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1966-02-12 第51回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十二日(土曜日)    午前十時十分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       木村 剛輔君    鯨岡 兵輔君       倉成  正君    坂村 吉正君       登坂重次郎君    丹羽 兵助君       西岡 武夫君    西村 直己君       野田 卯一君    古井 喜實君       松浦周太郎君    三原 朝雄君       水田三喜男君    大原  亨君       加藤 清二君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    八木  昇君       山中 吾郎君    春日 一幸君       竹本 孫一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房陸上交通安         全調査室長)  宮崎 清文君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩埼  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君         運輸事務官         (航空局長)  佐藤 光夫君         建設事務官         (都市局長)  竹内 藤男君         建 設 技 官         (道路局長) 尾之内由紀夫君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十二日  委員竹内黎一君、灘尾弘吉君、橋本龍太郎君、  勝間田清一君、角屋堅次郎君及び多賀谷真稔君  辞任につき、その補欠として西岡武夫君、木村  剛輔君鯨岡兵輔君、安井吉典君、有馬輝武君  及び滝井義高君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員木村剛輔君鯨岡兵輔君及び西岡武夫君辞  任につき、その補欠として灘尾弘吉君、橋本龍  太郎君及び竹内黎一君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十一年度一般会計予算  昭和四十一年度特別会計予算  昭和四十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。楯兼次郎君。
  3. 楯兼次郎

    楯委員 私は、社会党の国対の要請によりまして交通問題を主として二時間、模範的な、時間を厳守するつもりでこれから質問をいたしたいと思います。  総括質問が始まりましてから、自分の席で大蔵大臣質問するのでありますが、あなたの答弁を聞いておりますと、少しあいまいといいますか、私の聞き違いかわかりませんけれども、判然としない点がありますので、冒頭に簡単にお聞きしたいと思います。  それは、七千三百億の公債を発行いたしまして、日銀の買いオペの対象にはしない、これはまあはっきり把握できたわけでありますが、日銀貸し出し担保にするのかどうか、この点がどうもあいまいのようにとれますので、はっきりしたところをお聞きしておきたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 出します公債は、これは貸し出し担保になることもありますし、あるいはオペレーション対象にすることもあります。これはもう原則であります。しかし、この一年間の期間におきまして、今度発行する公債担保にして貸し出しをすることも、またオペレーション対象にすることもありません。そういう見通しでございます。
  5. 楯兼次郎

    楯委員 それでは本題に入ります。入ります前に、二月四日の全日空ボーイング727の遭難事故を最も緊急な交通安全の問題として取り上げたいので、少し質問をいたしたいと思います。  今回の史上最大といわれる航空機事故について、その直接原因間接原因とに分けてお聞きをいたしたいと思います。  言うまでもなく、事故の直接原因は、原因究明作業が進まなくては明らかではございません。これは調査委員会が設けられていま調査が進行をしておるようでありますが、私はこの事故本部長にお聞きいたしたいのでありますが、原因究明のためには、機体を一〇〇%回収をして、事故原因の解明を世界に明らかにしなければならないし、また、それがこの最大事故に対する日本政府の当然の措置であると思うわけでありますが、その用意があるかどうか、事故対策本部長にお聞きをいたしたいと思います。   〔発言する者あり〕
  6. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  7. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 今回の全日空の不祥事による災害、飛行機事故機材散在状況は、おおよそ見当がついたような段階まで昨日まででまいったようでございます。それでございますが、捜索方針といたしまして、遺体を引き揚げることを第一に重点的にやりたいと考えておりますので、今日まで機材は揚げておりませんが、今日の段階では、機材を揚げたほうが、あるいは機材の下に遺体があるのではないかというような点も考えられますので、今朝来そういう機材を逐次揚げながら遺体捜索を進めていくという方針に切りかえておる次第でございますが、大体、ほとんどと言っていいくらい飛行機機材は揚げ得るのではないかといういまのところでは見通しを持っております。主要部分につきましては、大体所在地がわかったようでございます。
  8. 楯兼次郎

    楯委員 本部長答弁では、大体機体を全部回収し得る見通しがある、こういうように私答弁を受け取ったわけであります。  これは私が申し上げるまでもないと思いますが、かつて一九五〇年であったかと思いますが、英国コメット機が地中海に墜落をした。五十メートルもあるような深海から、機体回収をして、直接の原因がわかるまでこれを究明をして、そうしてこの原因を相当な費用日数をかけて究明をした、こういうことを聞いております。しかも、その事故原因判明をするまでこのコメット機使用を全然中止をした、こういうことを聞いておるわけでありますが、これは当然の措置であるとはいいながら、責任と誠意のあるりっぱな措置であるというふうに、新聞等でも拝見をいたしまして感銘を受けたわけであります。この故知にならうわけではございませんが、機体を一〇〇%回収をして直接原因究明をし、それが明らかになるまでボーイング727の使用を禁止するのが当然だ、こういうように私ども考えておるわけでありますが、この点、運輸大臣はどのようなお考えであるか。佐藤内閣人命尊重を大きな看板にされておるのでありますから、当然の措置であるというふうに考えたいのでありますが、、御答弁お願いいたします。
  9. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたしますが、この機種の安全性につきましては、大体いままで各国でも十分な検討の結果、非常に安全性の高い飛行機であるということで、いままでやはり使用しておる事情は御了承と思いますが、アメリカでも先般二、三回事故が起こっておった経験があるのでございますが、いろいろその原因等究明した結果から見ましても、やはり機材そのものの根本的な欠陥ではないというようなことで、今日も使用しておるような事情でございます。運輸省としましては、そういう点でいますぐ使用中止するというようなことは考えておりませんが、この機に対して特に事前の点検、あるいは機材調整等、一切の作業に特段の注意を払わせると同時に、運輸省としても、昨夜来検査を十分しまして、そうして安全を確保しながら進めておるような事情でございます。  先ほども申しますように、今回の事故にあいました飛行機資材等は、十分早急に引き揚げ得るという見通しでございますので、これによって厳重な調査検討をいたしまして、もしも飛行機そのものに大きな欠陥があるというようなことがわかり得るようなことになりますれば、その時点においてそういう処置をとることにいたしたいと考えておりますが、いまの段階では、運航を中止するというようなことは考えておらない次第でございます。
  10. 楯兼次郎

    楯委員 米国で三回事故をやった。米国米国の行き方があると思います。しかし、われわれ日本人としては、かつて、先ほど申し上げましたような英国政府のとった態度が、人命尊重というたてまえからは、多少それは支障はあるでしょう、あるでしょうけれども、最も妥当な措置であり、あるいは航空機利用者に対する安心を与える道である、こういうふうに私は考えるわけです。それが中止できないというのは、どこに支障があるのか。簡単でけっこうですから、中止でき得ない難点をひとつ指摘していただきたいと思います。
  11. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 この飛行機を使いますまでには、各企業が二ヵ年以上の歳月を使いまして、そしてあらゆる技術を動員しまして検討いたしました結果、安全性の高い飛行機であるという結論に到達いたしまして使用しておるような事情でございますので、そういう技術的な研究調査の結果等を勘案いたしまして、いま申し上げるような処置をとっておる次第でございます。
  12. 楯兼次郎

    楯委員 中止の意向がないようであります。しかし、機体の直接原因というのはまだ判明をしておらないのに、ただ安心だ、安心だと言うのは、原因を突きとめなくしてだいじょうぶだ、安心だと言われるのは納得がいかない。総理大臣、どう思いますか。いま対策本部長利用者を代表して言う私の質疑応答を聞いてどうお考えになりますか。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま運輸大臣がお答えいたしておりますのは、過去の経験から、これも科学的な、また技術的な検討を十分加えてやったのでございますから、ただいますぐこれをとめるという必要はない、かように申しておりますが、また、楯君は、いずれにしても、いま現実事故が起きたじゃないか、事故が起きた以上、その原因がはっきりするまでは停止したほうがいいんだ、これまた一理のあることのように考えます。しかし、私は、あまりにもその原因がわからないから、こういって非常に疑わしきは一切採用しないのだ、こういうような言い方のように聞けるのでありまして、むしろ技術的な経験を生かして、そうして特別な原因があるのではないか、こういう意味の究明をすべきじゃないか、かように思います。今日停止しなくていい、私はかように思っております。
  14. 楯兼次郎

    楯委員 いま直接原因についてお聞きをいたしましたが、それでは間接原因について二点お聞きをし、御忠告をいたしたいと思います。  今回の事故は、有視界飛行をとらずに計器飛行をとっておれば起きなかったのではないか、こういうことが言われております。したがって、私は、航空法をこの事故にかんがみまして改正をして、少なくとも高速旅客機の有視界飛行を禁止することが、安全輸送のために、多少着陸には時間がかかると思うのでありますが、最上安全策をとるという立場からいけば、これは当然な措置だと考えますが、運輸大臣はどうお考えになるか、第一の問題をお聞きしたいと思います。
  15. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 計器飛行と有視界飛行の二つの行き方のうちで、必ずしも有視界飛行が危険であるということでもないようでございます。そういうことで、場合によっては有視界飛行に切りかえるというような処置をとっておりますが、この問題は技術的に十分検討いたしまして、将来安全第一の方向で進めていくようにいたしたいと考えておりますが、いまのところでは有視界飛行をすぐ計器飛行に全部切りかえるというところまでの結論には達しておりませんが、いま楯委員も言われますように、そういう一つ考え方等もございますので、十分検討して善処したいと考えております。
  16. 楯兼次郎

    楯委員 必ずしも有視界飛行が不安全ではないという、そのことばの裏から、私は、もう最上安定策をとってやるべきだ、こういうふうに思うわけです。これは、運輸大臣は、事故発生以来たびたびそういうことを言明をいたしておる立場もあるので、もう一回これは再考をしていただいて、百何名というような人命が一瞬にして失われるような事故は、多少時間がかかっても、多少経営の面で無理があっても、最善安定策をとる、こういうふうにひとつ管理者としては頭を切りかえていただきたいと思います。起こってからではおそいわけです。そのようにお願いをしておきたいと思います。  それから、この全日空事故発生を端緒といたしまして、おとといですか、大阪の空港において、あわや着陸機が前におる離陸しようとする飛行機に衝突  こまかいことはもう御承知だと思うので申し上げませんが、そういう事故が起きかかっておりました。その内容を聞いてみますると、航空界もまた国鉄の軽わざ的な過密ダイヤと同じように、支離滅裂という印象を受けるわけであります。したがって、この全日空事故に対しましても、間接的な原因としては、過当なスピード競争を暗黙のうちにパイロットに強制をしてきた、この混乱した支離滅裂な航空業界あり方に私は問題があるというふうにとれるわけであります。したがって、こうした面の対策としては、どういうような処置をとられるのか、大体、直接人命関係のある企業において施設が不備であるとか、あるいは人が足らない、あるいは人が未熟練である、そういうあいまいな環境人命関係のある企業をそのまま野放しにしておくということはいけないと思うわけであります。この点どうお考えになりまするか、お伺いをしたいと思います。
  17. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 現在日本航空企業の実態は、安全度の点におきましては安全であるという確信のもとにやっておるのでございますが、航空事業が非常な速力で伸びてまいりますると、さらにそれに伴いまして飛行場施設等も拡張していかなければなりませんし、あるいはいろいろの人員等整備もいたさなければならないのでございまして、そういう情勢下において万全を期しながらやっておりますが、いま楯委員も言われますように、人命尊重最大の要素でございますので、運輸行政といたしましても、安全第一を中心に、企業から運輸省政府一体になってこの問題と取り組んでまいる決心をいたしておりまして、昨日も企業責任者を集めまして、そういう方向で万全を尽くすように指図をいたしたような次第でございます。
  18. 楯兼次郎

    楯委員 総理大臣にお聞きしますが、なかなかこの国内航空統合だとか、いま申し上げましたような環境整備ということは、過去のいろいろな問題に照らして、言うべくしてむずかしい問題だと思います。したがって、単に運輸大臣のみが、企業合同であるとか、あるいはその他の改良に奔走をしても、なかなか実現には日数がかかると思います。現にけさの出がけ新聞を見てまいりますると、国内航空統合について、まあ運輸大臣のほうから関係者に話があったんだけれども実現までには相当な日数がかかるであろう、こういうふうにジャーナリストはすでに予言をしております。しかし、これは日にちがかかってはだめだと思うのです。したがって、関係大臣を督励して総理が強い決断を下さないと、なかなか問題は早く片づかない、こういう気がするわけです。  以上、質疑応答した経緯から見て、総理決意をお聞きしておきたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず第一点の計器飛行ということ、これは、私は真剣に取り組むべき問題だと思いますし、また航空管制官制度、そのあり方等につきましても、さらに熱意を持ってこれに対処していかないと、航空機は非常に進む、しかるにその管理管制方法は従来どおり、こういうようなことでは、とても追いついていくものではないと思いますので、この点は、運輸当局におきましても、一そう技術の進歩におくれをとらないように、制度そのものとして万全を期するようにいたしたいと思います。  また、第二の経営の問題につきましても、航空審議会においてすでに答申も出ておるのでありますし、私もしばしばお答えいたしましたように、今後は集約化が行なわれる、かようなことを申しております。これは、しかし行なわれるといって、ただよそごとのような言い方をしておるわけではないので、行政指導を積極的にやるのだ、こういう意気込みを実は出しておるわけであります。しかし、御承知のように、私どもいわゆる統制経済、あるいは権力経済、かような立場ではないのでありますので、関係者納得を得た上でこれを遂行していこう、関係経営者相互が、ただいま航空審議会でせっかくりっぱな答申が出ておるのでありますから、これを十分尊重して、そして、これに協力するということが最善方法だ、かように考えます。ただいま仰せになりますごとく、政府自身がこういう事柄に熱意を持たない限り成果はなかなかあがらない、かように思います。自由経済でありますだけに、この行政指導というものがどういう形でやられるか、たいへんむずかしい問題だと思いますが、まず第一は政府決意だ、かように私も思います。
  20. 楯兼次郎

    楯委員 総理答弁自由経済人命尊重とどういう関係があるか私はわからぬのであります。審議会にはかっておるからとおっしゃいますが、私は、あと質問の中から申し上げたいと思いますが、審議会尊重をして審議会答申を実施せよと今日まで主張をしてきたのは、むしろ野党の社会党であって、政府・与党のほうでは審議会答申その他は大体ほごにされるか、あるいは口では答申とおっしゃいますが、答申を実施しないというのが慣例じゃないですか。私はあとでその実例を申し上げるので、いまここでは申し上げません。ほかの問題とからまして申し上げたいと思いますが、そうであるから心配をするのです。史上最大の、一つ飛行機で百三十三名の命を失うというような問題が起きたのでありまするから、審議会答申もけっこうでありますが、そういうことのないように、関係者に対する督励と決断政府お願いをしたい、こういうのが私の質問であります。  そこで、私もこの事故が起きてから再認識をして非常に驚いたのでありますが、東京上空には——委員長の許可を得て、これはあとで見ていただきたいと思いますが、ここへ地図を持ってきてあります。幅十四マイルにわたって関東を縦断する米軍機専用ブルー14とかいう帯があるそうであります。したがって、南から来る航空機大島上空から木更津上空を大回りして羽田に発着をするというような不便な姿であるというのが現実だそうであります。したがって、金のことを言うのはどうかと思うのでありますが、その迂回費用に年間十数億円もガソリン代が余分に要る。また今回の事故で、有視界近道飛行を企図した、こういうのも、この関東一円をおおう米軍機専用ブルー14といいますか、これに関係があるというふうに思うわけでありますが、こういうものは実際あるのですか、どうですか、運輸大臣
  21. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 航空のやはり一つのそれぞれの通路がありまして、かち合わないようにしていくために一つの軌道といいますか、そういうコースがあることは事実でございます。
  22. 楯兼次郎

    楯委員 この地図にもあるように、ほとんど関東一円にわたって米軍専管空域がある。とれによって非常に民間航空の発展が阻害されておる。一例を申し上げますると、松本に飛行場ができた。ところが、これが災いして、その飛行場が使えない、こういうことすらいわれておるわけであります。このようなばかげた、われわれ東京に住んでおる者が、これじゃまるで米軍専管空域から空気をもらって呼吸をし、日本飛行機専管空域の気流を分けてもらって自分の国の飛行場に発着するというようなばかげた根拠というのは、どこから出てきたんですか。
  23. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 米軍が使っております飛行場とか、あるいは日本民間飛行場等のいろいろ航空上必要な路線につきましては、調整をしながら現在やっておる次第でございます。
  24. 楯兼次郎

    楯委員 こういうばかげた広域な協定というのは、何に基づいてどうしてこんなものが設定をされたかということをお聞きしておるのです。これでは、まるで日本は、航空に関する限り関東地区植民地と一緒じゃないか、こういう感じがするので、その根拠と出てきたゆえんをひとつ御説明願いたいと思います。
  25. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  26. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 御質問航空路青14は、航空法三十七条第二項の規定に基づきます航空路指定に関する告示によりまして、日光−大宮−横須賀−大島レンジを結ぶ航空路でございまして、これは一般航空機使用に供されるものでございまして、米軍専用のものではないわけでございます。ただ御指摘のように、この航空路に近接をいたしまして提供施設がございますので、その提供施設に出入する航空機もこの航空路使用するという関係に相なっておるわけでございます。
  27. 楯兼次郎

    楯委員 私のお聞きしたいのは、航空法の三十七条に基づいて航空路線協定運輸大臣がするということはわかるのです。なぜそんな協定をしなければならないのか。その三十七条に基づく協定根拠は何か、こういうことを聞いておるわけです。
  28. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 先ほど来楯委員指摘のように、航空交通管制の必要上、いわゆる航空路管制をいたしておるわけでございますが、この管制の必要上「航空法に基づきまして航空路をきめておるわけでございまして、これは別に米軍との協定関係と直接関係はないわけでございます。
  29. 楯兼次郎

    楯委員 そうすると、民間協定ということですか。日ソ航空民間協定、そういう類のものですか。われわれは安保条約の六条による交換公文からこういうばかげた協定がしいられておる、こういうように受け取っておるわけですが、そうじゃないですか。
  30. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 航空路指定につきましては、楯委員指摘のように、計器方式その他の航空の安全上、航空法に基づいてわが国が独自に規定するものでございまして、外国との航空協定とは直接関係はございません。
  31. 楯兼次郎

    楯委員 そうすると、青14というのは、米国の軍用機が使用するコースではないのですか。米国の民間の飛行機使用するコースですか。
  32. 佐藤光夫

    佐藤(光)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、これは米軍の軍用機専用ではございませんで、一般航空機、つまりわが国の航空機も外国航空機も共通に使用する航空路のためのものでございます。
  33. 松野頼三

    ○松野国務大臣 運輸省の所管でありますが、私のほうも多少関係がございますが、いま航空法によって日本の空は日本運輸省が全権を持つ。ただ、日米交渉のときに、この軍用機を使用するについて、危険防止の意味でこの空路を主として使う、この飛行場を使うというのが防衛庁、米軍航空法のもとにおけるわれわれの配分の中でありますから、どちらが優先じゃありません。日本航空法が最優先、その中で危険防止の意味で、これはおまえのほうが使え、これはおれのほうが使う、こういう配分なんです。したがって、いまは米軍の基地が関東地区には三つある。日本じゅうで六つくらい。民間航空が四十ぐらい。また自衛隊の使っておるのが四十ぐらいありますが、これはみな日本航空法のもとにおいて軍用機も統制されております。
  34. 楯兼次郎

    楯委員 日本航空法のもとにおいて協定が結ばれ、統一されていることはわかるのです。しかし、その出てきたところは何かというと、全然米軍には関係のないものか、そうであるのかという点をお聞きしておるわけです。
  35. 松野頼三

    ○松野国務大臣 かりにその航空法のもとにおいて指定を受けましても、その指定はあくまでその主とした指定であって、その他は使ってはいけないというわけじゃございません。緊急避難の場合、あるいは航路変更の場合、それが航空法における権限であり運用をいたしておるわけで、それ以外は飛んじゃいけないというのじゃない。主としてこの空路を使え、危険防止の意味で。これですから、今日もし民間航空がここをどうしても使いたいというなら、また航空法のもとにおける権限ですから、民間航空の安全の意味で航路変更ということは、これは運輸省において権限があります。全部使っちゃいけないというのじゃありません。主としてそういうものを使え、その理由は何だといえば、航空における空路、レーダー、航空灯というものが基準になって運輸省がそれを指定するわけで、ただ空だけ指定するわけではなしに、航空の空路の設備に応じた指定を受けておる、こういうわけでありますから、設備が変われば空路も変えられる、それは、日本航空法の権限のもとにおいての配分でありますから、したがって、この日本東京が非常にお困りだというならば、航空法における設備を変え、配分を変えればその運営はできる。しかし、今日でも民間航空法のもとにありますので、米軍であろうと日本の自衛隊であろうと、航空法の規定のもとにおいての問題でありますから、いけないという意味じゃありません。今日運用上そういう運用を主としてしておる、こういうわけであります。
  36. 楯兼次郎

    楯委員 防衛庁長官の話はよくわからないのです。そうすると、それを使用するのは米軍機であろうと民間機であろうと、全然同一資格でやれる、こういうことですか。
  37. 松野頼三

    ○松野国務大臣 同一資格ということは、基本的には世界航空協定というのが同一資格でできております。その中に、例外として軍用機というものがないとは言いませんが、基本は民間航空協定による民間航空国際協定日本においては航空管制航空法、このもとに今日運用しておりますので、運営は同じであります。
  38. 楯兼次郎

    楯委員 どうも長官の話を聞いても釈然としません。何だか答弁に、民間のほうにウエートを置いて米軍の軍用というほうをおおいをかぶしたような説明をされる。まあわれわれしろうとでありますが、いろいろな関係者の話を聞くと、こういうのは目ざわりになるというので、移転の要請を政府はしたほうがいいんじゃないか、こういうことを聞いておるので、長官のおっしゃるように、そう簡単にいくものなら、ぜひひとつコースを羽田離着陸支障のないところへ変えてもらったほうがいいと思うのです。
  39. 松野頼三

    ○松野国務大臣 楯委員のおっしゃるのは、基地の問題だと思います。いまのは、航空管制の問題でのお話と基地の問題というのは、これはおのずから別にしていただきませんと、航空の基地が多いから管制ができないというのか、あるいは航空管制はもっと高度化してまいればできるのじゃないか。基地の問題と航空管制とはちょっと議論が別じゃないか、私はかく思います。  それでは飛行場が密接しておるところはみなないかといえば、やはり都市周辺ではどこでも密接しておるのです。それは旅客が多い、必要があれば、飛行場はみんな密接しております。北海道にいけばずいぶん離れております。基地の問題と航空管制の問題とはおのずから別じゃなかろうか。もちろん関連がないとは私は言いません。
  40. 楯兼次郎

    楯委員 われわれ社会党立場から言えば、基地も空も撤去願いたいわけですよ。それから人口の密集地帯からはこれは移転をしてもらいたいのですが、まあしかし、これは議論いたしましても果てしがないと思いますので、次に進みたいと思います。  昭和三十九年に政府が総合的な交通政策を樹立する必要がある、こういうので、日本の有識者による交通基本問題調査会というのをつくりまして、総合的な施策について諮問をいたしております。これが三十九年にでき上がりまして政府答申をしておるのでありますが、関係の大臣は内容を知っておみえになりますか、そういうものがあるというのは。
  41. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 ただいま楯委員質問でございますが、大都市近郊における通勤通学輸送対策について都市交通審議会に諮問をいたしておることは承知いたしております。
  42. 楯兼次郎

    楯委員 ちょっといまよそ見をしておったのですが、運輸大臣はそれを知ってみえるわけですね。この主管は総理府だと思うのですが、総務長官、知ってみえますか。
  43. 安井謙

    安井国務大臣 答申をいただきまして、それに対しまして、特に四十年度からそれぞれの対策を立てて、いま実施中でございます。
  44. 楯兼次郎

    楯委員 答申の内容をこまかく私はお聞きしたいとは思いません。一体、この初めてできました総合的な日本の交通に対する政策の答申について、何が一番強調されているかという点を、簡単でけっこうですから、ひとつ総理府長官、関係のある運輸大臣、建設大臣あるいは自治大臣にお聞きしたいと思います。
  45. 安井謙

    安井国務大臣 お答え申し上げますが、まず交通問題に関しましての長期の全体計画を立てること、その計画の内容といたしましては、まず施設——交通関係の道路、踏切、あるいはその他の施設を十分徹底させてやっていくことがまず第一でございます。その次には、国民的な関心のもとに交通問題に対する対策を立てていくこと、こういう意味では、国民会議といったようなものを実は昨年から春秋二回開いて、全国にこの交通思想の普及をやっております。さらに家庭、児童に対する徹底化をやっていくことが第一だと思っております。  その次に、いまの交通施設の問題につきまして、総合調整をやる必要があるということで、昭和四十年度から総理府の総務長官を長としております交通対策本部長のもとに、交通安全室というものを置きまして、それによって各省の施策の総合調整を行なっておるような次第でございます。さらに、ことしから三カ年計画をもちまして、全体の交通安全整備の緊急対策というものを持ちながらやっていく。さらに運転者の十分な教育、訓練、これをやっていく計画も立てておるわけでありまして、それから一番最後に大事なことは、被害者に対する補償措置、損害保険、あるいは保険制度の拡充、また事故者に対する救急措置、救済措置、そういったものの拡充をいま総合的に進めつつある状況でございます。
  46. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 ただいま総務長官が申し上げたようなことでございますが、特に交通量の増加に伴って設備投資を十分にするようなこととか、あるいは大都市の過密状態を緩和するような施策とか、安全第一でやるようにというようないろいろそういう答申が出ておるわけでございます。
  47. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 総務長官、運輸大臣等が言われたことと同じでありますが、建設省に関係したことと言いますと、やはり大都市内の交通問題、これは都市内だけでは解決しないから広域的に考える。今後、特に投資が非常に膨大に要ると思うのですが、用地費等にかけることが適当でない。ぴたり抑制をすることが特に私ども関係のある事項であります。
  48. 永山忠則

    ○永山国務大臣 私のほうの関係におきましては、建設省と同じく施設の緊急整備三ヵ年計画で予算をことしから実施するようにいたしております。すなわち標識、信号機等の整備でございます。  なお、運転者の関係につきましては、その教養の度を高める、もしくは安全運転学校、あるいは安全運転教室をつくりまして講習内容を整備していくというような関係、あるいは違反者の再教育に重点を置く。なお、学校児童に対しましても交通安全協会から運転、ことに自転車の運転関係について講習をするというような関係、ことに本年度予算で全国の運転者の履歴を中央に集中管理する電子計算組織を三カ年計画で整備することにいたしたのでございます。さらに被害者の救急施設としては、特に救急車の整備を進めておるのでありますパトカーもまた自台増車いたしております。救急車の関係も四十年度から四十四年度までは大体十万以上の都市、あるいは主要国道沿線、高速道路沿線、空港所在地の市等にこれを十分整備をする。また被害者救済のために警察に相談員を設け、あるいは安全協会にも相談員を設けまして、事故処理相談に応じ、弁護士会との連絡を密にしてこれが対策を講じるという答申内容に即応して前進をいたしておる次第でございます。
  49. 楯兼次郎

    楯委員 そのとおりだと思います。交通に対する総合計画というものは、終戦以来政府になかったわけです。私ども関係委員会でやかましく言っておったのですが、三十九年に初めて総合計画の答申ができた。結論から言いますと、政府がこの答申を忠実に実行をすれば、大体現段階における日本の交通の諸関係の問題点は私は解決されると見ております。私ども社会党立場ではありますが、非常に交通基本問題調査会の答申を重視いたしておりますし、社会党自体がこの答申の内容を盛った議員立法をつくっております。きのうも新聞によりますと、運輸委員会で社会党提案の国鉄緊急整備法が提案をされた。ところが自由民主党の諸君がこの整備法について質問をした。どういう質問をしたかというと、こんな夢みたいなことはというので、一笑に付しておられるようでありますが、われわれの提案をしておる鉄道緊急整備法というのは、ただいま各大臣が答弁せられました答申の内容をほとんど取り入れて提案をしておるのです。それを与党の議員が夢のようなと言って一笑に付すということでは、交通問題の解決に対する熱意は、閣僚そのものから私はないような気がしてならないわけであります。でありますから、ぜひひとつこの答申にありまする内容を忠実に実施をしていただきたいと思います。  わが党が提案をいたしております緊急整備法というのは、まず安全輸送を基本として、いま混雑いたしておりまする通勤輸送の緩和をはかろう、しかし運賃値上げであるとか、そういうみみっちい財源ではとてもこれは解決ができませんので、自己資金、借り入れ金、政府出資、おのおの三分の一ずつを出してこれが解決をはかろう、こういうことであります。それから答申の中にも盛られておるのでありますが、社会党は、どうもアメリカをあまりよく言わない、こういうことを言われるのでありますが、一九六二年にケネディ運輸教書というものが出ておるわけでありますが、この運輸教書に基づきまして、都市公共運輸法というものをアメリカがつくっております。これもわれわれ社会党は大いに取り入れまして、これに基づいて安全基本法、あるいは地下鉄の問題、あるいは都市間の問題、あるいは国鉄の緊急整備法等をつくっておるのでありますから、ひとつ社会党政府よりもむしろ基本問題調査査の答申尊重をして、政府がつくらないからわれわれが法律をつくって提案をしておるという点を、ひとつ認識を新たにしてもらいたいと思います。このケネディ運輸教書に基づく都市公共運輸法というのは、簡単に申し上げますると、政府が、たとえば都市交通を緩和するためにはこうこうこういうことをやれといって長期計画を立てる、その三分の二は国が投資をしてやろう、あとの三分の一は、——経営は公共企業体か、まあ名前はいろいろありまするが、その経営者が負担をして運営をする、こういうことでありますので、ぜひひとつこの答申の線に沿って交通対策を進めていただきたい。公債発行論議あるいはその他の論議で予算委員会は連日わいておりますが、これはきわめて重要なことだと思いますので、この答申どおりに法律をつくり、行政を進めてもらいたい、そうすれば、現段階における交通の諸問題はほとんど解決をしていくのではないか、こういうふうに思います。  そこで、こういう精神に基づいて、公共料金の値上げは、われわれ社会党立場からいって不適当ではないか、こういう論をこれから進めていきたいと思います。  まず冒頭に簡単に言えることは、七千三百億円の建設公債を発行しながら、特に東京都の市民、都市の市民がもう困ってしまうと言っておるような都市交通の緩和、あるいは幹線輸送の緩和について、なぜ真剣に投資をし解決をしようとしないのか、こういう点が私は不可解でありますので、この点をまずお伺いをしておきたいと思います。
  50. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 大都市近郊の非常な交通難の状態を解決いたすために、国鉄の今回の第二次輸送力増強計画の中では、約五千億程度の投資をつぎ込んで、大都市近郊の交通緩和のために努力するようにいたしておるわけでございますし、さらに都市近郊の私鉄等の輸送力増強の線にも、十分そういう線を織り込ませて、できるだけの努力を続けておる実情でございます。
  51. 楯兼次郎

    楯委員 公共料金値上げ、物価値上げということになるんですが、総理は予算委員会冒頭から、物価抑制について、真剣、真剣ということばを、一日に、まあ大げさに言えば何十回も使われておるのを私は聞いておるわけです。ところが、政府が幾らその説明、説得をされても、国民の受ける側からいえば、自分の操作できる公共料金を値上げして、それ以上にむずかしい物価を上げない、上げないということでは、真剣さが足らないではないか。それはあなたのほうにはいろいろの説明、言い分はあるでしょう。しかし国民はそう思います。おれは酒を飲むけれども、国民、おまえたちは飲んではいかぬ、私は簡単に言うと、こういうふうに国民は理解をしておるのではないか、こう考えるわけです。だから、七千三百億も公債を発行して、なお操作の一番容易にできる公共料金を抑制して、そうして国民一般に物価は上げないように、なぜこういうお説教をやらないのか、これは本末転倒、順序が逆だ、私はこういう気がしてならぬのです。素朴な国民もそう受け取っておるに間違いないと私は思うのですが、この点どうですか。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話は、素朴な国民にわかるように説明しろ、こういうことですが、やはり経済の現象は経済の原則、これを無視しては克服するわけにはまいりません。ただいま経済の不況克服をしよう、同時にまた物価問題、これも安定させよう、この二つを同時にやろう、かように考えておるのでありますが、いずれもが経済の原則、それにのっとって処理できるものでございます。そういう観点を十分国民も理解していただきたいと思います。なるほど、公共料金だけは上げなければ国民はしあわせかもわかりません。しかし、その場合に、公共企業は一体どうなるのか。やはり適正な料金の引き上げ、これもやむを得ないんじゃないか。もちろん合理化はいたします。また必要な人件費等も抑制してまいります。また政府自身が低利長期の資金の融資をいたしまして、引き上げの条件、そういうものがそろわないように、あらゆるくふうをいたします。しかしながら、それだけの合理化をしてもなおかつどうしてもやっていけない、こういう場合には料金を上げる、これがいわゆる経済の原則であります。この経済の原則を無視して、そうして企業もりっぱであろう。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 また利用者も幸いする、かようなことはできないのであります。
  53. 楯兼次郎

    楯委員 先ほどもちょっと触れましたが、ケネディ教書、あるいは基本問題調査会の答申は、こういう企業については政府資金を投入をしてやれ。これはあとで申し上げますが、それならこの東京都の通勤輸送は、あなた、運賃を値上げして解決ができるような問題ですか、これは。そんななまやさしい問題じゃないと思うのです。だから、先ほど答申承知をなさっておるか——答申の貫いておりまする線は、交通については国が責任を持てということなんです。国が責任を持てということを初めから終わりまで強調をしておるわけです。そういう精神でやれば、物価の問題、あるいは非常に行き詰まりにきている都市交通の問題、幹線輸送の問題も解決ができるのではないか、私は金の使い方を間違えておるような気がしてならぬわけです。そこで、これは総理は勘違いをされておるかどうかわかりませんが、国鉄の運賃の値上げをしても、〇・七%くらいしか物価には影響ない、こういうことを本会議で演説をなさっておるのですが、間違いございませんか。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 運賃が消費者物価に与える影響、これは〇・七というのが私のほうの調べでございます。
  55. 楯兼次郎

    楯委員 まあこれは水かけ論になりまするので、この議論はやりたくないのでありますが、大体第三種産業といいますか、サービス業に政府の扱っておりまするレオンチェフとかいう計算のしかたは誤っておる、こういうことを多くの学者が指摘をしておるわけです。したがってサービス業に適用する計算方式でやると、少なくとも国鉄、私鉄の運賃値上げは二%物価上昇に影響を与える、こういうことを言っております。こういう話を聞きますると、本年度の物価の値上がり予想が五・五%です。まあ安定成長は三%ですから、公共料金値上げによって二%、したがって五・五%に押える、こういうようにつじつまが合ってくるわけです。四%だとか四・五%といえば、こういう計算方式からいってそれは間違いである、こういって指摘されるので、五・五%に押えるが、それが最低の物価上昇の値である、学者の説を聞いてみますると、こういうふうな印象を受けるわけですが、この点はどうですか、きょうは、経企長官は奥さんの何か御不幸があったそうでお見えになりませんが、大蔵大臣にお聞きしましよう。
  56. 中西一郎

    ○中西政府委員 物価の個々の料金等につきましての値上げが物価全体に、家計全体にどういうふうに響くか、いろいろ計算の方式もあるようです。しかし、現在最も確実に見通し得る方式としましては、CPIを構成しておりますウエートと、値上げ率の両方を相乗、かけ合わせまして出すという方式が一番端的なやり方ではないか。そのほか産業連関表を使ったような試算もございますけれども、産業連関表そのもののもとになっております経済の構造、原材料の使われ方、輸送の仕組み、そういうようなものが目まぐるしく現段階では変わっております。そういう意味で計算の技術的な問題もありますけれども、仕組み全体から見て、産業連関表を用いて計算するやり方が端的な結果を得るかということについては、なお疑問がございます。そういう意味でわれわれ事務当局としては、産業連関表のほうの数字については、まだ公のものとして結論を得る決意に至っていない、そういう経過でございます。
  57. 楯兼次郎

    楯委員 だから、いま御説明があったように、あまり自信がなさそうであります。いろいろな説があると思いますが、いま申し上げました考えの学者たちは二%、これが物価に及ぼす正当値である、こういうことを言っておるわけです。これは、ここで国鉄の値上げ問題に及ぶのは時間がなくなりますので、そういうことを申し上げておきたい。  それから一年運賃の値上げをストップしました。そのストップした一年間に多少とも値上げ率を縮小する努力をされ、あるいはその成果があれば、まだわれわれ違った考えになるのでありますが、一年ストップかけたから一年待った、待ち賃をプラスアルファでくっつけてやろう、こういうような運賃の値上げは承知ができないのです。平均二五%上げたとおっしゃっておりますが、この都市近郊ではほとんど倍じゃないですか。二五%、私鉄は二二%とおっしゃるのだが、都市の最も国民が利用する区域は、一々こまかいことをあげることはできませんが、二倍以上の値上げになっておる。一年の待ち賃がついておるような気がして私はしょうがないのです。  それから、一番私が値上げについて不明朗であるという点は、国鉄運賃も、私鉄運賃も、運輸審議会答申を待って政府が採択をするという、あるいは決定をするというたてまえになっておる。ところが、今度の国鉄、私鉄運賃の値上げはどういうやり方をやったか。審議会答申が出ないうちにすでに政府与党は何%である、これだけ値上げするということを決定しておるじゃないですか。総理大臣、お聞きなさい。あなたは航空審議会答申尊重して云々ということを強調なさいましたが、運賃値上げについては、審議会答申を待たずにこれだけだ、こういう決定をして、間接か直接か知りませんけれども審議会に圧力をかけ、あるいは審議会を無視しておる。全く非民主的なやり方であるという点が私ども国民の側からいえばがまんできない。これは私だけの意見じゃないと思います。与党の諸君だって、なぜ筋を通さないのか、値上げの是非は別として、そういうばかげたことをやる政府のやり方はなっておらぬ。こう言っておこっておる人も多数あると私は思います。経済企画庁にあります国民生活審議会会長が非常に憤懣やる方ないことばでこういうやり方を痛撃しておる。一部を読んでみますと、「たまたま米価審議会答申を無視したような形で米価がきまりそうになったんですね。また公聴会を開いているあいだに国鉄の運賃値上げがきまるというふうな事態になったものですから、非常に」委員会としては「強硬な意見が強くなりました。」政府が委嘱しておる国民生活審議会会長ですら、当時これだけのことを言うのですから、憤懣やる方ない意見を持っておったわけですが、なぜこんなばかげたことをやったのか、運輸大臣総理大臣にひとつお伺いをしたいと思います。
  58. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 運輸審議会で公聴会の最中に運賃の値上げ率をきめたではないかという質問でございますが、実はあの際に私も出席いたしておったのでございますが、大体党の方針として、いつごろ運賃値上げを実施するかという実施時期について党がいろいろ検討いたしましたのでございまして、その際、運賃率等についても、党の役員の間でいろいろ議論はなされておりましたが、それはあくまで党の内部の議論でございまして、運輸大臣としては、公聴会の最中であるし、審議会答申を待たなければ決定すべきものではないということで処理しておった次第でございます。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の取り扱い方については、ただいま運輸大臣がお答えいたしたとおりであります。しかし、楯委員からもいろいろ御注意がありますから、将来注意いたします。
  60. 楯兼次郎

    楯委員 総理が率直に今後やると言われるので次に進みたいと思いますが、この国鉄の第三次長期計画というのは、政府の本年度出された経済活動指数に見合った施設の増強であるかどうか、こういう点をお聞きしたいと思います。二倍も三倍も車に人を詰める、こういうのでは困るので、政府の経済成長活動に見合った長期計画であるかどうか、こういう点を簡単でいいですから、答弁していただきたい。
  61. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 経済企画庁の長期計画と見合ってつくっておる増強計画でございます。
  62. 楯兼次郎

    楯委員 いつも一応数字は合わせておるような説明でありますが、大体十年くらい前の輸送活動指数を三次長期計画で実現しよう、こういう計画である気がしてならないのですが、そういう点はないですか。もう一回お聞きします。運輸大臣はわからなければ事務当局でもけっこうですから……。
  63. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 政府委員から答えさせます。
  64. 堀武夫

    ○堀政府委員 お答えいたします。  経済企画庁でつくりました中期計画の数字に大体見合って樹立をいたしております。
  65. 楯兼次郎

    楯委員 政府としてはそうでしょう。そうでしょうが、そういう気がする。  それから、ここで十年来議論してきたのですが、結論は出ておらない。結論は出ておらないけれども、もう一回私は確認をしておく必要があると思うのですが、国鉄の公共企業体の意義です。独算制と公共性ということを盛んに言われる。独算制と公共性というのはどういう意味か、はっきりわからないわけです。われわれは、公共企業体というのは収支とんとんで、新規投資は、設備投資は政府の出資によってやるというのが、あるいは新幹線のような場合には借り入れ金ということもあるでしょう、そうしてやるのが、これは公共企業体の本旨だと思うのですが、政府の見解はどういう意味ですか。
  66. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 国鉄が持っております公共性というのは、公共の福祉を増進することを目的として業務の運営をやっていくということでございますし、独立採算制というのは、公共企業のたてまえから、その経営の主体を独立採算制でやっていくということでございまして、何か矛盾するような点があるようにも言う意見もございますが、この公共性と独立採算制との調和をはかりながら、その使命達成に努力をしてまいっておるような次第でございます。
  67. 楯兼次郎

    楯委員 運輸大臣答弁、ちょっとわからぬのですが……。金を出すほうに直接関係がありまするし、それから総理大臣は、これは国鉄の一番長老だから、簡単にひとつ。金を出す大蔵大臣は、公共企業体とはどういう把握をしておるのか、総理大臣は、総理大臣以外のこういう面の長老として、ひとつ簡単に見解を聞かしていただきたい。
  68. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公共企業体とは、読んで字のとおりでありまして、企業体であります。企業体としての運営をすべきものである。同時に公共性を持っておる、その公共に奉仕しなければならぬ、そういう性格のものを公共企業体というものと存じます。
  69. 楯兼次郎

    楯委員 抽象論で、それは国語の辞典と一緒だと思うのですよ、いまあなたのおっしゃるのは。それなら私はお聞きしますが、具体的に公共性とは何をやることか、簡単に一つだけあげていただきたいと思います。公共性とは何か、何をやるのか。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国の陸上輸送の中核としての任務を完遂する、かようなことであります。
  71. 楯兼次郎

    楯委員 私は独立採算制と公共性の関連を聞いておるのです。大蔵大臣のおっしゃるのは、安い国語の字引きの解釈と一緒ですよ。片方は独立採算制と言い、片方は公共性と言って、これは相矛盾しておるじゃないですかね。したがって、この運賃料金でも、基本問題調査会は、国が責任を持って解決せよと答申しておるのです。ところが、歴代の保守党内閣は、てめえのところでまかなって運営をせよ、近代化をせよ、新幹線の投資でもまかなえ、こういうことを言っておるわけです。これは、まっこうから意見が、答申政府の見解と食い違っておるわけです。総理大臣どう思いますか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は国鉄に長くいましたし、また楯君も国鉄の現場で働かれたと、かように思います。ただいま公共性並びに独立採算制の議論をここでお尋ねを受けるとは実は思いませんでしたが、しかし国民の中には、ただいまのような点についていろいろ疑問を持たれる方もあるだろう、かように私思いますので、独立採算制が、いわゆる公共性という観点からまた要求されておる、こういうこともひとつお話しをしてみたいと思います。  まず第一は、事業のサービス、これを国民に提供する、交通のサービスを提供するというのが国鉄の使命だと、かように思います。サービスは、ただ運ぶというだけではなく、また取り扱いが非常に親切だというだけではありません。料金が安いものであることが、これも一つの大きな条件だと私は理解しておる。この点では楯君も同じような考え方だろうと思います。  ところが、この国鉄は、そのサービスを提供するためには非常に金がかかる。設備にも金がかかるし、最近の過密ダイヤの克服ということにもたいへん金がかかる。また多数の従業員を擁しておりますので、これの従業員がサービスの本体である、こういうことを考えると、やはり適正な賃金も払わなければならない、こういうことで、経営上にはいろいろの苦労が多いと思います。国鉄自身が非常な利益をあげる事業だと、かように私は思いません。利益をそんなにあげてくれる必要はないと思います。しかしながら、これがもしも赤字だ、赤字経営をしたら、その赤字はだれが負担することになるのか。楯君はただいま言われるように、これは政府がその赤字を埋めればいいじゃないか、かような言い方ですが、政府が赤字を埋めるということは、一体だれの責任において政府は赤字を埋めるのか。私自身がそんな金を持っておるわけじゃありません。それは国民の負担においてそれがまかなわれるということであります。ただいま国民は各方面において非常な負担をしょわされておる、その負担の軽減が叫ばれておる。私はまた、国民の負担はできるだけ軽減するのが本来の姿だと思います。  かように考えまいりますと、やはりこのサービスを受けた受益者自身が国鉄の経営をして健全ならしむるというのが本来のたてまえじゃないか、かように私は思います。いわゆる一般国民の負担、税金でまかなうという行き方は、これは必ずしも適当な方法ではない。そこにいわゆる独立採算制の問題が出てくるのであります。この点は、質問者である楯君はもう百も御承知のことなんだと思いますが、国民の中には、私は、こういう点で非常な誤解を持っておられる方があるだろうと思いますので、ただいまのようによく小分けして申し上げますが、結局この事業を、サービスを、交通の利便を提供するために国鉄自身は非常な苦心をしておる。だから、みずからが姿勢を正して経営の合理化をはかって、そうしてむだな金を使わないようにする、このことがまず第一に要求されることだ。だから、国鉄自身の経営を見ていますと、非常な機械化を行なっております。私どもが想像する以上の非常な近代化が行なわれておる。だから、従業員が今日のような列車回数、今日のような多数の乗客、貨物を扱っておるにかかわらず、その従業員の数が非常にふえておらないということでもおわかりだと思います。だから、この経営の合理化をとにかくできるだけして、そうしてむだを省く、しかもその交通の便益は一〇〇%提供しよう、こういう努力をしておる。そうしても、どうしても解決のできないものがある、それが最後に一般の税金によるのか、また国鉄だけの受益者の負担によってこれを解決するのか、こういうところへ押し詰められてきたもの、これが今回の料金の値上げであります。運賃の値上げだ。かように思いますので、この点も御理解をいただきたいと思います。
  73. 楯兼次郎

    楯委員 総理大臣はそうでしょうけれども、私は、先ほど申し上げましたように、国鉄でない、政府でない、日本の交通の最高の学識経験者、実務家がつくった基本問題調査会の答申を、委員会が終わったらひとつ読んでいただきたいと思います。答申に盛られておるのはそういう考えではないのです。それでは、赤字が出たら、国民の税金より利用者が負担すべきである、こうおっしゃいますが、一歩譲って、二、三不合理な点をひとつ指摘をしてみたいと思います。  まず第一は、今度の長期計画で運賃の値上がり分は建設費の二〇%だ  来年度予算をちょっと正確には覚えておりませんが、運賃値上がり分は千億以下だと思います。私は、政府がその気になれば、値上げをしなくてもそのぐらいは、先ほど申し上げましたように、答申の精神からいかなくても、まかなえると思います。  まず第一に、非常に不合理だといってあげておりまするのは、国鉄の資本金です。資本金を、めんどうだから私のほうから言いますが、八十九億円ですよ。三公社あるいは公団が五十近くある。その公社、公団の政府の出資金を見てごらんなさい。膨大な国鉄の運営を資本金八十九億円でするというようなことは、他の公社、公団と比較をすれば問題にならないのです。これは笑いものです。こういう面からも、もう少し国鉄に政府は出資をしたっていいではないか、こういう点が一つあげられると思います。  それから、よく国鉄では貨物の暫定割引一年だ、時期が来るとまた二年だ、三年だというので、暫定という名前はついておりまするが、これはなくならない。そういう法定割引率以上に割引をされておるいわゆる公共負担の総額は、昨年国鉄のほうでは八百六十八億だといっております。私は、八百六十八億全額政府に出せと言わないまでも、当然政府の意思によって暫定割引なり、あるいは法定割引率以上に割り引かれておるその一部は、たとえ百億なり百五十億なりでも政府がめんどうを見てやる、支弁をしてやるのは当然だと思うのです。これは、いま引用はいたしませんけれども、基本問題調査会の答申にも、そのことがくどくどといってあります。それから諸外国の鉄道に対する政府の取り扱いを見ても、すでにその価格差補給金を予算に盛ってから暫定割引なり、あるいは学生に対する割引なり、そういう法令を予算を前提として出しておるわけです。日本は全く逆です。こういう面もひとつ考えてもらいたい。  それから市町村納付金というのがありますね。市町村納付金というのは三十一年にできました。市町村納付金を、大体九十億円一年間に市町村に出しておるわけです。これは一体どういうことですか。国鉄が赤字だ、運賃の値上げをしなければならぬ。それに地方財政が三十年ごろに非常に逼迫をしてきた。そうしたら、今度は国鉄のほうから、地方財政の穴埋めに納付金という名前をつけて九十億円支出しておるじゃないですか、これは一体どういうわけですか。この関係はわかりますか、運輸大臣、どうですか。
  74. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 固定資産税のかわりのようなものでございます。
  75. 楯兼次郎

    楯委員 大蔵大臣、どうですか。
  76. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま、第一は資本金の問題でありますが、資本金はお話しのとおりの額です。しかし、国鉄の経理全体としますと、内部留保全等もありまして、実質的の自己資本は六〇%ぐらいになっておる。今日、普通の私企業においては二〇%を割るという状態に比べますると、非常に堅実な内容である、こういうふうに考えております。  また第二は、特別の国鉄のサービス、学生、通勤パスというようなものに割引がありますが、これに対して政府は金を出すべきじゃないか、こういうお話でございますが、これは、もう先ほど総理からお話がありましたとおりなんです。結局だれが金を出すかということになれば、これは国民全体から出さなければならぬ。これはそうじやなくて、利用者が負担すべきである。ところが、その利用者の負担が限度にきた、こういう際には問題と思いまするが、今日利用者の負担からいいますれば、戦前に比べまして物価は四百倍だ、国鉄の旅客の運賃は百六十倍だ、こういうようなことであって、いろいろ総合的に考えてみますると、これは利用者に負担をしていただくのが筋である、こういう見解をとっておるわけなんであります。  それから、ただいま固定資産税のかわりに納付金だという答弁がありましたが、それはそのとおりの考え方でありまして、これは、基地につきましても同様なことをやっておりますので、国鉄がそういう措置をとる、これもやむを得ないことか、かように考えております。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお答えで、私がつけ加えなくてもいいかと思いますが、これは鉄道のほうのかねてからの主張でありますから、やはりただいま御指摘になりましたような貨物運賃の割引あるいは学生割引、その他国の援護施策として運賃をまける、あるいは免除する、こういうような問題がございます。そういうものの穴埋めをしろ、まずそういうものの穴埋めをしたその上で運賃の問題を扱うならまだわかるが、国がこういう点にめんどうを見ておらぬじゃないか、こういうおしかりかと思いますが、そういう意味では、そのおしかりはそのとおり当たっておると私も思います。しかし、こういう事柄はもう過去長い間のしきたりでありますから、そのしきたりをただいま急に変更するとと、これはあまりいい形ではございません。私は、楯君がこういう点において不満をぶちまけられること、これはもうそのとおりでございます。しかし、国鉄自身が在来から、国有鉄道という関係もあり、ただいま申し上げるような特別な国の政策に協力する、これがサービスの提供のゆえんだ、かような考え方で今日まで協力してまいったのですから、この機会に、国鉄が公社になったから、こういうだけで直ちにそれを変えるというのはいかがかと思います。  ただいままた、市村町に対する納付金の問題についてお話がありましたが、これも、固定資産税がかかるというような問題から、ただいまのような納付金制度でこれが落ちついたということであります。  また資本金自身の問題につきましては、これは国が持っておる資産の提供、その評価、そういうこともありますので、ただいま国鉄の持っておる資産を正確に評価したら一体どういうことになるのか、これは一つの大きな問題だ、かように私も思っております。この点で、御指摘になりました点を全然私が理解しておらないわけではない。同じような理解はいたしておりますが、ただいまの状態では、この点重大なる変更を加えない、そうして国策に協力する、それがまた国鉄本来の使命にも合うんだ、かように私は理解しております。最終的に、こういうことを処理いたしましても、運賃を改正しなくていい、こういう状態でないことだけは御了承いただきたいと思います。
  78. 楯兼次郎

    楯委員 私は、公共負担が約九百億あるというのを上げよと言っておるのじゃないのです。それはもうどんな割引でも、国民の側からいえば、これは安いにこしたことはない。がしかし、そういうことをやっておる政府は、運賃値上げという前にこういう点も考慮して、諸外国でやっておるように、その何%かは当然政府が運賃値上げのかわりにめんどうを見るという常識があってもいいではないかと、こういうことを言っておるわけです。  それから、通行税が昨年一年、約二十七億取っておるのですが、通行税というのは一体何に使うのですか。二十七億、運賃から通行税という税金を取っておる、これは一体国鉄が使うのですか、どこが使うのですか。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは一般の財源に充当せられるわけであります。
  80. 楯兼次郎

    楯委員 運賃の値上げをやる国鉄から金を余分に取って、そうしてよそのほうへ持っていって使うなんということは、幾ら大蔵省が理屈を並べたって国民のほうは了解しませんよ。何でそんな金があったなら運賃値上げの足し前にしないのか。そういうばかげたことをやっておるのですよ。これはどうですか、運輸大臣。通行税二十七億を国鉄から取っている。これは昔の臨軍費のなごりですよ。軍事費に使うために通行税を国鉄にかけて、汽車に乗るのに税金を出して、それで大砲、鉄砲をつくっておった、その戦前の亡霊をまだ生かしておる、そうして運賃の値上げをやるという、こんな不合理なことはありますか。どうお考えになります。担当大臣。
  81. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 大体これは一等料金だけかけておるのでございますが、運輸省といたしましては、なるべくそういうことをなくしたいという意図を持っておりますので、交渉はしておりますが、現在の段階では、目的を達し得ないでおるという実情でございます。
  82. 楯兼次郎

    楯委員 ことしからとってもらいたいのだが、来年はこんなばかげた通行税は撤廃しますね。大蔵大臣、どうですか。
  83. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 将来の問題としてよく検討いたします。
  84. 楯兼次郎

    楯委員 しかし大蔵大臣、金額が少ないから鼻であしらってみえますが、こういうばかなことをやっておったのでは国民が承知しませんよ。赤字で値上げだ、そこで、ほかのほうへ使う金を取るなんというばかげたやり方は納得しませんよ。  それから、私が最も不愉快に感じますのは、これは大蔵大臣、あなたじゃないのですが、田中大蔵大臣が強調して、——病気で入院をしてみえるので、まあ幹事長でありますから、ここへ出てこれぬので文句は言えませんけれども、一番不愉快にたえないのは建設公団です。三十八年度から鉄道建設公団が発足をいたしました。そのときの政府の理由というのは何か。鉄道は仕事も多いし金もないので、これを切り離して、そうして、いままで赤字の国鉄が使っておった新線建設費をば政府に肩がわりをする、そういうために建設公団をつくるのだ、こういう精神と意図で、われわれの反対を押し切って発足をしたわけです。ところが、依然として、御承知のように三十八年度から四十一年度の国鉄の出資が七十五億です。これは初めから国鉄から財源をもらうのだというのでわれわれの反対を押し切った法案なら、われわれは文句は言えないかもしれません。しかし、国鉄は金がないので赤字だから、運賃の値上げという問題が起きるから、これを建設公団に切り離して、政府の出資に肩がわりをすると言って発足した建設公団が、三十八年度、三十九年度、四十年度、本年度の予算でも相変わらず七十五億円を出資をしておるのです。政府は幾ら出資しておるか、十億円でしょう。政府が十億円で国鉄は七十五億だ。私は、この法案のできるときに本会議でこう言ったのです。金のない国鉄が利子のつく金を借りてきて、そうして建設公団の大株主になって出資をして、でき上がったら、まあ新線というのは全部赤字ですから、その議論は別として、またでき上がった赤字のものを国鉄がもらう、こんな不合理なことはありますかと、こういって私は議論をした覚えがあるのでありますが、ほんとうに国民の生活に影響を及ぼすのだ。値上げはしないにこしたことはないが、政府立場で値上げをするというなら、こういう面を、大蔵大臣が当初発足のときに天下に言明をしたように、なぜ政府に肩がわりをして、これでも足らないのだというふうに持っていかないのですか。これは、行政管理庁でも、こんなばかげた公団があるかという、政府の出資が十億円で、国鉄から七十五億相変らず出しておる公団なんというものは、これは政府の公団じゃないですよ。国鉄の公団ですよ。どうですか。どう思いますか。全く不愉快ですよ。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは国鉄の公団だというお話でございますが、国鉄とこれは密接不可分のものであります。それはそのとおりであります。それなるがゆえに国鉄もこれに多額の出資をする、こういうことに相なるわけであります。しかし、公団をつくりましたゆえんは、公団を独立のものとして大いに新線の建設を促進しよう。これが国鉄の内部機構として行なわれたころは、御承知のとおり、大体新線建設というと百億足らないぐらいな規模だったわけです。今日はどうでしょうか。公団をつくったということもありまして、五百億円の規模の新線建設を進める、こういうことになっておりますので、私は、公団をつくった意味というものは十分ある。ただ御指摘の、それに国鉄が出資をする、これはおかしいじゃないかという話でございまするが、これは、国鉄と密接不可分のものであるということと同時に、公団がつくります新線は決して採算がとれないものじゃない。採算線も多いのです。今度主力をあげておりますのは武蔵野線、つまり東京の過密した交通状態を緩和する趣旨の建設が多いのですが、これなどは、できれば、私は相当の高収益をあげる状態になるだろう、こういうふうに見ております。ただ不採算線のあることは、これは事実でありますから、それに対しましては政府も財政上の援助をしよう、こういうふうな仕組みになっておるわけであります。
  86. 楯兼次郎

    楯委員 私は新線をつくっちゃいかぬということを言っておるんじゃないのです。いま速記録を持って来て、田中大蔵大臣はこう言いましたという時間もなければ、そんなことをする必要がないから、口頭で言っておるわけです。簡単に言えば、政府が肩がわりをしますよ、そのためにということをあなた方は言ってこれをつくったのですよ。ところが、依然として、まあていさいにもすぐにはいかぬから、本年度国鉄運賃の値上げという問題もあるので、国民の負担が多くなっては、利用者の負担が多くなってはいけないので、今年度は三十億出資しなさい、こういうことなら話はわかるのですよ。創立当初から依然として、ふえれば格別、減りはしないじゃないですか。こういう点にわれわれは政府に対する不信感がある。もう少し国民生活を真剣に考えなければいかぬと思うのだ。そういうことを言っておるわけです。しかし、時間がたってしまいましたから、もう一つ進みます。  この三次長期計画の工事費の計画ですが、これは物価が来年度五・五%上がる。われわれ社会党ではもう少し上がるというふうに考えておるのですが、七カ年の計画に、すでに初年度物価が五・五%上がっておる。こういう点から言って、物価の基準単価をどのくらいに見てこういう計画を立てられておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  87. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  88. 堀武夫

    ○堀政府委員 この計画には、物価の値上がりは見ておりません。
  89. 楯兼次郎

    楯委員 物価の値上がりを見ておらなければ、すでにもう来年度から物価は五・五%上がる、先ほど簡単に申し上げましたように、これはもう最低ぎりぎりの——藤山経済企画庁長官に言わせれば、ぎりぎりの政府の希望的観測ですから、これは五・五%以上上がると見なければならない。これは来年からまた運賃値上げ、こういうことになるのじゃないですか、この計画を実行すれば。どうですか、大蔵大臣
  90. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほどのことにお答えしておきますが、こういう際だから、国鉄の出資も減らしたらいいじゃないかというお話でありまして、三十億にせい、こういうのですが、これは政府においてもその辺の心づかいをいたしまして、政府の出資する額、これのほうをふやしておるわけでありまして、これが三十五億円になっている。従来は十億円です。  それから、ただいま長期七カ年計画において単価をどういうふうに見るか。いま運輸当局答弁では、単価はこれを増額しておりませんと言いますが、新線建設というようなものにつきましては、大体消費者物価じゃないのです。これは。建設費でありまするから、大体において卸売り物価です。卸売り物価はほとんど動いておらない状況でありますので、変更をいたさない、こういう考え方かと存じます。
  91. 楯兼次郎

    楯委員 私は、建設公団のことを言っておるのじゃないのですよ。四十二年度は、国鉄の七十五億が三十五億になるというのか、いまあなたがおっしゃったのは。私の言っておるのは、第三次長期計画、七ヵ年の計画に対する物価基準はどれだけ見ておるのか、こういうことを言っておるので、あなた混同されておるのかおらぬのか、そういうぐあいに受け取れますが、もういいですよ、水かけ論ですから。
  92. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 陳弁しますが、混同していないのです。あなたが言いっぱなしで、どうも国鉄にばかり出資さして思いやりがないじゃないかというから、そうじやないのであって、これは思いやりも相当やっておるんだということが一つ、これは建設公団の話です。  それから国鉄の新線計画の話は、ただいま申し上げましたとおり、卸売り物価に関係するものでありまして、卸売り物価は動いておりませんから、これでよろしいと、かようなことであります。
  93. 楯兼次郎

    楯委員 いつも運賃の値上げのときには、そうおっしゃるのですよ。そうおっしゃるのだが、二年やってみると、これはあかぬと、こういうので、これは第三次でしょう、完成されぬうちにまた値上げになる。これはあとで時間があったらお聞きしたいと思いますが、瀬戸山さん見えておりますが、道路計画だって、大体半分ですよ。二年半で、まあ需給関係もありますが、大体変更せざるを得ない。また来年か、再来年になったら運賃の値上げをやるのでしょう。どうですか、運賃の値上げをやるのでしょう。それからあなた、いま事務当局から書類を持ってきて建設公団のことをおっしゃるのだが、その前におっしゃっておれば、こういう行き違いはないわけですよ。どうですか、また物価が上がるので、運賃の値上げをやるのでしょう、この計画をやっていくとすれば。何年やらないですか。
  94. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 いまのところでは、運賃値上げは考えておりません。
  95. 楯兼次郎

    楯委員 それからもう一つは、運賃の立て方ですが、昔のことは言いませんが、終戦以来、貨物運賃は赤字ですね。全部赤字ですよ。黒字のちょんちょんのときは一年ですよ。全部赤字だ。これを、旅客の運賃をつり上げて赤字をカバーをしてきた。そして、本年度の国鉄の値上げ案を見ましても、貨物はやはり赤字が出るように、旅客で埋めるように立てておる。われわれ社会党に言わせれば、独占資本に奉仕する運賃だ、こう言われてもしかたがないと私は思うのだ。でかい産業の利益を擁護するために、大衆収奪の上に立っておる。これは当てはまると思う、終戦以来そういうやり方をやってきておるのですから。  それから、補正予算が十六、十七日と審議される、ここで議論になりますが、すでに二月十五日の運賃値上げは、これはもうできませんね。そういたしますると、二月十五日から運賃の値上げをして、それに、なお減収であるというので、鉄道債券二百六十二億の増発行をする、こういうのが補正の機3号の内容ですが、これは根本的に変えなければいかぬと思うのですが、この措置をどうされるおつもりか。
  96. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 運賃法は、二月十五日にこれを実施するという予定でありますが、国鉄の運賃引き上げがおくれますと、一口に四億円ぐらいずつ予定より不足を生ずるわけであります。そういう状態において、もし運賃法の成立が十五日に間に合わぬということになりますることは、私はただいまこれを予想しておりませんけれども、万一そういうことがあると、まあ四、五日のことでありますれば、一日四億円のことでありまするから、何とか国鉄経理の合理化というようなことで疎弁できると、こういうふうに思いますが、これが長引くということになると、重大な支障がある、かように考えます。
  97. 楯兼次郎

    楯委員 長引く、短い、長短の限界は幾日ですか。
  98. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国会の良識ある御審議を御期待申し上げる次第であります。
  99. 楯兼次郎

    楯委員 そうじやない。運賃の値上げがおくれるのじゃないですよ。幾日ぐらいならば機3号だけで、工事量を減らすなりなんなりして再補正しなくてもやっていけるのか、あるいはどのくらいおくれたら再補正をしなければならぬのか、その長短の限界を聞いておるわけです。
  100. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 数日間のことであれば、国鉄は何とか切り抜けると思いますが、これが、それをこえるということになりますと、非常に大きな支障が出てくる、かように考えます。
  101. 楯兼次郎

    楯委員 これは、大事なことがあとに残っておるので、先を急ぎますが、」私鉄の運賃値上げはすでに実行されておりますが、この点について、非常に不合理であるので触れておきたいと思います。  大体私鉄は、大手十四社というのは都市集中ですから、もうからぬということはないのです。たとえば国電の場合、都市周辺の十三か十五の路線で上がる黒字で、二百ぐらいある地方の赤字路線をまかなって、収支とんとんになっておるのです。それから赤字の出る貨物輸送も、やはり都市周辺で、これは二倍も三倍も定員より乗せるのですからもうかる。またもうかった分で赤字を埋めてとんとんになっておるのですよ。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、私鉄の大手というのは、ほとんど都市周辺ですね。周辺ですから、国鉄と比較して絶対もうからぬということはないと私は思う。その私鉄に対して、二二%の運賃の値上げを行なっておる。これは非常にけしからぬと思う。私鉄の内容は、私が申し上げるまでもなく、兼業と小会社の養成をやっておるわけです。一覧表を見ますると、小会社に投資をしておるのが、本社の資本金の大体平均倍額やっております。それから、兼業をしておる企業から上がる収入を見ますると、私鉄の輸送から上がる収益の合計したものの大体平均六割ぐらいの収益をあげておる、こういう状態です。そういうもうかっておる私鉄に対して運賃の値上げをさせるということは、非常にけしからぬと思う。この点、どうお考えになりますか。時間がないので簡単に申し上げました。
  102. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 大手の私鉄等も、輸送需要が非常に増大しておりまして、そのための施設費等の増加によりまして、金利負担等を考えますと、相当な赤字になっておるということは事実でございます。関連事業とか、兼業しておりますその他の事業との経理は、混同させておらないのでございます。
  103. 楯兼次郎

    楯委員 これは輸送を完ぺきにするために兼業をやり、子会社に投資をして、その利益を吸収して本来の輸送施設の増強をやり、近代化をやるというのなら、話はわかるのです。ところが、子会社に投資をして、そうして利益配当を大体私は平均一割以上やっておると思うのですが、そうしてなお運賃の値上げを求める。こういうことは、非常に不合理だと思うのです。もし大手の中でたいしてもうかっておらぬところがあるとしても、これは子会社のほうへ投資して、それから上がる利益が、本社が借り入れる金利より低い、こういう点で多少収益が低い、こういうことがいえると思うのですが、これは本末転倒していますよ。輸送を完全ならしめるためにいろいろな仕事をやって収益をあげて、これを完ぺきにするというのなら話はわかるのですが、子会社・兼業を太らせるために運賃の値上げをやって、そうして資本投下をやって企業を広げておる。これは順序逆転ですよ。それで、運輸審議会は、今度もそうですか、前の値上げのときにも三つの条件をつけておりますね。運賃の値上げについて、これこれこれはやれ、こういう三つの条件をつけておるのですが、その三つの前回の値上げのときにつけました条件、その条件が完全に実施をされておったかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  104. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 前回の値上げの際の条件は、決算期等に逐次報告をさせまして検討いたしまして、おおむね実施されておるという状態でございます。
  105. 楯兼次郎

    楯委員 あまり問題を多く出し過ぎて、一問一答ですから、私のほうも膨大な資料を持ってきておるのですが、いまの運輸大臣答弁では納得できませんし、また反発をする資料が幾らでもあります。しかし、これは時間が制限されておりますので、でき得れば運輸委員会のほうへ出席をさしていただいて、こまかい問題に入りたいと思います。  そこで、今度は一番重要な問題を申し上げるのですが、これは真剣に考えていただきたいと思います。といいますのは、いま国電一車両の定員というのは、大体百四十四名だと思います。ところが非常に逼迫をしておりますので、いつの日にか、日にちは記憶いたしておりませんが、自衛隊を使って、どのくらい詰め込めるかやってみようというので、しりを押して詰め込み作業をやった実験の結果が四百九十二人だ、こういうことを言っております。ところが、実際ラッシュに乗っておりまする人を調べてみますると、五百人以上も詰め込んでおる。大体統計では定員の二七〇%、この東京の周辺で。大阪もそうでしょう。二七〇%、三倍近いだけの人を詰め込んでおる。だから、いまや定員二倍が生理的限界である、三倍が生命的限界である、こういうことをいわれておる。したがって、冒頭に申し上げましたように、この殺人的な都市輸送、通勤輸送を解決する道は、運賃を二〇%上げて解決のできる問題じゃないということです。先ほどの答申にも出ておりましたように、運賃を二割、三割上げて、この殺人的な都市交通を緩和するの、できるのというような問題ではない。政府が思い切って財政投資をして根本的な解決をはからないと、いまにえらいことになるぞ、こういって忠告する、警告する人も非常に多いわけです。したがって、こういう問題については、答申の中にもありますが、ぜひひとつ考えていただきたい。  これはもう時間がございませんから、自治大臣にいろいろお聞きしたいと思うのでありますが、大体都市のバスにしろ、あるいはその他の運輸機関で、あなたのほうで権限を持って許可するとか、認可するとか、あれをこうするというようなことはできぬでしょう。たとえば東京都で、人の流れを見てバス輸送の調節をしようと思ったって、東京都知事には何の関係もないと私は思うのです。何も自治省には権限はないと思う。だから、今日、東京なり大阪なり、都市がこのようなばかげた交通状態になってきたということは、簡単にいえば、一にかかってこれは中央官庁に私は責任があると思うのです。一地方の問題としてまかしておいたのでは、これは何にもできない。したがって、運賃の値上げどうこうじゃなくて、ケーネディ教書のように、あるいはロンドンやパリやニューヨークがやっておるように——ロンドンはすでに三十年前に、これではいかぬというので、交通の国鉄を除く一元化をやっておりますることは、皆さん御承知のとおりです。つまり国が責任を持って——社会党東京に地下鉄をつくって、それを中心として地域ブロックにターミナルをつくる、そして運賃は全部統一をしてやっていこうという法案をいま私のところでつくっておるわけですが、そのぐらいの決意を持たないと、東京都の通勤輸送というものは解決しませんよ。この間も雑誌を見ておったら、通勤革命論というものが出ておる。私は、選挙の前になりますると、自民党の諸君が中小企業、農業の革命的施策という、あの革命だと思ったのです。そうじやない。このままにほうっておけば、いまや通勤の疲労から革命ですね、もう政府頼むに足らずという革命が起きるであろう、こういうことが堂々と雑誌あたりで議論をされておる。われわれバスに乗って通勤しておるのですが、自動車に乗って通勤される方はわからないのでありますが、そのぐらいに市民の疲労は極度に達しておる。政府に対する通勤輸送の怨嗟は、いまや東京じゅうに満ち満ちておるということです。これを解決をしなければ、運賃の二〇%値上げがどうこう、こんな問題で私は解決をする段階じゃないと思う。すべて認可、許可、調節のそれはあげて内閣にある、中央にあるのです。したがって、今日の都市交通、通勤輸送を生命的限界まで追い詰めたのは、その戦犯はだれであるか。交通戦争という看板をつければ、戦犯は池田内閣であり、佐藤内閣である、こういうことが私は言えると思うのですから、真剣にひとつお考えをいただきたいと思うわけであります。  それから、建設大臣に交通の問題で一言も質問をしないというわけにいきませんので、あと十分ばかりもらって質問をしたいと思いますが、東京の将来ですね、これは簡単にお答えいただければけっこうですが、私も交通問題で質問をせよというので、いろいろ人にも聞き、本に書いてあるのを調べてみました。ところが、都民の願望としては、これは経済企画庁がアンケートをとったのでありますが、全体の四四%ぐらいは都心部をこのままにして、そして郊外に住宅地を持って、そうしてハイスピードで中心地へ通勤のできるような構想を実現してもらいたい、これが大体集約をした都民全体の意見であるというふうに考えるわけです。瀬戸山建設大臣は、こういう点について何か構想があるような話を聞いておるのでありますが、もし構想がおありになったら、一言ひとつここで発表していただきたいと思います。
  106. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 そういうお話をいたしますと二時間くらいかかると思いますが、十分以内ということでありますので、簡単に申し上げます。  大都市問題というものは、ここでくどくど申し上げるまでもなく大問題であります。私は、こういうことを考えていただきたいと思うのです。東京、大阪、大部市それぞれ特色がございまして、これの一律の解決策は簡単にありません。あるいは市内の立体化とか、あるいは街路の拡張、高速道路、いろいろ現場に合う施策をやる態勢を整えておりますが、率直に申し上げて、これを都市及び都市周辺内だけで解決するということは、不可能であります。というのはどういうことかというと、私はこの日本の現状を見ておりますと、妙な話をいたして恐縮でありますが、約七千メートル、八千メートル上空から見ますると、日本の国土は狭いようでありますが、きわめてその利用状況が不完全にできておる。鉄道は、御承知のとおり、明治時代で七千キロも非常に急速な進歩をしたそうでありますが、明治以来は、道路交通の幹線道路網というのは、残念ながらつくっておりません。これはすべて率直に申し上げて、いまから三百五、六十年前、一六〇〇年の関ヶ原の戦いがあった後、天下統一のために日本全国のいわゆる幹線道路網というのを徳川時代につくっております。それ以来つくっていないのです。その当時の人口が、正確であったかどうか私は承知をいたしておりませんが、三千万。現在御承知のとおり、私どもの想定では昭和四十五年、一九七〇年では一億をこす、これは確実にこすと思います。そういう三倍以上の人口の、民族の活動舞台である日本の領土の中に、三千万の人口の活動舞台のときの道路を使っておるというところに今日の過密の問題、あるいは地域格差の問題、この根本の原因があると私は見ております。したがって、今日まで御承知のとおり道路整備というものについては不満足であったかもしれませんけれども、非常な努力をしておる。これはまあいろいろ言われますけれども、この近代の既存の道路の整備の状況というのは、短期間で申しますと、まことに急速な進歩であります。しかも急速な進歩をいたしますと、すでにそれ以上の、それをオーバーする交通地獄が出ておる。これは、やはりいま申し上げましたように、人口一億の民族を動かすだけの基幹交通網が新しくつくっておられないというところに、根本問題がある。そういう意味で、私は、楯さんもよく御承知のとおり、縦貫自動車道、これに新たな、全然交通網のないところに新たな交通網をつくらなければ、この問題は解決しない。これは相当長期かかります。約三十年後を目標にしておるわけであります。これは相当時間がかかりますから、それまで東京や大阪というものを、そういういまお話のありましたようなことにおくわけにいかない。  そこで、時間がありませんから東京近方だけ言いますと、いままで中心から三十キロないし四十キロのところを考えておりましたが、今日は五十キロないし七十キロ圏で相当大規模の都市をつくる。それらの中心はやはり中心として残らなければなりませんから、先ほど御引用のありました角本君の交通革命論じゃないけれども、そこにやはり思い切って高速の地下鉄その他をつくるべき段階にきておる。しかし、これは頭で考え、口で簡単に言うようなものではありません。やはりこれは総力をあげて計画を立てて推進するということでなければ、この根本問題は内部だけでは解決しない、かような考えをもって進めたいと思っております。
  107. 楯兼次郎

    楯委員 一口言ってやめたいと思いますが、実は道路のほうは全然質問できなかったわけですけれども、ただ、これはあとで分科会でわれわれの意見を申し上げますが、一番心配しておるのは、いま名神高速道路ができたわけです。ところが国道一号線と並行しておるところは、国道のほうは押すな押すなですね。ずらっと何十キロにわたって、ときによると自動車が並んでしまっておる。ところが名神有料道路のほうは、かんこ鳥が鳴いておるわけです。はき違えたかどうか知りませんが、地方の有力者がこんなものつくったってしかたがないじゃないか、こういう議論がいまや各所でほうはいとしてわいてきておるわけです。私は、これは誤りだと思う。けれども、料金を下げなければ、せっかくつくったあの道路が生きてこない。したがって、私は二十五年で投資額をペイするという前提をくずして、これはやはり一般財政から投資をして、そうして料金を下げる。料金を半分に下げれば倍以上の需要がふえる、私はこういうふうに見ておるわけです。これは答弁は要りませんから、近々の、今日の問題ですから、そういう点、ひとつ考えていただきたいと思います。
  108. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 答弁は要らないというお話でありますが、お答えいたしておきます。  いまおっしゃるとおりの現状であります。これは百九十キロですから、ほんとうは高速自動車道じゃないのです。率直に言って。高速自動車道は、御承知のとおり、最大百二十キロ予定しておりますが、平均百キロでよろしいと思います。そういう道路で百九十キロつくったから、これが直ちに急速に利用されるというものではない。これは交通に専門の楯さんあたりよく御理解です。しかし、国民の側から見ますると、何かむだな仕事をしているようにお考えなさる気分が起こるのもよくわかる。これはやはり少なくとも千キロ、二千キロ、私どもは今度少なくとも七千キロの高速道路網を国会にお願いしたいと思っておりますが、そういう時代になって初めてこれは効果を及ぼす。しかし、千数百億の金をかけてつくった道路でありますから——現に一号国道は非常にふくそうしておる。これは一万台ないし二万台日常通っております。これをこれに乗せないということは、非常に経済的に見ても、また交通問題から見ても、不適当である。これを単なるペイラインだけで考えるということは、私は政治家としては間違いである。したがって、これは公団あたりでは計算がどうだこうだ言っておりますけれども、四月から、これはいま検討させておりますけれども、下げて、ペイということは別問題としてあの道路を利用させたい、こういうことにいまやっておりますから、しばらくお待ち願いたい。
  109. 楯兼次郎

    楯委員 質問を終わります。  七分超過して申しわけない。(拍手)
  110. 福田一

    福田委員長 これにて楯君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤進君。
  111. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、日本共産党を代表いたしまして、佐藤総理並びに関係の閣僚の皆さんに質問をいたします。  時間の都合もありますので、私は、まず第一にベトナムをめぐる問題について、第二に、政府の財政政策について、第三に物価問題について、この三点にしぼって質問を申し上げたいと思います。  最初に、ベトナムの問題でございますが、御承知のように去る一月三十一日、アメリカのベトナム民主共和国に対する爆撃が再開されました。その翌日、アメリカは国連に対して、国連安保理事会を直ちに開いてほしい、ベトナム問題を討議してほしい、こういうことを要求したわけでございます。これに対して政府は、ベトナム問題を国連に持ち込んだこのアメリカの提案に対して、これを全面的に支持された。そうして、このアメリカ提案の決議案を安保理事会で通過させるように、こういう訓令を国連大使に対してされたと私は見ておりますけれども、その結果、今日までそれは一体どんなように進んでおるのでありましょうか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本政府が松井大使に対してどういう訓令を出したか、ただいまこれは加藤君の想像で、私はさように想像しておりますということですから、政府責任はございませんが、その訓令は明らかにしておらないはずでありますので、この点はまたこの席でも明らかにできない問題だと、かように御了承いただきたい。またその国連に取り上げたことは、南北ベトナムが国連の会員ではございませんけれども、加盟国ではございませんけれども、それにいたしましても、アメリカ自身が加盟国でありますし、必要だということで、国連に提訴するといいますか、そういう申し出があると、国連自身は唯一の平和機構としての働きをするのは、これは当然のことでありますから、そういう点も、これもアメリカがこれに提訴したというか、ここに持ら込んだ、こういうことについては、これは国連憲章から見まして当然のことだ、かように私思いますが、なお詳しくは、その後の経過等については外務大臣からお答えさせます。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国連外の国の問題につきましても、国連の本来の使命から見て、世界の平和に関心を持ち、そしてこれは紛争の一日も早く収拾することに努力すべき責任を持っておるのでありますから、今回アメリカがこの国連の使命にかんがみて、問題の解決のために国連にこれを持ち込んだことは当然であるとわれわれは考えております。  日本はたまたま安保理事会の議長国でございます。考え方は国連加盟国の多数の決議によってこの問題の収拾をはかるように議長国として万全の努力をなしつつある、こういうことに尽きるのであります。ただ一応正式の会は休会のままといたしまして、そして各理事国に対していろいろ話し合いをしておるといういま段階でございます。
  114. 加藤進

    加藤(進)委員 ただいま総理は松井大使に対して訓令をしたことは覚えはないと——訓令をされたわけですか。——わかりました。この松井大使に対して特に国連の安保理事議長国として努力せよ、こういうたてまえでの訓令だったと思うのです。ところがその後の状態ということについては、私はいまの椎名外務大臣の御説明では十分に理解できないのです。というのは、国連の松井大使自身がいまそういう訓令を受けたにもかかわらず、努力は払っておられるはずだけれども、安保理事会の開会さえ前途全く暗い、どうなるかわからない、こういう現実にぶつかっておられると思うのです。これは一体政府としては、松井大使に訓令をされたたてまえからいっても責任があると思うのです。これほど国連の内部の事情について見通しをまことに十分に持たれなかったのか、見込み違いだったのか、その点ひとつ御説明を願いたいと思います。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 かような問題が簡単にすらすらきまるということであればまことにけっこうでございますが、従来の例からいっても、きわめて事柄が重大な問題であるだけに、なかなか容易に各国が一致した結論に出るということはむずかしい。せっかく議長国としての使命を果たすべく努力中である、これだけ申し上げておきます。
  116. 加藤進

    加藤(進)委員 私も椎名外務大臣と、おそらく困難な問題だろうということについては意見が一致するのです。しかし、その困難の原因というものは、一体どこにあるんだろうか、私はこの困難の原因というのは、そもそもベトナム問題を討議する何らの権限のない国連にこの問題を持ち込んだというところに、こういう事態の起こっておる困難の原因があると思うのです。したがいまして、わが党は、去る代表質問においても林議員がその点を質問して、佐藤総理に警告をしたはずなんです。ところがそれに対しては、佐藤総理はどうお答えになったかといろと、先ほどの答弁にもありましたように、国連というのは国際平和機構であるから、ベトナム問題に介入するというのは当然である、こういうふうに述べられておるのは、そのとおりですね。  そこで、私は政府にお尋ねしたいのは、現在ベトナム問題というのは、一体どこにほんとうの問題があるんだろうか、その点について政府は真に事態の本質をとらえておられるかどうか、こういうことであります。第一に、現在のベトナム問題というのはどこに一番の問題があるかといえば、それは一九五四年、御承知のようにジュネーブにおいて関係九カ国の間でベトナムの独立と平和についてきわめて厳粛な宣言がなされております。このベトナム協定こそがベトナム問題解決の絶対唯一の国際的な基準である。この点を堅持するかしないか、こういうのが私はベトナム問題を真に解決する第一の前提だと思うのです。しかもこれに対しては、国連は何ら関係がないんじゃないですか。何一つジュネーブ協定関係がないです。ここに私はまず第一に思いをいたさなくちゃならぬ。第二に、国連にベトナム問題を持ち込まれたアメリカが、このジュネーブ協定に対してどんな態度をとっておるのでしょうか。すでに一九五四年以来、十一年間このジュネーブ協定をまっこうからじゅうりんしてきたというのは、ほかならぬアメリカ自身じゃないでしょうか。そうしてベトナムに対する侵略を今日まで強行してきておる。停止していない。ここに問題の一切の根源があると私は思うのです。これが第二。第三番目にアメリカの直接侵略を受けている南ベトナムの人民の代表である解放民族戦線、これはもちろんのこと、ベトナム民主共和国さえ国連には参加しておらない。当事国が国連に参加しておらないにもかかわらず、当事国外の諸君が話し合って国連の場に持ち込む、こういう国際的な信義を裏切る態度こそ、今度の問題を解決できない状態に追い込んできた原因だと私は思うのです。したがって私は、この国連の安保理事議長国としての日本が、ベトナム問題について国連こそこの問題を取り上げる点において何一つ権限を持っていないということ、この点をはっきり確認していかなければ、ベトナム問題の平和的解決などということは全くから文句である。この点を私は総理に所信としてもう一度お伺いしたい。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま加藤君の御意見と私が本会議でお答えしたところ、これは絶対に一致点を見出せないものでございます。ただいまも、加藤君は私の本会議で説明したこともちやんと記憶していらっしゃるし、そのとおりでございます。私は、国連はそれだけの権能を持っておる、かように申し上げておるのでありまして、ただいまのような共産党の主張とは全然違う。  私、もう一つつけ加えておきたいのですが、今日の問題は、いわゆる南ベトナム政府、これを武力によって変えていこう、こういうベトコンの運動がある。私どもは本来武力によるこういう革命的な行動というものは承認はしておりません。民族的解放の問題は、これは民主的な手続によって片づけるのが私ども本来の姿だと思います。わが国においてもさような状態であります。この点が共産党の認識と私どもの認識が違っておる。だから、各人が同じような考え方を持てとまでは申しませんが、しかしながら、それぞれの主張を通すためには、それは平和的な手段によれ、いわゆる武力を行使するということは、これはよろしくない、かように私ども考えておる。それだけでなくて、この武力を行使するベトコンの行動というものを北から援助しておる、ここに問題があるのだ。南の政府はそういう意味でアメリカの援助を求めておる。そこで正面から武力衝突になっておる。これがただいまの問題なんだ。ジュネーブ協定を守るとかということ、これはもうそれから後出てくる問題なんで、だから、もともと武力行動というものが承認されるというところにそれは問題があるわけなんです。だからそういうものは否定してかかって、そういうことはいけないのだ、民主的な方法で自己の政治的な主張は通す、こういうことでありたい。これがその立っておる根本的な相違でございますから、どうも議論をいたしましても、ややその成果がないのじゃないか。むだだとは私は申しませんが、ただいまのように食い違っておる、かように思います。
  118. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、なるほど佐藤さんとさまざまな点において立場や見解の相違していることはもちろん認めます。しかし、私がここで佐藤さんその他に御質問申し上げているのは、決して私の主張を押しつけるつもりじゃないのです。こういう事実がある、こういう状態だ、問題はここにある。その点についてあなたたちはどうお考えになるのかと、こう聞いているのです。ベトコンの問題、これが武力を使うからいかぬと、そもそもベトナム人民があのような民族解放統一戦線をつくって戦わざるを得ないような状態にしたのは何であったか。侵略者であったことは、これは明らかでしょう。北から浸透してくる、北も南も同じ国民じゃないですか。国民が助け合うということは、これは当然な権利であって、これに対して何一つ干渉するわれわれは権限はないと思います。これに対してあえて干渉、侵略を加えたのは一体何か。そこを私はあなたに十分に知ってもらわなくちゃならぬ。このことが問題であって、何も主張が違うとか、違わないとかという問題じゃない。ですから、現に私は、アメリカはどうしているのか、何をやっているのか。国連に提訴したということは、これは正しい権限にはっきりとうたわれておる立場で問題を出しておるのかと、こういうことを私はいま聞いておったわけです。  そこで、私は、いまアメリカとのことについて佐藤さんは触れられなかった。ベトコンについてだけ触れられた。ベトコンが武力を使い、革命的行動をとるのはいかぬと言われた。ではそのアメリカは一体何をやっているのか。アメリカは国連を使って何をやっているのですか。国連を道具に使っていままでやった数々の罪業があります。これは。ちゃんと御承知のとおりだ。朝鮮戦争で一体何をやりましたか。国連を使って、とにかく自分のやった朝鮮侵略を合法化した、そして南北朝鮮の民主的、平和的な統一を妨害した。南朝鮮のかいらい政権を盛り立てた、そうしていまやアジアにおけるアメリカの侵略の拠点をつくり上げている、全部国連を使っているじゃないですか。日韓条約の中にもそれが明らかだ。これは日韓論議の中でもお耳に入っていると思うのです。アフリカのコンゴの問題がそうでしょう。コンゴの人民の武力弾圧をする、その武力弾圧は正当だというたてまえをとるために国連が利用されている。ころして国連は平和の機構どころか、今日アメリカの侵略を合法化するという、そういう舞台になっているんじゃないですか。事実ですよ。歴史的な事実について私はあなたに質問をしているのです。どうです。しかも今回このアメリカが、自分のやっておるベトナムの侵略のことはほおかむりをして、国連に持ち込んで、平和的な解決をいたしましょう、——佐藤さんにやにや笑っておられますけれども、事柄は重大ですよ。この問題について真剣に国民と世界に答えてもらわなくちゃならぬ責任がある。だから私は聞くんですよ。あなたはこのようなアメリカのやっておる、国連を舞台にしてベトナム問題を有利に解決に導こう、こういう手口に対して、今後ともこの手口を支援していかれるか、協力していかれるのか、この点を重ねてお聞きしたい。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国連は唯一の世界平和機構でございます。共産党の主張には私は賛成しません。
  120. 加藤進

    加藤(進)委員 それは問題をはぐらかしておられることでございまして、それでは私はこの国会の権威が保てぬと思うのですよ。佐藤さん、私はただ自分の頭で描いたことでアメリカを攻撃し、それに協力する佐藤さんを非難しているわけじゃないのです。アメリカが現に何をやっているのか、この事実をあなたは目で見、耳で聞きながら認めてこないのか、この点を私は聞いておるのです。だからアメリカがいま一方には国連に問題を持ち込み、一方では現に何をやっておるか。何をやっておるか。(「やらざるを得ないのだよ」と呼ぶ者あり)いま自民党の諸君やらざるを得ないと言うけれども、現にやっておることが真にわれわれ人民の立場から、世界の平和の立場から認められるかどうか、この点で私ははっきり言いたいと思う。だからベトナムに対する北爆、これがどんどん強化されておること、これはいいことですか。国連にどんどんと平和的な話し合いを持ちかけておきながら、そういうゼスチュアを示しながら、カムラン湾などの基地はどんどん永久化されておるのです。それで、アメリカでは、ことし新たに百五億ドルという膨大なベトナム戦費が組まれている。さらに二万人以上の軍隊が送られる。ラオス、カンボジアをはじめとして、インドシナ全地域が戦場になろうとしている。しかもそのためにホノルル会議がちゃんとその侵略拡大のためにやられておるんじゃないですか。こういういわば全世界のつまはじきをされるようなことをあえてやりながら、それを隠すためにこそアメリカはこの問題を国連に持ち込んで、佐藤さんなんかに協力を要求しているのじゃないですか。もしそうではございません、見解の相違だと言われるならば、私は別の角度からそのアメリカのやり口に対して協力される佐藤内閣の問題を一つ特に指摘したいのです。  それはベトナムの特需の問題でございまして、自民党の委員からもすでに質問がなされております。私は、ここで、どなたでもよろしゅうございますけれども、今日までのベトナムのいわゆる特需というものは、総額一体どれくらいの額になっているのでしょうか。これは資料の許す範囲でけっこうでございます。回答できないようなことを私はお聞きしているわけじゃないのです。
  121. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは政府委員のほうからあとで資料として出してもよろしゅうございます。
  122. 加藤進

    加藤(進)委員 資料として出していただくということはけっこうでございますが、その資料の根拠になる数字はどこから出てきておるのでしょうか。
  123. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日銀あるいはまた商社等の貿易の統計から出るわけです。
  124. 加藤進

    加藤(進)委員 私はここに通産白書を持っておりますが、この中に、ある程度通産省の知り得る範囲の数字が出ておると私は思うのです。そう見ていいですね。三木さん、いいですね。その通産省の特需の数字のところに、この「(資料)」は「アメリカ大使館資料による。」と書いてある。これは事実ですね。いま納得されておられるようです。事実だということです。そのほか商社その他からも資料は入ると言われる。しかし、一九六〇年安保条約、さらにこれに基づく行政協定と地位協定というものが現に存在しております。発効しております。この地位協定に基づいてアメリカ軍は日本の物資を調達する、役務を調達するという権利が保障されておるわけですね。すると、アメリカの立場から言うならば、日本で物資を調達する、その物資を調達したことについて、その実態をあからさまに日本政府に対して知らせるという義務を持っておるんでしょうか。
  125. 三木武夫

    ○三木国務大臣 知らせる義務はないと思います。
  126. 加藤進

    加藤(進)委員 すると、アメリカの政府日本に対してこれだけの発注をした、こういう報告がたとえ大使館からあるにしても、それはアメリカの義務としてではなしに、好意的な立場からのいわば資料提出でございますね。
  127. 三木武夫

    ○三木国務大臣 義務でないですから、そういうことになると思います。
  128. 加藤進

    加藤(進)委員 すると、日本国における米軍の地位に関する協定の第十二条第一項によれば、米軍は、日本国で物資、役務を自由に発注することができる。政府に対して何らこれを報告する義務も必要もない。さらに同じく、第十一条第五項によって、これらの物資を国外に持ち出すことについて、関税検査なしに通れるということが保障されている。すると、いわゆるベトナム特需の数量はどれだけか、数はどれだけかということを政府に確かめただけでも、その全貌は、政府といえどもつかみ得ない。国会といえども、国民といえども、つかみ得ないという事情にあるのじゃないですか。しからば、アメリカが必要なものを日本の国内で調達する、直接注文をやる、つくらせる、どんどんベトナムその他へ送る、しかし、日本政府も国会も国民も、それについてはほんの一部は知らされるかもしらぬけれども、全貌は知らされない。こういう現状になっておることをあなたは認められますね。
  129. 三木武夫

    ○三木国務大臣 アメリカの特需というものは次第に減る傾向があって、ベトナムの問題が起こってから特にアメリカの特需がふえておるということは統計の上にあらわれてこないわけですから、私はベトナムの紛争で非常な特需の激増をしたようには見ていないのです。
  130. 加藤進

    加藤(進)委員 私はそういうことを聞いておるのじゃないのです。私は何も、ベトナムの戦争で特需がどんどんふえて、そうしてなどというようなことを推測して、あなたたちに質問しておるわけではないのです。いまの日本の現状から言うならば、アメリカがもしやる気があるならば、日本の産業にどんどんと発注をして、そうしてベトナムであろうが、アジアにおける戦争のために日本の産業を使うという危険がちゃんと目の前にあるということです。ある社会党委員はこうおっしゃいました。それは日本を軍需工場化することではないか、兵器廠化することではないかと言われたけれども、これは佐藤さん笑っておられますけれども、そうなっても佐藤さんはそのことについて実は何にも報告は聞いておりません、こういう状態が現に起こっておるんじゃないですか。私は、そのことをわが国会も政府も国民もはっきり知らなくちゃいかぬということだと思う。アメリカのベトナム戦争は、日本政府やわれわれの希望と決して一致するものじゃない。どのように発展するかは、アメリカのいわば軍部とアメリカ政府の腹一つにかかっている、こういう状態にあればこそ、われわれは、いまついせんだって行なわれたホノルル会議以後、いよいよアジアにおける新たなる戦線拡大という危険があらわれてくるからこそ、新たにこの問題について注意を喚起しなくてはならぬ、こう思っておるわけであります。  もう一つ私は、これに関連して、いま来日中のアメリカの国防総省対日調査団というのがあります。防衛庁の当局とすでに、核弾頭の装着可能であるミサイル、ナイキハーキュリーズを日本に売りたいがどうか、円払いにしてくれぬか、代金で米軍のベトナムに対する軍需品を調達してくれぬかなどというような話が来ているように私は聞いております。国会でもすでに防衛庁長官は、ある程度その内容について触れられてきておると思うのです。私は、この際この国会の壇上において、その交渉の経過と内容を明らかにしてほしい。特にアメリカがどのような要求を出してきておるのか、日本政府に対してどういうことを注文してきておるのか、その点だけは私はぜひとも責任を持ってここで明らかにしていただきたい。
  131. 松野頼三

    ○松野国務大臣 先ほどの十二条の誤解があるといけませんから……。先ほどおっしゃったのは、十一条の第五項は、御承知のように、命令により日本に出入する軍隊の部隊の関税の問題、それから公用封書の問題でありまして、特に軍需品という特需の規定ではないと私は思いますので、議論があまり進展し過ぎますと誤解を招きますから、おっしゃった条文は部隊の関税のもの、郵便のものに関するものであるということを前もって御報告して、それから議論を進めたいと思います。  それからもう一つの、ただいまのベトナム特需というものはないのです。特需という規定は、日本米軍に売る、これが特需であって、ベトナム特需というものは日本の今日の公用語にはありません。駐留米軍、アメリカ合衆国軍隊に対するものを売ることで、ベトナムということばはないのです。特需の規格には。そこに議論が、ややもいたしますと誤解を招くことばが出てくる。これはお互いの議論の正確さを見るために……。  したがって、次の御質問の問題は、そんなに詳細なものの説明を聞いただけで、協定をするわけじゃありません。ねらいは、日本で将来兵器を買うなら円払いで買うかドル払いで買うか、その価格の問題、米軍から買うかアメリカの商社から買うか、その優劣の問題の説明を聞いただけで、ベトナムということばは一言半句もこの問題には関係ございません。またわれわれは、防衛庁はそんな権限を持っておりません。
  132. 加藤進

    加藤(進)委員 これは今後もいろいろ真相が追及される問題であると思います。特にアメリカが、世上いわれておるところを総合すると、核弾頭のつけられるような兵器を日本に売り込みたい、アメリカでは中古だけれども日本にはこれを使わせよう、こういう動きがあることについて、国民は非常に不安に思っています。それは決してそれだけの単独の問題としてではなしに、アメリカの原子力艦隊が佐世保や横須賀に来るというような危険とも含めて、日本がいよいよ核戦争の基地化されるんではないか、日本に核兵器が持ち込まれる危険があるんじゃないかという点についても、この問題は非常に私は重要だと思いますから、その点では防衛庁長官は非常に紳士的にいろいろな点を御指摘になりましたけれども、最も重要な点については何ら国会として、なるほどこの問題についてはそういう内容があったのかと、その片りんさえ実は私はここではうかがい得なかったことはきわめて残念だと思います。
  133. 松野頼三

    ○松野国務大臣 せっかくの御質問ですから、誤解のないように。自衛隊及び日本の国会の議決によって、核装備をするようなことはいたしません。持ち込むこともいたしません。もし御心配ならば、それがないように必ず明確にいたします。どうぞ誤解のないようにしていただきたい。そういうことはないように明確にいたします。その時期が来れば。それをいまから明言しておきます。その節はどうぞあまり御反対ばかりされずにいただきたい。明確にいたします。したがって、今日は両用だと言われますけれども、両用じゃないようにすれば片用なんでしょう。両用をやめれば片一方しか使えないことになるのでしょう。したがって、国民全部が御心配のないように、核については明確なものにいたしますから、どうぞ誤解のないようにしていただきたい。
  134. 加藤進

    加藤(進)委員 その点については、十分の時間がございませんので、やりとりを申し上げるわけではございませんけれども、しかし絶対にいたしませんとこう言われても、ベトナムのいわゆる特需です。これは私は何もベトナム特需ということを規定するわけじゃない。特需の中に必ずやベトナムに行っているものもある、こういう意味でベトナム特需ということを言ったわけでございますけれども、その問題一つについても、政府が関知できないようなところで、アメリカは公然と日本が使える、こういう状態にあるし、さらにその上に安保条約そのものは、われわれに日米共同の防衛の義務というたてまえから事前協議といういわばチェックがあるようではあるけれども、その中にきわめて国民の不安を思わせるような問題が出てきておる。こういう点が、今後の十分に警戒し、検討を進めていかなくてはならぬ問題であると私は思っております。私はこの問題についてこれ以上質問は申し上げませんけれども、しかし、いままでのわずかな論議の中でも、佐藤さんにしろ椎名さんにしろ、防衛庁の長官にしろ、いま国民の、ベトナムの侵略戦争をめぐって日本政府が真に慎重に対処してもらわなくてはならぬ、平和を守るという点について努力してもらわなくてはならぬという要望からするならば、きわめて私はあいまいもことして、国民の要望にこたえるような明確な答弁をいただけなかったことを非常に残念に思っております。しかし、この問題につきましては、私は以上で質問を省略いたしまして、次に、財政政策についての質問を続けたいと思います。  一番初めに、政府昭和四十年度に発行する公債いわゆる昨年末の国会において論議された公債千五百九十億円、これは現在までにどれだけ発行されておるでありましょうか、またどのようにその消化が行なわれておるのでしょうか。
  135. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 現在まで七百五十億円ばかり市中で消化をされております。その消化の方法は、そのうち一割は証券会社を用いまして国民に売っております。それから九割は、各金融機関がこれを買っております。
  136. 加藤進

    加藤(進)委員 さて、その公債を消化するにあたって、日銀貸し出しをされておる。日銀貸し出しというのはどの程度やられておるのでしょうか。
  137. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本銀行は、公債を消化するために貸し出しはいたしておりません。
  138. 加藤進

    加藤(進)委員 公債発行ということは、政府も言われるように、財政政策の大転換だ。したがって国民は、この公債発行問題についてきわめて深い関心を持っておることは、これは御承知のとおりです。ところがいま大蔵大臣は、ほとんど市中金融機関でこなしている、日銀はそれについて何ら貸し出しをやっておらない、こう言われました。日銀はこの公債のために貸し出しをやったというていさいにはなっておらぬかもしれません。しかし明らかにこの公債の発行されるこの時期に日銀貸し出しが行なわれたということは、これは私は事実だと思うのです。これについてまで、大蔵大臣は、そうでない、何らの貸し出しも行なわれておらない、こういうふうに言われるのでしょうか。
  139. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本銀行は、オペレーションはもう始終やっておるわけです。財政の引き揚げ超過がある。そういうような際には、日本銀行が資金をかわって供給するというふうにいたすわけで、逆に支払い超過が政府側で多いという際には、日本銀行が通貨を民間から引き揚げる、こういう措置を、これはもう常に口口常の重要な仕事としてやっておるわけです。公債の消化のために日本銀行がそういう措置を関連してやったということはございませんです。
  140. 加藤進

    加藤(進)委員 一月二十七日に日銀は百億の買いオペをやった。一月二十八日、六百億の貸し出しを行なった。一月三十日、三百八十五億の買いオペを行なった。これはお認めになりますね。
  141. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは日銀の通常の業務としてやったものでございます。
  142. 加藤進

    加藤(進)委員 通常の業務といわれますけれども、七百億の公債を発行された。するとその同じ時期に六百億の貸し出しをやり、同時に買いオペも引き続いてやる、こういう事態が起こりつつある。しかもその理由として、公債発行の市中消化のために、市中金融機関は非常に金に困った。コール市場に殺到した。そうしてそのために急遽日銀は六百億の貸し出しを中心として金融措置をとらなくてはならなくなった。これは事実でしょう。これは事実だと思う。したがって、私の聞きたいのは、日銀がどういうたてまえでやったのか、あのときにはこういうたてまえをとってやったのであって、公債の発行には何ら関係がありませんという答弁ではなしに、公債を発行されるその最も重要な時期に、機を逸せず、このような貸し出しが行なわれ、買いオペがやられたということについて、私はもっと責任ある回答をいただかなくてはならぬと思うのです。今後、私たちの心配するのは、七百億のいわば公債の消化についてさえ、こういう事態が現に起こっておるし、すでに日銀の政策委員会の内部においては、公債の消化のための買いオペに踏み切るべきではないかという意見が出されてきておる。ある財界では、買いオペはもはや必至の状態にある、こういう危惧を持ちつつある。私はいま市中銀行が金繰りにあえいでおる、こうは言えないと思う、一方では金が余っておるのですから。にもかかわらず、公債が出たというところでコール市場になぜ殺到して、そのためのいわば処置をどうして日銀が六百億の貸し出しを通じてやらなくてはならなくなったか、この原因、この事情について、もっともっと私は大蔵大臣がまじめな、真剣な態度で国民にその事態を明らかにされる必要があるのではないか、こういうことを御質問申し上げておる。
  143. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日本銀行の買いオペ、売りオペは、これはしょっちゅうやっておるのです。現に昨年の一月のことをよくお調べくだされば、同じようなことをやっておるのです。たまたま今度公債発行になってきた、その公債の払い込み期日が、一月の二十七日でありましたか、オペレーションの日と一緒であったというだけの話でありまして、これは何らの関係がないのです。これは昨年一年間のオペレーションの動きをお調べくだされば、同じことをやっておる。全然変わったことをやっておりませんです。
  144. 加藤進

    加藤(進)委員 この点については、私はある材料は持っておりますけれども、しかし今後もっと別の機会に追究を進めてまいりたいと思うのです。  ただ、私は、ここで大蔵大臣にも注意を申し上げたいのは、いま国民の前に七百億、八百億という程度ではなく、いよいよ七千億、さらに一兆円、あるいは大蔵大臣のことばどおりを信用するならば、この数年間に四兆円の公債を発行する、こういう事態が必至になってきておる。この政策を断固としてとられようとした、ここに、財政政策の大転換なるものがあるのですから、この大転換なるものが今後日本の経済また日本の国民生活に及ぼす大きな影響ということについては、私たちは、いま大蔵大臣の言われたような、真実をできる限り隠そう、従来と変わりはないなどというような御説明では、とうてい私は納得がいきません。私は、いままで歴代の自民党政府が何をやってこられたかということを、私たちは一ぺん振り返ってみたいと思うのです。  御承知のように、まず、池田さんの高度成長、所得倍増政策が進められた。そのことは、人民はどう受け取ったか。非常な大きな犠牲を受けて、重税、低賃金、合理化は進められた。そして、人民の貯金から保険、年金掛け金まで、国家財政をあげて独占資本につぎ込まれた。こうして軍国主義復活の政策が強行されてきた。そのことが、今日の物価高と出産の過剰を生んでおる。あなた方の言われる不況の原因というのは、まさにこの高度成長政策を続けてきた、こういうところに原因があることは、一部は認められると思うのです。ところが、今日、こういう政策が行き詰まる、ここに、いわゆる財政政策の大転換というものが提唱された。金融措置ではならぬ。一時的なてこ入れではできない。こうしていよいよ公債発行によるインフレ政策に転換された。こういうことは、いままで続けられてきた人民に対する収奪をさらに強めて、独占資本を太らせて、日本をアジアにおける戦争の拠点にしようとする、こういうねらいを含めて、この財政政策の転換ははかられつつある、私はそう感ぜざるを得ない。私は、そういう点について今後もっともっと真相を究明していかなくちゃならぬ、こういうふうに考えておりますけれども、問題を次に移します。  そこで、今度政府は、四十一年度の公債発行については、これは財政法のたてまえを守っていく、こう言っておられる。しかし、たてまえを守るということについても、私は大きな問題があると思う。それは、すでに社会党の成田議員が指摘されましたように、従来の財政法の単なるただし書き、すなわち、例外規定というものを錦の御旗のようにして、いよいよ均衡財政の時期は終わった、これは佐藤さんが豪語されたことばです。大阪で。そうして公債発行に転換された。ここに私は、あの財政法制定当時の事情を想起するならば、単にこれはただし書きによって認められておるからいいなどというなまやさしい問題ではない、こういうことを私は指摘したいと思うのです。しかしもう一つ、この公債発行の対象は公共事業に限るといっておられる。そうですね。ところが、この公共事業ということについて、私はこの予算委員会のこの議場で、あなたから次のような御説明を受けました。公共事業というものは国民の財産として残るもの全部だ、こう言われた。そうですね。残るものが全部公共事業である、こう言われた。それで、私聞きたいのは、こういう国民の財産として残るという公共事業、これは残るという公共事業でなしに、国民の財産として残るもの全部ということならば、今度の予算の中で一体どれくらいの割合を占めるのだろうか、私は実は頭をかしげている。どれくらいの割合を占めるのだろうか。公共事業費という費目はわかります。公債発行の限度もわかっておりますけれども、国民の財産として残るものという規定をあえてあなたがたてまえとしてとられるならば、しかも、そういう国民の財産として今後残るものについて、公債の発行は可能だと言われる以上は、私はもう少し中身をお聞きしなくてはならぬと思うのです。その点について、今年度の予算の中の大体どれくらいに当たるものだろうか、その点をお聞きしたいのです。八千億程度じゃないと私は思っておるのです。
  145. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ガソリン税である道路なんかありますが、それは公債関係がございませんが、今度の予算で対象となる公共事業、、これは全部ひっくるめますと八千三百億円になります。
  146. 加藤進

    加藤(進)委員 施設費というものがありますね。この施設にはもちろん備品その他もありますけれども施設費として含まれるようなものは国民の財産としてあとに残るものじゃないのですか。その施設費というたてまえをもし考えるならば、四十年度一般会計では三六%に当たる。これは私の計算で、そう大きな間違いはないと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  147. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ちょっと聞き取れなかったのですが、何で三六ですか。
  148. 加藤進

    加藤(進)委員 四十年度一般会計の中で施設費というものの割合は三六%に当たると私は計算しているけれども、その施設費なるものは、本来、国民の財産として今後残るもの、こういうたてまえに立つ支出ではなかろうかと、こう聞いているのです。
  149. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 施設費と申しましても、いろいろあるのでありまして、いまどういう施設費をおとりになったかですね。施設費というふうに名前のついたものはそんなにあるはずはありません。ありませんが、ちょっと三六%というのは、私のこの頭の中と一致しませんが、要するに、加藤さんが言わんとされることは、公共事業費等というが、これは流動的なものであって、どうにでも拡大できるんじゃないか、こういうことだろうと思うのですが、さようなことはありません。私どもは、この公共事業費等、公債対象になるべき費目はこういうものであるといろことを厳に制限的に考えておりまして、このカテゴリーを動かそうというような考え方は持ってない。
  150. 加藤進

    加藤(進)委員 それではもう一つお尋ねしますけれども、公共事業費というものは国民の財産として将来残るもの、こういう規定をたてまえにされておるわけですけれども、それにはどういう法的な根拠があるのですか。どっか明確な定義その他があるのですか。
  151. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法第四条ただし書きにそう書いてあるわけでありまするが、その解釈ですね、これは、学者、実際家によって区々まちまちでございます。私どもはそれを非常に制限的に解釈いたして、そう申し上げておるのであります。
  152. 加藤進

    加藤(進)委員 そうすると、あまり明確な根拠はない。これは第四条ただし響きには、国民の資産として残るべきものというようなことばは一つもなかったと私は記憶しております。したがって、それは佐藤さんが公債発行に踏み切られるにあたって、公債発行の対象となるべきものはまさにこういう性格と内容のものであるという御一存だったと私は思うのです。すると大蔵大臣は、だけれども公債発行の範囲や費目については厳にこれを拡大しないようにつとめている、こういう御説明なんですけれども、そうなると、おれの腹一つにまかせてくれ、実はあまり明確なたてまえはない、しかし公債を発行しなくてはならぬ、たてまえはとらなくてはならぬ、できるだけ大きな範囲において公債発行の可能な道をつくらなくてはならぬというような考え方が当然起こってくると私は推測するのです。そこで私は国民の立場から見てきわめて心配するのは、もしそのような腹づもり一つで、従来何らの法的には根拠のないようなことをたてまえにして公債発行に踏み切られるとするならば、あるいは思いも寄らぬ拡張解釈によって公債発行が無制限に行なわれはしないか、これは私一人の不安じゃない、心配じゃないと思う。この点をもっと明確に解明して、政府はこの限度以外には公債の発行はしない、そのたてまえはこうだと、少なくとも国民の納得できるような解明を与えてもらわなくてはならぬ、私はそう思う。その点いかがでしょう。
  153. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはきわめて明快に申し上げてきたところでございます。すなわち公債対象となるべき経費はこういうものであるということを予算書の付属資料として御提出を申し上げておるわけです。なお、将来公債の発行の必要があるという場合に、これだけの費目だけかというと、そうじやない。なお二、三の費目についてそういう該当のものがある。そういうものを全部入れますると、公債のことしの四十一年度のベースで考えてみますと、八千三百億ぐらいになる、こういうことまで申し上げておるわけでありまして、公債が無制限に発行されるという性格のものでないということは非常に明快になっておるわけであります。
  154. 加藤進

    加藤(進)委員 ただし、ことしはこの費目に限る。しかし予算総則に、もし政府考えから、いま申し上げました、きわめて一般的な拡張解釈の可能なようなたてまえをとって、そうして費目をさらに拡大するということも私は不可能じゃないと思うのです。そのような議論がこの予算委員会において、たとえば兵舎はどうか、こういうような端的な質問として私は出たと思うのです。それについて私は決して国民を納得させるようなお答えはなかったと思うのです。そういう点について、公債発行への道というものは非常に危険な内容を含んでいる。この点を私はひとつ指摘しておかなくてはならぬ。  それからもう一つ、国民の財産として残るもの、それだったら金は幾らつぎ込んでもかまわないだろう、こういう腹かもしれません。しかし国民の財産だからといって、つくらるべきもの、公債がそのために発行されるべき対象は何であるかと言えば、それは景気刺激のためだ、不況克服のためだという、どこへつぎ込まれるのですか。国民につぎ込まれるよりも、これは大きな独占を太らせる、独占のために役立つような施設がどんどんつくられるということは、従来でもそうでございますけれども、今日もまたこの公債発行の対象、内容として明確に出されておるのじゃないでしょうか。これはおそらく大蔵大臣の御答弁からいうと、立場が相違すると言われるかもしれませんけれども、私はその点について一言大蔵大臣の御解明をお願いしたい。
  155. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 独占を太らせるとかなんとかという考え方は毛頭持っておりません。つまり公債を発行して、それを財源といたして、国家、国民の全体の財産、つまり道路でありますとか、住宅でありますとか、あるいは河川、港湾、そういうものが整備される、こういうことを期待しておるわけであります。
  156. 加藤進

    加藤(進)委員 予定の時間が迫ってきておりますので、私は実は物価の問題について触れるということを約束しながら、これが果たし得ないのは残念でございますが、あと一、二だけ質問させていただきたいと思います。よろしゅうございますか。  一つは、この公債発行の対象として海外援助資金というものがございますね。この海外援助資金は、私の危惧する点から言うならば、これが現在行なわれておるアメリカのベトナム侵略、これに協力していくような東南アジアにおけるさまざまないわば経済進出の役割りを果たすであろう、もしこの額が次第に拡大していくならば、それに応じて公債発行の額もまた増額せざるを得ない、こういう状況にいくのではないかと心配しております。と申しますのは、去る七月に行なわれた日米貿易経済合同委員会の席上で、東南アジアに対する経済協力の額を国民所得の一%近くにまで引き上げるべきであるのではないか、またそういう強い要望がアメリカ側から出されたということを私たち聞いております。そういう点から見るならば、私たちの頭の中に、あるいは三次防あるいは公共投資という名前のもとでの独占に対するさまざまな財政支出、そしてベトナムにおける経済協力という名前のもとでの海外進出、こういう点に公債発行のおもな内容が含まれておる、こういう点を私は非常に危惧するわけであります。  私は、最後に一言だけこの公債発行の問題について触れて質問を終わらせていただきます。残念ながら佐藤さんのベトナム問題についての答弁にしろ、大蔵大臣の私に対する答弁にしろ、できるだけ真実をおおい隠して、悪いことばで言うならばごまかして、この国会を通ればよい、こういう安易な態度があることは非常に遺憾です。その点について私はあえて指摘しておきます。  私は最後に、この公債発行を中心とする、いわゆる財政政策の大転換というのは、アメリカのベトナム戦争に協力しながら、陰に三矢作戦計画を立てて、防衛計画という軍備の拡大、さらに海外出兵、そのための小選挙区制、憲法改悪などというような危険な動きが一方で進み、アジアにおけるアメリカの侵略のために日本国民が犠牲になって、いよいよ日本の軍国主義の復活と、帝国主義的海外膨張政策が推し進められようとする、その重要な役割りを果たすためにこそ、この佐藤内閣公債発行を中心とする財政の大転換があると私は断言してはばからないのでございます。その点を最後に強調して、私の質問を終わりたいと思います。
  157. 福田一

    福田委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十一年度総予算に対する総括質疑は終了いたしました。  次会は来たる十四日午前十時より開会し、昭和四十一年度総予算に対する一般質疑に入ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会