○藏内修治君 私は、ただいま
趣旨説明のありました石炭
関係三法案、並びに、これに関連して、今後行なわるべき
政府の抜本的石炭安定対策について、自由民主党を代表して若干の
質疑をいたしたいと存ずるものであります。
各位もすでに御承知のとおり、過去十
年間を通ずるわが国石炭鉱業の課題は、豊富かつ低廉な重油の急激な進出に対して、みずからの将来をいかに打開するかという、いわば生存のための条件を確立することであり、このために実施された炭価千二百円引き、及び大
規模な
合理化整備は、他産業においては全く例のないきびしいものであり、総トン数において二千百七十万トン、炭坑数において六百二十五という、計画以上の
合理化効果と、行き過ぎた斜陽ムードをもたらしたものであります。加うるに、わが国における重油の価格の推移は、これまた、はるかに予想を下回る価格となり、急激な
合理化過程に生じた電荷にあえぐ石炭鉱業にさらに追い打ちをかけるとともに、石炭鉱業をして、放置すれば逐次崩壊していく絶対絶命の窮地に追い込んでしまっているものであります。
このような窮状にある石炭鉱業に対し、
政府は、抜本的安定対策を講ずるため石炭鉱業審議会の
答申を求めるとともに、総合エネルギー
調査会に対しても、エネルギー政策における石炭の位置づけに関し
答申を求めているのでありますが、問題は、
答申を求めるにあたっての
政府の
基本的態度であります。
そこで、私はまずお尋ねを申したい。一体、
政府は、エネルギーの安全保障の見地から、石炭産業を将来にわたって維持すべきものと
考えているのか、それとも、
経済合理主義の立場から、つぶしても差しつかえないと
考えているのか、いずれの立場に立っているかということであります。この
基本線の定まらざるところに、今日までの石炭政策の停滞と石炭
企業の窮迫の根本的な
原因があります。それのみではありません。
政府は、三木
通産大臣が去る二月二日の本院本
会議で言明せられましたように、この三月中にも石炭についての位置づけについて
調査会の中間
答申を得て、これに基づいて石炭鉱業審議会の抜本的安定対策に関する最終
答申をこの六月には求めようとしておるのであります。すなわち、エネルギー
調査会が純
経済ベースで
答申する事態がかりにあり得るとするならば、鉱業審議会の長年月にわたる作業は全く無慮味であり、同時に、
政府のこの両機関に対する諮問をしておる態度はまさに矛盾するといわざるを得ません。石炭を残すのか残さないのか、かつて
通産大臣であられた佐藤
総理並びに三木
通産大臣の明確なる御所信を承りたいと存ずるのであります。
私は、エネルギーの安全保障の見地から、国産エネルギーの大宗である石炭産業は保護すべきものとの立場に立つものでありますが、
政府も、ここに
関係法律案を国会に
提出している以上、暗黙のうちにこの立場を認めているものとは存じます。しかりとすれば、優柔不断にして今日まで根本的安定対策の樹立を遷延してきたことをまことに遺憾とするものであります。
さて、次は、総合エネルギー政策における石炭の位置づけについてであります。スケジュールとしては、石炭鉱業審議会はエネルギー
調査会の三月中間答中に基づき六月に最終
答申を出す予定であることは、前に述べたとおりでありますが、安定対策の基礎的条件となる出炭
規模をほぼどの辺に想定しておられるか、お伺いをいたします。
すなわち、昨年十二月石炭鉱業審議会が破局的石炭
企業の再建のためにまず石炭の位置づけを強調した契機となったものは、資金不足、労働力の不安定、災害等諸種の
原因からする予想外の出炭不振であります。五千五百万トンは目標としても、せめて五千二百万トンくらいは確保したい、しかしそれが五千万トンの大台もあぶない、こういう状態であったわけであります。ところが、昨年末を境といたしまして、情勢は全く変化しております。出炭は現在では相当に快調であり、四十
年度末においてはほぼ五千百万トンは見込めるという、当初の線に近づいてきておるのが現状であります。その理由はしばらくおくといたしまして、石炭はこのように流動的であります。出炭量を位置づけによって長期的に堅持する自信がおありかどうか、
通産大臣のお答えをお願い申したいのであります。
さらに、出炭のこの趨勢は四十一
年度にも持続せられると私は
考えております。
大手、中小合わせて四十一
年度末五千四百万トンにのぼると見るのが、ただいまの一般の見方であります。幸いにして抜本的安定対策が軌道に乗るといたしまするならば、さらに出炭は上昇するでありましょう。したがって、位置づけによって出炭ベースが確立せられるや、ここにたちまちにして過剰炭の処理をいかにするかという問題が生じてくるのであります。
過剰炭処理の第一の方法は、積極的に新規需要を拡大することであります。現在、電力に一千九百万トン、鉄鋼に八百五十万トンを、非常な努力の結果買い取らせているのでありますが、別途の新規需要面が油の進出によりまして年々縮小せられている今日では、四十一
年度に、磁力にさらに約二百万トン、鉄鋼に約八十万ないし百万トン、これほどの新たな政策需要をつくらなければなりません。その具体策並びに可能性について
通産大臣は自信がおありであるかどうか、承りたいと思います。
過剰炭処理の第二の問題は、消極的にスクラップを続行し、出炭を抑えていくことであります。四十一
年度予算では、保安閉山を加えて三百四十三万トンのスクラップを見込んでおられますが、四十二
年度以降も相当量の
合理化整備が必要となるものと
考えられるのであります。ここに、四十二
年度に終わる予定の石炭鉱業
合理化業務を重ねて延長せられるお
考えがあるかどうか、
通産大臣にお尋ねいたします。
第三は、貯炭対策であります。四十一
年度には、先ほど申し上げましたような出炭の趨勢からいたしまして、ピーク時において約五百万トンの貯炭が見込まれるのであります。現在は、制度金融にいたしましても、市中金融からも、貯炭に対する融資は全く望むことができません。しかりといたしまするならば、貯炭機構を新たにつくる意向が
政府にあるかどうか、もし貯炭機構をつくらないとするならば、この貯炭融資についていかなる方途をおとりになるお
考えであるか、通産、大蔵両大臣のお
考えを承りたいと思うのであります。
次は、抜本的な安定対策の具体的内答について、
政府の構想を承りたいと思います。
その第一は、石炭
企業が背負い込んでおる過去の重荷、すなわち、いわゆる異常債務をどう処理するかという問題であります。中間
答申は、私
企業として存続せしめるならば長期無
利子の
財政資金をもって肩がわりすることを提起いたしておりますが、これに対する通産、大蔵両大臣の御所信を承りたいのであります。
また、この方途をもっていたしましても、中小炭鉱に対する対策というものは、これには全く当てはまらないのであります。この点、中小炭鉱に対しては、いかなるきめこまかい、そして愛情のある対策が講じられるか、この点について
政府の御構想を承りたいと思うのであります。
第二は、一たび過去の重荷を整理した後は、絶対に赤字要因の再発を防止することが必要であります。そのためには、ほとんど融資制度一本に依存してまいりました石炭対策を、大幅に補助政策に移行せしめることが必要であろうと思います。坑道掘進、保安施設等に
農業基盤整備と同様な国の助成制度を確立することが必要ではないか、
通産大臣の御方針を承りたいと思うのであります。
赤字要因再発を防止する第二の方法は、炭価の中に大きな部分を占めております運賃、鉱害復旧費に対して、安定補給金をもって
措置することであろうと思います。
運賃補助にあたっては、一律のトン当たり補助は必ずしも妥当な方法ではないと私は思うのであります。わが国石炭の生産構造は、従来は九州を中心とする西が主で、北海道を中心とする東が従でありましたが、長期的展望からいたしますれば、逐次、東が主、西が従となりつつあります。したがって、消費構造はこれと逆行して西が主で東が従となる趨勢に応じて、地域メリットを考慮した、より合理的な運賃政策をきめこまかに行なうべきであると
考えますが、大臣の御
意見を承りたいと思います。
鉱害は、
政府の毎年の努力にもかかわらず、いまなお通産省
調査によりましても六百億円もの残存鉱害量を持っておりますが、これは大勢として漸減するでありましょう。しかし、復旧費は、米をはじめとする農産物の毎年の価格騰貴、労賃の値上がり等によって、逆に増大していくと思うのであります。したがって、特に無資力鉱害復旧には大幅の予算
措置が必要であり、また、産炭地
振興のすべての前提でもあろうと思うのでありますが、整理交付金は本年からでも大幅に
引き上げる必要があります。
合理化整備が交付金でまかない切れないところに、現在の異常債務が発生し、深刻な
産炭地域の社会問題発生の真因があることを思えば、交付金の基準
引き上げに十分な検討を加うべきであります。
通産大臣の御
所見を承りたい。
以上、赤字要因予防の
措置は、安定補給金によることは中間
答申にも示唆されておるところでありますが、
財政資金によるも、安定補給金によるも、大きな国費の支出を要することであり、その財源対策をどうするかは、きわめて重要な課題であります。
石炭対策の財源を重油消費税に求め、ここに石炭と石油の価格のバランスをとることは、欧米諸国の通例であり、わが国においても将来不可避の命題とは思いますが、
年間七千万キロリットルにも及ぶ膨大な重油消費に新たに消費税をかけることは、各方面に及ぼす影響がすこぶる大きいことを考慮し、十分慎重なる配慮を加えてまいる必要がありましょう。ただ、現行の原油関税は、一二%の関
税率のうち二%が国内産原油の対策に充当せられ、一〇%は石炭対策に振り当てることになっていながら、現実は、広義の石炭対策、すなわち、主として産炭地の道路、港湾等公共事業に振り向けられ、石炭局
調査によれば、
総額約六百億円のうち約百二十億円、約二〇%が石炭プロパーに使われているにすぎません。七千三百億円にのぼる建設公債の発行せられている今日、公共事業分はそれに吸収して、原油関税はフルに石炭対策に充当されるならば、他の財源にしわ寄せすることなく、また一般
物価にもはね返ることなく、石炭安定対策のほとんどすべてを行なうことができると思うのでありますが、大蔵、通産両大臣はこの
措置をとる御
決意があるかどうか、承りたいと思うのであります。
安定対策の第三は、将来への方策でありますが、新鉱開発に対し現行五〇%の
近代化資金の融資比率を八〇%まで
引き上げるならば、特に新たに開発機関や国策会社を
新設することなく、各
企業において自主的な新鉱開発が可能であると思うのでありますが、
通産大臣はいかがにお
考えになりますか、承りたいと思います。
鉱区の調整については、もちろん望ましいことではありますけれども、それには、
関係会社の
内容、販売の機構、労組等、調整すべき幾多の条件があり、必ずしも簡単なことではありません。私は、英国の国営ですら一つのルールをつくるのに十年もの長い時間とばく大な経費を要した事実にかんがみ、また、
政府がかつて常磐炭鉱の一本会社化を慫慂していまだ実現していない事実等から、無理な
合併、一本化は得策ではないと思うのでありますが、
通産大臣の御
所見を承りたい。
最後に、国営の問題について一言触れておきたいと思うのであります。
佐藤
総理は、去る二月十六日の衆議院予算委員会における社会党の多賀谷真稔委員の国営移管論に対し、私
企業のよさを今後も生かしていきたいと述べておられるのでありますが、私
企業としての限界まできた石炭産業の今日では、必ずしも説得力がないのではないかと私は思うのであります。私は、石炭
企業のような労働集約的産業は、集中化の効果よりも分散化の効果のほうが大きいと思います。三井鉱山が、田川、山野等の鉱業所を第二会社に移したことによって出炭も著しく増大した事実によっても、これは明らかであろうと思うのであります。自分の山が悪くても他の山でこれを補うというのでは、真の
勤労意欲も、また真の
企業意欲も生ずるはずがありません。私が社会党の国営論に反対する積極的理由はここにあります。(
拍手)私は、石炭はあくまでも国の厳重な監督下において私
企業として存続させることこそが、
国民経済的見地からも至当と
考えるのでありますが、
総理並びに
通産大臣の御
所見をお願い申し上げまして、私の
質疑を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕