○加藤清二君(続) さあれ、私の最も尊敬してやまない
河上先生、しかもクリスト教徒であらせられた先生が、クリスト降誕祭のその前夜、本院においてその
功績をたたえられました。そのことに感激いたしまして、国家、
国民のしあわせのために
討論を進めます。(
拍手)
まず第一に、
わが国の
財政経済を今日の破綻に導いた自民党
政府の責任でございます。自民党池田内閣が高度経済成長
政策を開始して以来、
政府は毎年度の
予算規模を、経済
成長率をはるかに上回る大きな比率で膨張させてきたのでございます。まさに無軌道、放漫な膨張といわなければなりません。しかも、その無軌道、放漫な
予算の支出が、ほとんど独占大
企業のための公共投資でございます。独占大
企業は、このほかに
銀行が軒並みにオーバーローンになるほど過剰設備をいたしました。一方、
インフレと信用膨張が進み、
物価は急速に騰貴いたしました。その結果、
財政の
支出要因は果てしもなく拡大膨張することは当然でございましょう。過剰生産が表面化し、それに基づく経済
不況が起こってまいりました。経済
不況、これは明年もまた一向に景気回復の徴候がございません。
不況のはね返りとして国の租
税収入が大きく縮小する結果を招来したのでございます。支出が膨張し、他方で
税収が縮小すれば、
財政が破綻するのは当然でございます。現在の
財政破綻は、その意味におきまして、ここ数年間の自民党
政府の
経済高度成長政策と、放漫膨張
財政政策の必然的な結果でございまして、その責任は重かつ大、あげて自民党
政府にあるといわなけれぱなりません。(
拍手)
しかるに
政府は、恥知らずにも、責任をほおか
ぶりし、
赤字公債発行と
公共料金引き上げによって、
財政破綻を糊塗しようといたしておるのでございます。そのあらわれが、このたびの
補正予算でございます。
第二に、
赤字公債の
発行は、
財政の憲法ともいうべき
財政法第四条の
公債不
発行の大原則を破るものでございます。かつて
わが国の軍閥と財閥は、
赤字公債発行による
財源を軍事費に投じて、アジアへの侵略戦争を行ない、
日本を亡国の危機におとしいれたのでございます。この苦い教訓に対する反省の上に立って、戦後、われわれは二度と再軍備せず戦争しないという憲法第九条と、二度と
赤字公債発行をしないという
財政法第四条を制定したのでございます。
ところが、自民党
政府は、御承知のように憲法第九条をじゅうりんして、自衛隊の再軍備を進めてきました。そして今回また二千五百九十億円の
赤字公債発行によって
財政法第四条をも破壊しようとしておるのでございます。この二つは表裏一体、ワンセットでございます。佐藤内閣は憲法第九条のじゅうりんを進めているのみならず、機会を見て第九条そのものを改悪しようと虎視たんたんであるといわれております。
日韓条約の批准を強行したのは、東北アジア
軍事同盟の仕上げにつながったものであり、明年度からは第三次防衛計画を開始し、自衛隊の装備を核武装の水準にまで高めようとしております。こうした背景の中で、
政府が
財政法第四条をじゅうりんして
赤字公債を
発行することは、まさにかつての
満州事変を契機として
公債発行が急増し始めたあの戦争への道の繰り返しとなるのではないか。賢明な
国民はひとしくこれを憂えているのでございます。(
拍手)
第三に、
赤字公債は必然的に
物価値上がりを促進しております。
インフレのおそれはないと
政府は再三申しますけれども、現在の
金融情勢のもとでは、一たん民間金融機関の引き受けた
公債が日ならずして日銀へ集中されることは必然でございましょう、大蔵大臣。これは従来の
政府保証債や金融債が結局日銀へ集中いたしまして、日銀の通貨を増発させてきた
経過によっても明らかなところでございます。現在でさえ
消費者物価の
値上がりが年に八%もこえようとしている。これにさらに
赤字公債発行が加わるならば、一体
国民生活はどうなるでございましょうか。
国民の最も心配するところでございます。この心配を解くかぎは、遺憾ながら、
予算委員会における
政府答弁からは得られませんでした。
赤字公債発行は大資本の階級的利益に奉仕するものでございます。本年度は
歳入不足を補う
公債を出し、明年度以降は
建設公債の名前で
公債を
発行しようとしておりまするが、その
公債財源によって何が行なわれるかといえば、一つは、大
企業の産業基盤に奉仕する公共投資の拡大であります。またの一つは、財界の望んでやまないところの
企業減税でございます。そして、その
公債の元利をだれの
負担で償還するかといえば、将来の
国民の税金でまかなうことは必然でございましょう。本年度二千五言九十億円、明年度七千億円、明後年は一兆円もというように
公債を
発行していけば、
発行累積額が十兆円に達するのは数年のうちでございましょう。その元利を
国民の税金でまかなおうとするならば、まさに
国民にとっては所得倍増ではなくして、税金倍増だといわなければなりません。(
拍手)
インフレと
物価騰貴のしわを寄せられ、また税金倍増の
負担を負わされる。まさに踏んだりけったりではございませんか。池田総理の所得倍増は、大
企業にのみ与えられたものでございました。これと同様、佐藤総理の
人間尊重は、これまた大
企業と
政府の要人にのみ与えられる親切でございましょうか。(
拍手)
第四に、
公債に関連して見忘れてならないことは、
赤字公債発行は
地方財政を一そう窮迫させることでございます。
公債財源によって
政府が
企業減税を行ないますと、地方自治体の
税収入は縮小されてまいります。また、
公債財源による
公共事業拡大が行なわれますれば、地方自治体の
財政支出はやがて膨張いたします。自治省によれば、国家が七千億円の
公債発行をすれば、地方の
財政は約三千六百億円の赤字を免れないであろうと試算していることは、きわめて重大でございます。それに加えて、地方起債市場の
資金が
公債によって国へ吸い上げられるのも、
地方財政にとっては大問題でございます。まさに
公債発行は
地方財政を破産させると言って過言ではございません。その結果、地方自治はいよいよ
中央集権のもとにひもつきにされ、他方では、地方住民に対する地方税の
負担がいよいよ重加されることは免れ得ないことでございましょう。
以上、いかなる見地から見ましても、
公債発行は断じて
国民の承認できないところでございます。(
拍手)
政府は、
公債発行によって
政府が借金するかわりに、
企業も
国民の家計も豊かにするのだと称しておりまするが、とんでもない話でございまして、
公債発行によって豊かになるものは確かにございます。しかし、それは独占大
企業だけで、国の
財政も
地方財政も
中小企業も、また
国民の家計も、すべて破局の運命をたどらなければならぬことが目に見えているのでございます。もし見えないとすれば、それは経済に暗い人の目といわなければなりません。
第五の問題点は、
公共料金の
引き上げでございます。今次
補正予算は、
消費者米価、健康保険料、
国鉄運賃などの
公共料金の
引き上げを前提として編成されております。佐藤内閣は、その公約としては
物価安定を最大課題とすると約束しております。ところが、現実はどうでございましょう。今年度の
消費者物価は四・五%の
上昇にとどめるという公約でございました。しかし、現実にはすでに八%をこえていることは明らかでございます。これはすでに重大な公約違反でございます。それに加えて、各種
公共料金が続々と
値上げをされていくということに相なりまするならば、これもたいへんな問題になりまして、これこそ一体
国民生活はどうなるであろうかと心配せざるを得ないのでございます。内閣の冷血無情と申しましょうか、本質がここに暴露されていると言うても過言でございません。(
拍手)
第六に指摘しなければならぬことは、
韓国への無償供与の十八億円を計上していることでございます。日韓の批准書交換のとたんに、
韓国政府が竹島に漁業専管水域を設定したことは何を物語るでございましょうか。まさに、わが党がさきの国会で指摘したとおり、
日本の国会と
国民に対する佐藤内閣のもろもろの
説明は、
国民を欺く口から出まかせにすぎなかったと言うても、これは差しつかえないではございませんか。(
拍手)
韓国は、すでに南ベトナムへ一個師団を派兵しております。加えて、さらに三個師団を派兵しようといたしております。この
韓国に対して供与する十八億円の金は、
韓国の南ベトナム派兵の費用をあと押しするものではないかと
国民は心配をいたしているのでございます。(
拍手)
すなわち、今次
補正予算の性格を要約すれば、
赤字公債と
インフレの
予算であり、
公共料金引き上げの
予算であり、日韓
軍事同盟強化の
予算であり、わが党は、平和と
生活安定を求める
日本国民の名において、断じてこれに反対するものでございます。(
拍手)
これに対し、社会党提出の
組み替え動議は、まことに現在の
日本経済と
財政の危機を打開するにふさわしい、しかも正しい問題点を提起しておるのでございます。
まず第一には、
財政法第四条を断固守ります。
赤字公債は
発行いたしません。当面の
財政破綻を打開しようといたしておりまするが、そのため、
歳出においては、
不要不急の
経費を徹底的に削減し、
歳入においては、納めるべき税金を納めずにいる大
企業、
高額所得者から、租税
負担公平の原則によって、しっかりと税金を取り、それによって、本年度
予算の
財源不足を打開しようといたしておるのでございます。この点は、佐藤総理も賛成でございます。大
企業の社用族が使いますところの交際費がまさに五千億、それは株主に分けまする配当金ととんとんでございます。こんな大きな、株主の配当金ととんとんになるような大きな交際費を使っているそういう
企業家が、世界広しといえども、どこの国にあるでございましょうか。(
拍手)まさに
日本の
企業家は、温室に入れられて甘やかされておるといわざるを得ないのでございます。
第二には、
公共料金の
引き上げをストップする立場に立っておることでございます。これは、もちろん、
不況で
国民の収入が停滞しているときに、
公共料金が
引き上げられることが、勤労
大衆、特に低所得階層の
生活をはなはだしく窮乏化させることを考慮しているからでございます。そして、食管会計、健康保険
財政、あるいは国鉄の新しい建設計画は、その経理を徹底的に洗い直した上に立って、所要の
資金は国の
財政によって
措置することを主張しておるのでございます。
第三は、
公務員給与の改定については、
人事院勧告のとおり、五月から完全実施するというたてまえでございます。
公務員労働者が労働基本権を奪われている、そのかわりに人事院の勧告が行なわれるのでございますから、これを完全実施することは、
政府として最低限の責任でございましょう。また、この
組み替え案は、
物価値上がりで特に困窮している低所得層対策として、失対賃金と
生活保護基準の
引き上げを主張いたしております。こうした
措置が
国民大衆の
消費需要を拡大させて、もって、現在の経済
不況を打開する有力なる
措置であるということは、賢明な大臣ならずとも、自民党の皆さんよくおわかりのことと存ずるのでございます。
第四に、
災害対策を飛躍的に拡充するということでございます。しかも、量的な拡充にとどまらず、特に
被災者援護法を制定いたしまして、
被災者の
生活保障と
生活再建の抜本策、救農土木
事業の実施等々を考慮いたし、従来の保守党のこう薬ばり的な
災害対策から見れば、これはまさに画期的な提案でございまして、
政府は、すみやかにこの提案を受け入れて、実行に移すべきでございましょう。
第五に、現在の経済
不況を払拭する重大な
需要拡大
政策をとるということでございます。現在の経済
不況の特徴は、
地方財政と
中小企業という
日本経済をささえる二つの柱が、いまにも折れそうになっているというところに、その特徴があるのでございます。いかに
政府が公共投資で景気を刺激するといいましても、
公共事業を施行する末端の地方自治体が
財政破綻に瀕し、超過
負担に耐え切れず、
公共事業を返上するというような現状では、まず、
地方財政にてこ入れするということがなければ、景気回復の機運が地方から盛り上がってくるはずがございません。(
拍手)
中小企業も同様でございます。毎日平均倒産が二十件、零細はその八倍にも及んでおります。現在のままでは、いかに景気の刺激をはかっても、それはとうてい
日本経済の底辺へしみ通っていくはずがございません。この点は、
予算委員会における総理の
答弁をよしとするものでございます。しかし、言だけやよし、必ずあれを実行に移していただきたいことを要望するわけでございます。したがって、まず、
中小企業対策に大胆な
財政措置を盛ってこそ、有効
需要も、経済の活気が底辺からわき上がってくるのでございます。社会党
組み替え動議は、こうした見地から、
地方財政対策と
中小企業対策に大胆な
予算措置をとることを提案しております。
また、その他生命保険、損害保険、農協系統余裕金などを、
利子補給によって活用して、住宅の大量建設を断行することも主張いたしておるのでございます。これらはいずれも底辺からの景気回復の
措置であり、これを断行すれば、いまの
不況を一気に払うことができると確信いたして提案いたしておるのでございます。
最後に、
韓国への無償供与
予算を削除いたしまして、
日本の平和と、中立の立場を
確立することを主張いたしております。また、
日韓条約と切り離した立場に立って、李ラインによる被災漁業者に対し、十分なる代位補償の
措置をとることを主張いたしております。
以上のような内容を盛った社会党提出
組み替え動議は、
日本の経済と
財政の危機を打開し、
インフレをなくし、しかも景気
上昇、
健全財政の堅持ができる
日本経済を築こうとするところの熱意にあふれた提案でございまして、
国民は心からこれを待望いたしておるのでございましょう。この期待にこたえることこそが、国会と
政府の責任といわなければなりません。
最後に、総理に申し上げておきます。
あなたが、なお
人間尊重を揚言するならば、来年は失敗を繰り返さぬためにも、
国民の幸福、国家の平和を基調としたこの社会党の
予算をよき手本として、来年度
予算を編成されるよう、しかと申し入れ、
補正予算の
政府案に反対、社会党
組み替え動議に賛成の意思を表明いたしまして、私の
討論を終わるものでございます。(
拍手)