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細谷治嘉君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま御
説明のありました
昭和四十一
年度地方財政計画及び
地方交付税法の一部を
改正する
法律案、
昭和四十一
年度における
地方財政の
特別措置に関する
法律案について、若干の
質疑を試みたいと思います。
昭和四十一
年度地方財政計画の
規模は、
歳入歳出とも
総額四兆一千三百四十八億円であり、前
年度に対する
伸び率は一四・五%となっており、国の
予算の
伸び率一七・九%と比較しますと、かなり下回っております。昨年と一昨年はいずれも国の
伸び率を上回っていたものが、逆転したところに問題が存在しており、しかも、
自主財源である
地方税はわずかに五・三%の
増加にすぎず、
地方交付税もまた四・七%、
臨時地方特例交付金四百十四億円を加えても、なお五・七%にすぎないのであります。他方、
公共事業補助負担金は二九・五%、
地方債は七七・六%と、異常な
伸び率を示しており、わずかの
自主財源をもって
多額の
公共事業を消化するという
赤字構造となっており、
自治省当局ですら、一見健全なようだが、
一般財源の不足している面と、
臨時地方特例交金付で一時しのぎをするなど、
財政要素を見ると
不健全そのものと嘆いておるのであります。(
拍手)
試みに、
昭和三十八
年度の
地方財政計画と
決算額を比較してみますと、
歳出面で、後者は六千七百五十二億円、二六%も
計画を上回っております。そして、この
超過額の
最大原因が
国庫補助を伴う
投資的経費にあることを、実績が如実に証明しております。なるほど
人事院勧告に基づく
給与改定によって、
給与費の
超過額も三二%と二位にありますが、
決算総額に占める比率は三六%で、
計画の三七%よりもかえって下回っており、逆に
投資的経費が三四%から三五%と上回っているのと好対照であります。
私は、今日の
地方財政において
人件費がなみなみならぬ重荷であることを否認いたしませんが、
地方財政の
危機をもたらした
最大のガンは、
高度経済成長政策のもと、
歳入に見合わない
公共事業を押しつけ、しかも
多額の
超過負担を強制してまいった
政府の
施策にあると結論せざるを得ないのであります。(
拍手)
昭和四十一
年度の
地方財政計画は、
地方自治と
財政の
危機を鏡のごとく映し出しております。いな、
危機というよりも、すでに破綻しておると申したほうが当たっています。
政府は、口を開けば、国と
地方の
財政とは車の両輪である、国が
赤字だから
地方も借金して仕事をすべきだ、国債
発行、積極
予算で景気が立ち直れば、
地方団体も必ずよくなると主張いたしておりますが、この認識こそ、全国知事
会議が指摘したごとく、
地方の
財政の実態を理解しない、無責任な態度と申さなければなりません。(
拍手)車の両輪であるならば、両輪が一体となって動けるよう
措置すべきであります。
以上の諸点について、どう考えておられるのか、総理、大蔵、
自治大臣に所信のほどを承りたいのであります。
質問の第二点は、今回の
地方財政計画が、バランスを失った、無定見、無
方針に近いものだという点であります。
自治省は、昨年十二月六日、
昭和四十一
年度の
地方財政対策を大蔵省に申し入れました。その
内容は、国債
発行七千億円、
減税規模平
年度三千億円、初
年度二千四百億円、国の
財政規模四兆二千五百億円、
公共事業費の
伸び率二〇%を前提として試算すると、
一般財源不足額が三千三百六十億円となるので、これを
措置してほしいというものでありました。これに対し、大蔵省は、過大な見積もりである、不足額は約二千億円で、節約五百億円を加えれば千五再億円で十分だと反論しました。大蔵省の
予算原案が内示されるや、自治省は、
臨時地方特例交付金は全額返上すると強気を見せましたが、全国知事会など
地方六団体の
交付税率を三七%に上げてほしいとの熱望を踏みにじり、いち早く後退して、
交付税率を三五・四%に
引き上げと主張を変え、不足
財源は二千七百八十億円だと妥協しました。その結果、最終段階では、わずか一千億円の
財源措置となり、
交付税率も三二%にすぎない結果を招来し、
特別地方債千二百億円の新設を認め、あげくの果て、自己努力の名で約百億円の
固定資産税、
都市計画税の増税、百五十億円の節約を押しつけられてしまいました。かくして、四十一
年度地方財政計画は借金
財政となり、数字を合わせて銭足らずの始末となったのであります。
大蔵大臣は、去る本
会議において、わが党横山議員の質問に対して、三千三百六十億円の不足というのは
予算獲得のための自治省の作戦にすぎぬと広言し、自治省に対するべつ視と
地方財政軽視の態度を表明しました。まことに遺憾であります。反面、これに何ら反論し得なかった自治省のふがいなさ、無責任さは、強く指摘されなければなりません。(
拍手)
申すまでもなく、国の
予算案は、自治省が試算した当時の前提条件と変わりました。国債は三百億円
増加し、
減税規模、
公共事業の
伸び率等、いずれも大きくなっております。したがって、借金
財政のからくりバランスは、くずれ去ったといわなければなりません。今度の
地方財政計画について私が試算いたしました結果は、おおよそ二百十億円程度の穴があいておると思われます。現に、
昭和四十一
年度都道府県の
予算案は
総額二兆八千億円となっておりますが、税収、
地方債を
地方財政計画以上に見積もり、
公共事業の大幅増、単独
事業の大幅な圧縮によって、かろうじて形だけのバランスをつくり上げています。かくして、
昭和四十一
年度の
地方財政計画はスタートからアンバランスであり、どう見ても
年度内を通じてカバーできる
財政見積もりと認めることはできないのであります。
以上について、大蔵大臣、
自治大臣はどう考えるのか、具体的に
説明願いたいのであります。
第三にただしたい点は、
計画及び二つの
法律案に盛られた問題点についてであります。
その一つは、第一種
特例交付金の二百四十億円についてであります。これは、
市町村民税及び府県民税の所得割りの
減税分二百九十四億円の肩がわりとして、たばこの売り上げ本数に応じて案分し、
昭和四十二
年度からはたばこ消費税として
地方に移すことが確認されていますが、つかみ金一千億円のワク内で出されたために、
減税額より五十四億円も少なく、額として不十分であります。のみならず、四十二
年度においては、税制調査会で強く主張されたごとく、現行の専売益金からの移管によらず、たばこの値上げによってしぼり出す可能性が強く感じられるのであります。この点について、値上げによらないと明言できるかどうか、大蔵、自治、両大臣の明確な答弁を得たいのであります。
その二つは、
超過負担の解消についてであります。自治省の調査によりますと、
昭和四十
年度において千二百億円をこえる
超過負担があったと確認されております。
地方財政法あるいはその他の法令によって当然国が支出すべきであるにかかわらず、これを
地方団体に押しつけてまいったのが、今日の
地方財政を破綻に尊いた有力な犯人といえるのであります。いま、
地方団体の一致した声は、補助率
引き上げなどは無意味である、もはやだまされない、現実に必要な単価と対象に対し、法令に基づいて正確に補助すべきだ、国は法令を守ってほしい、と叫んでいます。このような実情にかんがみ、自治省も昨年これが対策を樹立し、四十一、四十二
年度の二カ年
計画でこの
超過負担を完全解消する
計画をしたのでありますが、今回の
地方財政計画では、わずかに二百五十億円が対象になったにすぎません。しかも、補助人員の削減等が計入されている点を考えますと、まさに焼け石に水の感があるのであります。この問題は、
地方の国に対する不信感をいよいよ
増大させるものだけに、積極的かつ早期の解消をぜひやらなければなりません。大蔵、自治両大臣の具体的方策を明確に承りたいのであります。
その三は、一般
行政費及び
投資的経費中に占める単独
事業の極端な圧縮削減であります。
地方自治の本旨は、住民自治に基づく
住民福祉の増進にあることは申すまでもありません。しかるに、
財政計画によりますと、一般
行政費中、
国庫補助負担を伴うものが一六%と、全体の
伸び率を上回っているのに、単独分はわずか六%と三分の一にすぎず、大蔵省折衝で押しつけられた節約額百五十億円をすべてここに求めていることは、全く合点のいかぬことであり、
地方自治を無視し、国の
地方団体に対する
財政面からの支配の姿を示すものであります。さらに、
投資的経費においては、単独分は一五%にすぎず、しかも、
増加額のうち、
地方公営企業への出資が大幅に
増大している以外は、物価の値上がりにも及ばない程度となっております。特に、小災害の早期復旧こそ災害を未然に防ぐ最も有効な手段であるにもかかわらず、これにほとんど手を出すことができない
状況は、ひとり
地方団体のみならず、ひいては大災害の原因ともなり、国全体の損失に直接つながることを銘記してほしいのであります。私は、この点だけをとってみても、今日の
地方団体は、あげて国の下請機関化していると結論して差しつかえないと思うのでありますが、
政府の御所見を承りたいのであります。(
拍手)
質問の第四点は、
地方交付税制度の
改正についてであります。
今回の案は、
地方交付税制度始まって以来年々改定強化してまいったものを、大幅に改め、
単位費用の改定と
補正係数の廃止などにより、およそ六百億円を削り落とし、
地方特別債に切りかえようというものであります。
単位費用そのものにも幾多の問題点がありますが、河川、海岸堤防の保全など、大災害、人命に
関係ある
事業の
地方負担をこれからは借金でやれというごときは、全く言語道断であり、
地方交付税法の一部
改正どころか、根本的な改悪と印すべきであります。過日の全国知事
会議においても、この点が大きく取り上げられ、国は元利を
負担すべきだと主張されています。長い間の
交付税
制度を通じ、
地方団体にとっては現在期待権以上のものとなっておる有力な
財源を一方的に剥奪することは、全く容認できないのであります。血も涙もない
政府のやり方と
地方団体は言っております。
このような配分方式をとらざるを得なかった原因は、かかって、国の
予算に応じて
伸びてまいる
地方負担分を、非合理的な妥協によって
交付税率三二%と決定し、
地方六団体の血の叫びであった大幅
引き上げを無視したところにあります。起債に切りかえた六百億円は、何とかして国が
措置し、最小限元利の補給等は保証せねばならぬと思うのでありますが、この点に関し総理、自治、大蔵大臣の明確な考えを承りたいのであります。
最後に、私は、
地方自治を土台とする
地方財政に今後どう対処するかについてお尋ねいたしたい。
大蔵大臣は、今回の
地方財政対策は暫定的なもので、今後は長期的視野に立って見ていかなければならぬと言っていますが、それなら恒久的にどうすべきかに関しては、具体的に全く不明であります。察するに、長期的展望の名のもとに、
地方財政を
政府、大蔵省の管理のもとに置き、再建即国の支配下に編入するとの姿勢だとも考えられるのであります。
行政事務の再配分、それに基づく
財源の配分という議論は、すでに長い間行なわれ、臨時
行政調査会、
地方制度調査会などの答申でも明記されてきたのでありますが、一向に実現しません。昨年九月、第十次
地方制度調査会は、
行政事務の配分についてのみ具体的に答申し、これを裏づける
財源問題については次期調査会の検討にゆだねたのでありますが、いまだ検討の気配すらもございません。多数決でしゃにむに押し切った府県合併に関する答申部分は直ちに採用して、法案提出を今国会に予定しながら、全員一致の方向である事務及び
財源再配分に対しては、きわめて消極的、いな、否定的な態度を終始とり続けている
政府の姿勢はまことに遺憾であります。
国と
地方団体間の
財政秩序を確立し、
地方の
財政構造を借金から自立
財政へと立ち直らせることが現在最も急務だと信ずるのでありますが、この点に関し、総理、自治、大蔵大臣の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕