○五島虎雄君 ただいま
趣旨説明のありました
法律案に関連し、
日本万国博覧会に関する諸問題について、
日本社会党を代表いたしまして
政府の所信をただしたいと存じます。(
拍手)
日本万国博覧会は、わが国も昨年正式に加盟国となりました国際博覧会条約に基づき、来たる一九七〇年、すなわち
昭和四十五年に大阪府下千里丘陵において開催されるわけであります。
日本万国博覧会は、条約上第一種一般博覧会といわれるものでありまして、人数の活動の成果、あるいは達成された進歩の全体を
内容とし、被招請国にその国の陳列館を建設する義務を課する最も大規模な万国博覧会であります。しかも、アジアにおける初めての万国博覧会であり、また、国が主催するものとして、オリンピックにもまさる国民的な一大行事であります。このような万国博覧会を開催することは、国際的には、わが国を広く世界に理解せしめるなど、諸国間の相互理解と文化の交流を深め、ひいては世界の平和と繁栄に寄与するものといわれ、国内的には、産業全般の発展を促進し、輸出の振興、観光の推進に役立つほか、住民福祉の向上に寄与するものといわれているのであります。
私も、
日本万国博覧会がきわめて血糊的なものであり、理想的な姿で実現されるならば、その効果と意義は確かに少なからざるものがあると思います。その意味において、
日本万国博覧会の開催につきましては、これを評価するものでありますけれども、一方、複雑な内外の情勢、特に日米安全保障条約の延長、改定、あるいは廃棄が問題となる一九七〇年という開催の時期、巨額の経費の
使用、博覧会
運営の基本方針等を考えると、
日本万国博覧会の準備、実行の過程に対し、多大の関心を抱かざるを得ません。
特に、日米安保条約の問題は、すでに今
国会におきましても、衆参両議院の予算
委員会を中心といたしまして、にわかにクローズアップされたのであります。一九七〇年には、
政府・
自民党の安保自動延長論や、あるいは再
締結論、全面改定論と、わが
日本社会党の主張しております安保廃棄論をめぐって、国論を二分する一大論争の展開が予想されるのであります。しかし、私は、この問題に対しまして
政府の意図するところを考えますと、日米安保条約の問題はできるだけ穏便に済ましたい、かつて六年前の安保改定が岸
内閣の命取りになったような轍を踏みたくない、国民の関心をなるべく集めないようにして安保体制を維持していきたいというところにあると思うのであります。故意か偶然か、東京オリンピックにもまさる
日本万国博覧会はこの一九七〇年に開催されるのでありますが、日米安全保障条約をめぐる国民の関心を意識的に
日本万国博覧会に向かわせるような意図がかりそめにも
政府にありとしまするならば、せっかくの
日本万国博覧会の開催も、その意義の大半は失われるでありましょう。この点は
日本万国博覧会開催の根底に触れる問題であります。総理は、その真意をここに十分明らかにすべきであろうと思います。
いずれにいたしましても、ともかく一九七〇年に決定した以上、
政府としては、いたずらに愚かな意図を持つことなく、
日本万国博覧会の成功に全力を注ぐべきであります。われわれも、
日本万国博覧会の問題に関しましては、その進行の過程を見守りつつ、基本的には協力することにやぶさかではございません。
このような観点から、まず第一に伺いたいことは、
日本万国博覧会の構想に対する
政府の基本的な考え方の問題であります。
現在、
日本万国博覧会の
運営については、国の代行機関として
日本万国博覧会協会が設立され、すでに基本理念を策定し、統一主題を
採決しているのであります。策定された基本理念は、ごくかいつまんで申しますと、「多様な人類の知恵が、もし有効に交流し、刺激しあうならばそこに高次の知恵が生れ、異なる伝統のあいだの理解と寛容によって、全人類のよりよい
生活に向って調和的発展をもたらすことができる」というものであります。「人類の進歩と調和」という統一主題とともに、いささか佐藤総理好みのきらいはありましても、それ自体としては首肯し得るものであります。このほかに、サブテーマとして、一、「人間自身、よりすこやかな生命の充足を」、二、「人間と自然、より豊かな自然の利用を」、三、「人間と技術、よりよい
生活の設計を」、四、「人間と人間、より深い相互の理解を」という四つのテーマが出されております。
しかし、これら基本理念や統一主題、サブテーマを見ただけでは、具体的に
日本万国博覧会とは一体何であろうか、私はもとより、国民全部がおそらく理解できないのではないでしょうか。私は、アジアで初めての万国博覧会であり、しかもわが国で行なわれる以上、従来欧米の万国博覧会に見られましたような文明誇示の場とすることなく、わが国の現実を虚心たんかいに表示することを基礎といたしまして、その上に産業文化の粋を明らかにすべきではないかと思うのであります。換言すれば、一部大
企業のためのショーになったり、日本の伝統文化の誇示にのみ重点を置き過ぎたりすることのないように、わが国の経済的
社会的現実の正確な位置づけの上に立った博覧会としまして、中小
企業も労働者も、また農民も、国民全部が積極的に参加し得るような構想が必要ではないでしょうか。この点について総理の基本的な考え方を伺っておきたいと存じます。
第二の質問は、
日本万国博覧会に招請する諸外国の問題であります。
条約によりますると、万国博覧会は、諸外国が外交上の経路を通じて招請されるものとなっているのであります。ところが、現在わが国は、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、ベトナム民主共和国、モンゴル人民共和国、ドイツ民主共和国、イエーメン・アラブ共和国、アルバニア人民共和国の諸国とはいまだに国交関係がありません。一体
政府は、これらの諸国に対しましてはいかなる
措置をとろうとするのか、まずこの点を言っておきたいと思います。
現在、国連加盟国は百十七カ国を数えております。しかし、残念ながら、万国博覧会条約加盟国はわずかに三十二カ国にすぎません。
政府は五十五カ国程度の参加を予定されているようでありますけれども、基本理念を生かすためには、さらに多くの参加国が必要ではないでしょうか。一昨年東京で開催されましたオリンピックは、世界のスポーツ祭典にふさわしく九十四カ国の参加を見たわけでありますけれども、
日本万国博覧会も、真に国際的な行事としようとするならば、国交回復のいかんを問わず、きびしい国際情勢に左右されることなしに、すべての国々の参加を呼びかけることが、人類の進歩と調和という統一主題に合致することではないかと思うのです。(
拍手)
私は、アジアで初めての
日本万国博覧会でもあり、万国博覧会の
趣旨からいたしましても、正式招請が技術上不可能ならば、これにかわる何らかの便法
措置を講じ、わが国の意のあるところを広く各国に伝えることが必要であろうと思うのであります。また、もしかりに国交回復のない国々から参加の申し出があった場合に、歓迎こそすれ、これを拒否する理由は全くないと思います。
政府は、これにどう対処する方針であるか、明らかにすべきであります。総理並びに外務大臣、担当大臣としての通産大臣の所見を伺っておきたいと思います。(
拍手)
第三の質問は、
日本万国博覧会に対する
政府の責任の問題であります。
現在、
日本万国博覧会に関する憲法ともいうべき一般規則案は、すでに国内的には最終決定となり、BIE、つまり万国博覧会パリ
事務局に
提出の運びになっております。これによりますると、
日本国政府は、博覧会の準備、開催、
運営に関し、必要な行政上、財政上の
措置を講ずること、博覧会は通産大臣の監督下に置かれること、博覧会の準備、開催、
運営は
日本万国博覧会協会が当たることなどが定められているのであります。
ところが、この一般規則案作成の過程において、
日本万国博覧会は
政府の監督、責任のもとに行なうという条項が問題となり、
政府の監督、責任のもとにという字句は削除されてしまっているようであります。また、最終的に赤字が生じた場合の
政府の責任についても明確になっておらないのであります。こうした点を見ると、
政府がどこまで熱意を持っているのか、全く疑わしくなってくるのであります。一体
政府は、
日本万国博覧会に対する責任をどう考えているのか、総理並びに
大蔵大臣、担当大臣たる通産大臣の所見を伺っておきます。(
拍手)
第四の問題は、地方財政の
負担増に対する配慮についてであります。
日本万国博覧会の会場は大阪の千里丘陵であり、当面大阪府並びに大阪市が全面的な協力体制をとっております。
昭和四十一
年度の経費五億一千万円のうち、国が二億五千五百万円を、残る半額を大阪府と大阪市が折半して
負担することになっているほか、千里丘陵の三百三十万平方メートルは大阪府が買収することになっており、現にその買収が進行中であります。
日本万国博覧会が地元にもたらす効果はきわめて大きいものであり、最終的にはプラスになることを疑っておりませんけれども、その過程において地元にあまりに過重の
負担をかけることは、万国博覧会の本質から見ましても不合理であるのみならず、一般住民の福祉に支障を来たすおそれがあります。
私は、
日本万国博覧会については、財政上国が最終責任を負うと同時に、準備、実行の過程においても、地方財政に過大の
負担をかけないように必要な対策を十分講ずべきであると思います。総理並びに自治、建設、大蔵、通産大臣の所見を伺っておきます。
最後に、
日本万国博覧会に要する経費の総体は、一説には優に一兆円をこすといわれております。それほど巨額なものであり、欧米の例を見ましても、ウイーンの大公園やパリのエッフェル塔など、後世に残る事業が行なわれているのであります。こういう点を考え合わせますると、オリンピックの競技場施設とは異なって、いまから、会場であるところの千里丘陵の事後の利用を十分計算に入れ、計画的に会場施設その他の設計を行なうことが必要であります。なお、これとともに、関連する公共事業、特に道路や港湾などの交通施設や観光施設等の建設は、近畿圏整備の関連におきまして総合的、計画的な配慮がぜひとも必要であります。これら諸点について、総理並びに担当相たる通産、建設、自治、大蔵各大臣の所見を伺いたいのであります。
以上、
日本万国博覧会が所期の成果をおさめるように、
政府として真剣に対処されんことを要請いたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕