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1966-02-22 第51回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月二十二日(火曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 楯 兼次郎君    理事 野原  覺君 理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       大橋 武夫君    上林山榮吉君       倉成  正君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       西村 直己君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    三原 朝雄君       水田三喜男君    湊  徹郎君       大原  亨君    加藤 清二君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       高田 富之君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       竹本 孫一君    加藤  進君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主計局次長) 武藤謙二郎君  出席公述人         富士銀行取締役         調査部長    紅林 茂夫君         法政大学教授  高橋  誠君         一橋大学教授  大川 政三君         武蔵大学教授  佐藤  進君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十二日  委員勝間田清一君、小松幹君、永井勝次郎君及  び永末英一君辞任につき、その補欠として兒玉  末男君、森本靖君、八木一男君及び今澄勇君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和四十一年度一般会計予算  昭和四十一年度特別会計予算  昭和四十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案について、昨日に引き続き公聴会を続行いたします。  本日午前中に御出席を願いました公述人は、富士銀行取締役調査部長紅林茂夫君、法政大学教授高橋誠君のお二人であります。  この機会に、御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。御承知のとおり、国及び関係機関予算は国政の根幹をなす最重要議案でありまして、当委員会といたしましても連日慎重審議を続けておるわけでありますが、この機会に各界の学識経験豊かな各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において貴重な参考といたしたいと存ずる次第であります。何とぞ、各位におかれましては、昭和四十一年度予算に対しまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存ずる次第であります。  御意見を承る順序といたしましては、まず紅林公述人、続いて高橋公述人の順で、おおむね三十分程度において順次御意見をお述べいただき、その後公述人各位に対し一括して委員から質疑を願うことにいたしたいと思いますので、あらかじめ御了承願います。  なお、念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ること、また、公述人委員に対しまして質疑をすることができないことになっておりますので、この点あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず、紅林公述人から御意見を承りたいと存じます。紅林公述人
  3. 紅林茂夫

    紅林公述人 ただいま御紹介をいただきました紅林でございます。昭和四十一年度総予算につきまして意見を述べるようにということでございますので、若干私見を申し上げまして、私の職責を果たさしていただきたいと存じます。  およそ予算二つ目的を持って編成されねばならないと考えられます。まず第一の目的は、当面の国民経済の直面しております短期的課題を解決することであり、第二は、あわせて国民経済のなお当面しております長期的課題を解決することであります。  この二つ短期的目的長期的目的に沿うているかいなかをまず新年度予算につきまして検討してみたいと存じますが、短期的目的とは、言うまでもなく、今日わが国がまず解決しなければならない経済的課題不況の解決でございますから、新年度予算がこの目的に沿うているかいなかを検討すべきであります。第二の課題は、わが国経済はいまや大きな転換点に立っておると考えられます。それは、過去の高度成長のあとを受けまして多くの点においてのいわゆるひずみを生じてもおるのでありますから、今後の安定成長が可能になるような均衡的発展の素地を確立することが必要であります。そのような長期展望のもとにおいては、財政金融のあるべき姿が正常化されることが必要でございます。そのような長期的展望に新年度予算が向かっているかいないかが検討されねばならないと思います。  右の二つ目的達成が以上の意味において必要でありますが、私は、四十一年度予算はおおむねその目的の線に沿っていると言うことができると思います。  四十一年度の財政政策には次の四つの特徴があると考えることができると思います。  まず第一は、長期構想に基づく減税であります。これは、企業並びに個人の税負担を軽減することによって、一方においては当面必要な有効需要増加にこの効果を求め、あわせて、長期的視野に立ちましては、今後の金融界の問題を解くためのこれは一つ構想に相なりますが、預貯金の増強、そしてそれがあわせて今後の公債発行消化資源となっていくこと、これらの目的に沿うものとして長期減税構想が立てられたものであろうと考えられます。  第二の問題点は、財政規模拡大することによって当面必要な有効需要増大をはかろうとしている点であります。しかし、財政規模拡大は、ただいま申しました短期的当面の目的を達成すると同時に、長期的ビジョンをもまた満足させる一つの大きな構想の中に入るものとならねばならないと思われます。  第三の特色は、公債発行による財源調達の方法に踏み切ったという点であります。これは、先ほど申しました、わが国一つの大きな転換点に立っているということは、財政金融政策もまた従来と異なった新しい政策に切りかえられねばならないということを意味するものでございますから、その意味におきまして、私は、公債発行政策に踏み切ったことに賛成をするものであります。特に、いわゆる資本的支出につきましては、これをすべてその年々の国民租税負担によってまかなうということは必ずしも妥当ではないのでありまして、経常支出につきましては、もとよりこれを国民の租税によってまかなうことが原則であらねばなりませんが、資本的支出につきましては、公債発行にその一部を求めることは間違っていないのであります。  第四の特色は、公共事業費等を早期に支出する構想を立てておる点であります。これは、申すまでもなく不況対策の促進ということでありますが、以上の四つの特色を持っていると言うことができると思います。  そこで、これらの内容を持つ財政政策がそれぞれの目的にどのように沿うているかを次に検討いたしてみたいと思いますが、当面の不況対策から見た場合、予算内容がはたして妥当であるかということにつきましては、以上見ましたように、政府は主としてこれを財政支出拡大に求め、あわせて減税によって当面の有効需要増加をはかっているわけであります。現状におきましては、そのような対策をとることはもちろん構想として正しいわけでありますが、今日の不況の性格から考えてみますと、有効需要増加をどの面においてはからねばならないかが重要な課題になると考えられます。今回の不況の性格につきましては、一昨年以来御承知のように多くの論議が重ねられてまいったところでありますが、いわゆる循環的不況という考え方構造的不況という考え方が相対立してまいりました。しかし、現実はきわめて複雑でありますから、循環的不況構造的不況合成現象と見なければならないでありましょう。しかしながら、従来の不況と異なる性格は、構造的な課題が特に大きく横たわっているという点にあると考えねばならないと思われます。その点から考えますと、今回の不況に対しては、有効需要増加を末端における最終需要増大に求めなければならないと考えられます。このような観点から見ました場合、以上の政府政策はけっこうであると考えられますが、しかし、減税政策あり方について若干の点を指摘いたしたいと思うのであります。  今回の減税はきわめて巨額な額に達しており、その意味におきまして面則的な減税が行なわれたとされておるわけでありますが、その内容から見ますと、ただいま申しましたような末端の最終需要増加という点から見まして、若干減税内容に当面の不況対策としての合目的性がないように思われます。もとより企業減税も必要でありまして、政府の考えております企業減税内容は、将来の企業資本形成を是正するという方向に向かって努力されておるのでありますから、これもまた重要な一つ課題でありますが、四十一年度に関しましては、私は、不況対策の見地をさらに強く織り込むことが望ましかったであろう、かように考えるのであります。この意味におきまして、所得税減税を原案よりもさらに大きくすることが望ましい、かように考えるものであります。もとより、租税政策も決して固定的なものであってはならないのでありまして、今後の景気動向いかんによりまして、租税政策による景気に対する弾力性、あるいは景気に対する弾力的運営、これが必要であることは申すまでもないことであります。  次に、財政規模拡大でありますが、四十一年度の一般会計は、四十年度補正予算後の規模に対しましては一五%増であり、財政投融資は一六%増に相なります。当初予算に比べれば、前者はほぼ一八%の増大であり、後者はほぼ二五%の増大でありますが、補正予算後の予算に比べれば、おおよそ一五、六%の増加でありまして、必ずしもそれほど大きな財政規模とは言えないと思われますが、一応四十一年度につきましてはこの程度の財政拡大が妥当であると存ぜられます。費目別に見ました場合、こまかい点につきましてはいろいろの問題が当然あろうと思われますが、一応公共事業を中心として前年度当初予算に比べれば一九%の増加をはかっておるわけであり、特に、不況対策といたしまして、住宅対策に、一般会計並びに財政投融資から予算をさきまして、二三%の増大をはかっているわけであります。そのほか、中小企業関係中小企業金融機関関係にも一応の配慮がなされておりますので、それぞれの観点からすれば必ずしも十分であるとは言われないでありましょうが、予算構成全体といたしまして、一応おおむね妥当と言うことができると思います。  これによって、政府は、四十一年度の国民総生産をおおよそ年度間において三兆一千三百億円程度増加させることができると計算しておるわけであります。この内訳を見ますと、個人消費支出増加が一兆六千七百億円となることになっており、政府財貨サービスの購入が九千六百億円の増加を示すことになっております。この二つを合計いたしますと二兆六千三百億円となりますが、これは四十一年度の国民総生産増加予定三兆一千三百億円に対しまして八四%に当たります。おおよそこのような姿で四十一年度の不況を解決しようというのが政府考え方であると見ることができますが、おおむね四十一年度につきましてはこのあたりが妥当であろうと思います。  これによっていわゆるデフレ・ギャップが完全に解潤し得るかいなかにつきましては、これは今後のことに属します。と申しますのは、有効需要増加は、今後国民経済均衡状態いかんによって十分に弾力的に運営されねばならないものでありますから、今後の国際収支の推移、あるいは物価の推移、あるいは雇用関係推移等に従って、景気に対する財政面からの措置を十全たらしめることが必要であります。これがいわゆるフィスカル・ポリシーであるわけでありまして、従来は財政面から景気調節の作用は十分に行なわれていなかったのでありますが、四十一年度以降においては、そのような政策財政面から行なわれねばならなくなり、また、そのような内容のものとなっておるのでありますから、特にフィスカル・ポリシーの健全な運営ということに留意する必要があると考えられます。  次に、長期的な目的予算が沿うているかいなかの問題でありますが、長期的問題は一挙に解決することはもとよりできないことでありますから、当然に長期構想としての予算編成考え方が背景にあらねばならないと考えられます。その点から見ました場合、新年度予算は必ずしもビジョンが十分にあらわれているとは言えない点があると存ぜられます。  政府は、かつては中期計画を一応作成いたしましたが、事情の変化に従いまして、これを今日改定しつつあると承っておりますが、そのような計画はもとより必要でありますが、それとあわせて予算との関係がもっと従来以上に密接に考えらるべきであろうと思われます。たとえば、社会的間接資本の充実は今後のわが国国民経済近代化あるいは国民経済の安定のためにきわめて必要なものであります。しかし、さればといって、これをきわめて短時日の間に一挙に実現するということは、もとより不可能であり、かつ妥当ではありませんから、ここにやはり一定の計画を立てて、予算の中にそのような長期的ビジョンを織り込むということが必要であろうかと思われます。それにより、国民は当面の不況対策と並びに長期にわたっての安心感あるいは希望を持つことができるようになるであろうと思うのであります。もとより、その場合、予算が長期的な構想を含むものとなるといたしましても、それは計画経済あるいは統制経済ということであってはならないのでありまして、先ほど申しました、国際収支あるいは物価ないしは雇用問題と十分に調節をとった実行が行なわれなければならないわけでありまして、十分にその点留意を必要といたしますが、ビジョンは掲げられねばならないであろうと、かように思うのであります。  さて、次に、以上のような予算短期的目標長期的目標を今後同時に達成していかなければならないわけでありますが、その間において若干の問題が発生する可能性があります。  まず第一は、当面不況対策としての有効需要増加はもとより好ましいものでありますが、それが現在問題となっております消費者物価の上昇を不当に刺激し、いわゆるコスト・インフレへの傾向が四十一年度中に早くもその萌芽をあらわすというようなことになってはならないという点であります。この点につきましては、私は、四十一年度中に直ちにインフレ症状が激しくなるということはないと考えておりますが、しかし、そのためには、政府は特に物価対策を強固に今後実行することが必要であると考えられます。インフレの萌芽が内在しておるのでありますから、この萌芽をつみ取りつつ有効需要増加をはかるということは、これはなかなか実際問題としてむずかしいことでありますが、しかし、そのような問題の解決がいま求められているわけでありますから、今後物価対策については、特に国民の最も関心を払っているところでありますので、これに重点を置かれることを希望し、期待するものでございます。特に、消費者物価の上昇が一般の貯蓄心に対して弊害を与えるというようなことがございますと、その面から金融正常化は一そう妨げられることになりますし、今後公債の消化にあたりましても問題を生じないとは言えないこと、言うまでもございません。  これとあわせまして、公債発行による国民経済正常化の効果、これが反面においてわが国経済を基礎的にインフレ傾向におとしいれる心配はないかということが問題になっておるわけでありますが、これは今後のいわゆる公債発行の歯どめが十二分に行なわれるかいなかによって決定されるものでありまして、私は、公債発行がいかなる方法によって歯どめさるべきかにつきましては、次の二、三の点を十分に考慮に入れることが必要である、かように考えるものであります。  根本的には、成長条件弾力性が十二分に常に保持されていくことが必要でありまして、成長条件弾力性が欠けてまいりました場合には、直ちに公債発行に対して調節をするという心がまえと実行力とが必要である、かように考えるものであります。ここに成長条件と申しますのは、先ほど申しました国際収支の安定と消費者物価の安定並びに雇用の安定であります。これらの不安定が近い将来に発生するおそれがあると見られる場合には、事前に公債発行の額を調整することが必要であります。これがいわゆる管理通貨制度の真義に徹するということでありまして、そのような基本的な考え方がそこになければならないはずであります。このことにつきましては、施政方針演説におきまして、佐藤首相並びに福田蔵相から、特に今後国民経済の動向に従って公債に対しては調整をすると言明しておられるのでありまして、私はそれに期待をするものであります。  次に、公債発行条件についてでありますが、これは市場の実勢を尊重することが必要であります。もし市場の実勢を尊重しない公債発行が行なわれますと、これは国民経済を非常に毒するものになるに違いないのであります。この意味におきまして、これに関連いたしまして将来問題となりますことは、公債市価維持政策をとってはならないという点であります。もし公債市場において価格の低下を示すというようなことになってまいりますと、もちろんその場合には新規公債発行は困難となりますが、もしそのような状態のもとにおいて公債発行し続けようとするならば、既発債の市価を維持しようということになりましょう。もしそのような政策がとられますならば、公債は不当に膨張していき、それが不当な通貨増加となってインフレ化をもたらすということは必然であります。この意味におきまして、公債市価維持政策は、これを今後行なってはならないと考えるものであります。この点につきましては、欧米諸国におきましても戦後常に問題になってきたところでありまして、アメリカもイギリスも、一九五一年に公債市場価格維持政策をやめることに政府中央銀行との間に同意が行なわれた、こういうことでありまして、われわれもこれを参考とすべきである、かように考えるのであります。  その場合、特にわれわれといたしまして重要であると考えますことは、中央銀行中立性尊重という問題であります。もちろん、中央銀行中立性尊重ということは、財政政策に背馳するような金融政策が行なわれるということではありませんし、そのような可能性があらわれることを期待して中立性を望むという意味では毛頭ございません。政府財政政策がその意図のごとく円滑に行なわれ、国民経済安定成長が実現されるための通貨信用面条件をつくり出すということが中央銀行の最大の任務でありますから、そのような任務の遂行が十分に行なわれるような形に今後されていなければならないという意味でありまして、財政政策金融政策一体化ということは今後最も必要な点であります。財政政策金融政策一体化が行なわれるために中央銀行中立性が尊重されねばならないということは、いささか逆説めいた感じがなさるかもしれませんが、実際問題といたしましては、やはり中央銀行の判断と政府の判断とがある一定の場所におきまして十分に討議されるということが日本経済安定成長のために必要であるということは、従来も事実をもって証明されておるところでありまして、やはり財政政策あり方金融政策あり方とが、時によりまして実際問題としては現状の判断についての相違を生ずることはあり得るわけでありますから、その場合に両者が十分に討議し合えるという場をつくっておくことが必要であると考えられるのであります。そういう意味におきまして、特に公債発行政策がとられた今後におきましては、中央銀行中立性の維持が必要であると私は考えるものであります。  以上のような諸政策が十分に講ぜられまするならば、私は、四十一年度の予算は、十分にその短期的な観点からもまた長期的な観点からも問題を解決するよすがとなり縛る、かように考えるものであります。しかしながら、先ほども申し上げましたように、今後の最も重要な課題は、公債発行によって財源が調達されるという一大政策の転換にありますので、この点について、国民もこれをインフレととかく結びつけて非常に懸念しておるのでありますから、これにつきましては、特に先ほど申しましたような点について十分政策上の配慮が加えられなければならないと考えるものであります。そのような政策がとられるならば、私は、公債発行によって通貨が増発される状態になりましても、必ずしもそれを直ちにインフレと結びつけて考える必要はないと考えます。先ほども申しました成長条件に十分の弾力性があり、将来に対しても弾力性が保持され得る見通しが十分にあるならば、通貨は増発されても、それは決してインフレを招くわけのものではありません。通貨の増発即インフレでないことは申し上げるまでもないことでありまして、国民経済均衡的発展が行なわれていく場合に供給される通貨は、これは正常なる成長通貨であります。そのような成長通貨の供給は十二分に行なわれねばならないのであります。しかしながら、成長条件に若干の問題を発生してきたと見られます場合には、事前にこれについて十分の配慮が行なわれることが必要である、このように考えるものでございます。  以上をもちまして私の公述を終わらしていただきたいと思います。御清聴たいへんありがとうございました。(拍手)
  4. 福田一

    福田委員長 ありがとう存じました。  続いて、高橋公述人にお願いいたします。
  5. 高橋誠

    高橋公述人 御紹介いただきました高橋でございます。ただいま本委員会にかかっております昭和四十一年度予算というのは、おそらく戦後の日本財政の歴史の中できわめて重要な意味を持つものだと思います。後世の財政史家は、おそらく、この四十一年度をもって、新しい日本財政の一段階の第一年目というふうにしるすことになろうかと思います。おそらく、その章の副題には、「均衡財政から公債を抱いた財政へ」という題をつけることになろうかと思います。こういう意味におきまして、この四十一年度予算につきまして、幾らか財政を勉強しておる者として意見を述べる機会を与えられましたことを光栄に存ずるものであります。  四十一年度予算にわたる問題はきわめて広範でありますので、私の公述は主としてそのうちの租税政策に関する部分について意見を申し述べたいと思います。それも、三十分という制約がございますので、若干の重要な論点にしぼらざるを得ないということを御了承いただきたいと思います。  四十一年度租税政策は、ごく大まかに申しまして、四つの大きな特徴を持っているように思います。一つは、何と申しましても、公債政策もとにおける税制改正減税ということであります。第二番目は、従来のそれに比べてかなり大幅な減税規模だ、こういう点であります。第三番目の点は、企業減税に従来と比べてかなり重点が置かれた、こういうことでありましょう。そして、最後は、税制改正の対象と改正の税目がきわめて広範だということであります。もちろんこれらは表面的な特徴であります。  この特徴を持ちます租税政策につきまして、私は、主として次の二つの基準、すなわち、税の負担の問題つまりこの租税政策というのは税の負担あるいは税の公平という点でどういうことを意図しているか、あるいは税の公平というのはどういう意味を持つのであるかという点、それから、特に今回の財政政策が意図しておるところの不況対策というものとどういうかかわりがあるか、この二点につきまして検討してみたいと思うのであります。申し上げる点は大体四点であります。  すなわち、第一の点は、公債発行というものと関連して租税負担というものがどういう関係にあるかという点、第二点は、主として所得税を中心とした個人減税性格、第三点は、企業減税に関する問題、そして最後に、全体の総括を行なってみたい、こう考えるわけであります。なお、最後に、この公聴会の問題につきまして一言触れることをお許しいただきたいと思います。  まず第一の点でありますが、公債発行によって免ずる租税負担の変更の問題であります。つまり、この四十一年度から本格的な公債発行が行なわれ、それによって減税が行なわれるということが、租税負担という関係にどういう問題をもたらすかという点であります。借金によって税負担を肩がわりするということがいわれておりますけれども、それはまあ一時的な意味でありましょう。おそらく、借金をしましても、その借金はいずれは租税によって返済されなければならない。つまり公債は、申すまでもなく、租税の先取りされた形態あるいは長期分割の手段でありますから、公債発行によって減税をしても、その減税による部分の負担は、将来の租税負担というものによってになっていかなきゃならない、こういうことが第一に指摘されなければならないと思います。そういう意味におきまして、公債は、国の債務というよりも、国民の債務というふうに考えるべきであります。つまり、公債租税負担関係を時間的に変更するものだ、これが第一の点であります。  第二の点は、公債発行によって階層間の税の負担関係というものに変更を与えるという問題であります。すなわち、もし今年度の場合に、七千三百億、あるいは減税を抜きました五千三百億、これを税によって徴収するということになりますと、おそらく、現在の条件もとでは、租税特別措置を改廃するとか、あるいは担税力のより大きい階層その他の税負担を強化するという形で解決する以外にないと思いますが、おそらく、そういう方法を避け、これを公債に求めたということは、現在の租税負担関係というものを現状のままに維持し、あるいはこれをさらに減税によって緩和する、そういう税の負担関係において分割された公債の部分を、今後その元利をその租税関係によって負担していく、こういう関係が生じてまいるものと思います。  要するに、公債発行によって税の負担関係が時間的あるいは階層的な関係で変更があるということを指摘したいのであります。なぜこういうことを申し上げるか。政策論としては、つまり、公債発行というもののもとでは、税の負担関係において従来以上公平の原則というものに十分留意した政策運営をしなければならぬということを強調したいためであります。  第二点は、所得減税の問題であります。  今回の税制改正におきまして、所得税にかなりのウエートが置かれているということは、しかもその多くの部分が課税最低限の引き上げ、なかんずく給与所得控除の引き上げというところに向けられた点は、ある程度評価し得るのでありますが、これは、言うならば、物価上昇等に基づく生計費の上昇というものに対する事後的な補正の措置というふうにも解せられるのであります。当然、こういう措置がなされなければ、税の負担関係は実質的に重くなるわけであります。ただ、このような補正措置で十分かどうかということになると、かなり問題があるわけであります。政府の前提としております基準生計費というものをとりましても、この数字は大体一年おくれになっております。つまり、昭和四十年度の基準生計費の算定の基礎になっている指数は、三十九年の指数であります。物価が安定している場合はそれでもけっこうでありますが、今日のように、政府の見通しでもすでに四十一年度で五・五%の努力目標、こういうような条件もとでは、なおそれ以上の課税最低限の引き上げというものが必要ではないかというふうに考えます。さらに、これは第二の基準、すなわち不況対策という点からも、現在の不況において需要を造出するという点から申しますと、この低所得者層に対する減税というものが、租税政策としては最も効果があるものというふうに考えるわけであります。  所得減税に関連いたしまして、税率の緩和の措置がなされました。私も、中所得の大体百万円以下のところに対しては、ある程度の税率の緩和の措置がなされるということは、これを支持するものでありますが、大体この税率緩和について照準を当てられている階層というのは、私の見るところでは、課税所得百二十万から二百五十万ぐらいの階層だと思われます。額をとってみますと、これはなるほど中所得という感じがするのでありますが、現在の課税所得の階層別の統計をとってみますと、これは四十年の統計でありますが、課税所得百二十万以上というのは、全体の四・一%であります。これにさらに所得税を納めない階層を含めますと、おそらくその数字は二%を若干こえる程度になろうかと思います。そうしますと、所得税減税の目標が中所得の税負担の緩和という場合のその中とは何かということになってまいりますと、いまの統計で見るところでは、これはかなり高額所得ということになるのであります。もちろん、財源が許せば、こういう階層の税負担も緩和することは望ましいのですが、現在の条件では、むしろその財源は低所得者層により振り向けるという方向が考えられてよかったのではないかと私は思うのであります。  それからいま一つ、意図せざる減税、つまり、課税所得四百万以上の階層については、政府租税政策としても何ら減税を意図しないのでありますが、現在の減税方式によりますと、ここでいま自動的に減税が行なわれる。これは、個々のこれらの階層の人にとってはきわめてわずかの額でありますが、しかし、これを総額にしますと、これは大体の概算でありますが、所得税減税のうちの百十億あるいは百二十億程度が、全体の所得税納税人員の中の〇・六%の人たちに向けられている。こういう意図せざる減税というのは、ある程度、今後の問題としては、そういう階層には減税が波及しないような措置をとることを考えてもいいのではないか、こういうふうに考えるのであります。  それから、個人減税に関連しまして、財産課税、贈与税及び相続税についての減税が行なわれます。これも久方ぶりの減税でありますが、現行の相続税、贈与税というものの持っている若干の不合理な側面、夫婦間の贈与あるいは相続等の問題あるいは地価値上がり等について基礎控除がやや低過ぎる、こういうことについて多少の手直しをするということは十分支持されるのでありますが、こういう財源が非常に窮迫しているという状況のもとでこういうふうな措置をとる、さらに百五十億ばかりの減税を振り向けるという措置は、私としてはあまり納得のいかかい措置だというふうに思います。この場合に、もしいまのような合理化の措置がある程度必要だとすれば、むしろこういう財産課税の増税によってその穴埋めをする、この財産課税は差し引き増減なしというふうな措置がとられてもよかったのではないか、こういうふうに考えるのであります。  それから第三の問題は、企業課税に関する問題であります。私は特に企業課税における特別措置の問題を取り上げたいと思います。  わが国の税制が個人税及び企業税におきまして広範な特別措置を設けておるということは、御存じのところであります。これらの特別措置は、それぞれの政策的な目標というものを掲げております。また、その政策的目標に対してある程度効果があるものもないわけではありませんけれども、しかし、その多くは既得権化している、そして税の公平という基準から申しますとかなり問題が多いということは、しばしば指摘されているところであります。公債政策をとります場合に、これは政府の心がまえの問題でありますけれども、歳出のほうである程度不急不要の経費を削るということ、そしてそういう浮いた経費をより合理的な方向に振り向けるということは何よりも大事なことでありますが、税制においてもまた同じような配慮をなされるべきだと思います。こういう点におきまして政策効果があまり十分でない、あっても著しく税の公平を害するというふうな特別措置は、この際十分に再検討して、そして、それから上がる財源をより合理的に、より有効に使うという配慮がなされるべきだったと思います。残念ながら、こういうふうな努力がなされていないということを遺憾に存ずるものであります。  その上に、今度の企業減税におきまして、一般減税の措置のほかに新しい特別措置が加えられました。企業の合併の促進あるいはスクラップ化のための税制、あるいは資本構成是正の特別措置、こういうふうなものであります。他方におきまして、重要産業用機械の特別償却制度とか新規重要物産免税制度、こういうふうな措置は整理されておりますけれども、いまのような特別措置その他が加えられております。こういう税制の特別措置を導入するという場合には、やはり租税全体の負担とのバランス、特に公平との関連を十分に配慮することが望ましいと思います。その上でどうしても特別措置をとらなければならぬとするならば、その特別措置の掲げる政策的な目標、たとえば企業の合併の促進というものがはたして合理性を持っているかどうか、それは十分公共性を持っているかどうかということについての判断がなされなければなりません。また、その目標に対して、その手続、政策上の方法として、たとえば資本構成の是正ということが合理性を持ち、公共性を持つとしても、それを減税においてやるということがはたして有効かどうか、そういうふうな手段の有効性についての配慮もなされなければならないと思います。こまかい議論は省きますけれども、私の考えるところでは、これらの特別措置というふうなものは、大体従来の方式をまた別な形で踏襲したものであって、いまの政策目標あるいは政策手段としての有効性というふうなものから見て必ずしも支持されないというふうに思うのであります。むしろ、企業減税をやるとすれば、それはこういう選別的な政策措置というものではなくて、一般的な減税というふうな措置をとって行なうことが望ましいと思います。  なお、中小企業、特に中小法人に対する税制につきましては、これは所得税との見合い、所得税とのバランスの上で考えられていくべきだと思います。  以上三点につきまして問題を取り上げて検討したわけでありますが、最後に、この租税政策の全体の性格がどういうものであるかということを申し述べたいと思います。  私は先ほど二つの基準を申し述べましたが、第一の基準は、この四十一年度租税政策が公平の原則というふうなものから見てどうかということであります。この点から見ると、その点はあまりよくないということであります。たとえば、所得税におきますところの税率緩和の措置というふうなもの、あるいは財産課税に関する問題、それから企業課税における特別措置の問題というものがそうであります。ここで一歩譲って、不況対策として税制、租税政策をどう考えるか、公平の原則をおいて、不況対策としてこの税制、租税政策は有効であるかどうかということの検討が第二の問題であります。租税政策を現在の条件の中での景気対策として使うという場合には、ただいまの紅林さんのお話にもありましたように、何よりも最終的な需要を造出する効果の高い措置をねらうということになりましょう。そういう基準からいたしますと、最も効果の高いのは、低所得者層に対する減税政策であります。第二の措置は、所得税一般に対する租税政策であります。企業減税は、これは景気条件によって非常にその効果はむずかしいのでありますが、現在のところは、むしろいまの一ないし二の方法重点を置いたほうがより有効性が商いというふうに考えるのであります。そうしますと、この租税政策性格というのは、次のようなところに帰着するのではないかと思うのであります。  それは、特に投資源泉の確保というところに非常に重点を置いた政策というふうに考えられると思います。公債政策というものとの関連において民間において貯蓄を増強する。そうすると、貯蓄の性向の高い階層に対する減税効果をねらう、あるいは企業の場合でも同じような配慮がなされているのではないか、こういうふうに考えるのであります。そうしますと、公債発行というものが先行して、減税はそれを可能ならしめる条件というふうに、これはやや言い過ぎでありますが、そういうふうに規定されないこともない、こう思うのであります。したがって、公平の原則あるいは当面の有効需要政策というふうな要請がやや後退したのではないか、こういう印象を持つのであります。  以上が四十一年度租税政策に対する私の意見であります。  そこで、最後に、やや蛇足になりますけれども、一つ意見を申し述べたいと思います。  それは、四、五年前でありますか、私が初めてこの公聴会に出まして公述をいたしました際に、なくなられました三浦委員だと思いますが、私に質問をされまして、おまえは公聴会あり方についてどう考えるかという御質問を受けたのであります。初めて公聴会に出まして、公聴会あり方についてどう考えるかということを聞かれましても、返答しようがないので、戸惑ったのでありますが、おそらくそれは次のような意味であったと思うのであります。それは、この公聴会の開かれるタイミングの問題、時期の問題であろうかと思います。つまり、この予算審議の大体中盤、中入りの段階で公聴会が開かれる、そうすると、私の意見は別としまして、いろいろな公述人からいろいろな意見が述べられても、それを十分に参考にすることができない。衆議院のほうはまだいいのでありますが、参議院のほうはほとんど予算の審議というものは終了している。そうすると、公聴会というのはきわめて形式的なものではないか、こういう点を是正する方策いかんという質問を受けたのであります。  そこで考えたのでありますが、このタイミングはやはり前に持ってくることが必要かと思います。このためには、いまの予算審議の過程について、これは法律上の問題を検討しなければなりませんけれども、一つは、政府予算編成方針を発表するその時点においてこれを衆参両院に報告する、そういう報告会を開くということが必要ではないか。これは報告ですから、別に決議等は要らないのであります。衆参両院の予算委員会に報告する。その報告のあとに、いまこの中盤で開かれているこういう公聴会を持ったらどうか、こういうふうに考えるのであります。これは、かつてこの予算委員会公聴会において私の受けました宿題にいま答える、こういうことであります。  以上をもちまして私の公述を終わることにいたします。御清聴を感謝します。(拍手)
  6. 福田一

    福田委員長 ありがとう存じました。
  7. 福田一

    福田委員長 これより両公述人に対する質疑を行ないます。小川半次君。
  8. 小川半次

    ○小川(半)委員 私は紅林公述人に、公債の問題と金利の問題の二点について、ごく簡単にお尋ねしたいと思います。  御承知のように、政府のほうでは、公債は市中銀行に引き受けてもらうのであるという方針を立てておりますし、また、そういうことになるだろうと思うのでございますが、そういうことになりますと、市中銀行の貸し出し金というのは縮まることになると思うのです。結局そのしわ寄せが中小企業にくるのではないか、こういう懸念が起こってくるわけでございますが、この点と、手持ちの預かり金が公債を引き受けたことによって少なくなった場合は、その公債を担保として日銀から借りる、こういう方法もあるわけでございますが、そういうことになると、結局、公債は結果において日銀が引き受けるということになりまして、通貨の増発となるわけでございます。私は、そういう場合はいささかインフレ気配が起こってくると思うのでございますが、ここは非常にむずかしいところでございまして、要するに、市中銀行のみが引き受けるということになると、貸し出し金のワクが縮まって、そのしわ寄せが中小企業にくる。では公債を担保に日銀から借りるということになりますれば、通貨の増発となるおそれがある。このかね合いを私自身も非常に気にしているのでございますが、この点についてひとつ御所見を承りたいのでございます。
  9. 紅林茂夫

    紅林公述人 それでは、ただいまの御質問に対しまして私見を申し上げてみたいと存じます。  公債発行いたしました場合に、上半期はほとんど問題はないということは、おおよその人が考えていることであろうかと思いますが、下半期になってまいりました場合に、それがただいま御質問にございましたように、何らかの形で日本銀行からの信用膨張につながりはしないか。その場に二つの問題が起こる。一つは、信用膨張が起こってきた場合に、大企業に偏して、中小企業にしわ許せがあらわれるのではないかという御疑念でございます。そのような御疑念がわくことは、私はごもっともであると思うのでございますが、しかし、中小企業が中小企業だけで存在していないということは、申し上げるまでもないわけでございまして、大企業から現在不況のために非常に注文高の減少、あるいは支払いの点における遅延などがございまして、中小企業は非常に困却をしておる状態にありますが、それらの点が不況解決とともに改まっていくということが期待されますし、もとよりわれわれといたしましても、中小企業対策と申しますのは、これは社会的に見ましても非常に重要であり、かつ、国民経済の安定的発展あるいは輸出増強などの点から申しましても最も大切なものである、かように認識いたしておりますので、そのような努力を特に最近は惜しまないようになっておるわけでございます。御疑念の起こらないように私ども善処をいたしたいと考えております。  次に、そのような場合、通貨が増発されるということになってインフレへの懸念があらわれないかという問題でございますが、この点につきましては、先ほど若干触れましたように、私の考え方では、通貨増発即インフレと考えないでもよろしい、かように思うのでございます。おおよそ成長条件が十分の弾力性を持っておるということであれば、通貨は当然にその範囲内において弾力的に増発されて差しつかえないはずでございまして、それは直ちにインフレを呼び起こすことはないと存じます。しかし、もし国際収支が悪化の前兆を示しているにかかわらず通貨を増発する、そのもと公債が置かれていたということになれば、これはもちろん是正されねばならないことであり、かつまた、特に現状におきましては、消費者物価と賃金の悪循環が始まる、あるいは消費者物価上昇のために預貯金の増強が著しくそこなわれるなどのことが起こってまいり、かつ、そのような場合に、景気がそういう状態もとにおいてさらによくなっていくとすれば、おそらくは雇用問題が非常に緊迫状態に再びなると考えられますし、そこからさらにまた賃金の上昇も起こってくるということに当然なってまいりますから、これはインフレへの道程を歩むということになりましょう。それらの点につきましては、管理通貨考え方は、もともとそういう現象があらわれる前に、それを見てとって十分に対処するということであらねばならないわけでありますから、今後は、それが特に公債発行によって、フィスカル・ポリシーといわれます、財政面からの景気調整政策という形で行なわねばならないことは言うまでもないわけでありまして、特にその点につきまして、先ほど公述を申し上げました際に、最後にまたその点を強調申し上げた次第でございます。そういうことでございますから、私といたしましては、将来もしこれらの私の申し上げます成長条件が十分に弾力性を持っているならば、公債発行額が累積してまいりましても、それが直ちにインフレ意味するというように考えないでもよろしい、かように考えておるのでございます。
  10. 小川半次

    ○小川(半)委員 次に金利の問題について伺います。  実は先般当委員会におきましても論議されたのですが、公定歩合の引き下げが行なわれたにかかわらず市中銀行の金利はそのままである。御承知のように、諸外国の例をとってみましても、日本の金利は若干高いのでございます。そこで、これからは日本はどうしても輸出に重きを置いていかなければならぬと思うのですが、やはり金利の分だけでも一つのコスト高になっておりますから、やはりそのコストダウンをして輸出を盛んにするためにも、ここらあたりで金利の引き下げをやるべきではないか。同時に、国内的に見ましても、いま政府においても、またわれわれ国会においてもたいへん頭を痛めておりますのは物価の値上がりでございます。この物価を抑制するためにもやはりコストを下げなければならぬ。いろいろ方法があるけれども、やはり金利引き下げも物価値下げの最も大きな役割りを持つものであると私は思うのです。私はいろいろ日本の銀行界のあり方を見まして、これは外国にあまり例のない、いわばはでな宣伝をやっておるのですね。カレンダーをつくったり、新聞雑誌の広告はもちろんのこと、あるいは預金者に手ぬぐいを配ったり、マッチを配ったり、もちろん宣伝はしなければならぬでしょうけれども、不必要に宣伝費に使っていると私は思うのです。こういう点などをつとめて金利引き下げの方向に持っていって、そういうサービスは私は不必要だと思うのです。決して預金者もそういうものをほしいとは思っていない。銀行がくれるから、あるいは手ぬぐいをもらったり、ふろしきをもらったり、 マッチをもらったり、カレンダーをもらったりする。全国的にこの宣伝費が非常に大きいと私は思うのです。こういう点から、やはり市中銀行のほうで、幸い紅林公述人がおいでになったこの機会に、音頭をとっていただいて、そういう経費は省いて、金利を引き下げて、そして物価抑制に協力しよう、こういう態度をおとり願ったらいかがかと思うのです。たいへんあなたに申しわけないことでございますが、われわれがいろいろとっております情報によりますと、いま日本において経済的に一番恵まれておるのは銀行家である、こういわれておるのです。まあ事実のようでございまするが、恵まれ過ぎていつまでも安楽な状態におらずして、ここで国の一番重要なる政策にわれわれも貢献しなければならぬという、そういうとうとい御精神をひとつ発揮されまして、金利引き下げの方向に全国の業者を持っていかれることがわれわれとして望ましいのでございますが、この点について貴見をお伺いしたいのでございます。
  11. 紅林茂夫

    紅林公述人 ただいま御意見を承りまして、まことに私どももごもっともであると存じておることでございます。  金利につきましては、しかし一般論といたしまして、まず、一応簡単に前提を申し上げさせていただきたいと存じますが、わが国の金利は、確かに従来非常に高かったために、低金利政策を遂行することが大体において歴代政府の大きな方針であったことは御承知のとおりでございます。この線に沿いまして、可能な限りわれわれも努力をしてまいりましたつもりでございますが、もとより、金利は資金の需給関係を相当大きく反映いたしますために、必ずしも十分に一般の御期待に沿えなかった点があったであろうと存じております。その点につきましては、さらに今後御趣旨のように私ども大いに努力をいたしたい、かように考えております。  ただ、当面の動きをひとつ考えてみますと、御承知のように、昨年の十二月六日にアメリカは公定歩合を引き上げました。そうして、そのために彼我の金利水準が非常に変わってまいったのであります。たとえば、定期預金について考えてみましても、従来はアメリカでは九十日、三カ月までの定期預金は年四%、九十日以上は四・五%ということであったのでございますが、この金利は、公定歩合の引き上げによりまして、最高金利が一律五・五%となったわけでございます。そうなりますと、わが国の銀行の定期預金一年ものが御承知のように五・五%でございますので、一年のものは等しい金利ですが、一年以下の金利は、アメリカのほうが、最高金利で見ます限りにおいて高くなった、こういう状態にございます。そのために日本の銀行の定期預金がアメリカに預けがえされるということはもちろん起こりませんから、これは直接関係はないようでございますけれども、しかし、全体の金利水準がそのように変わってまいりましたことが、御承知のように、国際収支に非常に響いてきておるわけであります。そういう状態でありますために、金利全体の動きから見まして、直ちにここで金利をさらに引き下げるということは、周囲の環境から考えねばならない問題がある、かように思うのでございます。金利はもとより安いほうがいいわけでありますが、しかし、金利機能の活用ということは、景気変動を是正する、あるいは景気変動を事前調節するという点から申しまして、非常に重要なものでございます。そういう点において、かつて低金利にあまり徹底し過ぎて金利機能の活用の面がいささかおろそかになったということを私どもは実は非常に憂えておったのであります。もとより、それは金利を高めたいという意味では決してないのであります。景気変動に伴って、あるいは景気変動に先導し得るような金利政策、そのような政策がとられる必要がある、かように思うのでございます。  これは、金利政策のあるべき姿ということで、原則論であり、一般論でございます。したがいまして、現状におきまして、ただいま御質問がございましたように、不況をさらに一そう早く解決していく一助として、金利を下げ得るだけ下げるという努力をするのは、私ども金融機関の責務である、かように考えております。しかし、昨年の十月以降は、全国銀行の貸し出し約定金利は、戦後最低の水準になっておるのでございます。  それから、次にもう一つ、銀行は恵まれ過ぎておるではないかというお話のようでございました。確かに現状のように、不況長期にわたりますと、銀行は非常に恵まれておるような観を呈することに相なります。ただ、申し上げるまでもないことでございますが、銀行は結局金利の収入ということでありますために、それの高い低いは先ほど申し上げましたが、結局一定の期間内におきましての収支というものは、それほど変わりがないわけでございます。でありますから、産業界は不況になれば直ちに収益の減少を生じますが、銀行の場合には、直ちにそのような減少が起こりません。そのかわり、上昇する場合も非常におくれをとるということになりまして、平均すれば、平準化されていることであると思います。  不幸にして、今回は、御承知のように、非常に不況が長引いております。従来、たとえば三十二、三年のなべ底不況といわれておりましたようなときを見ましても、企業の収益は、前期に比べて二期減益となっただけでございました。それが、今回は一昨年九月以降三期続いて減益であり、この三月決算はどうかということでございますが、これも私は実質上なお減益決算になると考えております。そうしますと、四期続くということになります。それでは九月の決算はどうかということでございますが、九月の決算はある程度よくなってくることが期待されておるわけで、私はある程度よくなると考えておりますが、しかし、まだ不況のいえた決算というわけにまいりません。  そういう状態で、今回の不況は非常に解決に困難を来たしておるわけでございますが、そういう情勢でありますために、一そう銀行が恵まれ過ぎておるという感が強いのであると思います。しかし、もちろん、それは私が弁解を申し上げるという趣旨ではございませんで、今後、一般の産業界が、あるいは一般の人々が非常に問題を持っておるという中におきまして、銀行のみが恵まれ過ぎておるというような感じの与えられないように私どもも自粛をいたしたい、かように考えておりますので、どうぞ御海容をいただきたいと思います。
  12. 小川半次

    ○小川(半)委員 けっこうです。
  13. 福田一

    福田委員長 次に加藤清二君。
  14. 加藤清二

    加藤(清)委員 お許しを得まして、まず高橋先生にお願いをしたいと存じます。  本委員会でことしの予算を審議するにあたりましての答弁を見比べてみますると、どうも理解に苦しむ、国民が知りたいというところがはっきりしていない面が多々ございまするが、その中の第一点に、総理は、経済成長を七・五%に置くと言われました。同時に、景気回復と物価抑制が並列して行なわれる、そうやるんだと言うておられる。しかし、どう考えてみましても、ただいま先生の御説明にもございました税一つ取り上げてみましても、なかなかに景気回復はできそうもございません。特に景気回復について行なわれた公債発行下の減税、この減税についてきのうここで藤井さんがおもしろいことを言うておられる。企業減税よりは所得減税のほうが景気回復には早道である、そのとおりです。だから、企業減税を遠慮して六、四にしてもらったのですと、こういう答弁なのです。実に意味深長で、おもしろい答弁だと思いました。しかし、減税の面からいっても、はたして景気を回復するということが可能でありやいなや。もしありとすれば、大蔵大臣の言うように、秋ごろからつま先上がりになるのだろうか、ならないのだろうか。去年も秋ごろからつま先上がりと言われたのでございますが、ついにナシのつぶてだったのです。最も問題になります点は、経企庁の長官の言うところの物価値上げの率を五・五%に押えるということばでございます。何べん聞いてもこれは五・五には間違いございませんけれども、それは、積算でなくして努力目標であるという点でございます。はたして物価上昇率を、これほど公共料金が上がっていくのに五・五%に押えることができるであろうか。もしできないとした場合に、総理の言うところの景気回復と物価抑制、これが並行して行なわれるであろうか、なかろうかという疑問を素朴な国民は持ちがちでございます。この点については、あとでお答えいただけばけっこうです。  次に、紅林さんのほうにお願いいたしますが、特に金融の専門家でいらっしゃるあなたにお尋ねしたいのでございます。  日本金融の実態を外からながめてみますというと、異質のものが同居しているように思えるのでございます。すなわち、片やオーバーローンでございます。片や歩積み両建てで引き締めでございます。一体、なぜこうならなければならないのかということに疑問を持つと同時に、私どもはこれを一日も早く正常化しなければいけない、こう努力しておるものでございます。なぜかならば、中小企業の倒産は、あなたも先ほどお触れになりましたが、年間六千件の余をこえておる。正月になりましてやや減ったとはいうものの、十二月と比べて減っているだけで、去年の当月と比べるとふえておるのでございます。中小企業の倒産の原因を調べてみますと、常に銭がつきものでございます。金融がついて回っているのでございます。歩積み両建て、担保凍結、手形サイトの延長、これがどの倒産にもついて回るわけでございます。しかも、倒産は六千件と言いましたけれども、それは公称資本金一千万円以上のものなのです。それ以下のものを入れますというと、交通事故で死ぬ人よりも倒産のほうが多いのです。これはもはや政治問題、社会問題です。そこで、えりを正して、金融界の方も政界の方も行政の方々も、こぞってこの解決に当たらなければならぬ時期に直面しておると思う。  そこで、お尋ねしたいのはオーバーローン、これは三十八年にすでに答申が出ている。にもかかわらず直らない。いつの日に直るだろう。歩積み両建ては、銀行局長から過去十一回にわたって銀行に注意がいっているはずなのです。それにもかかわらず依然として直らない。直ったという統計をあなたのほうが出しなさっただけで、具体的事実、実効金利というものは下がっていないということを総理も認めておるわけでございます。十一回も大蔵大臣や銀行局長から指示を受けて、それで直らない。一体ネックはどこにあるのでございましょう。金融界の方は大蔵省の命令を何とお考えでございましょうか。そこらあたりから解決していかないというと、この歩積み両建ての問題は解決しないと思う。まずその点から……。
  15. 紅林茂夫

    紅林公述人 ただいまオーバーローンの問題と、これに関連をいたしまして歩積み両建ての問題につきまして御質疑がございました。また御注意あるいは御希望がございました。私どもといたしまして、この問題が何回も議論されなければならないという状態にあることをまことに遺憾に存ずるわけでございますが、しかし、実はただいまも加藤先生からお話がございましたが、私どもといたしましては、大蔵省との関係におきまして、過当な歩積み両建て等につきましては、これを十二分に相互に連絡をとりながら自粛自戒いたしまして、これを解決いたしたわけでございまして、これは大蔵省との約束の期日よりも早く解決されておる状態にございます。ただ、拘束預金というのにも、御承知のようにいろいろとございますために、その中で特に過当なものと、それから過当とは認められないものというように分けていろいろやってまいったわけでございます。過当なものにつきましては、いま申し上げましたように、もうすでに完全に都市銀行においてはゼロになっておる状態であります上に、さらに銀行といたしまして、その上に自粛の方法をやっておりまして、その実は一応数字の上ではあがっておるわけでございます。しかしながら、実際問題といたしましては、いろいろのケースがございましょうから、加藤先生のお耳にいろいろ入っておるというようなこともおそらくおありであろうと思うのでございます。これは、私どもといたしましては、これだけともかく店がございますために、なかなか全部完全に徹底させるというところまではいきかねておりまして、その点まことに遺憾に存ずるわけでございますが、しかし、たとえば私どもの努力といたしましては、支店長会議をしばしばその目的のために招集もいたしましたし、担当者を特に呼んで注意をし、地方につきましては本部から何回も出張をいたしまして、周知徹底させておるわけでございます。そこで、先般大蔵省と日本銀行との合同の検査もございましたのですが、その結果としては、都市銀行はよろしいという御講評をいただいておるわけでございます。したがいまして、今後なおそのように残っておりますいろいろの問題がございました場合には、私どもといたしまして最善の努力をいたしたいと思っておりますし、そのために、御承知のように苦情受付機関もつくっておるわけでございます。ただし、苦情受付機関ができたからといって、そこへそうそう行けるものではないとおっしゃるでございましょう。まことにそうであろうと思います。したがいまして、私どもは、銀行の中に直接あるということではなかなか行きにくいという事情があることはよくわかっておりますので、その他の方法もこれと併用いたしまして努力をいたしておるわけでございます。その点、なお一そうの努力を重ねたい、かように存じておりますので、それで御了承いただきたいと存ずるのでございます。  それからオーバーローンの問題でございますが、確かにオーバーローンもなかなか改善されません。実はわが国のオーバーローンが初めて発生いたしましたのは、実はドッジ・ラインの行なわれました昭和二十四年なのでございます。昭和二十四年四月から、御承知のように、当時の復興金融金庫が貸し出し機能を一切停止され、そして回収だけは予定どおりに行なえというきびしい命令をドッジ公使からGHQの指令として受けたわけでありまして、そのために、当時の産業界は一挙に資金枯渇の状態になりまして、倒産相次ぐという懸念があらわれてきたわけであります。そこで、当時、日本銀行といたしましては、そのような政策はいささか実情に沿わないということを考えまして、若干日銀の信用においてこれを緩和するという政策をとったのでございます。それがオーバーローンの実は発端でございました。その後、二十四年の四月からドッジ・ラインが行なわれたわけですが、翌年の六月には朝鮮事変が起こりましたために、わが国は、なお当時占領下でございましたから、この特需に応ずることが至上命令でございました。そこで、生産力の拡充という必要が起こってまいりまして、その資金が引き続いてオーバーローンの形をもって緊急的に供給されることになったのであります。これがオーバーローンの第二段階と私は考えております。最初は安定恐慌といわれておりました恐慌を回避するために考慮されたものであったのですが、それが次の段階におきまして、朝鮮特需に対応するための資金供給のルートとなったわけであります。したがって、朝鮮事変が終わりまして一時オーバーローンの状態はかなり緩和されたのでございますが、しかし、次いで高度成長期がまいりました。その高度成長のための資金が再びこの方法をもって供給されるということになってまいったのであります。その背景に一つありますことは、やはり当時は非常に重税でありまして、これもドッジ・ラインの残していった考え方であることは御承知のとおりでございます。予算はすべて均衡ないし超均衡ということでやっておりましたために、一方において支出は非常に当然増大してまいります。その増大していく財政支出をほとんどすべて租税をもってまかなっていかねばならないことになったものでございますから、そこで企業におきましても内部留保は非常に困難になり、一般の生活面からも、余裕金が十分にあらわれて預金が増強していくという可能性が減ったわけであります。その結果、成長資金が、引き続いて高度成長のための供給ということで、オーバーローンを通じて行なわれたわけでございます。でありますから、私はその背景には非常に無理な超均衡予算、あるいは少なくとも均衡予算という形での毎年毎年の租税増大があった、かように考えておるものであります。  したがいまして、この問題は財政政策金融政策とが相一致して解決していかなければならないことでございまして、今回公債発行されるということに相なりましたので、その点から若干変化があらわれることを期待しておるわけでございます。しかしながら、公債政策が急にここで取り上げられることになりましたために、しかも不況解決するという重要な課題がございますために、先ほども小川先生の御質問にお答え申し上げましたように、下半期以降において若干の日銀の信用造出というようなことが起こる可能性があるわけでございます。そうなりますと、オーバーローンの状態はなお直らないのではないかということに相なりますが、これは、そのような事情におきましてある程度やむを得ないことかと存ずるのでございます。しかし、私どもは、オーバーローンがいいとはもとより考えておりません。したがいまして、あらゆる努力を重ねて、今後オーバーローンの状態解決したいと考えておるのでございます。そのために公債発行という政策長期にわたって弾力的に運営されることが望ましい、私はかように考えております。
  16. 加藤清二

    加藤(清)委員 たいへん御丁寧な御答弁でありがたいわけですが、次の質問者もあるようでございますので、簡単にずばり、ずばりお尋ねしますから、簡単にお答え願えればけっこうでございます。  歩積み両建てについて、この国会で前向きに是正しようという動きがございますが、それについて銀行協会としては協力する意思がありますか、ありませんか。
  17. 紅林茂夫

    紅林公述人 ただいま抽象的なお話でございましたので、そういう考え方ということでございますれば、もとより協力をいたしたいと存じております。しかし、もし特殊指定というようなことをお考えでございますれば、私どもはその必要はない、かようにお答え申し上げたいと思っておるのでございます。ただし、それは特殊指定になるのがいやだというような意味ではなくて、特殊指定にまでしていただかないでも、私どもは一般指定で十二分にこれを解決する努力をいたしておりますし、その自信を持っておりますためにそう申し上げたいのでございます。
  18. 加藤清二

    加藤(清)委員 自信のおありのことと御努力の前向きはけっこうでございまするが、悲しいかな実績があがらないということでございます。あなたの御見解をここで討論する気はありませんが、特殊指定どころか、特別議員立法におきましてこれを是正させようという空気もあるわけでございます。  ところで、片や引き締めておいて、片やどんどん出しておる。オーバーローンというのは預貸率が逆になっておるということですね。そういうやさきに、あなたたちは公債をシンジケートで消化を命ぜられたわけです。そのときに預金吸収がこれに追っつかなかった場合どうなさる御予定でございますか。過去においては、コール市場においてレートをつり上げて、中小金融の金をここへ吸い上げてこられました。強制的に吸い上げられました。都市十二大銀行を通じて、裏口からまた一つのルートをつくって、ここへ集約をなさいました。そうしてこのオーバーローンの解消というよりは需要に応じていきなさった。それはやがて中小金融を非常に圧迫することになったわけでございます。いわんやあなたのほうの貸し出し率をながめてみますと、全国の中小企業に対して二〇%以下なんです。だんだんこの貸し出し率は減っておるのでございます。毎年、年を追うごとに中小企業に対する貸し出し率というものは減っておるのでございます。そういうやさきに公債消化しろと言われましたら、あなたのほうは預金が追っつかなかった場合、一体どこにその資金源を求める御予定でございましょうか。
  19. 紅林茂夫

    紅林公述人 一方においてオーバーローンを盛んにやりながら、一方において歩積み両建てを通じて引き締めておるではないかというお話でございますが、これは、先ほどから申し上げておりますように、十二分に私どもは自粛をいたしてまいりまして、現在残っておりますものは、その必要が大蔵省から一応認められておるものでございまして、自粛を必要とすると大蔵省で考えましたものにつきましては、全部これを解放するなり、あるいは金利措置の必要なものは金利措置をいたしておるわけでございます。かつて非常に金融が詰まっておりましたときに、おっしゃいましたような弊害がある程度あったかと思いますけれども、現在は金融がその意味においては非常にゆるんできておりますので、そういう弊害が実際にあらわれておると私どもは考えていないわけでございます。全体的に申しまして、中小企業に対して特に過酷なそういうやり方をしておるということは、これはもう常に国会でも問題にされてきておりますことであるのみならず、社会でも非常に問題になってきておることでございますから、私どもといたしましては最大の努力をいたしておるわけでございます。  それとあわせまして、もう一つの問題は、公債消化資金でございます。これは今後景気が漸次立ち直っていくに従いまして、預金は私どもといたしましては相当増加すると見込んでおります。しかし、先生のおっしゃるように、これから先の話でございますから、足りなくならないとは言えないことでございます。ただ、その場合に、足りないと申しましても、これは私見でございますが、国際収支が安定しており、物価がコストインフレ的な症状を呈していない、労働市場におきましても、労働力が決してそれほど緊迫の状態にないということであれば、若干の通貨が増発されましても、直ちにそれをインフレと考えなくてもよろしいのだと思います。ただ、それが累積していけば、その危険はもちろんあります。そこで、先ほど申し上げましたようなフィスカルポリシーを十分に活用してほしいということを私も政府に強く要望をいたしておるわけでございます。
  20. 加藤清二

    加藤(清)委員 討論の場でないことを非常に遺憾に思います。とかく金融機関は、自分のところへ背負い切れぬと日銀に依存がちでございます。そのよき例が、あなたのところは山一さんの親銀行でありながら、さあ困ったとなると、日銀法二十五条の発動をして、山一に自分で貸さずに、親が貸さずに、もう一つ上の日銀にたよってみえるという事実があるわけでございます。  そこでお尋ねしますが、山一の担保物件は、あなたのところで御調査の結果、はたして妥当でありやいなや、この点を、今度はおせじでなしに、ほんとうのところを聞かしてもらいたい。私はとって持っている。この程度のものでございますと、これは日銀の数値なんですが、問題が中小企業の場合ですと、この程度の担保では借りることができない、どうして山一さんだけはあんな担保で借りられたのだろうか、しかも、自分の担保でなしに、人の担保でどうして借りられたのだろう、それなら私どももやってもらいたい、選別融資だのといって、金はあっても貸さない、貸す相手がないなどといっておらずに貸してもらいたいというのが中小企業の声でございます。それがいま倒れていくのですから、その倒れていく者に対するせめてもの声として、私はあなたのほんとうの声が聞いておきたいわけでございます。それから最後に、あなたのところの貸し倒れ準備引き当て金、まあ内部保留金、特に貸し倒れ引き当ての準備金はどの程度ございましたでしょうか。これでけっこうです。数字だけ言うてもらえばいい。
  21. 紅林茂夫

    紅林公述人 山一証券の問題につきましては、まことにこれも重要な問題になりまして、私どもとしては頭を痛めてまいりましたわけでございますが、ああいう状態でありましたので、お調べになっておられますように、担保が必ずしも絶対に十分であるとは言い得ない状態であるかもしれません。しかしながら、幸いにして、最近非常に証券市場も変わってまいりましたために、再建案がかねがね出されて検討されてまいっておるわけでございますが、大体昨年の五月に山一の問題が起こりましたころには、出来高が八千万株程度でございました。それが最近は一億五千万株にものぼってくるというようなことになってまいりましたので、この状態でまいりますれば、従来考えておりましたよりも早く解決が可能になる、かようにわれわれは期待をしておるわけでございます。たとえば、当時合理化案といたしまして山一証券の人員を六千人に縮めたいという考え方でございましたが、現在すでに六千人を割っておりまして、五千六百人程度になってきております。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 店も八十店にしたいというところが、七十七店にまで切り詰められているという状態でありまして、最近の計上利益は月平均六億円という状態になってもまいりましたので、この問題は前向きで解決することができると考えておるわけでございます。なお、種々幹事銀行におきまして検討中であり、かつ関係当局とも協議の上、具体案をいま検討しつつある状態にございますので、担保の問題もいろいろございますが、全体的に考えてみまして心配は要らない、かように考えておるわけでございます。  それから内部保留につきましては、先般銀行局からの検査もございましたが、特に当行は十二分にその積み立てがあるということを認められまして、現在は、私はその数値はしかと覚えておりませんけれども、そういう講評をいただいておるわけでございます。
  22. 高橋誠

    高橋公述人 加藤委員の御質問は、四十一年度においての物価景気の見通しはどうか、こういう御質問であります。これは一つは見通しの問題でありますが、いま一つ政策の問題という二つの問題に分けて考えることができるかと思います。  最初の見通しの問題でありますが、おそらく政府の当事者としては、これは政治家としてはあるいは当然かと思いますが、物価は上がらない、景気はよくなるというふうにおっしゃることは、これはある意味では当然であります。  ただ、経済学者としてそれについて的確な見通しを出せというふうに御質問でありますが、これは非常にむずかしい問題でありまして、やはり一般的にしかお答えできないということはたいへん遺憾であります。つまり、おそらく物価政府の見通しを上回る上昇率を示すだろうということと、景気は、今度の景気の後退は相当長期のものであるという程度の見通しを申し上げることしかできないのは非常に遺憾でありますが、問題は、政策の問題であります。つまり物価に対する政策景気に対する政策というものとの関係、あるいはその調和をどういうふうに考えるか、こういうふうな問題かと思います。  ごく一般的に申しますと、物価を下げるという政策景気を回復するという政策はかなり二律背反と申しますか、別の政策目標というふうに言うことができます。つまり物価を下げるということだけが目標でありますれば、財政あるいは金融というふうなもので相当需要を抑制するというようなことを強力に進めていく、かなりドライスティックなそういう政策をとっていけばかなりの速効的な効果をあげ得るかと思いますが、さりとてそういう政策をとった場合に、それから生ずるいろいろな矛盾というものも同時に考慮しなければならない。つまり一種のデフレ政策でありますから、そのデフレから生ずるいろいろな社会的な、経済的な影響というものが特にこういう不況の段階でどういう意味を持つか。ここで景気政策物価政策というものをどういうふうに調和するか、こういう問題、これが非常にむずかしい問題であろうかと思います。おそらく政府の御答弁の物価景気は両立するというのは、われわれは政治的な意味に理解して、当局者としてこういうふうに御答弁になるのは当然だと思うのでありますが、実際問題としては非常にむずかしい問題があるのではないか。その調和をどういうふうにはかっていくかということになりますと、まあおそらく結論はかなり中庸的なところに落ちつくのではないかと思うのでございます。これはおそらく現実論としては。と申しますのは、今日の物価上昇を来たしておる原因は、一つ高度成長から来る構造的な要因というものがあります。いま一つは、よく問題にされます管理価格の問題、あるいは第三番目にはマネタリーな側面の問題、こういう三つのことがあろうかと思いますけれども、第三のマネタリーな側面を通しての物価引き下げというのが最初に申しました緊縮政策でありますが、そういうものをこの際強行するということは、先ほどのように非常に問題がありますから、問題はこういう構造政策にかなり大胆に手をつけるということを試みなければならないと思います。しかし、これも非常に一挙にこういうことをやろうとしますと、かなり大規模財政支出を要しますので、それ自身がまた物価対策と非常に矛盾するという関連になってまいろうかと思います。そこで、きわめて穏当な方法としては、財政の支出を少なくとも経済成長率程度に押えて、そしてその構造を変えていく。いまのような低生産性の部門における生産性の向上というようなものが大規模に取り入れられるような方法というものを考えていくというふうなことも一つの案かと思うのであります。しかし、現実問題としては、これはまさに二兎を追うことになるわけでありまして、政策の目標としては相当困難な問題があるというふうに考えます。  以上であります。
  23. 加藤清二

    加藤(清)委員 どうもありがとうございました。
  24. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 以上をもちまして両公述人に対する質疑は終了いたしました。  紅林高橋公述人には、御多忙中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後は零時二十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ————◇—————    午後零時三十分開議
  25. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十一年度予算について公聴会を続行いたします。  ただいま御出席公述人一橋大学教授大川政三君、武蔵大学教授佐藤進君であります。  この機会に、御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙中のところ御出席をいただきましてまことにありがとう存じます。御承知のとおり、国及び関係機関予算は国政の根幹をなす最重要議案でありまして、当委員会といたしましても連日慎重審議を続けておるところでありますが、この機会に、各界の学識経験豊かな各位の有益な御意見を拝聴いたしまして、今後の予算審議の上において貴重な参考といたしたいと存ずる次第であります。何とぞ各位におかれましては、昭和四十一年度予算に対しまして忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存ずる次第であります。  御意見を承る順序といたしましては、まず大川公述人、続いて佐藤公述人の順で、おおむね三十分程度において順次御意見をお述べいただき、その後、公述人各位に対し一括して委員から質疑を願うことといたしたいと思いますので、あらかじめ御了承願います。  なお、念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際には委員長の許可を得ること、また、公述人委員に対しまして質疑をすることができないことになっておりますので、この点、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず大川公述人から御意見を承りたいと存じます。大川公述人
  26. 大川政三

    ○大川公述人 ただいま御紹介をいただきました大川でございます。  私がこの機会に申し上げたいと思っておりますことをあらかじめ最初に申し上げておきますと、第一番目は、不況対策としての財政政策は資源配分の適正化への努力と切り離して遂行さるべきではないということであります。第二点は、これまでの高度成長期下における資源配分の姿はどういったようなものであり、今後はそれをどういうように修正すべきであるか、四十一年度予算によりまして資源配分にいかなる変化が与えられるかということであります。第三点は、建設公債発行論拠について吟味し、それは民間投資からの振りかわり資金によって消化さるべきであるという点についてこれから順次述べてまいりたいと思います。  最初の経済安定政策に関する問題でありますが、御承知のように、財政経済的機能の三つといたしまして、資源配分機能、それから所得再分配機能、経済安定機能といった三つの機能がいわれておるわけでありますが、最近の長期的な不況に直面いたしまして、この最後の経済安定機能を財政が積極的に果たすべきであるということが最近非常に強調されておるわけであります。フィスカル・ポリシーの採用であるとか、古典的な均衡財政から、拡張的赤字財政政策への転換とか、あるいは公債を抱いた財政の展開とか、あるいはまた政策不在の財政からの訣別であるとか、いろいろな表現で現在の財政政策の力点の置き場所を変えるべきであるというようなことが示されているわけであります。財政が高雇用水準の経済安定という政策目標を追及せねばならないことについて、これ自体については私も異議がございません。大量の労働者を失業せしめたり、あるいは生産設備を遊休化しておくことが社会資源の非常なロスであり、また今日の財政は、安定政策という政策目標を達成するのに効果的な政策手段を備えているのみならず、十分に影響力のあるほどの比重を国民経済においてすでに占めておると考えるからであります。  ただ、私がここで強調しておきたいことは、財政経済安定機能なるものが、よく伝統的とか古典的とかいわれておる他の二つの機能、すなわち資源配分機能、所得再分配機能と独立に、それらから切り離されて遂行さるべきではないということであります。伝統的とか古典的とか、そういうような形容詞がつけられますと、今日ではもうあまり重要視する価値がないような印象を与えますが、私はむしろその反対であると考えます。財政経済安定機能は決して他の二つの機能にとってかわるべきものではなくて、むしろそれら二つの機能を発揮すべき場所を広げるものであるというふうに思います。国民経済の動きに密着して、経済安定機能を積極的に遂行することが要求されるということは、とりもなおさず社会資源の効率的配分において、財政が積極的に指導性を発揮する領域を拡大することにほかならないと考えます。その領域での財政の責任は、安定機能の強化につれてますます大になると考えなければならないわけであります。といいますことは、デフレギャップを埋めるため量的に有効需要を喚起しさえすれば、今日の財政の責任が果たせるわけではなくて、いかなる質の有効需要を増すかということの決定が重要だということであります。  御承知のごとく、財政的措置による有効需要の喚起の方策といたしましては、政府支出の増加による赤字予算、あるいは減税による赤字予算、第三に均衡予算規模拡大という三つの方策があるわけでありますが、その中のどれを選択するのか、どのようにそれらを組み合わせるのかが重要であり、また、かりに政府支出の増加を選択する場合におきましては、いかなる政府支出を増加するのかという決定が重要であります。それらの決定いかんは、単に有効需要の量的拡大効果を持つのみならず、民間投資、個人消費、政府消費、政府投資などの間の配分比率に変化を与えるものであるからであります。  完全雇用の場合は、ある用途への、たとえばAという政府用途への資源使用を増加させるためには、他の用途、たとえばA以外の政府用途、あるいは個人消費とか民間投資といったものを減少させねばならないわけでありますが、そういった意味でこの機会費用がじかに感じられるので、どちらかというと抵抗を受けやすく、したがって、その決定には慎重ならざるを得ないわけであります。ところが、遊休資源が現在存在しているようなもとでは、ある用途への資源使用の増加は、他の用途への減少を伴いませんから、そのような資源配分上の考慮を軽視してよいかというと、私はそうは思わないのであります。その場合でも、他の用途への使用を増加する可能性を打ち消す作用があるからであります。  四十年度から政府支出が租税収入のきびしい制約を免れて、公債発行によって、租税と比べれば比較的容易に政府支出を増加し得る可能性が生じましたことによって、インフレ不安感が持たれており、本委員会でも活発な論議がかわされたように承知しておりますが、その不安感の底にあるのは、いままでの高成長期において行なわれてきた資源配分のやり方に対する反省が十分加えられないままに、不況対策を大義名分として政府支出が膨張していくことに対する不安感があるのではないかというふうに思います。それゆえ、今後安定的成長を維持していく上に政府支出の増加がかりに必要としても、他の資源用途とのつり合い、並びに政府支出内部における諸支出間の配分について十分な検討を加えるべきであると思います。  そこで、次に第二の問題に移りまして、従来の高度成長期のもとにおいていかなる資源配分のやり方が行なわれてきたか、また、それを今後どういうふうに修正すべきであるか、四十一年度予算における資源配分への影響といった問題について考えてみたいと思います。  これまでの経済政策、あるいは財政政策を支配してまいりましたのは、生産能力の上昇を目ざす成長第一主義であるといえるのではないかと思います。そのために資源配分政策上どういう措置がとられてきたかと申しますと、第一は国民総支出に対する投資率を高めることであります。しかも、その投資でも、なるべく生産力上昇効果の大きい分野に投資を集中するということが第一であります。  第二には、投資率を大きくするためには政府支出率——国民総支出に対する政府支出の割合という意味での政府支出率を比較的低位に保持する。均衡予算原則に依存してこうしたことが行なわれてきたわけでありますが、政府支出率を比較的低位に保持する、逆に租税率は比較的高位に保持する、こういうことによって個人消費の増加を押える効果が出てくるわけであります。  第三番目には、政府支出のうち政府投資に向ける割合を高めるということであります。また、その政府投資の中でも、比較的生産力上昇効果の高い分野に政府投資を集中すること、こういった措置が結果においてとられてきたわけであります。  その関係国民所得白書によりまして昭和二十九年度と三十九年度とを比較してみますと、民間総固定資本形成国民総支出の一二・四%から二四・五%に倍増しております。これに対して、政府財貨サービス購入は微増程度に終わっておりますが、その中で政府資本形成は八・一%から一三・二%にかなり顕著な増加を示しております。これに対しまして個人消費支出は、民間設備投資と政府投資の上昇に食い込まれまして、昭和二十九年度で六二・一%の構成費を占めていたものが、三十九年度におきましては四八・〇というふうに急落しております。このように民間、政府両部門ともに投資率が非常に高いということ、その反面、個人消費、政府消費率が非常に低いということは、経済成長率が非常に高いこととともに先進諸外国にその例を見ないほどのものであります。  以上のような高度成長政策強行の結果が、今日一方に供給能力の過剰、地方に消費者物価の高騰というとがめを受けているとすれば、今後とらるべき対策は、次のような資源配分上の変化が期待されるものでなければならないと思います。  第一は投資率の低下であります。それから第二は政府支出率の引き上げ、第三には租税率の引き下げによる個人消費率の引き上げであります。第四には政府投資のうちでも比較的生産力効果の高い産業基盤充実への片寄りを生活基盤充実のほうに修正することと思います。  以上のような基準で、四十一年度予算による変化を加味した、経済企画庁で発表しております四十一年度経済見通しにおける国民総支出の構成を次に考えてみたいと思います。  それによりますと、四十年度の実績見込みと四十一年度見通しにおける各国民総支出要因の構成比を比較して目につきますことは、第一に国内民間総資本形成が二二・六%から二一・九%に低下していることであります。なかんずく生産者耐久施設が設備投資意欲の鎮静を計算に入れまして一六・二%から一四・七%に急減しております。かかる投資率の低下は、生産能力の上昇を押えるという意味では均衡化要因でありますが、有効需要の伸びを押えるという意味では不均衡化要因となるわけであります。  そこで、第二に気のつくことは、政府財貨サービス購入の構成比が二二・四%から二三・二%に若干ながら上昇しております。この大部分は資本支出の構成比の上昇によるわけであります。  第三には、個人消費支出の構成比でありますが、これがわずかながらでありますが、低下していることであります。すなわち、五三・九%から五三・八%に〇・一程度低下しております。これまでの高度成長期におきまして犠牲を受けてきた個人消費率の引き下げが期待されていただけに、このことは若干意外であります。ということは、個人消費の増加関係を持つところの所得税減税並びに社会保障費の増加がなお不十分なことを示すものと考えられるわけであります。  要約しまして、この構成比の増加いたしますのは、政府財貨サービス購入が〇・八%増加する。在庫品が〇・三%増加する。個人住宅が〇・五%増加する。これに対しまして減少するのが、生産者耐久施設マイナス一・五%、個人消費支出マイナス〇・一%ということになるわけであります。この関係を見てまいりますと、政府財貨サービス購入の増加部分をもう少し個人消費支出増加に振り向けてしかるべきではないかと考えます。個人消費よりは政府支出のほうが有効需要の刺激効果が強いという理由だけで政府支出率が高められたとは思いませんですが、個人消費との関係において政府支出の増加にウエートが少しかかり過ぎているように思うわけであります。  以上のようなマクロ的な経済指標の分析から、もう少し四十一年度一般会計予算の中身に入って申し上げたいと思いますが、先ほど個人消費の増加あるいは低下には、社会保障費の増加に不十分なところがあるのではないかということを申し上げましたが、その点についてまず考えてみたいと思います。  この社会保障費が、四十一年度予算におきまして、前年度の当初予算に比べて二〇・三%増加する。歳出総額の増加率が一七・九%でありますから、この増加率を比較した限りでは、社会保障費の増加にかなり重点的な考慮が払われたことは確かだと思います。しかし、四十年度予算の歳出総額の増加率が一二・四%であったときに、社会保障費は一九・九%増加しております。ところが四十一年度予算は、非常に歳出総額の増加率が大きくて、一七・九%であるわけであります。その歳出総額の増加率が高い割りには、社会保障費の増加率は二〇・三%、前年度増加率とそれほどたいして変わりがないというふうに見ると、まだこの社会保障費の増加する余地があるのではないかというふうに考えられる。もっとはっきりさせるために、この歳出総額の増加額の中で、社会保障費の増加額が何%を占めておるか、増加額だけを比べて申しますと、四十年度におきましては、社会保障費の増加は歳出総額の増加の二一・三%を占めていたわけであります。これに対して四十一年度は、その増加額の構成比が一六・〇%に落ちておるわけであります。もし四十年度と同じ増加額構成比を維持するといたしますれば、社会保障費の増加額は、四十一年度一千五十一億円ではなくて、千三百九十八億円にならなければならないわけで、また、その場合の増加率は二七・一%にならねばならないわけであります。  次に公共事業関係費について申し上げます。  従来、先ほども言いましたように、政府投資が産業基盤充実のほうに片寄り過ぎているのではないか、そういうような批判がしばしば行なわれてきたわけでありますが、そのことが四十一年度予算におきましてどのように修正されたであろうかと申しますと、公共事業関係費全体の増加率が一九・一%であるのに対して、産業基盤充実の代表的なものである道路整備、それから港湾等のそういう整備、これをひっくるめた増加率は一四・八%であり、公共事業費全体の増加率よりは多少低いわけであります。これに対しまして、住宅対策費、生活環境施設整備、これらの増加率は二一・八%でありますから、この増加率を比較した限りにおきましては、生活基盤充実のほうへ幾らか修正する努力が行なわれておるということがいえるかと思いますが、しかし、増加率においてはそのように見るべきものがあるのでありますが、何と申しましても、生活基盤充実費の公共事業費に占める割合は、依然として低いわけであります。たとえば、先ほどの生活基盤充実のためのものが、公共事業費全体の八・五%しか占めていないのに対しまして、道路、港湾等の費用の構成比は四八・五%というぐあいでありますから、まだかなりこの間のアンバランスがあるかと考えます。  次に、若干こまかい話になりますが、文教費についても申し上げたいと思ったわけでありますが、時間の関係上多少はしょらしてもらいます。ここで言いたかったことは、義務教育費の教科書の無償給付と、一方、小中学校の不足建物の整備、この間のバランスがどうかということであります。私の考えでは、教科書というのは、その使用者によって排他的に使用されるわけであります。他方、小中学校の建物とか屋内運動場というのは、これは一般的にみんなで使うものであります。まあ政府としてまずやるべき仕事というのは、どちらかといえば、そういう一般的な利益性の伴うものに重点をまず向けるべきではないかというふうに考えております。もちろん教科書の無償給付自体がいけないというのではございません。これは誤解のないように断わっておきますが、校舎とか屋内運動場の整備とのバランスにおいて問題があるように思うわけであります。  最後に、第三番目の建設公債発行についてでございます。  現行制度のもとにおきましては、公債発行収入が建設費にイヤマークされているという関係にあるわけではございませんから、厳密な意味では四十一年度公債が建設公債とは言い得ないわけでありますが、一応限界的に、それら公共事業費等の建設費が公債収入によってまかなわれるという関係があるものとして議論を進めたいと思います。  この建設公債発行の論拠の第一としては、納税者というものは、税金を支払う負担を過大に評価しがちである。他方、建設費支出の結果得られる将来の便益を評価する場合には、過小に評価しがちである。したがいまして、建設費を税金だけでまかないますと、納税者の抵抗が大きくて、社会的必要性の大きい公共的な建設が過度に押えられがちであり、したがいまして、資源配分の効率性低下を招くという理由が第一にあるわけであります。しかしながら、納税者の抵抗が強ければ、それだけ建設費支出の規模及びその配分について政府は慎重にならざるを得ないわけでありますから、むしろ限られた収入の中で支出の効率性を高めるという利点があることも見のがせないわけであります。しかしながら、また現在の税制におきましては、大衆課税色が強くて、消費抑制的な作用が働きますから、いま以上に増税をして建設費財源を生むことは、実際には困難であり、また望ましくないものと考えます。  第二の建設公債是認の理由は、よくいわれますように、これによって世代間の負担の公平がはかられるということであります。この議論の前提には、公債発行をすれば経費負担が将来に転嫁されるということを前提にしておるわけでありますが、公債発行をした場合に、はたしてその負担が将来に転嫁するのかどうかということにつきましては、かなり議論があるわけであります。一方におきましては、将来の納税者の公債元利の支払いの負担に注目しまして、公債発行をすれば将来に負担が転嫁するというふうに述べますし、他方におきましては、公債発行するといい、また租税によるといっても、それは単に資金調達方法の相違にすぎないのだ、どちらによったところで、政府支出が行なわれれば、資源が公共的用途のために使われるのでありますから、その負担を現在の者が負うことにおいて変わりはないのだ、したがいまして、この論からいいますと、公債発行をしたところで、やはり負担は現在の者が負うのであるというふうに両極端に分かれるわけでありますが、私がいま考えていることを申し上げますと、公債が民間投資に充てられる可能性を持った資金で購入される限り、将来に転嫁すると考えます。なぜなら、民間投資が政府投資に振りかえられることによりまして、将来の所得創出能力の伸びが押えられるからであります。かかる振りかわりの条件が満足されて、初めて世代間の公平を理由とした建設公債論が成立するわけであります。これに反しまして、低金利を維持したまま、民間投資には十分な金融をつけてやり、それに上乗せする形で公債発行、実質的には通貨造出というようなことが行なわれますと、民間投資と政府投資との間の振りかわりというものが起こらずに、そのしわ寄せが個人消費に及ぶおそれなしとしないわけであります。その場合には、この公共的建設支出の負担は現在の者が負うわけであり、世代間の負担公平ということは有名無実になるわけであります。  多少まだ残っておりますが、公債問題については後の佐藤進教授からもお話があるかと存じますので、私の公述はこれで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  27. 福田一

    福田委員長 ありがとう存じました。  続いて佐藤公述人にお願いいたします。佐藤公述人
  28. 佐藤進

    佐藤公述人 佐藤進であります。昭和四十一年度予算に関する意見を、国債発行問題を中心にして述べたいと思います。  まず、昭和四十一年度予算一般的な性格について私がどのように思っているかを述べたいと思いますが、昭和四十一年度予算は、国債発行によって可能にされた人為的な膨張予算でありまして、そうしたものとして、戦後かつてないような政府の積極的態度のあらわれた予算であると思います。政府の積極的な態度は、言うまでもなく戦後最大の規模といわれる経済不況の克服のために向けられております。国民はひとしく経済不況の被害者として、その成り行きに真剣な注意を払っており、また今回の不況特徴といえる不況下の物価高には深刻な危惧を抱いて、おります。  政府は、財政支出拡大を通して不況にてこ入れを行ない、国民経済の停滞感を払拭しようとしております。財政支出規模は、一般会計について見ますれば、四兆三千百四十二億円という巨大な規模であり、これは前年度比一七・九%の増加であります。この伸び率はいわゆる所得倍増計画の発足の当初の年である昭和三十六年、三十七年を除いて、戦後の予算規模の組み方としてはきわめて積極的なものであります。このほかに、前年度比二五・一%の財政投融資計画があり、同時に作成された減税案と合わせて、かなり有力な有効需要補てんがなされ、景気回復への足がかりがつかめると政府は考えているようであります。  私が心配しているのは、一つにはこのような大規模予算物価騰貴を一そう刺激するものではないかということ、そしてもう一つは、不況対策という口実でたいへんなむだづかいが行なわれようとしているのではないかということであります。  いずれにしても、大規模予算規模拡大を可能にしたのは七千三百億円にのぼる国債の発行であり、この国債の発行そのものは、日本財政政策を根本的に変革していくものと考えられます。こうした事情を中心といたしまして、国債発行の意義、国債発行問題点、国債発行財政の仕組みの変化といったそれぞれの問題点について所見を述べてみたいと思います。  まず、国債発行の意義であります。今回の国債発行は、戦後初めての公債発行といわれますが、いままでに公債発行が全然なかったかというと、そういうことはありません。公債は、広く国債と準国債、特に政府保証債、そして地方債等に分かれますが、政府保証債は昭和二十八年から鉄道債、電電債等を皮切りとして発行され、約一兆円の残高を持つものになっております。また地方債は、行政官庁の許可制度のもとにではありますが、戦後引き続いて発行を続け、地方公営企業のそれをも含めて約二兆円の残高を持つものとなっております。また、国債そのものについても、交付公債は戦後すぐ、外債は昭和三十四年の産投外債以来発行され、そのほかに短期証券の発行限度の拡大などのため、いわゆる国債現在高は一兆三千億円をこえるものとなっております。この一兆円をこえる国債残高の規模は、昭和三十年以来のものでありまして、財政法第六条による国債償還規定にもかかわらず、その規模が減らず、むしろ漸増の傾向をたどっていることは重要であります。  それにもかかわらず狭義の国債発行、われわれはこれを長期普通内国債と定義したいと思いますが、これに対しては、昨年まで政府はきわめて慎重な態度をとってまいりました。その基本的な理由は、財政法第四条における国債発行禁止規定があったこと。同時に、日本公債市場、広くは公社債市場の未整備のためであったのであります。  それでは、なぜ昭和四十年度補正予算(第3号)以後、狭義の国債である長期普通内国債の発行が行なわれねばならなかったかというと、それは言うまでもなく、財政収支の赤字が、不況に伴う税収の予想外の減収のため、やりくりのつかないほど大規模な形であらわれたからであります。  この財政収支の赤字は、必ずしも昭和四十年度に初めてあらわれたものではなく、昭和三十九年度補正予算において、歳出の減額修正二百十三億円が行なわれたのは、収入が支出に追いつかなかったからにほかなりません。なお、この財政収支を、一般会計だけではなく、特別会計、政府関係機関を含めた財政資金の対民間収支について見ますと、昭和三十七年度以降支払い超過が続き、それが次第に拡大しております。また、一般会計歳入の予算決算比について見ましても、昭和三十七年以降、決算が予算に及ばないという意味での財政赤字が明らかになっております。したがって、財政赤字の基調はいまに始まったものではなく、むしろ昭和三十六年、三十七年に所得倍増計画が始まった当初からのものでありまして、それは経済不況の影響よりも、むしろ誤った高度成長政策に基づく予算規模拡大政策にあるといえるのであります。  したがって、公債発行不況対策としてなされるというのも、巨額の財政赤字をのっぴきならない形でもたらした誤った政策的指導の責任追及をたな上げにした、いわば問題点すりかえの政策ともいえるのであります。財政の赤字は、言うまでもないことでありますが、収入をこえた過大な支出の結果もたらされます。従来は、高度成長政策の名のもとに、国力の限度をこえた公共投資の拡大がもたらされたが、今度は、不況対策の名のもとに同じことが行なわれようとしております。公債発行は、むしろ従来租税の自然増収というふうに縛られていた財政規模拡大の限度ないし天井を取り払ったものであります。それだけに、むだづかいが行なわれる機会はますます増大したと見てよいのであります。  公債発行の限度については、建設公債の原則と市中消化の原則を守れば、無制限な発行は不可能であり、これが公債の歯どめになるといわれております。これが正しいかどうか。  まず、赤字公債と建設公債の区別でありますが、昭和四十年度補正予算(第3号)における公債二千五百九十億円は、赤字公債、四十一年度予算公債七千三百億円は建設公債であるといわれます。こうした区別を方向づけたのは、財政制度審議会でありますが、同審議会の中間報告は、「経常歳出はあくまで経常収入でまかなうという原則を堅持し、健全な公債政策をとること」を要望しております。そして、この原則でいけば、財政法第四条に違反することはないとしております。財政法第四条を読みますと、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債発行し又は借入金をなすことができる。」とあります。そして公債発行には償還計画を国会に提出すること、また公共事業費の範囲について議決を経る必要があることが続いて規定されております。  ここで問題は、財政法第四条は、建設公債を原則的に認めているのではないことであります。国の歳出は、経常収入でまかなわれねばならぬとしているのでありますが、財政制度審議会の報告及びそれを受けた政府は、経常歳出は経常収入でと、原則をすりかえております。そして裏返しの形で、資本支出ないし建設事業は公債でという形に原則を立てておりますが、いままではこれらの一般会計建設事業も、全額経常収入でまかなわれてきたのに、これからは全額公債でまかなうというのだから、大きな転換であります。  第二に、公共事業費の範囲が明確でありません。この範囲は一般会計の投資的経費、つまり耐久施設の建設に充てられる経費のうち、揮発油税等の目的財源を差し引いたものとされているようでありますが、投資的経費そのものの勘定は、それを特別会計から一般会計への振りかえなどの操作で、どうにでもなるのであります。また今回の公債収入のうち、産投出資に充てられるものもありますが、この産投出資の大部分は、輸出入銀行への出資に充てられます。これが公共事業費でないことは明らかでありますが、そうしますと、公債規模は、この出資金、貸し付け金の大きさにより任意に増減できることになります。  第三に、このようにしてきめられた大きなワクの中で、実際の公債発行は弾力的に行なうというのが財政制度審議会で確認され、政府も守ろうとしている方針のようであります。弾力的という意味は、公債発行による公共事業景気上昇し、税収もふえたら公債発行は小規模なものにし、もし景気が停滞ないし下降し、税収が予定より減ったら追加発行をするという考えのようでありますが、税収との関係発行額を調節するという考えは、赤字公債の場合には出てはまるが、建設公債の場合には当てはまりません。赤字公債のほうが例外的であり、また範囲が明確であるという意味で正直であり、また景気政策の理論にも合致していると思われるのであります。  次に、公債発行の第二の大きな問題点である日銀引き受け発行と市中消化の区別であります。日銀引き受け発行の方式は、国民に与える心理的影響からも、国際信用上からも適当でなく、また安易な公債発行による財政膨張のきっかけとなるおそれも大きいので、将来はもとより、この際もとるべきではないとし、市中消化の原則を大前提とするのが政府の態度であります。この市中消化とは、市中金融機関がこれをまず消化し、国民にもこれを部分的に売りさばく方式が考えられて実行されておりますが、ほかに資金運用部資金もこの引き受けに加わります。昭和四十年度補正予算発行される二千五百九十億円のうち、千四百億円は資金運用部引き受けでありまして、残りを国債引き受けシンジケート団で引き受け、そのまた十分の一を証券会社が国民に売り出すことにきめられ、また部分的に実行されているわけであります。市中消化といいましても、政府資金の一部である資金運用部引き受けが大半では、市中消化条件が整っているとはいえません。  第二に、公債発行にあたって、きわめて人為的な、あるいは無理な市中消化促進策がとられております。その一つのあらわれが、大蔵省証券の日銀引き受けによる発行でありまして、この短期証券の発行限度は、昭和三十九年度の五百億円から、四十年度当初予算の二千億円へ、同補正予算の四千億円、そして四十一年度予算の五千億円へと拡大しております。これは日銀貸し出しの拡大や買いオペレーションの実施などと並んで、公債引き受け資金を政府みずからが供給する方式であります。このような無理をしてまで公債を引き受けてもらう必要があるでしょうか。  次に、公債が売れる公債ではないところから、それは発行しても、すぐ日銀に戻る可能性が強いのであります。六・七九五%の国債応募者利回りは、相互銀行、信用金庫、農林中央金庫などにとっては明白に資金コスト割れでありまして、これを引き受けることが赤字増大の原因となります。これらの機関が国債を長く持ち続けることはできないのであります。  最後に、国債は第一級の適格担保物件として、これが担保貸し出しの手段となることが予想されます。そして、この担保貸し出し金利は、公債金利よりも安いのであります。これは、やはり日銀が公債引き受け資金を低利子で供給することにほかならないわけですが、ここからは公債保有が固定化し、オペレーションが不可能になるということが起こります。いずれにしても、公債発行に必要な公債の流動性がないというのが問題の基本であります。結局、公債市場が確立していない日本現状では、市中消化でも、日銀引き受けと同じことになるのであります。また、政府がねらっている不況克服政策としては、日銀引き受けの赤字公債のほうが効果的であるという矛盾があるのであります。  国債発行は、いままで述べましたような問題を含みながら実行に移されつつありますが、なお残された時間で、この国債発行により、日本財政の仕組み、財政政策の基礎条件がどのように変わっていくかを見たいと思います。  第一が、国債発行の資金運用部に対する影響でありまして、それが財政投融資面に好ましくない影響を与えることであります。いままで述べましたように、資金運用部資金は、今回の国債発行のため、手持ち金融債の売却による国債引き受けや、手元準備金的余裕金による国債引き受けやらで、政府の国債発行政策に協力させられております。資金運用部資金の大もとは郵便貯金であり、厚生年金、国民年金であり、国民の零細な貯蓄を集めたものであります。それらの資金の運用にあたっては、資金拠出者の利益をまず考えるべき性質のものであります。資金運用部資金が国債引き受けの機関になるということは、国への資金供給者となるということであり、財政投融資の本来の使命である民間への資金供給のウエートが減ることになります。しかし、財政投融資規模は減らすことはできないとなりますと、その部分だけあらためて原資調達を行なわなければならないわけですが、財政投融資原資の現状では、公募債借り入れ金の増加が最も安易な道として選ばれることとなります。公募債借り入れ金は財政投融資原資の中でも最もコストの高い原資でありますので、運用のほうも有利で採算のとれるものが重点的に志向されることになります。国債発行財政投融資計画への影響は、昭和四十一年度財投計画における公募債借り入れ金四千億円、その前年度当初計画比七六・二%増加という形にあらわれております。また中小金融機関や農林公庫等への資金供給の減少などにあらわれております。  第二に、さらに重要なのは地方財政への影響でありまして、地方財政問題は、今度の予算編成過程での台風の目と呼ばれました。公債発行による公共事業の推進は、地方分担金の増加となる一方、国税と地方税の減税、減収による地方交付税、地方税の減収は、地方財政計画の破綻をもたらすのに十分であります。昭和四十一年度予算における地方財政措置としては、交付税の二・五%引き上げのほか、四百十四億円の臨時地方特例交付金、起債千二百億円、固定資産税、都市計画税の適正化百億円などで二千三百億円の財源手当てがなされたと聞きますが、この措置の特徴は、国の財源付与はあくまで臨時的なものにとどめる一方、他の多くを地方税の増徴、経費節約、起債等々に転稼したものと言えます。地方債は国債発行との競合でますます消化困難となるにもかかわらず、総額で六千七百七億円、その前年度比三八・三%の増加一般会計分の地方債は二千八百九十五億円、前年度比七七・六%の増加であります。  第二に、公債発行減税との関係でありますが、本年度、四十一年度減税は国税平年度分三千六十九億円、初年度二千五十八億円とされ、その中心は所得税減税企業減税とされております。所得税減税は平年度千四百六十五億円、企業減税は千五十五億円でありますが、この減税政策特徴は、所得税減税物価上昇による家計負担増加を打ち消すに十分なものではないのに、企業減税はいまや企業負担軽減の政策は行き着くところまで行き着いたと思われるほど手厚いものだということであります一企業減税のねらいは、企業の体質改善の促進に焦点が置かれておりますが、自己資本が少なく他人資本が多いという日本企業資本構成の特徴は、種々の原因が複合してもたらされたもので、公債発行による減税でそれが一挙に改善されるといったものではありません。  第二に、減税不況克服のために有効な手段とされておりますが、この減税は、企業利益の下ささえの役割りをするとしても、それが需要の増大をもたらすというものではなく、また合併促進のための減税など、人為的な価格つり上げの手段を与えるものと言わねばなりません。  公債減税関係では、最後に、今回の公債発行により、国の収入構造が大きく変わるようになったことにも注意しなければなりません。一般会計歳入のうち、公債収入の占める割合は、昭和四十年度補正後は六・九%となり、昭和四十一年度予算では一六・九%となっております。公債収入に多くを依存する体制は、所得再分配構造を不公平なものにしつつ、財政構造の中に組み入れられた自動安定装置をこわす作用を持つことは言うまでもありません。  いままで私は、公債発行問題を中心として、ごく大づかみに昭和四十一年度予算に関する意見を述べてまいりました。最も中心となる問題は、この予算国民生活を豊かにする予算となり得るかということであり、九千万の国民がひとしくおそれているのは、国債発行が現在続いている物価騰貴傾向をさらに推し進めるものではないかということであります。今日の、特に昭和三十五年度以降の消費者物価騰貴の原因については、いろいろな説がありますが、予算編成にあたって最も注意を要する点は、個々の物価対策ではなく、財政面からの物価騰貴刺激に対して極度に警戒的であらねばならぬということであります。大型の赤字予算を組むことは、そのものとしてインフレ効果をねらったものと見られます。インフレーションとは通貨供給量をふくらますことでありまして、通貨が流通必要量を越える場合には、貨幣価値の下落、円の値打ちの低下が発生いたします。円の値打ちが次第に下がっていることは、われわれ国民の日常生活からの実感としても疑い得ないのであります。もっとも私は、インフレーションが戦時下及び終戦直後の過程のように無制限な形で進行するとは思いません。今日は当時と違って開放体制でありますから、卸売り物価、輸出入物価に響く物価騰貴は、国際収支上の制約から抑制されざるを得ません。すると今度は、デフレーションということになるでありましょう。こうしたインフレーションとデフレーションの交代の過程でいつもしわ寄せを受けるのは一般国民であることに注意を払っていただきたいのであります。昭和四十一年度予算は、そうしたしわ寄せの体制を一段ときびしいものにしたと信じられるからであります。  以上で私の公述を終わります。(拍手)
  29. 福田一

    福田委員長 ありがとうございました。     —————————————
  30. 福田一

    福田委員長 ただいまの両公述人の御意見に対し、質疑があればこれを許します。加藤清二君。
  31. 加藤清二

    加藤(清)委員 きわめて簡潔にお尋ねをしたいと存じます。  公債発行が及ぼすあまたの影響のうちで、地方財政をますます窮迫化するではないか、それから中小企業金融を圧迫するではないか、こういう疑問を実は私どもも持っていたわけでございます。先生の御説明によりましてますますその念を深くしたわけでございますが、しからばこれに対して一体いかなる対策を立てたならばよろしいかという問題についてお教え願いたいわけでございます。  最も期近に波状の来るところは、私は中小企業金融だと思います。なぜかならば、シンジケートによって、中小企業専門の金融機関、すなわち相互銀行以下信金等々も、先ほど先生の御説明のとおり強制割り当てを受けるわけです。ところが、これは逆ざやになるのです。一銭九厘の公債は市中金融にとっては——市中金融というより、中小企業対象の金融機関にとっては明らかな逆ざやでございまして、背任横領の問題も惹起するわけでございます。そこでどうなるかといえば、この金融機関はこれを長期に持つことができないわけです。はき出さなければならない。ところで都市銀行は、一銭九厘で引き受けておっても、これを担保に日銀へ持ち込みまするというと、日歩一銭五厘の金が借りられるわけなんです。したがって、ここにさやができまするから、やや持ちこたえることができるでございましょう。したがって日銀総裁は、ことし一年は買いオペの対象にも、貸し担保の対象にもしないと言われましたけれども、大蔵大臣は、それは一年限りであって、そこから先の保証はしないのだ、つまり来年からはこれをオペの対象にしたり、あるいは担保貸しの対象にするということをほのめかしておられるわけでございます。そうなってまいりまするというと、これが日銀へ持ち込まれる、それはやがて貨幣増発に刺激を一そう加えるではないか、こうだれだって考えるわけです。  それから地方の問題は、景気刺激のために公債まで発行して国家予算を大きくする。ところがそれが、全額地方の事業を国家が持ってくれればいいんですけれども、三割とかせいぜい五割、ひどいのになりまするというと、住宅関係では三十三分の一しか国家が持たないというものがある。それを引き受けて、景気刺激のためにそれやれ、それやれと言われますると、地方財政はますます自己資金でまかなわなければならぬ問題が出てくる。さりとて地方財源の求め先は、いま急に電気ガス税を上げるとか、あるいは固定資産税を上げるとか上げないとかで、いま問題になっている最中、これさえもなかなかできない。そうなってまいりますると、景気刺激と言うてもそう簡単にできるものではない。が、いずれにしても、インフレの材料にならないようにする、ここが問題点だと思うのです。何かいい策がございましたら、ひとつお教えが願いたいということでございます。
  32. 佐藤進

    佐藤公述人 公債発行の地方財政及び中小金融機関に及ぼす影響ということで、何か対案というようなものがあればというお話でありまして、私がかねて考えていることを簡単に申し上げたいと思います。  公債発行、それが国の普通内国長期債、いわゆる本来の国債という形で発行されることの政治的あるいは行政的な意味と申しますか、そういうものは、いわゆる資金の中央集権化というものを推し進めるものというふうに考えられます。つまり、資本市場あるいは日本の資金調達のマーケットというものは一定の限られた量的な規模というふうに考えますと、国債がそこに割り込めば、それ以外の資金調達が困難になるということは当然であります。それらのおおよその影響というものは、まず政府保証債、地方債、事業債、一般社債、そういうものに及ぶ、また株式にも及ぶかもしれないということが当然考えられます。そういう傾向が一方では考えられますが、それは相対的な、マーケットにおける資金調達方式の地位の変化ということにはなっても、絶対額そのものは地方財政の場合でも、財投の場合を私御説明いたしましたけれども、赤字はますますふえていく、それを調達する手段として地方債というものはふえる。いわゆる公募債、借り入れ金という形での財投資金もふえる。それぞれの伸び率は、国債は今後数年間にわたって公共事業の伸び率とリンクして増大しますとしますと、大体一五%くらいずつ伸びていくはずでありますが、地方債、それから政府保証債というものはもっと大きな規模で伸びるのではないか、伸びなければいままでの事業量を維持できないのではないか、そういう気がいたします。  それで私自身としては、それらの公債発行の基本的な考え方に対しては、そういうものはやらないで済ませたい、やらないで済ませれば一番それにこしたことはないという立場でありまして、どうしても赤字が出るなら、それは赤字公債というほうがいい。建設公債となると、ある意味でそれが永久化するので好ましくない。しかし、さしあたっての不況対策のための公債発行ということであれば、国債の発行によらなくても不況対策はできるではないか。たとえば地方債を増発する、あるいは政府保証債をもっと増発するという形でもそれはできるのではないか、そういうふうに考えます。  そういう点で、地方自治という戦後確立されました一つのプリンシプルに忠実であるならば、地方自治法の二百五十条を改正いたしまして、地方債の発行は、特定の条件を満たす場合には自主的に行なえば行なってかまわない。何も市町村の場合は府県とか、府県の場合は自治省の許可とか、あるいはその背後に大蔵省があるわけですが、そういうものの許可を得る必要はない。それらの許可制度のもとに費やされているたいへんな精力のむだ使いというものもあります。補助金をとると同じように地方債のワクをとろうとしていろいろ活動しておる。そういうものは一切やめて、二百五十条を廃棄する。同時に地方団体に自主的に、その地域の開発のため、あるいは先ほど住宅のお話がありましたが、地方団体が経営主である公営事業、そういうものを大規模にそれぞれの団体の責任でやる。国はその資金の大きなワクを認めるという、そういうことであれば、地方債の場合には国債と違ってこれは日銀の適格担保にもならない。それから買いオペレーション、売りオペレーションの種にならない。いわゆる六大都市の特別の地方債というのはそれは例外でありますが、それ以外の地方債というものは、大体ことしも縁故債というのがずっと増大いたしましたように、その地区の地方銀行あるいはそれらの関係者で自主的になにをすれば、それ自体としては国債にあらわれるようなインフレの材料がない。そういう意味において、たとえば住宅とか、病院とか、あるいは地域開発、そういうものを中心とした地方債は全面的に認める、いままでどおり国債は発行しない、そういうことも考え方としては可能であり、しかも不況対策として役に立つということを申し上げたい。  中小金融機関の問題の、公債の保有が赤字になるという問題、それと担保貸し出しの問題について日銀総裁、大蔵大臣はどのように申されているか、私自身は新聞等で聞いておる限りでありますけれども、国債が日銀貸し出しの適格担保にならないというようなことはあり得ない。日銀法にはっきりと、国債は適格担保としてまず第一にあげられております。第一級の適格担保でありまして、そういうものとして国債を持ってきたのはやはりまずいのであるというふうに考えます。いま申し上げましたような、私自身の私案でありますが、それはある意味で、政府が考え、また実行されようとしている方針に対して対立するものと思いますが、効果の点、それから戦後確立された地方自治という観点から見て、当分の間地方債の発行について許可制度を実行するというような規定は、それ以来二十年近くたっているわけですから、もう廃棄してしまってもいい、こういうふうに考えます。  御参考になれば幸いであります。
  33. 加藤清二

    加藤(清)委員 この際、公債発行される、それの及ぼす影響、これは私どもとしては十分に検討を加えておくことが国家のために何より大切なことだと思いますがゆえに、もう一点だけお教え願いたいと思いますが、日銀がこれを引き受けて、日銀券すなわち円を増発しないという前提に立って、そういう答弁の前提に立ってお尋ねしますが、日銀券と借りかえをしないといえば、これは必ず地方の財政と中小金融を圧迫するという答えが必然的に出てくるわけです。これは大内先生もきのうはっきり当然だと言われました。そこで、もう一つここで考えておかなければならぬことは、コール市場が過熱をいたしまして、ここから問題が起きるではないかと思われます。すなわちこの今度の公債、それからいままでの累積しておる政保債とかあるいは蔵券とかを合わせますと、ことしだけで二兆円の余になるわけでございます。これは政府の発表でわかっているところです。同時に、今度は預金の増加率を見ますというと、その政府報告は六千億何がしでございます。そうすると、この開きはどこかへしわがいく。そとで、さしあたって過去の実績から考えられるところは、コール市場が過熱するではないか。なぜかならば、先生御存じのとおり、コールレートはこれは管理価格なんです。三名会がこれを握っているわけです。御承知のとおり証券業界とそれから都市銀行とそれからいわゆる短資業界の四祉、つまりコールの取り手のほうでコールレートをきめているわけです。ところが、今日のように投資が少なくなって、やや資金が潤沢になりますというと、一銭六厘とか一銭八厘に下がりましたけれども、投資が旺盛の場合、方々を刺激して旺盛にするのですから、これは必然的に上がると思わざるを得ない。ここが上がりますとどうなるかというと、片やオーバーローンを押えればいいですけれども、押えずになおこの過熱を許した場合には、ここへ中小金融や地方の金融が流れてくるわけです。いや流れるのじゃなくして、強制的にここへ持ってこさせられるわけです。そうして、それが大企業への投資に回されるわけなんです。金融機関としてはこれのほうが安全ですから、信用補完の上からそちらへそちらへとおもむくわけです。そこで、私はそれを想定いたしますと、どうしてもこの際オーバーローンに歯どめを食らわせる、公債発行の歯どめだけでなくして、オーバーローンに歯どめをするということが何より緊急不可欠だと考えられるわけでございます。この点について、両先生からひとつお教えを願いたいわけでございます。
  34. 大川政三

    ○大川公述人 ただいまの御質問は、日銀が通貨供給の増加をやらないという前提のもとで……。
  35. 加藤清二

    加藤(清)委員 やると言ってない。それをやるとインフレになるからやりませんと言っているのです。
  36. 大川政三

    ○大川公述人 そういった場合に、公債発行した場合に中小金融のほうにしわが寄る、そういうお話でありましたですが……。
  37. 加藤清二

    加藤(清)委員 日銀総裁がそう答えているのです。
  38. 大川政三

    ○大川公述人 私は、そのいまの前提があるいはどうかと思うわけでありますが、まあ景気の回復につれて取引需要なんかも増大してまいりますれば、多少通貨供給の増加があっても——これは、その限度はもちろんございますですけれども、多少通貨供給の増加があっても一気にインフレに持っていく心配はなかろう。そのためには、まあ財政面の歯どめと同時に、私の考えておる金融面の歯どめとしましては、日銀の国債保有限度を設けるとか、そういうような措置を一応きめますことによって、あるいは国債の発行金利を制限させるとか、そういったいろいろな歯どめを講じますれば、直ちに通貨供給の増加によってインフレになる心配はないかと思います。したがいまして、そういうふうに前提を変えますと、ただいまの御議論にちょっと反してくるわけでございますが、まあ現在この国債発行をした場合に、大蔵省当局でも考えておりますように、大蔵省証券を先に日銀引き受けという形で流す、それで多少金融市場を潤して、そうして公債を引き受けさせる、こういうふうな方法は、これはうまく運営していただければいいのでありますが、運営のしかたを誤りますと、絶えず大蔵省証券の発行残高が五千億あるというような形が継続いたしますと、事実上公債発行規模をふくらませるということになりますから、そのやり方については十分考慮しなければならないかと思いますが、しかし、公債発行をする場合に、そういう大蔵省証券の発行によって一応金融市場を潤すというような形をとるとすれば、この景気回復に伴う取引貨幣の増大の必要には、ある程度その必要を満たし得るのではないか。したがいまして、それ以上国債を担保とした買いオペという、あるいは日銀貸し出し、そういったことまで、大蔵省証券の発行をやるということに輪を加えてまでやる必要はないのではないか、そういうふうに考えております。そういった意味で、私の考えは、多少その通貨供給の増加をすることは必要だ。限度はありますけれども、しかしそういうことをやれば、その限りにおいて中小金融のほうにあまりしわ寄せがいかないようなことがまた効果として出てくるわけでございます。私はそういうふうに感じております。
  39. 佐藤進

    佐藤公述人 公債発行の影響について、なお詳しい御質問でありますが、日銀引き受け発行がなされないという前提で考えてというお話には、私の全体の公述の過程で、そういうことはあり得ないのだというふうにお話ししたわけでありまして、先ほど大川先生のほうからもお話がありましたように、現在、大蔵省証券の発行限度を四十年度四千億というのを拡大しまして、それでまあ資金供給をやるというようなことをやっているわけですが、その大蔵省証券をほかの外国の例を調べてみますと、これは、大体大蔵省証券といっても短期証券として融通性を持っているわけですね。市中で消化され、当然それらがまたオペレーションの材料になる。オペレーションは短期証券を中心として行なわれている。そういうのが実態であります。日本の場合でいいますと、大蔵省証券それ自体、これは一時、公募というようなたてまえをとった、入札制というようなことをとった例がありますけれども、結局だれも引き受け手がないというので日銀に入ってくるわけです。同じようなことは、公債の場合にも、これは利子は非常にいいわけでありますが、それがそのままの形で消化されるかどうかということになりますと、ただいま申し上げたような条件もとには、そのかなり大さなものが日銀引き受けという形にならざるを得ないんじゃないかというふうに考えます。今後の公債発行の見通しについて、いろいろこの委員会等を中心として大蔵大臣の考え等を引き出しておられるようでありますが、本年度の見込み、それから今後数カ年の見込み等々について非常に楽観的な見通しを持たれておりますが、その個々の公債の範囲につきまして、相当大きな省略があるのじゃないかというような気がします。先ほども言った地方債の例などで見ますと、来年度は六千七百億円ですか、発行される。政府保証債は四千億円、それから一般会計で七千三百億円、それから社債等を入れて約二兆円ですね。それで預金増加が六兆円あるからだいじょうぶだろうというような見通しなんでありますが、これらについても、それだけではないし、たとえば社債、事業債の規模等がこれらで済むかどうかというような点、非常に問題があります。特に地方債、政府保証債の面については、年度内にまた財政投融資計画の改定とか、地方財政計画の組み直しというようなものがあらわれるのではないかと考えられます。そういう意味において、見通しが非常に甘いのではないかというふうに考えられるわけであります。  結局その公債が、短期証券でも長期国債の場合でも売れて、それが流通性を持ち、流動性を持ち、市場性を持つという条件が一番重要であります。それらの条件が満たされていないということが今回の公債発行特徴でありまして、四月の一日からいわゆる公社債市場公債市場に上場されるそうでありますから、その値下がりが起こらないかどうかということを注目してみたいと考えております。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 どうもありがとうございました。
  41. 福田一

    福田委員長 以上をもちまして、両公述人に対する質疑は終了いたしました。  大川、佐藤公述人には、御多忙中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。(拍手)  次会は明二十三日午前十時より委員会を開会し、昭和四十一年度予算に対する一般質疑を続行することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十三分散会