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1966-02-09 第51回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月九日(水曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 赤澤 正道君 理事 久野 忠治君    理事 田中 龍夫君 理事 松澤 雄藏君    理事 八木 徹雄君 理事 川俣 清音君    理事 楯 兼次郎君 理事 野原  覺君    理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       木村 剛輔君    倉成  正君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       登坂重次郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三原 朝雄君    水田三喜男君       大原  亨君    加藤 清二君       勝間田清一君    角屋堅次郎君       小松  幹君    多賀谷真稔君       高田 富之君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    八木  昇君       山中 吾郎君    山花 秀雄君       竹本 孫一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府事務官         (総理府特別地         域連絡局長)  山野 幸吉君         警  視  監         (警察庁長官官         房長)     浜中 英二君         警  視  監         (警察庁警務局         長)      大津 英男君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (教育局長)  宍戸 基男君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    財満  功君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     斎藤  正君         文部事務官         (管理局長)  天城  勲君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建 設 技 官         (住宅局長)  尚   明君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月九日  委員松治郎君辞任につき、その補欠として木  村剛輔君議長指名委員に選任された。 同日  委員木村剛輔君辞任につき、その補欠として今  松治郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十一年度一般会計予算  昭和四十一年度特別会計予算  昭和四十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十一年度一般会計予算昭和四十一年度特別会計予算昭和四十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。山花秀雄君。
  3. 山花秀雄

    山花委員 私は、日本社会党を代表して、同僚議員に引き続き四十一年度予算案に対して質問を行ないたい所存であります。  私は、主として地方財政問題及びこれに関連して土地行政あり方などについて関係大臣質問をいたします。  本論に入る前に、昨今新聞紙上をにぎわしておりますところの、新潟県知事選挙の違反問題について一言質問をいたします。  その前に、委員長お尋ねをしたいと思いますが、本委員会冒頭、わが党川俣理事から、特に地方財政関係に関して審議をする際に、議事進行として地方財政計画書をすみやかに木委員に配付するように要求いたしておりましたが、それがどうなっておるか、ひとつお尋ねを願いたいと思います。
  4. 福田一

    福田委員長 お答えをいたします。  野原覺理事から、社会党要求されておりまする資料の提出を御相談がありましたので、委員長は、官房長官連絡をいたしまして、例年とは別に、今回からは特に資料を早く提出して、委員諸君質問に便宜を与えるよう努力をしてもらいたいということを申し入れをいたしました。その中に、ただいまお話のございました案件もあるのでありますが、これは地方との関係もございますので、非常に急がせておりますが、もう五、六日以内にはできるということを実は私は報告を受けております。したがって、御希望の点はなるべくすみやかに実現するようにいたしたいと思います。  なお、そのほかの案件は、ほとんど全部もう皆さんのお手元に届いておるようになっておると思っておりますが、なお後刻取り調べた上で、その趣旨に沿って善処をいたしたいと考えております。
  5. 山花秀雄

    山花委員 ちょうど私の今日の質問地方行財政に関連するので、本来ならば計画書を中心にいろいろ質問すれば審議がすみやかにいくと思うのでありますが、ただいま委員長から、請求されておりましてもまだ出ない、ただし四、五日の間には出るというようなお話がございましたので、いずれ一般質問でわが党同僚議員からこの問題で質疑があると思いますが、それまでに提出できるかいなかを、ひとつ自治大臣のほうにお尋ねを願いたいと思います。
  6. 永山忠則

    永山国務大臣 地方財政計画は、本月の十五日の閣議で決定して提出いたしたい考え方で、鋭意作業を続けております。
  7. 山花秀雄

    山花委員 ぜひ、一般質問の際にも地方行政の問題がございますので、十五日というようなお話がございましたが、間違いなく出していただくことを希望いたしまして、次の質問に入りたいと思います。  私は、昨年の十二月二十二日、本予算委員会において、佐藤総理及び石井法務大臣に、新潟県知事選挙違反事件についてお尋ねいたしました。すなわち、新潟県知事塚田十一郎君の選挙違反事件について、佐藤総理が、事の重大性にかんがみ、また自民党に多大なる悪影響を来たすことをもおそれて、法務大臣に指示し、これを不起訴にするよう検察首脳部圧力を加えたのでないかという点でありました。これに対して、総理法務大臣もともに口をそろえて、さようなことは断じてありません、新潟県知事違反事件はただいま初めて聞きましたというような答弁でございました。それから相当日数がたち、該事件の全貌につきましてはよく了承されておると思いますが、その後において検察陣に対し、手心を加えるよう何らかの圧力を加えたのでなかろうかと一般では流布されおりますが、この点、さようなことがあったかなかったか、はっきり答弁を願いたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 新潟知事選挙に関しまして、私が検察当局に対して圧力を加えたようなことは全然ございません。
  9. 石井光次郎

    石井国務大臣 新潟県知事選挙違反問題について、告発されておる問題について、私から威力を加えたというようなことはないということを、国会において前に答弁したことがございますが、その後も何らの行動をとったことはございません。
  10. 山花秀雄

    山花委員 新潟地検としては、ことしの正月三日間を休養しただけで、日曜日も返上してこの問題に取り組んでおり、その熱意には私ども一同感謝しておるところであります。それにしても、新聞の報ずるところによれば、新潟地検としては、一月中旬ないし下旬までに塚田知事収賄議員処分を決定する方針であると言っておりました。それが、二月に入ってもなお処分決定がおくれているのは、政治的圧力を加えたということが新潟県民の間には大かたの風評となっておりますが、ただいま総理大臣法務大臣も、さようなことはないと——私はそう答弁するより以外に答弁はないと思いますが、そこでお伺いしたいのであります。  佐藤総理にお伺いいたしますが、あなたは指揮権発動の件については身をもって経験されたのであります。それゆえに、第二の指揮権発動によって塚田知事政治生命を引き延ばそうとするのではないかということが、新潟県民の話し合いになっております。私は、過去のことがここで議論になることはあなたとしても遺憾千万でございましょうし、私も言いたくはございません。したがって、この事実がなければないと判然と国民の前に明らかにしてもらいたいと存ずるのであります。再度ひとつ御答弁を願います。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 新潟知事選挙の問題は、ただいま検察当局におきまして捜査中でございます。私どもも、捜査が早く完了いたしまして、そうしてかような一部で言われておるような不安や疑惑を生じないようにぜひともあってほしい、かようには念願をいたしておりますが、そういう意味からでも、私は別に、早くやるようにと、かような指図もいたしておりません。したがいまして、ただ、ただいまの私の気持ら、私の考えでは、ただいま捜査進行している、この進行中の捜査に一切何ら影響を与えないように、これを捜査当局のやるがままにまかしている。いずれ捜査の結果がはっきりすると、かように私は期待しておりますので、ただいまの問題にいたしましても、捜査が片づきまして、そうして完了いたしまして、それから後、政治的に私どもがいかなる処置をとるか、こういうように実は考えております。ただいまはどこまでも公正な捜査が遂行されるようにと、かように私は念願をいたしております。  また、ことばじりをとるわけじゃありませんが、ただいま、私が過去におきまして、指揮権発動をしたということを言われますが、私がした覚えはございませんから、これも誤解でありまして、私自身は当時一幹事長でございまして、いわゆる指揮権発動をするような立場じゃございませんから、御了承いただきたいと思います。
  12. 山花秀雄

    山花委員 ことばじりをとらえるわけじゃございませんが「私は、佐藤総理指揮権発動をしたということは一言も言っておりません。指揮権発動について経験されたと、こういう質問をしておるのであります。ひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。  自民党の、御承知の本院議員でありますところの亘県連会長は、最近、知事は不起訴になると言いふらして歩いておるそうであります。また、新聞紙上にもそういうことを報道しておるので、やっぱりそうかと新潟県民は憤りを爆発させる寸前の世論になっております。この亘議員発言をどう考えられておるかということを総理にお伺いしたいと思います。  もう一つ続けてお伺いしたいことは、塚田知事検察陣の追及を避けるために病院に入院されて、九回にわたる尋問を受けながらも逮捕をのがれておりますが、このため新潟県政はすでに三カ月余にわたって全く空白の状態であります。地方行政の上から見ても嘆かわしいことであります。二百四十万の県民は朝となく夜となくこの問題で持ち切って政治不安におののいておるのであります。県内大半市町村会は続々として県政刷新知事汚職議員退陣要求を決議しております。問題はこれだけではありません。との二月七日から県会が開かれ、いよいよ新年度予算に取っ組むことになっておるのでありますが、この7算編成も全然見通しもつかぬありさまであります。そこで、自民党県会議員の長老であり、現存県会議長をつとめております渡辺常世氏は、重大な決意をもって知事進言し、この際予算成立を待っていさぎよく身を引くことを天下に声明して、もって事態を収拾すべきであるという進言をしております。また、自分も議長の職を辞して知事とともに共同責任をとるということを明らかにしておるのであります。この渡辺常世氏の行動に関して、自民党最高責任者として、また政府最高責任者として、佐藤総裁並びに佐藤総理としての御所見を承りたいのであります。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ新潟卑下の情勢について詳しい資料を持っていらっしゃるようでありますが、わが党の県連会長亘四郎君の発言につきましては、私は別に関与しておりませんから、その意見について、発表について、とやかく私は批判いたしません。またその次の問題でございますが、渡辺議長がどういう進言をしているか、これも私は知りません。ただいま塚田知事も登庁しておると、かように伺っておりますので、もう年度あとわずかしか残しておりませんから、年度内に県会その他所要の、これは必要な行事、議事があるだろうと、かように思いますが、そういうものが遂行されまして、そうして地方行政悪影響のないように、そのことは私どもも、政府からも心から希望する次第でありまして、そういう意味指導は今後ともいたしたいと思いますが、事柄のもとがただいまの選挙違反そのことに関連をいたします。いずれにいたしましても、このことは、先ほど申しましたように、ただいま捜査中でありますから、捜査が完了しない限り、私どもがいかようなことも言えないと、かような状態でございますので、この点の御了承を得たいと思います。ただ、このために地方議会が開かれない、かようなことで非常な地方行政の遂行上支障を来たすと、こういうことのないようにはいたしたいものだと、かように思っております。
  14. 山花秀雄

    山花委員 総理答弁を承っておりますと、まあ県会が開かれたんだからというようなお話がございましたが、私は、開かれましても、県民諸君の不信はぬぐい去れないと思うのであります。特に渡辺県会議長態度は、私は政治家としては真に敬服すべき態度であると考えております。これに対して知事は面会を拒否しておるそうであります。受けようとしておりません。まことに言語道断といわなければなりません。自治大臣は、この新潟県知事のかつてのお互い議員としての同僚でありますが、公私の別を離れて、自治行政の長として、こういうあり方態度に対してどうお考えになっておるか、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  15. 永山忠則

    永山国務大臣 最も遺憾に存じておるところでございまして、特にその長である責任的地位にある人がえりを正さなければいけないということに対しましては、強く呼びかけておるのでございますが、この結果に反するようなことについては、まことに遺憾に存じておる次第でございます。今後におきましても、自治体責任的地位にある者は、さらに一段とえりを正すように強く指導をいたしたいと考えております。
  16. 山花秀雄

    山花委員 自治大臣お話を承っておりますと、地方自治の長がさようなことではけしからぬ、えりを正すようにというようなお話でございましたが、私は、この際総理として政治姿勢を正すために——塚田知事は党員であります。したがいまして、総裁として一日も早く出処進退を明らかにされますように勧告をしてはいかがかと思いますが、勧告する意思がありますかどうか、しつこいようでありますが、もう一度お伺いしたいと思います。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申しましたように、ただいま検察当局がせっかく捜査中でございます。捜査の完了を見守ると、かようなことを私申し上げておりますが、そうして、これが完了いたしましたら関係者または国民の納得いくような、県民の納得のいくような処置をとらすと、かように私考えでおります。
  18. 山花秀雄

    山花委員 従来こういう事件がかり起訴段階に入りましても、結局、判決が下らないとわからないというようなことで、処置が延び延びになっておるというのが慣例でございますが、今度このような場合に、特に政治姿勢が問題になっておる現段階におきまして、万一起訴になるというような事態が免じましたときには、出処進退を勧告する御意思がありますか。それとも、その事態に立ち至りましたときには、判決を待ってというようなことをお考えになっておるかどうか、お伺いしたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、捜査が完了したら県民が納得いくような処置をとると、かように私申し上げておりまして、重ねてそのことを申し上げておきます。
  20. 山花秀雄

    山花委員 その場合には、県民が納得するように明快なるひとつ御処置を希望いたしまして、それでは本論に入りたいと思います。  本予算編成にあたり、政府は特に四つの柱を強調し、その一つとして地方財政の強化をうたったのであります。考え方の基本は、危機に瀕した地方自治体財政を立て直し、赤字団体の解消をはかるとともに、健全な地方財政発展を期するというものであります。そこで、私は、本予算案の中で、しからば具体的に地方財政の立て直しのためにどのような措置がなされて、それによって各自治体がどの程度財政事情が改善される見通しか、この点について簡単に総現大臣の御説明を承りたいのであります。
  21. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 地方財政も国の財政と同様でございまして、この不況の影響を全面にかぶることになるわけであります。その上住民税減税をはじめとし、各種の地方財源における減税、さようなことが行なわれますので、結局において、地方財政収支不足額が二千五百億程度になるわけであります。それに対し、政府といたしましては交付税率の引き上げ、また特別交付金、合わせまして一千億円を提供する、それから千二百億円の特別債を起こすことを認める、こういうことにいたしまして、二千二百億円の財源対策を講じたわけであります。三百億近くのものがなお残るわけでありまするが、固定資産税都市計画税制度改正による増収が百三十億円くらいあります。残りの百五十億程度のものは、地方財政においても国同様に節約をしていくということで支弁をいたしてまいる、かようにいたしたわけでありまして、まあ地方財政対策といたしましては、今日の窮乏財政下におきましては、まずまず万全を尽くした、かように考えておる次第でございます。
  22. 山花秀雄

    山花委員 大蔵大臣説明を承っておりますと、交付税も特別に支給し、減税も行なっておる。まずまず地方財政がこれによって一応のめどがついたと、こう言われておりますが、数字の問題につきましてはあとでいろいろ質疑を重ねてまいりたいと思います。  固定資産税に関してはちょっとぼやけたような御答弁がございましたが、これは値上げしておるんじゃないかと思います。この点についても、あとでいろいろ質疑を重ねてまいりたいと思います。  私は、赤字財政原因について、私は私なりの見解を披瀝して質疑を続行してまいりたいと思います。  ここ数年来、全国の地方自治体財政に行き詰まり、赤字団体の数とその金額の増大などが大きな政治問題になっておることは御承知のとおりであります。その原因について政府はどう判断しておるか、お聞きしたいのであります。特に高度成長段階で、地方財政悪化と、地方都市がかかえ込んだいわゆる公害と住民生活環境整備の立ちおくれは想像以上であります。こうした現状については、私から申し上げるまでもなく、十分政府も認められることと存じますが、これらの原因は一体どこからきておるのか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  23. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 地方財政昭和二十八、九年ころ、非常に重大な危機に立ち至った次第でございます。これに対処いたしまして、地方財政再建促進特別措置法が三十年の暮れに成立をいたしまして、三十一年からこれが実施に移っております。この再建促進法に基づきまして指定された赤字団体、つまり再建整備団体として指定を受けました自治体は五百五十三団体、その団体再建計画は国の援助のもとに順調に進捗いたしまして、ただいま県にいたしますると一件、また市町村にいたしまして数十件が残存いたしておる、こういう状態でございます。その過程におきまして、いわゆる高度成長期に入ってきておるわけであります。高度成長期におきましては、自然増収がだんだんと地方団体においてもふえてくる。また、国のほうでも三税の収入がふえるものですから、したがいまして地方に交付すべき交付税も増額をされるということになりまして、地方財政は非常に順調な発展をし、地方行政水準も大いに上がったというふうに考えております。  ところが、最近、特に昭和三十九年の後半から、国と同様に地方財政にも悪化傾向が出てきておるのであります。つまり税収が減る。また、従来のように交付税収入がないということと、そういう収入悪化状態であるにかかわらず、人件費等の負担はかさむ、こういうことかと思うのであります。その同じ傾向が四十年度にはさらに拡大をされる。そこで三十九年度には、中央におきましては、百五十億円の交付税会計における借り入れを認めるということでしのいだのでありまするが、四十年度はとてもそれでは追っつかないということで、御承知のとおり交付税を減額すべきものを減額しないという措置等を含めまして、千二百億円の特別措置を講じたわけであります。四十一年度を想像してみますと、さらにそういう傾向が多くなる。そこで、ただいま申し上げましたような二千二百億円にのぼる特別措置を講ずる、かようにいたしたわけであります。
  24. 山花秀雄

    山花委員 現在多くの地方自治体の持つ財政上の悩みは、そうしてその原因はどこにあるか、政府はこれを正しくつかんでいないような気が私はただいまの答弁からするのであります。自民党政府は、ここ数年の間、地方自治体に協力させて、資本の高度成長をささえる役目を押しつけてきたのであります。これは戦後の日本財政の大きな特徴であるといわれておりますが、全体としてそのため住民生活関係する部分、すなわち上下水道、ごみ、し尿処理、あるいは学校施設など、生活に直結した問題が軽視されております。民間資本の生産基盤のための政策には重点を置かれてきておりますが、そうして住民と地方団体はこの公共投資政策の負担を負わされながら、自分たちが望んでおる生活環境の整備はあと回しにされてきたのであります。しかも、わが国の独占企業は、こうした地方都市問題の解決のために、その社会的責任を果たそうともしておりません。公害などももっぱら自治団体の責任に肩がわりをされておるというのが実態であります。  このようにして財政がふくらんでまいりまして、この十年間で三・四倍に膨張しておるのであります。四十年度の全国の都道府県、市町村財政の総規模は、三兆六千億円と、実に国家予算にほぼ近い額であります。本年のこの財政の総規模は、一体どのくらいに見積もっておられるのであるか。ただいまいろいろ交付金やなんか交付して世話を見ておると、こう言っておられますが、総予算は一体どのくらいに大蔵省としては認められておるかということをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  25. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 地方財政計画は、先ほど委員長からお話のように、追って提出いたしますが、ただいま概算したところによりますと四兆一千億円、大体の規模はその程度になります。
  26. 山花秀雄

    山花委員 四兆一千億円という膨大な財政だという説明でございます。この総規模に対して、地方自治体の独自の財源である地方収入はどのくらい見込めるのでしょうか。そうして、さらに地方団体一般会計の赤字に対して、自治省としてどう対処されておるか、お伺いしたいのであります。
  27. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 昭和四十一年度地方収入につきましては、大体一兆五千七百億円前後、譲与税が五百六十七億円、地方交付税が七千四百六十七億円、そのほかに臨時地方特例交付金が四百十四億円あるわけでございます。したがって、これらを加えますと、大体二兆四千億程度のものが地方財政の全規模四兆一千億のうちで一般財源と考えられるものであります。そのほかに、使用料、手数料、雑収入等で大体二千億程度のものがありまして、そのうちの一部が一般財源的に使用されております。
  28. 山花秀雄

    山花委員 いまいろいろ説明を承りましたが、相当赤字が出るということになります。その赤字対策として、予算書によりますと、地方交付金が五百八十六億円、臨時交付金が二百四十億円、臨時特別交付金として百七十四億円、この後者の二つの合計が四百十四億円、そして特別地方債の一千二百八十億円を発行してなお五百億円ほど不足をしております。この不足分については、超過負担の解消で二百五十億円、さらに首切り定年制などのことによって百五十億円を節約し、次いで固定資産税の値上げをやらせて百億円程度見込んでおるのであります。よく聞いていただきたいと思います。地方税はここ十年間で約三倍になっております。低所得者は、この地方税の高いのに非常に不満を持っておるのであります。たとえば扶養家族三人を持つ月収四万円程度のサラリーマン、いわゆる平均的家族構成ですが、この場合だと、所得税はゼロに近いというよりゼロであります。ところが、地方税は約一千二百円もとられておるのであります。このように地方住民はぎりぎり以上の負担をしながら、なお地方財政は行き詰まり、生活環境があとまわしにされておるのであります。こういう状態で、今度は固定資産税を上げるとなれば、これはいよいよ各方面に波及してくるのであります。住民の政治不信は一そう激しいものになると思いますが、もう少し血の通った措置がとられないものかどうか、ひとつ総理答弁を願いたいと思います。
  29. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 地方財政も国の財政とその対象とするところは一緒であります。ただいまたいへん負担がふえるようなお話でございますが、地方住民といえども三千億円の国税の減税はひとしく均てんをするわけであります。その上に、さらに地方税におきましても、住民税その他につきまして三百数十億円の減税をいたす、かようなことに相なるわけであります。ただ、都市対策というようなことも考え、また地方財政の強化というようなことも考えまして、百三十億円程度固定資産税並びに都市計画税の増徴を行なう、こういうことでありまして、差し引きしますと、地方住民というものは、税の面から見ただけでもたいへんな負担の軽減になるわけでありまして、決して地方住民の立場を無視しているというようなことではない。中央、地方一体ということで地方財政に対処しておる次第でございます。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣からお答えをいたしましたように、施策の面から見ましても、国でやる仕事、また自治体でやる仕事、これがそれぞれの分野があるわけであります。この点では地方自治の達成といいますか、そういう意味地方自治をもっと強化しろ、こういうお話もございます。ところが、最近のような、経済情勢は別といたしまして、地方開発が非常にやかましいとか、また社会開発がやかましいとか、こういうような状態でありますから、やるべき仕事はうんとあるのだ、その財源は一体どこに求めるのか。これが国民の負担になる。どこそこに住んでおる、何々都市に住んでおる、こう申しましても、ひとしく国民、その負担は、地方税だろうが、国税だろうが、そこの住民の負担になるわけでありますから、そういう意味で負担の軽減も同時に考えていかなければならない。ただいま山花君の言われることは、片一方で自治の範囲を拡大しよう、同時にまた、負担は軽減しろ、こういうお話だと私思いますが、そういう意味で、今回の公債政策なり、あるいは地方税を通じての大幅減税など、こういうことでは、ただいま山花君の指摘されたとおりの行政をしておると思います。一部におきましては、なお血の通った政治でない、こういう御批判もあるようですが、私は、今回の予算を執行するにあたりましてさらに注意をいたしまして、今後の施策におきましても十分血の通った政治になるように努力いたしてまいりたいと思います。
  31. 山花秀雄

    山花委員 総理大臣あるいは大蔵大臣のただいまの答弁の中に、いかにも大幅な減税をやった、減税を唯一の善政のような言いぶりでございましたが、私は、税金問題の論争をやることは考えていなかったのですが、まあ売られたけんかは買わなくちゃならないという形になりますので、ちょっと税金問題をひとつ論争してまいりたいと思います。  その前に、国鉄運賃の値上げについて、御承知のように、国会は運輸委員会がなかなか開かれなくて、政府関係筋では二月十五日の値上げはもうだめになった、運輸省や国鉄総裁は、これで一日五億円損をするというようなことを言っておりますが、一体一日おくれて五億円ほど損するのかどうか、運輸大臣、いらっしゃいましたら数字的に明確にしていただきたいと思います。
  32. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 今度運賃改定で予定しております一日の収入は、五億くらいの見当を予定いたしております。
  33. 山花秀雄

    山花委員 今度の減税は、中央・地方を入れて大体三百六十億円くらい平年度減税と承っておりますが、この数字に間違いございませんか。大蔵大臣、いかがです。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 間違いございません。ただし、けたが一つ違うので、三千六百億でございます。
  35. 山花秀雄

    山花委員 そのうち企業減税一般大衆の俗にいう所得税減税の割合はどうなっておりますか。
  36. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 六対四の割合でございます。
  37. 山花秀雄

    山花委員 六は企業減税のほうですか。
  38. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 所得が六で、企業が四でございます。
  39. 山花秀雄

    山花委員 初年度は所得はどのくらいの減税になりますか。
  40. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 主税局長答弁いたします。
  41. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 お答え申し上げます。  初年度は、所得減税のほうは大体八掛けでございます。したがいまして、千五百億円のうちの約千二百九十億円が所得減税でございます。これは四月から実施の予定でとのようになるわけでございます。一方、企業減税は、約千億でございますが、初年度減税は四割の四百三十億円ばかりでございます。
  42. 山花秀雄

    山花委員 千二百九十億円がいわゆる初年度の所得税の減税と承りました。そこで、運賃一日五億円といたしますと、三月一日からかりにこれを実施いたしましても、約三百日ぐらいございますから、三五の千五百億でございます。税金が吹っ飛ぶじゃございませんか、運賃だけで。これで大衆に減税の恩典を与えたことになるかどうか。さらに七月から郵便料金が上がることをもう既定づけておりますが、郵便料金は大体どの程度値上げの額を見積っておられるか。これはもう聞く必要はございません。いま言ったように、運賃と減税だけでもう相殺になっておるのに、あまり恩きせがましく減税減税と言わないほうが私はいいと思います。あまり言っておりますとぼろが出ますよ。  今回の固定資産税の値上げについては、わが党は重大な決意で対処することをきめております。なぜならば、二年前に政府は、昭和四十二年からこの問題の適切なる措置をとることになっていたのであります。したがって、三年間は据え置くという暫定措置をきめたのであります。三十九年三月十七日の地方行政委員会でも、当時の早川国務大臣はこれをはっきり約束しておるのであります。当時の会議録をよく読んでいただきたい。いいですか、この委員会でこういうことをちゃんと言っておるのであります。新しい評価を行ない、これに基づき固定資産税の額をきめるのが、納税者の負担が急激にふえることを避けるために、三年間の暫定措置で、当面は現状のまま据え置き、三年後、すなわち四十三年から実施するという内容のことをはっきり明言しておるのであります。わが党の安井吉典委員は、このことを何度も何度も確認して質問しております。一体三年間の暫定措置はどうなったんですか。まだ三年たっていないじゃありませんか。これを二年でやるということは、先ほど私は、もうあまり血の通わない政治であるということを言っておるのです。内閣が変わったからといって、同じ自民党政府じゃございませんか。権威ある国会の答弁がこうも簡単にくずれ落ちるようでは、真剣に質問する意欲がなくなるじゃございませんか。このようなことでは、国会の権威は地に落ちるばかりではございませんか。先日は、ピストル事件で国会の権威が疑われる。政府自身がその答弁に責任を持たないのでは、もう議会の存在を無視するファッショ同様の形ではございませんか。向こう三年間固定資産税は引き上げないとはっきり答弁しながら、わずか二年間だけ公約を守り、残りの一年間は公約を破棄してよいという、そんな態度は、第一、国民が許しませんよ。総理大臣、この問題はどう処理されますか。この際はっきりしていただきたいと思います。   〔「これは公約だから、総理大臣、やってください。」と呼ぶ者あり〕
  43. 永山忠則

    永山国務大臣 一応自治大臣やりまして、あと総理大臣にお願いしたいと思います。
  44. 福田一

    福田委員長 発言を許しましたから、後刻総理大臣答弁を認めます。
  45. 永山忠則

    永山国務大臣 時代の急激なる要請といいますか、変化と申しますか、都市の再開発ということは非常に強く急速度にやらねばならぬ情勢がございます。これが第一点でございます。  次に、その場合に、市街地の急騰した宅地がきわめて安く据え置かれておるということは、課税の適正を期するゆえんでもないのでございます。これが第二でございます。  第三は、国税及び地方税が減税をされることになりました。これらを総合いたしまして、この場合農地を除いた宅地に、新評価価格に対して課税をすることにいたしましたが、激変を緩和をするという方途を強く取り入れまして、きわめて段階的に、微温的にこれを引き上げる。すなわち二倍以上上がっておるところに対しては一割を上げる。三倍以上八倍までの部分は二割にいたし、八倍以上は三割と、一割、二割、三割というようなきわめて激変緩和の措置を高度に取り入れまして、負担の不均衡と過重を避けるような方向でこれを引き上げることにいたした次第でございます。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 固定資産税の課税は、ただいま暫定措置をとっておる、これは御指摘のとおりであります。これが三年計画であって、三年間持続する、こういうことでありまして、その間に変えるということは公約違反ではないか、こういう御指摘であります。ただいま自治大臣から御説明いたしましたように、たいへんな地価の変動等を来たしておりまして、あの暫定措置のままで固定資産税を課することは必ずしも公平ではない、したがいまして、税制調査等の答申を十分尊重して実施することが望ましい状態だ、かように政府は判断してただいまのような処置をとったのでございます。私は、やはりいろいろの期間等も約束がありますけれども、同時に、その形式だけにとらわれないで、実質的にまたどういうような課税方法が最も公正か、適正か、こういうことも考えられて御審議をいただくということが望ましいと思います。政府はかような態度でありまして、過日もお話がありましたように、必要ならば選挙の公約事項までドイツでは変えている、このくらいのことをやれ、このようなお話がございますが、私は別にそれを例にとって申し上げるわけではありませんけれども、最近の地価の変動等は目に余るものがございますし、ただ二割云々だけで課税をきめることは、これは適当でない、かように私は思います。
  47. 山花秀雄

    山花委員 ただいま総理の御答弁自治大臣の御答弁を聞いておりますと、納得するわけにはまいりません。三年間の期限を切って、三年目には適切なる措置をするということになっておる。私は、三年間たっても気持ちとしては上げることは反対であります。けれども適切なる措置ということは、三年目に勘案していいことであります。それが一つの公約になっておるのであります。それを二年にこれを縮めてやるということは、政治道徳の上からしても許せないと思うのであります。ところが、自治大臣説明を聞いておりますと、片一方で減税したのだからこのくらいのことと言う、許せないと思うのです。片一方でパンを与えて、片一方で石でぶんなぐるというのはこのことであります。大幅の減税をしたから、このくらいのことはいいではないかというような、そういう論拠に立っていると思います。けしからぬと思います。特に土地の価格はどんどん上がったからいいじゃないか、こういう話であります。売買でもすれば、それは利益を得るでありましょう。住宅をじっとかまえておると、土地が幾ら上がりましても、これは利益の対象にはなりません。そこで、固定資産税が比較的土地価格に比してぐっと安く見積っておるということは、そこに永住しておるという点が一つの根拠になっておるのでございます。それが、周囲の土地が上がって、土地ブローカーが売ったり買ったりしてもうけているからというので、永住しておる者にしわ寄せを来たすということは、理論上これは間違っておると思います。その点は、私はもっとはっきりしていただきたいと思います。一割、二割、三割だからかえって公平で安いじゃないか、こう言っておりますけれども、私は、三年目にその議論をしてほしかったのです。いまやるということは論外のさたです。もう一回はっきりひとつ自治大臣答弁してください。
  48. 永山忠則

    永山国務大臣 国の財政も、また地方財政も非常に困難なときでございます。しかるに、地方減税もこの場合いたします関係上、その減税部分の補てんを国の財源で補ってもらうというような状態をとっておるのでございます。また地方財政も、先刻のように非常に窮迫を告げているときでございますのに、しかも過密都市を中心として再開発というもの、あるいは環境整備、公害関係の対処、あらゆるものを急速度に整備する状態に迫られておりますので、やむを得ずこの処置をとりましたことを御了承を願いたいと思います。
  49. 山花秀雄

    山花委員 やむを得ずこの措置をとったという答弁でございますが、私は、大蔵大臣にひとつお聞きしたいと思います。課税の問題になっておりますので。この通常国会劈頭の予算委員会で私が質問いたしました点、これは総理も御答弁なすってよく御承知と思いますが、例の企業家連中の俗にいう交際費、まあ端的に申し上げまして、飲んだり食ったりするのが大半でありますが、これが当時の国家予算の六分の一に該当する五千四百六十五億円も使っておる。課税のある程度の免除はやむを得ないと思います。これは、営業政策その他で取っておる税金は、わずか五百四十億円程度しか取ってなかったと思うのです。固定資産税でどのぐらいいま取ろうとしておるのですか。ちょっとこのところへ手心を加えれば何でもないじゃありませんか。大蔵大臣、ひとつお考えをお聞かせ願いたい。
  50. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 交際費が連年累増しておりますことは、これはお話しのとおりでございます。交際費は、交際費という名称を使っておるけれども、大体においてこれは営業費である。したがいまして、これを自然にほうっておきますれば、損金として処置しなければならぬ性格のものであります。しかし、ただいま申し上げましたような傾向がありますので、これが乱に流れないというふうに規制する意味におきまして、これの一部を損金には入れないという制度がとられ、現に四十年度の税法改正におきましても、約その半分はこれを損金算入を認めないというふうにいたしておるわけでありまして、この四十年度に改正したばかりでございます。この推移がどういうふうになっているか、これを多少見た上で、さらに弊害があるというような状態でありますれば適当に善処したい、かように考えております。
  51. 山花秀雄

    山花委員 総理答弁をなすっていらっしゃったのですが、株主配当金がざっと六千億円、そして交際費が、ただいま申し上げましたような国家予算の六分の一に該当する五千四百六十五億円、そこで取っておる税金はちょっぴりしか取っておりません。ちょっと手心を加えればいいんじゃありませんか。ちょっと手心ですよ。  そこで、いま固定資産税で三年の公約を二年に破ってどのぐらい税の増収がありますか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  52. 細郷道一

    細郷政府委員 固定資産税の負担調整措置によりまして、明年度は本年度に比しまして七十三億円、都市計画税におきまして二十九億円の増収が見込まれております。
  53. 山花秀雄

    山花委員 公約を破って百億円ですよ。公約を実行して、ちょっと手心を加えれば、五百億や千億は取れるのですよ。大蔵大臣、いかがですか。
  54. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国におきましても、いま非常な財政政策の大転換を行なわんとしておるわけであります。地方においても同様な考え方で臨まなければならぬ、こういうふうに考えます。地方財政におきましては、中央の減税計画に基づく減収というものが出てくる。その上、さらに年来地方住民から待望されておる住民税減税、こういう要請にもこたえなければならぬ。そういうことで、三百五十億円くらいの減収になるわけであります。さような際でございますし、地方財政の今後のことを考えてみますと、やはり固有の財源を持つということを何とかして考えなければいかぬ、かような考え方からかねて計画され、しかしその実行が先に予定されておりました固定資産税、また都市計画税、かようなものを今回中央の財政政策大転換に際して調整をしていこう、かような考え方にいたしたわけであります。
  55. 山花秀雄

    山花委員 交際費から税金をかりに取らなくったって、企業家連中に適切なる行政指導をやって、交際費を使わないようにすると、これが利益に計上されて、それがいわゆる税収入の一つの根源になるのです。そういう措置政府はとるべきだと思います。  重ねて自治大臣お尋ねしたいと思いますが、三年のものを二年にしたということは明らかに公約違反と思いますが、自治大臣、どうお考えになりますか。
  56. 永山忠則

    永山国務大臣 きわめて遺憾に存じておるのでございますが、しかし、やはり経済上の急激なる変化と、これに対処する地方財政処置の上におきまして、地方団体も税制調査会も、この場合一般財源の恒久的の性格のある固定資産税は、負担の均衡の面から見ても、あるいは都市再開発を急激に整備する体制から見ても、ぜひ調整をする必要があるという要望等をも考えまして、この処置をいたした次第でございます。
  57. 山花秀雄

    山花委員 税制調査会がかりに答申いたしましても、わがほうでは議会の論議において三年間ということをきめておるから、来年その問題を処置すると答弁すればいいのではありませんか。税制調査会その他のいろいろ審議会の答申を全部履行しておれば、私はまたやむを得ないと思う。自分の都合のいいものは履行して、自分の都合の悪いのははねのけたというのが大体いままでの政府の慣例になっております。この問題に関して、税制調査会になすりつけるようなひきょうな態度はやめなさい。三年を二年にしたということは、あなたはいま遺憾であると言われましたが、そうすると、公約を破ったと私はその遺憾のことばを理解してよろしゅうございますか。
  58. 永山忠則

    永山国務大臣 議会でやはり三年の間暫定措置をやるということになっておりますことは、了承いたしております。しかし、いわゆる社会情勢の急激なる変化に対処して、また地方財政の安定の上において、地方市町村会からも強き要望等もあって、いわゆる社会のすべての情勢を勘案いたして、これを今回調整するということは、負担均衡の面等から見てきわめて妥当であると考えた次第でございます。
  59. 山花秀雄

    山花委員 一方では遺憾と言い、一方では妥当である。あなたが答弁しておるうしろで総理大臣大蔵大臣がひそひそ話しておりましたが、ずいぶん困った自治大臣だなというふうに私は聞こえてまいりました。まあこの論議はこれでやめましょう。  地方財政の行き詰まりは、政府の判断するようなそんな甘い分析では解決されません。地方財政赤字の原因はただ一つであります。それは、国の委託事業があんまり多過ぎることであります。そして、その委託事業に対して必要経費の三分の一あるいは四分の一程度しか国の財政支出をしないため、自治体が巨額の資金を持ち出しておるところに赤字の大きな原因があるのであります。地方自治体は、国の補助金、交付金、負担金などを受け、これに自治体の金をプラスして仕事を消化しておるのであります。したがって、国の公共事業や社会保障などが拡張されればされるほど、自治体の支出が増加する仕組みになっておるのであります。国が当然直轄してやるべき仕事を自治体に押しつけて、しかも経費を三分の一、四分の一しか支給していない。これでは地方財政が行き詰まるのは当然のことであります。そして、問題はさらに深刻であります。それは、基準単価の算出が全く現実離れをしておるのであります。実際にかかる経費より約三〇%以上も低く算出し、しかも、その三分の一、四分の一しか国が負担しない現在の基準単価は、適正とお考えになっておるかどうか、お尋ねしたい。たとえば現在の学校建築や住宅建築費の単価基準及び社会保障事業に関連する国民健康保険事務のごときもの等々であります。ひとつこの問題について、基準単価が適正であるかどうかという点をお答えを願いたい。納得できるようなお答えをお願いしたいのです。
  60. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いわゆる超過負担という問題についてのお尋ねのようでございますが、超過負担問題というのが昨今非常に問題になっております。これにどのくらいの超過負担が一体あるのかということにつきましては、まだ正確な統計をとっておりませんが、自治省が一応試算したところによりますると、昭和四十年度においては千三百億円ぐらいあるんだ、こういうお話でございます。しかし、これはあくまでも試算であり、しかもきめられた事業、特定の事業、その事業の量を超過する、その超過する事業量の総額を言うのでありまして、その超過した事業量のうら、国が幾ばくを負担すべきやというのは、それぞれの補助率できまっていくわけでありまするから、超過負担に伴うその事業量に対する国の負担が幾らであるかということは、その半分であるとか六割であるとか、それぞれの補助率に従って計算さるべきものでありまするが、それはまだ見当をつけておりません。さような次第でございまするが、御指摘のように、個々のものにつきますると、あるいは人件費補助のその人件費の単価が非常に低いという、そのケースのごときはたくさんあります。また、施設費、学校の建築の坪数が、あるいはその単価がというようなケースも多々あるわけでありまして、そういう問題につきまして、知事会が検討をいたしまして、これをぜひ直せ、こういう要請があったわけであります。その要請にこたえまして、昭和四十一年度におきましては、知事会の要請については大かたこれを処置をした、かように御了承を願いたいのであります。
  61. 山花秀雄

    山花委員 知事会の要請におおむね応じたと言っておりますが、その知事会のほうから私どもに、困ったことだという要請がきております。これは、やはり全部をやったことでないという証左の一つにもなるのではなかろうかと思うのであります。こんな大きなしわ寄せをされて、それでも地方団体が赤字にならないとしたらむしろふしぎなくらいであります。現在、各自治体の議会は、明けても暮れても国の委託事業、この超過負担による財政悪化をどう切り抜けるかということが頭痛の種になり、悩み続けておるというのが実態であります。この際、私は、政府がこの問題に対して制度のあり方と、地方自治を一そう民主的に発展するために、前向きの姿勢で再検討する必要があると思いますが、この点についてはっきりひとつ総理のお考えをお示し願いたいのです。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねは、超過負担だけの問題ではないだろうと思います。中央政府地方自治体との行政事務配分の問題が一つあります。またそれに見合うような財源をやはり確保していく、こういう問題があるわけであります。ただいまそういう点について、地方制度審議会なりあるいは税制調査会なり等々がこういう点を十分考えていこう、そうして中央、地方を通ずる適正なる行政事務の配分をして、そうしてまた、単独のものについての範囲も拡大してまいりますが、それについては十分の税源を確保する、こういうような方法にしようと、せっかくさような方向で、前向きで調査に取りかかっておる次第でございます。ただいま御指摘になりました超過負担の問題は、先ほど大蔵大臣から詳細に説明いたしましたように、今後なおあの大蔵大臣が答えた趣旨によりまして、実際に合うように今後とも努力してまいるつもりでございます。
  63. 山花秀雄

    山花委員 総理大臣答弁を承っておりましても、大蔵大臣答弁を承りましても、ただいま私が指摘いたしました超過負担は極力解消するように配慮したという御答弁でございますが、私は、そうは判断しておりません。これが平常の予算内容であればわかりますが、今度の場合は、景気刺激のために巨額の国債が発行されたのであります。特に政府は、不況から脱出をはかるため膨大な公共投資をやる予定だと言っておりますが、そうすれば、当然地方自治体が肩がわりをしてやる事業の量はますます大幅にふえてくるのであります。二千億円の新規事業、これに通常の公共投資の八千八百億円、約一兆円以上の事業であります。これによる各自治体の超過負担、すなわち持ち出し分は想像に絶するような大きなものになってくるのであります。昨年、すなわち昭和四十年度の各自治体が受けた超過負担の総額は、自治省の計算によっても一千四百億円に達しておるのであります。一体、四十一年度におけるこの超過負担の総額はどのくらいになるか、どういう見通しか、ひとつ御説明願いたいと思うのです。
  64. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど申し上げましたように、全国にたくさん自治団体があるのでございますから、その集計というものがただいまはっきりした形では出てきておりません。ただ、腰だめの試算といたしまして千三百億円ということがいわれておるわけです。しかし、これは現実に解消していきたいつもりでございます。全国知事会が指摘しておりますものは八項目ありまして、統計委託職員、保健所の職員、農業改良普及員、それから職業訓練所職員、この人件費の単価の問題であります。それから施設費の面におきまして、公立文教施設整備費、産業教育施設整備費、公営住宅建設費、警察施設整備費、そういうものであります。これを基準といたしまして昭和四十一年度は慎重な検討をいたしました結果、おおむね知事会の要望に合致するような措置をとっておる次第でございます。
  65. 山花秀雄

    山花委員 今度の予算案編成にあたりまして、自治省がきめた地方団体の赤字見込みは当初三千億円ぐらいといわれておりました。しかし、大蔵省と折衝の結果、最終的には二千六百三十億円ときまったように承っております。大蔵省は値切ることが任務だと考えていられますが、少なくとも地方団体の赤字の実情は、自治省の判断のほうがより正確であることは議論の余地が私はないと思います。しかも、一応この二千六百三十億円という赤字を基礎に考えてまいりましても、これに対する自治体の歳入はわずか千六百億円しか見込めない実情であります。こうした情勢の中に、公共事業の負担金などで約三千五百億円の支出がふえる。そして、さらに国税、地方税の減税による減収分が九百億円といわれておるのであります。このような、いまや地方自治体にとって客観情勢は四面楚歌であります。加えて政府の基準単価が不当に低いため、ついに国の公共事業は一切返上するというせっぱ詰まった自治体が続出しておることは、関係大臣よく御承知のとおりであります。  国庫補助の大幅な増額で自治体財政危機を乗り切れるという政府の見解でございますけれども、各新聞紙の論調及び経済誌は、否定的意見が圧倒的であります。これは、自治省の示した赤字総額三千億円を二千六百三十億円に値切った姿勢の中に、自治体軽視という考え方があります。三百七十億円も削られて立つ瀬のない地方団体が、どれだけ熱意を込めて国の事業に協力することができ得ましょうか。大蔵省がこの赤字総額を二千六百億円と算定した根拠について具体的説明をお願いしたいし、また自治省が三千億円を提案したその根拠もお願いしたいし、それから大幅に削られた額によって、従来の方針がそのとおり私は実行できないと思いますが、こういうような点について、ひとつ大蔵大臣自治大臣の御所見をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  66. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話のように、地方自治団体昭和四十一年度における財源不足額につきましては、最初自治省と大蔵省との間に相当の見込みの上における開きがあったわけであります。自治省においては三千三百億、大蔵省は二千億だ、こういうようなことであったのです。自治省がそういう見方をいたしましたのは、自治省といたしましては、政府の会計のほうが一体どういうふうになっているかということが見当がつかないわけであります。また一番大きな問題は、経済成長、これを一体どういうふうに見るかということについても見当がつかない。そこで、自治省は自治省なりの見方に従いまして地方財政収支というものを検討してみた。それが一応三千三百億ぐらいのところにきたということかと思うのであります。大蔵省は、これに反してわりあいに正確な資料を持っておるわけであります。その正確な資料に基づいて二千億といった。ところが、その後予算の修正、また経済見通しが経済企画庁との関係できまってくる、そういうものが自治省にも伝達される。そこで、だんだんと数字は合ってまいりまして、今日におきましては大体二千五百億円の財源不足であるということに両省とも意見の一致を見ておるわけであります。これを対象といたしまして、二千二百億円の特別措置、また固定資産税都市計画税百三十億円の増収、不足するところは、これは中央同様に地方でも節約をしていくということで、地方財政対策としては万全なと申し上げることができるくらいな措置ができておる、かように私は考えております。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕
  67. 永山忠則

    永山国務大臣 三千三百億ばかりの見込み不足について、大蔵省と折衝の結果二千五百億内外でその減収見込みの突き合わせが調整がついたということについては、自治省の試算の当時と、いよいよ予算が決定する当時との関係で、経済の成長率の見方が、最初自治省のほうも、また大蔵省の内意も聞いたのでありますが、少し低かったのであります。成長率は、その後の情勢で予算編成のときに少し上がってまいりましたので、したがいまして、税収入の見方が、当時と、同時に予算の決定との間の税収入の見方が、自治省が少なく見ておることになるのであります。さらに、したがって税収入には地方税の税の伸びの見方、それから今度国税の減収による交付税の穴埋めの見方、こういうことが経済成長率の見方で大幅に違ってまいったのであります。さらに、公共事業の伸び率が、大体自治省の見ている伸び率が最初の伸び率よりは大蔵省が最後に決定されましたものが少なかったのでございます。したがいまして、地方の財源の補てんに対して多少の差異が生じてまいりました。なお、公共事業が伸びることによって地方職員の増加が相当考えられておったのでございますが、大蔵省と折衝の結果、人員は抑制をしようという措置等をとりましたので、またこの人件費が、かりに自治省は千五百億見ておりましたのが、大蔵省と折衝の結果は千三百五十億というようなことになり、地方税の関係におきましても、自治省では伸びは七百五十億と見ておりましたが、最後に成長率が伸びることによりまして千五十億になる、計数はまだ整理いたしておりますので、間違いがあるかもしれませんが、詳細は必要に応じて資料並びに事務当局から出されるのでございますが、そういう関係におきまして、五、六百億というものが実質上の、計数上の試算当時と予算決定当時との差でございまして、それだけ赤字を押しつけられたということではないのでございます。したがいまして、一千億の一般財源を補てんをしてもらい、しかも交付税率の二・五%引き上げをきめましたということによりまして、地方の税源が安定をいたしておるのであります。経済の成長によりまして地方財政が伸長するというように、この点は地方団体からも非常に喜ばれておるのでございます。さらに、この一千億のうちにあります四百十四億の臨時交付税の中の二百四十億は、たばこの本数配分によるということをきめ、来年度からは税制の調整によってこれを恒久化していくということが方針にきまっておりますので、これも地方団体、ことに都市再開発をやるところの財源の確保が考えられますので、一応この流動性のときにこうした安定した地方財源の確立をいたすということができましたことに対しては、ここの地方財政処置に対しては適正な処置であったと考えるのでございます。  さらに千二百八十億でございますが、千二百億は、特に公共事業に対しまして起債のアップ率を強化することになったのでございます。この点に対して、公共事業の消化は非常に促進をするということになるのであります。ちなみにそのアップ率について申しますと……(山花委員「簡略に願います」と呼ぶ)それでは簡単に申しますが、一般補助事業や直轄事業に対しましては、旧来は四〇%内外であったものを九五%に引き上げてまいりました。災害等に対しましては、過年度充当率は、現年度と同じように土木関係一〇〇%、農林関係七〇%といったようなぐあいに、また教育施設等すべてのものに対して、水道関係等もみな起債の充当率を強く高めましたので、地方財政処置においては、とりあえずは本年度の消化を十分なし得るという体制を確立をいたしました。しかし、お説のごとく税の再配分、事務の委譲等によりまして、地方自治体の自主性を尊重して、地方自治の本質に対して今後勇断なる処置をとらねばならぬことはお説のとおりでございますので、今後最善の努力を尽くしていきたいと考えるのであります。
  68. 山花秀雄

    山花委員 自治大臣が大蔵省にいろいろ要求したが、大蔵省と話し合いした結果、最も妥当な線で一応まあまあ満足したというようなお話でございましたが、そこでひとつ、これは必ず起きる問題でありますが、この財源措置をいま考えておられるかどうかということは、御案内のように地方公務員に関する人事院の勧告に基づくベースアップは、必ず私はあると思うのです。政府でも五・五%物価上昇すると、こう言っておるのですから、なかなかそれでは押え切れないような今日の情勢でありますが、そのときの財源措置はそのときになってからやるということですか。何かそのときの財源措置をお考えになって予算を折衝されたかどうか。あまりくどくどした説明は要りません。もう簡単にひとつやってださい。
  69. 永山忠則

    永山国務大臣 この点は、お説のように非常に苦慮いたしておるところでございまして、政府におきましても、中途の予算更生にたらないような処置を検討をしてもらうように強く要請をいたしておるのでございまして、ただいまの〉、ころはこれに対する財源処置をいたしておりませんので、情勢によりまして対処せねばならぬ重大なる問題であると考えております。
  70. 山花秀雄

    山花委員 当然来たるべき問題だと思いますが、財政措置はしていない、大蔵省のほうにもそのときになればというようなお話でございますが、大蔵省関係ではこの問題について何か考えておられるのですか。
  71. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまベースアップを予定した措置は一切いたしておりませんです。
  72. 山花秀雄

    山花委員 五・五%物価上昇ということになれば、当然私は人事院の勧告が出てくると思うのです。何か語気を強めて、一切いたしておりませんと、こう言い切っておりますが、人事院の勧告がございましたら、今度は完全実施をされるお考えであるかどうか、これはひとつ総理にお伺いしたいと思います。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 しばしば申し上げておりますように、人事院の勧告は尊重しなければならないし、また尊重する考えでございます。
  74. 山花秀雄

    山花委員 完全実施と尊重とは少し内容が違ってまいりますが、尊重するということは、完全実施に道が通ずるという意味に承ってよろしゅうございますか。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま申し上げますように、尊重しなければならないというのがたてまえであります。また、政府は尊重する、これが態度であります。
  76. 山花秀雄

    山花委員 人事院の制度は、私が言うまでもなく、十分関係各閣僚、総理大臣はじめみな御承知と思います。尊重するということでありますが、ちょっとニュアンスが違うのでありますが、誠意を持って尊重すると承ってよろしゅうございますか。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんでございます。
  78. 山花秀雄

    山花委員 日本語を直訳いたしますと、誠意を持って尊重するということは、完全実施というふうに、私はさよう了承してまいりたいと思います。  そこで、基準単価を是正して超過負担を解消する、たいへんけっこうなことでございますけれども、この一年間の地価の上昇は、ごく内輪に見積もっても一四・六%、建築費の値上がりは二%程度と見ておるようでは、私はこれは内輪とかなんとかいうよりも、こんなことではとうてい追いつかないと思います。実質的には前年度並みの仕事をするのが精一ばいという評価であります。したがって、関係者に言わせるならば、新住宅建設五カ年計画は、出発点からはやもう不可能になっておる、こう漏らしておるのであります。  具体的に学校建設の例をあげて指摘をしてまいりましょう。昭和三十九年、東京都において、小中学校の校舎建築費は、鉄筋骨で七万二千五百円という基準単価が示されております。ところが、実際では木造で八万五千円以上が必要であります。昨四十年度は五千七百円アップされて、坪単価が七万八千二百円となりました。これでは鉄筋骨はおろかのこと、木造の建物も建てられません。基準単価をこのように低く算定をして、その三分の一しか補助しない。また土地については国が一銭も補助しない。したがって地元自治体の負担はたいへんなことであります。実際は東京都では、小学校一つ建築する場合に、児童数六百程度にいたしましても、昨年は約一億八千万円くらいは必要になっております。そのうち、国の補助金はわずか千五百万円くらいで、何と一制そこそこにしか達していない状態でございます。   〔松澤委員長代理退席、赤澤委員長代理着席〕 矛盾はこれだけではございません。児童の教材費も二分の一が国庫負担であります。しかし、実際には一人当たり千三円くらいかかっておりますが、基準単価はわずか三百円、国の補助が二分の一だと百五十円の支給である。この場合でも約一割程度の実質的な補助であります。地方自治三割は、いま地方自治一割というような状態であります。あとは全部自治体に何だかんだと言ってしわ寄せをしております。自治体のやりくりはまことに涙ぐましいものであります。自治大臣、本年度め小中学校の基準建築単価は鉄筋骨で七万四千円と決定されました。これは全国平均でありましょう。東京の場合だと若干高く、八万円程度だと想像されますが、この金額で実際に校舎が建てられるかどうか。木造の、ごく普通の住宅でも現在坪十万円というのが相場ですよ。ひとつ自治大臣、私が大蔵省に要求したのは、妥当な予算が決定されたと言って手放しで喜んでおられるような態度が見受けられましたが、いま私が申し上げましたように、こういう基準単価で建築ができるかどうかという点、ひとつ確信ある答弁を願いたいと思います。
  79. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 建築単価の問題は、毎年度算編成の際に問題になる点でございまして、文部省としましては、できるだけ実態に即するように累年努力をしてまいっておるところでございます。現在のところ、これは四十年度の平均でございますが、鉄筋建設の実績は八万二千十円ということになっております。来年度予算は八万二千百円で、大体前年の実績同額のところまでようやくまいっておる次第でございます。木造につきましては、全国平均で坪単価五万一千余円を要しておりますが、これは実績の線に追いつきませんで、本年度は約一〇%アップしてもらいましたが、一〇%のアップでは大体四万七千三百円でございますから、坪当たり数百円のまだ開きがございますが、今後とも引き続き実績に合致するような方向にいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  80. 山花秀雄

    山花委員 ただいま文部大臣説明によりますと、鉄筋骨の場合には八万二千百円と、こう承りましたが、これは大都市のお値段ですか、それとも全国平均のお値段ですか。
  81. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 平均でございます。
  82. 山花秀雄

    山花委員 東京あたりはどのくらいになるでしょうか。
  83. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 現在予算の積算としましては、全国平均八万二千百円で計算をいたしておりますが、これを全国五段階に区画をしまして、そうして予算配分をいたす予定でございますから、まだそこまで作業が進んでおりませんので、実数はわかりませんが、大体五段階で、東京のようなところはその最高の水準になるだろうと思っております。
  84. 山花秀雄

    山花委員 予算を国会に出して、そうして最高、最低の説明ができないというようなことは、文部大臣として非常に私は責任のない態度だと思います。これはもう当然いろいろ政府間でも折衝し、大蔵大臣との折衝においても積算ができておると思うのです。それがどうも平均だけで五段階の積算ができていないということは、怠慢しごくだと思いますが、私は、八万円そこそこで鉄骨の校舎ができるということ自体が認識不足だと思うのです。私は、自民党の議員諸君でもよく地方へ国政視察に行かれますが、どういう陳情を受けておるか、ここにおいでの多くの予算委員諸君地方の声を聞いておると思うのです。自治大臣説明によりますと、あるいは大蔵大臣説明によりますと、知事会の要望はおおむねいれたといって御満悦の状態であります。ここでは御満悦しているかもわかりません。一足地方へ行ってごらんなさい。どういう切々たる訴えがあるかという点であります。もう少し外部の事情をよくお考えになって、真剣にひとつ予算討議をしていただきたいことをこの際お願いをいたします。この単価では、私はとうてい鉄筋骨あるいは木造の校舎は建たない。そうなりますと、このしわ寄せがずいぶん地方自治財政におっかぶさってくるということであります。地方自治財政は極度に貧困化して、そうして、おおむねの地方自治住民に対するサービスが国から委託された仕事のためにできないというのが実情であります。こういう点は、私はもっとあたたかい目で地方自治を見てやっていただきたいと思うのです。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今回は相当の改革をいたしておるのであります。たとえば知事会から要望のあったものについて申し上げますと、統計職員は、その単価が四十年には三十八万二千九百二十九円であったものを、今度は四三%アップの五十四万七千七百六十五円に改めるわけであります。また、保健所の職員につきましては、医師五十九万七百四十五円であったものを百三万四千八百二円、七五%アップとなるのであります。それからさらに知事会からの要望であります農業改良普及員、これは三十七万四千九百四十二円であったものを、三二・三%アップしまして四十九万五千九百二十三円とし、また、労働省の職業訓練所職員につきましては、四十二万四千百五十七円のものを六十万二千百三十一円、四二%アップ、また国保の保健婦、従来三十五万六千百二円のものを三十八万一千八百二十八円といたす等の措置をしております。  また施設費につきましては、ただいまお話がありましたように、小中学校の校舎につきましては、従来七万八千九百円のものを八万二千百円と改定をいたしておるのであります。また、屋内体操場につきましては、八万一千五百円を八万四千八百円と改定をいたしております。それから公営住宅につきましては 木造従来四万二千三百円のものを四万七千三百円と改定いたしております。また警察施設につきましても、従来の単価をそれぞれ引き上げております。またし尿処理施設につきましても、同様な措置をとっておるわけでありまして、従来に比しまして相当画期的と思われるような改良をしておるわけであります。
  86. 山花秀雄

    山花委員 総体でどのくらいのアップになっておるでしょうか。それからもう一つは、どのくらいの要求をしてまいったかということをちょっと参考までに承りたい。どのくらいの要求をしてきたのをどのくらいに切って、昨年度と本年度はどのくらいのアップになっておるかという点……。
  87. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、知事会等が言うことをもとにいたしまして自治省が一応試算をいたしましたものが千三百億、こういうふうにいわれるわけであります。それに対しまして、ただいま申し上げましたようなものを全部くるめまして三百三十一億円の改善をいたしております。
  88. 山花秀雄

    山花委員 私も、いろいろな関係で国政調査で地方に出てまいります。一番先に要求されるのが学校の問題であります。鉄骨関係では、十万円以下ではとてもできないというのが要求であります。そこで、低く見積もってきてわずかばかりの基準単価をもらって、結局地方財政の持ち出しになるというのがおおむね全部といっていいくらいの地方自治関係者の私ども会議員に対する要請であります。これはおそらく同僚議員、与党議員も同じような要請を受けておるのではないかと私は思います。そこで、鉄骨が八万二千円程度でいいというふうなことを言っておられますが、これがまた地方財政に大きなしわ寄せになります。総理は一体どうお考えになりますか。ときどき国民議会か何かで地方に行ったときに、地方の方から総理に対して要請があったと思いますが、私の言っておることが間違っておるかどうか。間違っておったら、山花、おまえの言ったことは間違っておると、はっきり言っていただけばけっこうです。いかがですか。
  89. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 私から先にお答え申し上げます。実は、文部省といたしましては、各都道府県から建築の実績の報告を求めまして、これを平均して年度の平均単価を出しておる次第で、昭和三十八年は七万四千二十八円、三十九年が七万七千六百九十七円、昭和四十年が先ほど申し上げた八万二千十円と、こういう平均単価を各都道府県の報告によって計算をしておる次第でございますから、間違いないと実は私ども思っております。ただ、先ほどおしかりをいただきました、各県分の五段階の配分がまだできていないのは怠慢じゃないか、こういうお話がございましたが、三十九年までの分は明細ができておりますが、四十年の数字は実績の総額だけが集計されておりますが、さらにこまかく労務費がどのくらい、材料費がどのくらい、資材費その他そういうものを分析をしまして、これによって五段階を格づけをしてきめるわけでございますから、予算配分の時期までにそういう作業を終了いたしたい、こういう予定でございますから、怠慢というわけではありませんので、、四十年の分はいまそういうふうな作業中であることを御了承いただきたいと思います。
  90. 山花秀雄

    山花委員 地方からこういう報告がきたからこれでいいんだ、そういうお話でございましたが、そういうことでは政治家はつととまらないと思います。どんな学校が建っておるかというと、満足な学校が建っておりませんよ。あんまり単価を低く見積もって、地方財政は窮迫して金が出せませんから、あてがいぶちで建っておる学校を見てごらんなさい。不正があったり、雨漏りがしたり、耐久年限が予定よりぐっと早まったりして、結果的には国の大きな損失になっているという点であります。私ども政治家をもって任じておるのです。国務大臣各位もそうであろうと思います。だから、耐久年限の強い、教育施設の完備した、そういう学校を建てるという、その基礎から問題の考え方を出発させねばならぬと思います。総理大臣、いかがですか。ひとつ総理大臣の所見を聞かしていただきたいです。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから超過負担の問題について詳細な御議論、また意見の交換がございました。大蔵大臣や文部大臣等も誠意を持ってお答えした、かように私は聞き取ったのであります。そのうちでも、ことに山花君が言われる学校校舎、これがたいへん地方の負担になっておる、こういう御指摘であります。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 これは各市町村にそれぞれの事情があるというか、特異性があるといいますか、ある場所へ行けば学校の陳情を受けますし、ある場所へ行けば橋梁の陳情を受けるし、あるところへ行けば、どうも人件費等の査定が非常に辛い、こういうような陳情を受けるのであります。全部陳情が同一だとは実は思いません。先ほど大蔵大臣が、そういう意味で最も困っておるような人件費の問題等については詳しく説明をいたしました。私自身が受けますものは、医者の単価があんな安い単価じゃお医者さんは絶対に来ない、こういうようなことも私は耳に残っております。なるほど二万五千円程度の月給ではこれはたいへんだ、かように私も感じました。それらについては、今回は、大蔵大臣説明するように、倍額にした、こういうことでありますから、この辺はよほど改善された。それでいわゆる名医が雇える、かように私は思いませんけれども、こういう問題は、その実情に即した処置がとられつつあると思います。学校問題も、教育の問題については特にみんな熱心ですから、そういう意味で私は十分努力されておるものだと思います。しかし、山花君の言われることも、特殊な場所におきましてはそういう事態も起きておるのではないかと思います。ただいま政府地方にいろいろ予算措置を講じますものに、具体的な、たとえば学校の校舎、あるいは道路建設、橋梁等々について予算を計上するものもありますし、また交付税として一般的に地方財政を見る問題もございます。また特にぐあいが悪ければ特別交付税の制度もあるわけでありますから、そういうこと全部を勘案いたしまして行なわれるのであります。ただいま言われますこと、私一がいに八万二千円では鉄筋骨は無理だ、こういつてきめてしまうのもいかがかと思いますが、もし不都合な点があれば、ただいま申し上げますような、国から地方を見ておる交付税等でもそういう点を考えて、地方財政が強化されるようにこの上とも私ども気をつけなければならぬ、かように思いますが、ただいま言われますのは、交付税交付税だ、そういう手数をかける前に単価を適正にしろ、こういうお話だろうと思いますので、私は、そういう意味でも、先ほど冒頭に申しましたように、地方財政のためにも一そうそれを強固にするように、また施策が十分住民に理解され、喜ばれるような措置をとっていくように、この上とも努力をしてまいるつもりでございます。
  92. 山花秀雄

    山花委員 地方財政法によれば、国の負担金、補助金等の地方公共団体に対する支出金の額は、必要かつ十分な金額を基準としてこれを算定しなければならないとうたっておることは、御承知のとおりであります。政府及び関係各省がこれを守らないから、行政管理庁ですか、地方財政法の精神から、しばしば各省庁に対して勧告を行なっております。最近の例としては、昨年十二月十七日、閣議の席上で福田長官が義務教育費の問題で勧告をしています。すなわち、急激な人口増による文教施設の対策として、学校用地の取得についても助成金を出すようにと言い、さらに、義務教育費の父兄負担がふえているので、教材などの基準単価は実情に合った正しい算定をするようにと勧告をしております。昭和三十九年四月十五日、大蔵省はじめ十一省が同じような勧告を一斉に受けていることは、これはもう世間一般に知れ渡っていることであります。その年の暮れに各省から、それぞれの項目について具体的に検討され、おおむね趣旨に沿った改善がなされたと報告されたのであります。ところが、何と翌四十年度は、この改善されたはずの超過負担の総額が一千四十一億円に達しておるのであります。勧告は全く無視されておるのであります。行政管理庁はあってなきにひとしい存在と言わなければならないじゃございませんか。同じ内閣でありながら、これほどお互いに信頼しない、矛盾した話はないではありませんか。一体行政管理庁長官の面目は、あわれな存在となっているじゃございませんか。地方財政法を踏みにじって、行管の勧告も全然問題にせず無視する態度は、国民の一人として許すことはできません。これでは、総理がどれほどりっぱな施政方針を述べても、国民はだれを信用したらいいかということであります。総理がただいまいろいろ御答弁なされましたが、行政管理庁の勧告が妥当であるかどうか、その勧告の趣旨に沿ってこれから総理としての方針を貫くのかどうか、もう一回御答弁をお願いしたいのです。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 行政管理庁で勧告をし、各大臣ともこれを了承しておりますので、順次これが実施される、かように期待しております。
  94. 山花秀雄

    山花委員 基準単価の問題に関連して、国の委託事務がございます。もうたびたび人件費等については大蔵大臣からも御説明がございました。よく聞いていただきたいと思いますが、すなわち国民健康保険、統計調査、戸籍事務、自衛官募集、引き揚げ者関係、旧軍人軍属事務、日雇い健保、選挙管理、食糧管理、生活保護、恩給事務、不動産取得、福祉年金、実にこんなにたくさん地方団体に委託されているのであります。そして、これらの委託事務にかかる経費は、人口十万人程度地方都市で年間約一億三千五百万円程度を必要としております。しかも、国と都道府県から来る補助は三分の一程度で、七〇%近い経費をおのおのの自治団体が負担しておるのであります。自治体はこうした財政支出の増大で完全にもう行き詰まって、本来の仕事である、すなわち地域住民の福祉行政が、財政的に十分でないために、どうしても軽視されておるというのが実情であります。こうした事実をよく理解して、現実に応じた対策を打ち立てるべきだと私は思います。私は、このため、基準単価の決定あるいは委託事務の分担金などの基準、そして、その単価や範囲、あるいは数量などを適正にするために、学識者を含めた第三者機関をつくり、そこで実態に合った基準を算定するような、こういう配慮が必要と思いますが、一体そういう意思がおありになるかどうかという点をお伺いしたい。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 具体的なお話でございますから、十分検討してみたいと思います。
  96. 山花秀雄

    山花委員 よく検討してみせるということでお逃げになりましたが、これはひとつほんとうによく検討していただきたいと思います。何も私が言ったからといって、自民党の面目がつぶれるわけでも何でもございません。これは、やはり政治の問題として各党協力していきたいと私は存じております。  次に、地方債券問題について質問をいたしたいと思います。  高度成長に取ってかわった不況のために、歳入の伸び悩みが大きいといわれております。いわゆる経済界の不況で、事業税、電気ガス税などの地方収入に対する影響があらわれ、特に地方交付税の源泉である国税三税の不振が大きな影響を与えておることは、御承知のとおりであります。このため、本年は一千二百億円の新規地方債のワクをきめ、これに対処しようとしておりますが、そこで、次の点についてお聞きしたいのであります。  第一は、昨年度地方団体の歳入のうち、地方債による収入の割合は何%ぐらいであったか。第二は、本年度は何%ぐらい見込んでおられるかお示し願いたい。四十年度は全体の四・五%、本年度は七・一%といわれておりますが、正確な数字のお答えを願いたいと思います。四十年度地方債による収入は四・五%で、本年度は七・一%見込んでおると、こうなっておりますが、昨年に比べて二・六%の増加でございます。二・六%増というのは、常識的に考えて、どうも不健全であろうと私は思います。何となれば、これは要するに借金であります。借金が大きくふえれば、いずれは返さねばならない性格のものであります。住民とすれば、一つの大きな不安材料であります。それに、この地方収入が七・一%を占めるという状態は、戦前ならとにかく、戦後では、地方財政を最悪の状況に追い込んだ昭和二十八年ごろの状態と同じ現象であります。いわばきわめて不安定な財源に依存することで、これでは計画的に事業を進める積極的な意欲がわいてこないのであります。したがって、自治体によっては、危険を避ける意味から、公共事業に対する態度が必然的に消極的にならざるを得ないのであります。資金の裏づけがあいまいだから、及び腰の姿勢であります。俗に言うへっぴり腰であります。地方で幾ら公共事業推進を大なき声で叫んでも、自治体がおいそれと立ち上がってこない。地方債の増加それ自体は、このように考えると決してほめられたことではないと思いますが、この点を一体どうお考えになっておるか、お考えのほどをお示し願いたいと思います。
  97. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 昭和四十一年度における起債の総額は六千七百七億円であります。これに対応する昭和四十年度は五千四百六十四億円でありまして、今年度は千三百億円ばかりの増加と相なる次第でございます。
  98. 山花秀雄

    山花委員 その増加が、地方財政にとっては、やはりこれは返さなくちゃなりませんので、非常に公共事業その他に取り組む意欲が萎縮してくると思いますが、そうは大蔵大臣はお考えになりませんか。
  99. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国は四十年度において初めて千五百九十億円の公債を使う、四十一年度においては七千三百億円の公債を使う、こういうことになったわけであります。これは、一つは経済の不振ということもありますので、その影響を受けるのは地方団体も同じなんです。そういう国の状況を考えますときに、地方団体が全然いままでと同じようなペースであるというわけにはまいらない。しかし、地方団体のことをよく考えなければならぬというので、国においては一千億円の特別措置を講ずるというようなことをいたしまして、なるべく地方自治団体の起債の増額にならないことを期したわけでありますが、千三百億円程度この際ふえるということは、これはやむを得ないことであるし、またこのくらいふえても、地方財政の健全性に何らの支障はない、かように考えております。
  100. 山花秀雄

    山花委員 地方債による収入がきわめて不安定だと判断するもう一つの理由は、本年度に、ただいま大蔵大臣お話がございましたように、七千三百億円という国債の発行と関連する問題であります。七千三百億円という巨大な国債が登場する起債市場で、地方債の場合は七〇%近いものが信用度の低い縁故債であります。したがって、地方債がはたして完全に消化できるかどうかという点を考える必要が私は生じてくると思うのであります。千二百億円のうち五百億円を政府が引き受けても、七百億円が公募されるわけで、その数は国債の約一割にも相当するのであります。こうなれば、利率もよく、信用度も高い国債が先になり、どうしても地方債はあと回しになるというのが常識であります。ましてや公債市場の原資にも限度がございます。おそらく消化不能を起こす可能性があるのではないかと自治体関係者は心配しておるのであります。そこで、もしこの地方債が完全に消化されなかった場合、一体政府としてはどういう措置をおとりになるか、そういう可能性が十分に考えられるため、いまからそのときの対策を立てる必要があると私は思います。この点、自治体に対し親切なる態度を示す必要があると思いますが、こうした場合、どのような手を打たれるか、お答えを願いたいのであります。
  101. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま二つの面から地方起債が非常に困難になるというようなお話でございますが、公募債につきましては、地方債の利回りは非常に高いのです。七分三厘五毛ぐらいになります。国債のほうは六分七厘九毛五糸、五厘の開きがある。非常な開きであります。こういうことでございますので、ひとしく優先債だというふうにいわれております国債、政保債、地方債でありますが、地方債に対する魅力というものは相当高い、かように考えております。  それから、国の七千三百億円の公債につきましては、これを市中において消化をするという方針であることは御承知のとおりでありますが、この七千億円の市中消化というのは、決して国の公債が七千億円消化されるんだということを考えているのじゃありません。これは、これと並んで発行される政保債、地方債、そういうものがひとしく消化されなければ、国の事業は円滑に実行できないのです。それらを含めましての消化ということが、七千三百億円の国債消化というものの持つほんとうの意味であります。それじゃ、それだけの起債が消化されるのかということに対しましては、大体これだけの大幅な予算の施行によりまして、貯蓄が相当ふえると思うのです。ことしでも相当ふえておる。来年は六、七兆億円の貯蓄の増加ということが確実に期待されるというふうな見通しを持っております。その貯蓄の中で地方債の、国債の、あるいは政保債のその程度の消化がむずかしいかというと、これはさして困難なことではない。全部を消化する、こういう方針で臨みたいと思っております。
  102. 山花秀雄

    山花委員 大蔵大臣はたいへん楽観的なお考えでございますが、私はまた少し変わって、かりに地方債が利率が高くても、これは信用度の問題であります。たとえば、これは株式と同様には扱えませんけれども、相当配当金の多い株式でもぐっと安くて、配当金の少ない割り高の株式でもどんどん歓迎されるというような、そういう傾向がやはり地方債と国債の場合に関連性があると思うのであります。  地方債の消化については、どうも大蔵大臣の話を聞いておりますと楽観的でありますが、私は次のような問題が現実に起こっているから、あえて重ねて質問をするのであります。  すなわち、一月二十九日の各新聞は、「国債消化早くも暗雲」というトップの見出し記事を載せておるのであります。読売新聞によりますと、「さる十九日から公募された四十年度国債の一月分七百億円は二十八日国庫に払い込まれたが、引き受け金融機関はこの資金調達のためコール市場に殺到、同日の市場は異常なひっ迫となった。このため、日銀は同日六百億円の緊急貸し出しを行ない、」と、国債消化のため日銀貸し出しはやらないと強く約束した政府の主張は、払い込みの初日で早くもくずれ去ったと報道しておるのでございます。一月という月は、季節的にも一年じゅうで最も市場がゆるむときで、こういう月でさえあの状態ですから、今後景気刺激で民間の資金需要がふくれることを考えますと、国債の市中消化さえどうも困難が考えられてくるのであります。国債にしてもこのとおりだから、地方債となれば、その消化はたいへんな困難が伴うだろう、この点はおそらく政府も相当心配しておるのではないかと私は思っておるのでありますが、大蔵大臣は非常に楽観的なお話でございました。もう一度、私は重ねて確認しておきますが、もし消化に大きな困難が伴って、その不可能が確実というような形になった場合に、政府はどのような手を打つつもりでありますか。日銀貸し出しを国債の例によってやることもあるのかないのか、どうかという点を、ひとつお答え願いたいのであります。
  103. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま申し上げました国債、地方債、政保債その他を日銀引き受けの形でやる考えは全然持っておりません。しかしながら、ただいま申し上げましたように、貯蓄が相当伸びるのです。これは確実に伸びていくという見通しを持っております。この中でその程度の公債を消化していくことは、さして困難ではない。  また、一月二十七日のことについて言及されましたが、一月には相当多額の引き揚げ超過があるととが予想されたわけであります。ところが、海運ストライキの影響が相当響いていると思うのでありまするが、その関係で輸出入のほうに響きがある、国際収支が思ったよりよくない、そういうようなことで、引き揚げ超過が予定したよりも多かったわけであります。さようなことで、そういう際には日本銀行がオペレーションを行なう。これは通例のことでございます。たまたまその通例のオペレーションの日が国債の払い込みの日に当たった、こういうことで一部に誤解を招いたことがありまするが、国債の資金の払い込みと、それから通例のオペレーション、これは全く別ものでありまして、国債消化が早くも壁に突き当たったというような状況では決してございません。御安心願いたいと思います。
  104. 山花秀雄

    山花委員 大蔵大臣と私の意見が平行線をたどっておりますので、いつまで議論していてもこれは果てしがないと思いますので、もう少し推移を見て、どちらの意見が正当であったかということを後日これは証明するものだと思いますので、次に問題を移してまいりたいと思います。  過密都市の問題の財政事情について質問をいたしたいと思います。  いわゆる高度成長によりまして、人口の都市への集中が行なわれ、大都市の人口が急速にふくれ上がって、このために公害をはじめとする深刻な都市問題が発生し、これが今日の新しい政治問題となっているます。住宅の不足、地価と建築費の暴騰、交通麻痺、事故の増大、清掃事業のの停頓、教育施設の不足、そして総理が常に言っておられます青少年の非行化、犯罪の増加、伝染病の発生、さらに大気汚染、水不足、騒音、地盤沈下など、数えれば数え切れないほど問題が続出しておるのであります。このように都市問題については、それが深刻なあまり、各方面に活発な研究と討論が行なわれております。帰するところ、その原因は、資本主義の都市経済の矛盾から発生する社会問題であります。この結果、都市住民の社会的費用、すなわち住民の生活条件の悪化となると思うのでありますが、最近こうした都市問題の解決の一つの方法として、人口の地方分散が進められて、大都市周辺の中小都市、衛生都市の人口が急激に増加しております。また土地価格などの事情で、公団住宅をはじめ公営住宅がこうした中小都市にどんどん、どんどんと建てられて、これを受け入れる地方自治体財政事情が極度に悪化しておるのであります。こうした大都市周辺の人口の急激な増加に伴って苦悩する自治体に対して、本予算案で具体的にどの程度の補助なり、あるいは救済なりを考えておるかどうかということを説明願いたいのであります。
  105. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御説のように、景気の変動を極端に受けますのは大都市かと思うのであります。さらにそういう臨時的な要因のほかに、恒久的な要因といたしまして、都市に人口集中の傾向がある。それらを考えまして、昭和四十一年度予算におきましては、臨時特例交付金の一部をたばこ本数割りによって配分することといたしております。これが第一。第二に、固定資産税及び都市計画税につきましては、先ほど御意見がありましたが、その合理化、調整を行なうことといたしております。それから第三に、大都市海岸事業の補助率を引き上げることをいたしております。それから地方債の配分にあたっては、上下水道、学校などにつきまして、大都市需要に配意をするという考え方を取り入れる方針でございます。それからさらに首都圏及び近畿圏の整備、これにつきまして特別の措置を講じております。また、さらに市街地内にある工場を分散するというような意味におきまして、都市開発基金を新たに設置する。こういうような、過密都市対策といたしましては相当きめのこまかい対策をとっておるのであります。
  106. 山花秀雄

    山花委員 いままでの都市政策は、もっぱら社会資本の充実に中心が置かれ、地域開発はあと回しにされてまいりました。要するに生活環境は置き残されたという状態であります。したがって、都市問題は、住民の忍耐によって解消されていたと言っても過言ではないのであります。もちろん、それぞれの自治体は一生懸命にでこぼこ道路、あるいは上下水道、し尿処理、ごみ焼却、学校施設など、生活環境を改善するために努力はしておりますが、どんどん増加する人口のために、財政的に追いつかないのが実情であります。これは東京周辺、あるいは大阪、名古屋の近郊でも同様であります。現在、これらのいわゆる衛星都市は、年間一万人以上も人口がふえておるのであります。小学校を毎年新築しています。さきに述べたように、一校建設するために、地元負担だけで一億八千万円必要であります。もちろん学校だけではございません。生活環境も含めて、その財政支出は相当大きくなりますが、自治省は補助金等をきめる場合、こうした人口急増地域に対する特別のワクを設けて配慮している様子でありますが、そのワクの総額はどのくらいあるのですか。そうして、その補助をする場合、どのような基準で補助額を算定するのであるか、説明を願いたいのであります。
  107. 永山忠則

    永山国務大臣 詳細の数字は局長から答弁をさすことにいたしまして、人口急増補正に関しまして、昭和四十年度の金額でございますが、これは道府県分が百四億でございます。市村町分が二百四十七億で、三百五十一億でございます。したがいまして、人口急増補正の金額は、全需要の約二%に当たっておりますが、今後のこの補正につきましては、さらにお説の点を十分考慮したいと思っております。ことに、一定規模以上の住宅団地の開発に必要となるところの小中学校、下水、し尿処理、街路、幼稚園、保育所、市場、診療所等に対しても関係機関とひとつ十分協議考慮して、先行投資でできるように努力いたしていきたいと考えております。
  108. 山花秀雄

    山花委員 政府は、その重点政策の一つとして、住宅建設を非常に強調しております。いま自治大臣も、公団住宅あるいはその他施設を大いにやる、こう言っておられましたが、これに伴って、住宅公団をはじめ多くの公営住宅が、地価のまだ比較的安い地方都市に集中的に建設されております。特に最近の団地は二千一戸三千戸という大型の団地であります。これを受け入れる地方団体の負担は、こんなに大きい団地がくると、もう非常に大きいのであります。昨年の夏できた都下の人口約十万の町に、二千四百戸の公団住宅が建設されました。これに伴って、その町が支出する財政負担は約三億円になったということであります。学校が一つ、保育園、道路、街灯、ごみの処理などが中心でありますが、住民税収入は一年先で、負担だけはすぐかかる。起債も含めて三億円の支出であります。もちろん、これを全部初年度で処理するわけではございません。しかし、三億という金額は、この町の年間予算の約四分の一に相当するものであります。この場合、公団も幾らかの分担をしておりますが、実情では自治体の負担となっております。こうした問題が、千葉県や埼玉県のように、一部の自治団体の公団の受け入れ拒否という問題に発展しておるのであります。東京都下でも、各自治体の議会が、これ以上住民が負担をするなら、公団の受け入れを拒否しようという話し合いが行なわれておるのであります。せっかく住宅建設五ヵ年計画を進めようというやさきでございますから、この辺の事情を十分考慮すべきだと思いますが、総理の所見をお聞きしたい。  同時に、私は、人口が急激にふくれる自治体は、いろいろ申し上げたことのほかに、交通の問題とか郵便局の問題とか、幾らでも新しい都市づくりには問題が発生しておるのであります。これは各省が関係するため、やはり問題を一本にしぼる機関を特にきめることが必要であると思います。そこで総合的に検討する必要があると思いますが、この点について、総理からひとつ御所見を承りたいのであります。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 住宅問題は、ただ量だけの問題ではなしに、質の改善といいますか、そういう意味で、社会開発の一つの柱として実はこれを推進しております。ただいま御指摘になりましたような総合的な施策でなければならないということも、また特別に都市等が非常に自治体の負担が重くなる、こういう場合において、公団、公庫等で特に考えろ、こういうことも十分考えておりますので、具体的な問題についてはこの上とも御協力願いたいと思います。
  110. 山花秀雄

    山花委員 私たちは、人口急増地域のもろもろの問題を各省がばらばらに対策を立てるのでなくして、一本化して、そこで総合的に検討を加えたほうが合理的であると思います。総理もただいまさような意見を開陳されました。先日、三沢で大火があり、この火災から自治消防の問題が新しい問題としまして論議されております。すなわち、人口が急増し、家屋の数もふえれば、やはりこれに伴って消防力の強化が必要であります。自治体財政支出もこれがためにふくれ上がる。このように、人口増加は新しい一つの町を形成していくのであります。だから、いろいろ問題が同時に発生してまいります。自治省は急増対策としていろいろ苦労されておるようでありますが、問題によっては、建設省あるいは文部省あるいは郵政省と、扱う問題と場所が全部別々であります。それゆえにこの問題のむずかしさがあると思います。私は、これを急速に解決するために、やはり人口急増地区に対する特別措置法をつくり、総合的対策を立ててこの問題を解決すべきだと考えておりますが、そういう急増地域に対する特別措置法をつくるお考えがあるかないか、総理の所見をお願いしたいのであります。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの状態では、総合行政、こういう立場で取り組んでおります。したがいまして、住宅問題の解決が、ただいま御指摘になりますような消防の強化にも当然つながっていくわけであります。それに対して、ただいま特別措置法をつくれ、こういう御提案がございますが、これらの点も十分検討してみたい、かように思います。
  112. 山花秀雄

    山花委員 総理は御検討をすると言われましたが、これは、私は急速に解決するようにひとつ努力を願いたいと思います。  あと二問ほど質問をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  地方財政の窮状に対する理解がどうも政府は甘いようであると私は思うのであります。むしろ逆に、自治体を一そう困らせるような政令の改正までやっておるのであります。ここに一つの例をあげますので、十分考えていただきたいと思うのであります。それは、警視庁警察官の増員の問題であります。政府は、四十一年度、この警察官の増員について千二百八十人をきめる政令の改正を行ないました。一片の政令改正で千二百八十人もふやすこと自体、実に許しがたいことだろうと私は思います。同時に、東京都の財政支出はいよいよ深刻になってくるのであります。東京都の知事部局は、財政合理化のために職員の定年制を考慮し、定員はふやさない方針だ、こう言っておるのであります。財務局長も、この増員に伴う支出についてたいへん迷惑であると言っております。警視庁では、この増員に対する人件費として三カ月で一億三千二百万円必要だと主張しておるそうであります。もちろん、これだけでは終わりません。他に特殊手当あるいは超勤手当が必要であります。さらに膨大な装備費が要るからであります。こうした重要な問題、大きな財政支出の伴う問題を一片の政令改正できめ、議会側も激しい反抗を示しておると言えましょう。これでは地方財政を破綻するのも当然であります。理事者側でさえそう言っておるのであります。政府の一方的なやり方を非難しているのであります。自治大臣、この問題をきめる前に、すなわち閣議で政令改正する前に、地元の了解を得るとか、議会側に説明するとか、そうした努力をなぜしないのでありますか。予算措置を伴う問題ですから、編成作業にも大きな変更を伴うのであります。大臣、どう思いますか、御答弁願いたいです。
  113. 永山忠則

    永山国務大臣 この問題は、いわゆる増員計画は、昭和四十一年度を初年度とする三カ年計画でございまして、この点については地方局長等とよく懇談をいたして、地方にも趣旨を徹底し、さらに、地方からの要望がこの問題を進める大きな要因でもございました。すなわち、三交代にしていただかなくては過労でいけないという点、あるいは盛り場におけるところの取り締まり、団地の人口増等に対しての派出所を新設する等、こういうことで、警官の過労労務を解消する上の要望等でございまして、ちなみにこの増員関係を見ましても、やはり他の先進国よりは率が低いのでございます。こういうような点で、今後におきましても鋭意その趣旨が地方に伝わるように努力をいたしたいと存じます。
  114. 山花秀雄

    山花委員 自治大臣答弁を伺っておりますと、地方自治団体の要請に応じてこれを決定したと、こういう御答弁でありますが、これは間違いございませんね。あとでまた言質問題になるとたいへんですから、はっきりお答え願いたいと思います。
  115. 永山忠則

    永山国務大臣 これらの点につきましては、地方局長等の懇談会等から強く要望されておることでございます。
  116. 山花秀雄

    山花委員 これは大体東京都に関連することでありますが、懇談会等の話の中からという、きわめてあいまいなんですが、その前は、地方局長からの要請に応じてという。ところが、東京都では非常に迷惑だと、こう言っておるのですが、その点は、私は東京都議会との関係もございますので、この際はっきりしておきたいと思いますが、東京都からの要請によって増員したということですか、それとも政府が人口急増対策として増員したということですか、どっちか、この点ははっきり判明していただきたいと思います。
  117. 永山忠則

    永山国務大臣 知事会からの要望もございました。
  118. 山花秀雄

    山花委員 この警察官の増員のただいまあげました数字は、全国的にばらまく数字ですか。
  119. 永山忠則

    永山国務大臣 さようでございます。したがいまして、お説のように警視庁へは今年度は一千三百八十人の増員を予定いたしております。
  120. 山花秀雄

    山花委員 全国的にはどのくらいの増員になりますか。ちょっと私の考えておる数字が違いますが、全国的にどのくらいになりますか。
  121. 永山忠則

    永山国務大臣 全国的には三カ年計画で一万八千人の外勤警察官を増員する予定でございます。初年度は六千人の予定を持っております。
  122. 山花秀雄

    山花委員 自治省は、人件費が地方財政の大きな重圧になっているところから、給与費の節約を本格的に進める方針をきめております。定員のワクを広げない、あるいは定年制をしくなど、いろいろ考えられているようであります。ところが、こうした反面、膨大な財政支出を伴う警察官の増員をいとも簡単に政令の改正だけで実施する。これは主客転倒もはなはだしいことであろうと私は思います。警察官の不足があるならば、そして、どうしても増員しなければならないというのだったら、予備隊を使えばいいじゃありませんか。デモの鎮圧をやる以外ほとんど任務をしていない予備隊であります。これは民衆から離れた存在となっておるじゃありませんか。あの服装なり彼らの出動するところは、おもに大衆団体鎮圧というような任務しかやっていないじゃありませんか。ふだん一体何をしているのですか。ふだん鎮圧のけいこだけしておるんじゃありませんか。これをどんどん今言われる経費節約の面からでも利用したらいいじゃありませんか。民衆から離れた存在になっておるのがいまの機動隊、予備隊であります。民衆から親しまれ、民衆から愛される警官となるためにも、私はこの予備隊、機動隊の活用がよいと思うのであります。地方財政危機を救うためにも、よけいな金を使わないことであります。そうすれば、自治体も本来の事業を拡大することができますし、それによって景気の刺激にプラスすることにもなります。しかも、民衆と警官との距離が縮まって、政治家の能力が再評価されるじゃございませんか。総理大臣、この問題について、私は都議会のほうからも相当激しい申し出を受けておりますが、ただいま自治大臣は、聞きますと、いわゆる理事者側の要請でしょうか、知事会の要請があったということを言っております。私は、これは理事者と議会が相当対立しておると思いますけれども大臣は一体この問題について予備隊、機動隊の活用をお考えになるかどうか、あれはもう弾圧一本に使う方針であるかどうかという点、重ねて最高責任者総理大臣にお伺いしたいと思います。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の外勤警官の増員は、これはまず社会党の方にも御賛成がいただけるかと思ったのは、ただいま隔日勤務、いわゆる二交代制のものが大部分であります。これを三交代にしたい、これは一つの勤務緩和の問題であります。またもう一つは、都市人口急増、また盛り場等に対します警ら、これも人手不足だ、こういうのが全国的の実情でございますから、そういう意味でひとつ増員しようということで、三カ年計画、一万八千名、ことしは全国で六千名、その中で、ただいま警視庁は千数百名というものが出ておるのであります。  いまの機動隊をそのほうへ使ったらどうか、こういうお話でございますが、機動隊には機動隊の使命がある、またそれが必要なんでございますから、ただいま申し上げるように、警官の実情等から勘案いたしまして、今回の増員は絶対に必要だと私は思います。また、機動隊をこういうところへ使う、これは廃止してこちらへ回す、こういうような考え方政府は持っておりません。また、警察の問題は、しばしば各国の事情等につきましてもいろいろやかましいことを言われるのでありますが、大体一人の警官でどの程度国民のめんどうを見るのか、こういうことが一つの基準になるわけです。今回の増員をいたしましても、イギリスよりも日本のほうがもっとたくさんの国民のめんどうを見なければならない、まあ六百名程度のめんどうを見るということになるようでございます。一人当たりがそういう引き受けだ、そういうことを考えますと、もっとみんなが安心して生活のできるようにその生活を守る、こういう観点からも、最近の世相等にかんがみまして今回の増員は必要だ、かように思います。また、ただいま申し上げますように、特別に勤務緩和、三交代にもする、こういうような実情でございますから、東京都におきましていろいろな御批判がありましょうけれども、どうか御理解のあるような御協力を得たい、かように思います。
  124. 山花秀雄

    山花委員 私の地方自治行政に関する質問はこれで終えたいと思いますが、不肖にして言い足らなかった点も多々あったと思いますけれども、議論の中からひとつくみ取った建設的な問題につきましては、政府としても善処していただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  125. 福田一

    福田委員長 これにて山花君の質疑は終了いたしました。  午後は一時十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      ————◇—————    午後一時二十九分開議
  126. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十一年度予算に対する質疑を続行いたします。高田富之君。
  127. 高田富之

    ○高田委員 本日は政府の当面の外交方針並びに防衛に関します若干の問題について政府のお考えをただしたいと思いますが、まず最初にベトナム紛争の状況について一点お伺いしておきたいと思います。  と申しますのは、すでに北爆が開始されまして、戦争が次第に凄惨苛烈になり、拡大されまして満一年を経過しておるわけでありますが、先般暫時停止されておりました北爆も再び昨今開始されまして、さらに、ホノルルにおきましては、昨日までアメリカ並びに南ベトナムの首脳の会議が突如として開催された。たまたまわが国は国連安全保障理事会の議長国という重要な立場に置かれておるやさきでございます。政府といたしましては、この非常に緊迫し流動いたしております世界情勢、特にベトナムを中心としますアジアの情勢に処しまして確固たる方針を立てられて、そして、この際わが国としてなし得べき最善を尽くすということが要請されております重大な時期でございます。この昨今の時点において、ベトナムの戦局が一体どうなるのか、このホノルル会議というものの意味は一体どこにあるのだろうか、今後は戦争の様相はどういうふうな方向に変わっていくのだろうかというようなことに対する迅速的確な判断に基づきまして、安保理事会の運営その他、特使を派遣されておるわけでありますが、これらのわが国の代表の動きというものに正しい指示を与えなければならぬと思いますが、この現時点におけるホノルル会議を中心といたしましたベトナムの情勢についての政府の御判断、概略でけっこうでありますが、御報告を願いたいと思います。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ベトナム問題が一日も早く平静化すること、これがわが国の安全と平和のために絶対に必要だし、同時にまた、国際的にもこのことが最も大事だ、かように考えまして、終始一貫、平静化する、鎮静化する、いわゆる拡大しないようにいままで努力してまいりました。  現時点についてのお尋ねでございますが、すでに御承知のように、国連安保理事会におきましても、わが国が当番議長国としてこれを運営しておるのでありますし、また、ハワイにおけるアメリカ、ベトナム等現地の首脳との会談もジョンソン大統領が開催しておりますし、さらに、新聞の報ずるところでは、これを契機にいたしまして、ハンフリー副大統領がさらに東南アジアに出かける、こういうことも言っておりますし、また、北のほう、ホー・チ・ミン大統領もインドに対して平和への工作をするようにという依頼を出したとかどうとかいうような事態が報道されております。これらのことはただいま新聞報道の程度でありますが、私は、いずれにいたしましても、国際世論がこのベトナム問題に向けられ、そして拡大せず平静化するように、和平工作が成功するように、この上とも事態の推移を十分見守り、そのつど適切な処置を講じたい、かように思います。
  129. 高田富之

    ○高田委員 そういうふうな状況でありますことは新聞でも報道されておるわけでありますけれども、それの評価でございますね。いままでの経緯から見まして、あの大規模な首脳会議が、しかも非常に唐突に開かれまして、しかも、最近北爆が再開されて以後の南ベトナムに対する増員というも  のは、もうすでに二十万を突破するというような異常な兵力の増強ぶりでありますし、また、タイの南部におけるアメリカの軍事基地の拡充、あるいはベトナムにおける軍事基地の拡充、ラオスに対する爆撃の継続、いろいろな事態を総合いたしまして、今度の会議というものの意味が、かなりここでもっていままでとは違った形の、いわばかなり質的にも発展した強い軍事行動というものが起こるのじゃないだろうか。もちろん、一面、それに相応いたしまして、農業関係、民生関係、いろいろな対内対策も立てたようでありますけれども、ねらいというものは、何か相当な決意で大攻勢に出るんじゃなかろうかというような実は感じがいたしますので、政府のほうでは、いろいろな情報を総合してどのように判断されているか。実は、けさの同じ新聞で、イギリスのウィルソン首相は、八日、ベトナム戦争はいまや行き詰まりとなっており、これが拡大されてアジアにおける大規模な地上戦、おそらくはそれ以上に悪い事態を招く重大な危険があると述べたということがあわせて報道されております。それで、ただいま総理もおっしゃいましたように、会議が終わって早々に副大統領がアジア六カ国を回る、その名前は発表されておらぬ、六カ国を回るというようなこともありますし、それからまた、いまの北べトナムの動きでございますが、これはインドのほうへ仲裁のような要請があったという事態をどう認識したらいいか。政府におきましては、いままでのいろいろな情報から意味をつかまれておるんじゃないかと思うのですが、事態が非常に緊迫しているというときに、いわゆる譲歩というのじゃなしに、いままでの態度からしてどうも譲歩して出たというようなことは考えられないのですが、事態の非常な緊迫ということの一つのあらわれというふうにとれるんじゃないかと考えまして、非常に何か緊迫感というものが感ぜられるのでありますが、ひとつそれらの点についての政府の御判断を御発表いただきたいと思います。
  130. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 けさの新聞報道によりまして、北ベトナム大統領からインド大統領にあてて書簡が発せられたというようなことが出ておりますが、どうもわれわれの判断するところによりますと、一月の二十四日に北ベトナムのホー・チ・ミン大統領が各国の首脳あてにベトナム戦争に対する考え方を述べておる。すなわち、依然として四条件を基礎にして、そしてアメリカが撤退すべきであるということがその主要なる内容であり、そして、そのあとに各国おのおのその事情に応じた考え方を述べておる。どうもそれを今月になりまして、北ベトナムの駐ニューデリー総領事がこれをある解説を付して発表したのにすぎないのではないかと、こういうふうに解釈されるのであります。インドに対しては、共通の内容のあとに、国際監視団の団長格であるインドとしてこの問題を収拾すべき責任があるといったような、インドのこの問題に対する役割りをつけ加えておる。そのことを特に発表したので、それで、一月二十四日発の各国首脳あてのものとは違った一大譲歩をしたかのごとき憶測がそこに加わったのではないかというふうに一応解釈せられるのでありまして、この間わずか二週間そこそこの間にこういう重大な変更があったということは、どうも簡単に受け取れない情報である、かように考えております。
  131. 高田富之

    ○高田委員 そういうふうな御判断が一応妥当なような、私もそんな感じがいたしますが、そうなりますと、ただいま読み上げましたような、イギリスの首相の警告するような事態というものも、これもあながちにそうじゃないというふうな楽観的な考えを持つ根拠はないというふうに思われますが、総理、いかがでしょうか。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が昨年末ハンフリー副大統領あるいはハリマン特使等と会って、米政府、米国の真意を尋ねたところ、いわゆる事態についての和平、これは心から願っておる。しかし、その和平の条件というものは、別にこれというものがあるわけじゃございませんが、非常に端的に申せば、北からの浸透がやむことだ、このことを強く要望しておる。そうして和平を願っておる。これに終始しております。ただいまイギリスの総理がどういう立場でお話をされたかわかりませんが、アメリカがベトナム問題に対処する、そういう場合に非常な決意を持って対処するということは、これは間違いのないことだ、しかし、その態度自身は非常に弾力的な態度だ、かように私は考えるのでありまして、この米国の考えておる非常な決意を持ってこの問題の解決をはかりたい、これは、ただ北爆を遂行してとどめる、こういうわけじゃございませんが、とにかく、和平への熱意というものは、これは非常に抜くべからざる決意だ。しかし、同時に、その処置については非常に弾力のある態度を持しておる。したがいまして、北からの浸透がやむ、そしてみずからも北爆をしなくて済む、こういうような事態になることを心から願っておるのだと思います。これは、国連における安保理事会にこの問題を出しまして、そうして、今後の扱い方等について十分協議をしたい、話し合いたい、こういうことを一方で言っており、また、ハワイの会談も行なわれておるのでありますから、ただいま私の申し上げることも、さような意味でこの問題の経過をひとつ見ていただく、かようであってほしいと思います。私は重ねて申しますが、非常な決意を持ってこの問題と取り組んでおる。しかし、その行き方は弾力的な態度である、かように私は思っております。
  133. 高田富之

    ○高田委員 総理はアメリカのいまの行き方というものに絶対的な信頼を置いておられるようであります。しかし、問題は、いま安保理事会の議長というような重責に立っておりますし、この事態を一時も早くおさめなければ、極東の平和、同時にわが国自体の安全と平和に重大な影響を取ぼすせっぱ詰まった事態でありますので、相手方の、反対側の言い分というものにも十分冷静に耳を傾けて、そうして安保理事会の議長国たるにふさわしいような冷静にして客観性のある意見を出して、国際世論というものをリードしていくというふうな態度でありませんと、この重大事態に対する役割りを果たせないのじゃないかということを私は非常に心配するのです。先般のアメリカの決議案が突如として安保理事会に出されたというときにも、もうすぐ賛成すればいいのだというふうな、これはもうかえって権威を失墜するのじゃないか。ああいうふうな決議案でも、あれだけ難航してようやく議題になるというふうな事態ですから、やはりもっともっと一方の立場に偏していないということをき然として表明していくということがこの際は不可欠の前提でなければならぬと私は思います。ただいま総理のおっしゃいました、北からの浸透があるからどうこうと言いますけれども、このこと自体だって、いまはもう戦争になってしまっているのですから、両方から軍隊を出しっこしている。アメリカ本国からも行っているのですから、これはしようがないと思うのです。どっちからも出ている。しかし、事の始まりが、北からの浸透があるからということで始まったのですが、はたしてその北からの浸透がどの程度の、どういう内容の、どういうものだというようなことをわが国が独自の立場で冷静に判断して、それについて、アメリカのやっている行動がこういうことであるから正しいというふうな結論が出ておるならいいのですけれども、全然そういうこともなしに、ただ、アメリカが言うから、北のほうの浸透が悪いのだ、北さえやめれば南のほうはやりはせぬのだ、北が悪いのだ、この考え方では、私はとてもこの事態において特使を派遣して諸外国を回られても、あるいは椎名さんがソビエトへ行かれてもどこへ行っても、わが国の言うことに対して反対側が冷静に耳を傾けるなんということはあり得ない、アメリカに対する反対陣営のものが冷静に耳を傾けるなんということはあり得ない、こう思うのであります。総理、いかがですか。そういういままでの態度ではだめだということを感じられませんか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この席で、どちらが正しいとか、どちらがいいとか、かようには申しておりません。ただ、アメリカ自身の態度は非常に弾力的なものだということのその例に申したのでございます。  そこで、これは外務大臣からお答えをいたしますが、安保理事会の議長である松井大使に対しまして私どもも訓令を出し、そして、日本のかねてから主張しておるように、無条件で戦闘をやめて、そして話し合いの場につくこと、これを提案しておるのでございます。  詳細は椎名君から説明させます。
  135. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 安保理事会は、御承知のとおり、二月二日ベトナム問題を議題として採択いたしました後に、間もなく休会に入ったのであります。休会当初、わが代表部では、議長国としての立場上、時期尚早の段階事態の収拾にあせって乗り出して動きのとれないようなことになることは、これはどうしても避けなければならぬ。慎重なかまえをとって、もっぱら各国代表の意向打診と情報の収集につとめてまいったのであります。その結果、ソ連のみならず、マリ、ウガンダ、ナイジェリア等の諸国も安保理事会における実質的な審議に入ることを極力反対しておる、ないしはきわめて消極的な態度をとっておる。こういうことでは、これはへたに前向きの動きをいたしますと暗礁に乗り上げるということになるのでございまして、そういう方法によらないで、いわゆる議長声明をもって事態をひとまず収拾するという基本的方針を固めまして、米国代表部とも協議の上議長声明案を作成いたしまして、二月八日以降ジョルダンあるいはオランダ、アルゼンチン、マリ等をはじめとする非常任理事国と極力協議を行なっておるというのが今日の段階でございます。申し上げるまでもなく、ここに議長声明と申しますのは、右、左に結論を持っていかないで、そして、大体安保理事会の意向はこういう空気であるという、大体の情勢を議長の判断として声明して、一応収拾するという方法でございます。
  136. 高田富之

    ○高田委員 議長という立場では、とにかく公正に中立的な立場でやる以外にないということについてはあれですけれども議長でありますと同時に、日本の代表でありまして、やはり日本の立場自体が国際的に公正な立場に立っているということでない限り、権威は全くないと思うのです。ですから、あまりくどくどしいことは申し上げませんが、ここではっきり申し上げたいのでありますが、いやしくもこの紛争を何とかして和平会談へ持っていって解決したいということのために、日本も一はだ脱ぐということで動き始めておられるわけでありますから、しかも、時たまたま安保理事会の議長にもなっておるという、こういう事態なので、私はこの際、その初志を貫徹するために、いずれの側にも立たない公正な立場に日本自体が立ってこの重責を果たしていこう、こういうお考えはございませんか。どうでしょうか、総理。これは総理ひとつ……。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣がお答えいたしましたように、議長国でありましても、日本の国益を国連の場におきまして十分確保し、またそれを増進していく、こういう態度であることは、これはもう御承知だろうと思います。みずからのことも、利益も主張しない、こういうことでは、幾ら議長にしてもつとまるものじゃない、かように私は思います。したがいまして、議事の取り扱い方そのものについて、いわゆる公正な、公平な扱い方をしろ、こういうことはわかりますが、しかし、一国の主張そのものは、その主張までが公正あるいは中立、かようなものでないことだけは、これは高田君も御承知だろうと思います。議長である松井君はそういうような行動をしておる、かように期待しております。
  138. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、一国の国益ということで、議長自体の議事運営や何かの立場とは違うということになりますると、これははっきりと、それではいまのベトナムに対するアメリカのやっております行動は、これを日本としては支持していく、でき得る範囲において最大限度これに協力をしていくというのが日本の立場だと、こう理解してよろしいわけですね、総理
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、先ほど来外務大臣も答え、私もさように申しております。日本の主張というものがちゃんとあるのです。その日本の主張を捨てろ、こういうようなものではございません。
  140. 高田富之

    ○高田委員 ただいまアメリカの国内におきましてさえも、アメリカ国会の上院の公聴会等におきましては、連日アメリカ政府の、大統領のやっておりますベトナム戦争というものが、これは根本的に反省し直さなければいけないんじゃないかという議論が展開されておるわけであります。おそらくアメリカとしても、戦争中にかつてこんなことはあったことがないと思うのでありますが、とにかくその戦争目的自体に対しまして再検討を要請している。こういうふうな議論が国会において堂々と公開で論議せられておるという事態、また昨今の新聞報道によりますれば、アメリカにおきまする法曹界、言論界、学界などの諸団体の相当の多くの人たらからなっております組織でもって、いまのアメリカのベトナム戦争というものは違憲である、これはもう法的な立場からも許すべからざるものであるということが提起されている。大統領権限に対する重大な疑義を出しておるというようなことが大きく報道されております。また一般民間におきましても、最近に至たるまで、次第に反戦運動が高まりを見せ、中には焼身自殺をするというような事態まで出てきておる。アメリカとしては、かってなかったことだろうと思うのです。こういうような事態で、アメリカとしましても相当収拾をあせらざるを得ないような事態に当局者は置かれていると思います。しかし、あせって収拾しようとしても、それは譲歩するのでなしにあせって収拾しようとすれば、非常に大規模な軍事行動をやるというような危険な方向に行く可能性のほうが大きいと思うのです。こういうふうな事態でありますから「わが国といたしますれば、政府、大統領の言うことに相当基本的な疑問を抱き、根本的なその戦争目的、戦争行動に疑義を持つような議論が堂々と国会で出て、そうして日本の政府自体も、虚心たんかいにそういうことを考え直してみるというようなことをやらなければ、私は、この事態を正しくおさめていくことはできないんじゃないか、危険な方向へますます行ってしまうんじゃないかということをほんとうに心配するわけであります。  私は、時間の関係もありますから、あまり一問一答をこれで繰り返してはおられませんけれども、そういう重大な事態に、今後ともいままでのようにベトナム戦争についてアメリカのやり方に協力するという、ただいまおっしゃったような態度でいきますと、これはいままで以上の協力をどんどんやらされてくると思うのです。やらざるを得なくなると思う。もっとも積極的にそれをお引き受けになろうというかまえのようでありまして、たとえば今度のホノルル会議の結果としましても、今度は相当の  軍事協力は、日本の場合はなかなか憲法のあれがありますから、向こうも要請してこないと思いますけれども、それ以外におきまして、直接軍事——兵隊を動かしての協力でない限りにおけるあらゆる協力、経済的その他のいろいろな協力を・戦争をやっております一方の側である南ベトナム、この方面に対しまして要請してくることは、もう想像がつくと思うのであります。これに対しまして、政府は全力をあげてこれにこたえてやっていく、こういう方針でございますか、もしそういう場合にどうですか。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま日本が協力しておる、また国連の場においても協力、こういうようなお話でありますが、私は、先ほど申しますように、日本の外交の基礎は、どこまでも日本の国益を確保し、またこれを増進する、こういう立場で主張すべきは主張しておる。かように私は思っておりますので、ただいま協力だけだ、かようにきめつけられることについては、私は反対であります。ことに松井議長が提案したという、無条件で話し合いを始めろ、こういうことを提案しておるという状況、これも十分御理解をいただきたいのでありまして、日本が自主的な外交を展開しておる、かように御了承いただきたいと思いますし、また今後とも、これは自主的な問題として、日本が国益確保、国益増進、その立場に立って外交を推進していく、この考え方でございます。
  142. 高田富之

    ○高田委員 その無条件の話し合いということは、これはジョンソン大統領の出しておる方式でありまして、これは北側からも痛烈に反撃されておりますように、人をなぐりつけておいて無条件で話そう、これは、言いかえれば、無条件でおれの言うことを聞けというのと全然変わらない、こういうことで、いままで全然これが実っておりません。こういうことを言うためには、公正な第三者が言うか、さもなければ、みずからはそういう行動をやめて言わなければならない。ただいま北爆が再開されましたことによりまして、いままで北爆を休止していたのも、これは戦略的な休止ではなかったか、あるいは宣伝するための平和外交じゃなかったかといういままでの批判が、そのままそのとおりだったというようなことになってしまっている。さらに、ここでほんとうに平和な話し合いというものを再開しようとするなら、無期限、無条件に今後は絶対に北爆をやらないということぐらいここでやってからそういう動きをするのでなかったら、これは耳を傾けないと思うのです。おそらくアメリカあたりでも、国連安全保障理事会あたりからの要請でもって、北爆はやめてもらいたい、再開したのは、これはもう今後はやめてもらいたいということを強く要請していくようなことにでもなれば、これは世界の世論のあれもありまして、聞かざるを得ないようなことになるのじゃないか。日本とすれば、この際は、安全保障理事会の議長としての立場をそういう方面で生かして、そうして再び強くアメリカに対して、再開された北爆を永久にやめろというようなことぐらいはぜひひとつ要請すべきだ、こう私は思いますが、そのお考えはありませんか。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、アメリカだけに対してさような要求をするとか抗議をするという考えはございません。
  144. 高田富之

    ○高田委員 こればかりで問答していてもしようがないのですが、アメリカばかりと言いますけれども、これはもう前の委員会で二、三回、いろいろ同僚委員からも質問がありましたことですから繰り返しませんけれども、当初はほとんどかりに非常にこれを譲りまして、アメリカのベトナム白書にある程度の、何か北から第三国の武器が入ってきたのが発見されたとか、あっちこっちでぽつぽつテロみたいなものがあったとかいうようなことが、もしかりにアメリカの言うとおりであったとしましても、それに対するにあれだけの近代兵器をもって、大部隊をもって、そうしてこれを攻撃し、しかも毒ガスを用い、ナパーム弾を用い、一年間に一万八千何百回の爆撃を北のほうまで加えていく、こういうやり方というものは許されるものでないのじゃないか。もしこれがいわゆる防衛権の発動だとしても、明らかに権利の乱用であるというようなことで、相当議論があった問題です。それをいまに及んで、まだ北もやるからとか、両方どうとか言っているのでは、これは問題は解決しない。アメリカの議会でさえそういうことを言ってない。アメリカの法律家でさえそれを言っていない。こういう世論の高まりの中で、いまなお日本の政府が、そういう全くのアメリカの言うなりということで、全く自主性のない立場では、これは特使を出してこの問題の平和解決のために外国へ説得に行くとか、そんなことはとうてい問題にならない、茶番劇である、こう言わざるを得ないと思うのです。そこで、その点については、ぜひひとつ根本的な反省をいただきたい。なお、この問題については、後刻また同僚委員からあらためて質問を申し上げることになっておりますから、論点を進めたいと思います。  それで、このアメリカに対する協力の問題につきましては、基地の貸与、これが一番大きな問題でありますし、あるいはまたいろいろな特需をますます最近はふやしております。これにつきましても、外国からいろいろと抗議があるというような状態で、次第にそれが多くなっておる。あるいはこれも委員会で問題になりましたが、LSTの乗り組み員を政府があっせんをするというようなこと、あらゆる面からの協力があるわけでありますが、特にこれから重大になってまいりますことは、ベトナム特需、先ほど私申し上げましたように、ベトナムに対する武器でありますとか——必ずしも武器ばかりとは限りませんが、建設資材でありますとか、医薬品でありますとか、その他いまの戦争目的遂行に直接間接必要な物資のわが国からの調達、わが国を兵たん基地としての最大限の活用、こういう立場からの特需が急増しつつあります。最近非常にふえてきておりますが、さらにこれが輪に輪をかけて急増していく傾向にあるというふうに考えるわけでありまして、たまたま昨今アメリカのほうから、日本のベトナムに対する特需と引きかえに、第三次防衛計画に必要とする兵器をバーターで売り渡しをする、アメリカからの兵器とベトナム特需のバーター制というような形の話がありまして、ただいまそれについての協議が行なわれておるというふうに伝えられておるわけでございますので、この内容について、どういうふうな話の内容でありますか、どんな協議が行なわれておるのでありますか、ひとつ御発表願いたいと思います。
  145. 松野頼三

    ○松野国務大臣 おそらく新聞紙上に出ておりますもののことだと私は思います。ただ前提にお断わりしなければならぬのは、基本的にベトナム特需というような構想は、昨年からも、また今日もございません。いわゆる特需という意味でありまして、そのことについては何ら触れておりません。申し出の内容は、政府間同士で兵器の売買をする、そういう希望があるかないかという話であります。しかし、内容を聞かなければいけませんので、まず内容を聞こうじゃないかというだけであって、まだその詳細なことは、ただいま聞いている最中ですから、どういうことを言われるかわかりませんが、基本は特需の問題で、ベトナムということばはついておりません。
  146. 高田富之

    ○高田委員 ベトナムという字がついてないというのですが、もちろん特需の中に占めるベトナムの特需の比重ですね、これは相当大きいと思うのです。ただいまのところどの程度でございましょうか。
  147. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私の承知している範囲では、ほとんど数字的に見るべきものはございません。
  148. 高田富之

    ○高田委員 いや、見るべきものはないといっても、全体の特需に対してベトナムの特需の占める割合というのは、いまおおむねどのくらいになっているんですか。
  149. 松野頼三

    ○松野国務大臣 詳細なことはあれですが、概略的に申しまして、大体年間、特需というものがこの三年間三億ドル前後であります。そのほとんどのものが、家族、兵員の消耗的なものであります。器材というのはその中で一割足らずじゃないかと私は記憶します。その一割というのは、在日米軍の補修用のもの、ほとんどが実は兵員の俸給の消費、その総額は家族も合わせて三億ドル前後であります。したがって、昨年もそれは大きな変動はありません。したがって、ベトナムということばがほとんどこれからは感じられないということを私は申し上げたのであります。
  150. 高田富之

    ○高田委員 区別しないで扱っておればわからないわけなんですね。しかし、これはいろいろなもののあるうちで、特に戦場で使っていると思われるようなものというのは、ここへきて急増しているのじゃないですか、どうですか。
  151. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日本の特需の中には、急増しているようなものは、月立ったものはございません。多少あるといえばあるかもしれませんが、それは総額三億ドルの中で、せいぜい一割前後の中の話でありますから、大きなものが、三億が十億になったというものは、今日までにはまだ見受けられません。
  152. 高田富之

    ○高田委員 たとえば航空機の修理、軍用機の修理なんということになりますと、おそらくその中でのほとんど大部分というものはベトナムの戦争に出動した飛行機の補修、修理であろうと思うのです。そのほか最近では、ベトナムでしか使われないと想定されるようなサンドバッグでありますとか、あるいはジャングルシューズでありますとか、そういうだれが考えてもすぐわかるベトナム用のものというのは、最近になって相当ふえている。それから、たとえばセメントなんというものは、どこで使うかわからない。ところが、セメントなんかにつきましても、ベトナムにおける軍事基地の増強のために急にここへきてふえてきているというようなことは、これは一般にも報道されておるわけなんですが、セメント輸出の中で、ベトナム向けが急増しているというようなことになっておるわけであります。いま申しましたサンドバッグなんか、いま非常に大口の引き合いがきておる。こういうふうなことでありますから、そういうふうなことを考えますと、かなりここへ来てベトナム向けのものが急増してきているということだけは間違いないと思うのです。これは分類がはっきりしないとかなんとか申しますけれども
  153. 松野頼三

    ○松野国務大臣 そういういろいろな記事も私も拝聴して、私の所管ではございませんが、関連として調査をいたしておりますが、高田さんのおっしゃるようなものは——急増といえは急増かもしれません。かりにいえば、一万ドルが三万ドルになったといえば急増かもしれません。しかし、その基本の数が何千万ドルという数じゃないものですから。これが急増した、一万ドルが三万ドルになって三倍じゃないかということなら、これはあるかもしれませんが、基本が、そういう三億ドルの中の一割、三千万ドルの中のものでありますから、私たちは急増ということばは多少それはあてはまらないかと思うのです。したがって、これは正直に申して、ほとんどそんなに大きなものは出ていないのです。私が言うならば、全然出ていないというほうが近いかもしれない。飛行機の修繕はどうだ、これは前からもやったことがございます。したがって、急にこれがふえたという金額にはまだ達しておりません。そんなにおっしゃるようなものはないのですから、あるものをないというよりも、ないものをないと私は申し上げておきたい。
  154. 高田富之

    ○高田委員 それでは、あなたのところでお調べがしてあると思いますし、もしなければ、通産省あたりの関係になるかもしれませんが、たとえばアメリカのクリスチャン・サイエンス・モニターに、ベトナムのナパーム弾の九〇%が日本の二つの会社から納入されているというふうな記事が出ておるし、この辺につきましては、北ベトナム労働党あたりでもそういうふうなことを非難する論説が出たということも聞いておるのですが、こういうことはお調べになりましたか。
  155. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日本でナパーム弾をつくっている工場はございません。したがって、それは全然一方的な記事だとしか私は思いません。
  156. 高田富之

    ○高田委員 これは、ナパーム弾として完成してから向こうへ持っていったものか、そうじゃなくて、最後の仕上げはどこかよそのところへ持っていってやったというようなことも何か解説されておったようでありますが、そういう点はもう少し詳細にお調べいただかなければわからないだろうと思うのです。全然根も葉もないことをあっちこっちで言うはずはないと思うので、そういう点はひとつお調べを願いたいと思います。  それから、横浜の在日米陸軍調達本部関係のもので、三井物産とか日立電線とか、三菱電機とか、三菱商事でありますとか、丸紅、トヨタとか、一流の大きなメーカーのところへいろいろなものの発注がある。ディーゼル発電機であるとか、ケーブルワイヤーだとか、変電機だとか、有刺鉄線であるとか、トラックだとか、ジープだとか、こういうふうなたくさんの引き合いがあるというようなこともいわれておるのでありますけれども、こういうことも全部お調べにはなっておるわけでございますね。
  157. 松野頼三

    ○松野国務大臣 通産大臣が実は見当たらなかったので私がその代理をつとめたのですが、通産大臣がお見えになっておりますので、所管の大臣からお答えになるほうが正確かもしれません。
  158. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ベトナム特需は、防衛庁長官からお話しになっておるように、特にベトナムということによって顕著に特需がふえたという傾向はほとんど統計の上にはあらわれていないわけです。特需全体としてはむしろ減る傾向にある。その中で、ベトナムで特に特需がふえたという傾向は出てきていないと申し上げるほうが適当だろうと思います。
  159. 高田富之

    ○高田委員 これについて、通産省では、ただいま私が申し上げましたようなアメリカの調達本部のほうからの話があって、そういうものの注文を受けた、あるいはそれを実際に引き渡したとか、そういうふうなことの実情を調査されておるのでありましょうか。調査したものがございますか。あったら発表していただきたい。
  160. 三木武夫

    ○三木国務大臣 通産省のほうで特需に対しては調査をしておりますが、ベトナムに行く直接の軍需品というようなものは、ほとんどベトナムの影響というものはわれわれの調査にも出てこないのであります。
  161. 高田富之

    ○高田委員 どこ行きというふうに、さっきのお話じゃありませんけれども、わからないで、ただ物需一般でお調べになっているのかどうかわからないのですが、そういうふうなベトナム関係で米軍のほうから特別に最近注文がいろいろ出ているということでありますから、それはひとつ調査をして、そうして資料として取りまとめをしていただいて御提出いただきたいと思いますが、いまのところ、どうしてもそこにはありませんか。
  162. 三木武夫

    ○三木国務大臣 資料として出してもよろしゅうございますが、ここに出ておるおも立ったものは、いま化学製品であるとか、木材、銅製品、金属製品、繊維製品というので、特にベトナム戦争ということによって、ベトナム行きであろうというような物需が非常にふえたというような数字は出てきていないのでありますが、必要な資料は出してけっこうでございます。
  163. 高田富之

    ○高田委員 それでは、できるだけ詳細にお調べをいただいて、資料として御提出を願いたいと思います。  それからさっきの、アメリカから兵器を買い入れて、そのかわりに特需を出すというこの話なんでありますが、それは、いま内容がまだわかる段階でないとおっしゃるのでありますけれども、これはいま始まったことじゃなくて、去年のうちにも一度そういうことがあったはずでございます。ですから、大体の中身は御存じのはずだと思うのでありまして、そういうことであるとすれば、防衛庁として、方針としてそういうことは拒否するのか、それとも、それはやはり特需と兵器の引きかえけっこうだという形でおやりになる方針なのか、防衛庁のお考えはどうですか。
  164. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいま話を聞いておるところで、内容はわかりませんが、しかし、せっかくのお尋ねですし、私の知っていることを隠さずに申し上げたほうがこれはいいと思います。その内容は、要するに、第三次防衛計画で買うような兵器があるならば、米軍のものを原価で安く買え、その金を日本で円で払え、そうして、これでいままでの既存の特需の負担を軽くするというふうな構想であろうと私は概略的に承知しております。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 したがって、そのベトナムということばは私が特に削ったのは、今日でも特需が三億ドルくらいあるんですから、兵員の俸給を払ったり家族の支払い、その中に想像される金額というのは、せいぜいその三分の一か四分の一以下だと私は思います。したがって、ベトナムということばをつけることがいかにこの問題とは無関係であるかということは、数字的に私も念頭には考えております。それを先ほどから実は説明申し上げたのであって、では、この話が進むか進まぬかということは、要するに、これを大蔵省、財政当局の関係もございますが、私のほうの所管としては、その必要な兵器と向こうが売りたい兵器というものが合うか合わないかで私はきめたいと思うのであります。したがって、その基本的焦点はそこにある、うしろのバックグラウンドはこういうことであるということで、それは日本の特需の中の一部の金額にしかおそらく当たらないだろうと私は思います。要するに、兵器が日本で防衛上必要な防衛兵器か、それによってこれは判断をすべきものである。その防衛兵器に当てはまるならば、これは考えられる、防衛兵器に当てはまらないのなら、これはお断りする以外にない、こういうところが焦点になるので、その特需の話とこれとはおのずから限界が違うと私は思っております。
  165. 高田富之

    ○高田委員 いまアメリカ側とこの協議をやっているということについて、タス通信ですか、出ております。これは、アメリカが日本をベトナムに対する兵たん基地として利用するための一つの方法としてやっておる。また、日本における防衛力拡充ということのためにアメリカの新鋭兵器を売りつけるということとも関連があるというようなことで、非常に重大視して、そういうふうな論説が出ているというようなわけでありますから、そこらをもう少し厳密にしていただきたいと思うのです。さっきからのお話じゃありませんけれども、必ずしもベトナム向けということを特に言わなくても、こういうふうな形で、相当高価な最新鋭兵器を向こうから入れてくる、これと引きかえに、今度かなりの金額の特需というものがアメリカ側へいくわけでありますから、これはやはりこれからベトナムの戦争が拡大されていくということとつなげて考えるほうが自然なんで、あなたがおっしゃるように、いままである特需の支払いにそいつを充てたらどうとか、そういうふうに考えるほうが無理にこじつけているようにとるほうが、これは私は自然だと思うのです。ですから、そういう意味で、向こうさまがそういうふうに出ているものに対して、それは困る、そういう方針はとっておらぬということで、買いたいものがあればドルでもって買います。しかし、なるべく国産で間に合わしたいのだというふうな態度で臨むのか。こちら側の態度の問題なんですよ。いまあなたのおっしゃるのを聞いていますと、ほしい兵器があれば、第三次防の関係で、それとの見合いで、その範囲でこの話に乗ってもいい、こういうことでございますね。
  166. 松野頼三

    ○松野国務大臣 先ほどから協議協議とおっしゃいますが、まだ協議じゃありません。話を始めて、どんな内容かを聞いているわけで、私のいま申しているのは、私の承知している範囲の概略を申し上げたのです。しかし、大事なことでせっかくのお尋ねですから、隠さずに申し上げているわけで、協議じゃありません。今日は一方的に話を聴取しているというのが正確なことで、ことばは別としまして、その内容においては、おっしゃるように、その問題は、要するに価格の問題、円払い、ドル払いの問題、それから防衛兵器であるか、この三つが問題ですから、どうぞ……。私も新聞で見ましたけれども、タス通信がもしそういうなら、それは非常な誤解である。いずれ私の話を聞けばタス通信も理解してもらえるのじゃないかと、けさ実はそんな感じをして私は参りました。
  167. 高田富之

    ○高田委員 それでは、三次防の内容と関連するわけなんですが、今度は、核兵器でありますところの——核と普通兵器との両用ではありましょうが、核兵器として通用いたしますところのナイキ・八一キュリーズというものをどうしても取り入れる、こういう御方針でございますか。
  168. 松野頼三

    ○松野国務大臣 核兵器を装備する計画は、計画もございません。念頭にもございません。ナイキ・ハーキュリーズは、核兵器と断定する兵器ではございません。
  169. 高田富之

    ○高田委員 ですから、私は両用だと言うのです。両用だけれども一般には核兵器として通用している。日本においては、どうせこれは核兵器としてやるのじゃないとおっしゃるにきまっていますけれども、そのナイキ・ハーキュリーズは第三次防ではどうしても入れるのだということは決定しているわけですね。
  170. 松野頼三

    ○松野国務大臣 まだ決定しておりません。決定するのは早くても五、六月であります。しかし、いまのお話のナイキ・ハーキュリーズが両用だということは——いまのナイキ・ハーキュリーズは両用であります。日本に入れる場合には核装備をいたしません。したがって、その心配は私はないと思います。
  171. 高田富之

    ○高田委員 決定をするのは五、六月だというのは、正式決定は国防会議の議を経なければ決定しないのですけれども、庁内において案として内定しておりますかというのです。そういう方針なのですかというのです。
  172. 松野頼三

    ○松野国務大臣 まだ内定しておりません。
  173. 高田富之

    ○高田委員 それではお伺いしますが、第三次防衛計画というものは、新聞によりますと、あなたの主張で本年度からやっていこう、第二次が終わる年と第三次の始まる年を重ねたい、これが理想だということで作業をお進めになって、そうして本年度の計画の中には、したがって第三次防の始まりが幾らかでももう組み込まれているという形に持っていくのだ、こういうふうに承知しておるのですが、そうじゃないのですか。
  174. 松野頼三

    ○松野国務大臣 第三次防の準備調査計画費というものを四十一年度予算の中に幾らか入れております。したがって、これは予備準備でありまして、まだ決定しておりません。したがって、準備期間を入れれば五年プラス一年で六年になる、このほうがすべての計画にはよりベターだと私は思いまして、六年計画というものを発表しただけで、基本的に大きな数字が変わったわけじゃありません。やはり、一次防、二次防をやってまいりますと、つなぎの一年間が何もない、どちらかというならばブランクな一年が出てしまう、そのために後半が非常に無理をするというのは、どの計画も同じであります。したがって、言うならば、一年が予備期間、調査期間、それを入れれば六年というわけで、入れなければ五年ということであります。今回は入れるつもりでおります。
  175. 高田富之

    ○高田委員 五、六月に国防会議を開いて正式に決定をなさる、こういうのでありますが、いまあなたは調査費とおっしゃったのですが、すでに具体的にいま審議しております今年度予算案の中に入っておりますものはどんなことですか。おもなものは何と何が入っておりますか。
  176. 松野頼三

    ○松野国務大臣 開発費として、輸送機の研究開発費、それから海上の飛行艇の研究開発費、それがおもなものであります。その他に大きな予算の金額は、陸において多少ございます。これは車両の研究開発費、こういうものでありますから、要するに、研究開発の準備調査費用というのが開発費の中に入れてあります。
  177. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、いまおっしゃいました輸送機に関するそういう予備的な費用と、それから潜水艦に対する哨戒用の飛行艇ですか、そういうものの基礎的な費用か何かが入っている。こういうことになりますと、そういう新しい重要な兵器を採用するということを第三次防では前提としているわけですね。そうなりますと、その計画というものとあわせて審議しなければ、そのいま今年度予算の中へ頭の出ているものをとやかく議論できませんので、これはどうしてもあなたのほうでいま持っております案というものを参考資料として御発表を願うということが審議上絶対必要だと思うのですよ。いかがですか。
  178. 松野頼三

    ○松野国務大臣 予算に入っておりますものについては、もちろん、御説明もいたします。資料も提出いたします。しかし、その問題は、御承知のように、老朽する時期というものが、輸送機は、高田委員よく御承知のごとく、もうすでに二十年たっております。どんなことがあっても来年はこの輸送機というものを新規なものを開発しなければ、この任務は達成できません。その意味でこれを入れたのであって、どの機種というのはまだきめなくてもいいはずであります。いかなる機種をいまからきめるかという予備準備調査をしなければ、三次防の決定どころか、三次防が成り立ちません。そういう、もうだれが考えても必要であるものだけの開発研究費でありまして、三次防を全部きめなければこれが出てこないじゃないか、それとはこれは違います。したがって、最小限度のその三つぐらいの品目でありまして、ほかのナイキ・ハーキュリーズも今年の予算には入っておりませんし、すべてのものは後年の三次防決定にゆだねたというのは、全部がわからなければできないじゃないか。何もそんなものは入れておりません。どんなにしてもこれはわかるんだというはっきりしたものだけが開発調査費でありますから、全三次防がきまらなくても当然これは出していいはずであります。したがって、三次防をきめる予備的な費用なんですから、だから、予備的費用がないなら三次防はきまらないじゃないかと言うほうがほんとうの話かもしれません。それはちっとも私は問題はないと思います。
  179. 高田富之

    ○高田委員 しかし、何でもないようなおっしゃり方なんですけれども、そういう性質のものじゃないのじゃないですか。この第三次防というものについても、そうこまかいところまで全部がそれはまだでき上がっていないかもしれません。しかしながら、ほぼ基本的な新兵器や何かについては採用するかしないかとか、おおむねどの程度の数量が必要だとか、そういうふうなことを想定し、またそれにかかる総額費用、金のほうでも見当をつけながら、ある程度具体性を持ったものを描いていなければ、今年度と来年度から始まるものとがダブって、ことしがいってみれば初年度みたいなものなんですから、そういうふうな形にはならないと思うのですよ。だから、そういう点についてわかっている範囲、でき上がっている範囲で御発表願わなければならないと思うのです。  特にいま二つ御説明がありましたけれども、両方とも私はかなり重要だと思うのです。この大型輸送機や何かの新しい型のものをかなりの数入れるということになりますれば、これは日本の自衛隊の戦力というものについてもかなり大きな前進、飛躍といいますか、そういうものになるのだろうし、また第二のお話の潜水艦用の大型飛行艇の問題、これも、これからの自衛隊がどういう事態に対処するかというような、自衛隊の任務といいますか性格、こういうものにまで相当影響するから、戦略に影響する重要な根幹をなす兵器じゃないかと思うのです。そういうものがきまったということは、ある程度三次防がきまったということにならなければ、こういう重大なものは本年度予算の中に顔を出すということは考えられないのでありまして、どうかその第三次防の金額的にいった規模、それから内容的な性格、どういうねらいで、たとえばこういう兵器やこういう兵器を入れてどうするというふうな基本的な性格、こういう点について、基本的でけっこうでありますから、概略御発表いただきたいと思います。
  180. 松野頼三

    ○松野国務大臣 その必要は、私はちょっと意見が違っているのじゃないかと思います。その飛行艇はすでに二次防期間において相当長年予算がついておるものであります。特に今回突然出たものじゃありません。その開発の速度を速めたいというだけであって、新規なものではございません。  なお、輸送機の開発は、物理的に考えて必要であるというので、二次防の計画の中にも一応これは入っておるのです。入っておるのを、なお取り上げてこれを三次防のもののいいものに研究しようというのでありますから、何も新規なものがここに出ているというわけじゃございません。二次防計画の中に輸送機の開発ということばは入っております。それをいままでおくれておったから、三次防の前に本年この準備をしよう、飛行艇はすでに二次防期間中、四年以上毎年予算に計上されておるものを、今回促進するだけでありますから、三次防の問題と少しも矛盾も何もいたしません。
  181. 高田富之

    ○高田委員 いま私がお願いしたのは、それだけじゃないのですよ。金額的な規模、これはあなたが新聞記者にも語って、各新聞に全部出ているじゃないですか。どのくらいの構想で五年間にどのくらいの費用をかけて、おおむねこういうもの、こういうもの、こういうようなものを、いまおっしゃるように改良でもいいのですが、改良したもの、あるいは全然新しいものを使うのだという構想ぐらいはいまなければならないのですよ。全然ないということはないのですから、ぜひそのくらいのことを言っていただいて、こまかいことは資料として御提出願いたいのです。
  182. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いままで各所で話しましたのは、みな私の構想を私がお話ししたので、御質問があれば私はいつでもお話しいたしますが、資料というものをつくっていないのですから……。私の構想で私の責任でいつでも御答弁いたしますが、資料というものをほんとうにつくっておりません。資料をつくるとなると、積み上げてきてなかなか時間がかかりますので、やはり政治と準則は、お互いある場合にはトップレベルにおける話のほうが早い場合があります。そういう意味で私が言っているので、ほんとうに資料をつくれというと、これはいろいろなことを言いますと四カ月くらいかかるのです。どうかひとつ質疑におきまして、私の構想に御疑問があるならば、いつでも私の責任においてお答えいたします。しかし資料というものはほんとうにございません。
  183. 高田富之

    ○高田委員 ですから、述べるほうも、ひとついま要求しているわけなんですから、概要について述べてくださいと。こまかい点は資料でと言うと、こまかい点はいまだめだという説明がありました。概要は述べられるでしょう。それを述べてください。
  184. 松野頼三

    ○松野国務大臣 第一次防衛計画、第二次防衛計画、それが四十一年で終局いたします。したがって、防衛問題、国防問題というのは、長期的な展望がなければ、一つのものでも長年かかる準備というものが必要であります。その意味でこれを実行いたします。その目標は何だというならば、日本の自衛力に必要な装備をすること、兵員を充足するということが目標であります。  それでは、その目標をどこに置くか。予算的に言うならば、最終年度において国民所得の二%くらいまでは日本の防衛力にさくだけの国力があるのではなかろうかという希望を持ったので、最終年度において国民所得の二%くらいという基準を置いて、それがどんぶりになって、中身によりいい振りつけと飾りつけをしよう、そして充実したものにしようというのであります。したがって、ハーキュリーズあるいはホーク、いわゆる対空防衛兵器は必要でありますので、これは当然私は入れたい。こういうことから、ある場合にはナイキだとか、ホークだとかいうことばが出てくるわけであります。こういう話を参議院の予算委員会質疑のときに私はいたしました。今日も同じように、高田委員にはより以上、時間もたちましたから正確にお話ししているわけで、したがって、質問の内容によって私の構想を正直に申し上げますが、概略はそういう話をいままでいたしております。
  185. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、最終年次においては国民総所得の二%ということで、あなたがお話しになったものを報道されておるものによりましても、おおむね総額三兆円くらいになるのじゃないかというようなことが書かれておるわけです。  なお、ただいまもあなたがおっしゃいましたような対潜飛行艇、対潜哨戒機、それからナイキハーキュリーズ、ミサイルホーク、こういうようなものを全部あなたが発表されておるわけですね。ですから、こういうふうな点から言いまして、まず第一点は、総額三兆円、これはあなたの二%説から出るお話なんだろうと思うのですが、かりにおっしゃるとおりだといたしますと、これはいままでの第二次防では一兆二千億円ですか、とにかく二倍よりはるかに多い額でございます。相当飛躍的にたくさんの経費をかけるということになるわけですね。ですから、こういう構想で、これがしかもこの五月には最終決定をしていくというふうな御方針でもしあるとすれば、本年度予算審議にあたりまして、これは重大な審議の必要案件だろうと思います。  ことしは、御承知のとおり、初めて公債政策に踏み切りましたときでありまして、ぎりぎり一ぱい財政もやっておるわけでありますから、今後あなたのいま言われたような膨大な六カ年計画の防衛費の予算というものを考えました場合には、一体そういう財源というものをどういうふうに考えているのか。とてもそれこそ軍事公債のようなものでも出さなければ追っつかないような仕組みになっているじゃありませんか。大蔵大臣、いかがですか。ただいまの防衛庁長官の構想、第三次計画においておおむね三兆円引き受けた、こういうところですか。
  186. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それから、もう一つ情勢の変化が起こりましたから、これは御参考に申し上げたい。  そのときの資料は、中期経済計画というものを基礎にして一応の算定というものを私のほうはいたしました。ところが、中期経済計画が今日破棄されたので、したがって、その三兆円という理論がもう出てこなくなったのです。これは大きな情勢の変化であります。  なお、もう一つは、大蔵大臣とまだ一ぺんも話したことがないのです。本日はお互い議会ですから、私の承知していることを話した。大蔵大臣とはまだ一ぺんも話したことがない。大事なものさしの中期経済計画がつい先般御承知のような状況になりましたから、国民所得の基本の計算もまた実は白紙に戻りました。その当時は私はそういうことを申しましたが、そのときも、中期経済計画は六年先はございません。したがって、それを推定した数字でいくならばと、こういう数字がおっしゃるような数字になるかもしれません。基本が、実はものさしがいまちょっと中断しておりますので、その数字もちょっと中断していただきたいと思います。
  187. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、中期経済計画でいったときと、いまの状況で推算されたところではどうなりますか。
  188. 松野頼三

    ○松野国務大臣 中期経済計画も六年先まで実はなかったのです。したがって、かりに推定をしてこれをやったわけです。したがって、推定の基本がはっきりしなければ、三兆という数字も、かりに二%希望しても出てこないのですよ。したがって、その資料というのがまだ政府部内では固まっていないのです。したがって、三兆の数字は、私のほうが、かりにこういう数字を使えばこうなる、こういう数字を想定すればこうなると、いろいろな実は数字があるのです。その一番大きなのをとっておそらく高田委員は三兆とおっしゃったのだろうと思う、いろいろな数字が実は出ております。したがって、その基本のものさしがきまらないと、三兆の議論には少し無理じゃないか。ただ最終年度において国民所縁の二%程度を目標にするということは、私の実は希望であります。これは私の希望なんです。しかし、その数字が御承知のように推定数字。国民所得、国民総生産というものがきまらないと、三兆とかいう数字がなかなか出てこない。私も実はこれは苦労しているところです。
  189. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、いままでの第二次防では、国民総所得のどのくらいに当たるのですか。
  190. 松野頼三

    ○松野国務大臣 一・三七くらいじゃないかと思います。四十年で。四十一年も一・三七くらいだと思います。
  191. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、その比率が一・三七を二にするわけですから、これは相当のやはり膨張ですよ。しかも国民所得自体も、これから、いまの政府の予定によれば、計画といえるかどうかわかりませんが、七%とか八%とかずつ伸びていくということでいくわけですから、そうしますと、これはおそらく三兆以上になるかもしれません。最終年次におそらくこれが五十兆とすれば、一兆円の防衛費になるわけです。ですから、やはりあなたが三兆円と言ったのはそんなに違わないわけです。おおよその見当からいって、第二次防のときの二倍以上になる。いまの割合自体からいけばそんなに違わない。一・三七から二にしようというのですから、もとの総額がうんと大きくなっていくのですから、これはどうしましてもいままでの一兆二、三千億くらいだったものが三兆になるというぐらいの伸び方をするわけです。いまのパーセンテージからいっても。ですから、それでも大体考え方がわかるわけですから、大蔵大臣、そういうものをのみ込めるいまの財政状態でございますか、いかがですか。
  192. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 なかなかむずかしい話と思います。私は、防衛力は国力に相応して逐次これを充実していかなければならぬ、こういうふうに思いますが、その考え方をどういう年次で、どういう幅でやっていくか、そのときの経済情勢、財政状態、また国際情勢、そういうものと見合ってやっていかなければならぬ。いまから、先のことまできめておくわけにもなかなかいくまい、かように考えます。
  193. 高田富之

    ○高田委員 これはまだ大蔵大臣とは全然一ぺんも話したことがないといういまお話だったんですが、そういう重大な計画が、しかも、もうこの五月には国防会議へ出して最終決定までしょうというようなことでやっておられるのですから、相当重大な構想が防衛庁では練られつつあるわけなんですね。これは大蔵大臣、もう前にもいろいろお話があって、公債を出せば軍需インフレになるのじゃないかというお話がずいぶん本会議でも委員会でもあったわけです。そのつど、防衛力とは何の関係もありません、何の関係もありませんで、あなたは押し通してこられましたけれども、いいですか、いまや健全財政主義を一てきして、そうして膨大な七千何百億というような公債を出すというところへ踏み切った。これと、一方においてこの膨大な第三次計画を立てている。その次は第四次計画も当然これはやる。第五次計画もやるのでしょう。そういうものをわれわれが、これはたいへんだと感ずるのはあたりまえでしょう。これが別の問題で関係ありませんというわけにはいかないのですよ。そういう計画が許されるとすれば、この公債というものは、今度は雪だるま式にふえる危険性を十分持っている。これは、そうであれば頭から問題にならない。いまのようなとほうもない大きな軍事費の膨張ということは問題にならないと思います。大蔵大臣は、いまの防衛庁長官の構想に対しまして、どういうお感じを持ちましたですか。
  194. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ一度も話を聞いておりませんので、突如ここで初めて伺うような次第で、はっきりした見解を申すわけにもまいりませんが、御心配は、公債が軍事費の計画とつながっていくのじゃないか、こういうことにあるようでございますが、公債を軍事費のために発行するということは、断じていたす考えはございませんです。
  195. 高田富之

    ○高田委員 ですから、結局そういう計画がだめなのか、また公債のほうのワクを広げていくことになるのか、どっちかなんですよ、これは。ですから、私たちはそういう心配があるから、初めからそういうことを申しておるわけなので、本年度予算審議にあたりましては、どうしても第三次計画の概要というもの、その考えというものを資料としてお出しを願って、それと合わせてやらなければ——しかも、さっき言いましたように、もうその準備費用が載っておるのですからね。これは対潜水艦用の重要な兵器の改良なんです。それから大型輸送機も、これは重要な改良なんです。こういうものが入っている。これはずっとこれから連続性があるわけです。経費膨張のもとをなしているのですから。ですから、どうしても全体計画というもののアウトラインでいいのです。概要というものを参考資料に出していただいて、それと、これからの公債の返済計画、長期財政計画、中期の財政計画というものと合わせまして、これからの公債政策の数年間にわたる  これはもう約束がしてあるわけです。お出し願うことになっておるのですが、それと合わせて参考資料としてお出しを願って、ぜひ審議したいのです。そうしなければ、われわれは今年度の十分な審議ができない。防衛庁関係の費用についてもどういうふうな態度をとっていいかということを決することはできないわけですから、どうか早急に資料としてその全容をお出し願いたい。これを要求いたします。
  196. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いまの高田委員の中のことで、二次防の中に入っておるものがほとんどなんですから、三次防、新規というよりも、準備研究段階の中の一部でございます。したがって、その総額というものも、やはり国民経済に合わせて自粛してこういうものはやるべきだということ、これは論をまちません。しかし、防衛というものを国民の中の負担とするということも、これは私は必要なことだと思う。したがって、金額の相当というものよりも、いままでやっておることなんですから、それを急に三次防といって新たな予算が本年大幅に計上されたわけじゃございません。したがって、その計画を出せという——三次防が国防会議あるいはその前に構想がまとまったときには出しますけれども、まだ今日の段階では四十一年度予算というものに私たちは集中しておるのですから、その問題は少し時間的にまだその時期ではないと私は思います。
  197. 高田富之

    ○高田委員 さっき大蔵大臣も言われたのですが、国力に相応してやるべきものだ、こうおっしゃるわけですね。そうすると、国力相応とは一体どういうことを相応というのか。いま公債をお出しになるのに、この間の中澤君の質問じゃありませんけれども、金が足らなくなってふやすのに、どこまでふやしていいかわからぬということじゃたいへんなので、ワクをつくるためにこれを建設公債と称してワクをつくった、実は赤字だという話がだいぶあったわけでありますが、この防衛費なるものも、結局、国力相応、国力相応と言っていましても、どこが国力相応なんだかわからないのですよ。国力相応の歯どめがないのです。だから、国力相応というのはどこまでをいうのか、どの程度を国力相応というのか、いまの構想は国力相応なのですか、国力不相応なのですか、いかがですか。
  198. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま一般会計の予算の中で八%ぐらいになっています。また国民総所得の中で一・三七%ぐらいな規模でございます。まあ大体これを基準にいたしまして、そして経済力もついていく、それに応じまして逐次自主防衛の体制を整える、こういうことかと思うのでありますが、これが何%というような基準はないわけなんでありまして、大体国民生活を圧迫せず、しかも国の安全の立場から考えて必要な程度、こういうことで決定すべきかと考えます。
  199. 高田富之

    ○高田委員 これは相当厳格でなければならぬと私は思うのですよ。こういう憲法のない国の議論じゃないのですから、憲法第九条のない国の議論ならばいまの程度でもいいかもしれないです。しかし憲法九条のある国において、いま政府がお考えになっている相応な自衛力とはどの点なのかということは相当厳格でなければならない。いまの自主防衛、国力相応ということになってくれば、これは自主防衛というごとは自分でやれるということでしょう。人さまのごやっかいにならなくてもやれるということじゃないですか。いかがですか、自主防衛の解釈は。
  200. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 防衛、国の安全を保障する手段はいろいろあると思うのです。これは一国で、その力で完全にみずからの国を守る、これは、私は今日の世界におきましては米ソ両国ぐらいだと思うのです。そこで安全保障体制というものがある。国際連合もこれを認めておる。こういうことになっていると思うのです。ですから、その時点において日本がどういう安全保障の体制をとるか、またその一部として防衛力をどういうふうに考えていくか、位置づけていくか、こういうことはその時点において考えるべきものである、さように考えます。
  201. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、いまの自主防衛の考え方でいきますと、それはあなたのおっしゃいますように、米ソ以外の国は大体同じに考えられてくるというようなことで、フランスであるとか、イギリスであるとか、イタリアであるとか、こういうようなところを基準にして国力相応のと、こういうふうなことになってくるのだったら、まだまだどんどんふやさなければならぬという議論になるわけですね。よくアメリカあたりでは要求しているでしょう。日本はまだ防衛努力が足らないじゃないか、防衛費を節約して金もうけをやっているとはけしからぬということで、しょっちゅうハッパをかけられている。そうなりますと、あなたのようないまのお考えでいきますと、まだこれから第三次防ではその程度、四次防になるとそのまた倍くらいにしてと、こういうふうにしていく危険性が十分にあるということになりますよ、いまのお説では。歯どめがそれでは全然ないじゃありませんか。そういうことなんですか。
  202. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 歯どめは憲法第九条であるわけであります。つまり積極的に外国を侵すことはいたしません。もっぱら国の安全を保障するという立場の防衛である、かようなことで、これは非常にはっきりした歯どめだと思います。
  203. 高田富之

    ○高田委員 憲法九条を歯どめにする、こういうことでありますから、そうするとあの憲法九条のない国と同じような議論は絶対にできない、こういうことになるわけですね。ですから、その点はひとつそれでははっきりさせておきたいと思うのです。
  204. 松野頼三

    ○松野国務大臣 結局、防衛は相対的なものであります。世界じゅうの趨勢というものがやはり日本の国防に重要な基準になると私は思います。また国力といいましても、私が膨大な要求とおっしゃいますが、かりに二%になっても、世界じゅうで日本と対等な国における防衛費の負担率を見るならば、これはまことに目の中に入るような小さなものであります。したがって、その基準をどこに置くかによって議論の焦点が違ってくる。したがって、日本の最高の場合でも憲法による歯どめというものをこえないというのであります。その中においては、経済に応ずるように、相対的な世界の趨勢に応ずる、情勢に応じて装備をするということは、これは日本人の必要なことじゃないか。ここが私たちは歯どめであり、基準であると思います。
  205. 高田富之

    ○高田委員 いいですか。せっかく大蔵大臣が抽象的ではあるけれども、きちっとした歯どめを出したわけですよ。憲法九条、これは精神的なものでありますけれども、私はこれはほかの国にないのですから、ほかの国と普通に比べられては困る基準をお出しになったわけです。われわれに言わせるならば、憲法九条の歯どめというものは、ほんとうは防衛費を認めないのです。けれども、それをいま私は要求しようとするものではないのです。少なくとも良心的にあの憲法九条を守らねばならない立場にある政府が、良心的にこれに拘束されまして、これがあるのだからということで、ほかの国との比較を拒否できるわけですよ。ところが、いま防衛庁長官は、そう言ったってよその国では何%、これと比べれば日本の国はまだ少ない、これを言われたのでは、憲法九条というものは全然眼中にないじゃないですか。これはもう急速にこれをふやさざるを得なくなりますよ、そんなことをしたら。いまのはちょっとお取り消し願わなければ、せっかく大蔵大臣の御答弁答弁が矛盾しておりますから……。
  206. 松野頼三

    ○松野国務大臣 憲法九条以上の装備を日本がするということはない、これが歯どめであるということであります。防衛費の問題は、相対的な防衛力あるいは科学の進歩、それによって内容はきめるべきだ。これは外と中からの話であって、私は両方とも並列し得るもので、違反はしておらないと思います。
  207. 高田富之

    ○高田委員 こればかりやっておるわけにはいきませんから、またこの問題は専門の同僚議員が別の機会にやると思いますからなんですけれども、先ほど申しましたように、概要の構想はいま話が出たわけであります。大蔵大臣も初めてお聞きになった、こういうことでありますから、今後の予算審議にあたりましては、その中期財政計画とあわせまして、いまの構想というものを織り込んで検討する必要がある、こう思いますので、これは大蔵大臣としてももう少し詳細な、具体的な点を防衛庁とよく相談をされまして、大臣のほうでもそれをあわせて審議の材料に御提出を願うように御努力願いたい、こう思います。  それから約束の時間がだんだん追ってまいりますので、沖繩の問題をひとつお伺いしておきたいと思うのです。  きのう民社党の春日さんのほうからもいろいろお話がありましたが、それと重複を避けます。もっとも考え方の違う部分はやむを得ないのでありますが、まず第一にお伺いいたしたいことは、主席の公選の問題でございまして、これは前回も横路委員から質問があったわけでありますが、たまたまただいま新しく間接選挙のことになりまして、だいぶこれに対する反対の世論が強い。これは御承知と思います。このままにして放てきしておきますと——いままでの長い間の、これが沖繩の百万同胞の強く熱願するところでもありまして、先般の選挙におきましても、各候補者ともそういうような主張をされまして、これが非常に強い世論になって燃え上がっておるわけであります。したがって、前回も主席の任命の際に、不祥事件など起こったりしておることもありますので、今回はこういうことを未然に防がなければならぬ。へたをすると、このまま政府が傍観しておりますというと、沖繩の同胞の激高がどんな結果をもたらすかわからない。私はここ数日非常にこの状況は予断を許さぬと思うのです。ですから、ここで主席の公選ということは、すでに十年余りも前から、これはもう当時の高等弁務官が認めまして、選挙法までちゃんとできておるのに、施行期日をそのまま抑えまして、今日まで抑え押えしてきておるわけであります。ですから、自治権の拡大ということを強く求めております同胞とすれば当然のことなのでありまして、いまさらここへきて間接選挙で、しかもその権限内容も、前の任命当時とちっとも変わらないということですりかえようとしましても、これではとうてい承服しないと思うのですよ。   〔赤津委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、この点について強力に佐藤総理から、主席の公選制を実施してもらわなければ事態はおさまりませんということをひとつ強く対米交渉していただきまして、そうして島民の要望にこたえていただきたい。いかがですか。
  208. 安井謙

    ○安井国務大臣 お話のとおりに、昨年十二月から、いままでの主席の選挙制度が変わりまして、立法院による間接選挙に相なった。私どもは、この選挙制度というものは、いままでの経過から比べますと非常に進歩したものである。言うまでもなく、この立法院という島民の意思によって選挙された人によって主席が選ばれる、こういうことは、現在はいわゆる直接の公選に比べると、形は違いますがやはり相当民主的なものでありますので、住民の方もそういう点について十分な理解を持って、できるだけこれが円満に選出されることを私どもは期待をしておるわけでございます。
  209. 高田富之

    ○高田委員 佐藤総理は昨年沖繩へ行かれまして、沖繩の百万の同胞は非常な期待を持っておるわけですよ。これは、政党政派を超越いたしまして、今度はひとつ佐藤総理がきっとやってくれるだろう。あれだけいろいろなことをお約束になったのだから、必ずやってくれるだろうということで期待を持っておる。特にこの公選問題は、お調べになりましたとおり、全くもう前々からの古い懸案ですよ。しかも必ずほんとうにこの一点、これをやれるかやれないかによって、ほんとうに自治権というものの拡大を真剣に考えてくれているか、くれていないかということの証拠にもなるわけなんです。この際は、多少そのためにアメリカは何か難点があるかもしれませんけれども、たってこれは貫徹する、そうしなかったら、もうここへきますと、理屈やなんかの問題ではないと私は思うのです。これは民族感情ですよ。同じ日本国民でありながら、戦後二十年もああいうところでもって、ほとんど独裁的な権限を持った外国人の統治を受けておるんですよ。いつまで黙っているはずがないのです。私はこれは危険だと思います。このままほうっておいたら、えらいことになりますよ。だから、どうかひとつ総理、真剣に、体当たりをしてでもアメリカの方々の考え方を直してもらわぬと、これはたいへんなことになると思います。おやりになっていただけますね。どうですか。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 高田君からたいへん熱意のある御提案ですが、私は高田君とは考えが違います。ただいま安井君が申したとおりでございます。
  211. 高田富之

    ○高田委員 これは総理、もうほんとうにたいへんなことになりますよ。ほんとうにこれは、もうここで押し問答はしませんけれども、じっくりひとつお考えになって御決意願いたいと思うのです。  それから、これは沖繩のほうで出ておる新聞ですけれども、最近はベトナム戦争の影響がますます深刻になってきておりまして、そうして、沖繩にあります港でありますとか、軍用のいろいろな施設、それから基地、新設するもの、増設するもの、これも非常な勢いで全島基地化が進んでおりまして、そのためにあちらこちらで自分たちの建物の取りこわしを命ぜられたり、土地を取り上げられたりしている。これは二、三日前の新聞でありますが、いまたいへんな苦労を同胞がなめております。たとえば、これはある村でもって、米民政府から村民へ村役場を通じて文書できておる。一、許可されていない建築物はすべて軍用地内から撤去を要求される。二、地主が米国の権威を無視することは許されない。三、米空軍は全侵害物件の取り締まり及び撤去を実施するにあたっては強硬な態度をとらざるを得ないというような通告で、いま非常に戦々恐々としている。こういうときにこのいまの問題がからんでおるんですからね。だから私は御警告申し上げますよ。このままじゃとてもおさまらないだろう、どうかひとつき然とした態度要求してもらいたい。  それからもう一つ申し上げますが、これは琉球の船でございまして、すでに御存じと思いますが、琉球の漁船、その他船には民政府で指示いたしております特殊な旗を換げて航行すたことになっているわけなんです。ところが、その旗がどこの国の旗だかわからぬものですから、国籍不明としてしばしば非常な危害を加えられておる。その実例もたくさんあるわけでございまして、セレベス海におきましてマグロ漁船が操業中、インドネシアの海軍から銃撃を受けて、一人は死に、三人は重傷、そして現在でも補償も何もされておらぬ、あるいはまた、昭和三十二年には台湾基隆港で、やはりあの旗を立てておりましたために入港を拒絶されたというような事件、あるいは四十年には北ボルネオにおきましてラワン材を積みに行って、これがやはり怪しまれて非常に苦しい立場におちいって、急遽民政府や何かに連絡してようやく難をのがれたということでありまして、いよいよ戦争状態にあの付近がなってまいりますと、こういう事件はこれから一そう起こる危険性が増大しております。先般横浜の海員組合の支部のほうからですか、この問題については沖繩の現地においてはとうてい解決がつかないのだ。民政府当局もいうことを聞いてくれないので、ぜひ強力な日本政府の力によって国旗が掲げられるようにしてもらいたい、こういう切なる要望が来ている。ですから、これもちょうどベトナム問題で非常に戦々恐々たる状況にあるときでもありますから、いっときを争うと思うのでありまして、さっそくにも国旗が掲げられるような措置をとってもらえるように、総理から強硬に申し入れをしていただきたいと思いますが、これはいかがですか。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国旗掲揚の件につきましては、重ねて向こうの米軍に十分申し入れをしたいと思います。
  213. 高田富之

    ○高田委員 それでは、これはぜひ重ねて強く御要請を願うということにお願いしたいと思います。  さっきの主席の問題とも関連がありますが、実は先般の琉球の立法院の選挙の際に、投票日になりましてから、立候補者四名の被選挙権を剥奪してしまった、こういう乱暴きわまる事件が起こったことは御承知のとおりであります。こんなことは、とうてい日本におりますわれわれは想像もつかないことですが、もと犯罪を犯したことがあって、そういう前歴があるからということらしいのですが、それにしては——たとえばその一人であります友利などという方は、立候補する前は町長をしておった人です。町長の現職で立候補したわけです。町長になる前の事件なんですが、ずっと前にやった事件をたてにとって、町長をずっと無事につとめるようにその後なって、町長の現職で立候補したものが、投票日にパージになる、こういうむちゃくちゃなことをやっている。これなんかは私ども想像しますのに、こういうことがやれるのですから、そうなりますと、公選でもって主席を選ぶようなことになったら、主席の候補者はまさかやるわけにはいきませんでしょうし、だから、これは相当根の深い問題なんであって、主席の問題はさっき申したとおりですが、こういうとんでもない事件が起こりましたことについては、いまからじゃちょっとおそいくらいでありますけれども、やはり政府としては、こういうことはやらせないようにしてもらわなければ困る。特に総理が去年おいでになったときに、本土と沖繩の一体化ということをあなたおっしゃって、この言葉、このキャッチフレーズは非常に人気を博しているそうであります。非常にいいことをおっしゃったので、ぜひこれを実行してもらいたい。必ず実行するだろうということで、非常ないいキャッチフレーズになっているというのです。そういう点からいいましても、やはり日本で事が起こったらたいへんなことですから、ぜひこういうようなこともないようにしていただかなくちゃならないと思います。そのことが一つ、いまの具体的なパージ問題が一つと、本土との一体化問題については、しからばいまのようなことも一つだろうと思いますが、その他地方自治体に対する処置とか、いろいろな問題があるだろうと思いますが、具体的にはどういうことをおやりになるのか、これからこういうことをやって、本土と一体化の実をあげたいのだということがありますならば——あると思いますが、この機会にぜひおもなことだけでもいいですから、御発表願いたいと思います。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしの沖繩に対する援護措置予算にも非常に多額なものが計上されております。前年に比べて倍額になっておる。この具体的内容で、ただいまこれからやろうとするものがわかっていただけると思います。私はさようなことも必要でありますが、沖繩の祖国復帰、同胞沖繩百万、また九千万同胞、この国民の熱願を一日も早くこれを実現したい。それで、このことはしばしば申し上げますが、日米の相互信頼と協力のもとにおいて実現さすべきであると、かように思いまして、今日まで十分アメリカとも連絡をとり、日米協議委員会その他の場を通じまして、十分理解を深めるように努力をしておるのでございますが、今後ともかような方向においてこの実現を期するわけでありまして、いたずらに軍事基地反対、あるいは反米闘争、こういうような形で祖国復帰が実現が実現するものだとは、私はかように思いませんので、どこまでも相互信頼と理解、そしてその協力のもとに実現するつもりであります。
  215. 高田富之

    ○高田委員 しょっちゅうお伺いすることばなんですが、復帰のためには相互理解と信頼でいくんだと、こういうことなんですが、しからば、具体的に相互信頼によってアメリカのおやりになることに対して、基本的にはこれを支持していくということでずっとおやりになっていくということで、どういう契機にこれが返ってくるんでしょうか。具体的に、この島が返ってくることについてのあなたのことばを信頼した場合に、ああなるほど、そういうふうにしていればこういうふうなことで返るんだなという何かが出てこなきやならぬと思うのですが、ことばだけでは納得できないのです。どういうふうにして、どんな事態で、どういうふうにそれは返るのですか。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が昨年アメリカに参りまして、ジョンソン大統領とも基本的に話し合いをいたしました。たとえば日米協議委員会は、そのときまでは経済問題だけを協議するんだ、一般政治問題については、これは取り扱わないんだ、こういうことできておりましたが、これも改善しまして、協議委員会において、経済問題のみならずその他の事項についても協議する、意見の交換もする、また一般外交ルートにおきましてもその道は閉ざされておらないんでありますから、当方の要望するところのものは率直にこれを申し入れる、かような処置をとるわけでありますし、また今回の主席の立法院の選挙によるということは、非常に御不満のようにお考えですが、在来からの考え方で任命という制度が、今度は立法院によって選挙される、かように変わるのであります。これなども一歩前進といいますか、数歩前進のものだ、私はかように考えますし、こういう事柄がそれぞれの相互の理解と協力のもとに実現しつつある、こういうことでありますので、たいへん早急の間にこのことが実現しないことはまことに残念でありますけれども、私どもは、あらゆる機会に本土との一体化、その考え方のもとに行政またその他一般の問題について進めてまいるということであります。ただいまのお話しになりました国旗使用の件につきましても、これは厳重に重ねて申し入れて、これも実現したいものだと、かように思います。
  217. 高田富之

    ○高田委員 ただいまお話しのようなことでありますと、日米協議委員会を活用していろいろのことを持ち出されるということでありますが、それならば、先ほど来申しましたような主席公選の切なる住民の要望の問題、こういうことはここに出すのに最も適当な、最も重要な議題だと思いますが、お出しになりますか。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その点は、ただいまもお答えいたしましたように、在来の高等弁務官の任命制から、今度立法院の選挙と、かようになるのですから、これはたいへんな変わり方であります。また別に沖繩自身が独立するわけのものではございませんから、これは一歩ずつ前進といいますか、そういう意味で、御不満もあろうかと思いますけれども、私は非常な改善だと、かように思っております。
  219. 高田富之

    ○高田委員 総理、こういうことなんですね。多少のそういう改善とかあるいは援助、金を多少日本からよけいに持っていって民生の安定のために資するとか、そういうことをいろいろやることは、それは認められたかもしれないのです。しかし、そのことが最終的に施政権返還に近づくのか遠のくのかですよ。(「近づくのだ」と呼ぶ者あり)いやいや、そうじやないですよ。それは、向こうにしてみれば、住民がアメリカの統治に反感を持つ、反対するようになったら、これはもちませんから、基地としての利用価値がなくなりますから、そのためにある程度日本側からも援助もさせる。民生安定のために協力をさせる。軍事基地としてアメリカが自由自在にあそこを使わなければならない。自由自在に使うのに影響なき範囲における援助なり施策なら、これは幾らでもやらせますよ。それをやればやるほど軍事基地として安定するわけですよ。軍事基地が必要な限りにおいては絶対に返さないと向こうさまは言っているのです。ですから、この信頼し協力していくということでは、ますます軍事基地として強化されると私は思う。現に沖繩基地は、御承知のとおり、もう西太平洋における戦略上の中心の核兵器の核基地ですし、しかも、中国封じ込めの戦略の上では不可欠の核基地として、着々全島要塞化させつつあるわけでありますから、こういう状態に協力し、これに相互信頼でいくということになれば、信頼し、いま言ったような施策で部分的改良、それに差しつかえなき範囲における改良を続ければ続けるほど、これは総理、返る日は遠くなるのですよ。これは長引くのですよ。どうですか。だから、あなたのおっしゃることは住民にはわからないのです。国民にもわれわれにもわからない。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民にわからない、また社会党の諸君にわからない、こういうことですが、昨年アメリカに参りまして、ジョンソン大統領と私が共同声明を出しました。この声明の中にはっきり言ってあります。アジアの状況がかようなものを保有することが必要でなくなったそのときには進んで返す、かように言っておるし、その日の一日も早く到来することをお互いに念願している、かように申しておるわけであります。日本がちゃんと主権を持っている、潜在主権という形にしろ主権を持っておるということも認めておりますし、今日の国際情勢から、安全、平和維持のためにただいまアメリカがこういうことをやっておるのだということを申しております。したがいまして、ただいま言われますように、沖繩の同胞に不平がなければいつまでもアメリカはこの土地を保有するのだ、施政権を持つのだ、だから現状がこれで固定化されるのだ、さような状態は、これはよほど回りくどいといいますか、頭を働かしてようやく見つけた理屈だと私は思いますが、日本に返ってくるからこそ、私どももわれわれの予算もさいて、そうして沖繩同胞の窮状を見過ごすということなしに、去年の倍になるように増額しておる。今後も、この本土との生活の格差をなくしていくように予算措置をとるつもりでございます。これは、申し上げるまでもなく、私どもと沖繩同胞と、これは一体だ、かような考え方に立って初めてできることでありまして、私が直接沖繩を訪問いたしまして、現状はいかにも気の毒だ、われわれの同胞なんだ、ほうってはおけない、こういうことで、私は積極的に、わが国政府が施政権は持たないけれども、みずからの力で生活の向上をはかっていこうということをいたしたわけであります。また、そういう意味で、アメリカ自身も日本政府のこの指摘について十分の理解を持って、日本政府がこの土地に対してさような援助をすることを、施政権者ではありますが、承認むしている。同時に、またアメリカ自身もプライス法の改正までしよう、かように申しておるわけであります。沖繩住民の、またわれわれ同胞の生活は、これによってよほど改善されると思います。ただいま軍事基地化ということでいろいろの御非難がございます。もちろんそれにつきまして、沖繩住民といたしましても、この軍事基地化についてはいろいろな感じを持つことだろうと思います。しかしながら、アジアの平和のため、アジアの安全のためこの処置が必要だ、これが必要でないというのは、共産党の方や一部の方ではないかと私は思います。かように考えまして、今日アジアの平和、安全のために絶対に必要な措置である、このことも国民の全体は、大多数の方は十分理解しておるのでございまして、ただいまのような非難は当たらない、私はさように思います。
  221. 高田富之

    ○高田委員 いろいろ理解に苦しむことを御発言になるのですが、いいですか、われわれわからないという意味は、こういうときに返すというのでしょう、極東における自由世界の安全保障上の利益がそこなわれない日までというのですね。どういう状態になったときに返るのですか。具体的に、よくわかるようにひとつお願いいたします。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来お尋ねがございましたが、一国の安全は、それは自力によって確保する、これが自主防衛、こういうことだと思います。わが国自身は、御承知のように、積極的に他に脅威を与えるとか、攻撃的な力を持たない、これは憲法で命じておりますけれども、憲法では、自衛権の範囲においてみずからの安全は私ども確保する、それだけの権利があるわけであります。自衛権がございます。しかし、今日の国際情勢から申しましては、自分の力だけで確保するということはできない。日米安保条約を結んで、その集団防衛の形においてこの国の安全を確保しておるわけであります。しばしば言われることでありますが、私は、日本はこの日米安保条約のもとにおいて今日の経済的繁栄を来たした、かように信じておりますし、また国民大多数もこのことをかたく信じております。この日米安全保障条約が、それではそういう意味で他から侵略される、そういう事態に対して防禦の役をしたか、こういう質問をしばしば受けるのでありますが、この力の均衡という問題、これこそがいわゆる戦争を抑止する力のあること、それを認めないわけにはいかない。侵略を抑止するだけの力があるのだ、これで初めて日本の安全は確保されておるのであります。この点に思いをいたされなくて、事が起きた、その場合に日米安全保障条約があったから、それで立ち上がって防衛した、かようなる事態ではございません。この力の均衡がとれている、こういうところでアジアの平和が保たれておる、ここにわが国の安全も確保されておる、こう私はかたく信じております。
  223. 高田富之

    ○高田委員 極東における侵略の脅威とか、そういったものがなくなれば、そういうときには返すのだ、こういうわけなんですね。だから、そういうときとはどういうときだといま質問をしたわけですよ。いま考えてごらんなさい。総理、いいですか、そういう危機がなくなれば、そういう危険がなくなれば返す、こういうのですけれども、大体そういう危険はどうして生じているのですかね。いままで日本ももちろん、アジア大陸には核兵器一つありゃしない。ろくな兵器製造工場もありゃしない。まあ最近初めて中国は核実験を二回やったのですけれども、これはアメリカのほうで世界一の、もう徹底した核装備、これでもって半月形に大陸を包囲して、そこでポラリス潜水艦だとかミサイルだとか、あらゆるもので太平洋狭しとばかりに、この中国を中心とするアジア大陸をにらみつけているわけでしょう。そういう状態。大陸にも日本にも何にもないですよ。アメリカだけがこれをやっておるんですよね。その脅威に耐えかねて原爆実験をやったんだと、中国はこう言っておる。われわれ中国の実験に賛成はしていませんけれども、それよりこっちのことがはるかに先なんです。その中心が沖繩なんです。沖繩全島核兵器の基地で、大陸を昼夜を分かたずにらみつけている。極東の脅威はここから発しておる。これを取り除かなければ極東に脅威のない時代は来ませんよ。これに賛成して、この島をもっと一生懸命そういう方針でおやりなさいと言っておる限りは、永久に脅威は去らないし、永久に島は日本に返らないのです。返りっこないじゃないですか。いいですか、時間がないからもう同じような答弁はあまり何ですから……。そういうことでもう少しお考え願いたいと思うのです。きのうは民社党の春日君から、やっぱり違法だ、アメリカがあそこに居すわっておることは違法であるということを平和条約の三条、それから国連憲章に基づきまして法理論的に、不法占拠をやっておるんじゃないか、こういう立場で堂々と施政権返還を要求しろというお説があったわけなんです。ああいう違法だという解釈は、むしろこれは通説だろうと思うのですよ。信託統治するといっておきながら、無限にしない。する気がもうない。そういうふうなことは、ちゃんと主権平等の原則で、国連に加盟している国の一部分を信託統治にするなんというばかなことはできっこない。だから、これははっきりと不法占拠なんです。そうでしょう。それを不法じゃございません、合法的でございますと、まるでアメリカの代弁者になって、合法的だ、合法的だと言い張るのですね。この態度では島は返りませんよ。永久に返らないです。  きのう答弁された法制局長官、あなたの解釈は、私、初めて聞いたのですがね、アメリカ的解釈を聞いたのですが、日本の本では、大体私ども春日君が述べられましたような解釈のほうが通説だと思う。学者の間にも、一般にああいう解釈があるのだ、春日さんの言っているような解釈があるのだということはお認めになるでしょう。
  224. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私は、ただいま仰せになりましたように、春日さんの御質問がありましたときに、そういうお説があることを承知しておると申し上げたことは事実でございます。そのお説は、私は不肖にして国際法学者のいろいろな資料によって知ることができませんで、しばしば国会の御質疑における議論として私は承知しております。大体、きのう春日委員から御発言が通説であるかのようにただいまもおっしゃいましたが、通説ではございませんで、きのう私が申し上げましたのは、国連憲章七十八条は、ある地域が独立をして国連加盟国となった場合に、同地域には信託統治制度を適用しないという趣旨である、その七十八条が、国連加盟国の領域の一部が信託統治制度下に置かれることを排除するものでないということをきのう申し上げましたが、それは好むか好まないかは別でございます。別でございますが、国際法学上の定説とされているほど明らかなことでございます。それからまた、きのうは申し上げておりませんが、国連憲章の七十七条一項Cという規定には、加盟国でありましても、その地域の一部を信託統治制度のもとに置く道が開かれております。そういうことで、昨日はそこまで詳しく申し上げておりませんが、そうでないほうの論が通説であるというふうに仰せられますと、実はそうではなくて、私が申し上げたほうが、好むと好まないかは別といたしまして、これは国際法学上の定説でございます。
  225. 高田富之

    ○高田委員 どっちが通説かなんということは、私も専門家でないからよくわかりませんが、相当広く私どものこの解釈は知れ渡っておりますし、またきわめて常識的に最もわかりやすいのですよ。ですから、そういう解釈を内閣法制局長官がとれば、これは日本の通説になってしまうのです。だから、そういう説があるならば、日本に都合のいいほうをとったらいいですよ。日本に都合が悪くて、アメリカに都合のいいほうの解釈を何もとる必要はない。日本の立場に立って解釈していけばいいのです。そうすれば、これは日本の通説になります。いまだってこのほうがほとんど私は通説だと思うのです。その議論はきのう相当ありましたから、きょうはそれ以上いたしません。  時間も来ましたので、もう一点だけ伺っておきますが、防衛駐在官は、いまどことどこへ何人ぐらい派遣してあるのですか。
  226. 松野頼三

    ○松野国務大臣 十カ国に、人数で十五名。内訳の二、三申し上げましょうか。
  227. 高田富之

    ○高田委員 ベトナム、韓国は行っておりますか。
  228. 松野頼三

    ○松野国務大臣 行っておりません。
  229. 高田富之

    ○高田委員 これから行く方針はありますか。
  230. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ベトナムに一名派遣したいという希望を持っております。韓国にはいまのところ計画はございません。
  231. 高田富之

    ○高田委員 そこで、この駐在官というものはどういう仕事、任務をするのですか。
  232. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私よりも、これは外務省所管ですから、外務省のほうからお聞きになったほうがいいかと思います。概略的には外務省のほうからお答えしていただきます。
  233. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事務当局をして答えさせます。
  234. 安川壯

    ○安川政府委員 防衛駐在官は、一般のいわゆる武官と大体同じ任務を遂行しておると考えていただいてけっこうだと思いますが、日本の場合は、大使館に配属されまして、大使の指揮、監督のもとに駐在国の軍事情勢について調査をいたしまして、それを本国に報告することを主たる任務といたしております。駐在官と申しますものは、特定の国といわゆる軍事協力をするというようなことは全くその任務でございませんので、駐在国をめぐる軍事情勢について調査をいたしまして、それを本国政府に報告するというのが、主たる任務でございます。
  235. 高田富之

    ○高田委員 もしも国境監視委員会というようなものに参加を要請されたというような場合に、駐在官などがそれに参加するのにちょっと適当なように見られるのじゃないか。そういうような場合に、参加することは可能でございますか。
  236. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この前それに類する御質問がございまして、それに対しまして、私は自衛隊法に抵触するかしないかという議論はさておいて、憲法上どうであるかというような御質問に対しまして、憲法上は差しつかえないものだと了解いたしますが、なお詳細は法制局長官からお答え申し上げますと、こう申し上げたのであります。
  237. 高田富之

    ○高田委員 それでは、法制局長官にいまのとあわせてもう一つ、この前これはどなたかの質問に答えられたのですが、念のためもう一ぺんお聞きしておきたいと思うのですが、国連軍の一員として自衛隊が出ていく、韓国なら韓国に出ていく。その場合に、日本の指揮、監督、命令権というものはなくなって、国連自体がこれを指揮し、監督していくということに完全になった場合、そういう場合にはこれは差しつかえないという解釈になりますか。先ほどの国境休戦監視委員とあわせて御説明願いたい。
  238. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 憲法解釈の範囲でお答えをさせていただきますが、最初の問題は、憲法九条で厳格に禁止しておりますのは、武力の行使を中心としたことでございますので、武力の行使にわたらない事項につきましては、話が別になってまいります。そこで、ただいま外務大臣がおっしゃいましたような、また先般この席でお話が出ましたような国連の監視団、これはレバノンの例がございますが、ともかくも専門家が参りまして一定の事態を監視をする、それ以上の使命はない、もっぱらその使命だけに尽きるというようなものであれば、憲法九条の問題にはならないと思います。そういう意味で、政策上の問題は別として、憲法上は問題がないというふうに考えます。  それから第二の問題でございますが、第二の問題につきましては、国連がみずからの意思によりまして武力を行使するというような典型的な事例というものが、いままであったこともございませんし、当面考えられる余地もございませんので、その点はいま論議をすることは必要ではないのではないかと思います。なお検討をいたしたいと思います。
  239. 高田富之

    ○高田委員 検討するというのですがね、これは法律解釈なんですから、はっきりしておかないと困ると思うのですよ。あなたのこの前の御説明で、国連軍の一員として行くのだけれども、派遣した国の指揮、監督、命令というものがつながりがある場合は絶対にいけないのだ。しかし、そういうものが全然切れて、日本なら日本というものとは全然違った意思によって管理、監督されているようなところに派遣するのだと抵触しないかのごとき御説明がありましたからお聞きするので、そこをひとつはっきり言ってください。
  240. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまの第二段の問題は、憲法との関係で申しますと、九条が禁止しておりますのは、日本国がその意思によって武力の行使をする場合に規定があるわけでございます。これは、御承知のとおりでございますが、そうではなくて、ほかの主体がその意思によって武力を行使する場合に、日本国が部隊を提供するというようなことは一体どうかという問題だろうと思いますが、その場合につきましては、ともかくも日本の憲法というものは非常に平和の理想を追っておりますので、その行動が、まさに日本国憲法がいっておりますような平和を維持することを念願としている国際社会における活動として十分に評価し得るものであるかどうか、その辺に問題がかかってくると思います。それは、その当該具体的な場合について考慮しなければ、にわかにそれをいいというふうにもまいらぬだろうと思います。そういう意味で、具体的な場合になりませんと、軍と申しましてもこれはいろいろございます。その中身をよく調べてみないと、一がいにいいとも、また一がいに悪いとも言えないと思います。そういう意味で検討をさせていただきたいと思います。
  241. 高田富之

    ○高田委員 これは、もう時間がないのであれですが、重大なことです。いままではそういう解釈はなかったと思うのですよ。過去、自衛隊海外派兵をしないとかなんとか、決議は両院ともやったこともありますし一こちらはどうでしたか、御答弁も、いつでもそんなことは絶対にないのだということでいままでは通っておる。そのうちだんだんくずれ始まって、今度は前回のどなたかの質問に対しては、理想社会、空想社会みたいなものが世界にできてしまって、その国の主権から離れて、全く理想的なある団体が世界の治安を守るようになればいいだろうなんていうような、まるで夢みたいな、仮定のお話みたいなことをなさったのですが、きょうのになると、やや現実的にあり得るのですね。そのときの国連なるものの性格云々ということでおっしゃると、そこまでまいりますと、もうこれは国連軍の名による出動ならば差しつかえなしということに、もう紙一重じゃないですか。どうなんですか。あいまいですよ。そんなあいまいな答弁はないですよ。
  242. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまお触れになりましたところと、非常に関係がございます。つまり日本の憲法の九条は、一つには、日本国の意思による、日本国民意思による武力の行使について規定してあることは、御説明を必要としないと思います。ところで、日本国の意思によらない、つまり他の国の意思によるという場合に、兵力を出すということは、通常にはこれは許されないことだと思います。なぜ許されないかというと、憲法九条というものばかりでなしに、憲法の全体の精神からいって、まさに平和に徹するという憲法でありますから、いいかげんなことではできない。しかし、ただいまちょうど御引用になりましたように、これはかねがね言っておることでございますが、世界の平和——世界の国際社会がある程度組織化されて、その社会における治安の維持をするために、その社会の組織化された団体の兵力を使って、ちょうど国内における警察行動のように、治安を守るというようなものができれば、それは話がまた別であるということを、これは再三にわたって申し上げております。そういうものと同視できるかどうかが問題であるものだから、それをいま簡単に同視できるとは申せない、こういう意味でございます。原則的なことは、少しも変わっておりません。もし御質疑があれば、さらに幾らでも御説明申し上げます。
  243. 高田富之

    ○高田委員 時間がありませんから、きょうはこの程度にしておきますが、いまの問題はさらにもう少し明確にする必要があると思います。  以上をもって私の質問を終わります。
  244. 福田一

    福田委員長 これにて高田君の質疑は終了いたしました。  次に八木昇君。
  245. 八木昇

    八木(昇)委員 私は、時間も十分でございませんので、できるだけまとめまして、労働問題一般についてこれから若干の質問をいたしたいと考えるのでございます。  私考えまするに、日経連とそれから政府は非常にいろんな点で緊密な関係にあって、特に労働問題については、政府がほんとうに全国民の生活を守るという立場で、労働者の問題についてもほんとうに真剣に、まじめに政府の責務ということを考えて対処してきたというようなことが非常に少ないのだということを、実は感じておるのであります。と申しますのは、ことしの春闘が始まるでございましょう。これを前にいたしまして、日経連は、消費者物価上昇を企業だけが背負う必要はない。むしろ賃金、物価の悪循環をこの際断つべきであるという方針を出して、盛んにPRをしておるわけであります。それにちょうど符節を合わせるように、佐藤総理は、先般の本会議答弁等におきましても、もし春闘がうまくいけば、ということは、この春闘であまり賃上げがなかったという場合には、物価は安定する、こういうことを言っておられるわけであります。これは私は、生活の危機にさらされておる勤労者に対して、さらに犠牲を一方的に労働者に負わせて、この追い詰められた経済危機を乗り切ろうとする政府考え方を端的に示しておるものだ、こういうふうに考えざるを得ないわけでございます。言うまでもなく、不況あるいは経済危機というようなものに対する対策は、これはきっとだれかの犠牲、ある種の犠牲が伴う。これがなくしては、この不況脱出ということはできないわけです。だれもが得をして、しかも景気はたいへんよくなったなんというようなうまい話は、これはありっこないわけです。こういうことを考えますると、これはやはり資本の側においてもこの際は相当の犠牲を背負ってもらわなければならぬ、こういうことをやっていくのが当然政府の任務でなければならぬ、こう思うのですが、そこいら辺についての総理考え方の基本といいますか、こういうものをひとつ明快にまず述べてもらいたい。  それから第二の点は、日本の現状においては、賃上げが物価高をもたらしてきたということは、これは必ずしも言えないと思うのです。というのは、労働省が出しております賃金白書、これによって数字を見てみましても、昭和三十五年の生産指数を一〇〇としますと、それから四年後の昭和三十九年に生産指数は一六九になっております。四カ年間で出産は七割伸びているわけですね。これに対してこの四カ年間に賃金は一体幾ら上がったかといいますると、名目でいいますと、四〇%ぐらい上がっておりましょう。しかし、この統計の数字によりますと、物価が上がった分を相殺いたしました実質では、昭和三十六年に四・八%の実質の増加、収入増ですね。それから三十七年には前年度に比べて五・四%、三十八年が三八%、三十九年が七・六%というように、生産は四カ年間で七〇%以上上がっているのに、実質賃金の伸びは二十数%ですね。その間物価はやはりこの四カ年間に二十数%上がっているようですね。こういうことを考えますると、賃金がふえましても、それは必ずその賃金で大衆は消費をするわけですから、それは有効需要ということになる。しかも設備はいま日本ではあり余っておって、出産する力はあり余っている、こういうわけだから、勤労者が消費支出をしたからといって、必ずしもそれは物価高にならない。しかも生産の伸びはこんなに上がっているのに、実質賃金の伸びはこれだけだ、こういうことを考えますと、わが国の現状においては、いわゆるコストインフレ、こういうものは考えられないと基本的に私は思っているのですけれどもね。  それはともかくといたしまして、そういう状態にもかかわらず、いままでおまえさんたちが賃上げをやったから物価が上がったのだ、それで、これから先の物価の上がりを押えるためには、ことしはさらにこの賃上げをいままでより以上にがまんしてもらわなければならぬ、こういう政府のいき方というものは、これは許されない。それは日経連がそう言うのはもっともだと思いますよ。資本家は、できるだけ労働者にうんと働いてもらって、安い賃金でいきたい、こう目前の計算にどうしても走りがちなのはやむを得ないですけれども政府最高責任者総理態度としては、それは許されないと思うんですよ。その辺の考えをひとつ明快にしてもらいたい。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず、この理論を発展さす上から、二つの問題が提供されたと思います。ただいままで賃金問題というものについて政府自身は直接は干渉しないといいますか、労働省であっせん的な役割りを果たしておりますが、政府自身が賃金をきめる、こういう立場ではない。したがいまして、これは労使双方で話し合いで良識のある処置政府とすれば期待する、こういうことで、皆さんがきめてくださいと、こういうことを申しておるのが基本的態度であります。最近のように物価問題が非常にやかましくなりまして、そうしてこれが九千万国民の共通の悩みの問題だ、こういうところから、この物価の鎮静、安定化に協力する、こういう立場で今度は各方面について意見を述べておるわけであります。したがって、まず第一に、政府自身が直接干渉するとか関与するとかいうことは、これは本来の姿のものではないのだ。この点では誤解のないように願っておきます。  また、物価問題は、各方面からいわれておりますように、総合対策を立てない限り物価は鎮静しないんだ、そのとおりだ、かように思いますので、いままでも大まかな大綱として、経済を安定成長に乗せることと、また同時に、生産性の低い部門の生産性を上げること、同時にまた、均衡のとれた経済発展を期すること、その意味でまた流通機構等も整備することなどの大綱についての話はしてまいりました。また、大綱については、おおよそこれは御理解をいただいておる、かように思います。したがって、基本的な態度は御理解がいくだろう。だから、もうかっているところにおいて賃金を上げること、これは差しつかえないのだと思います。ただ野方図に上げる、もうかったからこれはどこまででも上げていいんだ、かように考えられないで、もうかる企業においては、賃金や配当に分配するばかりでなくて、最終消費者に対する価格を下げる、こういう受益といいますか、そういうところにも利益を還元しろ、こういうことを実は申しておるのであります。ところでそういうように努力される、これを積極的にそこまで言わなくとも、労使双方で良識のある解決をなさいという、これがただいまの結論であります。したがって、まず第一のお尋ねに対してはさように答えます。  第二の問題として、物価と賃金との間に直接関係は、お説のとおりございません。これは賃金が上がったから物価が上がったとか、こういうように単純なものではございません。ただいま申し上げるように、もうかっている企業で、それが賃金を上げることはちっとも差しつかえないのだ。ところが、非常に困りますのは、いわゆる所得、賃金の平準化という一つの原則がある。お互いの生活を向上させよう、またこれが政治の目標でもある、かように考えますと、所得の平準化をはかる、こういう意味で、いかような産業に従事しておっても、企業間の格差なしに賃金は平準化すべきだ、こういうことが叫ばれて、しばしば生産性も上がらないのに賃金だけは上げなければならぬ、こういう事態が起こる。このことは、ただ単に賃金の平準化、その原則から賃金を上げなければならないんだ、こういうものでも実はございませんで、労働の需給の関係から見まして、いわゆる完全雇用の状態が起こりますと、賃金の低い部門にはどうしても労働力がいかない。いわゆる若年労働を期待することはできない。かような状態でありますから、生産性が低くても、必要なる労働力を確保するために賃金を上げざるを得ない。これがサービス業であるとか、あるいは中小企業におきまして、労働確保の観点から賃金を上げなければならない。これはやむを得ない部門もあると思います。  ところで、一番問題になるのは、そういうようにして、高い賃金で労働力を確保した場合に、その賃金の高騰したことが、容易に物価あるいは料金で吸収される。これは、たとえば公共事業の場合においてそういうことがいわれる。これは電車やバスのその時期は絶対に必要だ。高い賃金を払わなければ、どうしてもそこに所要の労働力を確保できない。だから高い賃金を上げた。ところが、これが料金を上げることによって高い賃金というものが吸収されるとか、あるいは中小企業の点で、たとえば食料品その他のものになりますと、サービス料金が非常に重なって、高い経営費が要る。その場合に、物価をちょっと上げればそれが吸収できる、こういうことがあるわけであります。それでこういう場合においては、どうしてもこういうものについての対策を立てなければならない。これがいわゆる生産性向上、こういう部門だし、また賃金や、また経営が困難なその理由も十分考えまして、低利長期の資金を融資するとか、その他の方法で経営の合理化をはかるとか、いわゆる最もやすい方法の物価や料金に賃金の引き上げを転嫁しないようなくふうをしてもらいたい。一番楽なのは物価、料金に転嫁することでありますから、そういう方法のないようにするということでいってもらいたいと思います。  でありますから、第二の問題として八木君がただいま御質問になりましたように、物価と賃金との間に直接関連あるとは私は申しませんが、同時に、ただいま申し上げますように、賃金が上がるために物価が上がり、あるいは料金が上がる、こういうようなことも起こりやすいのでありますから、物価自身を上げないということ、そういう国策、また今日の経済情勢に対処する上からもこれが必要だ、かように考えますと、この点は協力を願いたい、かように思うのであります。
  247. 八木昇

    八木(昇)委員 いま総理がお答えになりましたように、賃金と物価との関係は、直接には因果関係はないということはいまお認めになったわけですが、私もそう思うのです。結局、いまの実態というのは、物価が上がっていく、生産性は労働者が働いてどんどん上げておる。それなのに物価が上がっていく。そうすれば生活は苦しい。そうすると生産性の向上に見合い、さらに物価の上がりに見合った賃金をどうしても要求せざるを得ない、こういう形になっておる。結局、ほかのいろいろな要素からくる物価高、それに追いつくために労働者は賃上げに毎年一生懸命にならなければならぬ、こういうかっこうになっておる。その賃上げが今度は物価高を呼んでおるとは必ずしも言えないと思うのです。それは私も専門家じゃございませんからよくわかりませんが、ハーバード大学のハンセン教授の書いた「一九六〇年代の経済的諸問題」という解説本をちょっと読みましたが、これはいわゆる資本主義学者ですけれども、これもそのとおり言っておるのです。賃金と物価というものは直接の因果関係はないということを言い切っておるわけです。それは私はそのはずだと思うのです。たとえばもうけておる企業——おもに大企業が多いでしょうが、中小企業にだって、もうけておる企業があります。そういうところが賃金を上げることを押えた。生産性は一年間に相当上がったのに、賃金ベースアップは押えた。こうした場合に、今度は経営側の収入がその分だけふえるわけです。そのふえた分は、これを貯蓄に回すとかなんとかはしていないのですよ。結局その利益のふえた分を製品の値段を下げて大衆に奉仕することもしない。その利益のふえた分を貯蓄へ回すということもしない。その利益のふえた分をもって、今度はさらに設備を拡張してみたり、あるいはその利益のふえた分をもって材料をうんと買い入れて、そうして生産をまたやっていく分に回したり、こうするわけですから、結局は労働者が使うのか資本家側が使うのかというだけの違いです。全体の総ワクは同じなんです。そうでしょう。結局ことし三十億円労働賃金を払うか、三十五億円労働賃金を払うか、三十億円労働賃金の支払いで、これをあまりベースアップしないで押えつけることができた、資本家側は五億円もうかった、その五億円はやっぱり資本家側がいろいろな方面に使うわけでしょう。同じですね。そういう観点から考えますならば、結局、出どころは違い、それから消費する内容は違うけれども、総ワクの支出としては同じなんですね。それから今度は、もうけていないところという話がございますけれども、もうけていないところが生産性を上回ってことしも来年も再来年も、三年も四年もそういう賃金を払っていたのでは、その企業はつぶれてしまうのです。ですから、短期間で見れば、生産性を上回って賃金を支払うということがあり得ましても、しかし、ある一定の長期で見れば、特別の例外を除いては、そういうことはほとんどないわけです。しかし、そのために、そこのもうかっていない企業の製品の価格が若干上がるという面は、それはあるでしょう。しかし、一方において大企業でいまのような事情がございますから、やはり結論とすれば、これをいかにも意味ありげに、物価高が賃金値上げを呼ぶ、賃金値上げが原因となって物価高となる、こういうことを説明することによって、相互にまさしく因果関係があるかのごとく大衆へごまかして話すという傾きがあるということは、きわめて遺憾だと私は考えておるのであります。そこら辺についてあまり長時間論争しておりますと、先の具体的な問題についての質疑ができませんから、一応私の考えを端的に申し述べておく程度にとどめるわけでございます。  そこで質問第一陣の勝間田さんのときの質問にもあったのですが、これは経済企画庁長官にお伺いをいたしたいと思うのですが、今後の一年間の物価上昇を五・五%と一応見通されておるわけでございます。そうすると、直接の原因結果という因果関係はないにしても、政府はこの賃金の上昇と物価というものは一種の関連を持つというようなお考えのようでございますから、その点からいきますと、来年度の物価上昇を五・五%と見るについては、一体、勤労所得すなわち労働者の労賃、これはどのくらい今後一年間で上昇するか、端的に言えばベースアップするというお考えでこの五・五%の物価上昇となるという結論を出されたのですか。
  248. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体国民所得一二%ということでございます。
  249. 八木昇

    八木(昇)委員 ちょっと聞き漏らしましたが、国民所得が一二%ですね。そうしますと、これは経済企画庁が提案をされた閣議了解の「昭和四十一年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」これにおいて見ますると、国民総生産は今後一年間で一一一・三でございますから、一一・三%上昇する、こういうことになっておりますね。そうしてその中で、結局個人消費に当たる分、これの伸びは二・二%、こういうことになっておるわけでございます。この点からいきますると、この中の、個人消費の中の大ざっぱに言って約八〇%が勤労所得だ、こういうふうに考えるわけでございますが、その辺の認識を、私の認識に誤りがないかどうか、まずちょっと聞いておきます。
  250. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体お話のように八〇%であります。
  251. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますると、結局この個人消費の中の大部分を占めるところの勤労所得、これの伸びは本年度に比べて来年度は一二%ぐらい上がる。そうなりますと、ふえるというわけですね。一二%ぐらいふえる。ということは、労働者の数も若干ふえるでございましょうけれども、大ざっぱに言うて、ベースアップが一一、二%はあるだろう、こういうふうに見通しておる、こう言えるわけですか。
  252. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 詳しいことを申し上げますと、勤労所得で一二・六%、それから農林水産になりますと五・三%ぐらいの伸びでございます。個人業種所得の。大体そういうところでございます。そこで必ずしも個々の単位が一二%伸びるというのではないのでございます。
  253. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますると、大ざっぱに言って、大体一二%ぐらいはベースアップが総平均してあるだろう。その場合で、なおかつ物価上昇は、ほかのいろいろな要素がおもに働いて物価上昇すると思うのですけれども、物価上昇は五・五%ぐらい、こういうふうに考えていいのですか。そうして、そのことは、今度は逆にちょっと伺いますが、これは仮説ですが、その場合、もしかりに一銭もベースアップがなかった、こうした場合には、五・五%という物価上昇はもっと下がるのですか。どのぐらい下がるのですか。
  254. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いまのは総数の収入から申して割ったわけでして、その中には人数もございますし、あるいは生産性の問題もあるし、業種の問題もございますし、いろいろ違いますから、全体として一二%のベースアップをしたらいいのだということにはならぬのでございます。
  255. 八木昇

    八木(昇)委員 それは当然生産性の若干の向上と、それから労働者の雇用数というものも若干ふえるでしょう。しかし、それはおたくでちゃんと予想を立てておるのでしょう。どのぐらいの生産性の向上があり、労働者の雇用総数がどのぐらいふえるかということは見通しを立てておるわけですから。そうしますると、かりに、一二%がそっくりそのままベースアップといかないでしょう、若干。パーセントがそれより落ちるでしょうが、大体一〇%か一一%ぐらいのおおよそのベースアップ、こういうことになるのじゃないですか。
  256. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それは総数でそう申し上げるわけだし、統計としてもそう出ておりますけれども、一二%を一律にベースアップしたらいいという問題ではこれはございません。ですから、その点、いまのお話のように、全部が一二%アップしていいのだというようなお考えならば、それは違っております。
  257. 八木昇

    八木(昇)委員 いや、そう言っておるわけじゃありませんが、中には五%か六%しかベースアップしないところもありましょうし、あるいは非常に景気がいいというような企業では十数パーセント上がるところもありましょうから、企業別、産業別、企業の規模別、いろいろなことによって違いましょうが、大体大ざっぱに言ってその辺のところではないかということを言ったわけです。いま御答弁もありましたが、大体それに近いところだというふうに私は理解をするわけでございます。  そこで、先ほど問いました第二の点にお答えをいただきたいのですが……。
  258. 福田一

    福田委員長 八木君、ちょっと、企画庁長官から発言を求められておりますから……。
  259. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 二一%のとき人員増が三%あるそうでございますから、大体八%、こういうことであります。
  260. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと、先ほど質問いたしました第二の点、かりにベースアップがなかったという場合には、五・五%の物価上昇というものは、相当これは下がるのですか。いまのように大体平均八%ぐらいのベースアップを見込んで五・五%の物価上昇、こうおつしゃるのですか。
  261. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いま申し上げたように、平均八%ぐらいで推算をいたしておるのでございます。
  262. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、経済企画庁の、そういうようなはじき方というものそれ自体について、私は相当異論がございますが、それは一応省きますが、そういうことを大体企画庁は見通しをしておられる。ところが、企業の中では非常に悲惨な状態のところが幾つかあるわけですね。たとえば炭鉱に例をとりたいと思います。私は九州の佐賀県でございますが、全盛期には八十くらい炭鉱がございましたが、今日では杵島炭鉱、明治鑛業の山が二山、それに三菱鑛業の山が一つと、小さな山があと三つばかりになってしまっているわけです。そのうち明治鑛業の二つの山と、それから杵島炭鉱、との三山は、いわゆる政府の管理炭鉱という形になっておりまして、今後、年間のベース・アップは三%をこえてはならない、非常に厳重にやられておるわけです。年度末のボーナスは二万五千円をこえてはならない。この数年間、非常な生産性の向上、一人当たりの出炭量というものは、これはたいへんな飛躍的な増大であります。にもかかわらず、ずっとベースアップを押さえられてきて、なおかっこういう処置をされておるという状況に実はあるわけでございますが、そういったふうな状態、しかも明治鑛業というのは、福岡県の山がずっとつぶれて、それを整理するために金が要ったのであって、佐賀県の二つの山は黒字山なんです。それなのに、そういう目にあっておる。こういう点について、これは大蔵省と通産省とそれぞれに関連があるわけだと思います。で、この三%以上ベースアップをしたり、二万五千円以上の年末ボーナスを出したりしたならば、今後一切合理化事業団やその他からの金の貸し出しやら利子補給やら、そういうことはもう一切やらぬ、お前の山は知らぬぞ、こういうことでございますが、一体そういうことでいいのかどうかということを、これは端的に大蔵大臣と通産大臣からお答えいただきたい。
  263. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御指摘の山は、きびしい再建計画を立てて、労使間の話し合いでそういうふうになったわけであります。しかしながら、石炭鉱業は根本的な対策を講じなければならぬ段階に来ておるわけです。六月ごろには総合エネルギー調査会あるいは石炭鉱業審議会の最終答申が出る。その場合に、いま御指摘のものもずっとそのままでいいかどうかということは検討を要します。このときに他の炭鉱の抜本的な対策と合わせて検討を加えたいという所存でございます。
  264. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ボーナスのことだとか、それから昇給の話のことは、私、よく承知いたしませんが、管理四炭鉱に対する政府の助成、これは石炭鉱業審議会の経理審査会の答申をそのまま実行しておるものでありまして、適正なものだと考えております。
  265. 八木昇

    八木(昇)委員 通産大臣答弁といまの大蔵大臣答弁には食い違いがあるわけなんですが、通産大臣は、これは労使が自主的にそういうふうにおきめになったんだ、今後のことについては抜本的な石炭対策について六月ごろ石炭鉱業審議会が答申をし、政府が方針を立てることになるので、その際考えたい、こういう趣旨であったと思います。大蔵大臣は違うのですか。
  266. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大蔵省がやっておる財政援助ですね。これは石炭鉱業審議会の経理審査会がきめたそのとおりのことをやっておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  267. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは、大体意味はわかりましたので、先へいきたいと思います。  たとえば、今度は公共企業体なんかの場合を考えてみたいと思うのでありますが、これは労働大臣になるかと思いますが、公共企業体の当事者能力の問題がこの二年間ほど特に非常にやかましかったわけでございます。それにつきましてはあとで聞くといたしまして、去年、たとえば電通あたりの場合には六・五%しかベースアップしていないわけですね。それで、一般の産業の総平均は、これよりはるかに多く上がっておるわけです。ベースアップしておるわけです。で、公社というほんとうに国の基幹産業というようなところにおいて、最近非常に合理化も進んでおり、生産性も飛躍的に増大しておるというような電通のようなところで六・五%である。そうしますると、いま企画庁長官がお話をされましたように、来年度は大体産業総平均で八%ぐらいはベースアップがあるだろう。実際は政府の見込んでおられるものよりは私は常識的に考えてもっとベースアップすると思うのですけれども。そういったことから考えまして、公共企業体等につきましても、これは民間のベースアップと見合いながら、ほぼそれと均衡するベースアップがなされるべきだと私は考えるのでございますが、これは、当事者能力が非常に今日まではまだ公社当局に弱いので、これは政府態度が相当左右します。で、特に労働大臣あたりから、そういった点は相当強調してもらいたいという私どもの願望がございます。労働大臣からお答えいただきたい。
  268. 小平久雄

    小平国務大臣 公共企業体、特に電通の例を出して、上がり方が少ないじゃないかという御趣旨のようでございますが、昨年は、御承知のとおりいわゆるベースアップで六・二五%、そのほかに定期昇給が大体四・五%程度あったわけでございますので、合わせますと一〇・七余、こういうことになります。昨年の民間の賃金の上昇率も、最近わかったわけでございますが、大体一〇%という程度でございますので、その両者を比較しますと、そう電通等の関係が低い、こういうことにはなっておらないように私は考えております。
  269. 八木昇

    八木(昇)委員 いまの御答弁でございますが、定期昇給というのはベースアップとは別ものでございますね。それは、毎年年齢の高い人が定年退職をしていく。その人たちはみんな給料も高いわけなんです。その人たちがやめた数と全く同数の新入社員が入るとは必ずしも限りませんが、ほぼ均衡した数の新入社員が入る。その新入社員は、やめていった人の総平均の賃金よりもはるかに、何分の一か安い人たちが同じ員数だけ入ってくる、こういうわけです。その差の分を財源として在籍職員の昇給をやるというのがたてまえなんです。だから、これは全然ベースアップにならない。むろん人的構成によって若干の実質上のベースアップというような形になる面がないとはいえませんけれども。ですから、やはりほんとうのベースアップは六・五%である、こういわざるを得ないと私は思います。そこで、いまの御答弁は、大体民間あたりのベースアップと均衡した形でことしも電通等の賃金について考えなきゃならぬだろう、大体そういう趣旨だと思いますが、その場合の比較対象は、電通の規模と相類似した民間企業、こういうものと比較せられなきゃならぬと思うのです。零細な企業までひっくるめての総平均ということでなくて。その点のお考えはどうですか。
  270. 小平久雄

    小平国務大臣 公共企業体の従業員の給与は、御承知のとおり、民間の賃金水準等をしんしゃくしまして、労使間の協議によりきまることがたてまえでございますし、またそれできまらぬ場合には、言うまでもなく公労委の裁定等によってきまる、こういうことでございます。そこで、どこと比較するかということでございますが、それは公労委が裁定等をする場合において、法の定めるところに従って比較検討された後に、これが適当であろう、こういう裁定を出されるわけでございますので、おそらく電通なら電通というものについては、類似のものと比較する、こういうことになるであろうと思います。
  271. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、物価等に関する問題は、あと一問で終わりたいと思うのですが、これは総理にお答えいただきたいと思います。  物価と賃金という問題、これが悪循環を繰り返している、この際断ち切らにゃいかぬなどというようなことを大げさに言うことによって、目前の企業家の利益ということだけを考えて賃金を押えつける、低賃金に押しつけておくというようなことにばかり一也懸命になっておるような日経連のあり方というものは、木を見て森を見ざるたぐいというのですか、要するに近視眼的だと私は思うのです。長い目で見て、わが国の経済発展という観点から考えますると。そこで百歩譲歩いたしましょう。百歩譲歩して、ある程度のベースアップが物価上昇に影響ありとかりにしても、これはやはりベースアップによる労働者の収入の増加というものが、最終有効需要というものをもたらして、そうしてそれが経済発展につながる、こういう観点というものを政府はやはり、あんまり労働者が赤旗なんか振って、賃上げ要求をするのはけしからぬという感情がわだかまって、大局を誤るというようなことでなくて、そういう正しい認識というものを持ってもらいたい。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕  それから、今度は第二の点は、いまは非常に設備が余っているのですよ。そうして稼働率がずっと落ちておるし、これは国家的にいって実にもったいない。とすれば、ここにやはり大衆需要を加味せねばいかぬ。私あたりはいなかの県ですが、ここにある幾つかの工場というのは、一つはグリコ工場、味の素工場、それから大和紡績というのがある。これがつくっておるのは、全部大衆が消費する品物をつくっているわけですよ。しかも機械が相当遊んでいる。こういうことを考えますると、やはり減税の面も、企業減税ではなくて、この際は個人の所得減税、しかも、それは中高所得層ではなくて、中の下以下の大衆所得層に恩典が加わるという、そういう形の減税、こういうことを考えて大衆需要というものを喚起するという、そういう策を積極的に持っていくのが政府の責務であって、それを非常に奇妙な議論を展開して、賃上げは物価高をもたらすから、これはもう押えにゅいかぬ、悪循環を断たにゃいかぬというようなことを十年一日のごとく、ばかの一つ覚えでこれを言っているというような態度は改めてもらいたい、こう考えるのですが、最終的に総理考え方をもう一度述べてもらいたい。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、物価と賃金との間に直接関係を結びつけるということは、私はいたしません、かように申しましたが、同時に、賃金自身が物価に与える影響、これは一、二の例を申しまして、公共企業あるいはその他中小企業等で、賃金を上げたことを、今度は料金を上げたり、あるいは価格をつり上げることによって吸収している、そういう悪循環もある、こういう話をいたしました。問題は、やはり賃金と物価との間が悪循環になると困る。長期的観点で見れば、必ず労働者も賃金が上がり、そして物価も安くとめて生産性を高めよと、こういう時期が来る。だからひとつ長期的な目で見てくれ、近視眼的なことはいかぬ、この御注意でございますが、ただいまが物価並びに不況克服、実はことしとそそれだけやりたい。それは近視眼的だろうが長期的だろうが、そんなことおかまいなしに、ぜひとも効果をあげたいのでございます。そういう意味で、これはぜひ各方面の協力を得たい。これはもう物価の問題に関する限り、政府だけが幾ら肩を怒らしたり、そうして物価を安定さすんだといっていばったって、そのとおりできるものじゃないんだ、経営者も労働者も、全部が消費者だ、国民各界各層の協力を得て、初めてこれが成果があがるのでありますから、ぜひともそういうふうにいたしたい。  そこで、いわゆる春闘というものについて、私は直接干渉しようというのではありませんが、とにかく労働者、また消費者なりに、こういう観点に立ちまして、自分たちが賃金も上がるが、物価も上がった、これじゃ何のことやらわからないじゃないか、だからしばらくごしんぼう願っても、この際は物価を鎮静さす、一そうの御協力を願いたい、かように実は申しておるのであります。  また減税につきましても、企業減税よりも所得減税、これを強く要望される。これは過去の例をごらんになれば、大体所得税の減税が八割程度来ており、企業減税その他はきわめて小部分だ、かように思いますが、今回も六割は所得税の減税、四割は企業減税ということでありますが、これが少し多い、もっと企業減税は小さくしてもいいんじゃないか、こういうことでありますが、もともと減税をどういうようにするかということは、そのときどきの経済情勢と対応してきめるべき事柄でありますので、私は今回の減税措置としては、六対四の割合でしたことは適正なものであった、かように思います。また、中身におきましても、所得減税の場合に、中高所得者を軽減するのでなくて、中小所得者の低減、こういうところに特に力を入れたようであります。中の所得層というのが一番苦しい立場にいま置かれているのじゃないのか。また空活の状況から見ましても、伸び盛りといいますか、子供の教育その他の観点から見ましても、ちょうど生活費の要る所得層、そういう所得層の税を軽減さすのがいいんだ、こういうことで、今回は特にその点を留意したはずであります。言われるように、高所得者というものは今回の減税はあまり利益を受けてない、かように私は思っております。御指摘の事柄もございますし、すべてが生活が楽になるようにすること、そうして豊かにすることが私ども政治の目標でもありますから、お話しになりました点も十分留意してまいりまして、今後とも一そう努力してまいるつもりであります。
  273. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、問題をいま政府が今国会に提案を予定しておられるやに聞いております雇用対策法の問題に進めたいと思うのですが、私は、雇用対策法がいま提案されようとしておる際に感じます点は、やはり雇用対策というようなものは、一方において最低賃金法というふうなものがきちっと確立しておって、労働者の最低生活というものが守られておる、それから失業保険とか、あるいはその他失対事業というような問題についても、これがある程度確立をされておるという、そういう問題とあわせて雇用対策法というようなものが打ち立てられていかないと、へたをすると非常な危険性を伴う、こう考えるのであります。というのは、いま現実に政府がやっておられる状態は、最賃法はまさしくにせ最賃法である。それから失対事業については、これを事実上ほとんどなくなしていこうという方向をどんどん進められておる。失業保険についても、非常な改悪を実質的にやっておられる。最近は、結婚のために退職をされた女事務員の方は、あなたは結婚のためにやめるのだから、就職の意思がないじゃないか、就職の意思がない人は失業者と言えないのだから、失業保険はやりませんと言うて、実際窓口で全部はねられておりますね。こういう改悪をやっておるという状態の中で、いま雇用対策法というものをやる、こういうことは、一方において企業家の側が首切りをしやすくし、そうして安い、無権利な労働者がやむなく、泣く泣く非常に安い賃金で好まざる企業にも無理に持っていかれる、低賃金を非常に固定化する、こういうような影響も及ぼしかねない危険を伴うということが少なくとも言えると思うのです。ですから、そういう観点をやはりぜひ持っていただきたい、こう思います。  そこで、具体的な点はあとで伺いますが、したがいまして、これとの関連において、最低賃金法についてまず先に伺いたいと思います。これはどうなさるおつもりでございましょうか。大橋元労働大臣、そのあと石田大臣になられましたが、大橋元労働大臣は、昭和四十二年度から新最賃法をやりたいということであったけれども、できるならばそれをもう一年早めたい、そしてことしの通常国会に新しい最賃法をはかりたいという希望を持っているということを言われた。それから、しかもこの新最賃法の内容については、総評の幹部等々との話し合いの過程でも、ことばはそっくりそのままではないかもわかりませんが、若干の例外を認めるならば、全国一律の最賃法というものも可能だという趣旨のことを言われておるわけです。その点とあわせ考えて、総理は一体いつから新しい最賃法を実施されるか、その内容についてどういうふうに考えておられるか、お答えをいただきたい。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま最低賃金審議会に諮問しておると思います。その内容なり、またその答申の期待している時期——大体四十一年だと思いますが、それについては労働大臣からお答えいたさせます。
  275. 小平久雄

    小平国務大臣 ただいまの御質問と大体同趣旨の御質問が先般本会議でもあったわけでございますが、最賃法につきましては、御承知のとおり、さきに中央最賃審議会から答申がございまして、四十一年度末までは重点対象業種に属する約五百万人を対象にして、まためどをきめて、これを極力推進するようにということでございましたので、労働省といたしましては、推進計画を立てまして、これを推進いたし、ただいま四百万人をこすというところまで来ておるわけでございます。  そこで四十二年度以降のものはどうするか、こういう問題がございますが、これと関連して大橋元労相が、でき得れば新しい法律をただいまの国会に提案いたしたいという趣旨の御説明を申し上げたことがあるようでございます。しかし、私は昨年六月に就任したわけでございますが、その間のいきさつを聞きましたので、就任早々でございましたが、八月に四十二年度以降の最賃法をどうすべきか、ひとつ御検討をいただきたい、こういうことで中央最賃審議会におはかりをいたしたのでございます。  御指摘のように、将来の最賃法につきましては、全国全産業一律がよろしい、そういう方式をとれという御主張もありますし、あるいは産業別、職業別等にすべきだという御主張もありますし、いろいろの御主張がありますので、この最賃の問題は、もちろん労使にとりまして非常に大きな問題に違いございませんが、単に労使間の問題というばかりでなく、これは全体の国民経済からも大きな問題でもありますしいたしますので、労使あるいは公正なる第三者等の間において十分議を尽くして、各方面に御納得をいただいてやることが最も望ましいことだ、私はかように考えますので、中央最賃審議会のほうからなるべく早目にひとつお考えをいただきたいものだ、かように期待をいたしておるのでございます。ですから、この国会と申しましても、もう幾らも、時期的にはたして間に合うかどうか、いまのところ実はよくわかりません。しかし、中央最低賃金審議会におきましては、最賃基本問題の小委員会というものをつくりまして、すでに現在検討に入ってくださっております。したがって、これはなるべく早く答申をいただきたい。御答申をいただきますならば、それをもちろん尊重いたしまして、できるだけ早く国会にもおはかりをいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  276. 八木昇

    八木(昇)委員 ただいま労働大臣が御答弁になりましたように、現在最低賃金推進三ヵ年計画というものが行なわれておるわけなんです。それが昭和四十一年度でこの三ヵ年計画が終了するわけですね。それで、私の承知しているところでは、その推進計画というものが行なわれておりますけれども、実態は中小企業の総労働者数は千三百二十八万人。これは製造業の場合、従業員規模三百人未満の企業、卸売り、小売り及びサービス業については従業員五十人未満の企業に働く労働者が千三百二十八万人おる。それが昭和四十年十二月三十一日現在ですから、もうほとんどいま現在です。いま現在で、このうち最低賃金がともかく曲がりなりにも適用をされておる数、これはわずかの四百五万。でございますから、中小企業労働者総数千三百二十八万の中の三〇・五%にしかすぎない、この実態であろうと思います。そうしてその適用の今度は内容でございますが、その内容は、甲地区、乙地区、丙地区、こういうふうに分かれておって、丙地区というのは、日本全国の約半分くらいの地域が丙地区になっております。その三地区をA業種とB業種というふうに分けてございますが、甲地区の場合、A業種とB業種とありますが、一日当たりの賃金が四百円ないし四百八十円、乙地区が三百八十円ないし四百六十円、丙地区が三百六十円ないし四百四十円というまことに低い金額であるにかかわらず、この目安をこえておるものは、たしかほんとうにわずかで、一〇%ぐらいしかないのではないか。こういうふうに思うのでございます。そうなりますと、昨年度あたりの新制中学の卒業生の採用について、月収一万三千円というのが大体初任給の総平均だということから考えると、全部これ以下ですね。はるかに及ばない。こういう実態であると私は承知しておりますが、大体、ほぼこのとおりでしょうか。
  277. 小平久雄

    小平国務大臣 最賃の適用の状況でございますが、適用の人員の関係は、お話がありましたとおり、中小企業の従業員約千三百三十万に対しまして、現在四百五万人緯度でございます。それからいまお話の中で、目安の額をこえるものが一二%程度じゃないかというお話でございますが、それはまさにそのとおりなんでございます。一二・一%ほどになっております。それで、申し上げるまでもなく、これは目安をこえておるものがそうなんでありまして、目安の額内にあるものでございますね。これが大体多ければよろしいわけなんでありまして、これは全体の八六%ほどに相なっております。この目安未満のものが二%、これは現実に、確かにございます。こういう状況でございますので、少なくとも現在最賃のほうの御答申に基づく目安の額内、あるいはそれをこえておるものがもうほとんど大部分、こういうことになっておりますので、その点は別段問題はないと思いますが、ただ、これが御指摘のとおり現状に合うかどうか、こういう点でございます。この点につきましては、目下、目安の改定について、やはり最賃審議会で御検討をいただいておりまして、遠からずその答申も得られると思いますので、それが答申が得られましたならば、その線に沿うて、極力これが実現をはかりたい、かようにいま考えておるのでございます。
  278. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、現在の最低賃金の現行法の実態というものは、もうかくのごとしということが明らかで、もうほとんど問題にならないのでございますが、それはほとんど問題にならないということは、かねて、大体歴代の労働大臣もおおよそをお認めになっておるわけでございます。  そこで、現在の最賃法との関連において、ILO二十六号条約批准問題についてお伺いをしたいと思いますが、この現在の最低賃金では、ILO当局は、ILO二十六号条約、すなわち最低賃金について規定してある条約でございまして、これはしかも一九二八年に採択された条約でありますので、現在より、実に三十八年昔にすでに採択された条約であります。日本の企業の状態というものは、欧米に比べておくれておるとはいうものの、いまより四十年前のヨーロッパよりおくれておるという状態じゃないのであります。これは問題にならない。ところが、いまの日本の最低賃金法のままでは、ILO当局は二十六号条約の批准を認めないのではありませんか。いまだに批准をしていないというのは、一体どういうわけでしょうか。
  279. 小平久雄

    小平国務大臣 現在の最賃法のままでILO二十六号条約を批准することには若干問題があるようでございます。そこで今回御検討願うにつきましては、そういう点も疑義がないように、ひとつしていただきたいということで、御検討をいただいております。詳細につきましては基準局長からお答えいたさせます。
  280. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 私からお答え申し上げます。  御指摘のILO第二十六号条約批准の問題でございますが、現行の最低賃金法が制定されます段階におきましては、この条約が批准可能であろうという予測を持ちまして最賃法の国会通過を願ったわけでありますが、その後技術的に、特に業者間協定を中心にいたしまして、関係労働者の意見聴取その他の点について、ILO二十六号条約にそのまま適合するかどうかという点について、事務的にいろいろ条約解釈について疑点を明らかにすべくつとめてまいったのでありますが、その間におきまして、御承知のように、現在のような重点業種を定め、金額の目安を設定いたしまして、実効性ある最低賃金制度を展開していこうという過程におきまして、先ほど来先生御指摘のような基本問題の検討もございましたので、いま批准可能かどうかということを直接問題にするよりも、一方においては実効ある最低賃金制度の普及徹底をはかると同時に、ただいま大臣から申し上げましたように、中央最低賃金審議会におきまして、このような点につきましても疑点なからしめるような形においてひとつ措置できるような答申をお願いしたい、かように考えておるような次第でございます。
  281. 八木昇

    八木(昇)委員 とんでもない答弁でございます。いまどきそんな答弁をわれわれは承ろうとは思っていなかった。許されませんよ、そういろ答弁は。なぜかとい」ますと、いまからもう二年前の昭和三十九年二月一日の予算委員会で大橋国務大臣は、多賀谷委員質問にこう答えておるのです。二年前ですよ、これは。「二十六号条約につきましては、お話の通り現行最低賃金法成立の際に、二十六号条約を批准」し得る、そういう目的のために「国内においてこの法律を制定する必要がある、かような趣旨で最低賃金法が制定されたわけでございます。しかしながら、」——そういうことでいまの現行最賃法を制定をしたけれども、これがILO当局で認められなかったということを言っているわけですね。「しかしながら、御承知のごとく、現行最低賃金法は、最低賃金の決定につきましていわゆる業者間協定の方式をとっておるのでございまして、これにつきましては、二十六号条約に照らして適当なりやいなや、多少法律上疑問の点があるのでございます。したがいまして、この点についてILOの事務当局に対しまして判断を求めておるわけでございまして、それがためにまだ批准の手続をとることができずにおる次第でございます。」こう言ったのですね。それに対してさらに追い打ちをかけまして二、三のやりとりがあって、そうして大橋国務大臣は、「この問題につきましては、なるべくすみやかに批准をしたいという岸総理、」——岸さんの時代ですよ。「倉石労働大臣の御方針は、われわれも同感でございます。しかしながら、この批准をいたしまするには、やはり国内法が厳格に条約の要求する条件に適合することが日本としては必要だ、またそれが条約実施上責任ある態度である、こう思っておりまするので、いささか国内法に疑問の点がございますので、ただいまILO当局の解釈をただしておるのでありまして、ILO当局の返事を待ってすみやかに批准に進むようにいたしたい、こういう考えでございます。」これは二年前の大橋労働大臣答弁です。二年もたって、これよりももっとあやふやなような答弁を労働省がするなんてことは許されません。いまのような日本の最賃法は最賃法と認められない。そんな最賃法をそのままにしておいて、ILO二十六号条約批准は許可しないというのがILOの意思でしょう、どうです。
  282. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 私から答弁さしていただきます。主としてILO第二十六号条約の問題でございまするが、御指摘のように、当初は批准可能ではないかという予測を持ったのでございますが、詳しく申しますと、ILO第二十六号条約の第二条では、いずれの産業またはその部分に最低賃金決定制度を適用するかについて関係のある産業に労働者団体及び使用者団体が存在するときは、それらの団体と協議の上行なうこととされているという点につきまして、現行最低賃金法との関連はどうであるか。あるいはまた、条約第三条第二項第二号における関係のある使用者及び労働者は、最低賃金決定制度の運用に参与する場合、平等の数及び条件でなければならないということとされておりますが、これはどうであるかという点につきまして、労働省といたしましては、最低賃金審議会という三者構成、委員の数も同数でございますが、そのような機関があれば、そのような条件を満たすのではなかろうかというような判断を当初は持っておったのでありますが、そういった点につきまして、いろいろ疑点を明らかにしようとしつつある過程におきまして、実はそれよりも、一方においてはこの最低賃金に関する条約の趣旨を尊重しつつ、関係労働者の意見も聞きつつ、実効性ある最低賃金制をいかにして前進させるかという観点から、中央最低賃金審議会の答申をいただきまして、業種、目安の決定を行ない、現行最賃制度の展開をはかっておるような次第でございまして、御指摘のように、ILO第二十六号条約の精神に反するとかどうとかいう観点ではなくして、むしろそれに正しく適合したいという観点から、法の運用面においても種々配慮をしておるような次第でございます。  今後の点につきましては、労働大臣からもお話がございましたので、省略さしていただきます。
  283. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、これだけ明確な大橋労働大臣答弁があったにもかかわらず、なお二年間ILO二十六号の批准ができていないということは、これはもう歴然たる事実で、できなかったについては理由があるわけでしょう。それでILOはどう言っておるのですか。
  284. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 ただいまお答えいたしました諸点についての問題は、いわゆるILOに対する正式な公文書をもってする折衝といったような形ではもちろんございませんで、条約の読み方について事務的に内々連絡をいたしてきた、こういうことでございます。したがいまして、お話しのように、ILOの正式な回答とか、そういうような形をもちろんとっていないわけでございまして、事務的な、いわば、非公式と申しますか、事務レベルにおきますいろんな接触であった、かように御了承賜わりたいと存じます。
  285. 田中龍夫

    ○田中(龍)委員長代理 多賀谷真稔君より関連質疑の申し出があります。これを許します。多賀谷真稔君。
  286. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず、昭和三十九年の二月一日に私が質問をしたときには、ILOに照会をしておる、こう言った。そこで、私は、その前の年にILOに行っておりましたから、ILO事務当局から聞いておる。照会も何もしていない。そこで、してないじゃないかと私は聞いたわけです。いや、しておりますと、こう言う。そんなはずはないぞ、文書を出してみろ、こう言った。はっきりしないわけです。いま局長のほうから、くしくもその真相の発表があった。それは内々聞いておる。しかし、内々聞いたところが、ノーと言われておるのですよ。ですから、もう結論ははっきりしておる。ですから、三十九年の二月一日には、国会でうそを言っておるのですよ。いかにもいま折衝中だ、事情を照会中だと、こう言って逃げておる。そこで私は、そういうことではないでしょうと、こう言っておるけれども、いや照会中です。ですから、結論が出たらすみやかに批准の処置をとりたい。いままでの局長並びに大臣答弁では、結論ははっきりしておるのです。これでは批准できないというのです。そうすると、はっきりしたら批准の処置をとるというのですから、もう現行法では批准できないのですから、この答弁どおりはっきり批准するように現行法を改めてもらいたい。国会ではっきりしているのですよ。ILOに照会中である、その返事がはっきりしたら批准するような手続をとります。こう言っておるのですから、もうILOについては結論がはっきりしておるのですから、すみやかに批准するように現行法を直していただきたい。この答弁大臣からお願いしたい。
  287. 小平久雄

    小平国務大臣 いままでのいきさつ、あまり私よく調べておかないで恐縮でございましたが、いずれにいたしましても、先ほど申しましたとおり、現在中央最賃審議会で御検討いただいておりまして、その答申はこのILO条約の批准にも差しつかえないような内容にしていただくことを期待いたしておるわけでございますので、この答申が得られ次第、先ほど申しましたとおり、国会にもおはかりをいたして、批准のほうもすみやかに進める、こういう方針でいきたいと思います。
  288. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理、実は岸総理大臣のときに、この最賃法が提案をされた。そこで、私どもは、その政府が出されました法案ではILO二十六号条約に抵触しておるじゃないか、これではとても批准できませんよ、こう言っておるわけです。ところが、政府は、いや、これで批准できるんです。こう言って、とにかく逃げた。ところが、われわれが指摘したとおり、ILOでは、これでは批准できません、こうきておるわけです。そこで、われわれが質問をしたわけですけれども、しかし、一昨年の予算委員会では、ただいまILO当局の解釈をただしておるのでありまして、ILO当局の返事を待ってすみやかにに批准に進むようにいたしたい、こういう考えであります。こう言っておる。ところが、ILO当局の返事は、はっきりしているのですよ。いま別の要素を持ってきて、最低賃金審議会に諮問をしておるから、その答申を待って、こう言われておるけれども、国会の答弁はそうでないのですよ。ILOの返事が来次第、すみやかにやる、返事ははっきりしておるのです。できないのですよ。二十六号条約に現行法は抵触しておると、こうきておる。ですから、この答弁どおりひとつはっきり処置をしてもらいたい。総理から御答弁願いたい。
  289. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来の経過を私も存じ上げませんでした。たいへん不都合なことだ、こういうことでおしかりを受けておりますが、ただいま最低賃金審議会にかけておりますから、その結論を得次第早く直していくということで、先ほど小平労働大臣からもお答えしたとおり処置いたしたいと思います。ただいまの状況で、ILO二十六号条約から見ればどうしようもないことだ、もう今日そういう段階がきておる、これはもうはっきりいたしたと思いますので、今度の答申ではそういうことのないようにいたしたいものだと思います。
  290. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 当時、最低賃金審議会の答申を得てすみやかに批准の処置をとりたいと答弁があれば、私はいま総理大臣から答弁されたので納得するわけです。当時はそう言ってないでしょう。いまILOに照会をしておるから、ILO当局の返事があり次第やる、こう言っておる。ですから、ILO当局の意思ははっきりしているのですから、すみやかに批准の処置を願いたい、こう言うのです。ひとつ国会で大臣が責任を持って答弁をしておるとおり実行してもらいたいのです。
  291. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われることがわからないでもありませんけれども、現実の問題としてこの問題と取り組んだ場合に、いま過去の、大橋労働大臣ですか、当時のような状況には行なえないのですね。これはやっぱり最低賃金審議会にかけて、その答申を得てこれをきめる、かようなことになっておるのですから、それで、その答申を待ってください、いま直ちに改正しろ、かように言われても、それは無理だ、しばらく時間をかしてください、かように私は申しておるのですから、その点では過去の責任について、重々おわびを申し上げておるような次第ですから、その点は御了承いただいて、そして新しい答申を得て、こちらがっくる最低賃金法、これもまた、十分御協力を得たい、かように思います。
  292. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、政府答弁がそうくるくる変わるようなことでは、責任ある政治はできませんよ。最低賃金審議会の答申案で一言も言ってないのですよ。ILO当局の返事を待って、すみやかに批准に進むようにいたしたい。ですから、ILO当局の返事ははっきりしておるのですから、これはそもそも国会にうそを言って、この法案は通過をしておるのですよ。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 国会では、これを批准するために法案を出しておる、こう言っておる。それが批准できないのですよ。ところが、また三十九年二月一日の私に対する答弁も、ほんとうはうそなんですよ。もう結論はそのときにはっきりしていたのです。しかも、照会しておる、こう言うけれども、いま局長が話したように、内々にそっと行って聞いておるわけですよ。それでノーと言われているのですよ。その事実も私は知ってて質問しておるのです。ところが、そのことを政府は認めない。依然として、照会中でございますから、こう言っておる。こういういいかげんな答弁で、そのとき、そのとき、ごまかしてもだめですよ。これはひとつ答弁どおりやってもらいたい。
  293. 小平久雄

    小平国務大臣 総理からも申し上げましたとおり、また先ほど基準局長からも御説明申し上げましたとおり、現在の最賃法のままでは、ILO条約を批准するのに疑義がある、こういうことでございますので、ただいませっかく昨年八月以来、中央最賃審議会に四十二年度以降の分につきましておはかりをいたしておるところでございますから、その答申を得るに際しては、ILO条約上も疑義のないような内容のものをぜひ御答申いただきたい、こういってやっておるのでございまして、以前の御答弁のとおりにいかなかったことは、はなはだ申しわけない次第でございますが、今日の時点におきましては、先ほど私が申しましたとおり、この答申を得次第、それはおそらくILO条約上毛問題のないものになると思いますから、もちろん国会の御審議を経た上で、すみやかにILO条約の批准も進めたい。こういうことで一つ御了承をいただきたいと思うのであります。
  294. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま労働大臣からお答えいたしましたように、これから最低賃金審議会にかけて審議を頼む、こういうのではございません。もう昨年の八月からさような処置をとっておりますから、その答申の出てくることもそうおそくはないだろう、かように思いますので、いましばらく時間をかしていただきたい。これをお願いしておるのであります。過去のいきさつにつきましては、ただいま速記録によりまして明確になっております。また、いまの関係者等にいたしましても、過去の扱い方が御満足のいかないような状況になっておることについて深く反省しておるのでございますから、どうかただいまの状況において今後どうしたら一番いいか、ただいまの答申を得て、しかる後にこれを改正することが一番望ましい方法だ、かように思いますので、これを御了承いただきたいと思います。
  295. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国会に対してうそを言っておるでしょう。私、非常に問題だと思うのですよ。国会を欺瞞しているのですよ。法案を通過してもらえれば批准できる、こう言って国会へ出したのです。その国会で法案が通過したら、批准ができない、こうなっておるのです。そのうちにILOに照会をする、こう言っておるでしょう。そうしてその結論が出たら、すみやかに処置をとるという結論は出たわけですから、そのとおりやってもらいたい、こう言っておるのですよ。もう少し国会に対して責任を持ってもらいたい。ですから、批准できる部分だけを批准して、抵触部分だけを早く改めて、今国会に提案をされたらどうですか。
  296. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど来申し上げますように、国会で以前申し上げたとおりの運び方ができなかったということは、はなはだ不手ぎわでございまして、恐縮に存じておるのでございます。ただ、多賀谷先生よく御承知のとおり、現行の最低賃金法を改めるといたしまするならば、これはどうしても中央最賃審議会におはかりしなければもちろんならないわけでございます。そういうこともございますし、すでに昨年八月以来御依頼申し上げておるんですから、これが答申があり次第これはもちろん先ほど申しますとおり、ILO条約にも抵触しないような、そういう疑義などのないように、これは当然しなければならぬと思いますので、その上で国会のほうの御審議もいただくし、またそれを経た上で条約も批准する、今日におきましてはそういう手順を経るはかなかろう、かように思いますので、どうぞその辺を御了承いただきたいと思います。
  297. 福田一

    福田委員長 野原君に関連質疑を許します。
  298. 野原覺

    野原(覺)委員 ただいま最賃法の実施の問題で多賀谷委員からいろいろ追及がなされまして、総理並びに労働大臣から御答弁があったのでございますが、私は、総理の御答弁も、労働大臣の御弁解も、了解することができません。私どもはこれは了解できない。私は、実はけさほどわが党の山花委員が、固定資産税の問題を取り上げて、永山自治大臣にただしました。その際、山花委員は、元の自治大臣早川さんの公約をとって、固定資産税は三年間は増額することはいたしません、こういう速記を持ち出して、永山自治大臣に、なぜ一体三年たたないのに、二年目の今日増額するのかと言ったら、永山自治大臣は遺憾の意を表したのであります。このように、私どもは、国会で各般の問題を取り上げて政府を追及する、いろいろお尋ねをする。政府答弁に詰まって、いいかげんなことを答弁する。その答弁が守られていないということになりますと、私どもは何のために国会審議をするのかわからぬのである。これは、いろいろ審議した結果、公約をされたならば、少なくとも国会を尊重される御意思があるならば、国会において答弁されたことは、これは守ってもらわなければならぬのであります。これは元の労働大臣であるから、あるいはさきの自治大臣であるからということでは、私は済まない。政府は一貫性を持つべきなんです。しかも同じ政党の自民党じゃございませんか。自民党政府じゃありませんか。その自民党政府大臣がかわりますと、もう前の答弁はすっかり忘れて、違ったことを平然として局長答弁をさせて、多賀谷委員が追及しなかったならば、これはまたここでごまかされてしまったかもわからぬのであります。しかし、八木委員にしても、多賀谷委員にしても、このことは十分検討しておりましたから、私どもはここで問題にいたしたのでございますが、こういうことでありまするので、私はとにかくこの固定資産税の問題、それからILO最賃法実施の問題、たまたまこの二つの問題が、本日午前と午後二回にわたって出てきた。またあしたも出てくるかもわからぬ。あさっても出てくるかもわからない。これでは、私どもは実は真剣に予算審議をするわけにいかない。このことについて、政府はどのような反省を持たれるのか。私どもしばらくここで退席をいたしますから、十分ひとつ御検討の上御回答あらんことを要求いたします。このままでは審議できませんから、社会党は退席いたします。
  299. 福田一

    福田委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  300. 福田一

    福田委員長 それでは速記を始めて。  小平労働大臣
  301. 小平久雄

    小平国務大臣 八木委員の御質問に対しまして、お答えを申し上げます。  労働大臣は、中失最低賃金審議会に、現行最低賃金法がILO二十六号条約に適合するよう、すみやかに、その改正案を求めるため、諮問をいたします。
  302. 八木昇

    八木(昇)委員 それでは、ずいぶん時間をとりましたので、最低賃金法につきましてお伺いをいたしたい点は、あともう省略をいたします。  それから、なお雇用対策関係につきましてもお伺いをしたかったのでございますが、これは分科会等に譲ることにいたしたいと思います。  あと私、二、三の項目についてお伺いをいたしたいと思うのでございますが、一つは、最近の労働災害の非常な頻発に伴うその後の処置の問題についてでございます。御承知のように、三池炭鉱で大爆発がございました。その大爆発がございましてからすでに二年数ヵ月を経過をしたのでございますが、御承知のように、現在の労働基準法やその他の法規によりますというと……。   〔発言する者あり〕
  303. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  304. 八木昇

    八木(昇)委員 こういう業務上の事故のために被害を受けた方々につきましては、三ヵ年間に限って使用者に対して解雇制限措置がなされておるわけでございます。ところがこの三池炭鉱の災害があってから三年といいますと、ことしの十月にその三年がくるわけでございます。ところが、現在まだたくさんの人たちがこの療養その他をしておる状況でございまして、現在までの法規のままでは、大多数のこの療養者の人たちは、今度は職場を失うという不安にいまやさらされておるという状況でございます。  そこで、こういったふうな問題について、政府としてはどういう考えを現在お持ちになっておるか、その点を総理から考え方について述べていただきたい。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 必要な休養、療養は続けていくつもりでおります。そういう点で労働大臣から詳細にお答えさせます。
  306. 小平久雄

    小平国務大臣 御指摘のように、三池の爆発事故から近く三年になるわけでございますが、三年を経過いたしまして、なおかつ治癒しない、こういう方々に対しましては、長期傷病補償給付に移るわけでございまして、これは、治癒するまでその後も引き続いてもちろん治療を受けることができますし、また一方、年金納付に相なるわけでありまして、御承知のとおり、これは基礎日額の二百十九日分の年金の給付が引き続いて行なわれる、こういうことになるわけでございます。ただし、三年経過後におきましては、雇用主のほうで解雇することができると、こういうことに相なっております。  そこで、現実の問題として解雇するかしないかという問題は、これはいわば労使間の問題であるわけでございますが、私としましては、事情も事情でございますから、犀川主のほうにも十分事情を理解していただいて、その間円満な処置ができるように私としてもできるだけ努力をいたしたいと、かように考えておるところでございます。
  307. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、少し具体的に伺いたいと思うのですが、あの三池炭鉱の災害の際になくなられた方は四百五十八名であります。四百五十八名の死亡に加えて一酸化炭素中毒患者になられた方が八百四十一名という大多数であったわけであります。それから二年数カ月たった今日なお入院をしておられる方が二百八十六名、通院をしておられる方が百八十二名、万田回復指導所に通っておられる方が二百四名、職場復帰をされた方はわずかに百六十九名でございます。しかもその職場復帰をされた方の百六十九名も、もともと坑内夫であった方であって、坑内夫に職場復帰をできなかった人というのが相当多数あるという実情もあるわけでございます。そこで、特に一酸化炭素中毒は、御承知のように神経障害、精神障害、こういう状態でありますので、労働基準法や現在の鉱山保安法あるいは労災補償保険法、こういうものの規定する範囲内の保護措置では、これは私は救済できないと思うのです。  たとえば、もうこの十月でまる三年になる。そうしますると、会社はそれでもなお職場復帰ができない人については、法律上はいつでも首を切ってよろしいということになるわけです。それからなお療養を続けておる人の場合は、その後二年間ぐらい療養をする間の療養費は出ますが、一応これでなおったということになると、一時金をもらって、むろんもう会社からもほうり出されておる。ところがこういう病気でございますから、実際表面には出ていない非常な悲惨な神経障害というのがまたいつ発生するかわからないし、昔の姿には文字どおり完全には戻らない。こうなりますと、一堂飼い殺しで病院から出ることができない。もう一生病院に入っていなければならぬという人と、それから三年ぐらいで職場へ戻れた人はいいですが、その中間の人についての補償措置がないわけですね。これは、現在の法規ではどうにもならないことになっておる。これは当然、一酸化炭素中毒のようなこういう特殊のものにつきましては、単独立法をしなければならぬのじゃないかと思う。これは労働大臣だけではお答えができないと思いますから、総理の決断いかんにかかっておる。いま全日空のあの悲惨事もございましたが、しかし、それとまさるともこれは劣らぬ、ある意味ではもっと悲惨な事故でございますので、そういった点についての総理の前向きの姿勢といいますか、こういうCO中毒については、現行法の不備の部分を補正して、でき得べくんば単独立法をする意思があるかどうか承りたい。
  308. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一酸化炭素中毒に対して、その援護といいますか、療養等給付金全般にわたっての単独立法をしたらどうかと、こういう御提案でございますが、特殊の災害だけについて単独立法をするということは、よくよくの場合だと実はかように考えております。他にもいろいろ影響するところがありますので、それでいままでは、この一酸化炭素中毒に対して単独立法をしないほうがいいんじゃないか、現行法律の運用で大体いまの要望にこたえられるのじゃないかと、かような結論でただいまこれに対処しておるのでありますが、しかし、ただいまも八木君から単独立法を強く要望されております。私は、いま言われる中間的なものというのはよくわかりませんので、なおそういう点について検討さしてみたいと、かように思います。
  309. 八木昇

    八木(昇)委員 いま総理から、わりあいに積極的な御答弁がございましたので、一応きょうはこれで質問は、このこと自体につきましては突っ込んでいたしませんが、いずれにいたしましても、現行法では実際問題として救済できません。  そこで、当面どういう措置をするかということが問題ですね、事態がもう半年後に迫っておりますから。そこで、ご承知のように総評、炭労、三池労組とそれから労働省との間に、ある程度話し合いが数回持たれてきております。ほとんど煮詰まった段階に現在きておるようでございますが、その中で、どうしても労働省との間に話し合いがつかない二、三の点があるわけです。  その第一は、現行法規では三年たつと長期給付に切りかえられ、会社との雇用関係が切れることになっておる、この問題ですね、先ほど来話しております。この問題について、労働省としては、法律を改めるということはできないが、しかしながら、実質的に労働大臣が、三井の会社にいろいろと話をして、解雇をしないように責任を持って話をしたいというようなところにとどまっておるようであります。ところが、実際にこの役に立たない状態の人を、今後五年も十年も一体その会社がほんとうに雇い続けてくれるか、ただ単なる話し合いというようなことで一体それでいいのか、この三池の問題についてのみは、相手が大三井資本であるからある程度それができたとしても、ではほかの企業の場合、それが一体できるのであるか。それから石炭鉱業以外でもこの一酸化炭素中毒というものは発生しますから、そういう普遍的な場合を考えるときに、これでは納得しがたいと思うのです。この点、もう一歩進んだ態度をとってもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  310. 小平久雄

    小平国務大臣 ただいま御指摘の点につきましては、八木委員お話がございましたとおり、他にも類似の事例がありますので、CO関係だけで解雇についても従来の法定以上にその期間を延ばすとか、そういうことがはたして適当であろうかどうかということを検討をいたしたい、かように考えておるわけでございます。それから当面といたしましては、私は先ほど申しましたとおり、解雇の問題につきましてはできるだけのあっせんといいますか、そういう努力をいたしたい、こう思っておるわけでございます。
  311. 八木昇

    八木(昇)委員 私はほんとうは非常に不満足なんですけれども、これはぜひ、当面三年たっても解雇措置にならないように、実際措置として責任を持ってもらいたい、こう思います。  それから、その次の問題は、現在は特別看護料というものが出ておるわけですね、家族の方が実際看護措置にずっと長期に当たっておられるものですから。これが三月で一応切れるという形になるが、今後も継続してもらいたいという問題です。  それからもう一つは、あの当時三池炭鉱は、非常に極度に、経済的に大争議のあとで苦しかったものですから、六%の賃金のたな上げという状態にあったわけです。災害が発生したときです。したがいまして、現在、この罹災者で療養をしておる方の、しかも坑内夫の方でございますが、現在の坑内夫の最低賃金は一万六千円、日額五百三十円、これに満たない人が相当数あるわけですね。これは少なくとも坑内夫最低賃金の額相当分までは、これを保障をしてもらいたい。しかも坑内夫最低賃金制一万六千円がきまったのは三年ばかり前のことでございますから、何年か前のことでございますから、それを実情に引き直した額にでき得べくんばしてもらいたい。その額まではぜひ保障をしてもらいたい。この二つの点について話し合いができておりません。労働省側がこれをうんとまだ言っていないというふうに私は聞いておりますが、この点もぜひ願いたい。
  312. 小平久雄

    小平国務大臣 第一は、特別看護料の問題でございますが、これは、お話がございましたとおり、三月末までは従来どおりやろう、こういうことでございます。それから三月以後のものにつきましては、重症のもの、つまり一症度から三症度のものは、もちろんこれはやろう。しかし、ごく軽微のものについては、ひとつ検討させてほしい、こういうことに話ができておるわけでございます。  それから第二に、三井鉱山で賃金を六%たな上げした問題でございますが、これにつきましては、六%アップしたものとして給付をするということは、法的にこれはどうして為そういう解釈は無理なようございますので、これはさように申し上げておるわけでございます。  それから第三に、最賃に満たない方の分でございますが、これは、最賃まで引き上げて給付を行なおう、こういう方針でございます。
  313. 八木昇

    八木(昇)委員 これは、私が要望した点をもう一度繰り返したいと思いますが、時間を節約する意味で、どうもいまの答弁のままではまだ不満足でございますので、今後さらに私ども実際問題として折衝を続けたいと思います。  そこで、できるだけ急いでやりたいと思いますから、あと二つの問題、教職員の超勤協定の問題と、それから公共企業体の当事者能力の問題、この二つだけで質問を終わりたいと思うのであります。  まず、教職員の超勤の問題であります。これは、文部大臣が御答弁になるのが適切であるかどうかわかりませんが、一体どういうわけで学校の教職員だけ、日本のすべての働く人の中で超勤の場合の時間外労働賃金が支払われないのですか、その理由をひとつ承りたい。
  314. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 お答えいたします。  私も実は事の起こり、次第は承知をいたしておりませんが、考えますのに、各俸給表ができますときに、そのころからの論点であったようでありますが、結局、教職員は、おそらく教鞭をとるのは最高で週二十四時間ぐらいと思います。したがって、超勤というものはあり得ないのだ、かりに場合によってあるにしても、その他の休暇等が一般公務員と違ってあるから、超勤制度というものはそぐわないのだ、こういう考え方が当時強くあって、そうして、そういう考え方で今日に推移してきておると思うのであります。ただし、そこで、超勤手当がありませんから、初任給で若干調整をしようということで、従来は私の記憶では、上級職甲の公務員試験を取った者と、大学を卒業して教職員に就職する者との開きは千百円でありましたが、ことしの人事院勧告でその差が二千円になりまして、教職員の場合には初任給が二万三千円であります。それから上級職甲の公務員試験を合格して教職員になる者は二万一千円、こういうことになっておりまして、どうも私は事の起こりは詳しく存じませんが、そういう経過をたどって今日に至っておるように承知いたしております。
  315. 八木昇

    八木(昇)委員 いまの答弁は事実に著しく相違をしておると私は思うのであります。というのは、文部省御自身が調査になっておられるわけでございますが、教員の勤務実態調査を文部省自身がやられました。文部省の初等中等局ですか、昭和二十七年にやられた調査によりますと、全国平均小学校で週五十九時間八分勤務をしておる。中学校で五十九時間二十九分、高校で五十三時間四十五分。御承知のように、条例による勤務時間は四十四時間でございます。ところが、こういう数字であります。それから文部省調査局が昭和三十二年に調査された結果によりましても、小学校で五十四時間四十九分、中学校で五十四時間四十四分の勤務をしておる。これは文部省御自身の調査でございます。そしてごく最近、静岡県等におきまして職員会議等がよく行なわれる。それで、どうしても職員会議は相当夕刻おそくまでかかる。これは、校長が職員会議をやるから集まれとおっしゃるから、集まって会議をやるということになる。これに対して時間外手当が支払われていない。この時間外手当を支払えという訴訟を起こしたわけです。その訴訟の結果、ついこの間、一月二十二日、静岡地裁で判決が出た。御承知だと思います。支払うべきである、請求した金額がそのまま、それに利息をつけて支払えという判決になっていますね。それから昨年の暮れの十二月二十一日には、同じように高等学校の先生方の訴訟についての判決があった。これも原告側の勝訴になっておるわけですね。これらについて一体どうお考えになっておるでしょうか。
  316. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 先ほど私が申し上げましたのは、教育職員俸給表ができます当時の事情がそういうことであったように承知いたしますので、その次第を申し上げたわけでありますが、実情についてはいろいろ議論がございます。そこで、文部省としても、従来御指摘のような調査をしたことがありますが、これは、調査費等をかけて、そして合理的な調査をしたのでなくて、そういう一応のデータは出ておりますが、はたして客観性がどこまであるかということに問題点もありますしいたしますので、文部省としましては、私も在野当時からこの問題のあることは承知しておりましたので、今度はひとつ若干の経費をかけて合理的な基礎調査をしてみようではないかということで、就任早々の八月の概算要求のときから、この調査費の計上を要求いたしまして、四十一年度予算には八百何十万円かこの経費が計上されることになりましたから、私どもとしましては、人事院あるいは財政当局あるいは自治省、こういう関係方面が御納得いただけるような客観性のある調査をしてみたい、かようにいまのところ考えて、それで、ひとつ年度がかわりましたらこの実施をしたい、かように考えておるわけでございます。
  317. 八木昇

    八木(昇)委員 さらに突っ込んで申し上げたいと思いますが、教職員にも超勤手当を出すべきであるということは、人事院が何度も勧告をしているわけです。これは御承知だと思います。そして、実際理論的にも私は矛盾しておると思うのです。というのは、私の記憶では、相当前に地方公務員の行政職——県庁の職員やその他の管理職の人に管理職手当を出すということになったわけですね。そのときに、課長さんとか部長さん、あるいはそういう役付の人はもともと高い俸給をもらっているのに、加えて課長手当なんというものをなぜ出すのかということを、国会で質疑があったと記憶しております。そのときの説明が、平職員の人たちには時間外手当が出ておるが、管理職には時間外手当が現在出ておりません、だからそれに見合うものでございます。こういう説明政府がしました。それが正しいかどうかは別として、そういう説明をした。ところが、それから今度は時がたって、小学校の校長、教頭に管理職手当を出すということを政府がやり出した。そこで、どうして出すのだ、校長、教頭クラスはもともと高い俸給をもらっているのに、なぜそれにまたプラス管理職手当を出すか、こう迫ったわけですね。この前一般行政職の人の役付に管理職手当を出す場合は、一般職員は時間外手当をもらっているが、管理職は時間外手当をもらっていないから、それに見合うものだと言うたが、一般教員は時間外手当をもらっていないじゃないか、それなのに校長、教頭に管理職手当を出すということは、これは全く矛盾しているじゃないか、こういう追及があったと思います。その際も、これはどうにも政府答弁ができないのです。だものですから、行く行くは、一般教員も時間外手当を出さざるを得ないようなことになりましょうというような、それも何ともばく然としたようなことで逃げたという経緯です。この点から言いますると、これはどうしても出さなければ済まぬと思うのです。学校の先生が時間外労働をやっていないなんということを考えている人はだれもいませんよ。特にいなかの小中学校なんというのは、それはほんとうに学校の先生方は毎日おそくまでやっていますよ。ですから、これは当然出さなければならぬ。そこで、いま文部省としては調査費を組んで調査をことしやります。こういうわけですが、それは当然、超勤手当を出したい、その前提の上に立っての調査である、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  318. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 これは、いろいろ議論もあるし、問題点がございまして、役所の職員でございましたら、職場で超勤をするときには超勤をしておるわけですが、学校の職員の場合には、超勤が一体だれについてどれだけあったのかということは、なかなかむずかしい点だと思うのです。たとえば、家庭訪問をするとか、あるいは教壇に立つのは一日四時間かそこらであるにしても、その教材を整備するのに時間はどうなるか。人によっては四時間授業をするためには五時間の教材整備が必要な人もあるかもしれない、人によっては二時間も教材整備をすればりっぱに教べんのとれる能力の人もあるかもしれない、そういういろいろな実情の差がありますから、いままではこの超勤というものに非常にそぐわないものという判断で、今日に至っておると思うのです。人事院も、最近のそういう議論にかんがみまして、昨年、この状況について研究をする必要があるのではないかということを勧告に付言をしてこられました。今年の勧告の際には、去年のような付言をしませんで、初任給の引き上げで、大体一般の公務員よりは二千円アップという勧告が行なわれまして、この勧告どおり実施をすることになっておるわけでございます。  私どもも、いろいろの問題点がございますから、いまお話のとおり必ずやるという考え方でするのかと言われると、これはまたいろいろ問題であろうと思います。人事院その他関係方面が御納得されるだけの客観性のあるデータが出るかどうか、これはやってみてからの上で検討する、いまの段階ではこう申し上げる以外に方法はない、かように考える次第でございます。
  319. 八木昇

    八木(昇)委員 これは、当然のことではございますが、人事院勧告の方向を目ざしてやるというふうに了解してよろしゅうございますか。
  320. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 昨年の人事院勧告にそういう研究をする価値があるではないかという付言がございましたので、その線に沿って調査をいたしたいと思っております。
  321. 八木昇

    八木(昇)委員 教組関係についてはあと一問でございますが、実は、これも私の県のできごとでございますけれども、九州の佐賀県で昨年の官公労の統一実力行使のとき、去年の十月二十二日を前にいたしまして、その前日の二十一日に、県の教員組合とそれから教育長との間にいろいろ交渉が行なわれた際に、実はこの超過勤務の問題について協定文が取りかわされたいきさつがございます。その協定文はどういう文章になっておるかといいますと、ちょっと読み上げますが、「一、教職員の勤務時間は、労働基準法及勤務時間に関する条例に基き、一週四十四時間以内、一日八時間以内とし、これ以上の勤務は一切行なう必要はないし、これを超過する場合は、労働基準法第三十六条の規定により、佐教組との間に話し合い、協定を行い、超過勤務手当を支払うものとする。」これが第一項ですね。  それから第二の項は、「一、労働基準法に基き、一日四十五分の休憩時間を必ず与えなければならない。したがって給食事務、休憩時間中の児童生徒の取扱いは校長、教頭の責任とする。」それから「一、右の件に違反する校長に対しては厳正な態度をもって措置する。一、以上の件については、教育長名で地教委、校長に通達する。」これは県教組委員長と、佐賀県教育長との間に正式の文書の取りかわしがあった。すなわちこれは、いまの読み上げたことでおわかりのように、原則として教員に超過勤務はやらせない。しかし、超過勤務が行なわれなければならない場合には、ちゃんと協定を結んで時間外手当を払いますという協定をしたわけです。ところが、その後、県の教育委員会は教育委員長が何度も文部省に上京してきた。そうして飛行機で飛んできて、行ったり来たりしまして、初中局と打ち合わせをして、どうも文部省は、こんなことをやってもらったら大ごとだ、たいへんだ、これが全国に波及したら一大事だということで、まあいろいろなへ理屈を教えてブレーキをかけた。そうして、今日に至るもこれを履行していない、これは一体何を意味するかというと、超過労働賃金が払わるべきである、払わるべきでないということ、そのこと自身もさることながら、やはり教師の労働条件については出先だけではどうにもならない。全国的に大体同じ事情を持つ労働条件の問題については、中央の文部省と交渉をしないと解決しない、そのことを端的に示している例ですね。これは、いわゆる日教組の中央交渉と深くからみ合っておる。現在、文部省の態度は、年に三回か四回ぐらい、労働条件の交渉ということではありませんが、懇談会というようなことで意見をお互いに述べ合うというようなことはいたしましょうというような態度のようですが、それは今度のILO、ユネスコが一緒に出しました教師の地位についての勧告案の精神にも違反しておると思うし、今日の教員の労働条件問題の実態、事実上この労働条件を握っておる日本の文部省のいまの実態にこれは著しくそぐうていないと私は考えるのですが、その点はどうお考えでございましょう。
  322. 中村梅吉

    中村(梅)国務大臣 これは基本的な問題も含まれているわけでございます。佐賀県の協定が、二十二日のスト指令の前夜から、徹夜をしましてこういう協定に調印をされたといういきさつ等も御承知のことと思いますが、これは別といたしまして、大体市町村立学校の教職員は市町村地方公務員であります。したがって その教職員に対する勤務命令その他の指揮監督権は、直接は市町村にあるわけであります。ところが地方教育行政の組織及び運営に関する法律、この第三十七条によりまして、給与の県費負担の教職員の任命権及び給与の支払いは県が責任を負う、こういうことになっております。しかし、実態はこの市町村の公務員でございますから、超勤の協定をするとか、あるいはもし超勤の命令をすれば、超勤手当を払わなければならない筋合いだと思いますが、そういう超勤の手当の問題とか、こういうものは市町村の責任に属することでございます。これを市村町の教育委員会に何ら協議もなしに、とっさの間に県教育委員会がこういう協定を結んだということは、どうも権限外のことである、こういう判断がわれわれ文部省側にもされたわけであります。県のほうから協議を受けましたから、そういう疑義があるじゃありませんかということで、いろいろ研究を県の教育委員会もされました。  またもう一つは、先ほどもお読み上げがございましたように、一日四十五分の休憩時間は必ず与えなければならない。これは労働基準法できまっておりますから・そのとおりでございますが、この四十五分をどこへとるかということは、これは学校管理上の問題でございますから、もちろん学校管理責任者である市町村の責任であると思います。しかも、この協定によりますと、四十五分の休憩時間はお昼の時間に必ずとる。したがって、生徒に対する給食であるとか、休憩中の児童の取り扱い管理は校長と教頭だけで責任を負え、こういう協定で、これもずいぶん常識的に考えて無理じゃないかというような問題点があったわけでございます。その後、文部省側もそういう問題点はなるほど指摘はいたしましたが、県教育委員会としては自主的に検討をした結果、なるほど自分らの県教育委員会としての権限外のことを協定したので、あの協定は無効であるといういわば無効宣言をいたしたわけで、文部省がそうしたわけではないという事情をおくみ取りいただきたいと思います。
  323. 八木昇

    八木(昇)委員 いま時間の催促もありますから、それ以上の追及をいたしませんが、そういうことを言いましても、これは、県教組と教育長との間に協定が結ばれたならば、その協定の線にのっとって県で条例をつくるべきです。超過労働賃金を支払い得るような条例をつくる、そして、今度は具体的な協定ですね。それが市町村で結ばれるということはあるでしょう。しかし、それをも頭からこの協定は無効だ、そして県で条例をつくることもまかりならぬ、こういうことは許されないじゃないですか。県で時間外賃金が支払い得るような条例がまず結ばれて——具体的な超勤協定は現場で結ぶということは、それは考えられます。ですから、そういう点から考えましても、事実上、文部省がこういう問題についての権限を握っておるということは疑いもない事実でございます。そういった点にかんがみまして、またILO、ユネスコの勧告もあり、いまの中央交渉等の問題につきましても、今後ほんとうに善処ぜられるように要望したい。  最後に一つお伺いいたします。それは電通とかその他の公共企業体の当事者能力の問題であります。これは太田、それから池田総理、両者会談がございまして、御承知のように、この点につきましては、いまの実情は実際公社当局が当事者能力を持っていないという状況にあるからして、ぜひ十分にこれは検討せらるべきだ、臨時調査会からもそういう趣旨の答申が何度かありましたし、今日ではそれは公務員制度審議会で一応論議をされるということになっておりますが、この点はいまのILO当局の意向やその他をいまさら言うまでもございません。少なくともこういう公社等につきましては、何も国はびた一文補助金を出しているわけではないのです。金を貸すということはあっても、昨今ほとんどこれに対して一般会計から金を出すなんということはないわけでございます。したがいまして、国会において、定員を公社は何名にしなければならぬ、その給与の単価は幾ら幾らだというふうに、コンクリートに国会でこれを縛ってしまうものですから、いざ組合と賃上げの問題について交渉しようと思っても、どうにもならない、こういう状態でありますから、そういう点は、やはりもっとゆるめるべきであると私は考える。それからまた、現在のような仕組みではなくて、やはり原則として、公共企業体の場合には、その調停やあっせん等の機関は、民間企業と同じように中央労働委員会がこれをやるということにすべきであると私は考えておるのでございますが、そういう公共企業体の当事者能力の問題について、総理のお考えはどうか、これを前向きの姿勢でお答えをいただきたい、こう思います。
  324. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねの当事者能力の問題、これはなかなかいまの予算制度のたてまえのもとにおきましてはむずかしいことであります。しかし、そういう点も全然ない、こういうのはひどいじゃないか。これは、良識があるならば、必ず政府の、また人事院の勧告なりあるいは中央労働委員会の決定なり、そういうものと離れたものはできてこないだろう、こういうような意味で、ある程度当事者能力のあるような措置をとりました。しかし、まだまだ本格的な筋のものではない、私はかように思いますので、ただいまお話のありましたように、公務員制度審議会等におきましてもこれらの点をもあわせて検討すべきだ、検討する、かようにお答えいたします。
  325. 八木昇

    八木(昇)委員 それに追加して、現実の問題をちょっともう一点お伺いいたします。  公務員制度審議会の結論が出て、最終的にこのことがきまるには相当の日月を要しますが、もうことしさっそく賃上げの問題がこの春出るわけでございます。去年でございますか、たとえば電電公社当局は、五百円自主的にベースアップをするという案を出したわけですね。公社当局として五百円ベースアップします。これ以上のベースアップ提案というのは、これは政府にくくられておってどうにもできませんということで、実際問題としてやっぱり当事者能力がなかったわけです。最終的には二千円のベースアップ、すなわち六・五%で妥結したわけです。そういう点にかんがみまして、当面ことしの場合も、そういう話にならないようなことではなくて、もっと公社が自主性を持って組合との団体交渉ができるように、公務員制度審議会の結論を待つまでもなく、ことしからそれを実質的にある程度やってもらいたいと思いますが、その点どうでしょうか。
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、政府関係機関、それが個々別々に給与などをきめるべき筋のものでもない、こういう意味で、それぞれの特殊性がありながらも、公社経営者は相互に横の連携もとらなければなりません。したがいまして、言われるような完全なもの、これはなかなかできるものではないと思います。しかし、全然交渉しても交渉の要点に触れない、こういうような交渉は意味ないのだ、こういうようなお話もございますので、よく検討してやりたいと思います。
  327. 八木昇

    八木(昇)委員 終わります。
  328. 福田一

    福田委員長 これにて八木君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  329. 福田一

    福田委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明十日午前、質疑の際に日本銀行総裁宇佐美洵君を参考人として本委員会に出頭を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  330. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  次会は明十日午前十時より開会することといたします。本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十五分散会