○堀委員 私は、数年前に
証券会社の事故の問題を相当長期間にわたって取り上げました。そこで一番問題になったのは何かというと、この印鑑の問題なんです。
株式の売買だけでなくて、売買の請求書とか、いろいろなものがあるのですが、ともかくそれに三文判を押して事故が非常に起きておるわけです。本人は売ると言ってないのに売ったとか、あるいは信用取引の証拠の
株式に入れてあるものがいつの間にか売られておるとか、非常に事故が多いのです。その経過を調べた結果、やはりこれはすべて届け出印鑑によって処置をしなければならぬという規制をするのが正しいという方針できておるわけであります。だから、
商法がいまのその問題について届け出印鑑
制度をとっていないのなら、届け出印鑑
制度をとるのが他との法律の権衡上当然だと思うんですよ、これは逆行ですよ。そうして
あとのほうを見たら、
会社に委託とか、信託
会社に委託していろいろと、こうなるのですが、そんな複雑な手数は、普通は実際の
株主はやらないんですよ。その問題はどうなっておるかというと、大体
株券を
会社に委託しておるのが多いわけです。委託をしておるやつは、今度はそれがどうなっておるかは、いまの話ではないですけれども
——よろしゅうございますか、気がついたときには善意のところに渡っておる。自分は
証券会社に預けてあるからだいじょうぶだと思っておる。ところがあにはからんや、とうの昔に売られていて、さあ
増資の払い込みも何も来ないからと思って
会社に行ってみたら、いや、それはとうの昔に売られて、あなた、何もありませんよ、こうなるわけです。そうしてそれはどこかへいって、ちゃんと善意なる取得者が持っておる。そういうやつはチェックしようがないんですよ。ここに書いてある、形式的には、いや、心配なら委託しなさいとかなんとかありますが、
株式の売買をやっておる連中は、実際には銀行や信託やなんかには委託しないんですよ。だから、そうではなくて、
証券事故を防ぐためにも、こんなことをしてはいかぬと私は思うのです。だから、これは届け出印鑑によって処理する以外には売買ができないというぐらいにして初めて事故の防止ができるんですよ。これは
証券局は、過去における事故
——最近だって事故はあるわけだけれども、ずいぶん私はこの事故の問題を
大蔵委員会でやってきたわけです。そうして取引所にも事故防止のための処置をさせ、いろいろやってきているけれども、その盲点は何かといったら、ここにあるんですよ。三文判で適当に処理ができるということにあるんだから、それは手数がかかるかもしれないが、しかし、投資家
保護を考えるのは
証券会社の当然の姿勢ですよ。だから私は、これまでそれがルーズであったので少なくとも、どうしても届け出印鑑の
制度にしろということを
証券会社に対して要求しておる際に、こっちがこんなことになったんでは、これはどうにもならぬことになるわけです。これは
株式流通上における非常な重大問題で、皆さんが法律でここへ書いておられるようなことは形式論としては成り立つかもしれませんよ。しかし、実際の中で、いろいろな事故がこれから起きることを防ぐ措置はないではないか。いまのように盗難にあったというのは非常にはっきりわかるわけですよ。多くの
株主は、たいてい自分の株を買ったら
会社に預けておる。いまは、あなたの株を幾らお預かりしておりますという報告を出させて、とらせるようになっていますよ。なっていますけれども、それは何ケ月かに一回のことですから、その間にそういう不良なる
証券会社の職員が自由にやって
——過去ずいぶん私はそれを手がけてきた。そうしてその結果は、善意なる人がほとんど報われないわけです。
会社側では、知りません、その職員のやったことで
会社の責任ではありません、こういうかっこうで逃げてしまう。実際にはそうなっていない。特に最近はどうか知りませんが、その当時は、
証券会社の幹部の諸君が、これは文書になっておるから明らかでありますけれども、事故が少々起こるのはあたりまえなんだ、そんなのは、もうけて返せばいいという言い方をしておる
証券会社の
経営者が実際におるんです。それが正会員の中にあるんですよ。そういう
証券会社の実態を踏まえて、あなた方はあまりに善意にこの問題を簡単に考え過ぎておる。私は、こっちはそっちの方向ではなくて、裏書きをきちんとして届け出印鑑以外は売買は無効であるということに規制をしてこそ、正常な
証券市場の発達が望まれるんですよ。私が
大蔵委員会で、
証取法から、
公認会計士制度から、監査基準から、いろいろと議論をして、今日それが法律化されてきておるのも、あげて投資家をいかにして
保護するかということで、それなくして
株式のいろいろな問題というのは発展しないですよ。あるいは、
発行会社なり
証券会社の
利益のために考えられておって、これによって
株主は何ら
利益するところはないと私は思う。その点について、どうでしょうか、大臣。私が言っておることは、私の
大蔵委員会における長い
証券問題に対するいろいろなかかわり合いの中から出してきた
一つの結論なんです。学者や何かではわからないことなんです。この点どうでしょう、法務大臣。