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八木(一)
委員 二月二十七日に
内閣総理
大臣に対しまして、部落解放の問題、同和問題の
解決の問題について御質問を申し上げました。それに引き続きまして各
国務大臣、官房
長官、法制局
長官にこれから御質問を申し上げたいと
考えておるわけであります。各
国務大臣の皆さま方には、各御担当の
行政庁の
長官としてのお立場とあわせて、
国務大臣としての御見解を伺いたいと思いますので、そのつもりでお聞きをいただきたいと思います。
この前に総理
大臣に御質問申し上げたときに、各
大臣が御
出席をいただきました。また、非常に政治の問題について練達な各
大臣でございますから、すでにこの問題については十分な知識、見解をお持ちであろうと存じます。しかしながら、非常に複雑な問題でございまするから、同和
対策審議会の答申をぜひ御熟読を願いたいということを秘書官を通じて申し上げておきました。時間がございましたならば、お一人、お一人その答申についての御見解を伺いたいわけでございまするが、制約をされた時間でございまするから、大事な点について私、二、三分朗読をさせていただきます。その後に御答弁を願いたいと思うわけであります。同和
対策審議会――その前文にそのおもな精神が明確に書かれてございます。
昭和三十六年十二月七日、
内閣総理
大臣は本審議会に対して「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を
解決するための基本的方策」について諮問された。いうまでもなく、同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、
日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる
課題である。したがって、審議会はこれを未
解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な
解決こそ国の責務であり、同時に
国民的
課題であるとの認識に立って
対策の探究に努力した。その間、審議会は問題の重要性にかんがみ存置期限を二度にわたって延長し、同和地区の実情把握のために全国および特定の地区の実態の調査も行なった。その結果は附属報告書のとおり、きわめて憂慮すべき状態にあり、
関係地区住民の経済状態、生活環境等がすみやかに
改善され平等なる
日本国民としての生活が確保されることの重要性をあらためて認識したのである。したがって、審議もきわめて慎重であり、総会を開くこと四十二回、部会百二十一回、小
委員会二十一回におよんだ。しかしながら、現在の
段階で
対策のすべてにわたって具体的に答申することは困難である。しかし、問題の
解決は焦眉の急を要するものであり、いたずらに日を重ねることは許されない状態にあるので、以下の結論をもってその諮問に答えることとした。
中をちょっと略しまして、
政府においては、本答申の報告を尊重し、有効適切な
施策を実施して、問題を抜本的に
解決し、恥ずべき社会悪を払拭して、あるべからざる差別の長き歴史の終止符が一日もすみやかに実現されるよう万全の処置をとられることを要望し期待するものである。
というのが前文の要約であります。
ここでいわれておりますることをさらに要約して申し上げますと、これは
日本国憲法の問題であるということ、そしてそれを
解決することは国の責任であり、全
国民的な
課題であるということを明確にいたしておるわけであります。それとともに、具体的な答申がこれではまだ不十分だ。しかし非常に緊急を要するからいま答申をした。したがって、これだけをやればこれが
解決をするものではない。
内閣、各政党、国会が知能をしぼってこれ以上のものをつくり出して、完全
解決をしなければならないということを示唆しているわけであります。その次に、何回も出ておりまするが、焦眉の急、この問題の完全
解決を一日も早くしなければならない。じんぜん日を延ばすことは許されないという問題を指摘してあるわけでございます。
そういう観点に従いまして、
内閣総理
大臣にこの前御質問を申し上げました。総理
大臣は、非常にこの問題について
相当十分な熱意を持って、理解を持っておられました。その部落の完全解放の問題、同和問題の完全
解決の問題について熱意を持って、急速に邁進する決意を披瀝をされたわけであります。そしてその決意の方法として、答申の完全な尊重をお約束をなさいました。さらに、私の質問と前後しまして、その完全な尊重ということは、この答申より以上のものを知恵をしぼってつけ加えてそれをやる、答申のそのほんとうの趣旨を尊重する意味であることを明らかにされたわけであります。
その次に、その問題を実施するための基本的な中核として法律が必要である。質問の内容においては、同和
対策特別
措置法という法律をもって申し上げた。答申もそういうふうに申し上げました。ただし、十日の日刊紙の情報によりましたならば、同和
対策基本法という法案を御準備になっておられるというように報道されております。法律の名前はとにかくといたしまして、そのような基本的な、そうしてまた具体的な法律が必要だということが、質問者と総理
大臣の間で完全に意見が合致をいたしました。それについてそういうことをやっていく。
それから、先ほどの問題で、急速にやるという問題については、どんなに長くても十年以内に完全に
解決をしなければならない。戦前の、この民主主義憲法、基本的人権の憲法がない時代ですら、十
年間で
解決をしようという決意をその当時の
内閣はした。このようにおくれて、しかもこのような憲法のもとで、このような準備が整えられて答申がなされた今日において、どんなに長くても十年以内に完全
解決をしなければならない。その前半、五年以内に、いま
考えられている方法を全部やってみる。それから後に、
考えられた方法をその後の五
年間に補完をするというような意味で、急速に完全な
解決を、スタートではなしに、完全な終止符をそれまでに打たなければならないというような論議をいたしました。大体において総理
大臣も同じ
考えでございました。また、その問題を遂行するために、
政府はもちろん積極的に邁進をしなければならないけれども、与党なり野党なり各政党、国会のほうの熱心な、熱意のある意見を十分に取り入れて、それを具体的に推進をしなければならないということについてお約束がされたわけであります。その観点においてぜひ各
国務大臣に御答弁を願いたいことは、三つございます。
一つは、
国務大臣とされまして、この問題に総理
大臣より以上の熱意を持って当たっていただかなければならないと思うわけであります。釈迦に説法で恐縮でございまするが、憲法九十九条には、
国務大臣の憲法に対する非常な責任が明確に書かれております。この問題は明らかに憲法の問題であります。憲法第十一条には、「
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」あと略しますが、そういう基本的な条文がございます。憲法第十四条には、「すべて
国民は、法の下に平等であって、人種、信條、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的
関係において、差別されない。」以下略ですが、そういう点がございます。憲法第二十二条には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」この職業選択の自由あるいは居住、移転の自由が実際上阻害されている現状にあるわけであります。第二十四条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」云々とございます。ところが、この問題はほとんど
解決がされておりません。相思相愛の中も完全に引き裂かれるようなことが、この同和地区の人と一般地区の人の間に恋愛が成立した場合の状態でございまして、「両性の合意のみに基いて成立」という憲法の条文が、実際上完全にだめになっているわけであります。その次に憲法第二十五条、「すべて
国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」これは、御承知のとおり、健康を詰めて、だんだんやせて命を縮めるような貧乏な生活を、そして文化的とは絶対言えないような生活環境で住んでいる人たちがあるわけでございまして、この第二十五条、これが完全に実施をされておりません。次に憲法第二十六条でございます。「すべて
国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」これもあとで統計で申し上げますが、長欠児童がある。義務教育さえ受けられない子供があるという点において、この第二十六条が侵害をされておるわけであります。その次に憲法第二十七条であります。「すべて
国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」とあります。この勤労の権利が保障をされておらないわけであります。これが部落問題の一番中心
課題になるわけであります。
このように、憲法の基本的人権に関する非常に多くの条文が、この部落問題の
関係においては完全にこれが阻害をされておる。この憲法どおりの状態がつくられてないということを、憲法を一番守られなければならない義務を有しておられる
国務大臣の方々が、いままでもお
考えでございまするけれども、さらに深く見詰めていただいて、この問題に対処をしていただきたいと思うわけであります。そこで憲法第九十七条には、憲法の基本的人権についてほんとうにしっかりと書かれているわけであります。第九十八条には、この憲法に違反をしたいろいろな法律はいけない、
行政行為もいけないということが明らかにあるわけであります。
そこで、申し上げたいことは、これからこの同和問題を
解決するために、いままでの法律にはそういうことがあまり書かれていないから、それを
解決する法律についてもそういうことを書きにくいということをもし法制局
長官が言うとしたならば、
長官は直ちにその職を辞する責任を持つということになるわけであります。
その次に、
行政措置においても、いままであまりやっていないから、これはなじまないとかというような
考え方で律していただきたくはないわけであります。もちろん先輩の皆さま方には、私がこんなことを申し上げなくても、憲法の条章に従ってそうやっていくんだ、質問者よりもっと熱意を持ってやっていくんだというお
考えをお持ちになっておられると思いますが、そういう意味で、
国務大臣として、この部落の完全解放の問題、同和
対策の完全
解決の問題について、総理
大臣と同様に、あるいはそれ以上の熱意を持って当たっていただく。熱意を持って当たっていただくことについては、そのような憲法の条章を完全に実現するという体制をつくるために、いままでのこの問題を知らなかった時代の法令とか、そういう問題に制約されずに、
国務大臣として、閣僚として御努力を願いたいということについて、まず一通り御答弁を願いたいと思います。
時間の
関係上、その次に今度は各
行政官庁の長として責任を持っておられます、そこの部門で対処すべきものについて、同じような
考え方で積極的に旧来のそれを阻害するような条件を乗り越えてやっていただくという御決心、それからまた、それをまとめて総合的にやるために、総理府総務
長官が事務的には中心になってやられると思いますが、そういう総理府の
長官がまとめて総合的にやられることについて
各省が積極的に協力をなさる、たとえば法律制定についても、今後の
行政の
計画をつくるについても、そういうことを積極的に協力をなさる、
行政庁の
長官としてのそういう御答弁を、お一人、お一人いただきたいと思うわけであります。
その二つでけっこうでございますが、たいへん諸先輩にお一人、お一人御答弁願って恐縮でございますが、まず
国務大臣として、そして
行政庁の
長官として、お一人、お一人その問題について前向きな、憲法を尊重する御答弁を賜わりますことを要請いたす次第でございます。順序は私わかりませんので、
委員長のほうからひとつ御
指名になっていただきたいと思います。