○泊谷裕夫君 私は、ただいま
趣旨説明のありました
日本国有鉄道整備緊急措置法案に対し、
提案者の
久保三郎議員並びに関係大臣にお尋ねをいたします。
足立日本商工
会議所会頭も唐島基智三、御手洗辰雄氏ら各界の権威者が日本国有鉄道諮問
委員会を構成し、国鉄法の一部を
改正する
法律案に対する衆参運輸
委員会並びに本
会議の附帯決議の
趣旨を尊重し、国鉄の経営のあり方について長い間検討を続けてまいりました。
昭和三十八年五月の答申は、当面の応急
措置として、国鉄に資本金を与える第一歩として、とりあえず、目下の国鉄の借り入れ金のうち、
政府がその債権者たる三千数百億円について、これを
政府出資とすること。なお、第二次五カ年計画を打ち切り、新しい長期計画を
政府の行なうべき
措置に見合わして立案すること。この
二つの答申をなされたのであります。さらに、諮問
委員会から、国鉄第三次長期計画についての意見書が出されました。その大要は、大都市付近の通勤輸送の改善、幹線輸送力の増強、直接的保安
対策の強化を
内容とし、投資規模は約三兆円に達するが、安全の確保と輸送力の
不足による経済のひずみ是正は緊急解決を要するので、
昭和四十五年までに完遂すべきである。なお、この計画
実施にあたって最も問題なのは、その資金調達の方法である。これについて、
政府がまず
財政投融資の思い切った増額など、積極的な
財政措置をとる必要がある。
次に、
政府出資についてであるが、二兆円の国鉄資産のほとんどが、運輸収入と借り入れ金のみによってつくり上げられたものであり、その中で
政府は、国鉄の長い歴史において、
昭和二十五年にわずか四十億円の出資をしたにすぎないということはまことに不合理であるので、この際、
政府出資の増額を
政府に強く要望する。
なお、これに関連して、国鉄に課せられている公共負担であるが、再三にわたって指摘してきた通勤、通学定期割引率を法定限度内まで引き下げること、及び公共負担による原価割れを
政府が補償することの
二つを何としてでも断行すべきである。
結びとしてこの答申は、戦後の疲弊したわが国経済の再建をはかるため国鉄の果たした役割りと、わが国経済発展の基盤としての国鉄の使命を考えると青、また、ヨーロッパ諸国における
政府出資、公共割引の補償など積極的な
政府の鉄道補助政策の実例に徴しても、いまこそ
政府が国鉄に対して抜本的な援助を行なうべき段階に到達していることは明らかで、真に国鉄がその使命を果たし得るよう所要の
措置を早急に講ぜられんことを強く要望する。となっております。
ところが、その後
政府は、日本国有鉄道基本問題懇談会を各省事務次官で構成し、
昭和三十九年十一月二十七日出されました意見書の大要は、
政府として最も政治的
責任を負わなければならない
政府出資について次のように述べております。日本国有鉄道法第五条第二項によれば、
政府は、必要があると認めるときは、国鉄に追加して出資することができると定められている。当面国鉄の希望するような出資は困難であるとしても、今後の問題として、出資またはこれにかわる負担金などについて検討することが必要であるとすりかえておるのであります。あげて一切の資金調達を運賃値上げによる一般大衆にしわ寄せする方策をとったのであります。
一体、公共企業体というのは何なのでありましょう。政治的には何らの配慮もなされず、弱い一般大衆を痛めつけて強い大企業を守り、それを国家的機構の中で守り抜くことが公共企業体なのでありましょうか。諮問
委員会で「第一に
財政投融資の大量投入、第二に国の出資、しかる後にある
程度の資金を運賃の値上げに求めることはやむを得ない」としても、いかにして
国民の負担増を少なくし、生活を安定せしめるかが政治でありましょう。しかりとするならば、当然久保議員
提出の日本国有鉄道整備緊急
措置法のように、運賃値上げを阻止する政治的な
措置がとられることが急務と思うのでありますが、久保議員に、諮問
委員会答申と同
法案の関連について、また運輸大臣は、諮問
委員会の答申が誤りと思うのかどうか、もし誤りなしとするならば、その政治的
措置はいついかなる方法で具体化するのか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
なお、久保議員の
説明によると、十カ年で総事業量三兆三千億とし、第一期一兆六千五百億と予想しておりますが、少々
不足ではないかと思われますが、その考えをあわせ明らかにしていただきたいと思うのであります。
次に、今回の運賃値上げは平均二五%、旅客三一%、貨物一二・三%、通勤定期実に六八%と、相当大幅なものであります。聞くところによりますと、昨年の十二月二十五日の経済閣僚懇談会において、
政府は、国鉄の新長期計画をおおむね二兆九千億円の投資規模をもって四十年から七カ年計画が
実施することを確認いたしましたが、しかしながら、資金計画について了解が得られず、大蔵省側からは、運賃値上げは四十一年一月から
実施し、その後さらに
財源が必要なら、四十三
年度にも再び値上げしてもよいという主張が行なわれたと伝えられておりますが、この際、佐藤総理から、第三次長期計画期間中再び鉄道運賃の値上げを行なわないということを、この
国会を通し、
国民の前に約束をしてほしいと思うのでありますが、総理の所見を明らかにしていただきたいと思います。
なお、うわさによると、藤山経済企画庁長官は、来年は一斉に公共料金を値上げをするが、大体調整のとれたところで向こう三カ年間ぐらい公共料金をストップさせると語ったということでありますが、その真偽を明らかにしてもらうとともに、もしそれが事実であるとすれば、いかなる政治的な
措置をとろうとされておるのか、この際、あわせお聞かせをいただきたいと思うのであります。
次に、石田国鉄総裁は、NHKで、「国鉄は、国で投資したものは
一つもない、全部運賃の中から生み出されたものだ、借金があるが、たいしたものじゃない。」と、このことばは、不正確ではあるけれども、問題の核心に触れていると思います。
政府は、口を開けば
財政投融資の大幅考慮を声高らかに放送するのでありますが、これに関連いたしまして、国有鉄道資金収入計画案によりますと、第三次長期計画終了年の
昭和四十六年には、長期債務残高は実に三兆円をこえ、一日平均の借り入れ金など返済金とその利子の支払いは、実に約十一億四千万円となります。国鉄の運輸収入見積もりの実に三割七分という金は、右から左、銀行に納めなければならぬという驚くべき数字なのであります。国鉄経営の
破綻はあまりにも明らかであります。
英国の七千億の国庫借り入れ金の封鎖、西ドイツの設備投資の千三巨億、フランスの戦災復興費
政府出資約三千億など、諸外国の鉄道助成策は見るべきものがあります。国鉄基本問題懇談会も、国鉄監査
報告書も、
政府出資、市町村納付金の減免など、
財政的
措置が特に要望されておりますが、
政府借り入れ金返済たな上げ、利子補給、税の減免などについて考慮されてしかるべきと思いますが、佐藤総理の基本的な考えと、大蔵大臣の具体的な助成策について、この際明らかにしていただきたいと思います。
第三に、
国民大衆は、重税と物価の値上がりで、苦しい毎日を送っているのに、これとは反対に、私的独占体、大企業を肥え太らせるために、あらゆる手段が動員されております。国家機構はもとよりのこと、たとえば
租税特別措置法、国庫補助、
財政投融資、利子補給、最近では、山一証券に対する無利子、無担保、無期限の貸し付けなど、ありとあらゆる保護が加えられているのでありますが、さらに、こうした独占体を強化する重要な一環としての価格体系があります。
昭和三十八年の実績で、大口特約電力料金、一キロワット時三円三銭に対し、一般家庭の従量電灯十アンペア、月八十キロワット時十二円二十六銭であります。水道料金も、工業用水はトン当たり四円五十銭なのに、一般家庭向けは、その四倍の二十円であります。鉄道貨物運賃でも、ただ単に物価を安定せしめるために貨物運賃の上昇率を押えたということばが使われますけれども、鉄道統計年報によりますと、鉄鋼一トン当たり平均運賃は五百二十四円四十八銭であります。しかるに、一般家庭用ミカンは、実にこの五倍以上の二千八百四十五円三十一銭となっているのであります。
このように、鉄道貨物運賃は、十四等級のうち六等級以下は採算割れといわれております。原材料のほとんどが六等級以下であります。その結果、国鉄運賃の実績は、貨物運賃収入は赤字となり、それを旅客運賃によってまかなっておるのであります。国有鉄道といいながら、生活必需物資に対する
特別措置はもちろん、その他石炭など、通産省、農林省、厚生省、文部省で俗にいう政策運賃をきめ、関係する団体にはよい子になりながら、その始末はあげて旅客運賃にしわ寄せする仕組みは、あまりにもかってといわなければなりません。担当運輸大臣として、この理不尽な体系を是正する
責任を有すると思うのでありますが、いかなる所見をお持ちであるか、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。
第四に、旅客運賃についてでありますけれども、今回の値上げ案は、遠距離利用者に特にきびしいものであります。上野−札幌二等二千百円が二千九百八十円と四三%増であります。急行、寝台料金を含めましても三二%の値上げとなります。さらに大きいのは通勤定期であります。一カ月定期で東京−横浜千五十円が二千十円で実に九一%増であります。大宮が千八十円が二千百円で九四%、立川が千二百七十円が二千四百円で八八%と、驚くべき数字を示すのであります。しかしながら、割引率は七割前後で、国鉄経営上からはまだ十分といえないでありましょう。
一面、
国民生活から見た場合に、かりに、いま伝えられております来
年度所得税減税二千億といたしましても、納税者一人当たり月八面円
程度であります。通勤定期値上がり分以下といわなければなりません。西ドイツでは通勤、通学輸送の赤字に対する一部補償、フランスでは公共割引に対する全額補償など考慮されておりますが、運輸大臣は、民生安定上いかに
措置されようとするのか、その方針を明らかにしていただきたいと思うのであります。
最後に、今回の国鉄運賃の値上げの問題は、特殊な意義を持っておると思います。一般の物価が安定しておるときに国鉄の設備を整備するということとは、たいへん意味が違うと思うのであります。消費者物価を中心に、
政府見解が二・四%の上昇だといいながら、事実は八%をこえるような現状において、
公債が
発行され、さらに物価の上昇を刺激するだろうといわれております。特に、ことしも勤労生活者の生活は実質において去年よりも低下してきております。このこと自体国鉄企業にも直接影響を受け、いつまでも料金を押えつけておくことは不能でありましょう。何ら有効な施策もなく公共料金を押えることはたいへん愚かな政策といわなければなりません。だからといって、物価の上昇に先んずるような公共料金の上昇を許すというのも問題があります。
石田国鉄総裁のことばを借りて言えば、これまでの毎度の運賃値上げの要請が、ことごと
国会の権限で値切り倒され、値切れば値切ったなりに
不足額を
予算で埋め合わせればいいものを、値切り倒しただけでザッツオール、しかも、わがもの顔して赤字新線や政策割引によるばく大な公共負担を押しつけるという政治の無
責任によるものだ。どこをどう押したって、非は政治の側にあり、国鉄に非があるとすれば、それはこうした投げやりな政治に文句
一つ言えない屈折した属僚性にこそありと、まさに一身を賭したような感じがするのであります。
総理の独算制というのであれば、運賃決定を国家でやることも、政策運賃を各省できめることも問題がありましょう。苦悩する
国民大衆、苦悩する公共性と独算制の国鉄、一体だれに罪ありやと訴えたいのであります。古く明治二十五年、第三議会で記録に残った演説、「つえをもって人をなぐって、責め、つえにありや」と訴えた島田議員のことばこそ想起されなければなりません。いまこそ政治の権威維持からも、前非を悔いて、やろうとすれば必ずできるはずであります。日韓の二千八百八十億円、台湾への五百四十億円の援助や、
租税特別措置法による
国税、
地方税など三千億、農地報償の一千五百億など、一連の行為が続けられてきております。しかしながら、ものには順序があってよいのではないでしょうか。人命尊重こそ何にも増して打たれなければならない政治の第一の手でありましょう。と考えてくるとき、いまだその
内容は十分とは言えないにしても、久保議員
提出の国鉄整備緊急
措置法案は、自己資金一千百億となって、国鉄全
職員の負担加重といわなければならない問題がありますけれども、
政府出資、借り入れ、自己資金の資金繰りを推進することによって、当面
国民大衆に運賃値上げの負担増を阻止し、一面人命尊重の第三次長期計画を推し進め、そのことは物価安定への、佐藤
内閣の最大にしてかつ急務な政治課題を前向きに推し進める行為にも通ずると思うのであります。いまこそ、野党議員
提出法案などと、従来の偏見にとらわれずに、運賃法を撤回し、久保議員
提出の国鉄整備緊急
措置法案の肉づけに当たるべきだと思うのでありますが、担当運輸大臣の見解を承りたいと思います。
最後に、各大臣の答弁は事務局の書いた原稿を読むのではなく、政治家として、閣僚として、
国民の生活を守る義務からも、思い切って政策を述べていただくことを強く要求いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
久保三郎君
登壇〕