施策に関する広報活動積極的推進生存者及び戦没者等の叙勲、青少年対策推進、農地被買収者等に対する給付金支給及び決定の事務、在外財産問題の調査、新生活運動助成国民体力増強及び各種統計調査等のための経費でありますが、昭和四十年国勢調査に必要な経費の減がありますために、前年度に比較して十四億三千四百十万七千円の減額となっております。  恩給支給に必要な経費は、恩給法等に基づいて、退職した文官、旧軍人及びその遺族等に対して年金または恩給支給するための経費でありまして、昭和四十一年度におきましては、新規裁定失権等に伴う増減がありますほか、新たに恩給改正措置のための経費を計上しておりますために、前年度に比較して百九十一億五千五百二十二万三千円の増額となっております。  沖繩財政援助等に必要な経費は、沖繩における義務教育教職員給与費に対する半額負担学校施設整備等教育関係社会福祉及び医療関係産業開発関係技術関係援助南方同胞援護会に対する補助のための経費でありまして、前年度に比較して二十九億六千五百五十五万一千円の増額となっております。なお、教育医療等援助経費につきましては、その執行にあたって必要に応じそれぞれ関係各省所管に移しかえて使用されるものであります。  警察行政に必要な経費は、警察庁及びその付属機関並びに地方機関経費及び都道府県警察補助のための経費でありまして、前年度に比較して二十九億七千二百五十八万四千円の増額となっております。  行政管理庁に必要な経費は、行政管理庁及びその付属機関並びに地方機関経費及び都道府県に配置されている統計専任職員費でありまして、前年度に比較して四億五千百四十七万六千円の増額となっております。  北海道開発事業に必要な経費は、北海道における土地改良農用地開発、漁港、住宅、林道及び造林事業等経費と、治山、道路整備及び港湾整備事業等経費に充てるための財源の各特別会計への繰り入れ金等経費でありまして、前年度に比較して百三十四億四千五十三万二千円の増額となっております。なお、事業費については、その執行にあたって必要に応じそれぞれ関係各省所管に移しかえて使用されるものであります。  科学技術庁に必要な経費は、原子力平和利用促進宇宙開発推進科学技術重要総合研究推進試験研究機関整備充実等のための経費でありまして、前年度に比較して三十六億八千五百九十五万四千円の増額となっております。なお、試験研究費につきましては、その執行にあたって必要に応じそれぞれ関係各省所管に移しかえて使用されるものであります。  なお、総理府所管におきましては、ほかに国庫債務負担行為四十三億六百五十四万四千八百五十二円を計上いたしております。そのおもなるものは、総理本府におきましては、沖繩先島地区テレビ放送施設整備等について四億三千三百七十八万九千八百五十二円、科学技術庁におきまして、日本原子力研究所出資原子燃料公社出資航空宇宙研究施設整備潜水調査船建造及び核燃料物質購入等について三十五億一千五百七十五万五千円であります。  以上をもちまして、昭和四十一年度内閣及び総理府所管歳出予算計上額説明を終わります。  なお、詳細につきましては、御質問に応じまして関係政府委員からお答えをいたすことにいたします。  よろしく御審議くださいますようお願いいたします。     ―――――――――――――
  18. 井出一太郎

  19. 田川誠一

    田川政府委員 昭和四十一年度における科学技術庁予算について、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十一年度総理府所管一般会計予算要求額のうち科学技術庁予算要求額は、歳出予算額二百五億八百十三万二千円、国庫債務負担行為額三十五億一千五百七十五万五千円でありまして、これを前年度予算額歳出予算額百六十八億二千二百十七万八千円、国庫債務負担行為額十七億八千七百九万四千円に比較いたしますと、歳出予算額三十六億八千五百九十五万四千円、国庫債務負担行為額十七億二千八百六十六万一千円のそれぞれ増額となっております。  次に、予算要求額のうちおもなるものについて、その大略を御説明いたします。  まず、歳出予算といたしましては、第一に、科学技術庁一般行政費並びに科学技術会議及び原子力委員会等各種審議会運営費並びに資源の総合的利用方策調査等に必要な経費をはじめとし、科学技術者資質向上のための経費発明実施化促進をはかるための助成費科学技術試験研究に対する助成費及び低温流通機構調査等に必要な経費として十三億三千百四十八万二千円を計上いたしました。これは前年度予算額に対し三億五万三千円の増額となっております。  第二に、重要総合研究推進のための特別研究促進調整費潜水調査船建造費並びに原子力平和利用推進するための試験研究費及び助成費並びに放射能安全対策のための調査研究費等として二十一億三百五万九千円を計上いたしました。これは前年度予算額に対し四億六千八百二万八千円の増額となっております。  なお、これらの経費のうち一部は、その執行にあたって必要に応じそれぞれ関係各省所管に移しかえて使用されることになっております。  第三に、宇宙開発推進防災科学技術促進航空技術向上金属材料等の品質の向上非金属無機材質創製研究放射線医学総合研究等を実施いたしますための当庁所管試験研究機関経費として四十億七千七百五十九万一千円を計上いたしました。これは前年度予算額に対し四億三千六百八十七万三千円の増額となっております。  第四に、理化学研究所、日本原子力研究所原子燃料公社日本科学技術情報センター等科学技術の振興に寄与させるため当庁の監督下に設けられました特殊法人に対し政府出資金を交付するため必要な経費として百二十九億九千六百万円を計上いたしました。これは前年度予算額に対し二十四億八千百万円の増額となっております。  なお、潜水調査船の建造、核燃料物質の購入、航空宇宙関係研究施設整備、原子炉その他の研究施設整備、使用済核燃料の再処理施設の詳細設計等を実施いたしますには多くの日数を要しますので、昭和四十一年度において、あらかじめ国庫負担となる契約を結ぶ必要がありますので、国庫債務負担行為の限度額として三十五億一千五百七十五万五千円を計上いたしました。  また、原子力損害を賠償することにより生ずる原子力事業者の損失を国が補償するため、原子力事業者とあらかじめ補償契約を締結することのできる金額の限度額を十七億円と予定いたしました。  以上、簡単でありますが、昭和四十一年度科学技術庁予算について、その概略を御説明申し上げました。よろしく御審議のほどお願いいたします。     ―――――――――――――
  20. 井出一太郎

    井出主査 次に、法務省所管予算説明を求めます。石井法務大臣。
  21. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 昭和四十一年度法務省所管予算の内容につきまして、大要を御説明申し上げます。  昭和四十一年度の予定経費要求額は五百九十四億八千五百六十万二千円であります。このほかに官庁営繕費として建設省所管予算中に三億一千七百万円が計上されております。前年度当初予算額五百四十三億三千六百三十四万三千円と比較いたしますと、法務省所管分は五十一億四千九百二十五万九千円の増額となっておるのであります。なお、前年度の補正後予算額五百五十七億六千六百五十二万一千円と比較いたしますと、三十七億一千九百八万一千円の増額となっておる次第でございます。  増減の詳細は別途の資料によって御承知をお願いいたしたいのでありますが、増額分の内訳を大別いたしまして御説明いたしますと、第一に、人件費関係では四十二億八千七百六十九万六千円でございます。これは昨年実施されました公務員給与ベースの改定に伴いまする増額分及び昇給等原資としての職員俸給等増額分がおもなものでありますが、そのほかに、検事、法務事務官等百七十二名、これはただし組織内部の凍結欠員解除によって充当いたしたのでございまするが、この増員に伴う所要人件費が含まれておるのであります。  この際、増員百七十二名の内容について申し上げますと、第一に、公判審理を迅速化するための検事が五名、検察事務官が十名、計十五名、第二に、非行青少年対策を強化するために二十五名、うち、少年院補導力の強化のための教官が二十名、少年鑑別所鑑別業務充実のための鑑別技官が三名ということになっております。第三に、登記事件の増加に対処いたしまして、その事務処理を円滑適正化するための事務官が百二名の増員ということになっております。第四に、大韓民国国民の日本国における永住許可事務を円滑に処理いたしますために、法務事務官が法務本省におきまして七名、入国審査官が地方入管事務所におきまして二十三名、計三十名となっておるのでございます。検事五名につきましては、検察事務官の欠員から振りかえしますし、また、法務事務官等百六十七名につきましては、内部組織の凍結欠員の解除の方法により振りかえ充当することとなっておりますが、在外公館要員といたしまして法務事務官一名が外務省所管に振りかえ計上されることになっておりますので、来年度の定員の上では一名減員となっておるのでございます。  第二に、営繕施設費の五百九十六万一千円でございます。これは、四十年度に計上されました滋賀、松江刑務所施設取得費三億四千八百六十万八千円が減額となりましたが、法務局等施設の新常費等に三億五千四百五十六万九千円の増額となっておりますので、結局五百九十六万一千円と増額となったのでございます。  なお、建設省所管計上の官庁営繕費につきましては一億二千二百六十八万二千円が増額されておるのでございます。  第三に、一般事務費といたしまして八億五千五百六十万二千円であります。これは、事務量の増加に伴いまして増額されたもののほか、積算単価の是正及び職員等の執務環境または矯正関係等収容者の処遇等の改善に伴う増額分等でございます。  次に、昭和四十一年度新たに予算に計上された事項経費について申し上げますと、第一には、昭和四十年六月三日第四十八回通常国会で成立した農地被買収者等に対する給付金支給に関する法律に基づきまして、登記所において農地等所有関係証明事務を行なっておりますが、これに要する経費といたして一億四百八十七万円が計上されておるのであります。  第二に、昭和四十年度補正予算に計上されましたが、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法に基づきまして、永住許可事務の処理を円滑適正に実施する必要がありますので、これに要する経費といたしまして、前述の三十名の増員のほか、六千四百三十六万九千円が計上されております。  次に、おもな事項経費について、概略を御説明申し上げます。  第一に、外国人登録法に基づきまして在日外国人の登録及び指紋採取の事務を処理するために要する経費といたしまして一億四千八百二十四万円。  第二に、法務局、地方法務局等において登記、台帳、供託、戸籍等の事務を処理するために要する経費として八億八千八百五十六万八千円。  第三に、検察庁において処理する一般刑事事件その他各種の犯罪事件の直接検察活動に要する経費といたしまして七億一千九百四十万二千円。  第四に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院の昭和四十一年度一日平均収容予定人員七万六千七百三十人の衣食、医療及び就労等に要する経費といたしまして六十五億一千六百六十二万九千円が計上されております。  第五に、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基づき刑余者及び執行猶予者を補導監督いたしましてこれを更生させるための補導援護に要する経費といたしまして九億二千三百五十三万九千円。  第六番目に、出入国管理令に基づき出入国の審査並びに在日外国人の在留資格の審査事務を処理し、また不法入国者の退去を強制される者の護送、収容、送還に必要な衣食、医療等に要する経費といたしまして九千二百九十万一千円。  第七番目に、公安調査庁において処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費といたしまして九億四千二百八十六万四千円。  第八に、法務局、検察庁等の庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営、整備に要する経費といたしまして三十二億二千八百六万六千円が前年度に引き続き計上されております。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の大要でありますが、このほか、東京拘置所、その他の施設を処分することによりまして、新たに東京拘置所、多摩刑務所、これは仮称でございます。川越少年刑務所、これは浦和拘置支所を含んでおります。これも仮称であります。岡山刑務所、旭川刑務所の各施設取得にかかりまする総額五十七億三千五十九万九千円の国庫債務負担行為要求いたしておるのでございます。  最後に、当省主管歳入予算について一言御説明申し上げますが、昭和四十一年度法務省主管歳入予算額は三百七億五千八百五十八万三千円でありまして、前年度当初予算額二百十八億一千九百四十五万一千円に比較しますと八十九億三千九百十三万二千円の増額となっており、また、前年度の補正後予算額三百一億一千二百三十五万一千円に比較しますと六億四千六百二十三万二千円の増額となっております。これは過去の実績等を基礎として算出したものでありまして、増額となったおもなものは、罰金及び科料と刑務作業収入でございます。  以上、法務省関係昭和四十一年度予算について、その概要を御説明申し上げました。よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  22. 井出一太郎

    井出主査 次に、文部省所管予算説明を求めます。中村文部大臣。
  23. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 昭和四十一年度文部省所管予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、文部省所管一般会計予算額は五千八十七億六千七百十八万八千円、国立学校特別会計予算額は千九百五十三億六千四百三十八万九千円でありまして、その純計は五千四百二十六億五千百七十八万六千円となっております。この純計額を前年度当初予算と比較いたしますと、およそ六百二十六億円の増額となり、その増加率は一三%になっているわけでありますが、義務教育国庫負担金の給与費を除いた一般会計予算額の増加率は一七・五%となっております。  以下、昭和四十一年度の予算案におきまして、特に重点として取り上げました施策について御説明申し上げます。  まず第一は、初等中等教育の改善充実であります。  初等中等教育の改善充実につきましては、かねてから努力を重ねてまいったところでありますが、来年度は特に恵まれない境遇にある児童生徒の教育対策に留意し、僻地教育及び特殊教育の振興、要保護・準要保護児童生徒の就学援助につとめましたほか、引き続き教科書の無償給与推進し、学校給食の普及充実をはかり、また、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数を改善し、施設設備を整備する等の施策を進めることといたしました。  そのうち、僻地教育の振興につきましては、まず、小規模学校の教員の充実とその待遇の改善を行ない、教員宿舎を整備する等、僻地勤務教員の優遇措置について配慮いたしますとともに、僻地の教育環境の改善のため、引き続き、各種の施設、設備の充実をはかりましたほか、学校ぶろ、ジープの設置、薬剤師の派遣、高度僻地学校の児童生徒に対するパン、ミルク給食の全額補助等の新しい試みを加えて総合的かつ重点的に施策を推進することといたしたわけであります。  次に、特殊教育につきましては、養護学校及び特殊学級の計画的な普及と就学奨励費の内容の改善のため必要な経費増額いたしますとともに、社会性活への適応性を一そう助長するため職業教育充実をはかり、また、教育効果の向上に資するために新たに視聴覚教材の利用、研究指定校の設置等を行なうことといたしております。  次に、要保護・準要保護児童生徒の就学援助につきましては、学用品の単価の級地差の解消をはじめ、それぞれの品目について補助単価の改定を行なうことといたしております。  次に、父兄負担の軽減をはかる趣旨から、小規模小学校の教材の充実を含めて教材費の増額をはかるとともに、国、公、私立学校を通じて、中学校及び特殊教育諸学校の中学部の第一学年までの児童生徒に対して教科書の無償給与の措置を拡大することにいたしたわけであります。  次に、学級編制及び教職員定数の充足につきましては、学級編制の基準を、原則として、小・中学校いずれも最高四十七人に改めますとともに、単級、四・五学年複式学級への教職員定数の増、特殊学級の増設、充て指導主事の充実等のための増員をはかり、また、給与の改善につきましては、多学年学級担当手当、旅費増額等を行ないました。  なお、教職員に関係のある事項といたしましては、その勤務の実態等に関する調査に必要な経費も計上いたしまして、四十一年度にその実態調査を行ないたいと思います。  次に、公立文教施設につきましては、引き続き既定計画の線に沿ってその整備を進めてまいりたいと考えて、公立文教施設整備費二百五十億円を計上いたしております。そのうち、木造建物を中心とする建築単価の引き上げ及び構造比率の改善は、地方団体の超過負担の解消という観点から特に配慮を加えた点であります。また、屋内運動場につきましては基準の改定を行ないまして、体育の円滑な実施に支障のないように配慮を進めてまいりたいと思います。  このほか、前年度に引き続き、教育課程の改善、道徳教育及び生徒指導の充実並びに教職員の研修及び研究活動推進に必要な諸経費を計上いたしております。  また、幼児教育の重要性にかんがみまして、父兄の要望にこたえて、引き続き幼稚園の普及整備のために必要な助成を強化いたしますとともに、所要の教員を確保するため、公、私立大学及び短期大学の教員養成課程に対する設備の補助を行なうことにいたしております。  第二は、大学教育の拡充であります。  国立学校特別会計予算につきましては、前年度の当初予算額と比較して二百七十八億円の増額を行ない、約千九百五十四億円を計上いたしました。その歳入予定額は、一般会計からの繰り入れ千六百十五億円、借り入れ金二十億円、付属病院収入二百二十億円、授業料及び検定料五十二億円、学校財産処分収入二十二億円、その他雑収入二十三億円であります。歳出予定額の内訳は、国立学校運営費千五百二十二億円、施設整備費四百二十億円などとなっております。  国立大学の拡充整備につきましては、まず、大学入学志願者の急激な増加を予想いたしまして、大学及び短期大学の入学定員の増加をはかり、後述の小学校教員養成課程の増募三百八十人を別にしてなお四千五百九十二人の増募を行なうことにいたしております。このため、大学について、一大学の創設、公立一農科大学の国立移管を含む二学部の開設、四文理学部の改組、二十五学科の新設及び二十四学科の拡充を行ない、短期大学について六学科を新設することにいたしました。  また、教員養成学部の整備につきましては、教育職員養成審議会の建議に基づき、その教員組織の整備を行ないますとともに、養護教諭養成所及び養護学校教員養成課程、幼稚園教員養成課程等の新設、一部小学校教員養成課程の学生増募など、当面必要な教員の養成に力を注ぐことにいたしております。  このほか、中堅技術者の育成のため十二の工業高等専門学校に学科を新設する予定であります。  次に、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、設備費等、各大学共通の基準的経費につきましても、引き続きその増額をはかっておりますが、とりわけ設備の充実に留意し、指定図書購入費、理工系学部設備費、工学部第二部設備費等の新規の予算を計上いたしております。  また、新制大学における大学院修士課程の拡充、付属病院、付属研究所の整備につきましても特段の配慮をいたしております。  次に、施設整備につきましては、財政投融資資金及び不用財産の処分収入を財源の一部に含めて予算額を大幅に増額いたし、一段とその整備促進をはかることといたしておりますが、なお、施設整備の円滑な実施をはかるため、後年度分について百八十八億円の国庫債務負担行為を行なうことができるようにいたしております。  次に、育英奨学につきましては、大学院奨学生及び教育特別奨学生の増員を中心として引き続き事業の拡充につとめ、また、日本育英会につきましても奨学金の返還業務促進等に要する経費補助する等により、全体で約十六億円を増額いたしております。  第三は、私学振興の拡大であります。  私立学校の振興は、今後の文教政策の重要な課題であり、その基本的な助成方策につきましてはなお慎重に検討中でありますが、現下の状況等にかんがみまして、明年度の予算案におきましても特に重点として取り上げたことの一つであります。  まず、私立学校振興会に対する政府出資金及び財政投融資資金からの融資につきましては、合わせて二百二億円といたしまして、大体前年度のほぼ二倍に拡大し、私学全般の施設の改善充実に充てることといたしております。また、私立大学等理科特別助成費及び私立大学研廃設備助成費につきましても合わせて三十七億円を計上し、その他、私立学校教職員共済組合に対する補助金の増額、私立大学幼稚園教員養成課程に対する設備費の補助の新設等の施策を講じております。  第四は、学術研究及び科学技術教育の振興について申し上げます。  わが国の学問及び科学技術の水準を高め、ひいては国民生活の向上に寄与いたしますために、学術研究及び科学技術教育の振興につきましては引き続き努力をいたしております。  明年度の予算につきましては、まず、学術研究について、科学研究費の拡充を行ない、特にがん特別研究費を別項目としてその増額をはかっておりますほか、引き続き研究所の新設、整備を行ない、また、ロケット観測、南極地域観測及び巨大加速器の基礎研究等につきましても、それぞれ目的に応じて必要な経費を計上いたしました。  なお、在外研究員の派遣のための経費は、一般会計から国立学校特別会計に組みかえて増額計上いたしております。  次に、初等中等教育の分野におきましては、理科教育設備及び産業教育施設設備の充実につきまして、あらためて新基準による計画的な改善充実を行なうことといたしましたほか、引き続き自営者養成のための農業高等学校の整備をはかり、また、新たに高等学校の衛生看護科教育に対し設備費の補助を行なうことといたしております。  第五は、青少年の健全育成であります。  青少年の教育問題は、近時ますますその重要性を加えており、これに対処するためには、学校教育及び社会教育の両面にわたって深く意を用いるべきところであると存じます。  まず、家庭教育、婦人教育につきましては、引き続き家庭教育学級、婦人学級等の充実発展をはかってまいりますとともに、家庭的環境に恵まれない留守家庭の児童に対する対策として、新たに児童会の育成事業のための補助を行なうことにいたしたわけであります。  また、勤労青少年の教育のため、学校教育の面におきましては引き続き新基準により定時制高等学校の設備の充実につとめますとともに、通信教育用学習書の給与につきまして、その対象となる生徒の範囲を拡大し、また、夜間定時制高等学校につきまして、夜食費補助及び運動場照明施設整備費補助等を増額計上いたしております。  次に、社会教育の面におきましては、勤労青少年に宿泊による研修、訓練の場を与えるために、国立第五青年の家を新設いたしますとともに、公立青年の家につきましても弾力的にその整備を進めることといたしております。さらに、青年学級及び勤労青年学校の内容の充実、新就職者の研修の実施のほか、新たに青年教室の委嘱も行なうことといたしました。また、青少年の団体活動を一そう促進するため、青少年団体等の育成もはかりたいと考えております。  このほか、青少年に対する映画の影響力にかんがみ、積極的に優良映画の普及をはかるとともに、その製作の奨励を促進する措置を講ずることといたしました。  また、社会教育施設につきまして、公民館、図書館、博物館等の施設、設備の整備を一そう推進いたしますとともに、引き続き適切な指導者の養成に意を用いてまいりたいと思っております。  次に、スポーツの普及につきましては、広く青少年一般にスポーツを普及奨励し、その体力の向上をはかってまいりますため、水泳プール、体育館、運動場及び公立高等学校の柔剣道場等の整備促進し、また、スポーツテストの普及、スポーツ教室等の実施、スポーツ団体・行事の助成、指導料養成等について、引き続き必要な経費を計上いたしております。  このほか、国立登山センター及びオリンピック記念青少年センターについて建物の整備を行ない、明年行なわれる予定のユニバーシアード東京大会についてその準備を進め、さらに、都市の勤労青少年のスポーツ施設の不足を補うために学校体育施設の開放を行なうなど、それぞれ必要な予算を新たに計上いたしております。  次に、学校給食の普及充実につきましては、完全給食の実施を目途として、引き続き単独校及び共同調理場の給食施設、設備の充実をはかり、また、栄養職員の設置を共同調理場のみならず単独校にも広げる等の施策を行なっております。また、小麦粉につきましては、従来のとおり補助を継続することにいたしますとともに、ミルク給食につきましても、国内産牛乳の使用をさらに増加することとして、所要の補助金を計上いたしております。  なお、前述いたしました高度僻地学校児童生徒のパン、ミルク給食費補助のほか、高度の僻地及び産炭地の財政力の弱い市町村に対しましては、引き続き予算措置について特別の配慮を加えることといたしております。  第六は、芸術文化の振興であります。すぐれた芸術を広く国民に普及し、また、わが国の伝統的な文化財を保存いたしますことは、国民生活の向上の上からもきわめて必要なことであります。  まず、国立近代美術館につきましては、その移転整備を行なうために必要な予算を計上し、また、芸術団体に対する助成のほか、歌舞伎、文楽等のすぐれたわが国の伝統芸術の保存とその振興をはかるため国立劇場の設立を行ない、さらに国立博物館の整備を進めることといたしております。  次に、文化財保存事業につきましては、文化財の修理、防災施設整備等を一そう充実いたしますとともに、最近国土開発の急速な進展に伴ってその必要性を痛感されております史跡、埋蔵文化財の保護につきましては、特段の配慮を加えております。  また、平城宮趾の買い上げ及び発掘調査、無形文化財の保存活用等につきましても、引き続き必要な予算を計上いたしました。  第七は、教育、学術、文化の国際交流の推進であります。  まず、外国人留学生教育につきましては、国費外国人留学生の人員を増加いたしますとともに、その受け入れ体制の強化をはかっております。また、国際学術文化の交流を促進するため、引き続き教授、研究者の交流を推進いたしますとともに、教育、学術、文化、スポーツ等の各種の国際会議への積極的な参加を行なうことといたしました。なお、最近、特にアジア、アフリカ諸国に対する教育協力の要請が高まってまいりましたおりから、新たに教育指導者の招致、教育指導者研修コースの開設、理科設備の供与及び指導者の派遣等を行なうため、新しい試みとして経費を計上いたしております。  さらに、ユネスコ国際協力につきましては、発足二十周年を迎えて、国際理解促進のための特別事業の実施、国際大学院コースの継続等、一段とその事業の推進をはかることといたしました。  以上のほか、文部省の機構につきましては、調査局を廃止し、新たに文化行政の一体的推進のため文化局を設置することといたしました。  その他、沖繩教育に対する協力援助費につきましては、これを画期的に拡充し、別途総理府所管として計上いたしております。  以上、文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。何とぞ十分御審議をいただきたいと思います。
  24. 井出一太郎

    井出主査 以上をもちまして、本分科会所管予算説明は全部終了いたしました。     ―――――――――――――
  25. 井出一太郎

    井出主査 この際、川俣清音君より発言を求められております。これを許します。川俣君。
  26. 川俣清音

    川俣分科員 いま本分科会にかかりました予算についておのおの説明を承ったのでございますが、国会関係予算につきましては、当面の責任者である議長が説明するのが当然だと思いますけれども、議長は議員でありますために、慣例上、議員が議員に質問をするということは他に影響するところ大きいので、その議長の直接指揮下にある事務総長が来て説明するのが当然だと思います。地方議会におきましても議会事務局長説明をいたしておるようでございますが、国会だけなぜ一体庶務部長であるとか管理部長説明をしなければならないのか。これは全く国会をみずから軽視しているものだと思います。したがって、国会予算だけは本分科会から削除してほしいと思うのです。これは審議の対象にならない。どこへでも庶務部長が行ってかってにひとつ説明をしなさい。一体、庶務部長であれ管理部長が慣例だということでおやりになるのについては、これは認めるわけにはいきませんから、主査、あらためて事務総長から説明を承るか、あるいは本分科会予算から削除してほしいと思う。審議の対象にはなりません。
  27. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 関連をして。私も主査に善処方を要望したいと思うのでありますが、各大臣がここに出席をして予算説明をされておるのですが、これは常任委員会においても大臣が説明をされておる。代理をよこさないで国会において予算説明をしておるのに、ここにある皇室経済、それから国会事務局、それから国会図書館、これは一回限りの説明の機会なんです。それが代理を出してくるということは、国民の税金を使うという意識が抜けておるからこういう代理を簡単によこすという考えが出ているのじゃないか。非常に危険な思想がこの辺から出てくるので、現象的には国会軽視だけれども、本質的には国民の税金を何億と使うために国会に承認を得るものなんですから、私は、国民の税金に対する考えが非常に軽視をされておるという、そういうふうな風習をつくるのは非常に危険だと思うのです。したがって、国会事務局だけでなしに、一回限りの説明の場合は責任者が来るべきである。したがって、もしその責任者が来れない場合には、少なくとも故障ある場合に代理するという職務を持った次官そのものが来べきである。ところが、それを見ますと、まず皇室経済の場合にも次官じゃない。主管である。一体、代理権を委任されて来ておるかどうかは不明なんです。科学技術庁の場合には次官が来ておる。これは代理権があると思う。そういう意味において、この中で次官も来ていないという例が一つ皇室費にある。それから、国会の場合については、国会の中におるということでエリート意識をもし持っておるとすれば、やはり私は、繁茂しない前に芽をつみ取る必要があるので、軽々に見過ごしてはいかぬと思うのであります。  したがって、一つの提案をしますと、少なくとも責任者が出席をしない場合には、あらかじめ出席不能の理由を文書をもって出さすか、あるいは予算説明の前に、こういうわけで責任者は来れないとか、国民の税金を使うための説明ですから、そういうことを明確にする一つの慣行をつくらなければいかぬのじゃないか。それから、さらに、長官または最高責任者の代理権を持っている次官級の者が来ない場合は、これは許してはならぬのじゃないかということが一つ。  そういうことを考えて、いま川俣委員から言われた事務局だけの問題じゃなくて、きょうの皇室経済の主管、それから図書館の副館長、この点については、厳重に、見過ごさないで処理をすべきである、そういうように思うので、委員長の善処方を要望したいと思うのです。
  28. 井出一太郎

    井出主査 ただいまの川俣分科員並びに山中分科員からの御発言は、主査において十分に善処、是正をいたす所存でございます。
  29. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 なお、私の感想を、これをもう少しまじめに考える必要があるので、補足したいと思うのですが、各常任委員会については、法案の審議が主として行なわれておる。そういう常任委員会においても、最高責任者の主管大臣が来なければ開会をしないという慣行をつくって、国会の権威を高めるべく、また行政官が国民の税金を使うのについての考え方を深めるために慎重にしてきておるわけです。この予算委員会においては、予算を中心として行なう場面でありますし、この分科会で一回限りしか説明しない場合に、やはり長官が来て説明するという慣行をつくらないと、一年の予算説明に一回も来ないままに何億という国民の税金を使う権限を得て、そして使わすということは、やはりこれはいけないのじゃないか。これはあわせてこの機会に厳重に具体的な方法を考えていただきたいと思います。
  30. 井出一太郎

    井出主査 この点につきましては、従来の慣例等もあったようでありますが、しかし、姿勢を正さなければいかぬという御趣旨には賛成でございますので、御趣旨の線に沿って対処をいたしたい、かように考えます。  午後は一時から再開し、皇室費裁判所所管について質疑を行なうことといたします。  この際、暫時休憩いたします。    午前十一時二十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時十分開議
  31. 井出一太郎

    井出主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、久保田衆議院事務総長から発言を求められておりますので、これを許します。久保田事務総長
  32. 久保田義麿

    ○久保田事務総長 けさほどの分科会に私みずから出席いたしまして提案理由の説明をいたすべきところ、欠席いたし庶務部長に代理させまして、まことに申しわけございませんでした。今後は十分注意をいたしまして、私がみずから出席いたしまして提案理由の説明も申し上げ、また御質問にもお答えいたしたいと思いますので、どうぞよろしくお許しを願いたいと思います。     ―――――――――――――
  33. 井出一太郎

    井出主査 昭和四十一年度予算中、皇室費裁判所所管について質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。坂本泰良君。
  34. 坂本泰良

    坂本分科員 私は、主として裁判所営繕関係について御質問申し上げたいと思うわけであります。ただ、裁判所関係と申しましても、戦前は裁判所、検事局と同じ建物にありまして、したがって、営繕関係法務省関係の検察庁の庁舎関係にもあるいは関連するかと思いますので、その点お許しを得て質問をいたしたいと思います。  昨年の九月、法務委員会として、福岡高等裁判所関係営繕調査並びに要望について調査に参ったわけであります。私はそれを中心にして御質問申し上げたいと存じますが、その前に、ひとつ本年度の予算について、最高裁判所庁舎の新築についてお尋ねしておきたいと思います。  それは、第四十八国会裁判所法の一部改正の法律案が提出されまして、その中に、最高裁判所庁舎新営審議会設置、こういう案件がありまして、この点につきましては、提案理由の中に、司法の象徴、こういうようなことばがございましたから、その他についていろいろ御質疑を申し上げ、答弁をいただいたわけでありますが、この司法の象徴は、司法の正義と公正を形にあらわすものである、こういうことにかんがみて、この最高裁判所庁舎の新築については審議会を設けてやる、そういう法律案でございまして、これにはわれわれも賛成いたしまして、この法律は昭和四十年三月三十一日に公布されておるのであります。そこで、本年度の予算を見ますと、最高裁判所庁舎新営審議会、これが三百二十三万一千円、庁舎新営(含事務費等)二十七億八千百八十四万四千円ですか、それから敷地購入費が四千二百二十五万五千円、こう出ておりますが、この審議会はどういうメンバーになっておりまして、どんな運営になっておるか、その他をお聞きしておきたいと思います。
  35. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねがございました庁舎新営審議会のことでございますが、委員は全部で三十二名、幹事が五名となっております。委員の構成は、国会議員、それから関係官庁からの委員、それから学識経験者、いろいろ分け方があると思いますが、そういうあらゆる面からの権威者を集めて構成いたしておる次第でございます。
  36. 坂本泰良

    坂本分科員 ちょっとその内容を――人数と、学識経験者はどういう方面から出ておられるか、その内容についてお伺いしたい。
  37. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 内容は、具体的になりますので、所管の経理局長から御説明いたします。
  38. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 具体的な名簿は後刻差し上げたいと思いますが、国会関係では、自民党、社会党、民社党、公明党、衆議院参議院からそれぞれ出ていただいております。それから人数は、ちょっと正確でありませんが、衆議院六名、参議院三名だったと思います。それから官庁関係といたしましては、大蔵省、建設省、法務省。官庁ではございませんが、弁護士会の連合会の会長。その他は学識経験者ということになりますが、あるいは国有財産の中央審議関係あるいは都市計画関係、それから建築関係の方々――建築関係は、広くいいますと四名ぐらいおられます。それから報道関係が三名でございます。学識経験者が十三名ぐらいになっております。
  39. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで、審議会はできてからすでに何回やられたか。あるいは、法律案の審議の際には、外国の調査等もしてやる、そういうことであったわけですが、その点いかがでございますか。
  40. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 審議会は現在までに二回開かれております。第一回は、最初の顔合わせ及び今後のスケジュール等につきましてお打ち合わせを願いました。第二回は、これも昨年中でございましたが、庁舎の敷地に関する問題を主として御検討願ったわけでございます。第三回は近々に開かしていただきたいと思っておりますが、第三回では、庁舎の規模、様式、経費、実施計画、その他最高裁庁舎新営につきましての基本問題を全般にわたって御議論願ったらと考えております。  外国調査の件につきましては、予算要求いたしまして、ある程度の金額、先ほどおっしゃいました経費の三百二十万の中に外国調査経費は含まれております。これは主として専門的な見地からごらん願うことになるのではないかと一応考えておりますが、これは審議会で御決定になると考えております。
  41. 坂本泰良

    坂本分科員 大体わかりました。  そこで、この審議会の法律案の審議にあたりまして一番問題になったのは、司法の象徴というのはどういうものかということでいろいろ問題がありましたが、先ほど私申しましたように、司法の正義と公正を形にあらわすものである、こういうことでケリがついておるわけですが、さらに、当時の議事録を見ればわかりますが、問題は、最高裁判所は、戦前、旧憲法時代は、いわゆるあすこに菊の御紋がありまして、天皇の裁判であった。しかしながら、新憲法に基づいて、裁判は国民の裁判である、国民のための裁判でなければならぬ、そういう点について十分考える問題があるじゃないか。さらにまた、現在の裁判の状況等を見ますと、新憲法実施当時のいわゆる民主裁判はいささか変更されて、憲法は変わり制度は変わったけれども、裁判官はやはり旧憲法時代の裁判官の方が多数おられるから、十分それは配慮されておるだろうけれども、いわゆる弾圧をする、ことに労働事件等については、公安事件としてこれを取り扱い、さらに訴訟促進ということであまり審理について慎重でない一ということになりますと語弊がありますけれども、やはり日本刑法に基づく暴行、脅迫とか、あるいは暴力行為等処罰に関する法律を適用しまして、正しい労働組合運動を、語弊があるかわかりませんが、弾圧する具に供されるようなおそれがなきにしもあらずである。ことに労働問題で起きた事件につきましては、その労働運動がいかなる運動によって展開されておるか。民間会社においては、使用者側の非常な無理解によって事件が派生しておる。あるいは全官公の問題にいたしましても、スト権がないからストをやるのはいけないということできめつけて、ただ形式上具体的にあらわれたことのみを取り上げて実刑に処する、あるいは執行猶予にする、あるいは罰金もあるわけですが、そういうような裁判が行なわれておる。ことに、一審では非常な理解ある判決があっても、それが控訴をされて高等裁判所にいき、さらに上告されて最高裁判所にいけば、一審で執行猶予がついたのが、二審では執行猶予がつかない。三審でも上告棄却だ。三くだり半の簡単な判決で、理由は弁護人の上告趣意書のとおりであるということで簡単に片づけられる。そういうような点等も考慮すると、ことに民主裁判の殿堂である最高裁判所は、その建物がいかにりっぱであっても、それがいやしくも弾圧あるいは国民を威嚇するようなものであってはいけない。裁判官の考えも変えなければならぬけれども、まずその裁判をする裁判所が外形上威嚇的であってはならない。旧憲法時代の、あの菊の御紋のあった時代の裁判を新憲法時代になって振り返りますと、いろいろと裁判の間違いもあるというので、いわゆる戦前は非常に威嚇的に考えられていた、そういう裁判所裁判を受けたから、もうしようがないというのであきらめた事件等もあるようであります。推測ができるわけですが、この最高裁判所庁舎の新築にあたっては、いやしくも国民を威嚇するような外形の建物であってはならない。やはり民衆が尊敬し、そしてその裁判には非常に信頼を置いて服するようなものでなければならぬ。そういう意味のことで、新庁舎の建築にあたっては、審議会はまずその点を十分考えて構想をやらなければならぬじゃないか、こういうような注文的の質疑等もいたしたわけでありますが、そういう点については、この審議会はまだ二回だけでありますけれども、裁判所として審議会にはかられる場合に、具体的にはどういうふうな考えをもって当たっておられるか、また今後当たろうとされておるか、その点についての御所見を承っておきたいと思います。
  42. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 御趣旨はよく理解できるところでございますが、実は私どもも、最高裁判所の新しい庁舎というものがいかなる姿を持たなければならないかという点について、卒然と考えてみましても、なかなかこれだというようなイメージが浮かばないわけでございます。その点やはり審議会の方々に十分御審議願わざるを得ないと思っておりますが、ただ、現在の国会の建物を例に引かせていただきたいと思いますけれども、この建物もやはり戦前の建物でございますが、戦災を免れまして、しかも新しい時代に応じた活発な国会活動がこの中で行なわれることにふさわしい姿を持っていたということが申し上げられるかと思います。最近伺いますと、国会周辺の地域が非常に整備されまして、名実ともに新憲法下の国会の設置の場所たるにふさわしい姿が間もなく現出するかに伺っております。  最高裁判所裁判の中身につきましていろいろ御指摘もあるようでございますが、裁判の独立と申しますか、裁判の中身は、それぞれ裁判官が自已の責任で裁判をしておりますために、場合によっては異なったいろいろな形の裁判が出ております。ただ、その中身を決定いたしますものは、しょせんは、当該時代に適応されあるいは有効に効力を持っております法解釈の問題でございますが、裁判所の建物が、象徴と申してよろしゅうございますか、裁判所にふさわしい建物であるという中身を私どもの理解で申し上げますと、いかなる体制の社会におきましても、当該社会の秩序を守るためには、何人もが自由奔放あるいは当該社会が気に入らないということだけであらゆるわがままかってが許されない、どこか法というものが権威を持っている国、秩序ある国というものがなければならないし、それを保障しますのが法であり、その法の正しい適用をいたしますのが裁判官であるというふうに理解いたしております。この意味で、裁判所の建物は、そういった法というものがどういう意味あるいは価値を持って当該社会に妥当しているかということを、何とか具体的な姿、ものでつくり上げる姿であらわしてみようというところに主眼点があろうかと思います。ただ、今度建てます建物は、今後百年、二百年、おそらくは事故がなければ続く建物というふうに考えておりますので、この長い期間にわたっても、変わっていく法の姿というものはあっても、法そのものの本質を保障するに足りると申しますか、法の姿を具現しているという姿を残したいということで様式等を考えるべきではないかと考えておるわけでございます。
  43. 坂本泰良

    坂本分科員 私が裁判官の点を言ったのは内容の問題ですから、いろいろとこれは法務委員会等でまた御質問申し上げたいと思うのですが、何としても現在は、だんだん一審よりも二審、二審よりも最高裁がどうも反動的である、それが裁判にあらわれているということが、一部かもわかりませんが、巷間にもいわれているようなわけであります。裁判官はやはり人ですから、入れかえてもよろしい。交代があるわけですが、建物は、いまおっしゃったように、あるいは五十年あるいは百年、あるいはもっと先まで――何と申しますか、司法権の独立と申しますか、裁判が確立してはじめて国民の生活の安定、法秩序も保てる、こういうふうに考えられますから、その点についてはいろいろと論議もありますが、せっかく百年の大計と申しますか、百年もあるいはそれ以上も使うべき最高裁判所庁舎の新築にあたっては、これはやはり慎重にしなければならぬ。そのためにこの審議会が設けられた、こういうふうに思います。やはり最初が大事でありますから、この審議会の委員等にも、ただ資本家で金をうんと持っている、寄付もできる、そういう人も必要でしょうけれども、やはりそういうものだけでもいかないと思う。日本の働く大衆は、やはり農民であり労働者でありますから、その代表者も審議会に入れてはどうか。しかし、それを入れるについても、選挙違反を起こす全共連の代表者を出してもほんとうの農民の代表ではない。それは使用者側だけの代表を入れてもいかない。労働者の代表といえば、総評もありましょうし、あるいは同盟もあるわけですから、やはりそういう方面からも委員を出さなければ、ただ社会的に有名だとかいうようなことにのみとらわれても私はいかないと思うわけです。また、学識経験者の中には建築の権威者がはいられてそれを立案するということも、これは最も必要ではないか、こういうふうに考えますから、その意味で外国の調査等もしてやるのだ、こういうことで審議会が設けられた、こう思いますから、ひとつ広く国民の中から――学識経験者は、ただもの知りで、学問ばかりできた者でもいかないし、それかといって、金もあり財もあるという人だけでは――やはり裁判を受けるのは国民全部でありますから、そういう点も十分考慮すべきではなかろうか、こういうふうに考えましたから、この委員のメンバー等もお伺いしたわけであります。そういうような意味で、この内容の裁判官はかえることができますけれども、この庁舎はそうやたらに簡単にかえることもできませんから、そういう点を第一に考慮して、国民を威圧するようないわゆる広壮な建物であってもいかぬと私は思うのです。やはり国民が親しむような建物をやるべきである。こういう点で、従来の条約改正を中心としてできた旧大審院のような建物は、一つの参考にはなるでしょうけれども、新しい立場に立っての構想に基づかなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。  時間がありませんからその程度にしまして、ここに庁舎新営の費用、それから敷地購入費ということがありますから、これについて、簡単でけっこうですが、どういう予定で、また新営の二十七億ですか、どれが一番金がかかって、どういうものかという点を承っておきたいと思います。
  44. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 昭和四十一年度の営繕費は概略三十億でございます。そのうち二億五千万程度が、いわゆる施設整備費と申しまして、特定の庁舎等の名をあげずに全国の庁舎増築あるいは一部の模様がえ等に使う金でございますので、新営庁舎のための費用といたしましては、いまおっしゃいました約二十七億五千万円程度ということになります。  最高裁判所営繕では、地方裁判所家庭裁判所本庁あるいは高裁本庁の新営を過去から続けてまいっておりまして、現在のところ、十二カ庁の本庁の工事を継続として持っております。そのほかに、ただいまの状況のもとでは、甲号支部五カ庁、乙号支部五カ庁が現在工事進行中と申し上げられます。これが四十年度には一部完成を見まして、四十一年度には、本庁で九カ庁、甲号支部で二カ庁等が次に繰り越され――繰り越しと申しては語弊がございますが、継続工事として持ち越されます。そのための費用が相当ばく大にかかりますので、新規のものといたしましては、甲号支部三カ庁、乙号支部三カ庁、それから簡易裁判所一カ庁、それから最高裁直接の研修所関係庁舎が二カ庁ございます。それと、臨時司法制度調査会意見実現のために、宅調をすみやかに廃止しなければならない裁判所等で、大阪、東京、八王子、名古屋等に至急増築をいたしますための経費がこれに含まれているわけでございます。
  45. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで、先ほど申し上げましたように、私は、昨年の九月十九日から五日間、福岡高等裁判所管内、福岡高等検察庁管内の調査に参ったわけでありますが、その点について二、三お伺いしたいわけです。  第一は、長崎家庭裁判所本庁の新築の問題ですが、これは行ってみますと、長崎地方裁判所の本庁に新築ができておりまして、そのうしろに長崎家裁の新築が計画されておる。しかしながら、どういういきさつか私知りませんが、最初家裁をつくって、本庁をつくる予定のものが、家裁ができて本庁がそこに移ったとかいうようなことも聞きますが、現在の地方裁判所の建物は、非常に表の道路が騒々しくて公判廷等も非常に困るから、従来の木造の地方裁判所庁舎であって現在家庭裁判所庁舎になっておる、そこに新築できたならば、家裁のほうは調停その他が多いから、騒々しくてもいいことはないが、がまんできても、法廷のほうがあまり騒がしいと困るから、そのうしろに現在家裁としてできておるのができ上がったならば、その裏のほうを地方裁判所庁舎にして、前のほうを家庭裁判所庁舎にする、そういうようにな計画やに承っておるわけですが、その点いかがでございますか。
  46. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおりでございます。継ぎ足して申し上げますと、法務省と申しますか、検察庁の庁舎新営が始まるようでございますが、裁判所は、私どもも同時に建てたくて予算要求もやってまいったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、継続工事の完成のために要します経費が非常に多額になりますために多少はおくれるかと思いますが、できるだけ追っかけまして、検察庁の新営に幾らもおくれないように長崎の不足分を建てたい。御指摘のように、地方裁判所庁舎が裏に建つことのほうが適切かと考えております。
  47. 坂本泰良

    坂本分科員 法務省の方も見えておりますね。
  48. 井出一太郎

    井出主査 はい。
  49. 坂本泰良

    坂本分科員 とにかく、現在の庁舎裁判所と検察庁と並んでおるわけです。そこで、検察庁のほうがすでに工事に着手して二カ年計画で完成をする、そういうことになると、裁判所庁舎がおくれはしないか。そうすると、やはり一方が早くて一方がおくれたのではどうもぐあいが悪いじゃないか。地方検察庁の庁舎の完成と地方裁判所庁舎の完成はやはり一緒がいい、こういうような非常な熱望があったようですが、その点についてはいかがな経過になっておりますか、承っておきたいと思います。
  50. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 まことに御指摘のとおりでございまして、長崎につとめております裁判所職員といたしましては、できるだけそれを希望いたしていると思います。しかし、私どもの予算要求としては、なるべくそれに努力いたしたいと思いますが、いまから同時に落成できるように運べるかどうかは、まだ今後の予算の問題にもからまりますので、そういうふうに努力はいたしたいと考えておりますが、確約は現在のところは申し上げられません。心理的な状況としましては、なるべく御趣旨に沿いたいとは考えておるわけでございます。
  51. 坂本泰良

    坂本分科員 法務省のほうはどういうふうになっておるのですか。
  52. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 長崎の本庁につきましては、四十一年度で完成の運びにいたしております。  それからなお、裁判所と検察庁が一緒に完成をするようにという御趣旨につきましては、私もそれが最も好ましいと存じます。ただ、御承知のように、現在検察庁の関係におきまして裁判所等の旧建物を借りておりますのが、なお九十カ庁ばかりあるわけでございます。その場合に、同じ裁判所の敷地の中に建て得る場合もございますし、また他に敷地をさがして新営をしなくちゃならないという場合がございますので、その間の事務調整の上におきまして一、二年のずれが従来あったわけでございますが、今後は裁判所とも十分協議をいたしまして、そういうずれのないように努力をしていきたい、このように考えております。
  53. 坂本泰良

    坂本分科員 われわれの見たところと現地の要望によると、落成式も一緒にやりたい、そういう希望があるのじゃないかと思いますが、いま検察庁のほうは四十一年度中ということですから、来年三月までに完成するし、裁判所のほうはやはりそれと一緒に落成式を急いでやる、そういうようなことはこれから先の計画でできないものであろうかどうか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  54. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 ただいま私ちょっと知識が正確でございませんが、法務省のほうで四十一年度完成ということになりますと、ことしの予算で四十一年度の新営の個所に私ども長崎を数え入れておりませんので、もう四十一年度ではどうにもなりません。四十二年度以降の関係に長崎もなると思いますので、落成式の点では断念せざるを得ないかと思います。
  55. 坂本泰良

    坂本分科員 次に、福岡地方裁判所家庭裁判所久留米支部の庁舎の新築の問題です。これもやはり福岡地検久留米支部との関係があると思いますが、これは裁判所法務省はどういうふうな関係になっておりますか、承っておきたい。
  56. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 現在久留米の支部は検察庁と一緒に同じ庁舎の中で仕事をいたしておりますために、これを新築いたしますためには、検察庁の新営の敷地を必要とするわけでございます。現在の裁判所の敷地がそれほど広くはございませんので、いまその検察庁をお建てになる敷地をつくり上げていくと申しますか、そのために法務省で御尽力になっておりますので、そのめどがつき次第、久留米については新営の要求をいたしたいと考えております。
  57. 坂本泰良

    坂本分科員 もう一つは大村支部です。長崎地方裁判所並びに家庭裁判所の大村支部、これも実際見てまいりました。明治十九年の建築のようですが、裁判所は非常に庁舎を丁寧に扱うし、穴があいてもそれを修理してやっておるから、多少古くても使っておる。しかし、もうがまんができぬから、ひとつぜひ新築したいというような要望もあったようですが、その点いかがになっていますか。
  58. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 大村をごらんくださいましたそうで、私もこれを、最近と申しますか、一昨年になりますか、見てまいりまして、玄界の風が吹いてまいりますところといたしましては至急にやらなければならない建物だと考えております。予算要求も重ねてまいりましたが、もうしばらくの努力を続ければ何とか大村も改築できるのではなかろうか、かように考えております。
  59. 坂本泰良

    坂本分科員 それから、対馬の厳原支部、これが明治十九年の購入となっておるわけですが、何かこれは古い建物を買うたのじゃないかと思うのですが、これが非常に古いのであり、なお、あそこは戦後になって密入国が多い関係等もありまして、警察並びに検察の留置場等については何か応急処置があっておる、こういうふうに思うわけですが、これについての裁判所並びに検察庁はどうなっておるか、その点を承っておきたい。
  60. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 厳原に参ったことはございませんが、写真等で見ますと、これもきわめて老朽化しております。御指摘のとおり、明治十九年の新営でございますが、これは離島の関係で、行かれる方もいろいろ犠牲を忍んで赴任されるということ等も考え合わせまして、できるだけすみやかにこれを改築いたしたいと考えております。  ただいま明治十九年の建物として裁判所が持っております建物は、宮津と大村と厳原の三カ所でございますので、十九年が一番古いところになりました。したがいまして、この十九年が四十二年度以降では当然頭を出す順位になっておると申し上げられます。
  61. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 検察庁関係におきまして、厳原支部は昭和二十四年に新築をいたしております。
  62. 坂本泰良

    坂本分科員 時間がありませんから、まだいろいろありますけれども、省略いたしますが、そのほか、大分県におきましては、大分地方裁判所家庭裁判所の豊後高田支部、それから日田支部、臼杵支部、こういうのが相当老朽化して建築の時代じゃないかと思いますが、その他は計画はどうなっておりますか。
  63. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、大分県では右の三カ所が六十年以上を経過している建物でございます。これもすみやかに改築いたしたいと考えております。
  64. 坂本泰良

    坂本分科員 熊本では、熊本地方裁判所家庭裁判所の山鹿支部、御船支部、こういうのがあがっておりますが、山鹿支部の新築については、山鹿市長など非常に骨を折りまして、今度支部を新築するにあたっては、敷地が不足であるから、それについては現在の敷地についての隣接の空地を準備する、さらに、入り口が県道から七メートルであるから、それを十メートルにして、そうして事件も非常に多いから、至急に新築をしてもらいたい、してもらうについては、山鹿市においては現在市役所の庁舎の建設にかかっておりますが、その移転についても、公民館はあけておいて、それ以外のところに仮庁舎を設けまして、そうして新築をしておるようなわけですが、その公民館をあけておるのは、裁判所が建築になれば、裁判所事務をそこでとり、さらに法廷等を仮設するについては適当な場所である、こういうことまでやりまして、これは山鹿市ほか鹿本郡並びに菊池郡の半分がこの管轄でありますから、そういうようないわゆる裁判所建築促進会と申しますか協力会と申しますか、そういう会ができまして、そうして非常にこの新築の促進をはかっておる、こういう状態でございますが、これは裁判所としては至急にその新築ができるかどうか、その点を承っておきたい。
  65. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 実は山鹿の改築につきまして、四十一年度の予算要求にのせようとずいぶん努力したわけでございます。ただ現地が、御指摘のとおり、裁判所に入ります道が非常に狭いことと、農道等がある関係から、敷地問題が何とかならないかということを考えておりましたところ、ただいま御指摘のとおり、地元ではきわめて熱心に、裁判所への入り口を拡張なされ、あるいは農道を廃止する、あるいは敷地の不足分に継ぎ足そうというような、いろいろな御努力、それから仮庁舎等まで御心配になっているという話をいま承ったわけでございますが、現地の裁判所等からもその報告は受けております。そういうふうに地元できわめて熱心に裁判所庁舎新営のことについて御尽力ないし御配慮のあるところには、最大限の敬意を払って可及的すみやかにその新営をはかりたい、かように考えておるわけでございます。
  66. 坂本泰良

    坂本分科員 時間がありませんから、一々御答弁を願うのはあれだと思いますから、ここに緊急を要求するようなことについて、ことに裁判所の建物というのはいずれも六十年、七十年たっておるようで、どうしても新築をしなければならぬ、こういう状態になっておると思いますが、鹿児島地方裁判所家庭裁判所関係では、知覧支部ですか、それから出水簡易裁判所、それから宮崎地方裁判所・庭家裁判所関係では高千穂支部、それから佐賀地方裁判所家庭裁判所関係では伊万里支部、こういう支部の建物はいずれも七十年以上ではないかと思うわけですが、こういう点についての計画は立てておられるかどうか、概括的でけっこうでございますから、承っておきたい。
  67. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘になりました各庁舎は、ふしぎと明治の後半から大正にかけて建てられた建物でございまして、それが九州の各裁判所に、いわば集まっていると申しますか、わりあいある程度の数がございます。裁判所全体の計画といたしましては、ただいま継続工事中の本庁舎が終わりますと、大部分が甲号、乙号支部の新営に向かえると思います。もちろん、現在程度の営繕費の伸びを前提としますと、ここ十年計画で、明治、大正時代、あるいは昭和でいいましても戦前程度の建物の目につくような建物はほぼ新営ができる計画を立てております。ただそのところで、やはり地元その他の状況だとか、あるいは庁舎の、単なる経年数ではなくて、特殊な状況による破損等を考えまして、必ずしも年代順ではなく先後するわけでございます。
  68. 坂本泰良

    坂本分科員 調査に参りまして、あるいは時間がないためにここで述べるのを落としておるかもわかりませんが、裁判所のほうではそういう点についてはすでにおわかりと思うわけでありますから、裁判所の新築については――戦後検事局から検察庁が独立しまして新しい庁舎ができた。しかし、その庁舎が、戦後の素材その他によってもうすでに古くなって困っておる。そういう点もございますから、法務省予算としては他の省に比べれば非常に少ないわけでありますから、十年計画ということを承りましたが、これはぜひもっと早急にやるべきじゃないか、人権擁護の立場等からしましても、そういうふうに考えられるわけであります。ことに最高裁判所予算については、司法権の独立で戦前の司法省関係から分離したという関係がありますけれども、それじゃだれがこの予算要求その他について閣議に列席するかということになると、現在、総長はその閣議に出席されて発言の機会がないわけなんです。やはり法務大臣を通じてやるということになれば、法務省予算がふえて、裁判所予算が減るのじゃないかというようなことも巷間にはいわれておるようなわけであります。各省には事務次官がおられてそして予算折衝等もスムーズにいくけれども、裁判所予算についてはそのチャンスがないじゃないか。やはり事務総長は閣議に出席して、予算関係等についてはその発言の機会がなければいかぬじゃないか。こういう機構改革等の問題もあるわけでありますが、ぜひひとつそういう点については今後の予算措置についても十分配慮していただくことを要望しまして、私の質問を打ち切ります。
  69. 井出一太郎

    井出主査 野原覺君。
  70. 野原覺

    野原(覺)分科員 私は皇室費について二、三お尋ねをいたします。  すでにこれは国会予算を計上いたしまして皇居の新宮殿が建築されておるわけでございますが、その建築の進捗の状況を御説明願いたいと思います。
  71. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 皇居の造営、特にその中心の宮殿の造営だろうと思いますが、宮殿の造営につきましては、三十七年度までに一応基本設計ができて、三十八年度にそれをもとにしてさらに実施の準備の設計をして、それから三十九年の夏から工事にかかりました。現在までにすでに基礎工事、それから主体工事のうちの、柱を立てたりするような部分まではもうできてまいっております。これからあとは、屋根をふきましたり、それから内装、建物の中の柱に銅板を張るとか、あるいは壁をどうするとか、あるいは障子の関係をどうするとか、いろいろそういうこまかい面に入っていくわけでありますが、いまの計画では四十二年度一ぱいで完成するつもりで進めております。最初の計画は四十一年度一ぱいで完成する予定で進めておったのでありますけれども、実際にやってみまして、これはやはり一年延ばさないといけないというので、一年延びました。そうしますと、四十三年の春には一応できる予定でありますが、しかし、その後なお手直しとか、いろいろやはりあると思います。そうしますと、四十三年の秋ごろが落成の時期になるのじゃないか、こういうふうに思って、いま鋭意努力をしておるわけであります。
  72. 野原覺

    野原(覺)分科員 私どもがこの予算を組みましたときは、たしか四十三年の三月、四十一年度中には竣工させる、そしてその経費はたしか八十八億円ということであったわけです。それが四十二年度、つまり工事が一年延びなければならないというのは、当初の見込みが狂ったわけでございますか、何か事情があったのでございますか、いかがですか。
  73. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 当初の見通しの幾らか甘かった点が確かにあったと思いますが、実施設計の段階に入っていろいろやってまいりますと、この宮殿の建物は普通の建築物と非常に違う点がありまして、柱と柱との間の間隔も非常に広い、天井も高い、その他、普通の建物とは大いに違った構造を持っておりまして、それを実施に移す場合における実施設計の段階においては、さらに新しい模型をつくってみて、それの強度がいいかどうかというような実験をやったり、それも役所だけではなくて、大学の研究所に委嘱してやってもらったりとか、そういうような面のことが相当ございまして、初め考えたよりは、そういう点の念を入れる場合においては時間が相当かかったというようなことで少しずつ延びてきまして、将来の見通しにおいてもやはり一年くらい延ばさないと無理だ。突貫工事のようにしてやれば絶対できないことはありませんでしょうが、それであとで、こんな変なものができたというふうに言われてもいけませんので、そういうことを考えますと、いいものをつくるためには延ばしたほうがいいというので、延びたような次第でございます。
  74. 野原覺

    野原(覺)分科員 工事の推捗につきましても見通しが甘かったわけですね。ただいま御答弁のとおりだろうと思います。  ところで、建築予算です。これは先ほど申し上げましたように八十八億の予算を組んだわけですが、その八十八億の予算ではとても足らないということになるのではないかと思いますが、当初の予算からどのくらい不足を生じてくるか。一体この新宮殿の竣工完成するまでの総経費はどのくらいになりますか、御答弁願いたい。
  75. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この基本設計ができまして工事にかかります際に、一応予算の見込みを申し上げましたその金額から、その後やはり相当追加をしないとできないということがわかってまいりました。最初は付帯の工事を合わしてたしか九十三億くらいでできるのじゃないかというように申し上げたように思いますが、しかし、だんだん進めてまいりますると、いろいろな資材とか労賃とか、そういうような物価関係の値上がりが一方にあります。それからなお、最初に申し上げました場合には、基本設計は一応できたのでございまするが、実施設計のこまかい面、特に仕上げ工事の面についてのこまかい点がまだできてないところで、腰だめ式に大体のところを見込んだわけであります。しかし、実際に実施設計をやってまいりますると、先ほどもちょっと申しましたように、いろいろ念を入れていかなければいけない面がございまして、そういうような関係経費がふえていくという面がまずありました。それから、基本設計の際には簡単に考えていた面も、その後、基本設計の当時の構想を改めて、やはり設計をよりよく改良しなければいけないというような面も出てまいりました。たとえば、コンクリートの太い柱がありますが、そこは染料などを塗る程度のことが最初の考えでありましたけれども、実験してみますと、それではうまくない、やはりこれは銅板を張らなければいけないというような問題も出てまいりました。そういうような設計の変更によって経費をやはりふやさなければいけないという面が出てまいりました。  そういうようなことを総合いたしまして、最初考えたよりも完成までには経費がよけいかかるという見込みでありまして、現在考えておりますところでは、全体の計画、これは新宮殿の建物の経費以外の関連の工事費も全部合わせて百二十一億ばかりと一応考えていますが、これも最近の状況ではまたこれがふえなければいけないような事情が出てきているのです。といいますのは、銅が非常に不足してまいりまして、銅が非常に値上がりをしてきておるわけであります。屋根をふいたり、先ほど申しましたように、柱に張ったりするのが銅板ですけれども、このほうが予算を組んだころから見ると五割くらいも上がってきておるわけであります。そういうような関係で、そのほうの関係がどのくらいでおさまりますか、ああいう値段は波がありますから、どうなりますかわかりませんが、そういうふうな関係で、いま考えております百二十一億よりもまだ幾らかふえるのじゃなかろうかというような点も考えております。しかし、これは国民の御負担においてできるわけでありますから、むだのないように鋭意われわれは努力いたしたいと思っております。
  76. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、三十億でございますか、当初の見込みよりもよけいに金を出さねばならぬ。ところが、その三十億も、いまの調子でいきますとまだ物価は上がります。資材が上がった、労賃が上がった、そのほか、建築についても、実施設計の段階でいろいろ考えなければならぬ点がたくさんある、こういうところで金がよけい要るんだ、こういたしましても、どうも私は、新宮殿の設計なり、それからその後の工事の進捗状況等を見て感ずるのですが、最初の計画というのが実にずさんじゃなかったのかという疑問を持つのです。その工事の竣工が、国民に発表してから一年もずれるとか、その予算が何十億も狂うなんということは、これは宮内庁の当初の見積もりが実にずさんではなかったか、こういう点を私は感ずるのです。これは遺憾ながら宮内庁も否定できないと思うのです。そこで、いま三十億足らないといっておるが、私は完成までにはもっと要るのではないかと思う。だから、この段階でやはりはっきり見通しをつけて、物価はどの程度上がるのだ、労賃はどのくらいだ、四十三年の秋までかかるとすれば、この程度の金はどうしても用意しなければならぬということであれば、やはりきちんとして私は工事にかかるべきではないかと思うのです。この点いかがですか。
  77. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 最初の見通しが甘くて宮内庁として十分でなかったじゃないかという点については、私も実はそう思います。見通しがはっきりできていなかった点は悪かったと思います。しかし、実際の事情は先ほど申したようなわけでありまして、なお、今後のことにつきましては、実施設計の面で設計を変更するという面はもうありませんが、主として物価の値上がりがどうかという問題がかかってくるわけです。これはわれわれのほうで弔実際問題としてわかりませんものですから、現在の段階で申し上げておるわけであります。しかし、物価の値上がりがあまりなければ、そうふやさないで済むというようなことで、これはちょっとはっきり申し上げかねることと思いますから、御了承願いたいと思います。
  78. 野原覺

    野原(覺)分科員 私は少々の金の狂いは問題にしたくない。これは何年度にもわたった建築というものには狂いがあるのがあたりまえです。しかし、九十億の予算が三分の一も狂うなんということは、常識では考えられない。これは将来もあることですから、厳重にひとつ気をつけてもらいたい。というのは、皇居の新宮殿でございますから、国会は何も文句を言わないですよ。そのことを宮内庁あたりが甘く考えて工事をなさるということは注意してもらいたいと思う。これはほかの官庁、ほかの建物の建築でございますと、断じて出しませんよ。これは国会では否決になりますよ。だから、そういう点を以後十分気をつけてやってもらわねばならぬと私どもは思うのです。  そこで、次にお尋ねしたいことは、基本設計をつくったのは東京の芸術大学の吉村教授であった。これは新聞にも大々的に報道されたわけです。吉村さんは、日本建築古来の簡素の美をここで出さなければならぬ、昭和の時代における歴史的な建築をここで残すのだ、国際的にも恥ずかしくない、すばらしいものをつくるのだ、だから、古来の建築の美に加うるに、現代の生活にも実際これが適応されるような、そうして昭和の時代の建築の最も代表的なものをつくるのだという意気込みで基本設計がなされて、これは各新聞も、新宮殿のことでもございますから、大々的に報道されたわけです。ところが、昨年、吉村教授は憤然色をなして辞表を宮内庁長官の宇佐美さんに出されたという。あれほど宣伝して、そうして国民も、吉村さんのことだから、すばらしいものができるだろうと期待しておったのに、新宮殿の設計のことで何か知ら割り切れない感じを国民も持たされておるわけでございますが、その間の真相はどういうことなのか、なぜ吉村教授が辞表を出さなければならなかったのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  79. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 出村教授は、基本設計は先生が主になりまして完成をされて、りっぱな基本設計ができたことは、われわれも大いに感謝し、敬意を表しておるわけでありましたので、なおその後実施設計の段階に入りまして、実施設計は宮内庁が主になってやりますが、引き続き御指導を願うということで、御指導を願うことになって御指導を受けつつあったのであります。ところが、昨年の春ころから、先先がどうも自分の思うようになかなか宮内庁側がやってくれないからというので御不満を言われたのですが、そのやってくれないとおっしゃる点は、主として、宮内庁側とすると、予算の面とか、あるいは工期の面とか、そういう面も考えて、いたずらにその予算がふえるということもあまり感心しないことでありまするし、また、工期があまり延びるようなやり方も、これも感心しないというので、先生の言われるいろいろの御意見はもう大部分はお聞きしておったのでありますけれども、お聞きしなかった部分もあるわけであります。先生は芸術家としての一つの一徹なお気持ちから、どうも自分の思うように全部聞いてくれないとすると、自分は設計の指導というようなことは引き受けられないというようなお話でありました。われわれのほうでも、先生にも御指導をお願いして、先生の言われるとおり全部できなくても、先生のお気持ちの大体の点は大いにそれを尊重して組み入れているわけであります。基本設計をおつくりになった方のそのアイデアを実施設計の面に生かしていくという点で、先生の御意見を大体においてお聞きしているのだが、しかし、部分的には、先ほど申したような理由で先生にがまんしてもらいたい、実施設計の責任は宮内庁で先生に御相談をするという立場だからというふうに申し上げたのでありますが、しかし、相談を受ける以上は、自分に全部まかしてもらう、自分の言うとおりにやられなくちゃどうも相談にも応ぜられないというような御意見で、結局、いっときは、何か相談だけ受けるならばいいようなこともおっしゃっていた時期もありますのですが、最後に、やはり相談を受ける以上、自分の意見をそのまま実現してもらわなくちゃいけないからというようなお気持ちで辞表を出してこられたのだと思います。先生の御意見のとおりにいたしますと、いま申した予算増加よりも、もっとずっとふえてまいりまするし、工期も場合によってはもっと延びるおそれもあったわけであります。そういうのを、役所の立場から見て、なかなかそう先生の言われるとおりできないということを申し上げた点でああいうことになったのであります。
  80. 野原覺

    野原(覺)分科員 吉村教授の基本設計に狂いが生ずるんじゃないか。基本設計があって実施設計ということになるのでございましょう。吉村さんは、基本設計だけじゃないのだ、自分がほんとうに心血を注いだ、歴史的にもすばらしい建築、国際的にもすばらしい建築、それを仕上げるんだという意気込みでやっておるのに、実施設計は官内庁だ、こういうことになったので非常に気分をそこねられた。すぐれた芸術家でございますから、それではもう自分は責任が持てない、こういうことになってきますと、百何十億も金を出して、そうしてすばらしい建築を建てると言ったのが、何か木に竹を継いだような、それはしろうとから見ればわからぬでしょうけれども、歴史的にも国際的にもすばらしい建築という当初のそれが、設計者がかわったために何か妙な建築ができ上がるんじゃないかということを私どもは心配いたしますが、その心配はございませんか。
  81. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私は、その御心配はまずないと申し上げていいと思います。基本設計でこの基本の点はできておりまするし、なお、先生のアイデアも十分生かして実施に移っております。その先生についても、こまかい面につきますと全部御専門でないわけでありまするから、アイデアを生かしながら、それぞれまた専門の方にも相談をしながら、宮内庁が実施の面に当たっておるわけでございまして、先生のお気持ちは十分もうわかっておりますので、それを生かしてつくっていく、ただ、予算とか工期の関係である程度がまんしていただく。たとえて言いますと、予算の面から言いますと、銅板を張るような場合でも、宮殿の中全体に非常に分厚な銅板を張るということを先生は主張されておりますが、おもなところ、お客さんのおいでになるようなところはそういうふうになりますが、あまり目につかないようなところは、幅の狭い、幾らか薄いので張るとか、部分的には、あまり目立たないところはアルミを使う部分もあります。これは、そう目につかないところは、そういうふうにして幾らか経費を節約するということもいいのではないかということが一つの例でございまして、全体的に見れば吉村先生の構想は生きてくる、りっぱな宮殿ができるものと私たちは思っております。
  82. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで、次にお伺いしたいことは、一般国民の寄付ですね。新宮殿の建築ということで一般国民からかなりの寄付金が集まったのではないかと思いますが、どのくらい集まったか、お聞かせ願いたい。
  83. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この一月三十日、つまり先月末までで六千三百七十二万円余り集まっております。
  84. 野原覺

    野原(覺)分科員 その六千三百万円とういうのは、それはどういうようになるのですか。これは会計法上、一応国庫に納入するわけですか。それとも、官内庁がかってに使うことができることになるわけですか。
  85. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 これは国庫のほうに入ります。したがって、宮内庁がかってに使うものではありません。
  86. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、それを国庫に入れて、そして先ほど申した三十億のオーバーということに、いまのところ、なるわけですね。
  87. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この六千三百万円も予算の中へ入っていくわけでありますから、予算以外ではないのであります。
  88. 野原覺

    野原(覺)分科員 せっかくの建築でございますから、理想的な、ほんとうに国際的にもすばらしい建築の新宮殿のでき上がることを私も希望しておきたいと思うのです。  そこで、最後に一点だけお尋ねいたしますが、富士見やぐら、富士見多聞ですか等の皇居内の史跡の復元補修工事がたしか始まっておるのじゃないかと思う。それの予算及び完成の見通し、これをお聞かせ願いたいと思う。
  89. 並木四郎

    並木政府委員 お答えいたします。  戦災で焼けました大手門の渡りやぐらは、本年度の予算で三千六百万、四十一年度の予算で千六百万を組んでございます。それから富士見やぐらのあの三重のやぐらでございますが、あれは現在白セメントを打ちつけてあるわけですが、あれをかき取りまして、城のとおりのしっくいにする。その予算は来年度の予算で二千一百万円組んでございます。それから、そのほかの平河門でございますとか、その近傍のへいでありますとか、そういったものは、まだ出してございませんが、四十二年度以降に組んでございます。それから大手門は四十一年度で完成します。それから富士見やぐらのあの三重層は来年度で完成いたします。
  90. 野原覺

    野原(覺)分科員 最後にもう一点だけですが、あの森に囲まれた皇居も、スモッグあるいは排気ガス等のために野鳥がずいぶん減っておるのではないかと思う。私どもが小さいときに聞いた話では、どんな野鳥でもあすこには来ておるのだということも聞いておったのですが、そういう点についてどういう状況にあるのか、お聞かせを願いたい。
  91. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 私の知っている範囲で申しまするが、スモッグ等の影響は、皇居の中でも、堀のほう、町のほうに面したところについてはやはり相当の影響がありますが、ずっと中のほうへ入りまして、吹上御苑あたりへいきますと、それほどの影響はないようであります。吹上御苑あたりにはいまもたくさんのいろいろな野鳥が来ております。
  92. 野原覺

    野原(覺)分科員 以上で終わります。
  93. 井出一太郎

    井出主査 次に、中嶋英夫君。
  94. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 ただいま野原先輩から新宮殿の問題等を中心に質疑があったわけでありますが、最後に大気汚染の問題について御質問がありました。せっかくすばらしい宮殿をつくられても、最近の東京の人口の過密化の現況あるいは産業の発達、あるいは各家屋の冷暖房装置の変化等々から、大気汚染の方向はだんだん激甚をきわめていくだろう。もちろん、これに対しては大気汚染を防止するためのいろいろな措置が行なわれなければならぬわけでありますが、しかし、最近では東京に空がないという叫びがいまではもう慢性化して、少なくとも星空をながめることが全然考えられない状態にあるわけであります。したがいまして、都心地にあります森林地帯、あるいは小公園等のその森あるいは林の中へ入ると、何か空気が清浄だという感じを受けます。感じは受けますが、もしこれをそれぞれガスあるいはばいじんの測定をした場合に、その森の中でばいじんが少ないとか、あるいはガス検知量が少ないなどということは、実際にはあり得ない。ただ、森があるために清浄な感がするというにすぎないと思うわけであります。そういう状態でありますと、今後宮殿がこの過密化への一途をたどる大東京の中心に位置することが、健康上、あるいは国事を行なう、特に対外関係の接触面の多い場合などの位置として適当であるかどうかということが検討さるべき時期が近いのではないか、こういう点を憂慮するのでありますが、この点について宮内庁当局のお考えを聞いておきたい、こう思います。
  95. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その問題は、ちょうど昭和三十四年に皇居造営審議会が開かれ、そこでいろいろ審議された際に、そういう問題も皆さまが討議をされ、検討されました。この空気の汚染の関係はある程度の影響はありますが、それはやはり堀の周辺の近いところで、ちょっと中へ入りますとその割りではないのでありまして、吹上御苑あたりは、その当時の調査ですと、空気の鮮度は、ちょうど石神井あたりと似ておるということでした。青梅あたりよりも悪いけれども、石神井あたりということで、特に悪いというほどでもない。  それからなお、皇居の位置としては、現在いろいろ各国の大公使館も東京にありますし、官庁も東京にあるわけで、やはり東京に皇居がありませんと何かにつけ不便であるし、やはり東京にあったほうがいい。東京ならほかの場所でもいいじゃないかということで、審議会でもいろいろ検討されましたが、結局、なかなか適当な場所がない、やはりいまのところがいいという結論をお出しになりました。われわれといたしましても、この審議会の御意見が妥当であったものと思っておる次第であります。
  96. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 この点についてもう一つお尋ねしたいのですが、もちろんこれは具体的に日程にのぼったわけじゃありませんが、議論としてあるいは研究課題としてしばしば論議されておるのは、官庁都市を他につくったらどうかとか、第二東京をつくったらどうかとか、学園を筑波山、あるいは国会、政府の各主要機関をむしろ第二東京都をつくってそちらへ移したらどうか、こういう第二首都の議論が相当出ておるわけであります。こういう点との関連において、いまの御答弁のような段階だけでいいのか、あるいはそれと並行してやはり検討の課題として宮内庁当局が持っていたほうがいいのか、こういう点についてお考えはなかったか。  ガス検知あるいはばいじんの測定については、季節によって相当変動があります。あるいはその日の時間によっても変動があるわけであります。ですから、ガス検知あるいはばいじん量その他大気汚染に関する問題について――吹上御苑のまん中では深大寺付近とかいうお話でありますが、最近は深大手付近もなかなか空気がよごれてきておるわけであります。そういうのをどの程度まで科学的にお調べになった上におっしゃるのか。  この二つをお答えいただきたいと思います。
  97. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 首都がどこかほかへ移るかというような問題、これはちょっと宮内庁のほうからとやかく申すべき問題じゃありませんが、そういうようなことがもしありますれば、皇居についても新しくまたそこで考えるということが出てくるのじゃないかと思います。  それから空気の汚染度の調査関係でありますが、これは皇居造営審議会が開かれたのはもう数年前ですけれども、そのころの調査でありまして、ごく最近の分はまだやっておりません。あそこはやはり木が多い関係で、木が多いと、そこを通ってくるほこりがそこですくわれる。それから、木は酸素を吐くというような関係で、木の多いところでありますので、空気は比較的きれいなものと思っております。
  98. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 いまの問題は今後また御検討いただきたいと思いますが、特に大気汚染度の問題については、測定の時期その他でずいぶん変わってまいります。それから、最近は皇居の周辺すべてがよごれた空気に包まれておるわけでありまして、その中でひとり皇居は樹木が多いという理由だけではたして清浄かどうかということは問題があろうと思うので、相当長期間、しかも科学的な検知方法を採用しない限りは、木があるからだいじょうぶだということでは済まないだろうと思います。その点触れておきます。  次に、最近、議会制度の確立の問題がいろいろ議論になっております。この点は国会みずからがよく検討し、国民の期待にこたえるべく、みずからえりを正し、反省すべき点は反省し、特に国会運営の面において不備の点があるならばこれを正して、議会制度というものが国民に信頼を得る、そしてその実をあげるに足る内容をお互いに加味していく、こういう点を私どもは考えなければならぬ。特に今国会になってから、衆議院では、議長みずからがこの議会制度の確立の問題に真剣に取り組もうとしておる段階であります。私たちもこの点については大きな関心を持っておるわけでありますが、私は、国会の軽視の傾向は、国会みずからその任務を全うしないという面、あるいは民主主義の確立が不十分なために、その成長充実の過程の一こまとしていろいろな問題を生む、こういうことから、国会自身が反省すべき点が多いと思うのでありますが、同時に、国会軽視は、国会運営だけでなくて、政府関係の各機関その他が国会に対して、その内容的に時に紛糾があり、混乱があろうとも、しかし、国会というものは国民の代表者、いわゆる憲法の前文にいうところの、国民に選ばれた国会の決定したことによって、国民はそれに従いながら、国民の福祉を増進していくという、その精神というものをお互いに尊重していくという、こういう気風がなければ、ひとり国会がこの問題に取り組んでも、なかなか議会制というものは一朝にしては確立、充実はしないと思うのであります。  そういう意味で伺うのでありまするが、毎回国会が開かれますと、天皇が開会式に臨席されます。おいでになっておことばがあるわけでありますが、必ずそのおことばの中には、ここに国会が国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切望する、こういう内容のおことばがあるわけであります。いわゆる国権の最高機関であるということを天皇は確認し、それを軸にして、われわれに対して、国民の期待にこたえるようにという努力を要請しておるわけでありますが、しかし一方、国会に対する、最高の機関としての扱い方と申しますか、そういう確認を宮内庁当局は実際にしておられるのかどうか、こういう点を私は伺っておきたいと思うわけであります。
  99. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 どういう点をお聞きになっているのか、具体的にちょっとわかりかねますが、われわれも、国会は国権の最高の機関であるということを十分考えております。
  100. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 きょう私は宮内庁長官の御出席をお願いしておったわけであります。これは宮内庁長官は偉い、次長はそう偉くないからいい云々ではなくて、宮内庁長官をお願いして、この場になって初めてお見えになってないということを知らされたわけでありまして、何か御事情があれば、前もってお話があってしかるべきと思うのですが、なぜ、この場になって初めて長官がお見えになってないということを私が気がつくというような状態になったか、この点を次長からお答えしていただきたいと思います。
  101. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 国会関係政府委員といたしまして、私宮内庁次長と経済主管とがなっておりましたので、分科会が開かれますというので、政府委員として参りましたわけであります。宮内庁長官は、天皇陛下の側近のいろいろの用がしょっちゅうあるものですから、政府委員にはなっていないのでありますが、しかし、どうしても長官でなければいけないという場合には、長官が都合さえつけば出ているわけでありまするが、きょうは先生のほうの御趣旨がわれわれのほうに徹底してなかったものですから、普通に政府委員としてわれわれが参りましたわけであります。
  102. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 それで「宮中席次暫定規程」というのが宮内庁におありになって、昭和二十五年六月二十八日に改正された分については国会のほうに御通知があったようであります。ところが、私たまたま本日、この問題に関して質問すると言いましたところが、昭和四十一年二月二十三日付の「現行暫定宮中席次」というものの資料が衆議院のほうから私の手元に入ったわけであります。あるいは衆議院事務当局において気をきかし過ぎたのかもしれませんが、質問をする日になって突然こういう資料が衆議院にある。衆議院はこの資料がいつ手に入ったかと聞いたところが、きょう手に入ったということです。しからば、改正になったのはいつなのかと聞いたところが、問い合わせをしたところが、四十年七月三十一日に改正をしておる。こういうことになっておるそうでありますが、四十年七月三十一日に改正があったときに、何ゆえに国会のほうに御通知がなかったか、この点を伺っておきたいと思います。
  103. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その点、私も詳しくは存じませんが、宮中で祝宴その他がある場合の席次の内規のようなものは一応できている、それをおっしゃるわけでありまするが、昨年たしか、やはり一部それを考え直すというようなことで、考え直した点があります。特に国会のほうへ秘密にしておかなければいけないというわけではなかったのですが、どういうことであったのでしょうか、その点私もちょっとわかりかねているわけですが、あるいは国会のほうの関係事項がなかったという意味で御連絡がなかったのかとも想像するわけであります。それは主として式部職でやっておることでありまするけれども、何も特に連絡を控えたといことではなかったのだろうと思いますけれども、何か手違いではなかったかと思います。
  104. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 手違いかどうか、お調べになればわかることですが、いま御答弁の中で、何か国会と特別関係がないようだからあるいは国会に連絡がなかったのかもしれぬというお話でありますが、これは議長あるいは副議長、各国会議員等みな関係があるわけでありまして、無関係なものではないと思う。一方、昭和三十七年五月十二日には、宮内庁の次長さんから衆議院事務総長あてに、祭粢料の下賜についての基準の通知があるわけです。この場合はあったわけです。この内容を見ると、区分がありまして、第一類と、第二類、第三類になっておりまして、第一類には、まず第一に大勲位有勲者、それから内閣総理大臣、それから衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、国務大臣まで。第二類が、両院の副議長、最高裁判所判事、以下国立国会図書館長、あるいは衆議院参議院における永年の、いわゆる二十五年在職をして表彰せられました国会議員、勲一等旭日桐花大綬章受章者と、それから各界において特に功績顕著であった者。第三類に参りまして、衆議院議員、参議院議員、文化勲章受章者、以下学士院、芸術院会員等々、都道府県会議長から地方自治体の関係の指定都市の市長及び議会議長等々まで、並んでおるわけであります。したがって、これで参りますと、衆議院議員、参議院議員が偉いか偉くないかは、各人の努力いかんで人間的評価を受けるわけでありますが、しかし、宮内庁のほうでも、まさか同じ総理大臣でも、吉田さんの場合は、これは偉い吉田さんだからトップにするとか、何々総理大臣の場合は、あまり人間的に支持がないようだとか、内閣があまり基礎が強そうもないから、これは軽くするとか、そういうものじゃないと思うのですね。同じように、いわゆる衆議院参議院というものを、国立国会図書館長やその他の人々と差をつけて扱うというようなことがいまだにあるのかどうか、そういうことから私は伺っておきたいのですが、総理大臣と衆議院議長あるいは参議院議長との関係を、これもやはり同列に見ておられるのか、あるいは差をつけてごらんになっているのか、こういう点もひとつ伺っておきたいと思うのです。
  105. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 地位的には同列だと思います。ただ、天皇陛下との関係におきますると、内閣総理大臣は最も関係が深い。常に国事行為に助言と承認をする責任者ということで関係が深いのですけれども、地位としては同列だと思っております。
  106. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 関係が深いとなりますと、宮内庁長官のほうが衆議院議長よりも関係が深いわけですから、そういう深いとか深くないではなくして、憲法の精神なり、あるいは日本が議会制度の上に国政を運営していくという基本の面から考えてどうなのかということを伺っているわけです。
  107. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 現在、内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁長官は、われわれ四長官というふうに言っておりまして、同じ地位の方だ、大事なときにはその四人の方がおいでいただくように御案内などしております。
  108. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 元旦に宮中で参賀をお受けになりますね。その際に総理大臣並びに国務大臣、内閣官房長官、法制局長官等の参賀を受ける時間と、衆議院議長、参議院議長、副議長の参賀を受ける時間に違いがあるのですね。時間の問題だけじゃなくて、衆参の議長、副議長、議員がある部屋で待っておる。そうすると、その前の廊下を大臣並びに法制局長官までの内閣関係者が、参賀が終わって帰っていく。帰っていくと、今度は議長、副議長が各議員とともに参賀に行く、こういう手順になっていますね。これは何か宮内庁の内部の部屋の関係とか、そういうことであるならば、当然衆参両院議長あるいはいまお話のあった最高裁の長官ですね、総理大臣と同列に参賀を受けて、その後において国務大臣あるいは衆議院議員、参議院議員、あるいは法制局長官、官房長官も参賀をするというなら私はわかりますけれども、何ゆえに議長、副議長はあと回しになっておるのか、こういう点を伺いたいと思います。
  109. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 やはりその部屋の関係もありますし、一ぺんに皆さんというわけにいきませんので、何組かグループで分けているわけでありまして、まあ行政の関係で総理大臣以下の方が来られる。総理大臣が代表して新年のあいさつをなさいます。それから国会の番ですと、議長が議員の方たちと一緒に来られてごあいさつなさるというふうに、グループ、グループで分けておるわけであり、その点、四人の方だけ最初に何かやったらどうか、それは一つの御意見であります。これも研究してみたいと思いまするが、現在のところはグループ別でやっている次第であります。
  110. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 そのグループ別でおやりになるというようなことから、何となく内閣総理大臣が、立法府である衆議院参議院の上に立つ、先に立つというような考え方がいつの間にか関係者の中にもしみ込んでくるというようなことの危険をお感じになりませんか。たとえばグループ、グループでやるならば、じゃ本年は国会関係から、次年はひとつ内閣からという方法もあるだろうと思います。衆議院参議院の議長というものが、その選任の過程において、政党政治ですから、政党の中で選考されて候補者がきまってくる。そしてその政党の総裁が一方で総理大臣になるというような経過からいって、何となく衆議院議長や参議院議長のほうが、内閣総理大臣の下風に立ってしかるべしだというような考え方が、特に吉田総理時代から強くなってきたようでありまするが、私はそうでないと思う。選考の過程がどうあろうと、たとえば衆議院議長というのは自民党だけの議長ではないわけであります。これは国会で選ばれるわけですから、したがって、それをもってして衆議院議長が、選考の過程の現実の実態からいって総理大臣の下風に立つというものじゃない、そういうことが自然と国会というものが軽視されてくる。軽視する傾向にあると、国会議員自身も、議会制度の確立の主たる任務を持つ者として研さんの実をあげようと思っても、国会軽視の雰囲気の中におると、どうしてもその実は上がりにくくなる、こういう面も私はあると思う。したがって、こういう問題について、単にグループの関係だとか、あるいは先ほどの御答弁のように、衆議院議長、参議院議長よりは身近な関係にあるとかいうもので判断されちゃいかぬと思うのです。もしそういう考えがあるならば、国会が開会式をするときには天皇がおいでになっておことばがあります。ならば総理府の正月の仕事始めに、内閣の仕事始めに、天皇がお見えになっておことばを出すか。天皇のお考えとしては、当然行政府よりも立法府が優先する、国権の最高の機関だ、こういう御確認の上に開会式にお臨みになる、私はこう理解しておりますが、私の理解は違っておりますか、その点をお伺いします。
  111. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 国会が国権の最高機関であるという点は、十分われわれも認識しておるつもりでありまするし、いまおっしゃったような点で特に国会の開会式には天皇陛下も御臨席になっておことばがあるものと思っております。そういうふうに考えておりまするが、たとえば新年の拝賀のときのグループ別がいいかどうかというような問題については、なお御意見の次第もございますので、十分さらに検討さしてもらいたいと思います。
  112. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 もう一点この問題に関してお伺いしますが、手元にあります昭和四十年七月三十一日改正されたといいますが、衆議院には本日通知になりましたメモでありますが、「現行暫定宮中席次」によると、一以下ずっとありまして、十三の順位で、十三の二という項目があります。ここに「国会議員、認証官、国立国会図書館長、国家公安委員会委員、内閣法制局長官、衆議院及び参議院事務総長最高裁判所事務総長(年齢順)」とあります。このことは国会議員から以下最高裁判所事務総長までのそれぞれの者を一緒にした上での年齢順なのか、あるいはそれぞれの年齢順なのか、この点をお伺いしたいと思います。
  113. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その席の設け方にもよりまするけれども、その概念としては、一緒に一ところにお集まりの場合でありますれば、その年齢順で従来考えております。しかし、その場合も、そこに書いてあります中で、私も詳しく覚えていないのでまことに申しわけないのですけれども、大体はいままでの例では、国会の方はこのあたり、認証官の方はそこらあたりというふうに、両方分けておりますから、国会なら国会で大体年齢順、認証官なら認証官の年齢順というふうになっておる場合が多いと思っております。
  114. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 天皇誕生日などの場合は、国会議員でなくて、いま申し上げたのを全部一緒にして年齢順じゃないですか。
  115. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 認証官と国会議員の方の一緒の場合は、全体を含めての年齢順の場合が多いと思います。
  116. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 ですから、これは十三の二に一緒にした者の中での年齢順なわけですね。したがって、内閣法制局長官あるいは最高裁判所事務総長国家公安委員会の委員の人でも、年齢が上の場合には国会議員の上になっておるのが、これは実際通常でしょう。そうでない例がありますか。
  117. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その中のたとえば国家公安委員とか、法制局長官の場合、認証官でない方の場合は、そう書いてあっても、たしか国会議員、認証官の次のところに年齢順に持っていっていたように思いますけれども、そこら私、ちょっとはっきりいたしません。
  118. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 国家公安委員会の委員は認証官ですか。
  119. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 認証官ではありません。
  120. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 実際は天皇誕生日など行ってみると、いつも末席にいるのは国会議員の若い人、たとえば大臣三回経験者であっても年齢の若い人の場合は下のほうへすわる。事務総長国家公安委員会の委員の年配の人は上にすわる。検事総長、そういう人も年齢の高い者は上という例が多いわけですね。ですから、私はこういう質問をするのは、一歩あやまてば、国会議員が何か国会議員を厚遇しろと、こういうことになるだろうと思うのです。私は決して国会議員であるがゆえに厚遇したり、へりくだったり、甘やかす必要はないと思うのです。しかし、公式の場における国会というものの位置づけというものは私は大事だと思うのです。特に最近行政府に対して国会が従属的な関係にあるような錯覚なり、あるいはともすれば錯覚ではない、そういう事実がだんだん出始めているという傾向、こういうことは、国会議員が尊敬される必要はないけれども、国会を軽視されることは、自然に日本の議会制度というものが軽視されていく。国会が軽視されるということは日本の憲法が軽視されるようになる。特に最近、憲法記念日の行事というものがありますが、全然なくなってきた。憲法記念日の行事をするのは、何か左翼団体のような感じなのです。こういう傾向がある。これは実際には、天皇のおことばにもしばしば、憲法の精神、憲法がどうのと出てくる。おことばと実態と違ってくるということは、私は、天皇に最も密接な関係のある宮内庁当局としては、好ましくないことだと思うのですね。天皇のおことばと実態とが離れてくるということは、これは好ましくないことだと思うのです。そういう点等から考えた場合に、私はこの席次などというものは、私もこれはちょっと勇気が要ると思うのです。へたにこの問題を取り上げると、何か国会議員はいばりたくて問題にしているのかというふうになるので。国会議員がいばりたいのじゃない。国会軽視の傾向を打破しなければならぬという点から申し上げておるのですから、そういう点から、次長として、総理大臣と両院の議長との関係、あるいは国務大臣、特に認証官その他と国会議員との関係というものについて、この際率直な御判断なり、あるいは私の意見が違うと思うなら、かまいません、遠慮なしに意見交換をしてみたいと思いますから、率直な御見解をお示し願いたいと思います。
  121. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 内閣総理大臣と衆議院参議院の議長の方は同格だと思います。それから、国会議員の方と行政府のほうの認証官、この関係につきましては、上とか下とか、なかなかむずかしい点はありますけれども、お客としておいでになる場合には、同じように考えてお扱いをするというのが、われわれのいままでの考えでございました。
  122. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 いままでの考えはわかるのですが、いま意見交換をして、たとえばいつの場合でも内閣総理大臣が両院議長に優先していいのかどうかという問題を私提起しました。それから、国家公安委員、これは国会の承認人事によって選ばれる委員であります。こういうもの、あるいは法制局長官、裁判所事務総長、これは何か急につくったもののようでありますけれども、これは前からのあれでいきますと、第一が大勲位菊花章頸飾、菊花大綬章、次が内閣総理大臣、それから両院議長があり、国務大臣があり、そして宮内庁長官が出てきて会計検査院長、特命全権大使、時従長、認証官、国家公安委員、それから勲一等旭日桐花大綬章、第十一番が従一位、十二番が勲一等、第十三番が衆議院議員、参議院議員、第十四番が都道府県知事となっているのですね。ですから、この考え方のなごりがここにちゃんと出てきていると思うのです、このいわゆる年齢順になったというところに。そういう点、私の判断では、国会というもの、国会議員個々ではなくて、国会というものに対する宮内庁の従来の考え方はそうだったと思うのですが、はたしてそのままでいいのかどうか、この点を伺っておきたい。
  123. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 国会は国権の最高機関であるという考えは、これは私も十分持っておるつもりであります。しかし、構成しておられる議員の方を最高の地位といっていいのか、そこの辺にちょっと疑問もあると思います。そこの構成の方も十分尊重すべきことは、われわれも考えなくてはいけないと思うのでありますが、そこの一応の席次というものも、主として宴席でもする際のテーブルの並べ方の便宜を考えて、式部のほうで主としてつくっているわけでありますが、それが一般社会の通念から見て不合理な点があれば、これを改めるということは必要だと思います。したがって、さらに十分検討をしていきたいと思います。
  124. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 国会は国権の最高の機関だが、国会議員は決して最高の人ではない。それはわかっているのです。それがわかっているから、先ほど来国会議員を最高の位置に遇せよとは言っていないのです。しからば国立国会図書館長とか、国家公安委員会の委員というのは、いまや天皇の名における役人じゃないわけです。しかもこれは国会の承認人事によって選ばれる委員です。これが高いか低いかというものの判断がつかないでしょう。その人が偉いとかじゃないだろうと思うのです。これは国民であれば、国会で承認されれば、ときに三十一歳の者が委員になる場合もあるわけです。だが、何ゆえにここで国家公安委員会の委員だけがこの十三の二に入るのですか。国会承認人事でこれに相応する委員会というのは他にたくさんあります。たとえば中央選挙管理会だって、これは非常に重要な位置です。選挙が公正に行なわれるかどうかは、これは議会政治の根幹です。こういうのはなぜ入ってこないのか。
  125. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 国家公安委員がそこに入っているのは、以前の法律で、国家公安委員は法務総裁と同等であるとかなんとかという条文があったときのなごりであります。なお、国会図書館長は、現在の法律にも国務大臣と同等の待遇をするということがありますから、やはり相当の待遇をすべきであるというふうに考えました。国家公安委員会については、現在の警察法にはそれがありませんので、したがって、これは以前から見れば幾らか下げて考えてはおりますけれども、そういう過去があったものですから、ある程度のところにいっておるわけであります。
  126. 中嶋英夫

    中嶋(英)分科員 私も、こういう質問をする以上は、同僚先輩の議員の諸君とよく協力して、国会の権威を国会の中から高めるための努力をしていきたいと思うのです。同時に、宮内庁当局も、もう一ぺん、天皇のおことばと憲法の前文、あるいは国権の最高機関であるという規定――あるいはすでに戦後においてもこの宮中席次等がだんだん変わってきております。だから私はこれ以上言いません。変わりつつあると見ているからこれ以上言わない。これが固定的なものであればいろいろ議論を深めなければならぬと思いますが、あえて暫定とおっしゃっておりますので、私は国会の中で国会の権威を高めるために努力しますが、同時に各界に対しても権威を高めてもらうように協力をしていただかなければならぬ。たとえば国会にはPRの機関がありません。ですから、新聞その他で客観的に評価されるだけであります。最近では、郵政省関係でも、あるいは電話局でも、国鉄でも、PR雑誌をどんどん出しているわけです。国会はPRはしない。批判は甘んじて受けます。批判は甘んじて受けるけれども、国会が漫画や漫才の対象にならないように私どもは努力しなければいかぬ。日本では、まだ天皇に対する批判というのは実際社会通念でタブーです。役人に対してもタブーがある。うっかりやると権力を持っていますから……。国会は権力があるようで、ない。実行の権力がない。ここに庶民の権力に対するうっぷんというものが向いてくる。これはある意味では安全弁であって好ましいことかもしれぬけれども、好ましいからといって、それを好ましいままで、いたずらに玩弄物のように扱っていると、結果的には、国会軽視は即日本の憲法に規定された国家の性格そのものまでが危殆に瀕してくるという、こういう危険もあるわけでありますので、こういう点に対する御配慮を、宮内庁に限らず、私は各界に要請しておきたい、こう思って質問したわけであります。その趣旨を十分御理解いただいて、今後宮内庁がお持ちである所管の事業が国民によくなじみ、理解をされるような運用をされることを心から期待して、質問を終わります。
  127. 井出一太郎

    井出主査 次に山中吾郎君。
  128. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 高裁のほうに質問を申し上げるのですが、実は去る二月の十一日に総括質問で総理大臣に質問をしっぱなしになっているので、それを確認をするための質問ですから、そのおつもりでお答え願いたいと思うのです。十一日の予算委員会の場合に、家庭裁判所調査官の待遇が非常に悪い。青少年問題については、むしろそういう専門家の判断が基礎になってその対策が立てられるのであるから、こういう人々を優遇しなければ、青少年問題を論じてもこれは形式的に流れる。もっと優遇すべきでないか、ということに対して、佐藤総理大臣は、特に調査官については待遇改善を考えたいと答えておるわけなんです。そこで、総理大臣が責任を持って答えておるわけですから、来年度の予算には実現する背景もあるのでありますし、また、最高裁判所のお考えもおそらくそうだと思うのですから、この点、最高裁のお考えをここではっきり明確に出していただいて、せっかく総理大臣がそういう答弁をしておるのですから、待遇改善を実現するようにしていただきたい。その御意見を聞いておきたいと思います。
  129. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 仰せのごとく、家庭裁判所調査官は、少年審判、家事審判が十分にその機能を発揮するためには欠くべからざる機関でございまして、しかもそれらの職は調査職ではありますが、高度の専門職である。そういう点で、いわゆる職務の内容はソシアルワークといわれております。先日佐藤首相がその点に御理解のあることを仰せられたことは、われわれ裁判所の者としても非常に力強く考えておりますので、その待遇につきましては、今後十分検討して、ぜひ何か結果をあげたい、かように考えております。
  130. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 これは職場の中で、やはり下積みになっておる調査官の欲求不満というのか、不平不満がずいぶんあるようでありますので、だれの手紙ということは別にしまして、これは立教大学の青少年問題の研究家で、元調査官をした山本晴雄教授に私信で出しておる手紙を見まして、ずいぶん家庭裁判所調査官というものは、非常に心理的に矛盾を感じているということがよく出ております。それは名前は秘しますが、「現在の調査官は当庁全員仕事に対する意欲と情熱を喪失しぼう然と机とにらみっこしている日々を送っております。書記官並みの待遇さえできない現在の待遇は、家庭裁判所はもちろん、非行少年の今後に対する施策が砂上の楼閣化することは火を見るより明らかです」、実際は、その前にいろいろと、自分らはずいぶんと重要な仕事をしておるつもりであるけれども、調査官が特に昇進なんというのはほとんどない。一般の事務を担当する人々が、学歴その他を越えてわれわれよりどんどんと昇給しておる。そういうことで生活苦を含んで非常に矛盾を感じておることをるる書いておる。私はこれ以上読まないですが、そういうところを見ますと、こうい青少年関係をほんとうに実効あるものにしようという理念と同時に、職場における職種によって違った待遇をしなければならぬということで、非常にむずかしい問題があるが、よほど裁判所のほうでも積極的に待遇改善をする主張をしないと、私は実現しないんだと思うので、これだけは特にお願いしておかなければならぬと思うのです。せっかく私も言い出したことですから、実現をしていただきたい。おそらく給与体系その他について矛盾が出るんじゃないかと思われるかもしれないが、たとえば文部省の中に事務系統でどんどんと昇格をしていく、課長になり部長、局長になるという人に対して、専門職として視学官制度がありますね。だから事務的に発言権はないけれども、やはり別途に待遇をされて、そして専門的立場で愉快に仕事ができ、積極的に仕事ができるという、そういう一つの例もあるわけでありますから、その点はいい機会でありますから御努力を願いたいと思うのです。  次に、この間も一言触れただけでありますので、この機会に青少年問題というものを実効あるものにするために、きょうは裁判所関係、きょうだけしか皆さんの御意見を聞く日がないのでお聞きいたしたいと思うのですが、裁判所意見を発表された。その意見を発表されたことについてずいぶんマスコミに大きい反響を与えまして、連日のように少しオーバーなくらいに法務省との見解の相違をはなやかに新聞に報道されておるわけでありますが、私は裁判所のあの発表を読みまして、誇張もない、実態に即したまじめな発表であると敬意を実は表しております。しかし、心配なことには、ああいう青少年問題に対する対策を考えるときに、ことに現在政治問題化して、総理大臣は施政演説においても特別に強調する、その他各所で強調しておるときに、裁判所のほうにおける指導理念と、それから法務省、警察庁における指導理念に違いがあれば、これはやはりいけないのではないか。新聞の報道でも、皆さんの白書というのか、発表によりましても、いわゆる教育主義の立場を強調されている。それから検察庁のほうでは刑罰主義というものを強調されておる。そうすると、青少年政策について基本的な考え方に全く相反する理念を持っておるままでこの青少年問題が進められては、これは実効は出ないと思う。そこで、すなおに、率直に裁判所のほうから、青少年対策に対する指導理念として教育主義をとられておるその立場、それと、法務省の刑罰主義に対する考え方について、二律背反的に絶対相合わないものなのか、そうではないのだ、こういうことだということをここでひとつ発表していただきたいと思う。
  131. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 ただいまのお尋ねでございますが、裁判所が先ごろ各方面にお配りしました資料は、最高裁判所としての少年法改正に対する正式の意見という趣旨のものではございません。これはこの前も申し上げました。家庭局がこれまでいろいろの会同その他の機会に取り集めた資料を整理したものでございます。ですからその内容は、一口に申しますと、少年非行の減少の実態と、それに対する少年審判の実際についての正確な知識を提供して、そしてこの少年法改正の問題について正しい論議が進められるようにという趣旨で、むろん各方面の御批判を十分に仰ぐ、そういう気持ちでつくられたものでございます。この少年対策といたしましては、警察、検察、裁判だけの問題で片づくものではございませんで、これは申すまでもなく、より広い視野で社会政策的な問題と存じます。  ただ、少年審判制度というものを少年法という点だけをとらえて申しますと、これは刑罰主義と保護主義とが対立して争っているというものではございません。裁判所のほうは保護主義ということを非常に強調しております。これは当然のことで、法務省といたしましても、私の見まするところでは、決して少年について刑罰主義をとれということを言っておるわけではございませんで、保護主義と刑罰主義とをいかに調和するか、それが問題なんでございまして、そしてこの点について法務省のほうでいろいろ案を用意されるということでございますから、その正式の案をちょうだいしてから、また裁判所裁判所として考えていきたい。そういう趣旨でございます。  ちょうど刑罰につきましても、刑の目的は応報かあるいは教育かという、御存じのような議論がございます。今日では、もう刑の目的は単なる応報であってもならない、教育刑ということを主張するにしても、しかし一般社会に対する影響、つまり一般予防というものを忘れてはならない、そういうことが言われておりますとおり、少年法につきましても、刑罰主義か保護主義かの問題、そういう主義の争いではなくして、いかにして少年の健全な育成のためにふさわしい制度を立てるか、こういうことが問題で、その点については裁判所法務省も考えが一致しておりますので、その点一言つけ加えておきます。
  132. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 少年法改正を前提としての論議ですから、一つの法律を設定するについては、前にその指導理念というものを統一して出発すべきである、私はそう思うわけです。そこで、いまのマスコミその他を見ておれば、いまおっしゃったようにはなっていない。皆さんのほうから発表された原文を読むと長くなるから、新聞で要約したのを見ても、こういうふうに書いております。「少年非行対策について「教育主義」と「処罰主義」という相反する二つの考え方がある。歴史的には「処罰主義」の反省から生まれた新しい進歩的な立場が「教育主義」であり、刑事学、心理学、社会学、教育学、精神医学などの豊富な知識、見解によって支持されている。」、要約して、そのとおり出ておると思うのです。ことに青少年に対する場合だから、そういう教育主義的な思想が指導理念になって法構成されるべきであるのじゃないかと私は思うのです。  ところが、一方に、必ずしもいまおっしゃったような相互理解ができていないのじゃないかという感じがするのです。いま法務省刑事局長は津田さんですか、いまおられますね。これは随筆みたいなものですが、近藤日出造さんとあなたと会ったときの「時事ばなし」の中に、肩をこらさないでしゃべっておられるのだから、どうということないのですが、保護主義と責任主義というふうなことばで出されておる、刑罰主義と教育主義じゃなくて。保護主義というのは保護だけの問題であって、教育というのはどこかしつけとか訓練がある意味では入ってくると思うのです。それから、どうも少年法は保護主義に傾き過ぎているという立場で、責任主義というものを法務省の指導理念のようにお話しをされて「責任主義というのは、本人の責任を問い、他の人のいましめになるようにする、といういき方なんです」。どういうふうに対談されたか知らないが、津田さんの答弁の中に入っている。もしこうならば、これは完全に応報主義のいき方なので、これは危険ではないかというふうに感じたのです。さらにまたこの中で「少年審判に検事を立ち会わせろという声が出ております。判事だけの審判だと、その人柄によって処分がまちまちになる、と考えられる。実際に、ある少年保護施設が、ある判事のときはがらあきになり、判事がかわったら満員、ということがあったんです。むずかしくいうと、対立当事者がおらず、しかも非公開の裁判に独立を与えてよいものか、という根本的問題がある、ということですね」と書いてありますが、これは真意はどうかわかりませんけれども、どこか相当の隔たりがあるように見ておるのです。  私は、少なくとも一つの過渡期の状態にある青少年を、社会防衛の立場から隔離をするという要素はもちろん含んでおるけれども、少年法を設定するについては、やはりもう少し指導理念というものが近づかないと法をいじくるべきものではない、こういうふうに思うのですが、ちょうど津田さんがおられるので、ここでひとつ安心するような答弁をお聞きしておきたいと思う。
  133. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまいろいろお尋ねをいただいたわけでございますが、先ほどの近藤日出造氏とは、もちろん私は対談いたしておりますが、非常に長時間にわたる対談のことをまとめられたわけでございまして、そのこと自体については必ずしも私の真意が伝わっていない面もないではないと思うのであります。しかしながら、先ほども最高裁事務総長が言われましたように、この問題は、保護主義とか刑罰主義とかいうことで割り切るべきものではなく、またどちらに指導理念があるというような性質のものでもないと考えております。したがいまして、要すればいかにして少年について再非行を防止できるか、また少年が再非行を犯すような環境を防止できるかということに本論があるのでありまして、それが最終目的だと思います。したがいまして、保護処分も必要だし、現在でももちろん少年に対して刑罰処分が行なわれておるわけです。  そこで、現在の刑罰処分あるいは保護処分というものが、保護主義に立っているのか刑罰主義に立っているのかといえば、それは見方によっていろいろあり得ると思います。要は、いかにすればその最終の目的が達せられるかということにあるわけでありまして、私どもは少年法について改正を要するという批判のあることは十分承知いたしておりますので、そういう観点でこの問題を検討し、前会法務大臣が申しましたように、複数の試案と申しますか、構想を発表して、これを世間の方々の批判に問い、その上で最も皆さんが納得する方向において少年法改正の少なくとも原案をつくるのが相当であるというふうに考えておる次第でございます。
  134. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 いろいろお話をされておられるならばけっこうだと思うのですが、保護主義の保護なんというのは、これはやはり甘やかし主義が入ると思う。教育主義というと何か訓練が入ってくるので、甘いようで、ある意味において教育主義というのは少年法の考え方についてはきっと筋が入っていくんだろうと思うのですが、刑罰主義とか責任主義とか保護主義とかいうことばは、人間形成というふうなものがどこかにいってしまって、保護するか刑罰に向かうかどっちかだというふうな感じがするのですが、専門家のほうで教育主義という場合は、保護主義と同じに使っておられるわけですか。
  135. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 家庭局長が参っておりますので、詳細は家庭局長に御説明いたさせます。
  136. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 お答えいたします。ただいま御質問の点でございますが、よく保護主義ということばが使われているわけですが、いま御指摘のように、保護主義ということは、何だか少年を甘やかすんじゃないかという認識を与えるおそれがあるわけでございます。私どもでは、保護主義ということばはもちろん使いますけれども、それは教育主義ということばとほとんど同意義でございまして、少年に矯正教育を施して再び非行を犯させないようにするという立場、そういうことを教育主義あるいは保護主義ということばで呼んでおるわけでございます。
  137. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 なお、ちょうど両方の方がおられるので、もうきょう以外に機会がないのでお聞きしたいと思うのですが、少年法を改正するについての十八歳論、引き下げですね。これについてはやはり意見は対立されておられるのですが、どちらからでもけっこうです。
  138. 津田實

    ○津田政府委員 少年法改正の問題は、先ほども申し上げましたように、いまその問題点を検討して構想を法務省内部でつくっておるという段階でございまして、その複数の構想を世に問うという考え方であります。したがいまして、最高裁判所には、その構想自体はまだ私のほうで完全に固まっているわけじゃないから御連絡をもちろんいたしておりません。ただ、しかしながら、最高裁判所事務総局と私のほうの係官とが、いろいろこういう問題について、その他少年問題一般について意見交換をいたしておることはございますが、その場合に、いろいろな意見はもちろん出ておりますけれども、それはそのときに会議をしたその者の意見交換ということでありまして、法務省として考えている構想というものがそこに全部盛り込まれているという性質のものではございません。
  139. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 少年法改正の主管省は法務省ですね、十八歳。家裁のほうからの意見を見ますと、ますます犯罪は年齢が低下をしてきておるというふうな一つの見方の中で、現在精神的な発達は未熟であるが、肉体的に非常に発達をした、このアンバランスは世界共通ですね。日本だけでなしに、世界のどこの青少年問題の原因にも、精神的発達と肉体的発達のアンバランス、第二次大戦後の世界共通の現象としていっているようですが、この辺からいって、やはり二十歳以下は刑罰にもっと教育的な意味を持った行き方のほうがいいという意見は、これは家裁から出している意見ですね。これは意見が一致してから法案はお出しになるのですか、対立したままお出しになるのでは軽率だと思うのですが、それはどういうことになるのですか。
  140. 津田實

    ○津田政府委員 立法に関しましては、もちろん政府が原案をつくるわけでございます。したがいまして、最終的には政府が責任を持って国会に提案できる案を作成しなければならないわけでございます。しかしながら、現在におきまして、罪を犯した少年を主として取り扱っている裁判所という非常に大きな機関があるわけでございますので、その意見を聞かないか、あるいはその意見を無視して法案を作成するということは、これは実際上困難であることは当然でございます。したがいまして、その立案の過程においては十分裁判所の御意見も伺いたい、また、伺ってこちらも考えるところがなければならぬと考えておりますが、責任体制から申せば、法案の立案の最終責任は政府側にあるという意味において、やはり場合によってはこれは考えなければならぬことがあるかもしれませんけれども、そういう事態は、私どもとしてはないことを希望いたしますし、また、そういうふうにいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  141. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 家裁のほうの御意見を。
  142. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの年齢問題でありますが、御承知のとおり、旧少年法時代におきましては、年齢は十八歳以下を少年というふうにいっておったわけでございます。ところが、戦後の憲法改正に引き続いたところの各法律の改正の際に、少年法は当然改正されたわけでございますが、その際に二十歳以下を少年とするということで、年齢が二十歳というふうにきめられたわけでございます。しかし、その少年法が改正されました昭和二十四年一月一日から二年間、二十四、二十五年の間、暫定的にやはり十八歳を少年として扱っておったわけでございますが、二十六年一月一日から現行のとおり二十歳に引き上げられておりますが、ところが、引き上げられた後も、少年の成育度その他から、あるいは十八歳、十九歳の少年の非行、われわれが想像できないような相当な非行がときどき起こるということから、年齢の引き下げという問題が起こっておりましたので、私どもも、年齢の引き下げ論というのが相当世間でいわれておるということから、あの資料に年齢引き下げ論を書いたわけでございまして、これは従来、私どものほうの裁判官の会同、あるいは法務省主宰の検察官の会同等におきましても、年齢引き下げ論、あるいは年齢引き下げるべからずという議論が相当出ておりますので、それらを詳細に資料としてまとめたわけでございます。
  143. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 意見はそのまま違ったままにおられるようでありますが、その次にこれもころばぬ先のつえでここでひとついろいろお聞きしてわれわれも考えたいと思うのですが、「少年保護制度の現状」のところで、家裁のほうでは「家裁の終局処分は「検察官へ逆送」「保護処分」「知事・児童相談所送致」「不処分」「審判不開始」の五つに限られている。しかし、逆送の七、八割は略式起訴ですまされ、公判に回ったものも、半分は執行猶予に終わっており、保護処分より弱体である。保護処分も、少年院の収容力や、保護観察官の不足などから決して満足できる状態ではない。」という一つの批判をされておる。そこで、また一方に専門家の意見を聞きますと、不処分、それから審判不開始という行き方は、法務省のほうでは保護主義の行き過ぎで甘過ぎるのだというふうな批判をしておるけれども、家裁の調査官で専門的に観察をして、そうして不処分、不開始の判断をした青少年の大部分は再犯を犯していない、社会復帰をしておる。したがって、決して不処分、不開始は甘いのではなくて、大部分その判断は正当なものとして、再び罪を犯さない少年に立ち返っておるということを強調しておるので、あるいはその点は家庭裁判所のあり方は決して甘くもない、むしろ科学的な処理をしておるのではないかという感じがするのですが、これは法務省のほうでも何かそれについて異議があるという批判を新聞では盛んに書いてあります。その点はどうですか。
  144. 津田實

    ○津田政府委員 道路交通事件を除きます家庭裁判所の処分状況でありますが、これはちょっと古いのでありますけれども、昭和三十七年を例にとりますと、検察官送致が六・六%、少年院送致が四%、保護観察が九・三%、不処分が一九・七%、それから不開始が四二・二%、こういうことになっております。そこでこれは個々の事件についてでありませんで、全体の平均値でございます。したがって、特定の事件について、もちろん裁判官は特定の少年を見まして適当な処分をしているということになろうと思いますが、全体の数字として不開始が四二・二%、不処分が一九・七%、つまり六二%程度のものがそういう処分で、外部には少なくともわからないというような処分ではたしていいかどうか、こういう問題はかねてから指摘されているところであります。したがいまして、その問題の内容を検討する必要があると思うのであります。もちろんその不開始、不処分は、本来情状の軽い者あるいは犯罪そのものが成立しない者というものがあるわけでありますから、そういう意味におきまして、不開始、不処分者の再犯、再非行が低いことはもう当然のことだと思うのであります。しかしながら、その内容をつぶさに検討いたします場合に、一体どうなるか、こういうことになります。もう一つは、ここでこの不開始、不処分その他の処分の効果を測定するという問題は、これは個人別に追跡をしなければわからぬわけであります。これを多年にわたって相当数追跡するということは非常に困難な作業だと思います。現に若干のものを追跡したという結果があるいは出ていると思いますが、それでは全体を見ることが困難であるというような判断を私どもはいたしておりますので、はたしてこれが全部追跡できるものか、少なくとも全体を推定し得る程度に追跡し得るものかどうかということは、やはり今後の大きな問題であるというふうに考えておる次第であります。
  145. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の、不開始、不処分が非常に多いのじゃないかという点でございますが、不開始、不処分はなるほど全事件からいきますと七〇%近くございますが、しかし、不開始、不処分ということば自体は、裁判所は何もせずに少年を野放しにしてしまうんだという印象を受けられる方もおありかと思いますけれども、しかし、家庭裁判所といたしましては、非行の原因あるいはその環境、あるいは本人の資質というものを調査いたしまして、再び保護処分あるいは刑罰を科さなくても再犯を犯すおそれがないという見込みのある者に対しましては、旧少年法当時保護処分として認められておりましたところの誓約書の徴取とか、あるいは書面で戒告するとか、あるいは保護者に引き渡すとか、あるいはその職場の環境をかえるというような保護的な措置を講じまして、不開始、不処分にいたすわけでございます。したがって、もちろん、先ほど津田局長が仰せのとおり、そういう不開始、不処分になる対象者は非行度が低いということもございますけれども、不開始、不処分の成績はかなりあがっておる。いわゆる不開始、不処分にした少年が再犯を犯す率は少ないというわけでございます。したがって、外面的に不開始、不処分が多いからといって家裁の処分が甘いというふうな批判は当たらないのじゃないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  146. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 それから、いま一つの意見の対立、これは実際わからぬのでお聞きするが、検察官先議論で、家裁のほうでは、検察官は公益代表であるといっても社会防衛的見地に傾くおそれがあり、処罰主義への逆行をまねく、また、家裁のような科学的補助機構、いわゆる調査官制度を持たない検察官によるふるいわけは、処分の科学性にもとるおそれがある、これも要約した文章ですから、実態はどうかわからぬのですが、こういう一つの意見を持っておるわけです。検察官のほう、法務省のほうでは、これについてどういう御意見を持っておられますか。
  147. 津田實

    ○津田政府委員 検察官先議の問題につきましては、いま御指摘のような批判のあることは当然承知いたしております。したがいまして、検察官先議とするのがいいかどうかという問題は、これはやはり一つの大きな問題であると思います。でありますが、家庭裁判所の処理そのものについての批判というものは消えているわけではないわけです。したがいまして、その批判そのものをかりに正しいとすれば何らかの方策を講じなければならぬという意味における一つの方策として、検察官先議というものもあり得るということを考える次第であります。たとえば、現在、強盗殺人事件のうち、これは三十七年の統計でございますが、平均値で検察官へ送致されるものが五六%なんです。四四%は少なくとも送致されない、つまり逆送されないという形が出ておるわけであります。そういうようなこと、あるいは、粗暴犯におきまして傷害致死というようなもののうち検察官に送致されるものの率は四四%、五六%は刑罰以外の処分になっておる。これは中間少年及び年長少年についてでございます。したがいまして、どうもこの数字自体を見ますと、はたしてこれでいいものかという世の批判があることは、確かに私どもも考えざるを得ない問題であるというふうに思われるわけであります。強盗殺人について四四%、あるいは傷害致死について五六%のものが少なくとも刑事処分にはならないということで、これでいいのかということは確かにあろうと思います。そういうようなことをすべて考え合わせました場合に、裁判官として独立の処分をされておる現在の家裁のあり方でいいのかという批判が当然それにつながってくるというふうに考えられるので、その点をやはり検討の対象にしなければならぬというふうに私は考えておるわけでございます。
  148. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 検察官先議の問題でございますが、要は、少年をいかにして再非行から防止するか、あるいは、もちろん、再非行を防止することによって社会をいかに守るかという点が一番重要な点じゃないかと思うわけであります。そういたしますと、家庭裁判所におきまして、少年の資質なり、あるいは環境なり、あるいは経歴、そういうものを家庭裁判所調査官が人間諸科学の知識を活用いたしまして調査した結果、これは刑事裁判が相当である、あるいは保護処分が相当である、あるいは何も処分をしないほうがいいというふうな資料を裁判官に提供いたしまして、それらの資料に基づいて裁判官が的確に判断して処遇する、いわゆる少年処遇に科学性を持たすということがやはり一番必要じゃないかと思うわけであります。そういたしますと、現在そういうふうな科学的な調査の機構を備えておるのは家庭裁判所でございますので、家庭裁判所がそういうふうなふるい分けをするのには最も適した機関でないか。特に、家庭裁判所裁判所の性質上非常に中立的な立場にございますので、そういうふうな中立的な立場にありますところの裁判所においてそういうより分けをするということが少年処遇にとっては最も必要でないかというふうに考えられるわけでございます。
  149. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 まだいろいろと話し合いをしなければならぬ意見がだいぶあるようで、距離を感ずるわけですが、しかし、青少年問題の場合は、少なくとも科学的に現在教育心理あるいは実際家を通じて積み重ねてきた青少年に対する学問というものを最善に活用する、そういう制度というものを前提とすべきだということだけは、どんな立場の方々もお考え願って、その中で共通の広場を出していただくべきものである、私はこう思うのですが、その点は切望いたしたいと思うのです。ことに、日本の場合には、大体教育学とか心理学なんていうものは西洋で発達した学問でして、日本の親というものは、子供が親についてくるべきであるという親孝行の理念の中で、子供に対する科学的な観察とか取り扱いとかをこえて、溺愛をするか、あるいは突っぱねるか、あるいは弾圧をするかということで通ってきたために、そういう子供に対する科学が少しも発達してない。日本で行なっている科学は全部西洋の中で生まれた科学である。そういう中に、青少年法の指導理念にしても、あるいは学校教育、家庭教育の問題にしても、親が自信をなくしておるというのは、いままでそういう心理学的に子供を観察し、その上に立って取り扱う、しつけをするとかいうことの能力が非常にないということだと思うのです。だから、大学で、体育学部で何か根性をつくろうというムードが出ると、ああいうしごきをして人を殺したりするような、まことに非科学的なものがある。だから、愛情とか、あるいは一方に社会防衛の立場とか、あるいは保護というふうな立場の中でも、何としても必要なことは、青少年に対する科学だと私は思うので、その科学を生かすような制度を確立する前向きな方向でこの問題をひとつ真剣に論議をしていただきたい。そういう場合については、私はやはり、一つの意見として、あの調査官の待遇をもっとよくして、何かそれを審判官というふうにして、基礎的にその判断をする身分保障、地位を与えて、それに基づいて検察当局にしても裁判所にしても取り扱うというまず前提に、科学的な取り扱いをする専門部門を置くというふうな考え方が一番大事であり、その中で共通の広場ができるのじゃないかと思うのです。たとえば、これも毎日新聞に載っておったんですが、これは一つの学者の発表で、これも参考になるかどうか知りませんが、山本さんの意見の中で、一定の経験を持った家裁調査官を審判官にして、検察官が保護観察以下の意見を付した事件を審理する、そして検察官が少年院送付以上の処遇意見をつけたケースについては刑事処分を含めて家庭裁判所裁判官が審理するというふうな一つの段階を持ちながら、とにかく専門的な人々のまず観察及び審判を受けたあとで処理するというふうなことを強調しておるようですが、法務省の経験の中から得た結論と裁判所の中から得た結論で、何か前向きに共通の広場を持つ方向にいかなければ、またその辺に共通したものを持たなければ、少年法などはいじくるべきではないと私は思うのですが、これはいかがですか。裁判所法務省、両方から御意見を聞いておきたいと思います。
  150. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねの点でございますが、おそらくアメリカなどで行なわれておりますレフェリー制度のことをおっしゃっていられるのじゃないかというふうに想像するわけでございますが、レフェリー制度については、すでにアメリカなんかでは行なわれて相当実績をあげておるということを聞いておりまして、私どもといたしましても、この問題は相当重要な問題でございますし、また、場合によっては、裁判官でない、いわゆる有資格者でない裁判官による裁判という問題にもからんでまいりまして、非常に検討すべき問題が多いものでございますので、現在も検討しておるという段階でございます。もちろん、この問題につきましては、将来とも、あるいは法務省とも十分御相談して考えていきたいというふうに考えております。
  151. 津田實

    ○津田政府委員 現在の家庭裁判所の制度を前提にいたした場合に、この問題をどういうふうに考えるかという問題はあろうと思います。つまり、裁判官ということを有資格のもとにするとすれば、その資格そのものは必ずしも限定されておるわけじゃありませんので、そういう一つの種類の裁判官というものを打ち立てるという考え方はあり得ると思うのであります。しかしながら、現在の家庭裁判所の機構そのものをさらに考えてみますと、これは対審の構造をとっておるわけではございませんので、本質的な裁判ということはできないわけであります。これは実質的に言えば行政処分であると思うのであります。したがいまして、それが裁判所裁判の形で、裁判官の処分の形で行なわれておるというのが現状であると思うわけであります。そういう意味において、これを行政処分というふうに見た場合に、どういう機構がいいかということは、やはり問題であると思うのであります。少なくとも、現在の機構といたしまして、それをどうするかという問題は、一つのやはり問題であると思いますが、私どもは、いまその問題は検討の対象にはいたしておりません。これは少なくとも最高裁判所においてまずお考えをいただく、いろんな問題、つまり内部組織等の問題をいろいろ考えてお考えをいただいた上で、法務省で検討すべき問題というふうに考えておる次第でございます。
  152. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私、もうこれで大体お話を聞いたので質問を終わりたいと思うのですが、刑罰とか保護とかいうことは、一つの刑事政策の問題もあるし、また社会防衛のいろんな問題もあるでしょうが、少なくとも科学的な、いままでに積み重ねてきた学問というものを活用する方向でひとつ解決をしていただきたい、そういうふうに思うので、もし国会に法改正を出される場合については、そういう点を確信を持ってお出し願いたいと思うのです。それまでは十分御検討願いたいと思います。  最後に、法務省刑事局長さんに……。青少年対策の中で、私は岩手のBBSの会長をしておるのですが、名誉職はこれ一つしかしていないけれども、青年諸君がああいう非行少年に対して一つの献身的な努力をしておるので、私も陰で応援をしておるわけです。ところが、最近の青少年の対策というのは、何かの委員会を見ると、年寄りばかりが寄って、老人が青少年を指導するというふうな姿とか、顔の委員会、顔の協議会、いわゆる看板の委員会ばかりなんで、やはり、少年の指導には、兄貴分の青年が指導するというふうな中で、家庭の欠陥のかわりをするというのが一番いいのじゃないか。少年の指導は青年にやらせる。あまり老人が古い頭でやるよりはいいと思うので、そういう団体を育成するという方向に、やはり法務省にしても家裁の関係にしても御指導を願って、看板の協議会などあまりつくらないようにされるのがいいのじゃないか。私は、一たん反社会的な少年になって社会復帰をする、これは一種の青少年問題のアフターケアだと思うのです。幼児時代あるいは小さいときの環境の欠陥から生まれてきて、どうにもならないような犯罪少年をつくったあとの復帰をどうするかということですから、非常に困難な問題があるし、法務省と家裁との対立もきびしく出ると思う。したがって、教育政策が、幼児教育が前提になければ根本解決がないことはよく承知しております。しかし、一たん非行化した中でも、凶悪犯罪の者は一割くらいで、大部分の者はちょっとした意志薄弱であるとか、あるいは復帰できるような可能性の青少年は大体七、八〇%ある。その人に対する問題がいつも論議をされると思っておるわけですが、おとなは、青少年問題を利用して民衆の歓心を買ったり、選挙に利用してみたり、ヒューマニズムをうわべだけ出すようなかっこうで、あるいは機構を変えて青少年局をつくってみたところで、ほんとうの青少年を指算するというふうな機構というものはどこにも出てきていない。その点については私は非常に遺憾なんです。そういう中で考えさせられるわけですが、やはり、実際にそういう子供ができぬ前に行なう教育が大切であると同時に、教育の失敗の中あるいは環境の中で落伍した、一たん非行化した青少年を社会に復帰せしめる。もちろん、これはほとんど困難な者もあるから、そこに極刑の死刑もあれば、永遠の隔離のいわゆる処罰主義も出てくるでしょう。しかし、それは一割くらいだろうと思う。あるいはそれより少ないか。大部分はやはり復帰する可能性があって、困難であるけれども、それをもとに戻そうというので、少年法もあれば、保護主義もあれば、教育主義も生まれてきておると私は思うのです。そういう場合には、やはりもっと青年の自主的に動く団体を育成して、そういうものも使いながらこういう問題も総合的に進めていくべきだと思うのですが、どうもああいう青年の団体を育成していくという熱意が法務省その他に非常に少ない。ほとんど予算も何もない。保護司のもとに従属せしめるというような努力ばかり出先の人々にはさしておるようである。もっと予算面で財政援助をして、そして彼らの自発性、自由に活動できるようにしてやるとか、そういう方面にもやはり力を入れていただいて老人がただ青少年に責任を追及するというふうな、そういう姿でこういう問題が発展しないように、ひとつ御要望いたしたいと思うのです。  この間総括質問の中で一言触れただけでありましたから、きょうこれ以外に機会がないので申し上げたわけであります。ただし、お互いに考えおくべきことは、これは世界共通の問題であって、日本の場合については、やはりおとなが青少年に確固たる民族的ビジョン、そういうものを与えていない中で、優秀な青年もエネルギーの浪費をしておるし、あるいは素質の低い者は非行に走るし、普通の者も個人的な享楽の中で退廃的ムードの中に自分をつぶしていくというふうな姿があるので、やはり、政治の姿勢をまず確立するということは、当然われわれが先に考えるべきことで、これを捨ててはできない。どんなに法務省の人ががんばり、家裁の人が努力をされても、私は不可能だと理解をいたしております。しかし、いま申し上げたようなことを前提としながら、単純に社会防衛の立場に走らないように、また単に保護処分だけに走らないで、私は、科学的な基礎に基づいた、きびしい教育主義の立場の中でこういう問題の結論を出すべきだと確信をしておるわけでありまして、意見の対立のままにマスコミの話題にのるだけでこういう問題をおもしろおかしく処理しないで、家裁及び法務省も真剣にひとつお話を願って、いわゆる世間からなわ張り根性と言われないような、誤解を受けないような形の中で、青少年問題でありますから、共通の広場をつくられて、国会に出たときにはあまり論議をしなくても通るようにしていただくように切望いたしまして、私の質問を終わります。
  153. 井出一太郎

    井出主査 次に、受田新吉君。
  154. 受田新吉

    ○受田分科員 二十分ばかりで質問を終わりますが、宮内庁に御質問をいたします。   〔主査退席、丹羽(兵)主査代理着席〕  今度の新年度予算皇室費の中に、先ほど質問があったのございまするが、なるべく関連しないかっこうでお尋ねしたいのは、宮殿新造営費なるものが関連経費を含んで一応計上されておるわけです。これが造営のはかどりがおくれていることも承っておるのですが、その事情はいろいろおありであることも伺いました。経費の点において、おくれることで負担増というものがどれだけあるのか。また、聞くところによると、この造営の過程において、関係業者の間における利害関係などで造営の進捗に渋滞を来たしておるというようなことも聞いているのですが、それらを含めて瓜生次長から御答弁願いたいと思います。
  155. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 おくれることによってどれだけ経費がふえるかということ、これはちょっと計算はむずかしいのですが、物価の値上がりがなければ変わらないと思いますけれども、物価の値上がりがありますると、その分は幾らか違っていくという点が出ると思います。  それから、おくれているのに何か業者の利害関係かなんかのことでおくれているようなことはないかというようなことでありまするが、そういう点は私はいままで聞いておりませんです。ただ、たとえば木材なんかの入手、その場合に、普通の木場にある木材ですと、何か普通は三メーターぐらいに切ってあるようですけれども、そういうような木では間に合わないので、五メートル以上、ものによりますと十メートル余もある長大なものを使いますから、そういう関係上、そういうものを出してもらうために、そういうものを持っておるところへいろいろ折衝して、この折衝するのにある程度時間がかかる。木場にあるのをすっと持ってくるのは早いですけれども、そういう折衝である程度時間がかかる。持ち出してくる場合も、大きなものを持ってきますから、運搬も普通の木のように簡単にいかない。そういうことで幾らかひまがかかるという点はありまするが、これは特別のトラブルがあってそうなっておるということではございません。
  156. 受田新吉

    ○受田分科員 皇居造営でございますから、業者の間に自分の利益の増大をはかるためにというような暗い野心を持っておるとは私は思いませんけれども、しかし、やはり私企業がそれを引き受けている以上は、そこにおのずから制約を受ける面もある。したがって、いま御指摘になったような資材関係などで、業者の努力足りずしてその入手難を来たすとか、あるいは資材関係で高額の金額を必要とするというようなことで足踏みするとかいうような、そのこと自身がやはり私は問題だと思うのです。少なくとも、国民の象徴である皇居の造営に対して最善を尽くして予定どおりそれを進めていくということは、特に参賀等で国民の皇室となっておるいまのお立場で、国民自身がその造営のすみやかならんことを期待しておるわけでございますから、その点については監督等において十分な手が打たれておるのかどうか、そこに一般民間関係と違った配慮がありてしかるべきであるが、監督の不行き届きとかいうようなことが造営をおくらしておるのではないかというような懸念もあるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  157. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 業者が十分に力を発揮しないために仕事がおくれているという点は、私はまずないと思います。先ほども他の方からの質問がありまして答えましたが、宮内庁のほうで実施設計をやっている、その実施設計のほうのやり方の問題、これは、いよいよやってみますると、普通の建物と違いまして、ほとんど新規にいろいろそういうくふうをしながらやっていく、それに対する構造上の安全度なんかにつきましてほかの例がない、また、それを大学の研究所に持っていって十分検討してもらうとか、そういうようなことで、実施設計をやっているほうで最初に考えたよりも手間どっておるという点が相当あります。ですから、どちらかというと、業者側は、もっと早く出してください、少し長期に及びますと、かえって設計のほうに早くやってくださいというふうに言ってきているようなことでございます。
  158. 受田新吉

    ○受田分科員 当初皇居造営設計をされた方のいろいろな問題も承っておるわけですが、そういうことで、他の民間の建築と違った、従来で言うならば雲の上のある印象を与える節があっては私はいけないと思います。引き続き急いで完成の日を待とうという御努力を一応了承させていただくこととしますが、国民が参賀してお喜びを申し上げようというようなときに、これがおくれておるというのは、国民の上に一つやっぱりいい影響力を与えるとは言えませんから、一応目標はどうでございますか。現時点における完成目標。
  159. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 現時点では、昭和四十二年度一ぱいで大体終える、しかし、あとの手直しその他がありますから、半年くらいさらにまた見ないといかないだろう、そうしますと、四十三年の秋ごろには落成するだろう、そうすると、四十四年の正月の国民参賀からは新しい宮殿で参賀を受けられることになるであろうというふうに考えております。
  160. 受田新吉

    ○受田分科員 一応その問題は終えまして、この予算書の中に、具体的にお尋ねする事項があります。内廷費は別として、宮廷費の中で大幅に増額している諸謝金の内容を御説明願いたいのでございます。
  161. 並木四郎

    並木政府委員 諸謝金の増は、皇居造営関係の揮毫料でございまして、揮毫料といいますと、壁に装飾のつづれ織りとか、それからホールに絵画をかける。玄関ですね。それから、食堂にも、そういう絵画ではございませんが、字の書いたものをかけるとか、そういうものを揮毫する謝金が二千四百二十万円入っております。そのほか、御進講謝金が、浩宮殿下の御進講関係が約七十五万円ふえております。それがおもだったものでございます。
  162. 受田新吉

    ○受田分科員 揮毫料というと、造営費の中でなくて、別のほうでそれをお出しになるわけですか。
  163. 並木四郎

    並木政府委員 そうです。科目がこういうふうに分かれておるのでありまして、揮毫料がこちらに入ってくるわけであります。
  164. 受田新吉

    ○受田分科員 これは、特に著名の画家等を動員するという意味で、それらについて、別にそういう皇居に対する奉仕的な気持ちというものをお願いするわけにはいかぬわけですか。
  165. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 そういう方は、相当熱意をもって、至誠をもって奉仕的にはなさいますけれども、しかし、やはりわれわれといたしましては、それ相当の謝金をおあげするというふうに考えなくてはいけないと思うので、謝金を組んでおりますが、従来の例によりますと、同じ謝金で、普通に書かれるものよりももっとりっぱなものを納めておられるのが従来の例であります。
  166. 受田新吉

    ○受田分科員 皇室の諸経費の中でそうした特殊の好意を受けるということになると、また別に寄付行為という制約を受けるということもあるかと思いますけれども、私たちの気持ちから言って、皇室の諸計画に対する一般的な寄付、一般的な好意的な労務の提供、皇居奉仕隊みたいなものもありますし、そういうところに自然に皇室に対する尊敬の念が私はわいてくると思うのです。一々これを金銭に見積もっていくという形のもの以外の、実際問題としてそういう国民の好意というものは、どういうふうにあらわれておりましょうか。
  167. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 これは宮殿の造営に関してでございましょうか。
  168. 受田新吉

    ○受田分科員 いや、全般に関して……。
  169. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 全般に関して、いま例にあげられました勤労奉仕などは、まず一つの例でございますが、そのほか、宮中関係施設をつくる場合にいろいろ業者に請け負わせるわけでありますが、そういう場合においては、われわれから見ると普通以上に勉強してやっていただいているように思っております。きのう落成式のありました皇后陛下御還暦記念の楽部の音楽堂なども、あれは一億二千八百万円でできておりますけれども、来られた方が、これは実際民間であったらもっとかかるであろうというようなことを言っておられましたので、そういうような面で、われわれのほうとしてはやはり正当なものはお払いするというたてまえで考えていかなければいかぬと思っておりますが、そういう場合、そういうことに当たられる方は、それ相当、それ以上に勉強してやっておられるというのが、普通の場合によく見るわけであります。宮殿についてもそういうことが言えるのじゃないかと思います。
  170. 受田新吉

    ○受田分科員 ちょっとお尋ねしておきたいのですけれども、天皇陛下が民間の吉凶禍福に対するお心づかいを賜わる方式ですね、これはいろいろあると思うのでございますが、金一封をもって御下賜をされるというようなかっこうのものもあると思いますが、それはこの費目の中でどこに当たっておりますか。
  171. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 そういう場合には内廷費の中からお出しになる場合が多いのでありますが、なお、宮廷費の報償費というところでお出しになる場合もあります。
  172. 受田新吉

    ○受田分科員 内廷費宮廷費に両方にまたがっておるようでございますが、これはかつて私次長にもお尋ねしたことがあります。できるだけ多くの国民に天皇の御好意を広く与えるという形が好ましいことであるということを進言したことがございますが、その御配慮をされておられましょうか。
  173. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 たとえば、おなくなりになった方に対する祭祀料、普通お供物料とも言いますが、それをお出しになる場合に、昔の例から見ますと、いろいろな社会的な功労者、特に社会事業の功労者などには、以前から見ますと範囲を広げてお出しになっております。
  174. 受田新吉

    ○受田分科員 そうしたところで国民に非常に親しまれる皇室ということになると思いますので、今後そういう社会事業その他一般社会福祉関係などにも広く陛下の御意思を広げていただくように、お願いしておきたいと思います。  なお、ここで一つ、直接これに関係ないことでございますが、皇居北の丸の開放の御計画をちょっと承りたいと思うのです。
  175. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 北の丸のほうは、これは宮内庁の管理する部分ではないのでございまして、したがって、北の丸というのはもとの近衛師団のあったところでございますが、建設省のほうであそこを公園にするという計画を進められておることは聞いておりますけれども、所管が違うわけでございます。
  176. 受田新吉

    ○受田分科員 もう宮内庁からはずれたから所管外であるということですが、それに対して別に宮内庁としては何らの希望を付してはいないわけですか。しかし、皇居に直接関係のある北の丸でございますから、それが皇居にどういう影響を与えるかということは、やっぱり前提にして、十分意見を開陳されなければいけないと思うのです。もう他省のことだから、どこがどうなってもいいというかっこうでいいか。あるいは宮内庁側から、開放される形を、環境のよさ、森厳さというものを保つとか、いろいろな形で御希望を付しておられるのじゃないでしょうか。
  177. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この北の丸につきましては、皇居造営審議会が昭和三十四年に開かれまして、その答申の中にも、付記として、北の丸についても早くこれを整備して公園にするようにということを希望するというのが入っております。これは皇居の周辺整備ということの中へ入るわけでありまして、われわれに意見を聞かれる場合においては、あそこが早くきれいな公園、最初は森林公園にするということを言っておられましたが、早くそういうふうになることを希望することは建設省のほうへ申し述べております。
  178. 受田新吉

    ○受田分科員 これは次長さんの職権でお答えができるところだけでけっこうですが、私は長官から従来御答弁いただいていたこともあるし、次長さんからもいただいたことがあるのですが、天皇の国事事項の代行制度ができたわけです。この法律もせっかくできた。しかも、諸外国の例を見ましても、英国のエリザベス女王のごときは、同じ英国の女王を共同の君主といただく国々だけでなくて、ドイツその他の国へも行っておられる。自由な気持ちで諸外国を旅行されておるわけです。天皇の海外旅行ということは国事事項かどうかということとあわせて、せっかくできた法律を背景にして、長い間御苦労された陛下が自由なお気持ちで直接御旅行されるというような形に、法律が施行されたこの機会に宮内庁としては御計画をお進めになっておられるのかどうか、御答弁願います。
  179. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 現在のところは、天皇陛下の海外御旅行についての特別の計画を進めているということはございません。しかし、将来何か適当な機会がございますれば、お出かけになるようになっていいんじゃないかとは思っております。そういう場合には、こと欠かないように準備をしたいと思っております。
  180. 受田新吉

    ○受田分科員 すでに法律ができて二年たちました。三十九年でしたからね。せっかくこの法律ができたのです。それは、天皇御自身が日本で一番陥没したところにおられて、陛下は、この憲法第三条の規定があるばっかりに、自由に海外旅行のできないという、日本で一番不幸なお立場であったと私たちは思っていたのです。ほかの人は海外渡航の自由があるが、天皇陛下だけにはそれがない、このお立場を解放して差し上げて、陛下も人間としてのお立場あるいは日本国天皇としてのお立場で自由に海外へお出かけいただきたい、こういう気持ちだったのです。国際的にはいろいろな問題もありまして、一カ国へ行けば他の国はどうするかという派生する問題もありましょうけれども、かつて二十歳当時にイギリスへ御旅行された陛下としては、それ以来海外旅行をしておられない。西欧の民主主義諸国家、従来から深いつながりを持った英国などは、やはり陛下御自身が御旅行をされてもしかるべき国ではないかと、具体的な例をあげて失礼ではございますが、そういう印象を受けておるわけです。私がお尋ねしたいことは、天皇の海外御旅行というものは国事事項には関係しないということであれば、それは陛下御自身の、宮内庁の御計画で事を運ぶわけです。それに対して外交上の保護をお加え申し上げるという形がとられればいいと思うのです。天皇の海外御旅行というものは国事事項かどうかということをちょっとお答え願いたいのです。
  181. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この海外旅行は、憲法第七条にいう国事行為ではございません。しかし、国際親善をはかるというようなことでありますれば公的な御行為ということになると思います。そうでなくて単に保養においでになるということになりますと私的行為になると思いますが、いずれにしても国事行為ではないのであります。
  182. 受田新吉

    ○受田分科員 そうしますと、天皇の海外御旅行は宮内庁の御計画で進められてしかるべきものである、こういうことになりますか。
  183. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 この国事行為は、「内閣の助言と承認により」とはっきりあります。それから、公的な御行為、これにつきましては、やはりいろいろお世話申し上げるのは行政の一環で、行政の責任は憲法で内閣にあるものですから、やはり重要なことについては宮内庁だけではやれないわけであります。
  184. 受田新吉

    ○受田分科員 そうすると、陛下の御自由な御旅行は宮内庁が単独にできると理解してよろしゅうございます。
  185. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 その御自由な御旅行というのは、理論的にはそうですか、普通それに伴うやはりいろいろの国との関係が出ると思います。そうなると公的な面もありますから、やはりこれは内閣に相談をしなければいかないだろうと思っております。
  186. 受田新吉

    ○受田分科員 私は、もう御遠慮されなくても、陛下に六十有余年の御人生を通じてこのあたりで海外旅行にお出かけになるように、国事行為代行制度が法律化されておるこの機会に、ひとつ宮内庁御自身で十分陛下の御意思をお確かめになられて、十分内閣にも希望を付せられて御計画をお進めになっていいと思うのです。時期としては、終戦二十年を迎えておる今日でございますから、国民自身も、陛下が海外旅行をするのはけしからぬなどというような考えの人は、大半の国民にはないと私は確信しておるわけであります。このあたりで、御自由なお気持ちのほうを前提にされ、皇太子あるいは義宮さんの海外旅行もけっこうですけれども、また、公的な儀礼的な意味の場合も含めて、陛下御自身が、皇太子、義宮さんという皇族方だけでなくて、英国のエリザベス女王のような自由な気持ちで海外旅行の御計画をお立てになってしかるべきじゃないか、宮内庁御自身がお進めいただくべきだと思うのですが、いかがでしょうか。ひとつ積極的にお取り組みになられて、六十有余年の御苦労の多かった人生に一つの希望という意味でも、また国際的平和への寄与ということでも、いま指摘したような国々への御旅行などは、私は、どの国も、文句を言うような、国際的親善に不安を来たすような問題はないと思うのですがね。われわれが国会で超党派で、まあ多少異論のあったところもありますけれども、一応国会の意思としてこれが法律化されておることでございますから、ひとつ具体的な御計画を積極的にお進めいただきたい。
  187. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 との国事行為の臨時代行に関する法律の制定は、憲法の四条に伴う制度を整備しておこう、将来お出かけになるような機会があった場合においても、お出かけになれないというようではいかないからというようなことで、まず制度を整備しておこうという趣旨で設けられたわけでありますが、その制度ができたんだからお出かけになったらどうかという御意見、これもごもっともと思いまするが、どういう機会においでになるか、どういうところへおいでになるかというようなことについて慎重に考えなくてはいけない点がありますので、もうお出かけにならないんだときめておるわけじゃありませんけれども、いまのところはまだ具体的な計画はないのですが、将来に向かって十分考えていきたいと思います。
  188. 受田新吉

    ○受田分科員 陛下もだんだんお年をとられます。御旅行が不可能になる時期も来るわけでございますから、いま六十代のお年の間に御旅行をされるというほうが御健康の上にも安全である。これまた、七十をこえられてお年をとられると、御旅行が不可能になる時期が来ると思うのです。私は、むしろ宮内庁からそれを陛下に進言をして、政府を動かしていくという形にお進めになっていいと思いますし、陛下御自身に御意思をお聞きになられたことはないでございましょうか。いかがでしょう。陛下の御意思はまだ伺っておられませんですか。
  189. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 陛下の御意思を直接どうというふうに伺ったようには私も聞いておりませんけれども、しかし、ほんとうに適当な機会があればお出ましになるお気持ちはあると思いますが、結局将来の問題としてわれわれも忘れてはいない大事な問題の一つでございます。
  190. 受田新吉

    ○受田分科員 次長が大事な問題として忘れていないと言われますので、この機会に、できるだけすみやかな機会に陛下の海外旅行を進められるように。これは国民の大半が喜ぶことでございます。何だか雲が晴れたような感じになることは間違いないことでございますから、これを忘れておられない次長、長官を通じて陛下にもおすすめなされるという御努力を願いたい。  もう一つおしまいに、私は、最近皇室が国民の中にとけ込んでおられることを、象徴天皇御一家として非常に喜んでおる一人でございますが、両陛下や皇太子さん、常陸宮さん等の御外出についても、まだ何だか手きびしい警戒で、御旅行あるいは御外出がなかなか思うようにいかないというような点があるのではないか。また、鷹司さんの御不幸はたいへん残念でございましたけれども、和子夫人のお悲しみのときに、皇后陛下は行かれたのでしたね。自分の姫宮さんの御病気をお見舞いされるというときにも自由な気持ちで行かれておるように伺っておるのでございますけれども、天皇陛下御自身が御葬儀などにお出かけいただいても悪いことはない。むしろ、人間として、姫宮のお婿さんの御葬儀などのときに、やはり普通の民間の家庭のような気持ちで陛下も焼香して差し上げるように宮内庁としておはからい願えなかったものか。これは、一般民間の人情の自然、それに準ずるような親の気持ちというものを、宮内庁が押えないで、自由に、しかしながら厳粛にこれをお運びしてあげるような御配慮をいただくべきではないかと思うのですが、その点について、御外出あるいは御旅行等に、儀式上あるいは警備上のいろいろな宮内庁としての御配慮はあろうと思いますけれども、人間陛下としてのお立場を十分尊重されるような御配慮を賜われるものかどうか、お答え願いたいのです。
  191. 瓜生順良

    ○瓜生政府委員 両陛下のお出かけの場合、やはり警衛の関係というのは一つの問題でございますが、宮内庁としては、できるだけ警衛については簡素化をしてもらうように警察当局のほうには要望いたしておるわけでありまして、そのお出かけの性質、そのときの状況によっては警察のほうでも相当簡素化はだんだんしてきておりますが、しかしながら、なお今後一そうそういう検討を要すると思う点がございます。最近も、こうしたらどうだろうかという簡素化のある案を持ってきたりして相談しておるのでありますけれども、ただ、警察の立場としては、やはり、世の中には流れていないまた別のいろいろな情報があったりするものですから、相当神経を使われる場合もあるのでありまして、そういう点も私のほうでもある程度理解しないと、警察のほうもお気の毒だと思いますので、理解しながらも簡素化をしてもらうように常に努力しているつもりであります。
  192. 受田新吉

    ○受田分科員 総理がお出かけになるにしても、きびしい警戒をやっておるわけで、日本は法治国といいながらもどこかにまだ野蛮的な行為が予想されるというようなことでああいう形になっておるんだなと思われることを、私もしばしば体験しておるわけでございますが、これは、人間間の信頼度というものを高めていけば、そういうものは行政の最高責任者の外出などについても十分解消できると私は思うのです。  特に、国民の象徴としての天皇御一家の自由なお気持ちを形式的に押えるということは、できるだけ少ないように御配慮願いたい。人間の気持ちをあらわすために、姫宮さんたちの御婚嫁先に、毎日毎日というわけではありませんけれども、たまにちょっと行ってみたいなというときには、ひとつ自由なお気持ちで親の気持ちを果たさしてあげたらいいじゃないかと思うのです。わけて、最大の不幸に見舞われたときに、親が焼香におじゃまするということに何か制約があるのか、これは私は理解に苦しむのでございますが、そういう点について、いま次長もそっと仰せられました、まだ問題に残っておるところがあるというふうな意味のことを仰せられましたが、そこを今後もっとはっきり前進さして、人間の天皇御一家を国民全体があたたかく抱いて差し上げて、象徴御一家の権威と、国民の信頼感と、もう一つは人間としての深い愛情、そういうもののつながりができるように御配慮を賜わりたいと思います。よろしゅうございますね。  では、質問は終わります。
  193. 丹羽兵助

    丹羽(兵)主査代理 それでは、皇室及び裁判所所管の質疑は一応終了いたしました。  明二十五日は、午前十時より開会し、内閣及び総理府所管について質疑を行なうことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十七分散会