○中村(梅)国務大臣
昭和四十一年度
文部省所管の
予算案につきまして、その
概要を御
説明申し上げます。
まず、
文部省所管の
一般会計予算額は五千八十七億六千七百十八万八千円、国立学校
特別会計の
予算額は千九百五十三億六千四百三十八万九千円でありまして、その純計は五千四百二十六億五千百七十八万六千円となっております。この純計額を前年度当初
予算と比較いたしますと、およそ六百二十六億円の
増額となり、その
増加率は一三%になっているわけでありますが、義務
教育費
国庫負担金の
給与費を除いた
一般会計予算額の
増加率は一七・五%となっております。
以下、
昭和四十一年度の
予算案におきまして、特に重点として取り上げました施策について御
説明申し上げます。
まず第一は、初等中等
教育の改善
充実であります。
初等中等
教育の改善
充実につきましては、かねてから努力を重ねてまいったところでありますが、来年度は特に恵まれない境遇にある児童生徒の
教育対策に留意し、僻地
教育及び特殊
教育の振興、要保護・準要保護児童生徒の就学
援助につとめましたほか、引き続き教科書の無償
給与を
推進し、学校給食の普及
充実をはかり、また、公立義務
教育諸学校の学級編制及び教職員定数を改善し、
施設設備を
整備する等の施策を進めることといたしました。
そのうち、僻地
教育の振興につきましては、まず、小規模学校の教員の
充実とその待遇の改善を行ない、教員宿舎を
整備する等、僻地勤務教員の優遇措置について配慮いたしますとともに、僻地の
教育環境の改善のため、引き続き、各種の
施設、設備の
充実をはかりましたほか、学校ぶろ、ジープの設置、薬剤師の派遣、高度僻地学校の児童生徒に対するパン、ミルク給食の全額
補助等の新しい試みを加えて総合的かつ重点的に施策を
推進することといたしたわけであります。
次に、特殊
教育につきましては、養護学校及び特殊学級の計画的な普及と就学奨励費の内容の改善のため必要な
経費を
増額いたしますとともに、社会性活への適応性を一そう助長するため職業
教育の
充実をはかり、また、
教育効果の
向上に資するために新たに視聴覚教材の
利用、研究指定校の設置等を行なうことといたしております。
次に、要保護・準要保護児童生徒の就学
援助につきましては、学用品の単価の級地差の解消をはじめ、それぞれの品目について
補助単価の改定を行なうことといたしております。
次に、父兄
負担の軽減をはかる趣旨から、小規模小学校の教材の
充実を含めて教材費の
増額をはかるとともに、国、公、私立学校を通じて、中学校及び特殊
教育諸学校の中学部の第一学年までの児童生徒に対して教科書の無償
給与の措置を拡大することにいたしたわけであります。
次に、学級編制及び教職員定数の充足につきましては、学級編制の基準を、原則として、小・中学校いずれも最高四十七人に改めますとともに、単級、四・五学年複式学級への教職員定数の増、特殊学級の増設、充て指導主事の
充実等のための
増員をはかり、また、
給与の改善につきましては、多学年学級担当手当、
旅費の
増額等を行ないました。
なお、教職員に
関係のある
事項といたしましては、その勤務の実態等に関する
調査に必要な
経費も計上いたしまして、四十一年度にその実態
調査を行ないたいと思います。
次に、公立文教
施設につきましては、引き続き既定計画の線に沿ってその
整備を進めてまいりたいと考えて、公立文教
施設整備費二百五十億円を計上いたしております。そのうち、木造建物を中心とする建築単価の引き上げ及び構造比率の改善は、地方団体の超過
負担の解消という観点から特に配慮を加えた点であります。また、屋内運動場につきましては基準の改定を行ないまして、体育の円滑な実施に支障のないように配慮を進めてまいりたいと思います。
このほか、前年度に引き続き、
教育課程の改善、道徳
教育及び生徒指導の
充実並びに教職員の研修及び研究
活動の
推進に必要な諸
経費を計上いたしております。
また、幼児
教育の重要性にかんがみまして、父兄の要望にこたえて、引き続き幼稚園の普及
整備のために必要な
助成を強化いたしますとともに、所要の教員を確保するため、公、私立大学及び短期大学の教員養成課程に対する設備の
補助を行なうことにいたしております。
第二は、大学
教育の拡充であります。
国立学校
特別会計予算につきましては、前年度の当初
予算額と比較して二百七十八億円の
増額を行ない、約千九百五十四億円を計上いたしました。その歳入
予定額は、一般会計からの繰り入れ千六百十五億円、借り入れ金二十億円、付属病院収入二百二十億円、授業料及び検定料五十二億円、学校財産処分収入二十二億円、その他雑収入二十三億円であります。歳出
予定額の
内訳は、国立学校
運営費千五百二十二億円、
施設整備費四百二十億円などとなっております。
国立大学の拡充
整備につきましては、まず、大学入学志願者の急激な
増加を予想いたしまして、大学及び短期大学の入学定員の
増加をはかり、後述の小学校教員養成課程の増募三百八十人を別にしてなお四千五百九十二人の増募を行なうことにいたしております。このため、大学について、一大学の創設、公立一農科大学の国立移管を含む二学部の開設、四文理学部の改組、二十五学科の新設及び二十四学科の拡充を行ない、短期大学について六学科を新設することにいたしました。
また、教員養成学部の
整備につきましては、
教育職員養成
審議会の建議に基づき、その教員組織の
整備を行ないますとともに、養護教諭養成所及び養護学校教員養成課程、幼稚園教員養成課程等の新設、一部小学校教員養成課程の学生増募など、当面必要な教員の養成に力を注ぐことにいたしております。
このほか、中堅技術者の育成のため十二の工業高等専門学校に学科を新設する
予定であります。
次に、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、設備費等、各大学共通の基準的
経費につきましても、引き続きその
増額をはかっておりますが、とりわけ設備の
充実に留意し、指定図書購入費、理工系学部設備費、工学部第二部設備費等の新規の
予算を計上いたしております。
また、新制大学における大学院修士課程の拡充、付属病院、付属研究所の
整備につきましても特段の配慮をいたしております。
次に、
施設の
整備につきましては、財政投融資資金及び不用財産の処分収入を財源の一部に含めて
予算額を大幅に
増額いたし、一段とその
整備の
促進をはかることといたしておりますが、なお、
施設整備の円滑な実施をはかるため、後年度分について百八十八億円の
国庫債務負担行為を行なうことができるようにいたしております。
次に、育英奨学につきましては、大学院奨学生及び
教育特別奨学生の
増員を中心として引き続き事業の拡充につとめ、また、日本育英会につきましても奨学金の返還
業務の
促進等に要する
経費を
補助する等により、全体で約十六億円を
増額いたしております。
第三は、私学振興の拡大であります。
私立学校の振興は、今後の文教政策の重要な課題であり、その基本的な
助成方策につきましてはなお慎重に検討中でありますが、現下の状況等にかんがみまして、明年度の
予算案におきましても特に重点として取り上げたことの一つであります。
まず、私立学校振興会に対する
政府出資金及び財政投融資資金からの融資につきましては、合わせて二百二億円といたしまして、大体前年度のほぼ二倍に拡大し、私学全般の
施設の改善
充実に充てることといたしております。また、私立大学等理科特別
助成費及び私立大学研廃設備
助成費につきましても合わせて三十七億円を計上し、その他、私立学校教職員共済組合に対する
補助金の
増額、私立大学幼稚園教員養成課程に対する設備費の
補助の新設等の施策を講じております。
第四は、学術研究及び
科学技術教育の振興について申し上げます。
わが国の学問及び
科学技術の水準を高め、ひいては国民生活の
向上に寄与いたしますために、学術研究及び
科学技術教育の振興につきましては引き続き努力をいたしております。
明年度の
予算につきましては、まず、学術研究について、科学研究費の拡充を行ない、特にがん特別研究費を別項目としてその
増額をはかっておりますほか、引き続き研究所の新設、
整備を行ない、また、ロケット観測、南極地域観測及び巨大加速器の基礎研究等につきましても、それぞれ目的に応じて必要な
経費を計上いたしました。
なお、在外研究員の派遣のための
経費は、一般会計から国立学校
特別会計に組みかえて
増額計上いたしております。
次に、初等中等
教育の分野におきましては、理科
教育設備及び産業
教育の
施設設備の
充実につきまして、あらためて新基準による計画的な改善
充実を行なうことといたしましたほか、引き続き自営者養成のための農業高等学校の
整備をはかり、また、新たに高等学校の衛生看護科
教育に対し設備費の
補助を行なうことといたしております。
第五は、青少年の健全育成であります。
青少年の
教育問題は、近時ますますその重要性を加えており、これに対処するためには、学校
教育及び社会
教育の両面にわたって深く意を用いるべきところであると存じます。
まず、家庭
教育、婦人
教育につきましては、引き続き家庭
教育学級、婦人学級等の
充実発展をはかってまいりますとともに、家庭的環境に恵まれない留守家庭の児童に対する対策として、新たに児童会の育成事業のための
補助を行なうことにいたしたわけであります。
また、勤労青少年の
教育のため、学校
教育の面におきましては引き続き新基準により定時制高等学校の設備の
充実につとめますとともに、通信
教育用学習書の
給与につきまして、その対象となる生徒の範囲を拡大し、また、夜間定時制高等学校につきまして、夜食費
補助及び運動場照明
施設整備費補助等を
増額計上いたしております。
次に、社会
教育の面におきましては、勤労青少年に宿泊による研修、訓練の場を与えるために、国立第五青年の家を新設いたしますとともに、公立青年の家につきましても弾力的にその
整備を進めることといたしております。さらに、青年学級及び勤労青年学校の内容の
充実、新就職者の研修の実施のほか、新たに青年教室の委嘱も行なうことといたしました。また、青少年の団体
活動を一そう
促進するため、青少年団体等の育成もはかりたいと考えております。
このほか、青少年に対する映画の影響力にかんがみ、積極的に優良映画の普及をはかるとともに、その製作の奨励を
促進する措置を講ずることといたしました。
また、社会
教育の
施設につきまして、公民館、図書館、博物館等の
施設、設備の
整備を一そう
推進いたしますとともに、引き続き適切な指導者の養成に意を用いてまいりたいと思っております。
次に、スポーツの普及につきましては、広く青少年一般にスポーツを普及奨励し、その体力の
向上をはかってまいりますため、水泳プール、体育館、運動場及び公立高等学校の柔剣道場等の
整備を
促進し、また、スポーツテストの普及、スポーツ教室等の実施、スポーツ団体・行事の
助成、指導料養成等について、引き続き必要な
経費を計上いたしております。
このほか、国立登山センター及びオリンピック記念青少年センターについて建物の
整備を行ない、明年行なわれる
予定のユニバーシアード東京大会についてその準備を進め、さらに、都市の勤労青少年のスポーツ
施設の不足を補うために学校体育
施設の開放を行なうなど、それぞれ必要な
予算を新たに計上いたしております。
次に、学校給食の普及
充実につきましては、完全給食の実施を目途として、引き続き単独校及び共同調理場の給食
施設、設備の
充実をはかり、また、栄養職員の設置を共同調理場のみならず単独校にも広げる等の施策を行なっております。また、小麦粉につきましては、従来のとおり
補助を継続することにいたしますとともに、ミルク給食につきましても、国内産牛乳の使用をさらに
増加することとして、所要の
補助金を計上いたしております。
なお、前述いたしました高度僻地学校児童生徒のパン、ミルク給食費
補助のほか、高度の僻地及び産炭地の財政力の弱い市町村に対しましては、引き続き
予算措置について特別の配慮を加えることといたしております。
第六は、芸術文化の振興であります。すぐれた芸術を広く国民に普及し、また、わが国の伝統的な文化財を保存いたしますことは、国民生活の
向上の上からもきわめて必要なことであります。
まず、国立近代美術館につきましては、その移転
整備を行なうために必要な
予算を計上し、また、芸術団体に対する
助成のほか、歌舞伎、文楽等のすぐれたわが国の伝統芸術の保存とその振興をはかるため国立劇場の設立を行ない、さらに国立博物館の
整備を進めることといたしております。
次に、文化財保存事業につきましては、文化財の修理、防災
施設の
整備等を一そう
充実いたしますとともに、最近国土開発の急速な進展に伴ってその必要性を痛感されております史跡、埋蔵文化財の保護につきましては、特段の配慮を加えております。
また、平城宮趾の買い上げ及び発掘
調査、無形文化財の保存活用等につきましても、引き続き必要な
予算を計上いたしました。
第七は、
教育、学術、文化の国際交流の
推進であります。
まず、外国人留学生
教育につきましては、国費外国人留学生の人員を
増加いたしますとともに、その受け入れ体制の強化をはかっております。また、国際学術文化の交流を
促進するため、引き続き教授、研究者の交流を
推進いたしますとともに、
教育、学術、文化、スポーツ等の各種の国際
会議への積極的な参加を行なうことといたしました。なお、最近、特にアジア、アフリカ諸国に対する
教育協力の要請が高まってまいりましたおりから、新たに
教育指導者の招致、
教育指導者研修コースの開設、理科設備の供与及び指導者の派遣等を行なうため、新しい試みとして
経費を計上いたしております。
さらに、ユネスコ国際
協力につきましては、発足二十周年を迎えて、国際理解
促進のための特別事業の実施、国際大学院コースの継続等、一段とその事業の
推進をはかることといたしました。
以上のほか、文部省の機構につきましては、
調査局を廃止し、新たに文化行政の一体的
推進のため文化局を設置することといたしました。
その他、
沖繩の
教育に対する
協力援助費につきましては、これを画期的に拡充し、別途
総理府所管として計上いたしております。
以上、
文部省所管予算につきまして、その
概要を御
説明申し上げた次第であります。何とぞ十分御
審議をいただきたいと思います。