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1966-02-14 第51回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十四日(月曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       倉成  正君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    丹羽 兵助君       西村 直己君    野田 卯一君       橋本龍太郎君    古井 喜實君       松浦周太郎君    三原 朝雄君       水田三喜男君    粟山  秀君       渡辺 栄一君    有馬 輝武君       大原  亨君    岡本 隆一君       加藤 精二君    角屋堅次郎君       小松  幹君    高田 富之君       滝井 義高君    只松 祐治君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       安井 吉典君    山中 吾郎君       山花 秀雄君    竹本 孫一君       加藤  進君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         総理府事務官         (総理府人事局         長)      増子 正宏君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  鹿野 義夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         国税庁長官   泉 美之松君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     齋藤  正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      中原龍之助君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英男君         社会保険庁長官 山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  加藤 威二君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  網野  智君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         食糧庁長官   武田 誠三君         林野庁長官   田中 重五君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         通商産業事務官         (通商局長)  渡邊彌榮司君         通商産業事務官         (貿易振興局         長)      高島 節男君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         自治事務官         (財政局財政課         長)     佐々木喜久治君         会計検査院事務         官         (第一局長)  保川  遜君         会計検査院事務         官         (第三局長)  佐藤 三郎君         農林漁業金融公         庫総裁     清井  正君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十四日  委員植木庚子郎君、丹羽兵助君及び山花秀雄君  辞任につき、その補欠として粟山秀君、渡辺栄  一君及び角屋堅次郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として只  松祐治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員粟山秀君、渡辺栄一君、有馬輝武君、只松  祐治君、永井勝次郎君及び春日一幸辞任につ  き、その補欠として植木庚子郎君、丹羽兵助君、  楢崎弥之助君、田中武夫君、岡本隆一君及び永  末英一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算  昭和四十一年度特別会計予算  昭和四十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより一般質疑に入ります。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 私は、まず社会保険関係財政の問題と、産炭地の地方自治体の困窮した財政打開策とそれから賠償問題、それから海外経済協力、こういう三つの問題について、関係大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。  そこで、ずばりまず問題から、時間の関係上入っていきますが、まず第一に、今年の年頭にあたって、鈴木厚生大臣は、医療問題が非常にむずかしい状態になっておるので、これを大所高所から打開をするために、健康と医療に関する懇談会といったようなものをつくりたいというアドバルーンを上げたのです。あれからすでに一ヵ月半の時間が経過したのですが、この構想については、一体どういうようになりつつあるのか、まずそれからお述べ願いたいと思うのです。
  4. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国民の健康を保持、増進する問題は、きわめて大切な問題であるわけでありますが、最近、公害問題でありますとか、あるいはまた生活環境がいろいろ変わってまいりまして、また、社会経済情勢変化に伴いまして、疾病態様も変わってきております。さらにまた、こういう国民の健康を守るという観点からいたしまして、皆保険下における医療問題、医療保険制度の問題、それから人口構造変化に伴う老人対策、いろいろ問題が提起されておるわけであります。   〔委員長退席田中(龍)委員長代理着席〕 こういう問題を大局的な観点から論議をし、私は、総理大臣私的諮問機関として、各界権威者からこういう問題についていろいろ御意見を伺って、これを政府施策の上に生かしていくということがきわめて大切である、必要である、かように考えまして、国民健康保障に関する懇談会を提唱いたしたのでございます。この点につきましては、佐藤総理も積極的に御賛成をされておるのでありまして、私は、ただいま内閣のほうと相談をしながら、この構想具体化を進めておるわけでありますが、きわめて近い機会に人選等も了しまして発足をしたい、このように考えております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 その懇談会は、総理の非公式な、私的な諮問機関だということですが、そうしますと、ここで何か目的を持って結論を出すというようなことをやるのでなくて、ただ各界意見を聞くだけの懇談会なんですか。それとも、いま非常に紛糾をしておる日本医療保険全体、あるいは医療制度もひっくるめたそれらの制度解決のために、一つ方向でも見出そうというためにつくるのか。目的がないと、もはや二百三十ぐらいの審議会やら諮問機関があるのですからね。もう医療問題は、大臣御存じのとおり、七人委員会というのを昔つくって、そしてすでに十年ぐらいたちますが、七人委員会以来、大体医療問題というのは論じ尽くされておるのです。いまや、勇気を持ってどこから実行するかということが問題なんです。そのときに、またこういう懇談会をつくってお茶を濁すということもどうかと思うのですが、これは何か目的を持って結論を出す懇談会なのか、それとも単なる茶飲み話をやって各界意見を聞くだけだ、こういうことになるのですか、どっちなんですか。
  6. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この懇談会は、先ほど申し上げましたように、大所高所から国民の健康を保持、増進いたします諸問題につきましてお話し合いを願い、その中から、政府施策の中に生かしていくべき有力な御提案なり御意見なりというものは、これを取り上げて政府施策に生かしていきたい、こういうことでございまして、ただに滝井さんがお触れになりました医療問題だけに限定するものではないのでございます。もとより医療問題も、国民の健康を保障するという面からいたしまして、非常に重要な問題でございますから、当然こういう問題にも論議が及んでいくということは考えられるわけでございます。その際におきまして、どういう問題からまず緊急の課題としてこれを取り上げ、どういう方向でこれを進むべきかというような点等につきましても、御意見があろうかと思うのであります。私は、そういう御意見十分考慮の中に入れながら、医療問題でありますれば、中央医療協あるいは社会保険審議会等、既存の、正式に法律に基づいて設置されている機関がございますわけでありますから、そういう機関におはかりをして、そうして、その答申を待って根本的な制度改革等に手をつけていきたい。ただいま中央医療協も、御承知のように、診療報酬体系適正化問題等につきまして、中医協としても意見書をおまとめになり、その線に沿うて、ただいま根本問題と取っ組んでおられる段階でございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 どうも一月三日のアドバルーンというのは、そう大きな期待は、いまの御答弁では持てそうにないような感じがします。  そこで、大臣にお尋ねをいたしたいのですが、一体、いまの医療保険問題の一番重要な論点というのはどこにあるのですか。対立する一番大きな論点というのは、どこにあるのですか。
  8. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この医療問題あるいは医療保険制度の根本的な問題、これは先般総括質問の際に、社会党を代表された大原さんの御質問に対してお答えをいたしましたように、第一点は、国民保険下におきまして、医療機関が一部に偏在をしてはいけない、国民医療保障を十分達成できまするように、医療機関整備されることが必要である、そういう医療機関整備の問題が一つであります。  第二の点は、診療報酬体系適正化の問題でございますが、この点につきましては、物と技術を分離して、そして技術を適正に評価すべきである、そういう合理的な診療報酬体系にすべきであるという御意見が、滝井さん御承知のようにあるわけでありまして、私もこれは有力な、今後の検討を要する課題であると、こう考えております。また甲乙二表の調整の問題も、これに関連して問題がいろいろあるわけでありまして、今後の課題になろうかと思います。こういう診療報酬体系に関する問題。  それから第三は、現在わが国には各種医療保険制度があるわけでありますが、負担の面におきましても、また給付の内容におきましてもアンバランスになっておりますことは、しばしば指摘されておるとおりでございます。したがいまして、この各種医療保険制度総合調整を行ないまして、そして国民負担の公平、給付の向上、適正化をはかっていく、こういう問題が、私は医療問題をめぐる根本的な検討を要する問題であろう、こう考えております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 いま大臣が、医療機関の適正な配置と整備診療報酬体系適正化医療保険制度総合調整という三点をあげられたんです。これらの三点は、支払い側重点をどこに置いて主張しているかといろと、支払い側は、診療報酬体系整備を中心に置くし、療養担当者医療担当者側はどこに重点を置くかというと、各種社会保険制度統合一元化総合調整じゃない統合一元化と、こういうことに置いているのです。二つ顔ができてきているわけです。大臣は、この二つの顔を、医療機関整備というやつを一つ入れて、三つにしておるだけのことなんです。  一体、こういう三つの問題があるんだが、この問題は、もう十年前から言われているんですよ。私が代議士に出たときから、うしろにおる川崎君なんか言っておった。十年前から言われていることを、まだやっぱり同じことが繰り返されているんです。これでは、厚生行政というのはどういう形かというと、まるっきり船は帆まかせ帆は風まかせということですよ。これはこういうことですよ。三つ論点がはっきりしておるけれども、どこからやっていいかわからぬから、大所高所から国民健康保障に関する懇談会をつくりましょうとか、あるいは社会保険審議会諮問が出たらそれに従いましょうとか、中央医療協議会方針が出たらそれを検討しましょうとか、それからもう一つある。社会保障制度審議会というのもある。もし健康保障に関する懇談会をつくったら四つになる。この四つのものが、それぞれ別の結論を出したらどうするんですか。ますます船は帆まかせ帆は風まかせになってしまう。先日川崎君がいみじくもいいことを言った。総理大臣というのは首相と書いておる。首があるんだ。一体総理の顔はどっちを向いているんだ、東南アジアの方向に向いているのか、中国の方向に向いているのか、ソビエトの方向に向いているのか、アメリカの方向に向いているのか、さっぱりわからないじゃないか。日本アジア外交には主動性がないじゃないかということを言った。日本社会保険医療行政もそのとおりですよ。鈴木さんの顔もどっちを向いているか私たちにはわからぬ。だから、一体どっちを向けばいいかということが問題なんですよ。  そこで、時間がないからだんだん結論を急ぎますが、大蔵大臣はいみじくも一つ方向を示した。さすがやっぱり大蔵大臣だと私は思っておるんです。どういうことを言ったかというと、大蔵大臣は、これは財政を扱っておるから、国債の処理と同じようなものの考え方を持ってきている。国債を出す場合には、七千三百億の国債を出します。そのときに歯どめが二つ必要だ、一つ市中消化をやる、一つ建設国債です。こういう二つの歯どめを私は国債にかけるからインフレは起こりませんと、こう言う。これはわれわれと対立する。議論は対立します。対立しますけれども、やはりはっきり歯どめを一つかけて、自信を持って出してきているでしょう。その故知にならったかどうか知らぬけれども、医療問題についても福田さんは、先日の大原君の質問に答えて三つの歯どめを言っておる。まず第一は、いまの医療費がどんどん膨張する、医療費が二割ずつ上がっていく、保険料の収入というのは一割しか上がらぬ、この状態ではたいへんな状態になるので、歯どめをしなければならぬ。一つは、審査委員会という歯どめがあります。もう一つは、各種社会保険総合調整したいが、できれば総合調整より一歩進んで統合にまで持っていきたい。最も大事な自動的な歯どめが一つほしい。それは一部負担です。こういう三つのことを言った。あなたもお聞きになっておったと思うのです。そうすると、一国の大蔵大臣財政を握る大蔵大臣審査制度総合調整、できれば統合、一部負担、こう明白に言ったのです。  そこで、一体この福田構想というものを厚生大臣はどう思うかということです。さいふを握っている大蔵大臣が歯どめが三つあります。こう言っている。この三つに対して、あなたは一体どういう感じを持っているか。まだほかの諮問機関答申を聞かなければあなたの構想は出ないというのですか。御存じのとおり、政治政党責任政治ですよ。少なくとも政党が、おれはこの方向に行くんだ、これについて意見があったらひとつ聞かしてもらいたい、こう言って少なくとも指南力を発揮しなければ、あっちこっちの意見を聞いて、そのあとで私のものをきめましょうじゃない。まず自分の手のうちを示して、これでいいか悪いか、悪いところがあれば直してください、これでなければ、船頭が多くして船は山に乗り上げちゃいますよ。いまその状態でしょう。ここ数代の大臣は全部そうです。みずからどろをかぶって、この日本医療保険混乱状態解決しようとする勇気を持った大臣は、失礼な言い分だけれども、一人もいなかった。だから、鈴木さんは池田さんの女房役としてやってきたのだから、勇気があるだろうと思って期待をしておるのだが、やがて六月に内閣の改造があるころになると、また新しい大臣が出てくる可能性がある。だから、ひとっここらあたりで、やはり何か方向を残しておく必要がある。大方針を残しておく必要があると思うのですが、福田構想に対するあなたの考え方をひとつ述べていただきたい。
  10. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この医療費の問題につきましては、滝井さんも十分御承知のとおり、先年来のいろいろな紛糾した事態、昭和三十五年以来改定を見なかった薬価基準改定の問題、こういう問題は、各方面の御協力によりましてようやくこれが解決を見たわけであります。これを契機といたしまして、医療問題、医療制度の根本的な改正ということについて、各方面でこの際これをやらなければいけないという機運が出てまいりましたことは、私は非常ないい傾向であり、今後の日本医療制度の改善こそ、この際ぜひやらなければならない、こう私も考えておるわけでございます。  そこで、いろいろ各方面から御意見があるわけでありまして、福田大蔵大臣の御提案も、有力なその一つであるわけであります。先ほど私も申し上げましたように、診療報酬体系適正化の問題、各種医療保険制度の根本的な総合調整、さらに進んでは統一、統合という問題も考えられるわけでありますが、そういう問題も今後検討すべき重要な課題であるということを私申し上げたのであります。しかも、滝井さんが御指摘になりましたように、支払い側診療者側とにおきましては、全く御指摘のとおりの立場をいまとっておるわけであります。しかし、これらの問題につきましても、国民世論の影響もございまして、この異なった主張を持ちながらも、共通の土俵の上にひとつこれを乗せて論議しよう、検討しよう、こういう機運がいまできてきておるのであります。私は、これは非常に大切なことだ、こう考えておるのでありまして、この機運をこわさないように、これを助長しながら、いまの二つ診療報酬体系の問題にいたしましても、各制度総合調整統合への方向の問題にいたしましても、私はせっかく出てきたこの機運を助長し、これを十分話し合いによって解決する方向に進めていきたいということで努力をいたしておるわけでありまして、漫然とこれを見送っておることではないのでございますから、その点を御了承いただきたいと思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 鈴木大臣質問したことに答えてもらいたいと思うのです。福田構想をどう思うかということなんです。時間が一時間半しかないのですから、簡明にして要を得た答弁をいただきたい  それでは福田さんにお尋ねしますが、一体あなたの歯どめの一つである一部負担というのはどういう考え方ですか。御存じのとおり、いま社会保険には一部負担があるのです。初診のときに本人は百円、入院したときは一日三十円を原則的に負担するのです。それから家族はもちろん五割、国民健康保険は、今度は一部七割給付になるわけです。したがって三割負担という形が出てくるわけですね。こういう制度はあるのです。こういう一部負担制度のほかに、あなたのいわゆる一部負担というのはどういうものの考え方の一部負担なのか、できればここで明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  12. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話のように、いま一部負担制度はあります。ありますが、私が申し上げておりますように、この制度医療費が増高する歯どめとしての作用をなさない程度のものである。それを実質的に歯どめとなるような働きができるように制度改正をしたらどうだ、これが私の卑見でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 池田さんは保守成長派代表であったし、佐藤さんは保守安定派代表です。その保守安定派代表のいわば女房役福田さんです。保守安定派特徴は、保守成長派に比べてどこに特徴があるかというと、経済を安定さして、池田さんの生産第一主義の政治人間尊重歩行者優先政治に切りかえるというのが保守安定派のいいところだと私は考えておったのです。いまの話を聞くと、医療費が膨張をする。だから膨張しないように一部負担をやらせるということになれば、これは人間はどうでもいいということになる。福田さんはこういうことを知っておるのですか。日本平均寿命は、われわれが学生のときは人生五十年だった。あれから男は六十七歳、女は七十二歳まで平均寿命は延びてきたのですよ。もう二十年くらいすると、日本人の平均寿命は九十歳になりますよ。もう二十年しますと、日本人口で三十五歳以上が五割一分を占めますよ。これは人口問題研究所結論です。ということは一体何を意味するかというと、甘木においてはみんなが非常に長生きするようになったということですよ。もう一つは、−われわれの学生のときは、乳幼児がうんと死んだ。どういうようにして死んだかというと、先天性弱質、化まれながらにして赤ちゃんが弱いというのが多かった。それは、農村でむちゃくちゃに農繁期に働いて、おなかの中の赤ちゃんなんかかまわずに働かされたからですよ。それが一番大きな原因だったのです。農村乳幼児死亡率が非常に高かった。したがって、先天性弱質で死んだ。それから下痢、腸炎、肺炎だった。それから結核くらいがあったのですよ。ところが、いま赤ちゃんは死ななくなった。何が死につつあるかというと、お年寄りが死につつある。脳溢血、ガン、心臓病、こういう老人性の疾患で死につつある。しかも、それも昔のように肺炎では年寄りは死ななくなった。昔は年寄りは肺炎になったら九〇%死んだ。いまは九〇%助かるというようになってきておる。したがって、お年寄りもだんだん死ななくなった。子供が死ななくなっておる。平均寿命が延びておるということで、なるほど健康保険の勘定は赤字ですよ。しかし、人間の健康勘定のほうは黒字になっておる。これは大黒字ですよ。平均寿命が延びて、赤ちゃんが死ななくなって、そしてみんな健康に過ごせるのですから、健康勘定は黒字です。ここを政治家が見誤ったらだめですよ。日本医師会の武見氏は、私どもといろいろ立場が違いますが、さすがに彼はここを見ておるのですよ。あなたは財政家だから、保険の財政だけは見るけれども、人間のほうを忘れておる。少なくとも保守安定派のチャンピオンの女房役ならば、ここを忘れちゃいかぬ。それでは政治は成り立たぬ、政治人間がやるのですから。  そこで、いまのようなものの考え方、保険財政が膨張するから一部負担をやって、それで歯どめをやるというならば、健康勘定は赤字になってもいいですか。いわゆる人間の健康勘定は、赤ちゃんがどんどん死んで、今度は福田さんが八十まで比きるのが七十くらいで死んでもいいのかということになる。それはいかぬでしょう。金は天下の回り持ちだから、心配なことはないですよ、金が少し赤字になっても。人間の命が、全日空機が墜落して死ぬことのほうがたいへんなんですよ。だから、福田さんのものの考え方はこれでわかった。非常に危険です。この考え方にもし厚生省が負けるようだったら、鈴木さんをわれわれは不信任しますよ。  そこで鈴木さん、それなら、まず、いまの健康保険の三十九年、四十年の累積赤字は一体幾らありますか。それからことし四十一年度においては、もう結論だけでいいです。もし制度改革をやらなければどの程度の赤字が出るのか。
  14. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政管健保につきましては、四十年度五百三十五億四千七百万、四十一年度七百二十億。日雇い健保四十年度八十一億六千八百万、それから四十一年度は九十五億七千万。船員保険、四十年度十六億八千万、四十一年度二十四億八千万。以上の赤字であります。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十九年度に百七十三億の赤字がありますね。これを五百三十五億に足すと七百八億の赤字が現在ある、こういうことなんですよ。間違いないですね。この七百八億の赤字を一体どうするのですか。私は暮れの国会で、厚生保険特別会計が四百億、政策転換のために歳入欠陥ができるということを指摘したわけです。それで予算を直すべきだと言ったら、大蔵省は、歳入は予算だから問題でない、歳出権だけ変更なければよろしい、こういうことであった。ところが、今度はこれを四十一年度の予算と比較をするときになると、やっぱりもとのままで見るわけですね。この予算書を見ますと、厚生保険特別会計のところはもとのままで出てくるわけですよ。たとえば厚生保険特別会計の健康勘定を見ますと、四十一年度の保険料の収入は三千十四億円です。ところが四十年度は二千六百二十七億円収入があることになって出てきておる。ところが、これはうそっぱちであって、政策を転換したから四百億はもうないのです。初めから二千二百億しか保険料収入がないわけですよ。ところが、こういう比較をするときは、もとのままのもので今度は四十一年度も比較させるわけです。だから、議員は勉強していなかったら、ははあ、去年は二千六百億の保険料の収入があって、ことし三千億だからそのくらいはあるかな、こうなるわけです。しかし実際はそうではないわけです。もう初めから四百億だけはうその数字を書いているわけです。会計検査院、来ていますか。こういうような場合に、一体会計検査としてはどういうように処置するのですか。国会に出すこういう予算の説明書が、実際には四百億も穴があるわけでしょう。それを出すときには去年のうそのままで出すのですよ。これは虚偽ですよ。虚偽のまま出して、そしてことしの三千十四億の保険料収入と比較させるでしょう。こういうように白昼公然とうそが行なわれておるわけです。こういうことで一体いいのですか。去年と比較するときは四百億の欠陥のあるものがそのまま出てくるでしょう。こういうときはどうなんですか。会計検査院は全然そういうものをほおかぶりして知らぬ顔をしておるのですか。歳出だけがあれば、もうあとはこれでもいいということになるのですか。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  16. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 御答弁申し上げます。  歳入の見積もりはできるだけ正確な見積もりを計上するのが正しい姿と考えます。それで、歳入予算編成のときにおいてできるだけいろいろな資料を集めて、その上で、これがまず大体妥当だというような見込みをつけてやりますもので、その見込みが正しい限りにおいては、その後事情の変化によってこれが変わっても、これはいたしかたないのじゃないか、こういうふうに考えます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 ところが、政策を放棄して二千六百二十七億でなくなったものを、どうしてこれを変えて出さないのですか。二千二百億しかないということをここではっきり答弁しているわけですよ。それをどうして変えて出さないのですか。幾ら予算だからいいのだといっても、四百億も狂ったものをそのまま出すのもおかしいじゃないですか。そのまま出していいのですか。そうするとどういうことになるかというと、御存じのとおり、決算というものについては、これは二つの説がある。議案説と報告説と二つある、憲法九十条による決算は。そうすると、決算については、国会は否決をしても何の障害も起こらないのですよ。これはでたらめな決算だといって国会が否決をしたときに、内閣は何か責任をとりますか。何にもないでしょう、否決されても。そうすると、歳入というものが、もはや初めから明らかにでたらめであるのにもかかわらず、それを前の年と同じことを、うそをそのままことしまた書いて出さなければならぬということはおかしいじゃないですか。当然にこれは、大蔵省は説明書には直して出すべきなんです。ところが、それをそのままやっぱり出しておるでしょう。それを会計検査院は黙って見ておるのですか。決算になったときは、この二千六百億はないから二千二百億になってしまうのですよ。ところが、そのときになって二千二百億になった、けしからぬじゃないかと私たちが追及しても、憲法九十条では報告するだけであって、国会がこれを否決しても内閣は何も責任がないのです。そうでしょう、決算は。決算には二つの説があるのですよ。議案説と、それから報告説と二つある。しかし、これは国会の採決だけはやっておるのです。決算委員会と本会議で採決をやっておるが、それは何かはっきりしない。その採決は一体何を意味するのかはっきりしない。そういうものなんですよ。だから、したがって、われわれは決算については非常に無力です。そうすると、ここの予算審議のときの歳入というものについて目を向けざるを得ないわけです。ところが、いまあなた方も、のほほんとして、四百億も歳入欠陥があることは明らかであるにもかかわらず、それをそのままこうした予算の比較表に出してくるというのはおかしいのです。
  18. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 当初歳入予算を組んだときにおいては、いろいろな改正等を織り込んで、期待をして、そうして歳入予算を組んだと聞いておりますが、そういう見込みのもとにおいて組みまして、その後事態の変更によって歳入予算がそのとおりにいかないという場合には、やはりこれを変更するのが常識だろう、こういうふうに考えます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣、いまの会計検査院のあれを聞いたでしょう。変更するのが常識だというのです。大蔵省は常識を逸脱しておるじゃないですか。直してください。
  20. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歳入は見積もりでありますから、それが年度の途中で変更になることはずいぶんあるわけです。租税収入あたりはよけいに出たり引っ込んだりいたします。それを一々修正はいたしておらないわけですが、前年度と比較する場合におきましては、多少異同はある、その実際のものじゃなくて、当初財政計画上御審議を願ったその数字を比較対照する。これは滝井さんも御承知のとおりと思いますが、これが通例なのであります。
  21. 滝井義高

    滝井委員 通例だけれども、それは間違いなんです。四百億も穴がある。これは虚偽の数字なんです。明らかに虚偽なんです。虚偽の数字を出して、そうして来年度の四十一年度の予算と比較させるというところに問題があるわけですよ。それだったら、この内容にそういうことを書いてくれなければいかぬですよ。ところが、この前は、がんとして歳出権だけが狂わなければいいんですと突っぱねたから私は黙って下がったんだけれども、よく考えてみると、どうしてもおかしいのです。これいつまで質問しておると大事なところのポイントがはずれますが、とにかくおかしいということだけを指摘しておきます。会計検査もおかしいと言ったんだから。  そこで、三十九年度と四十年度の累積赤字が七百八億円になりました。昨年の二月のこの予算委員会で、私は前保険局長小山君の答弁を求めたのですが、昨年においては、だんだん医療費も増加をして赤字が増加をするので、五十八億くらいの行政努力の項目を出しておったのだが、その後、これは昨年の十月までに四十三億くらいに変更されたのですが、行政努力は最終的にどの程度の成果をあげたのか。これは歳入の面にも関係しますが、予算の歳出においてどの程度の行政努力の効果をあげましたか。
  22. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政府委員から説明させます。
  23. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 昭和四十年度におきまして行政努力は四十三億円、かように見込んでおりまして、これは中身といたしましては、レセプトの点検と称せられております医師からの請求書につきまして、各管掌別の入り組みがあるとか、あるいはまた、その他の事務的な過誤があるわけでございまして、こういったものにつきましての調整をしていく、あるいはまた保険料の収納成績を上げていく、あるいはまた現金給付につきまして適正化を期していく、かような行政上の総合的な努力をすることによって効果を期待いたしておるわけでございまして、今日までのところ、個々の項目につきまして幾らの効果があったといったような数字は出てまいりませんけれども、最近までの実績を見通しまして、予定額よりはそういった諸般の効果をあげまして、給付費の年間の総支出見込み額というものも減少いたしておりますし、また収入につきましても若干の増が見込まれる、かような結果によりまして、当初は四十年度単年度におきまして六百五十九億の赤字見込みというふうになっておりましたのが、先ほど大臣が申し上げましたように、五百三十五億の赤字の見込みで四十年度も終わるという、かような結果になっておりまして、その聞こういった行政努力が相当あらわれておる、こういうふうに理解しております。
  24. 滝井義高

    滝井委員 目標が、当初は五十八億くらいだったのです。昨年の十月くらいになって四十三億になったのですが、確たる数字はわかりませんということでは納得できないのです。四十三億という数字を出しておるのですから。予算を組むときに、標準報酬の改定で幾ら、料率の改定で幾ら、行政努力で幾ら、こういうように、予算の説明に額を出しておるわけですから、四十三億というのは——レセプトでは、この前五億円だった。監査その他で五億円をあげるというのが小山君の説明だった。たった五億円しかあがらぬのに五十八億も組むのはおかしいじゃないかと私がここで指摘をしたら、必ずこれはやりますということだった。やれますという答弁だったのですよ。いまのような数字じゃだめですよ。  それならば大臣、四十一年度において七百二十億の赤字が出る、この七百二十億の赤字は、今度の健康保険の改正でどのくらい埋めますか。数字だけでけっこうです。
  25. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今度の保険法の改正によりまして、標準報酬の上限を十万四千円に引き上げ、また保険料率を千分の七十に改定をし、さらに国庫負担を百五十億入れることによりまして、大体保険収支は均衡を得るように考えております。
  26. 滝井義高

    滝井委員 それが均衡を得ないんですよ。標準報酬の改定百三十八億、料率を六十三から七十にするので二百九十億、国庫負担百五十億。七百二十億にならぬ。百四十二億不足ですよ。事務当局でいいから答えてください。
  27. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 事務当局から説明いたさせます。
  28. 山本正淑

    ○山本(正)政府委員 ただいまのほかに、昨年十一月一日から実施いたしました薬価基準改正によりまして四十四億の減が見込まれております。それから行政努力によりまして九十八億、合計いたしまして七百二十億でございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そのとおりです。大臣、お聞きのとおり、いいですか、七百二十億の赤字が出るうちに、法律の改正をやるにもかかわらず、なお面四十二億不足してくるのです。そこで、薬価基準が十一月一日から引き下げられたので、それから四十四億出してくる。まだ九十八億足らない。それを行政努力でやるのでしょう。去年四十三億の行政努力をやってみたけれども、何が何んだかわからぬうちに終わった。ことしまたその倍の九十八億の行政努力をやるというのは、一体何でこんなものを出せるのですか。どこから出るのですか。だから、こんなインチキな予算の組み方を認めるわけにいかぬです。大臣、九十八億の行政努力は一体何から出てきますか。
  30. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは、最近の医療費改定の問題や、さらにまた、各方面でこの医療費の増高が保険財政に相当大きな影響を与えておる。このままでまいりますと、保険料負担にいたしましても、また制度自体にいたしましても、重大な段階に入る、こういうことが一般の患者やあるいは被保険者の諸君にも十分認識をされてきておりますし、行政努力につきにましても、末端の保険監査に当たっております者につきましても、十分熱意を持って当たっておりますので、そういう九十億程度の行政努力を見込んだわけであります。
  31. 滝井義高

    滝井委員 いまはっきりわかったのは、監査に熱意を持って当たっておるからということだけがどうもはっきりしたのですがね。九十八億の根拠を、大蔵大臣、どういうように一体あなたは認めたのですか。私は今度はもう過去のことは言わぬです。だから、いまから修正させますよ。九十八億をはっきりしなければ、この歳入のところを変えてもらわないと困る。歳出も変えてもらわなければ困る。一体九十八億の理論的な根拠はどこですか。はっきりしてください。何と何で九十八億出るということがはっきりしない限りは私は了承できません。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 厚生省のほうから御説明申し上げます。
  33. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 事務当局から説明いたさせます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと待ってください。こういう大事な、行政努力を九十八億も組んで——いいですか。累積赤字は七百八億ですよ。これは一月一日に健康保険法が通ったときに七百八億で、実際はもっとふえますよ。これは一月一日に通っていないのだから、もっとふえますよ。そうすると、その面からも予算を変えなければならぬ。国鉄の運賃と同じです。国鉄の二百六十二億の赤字と同じ。もっとこれは深刻ですよ。そのほかに、いま言ったように、九十八億の行政努力というのは、去年の四十三億が何が何だかわからぬのだから、私は、これは納得がいくまでは、変えてもらわなければ、質問を中止します。大臣が説明してください。こういうことは事務当局がやることではないですよ。政治的にきちっとはっきりしなければいかぬです。
  35. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 行政努力の目標の内訳につきましてのお尋ねがございましたが、標準報酬の的確な把握によるもの二十四億円程度、それから保険料収納率の向上によるもの三十億円、レセプト点検調査の励行によるもの三十五億円、現金給付適正化によるもの九億円、大体こういう目標を……。
  36. 滝井義高

    滝井委員 その標準報酬の的確な把握や保険料の徴収というのは、これは何も行政努力でなくても、当然やらなければならぬことでしょう。当然やらなければならぬことなんです。しかし、まあいいでしょう。こういうものを合わせて九十八億をお出しになる。わかりました。  それならば、さいぜん保険の監査のことを言いましたが、保険の監査というのは、社会保険診療報酬の支払基金であります。そこで、一体基金の予算というものは幾らなんですか。
  37. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 三十九年度の予算は三十三億。
  38. 滝井義高

    滝井委員 三十九年度でなくて、四十一年度の予算を審議しているのですから、四十一年度の予算を言ってください。
  39. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 四十一年度は四十二億でございます。
  40. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一体四十二億の金はどこから持ってくるのですか。
  41. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 一件につきまして十四円二十銭ずつ徴収することにしております。
  42. 滝井義高

    滝井委員 そうましすと、結局、一件について十四円二十銭ずつ、医療費に回る金がここにくるわけですね。保険者から取るのでしょうから。政府管掌の健康保険もお出しになるのでしょう、取るのですから。そうしますと、いまレセプトの点検その他で、行政努力九十八億のうち三十五億、約三分の一はこの基金の機能から出てくるわけですね。したがって、基金の機能というのが非常に重要になってくるわけです。そうすると、いま一体基金というのはどの程度の職員がおるのですか。
  43. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 基金の職員の数は約四千人でございます。
  44. 滝井義高

    滝井委員 そのほかに審査その他をやる人がおるはずですが、それを加えると総数どのくらいですか。
  45. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 そういう職員が二千人でございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 福田大蔵大臣、いまお聞きのとおり、日本の一兆円になんなんとする社会保険医療のろ過装置、これが適正であるかどうかということをろ過するのはこの基金なんです。これは社会保険診療報酬支払基金法という法律があることは御存じのとおりです。そうすると、会計検査院長おられますね、この基金には、各保険者から、過去三ヵ月において最高額の費用を要した月の診療報酬のおおむね一カ月半分を委託することになっておるが、この委託が行なわれておるかどうか。
  47. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 お答え申し上げます。  われわれが見たところでは、それは行なわれているというふうに承知しておりますが、中に一部おくれているものがあるというようなことを聞いております。
  48. 滝井義高

    滝井委員 厚生省、これは大臣では無理でしょうから、事務当局でけっこうですが、いまの答弁は間違いですね。会計検査院の答弁は間違っておるのです。基金法十三条の「一箇月半分」は、やられていないはずです。会計検査は一体やっておるのですか。
  49. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お答えいたします。  支払基金の委託金が〇・五ヵ月分になっておるというのは、いま先生御指摘のとおりでございまして、これは二十四年のときに一・五ヵ月分というふうになっておりましたが、支払基金の理事会におきまして  理事会は、先生御承知のとおり、医療担当者側あるいは保険者側、それぞれ代表が出ておりまして、その理事会の申し合わせによりまして、〇・五ヵ月分でよろしいという形になって、運営をされておるわけでございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 国会がきめた法律を理事会がかってに変更できるんですか。
  51. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 これはいきさつがございまして、法律的には一・五ヵ月分ということになっておりますが、支払基金の資金状況その他を考えまして、中身につきまして基金の理事会において従来これを変えてきておるわけでございます。それで、〇・五ヵ月分になりましたのは、三十六年の一月からでございまして、その前に、二十五年には、一カ月分に相当する金額でよろしい。二十四年に一・五カ月分というふうになったわけでございますが、そもそも支払基金のこの委託金の取り扱いをどうするかということにつきましては、基金の理事会のほうでそれぞれの代表者の申し合わせによってこれを変えていこうというふうな慣例になっておりまして、その取り扱いを従来ともやっておるわけでございます。
  52. 滝井義高

    滝井委員 聞いているのは、法律を理事会で変えられるのかどうかということです。過去の経過を聞いているわけじゃないんです。どうですか。それならば、大臣、法律を変えなければいかぬ。それが一つ。  したがって、そういう形になっておるので、どういうことが起こり始めたかというと、七百八億の累積赤字が出たので、支払い遅延が起こり始めておるでしょう。私は調べてみた。調べてみましたら、各病院の給料の支払い日は、月の二十五日に払っておる。ところが、基金から払い込まれる金はどうなっておるかというと、二十八日とか二十九日に来るんです。そうすると、医療機関はどうしているかというと、医療機関はその三日か四日の分を銀行から借りてやっている。そうすると、健康保険は支払いの期日を明示していないでしょう。国民健康保険は、翌々月までに支払わなければならぬということを書いておるが、これは明示していない。なぜ明示していないかというと、一・五ヵ月分をきちっと基金に委託するという制度があるので、まあ翌々月までに払わなければならぬという規定は要らぬだろうという形なんです。立法者は当時そういう意思だったんです。だから、これは法律を変えねばならぬ。大臣、どうですか、今度の国会で法律を変えますか。
  53. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 法律問題でございますが、支払基金の委託金に関する規定は、御承知のように、一・五ヵ月分の委託を受けられるという規定でございまして、一・五ヵ月分の委託が受けられるという規定でございますけれども、その範囲内で、これは、先ほど申し上げましたように、理事会で申し合わせによってやるということになっておりますので、一・五カ月分の委託を受けないということで直ちに基金法違反になるというふうには私どもは解釈いたしておらないわけでございます。
  54. 滝井義高

    滝井委員 法律を読んでごらんなさい。「一箇月半分に相当する金額の委託を受けること。」と書いてあるんです。一ヵ月半分以内のものを受けなさいとは書いてないですよ。「受けること」なんです。「受けること」ということは、それだけ受けなければならぬということですよ。だから、そのために支払い遅延が起こっておるでしょう。十人、二十人使っておる医療機関は、給料を二十五日に払うときには金がきていないので、銀行から金を借りて払っているのですよ。金を借りて払っているのです。だから、これがまず第一に欠陥です。  もう一つ、私は質問の過程で考えついた。もう一つの欠陥が出てきた。それは、いま職員が四千人、そのほかに二千人というのがある。六千人でしょう。そうすると、一体この二千人というのは何をしているのですか。もう少し詳しく言ってみてください。四千人は職員、プラス二千人の二千人は一体何をしているのですか。
  55. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この基金の仕事は、御承知のように、請求をいたしてまいりますところの診療報酬の明細書の審査、点検等いたしますと同時に、非常にふくそうをいたしておりまするところの社会保険関係の支払いをここで一元的に行なっておるわけでございます。
  56. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、その人たちは診療報酬請求明細書の審査を、結論的にいうとやっているわけですね。おかしいじゃないですか。どういう法律的な根拠でその人はやることができるのですか。
  57. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 基金の審査といいますのは、御承知のように審査委員会で審査をやるわけでございまして、それには各学会のお医者さんの方々が入って審査をやっておるわけでございます。それから、それ以外に、診療機関からの請求書に誤りがないかどうか、窓口でもって、誤りのある場合にはこれを返戻することもございます。つまり事務点検をやると同時に、レセプトの請求が正しいものであるかどうかということを審査委員会にかけて審査をいたしておるわけでございます。
  58. 滝井義高

    滝井委員 どういう法律上の根拠で——これは秘密書類ですよ、診療報酬請求明細書というのは、秘密書類です。私がかつて東京の基金に行って、診療報酬請求の状態を見せてもらいたいということを言ったのです。そうしたら、当時社会労働委員長はいまの副議長の園田直君だったのです。基金は拒否しておるのですよ。これは全部秘密ですから見ぜられませんと言って、点検をしている状態を見せなかったのです。どういう法律的根拠でやるのですか。法律的根拠は一体基金法の何条のどこでそれができるのですか。
  59. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 支払い基金法の第三章の第十三条に「業務」として、第三号に「診療担当者の提出する診療報酬請求書を審査すること。」これはレセプトでございまして、いわゆるカルテではございません。レセプトを審査するというのが十三条の「業務」の中に入っておるのです。
  60. 滝井義高

    滝井委員 それは、この審査をするというのは十四条の審査委員がやるのですよ。審査委員以外の者がやるのじゃないですよ。十四条を見てごらんなさい。十四条の二項は「審査委員会委員は、診療担当者を代表する者、保険者を代表する者及び学識経験者のうちから、各々九人以下の同数を幹事長が委嘱する。」これでやるのですよ。ほかの者が審査できるはずがないのですよ。われわれがのこのこいって基金の審査をやれるのですか、やれやしないのですよ。やれないのです。大蔵大臣、いまのように二千人やみがあるじゃないですか。私はかつて文部省に、大学に無給の医局員が一万三千、多いときは二万人おる。これを一体どうするのだ、有給にしなければいかぬじゃないかという質問をしたら、当時のある大蔵省の主計官が、いや滝井先生、それはみんなやみです。私たちが認めているのは教授と助教授と講師と、それから三人か五人の副手、助手だけです。あとはみなやみです。こう言った。したがって、そういうやみには大蔵省は金はやる義務はございません。ぴたっと断わった。これはやみじゃないですか。これがやみじゃないという法律上の根拠はどこにあるのですか。どこにもないじゃないですか。どこから金を出しているのですか。この金はやみじゃないですか。審査をする権限はない。ない者にやらせる。そんなことがあるんですか。そういういわゆるやみの審査委員にやらして、三十五億の金を出すなんていうのはもってのほかです。だから、いまこの二点において疑問が出てきた。支払いのいわゆる一・五ヵ月の委託は、会計検査はやっておると言うたが、現場の局長はやっていないと言う。会計検査もぼやぼやしておる。ちっとも会計検査をやっておらないじゃないか、こういうところは。それから、そればかりじゃなくて、二千人のやみの人間がいる。率直に言ってやみだ。これは予算会計上やみの人間が審査をやっておる。法律上やる資格はない。しかも、その文書は秘密を守らなければならぬものですよ。いいですか。これは秘密保持の規定がどこかにある。十四条の五に「審査委員若しくは幹事又はこれらの職にあった者は、診療報酬請求書の審査に関して知得した医師若しくは歯科医師の業務上の秘密又は個人の秘密を漏らしてはならない。」という規定がある。そうすると、こういう人たちが秘密を漏らした場合には何も規定がない。何もしょうがない。だから、一体この二千人のやみの人間の金は、審査をやるからには給料を払っているはずだ。どこから出てきているのか明らかにしておいてもらいたい。これはひとつ大蔵大臣、明らかにしてください。
  61. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 先ほど滝井先生のおっしゃられました中に、大臣が読み上げられました九十八億の行政努力の中で、審査の分で金額のこれが入っておりましたが、これは支払い基金での審査とは全然関係がございませんので、ちょっと誤解しておられるのではないかと思いますが、それとは全然無関係でございます。先ほど大臣が支払い基金で大体二十三億を審査でもってやるというのは、これは全然それとは別でございます。それから二千人の審査に当たっておる者があるというふうに先ほど私は御答弁いたしましたが、これは、いわゆる事務をやりますのが四千人で、これは事務点検、事務的な審査でございまして、それ以外に二千人といいますのは、これは直接のレセプトの審査をやる審査委員会のメンバー並びに補助者としてやる分がそれに入っておるわけでございまして、これは、基金法に基づきましてレセプトの審査をやる。それによって大体公称二十三億、それ以外に返戻されたりなんかする分も相当ありますので、基金としましては、審査は相当厳正にやっておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  62. 滝井義高

    滝井委員 厳正にやっていないということを言っているんじゃないですよ。予算上の問題を聞いているんですよ。二千人は、一体いかなる法律上の根拠に基づいて審査をやることができるのか。法律上の根拠はないですよ。法律的根拠のないものに金を出すならば、それはやみの金になるじゃないですか、こう言っている。その金は一体どこから出るのか、大蔵省にそれを聞きたい、こういうことです。これはもはや大蔵大臣の責任ですよ、ないんですから。あるならば法律の一体どこにあるかを教えてもらいたいということです。ない。
  63. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 二千人の中身につきましての先生の御質問でございますが、これは、先ほど読み上げられましたように、基金法によります十四条の審査委員会委員各側それぞれ九人ずつということになっておりまして、それに補助者があるわけでございまして、これは全部お医者さんでございます。事務の人はおらないわけでございまして、お医者さんが審査委員会のメンバーとして入って、それで審査をやっておる、こういうことでございます。
  64. 滝井義高

    滝井委員 だから、なお私が問題にするわけですよ。医者ですよ。その医者がやるのに一体どんな資格でやりますかというのです。補助者ならば補助者ということがここになければいかぬ。二千人ですよ。三人か五人なら、これは補助者だと言えるですよ。ところが、全国の四十六都道府県で、これはもう月末になったら血みどろになってやるのだから。私も審査委員をしたことがある。とにかく四千枚から五千枚やるんですから、それならばそういうやみの二千人をつくらずに、医者ならば法律にきちっと根拠を置いて、予算をつけなければいかぬのです。つけなければいかぬでしょう。それを医者がやっておりますといったって、私が医者だからというて許すわけにいかぬですよ。法律は曲げるわけにいかぬ。だから、その予算は一体どこから出ておるのですか、はっきりしてもらわなければ——委員長、ひとつはっきりしてもらわなければだめです。
  65. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 支払い基金は、御承知のように各県にございまして、それぞれ各県大体二十七、八人の審査委員がおるわけでございます。それ以外に嘱託という名目でお医者さんが大体ほぼ同数程度いらっしゃるわけでございまして、この経費につきましては、先ほど大臣も申し上げました一件当たり十四円二十銭の範囲内で、つまり四十二億の基金の予算の中でまかなわれておるわけでございます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 現実はそのとおりですよ。だから、その法律的根拠を教えてくださいと、こう言っているのです。二千人もの人が、これは医者で・いま言ったように各都道府県に二十八人ぐらいの審査委員がおるというのは、これは法律上九人ずつだから、三、九、二十七おるわけですよ。九人満満すれば、三者になるのですから、保険者代表と担当者代表と学識経験者ですから、二十七人おるわけです。そのほかに、それと同じか、あるいはそれ以上の者がおるわけでしょう。たぶん東京には、私いつか行ったときにはわんさおったから、百人以上おりますよ。そうすると、一体そういう人たちはいかなる法律上の根拠でやるのか、そういう人たちは秘密保持の責任があるのかないのか、さっぱりわからぬじゃないですか、事務でございますと言ったって。そういう予算は一体どこから出ておるのかということです。こういうことを会計検査は何もやらないのですか。
  67. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 基金の性格は、会計検査院法のいわゆる必要検査対象ではございませんで、一部出資だものですから、選択的検査対象になっておりまして、その関係で常時計算証明を出させるというような検査はやっておりません。しかしながら、相当巨額の金を国が払っておりますので、本省検査の際、基金を呼んで、そして書類を持ってこさせて検査をしておる、こういう状況でございまして、おっしゃるような、いま問題になっております審査委員の問題のところまでは、会計検査院としてはそこまで行き届いておりませんで、今後注意いたしたいと思います。
  68. 滝井義高

    滝井委員 会計検査も気づかなかったということでしょう。これは大蔵大臣、どうしますか。大蔵大臣としてはどうしますか。法律上の根拠がないのですよ。しかも診療報酬請求明細書を審査をしておるんですよ。金も払っておる。いま言ったように一件当たり十四円何がしの、保険者の出すいわば医療費の一部をそういうものに払っておるわけです。だから、この制度があるならばあるように、理論的な基礎づけをしてもらわなければ困るのです。やみでは困るのです。だから、これが明白になるまでは、ぼくちょっと質問を——すわっております。
  69. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 厚生省のほうからお答え申し上げます。
  70. 滝井義高

    滝井委員 厚生省で答えるといったって、厚生省は法律上の根拠がなくて、どうにもならぬで困っておるのですよ。ないのです。(「要らないよ」と呼ぶ者あり)要らないことはないです。あるんです。
  71. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 法律的な根拠とおっしゃられましたが、これは、先ほど御指摘のように、審査委員会の権限としてやっておるわけでございます。審査委員会の権限としてやっておるわけで、審査委員会がレセプトの審査をやるということは、明らかに法律に基づいた審査でございます。ただ審査委員の仕事を補助的にやるといいますか、現在千何百名の人が、審査委員以外にやはり審査委員の手足として、同じお医者さんの立場でもって——これは事務の人は全然おりません、医者がおるわけですすから。審査委員の補助者的な立場で、あるいは大学の先生、あるいは病院の院長先生方が出られて、それで審査をやっているわけでございます。法律的に権限のある審査委員長の指示のもとに仕事をやっておるわけでございますから、法律的な権限に基づいて審査をやっておるというふうに私どもは解釈いたしておるわけであります。
  72. 滝井義高

    滝井委員 医療機関においても、医師の指示のもとに看護婦は注射その他をやります。しかし、それはちゃんと資格がありますよ。看護婦は看護婦の資格があり、レントゲン技師はレントゲン技師の資格を持っている、衛生検査技師は衛生検査技師の資格ををきちっと持っておってやるわけです。それならば、こういう二千人の人たちも、審査委員会のその九、九、九の指導に仰ぐならば仰ぐような法律体系をつくらなければやみじゃないですか。秘密保持の問題なんかどうします。秘密を漏らした場合には。規定が何もないじゃないですか。予算だってはっきりしない。だから、私はいまのような答弁では納得できないです。ただ現実を説明しただけでは。私は現実が間違っておる、こう言っておるのです。そんなかってな保険行政をやって、そして今度レセプトの点検から三十五億を出すのだ、審査、監査を強化して三十五億を出すのだといったって、インチキな人がやったものは無効です。取り消されますよ。法律的にはインチキです。
  73. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 行政努力の中の三十五億とは、これは無関係であるということは先ほど私が御説明したとおりでございまして、基金のほうの審査によりまして二十億ないし三十億の金額が出ておるというのは、これは行政努力とは全然関係のない数字でございますから、この点はひとつお間違いないようにしていただきたいと思います。  なお、法律的な権限の問題等につきましては、確かに秘密の保持については十四条の五で、漏らしてはならないということになっておりますが、審査委員会自体が各九人のそれぞれの審査委員を委嘱しておりますと同時に、審査委員長の委嘱を受けて、同じように委嘱の辞令がその他の方にも出ておるわけでございますが、しかも同じ医業をやっておりますお医者さんが、審査委員長の委嘱のもとに基金の職員として審査事務に当たるということについては、これは私どもは、法律的には抵触しない、あくまでも審査委員会の審査として適法に成立するものだ、こういうふうに解釈いたしております。
  74. 滝井義高

    滝井委員 十四条の五の規定をごらんになると、審査委員となっておるのです。秘密保持は。そうすると、この人は審査委員ではないのです。しかし、やることは審査委員と全く同じことをやっておるのです。全部同じことをやっておるのです。全部全く同じことをやっておって、そうして、その人たちだけはやみだから、法律の根拠がないのだから、秘密を漏らしたってどうにもできないじゃないですか。そういうものに今度予算を出すということは不当だ、こう言うのです。不当支出ですよ。これは、会計検査院の見解はどうですか。こういうことは不当支出でしょう。だから、私はそれじゃ納得できないと言うのです。これでは進まぬですよ、この予算委員会が。まだ四つも五つも大事な問題があるのに、そもそもの初めから進まぬじゃないですか。
  75. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 これは、先ほど来保険局長から御説明を申し上げておりますように、政府としてはただいままで適法としてそのように運営してまいったわけでございますが、いろいろ滝井さんの御指摘のように問題があるようであります。今後この点は検討してみたいと思います。
  76. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 基金の業務につきましては、先生御承知のとおり、これは各保険者と基金の契約によって仕事が行なわれておるわけでございまして、その契約に基づきまして、基金の予算というのは一件十四円二十銭の支払いによって行なわれておるわけでございまして、直接法律的な問題でどうこうという形にはならないと思います。  それから、審査委員会の業務につきまして、委員長が最終的には責任を負うわけでございますが、その審査委員会の委嘱によりました非常勤の委員の方々が審査をやる、といっても最終的には審査委員会が責任を持つわけでございますので、その点につきまして、違反であるとかいうふうなことは、私どもは、絶対ない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  77. 滝井義高

    滝井委員 二千人というのは、全く同じことをやっておって、秘密保持の義務もないのですよ。そうしますと、大きな疑義があり、いままで疑義のあるものに金を出してきておるわけです。不当支出ですよ。大臣は、なかなか問題がありそうだから検討するとおっしゃっているけれども、これは検討するだけでは済まないですよ。現実にやつておるんだから。月末になったらまた行なわれるんですからね。月末請求書が出て、来月初め行なわれるんだから。それならば、当然これは法律を変えて、予算措置もして、秘密保持その他を適法なものにしなければならぬですよ。だから、それならそれで、間違っておりました、適法なものにやりますという言明をすれば、それは一つの方法ですよ。  それから、一・五の委託をすることについても、いやいや、理事会が決定したらいいと言うが、何でも理事会がやるなら、国会は要らぬですよ。法律も要らぬですよ。  そういうでたらめな答弁でここをのがれようとすることについて、ぼくは気に食わぬですよ。だから、この二点について、もし何だったら大蔵省とよく話し合ってください。これは、十二円何がしの予算が十四円二十銭になるについては、大蔵省は知らぬはずはない。大蔵省だってこの予算を見なければならぬはずですよ。全然大蔵省が見ないでパスするはずはないんですよ。だから、いまのような答弁では、まだ私質問の入り口で時間が来てしまっておるんですが、納得できないですよ。
  78. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま滝井さんが御指摘になっております点は、今日まで政府としては法律的にも適法であるということでやってまいったわけであります。そのことを保険局長からるる御説明申し上げたのでありますが、いま滝井さんからもいろいろ御究明がありましたように、問題があるようでございますから、これを検討してみたい、こういうことを私御答弁申し上げた次第でございます。  なお、委託の問題につきましては、支払いに遅延等の支障を来たさないようにというたてまえからこれは設けられておるのでありますが、この趣旨に沿いまして、昨年来相当の累積赤字がございましたけれども、大きな遅延が起こらないように、資金操作でもって対策を立ててやってまいったのでございます。
  79. 野原覺

    ○野原(覺)委員 委員長、関連……。
  80. 福田一

    福田委員長 野原君に関連質問を許します。
  81. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ただいままで滝井委員が支払い基金の問題についてるる質問をしてまいりました。その質問に対する厚生大臣の最終的な御答弁はこうなっております。政府としてはただいままで適法として処理してきましたが、滝井君の御意見もありますので検討してみたい、こういうことであります。ところが、厚生大臣がこの御答弁をされてから、事務当局側の答弁は、必ずしも厚生大臣の今後検討するということを認めておるようには私ども受け取ることができなかったのであります。したがって、これは私は厚生行政上の重大な問題であろうかと思う。検討すると厚生大臣が申されますけれども、今日までやってきたことがほんとうに違法であったということになったら、これは重大な政治責任であります。また、その厚生行政の違法を認めてきた大蔵大臣の責任も重大であります。先ほど、支払い基金について、これは法律の規定が明確にあるにかかわらず、その法律の規定を破って、理事会がかってに一・五を〇・五にしておるとか云々の質疑応答がございましたが、これもまた重大であります。  そこで、私どもは、ここで委員長に申し上げますが、このような状態では滝井君は質問を続けることができないのです。滝井君は、きょうは一般質問のトップに立ちまして、一時間半の予定で、かなりの材料を持ってそれをたださなければならぬのでございますけれども、かくのごとき状態では、支払い基金だけで、もうすでにその前に進むことができなくなっておる。したがって、私どもは、厚生当局並びに大蔵大臣を含めて、明確な統一見解があるまではこの審議を進めることはできません。以上申し上げておきます。
  82. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 滝井君のただいまの御質問に対しましては、厚生大臣がお答えいたしましたとおり、問題点について本予算審議中に検討の上御報告いたすことにいたします。
  83. 滝井義高

    滝井委員 どうも社会保険財政の入り口でこういうことになってしまって、私の大事な質問があとできなくなったのですが、あと一問だけ許していただけるそうですから、少し重要な賠償の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  これも少し問題があると思いますが、現在の日本の賠償の支払いの進捗状態というものはどういうようになっておるのか、まず簡単に進捗状態を御説明願いたいと思うのです。
  84. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  85. 中尾博之

    ○中尾政府委員 賠償及びこれを要求いたしませんために、これにかわりまして行ないました経済技術協力ということで、わが国といたしましては、ビルマ、フィリピン、インドネシア及びベトナムに対しましては賠償を払っております。それからラオス、カンボジアに対しましては、これにかわりまする無償の経済技術協力を供与する義務を負いまして、それを支払っております。両者の合計は三千六百六十八億円でございます。現在までのところといたしまして、これらの支払いはおおむね順調に行なわれておりまして、昨年十二月現在におきまして支払い済み額が二千百二十三億円でございます。したがいまして、未履行額は千五百四十五億円となっております。  なお、この支払い義務の完了いたしました分は、このうちビルマ賠償でございまして、これは四十年の四月十五日に完了いたしております。それからベトナム賠償が四十年の一月十一日に完了いたしております。それからラオスの経済技術協力が四十年の一月二十二日に完了でございます。
  86. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、賠償の支払いというのは、御存じのとおり原則は、平和条約の十四条では、ドイツの経験にかんがみて、役務賠償というのが原則になっておったわけです。ところが、日本と東南アジア諸国との関係で、この役務賠償の原則というのに生産物を加えたわけです。そこで、その生産物を賠償として供与するときに、その生産物というのは何をいうかというと、資本財ということになったわけです。したがって「賠償として供与される生産物は、資本財とする。」という一項が各賠償協定にはあるわけです。最近の賠償の傾向を見ると、この資本財原則が幾分くずれつつあるわけです。何かというと、消費財を持っていく傾向がある。そこで、一体三千六百六十八億の賠償の中で二千百二十三億はすでに終わった、千五百四十五億は未実行であるということでございますが、終わったものの中で一体消費財はどの程度ビルマなり、フィリピンなり、インドネシアなりベトナムで占めておるのかお示しを願いたいと思うのです。
  87. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 消費財は、割合はきわめて少ないのでありますが、詳細につきましては事務当局から御説明申し上げます。
  88. 西山昭

    ○西山政府委員 お答えいたします。  現在まで履行いたしました賠償金額の約一〇%未満でございます。国別に申し上げますと、ビルマが六・六%、それからインドネシアが六一%、それからフィリピンが一〇%でございます。
  89. 滝井義高

    滝井委員 これは、化産物の中で何を資本財といい、何を消費財というかという区分のしかたが非常に微妙なところがあるわけです。家庭で使えば、資本財でも消費財というかもしれないし、消費財でも工場、事業場で使うと資本財というかもしれないし、あれですが、実際は、ビルマあたりはこれは非常に多いはずですよ。ぼくらの調べたところでは二割四分ぐらいあるようです。いまの御説明では六・六%、こういうことですが、そこで、時間がないので、少しはしょりまして、一体韓国に無償三億ドル、有償二億ドル日本は請求権方式で供与することになったわけですが、この中に消費財ということばはないけれども、「その他の生産物」ということばがあるわけです。請求権協定の中に。その他の生産物というのは、これは消費財を意味しておるのですか。
  90. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 消費財は無償供与のうち約半分程度予定することになっております。「その他」と書いてあったかと思いますが、それは消費財が大部分であると思います。
  91. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この三億ドルの中で一億五千万ドル程度の消費財、その他の生産物一億五千万ドルというのは消費財だという御答弁がございました。そうすると、一体この消費財を韓国に渡す場合に、合同委員会を日韓双方でつくるのですね、この合同委員会日本委員の任命は行なわれましたか。
  92. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ完了しておりません。
  93. 滝井義高

    滝井委員 どうしてですか。すでに御存じのとおり、昨年暮れの国会で十八億円の一、二、三月分の無償供与分はもう予算は通りました。それから今年度においても予算の要求があるわけです。そうすると、この委員会というのは、韓国から出てくるところの実施計画というのを、ここで見るわけです。当然つくっておらなければならぬし、しかも代表の代理人も数名置かなければならぬでしょう。
  94. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 向こうの事務の進捗状況が完了にまだまだ至っておらない状況でありますので、それに間に合うようには後刻日本側の委員をきめたいと考えております。
  95. 滝井義高

    滝井委員 この合同委員会委員になる人というのは、一体どういう資格、どういう基準でもって選考することになるのですか。
  96. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事務当局からお答えいたします。
  97. 西山昭

    ○西山政府委員 合同委員会をはじめといたしまして、実施に関します手続の細目の取りきめを行なう必要がございまして、目下韓国側とその点について折衝中でございます。合同委員会代表及び代表代理につきましては、先方がどのようなスーテータスの人を任命するかによりまして、私どもも日本側の資格を考える必要がございまして、その辺はあわせて検討したい、こう思っております。
  98. 滝井義高

    滝井委員 また日本の外交も自主性がない。韓国の状態を見てやるなんという、そんな不見識なことではしょうがないと思うのですよ。大臣一体どんな基準の人を出すのです。何かこれはものさしがなければ、私はいま人の名前を言いなさいと言っておるわけではないのです。やはりこういう大事なことを、その他の生産物なんという。いわゆる消費財を向こうにやるということになれば、これは相当しっかりした人をこの合同委員会委員に任命しておかなければいかぬわけです。あるいはその代理をつとめる人を任命しておかなければいかぬ。何かものさしがなければ、韓国が任命してきたら、その人を見て今度はこっちもやるのだというのでは、日本外交の自主性はないですよ。
  99. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 韓国がきまってから考えるというのではお説のとおりおそいのでありますから、その点は両方調子を合わせて、まあこの程度の人なら一番よかろうというところに相談を落ちつけたいと思っております。
  100. 滝井義高

    滝井委員 大体どういう人を、ものさしぐらいは——ものさしがきまっても、そのものさしにきちっと当てはまる人もあるし、まあ八分ぐらいのところで満足しようかということもあるし、いろいろあると思うのです。この大事な委員ですからね。御存じのとおり、大臣、いま韓国に行ってごらんなさい、日本の業者がひしめき立っているでしょう。まず三菱重工業とトヨタが自動車を争う。あるいは船舶は三菱と石川島播磨造船所が争うというようにひしめき立っておる。こういうひしめき立っておるときに、やはり日本では委員をきめて、韓国から出てくる計画をきちんと審査する資格をつくらなければ、まさかこういうところにまでやみの審査員をつくるわけにはいかぬと思うのです。だから、ものさしぐらいはここで示してもらわなければ、調印だけはあわててしたけれども、まだその人間も何もしておらぬ、韓国の出方を見てからだというのではなくて、こういう程度の基準の人は出したいというぐらいのことはわかるはずでしょう。
  101. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 無我夢中になっておるというのではない、大体こっちのほうでは腹はきまっておりますから、向こうのほうと相談して調子を合わせるというほうが、何といっても国際慣例でございますから、こっちではこういう者を選ぶ、おまえのほうはこれにならえというような出方は、なるべくしたくございませんので、その点は、何といっても各省の担当の局長を中心にして考えざるを得ない。それが一番よくわかっておるのですから。そんなところをぼんやり考えておりますが、向こうがなにすればすぐきまりますから……。
  102. 滝井義高

    滝井委員 各省の局長クラスを任命をしたい、そういうことであればわかるのです。それを早く言ってもらえばいいのです。  そうしますと、そういうように、合同委員会もやがて局長クラスの者は任命をしたいということですが、問題は、この賠償に、賠償を担保にして金を借りる方法があるようです。これは一体どことどこにいま賠償を担保にして金を貸しておりますか。
  103. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 インドネシアはすでに御承知だと思いますが、そのほかどこどこがございますか、事務当局から申し上げます。
  104. 西山昭

    ○西山政府委員 賠償を担保にして貸し付けを行なっておりますのはインドネシアとフィリピンでございます。
  105. 滝井義高

    滝井委員 賠償を担保にして命を貸す法律上の根拠はどこにあるのですか。
  106. 西山昭

    ○西山政府委員 賠償の限度内におきまして貸し付けを行ないまして、それに基づきまして、貸し付けが返還されません場合は賠償を落とす、こういうことになっておりまして、法律上適法だと考えております。
  107. 滝井義高

    滝井委員 法律上適法と言うが、それは条約か協定にそういうことが書いてありますか。法律上の根拠を示してください。フィリピンとインドネシアの協定、条約に、一体どこに賠償を担保にして金を貸しますという条項がありますか。
  108. 西山昭

    ○西山政府委員 賠償協定上にはそういう明文はございません。
  109. 滝井義高

    滝井委員 これも問題です。こういうように協定もないものに金を貸すとすれば。憲法との関係ですね。条約は、憲法七十三条の三で条約を締結するときは国会の承認を必要とするでしょう。そうしますと、たとえばフィリピンで言えば、三十一年七月に協定が発効して、五億五千万ドルの金、すなわち千九百八十億円の金を二十年間で差し上げます。こういうことになっているわけです。そして、それは一年に幾らということを予算に組んでいっているわけです。ところが、それを前に、たとえば予算に百億円ずつ出すなら出す。ところが、それを二百億円にしてくれということになれば、賠償協定違反じゃないですか、二百億円出すのですから。そうして、翌年度の分からそれを払うのだ、こういう形になれば、何のために国会で賠償協定の承認を得たのです。国会はそういうことを許しておりませんよ。担保にして金を貸せば、それだけ賠償を先払いしたと同じでしょう。日本経済状態を考えて、われわれは十年とか二十年とかの協定を結んでいるわけです。しかも一年に幾らということを結んでいるわけでしょう。それをかってにやれば、これは条約の内容を変更したことになる。条約の内容を変更したならば、当然国会の承認を得なければならない。これは承認を得ていない。
  110. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 賠償を担保にして金を借りてはならぬ、貸してはならぬという制約は別にないのでございます。賠償は賠償、借金は借金、借金の問題につきましては、これは金の出し入れの問題でございますから、大蔵難局からお答え願ったほうが適当だと思いますから……。
  111. 滝井義高

    滝井委員 借金は借金、賠償は賠償、賠償を担保にして金を借りてもちっともかまわぬと言うけれども、御存じのとおり、われわれが協定を結び条約を結ぶというのは、お互いに二国間の権利義務の関係を設定するわけですよ。その権利義務の設定の内容というものを大きく変更しておるわけですから、当然国会の承認を得なければならぬですよ、賠償借款をやらせようとすれば。それをかってに行政府がフィリピンとか、、あるいはインドネシアにどんどん命を貸してやるということは、これは許されぬと思うのですよ。一体いまフィリピンとインドネシアにどの程度の賠償借款をやっておりますか。
  112. 西山昭

    ○西山政府委員 現在担保で貸し付けておりまするものは、フィリピンにつきましては四千七百七十万ドル、インドネシアにつきましては五千六万万ドルでございます。
  113. 滝井義高

    滝井委員 いいですか、フィリピンは五億五千万ドルを二十年で払うのですからね。だから、二千四、五百万ドルしか一年に賠償は払わないわけです。ところが、それを倍の四千七百万ドル貸しているでしょう。それからインドネシアのごときは、もう日本との貿易関係を見てくださいよ、日本が品物を送ったって、なかなかスカルノさんのところは金を払ってくれない。そのくれないところに、今度は賠償を担保に五千六百万ドルの金を先貸ししておるわけですから、そんなでたらめなことはないですよ。一体だれの許しを受けて、どういう法律上の根拠でこれをやっておるのです。何も根拠はないじゃないですか。これももういまの答弁では納得できないです。
  114. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、賠償は賠償、借金は借金、これは別だと思います。ただ、そこに経済的な関連性を持たして、それでまあだいじょうぶだなというので輸銀を中心にして金を貸しておる、こういう状況であります。  それから最近インドネシアの問題に関しましては、御承知のとおり九月三十日の事件が起こりまして、まだ政治的混乱が続いておる、こういう状況でありまして、遺憾ながら回収上遅滞を来たしておる。これは各国ともこういう問題に際会いたしまして、いまこの問題をいろいろ各国とも苦慮しておるという状況でありますが、いずれにしましても、政治の情勢が鎮静した上で、どういう手を打つかということが問題になろうかと存じます。それまでは、新しい借款の問題は日本もストップしておる状況であります。
  115. 滝井義高

    滝井委員 私が言うのは、一年に二千万ドルそこそこフィリピンに払うのに対して、四千七百万ドル貸す、インドネシアも二億二千三百八万ドルを十二年で払うことになっておるわけですが、それをやはり二倍の五千六百万ドル程度も貸しておる。一体こういうことが行政だけで、国会の承認も得ずにかってにできるのかということですよ。しかもそれは、いま大臣の言うように、政情の不安が起こってなかなかすぐには回収ができないのだという金ですよ。大蔵大臣、こういうことが公然と行なわれておる。しかも三十四年の十月には、賠償引き当て借款じゃなくて、賠償先渡し借款をやっておるでしょう。その事実はないですか。
  116. 西山昭

    ○西山政府委員 先渡しに借款を提供したことはないと記憶しておりますが、さらに詳細調べて御答弁いたします。   〔発言する者あり〕
  117. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  118. 滝井義高

    滝井委員 大蔵省はわかっておるはずですが、インドネシアにやったことがあるでしょう。
  119. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 先渡しという意味がよくわかりませんが、先渡しで借款をするということはあり得ないし、また、そんなことをした事実はございません。
  120. 滝井義高

    滝井委員 三十四年の十月に千七百万ドルインドネシアに渡しておるでしょう。
  121. 鈴木秀雄

    鈴木(秀)政府委員 内容がよくわかりませんものですから。そういう事実は、私の知っている限りではございませんが、千七百万ドルというのは、具体的にどういうケースであったか、お教え願えましたらお答えしたいと思います。
  122. 滝井義高

    滝井委員 内容は私もよくわからぬので聞いているのです。あるはずですよ。これは、外務省はわかるでしょう。
  123. 西山昭

    ○西山政府委員 ただいま承知いたしておりませんので、さっそく調べて御連絡申し上げます。
  124. 滝井義高

    滝井委員 とにかくいまのはあとでひとつ……。千七百万ドルです。三十四年の十月です。  法律上の根拠のない賠償引き当て借款を出しておる。これは、一体だれが外務大臣のときにやったのですか。しかも、それは交換公文その他があるはずですよ。そういう交換公文等があれば、その交換公文を当然国会に出すべきですよ、やっておるとすれば。そうでしょう。だから法律上の根拠をもう少しはっきりしないと、これもまた進まぬですよ。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本といたしましては、輸銀あるいは経済協力基金等を通じて数国に貸し金をいたしておりますが、それは、一々国会の御承認を得ないで、当然政府の権限として、輸銀の問題はこれは許可をするだけ、それから基金の問題も、これも政府が承認を与えるという形式だと思います。そういうことでやっておりまして、一々貸し金をするのに国会の承認を経ないでやっておるのでございまして、したがって、賠償の相手国に対しましても、賠償とは関係ない、ただ払えない場合には云々と、この賠償担保という問題がそこにひっかかりがございますが、これは、本体はやはり国際間の貸借の問題である、こう考えております。
  126. 滝井義高

    滝井委員 私は、輸出入銀行なり経済協力基金から金を出すことについて悪いと言っておるわけではないのです。それは当然経済協力で出す。しかし、出すからには、無償供与でない限りにおいては、それ相当の担保がなければいかぬわけですよ、輸銀にしたって、経済協力基金にしたって。しかし、その問題でなくて、賠償を担保にして、明確にこれは賠償を担保にいたしますという約束のもとに出す場合においては、これは国会の承認を必要とするのではないか、条約の内容を変更するものだ、前渡しするわけですから。そこに問題がある、こう言っておるのです。そこに問題がある。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、賠償を担保にして、その借金が予定どおり払えない場合には、賠償の期限がきても払わないぞということになっておりますので、国家が新しい負担をこうむるわけでもない、賠償計画というものに変更を与えるものでもない。そういうことで、賠償は賠償、貸し金は貸し金と、こういうふうに区別してやって一向差しつかえないものと私は考えております。
  128. 滝井義高

    滝井委員 それは、財政計画に関係が出てくるわけです。前もって金をやるわけですから。ことし百億しかやれないというのに、二百億金をやるわけですから、財政計画に関係が出てくるわけです。だから、いまのように、インドネシアみたいに政情不安になってくると、返ってくる金が返ってこないことになるわけですよ。これでも財政計画に変更が出てくるじゃないですか。だから、この賠償引き当ての借款というのをやったならば、何かこれは、外務大臣が言うように、賠償の範囲内でやったのだから国に損がないというならば、何かそこに証書がなければいかぬです。すなわち両国間の交換公文か何かなければいかぬわけでしょう。その交換公文には、賠償の範囲でやりますとかいうことを書いておかなければできないわけでしょう、証文がなければ。そうでしょう。そこに交換公文というのができれば、それは当然国会にやはり報告なり何なりしなければいかぬでしょう。そういうことも何にもやっていないわけでしょう。
  129. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あくまでこれは別のものでございまして、ただ担保になっておる関係上、もし支払いができない場合には、政府がその通告を受けて賠償を払わない、賠償から落とす、こういうことにしております。
  130. 滝井義高

    滝井委員 私が実はこの問題を詰めるのは、御存じのとおり、韓国においてはすでに十ヵ年間で払うというのを、韓国の六カ年計画が、これは七一年に終わらなければならぬわけです。そこで、十年を六年に縮めてくれという話があるわけですよ。そうすると、もし賠償の借款ができるならば、これは、そういうことでみないってしまうわけです。やることになるわけです。最初に指摘をしたように、わんさと業者がひしめきあってソウルに行っておる。そうすると、われもわれもとその契約を結んで帰ってきて、そうして、それが今度は圧力になって、いわゆる日経連を中心とする韓国ロビーが圧力のあれになって、これを縮めるということになってしまうんですよ。その先例がすでにインドネシアとフィリピンに出てきているわけでしょう。そういうことになれば、あれだけがんがん言って国会でわれわれが反対をしたものが、ますますくずされてしまうことになるわけです。だから、これは日本経済の現状その他を見て、賠償というものは十年なり二十年ときちっと各国別にきめておるわけです。その計画を、もしいまのような大臣答弁ならば、フィリピンが、この五億五千万ドルを担保にいたしますから、全部三年でひとつ貸してくれと言ったら、貸すことになるんですか。
  131. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 有償、無償の計画につきましては、これは軽々にこれを変えることはもちろんできません。でありますから、予算の範囲内において計画的に支払い、それからまた有償の場合には、主としてこの協力基金というものを使うということにもしなりますれば、これは協力基金の財政の基本計画がやはり予算に関係のある問題でございますから、これはそう簡単には縮めることはできないし、また協定の内容も、これは動かすことができないようになっておると考えております。そういうわけでございますから、インドネシアに例があるとか、フィリピンに例があると申しましても、もしもこれが輸銀を中心とする純然たる貸し金という形である場合はよほど緩和されるかと思いますけれども、しからざる限りにおいては困難であろう、こう考えております。
  132. 滝井義高

    滝井委員 韓国との請求権及び経済協力の協定には、第一条の(a)に「各年の供与の限度額は、両締約国政府の合意により増額されることができる。」という条文がきちっとあるわけです。あるいは、それから前年度分が余っておるときは、次年度分に繰り越して渡すことができる、こういうのがあるわけです。こういう弾力条項があれば、これは増額の限度をどのくらいにするか、しかし、それはあくまでも各年度の供与の範囲内で幾ぶん弾力を持つということであって、一挙に十年分を六年分に繰り上げてしまうなんという解釈には、これはならぬと思うのです。そうでしょう。だから、日韓との間にはこういう条項があるから、ぼくらは幾ぶん——これはわれわれが負けて国会を通っておるわけですから、幾ぶんはあると思う。しかし、韓国の言うように、十年を六年にするということはあり得ないと思うんですよ。これは確認できますね。
  133. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは不可能でございます。
  134. 滝井義高

    滝井委員 それだから、これは確認をしてもらったんです。  そうしますと、今度は、韓国にはと言われるが、フィリピンやインドネシアには、こういうことはないんですよ。だから、ていよく一枚の証文をおそらく入れておるだろうと思うが、入れてその賠償を先取りするということは、結局この原則をくずしたことになってしまう。いま言ったように、韓国ではそれはできません。韓国はその条項があるんですよ。ところが、フィリピンにしても、インドネシアにしても、すでに二年分とか三年分をやってしまっておるんですから——やってしまっておるんですよ。だから、こういうことがもし平気でできるならば、何のためにわれわれが国会で賠償協定を審議し、そうして、それをわざわざ十年とか二十年の期限を切って一年幾らということを制限しなければならぬのですか。そういうことができるならば、そんなものは何もする必要はないわけです。明らかに条約というのは、お互いの権利義務なんだから、そういう二年分も三年分もの借款が先取り、先借りすることができるというならば、これは、条約内容の変更です。条約の一部修正なんですよ。国会では、条約は絶対修正ができませんといって所信を貫いた政府が、国会で条約が通ったら、とたんに、その所信を曲げてかってに修正しておる。そういうことは許されないんですよ。それは許されない。いまの韓国のように、そんな十年を六年にすることは断じてできないというならば、ビルマやフィリピンは、ビルマ、フィリピンの賠償協定の中にはそういう条項がないんですから、できるはずがない。
  135. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、ビルマでもフィリピンでも、あるいはインドネシアでも、賠償を繰り上げるということは厳格に禁止されておるのです。ですから、繰り上げておるのではない。ただ、それを担保にして金を借りる、その貸し先がそれでよろしいということになれば、それは借りられるのですから、別にビルマ、フィリピン、インドネシア等においては決して違法なことをやっておるわけではない。
  136. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いまの質問に関連して……。
  137. 福田一

    福田委員長 質問者、いいですか。
  138. 滝井義高

    滝井委員 どうぞ。
  139. 福田一

    福田委員長 野原君の関連質疑を許します。
  140. 野原覺

    ○野原(覺)委員 賠償担保で国が借款を与える場合に、国会の承認を得ないではたして可能なのか、実はこの問題を中心に滝井君がお尋ねをいたしております。とれに対する外務大臣答弁は、結論としては、それは可能だという答弁であります。ところが、ただいま滝井君が日韓の経済協力協定を持ち出して、二億ドルの有償供与についてはどうだ、こう聞きましたら、それは不可能だという答弁であります。韓国へは、十年間で二億ドルの金を貸すということになっておる。それを韓国のほうでは、経済計画六カ年だから六カ年に訂正をしてもらいたい、こう日本政府に要求があった場合には、たとえ総額が一億ドルでございましょうとも、これは、やはり日韓の経済協力協定の十年が六年に短縮されることでございまするから、国会にかけなければならない。このことは外務大臣も承認をされたのであります。ところが、賠償担保の場合、フィリピンやあるいはインドネシアの場合、なるほどインドネシアにこれだけの総額の賠償金がまだ残っておる。ところが、賠償を担保にして先措りをしたい。インドネシアの賠償というものは、国の財政計画によって国会がこの条約を審議したときに、はっきりその期間というものが十年間ときまっておるんだ、その十年間という、十年間以内にその賠償金を支払うんだ、こうなっておるものを、先借りで三年間でインドネシアにその金を渡してしまえば、これは期間の変更であります。これは、十年間という賠償条約協定の期間の変更なんだ。これは日韓の場合と何ら異なるところはないと思う。しかも、われわれがこの賠償の問題を国会で審議したときには、十年間でこれだけの金額を払う、その一年間はこれだけなんですということで、私どもあの条約に対する意思を決定したのであります。ところが、たとえ担保に取ったといえども、それをその十年よりも短い期限内で向こうに金をやってしまうということになれば、これは条約の期間の修正じゃございませんか。十年という承認を国会では取りつけておきながら、行政担当の外務大臣が、政府が国会を無視してかってにこの期限の修正はできないと私は思う。幾ら担保を取っても、これは事実上は金をやってしまうことだから、期限の修正なんだ。その点を滝井君は聞いておるんだ。これは、やはり賠償担保といえども国会の承認を求むべきだ。再度外務大臣の御答弁を承りたい。答弁いかんでは、私どもはこれは重大な問題として取り上げますよ。この点は、再度御答弁を要求いたします。
  141. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 有償無償とこうあるので、多少こんがらがってわかりにくいところが出てまいりますが、フィリピン等の場合は、韓国の場合に引き直すと無償供与の場合と同じ、それが十年間に支払うということになっております。多少の弾力性を持つことはちゃんと書いてある。書いてあるけれども、著しい変更をするということは、これはできない。そこで、これを繰り上げて使う方法はないか、こういうことになるのでありますが、その場合に、方法がおそらく二つあると思う。一つは、国の予算上の金に根拠を持つところの海外協力基金、それを使って、これを賠償担保と同じように、無償供与、どうせもらうんだから、それを担保にして協力基金のほうから借りたい、こういう場合があるだろうと思う。その場合は、国の財政力に影響がございますので、おそらくこれは不可能であろうと思う。それから輸銀の金を中心にして民間資金を糾合して借りる、こういう場合でございますが、こういう場合は、それは成り立ち得ると思います。思いますけれども、当初からそういったような必要がはたして実際に出てくるかどうか、これは実際問題としてなかなかあり得ないことではないか、可能性が非常に少ない、私はこうまあ考える。  それから、いままでやっておるフィリピン等の賠償担保の貸し金でございますが、これは、経済協力基金でなしに、普通の輸銀及び民間資金二割、それを入れたものでありまして、これは、その当時の輸銀の資金繰りの関係で、余裕があれば輸銀が自発的にこれを貸すことができるのですから、ただ政府が若干の許可を与えるかどうかという問題で、行政措置としてはきわめて軽い。これはいままで用いられた方法でございまして、これは差しつかえない、そういう状況であります。でありますから、韓国の有償無償の問題は、第一年度からきわめて可能性の少ない、つまり輸銀中心の担保全融ということが理論上は行なわれる余地はあると思うが、可能性はまことに少ないのじゃないかと私は考える。
  142. 野原覺

    ○野原(覺)委員 外務大臣、有償無償と若干の混乱をしたことは、これは私訂正いたしますが、私は、やはりインドネシア賠償とか、フィリピン賠償という場合には、これは十年間という期限があるわけです。賠償だから無償供与の性質を持つけれども、十年という期限があるわけだ。その期限があるにかかわらず、これを担保に入れて一年か二年で先借りしてしまう、こういうことは、国会で条約を審議さしたことと中身が大いに違うわけですから、当然これは国会に何らかの形で承認を取りつけなければならぬと思う。私どもはそれを聞いておる。いかがですか。
  143. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、外務大臣が答えていいかどうかわかりませんけれども、とにかく金繰りの問題でございますので、大蔵大臣が適当かと思いますが、私の考え方も一応申し上げておきます。  賠償は、これは国の予算の金である、それからこれを担保にしてだれが貸すかというと、輸銀を中心とした日本の民間の銀行のグループでございます。これは、資金の余裕もあって、貸し金として引き合うなと思えば貸すだろうし、貸してもいいなと思っても、手元に資金の余裕がなければ貸さないだろうと思うし、そういうことでこれは貸し借りが成立したのでございまして、これは、国の財政とは関係のない問題であって、したがって、国会の御承認を得る必要はない、こういうことできておるのです。
  144. 野原覺

    ○野原(覺)委員 参考までに大蔵大臣の見解も承っておきたい。私どもは、これは重大ですから、なお速記を調べて問題点を整理したいと思うので、大蔵大臣は外務大臣と同じ見解なのか、これは参考までに承っておきたい。
  145. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまお話しの問題は、外務大臣がお答えしたとおりと思うのです。つまり、申し上げておりますように、貸し金と賠償の支払いは別のものである。行ないました延べ払い融資は、賠償の繰り上げを目的とするということであれば、これは格別です。そういうものは私は一つも聞いておりません。ただ貿易政策上の見地、あるいは対外経済協力政策上の見地、そういうものからいたしまして、日本といたして東南アジアの諸国に金を貸す、延べ払いを認める、こういうケースが多々あるわけであります。その際に、インドネシアあるいはフィリピン、そういう国々に対する延べ払い融資などを行ないます場合に、賠償という関係があるもんですから、それを、ただ単に普通の担保だけではどうも満足ではない。しかし、経済協力政策あるいは貿易政策から融資はするんだ、またこれは、多少のあやふやなところがあるけれども、政府としては認むべき融資であるというふうに考えた場合に、たまたまそこに賠償条約がある。それに着眼いたしまして、それじゃ賠償をひとつ向こうの政府に言って、担保にとってこい、そうすればなお十分じゃないか。これは、私は日本政府としては当然そういうことをすべき立場にある。そうでないと、結局回り回って輸銀の融資の滞りなんかになりまして、国益に反する、そういうことになると思うのです。私は、もし賠償の繰り上げの意図をもってその融資をするということがあれば、これは穏当ではないと思います。しかし、そういうケースは、私は寡聞にして聞いておりませんです。全部補完的な保証というような意味において念を押す、それによって民間、つまり民間と申しましてもわが日本の商社である。その商社の権益を確保し、またひいては輸銀、つまり政府国の利益を守る。これは私は当然考えなければならぬことだ、かように考えております。
  146. 滝井義高

    滝井委員 いまの御答弁で、結局民間同士でやるにしても、政府が保証しないとだめなんですね。そこで、藤山さんもおられますが、インドネシアとの賠償担保借款は、藤山さん、あなたがおやりになったんですよね。スバンドリオ外相と藤山さんとが一九五九年十月十六日に東京でおやりになっておるわけです。それからフィリピンのほうは、これはガルシア大統領が岸さんに申し入れをして、そうして岸さんとガルシア大統領とが一九五八年十二月五日に共同声明を出して、一九五九年の、昭和三十四年九月七日、このときにお互いに借款供与の書簡を交換しているわけです。その内容に、ちょっと私いま丁寧に入らぬですが、およそのことはわかるのです。これは、やはり政府ベースでやっているわけですよ。政府ベースを基礎にして、民間の業者が民間の銀行と契約を結ぶ。しかし、裏打ちは政府がぴしっとやるわけです。だから、これは一種の賠償の繰り上げ使用ですよ。繰り上げ使用の形になるわけです。民間がフィリピンに行って契約をしてきたって、政府が裏打ちをしてくれなければ、これはだめなんです。だから、私もやめますが、この交換公文を出してもらいたいと思うのですよ。外務大臣、出せますか。やった日にちその他はわかっておるわけですから、その内容を、交換公文全部を出して下さい。フィリピンにおいては電気通信計画、マリキナダム計画、カガヤン鉄道計画、三つやってますよ。これは賠償の借款でやってます。そのうちマリキナダムは、もはや日本の鹿島組その他が何回も行ってやるけれども、まとまらないでおるのですよ。これは、三十四年の九月七日にやっておるのですよ。だから、この交換公文を出してもらいたい。それからインドネシアが、これがもうたくさんあるのです。ホテルをつくることから何からたくさんあります。この交換公文も出してもらいたいです。それと、繰り上げは絶対しないとおっしゃっておるけれども、三十四年の十月に千七百万ドルの先渡しをやっておるわけです。このあれは調べて報告するということですから、その二点をやってもらいたいと思うのです。出してくれるかどうか。
  147. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事務当局をして答えさせます。大体において必要があれば出して差しつかえないと思いますが、なお……。
  148. 西山昭

    ○西山政府委員 ただいまの資料につきましては、検討いたしまして、極力提出するように努力いたします。
  149. 滝井義高

    滝井委員 検討して提出するとかなんとかでなくて、一番重要な点でしょう、繰り上げになっておるのかどうかの。政府ベースでやっておったら、これは福田さんのことばと違うことになるのですよ。だから、出すなら出すと言明してもらわなければ、検討して出すとか、できるだけ検討して出すようにしましょうとかいうようなあいまいなことじゃだめですよ。
  150. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ韓国のほうから、繰り上げてほしいというようなことが具体的に出ておりません。そういったような必要ある場合には、前例にならって交換公文を出すことにいたします。
  151. 滝井義高

    滝井委員 韓国のことは、まだこれは向こうが六ヵ年計画を遂行上、一九七一年までにやりたいということは、これはニュースです。韓国のことは、まだわれわれはいますぐ出せとは言いません。これは適当な時期にひとつ出していただく。しかし、フィリピンやインドネシアの問題は、すでに五千万ドルないし四千万ドルの借款をやって、インドネシアのごときは焦げついてすぐ回収ができないということをあなたも御言明になっておる。そういう焦げつくようなものを出したのは、交換公文というものがなければ、これは出せないはずなんですよ。これはちゃんと交換公文をやっておるところがあるわけですから、それを出してくださいということが一つと、それからいま一つは、三十四年十月に賠償千七百万ドル先渡しをしている。これは調べなければわかりませんというから、調べてください。この二点をひとつ明白にしてください、こう言っておるんですよ。いいですね。——じゃ委員長、出すそうですからこれでやめます。
  152. 福田一

    福田委員長 これにて滝井君の質疑は終了いたしました。  次に、倉成正君。
  153. 倉成正

    ○倉成委員 私は、四十一年度予算案に関し、これまでの質疑で明らかにされなかった財政金融に関する諸問題と、農業の基本政策に関し、関係大臣にお尋ねいたしたいと思います。  まず、大蔵大臣の御都合があるそうでございますから、農業問題からお尋ねをいたしたいと思います。  質問の第一点は、食糧の需給についての基本的姿勢について、政府の御見解をただしたいと思います。  言うまでもなく、食糧は生命に関する国民の基本的な要請にかかわるものでありますので、国の農業政策としては一定の目安を持つことが必要であります。   〔委員長退席赤澤委員長代理着席〕 しかして、これを基準にして国内比産体制を整える必要があると考えるわけでありますが、農林大臣にお伺いしたいと思います。最近年次、昭和三十九年でけっこうでございますから、日本の農民が生産した食糧の総額、外国より輸入した農産物の金額をドルに換算してお答えいただきたいと思います。また同時に、その際のわが国の国民所得、輸入規模を、企画庁長官よりお答えいただきたいと思います。
  154. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農産物輸入でございますが、輸入額は、全部入れまして三十九年度は十七億九千一百万ドルになります。ただし、これには綿花、羊毛、ゴム等は入っておりません。
  155. 倉成正

    ○倉成委員 国内の生産額は……。
  156. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 国内の生産でございますが、国内農業生産総額は、二兆六千八百六十億円になります。ドルにはちょっと換算しておりませんが……。
  157. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本の総輸入額は、暦年で七十九億三千八百万ドルで、そのうち農産物の輸入額は暦年で十七億九千百万ドル、総輸入額中二二・六%。
  158. 倉成正

    ○倉成委員 ただいまお聞きのとおりに、農林大臣からお答えがございませんでしたが、三十九年度における国内の農産物の生産額は、ドルに換算しますと約七十億ドルになります。そこで、企画庁長官のお答えのとおり、輸入七十億ドルのうち農産物の輸入が十八億ドルに近い。また国内の農産物の生産額と農産物の輸入と合わせますと、八十八億ドルになるわけでございますから、もしかりに国内で農業生産を全然やらないといたしましたならば、今日の日本の輸入規模で農産物の需要をまかなうことができないということが、この点からも明らかであります。そこで、この農産物の輸入の中でおもなるもの、また国内と輸入で、今後急増する見込みのあるものはどういうものがあるかということについて農林大臣からお答えいただきたいと思います。
  159. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 国内の農産物について申しますと、まず一つは米でございますが、米は若干不足いたしております。これは、大体努力によって自給し得る見込みを持っておるわけでございます。  それから次は、畜産物でありますが、畜産につきましては、一つは酪農及びその酪農製品、一つは肉類でございます。この酪農関係は、現在まで非常に需要も増加いたしておりますし、また生産もかなり伸びております。最近、酪農品の生産の伸びは若干落ちておりまするけれども、これは政策を相当強化してまいりますのでありまするし、また、いろいろ法律並びに予算等によって強化いたしておりまするので、これも需要に応じていけるという、確信というところまでいかぬにしても、相当これは充足し得るという見込みを持っております。それから肉のほうでございますが、これも豚肉及び鶏の肉については、非常に需要に即応して出産が伸びるという見込みはございます。しかし牛肉は非常にむずかしい。むしろ現在は肉牛が減少しておる傾向でございます。したがって本年からは、特に肉牛の増殖について力を入れてまいりたい、こう考えております。  それから果実、蔬菜等生鮮食料品でございますが、これは、気候その他の状況で年によって非常に生産にむらがございまして、そのために、それらの関係もございまして価格にやはりむらが出る。こういう状態でございまするが、これらの問題を改善することによって、生鮮食料品は国内で自給しようという考え方を持っておるわけでございます。  なお、そのほかいろいろございますが……。
  160. 倉成正

    ○倉成委員 私は、いま需要の見通しについてお尋ねしたわけでございますが、御丁寧な御答弁がございましたが、ひとつ端的にお尋ねをいたしますので、答弁も簡潔にお答えをいただきたいと思います。  十年後の昭和五十年をとって日本の貿易、すなわち輸入の中で農産物輸入がどの程度の位置を占めるか、また占むべきかという点について明らかにいたしたいと思います。  そこで農林大臣昭和五十年における日本国民の必要とする農産物の総額は、ドル建てでどの程度になるか、お答えをいただきたい。  また企画庁長官、同じ昭和五十年の国民所得、輸入の規模は大体どの程度になるかということをお答えいただきたいと思います。
  161. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 昭和五十年と申しますと、まあ十年後と見ていいわけでございますが、数中は事務当局で御答弁さしたいと思いますが、大体米の点は先ほど申しました。それから酪農、いわゆる牛乳、乳製品でありますが、大体二倍半くらい現在よりも伸びる、生産もそこへ追いついていきたい、こう考えております。肉は、先ほどこれも申しましたが、牛肉を除いては二倍程度に伸びる、こう考えております。なお、数字は事務当局から答弁させます。
  162. 大口駿一

    ○大口政府委員 お答えいたします。  五十年度の食糧の需要額、いろいろな見方がございますが、ドルで大体百二十億から百三十億ぐらい、そのくらいの数字に見込んでおります。
  163. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 十年後の展望につきましては、公式的な数字をいま持っておりません。
  164. 倉成正

    ○倉成委員 ただいま農林大臣、官房長からお答えのありましたように、十年後の日本の食糧の需要、国内で必要とする食糧の総額は、需要の伸びが年間三%程度とすると百二十二億ドル、四・一%と計算すると百三十八億ドル、大ざっぱに言ってただいまのお答えのとおり百三十億ドルと推定されるわけであります。企画庁長官からは、所得、輸入の規模については、成長率の計算上、正確なお答えがございませんでしたが、私の推算するところによりますと、大体昭和五十年における輸入の規模は、百九十億ドル前後になるかと考えるわけであります。かりに昭和五十年で、国内で必要とする食糧を全部輸入でまかなうということは、この数字一つを考えましてもとうていできないということが明らかであると思うわけであります。この観点に立ちますと、これからわれわれが考えなければならないことは、何を国内で生産するか、また国内で全部自給をするということが不可能であるとするならば、何を外国から入れるかということをはっきりやはり農業施策の基本として考えることが必要であろう、この長期的な見通しが必要と考えるわけでありますが、この点についての農林大臣の御見解を伺いたいと思います。
  165. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 傾向を申し上げますると、十年後の数字は後ほど事務当局からお答えをさせまするが、いままで申しましたような状態でございますので、穀類のうちでも、やはり麦類は相当輸入をしなければならぬと思います。しかし、でき得る限りの自給はいたしたいと思いますが、やはり相当程度の輸入が必要であると思います。それから畜産その他の生鮮食料品は、でき得る限り国内で自給をいたしたいのでございますが、えさ、飼料でございます。特に濃厚飼料については、やはり相当輸入が必要になってまいるだろうと思います。ただし草資源は国内でどうしても自給いたしたい、かように存じております。そのほか、先ほど申しましたように、生鮮食料品全般はでき得る限り自給せざるを得ないであろうと思います。  なお、現在輸入しておりまするものとしては、砂糖あるいはコーヒー、ココアあるいはバナナといったようなもの、いわゆる熱帯的なものが輸入されておりまするが、これは、国民の嗜好の増強によりまして、やはりある程度の輸入がふえてまいるものであろう、こう存じておる次第であります。
  166. 倉成正

    ○倉成委員 農産物の将来の自給の見通しについて、若干農林大臣からもお答えがございましたけれども、今日の農産物についての需要の変化というものは、非常に大きな変化が起こっておる。この変化は、農業問題にいろいろと深刻な影響を与えておるわけでありますけれども、厚生大臣にひとつお尋ねしたいと思いますが、国民栄養の見地から見て、食糧の消費構造はいかなる形が望ましいか、今後十年ぐらいを目途として、牛乳、肉の消費等について諸外国との比較とも関連してお答えいただきたいと思います。
  167. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国民栄養の調査を見てみますと、年々栄養の摂取量が向上いたしております。戦後における国民の体位の向上もこの栄養の内容の向上によるところが大きい、こう思うわけであります。栄養審議会国民一人当たり二千三百カロリーを中心とした答申を出しておるのでありますが、その昭和四十五年度の目標に対しまして大体調順に推移いたしておると思います。十年後の国民栄養のあり方がどうあるべきかという問題につきましては、この昭和四十五年度の目標を一つの足がかりといたしまして、十年後の栄養の基準及びこれを補給いたします食糧構成の基準というものを栄養審議会諮問してみたい、かように考えておるわけであります。  肉や牛乳の具体的な摂取量につきましては、事務当局から御明説を申し上げますが、大体従来のでん粉中心の食糧構成から、たん白、脂肪及び野菜の摂取、そういう方向に改善されてきておる、こういう傾向であります。
  168. 倉成正

    ○倉成委員 簡潔にお願いします。
  169. 中原龍之助

    ○中原政府委員 いま大臣からお話がありましたけれども、大体、栄養の観点から見ますと、従来とも油脂類とか卵類、乳類、黄緑色野菜、果実類、こういうものの増量が必要であるということで進めてきておりますけれども、この増量につきましては順調に進展をしております。昭和四十五年を目標にいたしまして、栄養審議会におきまして栄養基準の目標値を定めましたけれども、それを見ますと、三十九年度はまだ出ておりませんけれども、三十八年度を見ますと、やはり足りませんものは、脂肪が目標に対して七六・八%というような関係になっております。たん白質は大体九四・一%になっております。それからビタミンのBのほうは六五・八%というようなかっこうになっております。カルシウムは六二・二%というような状況でございます。
  170. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 質疑者の要求もありますので、政府側の答弁は簡潔に願います。
  171. 倉成正

    ○倉成委員 私の端的に御要求したことと少し違うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、以上の説明で明らかになった点は、日本人の食生活は急激な変化が起こりつつある、特に畜産物の需要が爆発的に伸びつつあるということを認識すべきであります。このことは、人間食糧として百カロリーの効率を持つ農産物も、家畜がこれを消費して畜産物に変わった場合には、十五ないし二十カロリーに低下することを意味し、畜産物の消費の増加は、ばく大な土地からオリジナルな生産物を必要とすることを意味しておるのであります。こういったことが農業に対して容易ならざる変化を要求している、農政に大きな課題を与えているということを、ひとつ農林大臣、しっかり認識していただきたいと思います。  そこで、先ほどもお話がございましたが、今後の日本の農政の大きな柱の中で、米と畜産物がやはり重点であろうと思うわけであります。米については、大臣、石川県の御出身でありますし、よく御承知と思いますが、先ほど、十年後には大体国内で自給できるであろうというお話がございましたけれども、明治以来米の生産は大体三倍になっておる。今後十年間で反収は一体どの程度伸びる予想をしておられるか、また日本の耕地面積を——大体自給できるであろうとおっしゃった大臣の御発言の根拠には、現在の耕地面積を、水田をそのままにしておいてのお話であるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  172. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 米作につきましては、各種の政策がございますが、一つは、やはり農地基盤整備の問題でありまして、今度十カ年計画で二兆六千億やります。その中には、圃場整備もありますし、いろいろございます。それは御存じでありますから、詳しいことは申しませんが、またその中には、水田及び畑地の造成ということも加わっております。しかし、これは大体このごろ市街地としてつぶれる程度のものを補給する、多少ふえる場合もあるかしれぬが、大体そうであります。しかし、先ほどお話のように、草食性動物といわれる家畜の牛のえさであるところの草地というものについては、今後さらに四十万町歩加えていくわけでございます。水田については、先ほど申したようなことで、さようにして農地基盤整備をやる、その基盤整備の上に立って労働力の不足等を補うための近代化をはかってまいる。しこうしてまた、従来以上に技術浸透をはかってまいります。これはもちろん品種改良もありましょうし、栽培上のいろいろの技術というものが重要でありまするから、それも加わりましょう。土壌の改良、いわゆる土地の保全の問題、これもよく御存じのことでございますから、これ以上申しませんが、さようなことで、大体努力をすれば進めていけるであろうと存じておるわけであります。
  173. 倉成正

    ○倉成委員 大臣、私の時間が非常に限られておりますから、端的に私がお尋ねした点だけをお答えいただきたいと思います。私が専門家について調べたところによりますと、大体米は十年間に反収一割増加というのが常識であろうと思います。もちろん米作日本一等をとれば例外はございますけれども、平均的な水準としては、一割の増産が可能であると考える。そういたしますと、米については、一応十年後に国内で国民の必要とする需要を満たすことができるという大臣のお答えを是認するといたしまして、畜産についてひとつお尋ねしてみたいと思います。  畜産については、御承知のとおり、何と申しましても今日一番重要なのは飼料対策、昭和三十九年度で四億ドルに及ぶえさの輸入が行なわれておるわけでありますが、そのうち大体六、七割は鶏のえさであります。鶏と申しましても、結局半分以上は舶来品であり、もし国際収支が今日のような順調な情勢を続けていなければ、コケコッコーと鶏が鳴けば日本経済を揺り動かすというようなことさえ言い得るようなえさの輸入が行なわれておるわけです。そこで、私は酪農に問題をしぼって少し端的にお尋ね申し上げてみたいと思うのであります。  政府は、原料乳に対する画期的な不足払い制度を確立し、本年度予算において大幅な財源を裏づけいたしました。この点は、酪農を農政の柱とする政府の姿勢を示したものとして、全国酪農民の不安を一掃し、深く政府の態度に敬意を表する次第であります。しかしながら、わが国のような自然条件のところで酪農を発展せしむるには、なお幾多の困難な条件が予想される。すなわち、酸性土壌の非常に強い、また傾斜地の多いところで飼料を自給するということは、まことに困難なことであると思うわけでありまして、先ほど、土地改良十カ年計画の中で、草地改良について約四十万ヘクタールをやるという大臣のお話でございましたけれども、一体四十万ヘクタールの草地改良をやる自信があるかどうか。もっと端的に申しますと、大臣の御出身の石川県、大蔵大臣の御出身の群馬県で、具体的に草地改良について、金に糸目をつけないとして一体どの程度やれるか。そういう御認識があるかどうか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  174. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 草地改良の四十万町歩はこれからのものでありますが、いままで十二万三千町歩できておることは倉成さんよく御存じのとおりでございます。今後十年間でこれだけのものは十分——十分じゃない、非常に困難ではありますが、やり得ると存じます。  なお、草地のほかに飼料作物の栽培というものをふやしていきたい。大体百十二万町歩ぐらいに飼料作物をふやしていきたい。青刈り大豆とか青刈りトウモロコシとか、あるいはそのほかレンゲ、いろいろございます。それらの栽培面積は五十二万町歩ぐらい現在あろうかと思うのでありますが、それを百十何万町歩に、したがって石川県のようなところは、多くはそういうところがふえるであろうと思います。
  175. 倉成正

    ○倉成委員 草地改良についての大臣の御認識はまだ非常に甘いと思うのです。いま困難だけれども十分やれるというようなお話がございましたけれども、それにはそれ相当の手段、政策がなければならない。そういう点についてもう少し御勉強をいただきたいと思う。特にこの点を強調して、一応この草地改良の問題を終えておきたいと思います。  次に進みます。私は、今日の日本の農業政策を考える場合、マクロの見方と同時にミクロの見方を重視すべきだと思うのであります。狭い日本といいながら、北は北海道から南は九州まで、さらに沖繩まで、千差万別であり、同じ地域の中でも平野部と山間部の中に大きな相違があることを認識する必要があります。昭和四十年の国勢調査の結果を見ますと、人口増加を示した諸県は、東は茨城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川の関東諸県から、静岡、愛知、岐阜、三重の東海諸県を経て滋賀、京都、大阪、奈良、和歌山、兵庫の近畿諸県に至るまで、太平洋岸に切れ目なく連なっており、これらの都道府県以外で人口の増加したのは北海道と宮城、石川、広島の四県のみであります。すなわち九州、四国、東北のすべての県が東北は宮城を除きまして、すべての県で人口が減少しておる。また一九六五年の中間農業センサスによりますと、五年前の昭和三十五年には専業農家、第一種兼業、第二種兼業がそれぞれ三分の一ずつであったものが、昭和四十年には専業農家が二一・五%、第一種が三六・八%、第二種兼業が実に四一・八%となって、農業の兼業化が激しいのでありまして、しかも地域的に見ますと、第二種兼業の最も高いのは近畿の五六・四%、東海の五一・三%で、北海道だけが第二種兼業が二六・二%となっておるわけであります。この北海道については専業農家が五〇%、かように地域差が非常に激しい。しかも三十五年に比して農家戸数が五年間に四十万戸減少しておるということであります。こういった地域的な大きな変化の動向を見定めて農業政策はきめる必要がある。地域的な分極過程がすばらしく起こっている。この立地の変動が大きく農業に作用する時代がきたということを、はたして農林大臣は認識していられるかどうかということについて御見解を伺いたいと思います。
  176. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 倉成さんは非常にこの点を研究されておられるのでありますが、私も同じく、やはり経営面積にしても地方によって非常に違う、こういうことは経済原則から見ても当然であろうと思いますし、また、いまお話しのようないろいろな変遷を見ましても、そのとおりであると確信しておるわけでございます。
  177. 倉成正

    ○倉成委員 農林大臣は政策の担当者でありますから、お考えになるだけではなくして、やはり具体的にこれの裏づけとなる政策を、われわれにお示しになる必要があると思うのでありまして、私からひとつ御提案を申し上げたいと思います。  今日の農林省の行政は、ただいま申し上げましたような大きな変化に対していかにも画一的であり、試験研究機関一つをとりましても、必ずしもこの情勢に対応していないと私は考えるわけであります。私はこの際、全国の試験研究機関は、一時全部ストップしてでも再出発させる、農林省の行政も、食糧その他必要最小限の行政を残して、あとは再編成するというくらいの覚悟が必要であると思うのでありますが、十年一日のごとき態度を改める覚悟があるかどうか、この点について農林大臣の所見を伺いたい。  あわせて、この大きな人口の移動、産業の変化に対して、建設大臣として、また企画庁長官として、全国の土地利用計画の樹立についてどのようなお考えをお持ちになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
  178. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 倉成さんの御説ごもっともでございます。しかし、農林省の内部においても、それは画一的にやるということはありませんので、非常に変わっております。もちろん情勢の変化に即応して変わってきておることは、倉成さんも大体おわかりであろうと思う。まだ足らないということをおっしゃるんじゃないかと思いますが、しかし、地方それぞれに農政局を置きまして、その地方地方に適応したような調査あるいはその施策というところへもう進んでおりまするし、行き方としては、倉成さんの御説のとおりな方向へ向いておるということを御了承願いたいと思います。
  179. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 人口が地方的に移動しておりますことは、国土開発総合計画の上からいいまして、やはり注目すべきことでございまして、われわれといたしましても、新産業都市その他によって十分地方的に人口がとどまり得るようにいたしたい。たとえば岡山県の例をとってみますれば、岡山県全体では人口が減少しておりますけれども、県南新産業都市の周辺では人口がふえております。そういうことをやはり地方開発として考えてまいらなければならぬ、こう考えております。
  180. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 土地利用計画の問題から、私どものほうの考えを申し上げておきます。  結論から申し上げますと、わが国で一番おくれておる、また一番政治の欠陥は、国全体の土地利用計画ができておらないところにあると思います。しかし、これは非常に各般の問題が錯綜いたしておりますから、きわめて困難な作業でありますけれども、これは、やはり国全体の土地をどういうふうに利用するかということを総合的に計画すべき段階に入っておる。そこで、現在を申し上げますと、いま企画庁長官からもお話がありましたが、御承知のように、国土総合開発法というものに基づいて、全国計画あるいは地域計画というものが一応できております。これは全く文章でありまして、いわゆる構想である。したがって、土地利用そのものの計画という段階には入っておりません。そこで申し上げたいことは、現状のままで土地利用計画を立てるということは、私は必ずしも適当でないと思います。将来の日本の姿というものはどうあるべきか、これは非常にむずかしい問題でありますが、一応そういうことを想定して、そうしていまお話がありましたように、人口の増加がどうなるか、それから産業の配置がどうあるべきか、現状のままでやりますと、これは将来の日本の国の姿としては適当でないという考えを持っております。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 そこでいまやっておりますのは、全国計画あるいは地域計画、また小さく言いますと、倉成さんも御承知でありましょうが、いわゆる都市計画あるいは建築基準その他で、いわゆる局部的な、しかもそれは周密でない、あらましの土地利用計画がありますが、これではきわめて不十分である。そこで私ども一番の問題は、いわゆる議論がされておりましたが、人間の生きていく食糧問題をどう解決するか、食糧の需給体制をどの程度におくか、しかも、その食糧の需給体制というのは、いまいろいろお話が出ておりましたように、将来の技術革新と農業経営の構造変革、そういうものをどの程度に将来見込んでいくか、こういうことをやはり全体的に考えて、まず第一番にきめべきものは、農業政策はどうあるべきか、したがって農耕地はどの程度に、どういうふうな配置をすべきか、これが前提に立ちませんと、工業その他の配置の土地利用がなかなか困難であり、と同時に日本の将来の、農業以外の産業計画はどうあるか、これをかみ合わせなければいけない。と同時に、それに応じて人口の動態がどうなる、したがって都市あるいは農村の住宅その他の地域はどうあるべきか、あらましこういうように考えております。  私ども建設省としての考え方は、それをいたしまするについては、これは、すべて道路、交通、鉄道、その他の交通、通信の機関が前提になると思いますから、この際私どもは、そういう意味において、日本の全国の土地利用計画はどう想定すべきかということにおいて、やはり将来の基幹の道路網というものはどうあるべきか。全国の新たな道路網というものを今国会におはかりをして、将来の日本の構造はこうある、したがって現在利用されておらない農耕地、いまお話がありましたように、畜産等についてまだ大いに利用すべき地域がある、新たに利用すべき地域がある、そういうものが道路政策によってどういうふうに想定されるか、ここまでいきたいと思っております。ただしかし、全国計画を立てますのには相当の時間と非常な努力を要する問題でありますから、現在一番問題になっておりますのは、御承知のとおり、大都市周辺あるいは中都市周辺の農耕地と住宅地、あるいは工業用地、そういうものの土地利用計画ができておりませんから、非常なトラブルがある、非常にロスがある。緊急には、こういう点をすみやかに土地利用計画を立つべきである。こういうことで、私どものほうの宅地審議会で土地利用部会という専門部会をつくりまして、まずすみやかにできるところから利用計画を立てていきたい、こういうようにやっておるわけであります。
  181. 倉成正

    ○倉成委員 ただいま各大臣から、特に建設大臣からは詳しく御所見の開陳がございましたけれども、十分各省間に御連絡をとられまして、ひとつこの問題の解決に当たっていただきたいと思うのであります。  企画庁長官からちょっとお話がございまして、私もここで議論をいたそうとは思いませんけれども、人口の移動につきましても、一般に工業が興るから人口がふえるんだというふうな解釈がされておるわけでありますが、統計的に見る限り、必ずしもそういうことにはなっていない。すなわち人口の多いところに人口が集まる、土地の狭いところに人口が集まる、土地に反比例して人口がふえるという結果が今日の統計では出ておるわけでありまして、これらの諸点を勘案して、これからの土地利用計画、産業の配置、また農業との関連をお考えいただきたいと思います。  そこで、大蔵大臣が見えましたので、私、農業問題についてこれ以上御質問する時間がございませんが、農産物の需要構造、あるいは農業の地域性、土地利用計画等について問題点を指摘したわけでありますけれども、わが国の農業問題は多くの問題をはらんでおる。同時に、農業の指導者がいま自信を失っておる。この反映として、若い人々の不安が今日農村に満ち満ちておる。この際適切な施策と同時に、農業政策には、そのかなめとなる一つの思想、哲学というものが必要であると考えるわけであります。農業は人類の続く限り、たとえ月の世界に旅行ができるようになりましても、絶対に不可欠の産業である。同時に、動植物は生きておる、生きものを相手にする産業である。天地の恵みに感謝するという気持ちがやはり必要であろうかと思うのでありまして、ここに私は、一九六五年のジョンソンの農業白書を持ってきておりますが、この白書は冒頭に、土の恵みは国民経済の基礎であるという書き出しがら、最後に、われわれの前途は遼遠であるかもしれない。しかし、私は、エーブラハム・リンカーンが一世紀前に農務省を建設し、われわれをして豊穣への道に出発せしめたときそうであったと同様に、終局的にもたらし得べき勝利を確信するものである、と結んでおります。ドゴール、毛沢東、またがってのフルシチョフ、いずれも農業問題に深い理解を持っておることは、御承知のとおりであります。  そこで、この際、農林大臣のこれらの点についての御所見と、またあわせて文部大臣に対しましては、小中学生に、やはりこういった農業についての深い理解を持たせる必要がある。勤労を愛し、天地の恵みに感謝するというような気持ちは、やはり小さいときから、初等教育からこれを国民に教えることが人生を豊かにするという意味において大切であると思うのでありますが、この点について文部大臣からお答えをいただきたいと思います。  特に農林大臣、私は財政問題で時間をとりたいので、ひとつ要点だけ簡潔にお答えいただきたいと思います。
  182. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 哲学を要することは、あえて農政だけではないと思いますが、特に農政にはその必要が非常に多いように、私も同感でございます。したがいまして、この前の農業基本法をつくりまする際において、農業基本法の現在の一番必要な事項として、所得向上、生産性向上をはかることを主として規定いたしておるのでございますが、御存じのとおり、前文においてこの問題を強くうたっておることは、御了承のとおりでございます。この内容は、申し上げなくても御存じでございまして、労働の問題、食糧需給の問題、さらに創造力を与える源泉としての問題、さらにもっと重要な問題は、人類の構成上健全なる農村部落の存在が絶対必要であると私は確信しておるのです。そういういろいろの問題が包含されておると思いまするが、長くなりますから御了承を願いたいと思います。
  183. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 倉成さんのお説のとおり、土に親しませる、あるいは天地の恵みを味わわせる、非常にこれは大事なことで、私どもも子供で、農村で小学校のころの思い出がありますが、現在の教育の課程では、中学校では選択科目として農業の種目がございますが、小学校では、先生により、草花とか、若干そういうことをやらしておる程度であると思います。  そこで、実は現在の教育課程は、昭和三十三年にスタートしておりますので、すでに相当の年月を経ておりますので、現在教育課程審議会に小中学校、高等学校等の教育課程はいかにあるべきかということを目下諮問をいたしまして、検討を続けておる最中でございます。御指摘のような点は、非常に国民性を養う上において重要であると思いますから、私どももこの教育課程の再検討にあたりまして、十分意を体して努力をしてまいりたいと、かように存じております。
  184. 倉成正

    ○倉成委員 大蔵大臣に、財政金融に関しお尋ねをしたいと思います。特に、本委員会で明らかにされなかった諸点について、時間もございませんから、ひとつ端的に御質問をいたしたいと思います。  質問の第一点は、四十一年度の補正予算の財源に関する問題であります。佐藤総理は、昨年十二月の予算委員会で、赤字国債は四十年度限りでもう出さないと言明されましたけれども、四十一年度の財政支出を予想いたしますと、生産者米価の引き上げ、公務員の給与引き上げなど、例年登場する補正要因が考えられるほか、不幸にして大きな台風、災害がやってくるということになれば、相当額の出費が予想されるわけであります。さらにまた六月には、石炭合理化案が固まれば当然予算措置が必要であり、社会保障費の増額が年度途中の予算措置を必要とするということが予想されております。これらの事態に対して、税の自然増収があまり期待できぬ今日として、いかなる財源措置を講ずる用意ありやお伺いしたい。総理が言明したにもかかわらず、四十年度と同じような赤字国債の発行を必要としないかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  185. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十一年度の予算におきましては、まず歳出面、これに相当弾力性を与えることを努力したわけであります。つまり予備費におきまして、従来五百億円のものをさらにふやしまして六百五十億円にする。それから従来義務費につきまして、年度途中で補正を要するという事態がしばしばあったわけでありまするが、そういうことのないように、義務費の予算の編成に注意をいたしております。  また今度は財源の面であります。昭和四十年は非常な税収の落ち込みがあった、そういう見積もり違いがあってはならぬ、こういうようなことから特に注意をいたしまして、法人税のごときは昭和四十年度の実績見込み、大体それの横ばいであるというくらいな見積もりをいたしておるわけであります。所得税につきましては、経済成長というようなことで、その成長率に見合った見込み方をしておりますが、法人税は、景気の変動で非常に予見しがたい要素を持っております。そこで、特にかたい見積もりをしておる。そういうようなことを総合いたしますと、例年のような大幅な補正を要するという事態は考えてもおりませんし、またありましても、その弾力性の中で消化できるというふうに考えております。ただ、非常に大規模の台風があったというようなことがありますると、これはまた特別の措置を講じなければなりませんけれども、ときどき申し上げておることでありまするが、いずれの場合におきましても、その弾力性の幅の中で解決し得る問題である。財政法第四条の特例による公債を財源とするという事態は考えておりませんし、またこれを採用する考えは毛頭持っておりません。
  186. 倉成正

    ○倉成委員 ただいまの大蔵大臣のお話を要約いたしますと、予備費六百五十億、それに義務費は十分見た、それから税収の見積もりはかたく見積っておるので、おそらく自然増収があるだろう、こういう意味の御答弁だったと思うわけでありますが、やはり先ほどから申し上げましたように、いろいろの補正要因が重なってまいりますと、やはり特例法の必要が出てくるのじゃなかろうかという心配をしておるわけでありまして、この心配が当たらなければまことにけっこうなことでありますけれども、この点については特に念を押しておきたいと思います。  もう一つ、非常に技術的なことでありますが、予算総則に掲げられております公共事業、これを大体計算しますと七千六百五十億、これに対して七千三百億の公債の発行でありますから三百五十億——まあ三百億だけはさらにこの財政法四条による建設公債を発行できるという御解釈でございますか。
  187. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法第四条の規定によりますと、昭和四十一年度は七千三百億円の公債を発行するのですから、その対象となる公共事業費はどういうものを採択しておるかという、七千三百億円に相当する公共事業費の費目を掲げてお示しいたしますれば、これは、四条相当の措置なのであります。ところが七千三百億円の公債を発行すると申しましても、それにきちんと七千三百億円耳をそろえて一緒になりまする額というものは、なかなかそううまく出てまいりません。そこで七千六百億円というものに相当する公共事業費の費目をもって御審議の資料といたしておるというわけであります。しかし、私どもが公債発行の対象となる際、公共事業費等と申しますのは、七千六百億円というその額にとどまらないのです。なお、たとえば官庁の営繕費というごときものも財政法第四条による公共事業費などと考えますので、それらを入れますと、大体八千三百億程度になるのであります。その考え方の体系は動かすことは今後ともいたさない、公債発行の対象となる、また財政法第四条に規定してある公共事業費というものは流動的なものじゃない、固定した考え方に立っておるものである、かように御了承願いたいのであります。
  188. 倉成正

    ○倉成委員 ただいまのお話でちょっと感じとられるわけでありますけれども、官庁営繕費、公務員宿舎、これが一応総則の中に掲げられておりません。そこで、年度途中において官庁営繕費あるいは公務員宿舎を総則に掲げて公債を発行すれば、四条による公債発行であるというふうな御解釈だと思うのでありますけれども、私は、やはり財政法四条の趣旨、またフィスカルポリシーとして、不況対策として公債を発行するということになれば、年度途中において新たにこの総則に新しい項目をつけ加えるのはいささか適当でないと考えるわけであります。この点はいかがでございますか。
  189. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そのときの事情事情で公共事業費を変える、費目を変えるという考えは毛頭持っておりませんです。ことしは七千三百億円の公債発行でございますものですから、それに相当するものを、これはびしんと合うわけにいきませんものですから、七千六百億円のものを出した。しかし、この公共事業費に相当するものはまだほかにあるのであります。これを全部洗い上げてみると、四十一年度のベースでは八千三百億円くらいになる予定であります。官庁営繕費などが入ってくるわけであります。そういう考え方は変える意思は毛頭持っておりません。固まった考え方で将来とも押し通す、流動的なものではない、かように考えております。
  190. 倉成正

    ○倉成委員 次にお尋ねしたいのは、公債の市中消化についてであります。すなわち、大蔵大臣は公債の歯どめの要件として、財政法第四条と市中消化をあげられておりますが、日銀引き受けがすぐインフレになる、あるいは市中消化がすぐ歯どめになるという単純なものでなく、その間の説明がきわめて不十分であると思うのであります。  まず第一に、真の意味の市中消化目的であるならば、必ずしも日銀引き受けを回避する必要はないのではないか。同時に形の上での日銀引き受け方式をとらないにしても、実質的にはそれと同じ方策をとらねば国債発行は困難ではないか。第三に、市中消化を前提とした無理な公債発行は、金融の逼迫、金利の高騰をもたらし、金融の正常化に逆行するとともに、不況対策として意味を失いはしないか、こういう意味のことをお尋ねしたいと思うのであります。  第一の日銀引き受け方式を封ずることは、無制限な国債発行防止、それから起こるインフレを防止するという意味において、一応にしきの御旗ということができると思います。しかしながら、公債発行は、言うまでもなく政府が大量の資金需要者となる立場であられるわけでありますから、金融の動きが逼迫に向かうのは当然です。そうして国債金の支出が行なわれて中和される、その間の波をどう調和するかが中央銀行の役割りであると考えるわけでありますが、まずショックを与えてこれを緩和するか、それとも最初からゆっくりと余裕を与えるようにして、ショックを与えないで、一応信用を与えておいて、財政支出が進行するにつれて緩漫化する金融を締めていくか、前者が厳格な市中公募であり、市中公募の後における買いオペであり、後者が日銀引き受けによる売りオペ政策であり、いずれを選ぶべきかはその当時の判断によるべきだと思うわけであります。往年の高橋財政のもとにおいて、昭和七年から日華事変に至るまでの間、市中への売却はきわめて順調に推移しました。物価はおおむね平静であった点を参考にする必要があると思うわけでありまして、ただここで注意しなければならないのは、市場で受け入れられないような低金利によって日銀に押しつけることだけは、厳に戒めなければならないと思うわけであります。そこで大蔵大臣は、先日の本委員会において、預金の伸びが相当大幅に見込まれるとして、楽観論を述べられたわけでございますけれども、高橋財政の当時と比較いたしますと、当時は、普通銀行預金貸し出しについて見ると、昭和七年六月末預金が七十九億に対し、貸し出しが六十四億円、十一年六月末を見ますと、預金百三億に対し、貨し出しは六十二億となっておる。すなわち預金は伸びたけれども貸し出しがなかった。したがって、日銀引き受けであっても、市中消化率は高く、国債に対する投資が、金融機関の最大の資金運用の道であったわけです。しかし今日では、大臣いかがでしょう。大臣の言う預金の伸びが六、七兆という数字を、一応議論は差し控えるといたしまして、個人の貯蓄性預金と企業の営業性預金を区別する必要があると思うわけでありまして、最も安定的な個人の貯蓄性預金の伸び率は一定です。これまで伸びてまいりました企業預金のうち、一部は諸支払いの準備として滞留する部分がありますけれども、他は大体貸し出しと見合っておる。大蔵省の調べによりましても、債務者預金は貸し出しの二分の一、公取の抽出調査によりましても、拘束性預金が借り入れの三〇%となっておるわけであります。このことを裏づけするように、二月十一日の読売新聞によりますと、引き受けシンジケートを構成する地方銀行、信託銀行、相互銀行、信用金庫、証券会社など、早くも来年度の消化難を見通し、引き受け担保率を引き下げることを大蔵省に求めてきておる。すなわち地銀としては、引き受け率を二〇・五を二〇%以下に、信託、相互銀行などの三・六%のグループは三・三%にしてほしいというのであります。もちろん今日の銀行のシェア競争、他の方向を見てその態度を決するという金融情勢の中では、よその銀行が引き受けるからやはりうちもこれだけ引き受けなければならないだろうというような、資金の運用としてではなくして、そういう形での引き受けが行なわれると思うわけでありますけれども、これらの資金コストの高い金融機関の引き受けというのは、必ずしも容易ではないと思うのでありますが、これらの点について大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  191. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債の消化につきましては、お話しのように市中消化方針を堅持していきたいと思うのです。それはなぜかと申しますと、いま倉成さんは高橋財政のころのことを引用されて、あの場合には日本銀行引き受けで、日本銀行から逐次売り出す、こういう政策だったわけです。ところが最近の国際的傾向といたしまして、公債を発行する、これを中央銀行の引き受けにするという国はほとんどありません。公債政策による通貨の供給が健全であるか健全でないかということは、それを中央銀行の引き受けにするのかしないのかということで判断をするというくらいに、国債を発行する場合、これを健全にやっていこうという方法は市中消化なんだ、中央銀行の引き受けにはよらないのだということが国際通念化しているくらいの状態であります。そういうことを考えてみますと、実質的にこれが市中で消化されれば、それで経済的には問題がないのです。しかし内外に与える心理的影響等を考慮いたしまして、これを日本銀行引き受けにはいたさない、市中消化にいたす、こういう原則を打ち立てた次第でございます。そういう際に、将来金融上に窮屈感を与えるんじゃないか、それはどう考えるかというようなお話でございますが、この問題は、まず原則論を申し上げますと、租税による均衡財政をとっておる場合におきましても、あるいは市中消化による公債財政をとる場合におきましても、本質に違いはございません。つまり税という権力的な形において国民の資金を吸収する、また市中消化という民意に基づいた形で資金を吸収する、この吸収する、政府に民間資金が集まってくるのは同じ理屈なのであります。これによって均衡財政の場合と公債財政の場合、何らの差異があるものじゃない、また租税により、また公債によって吸収いたしました金は、いずれは使うのです。問題は、私は今度のように予算が膨大化した、膨大化した際におきましては、吸収した金を使うまでの間のずれというものが大きくなる、こういうふうに考えるわけであります。そういうギャップの、時期に対する配慮、これが第一にやってくるだろう、こういうふろに思います。日本銀行では売りオペレーション、買いオペレーションをやる、あるいは貸し出し政策もやります。大蔵省証券は、申し上げておりますとおり二千億円から五千億円にいたしました。これは市中の様子によって、窮屈な状態でありますれば、まず大蔵省証券を発行しておく、そうして市中情勢が順調になったというところをもって国債に置きかえていく、こういうことも考えておるような次第でございまして、そのつなぎの期間をうまくやっていかなければならぬ、こういうふうに考えます。  それから第二の問題は、国債ばかりの問題ではありません。政府保証債もある、地方債もあります。あるいは事業債も金融債もある。それらのものがみな円滑に消化されていかなければならぬという筋合いのものであり、またそれができなければ金融政策はうまくいっておるとはいえないと思います。しかし、昨日でありましたか、国会にも資料として提出いたしてありますとおり、近年における貯蓄状況というのは非常に順調であり、私どもは六、七兆の貯蓄増強を見込み得るというふうに御説明をいたしておるわけでございますが、しこれも四十年あるいは三十九年、こういうところの数字をごらんいただきますれば、相当かたいなという御印象をお持ちになるくらいの数字だと思います。そういう大きな貯蓄増強の中におきまして、七千三百億円の公債が出ている、これは、私はそう問題はない、かように考えておる次第でございます。
  192. 倉成正

    ○倉成委員 大蔵大臣の御見解を承っておくことにしまして、時間がございませんから次の問題に移ります。  国債の発行に関連して、金融の正常化と公社債市場の育成についてお尋ねをいたしたいと思います。本来ならば、今日の不況下においては金融は緩和し、金利は低下しているのが正常な姿と思われるのでありますけれども、今日の日本経済は金融がデフレ的に著しく縮まるという変則的な状態にあることは、御承知のとおりであります。これにはいろいろ理由があると思うわけでありますが、さらにわが国の金融市場が金融を必要以上に窮屈にし、金利水準を高めて、金融の過度の上下の変動が激しいと思われるわけでありますが、その原因は一体どこにあるかということをお伺いしたいと思います。
  193. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまの状況は、倉成さんのおっしゃるような状態ではないのであります。金融は緩和基調でございます。ただ、一昨年までの数カ年は非常に金融が窮屈な状態であります。それはなぜかと申しますと、これは民間の投資需要です。民間投資は財政の問題でなくて、市中の金融が担当する問題であります。この方面で非常に需要が高かったために窮屈な状態になり、しかも、これはあんまりほうっておきますると、国際収支の面あるいは物価の面、いろいろ影響がありますので、金融政策上はそれに対して通貨の供給をしぶると、こういう傾向が出てくるのは当然であります。そういうことから、ああいう状態であり、金利も上がったのでありまするが、昨年の正月から公定歩合の引き下げ、三回続いて引き下げておるような次第でございます。また、市中に供給する通貨の量も適正に保たれ、コールのレートも相当下がってきておる。今日におきましては、金融は非常に落ちつき、しかも低金利の態勢を持続し、今後もそれが続いていくであろうし、また続いていかせなければならぬ、こういうふうに考えておる段階でございます。
  194. 倉成正

    ○倉成委員 大蔵大臣のおっしゃるような方向にだんだんきていることは事実ですけれども、コールの低下その他は一応認めます。しかし、完全に低金利の状態にあり、金融が不況下のノーマルな姿であるとは私は考えておらないわけです。  この点は一応議論をおくといたしまして、金融を正常化して健全な国債制度を確立するためには、どうしても公社債市場を育成することが不可欠の要素と思われるわけでありますが、この再開が非常におくれた理由、三十一年四月に開設されまして、三十七年には御承知のとおりつぶれるに至った、この理由をあわせてお伺いした、と思います。
  195. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今日まで公社債市場が、まあ戦後日本では動かなかったという状態かと思うのです。三十七年にやめたのですが、あのころのものはまだ本格的な動きじゃない。今度これを本が、私どもの当面の課題でございます。それにつきましては、終局は国債市場というものをつくらなければならぬ。しかし、国債の市場をつくるということも、これは国債の信用ということに非常に大きな関係がありますので、そう簡単にはできない。そこで、予備的措置といたしまして、数日前でありましたか、この七日かと思いますが、七日に初めて政府保証債などの上場を実施するに至ったわけであります。このやり方に慣熟をするのを待って国債のほうに移行する。国債に移行する場合におきましても、店頭から気配相場を見ていく、そういうような過程を経てからでございまするが、そういう国債の本格的な取引市場上場というものを、四月以降なるべく早い機会に実施してみたい、かような考え方で諸般の準備を進めておる次第でございます。
  196. 倉成正

    ○倉成委員 三十一年から三十七年までの公社債市場が十分機能を発揮しなかったという理由の一つは、私はやはり金利が自由化されていなかった。もちろん法律上の規制は別といたしまして、証券取引法その他届け出の際にいろいろ大蔵省が規制をするというような形で、金利の自由化が行なわれていなかったということが一つの理由であると考えるわけでありますが、公社債市場の機能を真に発揮させるために、金利を自由化するお考えはないか、また同時に、金融正常化と関連して、政府の考える望ましい金利体系というものはどういうものであるか、お伺いしたいと思うのであります。すなわち国債利回りと他の金利との関係をどうするか。戦前を例にとりますと、公定歩合と国債利回りとの開きは最大〇・五%、多くはそれ以下でございました。またこれ以上開けば、国債を担保で日銀から借り入れて利ざやをかせぎ、国債を所有することが可能になる、こういうインフレを防ぐ方法として発達した、これは定着した金利体系であります。また、一年定期預金金利と国債利回りとの開きは、大体〇・五%から一%の間を上下しておりました。これは、定期預金が国債投資に適度に流れることを防ぐという意味において、やはりある程度定着した金利体系でございました。もちろん今日と当時とでは事情が異なっておりますけれども、政府の企図する望ましい金利体系というものは、やはり一つの目安が必要であろうかと思うわけです。これをお示しいただきたい。またその実現の具体的方法についても、あわせてお示しいただきたい。
  197. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 長期金利と短期金利の二つの流れがあるわけでありますが、国債は、これは直接的には長期金利の体系の一つの重要なる指標として考うべきものである。国債の今度の利回りをどういうふうにするか。これは、お話のように戦前のことも大いに検討し、また戦後の動きも検討してきたのでありますが、今日とにかく証券として市場価格を持っておる、そういうものは政府保証債であり、事業債であり、あるいは金融債である、そういうものとの相当の格差を持たせなければいかぬということも考える次第でございます。しかし同時に、そういう長期の利回り体系の中において国債が売り出された場合におきまして、これが民間で歓迎されて受け入れられるという条件も考えなければいかぬ。そして、また逆に国債の金利はなるべく低利回りにいたしまして、そうして国民負担も軽減しなければならぬ。いろいろな配慮から、最後の決定を今日御審議を願っておるような国債条件といたしたわけでございますが、この長期金利体系につきましては、私は今後日本の産業が、開放体制下において世界で大いに発展していくということを考えますと、さらに低いほうがいい。これには金融機関のコストを下げなければならぬ。金融機関の合理化という問題が非常に大きな問題になってくるだろうというふうに思うわけであります。そういうことを中心といたしまして、金融機関のコストの引き下げをはかり、また金融政策面におきましては、金利を常に緩和基調に持っていく、こういうことを一方において考える、そういうようなことと相まって、なるべく長期金利体系というものが低いところにいくのがいいだろう、こういうふうに考えているのですが、しかし、大蔵省が行政をもって強制をするという考え方は持っておりません。やはりそういう環境をつくり、そういうことができるような状態において自然にそういうところへいく、その環境をつくために大蔵省としては努力をするというふうに考えておる次第でございます。
  198. 倉成正

    ○倉成委員 今日の金融環境と金融構造の中で歓迎される公債という意味で今日の利回りその他を御決定になったという点、この点は私もよくわかるわけであります。そこで端的にお尋ねいたしたいと思いますが、将来の望ましいそういう金融環境が出てきた場合、今次の発行条件は現在の市場環境、金融構造を前提としておきめになったと思うわけですが、これは過渡的なものでありまして、今後の発行条件を規制するものではない。もっと具体的に言うと、今後の発行価格は新しい金利体系のもとで変わり得るかどうかという点を、端的にお尋ねしたいと思います。
  199. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いままで具体的に御審議を願ったのは、昭和四十年度債なんです。四十一年度債につきましては、国会で予算案の御審議を終わったあとの問題でありまするが、それからその先の問題、これから数年間続く公債は、そのときの状態においてシンジケートとよく相談をしてきめる。必ずしも四十年度に固定をしておくという考え方ではございませんです。
  200. 倉成正

    ○倉成委員 将来は変わり得るというふうにお答えいただいたと思います。  そこで、問題を次に進めまして、公債発行は四十一年度限りでなく、今後も当分続いて発行されると思うわけでありますが、その際、長期的な観点から考えますと、国際収支、資金需要の繁忙により金利が高騰して公債の価格が低落する場合が、やはり予想されると思うのです。その場合に、年度途中でも公債発行を中止する用意があるかどうか。西ドイツにおきましては、四十年五月に、起債市場の硬化から国債価格が低落しまして、これを防ぐために、ブンデスバンクが買い出動をいたしましたけれども、ついにこれを断念しまして、その結果国債発行を一時見合わせました。わが国の場合、市場の条件いかんによって国債発行を中止するような弾力的な運営ができるかどうか、特に硬直的な財政制度、単年度の財政制度をとっておる状況で、できるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  201. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気が非常によくなりまして、租税収入がどんどん入ってくる、予定をオーバーする、こういう状態でありますれば、それを見合いといたしまして、公債の発行を減らす、これは当然のことであります。それから、さらに公債の市中消化とか、そういう金融的要因において公債を発行することが適当でないというようなこと、これはそうめったにはありそうもないことと思うのでありますが、それらの状態に対しましては、公債政策は弾力的にやっていく。何が何でもきめたことだから押しまくるというような考え方は、いたしておりません。
  202. 倉成正

    ○倉成委員 税収が入ってきて公債発行をする必要がなくなったときにこれを中止する、これは当然できることです。しかし、そうでない場合に、金融上の操作の場合に、そういう弾力的な運営をすることが、やはりフィスカルポリシーとしての公債導入で特に考えておくべきことだ。これは将来の問題でありますが、特に注意を御喚起いたしておきたいと思います。  そこで最後に、時間がございませんから減税についてお尋ねしたいと思います。  まず、今日の減税が、国債を財源とした大幅な減税規模を持ち得たこと、あわせて税制にフィスカルポリシーとしての機能を与えたことは、わが国の税制上画期的な意味を持つと思います。そこでお尋ねしたいのは、今回の減税が不況克服という政策を持つとすれば、その減税効果について政府はどのように考えるか。すなわち、減税の需要波及効果をどういうふうに考えるか。同時に、税制にフィスカルポリシーとしての機能を与える考え方をとるならば、不況克服のための暫定措置であるのか、今後も積極的に取り入れる方針であるかどうか、お伺いしたいと思うのです。  こう申し上げますのは、もし景気が回復してまいりましたならば、増税を断行する、こういうこともお考えになっているか。昭和二十七年には法人税率を一挙に七%引き上げて、朝鮮動乱による景気の過熱を防止した前例がございますけれども、今後所得税や法人税を引き上げるということは、実際問題としてこれは非常に困難である。そうなってまいりますと、やはり比較的流動性を持つ間接税による操作が望ましいと考えるわけでありますが、今後の税制のあり方として、直接税六、間接税四の構成割合を是正して、間接税体系に重点を置くべきが妥当かと思われるわけです。この点について大臣のお考えを伺いたい。
  203. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、減税のフィスカルポリシーと申しますか、経済に与える影響につきましては、これは、私は同じ金を使うというならば、今日のような非常な経済の落ち込みの時点におきましては、公共事業費等といたしまして積極的な支出を行なうというほうが、はるかに効果的だと思います。しかし、さらばといって、減税が経済対策として何らの効果がないかというと、そうじやない。特に所得税の減税、また物品税の減税、これらは相当の影響力があると思う。あると思いますが、その影響力の強さは、私は、公共事業費よりは少ない、こういうふうに思います。しかし、一方におきまして、やはり今日反省してみまするときに、日本の企業あるいは個人に対する税の負担というものは、相当きつい状態だと思うのです。これはお話しのように、長きにわたって政府が追及していかなければならぬ問題である。租税の負担の軽減というものは、これは経済対策もさることながら、それとあわせて追及していかなければならぬ問題である、そういうふうに考えるわけなんです。そこで、私どもといたしましては、長期にわたって個人の所得税の減税もやっていきたい。今度は平年度で六十三万円が課税最低限になりまするが、何とかして八十万円の最低限ぐらいは実現する意気込みをもって減税政策はやっていきたい、こういうふうに思う。また、法人税におきましてもそうなんです。いま配当軽課なんというような問題があります。ああいう問題点も解決しながら、適正な法人税率というものをひとつきめていきたい。だから私は、今度の四十一年度のを、大幅減税ではございますが、これをもって終点とはしない、満足はいたしておりません。国会でも済みましたら、また直ちに税制調査会にお願いいたしまして、今度は長期目標をどうするかということをやっていきたいと思うのです。  第三点で企業減税のお話がありましたが、戦後やっておる減税、これは大体所得税が中心でやったわけであります。平均して、所得税のほうが八割五分ぐらいまできているのじゃないか、企業はそれに比べて一五%ぐらいだと思います。今度は、そういういままでの経過等も考えて、いままで問題になり、しかもいま経済が非常なむずかしい状態であり、しかも、このむずかしい状態をどういうふうに切り抜けていくか、その切り抜けていく過程を通じまして企業の合理化というものをはかりたいというので、中小企業を含めて、むしろそれを中心としての企業減税というものをいたしたわけでありますが、これも、これで終わりじゃないんで、今後も大いに進めていきたい、かような考えでございます。
  204. 倉成正

    ○倉成委員 時間がありませんので、最後に一点だけお尋ねをしたいと思います。  大蔵大臣が税制に長期構想を導入するというお考えには、賛成であります。そこで、この長期構想を入れてまいりました場合に、毎年の減税がやはり必要である。そこで、減税の基準をどこに置くかということが非常に重要な課題になってくると思います。四十年度税制調査会が打ち出した自然増収の二〇%程度を減税に充てるという考え方は、もはや今日では意味がない。やはり従前どおり、国民所縁に対する租税負担率に戻るべきであるという有力な考え方があります。四十年度の租税負担率は二二・一%、補正後は二一・三%、四十一年度は二〇・二%といわれておりますが、今後国債発行の漸減に伴い、累増が予想される歳出規模を税収のみに依存するためには、巨額の自然増収を見込むか、あるいは減税規模が犠牲になるおそれがあるわけでありまして、国民としては、政府が減税の基準をどこに置くかということをやはり一つの目安にしたい、こういう強い切なる希望があるわけであります。これらの観点から、租税の負担率を二〇%台に堅持する必要があると思うわけでありますが、どの程度の税負担率が適当であるか、お伺いしたいと思います。
  205. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 非常に経済が全体として流動をいたしておるわけであります。そういう際において、適正なる租税負担の基準、これを国民所得に求めることは、非常に困難じゃないか。それよりは、私は財政状態というものにあると思うのであります。長期にわたって目標を立て、所得税におきましても法人税におきましても、これを追求をいたしてまいる、これは先ほど申し上げたとおりでありまするが、その追求のしかたは、国民所得に対する何%というような感覚でなくて、一体財政状態はどうだ、これで余裕があるのかないのか、公債発行計画というものとにらみ合わして減税をすることが可能であるかないか、こういうようなセンスできめていきたい、かように考えております。
  206. 倉成正

    ○倉成委員 最後に一点。ただいまの大臣の御見解は一応承っておくとして、マクロの議論としてはお説のとおりかもしれません。しかし、ミクロの議論として国民が考えておるのは、やっぱり実質減税であります。そこで、昭和四十一年度の所得税減税において、物価値上がりを考慮に入れて実質減税となる配慮がなされているかどうか、今後もその配慮をなされる用意ありゃいなや、この点を一点だけ承って質問を終わりたいと思います。
  207. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ結果においてこの減税が消費者物価の上昇に対して大きな防壁となるということは、私は疑いないところであると思います。それで、今後は政府といたしましては物価問題に全力を傾ける、こういうふうに申し上げておるわけでございまするが、実質的に減税が減税の効果となってあらわれるように経済政策全体をうまくやっていきたい、かように考えます。
  208. 福田一

    福田委員長 これにて倉成君の質疑は終了いたしました。  午後三時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時十二分休憩      ————◇—————    午後三時三十一分開議
  209. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十一年度総予算に対する質疑を続行いたします。有馬輝武君。
  210. 有馬輝武

    有馬委員 最初に、法務大臣にお尋ねをいたしたいと存じますが、森脇文庫の森脇将光氏が、昨年の五月十日前後私文書偽造、同行使、恐喝未遂等で逮捕されました。その後保釈の申請なりあるいは追起訴なり、ずっと経緯があったと思うのでありますが、相当長期にわたって勾留をされておりますので、その経緯についてお聞かせをいただきたいと存じます。
  211. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいまお尋ねの件は、森脇君の逮捕から——逮捕は昨年の五月でございますが、十二月に保釈というようなことまでに、相当長い期間がたっておるということであります。これは、事件が非常に複雑に発展いたしたのでございまして“そのために時間がいろいろかかったのだと思うのでございます。この内容につきましては、詳しい経過はただいま刑事局長から詳細申し上げます。
  212. 津田實

    ○津田政府委員 森脇将光に関する事件につきましては、昨年の五月十日逮捕されまして、五月十二日、勾留請求がなされております。その後五月三十一日、七月七日、七月十二日、七月十九日、八月十四日、それぞれ起訴を受けております。その後、保釈の請求は昨年の七月一日に請求がなされておりますが、これに対しましては、同年十月六日、保釈請求却下の決定が行なわれております。この決定に対しては、弁護人から準抗告の申し立てをいたしておりますが、その申し立てに対しましては、十月十五日、申し立て棄却になっております。さらに昭和四十年、昨年の十二月三日、保釈請求がございまして、これに対して十二月十六日、保釈許可決定になっております。その保釈保証金の額は三億円となっております。この保釈許可決定に対しまして、その金額について弁護人から抗告の申し立てがございまして、それが十二月二十二日でありますが、十二月二十七日に東京高等裁判所におきまして申し立て棄却になっております。さらにこれに対しまして、特別抗告の申し立てがなされております。右特別抗告の事件は、最高裁判所において係属中であります。  なお、森脇につきましては、別途昨年十二月十四日逮捕されております。それに対しまして、十二月十六日に勾留請求がなされ、さらにその事件は一月四日起訴に相なっております。現在この別件におきまして、森脇はさらに勾留中であります。  以上が経過であります。
  213. 有馬輝武

    有馬委員 刑事訴訟法によりまして、保釈の請求ができることになっておりますが、必要のとき保釈について例外規定がありまして、保釈請求の棄却に対しては、たぶん第八十九条の第四号が適用されたものと思います。がしかし、これにもおのずから限度があると思うのでありますが、同被告が七月一日あるいは十二月三日に保釈請求をしておりますときにも、老齢のゆえをもって相当な手続をもって請求をいたしておりますのに、この第八十九条の第四号をあえて適用した理由について、法務大臣のほうから再度詳しく御説明をいただきたいと存じます。
  214. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 刑事局長から詳しく申し上げます。
  215. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年の七月一日に保釈請求がございます。これに対しまして検察官に意見を求められておりますが、検察官は、保釈不相当の意見を出しております。その理由は、ただいま御指摘がございましたように、被告人に罪証隠滅することを疑うに足る相当な理由があるという理由によって、保釈反対の意見をつけておりますが、裁判所におきましては、右の理由を認めたものとして保釈請求を却下いたしておると思います。昨年の十二月三日に再び保釈請求がありましたことにつきましては、十二月十六日に裁判所は保釈許可相当という判断をいたしまして、許可決定をいたしたというふうになっておりますから、すでに必要保釈の要件に当たるものというように裁判所は認めて許可決定をいたしたものというふうに考えております。
  216. 有馬輝武

    有馬委員 私が法務大臣にお伺いしたのは、最初の棄却と十二月十六日の保釈決定との間にいかなる経緯の変化があったのか、最初棄却した理由等がこの第八十九条の第四項からは明らかでないので、その間の経緯をお伺いしたいということで、ただ手続的なことを伺っておるわけではないのです。ですから、法務大臣にお伺いしたわけです。  なお、あわせてお伺いいたしますが、三億円の保釈金などというものは少し常識をはずれておるのではないかと思うのでありますが・ただいまの棄却の経緯といい、また常識的に考えて高額な保釈金といい、私はやはり単なる刑事事件以上に政治的な背景があるように思えてならないのでありますけれども、この点について、法務大臣のほうからお聞かせをいただきたいと思います。
  217. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 お尋ねの前段の問題は、後ほど刑事局長から申し上げることにいたしまして、三億円の保釈金の問題でございます。これは裁判所の決定でございまして、これにつきまして私どもぱとやかく言うことは差し控えたいと思うのでございまして、これは、保釈をする場合に、保釈金をどうやってきめるかというおおよそのめどの基準がいろいろあるわけでございます。それによりまして、裁判所においてしかるべく判断を下したと思うわけでございます。また、そういうふうな判断、そのほかの場合の森脇事件の取り扱い等につきまして、政治的な配慮が何か払われておるのじゃないかということでございますが、これは、全然そういうことは私はないと思うております。私自身がこの問題についての関係を申し上げますと、報告をときどき刑事局長から受けることはございますが、私のほうから進んでこの問題の報告を聞いたこともなかったくらいでございまして、したがいまして、私がこれに指図をしたこともなく、ほかのほうからこの問題についてのいろんな要求その他希望等の話も聞いたこともございませんし、これは、政治的の動きは、今日まで全然タッチしたことはございません。そういうお話は初めてでございますから、そういうことはないとお考えくだすってけっこうだと思います。
  218. 有馬輝武

    有馬委員 刑事局長、第一点についてお答えの前に、いま法務大臣から御答弁がありましたが、過去に保釈金で三億円くらいになった例があるのか、いままであった最高額は幾らくらいのものであるか、先ほどの第一点の問題と合わせてお聞かせをいただきたいと思います。
  219. 津田實

    ○津田政府委員 保釈請求がございまして、保釈却下の決定が第一回についてはございましたわけでありますが、その理由は、先ほど申し上げましたように、森脇において証拠隠滅をすることを疑うに足る相当の理由があるという判断でございます。それに対しましては、検察官はもちろんそういう意見をつけておりますが、これは起訴いたしました起訴の内容、同時に、その後の森脇の態度、あるいは吹原との関係、その他の事実内容から見て、証拠隠滅をすることを疑うに足る相当な理由というものがあると判断される結果、検察官もさような意見をつけ、裁判所もその判断を認めたものというふうに考えておる次第でございます。ただ、具体的にどういうことがその認めた理由になるかということにつきましては、これは、将来の公判の内容において明らかになることだと思いますので、その点はここに申し上げることを差し控えさせていただきたいと思うのであります。  なお、保釈保証金の金額につきましては、現在までの最高額は二千万円であります。大体逐次その額は上がっておりますが、現在まで、この森脇の分を除きましては、最高が二千万円であるというふうに私ども考えております。
  220. 有馬輝武

    有馬委員 大臣、いまお聞きのとおり、保釈金で第九十三条に保証金額を定める条件がうたわれておりまするけれども、いままでの過去の例で最高が二千万円。それが三億円というようなことは、先ほど私がお尋ねしたような疑問を提起せざるを得ないわけです。また、保釈請求に対する棄却の態度といい、そこには何らかの政治的な背景があるように、これは常識的に考えると出てくる。  しかし、この問題は水かけ論になりますから、ここで大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、昨年の九月の二十五日の地検の捜査によりまして、三十七年二月から四十年一月までに三カ年にわたって四十五億四千万円の脱税が判明したということになっております。で、三十五年の半期で金利等で三億二千万円の収入があったにもかかわらず、二千万円の赤字であったというような申告をしておった。私はここでお伺いしたいと思いますることは、大蔵省はこういった税の捕捉に対して、地検の調査がなければわからないのか、ここら辺の経緯をお聞かせいただきたいと思います。
  221. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 森脇の問題は、かねて国税庁におきましても着目をいたしまして、ずいぶんいろいろないきさつを経ております。しかし、何分にも貸し金業でありまする性格もありまして、その正確な捕捉が困難だったわけでありまするが、はしなくも刑事事件と相なりましたので、この刑事事件の歩みと歩調を合わせまして、脱税額を徴集する一切の手続をとり進めておるわけであります。で、こういう巨額な脱税が見のがされておったということは、まことに遺憾なことでございます。大蔵省といたししましては、こういうことがないように、あの事件を契機といたしまして特別の調査機構も設けまして、大口のそういうものがああいうままで見のがされておるということのないように努力しておる最中でございます。
  222. 福田一

    福田委員長 この際、刑事局長から発言の申し出がありますので、これを許します。津田刑事局長
  223. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど森脇の保釈不相当であるという棄却の決定が行なわれておりますことを申し上げましたが、その理由の中には、森脇文庫関係におきまして偽証を強要しておるという事実がある、吹原との共謀関係についての否認、その他証拠の作為があるというようなことが、その棄却の理由になっておるということになっておりますので、その点をつけ加えて申し上げます。  なおもう一つ、保釈保証金の最高額は二千万円と申し上げましたが、これは本件を除いてのことでございまして、本件では、吹原に対しましては三千万円の保釈保証金がきめられておりますから、その点つけ加えて申し上げます。
  224. 有馬輝武

    有馬委員 いまの刑事局長の御答弁ほっけ加えて聞いておきますが、問題は、大蔵大臣、遺憾でありましたということでありますけれども、遺憾であっては済まされないからお伺いをしておるわけなんです。このような多額な脱税が行なわれておるのについて、現在までの税の捕捉体制というものがどこに欠陥があったのか、それをどのように是正しようとしておるのか、これをあわせてお聞かせ願えなければ、徴税行政というものに対して国民は信頼を置くことができない。そうでしょう。あれは遺憾でありました、見過ごしておりました、われわれの能力では捕捉できませんでしたでは済まない問題をはらんでおると思うのでありますが、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  225. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 森脇の問題につきましては、非常に徴税上いろいろないきさつを経ておるのであります。ずいぶん努力をいたした形跡がございまするが、なかなか的確な把握、捕捉ができない。それが今回の刑事捜査によりまして明るみに出てきた、こういうことでございまするが、あれは、まあああいう特別なケースでありますが、まだ刑事事件にならないので大きなものがあるかもしらぬ、こういうようなことがあってはならない。そういうことで、調査能力を大口に集中するというような仕組みをつくる等、ああいうことのないように努力をしておる、かような次第でございます。
  226. 有馬輝武

    有馬委員 私は一つの例として租税公平負担の原則、そういう立場からお伺いをしておるわけです。今後あってはならないということではなくて、あった事実に対して大蔵大臣としてはどのように考えておるか、このことをお伺いしておるわけです。
  227. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 森脇のケースにつきましては、刑事捜査の結果、全貌が明らかにされましたので、それに歩調を合わせまして、脱税額の捕捉のための万全な手続をとっております。
  228. 有馬輝武

    有馬委員 私が本日税制の問題で冒頭にこれをお尋ねしたのは、——現在、本年度も二千五百九十億の税の落ち込みがある。せんだって大臣は、少し見込みよりも伸びてきたので、国債の発行を二百億くらい減らしてもいいんではないかというようなことを、二月九日ですか語っておられます。その理由として、金融緩和によって法人税の即納率が高まるなど、おもに法人税収が予想外に伸びることによるものだがというようなことで理由づけをいたしておりますが、私は、このことをそのまま受け取るわけにはまいらないのであります。といいますのは、その当時、これも同じ日でありますが、同じ日に全国の財務局長会議が開かれまして、全国の十財務局長から、経済情勢についての報告がなされておりまして、これは各般にわたっておりますけれども、その共通するところは、減産体制が引き続きとられ、生産が依然停滞しておる。設備資金や増加運転資金など、前向きの需要にあまり動く気配が見られない。労働市場では求人が減って、需給がゆるむ傾向が続いておるというようなことで、この二百億の増収見込みよりも、二千五百九十億を見込んだときよりも、落ち込みが二百億下回る。この理由づけを大蔵大臣がやっておることと、この財務局長の報告とは全然様相を異にしておるのであります。私が見るところでは、この二百億の伸びというものは、苛斂誅求というか、徴税行政の結果によるものであるとしか判断できないのであります。私も最近幾つもの例を聞いておりますけれども、大口の森脇みたいなものは脱税捕捉もできないで、検察庁の手に入ってから、ああそうですかというようなことで、のこのこついていくところの大蔵省国税庁が、事、中小零細企業に対しては、それこそ角をためて牛を殺すたぐいの徹底的な捜査を行ない、ただその企業だけではなくして、すべての関連産業に及んで、関係銀行筋から帳簿から、全部洗っておる。この事実から見て、私は、大蔵大臣の法人税の伸びがあってなんというような気楽なことばは、もうそのまま返上してしまいたいのであります。  一つの例で申し上げますが、これは東京のある例ですけれども、つい最近、架空の仕入れが二百万あったというようなことで、三十六年九月から四十年九月までの帳簿を全部押収すると同時に、関係会社に対しまして徹底的な調査の手を伸べておる。小さな企業でありますから、その取引先も全く零細そのもの、帳簿もほとんどないというのが実態であります。そこへ税務署から、まるで鳴りもの入りで捜査に来られたんでは、もう商売は完全にあがったりであります。その企業はもちろん、関連しておるところも、とてもこんなことをやられたんではかなわぬということで、すべての取引がストップしてしまう。これは、この一つの例に限らないのであります。私は実際に税務署に行きまして、その実態を聞きました。私が聞いたとおりのことをやっておる。角をためて牛を殺すようなことを一方ではやっておきながら、一方ではこういったていたらく。徴税行政に根本的な欠陥があるとはお思いになりませんか。
  229. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 徴税能力を充実するということは非常に大事なことであるとともに、むずかしいことでもあるわけであります。大蔵省といたしましては、どういうふうにしてこの徴税要員を確保し、またこれを養成するか、ずいぶん苦心もいたしておるわけです。一方におきまして、いまはそういう傾向が少ないのでありますが、景気がいいというときには、ある程度税務に習熟しますと、会社のほうで引っぱりに来る。そういうような傾向もありまして、なかなか要員の確保、養成ということは容易ならざることなんでありますが、教育機構を整備するとか、あるいは待遇の改善とまでなかなかいきませんけれども、そういう方向について意を配るとかいたしまして、できる限り法で命ぜられた徴税が公平にいくように、的確にできるようにというための努力をいたしておるわけであります。
  230. 有馬輝武

    有馬委員 私がお伺いしておるのは、一人一人の税務職員の諸君の能力の問題なり方法論の問題を伺っておるわけではないのです。第一線の税務職員の諸君は、それこそ、大臣がいま言われるように血みどろの努力をしております。限られた人員で、限られた予算で、宿舎もなくて。しかし問題は、それらの諸君をしていまみたいな状態に置かせるその徴税行政の根幹について、大臣の姿勢についてお伺いをしておるわけです。その点についてのお答えをいただきたい。
  231. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 税は、その根本である法律自体が適正でなければなりませんけれども、その執行も適正にやらなければならぬ。これは、税務行政を運営する上の基本として考えております。
  232. 有馬輝武

    有馬委員 どうも私の尋ねていることにぴんとこない答弁でありますけれども、時間がありませんから……。   〔委員長退席赤澤委員長代理着席〕  とにかく国民が、この前の本委員会における質疑の過程で、加藤委員質問政府側が答えて、中小企業の倒産が六千件以上にも及んでおる、最近の最高の率を示しておる事態について、やはり先ほど申し上げましたような零細企業が、徴税行政の面からも抜き差しならないところまで追い詰められた結果、手をあげるというような件数が私は相当に含まれておると思うのです。六千件のうち三分の一の二千件以上は、はしなくも、福田大蔵大臣の部下たちの手によって企業をつぶしたと見てもいいんじゃないかと思うのであります。そういう意味で、やはり基本的な姿勢の問題として、徴税行政はもちろん厳正でなければいかぬけれども、先ほど申し上げましたように、角をためて牛を殺すような形は避けていかなければいかぬ。企業を伸ばしていくための徴税行政でなければいかぬと思うのです。将来にわたって税収を伸ばしていく、そういう意味から企業を見詰めていく、その姿勢が根本になければ、私は、現在の零細企業というものは、あとでお尋ねいたします税制の面からちょっとした手を打ったって、絶対に救えない状態にまできておると思うのであります。  このことを特に申し上げまして、次にお伺いいたしたいことは、租税特別措置についてであります。  昨年度、大蔵省は、本年度の三月三十一日の期限切れのもの等のものを含めまして、租税特別措置の整理改廃を行なって、大体四百億ぐらいを浮かす構想を持っておったようでありますが、整理どころか逆にふえております。との経緯について、大蔵大臣の所見をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  233. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 特別措置につきましては、社会党のほうから、これは廃止すべきものであるというような御意見をしばしば承っております。しかし、これはそのときそのときの経済情勢に応じまして、それぞれ意味を持つものであり、今回も税制改正にあたりましてずいぶん検討してみたのです。ところが、一部のものは廃止する、これはできるのでありまするが、大体において廃止することができない、こういうことに相なった次第であります。逆に、特別措置を強化しなければならぬという必要が出てきておりますのは、特に中小企業であります。中小企業につきましては、ただいま御指摘のように、非常に困窮した状態である。これに対して、税制上何とか手を打ちたい、かようなことで、中小企業を中心に、なお企業一般の資本蓄積ということも考慮いたしまして、特別措置を強化する、これは今日日本が置かれておる経済情勢としてやむを得ざることである、こういうふうに考えた次第でございます。
  234. 有馬輝武

    有馬委員 もちろん、今度の租税特別措置の改廃の中で、いま大蔵大臣指摘されたような点がちょっぴりないでもありませんけれども、問題は、今回のその三千六百億減税の内容と効果の問題であります。また、所得税減税と企業減税の比率の問題であります。先ほど倉成委員からもお尋ねがあったようでありまするが、今回の減税というものは企業減税重点主義であることは、これはいなめない事実だと思うのであります。確かに、中小企業の分野にも若干の手が加えられておることも事実でありますけれども、重点はあくまでも大企業の特別措置の拡大であり、当然手を加えなければならない利子所得の減税なり何なりについて、全然ほうかむりで過ごしておる、この態度について私たちは指摘をいたしておるわけであります。税制調査会の意向というものも、少なくとも所得税減税に重点が置かれておったはずでありますが、これが五分・五分になった理由についてお聞きかせをいただきたい。
  235. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 五分・五分にはなっておりませんです。六対四でございます。  まあ減税といいますと、これは終戦後ずいぶんとられてきた政策でございますが、その際には所得税が中心でございます。ずっと、大体の場合そうでございます。今日までの経過を見てみると、八五%ぐらいまで所得税の減税がいきますか。企業のほうが一五%というような比率になってきておるわけでございます。ところが、今日のこの経済情勢を考慮してみますると、個人もたいへんなことです。したがって、平年度についてみますと、千五百億円にのぼる減税もする、そういう際に、企業をほうっておいていいかどうか、こういう問題があるわけであります。特にその中でも中小企業の問題であります。そういうことを考えまずときに、所得税は千五百億の幅の減税をする、企業も千億程度のことをしなければならぬじゃないか、こういう考え方になりました。しかし、お話しのように五分・五分までは持っていきません。所得税が六で、企業は四、こういうことにいたしたわけですが、今日不況を打開しなければならぬが、同時に、この不況をして再び繰り返さしてはいかぬ、それには企業の体質というものも、大企業、中小企業をおしなべて改善しなければならぬ、また同時に、中小企業の負担も軽減しなければならぬ、そういう事情も考慮いたしまして、また、過去においては所得税中心でいった、企業が置き去りになっておるという事情も考慮いたしまして、まあ六対四の、所得税、企業課税のバランスというものを考えた次第でございます。
  236. 有馬輝武

    有馬委員 法務大臣、もうけっこうでございます。  税の専門家に向かっていまみたいな抽象的なことを言っちゃってはぐあいが悪いです。福田さんも専門家かもしれぬけれども、私も専門家です。私がお伺いしておるのは、企業減税の効果が、いま言われるように、その資本構成の面まで考慮してやられたかどうか、具体的にお伺いをしておるわけです。私に多くを言わせないで、意のあるところを、抽象的な答弁ではなくして述べていただきたい。減税効果がないものを減税をやったって、これは見せかけの減税ですよ。もし今回の減税で効果がありとするならば、それを具体的にお示しいただきたい。今度この中小企業にたまたまおこぼれをやっておるのを見ても、スクラップ化だとか、企業合併だとか、うしろ向きのもので、いわゆる福田さん得意のいわゆる景気を刺激するような、企業を立ち直らせるような意味での減税というものは見当たりませんよ。あったら具体的にお教えをいただきたい。
  237. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 さっき倉成委員の御質問にお答えいたしたのでございますが、同じ財源を使うならば、今日の経済情勢から見て、景気対策上からは、公共事業なんかの歳出に用いたほうが有効である。しかし、こういう際に、減税が景気的効果がないといってこれを否定するわけじゃないのであります。すなわち、減税三千億の中におきましても、所得税でありますとか、あるいは間接税——所得税は個人の購買力に関係してきます。また間接税も同様の効果を持つわけであります。そういう意味において、これなどは確かに景気問題と相当深い関係を持つとは私は思いますが、その持ち方の強さが、公社事業費等として歳出を行なうという場合に比しますれば少ないのじゃないか、私はそういうふうに考えます。私どもがそういう際になぜそれじゃ減税をしたかというと、それにいたしましても、景気対策的効果のある減税であります。同時に、減税は景気ばかりの側面から考えたくないのであります。景気対策的な側面もあるけれども、同時にこれは資本蓄積、法人、個人を通じての資本を蓄積するという意味合いにおいて、長期にわたって国民負担を軽減すべきである、私はこういうふうに考える、その考え方に基づくわけなんであります。一方において景気貢献もねらい、また一方において、国家が借金をしても、なお企業や個人は富ましめるというような考え方をとらなければならぬ、そういう考え方に基づくわけであります。
  238. 有馬輝武

    有馬委員 その富ましめるというのは、企業については具体的にどういうことですか。
  239. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度の企業減税全般がそれに該当するわけですが、まず法人税率を二%引き下げておる。中小企業につきましては、三%引き下げております。企業の可処分所得がそれだけふえるわけであります。また企業がこれを蓄積してもいいわけであります。それからまた合理化を行なった場合の減税、あるいは資本蓄積を強化した場合の減税、あるいはスクラップ・アンド・ダウンという場合の減税、これらはこの経済状態を再び繰り返させない、その一つのかなめは、企業の内部蓄積を強化する点にある。そういう刺激を税制面を通じて与えていきたい。もとよりこれは、企業の自主的なそういう態勢がなければ始まらぬことでありますが、その刺激になる。そういう意味合いにおいて、さような考え方をとっておるわけであります。
  240. 有馬輝武

    有馬委員 資本蓄積と言われますけれども、その資本蓄積ということは、結局は資本構造の是正につながらなければ意味がないわけでありますけれども、現在まで昭和三十八年から大体総資本四十八兆に対しまして、法人税収、これは概算ですが、四兆八千億円。かりにこの四兆八千億全部を減税で自己資本に回したといたしましても、資本比率は一〇%くらい、とてもそんなことは夢物語でありまして、全部を回したとしても、そういう程度のものが、今度のような減税で、いま言われる資本蓄積に何ほどの役に立つか、この点私たちは疑問を持たざるを得ないのであります。お聞かせをいただきたい。
  241. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 資本蓄積を税制の改正だけでやっていく、これは無理というか、できる話じゃないのであります。これはいまも申し上げたのですが、企業の自主的なそういう気持ちですね。何とかしてそういうふうな努力をしたい、これが中心でなければならぬ。いまそういう気持ちが盛り上がろうとしております。そういう気持ちをせめて税制面で助長してやりたい、刺激してやりたい、そういう考え方でありまして、これで実際うんと蓄積ができるというようなものじゃないと私は思います。それだけの幅のことをやったら、有馬さんなんかもなかなか御納得されないと思います。まあ刺激剤として効果があれば、という程度のものであります。
  242. 有馬輝武

    有馬委員 あわせてお尋ねをいたしますが、所得税減税にいたしましても、これは具体的に数字をあげなくても、大臣、御承知のように、今度の場合、重点は中高所得層に対する減税ですね。この場合には、これは福田さんの好きな蓄積に回るのですよ。消費には回らぬのです。それと現在の不況の実態とを考慮するときに、減税効果に大きな疑問を持たざるを得ないのですけれども、その点について、これはむしろ租税負担公平の原則に矛盾する。その矛盾というものを拡大するに役立っておるだけで、いわれるところの効果というものはほとんどないと断じてもいいのではないかと思うのですが、その意味から所見を承りたい。
  243. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 全く見解の相違というほかありません。所得税におきましては、ともかく課税最低限がいままで五十六万円であった。それを今度、平年でいいますれば六十三万円まで引き上げる。これは個人の可処分所得というものを非常にふやすことになるわけであります。  なお、あわせて今回は、多年問題になっておりました中堅所得層と申しますか、三百万円までの所得者に対する税率の改正をする。これも私は、世間が待望しておった減税である、こういうふうに思うわけでありまして、これは景気の刺激にももちろんなることはなりまするが、同時に、私のねらいとする蓄積という面にも大きく貢献していく、かように考えます。
  244. 有馬輝武

    有馬委員 主税局長、三百万円以上の所得者は、二千万人の所得税の納税者の中で、比率として何%を占めるかをお聞かせいただきたい。
  245. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 課税所得三百万円でございますので、総所得三百万円とは若干姿が変わっておりまするけれども、現在の私どもの統計資料では、二百万円のところで区切った統計資料が出ております。その他若干の食い違いがございますけれども、現在のところ、申告所得税の納税者についてみれば、二百万円超の人員の構成比は、三十九年度におきまして八%強。大体八%ばかりが二百万円超の所得税の納税者の数になる見込みでございます。
  246. 有馬輝武

    有馬委員 大臣、いまお聞きのとおりですよ。これが三百万円以上だと、さらに五%を割っておると思います。現在の不況克服の一つの一番大きな手だてというものは、これは本委員会でわが党委員が終始主張しておりますように、有効需要を喚起することになければならぬ。これはおわかりだろうと思うのです。とするならば、大衆の購買力を高めていく、そういう面からも、税制の面からでも——大蔵大臣のことばのように、税制が全部ではないけれども、しかし、税制の面からも考えてしかるべきなのに、これは逆じゃないですか。
  247. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は先ほど申し上げたような趣旨で、課税所得三百万円以下の中堅所得層の税率を調整する、税率を軽減する。これは私は経済対策上も、また資本蓄積対策上も非常に有効である、こういうふうに考えます。
  248. 有馬輝武

    有馬委員 私は数字の上で三百万円以上にウエートが置かれているから、お尋ねしているんです。三百万円以上に、中高層に重点が置かれているじゃないですか。置かれてないですか。
  249. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 大臣の申されましたように、税率の緩和は、課税所得三百万円のところまで緩和いたしております。それをこえますところは緩和されておりません。昭和三十二年につくられました税率構造のままでございます。したがいまして、大臣のおっしゃったように、中堅所得層を三百万円程度と見まするならば、中堅層に対しての税率が緩和されている、こういうことだと思うのでございます。
  250. 有馬輝武

    有馬委員 塩崎君、苦しいよな。——中堅層に重点が置かれておることは事実なんです。いま購買力を高めなければならぬのは、この層よりももっと低所得者層なんです。有効需要を高めるためには。その点で少なくとも大蔵大臣の言うねらいとは実際の数字上では食い違っておることを、この際明らかに指摘しておきたいと存じます。  次にお伺いいたしたいと存じますことは、最近日銀総裁が無条件買いオペについての構想を明らかにして、当初は夏ごろからということであったものが、今月下旬には踏み切らざるを得ないような状態になってきておるようでありまするけれども、これは、私は、将来には国債を日銀のオペの対象にする前提として見るわけでありますけれども、これはひがみであるかどうか。日銀総裁は、加藤委員質問に答えて、買いオペの対象にはしないのだと言っておりますけれども、この経緯を見るときに、少なくとも資金需要が逼迫してきて、時期を早めなければならなかった経緯を見るときに、あとでもこの市中消化の面についてはお尋ねをいたしますけれども、この無条件買いオペというものが一つの水を向けたものだと受け取っておりますが、これがひが目であるかどうか、お聞かせをいただきたい。
  251. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ひが目であるかどうかと聞かれれば、ひが目であるというふうにお答えするほかないのであります。つまり日銀総裁は、本席でも申し上げたんでありますが、国債をオペレーションや貸し出し政策の対象にはしない、こういうふうには申し上げていないのです。ただ昭和四十一年度において発行する公債あるいは四十年度に発行した公債、またこれから発行する四十年度の公債、これらのものは一年間はその貸し出しやあるいはオペレーションの対象として実際問題としてこれを用いないという見込みであるということを申し上げたわけであります。  それから、さらにいまオペレーションを今度は始めたがと言うけれども、日本銀行のオペレーションは、財政の揚げ超あるいは払い超、それに応じまして常日ごろずっとやっておることでありまして、これは今後といえどもやっていく方針でございます。
  252. 有馬輝武

    有馬委員 国債を含めて、一年後については検討するということですか。
  253. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今日でも国債をオペレーションの対象にいたします。ただ今度新しく発行した、またこれからする公債は四十一年度中はその対象にはいたしません、こういうことを申し上げておるわけであります。
  254. 有馬輝武

    有馬委員 それだけでけっこうであります。次に、自治大臣にお伺いをいたします。自治省では四十一年度の地方交付税交付金の伸びが非常に減退鈍化するので、地方交付税法の改正検討しておられるようでありますが、その方向、内容を明らかにしていただきたいと存じます。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  255. 永山忠則

    ○永山国務大臣 詳細は局長からお聞き取りを願いたいのでございますが、交付税が、やはり三二%に引き上げましても、なお一般財源、ことに公共事業等の消化が支障を来たしておりますので、一部地方債、すなわち千二百億をもってこの公共事業の消化財源に充てる関係になりますので、その千二百億の公債関係は、できる限り公共事業を多く負担しておる府県に重点配分をいたしまして、市町村には交付税を多く配分するという形において、単位費用の調整等をいたすことを目的として地方税法の改正をいま意図いたしておる次第でございます。  なお、詳細については局長からでも答弁さしてよろしいと存じます。
  256. 有馬輝武

    有馬委員 自治大臣、あとで詳細は局長に伺いますけれども、これは、あなたが全生命を打ち込んで大蔵大臣とそれこそしのぎを削らなければならないあなたの唯一の仕事です。そういう意味で大綱についてだけは大臣からお答えをいただきたいと思うのでありますが、それでは昨年度の地方債の額と現在までの累積額、残額をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  257. 永山忠則

    ○永山国務大臣 地方債の上回り額は、一千六百億円を上回るものになっております。
  258. 有馬輝武

    有馬委員 現在までの累積をお聞かせいただきたい。
  259. 永山忠則

    ○永山国務大臣 地方債は、四十年度がまだいよいよにならぬと計数整理ができませんが、千六百三十億でございますが、四十一年度は一般会計の関係でありますが、二千八百九十五億になっておるのであります。その点特別会計におきましても上回っておるのでございます。
  260. 有馬輝武

    有馬委員 自治大臣大蔵大臣邸に朝がけをして、この問題について非常に御苦労なさった経緯については、私も新聞その点を通じて知っておるわけです。が、しかし、現在までの累積がおわかりにならないようでは、これは迫力がないんじゃないですか。
  261. 永山忠則

    ○永山国務大臣 一般会計の累積額は一兆一千億でございます。
  262. 有馬輝武

    有馬委員 その地方交付税法の改正方向について、局長から具体的にお聞かせいただきたい。
  263. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 昭和四十一年度におきまして、地方交付税の算定方法につきまして、特例を講ずる必要が生じたのでありますけれども、近日中に昭和四十一年度における地方財政の特別措置に関する法律案並びに地方交付税法の一部を改正する法律案の二法案を準備いたしておりまして、御審議をわずらわしたいと考えております。明年度におきます地方交付税制度改正に関する基本的な事項は、おおむね次のような内容でございます。  まず第一点が、明年度におきましては、地方財政の現況にかんがみまして、その財源を増強して財政の健全な運営を確保するために、国税三税からの繰り入れ率を現行の二九・五%から三二%に引き上げて総額の増加をはかるとともに、昭和四十一年度に限り百七十四億円の臨時地方特例交付金を普通交付税とあわせて算定交付することといたしております。  なお、算定方法につきましては、給与改定の平年度化、あるいは社会保障関係基準の引き上げによりまして必要とされる一般財源の増加額を基準財政需要額に算入するため、関係費目の単位費用を改定いたす予定でございます。  第二点は、経済の発展並びに国民生活水準の向上に対応すべき公共施設等の整備につきまして、引き続きその促進を必要とするわけでありますけれども、明年度におきましては、その財源として地方債が大幅に増額されることになったことに伴いまして、特に都道府県分にかかるこれらの経費につきましては、その対前年度増加分の大部分を地方債によって措置いたすことに相なりますので、現在基準財政需要額に算入されております投資的経費の相当部分を地方債に振りかえる措置を必要とすることになりますので、その投資的経費にかかる単位費用関係改定が行なわれる予定であります。  それから第三点といたしましては、財政力の貧弱な地方団体の財政基盤の充実につきまして、引き続き可能な限りその促進をはかるために必要な措置をとりますと同時に、特に来年度の場合は、今回の国勢調査によりまして人口の急減する団体が相当出てまいりますので、それらに対する交付税の措置につきまして必要な措置を講じたい、かように考えておる次第でございます。  以上がおもな改正点でございます。
  264. 有馬輝武

    有馬委員 いまの点についてお尋ねする前に、大蔵大臣、先ほどの答弁で、一年間はオペの対象にしないという御答弁でありましたけれども、質疑に当たった加藤さんの直接日銀総裁から聞いたことでは、とにかく担保にも買いオペの対象にもしない、一年間というようなあれがついてなかったというのでありますが、この点について日銀総裁の答弁との差異といいますか、食い違いについてこの際明らかにしていただきたい。
  265. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もこの席で日銀総裁の答弁を聞いておったのでありますが、昭和四十一年は新規国債を担保にもいたしません、オペレーションの対象にもいたしません、こう言っておられたわけであります。
  266. 有馬輝武

    有馬委員 課長、いまの投資的経費のうちの地方債に振りかえる分で、四十一年度は額としてどの程度になるか、明らかにしていただきたいと思います。
  267. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 現在のところ約六百六十億程度と予定しておりますが、まだなお試算中でございます。
  268. 有馬輝武

    有馬委員 この点では、数字の点で若干問題がありますが、とにかく国債発行によりまして地方財政に及ぼす影響というものは、いま自治大臣局長から御答弁がありましたように、ここで根本的な再検討を地方財政に加えざるを得ない状況に追い込んでおるわけであります。もう地方財政は完全に手をあげておるというのが実情であります。国税三税の減額、それはもうじかに響いてくる。また経費の自然増、歳出面でのたとえば生活保護費なり児童措置、結核医療費、こういった社会保障関係、あるいは直轄事業費、公共事業費、失業対策事業費、公務員の給与改善、こういった面を加えてまいりますと、これはもういま自治大臣が御答弁になったような結果を招来するのはきわめて明らかでありまして、−明らかというよりも、自然の成り行きであります。これに対して大蔵大臣としてはどのような措置をされるのか、お聞かせをいただきたい。
  269. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 地方財政は少し長い目の、また広い立場から考えますと、決して行き詰まっておる状態ではない、そういうふうに考えます。つまり昭和二十七、八年のころは非常に困っておって、そして御承知のような再建整備措置をとられて、その再建整備団体として指定されました府県、市町村、これらは、若干の例外はありまするが、大体において再建整備段階を終えまして、三十九年度までの状況は非常によかったのであります。ところが、三十九年の下期から悪化し始めておるのです。これがまた四十年度は一段と悪化が進む。四十一年度は、想像するところによると、もっと悪くなりそうである。なぜであるかと申しますると、これはもう一に経済界の動きなんです。今日の経済情勢を反映いたしまして、国の交付税の交付が減ってくる。また、地方自体の固有財源のほうの税収が減る。これが影響しておるのです。ですから、経済を立て直す、経済が常道に戻るということに相なりますれば、私は大筋としては地方財政は健全な方向にまた立ち返る、こういうふうに考えるわけです。しかし四十年度は非常に苦しい、そこで特別措置を講じたわけであります。また四十一年度も引き続いて苦しい、こういうことで、四十年度は千二百億でありましたが、今度は二千二百億円の特別措置をとりまして、そのつなぎをとる、こういうふうに考えておるわけでありますが、とにかく地方財政は国の財政一体となって、車の両輪として国の仕事を推進するわけでありまするから、今後とも地方財政の強化につきましては、できる限りの配意をしてまいる所存でございます。
  270. 有馬輝武

    有馬委員 ことばじりをとらえるわけではありませんけれども、車の両輪かもしれぬけれども、一方はこんな小さな車なんです。一方は七千三百億という国債を出して何とかまかなうかもしれないけれども、地方はそれができないじゃないですか。四十年度さえも一千億以上のものを地方債でまかなわなければならぬじゃないですか。それが車の両輪ですか。どこに車の両輪と言えるところがありますか。
  271. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体、予算の規模から申し上げましても、車の両輪、決して狂っておりません。昭和四十一年度は、地方財政の規模は四兆一千億前後であります。国のほうは四兆三千億であります。大体見合いのとれている財政です。車の両輪のごとき形をなしておるわけであります。
  272. 有馬輝武

    有馬委員 額はそうですよ。問題は、国のようにイージーな形で——国債それ自体には論議はありますが、とにかく国債という形で福田さんは逃げられるけれども、永山さんはそれで逃げられないのですよ。そのことを聞いておるのです。  それでは永山さん、大蔵大臣が言うように、車の両輪で歳入歳出ともバランスがとれておるのですか。
  273. 永山忠則

    ○永山国務大臣 収支は大体均衡がとれておるのでございます。最初三千三百六十億の欠損がくるということを算定いたしたのでございますが、最後に大蔵省と自治省の折衝の結果、一千億の一般財源と千二百六十五億の地方債関係でこれがつじつまが合うということになりましたので、その間の金額の差が問題となっております。しかし、それはいわゆる行政費の節約関係が百五十億、固定資産税等の税率調整で百億、さらに超過負担で二百五十億、その他で約六百億の差ができておりますことは、経済成長率の見方が、最初自治省が試算いたしましたときは名目一一であったかと思いますが、その後いよいよ最後の決定になりましたときには、それをやや上回っております。そのことによりまして、税の増収の関係、国税の増収分の関係等がございますので、結局これは十分やっていけるという見通しになっておる次第でございます。
  274. 有馬輝武

    有馬委員 実に気楽なことをおっしゃるので、私のほうが驚くのですけれども、四十年度でも一千億以上のものが縁故債、市場公募債にたよらなければならぬ状態にあるじゃないですか。そうでしょう。そのことをお伺いしておるのです。四十一年度はさらにこの七千三百億、特に三税の交付税率に及ぼす影響から見て、この趨勢値というものはのがれられない運命なんですよ。それに対してどのような手だてを講じようとされておるのか。それを予想されだからこそあなたは六・五%というような交付税率の引き上げを大蔵大臣と折衝されたではありませんか。それが二・五%に押えられた。その穴埋めはどうされるのかということをお伺いしておるわけです。
  275. 永山忠則

    ○永山国務大臣 お説のように、その財源補てんは交付税で全部補てんしていただくということを強く期待いたしておったのでございますが、しかし、いま流動的な時代であるから、交付税の引き上げは結局二・五%になりまして、あとを起債で見るという、すなわち公共事業方面重点的に起債の充当率を上げて、それによって処置するというので千二百億というものが特別に起債になったわけであります。国も借金いたしておるときでございますので、地方もまた借金で補う以外にないのではないかというように感じて、そういうことになったような次第でございます。
  276. 有馬輝武

    有馬委員 国も借金するから地方も借金いたしますと、気楽におっしゃっていますけれども、借金できないような情勢に金融情勢というものはなってきておるのですよ。たとえば公共事業費の地方負担金、いままで四五%であったものを、先ほどの課長の答弁のようにこれを九五%にしなければならなくなっておるでしょう。そして、いままで地方債で、とにかく都市銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫、信連、こういったところからも目一ぱいに金を借りておったのに、さらにこれから膨大な額を借りていかなければならない。そのめどが立つかどうか。頭の中では立つかもしれない。しかし現在までの累積地方債の残を見てごらんなさい。地方財政はにっちもさっちもいかなくなっておるじゃありませんか。だから地方交付税法を改正しようとしておるのでしょう。国と同じようにどうにかやっていけるのですか。
  277. 永山忠則

    ○永山国務大臣 国と地方は一体でございますので、国のほうで強く一体的な力でもって必ずこれが消化できるようにできるものと信じておる次第でございます。
  278. 有馬輝武

    有馬委員 永山さんはお人柄だから、これ以上申し上げませんけれども、これはたいへんなことなんです。いずれ機会を見てまた数字の上で一々お話を伺いますから、これは保留にいたしておきたいと存じます。  いま申し上げますように、大蔵大臣、とにかくその四十一年度の公社債の発行額は約二兆五千億にものぼるのですよ。国債七千三百億、政府保証債四千億、地方債七百二十億、事業債四千五百億、利付金融債五千億、非公募地方債三千五百億、合わせますと二兆五千億、そして、これが国債市中消化と競合することはもう明らかであります。市中消化をたてまえとするとおっしゃるけれども、このような状態の中で七千三百億の国債が簡単に消化できるとお考えですか。
  279. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、私も非常に慎重に幾らの額が適切であるかということを検討してまいったのです。この半年間は大体その検討に私の努力の焦点を向けるというくらいの検討をいたしてきております。  前にも御説明しておるし、資料も差し上げておるわけでありまするが、蓄積の——金融機関の資金力の伸びですね、これはもうわが国の経済においては相当のものなんであります。六兆ないし七兆の伸び、これは私は決して過大じゃないと思う。いまのお話の地方財政の問題も、そのワクの中で解決をするわけであります。  地方財政一つをとってみましても、国と同様に、四十一年度におきましては六千七百七億円の起債を必要とする。そのうち三千八百六十一億は運用部と簡保で持つ、こういう計画であります。縁故債が千六百億ばかりありますが、その他は市場公募になるわけです。これが五百六十億であります。とにかく運用部で三千八百億持つ。それから市中、市場公募で五百六十億消化する。これはそうむずかしいことじゃございませんです。残りは縁故ということになりますが、これは昨年もやったことです。昨年の初めのうちは非常に困難祝されておったのです。しかし経済界の資金需要がないという事情を反映いたしまして、これはそうむずかしくなっておりませんです。来年もこの情勢は続くであろう。金融機関の総資金量、それから資金運用部の二兆円の規模の実力、こういうことから、私は地方債について問題とするところはない、こういうふうに考えております。  なお、事業債、金融債、そういうものにつきましては、昭和四十一年度においてはどういうふうな状況になろうか、これも相当の規模になると思います。しかし、それぞれこの預金の増加が完全にのみ込み得る数字になり得る、かように考えております。
  280. 有馬輝武

    有馬委員 大蔵大臣ともこの問題ではまた大蔵委員会でいたしましょうけれども、あなたは資金量の増加をもっていまみたいに気楽なことを言われるけれども、あなたのねらいとするところの景気刺激策というものが効果を奏するとするならば、資金需要というものは根本的に変わってくるのですよ。その中で消化できるかどうかということをお伺いしておるのです。これは二律背反なのです。その点について、ただこちらだけ見る、こちらだけ見る、そういうことをやっておるから気楽なことをおっしゃられる。しかしこれは、時間がありませんから、いずれまた、永山自治大臣福田大蔵大臣とは、数字の上ではっきりいたしましょう。とんでもない話です。国債の地方債に及ぼす影響について、こういうところに自治省を追い込んでおる稲田大蔵大臣のほうも気楽な顔だけれども、追い込まれておる永山さんも気楽な顔、大へんなことです。これは。地方財政は完全に破綻ですよ。もうこの問題で長くあれするわけにいきませんので、農林大臣にお伺いいたします。  農林大臣、韓国ノリについてお伺いをいたしたいと思いますが、今国会に関税定率法の改正法律案が出ておりまして、その中で経済事情を参酌してノリその他五品目について改正を行なう、ノリについては一枚二円を一円五十銭にするということになっておりますが、私は、この関税定率法の改正に関連いたしましてお伺いしたいと思うのでありますけれども、韓国においては四十銭ぐらいから一円で買い付けることのできるこのノリが、日本においては五十倍の二十円しておる。その流通機構について、農林大臣、通産大臣としてはどのように考えておられるか、お聞かせをいただきたい。
  281. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 韓国ノリの四十年度の買い入れについては、まだ市中へは出ていないわけであります。それは、内地のノリの生産中でありまするので、出ておりません。そこで三十九年度のノリが出ておるわけでありますが、それは韓国から輸入された値段は九円四十五銭、こういうことになっております。四十年度のやつは五円五銭でございますが、これはまだ市中へ出ておりません。九円四十五銭のなにが、これが関税がその当時二円かかって十一円幾らになり、それから手数料等で十一円九十五銭くらいになります。それが卸、小売りを通じまして大体十五円三十五銭程度に売られておる、こういうわけでございます。日本のノリはその当時十七円四十銭、こういう市販でございます。大体ノリの質のいいのはそれよりも少し高いそうでございまするが、日本内地ノリと朝鮮ノリと平均的に言えば一五%ないし二〇%違う、こういうことのようでございます。  そこで、この機構の状態は、日本の輸入商社が六十五社ございます。それが日本海苔輸入協会を組織しておりまして、それから韓国のほうの業界としては、韓国側の輸出商社は韓国海苔輸出組合というものも組織しておる。その韓国海苔輸出組合と日本における輸入商社五十四社でできておりまする日本海苔輸入協会の間で話し合いがつくわけでございます。それが三十九年は九円四十五銭、それから四十年度のやつは五円五銭、こういうことに相なっておるわけでございます。  これらの問題については、なお十分流通関係についての検討は要するだろうとは思いまするが、大体さようなことに相なっております。
  282. 有馬輝武

    有馬委員 通産大臣、あとであわせてお答えをいただきたいと思いますが、いま農林大臣からも御答弁があったように、四十銭から一円のノリが、日本人は十五円、高いものでは二十円で食べさせられる。日常生活に欠かされないこのノリが、あなた方は日韓経済協力という名目でもって日韓両国の経済提携について声を高くして言われたけれども、韓国では四十銭から一円のノリが、日本にきたならば十五円から二十円、この事態は正常だと思われますか。たとえば海苔協会に対しまして、ただ一人の事務員がいるところに、協力費という費目で年間五千万円近い金を出す、あるいは農林大臣は六十五社とか五十四社とかいろいろおっしゃいましたけれども、六十七社ありますが、その六十七社で毎年チャンピオンというものを選んでチャンピオン料というものを払う。聞いてばかばかしいようなことが白昼公然と行なわれておる。流通機構の問題として、通産大臣、これを正常な形と思われますか。
  283. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どうもノリの輸入は複雑過ぎて、したがって、その中間のマージンも相当いろいろと取られることになって、したがって消費者にはかなり高くなっておりますが、しかし、一面において、これは日本のノリの生産業者の保護という問題もあるわけであります。したがって、これは昭和二十九年でしたかの参議院の決議に従って、生産者を保護すべきであるというような決議があって、需給調整の協議会ができたわけであります。そういうものが生まれた。しかし、いま有馬君の御指摘のように、チャンピオン制による輸入であるとか、第一問屋、第二問屋、それから小売商と、流通機構としてはきわめて複雑過ぎると私も思っておる。だから、もう少し簡明な流通機構に改革するのにはどうするかということを研究を指示してあるわけであります。ただ、しかし、一面に考えなければならぬのは、日本の国内におけるノリ業者の保護、安いからといってこれはいろいろ——第三次産品の輸入にはこういう問題がとこの国でも起こる場合があるんですね。安いのだけれども、それを持ってくれば日本の生産業者が困ってしまう。そこにやはり生産業者も因らないで、しかも消費者に対しても大きな負担にならぬ、そういう一つ調整作用というものがどうしても要るんですね。そういう点で、そういうことも頭に入れながらノリの流通機構というものはもう少し単純なものに改革をしたいという考えを持っております。
  284. 有馬輝武

    有馬委員 只松委員のほうから関連質問がありますので、これをお許しいただきたいと思います。
  285. 福田一

    福田委員長 只松祐治君より関連質疑の申し出があります。これを許します。
  286. 只松祐治

    ○只松委員 時間もございませんので、明日大蔵委員会で問題点その他お聞きすることにしたいと思います。  私が関連質問でお尋ねしたいと思いますことは、予算が政治の中でどんな枢要な位置を占めるかということは申すまでもないわけであります。予算の裏づけをなすものは、これは税金でございます。税金というのは、税法に基づいて取るわけですけれども、税法とともに問題になってくるのは税の調査、それから課税、徴収、いわゆる実際的に税金を取る、この段階が非常に大切なんです。ところが、この予算委員会におきまして、いろいろな法律上や、あるいは税金が重いとか安いとか、いろいろな話はありますけれども、具体的にこの徴税の問題についての論議がきわめて少ない。大蔵委員会等で・いわば片すみとは申しませんけれども、論議が行なわれても、それが一般的に関心をそう呼ばない、非常にじみでございますから。そこで、私はぜひこの予算委員会におきまして、換言するならば、わが国の政治の中でも最もある意味では重要な、国民と最も密接な関係にあるこの徴税の問題について論議すべきだろう、こういうことで関連質問をしようと思ったわけでございますが、時間がございませんので、その中で一、二だけをきょうはお尋ねしておきたいと思うのです。  その一つは、税は公平でなければならないわけでございますけれども、私は必ずしも現行税法が公平とは思わない、こういうことはたびたび申し上げております。たとえば法人税の調査状況ということを例にとってみましょう。  去年の年末に、私たち大蔵委員会で、徴税を強化しないようにという決議を行ないましたが、これがどう行なわれているか、私は調べてもほとんど末端にはおりていないようです。ところが、本年度二千五百九十億、来年度七千二百億、この公債が出ますように、税収がなかなか思うようにいかないということで、実際上は徴税が非常にきびしいわけです。末端に行ってごらんなさい。きょう私は一々例をあげようと思ったのですけれども、例をあげませんけれども、なかなかたいへんだ。ところが、そういう税収の中で、たとえば東京の国税局管内では大体二〇%から二五%ぐらいの調査率、調査されておる率がそういうことです。ところが、ある県におきましては、四五%ぐらい調査が行なわれておる。平均して三三%ぐらいになるわけなんです。五年間に一ぺんしか調査されておらない法人もあるし、二年半に一ぺん調査されておる法人もあるし、いわゆる調査一つとりましてもこういうふうに非常にアンバランス、そこから出てくる課税のしかた、こういうものも非常にアンバランスなんです。こういうことを課税の公平という立場からもっと大蔵省においてはやるべきでございますけれども、(発言する者あり)いまささやかれますように、こういう問題は非常に小さい問題だということで一笑に付されておるけれども、実際上はこの問題が政治の中において、予算の中で非常に大さなウエートを占めてまいります。こういう点についてひとつぜひ今後大蔵当局において——私は例を引く時間がございませんので、抽象的な話になりますが、明日でも例を引いて話しますが、御納得のいかない向きがあるかと思いますけれども、ぜひひとつ税の公平という点についていかなる御処置が行なわれておるか、あるいは年末に徴税攻勢というものが非常に行なわれておりますけれども、こういう点をいかに阻止するように努力されておるか、こういうことをひとつお聞かせをいただきたいと思います。  次に、一々答弁をお願いいたしておりますと、時間がすでに経過いたしておりますので、まとめて御答弁をいただきたいと思う。  たとえばある会社で総収入が九千万円あります。ところが、課税対象額になる純利益は九百六十四万円。ある会社はやはり総収入が九千万円だけれども、課税対象は二千五百万円になる。これは税務署で大体査定された額だと思うわけなんですが、これは同一の企業でございますけれども、同一地域の同一企業を見ましても、こういうふうに同じ収入の中でこれだけ課税対象額というものは違ってきておる。これもまた税務署はそのまま認めておる、こういう事態が出てきております。これはその会社に、あるいは国民に与える影響というものは非常に違うわけなんです。これは法人の中の一業種。私たち社会党がたびたび言っておるように、勤労者は一〇〇%ほとんど取られておりますし、中小企業者も非常に厳格な課税というものがなされております。ところが、たとえば赤坂かいわいの高級料理店、あるいは高級キャバレー、あるいは高級なバー、あるいはマンション、こういうところにいかなる課税が行なわれておるかというと、たいへんに遺憾な点がある。これも一々数字を申し上げませんけれども、不十分だ、こういうことがあるわけなんです。政治というものは、確かに、いわゆる大綱を予算委員会で論じ、あるいは大所高所からの問題を論ずる、あるいは政治はそういうものだと言う者がありますけれども、そうではなくて、具体的にこうやって国民の上に政治が及ぼしてくるこの末端の問題を、特に大蔵当局、あるいは徴税当局というものは、こういうことがないように努力をしていかなければならないわけでございますから、ひとつそういう点について一ぜひそういうことがないようにしていただきたいと思うのですが、私はすでに十分過ぎましたから、自分の言うことだけ言って、答弁を求めないで、何かたいへん変な話のようになっておりますけれども、そういうことではなく、あしたはもしできればゆっくりと一々御答弁をいただいて論議をしたいと思う。ただきょうは、そういう問題について、予算委員会においてもぜひひとつ論議をしていただき、大蔵省当局においても、ぜひそういう問題について御考慮をいただきたい、こういうことだけを申し添えまして、それに対する大臣の御所感だけを承って、きょうは具体的な答弁は求めないでおきたいと思います。
  287. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 税は、その立法におきましても、あるいは徴収の段階におきましても、これは公平ということが一番大野なことでありますので、公平を期してやっております。いま具体的な事例をあげてのお話がありましたが、同じ業種の会社でありまして、同じ規模の商売をやっておりましても、その経営者の腕前でありますとか、あるいは会社の経理内容等によりまして、利益金が違った結論が出てくる、これはもう当然あり得ることであります。またバーだ、料亭だ、これは見のがしておるのじゃないかというような響きのあるおことばですが、そういうことは絶対にありません。ただ、バーのホステスというのですか、こういうのはなかなか住所不定という人が多いのでありまして、捕捉が困難である。それをいかにして捕捉をするかということにつきましては、ずいぶん頭をひねっておる段階でございます。この上とも精励をいたします。
  288. 只松祐治

    ○只松委員 私の質問も不十分ですが、そういう答弁では満足しないのです。あとで事実をもって証明いたします。ただきょうは、三十分ぐらい私はずっと質問しようと思ったんですが、有馬さんのほうの勘違いで時間一ぱい質問されましたから、その問題点一点だけを言っておきます。
  289. 有馬輝武

    有馬委員 委員長、私も終わります。
  290. 福田一

    福田委員長 これにて有馬君の質疑は終了いたしました。  次は、安井吉典君。
  291. 安井吉典

    安井委員 私は、きょうの質問では、この間のこの委員会の質疑の中で相当大きな論議を呼び、その結論がはっきりつかないままになっております固定資産税の増税問題を焦点として若干の御質問をいたしたいと思うのでありますが、その前に、先ほども有馬君からも、地方財政についてのお話があったわけでありますが、それらの問題その他につきまして、若干のお尋ねをいたしたいと思います。  初めに、福田大蔵大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、きょう私、地方財政の問題をここで論議をいたしますが、それらの問題も、予算の上にもちろん関連を持って載っているわけでありますが、その基礎となる法律は、たとえば地方税法だとか、地方交付税法の改正だとか、あるいは昭和四十一年度の地方財政の特例法案だとか、その他いろいろな法案があります。それはいまだに国会に提案の運びにさえなっていないわけです。閣議決定もされていない。これはその地方財政関係だけじゃなしに、予算関係法案と称せられるものがまだ一割ぐらいしか国会に提案されていないはずであります。その法律によって、それを基礎として予算案というものは編成されているものだと思うわけでありますが、内容がまだきまらないうちに予算審議がどんどん進んで、そして予算案のほうはいつの日か法律をそっちのけにして通ってしまう、こういうしきたりで今日まで運営があるわけであります。この問題は、こういう質問で何か大臣をひっかけたりしようというような考え方じゃなしに、ごくプリミティブな質問として、こういうふうないまの予算審議のあり方に大蔵大臣として疑問を感じていないかどうか、この点をひとつ伺っておきたいと思います。
  292. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算と同時にこれに関連する法律案が——法律案であればなおいいが、要綱でもせめて早く出ることが望ましいと思うのです。ところが、御承知のような予算編成、非常に国会再開が差し迫ってから予算の編成が行なわれる、それの整理に各省とも忙殺をされておる、そういうような状態において予算案がまず提出をされる。こういうので、法律案のほうがどうもおくれがちになる。内閣としてはこれを取り急いでおるわけでありまするが、なるべく早く全部御提案申し上げまして、予算の審議に支障のないようにいたしたいと存じております。
  293. 安井吉典

    安井委員 中身の法律ができないうちに予算が通るということは、どうですか、ちょっとおかしくないですか。法律が決定してから予算というものが組まれて、国会に提示され、それから国会がきめる、こういうようなのが私は筋のような気がするわけでありますが、いまの仕組みというのはそうなっていないわけですね。その点についての基本的な制度論として、あるいは国会論議のあり方としての問題として私、いま申し上げているわけです。
  294. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算の前に法律案が通っているという形ですね、これは、私は実際問題としてなかなかむずかしいだろうと思うのです。予算の審議と並行いたしまして、法律案の大綱がせめて文書をもって提示される、こういう形になればまあまあと、こういうふうに思いますが、ともかくまだ法律案も大綱も出ていないものが相当ありますので、日夜取り急いでおる次第でございます。
  295. 安井吉典

    安井委員 私は制度論としていま申し上げているのを、大蔵大臣は、今度の国会における現実論としてお答えがあるわけです。その点ずいぶん食い違いがあるわけでありますけれども、この問題は、私はただ一つのいつも出てくる疑問なんですよ。そういうようなものとして投げかけたわけでありますが、われわれも国会制度のあり方の問題に関連して、これは十分検討すべき問題だと思います。そういうふうな意味でいま申し上げたわけであります。  この間うちからこの委員会での福田大蔵大臣の御答弁を伺っておりますと、なかなか名答弁が続いております。しかし、どうもよく聞いておりますと、ごまかしの答弁的なものの部分があるように思うのです。たとえば、経済構造の弱点を補強するためにはどうしたかという質問が出たら、大蔵大臣は、いや、農林予算には四千五百億円計上いたしました、中小企業予算は実に三六%の増でありますと、こういう繰り返しであります。予算のほうは実額で言って、中小企業予算のほうはパーセンテージでおっしゃる。農林予算のほうば去年とあまり変わりがなくて、一〇%程度の伸びであります。だから、それは実額で言ったほうがいい、中小企業予算のほうは、実額は元金が少ないわけですから、二百九十億円余りですから、二百九十億円余りじゃこれは迫力がないから、三六%の増でありますと、こういうおっしゃり方です。質問に対しては盛んに予算のPRをされる。これはけっこうでありますけれども、私は地方財政についてのこの間うちの大臣の御答弁、先ほどの有馬君の質問に対する御答弁にも、やはりいまのような、なかなかお上手な答弁の域を脱していないような気がするわけであります。今度の予算の中では、大蔵大臣は地方財政にはたいへんなおおばんぶるまいをした、こういうふうな印象をお与えでありますけれども、私は決してそういうものじゃないというふうに思うわけです。なるほど二千二百八十億円の措置をされた、地方交付税率も引き上げた、こういうようなことのようでありますけれども、今日の地方財政の危機的な様相は、一つには三割自治とか、一割自治と言われるように、行財政制度の全体的な仕組みの中にあるわけですよ。地方が自主的な財源操作ができないで、すべて政府が握っている。さっき車の両輪とおっしゃったけれども、ほんとうならその車の運転手は、両輪の運転手であれば、その運転手は大蔵大臣だけじゃないはずですよ。自治大臣だけではないのですよ。実のところの地方団体の運転手は、知事が四十六人も、市町村長が三千五百人も、運転手がいるはずであります。ところが、その地方財政方向というのは、運転手の数は多いけれども、実は大蔵大臣の運転だけでもう車は突っ走っていっているわけです。地方の自主性なんというものはない。こういうふうな仕組みで今日まで来ていたということ、その上にいわゆる高度経済成長政策のあおりを食って国がどんどん仕事を進めていくと、地方はその負担でおぼれかけている、こういうふうな事態の中で、昭和三十七年度からもうぐっと地方財政は下向きになってしまった。その上に今度は新しい事態として七千三百億円の国債の発行、こういうふうな形で地方財政は本来的な制度的なゆがみの上に、これでもか、これでもかと、政府施策の中で、あるいは経済変動の中で、——その経済変動にしても、これは単に財界が悪いというのではなしに、政府の政策の結果であります。こういうような中でとんでもない事態に今日来ているわけです。景気回復政策というふうなことをおっしゃっても、国が幾ら予算を組んだって、実際仕事をするのは地方で、地方のほうはこんなような財政措置では仕事ができない、現実化されないのではないか、実現できないのじゃないかというので、経済同友会でさえも地方財政を確立しなさい、こう言っているはずです。こういうふうな事態が今日あると思うわけです。そこで、ずいぶんおおばんぶるまいをされたというが、地方交付税率の二・五%アップ、この問題も、今度だけたいへん清水の舞台を飛びおりるような思いでおやりになったと言われるが、実は四十年度の、あの去年の年末の地方交付税法の特例法の中で、去年は五百十二億円落ち込んだわけですね。それを最後の段階では落ち込まないということでお埋めになった。去年のベースで五百十二億円というのは、地方財政の中で率にするとどれぐらいになりますか。
  296. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 大体率にいたしまして三%弱でございます。
  297. 安井吉典

    安井委員 去年の、四十年の最終段階で五百十二億埋めたわけですね。それが約三%。二九・五%に三%を足せば、三二・五%であります。ことし二・五%のアップをしたというので鬼の首でも取ったように自治大臣は言われるが、実は四十年の最終段階で大蔵大臣はおやりになっているのですよ。ことしは二・五%だが、去年は三%アップしているのですよ。去年の御措置よりもことしの地方交付税の措置というのは下回っているわけです。だから私は、ことし交付税の引き上げのためにずいぶん苦労なすったようなお話でありますけれども、こういう点でこれはたいした措置じゃないんですよ。去年よりも悪いんですよ。そういう点はお認めになりませんか。
  298. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そうは考えません。今度は一般財源、名前は違いますが、交付税率の引き上げもありますし、第一種特例交付金もありますし、第二種もある。全部入れますと千億円、約昨年の倍の交付をいたす、こういうことになっておるわけであります。そういう結果、一体地方財政全体としてどういろ姿になるか、これは表から見ますと二千四、五百億円の財源不足というものに対して千二百億円の特別起債、それから千億円の一般財源からの補てん、その他は地方の努力ということで、とにかく国の財政が非常に窮迫しておる際の措置といたしましては、まあこれは最大限考えられることをやった、こういうふうに考えております。  それから国のほうでは、七千三百億円の公債を発行するという事態でありますが、地方では、従来とも公債を発行し、あるいは借り入れ金をいたしておるわけであります。昭和四十一年度におきましては、大体五千四百億円ぐらいそういうものがあるわけでありますが、今度それが千三百億円ふえて六千七百億円ぐらいになる。まあこれだけの経済の悪化の事態に対して、地方はそれだけの借金増加で済む、こういうことに相なっておりますのは、私はこれは相当国において完ぺきな対策を、今日の時点ではできる限りの措置をとった結果である、こういうふうに考えております。
  299. 安井吉典

    安井委員 たいへんめんどうを見たというようなお話でありますけれども、実は七千三百億円の公債発行で地方に相当大きな被害も与えているわけですね。これは国の政策ですよ。  これは自治大臣にお尋ねいたしましても数字が出ないかもしれませんが、財政局長がおられるからお尋ねいたしますが、七千三百億円の国債発行によって地方税は——まあ国債発行は、国税の減税と、それから国の公共事業に対する投資と、両面に使われるということでありますが、四十一年度において地方税がどれだけ減収になり、地方交付税がどれだけ減収になり、それから七千三百億円を財源とする公共事業によって地方の負担はどれだけふえたか、それをちょっと数字でお知らせいただきたいと思います。
  300. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 地方税の減税は、地方税のプロパーで約三百九十億、地方交付税は五百八億、合計いたしますと、大体八百九十八億ぐらいの減ということになります。それから歳出でありますが、国の負担金の増加に伴いまする公共事業関係につきましては、地方負担の増加が五百三十億前後でございます。
  301. 安井吉典

    安井委員 つまりいまの御答弁によりますと、地方税の減収と交付税の減収が、国の国債政策の結果として八百九十八億減っているわけです。減るわけですよ。先ほどの大蔵大臣の御答弁は、恩恵を与える立場で自治体にずいぶんやったと言いますけれども、この八百九十八億円というのは、地方財政に対する加害者として、そういう形でおやりになっておるわけですよ。さらに五百三十億は、政府の景気対策というふうな形で地方は負担を増大させられておるわけです。合わせて千四百二十八億ですか、これだけ地方は国の公債政策の結果として負担をしいられ、収入を減らされている、こういう実態であろうと思うのです。国税の減税は、これはことしだけではありません。国税減税三千億幾らと言いますけれども、実はこれは平年度で、四十一年度は二千億ちょっとですね。どうもいつも減税規模というと三千億円と言いますけれども、これは四十一年度ではない、四十二年度からですね、大蔵大臣。この点を大蔵大臣、いつもごまかした御答弁で、いかにも来年から三千億円の減税があるようにおっしゃるのだが、四十一年度は二千億円ちょっとです。二千億円ちょっとの減税で、地方には八百九十八億円財源が減るわけですよ。来年はどうなりますか。三千億円減税になったら、地方の減収というものはもっと大きいでしょう。だから、いろいろな財源措置のことをおっしゃるが、大臣はあとでお埋めになったかもしらぬが、初めに減らしているわけです。減らしたのをただ穴埋めしただけじゃないですか。地方の財政へのプラスの要素というものは全くないわけです。加害者としての国が補償をちょっぴりやった、私はこういうふうなことにしかなっていないような気がするわけです。  四十一年度の問題については、山花委員も、それからさっき有馬委員も、いろいろ論議をされましたので、私は、さらに進んで、問題は四十二年度にあると思うのです。四十一年度も大事でありますけれども、四十二年度になったら、これは重大な事態がくるような気がするわけです。四十二年度における地方財政の見通し、こういうようなものについて、自治大臣どうですか。そこまでお考えになっておりますか。
  302. 永山忠則

    ○永山国務大臣 お説のように、四十二年度もやはりこういう財政計画が続くといたしますれば、相変わらず苦しい状態になると考えております。したがいまして、これが対策につきましては、十分ひとつ検討を進めて、赤字財政へ追い込まないように努力をいたしたいと考えておるのであります。
  303. 安井吉典

    安井委員 財政局長にお尋ねいたしますけれども、いまのベースでいけば、昭和四十二年度の地方税並びに地方交付税の減収はどれくらいになりますか。
  304. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、税制改正による減収の部分だけを取り上げて申しました。増収になる部分もありますので、両方合わせますと、地方税の初年度の減収は二百五十七億円ということになります。同じような計算で平年度分をはじきますと五百十五億円、したがって、地方税全体といたしましては、本年度は二百五十七億円の減収、それから明年度は、本年度のベースでそのまま横すべりすると考えた場合に五百十五億円の減収になる。したがって、経済の伸長その他によりましてベースが変わってまいりますれば、増収部分もふえてまいりますし、それに伴う減収の部分もふえてくるということになろうかと思います。現在の段階では、経済がどういうかっこうになりまするか、非常に激変時でございますので、国の税収もどういうかっこうになるか見当がつきません。したがって、昭和四十三年度以降における交付税の姿というものは、現在の段階では、残念でございますけれども、このような形になるだろうという見通しは申しかねるかと存じます。
  305. 安井吉典

    安井委員 明年度財政の問題がいま論議されながら、明後年度の話を私が持ち出して、何か妙なようですが、私はだんだんだんだんこのしわというものは後年度に寄ってくると思います。特にことしの場合は、なるほど一般会計からの繰り出しで、交付税の増その他で一千億円、大臣のさっきのお話のように見てはおりますけれども、その他の大部分は、これはもう地方債の増発ですよ。地方債の増発でやれ、国がどんどん仕事をやりたいから、地方もやってくれ、金がなければ貸してやる、貸してやるからどんどんやれ、こういうふうなのがいまの政策で、したがって、後年度に借金だけが残る、こういうふうな方向にいくおそれもありますので、私は四十一年度の財政もおそれますが、しかし、四十二年度はもっとひどい事態になる、こういうふうな気がするわけです。地方債の問題についても、先ほどの質問もございましたが、政府資金のほうの消化はそう問題ありませんけれども、私は、大臣の御答弁にもかかわらず、公募債や縁故債の消化にはなおいろいろな問題があると思います。総額で、国全体の預金総額がこれだけあるからだいじょうぶだ、こういうふうなおっしゃり方をするが、実のところは、自治省が今度の地方債の公募債、縁故債を全部一ぺんに借りられるならば、あるいはそういうことができるかもしらぬけれども、全国の四十六の都道府県と三千五百の市町村が借りるわけですよ。そういうような中で、私は、ケースケースによっては、消化が非常に困難だという事態も必ず出てくると思うわけであります。だから、どうしても起債で地方に仕事をやらせるのなら、私は、政府がきっちりと保証をすべきだと思います。政府が借りて貸してやるとか、そういうような措置がなければいかないし、さらにまた、今度の地方債の増発でものごとを処理せよというのは、国の政策の結果としてそれが出ておるわけでありますから、その元利償還金ぐらいは国がやはりめんどうを見るべきですよ。どうでしょう。
  306. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十二年度以降どうなるかと申しますと、まず歳出の面では、四十一年度でもそうでありますが、一番ふえるのは給与費なんです。国の政策の結果、つまり公共事業が国のほうでふえる、それに伴って地方でふえる額、これはもう大体半分くらいな規模になるわけであります。それにしても、とにかくその財源を充足しなければならぬわけでございますが、私どもは、四十二年度の経済は逐次常道に戻っていく、こういう見方をしておる。それに従いまして交付税も自然にふえます。また地方の固有の税もふえてまいります。でありますから、お話のような悪い状態になるのではなくて、先ほど私が申し上げましたように、いま地方財政が非常に窮屈になっているのは何か、こういうと、現在の不況がそうさせておるのであります。この不況が回復いたしますと、地方財政の姿勢というものはまたびんとしてくる、かようにいま考えておるわけなんであります。まあ落ち込みが国の政策の結果あるから、それの対策は国が責任を持てというお話でございますが、先ほど申し上げましたように千億円、ともかく一般財源から乏しい中を地方財政にさいておる。それから同時に起債の面におきましては六千七百億円、公募債その他の資金も調達しなければならぬ。それに対しまして四千億近くのものは、資金運用部あるいは簡保等でこれは保証したようなものであります。地方財政の運営というものは、これは全く支障のない形が秩序正しく行なわれる。昭和四十年度が非常に混乱したのは、年度の途中で税の落ち込みがある、こういう事態があったのでありますが、国と同様に地方におきましても、財源を昭和四十一年度は非常にかたく見ておりますので、年度の途中でそういう事態が起こるということは、ただいまのところ私ども考えておりません。そういうことは想像し得ざるところである、かようにいま考えております。
  307. 安井吉典

    安井委員 私、その起債について保証せよと言ったのは、政府資金による起債の心配をしているわけではないんですよ。政府資金による起債は、これは資金運用部資金や簡保資金や、それらでおまかないになればそれでいいですが、縁故債、公募債を言っておるわけです。それぞれの市町村で、ワクだけは自治省からもらうわけです。ワクだけもらって、かってに調達しなさいというようなことで投げっぱなしにしておいたんでは、できるところもあるだろうし、できないところも出てくるのではないか、その心配なんです。総ワクとしては、あるいはうそかほんとうか知りませんけれども、大臣の大ワクでのお話がありますね。民間資金は心配ない、七千三百億円の消化も心配ない、地方債も心配ない、そういう資料もお出しになっておるが、ケースケースによって、市町村でワクだけもらったって消化できないところがありはしないか、こういうことなんです。だから、政府資金じゃなしに、縁故資金、公募債についても、もう少し何かあたたかな配慮というものがなければ、これは実際は消化できないかもしれませんね。どうですか。
  308. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大局的に申しますると、金利が非常に低いわけであります。コールが特に安い。したがいまして、地方の金融機関から都市銀行に対してコールを出すという意欲は非常に減退をいたしておるわけであります。つまりそれらの資金は地方に大体還元をするという傾向になってくるわけであります。そういう傾向を端的に反映いたしまして、縁故債、つまり地方自治団体の出す臨時の借り入れ金、あるいは国鉄だとか電電だとか、そういうものが借りようとするもの、これはもう年度の中途におきまして、四十年度はそういうことを考えなければどうも事業がやっていけないというので、その成り行きを困難視されたわけであります。しかし実際は、これが円滑に消化をされておる。なぜかと申しますると、ただいま申し上げましたように、地方金融機関においてコールを今度はそちらのほうに回すというような傾向が出てきたことと、もう一つは、産業界における資金需要、これが依然として低迷しておる。金が事業会社では要らない、こういうような事態がそこに出てきておるわけなんです。そういう状態昭和四十一年度も続く、こういうふうに見ておりますので、地方の資金は、私がただいま申し上げましたような程度、つまり六千七百億円の借り入れ金をいたしますが、その大半は資金運用部、簡保で埋めるわけです。残りの千何百億になりますか、そのくらいの程度を縁故債、公募債でやるわけでありますが、これはそう心配はいたしておりません。
  309. 安井吉典

    安井委員 私は、そういうふうな一般論は幾度も幾度も聞きあきていますよ。実際に現実の問題として、ワクだけもらったけれども、消化できない町村が出た場合は、どうするのかということです。つまり保証措置というものを政府はお考えになるお気持ちがないかということですね。
  310. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 問題は、資金力の乏しい弱小の地方団体というところにあろうかと思うのであります。そういうものに対しましては政府としては政府資金でなるべくまかなおう、こういう対策をとっております。
  311. 安井吉典

    安井委員 そのことは非常に大事なことですね。弱いところは政府資金でやって、力のあるところは縁故債でもいい場合もありますね。それは確かですけれども、ただ、私はそれだけでは十分でないので、そのことは実際やっていただかなければいけないが、それだけではなしに、全体的な形で地方債の消化ができるような措置を真剣にやはり大蔵省、自治省は考えるべきだ、こういうことを申し上げているわけです。  ちょっとその地方債の問題が出たので、運輸大臣にも伺っておきたいわけでありますが、国鉄は利用債を発行されるわけでありますが、これを都道府県や市町村に割り当てておられる。どこの県も、どこの市町村もその消化に相当苦しんでいるようであります。その地帯の電化が行なわれる、複線化が行なわれる。さあ、それは地元の利益になるんだから利用債をお持ちなさい、青函トンネル、ああいうふうなものが北海道なんかありますが、それも、これは公団債でしたか、それも持て、運賃値上がりを抑制するための特別利用債も持て、大体特別利用債、電化利用債、公団債、こういうようなものの割り当てを地方にお出しになっている。いままでそういうことで、地方はその処理にずいぶん苦しんでいるわけであります。地方財政がこういうふうに逼迫をした際でありますので、この点はお考えを直していただかなくてはならないのではないかと思います。運賃を上げてもらわなければできません、そういうようなお答えじゃ困りますよ。ひとつ、この問題については自治省も大蔵省もその辺の事情をあまり御存じないのじゃないかと思うのですけれども、運輸大臣としてのお考え、さらにまたこれは、大蔵大臣もこういった点、どうお考えなんでしょうか、お伺いをいたしたいと思います。
  312. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 利用債という形は、これはあくまでも臨時的な、経済の今日の姿、これに対応したものでありますので、正常化いたしていきたいと思うのです。国鉄につきましては、運賃の収入がふえますので、昭和四十年度におきましては千何百億でありましたか、利用債を使いましたが、今度はそういう必要が非常に少なくなるので、利用債は激減をいたす次第でございます。
  313. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 鉄道利用債の発行にあたりましては、従来から地元への受益が非常に明瞭であって、また国鉄の輸送力増強とかあるいは近代化に役立つ際に、地元の負担力を十分考慮いたしまして、地元とよく相談をしながらやってきておる次第でございまして、なお今後は地元の財政、地方公共団体の財政に圧迫を加えないような方向で善処していきたいと思っております。大体四十年度に百五十億を予定しておりますが、四十一年度も同額程度のものを発行する予定にいたしております。
  314. 安井吉典

    安井委員 私は、国鉄の運賃値上げに反対であります。しかし、もし万一運賃の値上げというものが確定した場合の仮定の上に立ってのお尋ねとして、大蔵大臣はもうやりませんとおっしゃった。それから運輸大臣は、何かやらざるがごとく、やるがごとくというふうな御答弁でありますが、その点、私はやらないならやらないと、はっきりお答えを願いたいと思います。
  315. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私はやらないと申し上げたのじゃないのです。こういう形はなるべく整理をしていきたい、こういうふうな考えで、激減をする見通しである、かように申し上げたわけであります。
  316. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 利用債を発行いたします場合は、たとえて申しますと、地方で駅の新設が要望されて、ぜひこれをつくらなければならぬとか、あるいは線をふやさなければならぬとか、いろいろ特殊の場合に、地元の負担を仰ぎながらこれをやっておるというような事情でございますので、地方の財政圧迫にはならぬように十分留意をして、できるだけ地元と打ち合せながらやっていく方針でございます。
  317. 安井謙

    安井国務大臣 運賃が上がったという仮定の上に立っての議論だということを私はお断わり申し上げたわけでありますが、いまのようなことで相変わらず利用債の負担がくるということになったら、いま私が仮定をいたしましたように、運賃は上がって、負担はふえて、利用債もまた持たなければいけない、そこで、お話のように、住民は往復びんたになるわけですよ。それまでを地方公共団体に押しつけなければいけないという理由は、私はどうしても理解できないわけであります。どうでしょう。大蔵大臣も、なるべく激減する見通しであるというふうな御答弁でありますけれども、大蔵大臣は見通しをお立てになる大臣じゃないはずですよ。経済企画庁長官なら見通しでいいかもしれませんけれども、大蔵大臣はどうでも御処理できるはずです。どうですか。
  318. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国鉄がその事業遂行のために地方から借りる金ですが、これは、四十年度で千六剛億くらいになりますか、あとでまた詳しくは申し上げますが、おおよそ千六百億円くらいになります。それが千三百億円ぐらいに減るわけでありまして、大体三百億円の減少になる。かように、(安井委員「激減じゃないじゃないですか」と呼ぶ)これは私どもといたしますと激減でございます。
  319. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 いままでの特別債の中に利用債的なものがかなりあったのでございますが、今後はそういうものをやらない方針でいくつもりでございます。
  320. 安井吉典

    安井委員 いまの、運輸大臣はやらない御方針とおっしゃったのは、利用債なんですか、特別利用債ですか、公団債ですか、その三つを全部総括しておっしゃっておるのですか。それとも別々ですか。
  321. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私が申し上げましたのは不正常な形の借り入れ金、つまり特別債と呼ばれるものであります。
  322. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 特別利用債というようなものはやらないということでございます。
  323. 安井吉典

    安井委員 すると一般の利用債、それから公団債等は相変わらずおやりになる、こういうことですね。特別利用債はやらない、これは何か運賃との見返りだというふうなことで持たせていたというような経過があるようでありますが、じゃ、利用債、公団債のほうは相変わらずだ、こういうことですね。
  324. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 特別利用債は国鉄のほうでもやらないという方針をとっておるようでございますから、運輸省としてもその線に沿ってなるべくやらない方向でいく考えでございます。
  325. 安井吉典

    安井委員 これはあとの質問があるものですから、これだけで時間を費やすわけにいきませんので、この問題は明日から予算(機第3号)の国鉄予算の審議の機会もありますし、それからいま運輸委員会で運賃審議の問題がありますので、その中でさらに詰めてお尋ねをすることにいたしたいと思います。  もう一点。これは自治大臣に伺っておきたいのは、地方公務員の定年制に関する法案を今度の国会に御提案になるというふうなことについてのお話でありますが、これは地方公務員だけのものなのか、その地方公務員という中には教員も含めるのか、何歳ぐらいを定年としてお考えになっておるのか、さらにこの法案はいつごろ御提案になるのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  326. 永山忠則

    ○永山国務大臣 定年制の問題は、地方がその必要を認めた場合に、条例でこれを制定することを妨げないというような内容のものでございますので、何歳をどういうようにするかというような関係等、すべて地方の実情に応じて、その必要性のあるところだけがやるということを妨げないというだけの法案をいま作業をいたしておるような次第でございます。
  327. 安井吉典

    安井委員 法案の中には何歳で定年にするとか、そういうふうなあれはないわけですか。五十五歳を定年とするような考え方を自治省が持っておる、こういうふうに伝えられているのでありますが、どうですか。
  328. 永山忠則

    ○永山国務大臣 そういうような考え方はございません。ただ、いま論議いたしておるのは、五十五歳以下で定年とするということは好ましくないというような規定を設けるかどうかを検討中でございまして、定年制を何歳にするというようなことには全然触れる考えは持っておらぬのでございます。
  329. 安井吉典

    安井委員 女の人に年を伺うのは失礼だといわれますけれども、自治大臣は男で、りっぱな男性でございますので、まことに失礼ですが、お幾つですか。
  330. 永山忠則

    ○永山国務大臣 六十七歳でございます。
  331. 安井吉典

    安井委員 六十七歳というお答えでありますが、実にお元気で、もう見るからに健康にあふれて元気一ぱい御活動をされて、何か新聞によると、大蔵大臣を朝がけで襲って予算の運動をしたとか新聞は報じておりますが、自治大臣の御経験からいって、六十七歳ぐらいじゃ定年といわれるのは少し早過ぎると、こういうお考えじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  332. 永山忠則

    ○永山国務大臣 やはり定年の関係は、体位の関係あるいは頭脳の働きの関係、あらゆる点が総合されていくべきでございまして、一律的にはいかないと思うのでございます。地方にはその訓練を怠って、いたずらに人事の渋滞を来たすところもあるかと考えておるのでございまして、それらの点のすべてを勘案して、地方の自治の自主性によって検討をいただくということでいきたいと考えております。
  333. 安井吉典

    安井委員 自治大臣のように、健康にもすぐれ、頭脳にもすぐれておられれば、六十七歳で問題がないのだ、私はこう思うのですけれども、そういう尺度を条例の中におきめになるわけにいかぬでしょう。健康で頭脳の優秀な者に限っては何歳から、こういう条例のきめ方は私はないように思うのですが、その点はさておくといたしまして、これは教職員にもお考えですか。
  334. 永山忠則

    ○永山国務大臣 教職員も対象にするのでございますが、しかし、それも地方の自主性に応じてやることでございます。
  335. 安井吉典

    安井委員 安井総務長官に伺いますが、国家公務員についてのお考えはどうなんですか。
  336. 安井謙

    安井国務大臣 私も、国家公務員につきましても、長期の人事管理というようなものを合理的にやるためには、あったほうがいいというふうに考えてはおりますが、これはいまお話にありましたとおりに、非常にむずかしい問題であります。どういうふうに線を引くかとか、どういう職種にどう適合さすかという点につきましては、相当慎重な検討を要すると思いますので、ただいますぐ出すというふうなことは、国家公務員については考えておりません。
  337. 安井吉典

    安井委員 安井総務長官のほうは慎重な検討が必要だというふうに言われておるわけですが、自治大臣のほうは、もう慎重でなくてもいいのだ、早くきめて早くやらせればいい、こういうお考えのように私は見受けるわけです。現在の地方公務員法は、大体において国家公務員に準じて地方公務員を処遇する、こういう考え方で貫かれておるように思うわけです。国家公務員については何らの措置がないのに、地方公務員にだけおやりになるという考え方自体、私はおかしいのではないかと思います。これは国家公務員と地方公務員のほうとの制度的なお話し合いがあって、そういうふうなお気持ちに自治大臣は踏み切ったのですか、どうですか。
  338. 永山忠則

    ○永山国務大臣 地方公務員の中には非常に人事が渋滞して、やむを得ずそういう処置をとりたいという強い要望がございまして、関係団体からの申し出もございますので、必要に応じてこれをつくることを妨げないというようなことでやっていいきたいというように考えておる次第であります。
  339. 安井吉典

    安井委員 今日の国家公務員法あるいは地方公務員法等において、公務員の労働基本権が認められておりません。公務員には団体交渉権もないわけであります。そういう前提に立って、国や地方議会が憲法でも保障している労働の権利を定年制によって一方的に奪うような法律や条例措置を講ずるというところに、私は憲法問題からも一つ大きな問題があると思います。  さらにまた、どうも今度の定年制の問題は、地方自治体の財政難の見地から出されておるような気がするわけです。一時的な赤字対策のゆえをもって定年制というふうな公務員制度の根本にかかわる問題をお出しになるということが第二の疑問だと私は思います。先ほど大蔵大臣のお話によれば、あとのことは心配するな、地方財政のことも、どんどん来年度も再来年度もその次もしっかりやるのだというふうなお考えがあったわけであります。いま赤字だから定年制をやらなければいかぬ、こういうふうな安易な考え方で定年制をお出しになるというところに、私は大きな問題があると思うのです。  それからもっと大きな問題は、社会保障の制度が充実していないということです。この定年制という問題をお考えになります場合に、たとえば市町村長などからは、定年制の実施についての要望があります。ずいぶん強いわけですね。そういうふうな実態をよく見ますと、そこの市町村の役場、市役所にもう若いうちから入って、三十年も四十年もたって六十歳や五十五、六歳までなれば、二十歳ぐらいから入ったらこれはたいへんな勤続年数ですよ。そういう長い勤続年数でいる人がやめないでしがみついておる、こういう実態ではないんですね。そういうふうなお考え方でこの定年の問題をお考えだとすれば大きな誤りです。勤続年数の長い人が七十になったり八十になったり、よく聞いたら八十歳ぐらいの人もいるそうです。そういうような人がそこにしがみついておるのじゃないのですよ。今日、年をとった職員の人は、大部分は勤続年数の短い人ですよ。たとえば失対のほうの仕事をしていて、それが切りかえになったとか、つまり相当中高年齢層になって役所におつとめになって、そういうふうな形でやめれば、月給も安いわけですよ。あの高齢者の月給の表をおとりになってみるとおわかりになりますけれども、みんな月給は安いですよ。何十年も勤続している人なんていないですよ。勤続年数が短くて、ほかへ行ったってどうにもならないからつとめておる、こういう人が多いのです。そういう資料を十分御検討願いたいと私は思うのです。ですから、そういうふうな人がなぜ職場にしがみついていなければいけないかというのは、社会保障の充実がないからです。社会保障の充実こそが先決問題で、そんなことは全く考えずに定年制の問題を論ぜられるということ自体が、私はナンセンスだと思うのですが、どうでしょう。自治大臣、こういうふうな重大な問題は、もう今度の国会にはお出しになることをおやめになったほうがいいと思うのですが、どうですか。
  340. 永山忠則

    ○永山国務大臣 地方の実情上、特に能率化の関係と、さらに計画性の昇給をして、計画的に人事をやっていくというような必要性のところだけがやるのでございまして、決してこれを赤字対策や首切りというようなことにつながらないような指導はやっていきたいと考えておるのでございます。
  341. 安井吉典

    安井委員 どうもそれじゃ答弁になりません。これは、さらに後ほど自治大臣論議をいたしたいと思います。  さて、ことしの地方税制の改正の問題で最大の問題点となろうと思うのは、私は固定資産税の増税問題だと思うのでありますが、この増税の問題につきまして、この間の山花委員質問に対して、自治大臣は遺憾である、こうおっしゃいました。それはどういうお気持ちですか。
  342. 永山忠則

    ○永山国務大臣 暫定処置として三ヵ年据え置くということになっておるのでございます。それを三カ年を経ず、来年からこの暫定措置法でなくやるということになっておる点に対しては遺憾に思うけれども、しかし、今日の財政事情の変化によって、今回その暫定措置を改定していくことが至当な状況になっておるというように申し上げたのでございます。
  343. 安井吉典

    安井委員 これは単に遺憾ではいかぬですよ。もっときちっとした処理を私はしてもらいたいと思うのです。  これからひとつそういう点で御質問したいわけでありますが、大体自治大臣大蔵大臣は、昭和三十九年の三月三十一日に通った地方税法改正法が施行されるまでのいきさつについて、あまりお知りにならぬのじゃないかと思うのです。だから、私はそれを若干申し上げたいわけでありますが、固定資産税の基礎になります固定資産の評価がえが、三十九年の一月一日付で行なわれたのは御承知のとおりです。それまでの経過の中で、この評価がえというのはいままでの方式を根本的に改める大改革で、評価の仕組みそのものを変えてしまう、こういうことです。そのことによりまして、家屋の償却資産は、大体新評価によってもあまり大きな変化はなかった。しかし、土地についてはこれが大変革で、売買価額方式に変わったものですから、田畑は大体四倍くらいに変わる、こういうふうな実態があって、農民団体等からも相当強い反対運動もあり、いろんな経過で大体一、三倍程度で田畑はおさまったわけです。新評価と旧評価は。ところが、宅地のほうは全国平均で六・三七倍、これは自治省の統計です。大きく上がっているところは、十倍から五十倍も上がっているところもあります。宅地については。山林は三・〇五倍、その他が五・六七倍、五割増し、六増割しというなら話はまだわからぬわけでもありませんけれども、五倍ないし六倍が全国平均であります。それによって標準税率が百分の一・四七、これはたいへんな増税になるわけですから、全国的に反対運動が起きて、その反対運動の中で昭和三十八年の十月二十二日の閣議決定で、新評価には変わるけれども、三年間は農地据え置き、その他は一・二倍にとどめるという決定がなされたわけです。三十八年十月二十二日は、お並びの大臣も御記憶にあるかもしれませんが、その翌日衆議院は解散されたわけです。衆議院解散の前日の閣議で、これでは選挙にたいへんだというので、前日評価据え置きの決定がなされた、こういう経過があるわけです。その後、あの国会の中でいろいろな論議のもと可決されたわけでありますが、その中でも、三年間の据え置きはよいとして、その後はどうするか、四年目はどうするかということで、政府もこの問題の処理に当たったし、私どももその立場で論議を進めたわけです。三年間の据え置きというものははっきりしておるわけです。地方税法の附則の中にはっきり書いてある。附則第三十四項ないし第四十一項が加えられて、三年度分は据え置きないし二〇%増にとどめる、こういう規定であるわけであります。その三年目というのが昭和四十一年度、もういままさに迎えんとしておる昭和四十一年度が三年目であります。これに対して、この間うちの御説明によっても、A、B、Cの三ランクに分けて、Aは三倍までの値上がり、それからBは八倍までの値上がり、Cは八倍以上の値上がりと新評価と旧評価の値上がりの率を押えて、それぞれAクラスは毎年一割増していく、Bクラスは毎年二割上げていく、Cクラスは毎年三割上げていく、こういう法案をいま自治省はお出しになろうとしておるわけです。特に都市計画税は、毎年Aクラスは三割増し、Bクラスは六割増し、Cクラスは九割増しです。三年後には六倍ないし十倍というふうな大幅な引き上げにしようとしているわけです。私は、この引き上げの問題自体に問題があると思います。平均が六割増しというならまだ話はわからないわけではないですが、六倍ですよ。十倍のやつもあるし、十二、三倍のやつもあるわけです。そういう値上がりを、これは何年もかかってやるわけです。大体お聞きすると、十年ぐらいかかって新評価まで、五倍、六倍まで上げるのだというお話のようでありますけれども、そういう上げ方自体に私は問題があるし、上げてしまうということでこの法律がつくられれば、十年間毎年税金が上がるということですよ。毎年三割ずつ税金が上がるという法律を今度お出しになるというわけですね。減税法ということは私は聞いたことがあるけれども、毎年税金を上げるという法律を、十年間の税金の値上がりを、国会のいまの議決によってそれを決定づけるという問題ですから、私はこれは重大な問題だと思う。それについて、税率でももっとお考えになるというなら話はわかります。税率のことは全く考えない。税制調査会の答申を読んでみても、税率その他の問題は非常にめんどうだから、これから検討する。とりあえず評価だけはどんどん上げていくんだ、そういうふうな答申です。それを受けてのやつというのは、私は大きな問題があると思う。もう少し言わしてもらえば、これは一人の演説になって恐縮ですが、あとこれからの質問に対して、大臣腹をきめてお答えを願いたいのですけれども、本質論として、私は、固定資産税は財産課税か、収益課税かという問題もあるわけです。こういう論議がまだなされていない。つまり固定資産を持っておることによって、そこで収益をあげるものなら、その収益で払いますよ。しかし、住宅などは、住んでおるだけで収益にはならない。財産があるんだからそうだろうというけれども、住んでおるだけでは、それは収益というものには直ちに通じてはこないわけです。何か収益がなければ住んでいられないかもしれないが……。そういうふうに収益課税か財産課税かという考え方で、今後の課税の方式というものは変わってこなければいけないと思います。あるいは土地と家屋と償却資産、この三者の間のバランスの問題も全く論議がなされていない。税率の問題も、もちろんそうです。評価だけ上げてしまって税率をそのままにしておいていいというわけではないです。それからまた大企業のほうは、現行の固定資産税の中でも特別措置があって、発電所などは三割でいい、税金は三分の一でよろしい、あるいは三分の二でよろしいというような特例がある。そういう特例を置くぐらいなら、私は、そんなのをやめて、今日経済性の低い農業に対する特別措置をやるべきだと思う。こういうふうな問題もあります。  それからまたもう一つの問題は、早川自治大臣と私は、地方行政委員会で、この法案をつくるときにはっきり約束をして、速記録に残したのです。私どもはこの法律は通さぬと言う。しかし、どうしても通してくれ、三月三十一日ですよ。そういう段階で、早川自治大臣が私の質問に約束をしたのは、新評価に移行することによって大きな増税にはなりません、移行しても将来大きな増税はいたしません、こういう約束をはっきりしているわけです。速記録をよくごらんください。こういうふうな仕組みの中に、経過がずっと今日までにあるわけです。私は、この問題については、こういう雑本問題はきょうは論じません。これはもう一つ機会を改めてお話し合いをいたしたいと思いますが、私はきょうはっきり大臣にお考えをお聞きいたしたいのは、この三年間の暫定期間中にいま現にある段階において、法律改正をやるということが誤りだ、こういう点を申し上げたいわけでありますが、その前にひとつ大蔵大臣に伺いたいのは、先ほど来いろいろと今度の地方財政の欠陥補てんのために措置をされたというふうにおっしゃったが、自治省とどうしても話が合わない最後の三百五十億くらいの際に、固定資産税と都市計画税の引き上げで百億円、あるいはもっとちょっと多くなるかもしれませんけれども、この百億円等を見込んで自治省との折り合いがついているわけであります。だから、大蔵大臣が百億何がしのお金をきちっと御処理されれば、今日のような、自治大臣が遺憾でありますと言うふうな特例期間の中途における値上げという事態が起きなかったわけですよ。私は、法案は自治省でつくったのかもしれないけれども、その種をまいたのはやはり大蔵大臣だと思います。これは、やはり大蔵大臣の地方財政の危機に対する認識の不足で、自治体のほうは評価がえをしているのだから、自分で、自まかないで税金を上げて、それでまかなえばいいじゃないか、そういう安易なお考えで主張されたものだから、自治省のほうは、三年間の暫定期間を一年繰り上げて出さざるを得なかった、こういう事情があるのじゃないかと思うのです。だから、これは私は単に法案の問題でなしに、予算の問題だと思うのです。どうでしょう。大蔵省が百億円何がしの調達をほかの措置でおやりになれば、こういう問題は起きなかったと思うのですが、大蔵大臣、どうですか。
  344. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財源対策上の問題もあります。ありますが、この問題は、住民税を今度は減税をする。しかし、住民税の減税というのは、これは国民の声なんです。しかし、地方自治団体からいいますると、なかなかそう簡単に住民税は減税できないと言う。しかし、国民の声に応じて住民税の減税をしなければならぬという段階になりまして、恒久財源を他に求めなければならぬ、こういうことになりますると、国でも財政上の非常な転換をする昭和四十一年度、これは地方においてもいろいろいきさつもあったが、固定資産税の引き上げをいたしたい、こういうので、政府としては固定資産税の改定に踏み切ったわけなんでありまして、こちらがしかけてやったというような性格のものじゃないのであります。
  345. 安井吉典

    安井委員 住民税の減税の問題は、これは住民の声です。なるほどそのとおりです。私どもは、毎年毎年所得税のほうはいろいろな控除がふえていくが、住民税はもう数年来全く据え置きですよ。物価が上がっただけ税金が高くなっていったわけですね。国税の所得税のほうは、物価が上がるに従って、十分じゃないけれども、曲がりなりにも幾らか減税があったが、住民税はなかったのですから、そういうものを一日も早くやるべきであって、いまごろおやりになること自体がおかしいくらいです。それはそうですけれども、その住民税の減税をするからといって、なぜ固定資産税を不法な上げ方をして、それでいいのですか。固定資産税を上げなくったって、ほかで大蔵大臣は、もうことしは財源は乏しいかしらぬが、一ぱい持っているのですから、そういうもので措置できるはずですよ。それをおやりにならないで、自まかないでやれ、固定資産税を上げて住民税を下げろ、こういうふうな形で問題を処理されたところに、私は根本の問題があると思うのです。  そこで自治大臣、私は今度の期限付の減税措置、それを期限前におやめになったというところに問題があるということを、先ほど来申し上げておるわけです。税法の改正はいつでもありますよ。毎年あります。国税の改正もおやりになる。だから、一つの減税措置が国税なり地方税なりにある。期限はないのだ。ずっと一つの特例措置があって、期限なしの場合に、それを法律でいつ打ち切っても、これは国民はあまり文句は言えないでしょう。そういう方法は、いつでもいままでやっております。それからまた税金を安くするという措置は、これは当分の間の特例でありますよと、「当分の間」と税法の中に書いてある場合は、これも法律が改正になって切られても、そう文句は出ないと思います。しかしながら、三十九年度、四十年度、四十一年度の三カ年度でやりますよ、こう書いてあるのを、四十一年度にまだならないうちにそれをちょん切ってしまうということは、私は重大な問題だと思うのです。具体的に法律が明示してあるわけですよ。普通の問題ではないわけです。国民は、もう四十一年に入っているわけですから、これならことしもいいということで、そういう期待をしております。一種の既得権のようなものにまで今日の段階でなっていると、私は思うのです。それをいまの期限前に破棄をするというふうな、そういう措置をおとりになるということは、私は重大な問題だと思うのです。どうですか。
  346. 永山忠則

    ○永山国務大臣 それがいわゆる経済上の大変革を来たすときでございますので、特に地方開発、都市再開発というようなことを強力に、急激に推し進めていく必要性に迫られたのでございます。その際におきまして、やはり地方自治体から申しますと、その開発によって受ける受益者に公平なる税を負担せしめるということが望ましいのでございまして、この再開発等に関しましては、恒久財源を得ることがやはり地方財政の安定性でございます。そういう関係におきまして、地方自治体も強い要望をいたしており、さらに暫定処置でございますので、新評価額に見合った税金を納めるということが好ましい姿でございますが、激変、これを緩和するという意味で、これに三カ年間を置かれたのでございますけれども、そういうようないわゆる財政経済すべての変革期に直面をいたしだので、地方の財政の安定をはかる上において必要であったのでございます。
  347. 安井吉典

    安井委員 地方財政の充実の問題、自主財源を特に強めていかなければいけない問題もわかります。それからまた、バランスをとらなければいけないといった問題もわかります。わかるが、それなら法律できめてあるように、三年間、もう一年お待ちになったらどうですか。ちゃんと法律どおりおやりになったらどうですか。その法律を破るから、私は問題だと申し上げているわけです。  ここでひとつ確認をしたいわけでありますが、三十九年の通常国会の際に、私も早川自治大臣とはっきりお約束をした点があります。これから大幅な引き上げはしないという約束、さらにまた、それも三年間の暫定措置はきっちりやって、その四年から始まる恒久措置についての話なんですよ、そのときは。恒久措置をどうするかということをそこで論じたわけですよ。そうしてそれも上げないということを、あまり大幅な値上げはしないということを約束しておるわけですが、どうですか。この四年後の話をはっきりしているわけですよ。この点については確認をしていただけますね。大臣がかわったって、私は確認をされると思うのですが、どうですか。
  348. 永山忠則

    ○永山国務大臣 その点に対しては、早川自治大臣との間に論議が尽くされたことを了承いたしております。
  349. 安井吉典

    安井委員 先ほど一番最初に大臣に私は御質問したら、はっきりおっしゃったわけですが、遺憾でありますということだけは、もう一度確認をしていただきたいと思います。
  350. 永山忠則

    ○永山国務大臣 こういうような経済上の大変革で、そしてこれをやるようになったということに対して、暫定処置をこれの期限内に改定をする必要になったことは遺憾であるということを申したのでございます。
  351. 安井吉典

    安井委員 恒久措置として、大幅な増税をしないという約束についてはどうですか。
  352. 永山忠則

    ○永山国務大臣 その約束はございましても、やはり政治は生きたものでございますから、世の情勢の変革においては、やむを得ず変えなければなりません。したがいまして、その法律を出しまして、皆さん方の御審議を仰いでおる次第でございます。
  353. 安井吉典

    安井委員 昭和四十一年度の固定資産税の賦課期日はいつですか、自治大臣。   〔「大臣に聞いているのだ。」と呼ぶ者あり〕
  354. 福田一

    福田委員長 発言を許しております。
  355. 細郷道一

    細郷政府委員 固定資産税の賦課期日につきましては、毎年一月一日ということになっておりますので、四十一年度分につきましては、ことしの一月一日が賦課期日でございます。
  356. 安井吉典

    安井委員 大臣に聞いているんです。あなたはどうですか。
  357. 永山忠則

    ○永山国務大臣 局長答弁いたしたとおりでございます。
  358. 安井吉典

    安井委員 四月一日から昭和四十一年度が始まりますが、その四十一年度の賦課期日は、地方税法第三百五十九条に書いてありますように、昭和四十一年一月一日です。いま税務局長並びに大臣が御答弁のとおりです。きょうは二月十四日ですよ。しかし、まだ法律は出ておりませんよ。地方税法はまだ出ておりませんよ。閣議でもまだきまっておりません。しかも、この法律が通る可能性があるのは、おそらく三月の末か、もしもうまくいったって、そんなものでしょう。そういうふうな段階ですよ。つまり昭和四十一年度は、もう一月一日の賦課期日がきているわけですよ。四月にはもう徴税令書が出るわけですよ。現行法は、明らかに昭和四十一年度は安い税金でいくと書いてあります。三十九年度から四十一年度までは、はっきり安い税金でいただくのだと書いてある。その期日は、一月一日はもう経過しているのですよ。そういうふうな段階までくれば、国民はみんな三年間は安い税金でいくという、この既得権の現実に賦課期間に入っているわけですよ。そういう段階において、いまその特権を、事情変更だとかなんとかという、そういうなことばで打ち切れると思いますか。どうですか。
  359. 永山忠則

    ○永山国務大臣 旧来もやはり税率を変更したりする場合におきましては、こういうような慣例を経ておるのでございますが、一月一日の賦課期日は、すなわちだれがどこでどういうような価格で、いわゆる評価価額がどれであるかということを知るのでございまして、その後におきまして税率の変更等があります場合は、やはり四月になって賦課をするという状態になるのでございます。
  360. 安井吉典

    安井委員 そういうふうないいかげんなお話では、これは納得できませんよ。私が納得をしても、国民が納得をしませんよ。きちっと法律できめられている。期間がきまっているのですよ、三ヵ年間。当分の間とかなんかで、いいかげんな表現なら、私はあるいは納得するかもしません。しかし、今度の場合は、三ヵ年ときまっている。その三ヵ年の賦課期間にすでに入っている、手続期間に入っているのですよ。それをここで新しい仕組みに変えてしまうというふうなことは、大幅な値上げの方向にいまのうちから変えてしまうということは、全然問題にもなりません。自民党の公約なら、これはときどき張りかえてもいいかもしれませんけれども、これは昭和三十九年に国会に出て、法律できめてあるのですよ。単に大臣の約束じゃないのですよ。法律できめてある事項ですよ。法律ではっきり国民に約束していることを、国会がかってに国民の既得権とも見られるような権利をここで奪うということは、私は国会がそういうような中から不信を招くことになると思うのですよ。私は、こういうふうな際に、この問題については——問題は大蔵大臣から出ていると思います。大蔵省は、地方公共団体に対しましてきちっと百億円余りの税源を付与いたしなさい。私は、どうも社会党の提案には具体性がないというふうな評判だから、はっきり具体的な要求をいたします。第一は、地方交付税を上げなさい。もしそれができなければ、ガソリン税を譲与するとか、あるいは地方道路譲与税をふやすとか、たばこ消費税をふやすとか、そういう具体的な措置をしていただきたいと思います。百億円を。それから国庫の交付金や納付金、国から交付金や納付金が出ていますね、国鉄やその他の。それが実情に沿わない。そういうようなものを百億おあげになってもいいですよ。そういう具体的な措置でやってください。そういうふうな措置をやらないで、起債をふやすだけではだめですよ。いつものでんで、起債だけではだめです。そういうような具体的な措置を、大蔵大臣はやるべきだと思います。そして自治大臣は、この法案をもう一度考え直してください。幸いに閣議でもまだきまっていないし、国会提出の手続が済んでおりせまん。提出は取りやめてください。修正を要求いたします。そういうふうな重大な措置がなければ、われわれは予算委員会でこれ以上審議を進められませんよ。はっきりしてください。
  361. 永山忠則

    ○永山国務大臣 やはり負担の均衡上、地方で非常に高い地価がしておるにもかかわらず、安い税率でそのままになるということは——都市開発、地域開発等の利益を受ける人が負担をするということが、現段階においては好ましいと考えて、これを提出する考えでございます。
  362. 安井吉典

    安井委員 だめですよ、これは。はっきりした御答弁を願うまでは、私は質問はできませんね。
  363. 野原覺

    ○野原(覺)委員 議事進行。自治大臣に対するわが党の安井委員の固定資産税の問題に対する質疑でございますが、実はこれは、先般当予算委員会でこの問題について質問いたしました際に、自治大臣は遺憾の意の表明があり、いままた、政治道義上はこれまた遺憾であるということを再確認されておるのであります。私は、佐藤内閣政治姿勢を正す、政治姿勢を正すということは、ことばをかえて申し上げますならば、政治道義を正すということであります。政治道義上遺憾であるならば、この種の法案は、改正案は断じて提出すべきではない。もしこれを提出されるというならば、私は佐藤総理政治姿勢を正すということを疑わざるを得ない。したがって、あなたがここでこの法案の提出については考慮をする、提出することについては、これは明日か閣議にかける予定のようでございますけれども、社会党の主張ももっともであるから考えるというならば別でありますけれども、依然として提出の意思をあなたがひるがえされないで、あくまでも提出するということでここで突っぱられるならば、私は、ここに佐藤総理の出席を要求いたします。委員長は、その点ぜひひとつ佐藤総理をここに出していただきたい。私は承服できない。  以上、申し上げておきます。
  364. 福田一

    福田委員長 ただいま野原覺君から議事進行について発言がありました。この問題については、安井君と自治大臣との間に意見の対立というようなものが見られるわけでありまして、これについて政府の責任ある答弁を求められておるのでございますから、本日はこれで散会をいたしまして、明日の予算総会の劈頭に佐藤総理の出席を求めて、政府意見を述べていただくことといたしまして、その時間は、これはもう大体十分程度ということで、そういうことで了承をしていただくことにして、本日は、これにて散会……。
  365. 安井吉典

    安井委員 いまの委員長のおとりなしでありますが、一つ委員長の発言の中で間違いがあると思います。私と自治大臣とだけの意見のそこではありません。大蔵大臣とも一致しておりません。その点が一つと、それから、時間が十分ということでありますけれども、これは論議の都合でそういうお約束どおりいかないことになることもひとつお含みをいただきたいと思います。  それでは、これで質問を保留しておきます。
  366. 福田一

    福田委員長 ただいまの発言についていろいろありますが、これは委員長は、私が自分の意見を述べるべきときではございませんから、何も申し上げません。ただし私は、やはりそういうふうに野党の方と政府との間に意見の相違がある、こういう意味で先ほどのことばを申し上げたのであります。したがって、明日とにかく総理からこの問題について答弁を申し上げるということで、本日は散会します。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十九分散会