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1965-12-28 第51回国会 衆議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十八日(火曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和四十年十二月二十八日    午後二時開議  第一 昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案内閣提出)  第二 昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案内閣提出)  第三 石油ガス税法案内閣提出)  第四 農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  検察官適格審査会委員及び同予備委員選挙  中央更生保護審査会委員任命につき事後承認を求めるの件  日本放送協会経営委員会委員任命につき事後同意を求めるの件  社会保険審査会委員長任命につき同意を求めるの件  日程第一 昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案内閣提出)  石油ガス譲与税法案内閣提出)  日程第二 昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案内閣提出)  日程第三 石油ガス税法案内閣提出)  日程第四 農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案内閣提出)  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明及び質疑  日本国有鉄道整備緊急措置法案久保三郎君外七名提出)の趣旨説明及び質疑  午後二時七分開議
  2. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  検察官適格審査会委員及び同予備委員選挙
  3. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 検察官適格審査会委員及び同予備委員がそれぞれ二名欠員となっておりますので、この際、その選挙を行ないます。
  4. 海部俊樹

    海部俊樹君 検察官適格審査会委員及び同予備委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  5. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。  議長は、検察官適格審査会委員に       羽田武嗣郎君   中村 高一君を指名いたします。  また、同予備委員に       浦野 幸男君   重盛 寿治君を指名し、浦野君を草野一郎平君の予備委員、また、重盛君を中村高一君の予備委員といたします。      ————◇—————  中央更生保護審査会委員任命につき事後承認   を求めるの件  日本放送協会経営委員会委員任命につき事後   同意を求めるの件
  7. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) おはかりをいたします。  内閣から、中央更生保護審査会委員一木糟太郎君、藤野庄蔵君を、日本放送協会経営委員会委員池松文雄君、頼母木眞六君、平塚泰蔵君、我妻榮君を任命したので、それぞれその事後承認または同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり決するに御異議はありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも承認または同意を与えるに決しました。      ————◇—————  社会保険審査会委員長任命につき同意を求め   るの件
  9. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 次に、社会保険審査会委員長久下勝次君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに御異議はありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————  日程第一 昭和四十年度分の地方交付税の特   例等に関する法律案内閣提出)  石油ガス譲与税法案内閣提出
  11. 海部俊樹

    海部俊樹君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、日程第一とともに、内閣提出石油ガス譲与税法案を追加して両案を一括議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  12. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 海部俊樹君の動議に御異議はありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  日程第一、昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案石油ガス譲与税法案、右両案を一括して議題といたします。     —————————————
  14. 山口喜久一郎

  15. 中馬辰猪

    中馬辰猪君 ただいま議題となりました二法案について、地方行政委員会における審査経過並びに結果につき御報告申し上げます。  まず、昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案について申し上げます。  本案は、地方公務員給与改定を九月から実施するための財源地方公共団体に付与する等のため、昭和四十年度地方交付税総額を当初予算計上額に三百億円を加算した額とするとともに、普通交付税総額普通交付税の額の算定に用いる単位費用等特例を設け、あわせて昭和四十一年度から昭和四十七年度までの各年度地方交付税総額特例を設けようとするものであります。  本案は、十二月二十一日当委員会に付託され、同日永山自治大臣から提案理由説明を聴取し、二十三日質疑に入り、昨二十七日、質疑を終了、採決の結果、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、日本社会党安井吉典君から、本案に対し、少数意見報告書提出したい旨の発言がありました。  次に、石油ガス譲与税法案について申し上げます。  本案は、都道府県及び六大市の道路財源を充実強化するため、石油ガス税収入額の二分の一に相当する額を、石油ガス譲与税として、都道府県及び六大市に対し、その区域内にある国道及び都道府県道の延長及び面積に案分して譲与することを骨子とするものであります。  本案は、昨十二月二十七日付託され、同日永山自治大臣から提案理由説明を聴取し、本二十八日、質疑を終了しましたところ、亀山孝一君外二名から、石油ガス税法案修正に伴い、本法の施行期日昭和四十一年二月一日に延期すること等を趣旨とする修正案提出され、討論を省略して採決の結果、修正案及び修正部分を除く政府原案賛成多数をもって可決され、よって、本案修正議決すべきものと決定した次第であります。  右御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  16. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 両案中、昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案に対しては、安井吉典君より、成規賛成を得て、少数意見報告書提出されております。     —————————————  〔少数意見報告書本号末尾掲載〕     —————————————
  17. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) この際、少数意見報告を求めます。安井吉典君。  〔安井吉典登壇
  18. 安井吉典

    安井吉典君 私は、ただいまの地方行政委員長報告のうち、昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案について、地方行政委員会において留保した、本案を否決すべきであるとの少数意見を御報告申し上げます。(拍手)  本案に対する地方行政委員会における審議において、各委員からしばしば指摘されましたごとく、地方財政は、自民党政府高度経済成長政策のあおりを受け、昭和三十六年度を峠に悪化方向に転じ、年々収支状況が悪くなってまいりました。この地方財政悪化の一般的な傾向の上に、昭和四十年度は思いがけない新しい重大な事態が発生したのであります。これが法人税など国税の二千六百億円に近い大幅な歳入減という事実であります。これは、政府経済政策の失敗から、深刻な経済不況のため、予期していた税収が得られなかったものでありましょうが、景気回復策とし、全く無理な公共事業等歳出予算を組み、歳入では法人税などをことさらにふくらませ、収支のつじつまを合わせていたのがいま馬脚をあらわし、ここに破綻を生じたというべきであり、このような全く弁解の余地のないでたらめな財政運営を行なう政府に、国民は一日も国の財政をまかせておくわけにはいかないという論議が行なわれました。  そして、この国税減収地方財政にきわめて大きな影響をもたらし、すなわち、一、政府が当初予算において法人税等国税三税の大幅見積もり違いをし、そのため今度の補正予算において減額補正を行なったことから、地方交付税額が五百十二億円に近い落ち込みを来たしたこと。二、地方税企業課税法人税額に応ずるため、法人税減収のため、地方税減収もかつてない五百三十二億円の大幅額にのぼること。三、国家公務員に対する給与改定人事院勧告に準じ地方公務員給与改定を行なうための財源措置、その他ことしの相次ぐ災害対策のための財源措置が必要になったこと。以上のような重大な事態に対し、政府は、ただいま議題となっております昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案と、財特法と略称されております昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案とで措置しようとしているのでありまして、その内容は、一、交付税減収額は、減収がなかったものとするよう補てんすること。二、交付団体給与改定九月実施財源三百六十八億円に対しては三百億円だけ交付税をふやすが、この三百億円は特別会計の借り入れで七年間で返済する。すなわち後年度交付税先食いとする。三、五百三十二億円にのぼる地方税減収には四百億円の起債ワク増加措置するというものであります。  地方行政委員会においては、この政府措置の多くの矛盾問題点論議が集中され、一、交付税落ち込みは、国税三税の減収実態に照らし、現行二九・五%の交付税率が低過ぎることを意味するのだから、この率を引き上げる形で補てんすべきこと。二、国家公務員給与改定に対する人事院勧告は、公務員からスト権を剥奪した代償措置であり、したがって、勧告どおり五月から完全に実施すべきであり、地方公務員もこれに準じ五月改定として措置すべきである。また、その所要額は、地方の当然の財政需要増加だから、交付税率の引き上げにより措置すべきである。三、政府案では、ことしの国の財源不足だからといって、ことしの給与改定費を後年度交付税先食いするようなことでまかなうことは、将来地方財政がますます苦しくなってくることが予想されるだけに、禍根を今後に残すものであること。四、地方税減収補てんには四百億の起債では少な過ぎる等の鋭い指摘が、自民党を除く社会、民社各委員から行なわれたのでありました。  ことに、重大な問題は、前述の政府提出のいわゆる財特法案でありまして、大蔵委員会付託のこの法案は、赤字公債発行のための財政法改正と、もう一つは、地方行政委員会付託のこの地方交付税特例法案歳入措置を規定した交付税及び譲与税配布金特別会計法改正、この二つ部分によって成り立っているのであります。赤字公債発行交付税特別会計法とは、本来はこれは全く無関係でありますものを、この二つとも昭和四十年度の異常な税の収入減に対する特別措置であるという点で共通しているという趣旨で、財政処理特別措置に関する法律案とし、政府は一本にして国会提出しているのでありますが、これは不合理きわまる措置であると私どもは思うのであります。(拍手)  俗にみそもくそも一緒にすると言いますが、赤字公債発行は、わが国の財政政策に重大な転機を画し、ことによれば財政破壊に導くかもしれない、国民の好まざる、いわばくそ的提案であります。地方交付税特別措置は、地方財政対策であるため、欠点は多いが、いわばできの悪い栄養不十分なみそともいうべき提案であります。ところが、このみそ法案とくそ法案とを本来ならば別々な法案として国会提出すべきであるのを、政府は戦術的に一つ財特法の中に抱き合わせで提出したものであり、この二つは全く本質も違うし、みそとくそと、あるいは色だけは似ているかもしれませんが、それを一緒にしてしまうというふうなたぐいであり、かかる財特法提案政府態度国会審議のたてまえからも許すべからざるところであると論ぜられたのでありました。  そこにおいて、社会党は、昭和四十年度地方交付税総額等特例に関する法律案提出いたしましたが、委員会説明されました社会党案の要旨は、  第一に、昭和四十年度限り地方交付税率現行の二九・五%から三四・一%に引き上げ、これにより交付税落ち込みを補てんし、交付団体給与改定を五月から実施するための財源として交付するものであります。  第二に、交付税歳入法である交付税及び譲与税配付金特別会計法、同法の二九・五%を昭和四十年度に限り三四・一%と読みかえるものといたしております。  なお、第三に、社会党では、地方税減収補てん災害対策等地方財政需要増加に対応するため、地方債政府措置に加え、さらに、政府資金で三百億円を増額措置するよう、別に財政投融資計画の組みかえを要求いたしているのであります。  以上の社会党提案は、地方行政委員会付託政府提案に対する代案でありますとともに、これは大蔵委員会付託政府提出財特法案代案たる性格を兼ね備えるものであります。すなわち、この社会党提案さえ可決されれば、地方行政委員会政府提出地方交付税特例法案大蔵委員会財特法案も、両案ともに否決してもよいものであり、とりわけ、後ほど提案される財特法が否決されましても、地方財政には十二分の措置が行なわれますし、かつ、国民の大きな不安の種となっております赤字公債発行の道がなくなることになるものであります。しかるに、地方行政委員会においては、社会党案は無視されたまま政府案のみ多数で可決され、いま本会議に上程されているのでありますが、私は、多くの矛盾点問題点を持つ本案を否決すべきであるとの地方行政委員会における少数意見をここに率直に御報告申し上げる次第であります。(拍手)     —————————————
  19. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 両案中、昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案につき討論の通告があります。これを許します。細谷治嘉君。  〔細谷治嘉登壇
  20. 細谷治嘉

    細谷治嘉君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案に反対し、わが党提出昭和四十年度地方交付税総額等特例に関する法律案賛成討論をいたしたいと思います。(拍手)  本案は、去る八月十三日行なわれました国家公務員に対する人事院給与改定に関する勧告に準じて地方公務員給与改定を九月から実施するに必要な財源措置を行なおうとするものであります。地方財政計画ベースで計算をいたしますと、必要財源合計四百九十三億円となるのでありますが、人事院勧告どおりに五月から実施することにいたしますと、必要額合計七百四十億円と相なり、その差額は二百四十七億円であります。  申すまでもなく、人事院勧告は、公務員労働基本権を剥奪した代償として行なわれるもので、公務員の生活と権利を守るために完全に実施すべきものであり、このことは、ドライヤー委員会報告をまつまでもなく、政府地方自治体の当然果たすべき責務だと言えるのであります。(拍手)  ところが、政府は、財源不足等理由として、今日まで一回も勧告を守ったことがなく、実施時期を大幅にずらしてまいったのであります。日韓交渉にあたっては、八億ドルをこえる巨額の金を、無根拠のつかみ金で惜しみなきがごとく支出しようとしながら、年々歳々人事院勧告を値切り、法律制度の精神を踏みにじってまいった責任はきわめて大きく、まことに遺憾なことと申さなければなりません。私が政府案に反対する基本的理由はここにあります。  政府案によりますと、関係単位費用を暫定的に改定し、交付税方式基準財政需要額を算定し、他方収入額は固定し、その差額によって三百億円を配分しようというものであります。その結果、交付、不交付の別は、八月の普通交付税段階で必然的に固定されるという不合理を生じております。すなわち、三百億円は交付団体のみに配分され、不交付団体はほとんど全くこの措置にあずからないのであります。のみならず、交付団体必要不足額の六十八億円は節約を強制することによって糊塗され、不交付団体に対しては、財源のすべてを節約に求め、昨年に比し二割五分増の百二十五億円の節約となっておるのであります。一体、このような節約は可能でありましょうか。周知のように、国税の二千六百億円になんなんとする減収は当然地方自治体にも及び、地方財政計画ベースで見積もっても、すでに五百三十二億円の減収が見込まれるのであります。これに対して政府は四百億円の地方債増加することによってお茶を濁そうとしておるのでありますが、なお不足額は百三十二億円に達するのであります。この点を勘案いたしますと、交付団体は、昨年に比し実質的にはわずか四十億円、地方債を加えても二百三十億円の財源措置を受けたにすぎないことになり、他方、不交付団体に至っては、地方債以外にたよるべき財源はなく、各地に起きておる公共事業の返上に見られるとおり、極度財源不足におちいっておるものと考えられるのであります。  これに関連して指摘しておかなければならない点は、地方公営企業職員給与改定財源であります。現在、各種の地方公営企業は、極度累積赤字に悩み、政府の適宜な対策が強く要望されているのでありますが、今回は何らの具体的措置が示されておらないのであります。公営企業に従事する職員もまた地方公務員であり、当然国家公務員に準じて給与改定実施すべきことは論をまたないところであり、まことに遺憾に思う次第であります。  地方財政危機の一面は、地方税収入の激減に象徴されておるのであります。試みに、最近の地方税収納状態を見ますと、昭和三十八年度においては、財政計画額に対して一五%の伸びを示し、千五百六十億円に近い増収がありましたが、三十九年度はわずかに七%と急減し、本年度においては逆に四%近く落ち込むものと予想されているのであります。昨年までは国の財源措置不足地方税の若干の伸張によってかろうじて処理できたのでありますが、今年度はいかにさか立ちしても不可能だと申して過言でないのであります。政府当局は、今回の措置によって、府県は八三%、市町村に対しては七八%の財源充当になると称していますが、これは実態に目をおおった、きわめて部分的、皮相的な見解といわねばならず、地方団体のとうてい納得しがたいものといわざるを得ません。自治省当局が毎年策定する地方財政計画は、実際の決算額に比較すると、大幅に下回り、およそ七割五分程度にすぎないのであります。人件費においても同様で、今回の措置も、実際には府県七割五分程度、市においては五七%前後の充当率と見込まれるのであります。今日の地方自治体が、超過負担に窮し、公共事業を返上し、自治体としてぜひとも必要とする単独事業などを極度に圧縮せざるを得ない原因は、まさしくここにあると言えるのであります。  政府は、今回地方交付税落ち込み分五百十二億円を補てんし、地方税減収に対しては四百億円の起債を充当し、そして給与改定財源として三百億円を措置したことをもって、温情あふるる措置と自画自賛しているようでありますが、この態度、姿勢こそが今日の地方財政破綻をもたらしたものといわなければなりません。(拍手地方交付税落ち込みは、政府みずからの税収見積もりの過大から生じたものであり、政府責任において補てんすべきことは当然と申さなければなりません。さらに、給与財源としての三百億円は地方交付税先食いであり、今後七カ年にわたって返済を要するのであります。したがいまして、文字どおりの借金政策であって、地方団体にとっては泣きつらにハチの感さえあるのであります。  これに対して、わが社会党案は、国と地方との財政実情を勘案しつつ、無謀な公債政策を排除して、地方財政破綻から救い出し、地方公務員に対しては人事院勧告に準じて給与改定を完全に実施し得るよう措置したものであります。すなわち、地方交付税率を本年に限って国税三税の三四・一%に引き上げることによって、交付税落ち込み分を補てんすると同時に、後年度交付税先食いによらず財源措置を講ずることといたしております。もちろん、これだけの措置をもってしても、地方財政の現状から見れば十分だと申すことはできないのでありますが、政府案に比し数段まさるものと断言できるのでありまして、私は心から賛意を表したいと思います。(拍手)  いま地方財政は未曾有の危機に立っているといわれております。試み政府の明年度地方財政対策なるものを見ますと、地方税及び交付税の横ばいに対して、投資的経費の著しい増大が予想されるのであります。かりに公債七千億円、減税平年度三千億円、公共事業伸び率を二割と想定してみますと、約三千四百億円の歳入不足が見込まれるというのであります。これに対し、自治省は、定年制法定化補助職員制度の整理、人事院勧告の再検討、府県合併による人員の削減などを具体化し、他方固定資産税住民税の増徴、使用料、手数料の値上げなどによって収支のバランスをとろうと懸命の様子であります。一方、大蔵省は、一時的な臨時交付金をもって糊塗し、地方公務員法の改悪によって人件費を抑制し、地方税の増税と縁故債の拡大によって公共事業を拡大させようと企図しているといわれます。このことは、長期財政構想の一環として地方財政再建計画を樹立させ、公債政策の中に地方自治体を組み入れようとの意図だと申さなければなりません。  この意味において、公債発行を前提として提案された政府案は、困窮する地方財政を救出する方向をたどっておらず、逆に一そう危機を深める危険性を本質的に持つものだと理解せざるを得ないのであります。(拍手)  以上、私は、政府案であります昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案に反対し、日本社会党提出地方交付税総額等特例に関する法律案に心から強く賛意を表明いたしまして、討論を終わります。(拍手
  21. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて討論は終局いたしました。  両案を一括して採決いたします。  両案中、昭和四十年度分の地方交付税特例等に関する法律案委員長報告は可決、他の一案の委員長報告修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。  〔賛成者起立
  22. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。(拍手)      ————◇—————
  23. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 日程第二、昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案日程第三、石油ガス税法案日程第四、農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案、右三案を一括して議題といたします。     —————————————
  24. 山口喜久一郎

  25. 吉田重延

    吉田重延君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、大蔵委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  初めに、昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、昭和四十年度における租税及び印紙収入経済情勢の停滞によって異常な減収を見込まれる等の事態に立ち至りましたので、これに対処するため必要な財政処理特別措置を講じようとするものであります。  この法律案内容を概略申し上げますと、  第一は、公債発行であります。昭和四十年度租税及び印紙収入は、当初見込みに対し二千五百九十億円の大幅な減少を来たす見通しとなりましたので、この減少を補うため、昭和四十年度限りの臨時特例として、政府は、財政法第四条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内で公債発行することができることとし、右国会の議決を経ようとするときは、その公債の償還計画を国会提出しなければならないことといたしております。なお、この公債発行は、昭和四十年度一般会計歳出予算の翌年度繰り越し額の範囲内で、昭和四十一年度においても行なうことができることといたしております。  第二は、交付税及び譲与税配付金特別会計につきまして、一般会計からの繰り入れ額の特例措置及び借り入れの措置を講ずることといたしております。昭和四十年度においては、所得税、法人税及び酒税の収入見込み額の減少に伴い、地方交付税交付金は五百十二億円だけ減額することとなるのでありますが、地方団体財政事情の現況にかんがみ、特にその減額を行なわず、これを当初予算計上額どおりとすることとし、また、昭和四十年度分に限り、国税三税の収入決算額の増減による後年度精算は行なわないことといたしております。  次に、今般地方公務員給与改定に必要な経費の財源に資するため、地方交付税総額を三百億円増額する措置がとられることになりますので、これに伴い、交付税及び譲与税配付金特別会計におきまして、昭和四十年度において三百億円を限り借入金をすることができることとし、右の金額については、昭和四十一年度以降七カ年度にわたり返済が行なわれるよう措置するとともに、利子の支払いに充てるため、必要な金額は予算で定めるところにより、一般会計からこの会計に繰り入れることといたしております。  なお、これらの措置に伴い、国債に関する法律第一条を改める等、所要の規定の整備をはかることといたしております。  以上がこの法律案内容でありますが、本案は、去る十二月二十日大蔵委員会に付託せられ、以来、連日大蔵大臣の出席を求めて慎重な審査が行なわれ、二十四日には参考人を招致して、本案に対する意見を聴取いたしました。  かくて、昨二十七日、質疑を終了し、討論を行ないましたところ、有馬輝武君は日本社会党を代表して本案に対し反対の意見を表明せられ、次いで、木村剛輔君は自由民主党を代表して賛成の意見を、また、竹本孫一君は民社党を代表して反対の意見を、それぞれ表明せられました。  次いで、採決いたしましたところ、多数をもって本案原案のとおり可決となりました。  続いて、石油ガス税法案について申し上げます。  この法律案は、最近における自動車の燃料用石油ガスの消費の状況にかんがみ、揮発油に対する課税との権衡等を考慮して、新たに石油ガス税を設けようとするものであります。  すなわち、自動車燃料用の石油ガスについて、石油ガスの充てん場からの移出、または保税地域からの引き取りを課税原因として、その充てん者または引き取り者に対し、石油ガス一キログラムにつき十七円五十銭の税率で、昭和四十一年一月一日から石油ガス税を課することとし、これに伴う所要の規定につきましては他の間接国税の例にならって定めることといたしております。  なお、本案につきましては、当初、去る第四十八回国会提出せられ、自来、本院において継続審査に付されておりましたところ、第五十回国会審査未了となり、今回再度提出された経緯のありますことを申し添えておきます。  以上が本案の概要でありますが、本案に対しましては、山中貞則君より、自民、社会、民社の三党共同提案にかかる修正案提出されました。この修正案は、石油ガス税が新規課税であり、納税者の負担の実情等をさらに十分考慮する必要があると認められますので、その負担の激変を緩和する等、所要の規定について修正を行なおうとするものでありまして、おもなる内容は次のとおりであります。  まず第一に、この法律施行期日を一カ月延期し、昭和四十一年二月一日から施行することといたしております。  第二に、税率を暫定的に軽減することとし、昭和四十一年分は一キログラムにつき五円、昭和四十二年分は一キログラムにつき十円とし、昭和四十三年分以降は一キログラムにつき十七円五十銭の本則税率を適用することといたしております。  第三に、移出にかかる課税石油ガスについての石油ガス税の納期限を一カ月延期し、移出した月の翌々月の末日までとすることといたしております。  第四に、課税石油ガスの販売代金の領収不能の正当性について、所轄税務署長の承認を受けたときは、翌月以降の申告税額からその領収不能分に対する税額を控除することができることとするとともに、その後、領収不能としてこの税額控除の適用を受けた販売代金を領収したときは、その領収分に対する税額を申告納付しなければならないことといたしております。  次いで、本修正案について内閣の意見を聴取いたしましたところ、福田大蔵大臣より、この程度修正はやむを得ない旨の意見が述べられました。  かくして、原案並びに修正案につきましては、慎重審査の結果、昨二十七日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、修正案は全会一致をもって、修正部分を除く原案は多数をもって可決され、よって、本案修正議決となりました。  最後に、農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、本年春の異常気象並びに収穫期の台風等により水陸稲の被害が異常に発生し、これに伴いまして農業共済保険特別会計の農業勘定における再保険金の支払いが増加する等のため、同勘定の支払い財源不足が生ずる見込みでありますので、一般会計から十六億三千百万円を限り、同勘定に繰り入れることができることとしようとするものであります。  なお、この繰り入れ金につきましては、将来この会計の農業勘定におきまして決算上の剰余が生じた場合には、再保険金支払い基金勘定に繰り入れるべき金額を控除した残額を一般会計に繰り戻さなければならないこととしております。  本案は、審査の結果、昨二十七日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決となりました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  26. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 三案中、昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案につき討論の通告があります。順次これを許します。藤田高敏君。  〔藤田高敏君登壇
  27. 藤田高敏

    ○藤田高敏君 私は、ただいま議題となっております昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案に対し、日本社会党を代表して意見を述べ、反対の討論を行なうものであります。(拍手)  まず、その反対理由の第一は、この特例法案を制定しようとすること自体の不法不当性についてであります。  すなわち、現行財政法は、その制定の経緯から見ても明らかなごとく、新憲法公布直後、憲法の実体基本法として、その第四条、第五条を柱に制定されたのであります。そしてその立法趣旨は、第一には、戦争の危険性を防止すること、第二には、特定な支配階級奉仕への財政を排除して、財政の民主主義を保障すること、第三には、インフレと通貨の膨張を抑制することによって、平和的な国民生活の保障を約束しているものであって、新憲法第九条の平和主義を財政の立場から保障しているものであります。(拍手)かかる重要な新憲法体制の一環をなす基本法を、特例法をもって改正せんとするがごときは、まさに本末転倒もはなはだしく、これは一個の法律をもって憲法を改悪せんとするがごときたぐいであり、暴挙であり、この行為は違法不当のそしりを免れないといわざるを得ないのであります。(拍手)  第二の反対理由は、特例法制定の裏に隠されているその政治的意図の不当さとその内容の不法性についてであります。  この特例法制定の目的は、表面は赤字財政の一町穴埋めにあるかのごとく見えますが、その真の意図するものは別にあるのではないでしょうか。すなわち、それは、この法律によって一度赤字公債発行を認めさすことにより、財政面から日本の平和と民主主義のとりでを取りこわし、具体的には安保条約と日韓条約との結び目を通して、さらには来たるべき昭和四十一年度から繰り上げ実施が予定されている第三次防衛計画とも具体的にからみ合って、日本をしていつか来た道に引きずり込もうとする隠された政治的意図があるからであります。誤れる歴史は、平和を愛する国民日本社会党の力において再び繰り返してはならないからであります。(拍手)  また、この特例法そのものの内容は、昭和四十年度における一般会計予算中、二千五百九十億にのぼる歳入欠陥を、純然たる赤字公債によって補てんしようとしているのでありますが、そもそも現行財政法は、このような財政処理のあり方自体を禁止しているところでありまして、してはならないと規定しているものを無視するものでありますから、これほど無法、不当な政治行為はないといわざるを得ないのであります。(拍手)  反対する第三の理由は、法案それ自体の提案の時期と審議のあり方の不当性についてであります。  かかる重要法に手を触れざるを得ない場合には、その提案は通常国会、もしくは時間に制限を受けない条件の中で十分審議討論を尽くすべきであります。しかるに何ぞや、さきの臨時国会にこれを提出し、あわよくば日韓条約のどさくさまぎれに一瀉千里にこれを可決さそうとしたのであります。何たるあさましい考えでありましょう。ところが、たまたまさきの臨時国会があのような姿で終末を告げるやいなや、今度は、形こそ通常国会でありますが、その年内成立を企図して、強引な追い打ち審議をかけてきたのであります。かかる短期間で審議、決定しようとすること自体に、この法案が意図する欺瞞性があるといわざるを得ないのであります。(拍手)  続いて反対する第四の理由は、かかる歳入欠陥を生じさせたその政治責任の所在と、政府財政方針に対する一貫性の欠除についてであります。  そもそも、かかる不法不当な特例法を制定してまで、その一般会計の赤字を処理しなければならなくなった原因と、その責任の所在は、いずこにあるのか。佐藤内閣に、はたしてその責任をとろうとするまじめな政治姿勢があるのだろうか。責任ある政党政治のたてまえからも、事はきわめて重大であるといわなければなりません。  この責任は、言うまでもなく、歴代自民党内閣のとってきた高度成長政策を中心とする経済政策の完全な失敗と、いま一つは、佐藤内閣の四十年度当初予算における全くずさんきわまりない歳入見積もりの誤りにその原因と責任があることは、あまりにも明確であります。(拍手)かかる前代未聞の巨額な歳入欠陥を生じさし、国家の財政運営に、あるいは地方自治体に、あるいは国民全体に、はかり知れない迷惑を及ぼしたその責任はきわめて重大であります。佐藤内閣に政権担当の資格なしといわれても、しかたありますまい。  しかも、どうでありましょう。かかる巨額の歳入欠陥の生じることは、昭和四十年度予算執行の始まった当初において、すでに判明していたということではありませんか。このことを早く国会で表明をすると、その財政処理責任について野党の追及を受け、かつ、財政処理のあり方については、去る本会議におけるわが党提出補正予算組み替え案に見られるような、インフレなき不況克服政策を用いざるを得なくなることをおそれて、年末までこれを隠蔽し、そして、かかる不当なものといえども、どうしても成立させなければ、国庫や地方財政に重大な支障が起こるかのごとく装い、その責任を免れようとしておるのであります。まことにそのやり方においてもフェアプレーではありません。  また、佐藤内閣財政方針、公債発行に対するその一貫性の欠除たるや、まことにあわれむべき不定見さであります。その実態は、すでに本案に対する本会議におけるわが党の平岡議員の質疑によって余すところなく糾弾したところでありますが、いま一度角度を変え、過ぐる夏の臨時国会における大蔵委員会質疑経過を紹介いたしますと、大蔵大臣は、公債発行は、昭和四十三年度までは発行しない、追い詰められた赤字公債発行しない、公債発行は不況を克服してから行なう、公債発行よりも物価安定が先だと、公債発行に関する四原則ともいうべきものを、大蔵大臣は委員会において言明いたしておるのであります。佐藤総理、福田大蔵大臣、どうでありましょうか、あなたたちの言っておることは全部うそになってしまったではありませんか。(拍手)実に重大な公約違反であり、先に触れた歳入欠陥の責任とあわせて、この責任は、内閣総辞職に十分値するものであります。(拍手)しからずんば国会を解散して、その政策転換の可否を国民に問うべき責任があると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  続いて反対する第五の理由は、公債発行理由が景気対策に重点が置かれ、当面の経済不況を克服する、その政策手段においてさか立ちしておるからであります。  福田大蔵大臣が夏の臨時国会ではしなくも言及したごとく、現在の不況を克服する政策手段は、インフレの収束と物価安定が優先しなければならないと言ったのであります。しかるに政府は、依然として資本のための景気回復を先行さしているではありませんか。この政策推進の結果は、すでに今日までに試験済みであります。すなわち、佐藤内閣のとってきた、年度早々予算の一割留保をきめたかと思うと、つかの間に取りやめたこと、公共事業費と財政投融資の繰り上げ支出と、ワクの拡大等による政府需要の増大策といい、信用膨張政策としての公定歩合の再々引き下げ、共同証券や山一証券に対する無軌道な資金援助と、これら株式市場に対する政府資金のめちゃくちゃなてこ入れ、不況カルテルの促進等々、数多くの景気対策を講じたけれども、何らの実効もあがっていないではありませんか。逆にその結果は、インフレと相次ぐ物価高、受注難と中小企業の連続倒産、投資意欲の減退と在庫量の増大、帰休制の慢性化と就職難となって、まことに憂うべき現状を呈しておるのであります。佐藤総理、福田大蔵大臣、これでもまだあなたたちは大資本家のために忠誠を尽くすのですか。来年早々の米価値上げ、国鉄運賃、私鉄十四社の料金値上げ、郵便、電話、健康保険料等々の各種公共料金の引き上げは、これは一体どうしたことでありましょうか。四十一年度だけでも、これらの総引き上げで大衆から三千五百億もの収奪を断行することになっているではありませんか。国民大衆は、何のゆえをもってこれらの身がわり資金ともいうべきものに二千六百億や七千億もの公債資金を出さなければならない理由があるのでありましょうか。このようなさか立ちしたことばかりやっておるから、大蔵大臣の言ってきた秋口にはおそくともつま先上がりに景気好転のきざしがあるとか、貯蓄ある家庭、蓄積ある企業などという名御宣託も、悲しいから念仏に終わってしまうのでありまして、わが党は、断じてかかる国民大衆の生活を低下さし、苦しめさす政策には、絶対賛成できないのであります。(拍手)  続いて反対する第六の理由は、この特例法によって皮切りされる公債発行は、いま指摘したとおり、インフレと物価高をますます助長さし、国民大衆の実質生活を低下さし、苦しめるからであります。  政府は、インフレなき公債発行と言うが、現在の日本資本主義経済のワクの中で、そんな器用なことができるとお考えでありましょうか。これまた、過去の公債発行の歴史が雄弁に物語っておりますように、その帰結するところは、インフレと物価高とによって国民生活を破壊し、国家財政破綻に追い込む以外の何ものでもなかったことを、いまこそわれわれ政治家は厳粛に反省しなければならないときであります。(拍手委員会審議を通じても明らかなように、今回の公債発行と今後の見通しについても、政府が言うがごとく、昭和四十年度の二千五百九十億は赤字公債であるが、四十一年以降予定の七千億については現行法四条規定の範疇であって、あたかも赤字公債ではないかのごとく見せかけの主張をいたしておるのでありますけれども、このごまかし操作も四十二年度にはその化けの皮がはげるのであります。なぜなれば、昭和四十二年度発行額が四十一年度七千億の二〇%増とし、その上に、政府公約の減税である二千ないし三千億を加算すれば、その財政規模の拡大に見合う歳入財源は七、八千億を必要とするのであります。ところが、これに対応する自然増収は、その成長率を七ないし八%としても、その所要額の半分程度しか見込めないのであります。したがって、この不足額政府の言う擬装建設公債と称するものの上に上積みをされ、これが純然たる赤字公債に転化される危険性を十分持っているのであります。(拍手)  かくのごとく、大蔵主税局の試算を基礎にしても、一たび公債財源にその寄りどころを求めるなれば、かつての高橋是清大蔵大臣の手による戦時公債を引例するまでもなく、その帰着するところは、公債発行は雪だるま式になって、そのとどまるところを知らなくなることは必至であります。また、政府は、インフレを起こさない理由として、市中消化の可能性をあげておりますが、はたして可能でありましょうか。今日日銀借り入れの大宗をなしている都市銀行は、その預貸率において一〇〇%をこえております。このような銀行に対し、政府の計画は、公債発行額の五一・六%の引き受けを要請しようとしております。一体これらの銀行に余裕資金でもあるというのでありましょうか。事実問題として予見されることは、現在手持ちの政府保証債券を担保として日銀から融資を受けるに至ることは間違いありません。さすれば、直接公債を日銀に担保にしないだけであって、実質的にはワン・ステップの方式において日銀券を手に入れることになり、通貨増発に通ずることは必至であります。したがって、佐藤総理や大蔵大臣の公債発行してもインフレにならないとの言明は、明らかに国民を欺く欺瞞と断ぜざるを得ないのでありまして、これまた、わが党の断じて賛成できないところであります。(拍手)  反対する第七の理由は、公債発行のしわ寄せが中小企業資金を圧迫し、その経営を困難にするとともに、地方財政極度に窮地におとしいれるからであります。  すなわち、この公債を相互銀行や信用金庫にまで引き受けさせることになっておりますが、これらの金融機関においては逆ざやとなり、経営を圧迫し、ひいては中小零細企業の資金を枯渇させる結果となり、中小企業の資金難にこれまた拍車をかけると同時に、地方財政の資金ワクを極度に圧迫することになるのであります。いま、地方財政の現状は、先ほど安井議員のほうからも提案をされましたが、ただでさえその財政危機を訴えているさなかに、この公債発行を行なえば、起債資金にたより切っている地方財政がいかなる姿において窮地に追い詰められるかはあまりにも明白ではないでしょうか。(拍手)  最後に、わが党は、この公債発行が近き将来国民への租税負担を激増して許しがたい結果を招くことになることを憂えるものであります。すなわち、七年後にはその元金一兆円と、その利息年六百八十億の七カ年分、計一兆四千七百六十億は全部国民負担の増大となってはね返ってくるのであります。はたして政府は、七カ年の間に国民大衆にこれだけの富を生み出せというのでありましょうか。不可能といわざるを得ません。政府は、このような追及をおそれてか、その償還計画さえ提示しなかったことは、財政法違反であり、国会無視であり、この態度はあわせてきびしく責められるべきであります。(拍手)  以上論じたごとく、今回の公債発行の終着点は、通貨の切り下げか、それとも戦争に道を開くかの二者択一しかないと思われます。したがって、今回の財特法は、まさに百害あって一利なきものと断ぜざるを得ません。  ここに、日本社会党は、かかる無定見にして無方針、国民大衆無視と徴税強化、大衆収奪物価三倍政策推進の佐藤内閣の行なわんとする公債発行に、断固反対することを宣言いたしまして、反対討論を終わるものであります。(拍手
  28. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 砂田重民君。  〔砂田重民君登壇
  29. 砂田重民

    ○砂田重民君 私は、自由民主党を代表して、昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案に対し、賛成討論を行ないます。(拍手)  御承知のとおり、現下の不況はきわめて深刻な様相を呈しております。複雑な性格を持ちましたこの低圧経済は、必然的に財政面にも反映いたしまして、四十年度におきます租税収入が二千五百九十億円と、大幅な減少を来たす見通しのやむなきに至りましたことは、まことに不幸な事態といわなければなりません。これは予想を越えたきわめて異常な事態というべきでありまして、これをこのまま放置いたしますと、国と地方団体の行財政は機能を全面的に停止するばかりか、不況はますます深刻となり、経済は混乱し、国民大衆、公務員、企業等に及ぼす影響には、はかり知れないものが憂慮されるに至りました。  政府は、このきわめて異常な事態に対処するための異常な措置として本法律案提出されたのでありますが、税収減少に対して、歳出の縮小や増税、新規課税の方向をとらず、あるいはまた徴税の強化策ももちろんとらず、公債発行によって、政府が借金をしてでも積極的な予算の執行を断行していこうとするその決意は、ただいま直面しております経済環境のもとでは、まことに当然なことであり、また、適切な措置と考えるものでございます。(拍手)  自由主義経済社会におきましては、経済見通しを正確に把握いたしますことはなかなか困難なことであり、時として見通しに誤りのあることはいたし方がないといたしながらも、本院並びに参議院において、佐藤総理は、四十年度の経済見通しに誤りのあったことに対し、すなおに遺憾の意を表されたのでありますが、本年度公債発行財政法第四条の解釈によって行なうなどというごまかし手段をとらず、独立した本法律案提出して、不況の財政への好ましから、さる影響をありのまま国民報告し、その解決に正面切って責任を持とうとされているこの政府の姿勢は、きわめて率直であって、これを了とすべきものと考えます。(拍手)  さて、一般会計におきます公債発行は、戦後、これをもって嚆矢とするものでございまして、歴史的な新しい時代の新しい財政への転換期を迎えましただけに、本院におきまして本法律案提案理由説明が行なわれまして以来、国家経済に、あるいは国民経済にその及ぼす影響について、与野党議員は、きわめて真摯に検討を行なわれたのでございます。特に、野党議員諸君の御議論にも、傾聴するべき有意義な御意見を承ったのでありまして、その御熱意に対し、私は心からの敬意を表するものであります。(拍手)その主張された御心配の向きにつきまして、私もまた、ここで、以下簡単に申し述べておきたいと思います。  第一に、公債による二千五百九十億円は、すでに両院で成立を見ました補正予算一般会計中、貸し方の歳入の補正第四項に公債金として計上されております。一方、借り方の歳出補正の項目は、公務員給与改善、災害対策、米価改定に伴う生活保護、児童保護費等、さらに義務教育、保険の助成、遺族、留守家族援護等に代表される義務的経費の不足補てん、拿捕漁船乗り組み員への給付金等の日韓国交正常化に伴う経費、あるいはまた、中小企業信用保険公庫への出資金などでございまして、一部の方の心配されるような巨大資本の擁護などということは、その気配すらないことが明らかであります。(拍手)  第二に、現在の低圧経済環境のもとにおきましてこの程度公債発行は、決してインフレとなるものではないということであります。むしろ、景気回復の一つの薬として積極的に断行するべきものであることは、洋の東西を問わず、公債の歴史がこれを物語ってもおり、これは経済の常識として明らかなことでございます。(拍手)今回のこの種公債を、一回限りの特別法をもって発行し、市中消化原則を貫こうとしておられますことは、政府もまたインフレ防止に万全の備えをされているものとして、これを信頼するべきであります。  第三に、今回の公債発行は、軍事公債への道をたどってわが国を戦争に巻き込むという御議論が、野党の諸君からございました。わが国過去の公債の、歴史を顧みての御心配かと思うのでありますが、昭和十一年以降のあの事態は、公債が戦争をもたらしたものではございません。戦争が公債を引きずってインフレをもたらした事実を正しく理解しなければなりません。今日のわが国の政治機構は、当落と全く異なっておりまして、そのような危険な方向転換のできるはずもないことは御承知のはずでございます。  私は、この機会に一つ明確にいたしておきたいことがございます。平和を願う心は、世界の平和を願う心は、一部野党だけの専売特許ではないということであります。(拍手)世界永遠の平和を立党の精神とする自由民主党は、こよなく愛するわが国家国民を、戦争に導くがごとき危険な思想、言論、政策がいずくかにあるときには、皆さんよりも先頭に立って、断固これを粉砕、阻止する決意であることを明確にいたしておきます。(拍手)真実に目をそむけて、しいて曲論することは、国民を惑わせる悪質な言論といわなければなりません。(拍手)与野党を問わず、われわれ政治家の心すべきことと私は考えます。  本法律案第三条以下の地方団体等に対する措置につきましては、これを放置するようなことがありましたならば、全くその機能が麻痺して、国民を混乱におとしいれる危険さえある地方財政の現状よりいたしまして、きわめて適切妥当な配慮であることは明白であります。  以上、申し述べましたとおり、本法律案内容は、財政法第四条の精神をじゅうりんするものではありません。すでに成立を見ました補正予算財源確保のために、そしてまた、公債発行が市場の繁閑、通貨流通量の増減を見つつ適切に行なわれるためにも、本法律案を一日も早く成立させることこそ、国会の良識といわなければなりません。(拍手)  政府におかれましては、何といっても一般会計におきます戦後初めての公債発行であり、この措置は、名実ともに昭和四十年度限りの非常措置であることにいま一度思いをいたされて、これが運用にあたりましては、発行公債の条件、発行のタイミング等について、国際収支の均衡、金利体系、物価水準の安定等をバロメーターとして万遺漏なきを期されますとともに、二度とかかる措置を繰り返す必要のない経済環境づくりと、的確な経済見通しの上に立った予算編成のあり方に、一段の御努力を政府に要望しつつ、本法律案賛意を表し、討論を終わります。(拍手
  30. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 竹本孫一君。  〔竹本孫一君登壇
  31. 竹本孫一

    ○竹本孫一君 私は、民主社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案に対して、反対の討論を行なわんとするものであります。  戦後、日本の財政は、原則として健全財政主義を貫いてまいりましたけれども、今回の特例法によって、わが国の財政は、いま百八十度の方向転換を行なわんとしておるものであります。  この際、私の指摘したい問題の第一点は、今日の深刻な不況を招いた政府自民党の経済財政政策の失敗であります。  不況の根本原因であります設備投資の行き過ぎは、決して民間だけの責任ではありません。日本の経済が持つ過当競争的な体質と、資本の利潤追求的な偏向を何ら改善、改革することなくして、逆にこれを助長し、促進してきた政府の放漫財政こそが、真の原因であります。経済界に対する財政の主導力と、政府の指導責任の重大なることを、政府ははたして反省しておられるのでありましょうか。偉大なりとは方向を与えることでありますが、間違った方向へ、行き過ぎたスピードでタクトを振って経済を指導してきた自民党政府責任は、まことに重大であります。  第二点は、政府の経済見通しのでたらめであります。  所得倍増計画の設備投資は、年平均六・九%でありましたけれども、実際には二八、七%と暴走しました。中期経済計画の消費者物価上昇率は二・五%でありましたけれども、現実には八%も物価は上がっております。また、四十年度の経済成長率は、実質七%の予定でございましたけれども、実際は三%、いな二%台と転落し、その結果が今回の大幅な歳入不足となっているのであります。十年の経済計画は二年にして破綻し、五年の計画は一年にしてほごとなり、一年の経済見通しは半年にして大幅に狂うがごときでたらめが、一体経済計画の名に値するでありましょうか。(拍手)しかも、経済計画を担当する藤山長官に言わせれば、これは若干の食い違いであります。御説明が若干無責任であるように思いますが、いかがでございましょう。したがって、このままだらしのないこの体制を続けてまいりますならば、景気の回復は、政府の期待されるように上昇線は決して望み得ず、その意味で四十年度だけの特例法というこの特例法が、四十一年度にも、またそのあとにも、赤字公債のための第二、第三の特例法が必要になるでありましょう。国民は真剣にその点をいま心配しておることを、私は強く指摘いたしたいと思います。  第三に、今回政府がとった措置は全くイージーゴーイングで、かような無責任な赤字国債の発行に、わが民社党は断固反対であります。  法の法たるは、その規範性にあり、ノルムのノルムたるは、好況、不況を問わないのであります。財政法第四条もその例外ではありません。幸いにして、戦後、日本の財政は、自然増収の増大で、財政法第四条を発動する必要が全くなかったのであります。しかるに、今回は大幅な歳入不足が生じ、第四条が初めてその真価を発揮すべきときにあたって、かくも簡単に特例法を設けて第四条を否定するがごときは、政府みずから法の精神をまっ正面から踏みにじるものであります。これでは、何のために第四条が財政の基本法として設けられたか、理由がわからなくなるではありませんか。財政法第四条は、赤字公債発行と、赤字公債発行をしなければならないような財政経済の赤字運営を断々固として禁止しておるのであります。本年四月から今日まで、実質的に赤字を出して財政を運営してきた財政法違反の政治責任を、一体政府はどうされるつもりでございましょうか。政府は、この際こそ、従来の放漫なる財政支出を反省し、切り詰め、必要不可欠な支出以外は勇断をもってこれを節約するのが当然であります。しかるに、今回の政府措置を見れば、わずかに当初予算の一%、三百三十億円を節約したにすぎません。厳密に見れば百四十四億、全く問題にならない節約であります。歳入不足にあたっては、第四条の精神から申しますならば、当然、冗費の節約に全力を尽くした上、減額修正内容とした補正予算提出するのが法のたてまえであります。もしそれが景気をますます悪くするというのであれば、第四条の是認する建設国債による景気刺激のための第四次もしくは第五次の補正を提出するのが筋であります。法は社会生活の規範であります。憲法をはじめ、すべての法は守られなければなりません。法のじゅうりんと悪い特例をつくることこそが民主主義の基礎を脅かすものでありまして、われわれの断じて認め得ざるところであります。(拍手)  第四点は、今回の特例法には償還計画が全く示されていない点であります。  わずかに二行、償還期日である昭和四十七年度に二千五百九十億円の償還をするとしるしておるだけであります。この財政法をつくるときに、政府委員は、速記録によりますと次のように述べております。「どうして公債を還していくかという計畫を併せてつけるというように、非常に周到な用意を規定して、公債が濫發され、財政基礎を危くすることのないようにいたしておるわけであります。」と、そのように述べておるわけであります。いかに償還計画が重要であるかは、これをもってもわかります。しかるに、政府は、今回は何ら明確なる償還方法を提示いたしていないのであります。これまた明らかに財政法違反であると断ぜざるを得ないのであります。  次に、私は、来年度建設国債との関連におきまして、主要な二、三の問題点を指摘したいと思うのであります。  その第一点は、国債発行の歯どめに対して、政府が明確な解答を与えていないということであります。  政府は、公債発行の歯どめの一つとして、第四条に規定しておる公共事業、出資金、貸し付け金の範囲が発行限度になると言っておりますけれども、その公共事業の概念は終戦後にできたものでありまして、しかも、これはたびたびその内容を変えてきておるのであります。これを広義に解釈すれば、防衛庁の庁舎の建設さえも含まれるのであって、あらゆる営繕事業は公共事業の中に入っていくのであります。この一点だけ見ても、公共事業そのものが歯どめの装置になるものでは決してないことを明らかにしておかなければなりません。国民大衆は、政府公共事業の拡大解釈によって、建設公債という名の赤字公債発行されることを心配いたしておるのであります。(拍手)  もう一つの歯どめとして、市中消化の原則が第五条にうたわれておりますけれども、その定義と運用の方法についても明確な御説明がございませんでした。日銀が間接に、事前または事後公債を引き受けるという方法で、この原則が破壊される危険があります。また、政府の資金散布、日銀の貸し出し増加で、民間の消化力を計画的に増大せしめる方法も考えられます。  要するに、政府に誠意がなければ、行政技術的に第四条と第五条が骨抜きにされ、公債は雪だるま式に増発されて、国民大衆がやがて、この道はいつか来た道、インフレの道と嘆くことのないように願いたいのであります。(拍手)  第二点は、財政制度の能率化、計画化の点であります。  国債発行に伴う中央財政の膨張と、三千億円に達する地方財政の赤字化は、必然的に財政の計画化を要請いたしておりますが、政府は、これが計画化にはきわめて不熱心であります。私は、この際、財政の三本立て、すなわち、租税によってまかなう経常予算公債発行の基盤に立つ資本勘定予算、総理の言われる社会開発を目標とし、政府の資金と保険会社その他の民間資金による福祉予算、この三本立て財政の確立をはかるべき段階に立ち至っておると思います。(拍手)大福帳的な、お粗末な予算制度は、いまこそ新しい時代の要請にこたえて再検討、再編成すべきであろうと思うのであります。  これを要するに、ここ数年、池田内閣以来日本の財政経済の運営は特に無原則であり、無計画でありまして、そのとがめの不況に今日の経済財政が呻吟しつつあるわけであります。しかも、その窮状打開のためにとられた今回の非常措置そのものが、それ自体また無原則であり、無計画であることをわれわれは残念に思うのであります。かつて、日本経済の猪突猛進ぶりを批判いたしまして、ある人は、日本の経済の高度成長は天井までいけば一応とどまるであろうと期待したところが、ついに日本経済はその天井をも突き抜けて進みつつあると論じました。いまやその天井上から落っこちて二千数百億円の大赤字を出したのであります。この辺で日本の財政、経済、金融政策のあり方をわれわれは静かに真剣に反省すべき段階であろうと思うのであります。(拍手)  民主主義とは何ぞやということに対しまして、はなはだ古い表現ではございますけれども、ある学者は、恭倹おのれを持することであると申しました。神をおそれず、国民大衆をおそれない、反省と慎みのない民主政治の存続は許されません。同様に、経済の法則を忘れた国民不在の財政経済政策も、その存続を許されないのであります。  財特法は、ひとり財政だけの問題ではありません。特例法を次々に設けることによって、日本の政治の基本原則、日本財政の基本ルールがいま破壊せられ、じゅうりんされようといたしておるのであります。特例の積み重ねで原則が圧殺される、例外、例外で根本がくつがえされる、そこに日本政治の暗黒化、日本財政の赤字化が心配されるのであります。われわれ議会政治家は、政治の面でも、財政経済の面でも、いまこそ例外から原則へ、横道から本筋へ立ち返るべき重大時期であることを重ねて強調いたしまして、私の反対討論を終わりたいと思います。(拍手
  32. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、日程第二及び第三の両案を一括して採決いたします。  日程第二の委員長報告は可決、第三の委員長報告修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。  〔賛成者起立
  33. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 起立多数、よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。(拍手)  次に、日程第四につき採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内   閣提出)の趣旨説明
  35. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案趣旨説明を求めます。運輸大臣中村寅太君。  〔議長退席、副議長着席〕  〔国務大臣中村寅太君登壇
  36. 中村寅太

    ○国務大臣(中村寅太君) 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  日本国有鉄道は、かねてより輸送力の増強及び輸送の近代化につとめてまいりました。しかしながら、輸送需要は、わが国経済の高度成長に伴い、輸送力の伸びを大幅に上回る増加を示しております。国鉄におきましては、現有施設を極度に活用することにより、これに対処してまいりましたが、いまや列車ダイヤは過密化し、主要幹線の輸送力は弾力性を失い、ひいては輸送の安全性すら脅かされるに至っております。  ここにおきまして、国鉄では、大都市付近の通勤輸送改善、主要幹線輸送力の増強による過密ダイヤの緩和及び保安対策の強化を主眼とする第三次長期計画を策定いたしました。  政府におきましても、日本国有鉄道基本問題懇談会を開催し、同計画の内容等を慎重に検討いたしましたが、逼迫した国鉄輸送の現状を打開し、国民経済に占める国鉄の任務を当面遂行するため、おおむね二兆九千億円の投資規模をもって昭和四十年度から昭和四十六年度までの七カ年間に同計画を実施せしめることといたしたのであります。  この計画を遂行するために必要な資金につきましては、その大部分を借り入れ金によることとし、政府といたしましても、財政投融資の増額等につきましては、できるだけ努力する所存であります。しかしながら、もし現在の運賃水準のままで不足する財源をすべて借り入れ金によってまかなうとすれば、昭和四十六年度末における国鉄の借り入れ金残高は四兆数千億円の巨額に達し、同年度における支払い利子は膨大な額に達することに相なります。  一方、国鉄財政の現状は、昭和三十九年度においてすでに三百億円の欠損を生じ、このまま推移すれば、昭和四十年度においては一千億円に近い欠損が見込まれ、経営状態は極度悪化しているのであります。  これらの諸点にかんがみ、日本国有鉄道の健全な経営を維持し、第三次長期計画の円滑な遂行を期するためには、この際運賃の改定を行なうこともやむを得ないものと決意した次第であります。  この法律案提案にあたりましては、運輸審議会の答申を尊重したのはもとよりでありますが、国鉄運賃の改定国民生活に与える影響を考慮して、国鉄経営の合理化等により、所要改定率をできるだけ少なくするよう配慮いたしました。  次に、運賃改定の具体的内容についてでありますが、まず、旅客運賃について申し上げますと、現行の遠距離逓減制を距離比例制に近づけるために、二地帯制の境界を四百キロメートルとし、一キロメートル当たりの賃率は、第一地帯においては現行の二円七十五銭を三円六十五銭に、第二地帯においては一円三十五銭を一円八十銭といたしました。  また、航路の旅客運賃については、ほぼ旅客賃率の引き上げと同程度改定をいたすこととしております。  次に、貨物運賃についてでありますが、最近の輸送構造の変化に即応して、現行貨物等級の上下の幅を圧縮して四等級とするとともに、その賃率の引き上げはおおむね一七%といたしました。  以上がこの法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内   閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  37. 園田直

    ○副議長(園田直君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。野間千代三君。  〔野間千代三君登壇
  38. 野間千代三

    ○野間千代三君 私は、ただいま運輸大臣から小声で説明のありました、運輸審議会の手続を無視し、そうして圧力を加えて決定を見た国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対して、日本社会党を代表して、運賃値上げに反対の意見を明らかにしつつ、総理並びに関係大臣に対して若干の質問をいたしたいと存じます。(拍手)  今日、国鉄は、申し上げるまでもなく、わが国経済の形成とその発展に対してきわめて大きな影響力を持っております。国鉄の営業キロは、全長ちょうど赤道一周とほぼ同じ約二万キロ、その上を二万六千本の列車が走り、六十五億の旅客と三億トンの貨物を輸送しておるのであります。国内輸送市場の約二分の一を占める巨大な企業であります。国鉄の一挙手一投足が巻き起こしてまいります波紋は直ちに大きな社会問題となるのでありまして、今日提案されている法案内容は、旅客三一・二%、貨物一二・三%、通勤定期のごときは実に一・七倍という、国鉄史上にかつて見ない大幅な値上げであります。これはまさに国鉄企業を通しての佐藤内閣国民に対する物価大攻撃の一つの柱であるといわなければならないと思います。(拍手)  そこで、まず私が総理にお尋ねしたいのは、物価対策と国鉄運賃の関係についてであります。  総理は、本院においてしばしばわが党代表の質問に答えて、物価問題に対しては真剣に取り組んでおります、あるいは、物価を安定させ、経済を安定成長の軌道に乗せることは佐藤内閣の使命でありますと述べ続けてきております。しかし、総理は、すでに就任一カ年、はたしてその使命は果たされたのでありましょうか。本日総理府の発表によりますと、消費者物価指数は、総合において前年度比七・二%上昇、食糧のごときは九・七%という大がかりな上昇率を政府の統計ですら示しております。実に、この上昇率は、三十八年に次ぐ戦後物価騰貴の第二番目の大幅上昇を示しておって、国民にとっては、その生活を地すべり的に脅かされているといわなければなりません。国民は毎日毎日激しく押し寄せてくる物価の波に生活をさらしながらあえいでいるというのが、実際の状態であろうと思います。しかも、その上に、四日の後に迫った来たる一月からは、米価をはじめとして、私鉄、医療費、保険料、都市交、水道と際限もなく値上がりが予想されているのであります。一体、佐藤内閣は物価対策をやっているのか。政府はこの一年間何をやってきたのか。国民政府に対する怒りは、いまや政治そのものへの不信にまで発展しかねない実情にあると思います。政府は今回物価問題懇談会を設置したと言っておりますけれども、一切の物価をそれぞれ上げっぱなしにしておいて、一体何を懇談しようとするのでしょうか。(拍手)この国民のいらだたしい気持ちに国鉄運賃値上げの与える打撃の大きさを想定しながら、総理に対して激しい怒りで見詰めながら、池田内閣の高度成長政策は明らかに失敗であった、それを立ち直らすのが次の内閣の任務であった、そして佐藤総理はそれを公約をされた、しかしながら、失敗はあまりにも大きく、そして佐藤内閣の力量はこれを救うべくあまりにも小さかったのではないでしょうかと私は思います。総理から物価対策の具体的な政策を、政策そのものを答えていただきたいと存じます。  次に、政府の発表によると、国鉄運賃値上げの物価に与える影響は一・五%前後程度にしかすぎないと言っております。物価は毎年一〇%から二〇%変動しておるので、国鉄運賃の値上げによる影響は皆無だとすら言っております。これは驚くべき神経の皆無さであります。佐藤内閣のこの一年にわたる治政下において、今日次のような物価の実情です。すなわち、それぞれ単位当たり、米の値段は九十七円が百十二円に上がり、パンは八十八円から九十四円、ソーセージは四十円から五十五円、清酒は六百九十円から七百二十円、パーマネント料金は九百四十三円から九百九十三円、みそは百七円から百十六円、うどんかけは四十五円から五十四円、診察料は八十八円から百四十二円に、すなわち、国民生活の実態は、このように国民生活に直接関係のある生活費の値上がりによって脅かされ続けておるのであります。こういう際に、国鉄運賃の平均二五%値上げが行なわれたならば、生活必需品は、もう一度一斉に急騰することは明らかであって、国民は、この法案の発表以来、現実に来るであろうその予想におびえ切っているのが実情であろうと存じます。しかし、国鉄無賃の決定原則は、運賃法によれば、賃金と物価の安定に寄与することといわれております、明らかにきめられておるのであります。今回の国鉄運賃の値上げは、この原則どおり、物価の安定にどのように寄与するのでありましょうか。これに対する政府の政策的な保証がはたしてあるのでありましょうか。総理並びに経済企画庁長官に、政策に基づいた御答弁を求めたいと存じます。  特に、藤山長官は、現内閣の閣僚中まれに見るまじめな答弁をされるお方であります。別に私は選挙区が同じだからおせじを言うのではありません。藤山長官は国鉄運賃値上げに終始閣内でも異論を唱えていたと聞いております。長官は、朝日ジャーナルの質問に答えて、四十一年の物価は二、三%程度に押えたいと述べているのでありますが、これと国鉄運賃との関連についていかがでございましょう。反対されていた長官がなぜ二月十五日というふうに選んだのでありましょうか、その根拠をあわせて伺いたいと存じます。  次に、運輸大臣にお尋ねいたします。  今回の第三次工事計画と運賃値上げの基礎になったものは、昨年十一月二十七日答申を行なった国鉄基本問題懇談会の意見書でありますけれども、この答申は、工事規模総額二兆九千七百二十億円の資金調達の方法については、第一に、財政投融資を増加すべきである、第二に、政府出資または政府負担の検討が必要であると述べているのであります。それは今日の国鉄の資産の実体の分析から生まれてきた結論であるはずであります。  すなわち、国鉄の資本構成を分解してみますと、自己資本が一兆三千五十一億で、その内訳は、資本金、すなわち政府出資はただの八十九億であります。その他は運賃によるものであって、他人資本は九千四百九十一億、その内訳は、政府からの借り入れ金と鉄道債券、つまりすべて借金であります。つまり、国鉄は、今日、岡の金で建設したものは何一つもなくて、すべて全く国民の支払った運賃によって建設されてきたものであって、国有などと言えるものではありません。すべて国民のものであります。そして、昭和三十二年、第一次五カ年計画で一三%の値上げによって四千八十二億、三十六年、一二%値上げによって九千五百九十二億、それぞれ国民の負担において拡充をしてまいりました。その間借り入れ金も膨張をし続け、四十年にはついに一兆一千百十一億という巨額にのぼるに至っておるのであります。元利償還のために国鉄は毎日毎日三億円ずつ支払い、年間その総額は千二百十九億という巨額にのぼっているのであります。もはや借り入れ金は限度に達しております。国民の負担もまた物価の高騰から見て限界に達しているのは明らかであります。それは、つまり、政府出資がただの四十億にすぎないという——実際に投資した額は四十億でありますが、この四十億にすぎないという利用者犠牲の政策を転換する以外には、国鉄の再建はあり得ないということを明らかにしていると思います。  しかるに、今回のこの長期計画の七カ年のうちに、政府はまた新しく三兆一千七億の借金を加えようとしておるのであります。かくて、国鉄労働者は銀行へ金を返すためにのみ働くことになり、国民は銀行へ金をくれてやるために国鉄に乗車するという奇怪な結果になるのであります。政府の国鉄をここにおとしいれた責任はどうなのでありましょうか。運輸大臣は所管大臣としてその責任を明らかにし、また、大蔵大臣は、国民経済の見地からして、かかる実態を一体いつまでこのまま放置しようとするのか、意見を承りたいと存じます。  次に、運賃の問題であります。  今回の値上げによって国民はどういう影響を受けるかという問題でございますが、この値上げの実態についてはぜひ議員の皆さんにも聞いておいていただきたいのであります。旅客は、たとえば東京−広島間では、現行三千二百三十円であったものが四千三百五十円に、つまり千百二十円の値上がり、三四・七%であります。東京−青森間は、三千三十円が四千九十円で、千六十円、三五%の値上がりであります。通勤定期に至っては、東京−横浜間三カ月定期を例にすれば、二千八百四十円が五千七百三十円、実に二千八百九十円の値上がりであります。東京−大宮間は同じく三千七十円の値上げであって、その結果、二月十五日から三月三十一日までの間に、旅客運賃の増収は百五十九億円に至ります。  京浜東北線浦和駅の朝の通勤ラッシュ時に、国電が超満員のお客のためにその重みでぐらりと横に傾いて、ホームに横腹をこすりつけてついに発車ができなかったことを新聞、テレビが報じたのは、きのうのことでございます。いまや車両そのものも事実をもって政府の国鉄対策の無策に警告を発しているといわなければならないと思います。(拍手)何が人間尊重なのか、何が愛情の政治なのか、何が運賃値上げなのかと叫びたくなる国民の気持ちは、はたして無理でありましょうか。(拍手)国鉄に対する政府出資を要求する国民の声に対して、大蔵大臣の所信を承りたいと存じます。  最後に、国鉄運賃値上げと国家財政方向に関する国民の心配、危惧についてであります。  私は、最初、二五%値上げは、国鉄運賃史上に最初にして最高の上げ幅だと申しましたけれども、しかし、残念ながら、これは最初ではありません。国鉄の歴史によると、もっと残酷な足あとがあります。昭和十七年に二八%、昭和十九年に三〇%の値上げをしてまいっております。このときに、その結果、旅客収入の営業係数は、驚くべきことに三〇の数字をあらわしております。つまり、百円の原価に対して七十円のもうけをあげたのであります。この国民からの膨大な利益は、実は、あたかも日中戦争から大東亜戦争にかけての膨張に膨張を続けてきた軍事費にすべてが注ぎ込まれてきたのであります。これが国鉄営業係数の歴史の事実が示していることで、時の政府は、これを旅客輸送の抑制による軍事輸送の強化という政策の一環としてとったことを明らかにしております。もし今回の値上げが実施されれば、旅客の営業係数はおそらく七〇以下になるだろうと思います。今日、戦争公債を予想させる赤字公債発行を企図する財特法の議決が行なわれております。私のひそかな杞憂は、はたして単なる杞憂にすぎないでありましょうか。総理に答弁をいただきたい。おそらく、総理の答弁は、今回の値上げは工事資金であるというようなおざなりの答弁をするだろうと思いますけれども、しかし、総理に記憶をしていただきたいのは、昭和十七年、昭和十九年の大幅値上げのときの政府理由は、旅客輸送の犠牲による軍事輸送の強化と明らかにしておったのであります。  国鉄の運賃は断じて上げるべきものではありません。ほんとうの国民のための国鉄として、国民経済の要請にこたえ得る国鉄とするために、国の出資による国鉄の再建整備こそ国民の要求であることは、すでに明らかでございます。政府がこの方策をとり、国鉄値上げを撤回することを強く求めながら、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  39. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  ただいまお尋ねになりました野間君も国鉄出身なら、答える私も国鉄の出身であります。したがいまして、国鉄の事情はよく御承知だと思います。また、国鉄の果たす経済的使命、これもよく御承知のことだと思います。私も、これらの国鉄の果たす使命につきましては、ただいまお尋ねになりました野間君と同じような考え方で、この使命の完遂にこの上とも努力するつもりでございます。  ただいまの国鉄の現状は、私が申し上げるまでもなく、この使命を果たすことができない。輸送力が逼迫し、同時にまた財政的にも非常な困難な状態に当面しておること、このことは百も御承知だと思います。かような際に、望ましいことではございませんが、運賃の改正をいたしまして、そうして国鉄がみずからの力でこの要請にこたえるということに取り組むのでございます。ただいまは、申すまでもなく公社でありますから、独立採算制、そのたてまえにおいて、なすべきことはなす、これは当然でございます。しかしながら、最初お尋ねになりましたように、運賃改正が物価に及ぼす影響、これは、私どももこれを否定するものではありません。したがいまして、今回も、物価に及ぼす影響をできるだけ少なくする、かような意味におきまして、もともと採算のいい旅客運賃のほうは値上げが大きい、採算の悪い貨物輸送のほうの貨物運賃は、この値上げ幅を小さくしたということ、これは本来のたてまえからいうと、理屈に合わないような処置もとっておるのは、いわゆる物価に対する影響を最小限度にとどめたいというその配慮からであります。ことに、最も国民生活に影響のある、国民生活の必需物資等につきましては、特別に配慮をいたした次第でございます。これらの点を十分御理解いただきまして、今回の運賃改正がいかにやむを得ざるものであるかを、十分御理解をいただきたいと思います。  最後にお尋ねといたしまして、国鉄は国の出資によってこれをまかなうべきものだ、かような御議論でございます。先ほど私も一言触れましたように、独立採算制、そのたてまえにおきましては、みずからの力で改善するのが当然だと思います。しかし、この国鉄のような仕事、その公共性を考えます際に、国の出資、これが必ずその使命達成上必要だ、かように思いますが、ただいまの財政状態は、国自身も非常に困っておる際でございます。ただいま御指摘になりました点については、今後の問題として、政府自身も十分検討してみたい、かように思っておる次第でございます。(拍手)  〔国務大臣中村寅太君登壇
  40. 中村寅太

    ○国務大臣(中村寅太君) まず、物価問題についての影響について申し上げたいと思いますが、過去における国鉄運賃改定の際の経緯によってみましても、運賃改定が物価へ大きな影響を直接与えたとは必ずしも考えられないと存じております。このことは価格に占める運賃の割合がわりあいに小さいということであり、また、物価は需給関係その他複雑な要素で変動するためであって、改定が直接物価に及ぼす影響は、そういう意味からきわめて小さいものと考えております。むしろ、物価対策といたしましては、物資の流通全般の改善を行なう必要があると考えられ、これについては、新長期計画の遂行によって貨物輸送の近代化を実現し、それによって物資流通経費の低減をはかることが、物価問題の本質的な解決に役立つものと考えております。  国鉄の現状は、輸送力が極度に逼迫しておりますので、さらに財政悪化するときわめて憂慮すべき状態にございます。社会開発を進めていく上からいいましても、新長期計画を完全に実施することが必要であると考えておる次第でございます。  国鉄の新長期計画による設備投資の進み方につきましては、大都市付近の通勤輸送の改善、幹線輸送力の増強、保安対策に重点を置いて、工事の緊急性に応じて実施するとともに、効率的、重点的に行なうよう指導してまいっております。しかも、この新長期計画の実施が完全に遂行できるよう、国鉄基本問題懇談会の意見書の趣旨に沿って長期低利の財政投融資の拡大等、その資金の確保のために極力努力をいたしておるところであります。  また、政府の出資等の問題につきましては、国の援助についていろいろ国は考えておりますが、国の財政の現状から見まして、いま直ちにこれを実施することは無理であるというので、今後の問題として検討を進めてまいりたいと存じております。  国鉄基本問題懇談会は、昨年、当時の資料に基づき約二六%の運賃是正を行なう必要があるとの結論を出したのでありますが、本年度当初からの運賃改定が見送られましたこと、その他最近の収支状態から、国鉄は三〇%の申請を出してきたわけであります。しかし、政府といたしましては、現下の経済情勢や、物価への影響等をも考慮いたしまして、値上げ幅を極力抑制しまして二五%の増収案とした次第でございます。  なお、今回の改定は、新長期計画を遂行するために必要な資金の一部として、国鉄収入全体の二五%の増収をはかろうとするものであり、その場合、経済に及ぼす影響や、戦前に比べた場合の運賃水準等を考慮いたしまして、旅客、貨物の改定案を定めたものであります。また、生活必需物資等につきましては、国民生活に及ぼす影響を考慮いたしまして、特別措置を講ずることとしております。  以上申し述べましたごとく、運賃改定にあたっては国有鉄道運賃法に定められている運賃決定の四原則をそれぞれ十分に考慮している次第でございます。(拍手)  〔国務大臣福田赳夫君登壇
  41. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) ただいま総理並びに運輸大臣からお答えがありましたが、私も国鉄の担任している任務の重大なことはよく承知しております。政府でも、国鉄三兆円計価は大いにこれを助成したい、こういう気持ちでございます。ただその方法は、そのときどきの事情できめなくてはならぬ。今日の状態では財政投融資を大いにつぎ込む、こういう方針でございます。(拍手)  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇
  42. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 野間君の御質問に対してお答えを申し上げます。  今回の国鉄の運賃値上げがどの程度に物価に響くかということでございますが、大体CPIに対して〇・三二%とわれわれは推測いたしております。貨物に対しましての影響というものは、御承知のとおり、貨物には数千数百の種類がございまして、それから卸、小売り等の段階におきます影響を指数として出してまいりますことは、ほとんど不可能に近いものでございますが、先ほど運輸大臣が言われましたように、貨物の面に対する影響というのは、比較的数字的には少ないものではないかと思います。  それから、四十一年の物価を三%台に押えるということが朝日ジャーナルに載っていたが、どうかということですが、実は四十一年は、私は七五三論といって笑われておるとおり五%台ということを常に申しておるのでございまして、実は朝日ジャーナルの対談をいたしましたけれども、何か三%と響いてあれば、それは間違いだと思います。四十一年度は大体六%以内、五・五%くらいに押えていきたいというのが前から申しておる私の議論でございまして、その程度には努力目標を合わせてやってまいりたいと、こう考えておるのでございます。  なお、今回の値上げと物価対策とがどういう関係になるかというお話でございます。むろん、直接にはCPIに〇・三二%響きますが、しかし、御承知のような国鉄の輸送計画をやりまして、そうして、円滑なる貨物の輸送あるいは乗客の輸送ということを達成いたしますことが、物価対策の上において基本的な問題でございます。したがって、これらのものに対する対策を立て、あるいは五年計画等を充実してまいるために、先ほどもお話のありましたように非常に大きな借り入れ金をいたすということでございますれば、その利子等も相当かさんでまいりまして、国鉄経理の上に相当な重圧を感じてくるのでございまして、ある程度部分は乗客に負担をしていただくのも、そのときによりましてやむを得ないことかと思います。  最後に、私が運賃値上げは四月だということを主張しておったのに、なぜ二月十五日になったのかというお話でございますが、もちろん、公共料金を上げます場合に、その時期と値上げの率と申しますか、それが大事でございまして、両方とも、物価対策をやっていく上において慎重に考えてまいらなければなりません。したがって、私は初め四月を適当と考えておりましたが、しかし、諸般の情勢から申しまして、また同時に、最終段階におきまして、先ほど運輸大臣が言われましたように、三〇%の収益率を二五%まで下げることが同意されてきましたので、そこで二月十五日ということに決定をすることに賛意を表したものでございます。(拍手
  43. 園田直

    ○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  日本国有鉄道整備緊急措置法案久保三郎君   外七名提出)の趣旨説明
  44. 園田直

    ○副議長(園田直君) 次に、久保三郎君外七名提出日本国有鉄道整備緊急措置法案趣旨説明を求めます。提出者久保一二郎君。  〔久保三郎登壇
  45. 久保三郎

    久保三郎君 日本国有鉄道整備緊急措置法案について、簡単に提案理由並びにその内容について御説明申し上げます。  日本国有鉄道は、わが国交通機関の大動脈として国民経済の中で重要な地位を占めており、将来にわたってその地位は確保さるべき立場にありながら、いままで質疑応答の中でも見られるように、今日の国鉄は、幹線輸送の渋滞、殺人的な通勤輸送、さらには続発する事故等々、その使命である大量客貨の安全、正確、迅速な輸送を遂行することがはなはだしく困難な状況にあります。  御承知のごとく、戦時中は戦力増強、戦後は経済復興の名のもとに、長期にわたってその施設を酷使してまいりました国鉄は、昭和二十四年、マッカーサー指令により公共企業体に移行し、今日に至っております。公共企業体として国鉄に引き継がれたものは、開業以来とられてきた国営事業の実体をそのままとするあいまいな公共性と企業性であり、それを包括する独立採算制のワクであり、そして極度に荒廃した老朽施設でありました。国鉄は、しばらく経済復興の至上命令とインフレの中でその老朽施設をさらに食いつぶしながら輸送を続けてきましたが、ついに桜木町、洞爺丸等の相次ぐ重大事故の発生を見るに至り、その食いつぶすべき老朽施設の限界を示すものとして、昭和三十二年度から、老朽施設の取りかえを中心とする第一次五カ年計画が実施されるに至ったわけであります。  しかし、この第一次五カ年計画は、実施中途で改定を余儀なくされました。言うまでもなく、資金計画の破綻であり、改良計画そのものが輸送の伸びに追いつけないほど小さなものとなったからでありました。また、そのことは、財源を主として運賃値上げに求めたこと、政府がその計画に責任を持たなかったことであります。  かくして、第一次五カ年計画は四年目で打ち切り、昭和三十六年度から第二次五カ年計画として再出発しましたが、これまた主たる財源を運賃値上げに求め、加えて東海道新幹線建設の大事業を織り込み、結果として新幹線工事が先行し、予定どおり完成されましたが、幹線輸送の渋滞、通勤輸送の混雑は一向に改善されず、運賃値上げの際の公約は再度にわたって破棄されるに至りました。しかも、本計画も、第一次と同様、輸送の実情からして、計画自体過小であり、この過小計画すら計画どおり実施できぬありさまでは、三河島、鶴見の二大事故の反省の上に立つ積極的な保安対策など、もはや国鉄のみの責任と能力では解決を期待することが困難であるとし、かつ、昭和三十九年度予算要求にあたって、国鉄当局は、政府に対して、この計画による残工事のすべてに対する予算要求をいたしましたが、希望はいれられず、国鉄当局は大きな決意を迫られました。すなわち、このままでは引き続く事故も起こり得るとしたことです。ここにおいて、政府は、昭和四十年度までに当該の委員会をつくり、資金についても責任を持つとしました。  国鉄をしてかかる状況におちいらしめた原因の一つは、公共企業体とはいうものの、公共性も企業性も何ら解明されないまま、独立採算性のみ画然と与えられたことであります。国鉄の公共性とは、陸上輸送の根幹として安全、正確、迅速に輸送を行なうことにより国民経済に寄与することであり、いわゆる公共負担と称される産業政策、社会政策、文教政策からの運賃割引等は、当然国家政策としての財政支出によってまかなわれる性質のものであって、独算制のワクで運営される公共企業体の国鉄が負担すべきものでないにもかかわらず、そのまま押しつけられ、経営を圧迫していることであります。  また、国鉄が陸運における独占的地位を失いつつあるとき、独算制のワク内運営の行く先は、当然のごとく企業性の追求となり、その結果、目前の投資効果をねらう投資と、合理化に急なあまり、優等列車の増発のみが行なわれ、その結果は、時代に逆行して、ローカル列車及び貨物の足をおそくし、過密ダイヤは神わざといわれながらも、しかもそこからは現状を打開する資金を生み出すことはとうてい不可能なのであります。  また、二次にわたる五カ年計画がいずれも過小であり、しかも、その過小計画すら計画どおり実施され得なかったもう一つの原因は、それぞれの改良計画が国鉄だけの計画であり、その予算を握る政府責任によって何ら権威づけられておらず、その資金計画は毎年度予算編成の中で左右され、不安定な自己資金は過大に見積もられ、財政投融資すら思うにまかせず、計画は何らの権威も認められず、政府の手によってじゅうりんされたことであります。また、この財投を中心とする借り入れ金の重圧は、先ほど来の質疑応答によっても、遠からず経営の破綻となることを予告されておることも御承知のとおりであります。  以上申し述べたとおり、国鉄は、今日国民の要望にこたえるサービスの改善が行なわれないばかりか、安全輸送への不安もあります。しかしながら、わが国の地理的、経済的条件からして、自動車、航空機の発達にもかかわらず、大量輸送機関としての国鉄を今後も必要とし、国鉄の安全、正確、迅速は、国民的経済の中で一そう強く要求されるところであります。  この要求にこたえて国鉄を再建整備するには、これまで申し述べた諸点に留意した対策が必要であるにもかかわらず、政府は、今回も部内につくられたところの国鉄基本問題懇談会の結論さえ忠実に守らず、従来どおり運賃値上げによる大衆収奪によって資金調達を計画しておりますが、物価対策からもこれを抑制し、また国鉄の機能と役割りからも、道路、港湾、空港等と同様、政府が公共投資として所要資金の一部を出資し、緊急整備をはかることが肝要と考えられる次第であります。  第二は、二次にわたる五カ年計画が中途において挫折を余儀なくされた直接的原因は、何といっても、計画が政府によって正式に承認されず、政府責任が明確でなかったことでありますから、これまた道路、港湾と同様、政府責任によって計画は承認される必要があります。  以上が本法案提案理由であります。  次に、法案内容について申し上げます。  本法案は、以上申しました理由により、日本国有鉄道の現状を緊急かつ計画的に整備し、国民経済の中でその使命を十分発揮できることを目的といたしており、  第一に、幹線輸送力の増強、通勤輸送の緩和等に必要な線路増設、車両の整備、輸送の近代化、及び今日国鉄に強く要求されております安全輸送のための保安施設の整備等を鉄道施設整備事業といたし、第一次五カ年計画以来とられてきた輸送力増強及び保安対策の計画を踏襲発展させようとするものであります。  第二は、これらの整備事業は、昭和四十一年度を初年度として十カ年間に所期の目的を完遂しようとするもので、これを二期に分け、国鉄は昭和四十一年度を初年度とする第一期五カ年計画、昭和四十六年度を初年度とする第二期五カ年計画のそれぞれについて計画を策定し、運輸大臣はこの計画について閣議決定を求めるものとし、この整備事業が政府によって承認され、政府も計画遂行に責任を持つ体制とするものであります。  第三は、整備事業についての財源措置についてであります。前に申し述べたとおりの理由から、所要経費の三分の一を政府出資といたし、国鉄の健全な運営と整備事業の計画的な実施をはかろうとするものであります。  なお、整備事業の規模についてでありますが、第一次五カ年計画では約一兆六千五百億を投入し、立ちおくれを解消し、安全輸送の確保を重点といたし、第二期五カ年計画においては、需要の伸びに応じた輸送力の増強、近代化等に主力を置くこととし、十カ年間の総事業量はおおむね三兆三千億円程度と見込んだ次第であります。  以上で提案理由説明を終わるわけでありますが、なお、本計画実施にあたっては、特に次の二点に留意さるべきであります。  すなわち、その一つは、本法案による国鉄整備の目的は、国鉄をして国民経済上その使命を忠実に実行させるためのものでありますから、さきに指摘したごとく、採算と利潤のより得られるための投資に偏した方針は強く反省されねばなりません。利潤を生まない保安対策の拡充、あるいは通勤輸送の緩和等は、本計画で優先実施すべき事業であり、そのためにこそ、公共投資として政府が出資する意義もここにあるのであります。  第二は、国鉄の投資不足の回復と経済成長についてであります。高度成長政策は、幾つかの矛盾問題点を露呈してまいりましたが、その中でも、社会資本、公共投資の立ちおくれからくるアンバランスがはなはだしくなってきており、資本の側からも社会資本の拡充が要求されておりますが、かかる事態になったことに対する反省と検討が必要であります。本計画が民間企業の無政府的設備投資のしりぬぐい策として実施される場合には、この計画による投資はさらに新たな矛盾を生み出し、とどまるところを知らぬものとなり、とうてい国民的要求は満たされないことになるのでありまして、当然、この無政府的な設備投資をコントロールする中で本計画は実施される必要があります。また、国鉄を含む総合的交通体系が確立され、その分野と方向に沿って本計画が実施され、国民経済の中で調和のとれた国鉄の姿になる必要があるということは、言うまでもありません。  以上で説明を終わります。(拍手)      ————◇—————  日本国有鉄道整備緊急措置法案久保三郎君   外七名提出)の趣旨説明に対する質疑
  46. 園田直

    ○副議長(園田直君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。泊谷裕夫君。  〔泊谷裕夫君登壇
  47. 泊谷裕夫

    ○泊谷裕夫君 私は、ただいま趣旨説明のありました日本国有鉄道整備緊急措置法案に対し、提案者の久保三郎議員並びに関係大臣にお尋ねをいたします。  足立日本商工会議所会頭も唐島基智三、御手洗辰雄氏ら各界の権威者が日本国有鉄道諮問委員会を構成し、国鉄法の一部を改正する法律案に対する衆参運輸委員会並びに本会議の附帯決議の趣旨を尊重し、国鉄の経営のあり方について長い間検討を続けてまいりました。昭和三十八年五月の答申は、当面の応急措置として、国鉄に資本金を与える第一歩として、とりあえず、目下の国鉄の借り入れ金のうち、政府がその債権者たる三千数百億円について、これを政府出資とすること。なお、第二次五カ年計画を打ち切り、新しい長期計画を政府の行なうべき措置に見合わして立案すること。この二つの答申をなされたのであります。さらに、諮問委員会から、国鉄第三次長期計画についての意見書が出されました。その大要は、大都市付近の通勤輸送の改善、幹線輸送力の増強、直接的保安対策の強化を内容とし、投資規模は約三兆円に達するが、安全の確保と輸送力の不足による経済のひずみ是正は緊急解決を要するので、昭和四十五年までに完遂すべきである。なお、この計画実施にあたって最も問題なのは、その資金調達の方法である。これについて、政府がまず財政投融資の思い切った増額など、積極的な財政措置をとる必要がある。  次に、政府出資についてであるが、二兆円の国鉄資産のほとんどが、運輸収入と借り入れ金のみによってつくり上げられたものであり、その中で政府は、国鉄の長い歴史において、昭和二十五年にわずか四十億円の出資をしたにすぎないということはまことに不合理であるので、この際、政府出資の増額を政府に強く要望する。  なお、これに関連して、国鉄に課せられている公共負担であるが、再三にわたって指摘してきた通勤、通学定期割引率を法定限度内まで引き下げること、及び公共負担による原価割れを政府が補償することの二つを何としてでも断行すべきである。  結びとしてこの答申は、戦後の疲弊したわが国経済の再建をはかるため国鉄の果たした役割りと、わが国経済発展の基盤としての国鉄の使命を考えると青、また、ヨーロッパ諸国における政府出資、公共割引の補償など積極的な政府の鉄道補助政策の実例に徴しても、いまこそ政府が国鉄に対して抜本的な援助を行なうべき段階に到達していることは明らかで、真に国鉄がその使命を果たし得るよう所要の措置を早急に講ぜられんことを強く要望する。となっております。  ところが、その後政府は、日本国有鉄道基本問題懇談会を各省事務次官で構成し、昭和三十九年十一月二十七日出されました意見書の大要は、政府として最も政治的責任を負わなければならない政府出資について次のように述べております。日本国有鉄道法第五条第二項によれば、政府は、必要があると認めるときは、国鉄に追加して出資することができると定められている。当面国鉄の希望するような出資は困難であるとしても、今後の問題として、出資またはこれにかわる負担金などについて検討することが必要であるとすりかえておるのであります。あげて一切の資金調達を運賃値上げによる一般大衆にしわ寄せする方策をとったのであります。  一体、公共企業体というのは何なのでありましょう。政治的には何らの配慮もなされず、弱い一般大衆を痛めつけて強い大企業を守り、それを国家的機構の中で守り抜くことが公共企業体なのでありましょうか。諮問委員会で「第一に財政投融資の大量投入、第二に国の出資、しかる後にある程度の資金を運賃の値上げに求めることはやむを得ない」としても、いかにして国民の負担増を少なくし、生活を安定せしめるかが政治でありましょう。しかりとするならば、当然久保議員提出の日本国有鉄道整備緊急措置法のように、運賃値上げを阻止する政治的な措置がとられることが急務と思うのでありますが、久保議員に、諮問委員会答申と同法案の関連について、また運輸大臣は、諮問委員会の答申が誤りと思うのかどうか、もし誤りなしとするならば、その政治的措置はいついかなる方法で具体化するのか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。  なお、久保議員の説明によると、十カ年で総事業量三兆三千億とし、第一期一兆六千五百億と予想しておりますが、少々不足ではないかと思われますが、その考えをあわせ明らかにしていただきたいと思うのであります。  次に、今回の運賃値上げは平均二五%、旅客三一%、貨物一二・三%、通勤定期実に六八%と、相当大幅なものであります。聞くところによりますと、昨年の十二月二十五日の経済閣僚懇談会において、政府は、国鉄の新長期計画をおおむね二兆九千億円の投資規模をもって四十年から七カ年計画が実施することを確認いたしましたが、しかしながら、資金計画について了解が得られず、大蔵省側からは、運賃値上げは四十一年一月から実施し、その後さらに財源が必要なら、四十三年度にも再び値上げしてもよいという主張が行なわれたと伝えられておりますが、この際、佐藤総理から、第三次長期計画期間中再び鉄道運賃の値上げを行なわないということを、この国会を通し、国民の前に約束をしてほしいと思うのでありますが、総理の所見を明らかにしていただきたいと思います。  なお、うわさによると、藤山経済企画庁長官は、来年は一斉に公共料金を値上げをするが、大体調整のとれたところで向こう三カ年間ぐらい公共料金をストップさせると語ったということでありますが、その真偽を明らかにしてもらうとともに、もしそれが事実であるとすれば、いかなる政治的な措置をとろうとされておるのか、この際、あわせお聞かせをいただきたいと思うのであります。  次に、石田国鉄総裁は、NHKで、「国鉄は、国で投資したものは一つもない、全部運賃の中から生み出されたものだ、借金があるが、たいしたものじゃない。」と、このことばは、不正確ではあるけれども、問題の核心に触れていると思います。政府は、口を開けば財政投融資の大幅考慮を声高らかに放送するのでありますが、これに関連いたしまして、国有鉄道資金収入計画案によりますと、第三次長期計画終了年の昭和四十六年には、長期債務残高は実に三兆円をこえ、一日平均の借り入れ金など返済金とその利子の支払いは、実に約十一億四千万円となります。国鉄の運輸収入見積もりの実に三割七分という金は、右から左、銀行に納めなければならぬという驚くべき数字なのであります。国鉄経営の破綻はあまりにも明らかであります。  英国の七千億の国庫借り入れ金の封鎖、西ドイツの設備投資の千三巨億、フランスの戦災復興費政府出資約三千億など、諸外国の鉄道助成策は見るべきものがあります。国鉄基本問題懇談会も、国鉄監査報告書も、政府出資、市町村納付金の減免など、財政措置が特に要望されておりますが、政府借り入れ金返済たな上げ、利子補給、税の減免などについて考慮されてしかるべきと思いますが、佐藤総理の基本的な考えと、大蔵大臣の具体的な助成策について、この際明らかにしていただきたいと思います。  第三に、国民大衆は、重税と物価の値上がりで、苦しい毎日を送っているのに、これとは反対に、私的独占体、大企業を肥え太らせるために、あらゆる手段が動員されております。国家機構はもとよりのこと、たとえば租税特別措置法、国庫補助、財政投融資、利子補給、最近では、山一証券に対する無利子、無担保、無期限の貸し付けなど、ありとあらゆる保護が加えられているのでありますが、さらに、こうした独占体を強化する重要な一環としての価格体系があります。昭和三十八年の実績で、大口特約電力料金、一キロワット時三円三銭に対し、一般家庭の従量電灯十アンペア、月八十キロワット時十二円二十六銭であります。水道料金も、工業用水はトン当たり四円五十銭なのに、一般家庭向けは、その四倍の二十円であります。鉄道貨物運賃でも、ただ単に物価を安定せしめるために貨物運賃の上昇率を押えたということばが使われますけれども、鉄道統計年報によりますと、鉄鋼一トン当たり平均運賃は五百二十四円四十八銭であります。しかるに、一般家庭用ミカンは、実にこの五倍以上の二千八百四十五円三十一銭となっているのであります。  このように、鉄道貨物運賃は、十四等級のうち六等級以下は採算割れといわれております。原材料のほとんどが六等級以下であります。その結果、国鉄運賃の実績は、貨物運賃収入は赤字となり、それを旅客運賃によってまかなっておるのであります。国有鉄道といいながら、生活必需物資に対する特別措置はもちろん、その他石炭など、通産省、農林省、厚生省、文部省で俗にいう政策運賃をきめ、関係する団体にはよい子になりながら、その始末はあげて旅客運賃にしわ寄せする仕組みは、あまりにもかってといわなければなりません。担当運輸大臣として、この理不尽な体系を是正する責任を有すると思うのでありますが、いかなる所見をお持ちであるか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。  第四に、旅客運賃についてでありますけれども、今回の値上げ案は、遠距離利用者に特にきびしいものであります。上野−札幌二等二千百円が二千九百八十円と四三%増であります。急行、寝台料金を含めましても三二%の値上げとなります。さらに大きいのは通勤定期であります。一カ月定期で東京−横浜千五十円が二千十円で実に九一%増であります。大宮が千八十円が二千百円で九四%、立川が千二百七十円が二千四百円で八八%と、驚くべき数字を示すのであります。しかしながら、割引率は七割前後で、国鉄経営上からはまだ十分といえないでありましょう。  一面、国民生活から見た場合に、かりに、いま伝えられております来年度所得税減税二千億といたしましても、納税者一人当たり月八面円程度であります。通勤定期値上がり分以下といわなければなりません。西ドイツでは通勤、通学輸送の赤字に対する一部補償、フランスでは公共割引に対する全額補償など考慮されておりますが、運輸大臣は、民生安定上いかに措置されようとするのか、その方針を明らかにしていただきたいと思うのであります。  最後に、今回の国鉄運賃の値上げの問題は、特殊な意義を持っておると思います。一般の物価が安定しておるときに国鉄の設備を整備するということとは、たいへん意味が違うと思うのであります。消費者物価を中心に、政府見解が二・四%の上昇だといいながら、事実は八%をこえるような現状において、公債発行され、さらに物価の上昇を刺激するだろうといわれております。特に、ことしも勤労生活者の生活は実質において去年よりも低下してきております。このこと自体国鉄企業にも直接影響を受け、いつまでも料金を押えつけておくことは不能でありましょう。何ら有効な施策もなく公共料金を押えることはたいへん愚かな政策といわなければなりません。だからといって、物価の上昇に先んずるような公共料金の上昇を許すというのも問題があります。  石田国鉄総裁のことばを借りて言えば、これまでの毎度の運賃値上げの要請が、ことごと国会の権限で値切り倒され、値切れば値切ったなりに不足額予算で埋め合わせればいいものを、値切り倒しただけでザッツオール、しかも、わがもの顔して赤字新線や政策割引によるばく大な公共負担を押しつけるという政治の無責任によるものだ。どこをどう押したって、非は政治の側にあり、国鉄に非があるとすれば、それはこうした投げやりな政治に文句一つ言えない屈折した属僚性にこそありと、まさに一身を賭したような感じがするのであります。  総理の独算制というのであれば、運賃決定を国家でやることも、政策運賃を各省できめることも問題がありましょう。苦悩する国民大衆、苦悩する公共性と独算制の国鉄、一体だれに罪ありやと訴えたいのであります。古く明治二十五年、第三議会で記録に残った演説、「つえをもって人をなぐって、責め、つえにありや」と訴えた島田議員のことばこそ想起されなければなりません。いまこそ政治の権威維持からも、前非を悔いて、やろうとすれば必ずできるはずであります。日韓の二千八百八十億円、台湾への五百四十億円の援助や、租税特別措置法による国税地方税など三千億、農地報償の一千五百億など、一連の行為が続けられてきております。しかしながら、ものには順序があってよいのではないでしょうか。人命尊重こそ何にも増して打たれなければならない政治の第一の手でありましょう。と考えてくるとき、いまだその内容は十分とは言えないにしても、久保議員提出の国鉄整備緊急措置法案は、自己資金一千百億となって、国鉄全職員の負担加重といわなければならない問題がありますけれども、政府出資、借り入れ、自己資金の資金繰りを推進することによって、当面国民大衆に運賃値上げの負担増を阻止し、一面人命尊重の第三次長期計画を推し進め、そのことは物価安定への、佐藤内閣の最大にしてかつ急務な政治課題を前向きに推し進める行為にも通ずると思うのであります。いまこそ、野党議員提出法案などと、従来の偏見にとらわれずに、運賃法を撤回し、久保議員提出の国鉄整備緊急措置法案の肉づけに当たるべきだと思うのでありますが、担当運輸大臣の見解を承りたいと思います。  最後に、各大臣の答弁は事務局の書いた原稿を読むのではなく、政治家として、閣僚として、国民の生活を守る義務からも、思い切って政策を述べていただくことを強く要求いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)  〔久保三郎登壇
  48. 久保三郎

    久保三郎君 泊谷君のお尋ねでありますが、詳細は委員会で申し上げることにいたし、お尋ねの二点について簡単にお答え申し上げます。  第一点は、国鉄経営諮問委員会の答申と、提案した日本国有鉄道整備緊急措置法案との関係はどうだということだと思います。  申し上げるまでもなく、この経営諮問委員会と同じ長期計画に言及しておる国鉄基本問題懇談会の意見書、これは大体において資金調達については同じ意見だろうと私は考えております。でありますから、当然、この諮問委員会なりあるいは懇談会の意見を尊重するという立場であるならば、従来の運賃値上げだけによって新しい計画を進めるというのは反省されねばならぬ。その意味からいっても、私は、今回の運賃値上げ、運賃法の改正は、これは間違っておる、かように考えております。  さらに、もう一つつけ加えて申し上げますが、この懇談会意見書の運賃の問題についてでありますが、これはこういうふうな答申をしておりまして、政府はこの点については少しも考えておりません。すなわち、「もとより運賃引上げの実施に際しては、その影響の広範囲であることを考えて、その時期及び引上げ率については物価政策全体の立場から慎重に決定する必要がある。」かように答申しておるわけでありますが、一向にこの点については関心を持っていない。さような点からいっても、私どもが提案したものを一日も早く成立させることが当面の急務であろうと考えているわけです。  さらに、五カ年計画で、私どもの提案によりますれば一兆六千五百億、十年間で三兆三千億では、政府というか、国鉄の二兆九千七百二十億というものの七年に対比して少ないではないかという御指摘でありますが、実際は、国鉄あるいは政府で約三兆円の中に計画しております山陽新幹線、二千二百億程度でありますが、これは、東海道新幹線の今日までの経過あるいは将来の見通し、こういうものを考えますれば、山陽新幹線については、一般の改良工事の計画から切り離していくことがまず必要であろうというので、二千二百億のいわゆる山陽新幹線の計画はこの中には入っておらないわけでありますので、この点も御了承いただきたいと思うのであります。  以上、答弁申し上げます。(拍手)  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  49. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 鉄道の専門家ばかりから意見を述べられ、かつそれに質問を加えられておりますので、何だか私もちょっと戸惑っておりますが、先ほど野間君に対して、政府出資についての私の答弁はいたしました。今回も同じように政府の出資をぜひやれという御要望、また御意見でございますが、これにつきましては、野間君に答えましたように、独立採算でやるべき仕事のように思っております。  また、第三次長期計画、この際には運賃改正をしなくても済むのか、しないということをこの議場で約束しろというお話でございますが、特別の事情なき限り、経営努力並びに財政的処置で、運賃改正などをしないで第三次長期計画を遂行してまいりたいと、かように考えております。  また、運賃改正の時期につきましても御意見を述べられましたが、実は、この国鉄の運賃改正は、一年間時期を見たつもりでございます。一年間待機いたしましたが、やはり時期は早くしないと、ますますその負担が大きくなる、かように考えまして、今回もその中身についてくふうをし、物価等に及ぼす影響をできるだけ最小限度にとどめることにいたしまして、今回は撤回などはいたしませんで、これはぜひ御審議をいただき、成案を得るようにいたしたい、かように思っております。(拍手)  〔国務大臣中村寅太君登壇
  50. 中村寅太

    ○国務大臣(中村寅太君) 政府出資や国庫補助等につきましては、国の財政の現状にかんがみ、いま直ちにこれを実施することには無理がありますので、今後の問題として、独立採算制を原則とする公共企業体の性格等も考慮して、今後検討してまいりたいと思っております。  それから、国鉄の公共的性格からしまして、国鉄がある程度の公共政策的負担を負うことはやむを得ないものであると考えますが、過度と認められるものにつきましては、今後利用者負担の原則に立って漸次軽減する方向に持っていきたいと考えております。  なお、通勤割引に対する国家補償の点については、現在の段階では考えておりません。  旅客運賃の遠距離逓減制についてでございますが、現在一挙に距離比例制をとる場合には、遠距離旅客の運賃負担を急激に増大させることになりますので、今回の改正においては、ある程度遠距離逓減制を修正することにとどめました。なお、この修正に伴う遠距離旅客への影響を緩和するために、往復割引制度の強化を同時に行なうことといたしております。  長期計画を法律で定めることに関しましては、趣旨は一応ごもっともとも考えられますが、国鉄の今度の新長期計画につきましては、国鉄基本問題懇談会の意見書に基づいて閣議了解をして、この計画の完全実施を期しておるのでございます。  次に、政府交付金を交付することについては、国の財政の現状から見て、いま直ちにこれを実施するということには無理があるので、今後の問題として検討してまいりたいと考えております。(拍手)  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇
  51. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま、公共料金等を上げた後は三年間ストップするかということをお尋ねになりましたけれども、ただいま、消費者米価を除きまして、国鉄あるいは郵便料金等につきましては、少なくも今回の値上げが一二年は値上げをしなくていいような率で考えておりますので、三年間は個上げをしないで済むということでございます。(拍手)  〔国務大臣福田赳夫君登壇
  52. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 国鉄に対する政府の出資、融資、このことにつきましては、ただいま運輸大臣からお答えいたしましたとおりであります。(拍手
  53. 園田直

    ○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  54. 園田直

    ○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。  午後四時四十六分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         運 輸 大 臣 中村 寅太君         郵 政 大 臣 郡  祐一君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         法務法務次官  山本 利壽君         運輸省鉄道監督         局長      堀  武夫君      ————◇—————