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1965-12-23 第51回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十三日(木曜日)    午前十時十九分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 植木庚子郎君    理事 小川 半次君 理事 古川 丈吉君    理事 八木 徹雄君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       江崎 真澄君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    櫻内 義雄君       重政 誠之君    田中 六助君       竹内 黎一君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三原 朝雄君    水田三喜男君       有馬 輝武君    石田 宥全君       大原  亨君    片島  港君       川崎 寛治君    小松  幹君       高田 富之君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       野原  覺君    堀  昌雄君       山花 秀雄君    横路 節雄君       玉置 一徳君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      秦野  章君         防衛庁参事官         (大臣官房長) 海原  治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      松永  勇君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君         国税庁長官   泉 美之松君         厚生事務官         (保険局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (年金局長)  伊部 英男君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君         農林事務官         (園芸局長)  小林 誠一君         食糧庁長官   武田 誠三君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         通商産業事務官         (企画局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         運輸事務官         (海運局長)  亀山 信郎君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君         運輸事務官         (航空局長)  佐藤 光夫君         郵政事務官         (郵務局長)  長田 裕二君         郵政事務官         (貯金局長)  稲増 久義君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      武田  功君         郵政事務官         (経理局長)  淺野 賢澄君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         建 設 技 官         (道路局長) 尾之内由紀夫君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 今村  昇君         専  門  員 大沢  實君     ————————————— 十二月二十三日  委員久野忠治君、大平正芳君、片島港君及び野  原覺辞任につき、その補欠として川崎秀二君、  竹内黎一君、有馬輝武君及び川崎寛治君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員竹内黎一君辞任につき、その補欠として田  中六助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田中六助君、有馬輝武君、及び川崎寛治君  辞任につき、その補欠として竹内黎一君、片島  港君、及び野原覺君が議長指名委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)  昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)、昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 まず私は、最初沖縄問題につきまして、総理大臣お尋ねをしたいと思っております。  ジョンソン大統領は、去る二十日、これまでアメリカ高等弁務官による任命制をとっておりました琉球行政府主席を、今後立法院の議員の全員の多数決による間接選挙に改める大統領行政命令の改正に署名、同日午後大統領声明とともに発表したとありますが、私が総理お尋ねをしたい点は、さきに琉球新報の社長、それから沖縄タイムス社長、それから町村会の会長、琉球大学の教授、それから教職員組合代表の五人委員会諸君が上京されまして、総理琉球行政府主席公選について訴えた。そのとき総理は、その点について考慮しましょうという約束をされたという話を聞いている。それが全然日米協議委員会議題にもならなかった。沖縄代表の人はもちろん、全島民は非常に絶望しているが、まず、そういうように五人委員会の人が総理に面会を求めて、その点について訴えがなかったのかどうか。その点について私たちが聞いているところでは、総理は考慮しましょうということであったというのだが、その点が一つ。それからなぜ日米協議委員会議題にならなかったのか。この点は、昨日の毎日新聞の一面全体にワトソン高等弁務官毎日新聞に対するアメリカ見解が寄せられている中に、日米協議委員会議題にはならなかったということを書いてございますが、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思うわけです。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖縄の五人の委員会諸君が私のところに参りまして、自治権拡大について私にいろいろの話をしたことは事実であります。しかして、私も自治権拡大については努力する、かようなことは申しましたが、何ぶんにも施政権を私どもは持っておるわけではないのでありますので、この実現については私どもが特にくふうしなければならない、かように思っておりまして、いろいろと内々の交渉をいたしました。そういうことはございます。しかし、ただいま言われるように、協議委員会にかけることが、これが実現するゆえんなりやいなや、いわゆる公式の外交交渉十分効果をあげるかどうか、こういうことも私どもは考慮に入れまして、そうして米当局とも絶えず接触を保った、かような結果、ただいまのように自治権がある程度拡大された、かような結果になった、かように私は思います。ただいま言われるとおりに、五人委員会諸君に、考慮しましょうというような表現はしなかったかと思いますが、私はその実情については心から同情いたしておりますので、私ども本国政府のやることは十分果たすつもりでおったわけであります。
  5. 横路節雄

    横路委員 その五人委員会諸君総理に対する要請は、間接選挙ではなくて、公選にしてもらいたいということであったろうと思うのですが、その点をひとつもう一ぺん確認をしてもらいたいということと、それからなぜ日米協議委員会議題に全然ならなかったのか。なぜならなかったのかということは、総理のいろいろなお考えもあったでしょうが、それはアメリカ側から事前に拒否をされたためにならなかったのか、それとも総理が初めからそういうものは出しても全然見込みがないという考えで出さなかったのか、そこら辺のことはどうなんですか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私ども沖縄諸君に話をいたしますことは、機会あるごとに自治権拡大する、こういうことであったと思います。もちろん五人委員会諸君表現は端的に、これは直接選挙でやらしてほしい、こういうことであったと思います。けれど、この趣旨はいわゆる自治権拡大だ、かような意味合いにおいてこれを取り上げるべきものだ、かように思っておるわけであります。  同時に第二のお尋ねでございますが、協議委員会にかけるかかけないか、またいかなる方法をとるがよろしいか、これは私どもにまかしていただかないと——ただいまのような交渉の問題、いわゆる施政権のない、自分で独自の立場でこれを行ない得ない状況でございますから、その辺のことはひとつおまかせをいただきたい、かように思います。
  7. 横路節雄

    横路委員 総理、いまの日米協議委員会になぜかけなかったかという点について、施政権を持っていないのだから、そういう点についてはわれわれの独自の判断にまかしてもらいたいというのですが、私が聞いているのは、何か事前に話をしてアメリカ側から一方的に断わられたからかけなかったのか、初めからかけてみたってしょうがないと思ってかけなかったのか、それとも、もう少し適当な時期があればかけようと思ったのか、そこはまかしてもらいたい、まかしてもらいたいと言うけれども、どういう判断でかけなかったのか。特に、あとで川崎君から総理に対してお尋ねをするわけですが、総理はわざわざ戦後初めて総理大臣として沖縄おいでになられて、その点の実情をよく見きわめておいでになり、島民の多くの諸君から要請を受けてきたわけですから、やはり島民は、今度の日米協議委員会には少なくともかかるのではないかと思っていただろうと思うのです。その点は、やはりはっきりしてもらいたいと思う。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま最初から申しましたように、自治権拡大については私ども努力する、これをまたいろいろ沖縄の連中にも申し上げて、その了解は得ておったと思います。で、その実現についての方法等については、私どもがいろいろ接触しているその関係において、それがいかなる方法であろうが、そういう点をおまかせをいただきたいというのであります。私は、全然やらなかったとか、全然交渉を持たなかったとか、かような意味で申し上げているわけではございませんが、とにかく私がかような方向においてこのことが実現したことを心から喜んでおるその一人でもあることを、御承知おき願いたいと思うのです。
  9. 横路節雄

    横路委員 どうも総理のお話は、私の質問に真正面から答えていただいてないわけです。間接選挙になったことは自治権拡大の一歩であるとして喜んでおる、それがまあ総理のお考えなわけですが、私は、主席公選について日米協議委員会にかけなかったのはどういうわけなんですか、そのことを聞いている、そのことを聞いているのですよ。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、私どもその時期でない、かように思ったから協議委員会にかけなかったということです。
  11. 横路節雄

    横路委員 それではその次に、総理は、今回の主席間接選挙はどういうように受け取っておられるのか。それは、日本施政権返還第一歩として考えておられるのかどうか。主席間接選挙というものをどういう評価として受け取っていらっしゃるのでしょうか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 冒頭に申しましたように、私は自治権拡大、かような意味にこれをとっております。
  13. 横路節雄

    横路委員 しかし総理、あなたは、おいでになられて、こう言っていらっしゃるはずですね。施政権返還がなければ日本の戦後は終わってないんだ、そうあなたはおっしゃっているんだから、そうすると、二十年を過ぎたのにまだ戦後は終わってない、こういう状態なんですから、したがって、私がいまあなたにお尋ねしているのは、今度の主席間接選挙というのは、総理はどう受け取っているのか。自治権拡大というが、それは、日本施政権返還第一歩を踏み出したものだというように総理考えているのか。いやそうではないのだ、施政権というのは全然関係ないのだ、それとは無縁なんだ、ただその沖縄自治権を一歩前進したものだ、施政権とは無縁のものだ、こういうようにお考えなのか。その点はっきりしてもらいたい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいま自治権拡大、かように申しましたが、これを積み重ねれば必ず施政権は返ってくるものだ、かように私は思っております。いま直接関係ありやと、かように言われると、直接の関係はない。ただそういうこともその一つにはなり得る、かように私は思っております。
  15. 横路節雄

    横路委員 そうすると、これは施政権返還とは直接の関係はない。  そこで総理お尋ねをしたいのは、これはきのうの毎日新聞ですが、ワトソン弁務官が毎日本社に寄せている全文を詳細に読んでみますと、二つの問題があります。ベトナム戦争の激化に伴い、中継基地としての沖縄重要性アメリカはますます高く評価しているというのが第一点です。マクナマラ国防長官NATO理事会で明らかにしたように、中共との対戦略基地としての重要性が急激に増大している、こういうように二つの点をあげています。この理由で、今回の琉球行政主席間接選挙は、現地の人々の目をそらして、自治権拡大という名目のもとでアメリカ施策の安定をはかろうとする意図は明らかで、したがって、主席間接選挙制度実施は、日本施政権返還より、むしろアメリカ施政権維持長期化を暗示するものといわなければならぬ。だから、いま総理は、自治権拡大だ、直接には関係ないが、これを積み上げていけば施政権返還になるのだと言うが、そうではなくて、アメリカの今日の置かれている情勢からいって、このベトナム戦争におけるアメリカ基地NATO理事会におけるマクナマラ国防長官の言う中国との対戦略基地重要性、こういう点からいって、結局間接選挙制度実施というのは、アメリカ施政権長期にわたって維持をするというアメリカの決意を示唆したものにほかならないと思うのですが、その点は、総理はどうお思いになりますか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカ政府がどういう考え方をしているか、あるいはアメリカ国民がどういう考え方をしているか、またアメリカ軍部がどういう考え方をしているか、私は知りません。しかし、私ども国民的な念願は、これは沖縄同胞とともどもに一日も早く祖国復帰実現することにあるのでございます。私がこの夏沖縄を訪問いたしました際も、そのことをはっきり実は申しております。こういう意味におきまして、なかなか困難なことに違いないと思いますけれど、国民一体となってこの実現だけはぜひとも期したい、早期に復帰するように最善の努力をすべきだ、かように私は決意しておる次第でございます。
  17. 横路節雄

    横路委員 この間接選挙というのは、どれだけ自治権拡大になるのでしょうか。依然として行政主席については高等弁務官の思うままになるのではないでしょうか。これがどの程度一体自治権拡大になるのでしょうか。なるほど琉球列島施政に関する大統領行政命令、その第八節に——おそらくその第八節の(b)項を変えたものだろうと思うのです。しかし、ここの第十一節には、高等弁務官は、「すべての立法案、その一部またはその中の一部分を拒否し、」それから「いかなる公務員でもその職から罷免すること。」あらゆる一切の権限を持っているわけです。したがって、この間の立法院選挙でも明らかなように、選挙干渉を公然とやっている。いわゆる三名については被選挙権を剥奪をしている。こういう点で、一体間接選挙というものがどれだけの自治権拡大になるのですか。このいま申し上げました琉球列島施政に関する大統領行政命令の第八節のおそらく(b)項のところ、いわゆる高等弁務官が受諾する指名に基づき云々というところが直っても、第十一節のところが存置する以上は、依然として私は変わりがないと思うのです。こんなことで何が自治権拡大になるでしょうか。総理見解はどうですか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、あまり何がどうなるかといってやかましく言われないほうがいいのじゃないかと思います。私ども民主政治あり方から見まして、とにかく立法院というものを直接選挙でやった。この立法院が今度は主席選挙する。この意味において住民とのつながりができる。いままでは任命制度だった。しかし、これで住民ともつながりができる。よしそれが間接にしろ、つながりができる、こういうことで、いわゆる自治権拡大というようなことが期待される、かように思います。しかしながら、ただいまも言われますように、立法院権限そのものも、現在においてはもちろん満足すべきものではございません。だからこそ、日米協議委員会、また日米琉技術委員会等日米の間に行なわれて、そして、これらの権限拡大等も機会あるごとにはかっているわけであります。これは、前ケネディ大統領時代にその大体の方向が示されております。そういうものが順次具体化するということでなければならない、かように私は思っております。ただいま言われますように、現在の形は、ただ一つの行き方といいますか、まだ第一歩を踏み出したというような感じがするだけであります。立法院自身が、これは直接選挙ではありますけれども立法院権限が非常に限られているというようなところから、たいへん不満なものだと、かように思いますが、そういうことも積み重ねて、一そう住民の意向を十分政治に取り入れられる民主的なあり方に直していくべきものだ、かように思います。
  19. 横路節雄

    横路委員 それでは、総理もやはり主席公選が望ましい、やはり主席公選方向に向かってなお努力をしたい、こういう意味ですか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、施政権返還そのもの考えておりまして、いま途中において主席公選という形までやることが望ましいかどうか、そういうことのほうが実現しやすいのかどうか、よく考えたいと思いますが、私自身のねらいは、いわゆる施政権返還にあります。
  21. 青木正

    青木委員長 川崎寛治君から関連質疑の申し出があります。これを許します。川崎寛治君。
  22. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ただいま総理は、主席公選そのもの考えずに、施政権返還そのもの考えていきたい、こう言われたわけであります。ところが、問題は、先ほど横路委員質問に対しまして、相手側施政権を持っていることなのだから、相手側の問題だ、このように言われました。またアメリカ軍部、あるいはアメリカ国民がどう考えているかはわからない、こう言われましたが、ここに今日の沖縄問題を解決していく日本政府の根本的な態度の欠陥があるというふうに思うわけであります。なぜかといえば、沖縄問題は、潜在主権を持っております本土である日本側と、それから現在施政権を持っているアメリカと、そして支配を受けておる沖縄、この三者があるわけであります。そういたしますと、アメリカ日本沖縄、この三者があるわけであって、沖縄現地主席公選を当面の最大の自治の要求としてしておるわけであります。それに対して本土である、母国である日本側が、主席公選施政権者の問題だ、こういうことになるならば、母国としての責任はないのではないか。いかがでありますか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもちろん御承知のことだと思いますが、平和条約沖縄扱い方はきめてあるわけであります。日本も、憲法九十八条で私ども条約を守る義務がございますから、そういう意味で、この沖縄との関係においてはアメリカ日本の間を条約で規律しておるわけであります。したがいまして、この条約上の権利義務、これは果たしていかなければならない。どこまでも忠実でなければならない。これはまたわが憲法の命ずるところでもある。かように御承知いただきたい。  今日、私ども沖縄について潜在主権は認められている、こういう意味で、沖縄同胞ということばも私どもは使っておりますけれども、ただいまの状況は、施政権そのものアメリカが持っておるのだ、かようなことも、現実として、また平和条約を結んだ日本として、これは当然認めなければならないことです。
  24. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ただいまの答弁は、私の質問に対して答えていないわけであります。つまり私たちは、平和条約の第三条が無効だ、こういう立場をとっておりますが、本日はその問題には触れません。現在進められておる過程の中での問題の追及をいたしたいと思うわけでありますけれども平和条約の第三条で施政権をまかせ、そして立法、司法、行政の権力のすべて、あるいは一部を渡しておる、こういう状態になっておるわけでありますけれども、だからといって母国政府が、日本の領土であり、日本国民である九十三万の県民の要望に対して、そのことを日米交渉の場所において解決をしていこうとしない、それは相手側の問題だ、こうなるならば、母国政府責任はどこにありますか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、実は私ことばじりをとるわけではございませんが、平和条約を認めておらない、その立場においての議論は、これはごめんこうむりたい。そういうのは乱暴な議論だ、かように思います。私ども日本国民は、平和条約を締結し、その責任権利義務を尊重するのです。これだけははっきりいたしておきます。  同時にまた、ただいまお話しになりましたことは、私はこの春アメリカを訪問いたしまして、ジョンソン大統領との間に声明も出しております。こういう事柄について重ねては申しませんが、基本的な了解は得ておる、かように私は思っております。
  26. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ただいまの総理の御答弁はたいへん不満でありますけれども、関連質問でありますから私はおきますけれども、積み重ねをしていけば施政権返還にいくのだ、こういうことを言われておる。しかし、現在間接選挙になった、そのこと自体が二十年かかっておるわけです。御承知のように、一九五一年に琉球の臨時中央政府が成立をしたときに、当時のビートラー民政副長官が、選挙による、つまり直接選挙による政府の成立を期待をする、そのために持っていくのだということを明確にした。そこで立法院は、その姿勢に対してこたえるべく、五三年に主席選挙法を制定をしたわけです。民立法の第三号として制定をした。そこで、一九五三年の三月には第一回の主席選挙をやるべく日にちまできめてやったけれども、その法律が成立をすると同時に、布令の九十五号でこの主席選挙法というのは眠らされた。自来十三年間、主席選挙法というのは眠ったままできているわけです。しかも、先ほど横路委員も触れられましたように、大統領行政命令の第二節においては、民主主義の根本原則に従ってやっていくのだ、こういうことできておるわけであります。でありますから、超党派的な五人委員会の人たち主席公選を要求をし、また今回の立法院選挙においても、主席公選というのが最大の争点として争われてまいったわけであります。そういたしますならば、その主席選挙法というものをつくり、公選へ向けて進めてきた沖縄の県民の諸君が待望していたものが、十数年間たってようやく間接選挙にやってきた。しかもそれに対して、日本政府は、総務長官が代表して談話を出されておりますけれども、手放しで喜んでおられる。いままた総理も喜ばれておる。ところが、現地の松岡主席は、われわれが繰り返し運動してきた主席公選とはほど遠いんだということを明確に言い、主席公選、さらには自治権拡大に進んでいきたい、こういう声明を出しておる。そういたしますならば、沖縄現地のかまえというものと母国の政府の姿勢というものにはたいへんな距離があるわけです。しかもその中において、総理主席公選は当面考えない、そして施政権返還そのもの考えているのだ、こう言われる。ところが、先ほど横路委員も触れられたワトソン高等弁務官毎日新聞に対するアメリカ見解、これをしさいに点検をいたしてみましても、あるいは八月の二十五日、AP電の伝えるところを見てみても、われわれは将来にわたって沖縄返還ということは考えていないのだ、しかも、それは極東の緊張が緩和しない限り考えていないのだ、こういうことを言っておるわけであります。そういう情勢の中で、いかにして自治権拡大をやり、あるいは施政権返還に持っていくか。アメリカの極東政策というものに協力している限り、その政策が続く限り、施政権返還というふうなものが具体的な日程にのぼってくるということは、半永久的に考えられないではないか。その点、いかがでありますか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ジョンソン大統領と私が約束した共同声明、それには、ただいま御指摘になりますように、極東の安全と平和、これがいわゆる沖縄の領有を必要としないような状態、さようになれば返すということを言っておるわけでありますね。ただいま言われますように、これはたいへんむずかしい、たいへんな重大な問題だ、かように私は思います。したがいまして、この施政権返還、これこそは沖縄同胞百万はもちろんのこと、わが九千万国民がほんとうに協力一致して返還を願う、また返還されてもこのアジアの平和には心配ないんだ、またわが国の安全はこれによって確保される、こういうことが出てくるような事態でないと、これはなかなか施政権返還実現するわけにいかないだろう、かように私は思うのであります。ただいまの御質問も、さような意味におきまして政府に対する鞭撻だ、かように私は思いましてお聞き取りいたしましたが、この上とも一致協力して施政権返還、これが実現するように努力いたしたいものだ、かように思います。
  28. 横路節雄

    横路委員 いまちょうど施政権返還の問題になりましたから、いまの問題について総理お尋ねします。  先ほど申し上げましたように、総理は、沖縄訪問の際に、沖縄祖国復帰なくして戦後は終わらないと言明されたわけで、まだ戦後は終わっていないわけです。そこで沖縄祖国復帰について、総理はいまどういう努力をしているんですか。こうこういう努力をしているんだということがあったら、この機会にひとつ国会を通じて国民の前に明らかにしてもらいたい。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この沖縄の問題については、機会あることに返還を要求している、このことは御承知のとおりだ。ただ返還を要求するだけではだめじゃないかというおしかりも受けるかと思いますし、今日までそれが結実しておらない、成果をもたらしておらない状況でございますから、ただいま言われるように、おしかりを受けることも当然かと思います。しかし、今日私どもは、これは必ず返ってくるものだ、かように信じておりますし、またかような意味をもちましても、私がこの夏沖縄を訪問した、出かけた、そうして民生、経済的な向上、安定等につきましてあらゆる努力をする、こういう意味で、ただいまは琉球政府ともまたアメリカ政府とも、そういうような関係で密接な連携をとっておるというのが現状でございます。どういうことをやったか、かように言われますが、今日まで成果があがっていないだけに、ただいま申し上げるようなことでございます。
  30. 横路節雄

    横路委員 いまの総理のお話は、返還を要求している、返還を要求しているならば、日米協議委員会主席公選について議題とされても、私は当然であろうと思う、それが五人委員会の要求であるのに、その要請にもこたえていない。それから返還されると信じている、しかし信じているだけで返還されるものではない。  そこで、私は具体的にお聞きをしますが、ワトソン高等弁務官は、極東地域における脅威と緊張が引き続き存続している限り、施政権返還はできないと言明している。そこで総理お尋ねをしたいのですが、総理は具体的にいまどのようにして極東における緊張が緩和されるように努力をしているのか。アメリカ側は、沖縄は絶対手放さないんだ、それはベトナム戦争基地なんだ、アジア全体の戦略基地なんだ、絶対返さないんだ、極東における緊張が緩和しない限り返さないんだと言っているんだから、その緊張の緩和に対して、総理みずからどういう努力をされているのか、その点についてひとつ明らかにしてもらいたいと思う。そうでなければ、努力したことにならないのです。信じているというんじゃだめなんです。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、わが国の安全を確保するためには、申すまでもなく、アジアが安全で、問題が起こらなくて、そして繁栄であることが望ましいことというか、そうなければならないこと、これはもうしばしば申し上げたとおりであります。そういう意味でいろいろアジアに起こっておる問題、たとえばインドとパキスタンの争い、あるいはマレーシアとインドネシアとの争い、さらにまたベトナムの問題等につきましても、それぞれあっせんなり、くふうなり、努力なりをいたしておること、これはそれぞれの問題についてお尋ねがあったので、また重ねては申し上げません。さらにまた隣の国、韓国との間に日韓交渉を締結して、そうして国交の正常化をはかる等々、いろいろやっておるわけであります。また最近は、ソ連との間にもさらに領事条約やあるいは航空協定その他の締結等の運びにもなりつつある。とにかくアジア自身を安定ならしめ、そうしてここに問題が起こらないようにすることが私どものつとめではないかと思いますし、また不幸にして起きたその問題は、できるだけ早くこれが平静に帰するように協力することも私どものつとめだ、かように考えておる次第であります。
  32. 横路節雄

    横路委員 それでは、総理に、いまベトナムのお話がございましたから、ベトナムに対して佐藤内閣はどうなさるのか、ベトナム問題の平和的な解決についてお尋ねをしたいと思うのです。特に先般国連の安全保障理事会の非常任理事国に、最低の得票数だけれども、まあ二年任期で当選をしたわけです。これは実際恥ずかしい限りです。この間はアジア開発銀行の問題で本店はマニラに奪われた。これは、藤山元外務大臣、企画庁長官は野原君の質問に答えて、佐藤さん、いいことを言っています。藤山さんは、当時やはり外務大臣をやっただけに、アジアの一員としての姿勢を持たなければならないということをしみじみ反省した、こう言っているんだから、やはりアジアの一員としての姿勢を持っていないということを率直にマニラに行って考えられたようです。しかし、いま外務大臣でないから、企画庁長官としてのお考えですけれども、そういう反省を持たれている。  そこで、国連の安全保障理事会の非常任理事国としてこれから二カ年やるのですが、一体それならば、ベトナム問題をどういう方式で平和的に解決なさろうというのか。安全保障理事会における非常任理事国ですよ。責任は重大ですよ。しかも、そういう意味では、これはアジア・アフリカ・グループ等から選ばれていっているわけだから。そこで、いま総理から、極東のいわゆる脅威が除かれ、緊張が緩和されれば沖縄は返ってくる。ベトナム問題だというなら、ベトナムについての平和的な解決はどうなさるのですか、またどうしているのですか。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国が安全保障理事会の理事国になった、これにたいへん皮肉めいた御批判がありましたけれども、やはり平和を愛好される社会党も、とにかく理事国になったら、最低の票だろうが何だろうが、二年なったことを喜んでいただきたい。これは私があなたにお願いするわけですが、どうか喜んで……(横路委員「票が足りなかったことを反省しなければならぬ」と呼ぶ)それはもちろん反省しなければなりませんが、とにかく喜んでいただきたい。また、東南アジア開発銀行等が、この本店が東京に来なかったことについてはまことに残念だとしばしば申し上げておりますから、重ねてお答えをいたしません。  問題は、ただいまお尋ねになりましたベトナムの問題。わが国も、今度は安全保障理事会の場等におきましても、こういう問題で発言する機会ができた、かように思いまして、アジアの平和のために一そう積極的な活動ができる、かように思います。今日まで私どもはしばしば申し上げたのでありますが、無条件話し合いに応ずること、これによってこの事態をできるだけ平静にし、またこの話し合いの場を通じて問題を解決すべきだ、かようなことを申してきたのであります。さらに、私どもの主張のとおりに各国もそれぞれ動いておるようでありますし、英国のソ連への近づきも、またイタリア自身の北ベトナム訪問等につきましても、これらの機運も一面起こりつつあるようなけっこうな方向ではないかと思う。しかし、なかなかたんたんとした、そういう楽観が許せないような状況、ただいまの状況は一部そういう期待もありますが、なおきびしいものがあるというのが現状ではないかと思います。私どもも、ただいま申し上げますように、あらゆる機会をとらえ、私どもを訪問する外国の要人ともこれらの問題について率直な話し合いをするし、また積極的に書面等により考慮を特に促しておるというようなこともいたしておるわけであります。今日までこれが実現しないことは、私もアジアの一員としてまことに残念しごくに思っておりますが、どうも関係各国がまだ釈然としないというか、そういう意味でなかなか話し合いの場を持つことができないというのが実情であります。これらの点は、横路君もよく御承知のことだと思いますが、重ねてお答えした次第であります。
  34. 横路節雄

    横路委員 総理、いまのお話を聞いても、いやイタリアはどうしたの、いや何の国はどうしたのというお話はありますが、佐藤内閣はどうなさるのですか。御承知のように、国連の中で解決しようとしても、ベトナムは国連に持ち込むことは絶対に反対だから、不可能なわけですね。だから、国連の外でやろうとすれば一体どういう方法があるのか、それを、総理がやはりここで、ベトナムの平和的な解決についてはこういう方法があるんだ——あなたはこの前ここで、私の十月二十八日の質問に答えて、日韓の条約というのはアジアの平和の第一歩だとこう言ったんだから、平和の第一歩ならば、いま当面している最大の問題はベトナムの平和的な解決なんだから、それならば一体佐藤内閣はどうするのか。イタリアがどうするの、ソ連がどうするの、何がどうするのかにがどうするのではない。佐藤内閣はどうするのかということです。やっぱり佐藤内閣がどうするのかおっしゃらなければ、国民は聞いていて、何をおっしゃるのかわからないですよ。総理、おっしゃってくださいよ。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣がどういうことをするかということは、ただいま申し上げましたのが私ども最初考え方、これは非常にはっきりしている。だから、これは話し合いの場によって解決すべきだ、この主張を今日も持っておるわけであります。これは機会あるごとにそういうことを述べることが必要だ。ただいま申し上げましたのは、国際情勢の一般の動きを申し上げた。しかし、これというきめ手があるわけではありません。私どものこの主張を社会党が支持してくださるかどうかというだけの問題でありまして、そうして、あらゆる機会を通じてそういうことが述べられるということであります。
  36. 横路節雄

    横路委員 それでは、総理、話し合いの場というのは、アメリカ政府と民族解放戦線との間に話し合いを直接やれというのですか。話し合いの場、話し合いの場と言っても、聞いているほうによっては違うのですから。総理は話し合いの場を求めると言うが、だれとだれが話をするのか、その点はどうなさるのですか。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最小限度、直接関係するものが必要だと思いますが、同時に、この事柄は国際的な重大な問題でありますから、関係する範囲も拡大されるのではないかと、かように思います。とにかく、いま直接戦火を交えておるそういうものが話し合いの場を持つこと、これが最も必要なことですが、しかし、事態そのものが国際的な問題ですから、そういう意味で、直接戦火を交えておらないその他の国々もこれに参加するのではないかと、かように思います。   〔発言する者あり〕
  38. 青木正

    青木委員長 お静かに願います。
  39. 横路節雄

    横路委員 その点、総理はやはりアジアの一員だという、日韓はアジアにおける平和の第一歩だという、いま当面しているベトナムの問題は最大の問題なのですから、いまの点をもっと大胆率直にお話をしていただきたいのです。いま最小限に直接関係のあるものというと、それはどういうことなのですか。アメリカ軍と民族解放戦線との間に話をせいということなのですか。そのことはまずやりなさい。それから、関係各国というのは、総理のお考えになっているのはどういうことを考えられているのですか。やはりこういう機会に、総理は自分のお考えになられている外交方針というものを明らかにするべきだと私は思うのです。明らかにすべきですよ。——外務大臣ではない。総理大臣ですよ。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいままで一般に言われておることと、私が別なことを申しておるわけではありません。南越と北越が話をする、同時にアメリカとソ連も、さらに中共もこれに加入すべきじゃないかと、かように私は思います。これらのものがただいま最も密接な利害関係を持っているものだと、かように言われておりますから、こういうところで話し合いをすることがまず第一だ。さらに、こういう問題になれば、その重大性にかんがみまして、国連の安保理事会等におきましても十分協議して、どういうような国々が集まって話をするかというようなことがきまるのだと、かように私は思います。しかし、いずれにいたしましても、直接いま戦火を交えておるそれらの国々が賛成しないと、その他の国が参加するというわけにいかない、かように私は思っております。
  41. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いま総理のお話を聞いていると、直接戦火を交えている当事者同士で話し合いをする、それから関係各国会議でやる、その中にはアメリカ、ソ連、中共が入る、中共を含めて関係会議をやる、それから国連の安全保障理事会でやる、こういう意味ですか。安全保障理事会でやるということについては、これは、御承知のようにベトナムは絶対反対ですからね。それならばこそジュネーブ会議が開かれ、したがってジュネーブ協定をあくまでも順守をせよということを言っておるのである。それでは、関係会議とはアメリカ、ソ連、中共等、これらの関係国の会議を開いてそこでやる、そういう意味ですね、いまのお話は。やはり総理がきちっとして、その点どうなさるのですか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 直接関係のあるこれらの国がまずやることが必要だ、これらのものをはずしては困るということなんです。別な会議二つ持つとか三つ持つとか、かようなことを私は示唆しておりませんが、少なくともこれらの国々は絶対にそのメンバーとして必要なことだ、こういうことを主張しておる。これは、誤解のないように願っておきます。過去におきましてすでにジュネーブ会議というものがあった。そういうところでこの問題が取り上げられ、いろいろ議論しております。だから、過去のジュネーブ会議のメンバーというのは、その次に考えられるだろう。また、このジュネーブ会議に加入しておらない国、たとえばいまのような日本一体どうなるかという話がありますが、これなども、もちろん参加すべきだと、私はかように思っております。しかし、ただいまそういうような会議は招集というような段階に立ち至っておらない、その事実もひとつよく御承知おき願いたい。ただいま申し上げましたが、ジュネーブ会議には中共自身入っているか、入っていないだろうと思いますが、そういうものがやっぱり考えられるべきじゃないかと思います。
  43. 横路節雄

    横路委員 私はあとでお聞きをしますが、椎名外務大臣が一月にソ連においでになる。モスクワにおいでになる。あとでお尋ねをしたいが、総理も六月ごろおいでになるのかどうか、きのう私は十分聞いてなかった。行かれる中には、日ソの平和条約の締結ということもあるだろうが、しかし当然このベトナムの問題についてもいろいろ話が出るだろう。そういう場合に、総理総理としてのお考えがあるだろうと思う。しかし、ベトナムは、国連の中でこの問題について処理をすることは絶対反対なんだから、その点ははっきりしなければならないと思って私は聞いているのです。まあしかし、いま総理は、中共はこの関係会議には絶対に入らなければならぬというお話でございましたから、それは総理の新しいお考えとしてお聞きをしておこうと思います。  次に、このベトナムの平和的解決の問題は、積極的な面と消極的な面とがあると私は思う。消極的な面は、日本がこのベトナムの戦争に軍事的な介入をしてはならぬと思うが、この点はどうですか。軍事的に介入してはならぬと思うが、どうですか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本はベトナムの問題に、北だろうが南だろうが、どちらでも軍事的に介入してはならない、これはお説のとおりだと思います。
  45. 横路節雄

    横路委員 ところが総理、私はこれは、通産大臣、あなたのほうから資料をいただいたわけです。これは航空機製造事業法に基づいてやっている資料です。私のところへ資料を出したのですから、おそらく大臣のところに出ているだろうと思う。昭和四十年の米軍の特需修理飛行機の一覧表が出ている。日本飛行機の厚木製作所で、まず第七艦隊の航空母艦から北ベトナムを攻撃している艦上ジェット戦闘機、最新鋭のいわゆるF4Bマクダネル・ファントムというのですが、これを九月までに厚木の製作所で十三機修理をしている。F8Bが一機、F8C、Dが八機、F8Eが二十七機、クルーセーダーというのだそうです。EF1Fが一機、EFの10Bが一機、RFの8Aが九機。その次は同じく航空母艦から発進するジェット攻撃機です。これはAの1Jが一機、これはスカイレーダー、それからAの1Hが二機、これもスカイレーダー、Aの3Bが三機、Aの4Bが一機、Aの4Eが八機、Aの4Cが三十四機、Aの4E、Aの4Cというのはスカイホークでございまして、いわゆる空対地のミサイル、ブルパップ並びにロケット弾を搭載しているわけです。したがって、艦上攻撃機並びに艦上戦闘機の一月から九月までの修理は百九機に及んでいる。そのほかにプロペラの戦闘機であるとか、あるいは輸送機というのが五十五機に及んでいるが、三菱重工の小牧の飛行場では、日本にはもういない、南ベトナムのダナンに基地を持っているジェット戦闘機F102十月以降に修理に来ている。さらに問題なのは、川崎航空機工業株式会社の岐阜製作所にB57並びにC130が十月以降来ているし、十二月の八日にその工場を視察した者は、B52がその川崎の航空機の岐阜の製作所に来ているのを見ている。これは全部第七艦隊から発進をして、北ベトナムを攻撃をして、あるいは対空火器によって被爆を受け、その他によって日本に飛んできて修理を受けている。あるいはオーバーホールだ。三十九年は、先ほど申し上げた日本飛行機の厚木製作所では、ジェット戦闘機、ジェット攻撃機は百五十三機、新明和の伊丹、甲南工場は十四機、三菱の小牧は五十六機、川崎の岐阜は六機、こうなっているが、こういう状態は、これは私が先ほど言ったように、明らかに日本日本のあらゆる防衛産業をあげて、このアメリカベトナム戦争に軍事援助、介入をしているじゃないですか。一体これはベトナムの問題を平和的に解決をする、やれ直接交渉しなさい、やれ関係会議だ、こう言いながら、こういうように明らかに相手のその戦闘に参加をしておる。対空火器で被爆を受けて、そうしてやって来ては修理を受け、あるいはカモフラージュをするための迷彩を施してまた出ていく。明らかにこれらの日本の航空機製作所はアメリカのいわゆるベトナムの修理工場ではありませんか、兵器工場ではありませんか。この事実は総理はどう思いますか。いや通産大臣でもいいですよ。この事実はどう思いますか。いかに航空機製造事業法に基づいて、この第十条にあるからといって、やってもいいですか。——いや、総理大臣からひとつまずお聞きしましよう、これは明らかなんだから。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民間の活動は、私、一々存じ上げておりません。ただいま通産大臣からさらに補足説明があろうかと思います。先ほど来申し上げておることは、これは横路君も言われるように、政府自身がさようなことはしておらない。この点は、政府の行動、活動と民間の活動は別にしていただくこと。しかし、民間の活動でも、目に余るようなことがあれば、私どもはほっておかないつもりです。しかし、ただいまのように政府自身の関与することではございません。
  47. 横路節雄

    横路委員 外務大臣や通産大臣、いいですか。いま私が指摘した第七艦隊から出ておるこの艦上ジェット戦闘機、最新鋭のF4B——ファントム、それからB52、B57、こういうものが日本に来て、各飛行機会社の修理工場で修理をしておるのは政府の行動ではない、それは民間の行動だ、だから政府は制肘できない。それでよろしゅうございますか。いいですか、そういうことで。外務大臣、どうですか。
  48. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは日米安保条約に基づき、地位協定に明記されておりまして、ちょっと読んでみます。第十二条「合衆国は、この協定の目的のため又はこの協定で認められるところにより日本国で供給されるべき需品又は行なわれるべき工事のため、供給者又は工事を行なう者の選択に関して制限を受けないで契約することができる。」こういう明文があって、差しつかえないことになっております。
  49. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、それは政府の行動か、民間の行動か、どっちなんですか。いまあなたは地位協定を読んだが、それは政府の承認か、民間の行動か、どっちなんだ。
  50. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アメリカが民間の工場と契約して、修理または工事をするということは、これは政府が介入しない、自由にやってよろしい、こういうことです。
  51. 横路節雄

    横路委員 いやいや、そのもとになるのは地位協定なんだ。外務大臣、そのもとになるのは地位協定じゃないか。地位協定というのは、日本政府アメリカ政府との協定ではないか。それが何で政府が関係はないのだ。あなた、政府は関係しないと言うが、安保条約というのは、政府は関係しないの、どっかの会社とやっておるの。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その需品の調達であるとか、あるいは修理その他の工事の問題を政府が引き受けて、そうして政府が日本の民間を使ってやるというのではなくて、アメリカの軍隊が直接日本の民間の工場に発注をし、または工事等をする場合は、政府はそれには介入しておらない、こういうことを申し上げておるのです。もちろん地位協定は、日本国アメリカとの間において締結された協定でございます。ですから、そういう意味において政府がこれに関与しておらないということを申し上げたわけです。
  53. 横路節雄

    横路委員 しかし、武器の製造その他をやるのは、地位協定できまっておるのだろう。地位協定できまっておるというならば、政府の責任じゃないか。地位協定がなかったら、これはできないじゃないか。地位協定をたてにとってやっておるのだろう。地位協定をたてにとるということは、政府の行動でないか。地位協定をたてにとってアメリカはやっておるじゃないか。地位協定をたてにとって、アメリカは民間の航空機会社の工場を使ってやっておるじゃないか。地位協定がなければやれないじゃないか。だから、地位協定を使ってやっておるということは、政府に第一義的な責任があるではないですか。何で逃げるのですか、そういうことを。頭のいい外務大臣が何で逃げるか。
  54. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あなたが、そういうことをやるのは戦闘行為に介入しておるというようなことを言うので、これは介入しておらない、地位協定でそういうことは合法的にやれるということをあらかじめ両国の政府の了解があって、その範囲内においてやっておるのでありますから、それは差しつかえないのだ、そうしてまた、それは戦闘行為に直接介入するゆえんでも何でもない。
  55. 横路節雄

    横路委員 それでは椎名さん、第七艦隊から発進をして攻撃をして、そのまま飛んで、まず自衛隊の岐阜の飛行場におりて、川崎航空機の工場に入った。グアム島から飛んで、北ベトナムを攻撃して、そしてそのまま飛んできた。これはどうですか。戦闘行動でないですか。相手を攻撃してそのまま帰ってきた。B52やB57は、これはやれますよ。これはやれるじゃありませんか。これが何で戦闘行動でないですか。日本で、そこで修理をされたら、そこから直ちに飛んだっていいじゃないですか。B52は飛べるじゃありませんか。
  56. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本の施設区域を利用して直接戦闘行動を起こすという場合には、これは事前協議が要ります。しかし、まあ病人が病院に入るようなものですから、これを受け入れて、そして一応治療してやる、そのことは戦闘行為に参加するわけじゃない。でありますから、そこから今度は直接戦闘作戦行動の任務を帯びて発進するという場合には、これは事前協議が要る。
  57. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、あなたはたいへんなことを言いますよ。ものによりけりですよ。病気になったから治療してやるのは当然でないか、それはそうですよ。しかしグアム島から進発をして、そうして北ベトナムを爆撃をして、対空火器でたまを受けて、そうして日本に飛んできた。言うなれば、北ベトナムからすれば凶悪な殺人強盗を働いてきたんですよ。凶悪な殺人強盗を働いてきたものを、一体何でこれをただ、そうかそうか、そんなけがをしているならなおしてやろうというか。本来からいえば、これは刑務所に収容しなければならないのですよ。そうでしょう、国際的な信義からいけば。それをそういうように、病気でよたよたして来たから、これをなおしてあげるのは当然だというような、そういうたとえ話で、このいまベトナムで、B52で、第七艦隊の艦上攻撃機で、いわゆる戦闘機でこれだけの攻撃を受けて、どれだけの村落が焼かれ、多くの人が死んでいるかわからないのに、こういう事態を平然と見のがしておくということは、さっき言った総理——総理がいつでも言うじゃありませんか、平和に徹する、平和に徹する、——第一義的には日本政府責任ですね。日本政府が関与しているわけでしょう。その点だけはっきりしておいてもらいたい。
  58. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 戦争には参与しておりません。
  59. 横路節雄

    横路委員 いや、通産大臣、航空機製造事業法……。これはあなた、日本がこういうことを平気で考えているかもしれないけれども、相手の国はたいへんですよ。通産大臣、どうですか、いまの私の質問は。結局、やはりこれは航空機製造事業法に基づいて政府は関与しているじゃないですか。
  60. 三木武夫

    ○三木国務大臣 航空機事業法は、御承知のように、航空機の生産技術の向上ということを目的にした法律ですから、生産あるいは修理についていろいろな基準を設け、そして生産技術の向上に資することを目的にした立法であって、したがって、これに対して特別な制限というものを加えることはできない、この法律自体が。修理に対して、それが認可を受けたような修理の方法によっておるか、完全な修理が行なわれたか、こういうことを通産大臣の任命する検査員が検査をする、こういうことであって、それは航空事業の健全な発展を目的とした立法であって、いろいろなことをこの法律によってチェックするということは、法律の趣旨ではないということでございます。
  61. 横路節雄

    横路委員 この法律はもともと日本の国内の飛行機でしょう。この趣旨は国内の飛行機でしょう。こういう飛行機の趣旨は、もともとは国内の飛行機ですよ。これは、一体アメリカが戦闘に参加した、こういうものまで全部引き受けてやるなどという立法の趣旨ではないでしょう。一体これからこういうことをやるのですか。これから日本の防衛産業というのは、アジア全体のあらゆる戦争のそれらの兵器の修理を全部引き受けるのですか。通産大臣、どうなんです。あなたは、そういうお考えでいくのですか。そんなことはないでしょう、立法の精神は。
  62. 三木武夫

    ○三木国務大臣 外国の飛行機を絶対に修理できないということではない。もしそういう場合には、飛行機の輸入の許可を受けなければいけない。米軍の場合はむろん安保条約の規定から来るわけであります。軍用機の場合。
  63. 横路節雄

    横路委員 だから、やはりいまも言うとおり、この航空機製造事業法は国内の飛行機なんだ。外国の飛行機は一々許可を得なければならない。だから、許可を得るということは何かというと、地位協定なんだ。だから、第一義的にはやはり政府の責任なんだ。  外務大臣、B52について、前に板付の飛行場に台風で避難するとこういって、国民から非難されて沖縄に来ましたね。そして、沖縄から発進してベトナムを爆撃をした、あのときは来なかったですが、B52は来ていないのでしょうね。B52が来るときは、外務大臣に来てもよろしゅうございますかということを言うでしょうね、それは許可してないでしょうね、いままで一度も。
  64. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 B52が国内に緊急避難するというようなことは、以前にも例があったのでありますが、そういう場合には別に事前協議の必要はない、当然やれることだと思います。
  65. 横路節雄

    横路委員 それではどなたですか、外務大臣を補佐されておる方は。B52については、いままで許可しておるというのですから、その機数全体を、本年度のを全部ひとつ言ってもらいたい。どこの飛行場へ何機、いつ来たか。
  66. 安川壯

    ○安川政府委員 私は、Bの52が飛来したという実例は存じておりません。事前協議を要するとすれば、Bの52が、たとえば一個師団というような重要な配備の変更になるような規模で日本にもし駐留するというような場合には、当然事前協議の対象になりますけれども、それ以外に少数機の場合、あるいは台風避難で一時飛来をするというような場合には、事前協議の対象にはならないわけであります。
  67. 横路節雄

    横路委員 北米局長、私の聞いておるのは、事前協議じゃないのです。B52については、去年一年間日本に来たことがあるのかどうか、聞いたわけです。一体どうなんだ。それはどこで来たか来ないかわかるのですか。
  68. 安川壯

    ○安川政府委員 来たことはあると思います。一機か二機、慣熟飛行というような目的のために来たことはあると私は記憶しておりますけれども、いつどこに来たかということは記憶しておりません。
  69. 横路節雄

    横路委員 それでは北米局長、あなたに聞くけれども、それでは岐阜の飛行場に来ておるのは何機だ。これは地位協定で、あなたのほうに全然知らせないでやっているのか。
  70. 安川壯

    ○安川政府委員 修理の目的で来る場合に、一々日本政府事前協議をするたてまえになっておりませんので、何ら通報を受けておりません。私は承知しておりません。
  71. 横路節雄

    横路委員 じゃ通産大臣、管轄はあなたのほうだ。
  72. 三木武夫

    ○三木国務大臣 B52が修理のために来たことはありません。
  73. 横路節雄

    横路委員 総理、よく聞いてください、これぐらい日本政府というのはアメリカ政府に頭からばかにされておる。私の手元に資料があるのですよ。資料がなくて言っているのでないですよ、私は。六月二十一日から九月三十日までに横田の飛行場にB52が四機飛来しておる。これは修理の目的ではない。いま岐阜の飛行場にB52が来て、現に十二月八日に現地を視察をして、修理をしている。ただここで通産大臣は答弁することがぐあいが悪いだろうから、国会で答弁がぐあいが悪いだろうから、いや、ないんだ、こう言ってごまかしているが、現地ではそんなことはだれも信用しない。現に見に行っている。一体知らないで言っているのか、知っていてごまかしているのか。もしも知らないで言っているのなら、だまされているのだし、どっちなんですか。知らないで言っているなら、あなただまされているのだし、知っていて言っているなら、われわれ国会議員をごまかしているのだし、一体どっちなんです。いや、知らないなら知らないでいいですよ。知らないなら知らないでいいです。知らないならば、あなたのほうは全然アメリカ政府にばかにされているのだ。こういうことが、一体相互信頼とか何とか言われたって、何一つ確実にやられていないじゃないですか。
  74. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私がここで答弁をしておることは、そういう報告は受けていないということを言っておるわけで、その理由が、いろいろな意図をもってここで答弁をしておるものではない。
  75. 横路節雄

    横路委員 いまの通産大臣は、私も通産大臣の言を信用しましょう。私は報告を受けてない。——現に来ている。来ているのに報告を受けてない。それぐらいこのベトナムの戦争に参加しているB52あるいはB57、F102などは——通産大臣、聞いてください。F102は、わざわざ胴翼に、胴っ腹に書いてある。北ベトナムに何回出撃、南ベトナムに何回出撃と、出撃の回数を誇るために、その操縦士は一ぺんずつそこに一、二、三、四と書いている。それをそのまま小牧の飛行場に持ってきてやっている。こういうことをまざまざそこで見せつけられて、そこに働いている諸君は、これで佐藤内閣は平和に徹するとか、佐藤内閣はこれで一体ほんとうにベトナムの平和的な解決をしようと考えているとかなどとは、とても考えられませんよ。この問題については、通産大臣、あらためて調査をしてもらいたい。  では次に総理に私お尋ねしますが、私きのうちょっとこの席をはずしましたのですが、椎名外務大臣は一月にモスクワにおいでになるのですね。おいでになるならなるで……。
  76. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだはっきりきまっていません。
  77. 横路節雄

    横路委員 佐藤さんもそれじゃきまってないわけですね。おいでになる気持ちがあるのですか、全然行く気がないのですか。どっちですか。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだもちろんきまっておりません。私も、行きたいような、行くならどういうような準備をすべきか、こういうような、いろいろ複雑な考え方でただいままとめつつある際でございます。
  79. 横路節雄

    横路委員 佐藤総理、いま佐藤総理がちゅうちょされている気持ちは、それは、行かれるという以上は国民はあなたに何を期待するか、平和条約の締結です。平和条約の締結の前提は領土問題です。しかし、この領土問題は、沖縄の問題と千島の問題とは両方がやはりアジア全体の平和に関連をしているから、これはあなたがおいでになって領土問題の話をされてもできるわけではない。そうすると、平和条約締結が前提でなしにソ連においでになるとすれば、一体目的は何なのかということ、みんなが佐藤総理は何でおいでになるのかなというから、ちょうどあなたが言われるように、みんなも複雑な気持ちで見ているのです。それはまだきめないわけですね。大体行かれるとすれば、まず最初に椎名外務大臣が行かれて、もしも総理が行かれるとすれば——いや、椎名外務大臣が行かなくても、あなた御自身がすっと行くというようなこともあり得るのですか。その点はどういうことになるのですか。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 椎名君と私との関係は全然ございませんが、しかし、私が出かけるということになると、外務大臣はやっぱり行ってくれないと困るように思います。しかし、ただいま椎名外務大臣もお答えいたしましたように、御本人も考えていらっしゃらない。私自身もまだ行くことを考えておらぬ。はっきりいたしております。
  81. 横路節雄

    横路委員 次に総理お尋ねいたしたいのは、安全保障理事会の非常任理事国になったのでございますが、そこで問題は、これは法制局長官、あなたの得意中の得意だから——国連軍の派遣の要請があったときに、さあ理事国だ、どうなさいますか。今度は現実の問題としてどっかで起きるかもしれない。
  82. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 国連軍派遣の要請があった場合にどうするかというお話でございますが、国連軍というもののやはり性格によると思うのです。要するに、国連軍と同じように銘を打たれましても、たとえば朝鮮における国連軍のように、各国に勧奨して、各国がその勧奨に応じて、各国がその国権の意思発動によって武力を行使するというような結果になるようなものにわが国が国連軍の一翼を担当して武力を行使するということは、どうも憲法九条に抵触をするのではないかというように考えております。したがって、要するにおっしゃるような意味の国連軍の中身次第ということにもなりましょうし、一がいには申せないというのが結論でございます。
  83. 横路節雄

    横路委員 では具体的に聞きますがね、長官。六二年の九月から六三年の五月まで西イリアンに国連軍は警察隊の補助をする目的で派遣をしましたね。これは完全に警察隊としての補助の行動をしたわけです。こういう場合はどうなんですか。今度具体的に聞きます。あなたいつも抽象的に答弁するから。
  84. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 西イリアンの場合もそうでございますし、ほかにも類似のものがあったかと思いますが、実は西イリアンの場合の警察隊の補助というものが、かりに——典型的なお話をして恐縮でございますが、たとえば自衛隊における災害出動のような武力の行使とはおよそ縁のないものということになれば、これは話は別であることはむろんでございますが、その西イリアンの活動の内容、それをどうも私的確に承知しておりませんので、それについてどうも軽々に御答弁申し上げることが私にはできないわけでございます。
  85. 横路節雄

    横路委員 あなたはいつも抽象的に言うから、今度ぼくが具体的に言うと、あなた、西イリアンは、国連軍は警察隊の予備隊としてやったのだ、補助として。そうするとあなたは、その内容がわからぬと言う。そんなら、あなたはここで、自衛隊の海外派遣はいかなる名目でも絶対できない、こう言うなら別なんですよ。それをあなたは抽象的に、国連軍が純然たる警察行動としてやるときには出てもいいのだ、それは憲法九条に抵触しないのだと言うから、私は具体的に聞いたのだ。どうなんだ、その点。
  86. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私が国連活動としての警察行動ということを申したかどうか存じませんが、ただ、私ども考え方といたしましては、これは御承知だと思いますけれども一つの国際社会というものが、こう広く各国の国民代表するようなかっこうで一つの社会ができる。その社会の内部における治安維持のために、その組織化された団体がその意思によって武力を行使することがある、そういう場合に、その団体に対して兵力を提供するということ自身は九条の問題にはならぬだろうということを申したことばございます。そういう場合国際社会がある程度組織化されることになりますが、組織化された国際団体の活動、それを警察活動と申したことはございます。
  87. 横路節雄

    横路委員 だから、それには参加できるのかどうなのか。
  88. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま申し上げましたような意味で、理想的な姿とか、理想社会とか申したことがございますが、そういうものになれば、政治的な当否の問題は別として、憲法九条のらち外の問題である。したがって、そういう場合に、そういう団体に対して兵力を提供するということ自身憲法九条一項の戦争を放棄しているという問題には抵触しない。すなわち、憲法上は許されるだろう、政治上の問題は別である。当然のことでございますが、そういうふうに解釈いたしております。
  89. 横路節雄

    横路委員 法制局長官、ところが一番最初は、国連の決議で純然たる警察行動で行った。そこで何か武力蜂起が起きた。そこで安保理事会で、いわゆる武力行動に出てもよろしいときまった。出て行ったのは、あなたの言うとおり、最初国連の警察軍だから出て行った。ところが、安保理事会で武力行動に出てよろしいということになったときには、そのときには日本の自衛隊はどうするの。それは憲法第九条に抵触するから私は帰ります。こうなるのですね。そのときはどうなるのですか。
  90. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 少なくも明確に申し上げられることは、日本の国の一作用として兵力を行使するということは憲法九条に違反をするということでございます。したがって、いまおっしゃったような場合に兵力を行使する、日本国が武力を行使するという場合は憲法九条に違反すると言わざるを得ない。したがって、そういう危険のある場合、そういう可能性を包蔵している場合に出るということも同様に考えなければいけないと思います。
  91. 横路節雄

    横路委員 それでは出れないじゃないか、あぶなくて。
  92. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 そのとおりでございます。
  93. 横路節雄

    横路委員 それでは、いままであなたは長いこと国会で論議をしていたが、全然抽象的な論議なんです。抽象的な論議であって、最初は国連の警察軍として出た。しかし、そこで武力的ないろんな行動がある。そこで安全保障理事会で、国連警察軍として行ったが、そこの現地で武力行動の応対をしてもやむを得ないというときには、自衛隊は憲法第九条に基づいて、それは下がらなければならぬ、そういう制約があるんだから、初めから国連軍に対しては純然たる警察行動としても現実的には出れない、実際の法の適用からいけばそうなるだろう。それをあなたは、いつも長いことこの衆議院や参議院、両方でごたごた言うから、いつも問題になるのです。どうですか、できないだろう。できるのかね、そういうことは。
  94. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私は、実はその辺を意識しながらお答えしておるつもりでございますが、最初に、ただいまも申し上げましたように、国連社会、国際社会というものが、これは発展の段階にございますが、そういうある段階において国連社会の組織化された団体そのものが武力を行使するということがあり得ます。そういう武力を行使するのは、各国の名と責任においてではなくて、その国際団体の名と責任においてするという場合に、それぞれの国ができますことは、兵力を提供するということだけでございます。それで、そういう団体がその社会の治安を維持する、平和に対する脅威を除くというような場合に、その団体の力においてそれを鎮圧する、これをすなわち警察行動——何と言ってもよろしいのでございますが、一般の性格から言えば、これは警察行動と言ってもいいだろう。そういう武力を行使する団体に兵力を提供する、そのことと、各国がその意思によってみずからの名と責任で兵力を行使するということは違うであろう。これを分けて言っておるわけでございます。したがって、前段階の問題は、はなはだ抽象的だと言われればそのとおりでございますが、だからといって、そういう議論が成り立たないということは言えないだろう。したがって、私は両方の場合について言わざるを得ないわけでございます。
  95. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、私がこの問題を取り上げたのは、前に国連の安全保障理事会の非常任理事国に日本がなったときに、たしか五七年ですか、レバノンに国連軍が出ましたときに、当時の松平国連大使が、日本の自衛隊が国連軍に参加しないので、肩身の狭い思いをしたと言って大問題になりまして、ここの予算委員会でわざわざその問題を取り上げて質問したことがありました。また同じような問題が出てくる危険がありますので、その点をはっきりしておきたいと思って申し上げたのです。  次は、松野防衛庁長官にお尋ねをいたします。  それは第三次防衛計画なんです。これはいずれ大蔵大臣にも公債のことでお聞きをしていきますが、今回の補正予算で赤字公債が約二千六百億出されようとしているわけで、大蔵大臣のお話をよく聞いていませんが、四十一年度予算では七千億になるか八千億か国債を発行しようとしている——だろうと思うのですが、このように不況であり、財政事情が逼迫しているおりから、戦後いまだかってないこういうおりに、松野防衛庁長官は、いままであらゆる機会に新聞を通じて、四十二年の四月一日から発足をする第三次防衛計画は、一年繰り上げて四十一年の四月一日から発足をするのだ、こう言っている。ちょうど昭和六年の九月十八日の満州事変で日本は本格的な戦争に突入しようとした第一歩、そして昭和七年の秋から、いわゆる本格的な赤字公債が発行された過去の経緯を見ますと、まことにふしぎな道をたどってきているのじゃないかと思うのです。  そこで、私はあなたにお尋ねしたいのですが、第三次防衛計画は、いま私が言ったように間違いありませんか。四十二年四月一日から五年計画でやろうとしたが、それを一年繰り上げて、四十一年から六年計画でやるというのが、どうもこの国会ではまだはっきりした論議をしたことがないようだから、まずその点をはっきりしてもらいたい。
  96. 松野頼三

    ○松野国務大臣 そういう構想で私はおります。
  97. 横路節雄

    横路委員 そういう構想で——あなたの口から言ってください、四十六年の終わりなら終わりと。
  98. 松野頼三

    ○松野国務大臣 四十一年度から発足したいという構想で私はおります。
  99. 横路節雄

    横路委員 そこで、私はあなたにきょう聞きたいのは、財政的な問題を主として聞きたい。きょうはあなたに、やれミサイルホークがどうとか、ナイキハーキュリーズがどうとかなんとかいうことではなくて、財政的な問題を聞いていきたい。あとで大蔵大臣にも財政的な問題をあわせて聞きたい。  そこで、あなたは、私の記憶に間違いなければ、最終年度昭和四十六年度には防衛費は国民総所得の二%にしたいと言っておられたと思うのです。二・五%ではなくて、二%だと思うのですが、この点、ひとつここで明らかにしてもらいたい。
  100. 松野頼三

    ○松野国務大臣 まだ明らかにする段階じゃありませんが、せっかくの御質問ですから、ただいま私が承知しておる、考えておることを申し上げたい。これはあとで変更になるかもしれませんが、大体二%を基準に私は防衛力の整備をしたいと思っています。
  101. 横路節雄

    横路委員 藤山さんに一つお尋ねしたいのです。藤山さん、これから来年の経済ですね、国民総所得の実質的な伸びは、きのう何か、七%ないし八%だ、こう言われていた。そうすると、名目的な伸びは何ぼになるのでしょうか。一〇%ないし一一%ぐらいでいくのでしょうか。その試算でいくと、四十六年の国民総所得は幾らになるでしょうか。  もしも藤山さんが、どうもそれは、おれはそう簡単に計算ができないというならば、経済企画庁というものは数字の専門家がいるのだから、それぐらいの数字の計算をしていないわけがないのだから、出てきてひとつ答えてもらいたい。
  102. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いまいろいろな条件が変化しておりますし、また、きめていかなければならないいろいろな条件がございますので、はっきりしたことは申しにくいと思います。
  103. 横路節雄

    横路委員 いや藤山さん、あなたきのうでしたか、四十一年の伸びは七%ないし八%でいきたいと言ったでしょう。大体それはずっと維持していきたいのでしょう。
  104. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は申さなかった、大蔵大臣が言われたと思います。
  105. 横路節雄

    横路委員 それでは大蔵大臣。
  106. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体来年は実質で七%ないし八%にいたしたい、こういうことを申し上げたわけであります。
  107. 横路節雄

    横路委員 来年が七%ないし八%の実質の伸びでいくということになると——その前に藤山さん、しかしあなたのほうの中期経済計画というのはあのままなのですか。手直ししたのでしょう。総理、いま苦笑いをしているけれども、あとで聞きます。あれは手直しをなすったでしょう。手直ししてなければ大問題ですよ。二・五%ずつの物価の上昇なんだし、四十三年までは絶対に公債は発行しないのだから。手直しなすったでしょう。あるいは手直しなさろうとしているのか、その点、一体中期経済計画はどういうことになっているのか。
  108. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 中期経済計画は、かねて申し上げておりますとおり、いろいろ直さなければならぬ点がたくさんございます。したがって、それを将来にわたって検討してまいりますけれども、現在においてはいろいろファクターが変動しつつあるときでございます。したがって、いま直ちに検討をして直すという段階ではないと思いまして、将来適当の時期に直す、こういうことで考えておるわけでございます。
  109. 横路節雄

    横路委員 藤山さんらしくないですね。あなた、何をおっしゃるのですか。中期経済計画についてはまだいろいろなファクターが変わってくると思うので、いまは手直しする段階で風ないと言ってみたって、もう、まず総理から手直ししてしまったのだから。総理が手直ししたのですよ。四十三年までは公債発行はしないというものを、四十三年どころじゃない、来年、もういま公債発行するのだから。物価については二・五%というのは、そうじゃないのでしょう。来年の物価については、あなたじゃなかったですか、五・五%上がると言ったのは。もう上がってきているじゃないですか。中期経済計画はいろいろな要素があってまだ変わるんだというのに、全然作業してないのですか。それじゃ怠慢じゃありませんか。それでは一体何しにこの予算委員会をやっているのです。どうせこの予算委員会は補正予算だから、年末までに上がるだろう、たいしたことはないだろうなどというようなお考えで各大臣が出ておいでならたいへんですよ。私はきょうはいろいろ外交問題その他たくさんあるから、はしょって聞いているのですけれども、中期経済計画は、あとで総理にお聞きをするのだけれども、当然物価の問題、それからいまの公債の問題、国民所得の伸びの問題について、少なくとも四十一年から四十三年までのものについてはある程度あなたが見通しを持たれて——今度の補正予算というのは、だれが考えたって、みんな十五カ月予算だと言ってこれに臨んでいるじゃありませんか。もう一ぺん中期経済計画について、物価の問題、公債の問題、それから国民総所得の伸びの問題、そういう点について明らかにしてもらいたい。だめですよ、おざなりで。
  110. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 中期経済計画が、たとえば物価の問題で二・五%しか上がらぬという数字をずっと出しておるわけです。これらのものは現実において違ってきておるわけなんでございまして、そういう点について、これを検討し直さなければならぬことは私は否定しておりません。ただ現状におきまして、これらのものを、たとえば中期経済計画を修正したこういう案がきっちりできたのだと申しますのには、一体これからの財政の規模が公債をやってどうなるのか、あるいはこれからの物価に対する政府の対策等がどういうふうにきいてくるのか、そういうものをきめまして、そうして、たとえば政府需要がどのくらいに増大する、民間需要はどの程度におさまっていくのだというようなところから直してまいりませんと、ただいたずらにそれだけの数字を、たとえば物価だけその数字を入れかえるというようなことでは確定的な中期経済計画の改変にはならぬと思います。ですから、そういうことがきまってきてからでないと、中期経済計画を完全に改定するにはそういうことが必要だと思います。またその時期に、そういうむずかしい作業になれば、これは全然廃棄してしまうということをきめるか、いずれかだと思います。そういうような段階になりますとすれば、新しい何らかの見通し、計画を立てるということになろうと思うのでありまして、現状においては、私どもは中期経済計画の扱い方として、コンクリートなこういう計画に直したと言うことが適当だと思う段階には至っておりません。
  111. 横路節雄

    横路委員 じゃ主計局長、あなたのほうで、いま大蔵大臣は、来年の国民総所得の伸びは七%ないし八%だと言うが、そうすると、大体来年は名目は一〇%ないし一一%ですか。七%として——どっちをとるのですかね、八%にすれば一一くらいをとるのですか。大体その場合にどれだけになるのですか。
  112. 谷村裕

    ○谷村政府委員 来年度のことについては、さっき大臣が、GNPでほぼ三十兆くらいと言われたと思いますが、御質問にありましたように、かりに四十六年度どのくらいになるかということは、単純にいまおっしゃったように一〇%の伸びをしていったというふうにして計算いたしますと、ほぼ五十兆くらいになります。
  113. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、あなたとしては大蔵大臣を長くおやりになり、やるお気持ちがおありなのでしょう、不況を打開しようというのだから。来年は七%ないし八%、その水準はずっと維持していきたいということでしょうね。それから下げていくのですか。それから上げても、横ばいにいっても、下げるということはしないのでしょうね。それはどうなのですか。
  114. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体その程度の成長の高さは維持したい、こういう気持ちであります。
  115. 横路節雄

    横路委員 そうすると、松野防衛庁長官、昭和四十六年度が、いま主計局長が言ったように五十兆ですね。大体私どもの計算でも、名目一〇%の伸びで五十兆三千九百億くらい、一一%でいけば五十二兆くらいになる。そうすると、二%でいきますと一兆円になるのですよ。そうすると、来年、昭和四十一年から始まるこの防衛計画というものはばく大なものになるのですが、一体総額どれくらいなものを一応頭の中に入れていらっしゃるのですか。
  116. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまの五十兆が総生産の額か国民所得の額かによって第一にこれは違ってきます。したがって、中期経済計画の四十六年度まで見通したものは、今日政府機関の中にはございません。かりに中期経済計画をこのまま伸びると見通した場合という前提が一つの問題、その他は毎年国民所得及び国民総生産を一割伸ばすという前提、この上での話だとそういうことになるでありましょう。なるかならないか、これは今後の経済の問題ですからわかりませんが、その数字をとれば、おっしゃるように、五十兆の場合には最終年度は一兆目標ということになると私は思います。
  117. 横路節雄

    横路委員 そうすると、最終年度一兆を目標にしていけば、来年度から始まる第三次防衛計画の総体は大体どれくらいになりますか。
  118. 松野頼三

    ○松野国務大臣 来年度大蔵省に概算要求しております数字がすでにございます。それに非常に少ない数字です。三千五百億円前後でございましょう。ということは、昨年の予算よりも二五%増以内であります。概算要求の金額は、昨年の決定予算に対する二〇%増ぐらいが概算要求ですから、これ以上にはもうおそらくならないだろうと思います。したがって、三千五百億の要求ですから、これ以下であろうということだけは申し上げられます。
  119. 横路節雄

    横路委員 あなたが、国民総所得の二%、最終年度には一兆円ということになれば、昭和四十一年から始まる六年計画でいくとすれば、大体私たちの概算では四兆円ぐらいになるのじゃないか。第二次防衛計画というのは、大体一兆一千五百億か一兆一千八百億だ。それが第三次防衛計画というのは約四兆円になる。だから、先ほど私が大蔵大臣に指摘をしましたように、いみじくも昭和六年九月十八日ですか、満州事変に突入して本格的な戦争になっていった。そして、昭和七年の秋から本格的な赤字公債が出てきた。ちょうど来年は、いま松野長官が言われたように、二五%で押えているから、まあ三千五百億円程度だろう。しかし四十二年度から飛躍的ないわゆる防衛費になってくる。そうすると、どんなに大蔵大臣が陳弁これつとめても、やはりいまの不況を克服するためには、なるほど一つは公共事業ということもあるが、一つは防衛産業だ。一つは防衛費を増大して、防衛産業を拡大する以外にないのだというようにしか受け取れなくなってしまうのです。これは、国民の率直な意見です。この点については、防衛費の拡大というものに対して、大蔵大臣はどうお思いになりますか。昭和四十六年には一兆円になろうとしている。大蔵大臣、あなた財政当局として……。
  120. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 防衛費は国力に相応してこれを漸増する、こういうことでございまして、いま私ども考えておりまする公債政策とは何らの関係がないのです。公債の発行につきましては、そういうただいまお話しのようないろいろお話もあります。ありますが、その点を明確にするために、公債の対象といたしましては、防衛費はこれを充てておらぬ、こういうたてまえを堅持してまいりたいと思っております。
  121. 横路節雄

    横路委員 長官に二つ聞きますが、一つは、F86Fを戦闘爆撃機にしましたね。これは一体何を爆撃するのでしょうかね。いままでは飛んでくるやつを空中で要撃をするということだったのが、今度F86Fを戦闘爆撃機としてがんとやっつけるというのだけれども、何をやっつけるのですかね。いや、ここは問題なんです。一つの問題点だから聞いておきます。木村篤太郎さんは、前の長官時代に、爆撃機はいまの憲法のもとでは持てないと、こう答弁していますから、その点を念頭に置いて答弁してください。
  122. 松野頼三

    ○松野国務大臣 その爆撃訓練というのはやっておりますが、これは沿岸に来襲する敵対部隊に対する自己防衛手段の一つとしての訓練であります。
  123. 横路節雄

    横路委員 これは、いまあれですか、四飛行隊を持っているわけですね。四つですね。それから次に、東京周辺にナイキアジャックスというのがありますね。あれはマッハ二以上の爆撃機には役に立たないですね。あれはどこの飛行機をあてにして考えているか知らぬけれども、いま大体爆撃機を持って遠くへ飛んで行こうなんというのは、マッハ二以上の爆撃機がだんだん出てきた。そうすると、ナイキアジャックスを持ったけれども、マッハ二以上の爆撃機に役に立たない。役に立たないものを持っていてどうするんでしょうかね。マッハ二以上には役に立たないことは明らかだ。明らかなんですよ。
  124. 松野頼三

    ○松野国務大臣 マッハ二以上に役に立たないということが明らかだということは、あんまり明らかじゃありません。(笑声)これは明らかじゃありません。したがって、その議論はまだその先の議論ですが、この性能はあまり公にする必要はございませんが、マッハ二以上の速力と性能は、今日のナイキが持っております。したがって、有効かどうかということは、これはあまり明らかだということは明らかじゃありません。
  125. 横路節雄

    横路委員 総理、いまお聞きのとおり、せっかくばく大な金を用意してそろえたナイキアジャックスは、マッハ二以上の爆撃機には有効かどうかということも明らかでない。そこで、あなたに一つ聞いておきたいのだが、制服の連中は、沖縄に持っている核弾頭つきのナイキハーキュリーズを持ちたい。大体発射機ランチャーはナイキハーキュリーズなんだから……。この点は絶対持たないですね。第三次防衛計画で絶対持たないですね。この点だけは明らかにしてもらいたい。
  126. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それは言明できません。私のほうは、ただいま横路委員から御質問のように、だんだん兵器が進む、防衛力もこれに応じて前進しなければならないというならば、やはり今日の、ただいま明らかでないようなものでは困るので、より以上の明らかなものを持ちたいと思います。したがって、それ以上のものを持つということは私は今日考えておりますが、ナイキハーキュリーズを否定されるならば、私はそれを考えておるわけではございません。いまのよりもよりいいものを持つことが国民に対する私の責任だと思います。ただし、それじゃハーキュリーズかというと、そういうわけではございません。もっといいものが考えられるならば、日本の国情に合ったものを私は持ちたいと思っております。
  127. 横路節雄

    横路委員 いや、私が聞いておるのは、核弾頭つきのナイキハーキュリーズを聞いておる。それを持つか持たないかは第三次防衛計画の一つの重要な課題なんだから、この点をここではっきりしてもらいたい。ほかのことを聞いておるのではないのです。
  128. 松野頼三

    ○松野国務大臣 核弾頭のものを持つ気はございません。
  129. 横路節雄

    横路委員 防衛問題はもっといろいろお尋ねしたいのですが、また休会明けになりましたら、あらためてたくさん聞きたい。  今度の予算に、日韓の経済協力の費用が十八億入っていますね。この点を中心にしてこれからお尋ねをしたいと思います。  ここに、大蔵大臣の説明書です。第七、日韓国交正常化関係費とございまして、韓国との無償経済協力に要する経費として十八億円を見込んでおる。実は私は前もって一応説明は聞いていますが、しかし、これはこの間の国会で非常に問題になっている点ですから、一応本委員会で明らかにしてもらいたいと思うのです。  まず、この十八億円の経費はどういう算定の根拠で組んだのか、その内訳はどうなっているのか、その点についてお尋ねします。
  130. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 無償経済協力年額二千万ドル、それの二カ月分でございます。
  131. 横路節雄

    横路委員 この間の話によりますと、十二月十八日には、ことしの四百五十万ドルについては返すことはできないから、無償供与の中から差し引いてもらいたいという口上書が来ているのでしょう。来ているのですね。その点、はっきりしてください。本年度分の四百五十七万ドルですか、返せないから差し引いてもらいたい……。
  132. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはオープンアカウントですね。それを日韓協定では、支払いの方法につきまして、無償経済協力は年額三千万ドルでやる、そういう場合には、十年年賦でオープンアカウントの支払いを別途いたす、こういうことになっておるのだが、場合によりましてはそれを支払いをいたしませんで、無償の中から差し引くこともある、こういうことになっておるわけです。その方法につきまして、去る十八日に、韓国側のほうでは差し引きにしてもらいたい、こういう要請をしてきたわけであります。
  133. 横路節雄

    横路委員 要請といって、口上書で取りかわしたのですか、どうなんですか。
  134. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 口上書をもって、そういう要請をしてきたわけであります。
  135. 横路節雄

    横路委員 その十八億円については何に使うのですか。この十八億円については、無償供与ですから、両国政府の実施計画が合意に達しなければ、これは使えないんですね。
  136. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そのとおりでございます。
  137. 横路節雄

    横路委員 そうすると、これは組んだけれども使えないというわけですね。
  138. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 使えないというわけじゃありません。使えそうだというので、十八億円を予算に組んでおるわけであります。
  139. 横路節雄

    横路委員 これは何日以内に使うのですか。
  140. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、日韓協定によりまして、協定が発効したときから二月以内に両方で計画を承認する、それに基づいて現実の無償供与が始まる、こういうわけであります。それが大体二月分ぐらいは必要じゃないか、こういうことで十八億ということになっております。
  141. 横路節雄

    横路委員 四十一年度予算では、この無償経済協力に関する費用は幾ら組むわけですか。
  142. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一応三千万ドル。それからいまのオープンアカウントの勘定を差し引きにするということで、これは幾らになりますか、それを差し引いた額、これが予算に計上される、こういうふうに御了解を願います。
  143. 横路節雄

    横路委員 それではいまのお話で、四十一年度予算には無償三億ドルの十年均等分の三千万ドル、それから四百五十七万ドルを引いた二千五百四十三万ドルですね。そうすると、その日にちは、いつまでの分ですか。その組んだ分は、何年何月何日までの分ですか。
  144. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 政府委員が答弁します。
  145. 谷村裕

    ○谷村政府委員 お答えします。  御承知のように、協定の発効が十二月十八日で、そういう協定の執行につきましては、それから一年ごとになります。それから私どものほうの予算のほうは四月一日から一年ということで、約三カ月ちょっとずれております。そこで来年組みますものは、いま大蔵大臣が言われましたものは、四十一年度予算として組むわけでありますが、協定の関係から言いますと、四月一日から始まりましてその次の三月三十一日までの予算ではありますが、中身としては、協定の第一年度のあとの八カ月分弱と、それから協定の第二回分の初めの三カ月弱というのが内容になるかと思います。
  146. 横路節雄

    横路委員 この協定書の中で、合意議事録の4で——これは外務大臣に聞きましょうかね。第一議定書の第二条1に関し、一億五千万ドル以上の「資本財以外の生産物を供与することを期待する旨を述べ、日本側代表は、これに対し考慮を払う用意がある旨を答えた。」となっていますが、これは一億五千万ドル以上で、上はあいているわけだから、どこまでいくのですか。
  147. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 政府委員から……。
  148. 横路節雄

    横路委員 いや、ちょっと待ってください。それは外務大臣、政府委員じゃない。あなたが交渉してきたんですから。一番大事なところです。
  149. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一億五千万ドル以上はどこまでいくかという数字上のお話ですからね。
  150. 横路節雄

    横路委員 数字上——いや、そんなことないですよ。それはだめですね。ちょっと外務大臣、それは協定の一番大事なところでしょう。それを数字上のことだからと言って……。それは外務大臣、あなたが政治的にきめてきたことじゃないか。それはあなただめですよ、そういうことは。
  151. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは十年間に一億五千万ドル以上ということになっておりまして、年々の分割した額をどれぐらいにするかということは、そのつど両国の当局者間において協議してきめる、こういうことになっております。
  152. 横路節雄

    横路委員 私が聞いているのは、外務大臣、一億五千万ドル以上というのはどこへいくのかというのですよ。二億までもいくのか、三億から四千五百七十五万ドル引けば、無償供与は二億五千幾らになるんだが、そこまでも全部いわゆる消費財でいくのかと聞いているのですよ。
  153. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、つまり現地通貨が不足いたしまして、そしていろいろなプロジェクトを進める上において非常な支障を来たすというのが従来の例でございますので、そういう前例を追いたくないというので、消費物資を政府が一応かかえて、これを民間に供給する、そして集めた金を、つまり現地通貨をもって有償、無償のプロジェクト等の事業を円滑に進めよう、こういう目的で一億五千万ドル以上、こうなっておりますから、おのずからこの資金の性格から見て限度がある。だから、これが二億ドルにのぼるとかなんとかという、そういうことはまあない。多少……(横路委員「どこまで約束した」と呼ぶ)以上というのを約束したのです。
  154. 横路節雄

    横路委員 いや、あなたの言うのは、約束してきているでしょう。向こうのほうは一億六千二百五十万ドルとかという数字をはじき出しているんだから。  そこで、あなたのほうにお尋ねしたいんですが、この生産物の選定は、いいですか、あなたいまおもしろいことを言いましたね。この消費物資は政府がかかえて売却して、その金をいわゆる国に入れてやるのですね。これは政府がかかえるのですか。政府がかかえるのじゃないでしょう。あなた、全然違うのですよ。
  155. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 用語は正確じゃないかもしれませんが大体お察しがつくだろうと思ってそう言ったのです。つまり、管理下に行なう、政府がこれを管理して、そしてそれを現地通貨にかえる、こういうわけであります。ですから、実際に取り扱うものは、政府の役人ではおそらくないと思う。やはり適当な民間の業者に扱わせる、政府はこれを管理するということになると思います。
  156. 横路節雄

    横路委員 いや、それは違いますよ。そういうことを言ってはだめだ。ちょっと待ってください。全然違うよ、そういうことを言っては。——局長、いまあなたに答弁させるから、そこにすわっていなさい。そういういいかげんなことを言って、きめてきて何だ一体——いやいや、いま局長に答弁させるから。  外務大臣、この経済協力のここは非常に問題がある。問題があるから私はあなたにお尋ねをしようとしているんだが、あなたは御存じないんだね、この手続上に関しては。何にも聞いてわからない。あなたほんとうに何にも知らないですよ。  では局長、あなた答弁しなさい。この物がどういうようになって、ウォンにかわってどういうようになってと、ちゃんと順序正しく。だめだよ、きちっとしないと。
  157. 西山昭

    ○西山政府委員 先方と話しまして、先方が説明しまして私どもが同意しました手続は、資本財以外のものにつきましては民間によって、日本の民間の業者と契約を締結することに相なっております。そして、その購入の手続といたしましては、韓国の政府が輸入公表、それは、日本と年次計画に基づきまして、日本と協議がととのいました結果、実施計画に基づきまして韓国の政府が公開の輸入公表をやるわけでございます。それに基づきまして韓国の業者が応札いたしまして、その見返り代金を韓国銀行に出すわけでございます。その金は韓国政府の資金となりまして、それを特別会計に入れまして、その金を、先ほど大臣が申しましたように、いろいろの無償、有償関係のプロジェクトの、現地におきまして必要とする現地資金に充当する、こういうぐあいに相なっております。
  158. 横路節雄

    横路委員 私、聞くから、あなたはそこにすわっていてもらいたい。大臣のわきにでも。  もう一ぺんあなたの言ったのを言ってみるからね。そうすると、まず両方の実施計画で合意に達した、そうすると、輸入計画が定まったから、そこでいわゆる韓国政府は公示するわけですね。そうすると、それに応募するわけです。入札をして落ちたものは韓国銀行に入れるわけですね。その韓国銀行に入った金は、韓国政府の財政資金になっていくわけですね。そうすると、そこで韓国の業者は韓国政府から認可証をもらって日本に来るわけですね。そうして日本の業者と取引をするわけですね。商談をすれば、商談しましたというので、使節団を通じてやれば、二週間以内には来るわけだね。そうすると、品物を積んで帰れば、積んで帰った以上はだれのものですか。韓国の業者のものでしょう。所有権はだれのものです。
  159. 西山昭

    ○西山政府委員 所有権は、契約を締結しました韓国の業者のものでございます。
  160. 横路節雄

    横路委員 それからもう一つ。  総理、私はあなたにここでこんなことを言いたくないが、せっかく国民の血税である無償三億は、朴政権の利権と結び、職汚が続々と発生するんです。まず第一点は、いいですか、いままでビルマ、インドネシア、フィリピンの賠償については、外交特権を持った使節団が来てやった。今度のいわゆる有償については外交特権を持った使節団がやるが、この無償については、いまお話しのように業者がやるんです。業者が。そして、まず入札に応募して、金を納めて、許可証をもらって日本に来る。日本の業者と取引をする。そうしたら自分のものなんだから、あとは韓国に持って帰ったら、それを一倍半に売ろうと二倍に売ろうと、物によっては三倍に売ろうと、それは業者の腕次第なんです。腕次第、これが非常に問題なんだ。本来からいえば、このことは絶対に許すべきでなかった。局長、ちゃんと聞いて。大臣と打ち合わせるのはいいから。局長、聞いてなきゃだめだ。あなたがこれから目を大きくして監視しなきゃならないんだから。いいですか。ここが問題なんだ。なぜこういうことを、いままでフィリピン、ビルマ、インドネシアとやった賠償と同じように、外交特権を持った使節団にやらせないで業者にやらしたか。いいですか。その次に問題がある。業者のものなんだから何ぼに売ろうといい。暴利取締令であるいは頭をちゃんと押えるかもしれないけれども、いままで朴政権というのはやっているんだ。四粉暴利事件とかなんとかいって、大統領選挙になると、アメリカ等から行った小麦だとか砂糖だとかなんだとかいうやつを出して、それをぽっと売って、暴利だといってはちょっと頭だけ取って入れている。その次に問題がある。  そこで、日本の業者には日本政府が、韓国政府が指定した銀行を通じて払うんだね。そうでしょう。そのいきさつを話しなさい。
  161. 西山昭

    ○西山政府委員 民間業者が介入をするゆえんでございますが、韓国政府は、従来民間で消費しますいろいろの資材の購入にあたりましては民間の業者を使っております。政府で調達します政府用の公共事業用につきましては調達庁がやっております。私どもとしましては、政府でなければならない、民間でなければならないと、いろいろの特徴はございますけれども、民間であるから腐敗の原因であるというぐあいには考えておりませんのでありまして、民間の場合になぜ政府の認可が要るかと申しますのは、これは協定に基づきます三億の金を使うということをオーソライズしたものでなければ日本との協定が実行に移されませんので政府の認可を得る、こういう形になっておりまして、またこの場合に民間の業者がどういうものを買うかといいますと、これは日韓の両政府間で毎年の実施計画をつくりまして、韓国の政府が必要とする資本財以外のものについて日本と話をして、それに基づいて民間の業者が買い付けを行なうわけでございまして、その場合に韓国側の現在の考え方は、物によりましては非常に輸入価格と国内の販売価格の間に開きがあるものが御指摘のようにございます。そういうものにつきましては、特に当該の業者が転売等によりまして不当な利得をして、この協定が国民全般の利益にならないような結果になることを防止しまして、韓国銀行にウォン貨を払い込みます場合は、そういうような市場の関係も考慮して値段をきめる、こういうぐあいに了解しております。  それからまた、何ゆえに民間業者が入って、フィリピンその他のような外交特権を持った者にやらせないかというお話でございますが、ただいま申し上げましたような民間業者の特徴を生かしてやる、韓国の国内の制度も尊重してやる、こういうことでございます。  それから、民間業者といえども、協定にございますように、契約ができますと、韓国の使節団を通じまして日本政府に認証を求めるわけでございます。そうしていろいろの紛争が起こります場合には、使節団を通じましていろいろ解決する、あるいはその前に契約の内容に基づきましていろいろの仲裁その他の手続をとる、こういうことになっておりまして、民間の業者がこのように入ったからと申しまして、特に手続上に差しつかえはないと考えております。
  162. 横路節雄

    横路委員 もう一つぼくの質問に答えていない。日本の業者に日本政府が払うときの銀行の指定。
  163. 西山昭

    ○西山政府委員 この三億の無償の金が協定に基づきまして支払われていくわけでございますが、これは手続上、日本の政府が、契約ができまして支払いの時期が来ました場合には、日本の銀行にこれを払い込みます。公認の為替銀行に払い込むわけでございますが、その金をもって日本の輸出業者にその金が支払われるわけでございます。その手続が完了しまして協定の実施が行なわれた、こういうぐあいになるわけでございまして、この協定の実施上、そういう手続はどうしても必要なわけでございまして、目下どういう銀行を指定するかということは、日本政府の推薦を得て韓国の政府が自分できめる、こういうことになっておりまして、関係当局の間で話が進んでおると了解しております。
  164. 横路節雄

    横路委員 局長、いま問題がたくさん出ましたが、業者が韓国銀行にウォンを積んで、あと韓国政府から認可証をもらって日本に来て、日本の業者と取引をして、使節団を通じて認証を受ければ、積んで帰ってあとは何倍に売ったっていい。あなたはそれを防止するため適当なウォンでと言うけれども、所有権は業者のものなんだからね。一ぺん積んで認証を受けてもらった以上は業者のものなんだから。韓国の業者というのは、いままで例があるじゃないですか。ぼくはきょうはここに持って来なかったけれども、たびたび日韓の経済協力に関して使節団を出している。その膨大な使節団の報告書に何と書いてある。みんな李承晩や朴政権を取り巻いている一部の買弁資本家だけをふとらしていると書いてあるじゃないか。コンロン報告にまで書いてあるじゃないか。アメリカのいわゆる援助計画は何でつぶれたかといえば、こういうことでさっぱり効果があがってないんですよ。あなたたちは朴政権に押されて、こういう利権と結び、汚職が発生していることが明らかなのに、やっているじゃないか。  それから、いまあなたは最後にぼくに念を押されて答弁しているけれども日本政府から銀行に払い込んで、その銀行から業者にいくんだが、そのときにいわゆる公認の為替銀行、これは韓国政府が指定するんだろう。そうしたら、この国会でやったように、吹原産業事件のように、われわれの常識では考えられないが、大和銀行というものが吹原の預金がさほどないのに、何で三百億円もの通知預金証書を渡してみたり、三菱銀行というのが、たいへん佐藤さんには悪いけれども、自民党の政治資金を預金するからなどと、だまされるほうもだまされるほうだけれども、これまた三十億円の通知預金証書を渡したり——いま預金競争というのは激しいんだから、朴にこんなものをやってどうするんです。それは目に見えるではありませんか。そこへ何十億と朴の指定する銀行を通じて業者へ払い込むとなったら、日参する。日参したら何が起きるんです。この折衝をする外務当局が、こういうことについてなぜ一体防止の策を十分しないのです。あなたは、いま韓国の特徴を生かして民間にやらした。韓国の特徴の民間というのがくせ者なんです。これが汚職の根源なんだ。コンロン報告に書いてあるじゃないか。あなたは五月十一日の「エコノミスト」を読んだかい。小坂善太郎さんの弟さんと木川田東電の社長とが対談会をしている。何と言っているか。アメリカが援助したが何の役に立ったかな。ああ役に立ったよ。朴と李承晩という二つの腐敗政権、あの堕落政権を維持したな。あははははと言っている。もっときびしくやるべきだ。私はほかのことを言っているのでないのだ。これは無償三億ドルに関しているから言っているのだ。  そこで私は外務大臣に言っておきますが、これからひとつ国会はこれを監視しなきゃなりませんから、生産物については、三億ドルについては実施計画が出ますね。二億ドルについても実施計画が出るわけですね。合意に達しなきゃならぬ。これは必ず国会に出してくれますね。まず無償三億ドルについての実施計画、有償二億ドルの実施計画は、両国政府が合意に達したら出しますね。
  165. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御注意の点は、政府といたしましても、これを十分に参考にして善処したいと思います。  国会の承認は、いま考えておりません。
  166. 横路節雄

    横路委員 私は承認と言ってないんですよ。それは両国政府が合意に達した上でというんだから、私の言うのは、両国政府が合意に達したものは国会へ出してもらいたいというのです。当然じゃありませんか。無償三億ドル、有償二億ドルについて両国政府が合意に達したら——年度計画というものはなぜ出すことが悪いのです。そういうことをわれわれが国民にかわってきちっと見ておくことは正しいじゃありませんか。
  167. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先方の韓国ともよく協議いたしまして、善処したいと思います。
  168. 横路節雄

    横路委員 総理にぜひこれは決断してもらわなければならぬ。この間十月二十八日、総理、お聞きでしょう、対日請求権の問題だって——椎名さん、聞いてください。一体韓国政府の了解がなければ出せない。何です。こういうことがどうして出せないのか。それは出すべきですよ。これから国会が監視をする。それはそうですよ。両国政府が合意に達したものは出すべきですよ。どうして出せないんです。
  169. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事前処理に当たっての御相談はできませんが、事後の問題を報告するということは、一般の資料提出の例に準じて考えてみたいと思います。
  170. 横路節雄

    横路委員 ここではっきり出すと言わなければだめですよ。
  171. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御趣旨に沿いたいと思います。
  172. 横路節雄

    横路委員 そこで、実施計画ができたら、それによって調達が終わりますね。そうすると、年度の終わりには、どういうものが、どういう業者から、どういうかっこうで入ったかということは、最後に締めくくりがつきますね。最終的にその実施が終わったときも報告をしてもらいたい。よろしゅうございますね。
  173. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御趣旨に沿いたいと思います。
  174. 横路節雄

    横路委員 次に、外務大臣、八月十日の日韓国会の特別委員会の第九次会議で、経済企画院長の張基栄というのが、生産物の選定は日本側と協議せずに、われわれが決定するんだ、こういうことを言っているが、これは間違いですね。両国政府の合意でしょう。
  175. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一応向こうの希望を徴して、こっちがそれに応ずるかどうかということは、考えた上で、それで合意に達する、こういう運びになります。
  176. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私はきのう、外務省というものはほんとうになってないと思った。実際外務省というものは秘密外交そのものなんだ。私はほんとうに憤慨した。きょうほんとうは堅頭ここでやろうと思った。それはどういうことかと言いますと、民間借款について、韓国向けの延べ払いの輸出承認がすでに十件ある。そこでそのうちの一件については、民間信用供与によるプラントの対韓延べ払い輸出許可に際して、外務省と在本邦大韓民国代表部との間の往復口上書要旨というものを出しておる。これは外務省が出した。きのう大蔵省は私に十件出した。口上書でないですよ、一覧表を出した。口上書があるだろうと言ったら、あると言う。だけれど、私は大蔵省から口上書をとることは遠慮した。外務省が口上書をかわしたんだから、外務省からもらおうと思って、外務省によこせと言ったら、あなたのほうは何と言うかというと、この条件——条件とは頭金が一〇%、八年間の延べ払い、金利は六%、あるいは五%、六%、六%、五・五%、五・五%というようなことが外部に漏れることは、商社は都合が悪いから、外部に出さないでくれと言われたから、絶対にお出しできない。私はこれを聞いて、ほんとうはきょうの劈頭にこの問頭を取り上げようと思っただんけれども、しかし、きょうは私は沖縄の問題から当初取り上げたわけだ。ここに官房長来ているだろう。だれだ、一体官房長は。外務省の官房長はだれだ。何だ、いままで出せと言うのに出さないで。外務省の官房長は一体だれだ。きのうは何だ。ここへ来て答弁してみろ。商社にぐあいが悪いから出せないなどと。だれだ、一体官房長は。外務大臣、官房長はだれです。何です。一体そういうのは。こういう不届きなことは何です。このために五時間も六時間も待たしておいて。ほんとうに不届きしごくだ。
  177. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう利率だとかどうとかということよりも、外交文書でございますから、その内容のいかんを問わず、ぽんぽんその写しを外部に発表するということは、どっちかといったらこれはまあ各国とも控えておるのが慣例でございます。そういう意味で申し上げたと思うのでありますが、これにつきましては、参議院でもやはりあなたと同様な要求があった。それで、一々具体的に十件出さぬでも、大体もう型はきまっているんだから、企業の名前等は言わずに、その内容をひな型として出せば大体お察しがつくんじゃないか、そういうことで、参議院のほうはそれで了承を得ておる。そういう関係でございまして、参議院との振り合いも考えて、いまここで即答はできません。でありますから、その点を調整した上で、この審議に支障を来たさないようにわれわれのほうとしては善処したいと考えます。
  178. 横路節雄

    横路委員 だめだ。官房長がまず出てこい。官房長はいないのか。何だと聞いたら、この問題を出すことは、各商社にたいへんぐあいが悪い。各商社が、出さないでもらいたい。それは条件が違う。頭金は一〇%、全部同じだが、延べ払いは八年、八年、七年、八年、八年、四年、八年、八年、十年とある。金利は六%、五%、六%、六%、五・五%、五・五%、六%、六%、六%になっている。これを公表することは商社間で非常にまずいから出せないと言う。商社間でぐあいが悪いから出せないとは何ですか。輸出入銀行を使っておいて。何だ、一体こういうのは。そんなばかなことがありますか。
  179. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この問題につきましては私が責任を持って処理したいと思います。でありますから、参議院との関係もありますので、適当に調整をして、そして御趣旨に沿うようにいたしたい、こう考えております。
  180. 横路節雄

    横路委員 ちょっと予算委員長。(発言する者あり)いつも何と言っているのです。韓国の対日請求権だってそうじゃないか。出す、出すと言って出さないで、何だ、最後に打ち切って。だめだよ。
  181. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま申し上げたように、出すように努力いたしますから、どうぞ御了承願います。
  182. 辻原弘市

    ○辻原委員 ちょっと議事進行。  いまの資料提出の問題は、外務大臣から釈明もあり、出すように努力いたしますというお話があったが、私は、この問題は、資料を出す出さぬという外務大臣、政府に対する要求の問題と別個に、議員が要求をしてもこれを出さなかったその理由に、いわゆる商社の都合があるから、商社は出してはくれるな、そういうことだから、これをお出しすることはできませんと言った。私は、外務省のその官僚のものの考え方を国会としては糾弾する必要があると思うのです。だから、そういう意味で、出す出さぬは次の問題だ。そのことを答弁した責任者をここに出してもらいましょう。そういうことをわれわれは一々見のがしておるから、それぞれの出先官庁に国会がばかにされるのですよ。これは許せません。断じて許せません。だから、出す出さぬということは次の別個の問題だ。そのことは糾弾いたします。そういうことを内部でもっていつでも理由にして出さない。そういうくせをつけちゃいけません。それはいけません。
  183. 青木正

    青木委員長 連絡いたしますから、次の質問を続けてください、高野官房長が見えるまで。連絡いたしますから、それまで質問を続けてください。見えましたら連絡いたします。(発言する者あり)次の質問を続けてください。高野官房長が見えましたら——横路君、出席方連絡いたしましたから、来るまでその質問を続けてください。
  184. 横路節雄

    横路委員 それでは経済協力局長ですか、西山局長、じゃ、あなたからここで——ぼくは口上書をもらわなければならぬのだから、口上書は口上書でぼくはぜひ大事なんだから、それは全部もらわなきやならぬ。あなたはここで全部、いままで認証した十件についてしゃべってもらいたい。何何会社、何々プラント、何年何月何日、金利は何ぼ、何は何ぼと、こう言え。だめですよ、そういうことは。こういうことは商社間の競争を招くから秘密だなんてことはおかしい。早く言いなさい。
  185. 西山昭

    ○西山政府委員 塩化ビニール樹脂工場のものは三十九年十二月、金額は三百六十万ドル、頭金一〇%、八年、金利六%、それから同じく三十九年の十二月にセメントプラント、これは四百七十四万ドルで、頭金一〇%、八年、金利五分でございます。それから四十年五月、豊田通商が冷間正延設備を出しておりまして、これが四百十九万ドル、頭金一〇%、七年、金利六%、それから安宅産業がポリアクリルプラントを同じく四十年の五月に承認を受けておりますが、これが三百八十万ドルで、頭金一〇%、八年、金利年六%、それから四十年の七月に三井物産が尿素肥料プラントを承認を受けておりまして、金額四千三百九十万ドル、頭金一〇%、八年、金利年五・五%、それから四十年八月に日商がブルドーザーを承認を受けておりまして、頭金一〇%、四年、金利五分五厘。同じく三菱商事がブルドーザーで百三十九万八千ドル、頭金一〇%、四年、金利五分五厘でございます。それから四十年の十月に三井物産が苛性ソーダとPVCプラントを承認を受けておりまして、三百三十八万ドル、頭金一〇%、八年、金利六%。それから同じく十月に、伊藤忠がポリアクリル繊維プラントの許可を受けておりまして、金額四百七十万ドル、頭金一〇%、八年、金利年六%でございます。それからそのあと十一月に至りまして、衣岩ダムの水力発電所用の機材の承認を日綿が受けておりまして、これが金額四百九十七万ドル、金利六%、期間九年、こうなっております。
  186. 青木正

    青木委員長 横路節雄君、御要求の高野官房長、見えました。
  187. 横路節雄

    横路委員 何だ、いま言えと言えば言うんだ。私はこれはちゃんと持っているんだ。しかし私が——(「持っているのに聞くな」と呼ぶ者あり)持っているのを聞くのじゃない、一々口上書がついているから、口上書をつけてよこせとやった。官房長、ぜひ出てもらいたい。  私は、きのう政府の連絡員を通じて、あなたのほうを通じまして、あなたのほうのだれか調査官かを通じて、何べんも、いま局長が読んだ十件に関する、いわゆるプラント輸出承認に関する件で、しかもその件ばかりでなしに、一々口上書がついているんだから口上書をつけて出してもらいたい。そうしたら何と言ったかというと、これは政府の部内では出さない約束になっています。そのときに私に何と言ったかというと、この内容が一一違うから、こういうものが外部に発表されては商社で困る。だから出さないことになっているんだ。だから私は、大蔵省は私にその口上書そのものは出さないが条件については出したぞと、こう言ったら、それは大蔵省は約束違反だと言う。こういう民間の信用供与についても、三億ドルというものは、いわゆる政府関係機関の輸出入銀行の金を八割使って、しかも年四分で使わしている。一体どうしてこういうものが出せないのです。しかも私は、このためにきのうは何時間も待たされている。とどのつまりは出さないと言う。私はきょうは劈頭この問題を取り上げて、一体、外務省はいままでこういう問題についてどんなにわれわれのほうで要請しても出さない。あなたのほうは業者の都合が悪くて出さないのか、一体これはどういうことなんだ。
  188. 高野藤吉

    ○高野政府委員 お答え申し上げます。  昨日先生から御要求がありまして、先生の御要望に応ずるために各省といろいろ意見の調整をしておりまして、お答えがおくれましておわび申し上げたいのであります。  それで、本件は商社ばかりでございません。ある程度の外交文書でございまして、口上書でございまして、その点の関係で、内容的にはもちろん先生に御説明申し上げてもよろしいと思いますが、外交文書という関係もございますし、また商社の秘密と、いろいろやはり商業上の問題もございまして、その点を調整いたしまして、できるだけ先生の御要望に沿いたいということで努力したのでございますが、できれば、内容は御報告申し上げまして、それ自身ということはいろいろな関係でひとつごめんこうむりたいということを私はいま考えております。(「どこの官房長だ」と呼ぶ者あり)私は外務省の官房長でございます。
  189. 横路節雄

    横路委員 官房長、最後は何を出すことをごめんしてもらいたいのだ。何をだすことをごめんしてもらいたいと言ったのだ、あなたは。
  190. 高野藤吉

    ○高野政府委員 内容につきましては、いま西山経済協力局長が御説明申し上げたとおりでございまして、公文書自身、口上書自身はごめんをこうむりたい、そういう、ふうに考えております。
  191. 横路節雄

    横路委員 一体きのうの話によると、商社のほうの条件がいろいろ違う。おれのほうは八年の延べ払いだ、おれのほうは七年だ、おれのほうは五年だ、金利はおれのほうは六分だ、今度は五分五厘だ、五分となって、商社の手のうちがわかるから困る、そう言ったかと思うと、今度は、これは外交文書だから困る、外交文書だから困るのならば——外交文書ならばなお出してもらわんければ困る。先ほど外務大臣は私に何と言ったのですか。これは外務省が十一月二十六日民間信用供与によるプラントの対韓延べ払い輸出許可に際しての外務省と在本邦大韓民国代表部との間の往復口上書要旨、四十年七月十三日付口上書要旨、これは全部外交上の文書だ。さっき外務大臣は何と言ったかというと、十件とも大体これと同じひな形ですから、それで参議院にはこれを一つ出したのです。参議院と衆議院とのつり合いがございますから、まだ衆議院には出してございませんが、両方のつり合いを考え考えさせてくださいと言っておる。これは秘密文書ですか。外務大臣この口上書は秘密文書ですか。秘密文書ではないでしょう、これは。
  192. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 外交文書は、ほとんど秘密文書です。
  193. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、それでは民間信用供与の三億ドルは政府の義務なんですね。政府の義務だからこの口上書をかわし、口上書は外交上の機密文書だから国会には提出できないというのか。三億ドルは、それでは政府の義務なんですね。
  194. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 外交文書は、大体において無条件にこれを公開すべきものではないという意味において秘密文書である、そういうことを申し上げたのです。内容によっては知られても一向さしつかえないというものもありますが、どこそこの国とどういう文書を取りかわしたというようなことをそのまま裸で世間に公開することは、これは各国間においてお互いに慎んでおる、こういうことをひっくるめて申し上げたのであります。
  195. 横路節雄

    横路委員 それでは椎名さん、これ一件は秘密文書ではないというわけではないのでしょう。これをお出しになったのだから、全部出してくださいよ。これはただ参議院に出したのを私がもらったというだけで、衆議院には出ていないのだ。あと全部出してください。その点ははっきりしてください。
  196. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは差しつかえないと思います。出します。
  197. 横路節雄

    横路委員 全部出す、十件ともですか。
  198. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 参議院に出したものを出します。
  199. 横路節雄

    横路委員 九件とも全部と言ったのですよ。どうして外務省というのは、全くほかの官庁では——外務省はだめだ。外交じゃないですよ。出せるものと出せないものがあることは知っておるけれども、こういう口上書は何で出せないのですか。
  200. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま内容を全部述べたのですから、あらためてその内容をお知りになる必要はないと思ったのですが出してかまいません。出しましょう。
  201. 辻原弘市

    ○辻原委員 関連して発言いたします。  これは、私は総理にお聞きを願いたいと思うのですが、私はこの話をきのう横路君から聞いて驚いたのです。横路君が憤慨すると同時に、私も、一体政府は、われわれ野党に対して、補正予算は日限が少ないからぜひ協力をしてもらいたいとたびたび申し入れをしてきているが、ほんとうにわれわれ野党に本格的に論議を通じて審議をしてもらうという政府の心組みがあるかどうか疑ったのです。この程度のものを外交秘密文書だ、あるいは内容についてはいろいろ他に関係するところがあるから出せないなんというようなことでは、およそ外交に関するわれわれの論議というものは具体的事実をもってやれないではないか。総理がそのとおりお考えになっておるのが事実とするならば、総理の指揮下にある各省のそれぞれの機関、責任者というものは、全然佐藤内閣に協力しておらぬじゃないか、総理の意図に従っておらぬじゃないか、私はそこまで考えたのです。通せ通せとおっしゃってあなた方がわれわれに要請をされるならば、十分国会が議論ができるような場をあなた方つくらなければいかぬ。これは政府としては当然の責任ですよ。そういう意味で、私は、昨日この程度の資料を出すということについて——私はことばの端々はとらえません。とらえないけれども、その心の底にあって、なるべく出さないようにしよう、しかもそのことばの中に出てくるのは、国会の審議よりはむしろ他のいろいろなことをおもんぱかって資料の提出を拒むというがごとき態度は私は許せぬと思う。したがって、このことについては、総理なり責任者の外務大臣が、この席上において、自今そういうことをなからしめるか、昨日の事態について私は率直に——いま資料は提出できるから提出いたしますと約束したのですから、絶対秘密文書で提出できないという文書であるならまた話は別なんです。ところが、いま椎名さんが提出いたしますと言ったのです。きょう問い詰められて提出できるものなら、きのうもう少し誠意を持ってやれば提出できたはずです。そこを私は言うのです。不誠意きわまると言うのです。非協力きわまると言うのです。そういう意味で、私は責任者の陳謝を求める。陳謝を求めたい。また、総理から、自今こういうことの問題で、こんなつまらぬことで審議が渋滞するようなことのないよう、これはわれわれ野党としても望むのです。総理からも私は御明言願いたいと思います。明確にしてもらいたい。
  202. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 外務省といたしましては、以後十分に気をつけまして善処したいと思います。
  203. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理にも事のついでにお答え願いたい。これは外務省だけの問題じゃない、各省に関係する問題だ。
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来の経緯をいろいろ伺いました。私もたいへん感ずるところがありますが、同時に、今後は十分連係を緊密にいたしまして、審議に支障を来たさないようにいたしたいと思います。
  205. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、次の質問は、これは口上書をかわしているでしょう。口上書というのは、やはり広い意味であなたが言っている外交上の文書なわけですね。外交上の文書で、しかもあなたはいままで出せない、出せないと言ってがんばったまま、ここで出すということになったわけですが、そういうことになると、やはり口上書というものは両国政府を拘束している。だから、民間信用供与というものは、そういう意味では純然たる民間信用供与ではなくて、やはり政府を拘束しているものだ、義務づけしているものである、こういうように私は考えざるを得ない、この点はどうですか。
  206. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 口上書の取りかわしはある意味の両国の約束でございますから、拘束はしておる。そればどういう点を拘束しているかといいますと、民間信用供与そのものは民間の自由な意思に基づいてやるのであって、これに対して政府は、その内容に対して責任を分担するというようなことはもちろん全然ありません。ただ、三億ドル以上ということを言っておるので、三億ドル以上となっておるが、一体いままでどれくらいに達しておるかというようなことは、両国の間で一致してよく了解しておらなければいかぬ。そういう意味で口上書はお互いこの点を記録して、そうしていついかなる場合調べても、何年間かかってもう二億ドルに達しておるとか、一億五千万ドルであるとかいうようなことを確認し合う、こういう意味において口上書の取りかわしをした、こういうことなのです。内容については政府は責任を持たない。どうぞ区別をしていただきたい。
  207. 横路節雄

    横路委員 いまの外務大臣の説明で、三億ドル以上については民間信用供与でやりますということについて政府は責任を持ったわけですね。そうでしょう。両国政府は口上書をかわしたのだから拘束している。しかし民間の自由意思でやっている。私はいまあなたの言うとおり書いているのだから……。その三億ドル以上ということを拘束している。そうでしょう。
  208. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三億ドル以上に達しない場合でも政府の責任はないし、三億ドルが四億ドルになっても別に責任はない。ただ、その民間の信用供与というものをお互いに確認し合って、そうして両国の間で期待した三億ドル以上というものが、一体いまどの程度までいっているかということを確認するために口上書を取りかわした。つまりそれを怠らないで、両方で、いいか、よろしいと、こういうことで、三億ドル以上というものが、以下になるのか、以上になるのか、それは成り行きまかせなんでありますから、その点についての責任をとっているという意味じゃありませんから、どうぞはっきり区別してもらいたい。
  209. 横路節雄

    横路委員 椎名さん、いまあなたが三億ドル以上ということを、いまの段階で一億ドルまでいったのか、一億五千万ドルまでいったのか、二億ドルまでいったのか、二億五千万ドルまでいったのかということを相互に確認し合っているということは、やはり拘束しているのです。  次に、私は通産大臣にお尋ねします。  通産大臣にお尋ねしたいのは、この前ずいぶん長いこと総理大臣に北鮮との外交関係の問題を聞きましたから、ケース・バイ・ケースということになったのだが、そこでプラント輸出について——これは北鮮については別に吉田書簡というのは適用しないわけですね。そこで通産大臣も、これは吉田書簡の適用はないわけですから、もしも要請があれば、北鮮との貿易については、輸出入銀行を使わせるということについては何ら異議はないと思うのですが、その点はいかがですか。この点は大事です。この点だけはっきりしておいてもらいたい。吉田書簡はもうないのだから。
  210. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ケース・バイ・ケースというのは、そのことが具体的に起こったときに自主的にいろいろなことを頭に入れて判断をする。だから頭から無条件とかなんとかいうことは、具体的な問題が起こらないときにどうするということは言えない。自主的な判断によってどうするかをきめるということでございます。
  211. 横路節雄

    横路委員 三木さん、あり得るならあり得ると言ってください。実はあなたのケース・バイ・ケース、総理のケース・バイ・ケースも、いま国民はそのケース・バイ・ケースだけ知っているのです。あとのことはよくわからないのです。しかし、北鮮の貿易について、総理の気持ちには幾ぶんか前進しようという気持ちだってないわけではないと思うので、ひとつ私は通産大臣にお聞きしておくのだが、この問題については、それぞれの状況に応じて話があれば考慮されることもあるならある、考慮されないとかいうことではなくて、考慮されることがあるならある、こういうことをここで——何だ、佐藤総理、首を振らないで。三木さんひとつ……。
  212. 三木武夫

    ○三木国務大臣 横路君の質問は、ノーかイエスか、非常に端的に割り切れというお話でありますが、そう割り切れない場合もあるわけです。だから、プラント輸出に対しては、国交未回復の諸国に対してもやる場合があるし、やらぬ場合もある。
  213. 横路節雄

    横路委員 北鮮はどうですか。
  214. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いずれもそうです。
  215. 横路節雄

    横路委員 私はもう少し、せめてきょうの段階では通産大臣から、それこそあなたたちの得意な前向きな姿勢が伺えるかと思いましたら、これは落胆をしました。  総理はどうですか、同じですか。総理がもう少ししゃんとして答弁されなければうまくないですよ。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 同じ考え方をしております。ただいま通産大臣がお答えしたとおりであります。
  217. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、今度はほとんどあなたに質問いたしますから、前へすわって下さい。あと、労働大臣と郵政大臣には、対日請求権のところの郵便貯金や未払い賃金のことだけはぜひ聞いておきたい。あとはずっと農林大臣に聞きます。外務大臣はとにかくいてもらわなければならぬ。それから通産大臣は貿易関係ですから……。  農林大臣、ただいま大阪の保税倉庫に入ったままになっている二億五千万枚の韓国ノリは、ただいまどういう折衝過程になっているのか、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  218. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えしますが、それは今月の十七日に日本の輸入組合のほうと、それから韓国の輸出組合との話し合いができまして、日本の輸入組合のほうでこれを買い取ることに相なりました。確定いたしました。
  219. 横路節雄

    横路委員 確定なすった。いま価格の折衝はどうなっているのですか。
  220. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えします。価格は百枚一ドル四十セントということできまりました。
  221. 横路節雄

    横路委員 一ドル四十セントで価格がきまったのですか。
  222. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 そうです。
  223. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いよいよこれから保税倉庫から出てくるわけですか。一ドル四十セントで間違いございませんか。
  224. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 それは日本の輸入組合のほうで持っておるのでありますが、これは現在日本の生産期間中でありまするので、三月までは保管することになっております。
  225. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、そこでいまの一ドル四十セントが、いろいろな関税だとか、諸掛かりだとか入れますと一体幾らになるのですか。
  226. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 値段は七百五十四円です。
  227. 横路節雄

    横路委員 水産庁長官、間違いないですか、七百五十四円で、それじゃ五百四円がどういうようになって七百五十四円になるのか、ちょっと数字を明らかにしてください。
  228. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 御承知のとおり関税がございます。それから港の諸掛かりがございまして……。
  229. 横路節雄

    横路委員 関税は幾らですか。
  230. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 関税は二円でございます。港の諸掛かりを一応五円と見ております。そこで……
  231. 横路節雄

    横路委員 大ざっぱだね、五円というのは。もっと詳しく……。
  232. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 これは、韓国との仕切りは一ドル四十でございまして、あとは国内の問題でございます。一ドル四十は五百四円、これで韓国との間が仕切られまして、商社は関税を払い、港の諸掛かりを払って引き取るわけでございますので、実績的には、商社のコストは七百五十四円というのは現在の段階では一応推定でございます。韓国との間は一ドル四十で仕切られております。
  233. 横路節雄

    横路委員 水産庁長官、いまあなたが言った五百四円と七百五十四円との差は二百五十円だね。二百五十円はどういうふうになっているのだ。全部内容を言いなさい。商社に何ぼやって、何に何ぼやって、みんな知っているのだから、みんな言いなさいよ。
  234. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 商社取引でございますから、関税は制度的に明確でございます。それから韓国との仕切り契約につきましては、私ども監督をいたしております。報告を詳細受けておるので一ドル四十と関税の二円は明確でございます。あと港の諸掛かりにつきましては、今後の過程でございまして、一応五十円と想定をいたしております。
  235. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、これは四月にならなければ絶対出しませんね、どんなことがあっても。まさかいろいろな政治的な力が動いて、途中になってからぽっと出るようなことはないでしょうね。
  236. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これは、生産期間中は出さぬということになっております。
  237. 横路節雄

    横路委員 何月までですか。
  238. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 三月まで。
  239. 横路節雄

    横路委員 三月終わりまで……。
  240. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 終わりまで。
  241. 横路節雄

    横路委員 三月の終わりまでは絶対出さないね。四月になると出るわけですね。その点、はっきりしてください。その点、いつが問題なんですから。
  242. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 そのとおりでございます。
  243. 横路節雄

    横路委員 いまお話の韓国は一ドル四十セント、五百四円だが、これは韓国の漁民からは幾らで買ったのでしょうね。農林大臣、韓国の生産者からは幾らで買っているのでしょうね。
  244. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 韓国の生産者から韓国の輸出組合がどの値段で買ったかは存じておりません。
  245. 横路節雄

    横路委員 水産庁の長官は存じていませんか。生産者から生産者団体、それから輸出入組合とあるでしょう。
  246. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 貿易交渉をFOBで韓国の輸出業者と在来やっておりますので、その貿易商が韓国の農民から幾らで買ったかは詳細を存じておりません。
  247. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、これは私のほうの調べによりますと、先に入った二億枚については、韓国側は一ドル七十セント、一枚六円十二銭、あとから入ってきた五千万枚については二十六セント、一枚当たり九十三銭、それを込みにして、それをトータルにして最初一ドル五十セントで買ってもらいたいということになったのだが、最初の二億枚については、朝鮮ニンジンを日本に輸出している人とか、あるいは韓国の左官屋さんとかペンキ屋さんだとか、そういう人が買いつけたのが多い。あとの五千万枚については、韓国の商社、純然たる韓国のノリを扱うくろうとが扱って、それでいま言ったように一枚九十三銭で入れている。こういうことになっている。こういうように通産大臣にお尋ねをしたいのですが、通産大臣がおわかりでなければ局長にお尋ねをしておきたいのです。ノリの件に関しての局長ですから通商局長になるのでしょうか、いらっしゃればひとつぜひ出てもらいたい。  それはどういうことかといいますと、十一月の二十二日ですね、この問題についてはどうなっているのかお尋ねしておきたいのですが、輸入商社の三井、三菱、伊藤忠、東食、安宅の五社が中心になって韓国側と話し合いをつけまして、そのときに日本側が韓国ノリを引き受ける条件として五つの条件をきめていますね。第一点は、現在の関税率の一枚二円を引き下げてもらいたい。二番目、輸入商社の手数料を高めてもらいたい。第三番目、生産者への協力費は今後出さない。四番目、輸入五社の商権を続けてもらいたい。五番目、低利長期資金の貸し付けをしてもらいたい。そこで、この五つのことにつきまして、関税の問題、それから輸入商社の手数料の問題、生産者への協力金は出さない。それから輸入五社の商権を続けてもらいたい。低利長期資金の貸し付けをしてもらいたい。この点は通産大臣がおわかりでなければ局長……。
  248. 今村昇

    ○今村説明員 お答えいたします。  十一月二十二日の時点におきまして、確かにいまのような要望書が出てまいったことは事実でございます。ただ、最終的に十二月十五日に契約がまとまりました段階におきましては、いまの五つの条件は全部白紙還元でございまして、何も条件はついておりません。
  249. 横路節雄

    横路委員 どうぞ次長、関税については全く引き下げは考慮していないのですね。二円でずっといきますね。
  250. 今村昇

    ○今村説明員 関税引き下げの問題はまた別個の問題かと思いますが、いまのお尋ねの引き受けの条件としてそういうことが条件になっておるかどうかということにつきましては、これは条件にはなっておらないというふうにお答え申し上げたわけでございます。
  251. 横路節雄

    横路委員 先ほどのお話で一枚七円五十四銭でいろいろな諸掛かりを経て日本が受け取ったものが、われわれの口には十六円ないし十八円ないし二十円で入るわけです。(「国会では二十五円」と呼ぶ者あり。)農林大臣、七円五十銭のものが、いまの話だとさらに高まって二十五円になるそうです。国会では二十五円だそうですか、十六円、十八円、二十円という段階で消費者に入ってくるわけです。これは一体どこにこういう矛盾があるのですか、一枚七円五十四銭のものが。これはどこなんでしょう、この点は。
  252. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ノリの流通につきましては、まず第一、日本のノリと韓国のノリとは、品質関係からいいますと二割くらいの差があるようです。これは品質です。それからこれが卸から小売りを通じて出ておるわけでありまするが、ノリについての流通関係は昔からの因襲で出ておるわけでありまして、それ相応の経路を経てまいりましたものであります。また、その作柄のよしあしによって非常に違いまするので、たとえば、三十八年は大体において卸でも三十九年度との間が非常に違うことは御存じのとおりでございます。そういうわけで作、不作によっても違い、非常にその点が旧来の行き方で行っておりまするわけでございます。したがって、行き方についてはそれ相応の経路をたどって来ておるものでありまするが、われわれとしては、でき得る限りこれらの問題を十分ひとつ検討を加えていきたい、かように考えております。(「わからぬ」と呼ぶ者あり)
  253. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、みんな聞いていてわからぬそうです。あなたもおわかりにならぬだろうと思います。  それで、通産大臣は御承知かどうか、韓国ノリの輸入商社というのが六十七社あるわけです。毎年一社ずつチャンピオンをきめるわけです。一社ずつですね。たとえば東食だとか伊藤忠だとか安宅産業とこうきめてくるわけです。この六十七社を見ますと、まことにふしぎなことに、何とか木材会社というのもあるわけです。木材会社がノリをどうして入れているのかなと私思いました。何とか冷蔵株式会社もあります。これがどうして入れているのかと思うわけです。あるいはまた、調べてもらうと伊藤忠の事務所に看板だけかけて手数料をもらっているわけです。いままでは最高にもらっているところが手数料一二%もらうわけです。一%の手数料といいますと、二億五千万枚ということになるとどういうことになるでしょうか。去年ですと二億枚です。二億枚がかりに去年十円で入る。九円何ぼですから十円とすると二十億。二十億の一〇%とすれば何ぼです。二億です。一二%とすれば二億四千万円です。たいしたものです。そして、あとにずっと分けてやるのです。分けてやるのは、配分比は五%以上が七社、一%から五%までは一五社、一から〇・五%は八社、〇・五%以下が三十七社、これは通産大臣のほうなんですよ。三木さんのほうなんです。こういうやり方、これを三十二年からやっているのです。そして、たった一社だけが代表になってチャンピオンとしてもらって、そしてそれをみなに分けるわけです。農林大臣、ノリが高いというのは、こういうことをあなたは御存じなんですか。看板だけかけて手数料をもらっている。木材会社だとか何とかがやっている。この点については通産大臣はどうお思いですか。
  254. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま横路君の言われるとおり、三十二年からこういう式になった。それまでは各社がかってにやっておったわけであります。非常な弊害があった。そこで、こういう形でノリの輸入の方式をきめたわけですが、韓国がやはり一本になっていますからね。こちらがかってにというわけにはいがない。やはり輸入のいまの協会のようなものでこちらが一本になることが、やはり形と方式としてはこのほうが適当だと思います。いまそれが一社が代表になってチャンピオンのようなものはきまるわけです。これに対してはいろいろな金利、経費として私は一束四円のチャンピオン料というのをとっておることを聞いておるわけです。あとで詳細なことは事務当局から補足いたさせますが、そういうことで、だれでもかってに口をきいてノリを輸入できるというものではない。昭和三十二年に至る実績というものが基礎になっていて、韓国へ行ってかってにノリを輸入できるというわけではない。その実績にのっとって、いままで実績のあるものに割り当てをしておるということであります。
  255. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、さっぱりわからぬですよ。三十九年は日本で受けたのは九円幾らで受けていますが、実際には浜渡しは四十銭ないし一円で受けているんですよ。韓国の漁民はそれだけみじめな値段で売っているのです。場合によっては、日本の商社が向こうの大工だとか左官だとかペンキ屋だとか、そういうものに金を渡して買わせて、そうして輸出入組合をつくっている、だれでもなれるんだから。一体こういう商社に対してどうするのです。今村次長、どうなさるのですか、あなたのほうは。これはこのまま六十七社は認めていくのですか。そうして、やはりこれはこういう配分でやるのですか。チャンピオンは一二%、何は何%、何は何%とやるのですか。こういうことが一体いいのですか、この中間のマージンというものは。
  256. 今村昇

    ○今村説明員 ただいまの輸入方式が必ずしも最もいい方法だとは私ども考えておりません。ただ、そういうことができましたゆえんは、やはり韓国側の窓口が一本になっておるので、こちらも何らかの方法で一本化するという現実の必要がありましてそういう形になったのでございますので、いまの実績を固定しておるということは、それよりもなおいい基準がほかにございましたら、私どももそのほうを検討したいと思いますけれども、目下のところは、それよりもいい案というのがございませんので、現状を認めておるわけでございます。
  257. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、海苔増殖振興会というのがありますね。手数料を二・五%ないし三・五%とって、去年は四千七百九十八万七千円もらっておる。三十八年は二千五十五万五千円もらっておる。私、決算報告書をあなたのほうからいただいて調べましたら、この団体には職員が一人もいませんね。職員が一人もおらないで、三十九年には約五千万円の金をもらっておる。そうして、水産大学の名誉教授に月給十万円、年百二十万円を払っておるだけで、あと人件費がどこにあるかと思って調べてみたら、一つもない。しかも、三十八年の五月十六日に、「三八水漁第三七三六号」「韓国のり、輸入差益の拠出金に関する取扱方針」で、水産庁長官から団体長あてに出ているものがある。ここに「事業計画の承認」「海苔増殖振興会は、毎年度、拠出金の使途に関する事業計画について、あらかじめ水産庁長官の承認を得なければならない。」「水産庁長官は、その事業計画が次の事項の何れかに該当する場合にのみ承認するものとする。海苔増殖技術の研究及び調査、海苔の加工又は流通に関する調査、研究、及び宣伝、海苔増殖業振興のための事業に対する助成」「海苔増殖振興会は、年度終了後直ちに事業報告書を水産庁長官宛に三部提出しなければならない。」大体、海苔増殖振興会は一億二千万円をいままでもらっておるが、これは建物に約六千万使っていますね。これは何ですか。建物に六千万使っているというのは、あなたのほうの水産庁長官が出しているこの通達違反ではないか。この団体には職員が一人もおらぬ。そうして二・五%ないし三・五%の手数料を払っておる。だから、世間ではこれは政治団体だと言っておる。
  258. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 実は振興会ができまする基礎を申しますと、あれは昭和三十二年でしたか、参議院の農林委員会において決議をいたしておるのです。それは、日本のほうへ韓国のノリを輸入するときに、輸入するということはいいとして、日本国内においても零細漁業が多いのであるから、それらに対する生産の問題その他についての助成をすることを条件とするという決議からそういう問題が出てまいりまして、そこで振興会というものをつくったということ、これはだいぶ前の話でありますが、その後振興会においては、それぞれの、ノリの生産、ノリの養殖基礎研究とか、あるいは応用研究その他の試験研究といったようなものに努力をいたしておるという関係に相なっております。したがいまして、財団法人でありまするけれども、さような関係でありまするので、水産庁長官の通達で、先ほど横路さんがお話しのとおりのことで計画等を提出して認可を受けるということにいたしておるわけでございます。  そこで、昭和三十九年の実績を見ますと、昭和三十九年度の収入は、協力費、寄付金四千八百万円を含め五千九百万円であるが、このうち当年度に支出されたのは、次期繰り越し金三千五百万円を除く二千四百万円である。その内訳は、ノリ養殖基礎研究、それから応用研究その他の試験研究で八百九十八万円とか、試験助成、振興対策会議その他の増殖振興関係費五百六十万円、それからノリ流通調査、ノリ経営実態調査その他の調査費百七十万円、資料調製費百万円、宣伝費七十万円、その他の事業費二百五十万円ということに相なっておるわけでございます。  それから建物についての経費は、あれは数年前のことでございまして、これは水産庁長官から答弁いたさせます。
  259. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 海苔増殖振興会は、先ほどのように、かつては韓国からノリを輸入することが非常に問題でございまして、制限する、やむを得ない場合で入れる場合には、差額が生ずるので、日本の漁業者のノリの振興に役立つように考えたらいいという形で振興会ができ、御指摘のとおり一定の率で寄付をとっております。それで、その使途につきましていろいろ問題もあり、御批判もございました。会館をつくりましたのは三十五年と承知しております。そこで三十八年に至りまして、先ほど先生お読み上げになりましたような指導通達を出した次第でございまして、現在のところその趣旨に沿ってノリの技術向上、振興に役立たせるような仕事に使わせたい。先ほど人がおらぬというお話でございましたが、御承知のとおり、ノリに関する指導連としての全海苔漁業協同組合がございまして、この職員が全部兼務をいたして仕事をしておる。最近二名事務員を置いた、こういう実態でございます。
  260. 横路節雄

    横路委員 長官、私ここに決算書を持っているのですよ。いまあなたのお答えのとおりだ。これはあなたのほうから決算書をもらったのだ。三十八年、三十九年の決算書をもらって調べてみたら、人件費はたった一人だ。実際驚くべきものです。韓国のノリを入れて、五千万円の差益をもらって、そして事務職員は一人もいなくて、水産大学の名誉教授の何とかという人に月十万円、年百二十万円払って、それで会館を運営しているというのだから、世にもふかしぎな団体ですよ。だんだん聞いてみたら、それはそうでしょう、私のほうが水産庁からこれをとったから、向こうはあわててこのごろになって二人入れたでしょうな。入れたでしょう。とられてからあわてて入れたでしょう。この団体というのは、ずっとそういう意味で、昭和二十九年から差益金をもらっているわけですね。差益金をもらって、実際は会館に約半分を使っている。半分の六千万円を会館に使って、あとの半分の六千万は、二十九年から十年間にわたって——それは仕事をしたでしょう。たとえばいま、農林大臣、韓国ノリの差益金をもらって、約五千万、四千八百万もらって、三千五百万も繰り越しをしているんだから、一体事務職員もおらぬで、よく会館が経営できるものですね。私はほんとうはいろいろ名前を出して——やはり多くの人がここに関係してますよ。問題はありますよ。ただ私は、農林大臣と通産大臣、お考えをお聞きいたしたいのですが、向こうから、ことしならば五円だ、それにいろんな手数料を入れても七円五十銭だ。それならば、これは流通機構の問題になるが、どうしてあなたのほうで、韓国ノリですといって、十二円かそこらで売らないのです。また二十円で日本ノリと同じように売れるならば、いまお話がございました全海苔漁連だとか全国協同組合連合会だとかいう団体が、向こうの生産者団体と直接取引をして、日本でのノリがよくて十円で買うならば、現地の漁民から八円なら八円で買って、そして日本のノリと一緒にして売ったらいい。そういう中間の名もなき商社が六十七社、たった一社しか扱ってないんだから、六十六社は黙っていて眠り口銭をもらっている。海苔増殖振興会は、一体ことしはやるのかどうか知らぬけれども、通産大臣、農林大臣、これが日韓の経済協力の縮図なんですよ。ほんとうに日韓の経済協力をやるならば、向こうの生産者団体とこちらの生産者団体が直結をして、せめて向こうで七円か八円で買って、あるいは十円で買って、そうして日本のと同じ価格で売ったらいいのです。もしも向こうで九十銭か一円で——さっき言ったように、ことしは五千万枚を向こうで九十銭で買ったことは明らかなんだから、それならばこれは韓国ノリですといって、日本国民に、手数料をとっても八円かそこらで売ったらいい、なぜおやりにならぬのです。そういう決断はございませんか。これはまず生産者団体が直結してやるならば……。
  261. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 先ほども申し上げましたとおりに、ノリの流通関係は古い姿のままであります。そういう関係でありますので、別に黒い影があるとか、そこに変なことがあるとかいう問題は絶対ないと私は思います。それは強く、いま振興会その他についてもよく調べ上げたわけでありまして、その点は御安心を願いたいと思います。  ただ、流通関係においては、確かに旧態依然たるところがあることは認めます。これは、私も就任以来、この問題を考えていきたいと思っておる。今度韓国からノリを輸入する場合においても、韓国から相当の輸入をする、しかし国内の零細漁民に対してその影響のないようにしていきたいということが非常に大切なことでありますので、この際も大体国内のそういうような零細漁民に対して悪影響のないように国内的な措置を講じた上で、二億ないし五億の輸入をやることに毎年考えていこうといったようなことをこの貿易会議において、ことしの三月か四月、そういう内定があったように思うのであります。そういうことでありまするけれども、私どもとしては、やはり内地のそういう零細漁民に対する影響のないように考えていきたいということから、生産者団体というものと、それからその輸入業者——これは別でございますから、輸入業者から輸入されたものを生産者団体に一応それを手渡しする、その上でいろいろと消費者のほうに向けていくというような体制をとりたいということで進んでおったのでございます。しかし、急激に旧来の行き方を変えることができませんことは言うまでもございませんので、これらについて漸進的な意味合いからいたしまして需給協議会をつくって、そしてその協議会でそれらの問題を協議いたしまして、それに応じて輸入されたものを配分するといったような形を最初とりましたわけであります。これが決して理想的ではないのであって、漸進的に進む一歩、こう考えておるわけでございます。
  262. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、ことしの二億五千万枚について、当初一億枚については従来のいわゆる韓国ノリの関係の輸入問屋、それからあとの一億五千万枚についての半分七千五百万枚は、取り扱いは全海苔漁連、なお七千五百万枚については全漁連、これはどうなったんですか、一時決定したのですか、それはどうなったんですか。
  263. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答えいたします。  当初は韓国からすみやかにノリを民間ベースできめまして国内に流すという前提でございまして、そういう割り振りをきめました。ところが、先ほどお話もございましたとおり、韓国との間で価格が全くきまりませんで、現在のところ商社の買い持ちという形に相なっておりますので、その取りきめは生きておりますが、国内放出の今後の問題は、今後さらに生きておりますものの上でもう一度関係者一同相談してきめることに相なります。
  264. 加藤清二

    加藤(清)委員 横路委員のお許しを得まして関連質問をいたします。時間がございませんので、簡単にお尋ねいたしまするから、簡単にお答え願いたいと存じます。  韓国から日本へノリが輸入されるにあたりましては、これは常に悲劇が伴っているのでございます。いますでに農林大臣がお認めのとおり、ノリを生産する韓国の零細漁民、ひどい買いたたきにあっております。しかし、これが日本へ入りますると、また直ちに日本のノリ生産業者がその供出品を買いたたきにあうわけでございます。ところが、せっかく安いノリが入った、そこで日本国民が安いノリを食べられるというならば問題はございません。まだなぐさめられるところがございます。しかし、これは日本へ入りますると、とたんに日本ノリに化けて、質のよろしい日本ノリと同じ値段で売られているというところに問題があるわけでございます。同時に、これを扱い、このノリに引き込まれますると、時の、特に通商局次長は必ず傷するのでございます。悲劇のもとでございます。ただし、その多くの涙の陰に、にっこり笑ってほくそえむ少数の方々がいることは、これはいなめない事実でございます。  そこで、私はお尋ねしたい。そういう状況下にあるので、十数年にわたって毎年のように国会で論議され、これが農林水産委員会、商工委員会において議決されているのでございます。その院議をもって議決されたところの本文を農林大臣、読み上げてもらいたい。
  265. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 かわって朗読させていただきます。  前から申しますと、昭和二十九年の五月に参議院の農水で決議がございます。急いで読みます。   韓国海苔の輸入によってわが国海苔生産者は少なからぬ経済的打撃を受け、生産意欲を失いつつあり。よって政府はこの事態を認識し、今後の輸入を禁止することを適当と認める。   やむを得ない事情によって輸入を許可せんとする場合は、国内の生産増強を期するために、生産者の納得する適切な輸入方式等を樹立して、しかる後輸入をすべきである。三十一年五月、同じく参議院農水です。   かねて問題になっておる韓国海苔の輸入等に関しては別添要領によって措置されたい。   なお未決の事項の決定及び本要領と異る措置をしようとする場合は予め当委員会に協議せられたい。  右当委員会の総意を以って申入れをする。  これの別添のほうに先ほどの韓国ノリ需給調整協議会を通産省に置くこと、その輸入業者等から資金を得て振興の機関をつくるという趣旨のものが入っております。  それから三十六年五月、衆議院。   最近の国内産のりの生産状況及び今後の沿岸漁業振興対策事業のうちに占めるのり養殖業の重要性にかんがみ、政府は、流通の改善等によってのりの消費を拡大する措置を講ずることとし、其の効果のあがる迄の間は、韓国産のりの取扱については、年間一億枚を限度とするよう措置すること。   右決議する。  以上でございます。
  266. 加藤清二

    加藤(清)委員 農林大臣にお尋ねいたします。  たびたび行なわれました院の決議の趣旨からいきますると、一億枚を限度とする、端境期にはよろしいが、日本の出盛り期には絶対にこれを出荷することは相ならぬ、これが日本の柱でございました。それ以上ふやす場合は、日本のノリ生産の状況とにらみ合わせて、日本のノリ生産業者が納得のいく線でふやす、こういうことに相なっているわけでございます。お聞き及びのとおりでございます。ところがこのたび日韓会談からして、二億五千万と、一躍二・五倍にふやされました。明らかに院の決議違反でございます。なぜ院の決議を違反してまでも輸入数量をふやさなければならないのか、そのおかげでノリの日本の生産業者は絶対に影響なしとあなたは言い切ることができるのか、この点はっきりしてもらいたい。
  267. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 昭和三十九年においてはちょうど三十八年の冷害がありまして、一億さらに追加いたしております。これは、値段が上がり過ぎたということ、それから消費者その他からの要求があったこと、それから協議会の要求もありましたようなことから、さように三十九年において一億追加しております。さようなことでありまするので、もちろん国内の零細漁民の迷惑にならないようにするということが根本でございまするので、今回におきましても生産者団体と十分な協議をいたしまして、そして、先ほど申しましたような国内態勢を整えた上で二億五千万を今年輸入するという割り当てをいたした、こういうことに相なっておるわけであります。
  268. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間がございませんから簡単にいきますが、この輸入増加がノリ生産業者に及ぼす精神的な影響、心配はたいへんなものでございます。したがって、日韓の問題が国会で論議されまするおりに、その陳情が陸続として与党の大臣のところへもいったはずでございます。そのおりに大臣の皆さんは何とおっしゃったかといったら、いまそんなことを言うてくれては困る、これが通ってしまったらちゃんと処置してやるでいいから、心配せんと、いまあなたらはそれを騒がぬでおいてくれ、こういうふうに言うておられる。処置がはたしてできるのか、はっきりしてもらいたい。  ところで総理大臣お尋ねしますが、あるいは外務大臣でもけっこうです。あなたは朝鮮ノリの味を御存じでございますか。外務大臣、どんな味がします。
  269. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 わりあいにおいしいですね。
  270. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは通産大臣にお尋ねします。あなたは店頭で朝鮮ノリをお買いになったことがありますか。
  271. 三木武夫

    ○三木国務大臣 店頭では買わないけれども食べたことはあります。
  272. 加藤清二

    加藤(清)委員 試食でしょう。
  273. 三木武夫

    ○三木国務大臣 外務大臣と同じように、おいしいと思いました。
  274. 加藤清二

    加藤(清)委員 このとおりです。試食のときには食べたことがあるが、店頭で朝鮮ノリと称するものを買った国民は一人もございません。年間一億も入っております。二億も入っております。やみで四億も入っております。ところがこれは全部日本ノリに化けておるのでございます。したがって、これについて適切な処置は、品質表示をすることなんです。品質表示の問題も何年か言うてきておるが、いまだかつてそれが行なわれたことがない。そこで品質表示をなさる気があるかないか。同時に、この問題はいろいろ利潤にからむ疑いが多いから、いっそのこと流通機構を、食管で買い上げて入札制度にする勇気はあるかないか。これこそがきのうおっしゃられた流通機構の整備拡充でございます。そうして消費者物価を下げるこつであります。社会党があえて提案をいたします。通産大臣。
  275. 三木武夫

    ○三木国務大臣 このノリの問題は、いまの方式が私もいいとは思っていないのです。何か昔の実績を固定してやっておるわけですから、いろいろな点でこれは改革を要するべき点が非常に多い。また韓国の零細業者というものにも、日韓の国交が回復して、やはりそれも考えなければならぬ。日本の場合だって、これがノリ業者に影響を与えてもいけないし、いろいろな点でこれは農林大臣とも相談をして、ノリの流通機構というものには改革を加えたいという考えでございます。
  276. 横路節雄

    横路委員 それじゃ労働大臣にお尋ねをしたいのです。長いこと待っていただきました。実はこの前の日韓の特別委員会でぜひあなたにお尋ねをしておきたいと思ったのだが、いわゆる未払い賃金です。戦争中の朝鮮の人の未払い賃金。韓国の人の未払い賃金は幾ら法務局に供託されておるか、北朝鮮の人の未払い賃金は幾ら供託をされておるか。あの国内法で国庫に入るのは幾らになっておるのか、北朝鮮関係はそれはどうなっておるのか、その点をお答えいただきたいと思います。
  277. 小平久雄

    ○小平国務大臣 朝鮮人関係の未払い賃金その他でございますが、終戦直後に、朝鮮から来ておられた労働者が国に帰ったとか、あるいはその他居所が不明になったとか、こういうことで実は支払いの不能になりました賃金、退職金等があったわけであります。それらにつきましては、当時労働省といたしましては、一方におきましては極力供託等を進めてまいったのでございますが、何分にも当時のことでございますので、なかなか正確な金額もつかめない。そういう指導の過程においてとらえました額というものは、大体千七百万くらいになっておるようであります。ただし当時のことでございますから、現在の韓国関係が幾らであるとか、あるいは北鮮関係が幾らであるとか、そういう内訳は全然実はわかっておらないのであります。
  278. 横路節雄

    横路委員 そうすると、国庫には幾ら入るわけですか。国に所属するのは……。
  279. 小平久雄

    ○小平国務大臣 供託の関係だと思いますが、供託関係は直接は法務省の所管でございますが、われわれが承知しておりますのは約一千万程度、かように聞き及んでおるわけであります。
  280. 横路節雄

    横路委員 あとの七百万はどうなったのですか。
  281. 小平久雄

    ○小平国務大臣 その中には、終戦後のことでございまして、未払いのままであったものもあるようでありますし、若干は、何か当時の朝鮮関係の団体等が代表者と称して、これに支払いをしたというものもあるようであります。
  282. 横路節雄

    横路委員 それではまたあとでお尋ねします。  郵政大臣、郵便年金と郵便貯金と二つに分けて、韓国と北朝鮮側と幾らずつになっておるか。
  283. 郡祐一

    ○郡国務大臣 郵便貯金は二十年の九月現在で、朝鮮記号が約十二億ございます。しかしその後引き揚げ者等に九億七千万支払っております。韓国並びに北朝鮮の分の区分等については明瞭になっておりません。
  284. 横路節雄

    横路委員 主計局長、これはひとつ大臣にかわって答弁してもらおうかな。いまのお話のように、いまの未払い賃金の金だとか、それから郵便貯金だとか郵便年金だとかいうのは、あの国内法で国のものになってしまうわけですね。あれは北朝鮮の分も入っておるわけです。——いや北朝鮮の人の分も入っておるわけです。いま大蔵大臣がいないから、しかたがないから主計局長に……。これは主計局長、どうなさるのかな。やはり外務大臣に聞いたほうがいいかな。ちょっと主計局長じゃ困るね。それじゃ外務大臣だ。これはあなただな、やはり最後の締めくくりは。あなたに聞いて終わりにしたいと思うのだが、北朝鮮の人々の未払い賃金だとか、北朝鮮の人の郵便貯金だとか郵便年金が全部仕分けがつかない。仕分けがつかないのだから国庫に入ったわけだ。これは北朝鮮の人の個人の財産権の侵害になりませんか。
  285. 郡祐一

    ○郡国務大臣 郵便貯金につきましては、措置法に基づいて当事者の今後請求がございますから、韓国人の分については、特別の措置等を講じませんで、消滅していない分は、今後払い戻しがございます。北朝鮮の方の分については、そのまま残ってまいるわけでございます。
  286. 横路節雄

    横路委員 わかりました。  それではもう一ぺんお尋ねしますが、郵政大臣、それではそういう分で幾ら残っていますか。郵便貯金と郵便年金と二つに分けて答弁してくれませんか。これは二つの項目で向こうは要求しているわけです。
  287. 郡祐一

    ○郡国務大臣 これは、ただいま申しましたように、いままで払い戻しました分は計算が出ておりますが、残りの分は、今後韓国人が自分のものだとして請求してまいりまして、それぞれ調査をいたしまして支払いますものでございますから、これがどのくらいにそれぞれの振り分けがなりますか、見当がつかないものでございます。
  288. 横路節雄

    横路委員 総額で幾ら残っているかと聞いているのです。
  289. 郡祐一

    ○郡国務大臣 これは、ただいま申しましたように、精算月表に基づいて約十二億の残高があったわけでございます。ところが、そのうち利息を添えて今日までに九億七千万ばかり払いました。だから、その差額に利子がついているわけでございます。その分というのは、日本人の分も韓国人の分も北鮮の方の分も入っているわけでございます。したがって、韓国人の方については今度措置法に基づき、命令に基づき支払ってまいります。支払ってまいりますれば、その結果において韓国人の分がどのくらいあるかという見当はつきますが、ただいまのところでは仕分けがつかない状態でございます。
  290. 横路節雄

    横路委員 仕分けがつかない……。ちゃんと、きちっとしてもう一ぺん……。
  291. 郡祐一

    ○郡国務大臣 これは措置法に基づき、省令を出し、また通達を出しまして、取りそろえます資料等は全部これをきめまして、かつ初めてのことでございますから、郵便局等ですぐ支払いをいたしませずに、それぞれの郵政局のほうに連絡をいたしまして、その結果支払ってまいるという手続をとっております。
  292. 横路節雄

    横路委員 労働大臣、どうですか、未払い賃金の……。
  293. 小平久雄

    ○小平国務大臣 韓国人に対する未払い賃金等につきましては、供託のしてある分、それから供託はしない、つまり事業主が未払いであったという分、これらは今回の請求権協定に基づく国内措置で全部消滅をした、こういうことになるわけであります。北鮮関係については何ら触れておりませんので、北鮮の人に対する未払い賃金で事業主がまだ払ってない、供託もしてないという分は、適法に請求があれば払わなければならぬ。それから供託のしてあります部分は、二十五年の、御承知の供託特例法で時効を完成させずにありますから、これも適法に還付の請求がありますならば還付をしなければならない、こういうことになると思います。
  294. 郡祐一

    ○郡国務大臣 ちょっと一言つけ加えておきますが、いままで支払うものはほとんど支払っておりますし、残っておりますのは、日本人の分もまだ相当あるかと思います。したがいまして、今度措置法並びにこれに関する命令等によりまして要求のあります額というのはきわめて軽微なものである、かように考えております。
  295. 横路節雄

    横路委員 きわめて軽微だけれども、幾らなのかと私は聞いているわけですよ。それはわからないわけですね。  それでは最後に、外務大臣にもう一度重ねてお尋ねをしておきますが、先ほどのプラント輸出に関して政府が承認をしました口上書、あれはいつ出してくれますか。またあなたが出しますよと言って、予算委員会が終わってしまうと困る。
  296. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 できるだけ早く……。
  297. 横路節雄

    横路委員 できるだけ早くじゃ……。予算委員会の討論採決が終わるまで。間違いございませんね。委員長、それを念を押しておいてください。
  298. 青木正

    青木委員長 ただいま外務大臣が答弁したとおりでありますから……。  これにて横路君の質疑は終了いたしました。  午後は三時から再開することといたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後二時九分休憩      ————◇—————    午後三時十分開議
  299. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  300. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、本日この予算委員会におきまして、いま非常に論議の中心になっておりますところの国債発行の問題を中心といたしまして、経済の見通し、財政のあり方、減税の問題、物価その他金融等についていろいろな問題をお伺いいたしたいと思いますが、最初総理にひとつお答えを願っておきたいことは、最近、御承知のように、ことしの七月までは沈滞し切っておりました証券市場は、七月における政府の経済施策の発表とともに、異常な状態でやや投機化をしてまいっておりまして、   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕 先般はついに大蔵省では、それに対する規制処置を省令をもって講じるという段階に至ったわけでありますけれども、このことは、政府の皆さん方がインフレにはならないとおっしゃっても、実は大衆の知恵としてそういうものをかぎ取っておる結果ではないのか。そのことは、言うなれば政府の発言に対する不信感の一つのあらわれではないかという感じが私はいたすわけでございます。  そこで、私は、最初総理に、まあこれまで公債の問題については実は発言をお取り消しになったことがあるわけでありますが、それはそれといたしまして、本日のお答えにつきましては、ひとつ正確に、そうして責任を持ってお答えをいただきたい、当然のことでありますけれども。  実は、私が特にこのことを申しますについては、前池田総理と私との間において、かねて私どもは、税制上の分離課税の問題については、税の公平を失するという意味で反対を強くしてまいりました。しかし、当時利子に対する分離課税は行なわれておりましたが、証券市場の不振とともに配当についても分離課税を行なえという声が非常に経済界その他において強く上がったわけでございます。私がこの問題について池田総理質疑をいたしました際に、池田さんは、配当の分離課税はやりませんと、こういうふうにお答えになりました。本会議で私は一年後に重ねて伺いましたけれども、やはり私にその点を明らかになさいました。私は、池田総理在職中は、それゆえにこの配当分離課税の問題については実は安心をいたしておったわけであります。池田さんが総理をおやめになったときに私の頭に最初にまいりましたことは、日本の税制上の非常に大きな不幸の一つが実はこれで始まることになったと思ったわけであります。配当の分離課税は池田さんの退陣とともにさっそく施行されたというのが現状でございます。そこで、私は、この池田さんが少なくとも証券界に非常に身近な立場におられ、いろいろ御関係があったにもかかわらず、筋を通して税の公平を一部でも守っていこうとなさったことについては敬意を表しておるわけでありますが、どうかひとつ総理も、政府の信頼の基礎は総理の発言の中にあるわけでございますので、本日私がここでお伺いをいたしますことは、日本の今後の公債政策において非常に重要な点についてはっきりした答弁をいただきたい、こう考えておりますので、その点をひとつ最初に強くお願いをいたしておきます。  公債の問題に入ります前に、総理大臣は、いま東京都で入浴料金が幾らになっておるか御存じでございましょうか。——総理は御存じでないようでございますから、閣僚のうちでどなたか御存じな方があれば、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  301. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 二十八円だと思います。
  302. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、現在東京都の入浴料金は、おとなが二十八円でございます。中人というのがございまして、これは大体小学校の学童に該当するもの、これが十五円でございます。それから、それ以下の子供が八円でございます。これが東京都の実はいまの入浴料金であります。そこで、このいまの金額は、現在税金の課税最低減をはじきます際に大蔵省のほうで想定をいたしておりますところの家族構成がございます。夫婦二人と、十三歳以上十五歳未満が一人と、十三歳未満が二人、これで五人家族で、これを標準世帯として大蔵省は課税最低限をはじくわけであります。これをモデルとして考えてみますと、この一家が一回みんなおふろへ行きますと、一日に百七円かかることになるのです。私どもは、皆さん、私もそうでありますけれども、一般に自分の家にふろを持っておりますから、入浴についてのそういう悩みというものを直接われわれは感じたことはございません。しかし、入浴料金は累次上がってまいりまして、いまの家族が一回行けば百七円かかる。ところが、それでは私どもの家庭で一体ガスぶろでふろをたてると幾らかかるかと申しますと、大体百七十リットルを四十三度Cにするという標準で考えまして、まああとから、五人ですから一ぺんに入れませんから、少し冷えてまた追いだきするということを含めて、一日の費用は五十九円七十三銭でございます。そうして、水道料金は、これに見合うものは約三円三十銭。六十円見当でございます。私がいまこのことを申しておるのは何かと申しますと、所得の高いほうは、減価償却はありましても、一日六十円でふろに入れるときに、所得の少ない人は百七円かかるということを私はここで申し上げたいわけなんです。  私は、ここでこれから非常に大きなマクロの日本経済の話をいたします。しかし、私どもがこのマクロの日本経済の問題を論ずるときに、その数字だけの問題ではなくて、その底辺にあるのは、こういう生活の実態。たとえば、東京都には現在七十万世帯の者が民営アパートに入っております。その七十万世帯の半分の三十五万世帯は、一部屋が六畳か七畳ぐらいで、流しと水道とガスこんろがついておるだけのものに入っておるわけです。そうして、現在それが大体七千円から八千円の費用を払っておるわけです。片方では、公団住宅に入っておる者は、単位当たりで見ればその何分の一かで実は公団住宅その他に入れる。所得の多い者が安くて利用価値のあるものを得、所得の少ない者が非常にこういうような条件に置かれておるというこの日本経済の問題は、物価というものその他が単に抽象的に何%上がるかどうかということではなくて、非常に重要な問題になっておる、こういうふうに私ども考えますので、まず、そういう意味で、いまの日本のそういう低所得の方たち、こういう方たちについて佐藤さんはどういうふうに今後やってやろうとお考えになっておるのか、これを最初に承りたいと思います。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの分析はたいへんうまくできておると思います。うまくできておるというのは、詳細をきわめた、こういう意味です。私も同じような事柄について実は勉強したのでありまするが、たとえば、ことしは白菜が非常に安いといわれている。大根も安いといわれている。ようやくこういう安い白菜、大根によってつけものもさぞ安くみんなの家庭に出ていくだろう、こういうことをまずしろうとが考えたのであります。ところが、その話をいたしますと、とんでもない話だ、庶民の住んでいる家はどんなうちか知っているか、ただいま言われる七十万世帯に対するその半分、それらのものはつけものおけを置くようなところがないのですよ、だから、幾ら白菜が安くてもそれをつけるわけにまいりません、大根が安くてもつけるわけにいかない、それよりも、つけた白菜の四分の一を買ってくるほうがわれわれの食卓にまた負担が軽くて済むのです。こういう話を実は聞きました。まさしく、ただいまの入浴料から始まってのその感じと、私が実生活に触れての感じと実は同じ材料だと、かように思いますので、ただいま堀君のお調べについて敬意を表したわけです。私どもは、こういう実態を十分把握して、もちろん減税も大事なことでありますが、納税をしない家庭、これは一千万以上ある。このことを考えれば、この消費者物価その他の物価について真剣に取り組まなければならないことは、私が多言を要しないところだ、かように実は思うのであります。  最近、私どものやっております社会開発懇談会が、住宅を建設しろという、こういう答申を出しました。しかし、この答申は、量ではなくて質の問題なんだ。住宅を根幹にして、そうして、あらゆる社会問題、政治問題を解決していくように、こういうところで、この住宅問題はいわゆる質の問題だ。ただいま言われますように、交通から、さらにまた学校、病院あるいは運動場、子供の遊びまでの注意を払った住宅を考えろ、こういう話が出ておりました。私も、たいへんもっともな話だ、衣食住と言うから、今度は住を中心にして、お互いの生活の場、同時にまた産業の場、生産の場もひとつ考えてみよう、かように、社会開発懇談会の答申をありがたく実は思い、それをまた予算編成上の根幹にもぜひしたい、かように実は思っておるのであります。  ただいまのお尋ねに対する私の答えは、あるいは不十分かと思いますが、私自身も、わずかながら庶民の実態、生活の実態というものについて理解をするように努力しておる最中でございます。ただいまたいへんいいお話を聞かしていただきました。
  304. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実は私どもは国債の論議をいたしますときにインフレということばを使っておるわけですが、私は、どうもこのインフレということばは経済用語としては非常に複雑な要素を持っておりますから、そういうことばを避けて、物価が上がるという問題を中心にして議論をしていきたいと思います。ですから、その物価の問題というのは、これからはいろいろ計数の話になりますけれども、その土台にはそういう生活のあることをひとつ頭に置いて物の価格の問題を考えていくんだということで、特に最初にこの問題を取り上げたわけでございます。  そこで、総理最初に少し確認をさしていただきたい点がありますので、これから始めたいと思います。  いま私どもの大蔵委員会にかかっております昭和四十年度における財政処理の特別措置に関する法律案というのがございます。これは、本年度に限って赤字公債を出したい、つまり財政法第四条の例外規定でございます。私ども、これは例外だと考えておりますが、総理大臣は、さっき私申し上げたように、先のことは約束することもできませんが、あなたの在任中にはこういう例外的な処置はもう繰り返さない、こうお約束願えれば、私たちはこの特例の問題についてはかなり不安が取り除かれるような感じがするのでありますが、その点をひとつ、ちょっとお約束をいただきたいと思います。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、はっきりとお約束をいたしますが、御承知のように、ことしは特異中の特異な財政状態であります。しかも、一面において、経済の状況から需要も喚起しなければならない。こういうわけで、均衡のとれた予算にする、税収が足らなければ支出を削減する、こういうこともできないという、いわゆる異例中の異例であります。やむを得ずかような処置をとるのであります。私がいつまでやるか、それは別といたしまして、かような状態は、これは特例でございますので、もう重ねてかようなことはしないとお約束いたします。
  306. 堀昌雄

    ○堀委員 その点ははっきりいたしましたので、その次に、これに関連があるわけでございますが、財政法第四条は、いまとの見合いで改正はしない。ということは、これは例外で二度と繰り返さないとなりましても、本法のほうが、財政法第四条が変わってくると、いまのお約束が無効になるものですから、それを担保すると言うとたいへん大げさになりますけれども、いま特例は二度と繰り返さないとおっしゃっていただいたわけでありますから、あわせて、財政法第四条のこの部分に関する改正はしないというふうにひとつお約束をいただきたいのですが……。
  307. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は法律にやや弱いんですが、この部分に関しての改正はしない、——するかどうかというお尋ねでございますから、非常に限られた範囲だと思います。先ほど申しましたように、私の方針ははっきりしておりますから、この部分についての改正はしない、かように御承知願いたいと思います。
  308. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのこの部分と申します表現は、まず見合いでございますから、それを先に伺ったわけでございます。ちょっと法文を読んでおきますと、四条は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」「前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。」第三項として、「第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。」こうあるわけでございます。この一番最初の第一項について伺ったわけでございます。  そこで、その次に、今度の公債の発行の歯どめの議論の中で、日銀の引き受けはとらない、市中公募で行なう、こういうふうに本会議でも御答弁があるわけでございます。そこで、これも一つの歯どめの問題でありますが、この点は、今後も日銀借り入れまたは日銀引き受けによる公債の発行等はおやりにならないのかどうか、この点をちょっと伺っておきたいと思います。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま考えられたような発行方式を変えることは、よくよくでなければやりたくない、かように思いますが、ただいまとにかく一応の歯どめを考えておりますので、これで実施してどんな形になりますか、あるいはこれをもっと厳格にすべし、かような議論が出るか、あるいはもっと拡大しろとか、かようなことが言われるかもわかりませんけれども、しかし、もともとこの種の事柄、いわゆる赤字公債は絶対に出さない、特例は別ですが、今後は赤字公債は出さない、また、その公債を発行する使途もはっきり限る、かようにいたしておりますので、その原則に立ちまして、どういうように消化されるか、実際を見てまいろう、かように思います。ただいまのお尋ねも、赤字公債への危険を避けろ、こういうことだろうと思いますので、十分注意するつもりでございます。
  310. 堀昌雄

    ○堀委員 私がいま日銀借り入れに触れておりますのは、実は、財政法の側の問題ではなくて、日銀法第二十二条では、ここに対して道がはっきりと開かれておるわけでございます。日銀法第二十二条は、「日本銀行ハ政府二対シ担保ヲ徴セズシテ貸付ヲ為スコトヲ得」、二項は、「日本銀行ハ国債ノ応募又ハ引受ヲ為スコトヲ得」こうなっておるわけでございます。  実は、私どもはやはり日銀引き受けなるものの持っておるインフレに対するおそれというもの、これは非常に大きいわけでありますし、これは諸外国においても国によっては法律をもって禁止しているところもあるわけでありますから、私は、願えればこの際この日銀法第二十二条を改正をしてもらって、そういうことができないということになりますと、われわれこの今後の国債問題については不安がなくなる、こういう感じがするものですから、そういう意味でお伺いをしたわけでありますが、日銀法二十二条については、総理はどういうふうにお考えになりましょうか。
  311. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 日銀法につきましては、全般的な改正の問題があることは、堀議員もよく御承知のとおりであります。その際、どういうふうな内容にいたしますか検討いたしますが、ただいま公債の問題が財政法のたてまえから議論になっておる。その歯どめとして、日銀引き受けというような形は絶対にとりませんと、このことだけははっきり申し上げておきます。
  312. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、大臣はちょこちょこ何年かのうちにおかわりになることもありますので、ひとつ総理、いまの大蔵大臣の発言を確認をしておいていただきたいのです。
  313. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣の答えたこと、私もさように考えております。
  314. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、この間の本会議でも、今後の歯どめの一つに財政の規模の問題等があるということを大蔵大臣は強くおっしゃっておるわけであります。ところが、実は、これまでは税収のワクの中での均衡予算でありますから、入るをはかっていずるを制すという財政の原則そのままでまいったわけでありますが、今後は、公債を発行するということになりますと、一応は、いずるをはかって入るを制すというかっこうにならざるを得ない仕組みになってくると思います。そこで、私は、大蔵大臣が昨日も小松委員との質疑の中で、金融関係の財界の人たちとよく懇談をして、消化その他の規模について検討をしてから考えたい、こういうふうなお話がございますし、金融制度調査会からもこれについての意見が述べられておりますが、私は、そのことよりももっと重要なのは、この国会において、昨日福田大蔵大臣は小松さんの質問に対して、きょうはこれは四十年度の補正予算のことで、四十一年度の予算のことではありません、こういうふうにおっしゃっておるわけですが、実は、非常に今後重要なことは、来年度予算を組む前に、たとえば十一月の中旬とか下旬とか、十二月上旬に、その次の年度の予算を組むための、こういう予算委員会を一回やっていただいて、来年度その他に対する経済の見通しの問題、あるいは減税の問題、財政上のいろんな問題を議論をした中でこの財政規模についての問題が出てくることが望ましいことであり、これはやはり民主的な国会がきめることなのでありますから、その他の方が懇談会で公債のワクを幾らにきめるなんということは、いまの仕組みからしては必ずしもノーマルではないわけでありますから、そういう機会を、少なくとも公債を発行して財政を組んでいかれる限りは、ひとつ新しい慣例として開いていただきたい、こう考えますけれども総理、いかがでございましょうか。
  315. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会というものは、たびたび開くというのはずいぶんあちらこちらに御迷惑をおかけするわけです。ことしも、日韓問題があり補正問題がありしますので、補正問題を、ちょうど編成ができた、そこでお願いをしたわけですが、これがどうも臨時国会で終えることができなかった。したがって、通常国会に入ってその補正の御審議をいただいておりますから、ただいまお説のような、来年度予算編成とほんとうに相前後するといいますか、非常に密着した。そういう意味で、お話のような議論も出てくるのでございます。しかし、予算委員会は別といたしまして、各委員会も、国会が開かれなくとも常時開催しておるのでありますから、そういうところで十分御審議をいただければ意は尽くせるかと思います。ただ、私が申し上げておきますのは、ことしは非常な異例な審議をお願いしておりますので、皆さま方にも御迷惑だと思う。また、片一方では、年内に片づけてほしい給与その他の問題がございまするので、今回は異例な国会の審議だ、かように御了承いただきまして、ただいま、野党といいますか、少数党の意見も私ども尊重する考え方でございますので、各種委員会を通じて皆さま方の御要望はそれぞれ述べられる機会がある、かように私は思っております。
  316. 堀昌雄

    ○堀委員 そのことのためにだけ国会が開けないとしても、私が申し上げておるのは、実は、残念ながら、いまの日本の制度では、政府が予算案を決定してきまして、通常国会で予算が出ましても、そこではもう言うだけなんですね。この予算が、私どもが何か言ったら変更してもらえるのなら、私は事前にそんなことをやっていただきたいとは思いませんが、残念ながら、いまの仕組みは、出てきたものはともかくそのままで通るんだということになりますと、来年になっての予算で私どものものを言いますことは、再来年以後に多少取り入れていただければいただけるとしても、その年度の予算に入らないのですよ。いろんなことをわれわれ勉強して申したところで、入らない。ですから、それならば、予算編成の前に、何もこまかいことを言うのではございませんが、要するに、公債発行のワクというものは現在の情勢では幾らであるべきではないか、経済見通しについてはわれわれはこう考える、政府はどうかということの中で、われわれの意見が取り入れられて、そうしてそういう予算が組まれることが本来の民主的な予算のあり方ではないのか、こういうふうに私は考えますので、その点を総理から、そういう形でひとつ取り上げるということをお約束願えないかということです。
  317. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、全部御賛成が得られるような形ができればたいへんいいことだと思います。それで、私は、あえて予算委員会を開け、かようなお話ではなかったと思いますが、あらゆる機会に、他の常任委員会等を通じて十分御意見を述べられるように、私どもも大いに耳を傾ける、この態度でございますから……。
  318. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとしつこいようですけれども、やはり他の委員会でこれをやるべきでなくて、それをやるのが予算委員会ではないのかと私は思うのです。現在の予算委員会は、ややもしますと、予算の内容でないものの論議がやや多いわけですが、やはりそのことのそういうルールがしかれることが、予算委員会が予算委員会らしくなることの非常に大きな原動力になるのではないか。ですから、総理は、自民党の総裁でもありますから、その際は予算委員会を開いてひとついまの問題について大いに野党の意見も聞こうではないか、こうお答えいただいてちっともかまわないと私は思うのですが、総理の予算に対する真剣さはそれから始まると思うのです。ひとつお願いをいたします。
  319. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、政府自身が予算編成権を持っております。また、皆さま方に御審議いただくにいたしましても、何年度予算というような形でお願いをいたしております。したがって、いわゆる案としての審議よりもやや形が変わっておるというのが、これはもう予算の場合に言えることであります。そういう意味でございますから、事前に社会党の諸君の意見を十分聞く機会を持つこと、これは努力すべきことだ、かように私も思います。
  320. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、私、最初にお約束を取りつけることにだいぶ急でありまして恐縮でありましたが、本論に入らしていただきます。  昨日来のお話を聞いておりますと、大体来年度の経済成長は七%ないし八%くらにしたい、さらにまあ引き続き七%ぐらいが続いていくのが望ましい、こういうふうな御答弁でございました。私もそういうふうになればたいへんけっこうだと思うのでありますが、藤山企画庁長官にお伺いをいたしますが、一体、今日における実績見込み、昭和四十年度の実績見込みというのはどういうふうになっておるのか、お伺いをいたします。
  321. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 四十年度の実績は、まだ非常に正確なことは申し上げにくいと思いますけれども、ラフなことでお許しいただきます。  大体、個人消費支出は対前年度比一二・七%前後ふえるのではないか、それは当初見通しでありました。それが一一%台に伸び、それから、設備投資が、当初見通しが四兆九千億、前年度比五・四%増でございます。これが、いまいろいろ見方がございますけれども、今日の状況から見ますと、四兆五千億程度だろう。それから、在庫投資は、前年度とほとんど同じ水準で横ばい。若干のでこぼこはあると思います。これはまだ上になるか下になるか、若干ありますが、大体横ばいだ。実績からしますと、対前年度比三五%ぐらいな減である。それから個人住宅は、当初見通しが二四・七%ぐらいの増であったと思いますが、実績も、これは住宅投資が相当進んでおりますから、ほぼ横ばい、当初見通しどおりだ、こう見ていいのではないかと思います。  それから、財政支出が、当初見通しが対前年度から比べて一〇・二%ぐらい増だ、これは一四%ぐらいな増ではないか。それから輸出は、為替ベースでもって七十六億五千万ドル、これが八十五億ドル前後、それから輸入のほうは、為替ベースで当初見通しは七十三億ドルでございましたけれども、実績として六十九億ドル、あるいは七十億ドルかその前後、どっちになりますか、はっきりまだ正確には申し上げられません。それから鉱工業生産が大体一〇・五%対前年度比増でございますが、これが二%を若干上回る程度と、当初見通しと大きな開きがございます。消費者物価は、たびたび議論がありますように四・五%の当初見通しが、七・五以上、七ぐらい、あるいは想像される方は八ぐらい、こう言いますが、七ぐらいであります。
  322. 堀昌雄

    ○堀委員 トータルとしてのGNPを伺ってないのですが……。
  323. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まだそれらのものを全部数字的に整理して集計しておりません。ですから、はっきりした数字を申し上げかねるのでございますけれども、まあわれわれからすると、もうちょっと正確にして数字を出したい、こう思っております。
  324. 堀昌雄

    ○堀委員 長官、そのことは、あなたも責任があるからおっしゃりにくいんでしょうが、実はさっきまでの議論の中で、大蔵大臣は七ないし八%のGNPの伸びを来年に見て、主計局長は、さっき大体来年のGNPを三十兆ぐらいのところだと、こう言っているわけです。そうして三十九年のGNPは二十五兆六千八百八十億ですか、これはもう確定をいたしました。そうすると、いまの差し引き計算をしても、出るものは出ますね。企画庁、計算の専門家がいるんでしょうから、その計算から出したら何%になりますか、企画庁の事務当局、言ってください。
  325. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢政府委員 四十年度の国民総生産でございますが、非常に大ざっぱなことを申しますと、大体二十七兆七千億見当かと思います。伸び率にいたしまして大体八%前後、これを実質に直しました場合に、大体二、三%ということになろうかと思います。
  326. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこれは特に政府にひとつお願いをいたしたいことは、アメリカの経済統計を見ておりますと、大体もう二、三週間いたしますと、GNPベースでいろんなものはざっと出てくるわけです。こうなれば、先のことを議論し、考えるのには非常に役に立ちますけれども日本のこの経済統計のおそさは、私は、三年ぐらい前に、当予算委員会議論をいたしまして、早めてもらいたいと言ったわけですけれども、依然として早くなりません。現在、私の手元にある一番新しい資料というのが三十九年の第四クォーターの資料、これがまだ一番新しく出ていて、四十年の第一クォーターの資料はないのかと言ったら、来年になりますという話ですね。ともかくもこういうマクロのものですから、多少間違ってもないよりあったほうがいいんですから、できるだけいろいろな経済統計を整備をして、もう少しやはり経済の論議ができるようにしないから、それでもう企画庁の見通しなんというのは、当たるも八卦当たらぬも八卦で、これほどむずかしいものはないということになるわけで、私は、それは企画庁を責めるということよりも、そういう基礎統計を準備しないから、それだから当たらないものが出てくるのであって、来年の予算編成をするいま、まだことしのGNPがはっきりしないとか、そういうことで私は予算を組むのは神わざにひとしいのではないか、勘で組んでいるようなものではないかと思うのですが、企画庁長官、それはどうでしょうか。
  327. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 統計が非常におそいということは御同感なんでして、われわれもそれを何とかして進めていかぬといかぬと思います。たとえば、いまお話しのように、三十九年の第三・四半期の数字が非常におそいというお話、われわれも非常に困っておりますが、三十九年度の統計、成長、その他すべてのものをそろえますのに、やはり十月から十一月くらいまでかかります。それですから、実際三十九年の実績が出てくるのもおそくなるという状態で、その他各種の統計が非常に、二カ月、三カ月おくれて出てまいります。これはやはり政府全体として統計を早く整理し、あるいは収集の道を各方面分担して持ちましてやる、また収集の方法を適正なルートに乗せて収集していく。これはどうしてもやらなければ、これからみたいに経済指標を出して相当前途を予測する、あるいはその資料によって政策運営をしていくという場合には、非常に必要なことだと思います。ですから、われわれもそれを痛感しておりますから、今後ともできるだけ各省の協力を得まして、統計の整備と、それから早期に統計が出てくるように努力してまいります。
  328. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、三年前にお願いしたのですが、いま、まだできていないのです。ひとつあなたは、在任中に予算もつけて、そうしてひとつ総理立場から、日本経済がもっと科学的に運営できるように、これは政府の責任ですから、ひとつあなたは責任をもってやらせますと、ここでお答えいただきたいのです。
  329. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話を聞いておりまして、まことに残念に思いますから、できるだけ御期待に沿うように、もちろん予算の措置も要りますから十分努力したいと思います。
  330. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、企画庁長官にお伺いをいたしますが、政府は大体来年度七%伸びる、こう言っていらっしゃるわけです。ところが、一般的に私どもが聞いておりますのでも、少なくとも第二クォーターまでは横ばい、第三クォーター以後少し上がるということらしいのですが、大体これまでのこういう議論が年間だけの問題の議論になっておりまして、ややここに問題があるわけです。ちょっと私は、ここに過去の資料を通じて日本経済のGNPの変化を申し上げておきますと、昭和三十三年は、この前の不況の底の年でございます。三十三年の第一クォーターのGNPベースの前年のGNPに対する四半期別GNPの季節調整済み年率の伸び率を見ますと、第一クォーターが九七%、第二クォーターが一〇一・八%、第三クォーターが一〇一・五%、第四クォーターが一〇八・〇%、こういうことでありまして、一回三十三年の一クォーターに前年比より下がりまして、それからやや横ばいに二期いって、そうして第四クォーターになって初めて八%ほど上がった、こういうことであります。それから三十四年に入りますと、これが一二%、一八%、二二%、二八%、こういうふうな年率の上がり方をして上がっていったわけです。その平均は二一%であります。その次に、三十五年になりますと、ここでまたやや少し引き締めが行なわれた結果、第一クォーターが七%増、第二クォーターが一二%、第三クォーターが一七%、第四クォーターが二八%、端数がありますが、そういうふうにしてまたこう上がってきました。その次の年も大体同じようなことで、三十六年は、一四、一七、二四、二六、こういうふうに上がってまいりました。この年のGNPは二〇・八%も伸びたわけであります。そこで、三十七年に引き締めが始まって、これが第一クォーターは九・二、第二クォーターは四・二と下がり、すぐまたこれが上昇に転じて一〇・四、一〇・二となりました。三十八年は九・三から始まって一四・七、一七・二、二一・六と、これも後半ずっと上がりぎみであります。三十九年になりますと、八・三が第一クォーターで、あと一五・八、一五・八、一七・二と、三十九年の第四・四半期は一七・二上がっているわけです。ですから、さっきのお話のように名目八%でありますけれども、このことしの一−三月が前年比で一七%も上がっていたところから始まって、こう一つのカーブになったのだと思うのですが、これが横ばいになって、次に上がっていくときは、前半横ばいとすれば、後半の第三クォーター、第四クォーターは一四%ずつ伸びなければ七%にもなりませんね。そうすると、横ばいでそう一四%、一四%とはこれは上がらないでしょうから、やや少しはなだらかになるでしょうが、後半に上がらなければ、来年七%伸びないと思うのです。そして七%ということは、後半の第四クォーターあたりが一五、六%多ければ一七、八%までこないと、実は年率では七%くらいにならないのではないか。それほど再来年の一−三月上がったときに、その先はどうなるのか、四十二年はどうなるのか。そこへいってまた七%にしようというのは、これはなかなかたいへんなことなんです。この間からの議論を伺っておりますと、毎年七%にして安定成長だと、こうおっしゃるわけですね。ことばの上ではたいへんけっこうなんですけれども、生産活動を含めての現在の資本主義の仕組みは、そういかないわけですから、いま私が申し上げたように、これはこうカーブになって常に動いておるわけです。それの平均値をとって、ここでマクロの議論をしておるわけですが、私は、やはりそういうマクロの議論では今後の経済問題は無理だ、クォーター別でこうやってものを見ながら、そして少なくともその次の段階まで見通して、四十二年度まで見通して来年度予算の問題の議論をしていかないと、来年度の公債発行の問題というのは非常に大きな問題が出てくる、こう考えるわけです。企画庁長官、そういうことで四十二年度の経済成長はやはり七%でいけそうですか。もし前提として四十一年度が七%でいったとすれば、これはもっと上がらざるを得ない。もしいかなければ話は別です。どうでしょう。
  331. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 四十一年度の経済の見通しは非常にむずかしいところがございます。したがって、四十年度の実績から見てどの程度上下するかということがまず一つ。それからもう一つは、われわれ数字の上だけであれするよりも、経済の景気、不景気というものは、相当人気的な問題が経済活動を倍加させたり、あるいは倍に減らさせたりということがございます。したがって、ただいま各事業経営者に対しまして、来年の景気をどう見るか、また受注をどう見るかということを、企画庁としてはアンケートを出してやっております。まだ全部集計されておりませんけれども、いまきておりますところを見ますと、上半期はやっぱり受注はそうふえないだろう、下半期に至ってふえていくだろう、こういう見方が多いようであります。まだ最終的な集計はいたしておりませんけれども。そういうようなことをあわせますと、上半期はやはり今日の状態——財政措置その他も次第にきいてはまいりますから、いまよりも少しずつ上がってはいくだろうと思います。そして実際に好景気と申しますか、好景気という程度がございますけれども、ある程度こういう状況を脱却していくということは、下半期になるのじゃないだろうか。しかし、その辺について過去の数字と、あるいは過去の実際、こういうときに対しましたときの日本の経済の数字的に見た弾力、そういうものを一応過去の統計から勘案してまいらなければ人気だけというわけにもまいりません。そこいらのものをそろえてまいりますと、来年は平均しまして七%ぐらいにいければけっこうだという考え方でございます。
  332. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃるように七%にいけばいいほうかもわかりません。ただ私は、かりに七%になったとすると、私は四十二年度は七%でおさまらないのではないか。これまでの経過ですね、そこから入ってきてこう上がっていきますと、これはなぜ上がるかというと、これは政府の財貨サービスの購入や個人消費の伸び率では上がらないのですから、民間設備投資で上がっていくということですから、民間設備投資でこれを押し上げてきて、前半の低いのを後半でこう上げてくるとすれば、民間設備投資がそれだけ惰力がついてくれば、ここですぐ一回下がって、また横ばいになるということはないのです。これは必ずその惰力でずっといくわけですね。そうなると四十二年度は、もし四十一年度が七%になったとするならば、また九%なり一〇%ぐらいにはいきかねないと思うのです。ここで大蔵大臣、問題を私いまから、ちょっと来年を一飛びしますけれども、四十二年度経済のところを、これはたいへん先の話をして恐縮でありますが、少し議論をさせていただきたいと思います。  いま政府のほうでは、われわれが新聞で拝見しておるところでは、来年は七千億公債を発行したい、こういうお考えで、来年の予算規模は大体四兆二千八百億ですか、大体そこらだというふうに新聞で拝見しておりますが、大体こんなところですか。大体でけっこうですが……。
  333. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまのところはそんな見当でございます。
  334. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、その次の年になりますと、いまのように民間投資がこう上がってきたということになるところで四十二年が始まってくるわけでございますね。そういうときに、いまの財政規模をどういうふうにできるのか。私が心配するのは、七千億来年公債を発行して処置をする。しかし、それを押し上げてきた政府の財貨サービスの購入、要するに政府の需要ですね、これはおそらく一兆五千億ぐらいのものになって、それも押し上げをしておるわけですから、これをはずすわけにはいきません。これをはずせば、民間の設備投資だけでいけるというところまでまだいかないですから、これがささえになって、なりつつあるときに、民間の設備投資が四十二年度はどんどん上がり始めてきた。これははずすことはできないから、公債を発行するためには、依然として七千億なり幾らなりのものは出していかなくてはならない。しかし、民間の設備投資がすでに始まり出して、資金需要が今度はどんどん出てくるようになってきたということになったときに、四十二年度において、一体この公債政策というものはどういうことになるのでしょうか。市中公募の原則、私はもうさっき確認をしましたから、その点は安心をしておりますけれども、市中公募の原則、それから、いま伺ったことは、これがきっちり歯どめにかかっておるならば私は心配ないのです。しかし、まあ総理はまだお元気ですから、四、五年はやっていただくだろうと思いますから、その点は安心をして、見ますと、四十二年の財政というのは、私はなかなかむずかしいことになってくるのではないのか。こういうふうな感じがいたしますが、その点はいかがでしょうか。
  335. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま堀さんの話でちょっと感じますことは、来年の七%、これが下半期にいってぎゅっと急に実現されるのだ、そうすると御説のとおり一四%、こういうことになりますね。私はそういうものじゃないと思う。やはりなだらかにずっといって、ウエートはどっちかといえば下半期にかかる、こういうことだろうと思うのです。ですから、あなたが四十二年度の姿を想像されておるそれと、私の感じ、受け取り方はだいぶ違うのです。もう少しなだらかなかっこうにくると思うのです。四十二年度もかりに七%だというようなことを考えてみますと、四十一年度の平均の七%増しということですね。それですから、これはそう急激なことではない。  それからもう一つの問題は、あなたは設備投資だけを景気上昇の要因と考えておる。設備投資は全体のGNPの中で今日は大体二〇%以下、これが非常な高度成長期には三〇%近くなるとか、ふくれ上がって景気をつくっておりますが、私のいま見るところでは、いま非常な設備過剰状態である。なかなかこの現実から見ますと、そう急に設備投資がまた旺盛になってくるというふうには考えていないのです。そこで昭和四十一年度を例にとってみますと、おそらく設備のほうは横ばいぐらいな程度じゃないか、その設備投資の落ち込みを財政が補ってやる、こういうたてまえでなければならぬじゃないか、大体そういう考え方が四十二年度においても通っていくのじゃないか、そんな感じを持って動きを見ているわけであります。
  336. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃるように、いま皆さんのほうで試算をしていらっしゃるものをこまかく見てみますと、個人消費がやはりことしと同じ程度には伸びませんと、来年とても七%になりませんね。これは物価の問題もありますから、物価がもっと上がれば、これはとても七%になりません。しかし、物価が企画庁の長官のおっしゃるようにはいかぬと思うのですけれども、しかし、六%台にもし落ちつくならば、私は個人消費が一一%くらい伸びない限り、政府の財貨サービスの購入だけでは需要がありませんから、とてもそれだけ伸びないと思うのです。よろしゅうございますか。ですから、私がいま一つの前提として話をしたのは、前半が横ばいだということを一つの前提として、そこで七%も上げようということになると、民間の設備投資でも出てこないと上がらぬのではないかという意味を申し上げたわけです。私はそうなると言っているのじゃないのです。だから、そうすると、その先は困る。今度は裏返して、いま大蔵大臣がおっしゃるように、なだらかにくるのだ、なだらかにくると、私は個人消費がなかなか一一%伸びにくいのじゃないかと思うのです。  そこで、労働大臣おいでになりますね。政府が七%の経済成長をきめまして、いま大蔵大臣は民間設備投資が横ばいだ、在庫も少しはふえるでしょう、千五百億か二千億かふえるでしょうが、これもほぼ横ばいに近いプラス微増だ、こういうことになりますと、残ってくるのは個人消費が少なくともことし程度、一一%程度上がらないと、政府が自分たちで約束をしたことが実現できないわけです。これはあげて来年の春闘に関係がある。来年の春闘に、いまの日経連が言っておるように、企業個々別の内容だけのことで賃上げを一切やらさないということが起きたら、来年の一一%の個人消費の伸びは絶対達成できませんね。どうでしょうね、労働大臣、政府にあなたが忠実ならば、来年の春闘においても、少なくとも本年度程度の賃金の上昇をしなければ個人消費一一%はできませんよと日経連に言ってくれますか、ちょっとひとつ答弁してください。
  337. 小平久雄

    ○小平国務大臣 賃金の上昇の状況でございますが、ことしの一月から十月までの平均を前年同期に比べますと、大体九・九%ぐらい上がっておるのであります。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕  そこで、賃金というものが一体どういうふうにきまるべきかということでございますが、申し上げるまでもなく、賃金は、国民経済全体の伸び、あるいは雇用者以外の国民の各層の所得の伸び方等々とやはりバランスをとりつつ雇用労働者の賃金も上がっていくということが望ましい姿ではなかろうかと思うのであります。しかしながら、このように述べてはおりますが、やはりその規模なり業種なりによってもかなりの違いもあります。そういうことで、本来賃金は、あらためて申し上げるまでもなく、労使の間で自主的にきめられるべき性格のものである。こういう点から申しますと、来年の春闘に幾らくらい上がったら適当なんだというようなことを私から申し上げるのは、はなはだこれは、むしろ不適当というか、不穏当というか、そういうことでありまして、私からはそういう点を、ここでどのくらいが適当だと申し上げるわけにはまいらぬ、かように思うわけであります。
  338. 堀昌雄

    ○堀委員 適当だということを言っていただくわけじゃないのですが、要するに、政府のきめた経済成長、経済政策を達成するためには、そのくらいの賃金上昇を見ないと、これは何も政府の問題じゃなくて、資本家を含めての問題なんですから、私は、その点が非常に問題だと思うのは、日本では個々の資本家は、自分の企業について十分にまともな経営ができてなかったために今日の状態になっているわけですね。そこで、自分の企業だけから見れば、なるたけ賃金を上げないことが自分の企業の利益かもしれませんけれども、総資本として見るならば、マクロで見るならば、個人消費が下がっていけば、幾ら政府の財貨サービスなどをほうり込んでみても、これは経済は上がりません。経済が上がらなければ、自分で自分の首を締めるわけですね、資本家自体も。だから、そこのところは、私はエアハルトの考え方が、これはオーソドックスであるけれども、やはりこれが本来の経済のあり方ではないのか。設備投資型のときにはそれでよろしいけれども、こういう形になれば、これをささえるのを政府の財貨サービスの購入だけでささえるのは無理がある。やはり五〇%をこえるところの個人消費でこれをささえることこそ、それが本来的な安定成長なんですよ、私はこう考える。総理大臣、だからどうでしょう、あなたも日経連にはそういうことは言いにくいでしょうけれども、しかし、個人消費の伸びは日本の経済成長には非常に重要だ、こういうことは言えますね、どうでしょう。
  339. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは堀君に申し上げるまでもないことですが、全部が均衡がとれて、そして活発な活動をしているときに言えるような議論と、特殊な状態のもとにおいて言える議論と、これはおのずから違う。そのことをまず指摘しておきたいのです。  ただいまのような日本の経済のもとにおきまして、いま言われるような個人消費を伸ばす、そういう政策をとれ、こういうことは、ちょっといまの時期としては不適当じゃないか。ことに先ほど来申しておる物価自身の問題が片一方にある。物価の高騰は、何としてもこれをとめなければならない、こういう状態のもとにおいて、だからいまのような御議論は、ただいまはちょっと困る、かように私は思います。
  340. 堀昌雄

    ○堀委員 来年度の見通しを政府が立てて、これまでそういうふうに誘導しなければならぬというふうに総理はおっしゃっていたように思うのです。要するに、特に政府の投資がささえておるときにおける政府の責任は重大なんです。そうなりますと、私は何も個人消費をむちゃくちゃに伸ばせなんて一つも言っていない。ただ七%をささえるのは、要するに政府投資が一五%ぐらい伸びて、それから片一方個人消費が一一%ぐらい伸びて、ようやく七%ぐらいが維持できるということなんですから、私はそこを言っておるので、幾らでも伸ばせというのではなくて、やはり少なくとも前年度ぐらいの賃上げをしないと、日本経済はよくならないというのが私は常識だろうと思うのです。その点は。  もう一つ、企業の側面からいいますと、その間国税庁が発表しました資料で、これは新聞にずいぶん出ましたけれども昭和三十九年度の交際費の支出総額は五千三百六十五億円、よろしゅうございますか。これはそのときの法人税の歳入決算額九千七百五十四億円の五五%に当たるものを交際費として使っておるわけですね。私、この前大蔵大臣に申し上げたことがあります。一体企業は自分の企業のことを考えて、企業自体の社会的責任、言うなれば国家的責任といいますか、そういうものを少しも考えていない。そして片方では減税しろ減税しろと言って、漏れ聞くところによると、一千億近くの企業減税が行なわれるのでしょう。しかし私は、その前年、昭和三十八年度は、交際費が四千五百六十三億円、歳入額八千六百二十九億円のやはり五二・八%なんです。法人税の五〇%をこえたものを交際費として使って、これは経費で落ちておるわけです。これを企業者自体が考えずして、そして自分の経理を、自分の会社の利益が出ないなんというのはあたりまえなんですよ。そういうことをしないでおいて人件費を押えるから、結局、それが回り回って消費を押え、需要を小さくしているわけなんです。だから資本家自体がこういう問題の、本来減らすべきものを減らした上で、なおかつ企業がうまくいかないというのなら話はわかりますよ。そうじゃないんです。こういうものはせいぜい使っておいて——私はよく財界の人とも会って話を聞くと、こう言っていますね。昔は、堀さん、会社の社長なんてものは自分の自動車を持って、自分の運転手を持ってやっていたものですよ。大体いま会社の社長で自分の自動車で自分の運転手を使っている人がありますか。心がまえが違います。会社をともかく利用できるだけ利用しようというような人が経営者であるから、今日の日本経済はこうなったんですと言って、ある有名な財界の幹部の人が私に話をしたことがあります。私、全くそうだと思うのです。ほんとうに企業というものを真剣に考えないで、サラリーマン重役的に、会社から取るものは全部取っちまえ。しかし、会社は、その人たちのものであると同時に、社会的に果さなければならぬ役割りがあるわけですから、そういう側面を全然考えないでやっておるから、今日、設備投資一つにしたって、むちゃくちゃな設備投資が起こってくるわけなんです。こう考えてきますと、総理大臣、どうでしょうね、私は、こういうものはもっといまの税法を改正すべきだと思うのです。四百万円まではともかくいいんだ、それから以上がどうだこうだというような、そういう交際費の否認のあり方は、こういう際、問題があると思うのです。企業減税をやるのならば、私はまず交際費の問題をはっきりしてから企業減税をやっていただきたいとこの前大蔵大臣に申し上げたら、この間の六月の大蔵委員会で、私はそう思うとおっしゃったんです。総理大臣どうでしょうか。もう少し経営者は正すべきところを正し、払うべきものは払って、そうして総資本に回ってくる需要を考えるというのが当然なんじゃないでしょうか。私は、総理がいまおっしゃったことについて、こういう事実がある以上、まだ納得ができない。
  341. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの交際費の問題は、昨日も議論したところです。あるいは席にいらっしゃらなかったかと思いますが……。そこで、これは交際費という名前が適当でなくて、これは全部——いまあげられたような、重役が会社の費用でどんどん自家用車をやっておる、あるいは使用人まで払っておる、こういうような話も一面で聞きますが、いわゆるほんとうの社用といいますか、事業経営のために必要な使い方もあるわけでございます。片一方で、ずいぶん誤解をして、たとえばゴルフは全部会社の費用だとか、かような話も聞きますが、そういう意味のものじゃないんだ。だから、交際費も適当でなければならないのです。しかし、確かに交際費の多いことも、これが配当とほとんど同額——配当のほうがわずかに上だ。しかし、まだもう一つ問題なのは、会社経営の実態から見まして、支払い利子の非常に多いこと、二兆円をこしておる、こういうような事実も今後直していかなければならないと思います。先ほど、労働者の給与も上げて消費経済を大いに進めるべきじゃないか。これは、しかし、昨年あるいは本年がいわゆる通常の状態だ、かようには私は判断しないので、こういう状態のもとを直そうというのがいま私どもの課題でございますから、この例で来年も進んでいくんだというのは、やや言い過ぎだ。この辺はよくおわかりなので、今後ますます労働人口はふえていかざるを得ないし、また生産そのものも、生産性も上がっていくでしょうし、また各般においての需要も喚起される。しかして、ただいま言われましたごとく、やはり一国の経済をささえる一番大きな力は内需だ。もちろん貿易も必要ですが、内需がささえるんだ、こういうことに私ども考えを置いて、各労使とも、また全体がしあわせになるようにくふうしていかなければならぬ、かように私は思います。だから、一部は賛成であり、一部は反対である、こういうことです。
  342. 堀昌雄

    ○堀委員 私、ちょっと誤解があるといけませんから……。さっき申し上げたように、政府がやはり七%の成長をやりたいと言われたら、それをやるように全体を指導しなければならないのですよ。よろしゅうございますか。だから、そういうふうに指導するのなら、来年度の見通しは、長官、どうですか、非常にラフなのでいいのですが、ひとつちょっと述べていただけませんか。おそらく個人消費は一一%、横ばいぐらいになるんじゃないかと思いますが、ちょっとそこをおっしゃってください。
  343. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 まだ非常にむずかしいのでございまして、先ほど申しておりますように、いろいろな条件、数字的なもの、あるいは人気的なものをとって、これからあれいたしますが、いまのところ、われわれが考えてみればこんなことじゃないだろうかというところで、その意味で御了解願いたいと思います。  鉱工業生産は、大体ゆるやかな線で回復基調をたどっていくのではないかというふうに、四十一年度四月以降でございますから、考えられてしかるべきだと思います。しかし、それと同時に、先ほど申し上げたように、上半期のほうは非常にゆるいといわざるを得ないと思います。それから個人の消費支出は、お話しのようにほぼ横ばい——横ばいじゃない、同程度に伸びるのではないか。一一%程度ですね。そういうふうに想定したく思います。在庫投資は若干回復が見込まれるんじゃないか。それから個人住宅投資は、横ばいよりやや上回るのではないかと見ていいのじゃないか、こう思います。それから輸出は、本年のように急には——非常に伸びた、そうはなかなかいかぬ。したがって、どの程度になるか。本年は八十五億ドルでございます。これを九十五、六億に見るかどうか。その辺、もう少し伸びると見る人もあるし、そうはいかないだろうと見る人もあります。この辺はもうちょっとわれわれも研究させていただきたい、こう思っております。
  344. 堀昌雄

    ○堀委員 総理、お聞きのとおりです。私はここで非常に不審でなりませんのは、この前新聞では、総理大臣は、四十一年度予算の年内編成を何か閣議で大いに督励された、こう聞いている。ところが、予算編成方針もきまらず、おまけに、今日ここでいまの程度しか来年度の見通しが立たなくて、どうやって四十一年度の予算編成をなさるのか、私はわからないのですが、これはどうなるんでしょうね、総理。四十一年度の見通しがかなりきちんとできて、それに検討を加えた上で来年の財政規模がきまってこなければ、これまでと違って、民間主導型でなくて政府主導型ですから、これは政府の責任は非常に重大なんです。ところが、今日まだ、いま長官に伺うと、私どもも伺っていて、まあいまのようなことですね、確信がないのです。こんなことで予算がつくれるのでしょうか。総理大臣、どんなものでございましょう。
  345. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私かわって申し上げます。年内編成はどうだ、こういうことですから、私から申し上げますが、予算のあり方と、それから経済見通しのあり方、これは非常に関連があるのです。まず、大体予算は荒見当でこんなかっこうかということを基準にいたしまして、企画庁では経済見通しのほうを進めてみる。ところが、現実に予算のほうは大蔵省でこういうふうな考え方だ、それをまた企画庁では手直ししなければならぬ。いまの段階では、両方ともが相当のところまできておるのですが、そういうふうに行ったり来たりしている作業の最終段階ではありますが、まだここで政府の統一見解だといって申し上げるまでのところまではきていない、こういうのです。ある程度まできているのですよ。ただ、まだ最後的な段階ではない、こういうふうに御了承願います。
  346. 堀昌雄

    ○堀委員 わかりましたけれども、私は、やはり相互にこうなるんでしょうけれども、特に見通しが先じゃないかと思うのです。予算がきまらなければ見通しがきまらないというのは、やはりそれは相互関連がありますが、大体の見通しをきめてそこで試算をしてみたら、このくらいの政府の財貨サービスの購入がないとここまでいかないぞ、そうすると予算として見ればこうじゃないか、こういうことになるんじゃないかと思うのです。その点、こんなことは例のないことだろうと思うのですが、私、これは一般に対して、必要以上の不安感——と言うと行き過ぎかもしれませんが、何かすっきりしないなということを残しているのじゃないかと思うのです。大体のことはわかりましたけれども、どうかひとつもっと早くできるようなふうには考えていただかないと、特に財政主導型の景気調整をこれからやるのですから、その点はもうちょっとはっきりするように、これからお考えを願いたいと思います。  その次に、ちょっと減税の問題で、佐藤さんが総理でなかったころにおっしゃっていた三千億減税がどうやらいよいよ日の目を見ることになってきたようでありますが、ことしは三千億減税、何ですか七千億公債発行ということのようで、いいのですが、この減税というのはことしだけのことなのでしょうか。要するに、ことしというか、四十一年ですね、四十二年もやはり減税はなさる。こま切れではなくて、ある一つ長期的な展望に立った減税だ、こういうふうに理解をしてもよろしいかどうか。総理大臣、これはやはり政治姿勢の問題ですから、総理からひとつお答えいただきたいと思います。
  347. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題は少し長期的な観点で見てるべきだ、かように私は思っております。しかして、ただいま言われるように、ようやく三千億減税をことしはどうしてもやろうということで、大蔵当局を鞭撻しておるのであります。しかし、税制調査会等もありますし、それらの意見も十分伺いまして、そうしてこの減税問題と取り組んでおるわけであります。ただいまのところ、来年度以降——来年度はきまるが、その次はどうなるか、こういうような点については、ただいま申し上げる段階ではございません。しかし、いわゆる国民を富ます政策というものは続けてまいるつもりでございますし、また、財政のことでございますから、全体を十分勘案して、そのときに適切な処置をとるという政府の態度であります。
  348. 堀昌雄

    ○堀委員 私も四十二年度の額まで伺うつもりはございませんが、総理が、気持ちとしてそういう長期的な展望に立ってやはり減税を——来年が三千億ならば、それでは再来年は五百億ということにはならないでしょうから、それに近いような、それはそのときの情勢がありますけれども、そういう気持ちは続いていくのだろう、こういうふうに私理解をいたします。  そこで、これから各省大臣に少しお伺いをしたいのです。これは大蔵省から言っていただいてもいいのかもしれませんが、今度の米価の値上げで、四十年度の増収分、これは一体幾らになるのでしょうか。農林大臣、ちょっとお答えいただきたいのですが……。
  349. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 今度の補正予算でございますか。
  350. 堀昌雄

    ○堀委員 今度一月一日から値上げをされます。それが四十一年度に、要するにこれまでと比べてどれだけ農林省のほうに吸い上げることになるのか。四十一年度全体のことです。
  351. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 四十一年度全体ですね。約四百億以上になります。
  352. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと不正確ですから、事務当局で正確に答えてください。
  353. 武田誠三

    武田(誠)政府委員 今回の値上げに伴います四十一年度の増収分につきましては、まだ正確な数字までいっておりませんけれども、大体六百億程度になります。
  354. 堀昌雄

    ○堀委員 運輸大臣にお伺いをいたします。——運輸大臣、よろしいですか。運輸大臣ですよ。  来年に予想されておるところの私鉄の運賃の値上げによって四十一年度に私鉄が吸い上げる金額は一体どのぐらいか。国鉄の運賃の値上げによって四十一年度に国民から取り上げる金額は幾らか。どうぞ事務局とよく打ち合わせの上で御答弁いただいてけっこうです。
  355. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 国鉄関係で千六百五十億くらい。私鉄のほうは目下検討中でございまして、申し上げるような段階でございません。
  356. 堀昌雄

    ○堀委員 運輸大臣、いま私鉄のほうは、おっしゃるように、幾らにおきめになるかわかりませんから、きまってないかもしれませんが、もし申請をかりにそのまま認めたとしたら幾らになりますか。
  357. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 大体三百億見当だと思っております。
  358. 堀昌雄

    ○堀委員 次は郵政大臣。郵便料金の値上げで四十一年度の増収は幾らになりますか。
  359. 郡祐一

    ○郡国務大臣 郵便料金につきましては、郵政審議会の答申を得ております程度で、まだ政府の考え方等固まっておらない段階であります。ただ、郵政審議会の答申によりますと、四十一年度では二百数十億を期待しております。
  360. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも数十億というのは、非常にあとで計算が困りますので、少し狂ってけっこうですから、ラウンドナンバーでもうひとつ、二百何十億ぐらいというところを……。
  361. 郡祐一

    ○郡国務大臣 郵政審議会では二百九十億を期待しております。
  362. 堀昌雄

    ○堀委員 厚生大臣にお伺いをいたします。  来年度の健康保険の標準報酬の値上げ及び料率の値上がり、これによって四十一年度に健康保険勘定の増収になる部分と、いま各地で国民健康保険の値上げの問題が非常に出ております。東京都は否決をしておりますが、しかし、どっちにしてもこれである程度上がってくると思うのです。これは推計でけっこうでございますが、来印度における国民健康保険の増収分、これは地方自治体ですが、トータルで言っていただきたい。国民年金が何か来年はまた上がるようなことでありますので、国民年金を上げることによる国民からの吸い上げ分、これの三つをひとつお答えをいただきたい。
  363. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 政府管掌の健康保険が、ただいま政府で保険三法の改正を考えておるわけでありますが、そのとおりに国会の御承認を得ました場合におきましては、標準報酬の上限引き上げ、これで百三十八億、保険料率の引き上げ、これで二百九十億、計四百二十八億。それから国保のほうにつきましては、市町村団体がやってまいりますので推計になりますが、百五十億程度でございます。それから国民年金につきましては、四十二年の一月一日から実施をするという考えでおりますので、四十四億ということになります。
  364. 堀昌雄

    ○堀委員 私どもが大体いま承知をいたしておりますところの政府関係の吸い上げ分が、幾らになりますか、国鉄及び私鉄で約二千億、米価が六百億ですから、二千六百億、郵便が三百億で、二千九百億——四十一年度には政府の施策としていまのところ国民から三千五百億吸い上げるということをいま各省大臣お答えになったのです。これは法律その他できまるかどうかは別として、いまの皆さんのほうの腹づもりは、総計三千五百億国民から吸い上げる。そして、そこで今度は減税をなさる。減税をなさるけれども、私もまだあまりよくわかりませんが、大蔵大臣、いま総理のおっしゃる三千億減税というのは、所得と企業ではどのくらいの割合になるのでしょうか、それを伺ってからでないとまずいと思いますから……。大まかなラウンドナンバーでけっこうです。
  365. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだそれはきまっておりません。おりませんが、ざっと四分六ですかね、六が所得、四分が企業、こういうことになろうかと思います。
  366. 堀昌雄

    ○堀委員 来年度三千億といいましても、実は四月からの実施になるわけですから、平年度でいきますと、きっちりいっても二千四百億ですか、まあ二千二、三百億、それの六割ですから、千三百億ぐらいが所得税の減税になる。千三百億ぐらいが所得税の減税、そうすると、国民全体から三千五百億吸い上げて、その半分の——半分ではないのですが、大体所得税課税対象が五六%ぐらい、それから非課税が四四%ぐらい。一千万世帯と総理はおっしゃった。そのとおりで、そのくらいになるのですが、その三千五百億吸い上げた中で、片方は、税金を取られている人たちのほうは一千三百億返してもらいますね。ところが、あとの一千万世帯には、総理一体何をお返しになりますか。ちょっとこれを伺いたいのです。
  367. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、生活補助その他社会保障費がございますね、これらのお金が予算的にどのくらいになりますか、これは専門家だから御承知だと思います。
  368. 堀昌雄

    ○堀委員 生活保護の問題は、これはいまの一千万世帯の中のごく一部分になっておりますからあれですが、実はあとの部分は逆に取り上げられるほうなんです。健康保険、それから国民健康保険、国民年金——社会保障というのは私は与えるほうかと思っていたら、来年は何と取り上げる側に回るのですね。この来年度の問題というのは、経済理論としても実はちょっと問題があるわけです。個人消費を少し高めるために、なるだけ可処分所得をふやす、それで、減税をして可処分所得をふやして乗数効果をつくりたいという一つの政府の施策が片一方にあって、片一方では、しかし三千五百億円ぐっと吸い上げて、可処分所得はぐっと縮める、これは、私は政府の施策としてはやや矛盾倒錯をしておる点じゃないかと思うのです。なるほど、これまで押えてきたところに無理があったという問題も私はわからぬではありません。わからぬではありませんけれども、いまの財政をやるときに、このときにこれをやるというのが適当なのかどうか、これは私は非常に問題のあるところだと思う。できるだけこれを先へずっとずらして、言うなれば、それこそ、食管も赤字をかかえておっても、あなた方のほうでは、今度は大蔵省証券もふくらます。食糧証券もふくらます。そういうことでうしろへできるだけこれをずらしておいて、そうして可処分所得をふやして個人消費の上がるのを待って、そうしてそれを景気の浮揚力に使うというのが、財政のあり方としてならあたりまえのことではないか。それをともかくしょっぱなに持ってきて、一月一日から米価も上げる、国鉄も上げる、郵便料金も上げる、年度一ぱいに取るようなかっこうで、どんどん吸い上げていくということは、私は、現在の経済運営のあり方としては非常に矛盾があるのじゃないだろうかと、こういう感じがするのですが、いかがでしょうか、総理
  369. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、ただいま、年度一ぱい吸い上げる、こういうことを言われますが、そこで、やはり公共料金の扱い方も、その上げ幅を十分に注意するとか、その時期もできるだけ同時にならないようにする、そういう意味で、一年一ぱいというわけではございません。できるだけ生活に与える影響を少なくするようにくふうをしておるわけであります。同時にまた、真剣に物価問題と取り組んでいくというのが現在の政府のたてまえでありますし、この不況を克服し、物価問題と真剣に取り組んでいく、同時にまた、政府の施策もこれらの方向に対応したそれぞれの施策をやるということになるわけであります。先ほど来、また、この国会が始まりましてから物価問題に終始しているのも、こういう点から出てきているのだと思います。公共料金を上げることはある程度やむを得ないという御了承でございますけれども、しかし、いずれにしましても、公共料金にしても上げ幅はできるだけこれを縮めなければいけませんし、また、時期等も、鉄道と郵便を同時に上げないというのも、こまかな配慮ではございますが、そういう点でございますし、また、一般物価について、これは積極的に物価問題と取り組む、政府はかような態度で現在の値上げにも対処するつもりでおります。
  370. 堀昌雄

    ○堀委員 率を下げるのはなかなかむずかしいのでしょうけれども実施時期をずらすことは比較的簡単であって、そして効力があることだと思うのです。特にやはり一千万世帯の人たちは、さっき申し上げたように、プレゼントがないのですよ。実際ことしはプレゼントがないのです。だから、私が最初にふろ代の問題を出したのは、どうもこの一千万世帯がどうやら成長の陰に忘れられた国民というかっこうで残されていくのではないのか。それは多少は伸びていきますが、いまの政治を、まあ佐藤さん、人間尊重とおっしゃれば、当然ここは非常に比重のかかるところなんですから、その点では、公共料金問題は、われわれのほうでは米価もひとつ下げてもらいたい。国鉄は分離していただきましたが、何にしてもこれらの問題というのは、物価の上がるという側面もありますけれども、いまのそういう経済全体から見ての不公平な問題、ここらは十分ひとつ総理もお考えを願っておかないと、私は、これは国民の中に非常に不満な人たちがたくさん残るのではないか、こういうふうに思いますので、申し上げておきます。  そこで、この公債の歯どめ論の中で問題になっております一つは、市中公募を原則とする、こういう問題だと思います。この市中公募を原則とするということは、日銀引き受けでないということの裏側でありますが、今度の赤字公債の発行は、半分は資金運用部で引き受けていただく、残りはシンジケートに全部お渡しになるということのようでありますが、ここに私は、市中公募としては非常に問題があるのではないかという感じがいたします。市中公募というからには、私は、日本ではまだいまとても個人が国債をどんどん持つような環境にはないと思いますから、どうしても金融機関が持つことになると思います。金融機関が持つことになると思いますが、持つ可能性のあるものを全部シンジケートの中に入れてしまって、そうしてともかく千三百億なら千三百億ぽんと出して、そっちで分けてくださいということは、言うなれば、私は強制消化方式というか、これまでの政府保証債もみなそうですけれども、市中公募という名前の強制割り当てのような感じがしてしかたがないのです。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 市中公募というのならば、都市銀行はこれは別格ですが、やはり証券会社に一応全部持たせて、そこから始まって、金融機関は自己の採算ベースに応じて、自分のほうに余資があるならばひとつこれだけ買いましょう、余資がなければ買いません、こういうふうにコマーシャルベースになってこそ、これが市中公募というものでないだろうか。今度の公債発行については、財政制度審議会、金融制度調査会、証取審議会と、三つの審議会がいろいろな角度で答申をしております。この中では、証取審議会の意向だけは完全にシャットアウトされまして、金融制度調査会の意向の形で、シンジケートはなるべく幅広くつくるのがよろしいということで実行されておるように思うのですが、御承知のように、信用金庫、相互銀行、農中までは逆ざやです。逆ざやなものがシンジケートへ入ることについて、この間たまたま信用金庫連合会の小原さんという、会長さんですか、お目にかかったときに、極端な言い方をするならば、あなた方背任やっておるんじゃないですか、こう言ったわけです。逆ざやになるものを、進んで手をあげて割当の中に入って受け取るなんていうのはもってのほかだ、買うことはよろしい、それは少なくとも企業の自主性において買いなさい。企業の自主性において買うんでなければ、あなた方このシンジケートに入るという行為は背任ですよと、ことばはちょっと適当ではないけれども、そういうことを私は小原さんという方に申したのです。私は市中公募というものが歯どめになるかどうかという一つの問題は、そういう買うものの自主性が働くということが市中公募の一つの原則ではないかと思うのですが、大蔵大臣、この点は、いまのシンジケートのあり方というのは、市中公募としては変則だと私は思いますが、どうでしょうか。
  371. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は市中公募とは言ってないのです。市中消化と言っておるのです。つまり日本銀行で引き受けはいたしませんと、こういうことであります。しかし、市中消化でございますが、なるべくこれは一般国民に持っていただきたいものだという考えを持っております。でありまするから、その窓口を一体どうするかということも考えておるわけなんでありまして、ただいまのところは、これは証券会社を通ずるのが一番いいとこういうので、国民への窓口、これは証券会社というふうに考えておりますが、要するに、私は国会に対しましても、市中においてこれを消化する、これが公債政策運営上非常に大事なことだということを申しておるわけでありまして、来年は七千億とか、そういう公債を、政府保証債でありますとか、あるいは事業債でありますとか、地方債でありますとか、そういうものとともにいかに支障なくこなしていくか、これは非常に重大な問題であります。私も精力をそこへ注いでおりますが、押しつけはいたしません。シンジケートとよく相談をいたしまして、納得ずくでこれを持っていただくということにいたしたい考えであります。
  372. 堀昌雄

    ○堀委員 自治大臣にお伺いをいたします。来年度の地方財政の赤字というのは大体どのぐらいになって、その赤字を埋めるための起債ですね。起債の中には地方自治体縁故債と公募債がありますからあれですけれども、一応全体としての縁故債と公募債をおっしゃっていただいて、その上で公募債は一体幾らになるのか。それから大蔵大臣、来年度の政府保証債は、いまの資金運用部の財投計画との関係もありましょうから、全部は固まっていないとしても、大体発行ベースでどのくらいになるのか、要するにその二つ自治大臣及び大蔵大臣からちょっとお伺いいたします。
  373. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 来年度の政府保証債は、まだ最後まできめておりませんけれども、見当とすると大体四千億ぐらいになりそうであります。それから地方は一体どうなるか、こういうことにつきましては、実はこれはまだ政府部内の段階でありまして、政府対国会まで持ち上がらないのです。政府部内の段階とすると、赤字が幾らあるかということにつきまして、自治省と大蔵省で見解が違うのです。つまりその赤字が幾らになりますかによって一般会計でどういうふうな措置をするかという問題につながってくる、まだ非常にそういう流動的な状態でありますので、お答えすることを差し控えたいと思います。
  374. 堀昌雄

    ○堀委員 自治大臣、いまのは自治省と大蔵省の違いがあるのはわかりましたが、自治省側の言い分をちょっとここではっきり言ってください。地方財政は幾ら赤字で、一体幾ら起債しなければならぬのか、自治相、あなた大いに声を大にして言ってください。
  375. 永山忠則

    ○永山国務大臣 実際問題としては、まだここで申し上げるところになっておらぬのでございます。(発言する者あり)非常にその気持ちはわかるのでございますが、大体減税を、どういうように住民税を持っていくかという関係ですね。また政府の減税がどうなるかで、それがために地方財政にどれだけ響いてくるかというような関係が、まで税制調査会を経ませんと固まらないのでございます。したがいまして、実際数字は、鋭意大蔵省と数字の問題を折衝中にこの国会が始まったものですから、中止いたしておりますので、その間の数字が、ここで申し上げるということに至っておりません。
  376. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がたちますから……。私、これは新聞で見たのですけれども自治省は大体三千三百億ですか、ぐらいな赤字になるのだ、こういうことで、これに伴うところは大蔵省と折衝中らしいですがね。しかし、私ここでちょっと自治大臣、いまあなたことばを濁されましたけれども、いまから議論すると、——非常に重要なんです。よろしゅうございますか。政府は、ともかく来年度は政府支出をもって景気のてこにするわけですから、要するに、実は公共投資というものはできるだけふやしたいということだろうと思うのです。これもまた、公共投資の中身の問題はあとからやりますが、そのあと約半分近くは地方自治体が持たなければいけないのですよ。半分以上になるでしょうが、大体半分でいいですよ。半分それを持って、そうして所得税その他の減税があって、そのはね返りはいく。全体としての景気は低調だから、法人割その他は入らない。ともかく来年度は、地方自治体は、いまでも赤字できておるところへ、もっともっとしわが寄るのですよ。よろしいですか。こういう財政主導型の処置をしながらなおかつしわが寄る。これは、あなたがいま協議中のやつだから言えぬなんと言ってたいへん永山さんも自治大臣として成長されたというような感じがするのだけれども、しかしこれは、反面私必ずしも成長ではないような気がする。だから、これはどうでしょう、自治大臣、いいじゃないですか、みな内輪のことだから。あなたひとつ、あなたの信ずるところを少しおっしゃってくださいよ。
  377. 永山忠則

    ○永山国務大臣 大体腰だめでいろいろ折衝をいたしておりますが、理論的にはお説のように、税収は減るし、支出は増大する。今日でも非常な窮状にあるのでございますから、たいへんな困難な財政状態になるのでございます。したがいまして、いま鋭意大蔵省を中心にその財源措置について折衝を続けておるところでございます。
  378. 堀昌雄

    ○堀委員 ここでおっしゃらなくとも、永山さん、あなたはほんとうに全国自治体の輿望をになっておるわけですから、ここであなたがやることをやっておかないと、地方自治体というのは国の内側ではないのだなんと思ったら大間違いですからね。総理、よろしゅうございますか。地方自治体は身内ですからね。国がよかったら地方自治体はどうでもいいということならいいですけれども、そうじゃないのです。地方自治体があって国があるのですから。その点については、総理も大蔵のほうの肩ばかり持たないで、地方自治のほうの永山さんの肩を持って、やはり出すものは大蔵省に出させなければ、これは地方の住民にまた転嫁をしてくることになるわけですから、その点は、ひとつ総理、ちょっと約束してください。
  379. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、あるいは御期待に沿わないかわかりませんが、国民あるいは地方住民、これは同一の人であります。これらの方の生活を守る、またそれを向上さすのが私の仕事であります。したがいまして、いわゆる国税は減になったが、地方税が多くなったというようなことでは、これは同一人が納めるのであります。それらの国民本位の政治をするというのが私の主張でもあります。そういう意味で国と地方を区別するはずはございません。どうか御安心なすって十分成果をごらん願いたいと思います。
  380. 堀昌雄

    ○堀委員 今年度でも、実は四十年度の政保、地方債の引き受け状況は、政府保証債二千九百七十億円、公募麺方債が六百五十八億円、合わせて三千六百二十八億円というのが四十年度の状態のようであります。来年度や捻り地方債一千億以上公募しなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、そういたしますと、全体の規模としては、これは来年の七千億と言われる公債を含めますと四千億と七千億で一兆一千億、さらに公募一千億ないし一千五百億とすれば一兆二千億から一兆三千億の公募をしなければならぬわけです。公募じゃなくて消化かもしれませんけれども。その上に今度は事業債が出る。通産大臣にお伺いをいたします。来年度日本の企業というのは、事業債にどのくらいたよるというお考えでございましょうか。
  381. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まだこの事業債の規模というものが正確には出ていないが、財政投融資二兆円程度のものは出るものと思っております。
  382. 堀昌雄

    ○堀委員 財政投融資は二兆円ですけれども、そうじゃないのです。社債です。いま私が申しておりますのは社債です。
  383. 三木武夫

    ○三木国務大臣 まだ、社債についてわれわれのところでどの程度という試算はいたしておりません。
  384. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこれは総理を含めて大蔵大臣にも、企画庁長官にも、通産大臣にもお聞きを願いたいのですけれども日本の民間設備投資の問題については、これの金繰りをやりますところは、通産省に産業構造審議会の資金部会というものがございます。これが集計をいたしますのは実は来年の二月になるのです。いろいろ御検討をなすって、三月の終わりころですかくらいに、産構審の資金部会の資金計画が大体できて、来年度の民間設備投資計画というのが出てくると、こうなるわけですけれども、やはり資金の問題というのは、これはいまのような段階になってまいりますと金融の問題、起債の問題、証券の増資の問題等、これは一つの総括的な金融の問題なんです。それが各個ばらばらに、時間的にもこうなって出てくるようなことでは私はまずいのではないかと思うのです。今後の、こういう財政主導型の時期には特にまずいのではないか。そこで私、この前も実は産構審の資金部会の会長である堀越さんに大蔵委員会に来ていただきまして、そのとき永野重雄さんと木津田さんに来ていただいて、昭和四十年度における産構審の資金部会の中身の点検をやったわけです。これは、御承知のように銀行の融資ルールの問題をやっております中でやったのでありますけれども、そういたして、調べてみると、非常にこの資金部会の作業はラフな感じがいたしました。とてもそれだけ見られない内部留保を非常に割り高に見てある。あるいは金融側としてはとても出せないと言われるような金の問題も出されておる。あるいは増資については、増資をストップしておる状態であるにもかかわらず、増資はこれだけだということで、それで実は四十年度の民間設備投資計画が出されておるという実情がわかりました。私はその一つ一つについて、堀越さんにこれ実現できますか、あなたは産構審の資金部会の部会長だけれども、できますかと言ったら、堀越さんは、部会長として、できませんと言った。大蔵委員会会議録をごらんになればわかりますけれども。これは下から全部積み上がってきておるので、出てきた最終的なところでは動ごかせないのだ。じゃ、できないことがわかっているものを、資金部会の資金計画をつくってみても意味がないと私は思うのです。だからここのところは、民間設備投資の問題は、ひとつ産構審の資金部会が、おれのところの仕事だなんていうけちなことを言わないで、今後はひとつ経済企画庁、大蔵省とも連合で、——大体予算をここらくらいでやるわけですから、来年度の民間設備投資についてはひとつ協力をしていただいて、産構審の資金部会は予算の作業と同じころに大体のめどをつけて、来年度の金融情勢、いろいろなものを勘案しながら、そこで計画を立てていただかなければ、民間設備投資といえども、あの産構審の資金部会の資料というものは絵にかいたもちにすぎなくなるのではないか、こういう感じがいたしますが、通産大臣、この点についていかがでございましょうか。
  385. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま資金に対しては、やはり統制のようなことはないのですから、資金部会などでできる限り実際に適したような計画は必要だと思います。いままでも多少御指摘のような面もなきにしもあらずですが、できるだけ実際に即したような計画が立てられるようなくふうを加えたいと思います。
  386. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまさっきも申し上げたように、四十一年度に一兆二千億に近いものが政府関係から出ていくとなると、金融がゆるんでいるからと、こういうお話もあります。あるいは大蔵省証券を先発をして、資金散布をしておいてからやるからいけるのだ、こういうお話もあるかもしれませんが、一体それでは、現状金融はそれだけゆるんでおるのかどうか。これはひとつ点検をしておかなければならない問題だと思います。  御承知のように、コールは昨年三銭六厘しておりましたのが、現在は無条件一銭六厘のところまで下がってまいりました。だから、そのコールの面だけから見れば確かに少しゆるんでおるように思いますけれども、都市銀行の外部負債を点検をしてみますと、外部負債はちっとも減ってないのです。預金量がふえておりますから、手元流動性は昨年に比べればもちろん上がってはおりますけれども、いまの金融緩慢というのは、これは昭和三十年でございますか、あの当時のように自然に出てきた金融緩慢ではなくて、多分に日銀の操作によって生じておる金融緩慢のきらいもある。もちろん資金需要が低調だということもありますよ。ありますけれども、ほんとうはこれだけの——四兆円外部負債をまだ都市銀行が持っております。こういうことは、そんなに思っておられるほど金融はゆるんでないのではないか。そこへ一兆二千億ものものを金融機関に持たせるとなれば、これは非常に問題が出てきて、金融はかなりタイトにならざるを得ないのではないか、こういうふうな感じがいたしますけれども、大蔵大臣、これらに対する見通しはいかがでありますか。
  387. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 現在の時点で見ますと、金融は非常に緩慢で、それが端的にコールに出てきておるわけなんで、お話のとおりでございますが、その根本原因は、やはり貯蓄性向というものが非常に高いです。銀行貯金について見ますと、本年度に入りまして、ことしの六月は前年に比べまして六割くらいふえております。ところが貸し出しのほうは設備投資の低調、これを受けまして、むしろ引っ込むというような状態でございます。これがいまの緩慢状態をかもし出しておる根源じゃないかと思うのですが、この状態が四十一年度どう変わってくるかというと、私は基調は変わらないと思う。依然として貯蓄性向というものは高い。また同時に金融需要は低い、こういうふうに見ておるわけであります。もちろん今度は財政によって、政府による資金散布があるわけであります。それが貯蓄となってまた還元をされてくる、政府保証債だとか、あるいは事業債、地方債、こういうものを入れるとたいへんだから、これはなかなか消化し切れないのではないかというのでございますが、これら全部をひっくるめて消化し得る限度を測定し、しかもその実行においては、四半期に着実にこれを点検してまいりまして、遺憾なきを期してまいりたい、こういうふうに考えております。
  388. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣としてはいまのようにおっしゃる以外にあれはないと思うのですが、このことは実はなかなかむずかしい問題だと私は思います。これまで例のないことでございますし、非常にむずかしいことだと思いますから、私はその点であくまでも市中消化ですか、公募でなくて消化でけっこうですけれども、いまの千何百億のシンジケートの配分はまだ私はたいしたことはないと思いますけれども、七千億ものものをシンジケートに持たすという問題は、これは非常に重要な問題になってくると思うのです。だから、その点さっきおっしゃったように、政府の力によって無理に持たせるというようなことのないようにしていただきませんと、特に逆ざやのものは、残念ながら日本の金融機関が、メンツを重んじて、企業のそういう採算をはずしてシンジケートに入っておる点は、私は率直に言いまして非常に遺憾だと思うのです。シンジケートに入ることが何か非常に名誉であるということが信用金庫や相互銀行にあるとするならば、やはりそういう前近代的な経営感覚は私は問題はあろうかと思うのでありますけれども、しかしそれはそれとして、そういうコストの高いものは、それは合理化をして減るのはいいのですが、現状では明らかに逆ざやでありますから、そういうものについては無理のないような措置を十分とっていただきたい。そこで起こってまいりますのは、無理になってくると都市銀行に抱かせることになるのでありましょう。都市銀行は、そうは言っても余資がそんなにあるわけではありませんから、そこで国債なり政府保証債を日銀担保に入れて金を借りる。貸し出しが起きて、ここに日銀の信用膨張が形をかえた日銀引き受けという形で出てくる可能性が出てくるわけであります。  そこで、私は大臣にも総理にも確認をしていただきたいことが一つありますのは、私どもがインフレになるインフレになるという議論をしておりますのは、少なくとも成長通貨の範囲を越えて公債を発行することによって日銀信用が膨張しないと、ここがきちっとしておるならば、このインフレの問題というのは、これもやや不安が減るわけであります。大体現在の成長通貨というのは三千億内外というのが、私は現状の成長通貨ではないかと思うのですが、その三千億以上にわたる信用膨張は公債を発行してもとらないのだということを、ひとつここで約束をしてもらいたいと思うのです。
  389. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 もちろんそういう考え方です。つまり市中消化というゆえんは、これは形の上だけで市中消化だと、こういうことではないのです。あとで日銀にどんどん持ち込んで、そして日銀の信用膨張になるということを防ぐために市中消化と、こういうことを申し上げておるわけでございまして、日銀の信用増加が適正な成長、必要量を越えるということはできる限りこれを押えていく、こういうことを旨としてやっておる、こういうふうに御了承願います。
  390. 堀昌雄

    ○堀委員 いまできるだけ押えるとおっしゃるのですが、信用のほうは出ていくわけですね。押えるといっても出るわけですから、それをそこまできたら、たとえ七千億と予定をしておられても——よろしゅうございますか、公債発行七千億と予定をされておっても、結果として日銀信用が、それは三千億と見るか三千二百億と見るか、これは議論があるでしょうが、そこらはラウンドナンバーはけっこうですが、適正な成長に見合う通貨の増発量を三千億とかりに仮定をしたら、三千億まで膨張してきたら、ここでともかく予定は七千億としておったけれども、六千五百億でこれはとめる、こういうことになって、初めて私はいま大蔵大臣の言われた市中消化ということが名実ともに実行されると思うのです。その点がなければ、日銀の信用膨張は押えるんだといったって、ともかくもうそれ以上になれば、都市銀行だってないものは金は出せないのですから。しかし、シンジケートで上からぼうんと割り当てられてくれば買わざるを得ないのですから、そのしりは必ず日銀にいくわけです。だから私は、その公債がインフレに連ならない発行の限度は、そういうひとつ日銀信用の膨張を見ながらそこでやめるということ以外にはないと思うのです。総理大臣、どうでしょうか。
  391. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 大体さような考えでございます。しかし、ある時点でその適正額をちょっと出た、そんなようなことをあなたも言われているんじゃないかとは思いまするが、目標はそこに置いて、通貨の健全性はどこまでも守り抜く、こういう決意でございます。
  392. 堀昌雄

    ○堀委員 ひとつ総理もいまのことを確認していただきたいのです。フラクチュエーションがあることを私は言っているのじゃないのです。これはトレンドとして、もうそういうふうにどんどんなっていくときにはわかるわけですから、そのときには早目にこっち側で処置をするということは、これは非常に重要な問題なんですからね。ひとつ総理からも御答弁をいただきたいと思います。
  393. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいままでもしばしば年度途中におきまして私ども予算の増減、予算そのものではございませんが、財投の増減等をはかって対処しております。これらのことは今後一そうこれは大事になると思いますので、時期を失せず十分そのときの実情に応じた処置をとっていくということにいたしたいと思います。
  394. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで次に、今度は七千億というものの中身のことを少しお伺いをしたいのですが、財政法四条は公共事業と、こう書いておるわけでして、中のこまかいことは国会でひとつきめなさい、政府が出してきめなさい、こうなっておるわけであります。現在公共事業として、公債発行に見合うものは大体どの程度にお考えになっておりますか、大蔵大臣。
  395. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国民の財産としてあとに残るもの、つまり資本的支出ですね、これを公債の対象として考えております。
  396. 堀昌雄

    ○堀委員 現在公共事業の中に、御承知のようにガソリン税見合いの道路事業がございますね、道路事業、ガソリン税見合いの。昭和四十年度では二千幾らになりますか、二千六百五十億円でございますね。これはガソリン税が目的税でございますから、当然これは除外をされると、こう理解をしておりますが、これでよろしゅうございますね。
  397. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 そういう資本的支出の中で特定財源を持っているものは、当然これは公債対象から除外されるわけであります。
  398. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、昭和四十年度予算で大体いろんな住宅対策、環境衛生対策、文教施設、それから失業対策事業費等も含めて、大体考えられるものの上限というのはどのぐらいになりますでしょうか。
  399. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十年度は、公共投資等の資本的支出ですね、それと出資、貸し付け金、これが財政法第四条によって公債を出し得るものでありまするが、そういうものをひっくるめまして六千四、五百億です。
  400. 堀昌雄

    ○堀委員 昭和四十年度が六千四、五百億ということになりますと、さっきおっしゃった七千億というのは、大体一五%くらいの伸びが一般に考えられることでありましょうから、これは予算規模もそんなことになるのじゃないかと思いますから、いまの問題は約千億くらいふえて七千億くらいに、おっしゃるようになると思います。  そこで実は問題になりますのは、もう一ぺんこれはひっくり返ってきて四十二年度予算のことになるのでございますが、私はさっきぐっと上がるのだろうと言ったら、まあだらだらいくのだ、こういうお話になったわけですね。これはいいのですけれども、そうなったときに、この四十一年度と四十二年度の間でやはり財政は一五%ぐらいはふやさないと、さっきの大蔵大臣のお考えでは、やはり依然として政府支出のささえのほうに力があって、民間設備投資はまだなかなかいかないのだ、こういう話ですから、そうすると、財政規模が四十二年度は四十一年対比で一五%ぐらい伸びる。今度が四兆三千億とかりにいたしましようか、わかりませんが、新聞ではそこらの四兆二千八百億ですか、まあまあそこらなんでしょう。簡単に四兆三千億として一五%の伸びということになりますと、幾らですか、四兆で六千億ですから、七千億近いものが財政規模が広がりますね。ところが、公債のほうは、もういまのようなことですから、これは一五%くらい、もうちょっとそれは事業を伸ばせば別ですが、そんなに三〇%も四〇%も伸ばせませんから、かりに二〇%伸ばしてみても千四百億くらいしか公債の増発によって入ってくるものはない。減税は、さっきのお話でやはり四十二年度も額はわからないけれどもおやりになるということになると、四十二年度は、公債のほうはまあ七千億が八千五百億くらいにはなるかもしれません。八千五百億になると千五百億、で減税をやる、しかしこれは、公債の中では減税はあまり有効にきかない。それもあげて自然増収、税収の伸びがなければ四十二年度は政府支出で景気をささえるようなことにはなりにくい状態がくるのではないのか、こういうふうに思いますが、大蔵大臣、その点はいかがでしょうか。
  401. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気のささえとなる財政、これは一般会計だけじゃないのです。財政投融資が非常に大きな作用をなすわけであります。またさらに先ほど御指摘の地方財政の問題もあります。そういうものを全部ひっくるめて考えておりますが、一般会計のほうといたしますと、そういう経済情勢でありますれば、相当自然増収も見込めると思うのです。これはまあ何とかそういう方面でまかなってまいりますが、あとは民間の経済情勢が一体どういうふうなかっこうになるか、それに対応いたしまして一般会計と特例会計または政府機関、そういうもの全体としてそういう情勢に対処していく、こういう考えであります。
  402. 堀昌雄

    ○堀委員 また私、大蔵委員会であとのこまかい問題ば少し議論をいたすとしますが、きのう小松さんとの質疑応答の中で、公共事業費の中の防衛庁関係だけはこの中には入れないというお話がありましたね。これは総理大臣も確認をしてよろしいですか。ちょっと総理から一ぺんお答えいただきたいのです。
  403. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 信頼している大蔵大臣の言のとおりであります。
  404. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、今度の公債の利回りが六分五厘ということで、発行価格によって応募者利回りは変わりますけれども、利子は六分五厘ときまりましたようですね。このことは、やはり私は日本の今後の金利政策を含めての問題に、公債の表面金利の問題はかかわりがあると思っておるのです。ここで、公債問題について私どもが非常に考えておかなければならぬのは、公社債市場がない形であれば強制割り当て方式のようなものはどうしても続くのではないか、どうしてもこれは公社債市場を——私は大蔵委員会、予算委員会、いろいろなところを通じて過去四年にわたってこの問題を論じてきたけれども、いつまでたってもできないのですよ。なぜできないのか、金利が自由化してないからできないのですよ。現在は何だかんだといいながら、金利が固定化しているために、固定化している限りでは私は公社債市場というのはできないと思うのです。資本主義というのはどこにメリットがあるかといえば、需要供給によって価格がきまるというところに、メリットがあって、需要供給で価格がきまるところから、全体が自律的に働かない限り、金利が固定しておる限り、いまの日本の金融の不正常は直らないと思うのです。何か国債を発行したら金融が正常化するようなことの手始めだなんという経済評論の人もありますが、私はそれは逆ではないかと思う。もうちょっとすみやかに公社債市場ができておるならば、国債発行というものは非常にスムーズにいくけれども、公社債市場のないところで年間七千億くらいの公債を発行する、あるいは一兆二千億から三千億の政保債、地方債を含めて発行するなんということは、ほんとうは常識では考えられないことなんですね。総理、これは大蔵大臣からもお聞きいただいて、総理からも伺いますが、あなたも資本主義の政府を代表しておるならば、資本主義は資本主義らしくやるということに踏み切ったらどうですか、その点は。資本主義の一番肝心な金利が、ともかく統制的に戦後のまま置かれて、自由化してないようなそんなところがいま世界の資本主義国のどこにありますか。日本だけじゃないですか。要するに、金利が自由化をしたときに、私はプライスメカニズムが働いて、これこそほんとうの歯どめになるのではないか、こう思っておるのです。それでなければ、これはほんとうの歯どめにならないのです。私は、きょうはこの時間を通じて歯どめについての言質を総理からだいぶいただきました。しかし、ほんとうの歯どめは、金利が自由化をして、プライスメカニズムが働いて、公社債市場ができたときに、金利の情勢に応じて発行できる限度がおのずからきまるということになる。これがほんとうのオーソドックスな歯どめですよ。この点について、ひとつ大蔵大臣、総理大臣から明確なお答えをいただきたいと思います。
  405. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お考えは全く同感です。しかしその手順は、そう簡単にはなかなか取り運ばない。そこで私は、まず公社債市場というものをつくるほうから手がけてみたい、こういうふうに考えています。ぽつぽつ政保債の値つけ市場というものをつくる、これが完熟した時期にこれを市場に上場する、そうすると、大体国債への地ならしができるわけでありまして、その時期を見まして、国債の値つけ市場、次いでこれを上場する、こういうような手順を踏みながら、お話のような国債消化の正道をつくっていきたい、かように考えるわけです。
  406. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの大蔵大臣のお答えでおわかりだと思いますが、私は大蔵大臣時分から公社債市場の育成強化というようなこともいろいろ論議してまいりましたが、なかなかできない。このもとが、ただいま御指摘になりました金利が自由化されない、そういうところにあるのだ、かようなことでございます。あらゆる面において統制がはずされてきておるが、金利については依然としてこれが続いておる、こういうことについてどうしてもメスを入れなければならない。そういう時期にくるのだ。しかし、いま大蔵大臣が申しますように、どういう道をとるか、どういう手段をとるかということが一つの問題なんだ、かように申しておりますが、これで私どももまず公債を発行する、また、今日の状態のもとにおいては、金利の自由化は完全ではございませんが、そういう方向に向かうものだ、かように私どもは思っております。
  407. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、この金利の問題というのは、事務当局の皆さんは非常に慎重だと思うのです。しかし、これは実はきわめて政治的な問題なんですね。勇気を持ってどこかで環を切らない限りは、この環は続いているわけです。どうしても切れないのです。私はもうほんとうに、大蔵委員会会議録をごらんいただけば、この問題について大半を費やすくらいやってきて、なおかつ今日だめだというのはふしぎでならないのです。はたして日本は資本主義の国家なのかどうか、われわれは制度としては資本主義がいいとは思っているわけではありませんけれども、資本主義である限りは、資本主義がうまくメカニズムが相互に働いて、自律的にいってもらわなければ国民は迷惑するんですよ。私はさっきこうこうこうなったと経済成長のクオーター別の伸び率を申し上げたのは、金利が固定化しているからああいうことが起きるのです。諸外国でなぜ起きないのか。金利が自由化されているから、当然そこで歯どめがかかって、そうならない仕組みがある。日本はそうなっていない。私は佐藤さんが安定成長をおっしゃるなら、安定成長のきめ手は金利の自由化以外にないですよ。私はあなたが少なくとも在職中に金利の自由化をなされなければ、あなたのおっしゃった安定成長というのは、あれはにせものだ、こういうふうに理解せざるを得ないと思います。ひとつあなた、在職中やるということを御確認願って、私は質問を終わります。
  408. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、社会党の堀議員からこの話を伺うことを非常に愉快に思っております。私もそういう状態をぜひともつくりたい、かように考えておりますので、御協力を願いたいと思います。ありがとうございました。
  409. 青木正

    青木委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。  次に、石田宥全君
  410. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 きのうの本委員会においての山花委員質問に対してお答えになりましたが、年を追うごとに、回を重ねるごとに、選挙は腐敗をし、だんだん堕落をしてまいっております。このことについて、総理大臣は、各党とも大いに自粛をしなければならないとおっしゃったのでありますが、しかし、今日までの選挙違反の状況というものは、申し上げるまでもなく自由民主党が最もはなはだしいのでありまして、これは国民も周知の事実であります。新潟県の十一月十四日に行なわれました県知事選挙の問題に関連いたしまして、二十万円事件というものがあるわけであります。この二十万円事件というもので、今日では県議会が麻痺状態におちいっておるわけでありますが、先般、自民党の県支部では、この問題はどうも買収容疑の疑いがあるということで、当初九名の県会議員がこれを返されたのです。ところが、その金を返したのは、これは党紀に反する、だからこれは不正の疑いがあるからといって、返した県会議員を除名処分にすべしという議論が行なわれておる。自由民主党という党は、総理大臣は総裁でおられるわけですが、一体、正しからざる者が正しい者を除名処分にするというようなことがまかり通るところの政党であるのかどうか。私は、これは全県民が非常な疑いの日をもって見ておるところでありますので、これはひとつ総裁として、自民党の姿勢がこれでよろしいのかどうか、これをひとつまずお伺いをしたいと思います。
  411. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお話しになりましたように、最近選挙がだんだん腐敗する。これは全体の傾向として必ずしも断定はできません。ことにこれは自民党が悪いのだ、かように断定されるようでありますが、このことは、私はわれわれ自民党、これは悪いのもあるだろうが、同時にその点は社会党にも言えることじゃないか、とにかく選挙はりっぱにしようということで、いいが上にもよくするというのがお互いの努力の目標ではないか、かように思っておるのでありまして、私は社会党の諸君にもそういう意味で御協力を願っておる。ただいままでのところはいいからもうそれで終わりだ、こういうのではなくて、いいところは一そうお進めになりまして、そうして範を示していただくということで、選挙はぜひともりっぱな公正な国民の信頼するものにしたいと思います。  さて新潟の知事選挙についてのお話でありますが、この事件はただいま検察庁において捜査中のものでございます。これは昨日お答えしたとおりであります。したがいまして、その選挙のいわゆる二十万円事件なるものがどういう刑事的な責任を持つか、これはただいま捜査中でございますから、私はこれについてとやかくは申しません。ただ、言われるごとく、党紀違反というものが、この事件に関係があったから党紀違反として自民党がこれを取り上げている、こういうものではないのでありまして、私どもは、御承知のように、ちゃんと党の公認候補というものを押し立てて、そうして一致協力してこれが当選を期そうという態度で進んでおります。ところが、不幸にいたしまして、これが党紀を乱って、こういう意味の協力的な選挙を進めることができなかった。かような意味から、党紀違反があるのではないかというので、一部でただいま党紀委員会にかけておる、こういう事実はございます。しかし、このこと自身は、ただいまの二十万円事件に関係があり、これを断わったとかなんとか、そんなことで党紀にかけておるわけじゃない。これは、どこまでも党紀に違反しているかどうかという意味で党紀委員会にかかっているということでございますから、石田さんのただいまお話はたいへんな誤解だ、かように御理解をいただきたいのでありまして、私どもは、別にこの党紀委員会選挙違反、あるいはただいま検察当局が捜査するようなその事件にかかわり合っておるわけではございません。はっきり申し上げておきます。
  412. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 総理のほうが誤解をされておるので、私は、自民党の国会議員の党紀違反の問題を言っておるのではないのです。新潟県支部で、その二十万円を返した者を党紀違反に問うべきであるという論議が進められておるが、これはおかしいではないか、こういう質問なので、国会議員の党紀違反の論議ではないですよ。その点はひとつお含みの上でお答えを願いたいのです。
  413. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま重ねて石田君から、自分の質問はこうだというお話でございますが、さような点は総裁である私の耳に入っておりません。これははっきり申し上げておきます。
  414. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に、法務省の刑事局長見えておりますか。
  415. 青木正

    青木委員長 いますぐ着くそうです。——刑事局長、見えました。
  416. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 法務省の刑事局長にお伺いしますが、十一月十四日に行なわれました新潟県知事選挙に対する今日までの捜査の状況を御報告を願いたいと思います。
  417. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの件でございますが、この事件は昭和四十年十月二十一日及び二十五日の二回にわたりまして、日本社会党新潟県本部執行委員長杉山氏から新潟地検に対しましてなされました公職選挙法違反、内容は買収、文書違反及び事前運動でありますが、その告発事件にかかるものをさすものというふうに考えるわけであります。同事件につきましては、目下同地方検察庁において鋭意捜査中であります。現在に至りますまで被告発人であります塚田氏をはじめといたしまして、多数の関係人を取り調べておりまして、十一月十五日には県庁の一部を捜索、差し押えを実施いたしております。さらに昨二十二日、選挙運動の報酬として金員の供与を受けた疑いのあるとされている同県会副議長旗野、議員相場、同鈴木、吉川の四名を逮捕いたしております。  以上であります。
  418. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこでお伺いをいたしますが、検察庁並びに法務省の方針としては、選挙中といえども、事態が明瞭なものについては強制捜査をなすべきであるという検事総長の訓示が行なわれたということが新聞紙上で伝えられておるのでありますが、本件に関しては、選挙中にすでに二十万円事件といわれておりますけれども、これはあとでおわかりならばお尋ねをしたいと思いまするけれども、金額の多いものは七十万円、少ないものは五十万円、三十万円、いろいろなランクがあって、最初、九名がどうもこの金は選挙違反の疑いがあるということでこれを返しておる。返しておるのでありまするから、そのときすでに事態は明瞭であったにもかかわらず、選挙が終わるまでこれをそのままに放置をしておったのではないか。なぜもっと早くこの強制捜査をやらなかったのか。きのう山花委員総理並びに法務大臣に、指揮権発動のようなことをやったのではないかという質問をされたのでありますが、総理も、法務大臣も、そのような事実はないと答弁になっておられる。検察庁は独自の見地に立ってもっと早く強制捜査をなすべきであったと考えるのでありますが、なぜ今日まで強制捜査に踏み切らなかったのであるか、この点に関する事情を御説明願いたい。
  419. 津田實

    ○津田政府委員 本件につきましては、先ほど申し上げましたように、告発によりまして捜査を開始した事件であります。およそ刑事事件におきましては、いろいろ捜査の端緒がございますが、その捜査の端緒によって、少なくとも強制捜査をなし得る程度の資料を得なければとうてい強制捜査に踏み切ることはできないわけであります。本件におきましては、告発によりまして捜査を開始いたしましたが、御承知のとおり、強制捜査をいたしますにつきましてはいろいろ条件がございます。その条件がなければ裁判官の令状を得ることができませんので、その裁判官の令状を得るためにいろいろ端緒を得るにつとめるわけでございます。  そこで、本件におきましては、強制捜査といたしましては、先ほど申し上げましたように、知事室その他の押収、捜索を実行いたしております。この身柄の逮捕という問題でございますが、もちろん身柄の逮捕につきましては、やはり刑事訴訟法上の制約がございますし、本件につきましては、塚田氏は病気静養中であるということでございますが、取り調べのためには必ず出頭をいたしておりまして、取り調べを避けるというようなことは全然ありませんために、目下身柄を拘束というようなことには立ち至っていないというふうに判断されるのであります。御承知のとおり、被疑者の身柄を拘束するかどうかは、全くそのときの事情によるわけでありまして、身柄を拘束するやむを得ない必要のある場合に限って行なうべきものであることは、被疑者の人権を保つ上においても当然のことと存ずるわけでありますので、検察当局はその間の事情を十分判断いたしまして、現在任意捜査を行なっておる、こういうことになるわけでございます。
  420. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 いまの局長の御答弁でありますと、証拠が固まらないとなかなか強制捜査はできないのだ、こういうお話でありますが、九名の諸君がこれを返す際にすでに明らかになりましたように、ウイスキーのびんに二十万円を巻いて贈った。それで、それをもらった人が、ウイスキーを飲まないのでこれを親戚にやった。ところが、もらった親戚の人がこれを解いてみたら二十万円巻いてある。そこで、一体あなたはこれを全部くれるのですかどうですかと電話をした。ところが、どうもおかしいじゃないかということでいろいろ話をしたら、実はウイスキーのびんに二十万円巻いてあった。こういうようなことまですでにその段階で明らかなんです。同時に、つけものの底に二十万円を入れて贈った。これも九名の人が返すときには明らかにしておるのです。これくらい明瞭な事実はありませんよ。  そこで、検事総長に伺いたいのでありますが、なぜ一体、塚田知事を逮捕しないのか。いまの局長のお話でありますと、任意に取り調べに応じておるからしない、こう言われるけれども、県議会で問題になっておるところによりますと、これは病気静養と称しておるが、しばしば居どころを変えておる。前には一週間ほど転々と居どころを変えて副知事すら電話の連絡すらできないという状態だ。最近、つい一昨日も県会議員が電話をしたら、もうそこにはいないということであった。だんだん調べてみたら、そこにおるのだけれども居留守を使った、こういうことである。ところが、知事がはたして一体病気なのかどうか、これははなはだ疑わしい。なぜかというと、これも県議会で問題になったことでありまするけれども、塚田知事の診断書を書いたお医者さんがどういう医者であるかというと、産婦人科の医者と耳鼻咽喉科の医者だ。産婦人科の医者と耳鼻咽喉科の医者で、塚田知事の子分のような連中が診断書を書いておる。新潟市にはちゃんと国立の新潟病院があって、ここは精神科というのがありますよ。ノイローゼというならば、なぜ産婦人科の医者の診断書をつけなければならぬのか。こういう精神状態は、逮捕してもっと正確に精神科で診断をさすべきであるということがその理由の第一点。  もう一つは、その二十万円といわれる多額の金を贈った時期の問題であります。当初塚田知事は、実は独走だと考えておった。対立候補は出ないと考えておった。ところが、いままで副知事をやっておった吉浦君が立候補することが明らかになった。その時点で、選挙をよろしく頼みますと言って金を渡したといわれておる。ところが、逮捕をしないであるものだから、お中元と称して八月の中旬、下旬だといわれておるのが、一部にいや、今度は七月のうちに贈ったということがいわれる。知事を逮捕しておかないものだから、金を受け取った議員諸君と打ち合わせをすれば、、八月の下旬を七月の下旬と直すことも自由自在じゃないですか。非常に肝心な点が、公職選挙法違反であるかどうかというもうすれすれのところをこれで逃げられてしまうじゃないか。任意取り調べが可能であるといっても、そういう点にいろいろと県民の疑いというものが深まる一方なんです。だから、きのう四名の県会議員、特に自民党の県の幹事長も逮捕されておる。しかし、この段階でもなお塚田知事を逮捕しないということは、はなはだ疑いを持たざるを得ない。だから、きのうの山花委員のように、指揮権発動的な措置がなされたのではないかという疑いを持たれるのは当然である、こうわれわれは考えるのです。その点についていかなる理由で逮捕しないのか。すみやかに逮捕しなさい。逮捕しないとまだ証拠隠滅のおそれが十分ある、われわれはこう判断をしておる。検事総長は見えておりせんか。
  421. 津田實

    ○津田政府委員 被疑者を逮捕するかどうかという問題につきましては、これは法律上の制約があるわけでございまして、元来捜査は任意捜査をもって原則とすべきものであるわけであります。必要な場合に逮捕その他の強制手続を行なうことは刑事訴訟法の示しておるところであります。  そこで、逮捕いたします場合には、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることを裁判官に納得せしめるだけの資料を必要とするわけであります。そうしなければ逮捕状が出ないわけであります。したがって、その間に、問題のこの件につきまして、そのような十分な相当な理由があるかどうかという問題、あるいは理由があるとしても逮捕する必要性があるかどうかという問題は、現地検察官において十分判断をいたしておるわけでありまして、その判断に従いましてただいまのところは逮捕をいたしておらない、こういうことになるわけであります。したがいまして、今後逮捕するかしないかという問題は別といたしまして、ただいまのところは、そういう事情によっておるものと私ども判断いたしております。
  422. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私はちゃんと理由をあげたじゃないですか。二人の間で、もらった、もらわない、その期日を変えられてもわからないではないですか。わかりますか。それはどうなんです。八月下旬に贈った中元が実は七月下旬だったと言われても、二人の間でしめし合いをつければわからないではないですか。
  423. 津田實

    ○津田政府委員 具体的事実につきましては、先ほど申し上げましたように、ただいま検察官において捜査中でございますので、具体的事実の内容につきましては、こちらで申し上げることを差し控えたいわけでございますが、いずれにいたしましても、事実そのものはこれを把握することについていろいろな資料によらなければなりません。したがいまして、新聞で明らかであるとか、いろいろな世間の人によって明らかであるということによって直ちに検察官が動くものではなくて、検察官としてはみずからの信念に基づいて逮捕すべき事由ありと認めたときに逮捕状を初めて請求するわけでございます。したがいまして、いろいろなことを世の中で言われておりますけれども、そのことによって検察官が直ちに判断を左右するものではございませんわけで、本件につきましては、その点、検察官は十分適正に判断を行なっておるというふうに私は考えております。
  424. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ノイローゼだと言って逃避行をきめ込んでおるのでありますけれども、はたしてノイローゼなのか、あるいは証拠隠滅のために逃げ回っておるのか、それは一体どう判断されておるのです。それは担当検事の判断であって、あなたの権限ではないとおっしゃるかもしれないけれども、これくらい明瞭な事実はないのですよ。そういう関係で県会が今日麻痺状態におちいっておる。六十二名の県議会の中で、自由民主党の県議会議員が四十三名はこれに関係があるのです。大部分が関係がある。東京都議会のような問題ではございませんよ。東京都議会は非常な世論の批判を浴びて解散にまで及んだのでありますが、東京都の場合は知事が直接責任はなかった。その前に選挙違反はあったけれども、今度は直接責任はなかった。新潟県の場合は、県知事が中心になって、六十二名中四十三名はこれに疑問を持たれておる。だから、その事態を明らかにした議員を除名しなければならないなどというところの問題が起こり、そうして除名論を強く主張したところの、いま御報告の相場、鈴木、旗野、吉川などという県議会議員が今度は逮捕されておる。こういう状態の中だから、私は、少なくともその診断書というものをもっと明らかにしなければならないじゃないかということを言っておるのです。検事総長は見えておりませんか。あなたに聞いているのじゃない。あなたに答弁を求めていませんよ。
  425. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねでありますが、検事総長は目下海外出張をいたしております。でありますが、検察に関する事項につきましては、検事総長その他検察庁の職員は政府委員ではございませんので、これは全部刑事局長あるいは法務省において御答弁申し上げることになっておりますので、その点を御了承いただきたい。
  426. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 委員長に申し上げますが、午前中に検事総長の出席を求めておるのです。海外出張なら海外出張だと、なぜちゃんと言っておかないのです。この点は、あるいはまた政府委員でないなら政府委員でないと——委員会で決議をすれば、それは出席を求めることができるのでしょう。それならそのようになぜお取り計らいにならないのですか。
  427. 青木正

    青木委員長 私、先ほど検事総長の出席要求のあったことを聞きまして確かめましたところ、国際会議のために、十二月十一日から十二月二十六日までオーストリア並びにスイスに出張中ということを先ほど聞いたのであります。そこで、先ほど津田刑事局長も申しておるごとく、刑事局長が政府委員として全責任を持って答弁いたしたいとかようなことでありますので、御了承願います。
  428. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 今後ひとつこういうことのないように。  それから次に、自治大臣にお伺いをしたいのでありますが、いま申し上げますように、六十二名中四十三名、あるいは四十五名であるかもしれない、この点は、これこそ捜査中でありますから、私ははっきり明言はいたしませんが、少なくとも四十三名は関係があるということで、新潟県議会は麻痺状態におちいっておる。これに対して自治大臣は、はなはだ遺憾なことであるという談話を先般発表されたようでありまするが、地方自治体がいま重要な段階において、県知事は逃避行をきめ込んでおる。なるほど知事の事務取り扱いの代理はあるけれども、全く仕事が手につかない、こういう状態に置かれておるときに、一体自治省としてはこれに対していかなるお考えをお持ちであるか、大臣の所見を伺いたいと思います。
  429. 永山忠則

    ○永山国務大臣 これはいま捜査中でございますし、県議会のほうは特別委員会を設けて、そして議会も一応臨時議会を済ましたようでございますが、いずれにいたしましても、責任者はえりを正していかねばならぬということを強く指導をいたしておる次第でございます。
  430. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 自治大臣、報告がないのですか。その調査会設置については、意見がまとまらないで調査会の設置はできなかったのですよ。こういういままでの刑事局長の答弁やら、私が述べた内容で大体おわかりだと思うのでありますが、調査会ができるぐらいなら問題はない。調査会の設置ができないのですよ。  さて、この段階でひとつ総理に伺いたいのでありますが、おおよその内容はおわかりになったと思うのですが、これは、やはり国の政治の一部であり、新潟県政全般にかかわる重大な問題である。同時に、自由民主党の公認候補として当選をした塚田十一郎君に対して、総理は辞職を勧告して、すみやかにこの事態を収拾すべきであろうと考えるが、その御意思はございませんか、どうですか。
  431. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その意思はございません。
  432. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 自治大臣はどうですか。こういう状態にしておいたのでは、当分新潟県議会というものは動きがとれない。全く麻痺状態であって、かつての東京都議会どころのものではないのです。県庁の知事室が捜査され、公舎が捜査をされたなどということは、ここ十年間一件もないということを自治省の諸君が言っておる。その上に、知事は逃避行、県議会議員は次々と逮捕をされて、調査会の設置すらもできないという状態のもとにおいて、すみやかにこの事態を収拾するために、知事の塚田十一郎君に対して辞職を勧告してはどうですか。
  433. 永山忠則

    ○永山国務大臣 全体におきまして、指導者がえりを正してやるように強く指導をするという考えでございます。
  434. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そんなことでは収拾できませんよ。そんなことだから地方行政が麻痺状態におちいるのです。そういうことでは、一体いつまでこういう状態が続くかわかりませんね。自治大臣としては、これに対して、ただ責任者はえりを正して云々と言っている、そんな子供だましのようなことでこれは収拾できるものではありませんよ。積極的に——あなたはよく前向きにとおっしゃるのだが、前向きに、どうしたら一体この状態を打開できるとお考えですか。
  435. 永山忠則

    ○永山国務大臣 やはり理事者がえりを正すということに対してよく指導、助言をする以外はないと思うのでございます。
  436. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これは、四名の県議はきのう逮捕されたばかりでありまして、まだ次にどういう手が検察当局によって打たれるかはいまのところ明らかでありませんが、私は、少なくとも総理並びに自治大臣がすみやかにこれを軌道に乗せるように措置をとっていただきたいと思う。そこで、東京都議会の際に特別立法が行なわれましたね。この特別立法は時限立法であるけれども、本年の五月三十一日に制定されたものでありまするから、大部部分が違反容疑者となっておって調査会の設置もできないという状態のもとに混乱を続けるとするならば、やはり県議会の解散ということ以外に収拾の道はないのではないか、こう考えるのでありますが、総理並びに自治大臣の所見をお伺いしたい。
  437. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、ただいま捜査中でございまして、捜査の結論が早く出て終わること、これがまず第一に大事なことだと思います。私が申し上げるまでもなく、ただいまの新しい憲法のもとにおいては、これは判決が下るまではみな白だということになっております。ましてやその捜査の途上におきまして、ただいまのように先ばしった議論をすることは、私は差し控えたいと思います。
  438. 永山忠則

    ○永山国務大臣 総理の言われたとおりでございます。
  439. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 東京都の場合は、新聞がやかましく、世論がやかましかったから——これは、裁判はいまやっているのですよ。判決を見てから解散したのじゃありませんよ。新潟県民の心情というものをあなた方は察してやらなければならない。もはや事態は明瞭なんだから、裁判の結果を待ってなどということならば、これはたいへんなことになる、仕事は何もできませんよ。そういう状態にしておいて裁判の結論を待ってなどと、一体何を言うのです。言うことがあるならひとつ言ってください。
  440. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の答弁を十分聞いていただいて、そうして誤解のないように願いたい。ただいまの速記をあとでお調べ願いたい。私、裁判まで待てと、かようなことは申しておりません。裁判が済むまではすべてが白だというのは、憲法のたてまえじゃありませんか。ただいまのような捜査の途中において、ただいまのような結論を出すわけにいきません。かように申したのであります。私は裁判のあるまで待てというような話はしておりません。速記をよくお調べをいただいて、私が言った真の趣旨を間違いないように願います。
  441. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 同じことじゃないですか。白か黒か、はっきりしてからにしろということなら、じゃ結論を出してということと同じことじゃないですか。もはや県民の前には事態は明らかなんですよ。県民の前には事態は明らかなんだ。選挙中から明らかなんだ。ウィスキーのびんに二十万円を巻いたり、つけものの底へ二十万円を入れたり、県議の人たちは、これは公職選挙法違反の疑いがあるからといって、これを返して、わざわざ新聞記者会見をやって、これを暴露しているじゃないですか。みずから明らかにしているじゃないですか。さらに続いて逮捕されているじゃないですか。県民の前には、これくらい明瞭なものはありませんよ。もう白も黒もありませんよ。白か黒かをつけてからということは、裁判の結果を待ってということと同じことじゃないですか。意味は同じことですよ。私はそういう点で、これは必ずしも裁判の結論を待って処置をするなどという性質のものではなかろうと思うから、やはりしかるべき措置をとらなければならないということを言っておるのです。いかなる措置をお考えになっておりますか。
  442. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 捜査の現段階におきましては、ただいま石田君から郷要望がありましても、私は処置をとらない、そのことを重ねてお答えいたしておきます。
  443. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これは自民党の県知事であり、また事件でいま捜査の線上にあるものが全員自民党の県議会議員であるから、おそらくさようなお答えになったものであろうと思います。私は、自由民主党というものがいかなる政党であるかということを国民の前に明らかにしたものであると考えまして、この程度でこの事件は打ち切りにいたしておきます。  次に、これも選挙違反の問題でございますが、刑事局長、国会の答弁に当たられるのだそうでありますが、本年の六月行なわれましたところの参議院議員選挙にあたりましての違反事件では、小林章の違反事件、もう一つは岡村文四郎派の違反事件、この二つは双壁であるといわれました。しかし、小林章派の事件というものが大きくクローズアップされたために、岡村派の違反というものはあまり問題にならないようなことで、いま過ごされておるようであります。岡村君は一時自民党を離脱したようでありますけれども、人のうわさも七十五日、ちょうどその程度のところで自民党に復帰をいたしました。刑事局長、この岡村文四郎の選挙違反事件の概要をひとつ御説明を承りたい。
  444. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの件でありますが、これは全国共済農業協同組合連合会長岡村文四郎候補のため、同連合会の幹部、役職員等が主体となりまして、全国農業協同組合中央会、全国販売農業協同組合連合会等の関係団体及びこれらの傘下の団体の役職員等が選挙違反を行なったという事件でありまして、この違反事件につきましては、東京、大阪、札幌等におきまして、すでに捜査が行なわれ、現在までには四十八人が公判請求をされ、百二十四人が略式請求になっており、七十九人が不起訴になって、若干の数がまだ捜査中であります。  この事件につきまして、現在同派の出納責任者である細江等が目下所在不明でありますので、逮捕状をもって指名手配中であります。そのほか、去る十一月二十六日、かねて入院中でありました全共連常務理事黒川泰一にかかる買収容疑事件の送致を受けまして、現在捜査中であります。大体の現況はそのとおりでございます。
  445. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農林大臣に伺いますが、ただいま御報告のとおりであります。前回の本委員会においては、まだ捜査の段階であるからということで、農林大臣はこのことにあまり多く触れようとされなかったのでありますが、これについては、なるほど自由民主党の公認候補として出たが、選挙違反のために自民党は離党をした、それで自民党に対しては責任は済んだかもしれないけれども、六百万農民に対してどういう責任をとらせようとするのかということを私は追及したのであります。農林大臣は、やはり捜査中ということで責任をのがれようとしておられたのでありますが、いまお話しになりましたように、全国共済農業協同組合連合会というものがどういう団体であり、どういう組織であるかは、農林大臣よく御承知のはずですね。どういうふうに一体金を集めておるとお考えになりますか。
  446. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 現在まだ調査が完了いたしておりませんので、完了いたしまする段階において行政庁としては判断してまいりたいと思うのでありますが、ただ私としては、仕事がよく弊害がなしにいっておるかという問題については注意もいたし、心配もしておりましたわけでございまするが、前会長は何ら取り調べもまだ受けていないのでありまするけれども、十月の幾日でしたか、会長を辞任されております。そうして、そのあとに副会長がそのあとを継いでおられるのでございまするし、部課長等もみなその席を譲っておるようなわけでございまして、仕事としては、現在のところ支障のないようでございまするので、その点は安心いたしておるわけであります。
  447. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まだ捜査中だとおっしゃるけれども、すでに明瞭じゃないですか。  そこで、もう一つ刑事局長に伺いますが、この選挙違反の事件というものは時効というものが非常に短いのですね。それで、その時効成立までの間、逃げ回ってさえおれば起訴を免れるというケースが非常に多い。そこで、いまもお述べになりましたように、細江というのと能勢という二人の重要な関係者が逃亡をしておる。選挙違反の重要な責任者が逃亡をしておるような場合には、指名手配をやっておると言われるけれども、ほんの形ばかりの指名手配であって、検察当局は本気になってこれを捜査をしておらないのではないか。これはもういままでもたくさん例があるのですが、一体これは、ほかの犯罪者と別な扱いをしておるのか、あるいは他の犯罪人と同じような捜査の体制をとっておるのかわからないですね。これはどうなんです。別に扱っておるのですか。
  448. 日原正雄

    ○日原政府委員 お話の二名につきましては指名手配をいたしておりますが、指名手配そのものとしては一緒でございます。それぞれ指名手配いたします場合には、事件の内容を入れてございますけれども指名手配としては同じ取り扱いをいたしております。
  449. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 形の上では同じ取り扱いだとおっしゃるでしょう。しかし、ほとんど逮捕されたためしがない。現在の外務大臣のあの責任者なんというのはどうなったんですか。そういうことですよ。だから、そういうふうに実際は本気になって捜査をしていない、こうわれわれは考えざるを得ないのです。これは、やはりほかの犯人と同様に、もっと積極的にこれをひとつ追及してもらいたいと思う。  次に、農林大臣はいまいいかげんな答弁をしていらっしゃるが、一体全共連というものの金の吸い上げについては、私は具体的に質問をしなかったから、それにお答えにならなかったかもしれないけれども、末端へ行きますとこういう状況ですよ。全共連というものは末端の単位農協の部落の顔役のような者を動員して、全くその本人の意思に反するような場合も半強制的に加入させて、そうして、なけなしのさいふをはたかせてこれを吸い上げておる。その金がどれぐらい一体中央に吸い上がっておるのか。今度の違反にあたって監督官庁としてこの内容をお調べになったと思うのでありますが、一体選挙違反に使われた金がどういうふうに動いたのか、それをひとつ御答弁を願いたい。
  450. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答えいたします。今度の選挙違反の人は、公金を使ったというのは、調べの結果一つもございません。それから、この共済が共済資金を募集しております。ちょうど保険のようなものでございます。私の見た範囲においては、これらのものについて、そうあなたのおっしゃるような事例を見たことがございません。
  451. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それははなはだ不勉強きわまるもので、よほど無理をしなければこんな金が上がってくるものじゃないのです。それから私がいまお尋ねをしたのは、いま全共連にはどれぐらい金が上がっておって、どういうふうに運営されておるかということを聞いておるのです。
  452. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農政局長に答弁いたさせます。
  453. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 現在農協共済の契約額は約二兆円でございます。これはそれだけ金が集まっておるということではなくて、契約をしておる金額でございます。掛け金が当然それに伴いまして毎年収入になるわけでございますが、それを運用いたします範囲については、非常に安全確実な範囲につきまして基準を定めて運用させまして、必要な範囲を給付金の引き当てをいたしますために積み立てをさせてございます。
  454. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大臣は公金を使った事実はないとおっしゃるのでありますが、一体全共連に対する会計監査はどういう状況で行なわれておるのですか。
  455. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農政局長に答弁させます。
  456. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 全共連に限りませず、各種の農協の全国団体に対しましては、農林省において監査をいたすことは御承知のとおりでございます。  全共連につきましては、本年計画をいたしておったのでございますが、御承知のような事件で現在帳簿等がございませんので、現在監査ができないような事情にございます。
  457. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 帳簿が押収されて監査ができない状態のもとに公金は使われておりませんと言うことは、一体どういうことです。農林大臣。
  458. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほど刑事局長から御答弁がございました起訴者は、公金横領とかいうことで起訴されたのではございませんので、大臣もその趣旨をお答えになったわけでございます。
  459. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これは、全共連のある課長の台所から三十五万円ころげ出たというようなことから、おそらくこれは公金以外のものではないでしょう。一体どこからそんな金が出てきますか。自民党さん、出してくれますか。だれが考えても、全共連の会長の選挙に全共連以外からばく大な金が出るなどとは考えられないのです。帳簿がないのに検査をした。検査ができないのに公金は使っておりませんなどという答弁は、これはいただけませんよ。  そこで、これに関連いたしましてもう一つ伺いたいのでありますが、岡村会長が辞任した。辞任したが、それに対して退職金と功労金で幾ら出しましたか。——大臣、それぐらい覚えていらっしゃいよ。
  460. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 全共連の役職員の退職に際します内規に従いまして、一応全部くるめて二千五百万円程度が支出をされておると承知をしております。
  461. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農林大臣、先ほど私が指摘したように、農民は血の出るような金を吸い上げられておるのです。義理にからまれて入って、そして一年か二年掛けて掛け捨てにしている農民がどれぐらいありますか。そういう零細な金を吸い上げた金で、今度は選挙違反で会長をやめるにあたって二千五百万円をこれに出すなどということは、一体常識的に考えられる問題ではない。農民に知らせたら農民は憤慨しますよ。大臣、よく聞いていらっしゃい。ところが、この二千五百万円は一応きめたけれども、裏金をさらに一千万円ぐらい出すことに下相談ができておるといわれておるのです。そうすると、それが実現すると、時期と金額は役員会に一任するということがいわれている。一体二千五百万円プラス一千万円で三千五万円も選挙違反でやめていく会長に出さなければならないというようなことは、われわれ農民としてはとうてい納得のいく問題ではない。小林章派の違反については、阪田専売公社総裁は、指導監督の責任を負っておやめになりましたが、坂田農林大臣は、監督の立場にある直接の責任者として、一体責任を感じておられるのかどうか、これをひとつ伺っておきましょう。
  462. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これは共済団体の内規でやられることでありまして、農林大臣の認可も許可も要らないのであります。
  463. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私は、二千五百万円か三千万円かわからないけれども、そういうこと自体を言っているのではない。全協連という六百万農家の上に立っておる、農民の利害を代表しなければならないところの共済の全協連の会長が選挙をやって、そうして、さっき刑事局長から御説明のありましたように、十数県にわたって百二十四名もの略式命令を受ける者があり、四十八人も公判に付されておるというような事態に対して、監督の立場にある農林大臣が責任を全然感じないということですか。全然責任を感じませんか。
  464. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 選挙違反のいろいろの問題については、まことに遺憾に存じております。したがいまして、まだ捜査中でありますから、捜査完了の上で判断をしなければならぬということは前に申し上げたとおりであります。現在のいろいろの慰労金とか、そういう問題につきましては、これはこの共済団体の内規の問題でございまして、農林大臣の許可も要らないし、認可も要らないのでありまして、私もそれを後ほど聞き届けておるようなわけでございます。
  465. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 だから私は、その二千五百万円、あるいは三千五百万円になるかもしれない、その金の問題だけを言っているのではないと言うのです。農協法に基づいて運営をされておるこの事件について、農協法に基づく監督責任者としてのあなたの責任を問うているのですよ。全然責任を感じないということですか。もう一ぺん答弁をしてください。
  466. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 御答弁申しておるとおり、私も非常に遺憾に存じております。
  467. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 遺憾に考えておるだけであって、それじゃこのあとをどう一体処理をしようとお考えですか。
  468. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いまの不正等の問題については、この事業の内容について別に不正がなかったわけでありまするし、その後においての事業の進捗状態を見ましても、心配な状態に相なっておりませんわけでございます。ただ選挙違反のありましたことについては、私も非常に遺憾に存じております。
  469. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に、法制局長官、おりませんか。——じゃ、法務大臣にお伺いしますが、公職選挙法の二百二十五条を受けて、二百五十一条で、選挙の自由というのが保障されておりますね。ところが、農業協同組合が職員に業務命令で選挙運動をやらしておる、これは農協法にも違反をすると私は考える。同時に、これは選挙の自由を侵すものではないか。この点、ひとつ法務大臣、御答弁を願います。
  470. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、業務命令というものがはたしてどういうものか、あるいはその内容自体もわかりませんし、依頼した者と依頼された者とどういう関係があるかというような問題があるわけであります。したがいまして、具体的事件に即しませんと、抽象的な議論として判断を申し上げてお答え申し上げることは相当でないというふうに考えます。
  471. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 局長が答弁されるようでありますが、農業協同組合法ではその目的が明らかになっておりますね。これは第一条で明らかになっておる。それから第八条でまた事業の目的も明らかになっておる。そうすると、農協法に基づいてできておる農業協同組合の職員が業務命令で選挙運動を命ぜられるということは、これは農協法に反しておることは明らかだと思うんです。選挙運動のために派遣をされるということは、これは農協法に反することは明らかだと思うんですが、どうですか。
  472. 津田實

    ○津田政府委員 農業協同組合がそれぞれその目的を有することは当然でございまして、農業協同組合の職務として選挙運動をするということは、これはあり得ない。しかし、具体的事件についてどういう選挙運動がどういう委託のもとに行なわれたかということは、これは問題があるわけでありまして、その点、一がいにそれが農業協同組合法違反になるかどうか、むしろ全然さような農業協同組合と関係のないことであれば、それは全く個人関係であるということにならざるを得ないわけでありまして、その点は、具体的事件に即さないと判断できかねる次第でございます。
  473. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 あなた、おわかりなければ読みますよ。農協法では、農業協同組合というものは第一条で、「この法律は、農民の協同組織の発達を促進し、以て農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上を図り、併せて国民経済の発展を期することを目的とする。」として、目的を明らかにしておる。そうして第八条では、「組合は、その行う事業によってその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない。」としてある。この規定に基づいて運営されなければならないのに、選挙運動のために派遣をされるということは、農協法に違反することは明らかじゃないですか。
  474. 津田實

    ○津田政府委員 農業協同組合法に御指摘のような規定の存することは、御指摘のとおりでございます。したがいまして、ある農業協同組合員の行動自体が当該農業組合の行動として行なったかどうかということになるわけであります。で、もちろんその選挙運動というようなものが当該農業撤回組合の活動として行なわれたはずはないわけであります。しかしながら、具体的にかりにそこの職員が何か選挙運動をやったという場合がありとしますれば、全くそれは個人活動ということにならざるを得ないわけでございます。
  475. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 個人が自由に選挙運動をやることは、これは個人の自由でしょう。けれども、部長なり課長なりの命令によって選挙活動を行なわしめられるという場合においては、これは一体、農協法にも違反するが、同時に公職選挙法の二百二十五条の違反になるのではないか、これを聞いておるのです。
  476. 津田實

    ○津田政府委員 農業協同組合の活動といたしまして、あるいは組合員の職務といたしまして選挙運動をするというようなことは、あり得ないことである。つまり法上あり得ないことであることは当然でございます。したがいまして、農業協同組合の職員がある選挙運動を行なった場合に、その行為が当該農業協同組合の行為であるかどうかということになると、これは全く目的外の活動ですから、当該農業協同組合の活動ではございません。したがって、当該個人の活動ということになるわけです。その間に命令とか依頼とかなんとかいうことがあるかどうかという問題は、これは具体的事実に即さなければ、その命令ということに基づいて行なったかどうかはわからないわけであります。したがいまして、その場合に、その命令が違法であったかどうかということは起こるかもしれませんが、それは、当該農業協同組合の活動として許されないことを命じたということにすぎないであろうと思うのであります。もしそういうことがありとすればそういうことになるかもしれませんが、それは全く具体的事実関係によることでございます。
  477. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 具体的な事実があるから指摘をしておるのです。部課長の命令によって選挙活動をやって、そうして違反に問われておる人がおるんです。だから私は言っておるんですよ。  それから公職選挙法の違反の関係はどうですか。これは私は憲法の個人の人権にも関する問題だと思うのでありますが、明らかにこれは業務命令によって選挙運動を行なわしめる、農業協同組合というものは政治団体ではないのですから、これは公職選挙法の二百二十五条の違反に当てはまると私は考えるが、法制局長官はどうお考えになりますか。
  478. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ちょっと席をはずしておりましたために、初めから実は伺いませんで恐縮でございますが、ただいまお尋ねの点につきまして、農業協同組合法の組合活動としてはむろん法律が規定しているところでございまして、それ以外にいま御説明のようなことは、組合の活動としてはむろんないわけでございますので、それを離れた事案として考えなければならぬと思いますが、その場合に、二百二十五条の一号、二号、三号ございます。三号あたりの問題になるかと思いますが、それはその事案に応じて、結局この三号に該当するような行為になるのかならないのか、その行為の事実に即して判断しなければならぬと思います。むろん二百二十五条が問題になることは問題になり得るだろうと思います。
  479. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私はなぜこれを問題にするかといいますと、いつでもこれが行なわれるのです。本人の意思に反して、ある特定政党の活動を部課長の業務命令で行なわせるということはあってはならないのではないか、こういう見地に立ってこの問題を取り上げておるのです。これは今後もあることであって、本人の意思に反して、業務命令で選挙活動が行なわれるようなことがあってはならないということからこれを申し上げておるので、農林大臣、どうですか。あなたは監督官庁の責任者ですから、再びこのようなことのないように、何らかの措置をおとりになるお考えはありませんか。
  480. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これは、もちろん農協組合の命令として出た場合においては、私どもとしては、それはそういうことのないようにやりたいと存じまするが、多くの場合は、組合としての命令でなしに、個人、個人の間の依頼関係のようにして行なわれるような場合が多かろうと思うのでございます。そういう場合についてはどう考えるかという問題があると思います。
  481. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 だから私は断わっておるのです。部課長の命令によって、本人の意思に反しても行なわれる場合がしばしばあって、現に岡村文四郎の事件については、そういう人が二人選挙違反に問われておるのですから、だから、こういうことが今後あってはならないので、あってはならないということを、組合員に何らかの措置をとるべきではないかと私は考えるので、そういうお考えはありませんかと言っておるのです。どうですか。
  482. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 捜査が完了いたしませんと、全体の問題としてのその段階において考えていきたいと私は思っております。
  483. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これはまた別の機会に譲るといたしまして、大蔵大臣が待ちくたびれておられるようでありますので、大蔵大臣にお伺いをいたします。  いま補正予算の審議中でございますが、来年度の予算の編成はいつごろのお見通しでありますか、お伺いをいたしたいと思います。
  484. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 なるべく年内に編成して、大体来年の経済に対して財政がどういう影響を及ぼすかというような点を国民に明らかにしたいと思うのです。しかし、今日こういうふうに国会で補正予算のほうの審議が行なわれておるという状態で、なかなかそれも私の考えどおりにいくかどうか、いま疑問に思っているところなんですが、できたらそうしたい、こういうふうに思っております。
  485. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 年内には補正予算が成立し、関係法案が成立するとすれば、およそいつごろに編成ができるか、このお見通しを承っておきたいと思います。
  486. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 年内にというのは、三十一日ごろ補正予算が成立する、こういうことかと思うのですが、そういうことは考えておりません。一刻もすみやかに補正予算を成立さしていただきたい、かように念願をしております。
  487. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に、ガソリン税の問題についてお伺いをいたしますが、この問題は、予算委員会で両三年来議論が行なわれてまいりました。予算委員と大蔵委員とで小委員会もできておりまするけれども、いまだに結論は出ておりません。このガソリン税というものについて今度の説明を承りますと、ガソリン税は本年度は百三十二億円減収になる、これを一般会計から繰り入れて、道路事業の事業分量を減らさないような措置をするという御説明であります。一体このガソリン税というものは、いろいろたくさんありますけれども、これはどういう面が減ったとお考えになりますか。少なくとも農業と非農業と分けて考えた場合に、私は、農業のほうは機械化が漸次進んでまいっておりますので、農業用のガソリンの使用量というものは減ってはおらない、むしろふえておるのではないかと考えるのでありますが、大体データもあると思いますけれども、どんな状況になっておりますか。
  488. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私、その詳しい内容についてただいま資料を持っておりませんですが、局長から答弁いたさせます。
  489. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 消費量でございますが、農業用、林業用、漁業用を含めまして、四十年度の消費量が三十八万八千キロリットル、明年度の消費量の推計が四十五万一千キロリットルでございます。
  490. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 いまお話のとおりですね。もう膨大にふえておるわけですね。さて、そういうふうに膨大にふえておるが、ガソリン税というものの本質的な問題については、前の田中大蔵大臣の際にしばしば論議が行なわれたのでありますけれども、これは目的税的な性格のものであって、その補正予算の説明のときにも、百三十二億の減収になるから、その分だけ道路工事がおくれないように一般会計から繰り入れると、こうおっしゃっておる。この点からも明らかなように、これは道路の建設のための税金ですね。それを自動耕うん機であるとか漁船であるとかいうようなものにまで賦課するということは、これは適切なものではない、こう田中大蔵大臣は答弁をしておるのでありますが、福田大蔵大臣はどうですか。
  491. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 本委員会でいろいろ御論議がある、それも私は全部が全部とは申しませんが、多分にその理由がある、かように考えています。
  492. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それは目的税的なものであるから、道路を利用するものに賦課するのがたてまえであって、たんぼの中を動かしたり海の中を動かすような耕うん機や漁船に使うガソリンにまでかけることは妥当ではないということはお認めになりますね。
  493. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは国の財源でございますから、そういう面の性格もありますが、同時に、これは目的税にしておるという点もあるわけであります。そういう点から考えると、ただいま仰せのような点もある、私はこういうふうに理解しております。
  494. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 その点はお認めになりましたから、それは当然だと思うのでありますが、そこで、最近ガソリンの値段が非常に高いのでありますが、一体この税率は幾らぐらいでありましょうか。はっきりさしていただきたいと思います。
  495. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 ガソリン税の税率は、一キロリッター二万四千三百円、地方道路税の税率四千四百円、この二つがガソリンにかかっている税でございます。
  496. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういう金額を言っているのじゃないのです。私はパーセンテージが幾らだ、税率が幾らだということを聞いておるのです。
  497. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 お尋ねの点は、価格のうちに占める税負担の割合の問題でございます。税率がいま申し上げましたように二万四千三百円、四千四百円といたしますと、たとえば一リットル五十五円ぐらいでございますと、二十八円ぐらいがガソリンに関する揮発油税及び地方道路税の負担になる、かように思っております。
  498. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 税率として、比率で答弁をしてもらいたいのです。
  499. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 小売り価格のうちに占める割合は約半分でございますし、それを抜きました元値に対しましては、一〇〇%をちょっとこえるところが税負担になっておると思っております。
  500. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこで、さっき大蔵大臣は、すなおに、農業用のガソリンに税を課することは適切妥当でないということをお認めになったのでありますが、それならば、来年度の予算編成にあたって、農漁民用のガソリンに対しては税金を免除するという方向で予算の編成をしていただきたいと思うのでありますけれども、いまのところどういうお見込みでございましょう。
  501. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これはこの委員会で、ことしの三月でありましたか、国会におきましてもひとつ検討しよう、こういうことだったわけです。そういうことになったゆえんは、同じガソリン税を農業用であるか農業用でないかということを区分することは、税の技術上非常に困難である、こういう問題があるわけなんでありまして、私ども政府としては、これはなかなかたいへんな徴税費もかかるし、かえって税額よりは徴税費のほうがよけいにいきそうだというような説さえもあるくらいなむずかしい問題なんです。で、国会のほうの小委員会で御論議があるかと思って期待もいたしておるのですが、まだそういう機会も持たれておらないようでありますし、まあ政府としてはその後も、国会のほうはそういう状況でありますが、いろいろ関係各省とも打ち合わしておるのでありますけれども、税でこれを免除するということは技術的に不可能である、こういう結論です。よって、税は税でひとつやってもらおう、しかし、そのうち農道でありますとかあるいは林道でありますとか、あるいは漁港関連の道路でありますとか、あるいは農業改良資金の問題とか、そういう方面に昭和四十年度においても金を出しておる、その方向で四十一年度もひとつやってみたい、ただいまのところはそういうふうに考えております。
  502. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 どうも非常に困難だとおっしゃるのですね。それは、田中大蔵大臣も非常に困難だ、それから二つの理由をあげましたよ。その困難であるということと、もう一つは、脱税のおそれがあるということ、それから国税庁の職員を増員をしなければならないということ、かなり具体的なことを述べられましたよ。しかし、これはやる気になればやれるのです。一体、脱税の余地があるというけれども、これはもう市町村役場で、地方財源の不足のおりから、市町村役場にちゃんと小型自動車として、馬力と台数は登録済みですね。一面、農地というものの面積は、これはさまっておりますね。どこに一体脱税の余地があると考えますか。それからまた、これはたくさんの人間をふやさなければならぬということを言われましたよ。一千四百人もふやさなければならぬというお話がありましたけれども、これは農協なりあるいは農業委員会なりで、馬力と台数と面積でおおよその見当はつくのですよ。それで、その市町村ごとに、その農林漁業用の使用量というものをきちっと基準をつくる、それに基づいて税務署が、軽油引取税のように、チケットを出すということにすれば、いまの税務署の職員でも十分やれる。どうですか、大臣。
  503. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 税はおおよそじゃとてもいかないのです。これはもう各農家農家についてこれが適正にやられておる、こういうことが確認されなければならぬ。これは人に頼むというような方法もあるかもしれませんけれども、結局これは税務当局においてチェックをしなければならぬ、こういうことでございます。税務当局も会計検査とかなんとかありまして、責任のある決定をしなければならぬわけでありまして、私が心配いたします一つの点は、これはいま農家の所得税なんかが非常に減少してきております。農家における納税の気分、これはいまたいへん良好な状態じゃないかと思います。ところが、そういうようなことを通じてまた一つのもんちゃくが起きるような事態が起きるということも、これは考えておかなければならぬ。ともかく結論におきましては、お気持ちはよくわかります。わかりますが、技術的に非常に困難であり、不可能に近い、こういうふうに思っておるわけであります。
  504. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 福田さん、あなたも農村の事情はおわかりだろうと思うのですけれども一体部落の中とか村の中くらいで割り当てをきめて、どこにそんな抜け穴なんかつくれる余地がありますか。あたり近所みなわかっているのですよ。部落と部落、みんな耕地が入り組んでいるのですよ。そんな問題じゃありませんよ。きょうも午前中からの御論議でもありますように、租税特別措置法では五千何百億も六千億も特別免除をやっておいて、森脇将光みたいになれば、七十億も八十億も脱税させておいて、農民が三馬力か五馬力の機械を動かす。そのエンジンに使うところのガソリンをどうごまかすかなどという、そんなに厳密にお考えにならなくとも、あとでもこの問題は触れますけれども、私は、やる気があればやれるのだ、やる気がないからやらないのだ、結局そう言わざるを得ないのです。やる気になってやってごらんなさい。やれますよ、簡単に。
  505. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 どうも見解の相違のようでございますから、これ以上は私の考えは申し上げません。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  506. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これは、特に青木委員長が中心になって小委員会をつくった。ところが、これは政府のほうの圧力だと思うのですが、委員会を開いてくれと言っても開かないのですよ。だから、これはまだ今後の検討に待つことにしたいと思うのです。これは今後の検討に待ちたい。  そこで、この問題については農林大臣にお伺いをいたしますが、本年度の農道の改良整備のための予算は幾らでありましたか。
  507. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農道のための、いわゆる農免道路と俗称言うておりまするが、これは三十四億、それから同じような関係でありますが、林道は四億、それから漁港の通路のものが二億、そのほかに後継者資金、それから生活改良資金等が十億、合計五十億でございます。
  508. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大蔵大臣、さっき農政局長が申されたように、三十八年度には三十一万八千、それから三十九年度には四十五万一千、こういうふうに農業用は非常にふえておるという数字をあげておるのであります。昨年度までは百五十億くらいの見込みであったわけでありますが、こういうふうにふえてまいりますと、農業用のガソリン税というものはさらに大幅な増になると思いますが、どの程度増加になるお見込みですか。
  509. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 確かにこれはふえていくと思います。計数的にはそうはっきりしたことは申し上げられないかと思いますが、大体のことは局長からお答え申し上げます。
  510. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほど消費量で申し上げましたが、税額としては本年が大体百億でございますが、明年度の農業用、林業用、漁業用、全部含めまして百二十九億程度と推計をしております。
  511. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは、次に農林大臣に伺いますが、ことしのこの予算による事業は、路線で何線ぐらいで、何キロぐらいになりますか。同時にあわせて伺いますが、地方からの要望はどの程度出てきておりますか。これをお伺いしたい。
  512. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農地局長から答弁させます。
  513. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 お答え申し上げます。ことしの農免農道関係で、採択いたしました地区数は全国で二百七十五であります。その総延長は千二百キロメートルほどでございます。
  514. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 もう一つ、これは実施をいたした分ですね。地方からの要望はどの程度ありましたか。
  515. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 地方からの要望は、県庁と地方の農政局とでそれぞれ協議して、セレクトして本省に持ってまいるわけでございますけれども、採択いたしましたものが二百七十五件に対しまして、地方からのなまめ要望は、大体千件に近い数字でございます。
  516. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そうすると、約四倍ということになると思うのですが、そこで、次にお伺いしたいのは、農免道路を中心としてなるほど林道や漁港用の道路その他に分割されておりまするけれども、この農免道路と称するものはおおよそ大部分が市町村道であることは、これはお認めになりますか。
  517. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 大体が市町村道あるいは建設をいたしましてから市町村道になるものでございます。
  518. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これはおかしい話です。われわれがここ両三年ここで議論をいたしましたのは、農道のために五十億を回すからということで一応これは了承をしてまいったのです。ところが市町村道に大部分を費やしておるということなら、これは道路法の第三条、第十六条に基づいて、建設大臣の所管です。建設大臣の所管であり、市町村の管理するところです。これは農道ではありません。なぜ一体農道だといってこの高いガソリン税を取って市町村道に使ったのか。それならば農林省所管でなしに、建設省所管なりあるいは自治省所管であるならば話はわかるけれども、農林省の所管で農林省に五十億を回すからというようなことは、われわれは断じてこれは了承するわけにはまいりません。どうですか。
  519. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いまの問題でありますが、いわゆる農道と普通申しておりますのは、基盤整備とか、あるいは土地改良と同時に行ない得るのでありますが、今度のこのいわゆる農免道路の問題は、機械化をやるにしましても機械を運ぶことができない。それから牛乳とか、いろいろな農産物を集荷したり運ぶにしても非常に不便であって、ほとんど能率はあがらない、こういう問題がある。センターを置いていろいろやろうとしても仕事ができない。いわゆる農業の近代化をはかるためには、どうしてもこういうような農免道路的ないわゆる農道、これもやはりその意味において農道であります。その農道がなかったならば、この近代化をはかることができない、こういう実態であることは、これは石田委員もよく御存じのはずであろうと私は思います。  そういう意味合いからして、この要請に対しては二百七十幾らの予定に対して千を越すような押すな押すなの要望がありますことは、現在の農業の近代化をはかる上においていかに重要であるかを裏書きするものであろう。なお、これらの問題については、建設省ともよく相談をしてでき上がったものでありますことを御了承を願いたいと思います。
  520. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 実情実情ですよ。しかし建設省所管の道路で、市町村が管理する道路ですよ。それを農林省にやるというこの不合理を私は言っておるのです。それならば、市町村道で建設大臣の所管であるというならば、建設省に回したらいい、あるいは自治省に回したらいいのです。それを農林省に回すということが不合理だということを私は言っておるのですよ。そうじゃないですか。
  521. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農地局長からさらに追加して御答弁申し上げます。
  522. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 石田先生よく御承知のように、農道にはいろいろな種類がございます。まず圃場内の農道、それから圃場と部落とをつなぐ農道、さらに農産物なりあるいは加工品の出荷のために必要な道路というふうに、農道にいろいろございます。それで、農林省といたしましては、農免道路だけではございませんで、農道単独の事業、あるいは圃場整備の一部分として農道をつくる事業、その他開拓、干拓その他の事業に付帯してつくります道路をあわせて、農免道路を含めまして四十年度で百三十九億ほどの事業費を持っておるわけでございまして、事実上市町村道でありましても、それが農道として使われ、そうしてその改修あるいは建設等につきまして農民から絶大な要望がありますものにつきましては、今回農免道路として建設省その他各省と協議をいたしまして、事業を実施いたしておるわけでございます。
  523. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 道路法で明確に、市町村道は市町村が管理をし、そうして建設大臣の所管であることは明らかなんだから、市町村道をやるというならば、これは建設省に予算をやってやったほうが筋が通るじゃないか。あるいは自治省にまかしてやったほうが筋が通るじゃないか。これを言っておるのですよ。だから、農道というならば、いままではわれわれは農道として二年も三年も議論しておった。ところが、農道でないというならば、これは建設省の所管あるいは自治省の所管として扱うのが適切妥当なものであるということを私は言っておるのですよ。建設大臣、どうですか。建設省でこの予算をとって、市町村道はひとつりっぱにやってくれたほうがいいじゃないですか。
  524. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 理屈は全くそのとおりだと思います。ただ、あの農免道ができますいわれがああいうことで、いま農林省からお答えになりましたように、農村の実情に応ずるということでおやりになったと思います。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 これは道路法上の規定によりまして、別な機関がやるという規定がありますから、こういうことになっております。  ただ、ここで申し上げたいことは、お説のことが私は筋だと思いますが、建設省といたしましても、農村の道路の、建設省所管のいわゆる道路法の道路を積極的に整備をいたさなければならない。幹線道路は相当に進みましたけれども、日夜使っておる道路の整備は、御承知のとおり延長が非常に大きいからでありますが、おくれておりますから、私のほうといたしましても、積極的にいわゆる農村地帯の市町村道路にウエートを置いて進めたい。  御参考までに申し上げておきますれば、四十年度は約四十億やっておりますけれども、四十一年度は二倍以上の予算を、今後でありますけれども、組んで進めたい、かように考えております。なお、農免道路の実施は今年度が初年度でありましたから、いろいろいま仰せのとおりのようなこともあったと思いますが、今後は農林省ともよく御相談して、できるだけ趣旨に沿うようにいたすべきであろうと思います。
  525. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 自治大臣はどうですか。市町村道は市町村が管理することと明記されておるのですね。道路法に明記されておる。一体自治大臣は、この予算を実施するについて、市町村はどういう立場にあり、そうしてこれにどう関与しておるとお考えになっておりますか。
  526. 永山忠則

    ○永山国務大臣 これは農道で、農民が要望をいたしておる基幹農道でございます。ただ管理を市町村に頼むということになりますれば、市町村道に移管するのであります。農民の要望にこたえて市町村道になる場合もございます。あるいは部落道でいく場合もございます。
  527. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 はなはだ要領の得ない答弁でありますけれども、この程度にこの問題はいたしまして、大蔵大臣、大体ことしは農免道路の関係は三十四億しか回っていないのですね。先ほど農政局長が答弁をいたしましたように、農業用のガソリン税は非常に多額なものになるわけです。これを免税措置をとるのは非常に困難だということであるならば、これはいままでどおりとるとしても、少なくともとった全額をやはり農道を中心とする農政のために使うというお考えはございませんか。これは当然だと思いますけれども、どうでしょう。
  528. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 できる限りそういう気持ちで、農林大臣と相談してみます。
  529. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 どうもできる限りなんというあいまいな答弁では、承知できないですよ。全体のガソリン税は減っている中に、農業用のガソリン税だけは大幅にふえておる。ふえておる分だけ免税にするのが妥当なんであるけれども、免税は困難だからというならば、それに見合うだけのものをひとつ農林省と建設省と自治省との関連においてこれは農村のために使う、あるいは漁村のために使うというのが当然じゃございませんか。それくらいのことは、ひとついいかげんな答弁でなくてもっと誠意のある御答弁を願わないと、どうもこれは片づきませんね。
  530. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 理屈を言うといろいろあるのですよ。一般の道を農家が使う、トラクターが通らないということでもないのですね。これはもうずいぶん通っておるわけでありまして、そういうようなこともありますが、私は理屈を言うわけじゃございません。あなたの言うこともよくわかると先ほどから言っているのです。ですから、そういう気分でよく政府部内で相談をいたします。こういうふうにお答えする次第であります。
  531. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そんなあいまいな答弁では、これは片づきません。  総理大臣に伺いますが、一体佐藤内閣は農業というものを立てるつもりかつぶすつもりか、これをひとつはっきり聞きたい。あなたはいいかげんな抽象論でごまかそうとするかもしれないけれども、非常に所得が低くてあと継ぎもないような農村にしながら、追い打ちをかけるように固定資産の評価がえをやって、固定資産税を上げていらっしゃる。それからガソリン税のように、道路のための目的税であるにもかかわらず、その全額を還元しようともしないという大蔵大臣の考え方一体農業というものを立てるつもりかつぶすつもりか。立てるつもりならば、こんな不合理なことを幾つも幾つも積み重ねるような政策はとるべきではないと私は考えるのですが、どうなんですか。
  532. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん意外なお尋ねを聞きます。農業をつぶすつもりか、農村をつぶすつもりか、どうするつもりだ、かようなお話ですが、私は農業、農村をつぶすような考え方はいたしておりません。はっきり申し上げます。ましてや保守党のりっぱな基盤だと言われております。かような状態のもとにおいて、農業をつぶすようなことは絶対にいたしません。
  533. 青木正

    青木委員長 中澤茂一君から関連質問がありますので、これを許します。
  534. 中澤茂一

    ○中澤委員 大蔵大臣、あなたは経過を知らぬようだから。予算委員会で、これを減免しましょうという田中大蔵大臣の言質から問題が出てきたのです。そこで、それならば減免をやろうというので、実は赤城農林大臣、田中大蔵大臣とわれわれ予算委員と大蔵委員が入って、三回にわたって去年会合しているのです。では四十一年度からは何とか方法考えましょうと、経過はそういう経過なんです。そこで、それならばこれは予算で起きた問題だから、予算委員会の中にガソリン税小委員会をつくって、ここで四十一年度までに煮詰めようという約束なんです。ところが、予算委員会に問題のたびに小委員会をつくるというのは一つの悪例になる。おたくの自民党がそう言うのです。そこで、それならばこれは所管の大蔵委員会に小委員会をつくろうじゃないかということで、大蔵委員会に小委員会をつくった、こういう経過なんです。そうすると、これは大蔵大臣の言明から両党で四十一年度から処理するという約束があるのです。両党ばかりじゃない、これは民社党も入っている。民社党も入って全部で約束している問題です。それが技術的にどうしても困難だというなら、公党の信義はやはりこの際守るべきじゃないですか。問題はそこなんです。公党の信義はやはり守るべきですよ。こういう国民に直接の関係がある問題、予算委員会でこういう問題にまでなってきたのをこのまま締めくくりをつけないということは、私は悪い慣習だと思うのです。やはりひとつ問題が国民に直結したものが出たら、締めくくりをつけていく、それが必要だと思うのです。だから、そういう経過もいまあなたは大体おわかりだろうと思う。もしこれを、たとえば技術的に絶対困難だという、私は技術的に困難じゃないという反証をあげて言ったので、田中大蔵大臣は参ったのです。軽油は現実に共同購入で減税しているのです。それからA重油も現にやっているのですよ。農協の共同購入証書で一括して農協が買い入れ減税をやっておるのです。私はその買い入れ書類まで出したもので、そこで田中大蔵大臣は、なるほどそういう共同購入でやればできる節もあるな、そういうような議論をさんざん赤城農林大臣も出て小委員会でやったのです。そういう経過があるのです。これは、いま社会党のほうは譲歩しての話なんですよ。われわれはどこまでも減免を主張しておる。そういう経過があるのです。だから、あなたはどの程度田中さんから引き継いでいるか知らぬが、この問題はどうしてもここではっきりしてもらいたい。はっきりしてもらわぬと、これは何をここで大臣が責任ある答弁をしても意味がないということです。少なくともこの問題くらいは当委員会で結論を出してもらいたい。
  535. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 免税は先ほど申し上げましたようになかなかむずかしい、そういうふうに思いますが、その免税となるべき額の使用につきましては、御納得のいくように昭和四十一年度予算ではいたしてみたいと思います。またその節ひとつ御論議願いたいと思います。
  536. 中澤茂一

    ○中澤委員 この問題だけは予算折衝の過程で、われわれもそういう各党全部集まっての公約という問題があるのですから、これは予算の過程で御相談を願いたい。この問題は、ただ大蔵大臣の独断でばちばちやってもらっても困ります。もしそれをやれば、これは問題ですよ。全部これは話をそこまで責任のある人たちで煮詰めているのですから、その点だけは私は特に念を押しておきます。
  537. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 総理大臣は、農業は育てていくのだというお話ですけれども、いま申し上げたような不合理なことをどんどん積み重ねていけば、農業は立っていきませんよ。おわかりですか。それがおわかりなら次に進みますが、そういう不合理なことは累積しないように、ひとつ心がけていただきたい。  次に、大蔵大臣、この問題ではやや了解されたようでありますから、独断では御処理なさらぬだろうと思いますから、これはひとつ大蔵大臣を信頼してこの程度にいたしまして、もう一点だけ明らかにしたいと思うのであります。  それは、先ほど問題になっております農道の問題です。基盤整備事業をやる、農道をつくる、それから構造改善事業で道路の幅を広げる、二メートルを五メートルにする。そういう場合に、農地が道路になり水路になれば、その所有権はだれのものになりますか。
  538. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 土地改良をやります場合、国営、県営、団体営と、それぞれいろいろな例がございますけれども、国営で土地改良をやります場合は、道路をつくるという例はほとんどございませんけれども、それは国が土地の所有権を取得してつくるわけでございますから、当然国有でございます。それから団体営の場合も、多くは土地改良区が所有権を取得して道路をつくるというのが普通でございます。
  539. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大蔵大臣、いまお聞きのとおりで、二メートルの道路が五メートルになれば、三メートルの部分の農地というものは、道路になったとたんに国有地になるのです。これをひとつはっきり覚えておいていただきたい。  そこで、農地が工事をやったとたんに国有地になって、そうしてその維持管理費はだれが負担をすることになりますか。
  540. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 もう一度申し上げます。通常の場合は土地改良区が圃場整備をやって農道をつくるわけでございますから、圃場整備をやります場合に、土地改良区は土地の所有権を取得して農道にいたすわけでございますから、土地改良区の所有地になるのが普通でございます。国有地になることは、土地改良区が圃場整備をやるときは普通はございません。
  541. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それは、農地局長、よくわかっていない。少なくともあなた農地の図面を見たことがあるでしょう。赤線を引かれた場合、これは国有地になるのですよ。国有地になるから、だから、それを工場敷地や宅地にして売買が行なわれれば、代金は大蔵省がこれを取得するでしょう。大蔵省が取得するのです。  そこで、大蔵大臣に伺いたいのでありますが、そういうふうに農地がとたんに国有地になる。その農道の維持管理費は全部農民の負担です。維持管理は土地改良区の負担ですからね。そうすると、全部農民の負担です。それで、農地が国有地になった農道の維持管理費は全部農民が負担をしながら、売買が行なわれれば代金は国がこれを収納する。現実には、私はこれは土地改良区の財産でなければならない、こう考える。そうすれば、土地改良区が補償金を出してつぶしておるのだから、土地改良区の財産としておくべきであって、それが工場や宅地になる場合の代金は、当然土地改良区が収得すべきものであると私は考えるのですが、どうですか。
  542. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 何かもとのところで政府のほうと食い違いがあるようですから、農地局長から重ねて御答弁いたします。
  543. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 もう一度お答え申し上げます。  先生が御指摘するような場合は、おそらく土地改良区が圃場整備をやりまして、国有の道路がございます。そうして、その国有の道路を農地として、それと交換に別に道路をつくりまして、それを国有にする、そういう場合であろうかと思います。
  544. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 あなたはよく知らないんだ。現況をよく知らないんです。もっと勉強しなさいよ。どこでもそうですよ。都会でも農村でも、道路はこれは国有地として処理されておるのですよ。どこでも国有地ですよ。この道路や水路は一体だれのものですか。これは国有地となって赤線が引かれ、青線が引かれれば、これは国有地なんです。だから、新潟市の周辺をごらんなさい。宅地ができたり工場敷地になったところの代金は、これは国が、大蔵省がその代金を収納しているじゃないですか。それじゃ、それはやりませんか。
  545. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 土地改良区が普通圃場整備をいたします場合に、道路をつくりますと、それが国有になるということはございません。これは、一般には土地改良区のものでございます。
  546. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは土地改良区が維持管理を行なっておる農道または水路は、大蔵大臣、これは土地改良区の財産であって、売却をする場合には土地改良区がそれを収納してよろしいということを御確認願えますか。
  547. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国有財産局長が答弁します。
  548. 松永勇

    ○松永(勇)政府委員 お答え申し上げます。  国営で行なう土地改良の場合に、具体的にその農道等が国有になる場合があるかどうか、これは、農林省が実際に行なっております事業につきましてある場合があるかどうか、私も詳細には存じません。しかし、もしかりにありました場合には、その国有地につきまして土地改良区がこれを管理する。管理した後に、この農道が必要でなくなったという場合には、その管理に要した費用の範囲内で国は譲与することができるようになっております。これは土地改良法の九十四条の四にそういう規定がございます。  それから、先ほど先生が赤線引きということをおっしゃっております農道、これは、そういう最近つくられた土地ではなくて、明治以来国の財産として農道がある、それは、国有財産として存する道路というものがございます。これは、現在公共物としてそれぞれ公共団体が維持管理しているのが通常でございます。こういうものにつきましては、その農道が必要がなくなるという場合は、これは特殊の例でございますが、たとえば団地造成等が行なわれる場合に農道も要らなくなるという場合に、農道を廃止して、そして普通財産として売り払うというような事例はあるかと思います。
  549. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それじゃ重ねてちょっと伺いますが、局長、そうすると、土地改良区が維持管理をやっておる道水路は、これを農民から取得し維持管理をしておったその限度において、これは土地改良区に与えることができる、こういうふうに解釈してよろしいわけですか。
  550. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 お答え申し上げます。  土地改良区が管理いたしております国有地の道路というのは、非常にまれな例でございますけれどもございます。新潟県でたしか亀田郷の土地改良区にそういうものがございます。これは、土地改良区が管理を委託されておるわけで、管理費を支払っておりますから、その支払いました管理費の額の限度において無償で国が譲与するとい参規定に土地改良法上なっておるわけでございます。
  551. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういたしますと、大蔵大臣、これは確認をしておきたいのですが、私がさっき申し上げたことと結論的には同じことになるのじゃないか。国営の場合の農道、この場合には維持管理に要した経費、これについて計算をして無償でこれを土地改良区に供与することができる。まずこの点は明らかですね。
  552. 大和田啓気

    ○大和田(啓)政府委員 ちょっと、私ただいま言い足りない点がございました。亀田郷その他の具体的の例といたしましては、土地改良財産ではもともとございません。したがいまして、私が申し上げましたように、土地改良区が管理の委託を受けまして、そこで管理費を支出いたしましても、その支出した額の限度内において譲与するという規定の適用はございません。私が申し上げましたのは、一般的な土地改良法に基づく土地改良財産の問題でございます。
  553. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これはどうも答弁がはっきりしませんよ。もっと明確に答えてくださいよ。  国営の土地改良をやったところの農地は、無償で土地改良区に譲与することができる、こういうふうに承っていいのですね。(「そうじゃないんだよ」と呼ぶ者あり)大蔵省の局長もそう言っている。——どうも答弁がちょっとちぐはぐで、これは意見統一をはかってもらわなければなりませんから、別の場所で私はこれは確認をして、そして大蔵大臣にひとつ御確認を願いたいと思う。きょうはこの程度にいたします。  そこで、これと関連するもう一つの問題、これにつながる問題がある。というのは、無償で土地改良区に譲渡することができるかどうかは、いまそこで二人で議論しておるから、これはあとで確認しますけれども、その農道が、あるいは今度一般の農道も、維持管理費は、土地改良区が健在な場合は、土地改良区が支出したものは、農民の所得計算をする場合には全額必要経費としてこれは控除されますね。ところが、土地改良区必ずしも全面的に健全でないのです。そういう場合には、受益者同士が労務を提供し、あるいはバラスを入れるというような維持管理費を使っておる。けれども、この場合に、バラスを入れても、そのバラスを入れたものは必要経費には算入しないというたてまえを国税庁はとっておる。これは許しがたいことだと考えるが、大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  554. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一応、国税庁長官が来ていますから、お聞き取りくださいまし。
  555. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  農道の維持管理の費用を支出いたしました場合、農業収入を得るために必要な経費であるかどうかということによって、農業収入を得るために必要な経費は損金に算入するわけでございます。ところで、土地改良区につきましては、その農道の維持管理のために使用したという実績が、土地改良区のいろんな経費を支出いたしますけれども、その経費支出の明細からいたしまして明確でございますので、土地改良区の場合におきましては、維持管理費用は損金に算入することを当然として認めております。ただ土地改良区以外の場合におきましては、その農道の維持管理に該当するかどうかという点につきましていろいろ問題がございます。お話のようにバラスを入れたという場合に、そのバラスを入れたのが農道を新たに取得したと同等くらい厚いバラスを入れたのか、それとも農道を維持管理していくだけに必要な範囲においてごくわずかのバラスを入れたのか、そういったことからいたしまして、維持管理に必要な範囲のものでございますと、改良区以外におきましても、その維持管理のために支出いたしました費用は必要経費に算入いたしておるのでございます。
  556. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それは当然だと思う。ところが、これは新潟県では、関信局の関係になろうと思いますけれども、何年かこれを争っておる。ちょっと入れたバラスですね、それを必要経費に算入していないのです。これは二年も三年も争っていますよ。これはおそらく全国にそれをやっておるんだと思うのですが、であるから、これはさっきのガソリン税の小委員会のときに、吉国という説明員はこういう説明をしている。いまの説明と同じようなことだけれども、「土地を造成いたしました費用等は、これは土地の価格を構成いたしますので、減価償却の対象にならないわけでございます。おそらく農道に入れたバラスの場合も、その土地の造成の一環として、土地の価格として計算されるものと思います。」という答弁をしておる。だからこれは、店舗にひさしをつけたとか、店舗に何か加工をするとかいうようなものとはわけが違う。道路がこわれたからバラスを入れて修繕する、その経費を入れるか入れないかということは——なぜ私がこの委員会でこんな小さなものを扱うかと皆さんお考えになるかもしれないけれども、これは自治大臣、住民税の所得割り、国民健康保険税の所得割り、それの所得税に直接影響をする問題でありまして、日本じゅうの農民の今日の税金に非常に大きな影響がある。ところが、私はここでは遠慮いたしますけれども自治省はその計算の算定を知らないのです。知らない結果、これは税務署によりかかる。ところが、税務署はいま言うような見解で、道路の修繕のために入れたバラス代は必要経費に算入しないという措置をとっている。これは日本じゅうの農民いじめの最たるものだと私は言いたいのです。こういう問題がたくさん積み重なっておるから、さっき私は総理に伺ったようなことを伺わざるを得ないのです。これは別の場所ではっきりしたいと思います。やはり自治大臣の直接の責任だから、自治大臣、ひとつ自治省の係官をもっと勉強させて、独自でその所得の算定ができるようにやっていただきたい。それから、そういう不合理をたくさん積み重ねることのないように、総理の姿勢を明らかにしていただくことによって、私の質問を終わりたいと思います。
  557. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来たいへん詳細な、また事務当局も取り扱い上困るようなお話を伺いましたが、問題は、今日の農村問題にいたしましても、中小企業の問題にいたしましても、ほんとうにこまかな、十分注意をいたしまして、かゆいところに手の届くような処置をとることが必要だ、このことはよく私にもわかりました。ありがとうございました。
  558. 青木正

    青木委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。  午後八時四十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後七時四十分休憩      ————◇—————    午後八時四十八分開議
  559. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。玉置一徳君。
  560. 玉置一徳

    ○玉置委員 私は、民社党を代表いたしまして、今回の補正予算に関連いたしまして、政府の海運政策、船員政策並びに日韓国交正常化を真に意義あらしめるために、政府の外交姿勢、ことに今後のアジアの外交姿勢につきまして、質問をいたしたいと思います。  そこで、まず外交案件から入っていきたいと思います。御承知のとおり、日韓国会は混乱のうちに、去る十二月十一日、ようやくその成立を見たのでありまして、去る十八日には韓国のソウルにおきましてこれが批准書の交換が行なわれたことは、御承知のとおりでございます。この国会審議を振り返ってみますと、韓国との国交正常化は、いわゆる善隣友好外交の推進でありまして、日本の平和にとっても、はたまたアジアの平和にとりましても、有益であり、必要欠くべからざるものであるとする推進論者と、それから、日韓条約は南北両朝鮮の統一を阻害するものである、中国をはじめとします共産圏諸国とのみぞを深くして、その本質は軍事条約であって、アジアの緊張を激化させる以外の何ものでもない、こういった二つの反対論が激突したのであります。これを直ちに軍事条約と見まして、戦争への道に直結するということも、はなはだオーバーな表現でありますけれども、また一方、アメリカをうしろだてとしますアジアにおける自由陣営諸国の結束の強化に役立ったことも、いなめない客観的な事実であると思います。したがって、この日韓国交の正常化が、アジアの平和に積極的な寄与をなして、真にわが国のためにプラスになるか、あるいはまた逆にアジアの緊張を激化しまして、わが国にとりましても有害なものになるかどうかは、日韓正常化のあとに続いていきます今後の佐藤内閣の外交姿勢のいかんにかかっておると言っても過言でないと思います。わが党は、御承知のとおり、日韓国会におきまして、今澄政審会長を立てまして、わが国の進むべき外交の道はただ一つ、すなわち、対米追随の外交でもなければ、逆に米国を敵とする容共路線でもない、それは、アメリカに対しては自主外交であり、共産陣営に対しては共存の道であることを力説したのも、このゆえんであります。日韓条約は、この外交方針によってこそ、真に意義あり、価値あるものである。この意味におきまして、われわれは日韓条約を是認したのであります。本日は、その責任上、今後のわが国の外交方針、主としてアジア外交に対する佐藤内閣の態度につきましてこれからお伺いをしていきたい、かように存じます。  そこで、最近起こりました外交事件で、私の興味をそそったものに二つございます。一つは、アジアの開発銀行本店が、国民の多くの期待に反しまして、フィリピンのマニラに設置された問題であり、いま一つは、わが国がAA諸国の協力を得まして、国連の安全保障理事会の任期二年の非常任理事国に当選したことであります。  まず、アジア開発銀行の関係につきまして、お伺いをしていきたいと思います。もともと、アジアの開発銀行のアイデアはアメリカの発想にかかるものでありまして、その後主として日本がお世話をしてきたことは御承知のとおりでございます。その出資金もまた、アメリカに次いで日本が他のアジアの各国の群を抜いて多額であることも御承知のとおりでございます。この本店は、交通、通信、経済その他の各般の観点から考えましても、当然東京に設置されるものであることは、国民がひとしく信じておったところでありますが、ふたをあけてみますと、全く意外にもフィリピンのマニラに取られてしまった。国民は非常に驚いておるというのが事実である、かように存じます。これほど近年あわを食ったと申しますか、意外に感じられる外交事例というものは少なかったんじゃないか、かような意味におきまして、どう見てもこれは日本の外交の失敗であったといわざるを得ないと思うわけでありますが、これにつきまして、総理はどういうふうにお考えになっておるか、御所見を承っておきたいと思います。
  561. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アジア開発銀行がマニラに行って、その本店所在地が東京でないということ、これは私も、当時申し上げましたように、まことに残念に思っております。しかし、ただいま玉置君が言われるように、もともとこの構想はアメリカの構想ではございません。これは、日本が主になりまして、そして国連がこれをバックアップしてこの構想が進められたのであります。当初におきましては、アジアの地域だけでアジア開発銀行をつくるべきだという議論があったのでございますが、同時に、域外からも協力を得よう、こういうことでアメリカが浮かんできた、こういう関係にあります。しかして、ただいま御指摘になりましたように、マニラに置かれるようになった。不幸にして東京でない。これは、東京とマニラが争ったということになりますが、その他にも本店所在地を希望した国があるわけであります。私は、これについて、外交上の問題として、アジア外交のあり方についても、私どももくふうしなければならないと思いますが、同時に、今回のこの本店所在地をきめる場所が、ただいま立候補したその国でやったということに私どもが納得のいかないものがある、こういう点は、もしも第三国、中立地で開催された、こういうことだと、案外別な気持ちになったかもわからないと思います。  もう一つ、ぜひこれだけはわれわれも理解してあげなければならないと思うのは、いわゆるこれから開発の途上にある国、こういうところにおきましては、どうしても他の先進国に対しまして、いろいろ何かと比較して、みずから見劣りがしておるのではないかというようなものがあるわけであります。そういう地域におきましては、開発を必要とするのはわれわれなんだ、先進国である日本などにそういう本店を置く必要はないのだ、こういう気持ちもあるのでありまして、一がいにわが外交の失敗だと、かように言うべきではないだろう。これらの点については、十分の理解を持って、そうしてこれから開発途上にあるそれらの国々とともどもに提携していく、こういうことが日本の場合においても必要なのではないか、かように思います。しかし、私は、やっぱり東京に本店があれば何かと便利だ、また積極的に開発の手を差し延べるにいたしましても、これが公平な立場にあるのだ、こういうことで各国の理解を深めることもできるだろう、かように思います。この点はまことに残念ではありましたが、いわゆる外交の失敗と片づけてしまうことはないだろうと、かように私は思います。
  562. 玉置一徳

    ○玉置委員 佐藤総理の前段の御答弁は、まことに反省の深いおことばでございまして、今後のアジア外交というものをそういうお気持ちでやっていただくことが望ましいんじゃないか。初めからそういうやり方でやっておれば、今度の——失敗ということばは語弊がございますが、あれはなかったんじゃないか、こういうように感じるわけであります。  そこで、椎名外相にお尋ねを申し上げたいのでありますが、佐藤総理はああいうように御答弁なさいましたけれども、所管の大臣としまして、一体どういうようにお考えになっておりますか、御答弁をいただきたいと思います。
  563. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アジア開銀の問題については、国民大部分がその本店の招致を希望したことは疑いないと思うのであります。それが遺憾ながら目的を達成し得なかったことは、まことに遺憾であると存じますが、しかし、基本的に、アジア開銀というものは、世界の世論によって、ここに生まれるべくして生まれたのでございまして、その点については、われわれは双手をあげて歓迎すべきものと考えます。本店のいかんということは、その次に来たるべき第二義的な問題である、かように考えまして、今後とも、アジア開銀の本来の機能発揮につきましては、十分にわれわれとしても努力をいたしたい、かように考えております。
  564. 玉置一徳

    ○玉置委員 さらに外務大臣にお尋ねを申し上げたいのでありますが、外務大臣は、フィリピンが非常にマニラ設置に運動をしておったことを御存じであったのかどうか。なお、私が聞いておりますのには、投票の数日前、フィリピンの大統領が各国の閣僚並びに出先の大使等を船遊びに招待いたしまして、われわれがほかに行動をするいとまを与えなかったという事実がある。あるいは投票の前日と思いますが、招宴に招かれたときに、日本の閣僚がメーンテーブルからはずされておった事実があり、その場合に日本の出先の大使がその場所からこれまたはずされておった、こういう事実があることを椎名外相は御承知であるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  565. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 さようなことはあとから聞いて知ったのでございます。いかにフィリピンがこの問題に非常な努力をしたかということについて、実はまあ多少驚いたようなわけでありますが、しかし問題は、その場に臨んでうまく立ち回ったかどうかというようなことは、これは実は末の問題であると私は考えるのであります。やはり日本が国際社会に帰り新参として仲間に入りましてからまだ日も浅いし、今後日本が国際的に相当努力しなければならぬ、そうして初めてりっぱな日本の国際的発言力というものが生まれてくるし、国際的な信頼というものも出てくると思うのでございまして、この点はわれわれとしては十分に心して、そして今後の外交というものを進めていかなければならぬということを考えるのであります。ただ、その場に臨んでうまく立ち回ったかどうかというようなことは実は末の問題であって、この際根本的に反省すべきものがあると私は考えております。
  566. 玉置一徳

    ○玉置委員 重ねて外務大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、出先の大使館が平素から確実な情報をとり得ておらないというところに問題があるんじゃないか。ややもすれば、私らが聞いておりますのには、やはり旧来のアメリカとかヨーロッパの各国に順番にできる大使が参っておいでになって、というような憂いはないかどうかということであります。  それに引き続きまして、椎名外相にお伺いいたしたいのは、あなたは日経新聞紙上におきまして、先般対話をされておりますのが一面トップに大きく出たのでありますが、そのときに、アジア開発銀行の本店がマニラに取られたことにつきまして、その対談の相手、新聞社の主筆だったと思いますが、あるいは部長でございましたか、から失敗の原因を問われましたにつきまして、選挙と同じで、金だけでは当選しないのですねと新聞にきちっと書いております。私はここに持っておりますが、これはやや不謹慎と思われる外務大臣の発言としか私たちは思えないのであります。この点どういうようにお考えになり、なおかつこのマニラへの設置をどういうように反省されておりますか、どういう原因でこういうことが起こったとお考えになっておるか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  567. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 新聞の記事というものは、全局を伝えない場合があるのでありまして、向こうの質問によって答えた、その答えたのを新聞に記事を書くということになる。結局二億も出資をして取られるというのは一体どういうことだというようなたしか質問じゃなかったかと私は思いますがね。そこでそれに対する答えとしては、金だけでは選挙というのはうまくいくものじゃないということを言っただけであります。
  568. 玉置一徳

    ○玉置委員 その問題を追及するのではございませんが、いままで佐藤総理が内閣を組織されてから、日本の外交の柱は国連中心主義であり、自由陣営とのきずなを強くすることであり、かつまたアジアの一員としての責任を果たすことであるということを強く主張しておいでになりましたのは御承知のとおりであります。せっかくきょうまで椎名外相がその所管大臣として、佐藤総理大臣の外交方針をふえんしておいでになりましたのに、その一番頼みに思うアジア外交からそっぽを向かれたというのが今度の証拠だと見なければならないと思うのです。この機会に、いまからでもおそくないのでありますから、いままでのアジア外交というものは、どういうような間違いをおかしておったのか、どういう心がまえでこれからやっていかなければならないかという反省をぜひともしていただきたい。この点につきまして、佐藤総理から御所見をお伺いいたしたいと思います。
  569. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう日本は誤解を受けるようなことはないと思いますが、それにいたしましても、とにかくわが国民のうちにも日本の新しい行き方、さらにその目標などについて十分理解していない向きもあるようでございますが、戦後の日本というのはいわゆる軍国主義、あるいは帝国主義、あるいはいわゆる膨張主義、かようなものにはもう縁を切って、そうして今度はほんとうに平和に徹し、お互いに繁栄への道をたどろう、こういう平和国家として立ち上がったのであります。どうもしかし、このことは戦後におきましても、まだまだ理解が十分でないようであります。たとえば、経済的な援助をすると言えば、これは経済的膨張政策、いわゆる経済侵略をやるんじゃないか、かような疑いを持たれるとか、また技術的な援助をいたすにいたしましても、この国自身が科学技術を進めればまた再軍備をするんじゃないかとか、また過去の軍国主義に返るんじゃないかとか、日本自身がこれに疑いを持つようですから、外国の方が十分理解してくれないということもわからないではありません。しかし私どもは、真に日本の進む方向なり、またみずからがこれから打ち立てていこうというその目標をはっきり認識いたしまして、そうして各国の正しい理解を求めること、これがまず第一の問題だと思います。私は、日韓交渉ども戦後二十年かかり、そうして交渉を始めて十四年、はじめてでき上がったということも、その底にはやはり日本の真のあり方について十分韓国も理解してくれた、今度は経済協力をする、ほんとうに心から経済協力、このもとに自分たちも行く方向があるのだ、かようなことになったんだと思います。これが昔のように経済侵略というようなことがあったら、この妥結もできなかったと思う。アジアの諸地域につきましても、この考え方をもっとはっきりさす必要があると思います。どうも日本国民みずからが日本の行き方について疑念なり疑問を持つようでは、対外的に十分発展ができない、かように私は思います。今後ともわれわれの行く道が、真に経済協力あるいは技術援助、こういうことによって繁栄の道をお互いにたどっていく、そうして平和をもたらす、こういうことでありたいものだと、かように思います。大事なのは私たち自身だ、かように思います。
  570. 玉置一徳

    ○玉置委員 この際佐藤総理に、こういうことを御存じかどうかお伺いしてみたいのですが、南方諸国から日本に参りますのに、飛行機で二時間、三時間で参ります世の中に、無線電話は五時間、六時間というようにまだかかるわけであります。旧英領諸国はお互いに隣に接しておりますのに、それぞれ無線電話はロンドンに一応まいりまして隣に帰ってまいりますものでありますから、これまた相当な時間がかかる。こういうことで私が承っておりますのには、三千万ドルくらいのお金でもって、アジア各国が相互に一分間で通話のできるようにすることができるそうであります。しかもそれのマイクロウエーブは、日本が技術が一番優秀だと聞いております。こういう問題をやはりしてあげるような形にもっていっていただくようなことが、こういう事件が起こらないゆえんになるのじゃないかと承りましたので、私もしろうとでございます。ひとつ総理もいつかだれかに研究をさしていただきまして、何かおもしろい発想をお願いを申し上げたい、かように存じます。  椎名外務大臣にこの際ついでにお伺いしておくわけでありますが、非常に御努力いただいておりますアジア経済閣僚会議でございます。これは大体いつごろどういうようにして開かれるような手順になっておるのかどうか。しかも、これも今回のマニラに本店が持っていかれた経験にかんがみて、もう少しいろいろなところを考え直さなければならないところがあるんじゃないだろうかというようにわれわれ側面からも思いますので、お気づきの点、並びにこれの大体の運びをお知らせいただきたい、かように思います。
  571. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 東南アジアの数国は、大体自然条件等その他きわめて共通な基盤に立っておるものと思われます。産業にいたしましても、民族的に申しましても、その他の自然条件にいたしましても、非常に共通の基盤に立っておる。そうして、概して低開発国の域を脱しておらない。したがって、政治経済の面においてまだきわめて確固たる基盤に立っておらない。こういうことが東南アジアは流動的であるといわれるゆえんであろうと思う。この際日本といたしましては、憲法の制約ももちろんありますが、平和建設の面においてこれらの地域に働きかける。そして、日本といたしましては、これは年来のお得意の地域であり、貿易においても相当の率を占めておるのでありますけれども、最近は各国との日本に対する間においては、貿易がアンバランスであるので、これ以上伸ばすためには、日本が何らかの力を加えてこれらの低開発国の開発を助長するという必要がある。それがまたひいては政治的安定にもつながる。こういうことでございますので、この際東南アジア諸国に呼びかけて、そしてお互いの連帯的な意識を高め、そうして、どうすれば東南アジアがもっと繁栄するか、そういう方法につきまして忌憚のない意見の交換をするということから出発する。ただ他力本願というようなことでは、これは真の開発、真の繁栄というものを招来するゆえんではない。そういう意味におきまして、ひとつ自由に率直に話し合って、そして、われわれ自身によってその最も有効なる方法を見出す、そしてそれに協力するという形をまず整えることが東南アジア開発の第一歩ではないかということを考えますので、そういう趣旨におきまして数カ国に呼びかけておるのであります。特殊の政治的理由によってどうしても出席することをがえんじない国が二、三ございますが、他の大部分はきん然として参加する意思を表明しておるのであります。われわれといたしましては、この際日本が従来技術あるいは経済援助をやっておりますが、これをもう少し組織的に東南アジア全体に対して機構組織を固めて、そしてお互いの間に緊密な連携をとって共存共栄の道を開いていく、こういうことについて目下鋭意検討中でありまして、おそらく国会開会中でも、四月以降にその適当なチャンスを求めまして、東京においてさような会議を催したいという心組みでおるのでございます。
  572. 玉置一徳

    ○玉置委員 これにつきましても、ほんとうの意味のアジアの諸国が共存共栄の連帯の気持ちでこの場に臨むような配慮をぜひともお願いを申し上げたいのでありまして、いろいろと申し上げたいのですが、時間の関係もございますので、次の質問に移っていきたいと思います。  いま一つの問題は、日本がアジア・アフリカ諸国の支持を得まして、多年の念願でございます国連の安保非常任理事国に当選したことであります。このことは、敗戦後のわが国の外交史上画期的なできごとでございまして、それだけに責任のまた非常に重くなったことも事実だと思います。従来ややもいたしますと、国連の場におきましてアメリカの側に立つように皆さんにとられたところも必ずしも少なくなかったのではないか、しかしながらアジア・アフリカの一員としてこの場所を占めた以上、これからの自主的な外交のあり方につきましては、非常に責任の重大なことを総理もお考えになっておると思いますが、御所見をこの際承っておきたいと思います。
  573. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 玉置君御指摘のように、今回安保理事会の二年理事国になった、こういうことは光栄であると同時に、非常に責任の重いことを私ども痛感いたしております。かねてから抱懐するわが国の考え方を、この会議を通じ、この職責を通じて果たしていくつもりでございます。
  574. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこでさっそく出会ってくるのが、まずローデシア問題だと思います  椎名外相にお尋ねを申し上げたいのでありますが、世界の安全に対しまして、率先して責任を持つという態度が安保理事国としての当然の責務だと思いますが、さきにローデシアに対する経済政策が議決されました場合に、一番最後にこれに加わったのが日本であることは周知のとおりであります。今後、安保理事国として当然このようなことは許されないとともに、将来これがもし万一の場合、武力制裁にそのまま移行する可能性を持っておるわけであります。決してその可能性が少ないとは言えないと思います。いわゆる国連警察軍式の出動が十分考えられるわけでありますが、従来はいわゆる国連警察軍に対しましては、日本政府憲法のたてまえをたてにとりまして、軍隊の派遣を断わって、その他の道で協力してまいりましたことは御承知のとおりでございます。先般、七月の臨時国会におきまして、参議院の予算委員会で、稲葉議員の将来国連警察軍に参加協力する限界と申しますか、御質問に対しまして、椎名外相は、将来十分これは考慮すべき価値のある問題でありますから、十分検討いたしまして、次の通常国会までに統一見解を出しましょうということを約束されております。今日、国連の安保理事国となりまして、ローデシアの国連警察軍の派遣が現実の問題として議題にのぼる可能性が目の前の問題となってまいりました。政府は、安全保障理事会で議決がされ、この決議に基づいて警察軍の派遣を要請せられた場合、どう処理されるのか。さきに述べました国連警察軍への協力の限界の統一見解とともに、椎名外相からこの席上明らかにお答えいただきたいと思います。
  575. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ローデシアの新しい政権に対する制裁方法として、経済断交の方法によってこれに制裁を加えるということがとられておることは、御承知のとおりであります。わがほうといたしましても、従来ローデシアとの間にはいろいろ重要な貿易関係が設定されておるのでございますが、この国際世論の動向に従いまして、日本としてもこれに全面的に同調するという態度を目下とりつつあるような状況であります。  さらに進んで、実力によって制裁を加えるという点については、私はまだその点までは進んでおらないと考えておりますが、これらの国連警察軍というものを想定して、そしてこれに日本がどう協力し得るかというようなことにつきましては、かねてから法制局を中心にしてせっかく検討中でございますが、まだ確定的な結論が得られたとは言えない段階であろうかと思いますけれども、それらにつきましては一応憲法上のたてまえからの研究を、場合によっては法制局長官からお答えすることが適当であろうかと存じます。
  576. 玉置一徳

    ○玉置委員 法制局長官から、ただいままでの研究の中間の御報告をいただきたいと思います。
  577. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま外務大臣がおっしゃいましたように、国連警察軍の問題は、実はかねてから研究課題として検討をいたしております。しかし、結論的に申し上げますと、国連軍の形態というのが実はさまざまございまして、何でもかんでも国連軍ならいいというわけにまいらぬということは、明らかに申せると思います。たとえば、先ほども横路さんに申し上げたわけでございますが、国連の勧奨によりまして、各国が武装部隊を特定の国に派遣をして、その国の主権の作用として、つまりその意思と責任において武力を行使するということになりますと、これはどうも憲法九条があります以上は、ノー文句でよろしいというわけになかなかまいらぬと思います。しかし、同時にまたレバノンの例なんかがそうでありますが、他国からの武器の浸透というものを監視するために将校団が派遣をされる。それは武装部隊といわれるようなものではなしに、そういう将校団が派遣をされて、一定の作業に従事するというようなものは、これは自衛隊法上の問題はございますけれども、もし自衛官が行くということになれば、そちらのほうの問題がございますにしても、いまのようなことは憲法九条に違反するということには当たらないだろう。いろいろなケースがございますので、一がいに、一口にお答えを申し上げられないのでございますが、あらゆるケースに応じて、どう扱うべきかということをせっかく検討中でございます。
  578. 玉置一徳

    ○玉置委員 この問題につきまして論議をしておりますと一時間ほどかかると思いますので、次に移っていきたいと思うのですが、椎名外相にお伺いをしておきたいのは、この問題を、前に申しましたとおり参議院の稲葉議員にも、次の通常国会までにはほぼ統一見解を出すようにお約束をされておったことも事実であります。しかしながら、いまのお答えのとおり、むずかしいいろいろなケースがございますこともわれわれ承知できるわけでありますが、いつ何時このローデシアの問題が起こるかもわかりませんので、せめてそのときは、あまりまごまごしないで措置ができるような腹だけはおきめいただいておかなければ、ぐあいが悪いのではないか、かように思いますので、お願いをしておきたいと思います。  次に、同じく椎名外相にお伺いするのは、南アフリカに対する制裁問題でありますか。南アフリカの人種差別政策の非難決議案が国連総会の特別政治委員会ではかられましたときに、賛成実に七十八、反対一というAAグループの圧倒的賛成の中にあって、米英仏とともにこの決議案を棄権した。こうした態度はまさにAA外交に対する背反であり、なお日本の地位から申しましても、日本の外務省では、日本の国是が産業立国であるから、アフリカ諸国と共同行動をとる必要はないというようなぐあいで、アフリカ諸国の反感を買っておるとさえ伝えられております。さきの安保理事国への立候補に対しまして、アフリカ諸国の全面的な同調は得られなかった、最後まであぶない思いをさせられたというのも、ここにも原因があったと思わねばならないと思います。国際社会におけるわが国の地位がだんだんと高まってまいりますにつれまして、わが国だけが別行動をとり、わが国だけが実利を得るというようなことは、もはや許されなくなったのである。これはむしろ当然のことだと思いますが、南ア連邦に対してどのような措置をおとりになろうとしておいでになるか、外相から責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  579. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘のとおり、今回安保理事会の非常任理事国に当選いたしまして、従来よりも一そう高い立場に立って、国際問題に率先当面しなければならぬということになったのでございますから、この問題については、あらためて従来の考え方に対して相当な慎重な検討を加える必要があるということをわれわれは考えておるのであります。特に、今回はアジアの統一候補として当選したのでございますので、AAグループの一員として、十分にわれわれの立場を自覚しつつ、この問題に善処してまいりたい、かように考えております。
  580. 玉置一徳

    ○玉置委員 この二つの事件は、わが国はいままでややもするとアメリカの外交に追随してまいりましたわけでありますが、アメリカの追随外交だけではもうどうともならない段階に来ておる、こういうことを物語っておると思うのであります。佐藤総理のおっしゃいます外交の柱であります国連中心主義は別といたしまして、自由陣営の連携強化と、アジアの一員であるという、二つの異なる立場をどのように調和さしていくかということが、これからのわが国のアジアの外交の課題でありまして、そこにこそわが国のアジア外交の基調を見出さなければ、とうていやっていけない事態になってまいった、かように存じます。私たちがアジア外交を進めるにあたりまして、当面重大な関心事でありますのは、御承知のとおり、世界的な課題のベトナム問題、これの解決だと存じます。戦後、メーデー事件とかあるいは安保騒動というような種々の事件がございましたが、全般的に見まして、日本アメリカの両国民は非常に友好的な関係にあったと存ずるのであります。しかるに、ベトナム紛争が発生いたしまして、ここ一両年、わが国民アメリカに対する感情は日増しに冷却しつつある事実を、遺憾ながら認めざるを得ないのでございます。  ここで問題になりますのは、アメリカの対外政策でございます。自由と民主主義を防衛するためには死を賭しても戦うんだという、ある意味では非常にせっぱ詰まった、思い詰めた世界政策の基調、これが問題だと思います。共産主義も一種の教条主義でございますが、この思い詰めた、あるいは思い上がったアメリカの世界政策もまた一種の教条主義であると申さねばならないと思うのであります。ベトナムで負けますと、すぐにもアジア全体がいまにも赤化されるように思っておるのがアメリカの実態であり、いわゆる将棋倒しの理論というのがこれだと思います。自由と平和の名のもとにではございますが、ベトナムで毎日悲惨な戦争が続けられ、困っておるのはベトナムの国民だけであります。私のことばをもっていたしますれば、黒でないものは全部白だ。白でないものは黒だと、非常に割り切った、弾力性のない、硬直した外交がきょうまで続けられたのがアメリカのアジア外交であり、世界政策であったといわねばならないと思います。このアメリカの黒白外交と申しますか、将棋倒し理論、共産主義の力を過大評価しまして、一種の恐怖症におちいって、共産主義との対決は軍事以外にはあり得ないのだというような考え方におちいってしまっておるのがアメリカ考え方だと、かように存じます。この一種の教条主義でありますアメリカの外交が、わが国独特の反戦思想——あの悲惨な戦争に巻き込まれました国民感情として、二度と戦争に巻き込まれたくないという特別な国民感情とが相まちまして、アメリカに対する感情がここ一年冷却を続けておるのだ、かように存ずるわけであります。  さらに、アメリカの目から見ますと、東南アジアの諸国に台頭する民族主義も、共産主義の策動としか映らないのだ。そこに存在するものは、ベトナムに見られるような軍事偏重の政策にどうしてもなりやすいし、共産主義との対決という画一的な外交におちいっておるのが、世界の各地におきますアメリカの外交の姿だ、こう思うのです。このアメリカの態度が改まり、中共の好戦的な考え方が同じく改まらない限り、アジアに平和を招来することは非常にむずかしいのじゃないかということを、残念ながら肯定せざるを得ないのであります。わが国が中共の国連加盟につきまして重要事項指定方式の提案国になっているというような姿は、東南アジア諸国にとりましては、全くアメリカ追随者としてしか映らないのも、むしろこれは当然でございまして、みずからの好まないところを押し売りするものを、アジアの一員として感じてくれないのは、これまた当然のことだと思います。これが今日までのわが国のアジア外交の成果をあげ得なかった原因であるといわなければならないと思います。  アジア諸国の支援を得て安保非常任理事国になったわが国の立場考えまして、総理並びに外相は、今日までのわが国のアジア外交を反省し、今後どのようなアジア外交を展開されていこうとされるか、重ねて御所見をお伺いしたいと思います。
  581. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的な態度についてのお尋ねでございますが、私は、先ほど、日本あり方といいますか、戦後の行き方をひとつよく考えたいということを申しました。そうして日本自身が十分自信を持ち、われわれの決意したところを、これを東南アジア諸地域に対しましても理解していただきたいと思う。このことをまず第一に申しました。  第二に、つけ加えて申しますが、ただいまの国連中心の考え方、この国連で七つばかりの主義主張をはっきり述べております。その中には、民族主義ということがいわれ、あるいは反植民地主義ということがいわれ、また反帝国主義というようなこともいわれておると思います。そのもとにおいての平和を確保し、お互いが繁栄の道をたどろう、こういうことをいっておるわけであります。  ところで、ただいまの民族主義により独立していくと、お互いに競争する、それぞれの侵すべからざる領域があるのだ、かように考えますので、お互いの独立を尊重し、同時に内政に干渉しない、こういうことがお互いに繁栄していく基調ではないかということを申しておるのであります。また、ただいまお話しになりますように、日本はAA諸国の一員だ、そうするとAA諸国の各国々と仲よくすべきだ、かようなことも言われるのであります。この独立した各個々の国々は、国際協調によって初めてお互いに繁栄が遂げられるのだ、このことを忘れなければ、いわゆるAA諸国の一員であるというばかりでなく、同時に国際的な協調がいかに必要かということがよくわかってくると思います。私ども努力するのはその方向であると思います。別にアメリカに対しての考え方と対立するものでもなければ、また、言われるように、国連主義とこれが矛盾するものでもないように思います。そうしてわが国が、いわゆる反戦主義というわけでもありませんが、われわれは積極的に平和を愛好しておるわけであります。  その際にどうしても考えなければならないのは、わが国の安全確保、これは独立国、もうすべてが同じように、安全確保はいかなる方法によるのか、このことが一番大事な問題だと思います。お互いに平和を愛好し、繁栄するんだ、かように申しましても、みずからの安全が確保されておらなければ、どこにも平和もなく繁栄もないはずであります。先ほど申すように、お互いに独立を尊重し、お互いに内政に干渉しないようにしよう、かように申しましたのでは、ただそれだけでは積極的安全確保ということにはならないように思います。そこで、私どもが今日までアメリカと一緒に日米安全保障条約によってわが国の安全が確保されておる、そのことは、いかなる場合においても忘れてはならない、これをはっきり認識して、そうして先ほど来申すような主義主張でお互いに繁栄していく道をたどりたい、かように私は思うのであります。この点では、日米安保条約の庇護のもとにわが国の安全が確保されておる、かように考えますと、アメリカのいわゆる教条主義的な平和と自由——自由と平和を守る、こういうことについての批判も私どもとしてはできにくいような立場に実はあるように思います。ただいま玉置君は勇敢にもこの点を、これは教条主義的なものだ、共産主義国の共産主義に対する教条と同じように、自由と平和を守るというアメリカの教条主義もよろしくないんだ、かように聞き取れるようなお話でございましたが、私どもは、ただいまわが国の安全確保、この道は一体何でできておるのか、このことを十分認識して、しかる後に、先ほど来申すような国際協調のもとに、お互いに独立を尊重し侵さない、そのかっこうで繁栄への道をたどる、こういうことでありたいと思います。
  582. 玉置一徳

    ○玉置委員 佐藤総理のお述べになります安全ということもわからぬでもございませんけれども、私の心配いたしておりますのは、アジア・アフリカに対するわが国の外交方針といたしまして、自由陣営にあらざる者はすべてこれ敵であるという姿勢にまで入り過ぎてしまうと、これは問題ではないかということを先ほどからお願いをいたしておるわけです。アメリカがあのくらいばく大な費用を使いまして他国にサービスをしながら、案外もてないのは御承知のとおりでございます。これはあまりにも自分の一番いいと信ずる政体なり、いろいろなやり方を、まだいたいけない、せっかくこの間独立したそのままの、しかも経済的に独立の基礎も持たないようなこの国々に対して、無理に、あの民主的なやり方の高度なものをそのまま押しつけようとするところに無理があるのではないかということを私は述べておるのであります。そのアメリカに非常に似た形しか皆に映らないような外交の姿をしているからこそ、先般のマニラの問題が起こったのではないかというように、われわれは反省をしていきたいということが私のお願いであります。で、アジア・アフリカ諸国とこれからつき合っていかなければいかぬこの人たちと、ほんとうに佐藤総理のおっしゃるように、平等の立場でありますが、われわれがこれら後進国の方々の、やはり先ほどのお話のように、民族の自決と政体の自由というものはそのまま認めていきながら、しかもそれが共産主義であろうと、あるいは自由陣営の国々であろうとも、いずれも富の程度の低い、生活程度の低い国々でありますので、この人々の生活をどのように高めていくかということに協力をしていくことが、これからのアジアへのわれわれのサービスではないか、こう信ずるわけであります。  そこで、かくは申しますものの、私は、佐藤総理の言う自由陣営の一員であるそのきずなを強くするということに、決して反対するものではございません。イギリスが、アメリカの兄弟国でありながら、中共を承認し、ソビエトに対してもまたアメリカと違うニュアンスを持った外交を進めております。ときにはアメリカの行き過ぎを押え、あるいはまた他国との橋渡しをしながらアメリカをかばっておるという例を見習っていただきまして、アメリカはどうしてもアジアの風土に合わぬと申しますか、なかなかうまくよういかない場面が非常にやはりあるのではないか、それをアジアの一員である日本がとりなしてあげ、日本がサービスすることによって、またよきアメリカの友人になれるのではないかということを信ずるがために、このようにお願いをする次第なのでございます。  そこで、私の一番聞きたいことは、冒頭に申し上げましたとおりに、日韓の国交正常化を、日本の安全にとってもアジアの平和にとっても、これをほんとうに日本のためにプラスにするか、あるいはマイナスにするかは、佐藤内閣の日韓正常化に続く外交路線のいかんにあるという言い方をいたしましたのは、私は佐藤総理がソビエトに非常に御熱心と申しますとおかしいのですが、外交をお進めになるように手を打ちつつあることも非常に望ましいことだと思います。ただ、それが先ほど申しましたとおり、韓国、日本、台湾あるいはフィリピン、タイ国、こういうようにいたしまして、共産圏諸国とはますますみぞを深めるような立場に立ってものをやったのでは、これは対決をするということになります。対決ということは、どちらかを倒さなければ片方が安全であり得ないわけであります。かような意味におきまして、どこまでも私はアメリカに対しては自主でなければいかぬし、そうして共産圏諸国に対しては共存でなければいかぬ、この弾力性ある外交を続けていかない限り、どこかに大雪な間違いを起こすもとをつくるのではないかということを心配いたしまして、お願いをいたしておる次第でございます。  質問にもならぬようなことになりましたが、これにつきまして御所見を承りたい。
  583. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 玉置君のお説をいろいろ私伺っておりまして、私がいままで表現いたしておりましたいずれの国とも仲よくする、そのためにはお互いに独立を尊重し、そうしてお互いに内政干渉をしないことだ、いわゆるいずれの国とも仲よくする、この思想と通ずるようでございまして、私もたいへん激励を受けたような気がいたします。ただ、私がこの自主共存というこの考え方を進めていく上におきまして、一、二、玉置君もよくおわかりになっておることだと思いますが、やや私が誤解を持って聞いたかと思えるような点について私の見方も申し上げておきたいのは、ただいま米ソ両国がたいへん接近しておる、お互いに話し合うことによって今日の国際的いわゆる東西の対立あるいは冷戦がよほど緩和されておる、このことは非常にうれしい状態なんでありますので、いわゆる米国を、教条主義的に共産主義絶対排撃だ、かように考えることはいかがかと思う。この米ソ両国の関係をひとつごらんおき願って、アメリカもそんなかたくなな考え方はしておらない、また、私ども日本としてはいずれの国をも敵国とは見ておらない、敵視しておらない、いわゆる、ともどもに仲よくしていくのだ、このことをしばしば主張しておりますから、誤解はないだろうと思いますが、そういう意味で、今後とも自主共存、こういう形で私も進んでいきたい。だから、これは民社党が仰せられますが、私どものかねてのねらいでもありますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
  584. 玉置一徳

    ○玉置委員 この際、一言申し上げておきたいんですが、私は、佐藤総理がこの会議場におきまして、ついうっかりされましてか、どちらか知りませんが、しばしば、私は共産主義がきらいですとおっしゃいます。佐藤個人が家で子供に何をおっしゃっておってもいいと思いますけれども、一国の総理ともあろう者が、やはりこれはお慎みなすったほうがいいのではないか、かように思いまして、一言申し上げておく次第でございます。  そこで、いまの佐藤総理の御答弁によりまして、もう一つ進めておきたいのは、来たるべき一九七〇年の安保の改定に対処すべきわれわれの態度でございますが、これまた、先ほど申し上げておりましたような姿勢でなければならないんじゃないか。佐藤総理の姿勢、自民党の外交方針が、いままで申し上げましたような自主共存の立場に立っていただくことによりまして、初めて一九七〇年の安保の危機を打開することができると信ずるのであります。佐藤総理も、先般アメリカにお行きになりまして、ジョンソン会談におきまして、アジアの一員としての立場は、アメリカとニュアンスを異にするということをおっしゃったように聞きまして、非常にけっこうなことだ、こう思っております。その馬力でひとつアジア外交をぜひともお進めいただきたい。  最後に一言申し上げておきますが、中共政策でございます。ちょっとお気に召さぬかもわかりませんけれども、先ほど申しましたようなアジア・アフリカ諸国の立場に立ちまして、これから外交をやっていただくわけでありますが、来年の秋の国連総会におきましては、二度と——もうわかっておると思いますが、中共の重要事項指定方式のちょうちん持ちだけはぜひともやめていただきたい、このことは御答弁は要りませんから、ひとつ肝に銘じて日本国民の願いであるということをお考えいただいて、秋までまだ十分時間がございますので、各国とも十分御相談の上、私のこの提案を聞いていただくようにしていただきたいと思います。  いろいろと外交政策につきまして質問をいたしたいと思いますけれども、時間がございませんので、次の問題に移ってまいりたいと思います。
  585. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは別に答弁を求められたわけじゃありませんが、先ほどちょっとソ連訪問に言及されたようであります。この点は、誤解のないように、私、まだはっきりきめておりませんし、また、これも過日、他の機会にお答えしたように、私もいろいろあれやこれやと考えている思案の最中でございますから、これはきまったようにお考えにならないように願います。  それからその次に、私どもは、何としても総理の一番の責任は、やっぱりこの国の安全確保の問題であります。その意味におきまして、私どもが同時に与党ともともどもに、この国の安全確保について最善を尽くしていくという考え方でおることも御承知おき願いたいと思います。これが七〇年に対する云々の問題でもあります。  第三の問題は、しいて答弁を求めない、かように仰せられますので、お答えしないことにいたします。
  586. 玉置一徳

    ○玉置委員 それでは海運政策につきまして質問いたしたいと思います。  去る十一月二十七日から始まりました海運ストは、御承知のとおり十九日から第三波に突入するに至りました。おりから年末を控えまして、産業界や国民生活に与えるストの影響は、いよいよ深刻の度を加えてまいっております。しかも海運ストの特色といたしまして、ストック不足による経済界の影響は、スト解除後も相当長期にわたり影響するものであることにかんがみまして、私たちは一日もすみやかに労使双方の円満なる妥結を見ることをこいねがっておるものであります。政府もまた、この解決のためあらゆる努力を払われんことを切望してやみません。これに対します政府の決意のほどをお答えいただきたいと思います。
  587. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 海運ストの問題につきましては、たいへん国民の皆さま方にも御心配をおかけいたしておる次第でございますが、政府といたしましても、これが当初はストに入らないようにということで、労使に向かって、双方自主的に話し合いをしていただいて、ストライキに入らないで解決のできるようにと努力をいたしたのでございますが、御承知のように、ついに話し合いがまとまらずにストに入ったのであります。その後、船員中労委にあっせんを依頼いたしまして、今日せっかく努力中でございますが、船員中労委の方々の努力が非常に実を結びまして、一両日中には解決の曙光が見えてまいったような次第でございます。
  588. 玉置一徳

    ○玉置委員 今回の海員ストを通じまして、非常に浮き彫りにされてまいりましたことは、何と申しますか、非常なわが国の海運政策の不備でございます。  そこで、以下諸点の疑義をただしていきたいと思いますが、その第一は、再建整備臨時措置法に基づく整備計画基準の船員賃金のアップ率でございます。去る三十九年の四月、海運二法が生まれまして、それに基づく海運整備計画によりまして、三十九年から四十三年までの五カ年計画で集約会社を再建させることになりまして、その中に船員費の年率アップは五%から約七%と示されております。  したがって、労働組合の要求する賃金アップの原資がないし、また、海運整備審議会あるいは運輸省も、これ以上の賃上げに応じて三十九年を初年度とする再建整備計画を狂わせたときは、利子補給を打ち切り、新しい計画造船も認めないという意向を表明したということを、船主側がラジオ、新聞を通じて宣伝しております。これにつきましては、先般運輸省当局を招致してその真偽のほどを確かめましたところ、整備計画基準にいう船員賃金のアップ率五%というのは、あくまでも最低基準であり、賃金の決定は、当然労使の合意により決定されるものであって、海運局長通達をもって規定するものではございません。ましてや労働組合の賃金に応じ再建整備計画を狂わせた場合利子補給を打ち切るなどの意思を伝えたこともなければ、そういう話を聞いたこともございません、こういうことを確かめ得たのであります。このことは、テレビ、ラジオを通じ広く宣伝されたことでもありますので、非常に重要な問題でございますが、この場所におきまして、あらためて政府当局から、その真偽のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  589. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 整備計画の中で船員賃金の節約をいたしたような規定を設けておることはないのでございます。  それから整備計画の遂行の途中、今度の賃上げ要求に対して船主側が高いベースアップを承認した場合には、補助規定等を適用しないというようなことを政府として申し上げたようなことはございません。
  590. 玉置一徳

    ○玉置委員 それでは、次に用船料の固定化でございますが、これまた海運業再建整備臨時措置法におきまして、再建整備の期間五カ年と定めておりますが、これは用船料を据え置きしていないことは大臣も御承知のとおりでございます。これに対する海運局長通達も同様でございますが、ただ実際問題として集約後の用船料の実態を見ますと、ついその固定化が非常に顕著になっておりまして、諸経費の増加に見合う用船料の引き上げは、ほとんど不可能な実態でございます。オーナーの経営難がこの用船料の固定化に原因することからして、当局はこの面において実態を調査し、今後とも行政指導を強化して相互の合意により適正な用船料がで奉るように御指導いただきたい、かように存じますが、御所見を承りたいと思います。
  591. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 用船料その他のことにつきましては、海運局長から説明させます。
  592. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 整備計画における専属会社と中核会社との間の用船関係は、集約という趣旨によって五年間固定をするというたてまえになっておりますが、その料金である用船料を固定するというふうなものでないことは、ただいまの御質問のとおりでございます。  ただ、用船料はその船の運賃によるかせぎ高に応じて動くべきものでございまして、ただ単に経費の増高によってのみこれを動かすことはできない、あくまで商業的な立場で業者間で決定せらるべきものである、かように考えておる次第でございます。
  593. 玉置一徳

    ○玉置委員 次に、オーナーに対する新船建造ワクの確保についてでありますが、現状ではオーナーが計画造船に基づきまして新造船を行なうことが、ほとんど困難な状況になっております。政府はオーナーの計画造船に対する積極的な参加を促進するため、少なくとも優良オーナーに対しましては、新造船の機会を確保し得るよう必要な財政投融資等の助成を講ずる必要があると思いますが、運輸大臣はどういうようにお思いになるか。
  594. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 去年とことしで十二はいの造船を認めておるような実情でございます。
  595. 玉置一徳

    ○玉置委員 先ほど申しましたとおり、非常にきびしく少のうございますので、今後とも優秀なオーナーにつきましては、その機会を得るように御配慮をいただきたい、かように思います。  次に、内航海運に対する施策について二、三聞いてみたいと思います。  御承知のとおり、海上運送は国内輸送のうちに占める割合が実に四二%、非常に重要なのにかかわりませず、内航船運送業者は実に一万一千、船舶貸し業と貨物取り扱い業者がそれぞれ一千三百、二十トン未満のいわゆる一ぱい船主は六千七百、これは運輸省の海運白書の調べでございますが、かように多種多様な種類が雑多でございます。ことに三割近くがいわゆる二十トン未満の一ぱい船主というように聞いております。運輸省につきましていろいろなことを調べましても、その実態の把握が困難であるというのが現状でございまして、したがってこの国内運送の四二%を占めます内航船のいろいろな指導ができ得ないというのが行政の実態じゃないか、かように思うのであります。これらの内航海運は、いずれも船腹の過剰によります過当競争のために、ことに一ぱい船主の先ほど申しました家族労働による零細業者が数多く存在いたしますがために、それからもう一つ、国鉄の政策運賃によってこれは影響を受けるわけでありますが、こういうような関係で、数年前より運賃市況は全く低迷を続けまして、輸送のコストを著しく割っておるのが現状でございます。このようなぐあいで、最近は船員の充足も非常に困難となり、このまま推移いたしますならば、国民経済に重要な関係を持つ内航海運は、自滅を待つばかりであるというのが現状だと思います。いまにして急速にこれが危機打開の手を打たなければ、どうにもならなくなると思いますが、所管大臣であります運輸大臣の御所見を承りたいと思います。
  596. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 内航海運につきましては、玉置委員の仰せられますように、国民経済における重要な役割りを持っておるのでございます。玉置委員も仰せられますように、内航海運の輸送秩序の確立とか、あるいは内航船腹の過剰傾向等につきましては、いろいろ複雑な要因を内蔵しているのでありまして、こういう問題を解決するために、政府といたしましては、内航海運業法等を制定して努力してまいったのでございますが、過剰船腹の問題等につきましては、実効性のある方策を検討いたしまして、仰せられるような方向に向かって海運政策を進めてまいりたい所存でございます。
  597. 玉置一徳

    ○玉置委員 内航海運の過剰船腹に悩んでおりますこの零細な内航海運ですが、これの体質改善につきまして、一、二聞いてみたいと思います。  内航海運業者の実態につきましては、一ぱい船主から資本装備その他経営の態様が種々雑多でございますが、現在、先ほど申しましたように、運輸省におきましても、その実態がなかなか把握しにくいというのが現状だと思います。いずれにいたしましても、現在の船腹過剰を解消して、将来の経営の安定と内航海運の近代化をはかるためには、まずとりあえず免許制をしきまして、現在より多くしないということが、とりあえず当面必要なことだと思います。  それから、これも過当競争のためなかなか実効はあげがたいと思いますけれども、基準運賃の設定をいたしまして、セメント、石油、石炭、こういう国民経済上重要性の高いものにつきまして、船種別に許可運賃制を実施することを御検討いただいたらどうだろうか。  それから内航船の老朽船の買い上げにつきまして、先ほど申しましたように二万数千というほど数多いこれらの各種の内航船は、いずれも老朽船になっております。この老朽船を買い上げまして、これを解体し、あるいはその他低開発国等の輸出に振り向けると、こういう施策も同時に必要ではないか。これと並行いたしまして、代替新船の建造でございます。一万トンつぶしたら一万トンあるいは五千トン新船に建造する長期融資をする、こういう制度も現在おやりいただいておりますが、非常に金額が少ない。これを思い切って増額をしていただくようなお手配をお願いを申し上げたい、こう思うわけであります。  以上、まず、当面免許制を実施することによりまして、これからの実態を把握し、過当競争の根源をとりあえず押えるとともに、次は運賃の許可制を種目別に実施し、代替船の建造と、それからただいま申しました老朽船の買い上げというような措置をしていただきたいと思いますが、これに対する運輸大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  598. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 御指摘になりましたような幾多の問題がございますので、そういう問題をも含めまして、内航海運政策を十分検討いたしまして、強力に推進し、中小企業としての内航船舶の企業が堅実に進んでいくように努力をいたしたいと考えております。
  599. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで運輸大臣、最後にお願いをしたいのは、先ほど申し上げましたような幾多の手順を踏むことによって、将来の経営の合理化と船腹の過剰、経営の安定をはかることができますが、当面この過剰船腹をさばくことができないのであります。こういう意味におきまして、共同係船の早期実施ということがどうしても必要になってくるのじゃないか。これを実施しない以上、数年間を要するわけであります。先ほどの施策を思い切って打っていただきましても、なお数年の間かかるのじゃないか。この間が持てないというのが、現在の日本の内航運航業者の実態だと思います。かような意味におきまして、共同係船の即時実現できるような思い切った抜本的な政策を実施する決意があるかどうか。私の考えといたしましては、政府が、たとえばトン当たり一万円なら一万円の係船料の融資を行なう、これに見合ったトン当たり定額の出資もさす、これを基金といたしまして三カ年に八十億円程度の係船融資を計画的に実施する、こうして同時に、先ほど申しました係船をしてある間に、先ほどの老朽船の買い上げとか解体とか低開発国への輸出を促進していく、こういう施策をおとりにならないと、内航海運業界の経営の安定というものはとうてい望み得ないと思うのでありますが、中村運輸大臣のこれに対する決意、御所見をお伺いしたいと思います。
  600. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 共同係船の方法等もこれは一つ方法だと思いますが、内航海運政策についてはいろいろの複雑な点もございますので、十分検討して、前向きの政策を進めてまいりたいと考えております。
  601. 玉置一徳

    ○玉置委員 佐藤総理、ただいままで所管の中村運輸大臣にお伺いをいたしておったわけでありますが、事実日本——今度この機会にいろいろと勉強いたしてみましたところが、日本の内航海運の業界は現状の把握すら困難なほどむずかしい、混迷をきわめておるのが現状だと思います。したがって、先ほど申しましたような手順を踏みながら、しかも一応共同係船の融資を行なっておる間に、解体、買い上げ、輸出、新船代替、そういうようなことをやらなければ、先ほど申し上げておったような手続では十年河清を待つのじゃないだろうかというのが私たちが共同で勉強いたしました結論でございます。先ほど申しましたように、年末を控えまして大きな問題も起こっておりまして、非常にいろいろと御心配をしておいでになると思いますが、やはりこのこととは別に、日本の海運業の将来の繁栄と発展のために、ひとつ御勇断を振るっていただくように、心からこれは希望をしたいと思うのですが、御所見を承りたいと思います。
  602. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま海運ストライキについてのお尋ねがありました。政府はもちろん冷淡であるわけじゃございません。しかしながら、民間のストライキに対しまして、政府が関与するといいますか、干渉がましいことはしたくない、これは中立的な立場でございますから。さような意味においてこの成り行きを実は見ていたのでございます。しかしながら、職権あっせんその他、それぞれの法規の命ずるところがありますから、長期にわたって労使双方で非常に困るとか、ことに今回のものは、いわゆる一会社の争議というようなものでなくて、海運のゼネスト、こういうような意味のものでございますから、産業界に及ぼす影響がまことに大きい、こういう意味で政府もそのあり方と申しますか、これが仲裁の方法等についてもいろいろ苦心しておる最中であります。幸いにいたしまして、特に総同盟糸に特別な関連を持っておられる民社の方々も、早く何とかすべきじゃないかというようなお話が出ております。私は、今日までとってきた政府の態度は、これはその態度でよろしいのだと、かように思っておりますが、しかし主務官庁である運輸省におきましても、これを詳細に実情を把握しながら、絶えずその動向等にも注視しておるのでありますので、大体先ほど来申し上げますように、そのうち解決するのではないか、かように申しておりますから、しばらくその方向でまかしておくべきじゃないか、かように思っております。  しこうして、ただいま玉置君から海運政策の欠点とでも申しますか、あるいは弱点とでも申しますか、そういう点について詳細なお話がございました。私も、知り得た今日までの状況で、内航関係の船舶貨物運賃等について特別な考慮が払わるべきではないか。さらにまた、この過剰船腹七十万トンといい、あるいは八十万トンといい、あるいはもっと少ない数を言っておりますが、それらの船腹の処置等についても一つの示唆を与えられておるようでありますし、また海運再建方策としての立てましたいわゆるオーナー、船主の立場についても理解のある考え方を持っていらっしゃるようであります。これらのことは海運政策の充実、こういう意味におきまして、今回のストとはまた別に十分力を入れるべき事柄だと思います。ことにこの年末、最終になりましてストライキが行なわれ、そうして長期にわたっておりますので、越年等におきましても特に融資等においてめんどうを見るべきものがあるのではないか、かように思いますが、これらの点は主務省である運輸省におきまして、十分将来の対策を立てると同時に、今日の急場についても十分理解のある処置をとるようにいたしたい、かように考えます。——失礼いたしました。
  603. 玉置一徳

    ○玉置委員 次に、繊維産業の適正化の対策につきまして、三木通産大臣に質疑をいたしたいと思います。  繊維産業の構造改善につきましては、すでに繊維工業審議会で議論をしていただいておりまして、繊維産業の体質改善は、一言で申しますと、過剰設備の処理と企業の集約化であると思うのであります。過日東洋紡と呉羽紡の合併というようなニュースもこのことをさしておると思います。過剰紡織機をいかなる方法で廃棄していって、そうして経営の適正化、近代化をどういうふうにしてやっていくかということは、紡協、化繊協会、全繊同盟、その他からいろいろと案は出ておりますけれども、いまだに最終的な結論を得ておるわけではございません。通産省は、明後年すなわち四十二年度予算に間に合うように明年の秋ごろまでに結論を出したいというので、先般新聞にも発表になりましたような繊維産業適正化事業団というような構想をお示しになっておるわけでありますが、御承知のとおり、不況カルテルは明年の三月で切れます。それでいま御研究をいただいております適正化事業団は四十二年度の予算ということになりますと、これは実施が四十二年のどうしても十月ごろになると思います。この一年半というものが非常に大事なときじゃないか、こういうふうに思うわけでございまして、このつなぎをうまくすることによって、二倍、三倍の効果をあげるようなことが政治の妙手じゃないか、こういうふうに考えておるわけでありますが、通産大臣の御所見をお伺いしたい、かように思います。
  604. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御指摘のとおり、日本の繊維産業は相当なやはり過剰織機をかかえており、この老朽施設を破棄して、設備を近代化して、適正合併などによって適正の規模による体制を整備する、これが構造改善の方向だと思います。  そこで、各方面からいろいろな試案が出てきておるわけであります。こういう試案も参考にしながら、繊維工業審議会で夏ごろを目標に一つの小委員会をつくって、そして案をまとめてもらう努力をしてもらいたい、こういうように考えております。  その間に、御指摘のように、三月には不況カルテルの効力が失うわけですから、いま御指摘のように、本格的に繊維産業の構造改善と取り組むのは四十二年度の予算になるわけであります。その間が大事だということは御指摘のとおりで、何かその間に適当な方法はないかといっていま検討を加えておるところでございます。しばらくの時間をかしてもらいたいと思います。
  605. 玉置一徳

    ○玉置委員 最後に、大蔵大臣に今度の補正予算につきまして伺いたい。今度の補正予算は、一言で申しますと、公務員の給与のベースアップあるいは災害予算、食管会計の赤字、いずれも国民の生活に直結する必要なものばかりであります。なおまた、景気の刺激策、これまた非常に必要なことでありますが、いずれにいたしましても、この年末になりましてから、こういう必要なものに金を出しますが、金はもうすっかりなくなって赤字でございます。公債を出さなければならぬというて国会に持ってこられても、年の越せぬやつをいかぬじゃないかと言うこともできず、これははなはだ困ったものじゃ、こう思うのであります。  そこで私は大蔵大臣に質疑を申し上げておきたいのは、明年も在来のようないわゆる自然増というような財源は、ここ一、二年はあまり望んでも無理じゃないか、そういうことになってまいりますと、いままでのように、いつも大体補正予算に載る項目というものは同じであります。したがって、人事院のベースアップの給与財源でも、何とかして勧告の時期をくふうすることによっては、当初予算にある程度組み込むような方法があるのじゃないだろうか、食管会計の赤字においてもまたしかり、災害予算でございましても、大体過去五年間の平均値というものは出ておるわけであります。これも予備費とのくふうをすることによって、何かの方法があるのじゃないだろうか、あるいはまた、二、三年前やかましく言うておりました建設省なんかの公共事業の厳密な単年度主義を若干弾力性を持たすことによって、何かの方法考えられるのじゃないだろうかということが第一点であります。  第二点は、いかに注意をいたしましても、人間のことでございますので、景気その他の見込み違いがあって、またしかるべきだと思いますけれども、予算の執行につきまして弾力性を持たして、年に二回くらい、一つの関門で見通しの再検討をすることによって、予算実施に弾力性を持たしていく方法があるのじゃないだろうか、今後そういうことをひとつ今度の機会にお考えいただいて、そういう点も研究をしていただきたいと思いますが、これに対する大蔵大臣の御所見はいかがかということをお答えいただきたいと思います。
  606. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話全く同感でございます。  第一の単年度主義をどうするかという問題につきましては、そういう配意を今後特に強化していきたい、こういう考えを持っております。つまり今度の補正予算におきましても、債務負担行為という制度がある、これを大いに活用しようというので、昭和四十一年度の公共事業などの一部を昭和四十年度で契約できるような措置の御審議をお願いしておる。なお継続費でありますとか、あるいは繰り越しだとか、これは四十年度のものを四十一年度に繰り越していくという制度と、それから長期にわたっての契約ができるという制度とがあるわけであります。それらの既存の制度を大いに活用しまして、単年度主義に対して弾力性を与えたい。それから災害なんかにつきましては、予備費その他の方法で年度中に弾力のある運用ができるようにしたい。ただ給与だとかあるいは米の問題になりますと、あらかじめこれを予見して、どうのこうのというわけにはいかないと思います。そのとき、そのときの情勢によって対処するということかと思うのであります。  それから年度途中における支出をどういうふうに調整するかということにつきましても、これから実行上の問題として気をつけていきたい、かような考えを持っております。
  607. 玉置一徳

    ○玉置委員 質問を終わります。
  608. 青木正

    青木委員長 これにて玉置一徳君の質疑は終了いたしました。  次会は、明二十四日午前十時から開会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後十時三十一分散会