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1966-02-19 第51回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十九日(土曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    小川 半次君       大橋 武夫君    上林山榮吉君       川崎 秀二君    木村武千代君       鯨岡 兵輔君    倉成  正君       坂村 吉正君    田中 六助君       竹内 黎一君    登坂重次郎君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    三原 朝雄君       水田三喜男君    石野 久男君       大原  亨君    加藤 清二君       角屋堅次郎君    河野  正君       栗林 三郎君    小松  幹君       坂本 泰良君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    華山 親義君       八木  昇君    竹谷源太郎君       永末 英一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         国防会議事務局         長       北村  隆君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      今竹 義一君         防衛庁参事官         (長官官房長) 海原  治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (教育局長)  宍戸 基男君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壮君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         文部事務官         (大臣官房長) 安嶋  彌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     齋藤  正君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚 生 技 官         (医務局長)  若松 栄一君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         通商産業事務官         (通商局長)  渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君  委員外出席者          専  門  員大沢  実君     ————————————— 二月十九日  委員江崎真澄君、灘尾弘吉君、勝間田清一君、  多賀谷真稔君、中澤茂一君、山中吾郎君、山花  秀雄君及び竹本孫一辞任につき、その補欠と  して田中六助君、木村武千代君、栗林三郎君、  坂本泰良君、華山親義君、石野久男君、楢崎弥  之助君及び竹谷源太郎君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  河野正君が議長指名委員に選任された。 同日  委員木村武千代君、鯨岡兵輔君、田中六助君、  石野久男君、河野正君、栗林三郎君、坂本泰良  君及び華山親義辞任につき、その補欠として  灘尾弘吉君、松浦周太郎君、江崎真澄君、山中  吾郎君、山花秀雄君、勝間田清一君、多賀谷真  稔君及び中澤茂一君が議長指名委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  昭和四十一年度一般会計予算  昭和四十一年度特別会計予算  昭和四十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  昨日留保いたしました楢崎弥之助君の質疑を許します。楢崎君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 昨日の一般質問で問題を本日に残しました。ぜひ総理の御見解を承りたい、かように存ずるわけです。きょうは、総理、あなたは総理であると同時に国防会議議長であるし、自衛隊最高指揮官であります。そういう観点からの御答弁をひとついただきたいと思います。  総理は、昨日私が問題にいたしました、防衛庁航空幕僚監部防衛部調査第一課から発行されました「竜情報月間要約昭和三十九年七月分、及び通達、「広報については、次の事項を重視し、各地域の情勢に応じ適時適切に実施する」という通達をお読みになったことと存じます。そこで、このような防衛庁行動は、あの文章にもありますとおり、革新陣営を敵視をいたしまして、そうして憲法第十九条、同第二十一条に違反する、かつての憲兵政治あるいは特高政治の復活を思わせるものであります。同時に、これらの行為は、自衛隊法第六十一条及び自衛隊法施行令第八十六条、同八十七条に違反する明らかな政治介入政治行動であります。事は非常に重大であります。  松野防衛庁長官は、内閣委員会における就任後初の答弁で、自衛隊政治介入の疑いのあるような行動は絶対に慎むという決意を表明されました。昨年は、自衛隊最高指揮官である総理が知らない間にあの重大な三矢計画というものがつくられたことが問題になっております。そしてまた、今回は、あなたが知らない間に自衛隊はこのようなゆゆしい行動をとっておるわけであります。  国防会議議長であり、自衛隊最高指揮官である総理としては、こういうことでは私は責任は果たされていないと存じます。そこで、どういう措置を一体この事態に対してとられますか。責任を果たされますか。総理のお考えをお伺いいたします。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日の一般質問に際しまして、楢崎君から防衛庁長官に対する質疑、その詳細は昨晩並びに今朝重ねて報告を受けました。ただいま指摘されたような書面等は私も十分昨晩以来読み上げましたので承知しております。  ただいま最高指揮官としてどういうように考えるかという、私の見解をただされるのでございますが、これは、申すまでもないことでありますが、自衛隊国民全体の理解と協力を得なければ十分その目的を果たすことができないと思います。そういう意味におきまして、誤解を受ける、ことに、それが政治介入だ、かような誤解を受けることは、これはたいへん慎むべきことだ、かように思います。  ただ、楢崎君のただいまの御指摘にありました、あるいは憲兵政治特高政治、これを復活するものではないか、かような御心配があるようでありますが、さようなことは絶対にございませんから、また、私もさようなことをするつもりは毛頭ございませんので、その点はどうか誤解のないように願いたいと思います。  また、日々行動しております事柄につきまして、国民の一部から疑惑を持たれる、こういうようなことがあっては本来の使命達成にも重大なる影響を及ぼすものだと思いますので、今後一切の誤解を受けないように特に注意してまいるつもりであります。第一の責任者である松野防衛庁長官に対しましても、ただいま申し上げるような意味合いにおきまして、誤解を受けないような、本来の使命を遂行する、そのために国民の理解ある協力を求める、こういうような積極的な方向で努力するように指示いたした次第でございます。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この政治介入の問題は非常に重視をいたしておりまして、特に自衛隊法におきましては、この違反を犯した者は三年以下の懲役または禁錮に処するということになっておるほどの重大な行為でありますから、私は、総理が本問題について具体的に措置されることを望みます。そして、その措置の結果については、当委員会で問題にした点でございますから、当予算委員会の審議の期間中にぜひひとつその措置の結果を御報告いただきたい、もしそれが間に合わないならば、予算委員会後の内閣委員会でもけっこうですから、ひとつ総理に御出席していただく機会を得て、その点の結果を聞きたい、このように存じます。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御要望は私もわからないではございませんが、ただいま申し上げますように、この種の事柄は第一の責任者である防衛庁長官をして処理さすというのが本来のたてまえでございますので、ただいまお答えいたしましたように、私といたしましては、政治介入、かような疑惑を持たれるような行為があっては相ならない、かようにかたく防衛庁長官に、事後の処置等について、そういう誤解を受けないように処置するように申し入れておりますので、十分防衛庁長官最高指揮官のこの意向を体して処理するものだ、かように思います。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、防衛庁長官措置状態をいずれ御報告をいただきたいと存じます。  そこで、いま一点、国防会議議長たる総理にお尋ねしたいことがございます。それは、佐藤内閣成立以来、国防会議議長たる総理は、国防会議を一回しか開かれておりません。特に、第二次佐藤内閣になりましては一回も開かれておりません。その一回開かれた国防会議では、F104Jの継続生産の問題だけであります。そこで、私はお伺いをしたいのですが、二次防は、御承知のとおり、国の防衛に関する重要な計画でありますから、当然国防会議議題になる、そういうことで三十六年の七月に二次防は決定をされました。ところが、御承知のとおり、その二次防の計画の途中において、例のMAP、無償対日援助、このMAPが二次防では毎年百八十億、計九百億見込まれておりました。ところが、アメリカのドル防衛の政策上、これが四十年度からはバッジシステムを除いて完全に打ち切られることになりました。そこで、防衛庁は、この二次防の計画を一部変更し、また一部予算の穴埋めをやって、この二次防の修正をはかったわけであります。そこで、こういう二次防の修正というものは、当然国防会議にかけられてしかるべきもの、このように私は思うわけであります。  いま一点、三次防は、防衛庁長官の御答弁によりますと、二次防の最終年度、つまり四十一年度と、三次防の初年度の四十一年度をダブらして、三次防は計六年間にわたる計画であるということを答弁をされました。そして、この三次防を六カ年計画にするということは、本年の一月十一日の午前の閣議で決定されたと聞いております。そして、その三次防の計画の芽は四十一年度の予算にすでに出ております。たとえば、中型輸送機CX基本設計費一億五千万、あるいはスイス製のL90高射機関砲一セット三億六千万、こういったものを輸入するように、これは三次防の計画の一部であります。こういった三次防の全貌はきまっていない、六月ないし五月の国防会議でおきめになるというが、しかし、こうしてすでに三次防の一部は発足しておる。こういった状態を、私は国防会議にかけてしかるべきであろうと思う。先ほどの二次防の修正といい、あるいは三次防の一部実施といい、そういったものが法できめられております国防会議にかけられずに、これが防衛庁行動で進められておるということは、私は、国防会議を軽視するもの、あるいは国防会議を無視するものだ、このように思われるわけです。国防会議議長たる総理の御見解を聞きたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの二次防の一部修正あるいは軽微なる変更、こういうような問題は、一々国防会議にかけなければならない、かように私は思いませんが、三次防の基本計画、こういうものはどうしても国防会議にかけなければなりません。ただいままでそういう段階になっておりませんから、三次防がまだ国防会議決定を見ておらないのであります。楢崎君の御指摘のように、国防会議というものができておる以上、この機能を十分活用すること、これはもう当然のことでございますし、私は、そういう意味におきまして、ただいまの三次防、こういうものが必要なら、またそういうものが具体化するその際は国防会議決定する、このことをお約束いたしておきます。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、昨日いま一つ問題にしました点がございます。例のジュネーブの軍縮会議コスイギンソ連首相が提案をいたしました核問題でございます。この問題について、外務省はすでに見解を発表しておりますが、この点について総理はどのようにお考えでございましょうか、この点だけ聞いておきます。(「約束の質問と違う」と呼び、その他発言する者あり)  それでは、時間の関係もございますから、本問題はいずれ内閣委員会ででもお尋ねしたいと存じます。  そこで、最後に委員長にお願いをしておきたいと思います。昨年の三矢計画といい、本日問題にいたしました点といい、自衛隊の問題に関して非常に重大な問題点があると思うのです。そこで、昨年の三矢計画の問題について、予算委員会三矢委員会をつくっていろいろ検討いたしました。そうして、その結論が出たわけであります。この結論は、小委員会はつくるということ。ただし、社会党は自衛隊調査に関する小委員会という主張をいたしました。こういった三矢委員会結論について、予算委員長といたしましては、これをどのように理解し、実現されようとされますか、委員長のお考えを聞いておきたいと思います。
  10. 福田一

    福田委員長 お答えをいたします。  三矢問題の処理については、前委員長から引き継ぎをまだ詳細に聞いておりません。したがいまして、前委員長と十分打ち合わせをした上でお答えを申し上げたいと存じます。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長の善処をお願い申し上げまして、質問を終わります。
  12. 福田一

    福田委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、永末英一君。
  13. 永末英一

    永末委員 私は、最初に、この十二日に京都で起こりました精神異常少年殺人傷害事件についてお伺いいたしたいと存じます。  この事件は、十三日の午後六時半、精神異常の少年警官を刺傷いたしましてピストルを奪い、奪ったピストルで一名を殺し、一名に傷をつけた事件でございまして、一昨年ライシャワー大使に対する同様の事件がございまして、精神異常者につきます措置については、精神衛生法改正等、いろいろの措置が行なわれました。しかしながら、現状におきましては、いまだに、入院加療を必要とする者について、十一万余も、厚生省調査によりましてもなおこれを入院せしめることができない、このような状態に放置をされております。しかも、犯罪が起こりました場合、その犯罪の中で精神異常の者が起こす犯罪の比率は〇・七%程度でございます。ところが、その行なっておる犯罪内容は、たとえば殺人は六・七%、放火は一七・八%という、凶悪犯が多いのであります。したがって、いわば凶悪犯を犯す状態を潜在的に持っておるこういう人々については、重要な関心を持たなければならないと私どもは考えます。  国家公安委員長に伺いますが、こういう状況について国家公安委員長はどういう措置が必要だと考えておられるか、お伺いいたしたい。
  14. 永山忠則

    永山国務大臣 精神障害者医療保護がまず第一十分行なわれますように関係当局へ強く要請をする必要があると思うのでございます。  本件に関しましては、最初青年病院におったのでございますが、その際も警察では入院させるように助言をいたしておるのでございます。そうして、京都府内城南病院精神科同意入院をいたしましたが、その後経過がよろしいようなので、母親のほうから通院しつつ就職をさせたいという要望がありましたので、診断に基づいて一応退院をせしめたようなことでございますが、十分まだ加療ができていなかったように考えられますので、今後ともこの療養保護に対して格段の注意をしてやるように関係機関へ強く要請する必要があると考えております。
  15. 永末英一

    永末委員 いまの公安委員長の御答弁はまことに通り一ぺんであって、問題は、そういういわば潜在的な、犯罪を起こすとはきまっておりませんが、起こすかもしれない人々に対して、警察がカバーし得る範囲は一体どの程度なのだ、厚生省方面措置をしなくちゃならぬ範囲はどうなのだ、こういうところをはっきりと見きわめなければ、警察で全部できるわけでもございません。  この最初警察官が刺傷されました場所は私の事務所近所でございまして、私が事務所へ通うときには毎日通勤をいたしておる場所であります。あの近所はいわば私の周辺地区で、この事件のために二十四時間付近住民が感じました恐怖感というのは非常なものでございまして、したがって、政府通り一ぺんの答弁で、関係方面連絡してというだけでよいものではございません。その内容は、これからはっきりいたしますから、公安委員長はひとつ聞いておいていただきたい。  一つの問題は、六時半に事件が起こりまして、警察体制が整ったのは十時過ぎであったからおそいと、こういう批判が町にはございます。公安委員長はどうお考えか、お答え願いたい。
  16. 永山忠則

    永山国務大臣 第一の御質問でございますが、警察といたしましては、十分注意をいたしまして、そういう病人があれば関係当局へその療養及び保護関係を通報いたすことの責任がございますので、今後一段と注意をいたしたいと存じます。なお、療養等につきましては、関係厚生当局でさらに十分な療養保護をしていただくように強く要請いたしたいと存じます。  なお、本件発生は二月十三日午後六時二十五分でございますが、これが第一事件でございます。そこで、六時三十一分に第一事件の一一〇番を受理いたしておりまして、六時三十二分に第一種丙号緊急配備発令をいたしたのでございます。その人員は五百二十名・パトカー三十九台、張り込み個所百七十カ所でございます。ところが、六時四十五分に第二事件が起きたのでございます。そこで、そのときは機動隊出動命令を出しましたのが六時四十八分でございます。それから、第三事件が午後の六時五十五分ごろ起きましたので、七時十五分に、大阪、兵庫、滋賀、奈良、愛知各県へ協力手配をいたしました。七時五十分には乙号非常招集をいたしまして、ちょうど日曜日ではございましたが、市内全署、警察本部員全員二千五十名を配備増強し、検問、検査、張り込みを強化いたしたような次第でございますが、詳細につきましては、局長もおりますから、随時答弁をさせたいと存じます。
  17. 永末英一

    永末委員 質問時間が全体として短うございまして、私、防衛関係質問に主力を注ぐ準備をしておりますので、答弁は簡単に願いたいと思います。  お伺いしておるのは、発令した時刻を聞いておるのではなくて、発令した時刻から人員がそろうまでの間に長い時間がかかったという批判がある、その現状をあなたはどうお考えか、これを聞いておるのですから、局長ではなくてあなたの判断を聞きたい。
  18. 永山忠則

    永山国務大臣 警察といたしましてはあとうる限りの手配をいたしたものと考えておるのでございます。
  19. 永末英一

    永末委員 あなたは実情を御存じですか。警察官がいろいろなところ、警察官宿舎におる者もおれば、それぞれの個人住宅におる者もある。さあ事が起こったといってどういう連絡をするかといえば、まず交番連絡して、交番の巡査が自転車に乗ってその家へ行く、こういうことであるから時間がかかるのである。もし緊急に招集しなくちゃならぬ、そうすることが必要だとするのなら、たとえば各警官宅警察電話をつけるとか、いろいろな方法考えられなくちゃならない。あるいはまた、この種の実弾を持っておる人間がいつそれを放つかもしれないという状況で、行くえがわからないという場合には、たとえばテレビであるとか、ラジオであるとか、一般通知機関に委託をして招集を願う。いろいろなことが考えられると思う。そのことを聞いておる。あなたはどうお考えか。
  20. 永山忠則

    永山国務大臣 非常事態に即応するために、警察では待機宿舎をいま強化いたしておりまして、本年もそれに対しては予算を強くとっております。さらにパトカーを本年度も強化いたしまして、非常事態に即応する体制を整備いたしつつございますが、なお十分ではございません。御説のように、各家庭との連絡関係についても、十分電話その他の方法連絡のつく体制を整備いたしつつございますけれども、なお引き続いて大蔵省に予算要求をいたして、漸次との非常手配ができるような体制を整えつつある次第でございます。ちょうど日曜日の関係等もございまして、この全員の出そろいが非常におそかったのではないかという批判も受けておりますけれども、しかし、先刻申しましたように、警察といたしましては万全を尽くすべく、最善を尽くした処置をとったという考えでございます。
  21. 永末英一

    永末委員 大蔵大臣、やることはたくさんございましょうが、いまのような、何が起こるかわかりませんが、非常の場合に、警察官の動員を急速にやらなくてはならぬとするならば、非常にいまそういう設備が整っていないわけですね。その点について配慮する御意思ございますか。
  22. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国の公安を維持する力は十分とはいえないと思うのであります。そういう意味からいたしまして、逐次、警察要員の充足をはかっておるのでありまするが、昭和四十一年度もそういう考えで、定員は抑制するという中ではありまするが、警察要員の増強ということは考える。また、それに伴う機動力、待機宿舎等も含めまして、これを充実する。まあ、ともかく、できる限り今後も警察力の充足、国民に御心配かけないような体制、この強化にはつとめていきたい、かように考えております。
  23. 永末英一

    永末委員 このごろはガンマニア時代だといわれる。テレビを見ますと、ドンドン、パチパチ、出ない日はございません。そこで、この少年も拳銃をとろうというので警察官をねらったと思われます。現在、この警察官の持っておりました拳銃はSW45口径、これはアメリカ軍が昔持っておったのであって、大きくて、しかもまた、人間を殺傷するよりは動物殺傷用につくったと伝えられるぐらい重たいものでございます。そのアメリカ製のやつがいま京阪神地区には残っておるわけであります。警察としましては、漸次かえるというのでありますが、人に見えるようにぶら下げておくことが一体必要なのか、それとも小型にして見えないようにするほうがいいのか、そういう方針があろうと思うから、それをお聞かせ願いたい。
  24. 永山忠則

    永山国務大臣 制服を着た場合には、いまのようなかっこうのほうが好ましいと存じております。
  25. 永末英一

    永末委員 公安委員長警官が拳銃を持った時期は、日本の国内はようわからぬというので、アメリカが拳銃をくれて、それをみんな持たしたのですよね。その後、その拳銃が警察行為のために正当に使われた場合と、交番にかけておいて、とられてそれが使われたとか、いまの場合のようなケースが起こるのであって、私は、そういうことはあなたのほうで統計をとっておられると思います。何かあたりまえのように考えておられますけれども、一体いかなる場合でも人に見えるようにああいうものをぶら下げておく必要があるとあなたはお考えかどうか、伺いたい。
  26. 永山忠則

    永山国務大臣 やはり現在のままのほうが正しいのではないかと考えております。
  27. 永末英一

    永末委員 諸国の警官の力を示す象徴みたいなものはいろいろ考えられておりますが、日本におきましても、過去になずむことなく、民主警察としてふさわしい一つのスタイルというものを研究願いたいと思います。  あなたにばかりかかずらわっておりますと、時間が過ぎますので、厚生大臣、精神異常者というのは個人の病気であります。しかし、この精神異常者を異常ならしめておる要因は、非常に社会的な要因が多いと私は考えます。したがって、この精神異常者は、病気である限りにおいてはなおるものだという確信を、精神異常者保護者、親族等がやはり持ち、社会もまたそのように持たしていく、これが一番重要な点ではないか。現在、自分の家庭精神異常者がおるということを公にすることをやはりいやがる、そういう風潮があるのである。したがって、この点は多分に社会的な取り扱いということを考えなくてはならぬと思いますが、まず第一に伺いたいのは、社会的な病気だと考えて、この種の人々の社会復帰をはかるためには国に大きな責任があるとあなたはお考えかどうか、お答えを願いたい。
  28. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 精神病者、精神障害者保護の問題につきましては、医療方面の行き届いた措置が必要でありますと同時に、御指摘のように、社会全般がこのような患者に対しまして十分あたたかい目をもってこれを保護していくということが必要であると、このように考えておりまして、昨年六月の精神衛生法の改正におきましても、そういう観点で、在宅の療養の指導でありますとか、あるいは通報体制の整備でございますとか、あるいはまた通院にあたっての公費負担制度を創設する等、できるだけあたたかい配慮をもってこういう精神障害者保護に当たるべきであるということでやっておる次第であります。
  29. 永末英一

    永末委員 精神衛生法二十九条によるいわゆる措置患者、この措置患者は一昨年から昨年は五千人あなたのほうで予算が増加いたしました。ことしは三千人分しか増加をしていない。予算額はふえました。内容の判定を大蔵省は変えたからです。私が伺いたいのは、予算人員を各府県に割り当てた場合、各府県知事が、自傷他害のおそれありとしてこれらの患者を入院せしめる場合に、予算が満配になったからもうできないのだ、こういうことで入院せしめなかったら重大問題が起こると思う。そこで、毎年のことでありますけれども、これを上回った場合には、厚生大臣としては、その年度内に必ず補正予算を組んで大蔵省に要求する、こういう御意思があるかどうか伺いたい。
  30. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 現在、病院に入院させる必要のあります精神障害者の数は大体二十八万人程度考えられております。そのうち、現在入院しております者が十八万人でございまして、十万人程度の者が現在病床が不足のために在宅で療養しておるという状況でございますが、政府におきましても、この精神病床の増床につきましては特に力を入れて努力をしておりまして、国の補助によるもの、また医療金融公庫からの融資によるもの、そういうような対策を進めまして、昭和四十一年度におきましては、おおむね一万五千床程度増加する見込みでございまして、大体今後三年程度で二十二万程度の病床が確保できる。そういたしますと、大体現在入院治療を要するという患者の要請にこたえ得るものと考えておる次第であります。  そこで、御質問の点でございますが、病床がそういうことで少ないために、十七万人収容するところに十八万人入っておるという現況でございますので、措置入院の予算につきましても、施設の数と見合ってこれを予算に計上せざるを得ないという状況にございますが、不足を告げました場合には、財政当局ともよくはかりまして、補正予算等の措置を講じて万全を期したいと考えております。
  31. 永末英一

    永末委員 同意患者と称せられるものがございます。これは、それぞれが自費でやるわけでございますが、たとえこれは健康保険関係の法律が適用されましても、実態は月に約二、三万円程度の持ち出しを家族としてはしなくちゃならぬ。そこで、完全に治癒していないことはわかりながら、その二、三万円程度の出費に耐えかねて退院をしていく例があるのでございまして、今回の事例も、あるいはそれに該当するかもしれない。といたしますと、現在政府は、同意患者につきましては、法律上根拠がないということで一切の補助を考えておりませんけれども、もし、当初私が申し上げましたように国の責任であるとするならば、この点について、やはり国庫補助をつけていく方針をおとりになるのがあたりまえだと思います。あなたはどうお考えになりますか。
  32. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御指摘のとおり、現在精神病者あるいは精神障害者に対しましては、措置入院に対しましては公費でやっておるわけであります。また、通院患者につきましても、先ほど申し上げましたように、昨年の法改正によりまして半額公費負担を実施しております。これは、いまお話しになりました退院後のアフターケアを十分にやるということで通院を助成する、助長するという意味で設けた制度でございます。ただ、任意で入院いたしました患者に対しましては、医療保険でありますとか、あるいは生活がお困りになっている方に対しましては生活保護でありますとか、そういう面の医療扶助をやっておるということでございますが、今後検討していきたいと考えております。
  33. 永末英一

    永末委員 厚生大臣、私の申し上げたいところは、医療扶助や生活保護は通常の病気でもかかるわけだ。しかし、これについては、対社会的に害を及ぼすおそれのある人であるから、その意味合いで社会的な病であると国が考えるなら、やはり特別の措置をしていくのが当然ではないか。その人のためのみならず、社会のためですよ。だから、あなたはそれをしっかりやってください。それから通院補助も、付き添いがみなついていくわけだ。二分の一の補助では少ないですね。  もう一つの問題は、これらを判定する精神科医の数が非常に少ない。これは、普通のお医者さんと比べまして、きわめて少ない比率になっておる。社会がだんだん忙しくなりますと、異常心理の持ち主がふえてくるのでありまして、うようよしておるかもしれませんね。したがって、精神科医というものをふやしていく必要があると思うが、厚生省は、そういう方針をお持ちかどうか、簡単に答えてください。
  34. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 ただいま御指摘になりましたような御趣旨に沿いますために、昨年の六月の法律の改正で、保健所に精神衛生の相談員を配置いたしましたり、また精神衛生のための嘱託医を配置をするという制度を強化してまいったのでありますが、御指摘のように、なかなかそういう専門医等の確保が困難でございます。したがって、今後精神病関係の医者の確保につきましては、特に力を入れていきたいと考えております。
  35. 永末英一

    永末委員 あと一つ注文をつけておきますから、一括して答えてください。  あなたの言うことを聞いておりますと、やっておるということになっておるわけだ。ところが、実際はそうなっていない。たとえば保健所に置くべき相談員にいたしましても、全国で保健所の数は八百五十、今回少し増員をいたしましたけれども、二百程度である。そうすると、一保健所一相談員もない。その相談員については、精神衛生法では、大学の社会福祉の教科を卒業した者、なかなかいい規定があります。私も同志社大学の社会福祉科でケースワーカーになるべき彼らを教えておりましたが、それならば、そういう人々は自今どういう身分保障があるか、これはないわけである。また、一般病院でもケースワーカーが必要だと思うけれども、ケースワーカーとしてずっと長年やっていく上については、きわめて身分保障がないというに等しい状態である。こういう点をはっきりしてもらわなければ、意図はありましても、実現ができないという問題。  さらにまた、もう一つは、精神病院等においては、看護人の不足に非常に困っておる。無資格者を入れてやっておる。しかもあばれますから、女だけではだめだ。男の看護人がほしい。その男の看護人につきましては、いま制度がございませんので、これは全然無資格でやっておる。やはりこの制度を開いてほしい。たとえばわが党が主張しておりますような、中年者雇用の促進という点にも、一つは私は関係のある問題だと思います。  もう一つの問題は、病院入院加療いたしましても、いよいよ社会復帰になる、その間が全然施設もなく、指導体制もないというのが現状である。一つの案としましては、同じ病気に苦しんでおる人々の家族、こういう人々は同病相あわれんで、ポイントをついたいろいろなことを考えてくるわけである。こういう人々の集まりができておるわけでして、こういうところにも政府としては指導していく、こういうことが必要だと私は考えます。  以上の諸点について、簡単に所見を伺いたい。
  36. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 保健所の医師や、あるいは保健婦等の確保、あるいは相談員の設置、この問題は、御指摘がありましたように、従来待遇が他に比べまして非常に見劣りするものがございました。これも一つの大きな原因でございますので、この待遇の、処遇の改善ということにつきましては、四十一年度の予算におきまして、保健所の医師及び看護要員等につきましては特段の配慮をいたしましたことは、先般御説明申し上げたところでございます。  なお、第二の精神病の看護にあたっての男の看護要員の確保が必要であるという問題につきましては、これは前向きで検討していきたいと存じます。  第三の点は、社会復帰の問題でございますが、これは身体障害者、あるいは精神薄弱者、あるいは精神障害者等、社会復帰の問題が非常に重視されてまいりました。残された能力、残存能力を社会のために生かしながら、保護を加えっつ生活をさしていくということが特に大切になってまいりましたので、この点につきましても努力を払いたいと考えております。
  37. 永末英一

    永末委員 精神衛生関係の問題は、国内における安全の問題であります。私は、この辺で問題を外に対する安全の問題に切りかえまして質問をしたいと存じます。  われわれ民社党は、結党以来、日本の平和と安全の問題を政治の表舞台で、政治の問題として論議すべきであるということを主張してまいりました。私どもは、現在核戦略時代に入りました世界の平和は、何よりも核軍縮を中心とし、ひいては一般全面軍縮に至る道を講じつつ、同時に日本としては、いままでのようなアメリカまかせの防衛体制ではなく、自主防衛の方針を堅持し、具体的な措置としては、現在の安全保障条約体制を、有事駐留ないしは軍事基地の原則的撤廃を目的とするところへの改定、こういう方向で措置していくべきだと主張してまいりました。しかし、これらの点は、国民の支持を受けなければできない問題でございますから、何よりもまず、わが国を取り巻く国際情勢について的確な材料を政府は提供すべきだと思います。その手がかりとして、外務大臣に伺いたいのは、中共の核開発の状況について伺いたい。第一、中共の核爆弾の開発状況についてどのような判断を持っておられるか、伺いたい。
  38. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中共の今後の核開発の速度を把握するということはなかなか容易な問題ではございませんが、実際に核兵器保有を行なうためには、なお実験改良を重ねていく必要があることは、これは疑いのないところであります。運搬手段に関しましては、現に中共は小型ジェット爆撃機イリューシン28を約三百機保有しておるものと見られております。中共のミサイル開発能力につきましても、これを的確に把握することはきわめて困難でございますが、一部には、中距離ミサイルMRBMの配置が数年後に可能であろうと見る向きがある現状でございます。
  39. 永末英一

    永末委員 新聞紙上には、たとえばNATOにおいて、アメリカのマクナマラ国防長官が、中共の核開発についてのある推測をしたり、同時に彼はアメリカに帰ってもやっております。イギリスにおきましても、これらの点についての推測をやったり、これが出るわけである。ところが、いま外務大臣が日本政府見解として出されたものは、空々漠々、核実験はまだやるだろうなんというような程度では、一体どういうことを日本政府が把握をして日本の防衛方針を立てておるかわからないじゃありませんか。こまかに答えてください。核爆弾というのは、中共はどういう種類のものを現時点において用意しておると考えておるのか。また、近い将来どういう種類のものを開発しようと努力しておるのか、この二点をお答え願いたい。
  40. 松野頼三

    松野国務大臣 第一回、第二回の核爆発は、御承知のように相当な性能のものであるということは、世界が今日認めております。第三回が近く行なわれるというのが各所で報告を受けております。したがって、この第一回、第二回の性能、第三回の爆発状況というものを想定いたしますと、やはり核に対しては相当中共は進んだ性能を持っておる。これが兵器に採用されるという順序と段階を経ますると、近いうちには、いわゆる核兵器というものの段階まで到達するであろう。  運搬手段におきましては、潜水艦の場合、飛行機の場合、あるいはIRBMのように直接中距離のもの、この三つが想定されます。これにはある程度の時間はかかるであろうが、そう遠い将来のものではない。それでは何年だと言われますと、この何年は、なかなか容易に情報を的確につかみ得るものはございません。アメリカでもいろいろな年限を言っております。年限を各自発表しておりますが、これもあくまで想定である。しかし、ただいま外務大臣が報告しましたような飛行機、潜水艦というものは、今日いろいろなところでもうすでに発表されている数字であります。これ以上のものがあるであろう。永末委員も御専門でありますから、おそらくいろいろ御研究でありましょう。私たちもいろいろな資料で拝見しております。しかし、それはまだ資料の段階であって、その程度かな、あるいはそれを予想しながらわれわれ日本の国もいろいろな場合に計画を立てなければならないと思いますけれども、まだこうだということは的確に申し上げる段階にまで至っておりません。
  41. 永末英一

    永末委員 第三回目の核実験が近い、二、三週間ということを発表され、イギリスの中における一部の人の見解として発表されたのはすでにもう十日前の話であります。だといたしますと、その情報を信ずるならば、きわめて近いと判断せざるを得ない。もし中共が第三回目の核実験をやりました場合には、これを一体日本人がどう受け取るか、非常に問題が起こると思う。第三回目の核実験の期日について、政府はどのような見通しをお持ちか、お答え願いたい。
  42. 松野頼三

    松野国務大臣 直接中共の情報を日本が的確に把握する手段はございません。諸外国で各種の入手いたしましたものを、われわれは最大限度にそれを入手するという段階であります。第三回が近いということは各所で言われております。ただ、この中共の核爆発がどういう形で行なわれるのか、ここにまたいろいろな議論が出ております。同じように、同じ場所で行なわれるものなのか、あるいはもっと変わった形で行なわれるものなのか、これは核の前進、効能というものについて非常な大きな関心が世界で持たれております。したがって、その辺の段階になりますと、これは世界じゅう、また中共のことでありますから、的確には放送とか情報というものは入手されておりませんが、非常に性能が進んでおる、また非常な近い時期であるということが一般の今日の世界の常識であります。
  43. 永末英一

    永末委員 私は、世界の常識など伺いたいとは思わないのであって、日本政府がどう思っているか、日本政府はこの件について少しも国民に知らしたことはないわけですね。したがって、国会で明らかにしてもらわなければ、していただく場所がない。問題を簡単に伺いますから簡単に答えてください。現在中共は核爆弾を爆撃機に載せて飛ぶ能力があるかどうか。
  44. 松野頼三

    松野国務大臣 核爆弾は、私は相当な性能があると思います。ただ、それを運んで爆撃する能力があるか、そこまではまだ私は整備ができていないと思います。
  45. 永末英一

    永末委員 マクナマラ国防長官の言うところによりますと、一九六七年には中距離弾道弾ぐらいは開発し得るだろう、こういうことである。中距離、近い、七年。そこで日本政府は、あと二年ないし三年程度の間に弾道弾の頭に核弾頭がつけられて、もし中共のある地域から発射されたならば、日本をカバーし得る状態がくると判断しておられるかどうか、伺いたい。
  46. 松野頼三

    松野国務大臣 そういう事態があった場合に、日本の防衛はどうかということであろうと思います。
  47. 永末英一

    永末委員 それは別の問題、前段階だけ答えてください。
  48. 松野頼三

    松野国務大臣 二年、三年先に行なわれるかどうかは、これは私の予想で、はなはだ不的確でありますが、そういう情勢がこないとも言えない、くるかもしれないというのが現状じゃないかと思います。
  49. 永末英一

    永末委員 五分五分のようなお答えで、五分五分だと、日本の防衛も当然五分五分でやらなければいけませんね。  そこでもう一つ伺いたいのは、政府は、いまの中共の核武装に直進している意図をどのようにお考えか。詰めて申しますと、どこまで核武装をするのか、多量の核爆弾をつくろうという方針でやっていると判断しておられるかどうか、お答え願いたい。
  50. 松野頼三

    松野国務大臣 世界の核爆弾の保有というのが現実にどの程度あるか。世界の進んだ核装備の国、やはりアメリカ及びソ連というのが一番核開発が進んだだけに、保有も私は多いんじゃないかと思います。しかし、ではどの程度持っているかということは、容易に把握することは不可能であります。しかし、製造の工程及び歴史を見るならば、ソ連、アメリカというのが、何と申しましても一番これは進んだ国であります。次にフランスの場合が今日あります。ではフランスがどの程度か、そのあとで中共といいますと、そんなに多量なものができる能力というのは、私は、そんなにアメリカに追いつくようなものができるとは今日はまだ考えておりません。しかし、相当なものが、数量はいかんにしろ、技術は進んでおるような私たちは感じを抱きます。
  51. 永末英一

    永末委員 中共は他の共産主義国に核拡散を行なう意図があるとお考えかどうか伺いたい。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ちょっと聞き漏らしたので、もう一ぺん……。
  53. 永末英一

    永末委員 中共は他の共産主義国に、核についての情報を与え、ないしは核兵器、核爆弾をつくる助力をするというような意図を持っているかどうかについて、政府はどう判断しているか。
  54. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう意図の有無については的確に把握しておりません。ただ、しいて申し上げれば、これは推定でございますから、なるべく発言は控えさしていただきたいと思います。
  55. 永末英一

    永末委員 中共は第一回の核実験をいたしました場合に、その自分の核使用についての方針を世界に向かって宣明をいたしました。したがって、中共はどういう核軍縮なら受け取ると彼らは考えておるか、その点についての政府の判断を伺いたい。
  56. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中共は大国の核独占というものに対して抗議しておるのであります。でありますから、独占を許さないということを言っておる。しかし、開発後においては、自分は先んじて核攻撃はしない、使用はしない、結局、終局の目的は核の全面的軍縮であるということを申しております。はたしてそのことばどおり取っていいものか、あるいはそれにはいろいろなあやがあるのであるか、これもまだ判断する的確な確信を持っておらない次第でございます。
  57. 永末英一

    永末委員 先ほど防衛庁長官は、核運搬手段については五分五分の見通しをされた。しかし、核爆弾につきましてはもう少し違った見方をされた。第三次防は、まあ普通いわれているところでは、四十二年度から四十七年度までだ。この期間にこれらのことがあがってくると判断しておられますかどうか。
  58. 松野頼三

    松野国務大臣 そういう情勢ももちろん情勢の変化として重要な項目であります。したがって、第三次防におきましても、そういう場合というものについて考えなければならないと考えております。
  59. 永末英一

    永末委員 ただいまのことばはきわめてあいまいだ。第三次防においてそういう場合も考えなければならないと考える、こういうお話でありますが、三次防をいまつくろうとしている。つくろうとしている場合には、いろいろな想定があるわけである。その想定の中にこれを入れておつくりになるかどうか伺いたい。
  60. 松野頼三

    松野国務大臣 第三次防は、あらゆる場合の変化に応ずるように、三次防という固定的な、机上の数字的なものに実は基本的にしたくないと思います。したがって、三次防をきめましても、それが途中で変化できる、対応できるという、ある程度の伸縮性のあるものを私はきめたいと思っております。したがって、そういう情勢が入るというときには入るような条項を入れられるようにつくりたいというので、基本的に——私があいまいな返事をしたのは、ちゃんとそういうこともできるように考えますという意味で申し上げたので、固定的な、テーブルのような固いものは日本の防衛には必ずしも有効じゃない。これは一次、二次の短所だと私は思います。したがって、三次防は、もっと情勢の変化に応じて五年間の中においてもいつでも変えられるものにしたい。それは、その防衛の必要性から変化がくることは当然であります。二次防でも実は当初からだいぶ変化をしている。これはあたりまえのことなんです。その意味で、私があいまいなことばをつけたというのは、十分入れられるようにいたしたい、ことしの四月、五月きめるものに入るかどうかということは、これはまだこれからの問題であります。しかし、やはり十分諸外国に対応するということは私のつとめであると私は思います。
  61. 永末英一

    永末委員 いまのことばをつづめますと、三次防を遂行している間にはやはり当然考慮にはいれるようなそういうかまえで臨むのだ。しかし、いま予定している最初の草案というものについてはどうなんですか。これもやはり同じような感覚でいくわけでしょう。そこのところをはっきりしておいてください。
  62. 松野頼三

    松野国務大臣 第一年度作業は第二次防の継続的なものでありますから、第一次的なものには核の問題は入れるという考えは今日はございません。
  63. 永末英一

    永末委員 私どもは、中共が核武装をしている、しようと直進をしている姿、これは中共としては理由があると思います。しかし、われわれ日本の国は、非核武装ということをはっきりと国民の共通の意思として固めながら核軍縮に立ち向かおうとしておるのでございまして、したがって、すでに発達した核兵器を持っている国々と、おくれた核開発をこれから広げようとしている国々と・核を持たない国々と、その核を持たない国々の中でも、核を持ち得ない国と持ち得る国とは、いろいろの要求が異なってくると思う。したがって、核軍縮については、わが国は核を持ち得るけれども持たないという方針でいくのだ、こういう立場で政府は臨んでおられるかどうか伺いたい。
  64. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 政府の積極的な意図はこれに関して別に固めておりませんけれども、客観的に見て、日本の科学技術の進歩の現状は、核を開発しようと思えばできる能力をすでに具有しておる、しかし、政治上の政策によってこれは開発しない、こういう政策をきめておるということでございます。
  65. 永末英一

    永末委員 いまのような方針に立って考えます場合に、現在ジュネーブで行なわれております軍縮会議というものは、まず第一の大きな議題として各国の合意したところでは、いわゆる核拡散防止条約なるものを何とかまとめ上げようではないか、この点でいま会議が動いておると思うわけであります。しかも、始まって一カ月以上になっております。そこで、わが国といたしましては、この核軍縮ということがわれわれの主張しなければならぬ点であるとわれわれは思いますが、そうであるとするならば、日本としての方針というものをやはり早急に固めてこの機会に各国に訴えて、そして日本の方針が通るようにすべきだと考えます。いま外務大臣のお話ではまだ固めていないなんと言っておりますが、いつ固めるのですか、お答え願いたい。
  66. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 核拡散防止条約につきましては、基本的にわが国は賛成でございます。
  67. 永末英一

    永末委員 核拡散防止条約には基本的に賛成だと言われた。いまどこに一義的な核拡散防止条約がございますか。核拡散防止条約という名前はありましょう。しかし、その内容を盛るについて各国の意見が違うじゃありませんか。
  68. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約はありませんが、そういう構想なりあるいは提案というべきものが出ております。こういう考え方に対しては、日本は基本的には賛成である、こういう意思を表明しております。
  69. 永末英一

    永末委員 問題をはっきりしていただきたい。基本的には賛成だというならば、政府に案があるでしょう。その案を固めて、これに該当するところは賛成、該当しないところは反対、こうなるのが当然ではございませんか。  例を申し上げましょう。たとえば米国案とソ連案が出ておる。地下核実験を除いたいわゆる部分的核実験禁止協定、これを含めて全面核実験禁止協定に進めようというのが、両国とも同じ意見のように私も思います。しかし、核拡散防止、この点については必ずしも両国の意見は一致していない。たとえばソ連案につきましては、その中に最初の核兵器不使用を入れようとか、あるいは核保有国が非核保有国に対する攻撃をやめるということを入れようとか、あるいはそのことの中に、非核保有国が他の核保有国の核を置いておったのではだめだとか、こういう条件がついているではありませんか。私が伺いたいのは、いまあなたは外務大臣ですから御存じだと思いますが、米国案とソ連案と見て、どの点が賛成で、どの点が賛成できないか、明らかにしていただきたい。
  70. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 米国案もソ連案も、非核保有国に対して、製造あるいは譲り受け、とにかく持つことを禁止する、それをやめたい、こういうことが非常に強調されておって、核保有国はしからば何もしなくてもいいのかという、核保有国のなすべき分野につきましてはあまり触れていない、こういうのが特徴であろうと思います。こまかく言えば、いま御指摘のあるとおり、ソ連案では、核保有国は非核保有国に対して核攻撃を加えない、こういうことをはっきりと言い出しております。それからまた、アメリカは、自分の提案に関連してと思いますが、非核保有国の発言権をある程度認めよう、こういうような構想を出しておるにすぎないのでございますが、しかし、非核保有国からいいますと、能力があって、いまはもう絶対に開発しないということを政策上決定しておる国が数国ございます。やろうと思えばいつでも始められる、そういう国が非常な自制力をもってこの問題に臨んでおるという状況でございまして、これらの国の中に日本も入っておるのであります。ただ、現状を固定化して、そしてこの問題を取りきめようとすることは、説得力がいかにも弱い、これに簡単に追随するわけにいかぬというような意見がございます。その主張力の程度がいろいろ国によって違うわけでありますけれども、これらは今後国際会議を舞台にして漸次明らかにされるものと考えます。日本といたしましても、大体核保有能力を有しながら、かたくこの点は自制していこう、こういう国策が決定しておりますが、こういう態度で、この核拡散防止というものをどういうふうに日本が主張すべきか、これは十分にただいま研究して、適当なる態度をもってこれに臨みたいと考えております。
  71. 永末英一

    永末委員 今回のジュネーブ軍縮会議で、この核拡散防止条約という形で非常に進んでおる一番大きな点は、各国が、特に現在の核保有大国が中共の核保有をどのような形でチェックし得るか、こういうことを真剣に考えていると思います。したがって、ポイントは、単なる核拡散防止条約の成立を望むというのではなく、日本としましては中共——もちろん、フランスはヨーロッパの問題ではございますが、フランスも含めて、中共をどのような形でこの条約に組み入れるか、この辺の手段と方法、これが一番重要な問題だと思う。日本政府はどのようにお考えか伺いたい。
  72. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本としては、中共の核開発というものがきわめて緊切な問題であることを考えておるわけでありまして、もちろん、無条件にこの核拡散防止条約というものに参加されることを望むのでございますが、現状は必ずしもそういう方向に進んでおらない。まことに遺憾に考えております。
  73. 永末英一

    永末委員 あなたは、いろいろこれから案が出てくるだろうから、検討して、その中にいいものがあれば賛成したいというような雰囲気の御答弁を言われましたが、したがって、基本的な立場はきまっておるけれども、内容についてはこれからだと言いますが、日本として主張すべき問題点というものはいつごろつくるつもりですか。
  74. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 問題がいろいろ複雑ないきさつを経るものと思いますが、確定版をいつごろつくるかというようなことは、ちょっとこれは無理なことじゃないかと思うのです。状況の進展によってそれに即応する——日本の基本的な態度はもちろんきめておりますが、これに臨む案、方法、手段というものは、情勢によっていろいろ変わらなければならぬ。しかし、基本は、あくまでこれは通すという覚悟をもってこれに臨まなければいかぬと考えております。
  75. 永末英一

    永末委員 いまの外務大臣の発想法は、まことに日本人的だと申しますか、つまり、ある方針をきめて、通るか通らないかは折衝してみなければわからぬのであります。しかしながら、それは同時に、相手方が何を考えているかということを考えてからこっちの考え方をきめよう、こういうのでありますから、まことにコンニャクみたいな話です。これを評してアメリカの「フォーリン・アフェアーズ」の編集長は、どうもよく日本人の考えはわからぬ、いまのような考え方をしているので、自分たちとしては、問題点をきめてそうしてそれを折衝して、落とすべきものは落とす、とるものはとる、こう考えたいのだが、どうも日本の政治家は最後まで終着点を明らかにせずしてやっておる、これは困る、わからぬ、こう言っておりました。そういうのが相手方なんです。その相手方にやるのだから、日本こそは主張点を明確にして、唯一の核被爆国だと言い、しかも、核保有能力はあるが、やらぬのだということを国の政策としてきめておる、その立場なら私は発言権が大きいと思う。したがって、情勢を見ながらきめるのではなく、やはり早く基本的な何本かの柱をきめて諸外国に訴えることが外交方針ではないかと私は思うが、どうですか。
  76. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いずれにしましても、大きな国策の見地から割り出す手段、方法でございますから、初めに打ち出してこれに当たるという場合もありましょうし、問題がきわめて流動的で複雑である場合には、相当観察してそして慎重に主張を出す。まあいろいろあるだろうと思う。
  77. 永末英一

    永末委員 いろいろありますよ、歌の文句ではございませんけれども。しかし、そのことのために問題が混乱した形で国民に映ってはいかぬと思うのです。  混乱の状態をひとつ申し上げましょう。いいですか。安保条約というものはわれわれの国がいま持っておる。そうして佐藤・ジョンソン声明で、あなたがきのう本委員会で言われたように、いかなる外部の武力攻撃に対してもつまり援助してくれるのだ、こういうことばをとらえて、佐藤総理大臣は、このいかなる武力攻撃という概念の中には核攻撃も入りますということをこの委員会で言われたわけだが、これは一種の二国間条約に基づく核保障。ところが、一方、イギリスなどでは、少なくともインド洋、太平洋方面において非核保有国が核保有能力を持っている場合に、これを持たせないでおくためには、やはり保障してやらなくちゃならない、だから、多国間、つまり核を持っている数カ国というものが一致してひとつこれの核保障をやろうじゃないか、こういう構想があるわけだ。ところが、核保障というのは——わが国の場合ですよ。核は持っていないと言いながら、アメリカが核保障をしてくれるためには、何らかのやはりこれは反対給付も要求せられるでしょうし、もっと大きくは、理論的に見て、総理大臣が言うように、核保障を取りつけたと思うならば、それは一種の核拡散になっておるわけだ。あなたはそう思いませんか。
  78. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは私は核拡散にはなっていないと思います。
  79. 永末英一

    永末委員 ワルシャワ条約機構もございましょう。いろいろな国が核保有国と明示の条約あるいは暗黙の了解、いろいろなものがございましょうが、自国が核保有国の核のかさの中に含まれておる、そういう了解をし出したら、なるほど核保有国は五カ国かもしれませんけれども、それがそういう条約でカバーされてくるといえば、これは一種の分極化、力の分化が行なわれる。核保有していなくても、そこに起こる紛争というものについてやはり核のかさがおおうではございませんか。したがって、これは核兵器の新しい保有国ができるという、そういう意味合いでの核拡散ではございませんけれども、潜在的な核拡散になるというのが、私は普通の論理ではないかと思いますが、重ねて伺います。
  80. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本は国の安全をやはり第一に考えなきゃならぬ。今日、日米安保体制というものができておりますが、これは先般のジョンソン・佐藤会談におきましても、いかなる種類の、いかなる形の攻撃があっても、アメリカは日米安保条約によって日本防衛に対して万全の責任を負う、こういうことを言っておるので、ごくあたりまえなことをあたりまえに言っているだけの話なんです。しかし、日本は絶対に自分では核を開発しないし、また核を所有もしない、また、アメリカの基地を認めておりますけれども、持ち込みもこれは許さないという方針でございます。この間に何らの矛盾を私は感じないものと考えております。
  81. 永末英一

    永末委員 核を使うということは、核保有国にとってはもう死活の問題ですね。だからこそ、キューバ事件以来一種の平和共存状態がソビエトとアメリカの間にできたわけです。日本のために核を使うかどうか、この判定はアメリカがやるわけでございますけれども、われわれ日本にとっては、そのアメリカが核を使うかどうかということについて一体どの程度期待できるか、これは非常に重要な問題だと思う。そこで、フランスのような形で、自国が独自の核保有をすべきだという方針を持つ国が出てきたのである。われわれはそうしないと言う。矛盾はないと言われるけれども、アメリカ側としてはそういう致命的な重大問題がおっかぶさるかもしれない。そういうことを考える場合には、日本が、いや、わしは核については全然何もしないのだというような態度が一体許されるものだろうか。そんなことで、一体いかなる武力攻撃に対しても援助をすべきかどうか、こういう疑問がアメリカ側にもわき起こってくるとしたら、やはり当然の論理じゃないか。私は申し上げたいのは、たとえば原子力潜水艦にしろ、あるいは原子力艦隊、空母にしろ、その中に核兵器があるかどうか、われわれにはわからない。しかし、それが寄港を求めてくる場合に、国民側の疑惑は、だからこそ、その反対給付に対して、安保条約上の義務として日本政府はうんと言わなくてはならぬのではないか、やはりこういう疑問が起きてくるのはこれまた当然だと思うのです。  そこで伺いたいのは、私の見解では、いまのように核の保護を受ける、核攻撃に対しても援助するということは、アメリカはまたそのために核を使うということですね。あなたはどうお考えですか。
  82. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 実際問題としては、私は、使う使わぬということよりも、核をもって防衛責任をあくまで果たすというそのかまえであろうと思う。現状においてアメリカの核攻撃に対する抑止力というものが信頼できる程度のものであるかどうかということに帰着すると思います。これは必ずしも日本が所有しなくても、あるいは日本の国内に核兵器を持ち込まなくても、現在の核兵器の進歩の状況等から考えて、私は、核攻撃に対して十分な抑止力を具有しておるもの、持っておるもの、こういうふうに考えて差しつかえないと思います。
  83. 永末英一

    永末委員 抑制力というのは、日本が核攻撃をアメリカ以外の国から受けた場合には、アメリカが核をもってこれに対処するということがあるから抑制力になるのでしょう。アメリカがかってに核を持っておることが日本と関係がなければ、日本の安全に対する抑制力にはならぬではありませんか。あなた、もう一度お答え願いたい。
  84. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日米安保条約というものは、お互いに責任を果たし合う、アメリカの責任は、日本の安全をあくまで保障するために万全の努力をする、こういうことになっております。その努力の中から核兵器を除くとは書いてない。これは全部入れて、そして日本の防衛というものに対して全責任を負う、こういうことでございまして、いまの体制、それから核兵器の技術等から考えて、必ずしも日本に核基地を置く必要は毛頭ないと私は考えております。
  85. 永末英一

    永末委員 いま言われたように、全部入っておるということでありますから、そのように理解をいたしますが、そうだといたしますと、きのう本委員会でもちょっと問題になりましたが、あなたのところの外務次官は、どういう資格で発表されたか知らぬけれども、現在のところ日本はまだ米国の核のかさの中には入っていない、こういう発表を記者会見でやられたようです。ところが、この核のかさについては、核のかさなんというのはあなたはよくわからないとこの委員会で言われた。私は申し上げますが、先ほどのように、いかなる武力攻撃に対してもアメリカが日本を援助するのだ、その援助の中に核使用も含まれておる。全部といえば、含まれておるはずですね。そういう状態を核のかさと私は名づけるべきだと思う。だといたしますと、この下田次官の言われたことばと、あなたの言われたこと、佐藤総理大臣が本委員会で言明したこと、佐藤・ジョンソン共同声明により、矛盾するでしょう。私は矛盾すると思う。どっちが外務省の考えか、明らかにしてほしい。
  86. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その問題について統一見解をつくったわけであります。これによって必ずしも——下田次官の言うことは少し言い足りないことがあったかもしれぬけれども、一体、核のかさという定義ができてないのです。それで、日本の中へかさの心棒を持ってくるか、よそのほうへ置いておるか、そのかさというのはどういう意味かはっきりしない。それでこういうふうにきめたわけであります。  いわゆる核のかさという表現はきわめてあいまいな意味を持つものであるから、日本が核のかさに入るべきかいなかを断定的に論議することは適当でないと考える。現在の国際情勢のもとにおいて、米国の持っている核報復力が全面戦争の発生を抑止するきわめて大きな要素をなしているのであるから、日本もこのような一般的な意味における核のかさのもとにあることを否定することはできないと考える。しかし、日本が核のかさに入るということが、日本を核兵器基地にしたり、あるいは北大西洋条約機構内部で論議されているような多角的核戦力のごときものがアジアに設けられた場合にこれに日本が参加するという意味であるならば、現在そのような計画は存在していないし、また、今後も日本はそのような計画に参加する考えはない、こういう意味でございます。でありますから、どうぞそういうふうに御了承願います。
  87. 永末英一

    永末委員 その中で一番重要な点は、NATOとか、そんなことはどうでもよいのですよ。私が伺いたいのは、核の心棒がどこにあるか、そんなことはどうでもよい。核の心棒は、日米安保体制佐藤・ジョンソン会談なら心棒はアメリカにあるのである、われわれは核基地を使わせないのであるから。しかし、そのかさの一番端の中には入っておる、そういう意味ですね、お答え願いたい。
  88. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 核報復力をもって日本の安全を保障するという意味におきましては、やはりかさの中にあるということがあるいは適当かもしれません。
  89. 永末英一

    永末委員 このごろ外務大臣、外務省はたびたび次官発表をもっていろいろなことを発表するわけです。日本国民はこれを見ますと、なるほどこれは外務省の見解かと思う。ところが、いま伺ったように、一番重要な判断について、少なくとも新聞紙が紙面で報道したものと、いま外務大臣の言われたものとは違うわけだ。そういたしますと、国民は一体どっちを信用していいかわからない。重要な核拡散防止条約についても、ここ三日間の外務省から流れている情報は、ネコの目のように変わっているわけだ。だから私は、重要な核拡散防止条約、わが国が主張しなければならぬ点は明確にして言うべきであって、初め何かソ連案に賛成していると思ったら、こことこことが悪いんだということを次の日に言ってみる。こういうことでは、一体外務省というものが軍縮問題について真剣に方針を固めているとは思えない。いや、佐藤内閣というものが一体どういう方針で臨んでおるのか、これが晦冥混乱になるわけだ。あなたは一体、いまのような外務省見解の流れ方がよいと思いますか。
  90. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もともと、申し上げたように、核のかさというものがきわめてあいまいな意味を持っておりまして、それを用いたことが不運であったといえば不運であったのです。下田次官の見解は、決して内容なり心棒なりというものは狂っておりません。やはりそれが、核のかさというきわめてあいまいなことばを使ったことが適当でなかったということになりまして、今後は十分に気をつけて用語を……。
  91. 永末英一

    永末委員 意見を出す場合には、先ほど申しましたように、核拡散防止条約という名前はありましても、この条約に盛り込もうとする各国の主張点が違うわけだ。これをやはり全部精査をして、そして、発表すべき点はあとは変わらぬということを、それを変えるような、違う意見をまた付してくるというようなことのないように、ひとつ外務省は一本化した形で国民に流していただきたいと思います。  そこでひとつ伺いたいのは、同じ軍縮委員会にソビエトが、アメリカがB52に水爆を積んで常時パトロールをしておるのは、部分的核実験停止協定や、あるいはまた航海条約に違反する場合が起こり得る、すなわち、スペインで起こりましたように、それが海に落ちて、少なくとも一個の水爆が起爆装置が開いて爆発し、海がよごれたと伝えられておりますけれども、そういうことは、これは無過失責任ですね。条約上のそのままの責任であるかどうかは、これは問題でしょうが、無過失責任であることはあたりまえだ。防衛庁長官、わが国の周囲にB52の常時パトロールはございますか。アジア……。
  92. 松野頼三

    松野国務大臣 そういう事実は聞いておりません。
  93. 永末英一

    永末委員 B52はグアムにおるわけで、いろいろな用途を持っておるでしょう。そこで、外務大臣、ソビエトの主張というものをあなたは知っておられると思う。わが国も中共のそういうことは、核保有が発展してくれば、アメリカはいろいろなことを考えるでしょう。現に、沿海州にはソビエト側のそういう基地があることも伝えられております。したがって、わが国の周辺にもそういうことが起こり得る可能性があるわけです。イギリスにおきましては、過般来同じような問題が起こって、B52のイギリス領土、領空あるいは近海における常時パトロールをやめてくれろという運動が起こったことも御承知だと思います。あなたは、ソビエトのこれらの主張についてどういう考えを持っておられるか伺いたい。
  94. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もしそういう物騒な飛行機がわが領空内を飛行しておるとすれば、これは私は領海内における船舶の無害航行というような問題で片づけられない重大な問題を含んでおるのではないか、かように考えます。
  95. 永末英一

    永末委員 そういう状況防衛庁なり外務省がキャッチされたら、外務大臣としてはお断わりになりますか。
  96. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アメリカの場合とソ連の場合とおのずから違うと思いますが、アメリカの場合でありますと、ちょうど領海に核兵器を積んで入ったようなもので、これは事前協議の対象になる。その場合に、これを許すか許さぬかは日本の腹次第、協議のいかんによる。ただいまのところは、これは認めないというたてまえをとっております。それからソ連の場合には、これは明らかに領空侵犯であると考えます。
  97. 永末英一

    永末委員 過般、スウェーデンから人がやってまいりまして、いわゆる核探知クラブなるものをつくろうではないかという呼びかけがあったと伝えられております。もちろん、いまの問題とちょっと次元の違う問題ではございますが、核探知クラブというものに日本政府は参加をしますか。
  98. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいま御承知のとおり、地下実験に関して、米ソの間に意見が食い違っておる。アメリカは、現地に臨んで十分にこの問題を探知し得るような施設をする必要がある、ソ連は、そういうことは困る、こういうことで容易に地下実験の禁止を強行するということができない状況にあります。スウェーデンの提案は、ソ連の内部でそういう実験が行なわれた場合に、必ずしもソ連の領内に入って、そしていろいろなしかけをして、それが行なわれておるかどうかということをやる必要はない。地震学上の研究からして、離れたところでも、ソ連の国内においてさような実験が行なわれておるかどうか、アメリカにおいてそういう問題があったかどうかというようなことは、その国土に入らないで十分に探知できる、こういうことでございまして、そういう技術を応用するならば、結局問題が解決するのではないか。したがって、全面的核実験の停止ということが可能である、こういうことを提案しておるのであります。日本といたしましても、地震国でございまして、これらに関する技術が相当に進んでおり、世界各国も日本の技術を認めておる、こういう状況でございますので、日本といたしましてはこれに参加して、そして十分に協力したい、こう考えております。
  99. 永末英一

    永末委員 来年度から外務省の国連局の中に軍縮室というのをつくって、軍縮外交に資したいと考えておるということでありますが、外務大臣、この軍縮問題はあなたのところだけでやる問題だとお考えですか。
  100. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 軍縮問題は、一面において非常に大きな外交問題、国際間の問題になっておりまして、各国とも外務省に軍縮問題を取り扱う機能を置いておる。しかし、これは、一面からいうと、国防の問題にも関連するのでございますので、これは外務省だけというものではないと思います。
  101. 永末英一

    永末委員 官房長官、いま外務大臣は外務省の中に軍縮室をつくるという。しかし、これは国防問題だから範囲の広がっているところもある。政府国防会議というのがありますが、あなたは国防会議の事務上の連絡責任者、法律上そうなっていますね。内部は事務局長がやっておる。議長である内閣総理大臣国防会議との間をあなたは取り持っておるわけだ。そこで、この国防会議なるものは一体何をしているか、国民はようわからぬのでありますけれども、この種の問題、つまり、外務省が外交関係で軍縮を扱う以上の問題、防衛庁長官の所管事項にも関係してくる問題、通産大臣の所管事項にも関係してくる問題だといたしますと、やはりそれぞれの一省ではなくて、まさにいまある機構とすれば、国防会議というものがこの軍縮問題について積極的にこれはやらなくちゃならぬ問題だと私は思います。あなたは事務上の責任者としてどうお考えですか。
  102. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 先ほど外務大臣が答弁いたしましたように、実は軍縮問題といいましょうか、核を中心にする軍縮は、これは日本の防衛態勢の上では、防衛上の意味からいえば、必ずしもいま国防会議議題と——もちろんこれは、いろいろな意味での意見の交換等は行なわれましても、現在核を中心とする軍縮問題は外交問題であろうと思います。いま日本の自衛隊には、もちろん核の研究もなければ、核の装備もしておらない。そこで、外交上の軍縮問題として扱われる以上は、やはりこれは外務省に置いて、十分なるスタッフを置いて検討することのほうが適当であり、かつまた、外交問題はもちろん外務大臣の専管事項でありますと同時に、それは総理考え方も反映せられるわけでありますからして、外務省にあって、外交上の問題として取り扱うことのほうがより合理的ではなかろうかと考えております。もちろん、永末さんの御提案についても検討はいたしまするが、目下われわれの考えておりますことは、外務省で行なうことがまず適当であろう、かような考えでおります。
  103. 永末英一

    永末委員 官房長官、私の申し上げたことがおわかりにならなかったと思う。外務省の問題ではございません。日本における軍縮問題は、日本の平和と安全に関する問題だ。したがって、これは、一方自主防衛の線と一方軍縮とは両立してやらなくちゃならない日本の平和方針だとわか党は考える。あなたはそれは外交だと、こんなことを言っておる。そんなことはないですよ、軍縮というのは。そうでしょう。先ほど防衛庁長官が申しましたように、三次防をつくるについて、やはり核情勢の変化というものが入らなくちゃならぬ、こうなれば、一方やはり軍縮をやらなくちゃならぬじゃないですか。国防会議は、あなたは不適当だと思いますか。委員長総理大臣の見解を聞きたいんですね。これは事務上の責任者ですからね。
  104. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 国防会議は、防衛庁設置法の第三章の中に方針が明らかにされてあります。その中で、御承知のように、国防の基本方針、それから二には、防衛計画の大綱、三には前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱、四は防衛出動の可否、もちろん、その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項を諮問する、こうなっております。一応この設置法のたてまえから考えましても、もちろん精神的には永末さんのおっしゃることはよくわかります。しかしながら、この核軍縮の問題、核問題につきましては、御承知のように、国会並びに国民政府をあげて核の禁止といいましょうか、核の洗札を受けた日本人としては、それに対しては国民的な願望であります。そういう精神的な意味から申しますれば、もちろんこれは国全体の問題ではありまするが、核軍縮という具体的な外交上の問題であれば、事務的には外務省にあることが適当である。ただ、われわれ国民といたしましても、平和に徹するというたてまえから、いわゆる核問題については、まず一つの国民的理想のもとに、核軍縮の場合におきましても、その大きな観点と現実の核条約等の提起せられた場合の具体的な問題、かような意味において国民の理想を達成するという意味では、もちろんこれは国民全体の問題ではありますが、いわゆる設置法の性格から言いますれば、国防会議でこの問題を論議することはもちろんありましても、軍縮室というような問題は、外務省に置かれることが適当である、これが政府考え方であります。
  105. 永末英一

    永末委員 その意見は、私は反対でありますが、もう時間がございませんので、あと三問ほど、大体五分ぐらいでおさめるつもりです。  三次防について伺いたいのですが、われわれは、第一次防と第二次防というのは、言うならば無の防衛力から兵力整備をやる期間であったと考えます。したがって、その多くのものはアメリカの貸与供与品に依存しながら、いわば日本の地方団体が政府の補助金をもらって行政しておるというような形が、日本の防衛庁のやっておることであり、また、防衛計画です。性格が似ておる、こういう意味ですよ。しかし、いよいよアメリカの無償供与は打ち切られて、そうして自前でやらなくちゃならぬ、こういうことになりました。第三次防は、そういう意味合いにおいては、国民の税金でもってまかなっていかなくちゃならない。そういう意味合いでは、自主的な性格が返ってきた。とするならば、防衛計画なるものは、国民にはっきりと事態を示さなければ、これは国民が支持しない、こういう形になってきておると思うのです。  第二に、わが日本国の防衛というものは、明治時代以来国の外に出て戦う態勢をとってまいりました。しかし、いまわれわれが平和憲法のもとで考えるのは、この領土、領空、領海というものをどうやって守るかということでありますから、ことばは悪いのでございますけれども、大東亜戦争の末期に考えられた本土決戦というようなことを中心にして何が一体考えられたか、これは重要な一つの参考資料にはなると思う。われわれは、決戦をするために防衛力をつくるのではございません。戦わないためにつくるのであります。しかしながら、第三次防は、そういう意味合いにおいて、もし遺憾ながら戦闘状態が惹起いたしましたら、国民を包んで自衛隊が動かなくてはならぬ、こういう状態になると思う。そこで、三次防というものは、いわばそういう意味合いにおいても、国民に十分説明をし、納得をしてもらわなくちゃならぬ性格のものだと思います。  そこで、第三次防は、本委員会の説明によりますと、防衛庁長官は、五月か六月ごろ国防会議にかける、こんなことを言っておる。今国会中にやる意思はありませんか。
  106. 松野頼三

    松野国務大臣 今国会中に国防会議ではかるという準備と意思はございません。御承知のように、四十二年度からという計画で今日まで進んでおりました。その穴をある程度——四十二年から進行するのに便利なように今日やっておるわけで、四十一年から直ちに実行するわけではありませんので、この国会で審議するという希望は、私はございません。
  107. 永末英一

    永末委員 審議すると言うているんじゃないのですよ。ともかく国会が終わったときに、国民に重要な問題を国防会議できめて、あとはいつか国会までわからぬということでは困るわけです。そこで、少なくとも国会開会中にやるならば、いろいろな国民要望が入るでしょう。それを申し上げておるのです。
  108. 松野頼三

    松野国務大臣 この国会を通じていろいろな要望があると思います。それを十分取り入れて国会後にきめたい。じゃ審議はどうだ。四十二年度予算の前には十分審議していただくつもりです。したがって、あまりに拙速ばかりが能じゃありませんので、十分この国会における意向を反映して、それをいれてきめることのほうがより私はいいと思いますから、そのような時期を選んだわけであります。
  109. 永末英一

    永末委員 国会の審議というのは、あなたのほうのあげ足をとるのでも何でもございません。国民要望がどこにあるかを政府が知るために、これは有権的な唯一の機関である。したがって、ひとつ伺いたいのは、国会にはその防衛問題に対して十分これを対象としてやっていこうとする場が欠けております。ないとは申しません。昨年の当予算委員会では防衛に関する委員会をひとつ国会内に、次の通常国会、すなわち本国会でつくろうではないかということが、あなたが三矢研究小委員長のときに報告をされて了承されて、本会議でそのまま了承されている。いまやあなたは政府側だ、政府側としてもそういう防衛委員会が必要だとお考えかどうか伺いたい。
  110. 松野頼三

    松野国務大臣 三矢委員会で十分審議して、国会にこれほど重要な問題に対する特別委員会を設置すべきであるという三党の意向が一致いたしました。今日立場は逆になりましたけれども、私はその意向は、私の思想は変わっておりません。
  111. 永末英一

    永末委員 私は三次防についていろいろと質問資料を準備したのですが、残念ながら、国会正常化は時間厳守ということでございますから、あと一問にとどめたいと思います。  三次防は、そのような重要な問題であります。したがって、私は、いままで政府国民に国防の問題を明らかにするという姿勢に欠けておった、これが非常な誤解国民の中に巻き起こしている原因だ。そこで、昨年のこの予算委員会佐藤総理に、あなたは国防白書のごときものを出す用意はないかと言ったら、研究します、こういう話、一年たったらだいぶん研究が進んでおるんだろうと思いますが、少なくとも三次防を決定になる前にはそれを、別に表紙が白いから白書だという意味で申し上げるわけではないが、政府の公的な一つのものとして国民に訴える、こういう用意があるかどうか伺いたい。
  112. 松野頼三

    松野国務大臣 まことに建設的な御意見ですから、十分その意向をそんたくして、そうしてその準備を、研究をいたしたいと思います。
  113. 永末英一

    永末委員 一問と申しましたが、文部大臣に長らくすわっていただいておりますので……。  私は、日本の国というものを、現代の若い世代の者がやはり真剣に見つめるような教育環境がほしいと思います。いまや沖繩の問題は、日本が何ものであるかということを国民が知る上について重要な一つの焦点になってきたと思う。ところが、文部省が小中学校にどういうものを教えようかという学習指導要領をつくっておられますが、沖繩の問題なんというものは一つも書いていない。調べますと、中等学校の社会科の教科書で沖繩の問題を十三点ぐらい書いておるけれども、五、六行ないし一ページしか書いていないと、こういう。昨年の十一月沖繩に参りましたときに、沖繩の教職員会の人々が言うのには、沖繩で生まれたわれわれは日本人だ。だから、日本のことを勉強しようと、一生懸命日本のことを勉強しているんだ。ところが、日本に行けば、日本の子供たちは沖繩のことを知らぬではないか、そんなにわれわれを見棄てておるのか、こういう悲痛な叫びがございます。文部大臣は、子供たちの教育について、沖繩の問題をどのように日本の若い世代に知らせようとしておられるか伺いたい。
  114. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 お答え申し上げます。  私どもも同じような感じを持っております。現在の教育課程は昭和三十二年にできておりますので、現在教育課程の再検討をしておる段階でございますが、御指摘のとおり、教科書の中には若干取り入れられておりますが、なお不十分な点があるように感じますから、今後の検討の際には十分留意をいたしたいと思っております。
  115. 永末英一

    永末委員 終わります。
  116. 福田一

    福田委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。  次に、石野久男君。
  117. 石野久男

    石野委員 私は、日韓条約が批准されてから後の日本と朝鮮との間に起きているいろいろな問題について、きょうはお伺いしたいのですが、大蔵大臣がお急ぎのようでございますから、ちょっと質問の順序としてはやりにくいのですが、大臣に先にひとつお尋ねしたいと思います。  条約が批准されてあと、請求権問題に関連して、それの実施が両国間にいろいろと工作されていると思います。最近新聞等の報道を聞くと、韓国の張基栄長官が日本に来て、十年間割賦払いになる請求権の額について繰り上げ支払いをしてほしいということが強く要望されておる、こういうふうに承っておるのですが、その間の事情はどういうふうになっているか、ひとつ大蔵大臣からお答え願いたい。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕
  118. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その事情はむしろ外務省のほうがよく承知していると思います。私もそういう意向があるやに伺っておりまするが、まだ正式な話は受けておりません。
  119. 石野久男

    石野委員 外務大臣から……。
  120. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 有償、無償合わせて五億ドル、それを大体十年間に均等に配分してこれを実施することになっておりますが、最近韓国側において、初年度に相当これを繰り上げてほしいというような意向がきております。しかし政府といたしましては、せっかくの韓国側の希望ではございますけれども、財政上の制約もあり、また、規定上の問題もございますので、十分にこれに応ずることはきわめてむずかしい、こう考えております。
  121. 石野久男

    石野委員 そうしますると、報道されておるような韓国の要望というものは、日本の側では条約の規定に基づいて全然受け付けないという方針がはっきりと政府において固まっているということでございますか。
  122. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 無償供与の点については、多少の変動は認めることになっておりますけれども、重大な変更を加えるというようなことは、これはほとんど不可能でございます。
  123. 石野久男

    石野委員 韓国の張基栄経済企画院長官は、この請求権の使用計画を作成するにあたってこのように言っているといわれております。無償資金三億ドルは十年分割で平面的に使用するのではなく、当初の三年間、長くとも六年間内に使わなければ実質的に効果をあらわすことができないだろう、こういうふうに言って、その考え方に基づいて計画を進めておる、こういわれているわけです。条約によりますと、この請求権については若干の変更が両国の間の合意によって行なわれるということになっておるわけです。韓国側のそういう要望が出てまいったときには、政府としては当然それを受けて立たなければならないだろうと思います。韓国のほうの要望事項は、もう少なくとも三年ないし六年くらいにやらなければ次期計画、これに基づく経済計画ができないのだ、こういうのが向こうの真意のようでございます。したがって、それについて政府としては全然無関心でおるわけにもいかないだろうと思います。いま外務大臣は、何とか話はしなければならぬだろうということを話しておられましたが、その範囲政府考えている話し合いの幅というものは、大体どういうようなところにめどを置いてお話を進めるように考えておりますか。
  124. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 話し合いの許される範囲というものは、何%といったようなところだろうと思います。とても三年ないし六年の間に十年間の給付額をそれに圧縮してしまうというふうなことは、とうていこれは不可能な問題であります。
  125. 石野久男

    石野委員 条約によると、条約の第一条は、この協定の効力発生の日から十年の期間にわたって無償で供与するものとする、こうなっております。政府考え方は、この十年にわたってという線はくずさないというふうに受け取ってよろしいですか。
  126. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 大体さように考えてよかろうと思います。
  127. 石野久男

    石野委員 これは非常に重要なことなのです。韓国の側の考え方は、できるだけ早期に国家建設に役立たしめるようにしたい、これを使いたいという考え方ですから、長期にわたればその効果が出てこない、こういうようにはっきりと張長官は言っているわけです。したがって、折衝の過程では、この十年というものは、やはり短縮するということでないと効果が出てこないのじゃないか、こういうようにわれわれは想像します。したがって、交渉の経過としては、当然それに早晩乗って話は進められるものだろう、こういうふうに予想するのですが、もう一度伺います。十年というこの期間は、変更しないというたてまえでいくのですか、それとも幾らかの幅があるのですか。
  128. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 十年という協定は、これはくずさないつもりでございます。
  129. 石野久男

    石野委員 わかりました。  これは大蔵大臣に聞きますが、もし条約の内容である賠償の支払いについての期限に若干の変更があった場合に、第二議定書にかかわるいわゆる清算勘定の残高の支払いの分の差し引きでございます。これは、やはりその年度に割賦で取り上げるというたてまえをこっちがとりますと、年限が詰まっていった場合に、これをやはり詰めて差し引き勘定をする所存であるかどうか、そういう点をひとつ聞いておきたいと思います。
  130. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 清算勘定の返済は、それ自体できまっておりますので、無償供与のほうと関連なく計算される、かように考えます。
  131. 石野久男

    石野委員 そうなると、その議定書は賠償とは全然違うということですが、しかし、それはちょっと話は違うのじゃないですか。この清算勘定は、無償三億ドルの中から取るということになっておるはずです。全然無関係なことはないはずですが、考え違いをしているのと違いますか。
  132. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それでありますから、無償供与が続く限りにおきましてはそれから差し引く、こういうことになっておるわけです。ただいま外務大臣からお話しのように、無償につきましては十年のたてまえを変える考えじゃない、こう言うのでありますから、そこから差し引かれる、かように相なります。
  133. 石野久男

    石野委員 もう一度聞きます。  そうすると、いま外務大臣からの答弁では、十年の年限はくずさないというふうに言っておりますが、私は、おそらく交渉の過程でこれが相当くずれてくるものだと予想しておるのです。政府はそういう態度をとっていくだろうと思います。その場合に、第二議定書の四千五百七十二万九千三百九十八ドルというこの十年割賦払いというものを、別個な形で——大蔵大臣が最初に言ったように、別個に十年間で取るということではつじつまが合わなくなってくるのですから、これはやはり年限が、もし賠償の額が詰まった場合には、当然その中から取っていくというたてまえははっきりしておかなくちゃいけない、こういうふうに考えるのです。そういう点については大蔵大臣、どういうふうに考えますか。
  134. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま、無償供与の年限が詰まるということは考えていないわけであります。
  135. 石野久男

    石野委員 大蔵大臣に、お急ぎのようですから、聞いておきますが、不況克服の問題について、先般本委員会で小松委員に対して大臣の答弁では、不況の最大の要因は、設備投資が民間投資で行なわれないからだ。だから政府は、今度の予算でその設備投資の側面で不況克服の面を補足したい、こういうふうな答弁をされておりました。いまの不況の克服の問題について、もちろんこれはやはり有効需要を国内的に造成するか、あるいはその有効需要を海外で求めるかといういろいろな問題があります。その中で、国内需要の喚起ということは非常に重要なことだと思っておりますけれども、しかし、現在の設備過剰という実情のもとで有効需要を国内喚起しようとする場合には、どうしてもその一番大きい消費資源になる個人消費を増大させるということが成功しなければ無理だろうと思うのです。それは、企画庁の発表しておりまする数字から見ても、大体消費支出というものは、総生産のうらの五二・何%を占めているわけですから。しかも、そのうち勤労所得の占めている率が六二%を占めております。したがって、全体として約三分の一というものは消費支出で造成されなければいけない。ところが、いまの経済界の実情からいうと、やはり賃上げはほとんどストップするという態勢をとっておる。こういう情勢の中では、国内需要はなかなか喚起する態勢というものは出てこないだろうと思います。そこで私は、どうしてもこれは海外におけるところの輸出というものに相当力を入れなければいけないじゃないかと思うのです。この問題はあとで通産省にも聞きたいところなんですが、そこで、問題になるのは、いわゆる共産圏に対する輸銀の使用の問題があると思うのです。通産大臣は、先般ヒルトンホテルでの十七日における日本生産性本部における特別講演の中で、輸銀使用の問題などはいつか解決しなければならぬということを話されております。この輸銀使用の問題について、大蔵大臣は、共産圏に対する、特に中共に対する輸銀使用については吉田書簡の問題、これは非常に重要な問題なんですが、いま現在不況克服の側面からどういうふうにこれを処置しようとしておるか、この考え方だけをひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  136. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 不況との関連でありまするが、わが国の国際収支という大事な問題から見ましても、輸出ということは非常に重大な問題だと考えております。そういう立場からあらゆる努力をしておるわけですが、ただいまお話しの共産圏貿易、これにつきましてはしばしば本席で皆さんから申されておりますとおり、政経分離という範囲内におきましてできる限りの拡大をはかっていく、こういう方針で対処しておるわけであります。そういう方針のもとにおきまして輸銀がどういうふうな扱いをするか、これは、大体輸銀の融資の運営につきましては輸銀にまかしておるわけでありますが、問題がある際に輸銀が政府に相談する、こういうたてまえにいたしておるわけであります。
  137. 石野久男

    石野委員 大蔵大臣はお急ぎのようですから、私は、あとでまた終わってから来ていただいたときに承りたいと思います。  この際、外務大臣にお聞きしますが、日韓条約が妥結された後、両国の間に、請求権の年度実施計画を設定するにあたっての会議はひんぱんに持たれていると思いますが、その実情はどういうふうになっているか、ひとつこの際お聞きしておきたい。
  138. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事務当局から申し上げます。
  139. 西山昭

    ○西山政府委員 お答えいたします。  初年度の実施計画につきましては、目下韓国側と内々打ち合わせ中でございまして、大体の韓国側の計画がまとまりますれば、日本側と正式に会談をして決定をいたす段取りになっております。
  140. 石野久男

    石野委員 最近にその会合が持たれると聞いておりますが、いつごろ、どういう予定になっておりますか。
  141. 西山昭

    ○西山政府委員 協定全体につきまして、実施手続の問題と、それから内容につきまして初年度の実施計画と、両面があるわけでございますが、実施手続の問題につきましては、韓国側とほぼ了解に達しまして、若干の点を除きまして話が相当進んでおります。まだ最終的には至っておりません。実施計画の面につきましては、韓国側の計画考え方、その他をいま非公式に両国間でいろいろ話を聞いて、日本側の意見も申し伝えておる段階でございまして、遠からず正式の会談が開かれる運びになると思っております。
  142. 石野久男

    石野委員 遠からずというのは、もうこの二十二、三日ごろにその話があるというふうなことを聞いておるのだが、それはどんなふうになっていますか。
  143. 西山昭

    ○西山政府委員 正式の会談をいたします前に、相当考え方を煮詰めて、会談が円滑に行なわれることが望ましいと考えておりまして、まだ最終的に、いつ開始するという日取りは確定いたしておりません。
  144. 石野久男

    石野委員 外務大臣に聞きますが、この請求権の使用計画というものが韓国の側から出てくる場合、おそらく、情報でわれわれの承知しておる範囲では、相当早期にこの請求権の実額を受け取る、やはりそういうかまえをしているように見受けられます。そういうようなかまえで計画案が出てきたときに、それに対して対処するのには、やはり政府側としても何らか考え方をまとめておかなくてはいけないと思うのです。いま請求権の実施計画について、いろいろとわれわれの聞いておるところでは、たとえば、向こうにおける基本建設部門に対してどういうふうに使うとか、あるいは農業部門に対してどういうふうに使うとかいう、そういうような案があるようでございます。それらに対して政府としては、韓国の経済建設に寄与するために、やはり何らかの考え方というものを、いま示されておる素案の中でお持ちになっておるかどうか、そういう点、ひとつ聞かしていただきたい。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ私どものところには参っておりません。まずこれは、韓国側ではっきりと国内的に計画をきめて、そうしてしかる後に日本に持ってきて、共同の委員会において審議をする、こういうふうになると思うのでありますが、すでに相当時期もたっておりますので、われわれとしては早く内容を知りたい、こう考えております。
  146. 石野久男

    石野委員 請求権の使用の問題は、これは当然貿易の問題にかかわってくるのですが、韓国との貿易の問題について通産大臣にひとつ承りたいのです。  大臣は、十七日に、生産性本部における特別講演の中で、中共と直ちに国交回復することはむずかしいが、輸銀使用の問題などはいつかは解決しなければならないという御発言をなさいました。この問題について、もう少し詳細な大臣の考え方をひとつ聞かしてもらいたい。
  147. 三木武夫

    ○三木国務大臣 貿易の面においては、イデオロギーにとらわれないで貿易を拡大していきたい。これは、こういう平和共存の時代に、その基礎をなすものは貿易の拡大ということでしょう。ただしかし、国交の回復していない国々、これに対してはいろいろな障害があるわけです。中共しかり、北鮮しかり。こういう国々に対しては、国交の回復しておる国々には、貿易協定もできますし、通商条約も結べるけれども、そういうものがないわけです。したがって、いろいろな障害はあるけれども、しかし、そういう国々とも貿易は拡大の傾向にあることは事実です。大体輸出入合計で十億ドルくらいの共産圏貿易、これは十億をちょっとこえるでしょう。日本は自由諸国の中で、イギリス、西独に続いての貿易額であります。したがって、中共に対しても、中共にいつまでも輸銀を使わないという、いつまでも中共の貿易にはプラント輸出に輸銀を使わないのだという合理性は私はないと思う。しかし、いろいろなケース・バイ・ケースで自主的に判断をして、輸銀を使うか使わないかということはきめるべきで、いまは輸銀を使っておりませんが、いつまでも永久に中共貿易には輸銀を使わないのだという理屈は成り立たない、将来においてこの問題は再検討されるべき問題だ、そういうことを申し上げたのであります。それはいつかということは、まだそういうケースも起こっておりませんし、具体的に起こったときにケース・バイ・ケースでこれを処理していきたい。永久に輸銀を使わないという理屈は成り立たない、こういう考えです。
  148. 石野久男

    石野委員 大臣はいま、そういうケース・バイ・ケースで輸銀の問題については対処していくという話です。しかし、そういうケースがまだ起きていない、こういうことですが、現にプラント輸出や何かの問題で、輸銀を使うか使わないかということが非常に重要でもありますし、問題になっていると思います。ことに、中国の問題にしても、あるいは北の朝鮮の問題にしましても、輸銀を使うか使わないかでその貿易量が飛躍的に伸びる可能性のものがたくさんあると思います。そういう問題は、担当大臣として十分おわかりだと思うのですが、そういう点についてどういうようなお考えを持っていますか。
  149. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国交の未回復の国に対して貿易の場合、ソ連とか東欧などには、プラント輸出でもちろん輸銀を使っておるわけであります。中共、北鮮が問題になるわけでありますが、この問題は、輸出入銀行も政府といろいろ相談することになりますから、これは問題の一つで、そういう場合にいろいろな要件がある、そのときの自主的判断の中には。単純に貿易は拡大したらいいというばかりにはいえない。いろいろなそのときの条件、これが政府が自主的な判断をするという中の要素になるわけで、したがって、いまは北鮮に対しても輸銀を使っておりませんが、しかし、私が言っておるのは、永久にこれを使わぬというようなことは理屈が合わない。将来においては解決しなければならぬが、いまは、現実にいろいろと困難な事情もあると私は思う。しかし、まだ具体的にそういう問題も起こっておりませんが、まあこれは、将来いつかということは言えませんよ、将来において解決をされなければならぬ課題の一つである、こういうふうに考えております。
  150. 石野久男

    石野委員 われわれは、いま経済の不況克服のために輸出が非常に大事だということを考えており、そしてまた、あるいは中国とか、あるいは北朝鮮等に対しては、早急に他の共産圏地域におけると同じような形で、あるいは自由主義諸国とも変わりなく輸銀の問題は使うべきだ、こういうふうに考えておる。いま大臣の話を聞いておるというと、今日の段階で困難な事情があるというお話である。その困難な事情というのは、どういうことを言っているのですか。
  151. 三木武夫

    ○三木国務大臣 国交が回復しておりませんから、政府間の協定というようなものも、貿易協定を結ぶわけにはいかない。国交未回復によるいろいろな障害がある。
  152. 石野久男

    石野委員 貿易は現実に行なわれておるのです。国交回復をしないというところであれば、そうするともう貿易は全然やらないという意味なんですか。
  153. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そうではありません。中共貿易なども進んでおるのですけれども、輸銀ということになってくれば、ある長期に信用の供与という形をとるわけでありますから、国交を回復しておる国のようにスムーズにはやはりいかない。
  154. 石野久男

    石野委員 そうすると、いま大臣のお話によりますと、中国とかあるいは北朝鮮との間の貿易については、もう国交が回復しなければ絶対に輸銀の問題は使わない、こういうふうにおっしゃるわけですか。
  155. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は、繰り返して述べておるように、この問題は将来解決しなければならぬ、しかし、国交が回復してないだけに、国交を回復しておる国のようになかなかスムーズにいかない、障害はあるけれども、この障害はやはり解決をされなければならぬ課題である、こう申し上げておるのです。
  156. 石野久男

    石野委員 だから、その困難な障害があるからというこの困難な障害というのは、担当大臣として何を言っているのか、それをはっきりしていただきたい。
  157. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま言っているように、国交を回復していないわけですから、いろいろな点で、行き来の点においても自由でもありませんし、そういう点で、国交が回復して自由に貿易協定が政府間で結ばれて、しかも貿易の商社が自由に往来のできる国とできない国というものについては、やはり貿易上のいろいろな障害があることはやむを得ない。それから、国交を回復していないのですから、いろいろと両国間の正式な話し合いというものがなかなかうまくいかない。
  158. 石野久男

    石野委員 そうすると、大臣の言うのは、国交が回復しないから政府間の協定ができない、だから輸銀は使えない、長期にわたるところの信用を供与することはできない、こういうわけですね。そうすると、このトップマネージメント・セミにおいて話したことと矛盾するじゃないですか。そんなあんた二枚舌を使ってはいかぬですよ。
  159. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いや、それは、私の言っていることは何らの矛盾はしないわけです。中共や北鮮に対してはなかなかいろいろな障害があるというのは何かと言うから、それは、国交を回復していないためにいろいろな障害というものが、回復している国よりもあるということです。だから、輸銀を使うか使わぬかということは、基本的に問題が起こったときにケース・バイ・ケースで政府が自主的な判断をいたします、こう言っておるわけで、そこで、私が講演で言ったのも、いつまでも輸銀を使わぬという状態ではいけないだろう、やはりいつまでも共産圏の国交未回復の国に対して輸銀を使わないという理屈は成り立つまい、将来においてはこの問題は解決しなければならぬ課題の一つである、これが私の考えでございます。
  160. 石野久男

    石野委員 重ねて聞きますが、大臣はこういうふうに言っている。中共と直ちに国交を回復することはむずかしいがという前提で、輸銀使用の問題などはいつかは解決しなければならない、このことばは、中共との間に国交回復ができていない間でもその話をするんだ、こういうことでしょう。だから、いまの答弁も、両国間に国交正常化が行なわれていないから、政府間協定がなされていないから、だからやらないということではないんですね、この意味は。そこで問題は、大臣の言っている意味はどういうことなんですか、ちっともわからぬ。
  161. 三木武夫

    ○三木国務大臣 貿易上国交を回復していない、行き来なども、いろいろ向こうから入国するというような場合にでも自由にはいかないですから、そういう点で国交回復の国々よりも貿易上の制約というものがある、入国問題に対してもいろいろ問題が起こったり。それだから、国交回復をしておる国としてない国とは貿易上障害が全然加わらぬのだとは私は思わない、しかし、この輸銀の問題は、国交を回復するとかしないとかいうことが、これが大きな前提ではない、政府がいろいろなことを考えて判断をして、国交回復をしてなくても輸銀の問題は解決をしなければならない課題であるということを私は申し上げておる。
  162. 石野久男

    石野委員 いまの大臣の答弁で、努力をしようとする意図はよくわかるけれども、しかし、先ほどから話をしておるその困難な事情がある、そこが引っかかっているんだという、そういうお話です。だから、その困難な事情というのは何なのかということをわれわれがはっきり知らなければいけないと思うのです。だから、いま大臣が、担当の大臣としてこの輸銀を中国やあるいは北朝鮮に使うことができない困難な事情とは何なのであるか、その点はっきりひとつ……。
  163. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、いま第一番には、そういう具体的なケースは起こっていない。これは断わったですね。そして問題は、商談は御破算になって、その後新しい事態は起こっていない。起こってきたときに、そのときのいろいろな政治、経済、日本の事情、あるいはその対象、どういうものがその貿易輸出の対象になるか、これはいろいろなものが私は自主的の判断の中に入ると思う。これを、そのときそのときによって政府が自主的な判断をする自由は持っておるべきで、まだ起こっていない場合に、その問題を一々あげて、ここでこれだと言うことはなかなか困難です。その具体的なケースが起こってきたときに、そのケースごとに政府が自由に判断する自由は政府が持つべきだという考えでございます。
  164. 石野久男

    石野委員 いまの大臣の答弁の中に、その困難な具体的な問題の中に政治、経済その他、こう言っております。そうすると大臣は、中共貿易は、政府のたてまえは政経分離だ、こう言っておる。政経分離であれば、政治からくるところのそういう困難な事情は出てこないはずだ。政治からくる困難な事情とはどういうことなんです。
  165. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは、政治の中に、いま言ったような国交の問題なども政治の中に入るでしょうね。だから、一般の判断というものを一々ここで具体的に、これだこれだと言ってあげろということに対して、これは少し私は無理な注文だ、政府は、いろいろなケースが起こってきたときに、そのときの諸般の全体の情勢、日本の事情等も勘案して、そうしてこの問題を判断をすべきで、私はできるだけこの問題を早く解決したいという論者であります。この問題は、やはり政府が解決しなければならぬ問題の一つである。しかし、それが、石野委員がお考えになってもいろいろむずかしい情勢があることはおわかりのとおり。私は、できるだけこれを何とか解決できないかと考えておる者の一人であります。しかし、いろいろと問題が起こってきたときに自主的にこれを判断するという以上に、こういう問題がある、こういう問題があると言って一々問題が起こってないときに、ここにあげて申し上げることは適当でないと私は思う。
  166. 石野久男

    石野委員 私は、三木通産大臣が非常に貿易を前向きで広げていこうという意欲を持っておることはよくわかります。わかるのだけれども、大臣がたとえば生産性本部で話したことと、いま国会で御答弁なさっておることとの間にどうもつじつまの合わない意見を聞くわけなんです。政府はもとから、前々から政経分離で中共貿易をやるのだと言っておる。しかし、いま大臣の話によると、政治、経済、いろいろな事情によって困難が出てきておる、こういうわけです。そうすると、いまの大臣の答弁によれば、中共貿易というのは政経分離ではない、政経不可分のたてまえで困難が出てきておるのだ、こういうふうに受け取ってよろしいわけですね。
  167. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政経分離ということは、私は、やはり政という中の重点は、国交が回復してないということを重点に置いているのです。政治、経済というものは、そういうふうに考えないと、なかなか関連性を持ってまいりますから。その政というものの重点は、やはり国交が未回復であるというようなことを私自身は重点に置いて考えておる。そうでないと、政経というものがそんなに大根を切るように分けられるものだとは思っていない。
  168. 石野久男

    石野委員 いま政経分離とか、あるいは政経不可分とかいうことは、中国貿易についての日本の進む面では非常に重要なんです。特に政府は、中国貿易については政経分離という、こういうたてまえで中国に対する経済、貿易の関係国民に納得させてきておるわけです。われわれは、中国に対しての貿易というものは政治、経済を分離しては考えられないというたてまえできておるわけです。これは一体のものだ、こういうふうに考えておる。また、中国の側でもそういうふうに言っておると思います。  そこで、いま大臣のお話によると、政治と経済とはやはり大根をぶった切るようには考えられないのだ、これは一つのものだ。だから、大臣の考え方としては政治、経済の両面から中国貿易の困難性というものが出てきておるという。特に国交という問題は、これは経済行為ですか。
  169. 三木武夫

    ○三木国務大臣 経済行為も伴いますよ、国交の中には。しかし、私が言うのは、そういうふうに政経分離というものは、やはり国交夫回復、これはもう大きな政治問題ですね。国交が回復してない、それはやはりいろいろな形の条約を結んで国交を正常化する、これは大きな政治ですから……。そういうことがなくても、やはり貿易はやっていくのだというところに政経分離というものの本質があるのだ。それをこまかく言って、政治と経済というものは、いろいろなことをいえば結びつきはありますよ。しかし、根本においては、国交は回復してなくとも貿易はやるのだということは、政経分離の大原則だと私は思います。
  170. 石野久男

    石野委員 そうすると、大臣の考え方は、政経不可分というようなたてまえで貿易というものは考えなければならぬという基本的な考え方があると私は思うのです。ただしかし、諸般の事情によって困難性があるという。その諸般の事情はそれじゃどういうことなのか。ということは、この際われわれは、やはり中国は隣の国だし、しかも人口は七億をこえるという非常に膨大な需要市場というものがあるわけです。そういうところであって、しかも中国の側でも日本との貿易は進めたいと言っておる。日本の財界でも中国との貿易はやりたい、こう言っておる。そういうことであるにもかかわらず、中国貿易がうまくいかないというその理由は、諸般の困難な事情によりということだと、こういうふうに大臣は言われるのだから、その諸般の困難な事情は何であるか。これは、この際われわれが日本の経済外交上の問題としてはっきりとしておく必要があると思います。大臣、ひとつその点をもう歯に衣をかぶせないではっきり言ってくだい。
  171. 三木武夫

    ○三木国務大臣 第一番には、いま輸銀の問題が具体的に起こってないのです。中断されておるわけです。だから、そういうものが具体的に起こった時点において判断するということが現実に即したお答えだ。これは、いま中断したまま起こっていないですから、起こったときには、そのときの情勢で政府が自主的に判断をいたします。
  172. 石野久男

    石野委員 大臣が、いまそういう事態が起こっていないというけれども、それはあるんですよ。あるんだけれども、問題は、先ほども話したように、日本の政府が政経分離だというような、そういう形で中国貿易をするというたてまえをとっている。そういうたてまえから問題は中断された形になっている。経済行為としての中国と日本との商取引の問題は、具体的に日本の業者と中国との間にはもうひんぱんに行なわれている。最近では、それはLT貿易ではない、いわゆる友好商社貿易として行なわれており、最近の事情からいうと、日本の代表団が行って、肥料の二百万トンからの契約内容を持った非常に大きな仕事までしてきているわけなんです。だから、この問題がもし輸銀というものを使えば、日本の貿易の上からいっても非常に有益である。しかも年間二百万トンという肥料の輸出ということになれば、日本の業界に対してそれは非常な潤いになってくるだろうし、特に今日の不況段階を克服するのに非常に大きなまたその出口になってくると私は思う。そういう具体的な問題はあるけれども、現実には日本の政府が政経分離だというたてまえで貿易を見ているから、これが事態をその面に出してこないだけなんです。ほおかぶりしているわけです。じゃ、そういうふうにほおかぶりさせるような政府の対中国貿易の困難な事情のよってきたるところは何であるかということを私どもは突きとめなければ、せっかくこの不況を克服するいい材料があるのに、それを見捨てることになってしまう。しかも、せっかく努力している財界の諸君に対してこたえることはできないじゃないですか。何が困難なんですか。
  173. 三木武夫

    ○三木国務大臣 政経分離ということが輸銀が使えないということじゃないのですよ。国交が回復してなくても貿易はやろうということですから、そのことは貿易に障害がない。しかし、いまは具体的にそのケースは起こっていないが、ケースが起きたときに政府が自主的に判断する。私全体の見解から言えば、やはり貿易のアジアでの拡大を阻害するものはベトナム紛争だと思う。アジアでやはり経済協力とか貿易の拡大を促進するためには、ベトナム問題が早期に平和的に解決されるということが私は前提だと思っている。そういう意味で、中共側においても、このベトナムの平和的解決に中共も協力をすべきである。アジアにおいて、あるいはアメリカもまたその努力もしておるようであります。そういうことで、アジアが戦乱のちまたにあるということが、貿易の拡大の大きな障害になる。一日も早くこれが平和的に解決されるということは、日中貿易のためにもこれは非常に改善の材料になる。だから、しいて具体的に——まだ起こってないですから、これだあれだということを指摘せよということでは私は申し上げられませんよ。しかし、政治情勢全般として、アジアでアジアの紛争が起こっておるということは、これはもうアジア貿易全体の大きな障害であるということは申し上げてよかろうと思います。
  174. 石野久男

    石野委員 大臣は、問題を変なところへそらしてしまう。もちろんその問題で、時間があるなら、それは論争しますけれども……。  ベトナム問題が中国との貿易を阻害している。それは一つの要因になることは私は否定しません。けれども、今日、日本と中国との貿易の基本的な問題になるのは、そういうことのほかにある。日本の側にあると思うのです。やはり日本の中国に対する貿易政策の中で、たとえば輸銀を使わないというのは、中国の側の意見じゃありませんよ。日本の側の意見ですよ。ベトナム戦争があるないにかかわらずこの問題は存在しているわけです。ベトナム紛争がこんなに苛烈にならない前からでもこの問題はあった。だから、問題をそういうベトナムの問題まで持っていかないで——いや、基本的には持っていってもいいのです。でも、私は、ここでやはり日本の貿易を広げるために、経済外交をスムーズにさせるために、特に近隣国との間の中国との貿易をするために、輸銀を使うということは非常に有利であると思います。それをなぜ日本の政府が輸銀が使えないようにしておるのか、ここに問題がある。その問題の基本的なものを、大臣は、いろいろな困難な事情と、こういうことで話されたわけです。だから、いろいろの困難な事情というのは何なのか、それは吉田書簡なのかどうか、その辺のところをはっきりそう言ってください。
  175. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その前に、輸銀を使わなくて中断していますね、そのときにはいろいろだ困難な事情で政府がそういう判断をしたわけであります。将来のことはこれから出てきてからのことです。しかし、私と石野さんとの考えの違いは、アジアの平和というものがこの問題に直接関係がないとは私は思わないんです。貿易の大前提であるやはり平和の問題というものが解決をされなければ、不況のために貿易を拡大せなければならぬといって非常に輸出の振興を説かれるけれども、その大前提になるものはアジアの平和である。これは非常に基本的な問題です。
  176. 石野久男

    石野委員 三木通産大臣は、アジアにおけるところの平和がなければ中国貿易は広がらないというお話です。全般的なアジア貿易をどういうふうに見るかということの中に、中国貿易はもちろんあるのだと思います。私は、いま全般的なアジア貿易ということを論議の前提にはしておりますけれども、今日の問題では、輸銀を共産圏、特にアジアでは中国及び朝鮮に対してなぜ使わないのか、こういうことを言っているわけです。だから、アジアにおけるところの平和の問題が確立することは望ましいことだし、私は何もそれを否定しません。しかし、そこへいくならば、中国がもう少し平和に対して努力せよ、こう言っているが、中国は何もやっていない。むしろ日本がベトナムに対する戦争への基地を提供している、いろんな軍事的な物資を輸送する、この根拠地を日本が提供しておるし、あるいは兵力をそこに注入する基地になっておる。むしろ日本こそそれを断てば中国との間の関係はもっとスムーズにいくだろうし、あるいはもっとアジアの平和の問題がスムーズに進むだろうと思います。私はいまここで時間がありませんから論議いたしません。だから、大臣も、その問題があるならばまた別の機会にやりましょう。ここでは中国と日本との貿易について、輸銀をどのようにして、なぜ使わないのかということについての困難な事情について、端的にひとつ話をしてほしいのですよ。平和だとかなんとかでなしに、なぜできないのかという問題をはっきりしないと、この問題は前進しない。
  177. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは、中共貿易に輸銀を使うという具体的な問題の起こった情勢において政府が自主的に判断する過程ですから、いま中断しているのですから、それよりお答えのしようがない。具体的な問題で……。
  178. 石野久男

    石野委員 私の持ち時間がなくなってしまうから先へ進みますが、輸銀の使用の問題と、もちろんこれは延べ払いの問題が出てくるわけですよ。延べ払いはやはり輸銀を前提にしなければ、なかなか一般の延べ払いに対する根拠が出てきません。しかし、中国にしましても、あるいは朝鮮にしましても、額の少ないものについては民間でも延べ払いを自力でやったりしている。そういう自力でやっているものに対して、現状は、政府は傍観しておるというのが実情ですよ。こんなことでは、大臣は、日本の輸出を伸ばそうという熱意がないとしか見られないのですよ。いまほんとうに三木通産大臣に輸出を増強しようという考え方があるならば、ちょうどこの生産性本部で話したと同じように、その熱意を持って、やはり延べ払いの問題について政府が力をかす、そういうたてまえをとっていかなくちゃいけないのじゃないかと思います。中国の問題あるいは北朝鮮の問題について、輸銀を使うという問題についての政府考え方は、ケース・バイ・ケースでいく、この次にそういうケースが出てきたら、これは大胆に輸銀を主張するということについての政府の支持、あるいは積極的にそれを進めるための努力を通産大臣はやるのですか、どうですか、その場合に出てきたらやりますか。
  179. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま仮定の問題としてお答えすることは困難です。具体的に起こった場合に、そのときに判断するよりほかないですが、私自身は、できるだけこの問題というものは前向きに処理したいという自分の考えであります。しかし、問題が起こってないときに、みんなやるのかやらないのかというお答えはできません。そのケースが起こったときに、具体的にその問題に対する判断をするよりほかない。自分の立場としては、できるだけこの問題は前向きに処理したいというのが自分の考えであります。
  180. 石野久男

    石野委員 その場合に、一つだけ聞いておきますが、吉田書簡というものにはもう関係なく処理できるかどうか、通産大臣の意見を聞いておきたい。
  181. 三木武夫

    ○三木国務大臣 吉田書簡というものは、そういう歴史的な事実というものはあったでしょうから、いろいろなことを考える場合に、そういう歴史的な事実も自主的な判断の中に入るかもしれません。しかし、吉田書簡というものは条約とか取りきめではないのですから、永久に日本政府を拘束するものだと私は思っていないのです。
  182. 石野久男

    石野委員 いま中国との貿易は非常に大きく伸びておりますし、それから北朝鮮との貿易も非常に伸びておると思います。実際この通関統計を見ましても、昨年におけるEECに対しての貿易量あるいはまたEFTAに対する貿易量よりも、共産圏のほうが上位にきておると思います。ことに中共とかあるいは北朝鮮の場合では、非常な伸びを示しておるわけであります。私はここでもしこの延べ払いの問題で政府が好意的な立場をとり、そうして輸銀などを使うことができれば、飛躍的に伸びる可能性を持っておると思います。大臣はひとつこの際、こういう問題が具体的に出ましたときに、それらの問題について、漸進的な前向きの態勢でということの意味は、そういう延べ払いに対して政府も配慮をする、こういうことを考えておるものと私は理解しておりますが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  183. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういうものが出たときに、輸銀を使って延べ払いをやるということをここで約束することはできません。それは政府の自主的判断をその時点において拘束することであります。しかし、通産大臣としてはできるだけこの問題は前向きで——前向きということの意味は、共産圏に対しても輸銀が使えるような状態に持っていきたいというのが通産大臣としての考え方であります。
  184. 石野久男

    石野委員 外務大臣にお尋ねしますが、総理大臣は近いうちに韓国を訪問する予定だということを前々から言っておりますが、その予定は大体どういうふうになっておりますか。
  185. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国交が回復した、正常化した今日において、できるだけ適当な機会をつかまえて訪韓したいということを言っておりますが、まだ時期はきまっておりません。
  186. 石野久男

    石野委員 それは、大体予算が終わったころというような予定になるのですか。
  187. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その点についても、まだ具体的にはきまっておりません。
  188. 石野久男

    石野委員 外務大臣に聞きますが、最近、北朝鮮との祖国往来の問題で、二名の者が朝鮮へ行って帰ってきました。その後引き続いて申請している者がたくさんおりますが、それらに対してなかなか認めないというような状態のようです。それからまた貿易の問題では、先ほどから通産大臣は、何も問題はない、こういうふうに言っておりますけれども、そうじゃなくて、プラントものでは技術者を入れなくちゃいけないというような問題があって、これはもう昨年の六月ごろから懸案になっている。こういうような技術者を入れるという問題にしても、あるいはまた祖国へ在日朝鮮人が帰るという問題にしても、これは両国の友好関係や、あるいは貿易量を増加させるという意味では非常に大事な問題だと思います。  最初に、通産大臣は急いでいるようでございますから、この技術者を入れるという問題については、最近韓国代表部からだいぶ突き上げがきて、できなくなっちゃったんだというような話も聞いておるのですけれども、それらの点について、既定の方針でこれを処理するというお考えでおりますかどうか。
  189. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは、政府としてもいま慎重に検討をしておるのが現在の事情だと思います。
  190. 石野久男

    石野委員 外務大臣に聞きますが、祖国往来の問題については、幸いに、二十年このかた全然自分の国へ帰ることもできなかった人たちが三週間ほど祖国へ帰って、親類、家族の方々、あるいは姻戚の方々と会って、非常に喜んで帰ってきました。せっかくこういう道が開けたのだから、私たちとしては、できるだけこういうような状態は続けるべきだ、こういうふうに思っております。ところが先般、新聞によりますと、そういうようなことはもうさせないのだというような話があった、こういうふうに伝えられておるのですが、実際にもうこういう問題は全然断ち切ってしまうのでしょうか。それとも政府考え方としては、こういうせっかく開かれた祖国往来の問題について、在日朝鮮人の諸君を祖国へ帰すという問題については、今後も従来の方針に従ってそれを続けていく配慮があるのかどうか、この際それだけをひとつ聞かせておいていただきたい。
  191. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 二十年あるいはそれ以上も行き来が絶えておって、余命もあまり長くはない、この際というような話を聞きますと、これはもう全く人道上無視するわけにはいかぬ、そういう気持ちでこの前は取り扱ったのでございますが、ただその結果、何か非常に政治的にこれを大きく意味をつけて、そして政治的効果をねらうというような扱いが見えるので、どうも私ども困っておるのです。でありますから、そういった問題は純粋にそういう問題として、関係するすべての人たちがそういう取り扱いをするということであってほしいと思います。私は決してこういう問題を断ち切るというような、そんな考えは持っておりません。今後もこの点は十分に考慮してまいりたいと考えております。
  192. 石野久男

    石野委員 技術者の入国にしましても、あるいは祖国へ帰る問題についても、ほんとうに人道上の立場で行くものと、それから純経済的な立場で来るものと、政治的なものとは違うと思うのです。こういう問題は政府としても十分考えてもらって、ほんとうに人道的な立場で、もう何年間も——これはわれわれが自分のことを考えたってわかると思います。沖繩に対して自分たちは簡単にはいれないということは実に残念なことです。と同じように、在日朝鮮人の諸君が祖国へ帰るというようなことは、淡々として政府としてはこれを認めてやらないと、これは世界の笑いものになってしまう。同時に技術者を日本に入れるということも、商談のために来る者は何のことはないのですから、それははっきり、そういうことと政治を混乱させないたてまえでひとつ処置してもらいたい。これは特にお願いしておきたいと思います。  請求権問題について、特に民間経済協力の問題で、通産省が相当程度の通関を許しております。いまどのくらい韓国との間に通産省は輸出認可をしておるのか。それをひとつこの際聞かしてもらいたい。
  193. 三木武夫

    ○三木国務大臣 民間の信用供与によるものが十一件、八千万ドル、それから通常の貿易は、御承知のようにこれは別でありますが、昨年度の統計で約一億八千万ドル、それから輸入が四千百万ドル程度であります。
  194. 石野久男

    石野委員 いま韓国における外貨保有量は、まだ非常に逼迫した状態にあると思います。最近の外貨保有はどのくらいになっておるのでしょう。
  195. 加藤匡夫

    加藤(匡)政府委員 現在、大体一億三千万ドル程度と思われます。
  196. 石野久男

    石野委員 大臣にこの際聞いておきたいのですが、韓国におけるところの外貨の事情は非常に逼迫しておるし、それから輸出入の面から見ましても、国際収支の面で韓国の事情は必ずしもよくないと思います。日本が、片方では賠償、いわゆる経済協力という面で日韓条約に基づくところの有償、無償の貿易をする。それから片方では、民間がそういう形でやっていく場合に、向こうの支払い能力から見て、日本の貿易がややもすると輸出過剰になってしまって、焦げつきの状態が出てくる、取り立てが困難になる。さきにオープンアカウントの際に、現在でも十数年越しで四千何百万ドルというものが焦げついておりますが、そういう状態が出てくると非常に憂うべきことになるだろうと思います。通関で輸出認証をする場合に、大臣は、こういう民間の取引について何らかの基準でそれを制約するということを韓国については考えておりますか。それとも、それは放任しておきますか。そういう事情はどういうふうになっておりますか。
  197. 三木武夫

    ○三木国務大臣 われわれの立場としては、韓国が経済的にも健全な発展を遂げて安定をしてくれるということが隣国として願っておる点でありますので、いろいろな輸出の承認を与えるために韓国の経済にこれが役立ち得るということは、認証の場合にわれわれの非常に気を配っておる点でございます。
  198. 石野久男

    石野委員 大臣は昨年の十月に、通産省の幹部会で、日韓条約の批准と同時に積極化する民間ベースの経済協力について、窓口の一本化ということを強く指示をされたそうです。最近この韓国貿易の中で、たとえば自動車におけるトヨタと三菱との間のおかしなことが出ておるわけです。こういうような問題を通じて、たとえばコルトとコロナの変更にあたっての日本の業者間のいろんな競争なり、あるいはその結びつきというようなものが混乱を生じてきているような事情が出ております。この韓国貿易に対する窓口一本化の問題について、大臣はどういうような考え方を現に持っておりますか。
  199. 三木武夫

    ○三木国務大臣 われわれが日韓条約を結んで国交を正常化した。隣国の韓国が平和で繁栄をしてくれる韓国であることを期待しつつ条約を結んだわけですから、日本が過当競争によって韓国の経済に非常に——出先において日本の政府考えておるこの真意が曲げられるということは、非常に避けなければならぬ点でありますので、一本化といっても統制のようにはいかないですけれども、民間で経済界がまず日韓経済協力に対する団体をつくって、そこで、やはり過当競争の弊害を韓国の経済協力の上にあらわさないだけの自主的な、業界自身が調整をするような機関をつくる必要があると私は考えております。民間においてもそういう空気ができてきて、その民間の日韓経済協力に対する団体が結成されようという機運でございます。これは好ましい傾向だと思います。一々われわれは指示はできなくて、民間自身が過当競争を韓国を舞台にして繰り広げるようなことのないように、それだけ自制するだけのモラルが日本の経済界になくてはならぬと私は強く考えておるわけでございます。
  200. 石野久男

    石野委員 法務大臣にお尋ねしますが、最近、日韓条約ができてからあと、国籍選択の問題について非常に強制的な、いわゆる韓国籍を取得するための慫慂が行なわれておる、こういう事情が出ております。こういうことを法務省は指示をしているのでしょうか。たとえば、協定永住許可について、こういう法務省のビラをつくっております。これは、おそらく各地方自治体の町村の窓口に置いておくものだと思うのです。こういうふうに置いておくビラを、それぞれみんな役場の名前で個人にあてて全部これは送っているわけですね。こういうようなことなどは非常に——特に北の朝鮮に籍を持っている者にこれをやっているわけなんですね。こういうようなことは指示を出しておるのですか。どうですか、法務省。
  201. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいまのようなものは、役所のほうからとしては別に指示はいたしておりません。その現場で、役場ですか、何か取り扱いの者が便宜上そういうふうなことが何かの役に立つと思うてやったんでしょうか。私どもは承知いたしていないのでございます。
  202. 石野久男

    石野委員 法務省としてはこういうようなことはやらない、しかし、地方自治体のほうでこういうことをやっているということになると、これは一種のやはり国籍を強要するような指導、——これは地方自治体でやっているのかどうか知りませんが、とにかく、いずれにしてもビラは法務省のビラですからね。こういうビラを町村がこういうふうにして出しているわけですから、これは、法務省からの通知がなければこういうことはできないと思う。だから、こういうことはやらないのならやらないように徹底してもらわぬと困る。
  203. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 入管局長から答弁いたさせます。
  204. 八木正男

    八木政府委員 お答えいたします。  ただいまの刷りものは、窓口に置いておいて希望者に渡すようにという趣旨で配付したものでございます。もともと協定による永住の申請というものは、正直な話、非常な手厚い保護を永住者が受けることができるわけでありますから、われわれとしては、こっちから一生懸命売り込む必要は毛頭ないので、できるだけ厳選し、少しでも不明なものは出さないという非常にきつい態度をとっております。そして、市町村等については、そういった感触がいろいろ不徹底な面があるかと思いまして、協定成立後もたびたび私どもの係官を地方に派遣いたしまして、ブロック会議などで、あるいは都道府県、あるいは市町村の方々にお集まりをいただいて、そのたびごとに口をすっぱくして、一切政府としては立ち入った干渉などはしないのだから、いやしくもすすめておるというようにとられることを絶対にしてもらっては困るということを常日ごろ訓示しております。御承知のとおり、市町村に対しては指令権はございませんから、私どもとしてはそういう立場を強調して、そういう趣旨に沿ってやってもらうように言ってあるわけでございますが、今後とも気をつけまして、万一そのようなことが現実にありましたならば、その市町村に私どもあらためて注意を喚起することにいたします。
  205. 石野久男

    石野委員 法務省はそういうふうに考えていないことを下級の自治体ではやっておるということになると、在日朝鮮人の人は非常に混迷します。これは、やはり一つの国籍を強要する行為に類するし、それからまた在日している朝鮮人の諸君は何かにつけて、たとえば銀行などでも、早く韓国籍をとらなかったら融資はしてやらないぞ、こういうような形で韓国籍をとらない、いわゆる北の朝鮮を支持している諸君は、銀行の融資を受けられなくなるような状態に追い込まれておるのが実情です。これは法務省だけでなしに、あとで大蔵大臣に——銀行局がどういうふうな指示をしているのかわかりませんが、そういうふうな問題が川崎などにも出てきております。それからまた、警察関係では、警察が個別に歩いて、特に商売をやっておる朝鮮の業者の方に、早く韓国籍をとらなければいけないぞ、こういうような形の慫慂をしておるわけです。われわれは、こういうようなことは厳に慎まさなければいけない、法務省関係の問題については、こういうことは行き過ぎだからやはりこれは改めさせるように、法務大臣、ひとつしっかり指示をしてもらいたいと思いますが、それをやってくれますか。
  206. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この間の協定の趣旨を徹底させることは必要でありまするけれども、それから進んで強要にまぎらわしいような行動をとることは厳に戒むべきことであると思いますから、そういう意味において注意をいたします。
  207. 石野久男

    石野委員 法務省はそういうように国籍強要をしておりますが、また一面においては、教育の問題で、非常に民族教育を否定するというように見受けられる文部省の指示が下部に通達されておる。昨年十二月二十八日に次官通達で出されているところの文書は、まさにそういうものだと思います。  中村文部大臣にお尋ねしますが、これから文部省としては、在日朝鮮人の民族教育については、これを認めないという方針で文部行政をしていく所存ですか。
  208. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 お答えをいたします。  民族教育と申しますのは、その国の国語あるいは歴史とか事情を教育することをいうのだと思いますが、それ自体私どもは禁止をしようという意図はございません。ただ、日本の学校教育法で、日本の教育法人その他で法律上保護するに一体それが値するかどうか、こういう問題は問題点としてございます。したがってこの点については現在も各国の立法例、あるいは取り扱い例などを参考にいたしまして検討をしておる段階でございます。
  209. 石野久男

    石野委員 大臣、もう一つ聞いておきたいのですが、次官通達のあとのほうの記というところに、「このことは、当該施設の教育がわが国の社会に有害なものでない限り、それが事実上行なわれることを禁止する趣旨ではない。」ということを書いてあります。この「社会に有害なものでない限り、」という有害というのは、どういうことを内容としているものですか。
  210. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 いま御指摘のとおり「有害なものでない限り、」云々ということがつけ加えられておると思います。そこで有害とは何かということになりますが、これは世間でも言われ、また私どもにもそういう訴えといいますか、要望がありますが、民族教育それ自体は有害ではないと思いますが、それに関連をいたしまして、日本の諸制度あるいは憲法とか法律制度というものを非難したり、日本の憲法、法律上定められておる政治制度、こういうものに対して非難をするような向きがあるということをしきりと言われるのでありまして、これがどの程度に達しておるか、どういう状況であるか、私どもも調査はなかなか困難でございますから、関心は持っておりますが、具体的に事例をあげてどうということはいま困難な状況にありますが、もしそういうことがあれば、それに対しては何らかの措置を講じなければならない、またただほっておくわけにはいかない、こういう趣旨のことが含まれておると思うのであります。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  211. 石野久男

    石野委員 そうすると、大臣、どうもおもしろくないことがしきりと言われると、こう言われる。それを調べるという意味で、いわゆる各種学校としての在日朝鮮人の現に行なっておる学校教育等について、その面での有害であるかないかの調査をこれから何かやろうという意図があるということを言っておるわけですか。
  212. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 そこまで触れておるわけではございません。
  213. 石野久男

    石野委員 この際、いままであるところの、認可されておる各種学校などについては、これを取り消すとかなんとかいうことは、積極的に考えているのじゃないでしょうね。
  214. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 その点は現在研究をしておる段階でございまして、今後できれば、私どもとしては、何か各種学校の制度の中に一定の基準をはっきりさしたらどうかというように考えておりますが、いま結論を得ておる段階ではございません。
  215. 石野久男

    石野委員 私は、この民族教育という問題は、在日朝鮮人に対していま特殊の考え方で臨もうとするように見受けられる面が非常に感じられるのです。それではいけないと思うのです。民族教育というのは、日本におる在日朝鮮人の諸君に対してはそうであっても、日本人が外国に行った場合に、その外国で、たとえば公使館とかあるいは大使館その他在留している人々の子弟は当然日本の教育をしなくちゃいけない。その段階で、たとえば社会主義国に日本人の在留者がおる場合、その子弟に対して、その国は社会主義の国であろうとも、われわれはやはり日本の立場とすると、日本のような教育のやり方をする場合が出てくると思う。そのときに、その方針が違うからというので、もし社会主義国が日本人の教育に対して否定的な態度をとり、あるいはそれを弾圧するようなことがあった場合には、日本の国際的な関係を確立することができないし、また海外に在留する国民は非常に不安に追い込まれると思います。われわれはそういうことがあってはいけないと思うのです。政治体制、社会体制というものが現在世界には違ったものがある。そういう中で、政治体制の違った国民がそれぞれ海外に在留した場合には、それぞれの民族教育の自主性というものは認めなければいけないだろう。私は、やはり文部大臣はそういう方針で教育について指導しておるものと思います。在日朝鮮人に対してもそれと同じような方針で行なわれるものと思うのですが、この次官通達は、ややもするとそれを非常に曲解させるやに見受けられる面があるわけなのです。  私は、時間がありませんが、大臣にこのことだけは聞いておきたい。やはり外国人がその国に在留する場合、特に日本に在留する外国人、それは朝鮮人だけではないと思います。アメリカ人もおれば、イギリス人もおるし、インド人もおるし、いろいろおると思います。そういう人々に対するいわゆる民族教育というものは、同じような形で認めてやらなければいけないのだと考えますし、それらの間には何らの不平等な取り扱いをするという所存はないと思いますが、どういうふうに考えておりますか。その点、はっきり大臣の所見を聞かせておいていただきたい。
  216. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 抽象的な考え方としては、いま石野さんの御指摘になったのとわれわれも同じに考えております。日本人が外国におります場合に、日本の国語を教え、あるいは歴史を教え憲法を教えるということもやっておるわけで、それ自体はあえて非難すべきものではないと思います。ただ、それが日本の治安とかその他に悪影響を及ぼすようなことが万一あれば、それに対してどういう規制をするか、こういうことは当然考えなければ、日本の独立国としての立場上、ならないわけでありますが、民族教育をやっておるからこれはけしからぬ、あるいはそういうものは廃止させるとかいうような意図は考えておりません。ただ、問題は、純然たる民族教育で、日本の社会に貢献するところが何もなければ、それを一体保護する価値があるかどうかという議論は、法理論として残っておるわけで、この点は今後も研究を続けてまいりたい、かように考えております。
  217. 石野久男

    石野委員 民族教育を押えるとか、あるいは否定するとかいうことはないという文部大臣の所見は、よくわかりました。しかし、ややもすると政府は、在日外人としての朝鮮の諸君、特に北朝鮮を支持して日本におる諸君に対しては、偏見を持って臨む憂いがあるように思うのです。そういうことのないように私はお願いしたいと思います。ことに、そういう面は、政府考え方が非常に反動的な立場をとっておる。法務省なんかでも、革新的な分野に対しては非常に敵意を持ったいろいろなものの処理のしかた、あるいは行動のやり方をしておると思います。  法務大臣に、私は、こういうことを法務大臣は知っておるかどうか、これをひとつ聞いておきたいのですが、司法研修所の修習生に対してあそこの所長が訓辞をする中で、これはもうひどいことを言っておる。社会党なんというものをくそみそに言うような訓辞のしかたをしておる。「三百代言的な社会党は」云々というようなことを言っておるようです。私はこういう問題について、そういう訓辞をしておる所長がおることを知っておるのかどうか、ひとつ法務大臣に聞きたい。  この問題では坂本委員からも関連がありますから、委員長、ひとつなにしてください。
  218. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 そのことは一向承知いたしておりません。
  219. 福田一

    福田委員長 坂本泰良君の関連質疑を許します。坂本君。
  220. 坂本泰良

    坂本委員 これは、司法試験に合格しました者を司法研修所に二カ年間収容しまして、二カ年後に裁判官、検察官並びに弁護士になる者を養成する研修所でありますが、この研修所長である鈴木忠一氏が、昭和四十年の十一月二十九日に所長の講話をいたしたわけです。それによりますと、日本の法曹についてという講話であります。国民のために司法を運営するためいかになすべきかについて、裁判官、検察官、弁護士等の現状とその批判内容とする講話であります。その中で、裁判官、検察官についてはほとんど現状を肯定する見解を明らかにしながら、弁護士については多くの批判をやっておる。その中で、これは法律家ですから、裁判官、検察官あるいはその他の法律学究も入ると思いますが、「法律家は例外的な事柄をあたかも原則のように取り上げて論議をする、例外的な一、二の事柄をあたかも原則かのように取り上げて議論をする傾向がある、これは国会の社会党のような三百代言的な発言である、」こういうふうに述べております。時間がありませんから、その他たくさんありますが、その一つだけをここにあげたわけですが、鈴木忠一司法研修所長がこのような講演をしたことは、これは最も政治的中立であるべきにかかわらず、政治的中立を忘れて、公の立場でわが日本社会党を誹謗し批判したものである、こういうふうに考えるわけですが、この点についての大臣の所見を承っておきたい。
  221. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 先ほど申しましたように、全然そういうことを知らないのでございますが、したがって、内容についても承知いたしておりませんのでございますが、取り調べまして、何ぶんともごあいさつを申し上げます。
  222. 坂本泰良

    坂本委員 この研修所長の講話は、十八期生の五百名に対する講話であります。各一期からずっと現在二十期まであるわけです。この各期ごとに二、三回行なわれますが、これは講話といいますけれども、これら司法試験に合格した者に対する公の訓辞的なものとして取り扱っておる。これに対してはテープレコーダーをとって保存をしてある、こういうようなことですが、いやしくも三権分立の現憲法のもとにおいて、立法、司法、行政が確立をしておるこの現状において、司法をつかさどる法曹界においては、これは司法権の独立とも関連いたしまして、政治的には最も厳正中立でなければならないと思うのです。これが、弁護士あるいは裁判官、検察官となるべき、しかも司法試験に合格して二カ年の修習をしておる者に対する公の訓辞的なことをやる。これはまことに政治的中立を害しており、そこなっておるものである、政治的発言である、こういうふうに考えますが、その点いかがですか。
  223. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 御趣旨のとおり、そのとおりと思います。
  224. 坂本泰良

    坂本委員 この問題については、法務委員会におきましてテープレコーダーをとりまして、そしてその上でこれを究明したい、こういうふうに考えますが、ぜひひとつ大臣は、この司法権の政治的中立の問題というものを基本にしてこれを検討していただきたい。このような研修所長がおるということは、今後の司法権の問題に重大な関係がある、こういうふうに考えますから、本日は時間がありませんから、この点を要望しまして終わることにします。
  225. 福田一

    福田委員長 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  午後二時五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十六分休憩      ————◇—————    午後二時十六分開議
  226. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際申し上げますが、各党申し合わせの時間はお互いに厳守くださるよう御協力をお願い申し上げます。  昭和四十一年度総予算に対する質疑を続行いたします。栗林三郎君。
  227. 栗林三郎

    栗林委員 今日激増する出かせぎ農民の問題は、いまや農業だけにとどまらず、労働問題、社会問題としてもまことに憂慮すべき深刻な様相を呈しておるのであります。私は、この憂うべき深刻な出かせぎ問題に関して、政府はいかなる態度と方針でこれに対処されようとしておられるのか、またいかなる対策を講ぜんとしておられるのか、政府の所信とその対策について質問せんとするものであります。  しかし、この質問の前に、去る十六日、名古屋市における石川島播磨重工業名古屋造船所に発生しましたLPGタンカーの船火事事件に関してお尋ねしたいと思うものであります。すなわち、この事故によりまして、労務者十五名のとうとい人命が失われたのであります。私は、ここになきこれら十五人の不幸なみたまと遺族の方々に対し深甚なる弔意を表するものであります。  さて、これら十五人の罹災者の中には、気の毒な季節労務者が六名含まれておるのであります。栃木県一名、秋田県四名、その他一名の六名であります。彼らはすべて零細農であります。農業だけではとうてい生活ができない、生きていけないために、遠く出かせぎに来た人たちでありまして、まことに無残な事故といわなければなりません。この際、私は、この事故がどうして発生したのか、その事故の原因について承りたいと思うものであります。さらに、基準法四十九条に定められておる危険業務の就業制限に触れてはおらなかったかどうか、彼らの雇用主は一体だれなのか、労働契約等はあったのか、さらに、労働災害補償の適用とその手続はどうなのか、これらを含めて労働大臣から御報告を兼ねて御答弁をいただきたいと存じます。
  228. 小平久雄

    小平国務大臣 お答え申し上げます。  去る十六日に、名古屋における石川島播磨造船所で災害が起こりまして、十五名の多数の方々が生命を失われましたことはまことに遺憾にたえないところでございます。  まず第一にその原因でございますが、すでに新聞その他で報ぜられておりますように、被害者たちは、タンカーのLPガスタンクの外側にポリウレタンフォームという保温剤ですね、それの接着作業をいたしておった。その間に何らかの火源によってポリウレタンフォームが燃焼して、そして炭酸ガスが発生して窒息死と、こういうことに相なっておるのでありまして、火源がはたして何であったかということにつきましては、消防当局、あるいは警察、労働基準監督署等で目下調査中でございまして、はたして何が火源であったかということは、いまだ判明いたしておりません。  それから、それに従っておりました遭難者が、危険業務であって就業制限を受けるものではなかったかというお尋ねでございますが、それは危険業務で就業制限に該当する業務ではなかったと認めております。  それから雇用関係でございますが、これは、すでに御承知と思いますが、明星工業というものが請け負いまして作業をいたしておったのでございまして、今回の遭難者の諸君は、明星工業の直用の労務者であった、雇用関係はそういう関係に相なっております。  それから補償の関係につきましては、労災保険の関係におきまして、もうすでに現場にあらわれました遺族等に対しましては、御承知のとおり、遺族補償は年金制度でやるということになっておりますが、希望によりましては四百日分一時前払いもできますので、すでにどちらを希望されるかということの話し合いをいたしておりますし、現場に参っておらなかった遺族に対しましても、それぞれ連絡をとっておるところでございます。いずれにいたしましても、補償の関係はできるだけすみやかにやりたい、こういうことで努力をいたしておるところでございます。
  229. 栗林三郎

    栗林委員 危険業務の制限には触れておらない作業であったということでありますが、それでは安全管理の点では、これは遺憾のない措置がとられておった現場であったかどうか、安全管理の面からの御調査があればひとつ御報告願いたいと思います。
  230. 小平久雄

    小平国務大臣 安全管理の面でございますが、まあ造船業の場合のごとく多数の下請業者を使うというような場合におきましては、統括管理者というものを選定して、全体の作業従事者が一人の管理者のもとに安全を期するというたてまえにいまなっておるわけでございますが、その点におきましても、統括安全管理者も選定をされておりましたし、あるいは下請等との協議をするための協議組織等もできておりまして、そういう組織上の欠陥はなかったようであります。ただ、それらがはたして万全に作業しておったかどうかという点が当然問題になるわけでございますが、その点につきましては、目下詳細調査中でございます。
  231. 栗林三郎

    栗林委員 遺族に対する援護措置としましては、労災保険金の手続あるいは葬祭料、こういう法律に基づくものは何も心配がないようであります。秋田県の調査報告並びにわが党の出稼対策委員会で派遣しました調査員の中間報告とを合わせますと、大体労災補償金は約百八十万程度になるようであります。さらに葬祭料としましては、六十日分の計算でありますから、約九万円になるようであります。この程度は間違いなく支給される見通しであるようであります。さらに、明星工業及び石川島播磨造船では、一応見舞い金として十七万円それぞれ遺族に支給されたようであります。さらに、会社重役の方々の構成による対策本部を設置しまして、これら十五人の遺族の希望を聞いて、できるだけの保護援助の措置を講じていく、こういうことも私ども報告として承っておるわけであります。これら罹災者はいずれも貧困な方々であります。特にこれらの出かせぎ者の家庭はまことに悲惨な家庭状況にあるのであります。  私は、秋田県の調査資料に基づきまして、秋田出身の四人の家庭内容を若干かいつまんで申し上げますと、なくなった柴田民助君は、妻及び二人の子供を残してなくなったわけであります。そうして、田畑はわずか四反歩しかありません。柴田信一君は、これは純粋の日雇いであります。残ったのは父親と母、妹、三人であります。奥山勇君は、母と妻とあと子供三人、五人を家庭に残しておるのでありまして、ここの耕作反別は、田畑合わせて八反歩であります。しかも彼は七年前に火災にあって、三年前から毎年のように出かせぎをして、その家計を補っておったわけであります。さらに東海林松四郎君は、妻と子供四人を残してなくなったわけであります。この方の耕作反別は、田畑合わせて一町一反歩であります。以上秋田県関係者は四名でありますが、いずれもきわめて零細農家であります。したがって、残された遺族は、肝心の働き手をなくしたために、直ちに路頭に迷うような、そういうような状態に置かれている者が大部分であります。したがいまして、会社のほうではできるだけの遺族に対する援護措置を講じてくれるやに承っておりますが、どうか当局におかれましても、これらの遺族の援護助成につきましてはできるだけの措置を講じてやっていただきたい、切に要望申し上げる次第であります。  それでは農林大臣にお尋ねいたします。  出かせぎ者は、昭和三十五年を境にして激増しております。農林統計調査よりこの数字を取り上げてみますと、数字そのものはわれわれの調査の数字とは違いますが、激増ぶりは、これは間違いございません。三十五年、この年は農業基本法が制定される前の年であります。このときの出かせぎ者は十二万人と農林統計には出ておるわけであります。ところが、農業基本法が施行されてから、翌三十七年、一挙に三倍にふえておるのであります。三十六万に激増しておるわけであります。越えて三十八年はさらに上回って、約四十万近い出かせぎ者が出てきておるわけであります。いずれもこれは農林統計から申し上げた数字であります。このように、農業基本法施行前後から激増しておるわけであります。零細農の出かせぎは従来からありましたもので、五反歩以下の出かせぎ者は、今日でも昔と大きな変化はないのであります。ところが、今日の出かせぎの特色は、零細農の出かせぎの激増ではないのであります。専業農家またはこれに準ずる一町歩以上、いわゆる中農以上の出かせぎが激増しておるということでありまして、この層の出かせぎ者は全体の四五%に及んでおるのであります。しかも世帯主が三八%、あと取りが三五%、世帯主とあと取りとを合わせれば、出かせぎ者の七三%になるわけであります。まことに憂慮にたえない次第でありまして、農村崩壊の危機と言っても私は過言でないと思うのであります。わが党の調査によりますと、三十九年の出かせぎ総数は六十万をこえておるものと推定されます。しかも、ことしは不況といわれながら、生活に追い詰められた農民は、必死になって職場さがしをいたしました。そうして、悪条件の中にもかかわらず、職場をさがし求めて、大体昨年と同数の出かせぎ者が東京、大阪を中心に出てきて働いておる状況であります。  ここで私が農林大臣に聞きたいのは、何のためにこのようなおびただしい農民が、いろいろな問題を含みながらも出かせぎに出てこなければならないのかという、その理由をお聞きいたしたいのであります。私は、この出かせぎの理由は、農村の貧困と政府・自民党のあやまてる農業政策の失敗に起因するものと思うものでありますが、農林大臣はどのような見解をお持ちになっていらっしゃるのか、その御見解を承りたい。
  232. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 出かせぎの問題でございますが、いまお話しのとおりに、ここ数年間非常にふえております。ただ、三十八年がピークのようで、三十九年からまた若干減っております。これはお調べのとおりであると思います。  この出かせぎのうちで、東北地方が数においておそらく約半分を占めておると思います。したがって、東北地方が非常に多い。それから、東北地方のほかに北陸、それから次は北海道と、こういう順序であろうかと思います。  大体においてこの出かせぎがふえるということに相なりましたことは、もちろん他産業の非常な激しい成長がございまして、経済全般の高度成長がございまして、その間に農業との格差が大きい。農業に対する格差是正というものも、若干の向上はもちろんございます。ございますけれども、他産業の向上のほうがはるかに大きいというようなことから、一つの問題があるわけでございます。  もう一つの点を申しますと、やはり単作地帯が多いと思います。それは、たとえば米作単作地帯におきましては、ある意味においては近代化が進んでおる。したがって、省力経営が進んで、労働の減少に対する対策は整っておるけれども、単作であるだけに、つまり農閑期、ひまがよけい出てくる、こういう関係があります。そういうことで、単作地帯に特にそれが多い。こういうことは、あなたもよくお調べの方でありますから、よくおわかりであろうと思う。そして、それが零細農に比較的固定しておって、大きな経営の農家がふえてきたというところについては、これはこういうことでございます。つまり、小さいほうは、その地方においてすでに恒常的な兼業であった。つまり雇用関係がきまっている。三反歩だとかあるいは三反以下になりますと、どうしてもそれは何かやらなければやっていけないものであるから、あらかじめちゃんと兼業を持っておる。その兼業は恒常的な勤務なり、あるいは労働になっておるという関係でございます。ところが、大きなほうになりますとそうじゃありません。零細のものとは違って、そうがつがつする必要はないのであるけれども、いままでよりもだいぶん手があいてくる。それで、何とかひとつやっていきたい、こういう問題があるところへ、今度は都市のほうなり、あるいは土建関係からの雇用の要求が非常に多いというようなことから、したがって、恒常的でないものが多いわけでございます。さような実情から、大きなものにも及んでおるというのはそういう理由でございます。  それから、どこへ行くかということは、いまお調べであろうと思うが、土建が一番多い。しかも、東北において土建が多い。東北は七一%は土建でございます。全体からいえば五〇何%ぐらいが土建、その次は農林漁業のほうへ向くんでございます。その次は食品工業、といってもごくわずかなものでございますが、そういう実態になっておるのでございまして、現在少し出かせぎが減っておりますることは、やはり経済界全体が多少不況になっておるという問題がそれをあらわしておるものであると思うのでございます。大体そんなことじゃないかと思います。
  233. 栗林三郎

    栗林委員 時間がないから、要点だけを取り上げて申し上げてみたいと思います。  農業政策がうまくいっておれば、農業所得も増大するし、専業農家までもわざわざ夫婦別れをし、家族別れをして、そうして飯場生活などをするような出かせぎをする理由はないのであります。はたして農業政策がうまくいっているのかどうか。これはあなたのほうで出した白書に基づいて一、二点取り上げてみたいと思います。  まず、農家所得はどうなっておるか。この農家所得の推移をひとつ見てみたいと思う。これも三十五年には農業所得が五五%でありました。ところが、農外所得はその当時は四五%。まず半分以上が農業所得、半分以下が農外所得に依存しておった。これが三十五年。ところが三十八年には、ついに農業所得が半分を割ってしまった。四九・四%に下がったではありませんか。そうして農外所得が半分以上になってしまった。これだけでも農業がうまくいっているということは言われないと思う。そうして三十九年はさらに悪化して、農業所得は四七・八%、農外が五二・二%に増大したではありませんか。農家所得の形成の面で、かくのごとく農外所得に依存する度合いが増大するということは、まことに憂うべき現象ではありませんか。さらに、一町五反歩以上の上層農にも兼業化が進んでまいりました。そして上層農のほうが農外所得の伸び率がかえって高いのであります。これらの事実が明らかに専業農家の崩壊を意味するものでありまして、きわめて重大な事実と認識しなければならないと思う。  それでは、今度は農業所得だけで家計をまかなえる農家はどのくらいあるかを、これも白書で見てみましょう。農業所得だけで暮らしていける農家は、三十五年には一九・一%、二割足らずでありました。ところが、三十九年にはこれがずっと減りまして、一六・七%に激減したではありませんか。この二つを取り上げてみましても、農業政策はうまくいっていないということははっきり言えると思うのです。これで農業政策がうまくいっていると思いますか。この点について、ひとつ農相の、むずかしい答弁でなくて、もっとはっきりした簡単な答弁でよろしゅうございますから、そのものずばり答弁していただきたいと思うのです。
  234. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えいたします。  農外所得が農業所得よりも平均においてふえておることは、いまお話しのとおりでございます。しかし、一面において、農家のほうに貯金が非常にふえております。つまり農業所得のほかに農外所得がふえてきたということでありますので、農家所得がふえるということは別に悪いことではない。私どもの希望から言えば、専業農家が農業だけによってばく大な収入をあげることを一番好むのでございますけれども、それはやはり土地に制限がございますし、そう急激にふやすということはできません。そういう点でございまするがゆえに、都会の工場と違いまして、資本さえ投ずれば経営がどんどん大きく拡大するものでもありませんので、それはほとんど不可能なことであります。そういうことでありまするので、漸進的に進むべきものであることは言うまでもございません。そういうことでありましても、農業所得もふえておりまするし、さらにそれにプラスして農外所得がふえておるということでありますれば、別にこれはそのこと自体が悪いというものではない、こう思います。しかし、いまお話しのとおり申し上げまするならば、やはり農業自体によって所得がずんとふえていくという方向をとっていきたいということは、これは言うまでもないことでございます。そういう方面の努力も進めていきたい、こう考えておるわけでございます。
  235. 栗林三郎

    栗林委員 それでは、今度は農業経営の動向をひとつ見てみましょう。  三十五年には専業農家が三四%、三十九年は専業農家が減って二一%、これを農外所得がふえたからそれでよろしいのだ、こういうように安心をして見ていてよろしいのですか。さらに第一種兼業は、三十五年は三四%、三十九年は三七%、特に二種が三十五年に三二%のものが四二%、したがって兼業農家が七九%を占めておる。専業農家は二一%。一体、昭和四十五年までに自立経営農家を百万戸育成すると鳴りもの入りで宣伝しておった政府・自民党のこの自立経営農家百万戸は、これでふえますか。だんだん減っていくではありませんか。いまや農業収入だけで食っていけない農民が——農業収入で食っていけないんですよ。いけないから、ますます兼業あるいは出かせぎに依存せざるを得ない。これが出かせぎ者が激増してまいる理由であります。自立経営農家がどんどん兼業化していく、明らかに農政の失敗でしょう。  一方、農産物の輸入の状態はどうなっておりますか。年々ふえるばかりではありませんか。食糧自給度はついに七九%に低下しておる。これは深刻な問題ではありませんか。わが国はイギリスとともに世界の最大の農産物輸入国になっておるのであります。最大がつくから名誉であると考えておられますか。このことは、日本農業にとってはたして好ましい現象と考えておられるのですか。明らかに日本農業の大後退ではないでしょうか。  かくのごとく、農業基本法施行のときを境にして、日本農業は転落の一途をたどっておるのが現状であります。これでは農業者は農業所得で食っていけなくなることは当然でありましょう。多くの農民が生きんがため、あるいは経営赤字の補てんのために、好むと好まざるとにかかわらず、出かせぎせざるを得ない理由がここに存するのであります。去るも地獄、出るも地獄、進退両難にきわまった農民の悲惨な現実といわなければなりません。この際、農林大臣は、今日までの農政の失敗を率直に認めて、真に出かせぎしなくても食える農政樹立のために農業政策の転換をはかるべきだと考えるものでありますが、農林大臣の所信と覚悟のほどを伺っておきたいと思う次第であります。
  236. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いまお話しになりましたことでございまするが、順序は別でありましょうけれども、確かに輸入は非常にふえております。自給率は約八〇%、正確に言えば七九・幾らでございます。そのとおりでございます。との輸入関係から申しますと、国民全体の所得向上の結果として、日本内地において十分に生産することのむずかしいココアとか、あるいはコーヒーとか、バナナとか、さらに砂糖とか、そういうものが相当たくさん入っておるようになっております。  それから、畜産が非常に発達しておることは御存じのとおりでございます。その畜産の需要のごときも、年度別に見ますと、おそらく三十年前後から比較すると、いまちょっと数字はあるいは違うかもしれませんが、大体四倍くらい近くに伸びております。それに対して生産はどうかというと、若干それに追いついてはおらぬようでございまするけれども、非常な増加でございます。この畜産の大増加に対する場合において、草のようないわゆる飼料は、これは国内において自給すべきことは当然でありまするけれども、濃厚飼料になりますというと、これはなかなか急激に増産はできません。また、日本のように小さな土地において一億の人口を養っておるのでございます。こういうところにおいて、戦後十数年にして二千万石の米の増産をやっておる、これは非常な力であります。その上に動物のいわゆる家畜の濃厚飼料を急激にふやすということは容易ではありません。そういういろいろな問題がありまするので、飼料の増加というものも非常に多いわけでございます。  米の輸入につきましても、二、三年来反収がごくわずか減っております。しかし、人口は増加しておるという関係から、その需要に対して、最近二、三年の関係においては米も減っております。この需要に対しての不足、それはやはり輸入をいたしておる、こういう実態であります。もっとも米については、昨年以来、あなたもちょうど秋田県だと思いますが、非常な異常天候で、去年の四月ごろは天明以来の冷害であろうといわれておったにもかかわりませず、農民諸君と県並びに指導員諸君が協力一致してその冷害を防いでくれた。これは非常に私ども感謝しておる大きなことでございまするが、そういうようなこともありまして、ごくわずか減産をいたしておる。しかし、それでも米については九六%の自給をやっておるわけであります。だからして、非常に大きなものといわざるを得ないと思うのです。世界に類例がないと私は思うくらいであります。そういうことを考えますと、確かにいまお話しのとおりでありまするけれども、しかし、そう性急にこれらの問題を解決するということはなかなかむずかしいのであろう、こう思うのでございます。  申し上げることがまだあったように思いますが、ちょっと聞き落としましたので……。
  237. 栗林三郎

    栗林委員 農政をめぐって農林大臣と私との意見は平行線をたどっております。私は、この場で農政を論ずるために立ったのではありません。出かせぎ者に対する緊急の対策をぜひ立ててもらいたい、また、そういう対策があるならば承りたい、こういうことでここに立ったのでありまするから、この際、坂田農林大臣とは、残念でありますが、しばらくお別れをして、別の機会にまた農政を中心にして議論をいたしたいと思います。時間がありませんから……。
  238. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 政策の問題でございますから、ちょっとそれだけ追加して……。それで、出かせぎ……。   〔「発言を許していないんだから帰りなさい」と呼ぶ者あり〕
  239. 栗林三郎

    栗林委員 それでは労働大臣に、緊急と思われる具体的な出かせぎ対策につきまして、端的にお尋ねをしてまいりたいと思います。  先ほど申し上げましたように、私どもの調査によりますと、六十万からの出かせぎ者が今日東京、大阪に来ておるわけであります。その就労先は大体七〇%が土建であります。しかも、これらの就職はほとんど安定所を通じないものが大半であります。したがって、ここから賃金の不払いであるとか、いろいろな不祥事が発生する根源になっておるわけであります。そこで、私は、多くの問題の中から、緊急に対策を講じなければならないと思われる雇用の問題、下請の問題、賃金及び賃金の不払いの問題、動物飯場の改善に関する問題、こういう問題を取り上げて、労働大臣及び建設大臣にお尋ねしてみたいと思うのであります。  まず雇用関係でありますが、出かせぎ者の雇用関係が一番不明朗であります。土建業界はまことに複雑怪奇でありまして、幾段階もの下請があります。その下請の下に棒頭であるとか、飯場頭がおります。彼らは、登録をしておる業者との雇用関係を結んで来ている者もあります。ところが、登録もしておらない、事実は業者でもない、単なる世話役と称するもの、正式な雇用関係とは言いがたいが、そういう人たちと雇用関係を結んで現場に来て働いておるわけであります。そうして彼らの多くは、実際はぴんはねを常習とする労務供給をやっておるわけであります。中間搾取や、このような労務供給は法の禁ずるところでありますが、平然とこれが行なわれておるのが、これが土建現場の実情であります。一体、労働大臣は、法に禁ぜられておる中間搾取や労務供給がこのように白昼公然と行なわれておるというこの事実を知っておられるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  240. 小平久雄

    小平国務大臣 出かせぎ労務者の就労の関係でございますが、これは、先生も御指摘のとおり、職業安定所を通じましたいわゆる正常なるルートで就業をされるというものが比較的少ない、そういうところにいろいろの問題を派生する原因がある、こういうふうに労働省としても認識をいたしておりますので、労働省としましては、極力正常なルートに乗って出かせぎもしていただきたい、こういうことでいろいろ相談に応じましたり、指導をいたしましたり、あるいは就労地に相談所を設けましたりして努力をいたしておるのでございます。  御参考までに申し上げますと、昭和三十八年におきましては十八万人、三十九年におきましては十八万四千人が職業安定所を通じまして他の地域に就労をいたしておるのでございます。今後ももちろんこのような正常なルートに逐次乗ってもらうように大いに努力を傾けてまいりたい、かように考えております。  なお、御指摘の労務供給あるいはそれに伴う中間搾取、これらももちろん法の禁じておるところでございますから、監督指導におきまして十分監督はいたしておりますが、就労の事情が先ほど申しますとおりでございますので、見落としと申しますか、発見しがたいものもあるいはあるのじゃないかと思っております。いずれにいたしましても、賃金の支払い条件等も職場にこれを明示するように、こういうことで指導いたしておるわけでありまして、それというのも、こういった中間搾取的なことがなくなるように、こういう趣旨からやっておることでございます。
  241. 栗林三郎

    栗林委員 こういうピンはねや労務供給は、これは随所に行なわれております。あなたが知らないなんということは、知らないのでなくて、知って知らないふりをしておるのだ。私は昨年からことしにかけて約二百二十カ所の飯場を歩きました。その三分の二は事実上請負ではないのだ。ピンはねなんだ。それが東京のどまん中に何百、何千とあるではありませんか。日本の労働問題は、ILOなんというような次元の高い、そういう議論が行なわれております。いかにも日本の労働行政は世界でも最も高い水準にあるかのごとき印象を与えておる。ところが、皆さん、東京のどまん中にピンはねや労務供給が平然と行なわれておる。そういうものが一つや二つではないのですよ。何書とあるのですよ。私は、末端の監督署だけでは人員も足りないでしょうし、十分パトロールもできない、行政指導もできない、監督行政も十分できないとは思いますが、どうかひとつ大臣も飯場に入って、これらの実態を調べてもらいたい。そうして末端で苦労されておる監督署の皆さんを督励して——結局、これでうき目を見るのは農民なんですよ。出かせぎ農民がうき目を見ておる。一つ二つあるのではなくて、全部がそうだと言っても過言でないのが今日の飯場の実態ですよ。ぜひひとつしっかりと調査をされて、事前にこういうようなものを行政指導で是正してもらいたいと思うのであります。就業規則等も、これも明示しなければならないと規則にあります。さらにまた、就業規則などは、それぞれ所轄監督署に届け出しなければならないとありますけれども、はたして所轄監督署にこれらの就業規則が届いておるでしょうか。それぞれの現場や飯場にこういうような就業規則が張り出されておるでしょうか。明示されておりますか。明示されておりませんよ。どうかひとつパトロールをもう少しひんぱんやっていただいて、行政指導と監督行政をうまく織りまぜて、私はこれらの不法な、あるいは不正な行為をぜひ直していただきたいと強く要望しておく次第であります。  次に、賃金の問題に移りたいと思いますが、賃金につきましては法二十四条に賃金に関する五原則が規定されております。ただその中で毎月最低一回払わなければならない、こういう規定がありますが、私はこれの意味がわからないのであります。そこでお尋ねいたしますが、毎月最低一回払うということは、日雇いの皆さんでも、月払いの契約であれば、二十五日に締め切られればその月のうちに払わなければならないということを意味するものかどうか。毎月最低一回払いということはどういうことか、これをひとつ簡単に教えていただきたいと思います。
  242. 小平久雄

    小平国務大臣 基準局長から御説明申し上げます。
  243. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 私からお答え申し上げます。  先生御指摘のように、労働基準法第二十四条第二項におきまして、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」。と、御指摘のとおり定められております。そこで、賃金の計算方法が日給でございましても、その支払いの形が御指摘のような月給になっておるという場合におきましては、定められた一定の期日に毎月一回以上支払わなければならないということになっています。先生の御質問内容は、おそらく、たとえば二十五日に就業した、賃金の支払い日が二十八日というふうになっておった場合に、その三日分だけネグってしまって、翌月の月末にまとめて払うといったようなことをも含めてのお話ではないかというふうに存ずるのでございますが、そのような場合におきまして、たとえ日給でございましても、計算が日給であって、支払いは月々払うという場合には、当然その所定の期日に払わなければならないというのは御指摘のとおりでございまして、そういった点については、まあ二、三日分だから翌月回しというようなことは、もちろんこれは法の定める基準に反するものでございますので、十分留意して処置いたしたいと思います。
  244. 栗林三郎

    栗林委員 具体的な問題を出します。これは締め切ってから一カ月後に払うという最も賃金払いの悪い現場であります。したがって、所番地までは申し上げませんが、おおよその場所だけは指摘しておきます。横浜市南区日野町にある某建設会社の下請であります。ここはその月の二十五日に締め切ります。支払いは翌月の二十日になっております。これは賃金五原則に照らしまして違法でありませんか、合法でありますか。
  245. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘のように、賃金を計算します場合の締め切り日と、それから支払い日のこの二つに分かれておる場合のケースでございます。いずれにいたしましても、これは就業規則で定めるということに相なっております。就業規則の絶対的必要記載事項の中に、支払い日は明示することになっておりますので、賃金計算の締め切り口は計算の基礎になるわけですけれども、現実に支払うというのは、支払い日には支払わなければならない、こういうことになります。それがおくれましたならば、明らかに労働基準法二十四条に違反する、こういうことに相なります。
  246. 栗林三郎

    栗林委員 結局この場合は、二カ月働いて労働者は一カ月しか給料をもらわないということになっております。公務員の皆さんは月給を二十日にもらいます。われわれ国会議員は、申しわけないが一カ月の三分の一で月給をもらってしまう。ところが、こういう出かせぎ者の諸君は、働いて一カ月後でなければ支払いを受けることができない。二カ月働いて、そうして一カ月しかもらうことができないのであります。こういうことが許されてよいのかどうか。もしもこれが合法だというならば、私はこういうものには制限を加えてもらいたい。ことばはわかりませんが、皆さん、締め切りが二十五日であれば締め切り後五日以内に支払いをしなければならない、こういうことをこの賃金条項の中にひとつ明確に入れてもらいたい。そういうような賃金の支払いに関する法改正をやる御意思がないかどうか、これを労働大臣にお尋ねいたします。
  247. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御質問の事項につきまして、賃金の締め切り日と支払い日が著しく間隔があるという場合について、そういった内容を就業規則で定めることが適当であるかどうかという問題がございます。先生の御指摘になっておるケースはそのような場合であろうと思います。手続といたしましては、就業規則でその支払い日を明示する、そういうことに相なりまするので、就業規則で定めた日に支払ったかどうかが労働基準法第二十四条違反の問題になるわけですけれども、せっかく事業場についての御指摘もございましたので、具体的にその就業規則その他を調べまして処置いたしたいと存じます。
  248. 栗林三郎

    栗林委員 締め切り後十五日から二十五日以内に支払うという現場は土建現場の大半であります。ところが、ここに最も近代的な支払いをやっておられるりっぱな業者もございました。茅ケ崎の南湖一丁目四の二十五、亀井工業であります。ここには季節労務者が、四、五十人働いておりますが、ここの賃金の支払いは月二回になっております。十五日と三十日、そうして、いずれも締め切りはあります。締め切ってから三日目に賃金を支払っておる。月に二回払いであります。私は亀井土建のこの良心的な賃金に対する態度には敬服してまいったものであります。大半はそうではないのです。大半は締め切り後十五日か二十日、二十五日、いわゆる二カ月働かなければ一カ月もらえないというのが出かせぎ労働者の賃金支払いの実態であります。私は、法改正ができないなら、行政指導を強化して、こういう実態を一日も早くなくしてもらいたい。それができないならば労働省は解散したほうがいい。  さらに私は、この際、賃金の不払いのことについて一言触れてみたいと思うのでありますが、この問題につきましては、同僚華山委員が私の質問に関連して発言がある予定になっておりますので、この不払い問題につきましては触れないで、若干の時間が過ぎるかもわかりませんが、これは同僚との話し合いで了解をいただきますので、どうか寄宿舎の改善についてぜひ私は労働大臣に聞いてもらいたい。寄宿舎に関する規定は法第九十四条、五条、六条にあります。さらにこまかい規定は、事業附属寄宿舎規程にこまく規定されておるのであります。その中で問題になるのは一種と二種に分かれておることであります。一種の規定はかなり厳密な規定でありますから、この規定どおりの施設が施されるならば、私はまず無難な施設であろう、無難な寄宿舎であろうと思うのであります。この一種の寄宿舎の規定は三十カ条からなっております。実は詳しく書いてありますが、さて二種はどうでしょう。この二種寄宿舎は土建業がこれに適用される寄宿舎であります。いわば土建業に奉仕するために設けられた二種といってもよいと思うのであります。この二種はわずか三カ条の規定しかないのであります。一種は三十カ条の厳密な規定がなされておるが、二種はわずか三カ条だ。私は、この際この二種を廃してもらいたい。この飯場の——口が過ぎるかもわかりませんが、最も醜悪な、最も不潔な、とうてい人間が住むことのできないような、そういう飯場を一つ御紹介してみたいと思う。ひまがあったらひとつ見てきてください。  これは市谷にあります。市谷にフジテレビがある。あの近代的なデラックスなりっぱな建物のあるそのそばに、いま申し上げたような、動物でなければ住むことのできないような、そんな醜悪な飯場があるのですよ。窓もない、床は万年床だ、押し入れもない、そういう中で労働者は休んでおるのであります。私はこういう飯場はいまの二種規定にも違反しておると思うのであります。一体、監督署の皆さんは、この飯場施設を視察したことがあるでしょうか。もしも視察するならば、おそらく違法な建物ばかりではないでしょうか。私は、あのような劣悪な不潔な飯場の中に多くの労働者が住んでおるのは、日本の恥部だと思います。最も恥ずかしいことではないでしょうか。この二種の中にこういうおもしろいことがあります。身の回り品を整理するために押し入れ、もしくはたなを設備しなければならないと規定されておる。だから飯場頭は全部「若しくは」のほうばかりとっておるんだ。押し入れのある飯場は一カ所もありませんよ。「若しくは棚」なんです。申しわけのたなが窓にちゃんと備えられておりました。それですから、床などを整とんする押し入れがない、場所がない、勢い万年床になるでしょう。わずか二・半平方メートルの畳一枚半が彼らの自由の天地であります。私はいまの飯場でも、押し入れがちゃんとできて、さらに片廊下でもよいから廊下施設をする、そういたしますと、ふとんの整理もできますし、労働着や洗たくものは廊下に片づけることができるわけであります。したがいまして、いまよりは私はもっと清潔なものになるとは思いますが、この際このような動物的な、動物でなければ住むことができないような醜悪な飯場を一掃すべきではないでしょうか。私は、したがってこの二種の規定を全面削除してもらいたい。改正でなくて、全部これを削除してもらいたいと思うものでありますが、ひとつ労働大臣の意見を伺いたいのであります。この際、時間がないので、私は最も悪い飯場を紹介しましたので、今度は最もりっぱな近代的な飯場を一つ紹介しておきたいと思います。それは川崎市の新鷺沼にあります飯場であります。新鷺沼一ノ三四四、間組であります。ここの下請アントロメーダ川崎建設所であります。この事業所は、川崎市の浄水場の建設工事であります。ここには三百人余りの季節労務者が働いておる。私は、この飯場に行きまして驚きました。文字どおりこれは寄宿舎であります。端的に状況を申し上げますと、トイレは水洗トイレでありました。私は飯場をずいぶん歩きましたが、水洗トイレは初めてであります。それから大衆の洗たく機が備えつけられまして、みんながその洗たく機を利用して洗たくができる、そういうような設備もありました。さらに浴場を見ましたら、三十人ぐらい入られる大浴場で、これはタイル張りであります。私は、この窓をあけたとたんに、これは温泉でないかと言ったら、みんなわあっと言って笑っておりましたが、全く温泉であります。そういうようなりっぱな大衆ぶろが設置されてあったのであります。彼らは言う。われわれは、こうして寒いところを働いて帰ったならば、このふろに入るのが一番の楽しみだ、こう言って喜んでおった姿をこの目で見てまいったのであります。さらに、クラブ設備がありました。このクラブ設備は、テレビもある、碁盤も備えてある、将棋も備えてある。一通りの娯楽設備がありました。そういうものが休憩の一とき、夜の一とき彼らが楽しんで休まれる部屋に設置されてあるわけであります。さらに寝室はどうか。食堂はどうか。食堂はデパートの食堂と同じです。一流の営業者の食堂と何ら遜色はありません。調理室などはまことに清潔そのものでありました。寝室は二段のベッドになっておりまして、一人一人に整理だなが与えられておったのであります。私は、この規格はどこかを参考にしたのですかと聞いたら、これは防衛隊の宿舎を参考にして、そのとおりの規格でつくった寝室であります、ベッドでありますという説明でありました。そうして、皆さんが働くときの作業衣は全部この組で貸与するのであります。私は、勤労課長からこう聞いてまいりました。ここまで施設をしたが、もう一つ欠けているものがある。それは、季節労務者の皆さんが五カ月も六カ月も妻や家族と離れて生活をしておるのだから、せめてその期間に妻や家族がたずねてきたときにゆっくり面会のできる個室を備えた、そういう家族の休まれる宿舎設備をいま計画しておるのです。この話を聞いたときには、私もじんときたのであります。このようにりっぱな、近代的な寄宿舎もあるのであります。私は、業者がやる気になれば、もっともっと寄宿舎設備の改善はできるものと思うのであります。この寄宿舎の改善は、急を要する問題だと思うのであります。人権の問題でもあります。どうか、二種を廃して、そうして寄宿舎、飯場の大改革を、大改善を実現するための決意をひとつこの際御表明願えればまことに喜ばしい次第であります。
  249. 小平久雄

    小平国務大臣 お答え申し上げます。  先生も御承知のように、第二種の事業所付属の寄宿舎というものは、六カ月以内の臨時の施設、こういうのがたてまえと相なっております。それにつきましても、もちろん先生の御指摘のように、人道に反するような寄宿舎、俗にいう飯場ということであっては相なりませんので、法的にもその基準を定めまして指導し、あるいは取り締まりもいたしておるところでございますが、中には先生がただいま例におあげのようなものも、おそらく——私は、申しわけございませんが、現場も見ておりませんが、実在するのではないかと思います。従来も、この監督などはほかの事業所に比べますならば倍以上もやっておるのでございますが、それにしてもまだまだはなはだしく劣悪なものがあるということも、おそらく事実だと思います。そういう関係もございますが、結局は、しかし建設業などにおいて、下請等の場合に資力が足らぬということ、あるいは期間が場合によってはきわめて短期間であるというようなこと、そういうようなことでおそらくそういったほんとうのその場しのぎ的なものが存在するということになるのではないかと思うのであります。今後におきましても、もちろん厳重に監督もさせるつもりでございますが、これは私の目下むしろ個人的な考えでありますが、こういう劣悪なものにならざるを得ないという原因が、いま申すとおり、下請等の場合で非常に資力もない、こういう場合が多いのではないかと思いますので、建設大臣もおいででございますが、逐次建設省などともよく相談をいたしまして、でき得ればこういった宿舎設備などは、特に公共事業等相当大規模なものにつきましては、元請会社がめんどうを見てやるというようなぐあいにでもできますならば、一番望ましいのではないか。そういう点で、今後建設当局などともよく協議してまいりたいと考えるものであります。ですから、先生のおっしゃるように、第二種の分は何ぶん六カ月以内の臨時的なものでありまして、そういうものが実際問題として必要な場合も多々あると思いますので、この種のものを直ちに廃止するというわけにはいかぬと思います。逐次改善していくという方向で努力をいたしたいと思います。
  250. 栗林三郎

    栗林委員 最後に、私は一言政府に申し上げたい。私は出かせぎには反対であります。出かせぎする農民も、だれが好んで出かせぎする者がありましょう。食わんがため、生きんがための悲壮な行動であります。戦争時代でもない、民主主義、平和の時代に、夫婦が半年も別居しなければならないということは、まさに人生の悲劇ではないでしょうか。学者は、これを人間疎外の最たるものと言っておるのであります。一日も早く出かせぎをしなくても食えるような農業政策を確立しなければならないが、しかし、出かせぎという現実は、当分続くものと思われるのであります。したがって、好まない出かせぎではあるが、出かせぎする者が安心して働ける職場と、その働く諸条件を政府が真剣に考慮すべきではないでしょうか。私は、真剣に彼らのことを考えて、彼らに安心して働ける職場を保障していただきたいということを強く御要望申し上げて、私の質問を終えたいと存じます。
  251. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私に対しての御質疑ではございませんけれども、建設行政の立場から申し上げておきたいことがあります。建設行政をやります場合にいろいろ気になることがたくさんありますが、いま質疑応答がありましたように、一番深刻に気になっておるのは、出かせぎ労務者及び建設業に携わっておる労務者のいまの生活環境と、あるいは賃金不払いの問題、これであります。ただ、御承知のとおりに、一定の職場に恒久的に勤務する状態でない特殊の職場でありますから、なかなか実態が把握できない。こういう点については、従来もしばしば労働省とも協議をし、労働大臣にもいろいろ御協力をお願いしておるわけであります。ただ、建設行政の面から——いま出かせぎは反対だと申されましたが、私もそういう時代がくることを望んでおりますが、しかし、一面においては膨大な建設業が、これは必要で、あります。また、したがって建設労務者もどうしてもなければ、社会的にまた国家的に大切な仕事ができない。これを全部断ち切るということは、これは実際上、また経済的からいっても不可能であると思います。ただ、私は非常に最近いろいろな方面からその問題を検討しておりますが、先ほどお話に出ておりますように、この前の国勢調査による入口の移動、これとも関係があります。それから出かせぎの様子、この統計も、農林省統計、労働省統計、これは違っております。実態と相当離れております。これは職安を通じない、やみと申しますか、妙な手続による労務者の移動がありますから、統計が実態をつかみ得ないということはやむを得ない事態であります。ただ、この前の国勢調査状態国民所得の全国の状態を見ますと、それの数は実態に合っておりませんけれども、その趨勢を見ますると、未開発地帯、農業の所得の少ないところ、そういうところが多いのであります。しかも、先ほど来出ておりますように、その大半が建設事業に対する労務者である。この点を私ども建設行政のほうから見まして、できるだけそういう地帯に——低所得の地帯、生産性の少ない地帯、出かせぎの多い地帯、人口の減る地帯、これはとりもなおさず、原則としては非常に国民所得の少ない地帯であります。しかも、そういう地帯は、やるべき建設事業が非常におくれておる地帯であります。およそこういう状態になっております。したがって、これは一挙に解決するということはできませんけれども、私どもの建設行政のほうでは、特に今後はそういう地帯に多くの建設事業をやりたい。どうせ同じ仕事に携わるならば、できるだけ近所でやっていただくという態勢をつくりたいということで予算配分を考えておるということを、御参考までに申し上げておきます。  それから、賃金不払いの状態が、泣き寝入りの状態が非常に多いと思う。たまたまあらわれてまいりますと、これは徹底的に追及して最後の決をとるということに労働省とも協議をいたしておりますが、私もそういう体験がしばしばあります。したがって、私どものほうの建設業の指導といたしましては、そういう正当の理由と思われないような事由で賃金不払いをやった場合は、そういう業者の指名をしない、事業の指名をしないという方針をきめまして、それぞれ関係部局また下部機関に通達をいたし、なお、建設業界にもその旨を通達いたしております。  厚生については、いまお話しのようによくわかりますが、これはやはり建設業を指導し、なお労働省ともよく御相談をして、できるだけの進歩をはかりたい、かように考えておりますので、お問いがありませんでしたが、申し上げておきたいと思います。
  252. 福田一

    福田委員長 これにて栗林君の質疑は終了いたしました。  次に華山親義君。
  253. 華山親義

    華山委員 私は、二年前からこの問題に取り組みまして、しばしば労働大臣あるいは建設大臣、そういう方々に質問を重ねてきましたけれども、今日のいまの御答弁は、何ら進歩しておるところがない。全く無関心なのではないかというふうな気持ちさえいたします。一昨年大橋労働大臣が私の質問に答えまして、賃金不払いの問題、この問題につきましては法を制定する、元請が責任を持ってこれを支払う、下請がそういう場合には、元請が責任を持って支払うということに前向きに研究をしたい、こういうふうに言っておられた。今日、二年たっても何もない。また前の労働大臣にも質問をいたしましたところが、同じような、各省と十分に協議をして、そしてやりたい、こういうこと以外には何もない。今日どういう協議が進んでおるのかわかりませんが、そういう状態でございます。賃金の不払いということは、これは非常にしばしば起きて、また困ったものだ。しかもこの賃金の不払いをするような下請、四番目か五番目の下請になりますと、暴力が伴っております。暴力団が介律する、そういうふうな状況でございます。それで、私はこの問題に執拗に食い下がりまして、あまり関係のないところでございますけれども、地方行政委員会において、暴力団の問題からこの問題に言及した。そのときに、建設、労働両省から係官が出ていられた。このような問題は、これは党の問題ではございません。それで地方行政委員長の中馬さんが、非常に重大な問題だ、この議会中に——これは昨年の五月でございましたが、この会期中に方向だけの結論を出してもらいたい、こういうことを言ったのでございますけれども、何らそれに対する報告がない。  労働大臣に伺いますが、もういまや私は待っていられない。労働災害については、下請の責任は元請が負うことになっておる。賃金不払いも同様だと思うのでございますが、これも早急に法の規制をもって元請が責任を持つ制度を立てられますかどうか、明確に伺いたい。
  254. 小平久雄

    小平国務大臣 主として建設業が大部分と思いますが、いわゆる賃金不払いの問題につきましては、私も重大な関心を持ちまして、実は就任早々でございましたが、瀬戸山建設大臣とも問題の所在について御相談をいたしまして、とにかく賃金というものはもう言うまでもなく労働者の生活の根源でありますから、これが不払いになるというようなことは全く許さるべきことではない。もう人道上の問題でもあるから、何とかこれは一つの解決をしなければならぬ問題だ。下請等が払い得ない場合、いろいろ原因はございましょうが、原因によりましては、これは当然元請等に責任を持って払ってもらってしかるべきものじゃないか。一般の民間の事業にまでもそれが直ちにできないとすれば、少なくとも国なりその他の公共団体がやる事業等については、それくらいの取り扱いができるようになることが当然ではなかろうか、こういうことで、建設大臣とも相談をいたしまして、建設大臣も非常に御理解があって、ただいまお話のあったとおりでございます。そこで、さっそくこれは早急に事務当局でひとつ話を詰めてもらおう、こういうことになりまして、自来両当局で鋭意検討をいたしておるのでございます。ただ、先生のお話のとおり、なかなか簡単に結論が出ないということが残念ではありますが、これは、結局は雇用関係が、たとえ資力はないにいたしましても、下請なら下請が雇用しておる。その不払いの賃金を元請が払うとなりますと、雇用関係のないものがとにかくその責任を負う、こういうことに法的にはならざるを得ないと思います。そういうことが許されるかどうか、いろいろそういう問題があるので、簡単に結論が得られぬでおるとこういうことでございますが、瀬戸山大臣も非常に御理解を持っていただいておるものですから、さらに検討を急がせまして、なるべく早めに先生の御要望に沿い得るような結論を出すことに、今後ともつとめるつもりでございます。
  255. 華山親義

    華山委員 法的なお話がありましたから、私はここで議論をいたしませんけれども、そういう下請を選んだことに元請の責任があるんじゃないか、その責任を果たすべきじゃないか。またこういうふうなことになりますと、無過失責任ということはしばしば法律的にいわれることなんだ。かりに民法上の責任がないにしても、そういうふうなものにつきましては、これは元請がやるべきだ。なぜそういうことに一年間も二年間も論議しなきゃいかぬのか。頭の優秀な連中が官僚として集まっておるのに、貧乏な連中がたくさんそういう目にあっているのじゃありませんか。なぜその問題がこんなに解決できないのか、私はふしぎでならない。それから、私は昨年も言ったのですが、大体この法律は今国会中に出ますか。その点を伺いたい。
  256. 小平久雄

    小平国務大臣 先生が御指摘のように、賃金不払いを起こすような下請を選んだこと自体にも元請としての責任があるんじゃないか、そういうことも、実はわれわれも話し合っております。ですから、そういう点も含めまして検討をいたしておるわけでございますが、いまこの場で必ずこの国会中にと、こういうお約束をいたして、万一そこまでいかないときにははなはだ申しわけございませんから、率直に申しまして、極力急いで検討させますから、それで御了解いただきたいと思います。
  257. 華山親義

    華山委員 まだこの国会は長いのでございますから、ぜひこの国会に法律を出していただきたい。それが出なければ、また一年間苦しむのですから、出していただきたい。出なければ、私は次善の策を言いたいのでございますけれども、出してもらいたいということでがんばります。出していただけますか。もう一度御答弁願います。
  258. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど申しましたとおり、ここで必ずこの国会中に提出すると御確約を申し上げるだけの確信がございません。しかし、極力先生の御趣旨に沿うように努力をいたしますから、それでこの場は御了承していただきたいと思います。
  259. 華山親義

    華山委員 私は、ほんとうにそういうことばを聞くというと、何が阻害しているのかと思う。大きな土木会社に気がねをしているからでしょう。私はそれ以外に理由が考えられない。何もほかにないじゃありませんか。法律できめたらいいじゃないか。無過失責任という理論はあるのだ。私はぜひひとつやっていただきたいと思う。その法律のできるまで、今会期中にできると考えて、それまでにあしたからでもできることがある。それは閣議決定でもひとつやって、そうして国の公共事業、国の補助する事業、それから公団等の国から出る金の結びつく事業、そういう事業につきましては、土木請負契約を結ぶ際に、下請の賃金不払いの不始末は元請が負うのだということを条項に入れてください。できますか。
  260. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 この問題のむずかしさは、理屈を言うわけではありませんけれども、御承知のように民法上の契約であります。この契約が許されないという法律をつくるかどうかであります。ただ問題は、建設事業のほうからいいますると、下請をする場合は、全面的下請ができないいろいろの規制があるわけであります。その一部下請をする場合に、いまのような問題が起こるわけであります。そこで建設業界には、御承知のとおり、大、中、小。小の小までいろいろあるわけでありまして、問題は建設業界の整理をどうするかという面からも、私どもはいま検討いたしております。お説のとおりに、さっき労働大臣が言いましたけれども、賃金を払わないで仕事をさせるなんていうことは、これは人間世界ではおかしなことなんです。これを何とか解決しようということで検討しておりますが、労働大臣も申しましたように、何とか解決したい、こういう考えを持っております。
  261. 華山親義

    華山委員 建設省は何とか解決するということでございますから、近い将来、少なくとも今会期中には解決するものとして、労働大臣もひとつ御協力を願いたいと思います。  それから先ほどの飯場の問題でございますが、栗林委員も私も、ただここで言っておるのじゃありません。栗林委員には及びませんけれども、私も何十カ所かの飯場を見て歩いた。一体飯場というものを、大臣あるいは担当の局長、そういう人は見ておるのか。見ておるならば、私は、もっと栗林委員との話は合うのじゃないかと思うのです。見ていらっしゃらないから、まるで何か違ったようなことになるんじゃないかと思うのです。それで、監督がきわめて不十分だと思いますので、監督を十分にやっていただきたいのですが、その参考のために伺いますが、全国のこうした飯場的の事業場数は一体幾らあるのか、これを監督する担当の監督官は幾らあるのか、一人当たり担当事業場数は幾つくらいになるのか、お答えを願います。
  262. 小平久雄

    小平国務大臣 いまお尋ねのうちで、事業場の数、それからそこにおる労働者の数だけは、ここに手元に資料がありますので、とりあえず申し上げます。これは、昨年の一月現在でございますが、全業種で申しますと、事業場で一万八百九十四、その寄宿舎に、いわゆる飯場でございますが、それにおる者が二十四万千百三十四名、そのうちで建設業関係が、事業場の数で八千五百五十九、労働者の数で二十万千八百五十四人、こうなっております。その他のことはわかりましたら、またあとで……。
  263. 華山親義

    華山委員 監督官の数は。
  264. 小平久雄

    小平国務大臣 それは手元にございませんので、わかりましたら……。
  265. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 第二種事業付属寄宿舎の数は、ただいま大臣から申し上げたとおりでございます。  なお、その寄宿舎につきまして、建設業関係でどの程度監督をいたしておるかという数を申し上げますと、三十九年度の実績は、四百十四という数になっております。
  266. 華山親義

    華山委員 監督官の数は何人ですか。
  267. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 約二千五百弱でございます。
  268. 華山親義

    華山委員 一人当たりの事業場は幾つくらいですか。
  269. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先生御質問意味は、全事業場——労働基準法の適用事業場は約二百二十万程度になっておりますが、建設……。(「そんなことはない。いいかげんなことを言っちゃいけないよ」と呼ぶ者あり)労働基準法の適用場数と監督官と存じますが、以上申し上げたような次第でございます。
  270. 華山親義

    華山委員 もう一度聞きますが、監督を受ける事業場の数は、全国で幾らありますか。それからこれに当たる、監督をする監督官の員数は何人でございますか。そうすれば、割り算でできるわけでありますけれども、一人当たりどれだけの事業場を担当することになるか、こういうことです。
  271. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、監督官の人数は三十九年が二千三百九十八、四十年が二千五百九十八、こうなっておりますが、適用事業場の数は、一子九年が二百十七万二千という数でございます。四十年で若干ふえておると思いますので、先ほど約二百二十万と労働基準法の適用事業場の数を申し上げたわけでございます。
  272. 華山親義

    華山委員 一人当たりの事業場は幾らになりますか、千ぐらいになるのかな——千ですね。千の工場を一人の人が受け持つなんていったって、監督はとてもできっこないんじゃないのか。やれないということじゃないですか。こういうことで労働大臣、労働者の保護ができますか。
  273. 小平久雄

    小平国務大臣 御指摘のとおり、監督官の数は事業場の数と比べますと非常に少ないわけでございまして、なかなか十全の監督も困難かと思いますが、監督の実施の実情につきましては、基準局長からよく説明を申し上げることにいたします。
  274. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ただいま大臣が申し上げましたとおり、労働基準法適用事業の中には、建設業もございますれば、鉄鋼業もあるし、販売業もあるというので、内容的にいろいろございます。労働基準監督官の監督方針といたしましては、いわゆる工業的業種を重点として従来やってまいりました。最近に至りましては、娯楽業の一部、特に青少年関係のあるようなものにつきまして重点を指向いたしまして、非工業的事業につきましても、重点を定めまして監督を実施しておるような次第でございます。したがいまして、労働基準法適用事業場でございますから、労働者一人でも使用しておればその数に含まれるわけでございまして、それをことごとく監督をいたすということについては、監督技術上非常に困難を感じまするけれども、ただいま申し上げましたとおりの方針で実施いたしますと同時に、重点事業については監督回数を増加するということにいたしております。  なお、監督官の数が少ないではないかという御指摘をここ数年特に強くいただいておりますが、四十年度におきましては、二百名の監督官の増員をお願いした。四十一年度におきましても、いわゆる定数保留解除といったような形で可能な限り監督官の増加につとめておるような次第でございます。しかし、もちろんこれで十分であるということにはならないかと存じております。
  275. 華山親義

    華山委員 あと一問だけ。  こういうふうなことにつきまして非常に機動性が必要だと思うのでございますけれども、どうなのですか。こういう人には何か早く行動のできるようなものでも与えてあるのですか。あるいは出張する場合の旅費等も十分にあるのですか。
  276. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘のとおり、乏しい監督官数でございますので、できるだけ機動力を持たせるということが重要でございます。これも華山先生をはじめ先生方からしばしば御指摘をちょうだいいたしておるところでございます。地方の監督署に対しましては、これも十分ではございませんが、約五一台程度のものを逐年、——ここ数カ年にわたりまして相当増加いたしております。したがいまして、主要な監督署には乗用車あるいはジープなどを配置いたすように、それから東京とか大阪とかいったような事情のところには、それに相応した単車を配置するとかいったような苦心をいたしておるような次第でございます。  なお、監督旅費につきましても、もちろん十分ではございませんが、他の分野に比しましては、年々監督旅費の増加をお認めいただいておるような次第でございます。
  277. 華山親義

    華山委員 ただいまのお話で、大蔵大臣もお聞きだと思いますけれども、そういうふうな監督のもとでは現在のような非人道的な飯場ができるということは、まことに悲しいことではあるけれども、やむを得ないのじゃないかという気もするわけです。人道上の問題でございますから、こういう方面にはひとつ十分な人員、機動力を与えて、そして農村を出てきてひどい生活をしている人に、あたたかい手を伸べていただきたい、十分な監督のできるような措置をしていただきたいと思います。
  278. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 建設大臣とも相談いたしまして、努力いたします。
  279. 華山親義

    華山委員 では終わります。
  280. 福田一

    福田委員長 これにて華山君の質疑は終了いたしました。  次に河野正君。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕
  281. 河野正

    河野(正)委員 これは後ほどの問題とも関連をいたしますので、あらかじめ第一にお伺いをいたしたいと思います点は、いわゆる各種の審議会がございますが、この審議会のあり方についての問題でございます。一昨年、昨年と実は医療費問題で混乱、紛争が続いてまいりました。その過程の中で、しばしばこの委員会でも論及されたわけでございますけれども、この医療費問題の混乱には、いろいろな原因、理由がございますけれども、その最も大きな理由というものは、やはり審議会、その当時は中央医療協議会、いわゆる中医協の意見でございますが、そういう審議会の意見を軽視をした、あるいは、ことばをかえて申し上げますならば、審議会の意見を無視をした、そこに実は医療費問題の混迷と混乱があった。こういうことで、私も予算委員会の席上におきまして、佐藤総理にもいろいろ御意見を伺いました。厚生大臣にもお伺いいたしました。そのいずれにおきましても、今後は、審議会の意見なり答申なりというものについては、もう最大の尊重をする、こういうようなお答えがあったところでございます。これは一例として私は申し上げるわけでございますけれども、ところが今度若干滝井委員からも触れられておりますけれども、健康と医療に関する懇談会なるものがつくられる、そこで今後の医療費問題についての解決策を見出そうということであろうかと思います。しかしながら、御承知のように、社会保障制度審議会設置法の第二条第二項におきましては、総理及び関係大臣は、社会保障についての立法、企画、運営の大綱について意見を求めなければならぬ、こういうふうに書いてあるわけです。そういたしますると、いま総理なり厚生大臣が考えておられまする健康と医療に関する懇談会と、この社会保障制度審議会設置法に基づきまする社会保障制度審議会との関連というものが、一体どういう関連を持つのか、この点は、一例でございまするけれども、後ほどの問題とも関連をいたしますので、ひとつ率直な意見を承っておきたい、かように思います。
  282. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 厚生省関係のことにつきましてお答えを申し上げるわけでありますが、厚生行政を推進してまいりますために、審議会あるいは調査会、協議会等があるわけでございます。私は就任以来、この審議会等の御意見を尊重することに最善を尽くしてまいったつもりでございまして、先般紛糾に紛糾を重ねました医療問題につきましても、幸いにして中医協の御答申をちょうだいをいたしまして、それによって薬価基準の改定、あるいは診療報酬の問題等、皆さんの御協力を得てこれを解決いたしたところでございます。また社会保険審議会から保険三法についての御答申があったのでありますが、これにつきましては、標準報酬の上限の引き上げ、国庫負担の大幅な支出等につきましては、審議会の御意見を尊重いたしまして、その実現に努力するようにいたしておるのであります。料率の問題につきましては、御答申の中には、千分の六十五、現行法以内でという御意見が多数でございました。しかし、公益委員を中心といたしましては、財政上やむを得ない値上げの措置を認めておられるのであります。私はこの答申を全体としてよく精読をいたしまして、その答申のワク内で国の財政と見合って最善を尽くしたつもりでございます。  なお、お話がございました健康保障に関する懇談会の問題でございますが、この点につきましては河野さんも御承知のとおり、近年人口構造の変化、また産業、経済や社会情勢の大きな変動に伴いまして、疾病態様も大きく変わってきております。そういうような情勢に対応いたしまして国民の健康を保障する、健康を守っていく、健康を増進していくというような問題は、きわめて重要に相なってきておるのであります。一面、御指摘の社会保障制度審議会というものがございますけれども、河野さんも御存じのとおり、社会保障制度審議会は医療保障だけでなしに、所得保障、また社会福祉全般に対する審議機関でございまして、私は先ほど申し上げました理由から、国民の健康を増進する、健康を保障するという専門的な観点に立ちまして、各界の権威者の御意見を拝聴しながら、これを国の施策の上に生かしていきたい。社会保障制度審議会は法律に基づく機関でございますが、この懇談会は総理大臣の私的な諮問機関として、自由に隔意ない御意見を拝聴しながら、これを施策の上に生かしていきたい。こういう趣旨でございますので、屋上屋とか、そういうようなものにならないように実は考えておる次第でございます。
  283. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ具体的な御答弁をいただきましたけれども、私どもが心配いたしますのは、やはり委員会の本質論の問題でございます。特にいま大臣からも、屋上屋じゃないのだというお話がございました。しかし、社会保障制度審議会設置法には明らかに企画、それから立法、さらには運営の大綱について意見を求めなければならぬということでございます。  そこで私は、まあ私的だとおっしゃいますけれども、総理及び関係大臣がその意見を求めるわけでございますので、たとえば個人的な、私的な問題といたしましても、法律に基づくそういう正規の機関があるわけですから、それを無視はしてないだろうと思いますけれども、それを差しおいてあらためて意見をお聞きになることは、一方におきまして私は社会保障制度審議会の立場を軽視するということに通じてまいろうと思いますし、一方におきましては、何かいま私が指摘いたしましたように、屋上屋を重ねる結果になる。もし、そこに意見の対立でも起こったら一体どうなるんだという点につきましては、私どももきわめて憂慮するわけでございます。  もう時間もございませんから簡単に申し上げますが、われわれがいま仄聞するところによりますと、どうもいままでの各審議会というものが、隠れみの的な、いわゆる政府の方針を裏づけるための、利用するための審議会的な性格を持ってきた。ところが最近世論が非常にいろいろやかましくなりまして、なかなか審議会の運営というものが政府考えているようにうまくいかない。そういうことから、この際、この各種審議会、いま私は社会保障制度審議会を取り上げたわけでございますけれども、そういう審議会に対する一つの再検討の機会が来ている。そういう意味で今度健康と医療に関する懇談会が設定された、そういうような意見を聞いておるわけです。そういう意味で、私はもしそういう考え方だとするならば、いま申し上げまするように、これは非常に総理も各大臣も審議会の意見というものは尊重するんだ、こういう国会答弁をなさっておるわけでありますから、そういう答弁とはなはだしく食い違ってくる。これはことばを広げて申し上げまするならば、国会審議を軽視するもはなはだしい、そういう議論も出てくると思います。そういうことでございますので、今後そういう審議会のあり方について、何らかの考え方を持っておられての措置であるのかどうか、その辺の事情をひとつお聞かせいただきたい。
  284. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 各種審議会は、国会の御承認を得まして、法律に基づいてつくっております審議会でございますので、あくまでこれは権威ある機関として、行政運営の上でこれを尊重してまいるという方針には変わりがないのであります。ただ、自由な立場で大所高所から健康の問題について御意見を伺って、そしてこれを行政の上に生かしていく、また政府の政策の上に生かしていく、その際に、法律に基づいて設置されております審議会に当然かけるべき事項につきましてはこれを審議会にかけまして、そしてさらに万全を期していく、こういう方針でいきたいと思っております。
  285. 河野正

    河野(正)委員 私どもが心配をいたしまするのは、そういう二兎を追う政治的な諮問によってそれぞれの審議会の意欲というものをなくしはせぬかという点が一つございます。それからもう一つは、この医療費問題なら医療費問題を円滑に解決しよう、そういう意図から発想されたといたしましても、結果的にそういう私的な機関の意見と公的機関の意見とが食い違う、そういう場合にはかえってこの問題の解決を阻害するということになりはせぬか、そういうような憂慮をもう一つ持つわけです。私どもは、そういうような建設的な立場からこの問題を取り上げておるわけです。そこで、少なくともいま申し上げまするように、私どももなるほど医療費問題というものは国民の健康上非常に重大な問題でございますから、この問題の円滑な解決に資するという問題は非常に望ましいというふうに考えます。ですけれども、その問題の解決がなかなかむずかしいということで、あれやこれや各種の諮問——私的、公的の別はございますけれども、そういう諮問機関を設けられることが、いいか悪いかという点について私どもも非常に大きな疑問を持っておるわけでございます。そういう意味で、この委員会の運営と申しますか、諮問の方法といいますか、それらについては慎重を期せらるべきではなかろうかというふうに考えるのでございますが、その点いかがでございますか。
  286. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 河野さんの、いろいろいま御注意いただきました点も十分考えの中に入れながら、河野さんの御心配になっておりますようなことにならないように、慎重に運営してまいりたいと考えております。
  287. 河野正

    河野(正)委員 本来から申し上げますというと、この問題は総理にも、官房長官にもお尋ねしたい問題でございますけれども、御出席がございませんから、一応そういうような私どもの意見を強く開陳をいたして、時間もございませんので、次の問題に移らしていただきたい、かように存じ上げます。  午前中にも京都の例のピストル魔の問題が若干論議をされたようでございます。私はそういう現象を中心として、各面からこの問題に対してメスを加えてまいりたい、こういうふうに考えますので、まあひとつそれぞれ御答弁になる関係閣僚もいろいろな立場から申し上げますから、あらかじめひとつ御承知おきを願いたい、かように考えます。  この現象面としては、もう一週間になりますけれども、いわゆる京都の十七歳の少年ピストル事件がございました。それからずっとさかのぼりますると、先月はやはり同じく十七歳の少女がホステス殺しをやった。さらに十七歳の少女が十八歳の少年と一緒にタクシー運転手を殺した。昨年は十八歳の少年のライフル銃事件というものがあったわけです。それよりもっとさかのぼりますと、ライシャワー事件というような問題もございます。いずれにいたしましても、こういった暴走する十代の問題というものは、これは社会全体というものが真剣に考えなければならぬ。出てまいりまする現象というものは、いま申し上げましたような現象でございますけれども、問題は、要はその背景に内蔵される諸問題がきわめて重要だ、こういうように私は考えますので、こういう青少年の非行問題についてどういう御見解を持っておられるのか、この点はそれぞれ関係する厚生大臣、文部大臣、それから公安委員長、法務大臣、それぞれひとつ関係者の方にあらかじめ御意見を承りたいと考えます。
  288. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 厚生省の主として所管いたしております行政の面からこの問題を御答弁申し上げたいと思うのでありますが、精神病患者あるいは精神障害者、これの医療の問題なり、あるいは保護の問題なり、あるいは退院後のアフターケアの問題なり、さらに社会復帰への問題なり、こういう問題につきましては、私ども医療行政の面を通じまして最善の努力を払うことにいたしておるわけでございますが、また一面、こういう精神障害者等に社会全般があたたかい目で保護を加え、また指導していく、そういう環境がきわめて私は望ましいと思うのであります。これを冷たい目で見ましたり、冷たい扱いをいたしますと、精神病者、精神障害者というのはとかく反発化いたしまして、いろいろな思わざる事件を起こすということになりますので、こういう人たちの医療の問題とあわせまして、社会一般の理解とあたたかい指導が必要であるということを考えておる次第であります。
  289. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 お答えを申し上げます。  途中から参りましたので失礼いたしましたが、青少年非行化防止につきましては、いろいろな行政機関も関係がありますが、特に文部省といたしましては、学校教育並びに社会教育を通じまして、極力この改善策に努力をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。これについては、家庭との関係もありますから、母親学級とか、家庭教育、こういう問題についても御承知のとおり最近非常に普及をいたしまして、数たくさんの学級ができて、家庭の方々の心の持ち方、あるいは児童、生徒に対する考え方等の是正につとめておりますが、同時に教育の面から見ましても、指導主事等をふやしまして、そして生徒、児童に極力各都道府県及び市町村が力を入れていただくように、その措置を進めておる次第でございます。本年度におきましても、前年度に比してさらに前進をさせ、毎年これについては力を注いでまいりたい、かように考えております。
  290. 永山忠則

    永山国務大臣 警察関係におきましては、やはり総合施策の上に進められるということでなくてはいけないということで、各関係機関連絡を密にいたしておりますが、とりあえず警察体制の強化につきましては、本年度警察庁に少年調査官を設置いたします予算を計上いたしておりまして、そうして今後重要なる都道府県警察本部及び警察署に少年担当課の係の充実をはかっていきまして、非行少年の早期発見あるいは補導の徹底、犯罪取り締まりの徹底、転落防止、有害環境に対する取り締まりの徹底等をいたしたいと考えております。  さらに、民間協力体制の確立に重点を置きまして、この青少年補導センターの整備に努力をいたしまして、街頭補導活動などの強化のために、少年警察協助員制度を現在設けておりますが、それをさらに強化をいたします。すなわち、全国でいま九万七千名の協助員が活動いたしておりますが、この充実をはかりますと同時に、学校と警察連絡協議会をつくっております。この学警連をさらに充実をいたします。また職場と警察連絡協議会、職警連の設置にもつとめるのであります。全国で学校関係では小・中・高の約七五%が学警連に入っておるのでございます。そのほか防犯協会、婦人団体、PTA等の民間団体に対して、少年補導活動の協力を呼びかけておるような次第でございます。
  291. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 法務省関係のほうから申しますと、非行少年の生ずる温床とも申しましょうか、一番私どもが心配いたしております問題は、暴行事件と申しますか、各方面におきましての暴行ざた、これが非常に少年の非行問題の温床になっておる一つの面だと思うのであります。もう一つは、悪質な文化財と申しますか、映画その他の方面において好ましからざるものが多い。これらのものの取り締まりが十分でない今日の状態でありますので、これに力を入れまして、われわれの取り締まりのできるものはどんどん取り締まりをし、また自粛をしていただくものは大いに自粛をしていただきまして、非行少年の生ずる部面を少なくするということが第一の私どもの力を入れていく問題でございます。  もし、それでも非行少年が出てきた場合におきましては、どうやっていくかというような問題になるわけで、私どもはそれに対しましては、検察庁やら少年院、あるいは少年鑑別所あるいは保護観察所というようなところの内容を充実いたしまして、そうして再びそういう人たちがまた非行をやらないようにするためにはどうしたらいいかということに、内容の充実と、そうしてその人たちをよく更生のための指導をするということに力を入れていくということに考えておるわけでございます。
  292. 河野正

    河野(正)委員 それぞれ非行問題について関係閣僚の御意見を聞いたのですが、どれを聞きましてもまことにりっぱな答弁でございます。  そこで私は、それならば現実にどういう施策が行なわれておるかという点について、一つ一つ反駁をしてみたいと思います。  そこで、まず一番には、厚生大臣にひとつ登場していただきます。  午前中も若干触れられたのでございますけれども、これはいろいろなノイローゼ、その他変質者等も含みますけれども、そういった精神障害者の数というものは、大体百二十万を突破しておる、こういうようにいわれておるわけであります。国会ではいろいろなことが問題になりますけれども、こういう重大問題がいままであまり論議されなかったことを私ども非常に残念に感ずるぐらいであります。ところが、実際にその中にはすぐ手だてをしなければならぬ患者もおります。それは理想的に言えば、もう全部うまく処理をすることが望ましいわけですけれども、それは人権上の問題もございますし、経費の問題もございますから、私どもはそこまでは要求いたしません。しかし、さっそく手だてをしなければならぬ患者のグループがあるわけです。ところがそれらが全く放置をされておる。ざっくばらんに申し上げますと、三分の二は野放し状態になっておる。これはちょっと午前中も御答弁になっておったようでございますけれども、二十八万は直ちに手だてをしなければならぬということでございましょうが、そのうらの三分の二は野放し状態であるというふうに申し上げても過言でございません。その一つとして私は申し上げたいと思いますけれども、いろいろ手だてをやるというふうな御報告がございますけれども、なお今日この精神障害者を収容する県立の公的医療機関がない県が、埼玉、千葉、滋賀、鳥取、愛媛、佐賀、広島、大分というふうに八県にものぼっておる。こういう事態をごらんになって、はたしてこの精神障害者対策について努力をしたというふうな御答弁ができますものかどうか、この辺はいかがですか。
  293. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 精神病者、精神障害者の数は、これは精神薄弱者等を含めまして百二十四万程度おるようでございます。そのうち、河野さんが御指摘になりました病院あるいは医療施設に収容を要する者が約二十八万人おります。現在国立、公立あるいは私立の精神病関係病院、医療機関のベッド数は、十七万程度を数えておるのでありますが、この十七万のベッドに対しまして、十八万人現在収容いたしておるのであります。あとの十万人が、施設に収容できないで在宅でこれを治療しておる、こういう状況にあるわけでございますが、しかし近年政府も各県も努力をいたしておりますし、また民間におきましても医療金融公庫の融資を受ける等、いろいろ精神病院のベッドの増設ということが進んでまいりまして、四十年には約一万床をこえる増加数を示しておりますし、四十一年度におきましては一万五千床ぐらい増加する見通しでございます。大体厚生省計画といたしましては、二十三、四万程度のベッド数を確保いたしますればこれらの患者を収容できる、こういう計画のもとに、計画的に精神病床の増床をはかってまいる考えでございます。
  294. 河野正

    河野(正)委員 答弁はけっこうでございますけれども、数字の上から見てまいりましても、納得のいく答弁とは受け取りがたいのでございます。三分の二、私は野放し——これは学者によってつかみ方が違いますので、極端に言えば三分の三と言う人もおるかもしれない。それは別として、いずれにしても多数の精神障害者が野放し状態にある。しかも、それらに対して早急に対策を立てなければならぬ。ところが、いま申し上げますように全国でも八県、さっき申し上げましたが、この八県においては県立の、県の施設すらないというていたらくでございます。こういうことで、私はたとえここでいろいろりっぱな答弁を願いましても、それは全く絵にかいたもちで、私どもはそのまま額面どおり受け取るわけにまいりません。それから、なるほど近年化学療法その他によりまして治療法が非常に進歩いたしました。そういうことから、在宅患者もかなりふえてまいりました。厚生省としては、ベッドが足らぬでも、そのほうでもという御意見かもわかりません。しかし現実には、この精神衛生法の第四十三条におきましては、治療の必要を認めた際には精神病医師が訪問指導する、こういうことになっておるわけです。ところが、現実に訪問指導を行ない得るスタッフであるのかどうかということになりますと、専門医もございませんし、午前中御指摘の相談員もおらぬ、こういうていたらくでございます。ですから、御答弁はりっぱな御答弁をいただきましても、現状から申し上げますと、いま申し上げますように、全くこの施策というものは空白状態というふうに御指摘を申し上げましても過言ではなかろうと思います。これはもう答弁要りません。現状がそうですから要りません。  そこで、時間もございませんから、きわめて重大な点にしぼってお尋ねを申し上げたいと思います。  今度、京都ピストル魔、これも御承知のように同意入院がございましたけれども、入院後、家族等の希望があって退院をしておる。そういう患者のグループというのがかなり多いわけであります。これは経済上の問題も伴っておると思います。そこで、一例でございますけれども、今度のピストル魔の不祥事件、この原因はいろいろあろうと思いますけれども、この精神衛生の面から取り上げると、これは全部厚生省責任がある。というのは、本来から申し上げますと、この病院をふやすということ、ベッドをふやすということも必要でございますけれども、いわゆる病院から社会に復帰する中間施設がない。今度の場合も、中間施設に収容して、そうしてきめのこまかい観察をし、また監視をしておったならば、私は今度のような事件は起こらなかったというふうに考えるわけであります。ところが、そういう中間施設がない。これはもう昨年六月の精神衛生法の改正の際にも、委員会では附帯決議をしておるわけです。中間施設をつくりなさい。これは時の厚生大臣も善処いたしますと言っているけれども、つくってくれない。そこに今度の問題、これは一例でございますけれども、たくさんそういうケースがある。ですから、今日いろいろな、十七歳の非行青少年が行ないましたいわゆる不祥事件がございますが、その事件というものは、社会的ないろいろな施策で防止しなければならぬということでございますけれども、少なくとも今度の場合、これはライシャワーのときもそうでございました、それから、例の十七歳のホステス殺しも睡眠薬の常用者であるということで、この問題は厚生大臣に関連が非常に深いわけです。そこで私は、この問題の抜本的解決と言わぬけれども、かなり大きなウエートを持っていいと思いまする点は、やはり中間施設というものを早急につくらなければならぬ。これは京都大学の村上教授も言っておられまするように、病院と社会をつなぐアフターケア、いわゆる中間施設、これをつくって、この患者の経過というものをあたたかく観察をし、そうして、もうこれならばだいじょうぶという時期が来て社会に送り込んだならば、こういった問題の過半数は防ぐことができるだろう、こういう学界の指摘もあるわけです。それで、私は、この中間施設というものは、いま申し上げますように、今日の非行少年に限りませず、いろいろな社会の精神障害者、偏執者、ノイローゼもそうでございますけれども、そういう患者の諸君が衝撃的に行ないますいろんな不祥事件、そういう問題を防ぐ意味におきましては非常に重大な問題でございますので、これらについては、大蔵大臣も、ひとつ真剣に御検討願ってお答えをいただきたい、かように思います。
  295. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 河野さんが京都で起こりました井川少年ピストル事件を例にあげられまして、中間施設の設置の必要を強調されたのでありますが、私も、この中間施設の設置の問題につきましては、お説のとおりわが国に欠けておる点でございまして、今後諸外国の実情等も十分調査をいたしまして、前向きでこの中間施設の設置に向かって検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  296. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 厚生大臣と相談いたしまして善処いたします。
  297. 河野正

    河野(正)委員 いままで私が御指摘を申し上げました中間施設が現実にできるということになりますならば、私はこの社会を混乱させました不祥事件というものがかなり防止できるという確信を持っておりますので、この点は十分ひとつ御善処を願いたい。  そこで、ここで文部大臣のほうに一言二言お尋ねを申し上げたいと思います。文部大臣も青少年の指導ということについて若干のお答えをいただきました。そこで私は、時間がございませんから、多くを申し上げることはできませんが、一、二の点についてお尋ねを申し上げたいと思います。  一つは、いまやはり社会問題化いたしておりまするかぎっ子、いわゆる留守家庭児の問題でございます。これはいろいろな統計がございますが、本年にわたっての調査統計の一つを引用いたしますると、小学校の一学級で一二・八%、中学校の一学級で一〇・六%、平均いたしまして、中小学校で一一・九%がかぎっ子である。そうして、これは厚生省では全国で千六百六万おるというように言われておるようでございますが、いま小学校、中学校の状態調査いたしましても、大体一二・三%程度がかぎっ子である。所によりますと八〇%がかぎっ子だというふうな地域もございます。いずれにいたしましても、かぎっ子、留守家庭児がかなりおりまして、そうしてその留守家庭児の非行が最近非常にふえてきたというような、これは一社会現象でございますけれども、そういう現象がございます。そこで、これはいま私が申し上げましたように、学校の実情を調査して申し上げておるわけですから、この点については、文部大臣も十分ひとつ御配慮される必要があろうかと思います、非行少年対策の一環として。それらに対しまする御見解を承りたい。
  298. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 御指摘のような状況は、地域によって相当の開きがあると思いますが、確かに子供は学校に行っております。親は両親とも働きに行っておる、あるいは母親だけしかないのに、その母親が働きに行っておる、こういう状態で、学校の授業が終わりますと、子供が町にほうり出されております状態というものは少年非行の起こってくる非常に根本的な問題で、これは愛情の手で何とか救う道を講じなければならないということを検討しました結果、今年度、試みとしまして、留守家庭児童会という組織がよかろうということになりまして、これに対して国の助成をし、できるだけ関係の市区町村においてそういうようなことを活発にやっていただいて、学校の授業が終わりましたら、親が職場から帰ってくるまで、子供をあたたかい手で補導をしてあげる、勉強もさせるし、遊ばせもさせるし、運動もさせるというような方法を講じたいということで、昭和四十一年度、新しい試みとしての経費の計上をいたしまして、極力そうした事情の多い区域を中心に推進をしてみたい、かように思っております。これの成績があがりましたら、ひとつ全国的にもっと活発にやって、量はいま御指摘のようにたくさんあるわけですから、充実をさしてまいりたい、さように存じておる次第でございます。
  299. 河野正

    河野(正)委員 これも一つの社会問題でございますから、ぜひひとつ前向きでさらに拡大をしてほしいと思います。  それに関連をして、もう一つこれは特異な例でございますけれども、産炭地の問題がございます。これは多賀谷委員からも若干触れられたそうでございますが、やはり産炭地というものは、社会環境という面において非常に条件が悪い。それから経済的な問題等もございます。そこで産炭地の青少年に対しまする対策というものは、当然いまのかぎっ子とは若干違いますけれども、ひとつ大いに努力をしてもらわなければならぬ点ではなかろうかというふうに考えます。  そこで、これはもうすでに触れられた問題でございまするけれども、私どもは単に経済上の問題だけじゃなくて、非行少年対策として、やはり産炭地の問題の解決のために、ひとつ努力をやっていただきたい、そういう意味で、非行対策面からもいま私が申し上げました産炭地の特殊事情にかんがみまして、さっき指導主事をふやすというような問題もございましたが、そういう関係する小学校におきましては、補導教員をひとつできるだけ多く置くという配慮あるいはまた生活保護その他家庭訪問、いろいろ事務的にも事務量が増加しておるわけですから、したがって、そういう事情を勘案をして、この産炭地の小学校におきましては、事務職員を特に配慮をして配置する。こういう御配慮を願うことも特殊事情でございまする産炭地における非行少年対策に対しまする進歩した施策になるわけでございますから、そういう意味で、この点についてもひとつ具体的な御見解をお聞かせいただきたい。
  300. 中村梅吉

    ○中村(梅)国務大臣 産炭地の児童対策は、非常に重大な問題でございまして、そういう意味から、実はこの就学奨励につきましても、産炭地の町村自体が非常に疲弊をいたしておりますから、本来国と地方で就学奨励の全額を持つわけでありますが、所在市町村も疲弊しておる関係にかんがみまして、昨年来高率補助の道を開きまして、本年度もこれを充実して、高率補助をいたして、就学奨励をやっていく。またかたがた生徒指導をいたしまする教職員でございますが、これは標準法によりますと、生徒の数が減ってきておりますから、学校の教職員は減っていくわけでありますが、産炭地につきましては、特に調節の道を目下検討中でございます。場合によりましたら、この標準法による政令を改めまして、そうして産炭地には、できるだけ多くの教職員も配置をいたしまして——それがただ、せんだっても議論になりましたが、生徒指導専門の教員を置いたらどうかという御意見もありましたが、そうすることよりは、むしろ各学校に余分の教員を配置して、教べんをとりつつ生徒指導の時間を十分に持つというほうが適切ではないかという観点からも考えまして、いろいろその調節の道を目下検討中でございます。できるだけ御期待に沿うようにつとめたいと思っております。
  301. 河野正

    河野(正)委員 その点は多賀谷委員からもいろいろ触れられたと思いますけれども、私も、青少年の非行対策という面からぜひひとつ、さらに格段の御努力を願いたいと思います。  時間がございませんから、はしょって次の問題に移りますが、この非行対策の一連の問題として、実は国連の経済社会理事会の麻薬委員会が、最近睡眠薬を非常に乱用する傾向が世界的にふえてきた、日本もそうでございますが、したがって、この睡眠薬が乱用されておるということは、これは政府にも放任の責任があるのだというふうな警告が発せられた経緯がございます。そこで、もう時間がございませんので、一括して申し上げますると、これは先般の京都ピストル強盗も睡眠薬を飲んでおった、それからホステス殺しも睡眠薬の常用者であったというふうなことで、売るほうも非常に睡眠薬を乱売する。そんなことが結果的には非行少年をはびこら迂るというふうな結果になっておると思います。そこで私は、この睡眠薬と非行少年、——麻薬もそうでございますけれども、そういう問題の関連性を考えてまいりますと、私はやはり薬事法の一部改正を行なう段階がもう来ておるのではないかというふうに考えるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  302. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 睡眠薬の乱用が健康を害し、また特に青少年の非行にもつながるということで、私どももこれをきわめて重視いたしておるのであります。そこで、薬事法の規制を強化いたしまして、要指示薬あるいは劇薬としての取り扱いを厳重にいたしますと同時に、また習慣性というものを強くこれを徹底させるように、表示あるいは包装等にあたりまして十分注意をいたすようにいたしておるわけであります。また、販売業者につきましては、しばしば厳重に注意をいたしておるところでございますが、幸い、最近に至りまして、販売業者の間に自主的にこれを規制しようという機運が出てまいっております。厚生省といたしましては、これを助長をいたしまして、そしてこの睡眠薬の取り扱いが行き過ぎにならないように、誤った方向に行かないように指導してまいりたいと考えております。また取り締まりにつきましても相当やっておるのでありますが、四十年に十三件、それから今年に入りまして一月、二月で八件、そういう取り扱い上不適正な販売業者に対しましては、これを厳重に処分をいたしておる次第であります。今後も睡眠薬遊びというようなことで青少年が健康を害したり、あるいは非行化におちいらないように努力をしてまいる所存であります。
  303. 河野正

    河野(正)委員 特に最近、睡眠薬の売買の規制がきびしくなりますと、全然規制を受けない鎮痛剤のほうにだんだん広がっていくというようなことでございますから、やはりこの薬事法の一部改正というものはきわめて緊急な問題ではなかろうかというように考えますので、ひとつ御配慮を願いたい。  それから、いま大臣からいみじくも一部業者の中からそういう面に対しまする自粛の動きが出てきたということでございますが、しかし全般的に見てまいりますと、そうではない。やはり売らんかな精神というものが非常に旺盛でございます。特に薬の過当競争、これが最近非常に強まってまいりました。その一例として、ニクビタン事件などがございますが、これは厚生省が業界に自粛を申し入れたということでございますけれども、現実にはやはりうんと買いますと、自動車を景品に出してみたり、あるいはハワイ行き、香港行きの周遊券を出してみたり、こういう事実が現実にございます。私はどうもいま大臣がおっしゃったように、業界には自粛を申し入れておるということでございますけれども、なかなか業者のほうが強くて、どうも厚生省のいうことをうまく聞かぬ、なかなか改めようとしない、こういう傾向があると思いますが、この点いかがでございますか。
  304. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 医薬品の不適正あるいは不当な誇大な広告宣伝ということにつきましては、私どもこれを重視いたしまして、機会あるごとに業界に厳重な警告を与え、指導しております。したがいまして、保険に収載されております医薬品関係につきましては、いま御指摘のような行き過ぎの広告等は、最近は非常に少なくなってきておる。大衆薬の面でまだそういう傾向がございますので、この面につきましてもしばしば業者の会合等を開きまして、そして指導に万全を期するように努力を進めておる段階でございます。
  305. 河野正

    河野(正)委員 私はどうも、自粛の申し入れをしても、依然として過当競争に明け暮れておるというふうな現状を見て、これは社会労働委員会でも取り上げられたことでございますけれども、どうも厚生省の政治の姿勢が悪いんじゃないかというふうな感じを強く持ちます。そこで今度は佐藤総理じゃございませんけれども、常に政治の姿勢を正すということでございますから、その点に関連をして一、二お伺いをしたい。  一つはもう新聞でも出ましたが、厚生省の中で例の聖成君が選挙違反を起こして、その際選挙違反にかかって公民権停止の官僚四名がいつの間にか復職する、それが表に出ますと、今度は地方でも、岡山、香川の衛生部長がそうであったというふうな事態が明らかになってまいりました。こういう事態というものは、私はやはり厚生省の姿勢を正すということが、ひいてはいま申し上げまするような、薬事行政についてもにらみがきく、自粛を申し入れればきちっと自粛が行なわれる、やはりその関連性というものは私は非常に強いと思うのです。そういう意味でひとつその点に対する御見解を承っておきたい。
  306. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の矢野尚二君の任用に関しまして、まことに遺憾な、世論の御批判をこうむるようなことが起きましたことを私は申しわけなく存じておるところでございます。矢野君は選挙違反に問われまして、非常に責任を感じまして、当時の和歌山県の衛生部長を辞任いたしまして、自来今日まで反省し、謹慎の生活を送ってまいったところでございます。しかるところ今回厚生省から、さきに科学技術庁に推薦をしておりましたところの前任者がやめまして、その後任についての推薦方を事務当局間でいろいろ御相談があった模様であります。矢野君は放射線の専門の技術を持っており、また管理能力におきましても相当すぐれた人間であるというところから、事務当局間でこの推薦任用の問題が具体化してまいったのでありますが、本人が非常に今日まで三年間にわたって反省し、謹慎をしてきた。しかし世論は非常にこの選挙違反の問題につきましては道義的な面からきびしいのでございまして、本人も自発的に辞退をするということに相なった次第でございます。この間における私の監督上の行き届かない点につきましては、この席をかりまして遺憾の意を表する次第であります。
  307. 河野正

    河野(正)委員 これはもう選挙違反で逃げ回った人が現在閣僚のいすにすわっておられるような内閣でございますから、ある程度やむを得ないのかもわかりませんけれども、これは厚生省に限らず、今度専売公社におきましても——大蔵大臣、今度やはり選挙違反で公民権停止中の人が復職をしておる。これは公の仕事に従事する人ですから、みずから姿勢を正してやらないことには、これはただ公務員法の身分の保障というような法律上の問題だけではなくて、常識の問題だと私は思うのです。ですから、私は官房長官にひとつ、あと大蔵大臣にお伺いしたいと思いますけれども、単に公務員法の身分の保障があるからということでこういう問題を放任されることは、今後の政治の姿勢を正すという意味において、私は非常に悪例を残すというふうに考えわけでございます。この点、官房長官いかがでございますか。
  308. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 お話しのように、公務員は国民の公僕として姿勢を正さなければならぬことは河野さんのおっしゃるとおりであります。したがって、政府といたしましても、矢野君の場合におきましては、本人が世間のきついそうした非難にかんがみて、みずから身を引くようなことになったわけでありまするが、その他の関係者といいましょうか、そういう方もあるわけであります。ただ、これは全く法律論じゃなくて道義問題あるいは政治の姿勢の問題でありますので、その間法律と道義との関係からむずかしい点もありますが、ただ、何といいましょうか、やはり個人の生活ということも考慮に入れなければなりませんし、今後これらの扱いについては、もちろんその点は法律はどうあれ、いやしくも政治の姿勢を正すことが内閣の使命であり、また国民の儀表たるべき公僕の姿でありますから、今後こういうことの扱いについては、十分慎重なる態度をもって処してまいりたい、かように考えております。
  309. 河野正

    河野(正)委員 時間がございませんので、いま姿勢の問題に関連をして、ここで私は重大な問題を取り上げてみたいと思います。  それは、いま申し上げましたように、非行問題と薬事行政との関連について指摘を申し上げたわけでございますけれども、どうもいまの政府の薬事行政というものは非常にゆがめられておる。その一例を申し上げまするというと、戦後、厚生省の薬務局の職員が次々と私企業に転職をして、そして重要な地位を占めておる、こういう事実がございます。これで私は、幾ら薬事行政でいろいろいま出てまいっておりまする弊害を改めようといっても、なかなか改めることは不可能だ、こういうことを感ずるわけでございますが、この点は大臣いかがですか。
  310. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 厚生省の薬務局の職員が民間の企業に移っておる、この問題を私調べてみたのでございますが、昭和三十九年ころまで数名の薬剤士、薬剤官が民間の製薬業者、業界にいっておるのでありますが、これはあまり重要な経営の面にはタッチしていないようでございまして、むしろ薬剤士としての専門の技術を買われて民間に転職をした、こういうものが多いように思うわけでございます。河野さんもすでに御承知のように、薬務行政、特に製薬会社と関係のありますところの新薬の製造許可にあたりましては、薬事審議会というのがございまして、百数十名の薬学、化学等の専門家が委員に委嘱されまして、そしてあらゆる面から副作用等の問題を慎重に審議検討いたしまして、その上で製造許可等がなされる、こういう仕組みになっておりますので、今後、御指摘のようなことは好ましいことではないと思うのでありますけれども、薬剤官等が、自分の生活のためにその専門の技術を生かして民間に転職をするということ等に伴いまして起こる弊害等につきましては、これは絶対にさような、悪影響のないように、排除してまいる所存でありますし、できるだけそういう関係を断ち切るように指導してまいりたいと考えております。
  311. 河野正

    河野(正)委員 私は、検定そのものについてもいろいろ私見を持っております。ですけれども、時間がございませんので申し上げません。ですから、検定が厳重に行なわれるから、そういう弊害はないのだ、こういう答弁は私は当たらぬと思います、検定そのものに問題がございますから。  そこで、もう一つは、これは人事院総裁がおいででございますからお伺いしたいと思いますけれども、こういう方面の仕事に携わっておった者が、それぞれそれらに関連する民間の企業に移る場合には、これは公務員法の百三条の規制を受けると思うのです。これは私企業からの隔離の条項に触れると思うのです。私は、少なくともいま何ら関係がないようなことをおっしゃるけれども、すでに終戦後はなはだしいのは厚生省薬務局の製薬課長が四代続いて民間企業にいっておる。それから監視課長のごときも二代続いていっておる。ですから、問題があったからやめたのであって、あれを私どもが問題にしなければ、まだ連綿と四代も五代も六代も続いたと思うのです。しかもこれは、国家公務員法百三条の規定に明らかに触れる事項だと私は思うのです。この点いかがでございましょうか、人事院総裁
  312. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 公務員が離職後に私企業の職員に移っていくという点の規則は、ただいまおっしゃるとおり百三条にございます。ただ、その場合に、人事院の承認という例外がございまして、実は毎年、今回もせんだって御報告申し上げたわけでありますが、人事院からその承認についての御報告を申し上げておるわけであります。その報告にも関係がございますが、厚生省関係は、私どもの見ております他の役所に比べますと、これは案外少ないほうでございます。ただし、ごく下級の係長級とか補佐官とかあるいは専門官といわれるような人につきましては、ただいま薬務関係の者も若干ございます。これは私どもとしては、ごく高級な者だけを人事院で直接握っておりまして、そういう下級の人々が、しかも会社の役職でない、責任ある地位でないところに移られる場合は、各省に御委任申し上げておるわけであります。その点も、あまり少ないのでどうだろうかということで、実はこちらから出かけてお調べをしたことがあるのです。昭和四十年にはたしか薬務局関係の人が三人おりますけれども、これは私どもの目で見ましても、ただいま申しましたような、たとえば薬務局の広告専門官でありますとかあるいは係長、私どもの調べた限りではそういうもので、しかも会社の責任あるポストについたものでもないということで、問題にすべき点は認められませんでした。その点の御報告だけを申し上げておきます。
  313. 河野正

    河野(正)委員 どういう事情を御調査になったかどうか知りませんけれども、中には重役になったということでございますし、その点は厚生省が認めておる点もございます。ですから、そのような調査についても私どもは真偽について若干疑惑を持たざるを得ません。これは重役になった人がおるのです。ただ、民間企業にいく際に、社長づきとか嘱託だとか顧問だというかっこうで、一応百三条をのがれる擬装をしておる、その点はございます。ですけれども、実質的に私は百三条違反だと思うのです。これは許すことはできませんけれども、時間がございませんから、私は追及はいたしませんけれども、そういうことが薬事行政をゆがめ、薬事行政をゆがめたために非行少年が多発するということになるとするならば、私はこの点はきわめて重大な問題だ、こういうふうに言わざるを得ぬと思うのです。そういう意味指摘をしたわけでございますので、大臣、とくとお聞き取りの上、今後はひとつ姿勢を大いに正していただきたい、こういうふうに思います。  時間がございませんし、あと労働問題が若干ございますので、ひとつ労働問題について御所見を承りたいと思います。時間がございませんから、私も簡明率直に申し上げますから、お答えのほうもひとつ簡明率直にお願いをしたいと思います。  きょうお尋ねをしたいと思います点は、いわゆる公庫、公団、事業団、いわゆる政府関係機関の労使問題でございます。これは公務員の給与はきまりましたけれども、この政府関係機関の給与はいまだ確定しないという状況でございます。ところが、この政府関係機関の労働者というものは労働組合法、労働関係調整法、労働基準法といういわゆる労働三法の適用を受けておるわけですが、そういう意味では国家公務員、地方公務員あるいは公共企業体労働者とは法的地位において非常に大きな相違があることは御承知のとおりです。ところが、現状はそういうような労働三権の庇護を受けておるけれども、これは大蔵省がいわゆる認可権をたてにして、そうしてこの三権を押えよう、こういう態度に出ておりますことは、これは労働大臣御承知のとおりです。そのために、今日しばしば労使間の紛糾というものが重ねられておるということでございますが、この点私は、法律が示すように、明らかに労働三権というものが認められておるわけですから、私はやはり労働関係からいきますと、その法というものがそのまま適用されていかなければならぬ。そのまま適用されるとするならば、今日の紛争事件というものはほとんど姿を消すであろう、こういうふうに考えるわけでございますが、これらの政府関係機関の労働者の法的地位についてどういう御見解を持っておられますのか、労働大臣から御所見を承りたいと思います。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  314. 小平久雄

    小平国務大臣 公団、公社等の労使関係につきましては、先生がお示しのとおり、労組法あるいは労調法等が適用になるわけでございまして、一口に申せば、一般民間の労使関係と異なるところがない、こういう関係にあるわけでございます。  そこで、一番問題になりますのは、給与の改定等について、本来でありますと、法の定むるところに従いまして取り運ぶ、こういうことになるのでありましょうが、その折衝の過程で公団、公社等の理事者が、いわゆる当事者能力に欠ける、こういうことでなかなかスムーズに団交が行なわれない、その間に幾多の紛争が生じやすい、こういうところに問題があると思うのであります。  申し上げるまでもなく、公団、事業団等は、その性格上事業が公共性を帯びているということで、政府なりあるいは地方公共団体なりの出資によって成立をし、また、事業も交付金とか補助金とか、そういう形で政府協力と申しますか、援助と申しますか、そういう姿において運営もやっておる、こういうことでございますから、その運営特に給与等につきましても、政府がこれにタッチするということは、事業の性格上やむを得ないのではないかと考えるわけであります。そういう関係から所管の大臣の認可、また、その所管の大臣の認可には大蔵大臣の意見を徴する必要がある、こういった組織に大体全部なっておるわけで、その関係からいわゆる理事者の当事者能力ということが万全ではないと申しますか、欠けると申しますか、そこが非常に問題だと思うのであります。しかしながら、このことは、先ほど来申しますように、事業そのものの性格からいたしまして、これはどうしてもある程度やむを得ないものではなかろうか。したがって、こういった事業の特性とでも申しますか、性格を労使双方ともよく御理解をいただいて、われわれの立場から申しますならば、できるだけ平和裏に話を進めて、円満に解決をしていただきたい、こういう希望を持っておるわけでございます。
  315. 河野正

    河野(正)委員 その政府関係機関の労使は、やはり賃金問題についても一日も早く解決したい、それからまた円満に解決したいということですけれども、結局大蔵省が公社、公団法に基づいて認可権を持っておる。それを優先させよう、要するに規制をしようということをやるものですから、いろいろな紛争が起こってくる。たとえば賃金のアップ率にいたしましても公務員並みだ。六・七五%というふうに最初から公務員並みに押えておる。ところが、公務員並みに押えますと、もともと公団、公社、事業団の発生の歴史をお考え願えば、これらの従業員は、第一、共済の適用を受けない、厚生年金なんですよ。それから第二には、将来性について非常に不安定である。それから福祉厚生面において一般公務員と比べて非常に劣る面がある。そういうことから大体公務員の一〇%から一五%増しということでその均衡がとられてきたわけです。ところが、ことしの予算面を見ましても最初から一方的に六・七五%で押えておる。時期についても、公務員がきまらなければだめだ、こういうことで、全く政府関係機関の労使不在の形で大蔵省が何でも処理していこう、こういうところに問題があると思うのです。  そこで、私は、公団、公社法に基づいて認可権があることは否定いたしません。ですけれども、私はやはり、これはたとえばさっき精神衛生の問題を出しましたけれども、これは精神障害者の場合は生活保護法よりも精神衛生法のほうが優先をするわけです。主管の法律が優先するわけです。ですから、当然、労働三法というものが優先すべき性格のものだというふうに考えるわけでございますが、この点大臣いかがですか。
  316. 小平久雄

    小平国務大臣 私は、いま先生の御指摘の公団法なり事業団法なりよりも、労働関係の法律のほうが優先すべきだ、こういうお話かと思うのですが、私は、必ずしも優先ということではなくて、両者、いわば併存とでも申しますか、併立と申しますか、単に理屈から申せば、労組法あるいは労調法に基づいて手続を進めていけばよろしい。という意味は、つまりどうしても労使双方の話ができなければ、最終的には中労委等のあっせん等の手続をする、こういうことになるのだろうと思うのですが、しかしそれにしても、その場合でも、御承知のとおりこれは強制力はございませんから、最終的の経理的な支出ということになれば、これはどうしてもそれぞれの事業団法なり公団法なりによって所管大臣の認可、認可についての大蔵大臣の意見の聴取、こういうことに相ならざるを得ないと、仕組みから申せば思うのです。ですから、どちらが優先か、あるいは優先じゃないかというような性格ではないんじゃないかという、私はただいま実はそういう見解を持っておるわけです。
  317. 河野正

    河野(正)委員 私が申し上げておるのは、一応労働三法の適用を受けるわけですから、そこで労使間の自主交渉、その自主交渉に基づいて大蔵省が認可するとか認可せぬとかいう問題が出てこなければいかぬ。これが法律のたてまえですね。ですから、私は、公社、公団法というものを無視しているわけじゃない。それを認めるといたしましても、まずその労働組合法なり調整法なり基準法の適用を受けるわけですから、したがって、そういう三法に基づいて労使間でいろいろ努力をし、またいろいろ善処をする。それに基づいて公団法なり公社法というものが適用されるということでなければならぬ。ところが、たとえばことしの賃金を見てみても、最初から六・七五%に押えておる。賃金なら賃金にしても、労使間で決定したことについて、大蔵省がいいか悪いかという判定をすることが公社、公団の性格上必要でしょう。ところが、最初からワクをはめておる。時期的な問題にしても、さっきも申し上げましたように、要するに国家公務員がきまらなければきめぬのだ、そういうことでなくて、国家公務員がどうであろうとこうであろうと、公団なり公庫、事業団というものが労使間できめる権限があるわけですから、そこできめる。きめたものについて認可するか認可せぬかは、これは別問題です。ところが、そういう手続というものは全然無視する。ということは、結論的には三法を政府みずからが剥奪、制限をするということになっておりはしませんか。その点はいかがですか。
  318. 小平久雄

    小平国務大臣 私は、その運び方としては、先生のお示しのようにいくことが、一応の法のたてまえからいうとそのとおりではないか、そのとおりであろう、かように考えております。しかし、私どもがいままで聞いておるところでは、たとえば中労委なりに持ち込んでというところまでいった例は、あまりないのじゃないのでしょうか。そういうことで、とにかくその間に理事者と組合側との話し合いが、これは時期的にはたしかお話のとおり、いつもおくれておるようであります。がしかし、いずれにしても最終的には両者の話し合いがついて、それで従来解決をしてきておる、こういうことに相なっておると私は思っております。私も、実は就任以来、公団、事業団等の給与の決定が、いわゆる三公社五現業の諸君やら公務員の諸君やらよりもかなりおくれて、大体例年そうきまっておる、こういう実情であるということを承知いたしまして、どうもあまりにおくれるのは、それらの組合員に気の毒じゃないか。それから労働省の立場からすれば、大蔵省のほうにもお話を申し上げて——これは所管が各省に分かれておりますが、最終的には大蔵省の意見ということになりましょうが、ですから、極力早目にきまるように、きめてやるように、ぜひそうしていただくようにということで、担当の局長等にもずいぶん尽力をさせておる、こういう実情でございます。
  319. 河野正

    河野(正)委員 そこで、もう時間がございませんから結論的に申し上げますと、いま私が申し上げましたような手続、その労使間に労働三法では自主交渉と能力というものが付与されておるわけですから、原則的にはそこでとにかく結論を出す、それに対して大蔵省が認可権を発動する、こういうたてまえでなければならぬと思う。現実にそういう作業というものが、いま申し上げますような段取りで行なわれておらぬということになるとするならば、労働省は大蔵大臣に対して勧告され、注意される、そういう御決意がございますか。——私が申し上げた手続が、労働法のたてまえから当然のことだと思うのです。ですが、それがそのとおりに行なわれておらぬという現実の問題が出てまいりました場合には、それは労働行政の最高責任者として、そうあるべきだということを大蔵省に勧告される用意がございますかどうか。
  320. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど申しますとおり、法律的な手続から、あるいはその順序から申せば、先生のお話のとおりだと思いますが、私は、これもさっき申したのですが、一番望ましいことは労使間で円満に話がつくことでございます。その際、公団、事業団の理事者側の立場にすれば、せっかく話をしてもおそらくそれが認可にならぬでは困るという心配もございましょう。そういうこともありますので、一体所管の大臣なり、さらには大蔵当局なりがどの程度までならば認められるかということをいわば内々話を進めまして、その認められる限度において理事者も回答をしておる。それによって従来最終的な決定もしてきた。こういうことであろうと思いますので、できるだけそのテンポを要するに早めて、あまり公務員等からおくれないように極力そうすべきだ、私もこういう考えで、せっかく大蔵当局にもさっき申すとおりいろいろ内々のお願いをしてきた、こういうことでございます。今後ももちろんなるべく早くきまるように、労働省としてはつとめてまいりたい、かように考えております。
  321. 河野正

    河野(正)委員 早くきまることは、さっき申し上げましたとおり望ましいことですから、それは当然のことだと思うのです。ところが、公務員と違って、公社、公団、事業団というものにはいろいろな形があるわけです。それぞれ条件が違うわけなんですよ。それにかかわらず、画一的に賃上げのワクを六・七五%で押える、こういうところに矛盾をお感じになりませんか。いろいろな公社、公団、事業団があるわけですね。条件が違うわけでしょう。だから、それぞれその自主性というものが労働法で認められておるわけですから、その自主性というものを尊重しながら、労使がお互いに結論を出していくということが望ましいとおっしゃっておる。ところが、最初から賃上げのワクというものは、画一的に、機械的に一定の限度で押えておる。こういうところに私は問題があると思うのです。ですから、最初から許可権、認可権というものが優先をするという立場をとっておる。そういうところに、私の話を聞いて労働大臣は矛盾をお感じになりませんか。
  322. 小平久雄

    小平国務大臣 公団、事業団というような形をとっていろいろな事業をやっておる。特にこれを政府の事業としないでそういう形をとっておるというところには、本来民間の式の経営と申しますか、運営のいいところも取り入れよう、こういうことがもともとのねらいであろうと思います。そういうことでございますから、またずいぶんたくさんありますこの公団、事業団等も、それぞれ違った仕事をやっておるわけですから、これも理論から申せば、その業績に応じ、給与の面でもいろいろ差があっても、本来、理屈的には私はしかるべきものだろう、さように思います。しかし、何と申しましても、先ほども申しますとおり、出資なりあるいは交付金とか補助金とか、そういう関係で、少なくも資金的な面から申しますとほとんど同様な性格を持って、公務員等とあまり変わらないいわば性格にある、こういう点から申しますと、その間またある程度の統一性と申しますか、均衡を保つと申しますか、そういうこともあることも、私はこれまたやむを得ないんではないかというふうに考えるのであります。ただ、そこで問題は、大蔵省当局からあらかじめベースアップならベースアップの率が何%と示して、そのとおり画一的にいくのがおかしいじゃないか、こういうことだと思いますが、これは、しかし先ほども申しましたとおり、大体大蔵省としてはこの程度は認められるという一つのいわば基準の内示とでも申しますか、そういうことで、かりに大蔵省でやっているとすれば、おそらくそういうたてまえではなかろうかと私は思うのであります。
  323. 河野正

    河野(正)委員 認識不足といいますか、どうも私どもいまのようなお答えでは満足できません。  そこで、いろいろ私が現状についての御説明を申し上げて、その理屈はよく大臣もわかっておられるようなので、ただ要は、お隣にすわっておられる大蔵大臣に気がねして若干遠慮されるものだから、どうも若干つじつまの合わぬようなお答えになっておると思うのです。でございますから、ひとつ大蔵大臣、大蔵大臣が均衡その他でいろいろお考えになるのはけっこうですけれども、やはりこの政府関係機関の労働者というものは、労働三法の適用を受けている、庇護を受けているわけですから、そういう立場というものを十分尊重しながら認可権なら認可権というものを発動する、こういうことで異存なかろうと思うのです。私ども陳情に行きますと、そうおっしゃるのですよ。ところが、実際には規制が正面に出てきて、なかなか思うようにまいりません。でございますから、労働三法を十分ひとつ尊重しながら今後配慮するんだというようなお答えをいただきたい。  それからもう一つは、官房長官、さっきの賃金を公務員なみに早く決定するということについては、副長官のほうにもいろいろ御相談申し上げておる、それについては早急に検討して回答するということになっておりますので、回答できればひとつ御回答願いたい。
  324. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府機関につきましていろいろ政府部内で相談し合わなければならぬという事情がありますことは、ただいま労働大臣からお答え申し上げたとおりであります。しかし一面、労働三法というものがあることも、よく承知しております。三法の精神は十分尊重するつもりであります。
  325. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 公団、事業団等の労使関係の賃上げ問題ですが、これは御承知のように、回答が従来おくれておるわけなんですが、昨年はいろいろ関係のほうで努力いたしまして、従来よりも比較的に早かったのですが、なお去年の回答にいたしましても、私自身もこれはあまり手ぎわのいいことだとは思っておりませんし、もっとできるだけ早く人事院勧告が済んだ機会に回答すべきものと思います。ただ、妥結の問題になりますと、先ほど来労働大臣から答弁がありましたように、労使関係の問題であります。したがって、お互いに妥当なところで解決するためには、一方はできるだけ一円でも十円でも高いほうがいい、一方は何とかこれを値切ろうということもありましょう。そういうようなことで、最終的な妥結がおくれておることはそのとおりであります。この点は、必ずしも大蔵省がブレーキをかけているということではないと思いますけれども、いろいろな点を検討いたしまして、将来ともに十分善処していきたい、かように考えております。
  326. 河野正

    河野(正)委員 この妥結がおくれるということは、これは労使の力関係ですからやむを得ぬ点もあろうと思います。ただ問題は、公務員がきまるまで大蔵省が内示をしない。そこで出発のテンポが違うのですね。ですから、少なくとも公務員に示す際には政府関係機関についても示してほしい、こういうことですね。ところが、その点については、本来からいえば労働関係調整法で労使間できめ得る能力と権限があるわけですけれども、ところが、それを大蔵省がなかなか承知をしない。それで、公務員がきまらなきゃだめだ、こういうことを言うもんですから、出発の時点というものが非常におくれてくるわけですね。ですから、妥結がまた非常におくれてくる、こういうことになってまいるわけです。そういうことですから、いま官房長官から妥結の問題は云々というお話がございましたけれども、妥結の問題でなくて、やはり公務員と同時に回答をやるという方向でひとつ御努力願いたい、こういう意味のお話を申し上げておったつもりです。そこで、そういうふうな理解のもとでひとつお答え願いたい。
  327. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 おっしゃるように、そういう方向で検討をするということにいたしたいと思います。
  328. 福田一

    福田委員長 これにて河野君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  329. 福田一

    福田委員長 この際、分科会の設置についておはかりいたします。  ただいま審査中の昭和四十一年度総予算三案の審査のため、分科会を設けることにいたしたいと思います。すなわち、昨年同様、五分科会に分かつこととし、その区分は、昨年同様、第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、内閣、総理府(防衛庁及び経済企画庁を除く)、法務省及び文部省所管並びに他の分科会の所管以外の事項。第二分科会は、会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管。第三分科会は、厚生省、労働省及び自治省所管。第四分科会は、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管。第五分科会は、運輸省、郵政省及び建設省所管。以上のとおりといたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  330. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、各分科会の分科員の配置及び主査の選任につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  331. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  332. 福田一

    福田委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公聴会開会に関する諸般の手続につきましては、さきに委員長に御一任を願っておりましたが、理事と協議の結果、次のとおり決定いたしましたので、御了承願います。  すなわち、昭和四十一年度総予算について、来たる二十一日月曜日及び二十二日火曜日の両日、いずれも午前十時より公聴会を開会することといたします。  また公述人の氏名及び意見を聴取する日取りは、二十一日午前は、八幡製鉄副社長藤井丙午君、東京大学名誉教授大内兵衛君、午後は、東洋経済新報社社長綿野脩三君、大阪大学教授木下和夫君、二十二日午前は、富士銀行取締役調査部長紅林茂夫君、法政大学教授高橋誠君、午後は、一橋大学教授大川政三君、武蔵大学教授佐藤進君、以上であります。  右御報告いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会