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1966-04-27 第51回国会 衆議院 法務委員会地方行政委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十七日(水曜日)    午後二時三十一分開議  出席委員   法務委員会    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 濱田 幸雄君    理事 細迫 兼光君       安藤  覺君    鍛冶 良作君       佐伯 宗義君    四宮 久吉君       千葉 三郎君    中垣 國男君       馬場 元治君    神近 市子君       山口シヅエ君    山田 長司君       横山 利秋君    志賀 義雄君       田中織之進君   地方行政委員会    委員長 岡崎 英城君    理事 大石 八治君 理事 奥野 誠亮君    理事 渡海元三郎君 理事 和爾俊二郎君    理事 華山 親義君 理事 細谷 治嘉君       亀山 孝一君    田村 良平君       久保田鶴松君    阪上安太郎君       島上善五郎君    安井 吉典君       竹谷源太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 永山 忠則君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         国税庁長官   泉 美之松君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      佐藤 千速君         専  門  員 高橋 勝好君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————   〔大久保法務委員長委員長席に着く〕
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより法務委員会地方行政委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、案件を所管する委員会委員長であります私が委員長の職務を行ないます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  この際、委員各位に申し上げますが、総理大臣は三十分の予定で出席を求めておりますので、その範囲内で最初総理大臣に対する質疑を集中して行なわれますよう特にお願い申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田長司君。
  3. 山田長司

    山田(長)委員 新潟知事の不起訴処分について、かねてより起訴になるか、不起訴になるかということをめぐりまして懸案になっておりましたが、四月の十一日の午後三時、新潟地検伊尾検事正の発表によって不起訴決定したのであります。  何と考えてもまことにおそれ入った処分であります。当時の十二日の読売新聞新潟市民表情として新聞に扱われている記事を見ますると、この結論はまことにあと味が悪いという見出しで、十一日夕方から読売新聞新潟支局におもしろくないという怪電話が殺到して、新潟知事選現金中元事件はまことにふかしぎな事態である、全く意外の感を通りこして灰色の印象を残したということがこの市民全般の率直な表情である、こういうふうな書き出しで当時新聞が扱っておりますが、このことは単に新潟市民の声や新潟県民の声だけではなくて、選挙粛正について考えている全国民の声でもあると私は思うのであります。  事件の内容は、いまさら私が申し上げるまでもないことでありますが、塚田知事が四十二人の自民党県会議員に対して二十万円の現金を贈ったということは、だれが考えても、このときに行なわれるであろうと目される知事選挙を有利にするためであることは明々白々たる事実であると思うのであります。金を贈ったということは、贈ったほうも、もらったほうもともに認めている。調べ官に対してある者は選挙のためと言い、ある者は在職中協力したお礼だと言う。前者の場合で言うならばこれは明らかに選挙違反になるでありましょうし、後者の場合であればこれは涜職であると考えられる。ともに悪質なる犯罪である。それにもかかわらず検察当局は不起訴理由として、公訴維持ができないという理由でこれを結論づけてしまった。わが検察陣はかかる無能なはずはないと私は思っているのであります。このことを当時わが党の成田書記長はたまたま新潟に居合わせて、新潟県民の非常なるショックの表情を見てきて、検察権に対する国民信頼が裏切られたというような印象新潟県民の中から察知した。まことに遺憾千万なできごとだったと言っております。  塚田知事の不起訴処分につきまして、これは何としてもわれわれ納得できないところでありますが、もしこれは犯意がなかったというようなことがこの結論として出たものとするならば、これはまことにふかしぎなことだとしかわれわれは考えられないのであります。第一、これを幾つかに分けてみまするならば、次期選挙の告示の直前でもあり、しかも塚田氏は自民党から公認されたあとであったということ。第二点として、中元と称するも、かつて二十万円というような多額の金を県議に贈ったような例がなかったということ。それから県会議員の中に二人の者が病気しておったので、選挙運動は不可能だと見て、この二人には一銭も贈っておらなかった。第二点として、中元ならば秘書をやっても差しつかえないはずなのに、塚田みずから各議員を訪問しておる。二十万円という大金は中元としては世間にさような例はおそらくないだろうと思う。塚田財産状態等についてどんな調べ検察当局はしたのかしりませんけれども、とにかく不相応な贈りものであったということには間違いないと思うのであります。  そこで、総理に伺っておきたいことは、一体自民党綱紀粛正というものは、根本的にどういう姿勢をお持ちになられて臨まれておるのか、この点をまず最初に伺っておきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自民党綱紀粛正態度は、機会あるごとに説明をしております。いまさら、この点はよくわかっていただいておる、かように思います。もちろん国民の各般から疑惑や不安を持たれることのないようにみずからえりを正して綱紀粛正につとめる、これが私ども態度であります。
  5. 山田長司

    山田(長)委員 旧来のことを伺っているのではなくて、今回の結論がまことに納得がいかないので、少なくともこの結論が出るにあたっては、おそらく何らかの話があったのではないかというふうにわれわれははたで印象を持っているわけなんですが、そういう点については、結論を出すにあたって何らの話もなかったのでありますか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねは、自民党の、また私の綱紀粛正についての基礎的な、基本的態度は何かということでございますからお答えしたのであります。  今回の新潟塚田君の巻き起こしました事件につきましては、これは当時自由に検察当局が公正な調査をする、その捜査にまかしてありまして、私ども政治的にも何らこれに関与いたしておりません。したがいまして、私はどういう結論を出されるか、それを実は静かに待っていたのです。したがいまして、予算委員会におきましても、これについてのいろいろのお尋ねがございましたが、捜査途中であるから、私は何とも申し上げません、かように申して、経過を見ておった次第でございます。したがいまして、私は今日も検察当局を信じておりますし、検察当局捜査、その結果、これは権威のあるものだ、かように私は考えております。
  7. 山田長司

    山田(長)委員 実は、こういうことが参議院選挙直前にしてあったのであります。県の消防協会臨時総会を開いて、塚田氏が前に勤務しておった鹿島建設の社長の親戚に当たる平泉渉氏のために、この消防協会に何ら緊急を要しない事態にあったにかかわらず、その席に平泉氏を招いて事前に選挙のあいさつをさせたということから、当時起訴猶予になったことがあるのであります。その直後であって、これは何ら反省する意図をわれわれは感じておりません。なお、決算委員会において問題にした問題の中に、塚田徹君というむすこの関係している、それから塚田十一郎氏が社長である会社が、公道であって、新潟市道である、それから土地改良の管理区にある農道及び国有の水路を、何らの手続もしないでこれを破壊して、そうして宅地として分譲している。法務当局は明らかに不動産侵奪罪の成立を認めておる。しかるに、何らこれが取り扱いがされておらない。それから、新潟県で交通安全県の標準としての宣言をした当日、塚田十一郎氏はみずから自動車を運転して、それで国鉄の電柱をへし折って、急行列車をとめてしまった、こういう事例があるのです。  何で私はこんなことをここで持ち出したかというと、まるで新潟県だけは治外法権のような状態で、警察も検察庁も手が出ないでおるような非難を県民の間から受けているからであります。私は、本件につきまして、多数の検察官や多数の警察官が、寝食を忘れて捜査に当たったと思うのであります。ことに新潟地検では、前代未聞、知事室強制捜査をやったり、県支部捜査をやったり、自宅捜査をやったり、それから愛人宅捜査までやって、全く確信を得たと思うのであります。ですから、この二十万円事件のほかに、その調べの結果によりますと、選挙費用の超過もあったという、こういう事実も明らかになっておる。しかるに、公訴維持ができないということから、これが不起訴になってしまったわけでありますが、知事捜査中に、数回にわたって取り調べたが、知事は依然としてこれが当時の四年間の勤務中のお礼であるというふうなことで、これを言い切ってしまっているが、私は、そごするということでこれを起訴せずにおったということであるが、第一線の検察官警察官選挙に対する労苦というものはたいへんだと思うのです。しかるに、もしこの二十万円事件が、聞くところによると二十万でなくさらに百万、七十万、五十万とあったそうでありますけれども、もしこれが、不起訴になってしまっておるけれども、こういうことで選挙のための礼であるとか、あるいはそのほかお礼でやったというふうな慣例でこれを処理してしまっておるわけでありますが、一体選挙粛正というものがこんなことで徹底的にこれからできると思われるかどうかということを総理に伺わなければならぬと思うのであります。いかがでございますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 警察官検察当局が、法を守り、また社会秩序維持する、こういう立場に立ちましてたいへん苦労しておられる、努力しておられることは、ただいま山田君御自身指摘されるとおりであります。私は、こういう努力、これに対して敬意を表すると同時に、その結果下された結論に対しましても、私は全幅の信頼を置くものであります。どうか山田君も、ただいまのようにいろいろの疑惑を持たれるようでありますが、しかし、最終的に検察当局起訴しないといいますか、不起訴処分にしたことについて、これは権威のある行き方でございますから、十分これを信頼していただきたい、私はかように思います。
  9. 山田長司

    山田(長)委員 どうも与えられた時間が非常に少なくて、総理に伺う点がたくさんあるのでありますけれどもあと短く一、二点の質問に終わらせてみたいと思うのであります。  本件に関して、検察行政国民不信がいろいろな点でかかっているということは、これは私が言わなくても、国民全体がそう思っていると思うのであります。そればかりでなしに、最近仙台の高検におけるマージャン賭博事件、それから事務官の自殺した事件参議院小林章の不起訴になった事件、あるいはまた吹原事件の黒金の事件近江絹糸の、これはなくなったのでありますけれども、池田、河野両民に関する政治献金事件、それから、防衛計画をめぐる第二のFX戦闘機購入事件、いろいろ枚挙にいとまのないほどたくさん世の中で問題になった事件があるわけなんでありますが、これらの問題も、私は一々いま言っている時間がないのでありますけれども、特に問題なのは、検察行政の中で近江絹糸の一億二千万円の政治献金の問題というのは、明らかになっていながら、これが当局の追及不十分で——私は不十分とあえて言いたいのでありますけれども、これも世に出ずに葬り去られております。この政治献金の問題につきまして、ややもしますると、交換条件でもあるんじゃないかという印象を持つのでありますが、政治献金について、総理は何かお考えになっていることがありましたら、この機会に一言伺っておきたいと思うのであります。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる政治献金につきましては、政治資金規正法その他がございまして、これは十分国民の前に明らかにしなければ、政治自身不信を招くことにもなります。そういう意味で、たいへん注意をいたしております。ことに、私自身もかつてさような意味においての疑惑を持たれた、嫌疑を持たれた、こういうことがございますので、私は特にこういう点についても注意をいたしておる次第でございます。ただいま御指摘になりました事件など、これも検察当局努力の結果、その最終的な決定が下されておる、かように私は聞いておりますが、こういう点もあわせて、政治が今後国民から信頼を受ける、また、国民のために、国民とともに政治をする、こういう態度から、こういう点も考えていかなければならぬ、かように深くみずから考えておる次第でございます。
  11. 山田長司

    山田(長)委員 与えられた時間でありますので、まだ何点か伺いたいのでありますけれども、いずれこれは後日に残さざるを得ないわけであります。  阪上委員に交代いたします。
  12. 大久保武雄

  13. 阪上安太郎

    阪上委員 私は、この事件に関しまして、大きく分けて二つの大きな責任問題が発生しておる、このように考えておるわけであります。その一つは、政治上の責任であります。いま一つは、行政上の責任、これは司法に密接する部門の処分の問題であろうと思うのであります。  そこで、時間がありませんので、総理に三点だけ伺っておきたい、このように考えるわけであります。  政治上の責任問題として、もうすでに総理も御案内のことと存じますけれども、近年わが国地方政治姿勢がたいへん乱れております。新潟事件をはじめといたしまして、たとえば過般の東京都議会におけるあのいまわしい事件であるとか、あるいは兵庫県会の中で、やはり参議院選挙等と関連を持ちまして議長の公室で金品の授受が行なわれておった。その他小さな問題としましても、たとえば山梨県の大月で市長のいすを一千万円で売買するというような事件も出てきております。私の手元で調べましただけでも、こういった種類の背任事件というものは、地方自治体の中で十数件この一年間に出てきております。御案内のように、地方政治というものは、わが国民主化基盤でございますので、それがこのように乱れるということにつきまして、私はたいへん心配もいたしております。  そこで、総理に伺いたいのは、こういう最近のはなはだしい姿勢乱れというものは一体どういう原因で出てきておるか、総理はどういうふうにお考えになっておるか、この点をまず承っておきたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近の政治乱れということについて阪上君たいへん御心配のようです。私はいろいろ政治家そのもの政治を絶えず正していく、ことに民主政治を守り抜く、育てる、こういう立場に立ちまして、不信を買うような政治はいけないということでありますので、あらゆる努力をしてきた、かように思います。しかしながら、事柄事柄だけに、依然としていまなお批判を受けるような事件が起こる、まことに残念に思っております。しかし、国民各界各層におきまして、政治姿勢を正せ、また不信を招くようなことは厳に慎しめ、こういう気持ちのあります限り、大筋は狂わない、私、かように考えます。ぜひとも各界各層の協力を得て、民主政治をりっぱに育てていきたい、かように思っております。
  15. 阪上安太郎

    阪上委員 いまの御答弁で、大筋は非常に正しいお考えを持っておられると私は思うのでありますが、こういう際でありますので、端的に申し上げます。  最近のわが国地方政治姿勢乱れ、崩壊しておるということにつきましては、原因はいろいろあると思います。まず取り上げなければならぬのは、綱紀粛正の問題だと思いますけれども、それはいま御答弁がございました。しかし、私はもう少し具体的にもの考えていったときに、率直に言いまして、どうも憲法が保障しておりますところの地方自治あり方というものが、中央といわず、地方といわず、少し認識が不足しているのじゃないかというふうに考えるわけでありまして、はなはだ言いにくいことでありますけれども、そういったふうになってきた原因というものは、私は政府自民党のここ数年来の地方自治に対するところの指導方針が間違っているのじゃないか、実はこういう考え方を持つのであります。先ほど具体例の項目だけは申し上げましたが、これはどうしたことか、ほとんど自民ないし保守系地方政権下においてこういった事態が発生しておる。このことはもう言いのがれのできない点じゃないか、かように思います。ここ数年来私は自民党地方自治体対策をながめてみますと、あるいは政府方針考えておりますと、自民党さんのほうでは、地方政治というものは、中央に直結する政治じゃなければならぬ、こういうふうに強く指導してこられた。そして政府自治省その他の地方自治指導の姿をながめておりますと、口では地方自治の尊重であるとか、地方自治本旨であるとかいうことを言われますけれども、その動いておる方向というものは、再び戦前のような団体自治を非常に強めていって、憲法が保障しておりますところの地方自治本旨である住民自治というものを非常に軽視しておる。そしてどんどんどんどんと、再び地方政治中央集権化されてきておる。これは行政面財政面などあらゆる面でいなめない事実ではないかと思っていますが、そういったところにやはり大きな問題があるのではないか。そうして知事と県議会が、あるいは市長と市議会がものごとをきめたならば、もうそれが最高決定であって、住民は文句は言うな、こういうような政治の姿が再び出てきている。私はここにやはりこういった事件、あるいは地方政治姿勢乱れというものが出てきているのではないか、このように思うわけであります。一体地方自治本旨というようなことについて、これは地方政治をやっていくためのものさしでありますが、総理はどういうふうにお考えになっているのか。  それから、いま申し上げましたような中央直結政治というような表現が、はたして正しいかどうか。選挙たびごとにあちらこちらを回りますと、現在政権を取っているのは自民であるから、自民につながるようなそういう政治担当者を出してくれない限りにおいては、はなはだしきに至っては、補助金も何もつけてやりませんぞというようなことが言われているわけでありますが、こういうような印象を与えるような中央直結政治指導方針というものについては、改めてもらわなければならぬと真剣に思うわけであります。総理の御意見を承りたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近のような弛緩、ゆるみは一体どういうところから出ているか、これは人人によりまして、その立場上自分の都合のいいような議論をみなされると思います。阪上君は阪上君らしくただいま批判された、かように思いますが、しかし何といいましても、基本的にはまだほんとうに民主政治が理解されておらないところにある、私はかように思います。団体としてのいわゆる自治といいますか、そういうことが十分理解されていない。ときに個人主義的であり、はなはだしきは利己的にもなるとか、あるいは理屈だけは非常に言っている。理屈っぽくなっている。しかし、ものの道理あるいは大筋についての十分の理解を持たないとか、いろいろ原因があると思います。しかし、とにかく原因があるにしろ、これらの事柄を一々克服していく、各界各層努力によりまして、大筋の狂いなしにとにかくやっていけるのではないかと思う。そういう意味で今後も努力していかなければならぬと思います。  ただいま地方自治のお話をされました。もちろん中央地方一体となって国のりっぱな政治ができるのだ、かように私は確信しております。万一、中央地方が百八十度違う方向にいっていたら、これはたいへんだ、かように思います。しかし、今日地方自治という制度がございますから、その範囲において自治体が十分力を発揮するように、またそれが民主政治基盤でもある、かように私は信じております。いわゆる独善的な、中央集権的な考え方そのものを進めようというわけでもありません。しかし、大筋におきましては、やはり中央地方、これが連絡があること、これは当然地方発展のためにも、また国の発展のためにも望ましいことではないか、かように私は思います。
  17. 阪上安太郎

    阪上委員 地方公共団体が十二分に力を発揮するという方向へ持っていかなければいけないのだというお説でありますが、私はそのとおりだと思います。  そこで時間がありませんから、端的に伺いますが、いま一体そういうことをやることの欠陥がどこにあるか、もう議論しているひまはありませんから、申し上げますけれども、究極のところは、私は行政事務の再配分、ここにやはり問題点があるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。こいつを早くやらなければいけません。地方自治体行政的にも財政的にも危機に入っておる、あるいは曲がり角に来ておる、いろいろな言い方はされておりますけれども、その原因の主たるものはこれはやはり行政事務の再配分だと思います。今度もそのことに手をつけられるであろう、こう思っておったのでありますけれども、むしろ府県合併とかなんとかいうような末梢的な問題のほうへ入っちゃって、もちろん基本的には大事な問題でありますけれども、そして肝心かなめのそういった行政事務の再配分、国の事務はここまで、都道府県の仕事はここまで、市町村の仕事はここまで、こういったような行政事務の再配分というものがいまだにそのままになっておる、こういったところから地方自治体の力を発揮できないし、また国の関与というものも、委任事務の形で、これはどんどんと強められていく、こういうような姿になっております。これは早くやりませんと、いつまでたっても地方自治体は力を発揮することができないし、国の縦割りの非常な圧力を受けるし、中央集権的な方向へ引きずられるし、いろいろないまわしい問題が出てくる、こういうことになるのでありまして、これについて総理はどういうふうに決意されておりますか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりました点は、すでに国会等におきましてもしばしば論ぜられ、したがいまして、地方制度調査会等ができ、そして行政の再配分をする、同時にまた地方財政制度につきましても、この行政の再配分と同時に財政的な措置をとる、こういう考え方で進んでおる、かように確信をしておりますが、同時にまた中央における各官署、官庁等縦割りと申しますか、地方にまでその系統で行政をしておる。しかし、どうも最近の行政あり方から見まして、総合的にその機能を発揮せざるを得ない、そういう時期にきておりますので、ただいまの配分中央官庁縦割り、この引き方の弊害もためる、こういうことが望ましいんではないか、かように思いまして、ただいま制度調査会等においていろいろ御審議を願っておるような次第であります。
  19. 阪上安太郎

    阪上委員 いま一点だけお伺いしておきます。  同じくこの政治責任の中で、われわれは政党責任というものは十二分に感じなければいけない問題であると思います。総理は、過般の予算委員会の中で、山花委員のこの種の質問の中で、ただいま検察において捜査中の事件であるので、これに対しては何ら関与していない。しかしながら、事件が落着するならば、その後における政治的な責任というようなものをやはりわれわれとしてはとらなければならぬだろうというような意味のことをおっしゃった。そこで、私は何もいま直ちにとれと言う意味じゃありませんが、一方地方公共団体におきましては、一般に説として、自治体の中に政党政派を持ち込むことはいけないのだというような説もあることは、総理は御存じのとおりだと思います。しかしながら、現実にいま地方政治の中には、やはり政党政治が行なわれておるわけなんです。私は政党政治を否認するものじゃありません。地方自治体の中では好ましくないと言われておりましても、なお現実にそれがあるということにつきまして、これはわれわれは認めなければならぬと思います。そうなれば、政党の責任というものは、地方政治の中でもわれわれは負っていかなければいけないんじゃないか、こういうことが私は言えると思います。この新潟事件の場合におきましても、知事はおそらく——私はまた見解を異にいたしておりますが、塚田知事考えとしては、やはり政治責任をとったんだということで辞任しているんじゃないかと私は思うのです。ところが、そのうらはらの関係にあるところの四十二名になんなんとする自民党の金をもらったという議員諸君は、何ら政治責任を感じていない。東京都の場合は、これは逆であったということが言えると思うわけであります。こういうようなあり方は、はっきり言いましてどうかと思います。むしろ議会を、特例法もあることでありますので、思い切って解散するくらいのそういう政治責任というものを、新潟県議会は持ってもいいんじゃないか、それすらやらない。そこで私が皆さんに申し上げたいのは、一体こういう政治責任というものを政党として一体どう考えるか、こういうことがきわめて大切な段階にきているんじゃないかと思います。これについての総理答弁をお願いいたします。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  私は、ただいまの民主政治、これから発足して、やはり政党政治、議会中心政治、こういう方向へ進むのが実は望ましい形じゃないかと思う。これは政党が責任を持ちまして、いわゆる政策を公約する、その公約を実行する、こういうことでやはり民主政治が育ち、発展していくんだ、かようにいまだに考えております。こういう立場ものごと考えておりますと、中央におきましても、地方におきましても、同様なことではないかと思いますので、地方には地方向きの公約事項がある、あるいは中央には中央向きの公約事項がある、こういうように考えておるわけであります。しかして、ただいまのような、新潟知事がやめた、これは一体どういうことか、これがただいま、いわゆる刑事責任があって、そうして刑事責任を果たすという意味でやめていく、これならば、これはもう非常にわかり切ったことでありまして、それに関与する全体の者が刑事責任をとってやめるということでありますから、これは知事だろうが議員だろうが、すべてがそうだと思います。しかし、いわゆる刑事責任ではない、これからのいわゆる政治責任というような表現ができますか、そういうような表現をされると、これはその人々の感じ方がございます。政党の場合であれば、最終的には国民がその責任を問う、こういうことであるからというので、過去におきましてもしばしば国民に信を問う、こういうことでその政治責任を明らかにした場合があります。こういうことだと、やめるのでなくて県会を解散するのも一つの手か、かように思いますが、しかし、この場合におきましては、塚田君はさような手はとらなかった。世間を騒がすには忍びない、自分が政治上の責任をとってやめることがこの事態の収拾として最も適当な方法だ、これは私は地方自治体として、その長として選んだ道ではないか、かように思います。私はこの結末がどういうことになるのか、実は心配をした一人であります。過去の予算委員会におきましても、どういうことになるか、こういうお尋ねがございました。それに対して私がお答えいたしましたのは、県民が納得するような処置をいたします、ただいまは捜査の途中でありますからとやかくは申しません、かように私は申したのであります。御承知のように塚田君は選挙の前に公約した事項があった。したがって、予算編成を終えたい、これを終えれば自分はそういう意味責任をとります、こういうことをかねてから申しておりました。私どももその態度はまことにりっぱなものじゃないか、かように思います。ただいまこの事件検察当局からの検察処分、これはもう非常にはっきりして刑事責任はないんだ、かようにも申しましたけれども、しかし世間を騒がした、こういうことにおきましては政治家としてその責任をとった、かように私は思っております。
  21. 阪上安太郎

    阪上委員 ただいまの御答弁で、大体総理考え方はわかったのでありますが、私は政党責任というものはもう少し突き入って考えておいたほうがいいのじゃないか、たとえば一人の公認の候補が、公認の知事があるいは公認の市町村長が一つ政治責任を負ったというようなときにおきまして、政党責任をその場合とるということは、これに対してやはり人がかわったら、市民の批判を請えばそれでいいんだというような形じゃなくして、お互いに政党というものがもっとえりを正して厳粛にこの問題と取り組んでいく、公認候補が失敗したら一回くらいはあやまる意味におきましても、反省する意味におきましても、もう候補は立てないんだというくらいのところまでわれわれは踏み切っていかなければ、政党政治責任は果たせない、私はこのように考えるわけでありますが、議論いたしましてもどうかと思いますので、これで終わっておきたい、こう思います。
  22. 大久保武雄

  23. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 時間がございませんので、きわめて簡潔に、二点について総理にお伺いしたいと思う。  ことしの一月、新潟県においては塚田十一郎事件検察当局が押査をしている最中、県民は大きな疑惑を持ってこれをながめておった、ちょうどそういう時期に、新潟県議会の普通会計決算審査特別委員会が一月十四日に開かれまして、この特別委員会の席上において、県の監査委員である小林監査委員が報告を行なっております。その報告によりますと、昭和三十九年度中に八十六本、百一万六千円の洋酒、これはウイスキーかコニャックか、そういう西洋酒だろうと思いますが、それを買ったことにして、実は、その金で塚田知事ら五人が飲食をした、また、県会常任委員長に日本酒を届けた、あるいは週刊誌の広告費に出したなどという費用に充てたことがわかりましたと、こういうことを決算特別委員会で小林監査委員長が報告をしております。これは秘書課が、洋酒を買ったのでないものを買ったように出納長に書類を出して金を支払わしたらしいのですが、これは明らかに県庁員の公文書偽造、また、背任横領の疑いのある事件でございまして、先刻、阪上君から地方自治体における地方行政の混乱や不明朗の問題について総理大臣の所信をただしたのでございますが、こうしたことが塚田知事の部下に起きているということ自体が、この塚田事件疑惑を非常に深めたことではないかと思います。こうした地方自治体あり方について、二十万円の現金を贈ったということは、これは中元じゃないかというかもしれませんが、中元なら中元らしい金額や、あるいは品物、程度があろうかと思う。だれもそうは信じられない。こういう地方自治体における状況が重なり合ってこうした事件も起きたのではないか、こう思うのでありまして、こうした地方自治体あり方は、これを指導する自民党政府幹部の、政府当局の日ごろの姿勢が乗り移っているんじゃないか。これは総理として非常な反省をしていただかなければならない。これについて今後いかように政府姿勢を正し、また地方自治体の、特に首長の生活、行動についていかなる指導をし、また考えを持って今後国家の政治並びに地方行政指導していかれる所信であるか、それをまずお伺いしたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事件の内容は、私、存じませんが、通常交際として考えられる事柄、これまでやかましく言うわけではない。しかし、それが分に過ぎるとか、あるいは非常にはなはだしく乱れるとか、こういうことがあっては県民から県政をあずかる者としてたいへん注意しなきゃならぬことだ、かように思いますので、そういう点は十分今後とも注意してまいるつもりでありますけれども、要はそれが一体どういうことなのか、その程度を過ぎるのかどうか、こういうことが問題だ、かように思います。
  25. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 この問題については、あと自治大臣に質問をし、またこういう問題の今後根絶をはかるための方策等について政府の所見を承りたいのでありますが、時間の関係で、次に、本日の問題となっておる塚田事件を不起訴にした、その問題についてお尋ねをいたしたい。  四月十二日の新聞によれば、十一日の日に、伊尾検事正が証拠不十分でこれを不起訴にしたということを言っております。すなわち謀議をした事実、あるいは知事が県議に金を渡すとき、選挙ではよろしくとはっきり選挙を意識して渡した事実の証拠があげられない。よって、公訴維持が困難であるから不起訴にするというので、一応これは証拠不十分で不起訴ということにしておりますが、どうもずっと当時の新聞記事等を見ましても、黒だということはほとんど常識的になっておった。そこで不起訴という発表があったので新聞記者は非常に驚いた。いろんな新聞にそれがあからさまに出ておるのでございますが、これはむろん起訴するを疑うに足る事実がありましても、刑事政策上、便宜主義によって不起訴もしくは起訴猶予にする場合もある。それなら犯人の身分なり、状況なりあるいは金額なり、その他によって不起訴にしたという便宜主義をはっきり言えばいいのに、証拠不十分に持っていったということについて私は非常に納得がいかない。これは非常に問題になって、それを注視しておった新潟県民からいうと非常に疑惑になっておるだろうと思うのです。かつて造船汚職疑獄事件のときに検事一体の原則によって検事総長はこれを起訴に固めた。しかしこれに対して政府は不起訴の指揮権発動をやりました。検事はむろん検察行政であって司法とは違いますけれども、一般行政とは半独立した形でありまして、これがどうしても起訴するという場合に、政治的に政府が不起訴にしようと思うならば、それはこの指揮権発動によってやればよろしい。そこで検事はその責任を負わなくなる。このように明瞭な黒の事件を証拠不十分だというような法律上の理由にかこつけて不起訴にしたということになりますと、これは検事には非常な不満があるのではないか。便宜主義いわゆる刑事政策上やった、法務大臣、総理大臣が相談を受けて裏の指導によってそうやったということであれば、またこれは指揮権発動ほどでなくとも責任政府が負わなければならないので、検事という公正な立場の者を国民に疑わせないで済む。私は日本の裁判所は非常にりっぱだと思う。これに準じて日本の検察陣もなかなか公正でりっぱだと信頼をしております。このりっぱな検事に対して、いささかなりとも国民不信の念を抱かせるということは非常に残念である。むしろ指揮権発動なりあるいは刑事政策上、便宜主義によって不起訴にしたということであれば、これは検事としては大いに慰めるところあるであろうと思う。日本の大きな検察行政という経緯からいって非常に残念に思う。総理大臣は、検事警察が一生懸命不眠不休でやっておる。大いに信頼をし、またその努力を賞揚しておられますが、裁判所並びに検事が正しい司法並びに検察行政を行なうということは、何といっても日本の正義を守る最後のとりでである。そういう観点から見てこれは事、非常に重大であって、この問題について総理はいかに考えられるか、あなたは造船汚職疑獄事件のときの経験があるので、身にしみてこの点についてはお考えを持っておられるだろうと思うので、その御所見をお伺いしたいと思います。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の経験云々はひとつ取り消していただきたい。そういう経験はございません。はっきり申し上げておく。  また、竹谷君は、これがたいへん犯罪がはっきりしておる、かように言われますが、あなたいつお調べになりましたか。どういう権限でやられましたか。一体何を言われるか。私は検察当局がほんとうに不眠不休で捜査してそうして結論を出した、もっと検察当局権威のあるものだと思う。国会におきましてもその権威は十分尊重していただきたい、かように私は思います。そしてこれが犯罪であるという、そういう前提に立っての御質問、私、まことに不満でございます。
  27. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 犯罪であるかいなかは、これは裁判所がきめる。犯罪を疑うに足るべき十分の嫌疑があるかどうかという問題でございます。この点については議論のあるところで、私が一方的に片づけたのではない。当時のあらゆる新聞、また世論等から見ましても黒という判断が非常に強かった。それが逆に出たので、世間から非常にふしぎに思われたというにすぎない。検事は、あくまで公訴は必ず生きてきて必ず有罪にできるという確信ものばかりであるのではない、相当疑うに足る事件があればこれは起訴するのは当然でありまして、それが疑うに足る十二分のものがあったように私は思うというだけなんです。総理はおこったふりをして帰りましたが、これはとんでもない話です。これは日本の検察行政の今後の権威の上から重大なものであり、政府においては、法務大臣もおられるので、今後日本の司法と検察行政の高潔、公正を維持する上からこれは十分御考慮を願いたい。以上。
  28. 大久保武雄

  29. 山田長司

    山田(長)委員 最初刑事局長に伺います。  新潟県の前知事塚田氏が四十二名の県会議員に二十万円の金を贈った、この事件について、もし刑事局で明確に答弁ができなかった場合には、私は現地の検事正及び担任の検事に直接当委員会に御出張願って、これについてのお答えを願いたいと思うのでありますが、その点前置きして刑事局長にいろいろ伺いたいと思うのであります。  中元という名目で出したというのと、それから在職中の協力によってこれはもらったというものと、二通りの答えが、過日、法務委員会答弁として出ていると思うのであります。そこで在職中のお礼という形でもらった県会議員が何人いたか。それから選挙の協力へのお礼という形でもらったのだと思った人が何人いたか。中元なり在職中のお礼なりまたは選挙のためと思ってもらった者が何名いたか、三種類に分類した場合に四十二名中どういう数字が出ますか。その点について刑事局長に伺います。
  30. 津田實

    ○津田政府委員 本件につきましては、先般の法務委員会におきまして不起訴理由につきまして十分の御説明を申し上げたわけでございます。本来ならば、不起訴事件の内容についてはその理由は御説明申し上げるわけでありますけれども、詳しい当事者の主張はこれは申し上げることを差し控えさしていただいておるわけでありますが、この事件は公知の事実が相当あります関係上、それだけの理由を申し上げたのでは一般にこの事件が明らかにはならぬというふうに考えましたがゆえに、特に詳細に御説明申し上げたわけです。  そこで具体的に捜査の過程におきまして、どの人、どの人、名前はまあ別といたしまして何人がどういう主張をし、何人がどういう主張をしているかということにつきましては、これは捜査の過程におきましてかなり変わっておるものもありますし、いろいろ粉飾、歪曲等のものもあるわけでございまして、それらの証拠はすべてを通覧して価値判断をいたしておるわけでございます。したがいまして、何人がどうであったかというようなことを一々申し上げることは内容自体にもわたることにもなりますし、またそのこと自体でこれを判断しているという誤解を招くおそれがありますので、これは差し控えさしていただきたいと思います。
  31. 山田長司

    山田(長)委員 それはおかしいじゃないですか。問題は、もらったほうもやったほうも明らかになっている。それで贈ったほうの知事側では、在職中のお礼といっている。今度は受け取ったほうの人は、選挙によろしくという意味のことがあったという答えを出している県会議員もいるわけです。あなたのほうでは四十二名にわたって取り調べたというのでありますから、その四十二名中に何人が在職中のお礼としてもらったのか、あるいは何人が中元としてもらったのかということが、数字的に出なければならぬはずであります。四十二名全部調べなかったんですか、調べたんですか。
  32. 津田實

    ○津田政府委員 もちろん四十二名は言うに及ばず、あらゆる点を取り調べておりました。ただし人数が、だれがどう言っておるかという問題につきましては、証拠の内容にわたる事柄でございますので、これは申し上げることを差し控えさしていただきたい。現にこの事件は検察審査会に付されておるわけでございますので、そういう影響等も考えますとなおさらでございます。
  33. 山田長司

    山田(長)委員 私は、あえて在職中の礼をもらった者、あるいは選挙に対して協力してもらった者の名前をあげろと言っておるのではない。その数、四十二名のどれがどれに属するかということを伺っておるのです。これがなぜ本人たちの、不起訴になったからといって名誉に関係があるのですか。数を聞いておるのです、数を。その点を明らかにしてもらいたい。
  34. 津田實

    ○津田政府委員 先ほども申し上げましたように、これは最初の供述、その後の供述等にいろいろな変化がありますし、また歪曲、粉飾等見られるものもあるわけであります。そこで何人がどう言っておるかということを申し上げることは、証拠の価値判断のごく小部分を申し上げることになるので、これは誤解を招くおそれが非常にあるわけであります。
  35. 山田長司

    山田(長)委員 ただいまの刑事局長答弁では私は承服できません。なぜ承服できないかといえば、歪曲されるというのは、秘密にしている場合におけることについて問題があると思うのですけれども、これは贈ったほうも贈られたほうも正直に、別にこれは戦前のようになぐったりけったりしてその犯行を明らかにさしたのと事が違うのです。要するに一応良識ある者同士の、これは贈ったという者も贈られたというほうの者も明らかになっているのです。これは何としても贈ったということと贈られたということは、これは犯行を否認するために暴力でも使われていたというならば事は違うのでありますけれども、良識ある者同士の答えなんです。その答えはどういう理由で言えないか、もう一度明らかにしてもらいたい。
  36. 津田實

    ○津田政府委員 この事件は御承知のように、告発が端緒になって起こった事件でありますが、すでに告発の直後において、この事件の内容はある程度発表されておるわけであります。これは当事者によって発表されておる。したがいまして、この事件につきましてはいろいろ内容について世上伝えられておりますとともに、関係者のうちにはこれを政治的に利用しようと画策している向きもあるわけであります。したがいまして、その供述自体は、端的にその供述が直ちに信用すべきものかどうかということは多くの証拠と照らし合わせて結論を出さなければならぬ問題でございます。したがいまして、個々の人、あるいは何人がどう言って、多数の人が言っておるではないかというような簡単な議論で片づく問題ではございません。
  37. 山田長司

    山田(長)委員 贈ったほうも受け取ったほうもともに明らかになっているにかかわらず、しかもその事件が不起訴になったということにわれわれとしては疑惑が起こっておるわけです。同時に、この疑惑はわれわれだけの問題ではないと思うのであります。多くの人たちがこのことについて疑惑を持っていると思うのです。私は、これが明らかにならなかったというような場合には、これはもし在職中のお礼である、あるいは選挙に協力を依頼するというようなことで、この間の法務委員会答弁のごとく、知人の間であるならば差しつかえないというふうな意味のことを法務大臣は言っておりましたけれども、これがもしこういう形でものの処理ができたとするならば、選挙の違反という問題については、これからかなり問題が変わってくるだろうと思うのですが、こういう形で、これを法務大臣はこのままの形でよろしいということを言われるのでありますか、どうですか。
  38. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 こういう形といって、内容による問題でございまして、問題によりましてそれこそケース・バイ・ケースによって、いいとか悪いとかいうものはきまる問題だと私は思っております。
  39. 山田長司

    山田(長)委員 大体内容が、贈ったほうも贈られたほうも明らかになっているのですよ。どうしてそれが、内容によって問題がこうした形で処理される筋合いのものなんですか。法務大臣、もう一ぺん、これは選挙の問題に関連して、われわれは常に痛めつけられている事例がある。私はこういう事例があった。学友のところに名刺を次々と五枚配っただけで選挙違反に問われて辛らつな検事の取り調べを受けたことがある。それから私の友人が年に一回の労働組合の会合で、その席上でたまたま酒を二升と薄いせんべいのようなカツをごちそうしたということで、これが選挙違反に問われて、公民権の二カ年の停止を食ったことがある。年に一ぺんの労働組合の会合に出たときに、たまたまごちそうして、選挙の話をしたというだけで選挙違反に問われている。しかるに今度の場合は、二十万円という大金を、贈ったほうももらったほうも、ともに選挙に協力を依頼される形であるということまで明らかになっている。それが内容であるにもかかわらず——もしこれ以外の内容があるとするならば明らかにしてもらいたい。法務大臣、その点お答え願いたい。
  40. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 内容は申し上げられないということを津田刑事局長が申し上げておるとおりでございます。しかし諸般の事情を総合いたしまして、こういう結論が出た。こういう結論が出るためには、長い間の月日がかかったじゃないかとあなた方がやかましくおっしゃるほどむずかしい問題だったと私は思うのであります。だから、二十万円が出たんだが、これがあるときに出たんだから、これは選挙違反だということにきめてかかっておることそのものが間違いではなかったかということを、もう一ぺん反省しなければならないという問題もあると思うのであります。そういうものをいろいろと考量した結果、これは不起訴にするよりほかしかたがなかったんだということになったわけでございます。
  41. 山田長司

    山田(長)委員 事は、こうした金の授受や、あるいは恐喝等によって行なわれた問題や、あるいはそれに類似する問題については、領収書なんというものはなかなか発行するものではありません。証拠が残るというような筋合いのものじゃないと思うのです。ところが、これは明らかになっているのにかかわらず、この内容を明らかにできぬということは、一体どういうわけなんです。これはもし不起訴になったからといっても、何も個人的な名前をあげろと言っているのじゃないのです。これはあまねく選挙に関連のあるものといたしましては、当然これは究明されなければならない筋合いのものだと思うのです。もしこれが明らかにされずして、このまま次の選挙に臨もうというような場合には、在職中にお世話になったというようなことで、知事が、県内における県会議員が贈ったり、あるいは衆参議員が贈ったり、地方自治体の人たちが贈ったりした場合には、これは当局もなかなか取り調べ上に困難を生ずると思うのですが、この点永山自治大臣に、自治大臣としてではなくて、警察関係の長官として、一体こんな形のものが不起訴にそう簡単にされていい筋合いのものかどうか、この点を明らかにしておいてもらいたい、将来の選挙のために……。
  42. 永山忠則

    ○永山国務大臣 どうも答弁になるかならぬかよくわかりませんが、とにかく十分証拠がございまして、これが訴訟上立証するに足るというような状態に立ち至らなければむずかしいのではないか、こういうように感じるのでございます。
  43. 山田長司

    山田(長)委員 よくお聞きになっておらなかったと思うからもう一ぺん申し上げます。事実上明らかになっているのです。くれたほうももらったほうも明らかになっているのです。これぐらい明確なものはないのです。もらったということについて、もし戦争前のような、警察官があるいは拷問にでも付して、もらったと言えというのとは事が違うのです。もらったほうも明らかにもらったと言っているのですから。それで、その内容は選挙の依頼もあるだろうし、あるいは四年間の知事お礼もあったろうと思うのです。そういうことを内容に含んでいるのですから、これはもらったのかもらわないのかは明らかなんです。この明らかになっているこのこと自体を私はあなたに伺っているのです。もしこんなことが選挙違反にならぬというようなことであるとするならば、現地における警察官などは、選挙違反に、名刺を配ったぐらいのことでもこれが戸別訪問なんといって引っぱるようなこともあるぐらいなんですから、事実が明らかになっているものをどうして処理すべきかということを聞いているのです。警察担当者のあなたは、こういう場合においては当然明らかなる立場ものを言っておかなければならぬと思うのです。これは明らかにしてもらいたい。
  44. 永山忠則

    ○永山国務大臣 本件に関する関係は、法務省の問題でございますから、その内容等は、私は十分法務省の処置を信頼しておるわけであります。結局法務省を信頼いたしておるということでございます。
  45. 阪上安太郎

    阪上委員 私、いま問題になっております内容の答弁が得られないということなんですが、これについて憲法六十二条は私から説明するまでもないと思います。両院はおのおの国政に関する調査をすることができるのだと明確になっております。そこでお伺いしたいのですが、調査範囲です。憲法その他からあなたはどういうふうにお考えになっているか、これを法務大臣から伺いたいと思うのです。
  46. 津田實

    ○津田政府委員 従来の国政調査権と検察権に関する関係の問題につきましては、すでに山田長司議員が質問趣意書をお出しになっておりまして、それについて政府としては前に答弁をいたしたことがございます。その内容と同じことでございますが、国政調査権を尊重しなければならないことはもちろん当然でございます。しかしながら、検察権の将来の行使に影響がある事柄につきましては、それは国の重大利害に関する事柄でございますので、ある範囲におきましては、国政調査権に対してお答えをしないことがあり得るという趣旨でございます。すなわちこの問題は、かつても先例がございまして、内閣声明までいたしましてこれについてお答えをしなかった例があるわけでございますので、現在検察権としてはその範囲を守っておる次第でございます。
  47. 阪上安太郎

    阪上委員 そのことについて私は存じております。しかし調査の対象が、これはもう立法、司法、行政三権にわたって何ら差しつかえない、そのことば事実でありますし、したがって、きょうその審査をやっておるわけです。ただ問題は、それが現に検察庁の捜査中の事件であり、現にまた裁判所に係属中の訴訟事件、こういったものでも対象にならぬとは言えない。そういうことだと私は思うのであります。先ほど山田委員から質問がありましたような内容につきまして、現にもう捜査は終わっているのでありましょう。そして処分が出ているのでありましょう。これに対してあなたは、その内容は言えないのだ、こういうことはおかしいじゃありませんか。
  48. 津田實

    ○津田政府委員 すでに衆議院の法務委員会におきまして、先般その内容にわたりましてはかなり詳細を申し上げたわけでございまして、また具体的御質問をいただければ申し上げる限度はあります。しかしながら、すべてについてこれを明らかにするということは、将来の検察権運営に影響があるということであります。その点は、個々の検察事務を行ないます場合におきましては、一般国民の御協力を得なければできないわけでございますし、捜査は任意捜査をたてまえとするわけです。そこでいろいろ検察官に協力をしていただいて、いろいろなことをいろいろな方から言ってもらうということによって、証拠を確保しておるわけでありまして、その内容にわたりまして、証拠からいろいろなことを推知せしめるような内容を公にいたしますことは、将来の検察権の運営に非常に障害を生ずる、その意味で申し上げることに限界があるということを一般的には申し上げる次第でございます。
  49. 阪上安太郎

    阪上委員 今回の事件のように、国民としては納得しがたいというような雰囲気が十二分に現地にも、国民の間にも出ておるわけなんです。そこであなたは、その内容を明らかにすることによって、将来検察として民間の協力を得ることができないと、こういうふうにおっしゃるけれども、むしろ明らかにすることのほうが協力を得るのじゃないですか。そういう解釈はおかしいと私は思うのですが、法的には一体これはどういうことなんですか。そういうことを明らかにしちゃいけないという法的解釈なり根拠があるのですか。
  50. 津田實

    ○津田政府委員 御承知のとおり議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律がございまして、公務員の職務上の秘密に関する証言の程度がこれに記載されておるわけでございます。この場合に納得がいかなければ、最後には内閣声明まで出すという規定になっておるわけです。したがいまして、公務員たる者は、その限度において秘密を守るということを要するということになっておるわけです。この議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律は、国会の国政調査のための問題でございますので、一般公務員としても当然、参考人であれ何であれ、これに従わなければならぬというふうに私は考えております。
  51. 阪上安太郎

    阪上委員 その法律を実際そのとおり順守していこうということになれば、手続があるでし上う。あなたのような言い方ではいけないのじゃないですか。手続があるのじゃないですか。いまおっしゃったのは証人の場合でしょう。もしそういうことをおっしゃるなら手続があるでしょう。そういうことをおっしゃるならば、本委員会その他において議決しなければならぬでしょう。
  52. 津田實

    ○津田政府委員 それは証人の場合の規定であります。しかしながら、証人であれば拒絶していいが、政府委員であれば拒絶して悪いという理由にはならぬ、これは明らかにしないというたてまえでございますから、それは同じことなんで、当然との規定が類推されるとも考えられるし、この規定の趣旨から国政調査権に限界があるという解釈になると私は思います。
  53. 阪上安太郎

    阪上委員 ですから、類推していくということになれば、あなたが自分で勝手に私は言いませんというだけのことではいけないのでしょう。そういう手続を踏まなければいけないんじゃないですか、そういう理屈を言うならばですよ。
  54. 津田實

    ○津田政府委員 私といたしましては、私の役所として守るべき限界があります。しかしながら、問題の点は、最終的には大臣の決裁を仰ぐわけでございますが、さしあたりといたしましては、従来の範囲を申し上げておるわけでございまして、特段に大臣の御決裁を一々得ているわけではございません。
  55. 阪上安太郎

    阪上委員 当然それは大臣の許可を受けて私は申しませんというのが本筋ですよ、そんなことは。そういうことを言い出すならばそうなるのです。いずれにいたしましても司法に密着している部分でありますから、私もあまりしつこく言いませんけれども、しかしながら、検察機関の行動が、政治圧力によって厳正を欠いているのではないかというような問題が起こった場合こそ、ほんとうはきわめて系統的に、やはり順序を追ってこの問題を調査しなければならぬ。これはやはり国会の責務だとわれわれは考えている。したがって、先ほど言われたような質問の内容ですね、あの程度のことに答えられぬというような考え方はおかしいのじゃないですか。まして係争中のものでも何でもない。そういう考え方は私はおかしいと思う。大臣はどうですか。
  56. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 さっきの山田君の人数の問題だと思うのですけれども、それは答えられないのはほんとうだと思うのです。それを答えますと、何から何まで、すみからすみまで答えないとそのわけがわからなくなるのであります。全般的に見渡して、初めてその数が説明ができるのでございます。その数がどうだこうだというそれだけ出てきての解釈では誤解を招くもとでございます。かえってあなた方に判断を誤らしめることになるのでありますから、そういうものは出しても、出したほうが間違いだと思います。
  57. 阪上安太郎

    阪上委員 もうこれ以上言いません。しかし内容を知らさない、都合のいいところだけ答弁するなんていうようなことではかえって誤解を招くのですよ。これだけのことを申しておきます。
  58. 山田長司

    山田(長)委員 先ほど私が在職中の礼としてもらった者、あるいは選挙の協力としてもらった者、あるいは中元としてもらった者というふうな形で人数を伺ったのでありますが、これに答えがなかったが、このことはお答えになるだろうと思うのです。このことはお答え願いたいと思うのです。塚田知事が各県会議員に二十万円の贈与を行なった。二十万円の四十二名というと八百四十万円になります。だが、さらにそのほか百万円、七十万円、五十万円という人がいるようですから、どう少なく見ても大体一千万円以上の金と見られるわけでありますが、この一千万円以上の金高の財源はどこから出たか調査されたか。それからこの財源の内容は、刑事局長、御説明を願えると思うのですが、この点御説明願います。
  59. 津田實

    ○津田政府委員 合計四十二名に渡しましたのは各県議の二十万円でありまして、ただいま御指摘のように八百四十万円であるのであります。この金の財源は本人の借り入れ金によっております。
  60. 山田長司

    山田(長)委員 本件調査が始まって、不起訴決定に至るまでは、大体数カ月の歳月がかかっております。この間において検察官、検察事務官あるいは警察官等が専任されて動いたと思われますが、大体専任の捜査官あるいは検事何人くらいだったか、それから検察事務官は何名だったか、警察官は何名だったか、延べ捜査に当たられた係官、活動された範囲、これを法務省及び警察当局、両方に伺います。
  61. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねのような観点から調査をいたしておりませんのでわかりませんが、新潟程度の中級の検察庁におきましては、やはり主任検事が中心になりまして、やはり事の緩急がございますので、ある時期には大ぜいの検事がかかったこともある。また他の時期におきましては、主任検事あるいは一人の検事でやったというようなこともございます。検察事務官にいたしましても、一斉に捜索をするというような場合は大ぜいがかかるわけでございまして、一々これがどういう形で延べ日数をとっておるか、現実に調査しておるかわかりませんが、いまのところ私の手元には、どのような形で捜査が毎日行なわれてきたかということは承知いたしておりません。
  62. 山田長司

    山田(長)委員 四月十四日の法務委員会において、刑事局長は、塚田選挙違反事件の不起訴について、塚田は、「任期満了を間近に控えて中元の機会に四年間の締めくくりをつける意味において、党の慣例に従って党人たる県会議員に贈与したものである」ということを言われた。四月十四日の会議録の二ページの一段目に書いてあります。そういうことが書いてありますが、これは党人である県会議員に贈与したというようなことが明確になって、しかも任期満了で四年間の締めくくりに中元として贈った、こういうあいまいなことを、この間の法務委員会であなたは言っているわけですけれども、本人は選挙によろしくということを言っているということがいわれているのです。そういうことがいわれておりまする以上、このことは明々白々たる事実として犯罪にのぼらなければならぬ筋合いのものだと私は思うのであります。  それから法律的な立場で見ますると、経験則、むしろ刑事訴訟法上において公知の事実である場合には、だれもこれを認めるというのが、裁判上における意思の証拠をあげる必要のある場合におけるときに使われておるのじゃないかと私は思うのでありますけれども、これは局長は、塚田さんが在職中のお礼だからといって、将来のことをよろしくというふうに言っていることは、これはどう考えても、私たちから見れば、公知の事実として当然違反に属するものと思われるのでありますけれども、公知の事実というものを、刑事訴訟法上から推測した結論というものは出さなかったというところにわれわれは理解できないものがあるのですけれども、この点についてはどういうわけで公知の事実という問題を取り上げ得なかったのか、この点明らかにしてもらいたい。
  63. 津田實

    ○津田政府委員 この公知の事実として証拠を要しないというような事実の中に二十万円の授受があったというような事実は、これはとうてい入りません。これはやはり証拠をもって要することでございますが、前回申し上げましたとおり、二十万円の贈与ないし提供があった事実につきましては、検察庁としては、その事実は認定できるというふうに申し上げておるわけであります。そこで、公知の事実だからということで直ちにまいるわけではございませんのと、同時に、先ほど仰せられました党人たる県会議員に贈与したものであるという、これは塚田側の主張でありまして、個々人がどう言っているかという問題ではございませんが、少なくとも塚田自身はさようなことは申していないということができるわけでございます。
  64. 山田長司

    山田(長)委員 この間の速記録を見ますると、刑事局長はこういう事例について言っているわけですが、起訴した者で無罪となった者は十万人に二人の率と説明している。これは一一ページの一段目に書いてあるが、法務省の統計によるというようなことを言われておりますけれども、法務省の統計は、われわれの手元に出ているものは、昭和三十八年度に出ている以外にまだ統計は手元に出ていません。資料要求したけれども出ていないのです。そこで、裁判所における受訴者数は三十八年度において三百七十四万五千二百八十八人、無罪となった者は五百二十六人、それから公訴棄却になった者が三万二千一人、免訴その他が五十三人になっている。十万人に二人の率と大きな違いがあるが、局長はどの統計に従ってこの間の法務委員会における答弁を言ったのか。どうも私たちは数字に弱いので、小林委員の質問に対して黙って聞いてしまったのですけれども、十万人に二人の率というその違いは、法務省のどの統計に出ておってあなたはこの間言たのか、これを明らかにしてもらいたい。
  65. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねは、法務省におきまする第一審における無罪人員について調査をいたした無罪率でございます。法務省におきまして、つまり検察庁が起訴した者のうち、第一審において無罪の言い渡しを受けた者の無罪率でございます。これにつきましては、十万人に二人と申しますのは、道路交通法を含めての問題でございまして、そのときも申し上げたと思いますが、一般刑法犯につきましては〇・一四八、こういうことでございますから、残りの九九・八五二というものは刑法犯においても有罪になっておる、こういう数字を申し上げたのでございます。
  66. 山田長司

    山田(長)委員 大蔵当局国税庁長官、来ておりますね。  県会議員に贈られた二十万円の贈与については、本年の三月十五日が当然所得税の申告日に当たっているわけですが、この申告日にあたって四十二名の県会議員はどういう申告をされたか、四十年度の雑所得にでも入っているのかどうか。この点実は昨日大蔵省に調べておけということを申し上げたのですけれども、この点はいかがになっておりますか。
  67. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  塚田知事から県会議員の方が受け取られた金額が各人二十万円でございますれば、これは御承知だと思いますけれども、贈与税の対象になります。贈与税は年四十万円までは非課税控除の規定がございますので、他に贈与を受けておらない限りは、これは申告の必要がないということになるわけでございます。したがって、そういう方々が他に贈与を受けておるかどうか、こういう点につきましては、私どもといたしましては、検察当局調べが——現在一応不起訴処分になったようでありますが、検察審査会のほうにかかっておられるようでありますので、検察審査会のほうが処理された後調査をいたしたい、かように考えております。現在のところ、贈与税の申告がどういうふうになっているかということは、まだ調査をいたしておりません。
  68. 山田長司

    山田(長)委員 刑事局長に伺います。  この四十二名中に一人の分が、新聞紙に包まれて新潟県の県の金庫の中にあった。それで金庫の中にあったものの中には二十万円が入っているべきなのにもかかわらず、新聞紙に包まれていて、中にはからっぽだったという。一体、その前後の事情はどういうわけです。だれかもしその金を窃盗したとするならば、これは新たなものが発見されなければならぬ性質ですが、一体この二十万円はどうなったのです。
  69. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま御指摘のような事実は実は私もはっきりいたしておりません。さような事実は承知いたしていないのですが、何か金額に多少異論があったというようなことがあったそうでありますけれども、最終的には金額は全部二十万円ということになったというような事実があったというふうに聞いておるだけでございまして、それがただいま御指摘の事実に当たるかどうかは私もはっきりいたしません。
  70. 山田長司

    山田(長)委員 金額にかかわらず、県の金庫の中から紛失しているというような問題は、これは重大な問題だと私は思うのです。ただいまの答弁では満足しません。  そこで、不可解な事件の、さらに私は、当局が当然問題にして処置されているものと思われるのでありますが、家宅捜索の途中、たまたま愛人宅から発見されたと称される書類の中から、選挙費用の超過が出てきたということがいわれております。その選挙費用の超過につきまして、事務長はつかまっておるが、選挙あと、このつかまった事務長はどうなっているのか。  それから、当然費用超過という問題につきましては、これが選挙にはかなり重要な問題として取り扱われる筋合いのものと思われますが、選挙費用の超過については、自治大臣はどうお考えになっておりますか。
  71. 永山忠則

    ○永山国務大臣 選挙費用調査の問題については確認をいたしていないのでございます。本件に関してでございますが。一般の選挙費用超過はどうするかということは、これは別の問題でございますが、本件に関してはその問題をまだ確認いたしておりません。
  72. 山田長司

    山田(長)委員 当然書類上からいって選挙の費用超過という問題があるはずであります。この点は、二十万円事件と別個な形において当然当局はこれの取り調べをしなければならぬと思うのでありますが、費用超過につきましては、刑事局ではどういう態度で臨みましたか。
  73. 津田實

    ○津田政府委員 本件に関連いたしまして、公職選挙法違反、選挙費用の虚偽報告の問題について捜査をいたしておりますが、なお捜査続行中でございます。これは被疑者本田富雄、林勇作、梁取隆、この三人でありまして、これがこの選挙に関しまして、選挙費用につき虚偽の記載をした運動費用収支報告書を偽造しまたは虚偽の記入をした領収書の写しを提出した、こういう被疑事実について捜査中であります。
  74. 山田長司

    山田(長)委員 本件事件につきましては、われわれはいま伺った範囲におきましては全く納得できません。検察審査会に書類の提出等が行なわれたというようでありますけれども、この検察審査会というのは、まことに表面はもっともらしい形になっておりますけれども、一般の人から選挙名簿によって摘出された人たちが審査の衝に当たり、さらにその衝に当たっても、最近のように日当が非常に少ないときには、もし労働者だとかあるいは技術者等が当たった場合、とても出席率が悪いという話であります。さらに、そればかりでなしに、法律知識のない人たちが出て、検察審査会のメンバーとして、半年で一ぺんずつの交代をするというようなことであったのでは、検察審査会でほんとうに審査の衝に当たれるとはわれわれとしては考えられないのです。いかに検察当局結論を出したとはいうものの、ただいまの私の質問に対してのお答えでは、どういうところが支障を来たすのかわかりませんけれども、在職中の礼としてもらった県会議員の数も、それから選挙の協力を願った人の数も、あるいは中元なり在職中のお礼なりでもらったという数もまるっきりわかっておりません。それで、しかもこれは暴力行為等による自白じゃなくて、本人たちが選挙に協力するためだといってくれたと言って自白している。もしこのことがこんな形で処理されたとするならば、私は末端行政をあずかる警察官などは、これから選挙違反で人を摘発するというような場合に、なかなか困難なことが起こってくるのじゃないかと思うのです、お礼だということであれば。これをいかなる理由によって、二十万円という金額が明らかになっているにかかわらず明らかにしないのか。これは当然明らかにされるべき筋のものでありますけれども、何がゆえに明らかにしないのか。もう一度、最後に私は法務大臣に伺っておきたい。何がゆえに明らかにしないのか。明らかにしない理由を明らかにしていただきたい。
  75. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この問題は、さっきからも申し上げましたように、非常に関係した人数も多く、したがいまして、それの調査も非常な長い時日を要したわけでございます。こういう関係のものでございまして、複雑な関係にあって、そうしてようやく最後に断が下されたというものでございます。それでございますから、それに対しましていろいろな声が起こっておるというくらいのものでございまして、非常にむずかしいものだったと私も思います。したがいまして、この問題につきまして、これを一部どうだこうだというようなことであっては、かえって疑惑を招くということもいわれるわけでございますから、できるだけの範囲において皆さん方に知っていただくことのできるものをと思いまして、この前から刑事局長が大体のお話ししていい範囲ものは申し上げたはずでございます。それ以上の問題になりましてすっかり内容を話せということになりますと、これは底まで洗わなければ全般の判断はできないということになる問題だと私は思うのでございます。そこまではどうにもやれる問題でないと私は思うのであります。そうすることは、かえってこれから先の検察の仕事を非常に押えつける問題であり、仕事ができにくくなります。私は検察の今度やった仕事について全面的に信頼をしています。私はこの問題について、おまえはこれに内実の指揮権を発動したのじゃないかとか、あるいは総理大臣とおまえとで何か検事正にいろいろな指図をしたのじゃないかとかいうようなことを言われますけれども、私はかつてそういうことを一度も言うたことはございません。いいことならばしてもいいじゃないかとさえ言われましたが、そういうこともいたしたこともございません。私は、じっとこの推移を見ておったのでございます。というくらいに、検察権の行動に私はじっとまかしておる状態でございます。この検察権が今後とも公正に動き得るために、あまり根掘り葉掘りやらないようにしていただきたいということが私の願いでございます。
  76. 山田長司

    山田(長)委員 大臣に伺えば伺うほど、この内容を明らかにしなければならぬという感じに私は打たれます。それは、日本の検察当局の威信の問題として、これは失墜させたくないからです。かつて、指揮権の発動によっては、御承知のように犬養さんは全くの汚名を着て倒れていった。私は、石井さんがその衝に当たっていて横車を押したとは信じたくありません。しかしながら、万人が万人とも、この内容は、これは何と考えても違反になると思わざる者はないのであります。それが、ただいまのような御答弁で明らかにされずにおるということにつきましては、何としても納得できないのです。御承知のように、わが党の参議院における亀田得治君は、裁判の結果、無罪だといわれながら、それも、教育二法のあの騒ぎのあと、十年間も裁判が続いてきて無罪になったが、これをさらに、無罪になったにかかわらず、あとで訴えている、また起訴したじゃないですか。一体今度の事件は、これはくれたほうももらったほうも明らかになっているだけに、これくらい証拠が明確なものはないのです。こんな明確になっているものは、どういう横車を押したのかわかりませんけれども、とにかくこれは横車としか考えられません。こんな形で日本の検察権の威信というものを失墜することが私はおそろしいのです。こんな形で処理されたとするならば、これによって日本の選挙というもの粛正なんということは、これはとうてい行なわれません。もしこんな形で処理をしたということを残したならば、これは何年間お世話になったというお礼で公然と金を贈り、あるいはまた、衆参の選挙等においては、これが何年間世話になったというようなことで公然と金を贈るような事態が起こったときに、この事例であるならば、これは検察当局では処理できませんよ。こういう形で検察当局の首脳者が、裁判に付してこの結論が出たならいざ知らず、まるで検察当局が裁判長の役割りあるいは弁護士の役割りをしているような印象じゃありませんか。何のために塚田に対し弁護する衝に当たったようなことを言わなければならないのです。私は、幾らこれが処理されたとはいっても、検察当局のいままでの答弁における処理のしかたでは不満であります。これは、委員長、ぜひ私は、当局の実際の仕事に携わった検事正及び丸物検事、これをいかなる機会かにおいて呼んでいただきたい。  私は、党の綱紀粛正委員長という形におきまして、実は現地に調査に行りた一人でございます。その調査に行ったときに、 口にはしなかったが、自信満々たる態度で、私たちが行った前の日には、新潟県の県会の首脳者を逮捕したときでありました。もし自信がなくて国民をやたらにこういう形で逮捕するということであるとするならば——これは、私は検察当局にほんとうに自信があったからこそやったと思うのでありますけれども、自信がなくしてやたらに逮捕する、人権じゅうりんをやるというようなことになれば、これはゆゆしい問題であります。全くこれは許せない事件であります。いかなる理由で検事正及び検事が当時自民党県会議員を逮捕したのか、この逮捕の内容を明らかにしなければなりません。どうかそういう点で、委員長は、逮捕の内容を明らかにするために、当委員会にこの両名を御出席をさせていただきたい。これは両委員会の合同審査会でありますけれども、人権を守るために、そうやすやすと逮捕されるということをなからしめるためにも必要なことでございます。どうぞこの点お取り計らい願います。
  77. 大久保武雄

    大久保委員長 山田委員の御発言に対しましては、いずれ法務委員会理事会において協議いたしたいと思っております。
  78. 山田長司

    山田(長)委員 法務委員会理事会であなたが委員長として誠心誠意この結論を出してくれるならいざ知らず、なかなか横車を押す理事諸君が自民党には多いので、その横車のいかんによっては、このことをやみからやみに葬ってしまうような結論が出ると思うのであります。私は、少なくとも人権を守るという立場において、党利党略に関してこれは申し上げているのじゃないのであります。こんな形で検察当局に逮捕されて、調べられて、しかもこれは、自信のある態度でおそらく検挙したものと思うのであります。それが、陳述がまちまちであるという簡単なことで、あるいは証拠がなかったからというようなことで、やみからやみに葬られてしまうということは、日本の検察行政の上からいっても、あるいは日本の公平な選挙を行なうためにおいても、このことの明白さは明らかにしなくちゃならぬと思うのであります。そういう点で、理事会で委員長は、自民党の諸君が横車を押すというような場合があったにしても、日本の検察行政を明らかにするために、ひとつ断固たる態度でこのことについての御処置を願います。このことが委員長の将来における日本の輝かしい法務委員会委員長として足跡を残す一ページだと思うのです。どうぞひとつその点お取り計らいを願います。
  79. 阪上安太郎

    阪上委員 すでに山田委員からかなり突っ込んだ質問がありますので、できるだけ重複しないように質問申し上げたいと思います。  冒頭、総理に対する質問のときに申し上げましたように、この新潟事件については、われわれは納得のできない二つの問題点がある。その一つ政治上の責任問題である。これから質問いたしますのは行政上の責任問題、これについて一問一答の形でできるだけ簡潔にやりたいと思います。  本件の不起訴処分に至るまでの経過よりいたしまして、行政上幾多の問題が投げかけられております。その一つは、検察機関の捜査が適正に行なわれたかどうかという問題でございます。いま一つは、検察機関の処分が厳正であったかどうか、こういう問題だと思うのであります。  そこで、順序といたしまして、最初に、捜査の開始がはなはだしくおくれていること、あるいは強制捜査が不十分である。これは知事は逮捕しないで任意捜査をやっておる。同じ事件の一方側の議員だけが逮捕されている。いま山田君が言いましたとおりであります。それから、いま一つは、被疑者の供述、これが、選挙にまつわる報酬だと、ことに最初の段階においては自白しておるわけでありますが、これをことさらに釈放して、そして直ちに起訴をしていないというような点、それから、協議の結果、補強出張捜査が行なわれておる。これは多分に政治的なにおいがすると私は思っております。いま一つは、別件で捜査の段階において法定選挙費用の超過という問題が出てきておる。  そこで、最初にお伺いしたいと思いますのは、これは大臣どちらでもけっこうでありますけれども、おそらく検察当局は、これは告発以前に容疑事実を握っていたのじゃないか。それを社会党の告発を待って初めて捜査に入っていった。これは一体どういうことなんですか。  あわせて、これは時間を省く意味において、公安委員長、あなたにちょっとお伺いしたいのですが、この事件について警察は全くほうかむりしている。何もやっていない。大体捜査の第一線というのは警察がやることでしょう。それが全然やっていない。県警本部だから知事のにらみがこわいのか何か知らぬけれども、全然手をつけていない、こういうような問題であります。そこで捜査がほんとうにおくれておる、このことについて私は問題があると思うのです。これについてそれぞれ御答弁願いたいと思う。
  80. 津田實

    ○津田政府委員 御承知のとおり、直接の捜査の端緒といたしましては、本件は告発から開始されたものであります。その事件の前に捜査の端緒になるべきものを検察庁が握っておったかどうかということについては、私はいま承知いたしておりませんが、その関係につきましては、いつの時期にどうであったかということがかりにわかりましても、これは申し上げることを差し控えさせていただかなければならぬ事柄だと思うのでございます。
  81. 永山忠則

    ○永山国務大臣 本件は検察庁へ告訴されましたので、検察当局指導を待って協力いたしたのでございます。
  82. 阪上安太郎

    阪上委員 そういたしますと、検察庁のほうでもこの点は明らかでない、告発以前に全然知らなかった、こういうことになるのでしょうか。それから警察のほうも、あれだけ世間でわあわあ騒いでおる問題なんですが、これに対して告発が検察へ行なわれたので、全然警察は知ったことじゃない、こういうことで手をつけていなかった、何かそこに大きなミスがあるのじゃないですか。なぜそういうことを全然知らなかったのですか、この点明らかにしてください。
  83. 永山忠則

    ○永山国務大臣 本件は、はっきりした証拠をつかむ前に検察庁のほうへ告発されましたので、検察当局と協力してやったわけであります。
  84. 阪上安太郎

    阪上委員 津田刑事局長さん、あなたは過般の法務委員会答弁の中で「本件捜査に着手する前からすでに本件の内容がある程度世上に喧伝されておりまして、半ば公然の事実となったために、本件の関係者のうちには、これを政治的に利用しようと画策する者もありましたし、」云々と、こういうことを答弁なさっておるのです。そこまでわかっていて着手しなかった。これを考えますと、政治的圧力があったとかどうかという問題は、先ほどから論じられておりますけれども、そういうことではなくて、案外検察自身が何か政治的な配慮を自分でしてしまったのではないか、こういうふうに私は考えるのですが、この点どうでしょうか。
  85. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまの事件については、十月でございましたか、告発がありまして、それから捜査に着手したことは事実でございます。ですから検察官として捜査に着手したのは告発が直接でございます。しかしながら、その前の調査において何らかの端緒となるべき事実をつかんでおったかどうかということについては、これはいま知っておりませんことは先ほど申し上げたとおりです。法務委員会で申し上げましたのは、その告発がありまして、もうすでに告発即日新聞発表が行なわれておるわけでございまして、それからいろいろやかましい議論が出ておりまして、具体的に告発即日捜査に着手するというわけにはまいりませんので、その意味におきまして、もう捜査に着手するころには、世上かなり公知の事実らしきものが相当出ておったという趣旨を申し上げた次第でございます。
  86. 阪上安太郎

    阪上委員 一々これを追及しましても時間がかかりますから、私は問題だけ出しておきたいと思いますが、ただ、あなたの答弁の中で、いかにもこれが政治的に利用されるおそれがあるというようなことでもって云々と、こういうような答弁があちらこちらに出ておるわけなんです。だから私申し上げたように、あなた、御答弁になっていないのですけれども、何か検察自体が妙に政治的な配慮をしてしもうたのじゃないか。なるほど六十何名かの県会議員の中で四十二名というもの事件に関連しておるということになって、一方において、これは自民党の県連本部の中で何かいろいろ派閥があって、その一部の九名の反塚田派と称せられる者が告発しておるというような関係もあって、いろいろなことを考えて、何か検察が裁判所と同じように情状酌量してみようとか、何かそういう考え方を持ってしまったのじゃないか。私は、やはりここで一番問題になるのは、検察がそういう政治的配慮をすることは非常におそろしいことであるということなのでして、その点、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  87. 津田實

    ○津田政府委員 本件は、告発を端緒として捜査を開始したわけでございます。したがいまして、その捜査の進行そのものについて、何ら政治的な配慮を加えてというようなことはありませんことを私は確信いたしております。  そこで、先ほどお話しの政治的云々ということを申しましたのは、新潟県会をめぐる諸情勢の中にいろいろ政治的なものがあって、それが関係者の供述その他捜査に対する協力等をいろいろゆがめたり、間違えたりしておる事実があったということを申し上げておるのでありまして、検察庁自体が政治的に動いておるという事実は全然ございません。
  88. 阪上安太郎

    阪上委員 いろいろな言い方はあるでありまし上うが、やはり捜査にもう少し自主的に踏み切れなかったというようなところに、何かいまあなたがおっしゃったそういう事実に少し支配されたのじゃないかと私は思う。しかしながら、これはあなたはそうでないとおっしゃるからやむを得ないです。  次にお伺いしておきたいのは、議員のほうは強制捜査をして、渡したほうの知事に対しては、病気だということで熱海に転地しており、帰ってきてから、それでは強制捜査に踏み切るかと思うと、それもやらない。実際、こういうような捜査状態だったと私は思いますが、なぜ一方を逮捕しておきながら、一方に対してはああいう形をとったのですか。これはやはり大物の知事であるというようなことでそういう配慮をされたのかどうか、この点ちょっと簡単にお答えを願いたい。
  89. 津田實

    ○津田政府委員 御承知のとおり、捜査は任意捜査をたてまえといたすわけでございまして、強制の処分は特別の場合にこれをするというたてまえであります。本件につきましては、相手方と目されるものについて強制捜査が行なわれ、塚田知事に対しては、身柄に関する強制捜査は行なわれなかったということについてのお尋ねでございますが、これは捜査そのものは証拠を追って進むものでございまして、その間にはいろいろな経緯が出てまいるわけであります。しかしながら、検察庁としては、つとめて任意捜査をたてまえにして進んでおるわけでありまして、その間に外形的なアンバランスということはあり得ると思いますが、これはやはり捜査の進行に伴ういろいろな経緯から生ずる問題でございまして、塚田自身に手心を加えるために強制捜査、強制処分をいたさなかったということでは全然ございません。
  90. 阪上安太郎

    阪上委員 相場自民県連の幹事長外六名とありますが、これが逮捕されております。そして知事公舎あるいは家宅捜索が行なわれておるわけですが、この事件の中心人物の知事はあくまでも任意出頭である。これでは十分な証拠固めができるはずはないじゃありませんか。この塚田知事という人が中心人物ですよ。その人にこういうことをやっておって、捜査がほんとうに行なわれた、検察は信頼するに足ると言ってみたにしたって、これは信頼のしょうがないじゃないですか。これもやはり私のことですからこれ以上は言いません。言いませんが、私は非常に不満足であります。  それから、一方において、この七人に対しまして、これは処分保留のままで起訴をしないで、そして釈放をしておる。こういうことになっております。これも私は悪意にはとらないのでありますが、あるいは検察が考え方を間違っておったんじゃないか。二十万円というものはもう明らかに渡しておるんだ。しかも、供述によると、その段階において、これは明らかに選挙の報酬であるということであったので、二十万円の授受は明白である。したがって、釈放したってこれはもう必ず起訴できるものだ、こういうふうに検察が考えたところに甘さがあったんじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。それともこれは別の意図があってそういうことをやったのかどうか、この点もちょっと伺っておきたい。
  91. 津田實

    ○津田政府委員 先ほども申しましたように、捜査についてはいずれから手をつけるかということは、これは捜査技術の非常に重要な問題でございますが、その手をつけたものにつきまして証拠を追って進行していくわけであります。したがいまして、その進行の過程におけるいろいろの経緯を生じまして、この段階においてはこうであったが、次の段階においてはこうであるということはしばしば捜査においては出てくる問題でございます。本件につきまして、いろいろな外形的な問題はございましょうが、一貫してこの事実をいかに明らかにするかということに捜査を集中した結果でございまして、処分留保ということで釈放したというような事実ももちろんございますが、これ自体はやはり全体四十数名の者の内容を明らかにした結果でないと、これらについての考え方を統一的に出すことはできないというような結果であると私は思うのであります。
  92. 阪上安太郎

    阪上委員 いままで問題点を私申し上げたのですが、そういうやり方であったためにとんでもないことが出てきておると私は思うのですよ。一たん選挙費用として受け取ったというように答えた県議たちも、あとから、これは地検の強圧的な調べによるもので、公判の場合には単なる儀礼的な中元と解しというような口裏を合わせ、そして裁判も無罪をかちとろうというような考え方が出てきているというように私承っておりますが、あなたそういうことを聞かれたことがありますか。こういうことにつきまして地元の検察のほうから連絡がありましたか。
  93. 津田實

    ○津田政府委員 本件につきまして供与を受けた者の供述を中心にしてものを申しますと、供与を受けた者につきましては、先ほど来申し上げますように、県会をめぐる政治情勢その他いろいろな思惑がありますし、ことに知事選を前にしてすでに県会でいろいろ問題になっておったこともあるわけです。そういうような事態の中におきまして、関係者がいかなる供述をし、その供述がいかに信頼し得るものかという点には、十分の吟味を要する問題であるということになっておる次第でございまして、選挙運動費としてもらったというような供述があるかと思いますと、さようなことは全然なかったという供述も一方ありますし、金の授受の形態から申しましても非常に一律的なものであるということは、この前御説明申し上げておるとおりであります。そういうような状況等を考えますると、その当事者の供述そのものが、その趣旨でもらったというものも推測を述べたんだというような主張に変わることは、これはもうしばしばあることでございます。本件の内容を、証拠の内容にわたっては申し上げません。そういうような諸般の状況から全体を見て判断いたした次第でございます。
  94. 阪上安太郎

    阪上委員 捜査の最後の段階で、当初と供述がいろいろ変わってきているということは、あなたおっしゃっています。選挙運動費と思ったというのは、これは反塚田派、それから四年間の県政協力の謝礼として受け取った、これは中立派だといわれておる。単なる中元と思った、これが塚田派の人だ。先ほど問題になっておりましたので、それが何名ずつであるかということは伺わないことにいたしましょう。こういう最後の供述の分野であったということはお認めになりますか。
  95. 津田實

    ○津田政府委員 最後の形式的供述がどういう経過でどういうふうに変わったかということにつきましては、もちろん私どもは承知いたしておりません。しかしながら、最後に供述したことが間違いのないことであるとも必ずしも言い切れないというような捜査の証拠の価値判断の問題がございますので、一がいに供述のどの部分が信憑できるかどうかということは、すべての証拠を照らし合わせてみないと結論が出ない問題であるという意味において、供述の違いについてどこを検察庁が正当と判断したかということについては、検察庁みずからの最終的な判断に加えた結論が示しておると思うのでございます。
  96. 阪上安太郎

    阪上委員 そこで問題になりますのは、自白と、補強というのですか、補充というのですか、補強が正しいと思うのですが、この補強証拠との関係なんですけれども、これは高裁との間で、検事正、それから次席検事等が出てきて、最後の段階で協議なさっておりますね。そのときに補強証拠が不十分だというようなことだったと思うのですが、証拠が不十分だということで補強捜査を行なうことにきめられておるようであります。先ほど言いましたように、これが何名かということが問題になってくるのでありますけれども選挙運動費として受け取ったんだと言う人もおるし、それから四年間の協力費だと言う人もおるし、それからいま一つは、全然これは単なる中元だ、こう言う人もおりますが、補強証拠といいますか、あるいは補強捜査といいますか、一体この新潟事件の場合、どんな項目が補強しなければならぬところのものであったかということは、お答え願えますか。
  97. 津田實

    ○津田政府委員 去る二月上旬に、新潟の検事正及び関係検事が東京高等検察庁へ参りまして、捜査に関するそれまでの報告をいたし、今後の問題点について当検察庁で協議をしたわけでございます。そのときに、その結果、補強証拠ではない、補充捜査を命じたということになるわけであります。この補充捜査と申しますのは、その当時までの捜査におきまして、いろいろ全体的に、しかも高い立場で検討いたしまして、とにかく第一線検察官は一生懸命でやっておるわけですが、これを一歩引き下がって第三者的立場からものを見て、証拠のすきがないかどうかということを検討することは、検察内部では常に行なうことでございまして、さような検討をした結果でなければ裁判所において有罪の判決を得られないという問題になっておるわけであります。そこで、そういうような検討をいたしますと、この部分、この部分というように証拠に補充捜査を要する面があるという結論になりまして、その結論に従って補充捜査をやるということでその会議は終わっておるわけでございます。  そこで、個々にどういう項目であったかということは申し上げることを差し控えさせていただきたいわけでありますが、全体として申しますと、本件金員の授受された趣旨の問題が中心であったわけでございます。
  98. 阪上安太郎

    阪上委員 これは私のきわめてしろうと的な判断なんですけれども、補強証拠などというものは、犯罪事実の一部についてこれが存在すれば足りるのじゃないか。もっと極端に言うならば、直接証拠というようなものばかりでなく、状況証拠でもいいのじゃないか。これは一般的な解釈じゃなかろうかと私は思うのであります。先ほど言いましたように、自白そのものが、これは本人に不利になる唯一の証拠であれば、こんなものはそれだけでは有罪にするわけにいかぬだろうと私は思いますが、しかし今回の事件では、状況証拠として、十二分にあるのじゃないかと私は思います。それを不起訴にしてしまったというところに私は問題があるのじゃないかと思うので、起訴、不起訴の段階で、その判断のときに一体どこへ重点を置いたか、それをひとつ伺いたい。
  99. 津田實

    ○津田政府委員 すでに前回の法務委員会で詳細に御説明申し上げましたが、本件金員の趣旨というものについてはいろいろな証拠があります。また本件の金員の趣旨について党人間の贈与であった、中元の機会にやった贈与であったというような趣旨であるという意味の証拠ももちろんございます。しかしながら、それらについてはいずれも本件の金員の授受の形態が、直接塚田知事と相手方との間に行なわれた事柄であって、その内容自体につきましては目撃者その他介在者という者はないわけです。そういうような点を考えてみますと、一方に金員は選挙運動の報酬であると疑う余地が十分あると同時に、塚田自身の主張のような趣旨であったという意味のことを疑う余地も十分ある。いずれともそれはっきがたい。いずれに対しても、それは直接行なわれたことであり、授受の内容自体はお中元ですという単なる簡単なことばによっておるわけであります。そこで供述者はそれぞれその趣旨をそんたくして説明しているということがその状況でありまして、その趣旨をいかように考えたということについては、これは当事者の思惑違いということも間々あることで、そういうような意味におきまして一つの疑う余地がある。それに見合う証拠があっても、それを補強するだけの他の証拠がない。また別にこれを否定するような主張があっても、それの証拠はあるが、それを補強するだけの証拠がないという、両面どちらから見ても、本件については疑う余地はあるが、的確にこれを確認することができないということが、本件の嫌疑不十分になったおもな原因でございます。
  100. 阪上安太郎

    阪上委員 あまり長くてもどうかと思いますので、いいかげんに終わりたいと思いますが、次に、検察機関の処分、これがはたして厳正であったかどうか、いろいろな問題点をわれわれは持っております。その中で一つ、きわめて幼稚な質問かもしれませんけれども中元中元といまあなたもおっしゃっておりますが、検察当局中元というものを一体どう考えておるのですか。中元の定義をひとつ説明してください。
  101. 津田實

    ○津田政府委員 検察当局におきまして、中元というものの定義を立てているということはございませんが、一般的に私ども考えられるのは、その時期における贈答、通常の儀礼上の贈答ということでございます。本件でお中元ですということばが使われたことは、先ほど申し上げたとおりでございますが、そのお中元ということで、それだけの額が、いわゆる中元ということにならないということは相当考えられる。しかしながら、中元という名前におきましていろいろな趣旨が盛られるということは、しばしば世の中にあることでございますので、その本来のことばもさりながら、その内容の趣旨いかんが問題になるということでございます。
  102. 阪上安太郎

    阪上委員 中元というのは、この間私は字引きを引いてみた。そうすると、正月の十五日を上元という。十月の十五日を下元という。七月の十五日を中元という。これはどういうことかと言うと、半年間生存の無事を祝うためにそういうのがあるのだ。これはうら盆の行事として実は亡霊に供養するためにできた祭りだ、こういうことなんです。どうも何か少しうがち過ぎたようなかっこうになって、二十万円がどうも亡霊に供養するようなことになってしまったが、御案内のように中元とか歳暮、こういうものに名をかりてわが国選挙では事前運動が行なわれる。そして贈賄収賄というような行為は、この中元あるいは歳暮というような名によって悪用されると言うか、それでいろいろな選挙事前運動というものとのまつわりが非常に深い、こういうことなんです。そして今回のようにそれが法の立ち入り禁止区域というようなふうになってしまっておる。いま私はこの中元というものに対して、ああいう質問をいたしましたが、これを検察が簡単に扱ってはいけないのですよ。中元だからいいというようなことであってはいけない。この悪習というものを断ち切らぬといけない。この中元の行事、祭りを言うのではない、これが事前運動に利用されておる、しばしばそういうことが行なわれておる、こういうようなものをこの機会に断ち切らなければいけないのですよ。それを検察はきわめて簡単に、中元だからいい。だから、この間の読売新聞の何か時事川柳では「中元ならいいというので選挙楽になり」というようなことを言っておる。検察はこんなことを言わしておいていいのですか。中元なら何でもいいのだ、歳暮なら何でもいいのだ、こういうようなことをやっておるから、いつまでもわが国選挙が腐敗選挙から逸脱することができないのではないかと私は思うのですが、検察庁の中元に対する考え方というものは甘過ぎるのではないですか。この点はもっと厳格にもの考えたらどうですか。どうでしょう、これは大臣にお伺いしたほうがいいと思う。こういうことはほんとに悪い習慣ですよ。
  103. 津田實

    ○津田政府委員 検察庁が中元ということを無視しておるわけではございません。中元そのものの名をかりて、いろいろなことが行なわれることは世上あることでございまして、これは中元名下に贈収賄が行なわれたという事例は、しばしばわれわれの体験するところでございます。しかしながら、また一面、これは日本の純風美俗——美俗と言えるかどうかわかりませんが、そういう意味中元というものもございますし、また中元の機会に、その人と人との人間関係から、ある種の金員の贈答が行なわれるということも、これは否定できないわけであります。でありますから、検察庁といたしましては、中元であるからすぐにフリーパスであるというふうに言っておるわけではありませんことは、この前詳細に御説明申し上げたところによって御承知いただけると思うのでありまして、いわば——と言いますが、本来はその中元の趣旨いかん、中元の名前のもとに含まれている趣旨いかんということが問題になるというふうに考えておるわけであります。
  104. 阪上安太郎

    阪上委員 今回の場合は、塚田さんはお役所から給料をもらっておられるのは十八万円。十八万円の給料をもらっておる方が、銀行借り入れをやって、そして六百万円、二十万円ずつ中元を出す。一説には二十万均一ではなかった、七十万もらった人もあるというように言われておりますが、否定されておるようであります。中元というのは、そういう借金までしてやらかければならぬのが中元なんでしょうか。こういう扱い方、考え方、検察庁の考え方がおかしいと私は思う。やはりこれは証拠固めができなかったからというだけで、先ほど言いましたように状況証拠と言いますか、一般の社会の通念として考えられる中で、借金までして金を出す、そんな中元というものがあるかどうか。そんなもの中元ということは言えないのではないか、こういうふうに思うのです。それとも金のある人はこういう機会に幾ら出しても、これが中元であればやむを得ないのだ、こういうようなお考えでしょうか。
  105. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、中元という名前であればフリーパスであるということではございません。その中元としてという名目のもとに贈答されました金員の趣旨いかんによるわけでございます。したがいまして、その中元という名前でも、その趣旨が贈収賄であれば贈収賄になるということであり、選挙運動報酬であれば選挙運動報酬になる。しかしながら、繰り返して申し上げますように、やはり人それぞれ個人間の関係がありまして、その間の金銭の授受というものは、中元を機会に、あるいは歳暮を機会にということもあり得るという世の中の実態は、これはおおうべくもないわけでございます。そこで問題は、やはり本件の金員の授受の趣旨いかんということがこの問題のキーポイントになるわけであります。
  106. 阪上安太郎

    阪上委員 中元に対する考え方が非常に私は甘いと思っております。そういうことではいつまでたっても腐敗選挙というものはよくならないだろうと私は思います。もっとやはり状況を判断して、状況証拠からでも、中元などというものによって便乗するものに対しては、これはやはり徹底的なメスを加えていくことが必要ではなかろうか、私はかように思うわけでございます。  次に、佐藤刑事局長さんにちょっとお伺いしたいと思いますが、御案内のように、あなた方裁判所の管轄の中には、例の検察審議会というものがございますが、これは定期的に開かれなければならないようになっております。同時に、これは告発者等が申告した場合に、申し出があった場合に開くということにもなっておる、と同時に職権でこれを開くこともできる、こういうことになっておることも御案内のとおりでありますが、今回のこのような事件で告発者から申し出があったので、いま開いているようでありますが、これの運営につきまして、もっと積極的にこれを職権で開いていくというようなことが好ましいんじゃないかと私は思うのであります。ことにこの制度起訴陪審というようなものに取ってかわった制度ではなかろうかと私は思うのであります。したがって、このピープルを人を、人民をやはりこれに参加せしめていく、今回のようなこういう問題が起こったときに、まあ国会でこうして大騒ぎしてやっておるわけなんでありますけれども、こういう場合やはり職権でもってこれを開いていって、その理非曲直を明らかにしていこうというような積極的な態度がもう少しあっていいと私は思うのですけれども、裁判所としてはどういうようにお考えになっておりますか。
  107. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 実は、私ども検察審査会につきましては、その内容にはもちろんタッチいたすわけではございませんので、主として人事、予算の面においてお世話を申し上げておるわけであります。そしていま仰せのようなそういう場合に、職権発動をして立件したらどうかという御質問に伺いましたけれども、これはそれぞれの検察審議会において、あるいはその考え方は違うかとも思いますが、御承知のとおり東京におきましては小林章議員関係の事件におきまして職権で立件をいたしました。新潟におきましてはただいま御指摘のように審査の申し立てがございまして、なお記録等も相当厚いようでただいまその準備をいたしておる、こういうふうに聞いておるわけでございます。  そこで、全般的なその職権で立件する場合の運用、こういうことについて若干申し述べますと、検察審査会が昭和二十四年の二月から現実に機能を開始したわけでございます。自来昨年四十年の十月末までの間におきまして申し立てた件数はどのくらいかと申しますと、二万四千七百七十一件でございます。それに対しまして、検察審査会が職権をもって事件を立件いたしました件数は三千二百七十五件、双方合わせますと二万八千四十六件、かように相なっておるわけでございまして、職権による立件の件数はいま申し上げたとおりで、パーセンテージにして職権による立件の数字を申し上げますと一一・七%、かような運用に相なっておるわけでございます。
  108. 阪上安太郎

    阪上委員 この二万四千七百数件というやつは、これは全部申し立てによるものですが、これは法律は申し立てによるものは全部審査会を開かなければならぬ、こういうことになっていると思うのですが、これは間違いないでしょうね。全部開かれておりますか。
  109. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げました二万八千四十六件と申しますのは、申し立てた事件及び職権で立件いたしました事件、双方を合わせたものでございます。そして当然いわゆる形式的な却下、たとえば不起訴処分がないのに間違って申し立てをしたとか、二重に申し立てをしたとかと申しまする形式的な違法でございます。これは却下でございますが、そういうものを除きましては、必ずこれは審査会を開かなければならないわけでございます。そういたしまして、現実にどのくらい開かれておるかと申しますと、一件当たりの平均は二・三回ぐらい開かれております。審査員の任期中、これは六カ月でございますが、その間に審査員は何回ぐらい会議を開いてそれに出席するかということを統計上見ますると、平均いたしまして九回でございます。多いところでは、たとえば東京などは事件が多いのでございますが、週に一回は検察審査員は会合しておる、こういうような状況でございます。
  110. 阪上安太郎

    阪上委員 さらに、ちょっとそこでお伺いいたしたいのですが、この審査会法の第二条第一項第一号に「検察官公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項」、おそらく申し立てはこれだろうと思うのでありますが、これで公訴を提起しない処分、これがさらに公訴になったというような件数はどのくらいなんですか。歩どまりはどのくらいかということです。
  111. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問の点は、私どもいわゆる事後措置と申しておることなんでございますが、検察審査会が起訴相当またはこの程度で不起訴結論を出すのは不当であるという意味で不起訴不当と、かように申しておりますが、起訴相当の事件と不起訴不当である事件、それについてはそういう結論を出しまして検察庁のほうに通知をいたします。それに対して、御承知のとおり検察庁はそれを再考する、再度考えるということになっているわけでございますが、最近のところ、昭和四十年中におきまして、この検察庁におきまして再度考え処分決定いたしました事件が、私どもの承知しておりまする範囲では百二十二件ございます。その百二十二件の中で起訴をいたしましたものが三十件でございます。約四分の一起訴をいたしました。その余の九十二件はいずれも不起訴維持された、これは私ども知り得た限度でございまするが、さような数字が出ております。
  112. 阪上安太郎

    阪上委員 いま裁判所のほうから伺いますと、検察審査会、これの起訴になったものわずかに三十件だ、こういうことでございまして、この制度もあまり効果が少ないんじゃないか、かように思っております。  問題点は、なおたくさんございますけれども、だいぶ皆さんお疲れのようでありますし、またあとに質問者もおりますので、大体この程度にとどめておきたいと思います。ここで締めくくりとして法務大臣に、一体いままでの質問、答弁の経過から見て、今回の事件に対する処分というものはあなたは適当であったかどうかというようなことも聞きたいし、それからどう処置するかというようなことも聞いてみたいと思いますけれども、おそらくいままでの雲行きから見ますと、どうせこれはまあ適当であったと思うというくらいのところで終わってしまうと思いますので、これで質問を終わりたいと思います。
  113. 大久保武雄

  114. 島上善五郎

    ○島上委員 同僚議員から相当質問しましたので、私は委員長に協力してなるべく簡潔にいたしますから、答弁も簡潔に、ただしはっきりと答弁してもらいたい。回りくどい、あいまいな答弁をされてはこちらが迷惑しますから……。  最初は、ぜひ法務大臣に伺っておきたい。この案件の処理にきわめて重要な焦点ともいうべき法律上の解釈について伺いたい。  公職選挙法によりますれば、公職の候補者となろうとする者の寄付の禁止もしくは制限、それから候補者の後援団体の寄付の制限、それから選挙民の後援団体もしくは政党の支部に対する寄付の制限、このように各種の寄付の制限がございます。私は塚田知事が二十万円を贈った行為は、この寄付の制限のいずれかに該当すると思うのです。私の解釈によりますれば、公職選挙法第百九十九条の二、「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)」が、選挙区内にある者に対して寄付をしてはならない。解釈上この項に該当すると思います。有罪であるかないかということの問題は別としまして、解釈上これに該当すると思うのです。すでに公認候補としてきまった以降ですから、それから公職の候補者に現にあったわけですから、その者が選挙区内にある者に対して寄付をしたのですから、この項に該当すると思いますが、法務大臣にこの法律の解釈を伺いたい。
  115. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 刑事局長からちょっと申し上げます。
  116. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま御指摘の条文は「当該選挙に関し、」ということが入っておるわけでございまして、当該選挙に関してであればもちろん当然これに該当するわけでございますが、本件は当該選挙に関してであるということにならなかったわけでございます。
  117. 島上善五郎

    ○島上委員 それで逃げようと考えておるのでしょうけれども、この法律の第二項には、第一項の適用にあたっては「通常一般の社交の程度を超える寄附は、当該選挙に関しする寄附とみなす。」こうなっておるのです。これは私は当然だと思うのです。そこで問題は、通常一般の社交の範囲であるかどうかということになってくるのです。これが中元として菓子折りを贈ったとか、お酒一本やったとか、たばこ一箱贈ったということならば、私は何もあえて問題にしません。二十万円、しかも借金をして贈っておるのです。これはどう考えても分不相応の贈りものであるし、通常一般の社交の範囲と解釈するということはよほどのこじつけの三百代言でもない限りは、すなおな解釈としてはそういう解釈は出てこないはずです。この二十万円が通常一般の社交の範囲であるかどうか、これもひとつできれば大臣に伺いたいのです。二十万円という中元が通常一般の社交の範囲であるかないか、いかがでしょう。
  118. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 一応刑事局長から申し上げて、私が申し上げます。
  119. 津田實

    ○津田政府委員 百九十九条の二の二項には確かに御指摘のような条文がございます。したがって、当該の金員が通常一般の社交であるということは、これは額の点から言い切れない問題だと思います。しかしながら、当該選挙に関連のない金銭の授受というものを絶対に禁止しておる性質のものではございません。それぞれ個人間にいろいろな事情があるわけでございますから、その事情に基づく金銭の交付ということはあり得るわけでございます。
  120. 島上善五郎

    ○島上委員 私は実はこの法律改正に関与しておるので、その改正当時のいきさつもよく知っておるのですよ。通常一般の社交の範囲というのは、非常にあいまいな解釈が成り立つ余地があるので、もっとはっきりしたがったのですけれども、しかし、あいまいな条文であるとは申しましても、おのずから常識的に判断できる限度というものがあると思うのです。この前選挙に関連して、直前におさい銭を五十万円あげた事件がありますが、おさい銭と称して五十万円あげて、その宗教団体を自分の選挙に応援させた。これは明らかに選挙の買収行為ですよ。もしおさい銭として千円か二千円あげたのであるならばこれは問題にならぬ。しかし五十万円もおさい銭をあげたということになれば、これは常識上単なる純粋のおさい銭ではありませんから、選挙違反になる。同様に「通常一般の社交の程度を超える寄附は、当該選挙に関しする寄附とみなす。」度を越えた寄附は、その選挙に関しする寄付とみなすとわざわざそれこそ法律は前項の抜け穴を補強しているわけなんですよ。二十万円を、さっきから何度も指摘されておるように借金して——私は聞きたいと思っておったけれども、おそらくその借金はまだ返していないだろうと思うのですよ。担保を提供した借金でもなかろうと思うのですよ。お貸しくだされの借金だろうと思うのです。政治献金ですよ。そういうような金を無理算段して集めて、二十万円を中元として贈る。どう考えても、すなおにこの法律を解釈しますれば通常一般の社交の程度を越える寄付であるか、一般の社交の程度の寄付であるかはおのずから明白であろうと思うのです。私は、通常一般の社交の程度を越える寄付であるかないか、それを聞いているのですよ。あまり回りくどく、どっちにでも解釈できるような答弁は困るのです。簡潔にお答え願いたい。
  121. 津田實

    ○津田政府委員 本件がここにいわれる寄付であるかどうかということは、その金の趣旨その他によってきまることでございます。額ももちろんその趣旨を考える上の一つの要素でありましょうけれども、額だけですぐに番付になるかならぬか、あるいは社交儀礼になるかならぬかという問題ではないと私は思います。
  122. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは一体寄付というものをどういうふうに解釈していますか。それだけのまとまった金を借りる。中元名義であろうと謝礼の名義であろうと、あるいは次の選挙を依頼する意図を持っていようと、私流の解釈ですけれども、借金を返したわけでもないし、金を貸したわけでもない、上げっぱなしだと思いますから寄付だと思いますけれども、寄付ではありませんか。
  123. 津田實

    ○津田政府委員 寄付とは法にその定義規定がございます。これは御承知のとおりだと思います。したがって、定義規定に照らしてみまして、寄付に当たるかどうかということが本件問題点になるわけでございます。
  124. 島上善五郎

    ○島上委員 私はただいまの答弁は納得しませんが、何回聞いても同じような答弁ですから納得しないまま先に進みます。  それでは伺いますが、四十二名のうち在職中の協力に対するお礼ということで受け取った人もおるし、お中元ということで受け取った人もおるし、次の選挙に関連するものとして受け取った人もおるわけです。これは先ほどついにその数字は明らかにしませんでしたけれども、取り調べの際にこの三通りの自白があったことは、もうすでに認められておるとおりであります。次の選挙によろしくということでその金を受け取って、そうして次の選挙選挙運動をしておりますれば、次の選挙に関連するものとして解釈して受け取り、また次の選挙に現実に選挙運動をしておりますれば、その者は選挙法に抵触すると私は思いまするが、いかがでしょうか。
  125. 津田實

    ○津田政府委員 その結果、本人のために選挙運動をしたかどうかということは一つの資料であることは間違いございません。しかしながら、それが選挙連動をしたから金をもらった者の金は直ちに運動報酬になるという性質のものではございません。これは渡した趣旨いかんということに帰着するわけでございます。
  126. 島上善五郎

    ○島上委員 渡した趣旨は、選挙によろしくと言われて受け取ったということで、渡した趣旨はそれで私は明らかだと思うのですがね。いろいろあとで補強調査とか補充調査とかで、身柄を拘束されていないですから自由に連絡をとれるのですから、都合のいいような供述をしておるかもしれませんけれども選挙によろしくと言われて、はい、わかりましたと言って受け取って、その者が選挙運動しておる。選挙の合法的な報酬の範囲ならばこれも問題にならぬかもしれませんけれども、二十万円というのはどう計算しても私は合法的な報酬の範囲には入らぬと思いますけれども、そういう受け取った者に対して選挙法違反という見地から捜査をしたことがありますかどうか伺っておきたい。
  127. 津田實

    ○津田政府委員 本件は、塚田知事が運動報酬として渡したかどうか、そのほか関連して本件は贈賄じゃないか、いろいろな問題の観点から取り調べをいたしたわけでありますが、しかしながら、本件が運動報酬として渡されたものということの嫌疑不十分の結論が出ました以上、これを供与を受けた者については、もはや本人の受け取った意思いかんを問うことなく、それは嫌疑不十分であることは当然でございます。
  128. 島上善五郎

    ○島上委員 それではもう一つ、別の問題について伺いたいのですが、五十万、七十万、百万と言う人もありますから、一千万以上になるようですが、一千万以上の金は借金である、金を借りて塚田知事が自分のふところから出したというところまではこの前の選挙法の特別委員会で御答弁いただきました。それでは私は私なりに、多分県と関係のある業者から借りたんじゃないかというような疑いも持ちます。あるいはそうではなくて、銀行から借りたんではないかということも考えられる。業者が一千万円も金を貸すなんていうことは普通にはあり得ないことでありますから、銀行から借りたんじゃないか、銀行から借りるといたしますれば、個人で借りるのですから、一千万円以上の金を借りるには担保を提供して、返済の条件を明らかにして、利息も明らかにして借りているんだと思いますが、そうしてその後返済をしておるんだと思いますが、そういう点はこの事件に関連してお調べになったかどうか。お調べになったらその結果をお答えいただきたい。
  129. 津田實

    ○津田政府委員 本件の金員は、いずれも金融機関から借り入れをしておりまして、担保を提供しておるものもあります。あるいは信用のものもあります。現在この借り入れ金がどういうことになっておるかということは、私は承知いたしておりません。この問題につきましてはもはや不起訴になった事件でございまして、これらの金員の行き先、あるいは返済の有無ということを、検察庁がさらに取り調べをするということは適当でないと思います。
  130. 島上善五郎

    ○島上委員 それではあなたに最後に伺いますが、不起訴にしましたのは、容疑がないから不起訴にしたんではなくて、公訴維持が困難である、十分に証拠がないために公訴維持が困難であるというので、不起訴にしたのである、容疑が全然なくて不起訴にしたのではない、というふうに私ども承知しておりますが、そのとおりであるかどうか。
  131. 津田實

    ○津田政府委員 要するに犯罪の嫌疑が不十分であるということで、嫌疑が完全になかったという趣旨ではもちろんございません。
  132. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは最後に、法務大臣に一点と、自治大臣に一点伺いますが、いまのことに関連して、現行の政治資金規正法選挙法の政治献金に関する規正がきわめて不十分である、抜け穴だらけである、これはもっと厳重に規正をしなければならぬ、規正を強化しなければならぬというふうに私は考えます。これはまた選挙制度審議会の一致した答申でもあったわけです。今後、政治資金の規正についてもっと強化する必要がないかどうか。単に今度の事件ばかりではなく、この種の似通った事件がちょいちょい起こっておりますが、こういう政界を腐敗、堕落せしめるような根源ともいうべき政治資金の規正について、もっともっと強化しなければならぬ、こう考えておりまするが、これについての大臣の所見を伺いたい。
  133. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 政治資金規正法の強化と申しますか、改正の案はときどき話の種になることは事実でございます。しかし、いまの現行法でも、みんなちゃんと守っていけば、政界浄化と申しますか、政界が明朗になるのには非常に役立つものだと私は思っておるわけでございます。  さらに、いままでいろいろやってきた結果、こういう点ももっと直したら、ああいう点も直したらという点があると思いますが、そういうことを直されることには私は賛成でございます。
  134. 永山忠則

    ○永山国務大臣 金のかからぬ選挙とあわせて、政治資金規正に関しまして、いま選挙制度調査会で審議いたしておりますので、御意思の点はひとつ十分審議をいただいて、そして答申を待ちたい、こう考えております。
  135. 島上善五郎

    ○島上委員 自治大臣、いまの答弁は少しおかしいですよ。政治資金規正法を強化するという答申はすでに出ておるのですよ。出ておるのを、政府与党が都合が悪いものだから骨抜きにして、相当たなへ上げて、今日まで忘れておるのです。ですから、出ておることは出ておって実行しないということは、やる気があれば、すでに出ている答申を法律にして政府が出せばよろしいのですから、ひとつ、——大臣はその当時のいきさつを御存じにならないからやむを得ないかもしれませんが、すでにかなり具体的な答申が出ておりますから、どうかそれを十分検討願って、規正の必要があるとお考えでしたら、なるべく次の選挙に間に合うように出していただきたいと思います。  それから最後に一つ伺いたいのは、これはほんとうの最後ですが、今度の新潟事件の不起訴処分によって、今後の選挙運動にかなり悪い影響を及ぼしていると思います。この程度なら何でもないのだからやりましょう。——これは少し極端かもしれませんけれども、悪い影響がいろんな形で及んでいると思うのです。現に来年の地方選挙を目当てにもうすでにいろいろな運動が行なわれているのですよ。きょうはもうおそいから私は一々の事例は申しませんけれども、たくさんの例を持っているのです。目に余る事前運動が行なわれているのです。この新潟の不起訴の結果は、このような悪質な、目に余る事前運動にさらに拍車をかける結果になると思うのです。それに解散風もだんだんだんだん強くなってくる。総理大臣は先だって、解散を考えてないと言ったけれども考えていないのじゃなくて、考えているけれども、解散をいつやりますなどと答弁できませんから、ほんとうは考えているけれども、きょうは答弁できませんということなんですよ。まあ、いずれにしても解散風はだんだんだんだん強くなってきて、坂から玉をころがすようにスピードアップされているのですよ。解散というものはそういうものなんですから。そこで、いまもう衆議院の選挙の事前運動もちらほら起こっておりますが、今度の国会が終わって、議員諸公が一斉に選挙区へ帰ったら、もう一斉に選挙運動が始まります。政党の政治活動の形における選挙運動ならば、これは当然で、奨励こそすれ、非難すべきものではありませんけれども、そういう形ではない、観光バスを連ねて、飲み食い、ごちそうをしたり、それこそ、お中元に名を借りて不当な高額なものを送ったりというような連動が行なわれるであろうことは、もうそれこそ火を見るよりも明らかです。今度の不起訴の結果が、さっき申しましたように、こういう悪質事前運動に拍車を加える。現に拍車を加えつつある。  そこで大臣に申し上げたいのは、選挙を所管しておりまする大臣ですから、選挙違反というものは、違反をやってからつかまえて豚箱へほうり込んだり、刑務所へほうり込んだりするのが能ではないのです。その前に不正腐敗の選挙運動を防止するということが一番の上策なんですよ。  そこで大臣に伺いたいのは、来年の地方選挙を目当てに、または解散を目当てに現に動いておりまする不正腐敗の選挙運動、こういうものを防止するための有効な措置をなさる考えがあるかどうか。ここで伺いたいのは、抽象的なことばではなくして、こういうことを考えて通達しておりますといったようなことがあったらぜひ伺いたい。抽象的なことばであるならば、それは何もやっていないということの証拠にすぎないわけですから、私は抽象的なことばは期待しておりません。具体的にこういうこと、こういうこと、こういうことをやります、あるいはやっておりますという御答弁があったら伺いたい。
  136. 永山忠則

    ○永山国務大臣 明るい正しい選挙をやるように、御存じのように、常時啓発の予算を持っておりますので、これらの事前運動等がないように、厳重にやるように、現在もやっておりますが、今後さらに一そう努力をいたしたいと考えます。
  137. 島上善五郎

    ○島上委員 もう一つ忘れていた。最後と言いましたが、もう一つ、簡単なことですから……。これは総理大臣に聞きたかったのですが、総理大臣はさっさと逃げてしまったものですから……。  先ほど総理大臣が、同僚の質問に答えて、自民党綱紀粛正態度について御答弁されました。国民から疑惑不信を持たれないように十分自粛いたします、こういったような答弁がありました。それは答弁としてはけっこうなことですが、不信疑惑を持たれないようにするということは、何らかの具体的な行ないが、党の指令なり示達なりが下部へいってそのとおり行ないとしてあらわれてこなければ、これまた何にもならぬことなんですね。そこで、私は、これに関連して、これは大臣というよりは、政党の総裁として佐藤さんに伺いたかったのですが、佐藤さんがいないので、石井さんも永山さんも、それぞれ自民党のそうそうたる有名幹部で、実力者でから、そういう立場でちょっと御答弁できたら——私にはその答弁責任を持ってできませんというならばしかたがありませんけれども、御答弁できたら、さっきのことに関連して伺いたい。もし総理大臣のさっきのことばがほんとうならば、去年の参議院選挙で、ものごい悪質違反をやったうちの一人を、名前をあげてもいいけれども、離党直後ではないが、少しほとぼりがさめてから復党させておるのです。もう一人残っておる。小林章という人。これも復党させようといって、せんだってあなた方の顧問会議で、復党させようということにほぼ意見が一致している。その時期は、本人は不起訴ですが、裁判の状況と関連してきめよう、こういうことを顧問会議か何かできめたそうですか、これは国民から不信疑惑を招かないような、自粛の態度とはおよそ逆だと私は思うのです。幾らほとぼりがさめたといっても、国民はまだ小林章のあの悪質選挙違反を忘れていませんよ。本人が不起訴になっても、あれだけ公務員の地位利用をやって、目に余る悪質違反をやって、国民の憤激を買っている事実は、半年や一年や二年では忘れません。これをもうそろそろ国民が忘れたろうと思って復党させたら、よけいなことかもしれませんが、私は自民党のためにとらざるところだろうと思うのです。しかるに、総理大臣は、さっきここでああいうきれいな答弁をしておきながら、一方では顧問会議で復党させようということを申し合わしているとは、一体何事ですか。これに対してお答えできたら、お答えをいただきたい。
  138. 永山忠則

    ○永山国務大臣 御趣旨の点は十分総裁へお伝えいたします。
  139. 島上善五郎

    ○島上委員 私はただいまの答弁には一つ一つ納得できませんが、納得できないからといって、これ以上質問してもしょうがないので、また別の機会にぜひ総理に伺いたいと思いますので、きょうはこれで終わります。どうもありがとうございました。
  140. 大久保武雄

    大久保委員長 華山親義君。
  141. 華山親義

    ○華山委員 法務大臣は、日本の法を全部総括的に見ておられる方でございますが、四月十四日のわが党との質疑応答の間に、私としてはちょっと見のがしがたいことがあるので、お聞きしておきたい。  と申しますことは、首長が自由に使える金であるならば、これをとめることはできないじゃないか、こういうふうに言っておられて、そして、「たとえば」と言って、「交際費」と言っておられる。交際費は自由に使えるものでございますか、お伺いしたい。
  142. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 首長が首長の交際費の類を自由に使ってよろしいというのは、合法的なものには使っていいという意味だと、そのときも御説明申したように、その意味において使っていいので、これは水は冷たいときは冷たい、あったかいときはあったかいと同じようなことを返事しただけでございまして、法に反するような、あるいは疑わしいうような場合にでも何でも使っていい、自由にというのは、その人の勝手気ままに、どんな場合でも使っていいということにはならない。それを使うには、十分なる注意を要することは当然だということは、私はあとで御説明申し上げたつもりなのであります。そういう意味でございます。
  143. 華山親義

    ○華山委員 道義的、政治的にはそういうことで私わかりますが、手続上はどうなんです。自由に使っていいのでございますか。
  144. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 別に法規に従ってやるだけのことでございますから、機密費なら機密費というものはどう使っていいかということが、そこに規定で書いてありますれば、それによって使うという以外に、使う場合には、いまのような心持ちでやっていくという以外にはないと思うのですが、いかがでしょう。
  145. 華山親義

    ○華山委員 あなたは、何か包括的な金というものを、村長さんなら村長さん——あなたは村長さんということを言っておられるけれども、村長なりあるいは知事なりが一月に幾らという金は、これは御自分で使ってもいいんだ、そういう金があるんだというお考えに立っておられるんじゃございませんか。
  146. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 そのときも申したように、使っていい金があればということを申しておるはずであります。
  147. 華山親義

    ○華山委員 使っていい金があるということは、その人が自由に、自分が包括的な金をもらって、そうしてふところに入れておいて使える、こういう意味なんですか。
  148. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 いろいろな場合があるかもわかりませんが、私どういう場合にどうということは知りませんが、それは予算がどういう形でか盛られておって、その人の自由裁量にまかされたというようなものもあるかもわからないと思っておるのでございます。
  149. 華山親義

    ○華山委員 そこをお聞きしたいのです。私は、昨年東京都知事の交際費の使い方につきまして、自治省ともいろいろ御協力を得て、自治省との間でいろいろ質疑応答をいたしまして、交際費というものはそんなに自由に使えるものではないということが明らかになった。  交際費を使うには、とにかく一々の証憑書類をそろえて、そうして一々の決裁をとって、そのときそのときの一件一件について命令が出なければいけない。そういうことを御存じないのじゃないですか。そのとうりなんですか。
  150. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 そういうふうにきまっておれば、そのとおりにすべきものだと思います。
  151. 華山親義

    ○華山委員 きまっておればということは、どこできめるのですか。
  152. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 いろいろな場合によって違うと思うのでございます。あなたはいま自治省との場合をおっしゃってそうだとおっしゃるなら、そのとおりであろうということで、私はその前提として賛成をいたしておるわけでございます。
  153. 華山親義

    ○華山委員 だから私は法務大臣に申し上げるのですが、これは地方財政法できまっておるんですよ。そういう使い方ができないようにきまっておる。いろいろの場合とか予算の上でとか、そんなものじゃございません。ほかの経費と違った面は交際費には何もないのです。一般の事務費と同じなんです。ただ考えられることは、香典であるとか、そういうどうしても証憑書類がとれないような場合にはやむを得ない。これはしかしほかのことだってある。そういう認識にあなたは立って、あの答弁をなすったのか。そういう点は、私が去年の都議会の議長の交際費にからんでせっかく明らかにした点です。その点をあなたは間違えてお考えになっておるとたいへんですよ。法務大臣がこういう答弁をしたんだ、自由に使える。——私と自治省との間に質疑応答を重ねた結果、特に自治省は各府県にちゃんと通牒を出して、そういう使い方はいけないといっている。そのあとに石井法務大臣が、あたかも何かポケットマネーでももらって、それを使えるんだ。ただポケットマネーといったって、自分の金を使ってはもちろん悪いんですけれども、そういうふうにしてはいけないもんだということを御認識の上で、なさっていらっしゃるのか。予算の上でいいとか、条例の上でいいとか、そんなものじゃありません。地方財政法にきちんときまっておる、その点につきまして自治大臣、自治大臣がわからなければ、事務当局でもよろしいが、私の言うことを裏づけていただきたい。
  154. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 地方公共団体における交際費の取り扱いにつきまして、先生の御指摘のような国会の御審議もございまして、私どものほうで昨年通達を出しましたのでございます。その趣旨は、交際費の支出につきましても、他の一般経費と同様に地方自治法に定めておりまする支出の手続、具体的に申しますと支出負担行為があり、支出命令を受けてそして支出をするということでございます。なお交際費については、先ほども指摘のございましたように、正当債権者の領収書を受けておくというのがたてまえでございますが、その性質によって、社会通念上領収書を受けることのできないものについては、支払い証明等、担当者がその使途を明らかにしておくようにすべきだというような趣旨の通達を出して指導をいたしたのでございます。
  155. 華山親義

    ○華山委員 局長に、最後に一言だけ伺っておきます。  村長が一部の村会議員に、たいへんありがとうございましたといってお礼を出した、中元をした、そういうふうなものでもきちんと証憑書類をとっておかなくちゃいけないのであって、中元だから十万でも五万でもこれは受け取りは要らない、こういうふうにはなりませんね。
  156. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 中元を出すことも交際費の使途の一つとして可能でございます。その場合の取り扱いにつきましても、先ほど申し上げたような処理をなすべきもの考えます。
  157. 華山親義

    ○華山委員 それでは今期の中元分幾らというふうなことで、たとえば村長がことしの中元、議員に出す中元幾らということで百万円を出せ、そうして村長の受け取り書だけでよろしゅうございますか。
  158. 佐久間彊

    ○佐久間政府委員 中元につきましては、村長の受け取りゃ証明だけということでなくて、これはそれを受け取った方の領収書を受けておくということが当然の取り扱いと存じます。
  159. 華山親義

    ○華山委員 石井さん、そういうことでございます。あなたは法を統括しておるのでございますから、自由に使える金なんということを言うというと、いまここにいられる方々も、交際費というものは何ぼ使ってもいいようなふうにお考えになっているようですし、そういう人がたくさんありますけれども、そういうものじゃないということを深く認識しておいていただきたい。
  160. 大久保武雄

    大久保委員長 これにて法務委員会地方行政委員会連合審査会の議事は終了いたしました。  散会いたします。    午後五時四十三分散会