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1966-06-25 第51回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二十五日(土曜日)    午前十一時五十四分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 八木 徹雄君    理事 川俣 清音君 理事 楯 兼次郎君    理事 野原  覺君 理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       西村 直己君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    古井 喜實君       松浦周太郎君    三原 朝雄君       水田三喜男君    森山 欽司君       大原  亨君    加藤 清二君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       多賀谷真稔君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       竹本 孫一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         労 働 大 臣 小平 久雄君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府総務副長         官       細田 吉藏君         総理府事務官         (人事局長)  増子 正宏君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     山野 幸吉君         警  視  監         (警察庁交通局         長)      内海  倫君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  鹿野 義夫君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  加納 治郎君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (日本専売公社         監理官)    半田  剛君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     齋藤  正君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         農林事務官         (園芸局長)  小林 誠一君         食糧庁長官   武田 誠三君         林野庁長官   田中 重五君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      今村  昇君         通商産業事務官         (重工業局長) 高島 節男君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      安達 次郎君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 六月二十一日  委員大原亨君及び中澤茂一辞任につき、その  補欠として赤松勇君及び野口忠夫君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員赤松勇君、野口忠夫君及び加藤進辞任に  つき、その補欠として大原亨君、中澤茂一君及  び川上貫一君が議長指名委員に選任され  た。 同月二十三日  委員中澤茂一君及び川上貫一辞任につき、そ  の補欠として野口忠夫君及び加藤進君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員野口忠夫辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員加藤清二辞任につき、その補欠として五  島虎雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員五島虎雄辞任につき、その補欠として加  藤清二君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員大高康君、賀屋興宣君、川崎秀二君、櫻内  義雄君及び森清辞任につき、その補欠として  丹羽兵助君、小川半次君、森山欽司君、久野忠  治君及び松浦周太郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  稻村隆一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森山欽司君及び稻村隆一君辞任につき、そ  の補欠として川崎秀二君及び多賀谷真稔君が議  長の指名委員に選任された。 同日  理事久野忠治君三月八日委員辞任につき、その  補欠として久野忠治君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  閉会中審査に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  この際、委員長より一言いたしたいと存じます。  去る十七日行なわれた本委員会議事がはなはだしく不正常な事態におちいったことはまことに遺憾にたえません。私がここにあらためて申し上げるまでもなく、当委員会は、その審議を通じて、国政の内容と、これに対する各政党の主張を明らかにする重大なる義務を国民に対して負っているものであります。委員諸君におかれては、この点を十分に留意せられ、その任務の遂行に協力をせられるよう切望してやみません。  この際、小平忠君より議事進行に関して発言を求められております。これを許します。小平忠君。
  3. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、本日の予算委員会は、去る五月二十四日、両社より提出いたしました予算会員会開会要求に基づいて開かれたものと解しておったのでありますが、委員長、並びにこの委員会を開く経緯においてこの委員会が、衆議院規則六丁七条第一項に基づく委員長職務権限による新たなる委員会開会であるということは、去る六月二十日の三党幹事長書記長会談の際に、予算安員会を開くべし、細部のことは予算委員会に一比するというあの趣旨からいって、まことに私は遺憾であります。  この委員会は、当然両社開会要求に基づいて開かれるものと解するのであります。特に、去る六月十七日の本委員会におきまして、私は党を代表して成規発言通告をし、政府当局に重要な諸問題について質問をしようといたしておったのでありますが、当日は、ただいま委員長よりも発言されましたように、委員長席が他の委員によって占拠され、この委員会が開かれることができなかったようなあの不正常な姿は、まことに遺憾であります。  私は、この委員会が、予算審議はもちろん、国政全般について重要なる案件審議する委員会性格にかんがみまして、かかる不正常な事態は厳に今後戒むべきであります。したがいまして、この会期末において、重要な法案を残し、かかる不正常な姿において開かれるこの委員会に、私は党を代表して質問をすることはできないのであります。  どうか委員長におかれましては、このような不正常な姿、特に本委員会の重要な性格にかんがみまして、かかる事態が今後絶対にないよう十分なる措置をされんことをここに強く要求するものであります。
  4. 福田一

    福田委員長 この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員の異動によりまして、現在理事が一名欠員となっております。つきましては、この際その補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によって委員長において指名することに御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長久野忠治君を理事指名いたします。      ————◇—————
  6. 福田一

    福田委員長 予算実施状況に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑通告がありますので、順次これを許します。それではまず野原覺君。
  7. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、日本社会党代表いたしまして、主としてILO八十七号条約批准に伴う関連国内四法のいわゆるたな上げ部分についての政令問題を中心にお尋ねをしたいと思うのであります。もし時間が許されるならば、インドネシア賠償日韓賠償の支払い、それからベトナム、中国の問題にも触れて、佐藤総理の今日の政局に対するお考え方にも触れて御所信を承りたいと思うのであります。  いわゆるたな上げ部分政令につきましては、先般、六月の七日であったと思いますが、社会労働委員会におきまして私ども佐藤総理のお考え方をただしたのであります。その際における総理の御答弁は「ただいま審議会審議している問題ですから、この審議会答申、これを私どもは心から期待しております。」このことばに尽きたかと思うのでございますが、その総理が期待されておられる公務員制度審議会は、六月十三日午前三時五十分、労働側委員全員欠席のまま、たな上げ部分については在籍専従を除き政府提出改正案のとおり、そのとおり昭和四十一年六月十四日まり全面施行を認める答申案を決定いたしました。政府はこの答申を受けまして、六月十三日の閣議で未施行部分施行を行なう政令を制定したのでございますが、私の考え方によれば、この政府施行いたしました政令にも、それから、その政府が制定いたしました政令の基礎でございます答申にも、幾多の疑義問題点が存するのであります。したがって、私は、八十七号条約のいわゆる団結権擁護精神、この精神から見てこの政令はどうなければならぬのか、今後の労使関係正常化をはかる上からいってどのように私ども考えていかなければならぬのか、そういう角度でお尋ねをいたしますので、総理におかれましても、簡明率直に日本労使関係の問題でございまするから御答弁が願いたいのでございます。  まず最初総理にお伺いいたしたいことは、一昨日であったと思いますが、ジュネーブにおられます青木大使ILO理事会の光栄ある議長に満場一致の推薦で就任をされたのであります。これは日本の歴史にいまだかってないことでございまして、日本先進工業国としての栄誉もきることながら、ILO精神の高揚に一段の努力を、またILO加盟国のどこの国よりも日本は誠意をもって努力しなければならぬ責任も私はここに存しようかと思うのでございますが、青木大使ILO理事会議長 就任に対する総理の御感想、御所見があればお伺いしたいと思うのであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 野原君も御承知のように、私ども一はILO憲章精神、これは心から支持し、また共感を覚えておるものであります。その立場に立ちまして政府はかねてから努力してきている。そういう意味で、ILOにおきましてももう古くから常任理事国一つでございますし、このたびさらに、ただいま御指摘になりましたように、青木大使が栄誉ある議長になった。まことに私はしあわせに思います。光栄に思いますが、同時にこのことは、わが国がいままでとってきたその態度につきまして、国際的にも非常な信頼をかち得たその成果だ、かように思って喜びにたえない次第であります。
  9. 野原覺

    野原(覺)委員 ILO精神を尊重されるということでございまして、これはもとより私も同感であり、そうでなければならぬのでございますが、総理がただいまお述べになられたような御所見でございますならば、次にお伺いをいたします。  官公労働者日本政府との間の関係、いわゆる労使関係、この労使関係正常化というものが、どのようにしたならばこれが生ずるとお考えになっておりますか。いかがですか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この労使関係正常化したいというかねての願いを私ども持っておるのですが、私自身も若いときずいぶんこの問題では苦労してまいりました。その経験から申しましても、相互に理解を深めること、これが何よりも大事だ。意外なところに誤解があり、あるいは相互の不信がある。そうするととんでもない状態がしばしば出てくるのであります。したがいまして、基本的な問題は、労使双方お互い信頼し合うその素地をつくること、これは何といっても一番大事なことだ、かように私は私の経験から申し上げる次第であります。
  11. 野原覺

    野原(覺)委員 相互信頼の念を打ち立てなければならない、これも私同感であります。相互信頼の念というものは、これは単に口先だけでは樹立できないのでございまして、この相互信頼の念を打ち立てていくためには、労使話し合いというものが、これは平静の間に行なわれるということが必要であろうと思う。労使話し合いが行なわれるためには、労使が互いに譲り合う互譲の精神と申しますか、協調の精神と申しますか、労使の合意によるいわゆるルールの確立というものが大事であろうかと思われます。そこで、こういった考え方の上に立って総理府設置法十四条の三が実は設けられたのです。総理府設置法十四条の三によりますと、総理がよく御承知のように、いわゆる公務員制度審議会というものがここにつくられておりまして、公務員制度審議会構成は、労働者側使用者側公益側、この三者構成になっておるわけであります。私は、この三者構成になっておるということも、相互信頼の念を打ち立てていくための審議会であるからだろうと思うのでございますが、総理のお考えがあれば承っておきたい。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまの三者構成というか、三つのそれぞれの立場代表を出しておるという、こういうところに一つの問題があると思います。もともとそういう労使双方がこれは対立するものだ、そういう意味労働者代表が要るとか、あるいは資本家代表が要る、そういうことで扱おうとする。そうしてまた、その中間をとって公益代表というものが出る。どうもそこらにもう最初から対立的な考え方を持ってきている。こういうところが私はいかがだろうかと思います。しかし、現状においては、ただいま申し上げるようなことにならない限り、それぞれの立場についての主張もできない、またそれぞれの立場を守ってくれる者もいないという、そういう信頼度の問題につながっておりますから、現状においてはやむを得ないかと思いますが、さらにりっぱな労使関係が打ち立てられれば、こういう事柄はだんだん変わってくるのじゃないだろうか、そうして労使双方とも、これは全体の奉仕者だ、こういうことに徹するのじゃないかと思うのです。そういう状態に徹すれば、これは全体のために労使のそれぞれの権利を擁護する、こういうような意見も活発になるのじゃないかと思いますから、私はただいま申し上げますように、現状においては三者構成三つのものが出てくる、これはやむを得ないように思うけれども、将来のあり方としては、何でもこういうように対立的に考えていくということは清算されるような、そういう状態が望ましい、かように思います。
  13. 野原覺

    野原(覺)委員 将来の場合には対立しないようにということでございますが、どういうことでそういうお考えを持たれるのかわかりません。総理にお聞きいたしますが、総理府設置法の十四条の三ですね、いわゆる公務員制度審議会、この公務員制度審議会答申に私は疑義がありますので、あえてお尋ねいたしますが、これは一体何をやる審議会ですか。公務員制度審議会というものは、総理大臣、御存じないですか。いかがですか、総理大臣。知らなければ知らないとおっしゃって、そして次の方にバトンを渡してください。
  14. 安井謙

    安井国務大臣 公務員制度審議会は、公務員労働基本に関する問題を審議していただきまして、その答申を得るためにできておるものでございます。
  15. 野原覺

    野原(覺)委員 あえて安井総務長官の御答弁で私がまんしましたけれども、今後は、重大な問題はやはり総理大臣答弁願いたい。  公務員制度審議がいま問題になっておるわけです。公務員制度審議会は、総務長官が言われたように、これは官公労働者労働基本権あり方審議する審議会。その労働基本権あり方審議するためには、使用者である政府労働者であるいわゆる職員側、これの話し合いというか、つまり相互信頼の念が大事でございまするから、私は三者構成にしたものだと思うのです。三者構成にした理由は、やはり労働者意見を十分聞いて、そこでこの審議会基本権あり方を打ち出していこうというねらいがあったからだろうと思うので、将来は三者構成でないほうがいいんだというようなお話でございまするけれども、いつの将来のことかわかりませんが、現実労働者というものは存在をする。そして労働者には、労働条件の改善というものが要求として現実に残っておる限り、その要求をどのようにして実現していくかという、経済的な地位向上社会的地位向上、そういうものをどのようにして実現していくかという運動労働者側には必要になってくる。そういった運動の面の基本的なあり方審議会で打ち出すためには、どうしてもやはり労働者側意見を聞かなければならぬというところで、私は公務員制度審議会三者構成にしたのだ。三者構成にしたのは、ほんとうに相互信頼の念を打ち立てるために私はそのようにしたものだと実は信ずるのであります。  ところが、六月十三日の答申案議決に当たりましては、職員側代表全員参加しておりません。総評側五名、同盟側一名、日本の数百万のこの職員側代表する人たちがこの答申議決にあたって参加をしていないのであります。参加をしていない会議議決がされたのでございますが、このような議決というものは、答申としては私はきわめて不正常なものではないかと思う。総理、いかがですか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、この審議会審議会設置以来、審議をたいへん慎重に、またなかなか各方面から意見を述べて審議を続けた、かように私は思っております。  最初なかなか実質的審議に入らなかった、かように言われておりますが、この三者構成審議会でも実質的審議に入った。かようなことで、私はたいへんこの審議会はうまく運営されつつある、かように思って、その答申に非常な期待をかけていたのであります。これは、たしか七日時分であったかと思います。しかし、その後だんだん審議が進むにつれまして、この三者の対立的な考え方というのがよほど露骨に出てきたように思う。私は、とやかくは申しませんけれども、ただいま労働者側がいないところできまったのだ、かようなお話でございますけれども、しからばこの審議会成規手続を踏んでいなかったか、かように申しますと、これは私りっぱに成規手続を踏んで、そうして会議は行なわれた、かように私は思うのであります。どういう理由組合代表がその席にいなかったか、こういうことについては、これは私つまびらかにいたしませんけれども、ただ、会議そのもの成規手続を踏んだものである、そのことだけははっきり申し上げ得るように思うのでありまして、この点ひとつ御了承をいただきたいと思います。
  17. 野原覺

    野原(覺)委員 いま国会審議におきましても、これは、御承知のように第四十八国会船田議長あっせんに基づく取り扱い、したがって、私どもは、単にこれは労働者政府の院外における問題だとは受け取っていない。そのために、終末の国会審議の混乱も若干見えたのであります。したがって、私はここに予算委員会が開かれたので、あえて政府最高責任者である総理お尋ねをしておるわけでございますが、ただいまの総理大臣の御認識は事実と違います。その違う事実につきましては、これから申し上げますが、私がただいま質問をしておるのは、答申議決にあたって、労働者側職員側はだれ一人参加していないじゃないか。答申議決の最も望ましい姿というものは、三者構成にした理由からいっても、労働者側使用者側公益側、それがやはり参加をして議決をされることが望ましいのではないか。そういう意味で、正常な答申とは言えないではないかとお尋ねをしておるのです。これは正常な答申とは言えないじゃないか。答申が成立しておるかどうかは私は聞いていない。なぜ労働者側参加しなかったかどうかについても、これは事実を追って明らかにしていかなければならないと思います。  そのことはさておいて、せっかく公務員制度審議会三者構成にしておる。ところが、三者のうちの一者は完全に参加をしていない。使用者側公益側だけが集まってあっという間に午前三時五十分に可決をしたのです。聞きますというと、休憩をしておる間に——休憩の直前に、NHKの会長前田さんは、私はやめたいと思います。これだけ言ったのです。そこで労働者側諸君が集まって、会長が辞意を表明したじゃないかと言って休憩しておる間に、会長職権開会をして、だれ一人労働者側は入っていない。入ってくれとも、催促にもこない。あっという間にこの答申案議決してしまったのです。総理大臣、この事実から見て、これが正常な答申とは私は見られない。どう考えても、これは答申の正しい姿とは言えないではないかということをお尋ねしておるのであります。もう一度承りたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほどお答えいたしましたように、この審議会としては、成規手続を経て答申を出してこられた。それを政府は実施しておるわけであります。そこで、ただいまの野原君のように、どうも成規手続じゃないのだ、実際は違う、云々されるのでございますが、その事実認定の問題になれば、当時の事情をよく知っておる安井君からお答えさせたい、かように思いますが、しかし、私はただいま申し上げますように、私自身は、りっぱに成規手続を踏んだ、かように思っております。
  19. 安井謙

    安井国務大臣 公務員制度審議会が三者の構成でできておることはお話しのとおりでございます。したがいまして、三者が全員集まって答申の採決をなさることが、これは理想であろうと思っております。したがいまして、そういう運営を私ども期待をいたしております。また、会長はそれをつとめられた様子でございます。十二時過ぎから約三時間有余にわたって、労働者側会議出席の説得をされておるようでございます。にもかかわらず、どうしても労働者側から出られなかったというような事情は、事柄自体としては遺憾でございますが、しかし、全体の構成から申しますと、過半数の出席、そうして過半数の採決ということによってこの会議は成立し、また事柄もきまるということになっておりますので、やむを得ずそういう措置がとられたのだろうと思います。成規には何ら手続上手落ちはなかろうと思っております。
  20. 野原覺

    野原(覺)委員 やむを得ず答申案議決されたのであろう、理想的な姿から言えば正常な答申ではない。正常な答申とは、少なくとも三者構成にしておる以上、三者のうちの一者が一人なり二人なり参加しておることが望ましいのであります。完全に一者が脱落をして、使用者側の意向を全面的にのみ込んだ公益側が、使用者側と二者だけで答申議決するということは、これは正常な答申ではない。このことを政府は御認識になっておるのです。いまの安井総務長官の御答弁からもうかがえるのです。  その事実認識についてとやかく言われますけれども、私どもは、この事実認識というものは前田会長責任がございまするから、前田会長に十分お尋ねしようじゃないかというので、実はこの予算委員会は時間の制限をされておる関係もあって、総理府設置法でございますから内閣委員会に前田会長の出席——前田会長だけではなく、その他の公益委員の御出席わお願いわしてお尋ねしようと思いましたが、残念ながら前田会長は三十分——私も傍聴に行きましたが、きっちり三十分になったら社会党の質問は許さない。三十分ではこの事実認識について何らの質疑もできない。どうしてそういうように与党なり政府諸君は、前田会長お尋ねをしようということについて消極的な御態度をとられるのか、きわめて私どもは遺憾にたえないのであります。  要するに、正常な答申ではない。正常な答申ではないことを知りながら、正常な答申とは一者のうちの何名かが入ることだ、三者構成にした答申とは。それを知りながら、あえてこの答申に基づいて政令を出されるということは、私は、これは正常な政令とは思えない。正常な政令、つまり総理が先ほど御答弁になったように、相互信頼の念を打ち立てていかなければならない、公務員制度審議会はそのための審議会だというならば、少なくとも労働者側が完全に六名参加しなくても、何名かがそこに入って、何らかの意思表明ができるような会議をやって議決すべきなんだ。それをやっていない。総務長官は、完全に政府側の代表でございまするから、政府側の立場に立ってあなたは御答弁になりますけれども、私の調べたところでは、事実が違うのです。過半数の出席で成立する、出席者の多数決できまる、これは審議会あり方で形式的なきまり方です。しかし、公務員制度審議会の実質的なきめ方というものは、単に過半数、多数決ではいけない。少なくとも三者構成にした以上は、一者が抜けてはいけない。過去十七回公務員制度審議会が持たれましたが、第一回の議事録、それから最後の第十七回の議事録においても、このことを前田会長を中心に確認をされておるようであります。そうして、その上に、やはり相互信頼の念を打ち立てる審議会だからして、運営小委員会をつくろうじゃないか、労働者側から一名、使用者側から一名、公益側からは会長、副会長を含む三名、計五名で運営小委員会をつくった。この運営小委員会は、満場一致、全会一致にしようではないか、そのための努力をしようではないかというて、この二点を確認をしてきておるのであります。しかも、第三点には、全会一致に運営小委員会がならない限り総会は開かないということも承認をしてきておるのであります。これは当然のことなんです。相互信頼の念を打ち立てるという公務員制度審議会あり方から見て、私は当然のことであろうと思う。  このようにしておるにもかかわらず、運営小委員会は話がまとまらない。先ほど私が申したように、前田会長、それから今井副会長、このお二人が休憩にしましよう、それで労働者側に向かって、私ども二人はもうやめようと思います。こんなたいへんな仕事はもうごめんこうむりたいと思いますと辞意を表明した。職員側は、こちらの部屋で休憩をしておる。休憩をしておるのに、あっという間に、こちらの部屋では、会長、副会長が帰っていかれて、職員側には何にも言わないで職権で開会をやっておる。職権で開会をやって、何をやったんだと言ったら、いや答申案議決したんだ、過半数、多数決であれば議決できるのだから議決したんだ、こう言っておる。労働者側政府信頼しろ、審議会信頼しろと言っても、こういった抜き打ち採決をやられてどうして信頼することができますか。ほんとうにはらわたが煮えくり返るような思いをこの職員代表諸君はしておるんです。経過を言うと、経過中においては、職員代表諸君は、まとめなければならぬというので、たとえば管理職の範囲の問題、あるいは交渉の制限の問題、この二つを会長から出されて、この二つともあなた方の意見を通すわけにはいかぬが、しかし、一つで妥協してくれぬかと言うから、組合側の意向はいろいろありましたけれども、よし、まとめるためには妥協しよう、管理職の範囲は重大だから、八十七号条約には直接関係もしないのだから、再たな上げして、時間をかけて審議してもらうということで妥協しておるのです。非常に幅を持ってきておるのです。にもかかわらず、ただいま私が申し上げたような経過で答申案議決をされておるということは、まことにもって私はこの答申には多くの疑義を持たざるを得ないのであります。この疑義のある答申をもとにして出された政令にも、多くの問題点があることを私は指摘せざるを得ないのであります。  時間の関係もございますから、この点に対する総理の御所見はあえて求めませんけれども総理大臣、これはルール無視の答申なんです。ルール違反の答申なんですよ。労使関係正常化をはかる制度審議会の目的にそむいた答申です。制度審議会の目的は相互信頼の念です。ところが、労働者はほったらかして、自分たちだけで午前三時五十分にあっという間に議決をするんですから、そうでしょう。この点どうお考えですか。総理大臣、じゃ、あなたは首を横に振っておられるから違うだろうと思う。どうお考えですか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、野原君に私も先ほどからこの点について触れなかったのですが、三者構成であることはもうそのとおりであります。そのとおり構成されたのだ。しかし、同時にまた、この六月十四日に批准が発効するという、そのこともわかっていた。また、国内法もそれまでには整備したいという、これもよくわかっているわけであります。そこで、六月十三日、その未明に使用者側、これは出た。労働者代表はどうして出なかったか。これはやはり十分検討しなければならないのです。私は、ただいまのようなお話が出てくれば、労働者代表にも、もちろん出席を要望し、ずいぶん努力をしたものだと私は思います。どうして労働者代表はその席にいなかったか、これは、とにかく深夜のことだからいなかった、かような事情があるのか知りません。私はその事情をとやかくは申さない。だから、その辺のことはよくお考えになって、この審議会会長自身が、労働者代表が欠席のままこの審議を行なった、あるいは採決したという、これはよくよくのことだった、かように私は思います。それらの点についてのやはり同情と理解がないと、この処置についての考え方はなかなか出てこないんじゃないか、かように私は思います。  先ほど来十分この事情もおわかりの野原君のことだと思って、あえてその点は私触れなかったのです。しかし、ただいまのようにお話しになりますと、これは聞いておる国民から見ますと、使用者側に、あるいは会長に非常な専断があったんじゃないか、かような印象を与えるおそれもございますので、私はあえて事情を申し上げたい、かように思います。
  22. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣は、会長には専断がなかった、会長はルールどおりやった、こういうお考えのようです。私どもは、会長のやったことはルール違反である。会長の越権である。過去において労働者側と話し合ってきたことのルールにそむいた行為であり、公務員制度審議会の目的である相互信頼の念をぶちこわす行為だ、こう考えておる。これがあなたと私の対立であります。だからして、私ども国会会長以下公益委員全部ここに出てもらって、この問題を究明しようと要求するのは当然じゃございませんか。これを認めないというと社会党が承知しないから、かろうじて三十分間だけ許そう。時計の針が三十分になったら打ち切ってしまうのです。自民党はだれ一人質問なさろうとしない。私どもは、時間をかけてこういったやり方を究明しないというと、政府の出された政令にも問題が起こるから、私は尋ねておるのです。政令というものは行政府の命令でしょう。しかしながら、この政令がどうして政令として出されなければならなかったかという経過は、総理承知のように、船田議長あっせんに基づく昨年四月二十一日の衆議院本会議における議決によって、公務員制度審議会に移されたわけです。そういう経過があるわけだ。だからして、あの公務員制度審議会に移したときの私ども考え方は、これははっきり栗山礼行君、民社が提案をいたしておりまするように、制度審議会は慎重に十分に審議するということが条件であったのです。六月十四日がきたならば、八十七号に関係しようと関係しまいと何でもかんでも政令で出せということは、院の意思ではございません。総理、この点はいかがですか。
  23. 安井謙

    安井国務大臣 ちょっと事実関係だけ申し述べます。  先ほども申し上げましたように、会長は三時間有余にわたって労働者側の出席を要望されたわけでございます。いろいろな事情からなかなか出席をされない。したがって、十四日も間近にまいるというようなことから、やむを得ず開会されたわけでございましょう。しかし、その間の事情といたしまして、公益側八名、これは労使双方とも十分信頼をして認められておる委員でございます。八名の委員が一致した意見があの際出ておるということは、私は第三者として非常に公平な処置がとられたことの実証になろうかと思うわけでございます。  なお、前田会長を当委員会へお呼びになったという話もあとで昨日私伺いました。前田会長は、実は明日公務で外国へ出張をする予定になっておりまして、したがいまして、きょうはどうしても多忙のためどこへも出られないというお断わりをした由でございます。しかし、たってというお話で、三十分でもいいからということで、その三十分だけきょう内閣委員会へ出席をいたしたというような次第に伺っております。
  24. 野原覺

    野原(覺)委員 前田会長だけの要求ではない。前田会長ほか公益委員側を要求したのだ。前田会長に事故があれば副会長の今井さんもおるはずだ。あなたの、安井総務長官のお考え政府与党のお考えですか。それでは私どもは、二十七日月曜日に、公益委員全員出てきていただいて、院の意思がほんとうに公務員制度審議会にどのように反映したかを徹底的に究明いたしますよ。あなたのいまの御答弁政府与党を代表する考えであるならば……。与党は出したがらないじゃありませんか。出したがらないのですよ。私は昨日、予算委員会理事会を申しては何ですけれども、前田会長以下公益委員の出席については、これは非常に消極的なんですよ。だからして、院の中はかなり興奮をして荒れてきておる。国会が制度審議会会長以下公益委員を参考人に呼ぶことになぜ一体消極的でなければならぬかというので私は問題にしておる。しかし、これは安井総務長官、前田会長が外国へ行かれるならば、会長事故あるときは副会長がおる、公益委員もたくさんおられるわけですから、二十七日に要求して、この問題はあくまでも事実関係でございますから、あなたと私の見解が違いますから、出てきていただいた上で、できるならば労働者側も、それから吾孫子さん以下使用者側代表諸君も出てきていただいた上で、事実問題は徹底的に究明いたしましょう。  そこで、次にお尋ねいたしますが、これは総理大臣、まあ若干法案の中身に触れますけれども、あなたが最高責任者ですからよく聞いておってください。公務員制度審議会が何を審議したかということが議事録に出ておるわけです。私は議事録をずっと読みました、根気強く。第一回から第十六回まで私は読みました。最後の第十七回はまだ入手いたしておりません。この議事録によりますと、たな上げ部分審議については、職員団体の構成と登録制度については審議はされておる。ところが、在籍専従の問題、管理職の範囲の問題、交渉制限の点については審議がされていない。質問は若干議事録の上に、このことばは出てきて質問はされておりますけれども労使双方意見開陳はなされていない。いわゆる討論はなされていない。そういう意味審議がされていない。ところが、この審議のされていない在籍専従、それから管理職の範囲、交渉制限、これが六月十四日に一括施行政令となってあらわれてきておるのです。  私は、昨年四月二十一日のあの衆議院の本会議を思い起こします。慎重に十分に審議せよ、その上で答申を尊重せよと院は政府に命じたわけです。ところが、慎重に十分に審議されていないものがどうして一括施行政令となって出されなければならぬのか。これは院議無視じゃないかと私は思うのでございますが、総理はどのように考えますか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから、どうも政府のとった処置が院議無視をしたんじゃないか、あるいは不当じゃないか、こういうような前提からいろいろお尋ねでございますが、私ども成規手続をとり、院議を尊重し、院議の命ずるような、約束したようなその形におきまして今回の処置をとったつもりでございます。したがいまして、ただいま具体的な問題等についていろいろお尋ねがございましたが、全体としてその院議を無視しておらないこと、また有効な手続、所要の手続だけとった、かような点を説明をいたしまして、なおまた、具体的なものについては安井君からお話しをさしたいと思います。
  26. 安井謙

    安井国務大臣 審議の内容がたな上げ部分全体に触れていないじゃないかという御質問のようでございます。これは、審議会自身が責任を持って答申を出されておるのでありまするから、そういったことがないと思いますが、その中で特に申し上げられるのは、いわゆる専従の問題につきましては、まだ審議が十分にできてないから、これについては結論を待ってほしい、それ以外については審議をいたしたから、右のような結果を答申する、こういうことで、あとは全面施行ということに相なっておるわけでありまして、答申書の中にもそれぞれ労働側の意見公益側意見、あるいは使用者側意見、それについてもそれぞれの項目で触れられておるところであると思っております。
  27. 野原覺

    野原(覺)委員 議事録によりますと——これは安井総務長官でけっこう。前田会長は、審議されていないことを確認しておる、いかがですか。
  28. 安井謙

    安井国務大臣 私ども会長に伺っておるところでは、審議が十二分に尽くされたという点については、まだ若干残った問題もある、したがって、そういう問題については今後も検討するが、おおむねの審議は、専従を除いては一応全部できた、こういうふうに伺っております。
  29. 野原覺

    野原(覺)委員 管理職の範囲、交渉の制限、ともに審議は尽くされていないのです。これを前田会長は認めておりますよ、認めておりながら、六月十四日に間に合わさないと政府の要望にこたえることができないというので、どうしても十三日の午前三時五十分、夜明けに一気に採決したのじゃありませんか。したがって、私ども院は、そういう審議しないことまで政令で出せといって政府に預けた覚えはございません。私も院を構成する一人だ、私はそうやった覚えはない。行政府はかってに立法府の意思をじゅうりんしてよいのか。この点でこの政令には問題がある。答申自体に問題があるし、その問題の答申に基づいて一気に八十七号に関係のないところまでなぜ一括施行しなければならぬのかというところに問題がありますから、私ども尋ねておるわけですよ。総務長官、いかがですか。これは審議していないじゃありませんか。
  30. 安井謙

    安井国務大臣 まず六月十三日までには答申を出していただきたい、こういう趣旨は、政府は再三要請をいたしておりますし、また審議会御自身も、その趣旨については了承をしておられたと私ども思っております。また、国会のあの審議の際にも、栗山さんのこの趣旨説明の中にも、六月十四日の条約発効に際して混乱の起こらないようにすばやく措置をすべきものであると自分は考える、こういう趣旨もうたっておられるわけであります。したがいまして、あの審議会は、相当そういった総合的な点を十分しんしゃくされて審議をされたものと私ども考えております。またこの答申の中にも、労使双方から、いまおあげになりました交渉手続あるいは管理職の問題についても、それぞれの意見が述べられたということが触れられておるわけでございます。したがいまして、最終段階におきまして、管理職の問題だけに限ってたな上げをしろというような労働側の主張もあったように伺っておりますが、そのことを見ましても、交渉等の問題については、まあこの際一応論議は尽くされたものというような解釈も十分できるものであろうと思います。
  31. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは栗山礼行君の発言を御引用になられましたが、栗山礼行君がどこにそんなことを言っておる。それを読み上げてください。速記で読み上げてください。私の理解では、栗山礼行君はそういうことは言っていない。
  32. 安井謙

    安井国務大臣 栗山さんの趣旨弁明のおしまいのほうから、行数で申しますと二十行ぐらい前でございます。「この見地に立って、この際すみやかに公務員制度審議会を発足させ、本件に関する諸問題を円満かつ公正に解決し、条約発効に支障を来たさざるよう各党の御協力を特に切望申し上げる」こういうふうになっております。(「それは努力目標じゃないか」と呼ぶ者あり)「条約発効に支障を来たさざるよう」ということは、条約は六月十四日に発効するのでありますから、これに支障を来たさざるよう結論を出せ、こういう趣旨だと私は存じます。
  33. 野原覺

    野原(覺)委員 条約発効に支障を来たさざるよう各党とも努力しようという努力目標でありますよ。いまうしろのほうで発言があったように、これは努力目標ですよ。その努力目標は、社会党も努力する、総評の諸君も努力する、同盟の皆さんも努力する、みな努力したから公務員制度審議会が十七回論議をしてきたのじゃございませんか。努力目標ですよ。そこで結論が出ないのに、しゃにむに、六月十四日が来たならば政令を出せということはないじゃないですか。あなたは栗山君の発言にあると言ったんだ。六月十四日が来たら、いやでも政令を出せ、条約発効に間に合わすように出せ、これが院議だと言ったが、それはないじゃありませんか。努力しようということじゃありませんか。総務長官、いかがですか。
  34. 安井謙

    安井国務大臣 私が申し上げましたのは、提案者の説明の中にも、そういった条約発効に支障を来たさないように答申が出ておることを期待されておるということを提案者自身もおっしゃっていらっしゃる、こういうことを申し上げたのでありまして、いまのいつどう出す、こういった手続の問題をいまここで申し上げたわけじゃございません。
  35. 野原覺

    野原(覺)委員 この問題は、これは努力目標、それから院議は、六月十四日が来たならば一括施行政令を出せと言った覚えはない。総務長官、これは重大な基本的な認識の違いですから、総務長官発言を許すわけにはいかない。私ども院議は、あの衆議院本会議できめたのは、六月十四日が来たならば、条約発効の日が来たならば一括施行せよといってきめた覚えはないのだ。慎重に審議をして答申をしなさい、その答申が出たならば尊重しなさい。もとより六月十四日に間に合うように努力しましょう。これが院議だ。総務長官、六月十四日が来たならば政令施行しなければならぬということはないじゃないですか。あなたはあると言ったのだ。あなたは速記を調べて答弁しなさいよ。あると言ったのだ。六月十四日が来たならば何でも政令を出さなければならぬということは、院ではきめていないじゃないですか。その院できめていないことを、政府がやれやれといって前田会長を突っついたのでしょう。前田会長に圧力をかけたのでしょう。前田会長は圧力をかけられておりますよ。だからして、政令が強行されておる。総理大臣、これはそういう政令なんです。答申そのものに瑕疵がある、きずがある。その瑕疵のある答申に基づいた政令でございまするから、私は、このような政令というものは、これは撤回してもらわなければ、私ども社会党は了承はできない。このような政令では、総理が先ほど申された労使関係正常化相互信頼の念というものは、これは断じてわきません。このことを要求いたします。総理大臣、この政令については撤回をしてください。要求いたします。いかがですか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま政令を撤回しろという、これは要求だと特に力を入れてお話でございます。私は、しかし、そう要求されて、さようでございますかと言うわけにはいかない。ただ、もう少し具体的に申し上げてみたいのですが、ただいまの審議会、この答申が出てまいりましたのは、全部を読むわけにまいりませんから、大事なところだけひとつ読みますと、「当審議会は、次の如き判断の下に在籍専従制度に関する部分を除き、未施行規定を昭和四十一年六月十四日に施行することとするのは、やむを得ないものと認める。」これが正規の答申でございます。また最後に「なお、当審議会は、未施行規定をも基本事項とあわせて、今後引き続き審議の対象とすべきであり、したがって、未施行規定の当否に関する当審議会意見は、後日なるべくすみやかに逐次答申する予定であることを念のため申し添える。」これが最後の結論でもございます。かように思いますと、今日政府施行いたしましたこと、政令を出しましたこと、これは私は成規手続をとり、院議を尊重している、かように申し上げる次第でありまして、政府は撤回する意思のないことをはっきり申し上げておきます。
  37. 野原覺

    野原(覺)委員 審議していないことまで答申をする。その答申に基づいた政令が何が院議尊重ですか。それでは総理大臣質問を前進させる意味であなたにお尋ねいたしますが、これからがたいへんなんです。これは、官房長官総理のうしろにおられてよく総理に御注意してください。たいへんなんです。撤回できない理由は、答申を尊重するからだということばに尽きようかと思う、ただいまの総理大臣総務長官の御答弁は。それならば私はお尋ねいたします。これは総務長官でけっこうです。答申の付帯事項というのがあるでしょう。それを読み上げてください。
  38. 安井謙

    安井国務大臣 付帯事項と申しますのは、答申の最後の点をおさしになっておるのかと存じますが、「なお、当審議会は、未施行規定をも基本事項とあわせて、今後引き続き審議の対象とすべきであり、したがって、未施行規定の当否に関する当審議会意見は、後日なるべくすみやかに逐次答申する予定であることを念のため申し添える。」以上でございます。
  39. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは一つ一つ聞きまし上う。登録に関しては公務員制度審議会はどのような答申をしておりますか。
  40. 安井謙

    安井国務大臣 「職員団体の構成及び登録に関する規定については、ILO八十七号条約との関係においては、現行法制と比較しておおむね相対的に改善をもたらすものであると認められる。なお、当審議会は、(I)登録されない職員団体が当局に交渉を求めた場合においても、実際上、合理的な理由がない限り、恣意的に当局がその求めを拒むべきでないこと、(II)管理職員等の範囲の決定については、人事院等の当該行政機関は、管理職員に関する規定が職員団体の自主性の確保に直接関連する制度であることに照らし、職務の実態を十分に把握し、慎重にこれを行なうべきものであること、(III)職員団体の登録の切換えにあたっては、無用の混乱を生じないように配慮すること、(IV)登録されない職員団体も法人格を取得することができるように政府においてすみやかに検討すべきであると強く希望するものであることを付言する。」以上でございます。
  41. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、答申を尊重される政府はもとより、この付帯事項の総務長官の読み上げた四つの項目、これも私は尊重されるべきものではなかろうかと思いますが、尊重されておりますか。
  42. 安井謙

    安井国務大臣 全体の答申で、いまの付帯事項は登録事項に対しても施行を一応やるべし、しかし、将来こういう問題についていろいろ配慮をすべきである、こういう精神であると存じます。私どもはその精神を十分今後体してやっていきたいと思っております。
  43. 野原覺

    野原(覺)委員 全体について施行をやるべしといいますけれども施行をやるにあたっては、ただいまあなたが読み上げた四つの項目の付帯事項は、気をつけなさいと注意しておるのですよ。何を言うのですか、あなたは。制度審議会の付帯事項を何と解釈するのですか。登録については気をつけなさいよ、管理職の範囲については職務の実態を十分に把握した上でやりなさいよ、むちゃくちゃに管理職の範囲を拡大して、団結権の侵害とまたILOから注意されるかもわかりませんぞということを注意しているじゃありませんか。そうでしょう。だから、その注意の上に立ってあなた方が政令を出し、今後の運営をしていかなければならぬ。この点、大事な問題でございますから、これは私は一つ一つ指摘していきましょう。  それでは自治大臣、お尋ねいたします。六月二十一日付で自治省は自治公第四八号、自治省行政局長名で都道府県知事あて「地方公務員法の一部を改正する法律の施行について」通達を出しております。その内容を読み上げてください。通達を出しておるが、その内容を読み上げてください。
  44. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 通達は相当長いものでございますが、ただいま先生の御指摘になりました関係につきまして朗読をいたします。「地方公共団体における健全な労使関係を確立するためには、地方公共団体の当局と職員団体との間に正常な交渉が行なわれることが欠くべからざる条件である。改正法においては、地方公共団体の当局は、登録を受けた職員団体から、適法な交渉の申入れがあった場合には、その申入れに応ずべき地位に立つものであることを明らかにしているが(改正法第五五条第一項)、登録を受けない職員団体についても、地方公共団体の当局が、これと交渉することが職員の勤務条件の維持改善のために望ましいと判断するときは、これらの職員団体と交渉することができるものであることに注意されたい。また、改正法においては、交渉の手続等に関する規定の整備がなされたが(前記通知第三、五)、これは交渉における秩序を確保し、よき労働慣行の確立に資することを目的とするものであるから、その趣旨を体して運用にあたられたい。その際、これらの規定を形式的に理解し、職員団体の交渉を不当に制限することがないよう、あわせて配意されたい。」。   〔「みごとなものだ」と呼ぶ者あり〕
  45. 野原覺

    野原(覺)委員 とんでもない。何がみごとなものですか。明らかにいたします。いま読み上げましたように、登録を受けない職員団体についても、地方公共団体の当局がこれと交渉することが、つまり職員の勤務条件の維持改善のために望ましいと判断するときは、これらの職員団体と交渉することができる。この裏の意味は、望ましいと判断をすれば交渉はできる、望ましくないと判断すれば交渉しなくてもけっこう、そうでしょう。望ましいと判断をしたときに限り交渉したらいい。公共団体の当局、知事、部長、その当局は、望ましくないと判断すれば、組合のほうから交渉の申し入れがあっても、登録をされた団体とは交渉しなくてもよろしいという主張でありませんか。ところがどうですか。(「ILO違反だ」と呼ぶ者あり)ILO違反であるばかりか、私は答申を尊重すると言われたその答申の付帯事項には何と書いておるんだ。登録されない職員団体の交渉要求に対しても、合理的理由がない限り恣意的に当局がその求めを拒否しないことという厳重な注意をしておる。付帯事項で、恣意的に交渉を拒否してはいかぬぞといっている。「恣意的」とは何でしょうか。漢和辞典を引くまでもなく、「恣意的」とは、当局が自分の御都合で望ましいとか望ましくないとかいう主観的な判断ではないんだ。あくまでも合理的な理由、客観性がなければならぬ。主観的な判断でやる限りは恣意的でございますから、これは、私が申し上げるまでもなく、自治省の下部、都道府県知事、市町村長に対するこの通達というものは明らかに公務員制度審議会の第一の付帯事項に違反をしておる。こういうでたらめな指導をしておる。これでもって、どうして答申を尊重したといえますか。総務長官、恣意的とは何だね。これでどうして答申を尊重したと言えますか。総務長官、あの自治省の通達でもいいのかね。あなたは公務員制度審議会責任者です。あなたは総理府の責任者、恣意的にわたっちゃいけないといっておるのだが、あの自治省の通達でいいのかね。いいならいいと言いなさい、大問題だから。
  46. 安井謙

    安井国務大臣 ILO八十七号条約におきましては、登録団体であろうと非登録団体であろうと、交渉権そのものはいずれも持っておることには変わりはないと思います。したがいまして、登録団体は当然にいつでも当局は交渉に応じるということに相なる。しかし非登録団体につきましては、それが非登録でありますがゆえに、いろいろな団体の内容、性格、目的、そういうようなものについて不分明なことが多い場合、これは当局がよくそれを整理して、準備して、そうしてそれに応ずるのでありますから、いまの恣意的というのは、正当な理由なくして故意にこれを断わっちゃいかぬという趣旨でありまして、そういう意味で、自治省の通達は必ずしもそういったものをやれというふうにはうたっておらぬと私どもは解釈いたします。
  47. 野原覺

    野原(覺)委員 何を言うか。総務長官、望ましいと判断するときは交渉しなさい。こう書いておるのだ。そうしたら、裏をとれば、望ましくないと判断をしたらするなということじゃないかね。これは、これで交渉拒否ができるじゃありませんか。だから、政府の指令は、非登録団体との交渉は、望ましいと判断したときだけやったらいいんだ、登録団体は、これは交渉の義務がある、そうこれは受け取れるじゃないかね。そういうことがあっちゃいかぬといって、付帯事項は恣意的では許さぬということをいったんじゃないか、君。そういう三百代言的な答弁はしてもらいたくない。交渉の必要があるかないかの判断を当局だけにまかせないということが恣意的の意味なんだ。ところが、望ましいと判断するときは交渉しなさい、この通知は、明らかに恣意的ではありませんか。この通知は間違っていますよ。付帯事項からいって、これは間違っていますよ。  それからなお、これは、自治大臣おられますね。——なお、この佐久間行政局長の通達別紙二を取り上げます。たいへんな通達を出しておるのです。とにかく総理大臣、あなたは答申を尊重すると言うけれども、実際こういうようにとんでもない押し曲げへし曲げされたような指導が今日の地方自治団体に政府からなされておるわけです。  別紙二を読み上げますよ。別紙二には管理運営事項について書いてあります。「行政の企画、立案、予算の編成等、地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項は、地方公共団体の当局が自らの判断と責任において執行すべきものであり、交渉の対象とすることができない」いわゆる管理運営事項は交渉の対象とすることができない、こういう指導をしておる。そこで、私は自治大臣にお伺いいたします。定員の問題、それから職員の配置転換の問題、なお文部大臣にもついでにお伺いいたしておきますが、教職員は毎日教案というものを書いておりますが、あの教案に関して、これは管理運営事項に入るのでございますか、入らぬのでございますか、お聞きいたしておきましょう。
  48. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 お答えいたします。  地方公共団体の管理運営事項につきまして、昨年事務次官名で、ただいまお読み上げになりましたような通達を出しました。今回も参考にそれを添付をいたしたのでありますが、管理運営事項につきましては、そこに書いてありますようなことが私どもの見解でございます。ただ管理運営事項でございましても、反面勤務条件に関係がありますものにつきましては、関係する限りにおいて交渉の対象になる、かように理解をいたしております。  いま例におあげになりました配置転換の問題にいたしましても、配置転換を命ずることそのものは管理運営事項でございますが、その結果といたしまして住宅その他勤務上の条件につきまして欠けるところがあります問題につきまして、交渉の対象にするということはできるというふうに理解をいたしております。
  49. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは、行政局長答弁されるから、自治大臣より行政局長名の通達ですから、あえてあなたに聞きましょう。  あなたはそういう指導をしておる。勤務条件に関係がある管理運営事項はもとより交渉の対象だという指導をしておる、こうお逃げになりますが、どこに指導していますか。あなたの出した通達のどこにそんなことを書いておりますか。読み上げてください。
  50. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 ただいま御指摘いただきましたのは、今回出しました通達ではございませんで、昨年法律が成立をいたしました際に、全般について、一通りの法律に盛られております事項について出したものでございます。したがいまして、それぞれの事項につきまして詳細な留意事項というようなものは、その通達には載せてございません。その点は管理運営事項だけに限りませんで、その他の事項につきましてもさようでございます。ただいま申し上げました管理運営事項でありましても、勤務条件に関係する部分については、その限りにおいて交渉の対象になるという趣旨につきましては、この法律の趣旨を説明をいたします際の説明会の席上におきましてそれぞれ担当官から説明をいたしております。なおまた、私どもの担当官が文書等で解説をいたしましたものにつきましても、その趣旨は述べております。
  51. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、あなたは今度の通達でなくて、この前出したものを私が読み上げておるというように言っておるが、この前とは四十年の八月十二日、この前の、つまり四十八国会ILO案件が通過したときの通達に違いはございませんが、あなたは口頭で説明をしておると言うけれども、説明なんかしちゃいない。こういったようなものは、ILOからの注意もあるのだから文書に載せておくべきです。文書のどこを調べてみてもこれは出てこないじゃありませんか。勤務条件と関連するところのものは交渉の対象にするな、下部末端の市町村長はこれでやるんだ。この文書でやるわけだ。口頭で聞かれた者が市町村に報告するかどうか知りませんけれども、その方の報告がなければどうなる。文書で通達を出されるならば、当然勤務条件に関係のあるところのものは文書できちんとして通達の中に織り込んでおくべきだ。それを出していない。先ほど言ったように、交渉の問題で、管理運営事項の問題で、明らかに付帯事項と自治省の通達そのものが違反をしてきておるじゃありませんか。これが政府の、今日の佐藤内閣の労働組合に対するものの考え方です。そこからはどうして労使相互信頼の念が出ますかね。  昨年の八月三十一日のドライヤーの勧告第二千二百二十九項、ドライヤーが去年の正月に日本に来て、日本の国内法に対する七百ページの膨大な所見を発表した。その第二千二百二十九項でこう述べておる。青木さんが理事会の議長にもなったことで、ドライヤーの報告といえば、結社の自由に関する実情調査調停委員会委員長報告、かってに書いたものじゃない。ILOの機関の報告ですから、これは総理が言われたように尊重されるでしょう。こう書いてある。「改正された法律では、政府の事務の管理と運営に影響する事項は、交渉範囲から除外されるべきであると規定されている。」日本の国内法でこう規定しておる。「この規定の適用は、現実に深刻な困難を惹起するかもしれない。……このような事項のうち、たんにふたつだけを指摘してみると、職員の定員の問題があり、また職員の配置転換の問題がある。この性質の問題は、相互の誠意と信頼という雰囲気のなかで行なわれる団体交渉の枠外の問題とみなされるべきではない。」勤務条件の問題だから、管理運営事項は交渉の対象でないのだといったようなこの通達は間違い。これは当然のことです。職員組合、労働組合は勤務条件を改善するんですから。だからして、首切りの問題、定員が何人おるかでこれは超過勤務にも影響するし、自分の仕事の量に影響するわけですからね、当然のことなんです。第二千二百三十、二千二百三十一項で、なお、追って、ドライヤーはこう書いてある。「管理運営」を「実際的に、どこに区別の線を引くべきであるかについて、よりよき了解に達するよう努力すべきであると勧告する。」勤務条件と管理運営の区別の引き方はなかなかむずかしい。だからこれは努力をしてくれ。交渉議題が使用者の決定に属する問題であるとの理由で団交のワクから除去することは、実際問題として効果を失う。自治省の通達は、総理大臣、団交の問題から省いておるのですよ。私がただいま申し上げたように、管理運営事項は君らがやるべきものだ、交渉の対象ではないのだ、こういう文書の通達をやって省いておる。ドライヤーは、それはいけないと注意しておる。それから、この前田さんの審議会も付帯事項で注意しておるのに、自治省は依然として直していない。直さない態度で市町村長、都道府県知事に指導しておるじゃありませんか。これはとんでもないことです。それから、また、改正法の五十五条の第一項によりますと、「適法な交渉の申入れがあった場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つもの」として、合法処理を交渉の前提条件とし、交渉拒否の口実に利用してきている。また、交渉を拒否した場合、当局が一方的に打ち切った場合、何らの救済制度がない。  私は安井総務長官お尋ねする。地方公務員法によって交渉を申し込んだ。交渉が始まった。もうかなり時間がたったからやめようと、かってに向こうがさつさと打ち切る。帰れ、こう言う。これは許されるのかね。これは団結権の八十七号の精神から見て、こういうことは許されるのか許されないのか、総務長官、どう考える。
  52. 安井謙

    安井国務大臣 今度の改正法律案によりますと、御承知のとおり、交渉にあたりましては、時間、場所、人員、目的、そういったものを予備的に取りきめて、そうして正常な交渉をやる、こういうような規定がございます。したがいまして、交渉の目的自身は、常に両者が正常な状態のもとに意を尽くすことにあろうと思います。したがって、単に一方的に簡単に時間を打ち切るといったようなことも当然行なわれないでありましょう。といいまして、集団的な交渉といったようなものに名をかりて非常に不規則な交渉が続くというような場合には、これは当然制止されなければなるまいと思っております。
  53. 野原覺

    野原(覺)委員 どこにも救済の手続はないじゃないですか、あなたのいまの答弁を聞いても。なるほど時間、場所、人数等をきめて交渉がある。しかしながら交渉に応じない、あるいはかってに時間をさっさと打ち上げる、そういう場合には、向こうから打ち切られたらどうするのですか、相手が打ち切った場合には、交渉に行った者は。一時間という交渉が二十分間で打ち切られてしまった。帰れ、こう言う。それは市町村役場ではしょっちゅうあっておることなんですよ。約束は一時間やったのだ。ところが十分したら、帰れ、こう言う。おれは忙しいのだ、君らと会わぬという、それは許されないでしょう。それならどうして救済しますか。これは国内法不備でしょう。どうして救済するのか、それを聞いておる。
  54. 安井謙

    安井国務大臣 これをどういう形で救済するか、あるいはそういう形のものを破った場合の規制といったようなものがいまのところ規定をされていないことはお話しのとおりでございます。しかし、この法律の運用にあたりましては、実は六月十四日の閣議におきましても、総理大臣からも、この法律の運用は法の精神を体して円滑に円熟して行なうように、こういう各省に対する御指示もあったわけでありまして、法にきめられました範囲において当局としてはそういった点を十分に守るようにわれわれは今後も行政指導をやってまいるつもりでございます。
  55. 野原覺

    野原(覺)委員 大体交渉時間、人数、議題等について地方公共団体の当局と職員団体の間であらかじめ取りきめることになっているが、この点について政府が不当な制限を加えていないかということが問題です。地方公務員法、国家公務員法ではそうなっております。ところが、政府はいま言ったように不当な制限を加えておるわけです。君が会いたいときに会いなさい、こういう指導をしておる。かと思うと、管理運営事項は、これこれは管理運営事項だから交渉せぬでもいいのですと、口頭では勤務条件に関することを言ったと言いますけれども、どこにも文書ではない。これはやっていない。だから、不当な制限を加えるような指導をやってきておるのは政府じゃありませんか。これじゃ幾ら国内法ができても、たいへんなことだと私は思う。この点についてILOではどういう見解を持っておるかというと、こう言っておる。こういう時間とか人数とか議題というものをこまごまと書き立てる必要はないじゃないか、相互信頼の念を持って交渉をするのだから、お互い同士が話し合いをして交渉したらいいじゃないかと、こう言っておる。このことは現在ただいま日教組と中村文相との間に問題が起こっておるのでしょう。  そこで官房長官お尋ねいたします。まあ官房長官は非常に進歩的で、この問題については…。
  56. 福田一

    福田委員長 野原君、いまちょっと十分ばかり席をはずしております。呼びましょう。
  57. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは文部大臣、官房長官がいないようで、ちょっとなんですが、あなたにお尋ねいたしましょう。  あなたはいま日教組の交渉に対して条件をつけておられて、その条件が入れられなければ会わないと言っておられると新聞が書いておるのですが、ほんとうですか。それはどういうことになっておるのです。
  58. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 御承知のとおり、事の起こりは、政府労働団体との定期会合等から話が出まして、相互の不信感を取り除いていくために話し合いをしようということが会談をする動機であり、そういう趣旨で続けてきておるわけであります。そこで、私の現在言っておりますことは、どうもそういう不信感除去の話し合いをするのには、できるだけ少数の者で腹を立ち割って言い分をお互いに十分に言い尽くして話し合うことが効果的である、したがってそういう目的で従来続けてきましたが、大体そういうときには相当の人数になってしまって、結局日教組側でも文書に項目で書いてきたものを出す、こういうことでありますから、そういうことよりは、それは文書で出すということは事務的に届けられてもけっこう趣旨は達成できるので、事務当局とは常に連絡もあり、交渉があるわけですから、われわれの話し合いはひとつできるだけ少数にしぼって、そうして不信感除去の目的を果たすような話し合いにしようじゃないかというのが私の考え方で、そういう趣旨を実はいま言っておるわけで、そういうことならばわれわれはいつでも時間の許す限り会談をして、そしてお互いに言い分のあるところ、ものの考え方、こういうことを述べ合って不信感の除去を進めていくようにしようじゃないか、こういうのが現状でございます。
  59. 野原覺

    野原(覺)委員 日教組はあなたに対して人数の点でどういうことを言っておるのですか。人数の点であなたはどうも意見が合わないような御発言のようですが、日教組は何名会いたいとお願いしておるのですか、申し込んでおるのですか、文部大臣。——事務局はよろしい、文部大臣に聞いておる。
  60. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 具体的の人数のことは齋藤初中局長が折衝しておりますから、私もよく存じませんが、従来では副委員長とかあるいは部長とか書記をやる人とか、相当の人数になるわけです。そういう場面ですと、お互いに腹を立ち割った話が事実として御承知のとおり困難なわけです。そういうことでは、せっかくこういうふうな話し合いを続けても、その話し合いの効果を実らせることは困難じゃないかということで、私はしばらく前からそういうことを言い出しておるわけで、そういう趣旨をぜひ達成をして会談を続け、効果のあるような行き方をしたいという希望を持っておるわけであります。
  61. 野原覺

    野原(覺)委員 六月十五日の新聞報道を読み上げます。文部省は、委員長、書記長の二名の出席なら会うが、それ以上の人数なら会わないと拒否している。新聞が書いておる。日教組は従来の慣行どおり五名、それも三役と直接関係する部長が話し合いを進める上に絶対必要なので、人名まで明らかにして文部省に再考を促している。いいですか、五名です。あなたのほうは二人でないと会わぬとこう断わっておる。日教組は非登録団体です。断わっておるんです。ここに登録団体と非登録団体の問題が起こってくる。登録団体の場合には断われない。二名と五名、こう断わられておりますから、どうにもこうにもならない。腹を割ると言いますけれども委員長と書記長と、いろいろ定員問題がある、学カテストの問題があるということになれば、それぞれの担当セクションがあるわけだ。そのセクションの部長が、委員長、書記長について名前まで書いて出しておる。それを、中村さんじゃないのです。文部省の官僚です。——白洲次郎さんに言わせると、日本の官僚で気の食わぬものが二つあると白洲さんが「エコノミスト」に書いておる。一つの官僚は外務官とひどいことばで「エコノミスト」に書いておる。吉田さんの顧問の白洲さんが書いておる。だからして、これはその文部官僚の策謀かどうか知りませんけれども、文部省側の言うとおりしない限り、話し合いが開かれるのか開かれぬのかということが問題なんですよ。団結権の自由からいって、八十七号の精神からいって、おれの言うとおりしなければ、二名にしなければ会わぬのだ、これが問題なんですよ、八十七号の精神からいって。団結権の行使は十分にできてないじゃないかという問題なんですよ。ところが、現に日教組と文部省の交渉においても、私が読み上げたように、その形が出てきておる。つまり、このことを公務員制度審議会はこう書いておる。「登録されない職員団体との交渉要求に対しても、合理的な理由がない限り、恣意的に当局がその求めを拒否してはならない。」何も合理的理由はないじゃないですか。名前まで書いておるのだ、五名。それを、二名なら会うが五名ならだめだというような断わり方は恣意的な拒否ではありませんか。だから、付帯事項というものが、自治省において、文部省において完全に守られていないのです。文部大臣、この点はいかがですか。
  62. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 いま野原さんのお読み上げになったその当局というのは、私どもと、いま野原さんが考えていらっしゃるように見えるのとは根本が違うわけです。そこに当局というのは、非登録団体の関係のことでありますが、非登録団体と当局というのは、その当局は、あくまでも雇用関係があり、また勤務条件の維持、改善について管理、監督の権能のある当局をさしておるわけです。したがって、日教組の場合について申しますと、地方公務員である地方公共団体の教職員は、その勤務条件の維持、改善についての管理、監督は地方団体にあるわけで、文部省にあるわけじゃありませんから、そこにいう当局には文部省は該当しないという見解を私どもはとっておるわけであります。これが私は正しい解釈だと思うのです。ただ問題は、日教組との関係につきましては、ドライヤー委員会日本に来ましたときにも、どうも不信感というものが非常に過度に強まっているようだ、これについてはいろいろな要素があるようで日教組があまり政治問題に熱中し過ぎたことも原因の一つのように思われるというようなことも書かれて、問題はこの不信感を除去するということが必要だから、政府政府のイニシアで話し合う機会をつくっていったらどうか、こういうこともありましたので、われわれとしましては、その不信感除去につとめる目的で会談をすることが望ましかろうということで、その会談を続けてきておるわけであります。しかしほんとうに不信感の除去をするのには、書いたものを持ってきて、そしてきまった機関が顔をそろえてやるのは、これは一種の団体交渉であって不信感除去のための作業じゃない、不信感除去の趣旨に沿わないというように私は考えておりますので、途中から、実はできるだけ人数をしぼって話し合いをしよう、事務的ないろいろな諸問題であるならば、それば書いたものを持っていらっしゃい、事務当局にはいつでも会って意見を聞くように言いつけておくから、いつでもいらっしゃい、こういうことで、事務当局との行き来はかなりあるわけでございますから、われわれが会うならば、もっとそういう事務的な問題ではなしに、積もり積もってきておる過去の不信感をどう片づけていくか、そしてなごやかな気分でお互いにこの日本の教育を向上、改善するために話し合う行動に移していこうじゃないかというのが私ども考え方でありますから、ほかに他意があるわけではないのであります。今度のいう当局云々とそれとは、事柄、問題が別だ、私はこう考えております。
  63. 野原覺

    野原(覺)委員 日教組に対して文部大臣が当局でない、こうおっしゃる。当局でなければ何ですか、文部大臣。
  64. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 いまあなたが読み上げた趣旨のいわゆる公務員制度審議会が述べておられる当局には該当しない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  65. 野原覺

    野原(覺)委員 それならばとんでもないあなたの思い違いです。公務員制度審議会が申しておるのは、非登録団体の交渉について付帯事項を書いてある。日教組は非登録団体です。それは官房長官も文部大臣もやはり政府当局ですよ。あなたは文部当局なんですよ。なるほど今日の地方公務員法からいけば、管理、監督の地位にあるかないかは、法律解釈の上で議論がありましょう。しかしあなたは文教当局なんです。日教組は教員の全国的連合体なんです。ILOが認めたのです。そのことをすなおに公務員制度審議会は書いておるのじゃありませんか。これはたいへんな思い違いですよ。これはあなたは当局なんです。だからして、日教組が交渉を持ち込んできた場合には恣意的に断わっちゃいけません。いまあなたが断わっておるのは恣意的な断わり方です。二名なら会うが、五名は帰れ、君たちとは会わぬ、二名にしろ、文部大臣の言うとおりにしなければ会わないという、こういった交渉の持ち方が問題になっておるのですよ。この交渉の持ち方が、実はILO八十七号条約の具体的な問題になってきておる。それを十分に御認識になっていないのです。だから、そういう誤りを依然として文部当局は繰り返しておるわけです。  そこで時間の関係もあるから、ちょっと急ぎます。安井総務長官、この管理職の範囲で総務長官に聞いておきたいのだが、地方公務員法の五十二条三項で管理職員等について、「管理若しくは監督の地位にある職員又は機密の事務を取り扱う職員」と定義をしておるわけです。この定義は、実は公労法、それから地公労法では削除になった。労組法第二条第一号が採択をされて、この定義は削除した。削除した理由は、全逓がILOに提訴いたしました。七千名か八千名全逓が組合員を削られてしまった。管理、監督の地位にあるのだというので、課長補佐という名前をみんなつけて、つけてやると喜ぶ公務員もおるでしょう、おまえは課長補佐、課長補佐は管理職だということで、七千八百何名かの組合員を全逓が削られた。これは大きな団結権の侵害じゃないかというので、全逓がILOに提訴した。このことがILOに取り上げられて、政府が敗訴をしたわけです。負けたわけです。ILOでは、これはいけない。そういったいきさつもあって、国鉄や全逓といった公共企業体関係では、実は、管理、監督の地位にある職員、機密の事務を取り扱う職員という定義を省いたにもかかわらず、依然として——というよりも、むしろ今度地方公務員法ではこの定義を持ち込んできておるのです。公労法で省いたのに公務員法に持ってきた。この理由をお聞かせください。これは納得できないです。これは何か理由があるのですか、総務長官
  66. 安井謙

    安井国務大臣 公労協の場合と国家公務員あるいは地方公務員の場合では、その職能、身分あるいは組合活動の範囲のあり方といったようなものにつきまして、ある程度の差があるのは御存じだろうと思います。したがいまして、公務員関係におきましては、人事、労務等を管理する人、あるいは特別の機密を扱っておるような人、これはやはり管理職として認めるべきであろうというのが私ども考え方でございます。しかしその範囲をどういうふうにきめるか、この問題については、もっぱら人事院あるいは人事委員会におまかせをして、慎重にこの範囲をいまきめるということになっておるわけでございます。
  67. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは簡単に当然だろうと言いますが、どういうわけで当然ですか。差別されて当然だろう。それじゃ公労協では規律はどうでもいいという意味ですか。公務員と公労協とどこが違うのかということを聞いているのですよ。
  68. 安井謙

    安井国務大臣 こまかい規定、手続等のきめ方でございますので、政府委員から説明させます。
  69. 増子正宏

    ○増子政府委員 ただいま御質問の、管理、監督の地位にある者あるいは機密の事務に従事する者、この字句が公労法にあったものを公労法では削っておきながら、国家公務員法あるいは地方公務員法で取り入れた理由というふうに私は受け取ったわけでございますが、公労法の第四条の規定を改正いたしましたのは、いわゆる管理、監督ないしは機密の事務を取り扱う職員につきまして団結を禁止しておった規定であったわけであります。したがいまして、先般の改正でこの規定を削除いたしたわけでございますが、公務員法のほうにおきましては、いわゆる管理、監督あるいは機密の事務に従事する者、従来公労法で使っておりました表現に該当する者が今度は一般職員と同一の職員団体を結成することはできないという考え方を取り入れまして、その際に一応従来の公労法の規定を用いたということでございます。内容につきましては、先生もよく御承知のように、この管理、監督あるいは機密の事務に従事する職員というのは、従来から公労法におきましても、労働組合法の第二条の第一号、いわゆる使用者側の利益を代表する者というふうに包括して言えるかと思いますが、役所の場合にはいわゆる当局側に立つ者という趣旨でございます。
  70. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、区別した理由はないですよ。公務員と公労協は区別すべきではない。公労協も国の職員ならば、公務員も国の職員、この種のことは区別する必要はないと思う。ただ争議権についてはいろいろ問題はあるだろう。しかし団結権については区別する必要はないですよ。だからして改正法で公労法第四条第一項、地公労法の第五条第一項を削除するならば、公務員にこの種の管理、監督、機密の事項といった管理職を持ち込んでくることは当然間違いです。よけいなことをしておる。これは立法上の問題です。  そこで次にお聞きしたいことは、人事院総裁はいまお留守のようですからこれは飛ばしますけれども、管理職範囲の認定、これは実に気をつけてやらないと団結権の侵害になる。このことはILOで特にやかましいわけです。ドライヤーがこのことを一番声を大にして注意しておるのは、日本労働組合がILOに提訴した経過がそうなっておるからです。管理職範囲を拡大して組合を弱体化してきた、これが実は八十七号批准の導火線にもなっておることにかんがみて、政府におかれても、管理職の範囲は人事院もしくは人事委員会、公平委員会がやるという簡単なお考えではなしに、これは慎重にやられるように私は強く要望しておきたい。管理職範囲を拡大して組合を弱体化する、何でも組合を弱めたらよいのだという考え方をすると、日本の青木議長のもとでまたまたこの問題で国際的に問題が起こってこないとは保障できない。これは、どうかひとつ政府においても慎重にやられるように、特に私は団結権擁護精神を尊重されるという総理大臣に要望しておきたいのだが、総理大臣、いかがですか。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 管理職の範囲をきめる際には慎重にやれ、これはお説のとおりだと思います。したがいまして、これは政府がきめないで、人事院、第三者機関できめるというのも、ただいま申し上げるように、慎重に、しかも公正にこれをきめるという趣旨でございます。
  72. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで、付帯事項の第三、総務長官にこれはお尋ねいたしましょう。自治大臣でもけっこうです。「職員団体の登録の切換えにあたっては、無用の混乱を生じないように配慮すること、」と付帯事項にある。これは政府としてはどういう配慮をしておりますか。
  73. 安井謙

    安井国務大臣 これは、制度が変わるわけでございますし、新しい登録というものがやり直しをやる際でありますから、そのためにいろいろいままでの慣習とふなれのために摩擦が起こらないように、こういうものの実施については、先ほども申し上げましたように、閣議におきましても、総理大臣から円滑に運営されるように十分考えるようにという指示もいただいております。そういったようなことを考えて、各省それぞれ関係向きへも指示をいたしておるわけでございます。
  74. 野原覺

    野原(覺)委員 それじゃ総務長官でよろしい。国家公務員は登録の切りかえ一年、地方公務員は三カ月、どうしてこういう差別をしたのか。
  75. 安井謙

    安井国務大臣 地方の場合におきましては、御承知のとおり非常に単位が狭い範囲に限られております。国家公務員の場合には、非常にこの範囲が広くなって複雑になっております。そういったようなものの切りかえには相当時間も要するであろうというような配慮から、三月、一年という区別がついておるわけでございます。
  76. 野原覺

    野原(覺)委員 一年、三カ月の差別をした理由答弁としてはあなたのいまの答弁は落第ですよ。理由はないじゃないですか。地方公務員は小さい範囲だとこう言いますけれども、そうじゃないですよ。  まず、私は教育公務員の場合に例をとって言いましょう。三カ月で登録の切りかえができますか。教育公務員の場合に例をとって言います。まず人事院の規定に基づいて、管理職を人事院が教育公務員特例法できめる。公立学校の教員に準ずるという規則がありますからね。それに基づいて今度は地方の人事委員会と公平委員会が指定をするわけですよ。管理職はこれだ。その管理職は一般職には入ることができない。まずその作業をしなければならぬ。その作業が終わりますと、規約変更、それから組織改組の措置を今度はとらなければならぬ。登録をするためには規約を届け出なければならない。規約を変更すれば組織を変えていかなければならぬ。今度は支部はどういうようにやるかということになってまいるでしょうね。そうなると、かりに人事院が六月末に管理職の指定を行なったといたしましても、県の人事委員会や市町村の公平委員会がこれを完了するのは早くても七月の中旬か下旬ですよ。現に公平委員会はまだできていないところがたくさんあるじゃないか。公平委員会はこれからつくるのでしょう。これは自治大臣にあとで御答弁願う。公平委員会は全国津々浦々にできたかどうか。もう人事委員会と公平委員会は完全にできておればよろしい。しかし、これはできていないところもたくさんあるだろう。それをつくっていかなければ、そこでまたやる。そこで今度は人事委員会、公平委員会で指定されたあとでどういうことになるかといえば、規約改正を今度は組合員に公示しなければならぬ。これは法の定むるところで、規約はかってにつくってはいかぬので、これを公示する。これは登録の要件だ。それから今度は、組合員が公示した規約をいいか悪いかいろいろ議論をする。今度は全組合員が、これは直接無記名投票になっておる、規約については。今度は、さらにそれが終わると役員選挙に入る。役員の公示をする。この役員の公示をすると今度は立候補の締め切りをやる。それから今度は組合員がどうしようかという討議をやって、また全組合員の直接無記名投票で役員がきまる。そして初めて登録の要件がずっとそろうわけですから、三カ月以内にはできません。私はいま時間の経過を申しておりませんが、これは三カ月以内にはできない。できなければ、もう九月十四日までにやれということのようでございますが、これはどうなるのですか、総務長官、できなければ、しょうがないからその間は非合法団体として扱いますか。それとも何か、あなたのほうで三カ月ということにしておるのだが、次善の策がございますか。
  77. 安井謙

    安井国務大臣 お話しのようにいろいろな手続を要することは事実であろうと思いますが、地方団体の場合は範囲もきわめて限定されたものでございますし、人員も非常に少ない、そういったような意味から、三カ月というのは一応法律できまっておる事項でもございますので、ひとつこれはできるだけ円滑にお進めをいただきたい。しかし、登録ができなければいわゆる非合法団体かというと、これはことばのニュアンスでございますが、非登録団体という意味での不便といいますか、形が若干違ってくる場合がありましょうが、いずれにしましてもなるべく急いでそういった登録をしていただきたいというふうに考えております。
  78. 野原覺

    野原(覺)委員 できなければどうするのです。教員の場合はできないですよ。あなたは教員は小さい世帯と言うけれども、教職員組合というのはそれじゃとてもじゃないですよ。中央の人事院はいま作業中ですよ。人事院総裁がお見えになっていないけれども、なかなかこの作業はむずかしくて、事務総長の手元で簡単に結論は出ないと言っている。それは校長、教頭の問題だ。今度はそれが人事委員会におりるのだ。中央に準じて人事委員会、公平委員会がまたやるわけだ。それから規約改正だ。役員公示だ。それには期間があるのですよ。あなたは役員を公示をしたから直ちに選挙をやりなさいと簡単に考えますけれども、それは許されないのですよ。一人一人に浸透していくためにはかなりの時間を与えなければできないのですよ。これはできなければどうするのです。明確に言ってください。それはサボってできないんじゃないんだ。事実できないのだ。
  79. 安井謙

    安井国務大臣 これは、ひとつぜひできるようにそれぞれの団体に御努力を願うわけでございまして、いまの法律が変わりません以上は、三カ月を経過して登録していなければ、一応その団体は非登録団体という形に相なろうかと思います。
  80. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣、こういうむちゃな話がありますか。事実上できない。事実上できないのに、そういう事実上できないその三カ月というむちゃくちゃな期間をつけて、できなければ非登録団体だ。これが一体組合の団結権を尊重する政府の窓口ですか。いまの総務長官がこういう考え方だから困るのですよ。手っとり早く言えば、私はこの三カ月という期間を延ばせと言っているのだ。しかし、まああなたがそういう考えであれば、それは職員組合は非登録団体でやるでしょう。その際に起こる混乱、そういう混乱をしないようにせよと言ったにかかわらず、混乱が起こるように三カ月という短期間の期日しかしていないところに問題がある。付帯事項を守っていない。  第四番目、付帯事項を守っていないことを指摘します。それは「登録されない職員団体も法人格を取得することができるように政府においてすみやかに検討すべきである」と政府に向かって注意をしておる。これは日教組、自治労、いずれも非登録団体だ。それから自治労の中のたとえばいなかの村、村には村役場の吏員がおる。これは地方公務員だ。ところが水道の、今度は地方公営企業法によって律せられるところの者が三人おるといえば、その十人の村役場の吏員と三名とで、村長さんに向かって、夏期手当や年末手当やいろいろ勤務条件について、同じ立場にあるにかかわらず、一本の組合をつくることができないのです。これは残念ながら小さな十四、五人の世帯でできない。十四、五人の学校がある。教職員が十二名、小使さんが三人おる。小使さんの三人、教職員の十二名が同じ一本の組合をつくることができない。そういったような不合理がある。単に日教組、自治労だけではない。だからして、法人格取得の問題はこれは重要だと指摘しておりますが、この問題についてはどういう検討を政府はしておるのですか。
  81. 安井謙

    安井国務大臣 法人格の問題については、政府も、これが非登録団体といえども与え得るように、今後検討をしなさいというのが答申の趣旨でございます。よく承知しております。ただ、この非登録団体とその法人化という問題は、組合活動そのものに直接響く問題と申しますよりは、むしろ財産権の問題とか、そういった地位の他の要件を満たすべき性格のものであろうと私ども考えております。しかし、これはその答申の中にも至急検討すべしということがございますので、別個の法律的な考え方で至急検討を進めたいと思っております。
  82. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、検討をしてすみやかに改正法を国会に出さないというと、八十七号違反ですよ。これは総理大臣も御承知でしょう。八十七号の第七条に明白に違反するわけです。「労働者団体及び使用者団体並びにそれぞれの連合及び総連合による法人格の取得については、この条約第二条、第三条及び第四条の規定の適用を制限するような性質の条件を付してはならない。」今日の国内法はこれに違反をしておるのです。八十七号を批准をしたけれども違反をしておる。この第一がこれなんです。だから、この点はさすがの公務員制度審議会政府に忠誠を尽くそうと思った公務員制度審議会も、この点には触れざるを得なくて検討しなさいと、こう言っておる。  総理大臣、あなたに政府最高責任者としてお尋ねいたしますが、改正法をいつお出しになりますか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへん議論がありますから、ただいまの条約違反、こう簡単にきめてしまうわけにはいかないようです。政府は、いままでこれは条約違反じゃない、かような結論を出しておりますから。しかし、なおこういう事柄については十分慎重に検討をいたしまして、もし万一条約違反であれば、もちろん法律改正をする、そういう手続をとりたいと思いますが、ただいまのところ私どもはさように考えておらない、このことをつけ加えておきます。
  84. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたはILOを尊重すると言いましたが、そのILOから明確に勧告されておるのですよ。法人格を中央組織に与えないという日本の国内法は早く改めろ、これをILOは強いことばで勧告しておるのですよ。そうして八十七号条約にきちっとあって、これにもはっきりこうしちゃいかぬというのに、日本の国内法は非登録団体として法人格を与えていないのですよ。今度は公務員制度審議会からまた注意されておるのですよ。改正を早く出しなさいよ。何しているのですか。
  85. 安井謙

    安井国務大臣 いまのお話、私どもも、これは早急に検討をいたすということは、いま総理の御答弁のとおりでございます。ただ、第七条で違反しておるかどうかという問題になりますと、これはちょっと見解が違いますので、この第七条にうたっておりますのは、法人格のあるなしによって、この第二条、第三条、第四条の規定の適用を制限するようなことをしてはいかぬ、こういうふうに私どもは解釈をしておるわけでありまして、直接にこれが違反するとは思いませんが、しかし、いまのお話の趣旨、あるいはいろいろ勧告、答申といったようなものの趣旨からは早急に検討いたしたい、こういうふうに思います。
  86. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたはまたまたつまらぬ議論を出して時間をとるわけだが、第七条違反です。これは。あなたは法律をまっすぐ読みなさいよ、第七条違反だから。  それから、時間がないから急ぎます。在籍専従の問題です。在籍専従については、公務員制度審議会が再たな上げをしたわけですね。再たな上げをしてさらに続けて審議をする、こうしたのでしょう。総務長官、いかがですか。
  87. 安井謙

    安井国務大臣 そのとおりでございます。
  88. 野原覺

    野原(覺)委員 さらに審議するものを、十二月十四日が来たら、審議もしてないのに施行をすると期日をあなたのほうでおきめになるのはどういうわけですか。
  89. 安井謙

    安井国務大臣 公務員制度審議会審議を続けるという意味は、すみやかにこの結論を出すつもりであるから、もうしばらく待ってほしい、こういう意味でございますので、まあ六カ月あれば十分であろうということで、その答申を六カ月間むしろ待つという趣旨のものでございます。
  90. 野原覺

    野原(覺)委員 その六カ月という判断は、公務員制度審議会から政府に来たのですか、いかがですか。
  91. 安井謙

    安井国務大臣 これは、非公式ではございますが、公務員制度審議会責任者として、六カ月もあれば十分であろう、こういう意向を伺っております。
  92. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、制度審議会としては、そういう結論は議事録のどこにも出ておりません。非公式であなたに話したとすれば、前田会長政府に対する忠誠の一つとして言ったのでしょう。どこにも出ていませんよ。制度審議会は、この問題については議事録では再たな上げ。あなたもさっき言ったじゃないですか。在籍専従は再たな上げ、その他は一括答申だ。再たな上げとだけしか出ていない。それを、再たな上げでさらに審議するならば、あるいは三カ月でできるかもわからない。あるいは四カ月かかるかもわからない。これは公務員制度審議会審議をするというならば、審議もしない先に十二月十四日に政令を出すんだというこの期日の打ち出し方は、制度審議会を無視しておる。制度審議会を尊重すると言いながら、無視しておるじゃありませんか。これは弁解のことばはありませんよ。いかがですか。
  93. 安井謙

    安井国務大臣 在籍専従制度に関する規定につきましては、まだ把握は十分でないから、その施行を見合わせるのが妥当であると思われるとなっておりますが、引き続きまして「ただし、当審議会は、在籍専従制度に関する規定については、当審議会が早急に答申を行なうことを要請されていることにかんがみ、その施行を延期する期間については、特に留意することとする。」すみやかに出すからしばらく延期しろ、こういう御趣旨のものに私どもは受け取っております。
  94. 野原覺

    野原(覺)委員 総理大臣、これは、尊重するならば文字どおり尊重してもらいたい。尊重すると言いながら、政令をかってに審議もしない先にきめるといういき方は、ほんとうの尊重じゃない。早急にやるならば、あなたのほうで早急にやりなさいと催促したらいい。審議もしていないものを十二月十四日という政令で、公務員制度審議会が開かれなければ、十二月十四日が来たら審議なしにこの在籍専従の項目は政令が生きてくるわけです。こういうようなやり方は衆議院の本会議じゃ確認していませんよ。衆議院の本会議が、あの院議が公務員制度審議会に移した精神政府はかってにじゅうりんしておるじゃありませんか。これは、私はその点の一つとして指摘しておきます。  それから団結権の擁護、これは尊重すると総理大臣は言われるが、なぜ地方の消防職員に団結権を認めないのですか。中央の消防庁の職員には団結権を認めておるが、地方の消防職員になぜ団結の権利を認めないのか。これは法律の中身ですから、総務長官でよろしい。
  95. 安井謙

    安井国務大臣 御承知のように、警察あるいは軍隊、それに準ずる者につきましては、各国にそれぞれの特性に応じた規定を設けておるわけでありまして、消防に関しましても従来は全然認めてなかったのでありますが、本省関係につきましては、これは現場じゃないから組合加入を認めるべきであろう、こういうふうに判断いたしましたが、現場の第一線におられる消防職員あるいは刑務所の従業員、こういった者につきましては、まだ当分こういった組合加入を認めるべきであるまいという判断をいたしておるわけであります。
  96. 野原覺

    野原(覺)委員 地方の消防職員が警察に準ずる、どういうわけです。これは警察権はないでしょう。消防職員には警察法は施行されていない。消防職員は警察ですか。
  97. 安井謙

    安井国務大臣 消防職員はむろん警察官じゃございませんが、仕事の性格上、人命救助あるいは非常に火急を要するような現場事務、いわゆる警察官等が行なうと似たような、方面は違いますが、そういったような仕事を担当しておるものでありますから、この際それから除外をいたすというふうに考えておるわけであります。
  98. 野原覺

    野原(覺)委員 防衛庁の職員は、これは何ですか。制服の自衛隊以外の職員はどこが違うのですか、消防庁の本庁の職員と。
  99. 安井謙

    安井国務大臣 ちょっとすみませんが、政府委員答弁させます。
  100. 増子正宏

    ○増子政府委員 条約には、御承知のように軍隊及び警察という表現を使っておるわけでございますが、この軍隊、警察につきましては、それぞれ国内法にまかせておるわけでございます。したがいまして、その国々によりまして、いかなる機関がこのいわゆる軍隊、警察の範囲に属するかという判断をいたしておるわけでございます。  ただいま御指摘になりました消防につきましては、わが国の法制上、あるいは従来の経緯から見まして、広い意味で警察活動に入るものというふうに扱っておるわけでございます。この点につきましては、ILOにおきましても認めているところでございます。  なお、自衛隊につきましてでございますが、これが条約にいういわゆる軍隊であるか、警察であるか、いろいろ国内的にも議論のあるところでございますけれども、いずれにしましても、これらの軍隊、警察という条約の表現で取り扱っております国内の治安維持という、そういった機能の点から見まして、警察と同様に考えてよろしいのではないかというのがわれわれの解釈でございます。
  101. 野原覺

    野原(覺)委員 とんでもないかってな解釈をしています。これはILO憲章の第十九条の八項——時間の関係があるから結論を申し上げますが、条約は最低基準です。現実に軍隊で団結権を獲得しておるのは、オランダがある。警察についてはイギリスがあり、スウェーデンがあり、オランダはもとよりある。軍隊、警察には例外を認めた。それは各国が、軍隊、警察まで団結権といわれると批准がむずかしいというので、その例外を認めたが、ただしILO憲章十九条八項で、軍隊、警察の解釈は拡大するなと注意をしてある。軍隊と警察は、軍隊であり、警察なんだ。それは憲章の十九条八項に拡大解釈は許さない、こうしておるじゃないですか。そうなれば、消防は警察だというのは拡大解釈だよ。日本の国内法のどこに消防が警察だという国内法があるんだ。  それから中央の国家公務員の消防庁の本庁の職員に団結権を認めるならば、私は防衛庁の職員、事務をやっておるあの職員にも団結権を認めなさい。あれは自衛隊じゃありませんよ。警察にも事務職員がある。これらのものには団結権を認めて何ら差しつかえない。総理ILO憲章を尊重すると言った。ILO憲章を尊重すると言う口の裏から、もう現実ILO憲章をじゅうりんするところの解釈を一方的にやってきておるのが今日の佐藤内閣じゃありませんか。これは団結権一つとってみても言えるでしょう。ストライキ権じゃありませんよ。  念を押して注意しますが、団結権とは、団結をしてその職員の勤務条件と地位向上をはかることですよ。団結する権利、ストライキ権じゃないのですよ、これは。だから、ストライキ権と誤解をして、消防庁の職員にこんなものを認めたら、これは火事があっても消しに行かぬのじゃあるまいかとかなんとか御心配になることは御無用なんです。団結権に対する正しい理解のしかたをすれば、私は一応公務員である消防職員にも当然団結権を認めるべきだ。制服以外の防衛庁の職員にも団結権は認めるべきである。これは、勧告においてもそのことは言える。これがほんとうに青木さんを議長に出した日本の具体的ななすべきことではないか。ILOを尊重しますといったようなことばだけでは私はいけないと思うのです。  そこで、時間もございませんからこれで結論に入りますが、奇木大使を議長に出して光栄あるILOにおける日本立場がある以上、ドライヤーが注意した報告だけは、どうか守っていただきたい。ドライヤーが、八十七号条約批准に際して、日本の国内法ではかくかくしかじかのことはひとつ気をつけてもらいたい、これはこうしなさい、ここはこうあるべきです。ここは私はどうかと思いますということは、ひとつまじめに検討をして、近い将来、私は国内法改正にこれが具体的な姿で出られるように努力をすべきではないかと思う。総理大臣の御所見を承っておきたい。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、今回ILO条約を批准したことによって労使関係は新しい関係に入った、かように私は思います。この新しい時期、それこそはこのILO条約を批准し、その精神にのっとって正しい労使関係を樹立すべきその時期だ、かように私は考えております。これは、ひとり政府あるいは組合が一方的にそういうことを要求しておるわけでありません。関係者一同が新しい正常な労使関係を打ち立てる、かような意味において努力すべきことだ、かように私は思っております。  また、法律等におきましても、永久不変の法律というものはございませんから、もちろん、ただいまのように、いろいろ実施いたしまして、それがILO条約に違反するというような結論が出れば、これを改正するのにやぶさかではございませんし、また実害が生ずれば、今日の法の運用等におきましても、そういうものを除去することについて最善の努力は払っていく、かように努力するつもりでございます。  要は、労使双方が新しいその事態に、今後正常なものを打ち立てる努力が望ましい、かように思っております。
  103. 野原覺

    野原(覺)委員 ILO八十七号の条約に違反をしたという結論が出たときには、労働組合の団結権に実害が生じたことになるわけです。実害が生じますと、その生じた実害というものの救済は、これはなかなか——これは労働組合の非常なマイナスであって、現実にどうにもならないことなんだ。そこで私は、実害が生ずるおそれがある、あるいはその運営の上で考えなければ団結権、八十七号に影響してくるおそれがあるという、この種の問題については、労使相互信頼の念の樹立ということが正常化でもございますから、これはお互いに話し合いをして、事実運営の中で救済できるようにすべきではないか。私は政令の撤回を要求いたしました。しかし、政府も、一たん出した政令を簡単にここで、公式の場で撤回するとは言わないでしょうけれども、今日出された政令は、非常に疑義の多い答申に基づく政令なんです。しかも、その答申は、付帯事項を一々長時間にわたって指摘したように、これは尊重されていないのだ、答申も完全には尊重されていない。そういう中で労働組合に、政府信頼しなさい、審議会信頼しなさいと言っても、それは無理な話であります。八十七号を批准したのは、団結権を尊重することをILOに約束したのです。日本ILOの加盟国に誓ったのです。団結権は尊重いたします。これが八十七号批准の意味だ。それならば、ほんとうに団結権を尊重するという、具体的な国内法の上でその誠意が見られなければならぬわけだ。だから、実害の生ずるおそれがあるというそういう場合をも含めて、ただいま総理大臣の御答弁は、労使がお互いに信頼していくことができるように団結権を尊重していこうではないかと、私はそのように受け取りたいと思いますが、いかがですか。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、ただいまの野原君の御意見は私も理解できるものはございます。新しい事態をこれからつくろうというのでありますから、あらゆる努力をしなければなりません。実害が現に生じたら、もちろんこれを除却するのに最善の努力をしますが、実害が生ずるおそれあり、こういう場合におきましても、われわれは英知を働かせる、そうしてその努力をする、そういう事態が起こらないようにする、これはもちろんわれわれのつとめるべき事柄でございます。
  105. 野原覺

    野原(覺)委員 時間が参りましたので、残念ではありますが、これで終わります。
  106. 福田一

    福田委員長 これにて野原君の質疑は終了いたしました。この際暫時休憩いたします。    午後二時十一分休憩      ————◇—————    午後三時九分開議
  107. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況に関する件について質疑を続行いたします。勝間田清一君。
  108. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は日本社会党代表いたしまして、石炭問題、沖繩に関する問題並びに若干の当面の重要なアジアの外交に関する問題についてひとつ質問をいたしたいと思います。  まず第一に石炭問題についてでありますが、佐藤総理もよく御理解だと思うのでありますけれども、依然として今日石炭問題が抜本的な解決を見ておらない。私も想起いたすのでありますけれども昭和三十七年石炭の危機が叫ばれた当時に、当時の総理大臣である池田勇人氏は、心を入れかえて石炭問題に取り組むという、きわめて真剣な態度を実は示されたのであります。まだ当時通産大臣の責任を帯びられておりましたと思いますけれども佐藤総理も、これは私の責任である、抜本的な解決をひとつはかりたいということを、あの不安動揺の中であなたは確約をされたのでありまして、それ以来今日まで四年経過をいたしたわけであります。しかも有澤調査団は、第一回の答申、第二回の答申、また引き続いて最近は第三次の答申をするように聞いておるのであります。しかし、どの回答を見ましても、抜本的解決をつけるという打ち出し方でありまして、ほんとうに抜本的な解決が立てられておったならば、今日のこの窮状はなかったと実は私は思うのであります。私ども社会党は、必ずしもすべてが正しいものとは考えておりません。しかし、指摘した点は、重要な点が幾つかあったと私は思うのであります。それらの指摘した点が、依然として解決がついておらないというところに、今日石炭問題が依然として解決がつけられない根本の理由があるのではないだろうか。佐藤総理は有言実行をモットーとせられておるのでありますけれども、ことばどおりにあるいは実行されていないのかもしれない。したがって、今日の段階に立って、あるいは古い問題かもしれない、しかし同時に新しい問題でもある。でありますので、この際抜本的な解決をつけるという立場から責任ある答弁をしていただかないと、このまま何回続けてまいりましても問題の解決はならない、私はこう思いますので、総理の確信ある所見というものを私はお尋ねしたいのであります。  まず第一にお尋ねをしたいと思うことは、依然として石炭の位置づけが今日なされておらない。動揺常ならず、ここに根本の誤りがあるのではないだろうか。三十七年の当時において、当時五千五百万トンを維持するという石炭政策の要綱が決定をいたしました。そのときに、われわれも国会でこの問題を審議いたしまして、結局国会の意思は、六千万トンを目標にして五千五百万トンを維持するということであった。その後、御案内のとおりに、第二次有澤調査図の答申においても、五千五百万トンの維持という方針は踏襲をせられた。だが、実際にこの答申は実行せられたかといえば、実行はせられておりません。その根拠はどこにあるかということも私はお尋ねいたしますけれども、とにかく四十年、四十一年の状況を見ますと、五千万トンをわずか出るという実に悲惨な状態であります。聞くところによりますれば、最近は、第三次の答申において、もうこういう数字はやめようじゃないかという意見もあるそうです。あるいは五千万トン前後にしようじゃないかという軟論もあるそうです。いや絶対に五千五百万トンは堅持しなければならぬという意見を吐く人もあるそうです。私は、まことに動揺きわまりない今日の状況だと実は考える。総合エネルギー政策を確立して、石炭の位置づけを明確にする、このきわめて重大な基本的な態度が、今日の政府、歴代政府は不安動揺を続けておった、それと真剣に取り組まなかった。ここに、きわめて平凡であるけれども、きわめて基本的な問題の所在があるように私は思うのであります。私は、そこで佐藤総理にこの問題の考えをひとつ聞きたいのであります。  そこで、ひとつ私はお尋ねをいたしますが、石炭の位置づけをする場合に一番大事な点は何であったかというと、一つは雇用、一つはエネルギーの安全保障、一つは地域経済、この三つ立場に立って石炭の位置づけをする、この原則というものをあなたはいまでも考えておられますか。この原則をあなたはいまでも確認されますか。ひとつお尋ねをしたいと思います。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石炭問題につきましては、私は第一次有澤調査団から実は関係しておるし、ただいまお尋ねになる勝間田君も、思い起こせば、その際から私どもといろいろ交渉を持っておられる、あるいはその以前からもちろん研究はしておられただろうと思いますが、そういうことで、石炭問題の経過について私はとやかく申し上げなくてもいいと思います。ただ、その際に問題になりますことは、この石炭問題が産業的にたいへん重要な課題だ、これは労働雇用の問題をも含めて重大な問題だ、こういう意味で、各界各層の英知を集めてこれを取り組もう、こういうことであの民間調査団を派遣するに至ったのであります。今日まで第二次までの調査報告を受けて、政府はこれと逆の方向には実は行っていない。私は、民間の協力を得て、今日までこれを真剣に取り組んだと、かように思っております。  しかしながら、事は志とたがって、ますますむずかしくなってきておる。これは、申すまでもなく、その間に進行いたしましたエネルギー革命といわれるその結果だと思います。私どもがいろいろの場合を想定して、そうして出炭計画なり、あるいは雇用の問題と取り組んでまいりましたが、経済のいわゆるエネルギー革命は、私ども考えたより以上のテンポで改革を要請された、かように思います。  したがいまして、ただいままた第三次の調査団を派遣し、そうしてこれが調査をお願いし、その審議会答申も近く出ようといたしております。その際に、ただいま言われるように国産エネルギー源としての石炭をいかに取り扱うか。いわゆるこれがエネルギーにおける石炭の位置づけということにもなりましょうが、これが一つ基本的な考え方だと思います。そういう意味でただいませっかく慎重に取り組んでおるその際でございます。  また、それぞれの党におきましても、私どもの党におきましても、これは掘り下げて、いわゆる石炭産業全般としてその企業形態のいかんにかかわらず、これと真剣に取り組もうということで、いろいろ計画を立てておりますし、社会党の皆さんも同様な問題と取り組んでおられることだと思います。ただいままでまだ結論が出ておらない。しかし、もうその結論を出す、そういう時期に来ているんじゃないか、かように思っております。この問題はまことに重大な問題でありますだけに、各界各層の英知を集めて、そうしてこの問題の解決に私は取り組みたい、かように考えておる次第であります。
  110. 福田一

    福田委員長 ちょっと発言をいたしますが、非常に蒸し暑いようですから、なんでしたら委員諸君は上着をお取りになってもけっこうです。
  111. 勝間田清一

    ○勝間田委員 佐藤総理のあげ足をとろうという質問は私は決していたしません。しかし、これは真剣にひとつ考えてもらいたい。エネルギーの革命というものはいま始まったことじゃございません。さるがゆえに、エネルギーの中における石炭の位置づけという問題は、三十七年以来の一番の重要な問題であった。しかし、今日佐藤内閣は、電力、重油あるいはその中における石炭、あるいはいま起こりつつある原子力発電等々の諸エネルギーのあるべき姿という問題について真剣な研究をやっておりますか。もしやっておるならば、その中で一体石炭をどう位置ずけをしようと考えておりますか。この考え方がなくしていたずらに石炭を究明してみたところで、私は結論は出ないと思う。どういう研究をやられ、どういう結論を出されておりますか、ひとつ聞かしてください。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話というか、お尋ねのうちにもありますように、このエネルギー源、これはいろいろあります。その場合に、私どもやはり国内エネルギー源というものと、またこれが外国に依存しておるものと区別してものごとを考えていかなければならない。それぞれの特徴もあることでございます。そういう意味で、この国内の石炭、これこそはいわゆる国産エネルギー源としてまず一つ考慮を払わなければならないものだ。また、これは新しい分野ではございません。過去におきましても、りっぱな地歩を占め、多数の従業員を擁し、ばく大な投資もしておったそういう産業でございます。したがいまして、これが急速に他に移りかわる、こういうものでもない。これはもういかぬから、非常に経済的ではないからこれはやめるんだ、そういう簡単なものではないのだ。これは新しいものでありますなら、新しいものとしてのいわゆる経済性を考えていく、合理性を考えていって、そしてこれを開発すればいいわけでありますが、過去から続いてきておる産業だ、こういうところにこの石炭産業の特殊性があるわけであります。同じような国内エネルギー源、かように申しましても、水力と比べたり、あるいはいま欄発途上にある原子力発電とこれを比較してみる、こういうわけにいかないものがある。それらの点を考えまして、そしてこの石炭鉱業をいかに取り扱うかということと取り組まなければならない。ここにそのむずかしさがあるわけであります。しかして、私がいままでの調査団あるいは各界の御意見を聞きましても、この二つが一番重要な点である、かように私は理解しております。そういう意味で、この政府部内におきましても通産省は真剣にこの問題と取り組んでおる。ことに最近進行するエネルギー革命、これと取り組んでおるというのがいまの姿でございます。
  113. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたは私の質問にまつ正面から答えておらない。すなわち日本のエネルギー政策の面から見て、電力なり、あるいは石炭なり、あるいは原子力発電なり、あるいはまた重油等の石油資源なり、またその中でも輸入と国内開発資源との関係なりから見て、日本のエネルギー政策の総合的な計画とその中における国内産の石炭の位置づけという、そういう目標を持っておるのか、おらないのか。私はこれは一番おくれているのじゃないか。そういうことをやらずして石炭をいかに掘りくってみたところで、石炭問題の解決はできないじゃないか。何をおやりになっておるのですかと、これをあなたにお尋ねをしておるのです。この問題にまつ正面から答えてくださいよ。
  114. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私から。御承知のように総合エネルギー調査会、これは国会において御承認を受けた委員会でございます。これが、いま御指摘のような原子力も生まれてまいりますし、石炭あるいは重油、原子力、こういう総合的なエネルギー政策というものがいままで十分でなかったということであります。それは、一面においてエネルギーというものの革命とでも申していいぐらい、非常にエネルギー源というものに世界的に大きな変動があった。これに対応してエネルギー政策の確立というものがおくれておったことは御承知のとおりであります。そこで総合エネルギー調査会において十分に検討を加えて、石炭の位置づけというものもこれをはっきりしたいということで、鋭意ただいま努力をしておるわけでございます。こういう検討も参考にしながら、政府のほうにしても、石炭の位置づけというものを考えながら石炭の抜本策というものを講じたいというのが現在の政府立場であるわけであります。
  115. 勝間田清一

    ○勝間田委員 通産大臣、お尋ねしますが、そのエネルギー政策というものから見た日本の国産石炭の位置づけは一体どういうことになっているのですか、具体的に示してください。
  116. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、その総合エネルギー調査会が大体来月中には結論が出るという考えでございます。これは非常に専門的なことでもありますので、そういう専門家の意見等も参考にしながら。政府のほうとしても、抜本策を講ずるときには、石炭の位置づけというものを抜本策の前提にしたいという考えでございます。
  117. 勝間田清一

    ○勝間田委員 第三次の石炭の答申は最近になされると聞いておりますが、いつごろなされるのですか。
  118. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大体来月と予定しております。このエネルギー調査会の位置づけ等も参考にしながら石炭鉱業審議会で最終答申が出されるものである、こういう期待をいたしておるのでございます。
  119. 勝間田清一

    ○勝間田委員 通産大臣、ことばだけ合わしちゃいけません。エネルギー審議会の結論と、そして石炭審議会の結論が双方合意されたものが討議された結果が答申になってあらわれてくるなんという、そういう関係ではございません。しかし、今日総合エネルギー政策というものを確立をして、その中において明確な方向づけが行なわれて、そうして国内におけるエネルギーの石炭から重油の関係はどうするか、また鉄鋼と国内産原料炭との関係はどうするか、また今日の出炭計画とそして電力会社との関係をどうするか、これからの電力需用を重液でまかなうのか、石炭でまかなうのか、こうした計画というものは今日世界の先進国がすべて行なっている政策ではないか。  たとえば、あなたの御案内のとおりに、イギリスはすでに二億トンの石炭を出している。そして、御案内のとおり、この二億トンの出炭を電力もまた石油界も鉄鋼界も全部これを支持している。電力界は六千万トンの買い取りを約束している。これをやがて一億トンにふやそうということをイギリスの電力界は決定している。フランスはどうです。フランスもまた専売制度なりその他の政策を行なって、エネルギーと需要産業との間の明確な協力体制というものを取り上げている。ドイツがしかり、イタリアがしかりでしょう。  いま日本で一番足らないのは何であるか。各エネルギーの間における目標は明確でなく、それぞれ利益を追求して、たとえば電力のごとく独占をほしいままにして、その中で石炭が産業自己防衛の立場から、きゅうきゅうとして大量の失業者を出して、そしてまた大量の負債を今日政府は肩がわりしようなどという計画を立てている。こういう無計画なエネルギー政策、この根本を改めなきゃだめです。ここに、今日の、池田内閣以来保守党がとってきた最も大きな誤りがあるのではないかと私は思うのです。佐藤総理、どう思いますか。計画も体制も整っていないじゃありませんか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、そう勝間田君のように一方的にこれはしいるわけにもいかないだろうと思います。ただいま通産大臣からお答えいたしましたように、総合的なエネルギー政策を樹立するということで一つ審議会が、各英知を集めて結論を出そうとしている、また、そうすればその位置づけもできるだろう、そうして、しかもいま当面する石炭鉱業自身どうしたらいいか、こういう問題と真剣に取り組もう、こういうわけであります。過去において御指摘のような計画がなかったという、そういう点は全然なかったわけじゃありません。ただ、予想したような産業的な変革、これが予想されたとおりでなかった、非常にそのほうが急激な激しいものがあった、こういうことが今日のむずかしい状態を現出しておるわけであります。私は過去から今日までいわれておる、先ほど来言っている位置づけ、これがトン数によって表現できればたいへんしあわせでございます。おそらくいま通産当局においても、また審議会におきましても、どういうことを目標にするかという、これは眼目であって、おそらくそういう意味で英知をしぼりつつあるんだ、かように思うのであります。ただいまのところは、ややまだ結論が出ておりませんから、いましばらく時間をかしてくださいということを申し上げておるのであります。  ただいま御指摘になりましたようないわゆる総合的な計画、これは樹立される方向にある、ただ問題は、石炭を一体幾ら出すか、五千五百万トン、その位置づけでいけるのか、あるいは六千万トンを目標にして五千五百万トンの実施にする、こういうことが言えるのかどうか、そういうことがただいま言えない状況だ、これがいませっかく総合エネルギー審議会なりあるいは石炭鉱業対策調査会等でいろいろ研究されている、こういう状態でございます。
  121. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、そこでいろいろの言いのがれをされるようですけれども、具体的にひとつ聞いてまいりたいと思っておる。  いまの発電量の中で石炭を原料とする発電量は何%を占めておりますか、通産大臣、お尋ねいたします。総発電量の中で石炭を原料とする電力は何%ですか。
  122. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私の記憶しておる数字に誤りがなければ、いまは電力会社で国内炭を使用しておるのは四四%、そして従来は、これは少し上がって、三十七年ごろは三三%が四四%ぐらいになっておると思いますが、政府委員から、もっと正確な書類を持っておるでしょうから、お答えをいたします。
  123. 勝間田清一

    ○勝間田委員 政府委員、いいですか。
  124. 三木武夫

    ○三木国務大臣 お答えいたします。全体で三〇%程度ということでございます。
  125. 勝間田清一

    ○勝間田委員 重油を燃料にしての発電量は、全発電量の一体何%を占めておりますか。
  126. 安達次郎

    ○安達政府委員 大体石炭火力と同じ比率でございます。大体三〇%ぐらいとお考えいただきます。
  127. 勝間田清一

    ○勝間田委員 最近の重油の値下がりで、かつては八千何百円のC重油の価格でありましたけれども、最近はすでに六千円という状態になっておる。石炭問題が重要になったのが三十四年ころと考えてみまして、三十四年から今日の四十年、昨年まで、重油の値下がりによって発電の関係の燃料費の節減は一体幾ら行なわれたでしょう。幾らダウンがあったでしょう。——時間がなんですから私から申しましょう。千五百億円これによって燃料費は節減された。これが今日の電力業界の燃料費の節約です。三十四年から四十年までの間に、重油の値下がりだけで千五百億電力会社は利益している。利益ということばを取りかえますと、燃料費を節減している。  しかも、私はここで通産大臣にひとつお尋ねいたしますけれども、電力の料金は原則として原価プラス利潤できまっていることはあなたも御存じのとおり。その原価の中には石炭代が計算されている。その石炭代は幾らか。実際に電力会社が買っているのは幾らか。ここで数字で示してください。
  128. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  129. 安達次郎

    ○安達政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問の、いわゆる料金に織り込まれている石炭の価格と最近の石災の実際の買い入れの価格との対比を御説明申し上げます。  これは、各地区でみんなそれぞれまちまちでございます。そして、同時に、料金に織り込まれております時期も、みな各社がそれぞれ料金の変更がございますので、基準の時期もまたまちまちでございます。北海道は、二十九年の下期から三十年の上期の原価計算期間、大体それと四十年の下期の単価を比べますと、約千六百九十円ほどの値下がりを来たしております。
  130. 勝間田清一

    ○勝間田委員 値下がりじゃなくて、いま、現在幾らで見積もられているか。それで、幾らで買っているか。
  131. 安達次郎

    ○安達政府委員 ただいま料金で見積もられておりますのが三千九百三十七円で、ただいま買っておりますのが二千二百六十一円でございます。これは北海道。次は東北で、織り込まれておりますのが三千八百四十六円で、買っておりますのが、四千五十六円。これは逆に値上がりでございます。東京では、四千七百三十一円で、ただいま買っておりますのが四千六百九円でございます。中部電力は、五千二十円が織り込まれて、買っておりますのが五千八十九円。北陸は、石炭火力はございません。関西が、五千四十八円が織り込まれておりまして、買っておりますのは四千百四十五円。中国が、三千五百五十一円が織り込まれておりまして、買っておりますのが二千八百七十三円でございます。四国が、四千六百五十九円に対して、買っているのが三千八百四十円。九州が、二千六百二十五円織り込まれておりまして、買っておりますのが二千三百七十九円でございます。ちょっとこの全体の平均というのは、基準時点がまちまちでございますので出しておりません。
  132. 勝間田清一

    ○勝間田委員 佐藤さん、いまのおわかりでしょうね。電力料金の中で原価計算しておるので若干見積もりよりも高い石炭を買っていると思われるのは、東北電力と、あと中部電力が六十円ぐらい高いものを買っているというだけで、あとは全部大幅に下がっている。実際にこういう状態。こういう安い石炭を実際は手取りしておきながら、今日電力会社が、重油を使えばもっと安い電力ができるのに、石炭を使わせられるから負担増になるので、石炭をふやすことはごめんだと言う理由は、これで成り立たないということがおわかりだと私は思う。すなわち、料金で石炭は保障されている。重油と比較すべき性格のものではないのだ。これは承認されますね。石炭を燃やすだけの料金というものは、この電力料金の中で保障されている。しかも、御案内のとおりに、安い石炭を現に手に入れている。こういう状態で今日行なわれている電力会社が、一体どうして石炭の取引を渋るのですか。なぜもっと買わせないのですか。佐藤総理大臣の見解をひとつ聞かしてもらいたい。
  133. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石炭の一番の大量需要者は電力会社でありますから、現在の重油の火力発電を直ちに石炭に取りかえるというようなこと、それを押えて石炭の使用を増加するということは、技術的にもなかなか問題がございます。したがって、そういう制約はあるけれども、できるだけ政策的に石炭の需要というものを電力会社に確保してもらうように、強力な行政指導を行なっていきたいと考えております。
  134. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私の質問をあなたそらして考えて言っていらっしゃる。石炭を使わせることは負担増になるという主張は、よく電力会社がすることです。負担増にはなりませんね。どうですか。
  135. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは、御承知のように、現在千円重油と石炭との一トン当たりの価格は違いますし、それに運搬やいろいろ入れたら千百九十円ぐらいの差があると思います。そういうことで、石炭を重油にかわって使えば負担増になることは、その上の計算からいって明らかでありますけれども、しかし、石炭の一番大口需要は電力会社ですから、これはどうしてもいろんな燃料政策の上からいって、ある程度石炭の需要を確保しなればならぬわけです。そのためには、やっぱり電力会社に相当な石炭の需要を確保するということでなければ、政策的に需要を確保しなければ、ただコスト計算だけからくれば石炭の需要は減る一方でありますから、今日までも、電力会社に対しては、政府としてできるだけ石炭の使用というものに対して強力にこれを要請してまいったのでございます。今後も、これはまだきまっておらないのでありますが、石炭の今後の長期的な供給の見通しの場合において、電力会社にはある程度の石炭の需要というものを確保してもらうように強く要請したいという考えでございます。
  136. 勝間田清一

    ○勝間田委員 あなたの言われるのは私は理屈がわからぬと思う。電気料金は石炭、重油等が原価計算の中に入れてあるわけだ。織り込み済みなんだ。もしそうでないならば、電気料金を下げるべきなんだ。電気料金を下げずに、織り込み済みであるから当然石炭を使うのはあたりまえなんで、それを負担増というわけにはいかぬ、これは承認されるでしょう。三木さん、どうですか。あなたも年取られたのじゃないですか。
  137. 三木武夫

    ○三木国務大臣 お答えをいたします。  いま言われておるのは、石炭のことばかりを言われるわけですが、やはり人件費の増(勝間田委員「人件費は関係ありませんよ」と呼ぶ)いろいろありますから、電力料金の計算の場合には、単に石炭だけというわけにもいかない。いろいろな総合的な計算というものがなされなければならぬので、石炭の価格がこれだけにきめられておるから、その割合によって電力料金というものに対してどうこうするというふうな計算には私はならぬと思います。
  138. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いま貯炭が一千万トンにもなろうとしている。この処置というものが非常に大事だと思う。この貯炭が、おそらくこのままに放置すれば、来年はあるいは千三百万になるかもしれない、あるいはもっとふえるかもしれないと私は思う。この問題もいまの九電力が買うか買わないかという問題に関連していると思う。でありますから、九電力にさらに買わせるという手段を当然とるべきだと私は思うけれども、もう一つ当然やるべき処置というものは、単に貯炭対策として融資するとか融資しないとか、置き場をふやすとかふやさないとかいう問題でなくて、この貯炭の石炭を減らすという処置というものをいまから考えておかなければ、私は来年の対策が立たないと思うのです。その場合に、今日当然考うべきなのは、電発の増設をことしから着手しておかなければ間に合わないと私は思う。でありますから、九電力にもっと石炭を買わせるという処置を強力にとること、それから電発の二基増設を直ちに開始すること、この処置をとっていって初めてこの貯炭対策というものが明確にとれると私は思う。この決意があるかどうか、ひとつお聞かせを願いたい。
  139. 三木武夫

    ○三木国務大臣 電力会社に対しては、できるだけ石炭の需要を確保するように努力することはしばしば申し上げたとおりであります。そのほかにいま御指摘の電発の石炭火力の発電所は、御承知のように三基はいま建設中であります。追加二基することになっている。これにはできる限り補正の手続もとらなければなりませんが、いま五十七万キロワットの三基が明年、明後年にかかって完成をする。さらに二基、五十万キロワットの電発による石炭火力の増設をする計画を立てておるわけであります。しかし、来年度着工というわけには私はいかぬと思いますが、早急にひとつ、第一期工事が終わり次第第二期工事にかかれるように努力をいたしたいと考えております。
  140. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは総理大臣、また通産大臣、もう少し繰り上ぐべきだと私は思う。そして来年の貯炭のことを考えてまいり、またその及ぼす影響というものを考えてみれば、時期というものが非常に大事だと私は思う。でありますから、日本の電力需用のことも考えてみますならば、私は、この二基増設という問題とその着手という問題をさらに繰り上ぐべきだと思う。それで初めて石炭政策にあなたが真剣に取り組んでいることになると私は思う。そういう問題を処置しておかないで、今日の事態答申待ちだ何待ちだなんということでその日を過ごしておったのでは、この問題は永久に解決がつかない。総理大臣、ひとつこの際に明確な回答がほしいと思う。
  141. 三木武夫

    ○三木国務大臣 このあと二基ですが、私もやはり勝間田君と同じように、電発の火力発電というものは相当増設をして、石炭の需要を長期的に確保しなければ、電力会社といいましてもなかなかいろいろ——電力会社は、先ほど言ったように、石炭の価格が下がったりしても、人件費、資本費などのいろいろな関係があるわけでありますから、やはり電発というものに相当な石炭火力の重点を置くべきだという私も意見であります。そういう意味で三基いまやっていますけれども、でき得べくんば、まだ工事が終わらないときにあとの二基について着工するくらいのスピードで検討をしたいと考えております。
  142. 勝間田清一

    ○勝間田委員 この意味では通産大臣、ひとつしっかりやってください。  それから、いまの考え方を進めてまいりまするならば、四十五年目標に現在の三基とプラス二基の五基ですね。それにさらに三基ないし五基の電発の火力専焼炉というものをつくってまいりますならば、ここで三百三十万トン以上の需要を確保することは容易にできる。これが日本の電力の総需用の伸びの中で占める地位というものは、総体的にはそう大きなものではないと私は思う。したがって、これは今日の石炭需要の中で占めることを考えてまいりますると、今日の五千万トンにしようとか、五千二百万トンにしようとか、いや五千三百万トンがどうも適正な規模であるとかいうことをあまり気にしないで五千五百万トンの生産目標ということを立っても、決して架空な議論ではないと私は思う。  でありますから、ここに一つの具体的な問題から私は出発をいたしたのでありますけれども、五千五百万トンという柱をはずすことはきわめて簡単なことだ。しかし、その及ぼす影響はきわめて深刻なものである。たとえば八百万トンのスクラップであるならばたいした血も出ないかもしれない。しかし、もう二百万トンふやして一千万トンをスクラップにするということでありまするならば、おそらく四つ五つの大きな会社は倒れるでしょう。少なくともそれで三万の首は飛ぶでしょう。そむによって社会不安が起こるでしょう。それによって日本の失対事業その他の問題もさらに大きな問題として盛り上がるでしょう。私は、ここであなたが、いわゆる佐藤内閣がもう五基電発で起こすことによって解決される五千五百万トンというものをやるかやらないかということによって、五千五百万トンベースという目標が立つか立たないかという岐路であるし、産炭地、産炭地労働者等々の諸問題を考えてみると、私はきわめて明快な解決さるべきポイントを持ちながら、そのポイントを失うおそれがある。でありますから、私は単なるテーブルの上の論として、いやどうも五千五百万トンは架空だ、いま五千万トンしかないから、その辺で落ちつけよう、こういう考え方でこの問題を処置すべきでないと思う。ましてや、三十七年来今日までの経過をたどってみると、五千五百万トンの目標というものは、私は真剣に考えてもらいたい。佐藤総理は、五千五百万トンの目標はおろしませんということを、この際に確約をしてもらいたい。総理、いかがですか。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 せっかくの勝間田君からの御意見ですが、そう簡単には実は確約はできません。先ほど来、一体石炭の単価というものをいろいろお尋ねになりました。現在の単価はこれでいいのだ、これを確保するのだ、こういうことでお約束できますか、できないでしょう。だから、ただいま言うように、需要を喚起すること、そうして、適正な価格のもとで需要はいかにして喚起されるか十分考えなければならない。一方的に五千五百万トンはだいじょうぶです。先ほど来いろいろ炭価を聞いたが、それならだいじょうぶだ、こう言われますが、私はそうじゃないと思うんですよ。だから、これはもう少し、さっき勝間田君御自身が御指摘になるように、総合計画−十分計画性を持った、その上でただいまの目標を立てる、こういうことでないと私は無理だ、かように思います。
  144. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はあなたの言うことばさえわからない。いまの発言が特にわからない。でありますが、佐藤さんのお考えについてはさらにひとっただしたいと実は考える。いまの石炭会社の借金は、旧債は幾らでしょうか。どのくらいになりましょうか。
  145. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石炭鉱業の累積の赤字は約一千億であります。
  146. 勝間田清一

    ○勝間田委員 一千億は累積赤字で、少なくともこの処置を何とかしなければならないということで、いろいろ考えておられると私は思うんだけれども、これは、政府はどのように処置をされるという考えですか。
  147. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは重大な問題でありますから、ただいま石炭鉱業審議会にもこの問題については諮問をいたしております。そういう答申も参考にしながら、政府は最後的にこの問題の処理を決定いたしたいということで、いまそういう答申も間近く出ようというときでありますから、ここで政府がこういう考えということを申し上げることは適当でない、せっかく努力を、非常に精力的に検討を加えておるのですから、そういうことも参考にしながら、政府は最終的に態度をきめたいと考えております。
  148. 勝間田清一

    ○勝間田委員 全石炭会社の負債は幾らありますか。
  149. 三木武夫

    ○三木国務大臣 約二千億円であります。
  150. 勝間田清一

    ○勝間田委員 二千億ですね。一年間の石炭販売出炭数量は金額にして幾らですか。
  151. 三木武夫

    ○三木国務大臣 一年約二千億円です。
  152. 勝間田清一

    ○勝間田委員 出炭が二千億、借金が二千億、異常赤字累積が約千億、帳簿資産は幾らですか。存じているでしょう。六百数十億、知りませんか。
  153. 三木武夫

    ○三木国務大臣 資本金全体では約五百億です。
  154. 勝間田清一

    ○勝間田委員 帳簿資産ですよ。五百億ですか。間違いありませんか。
  155. 三木武夫

    ○三木国務大臣 帳簿資産は、これはいろいろ計算を要するので、ここに数字を持ち合わせておりません。将来そのお答えをする機会はあるとして、いまこの場では、資本金はいま言ったとおりでございますが、帳簿価額についてはお答えのできる資料を持ち合わせておりません。
  156. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私の調べだと、約六百数十億ですね、六百四十億くらい。いまの大手十七社等々の現在の株の値段を評価して、そして一体全石炭山の総株の株価総額は幾らでしょう。これも私が計算してありますから、どうぞ御心配なくひとつ…
  157. 井上亮

    ○井上政府委員 お答え申し上げます。ただいま正確な資料は持ち合わせておりませんので、正確には申し上げられませんが、ラウンドで申しますと、大臣がただいま答弁いたしましたように、資本金は要するに株になっておりますが、株価は、五十円以上の会社も一、二ございますけれども、ほとんど大多数の会社は、大体四十円ないしそれ以下ということになっておりますので、きわめて低い状況でございます。
  158. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私がなぜこうしたことをお聞きするかといいますと、この旧債の処理のために、政府は一説において公債を発行しようという考え方を持っているとか、そうした石炭審議会答申がなされるとか、それに対して大蔵省は均等償還がいいとかという考え主張しているということも聞いておる。この旧債を政府が借りかえて肩がわりしていこうという案が出てくる公算が非常に大きいのではないだろうか。  そこで、私どもが今日非常に考えねばならぬ問題があろうと私は思う。そうでしょう。二千億円の売り上げ高、資産はわずかに、帳簿にしては六百億程度、株価にしてみて七百億程度、しかし借金は二千億、しかも異常赤字の累積は一千億、こういう会社の実態というものを国が知っておって、少なくともこれは納税者に対して重大な犠牲、影響をかける問題でありますが、これを政府が肩がわりしていこうという政策をとる場合においては、国民が納得いくかどうかという問題は私は実は重大な問題だと思う。今日まで私企業ベースで、そして石炭に対してあらゆる金をつぎ込んできた。この予算もばく大なものだと私は思う。そして最後の段階に立って、こうした資産内容の日本の石炭企業そのものに対してさらにばく大な肩がわり資金をここに政府が出して、肩がわりしていこうという考え方、公債発行をしていこうという考え方というものについて、私は非常な疑惑を持つ。  このときに大切な問題は、国有化の問題というものが真剣に考えられていかなければならぬ問題で嫁ないだろうかと私は思う。しかし、その場合における企業者の責任というものを私どもはもとより正当に追及しなければならないということも当然であります。不当に国民にその負担をかけるわけにはまいらぬということも考えなければならない。でありまするから、この旧債処理の問題等については、やがて具体的な案をひとつわれわれは提示したいと思っておりますけれども、まだ政府のほうは具体的な案を持っておらないようでありますから、私は警告にとどめておきますが、この資産の実態ということをよく究明をして、そして国民の納得のいく体制というものをとることを強く要望したいと私は思う。この際にそれに対する総理の見解をひとつ承らしておいていただきたい。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま勝間田君から、勝間田君の考えをも含めていろいろ御要望になりました。私も、確かにこの問題は、ただいま政府が当面している経済界における一番大きな課題だと、かように思っております。しかも政府がこれをただ単に解決するというだけでなく、国民の負担にならないような、全体の負担にならないような、そういう形においてとにかく解決しなければならない。過去における石炭鉱業が果たしたこの役割、またそこに多数の従業員のいることに思いをいたして、これが安堵のできるような方法がとりたい。しかし、ただいまの御指摘にもありましたが、将来国民の負担にならないようにひとつ考えろと、こういうことはしごくもっともだと思います。十分慎重に検討してまいりたいと思います。
  160. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、最後に二点ほどひとつお尋ねしておきたいと思うのですけれども一つの点は、やはり基本的に解決をつけなければならぬ第三の点は何であるかというと、鉱区の調整だ、統合だ、新鉱開発だということを今日まで言い続けてきた、だが今日まで見るべきものを見ておらない、たとえば通産省の予算を握っておられる通産大臣はおそらくおわかりだと私は思うけれども、たとえば鉱区の調整という問題について一番大事な問題は、この鉱区は一体どのくらいの価値を持っているかということの認定が一番困難だ、それならばボーリングしてみなければならない、調査してみなければならない、その鉱区の価値というものの決定ができないで、そのためには予算が必要だが、そのための予算もない、そういう具体的な処置がとれておらないために、今日鉱区調整という問題は一歩も進んでおらない。しかし今日、そうした鉱区調整が進めばできるという問題は幾らでもあるでしょう。北海道にだってあるし、常磐の北部だってあるし、他の地域だって幾らでもあるでしょう この鉱区調整だとか統合とかいう問題をなぜ推進しないのか、そのネックはどこにあるのか、その問題を解決するためにどういう政策をとるのか、そういう対策というものを一体今日までとってきたのかということを私は追及せざるを得ないのだ。これも今日まで唯々諾々としてその年その年を過ごしてきたのじゃないかと私は思うのです。佐藤さん、そうじゃないでしょうか。これも政府の怠慢じゃなかったでしょうか。これもひとつ有言実行にお願いしたい。これがまずあなたにお尋ねをしたい第一であります。どういうようにお考えでございましょうか。どういうようにやられますか。
  161. 三木武夫

    ○三木国務大臣 勝間田君御指摘のように、今までもやらぬわけじゃないけれども、やはり大規模な鉱区調整が行なわれたとは言えません。今後これは根本策を考えようというのでありますから、機会としては絶好の機会であります。だから、今度はもう少し積極的に、石炭の根本対策というものを出すこの機会に鉱区調整をやりたい、こういう決意でございます。
  162. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでは、ひとつ私約束しておきたいと思うのですけれども、通産大臣、その鉱区調整の抜本的なものを積極的にやるというその具体的な案を最近出してもらえますか。
  163. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、どうせ大々的にやろうとすれば、十分検討を加えてやる場合には、勝間田君に出すばかりでなしに、明らかに国民の前にしなければならぬわけでありますから、これは十分検討をした後においてそういう考え方を明らかにする日があろうと考えます。
  164. 勝間田清一

    ○勝間田委員 非常に注意深い答弁をされますけれども、私はやはりやるということで必要な経費もやはり計上して、必要な法令があるなら必要な法令もつくって、そうして整備されたものを次の機会に国会に出すなりという踏み切り方をしていかないと、私は一つも前進しないと思う。佐藤総理、どうですか。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま三木君からお答えいたしましたように、この問題は影響するところ非常に大きいのですし、ただいまも言われますように、過去においても統合が叫ばれ、調整が言われ、そういう意味で開発と同時にそれをやってまいりました。しかしながら非常に弱かった、推進力が十分でなかった、こういうことは指摘されると思います。ただいまちょうど調査会においてもいろいろ案を練っておる最中であります。おそらくただいまの対策としての一つの方向としてはこういう点もあるだろうと私ども期待しておりますが、ただいま三木大臣からお答えしたとおりでありまして、そういうものが出てまいれば積極的に政府はこれと取り組んでいく、こういう態度でございます。
  166. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それで、最後にお尋ねをしたいのでありますが、この石炭の苦衷の中で一番苦しんでいるものは労働者と産炭地、その労働者の一番苦しんでいるものは、もとよりたくさんありますけれども、退職手当、未払い、給料、貯金、こういった既存の債権といいますか、そういうものが現在の状況としてもわずか二%しか補償されておらない。あとの八七%というものは未処理の状態にある。あの苦しい山の中で働きに働いて、退職金をもらえるはずだった。給料をもらえるはずだった。一生懸命に働いてわずかの貯金をしたが、そのわずか二%しか返ってこない。この未処理の労働者の債権を一体どうするか。そして労働者の最後の願いである年金制度を特別にどうするか。この当然の目下の要求と将来への要求というものをどう処理するかということが今日の一番中心の問題だ。  もう一つの問題は、産炭地の問題、不景気で設備投資が横ばいで、しかも立地条件の悪い産炭地に工場誘致をしていこうという、そういう状態を一体どう打開するかということについては、国家が直接これを行なうことなくしてはできないはずだ。この矛盾した経済状態の中で産炭地に積極的な振興政策をとることについてはどうしたらいいのか、まことに明快なきわめて重大な問題が提起されているのだが、この問題に政府はどういう回答を持っているのか、この問題だと私は思う。この問題について通産大臣、総理大臣、特に私は総理の見解をひとつ聞きたいと思う。いかがでしょうか。
  167. 三木武夫

    ○三木国務大臣 最初に御指摘になった特別年金制度は、これは各省間の意見も一致いたしておりますので、明年度を期して実施をいたしたい所存でございます。  それから産炭地振興………。(勝間田委員「内容と、だれが負担するか」と呼ぶ)退職金については、これは社内留保の形になっておるのでありましょうが、これが抜本的な対策が出て、会社の資金繰り等にも相当余裕が出てくれば、こういう面からも解決を促進する面もありましょうが、いろいろな面において退職金問題などについても今後どう処理するかということは、根本策の中にも検討を要する面があると思います。いままでは資金繰りも会社では非常に悪いし、社内留保というような形であっても退職金を支払えないようなケースが非常に多かったわけでありますから、これは抜本策の中においてこういう問題も考えてまいりたいと思っております。  それから、産炭地振興については、政府は、いろいろな産炭地の道路とかその他の公共施設、さらにこれを拡充して、そしていままでは景気の悪かった関係もあるわけでありますが、中堅企業になるような企業を誘致するということに対して、景気もだんだん回復してくる状態にもありますので、一段と積極的に中堅企業を産炭地に誘致する、それと、いろいろな中堅企業が来やすいような公共的な施設も拡充していく、こういうことを並行して行なわなければ、観念的に産炭地振興といってもなかなか実効はあがらない。そういう施策をじみちに積極的に積み上げていくよりほかにはない。これに対して一段と力を用いたいと考えております。
  168. 勝間田清一

    ○勝間田委員 石炭の問題が一応なんでありますから、あと外交問題が若干残っておりますけれども、それは本会議が終了して後にひとつ質問を続行さしていただきたいと思いますので、一応ここで休憩……。
  169. 福田一

    福田委員長 勝間田君の質疑の途中でありますが、本会議開会されますので、本会議散会後直ちに再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後四時二十四分休憩      ————◇—————    午後五時三十一分開議
  170. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、閉会中審査に関する件につきましておはかりいたします。  予算実施状況に関する件及び予算委員会運営の改善に関する件、以上二件につきまして議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。  なお、閉会中審査案件が付託された場合、委員を派遣して現地を調査する必要もあるかと存じますが、その際の派遣委員の選定、派遣地の決定等につきましては委員長に御一任を願い、議長の承認を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。      ————◇—————
  173. 福田一

    福田委員長 質疑を続行いたします。勝間田清一君。
  174. 勝間田清一

    ○勝間田委員 沖繩問題について、ひとつ質問をいたします。  去る五月の九日の日米協議委員会におきまして、政府は、自治権拡大あるいは渡航の自由等について非常な成果を得たような当時宣伝をいたしておりましたが、事実はそうでないように思われてならないのであります。まず、総務長官お尋ねしたいのでありますけれども、沖繩に対する渡航制限の問題がどんなに緩和されたのか、ひとつ具体的にお示しを願いたいと思うのです。
  175. 安井謙

    安井国務大臣 沖繩の渡航の問題につきましては、かねてから政府も、できるだけその手続の簡素化、あるいは日本の国籍をもって琉球の人が外国に行けるように、そういった点で折衝をやっておったわけであります。大体、渡航手続の書類あるいは許可期限の延長というようなものは認められまして、同時に、先日の日米協議委員会におきましては、沖繩政府が、旅券に関する発行は米民政府から日本政府へ移す、こういうような取りきめもできたわけであります。しかし、基本的な出入管理の権限そのものは依然としてまだアメリカ政府に残っておるというのが現状でございます。
  176. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は最近の一つの事例を持っているのですけれども、たとえば社団法人自由人権協会が昨年九月、六名の渡航願いを出したところが、そのうち二名だけが実際許可がおりた。ところが、ことしの五月六日になってあとの四名がおりた。一体なぜ去年の九月に出したものがことしの五月六日になってから出なきゃならぬのですか。一体こうした遅延というものはどこから出てくるのでしょうか。
  177. 安井謙

    安井国務大臣 旅行出入許可の権限は米民政府自身が実は持っておるわけでありまして、日本政府といたしましては、これを取り次ぐという仕事に相なるわけでありまして、誠心誠意取り次いでおりますが、向こうさんの事情でときどきそういったようなことが起こりますのは非常に遺憾でございますが、これは権限自体をまだ向こうが持っておるというような事情から、現段階において、日本がこれをどうするというわけになかなかいきかねる問題でございます。
  178. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、沖繩に行っても聞いたのでありますが、日本の国会議員でも、用事があって行くのに、間に合わないように出すのです。一体こういう処置は民主主義の原則でしょうか。
  179. 安井謙

    安井国務大臣 われわれといたしましては、できるだけそういった希望に対して便宜が与えられるように、極力手続等は促進方を訴えておるわけでありますが、何ぶん権限自身をいま向こうが持っておる、御承知のとおりの状況でありまして、これが遺憾ながら思うようにまいりかねておる面がときどき起こってくるということで、残念に思っておるわけであります。
  180. 勝間田清一

    ○勝間田委員 また、そこへ入る時期、通常は半年だと私は思うのです。しかし、この身分証明書を見ますと、おまえは一カ月以内に行かねばならぬ、入域期限をわずか一カ月に切っている。これも一体通常の状態でしょうか。
  181. 安井謙

    安井国務大臣 これもどういう事情ということになりますか、いまの入域の許可を一カ月というのですか、四十日。四十日間の間に入ってくれというので、滞在の日数はまた別に相なっていると思っております。
  182. 勝間田清一

    ○勝間田委員 四十日じゃございません。五月三日から六月二日までです。三十日です。そして、滞在は六月の十二日までだというのです。一カ月の入域期間です。
  183. 安井謙

    安井国務大臣 これは、国会議員のせんだっての場合の問題でございますね。私の承知しておりますのでは、六月十日から七月二十日までの期間に入域してくれ、こういうふうに聞いております。
  184. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は一つの例をここに申し上げておるわけです。国会議員の場合じゃございません。  それからもう一つお尋ねしますけれども、五月三日から六月二日までにあなたは入ってください、こういうのでありますから、五月三日から六月二日まででしょう。しかし、その許可がきたのは六月五日なんです。どうしてうしろへ戻ることができるのですか。時計をうしろへ回すことができるのですか。
  185. 安井謙

    安井国務大臣 どうもこの許可の日限が切れて発行されておるということはまことに遺憾だと思いますが、私どもは、こういった手続はできるだけ急いで、迅速にするように常に督促はしておるわけでありまして、おそらく何かの手違いで一両日おくれたのじゃなかろうか。それからなお、いま私が申し上げましたのは国会議員の入域の問題でありまして、それから、いまお話しの自由人権協会の方につきましては、勝間田委員お話のとおりでございます。
  186. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私があえてこういう質問をいたしますのは、まことに民主主義の名にふさわしくない、ごまかしの、しかも、出すことは出すけれども、事実上行けないような身分証明書を出したり、あるいは渡航許可を出したり、そういうごまかしをすることは、これは政治を暗くすることじゃないでしょうか。そういうことが今日の沖繩と日本との間に行なわれている政治じゃないでしょうか。できないならばできないで、明確にすべきじゃないのでしょうか。一体こういう事態を、日本政府は日米協議会を通じて解決すべきではないでしょうか。どうして解決されますか。こういう不明朗な状態を早く解決をつけることが明朗にすることじゃないのでしょうか。明らかにしていただきたいと思う。
  187. 安井謙

    安井国務大臣 従来から比べますと、最近に至りましてこの書類の簡素化、あるいはそういった手続の短期化といったようなこともだんだん行なわれてきておるとは思っております。しかし、いま御指摘のような、われわれの非常に不本意とするような状況も起こっておることも事実でございまして、私ども、毎月いま日米間におきまして、この旅行手続につきましては常に前向きの協議を進めておるような次第で、今後そういったことが、幾ら向こうの権限下にあるとはいえ、できるだけないようにつとめるべく、ひとつ今後も努力をいたしたいと思っております。
  188. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それからもう一つ、御案内のとおり、いま沖繩では一つの重大な問題が起こっております。申すまでもなく、沖繩に起こった民事事件が二つございました。一つは社会大衆党の友利君の、実際上は当選していながら、いわゆる行政命令で資格がないということで失脚をしたことから、これに対する訴訟が起こって、第一審では友利君が勝った。もう一つは、言うまでもなく、輸入のサンマに対する物品税がかかって、これは物品税の対象外だということがわかって、政府に対して還付金を要求した。第一審は原告の勝利となった。ところがあわててこれまた行政府の布告を出して、いかにも税金をとるのがあたりまえであるような、あとからこれを追認するような布告を出した。そうして上訴審にこれが回ったところが、ワトソン高等弁務官は、これをアメリカの民政府裁判所に移送することの命令を出した。これは沖繩の国民に対しても、県民に対しても非常なショックを与えている。われわれは大統領の行政命令というものがわれわれにとって非常な不満なものであることは申すまでもないのだけれども、こうした処置が行なわれるのも、たとえばアメリカの権益、安全に重大な影響を及ぼす場合ならばともかくといたしまして、全く民事に関係した物品税に関する問題や選挙に関する裁判の問題までこうした強権を出して横車を押すというようなことが一体許されていいだろうか。だからこそ、今日、琉球の立法府は全会一致でこのワトソンのいわゆる命令を撤回することを要求する、また同時に、伝えられるところによると、本日はいわゆる沖繩の上告裁判所はこれまた撤回要求をすると聞いております。当然だと私は思う。こういう事態に対して日本政府は一体どうするのか。総理、この事態を一体どう考えますか。沖繩県民がいまかたずをのんで日本政府の態度を待っている、注目している。総理大臣のひとつ見解を承りたい。
  189. 安井謙

    安井国務大臣 いま御指摘のようなサンマ業者の物品税の問題、あるいは選挙の当選無効の問題で、この裁判権が民政府へ移管されたといったようなことは、これは国民感情からいえば非常におもしろくないことであろう、これは私どももそう考えます。ただ、アメリカ民政府側の考え方というものが、アメリカのいまの利害その他に重大な影響がある、こういう見解を下した場合には、これまた移管し得るという取りきめに相なっておるわけでありまして、まあ今度の場合は、裁判権、裁判の結論をめぐりまして、これが布令、布告に対する沖繩政府の裁判権の関与であるというふうな見解から、布令、布告に対して民政府と別の見解を沖繩の裁判所でとられることはたいへん困る、こういう見解から、これを、上訴裁判に移っております際に、民政府裁判に移管したようでございまして、詳しい事情につきましては、その法律的な立証等につきましては、いまも取り調べ中でございますが、いずれにいたしましても、こういう問題はなるべくおだやかに解決するようなことを私どもも念願しておる点においては御意見と同じでございます。
  190. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理大臣の見解、どうですか。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この事態につきましては、ただいま安井国務大臣からお答えしたとおりであります。理屈よりも、こういう事態が起こったということを私はまことに困った問題だと、かように思っております。できるだけ早く円満に現地において解決ができるように、これを心から望んでおる、いましばらく推移を十分注視したい、かように思っておる次第であります。
  192. 勝間田清一

    ○勝間田委員 アメリカの諸君が、たとえば選挙の場合に、国民が、あるいは県民が選んだ者を好ましくないという場合に、それを資格がないという別な手段で資格を喪失させてその当選を無効にさせよう、こういうまことに非民主的な政治をやるのではないかという疑いを私たちは深く持たざるを得ない。また、法律上きめられていない物品税を政府があやまってとった。当然返すべきだ。ところが、それを糊塗するために、事後においてそれをまたあたかも合理化すがごとくに追認の布告を出したり布令を出したりして、そうしてそれを合理化そうとする、横車を押そうとする態度、これも私は民主的態度ではないと思う。だからこそ第一審において原告が勝った。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 そういうことを許しておいて民主主義を真に信頼するということはおそらくできなくなるのではないだろうかと私は思う。また、それが事実通るかもしれないというおそれから、今度は裁判権まで他に移さなければならぬという状態は、悪に悪を重ねることだ。それで一体どうして民主主義なんていうことが言えるだろうか、私はそう思う。  そこで、私は総理に聞きたいんだけれども、現地で解決をされることを望むなどという態度ではなくて、私は日本政府が、明らかにこれは遺憾であるということの態度を表明することと、同時に、明らかに自治権を拡大する重要な一環なのであるから、裁判権を確立する上において、自治権を最も拡大することの一つのポイントであるから、自治権拡大を主張しておる佐藤内閣としては、日米協議委員会を通じてこの問題をしっかりと話し合って、そういうようなことのないように抗議すべきだ、解決をはかるべきだ、こう思うのですが、さらに一歩進めたあなたの見解を承らしてもらいたい。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、ただいまいろいろ調査もいたしております。また、今後の発展のぐあい等も注意していかなければならない、その際に、ただいまのような勝間田君の御意見もございますが、私どももこの問題に対して善処する、かような気持ちでおりますから、どうか御了承いただきたいと思います。
  194. 勝間田清一

    ○勝間田委員 総理も善処されることを特に強く希望しておきたいと思うのであります。  次に、総括的な沖繩政策について私はひとつ総理の見解を承りたいのでありますけれども、ワトソンにいたしましても、アメリカの政府にいたしましても、アジアの対立、緊張がある限り、あるいはまたベトナム等の諸問題がある限り、沖繩の全面返還なり施政権返還はできないのだ、こういう論理が私はいままでの論理だと思う。私はこの論理にも賛成できないし、またアジアの緊張のために沖繩を使用するということに対してももとより賛成することはできませんが、しかし佐藤内閣として、あくまで日本国民の利益の上に立って、別なことばでいえばナショナルインタレストの上に立って日本の外交をやっておるのだと私は思うので、そういうのであるならば、当然あなたが一面においてアメリカの外交に協力するなら、他面において日本の利益を主張するという態度がもっと明確に出ていいのではないか。協力の反面に自己の主張があっていいじゃないのか。たとえばあなたが沖繩の今日のアメリカの立場を認めるなら、アメリカのその理由がなくなったならば直ちに沖繩の全面返還をすべきだという約束を取りつけるべきじゃないのか。常に日本のナショナルインタレストを主張しつつアメリカの主張を聞くという態度がなければならぬのじゃないだろうか。私は、佐藤内閣のアメリカに対する協力の反面に、沖繩の全面返還についてどういう主張をしているのか、沖繩の県民、日本の利益についてどういう主張をしているのか、それをあらためてここで聞きたいと思う。それがなければ、単なるアメリカに対する追従になるのじゃないでしょうか。日本政府として、この沖繩に対する全面返還についてどういう話をしているのかをあらためてここにお聞きをしておきたいと思う。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的な話は、昨年私がアメリカへ参りましてジョンソン大統領と会ったときに、共同コミュニケにその基本的な方針は出ております。さらにまた、その後私が沖繩を訪問した際に、沖繩の同胞に対して約束したこともございます。すでにそれらはそのおりおりにそれぞれ明確にしたつもりであります。また皆さん方からもこういう点について詳細なお尋ねがありまして、私はそのつどお答えしてまいりました。ただ・いまのお話のように、日本の国で政局を担当しておる私としましては、ナショナルインタレスト、これを増進する立場に立ってわが国の本来の主張をすること、これは当然であります。そうして、ただいま沖繩について問題になりますことは、沖繩同胞と私どもとの一体化、できるだけ早くこれを実現することにあること、これはその際に申したと思います。また今日も私の考え方には変わりはございません。ただ、沖繩の施政権の返還をし、また祖国復帰を実現する、この立場では同じでございますが、その行き方としては、私はアメリカの理解と協力のもとにこれを実現する、かような態度をとっておりますので、これは社会党とはあるいは行き方が違うかと思います。しかし目標とするもの、そのねらいといいますか、それは同じような目標だ、私はかように思っております。
  196. 勝間田清一

    ○勝間田委員 佐藤内閣は組閣当時にアジア外交について、中国に対する前向きの外交ということを主張されたのでありました。しかし最近のここ半年ほどの佐藤内閣のアジアに対する外交の経過を見ておりますると、私は非常に変わってきているのではないだろうかという感じがいたすのであります。たとえば最近の東南アジア開発閣僚会議、これが去る四月に開かれた。政府は大々的にこれを宣伝した。去る六月の十四日からソウルにおいてアジア・太平洋地域の閣僚会議を開いた、これも共同声明等を通じてわれわれは知るのでありますけれども一つの大きな動きであるということを私は知るのであります。最近のインドネシアの政変と、直ちにとった経済援助に対する態度の問題こういう問題も、アジアに及ぼす外交的な影響というものは見のがすわけにはまいらぬと実は思うのであります。しかも、そうしたきわめて顕著な自由主義諸国家の結束、その間における日本の指導的な役割りというものが一面あらわれておりまするけれども、他面において、懸案の事項である、たとえば共産圏に対する政策というものを見ておりますると、たとえば吉田書簡は撤回されたかされなかったか、依然として存続をしておる、中国の国連加盟については依然として重要事項指定方式を貰いておる、人的往来については各種の制限を加えておる、いろいろの中国等に対する政策というものは前進はしない、凍結あるいはむしろ硬直した状態に今日あるということがわかるのであります。このアジアにおける重大な緊張のさ中で、ベトナムという問題がアジアには起こっている、これがアジアの大きな不安の原因を一つなしている。  私は、こうした中で佐藤内閣がとっておる最近のこれらの状態考えてみますると、結局いま佐藤内閣の進んでいる道は、反共の態勢を結集している姿ではないだろうか、こういう印象を受ける。このことは決して単に私の印象だけでないと私は思う。国際的な影響というものを、私もできるだけ中立国なり共産圏なり自由主義諸国家なりの各種の影響を調べてみましたけれども、この傾向として受け取っておるのがおそらく第三者の共通した認め方だと私は思う。日本外交が反共態勢強化の方向に進みつつあるのではないかというこの評価のしかた、これに対して一体佐藤内閣はどう回答するか、これを私は総理大臣にお聞きしてみたい。いかがでしょうか。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまの沖繩の問題でも申し上げましたが、日本の外交の基本的路線が最近変わったとは思っておりません。また、私自身の考え方でこの国のあり方を進めておると、かように思っておりますので、急に反共路線に変わったと、かような感じを私は持っておりません。
  198. 勝間田清一

    ○勝間田委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、ソウルで開かれたアジア・太平洋閣僚会議は、反共のための自由主義諸国家の連帯を強める、あるいは共同関係を強める組織であるというように見てよろしゅうございますか。
  199. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、当初反共体制の強化のための企てであるというようなことを言われておりましたが、結論におきましては、決してそうではなくて、新しい対立をつくるとか、強化するとかということとおよそ反対の、現在ある対立をむしろ解消することを目的とするものでありまして、お説の点とは私は全く反対であると、こう考えております。
  200. 勝間田清一

    ○勝間田委員 対立を解消するというのであればどういう形で一体解消できるのでしょうか。この組織がどうしてアジアの対立を解消する組織になるのでしょうか。それをお尋ねします。
  201. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、特定の勢力を意識してやるというのではなしに、この間集まった国々との間の連帯関係を強化し、共存共栄の施策をだんだん高めていく。そして今後これを継続してやるということになったのでありますが、この次は、まだまだアジアの各国に呼びかけて、その参加を求めようではないかというような方向に進みつつあるのでございます。
  202. 勝間田清一

    ○勝間田委員 自由主義諸国家に限るというのがこの目的じゃないのですか。それでどうして対立が緩和できますか。
  203. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 自由陣営というふうに限ったわけじゃないのです。あの共同コミュニケの中に「自由諸国」というようなことばがたしか出ておったかと思うのでありますが、実際問題としては非同盟その他の国を目ざしておるのでありまして、アジアのあの地域の自由陣営の国はもうみな参加しておりますから、もっとこれを拡大しようということは、自由陣営というものにこり固まるという考え方じゃないのであります。
  204. 勝間田清一

    ○勝間田委員 結局対立緩和という問題がなるかならぬかという問題は、非同盟諸国をこれに入れるか入れないかという問題ではなくて、共産主義陣営と一体どういう関係を保つかということが緩和するかしないかのかぎじゃないでしょうか。そこをどうするかという問題です。
  205. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 着々この目的に向かって堅実に歩を進める体制、方針でやっておるのでございますが、共産陣営に対してはお互いに相手の立場を尊重して、いわゆる平和共存というところに結局持っていこうという真意であると私は解釈しております。
  206. 勝間田清一

    ○勝間田委員 この中には朴政権もあり、またいわゆる南ベトナムの政府も入っており、また最近はフィリピン等もそうでありますけれども、フィリピンを加えて、ベトナムに対する軍事動員をしている国もある。豪州、ニュージーランドのような考え方を持っておる人もある。その中で日本がどういう役割りを果たすかということが私は一番重要な問題だと実は思う。しかし共産主義陣営から見たらば、私の見る限りでは、最近顕著に見られることは、日本が指導的役割りを果たした反共組織という結論が共産主義陣営の評価だ。私はこのことは、事の正否は別として、非常に日本としては重要視すべききわめて重大な問題だと思う。そういう評価の上に立って日本の今日の活動が評価されておるということは、私は根拠があると思う。そういう状態の中で今後の日本の外交を進めていく上においては、決していい結果は生まれてこない。ましてやアジアの緊張を緩和するなどということは、とうてい私はできないと実は思う。こういうものは私はすべからくやめべきだと思う。しかし、私の見解をあえておそらく支持しようとは思わぬだろうと私は思いますから、それに対する回答は求めません。ただ、私は、ひとつ政府の方針として聞いておきたいと思うことは、アジア・太平洋のこの閣僚会議というものと、日本がこの前主宰してやった東南アジア開発会議というものとはどういう関係に立つのか、どういう運営が今後行なわれていくのか、その関係は一体何だ。これはひとつ明らかにしてもらわなきゃ困る。
  207. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 実は発想と申しますか、構想のスタートからこれは全然違うのであります。日本で行なわれました四月の東南アジア開発閣僚会議、これはたびたびこの国会においても申し上げたと思いますが、純粋に経済開発のための会議である。しかもその区域がほんとうのいわゆる東南アジア地域に限定されたのでございまして、この地域は宗教その他の文化関係、気候風土、社会的ないろいろな制度、習慣、そういったようなものは非常に共通の面がございまして、これを一体として考えていくということは必ずしもむずかしいことではない、むしろそう考えるのがほんとうである、こういうふうに地政学的にも言えるのではないかと私は考えます。こういう共通面をとらえて連帯感を強くし、お互いの協力関係を固めまして、そして一国だけじゃなかなかむずかしいので、地域全体が協力して東南アジア全体の開発をひとつ推進しよう、こういうためにはかっこうのこれはスケールである、こう考えた。そしてきわめて短い時間でございましたが、二日にわたってきわめて充実した会議を開催することができた。そして、まずもって農業開発の問題、あるいはその他の産業開発上の諸問題等について相当突っ込んだ論議が行なわれたのであります。  これに反して、ソウルで行なわれましたアジア・太平洋閣僚会議は、当初韓国の提唱にかかるものであります。そして当初は、もちろん日韓条約がまだはっきりできるものとも考えられなかった、そういう時代でございまして、一応韓国としても日本を除外して考えておったのであります。ところがその他の国から、日本の入らないこの種の会議はおよそ意味がないというような議論が出たそうであります。そういうことで、なるほどと、こういうことになったと思うのでありますが、ちょうど日韓問題もだんだん軌道に乗りつつあった。そこで、日本のほうにぜひこれに加わってくれという話でございましたが、それ以前から日本はこれに対して、あまり間口を急に広げるということもどうかというので、このほうは辞退する方針であった。それで、まだ時期尚早である、日本をどうぞ加えないでひとつおやりくださいというようなことで、お断わりしておったわけでございます。  ところが、その後日韓条約がだんだん進展をする、日本も韓国もほかのことをあまりかまっちゃいられないというようなことで、昨年一年はもうほとんどこの問題に手をつけず、両方からその問題に触れなかった。いよいよ日韓国交正常化ということになりましてから、あらためて韓国からそういう申し入れがあったのであります。国会においてすでに私は明らかにしたのでありますが、日韓国交正常化の今日においては、のっけからいままでのようにお断わりというようなわけにもいくまい。話は少し卑近な例になりますけれども、隣組という関係になったのでございますから、それで準備会議がバンコクで開かれるということになったので、その準備会議に臨んで、ほんとうにこの会議日本として参加すべきものであるかどうかということを確かめて、しかる上に賛否を決する、こういう態度に変わってまいりまして、いよいよバンコクの準備会議に臨んだわけであります。そこで日本といたしましては、とにかく対立を新しくつくるというようなことがみじんもあってはいかぬ、そして、むしろ今日ある対立を緩和、解消するという、もっとやわらかな態度でもしこの会議が行なわれるならば日本参加してもよろしいという態度をもってこれに臨んだのでありますが、期せずしてこの準備会議参加した諸国の態度というものは、そういう方面にこぞって賛同をしてまいった。そういうわけでございまして、大体この二つの会議の成立の動機、経路が異なっております。そして、この会議は東京で開かれた閣僚会議と違って、もう少し抽象的な問題でお互いの連帯を強め、協力して、足らざるところをお互いに補って、そしてお互いにりっぱな国家をつくろうじゃないかというような、そういう方面でいろいろな有益な論議をかわした、こういうのでありまして、性格も、その成り立ちの動機も経路も違う、さよう御了承願います。
  208. 勝間田清一

    ○勝間田委員 抽象的な会合だということばを使われますが、しかし、たとえば主宰した韓国が、反共組織としてこれを強めていきたい、軍事的な同盟組織にまでこれを発展させていきたいという非常に強い考え方を持っていることはわれわれ想像ができるし、明らかな事実だと私は思う。この態度に対しては、日本政府は今後どういう態度をとっていくのか、これをまず第一にお聞きしたい。  それから、時間の節減上続けてお尋ねをします。もう一つは、抽象的な組織だと言われるけれども、経済センター、何センター、何センターというスタンディング・コミッティがこれからできてくる。これは私は常設の機関だと思う。あるいは広報機関もできてくる。こういうことを考えてみると、これは単なる抽象的な組織とは私は考えられない。そういう場合においては、いかに言われましても、東南アジア開発会議の行き方というものと重複する、矛盾する、混淆する面というものは私は非常に出てくると思う。それでもなおかつ外務大臣は、これは抽象的な組織であると言われるかどうか、これが第二点。  引き続いて、これは恒常的な組織にすることがお互いに望ましいという考え方になった。まあこれについて翻訳が適当であるかどうかということで、戸叶議員との間に議論があったそうでありますけれども、今後これを恒常的な組織にしていくという考え方が確かにこの国の中にはある。しかし、日本政府考え方はどうなのか、今後の組織に関する問題はどうか、これが第三点。  この三つについての日本政府考え方、これをこの際に明らかにしてほしい。
  209. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この会議の男頭、朴大統領が会議に臨みまして歓迎のあいさつを述べた。その歓迎のあいさつの中に、韓国のいまの姿についての説明がありました。その説明の中に、「共産主義」ということばが確かにあった。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 これは主宰国の大統領、最高の来賓でございますが、その人のあいさつであって、これはどうするわけにもいかない。しかし、その韓国の大統領のあいさつは歓迎のあいさつでございますから、つつしんで拝聴した。そのことが共同コミュニケに書かれておることは事実であります。しかしながら、これに対して参加各国が何らの評価をしたわけではない。そして大統領と立ち話で、私さしで一さしでと言っちゃちょっと失礼だ、向こうが大統領ですから——立ち話をいたしました。向こうのほうから、よけいな刺激をすることは絶対に控えなきゃならぬと思う、それが会議を成功させたゆえんだと考える、というような述懐がございました。私はこれに対して、こういうことにだんだん持っていけば、もし開けば、次はメンバーがもっとふえるだろう、そういったような簡単なやり取りをしたようなわけでございまして、韓国としては今後の会議に対して、特に自分らのいまとっておる姿勢を押しつけようとか、これに同調してくれとか、あるいはこれを応援してくれというような意図は全然見当たらなかったということをはっきり申し上げることができると思います。  第二点でありますが、今回はいろんな案が一、二の国から出ましたけれども、大体の調子は抽象的な国際会議であった、こういうことが言えると思います。しかし、文化、技術、教育、あるいは諸般の情報、そういうようなものについてセンターなり何なりを設けようなんという提案がございましたが、そういう問題は、具体的にこれを取り上げて論議をするということじゃなかった。しかし、今後のことは、これはわかりません。  それから、常設的云々と言われますが、何か常設的な事務局でもつくろうかというような意見もなくはなかったのでありますが、その必要はないというのが大勢の意見で、ただ次の会議にいろいろな議題が問題として課されたのでございますから、そういう問題をもう少し整えて、そして次の会議であるバンコクの会議に出そう。その仕事を一体どこがやるかという話があった。それはバンコクが幹事役になって、バンコク駐在の関係国の大使連中を集めて協議を数回重ねれば、それで事足りるじゃないか、こういうことになりまして、それを称してスタンディング・コミッティーということばが——英文が正文でございますが共同コミュニケに入っておる。  「スタンディング」ということばは、私は英語が弱いのでありますが、必ずしも「常設」と、こう訳すものじゃなくて、これは何というか、もよりの委員会とでもいうのでございますか、「連絡委員会」という訳をつけたのでありますが、これがどうもあまり意訳に過ぎてスタンディングということばが出てこないのじゃないかという非難もありました。いずれにしましても、これを常設的なものにして固定的なものにするという考え方日本としては持っておりませんし、そういう説はただいまのところはどの国も持っておらぬようであります。
  210. 勝間田清一

    ○勝間田委員 時間も何でありますから、今度は反対の面から一つお尋ねをしたいと思うのですが、松村謙三さんが最近中国から帰られて、まことに重要な発言をされておるように私は聞き及ぶのであります。先ほど私が指摘いたしましたように、いままでの中国との懸案事項というものは一つも前進しておらない。吉田書簡の問題といい、国連加盟に対する態度の問題といい、人的交流の問題といい、一つも前進しておらない。こうした一面の共産圏、特に中国に対する外交の非常な膠着ぶりというものは、私どもは一日も早く打開すべきだと実は考える。したがって、この際に当然明らかにしてほしいと私は思うのは、もし佐藤内閣が従来の外交方針が変わらないのだ、最近のアジアにおけるいろいろの活動があったにもかかわらずわれわれの態度は変わらないのだということを明らかにするならば、積極的に中国との外交の前向きの姿勢というものがあらわれてよろしい時期ではないだろうか、私はさように考えるのでありまして、したがって、きわめて古い問題であり、新しい問題であるけれども、吉田書簡の問題はり重要な政治問題の一つとしては、国連加盟に中国が正当な地位を回復する問題について、従来の重要事項の指定方式が引き続いて可能かどうかというような問題についても私は相当問題になると思う。こうした問題についての佐藤総理、あるいは外務大臣の見解というものは、一体どうかということをこの際に明らかにしてほしいと思う。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど日本の態度は反共ではないか、かようなお話がございましたから、私は反共政策をとっておりませんと非常に簡単に答えました。そうして、同時に私は在来の基本方針を堅持しておりますということを申し上げました。この際に、しからばそれをもう一度明確にしたらどうだ、こういうお話でございます。あるいは誤解があるかもわかりませんから重ねて申し上げますが、私はどこの国とも仲よくしたいのだ、いわゆる平和に徹するという考え方を持っております。したがいまして、それぞれの国がそれぞれの政治形態をとっておりますけれども、それについての批評はあえてしないことにしておる。お互いの立場を尊重し合って、独立を尊重し、内政不干渉、こういうことでお互い仲よくしていこうじゃないかというのが私の基本的な態度であります。今日もそれには何ら変わりはございません。したがいまして、最近の状況は、どうも佐藤内閣は反共のほうへ踏み切ったのじゃないのか、かような批判は、私としては非常に迷惑するのです。しかも勝間田君御自身が、私、実はことばじりをとるわけではありませんが、共産主義陣営から見た場合にこの佐藤内閣の評価というか、最近の評価は、これは反共的な陣営に移った、かように見ておるぞと、非常に確信を持ってお話しでございます。私は、しかし勝間田君もそう確信があるわけじゃないだろう、かように思うわけでありますが、このことばは私はどうも耳ざわりのように感じますので、私自身ちっとも変わらないのだ、在来の方針を堅持しておる、このことを重ねて申し上げまして、そういう誤解があれば、その誤解を払拭していただきたい、かようにお願いをしておきます。
  212. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 吉田書簡の問題について私から申し上げます。  吉田書簡はたまたま当時の政府の方針と合致しておったわけであります。しかし、貿易の方針は、やはり情勢の推移とともに当然変わるべきものであって、吉田書簡が保存されれば何百年もつかわからないだろう、それに拘束されるということはもちろんございません。情勢の変化とともにケース・バイ・ケースでこの問題を処理してまいりたい、こう考えております。
  213. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私は、佐藤総理のあげ足をとるわけじゃございませんけれども、たとえば最近の日本のアジア外交に対する動きに対して、特に北鮮、中国、ベトナム、ソ連、こういったいわゆるアジアの諸国家の、特に共産圏の諸君がどうこれを受け取っておるかということは、やはりわれわれは日本国民として重大な関心を払わなければならぬことである。これは、アメリカがどう考えておるかということと中立諸国がどう考えておるかということとあわせて、われわれは常に判断の材料に入れておかなければならぬ事柄だと私は思う。その判断の中の一つとして、私はきわめて重大な最近の変化として見ておるのは、特にソウルにおける会合以来、日本佐藤内閣に対する評価というものは非常なきびしいものがある。これは最近の声明書だけでもあなたは一ぺん取り寄せてみられたらいかがかと私は思う。この各国の声明書をごらんになってみればよくわかる。こういう問題もわれわれは考えてみるときに、アジアに起こりつつある一つの大きな傾向というものを私どもは心配するのであります。しかし、それを考慮に置いた上で、日本の外交というものを進める上において今日明らかにせねばならぬのは、最近とった東南アジアに対する態度、ソウルにおいてとった態度、同時に今後中国その他においてとろうとする態度、こういう態度を積極的に明らかにすることによって日本立場というものが明確になってくるのである。その努力を佐藤氏は続けるべきであり、なさねばならぬのであって、それを、私の態度は変わりませんと言うだけでは、私は十分でないと思う。であるから、今日まで懸案になっている対中国の問題は一体どうするのですかという質問をいたしたわけであります。そこで、ただいま吉田書簡に対する問題についての外務大臣の答弁がございましたけれども、中国の国連に対する正統な地位の回復の問題について従来の重要事項指定方式をとっていた政府の態度は、いかに変わるのか、変わらないのか、この問題についての御答弁がなかった、これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  214. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 重要事項指定方式に対する考え方は、これは変えるべきではないと私は考えております。問題はきわめて重要な世界的な問題でありまして、この加盟問題は世界の大多数の世論によってまず決定すると申しますか、まず世論によってその動向を察知する、そういうことが少なくとも必要である。これは、ことしどういうふうに情勢が変わりましょうとも、やはり国際世論の動向がどうであるか、大多数の世論の動向がどうであるかということに照らしてみるということは、これは簡単に変えるべきじゃない、こう考えております。
  215. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでは重要事項指定方式でいこうというのですか。
  216. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、ただ一票の差できめるというのでなしに、三分の二の大多数の国際世論の反映にまず照らしてみなければならぬ、こういう点については私は変えるべきではないと考えております。
  217. 勝間田清一

    ○勝間田委員 まことにアジアの緊張の中における対中国との外交は、依然として進まないという状態を私は遺憾に思います。しかし、時間もまいったようでありますから、以上をもって私の質問を終わらせていただきます。
  218. 福田一

    福田委員長 これにて勝間田君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣清音君。
  219. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、主として生産者米価の算定方式をめぐる世論の動向やあるいは政府所見を聞きただし、次に、食管会計の赤字が非常に世論を刺激いたしておりまするので、はたして赤字なのか、あるいはつくられた赤字なのか、作業上の赤字なのかという点について学者ですら検討が足りないようでありまするので、この点を明らかにしていきたいと思います。次に、農業用ガソリン税について、前の予算委員会から懸案が大蔵委員会の小委員会に回っておりますが、この点について大蔵大臣の所見を聞きただしたい。さらに最後には、国有林の開放の問題が起きておりますが、佐藤総理が大いに進めているやの印象も受けるわけですけれども、この問題は、各地に不正な利権的な払い下げを助長するために、そういう方向を打ち立てるための案であるかどうかという疑問も出てまいっておりますので、この四点にわたってお尋ねをしていきたい、こう思います。  第一の米の生産者売り渡し価格と申しますか、政府の買い入れ価格の算定方式を米審に諮問されるはずでありますが、どのような方式で算定をして諮問されるのか、この点を農林大臣にお尋ねをしたいと思う。
  220. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 生産者米価については生産費及び所得補償方式による考えで進めておるのでございまするが、そのいき方についてはいろいろございまするのでありまするが、その点についてはまだ確定はいたしておりませんのでございます。
  221. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣は今国会あるいは延長国会になりましてからも、生産者米価の算定方式は、かつて米審が長い間苦労して、苦心の労作でありまする生産費及び所得補償方式のバルクライン方式を小委員会は農林大臣に答申をいたしておるわけでございます。したがいまして、その方針は変わらないということが、それ以後の農林当局の説明でございまするので、変わってはいないと思いますが、世間往々にしてこの方式をやめて指数化方式で算定をするのだというようなことが流布されております。指数化方式というのは、大正年間の一米穀法時代のいわゆる率勢米価方式とその論拠は変わりはないわけなのです。当時、率勢米価というものは非常に官僚統制時代の米価算定としては望ましい方式だということがいわれておったのでありますけれども、これを放てきをいたしましたのは、農業の生産物というものは天候に支配さねるところが多く、しかもまた、小さな農民も入れて多数のものがつくるのでありまするから、率勢米価などでは生産を持続していくことが困難だというところから、あれは廃棄をされた歴史を持っておるのでございます。これと同じように、一度廃棄された考え方を再びおとりになるというようなことはないのではないかと思うのですが、この点について農林大臣にお聞きすると同時に、科学技術庁長官が来ておりますが、一体いまの日本現状で米の生産に要する日照時間、一定の日照、日照りがなければ米は生育しないということになっております。その日照時間がはっきりしないのに、どの程度の生産があがるかということもわからないで係数だけで去年よりも何割上げる、おととしよりも何割上げるというような計算のしかたというものは、工場生産と違って日照積算温度、こういうものの蓄積の上に米が成り立つのであります。それを指数化方式でいくということになると、天候を支配するだけの能力が科学技術庁におありになるなら、これも一つの方法だと思うのです。日照、温度というのはさまっている。一定の温度がなければ、一定の日照りがなければ、米は生育しない。生育しないものを指数で、いや、これだけのものがとれるであろうなんていうようなことはできないはずなんです。  そこで、科学技術庁にお尋ねします。いまの時点で一体こういう日照を補給する力があるのか、あるいは天候を支配する力を持っておられるのか、この点をあとでお尋ねをしたいと思います。
  222. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えいたしますが、生産費及び所得補償方式によることは、それでいきたいと思うのでございまするが、昨年は生産費及び所得補償方式のうちで指数化方式というものを用いてやりましたわけでありますが、今年はどういう方式によるかはまだきまっておるわけでございません。しかし、昨年の指数化方式は率勢米価等とは相当違う点がありまするのでございます。特に最近生産費及び所得補償方式の算出の上において非常にだんだんと情勢を吟味してまいりました点は、たとえば調査農家の反収が二石九斗幾らという場合でありましても、これに対して一定の偏差を差し引いて、そして、たとえば昨年のごときは二石四斗幾らという生産量に換算いたしまして、それを反収といたしまして計算するということでございますので、その作付によるところの反収の減り方、あるいは地帯によって違う、あるいは気候によって違う点、十分それらの点について安全を見ておるような方式でいっておるわけでございます。  なお、一年だけの平均でなしに三年平均を見るといったようなことで、それらの問題については十分考慮された方式でずっと進めてきておりまする点を御了承願いたいと思うのでございます。
  223. 川俣清音

    ○川俣委員 私、さらにお尋ねをしたいのですが、算定方式の小委員会で有力な案として出されたのが、いまの物価問題懇談会の有力なメンバーの一人である——私、名前はあげませんけれども、この方は理論生産費による理論米価をきめるのがいいであろう、こういう案が出たのであります。これは机上論としては非常にりっぱでありまし上う。しかも、農林省が一番きらっておりまする米価算定の紛争を避ける上からは非常にいいという案でありますことは間違いない。理論米価が正しく計算されるならば、もう紛争はなくなるということで、いい案であるかもしれませんけれども、今後の農業の動向、これからの農業構造改善による変化、あるいは機械化による、近代化による変化というようなものを全然無視せざるを得ないという点と、もう一つは、理論米価を算出するからには、その理論米価以上の生産費をかけるような地帯からは米産地を除くという考え方であります。高い経費をかけておるのは米産地から除く。その農民は転業させるという考え方があるわけであります。それ以下の生産費でできる地帯は奨励をしていく。さらに一歩進んで、低い生産費で生産ができるならば理論米価をさらに引き下げていく、こういうなかなか理論的なものでございます。学者の言うとおり、米が理論的にできるならばけっこうな話でございますけれども、毎年御承知のように、四十万町歩ぐらいの災害地が発生して、百万石から二百万石の減収が常に絶えないのが日本の気象条件であります。したがって、理論米価でといいましても、天候というものを理論的に征服することができないのに、学者の一部には、理論米価が一番いいんだなんていう議論をする人がある。それにならって農林省が一番安易な道を選ぶような、安易に生産をさせる、この道をとったのが私は指数化方式だと思うのです。これは農業を否定する、だんだんと進歩していくであろう、あるいは土地改良も行なわれるであろう、品種の改良も行なわれるであろうということを否定するような算出の方法であるからして、農林省がこれに従われるわけはないと私はそう信じておる。農林省が農業をやめるなら別です。昔のように通産省と一緒になって農機具の奨励、これをつくるようなこと、今日の日本の農機具は、ほかの機械工業は非常に衰微しておるにかかわらず、農機具工業だけはあのりっぱな隆盛を遂げておりますのは、農民の購買力に依存をしておるのです。日本の化学工業が戦後立ち上がれなかったときに肥料工業だけが立ち上がったというのは、農民の購買力の援助のもとに発展をした。いま肥料工業が二百四十万トン以上の硫安を、ア系肥料を生産することができましたのは、農民の購買力の援護のもとに輸出もできた。最近の農業機械が輸出に大きな転換をしてきているのも、国内需要という背景に依存をして発展をしておることは御承知のとおりなんです。米価というのは単なる農民の手取りのものであるというような考え方だけではなく、日本の産業全体に大きな影響を持っているんだということを、これは企画庁長官なら御存じだと思いますが、ひとつ御答弁願います。
  224. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これはいろいろ問題がありまするが、さっき申しましたことは、災害があるということも予想し、それらの問題を考えまするので、三年平均を生産量については見る。また、それを見てもなおかつ不安定であろうということで、さらに安全をはかるために偏差を置いて、たとえば平均した計算されたものが二石九斗であっても、この計算に用うる反収は二石四斗幾らに見ていくといったような点にかげんが加わっておるわけでございます。  なお、この指数化米価によるかよらぬかは、米価審議会等にも諮問いたすわけでございまするが、昨年用いました指数化米価について申し上げまするならば、これは三十九年産米価格を基準価格として、これを物価、労働時間、労賃、単位当たり収量など、生産費及び生産者の所得と関連する諸指標をその後の変化によって修正することにより米価を算定するものである、こういうことであります。すなわち、これによつて算定される米価には年々の生産事情、また米作生産をめぐる経済諸事情の動向が適確に反映されるものである、御指摘のような問題はないと私は思うわけでございます。
  225. 川俣清音

    ○川俣委員 坂田さんの答弁は一体何を言っているかわからないのですが、こちらからだんだん教えながら答弁を求めてまいります。  去年の米審では指数化方式などというものを答申はいたしておりません。かつて、先ほどから申し上げたように、小委員会では京大の大槻さんを小委員長とし、これに大川さんも加わり、中山さんも加わって三カ月にわたって検討をいたしました結果の算定方式が、何といっても生産費を主体にしなければならない、生産費を主体というだけでは足りないので、所得補償方式を加える、これが生産費及び所得補償方式であります。そのどの点をとるかということについてはバルクライン方式をとろう、こういうのが答申のもとになっておった。これを変更されてはいないはずなんです。食管法によれば、生産費を償うことを命じておるのが食管法の趣旨であります。強制買い上げであるだけに、生産費を確保しなければならないというのが食管法じゃないですか。一体いまの内閣は、よく法律違反をした者は処罰するというのですが、食管法違反をした農林大臣は、これは免責になるものでありますかどうか、総理大臣お尋ねしたい。明らかに違反であります。(佐藤内閣総理大臣「もっとまじめに…。」と呼ぶ)いや、まじめですよ。しかしそこまでは言わぬから……。先ほども言ったとおり、これは藤山さんにお聞きしたいと思いますが、あなたが関係しておられた硫安でも、農民の購買力に大きく左右されて今日成長していることは何といってもいなめない。日本の機械工業がいま非常に衰退しておるときに、農機具の会社だけじゃないですか、株式で一割五分以上配当しているのはどこにありますか。一般の工作機械などはみな破綻に瀕しておるときに、農機具機械工業だけじゃないですか。あれだけ新聞に大きな宣伝費をかけて、二百億以上の宣伝費をかけてなお発展を遂げておるのは農機具工業だけじゃないですか。久保田にしても、井関にしても、日本農機具工業にしても異常な発展を遂げております。これは何にささえられておるか、藤山さんがよく御存じだろうから、ひとつ御答弁願いたい。それから米価の問題に入ります。
  226. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 農業の重要性にかんがみまして・肥料でありますとか、農機具でありますとか、そういうものに対する農村の需要というものが相当大きいことは、これは当然でございます。ただ、私自身硫安工業をやりましたので、農機具はやっておりませんでしたけれども、硫安工業は相当やはり農村のためにサービスをしたような状態でございまして、したがって、農村によって硫安工業が興ると同時に、硫安工業自身も農村に対して相当苦しい立場に立ちながらサービスをしたというのが当時の状況でございました。
  227. 川俣清音

    ○川俣委員 これは確かに共存共栄であって、農民もそれによって助かったことは事実です。しかしながら、他の化学工業が立ち上がれないときに早く立ち上がれたということは、何といいましても有力な購買力を持った農民が背景にあったということも、これは否定できない事実である。そこで共存共栄だ。だから一般の学者のように、米価というのはすぐ全部農民の所得になるのだというような考え方が学者の間においては往々あるのです。最近の各新聞に出ておりまする論争を見ましても、農民というのは大体安くてもつくれるのだという先入観念でやっておられる。学識経験者と名づけられるような学者はいま一人もおりません。荷見さんがなくなられてからいない。荷見さんは何と言って私らに教えてくれたかといいますと、こう言っておる。農民の感情から考えて、安くきめるというと、農民がみんな自家消費に持っていく、高いというと、自分の食糧を犠牲にして供出してまいったのがいままでの例だ、こういう説明をしておられます。これはやっぱり学識経験者であります。いまのは学識があっても、へんぱな学識があるだけで経験じゃないですよ。かって有力な米審の委員が何と言ったか。これから米は過剰になるであろう、したがって、そういう観点に立って米価を算定すべきだ。その年の秋には米が不足をして非常に困った。学者なんというものはいいかげんなことを言うもんだ。これが私の認識なんです。学者に給料を払っていいことを教えられないということを、農林省はお考えにならなければならない。  先ほどに戻りますが、昨年の米審の答申は指数化方式をとるなんという決定はしておられない。それをいまあえてとられるということになると、米審の無用論が起こるんじゃないか、こう思いますよ。中には、学者によっては、生産者などを加えるという米審は意味がないのだという御説をする人がある。これはとんだ暴言だと思うのです。大学制度をきめるには教授や何かは要らないのだ、それと同じです。そういう暴論と同じです。大学制度をきめるのに農民を集めてごらんなさい、農民を委員にしてごらんなさい、大学なんて要らないんだという決定を即時しますよ。一体生産者の代表が要らないんだなんという暴論を吐く人を、農林省の顧問にして相談をすることが誤りだと坂田さん思いませんか。あなたがあまりたよりないもんだから学者にたよるのですけれども、たよられない者にたよるところにあなたの間違いがあると思うのですよ。
  228. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 もちろん学者にもたよりますし、皆さんにもたよりますし、大切な農家にたよるわけでございますが、その点は誤解のないように御了承を願います。
  229. 川俣清音

    ○川俣委員 そうすると、荷見さんのようにあまりに農民の感情、気持ちの上の感情からして安くきめるというと、つくったものは売らない。自分で食ってしまう。高ければ売りましょう。安ければ自分で食いましょうということになったならば、集荷をしなければならない農林省の食管というものはこれで終わりを告げるのじゃないですか。集まらない買い入れ価格をきめて何になるのです。集めるための価格が買い入れ価格でしょう。集められないような価格は買い入れ価格じゃない。農民の感情を、農民の意見を聞くということになると、そういう結果になると思いますが、どうですか。
  230. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 昨年は指数化米価方式によりまして、いわゆる生産費及び所得補償方式としての一つであるところの指数化米価によったのでございますが、昨年は、どちらかと申しますと、非常に作のよくない年でございましたが、集荷は相当集まりました。その点は、やはり川俣さんのおっしゃるとおり、農民の気持ちに即応したものであると思うのでございます。
  231. 川俣清音

    ○川俣委員 だんだん時間がなくなりますので、生産者米価については中澤委員からあとで関連質問がありますので、私は米価の問題についてはこの程度にいたしますが、さらに食管の赤字について聞きたいと思います。  その前に、学者の中には、内地米よりも外米を食べたほうがいいじゃないかという議論があります。私、これは賛成ですよ。大体そういう学者が何を言うかというと、いまでは内地米は副食物にかわってきている、こう言う。副食物であると言うような学者には外米を食わしたほうがいいと思う。外米食わしたほうがいい、あるいは内地米のくず米を食わしたほうがいい。私はそれが好ましいのじゃないかと思う。むしろ、あるいは進んでは玄米を食わしたらいい。これは栄養素になるのだから、栄養源として、学者のような、貧弱だと申しては語弊がありましょうが、病弱な人には玄米を食わしていく、配給する。歩減りの多い白米は一般勤労者に食わす。学者のような、あるいは上流社会は米を副食物に類するような取り扱いをするならば、これは玄米を食わしてやる、配給してやる。そうすると米の需給もよほど調子がとれてくると思います。坂田さん、進んでこれをやられたらどうです。あまり米のつくり方について関心を持たないような人には、ひとつ栄養源として玄米を食わす。勤労者のような共かせぎをしなければならないところには、副食物のあまり要らないりっぱな白米を食わしていく。しかも品種を改良してますますうまい米を食わして、学者のようなのにはできるだけまずい米を食わしていくならば、米価というものについても再び反省する機会があるだろうと思う。農林省はそういう指導をしなければならない。消費者指導をしなければならぬわけです。どうお考えですか。
  232. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 川俣委員のいまのお説は賛成の部分もあります。と申しますのは、昨年内地米の少し足らなくなった七月の終わりから八月にかけまして、内地米に近い準内地米をたくさんお配りいたしたところが、こんなまずい米をなぜ食糧庁は配るかというので、食糧庁長官及び食糧庁のほうへ、もう押すな押すなで非難ごうごうたることがありましたので、そういう点から申しますと、日本米に全く同じと言ってもいい準内地米でさえもそういうことが昨年ありました。今年も準内地米を輸入していますが、そういう点から、重ねてそういうことになりますと、また昨年のようにお小言を受けなければなりませんので、今年は少しずつまぜて配給いたしておるようなわけでございます。しかし、川俣さんのおっしゃるような人々には、あるいはそのほうがいいのかもしれぬとも思って、その意味においては名論かと思っていまお聞きしておったようなわけでございます。
  233. 川俣清音

    ○川俣委員 これ以上は詰めませんが、ほんとうにそうやられたらいいと思うのですよ。新聞や何かに公然とそういう発表をしておられるのですから、私は非常に喜んでその人の意見をいれて配給されたらいい。あれは学者を代表しておるそうですから……。  次に、食管のことについてお尋ねをしますが、これは大蔵大臣も聞いておいてほしい。いまの食管で一体内地米の管理経費というものを見ますと、なるべくたくさん米を買わないで、少し買えば食管は黒字になる。買い過ぎると赤字になるということも言えるのですね。食管の会計というのはそういう会計になっておる。これはおかしな会計です。そういうところの反省なしに、ただ赤字だなんて、それじゃ具体的に例をあげましょうか。三十九年の決算を見ますと、六百八十八万トンのときには経費が一番少なかった。七百十万トン買うと経費は上がってくる。あるいは四十一年度の予算で七百十五万トン買うと赤字が増大をする、こうなる。保管料、あるいは集荷費、そういうものに非常に経費がかかるということで、この中からいま四十一年度の予算を見ますと、政府経費が七百四十八億です。この中で減らすことができるのは何かというと金利です。例年よりも非常に多いのは金利負担なんだ。そこで大蔵大臣にお尋ねをしたいのですが、赤字の原因は大蔵省がつくっておるのだ、高い金利で操作をさせておるところに赤字が出るのだということになる。大蔵省がつくった赤字であって、農林省がしょい込まされた赤字であるということが言えると思う。  さらに申し上げましょうか。経費が一番安くあがった年は、三十九年の決算ですが、二二・五%の国庫余裕金を使った。四十一年度は国庫余裕金を使わない計算で、全部金利負担になる。したがって、二百七億の負担をかける。政府経費七百四十八億の中の二百七億は金利負担なんだ。ここが問題なんだ。農産物安定とか、あるいは安定価格をつくるという場合の経費というものは、全部金利負担をさせておるかというとそうじゃない。一般の行政費で安定性を保っておる。安定価格に要する経費は一般経費であります。一般会計なんです。法案を見てみなさい、一般会計でしょう。農産物価格安定法の経費は、一般会計負担です。それで食管に負担を入れておる。すべて安定策は一般会計です。行政の指導上必要であるということでありますから、一般会計でやっておる。米などは最も安定性を持たなければならないというのでわざわざ特別会計にしておるにかかわらず、それは金利負担をさせる、行政費も食管会計で負担をする、使った金は全部金利をかけるのだ。こういうやり方では、安定をはかるのか商売をやるのかどっちだということになる。食糧で商売をやろうという考え方で食管を運営するのかどうか。これは大蔵大臣にひとつお聞きしておかなければならぬ。私が大蔵大臣なら、もっともっと赤字が減るような計算ができますよ。私にやらしてごらんなさい、すぐ計算してみせますから。大蔵大臣、どうでしょう。
  234. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 食管で商売をやるという考えは持ち合わしておりません。
  235. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますならば、政府の重要な施策として食管を運営するということになると、初めから必要な経費については一般会計で負担をするというたてまえを立てますと、こういう赤字にはならない。ところが、大蔵省はなかなかりこうでありまして、サル知恵がなかなか達者でありますから、どういうことかというと、どうせ一般会計で負担しなければならぬのだから、うんと赤字を出さしておいて負担をしたほうが値打ちが出るという考え方が大蔵省の考え方だ。そうでなく、しっかり計数を整理しておいて、なるべく赤字が出ないようにしておいて、出たらばこれを消費者にかけるかなんかというなら話がわかるのですよ。出すべきでないものまで出させるようにこしらえておいて、赤字が出て負担をしてやるのだから同じことじゃないかというのが大体従来の大蔵省の考え方なんです。どうせあとで負担をするのだからうんと赤字を出して負担するほうが、どっちかというと消費者に恩恵を売っていこうという商売げですよ。こういうのは世の中では商売人のやり方だ、あるいは街頭商人のやり方だと、こういうことを言う。そうでなくて、大蔵省でありまするならば、計数を整理しておいて、なるべく赤字の出ないようにこしらえておいて、しかもその上で、出た場合にはどう処置するかということを考えられるのがほんとうの経理の正しい行き方でないか、そう思いませんか。福田さん、このくらいのことはわからぬことはないですよ。
  236. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 食糧行政ですね、そのために必要な費用は、これは一般会計で持っていいと思うのです。しかし、いま食管の会計に取り入れられております経費は、これは純粋な行政費じゃない。これは食糧管理をやっていくための費用でありまして、行政費とは区分さるべきものである、そういうふうに考えております。  ただ、御指摘の点は、これが行政費であるのか、あるいは管理経費であるのか、区分がちょっとあいまいであるという点だろうと思うのですが、しかし、そういうものは私はたくさんはないと思う。しかし、せめてもはっきりしているものは一般会計で持つべきものであるというふうに考えておりますので、行政経費に相当する人件費ですね、これは一般会計負担、こういうことに今日でもしておるのであります。今後もはっきりすればそういうふうな考え方をもちろん取り入れていい、かように考えております。
  237. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで、私は二点明らかにしていきたい。  一つは、米穀法時代の間接統計時代の経理運営をするならばいまどのくらい要するだろうかということを計算してみたら、七千億円くらい要しますね、間接統制をやるとすると。いまでは直接統制のほうがよほど安上がりにできているということになる。間接統制で負担しなければならないようなも一のは、直接統制ならさらにはずしていくということが望ましいのではないかということになる。これが一つ。  もう一つは、先ほど指摘したように、なるべく集荷をしないほうが赤字が出ないという会計になってくる。保管料も要らない。集荷費も要らない。最も安上がりでいくならば、わかりやすく言うならば、赤字だけを気にする食管を運営するとするならば、なるべく米を集めないほうがいいという結果になる。しかし、それで米を集めなければどうなるのか。ある程度犠牲を払っても米を集めるんだということにならざるを得ないものであるからして、そこで、赤字というものはつくれる赤字じゃなくして、なるべく赤字を出さない会計にしておいて、出た場合にどう処理するかということを次の問題にするならば、世間で誤解が少ない。学者ですら赤字を気にするというのか、知ったふりをするというのかわかりませんけれども、全然内容をお知りにならないと思いますよ。一体赤字が出るのを出さないと思うならば、米をなるべく集荷しないほうがいい。これじゃ食管なんというものは意味をなさないですよ。赤字だけを気にするならばそういう結果になるところに、赤字以上の欠陥があるのだ、私はそう思う。だから赤字を気にするならば、食管はやめなければならない、こういうことになる。どうしても必要だというならば、ある程度のものは初めからどんぶり勘定ではなしに、あとでどうせ出すのだからなんということをしないで、初めから負担すべきものは負担して、そうして、これ以上はひとつ消費者に負担してもらおうじゃないかという話になるならば、私は消費者もある程度納得するのじゃないかと思う。出すべきものも出さないでおいて、出たのだから消費者が負担せいなんと言うから、内容がわからぬから反対だと言うのは当然のことなんです。もう少し計数整理をしたらどうですか。それで、なぜ一体米をたくさん集めれば赤字になるのか、これを検討していかなければならない。したがって、これは食管の赤字なのか何かわからない。食糧管理としては、多くの米を集めて消費者に安全に配給をするというところに食管制度があるのですから、少なく集めるなんていうことであるならば、食管制度は成り立たない。そうでしょう。ところがこの会計を見てごらんなさい。なるべく米をたくさん集荷しなければ赤字にはだんだんならなくなってくる。集めれば集めるだけ金利負担が重くなってきて——わずかな金なら国庫余裕金からも出るでしょう。金額が大きいからなかなか回せない。また集荷費もあるいは保管料も、わずか集めたならば保管料なんというものはかからない。集めてすぐ食わせればいいんですから、保管料なんてほとんどかからない。長く保管をしなければならないというところに保管料が上がってくるのです。買ってすぐ売ったならば、保管料というものはたいした経費じゃなくなってくる。あなたの計数はそういう計数でしょう。だから、たくさん買えば赤字になる。忠実に食管を守るならば赤字になるという会計だ。そうすると、これは消費者負担なのかどうかという疑問が出てくる。じゃ、これこれはひとつ価格安定のために一般会計で負担するんだ、これ以上は出せないのだ、そこで、これを生産者なり消費者なりが分配をして負担をしてくれというならば、ある程度納得がいけるのじゃないかと私は思うのです。もう一度ひとつ大蔵大臣、——総理のほうがわかっているようだからひとつ……。
  238. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま川俣さんは、赤字が出る要因として金利のことを言われておる、また人件費のことを言われております。金利は、これは米の収買、販売をやるのですから、その間のストックに対してどうしても要るわけなんです。これが安く上がるようにというので、国庫余裕金を振りかえ使用したり何かして努力はいたしておりますが、これは理屈上、事業をやっていく上において金融というものは必要なんでありますから、これは要るのですよ。それを一般会計で持ったらいいじゃないか、こういうお話のようでありますが、これは一般会計のものであって米の収買の関係のものじゃないというふうな理解をすること自体に大いに疑問がある、私はこういうふうに考えますぐしかし、そういう疑問を押し切って、あなたがおっしゃるように、金利は一般会計だということにすれば、これはお話のように赤字はそれだけ減る。また人件費全部ひとつ一般会計で持ったらどうだ、そうしたらこれも減ります。これを一般会計負担に追い込めば、赤字は当然減るにきまっておるのでありまして、それは結果は同じなんです。一般会計から入れるか、あるいは一般会計負担にしておいて入れないで済ますか、こういうだけの話でありますが、しかし米をいやしくも収買して、これを販売するというたてまえをとっている以上、米のための金融、資本費、またそれの管理に必要な人件費、これはその管理に伴う費用だと見るのが当然である、こういうふうに私は考えます。
  239. 川俣清音

    ○川俣委員 そこがあなたの研究の足りないところなんですね。買ってすぐ売ってごらんなさい。保管料は要らないじゃないですか。たくさん買うから保管が長くなる。買ってすぐ売るような事態で、保管が少なければ保管料は出てこないと私は言っておる。そういうようなことがいいのか悪いのかというのは別問題ですよ。食管というものはそういうものじゃないのだというならば、これはだれが負担するかという問題が起こってくる、こういうことが一つなんです。もう一つは、間接統制の場合は、赤字というものは出てこないのですね、いわゆる表面上の赤字は。これはなぜかというと、一般会計で全部処理してきますから、赤字という表現は出てこないのです。行政費で保管料から全部負担するのですから。しかし七千億になりますよ。計算してごらんなさい。たいへんな金です。福田さんが公債を発行しなければならないと言っておるけれども、七千億さらに追加しなければならないような金額ですよ。実際はやれないのですよ、間接統制なんか。そこで、それよりも軽い負担で済む直接統制をやっておるのだから、そこに考慮の余地があるのじゃないか。間接統制ならば、全部これは一般会計で処理しなければならない。それが間接統制の趣旨でしょう。安いときに買い上げて、高くなったら安く売るというのが、これが間接統制の機能なんです。したがって、そういう会計では困るということで特別会計にした。特別会計にしたのは、赤字を出すために特別会計にしたのじゃない。いわゆる間接統制よりも国庫負担が軽いということが直接統制の原因なんですから、それ二見合うだけのものは負担をしていくという考え方が成り立たないのかどうか。一般の人々はそうでなく誤解をしておる。それで、間接統制をやったらどうだという議論が出てくる。間接統制をやってごらんなさい、大蔵省はもう破綻です。そこで、この際少し勇気をふるったらどうだ。破綻するよりも破綻を避ける方法で負担をしたらどうだ。こういうことなんです。わかったでしょう。わからぬで首を振るなら、一ぺんやってごらんなさい、間接統制を。計算してごらんなさいよ。計算をしないで間接統制がいいのだというなら、大蔵省はたいへんなことになりますよ。それを教えてあげておるのですよ。どうですか。
  240. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 川俣さんは米を右から左へすぐ売ったらどうだ、こうおっしゃいますが、そのためには農家から買い入れをぽつぽつやるというふうにでもしなければ、そんなうまいことはできないのです。しかし、それでは一体農家はどうします。米は年に一回しかできない。それをなるべく早く政府に売り払う必要があるのです。したがって、どうしたってストックというものができるのです。配給を一挙にするわけにはいかない、毎月毎月やるのですから。それを一挙に配給せい、だらだら買え、こうおっしゃるのは無理じゃないか、かように存じます。
  241. 川俣清音

    ○川俣委員 そうじゃないのです。私の指摘しておるのは、なるべく少なく買えば赤字が出ないというような会計自体に問題があるのじゃないか、こう言うのです。趣旨に反する結果が出ても、赤字が出ないことだけ望むならば、そういう結果になりますということを指摘しておるのです。そうなんですよ。そういう会計のところに問題があるのだ。たくさん集めれば赤字が出てくる、少なく集めれば赤字が出ないなんという会計が問題なんです。普通なら、たくさん扱えば合理化になって安くならなければならぬのが、安くならないというところに会計の矛盾があるのですよ。わずか取り扱うより多く取り扱ったほうが負担が軽くて済むというなら、これはわかりますよ。多く集まれば赤字が出るのだなんという、赤字が出ぬためには多く集めなければいいのだという結果になる会計に問題があるのだ、こう指摘しておるのです。これは一千万石ぐらい集まってごらんなさい。いま四千万石集めている。一千万石にすれば赤字がずっと減るのです。それでいいかというと、それでは食管の機能が果たせないということになっていく、問題はそこにあるのだ。これは、総理はわかっておるからひとつ……。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま専門家の川俣君の御議論だが、どうもたいへん論理が飛躍して、どこへいくのかと、むしろ食管会計をやめろと言うのじゃないかと実はたいへんに心配をしたのです。ただいまのお話を聞いておりましても、間接統制なら金が要らない、直接統制をやれば金がかかる、そうして赤字がふえる、だから赤字だけで言うならば、もう統制はやめろ、こういうことのようです。ところが先ほど大蔵大臣が申しましたが、この食管会計で商売はしないんだ、だから営業的な考え方はもちろんない、これはおわかりだと思う。また管理費と行政費とその区分も十分気をつけてやっておりますから、明確にただいまはできておる、こういうことなんです。ところが、ただいまその区分が不明確だ、もう少し行政費で持つならばいまの食管会計の赤字は減るだろう、具体的の問題として保管費は一体どうするのか、金利はどうするのか、こういうようなお話がございます。こういう点では、大蔵大臣や農林大臣等いろいろ苦心しておるのでありますし、また私は、とにかく相当金のかかることではあるが、食管特別会計といいますか、この制度は持続する考えでおります。しかし、どう見ましても、赤字がふえることはあまり好ましいことではない。だからできるだけくふうをしていただいて、赤字が減っていくようにひとつ気をつけてもらいたい。この点は、ただ右のものを左にする、それで赤字が減った、こういうだけでは納得がいかない、これらの点におきましては、十分大蔵当局や農林当局においてもくふうをしてもらいたい、かように私は思っておる次第であります。何だか議論を聞いておると、食管会計をやめるような議論になりまして、とんでもないことだ、その点で不安を与えては申しわけございませんから、この制度は続けていく。しかし、何といっても赤字が非常にふえてはまずいから、できるだけ赤字はふやさないように気をつけていきたいと思います。
  243. 川俣清音

    ○川俣委員 やはり総理のほうが大蔵大臣より幾らかものがわかる。しかし私の話の中にも、必要で直接統制をしておるのだから、これをやめたほうがいいなんということは無意味だ、赤字だけを気にするならそういう結果になりはしませんか、こう言っているのですよ。赤字だけを問題にするならそういうことになる。赤字以外の必要性に基づいてやっている行為だ。それだから無条件にたくさん赤字を出してもいいということじゃない。赤字だけを気にするならば、やり方はあります。しかし目的は別にあるんだ。したがって、別にあるんだから、一般会計がどうせ最後に負担をするのならば、最初から明確にしておいて、これ以上の分は消費者なり何なりが何らかの形でこれを補っていくのだ、こういうやり方にしないで、何でも赤字を出すようにこしらえておいて、これを負担させるというから無理じゃないか、こういうことなんです。  それでは時間がないので次に移りますが、この委員会でガソリン税が非常に問題になりまして、大蔵大臣は、貧農の農作業にまで必要な農業用の要素、資材に税金をかけるということは好ましくないのではないか、だれでも必要上、農業構造改善上農業近代化のために使っておりまするガソリンに、近代化するとすぐ税金をかけるというようなやり方は好ましくないんではないかというところから、田中大蔵大臣は、十分今後は検討いたしますということになっておったのでございますが、依然としてこれが解決を見ないでおる。この中に問題があるのですよ。これは農民に回さなかったということは別にして、この計算の基礎に大きな問題がある。これは大蔵大臣にお尋ねしなければならぬ。最近大蔵省は、農業近代化のために助成金を出しておる、あるいは大型機械化のために補助を出しておられる。だんだんと大型化が進んできて、能率が上がってきておる。ところが従来の計算のしかたを見ますると、台数で計算をしておられる。農業の作業に要するものでありまするから、一台庭に置いたって農業用にはならないのです。飾りにはなっても農業用にはならない、飾っておいただけでは。それを活動させるというところに農業用の機械の本質があるわけでしょう。そうするならば何か、台数ではない。どういう活動をしたか、その活動に要する熱源はどこから出てきたのか、こういうことなんです。それがガソリンなんです。あるいは重油になってくる。発動機を動かすために必要なのがガソリンであり、重油なんです。台数ではないんです。最近の統計を見てごらんなさい。有価証券の報告書を見ますると、生産台数は必ずしもふえてはおりませんけれども、利益は上がっているという報告、その内容はというと、馬力数の高い、高度な農業機械をつくって利益を得ているということになる。昔のような小型、五馬力以下を小型という、あるいは四馬力以下を小型というようですが、それ以上を大型という。大型のほうがより多く使用されてきておるのは、農林省の統計で明らかです。それを依然として前の統計、一番大型化の少なかった台数をもって、それにガソリンの消費をかけて、これがガソリンの消費量だ、こういう計算なんです。これはおかしいじゃないですか。一般に農機具の動向というものを見ると、大型化してきた。その使用を奨励していって近代化するのだ。それが、普遍化してきたのだ、こう言っていながら、ガソリンをあまり使わない小型の台数でガソリンの消費量を出すということはおかしいとお考えになりませんか。大蔵大臣、これはどうですか。
  244. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 農業用のガソリンの使用量の測定ですね。それは、いままでは農機具の台数にガソリンの使用想定量を乗じて計算したわけです。しかし、今度はそれにさらに大型化の傾向を加味せよ、こういうお話であります。今度のお話はよくわかりました。私もそういう傾向をとり入れるべきだ、こういうふうに考えます。昭和四十二年度の予算のときには、そういう点もあわせてよく検討してみたい、かように考えます。
  245. 川俣清音

    ○川俣委員 よく検討するということより、大型機が生産されて使用されておる実態があるわけでしょう。小型の台数の消費量と大型とは違うのだから、小型の台数にガソリンの消費をかけて、それが農業用に使われておるんだというところに問題があるわけです。大型は大型だ。しかも大蔵省が農業生産者に対して、機械生産者に対して税金をとるときには、大型は大型なりの税金をかけているじゃないですか。負担さしておるじゃないですか。それが農業に回ると、農村に回ると、小型の消費量よりない機械が回っているというのはおかしいじゃないですか。生産されたものはどこに行っているのですか。そういう矛盾をみずからやっている。大蔵省というのは頭がいいはずですから、そんな計算ができないわけはないはずです。だけれども、なるべくガソリンの消費量というものを少なくしておかないと負担が多くなるのじゃないかということで逃げておるだけなんです。これはごまかしですよ。そういうごまかしは避けていかなければならない。福田さんが世の中をごまかすなんとは毛頭思いませんけれども、役人にはとかくそういうことが計算されやすいので、これを是正するのがあなたの責任だと、こういう質問なんです。どうですか。
  246. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話はよくわかりましたから、そういう線に沿ってやってみます。
  247. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点、これはどうしても総理にお聞きしなければならぬですが、最近国有林の開放運動が起こっておる。日本の木材需要が非常に逼迫しておりまして、木材産業が原料難のために非常に弱っておりますので、一そう国有林の開放をしなければならぬ。しかしながら、国有林はできるだけ御承知のように一ぺんに切り出さないで、需給計画を立てて切るという方向をとる。それじゃ不足だということで外材の輸入等が行なわれておりますが、それに加えて開放などといいますると、利権屋が寄ってたかって、これを食いものにするおそれがある。現にいま参議院の決算委員会でも問題にされております。これは、内閣の終わりころになると、その派閥の者が食いものにする傾向が出てきております。そのとおりです。いま出てきておるのは、みな前内閣時代の縁故で出てきているのです。これは明らかです。私は名前をあげることは控えますけれども、みなそういうことになっている。したがって、国有林の開放というと、はなはだしいところがあるのですよ。将来四、五年後に、あるいは二、三年後に鉄道敷地として買収されるであろうということで、幅十メートルで十一キロ払い下げ申請をしている。なぜ一体こんな幅のものを払い下げを受けなければならぬのですか。十メートルだと計画に入らぬかもしれぬ、もう五メートル幅をふやしてくれ、こういう申請。これを見ても明らかに鉄道の予定線を対象にしての払い下げです。農業構造改善であるとか林業構造改善のために必要なものならこれはいざ知らず、それにはみんな与党の有力な人々が背景になっているんです。佐藤さんはそういう意味でなく、これを大いに活用しようという意味でしょうけれども、それに便乗して利権的な払い下げが加わってまいりますので、厳重に注意をする必要があるであろう、これについて総理のはっきりした見解をお聞きして私の質問を終わりたいと思います。  私どもは、治山治水の上からも、国土緑化の上からも、森林資源の保全の上からも必要なものを無条件で払い下げるべきものではないし、必要なものは別にして、利権の対象になるような払い下げ方は厳に戒むべきだと思うのですが、いや総理が開放に賛成なんだからというようなことで、それを口実に地方に運動が起こっておりますことは遺憾しごくだと存じます。佐藤さんの意思に反すると思いますから、明確にしてほしいと思います。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国有林野の払い下げ——払い下げと申すよりも、利用と申しますか、そういう意味で今日問題になっておること、これは御承知のとおりであります。しこうして、この問題の扱い方については、川俣君から注意されるまでもなく、国民から疑惑を受けるようなことがあってはならない、かように私は思います。もちろん国有林野は、これは国民全体の利益、それに利用されるということが一番望ましいことであります。  ただ私、一言国有林野について申し上げておきたいのは、ちょうど川俣君の地方ですが、この東北地方と私どものところではよほど事情が違うのです。ちょうど昨年でしたか、地方長官——地方長官と申すより、知事がいろいろ地方実情を内奏しておった。その席に私おりましたが、青森県、岩手県等の知事が口をそろえて申しますことは、東北では国有林野が非常に多いんだ、おそらく七割は国有林野だろう、そういう意味で民有が非常に少ない、そのためにこの利用、開発ということは非常に重大な問題で、東北地方の振興のためにも、これはぜひそういう点を考えていかなければならないのだ、こういう説明をいたしておりました。私はその後実情等についてつぶさに検討してみますと、かような特徴があるのであります。したがいまして、林野庁でいろいろくふうをいたしておりましても、地方の要望にこたえるような利用はなかなかついておらないのではないか、かように思うのであります。そこでただいまもこれらの利用というような点についてくふうがあってしかるべきではないか、ただいま言われました国土保全の点についても、あるいは森林資源の利用という面においても、また国土開発の面から見ましても、いまのままにほっておくことはこれまた一つの問題だ、かように思います。しかし、そういう際に、御注意のありましたように、これが国民から疑惑を受けるような、そういうことは十分注意して、万が一にもさような事態が起こらないように注意しなければならない、かように思います。  ただいま、しからばその案がどこまで進んでいるか、いろいろ内閣におきましても案を検討しております。しかし、何と申しましても、もうすでにこの国会ではあと日数もございません。そういうことでありますから、皆さんの御審議を受けるような状態になってはおりませんけれども、いずれただいま申し上げるような、国民が納得のいくような案ができましたら、現状のまま推移するのではなくて、積極的にこの利用開発をそういう意味考えてしかるべきじゃないか。ただ、民有にするということについてはいろいろ議論がありますし、私は所有権を移すというよりも、この利用という点でくふうがあるのではないか、かように思っておりますので、それぞれのほうに検討させておるというのがいまの実情でございます。
  249. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一つだけ申し上げますが、明治九年に国有財産払戻法に基づいて相当な数量が国有林野から払い下げを受けておる、西南戦争のあとも、西南戦争の恩賞として国有林の開放が行なわれたのであります。なお明治三十九年から四十年にかけては、日露戦争後の農村の窮乏を救済するということで国有林の開放が行なわれております。そのために需給機能を失っておるわけであります。価格調整の機能を、すでに蓄積が足りないために失いつつある。それをさらに開放すると、需給の安定、価格の安定というものが非常に危険になるのではないか、こういう点について、ただ利用度が足りないのだ、それは確かにいまでは木材が不足でありまするから、あるのは国有林だということはいなめない事実でありまするけれども一、そういうことだけでなくて、青森などは、いま私があげたのですが、今度北海道に渡る鉄道ができるでしょう、あそこをずっと申請しているのですよ。おかしいじゃないですか。今度は総理がはっきりしたから、運動費を集めてやっているじゃないですか。何で十メートル、十五メートルの幅で何キロもいかなければならないのでしょうか、これが一体利用ですか、国鉄の大体予想線に沿うて払い下げ申請をしているじゃないですか、利用するのは、まとまったところを利用するならわかりますよ。だけれども、細長くて十メートル、やれ線がそれそうだからもう五メートルだなんて、こんな払い下げのしかたが一体ありますか、大臣は知っているはずです。いま那須の山部ですね、某会社が某々の背景のもとに払い下げて問題になっておる、私は名前は言いません。あるいは前内閣時代ですけれども、どういう払い下げ申請があったかというと、京都の嵐山を払い下げてくれ、こういうことがあったのですよ。これは、京都があげて反対をしたので阻止されましたけれども、あるいは神戸の甲山の払い下げ問題等が起きておった。どうも内閣の末期になるというと、こういう暗躍が行なわれるのじゃないか。これをもって私どもは末期症状だと思っている。末期でなければこんなことば起こらないはずだと言うんですよ。末期だから、この際食い逃げをしようということが出てくるのじゃないか。大いに戒心すべきことです。なんだったら名前をあげて言いましょうか。名前をあげてもいいですよ。私は控えたいんですが(「きたないから、そんなことはよせよ。何だか知らんけれども、あとでこっそり……」と呼ぶ者あり)いや、こっそりじゃない。問題になっているから、別にこっそりでも何でもないのだけれども、あえてここで名前を指摘しなくてもいい、こういうことだけです。大いに関心をもってもらいたい。——持つということですからあれですが、あなたがただ言われると、それに便乗して、そういう運動が起こることは事実なんですね。  以上をもって、私の質問を終わります。
  250. 福田一

    福田委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。永井勝次郎君。
  251. 永井勝次郎

    ○永井委員 簡単にお尋ねをいたしたいと思います。大臣は農林大臣、大蔵大臣、両大臣の質問を通してその締めくくりとして総理大臣の御答弁をわずらわしたいと思います。  本日の本会議で農安法の一部改正が可決されまして参議院に送られました。おそらく今国会でこれは成立を見るであろうと思うのであります。これは自民党、社会党、民社党三党共同の提案でありまして、この法案の作業過程においては、経済企画庁長官は物価問題の立場から、大蔵大臣は財政措置の立場から相当の難色があったと聞き及んでおるのであります。えてして議員立法は政府当局は相当粗末に取り扱っている、こういうことが従来あったわけでありますが、この本日の農安法の一部改正は多年の懸案でありますとともに、差し迫った切実な問題でありますので、この国会議決されたという趣旨、また立法の趣旨を十分くみ取って、今後の運営の上にあやまちのないように、粗略にするようなことのないように期待したいと思うのであります。  そこで、農安法の改正の中心になりましたカンでん、バレイショでん粉等の価格等について、間もなくこれらの問題が俎上にのぼるわけでありますが、これらに対する農林大臣のこの農安法が成立した場合における態度について、この法案に対する取り組みについて明確な態度をお示し願いたいと思うわけであります。
  252. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この農安法の政正については、議員のほうで御提出になりました。初め政府のほうの提出を私に要求がありましたけれど、会期があまり切迫しておりますので、政府提出はできないと申しましたのでございますが、議員の皆さんの三党共同によるところの提案によって昨日農林委員会を、本日は衆議院を通過いたしたわけでございます。国会の意思を尊重してまいりますことは言うまでもございません。
  253. 永井勝次郎

    ○永井委員 この法案が通りますと、当然財政措置が必要になってくると思うのでありますが、大蔵大臣のそれらについての心組みを伺っておきたいと思います。
  254. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 バレイショ等につきまして、十月になりますと価格決定があるわけです。十月の価格決定の際には、もちろんこの法律改正の趣旨にのっとって適正にきめていきたい、かように考えております。
  255. 永井勝次郎

    ○永井委員 次に農林大臣に伺いたいのですが、時間がありませんから続けて質問をいたします。  一つは、バレイショでん粉を増産する方向で努力をされる考えはないかということが一点。  それから、それらの問題を中心にいたしまして総理大臣からわが国の農業政策は、全体として農業政策に対する予算措置が非常に少ない。したがって、この面が片寄った形で陥没しておる。その中でも一応水稲関係に片寄った政策をなしておりますから、少ないながらも一応の形ができているのは水稲だけであって、畑作関係は全く無視された形にある。したがって、転落農家等が畑作地帯からどんどん出ているわけでありますが、水稲に対しては、米価の値上げその他これは十分に考えていただかなければなりませんが、それとあわせて畑作地帯に対する作物、さらに作物を焦点とした政策ではなしに、畑作農業経営というこの全体の経営を焦点とした施策を進めなければならないという点について、総理大臣所見を伺いたいと思います。  第一点のバレイショでん粉の問題ですが、これは御承知のように、カンでん、バレイショでん粉、コーンスターチ、こういうものを含めた総でん粉の需要は最近非常に伸びてきております。三十八年が百五万トン、三十九年が百十五万トン、四十年が百二十万トン、こういうふうにどんどん伸びてきておりますし、本年は、政府手持ちの繰り越しでん粉はほとんど手ばたきに払い出してしまつて底をついておる。こういう状態。それから今後の見通しにおいても、相当需要は漸増していくという見通しである。こういうふうに需要は伸びておる。ところが生産の面はどうかといえば、カンでん関係は単にそのときの相場で動くというのでなくて、経営が構造的な変革をしておる。どんどん減っておる。この三年ほどはどんどん減って、今後も減る傾向である。それからバレイショでん粉は、適地適産、寒地農業における安定作物として、農家はこれを増産したい希望がある。それに対して北海道の場合、従来農林省は十五万トン前後に押えてきておるわけです。それ以上増産したっていけない、こういうことで押えてきておる。したがって、カンでんは減っていく。バレイショでん粉は頭打ちになっていく。でん粉の総需要はふえてくる。そうすると、その不足分はどうするかというと、コーンスターチの輸入でん粉でこれをまかなっていくという形になるわけであります。農業政策の上からいって、国内の安定作物を押えて輸入を促進するというばかなことはないと思うので、そういう点において、農林大臣はバレイショでん粉を現在の需給の実情から見てふやす考えはないかどうか、そういう措置をお考えになるかどうか、これをひとつ伺いたいと思う。
  256. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 永井委員の御質問にお答え申し上げますが、いまでん粉の需要はもちろんさようなことでございます。そこで、そのでん粉の需要のみならず、生鮮食料品としても相当これはやはり重要なものであることは、これは永井委員も御同感であろうと思うのであります。そういう点から申しまして、もちろん適地に増産してまいりますことはそのとおりであると思います。ただし、私どものさらに希望し、また向かうべき点は、価格をそう高くせずして生産ができるということ、その点についていわゆる生産費を低くし、あるいは生産構造を改善してその方向にも向かってまいりたい、こういうことを念願しながら増産のほうに進むことはたいへんけっこうだと思うのでありますが、そういう点については、もちろんいま直ちにことし、来年というわけにもいきませんと思いますので、それらの点については十分両々相まって考えを進めていかなければならぬと思うのであります。  なおまた、バレイショの問題から言いますと、確かに北海道の適作物であることは言うまでもございません。ところが、いままで日本におきましては、永井委員が言われたとおりに、水田本位であることは言うまでもございません。畑地に対する改良というものはほとんどなかった。明治の末期に至って、また現在相当これらに力を注ぐことになりましたが、畑地の土地改良をやるとか、そういうものはいままで非常に行なわれていないことは私も痛感しておるものであります。  最近これらについても、畑地かんがいの問題とかあるいは畑作物に対する改良助長という問題は、十分これらの問題について力が入りかかったと申し上げてもよかろうかと思うのでございます。北海道あるいは南九州のような畑作の多いところにおいては、特にその感が深いと思います。そういう意味合いからいたしまして、私どもとしても九州南部あるいは北海道における畑作地帯というものに対して、特別に、畑地振興という意味合いからいたしまして、さらに一そうの力を注いでまいりたいということを考えて進めていきたい、かように存じておるわけでございます。
  257. 永井勝次郎

    ○永井委員 最後に総理お尋ねいたしますが、政府の政策を見ていますと、農業政策においては自立経営農家を育てていく、そうして経営規模をふやしていく。経営規模をふやすということになれば、経営面積の増加は、天から降ってくるわけではありませんから、現在ある地域を広げていかなければならぬ。そうすると、そこから当然人間が余ってくる。そういう者が離農として出てくるのですが、農地をどうする、農村の近代化をどうする、共同化をどうする、こういういろんな問題は、物の面における政策は一応出ておりますが、離農していく農民に対する人間の問題は、正面から取っ組んで具体的な施策は出ておりません。佐藤総理は、人間を対象にした政策をやらなければいけないと、池田内閣の経済政策に批判を加えていたのでありますが、その人間を重点に考えていくという、そういう政策の特徴は少しも出ておらない。中小企業においても、近代化をやる、経営規模を拡大する、そうすれば、需要はそんなにふえないわけでありますから、そこから競争で落ちていく者がどんどん倒産していくわけです。そういう関係の人間に取り組む政策が弱いと思うのです。それをどういうふうに取り扱うか。これが一点。  それから農業政策における水稲の問題は、米の政策は米の価格というところに、あるいは米という作物に焦点を合わせてこれはよろしいわけです。水田は米以外はつくらないのですから。裏作としてはいろんなものがありますけれども、一応これは米をつくるわけですから、米の政策をやれば水田経営農家に対する農業政策の焦点は合っていくわけです。ところが畑作経営の場合はたとえば麦を取り上げる、あるいはバレイショを取り上げる、あるいはビートを取り上げる、こういうふうに農作物を個々に取り上げて政策を立てても、これは必ずしも畑作経営の安定という方向に焦点が合いません。いろいろな作物がつくられるし、それから輪作経営で、五年に一回ずつ作物を回転していかなければならぬ。そのローテーションの上から、必ずしもいいものだけをつくるというわけにいかない。そうすると、作物対象で価格その他の問題を考えるとともに、畑作経営全体の問題を畑作農業政策の焦点として取り上げていかなければならないと思うのです。作物の価格の問題その他を取り上げる。もう一つは、畑作全体の経営の問題を取り上げる。これが畑作経営における今後の焦点でなければならない。従来そういう問題が欠けておる。ただ麦をどうする、バレイショをどうする、ビートをどうすると個々の農作物を取り上げているだけであります。そういう点で、総合的な畑作農業経営というものを焦点にしない限り、ただいまバレイショをどうするか、ビートをどうするかといったって、結局農家所得はふえない、こういうことになるわけです。そういう点において、今後の畑作農業経営に取り組む総理の姿勢について所信を伺っておきたいと思うのです。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 永井君の、今日農業が当面している問題について私見をまじえながらお尋ねになりました事柄について、私は大体においてその方向に賛成するものであります。  ところで、ただいま専業農家をつくる、そうすると当然土地は広くなる、規模は拡大される、また現在いるだけの人が必要でなくなる、こういうことを言われる。そこで離農者も出てくる、これについてのあたたかい転職その他についてめんどうを見なければいかぬ、こういうことを言われておる。これはまことに当然なことだと私は思います。今日まで農林省では専業農家の育成強化、これをはかっておりますから、ただいまのように離村する、あるいは離農する、そういう方もふえてくるだろうと思います。こういう方に対する土地をいかにするか。それには農地管理事業団、これが役立った働きをするだろうし、またその他の離職された方についての転職については、職業指導等適当な方法もあろうかと思います。また今日の現状からいたしましては、専業農家もそう簡単にどんどん育成強化できるわけでもありません。したがって、これはいわゆる農家収入をふやす、こういうような意味で、兼業の方々もしあわせになられるような産業開発等をいたしまして、所得の機会がふえることをいろいろ計画しておるわけであります。しかしながら、現状においてはなお十分だとはいえません。したがって、いろいろ農林、大蔵両省も苦心はいたしております。いずれにいたしましても、予算もなかなか十分というところにはいきませんが、それぞれの所要の施策を遂行するのには一応この程度でごしんぼう願ってということで予算も組んでおります。その場合に、どうも過去の経験から見まして、米、ことに水田農業、水田農政、そういうところによほど力が入っているのじゃないか、かような御批判があろうと思います。先ほど農林大臣もお答えいたしましたように、これから畑作、これはまことに重大な課題だから、これとも真剣に取り組む、かように申しておりますし、ことにことしから北海道や南九州について調査研究している、これもその御趣旨に沿うつもりでただいまやっておる、かように思っております。私の過去の経験から申しまして、わずかではあったが北海道開発庁長官をした、その経験から申しまして、この北海道、南九州地域に対して特別調査をすることはたいへんけっこうなことだと思うし、北海道においては特にそこに力を入れなければならない。これは、ただいま御指摘になりましたその作物についていかなる処置をとるかという、そのことも大事だが、とにかく畑作経営者の経営を充実さす、こういうことに特に意を用いていかなければならない。その一つの方法が、作物の価格が安定すること、またその利用度を高めること等々がくふうされるんだ、かように思います。これらの点は、もちろん農林省におきましても専門的に効力するのでありますけれども、各界各方面の英知で、御協力によりまして初めてこれが目的を達するのでありますから、政府もただいまの永井君の御意見どおりに一そう努力するつもりでございますから、この上ともひとつ御協力を願いたいと思います。
  259. 福田一

    福田委員長 次に中澤茂一君。
  260. 中澤茂一

    中澤委員 物価問題懇談会が本年度米価の決定について、あなたに一つの建議と申しますか、答申と申しますか、出しましたが、それに対して、経済企画庁長官としては妥当な意見であるとお考えか、それとも、これは農民のために妥当でない意見とお考えか、まずそれからお伺いいたします。
  261. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価問題懇談会は、御承知のとおり、性質から言いまして自由に意見を申し述べてもらう、こういう機関でございます。そして、われわれ政府の者はそれを参考にして問題の点を見つけていこうかというところであって、したがって、それによりましてすぐ実行できるものもございましょうし、また必ずしも実行できないものもありましょうし、ただ、そういうわれわれがふだん気づかなかったような点、あるいは世間が言いたくとも言わなかったような点を率直にいまいろいろの立場からお話しいただくことで議論をわかして、そうして一般的に議論になれば、おのずからその中から解決の方途が見つけ出される。そういう意味で、私ども物価問題懇談会に諮問したことはございません。それぞれいろいろの御検討を願って、自由な意見を出していただく、そうして、それについてわれわれ問題点考えていく、こういう立場でおります。なお、あの問題は本年度米価に限った問題でなくて、米価問題という問題だと御了承願います。
  262. 中澤茂一

    中澤委員 私はあれを読んで、これは農業の「の」の字も知らない連中が集まってかってな議論をしているんだなという感じを受けたのです。まずその中で、米はいいじゃないか、外米の安いものをどんどん輸入したらどうだという輸入論というものに一つの柱を置いておる。一体米がそう懇談会で言うようにどんどん輸入できる情勢にあるとお考えかどうか。
  263. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 準内地米みたいなものを輸入するというのには、地域的な限られた問題もございます。したがいまして、今後の状況判断でございますけれども、遠くはスペインだとかイタリアとかからも買っておるわけで、あるいはアメリカからならばある程度輸入できるかもしれませんが、そう非常な大きな期待を——将来中共と話し合いがつけば、いまでも中共から相当買っておりますから、もう少しそういう問題は考えられると思いますけれども、しかし、現状においてすぐ非常に大きなものは買えるという状態ではないと思います。
  264. 中澤茂一

    中澤委員 これは、とんでもない暴論を物価問題懇談会はやっておる。それどころじゃない。食糧自給態勢の問題で、これは日本がどうするかと、政府が真剣に取っ組まなければならない段階である。世界の総輸出量というものは、現在大体百三十万トンから、まず多く見る人で百四十万トンしか世界の米産地の商品として出すものはないのです。それに対して、日本は本年度の買い付けが八十二万トン、約七〇%近いものの買い付けを本年度やっておる。そうすると、本年度は八十三万トンで間に合いますが、おそらく来年度のわが国の食糧輸入は、普通作の場合で百万トンをこえなければ自給ということにならないんじゃないか。これは、冷害や凶作があったら全然問題は違いますよ。そうすると、百三十万トンの中で八十三万トンの米を日本が買い付けている。七〇%を買い付けている。もはや全く限界買い付けをやっておるのです。中共へ行ってようやく三十万トン輸入してきたというのが現状なんですね。だから、まさにこの物価問題懇談会の言っている外国から安い米を買ってこいということは、全く世界的な米の需給状況を知らない暴論なんです。来年百万トンの米を買うということ佳容易じゃない事態になってきておる。この点については政府も真剣に考えていかないと、おそらくあと三、四年たりたならば、日本の米自体が完全に不足して自給できない事態が出てくるということを私は警告しておきたいのです。だから、まず物価問題懇談会の輸入論に対しては、これは全く世界の米情勢を知らない暴論であるのだ、こういうことを私は一応反駁しておきたい。  それからその次は、これは総理にもお伺いしたいのですが、東京でやったアジアの経済閣僚会議では、一応開発輸入論が相当論議もされた。まあ東南アジアへ日本の農業技術を輸出して、そこで米を開発して日本へ持ってこようじゃないか。農林大臣はこれに対してあまり賛成じゃなかったようだが、こういう議論も出たようです。これに対しては、農林大臣はどう考えますか。開発輸入という問題で、日本の将来の米需給のために、東南アジアの気候良好地帯、米作地帯へ日本が技術を持っていって開発輸入してくる、そうして日本の五年後の米需給をまかなう、これは総理からもひとつお考えを聞かしていただきたい。
  265. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この前の東南アジアの会議においては、これは新聞ではいろいろ出ていますけれども、米の輸入という問題は問題になりませんでした。むしろ東南アジアのほうで、この前寄りました国のうち、輸出し得る能力を持っておるのはタイの国だけであります。あとは全部輸入の国でございました。そのほかに、ビルマはやはり輸出することができます。こういう実態でございまするから、もちろんその議論は出ませんでした。私は、日本状態から言いまして、雨の多い地帯ですから、やはり米作が日本の国の気候風土に最も適する作物である。ところが、ヨーロッパその他−の地帯は乾燥農業でありますから、これは麦作であります。でありまするから、気候風土の点からいいますと全くこの点は違うということを御了承願いたいと思う。こういう意味において、長らく米の問題について日本民族が非常な努力をしてきたことは当然のことであると思うのです。こういう気候風土に適したものが日本の主食としてあることが絶対必要であるということを、いまでも信念を持っています。あまりこれが強過ぎるために畑作が研究されなかったので、私は畑作をこれからうんと研究もし、また助成しなきゃならないと思うのでございます。  それからまた、自給自給と申しまするけれども、この小さな五百万町歩で一億に近い人口を持っておって、何でもかんでもこれは自給はできません。そこで何を入れるかという問題はたくさんございます。そのうちの一つは、草は別として、畜産の飼料であるところのトウモロコシとかマイロというものはでき得る限り輸入をする、こういう問題もあろうと思う。(「簡単に」と呼ぶ者あり)簡単に申しますとそういうことであります。
  266. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま農林大臣がお答えいたしましたから、もうそれでいいかと思いますが、一言申し上げておきたいのは、過日の経済開発閣僚会議、これはそれぞれの国の経済を開発して、それぞれの国の安定をはかる、それが実は大事なんであります。いま農林大臣が答えましたように、東南アジアの諸地域では自分のところで食べる食糧を輸入している、これが多いのでありますから、ただいま御心配になるような、いわゆる開発輸入を日本自身が計画した、こういうものでないことはひとつ誤解のないように願っておきます。  今日までのところ、いまの話にもありましたように、トウモロコシその他は輸入しておりますし、また砂糖も日本が輸入しております。これらのことは、農業が盛んになればそういう意味日本もしあわせにもなるのでありますけれども、米自身を開発して日本に輸入してくる、かような考えは毛頭持っておりません。
  267. 中澤茂一

    中澤委員 私も、三年間南方地帯を戦争中シビリアンで歩いていましたが、これは確かに技術輸出はしてやらなければいかぬ。タイのアロスターという山の下で日本の農業試験場がやっておりました。年間、日本の農業技術で完全に三回とれるのです。現に二年目からとっていたのです。だから、私は農業技術の輸出ということは大いにしてやり、また、長期な政策としては、これを変に誤解すると国際分業論になりますけれども、やはり東南アジアに対する農業技術の輸出と、あの肥沃な土地と気候状況を生かしていくということは、今後いろいろなアジアの経済の問題において一応考慮に値する問題だ、私はそう考えておるわけです。  そこで、全然時間がありませんから、米価に対して伺いたい。米価は、いまの藤山さんの物価問題懇談会が抑制米価論を出してから、これは消費者の意見と全く一致するわけだ。政府が、二年間米価値上げというお正月のお年玉を国民に贈ったから、国民も、米価値上げは困る、このキャンペーンと、そのあとから追い打ちをかけた財界の意見というものは、いまや生産者米価というものは上げちゃいけないという形にキャンペーンが行き届いてきていると私は見ておる。しかし、完全に科学的米価が可能であるなんということは、さっき川俣氏が言ったように、これは全くナンセンスなんです。米価というものは、これは最初から政治米価なんですよ。それをもっともらしい形をつくって出発したところに米価の問題点がある。むしろ米価は、政策論議の中で決定すべき問題だった。それを、一番当初は物価パリティをとった。それから所得パリティをとった。それから生産費所得補償方式をとった。そして指数化方式をとった。こういう四段階の計算方式の歴史を持っているものだが、これは当初から間違いなんです。米価というものの決定は、じゃ、米の生産費を下げるにはどれだけ基盤整備と生産構造の改善をやる政策をやる、その政策をやって、財政投融資をこれだけぶち込むから米価はこういう方向で幾らで押えていくんだという、こういう政策論議の中から当初から決定すべきだったんだ。それを、係数にこだわって、しかも、いままでは指数化方式が絶対だというような神聖感さえ持った考え方がある。これはとんでもない話なんです。さっき川俣氏が言ったように、おてんとうさん相手にしていて、そこからできる産物が、しかも多種多様な農業形態、それは一体どこの農家を補償するのか、生産費所得補償方式だって、これはちっともきまってないのだ。大体米の六割を売る農家を中心にしようじゃないかという農林省の考え方だけなんです。だから、そこで、米価の決定というものを一度基本的に再検討する段階にきておる、米価は基本的に再検討しなければいかぬ、そういうことを私は考えておる。むしろこの米価というものは、政策論議の中で国会できめるべきだ。それは、生産構造の問題から米価をきめていかねばいかぬというのが私の持論で、時間がありませんからそのくらいにしておきます。  そこで、大蔵大臣にお伺いしておきたいのは、赤字、赤字、食管会計が赤字になる。しかし、もし食管会計の健全化を政府主張するのなら、なぜ財政政策の不健全化をやるかということを問題にしたいのですよ。赤字公債を出さずに、財政全体の健全化の中でこれをやって、ここで締めて、経済再建をやるのだから食管も不健全化はいかぬ、赤字はいかぬというのなら、これは財政政策として筋は通りますよ。ところが財政全体は、あなたがやったわけじゃない、田中君がやったわけだけれども、でたらめな、放漫のやりほうだいをやって、公債を出さざるを得なくなったところへ追い込んでさておいて、そして、公債を出すのだから食管だけは健全化しなければいかぬ、そういうばかな議論は財政政策としてはあり得ないのですよ。だから、そういう点において大蔵大臣は一体どう考えるか。食管はどこまでも健全化して赤字を出してはいけない、食管だけは健全財政でいくのだ、こうお考えかどうか。
  268. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 米はこれを収買して販売する、そういう一つの特別の会計としてやっていきたい、こういうたてまえでやっておりますので、その基本線は堅持していかなければならぬ、こういうふうに考えております。しかし、そのときどきの財政事情、また農村の事情等もありまするし、また同時に消費者米価というような問題もあります。これはそのときの経済情勢、物価情勢、財政情勢、そういうものを総合勘案して適切にやっていく、こういうことかと存じます。
  269. 中澤茂一

    中澤委員 そこで、私は最後に申し上げたいことは、公債政策というものに対していま一度基本的に検討する必要があるのじゃないか。ということは、もちろん社会施設のおくれた部面、公共投資にぶち込んでいくというのはいいですよ。しかし、いま一番問題になっている物価の問題はどこがおくれているか、これが問題なんです。すると、おくれているのは全部農業と中小企業なんです。そこで、公債政策というものは、公共投資で、社会資本の充実にいま重点を置いているわけです。そして物価対策からいっても、農業と一番おくれている中小企業というものに公債の使い道がないという姿勢になっているわけですよ。これは、だから私は基本問題として提起しておきますから、公債政策が何でも社会資本の充実以外には使われないのだという考え方は、いま一度政府が再検討する必要があるのじゃないか。ただし、これは方法論はありますよ、いまのラインを守っても。それは、公共投資を公債でまかなうのですから、ほかのほうで農業投資へぶち込んでいく。金に、これは公債の金でございますという判こはないのですから、方法はあるのですよ。いまのラインを守っていても方法はあるわけですね。私は、基本問題として、もし公債政策というものを今後増額した姿勢の中で政府はやろうとするのなら、大体このごろあなたは参議院で九千億くらいな数字を出しているようですが、そういう中でやるのなら、やはり公債政策の中でおくれている農業と中小企業にどうするかという問題を一度再検討しておいてください。時間がありませんから、それだけにしておきます。
  270. 福田一

  271. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますから、簡潔に総理並びに関係大臣に数点お尋ねをいたします。  実は、食糧問題についての非常な国民の世論の高まりの中で、過般米価審議会で、今月の二十二、二十三、二十四日の未明まで麦価の問題で議論を行なったわけであります。私も、国会承認人事としてことしから米価審議会に加わって、各委員の真剣な議論の一員として参加したわけでありますけれども、そこで、近く一番主食の根幹である米価問題について、二十九、三十、来月の一日、おそらく三日間で終わらぬでしょう、真剣な議論でさらに日程が延びるかと思いますけれども、これは十分議論をするに値する重要な問題だというふうに思います。そこで、総理にまずお伺いしたいのでありますが、従来からずっと米価審議会の真剣な議論の上に立った答申政府に対してやられるわけですけれども、長い記録をずっとたどってまいりますと、米価審議会答申政府によって必ずしも尊重されてない点があるわけです。私は、時間の関係もありますから具体的に一々指摘はしませんけれども総理としては、この米価審議会答申については誠意をもってこれを尊重されるということば当然だと思いますけれども、まずその点からお伺いをしたいと思います。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米価審議会答申は誠意をもって尊重する。
  273. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 過般、麦価の問題つにいての答申を行なったわけでありますが、そこで、麦価の問題について詳細には申し上げませんけれども、まず政府の麦の買い入れ価格という点について、これは答申の本文の中でも明らかにしておりますように、政府の買い入れ価格では再生産を十分にカバーしない、したがって再生産確保のためには特別の措置をとる必要がある、こういうことを買い入れ価格として答申をしておるわけであります。農林省が米麦を中心にして六十数品目の生産調査をやっておりますけれども、これは審議会の中でも坂田農林大臣、担当の食糧庁長官からも明らかにしたように、農林省の麦の生産費調査で出てきた結果をもってしても、麦作農家の半分以上、あるいは半分程度のものは生産費をカバーしてない。その農林省の麦作の生産費よりもさらに低い価格で政府の買い入れ価格をきめておるわけであります。これは、御承知の農業パリティの変化によって、これを昨年度のやつにかけて、そしてパリティ価格というものを出しておるわけでありますから、したがって、このパリティ価格は農林省が出しておるいわゆる生産費価格よりも下である。その農林省の生産費価格そのものが、麦作農家の約半数近くのものは生産費をカバーしてない。こういう実態については、大臣も食糧庁長官も率直に認めておるわけであります。われわれも専門的な関係でそれを承知しておるわけであります。したがって、生産者代表といわず消費者代表といわず、各界の権威者がその事実の上に立って、政府の買い入れ価格の今月末の決定にあたっては、再生産確保の立場から特別の措置をとる必要がある。去年は、御承知のように麦作振興のために約二億円の金を出したわけであります。ことしは価格に上積みをするか、あるいは麦作振興という形で出すか、これは方法論はあげて政府にまかされるわけでありますけれども、いま言ったような実態から見て、しかも、御承知のように最近は不作地が冬作で非常にふえておる。二百六十数万ヘクタールという、六百万ヘクタールの相当部分が不作地という時代にある。いわゆる耕地の高度利用という点から見て基本的な問題を含んでおる。だから、米麦あるいはその他のいろいろなものの畑作振興の点について、これから力を注ぐ必要がありますけれども、そういう点から見ても、再生産ということを念頭に置いたこの答申の主文については、十分善処される必要がある。  それから建議の中で、麦対策の今後の方向についてもう一度再検討せいということをいっておりますが、私はこの問題には深く触れません。  次の、建議の第二項の中で、ことしは、御承知のように小麦について十七円の値下げを行なったわけであります。物価対策上からもまことに歓迎すべきことだと思います。問題は、こういうふうに小麦の政府の標準売り渡し価格を値下げいたしましても、いわゆる二次製品あるいは最終製品等を通じて、パンそのもの、あるいはうどんそのものという形で、消費者に、これが最終段階で値下げの効果が十分出るような強力な行政指導が行なわれる必要がある。こういうことは主婦代表その他からも強く出たところであります。麦は、御承知のように間接統制でありますけれども、しかし、せっかく政府が財政負担をして内麦で赤字を出し、外麦でもうけるという事態はございますけれども、いずれにしても、とにかくある程度の財政負担をしながら、麦の価格は全般的には売り渡し価格は据え置き、小麦については十七円の値下げをやったということでありますから、製粉界の値上げの強い突き上げ等もありましたけれども、それはもちろんでありますけれども、最終製品の段階においても、行政指導その他を通じて消費者自身から歓迎される姿にする必要がある。この点について、答申の趣旨を受けて、生産費の買い入れ価格の問題に対する配慮、また建議の第二項である消費者が歓迎する方向における今後の措置というふうな問題については、これは非常にまじめな、正しいわれわれの答申の方向が出されたと思うのでありまして、総理大臣みずから、答申の趣旨は誠実にこれを実行するということであるならば、その答申についてどういうふうに対処されるのか、それをひとつお伺いしたいと思うのです。
  274. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ただいまの角屋委員の御質問は、ほんとうにそのとおりに私も存じております。すなわち、第一の御質問の点につきましては、麦の生産性を高くし、それから生産費を安くするために特別の処置を講じたい。しこうして、それは慎重にいま検討をいたしておりますから、でき得る限り早く結果を出したいと存じております。  それから次に、消費者の最終の製品の値上げ問題についての建議でございますが、これもただいまお話しのとおり、われわれといたしましても、最終商品がここ当分上がらないように、でき得る限りの努力を払うつもりでおります。御了承願いたいと思います。
  275. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私はこれからの米を中心とした米価審議会の問題に関連をして、基本的な問題を数点ただしたいと思いましたけれども、楯委員の次の関連質問もありますし、時間も相当延びておりますので、米価審議会の米の答申が出てきた場合においても、総理が冒頭に言われましたように、われわれ関係者が真剣に議論をしたその答申を誠実に実行するという前提に立って善処をしてもらいたい。  なおいま、去年からとっておる政府の指数化方式についても触れようと思いましたけれども、これはまあせいぜい三年くらい実行したいということであって、これは永続性のある方程式というふうには政府自身も見ていないわけであります。だから、どういう方式を採用するかという点については、米価審議会の議論の経過並びに全体的な農業政策推進という総合的な判断という立場から十分検討して善処してもらいたい、このことを強く希望しておきます。
  276. 福田一

    福田委員長 楯兼次郎君。
  277. 楯兼次郎

    ○楯委員 いろいろお伺いしたいと思いましたが、時間がございません。したがって、仲裁裁定、公共企業体関係について三点お伺いをいたします。前進的な答弁がいただければ、きわめて短−時間にして終了いたしますので、そのつもりで御回答をいただきたいと思います。  まず第一点、労働大臣もお聞きいただきたいと思いますが、裁定が実施になりまして、補正予算が出てこない。われわれが二カ月もかかって国会予算審議をして、何百億という予算実行上重大な変更を来たしながら、補正予算が出てこない。この結論から私考えますのに、公共企業体には団体交渉権は与えながら当事者能力がない、こういうことがいわれておるわけです。団交はやるが、予算上の結論については無能力者である。しかし本年度の実態を見ましても、もし団交で三千五百円なら三千五百円という春闘相場が出て、公共企業体の当局者が団交妥結をすれば、予算の移流用によってこれを実施する、こういう決定がなされ、当事者能力が拡大になっておれば、団体交渉、闘争、調停、仲裁、こういうわずらわしい段階というものは要らないと思うわけです。こういう点について、当事者能力の拡大をどう考えるか。今日の結果から見れば、団体交渉の協定が予算の移流用を認めれば、それでいいのではないか、こういうまあ結論になっておるわけでありますが、当事者能力の権限拡大について、労働大臣、大蔵大臣、総理の簡単なひとつ回答をいただきたいと思います。
  278. 小平久雄

    小平国務大臣 楯先生から御指摘のありましたとおり、現在の法制から申しますと、団体交渉による協定ができました場合におきましては、予算上それが実施できるというような場合でありましても、予算においては結局移流用が認められない、仲裁裁定があった場合に予算上移流用が認められる、こういう仕組みになっておるわけでございます。そこで、先生のお話は、協定の際にも移流用ができたらどうか、こういった御趣旨かと思いますが、これは、結局予算制度の根本に関することでございましょうし、いま私の立場からどうと申し上げるわけにいきませんが、いずれにいたしましても、当事者能力というものにつきましては、政府も、これが検討を真剣に行なっておるわけでありまして、基本的には公務員制度審議会で当事者能力のこともひとつ検討をしてもらおう、それまでの間はでき縛る限り現行制度のもとで配慮をいたしていこう、こういうことを昨年二月に決定をいたしてやっておるわけでございます。
  279. 楯兼次郎

    ○楯委員 まあ労働大臣がいろいろ説明をされたんですが、いろいろの理屈を言うより、予算上の給与総額を取り払う、移流用ができるようにしたと現実には同じ結果じゃないですかと言うのです。補正予算をあなた方が国会に上程をして、裁定実施に伴う財源については、決定をされた予算に追加をする、変更をするということなら話は別ですが、予算の移流用によって何百億という仲裁裁定の実施ができるということなら、当事者にその権限を与えて、協定が結ばれたら直ちに移流用ができるということにしておけば、これは結果は同じじゃないですか。結果は同じですよ。池田・太田会談で数年前から当事者能力の拡大については真剣に検討をする。すでにまあ二、三年たっておるわけですね。何ら政府のほうで具体的な法案というものが示されないわけです。示されないが、途中紆余曲折を経ながら、いま申し上げますように、協約が予算の移流用を認めたと同じ現象をあらわしておる。こんなことなら、団交の協約で移流用をせしめる、こういうふうにお直しになればいいじゃないですか、同じことですからということを申し上げておるわけです。大蔵大臣も答弁してください。
  280. 小平久雄

    小平国務大臣 先生のお話のとおりのことになりますれば、確かに結果的にはまあ同じと、こういうことになると私も思います。しかし一面、何と申しましても国の財政からの支出でございますから、それがあまりに乱に流れるというようなことはもちろんこれは避けなければなりませんし、一つにはまた国会審議権との関係もあると思います。しかし、いずれにいたしましても、これは財政制度の問題でございますから、むしろ大蔵大臣から御答弁願うのがよろしかろうかと思います。
  281. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私も、争議行為を否定されておる三公社五現業当局が当事者能力を持つということは、そうあるべきである、こういうふうに思うのです。ただ、いままでの給与決定の交渉経過を見ておりますと、なかなかそれが実現できないような状態です。ことしはどうだったでしょうかというと、七千円というようなことです。とうていこれは話のベースに乗らない。やはり一般通念で交渉が行なわれるということで初めて当事者能力という問題も現実の問題になってくる、こういうふうに考えるわけです。私は、お話の趣旨はよくわかりますが、まあとにかくその話し合いでやっていけるという実体をつける、そういう慣行をつくり上げるということが私は先決だと思います。しかし、それにもかかわらず前向きでこの問題は検討していかなければならぬ。まあ有額回答というような慣行も始まってまいりました。だんだんとそういうものを育てていくべきである、かように考えております。
  282. 楯兼次郎

    ○楯委員 組合がことしは七千円だから、幅があり過ぎて、団交のいま言う私の主張を当てはめることができない。が、政府の回答のゼロ回答、あるいは三百円回答より組合の七千円のほうが真実性がありますよ。ゼロ回答、形式的に三百円でどうだ、こういう回答よりは、私はまだ現実味があると思うわけです。まあそういうことを議論するより、結果は同じなんですから、それから、総理大臣が任命した信頼すべき総裁であり、長官なんだから、結果が同じなら、そのぐらいの権限をまかしたほうが私はいいと思う。しかし、こういう議論をしておると、委員長のほうでもうじろりじろりとにらまれておりますから、次の問題に移ります。  それは林野庁の関係です。私は、仲裁裁定が出れば、林野庁の職員八万の方が当然この仲裁裁定が実施をされる、こういままで思っておったわけです。ところが、裁定の適用を受けるのは八万のうち約三万ですね。五万近くが、簡単に申し上げまするといわゆる臨時工的な存在であるわけです。これは何カ月雇用、何カ月雇用というので、臨時工的存在であって、適用を受けられない。そうして三万人の方が仲裁裁定の適用を受けて、それから再びこの臨時工的、日給制の人が林野庁当局と団体交渉をして、そこでまたいま私が申し上げましたことを繰り返して、調停にあげて、そしてまた仲裁にいって、それから日給のベースアップがきまる、こういうばかげたことをやっておるわけです。本年度の定期昇給のない春闘相場というものは大体三千五百円ですよ。だから仲裁裁定でも、昇給を除けば大体三千五百円のベースアップということを認めておるわけです。であるならば、この日給制は直ちに直すことができないとしても、なぜ三千五百円のいわゆる昇給を除いた春闘相場を団体交渉の段階で解決をしないのか。また調停、仲裁ですよ。まあ政府のほうはひまがあって困るかどうか知りませんが、こういう全くわかり切ったばかげたことを林野庁の場合はやっておるわけです。こういう点はどうお考えになりますか。全く無用な時間の浪費と徒労ですよ、こんなことは。農林大臣、どうお思いになりますか。農林大臣じゃないですか。
  283. 小平久雄

    小平国務大臣 今年の過般行なわれました仲裁裁定は定員内の、つまり月給職員についてだけ裁定があったわけです。これは実はきわめて異例なことでございまして、従来は月給者も、先生いまお話しの日給者も同時にこれが組合のほうから申請がありましたから、公労委で両者に対して同時に裁定をいたしておったのでありますが、今回は組合のほうの都合がどうであったのか存じませんが、いずれにいたしましても、月給者についてだけ申請があって、日給者についての申請がなかった。したがって過般の裁定においては、日給者のことに触れなかった。その後調停の申し出がありますので、ただいま日給者について調停に入っている、そういう事情に相なっておるわけでございます。
  284. 楯兼次郎

    ○楯委員 いま調停にかかっておればわれわれがかれこれ言う段階ではないのですが、しかし、もう相場はわかっておるじゃないですか。一緒に働いておる人が、大体春闘相場の裁定が出て、その適用を受けるということになれば、日給だから、昇給がない、それを取った大体春闘相場で団体交渉の席上解決すればいいのじゃないですか。それをやれまた調停だ、仲裁だ、全く私は浪費と徒労なことをやっておると思うので、こういう点をひとつあらためてもらいたいと思います。しかし、労働大臣と水かけ論をやっておりましても、調停の問題ですから、時間を食いますからやめます。  次の一点を申し上げますが、これは大蔵大臣、総理大臣によく考えていただきたいと思います。  いま申し上げました林野庁の約五万のいわゆる臨時工的職員はどういう状態に置かれておるか、あなた方も労働大臣や農林大臣からお話も聞かれたことがあるかどうか知りませんが、まず七カ月、八カ月、九カ月というように、一年間こま切れの採用ですね、雇用です。全国平均賃金は九百一円ですよ。その中には生活保護の適用を受けておる世帯が、何世帯ということは申し上げませんが、多数あることは農林大臣は承知をされておると思うのです。したがって、生活保護の適用を受ける世帯がありますから、受けない人たちもその生活状態はこれと紙一重であるということである。五万人の人がそういう状態にあるということをまず考えていただきたい。  それから、こういう不合理なことが行なわれておるのであります。同一仕事をやっておっても、片方の人は定員内月給制である。同じ仕事をやって同じ職場におっても、片方の人は臨時工的日給制である。だから、官庁へ入る見習い期間中とか、あるいは一年間そういう仕事を日給を取ってやっておって、半年か一年後に定員内の月給制になるというなら話は別ですよ。ところが五年、十年、一生臨時工的存在で終わるということです。たとえば運転手をやっておるでしょう。片方の人は定員内の月給制だが、片方に同じ運転手で一生とにかく日給で終わるという人があるわけです。こういうばかげた状態であるということ。それから原因不明の白ろう病という職業病ですね、これにかかってあののこぎりが使えないということになって、職場が変わると賃金がダウンされる。療養所に入れば日給はもらえない、こういう状態です。しかも、これらの人を称して公務員というわけですね。公務員のワクにはめて、いろいろな制約をしておる。仕事があるのにどんどんその仕事を請負に出して、そうして定員化をやらない、年間雇用をやらない、こういう状態に置かれておるわけです。  私は、資料をたくさん持ってきておりますが、時間の関係でずっと並べました。これは真剣に考えて——あなた方の公務員が、いま例示をいたしましたようなばかげた労働条件の中に置かれておるということを真剣にひとつ考えていただきたい。佐藤内閣人命尊重の政策は、まず足元から私はやってもらいたいと思います。農林大臣はもう十分知っておるわけです。農林大臣はよく御承知のはずです。速記録をずっと見てみますと、三月二十五日の参議院の農林水産委員会で、坂田農林大臣はこういうことを言っておる。直営直用で国有林野事業を行なうことにより、雇用の安定をはかることについても積極的に拡大する。なお雇用の通年化、こま切れでない、年間を通じて雇用することについても今後努力をする。こう農林大臣は実態を把握されておるから答弁をされておるのです。それで総理大臣、大蔵大臣、農林大臣のお三方が今後ずっと来年度の予算編成までおかわりにならないなら、これは、私は安心しておれるわけですね。ところが七月に内閣の更迭があるとかなんとかいわれるので、ぜひお残りの有力候補者である大蔵大臣や総理大臣から、これはほんとうにみじめな状態でありますので、この坂田農林大臣の言明を実施をして——これは一ぺんにはよくならぬと思いますが、改正の方向に努力していただけるかどうか、こういう点を質問いたしまして、答弁いかんによっては、私の質問を終わりたいと思います。
  285. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 先ほどお読みになったとおりのことでございますので、簡単でありますが、御了承願いたいと思います。
  286. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま農林大臣からお答えのようにも思えますが、ただ通年制にせいというと、これは全部が全部というとなかなかむずかしい問題かと思います。つまり、仕事の実態が季節的である、こういうことでございます。たとえば半年の仕事しかおおむねしない、こういうのを通年制にするということになると、私はそこに問題があるかと思いますが、なかなかいろいろの問題があるようにいま伺ったわけであります。雇用の安定、こういう面では最善の努力をしてまいりたい、かように考えます。
  287. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどの要望はよう考えておけということでございます。よう考えておきます。
  288. 福田一

    福田委員長 以上をもちまして質疑は全部終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後九時九分散会