○武藤山治君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
関税定率法の一部を
改正する
法律案外三案につき
質疑をいたし、さらに、国際貿易、
経済外交等について
政府の見解をただしたいと存じます。
今回の
改正は、国際価格の高騰に対処するため、銅、水銀の関税を無税とすること、砂糖関税を弾力化し、価格の高騰の際、引き下げあるいは免税ができることとするもの、後進国
対策として第一次産品の関税を引き下げること、日韓条約締結に基づくノリの輸入を容易にするための関税引き下げ等々を中心にした税率の変更と、保税工場、保税上屋に貨物を出し入れする場合の手続の簡素化をはかり、さらに蔵置期間を一カ年から二カ年に延長して認めようとするものなどが
改正の中心点であります。これらの法
改正で具体的に輸出入にどのような変化が起こり得るのか、輸出振興のためと大蔵大臣はただいま
説明をしたが、どんな
内容のものがどの程度輸出振興として日本に利益をもたらすのか、具体的にお示しを願いたいのであります。
第二に、銅の不足と価格の高騰から、これが
対策として関税を無税とするのでありますが、なぜいまごろ
措置をするのか、私は
政府の今日まで
措置をとり得なかった怠慢を大いに責めなければならぬ気持ちであります。昨年臨時
国会もあり、さらに十二月の通常
国会もあったにもかかわらず、今日まで銅のこの緊急な事態を避けるために、なぜもっと早く法
改正の手続がとれなかったのか、大蔵君は
本案を
提出するそれだけの手続が、なぜ今日までとれなかったのか、その経緯についても明らかにしてもらいたいのであります。(
拍手)
さらに、無税にすることにより、銅の輸入量は一体これからの需要に見合うだけ入ってくるのかどうか、その見通しと従来のものとの価格差、あるいは価格の推移が今後どうたどるであろうかという見通しについても明らかにせられたいのであります。
次に、銅価格は昨年の安値と比較すると二倍半の高騰を記録しております。このことは、国民生活、輸出産業、貨幣鋳造にまで悪影響を及ぼすことになっております。現在、電線メーカーは
全国三百八十社、伸銅メーカーは百五十社あるといわれております。しかも、その多くは中小企業のため、原料不足と採算悪化で倒産の事態に直面しているものが多いと報じております。まことに困ったことであります。しかも、その原因がベトナム戦争の
長期化にあるとあっては、戦争の罪悪をひしひしと身に感ぜざるを得ません。すなわち、ベトナム戦争用の薬きょうに使用する銅消費が増大し、消費財用に不足している現状であり、一体いっこの銅不足が解消するかわからない。すなわち、ベトナム戦争が続く限り銅の不足は解消しないのではないかと心配されているのであります。(
拍手)戦争に無関係の日本の平和産業が戦争による被害を受けている姿は痛ましいといわなければなりません。
政府は、四十一
年度及びそれ以降の銅の需給をどう見積もられているか、ベトナムに戦争が続く限り不足の状況はやむを得ぬと
考えているのか、不足分をどう埋めるつもりなのか、その方策を通産相にお尋ねいたしたいと思います。
さらに、変圧器、ふろがま、ラジエーター、テープレコーダー、電蓄等々銅を使用している商品が一斉に値上げされる傾向にあると伝えられております。銅不足から消費者の
家庭にまで影響を与えるような今日の事態で、これらの商品の値上げを抑えることが可能であるかどうか、可能であるとするならば、通産省の行政指導の計画をお聞きしたい。
さらに、銅の国内生産は需要の三〇%程度で、大部分輸入にまたなければならないのが日本の実情であります。そのために、安定的に銅を手に入れる道を講じておかなければならないのは、ずっと昔から承知をしておるはずであります。
政府は、そのためにも、現在までに海外
経済協力基金からボリビア、チリなどの銅山
開発に投資をしてきたはずであります。しかし、これらの海外
経済協力基金の投資というものは、一体効果があがったのかどうか、非常に疑わしいのであります。
そこで、私は、企画庁長官にお尋ねいたしますが、現在までに海外の銅山
開発に投資した
金額はどのくらいに達するか、また、その成果は一体あったのか、あったとすれば、その程度はどうであったか。
さらに、私は、大蔵大臣に銅の問題でお尋ねをいたしますが、業界では、銅含有量九五%の十円銅貨をつぶせば一万二千トンの銅が回収できると、恨めしそうに十円玉をつぶすことを
提案している向きも新聞は報じております。私たちは、戦時中、軽い十銭玉を経験したことがあります。ベトナム戦争のために、今日の重い十円玉もかつての軽い十銭玉のように変わらざるを得ないのかどうか、大蔵大臣、
政府貨幣の発行責任を持つあなたとして、業界のこういううわさに対してどうお答えになられますか。
さらに、大蔵省の管轄でいま皇居の造営をいたしております。膨大な銅板を屋根に必要とする。ところが、銅がなくて皇居の造営
工事は進捗をしないという実情にあるようであります。町では中小企業の戦争に関係のない業者から、上は皇居の造営に至るまで、銅不足で悩まされているというのが今日の姿であります。(
拍手)一体、この皇居造営は、計画どおりにこれが完成をするであろうかどうか、大蔵省はこの銅の確保に対しての見通しをどう立てられておるか。
次に、今回ノリの関税引き下げが行なわれ、韓国のノリが多量に輸入されることになります。今回の
措置で国産のノリとの間に価格はどうなるのか、消費者大衆に安いノリを供給することができるのか、日本国内の生産者を圧迫する心配のほうが大きいのか、今後の韓国ノリの輸入見通し並びに国内産業や消費者に対する影響、利害について明らかにせられたい。
次に、私は外務大臣にお尋ねをいたしますが、南北問題で国連貿易
開発会議が設立され、工業国の援助が約束させられました。アメリカ、イギリス、フランスはほとんど国民
所得の一%程度の援助を行なっております。日本も工業国家の一員として国民
所得の一%程度の支出をするという約束をいたしておりますが、一体、
昭和四十一
年度の
予算で、わが国はこれらの低
開発国に対する援助は何%を占めることになるか。ネパール、ケニア、ウガンダ、タンザニアなど、わが国の援助の条件に不満を示し、わが国の援助は非常に不評判でありますが、これが
改善のため、外務省は具体的な策をどう立てられておりますか。
第三に、昨年八月に第一次産品問題処理
対策会議なるものが
政府の手によって発足いたしましたが、低
開発国援助に関連して、これらの国との一次産品貿易には問題が多いのであります。したがって、日本農業と競合しないような配慮をして、どういう
対策を一体立てられるか、具体的に第一次産品問題処理
対策会議で結論づけられた日本
政府の方針を、ひとつ承りたいのであります。
さらに、最近業界が非常に心配をしておる問題に、オーストラリアとわが国との貿易関係の問題があります。オーストラリアは、わが国からの自動車輸入に対して、関税率を大幅に
引き上げようというのであります。しかしながら、わが国とオーストラリアとの関係を見ますると、
昭和三十九年は三億五千万ドルのわが国の輸入超過であります。これが是正をすることは、貿易政策の上からも大きな問題であります。しかるに、今年二月四日、オーストラリアは自動車関税を
引き上げる手続をガット理事会において承認を得ました。したがって、当事国間の話し合いを開始し、原則として六十日以内に交渉をまとめるということになっておりますが、現在の交渉の状況はいかがでございましょう。わが国の自動車産業、さらにこれに関連する
人々が非常な不安を抱いております。
私は、日本の外務省の
経済外交というものは、やや怠慢に過ぎるのではないかという印象を受けるのであります。貿易は、もとより両国が均衡拡大をしていくという原則に基づいて、互恵平等、その
趣旨に従った貿易が行なわれなければなりません。しかるに、先輩各位の御承知のとおり、南アメリカと日本の貿易関係を見ても、輸入超過が長年続いております。オーストラリアにおいてもしかりであります。しかるに、日本製品に対しては輸入制限を相手国はしておる。非常にきつい規制をいたしております。メキシコもオーストラリアも、今回の
措置を見ても明らかであります。これは日本の
経済外交が、私は、少々力の入れ方が足りぬのではないか、腰抜け外交とまでは断じないけれども、やや今日の日本の外交姿勢というものは、私は怠慢のそしりを免れないのではないかと感ずるのであります。
そこで、これらのオーストラリアとの関税交渉にあたって、外務省はいかなる基本的姿勢に立ち、これが解決に努力するか、外務大臣の明快なる御回答を求めたいのであります。(
拍手)
次に、
総理大臣にお尋ねいたしますが、最近の世界情勢は分極化とか多極化と呼ばれているように、変化も激しく、複雑で、こんとんたる様相を呈しております。ことに、昨年夏以来、EECに発生した深刻な危機は、ヨーロッパ
経済体制に新しい流動化の可能性を生じていることをあらわすものであります。そればかりでなく、アメリカとフランスの対立を中心として、世界
経済の編成や動向に対しても重大な変化をもたらそうとしておるのであります。戦後自由陣営の
経済発展をささえてきた主柱は、金融面のIMFと貿易面のガットという二つの国際
経済機構であったと思います。ところが、最近両機構とも重大な困難に直面して、激しく動揺し、深刻な危機におちいった感が深いのであります。ガットは五回にわたる一般関税交渉で関税障壁の引き下げを精力的に推進してきましたが、最近、従来の国別、品目別交渉方式による関税引き下げの限界に直面し、他方、南北問題として台頭してきた後進国のガット不信という壁に当面しております。しかも、ケネディ大統領の偉大なる構想といわれる、五年間に五〇%関税一括引き下げをしようといういわゆるケネディラウンドは、二カ年間の討議にもかかわらず、実質的には何もきまらず、完全な行き詰まり
状態にあるではありませんか。昨年七月以降EECの凍結
状態、半身不随のEECなどと評されてまいりましたが、EEC内部の不統一と利害の微妙な対立は、単にEECに影響を与えるだけのものではありません。すなわち、国際的影響のほうがずっと大きいのであります。ケネディラウンドが進まないのも、このEECの態度にかかっておるということができるのであります。ケネディラウンドの成否はわが国の利害にも深い関係を持つものであり、
政府は、閣
議決定で、一昨年ケネディラウンド全面支持を決定いたしております。われわれはEECとアメリカの交渉状況に対して、無関心ではいられないのであります。日本
政府は、現状から見てケネディラウンドは実現するものと見るか、
政府の願望ではなく、科学的、客観的見通しをお聞かせ願いたいのであります。
第二に
総理にお尋ねする点は、アメリカは通商拡大法に基づき、関税一括引き下げの権限を大統領に移譲しました。しかし、時限立法である通商拡大法は、明年六月末で失効するのであります。二カ年間空費した交渉を振り返ってみますると、これから一年の間にEECとの調整が本年じゅうにつくとは思われない。アメリカは拡大法の期限を延長してまでケネディラウンドの実現に進むだろうか。それともケネディラウンドは失敗して、ケネディ政権に比べると国際的ビジョンの後退が強く感じられるジョンソン政権のもとでは保護貿易主義がさらに勢いを加えると見るか。日本の将来にとって重大な関心事といわなければなりません。
総理の洞察力をもって、これらの問題をどのように認識されるか、見解のほどを承りたいのであります。
第三に
総理にお尋ねするのは、
昭和三十五年から四十年までの五カ年間の統計を見ますると、入超を続けるわが国の対米貿易ということになります。日本は毎年四億ドル以上の輸入超過でアメリカとの貿易関係を続けてまいりました。アメリカにとってはカナダに次ぐ取引先であり、好得意先であるのが日本であります。日本にとっては、入超に片寄った貿易をいかに是正するかという大きな問題があります。アメリカは、日本の輸入自由化の遂行、関税一括引き下げ、直接投資の自由化を日本
政府に強く要請し続けてまいりました。しかるに、他方においては、綿製品取りきめの締結、毛製品協定の推進、ダンピング法適用強化などを行なっておるではありませんか。アメリカの態度は、まことにてまえがってで、非合理といわなければなりません。(
拍手)口で貿易自由化を唱え、他国に強く要請しながら、輸入制限が完備している国がアメリカだといっても過言ではないでしょう。わが国の自由化率は九三%であります。アメリカが日本に対する自由化率は、一体、実質幾らになるか、七一%にすぎないのであります。すなわち、アメリカは輸入制限のための諸
制度が完備している国でありますから、エスケープクローズで、板ガラス、金属洋食器、安全ピン、腕時計、体温計など七品目に及ぶ制限をいたしておる。加えて、日本の業者に自主的輸出規制を強要して、合板、トランジスターラジオ、こうもり、野球グローブ、綿製品、毛織物など二十四品目の輸入差別的制限を行なっております。最近の動きでは、自転車、鉄鋼その他の商品にまで、これらの自主規制の強化が新聞で報ぜられておるのであります。これでは、日米貿易は互恵平等ではないではありませんか。日本とアメリカはイコールパートナーなどとおだてられて喜んでおるわけにはいかないではありませんか。しかも、現在、アメリカ議会においては、ハートケ・ハーロング案が
提出されており、アンチ・ダンピング規制を強化せよとの動きが強くなっております。まさにケネディラウンドに反する、国際通商拡大の理念に反する動きだと
考えます。日本
政府は、アメリカのこれらの輸入規制、他国強要の輸出規制に対し、真剣にこれが撤廃、縮小のために交渉を続けてきたか。アメリカに対するこれらの日本の外交姿勢について、私は外務大臣から明確なる態度をお尋ねいたしたいのであります。
さらに、今後ますますアメリカは保護貿易の形が強くなると思われるが、厳重に交渉する必要があると思うが、外務大臣の見解を承りたい。
次に、アメリカとの貿易が限度にきたと思われる現在、中国、ソ連、北朝鮮との貿易拡大は、国家利益の追求の上からも、
経済の安定的発展の見地からも、重要緊急事であります。吉田書簡をめぐり、停滞ぎみに推移した昨年でも、日中貿易は六〇%の
伸びで、輸出入合わせて五億ドルに近づいてまいりました。
政府が隣国との交易を拡大しようと心がけるならば、中国、北朝鮮との貿易量は飛躍的に増大することは、何人も疑う余地のない事実となるでありましょう。
通産省は、輸銀融資再開について検討中だと報ぜられております。台湾に対しては、アメリカのミラー
委員会の結論などを指摘して了解工作をするとのことでありますが、その結果が確定するのはいつごろでありましょうか。台湾の了解を得る必要は毛頭ないと思うのでありますが、すみやかに商業ベースの五年の延べ払い金融の道を開いてしかるべきだと思います。商社、メーカーから申請があれば輸銀融資を認めるかどうか、
総理大臣並びに通産大臣の御所見を承り、以下、詳細については
大蔵委員会の質問に譲ることにして、以上をもって質問を終わりたいと思います。(
拍手)