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1965-12-20 第51回国会 衆議院 本会議 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十日(月曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第一号   昭和四十年十二月二十日    午前十時開議  第一 議席指定     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  仮議長選挙  議長辞職の件  副議長辞職の件  議長選挙  副議長選挙  日程第一 議席指定  福田大蔵大臣昭和四十年度一般会計補正予算   (第3号)等についての発言  国務大臣の演説に対する質疑  昭和四十年度における財政処理特別措置に関   する法律案内閣提出)の趣旨説明及び質疑  午後二時三十六分開議   〔事務総長久保田義麿議長席に着く〕
  2. 久保田義麿

    事務総長久保田義麿君) これより開会いたします。  昨十九日、議長船田中君及び副議長田中伊三次君から、それぞれ辞職願が提出されました。よって、議長及び副議長がともに事故ある場合として、国会法第二十二条の規定により、仮議長選挙しなければなりません。つきましては、同条の規定により、私がこの際暫時議長の職務を行ないます。      ――――◇―――――  仮議長選挙
  3. 久保田義麿

    事務総長久保田義麿君) 仮議長選挙を行ないます。
  4. 海部俊樹

    海部俊樹君 仮議長選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  5. 久保田義麿

    事務総長久保田義麿君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 久保田義麿

    事務総長久保田義麿君) 御異議なしと認めます。よって、福永健司君を仮議長に指名いたします。  〔拍手〕  この際、仮議長福永健司君の御着席を願います。福永健司君。  〔仮議長福永健司議長席に着く〕
  7. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 御推挙によりまして、仮議長に選任されました。  諸君の御協力によりまして大過なきを期したいと存じます。よろしくお願いいたします。(拍手)      ――――◇―――――  議長辞職の件  副議長辞職の件
  8. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 議長辞職の件、及び副議長辞職の件につきおはかりいたします。  まず、その辞職願を朗読いたさせます。   〔参事朗読〕     辞職願                    私儀  衆議院議長辞任致度に付御許可願上げます   昭和四十年十二月十九日          衆議院議長 船田 中    衆議院議長 田中伊三次殿     …………………………………     離職願  辞職いたしたく許可願います   昭和四十年一二月十九日         衆議院議長 田中伊三次    衆議院議長 船田  中殿
  9. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) まず、船田中君の議長辞職の件につき採決いたします。  本件を許可するに御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。(拍手)  次に、田中伊三次君の副議長辞職の件につき採決いたします。  本件を許可するに御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。(拍手)      ――――◇―――――  議長選挙
  12. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) つきましては、議長及び副議長選挙を行ないます。  これより、議長選挙を行ないます。  選挙手続につきましては衆議院規則によることといたします。なお、念のため申し上げますと、投票単記無名投票であります。諸君のお手元に配付してありまするところの投票用紙に被選人氏名を記載せられ、木札名刺を添えて御持参あらんことを望みます。  これより点呼を命じます。  〔参事氏名点呼〕  〔各員投票
  13. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖開匣。  これより名刺及び投票計算を命じます。  〔参事名刺及び投票計算
  14. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 投票総数三百九十四、名刺の数は三百九十三でありまして、投票の数が名刺の数に一票超過いたしております。衆議院規則第六条第二項によりますと、「投票の数が名刺の数に超過したときは、更に投票を行わなければならない。但し、選挙の結果に異動を及ぼさないときは、この限りでない。」とあります。選挙の結果に異動を及ぼすやいなやは点検の結果を見なければ判明いたしませんから、このまま点検をすることといたします。  本投票過半数は百九十八であります。  これより投票点検を命じます。  〔参事投票点検
  15. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) おはかりいたします。  投票中、「山口喜一郎」と記載したものがあります。これは山口喜久一郎君に投票したものと認め、有効とするに御異議ありませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 御異議なしと認めます。  投票中、白票が五票あります。これは当然無効であります。  〔参事投票点検を継続〕
  17. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長報告〕          三百八十四点 山口喜久一郎君   〔拍手〕             四点 川上 貫一君   〔拍手〕              一点 山花 秀雄君   〔拍手〕      ほかに白票 五
  18. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) ただいま御報告いたしましたとおりでありますから、投票の数が名刺の数に一票超過いたしておりましても、選挙の結果には異動を及ぼしません。よって、衆議院規則第六条第二項ただし書によりまして、本投票はこれを有効といたします。  右の結果、衆議院規則第八条により、山口喜久一郎君が議長に当選せられました。  〔拍手〕      ――――◇―――――  副議長選挙
  19. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 次に、副議長選挙を行ないます。  選挙手続につきましては議長選挙と同様であります。すなわち、投票用紙に被選人氏名を記載せられ、木札名刺とともに御持参あらんことを望みます。  これより点呼を命じます。  〔参事氏名点呼〕  〔各員投票
  20. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖開匣。  これより名刺及び投票計算を命じます。  〔参事名刺及び投票計算
  21. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 投票総数四百三、名刺の数もこれと符合いたしております。本投票過半数は二百二であります。  これより投票点検を命じます。  〔参事投票点検
  22. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長報告〕          二百五十五点 園田  直君   〔拍手〕           百四十八点 山花 秀雄君   〔拍手
  23. 福永健司

    ○仮議長福永健司君) 右の結果、園田直君が副議長に当選せられました。   〔拍手〕  〔仮議長福永健司議長席を退く〕  〔事務総長久保田義麿議長山口喜久一郎君を演壇に導く〕
  24. 久保田義麿

    事務総長久保田義麿君) ただいま本院議長に当選されました山口喜久一郎君を御紹介申し上げます。  〔拍手
  25. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) ただいま諸君の御推挙により、衆議院議長就任いたすことになりました。まことに光栄至りに存じ、感激にたえない次第でございます。(拍手)  私は心を新たにし、誠心誠意、もって事に当たり、この重責を全うするために最善努力を尽くす覚悟であります。(拍手)  幸いにして、議員諸君の御努力によりまして、ここに各党の間に国会運営正常化についての申し合わせが成り、事態の円満なる解決を見ることができましたことは、まことに御同慶の至りであります。(拍手)  私は、議会政治の健全なる発達をはかることこそ、われわれに課せられたる重大なる責務であることに深く思いをいたし、議院の円満なる運営に全力を注ぐ所存であります。  ここに、就任に際し、切に諸君の御支援と御協力をお願いいたし、ごあいさつとする次第であります。(拍手)  〔事務総長久保田義麿君 議長山口喜久一郎君を議長席に導く〕  〔事務総長久保田義麿君 副議長園田直君を演壇に導く〕
  26. 久保田義麿

    事務総長久保田義麿君) ただいま本院副議長に当選されました園田直君を御紹介申し上げます。  〔拍手
  27. 園田直

    ○副議長園田直君) ただいま、はからずも諸君の御推挙により、本院副議長の職につくことになりました。まことに光栄至りに存じます。  私は、この職責の重かつ大なることを自覚し、公正を旨として、円満な議院運営をはかり、もって、国会権威を一そう高めることに最善努力をいたす所存であります。  何とぞ一そうの御協力、御支援をお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手
  28. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) この際、清瀬一郎君から発言を求められております。これを許します。清瀬一郎君。  〔清瀬一郎登壇
  29. 清瀬一郎

    清瀬一郎君 先例によりまして、私は、議員一同を代表いたし、ただいま御当選になりました議長及び副議長に対し、お祝いのことばを申し上げたいと思います。(拍手)また、前議長及び前副議長に対しましては、謝辞を述べたいと存じます。(拍手)  ただいま、山口喜久一郎君が本院議長に、園田直君が本院副議長に当選いたされました。われわれ一同、ここに衷心より祝意を表する次第であります。(拍手)  両君は、ともに、議会政治に対する多年の経験と豊かにしてすぐれた識見とを有せられる方々でありまして、本日、本院を代表する議長、副議長の重職に両君のごとき適任者を得ましたことは、まことに喜びにたえません。(拍手)われわれは、両君がその手腕、力量を遺憾なく発揮し、もって、国会権威向上議会政治発達に審与せられることを信じて疑いません。(拍手)  ここに、両君の御就任を祝し、あわせて今後の御活躍をお祈りいたすものであります。(拍手)  次に、このたび職を退かれました船田議長田中前副議長は、その御在職期間中、まことに多事多端の際でございまして、その御心労と御努力とはなみなみならぬものがあったと存じます。(拍手)  ここに、一身を挺して、国会正常化のために尽くされた両君の御労苦に対しては、深甚なる感謝の意を表するものであります。(拍手)  何とぞ一そう御自愛の上、国家、憲政のためにますます御健闘あらんことをお祈りいたします。(拍手)      ――――◇―――――  日程第一 議席指定
  30. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 衆議院規則第十四条によりまして、諸君議席は、議長において、ただいま御着席のとおりに指定いたします。      ――――◇―――――
  31. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) この際、暫時休憩いたします。  午後三時四十八分休憩      ――――◇―――――  午後七時六分開議
  32. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ――――◇―――――  福田大蔵大臣昭和四十年度一般会計補正予   算(第3号)等についての発言
  33. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 大蔵大臣から、昭和四十年度一般会計補正予算(第3号)等について発言を求められております。これを許します。大蔵大臣福田赳夫君。  〔国務大臣福田赳夫登壇
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昭和四十年度補正予算の御審議をお願いするにあたりまして、その大綱を御説明申し上げます。  今回提出いたしました昭和四十年度補正予算(第3号、特第2号及び機第2号)の大綱について御説明いたします。  昭和四十年度一般会計予算につきましては、経済活動の停滞を反映して租税収入が大幅に減少することが明らかになりましたことに加えて、各地を襲いました台風等による災害復旧人事院勧告に伴う国家公務員等給与改善、四十年産米買い入れ価格が当初予算における見込みを上回って決定されたこと等のため、緊急に措置を要する追加財政需要が生じ、歳入歳出の両面から当面の財政処理について特別の措置を必要とするに至りました。  こうした情勢に対処し、政府としては、補正予算編成し、次の措置をとることといたしたのであります。  まず、二千五百九十億円と見込まれます租税収入等減少につきましては、臨時応急的な特例として、別途提出しております昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案に基づき、公債発行してこれを補てんすることといたしております。この公債は、資金運用部資金による引き受け及び市中公募により発行することとしておるのであります。  次に、追加財政需要につきましては、緊急に措置を講ずる必要のあるものとして、公務員給与の改憲を本年九月から実施することに伴い必要となる経費公共土木施設等災害復旧等事業に必要な経費農業共済保険特別会計への繰り入れ食糧管理特別会計への繰り入れ消費者米価改定に伴う生活保護費等増加経費国民健康保険助成費等義務的経費不足額の補てんに要する経費日韓国交正常化に伴い必要となる経費等の項目があります。これらに対しましては、総額千四百十二億円の歳出追加を行なうことといたしております。この財源につきましては、歳入面で、税外収入の増四百六十四億円、三十九年度剰余金の使用百八十七億円、合計六百五十一億円を補正計上いたしておりますが、なお不足する分につきましては、既定経費節減出資金融資等への振りかえによる節減予備費減額等により、七百六十一億円の修正減少を行なって、財源の捻出をはかることといたしておるのであります。  以上によりまして、昭和四十年度一般会計予算総額は、歳入歳出とも六百五十一億円を増加して、三兆七千四百四十七億円と相なるのであります。  次に、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましても、今夏以来実施中の景気対策及びただいま申し述べました一般会計補正等に関連して、特別会計においては、食糧管理特別会計等十五の特別会計政府関係機関においては、日本国有鉄道等機関について、それぞれ所要補正を行なうことといたしております。  また、最近の経済情勢にかんがみ、景気対策一環として、債務負担行為制度活用することにより、一般会計特別会計及び政府関係機関を通じ、公共事業等について約千億円にのぼる契約額増加をはかることといたしておるのであります。  最後に、特に地方財政対策について申し上げます。  まず、地方交付税交付金につきましては、今回の予算補正において所得税法人税及び酒税の収入見込み額減額することに伴い五百十二億円の減額となるところ、特別措置として、これを減額せず、当初予算どおりとすることにいたしましたほか、地方公務員給与改善財源に資するため、交付税及び譲与税配付金特別会計において資金運用税資金から三百億円を借り入れ、当初の地方交付税交付金にこれを加算することといたしておるのであります。  また、国税と同様相当大幅な落ち込みが見込まれる地方税等減収対策につきましても、総額四百億円の地方債追加し、そのうち資金運用部資金により百五十億円を引き受けることとして、地方財政対策に遺憾なきを期しておるのであります。  なお、財政投融資計画におきましても、景気対策一環として推進しつつある財政投融資対象機関事業拡充地方財政対策及び今回の補正予算に関連して所要改定を行ない、日本住宅公団等機関に対し総額千三百三十五億円の投融資追加を行なうことといたしておるのであります。  以上、昭和四十年度補正予算大綱を御説明いたした次第であります。  なお、本補正予算についての御理解を深める意味におきまして、当面のわが国経済情勢と、これに対する私の基本的考え方を申し述べたいと存じます。  最近のわが国経済の状況を見ますと、輸出は引き続き堅調に推移しておりますが、生産活動は依然横ばい基調であります。私は、当面の経済情勢にかんがみまして、先般来の景気対策のすみやかな浸透を期し、今日まで陣頭に立ってその実行の督励に当たってまいりました。財政投融資の繰り上げ措置はすでに目標を若干上回る実績をおさめており、一方、二千百億円の財政投融資対象機関事業拡大措置も、発注、支払いは順調に進んでおります。ただ、率直に申しまして、公共事業施行は立ちおくれぎみでありました。しかし、最近次第に活発化しつつあります。特に、今回の地方財政対策の決定によりまして、今後日増しにその施行支払いが促進されるものと信じております。  政府としては、さらに、経済の現局面にかんがみまして、今回の補正予算編成にあたっては、租税収入減収に対し、財政規模の圧縮を行なうことなく、あえて公債発行する措置をとったのであります。  したがいまして、今夏以来の景気対策に加えて、今回の補正予算に伴う契約及び支出の集中するこれから年度末にかけては、このような財政運営により経済全般に相当な効果があらわれてまいるものと信じております。  他方金融面におきましても、政府は、引き続き資金需給基調緩和ぎみに保ちつつ、市中金利の引き下げを促進してまいりつつあります。特に、中小企業金融につきましては、さきに政府関係中小機関貸し出し金利引き下げを行なったのに引き続きまして、これら三機関の本年度下半期貸し出し計画に八百二十億円を追加し、さらに、中小企業信用保険公庫の無担保保険の新設、保険料率引き下げ等信用保証制度強化拡充をはかることといたしておるのであります。  幸い、今日、経済界におきましては、生産や設備の調整、経営の合理化企業合併統合等企業体質強化のための真剣な不況対応策が進展しつつあります。現在の不況克服するにあたりましては、民間みずからの積極的な努力と意欲が不可欠であると申さなければなりません。こうした努力こそ、経済界の将来の発展のための基盤をつくるものであると考えるのであります。  これらの事情を総合的に判断いたしますならば、わが国経済は、今日不況克服のための足固めを終え、今後次第に明るさを取り戻していくものと確信いたしております。(拍手)  私は、わが国経済が戦争直後の廃墟の中から立ち上がり、再建復興段階を経て目ざましい発展を遂げてまいりました今日までの過程におきまして、一貫して均衡財政方針が堅持されてまいりましたことは、大きな意義を持っていたと思うのであります。しかしながら、いまやわが国経済は新しい段階に入りつつあります。今後わが国経済の向こうべき道は、今日の国力基礎として、国際収支均衡と物価の安定の上に着実な拡大を持続しながら、経済質的内容を強化充実していくことであると思うのであります。そして、この経済発展の成果を広く国民の資産の増大と生活向上に結びつけ、もってよりよき福祉社会の実現をはかることこそが、経済政策の究極の目標であると申さなければならないのであります。(拍手)  この観点から見まするとき、私は、今後の財政政策課題は、次の三つ要請にこたえることにあると存じます。  第一は、豊かな経済社会を実現していくため、社会保障充実をはかるとともに、社会開発投資を積極的に推進していくことであります。特に、国民生活の場の改善のため、住宅を中心として、道路、生活環境施設等、立ちおくれている社会資本を整備拡充してまいりますことは、今後財政に課せられた大きな任務であると考えております。(拍手)  第二は、このように増大する国の費用を積極的にまかないながら、他面、企業家庭に蓄積を取り戻し、その安定の基礎を固めるため、財政がその機能を発揮することであります。国の経済の安定は、ただ単に財政がいわゆる均衡財政であることではないと考えます。国の経済をささえる企業家庭の安定こそが、経済安定の前提であり、不可欠の条件であります。(拍手)これがためには、国民税負担感がなお重いと思われる現状におきましては、大幅な減税財政要請されるのであります。  第三は、経済の安定的な成長を確保するために、財政運営弾力化をはかっていくことであります。すなわち、財政金融が一そう有機的な関係を高めることにより、経済活動推移に即応した有効適切な景気調整機能を発揮することであります。いまや、財政経済の動きに対し受け身であってはならないということであります。  私は、この際、財政政策基調を転換し、公債政策導入することにより、わが国財政に新しい政策手段を装備し、これを健全に活用していくことこそが、この三つ要請にこたえる道である、かように確信いたしております。(拍手)すなわち、公債発行によって、社会資本充実等財政が本来になうべき役割りを積極的に果たしていくことも、国民待望大幅減税も可能になるのであります。同時に、景気動向に応じて、公債発行を弾力的に調節すること等を通じまして、経済基調を安定的に推移せしめ、もってわが国経済均衡ある発展をはかる道が開かれていくと存ずるのであります。  特に、今日のように供給力が超過しておる状態のもとでは、健全な公債政策活用により需要拡大してまいりますことは、本格的な安定成長路線への地固めを行なう上において不可欠であると申さなければならないのであります。  公債発行につきましては、われわれには戦時中及び終戦直後のインフレの苦い経験があります。しかし、極度に資源と物資の欠乏していた当時と、二十年にわたる経済発展により、国力充実し、生産力が飛躍的に拡大しておる今日とでは、基本的にその条件を異にしておるのであります。(拍手)  もとより、財政健全性を堅持し、通貨価値の安定を確保することは、経済運営基本であり、政治に対する国民の信頼にこたえるゆえんでもあります。政府といたしましては、公債政策導入がいやしくもインフレに連なるがごときことの断じてないよう、最大かつ細心の注意を払ってまいる決意であります。(拍手)特に、財政規模をそのときどきの経済情勢推移から見て適正な限度に推持し、もって国民経済全体としての均衡を確保してまいる決意であります。  この意味におきまして、公債発行にあたりましては、第一に、その対象公共事業費等に限定し、いわゆる経常歳出租税その他の普通歳入でまかなうこと、第二に、その消化はあくまで市中で行なうこと、という二つの原則を堅持してまいる方針であります。今回の補正予算におきまして日本銀行引き受けの方式をとらなかったのも、この際こうした慣行を確立することが重要であると考えたからであります。  目下鋭意検討しております昭和四十一年度予算につきましては、いずれ予算審議をお願いする際に詳細に御説明する予定でありますが、その編成にあたりましては、これまで申し上げましたような基本的な考え方にのっとり、さらに、当面の経済動向にかんがみ、積極的なかまえでこれに臨む所存であります。  すなわち、本格的な公債政策活用により、一方では、国民負担の軽減をはかるため、画期的な大幅減税を実施するとともに、他方では、社会資本充実等重要施策について重点的にこれを配慮していく方針であります。  同時に、いやしくも公債政策導入に伴い財政が乱に流れることのないよう心するとともに、予算の効率的な活用をはかるよう、財政支出内容効果の徹底的な再検討を行なってまいる所存であります。  いまや、わが国経済は、量的拡大段階から質的充実段階に移行すべき時期に際会しております。今日の課題は、現下の不況をすみやかに克服すること、安定成長路線基礎を固めること、この二つであります。私は、まず不況克服の問題に取り組み、これに最大努力を傾ける所存であります。この異常な経済情勢からすみやかに脱却することこそが、豊かな活力に恵まれたわが国経済を本来の安定成長路線に正しく乗せる道であると確信いたすからであります。(拍手)  今日最も大切なことは、政府国民がこの際一体となって、わが国経済の将来に自信を持ち、困難の打開に立ち向かうことであると信ずるのであります。この意味におきまして、国民各位の一段の奮起と御協力をお願いしてやまないのであります。(拍手)  以上、本補正予算の背景をなす事情について御説明申し上げました。何とぞ、本補正予算に対し、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)      ――――◇―――――
  35. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 午後八時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。  午後七時二十四分休憩      ――――◇―――――  午後八時十分開議
  36. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ――――◇―――――  国務大臣の演説に対する質疑
  37. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。野原覺君。  〔野原覺君登壇
  38. 野原覺

    ○野原覺君 私は、日本社会党を代表いたしまして、佐藤内閣の政治外交、財政経済基本方針について質問をいたしたいと思うのであります。(拍手)  まずお伺いしたいことは、佐藤内閣の政治姿勢についてであります。  佐藤内閣は池田内閣から政権を譲り受けてから早くも一年余になりますが、およそ歴代内閣のうちで佐藤内閣ほど国民の間に人気のわかない政権はないのであります。(拍手)これは私のひとりよがりではなく、自民党の中や財界においてもその声は高いのであります。国民の間にたとえ一時的であったにせよブームといわれるものが起こらなかったのは、おそらく前にもあとにも佐藤内閣のみでありましょう。(拍手)  一体なぜでありましょうか。それは、第一には、その権力主義的、国民世論軽視、その超保守主義的反動性にあります。その権力者的本質が最も露骨になされたのが、さきの臨時国会における日韓条約の審議をめぐって行なわれた政府・自民党の暴挙に次ぐ暴挙なのであります。(拍手)御承知のように、日韓条約の締結は、日本国民にとっては安保条約のそれにも比すべき重大な選択であります。それは、わが国の将来にわたる運命と、極東における平和の成り行き全体にかかわる条約であり、さらに、軍事同盟への参加を禁止し、日本の安全を国際間の信義にゆだねた日本国憲法に違反する疑いのある重大な条約であるからであります。しかも、今回の日韓条約は、条約の重要条項において、両国政府の間に合意を見ていない、法的効力に重大な疑惑のある、前代未聞のしろものであります。かかる重大にして、しかも多くの疑問点をはらむ日韓条約については、特に慎重な審議が必要とされていたことは言うまでもありません。これこそ議会制民主主義のよって立つ原則であり、国民もそれを心から期待していたのであります。ところが、政府・自民党は、日韓会談の全過程及び国会審議において、終始一貫、その核心に触れる事項はことごとくこれを国民の目から隠し、日韓条約に対する国民の疑惑が深まりつつあるその最中に、審議を一方的に打ち切ってしまったのであります。しかも、そのやり方は、国会法、衆参両院の規則慣例をことごとく弊履のごとく破り捨てた、前代未曾有のものであり、議会を完全に生命のないしかばねと化した暴挙であったのであります。自民党が主張している議決なるものは、実際には存在しておりません。自民党が事後においてかってにでっち上げたものにほかならぬと思うのであります。(拍手)  このような日韓条約は、たとえその批准が形の上で整えられたとしても、権力と謀略によって成立した条約は、国民に対して何らの権威を持つことも、国際的な信用を保つこともとうていできないことは明白であります。このような権力による力づくの決定が合法だというならば、およそ法自体は暴力の飾りにほかならなくなるでごさいましょう。かかる理由によって、われわれは、日韓条約は、その内容においても手続においても無効であり、不当であり、その不承認を宣言したのでありますが、佐藤総理は、一体いかなる理由によって日韓条約が有効に成立したと考えるのか、御所見を承りたいのであります。(拍手)  私たちは、このように何が何でも押し切ろうとした政府・自民党の態度の中に、はからずも日韓条約の裏にひそむ危険性と不安と疑惑をいまさらながら認識させられたのでありますが、さらに、もう一つ重要なことは、今回の暴挙を通じて佐藤総理の権力主義的体質が最も露骨に示されたことであります。聞くところによると、佐藤総理は、今回の衆参両院を通ずる強行採決にあたって、終始その先頭に立ち、みずから断を下したといわれておりますが、それは事実であるかどうか、総理から御答弁を願いたいのであります。(拍手)  かりにその事実がないといたしましても、三回にわたる衆参両院における暴挙の責任は、自民党総裁である佐藤総理が負うべきものと考えるが、総理の御所見を承りたいのであります。  次に、佐藤総理は、参議院において、わが国議会史上未曾有の暴挙に対するわが党委員の質問に対して、ぜひ民主政治を実現したいというのは私の悲願であり、政治姿勢だと答えているのであります。一体、総理の言う民主政治とは何なのか、その政治姿勢についてどう考えているのか。あなたは、有言実行とよく言われますが、一体何を実行されたのか、あらためてお伺いしたいのであります。  さらにもう一つ、より重要なことは、今回の暴挙によってわが国議会政治と民主主義がこうむった傷は、他のいかなる手段をもってしても回復しがたいほど大きいということであります。一船田議長の辞任をもって問題をすりかえることは絶対に許されません。(拍手議長の辞任は、それはそれとして当然のことではありますが、これをもって能事足れりとすることは、またしても、過去に行なわれた政治的サル芝居の繰り返しにすぎません。もしも総理が、今後も議会民主政治の存続を望み、その権威を保持したいと念願されるならば、一日も早く国会を解散して、国民に信を問う以外にないと考えますが、総理の所見を伺いたいのであります。これは政治基本に関する重大な問題でございますから、私は明確な答弁を要求するものであります。(拍手)  以上のように、ひたすら権力と策略と口先のごまかしだけによって国政を専断しようとしている佐藤総理の政治姿勢は、ひとり日韓国会に限ったことではありません。たとえば、中期経済計画の期間中は公債発行しないと言明しながら、その舌の根もかわかぬうちに前言をひるがえしたこと、歩行者優先の政治を強調した総理が、平然として軒並みの公共料金値上げを行なおうとしていること、初めはゆゆしい問題だと言った三矢計画を、いつの間にか機密漏洩の問題にすりかえて口をぬぐっていること等、議会政治家としての資格がどこにあるかといわざるを得ません。(拍手)  要するに、佐藤内閣は、悪名高いその兄岸内閣の反動性を引き継ぎ、国民世論に挑戦して、戦後日本の平和と民主主義の大道を示したわが国憲法に最も嫌悪と抵抗を感じている右翼保守反動勢力のとりことなり、わが国政治を歴史に逆行する方向に引きずっていこうとしているのであります。まことに岸、佐藤御兄弟はわが国の民主政治議会政治の歴史の上にぬぐうべからざる汚点を残したというべきであります。(拍手)この点について佐藤総理はどのような反省を持たれているか、御所見を承りたいのであります。  質問の第二点は、佐藤内閣の外交方針についてであります。  佐藤内閣の外交が現実に行なっていることは、まず第一に、日韓条約の批准強行とアメリカのベトナム作戦に協力することであります。それから最近では、国連総会においてまたしても中国の代表権阻止に走り回ったことであります。さらにまた、沖縄についても、さきに総理が沖縄を訪問した際、日本人である沖縄住民の陳情に出会うと、これに会うどころか、これを避けてアメリカ軍基地に逃げ込むというありさまで、沖縄住民の最大の願望である沖縄の祖国復帰については何ら耳をかそうとしなかったのであります。  これらの事実から佐藤内閣について国民の頭に浮かぶ姿は、要するに、佐藤内閣は、日本国民はもちろん、アジアの国民に対しても背を向けて、ひたすらアメリカ政府に追従するという、非自主的な、しかも危険な外交を続けているということであります。現に、ある新聞はこう言っておるのであります。外務省が、ベトナム戦争に反対する新聞論調は日本国民の声を代表していないという談話を発表したのに対し、日本の外務省はアメリカ国務省の東京支所と言われてもしかたがないと批評を下しているではございませんか。(拍手)  そこで総理にお尋ねをしたい。その第一は、日韓条約を批准したとたんに、韓国政府は早くも竹島に専管水域を設定いたしました。これこそ、わが党が特別委員会で追及し、日韓条約不承認で警告した、まさにそのとおりになったではありませんか。韓国政府は、紛争処理の交換公文などはどこ吹く風で、竹島を占拠し、専管水域を設定し、ぐんぐんと既成事実を推し進めております。佐藤内閣が日韓条約は和解と友好の条約だと国民に説明したその説明がすでに早くも事実によって破られております。佐藤総理は、一体韓国政府に対していかなる抗議をし、日本国民に対していかなる釈明をするのか、この際はっきりしたけじめをつけていただきたいのであります。(拍手)  その第二は、佐藤総理は日韓条約批准は今後の外交の第一歩だと言われましたが、今後北朝鮮に対していかなる態度をとられるのか。北朝鮮とは国交断絶にひとしい現状をあくまでも続けられるお考えかどうか。また、アメリカはアジアに核兵器を持ち込み、日本をアメリカの核兵器のかさの下に入れようとしておりますが、佐藤内閣はこれに対していかなる態度で臨もうとしておられるのか。さらにまた、佐藤内閣はソ連との平和条約の締結ができるがごとく宣伝しておられますが、対ソ政策はどのように発展するのか、この際明らかにしてもらいたいのであります。  その第三は、佐藤内閣は中華人民共和国の国連加盟を阻止する目的で、再び重要事項指定方式の提案者となりましたが、その結果に示されたように、もはやこうした妨害行為は完全に行き詰まってきたのであります。そして来年四十一年には、国連から台湾を退け、中華人民共和国がその正当な地位に復活すべきであるとの主張が過半数を制し、重要事項方式に賛成する者も少数者に転落することは明らかでございますが、佐藤内閣は、中華人民共和国の国連復帰の問題について今後いかなる態度をとられるのか、お伺いする次第であります。  その第四番目は、沖縄の問題であります。沖縄はすでに核基地となり、アメリカのベトナム攻撃が沖縄から直接実行されています。このことは、沖縄住民の生命、財産の重大な危険を意味するものであって、アメリカが沖縄をベトナム攻撃の基地として使用すること、核兵器を持ち込むことに対し、政府は直ちに抗議し、これをやめさすべきであります。そして、沖縄の祖国復帰を一日も早く実現することこそ、日本政府最大にしてかつ緊急な責任であると思いますが、佐藤総理はどういうお考えでございますか。アメリカの代理者でなく、日本の総理として御答弁を願いたいのであります。(拍手)  その第五は、佐藤内閣のアジア外交のあり方であります。佐藤総理は、口を開けばアジア外交ということばをお使いになられますが、その実行していることは、まさにアメリカの番犬であります。そして、アジア・アフリカの新興諸国を見下しておるのであります。その黄色いアメリカ人の役翻りがアジア・アフリカ諸国から非常な反発を招いていることは、先般アジア開発銀行の東京誘致が破れたことでも明瞭であります。(拍手)これについて、総理並びに政府を代表して会議に出席されました藤山経済企画庁長官はどのような反省を持たれているか、御答弁を願いたいのであります。黄色いアメリカ人の汚名をそそいで、アジアの一員としての外交姿勢をお持ちかどうか、責任ある所信をこの際佐藤総理から承りたいと思うのであります。  質問の第三点は、経済財政基本方針についてであります。  佐藤内閣が発足したころ、すでにわが国経済はいわゆる高度成長の時期を過ぎまして、景気後退の局面に入っておりました。そして、佐藤内閣の過去一年の歴史は、わが国不況が深まる一方の一年であったのであります。不況が深まるにつれて企業の倒産が相次ぎ、そのしわが労働者に寄せられてきたのであります。現在では、大企業といえども、一時帰休の段階から首切りの段階に移ろうとしておるのであります。しかも、このように労働者が、賃下げから、さらに進んで失業のあらしの中に投げ込まれている一方、物価はどんどんと上がってまいります。昭和四十年度の消費者物価の値上がりは、当初四・五%にとどめるという政府方針であったのが、すでに八%から九%を突破することは確実であります。かつて、池田内閣の時代には、物価が上がっても、賃金がそれ以上に上がればよいなどと、無責任なことが言われましたが、現在では、いかに自民党政府といえども、そのようなことさえ言えない状態になってしまったのであります。(拍手)かつて、池田総理は、物価が上がるのは人間の値打ちが上がることを意味するという珍妙な説を吐かれました。その池田内閣の政策を、佐藤総理は、人間への愛情がないと、りっぱなことばを使って批判をいたしました。しかし、その佐藤内閣のやっていることといえば、池田内閣以上の物価の値上げではございませんか。国民を愚弄するにもほどがあると思うのであります。(拍手)  佐藤総理は、内閣を組織してからこのかた、物価安定はその最大の使命の一つであると、事あるたびごとに力説されております。ところが、佐藤内閣のやっている政策は、一体何でございますか。第一は、明年一月一日から消費者米価を引き上げることをきめました。第二に、同じく明年一月一日から健康保険料を引き上げることをきめております。第三に、明年二月十五日から国鉄運賃を引き上げることをきめました。第四に、明年一月十五日から私鉄大手十四社と東京の地下鉄の運賃を引き上げることをきめました。第五に、明年七月一日から郵便料金を引き上げることをきめたのであります。しかも、これらの公共料金の引き上げは、米価審議会や運輸審議会にかける以前にすでに政府は決定するという横暴な態度で、まさに日韓条約案件を問答無用の一瞬間の万歳によって決定したあの暴挙と全く同じやり方であります。(拍手)  公共料金の相次ぐ引き上げが、一般勤労大衆、特に低所得階層の生活をいかに窮迫させるか、また、それが一般の諸物価をいかに引き上げる結果をもたらすか、これは私がここであらためて申し上げるまでもございません。こうした無謀な引き上げは、責任ある政府としてできないはずだと思うのでございますが、政府国民生活防衛のための具体策をお示し願いたいのであります。(拍手)もしこうした国民生活を守る具体策がないとしたならば、国民生活を守る責任を有する政府が、みずから先頭に立って国民生活を破壊するものであって、これはまさに前代未聞の奇怪な事態といわなければなりません。  私は、佐藤総理に対して率直に申し上げたいのであります。これだけ物価を上げる佐藤内閣がこのまま政権の座に居すわれるなどと、もしあなたが考えておられるとしたら、それは責任政治を忘れた、とんでもない思い上がりであって、政権を私視するものと言われても過言でないと思うのであります。(拍手)この深刻な不況のもとで平然として次々と公共料金を上げる内閣は、もはや、その一事をもってしても、政権の座にある資格は断じてなしといわねばならぬのであります。(拍手)  そこで、総理にお尋ねいたしたい。第一に、総理は、国民に対して、口では人間尊重と言いながら、これほど物価を引き上げたことについて、申しわけないとわびるおつもりがございますかどうか、お尋ねをしたいのであります。第二に、それとも総理は、物価が上がるのは、佐藤内閣の責任ではなく、池田前内閣の責任であって、自民党も佐藤内閣も何ら関知するところではないと考えているのかどうか。第三に、明年一月から予定されている一連の公共料金の値上げを、この際断固としてお取りやめになられるつもりはございませんかどうか、総理の確固たる御答弁を要求いたすものであります。(拍手)  次に、もう一つの財政経済に関する基本問題として、公債発行についてお尋ねをいたします。  池田内閣以来のここ数年間、自民党政府は、経済高度成長の名のもとに、大資本のための公共投資優先の放漫な財政膨張を続けてまいりました。その結果、一方では、先ほど申し述べましたようなインフレと物価騰貴が引き起こされ、他方では、深刻な過剰生産経済不況がもたらされたのであります。そのため財政支出要因はいよいよ際限なく拡大し、しかも税収のほうは大幅に収縮し、ここに必然的に深刻な財政破綻が表面化してまいったのであります。これは、池田内閣から佐藤内閣に至る、自民党政府の重大なる責任であります。しかるに、いまや佐藤内閣は、この責任に目をおおうて、安易な赤字公債発行によって財政破綻を糊塗しようとしておるのであります。  わが国財政の憲法ともいうべき財政法の第四条は、公債発行主義を定めております。この財政法第四条は、かつての日本の歴史において、赤字公債発行を裏づけとしてアジアへの侵略戦争が遂行された歴史的事実に対するきびしい反省から制定されたものであります。(拍手)したがって、財政法第四条は、憲法第九条の精神を受けたもので、それ自体が、日本国民の平和への誓いを表現しているものであります。この財政法第四条をじゅうりんして赤字公債発行する佐藤内閣の財政政策は、まさに憲法第九条を破壊せんとする佐藤内閣の野望と軌を一にしているといわなければならぬのであります。  現在、佐藤内閣は、アメリカのベトナム侵略戦争に協力し、日韓台の東北アジア軍事同盟体制を総仕上げし、第三次防衛予算を飛躍的に膨張させようといたしております。このときに発行される公債は、本質的に赤字公債であると同時に、的には軍事公債発展する性格を持つことになるでございましょう。(拍手)  しかも、現在のわが国の管理通貨制度と非正常な金融情勢のもとにおいては、いかに政府公債市中消化を唱えても、それは必ず直接間接に日銀の引受けとなり、日銀の信用と通貨を無制限に膨張させる結果とならざるを得ません。このことは、いよいよ悪性のインフレーションを引き起こし、そのしわ寄せは、あげて勤労大衆に転嫁されることとなります。また、一たん公債発行に踏み切れば、もはや何らの歯どめもなくなることと思うのであります。自民党や財界の中に、明年度は一兆円の公債を出そうとする有力な意見が台頭している、この一つの事実によっても、歯どめのないことは明らかでございましょう。こうした情勢の中で公債の歯どめが可能だというならば、納得できる具体的かつ有効な政策と根拠をお示し願いたいのであります。  さらにまた、政府は、公債発行によって大企業のための企業減税と産業基盤の整備をやろうといたしております。そういたしますと、企業減税は法人地方税の減収をもたらし、産業基盤整備の公共事業は地方団体の支出要因を大いに膨張させることになります。また、地方債の起債市場の資金が、公債によって国へ吸い上げられることとなります。現在までに、地方財政は、不況による交付税や地方税の減収に悩み、また、公共事業の超過負担に耐え切れずに、公共事業を返上する地方団体もあらわれているのに、さらに公債発行が行なわれれば、地方財政は、まさに救うべからざる窮迫に追い込まれるでございましょう。その結果、地方自治は、いよいよ中央集権のもとに従属させられ、また、地方住民へは、地方税負担がいよいよ加重されることとなるでございましょう。これに対して、自治大臣はどのような御所見を持っておるのか、承りたいのであります。  しかも、公債の元利は、将来の勤労大衆の租税負担によって償還されるものでありますが、今年度二千六百億円、明年度七千億円、その次は一兆円と、公債発行していけば、その元利を償還するための国民租税の負担は、数年にして倍増されることは必至であります。先ほどの福田大蔵大臣の提案理由の説明を聞きますと、公債発行によって税金が下がるなどと言っておりますが、とんでもないごまかしであるといわざるを得ないのであります。(拍手)そして公債発行によるインフレの高進は、必ずや近い将来において、国際収支の重大なる悪化をもたらし、かつてのドッジ政策のように、きわめてドラスティックなデフレ政策をとらざるを得ない時代が、必ずくると思うのであります。そしてそのときこそ、さらに重大な大衆の窮乏と経済の破綻がくるでございましょう。したがって、公債発行は、大企業の階級的利益に奉仕し、勤労大衆を物価高と重税で苦しめ、地方財政破綻を招き、しかも、日本経済の将来に重大な危機をもたらす最悪の政策と断ぜざるを得ません。(拍手)  そこで総理にお尋ねをしたいのであります。  第一は、言うまでもなく、今日の財政破綻をもたらした重大責任は、まさに政府にあります。総理にもしも一片の良心がございますならば、この意味においてもいさぎよく佐藤内閣は総辞職をすべきではないかと思うが、いかがでございますか。(拍手)  第二に、そしてこの際日本社会党が提示しておりまするように、断固として財政法第四条を守り、赤字公債発行を取りやめ、本年度財政赤字は、不急不要の支出の大胆な削減と、歳入において取るべくして取っていない税金を大企業や高額所得者から厳正に取り立て、必要な税収を確保することによって、長年自民党内閣の誤れる政策によって破綻した日本の国家財政の危機を克服すべきであると思いますが、総理はいかがお考えでございますか。(拍手)  第三に、したがってまた、政府のこの第三次補正予算案も直ちに撤回されて、国民の要求に基づいて抜本的に編成し直して、出直すべきものであると思いますが、この点いかがでございますか。(拍手)  以上の三点について、総理並びに大蔵大臣経済企画庁長官の答弁を要求いたすものであります。  最後に、もし政府にしてあくまでも公債発行をやるというのであれば、これは戦後二十年の財政政策の重大な転換でございますがゆえに、これこそ国会を解散して、国民に信を問うべきであります。(拍手)その決意が総理にあるかないか、総理の所信をお尋ねいたしまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  39. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  まず第一に、私の政治姿勢についての御批判でございましたが、これは御批判は御自由であります。また御意見も、述べられることも御自由であります。私も御意見を伺った次第でございます。  具体的な問題についてのお尋ねがございましたから、これにつきましては私がお答えをいたします。  まず第一は、日韓条約はこれは無効だ、社会党は無効宣言をなさいました。私どもは、りっぱに国会の承認を得たものと、かように考えております。(拍手)すでに十八日におきましては、日韓間におきまして批准書の交換もできまして、今回新しい善隣友好関係を樹立しておりますから、さように御承知を願いたいのであります。  また、第二の問題といたしまして、前回の国会審議については、一々指図したかどうか。総裁としては、すでにその際にも申し上げましたとおり、私は、政府として、政府の責任において審議をお願いしておりました。国会運営につきましては、副総裁並びに幹事長にまかしてございます。そのことをお答えいたしたのであります。しかしながら、指図はしなくとも、総裁としての責任があるのではないか、かような御指摘であります。私もその責任は免れるわけにはいかない、かように考えております。したがいまして、私のかねてからの主張でありますいわゆる民主政治を守る、同時に議会制度を守り抜く、このことを心から考えておりますので、また野党の諸君の御協力も得まして、ぜひともこのことを実行してまいりたいと思います。幸いにいたしまして、今回、前議長、副議長のあっせんによりまして、正常化の方向に踏み出すことができた。私は、このことはたいへんわが国議会政治上重大なる意義があると、かように考えます。さらに積み重ねをいたしまして、その内容充実し、真の民主政治議会政治を守る、かようにいたしたいものだと、かように思いますので、せっかくの皆さま方の御協力も心からお願いする次第であります。(拍手)  第三に、有言実行ということばをしばしば使っておるが、その中身はどういうことをしたかというお話でございますが、これも、私があまり自慢らしく説明するまでもなく、すでに国会等におきましてそれぞれ議決を経たものでございますから、重ねて申し上げません。  次の問題といたしまして、かような状態、日韓国会の事態等にかんがみて、議会制確立のために国会を解散すべきではないかというお尋ねでありますが、私は、この議会政治そのものは、どこまでも国民のために国民とともに政治をする姿勢であってほしいと思います。国民が迷惑を受けるようなことは、私どもはすべきではないと思います。各政党の争いも、もちろんこれは、政党と申します以上、ときに争うことはありますが、その争いの結果、国民自身が迷惑をするというようなことがあってはならないと思います。私は、そういう意味におきまして、ぜひとも補正予算等の成立は、早くこれを希望しておりますので、そういう意味で御審議をいただきたいと思います。(拍手)また、解散などは、国民自身がたいへん私は迷惑をするのではないかと思います。ことに、今日の国内の経済情勢など考えますと、解散をいたしまして、一カ月あるいは一カ月半の政治空白をつくるべきではない、かように私は考えます。かような意味からも、ただいまは解散などは考えておりません。このことははっきり申し上げておきます。  私は、以上のような観点に立ちまして、今回の問題と真剣に取り組んでおります。過去におきましても、これらの事柄についてすでにたびたび発言をいたしまし汁。臨時国会における苦い私どもの経験は、私どもがこれをまじめに、この苦い経験を今後生かしていくといいますか、取り組むべきことだ、この意味において、ほんとうにえりを正して反省をして、議会政治を守り抜く、その方向で努力をする考えでございます。  その次に、外交問題についてのお尋ねでありますが、外交問題については、あるいは向米一辺倒というようなことば、そのままのことばではありませんが、米政府追随の外交をしておる、こういうことを言われますけれども、私はしばしば申し上げましたように、これは自主的な外交を私は展開しておるつもりであります。したがいまして、ただいまのような御批判もこれは御自由かと思います。  竹島の専管水域につきましてお尋ねがありましたが、私どもも、この竹島を含めて、わが国の領土等について専管水域を設けること、たとえば島根、山口、福岡、佐賀、長崎等のその沿岸並びに島嶼につきまして、さような政令を出したことは、すでに御承知のことだと思います。竹島については、韓国自身もその領土を主張しておりますし、わが国もこれを領土を主張しておる。これが紛争問題であることは、しばしば申し上げたとおりであります。また、今度は双方において専管水域を設けるというような事態になれば、これが漁業問題としての紛争の事項ということにはっきりなるのでございますので、外交問題としてこれが解決と取り組んでいくつもりであります。  北鮮との関係については、これもお尋ねがありましたのでしばしばお答えいたしましたように、北鮮とは今回の条約では何ら規定はしておらない、したがって、具体的問題について適切な処置をとる、かようにお答えをいたしておりますが、今日もその考えに変わりはありません。  次の、米国のアジア核基地化に対する対策いかんということでありますが、これは、米国は、いわゆる核攻撃に対しましては有効な核の報復力を維持するということが核戦争の発生を抑止するものだ、かように考えて、いわゆる世界戦略の基幹として、かような核の報復力を維持する、かような態度をとっておることは御承知のとおりでございます。この立場に立って、さらに核兵器がもたらす人類への不幸などをも考えまして、いわゆる世界平和維持のために、核拡散防止であるとか、あるいはさらに核兵器をも含めてのいわゆる完全軍縮、こういうことの実現に努力をしておる次第であります。私どもも、核兵器につきましては、被爆国として唯一でありますので、ぜひとも核兵器、これは人類の敵として心から憎む、いかなる事由があろうと核武装はしないということを国民とともに誓ってまいりました。ただいまの軍縮あるいは核拡散防止、そういう方向において一そうの努力をいたしまして、この地上から核兵器が不幸なる結果をもたらさないように、この上とも努力をするつもりでございます。  次に、対ソ政策についてのお話でありますが、対ソ政策は、ただいままでのところ、昨年じゅうに具体的な問題が、たとえば日ソ航空協定、領事条約、あるいは漁業の安全操業、あるいはシベリアの経済開発に対する協力の問題など、具体的な問題があります。これらについては、それぞれの対策を講じてまいっておりますが、また両国の間に協議を遂げておりますけれども、問題は、さらにさらに進んで、日ソ間に平和条約を締結するということが、これが私どもの願いでもあるのであります。しかし、今日の状況のもとにおきまして、領土問題を解決するとか、あるいは平和条約が締結の見込みがあるとか、かようには私は考えておりませんので、国民協力のもとに、一そうこれらの問題と慎重に取り組んでまいる考えでございます。  また、中共の国連加盟問題につきましても、ことしの国連の総会における票数なども非常な流動をしておりますので、今後、中共問題に対するわが国の態度は、一そう慎重に検討してまいる考えでございます。  沖縄問題につきましては、これは申すまでもなく、祖国復帰は、沖縄住民ばかりでなく、九千万同胞とともに心から念願しておるものでありまして、私が沖縄を訪問いたしましたのも、こういう点を考えて参ったわけでございます。しかしながら、ただいまは米国の施政権下にあるわけでございます。ただいまこれらの地域に核基地があるというようなことで、この問題をいかに扱うかという具体的なお尋ねがありますが、問題そのものは、ただいま申し上げますように、私どもが施政権を持っておらないのですから、そういう意味では、この問題に触れるわけにいかない。御承知のとおりでございます。  アジア開発銀行の問題についてお尋ねがありましたが、私は、アジア外交の基調といたしまして、経済協力、技術援助等をする考え方でおります。しかしながら、不幸にして、この本店を東京に誘致することができなかったことは、まことに残念でございます。  次に、財政経済の問題について、詳しいお尋ねがありました。詳細はそれぞれ主管大臣からお答えするのがいいかと思いますが、ただいまお尋ねになりまして、物価の問題について十分の効果をあげることができなかったことについて、国民に申しわけないと思っているか、また、池田内閣の責任で、自分たちの考えではないと、かような考え方も持っておるのか、あるいは公共料金の引き上げをやめるような考えはないかというお尋ねでございますが、この具体的な三点について申し上げます。  私は、この物価問題、いわゆる不況克服するという、経済を立て直すということ、これがこの佐藤内閣の大きな使命だ、かように考えて、昨年、今年、これと真剣に取り組んでまいりました。この夏以来の一連の施策がそれぞれの効果を出しつつあることは、これも皆さま方も御承知だと思います。しかしながら、事柄が、経済問題はまことに深刻な問題であります。一年に六千件以上の倒産の現象を引き起こしておる、こういうようなまことに深刻な経済現象でございますために、これに対して、いわゆる非常な決定的な処置がとれて、直ちに効果があがる、こういうものではございません。しかしながら、国際収支関係も非常に好転しておりますし、外貨の保有高もふえておりますし、また、株式界もようやく活況を呈しつつあります。これらの事柄は、今後の経済の回復について私どもが期待を持ち得る点でありますので、そういうように見ていただきたいと思います。  物価問題がしばしば論議されますが、この物価問題は経済の一現象であること、このことはおわかりだと思います。経済そのものの克服不況克服することによる、そうして、いわゆる総合的な、また生産性の向上による物価の引き下げ等効果を発揮するように、経済そのものを安定成長に乗せなければならないことは、私が指摘するまでもないところであります。そういう意味努力いたしておるのでございますので、今日までその効果が出てまいらないことは、国民諸君から見まして、たいへんあせった気持ちもあるだろう、こういう点について私は理解をするものであります。しかし、いましばらくごしんぼうを願いたい、かように思います。また、池田内閣時代の経済につきましては、すでに経済成長についてそれなりの評価が下され、りっぱな点におきまして国民からも感謝されておると思いますが、しかし、行き過ぎはよろしくないのでありますので、今日安定基調へこれを乗せることについて努力をしておるわけであります。  公共料金の引き上げをやめないかというお尋ねでございますが、公共料金の決定される公共企業体もまた事業でございます。したがいまして、簡単に、公共料金の引き上げをやめる、かようには、私は申しません。しかしながら、これが国民生活に重大なる影響を与えることは申すまでもないのでありますから、その時期並びに引き上げの率、これなどにつきましては、最善努力をいたしまして、そうして、国民生活を圧迫しないように、最善を尽くしてまいりたいと思います。できるだけその圧迫をわずかな影響にとどめるように、最善努力をするつもりでございます。  次に、経済財政の問題につきまして、全般についてのお話でございますが、先ほど大蔵大臣から説明いたしましたように、また、詳細をさらにお答えもするでしょうが、今年度経済の実情は、私どもの予想外の経済の停滞でございます。そういう意味で大幅に税収の落ち込みがございます。そこで、こういう点から、いわゆる予算健全性を維持するということになれば、すでに御審議をいただきました支出予算を削減して、そうして税収に見合うような態度で対処することも一つの方法だと思いますけれども、現在の経済界の実情を考えます際に、さような処置をとるべきではない。私どもは、今日の支出予算を削減すべきときではない、公債発行してもいわゆる財源を調達して、そうして必要なる施策を実施していくことが今日の経済情勢からは望まれることだ、かように考えますので、先ほど来申すところの御審議をいただきまして、公債の処理をいたすつもりでございます。  これがいわゆる軍事公債へつながるのではないか、これに発展するのではないか、かような御心配を持っていらっしゃるようでありますが、さようなものでは全然ございませんし、私どもが憲法を守り、また自衛隊法をどこまでも守っていくその立場から、いま御指摘になるような軍事公債への発展などは御懸念なさらないように、また、この公債がしばしばインフレへつながるということで御心配のようでありますが、これまた、先ほど来大蔵大臣から詳細に説明いたしましたように、十分歯どめをしておる、公債はどこまでも借金である、こういうことでございますので、いわゆる放漫な財政政策などやるつもりはございません。そういう意味で、インフレのおそれはない、かように私は考えておる次第であります。(拍手)  〔国務大臣福田赳夫登壇
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府が考えておりますことは財政の大転換である、重大なことであるというお話でございますが、まことにそのとおりであります。しかし、この転換は、私は、時代が要求しておる転換である、かように考えます。(拍手)戦後日本の立ち上がりの過程におきまして、長い間非募債主義、収支均衡方針がとられてきたことの評価につきましては、先ほど申し上げたとおりであります。それは明治維新も同じことであったと思うのです。しかし、今日の時点に立って考えてみますときに、国の財政均衡しておる、しかし、国の基底にある、国の背後にあるところの企業はどうだ、あるいは家庭の状態はどうだといいますと、国の均衡財政にもかかわらず、非常な経理の悪化の状態である、かように見るのであります。企業の財務比率をとりましても、これは先進諸国と全く逆な状態にあることは皆さまも御承知のとおりである。また、家庭におきましても、なかなか蓄積ができない。ことに、一番大事な住宅なんかになりますと、まだ、一そろいそろえるだけでも、これは数百万戸建てなければならないというような状態であります。これは、私は、今日の状態におきましては、国の経済の安定ということを考える場合に、企業家庭経済の安定、これを考える以外にはないのであります。(拍手)国は、企業家庭の安定のためにその犠牲になる。あるいは今日のように日本の国力充実した状態におきましては、もう幾ばくの借金を政府がいたしましても、いささかも政府の信用にかかわることはございません。もう企業家庭の借金を背負って立つぐらいの気概をもって財政運営すべきときにきておる、かように考えるのであります。(拍手)  さように考えまするがゆえに、重大な転換ではありますけれども、この転換をやめるという考え方はいたしておりません。しかしながら、お尋ねのように、一体この歯どめをどうするかということにつきましても十分考えております。  第一の歯どめは、何といっても財政規模が適正にきめられるということの一点であります。この財政は、民間活動が非常に活発であるという際には、これは引っ込める。民間の経済活動が落ち込んでおるという際には積極的に出る。その調節弁として公債が有機的に活動するのであります。その適正な規模がきめてあるという限りにおきましては、私は、この財政が、物資、資金、労務、国際収支、これらの経済の諸要素について不均衡をもたらすというような状態にはならない。インフレにつながるという議論がありまするが、それは、公債財源によって財政が膨張する、その結果、労務、資金、物資、国際収支に不均衡を生ずる、こういう点にあるだろうと思うのであります。さようなことから、財政の幅をそのときどきの経済情勢に応じて適正にきめる。つまり、昭和四十一年度について言いますれば、これは民間の経済活動が弱いときである。こういう際には、公債財源として、政府は積極的な財政を行なうべきときに当たっておる、かように考えるのでありまして、さような適正な財政規模のもとにおいて、公債をどういうふうに発行していくかという次の問題もあわせて考えておるのであります。  次の問題といたしましては、先ほども申し上げましたように、その公債発行を建設目的に限定するという歯どめでございます。それから、第二は、この発行方法を民間消化の方法による。つまり中央銀行の引き受けの方法はとらない。これは国際金融界におきまする通念でございます。この通念に従ってこの歯どめを厳守していく、かように考えておる次第でございます。  また、公債は増税になるのじゃないかというようなお話でございましたが、もちろん、出した公債は、将来国民の税負担においてこれを償還することになります。しかし、その税を出すところの力、民力がこれによって涵養されるのであります。これが増税だというがごときは、まことに飛躍した議論であるといわねばならないのであります。(拍手)  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇
  41. 椎名悦三郎

    国務大臣(椎名悦三郎君) 外交に関する御質問のほとんどすべてが、すでに総理からお答え申し上げたのでありまして、私はつけ加えるべきものを発見いたしませんが、ただ、中共の先般の国連における国連加盟の問題、同時に、台北政府を追放するという案に対する表決の問題について言及されましたから、この点をさらに分析して申し上げます。  中共の国連加盟を支持する票が四十七、反対する票が四十七、そして棄権が二十票、それから、この問題がかかるので、それを意識して欠席した国が三カ国、こうなっております。すなわち、台北政府を追放して、中共をかわりに加盟させるという積極的な支持票は四十七。しかるに、反対した四十七と棄権した二十と欠席した三とを合わせますと、七十票あります。この四十七のほかに、棄権と欠席を合わせて二十三票。これは、明瞭に推測し得るがごとく、中共に対して支持をしない国、あるいは中共支持に対して多分の疑問を持つ国が、すなわち四十七票と合わせて七十票あるということになるのであります。この点を御参考までに申し上げておきます。  それから、竹島の問題に関連して、条約が有効になるやいなや、これに対して向こうが専管水域を設定する等のきわめていわば挑戦的な態度を示してきておるではないか、ゆえに、この例において見るがごとく、日韓条約は平和的な条約にあらずして反平和的な条約であるというような御意見のようでございましたが、請求権及び経済協力の問題といい、あるいは漁業の問題といい、在日韓国人の法的地位の問題といい、あるいはまた文化協力の問題といい、きわめてこれは友好的な平和的な条約でありまして、ただ一つ竹島だけが、ついに問題を解決することができなかったので、紛争問題として今後の折衝に残されたのみであります。これをとらえて条約全体が反平和性を持っておるというようなことは、まことに当たらない議論であると私は考えます。(拍手)  以上、申し上げます。  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) アジア開発銀行本店が日本に来ませんことは、私も代表として参りましたので、まことに遺憾に思うわけでございますが、平素われわれは、やはりアジア外交を考えます上において、日本がアジアの一員であるということを口に言いながら、必ずしも十分なお世話をしてなかったのじゃないかという反省を持つものでございます。アジアの各国はそれぞれ独立を達成すべく苦悶の努力をいたしておるのでございまして、その裏打ちとして、経済開発が必須の条件でございます。したがって、アジア各国におきますいわゆる唯一の先進国である日本は、もっとあたたかい気持ちをもって、そうして具体的に――これは金額の大小だとは私は思いません。それぞれの国が要求しているものについて、もっとあたたかい気持ちをもってこれに報いてやることが必要だと思うのでございまして、そうしたことを今後われわれは反省しながらやってまいりますれば、今回のような失敗がなかったことと思います。大いに反省することによりまして、今後努力をしてまいらなければならぬということを感じてまいりました。  物価問題につきましては、非常に重要な問題でありますことはむろんでございまして、われわれは日夜これに取り組んでまいらなければならぬのでございます。しかし、今日の物価は、いわゆる景気循環からきておる問題でなくして、やはり機構上の問題からきているものとわれわれは判断せざるを得ないのでございまして、したがって、これらの問題については、根本的にそれらの経済上の格差あるいはひずみ等を是正することによって、初めて本格的にこの問題の解決がはかり得られると思うのでございます。したがって、その過程におきまして、公共企業体といえども、たとえば東京周辺の鉄道のことを考えてみましても、急激に東京の人口が膨張している、そうして、冬になれば外套を着ただけでもってもう乗れない、押し込まなければならぬというような状況そのものを解消してまいらなければならぬのでございまして、そういうことを考えてまいりますと、相当大きな資本投資を必要とする。それに対して資本投資をするため、いかにしてそれらの資金を調達するかということは、これは重要な問題でございまして、単に政府が出すというだけで可能な問題とも思いません。したがって、今日これをある程度乗客に持っていただくこともやむを得ないものであって、それは将来の物価安定に進む第一歩だと思います。ただ、しかし、これらの公共料金を上げます際には、むろん今日引き続いていろいろな物価の上におきます誘発作用を起こしますので、それらの問題については、できるだけ金額につきましても、あるいは時期等につきましても慎重な配慮をしてやってまいることが、消費者のために考えなければならぬことでございまして、われわれとしては、そうした考えを持ちながら、今日、米価にいたしましても、国鉄にいたしましても、郵便料金の問題にも取り組んで、結論を出してきておるわけでございます。  赤字公債の問題については、大蔵大臣から御説明がありましたので、それ以上つけ加えることはないと思います。(拍手)  〔国務大臣坂田英一君登壇
  43. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 竹島の専管水域に関する問題につきましては、先ほど総理並びに外務大臣からお答え申し上げたとおりでございますから、私からの答弁は省略さしていただきます。(拍手)  〔国務大臣永山忠則君登壇
  44. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 公債発行等によりまして、地方財政を圧迫したり、あるいは地方の税負担の増を招いたり、中央集権化におちいらないように、地方財源拡充努力をいたし、特に、公共事業等の実施にあたりましては、地方の自主性を尊重いたすように、鋭意努力を傾注いたしておる次第でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  45. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 野口忠夫君。  〔野口忠夫君登壇
  46. 野口忠夫

    ○野口忠夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました昭和四十年度第二次補正予算について、この予算国民の皆さん方が願いをかけている、この願いをもとにして、その内容等にわたり、総理及び各関係大臣に質問をいたしたいと思うものであります。(拍手)  今回、国会混乱の責めを負うて、議長、副議長が辞職をして、新役員によってようやく本会議開会の運びとなったのでありますが、国民に大きな政治不信の念を深め、重要な審議案件を流産に終わったなどの問題は、決してこれで解決したとはいえないのであります。  民主的な議院は、思想、信条の異なる議員、政党によって構成され、それぞれの立場が尊重され、その自由の総和の上に具体的に保障され、存在するものなのであります。このような議院の成果を保ち深めることは、もちろん国会役員の運営の責任でありますが、しかし、さらに重要なことは、役員の自由を保障する出身政党の民主的あり方であろうと思うのであります。一党一派、多数少数に偏することなく、公正中立、議会民主制確立に挺身する自由を役員就任のときより保障する環境でなければならぬと思うのであります。民主主義体制のかなめを占める国会役員の大多数は、長年月にわたり、多数を占める自由民主党の独占するところであります。そこには、常に、多数である政府・与党の意思を国政の意思として議決されることをもって、円満にして正常な国会運営と称するかのごとき状態を生んできたのであります。役員の任務は、いかにして政府・与党のために働くかであり、これに反対する野党の意見、主張をいかにみごとに封殺するかで、その役員の功罪の評価基準とさえなっている現状であります。国会正常化を何度高言し、議長を何度取りかえても、この議会民主制を顧みない多数独裁の傾向を改めない限り、真の国会正常化はあり得ないと考えるものであります。(拍手)新議長は全く人を得たる人格者として、副議長は議会運営のベテランとして、テレビでのごあいさつは全くごりっぱなものであり、その就任の御決意のほどもうかがわれたのでありますが、従来の経験を顧みますと、この二人の方もまた責めを負うて辞職されることがないとは断言できないのであります。絶対多数党の総裁として、政権担当の総理として、議長、副議長の交代によって補正予算成立のめどが立ったなどと安易な考えでおられるとは思いはしないが、議会民主制のじゅうりんは、政治本来の民主的立場を左右し、ひいては日本の民主主義体制の基本を左右するものであることを考えるとき、この際、総理として、総裁として、議会民主制確立のための所信のほどを承りたいと思うのでございます。(拍手)  次に、今回提案されました第二次補正予算は、その内容においてまことに重要な問題を含んでいるのであります。お尋ねいたしたいととは多くありますが、おもなる点について、二、三お尋ねいたしたいのであります。  その第一は、従来の補正予算歳出における補正が重点でありましたが、今回の補正は歳入補正が重点であることであります。すなわち、今年度税収見込み額において二千九百億余円の減少が見込まれ、今回の補正なくしては昭和四十年度国家行政は麻痺する、深刻な財政破綻を食いとめるための補正予算であることであります。  まず第一に、本年度予算の収支において、何がゆえにこのような歳入欠陥を生じたのかということであります。明らかに、私は、高度経済成長政策の行き過ぎによる失敗がその原因と言わるべきだと考えるものであります。(拍手)  いわゆる高度経済成長というのは、池田総理あるいは与党の政策的効果のみではないのであって、第二次大戦以後、世界が当面し、日本が当面した、破壊のあとにくる建設のための、当然くる経済活発化への歴史的な発生なのであります。問題は、この当然にきた日本の経済上の問題をどのように有効に解決をし対処するかが政策課題として登場するものであったのであります。ヨーロッパ諸国、諸外国においては、至るところの地域に見られる住宅と舗装道路の完備があり、国民生活消費水準が高位であり、社会保障制度の完全実施が行なわれており、国民生活向上、福祉政策の充実、これがその政策課題であったのだと解されます。この重要な時期に日本の政策課題を担当されたのは池田内閣であり、その解決の方向は、所得倍増と経済格差解消の表看板に飾られた日本産業資本繁栄の方向であったのであります。すなわち、生産資本財中心の設備投資拡大政策による過剰設備、過剰生産は、激しい過当競争を助長しながら産業資本の蓄積を拡大し、二毛構造の上辺の繁栄策に尽き、これと通うことのない大多数の下辺との格差を拡大し、消費有効需要の鎮静を必然的にもたらし、生産需要とのアンバランスによる破綻的現状を生んだのがこの実態であろうと思うのであります。(拍手)日本の当面した経済の進路の判断を、繁栄のムードづくりに終始し、地域的格差、産業的格差、個人的格差の解消に徹して全国民の繁栄と幸福に奉仕する政策としての見通しを持ち得ないで、その二重構造のひずみの拡大に終始し、現在のような大きな犠牲を国民に与えた責任は大きいのであります。(拍手)  しかるに、佐藤内閣の経済政策の方向は、全く不況打開の本質的要因である政策的失敗にほおかむりして、単に経済不況解消の名目で、国の均衡財政堅持の原則を打ち立てた財政法四条を拡大解釈し、大幅な国債発行による財源獲得により、さらに財政拡大の方向を指向し、政策的要因に基づく責任を、国家財政基本方針を転換することによってのがれようとする重大な問題を提起しているのであります。  そこで、佐藤総理並びに大蔵大臣にお聞きする第一は、このような政策の推進が、常に主張していられる来年度以降の安定経済路線とどのように結ぶかであります。不況という現象をどうにもできない自然発生的なものとし、政策的、人為的要因の是正、反省に目をつぶり、単に不況打開のための国債発行による大幅な財源確保と財政刺激を企図するなどは、はたして安定経済実現の路線とどう結合していくのかをお尋ねいたしたいのであります。(拍手)結果的には、インフレ的様相の拡大の中に、国民の犠牲による経済推進を強行するための隠れみのとして、国民をだます安定経済ということになりはしないかと憂慮されるのでありますが、御所信のほどを承りたいと思うのであります。(拍手)  なお、財界及び与党の大幅な国債発行の要望は、すでに強い要求としてあらわれております。過去に経験した軍事公債発行が、当時もそのインフレ化を考えて行なったものではなかったにもかかわらず、大きなインフレ破綻に日本経済を突き上げた経験に徴しても、いわゆる歯どめの効果が、安易な財源調達の方法として許される国債発行を持つ限り困難であり、まことに過去の経験の道を、緊迫するアジア情勢に合わせる軍備拡張政策とともにたどるのではないかと主張するものですが、公債発行インフレの通行についてお伺いしたいのであります。  次に、企業減税による企業貯蓄増大による自己資本比率の向上が安定経済導入課題となっているようでありますが、資本蓄積的傾向への企業育成が再び設備投資過当競争への促進剤となり、コスト低下の合理化が過大な不況風に便乗し、深刻な人員整理、帰休制度の増大等をその雇用問題として漸次増大しつつあることは、憂慮すべきことであります。農民離農の問題とともに、過剰生産に対して応じ切れない需要、その有効需要の絶対源である消費人口の窮乏の深化は、全く不況対策の本末を転倒するものといわざるを得ません。経済不況打開の道は、当面する日本経済の持つインフレ性と物価高とを終息せしめる方向で安定した経済に移行するものでなければならないとすれば、上部構造の繁栄にのみ狂奔した日本の経済政策をやめ、下部の雇用安定の方向における、もっと深くその実態をながめた上での日本財政不況対策を行なわなければならぬと思うのですが、その所見はいかがでございますか。(拍手)  なお、明年度予算について、政府・自民党の中に、公債発行額とその減税額について意見の対立があると聞くのでありますが、これはまことに昭和四十一年度以降の日本財政に対する重要な問題であると思われるので、この際明年度予算編成基本方針について明確にお示しを願い、その際の公債発行額と減税額はどれほどにするのかもお示し願いたいと思うのであります。  次に、今次補正予算との開運において、先ほど佐藤総則大臣から物価安定の問題についてお聞きしたのでございますが、国会周辺に、白いエプロンを着て、物価高騰の中で苦しむ主婦の声は、日本の総理大臣の耳には聞こえないのではないかというように、その答弁を聞いて感じた次第でありますが、(拍手)どうもこの佐藤内閣の物価安定という看板は偽りありの感じが深いのであります。  相次いで、決定された公定料金の値上げにつきましては、先ほど御質問があったわけでございますが、私は、この公定料金の引き上げが、一体物価引き下げ、物価安定ということにどのような影響を与え、どのような結果をもたらすものであるか、料金値上げが物価安定に対する関連。先ほどから総理の答弁を聞いても、この点は明瞭にならないように思うのですが、料金は上げなければならない、しかし物価は押えなければならない、この二つの間にある矛盾が、どうしてもその説明では了解できないのであります。  物価問題に関しては、藤山経済企画庁長官がその衝に当たるものと思いますが、あなたは、この重要施策として掲げる物価安定について、佐藤内閣の指導的職責の人であります。十七日の米価審議会に招かれて、消費者物価上昇率について、本年度並びに来年、四十二年度につきまして、段階的な引き下げ方針をお示しになったようでございましたが、その日の午後に、藤山さんのお考えとは全く反対な値上げが行なわれておるのでございますが、藤山さんは、経済企画庁の経済担当の大臣として、あなたの示されました昭和四十年度以降の物価上昇率引き下げのパーセントは、今年七・五%ではどうもおさまるものとは私は思われませんが、この辺のところについて、物価安定についてのあなたの言われた数字的見解と、公定料金との間における経済企画庁の考え方との矛盾点を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)  次に、農林大臣にお聞きいたしたい。相次ぐ今年度災害に泣く農民のための災害救済予算歳出補正が見られるのでありますが、宿命的な災害常襲産業としての農業を営む農民の被害は、常襲的であり深刻であります。東北地方に起こった災害などは、握りこぶし大のひょうが突然降ひょうし、収穫時の田は一瞬にして全面ひょうに埋まり、災害反収三斗といわれ、若年労働者を工場に都会に奪われ、後事を守る老農夫の、米を食べることのできなくなった悲しそうな姿を、私どもはこの目で見るわけでございます。みずからの責任でない自然災害の被害に対する園の答えは、結局、金は貸します、しかし利子はいただきましょう、共済掛け金を繰り上げ支払いましょう、あとには失対事業でも持ってきてくらいの、貧困な対策きり行なわれないのであります。現地視察等は、常に大がかりに行なわれ、大名行列は通るのですが、一体その行列の答えるものは、ようやく六分五厘の利子を三分五厘にするくらいのところで、災害であした食べる米もない人に、金を貸して利子をとる話では、全く災害対策も情けないと思われるのであります。(拍手)  わが党は、生活再建を基本とする被害者援護法、個人災害者には生活援護の弔慰金、見舞い金支給、無利子、無担保の融資対策等、災害農漁民を国の手であたたく守る政策確立を決定しているのでありますが、坂田農林大臣は農民の苦しみをよく知る方として、農業の災害に対する基本的な対策についての御所見をお聞きしたいのであります。  一つは、農業災害補償制度の抜本的充実案を考え直し、被害農民の被害の実情に十分こたえることのできる制度をつくるべきではないかと思われますが、いかがですか。  再建のための資金難は当然であります。当然融資の必要があるのですが、無利子という制度が最も望ましいけれども、せめて長期の据え置き期間を設けた融資制度の確立等を考えることについて、その御所見などを承りたいと思うのであります。  公務員給与のベースアップについて、発表によりますと、九月実施はたいへん厚く引き上げたなどと称しておりますが、人事院勧告は五月実施を強く勧告しているのであります。日本国政府のILO委員会報告書によると、公務員労働者の権利剥奪に対し、政府は人事院機関を設け、その権利を保障しておるので、公務員はたいへんしあわせであると報告されております。世界の信義の上に成り立つ公的機関にみずから表明した日本政府は、当然勧告尊重の義務があり、労働者は権利があると考えるべきであり、五月実施こそ当然なのであって、要求事項ではなく、正当な権利と称すべきものであります。  労働大臣は、今回のベースアップにおいて、この辺のところをどうお考えになっておったのですか。九月実施で、これでも厚くしたなどとお考えなのでしょうか。農地報償金など、裁判所も調査機関も該当しないことを明言しているところにぽんと出るほど、日本財政は豊かなのであります。労働者の基本的権利獲得について、今回のベースアップ九月実施についての労働大臣の御所見と、今後の人事院勧告に対する労働大臣の所信のほどを承りたいのであります。(拍手)  次に、地方財政の危機についてでありますが、地方財政の収支状況は、昭和三十六年から一挙に転落し始め、地財法適用時の昭和二十九年の赤字財政時代に逆戻りの憂慮すべき状況に立ち至っておるのであります。一体何が上向きになった地方財政を再び落としていったのか。地方財政の下向きに折れ曲がった時期が、所得倍増政策へ切りかえられた昭和三十五年、六年からであるところに、国家施策の放漫財政の自治体導入の負担のしわ寄せにあると指摘さるべきであります。  本補正予算には一応四十年度のつじつまをやりくっておりますが、昭和四十一年度はさらに深刻化することは、自治省自体がそう考えておるのでありますから、この際、この席上において、窮迫した地方自治体を救済するために、国債発行との関連性の中で、もう一度地方自治体が明るく喜べるようなお答えをこの場所においてお願いしたいというように思うものであります。  最後に、佐藤総理の組閣当初に国民に公約した人間尊重の政治が、ともすると壇上やテレビの中に終わること、まことに多いのであります。世界に繁栄をもたらすとともに深い偏差と侵略のつめあとを残している資本主義のこの姿の中から、人間が人間らしく生きる願いに燃えて立ち上がる民族解放の運動による世界の新しい変革の中に、従属を排し、自主日本の旗じるしを掲げる政治に期待し、国民の願いと要求に沿う真の人間尊重の政治具現を熱願し、警察の力や守衛の力で防衛しながら国民と争う政治ではなく、民衆の中に歓呼をもってこたえられる政治実現に御努力あられんことを願って、質問を終わるものであります。(拍手)  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  47. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  議会民主制の確立についてお尋ねがございましたが、この点につきましては、先ほど野原覺君にお答えしたとおりでございます。皆さまとともどもに、私どもは民主政治を守り、同時に、議会制度、これをぜひともわれわれの力によってさらに改善向上していかなければならない、かように思います。  また、第二の問題といたしまして、ことしの歳入不足についてのその原因は一体何かということでございますが、これまた先ほど野原覺君にお答えしたとおりでありますから、お許しを得たいと思います。  次に、最近の経済成長に対する態度は、いわゆる安定成長ということを言っているが、公債発行したりその他で安定成長とどういう関連を持つのかという点のお尋ねであります。私は、ただいまの不況克服、これが何よりも大事なことだと思います。国民が非常に暗い、陰惨な気持ちになっておりますので、不況克服に真剣に取り組んでいく。その意味におきましては、一時的なものとはいえ、ある程度需要を喚起する、あるいは刺激を与える、こういうこともやむを得ない、かように思っておるのでありまして、ただいまの公債政策は、借金ではありますが、同時に積極的な対策である、かように御理解をいただきたいと思います。しかしながら、この不況克服、その後に私どもの考える安定成長への道を歩んでまいるのでございますから、どうかそういう意味でごらんおきを願いたいと思います。  明年度予算編成方針については、これは大蔵大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。  最後に、国民とともに、また国民のために私どもは政治をする考えでございますので、それにおきましては、十分人間尊重、歩行者優先等の具体的な政策を取り入れてまいるつもりでございます。(拍手)  〔国務大臣福田赳夫登壇
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債発行するとインフレになるのじゃないかというようなお話でありますが、これは私が先ほども申し上げましたとおり、公債は、これを健全適切に運営するにおきましては、インフレと何らの関係はございません。戦争のイメージを抱いておられるのかとも存じますが、これは戦争がインフレを起こしたのであって、公債じゃないと理解しております。  また、明年度予算編成にあたりまして、政府、与党の間で意見の対立があるかのごときお話でございますが、全然対立はございません。何とぞ御安心のほどをお願い申し上げます。  なお、公債減税の額につきましては、いずれあらためてお答えする機会があろうかと思います。  なお、地方財政の問題につきましては、先ほど自治大臣からお話がありましたけれども、公債発行によりまして国の財政拡大されます。それに伴いまして、地方で相協同してする仕事があります。さようなことでもあり、また、景気動向を反映いたしまして地方税の収入が減るという問題もあります。さようなことは、総合的にこれを検討いたしまして、昭和四十年度補正予算におけるがごとく、地方財政に支障のないように措置する考えでありますので、御安心のほどをお願いしたいと存じます。  以上であります。(拍手)  〔国務大臣小平久雄君登壇
  49. 小平久雄

    国務大臣(小平久雄君) 今回のドライヤー報告は、人事院の勧告につきましては直接触れてはおらないのでございますが、政府といたしましては、基本的には、人事院勧告はもちろんこれを尊重すべきものであると、こういう立場でございます。しこうして、そういう立場でございますから、今年は例年にない非常に苦しい財政事情ではありまするが、精一ぱいの努力をいたしましてこの九月から実施をすると、かように方針をきめた次第でございますので、御了解をいただきたいと存じます。今後におきましても、もちろん同様の態度で臨むべきものと考えております。(拍手)  〔国務大臣坂田英一君登壇
  50. 坂田英一

    国務大臣(坂田英一君) 本年発生じた各種の災害については、天災融資法の発動、激甚災害指定農業共済金の早期支払い、その他いろいろの施策を講じ、種苗確保対策、病害虫防除対策等の措置を講ずるほか、農地等の公共施設に対する災害等についても、実情に即し、激甚地の指定を大幅に行なっておるようなわけでございます。これらの復旧については、相当の金額を予備金で支出いたし、さらに補正予算でも多額の資金を計上いたしておるわけでございます。また、被害農家に対する資金の融通については、天災融資法による経営資金百三十六億、それから公庫資金から百十四億、それらを確保することにいたしております。なお、長期、低利の方面に向かって十分の注意を払って、今年は三分の低利資金の貸し付けが相当多数占めておるようなわけであります。したがって、災害対策は十全であるとは言い得ないにしても、災害農民の不満を買うような事態はないと考えております。  無利子、長期融資の問題はまことにけっこうでありまするが、農業金融全体の利子体系にも触れる問題であり、当面、現行制度の充実と円滑な運営で対処していきたいと考えておる次第であります。(拍手)  〔国務大臣永山忠則君登壇
  51. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 地方財政の来年度の見通しについては、お説のとおり、相当の歳入不足が予想されるのでございますが、しかし、地方財源充実、行政の効率化等に意を十分用いまして、地方財政が混乱におちいらないように最善努力をいたしたいと存ずるのでございます。(拍手)     ―――――――――――――
  52. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 受田新吉君。  〔受田新吉君登壇
  53. 受田新吉

    ○受田新吉君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております昭和四十年度の第二次補正予算案並びに大蔵大臣財政演説に対する質問を試みんとするものでございます。(拍手)  さて、本補正予算案は、顧みまするに、十一月二十四日衆議院に提出されて以来、じんぜん月日をけみしまして廃案となったものでございます。今国会召集とともに、あらためてこれが提出されまして、押し迫った年の瀬を控えて、急遽審議の爼上にのぼせられるということは、日韓国会の変則状況の結論とはいいながら、政府の責任まことに重大であるといわなければなりません。(拍手)しかし、私は、国会正常化を前提として、この当面急を要する補正予算案の審議が、各党の歩み寄りによって軌道に乗せられた今日、あらためて本予算案のかかえた問題点を質問を通じて明らかにし、政府の所信をたださんとするものでございます。(拍手)  さて、今回の政府提出の補正予算案には二つの目的がひそめられていることを隠すことができません。  第一に、本年度税収減見込み二千五百九十億円に見合った同額の公債発行に踏み切ることでございます。これはわが国財政が終始均衡を鉄則としておりました従来のあり方を、この補正予算案以降は赤字財政で毛やむなしの方針に転換することを意味するものでございまして、わが国財政の制度としては画期的な大事件を提起したことでございます。  第二に、本年八月の人事院勧告に基づく公務員給与改善災害対策など、緊急不可欠な歳出補正をすることでございます。そして今回の最大の問題点は、本日からの第五十一通常国会でもしこれが成立しないといたしますならば、政府は二十四日から二十九日の年末にかけて、各機関とも小切手を振り出し、大蔵証券二千億円を追加させないと、政府の振り出し小切手は不渡りになりかねないという、換言すれば、笑い話では済まされないおそれが多分に存在する政府としてはせっぱ詰まった補正予算案であることであります。(拍手)  そして今回の補正予算案が、如上の赤字公債発行という大事件であること、不況対策等日本の財政政策の一大転換を画する重大な案件であり、より長期の実質審議を必要とするものでありますだけに、一そう政府の責任の重大性を指摘しなければならないのであります。  さて、現在、日本の当面しております予想以上の不況の原因を追及しなければなりません。この不況は、単なる自然現象ではなくして、第一に、資本主義本来の抱く宿命的なる欠陥から生じており、第二に、この欠陥を政府は是正するどころか、財政金融政策によってますます助長してきたところに問題の重点がしぼられるといわなければなりません。  資本主義本来の宿命的欠陥とは次のメカニズムでございます。民間大企業の過当な、かつ無政府的な設備投資競争であり、昭和三十五年度から三十九年度までに二十兆円の膨大な額に達しておるのでございます。これは投資が投資を呼ぶメカニズムの終えんと、いびつな家庭電化ブーム、安易な外国技術の導入の一巡によりまして、過剰供給におちいり、減産を余儀なくされ、ひいては需要の削減、賃金の低下を来たし、深刻な不況に突入したものであるというべきであります。  そして一方において中小企業、農業、公共福祉部門は、大企業の資本偏在によりまして、資本不足におちいり、生産性は著しく停滞し、恒常的物価高の原因をつくり、その結果、ついに社会的アンバランスを助長するという、まさに資本主義の現代的欠陥である豊富の中の貧困を招いたものであり、断じて許すことのできない重大事でございます。  同時に、政府は、財政政策によってこれを助長する方向をとってまいっております。そこで、歳入面におきましては、租税特別措置、利子所得の優遇等により、高い蓄積の生産第一主義をとり、歳出面におきましては、社会保障費、住宅対策費を極度に切り詰め、産業基盤の設備投資の重点を貫き通して、産業界をあおってきたものといわなければなりません。  私は、この事態に対処して、次のような施策を必要とすると存ずるものでありますが、総理、大蔵大臣はいかように考えておられるか、御答弁を願いたいのでございます。  すなわち、この不況と物価高の原因にかんがみて、まず第一に、各界代表の参加する投資計画会議(仮称)を設け、将来の需要に見合う設備投資額を決定し、同時に、重要産業の公共性の強化をはかること。第二に、財政の重点を社会保障拡充住宅環境整備重点に移行して、所得税減税をはかるべきこと。第三に、経済の二重構造は金融の二重構造に原因がありますので、中小企業向け金融の画期的促進のために、金融機関の公共性を一そう強化することであります。  以上の各項目をいまこそ敢然と実施しなければ、政府の行なわんとしておる有効需要喚起政策は、インフレを助長し、また、将来とも現在以上の不況をもたらすことは必至であると思うのでございます。そして、そのときこそいよいよ本格的赤字公債が登場いたしまして、国民生活は破壊の一路をたどるであろうことを憂えるものでございます。  そこで、第二次補正予算案の歳出面の問題点を指摘したいと存じます。  私は、この機会におきまして、人事院勧告給与引き上げ率が平均六・四%と、昨年より一・五%も下回っておることを指摘しなければなりません。これは、物価が本年四月から十月までにすでに五%も上昇しておることと比較検討するときに、問題点がひそんでおるのでございます。また、勧告は実施期を五月としておりますのを、補正予算案では九月からとしており、完全実施の基本線をはるかに後退しておるのでございます。このような現象は毎年のごとく繰り返され、一向に改善されようとしておらないのでございます。政府は事ごとに人事院勧告を尊重するといい、そして勧告が出ると、勧告にいうところの実施期五月は、予算編成技術上、または財政上困難であると、逃げの一手を打っておるのでございます。なぜ五月からの完全実施を行なわなかったのでございますか。私は、この機会に、この惰性的な措置を一挙に解決するために、経済企画庁の発表する経済の見通しの中の物価上昇率を基準として公務員給与の上昇予想額を含め、当初予算予備費として計上する措置をとるべきではないかと思うのでございます。人事院勧告を待つまでもなく、政府の責任において当初予算編成基本的性格を明らかにする、そのことを検討すべきではございますまいか。また、一方策として、人事院勧告による実施時期と予算編成技術面の調整をとる方策はないのでございますか。人事院は五月以外にも実施期を考えることができないのでございますか。でき得べくんば、公務員給与費という基本的な歳出面の措置を、毎年のごとく補正予算をもってスタートせしめる変則的な改善措置を改めるべきではなかろうかと思うのでございます。(拍手)  また、この機会に、公務員給与に大きい影響を与える消費者物価の上昇率に例をとってみましても、経済企画庁の経済の見通しはすこぶるずさんであり、実績との間に大きい食い違いを繰り返す愚を改めることができておりません。経済の見通しに伴う安定した経済政策の樹立の根底をつちかうための経済企画庁長官の所信をただしたいと思うのでございます。  なお、この機会に、一般職、特別職を含む公務員給与の一貫性を持たしめるために、せっかく総理府人事局を置き、総務長官を給与担当国務大臣とした現状にかんがみ、従来他省の所管に属してきたすべての特別職公務員給与を一本の体系のもとにおさめ、また、公庫、公団、事業団等の特殊法人のごとく、大蔵省の考えで独断で給与がきめられるそういう制度にも法律的基礎を与えることなど、また、現職者の給与引き上げに伴って、同じ先輩である退職公務員の恩給、年金のスライド引き上げ等もあわせ考慮する必要があると思うのでございまするが、御見解のほどを伺いたいのでございます。  いま一つ、地方公務員給与及び地方財政についてお伺いいたします。  地方財政は極度に逼迫し、地方財政硬直化の原因がいわゆる人件費の急激な増加であり、給与改定が地方公共団体の財政運営の実施の上に重大な障害となっていることを考慮されて、いわゆる安定合理化された方策として抜本的対策を打ち立てる必要があると思うのでございまするが、御所見を伺いたいと思うのでございます。  なお、最近の政府の調査によりますると、大都市の公務員給与は平均三万三千八百円、町村の公務員の給与はわずかに二万円というごとく、同じ公務に従事しながら、国、地方公共団体公務員の給与のアンバランスは著しいものがあります。これを適正化するとともに、地方財政の経常的収支には、地方税の増徴、地方交付税率の調整等、恒久対策を用意いたしまして、現在の苦悩する地方公共団体を救済する方途を講ずべきではないかと思うのでございまするが、特に総理及び自治大臣、並びに、以上の諸点については人事院総裁を含めて御答弁を願いたいと思います。  次に、補正予算案を拝見して、中小企業対策は、全く傍観的と言っていいほど無策であります。まじめな中小企業経営者の倒産相次ぎ、かつ、自殺者続出という悲劇が日々繰り返されております。中小企業者の五人や十人の自殺はやむを得ないという十年昔の哀話の比でない最近の実情は、目をおおわしめるものがあるのでございます。人間尊重の信念を政治の要諦とされている総理は、まず、当面する苦境の中小商工業者に即効的効果を伴う施策を講ずべきではありますまいか。政府は、今回の信用保証制度拡充だけでなく、開発銀行に二百億円にのぼる追加融資をしている現状にかんがみまして、政府関係中小金融機関にさらに大幅の財政投資を考慮すべきではなかったかと思うのでございます。  物価問題については、和次いで、米価をはじめ公共性を有する料金の引き上げが決定しているようでございます。物価安定の基礎である公共料金の大幅引き上げを食いとめることのできない政府に、物価に対する認識を期待することは不可能であるとさえ考えるのでございます。物価安定に害せる政府の具体的構想をお示し願いたいのでございます。  さて、次に、歳入面の問題点についてお伺いいたします。  私は、二千五百九十億円にのぼる赤字公債発行には、断固反対するものでございます。財政の憲法ともいうべき財政法の第四条には、国の歳出は、借り入れ金、公債でまかなうことはできないと、厳に規定してあります。皆さん、国会をあげてこの問題を真剣に討議するためには、借金財政に転じても、不況と物価高を押えるという経済政策を同時に用意すべきではなかったかということでございます。このことを考慮せずして、税金の集まりが悪いから借金をするという安易な公債政策に、わが党は断じて反対せざるを得ないのでございます。(拍手)  わが党の代案は、経費の節約、外国為替特別会計のインベントリー使用、資金運用部資金の使用等をもって、二千五百九十億円の赤字公債分に充当することでございます。この機会に、政府は、都合の悪いときは法律を自由に変えるという、法治国家をゆがめる形態を断じてなさないという御所見を伺いたいと思っております。  さて、具体的に申し上げたいことは、政府は、この際思い切って予算の一割程度の節約、合理化を行ない、減額修正をすべきではなかったかということでございます。  政府は、昭和三十九年九月臨時行政調査会の行政改革答申を、すなおに、そしていまこそ完全に実施に移すべきときではありますまいか。このような機会をとらえてこそ、今後、行政能率の合理化、近代化は可能であり、また、冗費の節約も行なわれるのでございます。さもなければ、今後の国債発行の続行に伴って、ますます非能率、むだが幅をきかすこととなるのでございます。  ここに、わが党は、建設的に前向きの態度として、現在の不況の現状にかんがみ、第二次補正として、当初予算より減額修正をした額だけを、建設公債または借り入れ金によって、大衆に直結する住宅、環境整備を中心とした景気刺激政策として盛り込んだ案を提出することを主張するものでございます。特に、純増加歳出六百五十一億円に見合う歳入のやりくりが、戦後初めての無理を生ましめたということを考えるとき、第一に、日銀の納付金、四十一年度初めに納入されるそのものを、四十年度下半期分二百二十億円の先食いをして本年度内に繰り入れていること、第二に、例年なら翌々年度繰り入れる三十九年度剰余金百八十六億円を本年度繰り入れていること、従来出資してきた日本道路公団、産投特別会計繰り入れ、産炭地振興事業団など三機関に対する二百五十二億円分と、地方交付税特別措置に伴う給与引き上げ額三百億円を融資に切りかえておること、これらは明らかに将来まで利子の負担を課せられた重荷にほかならないのでございます。こうした補正予算の無理、内部要因を、如上のわが党の掲げる前向きの措置をとることによって是正するよう、政府の深い反省と見解を求めるものでございます。(拍手)  さらに、おしまいに、来年度予算編成方針について大蔵大臣の御所見を承りたいのでございます。  わが党は、来年度予算編成方針の重点は、不況克服、物価高の抑制、公共福祉の増進の三つでなければならないと考えまするけれども、政府はこの三つのどれに重点を置こうとされておるのでございましょうか。過日の大蔵大臣の演説を聞き、また、本日重ねて承りましたところによりますると、主として不況克服の点に重点を置いて、物価抑制はこの際あきらめざるを得ないような形になっておるようでございまするが、これは基本的に誤っておることではございますまいか。われわれは、不況克服と物価の抑制は、さきに述べましたように、これらのよって来たる原因を考えるならば、りっぱに両立できるものであることを強く主張しておきたいのでございます。すなわち、建設公債はあくまでも生活環境の整備と住宅投資に限って発行し、同時に、企業減税は中小企業だけに限るべきであり、大企業向け企業減税資金を、全額、農業の計画生産、流通機構対策、中小企業近代化対策等、物価抑制措置に向けるべきであると考えるものでございます。  最後に、政府予算編成方針の無定見、無計画をあらためて追及したいのでございます。  すなわち、建設公債の額にしましても、当初は六千億円と言っておきながら、次には六千五百億になり、最近に至っては、七千億、八千億と、どんどん膨張しております。一体政府は何をめどに、また、いかなる理論根拠でこのような額を算定しているのでございますか。全く先が思いやられる無謀な編成ぶりであると断ぜざるを得ないのでございます。先ほど大蔵大臣は、量よりも質に重きを置くと申されたのでございます。赤字公債を無定見に発行し続けて物価安定を忘れたかかる姿が、どうして質の向上を伴うのでございましょうか。当初予算に対する補正予算の性格を十分検討されて、私の見解に対する御所見を、総理を含め、大蔵大臣に御答弁を願いたいと存じます。  なお、終わりに、日韓関係予算の計上に関連して一言承っておきたいことがございます。  日韓条約の締結に伴うて両国の親善関係を推進する上におきまして、経済関係だけでなく、相互の人間関係向上をどう考えておられるのでございましょうか。一例を、帰化した、かつての朝鮮人に引かせていただきましょう。いまりっぱな帰化日本人でありながら、銀行等の融資その他の経済関係、就職等の人間関係で著しく差別待遇を受けている事例は、最近においても枚挙にいとまがないのでございます。このような排他的大国意識がまだ残されているとするならば、新たに永住許可権を認められる多くの韓国人の上にどのような不安感を与えることでありましょうか。韓国の内政問題ではございますが、戦後の反日教科書の改善に期待して、古い友好関係改善を待つ韓国との人間関係向上の上におきまして、政府の積極的熱意を承って質問を終わりたいと思います。(拍手)  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  54. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  ただいま経済予算編成、また日韓等、各方面にわたりまして、まことに尊重すべき、かつまた、建設的な御意見を聞かしていただきました。心から敬意を表します。しかし、同時に、これらについての私の批判は預かっておきます。  具体的な問題について所見をただされた点についてお答えをいたします。  まず、第一、今日の不況克服するために、また、物価問題と真剣に取り組むために、特別な投資計画会議というような、各界の人を集めての会議を持ってはどうか、こういうことでありますが、ただいま経済企画庁におきまして、いわゆる中期経済計画等を策定いたします際にも、各界の方の御意見を拝聴しておりますし、また同時に、物価等の問題についても、最近、私どもが民間の協力を得る、また各界の御意見を伺う、そういう懇談会等を設けておりますので、お尋ねのようなものに近いものが考えられているということを御承知願いたいと思います。  同時に、社会保障等の関係公共事業の整備に特に注意すべきではないかということでございますが、最近、社会開発懇談会におきましてもこの種の答申を得まして、住宅問題、これは量ではありませんが、質的な住宅問題を中心にして、住みいい社会をつくるように進めるべきではないか、かような答申をいただいておりますので、これが予算編成の面にも出てくることだと御承知おきを願いたいのであります。  次の第三点で、中小企業の今日の窮状等を考えた場合に、金融の面で特に中小企業向け対策を立てるべきではないか、これはまことにお説のとおりでありまして、私どもも今日までさような意味で中小企業対策に特に留意してまいったのでございます。そうしてただいまは、この中小企業が、金融的に、金利の引き下げ、あるいは壁をふやしましても、十分使われないような状況だ。むしろ中小企業の要望は、いわゆる需要の喚起にある、注文をもっと出してもらいたいということでありますので、経済全般不況克服、これが同時に中小企業対策の重点にもなるんだ、かように私どもはいま考えておるのでございます。中小企業対策は、なかなかこまかなめんどうを見なければ、十分の効果をあげることができないと思いますので、一そう注意をいたすつもりであります。  次に、予算編成人事院勧告との関係についてのお尋ねがありました。なかなか人事院勧告と一致しないというか、いままで非常に予算編成上も悩み、中間において人事院勧告を実施する今日の実情は、たいへん困った問題であります。しばしば論議を重ねておりますが、ただいままでのところ、これに対する具体的な改善方策がまだ見つからないような状況でございます。この上とも私どもは努力を続けまして、人事院勧告の完全実施へさらに進めていく、そういうことでこの人事院勧告を尊重する、かようにしていきたいと思います。十分考えてまいりたいと思います。  また、最後のお話といたしまして、今日の借金であるいわゆる公債発行につきまして、予算減額修正をすべきではないか、こういうお話がございましたが、先ほども申しましたように、普通の状況ならば減額修正をするのが一応の案であります。しかし、今日は、申すまでもなく、経済情勢等から見まして、減額修正をするよりも、所要財源を見つけて、そうして経済不況克服、それに努力を払うときだと、かように考えておりますので、ただいまのような措置をとったわけであります。もちろん、これは借金でありますから、内におきまして減額修正というようなことまではいたさないにしても、いわゆる経常費の節約、それによって一つの財源も生み出すし、積極的に合理化も進めていくことは、これは当然であります。さような意味で先ほど来大蔵大臣もお答えしたと思います。  以上お答えしておきます。(拍手)  〔国務大臣福田赳夫登壇
  55. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私に対する質問につきましては、大体総理からお答えがありましたので、重複を避けて省略いたしたいと存じます。  ただ、今回の経済事情はきわめて不幸な経験でございます。こういう不幸なことを再びしてはならないという反省が私は財界で当然あるべきである、こういうふうに思うわけであります。そういうことを考えますと、ただいまお話しの投資計画会議、こういうものが官製のものでなくて民間からの反省として出てくる、こういうことが非常に期待されておるかと思うのであります。それを誘導するような考え方をいたしておるのであります。  なお、来年度予算編成にあたりましては、不況と物価対策をどういうふうに調整するかという話であります。当面、来年度予算は、不況問題また物価問題、両方に重点があるわけでありまするが、この二つの問題は、また相矛盾する面も持っておるのであります。その両者をいかに調整し、安定さしてまいりますかということが、考え方として非常に重要で、かつむずかしい問題であると、かように考えております。できる限り努力をしてまいりたいと、かように考える次第であります。(拍手)  〔国務大臣藤山愛一郎君登壇
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 経済見通しがずさんではないかというお話でございます。むろん、見通しでございますから、若干の狂いがあることは、これはやむを得ないことだと思いますが、先ほど御指摘のありましたような消費者物価については相当の大幅な変動がございます。したがって、これらのものについて、われわれが今後十分な見通しをつけてまいらなければならぬことは当然でございます。ただ、今日までの過去の数字を並べまして、そうして帰納してまいりますような関係におきましては、新しい事情の変化もしくは経済活動におきます精神的な作用面がとかく閑却されがちでございますので、われわれもそういう点について今後注意してまいらなければならぬと思います。そうして、努力目標ではあるけれどもということでもって、とかく若干低目に見やすい場合もございます。そういうようなものについては、適切な考え方のもとに今後とも整備してまいるつもりでございまして、必ずしも全部が全部当たるとは、そのとおりいくとは申しかねますけれども、なるべく大きな変化のないような見通しを立ててまいりたいと存じております。  物価問題につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますので、省略させていただきます。(拍手)  〔国務大臣永山忠則君登壇
  57. 永山忠則

    国務大臣(永山忠則君) 地方財政の窮乏打開につきましては、地方財源の強化、行政の効率化、広域行政財政の推進、行政事務の再配分等、あらゆる角度におきまして抜本的施策をいたしたいということは、受田君の言うとおりでございます。努力をいたしたいと存じております。  なお、地方公務員給与のアンバランス是正に対しましても、努力はいたしておるのでございますが、いまだ不十分でございます。今後一そうこれが是正に全力を尽くす考えでございます。(拍手
  58. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 人事院総裁の答弁は適当な機会に願うことといたします。  これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――  昭和四十年度における財政処理特別措置に   関する法律案内閣提出)の趣旨説明
  59. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案の趣旨の説明を求めます。大蔵大臣福田赳夫君。  〔国務大臣福田赳夫登壇
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、さきに申し述べました補正予算とうらはらの関係をなすものでありまして、最近における経済事情に顧みまして、昭利四十年度における租税及び印紙収入の異常な減少等に対処するため、必要な財政処理特別措置を定めようとするものであります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一は、公債発行であります。  昭和四十年度におきましては、経済活動の停滞に伴い、租税及び印紙収入は、当初見込み三兆二千八百七十七億円に対し、三兆二百八十七億円と、二千五百九十億円の大幅な減少を来たす見通しであります。かかる異常な事態に対処し、この減少を補うため、昭和四十年度限りの臨時特例として、政府は、財政法第四条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債発行することができることとするものであります。  第二は、交付税及び譲与税配付金特別会計につきまして、一般会計からの繰り入れ額の特例措置及び借り入れの措置を講ずることであります。  さきに申し述べました租税及び印紙収入の減少見込み二千五百九十億円のうち、所得税法人税及び酒税の三税の収入見込み額減少は、千七百三十四億円となり、これに伴って、昭和四十年度に地方団体に交付すべき地方交付税総額は、右の金額の二九・五%に相当する五百十二億円だけ減額することとなるのでありますが、昭和四十年度については、地方団体の財政事情の現況にかんがみ、特にその減額を行なわず、これを当初予算計上額どおりとすることといたしまして、このため、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れられる金額の算定についての特例を設けようとするものであります。  次に、今般、地方公務員給与改定に要する経費財源に資するため、昭和四十年度限りの特例措置として、地方団体に交付すべき地方交付税総額を三百億円増額することといたしまして、このため、交付税及び譲与税配付金特別会計におきまして、地方交付税交付金を支弁するため必要があるときは、昭和四十年度において、三百億円を限り借入金をすることができることとし、右の金額については、昭和四十一年度以降七カ年度にわたり返済が行なわれるよう措置いたしておるのであります。  なお、これらの措置に伴い、国債に関する法律第一条を改める等、所要規定の整備をはかることといたしております。  以上、昭和四十年度における財政処刑の特別措置に関する法律案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)      ――――◇―――――  昭和四十年度における財政処理特別措置に   関する法律案内閣提出)の趣旨説明に対す   る質疑
  61. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。平岡忠次郎君。  〔平岡忠次郎君登壇
  62. 平岡忠次郎

    ○平岡忠次郎君 私は、ただいま趣旨説明のありました昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案について、日本社会党を代表し、以下、若干の質疑を総理並びに大蔵大臣に対して行なわんとするものであります。(拍手)  この法律案内容の一つは、ただいまの大蔵大臣の御説明にもありましたとおり、木昭和四十年度における租税及び印紙収入の減少を補うため、約二千六百億円の赤字公債発行することができることといたそうとするものであります。  政府は、四十年度予算が赤字予算となると言いますが、財政の赤字は、実質的にはすでに三十九年度から始まっているのであります。すなわち、三十九年度の決算では、通常翌年度繰り入れるべき税収をやりくりして表面上は収支均衡をはかったのでありますが、実際には七百八十六億円の歳入不足であったのであります。  さて、本年度では、右に申し述べたとおり、約二千六百億円の税収不足となっており、さらにこれに今回の補正予算歳出追加事項となった約一千四百十二億円を加えれば、四十年度における見込み違いは、実に四千億円にのぼるのであります。このように大きな財源不足ないし見込み違いを生じたことは前代未聞であり、まさに醜態の限りであります。(拍手)しかも、これは政府経済政策経済見通しの誤りによるものでありまして、政府の責任は重大であり、内閣総辞職にあらずんば、解散によって信を国民に問うに価するものであります。(拍手)  しかるに、政府は、その責任を感ずるどころか、逆にその責任にほおかぶりをしたままで、財政破綻の既成事実の上に立って、公債発行措置をとろうというのであります。全く言語道断といわなければなりません。まず、この責任について政府はどのように考えておられるのか、総理大臣の見解を承りたい。  さらにもう一つ、本論に入るに先立って、佐藤内閣の姿勢についてただしておきたいことがあります。  それは、佐藤内閣が公債発行方針を決定するにあたって、どの程度の検討と反省を加え、また、どの程度の確信に基づいてこれが行なわれたかということであります。遺憾ながら、全くの無定見、無見識、かつ動揺の産物であるといわざるを得ません。なぜならば、第四十八国会においては、「昭和四十三年度までは絶対に公債発行しない」という佐藤総理の答弁によって統一されていたものが、その後一転して、「四十一年度以降に発行することがあり得る」と述べ、再転して、「四十一年度発行する」ということになったかと思うと、さらに三転して、ついには、「四十年度内に赤字公債発行することも辞さない」というところにまで発展してきたのであります。(拍手)しかも総理は、このことを去る八月四日の衆議院予算委員会において、わが同僚議員の辻原弘市君につかれると、何と答弁いたしておりますか。「当時田中大蔵大臣から耳打ちを受け、中期経済計画では四十三年まではやらないことになっていると言われたので、そのまま答弁した、正直に言って、逃げた答弁であった」と答えているのであります。この間わずか四カ月。四カ月の間に四回も方針が変わっているではありませんか。これはいかに政府経済見通しがいいかげんなものであるか、いかに現内閣に信念と見識が欠除しているか、いかに今回の公債発行が追い詰められた公債発行であるかということの何よりの証拠であります。(拍手)この点について総理の抗弁があれば伺っておきたいと存じます。  さて、かくして政府は四十年度の税収不足を赤字公債発行によって補てんいたそうとしているのでありますが、ここにドッジライン以後十数年にわたって堅持されてきた公債発行主義の原則は名実ともに破棄せられ、悲しくも、われわれが満州事変から太平洋戦争にかけて経験したような公債の季節が再現いたさんとしているのであります。  申し上げるまでもなく、現行財政法は、新憲法とともに生まれた戦後の新しい法律であり、その第四条及び第五条においては、赤字公債、すなわち、一般財源の不足を補うための公債を絶対的に認めず、また、公債の日銀引き受けによる発行を原則的に禁止しているのであります。しかして、その立案の趣旨とするところは、第一に、戦争の危険を防止すること、第二に、公債を通じての支配階級奉仕の財政を排除して、財政の民主化を確保すること、第三に、通貨の膨脹とインフレーションを防止することを三大眼目といたしておるのであります。すなわち、これを裏から言えば、公債発行は、戦争とインフレーションの危険を内蔵するものであるということであります。  試みに、わが国の旧軍事費の中に占める公債の比率を回顧してみれば、満州事変の九四・九%を筆頭とし、日華事変を含む第二次大戦の八六・二%がこれに次ぎ、日露戦争が八二・五%、第一次大戦が六一・七%、最低の日清戦争においても五二%となっておるのであります。現在は昔のような軍部は存在しないし、憲法及び財政法等も当時のものと相違しているから、公債発行をすぐに戦争やインフレーションと結びつけるのは、実情を無視した考え方であるという議論があります。しかし、それにかわって、いまの日本は、日米安保体制のもとで、アメリカの強い影響と制約を受けております。その中で防衛費の増加を絶えず要請されているではありませんか。  かつて濱口内閣時代に始まった不況が、昭和の初期四、五年続き、その後に景気刺激政策と軍事力増強が公債発行を伴って行なわれ、あげくの果てが満州侵略となったという前例があります。ここに歴史の教訓があります。  いま、日米安保体制のもとにおける軍事力は、つとに成熟しつつあります。しかして、ひな鳥の卵殻を破って突如としてあらわれてくるがごとく、まぼろしの日本軍事体制は突如として顕在化し、軍事公債の上に乗って公然と横行する日が近づきつつあることを私は危惧するものであります。(拍手)現に、政府は、ベトナム、朝鮮等を包含したアメリカの戦略体制に全面的に協力しつつ、昭和四十二年度から第三次防衛力整備計画を開始しようとしており、その最終年度の四十六年度には、防衛予算が八千億円をこえることが予想されるのでありますが、そのことを考え合わせれば、右防衛計画の発展と相まって、一度せきを切った公債発行が、次第に事実上の軍事公債の性格を持つものとなっていくことは、避けられない宿命ではないでしょうか。  私は、四十年度における赤字公債発行予定額である二千六百という数字にあえてこだわるわけではありませんが、紀元は二千六百年とうたわれた昭和十五年は、時あたかも日独伊三国軍事同盟が締結された年であります。そしてその翌年には、悪夢のような太平洋戦争へと突入したのであります。  戦後二十年、いま佐藤内閣の手によって再び公債政策の道が開かれようとしているとき、耳ざとくも、はるかに銃剣と軍靴の音を聞くの思いは、あにひとり私のみでありましょうか。(拍手)はたしてこの公債政策が、軍事公債政策発展することがないのであるのかどうか、もしないとすれば、いつの町限でこの発行を停止し、終結せしめるつもりであるのか、国民の前にそのプログラムについて明確にせらるべき義務が政府にあると存じます。(拍手)逃げの答弁ではなく、総理より、戦争と平和の歴史の岐路に責任を持つ宰相としての真摯な御所見をお伺いしたいと存じます。(拍手)  また、政府は、四十年度における財源不足対策としての公債発行と、長期経済安定成長計画の一環としての公債発行とを区別しておられますが、その名目が赤字公債であろうと、建設公債であろうと、通常歳入の足らず前勘定が公債となるのでありますから、内容は同一であります。(拍手)各国の例を見ても、建設公債という名のもとに、事実上の赤字公債を出している事例が多いのであります。赤字公債の名を避けて建設公債とすることは、財政編成にあたって政府の裁量でいかようにもなるのでありますから、政府が四十一年度以降は財政法第四条に立ち返って、赤字公債はこれを発行せず、建設公債のみを発行すると言ってみても、圧力団体の突き上げを食って、建設公債という名の赤字公債の乱発は、これを避け得ないのではないのか、歯どめとされる市中消化は、から念仏に終わるのではないのか、疑念なきを得ないのであります。(拍手)  インフレによる生活の脅威におののいている国民大衆の前に、しからざるゆえんをしかと解明する必要が政府にあります。公債発行が雪だるまとはならないという保障を政府国民に明らかにする必要があります。佐藤総理並びに福田大蔵大臣から、それぞれ御見解をお伺いいたしたいと存じます。(拍手)特に、大蔵大臣からは、明年度の国債の発行規模を、かりに巷間伝えられる七千億円と想定した場合において、市中公募は可能であるのかどうかについて、具体的に御答弁をお願いいたします。(拍手)  国債のみならともかく、政府保証債、公募地方債の増発も必至であります。四十年度の政保、地方債の合計は約三千六百億円、明四十一年度を控え目に四千億円と見ても、七千億円の国債と合わせて一兆一千億円のものが市中に放出されることになるのであります。  これに対し、市中引き受け余力はどうでしょう。四十年度の公社債全体の発行状況は、前述の公債、すなわち、政保債、地方債の三千六百億円に加えて、電力等の事業債三千九百億円の合計で七千五百億円であります。これは異例の金融緩和と金利の低下によって、幸いにも可能とせられているものでありますが、現在の情勢が明年度も続くとしても、一兆一千億円の公債発行は、大きく市場の圧迫となります。しかも事業債がこれに上乗せするわけで、それが四十年度並みとしても、三千九百億円であります。したがって、四十一年度の公社債は約一兆五千億円、すなわち、四十年度のちょうど二倍の巨額となるのであります。  さて、さしあたり四十一年度は、日銀のバックアップのもとに、よし市中消化が可能としても、大蔵大臣、四十二年度以降はどうでしょうか。かりに明年度の国債発行額を七千億円とし、年平均千五百億円ずつ純増するとすれば、四十五年度までの五カ年間の発行額は五兆円に達するのであります。一方、政保債、地方債の明年度発行額を四千億円とし、年平均の純増を五百億円という控え目な想定をしても、五カ年間の発行額は二兆五千億円となり、公債全体では、実に七兆五千億円にのぼる勘定となるのであります。(拍手)佐藤総理並びに福田大蔵大臣のかねて念願とする大幅減税を実現しようとすれば、この規模はさらに膨張するという矛盾に逢着せざるを得ないのではありませんか。このような展望に立っても、なおかつ、政府公債市中消化に自信があると言われるのでしょうか。  結論的に、国民のおそれる日銀引き受けの雪だるま式赤字公債となり終わり、インフレの激化必至と断ぜざるを得ません。(拍手)  以上の諸疑点について政府の明快な御答弁を、この議場を通じ、国民の前に明らかにせられるべきことを要請いたします。(拍手)  最後に、私はこの機会に、現在わが国経済は戦後最劣悪の状態にあり、一時帰休、首切り、大幅操短、公定歩合引き下げ、日銀緊急融資など、ありとあらゆる手が打たれたにもかかわらず、景気は依然として停滞し、経済危機は政府の赤字公債導入政策をもってしても救い得ざるていの、根の深いものであることを指摘しておきたいと存じます。  病根は、昭和三十五年以来の池田内閣による高度成長政策によってつちかわれました。以来、民間の設備投資は、所得倍増計画に対してすら八兆二千億円も上回り、そうした過剰投資の結果の過剰生産が、現在の経済危機の根本的原因であります。(拍手)すなわち、高度成長政策開始以前において、日本の中核的企業の損益分岐点の合計は約五兆円であったものが、いまや十兆円台に底上げされており、企業は売れると売れないにかかわらず、操業短縮の下限におのずから十兆円という限界があるので、この限界までは、何が何でも実需無視の過剰生産を余儀なくされているのであります。したがって、日銀発券の限度額が現在二兆一千五百億円であるにもかかわらず、いま、下請泣かせの長期手形を主軸とする企業間信用は、これに約十五倍する三十兆円の巨額となって、需要供給のバランスをからくもつなぎとめておるのであります。しかし、海綿の水の吸収度にも限度がありますように、二百十口手形、お産手形、あるいは割賦販売等の信用膨張の手段も、内需に関してはすでに行き詰まりに逢着しているのであります。必然的に外に向かって膨張するよりほかありません。韓国への八億ドル、すなわち、二千八百余億円のタコ足的特需に財界がわき立ち、これが政府をして暴虎馮河、日韓条約を強行せしめた要因の一つでもあり、また、政府が北爆にあえて賛成をして、ベトナム特需をそら頼みにしている財界にこたえている姿勢でもあります。(拍手)  むろん、通常輸出貿易にもドライブがとことんまでかかっております。政府が金科玉条として喧伝している輸出好調の実態は、メスを入れてみると、実は金繰りのための輸出、火の車輸出以外の何ものでもないことがわかります。たとえば、日産のブルーバードのCIF・アメリカンポート三十二万円、つまりアメリカまで運んでの沖渡し価格が三十二万円というのであります。周知のとおり、その内地販売価格は五十八万円であります。いすゞのベレルは、同様内地価格が六十万円のものが、アメリカ渡し三十五万円であります。肥料、化学製品等のわずかな項目の例外を除いては、好調日本の輸出の実態は、おおむねかくのごとき、背に腹はかえられずと観念した採算割れの出血輸出、金繰り輸出であります。政府はこれを直視する必要があります。かりにもから宣伝はこれを慎むべきであります。  しかも、この金繰り出血輸出ですら、海外経済環境にささえられるという僥幸に多分に依存しておったものであることに留意をする必要があります。すなわち、日本の輸出の三割が向けられているアメリカは、この十二月までは、五十八カ月に及ぶ長期間の好景気を続けてきたものの、連邦準備銀行の公定歩合引き上げをきっかけに、ようやく景気過熱収束の段階に入ったこと、さらに、日本の輸出の五〇%を吸収した低開発国の輸入のこの一両年の増勢も、これまでのテンポで上昇を続け得る見込みはなく、急速に弱まることが、の経済白書によっても、確実視されているのであります。(拍手)  なお、佐藤内閣の野心作ともいうべきアジア開発銀行も、低開発国のどんでん返しにあい、事志と違い、本拠をマニラにとられ、出ばなをくじかれたことは、アメリカのしり馬に乗る膨張政策を反省する上においてこよなき教訓であったと思われるが、いかがでしょう。(拍手)針をよけて、えさだけを食わんとする低開発諸国のみごとな抵抗ぶりであります。いずれにせよ、政府のそら頼みの輸出好調は、四十一年度以降は、海外経済環境の鎮静化によって逆転し、国際収支は再び逆調に転ずるものと客観的に判断されるので、金料玉条の政府の輸出好調の喧伝は、この際国民の側からこれを返上申し上げるよりほかございません。(拍手)  以上を要するに、ここに開始されんとする公債発行は、四十一年度以降のものも含めて、追い詰められた赤字公債の一語に尽きるのであります。先行き明るい国際収支に基づく景気回復によって埋め合わせがついたり、また償還が順調にきくがごとき簡単な性格のものではありません。  すなわち、ケインズの所論である、「単年度制の国家予算と、その年度をはみ出る現実の景気の波長とを調整するために、財政操作として公債政策をとるべし」とする、いわゆるフィスカル・ポリシーではあり得ません。あえて酷評すれば、軍事公債への移行が明瞭に展望される最もたちの悪い公債発行であります。つじつま合わせの冒険で、発行発行を重ね、その終着駅が何であるかは歴史の経験に徴して知る人ぞ知るであります。内に向かっては、インフレの激化となって国民生活を破壊し、外に向かっては、アメリカの走狗となって、戦争政策に拍車をかける危険性を内蔵するものであることを、ここに強く政府に向かって指摘し、私の質問を終わるものであります。(拍手)  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  63. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  まず第一に、内閣はこの事態を引き起こした責任をとって総辞職、それができなければ解散すべきではないか、所見はどういうように考えるか、かようなお尋ねであります。私は、ただいまの不況克服が私どもの内閣に課せられた一番重大な課題だと、かように心得ております。この課題解決のために全力を注ぐ決意でございます。また、先ほども申し上げましたように、国民が迷惑するような解散などはいたさないつもりでございます。これははっきり申し上げておきます。  第二の問題といたしましては、私の持つ財政基本方針についてのお尋ねがありました。これにつきましては、いままでも機会あるごとに説明いたしましたが、私はこの機会に、やや重複するかもわかりませんが、財政で最も必要なことは健全性にあるんだということを説明しておきたいと思います。  この健全性ということは、皆さま方がお考えになって、いわゆる均衡こそ健全ではないか、かようにお考えかと思いますが、私のいう健全性は、必ずしも均衡ということにとらわれるものではございません。私が申し上げるまでもなく、この財政規模だとか、あるいはその内容だとか、こういうものにおきまして、これらが国民経済とのつり合いがとれるということ、そうして安定経済に資する、こういうものがいわゆる財政健全性であります。したがいまして、必ずしも均衡とは同義ではございません。この点、誤解のないように願いたいと思います。(拍手)  この機会に、もう一つつけ加えて申し上げておきますが、国の経済、いわゆる経済の活動、こういうようなものは、いわゆる民間資金と、国家的な財政資金と、この二つが相まってりっぱな経済活動ができる、経済発展ができるのであります。これは、予算あるいは財政だけがこの役割りを果たすものではございません。このことはよく御承知のとおりだと思います。ことに民間の資金のほうがより大きな働きをするものであります。この二つ条件は、そのときどきの経済情勢から適切にそれぞれが動くのでありますが、今日のような不況な時代になってまいりますと、どうしても民間の資金のほうでは、十分の効果をあげるわけにいかない。ここでいわゆる財政的、あるいは予算の面で刺激を与えるとか、経済の浮揚力をつくれと、こういうことにもなり、私どももその方法をとっておるのであります。したがいまして、この点を十分御理解いただきますならば、われわれの財政あるいは予算の果たす役割りというものがどこにあるのか、その意味において、所要の必要な財源公債発行してこれを確保するということが、政府当然の責務だと、かように私は思うのであります。この点では、不幸にして社会党と同一意見でないことが、まことに残念でございます。しかし、今日の不況克服のために私どものとるこの政策が必ず効果があり、社会党もその考え方をひるがえされる日がくるだろうと、私はこれを希望するものであります。(拍手)  ことに、ただいまもお話がありましたように、多額の減税をする、そうして、減税をすればするだけ公債発行せざるを得ないようになる、このことは非常な矛盾ではないかというお話でございますが、これは矛盾ではなくて、減税国民を富ます、国民が富を得る、こういうことと同時に、必要なる経済の浮揚力あるいは公共先行投資をする、そのための公債発行ということでありまして、別に矛盾はないのであります。また、このことがより経済成長せしむるのに役立つ、かように私は考えますので、この考え方を推進してまいるつもりでございます。  その次に、この公債発行が赤字公債につながる、あるいはインフレへつながる、これは、そういう危険のあることは、論理的にわかるのでありますが、しかし、ただいまお話しになりました、公債が当然軍事公債発展するということは、これは論理的につながりのないものでございますので、賢明なる平岡君のお話にしては、たいへん残念なことのように思います。これは歴史的な教訓がある、かつての公債発行は軍事公債につながった、これは政治的な要請でありまして、論理的なものではございません。私は政治的にこのことをはっきり断ち切って、歴史的の教訓、これをとうといものにして、ただいま申すような軍事公債などには、その危険は絶対に引き起こさないということをこの機会に申すのであります。(拍手)また同時に、インフレへの危険ということでございますが、これは論理的にインフレへの危険がございますから、ここで大蔵大臣が先ほど説明いたしました公債発行の歯どめの――これが最も大事なのであります。この意味におきまして、インフレへの危険を私どもは防止し、健全な経済発展に資する公債、また、わが国が、国民が豊かになり、企業が内部蓄積を持つような、そういうような経済をいたすつもりでございます。(拍手)  〔国務大臣福田赳夫登壇
  64. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公債が雪だるま式にふえていく、とどまるところがないんじゃないかというようなお話でございますが、先ほどからるる申し上げましておるとおり、歯どめにつきましては十分これを考えておるのであります。つまり、第一は、財政規模をそのときどきの経済情勢に見合って適正にきめるという問題であり、さらにこれを建設目的に限定する、また、日銀引き受けの方式はとらない、かようなことで、公債発行額につきましては、これをインフレにつながらないように、しかも公債発行する目的に沿うような額にこれを厳に規定していくという考えでございます。  ただいまのお話によりますると、平岡さんも、昭和四十一年度につきましては不安は持たないようなお話である。四十二年度以降はどうだ、こういうお話でございまするが、四十二年度以降におきましては、経済の状況と相照応させまして財政規模を決定する関係上、今日の見通しといたしましては、逐次公債発行額がふえていく傾向を持つと思うのであります。しかし、ただいま申し上げましたとおり、その額の決定につきましては、建設費の状況、また、日銀引き受けによらない方法、つまり、金融機関動向あるいは貯蓄の性向等十分考慮いたしまして、これを適正に決定し、不安のないようにいたしたい、さように考えております。(拍手
  65. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) これにて質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  66. 山口喜久一郎

    議長山口喜久一郎君) 本日は、これにて散会いたします。     午後十一時十七分散会      ――――◇―――――  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         農 林 大 臣 坂田 英一君         労 働 大 臣 小平 久雄君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 上原 正吉君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         自治省財政局長 柴田  護君      ――――◇―――――