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1966-03-04 第51回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月四日(金曜日)    午前十時二十分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    上林山榮吉君       川崎 秀二君    倉成  正君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三原 朝雄君    水田三喜男君       足鹿  覺君    大原  亨君       加藤 清二君    勝間田清一君       角屋堅次郎君    小松  幹君       多賀谷真稔君    高田 富之君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       穗積 七郎君    武藤 山治君       八木  昇君    山中 吾郎君       山花 秀雄君    今澄  勇君       佐々木良作君    竹本 孫一君       玉置 一徳君    加藤  進君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         防衛庁参事官         (長官官房長) 海原  治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         文部事務官         (管理局長)  天城  勲君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英男君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  加藤 威二君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         食糧庁長官   武田 誠三君         通商産業事務官         (通商局長)  渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         中小企業庁長官 山本 重信君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君         郵政事務官         (大臣官房電気         通信監理官)  畠山 一郎君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         外務事務官         (国際連合局外         務参事官)   滝川 正久君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村井 七郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 大沢  実君 三月四日  委員足鹿覺君、穗積七郎君、武藤山治君、安井  吉典君、今澄勇君及び竹本孫一君辞任につき、  その補欠として勝間田清一君、小松幹君、山花  秀雄君、永井勝次郎君、佐々木良作君及び玉置  一徳君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十一年度一般会計予算  昭和四十一年度特別会計予算  昭和四十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  本日、参考人として日本銀行総裁出席を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  4. 福田一

    福田委員長 一般質疑を続行いたします。穗積七郎君。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 質問に入ります前に、賢明なる大臣各位にお願いいたしておきますが、実は私は四、五日前から奥歯をはなはだしく痛めまして、痛くて熱がありまして寝ておったのですが、国事を憂えるのあまりきょう出てきたわけです。ですから、私の一の質問に対して賢明なる皆さんは十を悟って、どうぞひとつ適切な誠意のある御答弁をいただいて、なるべく早く済むようにしていただきたいと思っておりますから、あらかじめお願いしておきます。  質問に入ります前に、簡単な資料二つ要求をいたしたいと思うのです。一つは、ベトナム問題につきまして日本松井大使国連安保理事会議長をつとめたわけですが、これがまとまらなくて、はなはだしく根拠の疑われる、また内容につきましても国際的な不信を招いておる大使書簡提出されたようですが、これを第一にわれわれ国会に御提出をいただきたい。それから第二は、これから触れる問題ですが、外務省中心になって策定を急いでおるといわれる国連協力法案要綱がもうまとまっておるようですが、法案が条文完成する前におきましても、重要な意味を持っておると考えられますので、草稿の要綱でけっこうですから、中間資料としてこれをぜひ御提出をいただきたいと思うのです。  これは、委員長を通じまして政府にお願いをいたしますので、それぞれ政府お答えをいただいておきたいと思います。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第一の書簡の写しは、資料として提供可能でございますが、第二はございません。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 それではこれからその問題について入る予定ですけれども、ないというのはどういう意味でしょうか。全然そういう事実がないというのか。資料がないというのか。はなはだしく不誠意、不親切なお答えだと思うのです。納得がいきませんね。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ要綱案なるものもできておりません。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 これは私は人の名前は避けますけれども、相当信頼するに足る筋から、特に東京新聞発表になりました国連協力法案要綱なるものは、佐藤首相了解を得て新聞発表がなされたということを伺っております。のみならず、ないということをいま言われたのですが、発表ができないのか、ないのか、どちらでございましょうか。  そうすると、東京新聞はじめ各新聞に、これの要綱がすでにできて、それから内閣、特に法制局並び防衛庁その他とも連絡協議をやっておるという事実が報道されておりますが、その事実も誤りである、誤報であるというと、ここにあります発表された要綱というものは、これは新聞社推測記事でございましょうか。これは相当信頼すべきものだと思われるゆえをもって、国会機関におきましてもこれをプリントいたしまして、これはもうマル秘でなくて、外に出ておるわけですね。したがって、いまの御答弁では、はなはだしく不誠意な御答弁納得がいきません。なぜ出せないのか。出せないのか、ないのかですね。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 原局ではいろいろそういうものについて研究はしておるということは私も承知しておりますが、これは案として私の手元にまだ入っておりません。それから、今国会にもちろん提出する意思もありませんし、そういうものは、結局ないということなんです。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 私は先ほど言うように、そういうことを隠すこと自身がおかしいと思うのですね。なぜ隠すのでしょうか。何かやましいところがあるから隠すのか。そうではなしに、大臣の決裁を得た政府最終案であるという段階に至っていないにしても、すでに外に、巷間にもうすでに信頼すべきマスコミその他の機関がこれを的確に報道をしておる。そうであるのに、われわれ国民の代表である国会に、その中間のものでいいから出していただきたいというのに、なぜ出せないのでしょうか。文書になっているじゃありませんか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は案としてこれを認めておりませんし、私の手元に来ておらない。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、外務省のどこでやっておるのですか。やっておるというなら、どこでやっておるのでしょうか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうものを研究調査するところは国連局でありますが、もし勉強中であるとすれば、国連局で勉強しているかもしれない。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、いままでの討議経過並びに内容について、まず国連局長から報告をしていただきましょう。
  16. 滝川正久

    滝川説明員 原局としましても、まだ何ら結論を得ておりません。したがって、原局案なるものを大臣手元に御提出するような性質のものも何もございません。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 予算委員会の第二分科会へ出ました委員からの報告によりますと、もうすでに椎名外務大臣は第二分科会で、検討中であるという御答弁をなさっておられるようですね。どういうわけでそういうふうにお隠しになるのでしょうか。  それから、時間がありませんから国連局長には申し上げておきますが、この新聞に出ておりますもの、また私の手元にありますこの要綱案なるもの、これは国会でプリントしたものですけれども、これらははなはだしく事実に反しますか。こういう事実はないのか。また、内容においてはこれとははなはだしく違ったものであるのか。大臣局長からお答えをいただきたいのです。外務大臣、あなたは検討中だという御答弁をなさっておられるでしょう。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう法案検討中だということは決して申し上げておりません。ただ、そろそろ国連協力のためにそういうことを研究すべき時期が迫っておるようにも感じられるということは言いましたが・案をいま検討中だということは申しておりません。
  19. 滝川正久

    滝川説明員 いま大臣お答えになりましたとおりでございます。特別に取り上げることはございません。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっと局長、待ってください。(「局長でない、参事官だ」「局長はおらぬか」と呼ぶ者あり)すでに部内並びに部外との連絡の上で検討しておるという事実はどうですか。
  21. 滝川正久

    滝川説明員 検討いたしておりますのは、国会のほうでもいろいろ御質問もございますので、法制的な見地から、憲法その他の関連検討しておる事実はございますけれども、法案というような観点から検討したことはございません。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、その憲法との関連において検討した経過並びに結果について御答弁をいただきましょう。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 憲法との関連についてまだ検討が十分に済んでいるわけじゃない。ただ、監視団というものを国連派遣する場合に、その監視団の一部を構成する人員を送ることについて、憲法上どうだというようなことは、この予算委員会において御質問がございましたので、それに対しては、自衛隊法海外派遣を禁じておるけれども、自衛隊法の問題を除いては、憲法上は差しつかえないものと思うと……。なおその問題については、法制局長官から同様のお答えをしております。しかし、まだ案が全部固まっておるわけじゃありません。ただ、監視団を構成する人員派遣することについて憲法上どうかということは出ておりますけれども、案そのものについての検討はまだ検討中でございます。それについてどうこうということをいま申し上げる段階でない、そういう状況であります。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 監視団その他、監視団の名義であろうと国連軍参加であろうと、あるいはまた諮問機関調査機関への出向であろうと、いずれにいたしましても、そういう軍事的な問題、国際関係の軍事的な問題について、監視調査、あるいは査察をする必要がある、そういう国連機構活動が出てくるということが予想される情勢になってきたので、したがって、この国連協力法並び自衛隊法改正の問題は検討すべき段階にきておるように思うということを、あなたは発言しておる。  そうであるなら、第一にお尋ねいたしますが、およそ法律関係というものはすべて事実関係基礎にしておるものです。そうでありますならば、その事実関係が先行し、事実関係背景として法の措置構想が出てくるわけです。あなたの言われるとおり。そうであるなら、それを必要とすると思われるに至っておる事実とは一体具体的にどういうものを言われるのか、情勢はいかなる情勢をその必要のある情勢とごらんになっておられるか、外務大臣の御認識を伺っておきたいのです。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、レバノンの問題がもうすでに起こっております。国連から監視団派遣するということがすでにもう実行されておる。その際に、日本に対してその構成員派遣を要請してきたのでありますが、御承知のとおり自衛隊法海外派遣を禁じられておるのですから、まあ国内法律上の関係でお求めに応ずるわけにはいかないといって断わったことがある。同様のことが今後も起こり得る、こう考えましたので、そういう情勢が起こりつつあるというふうに考えられる。そのときあわててもどうにもなりませんから、協力するかしないか、これは基本問題はそこにありますけれども、協力しようと思ってもできない、そういう事実が過去においてあったわけであります。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 レバノン情勢はすでに過去のことです。現在はどういうことですか。これから必要とするという、これからそういう対策を、措置を考えなければならないという、その現在並びに近き将来における情勢については、具体的に何をあなたはお考えになっておられるのか。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ同じようなことが起こるだろうと、こう考えたわけであります。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 それは、ベトナム問題のアメリカエスカレーション政策と即応することは明瞭であります。特にアジアにおいて。そういうことの討議背景になっておるのではありませんか。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別にそれに限ったわけじゃないのです。いろいろ国連活動がだんだん活発になるのでもございますから、そういう事実がおそらく発生するだろう。特別にベトナムの問題を想定したわけではない。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 ベトナム問題に限りはしないが、ベトナム問題を含む、こういうことですね。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別にそれにこだわっておるわけじゃありませんから、その必要が起これば考えなければならぬだろうと思います。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 これは、先ほど申しましたような、事前に非公式ながら佐藤首相了解を得てということが事実のようであります。したがって、この二十三日の新聞報道によると「このほど外務省自衛隊国連軍参加を含む「国連協力法案」(仮称)の要綱をまとめた。」と書いてある。したがって、それに沿うてこの要綱の一部が発表になったものとわれわれは想定せざるを得ない。しかも、これらは日本における世論形成の非常に重要な報道機関がことごとくこの問題を報道しているわけです。そうであるなら、この報道は事実に反する、また報道されておる要綱なるものは、全然そういうものがないものである、間違ったものであるということでございましょうか。
  33. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私もよくその新聞は読んでおりませんが、とにかく推測記事だろうと思います。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 それでは国連局参事官にお尋ねしますが、先ほどお話のあった海外派遣の問題と憲法との関係について、防衛庁並びに内閣法制局とお打ち合わせになった事実はありますね。
  35. 滝川正久

    滝川説明員 憲法解釈の問題でございますので、これは法制局中心の問題でございます。ある程度われわれは関連しまして話ししたことはございます。法制局がほかとどういうふうに相談されておりますか、それはわれわれよく承知しておりません。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 それでは外務省防衛庁とはどうですか。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私の知る限りにおいては、海外派遣の問題について防衛庁とはまだ話しておりません。そういう段階ではございません。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 参事官、どうですか、事務当局レベルは。
  39. 滝川正久

    滝川説明員 最初に、さっきお断わりしましたように、間違うといけませんので申し上げておきますけれども、多少やっておりますのは、現在の法制との関連という点での打ち合わせをしたことはございますけれども、法案というようなものについては、どこともしておりませんし、われわれとしても何らの結論をまだ得ておるわけじゃありません。そこをお間違いのないように……。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 つまり文章化してはいないが、アイデアはある、こういうことですね。
  41. 滝川正久

    滝川説明員 特に防衛庁とはお話ししておりません。これはまず申し上げます。  それから、アイデアは、これはまだ全くプライベートな段階でございますので、省内あるいは局内におきましても、必ずしも一致しておるものではありません。いろいろなアイデアはあり得るわけでございます。しかし、きまったものはありません。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 私は先ほど言ったように、外務省または政府全体として、最終的に確定したものの段階に至っていないにしても、事がはなはだしく重要な性質を持っているので、率直に中間報告国会にすべきである、そういうことを言っているわけです。だから、どういう意見があった、どういう想定がなされたということでいいんです。いろいろなバラエティーのある意見や判断があっていいわけですから、率直にそれを報告をしていただきたい。参事官、どうですか。どういうことを想定して、どういうことをピックアップして問題として研究討議をしたかという事実を、ありのままに言ってください。
  43. 滝川正久

    滝川説明員 各人の意見はまちまちでございますので、御報告するような段階ではもちろんないわけでございます。われわれが主として考えておりますのは、この前ございましたレバノンのような事態についていろいろ考えておる、こういうことであります。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだしく外務省は、大臣を含めてことごとく不誠意きわまる。秘密主義官僚主義です。そうであるなら、前へ進みまして、時間がありませんから、いささか構想といわれるものの内容にわたってこれから事前審議としてお尋ねいたしましょう。  まず第一に問題になりますのは、国連との関係条約上持ち込みました特に注目すべきものは昨年の日韓条約でございます。これは実は国連というものが、国際問題、東西・南北問題、すべて含んで非常に公正にして権威のあるものである、しかも対立的なものではなくて包括的な、権威ある平和・政治機構である、そういう期待が国民の間にはあるわけですね。それを大いに隠れみのとして利用して、そうして国連への協力国連の規定並びに精神の支持、特に三十九条による国連決議、この勧告決議に対しても忠実にわれわれは守っていく必要がある。これは日韓国会においてこの条約の中で示された政府の態度です。  そこで、私はお尋ねいたしますが、具体的にベトナム戦争関連をしない——関連することもあり得るという大臣お答えですが、それでは一般的にお尋ねいたしますが、もしこういう国連への協力国連中心外交政策一環として自衛隊海外派兵または派遣、その用語はあとで整理するといたしまして、そういうことが論議される以上、いままで国連憲章とわが国の外交との関係においては十分すでに討議されたものでありますから、そういう構想国内において具体化すとするならば、その情勢の必要を感じておるという御答弁ですから、そうであるならば、一体、国連憲章のどの条項を基礎とするそういう協力体制になるのでありましょうか。それを条約局長からでもけっこうですが、お答えいただきたいと思います。
  45. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 国連軍事行動をとります場合の最も典型的なものは、憲章第四十三条の特別協定による場合でございますが、これは御存じのとおりまだどことも締結されておりませんので、俗に国連軍と称しますけれども、本格的な意味国連軍というものはまだできておらないわけでございます。それ以外でどういうことがあり得るかということは、結局過去の実績によって判断するよりほかないわけでありますが、これはまあ朝鮮のときの国連軍、それから、先ほどからたびたび話が出ておりますように、レバノンとか、あるいはコンゴとか、あるいはサイプライス、いろいろなケースがあるわけでございますが、ただ、そのうち朝鮮のときの国連軍は、これは四十三条じゃありませんけれども、それに類するような一種の強制措置としての性質を持っておる、しかし、そのほかのものはいずれも関係国の了承のもとに、国連が、休戦監視だとか、あるいは泊安維持とかいうことで、関係国の要請によって軍事要員を出しておる、こういう関係のものでございまして、それぞれの決議の準拠の条文は、必ずしも国連の毎回の決議によっては明らかにされておりませんが、しかし、概括的に申し上げますと、朝鮮動乱以外の国連の舞台は、いずれも紛争の平和的解決手続一環として行なわれておる、かように了解いたしております。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 実はこの国連協力法の制定、あるいはそれとの関連におきます。それを原則とする自衛隊法改正問題というのは、先ほどもちょっと出ましたように、特にアメリカアジアにおけるベトナム戦争中心とする植民地支配戦争拡大がいまの情勢として見られ、特にそれに対しまして日本北爆をすら終始支持してまいりました。続いて昨年暮れからことしの正月にかけての見せかけの和平工作というものが失敗をして——これはアメリカ自身失敗を予定しておった。そして、北爆再開にあたってホノルル会談——重要な会談でありますが、これが行なわれた。そして、そのときに続いて、この間バンディ氏が参りまして、外務省の中枢である下田次官と話をされて、このベトナム問題の情勢、すなわち拡大への展望、それに続いて日本協力体制について話が行なわれた。そういう政治的な背景国際情勢背景の中で、外務省から非常に積極的にこれが推進される、討議される、こういうことは、自衛隊法改正は本来防衛庁の所管のことでございましょう。それを外務省から国連協力という大義名分、にしきのみ旗を持ち込んできて、そして一挙に国内における防衛庁所管のこの自衛隊法、大蔵省所管の為替並びに貿易の管理法の改正をやろう、これは実は国連協力の名によって平和憲法の平和条項というものを侵す、改正しないで侵していく。それから、一方におきましては、国連に対するいままでの地位協定、吉田・アチソン交換公文等によって、人と物による役務による協力は義務づけられております。そこへもってまいりまして、いまのような経済関係法律改正をいたしますと、これは物と人とを国連という名による戦争拡大に動員をし、協力をし、そうして平和と民主主義を日本国民から、経済から剥奪をする、こういう深刻な意味を持っておるとわれわれは過去の経験からいたして考えなければならない。そういう意味で私たちはこの問題を重要視しておるのです。  そこで、そういう私どもの質問の趣旨を十分理解された後に、お答えをいただきたいのですが、第一に、国連協力法なるもの、国連協力するというそのときの政府の態度、これは自民党としては当然な、いままで言われたことですから自明の理ですが、国民の権利義務を規制いたします国連協力法なるものをもってこれを固定する、法制の上で固定するということは、私はいま申しましたように、国連憲章のみならず、国連の三十九条による勧告決議、これはもうすでに日韓の場合には、六一年の国連総会において日本がいままでのずっと全部の対朝鮮勧告決議案なるものを全部了承しておるわけですね。これを確認しておるわけです。そういう経過を見ましても、これは、はなはだしく国連決議国内法律に優先をして、国内法律、諸法議決並びに国民の権利義務を規制をするおそれがある。そういう意味において、私どもはこれは断じて阻止しなければならぬというふうな考えを、不安を実は持っておるわけです。  もとより、内容をお示しになりませんから明瞭でありませんが、報道されておるところによれば、三十九条、四十条のみならず、四十一条の非軍事的な経済措置と、四十二条、三条の軍事的な、経済措置をも含む要綱外務省中心に審議されておるということ、これに対しましては、単に外交問題だけでなくて、非常に国内アジアの戦争に対する協力体制を、動員体制をつくるきっかけになる、そういう意味で、私たちは国連協力法なるものは、国内における自衛隊法並びに為替管理法等の経済法律改正問題の以前の重要な問題として、これは慎重に検討し、誤りなきを期さなければならないと思うのです。  その点については、三木通産大臣は、さすがに国際的な常識とそういう民主的な在野的な精神から見て、このことに警戒発言をされておるわけですね。国連決議国内法に優先する道を固定的に開いてしまう、または一般的に開いてしまう、これは重要な問題であるということで、非常に慎重論の発言をされておられるわけですが、この趣旨は一体どういうことでありましょうか。この私が持っておる不安と疑い、これについては、おそらく三木通産大臣も同様のお考え方からそういう御発言をなさったとわれわれは理解し、期待をいたしておりますが、三木通産大臣の御所感を伺っておきたいのです。
  47. 三木武夫

    ○三木国務大臣 外務省から、国連協力法なんというような法案をつくりたいというようなことで連絡を受けたことはないのであります。私も新聞紙上でそれを見たのでありますが、これは穂積さんとは私いろいろ根本的に考えの違う点があるので、同じだということではないが、しかし、われわれは国連協力はしなければならぬ、国連協力ということは、これはどうしても考えなければならぬが、国連決議がそのまま自動的に国内法に優先する、こういう立法については、きわめて慎重な取り扱いをしなければならないというふうに私は考えておるのでございます。これは、問題が具体的に出てきてないですから、私の考えというものは、この法案をつくる場合にはこの考え方というものも述べて、誤りなきを期したいと考えております。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣はひた隠しに隠してお答えにならないのですが、そういう構想はある、必要は感じておる、それは具体的に何だといえば、ベトナムを含む、ベトナムに限らない問題である、こういうお答えですから、背景は明瞭であります。そこで、事務当局に対して、国際条約上の問題として、私は事前審議意味でお尋ねをいたします。  条約局長、第一は、先ほどお話がありましたが、国連憲章のこういう国際関係における強制措置のその前段の状態からは、三十九条、それから四十条——三十九条は言うまでもなく勧告決議の問題であります。いま朝鮮にとられた決議は、ほとんど三十九条によっておる。それから国連軍、これはやみの国連軍です。四十二条、四十三条による正規の国連軍ではありません。また、精神も目的も違っております。しかしながら、それに至る前に、勧告に従わない場合には、四十条の暫定措置というものがある。それから次が非軍事的な措置、これが日本国内の経済法の改正につながる原則になるわけですね。それから四十二条、四十三条の軍事的強制措置国連軍、これが自衛隊法改正問題につながってくるわけです。これらのすべて国連協力を原則的に確立をする法制ということになりますと、当然、法の解釈上、これらの五つの条項に依拠して考えられるということが当然なことであろうと思うのです。それについて藤崎条約局長のお考えを伺っておきたい。
  49. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 現在、外務省の一部で検討しておるといわれている構想の中には、四十二条、四十三条の軍事的措置というようなものは含まれておらない。先ほど御説明申し上げましたように、いずれもそれより前段の紛争の平和的解決手続一環として監視隊その他のものが派遣される場合のことだけが一応検討の対象になっておる、かように了解しております。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 すでに発表されております要綱によりますと、この問題は、憲章第四十一条、第四十二条の特に二つの条項についてはすでにこれを基礎とする、これを援用する、これに依拠するということが示されておるわけですね。当然またこれが入らなければ、自衛隊法改正して、そしてこの自衛隊を海外に派遣するということは不可能ではありませんか。それじゃ何によってやるのですか。自衛隊海外派遣の問題がいま問題になっておる。そのときに国連協力の名目によってやるのでしょう。一体日本自身が独自に国際紛争に介入するという意味でなく、またはこれを監視するという立場でなくて、国連協力するというたてまえですから、そうであるなら、この軍事的な関係に対しましては四十二条または四十三条、正規の国連軍までいかないにいたしましても、特に四十二条が含まれなければ、それに基づく協力は当然できないではありませんか。それじゃ、外務省討議されているものの依拠する国連憲章の規定はどれどれですか。
  51. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 四十二条、四十三条は関係がないということは、先ほど申し上げたとおりでありまして、先ほど来例としてあげておりますように、たとえばレバノン監視団といいますが、レバノン監視団は第六章——第七章じゃございません。第六章の紛争の平和的解決手続の一つとして出されたわけでございまして、やるとすればそういうところというのが現在の構想の中で考えられておるというふうに私は了解しておるわけでございます。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 第六章は監視団調査団またはオブザーバーの問題でございます。そうではなくて、もう一つはやっぱり国連強制措置に伴う問題、これは松平国連大使の当時に問題になった情勢でございましょう。したがって、第六章だけでなくて、続いて第七章の三十九条から四十二条まで、これに依拠しなければ自衛隊海外派遣の問題というのは本格的には考えられない、当然そうなりますね。そのことを法理的に聞いておるのですよ。あなたは政治的答弁をする必要はないのです。条約局長として法理的にお答えいただければいいわけです。政策の論争については大臣から伺いますから。
  53. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私は事実をありのままに申し上げておるわけでありまして、自衛隊構成員を海外に出すということは、第六章の手続の一環である場合でも、現在の自衛隊法のままではできないというのが法制局の見解であると承知いたしております。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、日韓条約におきましては、三十九条の勧告決議というものにオブライジされておるではありませんか。日本はそれに大体——これは申し上げるまでもないことですが、三十九条の勧告決議なるものに対しては、関係各国は必ずしもそれに従う義務づけはありません。ところが、日韓条約の中、並びに六一年以後の国連における諸決議、前に行なわれた諸決議を一括いたしましてこれを支持する決議日本が賛成しておる以上、三十九条の勧告決議に対して、過去のものについては、これは明瞭に日本はすでに義務づけを負っておるわけです。すなわち選択の自由権を放棄しておるわけですね。日本国連協力の方針の中にすでに一二十九条が入っておるではありませんか、局長
  55. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 国連協力ということを政府で政策としてやります場合にも、それによって、もともと勧告の決議であるものを法律上義務づけるような決議にすりかえるというようなことはないのでございまして、現にたとえば国連協力法というようなものができておる国が幾つかあるわけでございますが、そういうところでも、それはそれぞれその政府国連決議に従ってやろうとする場合に、法律上それが可能であるようにするための法律であって、何も勧告をすべて義務づけるための法律ではないわけでございます。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 韓国ではない、日本政府ですよ。日本政府がすでに義務を負っておるということでしょう。みずから義務を買って出ておるわけですよ。そのことを言っておるのです。したがって、日本政府国連協力という、一般的な原則による協力の政治態度の中には、三十九条の選択権が認められておる勧告決議に対しても、みずからそこに義務づけを負っておる。買って出ておる。したがって、三十九条はすでに日本国連協力の中に具体的にもう入り込んできておるわけですね。あなたの言ういまの第六章の監視団または調査団、オブザーバーの問題をはるかに越えておるわけです。そうでしょう。
  57. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 御意見は、日韓基本関係条約の条項が三十九条の勧告決議を変質せしめるような法律的な効果を持つものかというような御趣旨かと思いますけれども、そういうことは全然含まれておりません。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 含まれておらぬことがあるものですか。国連の総会の決議で、日本はもうすでにそれに参加しておるでしょう、六一年に。六一年並びに六三年、第十八回総会における決議、この三十九条決議に基づく勧告決議に対して日本がこれを支持したということは、明瞭にみずからこれの決議に従うことの義務を負っておるわけです。やっておるじゃありませんか。これらの諸決議というものは、全部三十九条の規定による勧告決議ですよ。
  59. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 勧告決議に賛成すると、その勧告決議勧告決議ではなくて義務づける決議法律的に変質するというものじゃないわけでございまして、やっぱり勧告決議としてそれを支持しているわけでございます。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 それなら、なぜあなたはあれを入れるのですか。この決議の中に国連軍の北朝鮮まで含む軍の行動の自由、これは五〇年。翌年の五一年の二月に、朝鮮並びに中国を侵略国とする規定決議がある。これを日本は支持しておるではありませんか。これを支持しておるということは、このことの精神に従って、今後の日本の対国連外交というものはこの路線に従ってやるということでしょう。
  61. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 日本朝鮮問題に関して、国連で行なわれておる決議を支持しておって、その決議に昔の朝鮮動乱のころの決議が引用してあるから、間接に日本はそのころの決議を支持することになるじゃないかという御質問かと思いますが、それは、政治的にはそういうことになると思います。しかし、それは、日本政府が政策として、朝鮮動乱以来国連がやっていることは正しいことだと思ってこれを支持しているということでございまして、それによって勧告が勧告でなくなるという法律上の関係は生じないという法律上の意見だけを私は申し上げておるわけでございます。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、前もってお尋ねいたしましょう、この問題で押し問答していると問題が残るから。  それでは、将来情勢の進むに従って国連協力法なるもの、またはそれに類する措置を必要とするという場合においては、国連憲章の第六章の規定以外はこの中へ持ち込まないということですね。それは政治的な政府の態度でありますから、外務大臣からお答えをいただくのが適当かと思います。
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連憲章の効果ではなくて、日本の独特の政治上の方針なり政策に基づいてやっているということは、いま条約局長から申し上げたとおりでございまして、憲章関係なく、日本日本の政策、方針としてやる場合、それを無理に憲章に結びつけるということはいかがかと思います。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、国連憲章の第七章の諸規定は、今後日本政府はこれを援用しないということですね。第六章をのみ援用するということであるならば、第七章の強制措置の諸規定については、日本政府はこれを援用をしない、それを基礎としない、こういう趣旨ですね。その点は一番大事な点ですから、はっきりしておいていただきたい。具体的に言っておきましょう。三十九条、それから四十条、四十一条、四十二条、四十三条、この五つが特に重要です。これらのものは援用をしない、あるいはこれを基礎とする立法措置は考えない、これを確認しておいていただきたい。
  65. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、四十二条、四十三条でございます。と申しますのは、先ほど来の問題は、自衛隊海外派兵ということであったから、そっちの面を申し上げたわけでございますが、現在外務省の一部で研究されておる構想の中には、この自衛隊の問題のほかに、あるいは、それよりもっと先に経済関係のことがあるようでございまして、経済措置ということになりますと、これは当然第七章の第四十一条の規定が関係してくるわけでございます。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 そうじゃないのですよ。さっきから言っているじゃないですか。それでは第七章は四十一条に限りますか、援用は。具体的に言ってください。
  67. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 そういう条文を限るとか限らないとかいうところまで研究が固まっておるわけじゃございませんで、ただ、先ほど来申し上げておりますのは、四十二条、四十三条は関係がないということを申し上げておるわけでございます。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、三十九条から四十一条までは、これが入る可能性があるということですね。
  69. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 そういうことに了解していただいてけっこうだと思いますが、しかし、それがまた必ず入るというふうに考えられるとちょっと困りますので、そういうことが厳格に、この条とこの条が入る、入らないとかいうことが論ぜられるところまで研究が進んでおらない。しかし、四十二条、四十三条が関係ないということははっきりしておる、こういうことでございます。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 これは、ほんとうは総理に聞くべきことだと思いますが、おられませんから、政府を代表して椎名外務大臣にお尋ねいたしますが、四一二条、四十三条の援用は将来やらない、これは政府の態度として確認してよろしゅうございますか。条約局長答弁に対する政府の考え方……。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 はっきり申し上げることのできますことは、日本憲法が存在する限り、第九条の精神に違背するようなことは絶対にいたしません。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 それはどういうことですか。そうすると条約局長答弁、すなわち四十二条、四十三条は絶対に入れないということではないということですね。入れることもあり得るということです石。
  73. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その点は条文の解釈の問題でございますから、条約局長から申し上げます。
  74. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 現在外務省の一部で研究しておる構想は、この第四十二条、第四十三条は関係がない、こういうふうに申し上げておるわけでございまして、憲法の問題になりますと、これは法制局長官にお願いしたほうがいいと思いますが、非常にややこしい理屈があるようでございまして、将来国際連合というものが非常にりっぱなものになっていったら、それの平和維持活動協力することは必ずしも憲法と矛盾しない、そういう意見。ただ、現在の段階で、たとえば朝鮮動乱のようなものに自衛隊が出ていくということは、これは憲法上非常に疑問だ、こういうところのようでございます。そういうことでもっと有権的なことは法制局長官からお答えいただいたほうがよろしいかと思います。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 長官は来ておられますか。
  76. 福田一

    福田委員長 法制局次長が出席しています。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 いままで高辻さんが答弁していますから、高辻さんを要求しておいたのです。  それでは長官へのお尋ねは、法解釈についてはあとにいたしまして、三木通産大臣に続いて御所感を伺いたいのです。  実は私どもが重要視しているのは、情勢の変化に伴って、国連がそのとき、そのときの三十九条による勧告決議、これはその当事国も必ずしもそれに服する義務はございません。御承知のとおりですね。自由選択ですから従わなくてもよろしい。家庭裁判所のようなものです。ところが、それを国連協力の名によって義務づけるというところに重要性がある。すなわち、自衛隊法改正または経済関係法律改正の大義名分、法の根源として国連協力法なるものがおっかぶさって、その中に、その各論として経済関係法律改正する。そこに、私どもは、国内法の改正でありながら国際性を持った、国際法義務と関連した非常に重要な意味を指摘したいわけです。そうなりますと、いまお聞きのとおりですが、四十一条は非軍事的、すなわち経済的強制措置になります。その決議が行なわれましたときには、自動的にこれに協力するということができるように、事前に経済関係、すなわち特に為替管理、あるいは貿易関係の規制法でございますが、これを改正する必要を私どもは認めない。というのは、現行法のもとで、それに必要のあるときにはケース・バイ・ケース、その運用の中で十分できるではないかという考えを持っておるわけです。つまり国連協力を大義名分として、にしきの御旗として国内法の改正、あるいは改正された内容国民に直接権利義務を負わせることになります。そして、また同時に第二点は、私のお尋ねするのは、それと結びつけた改正というものに対しては、現在の運用から見て改正の必要がないのではないかと私は判断をいたしますが、通産大臣の御所見を伺っておきたい。
  78. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国連決議のあった場合、ケース・バイ・ケースで国の利益、こういうものとの関連において協力するというたてまえのもとに問題を処理して、現在までのところは私は支障がないと考えておるわけであります。ローデシアの問題についても、現在の法規のもとにおいて、いろいろな国連協力の実を示しておるわけでありますから、直ちに国連決議が自動的に国内法に優先するというような、そういう立法というものが必要というものについては、慎重な検討をしなければならぬという考え方でございます。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 続いてもう一間お答えをいただきたい。すなわち、現在の日本を含む国際情勢の中で、直ちに早期にいまの経済二法を改正しなければならないような情勢に至っていない。私どもは、現在の情勢の中においては現行法そのままで、運用の中で自在に処理していくことができる、こういうふうに考えますが、通産大臣の御認識はいかがでございましょうか。
  80. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現在のところではわれわれはそういう必要が起こっていない。運用の面で処理しておるのでございます。将来の問題としては、私はこれは非常に重大な問題であるから、慎重に検討しなければならぬ課題であって、いままでのところは運用でやれておるので、その必要は感じていない、こういうことでございます。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 この経済法の問題については、蒲田大蔵大臣の御所管の一つです。大臣の御認識と現状における御方針を伺っておきたい。
  82. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま通産大臣からお話がありましたが、私も大体さように思います。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 海外派兵がどこまでは憲法に抵触しないか、すべてが抵触するか、われわれはいかなる名目によりましてもすべてが抵触すると思いますが、ところで、その問題は法律解釈、憲法解釈とも関連をいたしますから、高辻長官が見えてからにいたしまして、その前に、一つここに重要な問題があるわけです。  今度は先に松野長官にお答えをいただきたいのですが、自衛隊法改正問題でございます。私どもは、自衛隊法が、隊員を海外に派兵をすることはできない、それは三条または八十八条の規定によるものである、特に三条の規定によるものだということですけれども、自衛隊法の法の構成並びに自衛隊の運営そのものはどこから制限がくるかといえば、まさに平和憲法の制限から私は規制されておるものだと思うのです。そうなりますと、自衛隊法改正だけによって、いろいろな名目をつけまして、海外に派遣をするということははなはだしく違憲の疑いがある、憲法改正を伴わずして自衛隊法だけかってに——これは両方手続が違いますが、したがって、そういうことはできないというふうに私どもは考えるわけです。それに対しての長官のお考えを明らかにしていただきたいと思うのです。
  84. 松野頼三

    ○松野国務大臣 自衛隊法は、憲法の規定に従って自衛隊法を策定されておりますので、憲法に抵触するような自衛隊法改正、運営は断じていたす気持ちもなく、またできないと私は思います。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 その点を明確にするためにもう一つお尋ねしますが、憲法に規定しておる自衛隊の海外行動ですね。対外行動を憲法が禁止しておると解釈されるその限界と、自衛隊法が禁止しておると思う限界とは、私は一致しておるものだと思うのです。限界は一致しておる、そういう理解でよろしゅうございましょうか。
  86. 松野頼三

    ○松野国務大臣 憲法が規定している以上に拡大する自衛隊法はありません。したがって、憲法の基本的なもの、その中に自衛隊法というのは含まれる。憲法以上に大きなものではないと私は思います。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 大きなものではあり得ない、あり得ないけれども、現在は憲法の限界よりはさらに小さい限界が自衛隊法に規定されておる、こういう御解釈か。私は円の大きさは同じだと思うのです。同じだと解釈しておる。当然そうあるべきです。自衛隊法の禁止規定というものは、特別な列挙規定というものはどこにもありませんよ。第三条の目的のところに規定されている、これは憲法の規定と合致するものである、こういう解釈でなければならないはずですね。そうすると、自衛隊法憲法を侵して拡大改正はできないということはあなたの御答弁ですけれども、そうではなくて、私の聞きたいのは、憲法の制限を加えておるその制限と、それよりさらに自衛隊法は小さく制限を加えておるかどうかということです。それを聞いておるのです。
  88. 松野頼三

    ○松野国務大臣 憲法の規定の範囲内に自衛隊法というのはあるということであります。したがって、一分一厘違うか違わぬかということは、法律の各条項があります。したがって、自衛隊法に規定されているのは憲法の範囲内である。じゃ同じ大きさかと言われれば、同じ大きさのところもありましょう。同じ大きさじゃないところもあります。かりに言うならば、自衛隊の定員なんというのは、憲法の規定の中から言うならば、これは一致じゃありません。(穗積委員海外派兵に限定しているわけです」と呼ぶ)海外派兵の問題についても、御指摘の第三条というのは、憲法の規定、憲法の精神と合致していると私は思います。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 そのとおりです。憲法の平和条項と自衛隊法の第三条というものは、精神においても、限界おいても一これは合致しておるものである。第三条が憲法の禁止するワクよりさらに小さくこれを制限を加えておるというものではない。三条と憲法との関係、それは松野長官の言われるとおりだと解釈しなければならない。そうでありますならば、これは自衛隊法改正することによって——憲法改正手続をとらないで、——自衛隊の海外行動を許すことはできない。すなわち海外に出す場合おきまましては、これは憲法改正しなければできないことになる、法理的にこういう類推解釈は当然だと思うのです。その点をお尋ねいたします。
  90. 松野頼三

    ○松野国務大臣 憲法の規定そのままは自衛隊法に規定されているわけではございません。憲法の範囲内においての自衛隊法であります。したがって、自衛隊法憲法の精神に合致していると私は申し上げている。範囲の大きさ、広さというのは、憲法の条項と自衛隊法というのは、おのずから自衛隊法がその範囲内に入っているにきまっていると思います。(穗積委員「第三条の問題だ」と呼ぶ)第三条の文句も、御承知のように、門衛隊の任務としてこれが書いてあるのであって、憲法の任務として自衛隊法が規定しているというふうな僭越なものではありません。憲法の条項を自衛隊法がきめるなんということ、これはできません。したがって、憲法の範囲内である、またその精神に合致している、こういうことであります。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 いや、お尋ねするのはこういうことですよ。自衛隊法だけ改正して、憲法改正しないで、自衛隊を海外に出すことができるかどうかということを聞いておるのです。
  92. 松野頼三

    ○松野国務大臣 海外に出すことができるかどうかということは、議会でも、御承知のごとく、海外出動を為さざることに関する決議とか、いろいろなものがあるように、何も憲法が全部の規定を規定をしてない、自衛隊法が全部の規定を規定してはいない、そのために決議があったり院議があったりしておるのですから、それが全部同じじゃないということは、これは法制上あり得ることだと私は思います。しかし、精神においては一貫しておるということであります。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 冒頭私がお願いしたように、もっと明確に答弁していただきたいですね。むだな質問をしておるわけではありませんから。  すなわち、私は、自衛隊を海外に出すことについては、これは後に参議院の国会決議もありますけれども、まず問題は憲法との関係で、憲法改正を伴わないで海外に出すことは、これははなはだしく違憲の疑いがある、この考え方について、あなたのお考えを伺っておるわけです。外務省はかってに解釈をして、憲法改正しなくても、自衛隊法だけ改正すれば海外に出すことができる、こういうことを言っておられるわけですが、われわれはそれは違憲の疑いを十分持っておるわけですから、所管としてのあなたのお考えを聞いておきたい。
  94. 松野頼三

    ○松野国務大臣 海外に出すということばが海外派兵である、いわゆる海外への出動であるというならば、現在の自衛隊法はそういう規定ではございません。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 そうでない場合には、どういうことがあり得ますか。
  96. 松野頼三

    ○松野国務大臣 出動、武力行使による派兵は、いたしたこともなければ、するような規定でもございません。海外に出張する、旅行するということは、これはいたしております。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 それでは将来もそうですね。それ以外の目的を持って出ることはあり得ない。
  98. 松野頼三

    ○松野国務大臣 現行自衛隊法においては、出動、派兵ということはいたす規定はございません。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 憲法の範囲内においてはどうですか。
  100. 松野頼三

    ○松野国務大臣 これは、私の所管ではございませんので、また聞きをしてかえって中途半端な解釈をするわけにもいきませんので、自衛隊法についてお答えいたしまして、憲法については所管の法制局長官のほうが明確であろうと思いますので、かえって私がいろいろ言うと誤解があると思います。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 それは法律の解釈問題ではなくて、自衛隊を事実動かす問題ですから、自衛隊法による自衛隊の運用の問題ですから、それはあなたの責任でしょう。自衛隊とともに憲法に従っておる国務大臣ですよ。だから、憲法に規定されておる制限を頭に置かないで、そして自衛隊をあなたが運営するということは、あなたがもしかわったにしても、いかなる防衛庁長官であろうと、それはできないことです。当然考えなければならない。
  102. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それでは、自衛隊法から憲法を推定解釈、運用したと、こういたしましょう。憲法の解釈より、自衛隊法から憲法を見たという場合において、憲法においては、要するに交戦権とか国際紛争の戦争ということは禁止しておるし、これは憲法に認めない。要するに、言うなれば正当防衛権という主権国としての固有の権利に限定されていると思います。したがって、外国に派兵するとか出動するとかいうことは、自衛隊法は認めていない、私はこう解釈しております。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 はっきりしたいことは、実は藤山長官も、前に外務大臣当時に、国会におきまして、自衛隊が特に海外に出ることについては憲法が基準でなければならない、こういうお考えを表明しておられます。したがって私は、きようあなたに、そのことについてお考えが変わっておるか変わっておらぬか、あなたは有力な閣僚として現内閣におられるわけだから、こういう重要な問題については、やはり過去の発言もありまして、これが論議される場合におきましては、当然あなたもその発言に対しては責任を持っておられるわけですから、その点を明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  104. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 海外派兵というようなことは、私ども憲法に違反するものだと思います。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 派兵の限界の問題ですね、概念がはなはだしく不明確なんです。参議院の決議も派兵となっておりますが、このときには、外務省が分類いたしまして、出張であるとか、あるいは出張でなくて長期滞在の監視隊等に加わる場合の派遣と、ことばで使い分けておりますが、憲法の精神並びに参議院における国会決議というものは、派兵ということばを使っておりますけれども、これはすべて防衛力に関係のある、自衛権発動に関係のある、日本においては自衛隊が海外に出ていくことすべてをこれは含んでおると思うのです。国会決議は明瞭にそういうことです。したがって、そのことはすべて憲法によって規制されておるものである。自衛隊法改正することによってそれを動かすことはできない。一切の根源は憲法であるということだと思うのです。あなたはそういう考えを言っておられる。その派兵ということばが、いまのように自衛権発動の自衛隊法第三条に規定されておる、あるいは第八十八条に規定されておる、すなわち戦闘行為の権限が与えられておる自衛隊、隊員、これを海外に出すことです。単に調査でありますならば、これは満州事変当時に当時の国際連盟から派遣されたように、シビリアンの調査団、あるいは外務省、経済省の調査団でもけっこうなわけです。学者でもけっこうなんです。そういう名目をつけて、第八十八条、第三条の規定によるそういう自衛権発動の戦闘行為の権限が与えられておる群衆またはその資格者自衛官を出すということ、これは一切含まれているのですよ。そう解釈すべきだと思う。あなたのお考えは、あなたの御答弁は大体そういう趣旨であったと思うのです。
  106. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 つまり武力行使を伴ってのいわゆる海外派兵という問題は、これは当然憲法の条章によってできないと思います。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 武力行使を伴うということは、それは伴う場合もあり得るのです。警察的行動のために出るのでも、それから監視隊として部隊が、ごく少数のものなら別ですけれども、相当多数をもって監視行動をとる必要がある情勢だということで出る可能性があるわけです。実は法制局長官が見えたら、憲法の解釈上から見てどこが限界であるか伺いたいのです。国連軍に参加するものは憲法改正しなければできないと思うが、監視機関ならできるようなことを外務省は言っておられますけれども、これは誤りだと思うのです。あるいは諮問機関、あるいは調査機関等々が予想されるわけですが、これにシビリアンが出ることは許されますよ。ところが、いかに自衛隊法改正いたしましても、自衛官、武官がこういうところへ出ていくということは、これは許さるべからざることだと思うのです。それは、外務省はすでに憲法を犯す解釈をかってにしておられるから聞く必要はない。特に総理並びに法制局長官に伺いたかったのですが、おられませんから先に進んで伺いますけれども、特にこれから問題になりますのは、松野長官、在韓国連軍というものもすでにできておるわけです。在韓国連軍は、三十九条の勧告規定に従ってできたものであって、正規の軍隊ではありません。その目的、その構成、その資格、すべてこれは正規の国連軍ではないことは明瞭で、もうすでに認められるところですが、しかし、国連協力の名のもとに、三十九条の勧告決議に伴って朝鮮戦争に戦いがエスカレートされて、朝鮮戦争が再開されたときに非常に問題になるわけです。そうなりますと、ここで実は自衛隊法改正だけで、吉田・アチソン交換公文、あるいは国連軍の地位協定による義務に従って兵員の協力体制が出てくる危険がある。それからまた、先ほど言った外務省の計画しておる国連協力法なるものができれば、それによって自動的に義務づけられて、自衛隊法改正されたならば、そういう出動も出てくるわけですね。だから、それについて説明はいたしません。あなたはよく御理解の上だと思うから、いたしませんが、自衛隊の何らかの監視調査あるいは警察的の、戦闘行為じゃない、警察的行動であるということならば出してもいいという解釈をとるならば、これは非常に危険だと思うのですね。そういう不安に対して、この際明らかにしておいていただきたい。
  108. 松野頼三

    ○松野国務大臣 まだ正確にどういう規定のものであるかということは、ただいまの穗積委員の説明だけでは実は私もわかりません。要するに、今日規定されておる憲法自衛隊法というものを厳正に守るということでありまして、いろいろな場面が出てくる、それはいろいろな場面で法律以外の規定されないものが出てくるかもしれません。しかし、そのときにはその法律憲法に合わせてそれを運営していくということであって、私は、どういうものが出てくるか、またどれがいいとか悪いとかということは、今日ここでは前提がわかりませんのでお答えできませんが、法律憲法という精神を自衛隊は守っていくということで御理解いただきたいと思います。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、ついでにちょっとお尋ねいたしますが、たとえば民間人が在日米軍、あるいは国連軍と個人契約をして、あるいはそうでなくて、独自に義勇兵として志願をした場合、それに対してはどういう処置をとり得るかということです。
  110. 松野頼三

    ○松野国務大臣 自衛隊法の規定以外のことでありますから、私のほうの法律ではこれは律し切れないと思います。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 それではついでにお尋ねしますが、自衛隊を退役いたしました予備官が、いま言ったような行動に出ることへの制限はありますか、ありませんか。個人行動です。
  112. 松野頼三

    ○松野国務大臣 予備自衛官については、予備自衛官の規定がございます。自衛官をやめた者については義務も権利もございません。したがって、予備自衛官については、予備自衛官の規定に応じて、自衛隊法に準じてこれを適用されると私は思います。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 退役いたしました自衛官は、一般の市民と同じですか、いまの行動に限ってですよ。
  114. 松野頼三

    ○松野国務大臣 退役いたしました自衛官は、一般の者と権利義務は同じであります。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 それからもう一つお尋ねしたいのは、こういうことです。特に最近日韓条約で交流が始まりまして以来、もとより政府機関も行けば、特に民間の資本投資並びに民間の経済人の往来のみならず、在留が非常に多いわけですね。そういうときに、もし韓国の中において政治的な革命または騒擾状態が起きたというときに、自衛隊は海外に、戦闘目的ではありません、在外機関日本政府機関並びに日本の資本、日本の人民の身体財産を守るための警察行為という名目で出ることが考えられますかどうか、あなたはどう解釈しておられますか。
  116. 松野頼三

    ○松野国務大臣 外国に自衛隊が戦闘目的において行動するということは禁示されておると私は思います。同時に、武力行使、武力威嚇をもってそこに出動すること、これも禁止されておると私は思います。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 続いて防衛庁長官にお尋ねしますが、最近の報道資料によりますと、今年度は沖繩に多数の防衛官が行っておるようです。七百人近く。これは御存じでしょうか。それからもう一つは、最近のマクナマラの証言によりましても、ベトナムに九人行っておるという証言が行なわれておる。それから現在、沖繩のみならず、韓国との間の自衛官の出入りは一体どうなっておるか。
  118. 松野頼三

    ○松野国務大臣 沖繩に参りますのは卒業の研修等でありまして、十年間に千人しか行っておりません。本年七百人行ったということはありません。十年間に延べ全部で千人でありますから、したがって七百人一年に行くということは考えられないことで、それは昨年の十二月までであります。そんなことはあり得ないと私は思います。せいぜい学校の卒業生の研修程度でありまして、十年間で千人の記録しかございません。また韓国に対して自衛官が行っているなんということはあり得ないと私は思います。同時に、ベトナムに九名、これもあり得ないと思います。
  119. 穗積七郎

    穗積委員 旅行でもあり得ませんね。旅行ならあり得ますか。
  120. 松野頼三

    ○松野国務大臣 先般多少問題になりました防衛研修所の学者が行ったとか、そういう旅行を入れるならば、あるいはあるかもしれませんが、いわゆる九名が集団的に命令をもって行ったということはありませんし、たまたまそこの旅行者が着いた、出た、着いた、出たというのを個々に計算すれば、それは私も何とも申しませんが、そういうふうなものはございません。
  121. 穗積七郎

    穗積委員 名目は何であろうと、そのとき、任務を持っていく者と、休暇をとって行く者とあると思うのです。休暇をとって行く場合でも現役は現役ですね。そういう場合の行動の規制はしておられますか。
  122. 松野頼三

    ○松野国務大臣 もちろん休暇でございましても、公務員でありますので、公務員規定に従って、旅行日程、その目的というのは許可を得て休暇をとっております。
  123. 穗積七郎

    穗積委員 昨年でありましたか、小谷防衛官がベトナムに行きまして、アメリカの戦闘爆撃機に同乗して戦況を視察をしたといって問題になったことがあった。長官ももうお耳に入っていると思うが、最近UPIの報道で、杉江統合幕僚長がホノルル会談前後にアメリカ並びにハワイに渡って、そしてちょうどホノルル会談の、——つまりベトナム戦争再開のときです。そのときに何らかの形でこれに接触をしておるという事実が報道されていますが、これはお聞きになっていますか。
  124. 松野頼三

    ○松野国務大臣 統幕議長は、おそらく隔年おきに、定期的に米軍の軍事施設の視察をしております。その報告は受けておりますけれども、そういうベトナム問題に対しての話とか、そういうことはいたすわけもなければ、いたしておらないと、明確な報告を受けております。
  125. 穗積七郎

    穗積委員 おそらく、むろんこの会議は米・ベトナム二カ国の首脳者会議ですから、幕僚長が参加するはずはありません。しかしながら、非公式な形で、たまたまその時期を選んで行って、そしてホノルルにおいてアメリカ並びにベトナム側の首脳と接触をすることの事実は、これが報道されておるわけですね。この事実は誤りですか。お調べになっておるのか、ただ聞いていないというだけでしょうか。
  126. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ホノルル会談があるというのは、そのあとで新聞報道で知ったわけであります。もちろん、統幕議長の出張というのは、昨年の十二月当初から予定された期間でありまして、何ら関係があるわけもなければ、そういう目的で許可した覚えもございません。また、会談の内容も、そんなものは一つも出ておりません。要するに、隔年的な軍事施設の視察だけであります。
  127. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にお尋ねをいたしましょう。  実は、先ほど来お聞きのとおり・国連協力の名による国内法の改正問題というのは、はなはだしく国連決議国内法に優先をし、それをおかす心配がある。そして、のみならず、この国連協力の名による法解釈、法改正というものについても、これの必要を認めていないというのが、大蔵大臣、通産大臣のお考えであります。そうであるならば、外務省としては、今後の経済法改正については、もうお取りやめになるべきだと思うのですね。国連協力法とコンバインしたそういう改正法、その立場に立った改正法、対外的な義務を負った改正法、その意思がありますかどうか。
  128. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さしあたりローデシア問題に当面しては、通産省も大蔵省も行政指導でまことに巧妙に処理されておりますので、大体においてかような法律をいまの段階においては必要としないような状況でございますが、将来に向かっては、これはいま何とも申し上げられません。
  129. 穗積七郎

    穗積委員 松野さん、あなたは外務省が特に自衛隊法改正の意図を持っておるということを新聞でごらんのとおりですが、防衛庁自身としては、近き将来において改正の必要を認めておられるかどうか。
  130. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いま私が予想しているとか、想定されるような事態というものはございません。したがって、自衛隊法改正というのも考えてもおりません。
  131. 福田一

    福田委員長 野原君に関連質問を許します。野原君。
  132. 野原覺

    ○野原(覺)委員 関連して二、三お尋ねをいたします。  ただいま、穗積委員政府に対して国連協力の問題でお尋ねをしておるわけでございますが、政府答弁は、私聞いておりますと、その質問の的をはぐらかそう、はぐらかそうとしておるように思うのです。そこで、私は、ただいまの質疑応答を聞いておりまして、次の点について疑問の点をお尋ねしたいと思う。  まず、外務大臣にお尋ねします。外務大臣に対しては、国連から派遣されたもの、たとえばスエズに、パレスチナに、あるいはコンゴに、あるいは朝鮮にというように、国連から派遣されたものは、軍と名のついたものもあれば保安隊と名のついたものもある。一体どういうものが今日幾つございますか、あげてください。これは私ども知りたい。国連から派遣されたものはどういうものがございますか。
  133. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事務当局からお答えいたさせます。
  134. 滝川正久

    滝川説明員 ただいまの御質問に対しまして、われわれの調査でわかっておりますものを申し上げます。数は全部で二十四、五でございますが、軍人の入りました監察団的なもの、これは、インドネシアに関する領事委員会の軍人監察団、インド・。パキスタン軍人監察団、インド・。パキスタン監察団、これは二つございます。パレスチナ国連休戦監察機構、レバノン国連監察団、イエメン国連監察団、以上七つ。それから、軍人以外も入りましたもので、ギリシア問題調整委員会、インド・パキスタン調停委員会、パレスチナ休戦委員会、ギリシア平和監察小委員会、ラオス小委員会、カンボジア・ベトナム安保理使節団、以上六つでございます。それから事務総長の代表、調停官というような名前でいっておりますのが、国連パレスチナ調停官、インド・パキスタン国連代表、アンマン国連特別代表、タイ・カンボジア事務総長特別代表、サイプラス国連調査団、イスラエル・ジョルダン事務総長特別代表、ドミニカ派遣の事務総長代行、これが七つございます。それから部隊として出ておりますのが、いわゆる朝鮮国連軍、それからスエズの国連警察軍、コンゴ国連軍、西イリアン国連保安隊、サイプラス国連保安維持軍、これは部隊として出ております。以上五つ。概略そういうことであります。
  135. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そこで、外務大臣にお尋ねしますが、ただいま読み上げましたその中のどれならば、あなたの構想からいって参加できそうですか。外務省は、国連軍に参加しなければならぬときもあるだろうというので検討しておるのでしょう。あなたの構想からいって、その読み上げたどれならば参加してもかまわないとお考えですか。
  136. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 参加してもかまわないと考えているかどうかというよりも、国連派遣する監視団に参加することは憲法上許されるかどうかということが、現にこの予算委員会において御質問がありまして、それについてお答えしたのは、自衛隊法はいかなる形でも海外派遣ということを禁じておるので、これに抵触する問題はしばらくおく、憲法上のたてまえからできるかできぬかというお尋ねでありましたので、それは憲法第九条には違反しないものと考えるけれども、なお法制局のほうでお答えをするのが本筋であるというお答えをいたしまして、法制局長官から、私と同様、それは憲法上は差しつかえない、こういう答弁をしておるのであります。いまあげました中で、最後の軍隊としてということは、これはまだ問題になっておらない。また、これは憲法上非常に疑義がございますから、この問題には触れない。監視団の一員として参加するということならば、これは差しつかえない、こう考えます。
  137. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、監視団の一員として参加するならば、これはあるいは問題がないかもしれない。あなたの構想からいって、監視団の一員ならば可能かもしれない、そういう考え方で検討されていようかと思いますが、そこで、お尋ねいたします。それならば。パレスチナ休戦監視団というのは、これならばかまわないということになる。いかがですか。監視団の一員ですから、パレスチナ休戦監視団のような場合にはかまわないということになるじゃありませんか、いかがですか。
  138. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは武力行使を目的としない、ただ軍事的な知識を持って情勢を判断するという立場に立つ限りにおいては、差しつかえないのではないかと考えます。
  139. 野原覺

    ○野原(覺)委員 問題はそこなんです。監視団という形で出かけていきましても、たとえば休戦監視団のような場合には、戦争をやめさせることが目的でございますから、いつ何どきまた戦闘行為が始まらないとも限らないわけなんです。国連が出ていく場合、どういう名目であるにせよ、それが国連軍であるにせよ、あるいは保安隊であるにせよ、警備隊であるにせよ、あるいは監視団にせよ、国連軍が一つの集団として出かけていく以上は、そこの治安状況というものはよくないわけなんです。だから出すわけなんです。いつ何どき武力を持って立ち上がらなければならぬかもわからぬ事態が起こるんですよ。現にパレスチナの休戦監視団というのは、あのスエズの戦争が勃発したときには、スエズ動乱においては、これは国連緊急軍に変わったのです。そうなるというと、監視団の一員として出るというのはおかしいじゃありませんか。監視団の一員というものは常にまる腰で絶対にピストルを持たないのだという保証は、国連が出ていくときにはどこにもないですよ。外務大臣、これはどう考えますか。
  140. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いかなる場合でも外部から危害を加えられるというような場合には、これはもう普通の人間であろうとあるいは自衛官であろうとも、自衛行為をやって差しつかえない、そういう意味の自衛行為というものは、これは基本的な権利である。それはいわゆる武力によってある政治的な目的を達成しようという場合じゃないのです。危害を加えられるときは、男でも女でもとにかく抵抗する、そういう趣旨の権利まで放棄はできないと思います。しかし、それ以上に武力をもってある目的を達成しようというふうに早変わりするということは、これは絶対に禁止すべきものである、こう考えます。
  141. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたの答弁は全くのごまかしです。武力を持って立ち上がらなければならない、正当防衛で立ち上がらなければならぬ、そういう事態には、じゃ逃げて帰ると言うのですか。そういうことは不可能でしょう。逃げて帰ることは不可能でしょう。ですから、たとえばパレスチナの監視団国連緊急軍に変わっておる、スエズの紛乱に緊急軍で対処しておる、だから監視団として出かけていっても、これは武力を持って立ち上がらなければならぬ、監視団はまる腰じゃございませんよ、そうなると、結局これは海外派兵になるじゃありませんか。外務大臣海外派兵になるじゃないですか、それはどうなんです。
  142. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、そういう場合は憲法違反ということにはなるまいと思いますが、やはり有権的解釈は法制局でございますから、法制局長官のほうからお答えするのが当然だろうと思います。
  143. 吉國一郎

    吉國政府委員 国連活動に対しまする一般的な問題につきましては、後ほどまた長官が参りましてお答え申し上げますが、ただいまの監視団の問題に関連をいたしまして、正当防衛のような行為が行なわれることが予想されるならば、それは結局戦闘につながるのではないかという御心配のようでございますが、たとえば、監視団と申しましてもいろんな種類がございますが、インド・パキスタンの停戦を監視いたしました場合には、そこに参加いたしまする人員は、携帯用の武器の携行も事務総長の命令によって許されておらなかった。したがって、いわゆるまる腰で参りましたわけでございまして、そのような全く戦闘行為をするようなかっこうではない、いわば兵力と申しましても、その軍事的な知識を利用するにすぎないという形態でございまして、そのようなものにつきましては、御心配のような事象は起こる可能性がないということでございます。
  144. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、外務大臣は、私には法制上の意見は言えないからというので、法制局長官を指名した。法制次長の意見によれば、絶対にまる腰、絶対に戦闘しない、そのことが条件になっておる。ところが先ほど委員長お聞きのように、外務大臣答弁では正当防衛ということを言っておる。危害を加えてきたならば立ち向かうのだということを言っておる。これは明らかに食い違いである。外務大臣は正当防衛で、危害を加えてきたならば武器をとるもやむを得ない、そういう監視団ならば可能だ、こう言う。外務大臣はわからないと言った。法制局は、いや絶対にまる腰だ、たとえばインドだ、パキスタンだと例まであげて言われた。これは絶対に見解が食い違っております。したがって、この問題は重大な問題ですから、これは統一見解を出してもらいたい。これじゃ審議できません。委員長、これは審議できない。これは統一見解を出してください。いちゃもんじゃない。これはだめです。絶対だめです。
  145. 吉國一郎

    吉國政府委員 私ただいま申し上げましたのは、インド・パキスタンの停戦監視団についてはそのような事例があるということを申し上げただけでございます。先ほど外務大臣お答えになりましたのは、たとえばインド・パキスタンの場合にいたしましても、レバノン監視団のような、全く実力の使用を含まないような方法で平和の維持、確立をはかろうということで出ましたものでございまして、かりに任務遂行中に違法な不法な襲撃を受けまして、わが身を守るために何らかの行動に出るということがあり得るということを仰せられたにすぎません。それは一般私人でございましても、国内の問題でございましても、刑法上正当防衛ということは認められておるわけでございます。そのような事例について外務大臣お答えになったものでございまして、一定の監察団あるいは監視団のような組織につきましても、正当防衛の権利というものは、これは国内法上も国際法上も否定することができないところでございます。そのようなことにつきましての問題でございますので、先ほど外務大臣の御答弁と私が申し上げました考えとは食い違うようなことはないと思っております。
  146. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは、私は関連質問だから、こんなに時間をとりたくないのだが、遺憾ながらますますこの答弁は混乱をしてきております。私はこう尋ねておるのです。パレスチナの休戦監視団は可能かと聞いたんです。監視団の一員ならば可能だという外務大臣答弁。パレスチナの休戦監視団が可能ならば、パレスチナの休戦監視団はスエズの紛争が起こったときには国連緊急軍に早変わりして、この紛争に立ち向かっておる。監視団では、警察隊であり、国連から出かけていったら、治安の状態はよくないのでございますから、そういうことが必ず起こるわけなんです。だから、結果においては派兵ということになるわけなのです。海外派兵憲法が禁止をしておるというならば、当然国連監視団といえども結果において海外派兵に持っていかれるのでございますから、これは禁止さるべきだ、こういう考え方に立って、私はこれを明確にしながら質問をしておる。ところが外務大臣は、監視団ならば可能だと言った。だから緊急軍に変わることも可能だと言ったんだ。あなた正当防衛だからいいと言ったでしょう。これは重大なことですよ。この問題は重大なことだ。外務大臣は従来の憲法上の解釈を曲げておる。そこで法制局は、私が質問をいたしますと、いまは何かわけのわからぬことを言って、あなたそこから下がりましたけれども、どう考えてもこの問題は、防衛庁長官の意見外務大臣意見にも若干の微妙な食い違いを感じますし、法制局の見解と外務大臣の見解にも大きな根本的な食い違いを感ずる。したがって、国連協力の問題については、私はすみやかに閣議を開いてもっと徹底した統一された見解を持って臨んでもらわなければならないと思います。私はその点を委員長に要求する。   〔「暫時休憩」と呼ぶ者あり〕
  147. 福田一

    福田委員長 この際、三十分休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ————◇—————    午後三時九分開議
  148. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。野原覺君。
  149. 野原覺

    ○野原(覺)委員 わが日本憲法海外派兵を禁じていると思いますが、どうでございますか。外務大臣の御答弁を願います。
  150. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりでございます。
  151. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いかなる名称を問わず、自衛隊海外派兵は断わるべきだと思いますが、いかがですか。
  152. 松野頼三

    ○松野国務大臣 海外派兵自衛隊法の禁止しているところ、そのとおりでございます。
  153. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 断わる方針であります。
  154. 穗積七郎

    穗積委員 私は、まだ海外派遣の問題についていろいろお尋ねしたいことがありましたが、理事会の申し合わせもありますので、あとこの問題は、他日外務委員会で審議することにいたしまして、きょうは、核の問題について簡単に一、二の点について政府当局のお考えを伺っておきたいと思います。  最初に外務大臣にお尋ねいたしますが、下田発言以来、日本アメリカとの間における核の問題について論議を巻き起こしておるわけですが、その後一昨日、イギリスの在日大使と下田外務次官との会談でさらに新たなる発言が加わっておるわけですね。それは、すなわち核拡散禁止協定に関連をして未保有国、しかも日本のごときはこれを開発する能力を持って承りながら一方的に長期にわたって核開発、武装の権利を放棄するということは賛成できないということを強く主張しておられるようでありますが、これは外務大臣、もとより事前打ち合わせもあろうと思うしいたしますけれども、政府としてこの方針は確認されるところであるかどうか、政府を代表して外務大臣にお尋ねをいたします。
  155. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 かねて明らかにしておりますが、能力があって、しかもあえて開発しないという国のみがこの不拡散の拘束を受けるということは少し均衡を欠くじゃないか、こういう考え方は持っております。
  156. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、近き将来に核開発の意思ありやなしやということが国民としては一番心配になる点です。その点をまずお伺いをいたしておきます。
  157. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本としては、さような開発をしようとしておりません。
  158. 穗積七郎

    穗積委員 いまのお話で明瞭になったように、国際条約、すなわち法律的には核開発の権利を一方的に放棄したくない、すなわち留保しておきたい、そして日本が核武装をしないということは、単に現時点における佐藤内閣の政治方針としては核開発、武装はしない、こういうことだけで、歯どめは非常に不確定なわけでございます。すなわちわれわれの考えることは、核の全面禁止、完全廃棄を、はっきりそれに向かう政治的な約束を取りつけて、そして、しかる後に核拡散禁止協定に対処いたしませんと、一面におきましては、かつての部分核協定に対するわれわれの期待が裏切られておるように、核拡散禁止協定なるものは現在保有国の独占を固定化す、長期にわたってこれを固定化してしまうという結果になるので、むしろわれわれとしてはその点を取りつけることが全面禁止、完全廃棄に向かっての約束を取りつけることが眼目でありまして、その取りつけができないからといって、未保有国、しかも開発の能力を持っておる国の核開発の権利を一方的に放棄することは好ましくないという点を下田外務次官、外務省は強調しておるわけですね。ベトーネンしておるわけです。そうなりますと、日本自身の核武装の問題は、現在の政府は政治方針としてはそれをやらない、しかしながら核開発、保有の権利は留保しておきたい、こういうことで、はなはだしく危険性を増すわけです。この前、先月の十八日でしたか、下田外務次官の禁止協定に対する意見発表がありましたときの外務委員会で、そのことを私は、一面前進のようであるけれども、実は隠されたものは、相手国が放棄しないということを口実にしてこちらが放棄する権利を留保しておく。特に問題になりますのは、アジアにおける中国の問題でしょう。すなわち外務省のいまの核開発、保有の権利は一方的に放棄したくない、それは不平等だということは、中国の核保有、開発というものを目標にし、それを意識した発言であるというふうにわれわれは非常に不安に思うわけですが、そういうことに対する外務省のその誤りを修正し、国民に、永久に核武装はいかなる条件、情勢においてもしない、こういう態度をとり、しかも現在としては、ベトナム戦争その他において現在の保有国が絶対に核使用をしない、または核戦争というような段階になりましても、相手国が使う以前にこちらが使うというようなことは絶対にしないということをむしろ取りつけるべきである、そうでないと、この間の禁止協定に対する批判、反対意見、反対的な傾向というものは、むしろ核の開発、保有の権利を留保する、そういう点を強調してすり変えられて、国民の期待を裏切り、アジアに非常な不安を増す結果になる、こういうふうに思うわけです。特に外務大臣は、この前に、現在の状態においてすら、すでにアメリカが安保条約のもとで、アジアにおいて核使用は当然のことであるということを支持しておられるわけですから、いまの御答弁とあわせまして、非常なうしろ向きといいますか、国民の全面禁止、完全廃棄の方向に逆向きの姿勢がわれわれとしてはうかがえるわけです。もう一度それに対する外務大臣の御答弁をいただきたい。
  159. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本のみならず、スウェーデンでありますとかイタリアでありますとか、そういう保有しておらないが、しかし、やろうと思えば開発がやれるのだという国々の間におきまして、やはり保有国の独占を固定化するものであって、それではおもしろくない。われわれもがまんしてこれを開発しないという方針で、あくまでその方針を守っていこう。こういうとこであるからして、保有国も漸次これを漸減する、終局的にはそういうものを全面的にもう持たないという目標に向かって進む姿勢をとらなければ一般の説得力がない、こういうことを言っているのでございまして、日本としても別に開発する権利を留保するとかなんとか、そういうことじゃなしに、もうかたく開発もしなければ持とうともしないという方針を堅持するのであるが、ついては保有国もやはり漸減に努力すべきである、こういう考え方を持っておるのでありまして、別に国民に不安を与えるというふうなことじゃなしに、核兵器の漸減、終局的には全廃、そういうものに向かって世界じゅうが進む体制をつくる意味において、私はそういうことを主張しておるのでありまして、国民に不安とか、あるいは周囲に脅威を与えるというようなことでは絶対にない、こう考えております。
  160. 穗積七郎

    穗積委員 簡単にお尋ねいたしますから、簡単に明快にお答えいただきたいのです。  そういたしますと、いまの政府の方針としては、核の保有国が全面禁止、完全廃棄に向かって、その方向に向かうということの約束が取りつけられない場合においては、拡散禁止協定には賛成をしない、こういうことでよろしゅうございますね。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろこの条約の審議の過程によって、日本のこれに対する出方もいろいろ変化してくる、こう思うのであります。いまからそれを条件にするとかいうような、初めから態度を固定してこれに臨むということは適当でないと思う。
  162. 穗積七郎

    穗積委員 そういう態度では、その全面禁止に向かって、完全廃棄に向かって交渉ができない。初めから、出方によっりてイエス、ノーはきめるんだ、そういう条件が政治的に取りつけられなければこの禁止協定には賛成できないという強い態度でなくて、そういうことができるはずがないと思うのです。  そこで、防衛庁長官にひとつお尋ねをいたします。日本防衛庁は、言うまでもなく核武装をするということは憲法でも許されないし、長官も、政治方針としてもそういうことはとるべきではないと思うと私は思うのです。しかしながら、外務大臣が先般お答えになわましたように、日米安保条約、これは第六条その他におきまして軍事的にコンバインされておるわけですが、その状態のもとで、その在日米軍または在韓国国連軍アジア地域において核兵器を使用する、それを支持するということになりますと、日米安保条約は共同防衛の責任があり、日本自身が主体者でありますから、したがって日本自衛隊が核武装をし、核使用をしないとしても、共同の、連帯の中に立っておるアメリカ、それが日本の防衛あるいはアジアの安全保障と称して核兵器を使用することを日本政府が許すならば、すでにわれわれは核安保体制が事実上確立されておる、こう言っても差しつかえないと思うのです。したがって私は、安保体制の継続しておるさなかにおいても、少なくともアメリカ軍は日本との関連において共同出動の状態が起きたときに、または日本の安全を守るためと称して出動した場合には、日本関連のある場合におきましてはアメリカは絶対に核兵器を使用すべきではない、こういう取りつけをし、事前にそのことを確保しておくべきだと思うのですが、松野長官の御所信を伺っておきたいのです。
  163. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日米安保条約の権限なり日米安保条約の趣旨に従って自衛隊は行動するのであって、今日核の問題をとやかく議論をしたり、またお互いに話し合いをしたりしたことは一ぺんもございませんし、私は、そういう事態は今日は、いまのところないと思います。
  164. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いているのはそういうことではない。日本自衛隊自身の核武装、核保有またはその使用の問題ではなくて、日米安保条約に共同防衛の責任を持っておる、そのアメリカ軍が、日本の安全の問題、極東の平和の問題を口実にして使うこと、それは日本が責任があり、日本関連があります。当然日本に対する核の報復爆撃は許されるべきでしょう。正当防衛、相手国の自衛権の発動がそういう段階に至るならば、日本の基地を核爆撃することは、これは侵略ではなくて正当防衛、自衛権の範囲に入ると思うのですね。そうなりますと、これはゆゆしき問題でありますから、私の言っておるのは、日本自衛隊の武装または使用の問題ではなくて、安保条約で共同の防衛の責任のある、その立場に置いておるアメリカ軍が使用することを日本政府としては禁止すべきである。当然そうでないと、日本自衛隊は、自衛行為の発動としても、核武装も使用もしないといいましても、その。パートナーであるアメリカ軍が使えば、これは共同の責任があるじゃありませんか。そのことを言っておるのです。アメリカ軍の使用を禁止すべきであるということです。
  165. 松野頼三

    ○松野国務大臣 自衛隊及び日本の今日のすべての法律憲法は、攻撃を受けなければ日本から発動するという趣旨のものではありませんので、報復爆撃というふうなことで、先制的なものは、いまの自衛隊法及び憲法では規定していないと私は思います。同時に、日米安保条約の場合における事前協議項目というのがございますから、私は、その問題は、日本に関しては、すでに安保条約事前協議項目というのがありますから、これで十分歯どめはあると思います。
  166. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ不十分な御答弁ですが、これは、もう太平洋の核安保、または太平洋の核武装化が最近著しくいろいろな動きが出ておるやさきでありますから、協議を待たずして事前日本としてはその態度を内外に表明して、特にアメリカに対しましてはそのことを申し入れるべきだと私は強く思います。  もう一点だけお尋ねいたしますが、外務大臣にお尋ねいたします。最近沖繩におきましても、またわが国内におきましても、沖繩の基地と施政権とを分離して施政権の返還要求の動きが出ておりますが、外務省としてはこの方針を支持されますか、いかがでありましょうか、お考えを伺っておきたいのです。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まことにありそうもない事態を仮定しての御質問でございますが、私は基地と基地以外の施政権の返還というようなことは、これはもう実際問題としてはあまり価値のない議論だと思います。
  168. 穗積七郎

    穗積委員 沖繩の立法院を中心にいたしました政府を含む動きというものは、最近特にそういうような意向が強くなっておる。わが国におきましても、自民党の中で床次氏その他をはじめとする方々が、この分離返還の動きをしておられるわけです。これは、当然大きな一つの沖繩問題に対する自民党の方針でなければならない。実現性があるないは別といたしまして、そういう方針自身が誤りであると思っておるか、誤りでないと思っておるかを伺うのです。もう一ぺん御答弁ください。
  169. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 にわかに同意しがたいと思います。
  170. 穗積七郎

    穗積委員 ここで私はちょっと一これで委員長、終わりますが、昨年の十月にスチュアート氏が日本を訪問いたしまして、佐藤総理と会談をしておる。続いて十一月になりますと、ワシントンにおきまして、ウィルソン首相、それからエアハルト氏が訪問いたしまして、ジョンソン大統領と三者会談をいたしております。これらの個別的な会談で特に出ましたのは、太平洋地域における核武装の問題、核化の問題でございました。これはもう世間周知の事実であります。続いてことしになりましてから、イギリス政府の方針として、太平洋地域における核化の提案がなされておる。これを見ますと、アンザス協定の核化をしたい、そういうことで、特にチャゴス群島並びに北豪州地域を核基地化すということがもうすでに具体的に指定されておるわけです。その上に、御承知のとおり、日本はもとよりアンザス協定の締約国でありませんが、その条約の施行領域、すなわち法的領域の中に沖繩というものがちゃんと明記されておるわけでございます。そうなりますと、アンザス協定の中へ沖繩というものが組み入れられるわけでありましょう。そうすると、これは、現在は施政権は日本のものではありませんが、日本の領土である。そうして一部におきましては、いまの施政権と基地とを分離した施政権返還の要求がある。もしそういうことで日本を含む太平洋地域における核の問題が出てまいりますと、一方においては、いまの日米安保条約においてその地位にある米軍が使用することをあなたは支持し、しかも一方においてアンザス協定で、日本の領土である沖繩がアンザス協定の施行地域の中へ対象として入っておるわけですね。なぜ私がそういうことを言うかというと、SEATOの対象地域の中へ締約国でないベトナムが入っておることが今日のベトナム戦争拡大する、あるいはそこに駐留する権限として取り入れられておるわけです。そうなりますと、日本の領土、やがて日本の施政権下に返るべき沖繩における核強化の問題は、アンザス協定に含まれていくわけですから、これは外務省としてこういうアンザス協定内の太平洋地域の核化促進という提案が、もうすでにことしになってイギリスから、いまのアメリカとの打ち合わせの上で発表されておる。それに対して外務省は何らの意見も出していない。何らのこれに対する批判的、またはこれに対する関心のある態度を示していない。黙認をしておる。しかもスチュアート氏は、佐藤総理と事前に十月に会って、佐藤総理はこの問題に対して否定をしなかった。否定をしなかったのみならず、興味ある態度を示したということがもうすでに国際的にも伝えられておるわけです。そうなりますと、このアンザス協定の核化の問題と関連をいたしまして、特に一方は、本土は日米の安保条約におけるアメリカの核使用の問題と、一方においてはアンザス協定の中へ沖繩が組み入れられるという問題で、日本としては核化の問題の面から重要な時期に到達していると私は思うのです。したがって、これに対する外務省のぴちっとした憲法の精神による非武装化の態度をこの際は明確にするためには、いま申しましたアンザス協定の核化の問題について無関心でおり、無批判でおり、意見発表しないということははなはだしく誤りである、のみならず、沖繩の諸君の不安というものは非常にそこにあるわけです。したがってわれわれは、沖繩は基地と施政権とを分離した返還の可能性はいまないということだけであっては、理論的にも私はこれは誤りである、そういう情勢判断から、外務大臣お答えをいただきたいと思います。
  171. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アンザス協定はたしか豪州、ニュージーランド、アメリカの三国の協定だと思います。イギリスはこの協定の当事国でない。したがって当事国でないイギリスがアンザス協定の問題について云々するはずもございませんし、そういったようなことは……(穗積委員「沖繩は入っているよ」と呼ぶ)沖繩は入っておらないと思います。アメリカ及び豪州、ニュージーランド、三国の協定でございます。
  172. 穗積七郎

    穗積委員 沖繩は地域の中へちゃんと入っていますよ。独立国ではないから締約国ではありませんが、このアンザス協定の地域の中の明文にあります。
  173. 安川壯

    ○安川政府委員 「琉球」ということばは、この前文に出ております。もちろんこれは、第四条に「いずれかの締約国に対する武力攻撃が」ということがございますから、沖繩における米軍が攻撃された場合にこの条約が発動するということはございますけれども、いずれにしましても、英国はこの当事国でございませんので、先ほどからお話を伺っておりまして、英米の間でこのアンザス協定のおっしゃいますところの核化という話が行なわれたということは、ちょっと私は話の筋が違うのじゃないかと思います。それから、もちろん佐藤総理とスチュアート外務大臣との間でこのアンザスの核化と申しますか、太平洋の核武装というような話は一切出ておりません。
  174. 穗積七郎

    穗積委員 いやいやそうじゃなくて、沖繩は、施政権は返還してないけれども、日本国領土であることは認められておる。そこにおる九十万の人間は日本国民ですね。それがアンザス協定の核化の中へ組み入れられるということは、何らの意思表示もないのにやっておるということになれば、沖繩は独立国ではありませんから、意思表示ができない、それをすべき責任のあるのは日本であると思うのです。沖繩人民の不安を解消するために、その責任のあるのは日本政府であると思う。そういう意味で言っておるのです。アンザス協定の中に琉球というものは入っておるじゃありませんか。
  175. 安川壯

    ○安川政府委員 ここでいっておりますのは、沖繩にある——沖繩がいわゆる武力攻撃を受けたならば、それによってこの締約国が、沖繩を含めまして、それぞれの締約国を防衛するために必要な行動をとるということでございまして、これはむしろ沖繩を保護する意味はございましても、沖繩を核武装するとか、そういう問題とは無関係な問題だと考えます。
  176. 穗積七郎

    穗積委員 時間が来ましたので、また他の機会に譲ることとして、これで終わります。
  177. 福田一

    福田委員長 これにて穂積君の質疑は終了いたしました。  この際申し上げます。ただいま参考人として宇佐美日銀総裁の御出席をいただいております。  宇佐美参考人には、御多忙のところ御出席をいただきありがとうございました。  なお、宇佐美参考人の御意見は、委員の質疑に対する答弁の形で承ることにいたしますから、御了承願います。  武藤山治君。
  178. 武藤山治

    武藤委員 私は、きょうは主として金融問題を中心にした昭和四十一年度の国の方針がはたして計画どおり貫けるかどうかということを確認をいたしたいと思うわけであります。  最初に、貿易関係の指導に当たっておる通産省の行政指導について伺いたいのでありますが、大臣も御承知のように、昨年十一月ごろから日本の輸出をめぐって関税法違反の疑いがある、そういうアメリカからの指摘がありまして、そのインボイス不正申告による額がだんだん明るみに出てきたようであります。報ずるところによりますと、この関税法違反によるインボイス不正申告による課徴金、まあ言うならば過料のようなものでありましょう、これが七千万ドル程度になりそうだ、こういう事実があるという報道がなされておりますが、通産省はこれについてどういう処置をしておるか、その真相を明らかにしてもらいたい。
  179. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御質問の、御指摘のようなことで嫌疑を受けておるということについては私も聞いております。まだ詳細は明らかになっておりません。しかし、今後やはり貿易の長期的な安定のためには、過当競争というようなものに対しては秩序のある輸出をしなければならぬという、こういう点で今後われわれとして非常に考えさせられる問題を含んでおることは事実でございます。
  180. 武藤山治

    武藤委員 ただいまその事実のあることを大臣も確認をいたしましたが、この問題をめぐって、日本の輸出業界は相当深刻に反省をしなければならぬ事態がきておると思うのであります。私は日本の長い将来のことを考えた際に、こういう商社の姿勢、態度というものをやはり根本から改めないと、日本のほんとうの意味の国際借用というものは長く続かないのではないか、そういう立場から少々お尋ねをするのでありますが、こういう事実が通産省でわかったのはいつごろで、わかってから今日までどういう処置をなされましたか。
  181. 三木武夫

    ○三木国務大臣 去年の十月ごろ、こういう嫌疑を受けておるということを聞いて、この事態を当事者間でいろいろ話し合いをしておるので、事態の推移をわれわれとして見ておるという段階でございます。
  182. 武藤山治

    武藤委員 外務大臣、報ずるところによりますと、この二百五十二億円に達する課徴金について、民間業界はなかなかこれを即納することはむずかしい。そこで、できるだけ徴収猶予をしてもらいたいという外交折衝にこれが持ち込まれている、すなわち外務省のペースでアメリカ側と交渉しておるという報道がありまするが、外務省としてはどの程度その交渉が進んでおりますか。
  183. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 対米輸出制限等の問題につきましては、外交ルートによっていろいろ折衝しておりますが、この問題を特に取り上げておる段階ではございません。これはもっぱら当事者間においてこの解決策について折衝しておるという段階でございます。
  184. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、われわれの受けた報道とはいささか違うようでありますが、あとで外務大臣、お取り消しになるというような態度はおとりにならぬでしょうね。あなたはときどき発言を取り消しされたり修正をされたりする名人のようでありますが、あとで外務省アメリカ側と折衝しておったことがわかってから、実はこうだったんだなんという修正のないように確認をしておきたいのでありますが、昨年の十月ごろからこの問題が起こって、外交折衝の中で、何とかいまアメリカ側とこの問題を処置したいと、道を開いておるという報道があるのでありますが、ほんとうに外務省は民間ベースにまかせきりで、商社にまかせきりで、これに対しては外交折衝はしておらぬとはっきり確認してようございますね。
  185. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまお答えしたとおりでございます。
  186. 武藤山治

    武藤委員 こういう日本の信用を失墜し、業者が自分の利益だけを追及すればよろしい、私利追求が資本主義経済の原則であるというような立場で、非常に乱れた、国の名誉や信用を失墜するような、こういう態度で貿易が行なわれるということは、まことに私はけしからぬ態度だと思うのであります。一体こういうインボイス不正申告が行なわれるような業界に対する政府の指導、また、これの責任は一体どこにあるのだろうか、この問題の責任の所在というものは一体那辺にあるのか、これをひとつお教え願いたいと思うのであります。
  187. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、貿易は統制はいたしておらない。したがって、根本にはやはり輸出業者が非常に秩序を守るということがなければ、自由経済といったところで、自由経済はそういう私利追求を許された経済の形態ではないのであります。やはり貿易の秩序を守り、また、経済の、貿易上における国際的道義を守っていくという強い自粛の態度が基本になると考えております。
  188. 武藤山治

    武藤委員 このインボイス不正申告によって、不定期船で貨物を運んでおいて、それをアメリカの税関に定期船で運んだように不実の記載をして申告をする。これがアメリカの関税法違反と指摘された。なぜそういうことをしなければならないのでしょうか。こういう不正申告をしたねらいは何でしょう。これによってどういうメリットがだれに与えられるという結果になるのでありましょう。私は、そのねらいが何であったかということを通産省はどう御認識されておるか、その点もただしておきたいのであります。
  189. 三木武夫

    ○三木国務大臣 根本的には、いまお話しのように、いまこういう嫌疑を受けておるわけですが、こういう事態が起こらないような自粛の態度が必要だし、あるいはまた手続上のいろいろな錯誤もあったと思いますが、根本にはやはり貿易業者の基本的な貿易に対する態度というものが問題であろうと思います。
  190. 武藤山治

    武藤委員 そこで、通産省としては今後これらの貿易商社に対してどういう指導をなさり、どういう処置をしようと考えておるか、現実に手だてをしておるとすれば、その具体的方策をお尋ねいたします。
  191. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、いまこの問題について関係業者でいろいろ話し合いをしておるようでありますが、根本においては、一時的に輸出が非常に増加しても長続きするものではない。今後やはり過当競争により公正な競争というものの範囲を逸脱して、そうしてこういう誤解を受けるようなことのないように強力な行政指導をして、再びこういう嫌疑を受けるようなことのないようにわれわれはやりたいと、強く決意をいたしておる次第でございます。
  192. 武藤山治

    武藤委員 二百五十二億円の課徴金と申しますと、これはたいへんな金であります。民間も、もしこの課徴金が課せられるとなりますと、業界はたいへんな負担になるわけでありますが、そういう際に、また国家的見地からまあこれは救済してやらなくちゃというので、大商社を保護する立場から、大蔵省が山一証券に融資したような、山一もちょうど二百数十億でありますが、今回も同じような二百五十二億円になるのでありますが、福田さん、大蔵省がこれをバックアップして、この金をひとつ有利な方法で融資してやろうなどという緊急措置はとらないでありましょうね。
  193. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 山一のような日本銀行からの特融ということは考えられないところであります。
  194. 武藤山治

    武藤委員 私は、こういう国辱的な非常にけしからぬ関税法違反を犯すようなことは、二度としてはならぬと存じます。これは日本の品位を傷つけ、名誉を完全に失墜することであります。しかし国対国の関係になりますと、いいところへお茶がわいたというので、これをアメリカ側がいろいろな形に利用する危険があります。たとえば対共産圏貿易のワクを日本にはめてくる。すなわち、アメリカが恩を着せて、この問題からシベリア開発への鉄鋼の輸出や、中国への貿易の制限、そういうような取引の具に使われる危険を私は感ずるのであります。そういうような点については、日本政府としては、それとこれは別だという、やはりき然とした態度で交渉に臨まなければならぬと思いますが、通産大臣の御所見はいかがでありますか。
  195. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカもそんな、これをひっくるめて、けちな量見を起こすことはあり得ないことですし、われわれもこれは別個の問題である、むろん当然切り離して考えるべきもので、このことがほかの日本の貿易政策に影響を受けることはない、かように考えております。
  196. 武藤山治

    武藤委員 これは結果になってみないとわからぬことでありますが、特に貿易関係を担当する通産大臣としては、ただいま私が危惧するようなことが起こらぬように、万全の、私は米国と日本との関係についての交渉は、腰抜け外交でない経済外交をひとつしてもらわなければならぬと存じます。どうかあなたのただいま披瀝された決意を貫き通して、日本の共産圏貿易や、あるいはアメリカの輸入制限法などがこういうものに便乗して強化されるということについては、それとこれとを分けて、ひとつき然とした態度で交渉すべきだと思いますので、十分その点は要求をいたしておきたいと思います。  限られた時間でありますから、この問題をいつまでやっておるわけにいきませんが、この問題については後日大蔵委員会、商工委員会等で、十分ひとつこれらの反省の上に立ってこの問題の堀り下げた検討をいたしたいと思いますので、あとの質問は各委員会へ留保して先へ進みたいと思います。  最近、出荷指数やあるいは卸売り物価の上昇傾向、鉱工業生産の上昇傾向、さらに物価はどんどん上がる傾向、中小企業は二月も依然として昨年十月並みの高水準の倒産の状態、こういう指数をそれぞれ検討して、専門家の立場から今日の経済情勢をどう認識されますか。よく福田さんは、つま先上がりによくなるとか、低圧経済のもとなら国債発行は心配ないとか、いろいろな概念で経済の現状を規定しておりますが、現在の経済の実情をどう規定をするか、まず藤山企画庁長官の見解から承りたいと思います。
  197. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま御指摘のように、若干指数が好転してまいってきております。ただ、これは今後の施策に十分またなければなりませんけれども、しかし、いまお話しのような指数の向上というのは、景気がまず一応底をついて上がり坂に向かっていくのじゃないかということが見られます。ただ、それぞれの業種に関しますと、業種の中での景気情勢はまだでこぼこが相当ございます。ただマクロ的に大きい見地から見れば上昇傾向にある、こういうことです。
  198. 武藤山治

    武藤委員 藤山さんは、現在の状態は底をついた、上り坂に向かった。向かったということは離陸した、離陸の準備はもう終わって一応陸を離れた、こう解釈していいと思うのです。  福田さんは過般新聞記者会見で、よくなるというのは二、三年先だ、こうおっしゃっております。その場合のよくなるというのは、一体どういう状態をよくなると判断されておるのか。あなたの考える、二、三年先にならぬとよくならぬのだという意味でのよくなるという内容は、一体どういう内容のことをさしておるのか。これをひとつお聞かせ願いたい。
  199. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 よく、景気はいつなおるのですかというような質問に接するのですが、聞く意味が二通りあるのではないか、そういうふうに私は考えるわけであります。つまり、今日の経済不況の最大の根源は、何と申しましても設備過剰である。よく言われるようなデフレギャップがあるわけであります。このデフレギャップをある程度消して、そして相当程度の稼働率を達成するということになれば、そこに本格的な増収、増益形態というものが出てくる、こういうふうに思います。そういう状態になるには、私は今日の過剰設備の深度から見まして二、三年はかかる、各企業が、まあ例外はありましょうが、おしなべて、大体において収益状態が改善顕著であるという状態には二、三年かかると思う。しかし今日の状態は、いま企画庁長官が申されましたように、ともかく十一月から鉱工業生産は上がり続けております。また出荷指数も十二月から改善を見ておる。在庫率も非常に改善されておる。そういうところから見て、私は、今日は、昨年をもって経済動向は底をついた、こういうふうに見ますが、幸か不幸かことしの予算の支出がたいへんおくれまして、今日ただいまの時期に集中をいたしておるわけです。そういう効果が顕著にあらわれてきつつある。そういうようなことを考えますときに、財政主翼型のこの経済情勢下におきましては、私はこの傾向というものは続いていくのじゃないか。それが拡大された昭和四十一年度、しかも上半期にその支出を集中するという経済となだらかに接続をするのじゃあるまいか。そして経済計画でもいうように、七・五%程度の経済成長が達成できるんじゃあるまいか、そういうふうに見ておりますが、これは、私は二、三年かかると申し上げましたデフレギャップの解消、つまり増収増益非常に顕著な形、それに向かって着実な歩みを始めた、こういうふうに見るわけでありまして、そういうような増収増益状態に向かって着実に動き出した、そういう傾向を景気回復と見るならば、もう今日すでにその動きは始まっておる、こういうふうに理解しております。
  200. 武藤山治

    武藤委員 景気は着実に回復に向かった、この飛行機は三メートル上がって五メートルで墜落するというような、途中で急激な変動は年度内には起こり得ないと判断してよろしゅうございますか。だんだん徐々ではあるが上がりっきりで、ずっと下がることは年度内はない、こう見てよろしゅうございますか。
  201. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、いわゆるデフレギャップ解消論、つまり公債でもうんと出して、そうして一気にこのデフレギャップを解消したらいいじゃないかという議論がありますが、これに対しましては反対をいたしておるのです。つまり、今日われわれが当面している問題は、経済を上昇過程に向ける、つまり景気の回復をはかると同時に、この回復の過程を通じまして経済を安定基調に乗っける、こういう二つの任務を持つわけでありまして、そういう角度から考えますときには、二〇%、三〇%というような、そういう高い成長を一挙に実現するということは、これは危険であり避くべきである、時間がかかっても着実にいくべきである、こういうふうに考えますので、今日の経済が非常な設備過剰状態である、そういうようなことを考えますときに、七・五%の成長を目ざす今日の政府の考え方、これは挫折することはない。たんたんとして回復の大道を歩み得る、歩み続け得る、かように考えております。
  202. 武藤山治

    武藤委員 政府が考えておる四十一年度の預金の純増額の見通しは大体どのくらいになるかということ、また、日銀が計算をしておる試算では、四十一年度の預金の純増加額というのはどのくらいになるか、これをひとつお示し願いたいと思います。
  203. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金融機関、生命保険とかあるいは郵便貯金とか、あらゆる預貯金、また金融債による預金の吸収、そういうものをひっくるめまして、大体六兆程度に見ております。
  204. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答えいたします。  預金が一年間どれくらいふえるだろうということにつきましては、これは毎年計画をしておるのでございますが、全体の数字ではっきりこれくらいということを予想するのはむずかしいのでありますが、見通しとしては、大体ただいま大蔵大臣のおっしゃった程度はできるんではないか、かように考えております。
  205. 武藤山治

    武藤委員 大蔵大臣のいまの答弁では六兆円程度、こういうことであります。そこで、四十一年度に必要とする、支出として予想される需要金額でありますが、これについて政府は、過般の本委員会において、預金の額と必要額とはとんとんであるから、起債の消化は全く心配ないという福田大蔵大臣答弁が再三議事録に載っております。そこで、四十一年の必要とする資金の内訳はどういうことになるか。たとえば国債七千三百億、地方債、政保債、縁故債、事業債、株式、政府関係金融機関放出、民間貸し出し、こういうように分けた場合に、個々の金額はどういうことになるか、明示願いたいと思います。
  206. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ個々の必要につきましての精細な積算はしておりませんが、過去の実績等から見まして、いろいろの見方がありますが、金融機関に依存するただいまお話しのような必要額の総額を合わしてみると二兆五千億ぐらいになろうか、こういうふうに見ます。
  207. 武藤山治

    武藤委員 二兆五千億円ですか。そんなばかなことは大蔵大臣ありませんよ。それは何かお聞違いじゃありませんか。
  208. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 前の年に比べまして二兆五千億くらいふえそうだということを申し上げたのです。
  209. 武藤山治

    武藤委員 それは民間貸し出しを除いた数字でございますね。
  210. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 もちろんそうでございます。金融機関に、各証券等の発行ですね、公募債等の必要額を申し上げたわけであります。
  211. 武藤山治

    武藤委員 わかりました。政府関係の発行される政保債や地方債、国債、そういうものを全部で二兆億円程度の資金が必要だというのが大臣のいまのお答えですね。  そこでお尋ねをいたしますが、先ほどの景気見通しで、本年はたんたんと上昇を続けている、景気はもう転落することはない、景気は上昇に完全に離陸した、企画庁長官も大蔵大臣の見解も一致しました。そうなりますと、民間の資金需要というものはふえてまいらなければなりません。上期は政府の財政支出で景気をささえるが、下期は民間の成長で景気をなだらかにつないでいきたいというのが福田大蔵大臣先ほどの御見解であります。そこで、民間資金需要は一体どういう推移をたどるか。金額はどのくらい予定されるか。これはどうでしょうか。
  212. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昭和三十九年度の実績が三兆九千億くらいになります。これは金融機関の貸し出しでございます。それから見まして、大体四兆五千億あるいは六千億程度ですか、その辺を見ておけばまずまずかと、こんな感じを持っております。
  213. 武藤山治

    武藤委員 そうなりますと、福田さん、先ほどあなたが言われた、預金が六兆円ふえて必要な資金は六兆六千億円必要となると、差し引き六千億円資金は窮屈になる、そういう計算になりますね。あなたの答弁の数字から言うと六千億円資金繰りは苦しいという姿が出てまいりました。よろしゅうございますね。
  214. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど、総体二兆五千億くらい証券発行に対して必要じゃないか、こういうふうに申し上げましたが、その中には借りかえでありますとか、金融機関間で相殺される金融債なんかもありますし、そういうものを全部差し引いてみますと、公債だとかあるいは地方債だとか政府保証債、あるいはさらに事業債、そういうものもくるめての資金需要は一兆三、四千億、その程度かと考えております。
  215. 武藤山治

    武藤委員 稲田さん、こういう議論になると、大蔵省の数字にわれわれはいつもごまかされてしまう。そこで個別にひとつ金額を言ってくれませんか。うしろについておるからすぐわかるはずですね。国債は新しく発行したのだから、これは七千三百億、そのうち三百億は資金運用部資金、一割の七百億が証券会社、そういう順序に、地方債は何ぼか、政保債何ぼ、縁故債、事業債、株式、民間、政府金融機関、そういうように項目別に、発行ベースと償還額をここにほんとうの数字を出してくれぬことには、数字でごまかされるのです。ですから、資金はだぶついておって、金融は緩和基調で、起債の二兆円は簡単に消化できますなんという答えがここへ出てくるのです。そのいまのを個別に、発行ベースと償還金額をきちんと出してください。
  216. 中尾博之

    ○中尾政府委員 個別というお話でございまするが、いま大臣が申し上げましたのは、全体の発行額から推定されまして純増額を、これはまた推定でございますが、出されました。それらの数字自体にも多分に推計を含んでおるわけです。たとえば民間事業債あるいは縁故債のごときは、年度が終わってみなければこれはわかりません。それから、そういうようなものにつきましての、ただいまございました借りかえの関係といったものも実際問題としてどうなるかという問題もいろいろあるので、大観した計数の推計でございます。つきましては、いまたとえば国債のお話がございました。国債につきましては七千三百億、うち三百億円は資金運用部で引き受けますので、これはただいま御議論になっております問題の外になります。しかし、この七百億円を今度は金融機関とそれからそれ以外の企業、個人、これがどういうふうに結果的にお分けになるかということは、シ団の内部においてこれからお話し合いがおそらくあるのであります。それできまることでございます。そういうようなものを一つ一つを積み重ねるということは、現在の段階では無理なんでありまして、したがって、大数的なことを申し上げておる次第でございます。
  217. 武藤山治

    武藤委員 そんなことを聞いておるのじゃないのですよ。発行ベースは、これはわかっておるでしょう。しかし、発行済みになるかならぬかは結果でなければわからないけれども、発行は幾らするかくらいはわかるわけです。株式以外のことは大体わかるわけでしょう。それを私は聞いているのです。あなた、一回に言うと答えられぬようですから、一つ一つ聞きます。国債はわかったから、地方債は、地方自治団体が一年間に借りなければならぬ借金は、総額幾らになるか。
  218. 中尾博之

    ○中尾政府委員 地方債の計画は、御承知のとおり本年度六千七百七億円でございます。
  219. 武藤山治

    武藤委員 地方債は六千七百七億、政保債は幾らになりますか。
  220. 中尾博之

    ○中尾政府委員 四千億円でございます。
  221. 武藤山治

    武藤委員 縁故債は幾らになりますか。
  222. 中尾博之

    ○中尾政府委員 まことに失礼でありますが、縁故債というとどういう部分でございますか。どういう形で……。
  223. 武藤山治

    武藤委員 公社、公団その他が縁故債を出しているでしょう。あるいは地方団体なんかも縁故債を出しているでしょう。それはどこへ含んであるか。あなたの科目が別になっているなら別でもよろしい。たとえばあなたのほうから機関別縁故債、国有鉄道、電電公社、鉄道建設公団、地方公共団体、公営公庫、総額で四千八百一億出す計画でしょう、四十一年度は。間違いございませんか。
  224. 中尾博之

    ○中尾政府委員 申し上げます。  いわゆる縁故債と仰せられまするうち、政府関係機関の、主として財投関係機関でございまするが、これの発行いたしまする先ほどの政保債以外の非公募の分が、三千二百億程度になろうかと存じます。それから、次に地方公共団体の縁故債でございますが、これは、ただいま申し上げました地方債計画の中に入っておる。それから、今後実行上、その計画の外で出すものがございますれば、それが出てくるわけでございまして、その辺の実情はよくわかりません。
  225. 武藤山治

    武藤委員 政府関係金融機関の合計は。——六千百億円で間違いありませんか、確認をいたしましょう。
  226. 中尾博之

    ○中尾政府委員 ただいま資料を整理いたしまして申し上げますが、政府関係の金融機関の……。
  227. 武藤山治

    武藤委員 このペースに合わせるのだから、貸し出し純増を出さなければ出ないわけだ。六千百億円の数字が間違っておるかどうか。開発銀行、輸銀、三公庫合計……。
  228. 中尾博之

    ○中尾政府委員 政府関係機関の貸し出しでございますが、これは四十年度の見込みでございまするが、おおむね仰せのような数字になろうかという見当はつけておりますが、まだどうなりまするか、確信は持っておりません。
  229. 武藤山治

    武藤委員 理財局長の分野は、それで終わりです。  藤山さん、本年の株式の増資計画から見て、株式はどのくらい出そうでありますか。
  230. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 株式の見通しというのは、大体三月末から四月初めになりまして四大証券等が各事業会社に対してそれぞれのアンケート調査等をいたします。でございますから、はっきりしたことは申し上げかねると思います。
  231. 武藤山治

    武藤委員 企画庁長官、はっきりした数字でなくてもよろしいのです。あなたの数字が結果的に間違ったなどと責めようとしておるわけじゃないのですから、あなたのほうで大体去年の推移、あるいはおととし、去年、本年というベースを考えれば、本年は大体景気はダウンしないという約束を二人とも出したのですから、景気は上昇一方で、だあっと闊歩していくという大蔵大臣の勇ましい見通しなんですから、だとすれば、これはふえますね。そうすると、去年の計画よりどうふえるかということのある程度の積算は可能なはずであります。
  232. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 事務当局から御説明いたさせます。
  233. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢政府委員 四十年度におきます株式発行額は、大体三千億程度ではないかと考えております。
  234. 武藤山治

    武藤委員 四十一年度の見通しは……。
  235. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢政府委員 四十一年度はまだわかりません。
  236. 武藤山治

    武藤委員 福田さん、昨年三千億だから、ことしは七・五%の成長と見て、経済が下期にずっとふえていくと、増資はふえてまいりますね。去年よりはふえてくる。特に東京電力はもうすでに三百億ですか、出しましたね。テレビで盛んにいま宣伝しました。経済が一応離陸をしたのでありますから、そういう増資の方面も私はふえると見ることが間違いないと思います。したがって、三千億の昨年の実績を上回ることは間違いないでしょうね。いかがでございましょう。
  237. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その辺は、なかなかつかみにくいところなんであります。しかし資金計画上の問題としますと、新しい株式の発行と、それから投資信託の解約、これが相当あるわけであります。そういうものとが、大体見合いをとっておる。そういうふうな考え方で、そうたいしたでこぼこはないのじゃないか、そんな感じを持っております。現に実績を見ますと、過去においては解約のほうが多い。それがならされてくる傾向にあるのじゃないかというような観測をいたしております。
  238. 武藤山治

    武藤委員 松井証券局長おりますね。——昨年の投資信託の解約の金額、さらに四十一年度の——あなた、専門家から見た解約の傾向は、大体大ざっぱに見てどのくらいと踏めばよろしいか。
  239. 松井直行

    松井政府委員 お答え申し上げます。  昨年度の設定と解約償還の差額、元本ベースで千九百億でございます。本年度も大体元本ベースでそれぐらいはあるのじゃなかろうかというふうに想像いたしております。
  240. 武藤山治

    武藤委員 そうしますと、かりに株式の発行を去年の三千億と同じペースとして、おそらくこれは五百億ぐらいふえますわ。三千五百億ぐらいになると私は見通しておるのです。そのうち投資信託の解約が千九百億と見ても、まだこれは株式で千億はふえる計算になります。本年の純増を見ていって。これはふえますわね。そうなってくると、どうも福田大蔵大臣が本委員会で再三答弁された、預金がこれだけ集まって、事業がこれだけだから、楽々起債は消化できるんだという答弁は、どうも楽々でなさそうであります。ただいまの質問を通じてわかったことは、発行ベースからだけでいくと七兆六千億から七兆七千億の資金需要が出てくるわけであります。おそらく、理財局長、これに反論をしたいような顔をしているからお尋ねをいたしますが、いま申し上げた項目別の金額の中で、本年期限が来て償還されるものの内訳を言ってみてください。わかりますね。本年期限が来て戻ってきて、それは純増とは見られないと思うもの、いま聞いたのは、全部発行ベースですわね。発行ベースでしょう。だから今度は、発行ベースでも、その中で期限が来て入ってくるものがあるから、その分は落としてやることが質問者としても良心的だと思うから、その数字を引いてみようと思っておるわけです。それは何ぼになりますか。
  241. 中尾博之

    ○中尾政府委員 ただいま資料でその数字がそろえておりませんから、手持ちの資料が集計をいたします。ただ、ただいま差し引くというお話でございましたので申し上げますが、ただいま発行と仰せられますので発行と申し上げておるのでありますが、おそらく御質問の趣旨は、金融機関の総合資金のベースの話であろうと存じます。そういう場合には、地方債計画と申しましても、これは地方債の全体でございます。そのうちで金融機関がその資金の手当てに当たるものがそこに載るわけでございまして、そのほか政府、運用部でありますとかあるいは簡保でありますとかいうようなものが、別途その勘定のほかにその消化に当たるわけでございます。それから公募地方債につきましても、個人消化がございます。そういうようなものがその消化に当たるわけであります。それから政保債と申しましても、いまの起債の全体の総額の中には、公営企業の金融公庫のように、政保債として発行されたものが再び地方債ということにして再計される部分も入っておるわけであります。したがって、これらのものをすべて調整いたしました場合のことを大づかみに想定いたしますると、先ほど大臣が申し上げましたような見当に相なるわけであります。
  242. 武藤山治

    武藤委員 大体大蔵省が予算委員会に出したこの資料は、全く架空の推計にすぎない。これで予算審議をしろという資料とは全くならぬ。国会議員を侮辱するような数字ですよ、これは。いまずっと積算をしてみたら、ほんとうの資料というのは、やはり発行ベースで出して、そのうち償還されて差し引き勘定をして減るものを出して、純増はどうなる。これを出してくれぬことには、資金需要が幾らになるかという説明にならぬですよ、福田さん。しかも企画庁長官、総合資金需給をつくるのは企画庁の仕事でございますね。企画庁のこの数字説明を聞いたのでありますが、まことにこれは雑な、ずさんきわまる資料といわなければならない。これで一体物価を下げたり、経済見通しを実現したりなどということができるはずがないということは、この資料を見ただけでわかります。株式の発行に至っては、先ほど専門家のほうから聞いたら、昨年は三千億、したがって四十一年度はそのベースでいっても三千億円、これはおそらく七・五%の成長があるのですからふえる、しかるに、投資信託の解約があるからツウペイになって、来年は株式のほうがマイナス千億だ、こういう資金需要の見通しであります。こんな資金需要をあてにして予算審議をして、一体日本の金融情勢がどうなるのか、金融の混乱にどういう事態が起こるのか、それがだれにどういう被害を与えるのかという議論はできないじゃありませんか、この資料では。企画庁長官、何か御所見がありましたらひとつあなたの見解を聞かせてもらいたい。
  243. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、金融見通しにつきましては、証券にいたしましても、あるいは貸し出しにいたしましても、大体三月の中旬ごろそれぞれの各機関が、銀行協会にいたしましても、あるいは証券協会にいたしましてもそれぞれの機関が数字を出してまいります。したがって、確定的な数字というものは、例年国会にも三月末、四月初めにお出ししておるのでございまして、われわれもそれまでの間は、過去の趨勢から見まして、この程度ではないかというある程度の試算でございますけれども、しかし過去の趨勢から見まして、そう大きな狂いのない数字が出し得るのじゃないかというのが、今日までの経験から見てわれわれ考えるところでございまして、そういう意味で、いまお話しのように、いま出ているものは非常にずさんじゃないか、一々のこまかい点につきますと、差し引きは相当あろうかと思います。しかし全体としてのつかみ方からいえば、そう大きな狂がなくしていけるんじゃないかというふうに考えております。
  244. 武藤山治

    武藤委員 いや、藤山さん。一千億の株式の発行金額の違いはそうたいした違いじゃないですか。一億や二億じゃないんですよ。投資信託の解約は大体一千九百億程度で推移するだろうという証券局長答弁、それで大体株式の発行は解約ととんとんになってゼロですよなんという資金需給計画が、そんなに違わない数字だといえますかね。千臓、株式だけで。
  245. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまの株式の発行につきましては、昨年は三千億だ、しかしそのうち金融機関が持つ分というものは非常に少ないのです。そういうことからいま問題になるものは金融機関が幾つ持つか、こういう問題なんです。そこをお考えくださるとただいまの御疑念は解消される、こういうふうに考えております。つまりこういうことを申し上げておるのです。預金は六兆、これは資金の供給です。それが需要が一体どういうふうになるかというと、これは貸し出しか、有価証券、こういうことに相なるわけであります。貸し出しはどうかというと、昨年、三十九年は三兆九千億ぐらいです。これを四兆五、六千億と見るのです。これはそう私はでこぼこのない見方じゃないか、そういうふうに見ておるわけです。そうすると残りが一体幾らあるかというと一兆五千億ということになります。その一兆五千億の中に政府関係機関、また民間の事業会社が発行する証券が包蔵し得るや、こういう問題なんです。国債につきましていいますれば、七千億を出す、そのうち証券会社は一割は民間消化するといっておりまするから、銀行に消化されるのは六千三百億程度になるわけです。そういうふうに積み上げた結果、先ほど申し上げたように実際の発行ベースじゃありません、実際の需要ベースでいいますると、一兆三、四千億になる。したがいまして四兆五千億の貸し出しと証券引き受け一兆三、四千億、これを加算いたしてみますれば、預金の増加六兆億円に対して優にまかない得る、こういうことを申し上げておるわけです。
  246. 武藤山治

    武藤委員 ただいまの口頭説明は納得いたしません。したがって、私は委員長資料を早急に出してもらいたい。福田さん、企画庁の出している資金需給実績、さらにこの見通しには、預金増加、金融債、財政資金、その他の収支じり、こういう項目を設けて一切の資金の増加が計上されているわけであります。さらに支出の貸し出しのほう、資金の需要のほう、これも貸し出し、民間金融機関政府金融機関、有価証券と分類をして、帳じりがどうなるかという需給実績を出すようになっている。私はこのスタイルに合わせて一体どういうことになるかということを、突き合わせを先ほどしたわけであります。個別にずっとやってみると、大蔵省側の正確な数字を確認して計算をいたしましても、先ほどの大蔵大臣答弁の数字とは、六千億円の資金の不足が出てくる。しかしこのことは、あとでひとつ資料で、——理財局長よろしゅうございますか、発行ベース、償還額、純増、スタイルも企画庁の出しておる資金需給計画と同じような方法で、ごまかしのない資料をひとつ至急提出を願いたい。よろしゅうございますね。大蔵大臣、よろしゅうございますね。
  247. 中尾博之

    ○中尾政府委員 承知いたしました。できるだけ準備をいたします。
  248. 武藤山治

    武藤委員 これは非常に重大な、日本のこの一年間の金融情勢がどうなるかという大きなポイントを決定する議論の出発点でありますから、この問題については本日中にひとつ本委員会にこの資料提出願いたい。委員長に強く要求をいたしておきます。  次に、宇佐美日銀総裁がいらっしゃいますが、ただいまの議論を通じてみて、日銀は日銀の独自性があり、通貨の安定をするという至上命令があり、いかなる権力にも屈服をしない、日本国民のための通貨安定の機能を果たさなければなりません。そういう立場から、日銀は日銀として、四十一年度の資金事情というものをどう判断をし、これにどう対処するかというやはり大きな検討を今日なされておると私は思います。まず最初の質問は、大ざっぱな質問でありますが、四十一年度の資金事情はどんな趨勢に進むでありましょうか、まず、率直な総裁の御意見を承りたい。
  249. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 日本銀行といたしましては、ただいま御発言がございましたとおり、通貨価値の安定ということを非常に大事に考え、これを進めなければならぬと思っております。ただわれわれとしましては、この全体の資金の動き、あるいは需要供給といいますか、それについては政府のいろいろの関係もございまして、またわれわれの経験では、これを的確に一年間を予想してこの金額だということも申し上げられないので、ただいま政府のいろいろの御計画をチェックしてこれからやっていきたい、かように考えております。
  250. 武藤山治

    武藤委員 日銀総裁、金融は年度間緩慢に推移しましょうか、それとも逼迫ぎみに推移するでありましょうか、その金融の情勢の見通しについてはいかがでありましょう。
  251. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 御承知のとおり、いま日本の民間経済は鎮静といいますか、そういう状態でおります。こういう状態のときに金融はやはり緩和傾向、緩和基調を保つということは、非常に大事だと思っています。したがって、日本銀行としては、緩和基調を維持してやってまいりたい、かように考えております。
  252. 武藤山治

    武藤委員 ただいまの総裁の見解は、期待でありますが、私は科学的にどういう推移をたどるであろうか、緩慢基調でいくだろうか、逼迫の傾向でいくだろうかという事実認識の見通しを聞いたわけです。しかし、それに的確に総裁はお答えになっておりませんから、後ほど質問を続けていきながらまた確認をいたします。  そこで、まず大蔵大臣にお尋ねいたしますが、昨年一カ年間の都市銀行について、何といっても今日の日本の金融メカニズムの中での最大の盲点は、都市銀行の資金繰りと都市銀行のこの一年間の動向にあり、それによって国債がうまくいくかいかぬかも決定されるような気がいたします。したがって、私はまず都市銀行に焦点を当てて伺いたいが、昨年一カ年間の都市銀行の預金増は幾らで、貸し出し増は幾らであったでしょうか。
  253. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員お答えいたさせます。
  254. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。四十年中におきます一年間の都市銀行の預金の増加は、これは実勢預金のベースで申しますが、一兆六千八十七億円でございます。
  255. 武藤山治

    武藤委員 貸し出し増は……。
  256. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 どうも失礼いたしました。貸し出しは一兆一千八百四十一億円でございます。
  257. 武藤山治

    武藤委員 いまの銀行局長の数字、私にはどうもわからぬのでありますが、日本銀行の統計月報からとりますと、都市銀行の一年の預金増は一兆四千億円、貸し出し増は一兆五千九百六十二億円になります。日銀の統計月報の数字が間違っておるんでしょうか、どこか計算の基礎が違うのでありましょうか。
  258. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいま申し上げましたのは、四十年の一月から十二月までの一年間でございますが、これは、当然日銀の統計のソースからとっておるわけでございまして、食い違うはずはないと思います。
  259. 武藤山治

    武藤委員 それでは一応食い違いはないという銀行局長答弁に立脚して質問を続けてみたいと思います。  四十一年度の都市銀行が引き受ける国債、政保債の額は、どう見込まれますか。
  260. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。四十一年度のいわゆる市中公募で発行を予定されております分は、一応七千億円でございますが、そのうち都市銀行がどの程度ということにつきましては、これはいわゆるシンジケート団の中におけるシェアの協定と申しますか、そういうものを行なって確定をいたすわけでございます。今日までのところ四十年度発行分につきましては、先生御承知のように、すでに決定を見ておるわけでございますが、四十一年度分につきましては、近くこの話し合いが行なわれるということでございますので、まだ最終的にはきまっておりません。ただ四十年度の実績を基礎に考えますならば、四十年度におきましては、ほぼ五〇%程度でございますので、かりにその程度にさしたる差がないということにいたしますれば、おおむね三千億ないし三千五百億——半分とすれば大体三千五百億見当ということかと思います。
  261. 武藤山治

    武藤委員 いま、相互銀行、信用金庫、地方銀行の中以下、そういうようなところでは、四十年度国債の割り当て比率では困る、資金が苦しくて困る、あるいは利息の点で利益率が減るから困る、そういう不満がかなり強く新聞報道されております。したがって、四十年度の割り当て、都銀、長銀五一・五%、地方銀行二〇・五%、信託、相互、信金、農林中金、生命保険がそれぞれ三六%ずつというこの割り当て比率は、このままではとても雑金融機関が苦しくていやだということになりそうであります。信用金庫や相互銀行に対する国債の引き受け依頼は、幾らか四十年度分よりは軽減をするおつもりであるか、その辺はいかがでございましょう。
  262. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年のことは、総体としてシンジケート団は七千億くらいは消化できるであろうということを見当をつけておるわけです。ですから、それは心配ないのですが、その割り振りですね、内訳、シェアにつきましては、これはこれからシンジケート団内部で相談する問題なんでございます。いま相互、信金のほうではどうも消極的だというようなお話でありますが、私は相当緊密な接触をとっておりますけれども、いまだかって相互、信金のほうで国債の消化につきまして消極的であるという声は聞いておりません。つい最近も信金の方に会ってみたのですが、非常に意欲的に協力するという態勢であります。
  263. 武藤山治

    武藤委員 意欲的に協力するというけれども、それは金利の問題から論議を進めてみても、そう喜んで引き受けておらぬのであります。それは、大臣には、信用金庫の支店を増設するのにプレミアがつかなければ困るとか、あるいは監督がきびしくては困るとか、いろいろそういうデメリットを考えるから、一応おせじ的にも表面的には言うでありましょう。しかし、やはりわれわれ政治家には、どうも政府のこういう信用金庫への割り当てというのは困る、預金コストが七分もかかるのに、いまの国債を買うのではたいへんだ、こういう意見も強くて、これはどうしても検討し直さなければならぬという。大臣は、これはまた四月になってからとか、あるいは三月の終わりころシンジケート団と話し合うので、率はわからぬ、こう言っているけれども、大体のめどは、都市銀行にもっと上乗せをする、四十年度分よりは上乗せをする、こういう腹くらいはきまっておるのではないかと私は思うのです。第一、大臣のいまの答弁からみると、あなたはこの予算委員会において全くでたらめな、いいかげんな説明をいたしておる。中澤茂一議員が本委員会で、国債問題について、市中消化とは一体何ですかと質問したら、自発的に国債に応募しようという法人、個人に応募していただくものでありますと言われた。あなたは再三、国債をこれだけ出しても、市中消化をするのだから心配はないですよと安心をさせておる。その資金については、預金はこうで需要はこうだから、その限界のワクから見れば、この起債の二兆円くらいは心配ありませんと大見得を切ってきた。しかも市中消化でそれが可能だと言ってきたわけです。その市中消化ですが、三月中にどこの銀行が何%引き受けますということは相談を銀行にまかせっきりで、それで国債に法人、個人が応募していただくものだというあなたの答えた完全な意味になるのですか。こういうことが、ほんとうに自由な市場に出して消化をしてもらうような概念に当てはまりますか、いま四十一年度の発行を考えているあなたの方法はいかがでございましょう。
  264. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 市中消化の中には一般公募と、それからシンジケート団の中で消化するというものとあるわけでありまして、一般公募につきましては、これはもう広く法人、個人がお持ちになる。これは証券会社を通ずるわけです。証券会社もシンジケートの中に入るわけですが。その他のものにつきましては、構成メンバーが持ち帰って保有するという形が——保有というか、その配分を検討する、こういうことかと思います。
  265. 武藤山治

    武藤委員 福田さん、なかなか頭が緻密なものですから、野党の質問に対して自発的に国債に応募しようという金融機関及び個人、こういうべきなのを——これがほんとうの表現ですね。それを法人。銀行も法人だから、法人、個人といえば間違いはないでしょう。しかし、これを読んだ限り、法人、個人といえば普通の企業が買うと判断しますよ。金融機関が大部分引き受けるのですよ。個人というものは、証券会社に渡るわずか七百億円、一割であります。こういうまやかしでうまく委員会の答弁を逃げてきているような印象を議事録を読むと感ずるのであります。私は、そこで、さらにこれだけのものを銀行に押しつけて、これがやがて景気上昇のときの民間需要というものを圧迫するという判断を持ちます。日銀総裁、いかがですか、その点は。
  266. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 御承知のように、日本の経済は毎月資金事情が非常に不足したり、そうでなかったりしておるのであります。したがってこの全体を、毎月の計画を——御承知のように、国債は小刻みといいますか、毎月出していくわけでございます。これに見合って政府の支払い、この国債によって得ました資金を、政府がどういうふうに出していくかということにもからめまして、毎月を調整してまいりましたら順調に消化できるのではないか、かように考えております。
  267. 武藤山治

    武藤委員 てんで総裁の答弁は科学性がないし、現実離れした、かくありたいという自分のゾルレンばかり述べて、現実がかくかくであるからかくかくになるということに対して、確信がないですね。まことに情けない総裁じゃありませんか。私は、やはり日本のこれだけの大きな金融を監督をし、通貨を安定させるという至上命令を持った日銀総裁としては、ただいまの答弁はあまりにもわれわれに安心をさせることのできない答弁ではないかと思います。しかし、それはあげ足とりになりますから、そのことは申しません。  大蔵大臣、いま都市銀行の一月末現在の日銀借り入れの残額は幾らか。コールマネーから借りていつも操作をしている一月末のコールマネーの資金は、都市銀行はどのぐらい使っているか。この二つの数字を明らかにしてください。
  268. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員お答えいたさせます。
  269. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。外部負債の総額、二兆五千七百三十五億円でございます。うち、日銀借り入れ金九千七百三十八億円、その他コール等でとっておりますのは一兆五千九百九十七億円でございます。
  270. 武藤山治

    武藤委員 ただいまの銀行局長答弁の数字は、オーバーローン九千七百三十八億と申しますが、これ以外に手形割引等があるのではないですか。手形割引等がこれに上積みされるのではないですか。
  271. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 そのとおりでございますが、手形の割引は、つまり手形は日本銀行のほうに移ってしまいます。そういう意味で負債としては残りません。
  272. 武藤山治

    武藤委員 福田大蔵大臣、ただいまあなたの部下から数字が発表されたように、都市銀行は日本銀行から九千七百三十八億円借りているのです。借金しておるのですね。さらにコールマネーを一兆五千九百九十七億円借金をしているのです。まさに都市銀行の資金繰りは、借金に依存をしておる経営であるといっても過言ではない。いかがでございましょうか。
  273. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ九千億借りておると申しますが、いろいろ事情があるのです。皆さんからいろいろ御指摘のあります証券金融、山一の金融なんかもその中へ入るわけであります。その他証券金融に出した額は、都市銀行に対しましては相当多いわけでありまして、差し引きしまして、一般の産業資金としてどのくらいになりますか、そうたいした額にはならないと思います。
  274. 武藤山治

    武藤委員 これだけのオーバーローンとコールマネーにたよっている都市銀行の状況が、そう苦しい状態でないというような大蔵大臣の認識ですね。これは、私はもう現実離れした期待だけであって、現実に合わぬ認識だと思います。しかもこういうような都市銀行の状態のところへ、今度の国債が入り込んでいる。さらに金融債の引き受けもあるでしょう。縁故債の引き受けもあるでしょう。いよいよもって都市銀行の資金繰りは火の車になるでありましょう。火の車になりませんか。都市銀行の金融事情は逼迫をしないかどうか。日銀総裁の御見解はいかがですか。
  275. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私は、一年を通じまして、いたさない、かように考えております。したがって、緩和基調も続けられる、かように考えております。
  276. 武藤山治

    武藤委員 一年を通じて逼迫をしない。それは、全体をプールして考えたら、何とか日本銀行が買い切りオペをやって資金を供給をする、あるいは今度はクレジットラインを引き上げるという問題が出ている。いままでの貸し出し限度を上げてしまうのでしょう。また不正常金融、金融正常化に遠ざかるようなことをやるのじゃありませんか、クレジットラインを上げるということは。さらに従来は、成長通貨の範囲内しか通貨は発行しませんと国民の代表の前で再三約束をした。しかし買い切りオペをするということは、成長通貨にはみ出た通貨の供給をやるということに通ずるのじゃありませんか。さらに短資業者に、今度はいままでのように出合いでコールを見つけるだけではなくて、橋渡しするだけではなくて、これをコールのプール場にして、ここに日本銀行が足り、ないときは金を貸そうというのでしょう。まさに日本銀行は、日銀始まって以来の非常な冒険をやるわけであります。資金が遍迫をしない、苦しくない、年度を通じれば心配ないと言うならば、なぜこういう措置をやるのですか。こういう措置は、逼迫をすると都市銀行がたいへん苦しいという情勢からいまのような操作をやるのではありませんか、金融調節を。違いますか。総裁の御意見を承ります。
  277. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いろいろの調節をすることは確かであります。それは、口々の金融も非常に動いております。また一カ月を通じますと、揚げの激しいとき、あるいは支払い超過のとき、いろいろございますので・その間を調節するのであります。たとえばいまお話しのような、コール市場に出すといいましても、これは間もなく戻ってくるという前提のもとにこれをやるものでございます。御承知のとおり、毎月三千億ないし四千億近い増減が一カ月のうちに操り返されております。したがって、そういうものの調節は、一年を通じて考えました場合に決して野放しに借金がふえているということがなく、これを常に短期的に調節していくということは、いまの日本の金融情勢では当然必要なことかと考えております。
  278. 武藤山治

    武藤委員 だから一年間そういう操作をやっていくと、最後の年度末にどうしても信用の膨張、あるいは通貨の増発をしなければワクにおさまり切れない事態が起こる。絶対に起こらぬと約束できますか。来年三月末にそれが起こった場合には総裁はやめるだけの確信を持った答弁を、絶対信用の膨張は起こらぬ、通貨の増発も起こらぬ、二千五百億円程度の成長通貨の範囲内に必ずおさまるという確約を与野党議員のいる前で、ここでできますか。もしそれが実現しなかったら、あなたが職をかけると約束できますか。
  279. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私の見通しでは、成長通貨の範囲内においておさまるものだと思っております。  私の身分については、この席で申し上げる——私は意見を聞かれておるので、ここに来ておりますので、そういうことはお返事する範囲外だろうと思っております。
  280. 武藤山治

    武藤委員 ただいまの身分について私がお尋ねしたのは、私が悪うございますから、これは私は取り消しをいたします。しかしながら、いまの答弁を聞いておると、具体的に質問をいたしますが、買い切りオペをした場合に、間もなくそれをまた戻す。間もなくというのは、いつごろの期間で、どのくらいの期間でこれを通例の場合に戻すか。その場合、私が心配しておるのは、一応買い切りオペで買ってしまった、今度は売るときに市場金利価格が、実勢金利がどうなっているか。そういうときに日銀が損をして今度は売らなければならぬ場合が出てくるでありましょう、買い切りオペの場合は。あるいはコールの場合も、今度はいままでと変わったコールを、プールの場所をつくって短期業者に金を貸す、すなわち短期証券を日本銀行が売って、それを十日間なり十五日間短期業者に預けておいて、また短期業者から今度は甘木銀行が買い上げる。買い上げる場合に、金利の変動があって、金利が上がった場合には、出したときの金利と買うときの金利の差は日銀が損をするのじゃありませんか。私のそういう認識は間違いでしょうか、どうでしょう。
  281. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまお話のように、今度の無条件オペレーションということになりますと、そういう問題もあるかと思いますが、私はそういう問題のないようにつとめていかなければならぬと、かように考えております。
  282. 武藤山治

    武藤委員 そういう問題がないようにするためには、どういう手だてをしたらできるでございましょうか。ひとつ総裁の御見解を承りたいと思います。
  283. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 そのときの金融情勢によって変わるわけでございますので、あらかじめこういうときはこうするということは申し上げかねます。
  284. 武藤山治

    武藤委員 わかりました。その情勢というのは、コールレートが上がれば、総裁の考えたような、意図する方向に金融市場は動かない。第二に、アメリカの金利が非常に高くて、輸入ユーザンスはどんどん日本にきて、日本の外貨事情を悪くしている。日銀はすでに平衡操作をやっている。外貨準備がどんどん減る傾向にある。いまある輸入ユーザンス関係だけでも一カ月平均四億五千万ドルくらい日本に滞留している、百二十日間。これがどんどんアメリカの高金利に向かって流れちゃっているわけですね。ユーロダラーもそのとおりであります。そうなってくると、公定歩合をいじらざるを得なくなる。都市銀行の資金不足をコールでまかなっておるのでありますから、コールレートが上がってくることも必然でありましょう。そういう金融操作を宇佐美さんが真剣にいま考えておるようでありますが、客観的にながめると、残念ながら期待どおりにはこれはいかぬと私は見ておる。すなわちコールは上がると私は見ております。コールは絶対に、月越し物、取り手一銭八厘五毛、一月に五毛上がったですね。国債が発行されて資金需要がちょっとふえたら、もうコールは五毛上がったじゃありませんか。この一銭八厘五毛の今日の水準を絶対に年度間ずっと確保できる、低金利政策を日銀自身の手で人為的にやる、自由主義、資本主義経済の根幹の中に日銀が権力を入れていく、これが低金利政策。そういう方向を一年間おとりになるのでございましょうか。
  285. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの将来の予想の問題でございますが、まずアメリカの金利が上がったので、シフトが起こっているのではないかという御質問でございますが、いまのところ起こっておりません。またアメリカの公定歩合いの云々という、アメリカの金利について私が国会においていろいろ予想を申し上げることは差し控えたいと思います。したがって、私はただいまお話のとおり、このコールレートというものも基準レートを中心にいたして、これは国債に関係なく従来も動いておるのであります。したがって国債が出ようと出まいと、従来のとおり五毛見当の動きは示しておるのでございまして、ある一日を、いまおそらく一月の末のお話だろうと思うのでありますが、その前のレートは一銭七厘五毛でございまして、そしてその一日、二日ばかり基準レートが一銭八厘に上がったのでありますが、しかしその月半ばはむしろコールが非常に余った、そうしたときもございますので、   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 五毛ぐらいの変化は、コール市場というものの性質からいっても当然起こるのではないか、こういうふうに考えて、これは気にいたしておりません。ただ傾向としては、われわれとしては細心の注意を示していかなければならないと思っておりますが、現在のところはコール市場もきわめて落ち着いております。
  286. 武藤山治

    武藤委員 現在は落ち着いておる。しかし四十一年中、今日のコールがそのまま推移するという、調節がうまく続けられますか。私はコールは上がるという判断をいたしておりますが、この四十一年中一カ年間絶対コールは動かぬ、一銭八厘の基準を、あるいは約定、申し合わせでこの一銭八厘と一銭七厘大毛が人為的に守れる、こう考えますか。
  287. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 日銀総裁がコールレートは一年間変化なしということを、国会で申し上げることは差し控えたいと思います。
  288. 武藤山治

    武藤委員 私は、総裁、先ほどからずっと論理的にお話をしてきたのでありますが、総裁も五時にどこかお出かけの約束があるそうでありますので、急いで総裁に集中したわけでありますが、どうも総裁、今日都市銀行の状態を見ても、また日銀の立場から見ても、今日の日本の一年間をこれから見通してみますと、たいへんな金融情勢ですね。日銀の貸し出し金総額は一兆六千六百億余円、これは増加の傾向をたどります。クレジットラインを引き上げること自体がもうこれの増加につながっていきますね。さらにコールマネーが一兆六千億円、都市銀行は信用金庫、相互銀行の金を持ってくる、あるいは農林中金の金を持てくる、こういう方法で一兆六千億円の金をうまく操作しないと、資金の偏在という問題が起こってきて、金融界のバランスがとれない。それをバランスをとるためには、自由金利でほうっておけない。日銀の立場から、あるいは自由民主党の資本主義自由経済を維持していこうという立場から、どうしてもコールレートがあまり動かぬようにしなければならない、金利があまり動かぬようにしなければならないという大きな資本主義運営の至上命令がある。そこにてこ入れをして、 コールレートが動かないようにしようというのが日銀の今日の意図であります。そうですね。ところがその意図は、先ほどいみじくも企画庁長官、福田大蔵大臣が、経済は上り坂にずっとこれからいくのだ、ダウンしないのだ。日本大挙の飛行機のように、三十センチ上がって三メートル飛んで落っこっちゃうなんということでは、これは離陸にならない。やはりずっと上昇していく、そういう見通しを藤山さんも福田さんも立てた。ですから、資金はますます必要になってくる。民間企業の回転資金だけでも、かなりの膨張をしなければ景気はよくならない。そうなってくれば、ますますいまのコールレートの問題、資金偏在の問題が中小企業に波紋を投げかけ、あるいは中小金融機関の預金金利と貸し出し金利との差だけ金融機関が苦しくなる。人のふんどしで相撲をとって、利益だけは確保できるのは都市銀行、雑金融はまことに国家政策の犠牲に供される。こういう状態に日本資本主義が追い込まれてきたということは、日本資本主義経営の運営が間違ったからであります。失敗したからであります。それが多くの大衆に犠牲を与えたのであります。その最たるものは、私は、やはり何といっても日本銀行の通貨安定に対するき然とした態度というものがくずされたというところにあると思います。  総裁、お帰りになるので、ちょっと最後の締めくくりに総裁に申し上げたいのでありますが、通貨の問題だけを見ても、日銀券の発行は、昭和三十五年を一〇〇とすると、昭和四十年の年末には通貨の発行量は二一〇になる。日銀の貸し出しは、昭和三十五年を一〇〇として三〇九にふくれ上がっている。いかに信用が膨張したかということを意味します。この際に日本の鉱工業生産はどうかというと、わずか一七五・七の上昇しかしていない。輸出も三十五年を一〇〇として二一〇であります。したがって、日銀貸し出し三〇九という指数は、他の成長と比較した場合に全くアンバランスであります。信用過多であります。日本銀行の金融政策が時の国家権力に追従し、通貨の安定という至上命令を守り得なかった前総裁の責任は大であります。したがって、私は、この四十一年度の政府の策定する予算がほんとうに実行され、国民大衆に犠牲を加えない道は、日本銀行の信用膨張を防ぐ以外にありません。しかるに日銀は、クレジットラインの引き上げ、買い切りオペの市場価格での操作、短期業者への貸し出し、こういうような新しい施策をここにぶち出して、人為的にコールレートの上がるのを防ごうとする。コールレートが上がれば国債の発行はむずかしくなります。そうですね、福田さん。いまの金利水準というものを調べてみると、政府保証債が年七・〇五三%、地方債が七・三五四%、一流事業債が七・五一八%、電力債が七・四〇八%、国債は六・七九五%でありますから、国債が今後発行していけるためには、福田さんが大蔵大臣をやっている限り、これから三年間ぐらい国債発行をする、総額四兆円ぐらいの国債発行になるだろうということを勝間田さんの質問に答えている。その国債発行が継続されるためには、いまの金利の比較から見ても、どうしてもコールレートを一銭八厘程度で食いとめないと、コールレートは一銭八厘で年利六・五七%でありますから、今日の月越しもので取り手のコールは一銭八厘五毛でありますから、国債の金利とわずか一毛しか違わない。したがってコールレートがちょっと変われば、国債を買う妙味はもうなくなるのですよ。金融機関というものは利益を目的に今日の資本主義国家では許されている。信用金庫も、相互銀行も、中小企業を救うためにできているのではない。いかにして利益をあげるかというためにやっておる。したがって、損をする国債を買わなくなります。したがって、コールレートの安定ということが、今日の金融市場操作の最大の焦点になっている。これを日本銀行が、人為的に低金利政策をとろうということが、またまたこれはたいへんな問題であります。これはけしからぬことであります。しかし、これによって、いよいよアメリカの金利高によって日本の外貨準備高が落ち込み、やがては日本の短期外資が流れ、公定歩合に手をつけなければならぬと思いますが、どうでしょうか。公定歩合は手をつけなくてもやり切れる、乗り切れる、こういう見通しでございますか。この辺について総裁の所見を伺って、あなたに対する質問を終わりたいと思います。
  289. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 公定歩合をいまどうするのだという御質問については、これはいま私の置かれておる立場上申し上げられません。ただ、ただいまおっしゃったようないろいろむずかしい問題はございます。私もこれを認めますが、今後どうしてこれに処していくかということは、従来にも増して日本銀行の責任は重くなっておると考えております。それだけを申し上げて、御返事にかえたいと思います。
  290. 武藤山治

    武藤委員 ありがとうございました。
  291. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 日銀総裁には御退席になってけっこうでございます。ありがとうございました。
  292. 武藤山治

    武藤委員 大蔵大臣、今日のコールレートの安定価一銭八厘を、大蔵大臣の判断では、どういう短期金融操作をやって調整をして、この変動をなからしめる具体策というものはどういうものがあるか、あなたの御見解をひとつ承りたい。
  293. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 コールレートは、日々これは動く可能性のあるものです。しかし、これを長期にわたって見ると、大体安定さしていきたいというのが、ただいま私どもの考えておるところであります。そういうためには、日本銀行の買いオペレーション、売りオペレーション、あるいは貸し出し政策もあります。しかし、それだけで完全でないという際には、政府の支出、この面においての配慮、それからさらにその支出の方法として、大蔵省証券も使うかどうかというような問題もあります。いろいろな金融、財政両方の手段もかみ合わせまして、このコールレートの安定の基調だけは貫いていこう、かように考えております。
  294. 武藤山治

    武藤委員 大蔵大臣、国債の金利が、利回りが六分七厘九毛五糸、コールレートの月越しもの取り手が一銭八厘五毛、国債が一銭八厘大毛、一毛違いですね。これでコールレートが国債利回りよりも一厘高くなったとしたら、都市銀行も国債を買う妙味はもうなくなりますね。こうなった場合に、国債発行はなるほど金融市場を混乱し、損をさせて買わさなければならぬ。しかし、国家のためだから愛国心からこれを保持しろ、こういう態度で国債を発行する歯どめとしてのレートじゃなくて、そのレートを無視してまでも国債発行を続けられると、こうお考えになりますか。それともコールレートが上がれば、これが国債発行の歯どめになって、政府は国債を減らす以外にない、こう考えるか。それとも、国債は発行できないが、金融債を減らしてもらおう、あるいは事業債を減らさせよう、ほかにそのしわ寄せをしなければ追っつかなくなると思いますが、コールレートの国債発行その他の起債との関係についてどういう認識をされておるか。福田(越)国務大臣 私どもは、いま国債も、政府保証債も、あるいは金融債も、事業債も、ことごとくこれを円滑に消化していくことを考えているので、そのいずれをも圧縮するというようなことは考えておりません。しかし、そのためには、コールレートというものは非常に重要である。これは短期的に見るといろいろの変化があると思いますが、少し長期にわたっての見方としては、安定をさしていく、金融緩和基調、その中軸としてはコールレートということを非常に重視していこうと思っています。
  295. 武藤山治

    武藤委員 それでは大臣、コールレートが国債金利を上回ったときにはどういう処置をおとりになりますか。
  296. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、短期的にそういうことはまあなしとしないと思うのです。しかし、長期にわたってそういうことは考えておらぬ。もし多少の期間にわたってコールが高いということがありましても、金融機関は、その利回りばかりで国債に投資するわけじゃないのです。あるいは支払い準備というようなこともある、あるいは最も確実な投資先であるという見方もあるわけであります。そういうようなことで、コールレートが直ちに国債の消化に直結するんだと、そういうふうには考えませんが、ともかくコールレートが今日のような状態で安定しておる、安定基調であるということは、国債政策をとっていく上に非常に重要なことである、さように考えています。
  297. 武藤山治

    武藤委員 その安定基調がいつまで続く見通しであるかというところに問題があるのです。しかし、その見通しは将来のことであるから、六カ月先だから、七カ月先だからといって、おそらく的確な答弁はいただけないと思いますから、質問はいたしませんが、とにかくいまの私がずっと述べてきた数字から見ても、都市銀行のコールローン、借り入れ金、こういう趨勢や数字から見ても、どうしてもコールレートは上がらざるを得ない。これに起債フラッシュで二兆円の起債がそれぞれの機関に流れていくのでありますから、これは金融は逼迫をしてまいります。それに加えて、政府がたいへんな頭をかかえなきやならぬ問題は、短期外資の流出であります。アメリカは、昨年十二月に公定歩合の〇・五%引き上げをやりました。またまた景気過熱からこれを再引き上げしなければならぬと外電が報じております。政府は、アメリカの再引き上げの外電に対してどういう受け取り方をいたしておりますか。
  298. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 アメリカの経済情勢、特に金融の動きというのは、わが国に非常に重要な影響を持ちます。そういうようなことから、アメリカの動きについては非常に注目をしておりまするが、いま直ちにアメリカが公定歩合を引き上げるというような話は、まだ伺っておりませんです。
  299. 武藤山治

    武藤委員 ドルユーザンスが現在一カ月四億五千万ドル程度の規模で日本に滞留しておることは、先ほど申し上げたとおりであります。しかも為替銀行の取り入れ制限の上限が、日本の場合は五・四八%、アメリカの場合はBAレートで六・一二%と、アメリカのレートと日本のレートの差があります。この差を求めて日本のユーザンスがたいへん外貨に悪い影響を与えている。外貨準備がどんどん減る傾向にある。この金利差を求めて流れていく情勢というものがいつごろストップするか、短期外資の流出を防げる時期はいつごろか、大臣の見通しをひとつ……。
  300. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、短期外資は、これがたくさん出たら問題だと思いますが、少しぐらい出るということにつきましては、そう心配はいたしておりません。つまり長期資本が調達できるかできないか、これは私は非常に重要な問題と思いますが、日本の国際収支の構造として、経常収支に黒が出て、そして短期外資にマイナスが出る。これはちょうど今日の状況であります。これは決して悪い姿ではない、こういうふうに考えています。なお、ユーザンスの金利の関係で短期外資が出るというようなお話でありまするが、理論的にはそういうことが考えられるのです。しかし、実際の動きとしては、今日までさしたる動きはございませんでございます。
  301. 武藤山治

    武藤委員 大蔵省の事務当局にお尋ねしますが、一月、二月の短期外資の流出は、絶対額は何ぼになりますか。
  302. 村井七郎

    ○村井説明員 お答えいたします。いまのところ、はっきりした集計はいたしておりませんが、一月は短期外資は五千万ドルぐらいむしろ増加いたしました。二月は大体とんとんぐらいではないかという感じでおります。
  303. 武藤山治

    武藤委員 どうもいいかげんな答弁ですから、あとでこれは資料で、また数字でいただきたいと思いますが、私はいまの短期外資が流れていくのは、やはりアメリカが公定歩合を引き上げ、その後貸し出し金利も預金金利もずっと上がっている。いまアメリカの定期預金の金利を比較をいたしますと、大蔵大臣、どういうことになりますか。定期預金だけの金利を見た場合、日本アメリカの金利差は。アメリカは定期預金は何分ですか、日本は何分ですか、それをちょっと発表してください。
  304. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 わが国の場合におきましては、先生御承知のように、定期預金金利は三カ月もので四%でございますし、六カ月で五%、一年定期で五分五厘でございます。一方アメリカにおきましては、昨年の十二月公定歩合引き上げと同時に、金利の引き上げございました。それはい一わゆる三十日以上、つまり一カ月以上の定期預金につきまして、最高を五分五厘というふうに改めております。これは最南でございますので、実際にはそれほどまでいっておらぬと思いますが、少なくとも三カ月もの、六カ月ものと比べますと、これは日本に対してアメリカのほうが預金金利が高い、こういう状況でございます。
  305. 武藤山治

    武藤委員 大蔵大臣、ただいま数字が発表になりましたように、三カ月ものの定期にした場合、アメリカの金利は日本より一・五%高い、六カ月ものにしても〇・五%高いのであります。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕  したがって、一年未満の、すなわち非常に短期に金利の高いところを求めて歩くユーロダラー、こういうものはどうしても金利の高いほうへ流れていきます。大臣は、先ほど、短期の借金が減るんだから好ましい方向だと、こう言う。それは、確かに外資は一銭もないほうがいいです。まさに自力更生で、外資なんか全然借りずにやれればやったほうがいいんです。ところが、過去の日本の保守党政府は、外資をかなり借りちゃっているから、長期資金を借りちゃったから、それの返済が一年間に何億ドルとあるわけであります。したがって、その返済額に充てるものを従来短期資本でカバーして返済していたから、外貨準備があまり減らぬという仕組みになっていたのです。それが、金利差を求めて短期外資がどんどん流れていくということになりますと、日本の外貨準備高の底が非常に低くなるわけであります。これは別な角度から見るならば、景気はやや上昇に向かってきた。金融は緩慢だったが、今度は資金需要がふえてきた。これで景気を一挙に上昇させようとしたところが、国際収支の問題に波綻がくるという重大な意味を含んでおるわけであります。したがって、金利の問題を人為的に大蔵省、日銀がくぎづけにしようとしても、もはやとめられない情勢が国際環境の中にもあらわれてきている。これをずっと四十一年度中に大蔵大臣として全然いじらずに、いままでの人為的な金利政策が続けていけると考えるか、その辺の大臣の見解を承っておきたいと思います。
  306. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 とにかく四十年について見ますれば、経常収支が七、八億ドルの黒字になる。それで、外資がそれに反比例して出ていく。しかも短期外資が出ていく。それで、しかも外貨保有高は微弱ながらふえていく。これは、私は決して悪い状況ではないと思うのです。今後のことを考えてみまするときに、アメリカの金利情勢なんかが変わっていく。それに伴いましていわゆるユーロダラー、これなんか多少動く、これは想像されます。しかし、四十一年度のことを想像してみますれば、八、九億ドルの経常収支の黒が出る、こういう状態でありまするから、少しぐらいな短期資金の移動につきましてそうくよくよすることはない、私はかように考えております。しかし、今後どういうふうな状況が起こるか、そうたいした変化はないと思いまするが、これは国際収支、国の経済運営のかなめでありまするから、最大の関心を払っていきたい、かように考えています。
  307. 武藤山治

    武藤委員 最大の関心を払っていくと申しますが、外貨準備がいま減っていくという傾向がそうたいした問題にならぬようなあなたの認識は、誤りですよ。というのは、世界各国の外貨準備高とその保有額の適正な量、いつも外貨準備がなければならぬというある程度の目安というものを、それぞれ常識的に各国は考えておる。その表から見ても、日本の外貨準備に対する輸入の率、本来輸入の三カ月分ぐらいは常に外貨準備がなければならぬと常識的に言われている。ところが日本はどうですか。イタリアですら五〇%、フランスも五三、カナダ三二、西ドイツ三六、日本は二六じゃありませんか。そういう貧弱な外貨準備のときに、さらに短期資本が流れていってこの底が下がってくるということは、今後日本の金融政策をこれでいじらなければならぬ事態が起こるであろう。われわれはこの年の終わりごろ、十月ごろ、あるいはそのちょっと先になるかもしらぬが、四十一年度中にそういう大きな事態が発生するのでは、また金融引き締めをやらなければならない。景気を上昇させようとして意図したものが、今度は外国の環境の結果、金融の引き締めをやらざるを得ないという事態が起こるかもしらぬ。あなたはそういう心配がないとおっしゃっておりますが、これは私は非常に深刻に考えなければならぬ問題ではないかと思います。  しかし、もう時間がありませんから、最後に伺いますが、歩積み両建て預金の解消の問題で、大蔵委員会並びに本予算委員会において再三質問がなされました。その質問を通じて残されている問題が一、二ありまするので、これらの問題について今後大蔵省がどういう態度をとるか、それを確認をしておきたいと思います。  歩積み両建て預金があるのはどういう理由かということを金融機関に聞くと、金融機関は、債権を保全するためだ、第二には、企業の手元流動性を確保するためだ、そのために拘束性預金というものが置かれているのだ、こうおっしゃるわけであります。しかし、そうだといたしますならば、昭和三十九年の九月の決算を見ると、銀行が取り立て不能で損をした金、これは全額でわずか二十六億二千二百万円しか取り立て不能の償却費というものはないのであります。二十六億二千二百万円しかない貸し倒れに対して、これの何百倍という拘束性預金をしておくということは、まことにけしからぬことであると思います。  私は、まず第一に大臣の見解を承りたいのは、この歩積み両建て問題について、本年の五月までに解消するという約束で今日まで大蔵省は仕事を進めてきたと思います。ところが、大蔵省の自粛対象預金の中に含まれておるものでも、あと相互銀行が二・六%、信用金庫が二・五%の自粛対象預金が残っておる。五月までの期限であります。五月までにこれが完全解消ができるかどうか、大蔵省の今日の作業の状況から見て的確に御判断を願いたいと思います。
  308. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中小金融機関に関する最終的な報告が、この五月に出ることが期待されておるわけであります。私は、大蔵省の歩積み両建て規制要領に基づくところの措置は、これは五月には完了する、こういうふうに考えております。
  309. 武藤山治

    武藤委員 歩積み両建ての第二の質問は、大蔵省の発表によると、現在残っておる拘束性預金は、都銀の分が二三%、地方銀行が二二・六%、相互銀行が三二・六%、信用金庫が三六・二%の拘束性預金がいまだ残っている。金額の合計にして二兆七千七百三十億円という膨大な拘束性預金があるわけであります。大蔵省は今後歩積み両建てを解消する方向に努力をするわけでありますが、この率をどの程度まで引き下げしようとするのか、目標はどの程度に置くのか。この目安がなかったら、幾ら歩積み両建てを解消して中小企業を助けようとしても、大蔵省がこの率まで拘束性預金を減らせという方針を出さなければ、これはいよいよ特殊指定の問題、与野党で約束をした整理の方針に進む以外にないと思います。大蔵省は、一体この拘束性預金の率をどの程度まで減らすか、それをひとつお尋ねいたしたいと思います。
  310. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歩積み両建てを徹底的に整理しようと思えば、もう債務者預金は一切いかぬ、こうやっちゃえば事は簡単なんです。しかし、そうやりますれば、預金者というか、債務者は一体どうなるか、非常に不便な事態になると思います。また同時に、金融機関の実質的の貸し出し金利、これには重大な影響がくる、こういうふうに思うわけであります。そういうふうに思いますと、そういう方向はとれない。そこでいまあなたは、拘束預金の率を何かきめたらどうかというようなお話でありますが、かりにアメリカが二〇%というようなことを言っておるようでありまするが、ある率をきめてみる。そうしますと、あなたも御指摘のように、この歩積み両建てには担保的な要素も相当あるわけであります。したがいまして、資力確実なる債務者に対しましては、歩積みの額というものは非常に低率なわけでありまするが、そういう低率のものがみんな一定の率にさや寄せをしていく傾向も、私はこれは必至である、こういうふうに見るわけでありまして、いずれにいたしましても国会の論議、予算委員会あるいは大蔵委員会、いろいろの御論議があった。歩積み両建て問題がまだ大きな問題を残しつつあるという認識におきまして、私はそのとおりに考えます。そういうことで、五月の中小機関の整理状況というようなものを見まして、私といたしましては第二段の措置をとる、こういう方針でございますることをここではっきり申し上げておきます。
  311. 武藤山治

    武藤委員 たいへん時間がおそくなりまして恐縮でございます。これで終わります。  第二段の措置をとるということは、現在の拘束性預金をさらに引き下げる。そのときには、この率まで下げる大蔵省の方針だという目標をはっきりひとつわれわれに確約のできる作業を至急進めていただきたいと強く要求をして、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  312. 福田一

    福田委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  次に足鹿覺君。
  313. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、農林漁業問題を中心に、これに関連する問題、及び各種年金等、厚生行政の当面の問題について若干の質疑を行ないたいと思います。  まず第一に、食糧問題と農政の姿勢について政府の所見を承りたいのでありますが、農業基本法体制下において農業の危機が叫ばれることは、まことに矛盾きわまる事態と言わなければなりません。しかも、その危機の度合いがいよいよ深刻になりつつあるとき、私は、この際政府日本経済における農業の位置づけと申しますか、あるいはまた経済政策の中で農業の位置づけを明確にいたしまして、農業政策の正しい発展を期さなければならぬという段階に今日至っておると思うのでありますが、この基本的問題と取り組む農林大臣の御所見を最初に承りたいと思います。
  314. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えいたします。  現在の農政において、やはり生産性向上をはかりまするためにそれぞれの施策を講ずるということと同時に、食糧の可及的自給をはかってまいる、しこうしてさらにまた、農村における環境の整備という点がおくれておりまするので、その点もでき得る限り拡充してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  315. 足鹿覺

    足鹿委員 昨年の七月ごろから普通米に対して、内地米が不足をいたしましたために、外米が混入配給されるような深刻な米不足を訴えるに至ったことは御承知のとおりであります。その原因は何と考えておられますか。単にこれを昨年あるいはその前の災害等の時期的なものと考えておられるかどうか、一時的な現象としてこれをとらえていこうとしておいでになりますか。この点、農林大臣の御所見を承りたい。
  316. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申し上げます。  足鹿委員から御指摘になりました現在の内地の米の生産でございまするが、三十七、八年ころから反収が減っております。したがいまして、全体として、若干振幅はありますけれども、ごく少量減りつつございます。したがって、需要は微増いたしておるけれども、、生産は減っております。その原因は一時的であるかどうかという問題でありますが、もろちん異常気象ということが非常に続きました。特に昨年のごときは、一時は天明以来の冷害になるであろうという心配もあったくらい異常でございました。そういうこともございます。しかし、それだけでなしに、やはり早植え等の技術が一巡したということもありましょうし、さらに一面から申しますと、やはり労働力の減少、そういうことによっての問題、第二種兼業農家が非常にふえておるということ、それらの兼業農家の生産は、専業農家に比較して、生産量がやはり少ないわけでございます。さようなことも、どういう程度に混入しておるかわかりませんが、やはり要因の一つであろうと存じております。
  317. 足鹿覺

    足鹿委員 本年の一月から消費者米価の値上げが行なわれました。値上げをして品質がよくなるかと思っておったら、規格が変わって、上米、並み米、徳用米となって、品質が著しく低下して、消費者の大きなふんまんを買っておることは御承知のとおりであります。いわゆる黒い米に対する消費者の怒りとなってあらわれております。消費者がこのようにまずい米を食うことを余儀なくされる形に、まだこれからさらに深刻な形になっていこうとしておることはおおうことのできない事実であろうと思います。そしてただいま農林大臣も申されましたように、内地米の生産の動きから見ても、生産の減少傾向というものは単なる一時的なものではない。これは日本農業の構造的な問題に深く根をおろした問題でありまして、その状態がさらに悪化しつつ進行しておると見るべきでありまして、そう簡単にこの内地米の不足が解決するとは考えられないのであります。したがって、主食である米の生産を確保していくためには、再び農政の中心を米の生産に据えるべく検討していく段階と私は考えます。食糧の国内自給、食糧供給力の画期的な拡大を目ざすべきであると考えます。この問題を農政あるいは国の経済の上に、正しく国民的な経済の上に評価をしていく農政の転換方針が示されなければ、私は、ただいまの農林大臣の御答弁はこれを具体的に進める姿勢とは言えないと思いますが、いかがでありますか。
  318. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申します。  先ほど申しましたのは、最近における停滞の姿を申したのでございまするが、現在の米の自給は九六%程度でございます。したがって、非常に停滞ということばが悪いのですが、まず微減という程度であろうと思います。しかし微滅であっても、これはいまのうちに考えなければならぬ問題であることは言うまでもございません。しかし、これは政策の変更をする必要はないのでありまして、従来とも、先ほど申しましたように、生産性を高めるということ、しこうして食糧の増強をはかっていくということ、それから第三には環境の整備という、こういう問題を掲げてまいりましたのでありまして、それは別に政策の変更ということではなしに——食糧増産の面をさらに一そう強める必要はありまするけれども、別に政策の変更ということは必要がなかろう、こう考えております。
  319. 足鹿覺

    足鹿委員 それは納得のしがたい御答弁でありますが、一例を申し上げましょう。あなたは、昨年の七月行なわれました全国知事会議の公式の席上において、最近の米穀の需給事情と端境期の需給操作の窮屈さを述べた後、米麦の生産対策についての十全の指導助成を進めてまいる所存であると説示を行なっておられます。この発言は、農業基本法制定以来の農政から見ると、重大な、しかも注目すべき内容のものであると私は考えるのであります。まさに政策の転換をうたっておられる。このことは、農業基本法農政の一枚看板であった。またある農業構造改善事業などで、米を軽視して、果樹とか畜産とかでなければその補助対象にもしないという方針で推進しておきながら、いまさら米の生産対策についても十全の指導助成をしていくのだということは、重大な農政の方向転換の内容を含んでおるとだれしも考えざるを得ないではありませんか。知事会議においてはそうした大胆な発言をされ、この国会の場においては従来の態度を固執して反省の色の見えないということは、私はきわめて遺憾であると思う。率直に政策の転換を認めるべきであると私は思いますが、いかがでありますか。
  320. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えいたします。  足鹿委員もよく御了承のことであるとは思いますが、繰り返しては申しませんが、食糧の増産というものは、これはやはりわが国の農政の根幹の一つであると存じます。農業基本法におきましても、前文にそれをはっきりうたっておるのは、足鹿委員もよく御存じのとおりであります。ただ、この食糧の増産と申しましても、非常に需要の多いものがありまして、それを急激に増強しなければならないという時期もあれば、しばらくまあそのほうへ力を入れるというときもありましょうし、食糧といいましても、内部的にそういうニュアンスが若干そのときどきによって起こり得ることは当然でございます。そこで、われわれといたしましては、従来、米は、学者その他の多くの識者によってまとめられたものによりまして、この四年ほど前でしたか、いわゆるその長期見通しをやりましたときに、米は十年後には八十万トン余るという数字を出しました。しかし、それは異常気象もあることであるし、数字はさような数字が出ましても、これによるわけにいかない。異常気象が起こり、いろいろの関係があるのでありますから、重要なる米についてはさようなことによって結論を出さないということにいたしまして、従来とも米の増産に力を入れてまいったという経過を持っておることによってもおわかりなのでありまして、とにかく食糧の増産に力を入れるということは、農政の大きな一つの筋道であることは、これは言うまでもございませんので、別に政策を変更したということではないわけでございます。その点を御了承願いたい。
  321. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは申し上げましょう。政府は農基法制定以来、食糧増産という物動的な農政から、所得格差の是正、なかんずく労働の生産性向上を目標とした政策に転換されたことは間違いありません。これは何人もよく承知しておるところであります。しかし、結果としてわが国のごとき小農経営の場合においては、労働の生産性が高まることにどれだけの意義があるか検討する必要のある重大な課題であったと申し上げて差しつかえないと思う。最近、農家経営の場合、反収が向上せず、逆に減少するということ、しつつあるということは、ただいまも農林大臣がお認めになっております。つまり農業の近代化によって投下労働時間のみ減っても、余剰労力を何かに振り向けなければ所得は高まらないということを物語っておるわけでありまして、そして農民は、企業的能力と融資その他を受ける信用力に欠けておりますので、そのことはわかっておっても、個別投資ができないから、家計を維持するためには出かせぎへというきわめて単純な労賃収入の道を、好むと好まざるを問わずとらざるを得なくなってきておるのであります。この間のわれわれが主催した全国出かせぎ農民総決起大会において切々と出かせぎの労働者が訴えたことも、このことと一致しております。  その結果、具体的に申し上げますと、三十八年以降、米の生産の減退は顕著なものがあります。三十七年の反当四百七キロ、三十九年の反当三百九十六キロ、そして去年は三百九十キロというところへ減ってきております。三十七年を基準として差し引き十七キロであります。一斗一升以上も反収が減るというこの重大な事態というものは、われわれは重視していかなければならぬと思う。そこで、前に述べたように、昨年の七月のあなたの説示となり、政策の転換になったのだ。従来の労働の生産性、所得格差の問題よりも、まず、米が不足してきた、これはたいへんだということであのような説示となり、事実上においては政策の転換が行なわれておるにもかかわらず、これを率直にお認めにならず、新しい農政の姿勢を打ち出すことに何か危惧を感じておられるということは、現農業危機の実態に備える農林大臣の態度とも考えられません。重ねて、いま私が申し上げた点について御所見があれば承りたい。
  322. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 同じことを申し上げて恐縮でありますけれども、別に政策の転換でなしに、たとえば、先ほども繰り返して申したように、農業基本法の制定当時においても、食糧増産というものが非常に重要である、また農民及び農業はこの重要なるものに向かって努力を払ってきた、これは将来に向かってもその努力を払うべきであるということを前文にうたっておることによっても、御了承であろうと思う。しかし、現在もそうでありますけれども、その必要性と同時に、日本の国は、御存じのとおりに土地生産力は非常に高い。これはおそらく世界一だと誇称しても間違いないと私は確信しておる。確かに土地生産力は非常に強いが、労働生産性は低い。しこうして、この労働生産性を上げて、生産性を上げるということがきわめて重要であるということは、これは私から申し上げなくても、専門家の足鹿委員にはよくおわかりのことであると思う。この生産性を向上し、所得を向上するということが現在において特に必要であるということから、たとえばこの基本法の第一条の目的においても、労働生産性を高めて、そして農民の所得を向上するということを目的として基本法を定めたわけでございまするが、この生産性を高め、所得の向上をはかることに関する法律というふうなことがあればいいかもしれないと思うのでありまするが、農政の根本はそうではないのでありまするがゆえに、特に前文において、この法律はかような目的を持っておるが、全般的に農政の目標はかようなところにあるというので、食糧の増強というもの、その他二、三重要な問題について、前文にそれをうたって間違いのないことにしていきたいということで、この農業基本法の前文に大きくそれをうたって、これを最も重要なものとしてうたってまいりましたことでございますので、政策の転換なんということは絶対ないはずでございます。
  323. 足鹿覺

    足鹿委員 歴代の農林大臣が、農業基本法を実施以来、ただいまのように御答弁になった農林大臣はないです。選択的拡大一本やりであったのです。構造改善政策一本やりであったのです。あなたは、いま私の質問に答えて、みずから政策の転換を告白しておりながら、それを明白に言わないというところに農政の混迷があることを反省すべきであると私は思う。ただいまも九六%の自給率と言われ、三月一日の本会議においてもこのことについて自賛をされましたが、しからばなぜ本年度準内地米八十二万トン以上の輸入を食管会計において計上されなければならなかったのか。そして、まずい米を消費者に高く売りつけていかなければならなかったのか。どうしてですか。農業基本法制定当時に、今日のような米の窮迫を予定したものはだれもなかった。あなたがいま言われたように、米は余るのだ、こういう主張ではなかったですか。私はあなたと押し問答するわけにはまいりません、先を急ぎますから。  ここで経済企画庁長官に一つ伺っておきますが、要は、現在の国際情勢なり、わが国経済の状態の中で、国内の食糧の自給力といいますか、供給力の目標を新しく国の政策として策定する段階だと私は思う。国際収支も、国民の生活も、そういうところの裏づけがなかったならば決して安定した政策とは言えないと思います。  しかるに政府は、三十九年制定をいたしました中期経済計画を、改定と称して、それが大きな誤差を生じたために、これを弊履のごとく破棄しようとしておられますが、この後に来たるところの、いま私が述べたいわゆる食糧の供給力、端的にいって、これをどのように国内において確保することを長期計画、今後とらんとする政策の中に位置づけをされようとするか。この問題が解決しない限り、農業政策を論ずることは私は困難だと思う。いまの坂田農林大臣の御答弁は全く支離滅裂であると申し上げても私は過言でないと思います。まだこれからこの問題についてはさらに実証していきますが、とりあえず長官の御所見を承っておきたい。
  324. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 中期経済計画では、国内自給度を三十七年度で八五%と見まして、四十三年度に至って八一%ぐらいに見たわけでございます。ところが実勢から申しますと、三十八年度が八一・一%、それから三十九年度が七九・八%、現実に自給度が下がっております。したがって、今後これからの新しい経済計画を立てます上において、いま申し上げたようなテンデンシーの上に立って単純に将来を予測するだけでなしに、こういう下がっていく傾向を、上げていくという見通しをつくるとすれば、それに対する政策の裏づけがなければならぬと思います。したがって、これから私どもがつけます見通しというのは、単に現実の問題としてのテンデンシーを将来にわたって、何年か先にはこうなるのだということだけでなしに、農林省その他の御意見等も承りながら、こういう政策をやればこういう下がっていくテンデンシーがある程度上げられるのだという見通しが立つならば、やはりそういう目的を置いた数字を立てていくのがほんとうじゃないか、こういうふうに考えておりますけれども、まだこれからやることでございますから、十分各方面の御意見を伺いながら、そういう問題については対処してまいりたい、こう思っております。
  325. 足鹿覺

    足鹿委員 長官の御答弁関連してまたあとでちょっとお伺いすることにいたしまして、一応この問題について私の意見を申し上げて次へ移りますが、政府は、いままでの質疑応答に見られるように、とにかく政策転換への認識が全くない。場当たりに当面を糊塗することにきゅうきゅうとしておられる。そのことがこの国会を通じて農政の貧困を如実に物語っておることは、農林委員会に付託されておる案件の貧弱さを見れば、よく実証し得ると思う。新しい角度から農政に取り組む積極的な熱意が、そして姿勢があるならば、このような貧弱な内容法案で糊塗するはずはないと思う。政府は、深くこの点について反省をされることを要求いたします。  そこで第二に、具体的な問題として、予算に関連して、食糧事情の悪化と食管会計の内容とその運営について承っておきたいと思います。  四十一年度予算に関する食管会計では、国内産米の買い入れ七百十四万九千トン、売却六百九十八万四千トン、差し引き十六万五千トンの保有ということに見込んでおられます。しこうして、買い入れ価格は、昨年同様玄米百五十キロ一万六千三百七十六円、消費者価格、本年一月一日改定価格によると規定されております。すなわち米価の据え置きであります。最近の異常な物価の上昇の中で、国内産米の買い入れ予定数量確保に自信があるか承りたい。生産者米価の上昇で、直ちにこれを消費者価格へスライドすることは、食管法のたてまえからこれは絶対に容認できない問題でありますが、消費春米価に対する方針、両方とも据え置くという考え方で、はたして生産者の米が買われ、消費者の満足を——少なくとも消極的にでも一応現段階にとどめるという自信があってこのような予算をお組みになったのでありますか、この点を承りたいのです。
  326. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申し上げます  米の買い入れの予定は予算上七百五万トン計上しておりますが、現在の情勢は順調に進められております。場合によると、若干ふえないかと思うくらい順調に買い入れが進められております。この点を御報告いたします。  それから、価格の据え置きと言われたのでありますが、これはもちろん、今度の生産者米価に関しましては、常にお答えを申しておりますとおり、生産者米価はやはり生産の確保という問題でありますので、多年の間みがかれてまいりました方法、これはまた食管にも規定しておることでありますからして、生産者米価は生産費及び所得補償方式というものを中心にして考えてまいることは、これは言うまでもございません。しかし、現在その指数がきまっておりませんので、まだわからぬのでありますから、予算面においてはそういう数字を掲げることはできないわけでありまして、これは現在の価格で据え置いておることは御指摘のとおりでございます。何もこれによっていくというのではなしに、生産者米価はやはり生産費及び所得補償方式を中心にして考えていくという考え方であることは、この予算委員会を通じて、総理、大蔵大臣、農林大臣、常に少しも間違いなくこの点を答弁しておるところでございますから、その点御了承願いたいと思います。
  327. 足鹿覺

    足鹿委員 私の質問は、きわめてメモも整理しておりますし、簡潔にやっておるつもでありますので、農林大臣も私の質問に簡潔に、急所の答弁をしていただくようにお願いいたします。  しからば、輸入食糧、特に準内地米の大量輸入について伺いますが、先ほども言いましたように、外米を九十万トン輸入の計画をしておる。そのうち準内地米が八十二万トンの買い付けであります。最近、準内地米の国際価格は上がる一方でございますが、最近の実績を勘案し三この外米の買い付け価格を算定すると食管会計には書いておりますが、買い付け予定価格の見込みは何ほどであるか、ちゃんとメモを整理して御答弁願いたい。少なくとも八十二万トンという、世界の供給力の六〇%以上を日本が買い集めようというのです。このような大きな問題を含んでおる食管会計に、買い付けの根拠も示さないでわれわれに審議を求めるということは、少し不親切ではありませんか。国会の審議権にも私は関連すると思う。最近わが国の買い付け量がだんだんふえてきた。また世界の食糧事情が極度に悪化をたどりつつある。したがって、買い付け価格が値上がりするということはあっても、値下がりする見通しは全くありません。  そこで承りたいと思いますが、準内地米の予算計上単価は幾らか。買い入れ単価と売り渡し単価との差益は幾らになるか。したがって、八十二万トンの平均差益総額を何ほど見込んでおられますか。以上の点について御答弁を願いたいと思います。
  328. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 数字でございますので、私からお答え申し上げます。  準内地米の予算上の輸入単価につきましては、トン当たり百七十ドル四十セントというふうに想定をいたしております。このほかに、これはFOBの価格でございますので、海上運賃、あるいはこちらに着きましてからの薫蒸費、輸入港の諸がかりその他がございまして、現実に政府が港で買い付けます価格といたしましては、トン当たり六万七千六百五十九円というふうに想定をいたして、おります。  それから準内地米の売り渡し価格でございますが、トレ当たり、主食用につきましては十万五千百八十円、それから業務用に売りますものにつきましては十万七千百八十円、工業用に売りますものにつきましては十万六千六百五十円というように想定をいたしております。それから……。
  329. 足鹿覺

    足鹿委員 何だ、そんな資料がないですか。専門家がそんなものがわからぬですか。
  330. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 いや恐縮です。申しわけありません——。準内地米につきましてだけの総額の損益の数字につきまして、いま資料を調べますので、ちょっとしばらく御猶予を願いたいと思います。
  331. 足鹿覺

    足鹿委員 とにかくこれだけの膨大な準内地米を買い付け計画をしながら、おうと言えば直ちにおうというふうに答弁ができぬなんということはどうですか。何ですか一体。  準内地米の買い付けがうまくいかなかった場合、あるいは値上がりがした場合、当然食管会計に大きな数字上の誤差が出ると思いますが、その始末はどうされますか。いまはこれだけのことを御質問申し上げておくにとどめます。そしていまの私が申したことについての答えは、資料で直ちに本委員会開会中に御提示を願います。それでよろしゅうございます。資料はもらえますね。——それではよろしいです。いただけるそうですから。
  332. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ちょっと、さっき買い上げが七百五十万トンと申したのは、七百十五万トンの間違いですから、訂正いたします。
  333. 足鹿覺

    足鹿委員 資料はもらえますね。——資料はだいじょうぶもらえますね。長官、あなたはちょっと待ってください。
  334. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 資料提出いたします。
  335. 足鹿覺

    足鹿委員 そこで、先ほども申し上げましたように、したがって買い付け先、買い付け先別数量、買い入れ価格、輸入の時期等も関連して御提示を願いたい。このような資料をわれわれはお示しを願うことによって判断をいたしたいと思います。要するに、いま述べましたように、百三十万トンから百五十万トンの準内地米、いわゆるヤポニカといわれる円粒種の供給力というものは、ふえる余地がないと私は見ております。したがって、これはなかなか大事業だと思うからであります。決してあなた方をとっちめようとかなんとかいう考え方ではなくして、計画に誤差がくればたいへん影響が深刻になるであろうということを心配するからであります。要するに、このような米の国内、国際供給力の中で、国内米の画期的な増産政策への転換なくして配給基準量、品質、価格を少なくとも現状以下に、配給価格の場合は現状を上回ったり、あるいは基準量や品質の場合は現状を下回らせないという確信があるかどうか。農林大臣、端的にあるならある、ないならない、そうおっしゃってください。
  336. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 基準量を下げるようなことは絶対ありません。確信を持っております。  それから品質のほうでございますが、これは、昨年は外米、いわゆる準内地米をおそく輸入して、最後の夏場へいっておもにそれを配給したところに非常に悪いのをかためて配給したということで問題が相当ありました。今年は初めからの計画的にそれをやっております。現在もう五十八万トン手当てが済んでおります。それから残りの二十三万トンについても、大体見当をつけておるようなわけでございます。したがって、昨年のように悪い——悪いというのは誤弊がありますが、準内地米をおしまいへいってかためてそれを配給するというようなことをいたしませんので、昨年のようなことはなかろう、こう存じておるわけでございます。
  337. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま重大な御言質をいただきましたので、間違いのないようにお願いいたしたいと思います。  しからばもう一点この問題の中心をなす点で伺いますが、聞くところによりますと、外務省は東南アジア諸国との片貿易是正のために米の生産国と長期買い付けを結ぶ構想検討中と聞いておりますが、農林大臣のこれに対するところの態度、特に国内農業への圧迫というような関係においてどのように考えておられるか。大体外務省検討しておるという要領は、タイ、ビルマ、カンボジア、将来は南ベトナムを含んで技術指導、品種改良に要する資金の援助等を考慮すると聞いております。そして、本年四月六日、七日東京で開く東南アジア開発閣僚会議外務省がこの構想を提案すると言っておるそうでありますが、国内においては増産運動を起こす、そして一方においては国の技術提携を進めて、日本の税金で得た貴重な金を外国へ供与または資金の貸し付けを行なう、そして、向こうも安い米を日本に片貿易是正という美名のもとに入れようという。一つの内閣で、一方においては国の増産をやろうといい、一方においては片貿易是正といって技術提携その他の方法によって安い外米をこれ以上入れようと、特に外務省の首脳部は、国内ではもう生産は頭打ちだからこうしなければ日本の食糧は救えないんだということを公言しておるそうでありますが、農林大臣はこの構想に賛成でありますか。また、態度を決定されることについて協議を受けられたか、これについて今後どう対処されるかをこの際明らかにしておいていただきたい。
  338. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 東南アジア方面に対する技術援助については、将来ともこれはでき得る限りの援助をしてまいりたいという考えを持っております。現にインドにおいても今年千二百万トンの不足があるので、日本として日本の米を出せない場合においても、何らかの援助をいただきたいという問題があり、また、東南アジアにおけるおととしの春のAA貿易会議において、その事務局長は、東南アジアにおいては五年後に一その当時の五年ですからいまもう近いでしょう。大体七十六億ドルの食糧の輸入をしなきゃならぬ、こういうことをその事務局長が書類によって提案しておるようなわけでございまするので、私どもとしてはやはりこの技術援助は十分していきたい、こう考えております。ただ、そのあとの面についてはいま何ら相談も受けておりませんし、別に話を聞いておるわけでもございません。お答えをいたします。
  339. 足鹿覺

    足鹿委員 しからば、私は外務大臣の御出席を求めてその真偽のほどを承りたいと思います。あとでもけっこうです。  新聞紙上の報道によれば、明らかに農林省といろいろな打ち合わせをしておる形跡がある。そして農林省が難色を示しておると新聞は一斉に報道しておるじゃありませんか。農林省と離れて外務省がそういうかってな食糧政策を、ただ単に片貿易是正という名目のみならず、国内生産は頭打ちだから自分らがやってやるんだということを言うならば、農林省は要らないですよ。農林大臣、あなたはもっとしっかりしなければ、日本国内農民の信頼をつなぐことはできぬようになりますよ。外務省に米の問題で引きずり回されるようなことで一体どうなりますか。もう少ししっかりしてもらいたいと思う。  あまりこの問題で時間を食うと先にいけませんので、藤山長官にいま一点、本年産米価についてこれに関連して伺いたい。昭和三十七年五月十一日公表の「農産物の需要と生産の長期見通し」によれば、十年後の農産物の需給状態がはっきりと示されておる。すなわち四十六年の米の需要想定は千三百十二万トンないし千三百七十九万トン、同じく生産の想定は千三百九十七万トンないし千四百二十九万トンとなっており、需要はすでに現在でこの量に達しております。明らかにこの需給の見通しも狂っておる。中期計画といい、この農産物の需給長期の見通しといい、全く狂っておるものばかりであります。一つも的確なものはないと言っても言い過ぎではない。見込み違いである。生産の減退は、昭和三十七年に千三百一万トンあったものが四十年には千二百五十七万トンに減っております。逆に配給人口は、三十七年には六千四百八十五万人、四十年には七千万台を突破して七千八十九万人となって、供給力をはるかに上回る勢いで人口は著増しつつある現状であります。こういう基本的な問題の見通しを誤るということは、そもそも政府の需給見通しというものがいかに空文的なものであるか、私は遺憾に思います。少なくともそれをもとにいろいろな財政支出や、あるいは財政投資や、いろいろな政策の裏づけをして今日まできたことが全く見込みと違うということは、政策の破綻か失敗にほかならないと申し上げても過言でないと思う。先ほど、まだこれから検討するということでありますが、この点についてどういうふうにお考えになりますか。その点を十分御考慮の上、御意見があれば承りたい。  いま一つは、先日長官は、物価の上昇を昭和四十一年度においては五・五%程度に押えたい方針を示された。しかし、現実に七・七%、また今回の国鉄運賃の値上げ等によってはさらに激しく上昇するでありましょう。これと米価算定との関係をいかに考えておいでになりますか。いわゆる国鉄運賃も、あるいはその他の公共料金も上げるだけ上げてしまっておいて、そしてこれから七月にきめられるであろう生産者米価は五・五%程度に押えていくつもりでこういうことを言っておいでになるのでないと思いますが、おそらく常識的に考えられないと思いますが、念のためにこの点を長官からはっきり御答弁を願っておきたいと思います。
  340. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 経済見通しをつくります場合に、先ほども申しましたように、一定の傾向を伸ばして、そして終局はこういうものだということにとどめるか、あるいは、そういう経済見通しを達成するためには、どういう資金の裏づけが必要であるか、あるいはどういう技術的な改善が必要であるかというような問題をあわせ考えてまいらなければならぬのでございまして、そういう面で計画がつまり総合的になってまいると思います。したがって、今度計画をつくります場合にも、そういう観点に立って私どもつくってまいりたいと思います。  米の問題につきましては、要するに農業の自給度の問題につきましては、外貨支払いの問題もございます。あるいは貿易の関係もございます。それらのものを勘案し、また日本の人口の総食糧需給関係ともにらみ合わせましてきめていく問題だと思うのでございまして、その点は、各方面の意見を十分慎重に伺った上で問題を詰めて確定していきたい、そして、そういう数字が出ました以上は、その目標に向かって、狂わないように政策がそれに伴ってまいらなければならぬと私は考えております。  それから、第二の御質問であります五・五%でもって生産者米価を押えるのだ、そういうことはございません。われわれは、かねて申し上げておりますとおり、五・五%というのは、物価全体を本年の七・五%前後から少なくも五・五%前後に押え込んでいかなければならぬという観点に立ってやっておるのでございまして、五・五%がそういう将来の生産者米価とか、あるいはそういう種類のものを織り込んで計数をあげたものではございません。
  341. 足鹿覺

    足鹿委員 次に、農林年金をはじめ、公的年金等の予算との関係について大蔵大臣中心にお尋ねをいたしますが、四十一年度予算を編成するにあたって、昨年十二月三十日閣議で決定した予算編成方針の一つの柱に社会保障制度の充実がうたわれているが、この点につきまして、具体的な問題を通じて大蔵大臣に伺ってみたいと思います。  国民年金をはじめとする一連の年金制度に対する国の補助金について伺いたいのでありますが、まず、これらの制度に対する国の補助率は一率となっているかどうか、もし一率でないとすれば、なぜ一率となっていないのか、その根拠を明らかにしてほしいのであります。これは、これから審議が続けられるであろう予算にきわめて関係が深いのでありまして、各制度について御説明をお願いいたしたい。政府の考え方とあわせて御説明を願いたいと思います。
  342. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 年金につきましては、共済方式というか、共済グループ、また御指摘の国民年金のような年金グループですね、二つの大きな系統があるわけです。その中がまたいろいろの共済組織あるいは年金制度に分かれておるのでありまして、それに対する国庫の負担につきましては、必ずしも統一されておりません。これはなぜ統一されておらないかと申し上げますと、それぞれ発生の沿革、歴史、また年金の受け持つ使命、そういうものがあるわけです。しかし、同じ性格のものにつきましては、これは統一さるべきである。今後努力をいたしまして、なるべくその性格ごとに統一の方向に進めていきたい、かように念願をいたしておるわけであります。
  343. 足鹿覺

    足鹿委員 具体的には承れませんでしたが、私の見たところでは、国民年金について保険料の二分の一、厚生年金が百分の二十、船員保険が百分の二十五、各共済組合百分の十五、ただし、公企体、地方公務員は国庫補助がないのであります。  こういう実情を踏まえて大蔵大臣に伺いますが、各共済組合は百分の十五ということであり、確かにそういうふうになっておりますかどうか、私の調査したところによりますと、国家公務員共済については、表向き百分の十五のほかに、旧法期間にかかわる追加費用は国が持っておるということになっておると存じます。これは施行法五十五条の規定による政令事項であって、明確であろうと思います。したがって、実質的には他の私学共済や農林年金よりも手厚い国庫補助が行なわれているということになっていると思います。この点、国家公務員の補助率が高いということが悪いというのではありません。他の制度、つまり私学や年金にも同様な措置をとることが妥当ではないかと、かように考えるからであります。なぜ不統一のままであるかを伺いたい。ただいまの大蔵大臣の御答弁は、発生の歴史とか、その経過だけを述べられておるわけでありますが、それでは御答弁にならぬかと思います。当然公的年金の問題については統一への努力が払われなければならぬと私は思うからであります。
  344. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話のとおりでございます。で、いまお尋ねの農業共済につきましては国庫補助が一五%、お話のとおりであります。これを昭和四十一年度におきましては一六%にする、こういうことで予算の御審議をお願いしておる。その他のそれぞれの補助がどういう沿革、事情に基づいておりますか、それは政府委員お答えさせます。
  345. 谷村裕

    ○谷村政府委員 いま御指摘がありましたように、国家公務員共済と、それから私学あるいは農林漁業団体職員共済組合との国庫負担の率は、いずれも百分の十五ということになっておりますが、既裁定年金あるいは旧法時代のもの、そういうものにつきましては、確かに国家公務員の関係では整理資源というような意味で、過去の分の追加の分を国のほうが負担して出しております。これは、私どもの承知しておりますところでは、いわゆる恩給時代のものを国家公務員共済のほうがその後において引き継いでおりますので、その関係で、過去の分に発生いたしましたものの処理につきまして、国がそれを続けて見ているという形になっていると思います。私学あるいは農林漁業団体共済等のことにつきまして、さらにその過去の分にあったものとの関係をどう調整するかということが若干問題になっていることは、御指摘のとおりでございます。
  346. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま大蔵大臣は、私の質問に答えて、一六%であるということをおっしゃいましたが、いまの主計局長答弁は、一五%だと言っておるのですね。これはどういう間違いでありますか。四十一年度の国の補助額は、農林年金と私学共済につきましては、給付に要する費用の百分の十五と、農林年金法六十二条にははっきり規定されておることは御承知のとおりであります。しかるに何ゆえ百分の十六とおっしゃるのでありますか、明確にしてもらいたいと思います。別にそれが悪いという意味ではありませんよ。政府が制度を改善しようという意図があるとするならば、そのあらわれとしてあえてこれを非難しようという考え方は私は持っておりませんが、少なくとも今日までの経過を見ておれば、予算に関係する法案はすべてすみやかに国会提出をして、並行して審議するということがたてまえではありませんか。この問題について予算書を調べてみますと、私学共済については二億四千六百四十万三千円、内訳は、事務費が四千九百七十四万八千円、給付費一億九千六百六十五万五千円となっております。明らかにこの給付費は一六%が組んであるのです。農林年金の場合は四億百二十六万二千円、内訳、事務費の補助が三千八百五十五万七千円、給付費の補助が三億六千二百七十万五千円となっております。この給付費の。パーセントは明らかに一六%になっております。しかるに、何を根拠に、法律は一五%になっておるにもかかわらず、その関連法も出さずに、何ゆえに一六%と大臣はおっしゃるのでありますか。何に基づいてこの一六%を今後計上し、運用され、支出されていく御所存でありますか。
  347. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど申し上げたとおりであります。つまり現行法では一五%となっておる、昭和四十一年度予算では一六%にいたしたい、こういうことなんです。その支給の方法は、まあ一%のことでありますから、これはいずれ根本的な法改正でもある際に改正をする、昭和四十一年度においては予算補助をする、こういうたてまえであります。   〔発言する者あり〕
  348. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  349. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの御答弁は、国会の審議権に関連がある重大な答弁だと私は思うのです。すべてそういう形で運用されるとは思いませんが、少なくともいま社会問題化しつつあるこの問題に対して、法案の裏づけもなしに、出すであろうとか、あるいは出すことを考えておるというような程度でいま御答弁になりましたが、私どもは全然そういうことは聞いておりません。聞くところによれば、何か補助金の交付要綱のようなものをつくって、それによって支出すれば事足りるのだ、一五%であるけれども、これはいろいろな経過をたどって一%プラスアルファなのだ。プラスアルファとは何ですか。つまりこのような重大な額を計上して、しかも他にいろいろ甲乙のあるこの年金の問題についてこのような措置をとられるということは、私は、少なくともやかましい大蔵省の予算査定の上において全く当を失したやり方といわざるを得ない。農林年金法六十二条に基づき寸分の十五となっておることを、改正法案あるいはそれ以上の法案を直ちに御提案になる、その御言明ができますか。ただ考えておるというようなことは、私どもは納得するわけにはまいりません。   〔発言する者あり〕
  350. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  351. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国会の御審議は、予算案で御審議もいただいておるわけで、決して国会に無断でやっておるわけじゃないのであります。これは農業共済ばかりじゃございませんが、他のものにつきましても、共済組合だとか、ほかのそういう団体に対しまして国が金を出す、それは法律においてはっきりする。これは、そういうたてまえのものが多うございますが、予算上御審議を経て補助をする、こういう場合も相当あるのであります。今回は根本的な改正の機会もありますから、その際に率の改正は譲るというので、予算補助でお願いをしたいという御審議を願っておるわけであります。一〇野原(豊)委員 関連して。ただいま足鹿委員が農林漁業の共済年金の問題及び私学の教職員の共済年金の率の問題についてお尋ねしておることは、私はきわめて重大なものがあると思う。そこで私は、その重大な中身に触れる前に、農林大臣と文部大臣にお尋ねをいたします。  いま大蔵大臣の御答弁を承りますと、百分の十五では少ないから予算で色をつけたのだ、こういうような意味合いの御答弁のように私は承ったのでございますが、そういたしますと、少なくとも百分の十五が少ないと政府が判断をされるならば、この国会に私学と農林漁業年金法の改正法案を出すべきである。これは出す用意があるのかないのか、農林大臣と文部大臣に、まずそれを承っておきたい。
  352. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いまの給付額の二八%相当額を予算に計上したのでありますが、その一分の点については、いま大蔵大臣の答えたとおりなんであります。
  353. 野原覺

    ○野原(覺)委員 農林大臣は私の質問をよくお聞きいただいた上で御答弁願いたいと思う。私は、この国会にこの年金法の改正法案を出す用意があるかどうかと聞いておる。あなたが百分の十五では少ないという判断で大蔵省と相談をされて、法律に百分の十五とあるものを百分の十六にかってに変えておる。だからして、これは農林省も大蔵省も、つまり佐藤内閣は、この百分の十五では少ないのだというお考えを持たれておるから、百分の十六の予算を組まれたのだ。したがって、この国会に当然この予算を組んだ改正法案を出されなければならぬ。その用意があるかどうかと聞いておる。いかがですか。改正法案をこの国会に出しますか。——前の答弁を求めております。あなたはあとで出てもらいますから……。
  354. 福田一

    福田委員長 文部大臣、文部大臣答弁をして。質問者は、農林大臣と文部大臣質問したじゃないか。
  355. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 委員長の御許可をいただきましたから、お答えを申し上げます。  実はこれにつきましては、私どもいろいろ経緯がございます。足鹿さんも御承知のとおり、昨年の国会でございましたか、私学共済の国庫補助について増額方の附帯決議がございました。その決議の趣旨に基づきまして、私どもとしましては、予算概算要求の際に、国民年金が百分の二十の補助でございますから、これに右へならえをして、私学共済も百分の二十の補助をしてもらいたいということで概算要求をいたしました。結果的に、大蔵省と詰めました結果、国民年金のほうは、就職したときから退職するまでの俸給額を月割りで平均をしたものが支給標準になる、それから私学共済のほうは、退職の最終年度を含めた最後の三年間の平均給与で支給をする、こういう支給の方法も違います。それから、内容として、その本人が負担をして積み立てます比率も違います。こういうような内容の相違があるので、この相違を今後十分に詰めた上での懸案にしようじゃないかということになりまして、その懸案に残すにしても、何とかしてくれなければ困るということから、結局大蔵省としては、予算補助で一%それじゃつけましょうというのが最後の締めくくりでございまして、したがって、御承知のとおり、百分の十五の補助率は、給付原因が発生したときに、発生給付に対して百分の十五を補助するわけでございます。あとの今度補助してもらう一%というのは、結局そういうような研究が整うまでの間私学共済の資金量を充実しておく、こういう趣旨に実は私どもは受け取りまして、こういう解決になった次第でございます。   〔発言する者あり〕
  356. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  357. 野原覺

    ○野原(覺)委員 農林大臣は御答弁がないのですがね。農林大臣は御答弁がございませんが、まず農林大臣の御答弁を承って申し上げましょう。農林大臣
  358. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いま、いろいろ文部大臣から御答弁がありましたように、これらの問題についてなお検討をすべき問題があります。そこで、経過等については先ほど文部大臣からお話のあったとおりの関係にあります。
  359. 野原覺

    ○野原(覺)委員 委員長、お聞きのとおり、自民党の皆さんもお聞きのとおり、私は百分の十五が少ないので百分の十六にしたその心持ちはわかる。私どももこの比率は少ないということを主張してきたのです。そこで、それならば、この国会に百分の十五の比率を改正する改正法律案が出されなければならない。ところが、私が調査をいたしましたら、この件名簿を見ますというと、ない。出す用意はないじゃないですか。これは議院運営委員会に、政府からこの国会にはこれだけの予定法律案、その中で予算関係法律案はこれだけだというものが出されておる。私はこれを調べてみたのです。これを調べて、もしこの中にあればまだ私は了としたいと思ったのです。しかしこれにもない。そこで、ますますもって私どもが承知できないのは、少なくとも百分の十五の比率というものは立法事項であります。法律であります。この比率は国会がきめたのです。この国会がきめたところの比率を、行政当局であるところの内閣がかってに上げたり下げたりするとは何事ですか。何事なんです。百分の十五が百分の十六になったからいいじゃないかという声がありますけれども、もしそれをよいとすれば、百分の十四に下げるということも可能だということになるわけです。したがって、そういう意味において、これは立法事項でございます。立法というものは最高機関である国会がきめたところの院の意思である。この院の意思を行政当局がかってに変更するということは、私は断じてこれは許すわけにいかぬのであります。許すわけにいかない、これは。しかも予算執行の上からいっても、これは違反であります。何のために一体国会が比率を審議するのだ。そうしてこの国会には改正法案も出さないというのである。だから、私どもは、これに対しては断じて承服できない。承服できない、これは。
  360. 福田一

    福田委員長 足鹿覺君。   〔「予算執行違反だよ」「法律をかえなさい」「休憩しなさい」「退場退場」と呼び、その他発言する者多し〕
  361. 福田一

    福田委員長 休憩しないで、このままで相談しましょう。理事会もやらないで退場するなんておかしいよ。そんなことは審議権の放棄だよ。理事会をやってから……。     …………………………………   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕     …………………………………   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕     …………………………………
  362. 福田一

    福田委員長 暫時休憩いたします。   午後九時五十一分休憩      ————◇—————   午後十一時十八分開議
  363. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。足鹿覺君。
  364. 足鹿覺

    足鹿委員 休憩前の私の質問を続行いたしますが、その際申し上げましたように、四十一年度の予算案に計上されておりまする農林年金と私学共済の給付に要する補助額につきましては、その百分の十六が計上されておるわけでありますが、しかるに、法律改正がこれに伴っておりません。この際、政府は、法律改正を行なって明確にすきべであると存じますが、政府の所信をこの際明らかにしてもらいたいと存じます。
  365. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御趣旨に沿って、法の改正をいたしたいと存じます。
  366. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの御答弁によれば、御趣旨に沿って善処するということでありますが、それは、今国会にすみやかに法律案の改正提出されるということで間違いありませんか。
  367. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 間違いございません。二〇足鹿委員 それでは農林年金の問題につきましてはこの程度にとどめまして、次に農林漁業用揮発油の減免税に関する問題について伺いたいと思います。今日までの経過については、事の発端は、昭和三十九年度予算の審議にあたり、わが党の井手以誠氏の質問に、「四十年度以降において発言の御趣旨を体して、減免につき考慮いたしたいと存じます。」と当時の田中蔵相が答弁したことに始まり、今日に至っておるのであり、予算委員の皆さんや政府当局も御承知のところであります。次いで三十九年度に引き続き四十年度の予算審議にあたって青木予算委員長は、昨年二月三日、「政府検討を続け、予算審議中に当委員会に報告せよ」と述べ、田中蔵相は「税法上の減免措置をとることは技術的困難であるとの結論に達したので、別途財政措置を講じた」云々と答え、続いて三月三日、青木委員長理事会の申し合わせを次のごとく報告しております。「農道整備事業については農林漁業用揮発油消費量の伸びの見込みを勘案して、予算の増額に努力し、なお農業用ガソリン税の減免措置について委員会において検討する、」と。越えて五月三十一日、青木委員長は「減免措置についてなお委員会において検討することになっていたが、その後三党間の協議により大蔵委員会において検討することとなったので、さよう御了承願います。」とはかり、大蔵委員会に小委員会設置を決定し、その小委員長には金子一平代議士が選任されました。そして六月七日、第一回小委員会、七月九日、第二回小委員会が開かれたと聞いているが、実質的には審議せず、小委員会は政府資料提出等を要求し、その説明を聴取した程度と聞いております。これが私の概略知っている本問題の今日までの経過であると存じますが、大蔵大臣、相違ないと思いますが、いかがでありますか。
  368. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体さように承っております。
  369. 足鹿覺

    足鹿委員 大体ということは、私の言ったことに間違いないということでありますね。  そこで、大蔵大臣にお伺いをいたしますが、本問題は以上の経過から見てきわめて重大な問題でありまして、明確な処理をしなければならないと考えております。政府は、本問題の処理は税法上の免税方式を採用することは因難な問題があるという理由により、四十年度から免税にかえて歳出面では予算上の措置をとるほうがより妥当であるとして、農道整備事業等について農林漁業用揮発油消費の伸びの見込みを勘案して、これが予算の増額を計上することとした。ただしこの場合、揮発油税の現行税率は一キロ当たり二万四千三百円であるが、目的税的性格を備える以前の税率は一キロ当たり一万一千円であり、この部分は当時一般財源に充当されていたのであるから、農林漁業用揮発油についても当然課税されてしかるべきものであり、したがって二万四千三百円から一万一千円を差し引いたものを基礎として農道整備事業等の金額が算出されたと聞いている。しかしながら、このような大蔵省の見解は一理あるかのごとく見えて、実は牽強付会ともいうべきであると存じます。  すなわち揮発油税は、道路整備費の財源に関する臨時措置法の制定を契機として、一般財源から通路整備財源に一変し、飛躍的な変質を遂げたわけであります。すなわち、その税収はあげて道路整備の財源に充当され、したがって、その税率も道路利用者の受益の程度と関連して決定されることになり、道路整備の緊急必要性にかんがみ、自来逐次引き上げられて今日に至ったのである。事ここに至っては、すでに農林漁業用揮発油等に課税する根拠と理由は全く失われたと言って過言ではありません。したがって、これに対しては理論上当然免税すべきものと言えるが、もし技術的に絶対に……。   〔発言する者多し〕
  370. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  371. 足鹿覺

    足鹿委員 免税が困難であるというならば、少なくとも農林漁業用等揮発油税収の全額を農道整備事業等に還元支出すべきが妥当かつ当然であり、大蔵省の見解は誤りであることを強く指摘するものでありますが、大蔵大臣の御所見はいかがでありますか。
  372. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま御指摘のように、農業用ガソリンを免税いたしますことは技術的に非常に困難があるのであります。さようなことから、大蔵者といたしましては、それに相当する額を農道整備に充てたい、かように考えまして努力をしてきておるわけであります。昭和四十一年度におきましては、約百三十億円のガソリン税が賦課されておりますが、これに対しまして、昨年は五十億でありましたものを八十五億円に増額して、御趣旨を尊重することにつとめた次第でございます。
  373. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣に承りたいのでありますが、四十一年度予算編成にあたって、農林省が当然一般行政費としてまかなうべき本経費を、なかんずく農業改良資金の原資としてこれを充当するがごときは、世にいう他人のゴボウで法事をするがごとき全く虫のいい態度と考えるがどうか。受益者たるべき農民が当然免税を受けるべき、百二十九億円を大きく四十四億円も下回る八十五億円で引き下がったことは、無定見というか、根性がないというか、まことにわれわれは了解に苦しむものであります。農林大臣が了承された真意のほどを承りたい。また、その根拠があれば示されたい。農免道路一本二千万円から一億円と見て、平均一木の建設費五千万円とすれば、八十八本に当たる貴重なものを失っておるのであります。  さらに農林省が当初予算要求を六十億五千万円としたその要求の基準を示してもらいたいのであります。要求が消極的ではなかったかと思います。  また大蔵省が八十五億円に査定し、増額したといま大蔵大臣が得々として仰せられましたが、農林君が六十億五千万円でよいといったものを、その要求の根拠も私は納得がいきませんが、またこれを八十五億円に査定した基準もあいまいではなかろうかと思います。つかみ金ではないかと言われても申しわけはないと思うのであります。六十億五千万円の要求をして八十五億円の予算がつく例は、来年度予算案の編成過程から見てまことに不思議といわなければならぬ。こういって決して過言でありません。  いずれにせよ、要求も査定もきわめて根拠の薄いことを物語っておるのでありまして、でたらめであり、官僚独善的な国会軽視のあらわれであると私は申し上げて言い過ぎでないと思うのであります。そこで、まず農林大臣の御答弁をお願いいたします。
  374. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 当初六十億要求いたしてありましたのは全く事務的でありまして、四十年度の五十億要求したと同じことで、同じ行き方で、同じ基礎の上に立って六十億の要求をいたしたわけでございます。したがいまして、最後の査定の問題のときには、先ほど大蔵大臣の述べたように、八十五億というところに増額いたしたわけでございます。これはでき得る限りこの要求に即応すべく努力をいたした結果でありまして、また国会を尊重してその主張をよく通したいというので、結局非常に尊重したあらわれであるというふうにお認めを願いたいと思います。   〔発言する者多し〕
  375. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  376. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣に重ねて申し上げますが、このことは、事実上農漁民の使用する揮発油に対してはキロリットル当たり一万一千円を課税しておると同一であり、ガーデントラクター等、小型農具への課税の上積みとみなしてよいと思うが、小型動力農具のごときは、年間の稼働日数は長くて三十日前後であり、一方自動車等は年間フルに稼働しておるものであり、その使用効率は比較にならないほどであることは言うまでもない事実であります。ガーデントラクターなどの普及によって農耕用の牛馬が今日姿を没し、その結果深刻な肉不足を来たしておることは御承知のとおりであります。このことは、言うならば農耕用牛馬の飼料に課税するようなものであって、往年の悪税たる牛馬税以上の大悪税を課しておると言って言い過ぎでないと思うのであります。このようなむちゃなことは、農民はもとより国民納得するところではありません。もっと農林大臣は今後き然たる態度で折衝されることをこの際申し上げておきたいと思います。  さて、先ほど大蔵大臣は、八十五億円を一応計上したということで、根拠については触れられませんでしたが、重ねて申し上げますならば、先ほど説明された八十五億円の算出基礎の基準についてであります。揮発油税一キロリットル当たり二万四千三百円、地方道路税一キロリットル当たり四千四百円、計一キロリットル当たり二万八千七百円、これから一万一千円を差し引き、一万三千円を課税単価としたことは全く不合理でございまして、先ほど述べた理由によって納得できません。したがって、この一万一千円なるものは、さきにも述べたように、揮発油税が制定実施された昭和二十四年から二十八年までの間は、一般財源として徴収された課税単価であり、このような十年以前の事実を持ち出して、事態の一変した今日算出の根拠とされたことについては了解に苦しむものでありまして、不当不法の措置であると申し上げても差しつかえありません。しかると同時に、本委員会のたどった先ほど述べました経過から見て、国会軽視もはなはだしい態度であり、政府の方針は絶対にわれわれは了承できないのであります。  そこで大蔵大臣に伺いますが、このような政治問題化した本問題について、従来の経過からしても、当然国会の意思を聞くこととなっていたのは御承知のとおりでありますが、大蔵大臣国会の意思をどういう形で聞き、この八十五億円を計上されたのでありますか、承りたいのであります。
  377. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大蔵委員会に小委員会が設けられたのでありますが、その意見結論を伺う機会はなかったわけであります。しかし国会、つまり予算委員会等におきまする議論のありますることは私もよく承知しております。それらの御意向を参酌して、できる限りの努力をいたした、こういうことでございます。
  378. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、二党間の協議の結果に基づく小委員会の意見も聴取せずして一方的に決定されたことについてまことに遺憾でありまして、当委員会としてはただいまの措置納得することはまいりません。そこで、委員長に申し上げますが、以上の質疑応答の経過から見てもおわかりになりますように、天下の公党たる三党の協議によって大蔵委員会に小委員会を設けられた以上、その小委員会の結論を得て後その方針に基づき取り扱うべきものであると考えます。これは三矢研究問題のときの小委員会の事例等から見ても当然ではありませんか。また、かりに身がわり措置をとるとしても、審議の経過と結果については結論が本委員会に報告され、了承を得た後措置さるべきであると私は確信いたしております。したがって、大蔵委員会の小委員長たる金子一平代議士を本委員会へ出席を求め、小委員会の検討経過及び結果を聴取することが絶対に必要であると考えておりますが、今日は時間もありませんし、この点については後日のことといたしまして、先ほど述べましたように、大蔵委員会の小委員会は、三党の協議に基づくその任務をいまだ果たしておりません。したがって、委員長において本委員会の決定に基づき、大蔵委員会の小委員会を再編成強化されてすみやかに審議を行ない、その審議の結果を当委員会に報告せしめて善処されんことを希望いたしますが、さような取り扱いをいたされる御所存がありますかどうか、この点について委員長の御意見を伺いたいと思います。
  379. 福田一

    福田委員長 お答えをいたします。  ただいま足鹿委員から申し述べられましたように、小委員会を大蔵委員会の中に設けて、三党閥において協議をすることになっておるが、それがまだ具体化していないように承っておるのであります。やはり政党間で約束した以上は、これは守るべきものであると私は考えます。したがいまして、大蔵委員会の小委員会をなるべく早く開いていただきまして、そうして、これに対して善処をしていただくように私から督促をいたし、また、その結果が出ました上においては、それが実現するように私としては措置をいたす所存でありますので、さよう御了承願いたいと思います。(拍手)
  380. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に大蔵大臣に伺いますが、ただいま委員長から私の質疑に対してさような御意見の御開陳がございました。この問題につきましては、ただいまの委員長の結果のお話のように、大蔵員委会の小委員会の結果を尊重されて、その結論に基づいて今後善処されることを私は期待をいたしますが、その点、政府としての所信を明らかにされんことを希望いたします。
  381. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国会の御審議の結果は、極力尊重いたしまして善処いたします。
  382. 足鹿覺

    足鹿委員 大体、私は、だいぶ時間もおそくなってきたようでありますので、委員長のただいまの御意見並びに大蔵大臣の御答弁の趣旨を一応了といたしまして、この問題につきましてはまだ幾多申し上げたいこともございまするし、私の根拠ももっと用意をいたしておりますが、本日はこの程度に質問をとどめまして、本日の質疑を打ち切ることにいたします。(拍手)
  383. 福田一

    福田委員長 これにて足鹿君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十一年度総予算に対する一般質疑は終了いたしました。  次会は、明五日午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十一時三十八分散会