○華山親義君 ただいま
趣旨説明のありました
地方公営企業法の一部
改正について、
日本社会党を代表し、総理大臣はじめ関係諸大臣並びに社会党案
説明者に質問をいたします。(
拍手)
地方公営
企業は、人間の生命の根源である水を供給する水道、人間の健康を保持するための病院、人間の
活動を促進するための交通機関などを
経営し、これによって、住民が健康にかつ快適に
活動するための基本的要求に応じようとするものであります。
まず、水の問題について申し上げます。
わが国の水の使用量は、都市用水、工業用水において、近年驚くべき高率の増加を示しております。今後も、生活態様の向上と工業の発展につれて、さらに強く永久に増大し続けるでありましょう。加うるに、人口の都市周辺へのなだれ打つ集中、
事業場、工場の増設は、水の使用を偏在化し、二重の要因をもって今後の極地的増大を覚悟いたさねばなりません。
昭和三十二年、
東京の小河内ダムは計画以来二十五年にしてでき上がり、都知事は、完工式において、
東京の水は当分だいじょうぶと式辞を述べたのであります。しかし、その後も都民は慢性的な水不足に
悩み、ついに
昭和三十九年のあの水飢饉におちいり、
東京都の失政もさることながら、
政府の利水に関する長きにわたる行政の怠慢によるものといわざるを得ません。(
拍手)渇水時においていつまたこの事態が起きるのではなかろうかと、専門家のいまひとしく憂いを持っているところであります。今日着工せられている工事は応急的なものにすぎないのであります。
ロスアンゼルスは、あの乾燥地帯に快適な近代都市として建設されました。その基礎は一に水道にあります。水源地からの導水管の延長は、
東京から仙台までよりさらに北に及ぶものであります。この建設の当時、アメリカの富力はそう高いものではなく、これをなし遂げたのは、半永久的な公債による思い切った先行投資によってなされたのであります。(
拍手)今日の
日本において、これを
東京その他の諸都市に求めることはできません。一年ごとの独立採算制をとることで自治体を縛っておいて、どうして大先行投資ができるでありましょうか。初めの十五年は赤字であっても、あとの十五年の黒字でこれを埋め得るならば、これも独立採算制ではないか。ここに公営
企業の存在
理由があり、民間
企業との根本的な相違があるのであります。ロスアンゼルスの水道
事業は、ここに発想されたのであります。
今後の水の問題は、
日本の国運、
日本民生の向上に関する重要な問題であります。公営
企業は、第一線において水と取り組む現業業務を担当するものであります。総理はこの認識に立たれて、国としての
立場から、公営
企業の水の
事業に援助、助成を講ぜられる考えはないか、承りたいと存じます。(
拍手)
次に、都市交通についてであります。
総理は、この
国会で、国鉄料金値上げについて、受益者
負担という
ことばを言われた。私は国鉄と地下鉄とで登院いたしております。あのラッシュアワーの、自分の足がどこにあるかわからないような混雑の中で、私は、同乗している人々に、
国会の議席に連なる一員としてまことに申しわけなく思い、私の無力をあわれに思います。せめて、私はこれらの人々にかわり総理に申し上げたい。われわれは受益者などという実感を毛頭持ちません。交通政策の貧困による受難者だと実感いたすのであります。これらの人々は二、三時間の往復に無意味に心身をすり減らしている。これらの人々は、しかし、都心に遊びに参るのではございません。働きに来るのです。そして、この働きの集積が、
日本の
経済を維持発展させているのです。
日本人の本来勤勉な労働力を仕事に集中させること、これが生産性向上の基本であり、
日本経済の発展の基本だと私は信じます。これが朝の通勤の第一歩においてぶちこわされている。
総理、あなたが受益者
負担の観念を今後も持ち続けられることは、国の発展の上からも反省さるべきであります。ロンドンにおいては、都心の交通の中心を地下鉄とバスに置き、乗る人々の疲労を防ぐためにバスの立ち乗りを禁止して、これによる
事業の損失を補助している。
日本の労働力の有効な発揮が、公営
企業の任務と深く連なることを思われ、都市交通に働く者の
大衆優先の交通政策を立てられる考えはないか、お答えをいただきたい。
次に、現在窮極に立つ地方
財政に対し、最もどん欲なのは通産省であります。工業用水道
事業についてだけ申し上げますが、多少の建設国庫補助を行なうにあたって、あるいは起債の
承認にあたって、一トン四円ないし六円の低料金を条件とし、その後原価計算上いかなる事情の変更があろうとも、料金の値上げを強力に押えております。このために、多くの県、市において、元金償還のためには、一般会計は無利子、無期限の貸し付けの形で
負担し、
経営費の欠損には一般会計から補助、繰り入れをしておるところが見受けられるのであります。また、多くの県、市においてこのことが実行されております。
このたびの法
改正にあたって、自治省は、
地方公営
企業制度調査会の答申をまともに受けて独立採算制の原則を立てたのに対して、通産省は
財界とともにまっこうから強く
反対し、この原則の
強化を骨抜きにいたしました。自治省の
改正案によって、地方
財政からの補助が打ち切られ、正当な原価に基づく工業用水の値上がりをおそれたからにほかならないのであります。(
拍手)この不当に安い工業用水を使っている大工場の地域の
中小企業はどうか。営業に伴う国税、地方税を納め、この税が大
企業の用水を安くすることに使われ、自分の営業には何の援助もなく、工業用水の少なくとも四、五倍、ところによっては十倍をこえる高い一般上水道の水を使っております。世にもふしぎな物語ではございませんか。私はイソップ物語を思い出します。
通産大臣、大
企業のために地方
財政に
負担をかけ、地方に大
企業と
中小企業との間に不均衡な
財政措置をとらせることはほどほどにしていただきたい。もしこのような地方
財政に余裕があるならば、地方に対し、これを
中小企業に使うように頼んでいただきたい。
中小企業は、その地方に芽ばえ、育ち、その土地と密着するものであって、地方行政になじむものであります。地方行
財政が大
企業よりも
中小企業に
転換することを心から望み、これについての通産大臣の御所見を承りたい。
厚生大臣、このような工業用水についての通産省の傍若無人ともいうべきふるまいとは対照的に、厚生省の上水道に対する施策は全くなきにひとしい。大都市については、水道用水の拡大に備えて大先行投資がなされなければならない。一面、いまだに水道の恩恵に浴さない人々は
国民の四〇%近くもおります。人間の生まれた土地、永住する土地によって定まる一生の恵まれない運命、これを運命として放置することは、文化
国家として許さるべきことではありません。厚生省は、わが党の長い間の強い要望にもかかわらず、何ら積極的な姿勢を示しません。なぜなのか、今後もそのつもりなのか、厚生大臣の御所見を承りたい。(
拍手)
次に、都市の交通に関して、さらに具体的に運輸大臣、建設大臣、
国家公安
委員長にお尋ねいたします。
今日、国鉄の輸送に期待することにも、路面の拡張にも、
限度のあることであって、残された地下を利用する以外にはありません。しかるに、地下鉄の建設費は、一キロ当たり平均三十億円、鉄道新幹線の七倍、一般路線の二十倍の巨額にのぼるのであります。国が、地下隧道を公共
事業的な道とみなして、これをみずから建設する用意がなければ、急速な伸長を望むべくもありません。運輸大臣にその構想がおありかどうか、承りたいと存じます。(
拍手)
また、建設大臣は、今後いかに自動車がふえようとも、特に都心においてこれをスムーズに運行させるだけの路面拡張の自信がおありになるのであるかどうか。
大臣が何と答えられようとも、加速度的な自動車の増加と都心における限られた路面拡張との競争には、限界があります。そして、現状はこの限界を示すものではないか。これを打開すべき道は、乗用自動車に対して、時間的にあるいは地域的に、その交通を
制限する以外にないのではないか。これは、ヨーロッパ諸国においてすでに行なわれ、また行なわれようとしているのであります。公安
委員長のお答えを願いたい。
この
制限によってバスによる高速運転が可能になり、バス乗客一人当たりの路面に占める面積の小さい利点を生かして、
大衆優先、大量輸送の道が開かれます。かくして、公営バス
企業は、その本来の任務を拡大し、その目的を達成することができます。運輸大臣、公営
企業の民営移行を考えられる前に、関係各省とも協議の上、この方向への公営
事業の発展を考えられる意図はございませんか、お伺いいたします。
次に、大蔵大臣、
地方公営
企業の水道、交通等の料金は、その公共的性質からも、他物価への心理的影響の面からも、でき得る限り低く押えらるべきことに御異存はないと思います。しかるに、これらの公営
企業の建設投資は、全部借金による仕組みになっております。したがって、
資本費は原価に重い要素を持つことになり、料金を低く抑えるためには、資金ができるだけ低利長期のものでなければなりません。このような資金は、
政府資金をおいて他にないのであります。
政府資金の公営
企業債全額に占める
割合は、
昭和三十三年の八五%から次第に低下して、
昭和四十一年度計画では五八%に落ちました。なぜなのか。その中で、
国民の生活に密着し、多額の投資を要する水道、交通においては、五〇%を割っております。
政府資金の原資となる郵便貯金、簡保掛け金は、
国民大衆の生活の中から、ささやかな
大衆の家計簿の中から生まれるものであります。これら資金を、まず
国民の生活に、家計簿を軽くすることに返してあげることは、当然のことだと私は思います。(
拍手)これを
国民が知ることによって、この原資の増加と見ることになりましょう。この
措置について大蔵大臣の前向きのお答えを期待して、御所見を伺いたいと存じます。
次に、労働大臣、このたびの法
改正は、職員の給料を従来の生活給的なものから能率給的なものに変えようとするものであります。現在の諸法において、給料に関し、能率という
ことばは、五現業、電電等について見ることができます。しかし、これらの場合も、職員の発揮した能率が考慮されるものと規定しておるのであって、決定の裁量に入れる程度の軽いものであります。しかるに、この法の
改正においては、職員の能率が十分に反映されるものと規定し、能率が、給料決定に必要な要件とする、数段強い、あるいは質的に異なる方針が打ち出されたものでございます。私は能率給を頭から否定しようとするものではない。しかし、これを許容し得る社会的条件、一生の間、子供を養育し、その能力に応じて教育を受けさせながら、憲法に定むる健康で文化的な生活を営み得ることが前提にならなければなりません。この前提にほど遠い今日、能率給を打ち出すことは、労働者の一生の生活にかかわる重大な不利益をもたらすものでございます。(
拍手)
この法の
改正に、何ら地公労職員の労働基本権の
回復に触れることなく、一方的に不利益を与える立法は、これを見のがすわけにはまいりません。この法の改悪に示されたとおり、公務員、
地方公務員に能率給の観念を決定的なものとして導入されるお考えがおありなのかどうか、労働大臣にお尋ねいたします。(
拍手)
この法の
財政再建に関する規定は、
自治大臣は、再建団体の
財政運営があらかじめ
承認された計画に合致しないと認めた場合は、その団体に、計画を越えた部分の執行の停止を求め、これに応じない場合には再建債の利子補給をとめることができることになっております。
財政運営が計画を越えることは、人件費についても起こり得ることであります。このことは、
企業管理者の当事者能力が
予算によって
制限される上に、さらに
国家権力をもって
制限されるものであります。総理は、公務員
制度審議会に対し、そのあいさつの中で、当事者能力は特に重要な問題として検討を求め、過日の本
会議における横路
議員の質問に対し、強い関心を示してそのことを確言されました。いまこの問題について
審議会が検討に入ろうとするや
さきに、このような当事者能力の
制限を
強化する
法律案が
提出されることは、意外とするほかはございません。総理、あなたの
ことばが真実であるならば、本
法律案を撤回して誠意を示されるべきであります。(
拍手)御意思のほどをお示し願いたい。
自治大臣には、今後
委員会において詳しくお聞きいたしますので、この際はただ一点だけ伺います。
昨年十月、
調査会の答申を得て、あなたの責任のもとに、自治省は本
改正の当初案を作成されました。しかし、その当初案の独立採算に徹するというただ一本の柱は、通産省と
財界の
反対によって打ち倒され、実質を失ったのであります。魂のない手足だけが残ったのであります。(
拍手)
調査会の答申が、このようなむざんな形において立法されることも全く珍しい。大臣、あなたは、今日、この結果を、
政治家として、まことに遺憾だと思われているのか、それとも、
調査会の答申を採用したことが間違いであったと考えておられるのか、われわれの今後の
審議進行上重要なことでございますので、お聞かせを願いたいと思います。
最後に、社会党案を
説明されました安井
議員に対し、
政府案と社会党案との主要な相違点をもっと明確にお示し願いたいと存じます。(
拍手)
〔
安井吉典君
登壇〕