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1966-02-18 第51回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十八日(金曜日)    午後二時四十二分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       倉成  正君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       登坂重次郎君    丹羽 兵助君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    三原 朝雄君       水田三喜男君    大原  亨君       岡本 隆一君    加藤 清二君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       田中 武夫君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       竹本 孫一君    永末 英一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         国防会議事務局         長       北村  隆君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         警察庁長官   新井  裕君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      今竹 義一君         防衛庁参事官         (長官官房長) 海原  治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (教育局長)  宍戸 基男君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    財満  功君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         通商産業事務官         (大臣官房長事         務代理)    吉光  久君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         通商産業事務官         (繊維局長)  乙竹 虔三君         中小企業庁長官 山本 重信君         運 輸 技 官         (港湾局長)  佐藤  肇君         運輸事務官         (航空局長)  佐藤 光夫君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         会計検査院事務         官          (第二局長) 樺山ただ夫君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十八日  委員西村直己君、勝間田清一君、小松幹君、山  花秀雄君及び竹谷源太郎辞任につき、その補  欠として小宮山重四郎君、田中武夫君、岡本隆  一君、楢崎弥之助君及び永末英一君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員小宮山重四郎君、岡本隆一君、田中武夫君、  楢崎弥之助君及び安井吉典辞任につき、その  補欠として西村直己君、小松幹君、勝間田清一  君、山花秀雄君及び永井勝次郎君が議長の指名  で委員に選任された。 同日  理事竹本孫一君同日理事辞任につき、その補欠  として小平忠君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件   理事辞任及び補欠選任   昭和四十一年度一般会計予算   昭和四十一年度特別会計予算   昭和四十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。   この際、理事辞任の件についておはかりいたします。   理事竹本孫一君より理事辞任いたしたい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。  つきましては、その補欠選任を行ないたいと存じますが、これは委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、小平忠君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 福田一

    福田委員長 昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を続行いたします。田中武夫君。
  6. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、中小企業倒産問題を中心にいたしまして、それに関連する問題についてお伺いいたしたいと思っています。  まず通産大臣にお伺いいたします。昨年は、中小企業と申しますか、企業倒産の戦後最大の年であったといわれ、御承知のように六千百四十一件、その負債額が四千六百三十一億一千五百万円、そうしてことしの一月に人って若干減った。三百七十八件、二百八十億九千百万円と若干減ったといっておりますが、二月に入りまして、二月十日までにすでに二百六十六件、百七十一億円に達しておるのであります。  そこで、これらの資料はすべて東京商工興信所資料によるわけでありますが、政府政府みずからこの倒産問題について調査をせられたことがありますか、いかがかお伺いいたします。
  7. 三木武夫

    三木国務大臣 各地方通産局に対して、原因とかその他について不況相談室などを設けて、そして不況状態などに対して、常にこれに対して関心を持つような指示を行なっておるわけでございます。
  8. 田中武夫

    田中(武)委員 通産局等関心を持つように指示をしておるということですが、通産省あるいは中小企業庁、言いかえるなら政府自体がこの倒産について直接調査をする、ことに東京商工興信所調査は、負債一千万円以上のものでないと出てこないのです。私は負債一千万円以下の小規模企業、これの倒産はより多いんじゃないかと思います。そういうものについて実態をつかんでおられるかいかがか、もし実態をつかんでおられるならば、ひとつ発表していただきたいと思います。
  9. 三木武夫

    三木国務大臣 通産省としてこれは大問題でありますから、常に、倒産をした場合に、原因などに対し、むろんそれを防止しなければならぬから、事前の処置に対してはあらゆる相談に応ずる、倒産が起こった場合には原因を追及するということを、いまは地方通産局の中では一番重点を置いた仕事としておりますが、詳細については中小企業庁長官からいまの点で御報告いたします。
  10. 山本重信

    山本(重)政府委員 倒産調査につきましては、従来商工興信所調査が一番網羅的でございますので、便宜それを使っておりますが、中小企業庁といたしましても、いま御指摘のように負債金額一千万円以下の状況等についてもする必要がございますので、とりあえずただいま実施をいたしておりますのは、政府系中小企業金融機関、この三つの機関窓口を使いまして倒産状況調査をいたしております。ただし、この調査は、その三機関取引先に限定されておりますので、必ずしも網羅的ではございませんが、全般的な動向を判断するには一つ資料になるわけでございます。それによりますと、負債金額一千万円以上のものとそれ以下のものとは、それ以下のものも相当ございまして、大体同数くらいというふうな推定をいたしております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 推定をいたしておりますという程度では、実際に調査をしていないのではないのですか。中小企業基本法の第七条では、政府は、定期的な中小企業実態調査実施をし、これを公表せねばならぬということになっております。また中小企業近代化促進法の第一条でも、中小企業実態調査実態に即した近代化、こうなっておるのです。したがって、政府中小企業実態を把握するための調査をせねばなりません。これは、基本法なりあるいは近代化促進法法律にきめられておることでもある。あるいはまた、かつて本会議においても決議をせられたと記憶しておりますが、いまだに政府は三機関を通じてやっておるとかどうとか言っておりますが、なるほどそれぞれの機関はそれぞれの立場、ことに自分たちが融資をしたところ、そういう関係者については調査をしておるでしょう。だが、中小企業全般にわたる実態調査というものはなされていない。中小企業基本法なりあるいは近代化促進法の精神からいって、どのように考えておられますか、
  12. 山本重信

    山本(重)政府委員 ただいま申し上げました三機関調査のほかに、各地方通産局におきまして調査を始めております。ただ、この調査は、たいへんに人手を要するのでございまして、東京商工興信所の例を申し上げますと、千人をこえる人が各地におりまして、聞き込み調査を主体にしてやっております。興信所のほうは、ある企業があぶなそうだというような情報をとることが、ある意味からいいますと、営業上きわめて重要な意味を持っておりますので、そういうことをいたしているのであります。なかなかそれだけの陣容を一挙に整えるということも役所としてはたいへんでございますので、いま各通産局では、どちらかといいますとサンプル調査、その倒産原因、あるいは背景というようなものについて徹底的に調査をする。したがいまして、量的な把握というほうには、まだ重点を向けておらないのでございます。御指摘のように、政府自体としてもよく実態調査する必要がございますので、順を追って体制を整備してまいりたい、かように考えております。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 通産大臣長官答弁はお聞きのとおりであります。何とかかんとか言っておりますが、実際の調査というものをやっていないということを物語っておると思います。  いままで何回も商工委員会なりあるいは本会議等々で、政府みずからがこの中小企業の大問題である倒産の問題について実態を把握するための調査をしろ、こういうことを希望し、要望してまいりました。ところが、いまだにできていないというのはどういうわけなんですか。先ほど、私、基本法その他の法律の条文を読み上げました。そのことは法律に明示せられておるのに怠慢であるといわねばならない。しかも、中小企業近代化促進法によって中小企業実態調査し、これに即した施策を講ずるということです。こういう近代化積極的政策と考えるならば、倒産を防止するための実態調査をし、これに即する対策を立てることは消極的な政策だと思います。この積極、消極の両面をまって初めて中小企業のほんとうの政策が樹立すると思いますが、いかがでございますか。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 中小企業実態調査、あるいは倒産をした場合に、その原因を追及して、私のところにも、それがどういう原因一体倒産になったのか、その原因というものは報告を求めて、われわれも報告を見ておるわけでありますから、それが十分であるかどうかということに対して御批判はあろうと思いますけれども、中小企業実態調査というものは、地方通産局としても大きな仕事一つでございます。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 実際は倒産が起きたときにあわてて対策を立てるということはあるでしょう。しかし、前もって積極的に調査をし、その実態を把握するということは欠けております。もし調査をしておられるならば、ことし一月から今日までの倒産の実数、その特徴、こういうものを持っておられるはずですから、ひとつここで発表していただきたい。
  16. 山本重信

    山本(重)政府委員 倒産原因につきましては、先ほど申し上げました通産局でのサンプル調査、それから三金融機関窓口調査及び東京商工興信所調査、いずれもおおむね似た傾向の結果が出ておりまして、倒産原因としてただいまの段階で一番多いのは、売れ行き不振あるいは受注の不振ということでございまして、これが全体の約二五%を占めております。それから続きまして、あと代金回収困難、それから過去の設備投資の負担、それから、ごく一部でありますが、一割五分か二割程度はやはり放漫経営というので、社長が勝負ごとにこったとか、経営陣の内輪もめがあったというようなものがございますが、これは好況、不況関係のないことでございます。そういう状況でございます。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 倒産原因についてはあとで触れます。私がいま伺ったのは、そういった意味じゃなかったんです。たとえば本年に入りましてからの倒産実態を見ますと、金属繊維件数が減って負債がふえております。化学その他の企業では、件数がふえて負債が減っておるのであります。これは一体どういうところに原因があると思われますか。何でしたら、去年に比べて件数が何%減り負債が何%ふえておるか、そういう点を申し上げてもよろしいですが、一口に言ってそういう状態です。これはどういうわけでしょう。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  19. 山本重信

    山本(重)政府委員 業種別動向でございますが、機械、金属関係は、三十九年が全体の三五%でございましたが、四十年は三〇%になっております。それから繊維関係は、三十九年が一五%に対しまして四十年が一四%になっております。それから建設関係は……。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 私は去年とことしを比べておるのです。四十年の一月の状況と四十一年の一月……。
  21. 山本重信

    山本(重)政府委員 それにつきましては、ちょっとお待ちください。——お待たせいたしました。一月の倒産の中で金属が百件、繊維関係が五十七件、化学その他が二百二十一件、かようになっております。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 負債件数が逆になってきておるでしょう。
  23. 山本重信

    山本(重)政府委員 最近の倒産状況は、一般的に申し上げまして、いわゆる小口化しているといいますか、そういう傾向があると思います。ただ、統計の上では、その月に大口件数がございますと、全体の平均負債金額にいろいろ波動が出てまいりますので、必ずしもその月の数字だけからそういう傾向がはっきり読めない場合もございますけれども、大勢の傾向としては小口化という傾向がある、かように思います。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 金属繊維件数が減って負債がふえておるんです。したがって、むしろ大口化しているのと違いますか。化学その他は件数がふえて負債が減っておるから小口化しておる、そういう結果と違いますか。
  25. 山本重信

    山本(重)政府委員 一月は、金属におきましては、帝国製鉄等大口倒産がございました。繊維関係でも、鷲津紡織等のやや大口のものがございましたので、全体としてはそういう傾向になっております。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、ごらんのとおり、長官はいま東京商工興信所資料——私も持っております。これをもってお答えになったわけなんです。この事実を見ても、政府みずからが倒産実態を把握していない。すべて東京商工興信所等民間調査に依存しておるということを雄弁に物語っておると思うのです。そのことは、中小企業倒産に対して政府が真剣に取り組むという姿勢がない、このことを物語っておると思うのですが、どうでしょう。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 私はそうは思わない。地方通産同というものがいま一番に力を入れておるのは、何とかして中小企業倒産を防止しなければならぬということで、地方通産局など私が参りましたときに、とにかく人員はふやしておりませんから、それで、この問題については、先般も大阪で非常な家庭争議が起きるぐらい、倒産の問題については通産局として力を入れておるという報告を私は受けておるわけであります。こんなに一カ月に何百軒もの倒産があって、地方通産局としてはただぼう然とそれを見ておるわけではないのであります。一番地方通産局不況の防止、あるいはその原因というようなものに対しても力を入れて、何とか中小企業倒産を少なくしたいという努力をしておることについては、大臣として疑っていないわけでございます。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 もうこれはこれでおきましょう。  ただ、私が申し上げたいのは、倒産原因を分析していく中において、私の持っておる資料と同じ資料お答えになったということ自体が、政府みずから実態を把握していないんじゃないかと申し上げておるだけなんです。そのことはお認めになると思います。  そこで、次に、それでは倒産原因なんです。いま中小企業庁長官が申しました倒産原因、たとえば採算悪化による赤字の累積とか、不況による受注減だとか、販売不振だとか、あるいは放漫経営だとか、いろいろあげられました。しかし、私はそういうような原因の分析では、真に中小企業倒産対策にはならないと思うのです。もっと中小企業倒産原因の根本へメスを入れなくちゃならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 言われるとおりだと思います。これは、当面の問題としては、不況によって非常に仕事が減ったということでございましょうが、その背景の中には、たとえば中小企業生産性、これはだいぶ格差は縮まっておっても、平均ですれば、一千人以上というような大企業に比べて、五七%という生産性格差を持っている。それから労働関係が、人手が余っておったときには安い賃金で中小企業が雇用できたものが、そうはいかなくなってきた。労働に対する需給の面に非常に変化が起こってきた。しかもまた、開放経済になってきて、そして封鎖市場のようなものでなくして、ほとんど自由化されてくるような中で、いきなり世界経済の荒波に出ざるを得ない。こういういまの経済事情が、中小企業に対して不利な客観的な条件を持っておった。そこへ不況というものが重なってきたところに、こういう倒産というものもふえた原因があるので、ただ不況だからということでは、中小企業対策としては、その考え方があまりにも浅過ぎるという考えでございます。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 倒産原因中小企業構造の問題がある。三木通産大臣が好んで使われる中小企業構造改革、この問題については後に触れていきたいと思いますが、私が申し上げておるのは、表面的なものだけをとらえて——先ほど山本長官答弁で、原因についてこれこれと言ったのは、表面的な原因だけなんです。私が私なりに考えました根本的な問題について一、二触れてみたいと思うのです。  その一つは、大蔵大臣に考えていただきたいのですが、いままで公定歩合を引き下げれば倒産は減り、公定歩合を引き上げれば倒産がふえておった。これは単に金融の面からあらわれてくるものだと思うのです。ところが、昨年は、御承知のように一月、四月、六月の三回にわたって公定歩合を引き下げた。にもかかわらず、戦後最大倒産の年となった。こう考えると、公定歩合との関係はどうだろうか。金融緩和というだけでは原因はさぐれないのじゃないか。そこで、この金融関係一つの大きな原因をなしておるものは、当委員会におきましても特にこの問題を重視して、近く小委員会で論議せられることになっておるようでございますが、いわゆる拘束預金です。歩積み両建ての問題があります。通産大臣は御承知と思いますが、一つの例をあげてみたいと思います。  これは兵庫県の姫路市にある播磨鉄鋼という会社であります。この会社は、資本金一億五千万円、従業員五百十三名でありますから、いわゆる中小企業ではありません。しかし、この会社は、御承知のように昨年末、十二月二十一日に会社更正法開始手続申請を出しております。そこで、その播磨鉄鋼のその手続の前日、十二月二十日の預金残を見てみますと、約九億円、正確に言うと八億九千八百五十九万四千六円あるのです。これは七つの都市銀行をはじめ、十余りの金融機関に対して預金残があるのです。それで、その後借り入れ金等相殺支払い手形等相殺支払い手形買い取り請求等を差し引きまして、現に六億八千七百五十七万二千六百三十七円という預金残がございます。ところが、十二月二十一日に会社更生法開始手続申請をやりましたので、十二月二十七日に保全命令が出まして、一応いわゆる凍結になっております。このごろ、会社は、自己資本よりか他人資本といいますか、自己資本は少ないといわれておる。それにいたしましても、一億五千万円の会社ですが、その数倍に値する九億円に近い預金を持っております。いろいろなものを相殺いたしましても、六億八千万円以上の貯金が現に凍結せられておるのです。  そこで、その関係者の言をかりるならば、これらの銀行がこの預金を使わしてくれるならば倒れていなかったであろう、そう言っておる。なぜ出さなかったかといいますと、いわゆる歩積み貯金として拘束をしておって出さなかったのです。そのために、ついに会社更生法の適用申請をせねばならない事態に立ち至っております。通産省は、この播磨鉄鋼に対して、年末に通りました中小企業信用保険臨時措置法の二条二項による第一号の指定をいたしております。しかし、それは事後の問題です。倒れた後の問題。倒れるまでにこういう拘束預金を使わしてもらっておったならば倒れなかったであろう。実はこの会社の申し立て人代理の弁護人は私の友人でありますので、その書類一切をここに持ってきております。大蔵大臣、こういった拘束預金、これがしかも一億五千万円で相当な規模のところ、いわんやもっと規模の小さい中小企業、零細企業においては、こういった歩積み両建てといいますか、拘束預金、これが倒産の大きな原因をなしておるということをお考えになりませんでしょうか。いかがでしょうか。また、それに対してどのような手を考えられますか、ひとつお伺いいたします。
  31. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歩積み両建てにつきましては、当委員会で毛大蔵委員会でも非常に論議をされたところでありまして、歩積み両建てというものは、現象としてはどうしてもあり得るのです。しかし、これが過当になってはならない。つまり歩積み両建てが行なわれるゆえんのものは、商取引の便利のためもあります。あるいは、銀行からの貸し金に対する担保というような意味合いも持ちます。いろいろの意味合いを持ちますが、それが度を越えて行なわれるということがありますれば、これは非常に問題だというのがこの委員会等における御論議だ、こういうふうに存じます。また、私どももそういうふうに心得ております。  そういうことで、歩積み両建てにつきましては、整理計画を立てまして、都市銀行につきましては、昨年の五月にその整理の報告を徴しております。また、その他の中小金融機関につきましては、目下その整理が進行中でありまして、一応の区切りがこの五月にやってくる、こういう状態であります。しかし、その報告によりますると、一応片づけておるということになっておりまするが、実態が一体そういうふうになるかどうかということが問題だろう。大蔵省におきましては、銀行等に対する相当の検査機能を持っております。そういうようなことで、この機能をあげまして、これが不法不当に使われないように、そういうふうに行政指導をいたしておる最中でございます。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣、不当不法であればいけないと言うが、一億五千万円の会社ですよ。それが九億に近い預金を現に持っておって倒れておるのです。何でしたら、銀行を一々読み上げましょうか。三千万円以上の預金があるのに、それを引き出しを許さなかったのが九つから十近くあります。銀行の名前を書いてありますのを渡しましょうか。どうしますか。どうしてくれます。
  33. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もこの現実の会社の問題につきましては、きょう初めて承るのですが、いま拝見しますと、銀行と申しましてもずいぶんたくさんあるようです。そういうものは私は異例であると思う。たいていそれだけの規模の事業をやっておりますれば、主力銀行というのがあるのです。その銀行が責任を持ってめんどうを見る、こういうのが普通であります。ただいまお話しのように、十幾つも銀行がある、これじゃ責任のみんなおっかぶせ合いになる、こういうようなことになって、ただいまのような事態を起こしやすい環境にある、こういうふうな感じをいま持ったわけであります。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 銀行は確かにたくさん取引をしているようです。だからといって、三千万円とか六千万円とかいうのもあるでしょう。一番多いのは八千万円というのもありますね。そういう金を出させないというのはどういうわけでしょうかね。これは拘束預金もいいところだと思うのです。そこで、いまこのことについて議論をしようとは思っておりませんが、かつて私は当委員会で、前の田中大蔵大臣と、銀行法二十三条、それを受けた相互銀行法二十条、すなわち銀行、相互銀行が法律または法令に違反した場合、あるいは大臣命令に違反したときには、役員の解任、業務の停止という規定がございます。これをこういうときに使われないかということで、初めは田中大蔵大臣は消極説だった。しかし、いろいろその後大蔵委員会等で議論をしているうちにだいぶ前進して、考える、こういうことになった。私は、銀行法二十三条あるいは相互銀行法二十条の大臣命令を見ると、拘束預金の問題に対して何回か出された通達その他のものは、これに含まれる、こう思いますが、いかがでしょうか。そうして、あまりひどいのに対しましては、二十三条の大臣命令を出していただきたい、こう思いますが、いかがです。
  35. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金融機関に対しましては、歩積み両建てについて基準を示しまして、その整理を指導いたしておるわけです。それに基づきまして整理いたしておる状況は、一々報告が行なわれておるわけであります。その報告に虚偽があるとか、そういうようなことがありますれば、これは大蔵省の行政に反する行為でありますので、もう厳重な措置をしなければならぬ、悪質なものにつきましてはそういうふうに考えますが、その法の根拠がただいまお話しのものに基づいてやれるかどうか、私もちょっといまここでお答えするわけにはまいりませんが、必要があれば銀行局長からお答えを申し上げます。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 銀行法の二十三条なり相互銀行法の二十条については、論議はきょうはおきます。しかし私は、あまりひどいのに対しては、それに基づく大臣命令を出してもらいたい。この規定からそういうものを出せるかどうかについては、いろいろと議論を田中大蔵大臣ともやりました。だいぶ私の言うことが田中さんわかったようなところまできてやめたのです。まあこの点はとの程度にしておきましょう。  三木通産大臣、もう一つ見のがすことのできない倒産の根本的原因は、大企業の集中、合併といいますか、さらにそれによる下請企業その他の系列の再編成、そういうのが大きな原因をなしております。また、金融面においては、選別融資、体制金融、こういうのが原因をなしております。  そこで、私はずばり言いたいのですが、特定産業振興臨時措置法、すなわち特振法、これは三回にわたって国会に提案せられました。提案は三回、国会は三回流産になっております。三回にわたって流産した特振法が現に生きておるじゃありませんか。これについてどう考えられますか。ことに、きのう通産大臣は、ヒルトンホテルにおける日本生産性本部のトップマネージメントのセミナーですかで特別講演をなさいまして、各企業設備投資におけるルールをつくる必要があるということを強調せられたようであります。特振法をわれわれが論議した際に、なぜこれを必要とするのか、ことに特振法で七つか八つかのカルテルが出ております。ところが、そのほとんどは現在の独禁法でできるじゃないか、もしできないとするならば、投資調整カルテルだけだということを論議したことがあるのです。まさに大臣が、投資調整に対するルールをつくる、すなわち、投資調整をする必要があるということであるならば、二回流産したところの特振法が白昼堂々生きておる、しかもそのことが、中小企業倒産に大きな原因をなしておる、こう考えますが、いかがでございましょう。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、日本の大企業、これはやはり集中、合併というものの必要を認めておる論者でございます。日本で大企業といったところで、これはやはり欧米諸国に比べたら中小企業であって、たとえば自動車などを例にとってみましても、日産とゼネラルモーターズを比べれば、日産が一に対して三三・九ぐらいのことで、日本の大企業といわれるものも、欧米諸国の大企業に比べれば中小企業のようなスケールであります。したがって、ある程度日本の大企業も、あるいは業務の提携とか、あるいは合併とか、こういうことで経営の規模を拡大する必要がある、開放経済における企業体制としてはその必要があるとわれわれは考えておるわけでございます。そうでなければ、一つの規模の大きさによるところの企業のいろいろな競争上の利点というものを、日本の企業というものは受けることのできない国際競争上における不利があるということを考えるわけであります。  そこで、私がきのう特別講演をした趣旨は、大企業もそういうふうな意味において業務提携とか合併、経営の規模というものを拡大する必要があると同時に、一方において、過当競争からくる投資の浪費というものを見のがすわけにはいかない。そこで、それはカルテル行為ということではなくして、企業の経営者が市場の状態なども勘案して、将来の市場、需要などの見通しを持って、お互いに競合するような設備投資をしないで、やはりみな分野というものをお互い自身が一番よく知っているわけですから、あまり重複するような投資でなしに、できるだけ設備投資というものが単なるシェア競争のためにむだな投資をするということのないような、自主的にそういうルールというものが業界に生まれることが企業の秩序を維持する上において好ましい。これを何か法制的にという意味ではない。それだけの判断を産業の経営の最高の責任者は持つべきである、それでなければ、投資上において非常な浪費が起こってくるではないかという意味のことを申したわけであります。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 行政権といいますか、行政指導と法の限界、そういう問題につきましてはあとで触れていきたいと思いますが、とにもかくにも日本の企業が国際競争にうちかっためには合併をせねばならない、そういうことについての大臣大臣の考え方があり、見方があろうと思います。ただし、それはあくまでトラストについては私的独占禁止法によって定められたものがあります。あるいは自主調整にいたしましても、それぞれ法によって定められたものがあります。だからこそ二回、三回にわたって特振法を出してこられたんじゃないですか。その特振法が国会で流産をするということは、国会の意思がそれを許さなかったということなんですね。それでもまだ必要だというなら、何回でも出して、その法にきめられたことによってやるべきであって、あまり行政指導だとか、そういうことで法に定められたことをもぐるようなことをやらすべきでなかろうと思うのですが、どうでしょうか。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 私が言う自主調整というのは、お互いに産業の経営者が情報交換をするということは、何ら法に抵触するものではない。お互いに知っておるわけですから、だからいろいろな設備投資をする場合に、将来の需要というものも予測できるのですから、そういう点であまり——単なるよそもするから自分もするというような設備投資のあり方ではなくして、いろいろな分野、競合しないようなそれだけの自主的な判断というものが産業界になければならぬという点を強調したので、それを法律をくぐるとか、そういう意図はない。やはり経営者というものは自主的にそれだけの責任を持つべきである。他人からとやかく言われなくても持つべきである。一般的な産業のモラルとして私は強調をしたのでございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 法との関係につきましては後ほど触れますが、とにもかくにも、そのような企業の集中、合併、こういうのが中小企業倒産の大きな原因になっておる。このことだけはいなめない事実だと思うのです。そうとするならば、それが必要であった、しかし、そのためにはどうしてもはみ出すものができるということならば、基本法の十五条あるいは近代化促進法の十条に、事業の転換あるいは転換の指導、こういうことが明記せられてあります。まずこの中小企業基本法の十五条、近代化促進法の十条等の施策をなした後に、そういうことをやらすべきではなかろうかと思うのです。そうでなかったら、大企業だけが国際競争にうちかつ力をつくるために系列、下請等を倒していく、こういう結果になっております。  そこで私は、中小企業倒産一つの大きな原因が大企業の合理化、集中、合併にある、こう申し上げておるので、それに対して基本法十五条、近代化促進法十条、これらの精神と相まってどういう施策を行なう、こういうことについて御答弁願います。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、やはり根本の問題は、中小企業の持つ低い出産性を高めるよりほかにない。そういう点で、中小企業近代化、高度化というものについて、政府中小企業施策の中でかなり重点的にこれを取り上げておるわけであります。しかも今後は、そういうふうなことが起こり得ますから、中小企業の総合指導所というようなものを、ばらばらになっておるものを少し統一していきたい、そしていろいろな場合における相談にあずかりたい、転換の必要も起こってくるでしょうから。そういうことで、この中小企業というものにしわ寄せが来ないような処置を講じつつあるわけでございます。  ただ、田中委員の御指摘のように、大企業が集中されることが、そうなってきたならば直ちに中小企業というものがみな立ち行かぬようになるのだというふうには私は思わない。やはり大企業といえども、中小企業の持っておる役割りというものは近代産業の中で非常に大きいものがある、だからどうしても部品などは、大企業といえども中小企業——関連中小企業というのは、大企業になればなるほど非常に幅の広いものがありますから、大企業中小企業というものは非常に補完的な関係を持っておると思います。だから、大企業が合理化されて国際競争力を持ってくることが、そうなれば直ちに中小企業が不利益をこうむるのだというふうには私は思わない。どうしたところで、下請企業のごときは、親の企業というものがやっぱり国際競争力に勝たなければよくいくわけがない。そういう関係があるのと、また、中小企業としてやっていける分野というものは産業界に相当にある。そういう点で、われわれとしては大企業があまり中小企業の分野まで侵入しないような、そういう点に対しての配慮は要りましょう。そういうことはありますが、必ずしも全部の産業について大企業でなければならぬというふうには思わない。したがって、中小企業の将来というものをそんなに私は悲観的に見ない。中小企業のいま持っておる生産性の低さというものを大企業に匹敵するようなものにわれわれがしていくならば、中小企業は永遠の生命を特っている、そんなに悲観するものではない、かように考えておるわけであります。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 大企業の合理化、集中、これによって、もちろん全部じゃないのですよ、よくなるというか、系列に入るところは救われるわけです。ところが、そうでないものが倒れていく、これを見のがしておいていいのか。しかも、先ほど申しましたように、基本法なり近代化促進法にもいろいろとそのときのことを予想した規定がある。あなたは、また中小企業の総合指導所を全国につくっていくと言うが、ことしは十七ですね。これを全国に、各府県に置く必要もあろうと思うし、また、いま言われていることは、昨年の中小企業白書に、中小企業倒産原因構造的要因である、そして、構造変化に中小企業がついていけなかった、そういうようにも分析しておられる。そういうことをいま伺っているのじゃありません。  そこで、大臣は、だから中小企業構造改革だ、こうおっしゃるのだと思うのですが、この中小企業構造的要因を除くための施策というものは一体どれだけなされておるかというと、ほとんどお粗末であります。一体、大臣のおっしゃっておる中小企業構造改革、あるいは白書のいう中小企業構造的要因が倒産原因であったというようなことについてどのように考えられ、そして四十一年度の予算においてどのように実施しようとしておるのか、簡単でよろしいからお答え願います。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、近代化資金、高度化資金、これが増額しましたし、対象もふやした。また小規模な企業に対しては、機械類の貸与制度、これはやっぱり今年から初めてやるのですが、これを少し育ててみたいという考えがあるわけなんです。こちらが向こうの希望する機械を買って中小企業に渡して、そして長期に支払って自分のものにする、共同工場をつくって、そして、また長期に賃貸料を払ってしまえばそれが自分のものになるという、これは非常に信用力の弱い小規模な企業に対する対策として育てていくべき政策ではないかと思うのですが、そのほかに、今年度の政府関係金融機関で貸し出す規模は五千五百億円くらいのものがあると思う。その中でまあ二千七、八百億円は、これはやはり構造改善のための融資だとわれわれは考えておるわけであります。これで十分だと申し上げるのじゃないのですが、中小企業対策の中において構造改革をやりたいという意欲は、予算の中に示してあると考えております。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 一般会計で二百億円をちょっと出た程度で、三六%昨年よりふやしたといって大きな顔をしてもらっちゃ困る。全体の予算から言えば一%にもならない。〇・六八%ですか、一%にも満たないのですよ。いま大蔵大臣に、中小企業から納めるところの国税、すなわち所得税、法人税は幾らかと聞いてもこれは出ないと思う。しかし、私はかつて三十三年に、大蔵省でわからないので国会図書館で調べてもらったことがあるのです。三十年で一千億以上です。そのときにはわずか二十何億円しか中小企業対策費はなかったわけです。今日ではもっと多い税金を納めていると思います。それに見合うだけの試算が一般会計においてできておるかどうか。たとえば機械貸与制度とこう通産大臣おっしゃいましたが、わずか六県に適用するだけでしょう。なぜ六県だけにしぼったのか、こういうことになるわけなんです。こういうこまかい問題は分科会か商工委員会でやります。しかし、あまり大きな声で、考えておりますなんて言われては困る、こういうことを申し上げておきます。  さらに、中小企業倒産のもう一つ大きな原因は大企業のカルテルである。政府不況対策は、いわゆる下からの解決といいますか、生産性の低いところを生産性を上げさせ、最終消費者の需要を喚起するような方法をとらず、上からの不況克服策、すなわち不況カルテル、あるいは行政による勧告操短、こういうことによって乗り切ろうとしておる。そのために、大企業の大きなカルテルというものが中小企業をつぶす原因になっております。  そこで、一応カルテルの実情を申し上げてみたいと思うのです。現在のカルテルは、独禁法の二十四条の三、すなわち不況カルテルが十七、二十四条の四、合理化カルテルが十四、独禁法除外法によるもの、もちろんこの中には中小企業団体法等中小企業のものもあります。それが千二十一、合わせて一千五十二件のカルテルがございます。このすべてが私そうだとは申し上げてはおりませんが、大企業のカルテルが中小企業倒産の大きな原因をなしておる。さらに行政指導による勧告操短、鉄鋼の公販制度買い上げ機関、こういう——私は行政指導によるカルテルと申し上げたいのですが、こういうものが十四あるのです。この実態に対しまして、一体、公正取引委員会委員長はどのように考えられるか。  さらに、わからないといいますか、もぐりのカルテルが、公取委員会が現在審査中のものだけでも八十数件にのぼっておる。最近北島委員長になってからだいぶん元気に摘発をやっておられるのには敬意を表しております。しかしながら、まだまだこれだけのカルテルがある。こういうことに対してどのように考えられておるのか。  さらに、行政カルテル、行政指導による勧告操短、あるいはもぐりのやつですからわからないといえばわからないのですが、それを調べなくちゃならない。それも大きな物価高の原因、あるいはいわゆる管理価格といわれておる原因をなしておる。そういうものを徹底的に調べるのには現在の人員でやっていけるのかどうか。そういうことについてまず公正取引委員長の御意見を伺いたい。
  45. 北島武雄

    ○北島政府委員 わが国の独占禁止法は、御案内のごとく、カルテルは原則禁止で、例外的に政策目的を達するために必要な限度において認められておるわけでございますが、その数が、ただいま御指摘がございましたように非常に多いのでございます。これはあるいはわが国の中小企業構造関係からくる意味もあるかとも思いますが、ただいまお話にございました中で、中小企業団体法関係が六百二十四ございますし、それから輸出入取引法、これは貿易関係でございますが、二百七ございます。それから環境衛生法関係が百二十三あるというふうに、中小企業、それから貿易関係のカルテルが非常に多いわけであります。その内容につきましても、すでに十年にわたって続いているものもございます。こういうものについては、中小企業の指導の方法として、根本的に体質を改善していただいて、できるだけカルテルというものを早くなくしていただくほうが日本のためになるのじゃないか、こういう感じを持っております。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕  独禁法のカルテルにつきましては、御案内のように、ただいま不況カルテル十七件、合理化カルテル十四件ございますが、このうち不況カルテルの認可につきましては、認可要件をできるだけ厳重に検討いたしまして——ただ、それとともに、これはまた法の与えているものでございますので、緊急避難的の意味もございますし、おくれて認可されてもまた意味がないのでございますので、認可申請のありました場合においては、できるだけ早く審査を完了いたしまして、要件に当てはまるものについてはできるだけ早く認可していく。それとともに、できるだけこれが長期にわたることがないよう厳に戒めておるわけでございます。  なお、このほかにいわゆるやみのカルテルが相当あると私ども考えておりまして、こういうものにつきましては、独占禁止法の精神に照らし、どんどんこれは摘発するつもりでございますが、ただいままでのところ、公正取引委員会の陣容はきわめて貧弱でございます。私も、必ずしも人が多いばかりがいいとは思いませんけれども、する仕事の内容から見まして、非常に私は少ない感じがいたします。ただ来年度は公正取引委員会の地位を若干政府で御認識いただきましたせいでございましょう、他官庁に比べまして相当高率な増員にはなっております。しかし私は、これだけでまだなかなか足れりとは思っておりません。ただ実効上の問題もございますし、実際に人を集めましてこれを働かせるのが一番の仕事でございますので、来年度はさしあたり三十名の増員というものをフルに活用して、やみカルテルの取り締まり等についてはできるだけ力を入れていきたい、こう考えておるわけでございます。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 総務長官、いま北島委員長が申しましたが、独禁法の番人とし、ことに消費者保護の立場から、独禁法に定められた仕事をしていくためには、現在の人員あるいは陣容ではやっていけない。ことしは三十人をふやした、予算が三億六百万円になった、それで事足れりとは考えておりません。ことに地方出張所ではほとんどが五人、六人じゃございませんか。それで一体何ができますか。まず、閣議において公取委員会を担当しておる総務長官、どう考えられますか。
  47. 安井謙

    安井国務大臣 御指摘のように、これは見方によりましていまの機構では非常に人数が少ないじゃないかという御見解も十分われわれ理解できるわけでございます。いままでも田口さんはじめ、あるいは内閣委員会等での数次の御勧告も考えまして、ことしの予算は、御承知のとおり定員増はほとんど認められておらないという状況下にありまして、一割以上の定員をふやしたというのはおそらく例外中の例外で、公取くらいのものじゃなかろうかという気もいたしておりまして、まだ不十分かもしれませんが、いま委員長の話しておりますように、その持った力を今後もフルに活用して運営の全きを期していきたいと思っております。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣も、答弁は要りませんが、ひとつよく聞いておいていただきたい。公正取引委員会が、むしろ経済官庁からはじゃま者扱いにされている、こういう感すらあるわけでございます。現に藤山長官は、不況カルテルは抑制しない、不況カルテル歓迎のような発言を先日生産性本部の講演でやっておられますが、不況カルテルというものをどのように考えておられるのでありますか。
  49. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、不況カルテルは緊急避難的なもの。そこで、今日、不況カルテルをつくらなくてはならないような事業の状態が過去においてよかったかどうかという問題は、これは別でございます。これはあらためてわれわれは検討しなければならぬ。しかし現状において不況カルテルを必要とするような状態が起きてきた。もし緊急避難的に不況カルテルをやりませんと、非常につぶれるものが出てきたり、あるいは将来の寡占体制がそれででき上がってはよろしくない。したがって、ある時期を切って不況カルテルをつくりますけれども、その条件は、当然自分みずからが合理化をし、あるいは業者相ともに協調して、そうしていまの不況の間を耐え抜いていくという状態政府も認めたのだ、公取のほうでもそれを認めているのだ、こういう前提に立って、私は不況カルテルというものは今日やむを得ぬと思います。しかし、これが長きにわたって続いて、そうして価格維持をするというような状態であってはいかぬし、また同時に、そういうような不況カルテルをつくらないことによって将来の寡占体制ができていく、何か強力なものだけが、ほかのものはつぶれるままにまかせて、合併してしまうという状態は好ましくないと思いますから、ある時期はやむを得ないのじゃないかというのが私の考えで、全面的に認めているわけではございません。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 不況カルテル等は緊急避難的なものだ、そういう気持ちでものを言われたのならまあいいと思うのですが、新聞の報道はだいぶ違っておりますね。そこで、あくまでも緊急避難としてやむを得ざるに出る行為だということで不況カルテル、合理化カルテルを認めていく、そういうことは私的独占禁止法のたてまえでもある。したがって、不況カルテル等を認めるときには、要件として一般消費者、関連事業者の利益を不当に害するおそれのないこと、あるいは不当に加盟、脱退を制限するものでないこと、こういったような要件がついております。こういう要件の上に立って、公取委員会としては不況カルテルを認可するときにどのように調査をし、どのような基準を持って行なわれておるのか。さらに、この不況カルテルと合理化カルテル等に関係者の加盟、脱退を不当に制限しないことという要件と、かつて公取委員長の二代前の佐藤さんが、カルテルには拘束性を必要とする、進んで罰則がなければといったような——罰則とは言わなかったが、強い拘束性という意味のことで、カルテルの要件について談話を発表せられたことがある。あのことは、私は独禁法違反の発言だと思っておりますが、いまのあなたは、カルテルとはどう理解しておりますか。そういった拘束性がなければカルテルとは言えないと考えておられるのかどうか。この不当に加盟、脱退を制限しないという条項と照らし合わせて、世の中では公取委員会のカルテルに対する定義について疑問を持っておるのですから、明確にここでひとつ解釈を出していただきたい。
  51. 北島武雄

    ○北島政府委員 問題は二つあるかと存じます。最初の問題でございますが、不況カルテルは、御承知のごとく積極要件と消極要件とございます。ただいまお述べになりましたのは消極要件のところでございまして、カルテルが必要の最小限度を越えないとか、あるいは一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないかとか、あるいは不当に差別的でないかとか、あるいはさらに加入脱退を不当に差別していないか、こういう点の消極要件につきまして十分審査するわけでございますか、そのうちの一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないかどうかという点につきましては、特に慎重にいたしておりまして、関連事業者及び特に一般消費物資に関係あるものにつきましては、事務局でまず十分に業者の方等から直接ヒヤリングを行ないますとともに、委員会の議に付されましたときにおきましても、関連事業者に直接お越しいただきまして、そこでよく意向を確かめまして、がまんをさせる、それから希望などをよく聞きまして、その上で認可いたしておるのでありまして、ことにその点につきましては、いままで十分な措置をとってまいったつもりでございます。  第二のカルテルについて、いわばやみのカルテルについて拘束性を必要とするかどうか、こういう問題でございますが、私は……。(「やみじゃないカルテルだ」と呼ぶ者あり)カルテルは、これは法の第一条に規定してございますが、相互に協定あるいはその他何らの名義をもってするを問わず、価格を決定したり維持したり引き上げたり、あるいはまた生産数量とか取引の相手方を制限する等、相互に事業活動を拘束し、または遂行することによって一定の取引分野における競争を自主的に制限する、こういうふうになっております。  そこで、これは普通のカルテルの場合には問題がないわけでございますが、認可を受けない普通のやみのカルテルの場合にいわゆる紳士協定、別にその協定に違反したからといってペナルティをとるわけでないとか、こういった場合に、はたしてそれがカルテルと言えるかどうかという問題になるわけでございますが、この点につきましては、私どもは、お互いに協定してその約束を実行していれば、そこに拘束性ありと、こういうふうに解釈しているものでございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 まだ明確な答弁ではなかったが、時間の関係上次に移りたいと思うのです。  とにもかくにも、法律において許されておるカルテルにも、いま言ったような不当に加盟、脱退を拘束してはいけない、あるいは関連業者が一般消費者等に不利益をこうむらしてはいけないといったような消極的要件がきめてあります。ところが、法律によらない行政指導によるもの、行政勧告によるものがそれ以上の力を出してきておる。こういう事態に対してはどう考えられるか、そういうことについて通産大臣と公正取引委員長にお伺いいたしたいのですが、その一つの例として粗鋼の減産勧告、いわゆる鉄鋼カルテルといわれているものを例にあげて申したいと思うのです。  あの場合に、いわゆる行政勧告で行なう場合には、必ず通産省なりどこかの行政庁の勧告のうしろには業者の申し合わせがあると思う。もしあるとするならば、これは独禁法違反である。もしないとするならば、行政庁が圧力をかけてこれをまとめていくというところに行政の行き過ぎがある、このように考えられます。さらに加盟、脱退については、いま言ったように、不当に拘束してはいけない、こういう規定もございます。あるいはアウトサイダーの規制命令につきましては、中小企業関係と、貿易関係と申しますか、輸出の関係等にのみ許されておるわけでございます。ところが、行政勧告にアウトサイダーを許さない、それを何らかの罰則、制裁といいますか、この場合は住友金属に対して輸入原料炭の割り当てを減らす。実際は住友が軍門に下ったので、ありませんでしたが、そういったような何らかの報復手段というようなものをうしろにちらつかせながら行政庁が勧告を出すということ、このことは私は明らかに独禁法上問題があると思う。このことについて通産大臣はどう考え、公正取引委員長はどう考えておられるか、お伺いいたします。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 粗鋼の減産の例をとってお話しになりましたが、これは、でき得れば不況カルテルをつくれば、そのほうが適当だと思います。ただしかし、御承知のように業界は百軒近くあってなかなか話がまとまらない。しかも市況は生産費を割るというような状態で、鉄鋼のごとき基礎的な産業をそういう状態に放置すれば、これは産業界にやっぱり異常な混乱が起こってくる。国としても非常な不利益をこうむるわけでありますので、したがって勧告操短という、通産省の設置法第三条によるいわゆる調整を行なうことができる、これを根拠として行なったわけでございます。したがって、そこで勧告操短のごときものは、そういう正常な状態に返れば、これはいつまでもやるべきものではない。できるだけ早くそういう事態はやめなければならぬわけであります。ただ、これに対して拘束力は持っておらないわけであります。罰則のようなものはないわけでありますが、しかし、日本の鉄鋼業界のために好ましいということで、全責任を持ってこういう勧告をいたしたわけでございます。  また、報復というようなことを御指摘になりましたが、役所に対する通産大臣指示は、通産省が操短を指示した数量だけの輸入炭を割り当てるようにしなさい、これが適当だという割り当ての数字、これに見合うだけの輸入炭の割り当てをしなさい、それで、みなが減産をしておるときに自分一人が増産をして、そのために輸入炭が不足するということはやむを得ない。それを、増産をしたものまでわれわれが輸入炭の手当てをする義務はない。結果的にはそのことによっていろいろな制約を受けることはやむを得ない。これだけの減産をすることが適当であるというだけの勧告をして、その勧告に見合うだけの輸入炭の割り当てをするということが報復的だとは、われわれは考えていないのであります。
  54. 北島武雄

    ○北島政府委員 勧告操短につきましては、公正取引委員会といたしまして、いわゆる行政指導によるものも、これはカルテルと実際上同じ効果を持つのであるから、できるだけそれは独禁法上の不況カルテルによるべきだという考えは昔からございまして、これを従来強く主張いたしまして、前内閣時代において、結局勧告操短をできるだけ早くやめようということになって、一つもなくなった。ところが、粗鋼の勧告操短という新しい問題が出たわけでございます。行政指導によるいわゆる勧告操短は、独禁法的の考えからいけば、やはり不況カルテルによるべきであって、結果的に同じようなことを招来するものはやはり独禁法の精神には沿わない、こう私は考えております。ただ、ただいまのお話で原料炭の割り当て、これは外国為替及び外国貿易管理法によるとのことでございますが、この辺は私どもよくわかりませんけれども、結果的においては、やはり不況カルテルにおいてはアウトサイダーを規制いたしておりませんので、これはアウトサイダーを規制することになる、加入、脱退の自由を制限することになるので、独禁法的には問題があると私は考えております。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 いま通産大臣もお聞きのように、公正取引委員会は、アウトサイダーを規制するようなことまでやって、これは独禁法上問題がある。ことに勧告操短というようなものは不況カルテルでやってもらいたい。通産省は、四十年七月二十六日にこの減産措置について決定をしております。その中に、監視委員会を設けて監視するとか、あるいはいまそれは報復手段ではないと言ったが、原料炭の割り当てを減らすというような、いわば兵糧攻めといったようなものを持ち出してアウトサイダーをつくるなということは、明らかに独禁法違反であります。そういうことがなぜできるのかということでだんだん詰めていこうと思いましたところが、通産大臣のほうがまず先に、設置法の三条によってやれる、こういうように言われたので、そこへ入りたいと思います。  設置法の三条、おそらく二号であろうと思いますが、この条文を一度読んでみてください。「輸出品の生産の振興その他」から鉱産物とか、こうやってきまして、そして最後に調整ということばがある。だからやれるのだと、こう言う。しかし第三条は任務であります。通産省の任務である。権限は第四条に規定してあって、それは法律によらねばならないとあるのです。たとえばあなたが言っている三条を見た場合、輸出品とか鉱工業品とか何とかいろいろあるわけであります。それらすべては、調整に法をもってやっておるじゃありませんか。しかるに鉄鋼だけはなぜ行政でやるのか。三条の任務にはある。しかし四条の権限にはない。それは法律によらねばならない。ことに国民——自然人と法人を含みます、に対し直接権利あるいは義務、こういうものを制限し、これに関係あるものは法律によらねばならないことが憲法の原則であります。しかるに法に基づかずして行政権でなぜできるのですか。三条の任務でできるということには了承いたしかねます。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 三条のしまいのほうに、工業製品に対しても、生産、流通、消費増強や調整ができることが書いてあることは御存じのとおりですが、だからこれを権限とは考えてない。一つの任務である。通産行政の任務は、鉄鋼の生産、これがコストを割る、生産費を割ってくる。そうなれば次にどういうことが起こるかということ、平炉メーカーなどは次々にやはり倒産の危機に瀕してくる。こういうふうな状態をそのままに放置しておくことが、権限というよりも通産行政の任務に反すると私は思う。したがって、こういう調整という見地からいま言ったような粗鋼減産、勧告操短をいたしたわけであります。権限というよりも任務と解してそういうことを行なったわけであります。したがって、これをいま法律をつくればよいじゃないかということでございますが、単行法によるいろいろな場合は、それはそれだけの政策目的を持っておるわけで、こういう緊急避難的な事態というものは最初から予測のできないような事態でありますので、やむを得ず行政勧告によったわけでございます。したがって、ほかにもこういう例を拡大していこうという考えではない。何か独禁法の規定によってそういう事態に対処できぬかということをいろいろ考えたのですが、やむを得ないということで、任務としてわれわれはやったわけでございます。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 この四条には「この法律に規定する所掌事務」とありますね。それと任務とどのように違うのですか。しかも、所管事務を処理するためには法律によらねばならないとなっておるのですよ。緊急避難的だと、こういうことですが、現に単独法をつくらなくても独禁法の不況カルテルでやれるではないか。通産省は、それは多種多様であるのでできないと言う。多種多様であり、及ぼすところ大なるがゆえに、より法によらなければならないと思うのです。そういった権限はございません。
  58. 三木武夫

    三木国務大臣 いま事務当局も法文を持ってきて、私の解釈のように事務当局も解釈している。それは権限でなくして、通産行政の任務として、行政指導という点からそういうことをやっておる。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、こういう論争はしたくないんですが、任務と四条の所掌事務とはどう違うんです。
  60. 三木武夫

    三木国務大臣 私も第三条というものの解釈、これは全般的にそういう工業の調整、そのことが国の利益に非常に反するということで、任務としてやらなきゃならぬという根拠でやったわけでありまして、これは三条によって勧告操短はしたものと、これが根拠でございます。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 四条は三条を受けておるんですよ。こういう任務がある、その任務を遂行する、すなわち所掌事務を行なうのには法律によらねばならないとなっておるんです。現にこの三条二号には、輸出品の生産の振興あるいは鉱産物、工業製品、こういうふうにあげてあるわけです。粗鋼は工業製品でありましょう。そうしたら、他のすべては全部法律で、たとえば輸出品については輸出入取引法で、法律できめておるんですよ。なぜ鉄鋼だけが法律によらずにできるかということです。三条と四条との関係、任務と所掌事務との関係を明確にしていただきたいと思います。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 私としては、いま繰り返して申しておるのは、通産行政というものが権限といえばきめられておるだけしかないんで、通産省の行政指導という面は、全般に日本の産業の健全な発展ということを任務としておるわけです。権限でいろいろなことをきめておるのは、権限できめられたことだけでありまして、もっと行政指導というものに対しては非常に範囲の広いことをわれわれは考えておるのでございます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 それは大臣、違いますよ。何回も言いますが、現に輸出品だとか鉱産物とか、ずっと書いてあるんですよ。その他のすべては全部法律によってやっておるじゃないですか。それになぜ粗鋼だけが行政指導でできると——任務だ任務だとおっしゃるが、任務と所掌事務はどう違うんです。四条の所掌事務は法律によらねばならないと明確に書いてあるんですよ。
  64. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまの御指摘の三条、四条の関係でございますが、まさに御指摘のとおり、通産省の任務を達成するために通産省の所掌事務がそれぞれきめられておるわけでございます。それを達成するための手段といたしまして、権限的な事項と、権限とまでは申さなくても、任務を達成するいわゆる一般的な指導行政と申しますか、これは普通に私たちのほうでは権限とは考えていないわけでございます。任務を達成するためにあらゆる形で指導行政をやっております。先ほどの勧告等につきましても指導行政の一環として考えておるわけでございまして、強制力を持ちません。ただし、先ほどお話のございました外貨割り当て等につきましては、これは権限のほうに書いてあるわけでございまして、この外貨割り当てをするというのは法律通産大臣に与えられた権限でございまして、その権限に基づいて外貨割り当てはやっております。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、勧告操短を守らすために権限に基づいてやる、石炭割り当てをやらないということ——実際はやらなかった、それは住友が軍門に下ったから。そういうおどしをかけながら強制する権利がありますか。法律的にそんなものはありませんよ、どうですか。  さらに、時間もないようですから、救済の問題とも関連して伺いますが、独禁法によるカルテル、あるいは独禁法除外のカルテルによって被害をこうむったものは、行政不服審査法による救済の道があるのです。あるいは独禁法による不況カルテルそのものに対して異議の申し立てがあったときには、公聴会を開かねばならぬということになっている。そうして、そのことによって直接に被害を受けた——これは関連中小企業が多いでしょう。これは行政事件訴訟法によって原告になる資格があるわけです。とにもかくにも法律によるカルテルには救済の道があるわけなんです。ところが、行政指導による操短カルテルには——おそらく行政処分でないとおっしゃるでしょう。行政処・分でないから、行政不服審査法にも当たらない。まして行政事件訴訟法の原告となり得ない。切り捨てごめんじゃありませんか。法律によるものでしたらそういった救済の道が開かれておる。ところが、救済の道をとじてしまっておる問題に対して、通産省が行政指導の名のもとにおいて行なう。しかも、それが一般の消費者、関連中小企業者に大きな損失を与える。そのことによって倒産した例もあります。それをもまだ法律によらずに通産省がやれるとおっしゃるのですか。いかがですか。
  66. 三木武夫

    三木国務大臣 現実にあの場合をお考えになっても、他のものは、住友金属を除いては、こういう状態ではもうやっていけない、一社だけであります。ほかは全部ああいう勧告操短に対して賛成をしておるわけであります。また、そういう採算を割って大部分の企業倒産に瀕さすというようなことが、通産行政として——一社だけが、それでも自分はできるだけ、能力に応じて、生産設備に応じて生産をすることは自由だということになれば、全体として日本経済に与える影響というものは非常に大きなものがある。その場合に通産省として、これは拘束力は持っておりませんよ。しかし、通産省としてこういう勧告をして、全体としての日本の鉄鋼業界の健全な発展のために協力をしてもらいたいという、この勧告操短というものは、行政指導としては私はこれは適当なものである。これに対する批判は、通産大臣がやはり全面的にこの政治的責任は負うべきである。しかし、あの場合にそのまま放置して、しかも次々に鉄鋼業界というものが倒産に瀕するような事態をそのまま放置することが、いわゆる通産行政、日本のこの工業に対しての調整をして健全な発展をはかれという設置法の精神に沿うておるとは思わない。そういう意味で、この責任はやはり通産行政全体が政治的責任を負うべきものである。しかし、あの場合に、それを放置して、鉄鋼業が次々に倒産する事態を放置することは、通産省の任務を果たしておるとは私は考えない。そういうことで住友金属も、それはもっともであるということで、最後にはこの減産の勧告に服していこうということで今日は解決をしておるわけで全体のためによかったと私は思っております。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 もし必要ならば、私は不況カルテルによるべきだと思う。法律によるべきである。先ほど私が例をあげたように、法律によるカルテル、不況カルテル等には救済の道がとにもかくにも開いている。ところが、行政措置には救済の道がないのです。それを、あげて私の責任であると言っておるが、それではこの粗鉱操短勧告で——これは七月からなされておる。その結果、合金、鋼鉄等の中小企業で、十分に原料が買えなくて倒れたところがたくさんあります。こういうものの救済措置がとれないのですよ。あなた、個人的に責任を負いますか。  私は、まだ行政の行き過ぎ、法との限界、そういうものについてもっと掘り下げて質問もしたい、そのように用意をしておりましたが、どうも時間があまりないようでございますので、そういう点についてはまたあらためてお伺いするといたしますが、私は勧告操短は直ちにやめるべきである。そうして、法に基づくところによって、不況カルテルが必要ならば、それに移行すべきである。このことを通産大臣に勧告を申し上げます。  それから公正取引委員会は、これは法による不況カルテルでやるべきであるという御意見を持っており、その行政勧告操短のうしろには、これはないといったって、必ず業者間の申し合わせがある。あるいは実質的に競争分野を狭めるといいますか、実質的に競争をなくするというのか、独禁法の八条ですか、あれにも当たると思う。八条に当たったものは、八十九条に罰則もありますね。そういう点についてまで聞きたいと思っておったのです。私は、三木通産大臣のとられた態度は独禁法八条の違反であり、その八十九条二号の罰則により、三年以下の懲役、または罰金五十万円以下に処すべき行為である、このように思います。  それから、公正取引委員長にももっと伺いたかったのですが、この不況カルテルとか合理化カルテルの異議申し立てがあったときに、公聴会を開くということになっている。しかし、私は関連事業者、一般消費者に大きな影響があるので、その申し出があって認可をする前に公聴会等を開くというように法改正が望ましいのじゃなかろうか、このようにも考えております。そういった点について、あとで一言でよろしいから御答弁を願いたいと思います。  まだいろいろと申し上げたかったのですが、時間の関係で急がねばならないのは残念ですが、とにもかくにもこの行政勧告というのはやめてもらいたい。そうして法律によってやっていただきたい。いま私は、中小企業倒産の問題で、その原因の底辺といいますか、根本をたどって、特振法の問題、拘束預金の問題、それでカルテル、ここまで来たわけです。まだほかにもたくさんありますし、それに関連して、実は法務大臣会社更生法等のこともお伺いしたいと思っておったのですが、どうも時間がなさそうなので、これはあらためて他の場所でやりたいと思っております。  大臣、最後にもう一ぺん。どうです、法律による気はありませんか。いま私が申し上げておるように、法律によるカルテルですら救済の道があるわけなんですよ。ところが、いま通産省がやっていることは法律上救済の道がない。まさに憲法違反である。考え直してください。決意をお伺いいたします。
  68. 三木武夫

    三木国務大臣 不況カルテルということで、独禁法の規定によってやるべきで、この行政庁の勧告操短のごときは、これは軽々しくそういう勧告をすべきものではないという原則には、賛成であります。しかしながら、絶対にそういうことはできぬ、たとえば不況カルテルというものの結成が困難になって、その事態が、放置すれば日本の産業界に混乱を与えるという場合に、通産大臣の持っておる調整の任務というものを遂行できぬという、絶対にこの道をふさぐことには賛同はできません。けれども、法律によるべきで、こういうことは例外中の例外にすべきであるという田中議員の主張には、私も賛成であります。
  69. 北島武雄

    ○北島政府委員 不況カルテルの認可にあたりましては、先ほども申しましたように、委員会の席上に関連事業者の方にも直接来ていただいて、聴聞いたしております。いわば自主的な公聴会を、公に公開はいたしておりませんけれども、一般聴取者はございませんけれども、いたしておりまして、実際は支障は生じないと思われますが、必要がある場合には公聴会を開くことも考えられます。ただし、不況カルテルは緊急避難で、できるだけ早く必要がある場合は認可しなければいかぬ。公聴会については、さらに半月程度時間がおくれますので、そういう点もやはり考えなければならぬと思っております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 もう時間がきたようでありますので、結論をひとつ申し上げて、通産大臣あるいは大蔵大臣等にも考えていただきたいと思うのです。  冒頭申しましたように、中小企業対策費が二百億五千五十万円、前年に比して三六%増となったといって大きな顔をしておったら困る。全体の四兆三千百四十二億七千万円から見れば〇・六八%、一%に満たないのであります。ことに中小企業倒産問題については、前向きな施策がこれといって講ぜられておらない。したがって、最初希望したように、民間の東京商工興信所調査等にたよることなく、政府みずから、通産省みずからの手で調査をし、個別的な対策を立ててもらいたい。興信所ですら日報を出しておるのです。その日報には、もう一カ月ほど前から、何々会社は行き詰まっておるとか、あるいは動揺しておるとかいうことが書いてあるわけです。したがって、個別的な調査の上に立って、きめこまかい防止対策を立ててもらいたい。そういうことを要望し、最後に、先ほど申しましたように行政勧告操短というようなことは、もうほんとうにあきらめてもらって、法治国であるから、法律に従っての行動をとってもらいたい。そのことを要望いたしまして、質問を終わります。
  71. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に楢崎弥之助君。
  72. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 一番最初に一言お伺いいたしたいのでありますが、現在中国とフランスの間で、エールフランスの航空機の上海乗り入れの問題が協議されておると聞いておりますが、運輸大臣は御存じでしょうか。
  73. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 フランスと中共との航空協定は、いまだ締約されたという情報には接しておりません。
  74. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま交渉中であると聞いておりますが、御存じですかと私はお伺いをしておるのです。
  75. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 最近のチャイナメール紙の報道によりますと、現地フランス航空支店広報担当者の言として、現在フランスと中共間の交渉が行なわれており、エールフランスの上海乗り入れが近く実現する模様とのことでありますが、まだ確認されてはおりません。
  76. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現在エールフランスの上海乗り入れの問題が交渉中であります。そして、早ければ三月にまとまるのではなかろうか。そこで、日本とフランスの航空協定によりますと、路線の中に中国の本土の一部ということがきちっと載っておるわけでございますから、もしエールフランスが上海を経由して、たとえば日本の羽田に飛んでくるという、そういう状態がもしできたときには、運輸大臣としてはそれを歓迎されますか。
  77. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 楢崎委員が仰せられましたように、日本とフランスとの間の協定の中に、中国本土内の地点を掲げておりますが、この地点につきましては、両国政府間で合意により定めることとなっております。現在のところ、日本と中共との間には航空協定も結ばれておりません等、その他いろいろの情勢を考えまして、フランスが中共の一地点を通って日本に入ってきたいという申し入れがあっても、いまのところ合意する意思はございません。
  78. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本とフランスの間の航空協定は、ちゃんとできておるわけですね。路線の中に中国本土の一部というものがある。それが具体的になった場合には協議するとなっておることは、承知しております。そこで私は、エールフランスが上海を経由して日本に飛んでくるような事態になるということは、われわれ国民の側からいうと、中国を訪問する際には、いまいろいろ遠い道を通って入っておるのですから、非常に歓迎すべき事柄である。また、政治と経済を分けるという立場から考えても、直接中国に、上海に飛んでいかれるというような事態になれば、歓迎すべき事柄であろうと思うのです。そういう事態になった場合には、運輸大臣は歓迎されますかと言っておるのです。
  79. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 歓迎いたしませんから、応じられないと申し上げておるのでございます。
  80. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なぜ歓迎されないのです。それは、中国を敵視することに通ずるではありませんか。佐藤総理の方針だって、政治と経済を分けるという、そして経済的な問題は積み上げていくという方針でしょう。どうして歓迎されないのです。理由をおっしゃってください。
  81. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 中国と日本とは国交が正常化されておりません現段階においては、諸情勢を勘案いたしまして、フランスのこの申し出には応じられないということでございます。
  82. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣はどのようにお考えですか。
  83. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ具体的に問題が提起をされておらないのでありますから、いわば仮定の問題でございます。もしそれが現実の問題になった場合には、十分に慎重に研究してこれに対処したいと思います。
  84. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、もしエールフランスの上海寄航の話がまとまりまして、羽田にそのエールフランスが飛んでくる。路線の途中で、いま現実にあるエールフランスの日本への乗り入れの途中、上海に寄航してエールフランスが羽田なら羽田にやってくる際に、拒否できますか、運輸大臣
  85. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 中国本土内の地点を通って日本の国内に入ってくる場合には、それは両国の間で合意によって定めるということになっておりますから、断わるということもできるのでございます。
  86. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 航空協定のその部分は、中国本土に寄るということは予定しているのですよ。その中国本土のどの地点に寄るかということについては協議をするということになっておるのですから、中国本土を経由してくるということを、いまの大臣のおっしゃった条項によって拒否することはできません、中国本土へ寄航するという問題は、その日本とフランスの航空協定では認めておるのですから。ただ、どの地点になるか——じゃあなたは、上海でなくて、重慶とかあるいは北京とか、そういったところだったら許可するというような意味ですか。上海だから悪いという意味ですか。
  87. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 フランスと日本との航空協定の中で、中国の地点を通って入ってくる場合は両国の合意によって決するということになっておりますので、断わることはできると申し上げておるのであります。
  88. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、運輸大臣のお考えでは、その航空協定のたてまえからいっても断わることができる、現実にそういう事態になった場合には歓迎をしない、すなわち断わるということですか。歓迎しないとおっしゃっている。
  89. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 現時点においては、さようでございます。
  90. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの運輸大臣は、断わるつもりであると言う。外務大臣は、現実にそういう事態になったら検討するとおっしゃる。どういうふうにこれは考えたらいいのでしょうか。
  91. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 慎重に考慮するというのは、関係省と十分に協議して、そして決定する、こういうわけです。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 事は外交問題です。外交問題で外務大臣が慎重に検討をしたい、それに運輸大臣が拒否するなんという考えを持たれておるのは、どういうことなんでしょう。外交問題ですよ、これは。
  93. 中村寅太

    ○中村(寅)国務大臣 先ほど申し上げましたように、中共の地点を通って日本に入ってくるときは、日本とフランスとの間に合意が成り立ったときにのみ本協定は効力を発するのでございまして、現時点では私は拒否する考えであると申し上げておるのでございます。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この問題は、いずれ事態が明確になったとき、もう一度詰めたいと存じます。  それでは防衛問題に入りたいと存じますが、主として私は二次防、三次防に関係する問題点について御質問いたしたいと存じます。  松野長官は、過ぐる昨年八月六日、内閣委員会におきまして、伊能委員の三矢計画に関する質問の際に、このような答弁をされております。「この結論に従って政治介入の疑いがないことを今後必ず自衛隊は守ると同時に、私も就任以来それに心を尽くしております。」これは、おそらくあのような三矢計画問題のあとあなたは防衛庁長官になられたわけでございますから、この答弁のお気持ちは、自衛隊というものはもちろん政治介入はしない、と同時に政治介入の疑いのあるような行為も自衛隊としては慎しみたいという、そういう自粛自戒の決意を表明されたと私どもは聞いたわけですが、そうでございましょうか。
  95. 松野頼三

    ○松野国務大臣 そのような趣旨でございます。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あとの質問とも関連をいたしますから、さきに聞いておきたいのですが、二次防あるいは考えられておる三次防というものは、重要な国の防衛政策であると解してよろしゅうございましょうか。
  97. 松野頼三

    ○松野国務大臣 重要なわが国の防衛政策であります。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 自衛隊がお使いになっておる用語の中で、対象勢力ということばがありますが、どういう意味でございましょう。
  99. 松野頼三

    ○松野国務大臣 わが国を直接・間接的に侵略する勢力、これを対象勢力と一応概念的に呼んでおります。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 二次防は四十一年度をもって終わるわけですが、長官として二次防を過去五年やってこられたわけですが、現時点において二次防の成果をどのように評価されておるか、お聞きをしたいと思います。
  101. 松野頼三

    ○松野国務大臣 二次防は四十一年度で終わりますが、ただいま御審議いただいておりますのが、四十一年度の最終年度の予算であります。この五年間を振り返ってみますと、どうやら二次防の達成ができた。しかし、その過去を振り返りますと、いろいろ長所と短所がございます。したがって、実行では、どうやら艦船が二次防計画よりもややおくれたということが目立ちます。その意味で、やはり二次防の反省というならば、これは予定計画の準備が足らなかった、あるいは開発の準備が足らなかった、あるいは諸般の計画の準備が足らなかった、このために、二次防がどうやら完成したと言いますけれども、反省をすると、三次防はこの点は反省して、より以上効果的に能率的にやるべきだと、こういう考えが二次防に対する考えであります。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 三次防をつくられるにあたっては、当然二次防の総括をなさった上で、あるいは評価をなさった上で三次防に移っていくと、このように思うわけです。それで私は、二次防の総括なりあるいは評価について、以下質問をしたいわけですが、特に二次防の総括あるいは三次防——特に四十一年度について、防衛庁の予算的に見ても、方針の上から見ても、あなた方が重点事項に掲げられておる問題について、まずお伺いをしたいと思います。  二次防の本文の中に、「(2)防衛力整備の方針」、その中の(二)のところに「右のほか、防衛力の向上に資するため、情報機能を整備充実し、」とあります。さらに防衛庁がお出しになっている四十一年度の重点事項の中で、冒頭に「防衛意識の高揚及び充足対策の強化」、そのまた一番最初の洋数字の一の中に「広報活動の強化」ということをうたってあります。非常に重要視されていると思うわけです。そこで、この情報活動あるいは広報活動についてお伺いをしたいわけですが、まず、二次防本文の中にある「情報機能を整備充実し」とありますが、どのような活動をなさいましたか。
  103. 松野頼三

    ○松野国務大臣 情報活動の一番大きなものは、やはり国民に対して防衛意識というものを植えつける。二次防の一番大きなネックというならば、陸上自衛隊における補充で、これは、要するに防衛庁における広報活動の焦点が必ずしも成果をあげ得なかったために、二次防における陸上の兵員補充率が一番大きく欠点を出しております。このために情報及び広報というものは、まず国民に対する国防意識、青年に自衛隊に対する魅力、あこがれ、内容、こういうものの実態を知らして、自衛隊に誤解のないようにしたい、これが広報活動の主なるものであります。情報活動は、諸外国における防衛力というものの整備の状況、あるいは現在の国際情勢における防衛力の動き、こういうものが情報である、この活動をしております。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 二次防の中で、これは三次防にも引き継がれますが、いわゆる防空体制の強化をされました。特にナイキ、ホークの大隊を設置をされました。そのうち福岡県に設置をされました編成は二月一日と聞いておりますが、どうなっておりますか。あとで聞きますけれども、この福岡県に第二高射群を配置するについて、あなた方は竜作戦というものを展開されました。竜作戦というのは一体どういう作戦でございますか。
  105. 松野頼三

    ○松野国務大臣 防衛庁におきましては、やはり部隊の性質上、いろいろな計画を作戦とよく通称いたします。かりに言うならば、一つの懇談会の場合にはクラブ作戦、こう言うとクラブ諸君との懇談会、その日にち、場所、設営ということになります。予算のときには大蔵省作戦、これは大蔵省に対して予算獲得の作戦ということになりましょう。いろいろの場合に、作戦ということばが、これは性質上通俗語でよく使われます。その意味で、おそらくそれは竜情報とか竜作戦ということばを使ったかもしれません。それは、その名前を冠詞を簡単にして明確に言うために往々にして使うことばでありまして、おそらく竜という名前をつけたというならば、それはナイキの搬入計画、搬入予定、搬入の時期とか、そういうものをおそらく竜作戦と呼称したんじゃないか。したがって、作戦という名前でいろいろな名前を使いますので、おそらく楢崎委員のおっしゃった竜というのは、北九州市におけるナイキ配置のための計画、準備というものを総括的に竜という名前で総称したのじゃないか、私はこう思います。おそらくそのことを御指摘になっておるんじゃないかと思います。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのおことばによりますと、竜作戦というのは、福岡県に第二高射群を配置するについてのいろいろな対策の総称である、そのように承ったわけです。この竜作戦の費用はどういうことになっておるのでしょうか。
  107. 松野頼三

    ○松野国務大臣 一般庁費あるいはその運搬費あるいは計画費というものは、一応予算の中に入っております。そのほかにはもちろん広報というものもございますので、その地方において、その兵器、ナイキというものに対する不安を与えてはいけませんので、その住民に対する広報活動というのは、これはおそらく広報費で支弁すべきもの、搬入の運賃については、それは予算で認められた設備費でやるべきもの、したがって、どの予算という一つのものでは私はないと思います。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、その竜作戦には地元のいろいろな方面に対する工作費——工作も含まれておるのですか。
  109. 松野頼三

    ○松野国務大臣 工作費と申しますと、いろいろ語弊がありますが……。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 工作費じゃない、工作です。
  111. 松野頼三

    ○松野国務大臣 工作ということばが当てはまるかどうか知りませんが、いわゆる広報的にそのものを周知徹底させる。なるべく、こういうものであると、ことに最初のものにつきましては、最初の地方ではどういうものができるだろうという不安がありますので、そういう意味では当然事前に、これは設置する前に、宣伝と言うとおかしいですが、広報、周知徹底させるための広報費というものは、私は使ったと思います。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、その工作の中に買収行為は含まれておりますか。
  113. 松野頼三

    ○松野国務大臣 買収ということばは多少どうかと思いますが、その用途によって、あるいはいろいろな使用方法があるかと思いますが、買収といって、個人を買収するということは、私はあり得ないと思います。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では長官によると、そういう竜作戦の広報活動、私から言わせると、そういう工作に従事をした人たちは、大体どういう人たちなんですか。
  115. 松野頼三

    ○松野国務大臣 この所管は、施設庁がまず関係がございます。それから地方連絡部が関係がございます。その部隊の運搬、建設のために、その航空関係が所管をしておりますので、これも関係がございます。したがって、その場所、その時期によって、この三つの動きが私は組織されたと思います。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方は情報なんかも集めておられると思うのですが、買収費も含めて——そういう費用は一体どのようなルートで流されるのですか。支払い方等も含めて御答弁をいただきます。
  117. 松野頼三

    ○松野国務大臣 買収ということばがどうも私には当てはまるとは思いませんが、広報の場合には、その方に対する宣伝、それに対する説明、ある場合には現地を見ていただくために現地を案内する、そういうものに使い、ある場合には情報収集費ということも、これもございます。したがって、そういうものであって、買収というのはどういう事実か、私にはちょっとわかりませんが、そういうものを総括的にわれわれは国民に自衛隊というものを親しませる意味でやっておることは、これはございます。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 情報提供者に対する報償金を支払われるわけでしょうが、そういう際には、領収証をとられますか。
  119. 松野頼三

    ○松野国務大臣 一般の会計法に規定するような厳格なものではございません。しかし、もちろん簡略なものは、ある場合には右代表何名とか、ある場合にはこういうものとか、簡略なものは領収証をとっておるのではなかろうか。これは正確には私もよく存じませんが、私の今日の考えでは、簡略なものはとっておるのじゃなかろうか、こう考えます。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官が新しく就任される前、つまり小泉長官の時代に大部分は属する問題であります。したがって、松野長官答弁の中で、であろうと思う、であろうと思うということを絶えず言われますが、私は事実を指摘したいと思う。つまり竜作戦のうち、広報活動に関する部分は、これは予算が非常にでたらめであります。あなた方のこういった問題に対する支払い組織は、おそらく西部航空方面隊、西空の主任資金前渡官ですか、そういう方がおられるわけです。そして第二高射群のそのおのおのの基地である芦屋、春日あるいは新田原等には、それぞれ分任資金前渡官がおられます。そういった組織を通じて、あなた方はこの工作費を流しておられる。しかもこれらの工作費は、なかなか予算的にむずかしいから、あなた方は予算で許されておる報償費あるいは謝金あるいは訓練演習費あるいは入校講習旅費等からかすめ取って、そして架空の経理を行なって、この竜作戦の工作費に充てておる疑いがあります。私はこの事実を知っておる。会計検査院が来られておったら、三十九年度の会計決算をいま国会に出されておりますけれども、こういった点に不正の事実はありませんでしたか、会計検査院にお伺いします。
  121. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 お答えいたします。  先生のおっしゃっておられますのは、防衛庁の報償費が主としてのことであろうと思いますが、報償費のうちには、御承知のように、自衛隊の隊員等の表彰に関する経費と、もう一つは、いまお話のございました情報収集関係の経費とがございます。  そこで、隊員の表彰関係の経費は、これは一般の経費と同じでございますので、会計検査院に対して正規の証明をいたさせております。それから情報収集関係の経費は、特殊な経費でございますので、計算証明といたしましては、簡易な証明の方法を承認いたしておりまして、私どもには取り扱い責任者の領収証書と、それからその内訳とがまいっておるわけでございます。ただし、この簡易証明を承認いたします条件といたしまして、その取り扱いに要す関係の領収証書等の証拠書類は、すべて取り扱い責任者のところで保管することに相なっておりまして、私どもが実地調査に参りました節には、その実際の証拠書類に基づいて、一般の経費と同じような検査をいたしておるわけでございます。三十九年度の例で申し上げますと、防衛庁の報償費の決算額は八千四百二十一万円でございますが、簡易証明の取り扱いをいたしましたものは七千二百七十二万円でございまして、この簡易証明の取り扱いをしましたものに対しまして、私どもは九三%の実地検査をいたしております。  ただいまいろいろ不当な事例はなかったかというお話でございますが、私どもが実地検査をいたしました範囲におきましては、さような事例はございませんでした。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、私は簡単に申し上げますが、長官、西空のこういった工作に従事しておられる人は、いま申しましたような竜作戦の費用を捻出するために、旧在郷軍人の関係、あるいは料理屋のおかみさん等に渡してもいない金の架空の領収書をつくらしておる形跡があります。もしこういう事態があるならば、会計検査院はもう一度三十九年度の予算について調査をされますか。
  123. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 先ほど御説明いたしましたように、私どもが実地検査をいたしました九三%の金額の範囲内におきましては、さような事例はなかったのではございますが、一般に防衛庁の報償費につきましては、従来若干経理が妥当でなかった点もございますので、私どもは注意をいたしました。その結果、三、四年前から経理は一般的には適正になっていたものと私どもは考えております。  御質問の三十九年度、三十八年度のものでございますが、私どもはすでに検査を終了いたしまして、国会に対して検査報告を提出いたしております。それに対して再び検査をするということはいたさないたてまえとなっております。  なお、報償費は特殊な経費でございまして、その具体的な内容がだれにどういうことで支払ったかという点については、その具体的な内容については御容赦を願いたいと考えておる次第でございます。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 具体的な事実が明白になっても会計検査院は再調査をなさいませんか。どうですか。
  125. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 先ほど申し上げましたように、私どもは大体において検査をいたしております。さような事実はなかったものと考えておるわけでございますが、(「あったらどうするのだ」と呼ぶ者あり)かりにありましたら、それは非常に経理としては適切でないと考えております。(「質問に答えるのだ、再調査するかというのだ」と呼ぶ者あり)先ほど申し上げましたように、すでに決算を確認いたしておりまして、それに対して一般的に検査をいたさないたてまえとなっておりますが、私どもの内部的には、さような調査をいたしても、それは差しつかえないかと考えております。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、不当な事項がもし明白であれば、あなた方は国会に対して虚偽の報告をしたことになりますよ。それは明白であって、しかも再調査をしなさいというのであれば、一体こういう事態の処理はどうなるのですか。私は不当な事実を明白に指摘しますよ。会計検査院はどう処理されますか。すでに三十九年度は決算報告をなさっておられます。どうされますか。
  127. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 私どもの与えられました予算と人員におきまして、できるだけの検査をいたしたわけでございます。もちろんそれについて見落としがなかったということを申し上げるわけではございませんが、私どもは、そういうふうに、できるだけの範囲におきまして検査をいたしました結果、さような事実はなかったということを申し上げておるわけでございます。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 われわれ国会議員には国政の調査権があります。われわれがもし事実をつかんだときに、それを政府の場で明らかにする際に、いまのような答弁であったら、一体これはどう処理をされるわけですか。もし不当な事項が明白であれば、どう処理をすればいいのですか。もしあなたが答弁ができないのだったら、私は総理大臣の御答弁を求めたいと思う。会計検査院としては、再調査ができないということであれば、一体どう処理ができるのでしょうか。
  129. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 会計検査院の責任において決算検査報告を作成いたしたものでございまして、従来の取り扱いといたしましては、一ぺん確認をいたしたものについては、検査をいたさないたてまえとなっております。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうするならば、当然、佐藤内閣の最高責任者である総理の答弁を聞かなくちゃならぬことになります。じゃ一体その処理はどうなるのですか。どうしたらいいのですか、教えてください。そこに並んでおられる大臣、どなたでもいいから教えてください。——委員長、私は答弁を求めておるのだから、委員長、催促してください。
  131. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 便宜私がかわってお答え申し上げます。  もし会計検査院が国会に対して、会計検査報告をいたした後に、その報告にあやまちがあるというならば、会計検査院はその検査が粗漏であったという批判を受ける、こういうことになります。それに対しまして、会計検査院では、ただいま申し上げましたとおり、検査報告は提出はしてあるのだけれども、内部的な検査をいたします、調査をいたします、こういうふうに申し上げておるわけであります。  なお、当然防衛庁におきましては、そういうことがあるならば、防衛庁自体調査が行なわれてしかるべきものである。そういう調査に基づいて、今後防衛庁の会計を適正にし、また会計検査のやり方も適正にするという反省をすべきである、かように考えます。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま大蔵大臣から、所管でないにもかかわらず、御所見を承ったわけですが、会計検査院、再調査をしますか、部内的にも、権威をもって。
  133. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 検査報告として提出しました、確認をいたしたということを申し上げましたのでございまして、ちょっと私落としましたが、たとえばその事態が予算執行職員等の責任に関する法律に該当するような重大な事態でありますれば、これは予責法によりまして懲戒処分をするなり、あるいは弁償責任を決定するなり、そういった事態はあとに残されているわけでございまして、そういった点の必要があるかどうかについての調査は、内部的にはいたさなければならないかと考えております。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは、結局再調査はしないということでしょう。いま言っているのは、ただ、そういった事実がはっきりすれば、だれかが責任をとりますということでしょう。私はそういうことを聞いているのじゃないのですよ。責任は当然だれかが負わんならぬでしょうが、そういう事実を明確にするにはどうしたらいいかと言っているのです。私がつかんだだけではだめでしょう。どうしたらいいのですかということを聞いているのですよ。
  135. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 検査ということをごくかたく考えて申し上げたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、予責法とか、そういったものに関係する事態でございますればもちろん調査をいたしまして、法律によって適当な処分をとるということに相なると考えております。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はあなたが会計検査院長と思っておったら、局長さんですか。それじゃ会計検査院長を呼んでください。最高責任者を呼んでください。いまの答弁では納得できません。答弁があいまいです。
  137. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 野原君の関連質問を許します。
  138. 野原覺

    ○野原(覺)委員 会計検査院にお尋ねをいたしますが、楢崎委員が質問いたしておりますことは、会計検査の報告を国会に出したあとといえども、間違いの点を指摘された場合には、当然会計検査院では再調査をすべき責任があるという点を指摘しておるわけであります。国会に対する報告はもちろん再度の報告をする法的義務はないと思いますけれども、検査自体に間違いがあるではないかと事実を指摘された場合には、会計検査院の職務上、当然指摘された事実は再調査をすべき責任がこれは法的にあるわけであります。この点を明確にしなければ次の質問ができない、これが一体できるのかできないのか、端的に御答弁願いたい。
  139. 樺山ただ夫

    ○樺山会計検査院説明員 私の御説明が悪かったと思いますが、確認いたしましたことにつきまして、再度検査報告には載せないということでございまして、そういった新しい事実が発生いたしましたものにつきましては、私どもで再調査をいたしまして、法律に基づいて処理すべきものがあれば処理をするということに相なると思います。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの御答弁は、会計検査院として一度検査したあとでも、明らかに不当な事項があれば会計検査院として再調査をする、こういうことですか。なぜ初めから言わぬのですか。あなたはできない、できないと言っていた。  それでは、いまの点は、私は事実を知っております。しかし、その人たちの問題もあります。当場所でそれを明らかにするということは、あるいは不適当かもしれません。したがって、この問題の調査については、もし要求があれば私は出します。私は会計検査院の責任で実はやってもらいたいと思っておるのです。防衛庁長官はこれらの問題についてどう思われますか。
  141. 松野頼三

    ○松野国務大臣 会計上において粗漏あるいはあやまちはないと私は思います。しかし、これはやはり人のやることですから、ある場合にはそういうものがないと私も断言できるものではございません。しかし、一応会計検査院の検査を通っておるものですから、まあ万々間違いなかろうと思いますけれども、おっしゃるように、全然ないかと言われると、私も事実全部なかったというわけではありません。毎年防衛庁も会計検査院から摘発を受けている事柄もたくさんありますので、もしあれば、私のほうも十分注意をしなければならないし、またないと私が断言するわけにもこれはまいりません。防衛庁も十分いろんな面において注意をしておりますけれども、粗漏、ミス、あるいは手落ちというものがないとは申しません。あった場合には、それは善処して、今後ないように自粛すべきだと私は思います。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方は第二高射群の福岡県設置問題について、反対をしておる向きについて、買収工作をやっております。そういう事実があります。したがって、防衛庁長官は、西空の竜作戦・特に広報活動に従事をしておった人たちに対して厳重に調査をしてもらいたい。  では次に移ります。先ほど長官は、竜情報ということばを答弁の中で言われました。竜作戦という「竜」という名がついたのは、おそらく竜情報、そういったものがあるから、竜作戦とつけたのであろうとあなたはおっしゃいました。竜情報とは一体どういう情報でありますか。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 松野頼三

    ○松野国務大臣 福岡県北部ナイキ搬入及びその設置について総体的な計画というものを総称して「竜」と、こう申し上げたわけで、その中にはいろいろな情報もありましょう、いろいろな広報活動もありましょう。したがって、それを竜情報というか、竜作戦というか知りませんが、「竜」という名前をつけて、その日程に代名詞をつけたのであろうと私はそう想像して——私が名前をつけたわけではありませんので、したがって、そのナイキ搬入及び設置についての計画を「竜」と呼ぶと、おそらく部内で通俗にこれをやったと私は思います。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁は、竜作戦について「竜情報月間要約」というものを出されておる。その事実はお認めになりますか。これは航空幕僚監部防衛部調査第一課から出ております。
  145. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私は現物を見ておりませんが、期間が相当長かった。楢崎委員は地元で一番よく御存じのように、これは相当長期間かかった。したがって、その間において地元の空気、地元の情報、あるいはいろいろなものをずっと積み上げていけば、いろいろ書類をつくったであろう、私はそれを是認するわけではありませんが、そういうことは一年か一年半の長期間でありますから、その時期、時期に応じて、地元の空気、地元の情勢というものは、それを知らせ、あるいはそれを知るということはあったであろうと私は思います。
  146. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 「竜情報月間要約」の三十九年七月分を資料として提出してください。出せますか。
  147. 松野頼三

    ○松野国務大臣 その内容を私もよく存じませんが、いろいろな部内の資料を一々出すということは、私は必ずしも行政上において感心したものではないと思います。したがって、もし御要求があるならば、私の口頭で、質疑の中でやっていただきたい。これはやはり一つの規律の問題です。したがって、部内だけのものが公にどんどん出るということは、それが内容のいかんを問わず、書類を所管する、行政を所管する者としてはあまりありがたいことではないと私は思いますので、その情報が、もし御質疑があれば、国会ですから、私が答弁いたします。また質疑によって明らかにしていただくならいいですが、いろいろな書類を、行政の中のものを一々出すということは、原稿もあれば、草案もあれば、固まっていないものもたくさんあると私は思います。したがって、ひとつその点は御理解願いたいと思います。
  148. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は具体的に申し上げておるのです。航空幕僚監部防衛部調査第一課が出しておる「竜情報月間要約」の三十九年七月分を出せますかと聞いているのです。あるという答弁ですから、それは出せますかと聞いているのです。
  149. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私はあると思うというだけで、私実は見たわけじゃありません。しかし、ナイキ搬入については、御承知のごとくいろいろな情勢、いろいろな報告というものがあったと私は思います。したがって、それを一々出すということは、部内のものでございますから、公にするということはあまりありがたいことではない。私は見たわけじゃありませんので、ここであると答えられませんが、部内限りの通信連絡——情報というものは私はおそらくそれじゃなかろうかと想像するわけであります。
  150. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうもあいまいですが、何回も申し上げるようですけれども、「竜情報月間要約」の七月分というのはありますか。
  151. 松野頼三

    ○松野国務大臣 あるかどうか、私もいま直ちに明確にはお答えできませんが、しかし部内の書類のことですから、まあひとつこの辺で、質疑でごかんべんいただければありがたいと思います。したがって、あるかどうかと言われましても、私として明快に答弁する用意は、今日は持っておりません。
  152. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、あるかどうかわからないならば、あるかどうかを、いま事務当局に調査を命じてください。
  153. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私もまだ明快に存じません。したがって……。(「あるさ」と呼ぶ者あり)私は見ていないのです。三十九年のことですから……。
  154. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、すぐ調べてくださいと言っているのです。いまわからぬなら、すぐ調べてください、事務局がそこにおるのだから。事務局も知らぬというのですか。
  155. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 防衛庁関係の情報の収集に関しまする内部部局としては、防衛局が担当いたしておりますが、航空幕僚監部におきまして、第二高射群の基地建設に伴いますいろいろな地元の動向等についての情報を入手して、いろいろ検討いたしておるということは承知いたしておりますが、ただいまの御指摘の書類があるかどうか、私もはっきりいたしませんし、おそらく当時はございましても、こういう書類は逐次処分いたしておりますので、おそらく現在におきましては、航空幕僚監部におきましても保存していないのではないかというふうに考えます。
  156. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま保存しておるかどうかなんて聞いておらぬですよ。何を言うのですか。時間を食ってしようがないじゃないですか。  それじゃ、防衛局長で知らぬならば、あなたが航空幕僚監部防衛部に連絡してください。
  157. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いずれにしても、部内の書類ですから、そう大臣が決裁するというものでもありませんので——それはいろいろな情報、いろいろな報告というものは、部内では年じゅうあることであります。したがって、これは公にするというほど権威のあるというか、それだけ慎重につくった書類ではないのじゃなかろうか。一つの情報というものはいろいろなものがありますので、それを公にするという権威のあるものではないと私は思いますので、したがって、ひとつその書類の提出ということは、それはなかなか部内の行政上においてはひとつごかんべんを願いたい。
  158. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はあるかないかをまず聞いておるのですよ。出せるか出せないかはその次に聞きますよ。あるかないかを聞いておるのです。わからぬならば連絡してくださいと言っているのです。私は出どころもはっきり指摘をいたしております。
  159. 松野頼三

    ○松野国務大臣 よく調査して御答弁いたしますので、その問題は後刻御返事いたします。
  160. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これがなくては質問が続けられないのです。だから、私はあるということが明確であれば——私は持っております。それで進めてよろしいなら私はやりますよ。ただその際に、あるということを明確にしてもらわないと困る。私は仮空のものをここで出したと言われては困るから、だからあるかどうかをまず明確にしてください。   〔「委員長、あるかどうかくらいはっきりさしたらいいじゃないか」「空幕から出ているのだから、電話一本でわかるじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  161. 福田一

    福田委員長 委員外の発言はどうぞ……。
  162. 松野頼三

    ○松野国務大臣 過去にそういうものがあったと思います。
  163. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その資料は出せますか、当委員会に。
  164. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいま申しましたように、過去においてあったということはあったようでありますが、その書類の内容とその書類の格づけが非常に軽微なものでありますので、保存的な書類ではございませんので、今日は残っておりません。
  165. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、私が手元に持っておりますものがそれであるかどうかは、お聞きになってあとでお考えを聞きたいと思います。  私の手元にある「竜情報月間要約7月分昭和39年8月航空幕僚監部防衛部調査第一課」、読んでみます。  その要約の目次は、「1、全般2、地方自治体 3、対象勢力の動向 4、報導等 5、今後のみとおし」こういう目次でつくられております。  それでは一応読み上げます。  1 全 般   (1) 本月間をもって県下各自治体の定例議会は福岡市議会を残して全部終了した。     一部3月議会で、反対決議および反対決議案審議保留とした自治体で再提案の懸念ありとするところもあったが、いずれも上提されず全般にN問題については低調であった。   (2) 9月の福岡市長選挙を目ざし社会党は前衆議院議員柏正雄を推薦し、これが必勝を期するため、日共と協定を結んだが、これは去る38・4統一地方選においても社共は政策協定の提携により、社共統一候補による統一選挙を推進し、この効果として安保共闘の再開をはじめとして、1〜3月中に12回にわたる統一行動をもりあげたことは記憶に新しいことであり、今回の社共協定が当面する政治問題についての統一行動の契機をつくることも考えられる。   (3) 7月9日社会党は改憲、核武装阻止福岡県会議を結成したが、これによって4・17スト以降安保共闘解消の方向を打ち出した。社会党はこの組織の中核としてN問題を具体的にとりあげる公算が非常に強い。   (4) 本月間は8月原水禁大会成功を目ざして日本原水協が各地区において平和行進、教宣活動等を実施し、その中にN基地化反対を織り込んでいたが、N反対運動としては表立った動きは見られなかった。  2 地方自治体   (1) 春日地区    〇春日町議会     マル社木田議員はさきの3月議会以来陳情組の防音工事の交渉が成功していないので今度の議会にN反対と併せてとりあげようと工作中であったが上提の段階に至らなかった。     その他の自治体ともN問題なし。   (2) 築城地区    〇勝山町議会     去る3月21日マル共光吉議員が提出した「地対空誘導弾ナイキ基地建設に関する意見書」については廃案とした。     その他の自治体ともN問題なし。   (3) 芦屋地区、久留米地区     共にN問題をとりあげた自治体なし。    なお、残る福岡市議会は8月1日終了で現在までのところN問題なし。    これをもって全自治体の議会は終了するが、次期定例議会は9月開催の予定である。  3 対象勢力の動向   (1) 春日地区    7・3 福岡市民会館において社会党主催で「柏正雄を激励する会」が開かれた。        来賓として楢崎代議士が挨拶し、その中でN問題についての発言あり、また集会中配布した資料の中にもN問題につきふれていた。    7・9 改憲・核武装阻止福岡県会議結成さる。        16・00より県教育会館ホールに於いて結成式実施され、当面の運動方針、役員を決定。     不明 社会党は福岡市長選を目ざし柏正雄の必勝を期すため日共と協定を結んだ。   (2) 芦屋地区    7・9 自労中間分会の代表2名が中間市役所を訪れ、諸要求事項2、3項目のうち「核兵器持込反対」の一項を内容とする要求書を市長宛手交した。    7・17 芦屋町内で福岡生保同5名が核兵器持込禁止のたすきをかけ携帯マイクで“核兵器持込禁止、原水禁世界大会を成功させよう”と放送して歩いた。    7・19 芦屋町内で芦屋町原水協は原水禁世界大会参加資金カンパのため携帯マイクで呼びかけ、その中で“芦屋はN陣地の有力な候補地である。N配備は核武装につながる、反対しなければならない……”とあった。    7・28 飯塚市周辺に改憲、核武装阻止福岡県会議が“N基地反対”のビラを貼布。   (3) 築城地区    7・2 16・00〜17・00の間築城町内においてマル社吉元町議が携帯マイクにより、憲法改悪阻止、築城N配備反対について放送して歩いた。    7・9 17・00から10日にかけて築城町駅前、基地周辺に対し、日本原水協のビラが貼布された。その中に“築城N基地化反対”のビラがあった。   (4) 久留米地区    7・? 高良台周辺の部落民の中で久留米・社会党地区事務局長山本末男にNについての話しをきこうという声が一部にあったが、4特連が中心となり表面に出ないうちに自衛隊の方でPRをする方針で臨み、阻止しえた模様である。    7・? 地元警察の情報によれば、民青同築後支部某がN陣地公式発表後も反対運動を実施すると語ったとのことである。  4 報道等    7・1 NHKローカルニュースは九州基地視察中の小野防衛施設庁長官の福岡における記者会見でN陣地候補地殆んど決定と報道。    7・6 朝日新聞(朝刊)の「青鉛筆」欄に築城周辺議員等の入間基地見学について掲載。    7・8 KBC TV 18・45ニュースで築城基地周辺議員等の入間基地見学の模様を報道。築城基地は3月以降N陣地の有力候補地になっていると伝えた。    7・11 NHKTVニュース 07・45〜08・00「再編成された西日本防空」報道    7・22 西日本新聞は「雁の巣返還されない。NASA中継局に使用」と報道。    7・22 RKBラジオは「爆音と漁民」について報道。N問題にはふれなかった。  5 今後の見とおし   (1) 現時点における対象勢力のN反対運動の動きとしては表立ったものはみられず、8月原水禁世界大会成功、生活権要求等などに便乗したところのN設置反対運動がみられる程度であるが、原水禁世界大会が終了し、九月下旬以降予想されるN大隊設置場所の正式発表後においては対象勢力のN設置反対闘争が活発に展開されるのではないかと推測される。   (2) 9月福岡市長選挙を目ざして結ばれた社共の政策協定は当面する政治問題についての統一行動の契機をつくり、ひいてはN反    対運動を盛り上げる要因となるのではないかと思われる。これが「竜情報月間要約」七月分の内容であります。大体こういうものであろうとあなたも思われますか。
  166. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いま拝見いたしました。
  167. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は当初、防衛庁が用語として使う対象勢力とは何かと聞いたら、あなたは直接、間接に侵略する敵であると御答弁になりました。そうすると、ここに3の対象勢力の中に私も入っておる。私ども社会党がだいぶん入ってきております。防衛庁は、社会党を対象勢力として対処しておるのですか。
  168. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それは非常に違います。私の申しましたのは、憲法、自衛隊法における対象の話を概略的に申し上げましたわけで、今回はこの竜ですか、Nと申しますか、このN作戦の中における仮装敵に、ある意味においては通俗的に反対派、賛成派ということばで私はこれを申し上げたわけで、この問題と私の最初に申しました憲法、自衛隊法との区分けは、それは非常に大きな違いであります。これは、この問題に限って通俗的に賛成派、反対派という意味で、この用語を通俗的に使ったであろうし、社会党及び自民党といえど、憲法の中においては平等な立場でありますので、それを申したということは、それは毛頭ございません。
  169. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた方が、第二高射群の設置問題について、情報としてこれはとっておるわけです。その中に、われわれは自衛隊からいつもマークをされておるということです。そういうことでしょう、反対勢力として。
  170. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それは大いに議論が私は違うと思います。ただこの問題のナイキ設置についての賛成派、反対派というものの対象のものでありまして、もちろん政治的に大きな意味ではございません。このナイキの搬入について、賛成であるか反対であるかということ以外は、この問題には限界があると私は思います。
  171. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あの杉田前陸幕長が、富士学校の校長時代に、よい中隊の育成についてという訓話を行なっておる。その中に、どういうことを言っておりますか。自衛隊の敵として総評、日教組、共産党、社会党(一部)と書いてあります。どういう意味か知りませんが、社会党(一部)とともに、マスコミ(一部)もこれに入る。こういう訓話をしておるのです。昨年十二月二十三日の当予算委員会において、横路委員指摘をいたしました幹部への道という問題で、反共の精神を高揚するという問題を取り上げられました。自衛隊のいまの考えというものは、こういうことなんです。だから、対象勢力の中に——これは自衛隊としては敵対勢力です。敵対勢力の中に社会党を入れて、そして絶えずわれわれの行動を、いわゆるマークをしておる。これは何ですか。これは明らかに自衛隊法の六十一条、同施行令の八十六条、八十七条に該当しますよ。政治行為ですよ。こういう情報のとり方が、あなた方が自衛隊法で認められておる情報収集の中に入りますか。こういう情報の収集のしかたが入りますか。しかも、あなた方は竜作戦の中で、買収工作までやっておる。それが情報収集の中に入りますか。PR活動の中に入りますか。広報活動の中に入りますか。これは憲法違反ですよ。
  172. 松野頼三

    ○松野国務大臣 社会党をマークしてどうのということはありません。今回の問題は、たびたび申しますように、この搬入について、この設置についての賛成派、反対派ということだけでありまして、そのほかに、この内容をごらんになってもわかるように、政治的介入という文句はございません。おそらくこれは地方紙に出たり、地方のものを中央におそらく報告したという文書じゃなかろうか。主観的意見というものはおそらくこの中には入っておりません。賛成派、反対派というものについては十分これを理解して、反対の方にも説得をしながら、そうして摩擦を避けながらやろうというのがこの問題の根源ではなかろうかと私は思います。したがって、自衛隊法とか憲法にもとるようなことを自衛隊は断じていたしておりません。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう言いのがれを言っては困りますよ。私は念のために、あなたがそう言うであろうと思って当時の新聞を調べてみたが、この七月三日の柏正男を激励する会で私があいさつした中で、N問題に触れたなんという記事は一つもありません。ということは、この会場にあなた方がスパイとして入っておったのです。絶えずそういう行動をあなた方はしているのだ。これは特高活動ではないですか。自衛隊は憲兵と同じじゃないですか。
  174. 松野頼三

    ○松野国務大臣 自衛隊がその中に入っておるならば、それは、おそらく楢崎委員のほうでお呼びにならなかった人が入っておるということはないと私は思います。しかし、一般的に地方連絡部とかでは、いろいろな話がいつかのときに、有名な方の話は伝わりますから、その口に聞いたというわけではおそらくなかろう。やはり私だって、同じように、代議士の話は、地方ですれば地方の人の話にのる、それを聞いたということもありましょうし、私は出所をどうこうという確証を申し上げるわけではありませんが、そうだというわけではなかろう。そういうふうな行動は、私の自衛隊はしておりません。しかし、地方のうわさ、地方の話というのは、それはおのずから地方の実情を知る上においては必要なことだから、それは聞いたでありましょう。しかし、そういう失礼なことをすることも万々ないと私は思います。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 会場に入っておらなくては、私がそろいう発言をしたということはわかるわけはないでしょう。このときの結成の大会は、自由に入れる大会でありました。  私は、もう一つ問題を提起いたしますが、重大な政治介入であると私は思う。もしこれで足らないならば、私はもう一つ出します。防衛庁は、これもおそらく航空幕僚監部から出されておるのかどうか知りませんが、昨年の五月に、「広報については次の事項を重視し、各地域の情勢に応じ適時適切に実施する」、竜作戦の広報の問題です。いいですか。もう一度言います。「広報については次の事項を重視し、各地域の情勢に応じ適時適切に実施する」、こういう通達を西空にあなた方は出しております。これは御存じですか。
  176. 松野頼三

    ○松野国務大臣 各部隊では、その使命に応じて適切な、あるいはそれに必要な通告、命令というものを出しますので、そのナイキについて必要な場合にはいろいろな指令、命令は出したであろうと私は思います。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これもおそらく資料提出を求めても出されないでありましょうから、私はこの中の問題点を拾ってみたいと思います。これは、すでに昨年五月の十七日に、一部民放テレビで、自衛隊竜作戦で世論操作に乗り出す、こういう表題で四回にわたって一部が報道されております。それの全文がここにあります。あなた方がいかに政治活動をやっておるかということがこれでさらに明白になります。こういう点だけで時間がかかってもしようがないんですが、私はその原案を出しますから、今度は読むのは省略します。  この実施要領によりますと、あなた方はこういう指導をしておるんです。このナイキ設置方法についてです。いいですか。問題点だけ抜き出します。(1)「地方議会に対しては、最悪条件の自治体においても、過半数の議員確保を目的として、引続き(票固め)を積極的に実施し、不明議員を皆無化すると共に、監視を続行する。」不明議員については監視を続行する、いいですか。  それから今度は、あなた方は、これも自衛隊法施行令の八十七条に違反するものと思われますけれども、第三者に頼んで、あなた方は、工作を第三者にやらせておる。この文章では、こうなっております。「反対側の署名運動、個別説得工作などに対応する処置が第三者により必要に応じ直ちに実施出来る如く準備する。」第三者に頼んでおる。  それから協力団体をあなた方自衛隊はつくるのですか。この(4)には「既存協力団体の利用をさらに強化し、未組織地域における結成を促進してその拡大を図ると共に、」何ですか、これは。そして今度は「方針」の中に「反対運動を無力化」する。二の「主眼」のところには「地方自治体における反対決議を封止する。」どういうことですか、封止するとは。同じく主眼の5のところには「反対勢力に対する切り崩しにより、これが弱体化、孤立化をはかる。」どういう切りくずしをするのですか、あなた方は。これはここに書いてありますように、この第二高射群は昨年春に設置場所を決定をして、そうして五月段階から工事に入った。工事は大体十二月ころ終わったはずです。そして、アメリカから派遣をされておった実施部隊が帰ってくる、そしてこのナイキアジャックスのいわゆる機体、弾丸等は、昨年末までに搬入を終わった。本年二月一日編成を目標にして、あなた方は努力をしてきておる。それを段階別に前期、中期、後期、こういうふうに分けて、あなた方はおそるべき工作をしておる。明らかにこれは自衛隊法あるいは自衛隊法施行令にいう政治活動をやっております。これを政治活動と言わずして何を言いますか。長官の御所見をお伺いしたい。これは、念のために言っておきますが、あなたが大臣になる前の小泉長官の時代だからあなたを責めるのは酷だけれども、しかしこの工作は現在も続いておるし、あなた長官だから……。
  178. 松野頼三

    ○松野国務大臣 御鼓舞、御同情いただいたような気もしますが、あとにはきびしいことも出てきましたが、自衛隊法における政治活動の禁止、それは明文がございます。また政治活動という目標も明確にこれはなっております。ただ、このことば、用語は私も非常に不穏当である、また用語が必ずしも適切じゃない、それは私は考えます。しかし、その内容をごらんいただけばわかりますように、票固めといっても、政党の票固めという意味じゃございません。いわゆるナイキに対して理解をされる方をふやすという趣旨であって、投票の票固めじゃないことは、これは明らかなものであります。もちろんこの目的が政治目的じゃないのですから、あくまでもナイキ搬入、また防衛庁、自衛隊に対する理解を深めるという目標のもとにこの問題が書かれてあるのでありますから、そのことば、用語が必ずしも適切でないことは私も認めますけれども、その目標が、政治目標で、この作戦とか、この文章をつくったものではない。あくまでナイキ搬入について賛成派、反対派、あるいは説得に対するその支持、これの理解を深めるということが、まあ言うならば切りくずしということばになったかもしれません。これは不安をなくし、理解を深めるということばであるということは、前後の模様、その基本からお考えいただけば私はわかると思う。したがって、自衛隊法の中には、政治目標は明確に出ております。一部の政党を支持する、幹部になる、役員になる、それに対する行動をする、これは政治活動禁止として自衛隊法に明文がございます。その目的でやったことでないことだけは御理解いただきたいと思います。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 長官、あなたがこれを単なる用語の問題として片づけるならば、先ほど私があなたの立場も思って、実際に買収工作をしておる事実はあるが、また伝票をかってにつくっておる事実はあるが、私はあえて個人的な名前を指摘しなかった。そういうことを現実にやっておるのだ。用語の問題じゃないのです。買収工作をやっておるのです。あなたが用語だといって逃げるならば、私はさっきの問題をここに出しますよ。   〔「出せ出せ、遠慮するな」と呼ぶ者あり〕 出しますよ。これが自衛隊法に許された政治活動に該当しませんか、あるいは自衛隊法にいう情報収集の範囲内の問題と思われますか、こういうあなた方の工作が。これを、あなたがこれでいいのだとおっしゃれば、私は重大問題だと思う。あなたは一番冒頭に私に言ったじゃありませんか。明らかに政治介入をするということはもちろんのこと、政治介入の疑いがある行為すら厳に慎むとあなたはさっき冒頭で言ったじゃないか。だから私は、冒頭にあなたの決意を、こういう意味ですねと念を押したのです。あなたの言と違うことを自衛隊はやっておる、どうしますかあなたは。
  180. 松野頼三

    ○松野国務大臣 自衛隊が政治活動的疑いがあるという行為がありますならば、厳に慎しみます。
  181. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このような社会党あるいは革新陣営を敵視する工作を続け、そして、これは自衛隊法あるいは憲法に抵触する疑いのある行動です。憲法の十九条を念のため読んでみましょう。「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」第二十一条、表現の自由があります。「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」表現の自由に対する重大な侵害であるし、あるいは自衛隊法、自衛隊法施行令にこれは明らかに違反しますよ。一歩譲っても、これはあなたが言ったように政治介入の疑いがある行動ですよ。これが政治介入でないなどと思う人は頭がどうかしてますよ、議員として。どういう責任をあなたは痛感されますか。
  182. 松野頼三

    ○松野国務大臣 なお自衛隊の行動について疑いの点、また疑惑を招くような点がありますならば、それはもう改めます。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は昨年のあの三矢計画、ああいう問題が発生をして、自衛隊はほんとうに自粛したと思った。そして松野長官は、何回も繰り返しますが、就任の冒頭に内閣委員会であのような発言をされました。ところが、現実にこういう政治活動を自衛隊が行なっておるとすれば、私はただいまのような長官の御答弁では納得いきません。われわれは絶えず身辺を自衛隊からつけられておる。これは、特高や憲兵以上の行動ですよ。そういう行動は許されますか。絶えず監視をされておる。いまのような答弁では私は納得できません。
  184. 松野頼三

    ○松野国務大臣 議員を監視したり、あるいはそういう特高的行為は絶対にいたさないと私は思います。また今後そういう疑いがあるならば、そういうことはいたしません。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちゃんとこの広報の指導に書いてあるではありませんか、監視すると。いまのような答弁では私は納得できません。もう少し責任のある回答をお願いします。これは、もしこの出どころをあなた方が疑うなら、私は自分の議員の職をかけてもいい、そのかわりもし事実だったら、あなた、議員の職をかけなさい。
  186. 松野頼三

    ○松野国務大臣 監視するということばと用語については、それは非常に誤解を招くことがありますので、あらためて私のほうは、そういうことばがあるならば、それは訂正いたします。
  187. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この文章を見てだれが誤解しますか。この文章を見てだれが誤解しますか。ゴカイもハッカイもないですよ、あなた。こういう行動をしておることについて、あなたは今後どう指導されますか。こういう答弁答弁では私は引き下がるわけにはいきません。
  188. 松野頼三

    ○松野国務大臣 よく今後調査いたしまして、そういうことのないようにいたします。
  189. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、もうすでに二月一日にナイキは編成を完了する予定で進められておるのです。もう大部分終了しておるのです。こういう形であなた方はやってきたのです。この一年間、あるいは二、三年来やってきた。竜作戦というのは、三年ぐらい前からあなた方は始めております。こういうことを許したことについて、私はこれは防衛庁長官の責任の問題であると思う。これは、私はいまのような大臣の御答弁では納得できません。三矢計画に次ぐ防衛庁の姿勢の問題として、私は内閣総理大臣の御見解をぜひ承っておきたいと思います。
  190. 福田一

    福田委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  191. 福田一

    福田委員長 速記を始めて。防衛庁長官
  192. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまの点は、行き過ぎでありますので、訂正、削除して、今後かかることのないように十分注意をいたします。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年の三矢計画に続いて、この種の問題は非常に重大な問題でありますから、私はこの際自衛隊の最高指揮官であり、国防会議議長たる総理大臣の出席を求めて見解を承りたいと存じます。委員長においてお取り計らいをお願いをいたします。
  194. 福田一

    福田委員長 楢崎君の発言の御趣旨に沿うよう措置いたします。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは時間が非常に切迫をいたしておりますので、以下主たる問題点のみについてお伺いをいたします。  四十一年度二次防の最終年度と、四十六年までの三次防の初年度をダブらせて、いわゆる六年構想で三次防を長官は考えられ、すでに閣議決定を見たようであります。そこで、この三次防は、期限として一九七〇年、すなわち昭和四十五年のいわゆる現安保の期限の時期を含んでおるわけであります。したがって、防衛庁としては、当然現在の安保条約が一九七〇年、昭和四十五年に一体どのようになるかということを、当然三次防の構想の中にお入れになってつくる必要があろうと思う。一体、現在の安保条約はどのように四十五年にはなるのか、想定をされておるか、お尋ねしたいと思います。
  196. 松野頼三

    ○松野国務大臣 第三次防の構想としては、四十二年から発足するというものを、四十一年から一年準備期間をおきたいという構想で、今日作業を準備中でございます。したがって、国防会議にはかるのは、まだ五月か六月ごろになるかと私は思います。  安保問題につきましては、これは日本の国の最高のものでありますので、どの情勢に変わるかということは、これは私もただいま決定するというわけにはまいりません。しかし、防衛計画としては、第一次、第二次、第三次という防衛計画の面では、継続的にこの防衛力の増強をはかりたい。この意味で、私のほうは、今日第一次、第二次あわせて第三次、したがって安保体制のもとにおける今日の状況をつかみ得る範囲で私のほうは作成するつもりであります。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、当然現在の安保の体制が、いうところの新安保なり特別安保、あるいは核安保、こういった問題との関連で、三次防の構想は影響を受けると思うのです。したがって、防衛庁としては、当然今度の改定時期における安保がどうなるかということを一応想定をしながら、三次計画を組まなくては、現在の国際情勢にマッチする計画は出てこないんじゃなかろうかと思うのです。  そこでお尋ねをいたしますが、現在日本は、一体アメリカの核のかさの中にすでに入っておるとわれわれは思うが、防衛庁はどのようなお考えですか。
  198. 松野頼三

    ○松野国務大臣 核の中に入る入らないというより、日米の安保条約というものの中において私たちは防衛計画を立てるべきである。兵器の問題は、第一次防衛計画のとき、第二次防衛計画のとき、世界の情勢は兵器の場合は非常に変化をしております。しかし、安保条約というものの基本の中においての基本構想は変わっておりません。したがって、兵器が変わるという予想は、これは諸外国の情勢はなかなかつかみ得ません。しかし、今日わが自衛隊の進むべき道、また自衛隊が必要な装備、これを中心に第三次防を考えたい。じゃ、世界の情勢はどうなんだ、安保の情勢はどうなんだ、その変化は、変化があるときに、その変化に応じ得るような態勢をとる。今日は現状のしもとに第三次防を組むという基本でございます。したがって、私は、かさに入っておる、入っていないということは、安保体制の中に入っておるということが一番妥当じゃないかと思います。
  199. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しからば、日本はその安保体制の中に入っておるわけですが、アメリカのアジアにおける核戦略体制の中に入っておると思われますか。
  200. 松野頼三

    ○松野国務大臣 アメリカの戦略体制というものを私もつまびらかには存じません。しかし、安保体制のもとにおいて、アメリカがアジアに向かって核戦略をしておるというふうな私たちは情勢と見てのその対処はいたしておりません。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本政府の考え方は、あなたの立論に立ってもけっこうです。安保体制の中にある。したがって、日本の防衛は最終的にはアメリカの武力にたよることになる、それが現実的であります。したがって、アメリカの武力は現在どうなっておるか。それはもう明らかなように、当然巨大な核戦略体制を根幹としておることは事実であります。これは否定なさらぬと思います。したがって、日本の防衛にとって、アメリカの現在の戦略体制、つまりいわゆる核戦略体制にたよる、あるいは核戦略体制の中にあるということは、客観的な事実ではありませんか。防衛庁長官がそのくらいのことがわからないはずはないでしょう。すでに昨年の十一月には、横須賀に基地を持つ第七艦隊に、原子力空母のエンタープライズ、あるいは原子力フリゲートのベーンブリッジ、あるいは原子力巡洋艦のロングビーチが編成されて、第七艦隊はいまや原子力機動艦隊が中心であります。しかもグアムにはすでにポラリス潜水艦が六隻ないし七隻入っておる。同時に、せんだってスペインで墜落しましたB52、これは常時水爆を積んでおる。このB52がグアムには二個大隊、一個大隊三十五機ですから、少なくとも七十機はグアムにおります。それが昨年の七月二十八日に緊急避難という名のもとに、台風避難という名のもとに板付に飛んでこようとした、翌日沖繩に行って、それが六時間もたたないうちに渡洋爆撃をやったことを御承知でしょう。原子力潜水艦はすでに佐世保に六回入りました。韓国の鎮海には、原子力潜水艦の基地というものができております。そういった現実の体制を考えれば、アメリカの核戦略体制の中に日本が入っておる、安保条約を媒介にして入っておる、当然ではありませんか。
  202. 松野頼三

    ○松野国務大臣 安保体制の中に入っておるということは、これは明確であります。ただ、ただいまお述べになったように、それではアメリカが核装備をして今日アジアにおるかどうかということ、これはわかりません。したがって、核戦力、核戦術をアメリカがアジアに持っておるかどうか、これはわかりません。しかし、安保体制のもとにおいて、そうしてアメリカの軍事力と日本との対等な軍事同盟と申しますか、一つの相互軍事力というものを対象にして日本の国が守られておるということは、これは明確でありましょう。ただ、その核のかさに入っておる入ってないということは、そのことばの使い方もいろいろありますが、とにかく日米安保体制のもとにあるということが明確であるならば、おのずから私の言うことは明確じゃないかと思います。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういう答弁を防衛庁長官がなさっちゃいけませんよ。朝日ジャーナルによると、与党自民党の有力者の意見が全部出ておる。アメリカの核のかさの中に入っておるかどうかなんていうようなことは明らかじゃないか。核のかさに入っておるじゃないか。みな言っておるじゃありませんか。それを長官はわからないとおっしゃるのですか。
  204. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私はわからないと言っておるわけじゃありません。安保体制のもとに日本があるということを言っておるわけで、ただ核のかさとかなんとかいうことは、これは用語の使い方によっていろいろ誤解を招きますので、安保体制の中にある、したがって私は、それを否定するわけじゃございません。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは時間がありませんから、もう一問聞きます。アメリカのアジアにおける核戦略体制の中に入っておると思いますか。
  206. 松野頼三

    ○松野国務大臣 アメリカの核戦略体制というものを私は実際存じません。しかし、アメリカの兵力の中には核というものがある、これはわかりますが、アメリカのアジア戦略に核戦略構想があるということは、これは私は存じません。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたが存じないで私が存じておるのはおかしいですけれども、いまの客観的な情勢はさっき言ったとおりです。それをわれわれはアメリカの核戦略体制といっているのです。そうして、そのような体制の中に日本が入っておるということはもう事実ではありませんか。  外務大臣はおられますか。——それでは、一体、政府は現在の安保条約を一九七〇年にはどのような形にしたいと思っておられますか。つまり、現状のままでいかれるような考えなのか、あるいは、いま現実に日本は核のかさの中に入っておることは事実だ、それをむしろ明確にして、いろいろな注文をつけてやっていくのか。構想があったらお聞きをしたいと思います。
  208. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 核のかさとよくいいますけれども、一体どういうようなことをさすのか、私もあまりせんさくしたことはございませんが、昨年の一月、佐藤総理がワシントンを訪れまして、ジョンソン大統領と会談をいたしました。その結果、共同声明が発せられまして、その中に、日本が今後いかなる形の攻撃を受けようとも、アメリカはこれの防衛に全責任を持つという趣旨のことが書かれておるのでありまして、この意味は、かさに入ろうが入るまいが、とにかく日米安保体制のもとにおいては、アメリカはいかなる外部の攻撃に対しても日本を防衛する責任を必ず全うする、こう言っておるのでありますから、これらの問題に対する大きな概括的な回答であろう、こう思うのであります。  それで、七〇年にはどうなるかというお話でございますが、まだ四、五年先のことでございまして、ただいまの取りきめでは、一応十年の期限が来まして、その以後は一年の予告をもってこの安保条約を解消することができる、一方的に解消することができる、そういう状態に入るわけであります。その際に、一体これをさらに改定するか、現在規定されたままでこれを持続するか等につきましては、まだ政府部内において確定的な方針は立っておりません。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、ソ連のコスイギン首相が二月二日に提案をしたわけですが、つまり再開されたジュネーブ軍縮委員会に対して、全般的な完全軍縮の一歩として、核拡散防止条約を提案をしておるわけであります。ソ連政府はその中で、核保有国は非保有国に対して核兵器を使用しないことを提案し、また、他の核保有国が同様の義務を果たすならば、他に先がけて核兵器を使用しないことを直ちに確約する用意のあることを宣言をいたしております。このソ連提案に対して、日本の外務省はどのような見解をお持ちでしょうか。
  210. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 核保有国が非核保有国に対していつでも核を使うということでは、これはたいへんなことでございます。そうじゃなしに、保有国は非保有国に対して攻撃をしない、これはたいへんけっこうなことだと思います。思いますが、しかし、いま提案されておる核拡散防止条約、それに、ただこれだけで満足して入れということは、どうも説得力が薄いのではないかというのが、非核保有国の有力な国々のこれは通論でございます。つまり、おまえは能力があってもとにかく核は持つな、持つべからず、そして、いま持っているところは従来の状態のままにしておく、そのかわり、こっちのほうからは核で攻めないということを言われただけでは、どうも能力があってもがまんして、とにかく核を持たない、こういう努力をするのでありますから、それに相応するだけの努力をやはり核保有国がしなければいかぬ、そういうことを言っておるのが現状でございます。日本といたしましても、このほうが正しい議論ではないか、こう考えております。
  211. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、簡単に言いまして、昨日下田外務次官が記者会見で見解を発表しておりますが、これは大臣もお読みになったと思いますが、この下田外務次官の見解を大臣は支持されますか。
  212. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、内部でこういったようなことをお互いに話しておるのでありまして、特別にきのう機会をつくって、外務省の見解を格式ばって発表したというのじゃない。平生われわれが考えていることが、つい下田次官の口から出た、こういうわけであります。同意しております。
  213. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣も昨日の下田外務次官の記者会見における発言に同意しておるといまおっしゃいました。しからば、この下田外務次官の話の中には、他国のかさの中に入りたいなどと言ったり、大国にあわれみを乞うて安全保障をはかるなどということは考えるべきではない。そのとおりだと思うのです。ところが、佐藤総理は、昨年十月二十日に、来日中のスチュアート英外相との間に、核拡散防止について話し合いを持たれております。その際、佐藤総理はこういう見解を出されておる。核を持たない東南アジア諸国は、核兵器に対する大きな不安を持っておる、核拡散防止の条約は、核を持たない国の安全保障のことも考慮すべきである。つまり日本のような核を持たない国の安全保障は、核を持っておる国が責任を持つ必要があるのではないかという見解であります。そして、このような見解を受けて、松井国連大使は、十月二十二日の国連の政治委員会で同様の趣旨の発言をやっております。さらに十一月一日には、ハンフリー米副大統領が朝日新聞の秦外報部長の質問に答えて、アメリカにとって核戦力と核政策の中に友好国を含めるべきときがきた、日本もこの討議に加わるべきだと思う。こういった一連の発言を考えたときに、佐藤総理の構想の中には、日本はいわゆる核兵器は持たない、核武装はしないが、核保有国であるアメリカが当然守ってくれるべきである、そういう考えであると思うのです。そうすると、この下田外務次官の、あなたが同意された核のかさの力なんか借りる必要はないという見解と相違すると私は思うのですが、この点はどう思いますか。
  214. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 下田次官の言っていることが二色あるのです。第一は、核兵器を中心とする現状を固定化するということ、持っていないものはこっちから攻撃しないから、それで満足して、この状態を固定化しようというような提案は、少しこれは説得力が薄い。核保有能力があって、しかし持つべきではないといってがまんして核保有に対してあえて努力をしない、そういうがまんをしているのだから、持っている国もだんだん漸減方針をとるべきである、こういう考え方がいまわりあいに非保有国の有力な国々の間に唱えられておるのでございまして、日本もそのほうがより説得力があるやり方である、こう考えておる。そのアイデアを昨日話したのです。  それからもう一つは、アメリカの核のかさの下に入るとか入らぬとか、これは私は、さっきも申し上げたとおり、かさの下に入るとか入らぬとかということは、一体何を言っているのかよく私にはわからない。しかし、そういうことがわかろうがわかるまいが、とにかくジョンソン大統領は、日米安保体制においては、いかなる形の攻撃を受けようとも、アメリカは日本を防衛する責任を必ず果たすということを言っているのですから、その一本を取っていれば、かさへ入るとか入らぬとかというまぎらわしいことを言う必要はないと私は考えております。  そこで、その問題についての下田次官との打ち合わせもよくいたしませんけれども、どういうつもりか知らぬけれども、大体において、これははっきりした具体的な定説というものは私はないような気がいたしますが、とにかく、そういうことなしでも十分に日本の安全ということは考え得る状況でありますから、その点は必ずしも下田次官と同説ではない。同説か同説でないかもわからない、そういうわけです。
  215. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、下田外務次官の意見を聞いておるのではなしに、外務省の最高責任者である外務大臣の意見を聞いておるのです。間違いのないようにしてください。  それから、核のかさということばは、あなた御存じないならば、下田外務次官が使っておりますから、よく聞いておいてください。
  216. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その問題については、私はお預かりにしておきます。このかさの問題は。
  217. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お預かりにしておきますとはどういうことなんですか。
  218. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よく内容がはっきりしませんから、賛成とも反対ともここでは申し上げません。もう一つのほうの説については、私はこれを支持しておる。
  219. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、結論だけ言いますと、おそらく一九七〇年、来たるべき安保の改定時は、わが党の観点から言うならば、いわゆる核安保体制との対決になろうと思います。核安保という意味は、これを明確にしておきたいのですが、われわれが考えておる核安保体制というのは、核保有国が軍事同盟関係を結んでおる非核保有国に対して、一定の条件のもとに核を提供し、または核基地を設定して、その国の安全を保障する体制、これをわれわれは核安保体制と称しております。おそらく一九七〇年はこういう核安保体制をめぐる問題が出てくる、このようにわれわれは思うのでありますが、時間がないから、この点はこれでやめまして、最後に一問だけお伺いをしておきたいと思います。  いまの世界戦略体制からいきますと、核基地の固定化ということは非常に退嬰をしました。そしてポラリス潜水艦のごとき隠密性、機動性のあるものに変わってきた。したがって、今後日本に対する海軍基地の要求というものは非常に増してこようと思うわけです。そういった点で、私は、ここで一つだけ例をあげてお伺いをしておきたいのですが、最近博多港が、あるいは原子力潜水艦が入ってくるのではなかろうかといううわさを聞くわけであります。現在博多港は米軍用船が出入りをいたしております。米軍用船が博多港に出入りをする法的な根拠は一体何でありましょう、防衛大臣
  220. 松野頼三

    ○松野国務大臣 安保条約により日本の基地を提供しております。基地以外の商港については、その利用の限度において便宜をはかるということであります。
  221. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 はっきり言ってもらいたいのです。どの条約の何条か、はっきり言ってもらいたい。
  222. 松野頼三

    ○松野国務大臣 条約の所管は外務省でございますから、外務省から御報告させていただきます。
  223. 安川壯

    ○安川政府委員 お答えいたします。  安全保障条約に伴います合衆国軍隊の地位協定の第五条に「合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運行されるものは、入港料又は着陸料を課せないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。」これが根拠であります。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この博多港に米軍用船が出入りしているその根拠は、地位協定第五条といまおっしゃいました。その五条の中にある船舶ということばに、軍艦が含まれますか。
  225. 安川壯

    ○安川政府委員 軍艦は含まれております。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、この五条の入港の状態というものは、ここでは運航と書いてありますが、寄港する程度の場合には、この五条に根拠があるというわけですか。
  227. 安川壯

    ○安川政府委員 ちょっと御質問の趣旨を正確に把握したかどうか……。運航でございますから、入港します場合には、それはただ入って出ていくというだけではないのでございまして、運航上入港するという場合は、必要な人員、あるいは機材の積載、あるいは積みおろしをやるということは当然含まれておるわけでございます。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、これは、その程度の場合をいうのであって、もしその入港の状態が、つまり港の施設を使用する状態がある程度の範囲以上になると、これは当然地位協定の五条ではできないはずですね。これは、日米合同委員会にかけて、その施設の提供を求めなくちゃならぬでしょう、使用の状態がはっきりしてくれば。土地等の使用等に関する特別措置法による措置をしなくてはいけぬと私は思います。
  229. 安川壯

    ○安川政府委員 普通の開港場に入りまして、一般の米軍の専用施設でない施設を使う場合には、一般の民需を圧迫しない範囲で両方を調整しながら使うわけでございます。もし米軍のほうでもっぱら専用して使いたいという必要がある場合には、当然新しく合同委員会で合意をしなければならないことになるわけでございます。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの御答弁であれば、船舶の中に軍艦が入る。佐世保に原子力潜水艦が入港する場合には、推進が原子力によるだけであって、問題は海水汚染の問題だけである、それさえ問題なければ、これは一般の軍艦と同じである、したがって寄港を許可する。そうすると、この船舶の中には、原子力潜水艦なり原子力艦隊が当然入るという解釈であるわけですね。
  231. 安川壯

    ○安川政府委員 協定の解釈上はそのとおりでございます。一般の軍艦は商港に入れるわけでございます。ただし原子力潜水艦に関しましては、特別にアメリカ側と日本政府の間に了解がございまして、原子力潜水艦は横須賀、佐世保に入るということになっておりますから、協定上は入り得るわけでございますけれども、その協定を離れまして、別途に両方の政府間で、原子力潜水艦に関しましては横須賀と佐世保ということになっておりますから、その了解が生きておる限り、ほかの港に入るということはあり得ないわけでございます。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、原船の場合は横須賀、佐世保にしか入らないという協定がある、もしその協定があれば、私は資料として出してもらいたいと思います。  そこで、問題は、使用の状態が常識で考えて、基地としての使用の態様であれば、私は第五条では使えないと思うのです。その使用の状態の限度というのはどの辺に置くのですか。
  233. 安川壯

    ○安川政府委員 基地ということがどういうことを意味するか、よく了解いたしかねますけれども、私は、先ほど申し上げましたように、もし港のある施設を、一切の民間の使用を排除して米軍専用にしなければ米軍の用が足せないという事態がございますならば、米軍は当然日本側に施設区域として提供することを要請してくべきものでございまして、要請があった上で日本側でもそれを検討いたしまして、合同委員会でもし日本側が合意すれば、施設区域になるわけでございます。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、結論だけ申し上げておきます。いま博多港の米軍用船を含むアメリカ船舶の寄港の状態は、これは調べられたことがございますか。防衛庁なり外務省で調べられたことはありますか、あるいは運輸省で調べられたことがありますか。
  235. 小幡久男

    ○小幡政府委員 お答えいたします。正式に調べたことはございませんが、私どもに参っております津壁の使用の件数から判断いたしますと、たとえば昭和四十年度の四、五、六の三カ月の間には八件というふうになっておりますので、大体これが船舶の隻数に関係があるんじゃないかと推定せられます。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この米軍用船の普通の港の使用の状態なんか、これは、当然私は、日本政府としては注目をして調査をしておかなくてはいけないと思うのです。そうしなくては、もう地位協定五条によりまして、どこの港だって軍艦は入れる、使われる、基地として使える、そういうことになってしまうんです。  時間がありませんから、私は、ここで私が調べました博多港の使用の状態、数だけ言っておきますが、最近三年間、昭和三十八年度は商船が四十一隻、軍用船(軍艦を含む)三十五隻、計七十六隻。三十九年度は商船四十一隻、軍艦もしくは軍用船四十隻、計八十一隻。昭和四十年度は商船七隻、軍艦あるいは軍用船二十二隻、合計二十九隻。三十八年、三十九年、四十年で、軍艦もしくは軍用船が入ってきたのが九十七隻に及ぶ。こういう状態になっておって、単なる地位協定五条でそれを許しておるということは私はできないと思う。できませんよ、これは。これは当然土地等の使用等に関する特別措置法を通じなくては、私はできないと思います。つまり、俗にいう基地としての提供をせしめなくては、私はこういう使用はできないと思う。
  237. 安川壯

    ○安川政府委員 先ほど読み上げましたように、地位協定の第五条には、何隻以上入ってはいかないというような制限はございませんので、必要のあるつど入る当然の自由を持っておるわけでございます。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何を言うのですか、あなた。あなたは土地等の使用等に関する特別措置法を知っていますか。そういう特別措置法の手続を必要とする使用の状態とは、じゃ一体どういうときをいうのですか。冗談言っちゃ困りますよ、あなた。法律の解釈を言うんだったら、もう少しはっきりしたことを言ってください、専門家だから。こういうことだったら、どこの港だって、軍艦が入ってきてかってに使用していい。
  239. 小幡久男

    ○小幡政府委員 施設として提供する場合に、その施設の該当いたします土地等の所有者の合意が得られない場合に、いまおっしゃいました法律があると考えております。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、いまの博多港の使用の状態は、合同委員会を通じて使用していますか。何を言っておるのですか、あなたは。
  241. 小幡久男

    ○小幡政府委員 博多につきましては、先ほど外務省のほうからも答弁がありましたとおり、一般の商港でありまして、これは施設を提供せずに、港長とのいわゆる通常の契約で、 コマーシャルベースで使用しておるというのが現状であります。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 冗談じゃないですよ。米軍の軍用船もしくは軍艦に使用させる際に、単なる港長との契約によってできるなんということはどこにありますか、そういう根拠は。だめですよ、そういう解釈では。そういうことを合同委員会を通じないで、単なる港長との契約によってできるなんていうことはどこにありますか、あなた。
  243. 小幡久男

    ○小幡政府委員 お答えいたします。  博多港の入港につきましては、米軍の輸送部の担当将校と、港湾の責任者でありますところの福岡市長との間に契約書が取りかわされております。
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそういうことを言っておるのじゃないのです。それによって使用はしておるが、もしその使用の状態が、いま私が読み上げたような使用の状態になれば、地位協定の五条によって、こういうことはできないということを言っておるのです。こういう程度の使用になれば、当然私は日米合同委員会の議を経なくちゃいけないということを言っているのです。
  245. 松野頼三

    ○松野国務大臣 このことはすでに議論が出たと思いますが、要するに基地としての提供というのは、基地管理権というものが、米軍の主管、米軍の使用、専用という主体のもとに置かれた場合に、基地という制限をきめております。したがって、一般の商港に入る場合には、その商港の便宜、あるいは管理者との協定、あるいは承諾のもとにこれを使用するので、数が多いからいけない、いいということでこれを判定すべきものではない、私はこう解釈しております。
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官、あなたは要らぬことを言わぬがいいです。いいですか、米軍は港の使用をいままで以上に使いたい、そして優先的に使いたい、そのために、日米合同委員会にこの問題を出しているじゃありませんか。ところが、まあいままでどおりでいいじゃないか、いままでどおりより少しよけい数がふえるぐらいだったら、そう合同委員会の議を経ないでいいじゃないかというごまかしをやっておる。そして、あえて日米合同委員会でこの問題の結論を出さなかったのですよ。これは、合同委員会まで持ち出されているのだ。だから、私は、使用の状態が問題であるということを言っておるのです。この程度の使用の状態になれば、当然合同委員会にかけなくちゃいけない。
  247. 小幡久男

    ○小幡政府委員 先ほど申されました合同委員会の問題でございますが、一時、現実に米軍から、博多の埠頭を専用したいということを内々言ってきたことがございます。しかし、私のほうでは、現状の利用形態で十分であるという判断をいたしまして、それは断わりました。したがって、合同委員会にはこの問題はかかっておりません。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは時間がありませんから、この問題は別の機会に譲りますが、これで終わりますけれども、冒頭の会計検査院の問題は、会計検査院として再調査をするということでありますので、その再調査の結果を見て、また私はこれに対して質問をやりたいと思います。  なお、総理大臣の件については、よろしくお願いいたします。(拍手)
  249. 福田一

    福田委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、岡本隆一君。
  250. 岡本隆一

    岡本委員 本予算委員会の冒頭で、わが党の横路さんや中澤さんから、今度政府が発行される公債の性格について質問がございました。私は経済についてはしろうとでございます。それだけにもっとわかりやすく国民全体に——国民のほとんどは経済についてしろうとなんです。だから、国民全体にもっとのみ込みやすいように、今度の公債の性格というものを説明していただきたいと思うのです。  政府は、今度の七千三百億の公債は、これは赤字公債ではない、建設公債である、こういうふうに言っておられるのであります。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 しかしながら、私どもの解釈では、財政法の第四条というものは、一般財政を公債や借り入れ金でまかなってはいかぬ、こういうふうな規定がしてあります。したがって、財政法第四条を読みますと、普通の家庭で申しますなれば、世帯に使う金は借金するな、こういうような意味にすなおに読んでおるのです。今度出されましたところの公債の使途というものを見てまいりますと、それは、一応年々の一般会計でまかなわれる範囲のものでしかあり得ないわけなんですね。だから、そういうふうな意味から、すなおに財政法のとおり読んでいきますと、やはり日本の国の年々の世帯に使う金に今度の七千三百億の公債が充当されておる。だから、これはやはり財政法の違反である。世帯の金は借金するな、こういうような意味を拡大解釈して、私は今度の公債の使途というものがきめられておると思うのです。だから、私は、そういう意味でははっきりと、いや赤字公債です、仰せのとおり赤字公債です、こういうふうに言われることのほうがすなおに国民には受け取れるのではないかと思うのでございますが、大蔵大臣の御説明を承りたいと思うのです。
  251. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十一年度に発行しようとしておる公債は、正確に申し上げますると、財政法第四条公債、これが一番正確だと思うのです。ただ通俗的に、建設公債建設公債、そういうふうにマスコミなんかでも呼んでくださいますので、私どももしばしばそれを借用することにいたしておるわけでございます。赤字公債じゃないかというお話でございますが、赤字公債ということばには、使い方によりましていろいろの意味があるようであります。つまり、日本銀行引き受けで発行する公債をもって赤字公債だ、こう言う人もあります。あるいは財政の始末がつかないので、その全体のしりをそこへ持っていくという意味において、赤字公債とおっしゃる人もあります。あるいは経常財源としてまでも公債を使用するというような意味合いにおいて使う人もあります。しかし、そういうまぎらわしいことばでありますので、私は、赤字公債ということば自体を使わないことにいたしておりますが、今回発行しようとする公債は、財政法第四条におきまして資産としてあとに残るもの、そして、それが回り回って国の発展、復興に貢献し得るようなもの、それを対象として出す公債である、こういうふうに御理解を願いたいのであります。
  252. 岡本隆一

    岡本委員 資産として残るものとおっしゃいますが、それじゃ災害復旧に使われる費用、これは資産増にはならないはずなんです。たてまえ上から言いますなれば、日本の災害復旧は原形復旧ということになっております。なるほど原形復旧主義が必ずしもとられておりません。改良復旧が行なわれております。だから、ある程度の資産増にはなっておりますが、災害で本年度は九百十二億の予算が組まれておりますが、九百十二億の災害復旧の費用のうち資産増になる分というものは、災害が復旧してそれが改良される分の、いわゆるそのかさ上げの分だけです。上積みの分だけです。そういうことになってまいりますと、一例をあげれば、この部分というものは、これは資産として残るものということが言えないと思うのです。だから、そういう意味では、あなたがおっしゃるような意味においては必ずしも四条公債ではない、こういうことになってまいると思うのでありますが、いかがでしょう。
  253. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 災害の場合は、お話しのとおり主として復旧でございますが、しかし復旧をしなかったら一体どうなるのだ、そういうことを考えますと、復旧によりまして形成される国土の改善、これはわれわれ国民の資産である、こういうふうに見るのが自然である、私はかように考えます。
  254. 岡本隆一

    岡本委員 あまりこの問題については、私もきょうは議論をしようと思う主題ではございませんから、深く議論をしようと思いません。また、しても水かけ論になるだけだと思いますが、私どもの解釈では、たとえて言えば、政府のほうからの今度の一般会計予算の説明書の五十二ページに、公債の充当される使途の説明がございます。ただいま配付いたしました資料の一番末尾に、その公債の使途と、それから公共事業との関係をわかりやすくピックアップしてみましたが、この治山治水の対策費を見ましても、四十年度の予算は千二百億である。四十一年度は千四百三十七億とふえております。そのうち千三百九十六億を公債でまかなっていけば、今年度の一般会計で負担する分は四十一億にすぎない。道路整備を見ますと、なるほど道路整備費だけは非常に多く、公債充当費と、それから本年度予算との間の差額が二千七百八十一億ございます。しかしながら、よく考えてみますと、これはガソリン税が入るから、目的税をはずすわけにいかぬからここに入っておるわけなんです。だから、総計でみまして、七千四百二十三億という昨年の公共事業費の予算が、ことしは八千七百六十三億とふえておる。しかし、そのうち五千八百六十八億は公債で充当して、残りの二千八百八十五億のほとんどは、これはガソリン税である。言いかえますと、全く公共事業費を本年度の予算からすっかり引き抜いてきて、それを全部公債に振り当てておる、こういうようなことになっておるわけなんですね。そういうような財政の運営を見てまいりますと、私どもはすなおに考えまして、前年度の一般会計の支出に当然ことしは自然増が出てまいります。当然増が出てまいります。ところがそれをまかなわなければならないところの税収の伸び悩みがある。だから、その分は公債でいったんだということになれば、これは赤字です。さらにまた減税の要望が強い。ことに景気対策として企業減税の要望が強い。だから、それの財源を公債に求める、こういうことになってまいりますと、私ども見るところでは、全くこれは財政の運営を、公共事業を全部ひっこ抜いてきて、それをごそっとそのまま公債に充てて、その分だけ、荷が軽くなった分だけ全部一般財政の運用に振りかえた、こうとよりとれないわけです。だから、そういう意味になってまいりますと、これは建設公債というわけにはいかない。どう言ったって、私はすなおに赤字公債だ、建設公債とはいえない、これは赤字公債だ。こういうふうに、政府としてはやはりすなおにシャッポをぬがれたほうが、国民のほうが、——赤字ということを非常にきらわれるようでございますけれども、しかし、やはりことしはそういうふうな年なんだ、政府は、自然増に対して、非常に財政の運営が苦しいんだ、そういうようなことを率直に訴えられたほうが、国民のほうもやはりいろいろな面で今後協力する気持ちが、財政運営に対して政府に協力する気持ちが出るのではないか、あるいはまた、いろいろな企業が特に減税をしてほしいとか、あるいはまたいろいろな圧力団体がいろいろな要求をしてくるのを押えるのには、遠慮してもらうのには、やはりそのほうがいいのではないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  255. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま、予算の中で公共事業を全部ひっこ抜いて、それの財源として公債を発行するというが、全部じゃないのです。しかし、大体あなたのおっしゃるとおり公共事業費はひっこ抜いて、その財源として公債を発行する、こういうふうにしたわけです。その反射的効果として、経常行政費の財源が楽になってきます。したがって、減税も可能になる、こういうふうになるのでありますが、しかし、これは、先ほど、赤字公債というのは三つの意味で使われておると申し上げましたが、そのいずれにも該当しないのです。あくまでも財政法第四条に従いまして、そのただし書きに従って、公共事業費と出資、貸し付け金、その財源としてこれを発行する、こういうたてまえをとっておるわけであります。
  256. 岡本隆一

    岡本委員 財政法第四条公債などといっても、国民にはわかりません。だから、赤字公債と呼ばれるのがそれほどいやでしたら、これはいろいろ自然増も少ない。あるいはまた、減税の要望にもこたえなければならぬ。いろいろやりくりを考えてみたが、公債を発行するよりしようがない。だから、公共事業費だけひっこ抜いてきて、一応その分だけ借金して、それでもってやりくりしていくのだというやりくり公債、こういうことにすれば、国民にも非常にわかりやすいと思うのですが、いかがでしょう、やりくり公債じゃどうでしょう。
  257. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 やりくり公債ではございませんです。大体今度公債を発行しようという考えは、過去数カ年間は、いわゆる民間設備投資主導型の経済であったわけです。民間の設備投資に国家の資金が使われたわけであります。今度は、設備ももうできた。しかも大いに過剰である。そういう際におきましては、いままで民間が使っておったその金を政府が使う。そして、立ちおくれておる公共投資、道路でありますとか、河川でありますとか、あるいは水道、住宅、下水、そういうようなものに充足していこう。こういう積極的な意図をもって発行されておるわけです。ですから、これを俗に建設公債という人がある。私はそれでいいと思うのです。この名前は非常にいい名前である、かように思います。
  258. 岡本隆一

    岡本委員 やりくり公債を、人が見かけだけで建設公債と呼んでくれるから、それはえらいけっこうでございます。これはちょっとずる過ぎますよ。政府としては、その本質を明らかにし、その性格を明らかにする責任があると思うのです。またあなたが、建設公債と呼んでもろうて、これはえらいけっこうやと、こう思われるのでしたら、やはり建設公債らしい運営をしなければいかぬと思うのです。一般会計がやりくりが苦しければ、一応減税もぐっと押える。また、新規事業も押えられるものはある程度押えていく。また、新しいいろいろな要求、要望というものにも、どうでもこうでもというものにはこたえていくけれども、そうでない限りは極力押えていく。こういうふうなうんと強い緊縮方針をとられて、その上に立って、日本の公共事業がおくれておる、ことに住宅難はきびしい、交通戦争は激しい、だから、そういう日本の公共事業の立ちおくれに対して、これを急速に伸ばしていかなければならぬ、こういうふうに考えられるなれば、はっきりとそれを目的とした、目的意識をはっきりさせたところの公債というものを募集されて、またはっきりとその目的にその公債の金を使っていかなければいかぬと思うのです。今度の公債の使い方というものは、きわめてあいまいもこです。どこへその金が消えたかわからぬ。借金はしてきたけれども、世帯のやりくりであっちこっち出ていって、まとまってこれに使いましたということは言えないわけなんです。なるほど、道路事業もやっていられます。災害復旧もやっていられれば、下水道その他の整備もやっていられる。しかしながら、それは年々やられるところの経費に、大体物価の値上がり及びある程度の伸び率というふうなものを見た程度にすぎないわけですね。だから、経費の前年比を見てみますと、社会保障は一一四%です。だから、一四%増、文教科学振興費は一二%増、防衛関係費は一一%増、特殊外債処理これは日韓の関係とかいろいろなことのためにふえていますが、三八%増になっております。公共事業費は一八%の増なんです。だから、あなたのほうは建設公債だと言われる。それじゃ、建設公債だといわれるところの公共事業が躍進的に伸びているかといえば、一八%なんです。他の費目もみんな一〇%以上伸びております。だから、ほかのものが一〇ないし二〇%増であるのに対して、特に公共事業費だけが四〇%、五〇%伸びました、こういうことであれば、あなたは建設公債だと、こう言われたとしても、これは国民のほうが納得するかもしれません。しかしながら、そうではなくて、大体の伸び率が、やや公共事業費がほかのなにを少し上回っておる。どれもドングリの背比べではあるが、ちょっとだけ頭を出しておる。それだけでもって、建設公債でございます。そういうふうな呼び方をしてもらって、えらいけっこうでございますというわけで左うちわであおっておるようなことでは、自己満足をしていられるようなことでは、これは国民のほうは承服しないと思うのです。しかし、まあ済んだことは——これは、こういうふうな意見がある、考え方があるということ、国民のある層の中には、相当な層の中には、やはりこういう批判を持って政府の本年度の公債というものを見ておるということは、はっきりとやはり認識しておいていただきまして、今後、来年度からも政府はやはり公債を発行されるようなおつもりの模様でございます。これは、先般来の本委員会におけるところの質疑の過程の中でも、あなたはどんどん今後とも公債を発行するのだというふうなことをはっきりと言明しておられますが、今後公債を発行されるとするなれば、やはりそういった形の、一応財政法四条のその精神をそのまま生かしていって、世帯の金には借金しない、しかしながら、建設的な方面にはいろいろな面で国民の協力を求めて——日本は貯蓄率の非常に高い国民です。だから、その国民の協力を得て、それでもって将来への長い投資として建設事業を進めていく、こういうふうな形で公債の運営、財政の運営を行なわれるべきであると思うのでございまするが、大蔵大臣、いかがお思いになりますか。
  259. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまお話しのように、一般の行政費も十何%というのでいろいろふえておるわけであります。また、これをふやさなければならぬ。社会保障費をふやせ、あるいは官庁役人の人件費もふやせ、いろいろな施設をせい、これは社会党といえども大いにこれを要望されておるわけであります。一般の行政費はふえるのです。そうしますと、今日の経済情勢のもとにおきましては、建設事業に充てる財源というものは非常に乏しくなります。ですから、公債を発行しなければ、建設費というものは相当圧縮しなければならぬと思うのです。今回、財政法第四条に従いまして公債を発行する、こういうことにいたしまして、圧縮するどころか、大いにこれを増加いたしまして、そうして先ほど申し上げましたように、いままでは民間の設備が非常に盛んであった。その同じ金を政府がかわってやってやろう。いわゆるおくれた社会資本の取り戻しをしていこう。こういう意味を持つわけでありまして、私は、この財政方針は、民間設備投資にそう金の要らない時期まで、今後二、三年の間はどうしても続けていくべきである、かように考えておるわけであります。
  260. 岡本隆一

    岡本委員 いまおっしゃったことをそのまま受け取っていけば、私の言ったことと同じことを言っておられるわけです。もう税収は伸びないんだ。だから、いろいろな国の経費がふえてきたから、建設事業には振り向けられなくなってきた。だから、それを公債でまかのうたんだ。こういうことになってまいりますと、これは、いろいろな建設事業というものも、例年並みのワクの中で当然やっていかなければならぬ。他の事業に負けないようにやっていかなければならぬ。しかしながら、その分がはずれてくるから、公債でまかなったんだ。結局、それは世帯に金を使い過ぎたから借金せんならぬようになった、こういうことなんですよ。だから、こういうふうな運営をしないように、やはり税収の範囲内において一般財政をまかない、建設事業というものは、やはりはっきりと目的意識を持った、公債の使途をはっきり国民に、こういうことに使うんだから、ひとつ金を貸してもらいたい、こういうことをはっきり打ち出してやっていくべきである、こういうようなことを私は申しておるわけなんです。  企画庁長官にお尋ねいたしますが、私の言っていることは間違いかどうか。また、企画庁長官として、あなたは池田さんの経済成長政策を相当批判しておられました。確かに池田さんの経済成長政策のひずみが今日大きく出てきて、それでもって佐藤さんは往生しているわけなんですね。だから、佐藤さんにすれば、悪いときに池田さんがなくなって、そのあと引き継がんならぬようになってよたよたせんならぬのは、非常に気の毒だと思うのですね。そのことは、やはり高度成長経済というものが間違っておった。だから、これから後は政策というものを大きく転換し、いわゆる安定成長ということばを編み出しておられますが、その過程の中で、私たちは、公債政策をもしとるとするなら、その公債政策をとる場合には、財政法の第四条というものの考え方をよくかみしめて、その上に立った運営をやっていく、こういうふうに考えなければいかぬと思うのでありますが、企画庁長官のお考えはいかがでありましょう。
  261. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 財政の政策の上で、税に依存するばかりでなく、公債と税とを併用してまいりますことは、これは財政政策において各国がやっておりますし、また当然公債と税とを並行してやってしかるべきものだと思います。したがって、私などの考えからすれば、ドッジ・ライン以後公債を出して社会資本の充実をやるべきだった、私はこう思っておるのでございますが、それを今回大蔵大臣が、税だけでなしに、税と公債とを併用した新しい財政政策に転換されまして、したがって、明年度以降をごらんになればはっきりわかってくると思うのですが、その切りかえのときには、あなたのおっしゃるような感じを持つ方が、若干基本的な方針から離れて、ある場合がないとは言えません。しかし、財政運営の方針は、税にだけたよるのでなしに、税と公債との二本立てでやるのが大体原則でございますから、そのこと自体が赤字公債ということではないと私は思います。
  262. 岡本隆一

    岡本委員 税と公債の併用は、従来とも日本はやっているわけです。財投のお金にいたしましても、これは、日本としては従来からそういうことはやってきているわけなんですね。私は経済や財政の専門家でございませんから、率直にしろうとの私がこういうふうな考え方を持っておるし、またしろうとの国民の多くは、そういう点ははっきりと税と公債との——国の借り入れ金ですな、借り入れ金との使い分けというものは、片一方、一応借金の金は世帯に使わないのだ、世帯の費用は世帯の費用としてやっていけるような健全な運営をやるのだ。しかし、大きな将来の建設とか国民的な投資というものについては、その目的をはっきりとして国民に協力を求めるべきだ、こういう考え方が一番すなおで健全で、国民に受け入れられやすいから、来年からはそういうふうな運営をして国民を納得さしていただきたい、こういうことを私はお願いいたしておきたいと思います。  それでは、きょう一番お尋ねいたしたいと思っております地価対策の問題について、お尋ねしたいと思います。  一昨年の三十九年五月でございますが、衆議院でもって地価安定施策の強化に関する決議を院議をもって定めました。そのことは官房長官も御承知であろうと思います。これは、私は非常に重要な問題でございますので、総理大臣に特に出席をしていただきたい、こういう希望を持っておったのでございますが、一般質問であるからそれはぐあいが悪いというふうなことでございますので、総理大臣にかわって官房長官にお尋ねいたしたいと思います。官房長官は、かつて建設大臣もしておられますし、またこれはなかなか大もの官房長官でございますから、副総理というふうな気持ちでもって、あなたは総理大臣にかわってお答えを願いたいと思うのでありますが、この地価安定施策の強化に関する決議をどのように佐藤内閣は尊重してこられたか、そして、またどのように実施に移していく考えを持っておられるのか、お答え願いたいと思うのであります。
  263. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 ただいま御質疑がありましたように、三十九年の五月に、衆議院におきまして地価安定施策の強化に関する決議案が可決されまして、政府はこれを尊重するという答弁をいたしております。この問題は、岡本さんも京都伏見区の止まれでありますからして、特に関心も重大であろうと思いますが、政府はこの決議を受けまして以来、これが具体化のために努力をいたしてまいっておるわけでありますが、御承知のように、なかなかこの地価対策問題は広範な問題を含んでおります。昨年、おそくなりましたけれども——その前から建設省においては十分検討を続けてまいったわけでありますが、なかなか一省においてこれを解決することが非常にむずかしい。御承知のように、税制問題もこれにからんでおる。あるいは自治省との関係等もある。かようなことから、して、昨年、地価対策閣僚協議会を設置いたしまして、関係閣僚間においてこれが調整をはかり、一日も早くこの地価対策を確立しようということで、数次にわたってこれが協議を進めてまいったわけであります。その結果、昨年十月でありますが、大体政府としてはこの方針でいこうというような方針が定まりまして、そこで今日、昭和四十一年度の予算にも、十分とは言いがたいのでありますけれども、ある程度積極的な施策のもとにこれが解決をしよう、こういう考え方でまいっておるような次第であります。  なお、この地価対策の問題は、一応直接的な政策、あるいは短期的な政策と、長期的な政策の二つに分かれております。とりあえず至急に住宅を大量に供給するという国家の考え方も持たなければなりませんし、またこれは、アメリカと日本とは土地の広さが違いますし、事情も違いますが、道路が整備されることによって、遠い地域の宅地がいわゆる市外の宅地として活用される場合があります。これは、御承知のとおりでありますが、たとえばロサンゼルスの郊外などは、非常に道路が整備してありますために、住宅としては安く提供せられておる。東京の場合におきましても、案外今日では東京の市内の住宅地と市外の住宅地との幅がだんだん狭くなってまいっておるような状態で、長期的にいえば、さような意味でのいわゆる道路政策等もこれに関連をしておる。こういう点から、非常に多岐にわたっておるのでありますが、政府は、いわゆる前向きの姿勢でこの問題を急速に解決しようという努力をいたしておるところであります。
  264. 岡本隆一

    岡本委員 閣僚協議会をおつくりになって、幾ら小田原評定を重ねていただいても、地価問題は解決いたしません。この決議は、もう一度読んで見ますが、「本院は、最近における地価の高騰が、国民の住生活を脅かし、公共事業等の施行を著しく困難にし、国民生活の安定と経済の健全な成長に重大な障害を及ぼしている現状にかんがみ、ここに、深い憂慮を表明する。よって本院は、政府が、地価の高騰を抑制するための強力な措置として、農地との調整を考慮した土地利用計画を策定し、あわせて地価の公示制度を確立し」、第三番目に、「土地の有効利用を促進するため、たとえば空閑地税等の税制その他の制度を設ける等積極的な諸施策を検討して、すみやかに地価の安定を図ることを強く要望する。右決議する。」はっきりと三つの方法を指摘しているのです。まず第一には、土地利用計画を確立せよ。その次には、地価の公示制度をやれ。さらにまた土地の利用を促進するために、土地利用促進税と申しますか、ここには空閑地税という名で呼んでおりますが、そういう税制をはっきり設け、それでもって地価の安定をはかれ。こういうことで三つの手段をはっきりと明示しているのです。だから、この方針に従うべきなんです。これは社会党だけが出したのじゃないのです。これは正示啓次郎君が三党代表でもって本会議で提案理由の説明をいたしております。土地収用法が三十九年に改正が出てまいりました。土地収用法の強化をやるのはよろしい。それは、やはり土地の性格というものは、今日の日本の状態から考えたら、私有権というものはある程度制限されるのも和むを得ない。それはそれでわれわれも必ずしも反対はしません。しかしながら、片一方地価の値上がりを野放しにしておいて、強権で土地を取り上げるというようなことだけをやろうとするのはいかぬ。だから、土地収用法を本会議に上程するのなれば、その前にまずこの地価安定施策の強化に関する決議を先に上程せよ、それを可決された上に立って、土地収用法の強化を議決するというのなら、われわれも拒まない、こういう経緯があったわけなんですね。だから、私どもは、土地収用法を強化される、それと一緒に政府が誠意を持って地価の安定施策を強化していくという誓約をとって、それでもって今日に至っているわけです。それから二年半たつのです。なるほど一年間は池田内閣でしたが、しかし、佐藤内閣が成立してからすでに一年半になるわけです。その一年半の間に、この三つの土地利用計画は、それじゃどれだけ芽をふき出してきましたか。あるいは地価の公示制度、これも全然芽をふき出してない。税制の抜本的な土地利用促進税というふうな形のものも、まだ芽をふき出しておりません。だから、衆議院で三党がきちんと話し合ってこれでいこうということをきめたことは、全然実施に移しておらない。しかも、ことしはまた土地収用法の強化が出てまいっております。私どもは、これが何らかの形で芽をふいてこないことには、今度は土地収用法の強化には応ずるわけにはいかない。前回の土地収用法の強化のときに、私たちは地価を野放しにしておいて土地収用法の強化なんかすることはいかぬ、しかし、出てきた土地収用法の改正ですから、一応消極的に協力しましょうということで、私どもは反対しても、本会議で議決されるということにはまあ強硬な反対の態度はとらなかったわけです。しかしながら、そのときに地価安定の強化をやります、だから土地収用法の強化を認めてくれということで、私がのんだのです。ところが今度は、これは全然本会議の議決はほおかむりで、土地収用法をもう一ぺん出してきた。それじゃ、私たちはこれはのむわけにはいかないのです。この三つをはっきりと本会議において議決したのですよ。だから、本会議で議決したということは、これは自民党の政調会も承知したということなんです。この案文を持っていって、両方ともが——私どものほうも政策審議会で認めました。自民党も政調会にこの案文を持っていって承認を得ておられるのです。そして、初めはもう少し強かったのです。それではせめてこの程度にしてくれということで、そのとき、まあそのときの窓口であったのは瀬戸山さんか、その次の、いま副幹事長の二階堂さんですかね、とにかく話し合って、これでいこうということで、きちっと議決をしておるのですね。ところが、全然それが今度は出てきておらない。大体、この三つの柱の一体どれとどれがどの程度に出てきたか、それをひとつ具体的に御説明願いたいと思います。
  265. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 岡本さんの言われること、ごもっともでありまして、政府は三十九年の決議を心から尊重いたしまして、それについての具体的な検討を佐藤内閣になりましてから続けてまいったわけであります。その中で、いまお話しのような空閑地の利用、それから土地の公示制度、あるいはこれに関連するところの税制、こういう問題等につきましても、昨年来からして十数回といいましょうか、相当の期間にわたって検討を加えてまいっております。これが今回の予算に具体的には出てまいりませんけれども、なお引き続き、土地公示制度は、これをすみやかに実現すべく建設大臣においても努力をいたしておりますし、農地との関係におきましても、閣僚協議会におきましては、農林大臣もそのメンバーとしてやっておるような次第であります。特に建設大臣は、御承知のように、その道の専門家でありますので、なお具体的な協議状況については、国務大臣である瀬戸山建設大臣から御説明申し上げたほうが適当かと存じますので、御了承願いたいと思います。
  266. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 今日までの経過は、官房長官からお答えしたとおりであります。おっしゃるように三項目の要領が決議されておりますが、今日までそれが具体化されておらないということは事実であります。私どもは、今回国会にお願いしたいということでいろいろ準備をいたしておりますが、第一は土地収用法の改正、それだけでは相ならぬ、よくわかります。それだけでは私も相ならぬという考えを持っております。そこで、土地利用計画を定めるということが、これは土地政策あるいは地価対策の前提であることは、よく承知いたしております。けれども、岡本さんも御承知のとおり、土地利用計画というものは、そう短時日にできるわけではございません。狭いといっても、なかなか日本の領土も広うございますから、そこで一番問題は、農地との関係、農地と市街地、あるいは住宅地、あるいは工業用地、こういうものとどういうあんばいをとるかということは、そう短兵急にできる仕事ではありませんので、私どものほうは、できるだけこれをすみやかにやりたい、こういう気持ちでおります。しかし、これを全国的に実施するということは、いま申し上げましたように、時間的にも手数の上からもそう簡単なものじゃありませんから、一番住宅地と接触する大都市周辺からまず進めたい、こういうことで、いま宅地審議会で特に専門部会を設けて、そういう道の専門家に集まってもらって、できるだけ急速に東京、大阪その他の大都市周辺の土地利用計画を、土地利用区分を定めてもらいたいと、いま諮問をいたしておるところであります。  それともう一つ、土地利用に関する増価税等の問題があります。増価税と申しますか、空閑地税等がありますが、空閑地税についていろいろ議論がありますけれども、やはり土地の利用を促進する税制面からの協力を得なければならぬ。もう一つは、あとでまたお尋ねがあるかもしれませんけれども、そのときお答えいたしますが、土地によって特別な利益を得るということは、これは排除しなければならない。問題は、やはり土地というものは、まず民族のためといいますか、公共のために使うというのが大前提である、こういう立場で政策を立てまして、法律その他をこの国会におはかりする準備をいま鋭意進めておりますので、単に土地収用法だけを出して御審議を願おうとは思っておりません。
  267. 岡本隆一

    岡本委員 それでは、単に土地収用法だけを今国会に提出するつもりではない。じゃ、土地利用区分、ことに都市周辺での土地利用区分を確立したい、こういうふうなお考えであり、そういうふうな法案も今国会にあわせて提案される御意思があるのかどうか、お伺いしたい。
  268. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 それは、率直に申し上げて、とうてい今国会に間に合うだけの準備はできないと思います。  それから、先ほどのお尋ねの中に私が漏らしましたことがありますが、いわゆる地価の公示制度、これも当然やらなければならない。そうして、やはり国民に地価というものを知らせる。しかし、御承知のとおり、これもやはり権威のある土地評価をしなければなりません。私ども不動産鑑定士によってこれをやって、地価の公示をする、こういうかまえでおりますけれども、御承知のとおり、鑑定士の制度が設けられてからまだ数年にしかなりません。その鑑定士も相当な見識のある人でなければなりませんから、試験制度でやっておりますが、なかなかそれほどの人員をそろえるという段階になっておりません。いま地価の調査を鑑定士に従って四十一年度も予算をとって続けておりますが、この鑑定士の増加もはからなければならない。そういう意味で、全国的にというわけにまいりませんので、やはり最も緊急を要する大都市周辺からやりたい、こういうことでありますが、これももうしばらく時間をかしていただきませんと、これの完全な実施ということはちょっと望めない、こういうことに考えております。
  269. 岡本隆一

    岡本委員 官房長官、ただいまお聞きのとおり、この地価問題は日本の住宅問題の根底をなす問題であり、さらにまた、これはもういま焦眉の問題と言ってもいいほど重要な問題でございます。そしてまた、建設大臣は一緒に長い間建設委員会の中で意見を交換したので、私も建設大臣の瀬戸山さんのお気持ちはよくわかっております。やろうという気持ちは十分持っていられると思うのです。しかしながら、いろいろ他の役所との間にむずかしい問題があって、なかなかこれが建設大臣の意思だけでは進まない。一番大きな問題は農林省との農地関係の問題であると思うのです。だから、一つ高い次元に立って総理大臣ががんと大きな決意を示し、総理大臣がほんとうに真剣にこの問題と取り組むのでなければ、私はこの土地問題というものは解決しないと思うのです。ところが、この問題が、佐藤内閣ができまして一年半、さらにまた、ことしは佐藤内閣は住宅政策を最重点政策とする、こういうふうに銘を打っておられます。また事実戦後衣食住と申しますが、衣と食とは大体戦前の状態を取り戻しました。あるいは一部戦前よりも少し好転している向きもあるでしょう。しかしながら、住は戦前よりもはるかに以下です。国民の住生活というものは、戦前のもう半分以下です。戦前は九尺二間の裏長屋というふうなことを申しましたが、今日では長屋が二階建てです。重層長屋というふうなことばが出てまいっております。アパートのことを役所では重層長屋と呼ぶんだそうです。大蔵大臣、御存じですか。長屋が積み重ねられている。そういうふうな状態に国民の住生活が追い込まれておるときに、この住宅問題を解くための一番かぎであるところの宅地問題を放置して、この住宅問題を論ずることはできない。だから佐藤内閣が住宅政策を最重点施策として取り上げられるなれば、土地問題をまず解決しなければなりません。ところがいまお聞きのとおり、土地問題の中の一番重要な問題の土地利用計画、これはとても今国会にはどうにもなりません、こういうことです。公示制度にしてもなかなか思うように進みません。それから税制です。これも大蔵省のほうでそう真剣に取り組む御意思があるようにはどうも見受けられない。あとでお尋ねいたしますが、今度出ておりますところの譲渡所得税の改正にいたしましても、必ずしもこれがどれだけ土地の利用促進に役立つか、私は大きな疑問を持っております。だから、佐藤内閣がほんとうに前向きに土地問題と取り組まれるとするなれば、総理みずからがこの問題とほんとうに真剣に取り組むという決意を披瀝していただかなければならぬと思うのです。総理でないあなたは、何ぼ女房役で一心同体だということでも、総理と同じ気持ちというわけにはまいらないでありましょうが、しかしながら、やはり官房長官として、あなたは、この機会に、総理にかわってはっきり土地問題とどう取り組むかというところの決意の御披瀝をお願いいたしたいと思うのです。
  270. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 土地問題は、お説のとおり、国民生活の特に豊かなる国づくりの上においては、最大重点施策だとわれわれも考えております。したがって、総理は、尺寸の土地といえどもこれは人間の力でふやしたり減らしたりできない重要な問題であるだけに、宅地問題閣僚協議会におきましても総理みずから出席をいたしまして、そこで難問題のときには総理が強く指示されております。非常に熱心であります。ある意味においては大蔵大臣もしかられることがある。そういう意味で、総理は非常に熱心に、この問題は解決すべきであるということからして、特に宅地と住宅、いわゆる土地問題というものは国民生活の向上の面から考えても、そして豊かなる国をつくる上から考えてもどうしても解決すべき問題であるということから、強く指示せられてこの閣僚協議会が生まれたのでありますからして、総理の決意はまことに非常に強いものがありまして、おそらく近い将来において具体化をすることは私は間違いないと思っております。特に今度の土地収用法を出すにいたしましても、従来閣僚協議会で進めてまいりました先ほど来の公示制度の問題あるいは空閑地利用の問題、あるいは税制の問題等も、あわせて土地収用法に関連してのいわゆる政府側の説明も十分に申し上げる所存でおりますので、政府は前向きで全力を尽くし、この問題の解決をはかりたいという決意を総理も持っておることを御了承願いたいと思います。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  271. 岡本隆一

    岡本委員 政府のほうでも前向きに御検討を願えると思うのでございますが、私どもも一応宅地政策というものを立てて、先般瀬戸山建設大臣が御就任になりましたときに、社会党の考え方をよく申し上げました。大臣もそれを参考にして大いに進めたい、こういうふうな御意向を漏らしていただきましたが、何をおいても土地問題の解決には、第一番目には土地の所有権ですね。土地を持っておるということは、これは、土地は国民のものだ、国民全体のものだ、しかしながら、それを有効に利用することを国民からまかされているのだ、こういう考え方に国民全体が立たなければならぬし、また政府の施策も、そういう考え方に立ったものでなければならぬと思うのです。いまプリントを配付しましたが、読んでいますと時間がかかりますから、あとでゆっくりごらんを願いたいと思うのでありますが、まず第一には、土地の所有権というものに対するところの従来の考え方を変えていく、こういうことは一番にやらなければなりませんし、その次には、どうしても土地の利用区分の確立ということをはっきりする。そしてまた同時に、われわれは農林業地域と、それから市街化地域とに国土を考え方を分けていく。市街化地域については、土地の区画整理を促進してどんどんそれを住宅の川に供し、あるいはまた産業の用に供していく、農林業地域につきましては、そこには農地の確保を、だから農地法をさらにきびしくやってもいいと思うのです。そして、それでもって農地の確保をやる、こういうふうにしないと、いまのようにスプロールしていきますと、工場やあるいは宅地がどんどん農村の中へ食い込んでいく、蚕食していく。そういうことになりますと、農地そのものがどんだん値がつり上がりまして、今日では農業そのものが、田んぼの値が上がってきたためにもう成り立たない。経営規模の拡大をやろうと思っても拡大できない、こういうふうな状態になってきております。だから、日本の農業の経営を安定化さすためにも、土地の利用区分というものは、これはぜひやらなければならぬ問題であると思うのです。また市街化地域については、農地転用が今日のような状態では非常に困る問題があります。だから、農地法の改正もやっていかなければならぬ。宅地の安定供給のためには、一応土地の高度利用ということも必要でありましょうが、同時にまた、土地の流通機構というものが今日のような状態であってはなりません。だから、土地の流通機構をやはり公的な機関でやらなければいかぬ。今日の国民の職業の安定をはかるために、従来はまあいわゆる口入れというものがありましたが、それがなくなって、今日ではそういうことが許されなくなって、職業安定所がありますね。それと同じような考え方に立って、土地の売買というものが今日のように乱脈になってまいりましたら、少なくとも一定地域、市街化地域の中の特に宅地開発を促進しなければならぬというふうな地域を宅地開発地域と指定して、その分だけは公的な機関が一切の土地の権利の譲渡の仲介をする、こういうふうにしなければ、私は土地の安定した供給というものはできないと思うのです。そういうふうないろいろなことをわれわれは考えまして、一つの案として今日皆さんに配付いたしておりますが、ひとつ政府のほうでも、前向きにほんとうに国民の住を確保する。住を確保するには、まずその土地を確保しなければならぬ、住を保障するためには、土地を確保しなければならぬ。そのためには土地政策が一番大切であるということを十分御了解願いまして、官房長官は御用でお急ぎのようでございますから、一応いまのあなたの御所信の披瀝を誠意あるものと思いまして、少なくとも今国会中に不可能なら、次の通常国会には一貫した、まとまったところの土地政策というものを政府においてお立てになって、体系づけられたところの土地政策として、少なくとも宅地法という形で、その中で土地の利用区分その他の問題を明らかにし、土地の流通機構の問題も明らかにし、さらにまたいろいろな需要供給の関係を安定化させるための税制の改革というようなものも添えて、次の通常国会、来年の通常国会には必ず出すということをここで御誓約願えますかどうか、その辺をひとつ御答弁願って、お帰り願ってもけっこうでございます。
  272. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 岡本さんの貴重なる研究に基づく御意見等も十分にわれわれは参照いたしまして、お話しのように将来に向かって最善の努力をいたしたいと考えております。ただ、次の国会に出せるかどうか、お話がありましたように、農林省、自治省、大蔵省等に関係いたしておりますので、ひとつこれが実現のために最善の努力をいたしたい、かように存じますので、御了承願いたいと思います。
  273. 岡本隆一

    岡本委員 それでは建設大臣にお尋ねをいたしますが、ただいまあなたから土地についての考え方の一端をお話し願いましたが、土地は商品でないという瀬戸山構想を七月に御就任と一緒に発表されまして、非常に大きな期待を持って、私どもは今年度の施策がどういうふうに出るであろうかと、胸をふくらまして待っておったわけです。ところが、今度出てまいりましたところの一連の地価対策についての諸施策というふうなものを見ますと、失望の限りなんです。土地は商品でない、こう瀬戸山大臣はおっしゃいますが、しかしながら、電車に乗りますと、電車の中に大きな土地の広告があります。新聞をあけますと、もう日によりますと一ページ大の土地の広告がある、あるいは毎日折り込みが入ってまいります。もう百貨店の商品と同じようになっておる。大臣は、商品ではないとおっしゃいますが、現実にはもう百貨店の特売と同じように土地が業者の手によって扱われておる。どうして瀬戸山構想がもう少し実りそうな方向に進まないのか、どこにそういう隘路があるのか、大臣としてどういう点がおれは困っているのだという点をひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  274. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 毎日土地の売買の広告があり、あるいはビラが来る、これは私は悪いことじゃないと思います。これは、やはり土地は売買することがあたりまえのことであります。私有財産権を認めております以上は、やはり所有者からほしい人に売ってもらわなければ土地の利用はできませんから、ここにこういう土地がありますよということを知らぬ人が多いですから、これに知らせるということはあえて私は不都合ではないと思います。  ただ問題は、私が土地は商品ではないと申し上げたことが、このごろはやりことばのように使われておるようでありますが、私はそういうことばがはやることを期待しております。先ほど岡本さんが言われましたように、土地の問題とか地価の問題というものは、一片の法律をつくればそれでものが解決すると、そう簡単に私は考えておりません。問題は土地と人間というものがどういう関係にあるかということを真剣に一ぺん考えようじゃないかという意味で、土地は商品ではないということは、売り買いはできませんという意味の商品学的な、あるいは商業学的な定義を私は申し上げておるのじゃないのであります。土地は商品ではないということは、一体人間の生活、あるいはすべての産業、経済、文化、全部人間の活動は、先ほど長官も申し上げましたけれども、土地以外にはできないのだ、しかも、その土地の増減ということはできない、こういう意味で、もう少し土地というものを投機の対象にしたり、あるいは土地を高く売ってみずからもうけようという、そういう根性をこの際民族のためにやめたらどうか、そういう意味で土地は商品ではないと申し上げたのであります。
  275. 岡本隆一

    岡本委員 私がいまお尋ねいたしておりますのは、土地は商品でないということばのその意味をお尋ねしているのではなくて、その大臣の御趣旨は非常にけっこうだ、だから施策の上にそれをぜひ実らしてもらいたい。ところが、今年度出てまいっておりますところの諸施策の中には、なかなかそうはいきそうな模様がない。それでは、それがどこに隘路があるのか、あなたが土地は商品でないというふうな施策を現実に国の施策の上に生かしたいと思うのに、また、私は閣議の中で、あるいはまた内閣の中でいろいろ御努力願ったと思うのですが、それがうまく実を結んで出てきておらない。だから、そういう点についてあなたのお気持ちを承りたいということなんです。
  276. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 岡本さんも御承知のように、土地の問題は頭で考えたり口で言ったりすることはきわめて簡単であります。けれども、これはまあ古今東西を問わず、土地と人間との関係というものはきわめて複雑でありまして、しかも深刻であります。でありますから、私が昨年の六月土地は商品でないと言ったから、直ちにそれで効果があらわれるというふうにお考えなさってくださると、非常に恐縮するわけであります。そういう考え方に基づいて、今後法律の制度なり行政のやり方をしていこうということでありまして、それを御理解を願いたいというので、一言にしていえば、土地が商品でないという考え方に立って、やはり国民的に進んでもらいたいということであります。  そこで、一体どういうふうにするのだ。これは、これからでありますから、いままで出てきておらないのは当然であります。そこで、私どもは、土地は、特に宅地の場合は、需要供給の関係があります。宅地ばかりでなくて、公共事業を膨大にやります場合に、どうしてもそういう関係があります。しかも、限られておる土地でありますから、宅地の場合などは、国あるいは公共団体で公有地、国有地をできるだけふやすということが一つの地価対策であります。これは、大量といっても一挙にはできませんけれども、大量に計画的に民地を国有地あるいは公有地に取得して、できるだけ安い価格で取得する手段をとる。そして、安い価格でこれを利用する体制をつくる、これが第一だと思います。それから、公共事業を行ないます場合には、従来行なわれておりましたように、社会資本の充実によって、たまたまその地域に土地を持っておる、こういう人々が、国民の努力によって特定の人がその利益を壟断する、これを排除したい、こういう基本的な考え方で対策を講ずる。しかし、どんなに理解してくださいといっても、御承知のとおり世の中のことはなかなかそうはいきませんから、やはりそういう原則に従った土地の取得制度をつくる。これが土地収用法にかかってくるわけであります。そういう一連の総合した施策をとらなければ、土地対策、あるいは地価対策というものはできない。しかも、これが今度の私どもが試みております一連の政策で、必ず十分に、完全無欠にできるとは私思い上がっておりません。やはりそれを実行いたしまして、理解を求めるところは理解を求める。やはり国民の理解がなければ、どんなに法律制度をやりましても、御承知のとおり伸びない。これは、行政官も今日までの土地に対する態度というものを変えて行政行為をしなければならない。そういう体制はもちろん必要であります。  そこで、私どもは、今後皆さんにもおはかりして土地対策、地価対策を進めて、これに欠陥があれば次々に改めていく。先ほど岡本さんが示された皆さんのお考え等も、私はよく理解しておるつもりであります。こういう点は、一党一派の問題ではないと私は考えております。国の基本的な問題だと思っておりますので、将来はあやまちといいますか、欠陥があればどんどんこれを補充して進めていくものである、かように考えております。
  277. 岡本隆一

    岡本委員 政府が今度出しておられます地価対策には、大体四本の柱があると思うのです。まず第一には、宅地の大量供給をやりましょう。その次には、既成市街地の高度利用をやりましょう、それから三番目には、土地収用法の改正をやって、公共用地をごね得がないようにしましょう、それから最後には、税制の改正、この四本の柱が出ておるわけですね。この四本の柱を一つずつ点検をしてまいりますと、どの柱も非常に細かったり根が腐っておったりというふうなことで、もう一つも役に立ちそうにないんですね。その中で政府が一番努力しておられるのは、宅地の大量供給という考え方であろうと思うのですね。ところで、この宅地の供給の姿を見ましても、なるほど宅地の大量供給、こう銘打ってございますが、それでは去年と比べてどれだけ伸びておるかということになりますと、飛躍的な伸び方というわけにはいかないのであります。お尋ねをいたしますが、それじゃ、本年度は一体新たに大体どれぐらいの宅地を、家の数にして何戸分ぐらいの宅地を公的な供給によってされようとするのか。さらにまた、民間の宅地造成でもって、まあ一軒四、五十坪とかりに仮定して、一体どれぐらい、何戸分ぐらいに相府当するものを民間に供給させて——一応本年度政は住宅建設計画を立てておられますが、その中で、ことしはそれじゃ市場へ——先ほど、とんどんチラシや広告で、土地が出てくるということはけっこうじゃないか、こういうことでございました。それが安う出てきたらけっこうなんです。えろう高う出てくるところに問題があるのです。だから、政府としては公的な機関で安いところの宅地をどのぐらい、何戸分ぐらい供給されようとし、また、民間はどれぐらいの戸数の分を供給するであろうと見込んでおられるのか、お伺いしたいのです。
  278. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 先ほども申し上げましたように、土地の問題は、こちらで単に考えるというだけの安易なものじゃございません。なお、公共事業の場合は別でありますけれども、特に宅地の場合は、ただ面積を確保したから直ちに宅地になるというわけじゃありません。私どもは今後は、農業との関係もありますから、いわゆる熟畑、熟田とかいう既耕地はできるだけ避けるべきものである。これも、やむを得ない場合はそういうところも——日本はほとんど平地は使われておりますから、やむを得ない場合もありますけれども、できるだけそういうふうなものに利用されておらないところを包含してやろう、といいますと、丘陵地帯等をできるだけ使用したい、こういうわけでありますから、面積を多く確保いたしましても、造成になかなか時間がかかる。しかも、御承知のとおりに、住宅は早く建てなければならない、こういうことでありますから、面積が非常に少ないじゃないかとおっしゃることは、私はこれで十分だとはもちろん考えておりません。  そこで、いま、来年度はどうだ、こういうお話でありますから、試みに申し上げますと、公団においては、新たに四十一年度で造成をしたい、あるいは確保したいというのが五百五十万坪、そちらで御承知だと思いますが、昨年から比べて百万坪の増であります、それから、いま申し上げましたように、これはなかなか一挙にはできませんから、現在継続していま開発をやっておりますのが、これは公団分でありますが、いま申し上げましたように、新規が五百五十万坪、いま着手いたしておりますのが二千百七十五万坪、この造成がなかなか困難であります。合計で、公団分として二千七百二十五万坪。それから、そのほかに工業用地として五十万坪、そのほか公庫のいわゆる地方公共団体造成用として資金を貸し出しまして造成するもの、これが四十一年度新規として六百万坪、それから造成地として四百二十万坪、合計で千二十万坪、こういうことを目標にして予算構成をいたしております。  それから、御承知のとおりに、まだこのほかにいわゆる区画整理事業でやりますもの、これは全部宅地になるわけじゃございませんけれども、土地の区画整理事業でやっております分も相当にある。それから、これはぜひ御理解願いたいのでありますけれども、いわゆる公営住宅、これは用地を大体予定して予算の中に入っておりますので、これはまた別なものが出ると思いますが、これを全部ここに数字であらわすことはちょっと不可能であります。そのほか、民間の宅地造成がどのくらいあるかということは、これはなかなかここで数字をどのくらいやるでありましょうということは申し上げられないのでありますけれども、従来の実績としては、これはむしろ政府がやっているよりも多くやっているような実情であります。しかも、これは、御存じのとおり非常にばらばらにやっておりますと、悪質地と申しますか、不適地の造成が行なわれておりますから、これは一面においては規制をしなければならない、こういうことも今後は検討していきたい、かように考えております。
  279. 岡本隆一

    岡本委員 ただいま御説明の、たとえば本年度は公団が五百五十万坪新規に購入する、そして継続分が二千百七十五万坪ある。しかしながら、この二千百七十五万坪というのは、ずっと過去に取得された土地が、いま引き続いてその造成事業の最中であるということでございますから、政府として新たに住宅の土地として開発に臨んでいくということであれば、五百五十万坪がことしの新たな宅地の伸びということになってくるわけです。そうすると、五百五十万坪を大体一戸当たり四十坪と平均していきますと、これは十四万戸分になるのですね。また公庫の分の六百万坪は十五万戸分ということになってくるわけですね。そうすると、合わせて二十九万戸、三十万戸分くらいということになってまいります。そういうことになってまいりますと、来年度の政府の住宅建設計画はたしか約九十万くらいだったと思うのですが、そうしますと、そのうち三十万戸、三分の一、あとは民間の造成に期待する、こういうことになってくるのでございますが、そういうような形であって、この政府が供給するところの宅地の造成というものが、需要を大幅に、需要をほとんど満たすとか、上回るまではいかなくても、宅地の需要をほとんど——せめて三分の二くらいは政府が安く供給するということになれば、地価は下がります。しかしながら、政府が供給するところの分は、そのごく一部分だ、あとほとんどは民間にたよるんだということになってまいりますと、これは、宅地造成だけではなかなか、よほどの努力を政府にしていただかないことには、地価抑制策にはならない。むしろ政府が用地取得をされますことによりまして、かえってその周囲の土地がぼんぼん値上がりする、それがまた思惑買いの対象になっていく、架空需要を呼んでいくということで、今度はむしろ政府の宅地造成が逆にその地域の地価をつり上げていっている。新幹線であるとか、名神であるとかいうふうな公共事業がそのあたりの地価をものすごくつり上げましたが、それほどのことはなくとも、今日政府の宅地造成が逆に周辺の地価を上げているというふうな事実があるということも私たちは考えなければならぬと思うのです。だから、現在のような中途はんぱな宅地供給は、逆に地価の値上がりを招いておると言っても私は過言ではないと思う。だから、いま行なわれておるところの政府の地価安定策の一環としての宅地の大供量給というものが、決して地価安定策の大きな柱にはなっておらないということを御認識願って、私は一そうの御努力を今後お願いしたいと思うのですね。  その次に、二本目の柱になっておる既成市街地の高度利用ですね。この内容を見てみますと、これはほとんど柱らしい柱になっておらない。金融公庫の中高層融資にしても、四十年度が一万三千三百戸で四十一年も一万三千三百戸、そうすると全然伸びがない。去年並みです。それにまた、公団の市街地団地をふやしましたといっても、前年より千五百戸をふやしておるにすぎない。こういうことで、ここには既成市街地の高度利用をやります、これは大きな宅地対策一つの柱ですというような形で施策の一つとして出しておられますが、これは、政府のいわゆる市街地再開発に対する努力が足りないと思うのですね。なるほどことしは再開発のための工場跡、その他の用地取得のための再開発に関する法案が出てまいっております。しかしながら、あれといえども、かりに坪五万円と仮定いたしましたら、それはたしか二億かそれくらいのごくわずかな坪数です。だからあれも焼け石に水、二階から目薬といった程度のものであるわけでございます。だから、今度出しておられます政府の方針、四本の柱といいますが、土地収用法の改正、これとても安い宅地の提供にはたいして役に立ちません。そうすると、残るところは税制の改正ということだけになってまいりますが、そこで、自治大臣にお尋ねをいたします。  過般来問題になっておりますところの固定資産税の値上げです。あれは、大体従来、いままで委員会での御説明では、地価が上がったから税の公正を期するためにというのが一番大きな目的のように受け取られますが、地価対策としてどれだけの効果があると考えておられますか、自治大臣にお考えを承りたいのです。
  280. 永山忠則

    ○永山国務大臣 地価に対して、それよりも安い課税でありますれば、やはりその土地を保有する意欲を刺激しまして、土地の適正な利用に関係があると思うのであります。要するに、土地は上がるのに、それに対する固定資産税が低過ぎるということになると、地価対策上非常に影響がある、こういうように考えておるわけです。したがいまして、やはり地価対策上適正な課税に持っていくということは、漸進的ではありますが、非常に必要であるというように考えておる次第でございます。
  281. 岡本隆一

    岡本委員 税金の上がる土地はどういう土地ですか。今度固定資産税が上がる土地は、どういうところが対象になっておりますか。
  282. 永山忠則

    ○永山国務大臣 農地は対象にいたしておりません。それで、上がる大部分は、大都市の土地価格の上がっておるところが多く対象になっております。
  283. 岡本隆一

    岡本委員 大都市周辺の地価の値上がりがひどいところが、今度一番上がることになる、こういうことのようでございますが、そういたしますと、そういうところの地代や家賃が上がってまいりますね。これは物価値上げ抑制の政府の今度の政策とはだいぶ違うように思うのです。そうしてまた、運賃も上がるし、鉄道も上がるし、地代も家賃もこの際上げようという考え方から固定資産税の値上げをやられることになったわけですか。
  284. 永山忠則

    ○永山国務大臣 土地が上がっておるにかかわらず税金が低いというところに対しまして、激変緩和の措置をとって、非常に微温的にいたしておりますので、いわゆる家賃に対しての影響はきわめて少ないものであると考えておるわけです。さらに、やはり家を建てます場合、普通三年間に二分の一固定資産税の課税減がございます。それから中高層で三階、四階は五カ年間二分の一固定資産税を減ずることになっております。五階以上が十年間というような状態になっておりますので、それらの点を勘案をいたして考えておるのでございます。
  285. 岡本隆一

    岡本委員 私がお尋ねいたしておりますのは、固定資産税の値上がりが地代や家賃に及ぼす影響をお尋ねしておる。それで、従来とも税金が上がりますと、地主、家主は、税金が上がったから家賃を上げてくれ、地代を上げてくれ、これが一番大きな口実になるのです。だから、今度の固定資産税の増徴というものは地代、家賃の値上げを非常に促進することになると思うのです。そういう効果のほうが逆に土地利用の促進よりも大きいと私は思うのです。今度は急激な値上がりにならないようにということで、ある程度押えておられます。それだけに休閑地を持っておる人にとっては、土地の管理費といえばもう税金だけなんですね。だから、あまり管理費がかからないから土地を遊ばして持っているわけなんです。だから、土地の利用を促進しようと思ったら課税対象を区分せなければだめなんです。それを有効に使っておる。現在農業に使っておる、あるいは小市民がわずかな収益をあげるための商売に使っておる、あるいは自分の住居に使っておる。地価が何ぼ上がりましても、いままで電車の駅に近いところに住んでおる、駅から歩いて二、三分のところに住んでおる、ちょっと行けばもうそこは駅だ。便利だからその辺は商店街として発展してきて、二十万、三十万にも上がってきた。しかし、その近くでひそやかに住んでおるところのサラリーマンにとっては、地価が三十万になろうと五十万になろうと、収入増はちっともないんですよ。そうすると、それらの人は、土地の値上がりによるところの恩恵というものは何ら受けられないにかかわらず、固定資産税だけはぼっぼ、ぼっぼと上がっていくのです。そうでしょう。だから、そういうふうな利用のしかたによって税というものはかけていかなければいかぬ。ところが、今度の固定資産税の増徴の方法というのは、一律まんべんなしでしょう。その地域の値が上がったからといって、一斉にばあっとみんな上げるのですよ。そういうことになってまいりますと、利用促進にちっともならないのです。まじめに有効に利用しておる人については上げない。しかし、遊ばしているものはごつんと取る。そういうふうにすれば、土地利用促進に大いに役立つのです。だから、私たちは空閑地税ということばを使うのです。空閑地税をかけなさい、利用促進をやりなさいと、そういうふうに私たちは言っておるにかかわらず、あなたのほうは、税金が安いと遊ばしよるといかぬから税金よけいかけてやれということで、善意を持って有効に使っている者にまでばさっと軒並みに税金をかけていく。こういうことでは、利用促進の効果よりも、むしろ逆にそれは家賃や地代の値上がりになって、これだけ物価の値上がりに苦しんでおる善良な国民をさらに苦しめることになる、こういうことになると思うのです。どうですか、今度は話に残っているようですな。まだきまってないようですね。これから後、まだ固定資産税の処理の方法については話し合いをされるように聞いております。態度をきめられるようですが、自治大臣、いかがですか、こういうふうに一律まんベんなし、全然区別なしに悪平等な課税の加重をされるというふうなことよりも、空閑地税的な要素をもって遊休地に対して税金をうんとかける、強化する。それはもう持っていたら、これはとても長く持っておられぬというほどの課税をされる、そういうふうな方式に改められる用意はございませんか。
  286. 永山忠則

    ○永山国務大臣 大いにひとつ論議を尽くして御審議をいただきたいと存じておりますが、実際上、空閑地だけをということになりますと、課税の技術上、その他いろいろ難点があるようにいわれておりますので、それらの点も十分ひとつ御検討願いたいと存じます。  なお、商店街その他のところは、やはり今回は所得税その他のすべての減税を非常に多く恩恵を受けるところが多いのであります。なお一般の住宅地の値上がりはきわめて微温的なところが多いと存じますので、まあ五十五坪くらいなところで大体固定資産税は月三十円くらいというように算定をいたしておりますが、これらの点に対しても、十分ひとつ御検討を願って、御論議をいただきたいと存じます。
  287. 岡本隆一

    岡本委員 空閑地税については、これはなかなか課税がむずかしい、空閑地であるかどうかという認定がむずかしい、だから困難だ、こういうふうなことなんです。昨年の委員会でもこの問題は議論したのでございますが、なかなか捕捉できないというふうな、課税技術上の問題が一番強く強調されている模様なんですね。しかしながら、大蔵大臣、いかがですか、この空閑地税ですね、私は簡単だと思うのです。何しろ、個人の所得というような全然見えないものですら、大蔵省はきちんと捕捉して——きちんとまではいかぬか知りませんがね、大脱税、森脇みたいな大きなお目こぼしもございますがね。しかしながら、個人の所得をきちんと税務署は把握されます。それで、幾ら入るかわからぬものすらなかなかじょうずに把握されるのだから、現にあるところの土地、みんなそこをだれも自由に見ることができる土地、その土地が空閑地であるかないか、それくらいな認定は、その地域の学識経験者をも入れたところの審査機関をお設けになって、それでもってこれが空閑地であるかどうかということをぴしゃっと認定して、架空の擬装的な、これに使ってますのだというような擬装的な建物を建てても、それは擬装だといって排除して、そんなものは空閑地かどうかということは、付近住民の良識を聞きつつ判断していけば簡単なんです。だから私は、空閑地税というものは、税の課税技術上困難だというふうなことは、まあ議論にならないと思うのでございますが、大蔵大臣の御意見はいかがですか。
  288. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 空閑地なりやいなやという点がむずかしいのです。(岡本委員「それが何でもない」と呼ぶ)それが何でもないとおっしゃいますが、これは、私ども徴税の衝に当たる者といたしますと、非常に納税者との間に摩擦を起こす、これはもう税務行政執行上非常に大問題になる、こういうふうに考えます。
  289. 岡本隆一

    岡本委員 去年は大蔵大臣田中角榮さんでした。これは、まあ日本電建の社長さんをしておられたというような話を聞いておりますから、まあなかなかこれは土地ブローカーの親玉だ。だからとてもこの人じゃ話にならぬわいと思って、実は去年はあきらめていました。また建設大臣は、なくなってみたら百億の遺産が残っている河野さんや、——こういうことです、その遺産は、週刊誌なんかの報ずるところによりますと、ほとんど土地だというのですね。東名道路だとか、あるいは地方道にセンターをぱっと引いて、はよやれといってセンターを引いた。そのインターチェンジのそばにむすこさんが社長をしている会社がどうっと土地の買い占めをやっておる。そういうようなものを合わせて遺産百億になるのだ、こういうふうな週刊誌での解説でございました。さもありなん、そうでもなければ、とても百億というようなものは残りもしないわと、実はこう思っておりました。だから田中角榮さんと河野さんとが大蔵と建設では、とても地価の解決はつかぬわいと実はあきらめておったんです。ところが、今度は福田さんが大蔵大臣になられました。さらにまた、瀬戸山さんはきわめてまじめな建設大臣です。だから私は、これは名コンビだ、今度こそ福田さんと瀬戸山さんの手でもっていまの税制なんかもぴしっとやって、りっぱな土地政策をやってもらえる、こう思って、きょうは喜び勇んで資料を用意して、大いに議論して地価対策の実を結ぼうと、こう思って出てまいったら、いまの返事を聞いたらがっかりですわ。あなたも土地ブローカーみたいな感じを受けますが、しかしながら、それは一国の財布を預かり、かつまた、まじめに地価問題と取り組みたい、住宅政策と取り組みたいというところの佐藤内閣の大蔵大臣としては、十分補佐の実をあげていただかなければならぬと思うのです。いまのようなふまじめな御答弁では納得できません。これは、今度もう一度地価問題を建設委員会で……。(「休憩」と呼ぶ者あり)休憩ならしてもいいよ。まだまだ問題は残っているんだから。しかし、時間もすでに経過したから、ぼつぼつやめましょうと理事さんから言うてきていますからね。だから、農林大臣にもせっかく来ていただき、法務大臣労働大臣にも来ていただいて、問題を残しながらお尋ねできないのは非常に残念でございますが、これは、また別の機会にお尋ねさしていただくことにして、ひとつ大蔵大臣、いま官房長官があれほどまじめに、地価問題と取り組みます、そして、あなたもさっきここで聞いていられたでしょう。衆議院の議決、三十九年の五月に地価安定施策に関する決議、その中に土地の有効利用を促進するために、たとえば空閑地税等の税制ということをぴしっと出している。これは自民党の政調会も承認しているんですよ。三党がちゃんと話し合ってできたところの院議ですよ。この線に沿ってやれ、やってくれということを私どもが要望しておりますのに、そんなものできっこないと、こんなふまじめな御答弁では納得できません。前向きに、この税制の改革、空閑地をかちっと捕捉して、土地利用促進税という制度をきちっと設けるか設けぬか、この点だけ大蔵大臣から明確な御答弁をいただかなければ、私はきょうは質疑を取りやめるわけにいきません。
  290. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 土地問題につきましては、私は非常に熱心なんです。瀬戸山建設大大臣も熱心で、非常にいいコンビである、こういうふうに考えています。私は、岡本さんもお聞き取り願ったかと思いますが、土地の問題は考え方を変えなければならぬ。つまり、これは国民財産だ、そういう考え方でいくのだ、そういうことを、昨年自由民主党を代表して佐藤総理に質問したことがある。佐藤さんも、そのとおりだ、やる、こう言うので、非常に意を強うしたのですが、たまたま同僚である建設大臣も同じような考え方、——車の両輪のごとく地価問題を解決していきたいと思っておるのです。  ただ、その方法論です。方法論が空閑地税一本であるとか、そういうことじゃ私は問題は解決しないと思う。私は、あらゆる手を使わなければならぬし、また、税の面においても、合理的なやり方をしなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。  まだ御審議をいただいてはおりませんけれども、近く建設大臣のほうから土地収用法の改正が提案になる。その際には税法のほうも改正をしたい。つまり収用を受ける人は、今度はそうごね得は許されない。その結果、従来より不利益な待遇を受けることになります。そういう際における課税措置、これを緩和しよう、こういうふうに考えておるのです。そのかわり、その近傍における一般の土地の値上がり、こういうものがあるだろう。そういうものに対しましては重課をしよう、こういうような考え方をいたしておるわけでありまして、いま私どもが考えておりますのは、固定資産でありますが、いわゆる資産課税、これは私は土地政策には悪い影響はない、いい影響がある、こういうふうに考えておるのです。ただ見解の違うのは、それは空閑地税に限定するかどうか、こういう一点でありますが、今後も検討いたしますが、ただいまの段階ではそういうふうに考えております。
  291. 岡本隆一

    岡本委員 私は税一本で土地が安くなるなんて言うた覚えはないです。また、この決議案もそんなことをちっとも書いてございません。土地利用区分の確立は大切だということが書いてありますし、また地価を安定させるのには、需要と供給の関係をバランスをとらなければいかぬです。そのためには、一応需要を押える。また架空の需要も押えなければいかぬ。また、供給をするのには、遊ばしている土地をはき出させるような方策も講じなければいかぬ。御承知のように、都市周辺には、このごろはたくさんの惰農が発生しております。もうとにかく土地をちょっと売っていけば、のんびりアパートでも建て、中にはふろ屋を建てたり、いろんなことをして、練馬とか杉並あたりのかつての農家はみんな左うちわです。だから幾ら土地を遊ばしておろうと、ちっともその人らは——ネギを植えていても、大根を植えていても、そんなものは自分のところの副食物のちょっと足しになればいい。のんびり暮らしている。そうして値上がりを待っているのです。そういうふうな土地をはき出してもらうためには、やはり土地というものは遊ばしていたのではそろばんが持てぬというような方法を講じぬとだめなんです。また一方では、金が遊んでおるから、土地に投資しておくのが一番かたい、いまの思想はそうですよ。庶民のほうは、金がないからしようがない、五万、十万、二、三十万というような貯蓄を一生懸命勤労者はしております。それが銀行やあるいは金融機関に集まれば、一応設備投資というふうなことになり、大会社設備投資をどんどんやって今日の不景気がきた。さらにまた、そうでなしに、大会社がどんどん土地を買い占めて、それでもっていまよげい一そう土地が値上がりになってきている。だから庶民が自分の家を持ちたい、せめて自分の住む家ぐらい自分がつくりたいというその庶民の夢が貯金となってきている。ところが、貯金が積もれば積もるほど、地価のほうがどんどん先に高うなるもんだから、いつまでたってもウサギとカメの競走のようなことになっている。これが今日の地価問題です。だから、そのような地価問題の解決をつけるためには、遊ばしているところの土地をはき出してもらうということ、あるいはまた、要りもせぬのに土地を買うて遊ばして値上がりを待っている、そういうような行為はぴしっと禁止するような方法を講じなければだめなんです。それが空閑地税というところの一つの構想となって出てきているわけなんです。これは、私だけが言っているのではないのです。多くの識者がそういうような考え方に立たなければいかぬ。またそういうふうな考え方に立って、土地は国民全体のものなんだ、あなただけのものではないのですよ、土地は国民全体のもんなんですよということを、はっきり国が態度で示すということなんです。だから、土地は国民のものだ、あなたは土地の所有者としての義務を果たしなさい、責任を果たしなさい、その土地を有効に使わせなさい、こういうところの姿勢をぴしっと税制の中で立てることが大事だ。また、そういうふうにするのには、どれもこれもやみくもにそういうことはできない。それにはやっぱり土地利用区分というものを確立して、ここは農地ですよ、ここは宅地ですよ、宅地にすべきところですよと、こういうふうな考え方に立った一貫した総合的な国の土地利用計画というものが立てられなければならぬと言うのです。私はいまの御答弁では満足できません。土地収用法の改正に際して、これは、大蔵大臣には必ず建設委員会に来ていただきます。大蔵大臣に来ていただいて、この議論の続きをやらなければ、私は土地収用法の改正に対しては、絶対にこれは物理的な力を使ってでも今度は阻止いたしますから。だから、この点は、大蔵大臣、必ずしかとお約束しますから、ひとつあなたもその覚悟でやっていただきたい。きょうは、これはもうあなたと議論をしていても、きょうのところはどうも並行線のようでございますが、しかしながら、これから一月ほどゆっくり頭を冷やしていただいて、私の説に賛成した上で建設委員会に出ていただくようにお願いしておきまして、私のきょうの質問を終わります。
  292. 福田一

    福田委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。  次会は明十九日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後九時一分散会