○
小林進君 私は、
アジア開発銀行への
加盟に伴う
措置に関する
法律案並びに
外国為替資金特別会計法の一部を
改正する
法律案に対し、
日本社会党を代表いたしまして、
反対の
討論を行なわんとするものであります。(
拍手)
その
反対の第一の
理由は、この
アジア開発銀行の隠された
目的が、
アジアの平和と
住民のしあわせを犠牲にし、
民族独立の運動を阻害をし、二つの
アジアをつくり、
アジア諸
民族の対立をいよいよ激化せし
むる企図のもとに行なわれようとしているからであります。(
拍手)言いかえれば、
アメリカを
中心とする
反共勢力の
アジアに対する
軍事支配力を維持温存するための
経済的侵略にほかならぬからであります。
明治百年、
欧米諸国の
アジア侵略と
植民地政策に追いつき、その残余の分配にあずからんとして数々の
帝国主義的侵略を続けてきた
日本は、第二次
世界大戦によって完膚なきまでにその野望を粉砕され、敗戦という冷厳なる事実の前に、
国民ひとしくその
侵略政策の誤りを
世界に向かって
陳謝宣言をしてきたことを心に刻み、すべての
外交政策の基調にしておかなければならぬのであります。(
拍手)
今日、わが
日本の
アジアにとるべき道はただ一つ、
アジアの一員であるという立場に立って、
アジア及び極東の全
地域における全
住民のしあわせを祈念し、
アジアの全
地域から一切の戦争の危険をなくし、特に多年にわたり
欧米諸国によって侵された
植民地政策の残滓を払拭し、さ。って諸
民族の完全なる
独立と貧困の追放のために、あらゆる
援助と
協力を行なうべきであって、これこそ
日本民族に課せられた崇高な使命であり、贖罪のための大きな
責任であるといわなければならぬのであります。(
拍手)
しかるに、
日本政府は、この
日本民族の悲願を無視し、
アメリカを
中心とする
欧米諸国と手を結んで、再び
アジア侵略と新
植民地政策のための役割りを、この
アジア銀行を通じて行なわんといたしているのであって、これはわれわれの断じて了承し得ざるところであります。
その具体的例を示すならば、この
銀行への
加盟国は
アメリカを頂点とする反共国家群によって形成されることによっても明らかであります。すなわち、このア銀に
加盟を許されている国は三十二カ国であって、エカフェ
地域二十カ国、
地域外十二カ国でありますが、そのいずれもが
アメリカと軍事条約を結んでいる国か、または
アメリカから経済的
援助を受けている国々であるということであります。
日本は敗戦後二十一年、いまなお
アメリカから軍事的支配を受け、政治的、経済的に制肘と干渉を受けていることは、皆さま御承知のとおりでありますが、その厚薄の差こそあれ、
加盟国はいずれもこうした関係にある国々の集団であることをまず知らなければならぬのであります。そしてこれらの反共集団は一丸となって、
アメリカの
反対側に立つ国、すなわち、中国、北朝鮮、北ベトナム等の
社会主義国家群の
加盟を歯をむいて拒否をいたしているのであります。こうした対立の激化とそれへの
加盟がいかに危険であるかを察知した賢明なる国々、すなわち、エカフェ域内におけるビルマ、モンゴル、インドネシア、域外においてはフランス、ソビエトロシア等、その他多くの国々が米国の懇願を払いのけてその
加盟を拒絶いたしているの、であります。その結果、
アジア地域における総人口の過半数が
加盟をせず、半分に満たぬ少数の人々をもって構成されているにすぎず、これをあえて
アジア開発銀行と銘打つがごときは、実体の伴わないまことに僭越しごくの名称といわなければならぬのであります。(
拍手)
今年九月の批准を待っていよいよこの開発
銀行が活動を開始したとき、いかなる結果がもたらされるでありましょう。一
民族、一国家の悲願を
アメリカ帝国主義の武力侵略によって北と南に分断をされ、いまなお同じ
民族が殺戮し合う内戦の悲劇を繰り返している朝鮮、ベトナム等に対し、さらに戦火の油を注ぐことになるのであります。すなわち、南ベトナム、南朝鮮等のかいらい政権に対し、
アメリカの命令一下、この開銀の経済
援助が行なわれることになりましょう。この
援助は、土木
援助、食糧
援助のいかんを問わず、直接、間接に総合軍事力となって北ベトナムヘの攻撃と侵略への力を一そう強めることになり、また、韓国への
援助は、韓国軍隊のベトナム出兵への基盤を強化することとなりましょう。これすなわち、
アジア開発銀行への投資と
協力は、経済
援助に名をかりた侵略戦争への加担にほかならぬのであります。このことは、六億五千万人の人口を有する中国
政府と台湾省亡命政権との関係においてもまた同じであります。
かかる侵略戦争への介入と、
民族の統一を妨害をし、内政干渉もはなはだしい戦争政策に何ゆえわが
日本が積極的に参加しなければならぬのか、われわれは
政府伊良識を全く疑わざるを得ぬのであります。その原因は、一に一九六五年四月七日、ボルチモアで行なったジョンソン米大統領の東南
アジア開発に関する演説と、ベトナム侵略戦争に対し、
日本が
経済協力の形で戦争に参加すべきことを強く要請している
アメリカの圧力の前に屈服したものと思わざるを得ぬのであります。(
拍手)われわれは、平和を愛する
日本国民の一滴の血も一円の金も、断じて
アジア侵略と
アジア人同士の戦いのかてに提供してはならぬのであります。(
拍手)これあるがゆえに、わが
社会党は、
アジア開発銀行の
出資に対しては、第一にこの
理由で
反対をいたしているのであります。
第二の
反対理由は、
加盟国の出
資金構成から見た
アメリカの支配力に関する問題であります。
この
アジア銀行に
出資される金の総額は十億ドルでありますが、そのうち、
アメリカと
日本との
出資総額が合わせて四億ドル、四〇%に達し、とれに韓国、台湾、南ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド等の
出資額を加えると、実に五六%にも及んでいるのであります。これらの国々は、それぞれ日米安全保障条約、米韓相互防衛条約、ANZUS条約、東南
アジア集団防衛条約等々の
締結国であり、
アメリカの極東戦略の有力な構成メンバーであり、事実上
アメリカの
軍事支配力に従属をいたしている国々であります。こうした
出資額の構成から見た
アメリカの強力な支配力と、
アメリカの
アジア戦略、中国包囲作戦を結びつけてみた場合、この
銀行がいかなる方向に向かって
運営されるかは、いまさら
説明を要せざるところであります。
米州開発
銀行において、
アメリカは四〇%の投票権を持ち、それによって絶対的支配力を掌握していることは、皆さま御承知のとおりであります。かつてキューバ事件に関連して、ベネズエラ、コロンビアがキューバと国交を断絶するや、多額の投資を行ない、
反対にメキシコ、アルゼンチンがキューバに対する集団制裁に
反対をしたとき、いかにこれを冷淡に取り扱ったか。その後アルゼンチンがキューバとの国交断絶に踏み切るや、その翌日、直ちに一億五千万ドルという多額の融資を与えたるがごとき、あくどい高利貸しもやりかねない、いやらしい成金根性の政策といわなければならぬのであります。(
拍手)
この前例に照らして、
アジア銀行の性格、構成、
運営等を見る場合、これは米州
銀行以上に
アメリカの思うままに支配される要素が多分に含まれていることを強く警告をせざるを得ぬのであります。米州
銀行はキューバを敵とし、
アジア開発銀行は中国を敵視し、
アメリカの中国封じ込め政策のためにつくり上げられようとしている。これあるがために、われわれはこの
法案にあくまでも
反対せざるを得ぬのであります。
第三の
反対の
理由は、国連を隠れみのとする
日本政府の外交のあり方と、その態度に関する問題についてであります。
政府は極力、この
アジア銀行は、国際連合のエカフェから発足した自主的、非政治的機関であることを強弁いたしているのでありまするが、われわれは、
政府の、この国連をかさにしてその正当性を裏づけ、
国民をごまかそうとするやり方に徹底的に反発をせざるを得ぬのであります。すなわち、われわれは、今日の国連は、国連憲章の精神を正しく発揮しているものと見ることができぬのでありまして、まさに
アメリカという大国によって
運営をせられ、
アメリカの利益のための機関に変貌しているものと思わざるを得ぬのであります。議会政治認むべし、ただし、自民党の支配許すべからず、国連認むべし、ただし、
アメリカの支配許すべからず、かような意味において、今日の国連をして、国連本来の姿に返すことこそ、最も重要な課題であるといわなければならぬのであります。
しかるに、
日本政府は、朝鮮動乱における、スエズにおける、コンゴ、西イリアン、キプロス等における
アメリカの国連憲章違反
行為に一片の批判を加えようともしないのであります。いままた
アメリカは、南ベトナムにおいて毒ガスを使用し、
アメリカの国内においては極端なる人種差別を行なって、しばしば問題を起こしていることは世間周知の事実であります。かくのごとき明らかな国連憲章違反事項に対してさえ、それが
アメリカの
行為であれば、
日本政府は一言の故障も批判もなし得ないのみならず、
国会におけるわれわれの質問に対してさえ、その真相を答えることをおそれているのであります。かくのごとき外交姿勢及びこうした国連のあり方に対し、どうして信頼を置くことができるでありましょう。しかるに、
日本政府は、国連がなおかつ正しいものであるかのごとき幻想を
国民に与えて、
アメリカへの従属と奉仕の外交をごまかさんとする、これはとうてい許すことのできぬものであります。
政府が、真に国連本来の精神にのっとって、低開発
地域の経済開発を行なわんとするならば、
アジア銀行への
出資はやめて、むしろ国際開発協会(第二世銀)等の機能の強化拡大をいたし、ソ連、フランス等の
協力を得、中国の国連
加盟に努力をし、
アジアを一つとした経済
援助の実現に邁進すべきであります。(
拍手)
アメリカは、現在、財政の六割五分に及ぶ軍事予算と対外軍事
援助からくるドル不足、それにベトナム戦争による軍事費の増大等で、日に日に経済不安定を醸成していることは
世界周知の事実であります。このため、
日本をして、
アジア経済
援助の肩がわりをさせようとしている。この政策に応じて、
アメリカのドル不足の肩がわりをしようとしながら、あえて国連の名において
国民の目をごまかそうとする
日本政府のこのずる賢いやり方に対し、われわれは徹底的に
反対せざるを得ぬのであります。(
拍手)
最後の
反対理由として、われわれは、
日本国内の経済情勢と、この
出資の関係とを問題にしなければならぬのであります。すなわち、
日本の経済状態は、はたしてかくのごとき百害あって一利なき
出資を許すほどの余裕ありゃいなやということであります。
日本の経済は、すでに一切の蓄積を使い果たし、すでに借金政策に転換をし、この二億ドルの
出資も、外為
資金の取りくずしを行なわなければならぬ最後の窮状に追い込まれていることは、いまさら
説明を要せぬところであります。
世界四大工業国の一つであるなどと架空の名声に酔っているその陰に、低
所得者層がいまなお生活の苦しみに涙しており、
日本人一人一人の平均
所得は
世界で二十一番目、後進国と銘打たれているベネズエラ、グァテマラなどの国々と肩を並べている貧弱な状態であります。その中で、もはや戦後でもないなどということばにだまされながら、いまなお
日本国民は、敗戦の賠償の残額八億四千四百万ドル、もらったと思っていたガリオア・エロアの支払い残額が四億四千四百万ドル、合わせて実に十二億八千八百万ドルの多額の借金を支払う
責任を負わされているのであります。こうした
国民の負担と苦痛を無視して、こんなむだな
出資をすることが、はたして
国民の要望に沿うものであるかいなかは、問わずして答えは明らかであるといわなければならぬのであります。(
拍手)全
国民の声を代表して、わが党は、あくまでもこうした
出資に
反対せざるを得ぬのであります。
結論として、一言
政府に申し上げたい。
アジア銀行十億ドルの開発投資よりも、
アメリカが百億ドルの軍事費を投じてベトナムで破壊を行なっている戦争を即時中止せしめるよう努力されたいということであります。十億ドルの建設よりも百億ドルの破壊がいかに大きいかは、小学生のそろばんでも明らかでございましょう。(
拍手)
日本政府に、この小学生並みのそろばんと良識を要望いたしまして、私の
反対討論にかえておく次第でございます。(
拍手)