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金丸徳重君 私は、ただいま
議題となりました
土地収用法の一部を改正する
法律案並びに
土地収用法の一部を改正する
法律施行法案につき、
日本社会党を代表して、その
修正部分につき
賛成し、
政府原案に
反対の意向を表明いたしたいと思います。(
拍手)
制約された時間でありますので、その要旨のみを簡略に申し述べて、各位の御判断を仰ぎたいと思うのでありますが、まず第一に、
土地問題が、地価問題とからんで
現代わが国における政治、経済、
社会上のきわめて困難なる問題の一つでありますることにつきましては、われわれも早くよりこれを強調し、これが
根本的解決策について、たびたびの機会において、また
各種の角度から、
政府に要望を繰り返し、その真剣なる
検討と
熱意ある
対策の遂行を迫ってきたところであります。
その意味におきまして、
瀬戸山建設大臣が就任以来、この問題につき従来にない
熱意を示されてきたことに対しましては
期待を持つとともに、特に
大臣が
土地は
商品にあらずなどという思い切った表現をもって事に当たられる
態度に対しては、いささか驚きと戸惑いの感を抱きながら、その真意が具体的にはいかなる
根本的、
総合的対策となってあらわれるかについて、大なる関心を持って見守ってきたところでございます。
しかるに、今回提案されてきたところのものを見ますると、
根本的、
総合的対策などはおよそ縁遠いものでございまして、ただ単に
公共用地取得を簡便、迅速ならしむるために、
土地収用法に若干の手直しを加えようというものであり、
土地問題解決のためにも、また
地価問題解決のためにも、ほんとどと言っていいくらい効果の薄いものであります。(
拍手)われわれの
期待が大きかっただけに、大なる不満と落胆を感じながら
本案に対せざるを得なかったゆえんでございます。
次に、問題として指摘しなければならないことは、
政府原案の底を流れる
根本の
考え方であります。
土地問題の根底に地価問題があり、
公共事業推進の途上に大きな障害となって横たわっておるものもまた、その
用地取得の困難さであり、その底辺に急激に騰貴を続ける地価問題があることは、われわれも十分これを認めておるところであります。したがって、この点について何らかの
改善策が講じられますることについては、もとより望むところでありまするが、それはあくまでも
公共の
利益と
私権尊重との調整という
根本理念に基づかなければならないことは申し上げるまでもございません。時代の要求が
公共事業の
推進にありとか、
地価抑制は現下の急務であるとかいうようなにしきの御旗の陰に隠れて、大事な
基本的人権が
軽視されるような心配があることは厳に慎んでもらわなければなりません。いわんや、片々たるごて得を排除するに急のあまり、善良なる
市民の
権利をじゅうりんしてはばからぬなどの風潮を導き、高めるようなことは、最も警戒してかからなければならないところであります。(
拍手)
しかるに、残念ながら
政府原案には、次に述べるような
諸点についてその警戒すべき
考え方が
随所に散見されるのでありまして、私が納得できない第二点はここにあるのであります。
すなわち、今次の
政府原案は、その重要なる
改正点として被
収用地の
補償額算定の
基準を
事業認定のときに固定せんとしております。これは
土地という特殊なる
取引対象物について、他の
一般商品と同様な観念をもって対処せんとしておるものでありまして、
根本的に誤りであると申さなければなりません。すなわち、
土地というようなものは、そのものずばりの
代替物のなきものであります。それにつきましては、その
地域一般に共通する、いわば
一般的評価額とも申すべきものがあると同時に、その
所有者または
占有者等に特有する
個人的沿革や
事情等に基づく、言ってみますならば、
特別評価額とも申すべきものが潜在付随していることもあり得るのでありまして、特に
先祖代々その
土地の上に働き、そこに衣食してきました
農民諸君等の場合におきましては、その
事情も複雑、微妙なるものがあり、また、一般的に申しまして、
土地に対する
愛着心などは他の想像を絶するものがあるのでありまして、それがまた一方におきましては、
国土愛や
祖国愛の
精神にも通ずるところのものであることは、ここに強調するまでもありません。したがって、
起業者がこうした
土地を円滑に入手しようとするならば、まずその
特殊事情等についてあたたかい理解と同情ある
態度で臨み、その
生活権確保等のためにも、できる限りの
対策を講じてやるだけの
配慮を必要とすることは申すまでもありません。(
拍手)
しかるに、
政府案は、この辺の微妙なる
配慮の余地をふさぎ、
補償額算定という
収用法最大の課題を、
事業の
認定のときという、一見いかにも明瞭のようできわめて不明瞭な点に置き、また、あたかも安定しているかのように見えて、実際上きわめて不安定なる点に固定しようとしておるのでありますが、これは問題に向かって問題を投げかけたようなもので、まあ
自己逃避か、しからずんば
自己欺瞞以外の
何ものでもありません。のみならず、こうした問答無用、寄らば切るぞといったようなかまえを見せること
自体が、善良なる
市民に与える
精神的影響の大なることは申すまでもありません。もともと、伝家の宝刀は袋に入れて床にあることこそが好ましいのでありまして、もしこれが不断に抜き放たれて、さらでだに使いたがる
権力亡者などによって常時振り回されるようなことあらんか、宝刀変じてたちまち殺人の凶器となり終えて、
世道人心に与える
影響もただならじと憂慮されるのであります。(
拍手)
また、
公共事業起業者の便宜をはからんとして、
手続保留地の
制度を設けておるのでありますが、これなども、
運用いかんによっては、
土地所有者の犠牲において
起業者に
土地値上がりの
利益を独占させる
可能性さえ伏在するのでありまして、無条件に
賛成できないところでございます。
以上のように、
随所に見られる
起業者保護、
私権軽視の
傾向は、
本法施行法の中にも見られるのでありまして、
米軍基地等に関する
規定が他の
公共用地に関するものと肩を並べて
施行法の中に入ってきたなどは、その顕著な一例と申してよろしいと思います。元来、
米軍用地などが他の
公共用地同様に
収用法の
適用を受けること
自体、理論的、実際的にも法の
精神にもとるものといわなければなりませんのに、最近の
傾向として、
米軍基地や
演習場の存在が
付近住民に迷惑を及ぼし、
近隣土地の値下がりをさえ招いでおる
実情にあるのでありますが、これらをよそにして、
地価抑制をおもなねらいとしたといううたい文句の今回の
収用法改正案の中に割り込んできたなどは、全く納得できないところでありまして、便乗といいますか、
ネコババといいますか、本
改正案の趣旨をして一そう不純なものといたしておるのであり、遺憾しごくに存ずるところであります。
時間が迫りましたから、結論を急ぐのでありますが、これを要するに、
政府案は、
公共用地取得に便ならしめんとするのあまり、これによって生ずる
各種の問題をわざと
軽視または無視せんとするものであります。もともと
収用法は、
手続規定を本質といたします。その
手続法は、その本体としての
総合的土地対策に基づく強力なる
地価対策の先行誘導あってこそ、初めてその
運用の全きを期し得られることは申すまでもありません。しこうして、いま国民が
政府に強く要望しておるところのものは、豊富にして低廉なる宅地であり、
工場事業場等の
用地であります。そのために必要なる
措置は、
土地利用区分の設定とか、都市及びその周辺における
遊休地や空閑地の動員とかいう問題の核心に触れる方策でありまして、こうした施策が強力に
推進されて、
土地対策の
根本に
解決のめどがつくならば、
公共用地取得も、巧まずして、円滑かつ安易に進められるに至るでありましょう。その
根本問題を故意に怠って、
枝葉末節の
収用法等に拘泥しておる限り、かえって問題を混乱と困難のるつぼの中におちいらしめる以外の
何ものでもありません。
とまれ、
本案の提起が、
オリンピック関連事業等に見られたように、
公共用地取得が
地価値上がりを刺激した事実にかんがみてのものであるとしまするならば、それはいささかけんか過ぎての棒ちぎれの感なきにあらずであります。(
拍手)また逆に、今後一そうの
地価値上がりを予想しての
対策であるとするならば、それは
公共用地のみ独走せんとするいわゆる
勇み足たるのそしりを免れますまい。
瀬戸山大臣が、この問題について、初めから大上段にかまえ、何らかの手を打たんとした
熱意のほどはわかります。その義理がたい御心境に対しては深い敬意を表しながら、しかし、それだけに、さらに一段の御
検討を願ったほうが無難であろうことをあえて申し上げて、本
討論を終わります。(
拍手)