○横山利秋君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
中小企業、農業、
労働並びに地方
財政の四部門にわたって、
総理以下関係各相の
所信をただしたいのであります。(
拍手)
これらの層には、保守党
政治の失敗の結果が今日集中的に露呈されていると思われます。
総理は先日、
演説で、
経済の
見通しについて、近い将来必ずや栄光に満ちた繁栄の道が
約束されるであろうと言われましたが、今日苦しみあえいでいる
人々にとって、これほど空虚なことばはないと考えられるのであります。(
拍手)
政府は、いたずらにバラ色の夢を振り回すことによって、その根本的
対策を講ずることを逃げているのではあるまいか。いな、むしろ、
自由主義経済の原則に立って、強いものが弱いものを圧倒し、大
企業中心の産業再編成が行なわれ、中央集権によって地方自治体の弱体化をねらっていることを
期待しているのではありますまいか。もしそうでないというなら、以下申し上げる私どもの建設的な
提案に勇敢に応じて、率直な御
答弁を賜わりたいのであります。
まず
中小企業について伺いたい。三十八年の倒産は千七百三十八件、三十九年に至って四千二百十二件、四十年は六千件を突破すること確実であり、一年ごとに倍になっています。しかも御存じのとおり、これは負債額一千万円以上の統計ですから、実際は数倍になるでありましょう。十月にあった印刷会社の社長一家のガス心中事件をはじめ、川口鋼業の社長親子の三人服毒事件、機械部品工場の社長の鉄道自殺事件など、年間を通ずる倒産とその悲劇は、社会問題というより、いまや
人権問題に発展をいたしておるのであります。(
拍手)
池田元通産
大臣は、
中小企業の五人や十人と言っただけで首を切られた。あなた方はそうは言いはしない。しかし、事実はそれ以上にばたばたとつぶれているではありませんか。
総理はもちろん、通産
大臣や
中小企業庁長官はえりを正して、みずからの責任を考えてもらわなければなりますまい。惰性と慢性化した感覚は、正さるべき責任が追及されず、落差のある
政策が実行されず、事態はますます深刻になるばかりであります。
大臣の
経済演説の中にありましたが、経営者の無能とか放漫とかを云々したり、あるいはその努力のみを要求することは、
政府みずからの
政治責任を免れるひきょうなことであり、断じて許さるべきではないと考えるのであります。(
拍手)
昨年の
中小企業白書は、これらの原因を
構造的要因から来たのだと断じました。その言やよし。それならば
政府は、その
構造的要因がなくなるように
政策を立て、それを実行しているかどうか。
要因を分析いたしますと、第一に、技術革新についていけない、第二に、
労働者が足りない、第三に、開放体制にさらされた、第四に、大
企業が
中小企業の
分野に進出した第五に、需要の変化が起こった、第六に、下請系列の再編成で倒産した、第七に、流通の仕組みが変わった、第八に、過当競争でつぶれた等、いろいろの原因があげられますが、これらを具体的に問題を掘り下げてみますと、いずれも大
企業の独占集中と
合理化政策が大なり小なりの影響を与えていることを見のがすわけにはまいりません。
日産とプリンス、住友セメントと野沢、川崎重工と横山工業、丸紅と東通、三井物産と木下、東洋紡と呉羽紡など、大
企業の合併、吸収は
政府の援助を受けてさらに広がるでありましょうが、必ずそこに、下請や関連
企業へのしわ寄せが行なわれ、その実行によって
効果を生じさせるのであります。かりに倒産をしても、会社更生法で、関係
中小企業の犠牲の上に立ち直ること、また各位御存じのとおりであります。
総理に伺いたいのですが、今国会に
政府の
提案した
中小企業向け金融といい、税制といい、
構造的要因を解消するための施策は何もないではありませんか。あなたは、これで二重
構造の解消や倒産がなくなると幻想にふけっているのではありますまいか。
政府の
中小企業政策は、大
企業を援助し、発展させれば、下請や関連産業も潤うであろうという考えらしい。あたかも富士山のてっぺんに大量の砂を投げ込めば、御殿場の辺まで砂がずり落ちるだろうという考えだ。ところがそうはまいりません。富士山のてっぺんには大きな穴がある。大
企業が全部のみ込んで、御殿場の
中小企業まではおこぼれはないというのが現状であります。(
拍手)
私どもはこの際
提案をしたい。第一に、今日の
中小企業庁は弱体で権限がなく、
中小企業の
要望にこたえていません。
中小企業基本法に筋を通し、あなたや
大蔵大臣の言う
経済各部門の均衡のとれた発展を期する軸となるために、
中小企業省を設置すべきである。第二番目に、
政府が仕事をふやして
不況を克服するという。しかし、
政府の仕事がふえて、それをもらうのはほとんど大
企業ではないか。この際、国、県、市町村、公団、公庫の予算の一定量を
中小企業向け需要に確保する立法をすべきである。第三に、大
企業が
中小企業の
分野にめちゃくちゃ進出することを防止する産業
分野の確保に関する法律を
制定すべきである。第四に、
政府金融機関の資金を増加しても、市中銀行が
中小企業向け貸し出しを減らすという弊害を除去するために、銀行法の改正をすべきである。
三木通産
大臣に言いたいのでありますが、あなたはどうも幹のような大
企業のことばかり考えて、枝や根っこのこと、すなわち
中小企業に太陽を当てないし、水や肥料を十分に当てない。
不況の烈風が強くなると、三木自身も倒れることをひとつ腹に入れていただきたいと思うのであります。(
拍手)
公取委員長に伺いたいが、先ほどのあなたの御
答弁を聞きました。あなた自身も認められたとおり、公取の活動は不十分きわまるという批判が強い。不当な大
企業の違反や物価
値上げや不公正取引は白昼公然と横行しているではないか。あなた方公取に寄せられている
期待は実に大きいのに、大
企業は敬遠して
中小企業の問題をばかり追い回しているという批判がある。予算と人員不足を理由になさるが、それで仕事ができないということでは理由になりません。現行法のもとにおいても実に多くの問題が山積している。大
企業の手形のサイトが驚くべき長期の現状をあなたは知らないはずはない。百貨店への出向社員
制度が
中小企業泣かせとなっていること、長年にわたっているではないか。新聞代が突如として一斉に上がったではないか。通産省はじめ各省が石油、繊維その他かってに一斉操短を指導しているではないか。役所のやることなら差しつかえないとあなたは言うのであるか。今回わずか三十人ぐらいの増員や、出先が一つふえたくらいで安んじておられたのでは、法の所期し、
国民が
期待する公取の責任はつとまらないと私は考える。
きのう、セメントの
大手に手入れをされたようであります。この際、勇気を持って、一罰百戒の精神をもって、次々と違反事実を公表し、大
企業の横暴を是正させるべきであると思うが、どうでありますか。深刻な
経済情勢の中で公正取引が行なわれるためにどうあるべきか、公取の機能はいかに発揮さるべきか、この際、あなたは、周囲に顧慮することなく、
所信を披瀝してもらいたいのであります。
次に、私は、具体的事例を二、三あげて、
政府の
中小企業政策の誤りをただし、
転換を求めたいのであります。
その第一は、今日の
政府の
中小企業政策が、
経済ベースにある大
企業に近い優等生の中
企業のみに焦点が置かれ、圧倒的な多数の零細
企業が、何ら
政策の恩恵を受けないという点であります。
第二は、鳴りもの入りの協業化も、団地
政策も、行き詰まりを来たし、
近代化の指定業種方式も、作業はほとんど進んでおりません。
近代化計画で計画が一応できた二十九の指定業種は、総計画額三千百五十七億、
政府資金はわずか二三・八%で、あとは自己資金や借り入れでやれというのでありますから、全く実現不可能、絵にかいたぼたもちということができます。
第三は、声をからして組織化しろと言い、協同組合化を奨励する
政府が、他方、行政面では、協同組合は責任が乏しいからといって、仕事を出すこと、物を買うことを敬遠しているということは、全く言うこととやることと違うではないか。また、
中小企業団体に仕事をまかせようとせず、官僚がなわ張り根性でさいふを握り締め、あげくの果ては、組織の内部介入までするようなことで、
中小企業の組織発展とはおこがましいではないか。どんどん仕事をまかせるべきである。
第四に、人手不足で、家族をあげて家業に全員で働いておる個人
企業で、専従者控除としては、今回の改正をもってしても、月二万円以上は月給として損金に認めないという。三十歳、四十歳の長男、次男が、営業の実際を担当しておっても、月に二万円以下とは何ごとであるか。零細な個人
企業の安定をはかるために、完全給与制を認めるべきではないか。
これらの数々の矛盾は、要するに
政府の
対策が
中小企業の実態に触れず、根本
政策がなく、また真にかゆいところに手が届いていない証拠であります。この際、これらの点について
大蔵大臣や通産
大臣の反省の弁を率直に述べてもらいたいのであります。(
拍手)
次に、農業問題についてお尋ねをしたい。
今日、全国の農家の
人々は、農業の将来に大きな不安を抱いています。
その第一の原因は、
政府が食糧の自給度向上を農政の目標に掲げず、輸入食糧をふやし、選択的拡大と称して、需要の伸びない作物の
生産は減らすというような、農家の希望と目標を見失わせるような農政をとっている点にあります。この結果はどうでありましょうか。最近、
わが国の農業
生産は明らかな停滞を示しました。
昭和三十七年、農林省が公表した農産物の需要と
生産の長期
見通しは大きく狂い、
国民の主食である米の需要は
見通し以上に伸びておるのに、
生産は減退し、昨年の端境期には深刻な米不足の現象すら引き起こして、
国民を驚かせ、
政府は八十万トンをこす輸入を行ないました。
昭和四十一年度には、輸入食糧百万トンが必要だといわれています。麦類は、いずれも作付面積が
見通しよりも二〇%から五〇%も大幅に減少、なたね、レンゲ、トウモロコシ、大豆等の肥料作物も、需要はふえておるのに作付面積の伸びは
見通しを下回り、耕種部門の
生産はいずれも減退をしたのであります。畜産は伸びているとはいえ、乳牛はすでに頭打ちの傾向が強まり、肉牛は明らかに減産しております。このため農産物の輸入は、ここ三年の間に八億
ドルから何と十八億五千万
ドルに激増し、本年は二十億
ドルをこすでありましょう。輸入総額のうち、農産物輸入が四分の一以上も占めるということは、
国民経済全体から見ても看過すべからざることといわなければならない。(
拍手)
わが国の国際収支は、貿易収支は黒字になったとはいうものの、貿易外収支は赤字、さらに広がる傾向にあります。しかも
経済成長で鈍り、低金利
政策がかりに続けば、短期資本が逃げ出すおそれもあり、国際収支の大問題となるでありましょう。国際収支の面からも農業
生産の停滞はきわめて重大な問題であります。また、
国民の主食である米が、
昭和四十一年度には百万トンもの輸入が必要であるといわれるのに、東南
アジア諸国では食糧
生産が停滞する一方、
人口の増加はなはだしく、食糧の輸出余力が低下するなど、将来、
わが国が米を輸入に依存していくことには限度が見られ、
国民生活安定の面からも、この問題はゆるがせにできますまい。
政府は、このような
国民生活、国際収支、ひいては
国民経済全体の立場からも、重大な問題となっている農業出産停滞の責任を真剣に反省しなければなりません。農林
大臣は何をしておられるのか。あなたは一体食糧を増産しているのか、減産しているのか。時、おりしも行政管理庁から、農林省のむだ使いを指摘されましたが、この際、胸に手を当てて自分の仕事を問うべきではありませんか。まず、農家の
人々の不安を一掃し、農業
生産の発展をはかるため、農政の
姿勢を根本的に改め、食糧自給度の向上を農政の
中心に据えるべきだと考えるが、農林
大臣はどうしようというのか、はっきり
答弁をお聞きしたいのであります。(
拍手)
農家の
人々の第二の不安は、
政府が選択的拡大の
中心に置いている作物にさえも、十分な
生産対策をとらないという点であります。その代表的なものは畜産であります。たとえば牛肉の消費は増加しているのに、肉牛の
生産は減退している。原因は何でありましょうか。
政府が牛、豚、鶏を飼えと奨励しながら、えさの
対策が皆無にひとしいという点にあります。国内産の濃厚飼料の供給量はほとんどふえず、輸入飼料が激増しているばかりか、粗飼料の
生産もかけ声だけで、その増産は遅々として進まない。
昭和三十九年の飼料作付面積は四十八万五千ヘクタールで、百万ヘクタールの目標の半分です。草地造成改良事業による草地面積も、目標の五十万ヘクタールの半ばにも達しておりません。
政府は、最近、
消費者物価の値上がりを攻撃されると、農産物の値上がりが大きいためだとか、農家の
生産が
合理化されないためだとか、責任を農家に転嫁するような説明をしばしば行ないますが、その責任は全く農家にはなく、このような飼料
対策を忘れた
政府の畜産
政策をはじめ、農業
生産対策の怠慢にあると考えるのであります。(
拍手)これは肉牛だけではない。養鶏農家もえさの値上がりが最大の悩み、乳牛、養豚の場合も同様であります。
世界各国の場合を見ても、肉類は自分の国の
国民の食
生活に適した、つまり口に合った肉の
生産に努力しており、
わが国が肉類を輸入に依存するということは、
可能性がわりあい薄いのであります。それならば、真に
消費者物価の安定をはかるという立場から考えても、また、農家の所得をふやし、
生活を安定させるという立場からも、
政府は、国の責任で、大規模な草地造成事業、肥料作物の増産
政策を推進し、畜産の基礎づくりを行なうべきだと考えるのでありますが、これを実行する
決意があるかいなか、農林
大臣にお伺いしたいのであります。(
拍手)
農家の第三の不安は、
政府が、農村
人口は大幅に減らしていくという
態度で農業
政策を軽視し、他方離農する
人々に安定した
生活を保障せず、何ら責任ある施策がとられていないという点であります。このため、農業
生産は停滞、農業
人口は農村から流出、しかし中高年齢層の
人々の行き先の多くの職場は、季節出かせぎというきわめて不安定な流出が激増いたしました。そして最近では出かせぎさえ職場がなくなるとか、
中小企業の倒産で農村に帰るという人がふえる傾向が出始めました。五年前の農業基本法国会において、われわれが、農民に安定した就業の保障を
確立せずに大幅な農村
人口の削減を強行することは農民首切りであると指摘したことが、具体的事実となってあらわれてきたのであります。(
拍手)
政府は、すみやかに農民首切り
政策を撤回すべきであります。そのためには、第一に草地造成をはじめ大規模な農用地造成、あるいは裏作の飼料作化などを国の力で推進し、農業の場で働く
分野を広げることであります。第三に、他産業への
就職を希望する農民には、安定した就業を保障し、職業訓練や訓練期間中の
生活保障まで責任をとるような施策を明らかにして、無責任な離農促進をやめることであります。特に、兼業の機会さえ少ない山村や漁村では、昨年の冷害や
災害の打撃まで加わって、
生活水準の格差は一そう大きくなりました。このような山村には、国がまず率先して
国有林
労働者の
雇用安定の模範を示し、
国有林野事業で地元の
人々の働く場所を広げ、山林全体の有効な活用をはかること、また漁村では、これまでのとる漁業から育てる漁業に改造し、漁場を拡大して漁民の働く場所を広げることなど、農業、林業、漁業の
生産の拡大、農民、漁民の働く場所の拡大を国の力で積極的に推し進めるべきだと考えるのでありますが、特に農山漁村の中高年齢層の
人々の安定した就業の保障について、
大臣の
所信を承りたいのであります。(
拍手)
次に、
労働問題について、まず春闘に対する
総理の見解を伺いたい。
総理は、一月二十五日の記者会見で、物価と
賃金の間に密接な関係があることは見のがせない、春闘さえたいした変化がなければ、
物価対策は計画どおりやっていけると述べられた。あたかも、今後の物価動向については、
労働者の
賃金闘争に責任を負わせるかの感があり、きわめて無責任なことばといわなければなりません。(
拍手)現在、付加価値に占める人件費率は、
労働分配率で見ても、欧米の五〇ないし六〇%に比較して、三二%
程度であり、しかも年々この比率が低下していく。このような
状態で、賃上げがコ
ストインフレを招来するという議論は成立しないではありませんか。大
企業を
中心とする放漫な
設備投資が今日の
不況を招いたことは、天下周知の事実ではありませんか。(
拍手)いわんや
消費者物価は、三十五年から四十年までに三七・六%
上昇し、昨年は八%、本年に入ってからは公共料金が先頭を切ってどんどん上がる。一体だれが物価を上げたのか、
政府ではありませんか。(
拍手)だれが困るのか、
労働者ではありませんか。その結果、
労働者の
実質賃金は昨年九月で三・七%も低下している。あなたの時代になって
賃金は下がったのです。
日本の基幹産業や
経済成長率は
世界水準を抜いておるのに、
賃金は欧米よりはるかに低いではありませんか。
総理は、景気を上げるために
生活を犠牲にしようとしておる。あなたの目には産業や株価は映るけれども、
生活と給料袋は目に映らないのではあるまいか。あなたは春闘の真の原因を反省することなく、日経連の主張にのみ耳をかそうとしている。全
日本の
労働者が、総評、全労の区別なく、春闘に立ち上がりつつある。したがって、この春闘は好むと好まざるとにかかわらず、
政治的性格を持たざるを得ない。なぜなら
政府の
経済政策が物価を上げ、
企業には
労働者にしわ寄せをさせる
政策を行なっているからであります。
総理は、この
政治的責任を深く考えてもらいたい。
経済発展の原動力となる働く
人々とその
家庭についてどう考えていられるのか。物価の値上がりに苦しみ、
生活の安定を目ざす春闘への見解をあらためて披瀝されたいのであります。
第二は、当面する
雇用問題であります。現在、経営者は
高度成長政策が招いた
不況を利用して、首切り、下請
臨時工、
社外工などの切り捨て、新規採用の中止、一時帰休など、労務費を減らすためにきゅうきゅうとし、これがため労使の紛争は日を経るに従い大きくなるばかりであります。本年卒業の大
学生をはじめ、
就職難は非常にきびしくなっています。日経連は
日本的レイオフ制を近く決定し、そのために失業保険法の改正を
政府に要求するといわれています。申すまでもなく、これは中馬年齢
労働者の合理的な首切り
制度であり、諸外国の類似のものとは全く異質で、しかも非人間的なものであります。昨年末、
雇用審議会は
雇用政策に関する
答申を出しました。そして、現在の
日本の
労働市場が、中高年齢
労働者が余り、若い
労働者が足りないといっています。これは大
企業中心に、安い
賃金で使える学卒者や若い
労働者に集中的に人集めをした結果であります。それにもかかわらず、
答申も、また
労働省の予定している
雇用対策法も、この中高年齢の
労働者の
雇用対策についてきわめて不十分であります。そして、人間をあたかも物と同様に移動させればいい、あちらからこちらに移せばいいというようにやられようとしていることは、戦争中の国家総動員法と大差ないことでありまして、きわめて遺憾千万といわなければなりません。(
拍手)
これらの不安定就労者を安定せしめるためには、第一に、実効性のある全国一律の最低
賃金制を
確立することであり、第二に、
社会保障制度の抜本的拡充、第三には、住宅施設の拡大が行なわれることが喫緊の前提でなければなりません。
労働大臣に、このレイオフ制や
雇用問題について明確な
答弁を要求いたしたいのであります。
第三は、いま申しました最低
賃金制についてでありますが、
昭和三十四年に法律が
制定されて以来、昨年までには四十万人の
労働者が適用されました。しかし、その方法が業者間協定を
中心とするものであるために、各産業の初任給水準と大きな格差があり、
中小企業では支払い能力が優先しているため、法の目ざす最低
生活を保障する役割りを果たしておりません。われわれが当初以来指摘し続けた欠陥は、明白な事実として証明されたのであります。
これは、現行
制度そのものに原因するものでありまして、いまや
政府自身もそれを認めているところであります。この根本的是正のために、中央最低
賃金審議会は、三十八、三十九年と二回にわたる
答申をしましたし、大橋、石田両
労働大臣も、四十一年中には、全国一律制を含む最低
賃金制度の
確立のために法律案を
提案したいと
答弁してまいりましたが、
労働市場の
構造的変化が進展しておる今日、
労働大臣は、この
約束を実行される気か、またその
内容はどういうものであるか、責任をもって
答弁されたいのであります。(
拍手)
またあわせて、昨年末提出されました臨時家内
労働調査会の報告書によって最低工賃規制の見解が出ましたが、これをどうするか、お伺いをいたします。
最後は地方
財政について伺います。
民主
政治の基盤である地方自治体は危機にあります。普通会計では、三十九年度
実質単年度赤字で六十四億、赤字団体の赤字会計は、前年比三七%に当たる百億の増で三百七十二億の赤字、地方公営
企業の累積赤字は六百六十億、
国民健康保険の赤字団体は三十九年度二千二百二十九団体となり、二百五億の赤字が見込まれています。まさに地方
財政は重大な事態に立ち至っておりますが、
総理はじめ各閣僚の
演説は空虚で根本
対策が何ら講じられていないことは、まことに遺憾なことといわなければなりません。(
拍手)
地方
財政の危機は、戦後二度目のピークを迎えました。前回は
昭和二十九年から三十年にかけてでありますが、今回の危機の原因とは無関係ではありません。当時、終戦以来急激に膨張した自治体の事務に対し、根本的な税財源
措置を怠り、その場その場の思いつきの財源
措置で終始し、特に、後年度に問題を残す地方債の大幅な増額でごまかしてきたのであります。今回もまた、
政府は
不況になると、回復策として公共事業を拡大するのでありますが、その結果増大する地方の負担額に対しても、根本的な考慮を払おうとしません。
政府・与党につながる自治体の長や各級の議員もまた陳情
政治に身をやつし、かくて地方は中央の下請、出張所と化し、超過負担はしいられ、地方債の償還費は増加し、本来の
住民福祉につながる仕事は放棄されざるを得なくなっているのでありまして、かくて
財政は中央集権化し、大
企業の節度や計画性のない
設備投資に自治体が奉仕し、いまや抜き差しならぬ事態が全国津々浦々の地方自治体を襲っているのであります。(
拍手)
自治
大臣に伺います。あなたはこの地方
財政の危機を御存じのはずだ。それにもかかわらず、四十一年度予算編成に際し、何ら過去を反省することなく、また将来を展望することなく、またぞろ過去のわだちを踏んだのはどうしたことでありますか。四十一年度の地方
財政不足額を、当初三千三百六十億円以上と見込んでおきながら、ふしぎなことに、大蔵省の圧力に屈しられたのか、わずか二千二百八十億に妥協して圧縮した理由は何であるか、理屈も何もない、地方自治体を無視した身がってな計算がどこから出たのであるか。このようなことを繰り返すから、事態の
解決はぼかされる。また、この
措置として一般財源の投入一千億の上に千二百八十億の赤字地方債、
再建債を押しつけられている。全くの一時
解決だ。これでは四十二年度以降再び大幅な財源不足でにっちもさっちもいかなくなること、明白ではないか。一体いつまでこの妥協に妥協を重ねたような
状態を繰り返すつもりであるか、この際
財政構造の根本に欠陥があることを肝に銘じてもらわなければなりません。言うまでもなく、まず国、地方を通ずる行政事務を再配分し、それに見合う税財源を再配分することが必要であります。今回の予算編成に不信を買った自治
大臣は、この地方
財政の危機に対処する長期の
方針を明らかにする責任がある。国会を通じて、地方自治体に明白に示してもらいたいのであります。(
拍手)
なお、
国債発行に伴い公共事業の拡大が行なわれるが、必然的に地方負担額が増加する。現在の歳出
構造のもとでは、国で公共事業の増額があると、その五割の地方経費が必要であり、
社会保障費なら三割、給与改定の場合には国の所要経費に対して、逆に十五割の比率で地方経費が必要となる関係にあるといわれておる。
大蔵大臣は、この際、国の負担割合を増額し、あわせて超過負担額の解消をはかる
決意があるか、具体案を示してもらいたい。さらに、赤字地方債千二百八十億、地方公営
企業再建債二百億の元利償還を今後国庫負担とする考えがなければ、将来への
解決にならずと考えるが、
所信を承りたいのであります。(
拍手)
次に、財源に因って今度固定資産税と都市計画税で百億の増税が
提案されている。これは奇怪なことといわなければなりません。三十九年の国会審議の際、院外の各階層のほうはいたる抗議を受けて、自治
大臣は次のように言明をされた。すなわち、固定資産税の評価並びに増税については、暫定期間三年の経過後に行なわれる恒久
措置においても、暫定
措置において講じたとほぼ同様の税額調整を行なうと、明白に言明したではありませんか。それにもかかわらず、いま三年の予定を一年かってに繰り上げて、四十一年から固定資産税を最高三割増税し、七十八億の税収を得ようとしています。国会を軽視するつもりであるか。
国民にうそを言ってまかり通ろうというのではありますまいか。自治
大臣は、交代したとはいえ、当然過去の経過と
約束に責任を持たなければなりません。いかがでありますか。自治
大臣には、この間の経緯を明らかにし、
約束を履行し、増税を取りやめる説明を承知したいのであります。(
拍手)
以上、
政府の
経済政策の失敗が及ぼした四つの層の問題点を摘出いたしました。
総理以下、関係閣僚の誠実な
答弁を要求いたしまして、私の質問を終わることにいたします。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕