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武藤委員 私は、総裁、
先ほどからずっと論理的にお話をしてきたのでありますが、総裁も五時にどこかお出かけの約束があるそうでありますので、急いで総裁に集中したわけでありますが、どうも総裁、今日都市銀行の状態を見ても、また日銀の立場から見ても、今日の
日本の一年間をこれから見通してみますと、たいへんな金融
情勢ですね。日銀の貸し出し金総額は一兆六千六百億余円、これは増加の傾向をたどります。クレジットラインを引き上げること自体がもうこれの増加につながっていきますね。さらにコールマネーが一兆六千億円、都市銀行は信用金庫、相互銀行の金を持ってくる、あるいは農林中金の金を持てくる、こういう方法で一兆六千億円の金をうまく操作しないと、資金の偏在という問題が起こってきて、金融界のバランスがとれない。それをバランスをとるためには、自由金利でほうっておけない。日銀の立場から、あるいは自由民主党の資本主義自由経済を維持していこうという立場から、どうしてもコールレートがあまり動かぬようにしなければならない、金利があまり動かぬようにしなければならないという大きな資本主義運営の至上命令がある。そこにてこ入れをして、 コールレートが動かないようにしようというのが日銀の今日の意図であります。そうですね。ところがその意図は、
先ほどいみじくも企画庁長官、
福田大蔵
大臣が、経済は上り坂にずっとこれからいくのだ、ダウンしないのだ。
日本大挙の飛行機のように、三十センチ上がって三メートル飛んで落っこっちゃうなんということでは、これは離陸にならない。やはりずっと上昇していく、そういう見通しを藤山さんも
福田さんも立てた。ですから、資金はますます必要になってくる。民間企業の回転資金だけでも、かなりの膨張をしなければ景気はよくならない。そうなってくれば、ますますいまのコールレートの問題、資金偏在の問題が中小企業に波紋を投げかけ、あるいは中小金融
機関の預金金利と貸し出し金利との差だけ金融
機関が苦しくなる。人のふんどしで相撲をとって、利益だけは確保できるのは都市銀行、雑金融はまことに国家政策の犠牲に供される。こういう状態に
日本資本主義が追い込まれてきたということは、
日本資本主義経営の運営が間違ったからであります。
失敗したからであります。それが多くの大衆に犠牲を与えたのであります。その最たるものは、私は、やはり何といっても
日本銀行の通貨安定に対するき然とした態度というものがくずされたというところにあると思います。
総裁、お帰りになるので、ちょっと最後の締めくくりに総裁に申し上げたいのでありますが、通貨の問題だけを見ても、日銀券の発行は、
昭和三十五年を一〇〇とすると、
昭和四十年の年末には通貨の発行量は二一〇になる。日銀の貸し出しは、
昭和三十五年を一〇〇として三〇九にふくれ上がっている。いかに信用が膨張したかということを
意味します。この際に
日本の鉱工業生産はどうかというと、わずか一七五・七の上昇しかしていない。輸出も三十五年を一〇〇として二一〇であります。したがって、日銀貸し出し三〇九という指数は、他の成長と比較した場合に全くアンバランスであります。信用過多であります。
日本銀行の金融政策が時の国家権力に追従し、通貨の安定という至上命令を守り得なかった前総裁の責任は大であります。したがって、私は、この四十一年度の
政府の策定する予算がほんとうに実行され、
国民大衆に犠牲を加えない道は、
日本銀行の信用膨張を防ぐ以外にありません。しかるに日銀は、クレジットラインの引き上げ、買い切りオペの市場価格での操作、短期業者への貸し出し、こういうような新しい施策をここにぶち出して、人為的にコールレートの上がるのを防ごうとする。コールレートが上がれば国債の発行はむずかしくなります。そうですね、
福田さん。いまの金利水準というものを調べてみると、
政府保証債が年七・〇五三%、地方債が七・三五四%、一流事業債が七・五一八%、電力債が七・四〇八%、国債は六・七九五%でありますから、国債が今後発行していけるためには、
福田さんが大蔵
大臣をやっている限り、これから三年間ぐらい国債発行をする、総額四兆円ぐらいの国債発行になるだろうということを勝間田さんの
質問に答えている。その国債発行が継続されるためには、いまの金利の比較から見ても、どうしてもコールレートを一銭八厘程度で食いとめないと、コールレートは一銭八厘で年利六・五七%でありますから、今日の月越しもので取り手のコールは一銭八厘五毛でありますから、国債の金利とわずか一毛しか違わない。したがってコールレートがちょっと変われば、国債を買う妙味はもうなくなるのですよ。金融
機関というものは利益を目的に今日の資本主義国家では許されている。信用金庫も、相互銀行も、中小企業を救うためにできているのではない。いかにして利益をあげるかというためにやっておる。したがって、損をする国債を買わなくなります。したがって、コールレートの安定ということが、今日の金融市場操作の最大の焦点になっている。これを
日本銀行が、人為的に低金利政策をとろうということが、またまたこれはたいへんな問題であります。これはけしからぬことであります。しかし、これによって、いよいよ
アメリカの金利高によって
日本の外貨準備高が落ち込み、やがては
日本の短期外資が流れ、公定歩合に手をつけなければならぬと思いますが、どうでしょうか。公定歩合は手をつけなくてもやり切れる、乗り切れる、こういう見通しでございますか。この辺について総裁の所見を伺って、あなたに対する
質問を終わりたいと思います。