○小川三男君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま上程されました国鉄運賃法の一部を改正する
法律案に
反対の討論を行ないます。(
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まず第一に、
政府・自民党は、
財政法第三条及び
財政法第三条に関する特例法が国鉄と郵便の料金決定を
国会にゆだねている重大な使命と、その
責任をみずから放棄している点を追及しなければなりません。この二つが
国会の決定をまたなければならないのは、国鉄運賃と郵便料金とが国民大衆の日常生活にとって切り離すことのできない大きな
役割りを持つからである。ところが、
政府は、運輸審議会に対して、みずから慎重審議を求めておきながら、その答申案の出るに先立って、国鉄運賃の
値上げを発表し、これを既定の事実として押しつけるがごとき無
責任きわまる態度で臨んできたのである。この態度こそ、みずから審議会を無視するものであると同時に、
政府は、運輸大臣は、左の手で運賃
値上げを運輸審議会に諮問しつつ、右の手で自民党と閣議はその
値上げ決定を行なってきたのである。これは、私鉄運賃の場合も、米価
値上げの場合も、審議会がみずから公聴会を開き、いまだ審議しているさなかに
値上げ発表を行なってきたことと同じである。こうした
政府の審議会無視の態度は、直ちに国民大衆を無視するの態度といわざるを得ない。このゆえにこそ、経済企画庁の国民生活審議会が、
政府の物価政策は作文にしかすぎないと、怒りを込めて指摘しているのであります。(
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その第二は、去る十九日の運輸
委員会における審議打ち切りの強行である。国鉄運賃問題は、物価の天井知らずの暴騰に苦悩する国民にとって重要な問題であるがゆえに、
日本社会党は九名、民主
社会党は二名の質疑通告を
提出したのである。それにもかかわらず、約半数の質疑者を残して、わが党の久保
委員の
質問中に、突如として質疑打ち切りの
動議をもってその言論を封殺し、
国会正常化を守らねばならないみずからの使命をみずから放棄して、あえてこの暴挙を行なったのである。(
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国会における審議の公正と言論の自由はどこにあるというのか。この事実は、全く許すことのできない議会
政治に対する背反である。
その第三は、今回の国鉄運賃法の改定を前面に押し出した国鉄第三次長期計画の
内容である。
昭和四十年から四十六年までの間に総額二兆九千七百二十億円を投じて過密ダイヤの解消を最大の主眼とすると称する反面で、この
資金の約半額に当たる一兆七千七百四十四億円を自己
資金でまかなうという名目のもとに、これを利用者の肩に押しつけてきたのであります。このことは、国有鉄道が当然
政府の
資金をもって行なうべき事業を、利用者からの収奪、大衆収奪によって強行しようとするものであって、断固として
反対せざるを得ません。(
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国鉄当局は、前回、前々回の
値上げと同様に、今回の運賃
値上げに対しても、輸送増強のためには
設備投資が必要であり、その
資金は運賃によるほかないと言っている。企業に対する資本負担を行なわせる場合、企業は当然負担者に権利を与えなければならない。現在のように、国民を無権の出資者として、それを当然としている
政府並びに国鉄当局の態度こそ問題である。しかも、続出する公共料金の
値上げの中で最大の比重を占める国鉄運賃の
値上げが、他の一般物価に及ぼす影響と公債発行によるインフレの懸念との相乗作用をもって国民大衆の生活にのしかかってくることの重大性について、
政府当局はこれをいかに考慮したであろうか。しかも、国民大衆を無権の出資者とする一方で、さらに、今日の輸送の実情を
政府当局は正確に把握しているのであろうか。戦国乱世の時代なら知らず、いまの世に、押し込み、はぎ取りなどが通常のことばとなり、しかも事実これが行なわれているのは、世界の全交通機関の中で、わが
日本の国有鉄道のみである。
人間を
人間とも思わない詰め込みと、一瞬を誤れば大惨事を引き起こす過密ダイヤに苦しむ国民大衆の上に、さらに運賃
値上げの重圧を加えるに至って、これがどこをさせば
政治といえるのか。交通政策といえるのか。これはまさに暴政であり、弾圧であるといわざるを得ない。
政府は、すみやかにこの法案を撤回すべきである。
次に、以上の実情を打開するために、わが
社会党は、
日本国有鉄道整備緊急措置法案を去る十二月二十八日の衆議院本
会議に
提出しました。これは、運賃
値上げ、過密ダイヤ、通勤ラッシュなどをすみやかにかつ計画的に整備して、利用者サービスをはかることを骨子とし、一、幹線輸送の増強、通勤輸送の緩和などに必要な路線の増設、車両の整備。二、整備事業は
昭和四十一年度を初年度とする十カ年間計画、運輸大臣はこの計画について閣議決定を求めるものとし、
政府も計画完遂に
責任を持つ。三、財源については、所要経費の三分の一の一兆一千億円を
政府出資とする。以上が法案の大要であるが、わが党のこの計画によって、国鉄本来の公共性である陸上輸送の根幹として、大量の乗客、貨物を安全、正確、迅速に輸送することができ、しかも、国家
財政の出資によって、利用者負担の運賃
値上げは避けられる。しかるに、
政府は、この提案に対して何ら誠意ある
対策を示すことなく、今回の
値上げ法案を強行することにただきゅうきゅうとしていたにすぎない。
国民大衆の
値上げ反対の強烈な願望を無視してこれを実施するならば、一般旅客は、当局がいかに家計を圧迫する
値上げではないと説明しようと、実際に駅の窓口に行って自分の支払うべき料金を知ったとき、どんなにか驚き、失望し、かつ怒るであろうか。さらに、これが農民、中小企業者への影響の大きさについても、関係当局はこれを
調査したであろうか。農民の場合、日雇い通勤の多い兼業者は、わずかの賃金から定期外旅客としての高運賃を取られる反面に、農産物の運賃
値上げによって、いまの市場取引、荷受け組織と小売り組織から、農民の手取り価格は相対的に低下する。消費者価格は高くなって、その生活は苦しくなるばかりである。これと同じように、原料費の値上がりと輸送コスト高を他に転嫁すべき手段を持たない中小企業者は、みずからこれを負担せざるを得ません。もしこれを負担することができなければ、そこに待っているものは必然に倒産である。このことは去る十八日の物価問題連合審査会において、わが党
委員より計数をあげて強く指摘したところである。したがって、この国鉄運賃の
値上げは、
値上げエスカレーションの口火となって、さらに重大な結果を招くことは、火を見るよりも明らかである。(
拍手)よって、
政府は、直ちにこの悪法を撤回し、わが党が提案している
日本国有鉄道整備緊急措置法を採用して、輸送の増強と安全をはかり、国民の期待にこたえるべきであろう。
日本社会党は、全国民大衆とともに、
佐藤首相と自民党の諸君にその果たすべき
責任の道を示して、ここに私の
反対討論を終わります。(
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