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1965-12-22 第51回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十二日(水曜日)    午前十時六分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 植木庚子郎君    理事 小川 半次君 理事 古川 丈吉君    理事 八木 徹雄君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    今松 治郎君       江崎 真澄君    大橋 武夫君       大平 正芳君    上林山榮吉君       川崎 秀二君    久野 忠治君       小坂善太郎君    櫻内 義雄君       重政 誠之君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    灘尾 弘吉君       丹羽 兵助君    西村 直己君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三原 朝雄君    水田三喜男君       石田 宥全君    大原  亨君       片島  港君    小松  幹君       高田 富之君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       野原  覺君    堀  昌雄君       山花 秀雄君    横路 節雄君       佐々木良作君    永末 英一君       加藤  進君  出席務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 中村 梅吉君         厚 生 大 臣 鈴木 善幸君         農 林 大 臣 坂田 英一君         通商産業大臣  三木 武夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         建 設 大 臣 瀬戸山三男君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 福田 篤泰君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  稲木  進君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    宮沢 鉄蔵君         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正雄君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         厚生事務官         (薬務局長)  坂元貞一郎君         食糧庁長官   武田 誠三君         通商産業省事務         官(企業局長) 島田 喜仁君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君         郵政事務官         (電気通信監理 畠山 一郎君         官)         郵政事務官         (郵務局長)  長田 裕二君         郵政事務官         (経理局長)  淺野 賢澄君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         自治事務官         (税務局長)  細郷 道一君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         専  門  員 大沢  實君     ————————————— 十二月二十二日  委員稻葉修君、川崎秀二君、有馬輝武君及び佐  々木良作君辞任につき、その補欠として久野忠  治君、橋本龍太郎君、片島港君及び玉置一徳君  が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)  昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)、昭和四十年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和四十年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三案を一括議題とし、質疑を行ないます。山花秀雄君。
  3. 山花秀雄

    山花委員 今国会における補正予算審議にあたり、日本社会党を代表して、おもに政治姿勢の問題と経済政策及び外交問題について質問をいたします。  十一月十二日午前零時十八分、日本議会制民主主義は死んでしまったのであります。あらゆる法規慣例を無視して、上程中の重要議題閣僚不信任案をほおり出して、抜き打ちに、だまし討ちによって日韓条約案件採決を強行いたしました。これを議会政治自殺行為と言わないで何と言えるでしょうか。これは翌日のあらゆる新聞の社説で批評しております。あのような状態強行採決が認められるといたしますならば、憲法改悪であろうが、核兵器の持ち込みであろうが、どんなことでも万歳と叫ぶだけで何でもできるということであります。これで国民議会政治を信頼せよと言っても、だれも本気にしないのであります。日韓条約の批准という目的のためには手段を選ばずというやり方は、全く世界一の反動政権といわれておる朴政権とちょっとも変わらない政権佐藤政権であります。田中幹事長は、今度のやり方は新例と称しております。こういう新例が既成事実になるとすれば、選挙が終わって多数党になったその瞬間から、国会審議が必要なくなるということであります。これは一般的な民主主義理解もないファッショの態度であります。議会制民主主義の根本的なあり方について、まず第一に佐藤総理所見を承りたいのであります。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山花君も御指摘になりましたように、臨時国会審議がまことに異常な状態であったこと、またそれについて私も率直に、まことに残念だと、かような表現をしばしばいたしてまいりました。しかしてこの問題も、前議長、前副議長あっせんにより各党各派におきましてりっぱな申し合わせができ、今後われわれはあの苦い経験、その反省の上に立って真の民主政治、真の議会政治を守り抜こうと、かように決意を表明しておるのであります。この点は、私も党の総裁として、ただいま忠実に実行に移すべきその段階だと思います。たいへんむずかしい問題であろうかと思います。しかしながら、事柄民主政治を守る、議会政治を貫く、こういうことでございますので、各党歩調をそろえ、十分成果があがるように今後も努力をいたしたい、かように私は思っております。
  5. 山花秀雄

    山花委員 従来たびたび、佐藤総理も御承知のように、たとえば警職法、教育二法案、破防法、安保、こういうときには、その事後処置として、必ず、善処いたします。さようなことは二度と繰り返しをいたしません、こういうような表現がなされておるのであります。しかし、何回も何回も同じようなことが行なわれるということは、遺憾千万であります。ただいま佐藤総理が、決意を表明されましたことを将来十分に違反しないと言う。そういう精神を貫いていただきたいと思うのであります。議会制民主主義とは、何よりも目的に近づくための手続、手段を重んずる政治理念であります。われわれはこの理念によりまして、議会民主主義を守ろうとするために、あえて一部の批判を顧みず抵抗をいたしました。かつて昭和四年、あなたの先輩である同郷の田中義一内閣当時、治安維持法に死刑を加えるという改悪案が上程されました。当時労働農民党所属の山本宜治議員は、強硬に反対をいたしまして、そのため右翼の暴力により暗殺をされました。その後日本政治はどうなったでしょうか。暗黒の軍人政治家によって、戦争戦争へと突入をいたしてまいりました。三百有余万人の不幸な帰らぬ人ができ上ってまいりました。また、戦時中の翼賛政治では、野党の動議もあるいは牛歩戦術もなかったことは事実であります。そのかわり、国会は軍部の思うままに支配をされまして、歴史の歯車に大きく狂いを生じたことは、御承知のとおりであります。近くは安保条約をめぐり、わが党の委員長浅沼氏が同じく右翼の手で殺されました。野党抵抗の強いとき、そのあとで必ず国の平和と安全がゆがめられるような状態であります。国の不幸が忍び寄っているのであります。野党が、ある場合は命までかけて抵抗するのは、単なる反対のための反対ではございません。国の運命が左右される、議会民主主義を守らなければ将来必ず国民が不幸になると判断をしておるからであります。こうした歴史の教訓を思い起こして、国家と国民の将来を考え、そのために絶対に議会民主主義をとうとぶことが大切であります。国会正常化を願うならば、この際、もう一度しつこいようでありますが、総理反省所見をお伺いいたしたい次第であります。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおりでございますが、この前議長あっせんをいたしまして各党申し合わせをいたしましたことは、言論の自由を尊重すること、同時に少数党意見も尊重すること、さらに物理的抵抗は一切しないこと、こういう申し合わせをいたしております。私は、この申し合わせでただいまの問題の要点は尽くされておることだと思います。しかし、ただいまも御指摘になりましたように、少数党が最後まで絶対に自己主張を通す、こういうことであると、ただいまのような事態もしばしば繰り返される。こういう点もルールをやはり守っていく。ルールは何か、やはり多数決の原理じゃないか、かように私は思いますので、こういう点が、いま申し合わせをしてようやくスタートしたその際でありますだけに、この申し合わせに忠実に、成果をあげるように一そうの努力をすることをこの際に重ねて申し上げまして、与野党ともに、ただいまの申し合わせを有効ならしめる、成果をあげるように一そう努力を願いたいものだ、かように思います。
  7. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの各党申し合わせにより、言論の自由の確保を十分尊重する、少数意見をも尊重する、私はこのことが守られますと、物理的抵抗というような問題は起きないと思うのであります。この点をひとつはっきり将来守っていただきたいことを要望しておきたいと思います。  なお、議会制民主主義を破壊するのはだれであるかということをわれわれは考えてみたいと思うのです。政府与党は、議事妨害をした野党を非難しております。野党は、強行採決をした与党の責任を問うておる。結局問題は水かけ論であります。あと既成事実だけが残っていくのであります。そうして、国民議会を信用せず、政治不信になってきておるのであります。総理態度は、われわれも悪いが野党も悪い、そういう立場で、ただいま各党申し合わせをしたからこれからはだいじょうぶだということを言われております。これは、往々権力を持つ側にひとつの既成事実をつくり上げることを許しておるというのが、従来の慣例になっておるのであります。われわれも、減税政策とか住宅政策等はどっちを先にするか、あるいは道路整備を先にするか、こういうような政策問題については、議会多数決できめると考えております。しかし、憲法の基本に直接触れるような問題、こういう大きな問題では、右の公式論は私は当てはまらないと思うのであります。国会を二分するような重大案件については——議会制民主主義の究極のにない手は国民であります。安保問題とか日韓問題とか、与党野党が絶対に妥協を許さない、きびしい対立をした場合には、これを決定するのは最高主権者国民以外にないと私は信じております。したがって、当然国会解散して国民の信を受け、それからやるべき性質のものであると思いますが、この点、総理はどう考えておられますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山花君も議会のベテランで、私がかようなことを申し上げる要もないと思いますが、いままでも、国会におきまして議案が審議され、修正され、与野党の間において話し合いがついたもの、これは非常に多いと思います。私はその数をはっきりは申し上げませんが、修正案件は非常に多い。こういう点で、私ども少数党意見も特に尊重しているということ、これはよく御理解がいくだろうと思います。また、かような方法でしばしば両党が話し合いを遂げております。ところが、ただいま御指摘になりましたような基本的な問題になりますと、絶対に相いれないという、これは一体どうしたことでしょうか。各政党は、それぞれの主義政綱を掲げております。だからこそ独自の政党の存立の意義があるわけであります。もしも同じようなことであるならば、独立した政党とは言えなくて、それは一緒になったっていいはずであります。ところが、ただいま申し上げるように、主義政綱が違っておる、そういう意味でこの各政党独自性というものがある。その問題に触れれば、これはどうしても意見が対立する、絶対相いれない。ただいま御指摘になりましたとおり、おれのところの主義政綱、それに反するものは絶対に相いれないのだ、こういうことであります。そういう問題にぶつかった場合に、いつも問題を引き起こしておる。私ども反省をしなければならないのは、こういう点だと思います。そうして、そういう場合、ただいま御指摘になりますように全部解散をして国民にその信を問う、こういう道を歩め、こう仰せられますが、私は、そのことは国民が非常に迷惑をすることではないかと思う。各政党がそれぞれ選挙を積み重ねてまいります場合に、自己主義主張、これが理解のもとに国民に訴えておると思います。あらためての問題ではないと思う。だから私は、国民とともに、また国民のために政治をするのが民主政治であり、議会政治だ、かように考えておりますので、国民が迷惑をするような事柄は避けたいと思う。ただいまは一体どういうときなのか。ただいまは経済的な不況を克服すること、政治的なブランクはこれは許せないときだ。国民のために、国民とともに政治をする、その態度であってほしいと思います。あえて私は、過去の選挙によって各党の分野、支持はきまった、かようには申しませんけれども、そういう点も十分御勘案を願い、解散という問題はそう簡単に扱うべきことではない、国民が迷惑をするようなことは、われわれ政治家は避けるべきだ、かように私は思います。
  9. 山花秀雄

    山花委員 ただいま総理答弁を承っておりますと、経済的な不況問題の克服が非常に大切である。その点は、臨時国会劈頭にわが社会党も強く主張しておりました。七十日の期間では、与野党が激突すると予想されておる日韓問題の審議日数としては短いという観点に立ちまして、臨時国会補正予算だけにとどめて、当面する災害対策、人事院の勧告の給与ベースの問題、あるいは中小企業不況対策、物価問題、こういう問題だけを中心にやれと強く主張していたことは、総理も御承知のとおりであります。七十日の期間ではこの問題は解決できないと、私どもは予見して主張してまいりました。七十日という期間が短いがために、御案内のように議員言論を十分に制限したり、五分に制限するという苦肉の策に自民党諸君は出られたのであります。当然これは百五十日の日数を予定される通常国会で、社会党の言っておりましたようにやれば、こうした不祥事はできなかったと私は考えておりますが、総理の見解いかがでございますか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま過去の問題について、私は深く反省をしておるのであまり触れたくはありませんけれども、新しい申し合わせをした際でありますから、前向きの姿勢でこの問題と取り組みたい、かように申しましたが、山花君からたって臨時国会のいきさつについて触れられて、またそれについて所見を聞かれますので、私お答えをいたしますが、当時社会党方々は、経済問題を中心にして臨時国会を開けと言われました。そうして七十日の会期は要らないと言われた。もっと短い会期でよろしい、こういうことを言われたと私は記憶いたしております。またこの七十日の会期が、私どもはどうももっと要るのではないかと思いましたが、社会党は短い会期を要望されておるから、その辺でようやく七十日がきまったと思います。その際に、社会党方々は、日韓問題よりも経済問題を先にやれ、こういう強い御要望であったと思います。私は、国会というものは各委員会が並行してしばしば審議を行なうところでございまするし、一委員会だけで事柄が終わるものでもない、かように思っておりますので、もしもこれが、国会がうまく審議を続けていくならば、並行して審議をすることによりまして、すべての問題が、いま当面しておる重要問題は解決を見たのではないか、かように私は思います。しかし、ただいまとやかく申しまして議論を紛糾さすことは、私の真意ではありません。せっかくただいま申し合わせをいたしまして、前向きで、今度はこういうような問題を起こさないようにしよう、かように実は申しておるのでありますから、そういう意味で、過去のいろいろのできごとも、われわれがもちろん考えていかなければならない反省のその材料にはいたしますが、どうか前向きの姿勢でこれらの問題も取り上げる、こういうことであってほしい。これを心からお願いをいたします。
  11. 山花秀雄

    山花委員 反省の結果、十分に言論を尊重してやる、まことにけっこうな御意見でございます。あの期間で並行審議しておれば、経済問題も解決したのではないか、総理はこういわれておりますが、並行はいたしておりません。自民党諸君は、もう頭のてっぺんから足の先まで日韓日韓で、日韓だけをやったのじゃありませんか。ほかの委員会は、社会党からずいぶん追及してまいりましたが、開こうといたさなかったことは、これは事実であります。この点は、総理も十分反省していただきたいと思います。  なお、今後は各党間の申し合わせにより十分言論を尊重する。補正予算は、単なる補正予算では今度はないと思います。非常に重要な問題が内臓しておる補正予算でございますので、私どもは悔いを残さないように十分審議をしたいと思う。ところが、伝え聞くところによりますと、審議のいかんにかかわらず、二十六日までには絶対強行採決であげるということが話し合われたというふうに承っておりますが、さような事実があったかなかったか。こたは総理が一番よく知っておられるところでありますから、一言承っておきたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の補正予算がまことに重大な意義を持つ、かようなお話が各方面でいたされております。確かに今回の補正予算は重大な意義を持つものだ、できるだけ早くこれを成立させたい、かような意味合いにおきまして、各党とともどもに十分この審議等方法、また大体どの辺をめどに審議を終えるか、こういうようなことも、十分相談をしたつもりでございます。そういう点がいわゆる申し合わせの線、各党において言論を尊重し、特に少数党意見も尊重する、こういうような点から話になり、またただいま強行採決云々と言われますが、こういう点を申し合わせをしたばかりで乱るようなことでは、これは成果があがらないということにもなりますので、そういう意味で、ことに社会党方々物理的抵抗をしないような方法、それは一体どうしたらいいのかというようなことで十分相談をされたようでございます。私は、国会あり方がこういう相談の方向でいくということは非常に望ましいことだ、かように思っておる次第でございます。
  13. 山花秀雄

    山花委員 強行採決はしないというふうに承ってよろしゅうございますか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 強行採決、これは私どものことでなくて、当委員会の問題でございますから、委員会において十分御審議を願いたいと思います。
  15. 山花秀雄

    山花委員 議長、副議長が辞職をされました。そのとき議長の述懐といたしまして、与党自民党から強要されたということを発表しております。すべて議会でやるべき問題でございますけれども因果関係は、与党から出ておる議長、副議長であり、現在そこにおられます青木委員長も、党籍ある自民党の党員であります。したがいまして、単に国会委員会だけの処置ではなかろうと私は思います。その出身母体である自民党諸君から強要がなければ、青木委員長もそういうようなことはやらないのではないかと私は信用しております。こういう因果関係がございますので、総理の所信をただしただけであります。  日韓強行採決につきまして、一つ内外批判がたいへんきびしいということを総理も知っておられると思いますけれども、この際、輪をかけるようでございますが、一応申し上げたいと思います。  この強行採決を前にして自民党は、党の首脳を個別に有力新聞に訪問させまして、何ぶんよろしくとのあいさつをされたといわれております。用意周到にマスコミ対策をやったつもりでいらっしゃっただろうと思いますが、採決の結果、各紙は自民党政府を袋だたきにしていたことは御承知のとおりであります。大新聞の毎日新聞は、遺憾な自民党採決といい、同じく朝日新聞は、自民党の暴走を指摘し、さらに読売新聞は、議会政治の危機と叫んでおります。その他多くの新聞の例をここで披瀝するまでもございません。経済雑誌のエコノミストは、兄貴の岸元首相韓国の朴君よりぼくのほうが手ぎわよかったぜとばかりに首相の得意そうな顔が見える云々と言って皮肉っております。しかし、国民支持はいよいよ失われていくことは、忘れてはならないということを御忠告申し上げたいと思います。  朝日の世論調査は、佐藤内閣支持率内閣成立当時は四七%でありました。この八月には三七%と大きく低下をしております。日韓国会の十二月にはおそらく三〇%近くまで下がっているだろうと思われるのであります。今日の議会政治あり方について国民不信感が強いので、あるいは支持率がさらに低下するかもしれない。佐藤総理は、現在国会解散に踏み切らないのは、実にこの国会のきびしい批判によって自民党が大敗する可能性がある、東京都議会のようなことを頭の中にお考えになって、解散回避の御答弁をなすっていらっしゃるんじゃなかろうかと私は思います。人もまたそう言っております。要するに、党利党略のために解散できない。ほんとうにもし議会政治を守り、民主政治のたてまえを貫くというんだったら、これほどまで国会を空転させ、かつて例のない予算案の不成立、日本国会始まって、戦前の帝国議会から戦後の民主国会民主国会は五十回の国会でありました。政府が提案した予算案が廃案になるということは空前絶後であります。こういうようなていたらくの問題で辞職もできないし、解散もしないというようなことでは、一体どうして民主主義政治の本質を守ることができるんでございましょうか。私は、佐藤内閣予算案の廃案によって責任政治を感ずるならば、当然辞職をしてあとの内閣に処置をまかせるべきであると考えるのが民主政治の本道と思いますが、総理は一体どうお考えになっておるか、御所見をお伺いしたいと思います。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日も本会議の席上におきまして、総辞職あるいは解散ということを強く要求されましたが、私はそれにもお答えいたしましたように、私どもただいま当面している課題、国民から託されている課題、この重大な経済の立て直しという問題があります。これと真剣に取り組むというのが私の考え方であります。また、解散は、先ほどもお答えいたしましたように、国民が迷惑するその形のものはいたしたくない、かように申し上げておるわけでございます。
  17. 山花秀雄

    山花委員 私は、政治姿勢についてこれより以上追及はいたしませんが、責任政治民主主義の一つの本質であることだけは十分わきまえていただきたいと思います。  次に、憲法問題についてお尋ねをしたいと思いすまが、ベトナム戦争がアメリカの強硬な態度からいよいよ拡大をされております。さらに拡大する気配がうかがわれておることは御承知のとおりであります。このため、流動的な国際情勢がさらに急激に大きく変化を遂げるだろうといわれております。こうした戦争の緊迫した状況の中で、アメリカの原子力潜水艦が相次いで佐世保に入港し、二十日には原子力航空母艦が多くの護衛艦を連れて入港しております。まるでアメリカの軍港を見ておるようだと新聞記者は述べております。日韓条約の批准書が交換されたとたん、まるで日本がアメリカの軍事基地になったようだと、こういう印象を外国の人々は言ったりしておることは、これはいなめない事実であります。事実日本の各地にアメリカ軍の基地があり、それが一そう質的に強化されております。アメリカ艦隊の佐世保入港は、日韓条約の軍事的側面をはからずも国民に見せたようなものだと国民は信じております。  伝えられる報道によれば、近く横須賀に入港するだろうといわれておりますが、総理はこれを知っておられますか。もし横須賀に来るとするならば、国民の不安をいっそうかり立てるだろうと思うのであります。いたずらな不安だけで必要がないものを、きっぱりこの際断わるのが政局をあずかる総理のとるべき態度と考えますが、総理はこれらの問題についてどういう態度をおとりになるか、この際伺っておきたいと思うのであります。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 横須賀に入港するとか云々のことは聞いておりません。
  19. 山花秀雄

    山花委員 もし来るような場合があれば、東京を控えた玄関口でございますし、断わる所存があるかどうかということを聞いておるのであります。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、そういう事態が起きたときに私の考えを述べます。
  21. 山花秀雄

    山花委員 そういう事態が起きたときに考えるというばく然たる御答弁でございましたが、断わる考えであるか、イエスと言う考えであるか、その点はただいま言明できないのでありますか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう事態が起きたときに私の考えを述べますと、かように答えております。
  23. 山花秀雄

    山花委員 私は、国民の不安を除くために、そういう事態が起きたら断わるとはっきり答弁をしていただきたかったのでありますが、それは言わないところに大きな含みがあろうと思いまして、国民はなおさら不安を高ずるということだけを申し上げておきたいと思います。  前国会に参議院において、総理はわが党岡田宗司君の質問に対して、憲法の平和主義は守るけれども、第九条を将来も一字一句も変えないとは約束できないと答えておられます。これは一体どういうことを意味しておるのでありますか。将来第九条を書きかえることを考えておるのでありますか。国民にはっきりわかるようにひとつお答えを願いたいのです。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自由民主党の政綱、これに掲げておる憲法に対する態度、これは御承知だと思います。私も自民党の党員でありますから、この綱領には私も忠実であります。しかして、そういう意味からしばしば尋ねられるのでありますが、憲法を改正するのかしないのかということでございます。私は、ただいますぐ改正する、かようには考えておりませんから、しばしばそのことも申し上げたのであります。しかして一番大事なことは、憲法の規定しているその平和主義だ、このことは私はどんな機会がありましても変えない考え方でおります。したがって、その文句自身がどういうようなことになるか、これはいろいろそのときの問題だろうと思いますが、ただいま変える、そういう趣旨であの答弁をいたしたわけじゃありません。置かれておる自民党党員としての発言をするその範囲内において最も忠実な話をしたわけであります。しかし、ただいま具体的にこういう検討をしておるとか、こういうものでないことは、誤解のないように申し上げておきます。
  25. 山花秀雄

    山花委員 憲法の中核をなしておる平和主義だけは絶対に守っていきたいのだという、この中核になっておる平和主義というのは、これはどなたも御存じのように、憲法第九条であります。その九条を絶対守っていく、こういうように御答弁あったと理解してよろしゅうございますか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりだと思いますが、九条の精神、これは私は守り抜く、かように申しておりますので、誤解のないように願っておきます。
  27. 山花秀雄

    山花委員 一方では平和主義を絶対に守る、こう言われております。しかし、一方では、第九条を書きかえることについては明確な御答弁はございませんけれども、平和主義を絶対守るということで、また九条の精神はそうだという御答弁がありましたから、この問題はまたあとの論議に私はしていきたいと思います。  平和主義を守る以上は、私といたしましては、第九条の書きかえは不可能であると考えております。こんなことは、もしできるとしたならば、これは奇術師か魔術師でなければ私はできないと思います。もしこれをやったとすれば、詐欺師のやることであります。平和主義を守り、第九条の書きかえということは、具体的にどう書きかえるということを私は問いたいと思いましたが、第九条の根本精神だけは絶対守る、こうはっきり言われておりますので、それはそのまま信用していきたいと考えております。  さらに、参議院の質疑の中で、わが党の伊藤顕道君、稲葉誠一君の質問に対して、高辻法制局長官は、自衛の目的と限度に沿った核兵器ができれば、それを持っても憲法違反にならぬと答弁をしております。総理もそのとおりだと言明をしておられます。一体自衛の目的と限度に沿った核兵器とはどういうものか、総理の御見解を承りたいと思います。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの点が問題だと思いますが、議論の問題としてそういうことを考えるということがあったと思います。たしか速記録に載っているだろうと思いますが、この点か実は大事なことなんで、高辻君の言っているのは、これは議論の問題だ、理論的にそういうことが可能だ、しかし政治的にそれじゃそういうことを考えているのか、かように言われると、私は考えてないんだ、かように答えたと思っておりますので、その辺は誤解のないように願っておきます。
  29. 山花秀雄

    山花委員 理論は単なる理論としていつまでも存在するものではございません。理論はやがて実践化するというのが理論の本質だろうと思います。そういう点はいかがでございましょうか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのように、議論で許されるものなら政治的にも可能だ、こういう御心配がおありで、それをお尋ねのようですが、私はその点にもつけ加えて、政治的にはさような問題を考えてない、かようにはっきりお断わりしたはずであります。したがいまして、その誤解はないようにしていただきたいと思います。
  31. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの答弁では、理論は肯定しておられるけれども政治的には考えない、何かちぐはぐな御答弁と承っておりますが、この点は、私はまた他の同僚議員からもいろいろ質疑があろうと思いますので、了解しない点で総理答弁を承っておきたいと思います。  それでは、私のほうから具体的にひとつ聞いていきたいと思います。  いま、東京周辺や福岡には、ナイキアジャックスが配置されております。これは核弾頭を装備できないが、第三次防衛力整備計画では、核弾頭の装備のできるナイキが配置される予定だといわれております。そこで、総理にお伺いしたいのでありますが、この核弾頭を持つナイキは、自衛の目的と限度に沿った核兵器なのか、あるいは自衛の限度を越えた核兵器なのか、いずれにお考えになっておるか、御答弁願いたいです。
  32. 松野頼三

    ○松野国務大臣 第三次防の計画はまだ検討中でございまして、山花委員の言われるような前提で御質問でございますが、まだその段階までいっておりません。ただし、御承知のごとく、核については、今日議会の意思表示というのがございます。したがって、それを守ることは当然でございます。
  33. 山花秀雄

    山花委員 ただいま検討中と防衛庁長官が答えられましたが、いかなる操作によるいかなる形においても、核兵器はわが日本には絶体持ち込まないという従来の方針を堅持していかれるかどうかという一点について、明確に御答弁願いたいと思います。
  34. 松野頼三

    ○松野国務大臣 絶対に堅持いたしております。また、今後も堅持いたします。
  35. 山花秀雄

    山花委員 現在のナイキアジャックスは、発射装置が、核弾頭をつけたナイキでも、両方使用できるようなものであります。それだけに、政府がその気になれば、いつでも核兵器が使用できるのであります。アメリカは、現在盛んに地下核実験をやっております。すでに大砲から核弾頭を発射する原子砲ができております。この原子砲の場合に、自衛の目的と限度に沿った核兵器なのかどうか、お伺いしたい。こういうものをも一切入れない、そして、操作のできるナイキの両面使用も絶対しない、さようなことは絶対やらない、こう確信を持って御答弁できるかどうか、ひとつはっきりしたことを言っていただきたいと思います。
  36. 松野頼三

    ○松野国務大臣 防衛力というのは相対的なものでございます。ただし、日本の場合は、その意思によって、核弾頭、核装備というものは、一切自衛隊はいたしませんということが基本であって、兵器の種類とかどうだとかいうことは、これは付随的なものである。また、これは日進月歩ですから、今日の議論が永遠なものじゃございません。ただ、私が今日言えることは、核装備、核弾頭というものは、わが自衛力の今日の計画にはないということを明確にしておけば御不安はないのじゃないかと思います。
  37. 山花秀雄

    山花委員 日本に各所に散在しておるアメリカの軍事基地がたくさんありますが、アメリカがもしそういう装備、装置を日本に持ってきた場合に、これは日本の自衛隊じゃないから、日本のいわゆる防衛力ではないから、アメリカの場合にはやむを得ないというような、そういう消極的な処置をおとりになるのですか、アメリカの軍事基地内といえども絶対持ち込んでもらったら困るという政府の意思表示ができるのかどうか、この際お伺いしておきたいと思います。
  38. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日本の領土内において、核装備、核弾頭というものを持ち込んだり装備したりする計画はございません。
  39. 山花秀雄

    山花委員 少し議論が混迷してまいっておりますが、原子力潜水艦が佐世保にちょこちょこ入ってくるということは、日本の領海内に原子力、核兵器が入ってきたとわれわれは理解しておりますが、これはどういうことになるのでございましょうか。
  40. 松野頼三

    ○松野国務大臣 原子力を燃料として使う、推進力として使う、エネルギーとして使うということは、これは世界の科学技術の進歩による問題であります。ただいまの議論は、装備の問題、兵器の問題の話だと私は思います。したがって、核装備、核弾頭というものを日本の自衛隊において今日持ったり、安保条約の違反をするという現実は、今日米軍といえどもございません。
  41. 山花秀雄

    山花委員 しつこくお尋ねいたしますが、沖繩のいまアメリカが使用しておる軍事基地には、さような種類の兵器は一かけらもないとお答えできるのですか。
  42. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日本の今日行政権、施政権というもののある範囲をただいま議論をいたしております。その以外のことにつきましては、われわれは外国の軍事の装備、内容、配置というものを知る由もございません。また議論することは、おそらく議論であって、現実にこれを言うことは、私はわからないと思います。
  43. 山花秀雄

    山花委員 さよういたしますと、沖繩の施政権がアメリカにある限り、あの場所においては、日本政府としてはいかなる兵器の持ち込みがあるかわからないということでございましょうか。
  44. 松野頼三

    ○松野国務大臣 配置、兵備、装備をわれわれが明確に知るということは、これは世界じゅうできません。ただし、いろいろな政策あるいは協定、条約の精神によってその方向を知ることはできますが、配置、装備、内容があるとかないとかいうことは、これはおそらくアメリカ軍でも私はできないのじゃないかと思います。したがって、われわれ日本人にこれがあるとかないとかということを明確にしろと言うほうが、これは私は軍事上むずかしい。ただ日米間において接触して日本が方向を知り、そしてその間においてわれわれが推察し、相手のことばを信じるということによって、この問題があるかないかを判断する以外ございません。
  45. 山花秀雄

    山花委員 そういたしますと、これは安保条約その他いろいろな国際的な関係、その他いろいろな点で兵器の極秘のことはわからないから、持ってきておるかもわからないし、持ってきていないかもわからない、それは相手国家の戦略的な立場から日本政府としてはわからない、こういうことでございますか。
  46. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日本政府が言うべき立場ではないということであります。
  47. 山花秀雄

    山花委員 言うべき立場でないという点は、私は少し脆弱だと思うのです。本来はわが国の領土であります。講和条約によりまして極東の平和が確保されますと、当然日本に返還されるべき領土であります。あそこに住んでおる多くの日本国民がおるのです。こういうところに、日本の国をあげて禁止をしておる、反対をしておる核兵器だけは絶対持ち込んでもらったら困るというだけの意思表示は、私は政府はできるのではないかと思いますが、こういう意思表示はできないのですか。
  48. 松野頼三

    ○松野国務大臣 言うべき立場ではないという日本語の意味が、少しお互いに意見が違っておりまして、言うべき立場ではないというのは、核兵器がないと言明する権威とその立場ではないという意味であったのです。あるいは、あるとかないとかいうことを言明する権威は、今日私はないと言っただけで、ただいま言うべき立場というのはそういう意味で申し上げたので、山花さんの言われることは、それを主張することは自由ではないか。これはまた政治的な意味で、私の答弁が少し日本語のことばが違っておったと思います。
  49. 山花秀雄

    山花委員 そこではぐらしてもらっては困るのです。そういう主張をやる意思があるかどうかということを言っておるのです。それをはっきり御答弁願いたいのです。
  50. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日本政府として言うべき状況と言うべき立場に立ったときは、それは日米間ですから言うことは私はあり得ると思います。しかし、それはその状況判断であって、常々米軍の装備についてわれわれが発言をしたりどうするということは、やはりアジア全般、極東全般の軍事情勢によってこれはきめることだと私は思います。したがって、言うべき権限があろうがなかろうが、言うべきときは日本政府は言っております。つい先般いろいろなものが飛んできたことがあります。これは、安保条約の範囲内においては当然日米間の権利と義務であるかもしれません。しかし、国民感情の中でこれを主張することは、すでにわが佐藤政府はつい最近遠慮なしに言ったこともあります。そういう意味では、権利とか義務じゃなしに、国民の立場で、政府が言うべき立場において言うことはあると思います。ただいま申し上げておるのは、私の責任は、装備、兵備については防衛庁長官の責任でございますから、私の意見はその範囲内にとどめたいと思います。
  51. 山花秀雄

    山花委員 現在米、英、ソ間で、核拡散防止条約の討議が進められていることは御承知のとおりであります。しかし、その条約の方向は、現在核兵器を持っていない国に対して今後核兵器を持つことを禁止するだけでありまして、現に核を持っておる国に対しては何も言っていないことは、御承知のとおりであります。これでは核戦争の危機の解消には全然ならないのであります。わが国は世界でただ一つの被爆国家であります。核兵器を現に持っている国は、それをさっぱり廃棄するということも含めて核兵器の全面禁止を主張すべきだと思うのであります。特に国連では安保理事会の理事国に当選したこの際、正々堂々とこのことを強く訴えることが平和を愛する国民の期待にこたえる外交と思いますが、総理の御見解を承りたいと思います。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はただいま御指摘になりましたように、世界における唯一の被爆国である、また人類の幸福のために核兵器のないことを心から願う、かような意味において核拡散防止あるいはさらに軍縮会議、完全軍縮、そういう方向においての努力をするつもりでございます。あらゆる機会にこういう問題と真剣に取り組んで、わが立場を十分理解さす、かような意味努力してまいるつもりでございます。
  53. 山花秀雄

    山花委員 総理決意を聞きましたが、もう一度関連して質問をいたしたいと思います。  現在の核拡散防止条約は、いま核を保有する国だけがそれを許されております。したがって世界各国の中で特別な発言権を持つことになります。それから核保有国が、核を持たぬ国の安全を保障してやるという問題が出てくる、いわゆる核安保という考え方であります。最近アメリカは、対中国の太平洋核戦略体制を展開し、日本をアメリカの核のかさの中に入れようとしております。原子力航空母艦や原子力駆逐艦を太平洋に配置したことは、そのあらわれの一つであると私は考えております。  ここで伺いたいのは、政府はアメリカと何らかの核安保の措置を進めるのかどうか、重要な問題でございますので、明快なる御答弁を願いたいと思います。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来の御議論を聞いておりまして、ようやく核心に触れた御議論だと私は思います。私自身が総理といたしまして、わが国の安全確保にたいへん腐心しております。これは御理解いただけるだろうと思います。同時に、このことは私一人ではなく、日本国民全体がわが国の安全はいかにして確保されるか、これにほんとうに頭を悩ましておることだと思います。私は、この問題とは真剣に取り組まなければならないことだと思います。ただいままで日本は、日米安保条約によって日本の安全を確保しております。そうして、その場合におきましても、先ほど来御議論がありましたように、核兵器の持ち込み、使用、これは絶対にどんなことがあろうともやらないんだということを誓っております。どうかこれらのことをも考え、わが国の安全確保に最善を尽くす、核の持ち込みなしに最善を尽くす、その方法はいかなる状況であるか、これをひとつ考えてみたいと思います。私は、ただいま安保条約そのものが十分たよりになるものだ、かように考えておりますので、これより以上のものをいま考えるべきときではない、かように思います。しかし、いずれにいたしましても、わが国の安全確保には、国民はもちろんのことでありますが、私は総理大臣といたしまして最大の関心を払っておる。このことをこの機会に御披露し、また皆さまとともどもにわが国の安全について十分考えていただきたいと、かように思います。
  55. 山花秀雄

    山花委員 総理もこの問題に関しては非常に重要に考慮をされておるという御答弁がございました。私は、この際一言申し上げたいと思いますが、世界でただ一つの被爆国家であるというこの観点から、日本は平和憲法をよりどころにして国際外交を進め、日本の進路を見出しておる、その全責任を持っておる総理大臣である、こういう信念と確信を持ってこの問題をひとつさらに深く検討をしていただきたいことを要望しておきたいと思うのであります。  時間の都合もございますので次に移りますが、総理は、日韓会談の次は日中問題だと言っておられました。ところが、本国会からは急に日中は日ソに変更いたしました。日ソ関係についての総理の基本的構想をごく簡単に述べてほしいと思いますが、その前に、私は日韓会談のうちの一つの領土問題の懸案について、昨日も自民党委員からも質問がございましたが、ちょっとふに落ちない点がございますので、重複するようでございますが、社会党として質問をしていきたいと思います。  要は竹島の問題でございます。外務大臣の国会答弁を聞いておりますと、これは日本領土として明確には解決していない。しかし条約を取りかわして親善友好を積み重ねていけば解決するという。親善友好を積み重ねていけば解決するということは、日本の領土として解決するというふうに私どもは承っております。また、そうでなくてはならぬと考えております。ところが、日本国会日韓問題の論議の最中、韓国の外務大臣が、いまになって日本国会で竹島の領土権云々を論議しておることはばかくさい話ではないか、これは日本政府と了解のもとに韓国固有の領土としてはっきりしておると言い、そのことは、批准を終わってすぐに御承知のとおり水域の問題を先手を打って発表いたしました。このことにつきましてどういう見通しがあるか、将来友好親善の積み重ねのもとに日本の領土としてはっきりする見通しを持っておられるかどうかということを承りたいと思います。
  56. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 友好親善のムードが高まるにつれて、この問題に対して平静な気持ちを持って折衝ができることを確信しております。ただいまの状況では、ややこり固まったような空気の中にあるのでありまして、漸次そういう機運が醸成した場合に、この問題の解決に歩を進めたいと、こう考えております。  それから水域の問題でありますが、韓国は自国の領土として低潮線から十二海里の水域設定をやった、こういうことを言っております。わがほうとしても、島根県の付属島嶼一体にさような手続をしておるはずでございます。そうなりますと、いわゆる漁業紛争というような形になってあらわれると思うのでありますが、この紛争解決の方法としては漁業協定の中に明記してありますので、漸次そういう情勢が明らかになれば、この条項に従って紛争処理の手続を進めてまいりたい、こう考えております。
  57. 青木正

    青木委員長 野原覺君から関連質疑の申し出があります。これを許します。野原君。
  58. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いま山花委員から竹島の問題についてお尋ねがございましたので、関連して二、三御質問したいと思います。  十八日に椎名外務大臣は批准書の交換のためにソウルに行かれたわけでございますが、そのソウルに行かれまして竹島の専管水域について、この問題について韓国側と会談ををなさいましたかどうか。なさったものと私どもは考えますが、もしなさっておれば、その詳細な話し合いの中身についてお聞かせ願いたいと思います。
  59. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今後あらゆる機会を利用してこの問題の解決のために一歩一歩、歩を進めてまいりたいという大体の構想は申し上げたつもりでおりますが、そういう意味において、批准書交換の際も、そういう機会があればそれをとらえて一歩でも二歩でも進めてみたい、こういう考え方は実は持っておったのでありますけれども、今回はさような機会がなかったのであります。ただ竹島の問題につきまして、御承知の交換公文がございますが、これは他の条約、協定等と一括して処理するということになっておる。それで、この交換公文の問題について、いつから効力を発揮するかというような手続上の問題がはっきりいたしませんで、その問題を、かねて向こうの事務当局にこちらの事務当局から話をかけておったのでありますが、明確な返事がなかった。そこで、われわれとしてはこれを放置することはできないので、御返事があろうがなかろうが、とにかく官報に公示して、そして、この日韓条約関係のものが一括して効力を発生するということを国内手続としてこれを確認する方法をとっておる、この点を韓国側に通告する、こういう書簡を渡しまして、それを受理してもらうということだけは話してまいりました。それ以外には、竹島の紛争解決のために話したことはございません。
  60. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は、過般の臨時国会においても一部論議されておりますが、審議をあのような形で打ち切りましたために、実は十分に議論されないまま批准が強行されておるわけです。ですから、私は決して蒸し返しで申し上げるわけではありませんが、竹島問題は紛争解決の交換公文で処理される、このことは韓国側も了解しておると思うと、終始一貫、総理と外務大臣の答弁はこの一語に尽きるわけです。紛争の処理の交換公文で竹島が処理されるということは、つまり竹島は紛争の島だということを日本も認める、韓国も認める、こういうことになって調印が行なわれ、批准を国会に持ち出したんだ、こういうことであったと私は思うのです。それならば、私どもはいまここで疑問に思うのは、現実に専管水域を韓国は設定したわけなんです。韓国が専管水域を設定したことから考えられることは、やはり韓国は依然として、竹島はおれの領土だ、紛争解決の交換公文では処理されるものではないんだという、その見解があればこそ専管水域を設定したのではないかと私は思う。紛争処理の交換公文で処理されるということを韓国が了解しておるならば、あのような専管水域は設定されないはずである。専管水域が設定されたということは、私ども主張しておったように交換公文では処理されない。樋口会談白書を持ち出して、私はかって八月でございました、ここで申し上げたことがある。私ども主張しておったとおり、韓国は、交換公文では処理されない。そうなってまいりますと、これは、総理並びに外務大臣は批准を強行するために国会にうその答弁をしたということになる。いかがですか、この問題は。私は速記を出しますよ。外務大臣御答弁願いたい。
  61. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 向こうは絶対に韓国の領土であるということを言い、またこっちも絶対日本の領土である、こういうことを主張して一歩も退かないというこの状況は、すなわち紛争である、こういうわけなんであります。向こうは絶対にわが領土であるということを従来言っておりますから、それで専管水域を設定するということになったんだろうと思う。わがほうも島根県の付属の島嶼につきましては専管水域を設定いたしました。こういうふうに両方とも拮抗して相譲らない、これがすなわち紛争である。
  62. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、外務大臣、竹島は紛争処理の文換公文で処理されなければならないことを韓国も認めたわけですか。認めておるわけですか。
  63. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 認めざるを得ないようなことになっておるのであります。すなわち、これは両国の唯一の最も大きな紛争であるということがはっきりしているのであります。そして両方とも譲らない、こういうことが両国の間の紛争である。この紛争は何らかの方法で解決されなければならない。それについては、いろいろ韓国国会等において非常に強い主張をしておるようでありますけれども、これが交換公文としてりっぱに合意されて調印されたのであります。竹島問題がこれによって将来処理されるべきものであるということは、これは、当然向こうは認めざるを得ない状況下においてこの交換公文の合意がなされたものである、さように御了承願います。
  64. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あいまいな御答弁は困る。私は関連ですから簡単に終わりたいと思う。端的にお聞きじます。だから、あなたも簡明率直に御答弁願いたい。紛争処理の交換公文で竹島が処理される、このことを韓国も認めたのかと聞いておる。
  65. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは認めておるという、じゃ証拠は何だ。ここに言う紛争処理とは竹島、あるいは韓国流に言うと独島の紛争処理であるというようなことで、さらに交換公文は取りかわしておりませんけれども、この交換公文の合意というものによって、韓国が十分にこれを認めたということを確認し得るものであると私どもは確信しております。
  66. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、外務大臣、紛争処理の文換公文で処理されるということを認めておりながら専管水域を設定した、このように理解してよろしいのですか。
  67. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そう、お説のとおりでけっこうだと思います。とにかく韓国の沿岸にすべて設定したのでありますから、自分の領土であるということを主張しておるたてまえ上、これもやはりやらざるを得ない問題であろうと思います。
  68. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そのように了解してもよいということでございますから、これは重要なことであります。現実に韓国は専管水域を設定したのです。だから、専管水域を設定したことから考えられることは、やはり韓国は、これは依然として韓国の領土だ、交換公文などで処理されるべきものではない、そういう考え方があればこそ専管水域を現実に設定したのではございませんか。そう理解するのが筋じゃありませんか。朴大統領の宣言で専管水域が設定される。紛争の交換公文で処理されるんだ、紛争の島だということがあれば、幾ら韓国だって私は専管水域を設定するわけはないと思う。そうじゃない。紛争の交換公文は、白書にあるように、竹島を除いた以外のものだ、漁業請求権を除いた以外のものだ、その考えが依然としてございますから専管水域が設定されたんじゃありませんか。いかがですか。この点をもう少し明快にお答え願いたい。
  69. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 向こうは、独島なるものが、これはもう明確に韓国の領土である、こういうたてまえをとっており、また日本も、竹島はわが領土であるというたてまえをとっておるのでありますから、両方で専管水域を設定するということになるわけであります。それからもし片一方で、この問題は紛争の対象になっておるから、まあ手かげんをして専管水域の設定は特に控えておこうということになれば、日本もまたこれに相応して控えるということになるわけでありますけれども、向こうが例外なしにそれに対して専管水域を設定するというのでありますから、こっちも島根県付属の島嶼全体に対して専管水域を設定した、こういうことになるわけです。
  70. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、竹島に専管水域を日本側も設定する、韓国側も設定する。こうなれば、私は漁業紛争の処理規定によってこれが処理されるものだ、こう理解いたしますが、いかがですか。
  71. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一応漁業協定の紛争処理に関する条項によって、これが解決の手続をとられるということになるはずでございます。
  72. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私、関連でございますから、簡単に終わりますが、このことは何回も言うように領土問題です。そして、これはあいまいにすることは許されないわけです。竹島が今日十何年の間、韓国の警備隊から占拠をされております。私どもは、この問題を専管水域以上に重要なことだと実は思うのです。専管水域が設定されたから、新聞は専管水域だけを取り上げておりますけれども、紛争処理の交換公文に竹島が該当するんだ、これで解決されるんだと言いながら、警備隊が十何年占拠しておるわけです。この警備隊の占拠を、日本は抗議を一応やっております。その撤去を求めてはおります。求めてはおりますけれども、私どもは、あの日韓条約が調印される時点において完全にこれを撤去さして、無人島の状態にして調印されるべきものではなかったかということを今日まで主張してきたわけです。ところがこれもあいまいにしておる。竹島の「た」の字も何にも紛争処理の交換公文にはない。だからして、私どもはどう考えてもこれは——しかも処理の交換公文の中身は調停なんです。調停ということでは、これは拘束力がない解決しかできない。拘束力は持たない。こうなれば、竹島は永久たな上げ、そうして、韓国は警備隊を解かないのでございますから、結局、日本は実質的には永久放棄。形式的には永久たな上げで、実質的の永久放棄じゃないですか。こういうことにしてあの日韓条約炉調印されたということはきわめて不満だということを、本会議委員会で私どもは追及してきたはずであります。ところが、総理大臣は本会議で何と答弁をされましたか。井手委員の質問に対して本会議総理大臣が答弁しておることは、こう言っておる。一括解決の方向できましたが、竹島問題だけは完全解決ができなかった、しかし、交渉の大筋から見て、取り上げる方向がきまったのだから、全くの白紙状態になったとか放棄とか、さようなことは全然ございません、あくまで固有の領土権を主張する、こう言っておる。ところが、取り上げる方向がきまったというが、どうきまったのか、依然として専管水域がまた設定されたじゃないか。取り上げる方向がきまったということは、韓国側も紛争解決の交換公文で取り上げるんだということを明確に了解をつけてから、私は言えることだろうと思う。その了解がないのです。了解がなければ、この専管水域を設定するんです。了解があって専管水域を設定することになれば、これは韓国はたいへんな道義的に私は日本に対して責任を持ってくると思う。そういうことであるにもかかわらず、十八日に訪韓をされて、竹島の問題については一言の抗議もしないで帰ってきておりますが、私はきわめて遺憾に思います。だから、絶えずこの問題は私どもは取り上げて、政府の責任は追及及したいと思います。  以上で終わります。
  73. 山花秀雄

    山花委員 先ほど総理答弁を求めましたことを、関連質問が入りましたので、もう一回、簡単ですが、申し上げたいと思います。  総理は、かねて、日韓の次は日中問題ということをしばしば言っておられました。ところが、本国会から急に日中が日ソに変更した様子でありますが、日ソ関係についての総理の基本的構想を、簡単でよろしゅうございますから、お述べ願いたいと思います。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に私は、日韓が済んだら日中、それからその日中を日ソに変えた、かようなことは申しておりません。この点は誤解のないように。これを足場にいたしましてアジア外交を展開する、また善隣友好関係を樹立する。それがどこであろうと、私が考えて、できるところへどんどん進めていくということであります。その日ソ外交のただいまの問題は、ことしじゅうはいろいろ具体的な問題が出されました。たとえば、シベリア開発計画における日本の協力、日ソ航空協定あるいは領事条約、また、かねてから私ども主張している北方における漁業の安全操業の問題等々、具体的な問題が出ております。幸いにして、ソ連政府もこれらの問題について話し合ってくれる、こういうような事柄でございますから、これらの点についての話し合いを進めていくというのが、ただいまの問題であります。ところで、ただいま日ソ外交、こういうことで一番問題の大きいのは、これは申すまでもなく日ソ平和条約の問題だと思います。ただいまさような点についての十分な腹案があるわけでもなく、ただいまそういうものの打診などもしておりませんので、いま申し上げたとおりです。いわば次元の低い問題について、いろいろ問題の解決の方向に取り組んでいる、こういうのが現在の実情であります。私の訪ソが新聞その他に伝えられておりますが、私は、私の考えとしていまだ一度もさような点に触れたことはございません。誤解のないように願っておきます。
  75. 山花秀雄

    山花委員 次元の低いところから徐々に改善を積み重ねていくという総理答弁でございました。たとえば航空問題につきましても、昨今は新聞で大きく取り扱っております。この問題に関しましては、昨年私どもがソ連共産党中央委員会の招待により向こうへ参りまして、十分話し合いをしたつもりであります。社会党話し合いが今月実って、自民党の皆さんの成果になったということだけはお忘れないようにしていただきたいと思います。  そこで、次元の商い問題ということになりますと、当然領土問題になろうと思いますが、この領土問題については、総理はどういう所存を持っておられるか、この際はっきりしていただきたいと思います。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 平和条約が締結されれば歯舞、色丹は返すというのが、ソ連と日本との間の話し合いでございます。しかし私どもは、これは前内閣、池田内閣の当時もそうですか、あるいはその池田内閣以前の内閣においても同様であったろうと思いますのは、日本が国後、択捉についての領土権を主張している。南千島はわが国固有の領土だ、いわゆる放棄した部分ではないということを、実ははっきり申しておるのでありまして、そういう点で、機会あるごとにソ連に対しまして、わが国の固有領土を認めるように、しばしば通告あるいは文書の交渉などはしている。あるいは口頭でもそういう点を申し入れをしております。一貫して政府はこの点を主張しておるのでございます。
  77. 山花秀雄

    山花委員 歯舞、色丹、択捉、国後等の返還につきましては、社会党も強く要求しておることは御承知のとおりであります。従来、しばしば外交問題については与党野党が衝突しておりましたが、この問題では、致した見解がとれると私は思うのであります。そこで、なぜこれが解決がおくれておるかという、その原因をひとつお互いに考えてみたいと思います。かりにソ連が応じた場合——当分応じようとは思えませんけれども、かりに応じた場合、日米安保条約第五条により、日本国の施政のもとにある領域が共同防衛の対象地域ということになっております。この北方領土を安保条約の対象地域から除外する考えがあるかどうかであります。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまからそういう点まで先走ることができないのです。申すまでもなく、社会党の方も、この領土問題については私ども主張を一緒にしてくださる。ただ、その考え方には、ややニュアンスの相違その他ものの考え方の違いがあるだろうと思いますが、ただいま日本に返ってくるとか、そうして、その問題がどう扱われるとかいうようなことになれば、たいへんけっこうですが、ただいまそこまで話を進めるわけにいかない。ことに外交上の問題ですしいたしますので、社会党も幸いにして同一なんですから、これはお願いなんですが、どうか、そういう点も交渉の機微と、かようにお考えをいただいて、この外交の問題を慎重に扱うように鞭撻を願いたいと思います。
  79. 山花秀雄

    山花委員 私は、これは安保条約と非常に関連性が強いと思うのであります。そこで、この問題についてざっくばらんに申し上げますと、安保条約が大きな障害になっておるということはいなめない事実であります。もし特例が日米間で了解されますと、この問題はすみやかに解決すると私は考えております。総理のいまの御答弁によりますと、ずいぶん先走ったことであるから、アメリカともそういう話はしたことがないという答弁になると思いますので、あえて答弁は求めませんけれども、北方領土をソ連が返還する場合に、サンフランシスコ条約の第二条にある、日本国は千島列島に対する権利、権原及び請求権を放棄するという規定との食い違いが生まれてくると思います。当然われわれはソ連に、これは戦争によって掠奪した地域でないから返してもらいたいという主張をいたしますが、残念ながらサンフランシスコ条約は、そういう主張のできにくい条約になっておることは御承知のとおりであります。サンフランシスコ条約の改定をすることが可能かどうかという点であります。こういう問題につきまして、もし答弁ができましたら答弁していただきたいと思います。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、放棄した部分なりやいなやということでいろいろ議論があることは承知しております。しかし、私どもは、どこまでも本来固有の領土は放棄した筋のものではないと、かように考えておりますので、ただいま、放棄した部分はいわゆる千島列島とは表現しておるが、国後、択捉はこれに入らない、かように考えております。
  81. 山花秀雄

    山花委員 今回の第二十回の国連総会で、例の、台湾の国民政府を追放して北京政府に中国代表権を与えるという議決が、四十七対四十七で賛否同数になりました。それは御承知のとおりであります。本年以降は、もはや重要事項指定方式を使っても、中国の国連加盟を阻止できないということが世界の大勢に相なっておることも御承知のとおりだと思うのです。かつて私は、ドゴールが中国を承認した翌日、この予算委員会で、当時の総理大臣であった池田さんに質問をいたしました。そして中国承認の英断をやれと言いましたら、池田さんはそれは暴論だという答弁をなさいました。私は、英断か暴論かはいずれ歴史が正しく証明するだろうと言って当時質問を打ち切りましたが、ついに世界の大勢は、中国の国連加盟を可能にする段階にただいま来ておることは否定できない事実であります。歴史は正しさをいつかは証明するものだということを池田さんも草葉の陰で理解しておるのじゃなかろうかと私は思っております。佐藤総理は、あなたは来年以降もこの世界の大勢にさからっていくつもりか、それとも賛成をしていくつもりか、こういう点について、ひとつ所信をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中共問題では、いつもただいまのような国連における賛成国の異動によりまして、だんだんその時期が来たのだから、日本はどうするのだということをしばしばお尋ねになります。しかし、いつもお答えしておりますように、私どもは、中国に対しまして、すでに国民政府との間に条約上の権利義務を負っております。そうして、国民政府も健全であります。それはりっぱな業績を上げております。かような状態のもとにおいて、中国代表権を主張しておる二つの政府、その取り扱い方が重要問題であり、重要課題である、このことは、私どもも最後までそのことを考えていきたいと思います。したがいまして、今日国連におきまして重要問題として、取り上げましたのは、これは間違っておらなかった、私はいまだにさように考えております。しばしば申し上げるように、中共北京政府自身がいわゆる祝福されて国連に加盟する日が実現することを私どもも期待いたしますけれども、ただいま申し上げるように、国民政府と北京政府との関税を考えますと、これは簡単に処理のできない問題だ、かように思っております。
  83. 山花秀雄

    山花委員 なお、経済問題、特に重要な論議の対象になっております国債発行問題等々について、順を追うて質疑を重ねていきたいと思いますが、総理が正午この委員会に出られないようなことを理事間の話し合いで承認したということを承っておりますので、順序を変えまして、総理がおられる時間、総理に対して質問をいたしていきたいと思います。  それは選挙制度に関する問題であります。この際総理にお尋ねしたいことは、前通常国会において、昭和三十五年度施行の国勢調査の結果に基づいて、人口比例による議員定数の増加の改正が行なわれました。このことによって若干の不合理の是正が行なわれました。ことしの国勢調査による人口異動や増加によって、またまた人口数と議員定数のアンバランスが非常に不合理になりました。したがいまして、五年目に行なわれる人口比率の変化に伴う議員定数の増減を行なうことが公平なる選挙制度と存じますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題は、いわゆる理論的に人口の異動によって定数の増減ができる、これは、本来から言えばさようなものだろうと思います。しかし、たいへん重大な意義を持つものでございますから、その点が簡単な理論では片づけることができない。そこで、スライド制などもそういう意味では採用されておらないのですが、選挙制度審議会において、各界、各方面の意見を求めて、そうして答申を得て、国会においてもそれを決定する、こういうことなんですが、ただいまちょうど選挙制度審議会が開催されておりますし、その答申を実は政府は待っておるということであります。その事前に政府意見を発表することによりまして、ただいまの選挙制度審議会に何らかの影響を与えるということは、私は慎しむべきことじゃないか、かように思いますので、私個人の考えよりも、ただいまの答申を待つ、こういうことで終始する考えでございます。
  85. 山花秀雄

    山花委員 答申を待つのは、これは非常にけっこうだと思います。しかし、審議会に要請する事項として、国民の基本的権利が公平に施行できるような要請をすることが、私は政府として自由にとらるべき態度だと思います。ちょっと一例を卑し上げましょう。宮城県の定員は、御案内のように、参議院は半数改選で一名であります。栃木県は二名でございます。栃木県の方にはお気の毒と存じますが、公平原理から申し上げますと、有権者や人口の少ないところが二名で、有権者や人口の多いところが一名ということは、これは国民の基本的権利に大きな侵害を与えておると思います。私の選挙区を申し上げてはなはだ恐縮でありますが、——私の選挙区だから言うわけではございません。今回の人口調査によりまして、有権者が百十万有余になっておりますが、人口九十万から百万程度のところと同じ定数になっております。これも基本的人権の公平なる扱いから見ると、実に不合理なる制度であります。したかいまして、こういう問題を選挙制度調査会にしっかり調査をして答申してくれということは、政府としても言えることじゃないかと思います。いかがでございましょうか。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねの点は、包括的に諮問に入っている、こういうことでございますので、もちろん審議会はこういう点について答申されるだろう、いわゆる一般的な制度上の問題ばかりじゃなしに、個々の問題についても答申すべき状況にある、かように思います。
  87. 山花秀雄

    山花委員 選挙制度審議会は、特に選挙区制の問題を中心にいま審議しておるというふうに承っております。人口比例の問題につきましても、もし答申を求めておるということでございましたら、これはやはり基本的人権の問題でございますので、ひとつ急がしていただきたいと思います。  次に、選挙制度審議会が来春早々選挙区制の問題について答申がなされるというように承っております。政府は、現行選挙区制、いわゆる中選挙区制を小選挙区制、一人一区制に改正する意向を持っておるやに伝えられております。私は、現行中選挙区制は有権者に選択の自由を多く与えるという点で、小選挙区制よりよいと考えております。これを悪くしておるのは、金を中心選挙をやる、買収供応に狂奔する候補者があるということが原因の一つであります。私は、一人一区の小選挙区制になれば、大局を論ずる政治家よりも、地方利益をえさに、また俗に言う葬式花輪議員とか、あるいは御祝儀ばらまき議員とか、政治家より政治屋のやからが輩出する悪弊が高まるというふうに考えております。総理は、一体どういうようにお考えになりますか。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま選挙制度審議会でせっかく審議しておるところでございます。先ほど来申しますように、政府の考えを申すことは、そういう自由なる判断、その答申をいただく上においてあまり適切なことでない、かように私は考えておりますので、私は、これについての意見は差し控える、かように申したのであります。山花君あるいはその他の方も特別委員になっておられて、委員会におきまして、それぞれ特別委員意見を活発に進言していらっしゃるように理解しておりますので、私は、そういう機会にただいまのような貴重な、得がたい御議論をひとつ御発表願いたいものだ、かように思います。
  89. 山花秀雄

    山花委員 私は、選挙は現行制度のもとに公正なる明かるい選挙を行なうよう、政府も各政党も力を入れるべきであると思います。しかしながら、実際の選挙は目に余るものがあるということはいなめません。昭和三十八年度に行なわれました東京都知事の選挙のにせ証紙問題や買収事件は、いま私が繰り返して申し上げるまでもなく、総理も御承知のように、自民党の事務所内で金銭の取引が行なわれたり、幹部諸氏の秘書連中がこの違反事件に連座しておることが明らかにされました。このような悪質選挙の結果は、東京都政の腐敗、堕落を生み出す。また解散選挙の結果は、選挙民の厳粛なる審判のもとに、わが社会党が第一党になり、多年絶対多数を誇っていた自民党は御承知のような成績に終わりましたことは、総理のよく知っておられるところであります。東京都は日本の首都であり、世界第一の人口を誇っておる大都市であります。かかる結果を生んだことについて、自民党総裁として、総理はどういう反省と責任を感じておられるか、お尋ねしたいのであります。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 選挙は公正である。その判断、その批判につきましては、各政党ともえりを正して、真剣に反省していかなければならないことだ、かように私は思います。さような意味において、自民党は十分深い反省をしておるものだ、かように思います。問題は、選挙そのものが清潔な選挙でなければならないと同時に、それらによって進められる政治がほんとに都民の意思に合致する、都民の要望にこたえるものということであってほしいと思います。今日、東京都政につきましても、選挙の結果は御承知のようなことになりましたが、都政の運行そのものについて何ら進歩を考えられない、かような批判新聞等に出ております。こういう事柄は、お互いに政治家といたしまして真剣に、またえりを正してその批判も受けるべきではないか、かように思いますので、この政治家としての反省すべき点は、選挙はもちろんそのうちの大事なことでありますけれども、同時にまた政治活動そのものにつきましても、われわれは絶えず国民から監視されている、これにこたえるんだというような決意反省を深めていかないと、国民批判はまことにきびしいということを痛感する次第でございます。
  91. 山花秀雄

    山花委員 選挙政党みずからえりを正した反省がなくてはなりません。ただいま総理も、その意味のことを御答弁なされました。政党党首——これは政党の問題になります。自民党では総裁、私ども社会党では中央執行委員長であります。私ども社会党選挙では、政策論議を中心選挙をやりますが、まことに言いにくいことでございますが、自民党では多額の金が、数億、数十億動いておるというふうに、これが世間一般の常識となっております。総裁選挙は、公職選挙法の適用を受けないとはいえ、あまりにも政治道義に反すると思いますが、総選挙の当事者である総理はどのように反省されておるか、承りたい。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われたようなことがあれば、これはたいへんな問題だと思います。どうかそういう点につきまして、お互いに十分注意していくべきだ、かように思います。
  93. 山花秀雄

    山花委員 総裁選挙がこのような形で行なわれました結果、その運動資金入手のために吹原事件のような汚職事件が表面化し、自民党の有力幹部の名が次々と表面化する結果、政党不信の声が国民大衆の間に浸透してまいりました。結果的には、政党不信により政治不信選挙に無関心状態となります。民主政治がこの辺のところからくずれてくる危険性、可能性があります。総理は、あなたの総裁選挙にこのような多額の金が動いたことを知っておられるかどうか、もう一度お尋ねいたしたいと思います。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私に関する限りさようなことはございません。また私もさようなことを耳にしておりません。
  95. 山花秀雄

    山花委員 私に関してございませんというだけでは、政党の最高責任者、総裁の責任は私は免れないと思います。このことは、ことしの参議院議員選挙自民党から出馬した元専売公社幹部小林章君のごときは、多数の部下職員を選挙買収運動に使って、今次選挙では驚くべき多くの違反事件連座者を出したことは御案内のとおり。本人は議員として何ら責任をとろうともせず、平然としております。総理は、小林議員は無所属になったからわれわれに責任はないという態度をとっておられますが、もし政党の規律と政治的責任を感ずるならば、当然除名処分をとり、その責任を明らかにすることが政治家としての態度であろうと思いますが、総理はどうお考えになりますか。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお話しのように除名すべきだと、これは社会党の御意見として伺っておきます。私は、自民党の党籍を離脱した人、それを除名するというようなことは意味がないように思いますので、私どもはそれをとらない、かように御承知願います。
  97. 山花秀雄

    山花委員 私は、さようなことでは、ほんとうに選挙の公正を政党が率先してやる意欲に欠けておる態度だと考えております。  それでは、最近施行されました、本年十一月十四日投票の新潟県知事選挙についてお尋ねをいたしたいと思います。自民党より出馬した塚田十一郎君は、その事前運動として、自民党系県会議諸君四十数名に平均二十万円程度の金員を贈り、これが明らかに買収費用であると察知した九名の県会議諸君が連名で塚田知事に返しております。それからなお六名の諸君がこれに続いて返したことは、今日明らかにされておる。金を渡したのは八月中旬から下旬といわれております。選挙は十一月十四日であります。当然買収費用の金銭であることは明らかであります。この点は目下検察当局が捜査に当たっていると聞いておりますが、新潟県の君副知事は、この問題は政治的に政界上層部に連絡してあるからだいじょうぶだということを言いふらしておる。一部では、まことに遺憾でありますが、佐藤総理から石井法務大臣に、自民党の死活問題だから政治的考慮を払うように言ったというようなことが伝えられております。これは、事実としたら一この際ひとつ事実かどうか明らかにしていただきたいと思います。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理から法務大臣に対してさような指示をした覚えはございません。本人がはっきりさように申すのでございますから、間違いはございません。ただいま塚田知事の選挙違反等については捜査中でございますから、この結果を待つ以外に方法はございません。重ねて申しますが、総理からこの問題について法務大臣に指示したことはございません。
  99. 山花秀雄

    山花委員 石井法務大臣にお尋ねしたいと思いますが、ただいま佐藤総理は、あなたに圧力を意味するような言動はいたさないと答弁しておりますが、あなたはお聞きにならなかったかどうか、お尋ねしたいのです。
  100. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいま、あなたのお話で初めてそういうことを聞きました。何も聞いておりません。
  101. 山花秀雄

    山花委員 私の話で初めて知ったと法務大臣は答弁されましたが、この問題につきましては、検察当局のほうにしばしば厳重なる抗議運動が行なわれているということを聞いております。部下のほうから法務の最高責任者のあなたのほうに何ら連絡がなかったといたしますと、相当怠慢だと思います。十二月五日付「新潟日報」には、自民党県連合会総務会の決定として次のような記事が掲載されております。十二月四日の会合であります。反党行為を処断するという大見出しで、亘会長、稲葉、佐藤、小沢氏等自民党衆参議員を含む約六十名が出席し、本部に対し、亘会長の名で重ねて除名要請の文書を提出する決議を行なったことが報道されております。反党的だった反主流派県議については、特に知事の贈った二十万円中元問題を明るみに出した反感から、席上即時処断の強硬意見が出ました。執行部としては、具体的反党事実を確認の上、党紀委員会にかけたいということであります。知事から金をもらった連中が集まって、買収費用と思われる金を返した諸君を処断するというのは、どろぼうがどろぼうをつかまえるようなことであります。そういう決定をするというのは、俗にいう盗人たけだけしいことであります。自民党の最高責任者として佐藤総理はどういう判断に立たれておるか。こういう事態に対して、当然あなたは責任なしと言えないと私は思います。そこで、どういう責任の態度を明らかにされますかということをこの際お伺いしたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの新潟の知事選挙に際しまして、公認候補をきめ、さらに党として統一選挙に臨んだわけでございます。そのときに、この選挙をいろいろ乱した、かようなことが言われ、そういう意味から党紀委員会にかかるという事態が起きております。しかしこれも中身は——御心配をいただいておりましてたいへん恐縮というか、あるいは感謝と申していいのか、自民党自体の問題でございます。どうかその点は誤解のないように願っておきます。ただこの問題の買収あるいは違反、こういうような事柄につきましては、先ほど来お答えいたしましたように、検察当局においてただいま捜査中でございますから、これははっきり分けていただいて、そして御判断願いたいのであります。
  103. 山花秀雄

    山花委員 自民党内部の党紀問題だから他党の御心配は要らないと言う、それはまあそれで承っておきましょう。しかし、買収、連座、選挙界を汚したという問題は、これは自民党だけが被害をこうむる問題ではございません。政党全般に対する不信と、政治に対する国民の不信を増加する形であります。したがいまして、私は黙っておられないということであります。ただいま総理から、法務大臣に圧力を加えたことがないと、こうはっきり言っておる。法務大臣も、そういう話は聞いたことがないとはっきり言われた。そういたしますと、この前の小林章議員に対する検察当局の処置は、多くの国民が疑惑を持って見ておるということは事実であります。どうか法務大臣、厳粛なる司直の手でこの問題を解法されるように、ひとつ部下を督励していただきたいと思います。裏に回って反対のことをやらないように、堂々と選挙粛正の実績をあげていただく指示をして、部下の諸君がだれにも侵されなく、所信に邁進できるような体制を築いていただきたいことをお願いしたいと思います。  いろいろ質問を続けていきたいと思いますが、ちょうど総理の外出する時間になりましたので、理事会の申し合わせがございますので、私の質問はこれで一応留保いたしまして、再開されましたときに質問を続行していきたいと思います。
  104. 青木正

    青木委員長 山花君の質疑は一応終了いたしました。  午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後は一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  105. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。山花秀雄君。
  106. 山花秀雄

    山花委員 経済問題につきまして、若干質問を続行してまいりたいと思います。  十月十三日の総理の施政方針演説で政府の経済情勢に対する正式の見解が示されました。そして、その判断の甘さが痛烈に批判されました。佐藤内閣には具体的な経済政策がないのも同様だと一般には批評をされております。企画庁長官が十月の一日に、景気は年内に回復に向かうと言明すると、同じ日に通産大臣が、鉱工業生産の出荷、在庫指数など、どれを見ても景気回復のきざしは見当たらないということを言っておるのであります。同じ内閣の大臣か、同じ日に全く相矛盾する景気見通しを発表しております。不況と物価高で、悩む国民は、これを聞いてますます失望するより以外にございません。こうしたちぐはぐな見解は、本年度の経済白書にも随所にあらわれておるところであります。たとえば、現在の不況は循環的な一つの波だから心配はないと言い、その反面では、不況が単なる在庫調整にとどまらず、従来にない重要な局面を持っておると、こう指摘しておるのであります。この際しっかりした政府の統一した景気見通しをお述べ願いたいと思うのであります。
  107. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今日どうして景気が悪いのかといえば、構造的な問題であって、循環的なものではないということは、今日みんなの一致した見解でございます。御承知のように、本年度は予想以上に景気が悪くなった。そして引き締め解除をやってまいりましたにかかわらず、景気がさらに悪くなってきたというのは、全くいま申し上げたような構造上の問題があるからでございます。したがって、今後景気を回復してまいるということには相当な努力を必要とするのでありまして、七月二十七日の、御承知のとおり、政府政策会議におきます二千百億円の財投その他の政府需要を喚起する方法をとりまして、私ども当時あの時点において、これらの施策をやりますことが年末における大体景気の悪化する底になるんだろうということを考えております。希望的観測としては、若干もう少し早くいくのではないかという希望的観測もされないことはございませんでした。しかし、これはきのう大蔵大臣が説明されましたように、七月二十七日にきめました緊急措置につきましては、相当に急速にそれらの措置がとられまして、そうして財政支出とも並行して進んでまいったのでありますけれども、地方財政関係の通常年度予算におきます公共事業投資その他がずっとおくれてきまして、大蔵大臣も言われましたように、その面におきましては、十月ぐらいまでは昨年よりも支出が少なかった、むしろ本年のほうが少なかったというような事情もございます。そういうようなことから関連いたしまして、われわれが予想していた希望的観測よりも若干おくれてきておるということは、これはそのとおりだと思います。  ここでわれわれとしてはさらに一そうの、今回の補正予算を通じ、あるいは将来の四十一年度予算を通じて諸般の景気浮揚の方法を盛ってまいりたいと、こう考えておりますので、まず新年になりまして急激にいままでのような景気がくるということは考えられもしませんけれども、徐々に景気が回復してまいるということは、私どもそのとおりにいくんじゃないかと、こう考えております。
  108. 山花秀雄

    山花委員 藤山大臣の答弁は、希望していたが、希望どおりには遅々として進まず、しかし、その希望の線にはやってくるような情勢だというような御答弁でございましたが、通産大臣のこの前の演説は、少し悲観的な演説をやっておられましたが、いま企画庁長官の言われたことと相違しておるのであるかどうか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  109. 三木武夫

    ○三木国務大臣 企画庁長官のいまの考え方と大きな開きはございません。
  110. 山花秀雄

    山花委員 そういたしますと、前回の景気回復のきざしは見当たらないという言明は、ただいまの言明で調整されたと理解してよろしゅうございますか。
  111. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、全般の経済指標は、これはだれが見ても悪いのでございます。輸出が伸びておる以外は悪いので、これに対して政府が財政金融面から有効需要を喚起しようという努力を続けておることは御承知のとおり。この効果が徐々にあらわれつつあることは事実でございます。そういう意味においてだんだんと景気が回復に向かうような方向に、速度はおそくてもきつつあることはそのとおりだと思います。
  112. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの答弁を承っておりますと、前回の景気の回復のきざしは見当たらないという御説明が変更されたというように承りますか、現在の不況の根本原因は、明らかに高度成長政策の失敗であると私どもは考えております。無計画に近い設備投資、さらに国民の実質収入の低下が物価上昇で拍車をかけられている。生産に対して需要が追いつかなかったからであろうと考えております。この高度成長の失敗を補うために中期経済計画が生まれました。これは佐藤内閣成立の一つの声明として発表されました。これは、高度成長から安定成長といううたい文句に変わってきたことは御存じのとおりであります。しかし、この中期計画もうまくいってないと私は思います。それは、結局、財政金融を通じてその資金計画が用意されていなかったからであります。無計画な経済政策と資本主義経済の持つ必然的な景気の循環の波に同時にさらけ出されたから、今日のような深刻な不況があらわれたのであります。こうした根本的な原因追及もしないで、その場限りの不況対策では、結局破局がますます大きくなるだけと考えております。大蔵大臣は、一昨日の本会議で、時代の要請に従って財政の転換を行なうと言明されました。このことは、池田さんにかわって佐藤内閣が生まれたとき、その一枚看板となった中期経済計画が失敗し、破綻したものと理解してよろしいのでございましょうか、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  113. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 中期経済計画は、その策定後、特に国際収支の面等で大きな違いが出てきておるわけであります。私が財政政策を転換すると言う意味は、中期経済計画を基盤に置いておるわけではないのであります。つまり戦後十数年間にわたりまして均衡財政の方式がとられてきた。しかし、この均衡財政方式は、そのとられた当初、またその過程におきましては重要な意味合いがあった。しかし、今日の時点におきましては、国の力が相当強くなってきておる。こういう時期に、政府が幾らか借金をするというようなことがありましても、国の信用にかかわることはない。一方、国内の情勢を見ますと、国をささえておる財界というか企業、また家庭、そういうような状況は必ずしも満足すべき状態ではない、ことに企業のごときは非常な悪い経理状態である、また家庭も資産が蓄積されない、大事な資産である住宅なんかも惨たんたるものである。そういうようなことを考えますときに、これは財政がここで一大転換をして、そういう国をささえる基盤である企業と家庭の安定をはかる、これこそが経済の安定なんだ、そういうために政府はここで公債政策を採用する、こういうことを申し上げておるわけでありまして、中期経済計画と直接に関連をして申し上げておるわけではないのであります。
  114. 山花秀雄

    山花委員 ただいま大蔵大臣の御答弁を伺っておりますと、佐藤内閣が立てました一枚看板の中期経済計画に基礎を置いて考えたものではない、こういうような説明を承りましたが、そうなりますと、中期経済計画の変更が、いやおうなしに具体的に大蔵大臣の手元で経済政策として進行しておるとわれわれは理解するより以外にございませんが、この際、中期経済計画がもし行き詰まっておれば、失敗であったということをはっきり国民に示して、新しい角度からの財政経済計画を発表すべきではないかと思いますが、一方ではほおかむりをして、一方では徐々に変化をしていくというような形は政治家のとるべき態度でないと思いますが、首班者である佐藤総理大臣はいかようにお考えになっておるか、御答弁願いたいと思います。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のとおり、中期経済計画は昨年の夏から秋にかけて非常な大ぜいの方々の協力によってできたものでございます。そして、この一月に閣議決定を得たもの。しかし、当時の事情から申しますと、非常な経済の急激な変動が起こりつつある事態でございまして、でき上がりましたものが必ずしも今日の事態に適応しているものだと私どもも考えにくいところが多分にございます。したがいまして、これは一応われわれ参考として考えてはまいりますけれども、しかし、これから離れて、やはり施策をただいま大蔵大臣の言われますようにやってまいらなければならぬと思います。で、中期経済計画を将来改定するかどうかということについては、これは別個の立場で考えてまいりたいと思います。したがって、今後、ここ数年の間どういうふうに考えていくかということは、いずれ予算編成等にあたりまして、いわゆる中期経済計画的な具体的なものではない二、三年の見通しというようなものを考えて、そしてまいりたい、こういうのが私どもの現在の考え方でございます。
  116. 山花秀雄

    山花委員 大蔵大臣の答弁を伺いましても、藤山さんの答弁を伺いましても、中期経済計画のその線に沿って経済政策を行なってないという御答弁であります。そこで、最高の責任者である佐藤総理の考え方をこの際ただす必要が生まれてまいりました。佐藤総理は、この問題についてどうお考えになっておるか。いままでは経済閣僚にまかして答弁をさしておりましたが、基本的な問題は、最高責任者である佐藤さんから伺いたいと思います。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ね、しごくごもっともですから、私からお答えいたします。  中期経済計画は、当時これができ上がりましたその時期は、これは十分御承知のとおりだと思いますので、あえて私は申しませんが、この中期経済計画ができた後に佐藤内閣が誕生した。当時におきましては、この中期経済計画を一応の指標にして、そうして経済と取り組んでまいりました。ところが、ただいま率直に経済企画庁長官や大蔵大臣や通産大臣から説明いたしますように、中期経済計画どおりになかなか動かないし、またそのとおりに動かそうといたしましても、経済の実情はそれを許さない、非常な食い違いのあること、これは御指摘のとおりであります。そこでただいまのようなお話が次々に答弁されておるのであります。こういうところで私どもも新しい情勢に対応する、また国民の今後の行く方向といいますか、産業界の行く方向としてのもの、これをやはり示すそのときがきておるのではないか、かように私も考えておる次第でございます。もともと中期経済計画を実施するにあたりましても、しばしば説明いたしたのでありますが、この中期経済計画をこのとおり五年間くぎづけにするという考え方が必ずしも適当ではない、五年間の考え方を、その年々といってはあまりにも権威がなさそうですか、情勢に応じた考え方で見ていくべきじゃなかろうか。その年、その年というような考え方でなしに、やはり長期的な見方はしていかなければならないが、このつくった長期計画そのままを墨守していくということであってはならない、こういうことを私はしばしば申してまいったように思います。どうかそういう意味で、この問題をひとつ直していかなければならない、かように私は思っております。
  118. 山花秀雄

    山花委員 ただいま総理の御答弁を承っておりますと、一応の見通しは立てたが、経済情勢の刻刻の変化に即応して具体的に事を処していきたい、こういうような御答弁でございましたが、四十年度の予算編成に際しまして、私なり同僚の横路委員からもいろいろ質問をいたしました。当然財政的に破綻を来たすのではなかろうか、その裏づけ措置として公債でも発行するのではなかろうかと考えましたから、公債を発行するのかどうかとしつこく聞いてまいりましたが、総理大臣は、長期経済五カ年計画のこの期間は絶対に公債を発行いたしません、私の質問でも、横路委員の質問にも、確信を持って明確に答えられたのであります。ただいまの御答弁を聞いておりますと、政策転換でなくして、政策の破綻をみずから認められておるような答弁でございました。長期にわたる経済政策は立てるけれども刻々の変化ということは、これくらいあいまいな問題はございません。いずれの国の経済政策にいたしましても、短きは三カ年計画、長きは七カ年、十カ年計画という長期の見通しに立って、その国の経済政策見通しを立てて政治をやっておられるのであります。そこに国民が信頼し、そこに国民が協力する気持ちが出てくるのであります。途中で次々と行き詰まって、そして破綻を来たしたことを、政策転換という美辞麗句によって一時のがれのごまかしをやろうということは、私は率直に申し上げますが、これは責任のない政治的罪悪の一つであります。当然この政策の転換ということになりますと、日本の経済に与える影響も大きいのでありますから、私は前にも申し上げましたが、こういう政策の重大転換をやる場合には、やはり主権者の意見を聞いてそれに従うというのが民主政治の一つのあり方であると考えております。再度お伺いしたいと思いますが、経済政策転換を訴えて総選挙をやる意思があるかどうか、この際もう一度明らかにしていただきたいと思います。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お尋ねになりますのは、総選挙をやるかやらないかということのようですが、しかし、その段取りといいますか、理論的に私もいまの御議論に一部は賛成ですが、全面的に賛成ではございません。と申しますのは、五年なりあるいは三年なりの長期計画をいずれの国も持っておるじゃないか、かような御指摘であります。この三年なり五年なりというものを持った場合に、それがたんたんたる道であるとか、あるいは平均した三年間の目標達成への過程をたどるか、こういうところが実は問題だと思うのです。いわゆる経済というものは生きものですから、また統制経済をしておるわけでもありませんし、計画経済でもない。自由経済のもとにおいて、これは行き過ぎもありましょうし、あるいはやや縮んでいることもあるだろう、かように考えますので、やはり五年あるいは三年の目標にいたしましても、その途中においては、いろいろな情勢に応じた一つの変化も多少ある、かように御理解をいただきたい、私もさように考えておるのであります。また、ただいまの公債論について、私は確かに中期経済計画の間はとか、こういうまくらことばがあったとかなかったとかいって、臨時国会でもいろいろ責められました。当時の記録も、いろいろ速記も取り寄せたりして検討してみましたが、しかし本会議において、昨日でしたか一昨日でしたか、私の公債発行についての考え方が、そのときどきによってだんだん変化してきている、これは御指摘のとおりでありまして、その点については、私はこれを否定しようとは考えておりません。ただいまの公債発行に変わったということ、これは確かに大きな変化であることは間違いないと思います。これは、いま私が述べたような理論、三年あるいは五年の間たんたんたる方向ばかりじゃないというその議論から見ましても、これは行き過ぎな、非常な大転換だ、かように言われることも、これも私は否定いたしません。ただいま申し上げるような事柄のその結果、大蔵大臣が申しておるように、これは要請だということになるだろうと思いますが、しかし、とにかく大転換をしている。しかして私がこの前も本会議で申しましたように、われわれの政治姿勢としては、やはり国民のためにするのだ、そういう意味で、解散などに訴えた場合に一体どうなるのか、これはたいへんな空白を生じて国民は迷惑するのではないか、大事なときにきているのだ、そういう意味で私は解散はいたさない、かように実は申しておるのでございます。この点は重ねてお尋ねがありましたが、この機会におきましても、解散はいたしません、重ねてはっきり申し上げておきます。それよりも、私どもに課せられた課題、それを遂行していくことが私どもの責任でもある、かように思いますので、一そうの勇気を持ちましてこの事態に取り組んでまいるつもりでございます。
  120. 山花秀雄

    山花委員 たいへん自信を持って、さらに一そうの勇気を持って経済政策を推進していくんだ。従来往々、経済政策の失敗する内閣ほど、俗に申し上げますと強がりのことを言っておるのであります。私は、佐藤さんがそういう強がりのことを従来の内閣に例をとって言っておるとは考えませんけれども、しかし、そういう気配が何となく身近に感じられるということだけを申し上げておきたいと思います。  どうもどの内閣は、経済問題については非常に弱いようであります。昨年の経済白書を見ると、一そうその感を私は強くするのであります。白書は、輸出力の強化を通じて福祉水準を向上させるといっております。また、政策に誤りがなければ、比較的短い間に景気の調整期を乗り切れると書いてあります。実は、考えようによりましてはのんきな白書であった。こののんきな白書が今日いろいろな方面に手詰まりを来たして、政策転換、変更という形が出てきたのではなかろうかと思います。輸出は確かに伸びております。しかし、企業も国民も塗炭の苦しみをなめております。中小企業者の倒産は、オリンピックではございませんが、相変わらず記録を更新しているのではございませんか。勤労者の実質収入は、五年ぶりで本年度は最低の伸びに落ちておることは、御案内のとおりであります。物価だけはウナギ登りにどんどん上昇しております。中小企業、零細企業は深刻な経営難で、先日も、わずか一万七千円程度の不渡り手形のために電車に飛び込んで自殺した中小企業の経営者がいたことが新聞紙上で伝えられております。新聞を見ている人なら、この記事は私は御存じだろうと思います。閣僚の間においても。倒産も相変わらず増加しております。東京における九月の倒産件数は五百十一件、本年二月に次ぐ記録と相なっております。十月には景気対策が侵透すると思っていたら、何と九月より三・九%倒産が増加しております。東京商工興信所がそういうように発表しております。私は、これは間違いないと思います。しかし、その件数は、負債総額が一千万以上であります。零細企業の倒産はどれほどあるか、きっと想像を絶するものと思われるのであります。経済白書は、政策に誤りがなければ短期的に景気が回復するといっておりますが、以上の状態を判断すれば佐藤内閣経済政策は明らかに失敗したものと断言してもはばからないと思います。この不況中小企業家の自殺者が相当数に達しておる。また、首を切られたものは、中小企業あるいは大企業においても失業者がどんどん出ておる、非常に多い数だといわれております。こういう人々に対して、総理は深くおわびをし、同時に速急に対策を立てなければならぬと思いますが、総理の御見解をいま一度、経済政策に関してお聞かせを願いたいと思います。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりましたように、中小企業といわず、倒産件数がなかなか減らない。さらにまた、毎日の新聞を見まして、悲惨なる、気の毒な事件が次々に起きておる。私は、政治の最高責任者として、ほんとうに心を痛めておる次第でございます。私どもがこの夏以来とってまいりましたいわゆる不況克服、それぞれの具体的な処置は、十月あるいは十一月、ようやく効果をあげつつある、かように私は見ております。しかし、経済問題も、非常に短期間の間にぜひ成果をあげろという非常なせっかちな気持ちがどこかにあるようです。まあ今日まで悩んでおられる産業界の実情を見れば、せっかちな気持ちにもなるだろう、かように私も同情し、理解もいたしますが、とにかく非常なせっかちな気持ちが出ておる。しかし、一時、秋時分に見ましたような沈滞した気持ち、これは一掃することができた。私どもは、その意味においては、経済全体としてはやや明るい——明るいとは言い過ぎですが、一応の落ちつきを見て、いわゆる沈滞ムードは、これを解消することができた、かように思って実は喜んだのであります。その後におきましては、いわゆる国際収支の状況が、外貨の保有高もふえてまいりますし、たいへん好転をいたしました。そういうことが株式界にも反映したのか、株の値段などもだんだん出てきた。いわゆる不況あるいは不景気株高というような話もありますが、やはりどこかに株式界の先見性というものが出ているのだ。これは、確かにただいまのような国際収支の状況などをも反映しての問題だと思います。これは、御承知のとおりに、予算の繰り上げ使用であるとか、あるいは財政投融資の増加であるとか等による需要の喚起、これがようやくだんだん出てきつつあるのだ、かように私は思うのであります。実際問題として、これらの一連の措置がもつと早く効果をあらわすのではなかったかと、かように期待をいたしましたが、ただいま十一月あるいは十二月等において、これが出ている、かように私は思いますので、われわれはさらに希望を持ち、また元気を出して、そうして今日の産業の不況克服、これをひとつ国民とともにいたしたいものだ、かように思っておる次第でございます。
  122. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの総理答弁に、私はたいへん不満を感じております。明るい見通しが出てきて好転をして、不景気の株高である、あるいはそうはいえないかもわからぬが、株というものは先見性を示唆するものであるからだんだん明るくなる、これも理由の一つでありましょう。私は、ほんとうに総理に言ってもらいたかったことは、来年正月から米が上がり、国鉄運賃が上がり、公共料金が上がり、それによって大衆生活が深刻なる苦悩になろうとしておる、この大衆生活をどう考えるかということを総理から率直にひとつ国民に思いを寄せて、この際発表していただきたかったのであります。そういうことについては一言半句も触れなかったことについて、総理の感覚をこの際疑いたいと思います。  深刻化した景気対策として、結局公債発行に踏み切ったというわけでありますが、この公債は、俗にいう赤字公債の発行であります。過去には暗い経験を国民に与えておることは、私は大きな問題点の存するところだと思うのであります。太平洋戦争にあたりまして、御案内のように、赤字公債が日銀引き受けで発行されました。その財源が戦争の費用となり、インフレが高進をいたしました。つまり戦争と赤字公債とインフレは、三つ一つのものだという経験を私たちは持っております。そのため、戦後この反省の上に立って、憲法では非武装の第九条がつくられました。財政法では、赤字公債を認めない第五条が生まれたものであります。この経験を総理はよく知っていらっしゃると思いますが、それを知っての上で赤字公債に踏み切ったかどうかという点をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  123. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 憲法第九条と公債が関係があるということは存じません。また、財政法第四条に基づいて発行する公債を考えておるのであります。ただし四十年度は、これは特別でありますが、四十一年度以降財政転換として考えているものは、財政法に根拠を有した公債でありまして、私どもは、これは建設的な公債である、かように考えておる次第であります。
  124. 山花秀雄

    山花委員 私は、過去の経験から、憲法の平和主義、これと赤字公債が関連するということは、長い目で見てもらえば必ずこの問題に関連してくるということを、この際申し上げておきたいと思います。  私は、公債発行がすぐインフレに直結するという、そういう公式論を言っておるのではございません。現実の景気の実勢、とりわけ物価の騰貴を考えると、この際の公債発行は物価上昇に拍車をかけてくる、そうしてそれがさらにインフレに拍車をかけてくるということを主張しておるのであります。現実に国民の所得の伸びをはるかに越えて、財政がぐっとふくらんでおることは御承知のとおりであります。借金政策といわれる日銀の信用が大きく膨張しております。そういう状態の中で公債を発行すれば、まさに火に油を注ぐようなものであります。総理は、安定成長を口ぐせのように言っておりますが、安定とは、もちろん物価の安定が前提であります。物価の安定なしに安定した生活の成長もあり得ません。ところが佐藤内閣が、先ほど長期計画により、あるいは物価騰貴はせいぜい年に二・五%、五カ年計画として一割二分五厘という発表に対して、本年度の予算審議において同僚横路節雄君から、九年度は四・八上がり、四十年度の予算では四・五とうたっておるけれども、さようなわけにいかないと質問をいたしましたときに、総理は、確信を持って本年度は四・五%に押える。それならば来年、再来年、その次の年は一%ずつの物価上昇で自信があるかどうかという横路委員の質問に対して、当時明快なる答えがなかったように考えております。ところが、臨時国会壁頭において、いみじくも総理は、四・五%と考えたがと、御親切に月別の騰貴率をお示しになって、十月現在八%になった、こういうふうに自己の失敗を率直に臨時国会堅頭に認められました。私は、こういうように本年度はもう八%以上上がったと思いますけれども、さらに来年度は、御案内のように米の問題、あるいは公共料金の問題、加えて国鉄運賃の問題、郵便料金の問題がいろいろいわれております。このように政府の財政計画において安定の計画がないのであります。ずっと物価が上がる一つの政策をとっております。インフレのおそれはないと言っても、国民は信用できません。総理は、せめては政治力をもって公共料金を押える、こういう前提条件の経済政策、物価政策をお考えになっておるかどうか。来年度からは、いま巷間うわさされておるようなことはやらない、こういう前提条件をひとつ示してもらわない限り、私は公債発行が赤字に連なり、インフレに連なり、国民経済を破局的どん底に追いやられると考えておりますが、いかがなものでしょうか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま政府が当面しておる問題は、いわゆる経済の不況を克服する、経済の安定化にこれを持っていく、安定成長への道を経済に取り戻す、こういうことを努力する。その一面、公債を発行しておる。公債は、ただいま御指摘にありますように、端的に申しましてこれは借金なんだ。借金であるということは、これはもう私もそのまま認めますが、これは借金だ。なぜ借金をするのかということになると、現在の経済の状況が借金をもして需要を喚起せざるを得ない状況にあるんだ。この点を御了承いただきたいと思うのです。私は、借金である、積極性のものである、同時にそれが理論的にインフレになる危険を持っておるといわれる。これについては、私は十分注意をしてまいりたいと思いますが、借金であるから、積極性は持つが、同時に借金の本体を考えて、めちゃな、膨張した借金はすべきではない。しばしばいわれておりますように、公債を発行いたしますが、その健全性を維持するということを申しておるのも実はここにあるのであります。で、その借金をしながら健全性を維持する、この点がどうもおわかりにならないようですが、と申しますのは、いまの経済あるいは産業界の活動というものは、政府の予算あるいは政府の財政資金も必要でございますが、同時に民間の資金というものが大きな働きをなしておることは申すまでもないのであります。この民間と政府の予算とが合して今日の経済を動かしておる、かように見てもいいだろうと思います。したがって、私どもの予算なりあるいは財政が経済の動きに対応する、つり合いのとれたような考え方をすることが必要なんだ、ここに私は健全性ということを求めております。したがって、いわゆる均衡ということとは違う、均衡予算ではない。しかしながら、その規模あるいはその使い方等において十分の考慮を払っておるので、この健全性は維持していくということを実は申しておるのであります。  そこで、この経済自身が、いままでも各大臣から説明されるように、今日の不況は、いわゆる循環性のものもあるが、同時にまた構造からきているものもあるんだ。それらに対応するのは、なかなか短時日の間には効果をあげ得ない。そこで総合的な対策が必要なんだということをしばしば申し上げたので、その点は誤解ないだろうと思います。ただいま御指摘になりました、たとえば公共料金その他の一連のものを上げざるを得ないではないか、これは国民生活を圧迫するじゃないか、こういう御指摘だと思いますが、この公共料金を上げることは、ことに私どももこれを好ましい方向だとは思いません。しかしながら、ただいまも物価の問題自身が経済の一現象であるということに御賛成ができるならば、経済自身を健全なものにし、そして、それを育成強化していく、そこで初めて物価も鎮静するのだということがおわかりがいただけるのではないかと思います。そういう意味に考えてまいりますと、いわゆる物価の問題で、生産性の高い物価は、これは現実にどんどん値段も安くなっている。これは、耐久消費財である電気器具などをごらんになればおわかりになるように、生産性が上がっているので、どんどん安くなっている。若い青年諸君がほんとうにのどから手の出るような思いをしている自動車すら安くなっている。これははっきりした事実だと思います。しかし、生産性の上がらない部門、たとえば中小企業における食品加工であるとか、あるいは農業であるとか、こういうところの生産品は、これはだんだん高い。それにいたしましても、部分的には、ものによって安いものもある。これは需給の関係で値段がきまるのであります。私ども今日一番大事なことは、人間の値打ちが非常に高くなっているのだ。そういう意味から、どうしても物価全体も、ときに生産性が上がらないところは、物価そのものを上げざるを得ないのではないかということになると思うのであります。これが消費米価が高くなったゆえんだ、かように思います。また公共料金、鉄道であるとか、バスであるとか、地方鉄道、あるいは郵便料金等々が指摘されておりますが、これらのいわゆる公共企業、これも産業の一部である、かように考えますと、ただいまの全体の原則に当てはまらざるを得ないのだ、したがいまして、公共料金も上げざるを得ないのだ。もしもこれをストップだということであるならば、そこらで働いておる人々の賃金は全部ストップなのか、またその採算のとれない点はいかにしたらいいかというような問題にもなってくると思います。政府自身がこれを負担するわけにもいかないだろうと思います。しかし私は、公共料金が国民生活に圧迫を与えるとか、非常に困難をもたらすという事実を無視するものではありません。したがいまして、公共企業を経営の合理化を積極的にやっていただきたいし、またその上げる時期、あるいは上げる率等については十分くふうをいたしまして、国民生活に圧迫を与えない、さようにはいかないが、与えることが最も少ないような方法を選ぶべきだ、かようなことを実は申しておるのであります。非常に簡単なこをを申し上げれば、経済自身を安定成長に乗せて、そして生産性を上げない限り、これは、賃金などはどんどん上がらないというわけにはいかないのですから、そこに問題があるのだと思います。ただいま申し上げるように、物価の問題、これは悩みの問題であり、大きな問題だと私も考えておりますが、これは経済の一現象で、それはいなめないことだ、かように思いますので、この物価問題を取り扱うにいたしましても、経済そのものを直してかかる、これでなければならない、かように思っておる次第でございます。  まだどうも十分意を尽くさない点もあるかもしれませんし、問題はもっと審議し、大いに意見を交換する、これは重大な問題だ、かように思いますので、どうか御遠慮なしに御批判をいただきたいと思います。
  126. 山花秀雄

    山花委員 ただいま総理の御意見を聞いておりますと、御遠慮なしに御批判願いたいというお説でございましたから、遠慮なしに批判してまいりますと、てまえみそを並べておるだけの答弁だというより以外にございません。私は、物価が上がるということは国民生活に相当影響がございますので、どうしたら物価が安定できるか。いま総理の言っていることは、大勢順応主義であります。この経済非常時にもっと思い切った施策が必要だと思います。たとえばある期間ストップにするとかというような——それは政府としてはできるのです。その間に体質改善、あるいはいろいろいま総理の言われたような施策をやる、こういう思い切った政治対策が物価の面にあらわれてこないと、凡人の政治家だったら大勢順応主義でよろしゅうございましょう。私は佐藤さんに、平々凡々たる政治家たれというふうには言いたくありません。傑出した政治家として、人さまが、あいつは敏腕をふるうというぐらいの腕前をだしていただきたい。保守にそういうようなことを言うのは、社会党として筋違いかもわかりませんが、この際ひとつ保守とか革新とか言わず、傑出した政治家として物価対策に本腰を入れてやってもらいたいと思う。ところが私は、あなたの力ではやれないというふうに考えておることも申し添えておきたいと思います。  現在、インフレは世界的傾向として潜在的に進行しておることは、総理大臣も御承知だろうと思います。ドルもポンドもいまは下落しております。一九五八年から六四年の六年の間に、ドルは八%、ポンドは一六%、マルクは一四%、日本の円は実に三二%も下落しております。世界的なインフレ進行の中で日本の円の下落がとりわけ大きいというのは、何といっても経済政策の失敗を端的に事実としてあらわしておると思う。こうした状況こそインフレ傾向の姿をよく物語っております。そこに、公債発行の借金政策をということになると、条件がそろい過ぎるじゃありませんか。インフレになることは子供でも理解しております。私は公債政策をインフレ政策と見たくないと考えましても、いま申し上げましたいろいろな条件を積み重ねてまいりますと、必然的にインフレになることは明らかであります。これでもあなたは、公債発行がインフレにならないと言明する自信がおありになるかどうか、お答え願いたいと思います。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、公債政策から直ちにインフレという問題が引き起こるとは思いません。先ほど来申しました財政の健全性、同時にまた公債発行のいわゆる歯どめといわれておることが守られる限りにおいて、インフレはこわくない、インフレになるような危険はない、かように実は思っておるのであります。ただいまのような点について、あるいはいろいろ圧力が加わって守れないだろうという御懸念があるようですが、それこそ私ども政治的にその死命をかけてこれと取り組む問題でございます。そういう点は十分御注意もございますので、インフレにならないような歯どめを十分にいたすつもりでございます。  ただもう一つ、先ほどのお話で御意見が出て、非常な激励を賜わりましたので、一言申し上げておきたいのですが、いま物価問題と真剣に取り組んだ場合に、物価を全面的にとめる、一年間ストップとか、あるいは二年間ストップだとか、こういうような処置をとった国もあります。さらに物価だけでなしに、収益まで考えて、そうしてストップさせた、こういうところもありますが、必ずしもどれがみんな成功しているとは思いません。また、ある国によりましては、賃金と物価との関係から見て、賃金はオールストップだ、こういうことで、これは非常な大英断だと言われて、かような処置をとったところもあります。しかし、私はこれらも必ずしも成功したと申し上げ得るだけの勇気はございません。過去わが国におきましても、昨年予算編成に際しまして、鉄道運賃を一年間ストップするということで、私はストップをいたしましたが、その結果は、必ずしも私どもが期待したとおりの方向には行かなかったように思います。ただいまお話しになりますように、ストップ令はたいへんいいことであるかのように考えられるが、経済が生きものであり、経済自身が自由経済のもとにおいてどんどん流動しておるその実態に合わないといいますか、いわゆる経済の原則を無視したところにずいぶん無理がかかっておるようであります。私は、いかに扇動され、おだてられましても、さような処置をとる考えはこの際持っておらないことを、この機会に申し上げておきます。
  128. 山花秀雄

    山花委員 財政投融資を含めまして、すでに国債が大量に日銀引き受けで発行されております。政府は公債の市中消化を口にしておりますが、そのためには受け入れ側の金融条件の整備がされておらなければなりません。その金融条件がなければ、一度市中銀行で消化されても、結局は回り回って日銀の買いオペで吸い上げられてくることは、火を見るよりも明らかであります。これは、事実上赤字公債の日銀引き受けで、財政法にも触れてまいります。  そこで、市中消化についてお伺いいたしますが、昭和三十九年の公社債などの消化状況を判断する必要があります。現在わが国には公社債の流通市場がございません。当然各種の金融機関がこれを引き受けておることになっております。しかし市中の各金融機関の預金コストは年々に上昇の傾向にあります。加えて公定歩合の引き下げ、証券利回りが預金コストと逆ざやになっております。こういう現象に注目されなければ、公社債の発行はできません。そのためにあらためて預金金利の引き下げということが現実の問題として論議されることになるだろうと思いますが、この点、政府はどうお考えになっておりますか。
  129. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公債の発行につきましては、しばしば申し上げておるのでございます。それは日本銀行引き受けの形ではやらないということでございます。この原則は堅持するつもりでございますが、それにはそれ相応の準備をしてかからなければならない、これは当然であります。そういう観点から、ことしは二千五百九十億円の公債の発行を年度途中において行なう、こういうことに相なるわけでありますが、公債と同時に政府保証債だとか、あるいは地方債でありますとか、あるいは事業債でありますとか、いろいろなものも合わせてこれを消化しなければ、国民経済が動かないわけであります。その中において国債の消化をはかるということを考えるわけでございますが、たとえばことしでいいますと、事業債は昨年に比べまして千億くらいふえるわけであります。それから地方債が千五百億くらいふえます。そこへ政府で発行いたします国債が二千五百九十億乗っかる、こういうことになるのですが、これを全部消化しなければならぬ。そうしますと、二千五百九十億円という政府のものが突如として急に入ってくるのですから、他の債券の消化を圧迫してはならない、こういうふうに考えるわけであります。そこで、二千五百九十億円の公債を発行しますが、その半分は資金運用部でこれを引き受ける、市中消化は千三百億程度にする、こういう考え方をとるわけであります。この消化につきましては、シンジケートを結成いたしまして、これが消化の全責任を負う、こういう形になります。もちろん、そのシンジケートは金融機関でありますが、そのシンジケートの一員である証券業界は、これを大衆に売りさばくという考え方をとるわけであります。そういう考え方をとりまして、公債はもとより、社債も政府保証債も、また地方債も、ことごとくこれを市中で消化するというたてまえをとる、その同じ考え方を昭和四十一年度においてもこれを適用して、完全消化ができるという見通しの上に予算を編成する、かように御了承願いたいと思います。
  130. 山花秀雄

    山花委員 預金金利は、本来、資金の需要の度合いに応じて、適切にきめられる性格のものであります。いやしくも低利の公債発行を行なうために、きわめて政治的配慮で、人為的な金利の引き下げなどは行なうべきではないと思います。ただ、預金金利と一般国民の零細な貯蓄については、特別の配慮が払われるべきであります。現在、全国の銀行で一口百万円以下という個人預金が全体の九七%を占めております。これは、零細な貯金が圧倒的に多いということであります。もちろん、これらの人々は生活に余裕があって貯金するというのではなく、わが国の社会保障の貧弱なあまり、自分の手で老後の生活を考え、あるいは子女の教育、結婚費に備えるための、その非常時に備える貯金であります。これらの人々は、当然、利子によって生活をしておるものではございません。預金金利の上げ下げによって生活そのものが大きく支配されるものではございませんが、問題は、消費者物価が年平均六、七%も上昇しているために、貯蓄の実質価値が年々低下しておることは見逃せない問題点であります。貯金をすればある程度損をする、実際の物価が上がり、利子をもらってもなお損をするという計算であります。それくらいいま物価が上がっておるのであります。政治は、常にこうした庶民の生活の実態をよく見て、その上で対策が講ぜらるべきであります。多くの大企業が、借り入れ金の利子支払いを少しでも楽にするために、公定歩合の引き上げを望み、さらに、これによって金利の引き下げが叫ばれておるときに、零細預金の金利まで同様に扱うのは、物価問題に関連して、あまりにも重大であると思います。この点、総理、大蔵でもけっこうでございますが、御所見を承りたいと思います。
  131. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公定歩合の引き下げは、これは短期金利の問題であります。公債の問題は、これは長期金利の問題なん、です。これはまあ別の問題でありまするが、ともかく金利水準というものは、私は原則論とすると、なるべく低いがいい。これは特に長期金利について言えると思うのでありますが、わが国の国際競争力というような見地から考えるときに、企業の金利負担が安くて済むということは絶対必要なことである。そういうようなことから、短期金利の引き下げに伴いまして、長期金利も、これは引き下がったほうがよろしいということから、開発銀行でありますとか、北海道東北公庫でありますとか、長期信用銀行、その他の長期信用機関の利下げを行ないますとか、あるいは市中の一般の貸し出しの金利引き下げを行ないますとか、あらゆる努力をしていく。なお今後も続けていくわけでありまするが、ただ、そうなりますと、それには限界があるのです。つまり、限界まで来た銀行の資金コストをさらに下げるというためには、預金の利子に手をつけなければならぬ、こういう問題になるわけでございますが、お話のとおり、預金の利子まで手をつけるかどうかということは、これは非常に重大な問題でありまして、これは国際的な金利趨勢、また国内の経済環境、いろんな条件が熟して初めてできることである。私は、今日ただいまの段階におきまして、預金利子の引き下げを行なうという考えは持っておりません。まあこの問題は、そういう利子を取り巻く環境がどういうふうに変化していくかということを十分見ながら検討していく問題である、こういうつもりでおるわけであります。
  132. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの答弁を伺っておりますと、零細預金の俗にいう貯蓄利子の引き下げは行なわない、こういうように理解してよろしゅうございますね。
  133. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまそういう考えは持っておりません。
  134. 山花秀雄

    山花委員 時間も相当たっておりますので、あと四問ばかり質問をして私の質問を終わりたいと思います。公債論議はこの程度で終わりたいと思います。いずれわが党の委員からまた詳しく行ないますから、この辺でとめて次に移ります。  政府は、深刻な不況に対し、企業の経営者に対して、冗費を節約、できる限り切り詰めて行なうよう要請をいたしました。これは当然なことだと思います。ところが、この十五日に国税庁の発表した企業の交際費が実に五千三百六十五億円に達しておると言われております。この金額は、国の一般会計の六分の一に相当する驚くべき巨額の金であります。もちろん取引に多少の交際費を必要といたしましょうが、国の予算の六分の一も使うとは全く異常であります。この巨額の交際費を、商品の質をよくするために使うとか、商品のコストを引き下げるために使うならば、国民経済の上から大きな利益があると私は考えております。不況で自殺をする人もいる世の中で、この交際費の乱費は全く奇異な感じをわれわれは持つのであります。この交際費が年々増加する傾向に対して、政府はこの四月から、損金算入を認めない分、つまり税金をかける割合をふやす。しかし、それでもこの五千数百億円に対して五百三十四億円で、わずかに一割にしか過ぎません。企業収益の悪化から配当がなくなり、やがて合理化だ、首切りだと言いながら、一方ではこんな巨額の交際費を使う、全くおかしいことであります。政府の早急な態度決定が私は必要と思いますが、こういう不当な多額の交際費に対して、政府はどういう態度でこれを処置するか、この際お伺いしたいと思います。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの国税庁の発表、そのとおりの数字が出ております。五千三百億、その一割を否認した、いわゆる経費と認めない、こういう処置をとった。しかし、この経費として課税の対象にならないもの、これはやっぱりそれぞれの理由があるのだろうと思いますし、ことに、私もたいへん心配いたしまして、寄付金などはどうなっているかと尋ねたのでありますが、寄付金は別な項目のようですし、したがって、これはほんとうに社用の関係でそれが使われているものじゃないか。一部それは不都合のものもあるかもわかりません。そういうものは厳に戒めるべきじゃないかと思います。ただいまのは交際費だけの問題ですが、その際に同時に発表いたしましたもあに、金利を一体どのくらい払っているか、産業界で払っている金利が全体で二兆円をこしているというそのときの発表であります。同時に、配当の金額が六千億をちょっと出ている、かようにうろ覚えに考えておりますが、その配当の金とほとんど同額——もちろん差がありますが、さような意味の社用の費途、これは大いに注意しなければならない点だ。おそらくその全部が、一部で考えるような不都合な使い方ではないと思いますけれども、誤解を招くおそれがありますので、よく注意して、そして配当の金が、ただいまのように六千億ちょっとこしているというように記憶しておりますが、それでは株主に対しましてもその責任は果たせないのではないか、こういうことで、経理をさらに注意すべきだ、かように私も思っております。
  136. 山花秀雄

    山花委員 いまも申し上げましたように、国家予算の六分の一、ずいぶんでかい交際費であります。商業の、あるいはいろいろ慣例上必要とする点はわれわれも十分認めるにやぶさかではございません。しかし、本年度の国の税収入の見込み違いが赤字公債として埋められようとしております。いままでは自然増収が三千億とか、年度によりましては五千億をこえるぐらいございました。いかに不況であるか。そして、そのおおむねは法人税であります。そういうときに、一方ではこんなにでかい金を使いほうだいに使っておる。一方では国の税収入にでかい見込み違いかあって赤字公債をやらなくちゃならぬ。これにじっと目をつぶって見ておる大蔵当局の態度は、私はけしからぬと思います。大蔵大臣、一体この対策について、いま総理も言われましたが、大蔵大臣としてひとつどういう処置をとるかという御答弁を願いたいと思います。
  137. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 交際費と一がいに申しましても、これは相当部分が営業費的性格を持っておる。そういう意味から、税法上はこれを損金に見る部分が多いわけでございまするが、しかし、その実態をよく見なければならぬと思います。ことにこういう経済不況下でございまするから、こういう経済不況下にこそ財界の姿勢を正すということも真剣に考えていかなければならぬ問題だと思います。税法上必要があるかどうかということにつきましては、これを十分慎重に検討してみたいと存じます。
  138. 山花秀雄

    山花委員 私は、産業が隆盛におもむいて、労働者が高賃金で楽しみ、株式配当も潤沢になった場合には、幾ら交際費を使ってもどうこう文句を言うものではございません。労働者は低賃金に泣き、消費者は高いものを買わされて、そしていま言ったような多額の交際費が使われるということは理に落ちないものであります。当然これは、一方では税収入がなくて赤字公債を発行しようという、この赤字公債は全部国民の借金であります。国民の税金で穴埋めをしなくちゃならないものであります。だから税金は、そういう不要不急の財源から取るべきであると私は考えますが、大蔵省といたしましては、これに税率を高くかける意思があるかないかということをはっきり御答弁を願いたいと思います。
  139. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 交際費課税につきましては、今日まで相当論議がありましてただいまの税制に相なっておる次第であります。今日の税制自体にも十分の根拠があってのことと思いますが、なお、今日のようなこういう経済情勢でもありますこの際の問題として、これを改定する必要があるかどうか、慎重に検討いたしたいと思います。
  140. 山花秀雄

    山花委員 慎重に検討するということは、裏を返せば、私はひがみではございませんが、取らないことというふうにしか受け取れません。これはひとつ十分閣議を開いて検討をしていただきたいということを、この際申し上げておきたいと思います。  次に日中貿易のことについてお尋ねをいたしたいと思います。御承知のとおり、中国では、来年度より第三次五カ年計画の発足をいたします。アメリカはもとより、欧州各国が先を争って中国との貿易の拡大をはかろうとしております。この貿易競争は、第三次五カ年計画が始まり、一そう激しくなっております。わが国の貿易は、一九六三年より本年度まで急カーブで上昇しております。金額は一億八千七百万ドルに達しております。ところがこの上昇カーブも、来年からはストップして、現在の見込みは、本年並みの横ばいというようなことで終わるだろうと言われております。毎年飛躍的に伸びてきた日中貿易が、いまになってその成長が急に鈍化したのはどういう理由か、政府も心覚えがあろうと思いますので、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  141. 三木武夫

    ○三木国務大臣 中国大陸との間には国交も回復しておりませんから、貿易上いろんな支障があるわけであります。そういう点で、ほかの国交回復国のように貿易協定を結んだりして貿易の拡大がなかなかできない、そういう根本的な障害がある。しかし友好商社との貿易、あるいはLT貿易全体を通じて、そう大きく貿易量が激減するとは見ていないのであります。ある程度の貿易量は維持されると考えて、そんなに大きな、非常な日中貿易というものが激減するというふうには見通しを持っていないのでございます。
  142. 山花秀雄

    山花委員 私は、五カ年計画によって各国の貿易はぐっと上昇する、その段階で日本が横ばいをするということを言っておる。激減するとか激少するとかいうことは言っておりません。LT貿易に努力されております。御承知の岡崎氏は、今日の段階で日中貿易の大きな障害は、何といっても吉田書簡にあると述べておられます。輸出入銀行の融資によるプラント輸出を政府が禁止したため中国側が硬化して、その結果、第三次五カ年計画で大きな伸びが予想されていたが、ついにこれがだめになったというわけであります。これは国民のよく知っておるところであります。また、あらゆる経済雑誌もこういう批評をしておることは、御承知のとおりであります。特にこの第三次計画は、機械や化学設備を中心とするプラントが大いに見込まれておる、生産過剰に悩む日本の企業にとっては、この上ない機会であります。まして中国側は、対資本主義国との貿易では、いま通産大臣は、国交が回復してないからと言っておられますが、国交の回復していない国においてもだんだんと大きく成長をしておるのであります。問題は一つ、日本政府態度いかんできまると思います。総理は、この問題の解決について、吉田書簡問題が大きな障害になっておると言われておりますが、どうお考えになっておるか、これは、日本の貿易経済の上においても大きな関係がございますので、ひとつお聞かせを願いたいと思います。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま通産大臣がお答えいたしましたように、国交がないという、これが一番の問題でございます。それが同時に、いわゆる吉田書簡等にも関連を持つ、いわゆる輸出入銀行の使い方、こういうふうにもなるのでございます。ただいま申し上げる国交が回復しない結果、ただいまのような伸び率であるということでございます。
  144. 山花秀雄

    山花委員 国内の深刻なこの不況中小企業の倒産、失業者の増加、いずれを見ても暗いニュースばかりであります。中国問題で少しでも前向きの姿勢をとれば、国内のこういう問題がそれだけ緩和するのであります。政府はいつも政経分離と言う。しかし実際には、アメリカや台湾に気がねをして、そして、みすみす日本商品は倉庫の中で眠っておるというのが現状であります。せっかくの設備を休止させ、投下したとうとい資金をむだにしておるのであります。こんなばかな政治がありますか。経営者でも、少し頭の回転のきく人は、本気になって日中貿易を考えております。総理大臣、中国との貿易量の最も大きい国はどこでありますか。あなたはそれを知っていらっしゃると思いますが、中国と一番大きい量の貿易をしておる国は、中国と一番仲の悪いアメリカであります。二位はオーストラリアであります。三位はカナダであります。日本は五番目といわれております。中国と激しい対立を続けておるアメリカが貿易ではトップに立ち、何と日本の十一倍の二十三億ドルの取引をしているじゃありませんか。政府は、さきに、ベトナム戦争を考慮しながら日中貿易を進める、こう言ったが、ベトナムに軍隊を送っておるアメリカが第一位で、同じくベトナムに派兵しておるオーストラリアが第二位であります。中国の対外貿易は四十億ドルと言われておりますが、その半分以上がアメリカに独占されておるのであります。総理が真に日本の立場を考えるならば、この際、アメリカにも台湾にも気がねせず、中国も日本との取引を望んでいるのであるから、いままでの考え方を改めてやっていただきたい、こういう政策の転換こそ国民が強く望んでおるのであります。私は、こういう政策転換に踏み切って、日中貿易増大のために献身的な努力をするかどうかという総理の所信をこの際お伺いしたいと思います。
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府が政経分離の形において中共と、北京政府とつき合っていること、この態度に変わりはございません。ただいまのもっとやれとおっしゃることは、御意見として伺っておまきす。
  146. 山花秀雄

    山花委員 いろいろ質疑を続けたいと思いますが、だいぶ自民党委員からやきもきしておるような声が聞こえております。しかし私は、やれば今晩一晩でもやる元気がございますけれども、ものには限度がございますので、この程度で次の質問者に席を譲りたいと思います。
  147. 青木正

    青木委員長 これにて山花君の質疑は終了いたしました。  次に、小松幹君。
  148. 小松幹

    ○小松委員 私は、主として総理並びに大蔵大臣に経済問題を質問いたしたいと思います。  世間では、佐藤総理は有言実行と、こう言っていますけれども、私が考えているところは、ことに経済問題においては有言不実行であるように思うのであります。その例をとれば、物価の安定ということは、うたい文句だと思うんです。ところがこれはうたい文句だけであって、一つもやっていない。いや、やっていないだけでなくして、ますます物価は上がっている。佐藤内閣ができてから、今日ずいぶん物価は上がってまいりましたが、ことに四十年度は、七%以上上がっておる。まだ将来も上がる。ことに公共料金を引き上げていく傾向にあるとするならば、昭和四十年度は、これはもう物価安定ということはさておき、物価を引き上げる内閣として考えざるを得ないわけなんです。この点、私は、いま山花委員の質問を聞いておっても、なぜこういうような有言不実行になるのかと考えてみると、やはり経済に対する問題の深刻な面について研究が足らないのか、あるいは突っ込みが足らないのか、認識不足だと思うのです。たとえたならば、さっきの物価は、これは参議院の答弁でも、衆議院の答弁でも、あなたは経済の一現象にしかすぎないというような答弁をしておられる。まさに国語的な解釈をすれば、物価という問題は経済の一分野かもしれません。しかし、事経済に関する限り、物価と金利と労働賃金というものが一番大事なネックである、これをはずして、物価は経済の一現象であるというような考え方を持たれておるところが、事の深刻性というものを把握していないのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。この点、それならば、深刻性を把握していないだけならばいいが、さらに生産性の向上と見合うんだからというつけたりをつけております。それならば私はお伺いしますが、一体いま操短をさせておるのは、生産性の向上をさせておるのですか。むしろ生産性の向上をストップさせて、操短をさせておるじゃありませんか。片一方では操短をさせておいて、そうして物価が上がってくる現象をつくっておりながら、生産性の同上と見合うんだからというのは、これは盗人たけだけしい言い方である。物価をほんとうに下げようとするならば、生産性の向上を言うならば、なぜ操短をさせるのか、あるいはカルテルの結成をなぜさせるのか。カルテルの結成をさせ、操短をやって、そうして基本的な管理価格を上げておいて、物価が上がるのは経済の一現象だというのは、国民として聞こえません、こう言わざるを得ない。ここに、佐藤総理は経済に弱いと言われますけれども、私はそうも思いませんけれども、やはりそういう認識の甘さというものが私はあるのじゃないか、そうじゃないでしょうか。実際問題として、ほんとうに大事なところは物価なんです。その物価をどんどん引き上げていく形の政治をとって、そうして一方では操短をしい、カルテルを許していくということのちぐはぐな政治というものは、どこに比重をかけた政治をしているかといえば、私は物価のほうに比重をかけていないで、むしろ操短のほうに大きなウエートをかけているのだ、こういうように考えざるを得ないのです。この点、あなたは物価対策にどういうように取り組もうとしておるのか。真剣に物価を引き下げようという観念を持ち、政治生命をかけてやろうという考え方があるのかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま小松君から声を大にしておしかりを受けているようですが、しかし、物価が経済の現象であるということはお認めになったようでございまして、ただ、その現象のうちでもこれは一番大事なんだ、だから力を入れるのだ、こういうことを言われたように私は聞いたのでございます。いわゆる経済の活動、それとは別なんだ、別な原則から出てくるものだとは、かようには言われなかった。そのうちで一番大事なのは物価なんだ、こういうように言われている、かように私は聞いたのでありまして、私の表現が非常に簡単に扱った、かようにおとりだったら、私が何を苦労して物価問題と取り組んでおるかということがわからなくなるのです。申し上げるまでもなく、経済そのもの、この見方ですが、経済そのものを育成強化していく、そうすれば物価も落ちつくじゃないか、こういうことが言われる。この点に対して、それならば、経済は成長したが操短をしておるじゃないか、これは一体何だ、こういうお話だと思います。この操短をするということは、いわゆる経済活動として十分利潤を——いわゆる需要が供給にマッチしない、それではいわゆる経済活動にならない、こういうところを産業人が考えるから操短をするわけであります。だから、私どもはそれはいわゆる利益が上がらない、利潤の問題もある、こういうことでございましょうが、そこにいわゆる経済の現象というものがある。それがいかにむずかしいか、いわゆる統制経済で幾らこれをやりましても、生産をどんどん上げましても、その品物が消費されなければ、これは経済のりっぱな活動だとは言えない。現に、しばしば聞くところでありますが、経済は量ではなくて質だ、こういうことがしばしばいわれる。ソ連あたりにおきましても最近はこれに目ざめて、いわゆる量だけではなくて質の問題だ、かような方向にただいま変わったといわれております。これは、私が申し上げるまでもないことですが、いわゆる生産性を向上すると申しましても、これが量だけの問題なら経済活動にならないのです。だから、その辺の誤解はないと思うし、ことに小松君はその道のベテランだから、この点はよく御承知の上で私にお尋ねになっておる、かように私は思いますが、ただいま申し上げるように、この経済活動そのものから見まして、いわゆる物価の問題、これは一口に物価というけれども、その物価をいろいろ区別して、それに対する対策を立てていかなければならない、かように私は思います。だから、先ほど例にあげました耐久消費財といわれる電気機器なりその他のものが現に安くなっているじゃないか、自動車など安くなっているじゃないか、これはこれでわかる。ところが今度は総体的な物価だといわれるが、そのうちで一番問題になるものがいわゆる管理価格といわれるもので、管理価格といわれるものについては、これは政府が適当に指導している、もちろんこれを値下げする方向に指導しておる、これも御承知のとおりであります。  それからもう一つは、いわゆる消費者物価です。消費者物価は一体どうあるか、こういうことでいろいろ努力をし、同時にまた、公共料金の扱いなどについての問題がいわゆる国民生活を圧迫する、あるいはこれに非常な重荷を課す、こういう意味で特に私どもが注意しなければならない。だから一般的に、総体的にはいわゆる生産性の問題で私はいいと、かように思いますが、しかし、個個の物価についてそれぞれの対策を立てない限り、皆さま方の納得のいくようなことにはならない、かように思っておるのでございます。
  150. 小松幹

    ○小松委員 言うはやすいけれども、やらなければ何にもならない。生産性向上そのものは私も否定しません。だから、あなたは電機のことを取り上げましたが、これは操短も、あるいはカルテルも結成していませんから、わりあいに下がっておる。そういう政治をされれば、比較対照でも下がるわけなんです。ところがそういうものをとらぬで、管理価格などをとらないでも、実際生産性向上がおくれているのは何か、一番物価が上がっているのは農産物じゃありませんか。それならば、農産物の生産性向上ができなければ、それをさせるように予算をつけていくのが政治じゃありませんか。ところが農村の農産物などについて一体どういうように生産性を向上させ、そうして農産物の価格を引き下げるように政治がしむけていったか。これは具体的な問題なんだ。実際問題としてやっていない。  たとえるならば、鶏を飼え、豚を飼えというけれども日本のいわゆる家畜のえさはみんな外国から輸入しているじゃありませんか。ほんとうに生産性を上げて、卵も安くなり、あるいは豚も安くなるためには、えさをどう解決するかというのが政治じゃありませんか。そのえさを解決せないで、そこに投資をしないで、そうして生産性の向上だ、そう言ったって、それはから念仏じゃありませんか。一体えさの問題についてどれだけやったか。何もやっていない。やっていないから、どんどん農産物価格というものは、生産性向上がちぐはぐになって、上がる。今度は流通機構にしても、藤山経済企画庁長官は——ちょっと待ってください、前へ出ておっていいですから。経済企画庁長官は、あるいは流通機構をやりますとかなんとか言うが、一体流通機構は何をやっているのですか。何にもやっていないじゃないですか。ただ生産性の向上がうたい文句で、やりますがうたい文句で、そうして何にもやらぬから、農産物のわゆる生産性向上が上がらないし、どうしても物価というものにはね返ってくる。  いま物価水準の一番高くなっておるのは食糧じゃありませんか。かん詰めであり、あるいは生鮮食料じゃありませんか。これらについて何もやっていない。むしろ農林予算は削って削って、しかも融資。もとは補助金なり国家投資であったのが融資。融資という金を借りて農業をしようという金借り農業に転化させておって生産性向上ができますか。そこに矛盾がある政治をやっておって、そして生産性が上がらぬからと、そういう他人行儀なことで人に責任をなすりつけるようなことを言っているから、いつまでたっても物価が下がらない。ほんとうに下げる意思があるならば、断固としてやるべきなんだ。どこに隘路があるか、見たらわかるでしょうが。設備投資によってやったものなら設備投資が受ける。ところが農産物などは、設備投資もたくさん金は出していません。金は借り出しません。それだったら、農業の繁栄のために設備投資なりあるいは投資をしていくという政治が生まれたときに初めて物価が下がるわけです。だから、物価対策をやるという意思が佐藤総理にはない。あるけれども末端の大臣がやらないのか、あなたが指導が悪いのか、やっていないわけです。その例を一つ私がとりましたから、一体農産物価格対策について生産性向上のためにどのように努力してやっているかを、一つ農林大臣から承りたい。
  151. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ただいまの御質問の点に対してお答えいたしますが、農業の生産性向上については、いまお話しのとおり、なかなか早くはいかないのは事実です。しかし、やっていないのではないのであります。農業基本法制定以来、構造改善もやれば、機械の発展もやれば——たとえば機械にいたしましても、初めほとんど牛馬によって労働をやっておったのが、現在は機械力によって相当進めております。何百万台というものがいま普及されておることは、御存じのとおりでございます。それからまた、基盤整備にしても、小さな基盤であっては、そこへ生産性向上をやろうといってもできないわけでございますが、これは御存じのとおりでございます。そういうわけでございますから、基盤整備をどんどん進めていこうというのでやっております。しかし、この基盤整備ができないで、ほんとうに構造改善なりあるいは機械力を使うなりということが不可能であることは、御存じのとおりでございます。たとえば、大体農道がなければ、大きな機械を持っていってもそこに入らないわけでございますから、そういう点について基盤整備の問題、あるいは農道というもの、そういうものについて努力はいたしておるわけでございます。そういうような関係でございまして、努力はしておっても、農業の生産性向上は非常に時間がかかるということでございます。  それからえさの問題につきましては、御存じのとおりに、草地の改良というものを大きく進めておるのでございます。しかし、これもなかなかそう簡単にいかないわけでございまして、この農業の問題については、そう急激に進め得ないというところは、これは農業としてはやむを得ないことでもあるとは思います。しかし、さらに一そう努力を払うべきであるということは、御説のとおりであると存じます。
  152. 小松幹

    ○小松委員 農林大臣は、努力を払うという形、姿勢は示しておるという御答弁でございます。それはそういう姿勢は示しておりましょう。しかし、いまの現実の政治というものは、特に消費者物価が上がる、その消費者物価の一番最たるものは生鮮食料品であり、農産物であるというならば、そこにピッチを速めるという政治が生まれなければ、農業というものはひまが要るものだというて、ばかがあほうを待つように、いつまでもやっておったんではいけません。それは百年河清を待つものだと私は思う。そこに政治のほんとうの実態を発揮さすのならば、いかにして三年計画を一年に縮めていくかということが大事なんです。それをやらないで、ただ、長引くものだ、そのくらいのことはだれでもわかっておる、百姓だってわかっておる。ところが、百姓はわかっておるけれども、生産性の向上といううたい文句ならば、それのピッチを速めてやることが必要なんです。いまトラクターを買うてという、それならば、生産性向上をするためには、なぜトラクターを使うためのガソリン税の免税くらいはやらないのか、やるべきじゃないですか。それをやって、生産性の向上の一つの分野かもしれませんけれども、それを引き下げてやることが、農業をかわいがると同時に、農産物価格の安定になっていくんじゃないですか。トラクターが使うガソリンの税までぼんぼん取って、国会で大問題になっても、それさえ引き下げきらないような政治で、一体何で物価安定などといううたい文句が現実政治に通ると思いますか。こういう政治というものは、ただ、から念仏の政治にしかすぎないと私は思うのです。ほんとうにやろうと思うならば、綿密に計算を立ててそこまでやる、そうすることによって、ほんとうに農業が生産性を上げてくるわけなんです。三年で上がるものが二年で上がり、二年で上がるものが一年で上がるわけなんです。それをやらないで、いま農林大臣の言うようなことを言っておっても、それは政治にならない。官僚政治ですよ。いまの農林行政というのはほとんど官僚政治、役人がする政治だ。ほんとうの政治家がする政治じゃない。  藤山さんにお伺いしますが、流通機構では一体何を考えてやったのか。豚や、あるいは最近は牛肉が高くなっておるが、いま流通機構で何を考えておったのか。市場流通というものをどういう考えでやったのか、それが現実的に実っていないんですが、一体今後どうするのか、それも加えて言ってもらいたい。
  153. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 流通機構の問題は、相当今後力を入れて改善する必要があると思います。流通機構そのものは非常に多岐にわたっておると申しますか、たとえば、東京あたりの大都市における市場の問題、こういう問題につきましても、われわれつぶさに現況を見てまいりますと、今日九百万というような大きな人口をかかえた都市におきます市場の配置その他というものが、必ずしも適正であろうとは思っておりませんし、その規模等についても、ここらの問題はもう一ぺん再検討してまいりませんと、人口四百万ないし五百万の都会におきます過去の長い間の伝統の上に立っておると思います。こういう点につきましては、やはり首都圏整備等の方面におきましてもそれらの問題について、今後の東京都におきます生鮮食料品の配給経路あるいは今後あります都市形態の発展系統等に従って考えてまいらなければならぬと思います。市場そのもの、市場の中の近代化の設備等につきましても、これから相当考えてまいらなければならぬ。近代化自身がおくれておるということだと思います。また、建物その他機構の面でおくれているばかりでなく、あるいはそれを取り扱う業者の間における問題もあるのでありまして、それらの点について、やはり新しい観点に立って、これから出発をしていかなければならぬと思います。  また、同時に、今日団地等がたくさんできてくる。東京都のごとき状態の大きな都会では団地等かできております。したがって、配給につきましても、むろん中小規模、あるいは配給業者というのは零細業者でございますから、この立場を保護していかなければならぬことは当然でありまして、既存の配給業者を活用することによって新しい販売の方法、たとえば最近唱えられておりますような自動車による販売というようなものを、既存の業者そのものが一致団結してそういう方向に一つの道を開いていく、それらの問題も既存の業者と対立関係にあっては事は進まないのでございまして、過去におきます例を見ましても、たとえばスーパーマーケットができる、あるいは新しい配給の機構等を考えられましても、既存の零細配給業者との間の相克摩擦というものによって問題が進展しない点が多分にございます。ですから、そういう面について、今日までの零細な配給業者の協力を得ることも大事なことでございまして、そういう面についても、農林行政あるいは通産行政の中で今後やっていただかなければならぬ点だと思います。要するに、配給機構の整備とこれからの新しい時代に即しますような運営というものは、今日ここまでまいりますと、相当新しい角度から考え直していかなければならぬところがたくさんあります。また、事実、そういう機運にもなりつつあるのでございまして、これを行政の面において生かして活用していく方途を力強く進めてまいりますれば、配給上の問題についてはかなりな改善ができると思いますけれども、いま言ったような問題を含んでおりますので、相当規模の政府の援助、あるいは財政的な援助も必要でございますし、あるいは組織化に対する誘導も必要だろうと思います。それらのものをあわせて今後これらの問題に取り組んでいきますことによって、長期の流通機構における対策が完成されるのではないかと思います。  そういう意味において、われわれは新しい観点に立って、企画庁としては、それらの問題を検討しながら、各省の行政の上に乗せてまいりますように、それぞれ各省大臣と連絡をとりながら進めてまいりたい、こう思っております。
  154. 小松幹

    ○小松委員 物価対策について、何々物価対策委員会とか何々協議会とかいう組織、機構だけは、経済企画庁中心にできるけれども、一向その問題の進展がない。同時に、私、政治全体として考えて、それに取り組むところの姿勢というものも弱いと思うのです。これは、企画庁自身があるいはそういう性格を持っているかもしれません。しかし、企画庁がそういう性格を持っておるならば、内閣全体として、もう少しほんとうに生産性を上げて物価を下げるんだという、その政治の一点にしぼるならば、私はできないことはないと思うのです。そのくらいなことができない政治ということはあり得ない。やろうというかけ声だけで、しないわけなんです。この点は、佐藤総理、ひとつあなたは言うだけでなくして、もう少し物価の——農産物だけとってもかまいません。その流通機構にはどれだけの人的動員をして、どれだけの予算をつけてやれ、時限を切ってやれ、これだけの強い信念の政治が生まれなければ、物価というものはそう簡単に下がるものじゃございません。あなたまかせでは下がらないと私は思うのです。どんなまずい政治でも、ここだけはやろうという政治が生まれれば——スペインに私が行きましたときに、さっき総理も、ちょっとよその国でもという例を出しましたが、スペインは、食うことと着ることと家だけは、絶対に物価を下げております。あの王政でありましょう。民主政治ではないかもしれぬ、権力の王政であるかもしれぬけれども、その貧困にあえぐスペインの政治の中で、やはり住むことと食うことと着ることだけは物価を引き下げております。そういうところでも私は政治ができると思うのです。まして高度に経済が進んでおる日本では、やろうと思えば、まず家、そして食うこと、そして着ること、こういう程度の政治というものは必ずできると思うのです。できないということはない。やらないからです。ところが日本の場合は逆です。食うことを下げるのではない、一番大事な主食米価、消費者米価を上げるんですから。片一方では消費者米価を引き下げますといううたい文句で言っておって、去年も引き上げます。また来年も引き上げます。二年続けて消費者米価をぐんぐん引き上げるような政治というものが、はたして消費者米価並びに物価を安定しようとする政治のとるべき手段かどうか。これは、財政の操作ではそういうこともあり得ると思います。しかし、財政のそろばんの操作ならばそういうことはあり得ても、ほんとうに消費者物価というものを下げねばならぬ。これは、一億の人民が全部一億米飲を食うとするならば、その食糧だけは絶対に佐藤内閣は上げないぞという不退転の決意があってしかるべきだ。そのときに、政治はさもありなんと拍手かっさいをされると私は思うわけなんです。ところが全部上げてしまう。こういう政治。それは、生産者米価が上がったから消費者米価も上げるんだ、金がないからだといえばそれまでなんです。そこには政治がないじゃありませんか。ほんとうにやるならば、私たちが言っているところの二重価格制をとってでもいい、あるいはスペインがやっているような制度をまねしてもいい、やろうと思えば私はできると思う。ここに不況対策とか、あるいは物価対策と口で言うけれども、真剣にやろうとする具体策を持ち合わしていないところに問題があるのではないか。それは、やろうという気持ちなり善意というものは、幾ら私たちでも認めますよ。善意というものは認められるけれども政治というものは、ただやろうと思っているんだという善意だけでは承認できない。だから私は、強くここで言っておきたいのです。善意だけでやれるなら、だれでもそれはできます。しかし、そういう善意心だけではなくして、実際に結果をあらわしていくところに政治の妙味がある。結果の出ない政治なんというものは意味がない、私はこう考える。この点、佐藤総理の物価対策に対する信念、これからどうしようかということを、国民の前にはっきり言明していただきたい。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど藤山企画庁長官からお答えいたしました。また、ただいまは小松君から善意、誠意は認めるというお話がありました。しかし、物価問題がいかに多岐にわたり、またそれがいかに困難であるかということもおわかりがいただけたと思います。さらに御鞭撻をいただいて、やる意思があればできるんだ、しっかりやれ、こういうお話も伺ったのであります。  私は、この物価問題、あるいは経済の不況から抜け出て、そうして経済を安定成長に乗せることが私の内閣に課せられた課題だ、かように考えておりまえただいま物価問題について、公共料金その他について上げざるを得ないような状態、これによって経済を安定成長へ乗せることができるんだ、かように実は考えております。ただ、これが非常に国民生活を圧迫する危険がございますから、その時期になり上げる率なり等については特に留意してほしい、またみずからが姿勢を正すという意味におきまして、経営の合理化を積極的にはかることは、これまた当然だ、かようにお答えをいたしておるのでございます。  また、先ほど来農産物についての価格決定についてもお話がございましたが、申すまでもなく米食の日本人、それの立場において、生産者米価が落ちつかず、毎年上がっていく、食管会計だけにおきましても一千億以上の穴があく、こういう状態だと、ただいま言われるように、二重米価もやむを得ないじゃないかと言われましても、やはり食管会計の赤字は小さくしていく努力はしなければならない。そこらに問題があるわけでありまして、これは国民も納得してくださるように思うのであります。しかし、納得のいかない点もありましょうから、さらに私どもは注意していかなければならない。  また、流通機構の改善については、あるいは生鮮食料品について冷蔵倉庫を大幅につくるとか、あるいは輸送上の改善をするとか、あるいはまた特別な栽培地域を予定して、蔬菜の供給地を考えるとか等々の具体策をとっております。しかし、いずれにしても、天候によって左右される農産物は農民の非常な努力にもかかわらず、できばえにいろいろの差があるわけでありまして、申すまでもなく、ことしなどは白菜が非常に安いといっている。生産者はこれでも非常な苦痛を訴えております。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 片一方で生産者が苦痛を訴える、それでは消費者は安いから満足しているかというと、やはり白菜ばかり食っておるわけにはいかない、われわれはもっとキュウリが食べたい、あるいは大根が食べたい等々の欲望が出ておりますので、その需要供給をマッチさすことも、時期的にこれをあんばいすることもなかなか困難だと思います。しかし、困難だといって投げやりではございません。の努力を尽くし、ただいま御指摘になりましたように、さらに成果をあげるように努力してまいるつもりでございます。
  156. 小松幹

    ○小松委員 私は、消費者物価の問題について、経済の一現象というようなとらえ方ではなくして、政治の目標であるというとらえ方をしてもらいたいがためにいろいろ例を出して言ったわけなんでありますが、やはり公共料金の引き上げ、国鉄料金あるいは郵便料金、あるいは四月は大学の入学金、学費等もまた上がってまいります。次々と連鎖反能で上がってくれば、国民の前に大きく立ちふさがるのは物価の値上げということで、これが一番大きな圧力となって感じてくるわけなんです。ここに私は政治というものが不信を買うゆえんがあると思う。幾らいいことを言い、幾ら論理的にものごとを進めても政治はそのときそのときの時限において正しく国民に受け入れられねばいけないとするならば、消費者米価あるいは卸売り物価等の引き下げを断じてやるという不退転の決意政治にあらねばならぬ、私はかように考えます。  次に、私は、また不況の問題にまいりますけれども、やはりこの問題も、佐藤総理はまだまだ不況への突っ込みが足りないのじゃないか、本会議の質問でも、野原君から質問が出て、倒産したのが四十年が一番多い、こういうように言われても、経済は停滞しておる、しかし貿易がいいから、あるいは手持ち外貨がふえたから、こういうような言い方でただし書きをつけてそれをのがれておる。これは政治家としてはまことに高踏的とでもいいますか、不遜でもあると私は思う。あたりまえのようなことであるけれども、私は、そういう政治というものはほんとうはよくないのじゃないかと思う。たとえば、ケネディが何年か前に破天荒に、アメリカ経済はほんとうにいま危機一髪のところに来ておるのだと言って中外に声明して、自分はこのアメリカの危機を救うと打ち出していった経験がございます。いまこそ佐藤総理はこの日本の景気というものをすなおに見て、そうして国民に訴えるときじゃないか。四十年になって倒産が一番多い、いや、それはそうだけれども、まあ貿易がいいから期待しております。というような安易な言いのがれや、何か持たせたような、きょうは天気が悪いけれども、あしたはようなりますよ、というような持たせかけたような発言なり指導なりをして政治をしたら、私は誤ると思う。いまの時限において、日本は経済は不況なんだ。そうでしょう。四十年は初めて当初予算が一カ月ならずして穴があいた。大体当初予算を組み立てるときに、田中大蔵大臣は大きなあやまちをおかしておる、歳入の見積もりを見誤っておるのですから。それというのも、経済のことだと言えばそれまでだが、これは、はっきり自分の歳入の見立て方が悪かったからこういう結果になったんだ。こうなったのは福田さんには責任はないかもしれぬけれども佐藤総理には責任があるはずです。実際歳入欠陥をこれほどしたということの責任、これを自分もしっかり受けて立って、誤りました、おおミステークじゃないけれども、私の見誤りでした、そしていまは経済はこんなに深刻なんだ、四十年度の経済成長率は二・五%でしょう。ことしの成長率は二・五%、当初の計画は七%か九%でした。それが二%台に落ちているのです。中期経済計画も何もあったものじゃない、これほど計画が破綻し、予定した能率が上がらないで成長がとまっておるということを国民に訴えて、倒産した人にはまことにお気の毒だと、こう訴えてこそ国民の共感を呼ぶのです。それが私は佐藤総理に欠けておると思う。そう言う野党に対して、私がこう言ったから負けぬようにオウム返しでやり返してやろう、そういう総理大臣であったら意味がないと思う。そうでなくして、自分に言い聞かせる政治でなくてはならぬ。いまの不況は、自分の内閣の責任において自分がやっているんなら、私は自分にしっかと言い聞かせる答弁でなくてはならぬと思う。それを、野党がこう言うたから、いや、そうじゃないぞ、いま貿易はいいから、外貨を持っているから、まああしたはようなるだろう、こういう言い方は私はすべきではない、この点、不況の認識が少し甘いのじゃないかと思うが、その点、どうなんでしょうか。総理、あなたはほんとうに経済というものの深刻さ、あるいは現実というものを直視しているかどうか、お尋ねしたい。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の表現があるいは不十分でただいまのようなお話が出ておるかわかりませんが、私はしばしば本会議その他の場所におきましても、不況の克服こそ佐藤内閣に課せられた重大な課題だ、かように考えておるということをしばしば申し上げました。その点について、小松君から御指摘になるまでもなく、当面しておる現在の産業の実態、経済の動向、これについては私十分注意しておるつもりでございます。しかし、これはいままでもしばしば申し上げましたように、まことに深刻であり複雑なものである。複雑なものであるだけに、短期間成果がなかなかあがらない。そういう意味では、ややもう少し、せっかちにならないで、しばらく事態をよく見ていただきたい、かようなことを申しておるのであります。私は、ときに国民に対しては激励もし、ときに国民が失望しないような処置もとりたいと思いますし、ときに大いに希望を持つことも与えなければならない、かように考えるのでありまして、ただ、いま言われるような実態だけを申し上げるだけでなく、これが具体的な処置として効果あるような施策がなされなければならない、かように思います。  ただいま物価について政府自身が無策だという御批判をいただきましたが、この経済不況に対しましても、夏以来の一連の施策は、ただいま申し上げるように、私どもが一致して、そうして真剣にこれと取り組んでおるその証左である、かように私は皆さま方に申し上げ得ると思っております。
  158. 小松幹

    ○小松委員 福田大蔵大臣は、私の政治としては、企業と家庭とを幸福にするんだと、こうおっしゃって、両方並べております。それはそれなりにいいと思います。それならば、ことしから去年にかけて、もうずいぶん中小企業の連鎖反応による倒産がたくさんございました。それに対して、倒産したものは倒産したものだ、一々政府が取り合っているわけにはいかない、こういう考えで対処しておるのか、一体どういう考え方でこの中小企業——ほとんど倒れておるのも中小企業の部類に属するものが倒れておるわけですが、一体企業と家庭を愛するという政治のものならば、これに対してどういう処置をするのか、したのか、この点についてお伺いもいたします。また、もう一つは、それならば中小企業対策はどのようにあらねばならぬか。企業をかわいがるというならば、大企業だけの考え方でなくして、その点をひとつお伺いもいたします。
  159. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私が企業の中で一番関心を持ち、心配をいたしておるのは中小企業なんです。つまり今回の不況は長期化しておる。大企業のほうは何とか、あるいは減配でありますとか、あるいは無配にするとかしてもつなげるものが多いわけでございますが、中小企業には抵抗力がない、長引きます不況下では非常に苦しい立場に置かれるだろう、こういうので、私の心配の一番大きな焦点は、そこにあるわけであります。さようなことから、政府としては、地方通産局に中小企業相談室を設けて、大蔵省からも地方の局長等を派遣し、問題のある中小企業に対して親身に御相談にあずかれるようにしております。また、こういう際にはとかく金融問題、こういう問題が重要な関係になりますので、金融につきましてもなるべく円満にいくようにというので、そういう相談機構等を通じまして問題の解決に当たらせる。そのほかに、特に年末なんかに際しましては、政府資金あるいは民間資金、そういうものを十分用意してこれが対策に立ち向かう、あるいは借りる場合の金利につきましても、これもなるべく安くしなければならぬ。それから、さらに担保力がなくなってきた、こういう問題があるのであります。そういうことを考えますときに、これは損害保険、信用保険、この制度を拡充しなければならぬ。こういうようなことで、今度の補正予算でも、その改正のための資金をお願いしておる、こういうような措置をとるわけであります。倒産が多い、これは、やはり中小企業がこういう状態下において抵抗力がない証拠だと思うのであります。これは、できる限りの措置を尽くしまして、中小企業には親身に尽くしてやらなければならぬ、さように考えております。また、前の国会におきまして加藤委員から御意見のありました歩積み両建てにつきましては、加藤委員の構想によりまして、歩積み両建て苦情受付所というものを各都道府県の商工会議所内につくり、そこに関係官が出張いたしまして、その訴えを聞くというような仕組みをとる等、できる限りのことをいたしておるということを申し上げておきます。
  160. 小松幹

    ○小松委員 中小企業対策については、あらためて別な人がやると思いますが、ほんとうに不況によって犠牲を受ける。あるいは不況だけではない、経済のやり方、仕組み方では、私は一番問題点は中小零細企業だと思うのです。この政治というものは、私は大企業はそれほど政治の手を差し伸べないでも自立し、また自己計画でもやれると思うのですが、しかし中小企業に関する限りは、ほんとうに政治の手が伸びなければ、これは存立が危うく、だから、ちょっと突けば将棋倒しに倒れるという現象が起こるとするならば、結局設備投資が行き過ぎた結果なんでございましょうから、そこに必ず連鎖反応が弱いところに来るということになれば、一番弱いところを政治はつかまえねばならぬ。その政治の目標は中小企業だ、こういうように考えても考え過ぎではないと思うのです。それについてもう少し対策を立ててやらにゃいかぬ。そこで私は、この不況の認識のしかたというものが、これはもう何回もだれか、前の山花さんも尋ねましたが、一体今日のようなこの不況現象というものが起きたその原因をどう把握しておるか。原因はいろいろあるが、その把握のしかたによって私は政治が違ってくると思うのです。一体、今日の不況のつかまえ方をどういうようにつかまえておるのか、認識をなさっておるのか、この点、総理にお伺いしたい。
  161. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように、今日の不況は、いわゆる循環的なものでなくて、構造上からきていると思います。過去における非常な設備投資の増大、それによります過剰設備のでき上がったこと、同時にそれに対する需要を、この貿易バランスを合わせるための金融引き締めの結果として消費を押えた、それが逐次慢性化してきた、こういうところからきておると思います。そうして、高度に経済が発達している中でもって、それぞれの産業の発達のしかたもまちまちでございますし、また企業形態におきましても、大企業と中小企業といわゆる零細企業との間には著しい格差ができてきております。こういうことが今日の不況の主要なる原因をなして、一々数え上げればたくさんございますので数え上げることは省略いたしますが、そういうところからきております。したがって、そういう意味において、ある程度格差の是正をしていかなければならぬ。景気を今日上げていきます場合に、デフレ的な傾向とインフレ的な傾向があるわけでございまして、やはりある程度景気浮揚のためにはインフレ的な方向に進むだろうと思いますが、これを安定均衡の成長に乗せてまいらなければならぬので、そこに初めて安定した経済の成長が期待し得ると思います。そういうことになりますように、今日の経済を把握しながら見通しを立てて進めていく、こういうのが現状だと思います。
  162. 小松幹

    ○小松委員 藤山さんの不況の認識を聞いておると、いつも何だか書生論を聞いておるように私は感ずるのです。まあ評論家なり企画庁ならばそれでつとまるかしれませんが、実際そういう不況の認識では政治は生まれてこぬと思うのです。いまのような考え方で言えば、一体何をしたらいいのか、その先が出てこない。そこまでは出てくると思うのですけれども、その先が出てこないと思うのです。構造上の問題だ、あるいは循環的な問題だ、それじゃ循環的な問題だというならば、それに対処するのにはどうするのか、循環的なものならば、循環してこう出て、うまく展開して、いまごろは上がってこねばならぬ。福田さんは、大蔵大臣は、この夏も、七、八月ごろだったか、秋口から上向く、秋口から景気はつま先上がりになると言った。何もどうもせぬじゃないか。実際は、これはもうずっと下がっている。これなど考えたときに、ただ循環の法則だとか、あるいは構造上の問題だと言っただけでは解決がつかぬ。構造上の問題があったら、一体その構造上のどこが問題だ、その構造のどこが問題点であったのだというようにつかまえていかなければ私は政治は進まないと思うのです。そういう意味で、金融政策も、あるいはただ途中からつま先上がりになるといって、この前は民間設備投資が行き過ぎたのだから、今度は国内の需要を喚起するために財政に力を入れればいいんだという、これも私は一つの政治であると思うのです。しかし、それでもなおかつ——たいてい大蔵大臣は、財政を今日もう一生懸命に果たし過ぎるほど果たしてきた。佐藤内閣ができてから、私は金融政策はもうやり尽くすほどやってしまったと思うのです。それから財政政策もほとんど手のうちはみんな出てしまった。財政も経済も手のうちは全部出てしまったけれども、成長率は二%に下がってきたということは、これはもう一回反省せねばならぬというように私は考える。ここに経済の不況の認識なり経済のよって来たるつかまえ方が甘いから、あっちこっち、あっちこっちに振り回されて、そのときそのとき調子のよいことだけを言うておると思うのです。だから、構造上の問題があるならば、その構造上の問題で、何が構造上で問題があったのか、ここに私はもう少しメスを入れていかねばならぬと思う。民間設備投資が火の消えたようになっておるのに、木に竹をついだように財政、財政——池田さんは民間設備投資、佐藤さんは今度は財政投資、財政投資、全くそこは木に竹をついだような政治になっておるから、その谷間ができておる。それは有効需要を喚起するというていいけれども、財政需要を喚起してみたところで鉄鋼がどれだけ飛び上がってくるか、繊維がどれだけ飛び上がってくるかということは、なかなか迂遠な道でしょう。財政投資をやっていけば、土建屋が一番先に立ち上がるでしょう。しかし土建屋は、いま操短もしておらなければ、まあオリンピックで少し倒れたのもありますが、実際に構造上変化したというならば、もう少し考えるところがあるのじゃないか。民間設備投資が減ったからといって財政投資にぽっと切りかえたって、その間のギャップがあると思う。そのギャップをどのように埋めるかという政治ができない限りは、大鼓をたたいても、ここ半年、一年は経済というものは上がりません。つま先上がりと言うから、つま先がいつも上がっておるからつま先上がりでいいでしょう。GNPは二十五兆、財政、財政というけれども、GNPに示すところの国民総生産は二十五兆、今度来年度は四兆円と言うが、二十五兆の中の四兆円の果たす役割りというものは、それは幾らかあるでしょうが、これだけの、この一五%の成長率できたもののギャップはそう簡単には埋められぬ。だから、つま先上がりで、だんだんじり貧で先取りでいくのです。もはや一年間ずったわけです。それを秋にはようなる、冬にはようなる、春にはようなる、そういうような甘いムードで政治を進めるからいけない。政治をやる者はもう少し——甘いムードもいいでしょうが、いわゆる音楽のような甘いささやきで、つま先上がりで、あしたはいい、あしたはいい、——持たせちゃいけませんよ。どうも佐藤内閣は、この経済の深刻な面というものをおおい隠して、持たせておる。あしたはようなる、あしたはようなる、そうしてよくなってくれば拍手かっさいでしょう。しかし一向によくならぬで、とんとんとんとん落ちる、階段を落ちるように落ちていく。これが現実です。落ちていく。第一、成長率が二・五%とか二%なんというような破天荒に落ちてしまっておる。こういうように落ちるということは、いわゆる経済に対処する考え方が甘い。あすはなんとかなるだろうというこの考え方が常に先行しておるから、そういう言い方になる。そういう言い方をしないで、もっとシビアーにものを考えていけば、ここまで落ちこぼれないでも済むのじゃないか、私はそう考える。この点、財政投資もいいでしょう。あるいはもう手を尽くしたんですから、これよりあとは何にもありません、とお手あげの政治です。もうあとは借金をして公債を発行するだけですというのが佐藤内閣の最後の切り札を見ざるを得ない。それで、そんなら最後の切り札でも、公債発行をしたからといってたいへん甘いムードに酔わせている。一体国民は公債発行して、大きなことをこれから借金をしてやるんだから、たいへんようなるだろうと思っていると大間違いです。五千億か六千億か七千億するか知りませんが、七千億か五千億の借金をして公債を発行したからといって、いまの落ちこぼっていくこの経済を上向き経済にしょうなんという大それた考え方を持っていると、とんでもないあやまちです。ほんのちょっと目ざまし薬をぽんと打たれた程度に考えていいのです。だから自民党の中でも、そんななまやさしいことでいまの不況は救えないから、一兆円公債を発行しろ、減税は五千億やれという意見が出ておるじゃありませんか。その出ている原因は那辺にあるか私は知りません。しかし、那辺にあるかもしれませんけれども、あまり佐藤内閣が公債、公債と言うて、公債一枚看板に言って、打ち出の小づちだ、これさえやれば経済はようなるんだ、不況は回復するんだというような言い方をすれば、私たちだっても、佐藤さん、それはちょっと甘過ぎませんかと言いたくなるわけです。ここに私は経済の見方の甘さというものがあると思うのです。私はいまの情勢をすれば、そんなに一ぺんに不況は回復せないと思うのです。だから、各都市銀行が昭和四十年度の経済の見通しを出しておりましたが、まちまちな意見が出ておりますけれども、どれだって四十年度の中半期までは、だれもいいなんて言っているものは一つもないのです。ということは、不況を回復しようという佐藤総理の考え方は、これは一年先だということにしかならない。そうすると、あなたが総裁になって一年間はどんどんどんどん階段を下って、あと一年間でやっとこしょで底をついて、こうぽっつりぽっつりといくという、そうなったら、二年間の佐藤内閣政治というものは、経済においては全く低調ムードにしかすぎないじゃないですか。そんならここでがんと何かやるという決意国民とともに示すべきだ。その決意を披瀝していかなければ、公債発行とかなんとかいっても、それは単なる甘いムードを世間にまき散らすだけだと私は考える。この点、佐藤内閣は経済に対するビジョンというものを那辺に置いておるのかということを私ははかりがたいわけなんです。佐藤総理、あなたの経済に対するビジョンを、どうかひとつ国民にわかるようにお願いします。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申し上げたとおりの佐藤内閣の課題、これは不況を克服する、これと真剣に取り組むということであります。私は過去のわが国のあり方をいろいろ考えました際に、いわゆる政府は均衡予算ということで今日までやってきた。なるほど政府は借金はどんどん減っていく。そうしていわゆる超均衡、いわゆるドッジラインが守られていた。しかし、はたして国民政府が均衡財政を堅持したように、国民自身が同じように豊かに、また企業自身も内容豊富な状況で経緯したかどうか。これは、先ほどお尋ねがありましたように、六千億ちょっとの配当をしておるが、同時に金利としては、一年間に二兆円以上を支払っておるのです。こういうような経済の状態になっておる。国民の実態になっておる。私はここに一つの問題があるのじゃないかと思う。ただいまは私が申し上げるまでもなく、国民自身が主権者と言われている。また国とは一体何か、かように考えると、国民自身が実態なのだ、かように考えざるを得ない。そこで私どもは、政府そのものよりも国民自身が豊かになり、そうして十分の力を持つこと、産業自体がさような状態になることが望ましい姿ではないか。だから、ただいままでやってきたいわゆる超均衡予算、そのもとにおいてなるほど国民自身が非常に余裕を持って支払われた税金なりやいなやということを考えざるを得ない。そこで、今日私どもはこの際は大幅に減税をして、一時的に政府は借金をいたしても、その実態そのものを豊かにすることが今後のあり方である、かように私は考えておるのでありまして、ただいまのようにビジョンだと言われれば、これが私のビジョンでもある。国民を豊かにする、国民を富ますというそういう考えのもとにこの経済のあり方、産業のあり方をこれから成長さしていきたい、かように私は思っておるのであります。
  164. 小松幹

    ○小松委員 総理は、安定成長という一つのスローガンも掲げて、経済を安定成長に持っていくのだと今日まで一年有半やってきたが、ここで私は、単に安定成長という観念だけでなくして、経済的にもう少し突き詰めてみたいと思うのです。安定成長という一つの成長指数はどのくらいか、もう一年半たったから大かたわかったと思う。安定成長の指数はどの程度を安定成長と見ておるのか、この点をお伺いしたい。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねは成長率だろうかと思う。まあ私ども考えているのは七、八%を考えております。
  166. 小松幹

    ○小松委員 そこで、七、八%を考えておるといえば、池田内閣が当初所得倍増政策で掲げたときも、大体その程度の成長率を掲げてまいりました。佐藤内閣も安定成長の成長率を七、八%と見ておるわけです。その点をもう一回お伺いします。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 池田内閣としいて異を唱えるわけじゃないですが、池田内閣のほうがやや少し高くはなかったかと、かように考えておりますが、それより私は七、八%、たしか九%か九・一、二%、それが池田内閣の当時の計画ではなかったかと、かように思います。
  168. 小松幹

    ○小松委員 池田さんが考えたのは七、八%が当初の高度成長であったのです。ただそれが結果として一〇%に、一三%に実質成長がなってきたわけなんです。ところが、あなたは七、八%を安定成長だと考えてやったところが、結果として二・五%になったのです。これから先どうなるかわかりません。どうして七、八%が日本経済の安定成長なのか、それをお伺いしたい。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はただいま、いままでの経済の成長率の実績等から見まして、これが今日の過熱を引き起こした、かように考える。そういう意味でもう少しブレーキをかけるのがいいんじゃないか、かように思っているのです。  小松君も御記憶にあると思いますが、最初所得倍増計画、この二倍という計画をスタートいたしました際に、七・二%ならばこれは十年で倍になる、当時私は大蔵大臣であったから、さようなことを申し上げたかと思います。池田総理の場合は最初のスタート、初期をひとつ上げてみようじゃないか、現実に七・二%はもうだいじょうぶできるようだ、だから最初をひとつスタートに上げてみようじゃないか、こういうことを言われて、当時の計画が九・二、いわゆる当初の二、三年、計画の三年ぐらいはさような方向でいったらどうだろう、こういう話であったと思うのです。そうして、それについて非常な批判——あとで実績上を見ると、名目成長にしても実質成長にしてもこの九・二を大きく上回っている。そこで、計画が違うじゃないか、こういって社会党諸君から言われました際に、ただいまの実績はこれはうれしい実績だ、われわれが予定した以上の成績があがったのだ、かようにたしか説明したと思います。今日ただいま私が責められているのは、どうも佐藤内閣になってこの見込みが非常に狂って、非常に小さいじゃないかということをいま言われ、責められておる。これは、この狂ったというほうからいえば、上回ってもまた下回っても同じように狂いに違いない。なぜその狂いが起こるかといえば、これは統制経済、計画経済じゃないのだ、私どもは自由経済をやっているんだということであります。だから、その狂いがそこに生ずるのであります。しかし、経済の実態から申せば、上回っての狂いならこれはしんぼうができるが、下回っての狂いはこれはしんぼうができないというのが、国民の皆さんのお感じだと思う。私も、計画が下回った、そのために非常な支障をあちらこちらに来たしておる、まことに残念でならないのであります。しかし、これらのことは、私が政局を担当した際に、いわゆるひずみ是正という表現でこの問題と真剣に取り組んだのでありますが、これはただ単にひずみという程度のものでないということを如実に示しておるのでありまして、私はまことに残念ですが、ただいまの不況克服、これを真剣にやらなければならない、それが私の課題だ、かように思っておるのであります。
  170. 小松幹

    ○小松委員 私は、日本の経済の安定成長は、私なりの考えならば、五%ぐらいがいまの段階で適当だ。安定ということは一体——いままではこういうことを尋ねませんでしたけれども、いま初めて安定という数字をあなたに尋ねた。もう数字を出してもいいころだから尋ねたわけなんですが、安定とは安く定まるというのか、低く定まるというのかその辺のところがことばがあいまいである。あいまいなだけに、経済があいまいになるから、私はここで安定成長の実態を聞いてみたいと思う。安定成長と均衡成長とは違うのですか。同じものなんですか。この辺をお伺いしたい。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体同じような考え方じゃないでしょうか。安定成長あるいは均衡成長、こういうようなことは大体同じような意味だと私は解釈しております。
  172. 小松幹

    ○小松委員 そうすると、均衡は安定と同じだという、日本語ですから、そうとってもいいと思うのですが、それじゃ均衡といい安定といい、物価などの数字というものはどういう点に安定したらいいのか、どういう点に均衡したらいいのか、ここに私は成長経済の目標が、七%の成長でわれわれはやるのだ、これが日本経済にとって正しいのだというならば、そこに物価というものは、この辺が正しい均衡なり安定なりという数字というものがなければならぬ。一体物価というものは、七%の成長率に対して何%にとめるのか、これが安定なのか均衡なのか、その辺をお願いします。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなかむずかしいことですが、物価はとにかくあまり上げないことが望ましいように思います。ここでいろいろな議論があろうかと思います。しかし、全然上げないというようなわけにはいかないだろう、一般の明治以来からの経済の発展の途上で見まして。しかし、そのものは非常になだらかであり、あまり大きくないもの、これが望ましいことは、申すまでもないところであります。中期経済計画等でも、これは計画そのものを申し上げるわけじゃありませんが、そういう意味で、できるだけ物価の値上がりを押えたいという気持ちであれはできたものだと思う。しかし、あれは四・五程度を考えておるようですが、まだもっと低いところが望ましいのじゃないだろうか。これは、なお専門的に研究しております企画庁長官に答えさせますが、二、三%、あるいはもっと低いところか、かように思いますので、それらの点は企画庁長官からお聞き取りをいただきたいと思います。
  174. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安定成長と均衡成長のお話でございましたけれども、これはいろいろ使い方もあると思いますが、私どもは、年々の経済があまり大きな変化がないという、時間的な過程における問題のほうに重点を置いて説明するときは安定と申しますし、それから、均衡というのは、やはり安定成長の内部の問題でございますけれども、あらゆる産業、たとえば農業と工業だとか、あるいは中小企業と大企業であるとか、その拡大、発展が、できるだけ均衡をとって拡大、発展していく、あるいは産業構造と運輸構造とが均衡をとって発展していく、そういうことだと思います。そこで、そうした安定的な均衡成長を逐げてまいります場合に、すべてが整ってまいりますれば、おそらくかなりな成長があってもそう破縦は起こさないと思いますけれども、まだいまみたいにゆがみ、ひずみのあるところでありますれば、やはり急激な発展というのはゆがみ、ひずみを大きくさせ、運営をぎこちないことにいたしますから、したかって、いわゆる成長が低いほどそういう状況にのっけていきやすい。低いほどと申しては語弊があるかもしれませんが、のっけていきやすい、こう思います。そういうことでわれわれは安定成長あるいは均衡成長ということを考えておりますが、しからば、いまお話しのように、均衡成長、安定成長のときに、物価は前年度に対してどのぐらいを目標としていくべきか、こういう御質問だと思います。外国の例をとりますと、大体対前年度二%前後が、まず経済が発展、拡大しておるときの物価の対前年度上昇で、それならばインフレにもならぬし、国民の収入の中でまかなっていける、大体そういう感じをみな持っておるようでございます。日本におきましては、まだそういう状況について、若干外国のように十分な——経済膨張についての若さがございます。したがって、所得水準の平準化等もこれからもっと行なわれてまいりますと、やはり合理化ができない、主としてサービス業や何かを中心にした勤労者に対しては、勤労者の所得が増大していくことによって、そうした面における料金の上昇というものが見られることになります。したがって、そういうことを考えてまいりますと、やはり外国の二%ないし二%半よりも若干多目に見ておかなければ、当面の見方としては適当でないのじゃないか。ですから、まあ三%前後を目標にしてわれわれ考えていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  175. 小松幹

    ○小松委員 公債発行の政策。借金政策をしますと、まあ公債政策がそのものずばりインフレ政策だとも言いかねるかもしれませんけれども、やはり公債政策というものは、金利に金利がつくような結果にもなるし、あるいは日銀引き受けの問題はないとしても、結果論としてそういういわゆる日銀信用の裏づけというものが動いておるならば、やはりいままでよりも以上に物価の安定ということを考えないと、とてつもないことになるわけなのでございます。いままでのどの内閣でもやらなかった公債政策をとった以上は、一番大事なところは、成長率よりも何よりも、その中身の実質成長というものと形式的なものがこんなに離れる結果になれば、物価上昇を来たしてくるのでございます。やはり物価というものが私はここで一番大事なポイントになると思う。経済計画の中心は私はここだと思うのです。数字の一番大事なところはここだ。いま何%だ、三%、四%と言われましたが、おそらく来年の当初予算には、あなたは、経済企画庁長官も公債を抱きかかえた中期経済計画か何かを出さざるを得ないと思うのですが、一体その場合に、現在の物価水準から考えて、これをどうしてその中期経済計画の線にのせようとするのか、いまあなたがもし計画をお持ち合わせかあるならば、参考的に言っていだたきたい。かつてあなたは米価審議会に行かれて、米価審議会で物価政策の数字をはっきりした。とたんに公共料金をぽんぽん上げて、何だ、いま来て物価水準はこんなにしますという数字を出したあげくに、すぐよそでは公共料金を上げますなんというようなことでは、経済企画庁長官のかなえの軽重を問うという意見も出たわけなんですが、あなたは一体どういうように数字的に考えているのか、お伺いします。
  176. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 誤解があるといけませんから申し添えておきますが、先ほど申し上げました三%前後というのは、安定成長下における望ましい状態はどうだという御質問がありましたから、三%そこで現実の問題として、これから物価を、対前年度比どのくらいに政策で持っていくかということになるわけでございまして、先ほどのとは違った観点から申し上げるわけです。本年度は御承知のとおり七・五%以上、七%前後にならざるを得ないと思います。そこでわれわれといたしましては、来年度この情勢で引き続き七%台の物価上昇というようなことであってはたいへんでございますから、何としても今日以後の政策努力によって、これを下げてまいらなければならぬことは当然のことだと思います。そこで先般、いまも御指摘になりましたように、米価審議会で、どのくらいな目標でやるのかというようなことでございましたから、まあ本年は七・五%くらいはしかたがないけれども、来年はまあ五・五%くらい、その次は三・五%、三%台というようなことを申して、七、五、三といって、七五三の議論じゃないが、ちょうど十一月十五日でございましたから、そういうあれが出たわけでございますが、必ずしも来年五・五%前後、六%以内ということが不可能なようにも考えられません。しかし、これは今後の政策努力によります。たとえば、本年の場合、三月から四月に移行しましたときはいておりましたげたは、三・四%くらいのげたをはいております。来年の三月、四月を考えてみまして、いまの現状では、まあ二・五%くらいのげたで済むように思います。したがいまして、たとえば本年七・七%くらいの上昇がありましたときに三・四%のげたをはいていたということから考えますと、残り四%前後とすれば、二・五%のげた四%加えると六・五くらい、その六・五くらいのものをこれからの政策努力で五%台に持っていく努力をしなければ、これは政治にならぬと思いますし、われわれもそれだけの目標を立てて努力していくということでなければならぬと思います。ですから、来年からすぐ先ほど申し上げた数字である三%に持っていくなんということは私はなかなかできないというのでございますが、少なくとも来年は五ポイント台にとめていきたい、そういう努力をしていきたい、そのかわり再来年はさらにもう一%なり一%半なり努力して四ポイント台、あるいは四ポイントを若干切るくらいに持っていく、こういうことが私のいま心に描いている目標でございます。
  177. 小松幹

    ○小松委員 あなたが米価審議会で七五三の物価上昇を言った、それは七であり五であり三である、順次漸減方式をとらざるを得ないのでそう言ったんだろうと思うが、しかし来年度は、公共料金の引き上げがたくさん入っておるのを見ると、公共料金のうちでも米価、あるいは国鉄運賃、あるいは郵便料金とかいうものを加えますと、これは五にもならぬ四にもならぬのじゃないかと思うのだが、その辺はきょうはもう問うたってしかたありますまいから、中期経済計画か、来年度の経済見通しのときに、一体どう処理していくのか、これはから念仏の数字を出すならだれでもできますよ。えて企画庁はそういうから数事を出していくから、今度はひとつから数字を出さぬように、ほんとうに練り上げて、実行数字を出していただきたいと思うわけでございます。  私は、ここで経済の動向というものをしっかり考えてみなければならない。これは大蔵大臣が一番責任を感ずるわけですが、経済のこれからの向き方というものをあなたはどういうように——まあ一口で言うならば、景気の向き方でもいいでしょう、あるいは安定成長の一つのステップでもかまいません。そういうものについてひとつ大蔵大臣のお考えを承りたい。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  178. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ことしは大体において経済が横ばいに推移してきておると思うのですが昭和四十一年度という年は、日本の経済全体として、実質におきまして七%から八%くらいの成長が達成できるようにしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。七%ないし八%の成長が達成できるか、こういう問題になりますると、これは、特に金融政策をどうするか、また財政政策をどうするかというところに重大な関係があるわけでございまするが、経済成長の要因であります第一の国民の消費動向、これにつきましては、大体ことしのような動きをしていくのじゃないか、また輸出は鈍化の傾向がありますが、それにしても相当の伸びは見られる、こういうふうに思うわけであります。問題になりますのは、金融政策と密着しておる民間の設備投資活動がどうなるか、こういうことでございまするが、かりにこれが横ばいであるという状態において、そういうふうに渋く見た場合におきまして七%、八%の高さの成長を達成するにはどうするかというと、あとは財政がこれを補うというほかはないのであります。いま昭和四十一年度の予算を編成しておるわけでありまするが、その編成の基本方針も、設備投資のそういう停滞を財政が補って立つというよいな形のことを考えておるわけであります。そういう考え方に基づいて、予算の幅、またそれの財源となるべき公債の幅というものをきめていくというふうに考えておるわけであります。したがいまして、ことしは今日まで横ばいであった。しかし、十一月からおくれておりました公共投資の支払いが非常に順調になってきております。十月までは、率直に申しまして、予算はふえておるにかかわらず、昨年よりも支払いが少ないという状態だったのですが、十一月から急に盛り返し、十二月も同じような調子でございます。一−三月にはそういう公共投資が集中するわけでありまして、経済に及ぼす影響は相当甚大である、こういうふうに見ております。そういう過程を経まして、昭和四十一年度には平均して成長が七%になるようにというので、だんだんと上向きの調子を続けていく動向になろう、かようなふうに見通し、またその見通しができるような予算を編成したい、かように考えております。
  179. 小松幹

    ○小松委員 あなたはこの前の本会議で、こういうふうに言った、財政規模というものが大事だというふうにおっしゃられた。だから、一体国民総生産と財政規模との割合というものをどういうように考えておられるのか。財政規模が大事だと言った以上は、それじゃそれをお聞きしたい。同時に、国民総生産というものを来年度どういうふうにとりたい、どのくらいを目標にして、その目標に合わせてどの程度が適正規模なのか、いわゆる予算の適正規模を承りたい。
  180. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 予算の規模は、そのときどきの経済活動というものと見合いをとらなければならぬ、こういうふうに考えるのです。私の考え方の基本は、毎年毎年の経済の成長がでこぼこがあってはいかぬ。ある年は一〇何%も増大するが、ある年は二%に落ち込むというような状態じゃいかぬ。七、八%と総理がおっしゃいましたが、そういう速度で毎年毎年続くような状態が、国民経済が最もロスがなく成長し得る状態である、こういうふうに考えるのです。したがいまして、民間の経済活動が非常に活発であるという際には、財政の規模は縮小していいと思う。しかし、四十一年度については、いま申し上げましたように、民間の設備活動が非常に停滞をしておる、そういう際には、逆に財政は拡大し、積極的に出動すべきである。したがいまして、過去の例では、国民総生産の中における財政のウエートは——財政と申しましても、これは財政投融資も、あるいは地方財政も含めての話でございまするが、大体ずっと二〇%前後です。それは、そういう民間活動が落ち込んだ際にはもっと出てよろしいし、民間活動が活発であるという際には、二〇%というのは落ち込んでよろしい、必ずしも固定した考えをとる必要はない、かように考えています。
  181. 小松幹

    ○小松委員 固定した考えを持たないと言うけれども、あなたは、公債発行の初年度であって、やはり公債の歯どめになるのが予算の適正規模だというように表現されたわけなんですね。だから、それならば予算の適正規模は、来年は国民総生産をこのように見る、成長率はさっき育ったでしょう、七%か八%に見ると。それなら予算の適正規模はこれなんだというのが出ないと、もう数字が一つ一つ出てきたのに、いまのような抽象論で、そのときによって、財政が出ればこっちが引っ込む、こっちが出ればあっちが引っ込むなんて、そういうようなことは、これは適正規模なんといわれませんよ。そんなことを言えば、圧力団体に圧力をかけられれば二百億がふえたりする場合も出てくるでしょうから。やはり適正規模と言うた以上は、これに対してこれが適正だ、あるいはこれに対してこれが適正規模だというように、何かものさしがなければならぬと思うのです。そのものさしは何に対してこれだけが適正だ、だからいま言うた二〇%というなら、来年度はそのところでいくのかどうか。それはあなた、二〇%が三〇%になり、四〇%になったり、八〇%、そんなむちゃなことはないでしょうからね。だから、適正規模というのはほぼ的が当たっておらぬと、適正規模に一〇も二〇も違ったのじゃ話にならぬでしょう。それだったら、一寸ずりに適正規模が、圧力団体でやれば、いまはあなたは二〇%と言うが、来年は二三%が適正規模だ、再来年は二五%が適正規模だと言われたのじゃ、これは話にならぬでしょう。だから、大体適正規模と言うなら、あなたは公債発行をやる、公債発行というのは、とにかく七年間ぐらい先の支払い計画でしょう。それだったら、少なくともおれは、自分の手にとらぬけれども、七年間の責任は持たざるを得ないとするならば、その間の適正規模は二〇%、それに少しは誤差があっても、大体それでいくのだというような考え方がないと、人前で歯どめは適正規模だなんて言っても、適当に動きますよなんと言ったのでは話にならぬ。その辺は二〇%ですか、どうですか。
  182. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、ただいま原則論を申し上げたわけなんです。四十一年度に限ったわけじゃないのです。四十一年度の予算につきましては、ただいま鋭意編成に取り組んでおる最中でございます。これはまだ結論も何も出ておりません。ただ、大体の見通しとしまして、成長率は七、八%の間にというふうに考えております。それから国民総生産は三十兆前後ということであります。そのスケールの中で設備投資活動を一体どう見るかということが問題なんです。この問題の見方によりまして、それで設備投資が横ばいになるか、あるいは多少上がるか、下がるか、その辺の決着によりまして、財政の規模はおのずからきまってくるのであります。おそらく二〇%はこえると思いますが、そういう考え方に基づいてきまるわけですが、これはただいま申し上げるわけにはまだまだまいりません。目下編成の途中でございます。
  183. 小松幹

    ○小松委員 あなたが本会議で、公債発行の前提に、歯どめ役は財政規模だ。これは大みえを切って言っているのですから、私どもはそれはそのとおりだと思うのです。公債だからといっていろいろプレッシャーがかかってくるときに、財政規模はこれが適正規模なんですと、天下に公表したその財政規模をたてにすればよい。プレッシャーに対してそれでなければずるずるに、どうせ銭がかかるのだろうから、借金ならつなぎでこの借金もしてくれと言えば、適正規模が移っていく。これをおそれるから、私はそれをあなたにあえて聞いておる。あなたもそのつもりではっきり言っておるのだろうと思う。いままで適正規模があるからだいじ上うぶだなんと言うたことは、いままでの大蔵大臣ではなかった。適正規模の数字をはっきり出した者はないのです。ところが、適正規模というものを言うた以上は責任を持たなければいかぬと思うのです。それでなければ、今後公債発行なんといっても、必ずどうせ借金のつなぎじゃないか。論より証拠、田中大蔵大臣のときを見なさい。あれはほとんど全部政府保証債に肩がわりしていったじゃないですか。そして各大臣の要求を、だいじょうぶ、まかしておけと、河野農林大臣か建設大臣かに胸一つたたいて何百億というのをぽんと出した。それはどこへ行ったか。政府保証債に行っているのです。全部政保債に逃げているのです。だから、実質的に公債発行は田中大蔵大臣のときにやっておる。表に出たのです。陰性な、隠れたるところの公債発行に逃げちゃった。だから、大蔵大臣であんなことすれば一番楽ですよ。胸をたたいてぽんと出せば、全部借金に回す。隠れたる政保債で、公債と言わないで借金に回すわけですからね。あなたは田中さんと違うて、はっきり表に公債をやりますと看板を上げた。田中さんはそういうことは一口も言わぬで、公債は絶対やらぬのだと言って、全部政府保証債によってぷっとふくれた。政府保証債が三十九年、四十年にはたいへんふくれてしまった。というのは、プレッシャーのかかった圧力団体の意見は全部政府保証債に逃げ隠れたから、予算編成は楽だった。こんな楽なことなら、私だって大蔵大臣になれます。ところが、表に看板掲げて公債発行と言った以上は、そう逃げ隠れはできないと思うのです。そうならば適正規模というものが、あなた自身も言ったけれども、一番大事なポイントになる。そこまで信念がぐらついていては話になりませんよ。プレッシャーがかかったら、田中さんよりもっと悪い。表に出たから、どうせ看板を上げたのだからつなぎだ、毒を食らえばさらまでということになるでしょう。田中さんは隠れて毒食らえばさらまでとやったことを、あなたは表に出ておるのですから、国民としては大きな迷惑です。だから、適正規模というものがいかに重大なものかということを私は言っておるのです。表に出てじゃんじゃんやられたのではたいへんですから、この点をしつこく私が言っているのです。この点、もう一回はっきり承りたい。あなたがいま言ったところをもう少し確認していきたい。
  184. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまは四十一年度の予算の御審議をお願いしておるわけじゃないのであります。   〔発言する者あり〕
  185. 青木正

    青木委員長 御静粛に願います。
  186. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十一年度の総予算につきましては、いずれ案を具してここで御審議をお願いするわけでありまして、基本的な考え方を申し述べておるわけでございます。   〔発言する者あり〕
  187. 青木正

    青木委員長 御静粛に願います。
  188. 小松幹

    ○小松委員 大蔵大臣、それはちょっと言い過ぎですね。いま補正予算審議しているのだからそのことはおかしいという言い方は、失礼千万な言い方です。公債発行を含んでおって、あるいは十五カ月予算と、あなたは言わぬでも世間では言われておるし、結局予算というものはつながっていくものでしょう。そうなれば、四十一年度の予算を聞かなければこの補正予算は通されませんよ。それができないでこの予算を通されますか。一番大事なところなんですよ。せっかく年末に通そうと思っておって、そうして協力もしておるのに、これだけが予算であってあとはオフリミットというなら、これは絶対に通されません。この補正予算の中に含まれておるものというのはそこにある。だから、あなたも本会議でちゃんと言ったでしょう。本会議でちゃんと適正規模だということを言っておる。それじゃ言わなければよかった。来年言えばよかった。おとといちゃんと言ったでしょう。それだったら、適正規模というものをはっきり聞かなければならぬ。これは一番大事なところなんです。もうすぐこれが終わったら、年末に予算を編成するでしょうが。いま言わぬでいつ言うときがありますか。来年の予算といっても、もうコンクリートになってからでは何にもならぬからいま言うておくのです。いまからプレッシャーがかかる、この年末から払暁戦になってかかってくる。いまから一番かかってくるのです。あなたのところは、補正予算国会で通ったら万歳で、あとは全部押せ押せで来年度予算にかかってくる。そのときが問題になる。予算の適正規模をあなたが言った以上は、適正規模がどこと言わない限りは、もう押せ押せムードでやられたのでは、公債は発行したわ、ほんとに田中さん以上になるかもしれない。だから、ほかの委員のおる前で、あなたはここで小松からやられたんだから、おれは適正規模を守ると言わなければいけない。そうでなければ、隠れておってそういうことを言ったら押せ押せです。だから、いま言うのが一番いいから私が言っているのです。適正規模をはっきり守っていく。適正規模は幾らか、もう一回承ります。
  189. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 適正規模を貫きますかということをはっきり申し上げます。しかし、まだその適正規模が幾らの規模であるかということは、今日の時点では私自身もきめておりません。
  190. 小松幹

    ○小松委員 あなたとしてはそうでしょう。そうでしょうけれども、ここではっきりあなたに言っておかなければ、あなたは来年、年を越して私が来たときに、適正規模はここまでずった、ああああという間にずったということになるでしょう。もはや予算はほぼあなたのところではつかめているはずだ。だから、適正規模が言えないはずはないはずです。来年度の適正規模はここだ、そうして、その適正規模が何ぼ縮まったか、何ぼふえたかというところは、それはあとで幾ら一億ふえたから、二億ふえたからといって、そんなこまかいことは言いませんから、もうこの辺をはっきりしておかないと、適正規模はあやふやですよ。だから、言い出しもとはあなたなんです。私から無理に押しつけたのではない。言い出しもとはあなたなんです。そうして、ことしの予算も、補正を加えればもうトータルが出ている。その昭和四十年度予算の何掛け、何%上がりでこれが適正規模だ、これを出してもらわない限りは、あとはどうなるかわからないということになるわけです。ぜひ出していただきたい。
  191. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 どうも走るで四十一年度予算の御審議をお願いしておるようなかっこうですが、私は原則、ルール、方程式を申し上げておるわけなんです。その方程式に従って必ず予算は編成いたします。これはお約束いたします。
  192. 小松幹

    ○小松委員 方程式は数字が出ていません。私はその方程式に数字を入れてここで言っていただきたいと言っているのです。そうでなければ、われわれとしては納得ができない。その方程式まではだれだって言うし、だれだって納得するでしょう。適正規模があるから公債発行はいいのですということはだれだって言いますよ。しかし、その適正規模がもはや——それを八月とか十月ごろ言えというのは無理でしょう。ところが、もう年内に予算編成をするというときに適正規模が出ないというはずはない。そこからあと何ぼか誤差があったからといって、それを言うのではない。ここで昭和四十年度の予算に対して何%上がりが適正規模だ、あるいは来年度の国民総生産がこれと見る、それに対する何%が適正規模だ、ほぼ何億円だ、何兆円だ、この数字がほぼ出ない限りは、適正規模なんというXかYかわからないようなものを言ったって、これは審議できないじゃないですか。
  193. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 率直に申しまして、まだ昭和四十一年度の予算につきましてはその計数を固めておらないのです。   〔発言する者あり〕
  194. 青木正

    青木委員長 御静粛に願います。
  195. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ総理にもおはかりもしておりません。そういうような状態でありますので、これをこの席で申し上げる段階にまだ立ち至っておりません。
  196. 小松幹

    ○小松委員 それは、あなたの良心的な意見はわかりますよ。わかりますけれども、あなたが本会議の席上で、公債発行は予算の適正規模が歯どめになるのだ、こういうようにだんびら上げて切られた以上は、適正規模が幾らかということを問われることは当然なんです。聞かれることは当然なんです。いまだにその適正規模というものが出なければ——どうも言えないというのも私はわからぬことはないですよ。わからぬことはないですけれども、一番大事なところを聞かれて、それがわかりませんじゃ、大蔵大臣かわったほうがいいかもしれません。それでなければ一番肝心なところがすべっているわけです。一番大事なところが抜けているわけです。私に言わせれば。だから動きますよ。こういう意味で、適正規模というものは本年度の予算の何%を大体考えておるか。しかしそれは適正規模よりも少し上回っておるとか、適正規模はこのくらいだけれども、少し低目に見ているとかいうことが震えるわけなんです。それを言わない限りは、これはもうかがしただけで数字が出ていない。これはもう一回お伺いします。
  197. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 適正規模よりも多くもなく少なくもないのでありまして、これは重ねて申し上げますが、まだ四十一年度の予算の概貌につきまして申し上げる段階に立ち至ってないのです。
  198. 小松幹

    ○小松委員 物理的に逃げるんでしょうか。実際これは総理も——私がここに強調するというのは、これは一番大事なところなんですから聞いているわけです。数字の持ち合わせがない。持ち合わせているけれども政治的配慮かもしれません。賢明なる福田大蔵大臣だから、大体今年度予算の何%上がりが適正だというようなことは考えておられると思うのですが、全く配慮しておりませんか、あるいは政治的に出されないのですか、その辺をお伺いします。もうそれほど深く言ってもしょうがないから。
  199. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 せっかくのお話なんですが、まだ申し上げる段階に立ち至っていないのです。これはもう正直なところであります。
  200. 小松幹

    ○小松委員 そこで、公債の発行に踏み切った以上は、やはり世間でも歯どめといわれ——これだけが歯どめではないでしょう。しかし、大蔵大臣みずからがこれを掲げた以上は、これも大きな、非常に重大な歯どめになる、こういうようにも考えますが、そこで、公債発行をした場合の歯どめに——あなたは別なことも言っているが、別な歯どめというものをどういうように説明しておりますか。
  201. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 基本的なものは、何といってもそのときの、つまり四十一年度につきましては四十一年度の経済状態をどういうふうに見るか。それに見合って財政の規模をきめるわけでありますが、そうきめました財政の規模の財源を、租税で幾ら、公債で幾ら、こういう公債の限度につきましては二つの方針を考えているわけであります。一つは、この出す公債はいわゆる資本的支出、つまり国民の財産としてあとに残るものの財源としてのみこれを使う。人件費その他行政費、一般費の財源として使うことはしない。これが一つであります。もう一つは、その発行の方法であますが、日本銀行引き受けの形はとらない、全部民間消化の形をとる、こういうことでございます。これは四十一年度の話であります。
  202. 小松幹

    ○小松委員 日銀引き受けではやらない、それから建設公債で——どういうんですか、来年度は四条の建設公債でやる、こう言われるのですが。その辺ははっきりもう一回ちょっと……。
  203. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十一年度に発行する公債は、その根拠を財政法第四条ただし書きに置いて行ないます。
  204. 小松幹

    ○小松委員 そうすると、第四条の建設公債ということで公債の発行額はほぼきまるとすれば、本年度の公共事業関係の費用は、六千五百億円が大体計数的に見て公共投資の数字だと思いますが、これはどうなんでございますか。
  205. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十年度は大体そんなものであります。
  206. 小松幹

    ○小松委員 そうすると、おのずから来年度の公債発行額は六千五百億円のワクということになりますが、それはそのとおりですか。ちまたに、あるいは新聞に七千億円というような書き方も見えるが、それはどういう意味ですか。
  207. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは四十年度の話なんですね。四十一年度は、先ほど申し上げましたように、経済状態と見合った形で公共事業をきめるわけです。しかも景気の今日の状態から見ますと、景気に密着しておる公共事業、これは相当積極的に伸ばさなければならぬ。ことに住宅なんかを中心にして拡大をしなければならぬ。こういうふうに考えているわけでありまして、これは六千四、五百億というふうなことしの数字じゃないのです。それにプラス・ビッグアルアァ、こういうことになるわけであります。しかし、これが公債の額そのものであるかというと、そうじゃないんです。これは一つの歯どめなんです。また一方におきまして、ただいま申し上げました日本銀行の引き受けにはしない、民間で消化をする、その消化可能額の測定という問題があるわけであります。そのいずれもの関門に合格しなければその額にならぬ、かように考えておるのであります。
  208. 小松幹

    ○小松委員 それはちょっとあいまいなことを言ったのですが、六千五百億あるいは七千億、この本年度の財政投融資やらの公共事業に対して成長率を、あるいは適正規模の上がったものを考えれば、ほぼこの計算は出ると思います。ところが、うわさに聞きますと、こういう公共事業の中に官庁営繕費の警察署の建設費まで入れて、とにかくそれを太らすというような意見も出ておるが、そんな官庁営繕費まで入れるように計算しているのですか。
  209. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この公債発行の対象になる建設費は、財政法によりまして、これは国会に明示をすることにしております。それで、その中には営繕費も何もみんな入ります。しかし、それに対して全部公債を発行するというのじゃありません。これは税の関係等を見、それから財政のワクを見、そうしてその差額になるという一面もあります。また、先ほど申し上げましたように、日本銀行に引き受けさせないという制約もあるわけであります。そういう形できめられる公債の額でありますので、公共事業費そのものが直ちに公債の額に密着しているわけじゃないのであります。
  210. 小松幹

    ○小松委員 まだはっきりしませんが、官庁営繕費やあるいは防衛庁の施設費のほうまで含めて公共事業にとって、そうして公債のワクをふくらますというような考え方もあるそうでございます。それをやれば、官庁営繕費なども公共事業費でいくという考え方をとられるのか、もっとはっきりと、そのものずばりじゃなくても、大体四条の公共事業費という建設公債という形をとる以上は、公共事業でなくちゃならぬでしょう。それを防衛庁の施設の費用やら官庁営繕費まで入れて、そしてふくらまかすということはあり得るのかどうか、それをはりきりしてもらいたい。
  211. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 財政法にいう公債の対象になる費目は何であるかということは、これはあらためて四十一年度予算の審議をお願いする際に御披露申し上げますが、その中には官庁の建築費は入れるつもりであります。しかし防衛げの施設につきましては、いろいろ論議を呼ぶ問題でありますので、全部これをはずすつもりであります。
  212. 小松幹

    ○小松委員 官庁営繕費を入れ、防衛庁の施設も入れ、警察署の派出所の費用まで公共投資に入れて、そうして公債のワクを広げるという苦肉の策もあるという、そんな考え方がもしあるとするなら、それはたいへんな——最初からインチキみたいなことをそうまでして、何かおかしいと思うのですよ。だから、あなたはいま官庁営繕費は入れるが、防衛庁は入れぬと言うけれども、官庁営繕費なんというのが公共事業費のワクとして公債発行の対象に、四条適用になるということは、私は疑問に思う。その点はもう少し考えなければならぬと思うのです。いわゆる公債発行の四条を適用して、建設公債という銘を打って出そうというのでしょう。一番最初から何かそでの下をくぐって入ったようなインチキ数字でふくらますというような考え方は私はせぬでもらいたい。ここではっきり出ておれば言いますけれども、まだ出ていませんから、突き詰めたところは言いませんけれども、聞くところによると、警察署の派出所の費用まで公共事業に入れて、公債発行でとればいいんだという意見もある。むちゃくちゃなことを言う人もあるわけなんです。そういうことでは先が思いやられる。建設公債と銘を打ったら、正々堂々と建設公債のワク内でいけばいい。それだったらべらぼうにふえるわけがない。歯どめにもなるわけなんです。それからもう一つは、日銀引き受けでないからインフレにならないと言う。確かにいまあなたのおっしゃるところを額面どおりに承れば、日銀引き受けでなくて、ことしの四十年度の公債発行も、大体利子は商いけれども、売りやすいようにして市中消化をねらっておることは認めます。しかし、これが問題になるところはシンジケート、引き受け団体というものが大半は、五七%というものが都市銀行でしょう。都市銀行は、それは銀行は大きいでしょう。都市銀行の預貸率はだんだん最近はよくなって改善されてきました。しかし、都市銀行の預貸率は改善されたけれども、オーバーローンは解消したということはないわけです。すでに都市銀行は日銀から貸し出して超過が今日まで続いておるわけです。そうなれば、一体日本銀行からオーバーローンでよけい借っておるところの都市銀行がこの公債の大半の五〇何%というものを引き受けたときに、一体どこからその余裕金なりその引き受けの金が回ってくるのかといえば、結局何かを通じて日銀が引き受けなければならぬじゃありませんか。手持ちがあって、農林中金とかあるいは信用金庫ならば、資金コストはたいへん問題があるけれども、手持ちがダブついている、日本銀行までいかないでも、自分の手持ちがダブついているから、コールも安いし、だから何とかなると思うが、都市銀行はそんな余裕はないはずです。それが半分以上もこの公債を引き受けるということになれば、結論的には日本銀行に迷惑をかけるということは事実であります。形はどうであろうと、それは事実であります。ちょうど山一証券が日本銀行の特融を受けて、それは抵当に出してあるとかなんとか言うけれども、結局は日本銀行にしりがいっていることは間違いないでしょう。それと同じように、形はそういう形ですけれども、都市銀行がそれだけ余裕がありますか。預貸率を見てもオーバーローンの現状を見ても、そんな余裕というものはそうあるものじゃないです。やはり最後は日銀がしりを引き受けなければならぬ。これは大きい銀行ですから、その辺のたらい回しはうまくやるでしょうけれども、私はしょせんは日本銀行が回さねばならぬ宿命を持っておるのだ、こういうようにも考えますが、大蔵大臣はどういうふうに判断をいたしますか。
  213. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが国におきましては、貯蓄性向というものは非常に良好でございます。ことしもすばらしい状態でございまして、本年度になりましてから十月までぐらいの調子を見ますと、昨年の六〇何%増しというくらいな状態になっております。一方貸し出しは、財界の今日の情勢から見まして、むしろ減っている、こういうような状況でございます。したがいまして、金融はきわめて緩慢である。この状態は先ほど申し上げましたが、四十一年度におきましても金融は引き続き緩慢、つまり設備投資が活発でない、こういう状態を金融情勢にも端的に反映してくる、こういうふうに見ております。そういう基本情勢でありますが、ともかく発行します国債は民間で消化する。消化するということが、私がいま一番重大に考えておる問題でありますが、このためには根回しということがずいぶん必要じゃないかと思います。そういうようなことで、大体の見当がつきましたならば、引き受けの衝に当たる財界の首脳の人ともよく懇談をし、これだけはだいじょうぶか、こういうような見当もあらかじめつけてみたいというふうに考えているわけなんであります。さらにその上、国会で御承認が得られた上におきましては、シンジケートに十分相談をし、これが消化に万全を期すというような、私といたしますと、この消化には全力を尽くして当たり、皆さまに御心配をかけないようにしたい、かように考えています。
  214. 小松幹

    ○小松委員 一番心配しているところは、やはりどなたが公債の問題を論じても、日銀引き受けではなくても、日銀にいわゆる迷惑がかかって、それが日銀信用の膨張になりインフレーションを起こす。それはそうでしょう。最初あなたは、日銀引き受けでもりよいという考えも持ち、あるいは財界あたりでも、なにそんなの、日銀で引き受けてもいいという考えがあった。私はそういう考え方を二、三聞いておりました。ところが、IMFの総会にあなたが出られて、外国の金融専門家に聞かれたときに、初めて日本銀行、中央銀行というものが公債発行を引き受けたら日本の信用にかかわるということを強調されて帰られたと思うのです。これはどこの国でもそうだろうが、私は公債発行を中央銀行というものがしりを引き受けていくような形になったならば、これは形式的にはどうであろうと、内面的にそういう形になればたいへんな危険な問題があるから、この問題を強く世間も言っているし、私どももここで言わなければならない。論より証拠に、こういうこともあなたは考えておるんじゃないですか。第一、大蔵証券は昭和四十年、ことしワクを二千億ふやしたでしょう。大蔵証券は四十年度に四千億にふくらましたでしょう。来年度は六千億にふくらませる予定を考えておると思うのです。それは事実ですか、ちょっと聞いてみないと……。
  215. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ最後的にきめておるわけではございませんけれども、大体五千億程度にお願いしようかと思っておるところであります。
  216. 小松幹

    ○小松委員 大蔵証券はいままで、三年前までは五百億くらいであった。ところが、四十年度になって二千億になって、今度の補正予算で二千億のワクをくれという。来年度は五千億か六千億の大蔵証券のワリをくれというのは、一体それはどういう形に大蔵証券がなるか。大蔵証券は短期でしょうから、短期に金を日本銀行に引き受けさせて取るでしょう。そうして現金に打ちかえて、あるいは財政投資をピッチを早める。そのピッチを早めるということについては、それは行政措置として考えてもいいと思うが、問題は大蔵証券を日銀引き受けで六千億もやって、そうして、それをやがては公債に切りかえていくとするならば、何のことはない、結局日銀引き受けの大蔵証券六千億がやがてはまた公債に化けて出るだけの話で、短期の証券が長期に変わるだけで、その短期がいわゆる大蔵証券として日銀引き受けになる。ここに私は、日銀引き受けの短期証券と日銀引き受けでない公債とが下でつながっておるところに大きな疑問を持つわけでございます。これはあの高橋是清大蔵大臣のときから、こういうこそくな形のいわゆる公債発行というのが動いた実績もある。こういうことを考えると、これはなかなか理屈はうまいことを言うけれども、大蔵証券が飛躍的に四千億にも六千億にもふえていくということに問題があるんじゃないか。これは今後の問題でございます。いまあなたは五千億とか言っておりましたが、とにかく昭和四十年度にワクを四千億のワクにしておるのですから、少なくとも本年度は四千億というものを、来年の一月から三月、四月にかけて大蔵証券を日本銀行で全部打ちかえてやっていくのです。大体大蔵証券は三年前までは五百億くらいであったのが、公債発行の名とともに飛躍的にこの大蔵証券がふえてきたというところに、私はいささかの疑問を感ずるわけなんです。やはり問題は、大蔵証券は日本銀行の引き受けですから、そうするとやはり何か日本銀行にだんだん——別に猜疑心から言うわけではございませんけれども、どうしても公債発行などという便利なものは借金ですから、これはお互いでも借金しつけたらなかなら足が抜けぬと同じように、もう雪だるまのようになることは当然なんでございますから、この点が問題になる点だと、こういうふうに考えております。この点、大蔵証券に対するあなたのお考えを承りたい。
  217. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 本年度は大蔵省証券は二千億だったのですが、税収が二千六百億近くの落ち込みだ、こういうことから、年末の国庫資金の支払いに二千億では支障を生ずる、三千億から三千五百億ないと順調な支払いができない、こういうことなので、少し余裕をとって四千億円の拡大をお願いしておるわけなんです。来年度になりますと、月々の税の徴収の動きですね、この動きのこともある。そのほかに、今度は公債が市中消化というたてまえである。月々ならして出していくわけじゃないのでありますから、金融情勢の緩慢をはかってやるわけでございまする関係上、つなぎが必要になる。そのつなぎのために大蔵省証券をさらに準備しておく必要があるのではないか、こういう考え方でございます。それで、実際の動きを見ると、大蔵省証券は日銀に引き受けてもらう場合のほうが多いと思いますが、そういう形で政府は資金を得て支払いをするという状態になると思います。市中に札が出回る、そういう状況とにらみ合わせて国債の発行消化が行なわれるということになるわけでありまして、大蔵省証券がそういう形で出るからといって、これはいささかも公債の市中消化の問題とは関係はないのであります。ただ、大蔵省証券が先行して出るという場合におきましては、金融が緩和基調で推移するであろう、そういう原因になる、こういうことかと思うわけであります。
  218. 小松幹

    ○小松委員 大蔵証券の発行そのものは、それは別途の意図があると思うのです。国庫金の余裕がないときに大蔵証券を臨時に発行するのですから、その限りにおいてはよいと思いますが、それが日銀引き受けで、やがて公債発行に肩がわりしていく、この過程が問題だと言っておるわけでございます。  そこで、金利の問題になってまいりますが、公債の利回りは、表面金利はどうであろうと、どの程度になっているか、それが現在の公債の消化の金利としてどういうような位置づけをしておるのか。そのことを一つと、ついでですけれども、ことしの四十年度の金利は、これは来年度予算に組むと思うのですが、どのくらいに考えておるのか、この点を承りたい。
  219. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今度出す公債ですね、この公債の応募者利回りを六分七厘九毛五糸と こういうふうに大体話し合いを進行させております。それで、この予算案並びに法律案が成立したならば、そういう方針で直ちにシンジケートと話し合いをつけたい、かように考えております。
  220. 小松幹

    ○小松委員 この金利の問題は、これは一回だけの公債発行を考えておるならばだが、相当金利というものは考えなくてはならぬのじゃないか。発行するのには高金利のほうが都合がいいが、これは将来金利負担というものが相当かかってくるし、現に四千億の金利でも百七十億くらいな金利が来年度組まれるのじゃないかと思うのです。そうなると、今度は大蔵証券などは、その金利にまた金利がかかり、そうしてしまいには金利ずくめで、元利の償還というものに相当大きなウエートがかかってくるとすれば、やはり金利というものは相当考えて発行しなければたいへんなことじゃないか。たとえば電電公社の電話債券が七年で倍になる。そうすると、電電公社並みの金利でいけば、公債発行の最終の七年目には元利合計で倍になるという形になるわけです。たいへんな金利です。それに途中で大蔵証券にかえたりして打ちかえていきますと、金利がまた金利を生むという形になれば、私は金利というものは相当大切な問題だと思っております。この点にどういう配慮をしておるか。シンジケートと話し合いをすると言っておりますが、ほぼもう固まっておると思うのです。  それからもう一つは、そういうさなかに日本の全体の金利、普通のいわゆる金利ですね、これとの調和というものをどういうふうに考えるのか。いわゆる金利体系というものをもはや整理する段階が来ておるのじゃないか。この金利の問題は、日本の金融政策の上では幾たびか金利体系の調整ということを言われておりました。公定歩合はぽこんぽこんと下がったり上がったりしますけれども、実際の貸し出し金利などというものはそううまくいっていない。たとえば長期金融の資金あるいは短期の都市銀行などの貸し出し金利は依然として下がっていないのです。公定歩合は下がった。だから、当然貸し出し金利は下げてもいいはずなんですけれども、下がらない。だから、銀行の決算だけはかちっと利潤を上げて——利潤と言うたらおかしいでしょうが、まことにノーマルな、余り過ぎるほどの経営をしておるということは、すなわち金利差によって銀行は浮かばっておるということになるわけなんです。この辺で日本の金融界の金利をどういう形に整理するのか、貸し出し金利をどういうように整理するのか、金利の交通整理をしない限りは——私は、これはまた聞きですから、わかりませんけれども自民党の中では、ちっと銀行をしごいてやるかという話もあったということを聞いております。金を貸さぬときにはほんとうにしごきにいきたいぐらいでありますが、公定歩合の下がりによって貸し出し金利を下げぬでもうけて、そうしてぬくぬくとこの不況のときにかちっと経営がノーマルで利潤を上げておるということは、たいへんいいことです。銀行ですから、そういうノーマルな経営はたいへんありがたいことですけれども、また金利体系の調整、交通整理というものも考える段階にきておるのではないか、こういうことも考えるのですが、大蔵大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  221. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、公債のほうの利回りの問題ですが、これは、先ほどから申し上げておるように、公債は市中消化をはかる、こういうことをどうしてもやらなければならぬ。それには、お話のとおり利回りがいいほうがいいのでありますが、しかし一面、私は国の財務の担当者である、そういうようなことから言いますると、どうしても金利負担というものは安くしなければならぬ、安くしながらこれがうまく消化されるという状態が一番いいわけでありまして、私もそういうことのためにこの一月間くらいずいぶん苦心もしてきたわけでありますが、結局、先ほど申し上げましたように、六分七厘九毛五糸、これは政府保証債に比べまして大体二厘五毛低利のわけであります。相当現在の社債やあるいは政府保証債や地方債の利回りの体系の中では低目にしたというふうに私は考えております。しかしながら、そう低目ではありまするけれども、十分引き受け側とも話をいたしまして、これで全額消化する見通しは十分でございます。  第二の金利の問題でございまするが、私は、先ほども山花委員に申し上げたのでありまするが、金利水準というものは、こういう国際自由競争の時代におきましては、日本はなるべく低位のほうがよい。しかしながら、金利は強制あるいは作為をすべきものではない。そういう環境ができて自然に安くなるという状態が一番よい、こういうふうに考えているわけであります。公定歩合が引き下がりましたに伴いまして、市中の貸し出し金利はそれに追随して下がるようにということを指導しておりますが、なかなか思うようにはいきませんけれども、着々その方向に進んでおります。また、長期金利につきましては、先ごろ三厘方の引き下げをいたしまして、政府関係機関、また民間の長期信用機関、そういうものが引き下げを行なったわけでありまするが、今後一体どういうふうな体系をとるべきかということは、これからの公債を発行したあとの金融情勢が一体どうなるかという問題も一つあります。それからもう一つは、アメリカの金利引き上げの問題があるのです。これが将来どういうふうな発展をしてくるかということもよく見ておく必要があります。つまり、わが国の国際収支に関係が出てくるわけであります。そういうようないろいろな要素を見まして対処しなければならぬ問題かと考えますが、作為をしてはいけない。自然にそうなるようにと、こういうことを念願しておるわけであります。
  222. 小松幹

    ○小松委員 最後の質問をして終わりますが、金利は作為をしてはならぬ、こうおっしゃるから、それはそれでよいでしょうが、たいへんな公債を引き受け団体に引き受けさして、もっと言えば、これは公債を、ほんとうの市中消化ならば公社債の市場、マーケットというものでやればよいわけなのを、引き受け団体によって、シンジケートでやられる以上は、もはや公債発行のときに、そこに一つの作為があるわけでございます。だから、一方では作為の金利というものを押しつけておいて、そうして他の面では自然の流れに従ってというのは、ちょっとそれはまずい面も出てくるのではないか。御存じのように、アメリカの公定歩合が引き上げられて、外国金利というものが上がってまいりました。その辺の調整も考えなければならぬと思いますけれども、いずれにしても、長期貸し出し金利、それから、いまの都市銀行の金利、もう一つは外銀の輸入ユーザンスの金利、もういまのままでいくと、アメリカの金利が上がりますから、みな貿手に変わっていると思うのです。いずれにしても、外銀のユーザンスと貿手とは直結してしまって変わっておる、ここに貿手を改めるか何かしなければならぬ。こういうことがあれば、おそかれ早かれ、私は日本の金利体系というものをもう一回考え直す時期がきておるのではないか、こういうように考えるわけでございます。アメリカの景気がいつまで続くか、あるいはアメリカの高金利のいまの水準がいつまで続くかは別といたしまして、これは日本の場合、さっそく輸入貿手と輸入ユーザンスとの問題、あるいは長期金融あるいは都市銀行の貸し出し金利等も考えて、公債発行の金利等も総合的に判断をしていくことが望ましいのではないか、かようなことを考えているわけでございます。  以上をもって私の質問を終わります。
  223. 青木正

    青木委員長 この際、三十分間休憩いたし、午後六時から再開、高田富之君の質疑に入ることにいたします。    午後五時二十八分休憩      ————◇—————    午後六時十二分開議
  224. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高田富之君。
  225. 高田富之

    ○高田委員 主として物価対策を中心といたしまして政府所見をただしたいと思うのでありますが、その前に、先ほど小松議員の質問の中で、公債発行の歯どめということにつきましていろいろと質疑応答がかわされたわけでございますが、私ども承っておりまして、必ずしも明瞭でない点がございますので、念のため一点だけ最初お伺いいたしておきたいと思います。  大蔵大臣の御説明によりますというと、おおむね公債発行につきましては歯どめが三つあるということでございまして、第一は予算の総ワクというものにしばられる、第二は建設公債に限るのだ、第三には日銀引き受けはやらないのだということについて、るる御説明を承ったわけであります。いずれも相当たくさん問題があるということは明らかになりましたが、特にここで重ねてお伺いいたしたいのは、そのうちの最初の第一点でございまして、大蔵大臣の御説明では、この予算の総ワクというものが歯どめになるということについては、御説明の中では、大体通例国民総生産の二〇%程度がめどだということをおっしゃっておるわけであります。さらにまた、たとえば来年に例をとってみれば、いま政府としてはおおむね七%の実質経済成長というものを見込んでおる。したがって国民総生産額三十兆、この三十兆というもの——これはまあ多少違いましても、それを別にどうこう言おうというわけではございません。しかし大臣の御説明によれば、一応七%成長というものを前提としますと三十兆前後である、こういうことになりまして、これに対して大体二〇%というようなところまでお話があったわけであります。そこで私ども、やはりこれが一つの歯どめだ、だから国民は心配しなくてもよろしいという意味で繰り返し強調されております以上は、その点をはっきりとさしていただきませんと、何かここがぼやけておってわからない。そうはいっても、実際に編成に当たってみないというと、どれだけ膨張するかわからないというようなことがありまして、何か不景気でもってうんと刺激しなければならぬという必要性が大きくなれば、二〇%が三〇%にも四〇%にもなり得るかのような印象を与えたのでは、これは全然歯どめという御説明の意味が通じなくなりますので、さような意味におきまして、先ほどせっかくそこの辺までお話がございましたので、さらにもう一歩突っ込みまして、国民が聞いて、これはなるほど歯どめだということがわかりますような御説明をぜひ承っておきたい、こう思うわけであります。
  226. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先ほど二〇%というふうに申し上げたのは、過去の通例国民総生産の中で占める国の財貨、サービス、こういうものが二〇%前後の傾向であったということを申し上げたのです。しかし、私の基本的な考え方は、民間の経済活動が低調である、特に設備投資が低調であるという際には、財政は積極的にこれを運営して、そして、その設備投資の落ち込みを補うという性格のものであるべきである、そういう考え方のもとに来年度七、八%の経済成長を達成する、財政以外の要因がどういうふうに働くか、それを見きわめて、その残りを財政が担任するというところから財政の規模をきめていきたい、こういうことを申し上げておるわけなんです。方程式を申し上げたのですが、しかし数字は、目下そういう方式によって詰めておる段階でありまして、ここではまだ申し上げるところまできておらない、こういうことなのであります。
  227. 高田富之

    ○高田委員 大事なところへいきますとどうもわからなくなって非常に残念なんですが、それは、経済活動が沈滞しておるときに国の財政でもってこれを刺激をするのだ、そのために、そのときにはある程度ふくらますのだ、民間の活動が活発なときには縮めていって調節する、その考え方はそのとおり、おっしゃっておることはそれなりにわかるわけなんですが、歯どめだとおっしゃるのですから、歯どめだとおっしゃるからには、そういうことではなしに、二〇%というものはおおむね基準になるというお考えまでは述べられておるのですから、もし基準でないとすれば、例だとおっしゃるのですが、そうなりますと、幾ら不景気だから、幾ら民間設備投資が沈滞しておるからといって、これが大幅に上へいっちゃったり、景気がいいからといって大幅にゼロに近づいていくということはあり得ないわけなんです。そこに何らかのあなたのおっしゃる歯どめという意味国民が心配しなくても輪がはまっておるのだということをおっしゃる意味があるのだろうと思うのです。それをお伺いしなければ、歯どめだとせっかく言われましても、不景気のときはうんと無限に大きくなるぞ、景気のいいときには小さくなるぞでは、これは歯どめじゃ全然ございません。せっかく二〇%という過去の例までお出しになっての御説明でありますが、もうちょっと御説明が加えられなければ歯どめの説明にならぬと思いますので、そこをお聞きしておるわけです。
  228. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 その二〇%ということが歯どめだというふうにはおとりくださらぬでいいのです。そうでなくて、過去の大体の傾向がそのくらいであった。しかし、今回のものは多少それより上回るかもしれませんけれども、考え方としてどのくらいか、二十何%くらいまでいくかということは、これはただいま申し上げましたような方程式から出てくるのです。そっちのほうが大事なんです。それが基準になるのだということを申し上げておるわけであります。その二〇%だ、あるいは二十数%だというのは、これは政府の財政ばかりじゃないのです。地方財政だとか政府機関とか、そういうものを全部ひっくるめての政府関係のウエートというものでありまするが、そういうようなものを勘案いたしまして、さらに政府財政はどうあるべきか、財政投融資、またそれに関連して、政府保証債の発行額はどうあるべきか、おのおのきまってくるわけなんであります。さらに高田さんがお尋ねになっておるのは、一体ことしの予算に比べて何%ふえるのだ、こういうところだろうと思うのですが、それはまだはっきり申し上げる段階まで来ておらない、こういうことなんであります。
  229. 高田富之

    ○高田委員 いろいろ押し問答いたしましても、なかなか言っていただけないのでありますが、いまの御説明のあれでは歯どめにならないと思うのです。これは、これからのいろいろな予算要求なり四囲の情勢なりを見ながら伸縮自在ということになっちゃいまして、これでは歯どめにならないと思うのです。だから、たとえどんなことがあっても、いま与えられている条件で、大体もう来年度のことはある程度基礎的な条件はそろっているわけですから、いまの設備投資の状況、民間経済活動の状況というものを前提とした上で、しかも七%程度の経済成長を見込むというようなそういう諸条件の中では、おそらくいま言いましたように、どんなことがあっても最高限度二五%をこえるなんということをしたら、これは不健全なんだ、だから、何といってもそのパーセンテージより低目でなければいけないんだというようなことになれば、これは歯どめだということになりましょう。しかし、どこまで広がるのか何だかわからぬという御説明では、これは歯どめということではないとわれわれは理解せざるを得ない。したがって、歯どめ論としてそれを第一にあげられたのはお取り消しになったほうがかえってわかりいいんではないか、こう思いますので、あっさりひとつこれはお取り消しを願いたいと思うのですが……。
  230. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは、高田さんの御理解がまだ届いてないように思うのです。そうじゃなくて、私申し上げますのは、財政の規模というのは非常に大事なんだ。ということは、つまりどういうことかというと、民間の経済活動と政府の経済活動とが合わさって、そこで一体何%の成長となるかという、その何%の成長を達成するために必要な財政投資はいかばかりであるか、そこに一番の問題があるのです。そういう何%の成長ということを考える場合におきましては、その成長下において物財の需給がどうなるか、あるいは労働事情がどうなるか、あるいは資金の需給がどうなるか、国際収支はどうなるかということに関連があるわけなんです。それらが均衡がとれておりますれば、民間の活動が停滞しているときに政府財政が相当拡大されても、いささかも心配はないんだ、そこで、財政の活動というものがそういう要因によって制約をされてくるんだ、こういうことを申し上げておるわけなんで、まだ現実にその数字がことしの予算に比べて、政府の財政規模あるいは財政投融資の規模が何%ぐらいふえるんだということをここで申し上げる段階には来ておらない。しかし、その数字は客観的にきめるのであって、これが何かの圧力できめられたり何かするというようなことはありません、こういうことです。
  231. 高田富之

    ○高田委員 それでは、結局もう見解のあれでもって、ある見解によれば、現在の段階ではこの程度しなければいまの景気の回復には役立たぬというような見解もあるし、いや、それでは行き過ぎだというような見解もあるし、いろいろな見解が出てきて、結局基準となるべきワクというものがない。そのうちのどっちの見解がとられるかということは、力関係やそのときの情勢によるわけですから、結局ワクがないということになる。こう理解せざるを得ないのでありまして、もうこれ以上は押し問答してもしかたがありませんから、ワクがないというふうに理解をいたしまして先に進みたいと思います。  そこで、実は物価問題につきましても、先ほど小松議員から最初総括的ないろいろお話がありました。大体佐藤内閣経済政策というものにつきましては、非常に国民は不安感を持っておる、率直に言いまして、何か一定の方針、確たる方針というものがないんではないかという不安を非常に持っておるわけであります。と申しますのは、この一年間の実績に徴しましても、物価の問題につきましても、たとえば最初、本年度は物価上昇は四・五%くらいにとどめられるであろうというふうなお見通しであった。いつの間にかそれが倍近くになってしまう。あるいはまた景気の見通しにつきましても、公債の発行の必要な状態などというものは生まれない、心配ないというようなことで、今後何年間かは公債不発行で完全にやっていけるという見通しを持っておられたことも事実であります。さらにまた、年度途中におきましては、公共事業費等の支出を押えていくというふうな方針をとられ、あるいはそれを解除する。あるいはさらに逆に今度は繰り上げ支出をする、二転三転、非常に動いておる。公債を発行するんだということを言い出されてからも、その内容、出し方あるいはその額がしょっちゅう動いておる。結局これは情勢に押されている、あるいは財界の強い要請なり、あるいは党内の事情なり、いろいろなところに押され押されて、行き着くところに行き着きつつあるというふうな感じを、ほんとうに誇張でなしに、実際問題としてだれでも持たざるを得ないわけです。ですから、たとえば中期経済計画なんかにしましても、当初はそれを基準にされて、一応経済政策についてのめどをお立てになるというふうな方針であられたんだろうと思いますが、いつの間にかこれが無用のものになってしまって、どこかにたな上げされて消されてしまっておる。さればといって、それにかわるべきものがあるんだろうか、非常に国民は不安に思っておるわけであります。公債発行などという大転換をおやりになるにあたっても、こういうふうな確たる見通しなり、これから何年間か先の経済運営の方針というようなものが示されないままに、押され押されてやられておる。やむにやまれずとうとう公債発行というようなところに行ってしまった。こういう感が非常に深いわけです。こういう点について非常に私自身も、どうも確たるものがないんじゃないかと見ざるを得ないのですが、この点はいかがですか。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御批評はこれは御自由ですが、私その批評に答える筋のものではないように思っておりますので、お答えはいたしません。
  233. 高田富之

    ○高田委員 それは国民がおそらく共通に持っておる不安だと思うのです。ですから、こういう機会に総理から、そう見られておることがもし心外であるならば——それでいいというなら別ですが、これは困るということであるならば、これこれこういうことだという御説明があってしかるべきだ、こう思うので、ぜひひとつ親切に、国民のだれにもわかるように御説明をいただきたいと思うのです。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん不親切な答弁をいたしまして……。しかし高田君、それにおこられもしないで重ねてお尋ねでございますので、私もお答えをいたしたいと思います。  経済問題はなかなかむずかしい問題でございます。たとえば池田内閣当時に社会党の方は一体どう言われたか。この池田内閣の経済成長政策は低い、おれたちならもっと大きいものをやる、こういうお話があったと思います。ただいまそれをお忘れになっていらっしゃるようなんで、そして今日経済の不況をかもし、そして、これを克服するために私ども努力をしておりますが、この経済不況は、高度経済成長のもたらした結果ではないか、かようにも言われる。もしも社会党諸君の言われるように経済成長、これがもっと大きかったら一体どうなるのか、そのことも、これは社会党御自身の考え方について、これまた世間がさような批評を下しておるのでございます。これまた私の耳にもそれは入っておるのでございます。さようなことを考えてみますと、たいへん実はむずかしい問題であります。しかし、私は池田内閣のあとを受け継ぎまして、そしてこの問題と真剣に取り組んでいる。私の見方が間違っていたとか、あるいは甘かったとか、かような点についての御批評は、これは私そのままありがたく御批判をちょうだいいたします。私が今日まで池田内閣のあとを受け継ぎまして、いろいろこれと真剣に取り組んでまいりました。私どもも、在来の見方について、いわゆる経済のひずみというような表現で経済の不況を見ていたことは、明らかに間違いだと私は思います。これは経済のひずみという程度のものではない、もっと深刻なものであります。また、そういう点で、これがどういうところに基因しているかということで、その原因もいろいろ調査し、そうしてそれに対処してまいったわけであります。したがいまして、最初におきましてはいわゆる資金面で非常にルーズであったのじゃないのか、そういう意味で資金的な道をふさぐ、そうして、これが正常になれば必ず設備投資等も鎮静するのじゃないか、かような見方も二時したことは事実でございます。  しかして、今日になってまいりますると、この深刻な経済界に向かって対処するのには、やはり何といっても積極的に需要を喚起する必要もあるのだ。しかし、同時にまた、本来の本筋であるべき経済の姿というものを想定して、それを育てるようにもしたいものだ、これをやっていかなければならない。これがいわゆる安定成長への道であります。しかし、安定成長にばかり力を入れまして、現在当面しておるその事態を無視するようなことがあってはならない、かように私は考えておるのであります。  ただいまいろいろの御批判を受けましたが、ただいま申し上げますように、私どももそれぞれの現状分析、さらにその原因等も追及し、それぞれの対症療法もいたしますが、総合的な施策も実はいたしておるわけであります。そういう意味で、いろいろまだ御理解もいただかない点がある。ことにこれが経済そのものよりも物価というような形の問題について非常な批判のあることも承知いたしておりますので、経済自身が健全性を取り戻して立ち直ってきて、そうして安定成長への道を歩むようになれば、必ず物価も鎮静すると思いますけれども、その途中における経済安定化への道を歩む、その際にこの物価の問題が、別の方向といいますか、国民生活に与える方向ではなかなかしんぼうのできないような事態になっている、こういうような点も指摘されておるのであります。そこで、私が申し上げますように、物価自身も総合的政策のうちにこれを解決するということにならなければなりませんし、また一口に物価と申しますが、それぞれの具体的な物価等の問題に対処していくということでなければ、十分こまかな手当てをしない限り、当面しておる不況あるいは物価対策などは解決ができない、かように私は思うのであります。  特に時間をとりまして説明をいたしましたが、重ねてのお尋ねでありますから、さように御了承をいただきたいのであります。
  235. 高田富之

    ○高田委員 ただいまの御答弁の初めのほうで、社会党はもっと高度成長をやれと言ったので、社会党がやったらもっとひどいことになったろうというようなお話ですが、これは、選挙のときの立ち会い演説会かなんかでの無責任な放言としてならばともかく、この大事な予算委員会におきまして、自民党総裁であり、総理が、野党に対しましてそういう無責任な御批判は困ると思うのです。私どもそういうばかなことを言ったことは一度もないのでありまして、われわれは、池田内閣の高度経済成長、あれでいけば必ず所得倍増にあらずして物価倍増になるぞ、必ず反動の生産過剰の恐慌がくるぞ、だからもっと投資の規制をしろ、そうして初めから安定成長のためのあるべき施策を提示いたしまして対決してきたわけですから、念のためその点ははっきりここで明らかにしておきたいと思うのです。  いろいろと御説明はありましたけれども、結局過去一年間の実績が証明しますように、相当動揺されてきた。一言だけ反省されておる点は、経済のひずみだといままで思っておったが、これは単なるひずみ以上のもので、もっともっと深刻なものだということがわかったというわけでございますので、やはり事態の深刻さというようなものに、次第にこれは楽観論というものをみずから消して取り組まざるを得ないということになられたのだろうと思うのであります。  そこで、経済企画庁長官にお伺いしたいのですが、当初本年度の物価の見通しについて、四・五%程度というふうなお見込みであったようでありますが、その倍近いようなところまでになってしまったということは、これは何に原因があるといまお考えになっておられますか。
  236. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 本年度の物価を顧みてみますと、御承知のように、年度初めに消費者米価が上がりました。それから四月になりまして教育関係の費用、住居費等が上がって、そして前年度に比べてみますと、著しい九・八%というような消費者物価の値上がりを見たわけであります。その後若干ずつそれらの事情が吸収されてきて、年度末七・七におさまるか、八におさまるかというようなところだと思います。どなたが考えてみましても。そして、それだけの経過をたどってみましてもわかりますことは、やはり経済の構造上の問題が物価問題に影響してきている。たとえば教育費の値上がりということにつきましても、教員が学校で教べんをとるというようなことは、いわゆる合理化のできないサービス事業——教育をサービス事業という言い方をすると悪いかもしれませんが、しかしそういうことなわけなんです。ですから、そういう意味での賃金が影響してきておる、俸給が影響してきておることもある。同時に、非常に高度に経済が発展してきて教育が普及してくる。いいことではございます。また、技術教育を盛んにしていかなければならぬ。それらに対する大学の設備の拡張とか、あるいは実験室、従来のような法文系の教室よりもそういう方面に力を注いでいくとか、これはそれぞれ大学等においても、官立大学は国が見ますけれども、私立大学になればそれぞれ多額の資金を投入しておるわけでありまして、それらに対する負担というものも、学生がふえてまいりましても、やはり相当の負担がかかってくるということになると思います。そういうような点を考えてみましても、あるいは農産物のこの間の状況を見てみましても、やはり本年度には卵が非常に安売りされた。非常によけいつくるようになったけれども、一時安売りされた。それを安定させるために引き上げなければならなかったというようなこともございます。  これらの問題はすべてやはり経済の円滑な運営ができにくいようなゆがみ、ひずみ、構造上の問題が各所にある。そのゆがみ、ひずみの大きさあるいは幅というものは大小それぞれいろいろだと思いますが、あるものは非常に大きく、あるものはそれほどでない、それから出てくる影響についても大小いろいろございましょうけれども、しかし、それらのものがみな重なり合って影響をしてきておるということは言えると思います。ですから、そういう意味でわれわれはこうした問題を取り上げていく場合に、それらの基本的な問題を直してまいらなければ、なかなか物価問題の根本的な解決はできないのだ。一時的にたとえば牛肉が高い、需給が非常に逼迫している、外国から緊急輸入をしてそれを補う、需給関係の問題ならばそういうことも考えられるのでございますけれども、そうでない原因から来ている面からすれば、やはり長期にわたってそれらの構造を改変していくということでなければならぬと思います。私どもはそういうふうに理解しております。
  237. 高田富之

    ○高田委員 いずれにしましても、当初のお見込みが倍にも狂うということは、非常なこれはたいへんな事態でありまして、ただいま国民が物価の値上がりに最も苦しんでおるわけであります。本年度は特に実質賃金の上昇率を上回る物価の上昇でありますので、事はきわめて重大であります。非常に深刻な事態にいま当面しておるわけでありまして、政府がどれだけ深刻にこの問題と取り組むか、実効のあるどういう具体策を打ち出すかということについては、これは全国民が最も期待をして、注視しておるところだと思うのです。  ところで、先般消費者米価の問題をきめます際の米価審議会におきましても、これも異例なことだと思うのですが、消費者米価を上げることで、一体政府は物価対策について消費者物価の将来の見通しなりについてどういう考え、方策を持っているかということを委員が聞かなければ答申ができないといって、そうして藤山長官がわざわざおいでになって、政府の考え方を述べておるわけであります。そのときに、長官の説明によりますと、これは先ほどもちょっと御答弁があったようでありますが、本年度は七・五%、四十一年度は五%、四十二年度は三%と、段階的に上昇率を低めていきたい、こういうふうなこと、さらにいろいろ国民生活に与える影響等を考慮して云々と、いろいろ安心するような御説明をなすっておるわけでございます。こういうことは、やはり米価審議会あたりで皆さんが答申をする上において重要な前提になりまして、答申が出ていると思うのです。  ところで、そのおっしゃられましたことが、どの程度責任を持っておやりになる確信があるのかということを、その後また国民は疑い出しているわけです。なぜかというと、それをおっしゃったあとで、各種公共料金の一斉引き上げがどかどか、どかどかと打ち上げられてきておりますからね、あのときはまだそういうことでなかったわけでありますし、藤山長官は特に公共料金の引き上げなんかについては慎重にやるのだと言われる。全然上げないとはおっしゃっておりませんが、幅はうんとできるだけ少なくするし、時期的にもうんとこれも考えて、国民生活に影響のないようにやっていって、来年度は五、その次は三、こういう御説明なんですが、そのあとですぐに、これをひっくり返すような事態が政府自身から発表されておりますので、これでは長官のおっしゃったことは、これは何にも根拠のない無責任なことなんだろうかと疑わざるを得ないのですね。当然だと思うのです。先ほども何か御答弁の中で、たまたま十一月幾日が七五三の日に当たったものだから七五三と言っちゃったというような御説明なんですが、これでは私は国民は憤慨すると思いますよ。こういうことは、どういう意味でそういう御発言をなすったのか、いまでも責任が持てるものなのか持てないものなのか、もう一ぺんこれははっきりと責任のあるお見通し、またお考えを述べていただきたいと思います。
  238. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 うっかり十一月十五日だから七五三と言っちゃったという意見ではないので、その点は、よその人が私の言ったことに対して、七五三の日にうまいことを言うものだなと言ったのでございますから、そうしてからかわれたということを申したわけであります。  今年の物価情勢が年度末にいって七・五ないし七・七、これは一応われわれとしても努力をして、幾らかは下げるような努力を試みるにしても、そのくらいはいかざるを得ない、うっかりすればそれ以上にならざるを得ない状況でございますから、大体七・五くらいとわれわれとしても申したわけであります。二年くらい後に三%前後、こう申したのですが、これは、要するに先ほども御説明したと思いますけれども、経済が戦後各国でもって非常な勢いで膨張をしております。そういう中で大体対前年度二%ぐらいの物価の上昇というものは、諸外国におきましてもまずインフレの懸念もないし、まあその程度のものは経済が成長発展していく過程ではやむを得ない事態であろう、それ以上になってくれば相当な危険がある、インフレともなろう、 国によっては三%上がればすでにインフレの傾向があるというようなところもございますが、まあ若干の相違はあろうと思います。したがって、物価の対前年度比上がりがおさまって、その辺までいきまするならば、一応戦後の各国の経済事情に相応いたしまして、日本の物価がまず安定していったということが言えるのじゃないかというのが私の考え方でございます。したがってそこに目標を置いて持っていかなければならぬ。  ですから、それは一年ではとうてい来年度すぐに達成するとは私は思いません。構造上の点や何かございます。したがって、少なくとも年二年後に目標を置いていく。そうすれば、段階的に申して来年はどのくらいになるかといえば、まあ五・五%前後、五%台、先ほど七五三といって、五%だということなんですが、五%台ということにお考えいただきたいと思うのですが、六%にならぬようにということです。なるかもしれませんが、五%台でおさめていきたい。そうして、その次は三%台、四%の間までくらいにおさめていけば、私は物価対策としては経済政策と合わせて相当好もしい行き方ができたのではないか、成功とまでは言わないにしても、成功の道を進みつつあるのではないか、こう思います。  そこで来年度、四十一年度の物価がどのくらいになるかと言うことはなかなか困難でございますけれども、しかし、これも先ほど御説明申したと思いますが、三月と四月のいわゆるわれわれがげたと言っておりますものか、本年は三・四%、たぶん来たるべき三月、四月のげたというのは二・一五%ぐらいだろうと想像されます。したがって、本年はたとえば三・四%のげたをはいて七・五%だとすれば四%くらい、そこにあるわけです。ですから、かりに四%に二・五%のげたをはがせれば六%半ですから、来年は本年のままの横ばいというような形でも、それは政策的努力でもって一%くらい下げれば、まあ五・五%くらいにいくのじゃないかというのがわれわれの努力目標であり、想定をその辺に持っていってやっていきたい。そこで、先般米価審議会で御説明申し上げたときに、できるだけむろん国鉄その他の料金につきまして押えていく、あるいは時期等をずらせていくことは、私どもが物価を扱っております上においてやってまいらなければならぬことでありまして、御承知のように、国鉄はすでに一年前にストップをいたしておるのでございますから、国鉄が申請するとしないにかかわらず、一年後には問題になる。いわんや国鉄としては相当熱心に各方面に国鉄の内情等を説明をされまして、一年間におけるストップがいかに国鉄経営に響いてきているかという御説明も承っておりますので、われわれとしても、国鉄原案どおりやるかやらないかは別として、この年度内の適当な時期、あるいは来年度早々に考えなければいかぬということでありまして、私としてはできれば四月一日くらいの国鉄運賃の引き上げが適当ではないかと考えて、その前後から頭の中にそういう問題がございました。そういうことでございますから、いま申し上げたように、来年度の努力目標を、六%以内でできるだけおさめて、五%台でいきたいというこの努力目標にいたしてもそういう点については意識の上にあったことは当然でございます。ただ、どの程度にそれが波及効果を今後持ってくるかというこまかい計算は、まだ全部にわたっていたしておりませんので、そういう点について、一々どういうものが、どういう波及効果がどういう物質の上にいくかということについては申し上げかねると思います。大体私はいま申し上げたような考え方、あるいは扱い方によってやってまいったのでございます。
  239. 高田富之

    ○高田委員 本年度よりも明年度は物価上昇率を引き下げていくという努力目標、政策目標といいますか、そういうものについては、気持ちとしてはわからないことはないのですけれども、そのために、それを裏づける施策なり行動というものがやはり常になければならぬと思うのですが、それが逆に、明年四月以前に相次いでの、しかも長官が米審でおっしゃったような、上げ幅は極力小さく時期も国民生活に影響のないように配慮するということとはおよそこれは違うと思うのですよ。時期的には、みんな国民か一番心配しているやさきへもってきて相次いでばたばたっと、しかもいずれもかなりの大幅ですね。みんな何割というのでしょう。そういうことであったのでは、いかに政策目標をそういうふうに置かれましても、これはかえってことしよりも上がるのじゃないかと思うほうが私は自然じゃないかと思うのです。反対に下げるための努力としてはこういうことだ、こういう努力によって下げるのだということについてどういうことをおきめになっているのですか。どういうことをおやりになろうとしているのですか。
  240. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価の問題、これは本格的に取り組んでまいらなければなりませんから、私としましては、閣内で物価関係の閣僚協議会ができますと同時に、企画庁におきまして懇談会形式によりまして各界の方々にお集まりを願って、そうして問題の所在、またそれに対する解決の方法等につきまして十分意見を交換しながら、これらの御意見を総合して今後のわれわれの物価施策の上に益してまいりたい、こう思っておるのでございます。  同時に、企画庁としては、将来、四十一年度予算編成等にあたりましても、各省はそれぞれ物価に関するいろいろな予算要求もされております。その中で、適正に物価に響くような予算でございますれば、大蔵省の理解を得て、そうしてできるだけそれぞれの各省の施策が実施できるように各省とともだ協力してまいりたい、こう思っておるのでございます。それらを通じまして、今日まで予算の裏づけが十分でなかった、あるいは予算の裏づけがなかったという問題にも取り組んでまりいまして、そうして各省のそれぞれの行政の中で、物価行政、物価の安定に資するような諸般の施策に対してバックアップをしていく、こういうつもりでおります。
  241. 高田富之

    ○高田委員 具体的な行動とされてはまず一斉値上げ、そして物価対策としては閣僚協議会と懇談会をつくったというようなところでありまして、しかもその懇談会をつくったときには、すでに各種公共料金の一斉引き上げを決定、発表したあとでありますので、そのために労働団体で参加しないというようなところも出ておるというような状況であります。いずれにいたしましても、この際に上げるものはみんな上げてしまうというふうな態度に出られたということは、もう何べん御説明願いましても、国民の容易に氷解しない点でありまして、今後の施策によってこれを打ち消すことができるかどうかという問題であります。  私は、ここでさらに質問を進めまして、具体的な事例に入りたいと思うのですが、米価の問題であります。米価の問題につきましては、昨年の大幅値上げをやりまして、また本年も一割近いかなり大幅の値上げを相次いで行なうわけでありまして、こういうことはいまだかって例を見なかったわけであります。これも、先般の米価審議会における答申の内容そのものは必ずしも具体的ではない、こういうわけではありますが、しかし、答申しました各委員に共通しておりますことは、何といっても国民生活に相当な影響を及ぼすし、他の物価への波及というものを非常におそれている、したがって、これはもう相当慎重に配慮しなければならないという意味が多分に盛られておるわけであります。しかるに、答申が出るやいなや、全くそういうふうなところには配慮されないで、かねて政府の内定しておりましたとおりのものをすぐに打ち出した。こういうことで、審議会委員諸君も非常に心外に思って、農林大臣のところへ抗議に行かれ、場合によってはやり直しをしようじゃないかというふうな機運であった、こういうわけであります。私はこの際農林大臣に対しまして、あなたは、こういうふうな消費者米価の大幅な、しかも相次ぐ、去年やってまたやるというふうな引き上げ、この問題について、今後の食管制度のこれは事実上の骨抜きと言わざるを得ないと思うのでありますが、どういうお考えを持っておりますか、はっきりと御答弁願いたいと思うのです。
  242. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 お答え申し上げます。  いま高田委員のおっしゃるとおり、消費者米価の改定については慎重に考うべきものであることは申すまでもございません。さような関係からいたしまして、この食管制度の運営の実情、それから、この改定が家計並びに物価に及ぼす影響等を十分慎重に検討いたしまして、家計米価の範囲内において、生産地における生産者米価と消費者米価との逆ざやを正常化していくということによって食管制度の運営を妥当ならしめてまいりたい。こういうことで、家計米価の範囲内においてこれを改定するということにいたしたわけでございます。  さらに、この影響を見ますと、大体改定当時においては、非配給米の影響も入れまして、千分の八くらい影響があるかと思うのです。それから、本年一年を通じまして、物価指数においては千分の二、いわゆる〇・二%の影響であると計算されるわけでございます。かような関係でありまするが、なお私どもはこの家計の問題から見まして、米の関係は大体生活費から見まして六%ないし七%程度でありますが、最近の情勢は、生鮮食料品のごときは二五%ないし一六%という米以上に相当商い率を占めておるようなわけでございまするので、特にこの際、生鮮食料品の価格の安定というものに特別の注意を払っていかなければならぬ、かように考えてやった次第でございます。  それからなお、これらについて審議会においては十分いろろいろ御議論を願ったわけでございまするが、この際の改定はやむを得ないが、十分慎重に処置されたいという意見もあり、なお配給制度の改正等についても十分考慮されたいという附帯決議もありましたようなわけでございまするので、その翌日閣議に報告をいたしまして、それから二十日だったと思いますが、さらに検討を加えまして、この参考試案と同じようなことに決定を見たようなわけでございます。
  243. 高田富之

    ○高田委員 今回は配給制度につきましても、上・中・下と三段階に分けましたが、上米に属する部分が五%ぐらいを占めるわけでありまして、それの値上げ率が一番高いわけですから、実質的には今度の値上げ率よりも高くて、九・五%の値上げ、こういうふうな結果になるわけです。それは大臣もお認めになると思うのですが、そういうふうなことでありまして、最近は食糧事情も非常に逼迫してまいりまして、都会地におきましては悪い米、まずい米という評判、しかも値段ばかりが上がってくる、こういうわけであります。この点につきましては、答申の中にはそういう点を指摘しておるわけでありまして、配給制度についての消費者の立場からの改正、そうして混米や何かについての厳格な規制、そういう実質的な悪い米を高く売るというようなことをなくせということがあるわけなんですが、今回実施されましたことはその逆を行っているんじゃないか。ますますまずい米を高く買わされるという結果になるのではないか、今度の結果を見て、どこでも家庭の主婦はその点を非常に遺憾に思っておる、心配しておるわけなんです。どうですか、大臣。
  244. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 配給の点については、私どもも相当検討を加えていかなければならぬ、こう考えております。ただ、いまこの際上米と並み米と徳用米と三つに区別をいたしまして、従来一番上の特選米、それから普通米、それから徳用米と三つに分かれていたのを、その制度をやめましたわけです。と申しますのは、だんだん生活程度が上がりましたので、特選米に対する配給は、実際はその原料が少ないのです。少ないにもかかわらず、実際消費者にいくのは三割以上にも及んでれる。それから今度は徳用米のほうの原料は非常に多く行っておるのにもかかわらず、実際はあまりたくさん配給されない、こんなような実態になっておる。やはりいいものを食いたいということがあり、また配給店といたしましても、できるだけ努力をして、白くきれいなりっぱなものにこしらえて、よけい出したい、いいものを出したい、こういうようなことから、実際問題との間に違いが出てきておるわけであります。  そういう関係でありまするので、今度はその消費者の需要の実態に合わすほうがよかろうということからいたしまして、また、それは従来の米価審議会における要望でもありましたので、上米というものを多くできるようにいたし、それから並み米、徳用米という区別に、かようなところからいたしたようなわけでございます。かようなふうに配給米の区分を改正いたしたのでありまするが、これの実行にあたりましては、十分注意をする必要もありまするし、また、よく検討を加える必要がございまするので、目下省内において十分検討を加えて、場合によりましては、それによってまた米価審議会等に諮問するつもりでおるわけでございます。
  245. 高田富之

    ○高田委員 実はこの消費者米価を一年ごとに引き上げるというような問題は、農林行政の面からいきますと、これは最も排撃しなければならぬやり方だと思うので、農林大臣がそういう点について、これを肯定するというのはいかがかと思うのです。と申しますのは、こんな調子でいきますと、また来年も生産者米価が幾らか上がるということになれば、必然的に消費者米価も上げるんだろう、こういう考えを国民は持つわけです。心配するわけであります。そういう例をつくってしまっているわけです。前の赤城農林大臣も、生産者米価と消費者米価というものが別々では不合理である、何らかの方法でこれがスライドしなければいかぬというふうなことを持論として絶えず主張されておったのですが、これが実際行なわれてきているんですね。厳密な意味におけるスライドであるかないかなんという議論は別としまして、生産者米価が上がったら必ず消費者米価を上げる、これでは食管制度というものは、事実上もう骨抜きでございます。そういうことになるということは、言いかえれば、消費者の圧力をもって生産者米価の値上げを押えるという政治的効果のねらいがあるのだというふうに、これは生産者側もとらざるを得ないでしょう。もしそういうことになったら、いまでさえも主食の生産が減退しておる、需給状態は非常に悪い、七、八十万石も輸入しなければならぬという、この思わざる事態を引き起こしておるのが、もっと悪いことになる。ですから、農林行政の立場からしますと、食管制度は堅持しているのだという安心感を与えまして、そうして、農民に対して、主食の生産にさらに一そう能率をあげ、生産をあげるような方向を明らかにしなければならぬ重大な段階だと思うのです。こういうときに、相次いでこういうことをやられたのでは、これはもうきわめて事は重大だと私は思うのです。消費者の立場から心配であると同時に、生産者の立場からももう非常にこれは大問題としなければなりません。したがって、これは財政上の見地から食管の赤字が一千何百億になるから云々というようなことで、ただそれを消すということだけに頭を置いて、全国民に関係する消費者米価、また全農民、ほとんど大多数の農民に関係する生産者米価、この両方に大きな不満と不安を与えるような施策をとることは、これは策の最も愚劣なものだ。来年四兆何千億なんという一般会計予算を組もうというときに、一千億の金で全国民の米の消費についての不安感をなくし、全農民についての生産意欲を増強するならば、こんな安い、有効な出費はないと私は思うのです。食管制度のよさというもの、食管制度の必要性というものも、こういう段階では真剣に政府が再認識してもらわないと、単に財政上の見地から、いや生産者米価を上げた、赤字になるから消費者米価を上げろ、これでは農政の上にもたいへんな大失敗を来たすし、消費者側からもこれは大きな不満を買う、こう思いますので、この点はひとつお考え直しをしてもらわなければならぬ、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  246. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 生産者米価並びに消費者米価についてたいへん御心配をいただくことは、私もたいへん感謝するのでございます。ただ、よく御存じだろうと思いますが、この生産性向上をはかって、農家の米価を上げずにこの経費が持てるようになれば一番理想的でございますが、それは、先ほども小松委員から御質問がありましたとおりに、この零細な農業に対して生産性を上げるということについて極力努力はいたしておりましても、なかなか、それは日本ばかりでなしに、各国ともに零細な農業において、そういう生産性を上げることによってのみ所得を上げることができないことは、御存じのとおりでございます。さような関係からいたしまして、生産性を向上することにうんと努力を払うと同時に、やはり生産者の価格を十分考えていかなければならぬことはお説のとおりでございます。さればといって、消費者の面についでも、これは申すまでもなく、消費者の米価改定は家計費の範囲内にとどめるべきものであると私も信じておるのでございます。さような関係からいたしまして、食管法におきましても、御存じのとおりに、生産者米価については再生産を可能にするように、消費者米価につきましては家計の安定を旨として、というふうに改定することにきめられておるのでありまするけれども、やはり同時に米の値段でありまするからして、生産者米価と消費者米価が逆ざやに相なりましたのでは、国の予算がよけい要るとか要らぬとかいうことだけでなしに、逆ざやになりますと、食管の運営には非常に支障になることは、これはもう御存じのとおりであると思うのでございます。そういう関係から、私は先ほど申しましたように、逆ざやを直す、そういう意味においては、この際改定の必要があると認めたのでありまするし、なおかつ、それは家計米価の範囲内において行なう、そういう意味における関連性はあるのではないか、またそれで進むべきものではないかと、かように考えておるようなわけでございます。
  247. 川俣清音

    ○川俣委員 関連して。私は質問しないつもりでおったのですが、農林大臣がわざわざ答弁をされましたその答弁の中に、たいへん誤解があるようでございますので、この際お尋ねしておきたいと思います。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕  それは、ことしの買い入れ米価をきめられた価格と実際の価格との間に開きがあるはずであります。決定した生産者米価と今日まで買い入れられました米価との間に開きがあるはずでございます。その開きを考えないで逆ざやとおっしゃいますが、一体何等米が逆ざやになっておるのか、平均が逆ざやになっておるのか。逆ざや、逆ざやと言うけれども、計算の基礎がわからないで逆ざやと言われますから、あえてお尋ねをしなければならないわけです。一体ことしの実際の買い入れ米価は幾らですか、今日までの。
  248. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 買い入れ価格は、一−三等の平均でありますが、これは大体において平均のところの——見えでありますが二千四百円くらいの開きがあります。
  249. 川俣清音

    ○川俣委員 これ以上質問するとなおお困りになるでしょうと思いますが、想定いたしました一等米の買い入れ数量と二等米の買い入れ数量並びに三等、四等米の買い入れ数量とが大きな開きがございます。したがって、買い入れ価格は違ってきたはずでございます。それをわからないであなたは逆ざやと言うのですから、わからないのです。幾らに見ての逆ざやなんですか。これは一等米と三等米とは当然逆ざやがありますよ。
  250. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 食糧庁長官答弁いたさせます。
  251. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 私からお答えを申し上げます。  いま大臣から申し上げました逆ざや関係につきましては、特地におきます一−三等の玄米の生産者価格と特地におきます上米の価格、その間の逆ざや関係がなくなるようにということで計算をいたしておるわけでございます。
  252. 川俣清音

    ○川俣委員 私の聞いておるのは、最初に想定をして、米価決定のときに想定をした一等米の数量と二等米の数量並びに三等、四等米の数量とに開きが出てきたんだから、計算は必ず変わらなければならぬはずだ。開きが出てきているのです。この開きを無視して逆ざやと言うからお尋ねをしたのだ。変わったでしょう、一等米の想定数量と。二等米、三等米、四等米、みな変わっているじゃないですか。結果が違っておるはずなんです。加重平均すると違っておるはずなんです。それだけわかっていなければならないのに、あなたは教え方が悪いんだ、大臣に。
  253. 武田誠三

    ○武田(誠)政府委員 生産者米価を一万六千三百七十五円というようにきめましたときの各等級比率と、現在買い入れをいたしております場合の等級比率との間には、これは例年その年の作況によりまして違ってまいりますので、ことしの状態につきましては、まだ全部の供出が終わっておりませんので、計算をいたしておりませんけれども、その間に多少の違いは出てまいるというように思っております。
  254. 高田富之

    ○高田委員 家計米価のゆとりというものをほとんど全部今度は米価の値上げによって食いつぶしてしまっておる。家計米価の伸びが一〇%に対しまして、上げ幅が八・六、いま言いましたように実質的に九・五というようなことでありますので、今回の場合は、ほとんど米の値上げだけで食っちゃっておる。それからこの前とにかく一四・何%、あれだけの大幅値上げをしたばかりで、またこれをやっておるのですから、これは時期的な面から言いましても、上げ幅から言いましても、企画庁長官のお考えの公共料金引き上げに対する基本的なお考えとは、まるっきり私は逆だと思う。こういうことをされておったのでは、一般物価を強力に押えていこうといっても、これはだめだと思うのです。こういうやり方では。この点は、全く言行不一致じゃないか、こう私は強く指摘いたしたいのです。  それで、実はそのほかいろいろ農産物価格について申し上げたかったのですが、先へ進みたいと思うのですが、こういうことなんです。よく農産物、中小企業の製品については、これは値段を上げるのじゃなくて——生産者の場合ですよ。生産者の値段を上げるのじゃなくて、生産性を上げるというほうが主なんだということをしょっちゅうおっしゃるわけです。たとえば米の問題にしましても、私がいままで申し上げましたようなことを言いますと、反論をする者は、消費者米価を上げたくなかったならば生産者米価を上げなければいいじゃないか、生産者米価なんか上げなくても生産性を向上するようなところへ金を使ったほうが有効なんで、米価を上げることに金を使うのは間違いだ、生産者米価を上げないことを考えろ、こういう議論が必ずあるわけなんです。しかしこれは、私はとんでもないことだと思うのです。農産物のような場合は、ただいま何といいましても、非常に生産者価格というものは不安定なんですね。不安定で、かつ低い。平均してみれば低いのですが、上がり下がりのあれが非常にはなはだしい。特に野菜類などは非常にはなはだしい。これでは生産性を上げろとか、生産のために努力をしろとか言ってみたところで始まらないのです。これは農業生産を放棄してしまった、現にどんどん。ですから、まず前提としまして、価格の安定ということを考えまして、その上で生産性を上げるための施策を強力に行なわなければ、農業生産品の価格を下げるということは不可能だと思う。そういう点では順序が逆だと思うのです。いまの考え方は。生産性のほうを先に考えて、安定のほうはあと回し、いまの野菜なんかにしましても、ほとんど安定措置なんというものは、言いわけみたいにちょっと一、二の品目をやっていますが、こんなことではいかぬと思うのです。農産物、野菜なら野菜について、主要品目についてやはり政府が指定制度をとり、価格の安定制度、安定基金というようなものを、そういうところへは思い切って金を出しまして、そうしてまず安定させることなんです。安定すればそこから逃げていきませんから、そこで初めていろいろな施策に協力もして、生産性を上げることになると思います。しかし、いまのやり方というものは、そういう点を全部手を抜いてしまっておる。そうして、いたずらに生産者の価格の高いことをなじる、こういうやり方をやっておると思うのです。これは全く順序が逆だと思います。そういう点につきまして、これは農業政策全般にも関する非常に重大な問題です。きょうはまたあとで農業関係専門の質問もありますので、それ以上触れませんが、そういう考え方についてはどうか、ひとつ企画庁長官と農林大臣からお聞きして、次に進みたい、こう思います。
  255. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 農産価格につきましては、いまお話しのような点をわれわれも考えておるので、先ほど申しましたように、たとえば卵の例をとりましたように、価格が安定することによって初めて卵の合理化、増産ということができるんだということは、私どもも御同様同じ考え方でおります。
  256. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ただいまの企画庁長官と同じような思想でございます。
  257. 高田富之

    ○高田委員 いずれにしましても、物価政策の中でいろいろ重要な問題があると思うのですけれども、例のひずみの是正といいますか、二重構造の解消、生産性の低い部門の生産性を上げるのだということが物価政策のこれはかなり長期的な重要な基礎条件だといわれておりながら、その点についての施策は非常におくれている。これは、私は問題にならぬほどおくれていると思うのです。これは口頭禅に終わっているんですね。口で言っているだけで、実際の施策の面には出ていないと思うのです。農業でありますとか中小企業、特に農業なんかについては、日本の農業の構造からいいましても、これの生産性を上げるなんということは、これはもう相当思い切った、財政の上では一つの革命的といっていいほどの比率の飛躍的な増大がなければできないと思うのです。かつて池田さんでさえも、そういうことについては革命的施策を講ずるなんということを口ではおっしゃったことがあるのですが、実際には全然効果があがっておりませんけれども、この点は物価政策という点からいいましても、先ほど言いましたように、相当思い切った財政上の投資というものを考えていただきたいと思うのです。  そこで、これは強くその点を要請いたしまして次の問題に移りますが、運賃の問題であります。米価に次ぎましては、国鉄運賃の値上げ問題が、これまた非常に大幅に行なわれようとしておりまして、事はきわめて重大であると思うのであります。一体、国鉄の運賃値上げをしなければならない理由はどこにあるのか。去年までは黒字で、ことしから赤字になったというわけでありますが、何が原因で赤字になったか、どうしてもここでああいう大幅な値上げをしなければならないものかどうかという問題については、これは相当疑問とする点が大なるものがあると思いますので、まずその点について、簡潔でけっこうでありますからお答えを願っておきたいと思います。
  258. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたしますが、国鉄運賃はいままで非常に低過ぎるように押えてきておった関係がございますのと、現在の国民生活が要求しております旅客の輸送力、あるいは日本経済の必要としておる貨物輸送量等を国鉄がになうべき場面におきまして、非常に施設の点において劣っておるのであります。そこで一般の財投なんかの金をつぎ込んで、なるべく運賃を上げないでという配慮でやってみましても、そういう借り入れ金には限界がございまして、公共企業体の性格から考えましても、利用者負担の原則等にらみ合わせまして、この段階ではおおむね二五%の増収率の値上げはどうしても必要であるという点で結論に達して、値上げの要請をいたしておる次第でございます。
  259. 高田富之

    ○高田委員 国鉄の運賃の値上げ、国鉄経営の健全化ということで最大の問題は、四十年から四十六年にまたがります輸送力増強七カ年計画、第三次計画、これが二兆九千億円ですか、こういうような設備投資というようなものに非常にばく大な資金を必要とし、また、いままでの借り入れ金がすでに一兆円だというようなことで、その利払いというようなものに非常に追いまくられておる。こういうことが原因で、どうにも利用者の負担による以外にはいまのところ方法がないのだというようなことで、国鉄当局からも強く要請され、またそういった答申も行なわれた、こういうふうに考えておるのですが、国鉄総裁、そういうことに間違いありませんか。
  260. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  国鉄運賃の値上げの問題でございますが、御承知のとおり、これには私は三つあると思います。第一は、通勤、通学の輸送がまさに交通地獄の状態だ。しかも年々非常な勢いで乗客というものがふえてきておる。これに対してはぜひとも緩和策をとらなきゃいかぬ。第二は過密ダイヤの緩和であります。国鉄の輸送量というものは輸送需要に事実追っついておらない。余裕というものが少なくともない。余裕がないところに弾力性はないのだ。弾力性のないところには、ほんとうに交通機構としての任務を尽くすことはできない。これが国鉄の状態だ。さらに過密ダイヤというものを安全化する必要がある。いま言った交通地獄の緩和、それからして安全装置の問題に対して国鉄は約一兆のお金が要るのであります。こういうものは通勤、通学の問題でございますが、これは東京、大阪を中心としての問題である。御承知のとおり、新宿や池袋に行ってごらんになればまさに交通地獄だ。この緩和というものはぜひともやらなきゃいかぬ。ところが、それをやるためには過密ダイヤの安全化とともに、金は非常にかかるが収入は非常に少ない。とてもペイしない。ペイしない仕事を国鉄が幹線の輸送力増強と同じように借金をもってするということは、独立採算制のもとに経営しておる国鉄としてはとてもやっていけない。しかも国鉄の運賃というものは非常に安いのである。天下一安い。公共企業体でありますからして安いと、こういうことなんですが、国鉄というものがちゃんとするだけのことをして、そうしてなおかつ余裕があるなら犠牲になるのもどれはよろしい。しかし、いまのような交通状態をやっておいて、そうして公共負担というようなことは、これはちょっと聞こえない議論ではないかと私は思うのであります。  こういうことで、少なくともどの借金をもってしては、どうしてもいけないものに対しては、これはひとつ自己資金でやらにゃいかぬ。自己資金はどこから求めてくるかというと、主としてやはり運賃の値上げ、御承知のとおり電電公社なんというものは、昭和二十九年において、昭和十一年に比べて二百三十三倍だ。国鉄の旅客運賃なんかわずかに百四十一倍ですよ。非常に安く押えつけられてきたのです。これをつまり上げる——私は上げるとは言いません。是正するのだ。是正して自己資金を増大したい。さらに公共負担の一部を是正する。たとえば、通勤のごときは八割二分という非常に大きな割り引きを国会から命ぜられておるのでありますが、これはとても国鉄としてはたえられないのです。やむを得ず、この際ひとつ適当なところに割り引き率を下げていこう、こういうぐあいに、運賃の値上げとともに公共負担の一部の是正ということで自己資金をつくる。これがつまり運賃値上げの理由であります。
  261. 高田富之

    ○高田委員 総裁は独立採算という前提の上に立って国鉄を預かっている、そうすると、どうしても借金をして施設をしてやったんじゃとても引き合わないから上げるんだ、これは一応私は筋が通っていると思うのですよ。ただ、前提が少しおかしいんじゃないかと思う、そういう場合、必ず利用者の負担にしなければならないということはないのでありまして、利用者のほうへ開き直らないで、もっと大きいところへ目をおつけになったほうがいいんじゃないか。  そこで、行政管理庁長官、見えておりますね、お伺いしたいのでありますが、昨日、「日本鉄道建設公団監督行政監察結果にもとづく勧告」というものをお出しになっておるわけであります。これは、かねて私ども日本鉄道建設公団というものができます際に、これは、国鉄の新線建設についての負担を軽くするという表面上の理由ではあるけれども、中身を見るとそうなってないではないか。ほとんど全部国鉄に金を出させて、そうしてできたものはまた国鉄に買い取らせている一これは、何のことはない、かえってよけい経費がかかるじゃないかということで、何のためにそんな公団をつくるのかわからぬということで、いろいろといろいろな角度から心配いたしまして、運輸委員会などで繰り返し質問があったわけなんです。はたせるかな、いまここへきて勧告があるわけでありますが、どういう趣旨でどういうふうにしようということでありますか、長官からひとつ御説明願いたいのです。
  262. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お答えいたします。  鉄道建設公団の公団法の第一条の趣旨から申しましても、新線建設を推進することとある。したがって、その金につきましては、政府側が国として当然相当のものを出すべきじゃないか、しかるにもかかわらず、昭和四十年度は御承知のとおり政府側が十億、それから国鉄側が七十五億、発足以来三カ年の間の百六十九億の総計のうち、政府側が負担しているものはわずかに一五%という比率に相なる。したがって、趣旨から申しますと、もっと政府側が国の立場から出資すべきじゃないか、そう考えて勧告いたした次第でございます。
  263. 高田富之

    ○高田委員 ただいま御説明がありましたように、せっかくこういう形のものをつくっておきながら、四十年度には、政府出資が十億円に対して国鉄出資が七十五億円、いままでで三カ年合計、政府出資が二十五億円に対して国鉄の出資が百四十四億円、こういうことをやっておるんですね。だから、国鉄が赤字になったりするのはあたりまえの話だと私は思う。これはやはり政府の責任だ。政府の責任においてまずやるべきことを存分やって、それから運賃是正の問題になるべきであります。順序が全然違うのであります。ですから、そういう問題について、国鉄総裁、あなたはどういうふうにお考えになっておられますか。さっきの説明では、どうも運賃のことばかりおっしゃっておったけれども、もう一ぺんひとつ国鉄総裁の御見解を承りたい。
  264. 石田礼助

    石田説明員 お答えいたします。  新線建設公団に対する国鉄の出資につきましては、これは関係官庁と相談の上で出資しております。要するに、われわれから言えば、国鉄にかわって新線建設公団がやってやるものだ、われわれと一心同体、こういうことから考えまして、どうせでき上がったものは国鉄へきてわれわれが経営するわけのものでありますからして、われわれが直接に出資するか、建設公団を通して使うかというだけの違いであります。少し金額としては少ないわけじゃありませんが、そういうわけで出資しておるのであります。
  265. 高田富之

    ○高田委員 ちょっと待ってください。出資しているわけはそういうわけであっても、せっかくこういう勧告があったわけなんですが、これはむしろ国鉄の立場からしても、そんな大部分あなたのほうで出す、別団体をつくって、よけいの役員を置いて、経費をかけてでき上がったものをまた買い取らせられるんじゃ、これは合った話じゃないじゃないですか。ですから、こういうふうなことは全部政府の責任においてやらせる、国鉄はそれによってうんと財政的に軽くなる、そのためにつくったものだと、これはつくった当時説明しておるのですよ。国鉄の負担を大いに軽くするためにわざわざつくったものだ、こう言っておる。ですから、あなたのほうからすればもちろんそのとおりであっても、出資を国鉄にばかりさせておるというのは全く筋が通らぬというあなたのお考えでなければならないと私は思う。そうでしょう。
  266. 石田礼助

    石田説明員 ところが、これは国鉄ばかりでやっておるのじゃなくて、国鉄が一部——その一部が多い小さいのことについては多少議論はありまするが、全部私のほうでやっておるわけじゃないのであります。その点はどうぞ御了承願いたい。
  267. 高田富之

    ○高田委員 いいですか、今度の行政管理庁の勧告によりましても、「鉄道新線の建設は、いわゆる地方開発線が多いが、これは、主として国家的な政策上の要請に基づくものであるから、建設資金は、国家資金をもってあてるべきで、公共企業体である国鉄の出資にその建設財源の大部分を依存している現状では、公団設立の趣旨は失なわれている。」と、こういう勧告であります。したがってこの勧告のとおり政府において大幅な出資をしなければならないものだ、こう考えますが、総理のお考えはいかがですか。
  268. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま国鉄総裁からお話しのように、これは一心同体のものであります。新しい公団ができましたのは、新しい機構のもとで新線の建設を推進しよう、特にその金融調達力をつけよう、こういうような趣旨かと思うのでありますが、政府としても、この公団に対しましては融資の面で相当協力をいたしておるのであります。勧告の趣旨も尊重することは、これはもとよりでありまするが、同時に、融資の面でも大いに御協力申し上げて、この公団所期の目的を達するということにしたいと、かように考えております。
  269. 高田富之

    ○高田委員 それでは、この問題はこれで打ち切りますが、こういうふうな、要するに勧告では「国鉄第三次長期計画の実施に伴う国鉄側の資金事情からしても、公団に対する国鉄の今後における多額の出資は、事実上困難とみられる状況であるから、鉄道新線建設の主たる財源は、これを政府の負担に切り替える要がある。」こうはっきり勧告しておりますから、いまあなたはこれを尊重するとおっしゃったのですが、これはいま全く逆なんです。ほとんど政府は出さない、国鉄ばかり出しているのですから、これは逆になるように大幅なやはり出資をしてこの勧告の趣旨に沿うということを、ここでひとつつお約束願いたいと思います。
  270. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 この公団がその使命の達成ができるように出資もいたします。同時に、融資の面におきましても、資金運用部あるいはその他の財政投融資計画において御協力を申し上げる、また一部の利子の補給等も考える、こういう考え方でありますので、その答申につきましては、それらの考え方を考慮におきながら尊重していきたい、かように考えます。
  271. 高田富之

    ○高田委員 まずそういうふうな施設等については国でやるという原則を立てて、しかる後に運賃の是正、こういうことでなければならぬと思うのです。  そこで運賃の問題でありますが、お伺いいたしますが、貨物輸送におきましては、昭和三十九年度において四百九億円の赤字、旅客運送においては三百四十五億円の黒字というふうに出ておりますが、こういう事情に間違いございませんか。
  272. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 三十九年度の決算につきましては御説のとおりでございます。
  273. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、貨物輸送では赤字で、旅客の輸送ではもうかっておる、こういう状況にありながら、平均二五%の値上げをするにあたって、旅客のほうを大幅に上げて貨物のほうはあまり上げないというのは、一体これはどういうわけでありますか。
  274. 石田礼助

    石田説明員 これはごもっともの質問だと思いますが、これまでの運賃のあり方を見ますると、昭和十一年に比べて旅客運賃というものはわずかに百四十一倍、貨物運賃というものは二百二十何倍にふえておるのであります。要するに、その間に非常なアンバランスがある。ことに貨物運賃を上げるということは、政府の物価政策にかんがみましてもこれは考えなければいかぬということで、いままで非常に安く押えつけておった旅客のほうを多くして、そして貨物のほうを押えた。  それからさらにもう一つ申し上げなければならぬことは、貨物というものは現在これ以上に上げることはむしろ収入減になるおそれがある。これは、要するにトラックその他の競争によるものであります。そういうことでもって旅客のほうの上げを多くして貨物の上げを少なくした、こういう次第であります。
  275. 高田富之

    ○高田委員 しかし、何といいましてもあまり極端過ぎると思うのです。三百四十億も旅客のほうでもうかって、貨物のほうで四百億ばかり損しておるいこういうふうなときに、わざわざ上げ幅をまるっきり倍も旅客のほうを、もうかっておるほうをもっとうんともうけておる、こういうやり方というものは納得できないと思うのです。特に通勤ですね、通勤労働者に対します定期券の割引などの率を一番高く上げる、倍にもしてしまう。これでは、一体政府の物価政策だって、帰するところは国民生活の安定でしょう。国民生活に不安なからしめるのが問題なのであって、企業のほうは問題じゃない。企業のほうは間接的なものなんです。究極の目標は国民生活じゃないですか。そういう点を考えました場合に、今回の値上げにつきましては、さっき申しました大前提は別としまして、その値上げ自体の中における考え方というものも、これはきわめて不公正なものであり、物価対策上も認めがたい、こういわざるを得ないのであります。特に先ほど国鉄総裁は、交通地獄のお話をされたのであります。そういうわけなんでありますけれども、いままでの各局別の鉄道管理局の営業係数というような点から見ましても、山手線でありますとか、それから大阪の環状線でありますとか、この近所でいえば高崎線でありますとか、そういうふうな通勤、通学、主として通勤のほうでありましょうが、ああいう過密ダイヤでもって交通地獄を現出しながらやっておりますこういう各線、並びに大都市周辺の管理局というものは、非常に成績がいいんですね。非常に利益をあげておるわけなんです。ですから、こういうふうなことを考えましても、この通勤労働者なんかに対してはもっともっと施設をよくしてやって、上げなくともいいわけです。ああいう苦しい思いをさせながらうんともうけている。ああいうところが一番もうかっているのです。こういう事実は間違いじゃないでしょう。どうですか、国鉄。
  276. 石田礼助

    石田説明員 ただいまの御質問でございますが、たとえば山手線なんというものはずっと昔につくった、非常な安いときにつくった関係で、しかも、御承知のとおり乗客数は非常に多いということで、あれは営業係数からいっては非常にプラスになっております。今度割引率を改正することによってああいうもうかった線に乗る客の負担がふえるということ、これは一応矛盾なようなことでありますが、国鉄の勘定から申しますると、二万千キロのうちでもってもうかる線というものは二割五分、あとの七割五分というものは損をしている線。要するに、もうかる線だから運賃は値上げせぬということになると、損するほうはうんと値上げをしなければならぬ、こういうことになりますので、国鉄としてはちょっとどうもそれだけ、おっしゃることをやるだけの勇気はない。やはりどんぶり勘定でいかねばならぬ。要するに、われわれは私設鉄道と違う。私設鉄道ならもうかるところだけやる。国鉄はそうはいかぬ。そこに公共性というものがある。つまりマイナスになるものでも、これが経済開発のために、その地方の人のためになるということであるなら、これは涙を出す出さぬにかかわらず、とにかくやらなければいかぬ。それで、とにかくいまのような——それからさっき景気が悪いときの問題がありましたが、御承知かしれませんが、国鉄法には五割までの運賃割引はやれ、こういうことが書いてあるのでありますが、実際はどうかというと、その後議会の御命令によって、通勤者に対しては最高八割二分の割引をやっている。通学者に対しては九割二分の割引をやっておる。私は、五割以上のものというものは、法律できめてあるからしかたありませんが、それ以上のものというものは、やはり文教政策でやるのがほんとうじゃないか。国鉄の公共性ということで、国鉄にみなおっかかってきているのですが、これはあまり割引が多過ぎるから、まずひとつ是正するということで、ことに通学者に対しては、運賃も上がる、しかも割引というものをそのままということになると非常にきつい。そこで、通勤者だけにひとつやろう。ということは、通勤者のうちの八割五分というものは雇い主が負担しておる。通勤者自身の負担ではない。そこに問題がある。そういうことであれば、雇い主からいえばそれだけ利益が減るわけなんです。利益が減れば、約五割の法人税が減るのだ。結局これによって負担は大蔵省と雇い主との両々の負担になるのだから、まず負担しやすいのじゃないか、こういうことで、しかも、それも五割というところまで一ぺんにやらないで、これを二度に分けてやるということで、今度は一ぺんに五割というところへ持っていかないで、六割五分というぐらいのところに持っていった次第であります。
  277. 高田富之

    ○高田委員 国鉄株式会社であれば社長として相当の手腕家ということになろうかと思うのです。しかし、これは総裁のおことばにもありますけれども、公共性、公共企業体だからつらいのだというおことばなんです。私は、やはりここに根本問題があるのじゃないかと思うのです。いまのお話のとおり、あれだけ通勤労働者がほとんどもう肋骨も折られるほどのあの窮屈な思いをして、そしてあのがらくた電車の中で運ばれておる。そこでは相当もうかっているわけですね。ここでさらに運賃をたくさん取ってもうけて、ほかのほうのもうからない線のほうの穴埋めをしよう、経営上はそういうことになるのだと思います。しかし、ほんとうはそういうことは公共性という見地からいえばやるべきことではないと思うのです。ですから、そういう赤字のほうに対しては別途これを考えまして、むしろいまの通勤労働者に対しては、それだけにゆとりがあるのですから、よけい施設をよくしてやるということを考えてやるのが当然だろうと思うのです。これはもう全く予盾しておることでありまして、会社が持つというお話ですが、中小企業、零細企業になると、必ずしもそうじやないのでありまして、全額持っているというわけじゃない。あるいはまた、会社が持っておるからということを口実に給料を上げられないのです。同じことなんです。ですから、やはりこういう点については根本的にお考え直しをしていただかなければならぬと思います。  それから貨物のほうなんですが、貨物のほうにつきましては、農林水産物資、漁業物資、石炭とかセメントとか砂利とか、いろいろ政策的な割引というようなことで相当安くなっている。ただ、私はここで申し上げたいことは、農林水産とかなんとかいうことになりますと、これはもう全く、ああいう経営形態なものですから、なかなかこの運賃の上昇率を吸収するということはできないと思うのですよ。これはしようがないと思うのです。ところが、石炭に至りましては、石炭の合理化政策の一環といたしまして、昭和三十六年以降運賃がずっと延納になっておる。現在までに三十億未納がたまっておる。それっぱなしになっておる。これは、やはりこのままでほうっておくということははなはだ不当なことじゃないかと思います。それからセメントや砂利、こういうものは、現在いんしん産業の最たるものでありまして、ある程度の運賃値上げなんというものは幾らでも吸収して——利益をちょっと減らせば何でもないことなんでありますから、こういうふうなものは、やはり独占的な大事業で相当の収益のあがっておるものと、零細企業あるいは農林漁業製品というようなものは区別をなさって、そうして運賃の問題については、負担力のあるところに相当程度負担をさしてもいいのじゃないか。もちろん競争線にみんなとられてしまうことはあるが、そういう限界まではやれることなんですから。そういう点で、いま申しました石炭の問題はどうなっているか、三十億円の未納の問題はどうなっているか。それからセメントや砂利とか、そういったようなものについての運賃と農林水産物資というようなものについては、格段の開きをつけてよろしいと私は思うのですが、この点についてはいかがですか。
  278. 石田礼助

    石田説明員 第一に石炭の問題でありまするが、これは、石炭業の現況から見て、運賃値上げをするということは、われわれとしてもはなはだ気の毒に存ずる次第でありまするが、しかし、どうも国鉄の独立採算制の立場から見て、石炭の運賃を上げないでやっていくということは、これは国鉄の財政上耐え得ない。それで、まず運賃というものに対してはそのままにして、そのかわり支払いというものを延ばす。すでに今日までにおいても、さっきお話がありましたが、約二十一億ばかりの延納になっておるのであります。どうせこの石炭の問題というのは、これはよけいなことですが、国鉄が運賃を上げないから石炭業というものが回復するというものじゃない。まだまだ大きな問題で、政府が大きな手を打つことによって初めて解決すると存ずるのでありますからして、運賃を延ばしても、いつかほこれはやはり国鉄の手へ入ってくるんじゃないか、つまりこういう希望を持って、運賃の支払いの延べということに対しては、しかも無利息ですよ、それでやっておるのであります。それからさらに米、野菜もの、それから飼料、肥料というようなもの、そのほか合計して六十九品目につきましては、これは生活費の上に至大の影響を持つということを考えまして、国鉄は公共企業体であるということにかんがみて、この問題については特別の措置を講ずるということを検討すべく、いま関係省と交渉しておるのであります。  それからさらに通勤通学のごとき、あんなさんたんたる交通状態を現出しながら値上げをするのはけしからぬじゃないか。私は、これはもっともだ、商売上からといえばこれは非常識だ。品物をよくして値を上げるというのはわかるのだ、よくするために値を上げるというのは。ところが、どうして一体こういう状態になったかという、そこをひとつ考えていただかなければならぬ。われわれ国鉄はその定石どおりにやるだけの余裕がないのだ。それは実にはなはだ非条理であるということは十分に承知しておりますが、涙をのんで運賃値上げをする、こういう次第でありますから、どうぞひとつ……。
  279. 高田富之

    ○高田委員 総裁も言われておるとおり、そういう点では経営という点からやっておることで、実際は政府が責任を持ってそういう不合理を是正するということでなければ、公共企業体の意味は全然ないと思うのですよ。ですから、そういう点については、さっきも話がありましたが、学割なんかについては、フランスでは文部省で全部持っておる、こういうようなことでありまして、そういう施策があまりになさ過ぎる。何んでもみんな独立採算だからといってそこへおっかぶせておいて、足らなくなれば料金を上げればいい。しかも料金を上げるのに、抵抗の少ないところを上げていく、こういうことでしょう。抵抗の少ないところを上げていけばいいという最も安易なやり方で、そうして国民大衆の生活の負担をどんどん高めておる。これが政府の物価政策じゃないですか。これでは全く国民は納得しませんですよ。特に総理は、鉄道の関係についてはほんとうに大先輩、エキスパートなんです。どうかこの点について総理の、これではいかぬ、これは何とかしなければいかぬというお考えがありますならば、この際ひとつ、そういったいまの行き方の不合理、この点を是正するための努力をお誓い願いたいと思うのです。国民にお約束していただきたいと思うのです。
  280. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま石田総裁から国鉄の窮状を切々として訴えられた、かように私聞いておりましたが、ただいま言われるとおり、これは高田君も御指摘になりましたとおり、公社でございますので、いわゆる独立採算制、そういうことでたてまえが立ててあります。その独立採算制でなかなか素志を貫き得ない点、いわゆる公共性をもう少し考えろというような点については、総裁自身申したとおり、十分考えていくということでありますし、また、公社としていわゆる建設等の面において、特に借り入れ金等の負担が重くなるというようなことについては、先ほど来問題になった建設公団というようなものをつくりましてその負担を軽くする、こういうことで、あらゆる面でくふうはいたしておりますが、ただいまの基本的な問題については、何といたしましても、基本的なものは、収入は自己収入によるということが本来の趣旨でありますから、こういう点も、今回の運賃改正はやむを得ないものだ。しかし、それが国民生活に及ぼす影響、他の物価に及ぼす影響等を勘案いたしまして、できるだけこれを小幅にとどめるようにあらゆるくふうをいたしておるわけであります。先ほど来重ねてお尋ねがありますから私からも答えておきますが、ただいま総裁が答えたとおり、今回の値上げはやむを得ない運賃改正だ、かように私は考えております。
  281. 高田富之

    ○高田委員 いずれにいたしましても、政府としましては、単なる営利事業でありませんから、今回のような安易な値上げというものはわれわれは承服いたしませんので、さらに抜本的な再検討、しかるべき措置をおとりになることを強く要請しておきたいと思うのです。  それから、この機会に関連いたしまして、一言だけ承っておきたいのですが、私鉄大手十四社、それから地下鉄営団の通賃改定の問題につきましては、答申が運輸審議会から出ておるというような状況でございます。——まだ結論は出ておらないのでありますが、いずれにしましても懸案でございますが、この私鉄大手十四社、地下鉄営団の運賃改定につきましては、現在、いつごろどんな程度の値上げをする予定をしておるのか、しておらないのか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  282. 中村寅太

    中村(寅)国務大臣 お答えいたします。  私鉄運賃の問題につきましては、ただいま申請が出ておりますので、それにつきまして経済企画庁のほうと事務的に詰めまして、できるだけ国民生活に影響を与えないような方向で結論を出して、国鉄の運賃等の値上げの時期等をも勘案いたしまして善処してまいりたい、かように考えております。
  283. 高田富之

    ○高田委員 経済企画庁長官、これは時期的とか上げ幅とか、そういうことについての企画庁としてのお考えはいかがですか。
  284. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私鉄のそれぞれの内容等につきまして、ただいま運輸省の出されたものについて検討中でございます。いずれそれらのものを検討した結果、それぞれの社によって違ってくると思います。同時にその時期等につきましても、できるだけ、国鉄との関係もございますから、それと見合いながら必要な時期を選んでいく、こういうつもりでおります。
  285. 高田富之

    ○高田委員 いずれにしましても、相次いでこういうふうな値上げ問題が出てまいっておりますので、最初に申し上げましたように、公共料金問題につきましては、そのほか申し上げたごとく地方公営企業の問題も同じなんですが、もっともっと深刻に取り組んでいただかなければ、当初お話しいただきましたような、明年度は五%台なんていいましても、これは単なる口頭禅に終わると言わざるを得ないのでありまして、もっとこの点については真剣に、そして国民が納得のできる姿勢と施策をとっていただかなければならぬ、現状では、われわれはとうてい来年度は物価値上げ率が下がるなんていうことを信用するわけにはまいりません。それだけははっきり申し上げて、再検討を強くお願いしたいと思うのです。  それから、次に論点を移しますが、この物価問題で公共料金と並びまして非常に重大なことは、やはり管理価格の問題だと私は思うのです。この問題についてやはり相当の決意を持って、できれば価格の積極的な引き下げというようなことまでやることをお考えにならなければ、全体としての物価水準は下がりっこないと思うのであります。そういう点につきましては、特に前々から公正取引委員会のほうでいろいろ御調査にもなっており、いろいろな注意や勧告、発表なども行なっておるわけでありますので、この機会に公坂のほうから現在までにお調べになりました管理価格の状態、並びにカルテルといったようなものの現状について、簡単に要点の御報告をまずいただきたいと思います。
  286. 北島武雄

    ○北島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま管理価格について、公正取引委員会はいままでどういうふうな調査をしてきたかというようなまず第一のお尋ねでございますが、管理価格と申しますと、いろいろ意味もあるかもしれせんが、生産性が著しく向上いたしまして、本来ならば価格が下がらなければならぬところが、なかなか下がらない、こういったものを俗に管理価格と申しておりますが、これは物価対策上非常に遺憾なことでございますので、公正取引委員会といたしましては、昭和三十八年度から日銀の卸売り物価指数をもとといたしまして、その中から多年にわたっていわば硬直的価格を呈しておる品目を選び、さらにそのうち十二品目につきましで予備的調査を行ないました。ブリキ、板ガラス、珪素鋼板その他でございますが、このうちさらに一品目、ブリキにつきましては精密な調査を実施いたしました。こういった管理価格、本来正当な公正な競争が行なわれておるならば値段が下がらなければならぬものが何か下がらない、こういう点につきましては、いろいろ原因もあろうかと思いますが、独占禁止法の立場といたしましては、その裏に違法な価格協定がある場合、それからあるいは不公正な取引方法によってその価格が下がらない、こういった場合に独禁法の対象になるわけでございますが、ただいま精密調査いたしました一件のものにつきましては、格別独禁法上、現在の独禁法に照らして違法というものは見当たらなかったのでございますが、さらに引き続きまして他の十一品目につきまして調査を続行いたしておるわけでございます。最近は、御承知のとおりの不況事態に際会いたしまして、不況カルテルの認可申請が殺到いたしておりますので、その方面の管理価格の調査はちょっととだえたかっこうになっておりますが、いずれ不況カルテルの認可が一段落いたしましたならば、あらためて腰を据えてこの管理価格の調査を続行いたしたいと考えております。  なお、ただいまのカルテルの状況はどうか、こういうお尋ねでございますが、最近の不況事態に対処いたしまして独占禁止法二十四条の三による不況カルテルの申請が出ておりますことは、ただいま申し上げたとおりでございますが、このうち現在までに十七品目につきまして不況カルテルの結成を認可いたした次第でございます。もともと不況カルテルの永続ということは望ましくございませんので、法律の要件に当てはまる場合、そうして消極要件といたしまして、一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害することのない場合にこれを認可することといたしておるわけでございますが、大体ただいまのところ、一応不況カルテルの問題は、あと二、三の品目を除きまして一段落の状況かと思います。  簡単に御報告いたします。
  287. 高田富之

    ○高田委員 公取でただいま御報告がありましたように、価格が下がらないで硬直しておるというものにつきましての調査を手がけまして、これが三十九年の一月ということでございますが、これらは中身を見ましても、いずれも三社なり三社なり、ほんのわずかな大企業が当該製品の一〇〇%、あるいは九〇%とか、少なくとも五〇%以上、大部分の生産を独占しておる、いわゆる独占ないし寡占の状態にあるものばかりでございます。したがって、こういうものは生産性が非常に上がっておる。この調査の中にあるのでありますが、数年間に生産性は相当に向上しておるわけであります。しかるに、価格はちっとも下がらぬということで、これの調査に手をつけられたわけであります。これは非常に重大な問題であって、この物価の問題になりますと、いつも中小企業だとか、サービス料金がどうだとか、野菜がどうだとかいうところにすぐ持っていかれるのでありますが、問題の基本はむしろそういうところにあるのではなくして、これらの基礎物資、重要な物資を生産し、その大部分を独占、寡占しておりますところのものが五割も、あるいは倍も生産性が上がっておるのに、ちっとも価格は下げておらぬ。これにメスを入れることなしにいまの物価問題を解決するということは、全く不可能だと思うのですよ。その点につきましては、いまもお話がありましたように、せっかくこういう調査に着手しておりながら、いま不況でもって不況カルテルの申請が相次いで出てくる。それを調査したり認可したり監督したりするのに手一ぱいで、せっかく始めたものがいまのところたな上げになって進まない、やれない、いまの仕事が終わったらまた手がける、こういう状態に置かれておるということは、この物価問題の重大なときに、これは非常にたいへんな問題だと思います。これは何とかしなければならぬと思うのでありますが、通産省あたりでは、こういう公取の行き方に対して、これをもっと推進するような方法をお考えになっているのか、それともむしろ逆のお考えを持っておるのか、ひとつこの際明らかにしていただきたいと思うのです。
  288. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大体日本の産業というものは、非常な過当競争の弊害もあるくらい、日本の市場の構造というものは競争型であります。したがって価格の面においても、独占価格、管理価格というものは、いま公坂でも調査した結果見当たらなかったという報告でありましたが、やはり日本は、独占して管理価格というようなものはなかなかむずかしい産業の状態であることは御承知のとおりでございます。しかし、やはり今後ともこういう面については、一つの経済の秩序を維持する上においても、国民の、消費者の利益を守る上においても、公取のごとき機能はやはり強化されなければならぬ。公取のような機能は資本主義におけるやはり強化する一面の部門である。ただ、しかし一方において、産業政策としても自由化の促進であるとか、あるいは関税を引き下げる、あるいはまた、企業の許可制というようなものはほとんどありませんから、新しく企業、産業をやる場合にはほとんど自由になっている、そういうので、やはりそういう新しい企業を育成して、競争的な立場に産業を置いておくという方針で通産行政はやっていきたいと考えております。
  289. 高田富之

    ○高田委員 独占の状態が見当たらないと言いますが、ただいまの御報告はそうではありませんで、価格が八年間全く値動きのなかったものというのでずっと列挙し、さらにほぼ横ばいなもの、上昇傾向を示しているもの、やや下落傾向になっているもの、最近硬直的になったもの、いろいろに分けまして、相当たくさんの品目をあげてあります。これの一つ一つを実態を調査してみなければわからぬ。なお硬直性があるということで、最初にようやくブリキの問題を手がけたところでおしまいになっているのです。その手がけたブリキの内容については、きょうは何ですから質問はしませんけれども、いろいろな事実が明らかになっているのです。いわゆる独占とはいえないまでも、非常に不公正な理不尽なやり方でもって価格を維持しているというような事実が調査されているのですよ。調査しただけでもってその後幾らか下がったということも事実あるのですね。ですから、これは非費用に重要なことだと思う。いまこれがストップしているということは、こういうものに熱を入れないということは、やはり物価政策に熱意がないと言われてもしようがないと思うのですよ。ブリキに手をつけたのでありますから、これに引き続き、何十品目、百品目以上あるのですから、これは徹底的に調査する。それだけでもって相当価格も下がるのじゃないかというくらいでありまして、この問題につきましては、ややもすれば独禁法を緩和していくという方向に、いままでの特振法案以来相当動きを示しておりますが、そういうことではならぬと思いますので、特に私は通産大臣にその点についての姿勢をはっきりしてもらいたいということを要望したいのであります。この点について、公正取引委員会の拡充強化ということであるならば、それも具体的に何倍もの予算を組む、人員もちゃんとするというふうにいたしまして、すぐこれは取りかからなければいかぬ、それくらいの熱意がなければ、これは信用しませんよ。この点について、まず通産大臣、それから経済企画庁長官のお考えをお聞きしておきたいと思うのです。
  290. 三木武夫

    ○三木国務大臣 先刻も申したように、この自由経済のもとにおける経済警察的な役目を果たすわけですから、公取という機能は必要である。そういうとで、国民の利益に反せないような公正な競争が行なわれるようなとういう機能を持つことは、やはり自由経済のもとにおいて必要である。しかし、人間をどうする、これをどうするという具体的な問題については、これは今後の課題でございますが、この機能は必要である。人員をふやすとかなんとかいうわけのものばかりではなくして、いろいろいま仕事が停滞しておるとするならば、その仕事が推進できるように機能を強化する必要は私も認めるものでございます。
  291. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価問題を扱っておりまして、硬直的な価格の問題にはわれわれも留意いたしておりますので、いずれこの問題は物価問題懇談会等をやりますと必ず各方面から御意見が出てくる問題だろうと思います。われわれもそういうつもりで公正取引委員会が活発に活動して、調査されることを希望いたしております。
  292. 高田富之

    ○高田委員 そこで、いま独占的な、寡占的な部門における最終小売り価格と、それから実際の製造原価というようなものを、もし的確に調査していくことができる機関ができて、片っ端からそういうものが調査されるということになりますと、いろいろな問題が明らかになってくる。かりにそれによって強権的にどうこうということでなくても、そういう事実を発表しただけでも、消費者のほうが非常に保護されます。それによって価格を適正化することもできるわけであります。消費者を保護するということのためには、何としてもそういう点で独占的な、寡占的な、ほとんどのわが国の重要産業というものはそうなっているのですから、物の原価というようなもの、最終小売り段階に至るまでの中間のマージンなりいろいろなものを徹底的に調査するということが、私は一番大事だと思うのです。  試みに、これはわが党で若干のものの資料を集めたものでありますが、二、三その製造原価と販売価格の問題について、御参考までに党の調査を申し上げてみますと、たとえばテレビなんかにしましても、小売り価格五万数千円のものであっても、原価が七、八千円、輸出するときが一万六千円ぐらい、それが五が何千円で売られている。あるいはまた、十六力八千円で売られる定価のものでありましても、これが輸出に三万七千円で行っており、原価はそれよりやや安い。それから化粧品類なんかは、これは全く化粧品そのものを売っているのじゃない。販売者自身が言っているように、ムードを売っているのだ、こういうことが公然といわれておりまして、容器をくふうしたり宣伝会等をたくみにやることによりまして、中身の実際の価値なんかとは全然かけ離れた価格でどんどん売られている。おそらく、これはみんな数倍から場合によっては十倍ぐらいの値段で、高いほうが売れる、高いことによってムードをかもし出してよけい売れるのだというような商売が公然と行なわれているわけであります。  それから、また薬品に至りましては、これは全くお話の外でありまして、これはわが党の議員が質問をいたしました委員会におきまして答弁もあったわけなんですけれども、たとえば武田製薬の一〇ミリ二CC強力メタポリン、こういうようなものは、原価が五十銭か一円でできるものを十六円で売っている、こういうような問題ですね。一般に薬品につきましては、いろいろ問題が起こっておるわけであります。全然きかない薬を、相当の価格で大量に売っているというような例は相当ありまして、特にこれは医学界でも相当問題になっておるわけでありますが、たとえばビタミンをうんとはやらせて、宣伝によってビタミンブームを起こさせて、大衆保健薬といいますけれども、実際には何の効果もない。そんなものに金を使うのなら、普通の食物をとったほうがよほどいいということが明らかであるにもかかわらず、そういうものが大量に売られる。非常にもうかる。こういうことは日本だけにしか通用していないのですね。そういうふうなものは、例をあげれば切りがないのです。メチオニンとかあるいはグロンサン、これはわが党の議員がかつてこの委員会でも質問しております。グロンサンなんというものは全然きき目がない。これが大量につくられて、大量に売られて、うんともうかっている。いずれにしましても、こういうふうな問題についてあまりにも消費者の立場というものを考えないで、少数の独占的な製薬会社にもうけほうだいもうけさせておるという事態は放置できないと思う。だから健康保険が薬を使いますために赤字になったり、たいへんなことになるわけであります。いまの薬事行政の問題は、前々からいろいろ指摘をされておりますけれども、なかなかこの点はいまもってほんとうに思い切った措置がとられていないと思うのでありますが、この点についてひとつ、厚生大臣。
  293. 鈴木善幸

    ○鈴木国務大臣 医薬品の価格につきましては、近年におきまして製薬業界の設備の増強あるいは合理化、自由化等の関係もございまして、相当価格の値下りを見ております。健康保険、医療保険に採用いたしますところの薬品につきましては、三十五年以来いろいろな事情で薬価基準の改定ができなかったわけでございますが、先般この薬価の実勢に応じまして十一月一日、さらに十二月の一日と、二度にわたりまして、総医療費の四・五%でありますから、約四百五十億の薬価の引き下げをいたしたわけであります。今後も実勢薬価に応じまして、薬価基準の改定をやってまいる所存であります。
  294. 高田富之

    ○高田委員 そういう例をあげれば切りがないのです。電球の場合でも原価十円のものが六十五円、腕時計でも、内地で四、五千円のものがFOB千五百円、こういうようなことですね。これにつきましては、公取でもそういう問題は一部調査したものもあるようでございます。しかし、何としましても、そういう企業の内容に立ち入りまして実態を正確に調べるということは、なかなか容易ならざる仕事なんで、これに対しては、やはり相当力を入れてやらなければいけない。特に官長の場合は、大体局長級くらいになりますと、たいてい関係の会社に天下りをするのですから、そういう関係も深いので、やろうたってできやしませんよ。ですから、別個の独立の機関で、そういうところに相当の権限を与え、資金を与えまして、そうして徹底的に、容観的にやらなければできないと思うのです。これはいまの物価問題の最大のガンだと私は思うのです。ですから、この点については先ほども言明を得たわけでありますけれども日本の場合、問題はちょっとひど過ぎるのです。特に最近の誇大広告、広告費だけで一体幾らになるか。誇大広告で消費者を惑わす。そうして安いものを相当高く、薬のごときはきかないものを売っておるようなことをやっておる。たとえばテトロンの場合を見ましても、東洋レーヨンの場合、テトロンの宣伝費だけで年に六十五億円、これは宣伝費で世界一ですよ。こういうような誇大宣伝をやって、そうしてそういうふうな販売をやって、おるわけですから、これを徹底的に征伐しなかったら、物価問題というものは何年たっても解決しません。ですから、この点につきましては、実は一つ一つの例につきまして何しますと、もっとこまかい問題になりますが、きょはこの辺で終わりますが、ぜひこの点に真剣に取り組むということを、最後に総理からお答えを願っておしまいにしておきたいと思うのです。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま高田君からいろいろの実例を出して、物価引き下げについてさらに努力すべき点の御注意がございました。私もとの内閣におきまして、不況克服と同時に物価問題、これは真剣に取り組むつもりでございます。
  296. 青木正

    青木委員長 これにて高田君の質疑は終了いたしました。  次会は明二十三日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時二十五分散会