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1966-04-22 第51回国会 衆議院 法務委員会大蔵委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十二日(金曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員   法務委員会    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君    理事 濱田 幸雄君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君       鍛冶 良作君    唐澤 俊樹君       四宮 久吉君    田中伊三次君       千葉 三郎君    中垣 國男君       馬場 元治君    濱野 清吾君       早川  崇君    横山 利秋君       吉田 賢一君    田中織之進君   大蔵委員会    理事 吉田 重延君 理事 堀  昌雄君       岩動 道行君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    木村 剛輔君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       西岡 武夫君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       横山 利秋君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         国税庁長官   泉 美之松君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    加治木俊道君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    中橋敬次郎君         専  門  員 高橋 勝好君         専  門  員 拔井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第一二  七号)      ————◇—————   〔大久保法務委員長委員長席に着く〕
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより法務委員会大蔵委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、案件を所管する委員会委員長であります私が、委員長の職務を行ないます。  商法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  3. 大久保武雄

    大久保委員長 本案についての趣旨説明は、お手元に配付してあります資料によって御了承願うこととし、これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  4. 只松祐治

    只松委員 今回の商法の一部改正は、表面上は株主保護という名前がつけられて、そういうふうなことが言われておるわけですが、実質上は現在一般のいわゆる資本家と申しますか、株主というものではなくて、経営権というものが過大な力を持ってきております。その経営に参加しておる、いわば大株主保護をますます強める、こういう結果をもたらすのではないか、こういうふうに思われるわけです。個々の条文は法務委員各位の御審議にゆだねることにいたしまして、私は大蔵委員会のほうの立場から、いかに現在でもなおかつ経営権過大で、零細株主というものがひどい目にあっておるか、いわば粉飾決算の問題をも兼ねまして、そういう面から御質問をしてまいりたいと思います。  まず、抽象的なことをお尋ねいたします。もちろん私たち社会党でございますから、資本主義そのものには賛成いたしませんが、しかし、現在は残念ながら資本主義社会なんです。資本の権の行使というものが行なわれているわけです。しかし、とは言っても資本絶対ではなくて、資本経営労働というふうに、おのおのの権利が分かれて資本主義経済というものが行なわれている。しかし、実際上は、この経営権というものが、いま申しますように非常に過大になってきておりまして、資本、特に零細資本というのはほとんど無視されておる。あるいは労働という立場も、きわめて否定されてきております。抽象的になってたいへん恐縮でございますが、冒頭にそういうものの一つとして、経営権会社経理内容を自由自在にしておるわけです。いわば、一言で言うならば、粉飾決算をほとんどの会社が行なっておる。これは、大蔵証券局に出ております決算と、それから大蔵の同じく国税庁に出ております税務報告とが、ほとんどの会社が違っておるということが端的にそのことを明らかにしておる。これは税務署に報告しておるのが正しければ、商法上の違反になるわけです。それから証券局に報告しておるのが正しければ、税法上の違反になることは、私たち大蔵委員会でたびたび指摘してきておるとおりであります。たまたま山陽特殊鋼というようなあまりにもばかばかしい粉飾決算の実態が出まして、初めて刑法上の適用があったわけですけれども、昨年も私がその問題を、刑事局長さんだったですか、お見えいただきましてお尋ねいたしましたときには、全然そういうことの適用はいままでしたことがない、こういうお話でございました。そこで、証券局、あるいは法務省国税庁、それぞれから、どうしたならば粉飾決算をなくすことができるかということについて、冒頭に、抽象的なお話で失礼でございますが、お尋ねいたしたいと思います。
  5. 加治木俊道

    加治木説明員 便宜、証券局のほうからお答えいたします。  お説のとおり、粉飾の事実は絶無にはなっておりません。戦後特に株式民主化ということが行なわれまして、また企業立場からいいましても、特定の少数金持ち階級資本調達を依存するということでは、企業の必要とする十分な資本調達も必ずしも十分行なわれない、こういう実情になっております。したがって、一般大衆層に積極的に資本参加していただいて、資本調達しなければならない、こういう実情になっております。それだけに、当然、経営者あるいは企業といたしましては、株主保護、いかに少数株主といえども、当然守らるべき利益権利というものは保護、確保されなければならないというふうに考えております。残念ながら、去年お説のような事件もあったわけでありますけれども、証券局といたしましては従前からその点については意を用いておったのでありますが、その後さらに、限られた人員でございますのでなかなか十分な、御期待に沿うほどのことはできない点もございますけれども、重点的に審査を強化いたしまして、できるだけこういった弊風というものを一掃したい、かように考えております。
  6. 新谷正夫

    新谷政府委員 証券局からお答えございましたことと同じ意見でございますが、商法の観点から申しますと、確かに株式会社経理というものが、はたして現行法制のままでいいのかどうかということは、一つの問題になるのではないかと思うわけであります。株主層が非常に広範にわたりまして、大株主のほかに小さな株式を持っておる一般大衆投資家立場ということも、十分考慮しなければなりません。株式会社法におきまして、計算書類の承認あるいは監査制度、あるいは検査役制度、いろいろの制度を設けておりまして、会社経理が適正に行なわれるようにということを配慮されておるわけでございますけれども、これのみではたして十分かということになりますと、これはまた研究の余地があろうかと思うのでございます。商法とは直接は関係ございませんけれども、公認会計士あり方等につきましても、現在いろいろと検討を加えられておるような状況でございますので、商法の面からいたしましても、やはり今後の問題といたしまして、そういった株主保護ということをさらに十分に頭に置いて検討すべきものは検討していく必要があろうと思うわけであります。  今回の商法改正点は、大別いたしまして七項目ございますが、いずれも株主保護に欠けてはならないということで、いずれの項目につきましても、株主保護の措置は講じたつもりでございます。御意見のように、少数株主保護ということは確かにたいへん重要な問題でございますので、今後の問題といたしましても、十分にその点は検討する必要があるもの、このように考えております。
  7. 泉美之松

    泉政府委員 お答えいたします。  税法立場といたしましては、御承知のように、法人税申告書は、法人確定決算に基づいて、それに税法の特有の規定に基づく申告調整を加えて申告を出していただくということになっておるわけでございます。したがいまして、お話しのように、粉飾決算の問題は、まず、商法に基づくところの確定決算が、正しいその法人利益経理上明らかにする、これが前提になるわけでございまして、その法人の正しい経理を基礎にして法人税申告書が出されることが望ましい、こういうことになりますので、あくまでも商法に基づく法人決算が正しいその会社利益状態を明らかにするものでなければならない、これが第一でございます。  ところで問題なのは、現在の税法で、課税所得標準である所得を計算する場合におきまして、商法配当可能利益を計算する立場、これは御承知のとおり、株主及び債権者保護というのが前提になっております。また、企業会計立場ですと、企業それ自体保護ということが前提になっておりまして、それと、税法と、この三者の間におきまして、大筋は一致いたしておるのでございますけれども、中に違った面が出てございます。たとえば、貸し倒れ引き当て金につきまして、法人税法におきましては、業種別一定の率までの貸し倒れ引き当て金引き当て損金と見るということになっておりますが、商法の面からいたしますと、過去の貸し倒れ引き当て実績から見て、税法上許容される限度一ばいまで積まなくても——それを一ばい積むと配当可能利益を減殺することになるというような面がありますが、税法上は一定限度以下の貸し倒れ引き当て金引き当てなら、これを損金として認めるという立場をとっております。そういった点におきまして、両者の間にいろいろ違いが出てくるわけであります。その違いは、それぞれの目的からいたしましてやむを得ない面もございますが、できるだけこの違いをなくすということで、多年の間、商法税法、あるいは商法企業会計企業会計税法、これら三者の間の調整につきましていろいろ努力いたしてまいっておるわけでございますが、今後もそういった面におきましてさらに努力を重ねていく必要があろう、このように考えておるわけでございます。
  8. 只松祐治

    只松委員 こういう問題は、抽象的に論議しましてもなかなかむずかしい問題でございます。二つございまして、一つ税法上の問題でございますが、一つは具体的な会社の例をあげましてお尋ねをしてみたいと思います。これはそれほどいい例ではないと思いますが、私はもっといい例をここに持ち合わせておるのですが、しかし、それを出しますと、山陽特殊鋼じゃないかもしれないけれども、あまりにも社会的に与える影響が大きいことをおそれますので、きょうは私はそれを出さないことにして、したがって、それほどぴしっとした例ではございませんが、お伺いしたいと思います。  まず、この株主がいかにいじめられておるか、投書を読み上げてみたいと思います。前略をいたしまして、山一証券会社の支所に何か成長株はないかと依頼したところ、この株を推奨してくれ、一株七千五百円で百株を買いましたのに、こんな状態に相なり、いまさら処分もできず、どうにもなりません。こんな場合、株主だけが泣かなければならないものでしょうか、はなはだ心外に存じます。これは日本アドレソグラフ・マルティグラフ株式会社という会社でございます。この人はいわゆる七千五百円で株を買った。現在株は、あとお尋ねをしますが、いま幾らですか、五百円前後でございますか、一時は二百五十円ぐらいまで落ち込んでしまったわけです。この問題を通じて多少御質疑をいたしたい。証券局のほうで、この会社設立年月日設立当時の株式総数株式発行価額、おもな持ち株主等々についておわかりでしたら、お答えをいただきたい。
  9. 加治木俊道

    加治木説明員 お答えいたします。  正式に証取法上の届け出書あるいは報告書が出てまいったは三十七年でございますので、御期待に沿うような的確なお答えができるかどうかわかりませんが、私どものほうで承知いたしております限りでは、設立昭和三十二年五月でございます。三十二年五月設立当初は資本金が五千四百万円、その後三十七年六月二十日に一億六千二百万円、当初設立の際は公募でなかったようでございますので、証取法上の手続はとっておりませんが、三十七年六月の増資によって一億六千二百万円にいたしたのでありますが、このときに届け出書が出てまいっております。株主は、米国アドレソグラフ・マルティグラフという会社、これが私のほうの資料によりますと、六〇%の大株主であります。その次は極端に下がりまして、エルマー・E・ウエルティという人が三・〇二%ということでございます。あとは一%前後の株主でございます。株主数は、去年の六月三十日現在で六百三十九名になっております。役員は、会長がクラーク・E・テーラー、社長は三島通隆、こういう人になっております。
  10. 只松祐治

    只松委員 いま文書を読んだのはその一人ですが、この会社はいま六百三十九名、六百四十名ぐらいの株主がおられるわけです。経営に参加されておる人は、それなりの給料をもらったりなんかいろいろしているわけです。全然経営に参加しておらない単にこの株を持っておる六百有余名の人というのは、最高八千円ぐらいの株をつかまされて、そして現在は五百円前後の株でどうしようもなく、十分の一程度に下がって困っているわけですね。会社にいろいろかけ合っても、どうにもならない、こういう状態でございます。これを百株、二百株と買って、七十万あるいは百四十万というような金をすった人も、たくさんおいでになるわけです。いわゆる経営権があまりにも過大で、経営者がかって気ままなことをしますと、弱小資本家というものは非常に困難な目にあうということの端的な一つの例でございます。それに、これには当然粉飾決算というのが行なわれております。  それから、これはどうもまだ時間がございませんで、的確にとらえていないわけでございますが、この株の発行額面は五百円でございますね。十株券のやつが五千円で出している。この発行当時も、関係会社帳簿等を見ますと、いろいろ問題があるようでございます。一説には、これは全部が全部発行されないで、一部の株券しか実際上は発行されない。そうしてたとえば五百円の額面株券のやつを千円以上のものに見積もって、そこである会社がそこに払い込んでしまった。残った実際上払い込まない株というのを適当に分けた、こういうようなこともいわれておるわけですが、私はそこの確証を今日この席上で断言し得ませんので、いわれておるという程度にとどめておきますけれども、発行当時からそういういろいろなことがいわれておる。そういう不確定な前提でたいへん申しわけないわけでございますが、そういうことで、会社設立に際して発行する株が——その前に、もし証券局のほうで発行当時のそういう状況を、私もそこまで前に質問を示していませんので、あるいは調べてないかと思いますけれども、おわかりになったら、ちょっとそこのところをお聞きしておきたい。
  11. 加治木俊道

    加治木説明員 先ほど申し上げましたとおり、私のほうは証取法上の手続がとられました以後の数字等を把握しているのでありまして、発行当時どういうふうに行なわれましたか、ただいまのところ、承知いたしておりません。
  12. 只松祐治

    只松委員 これはこの会社だけではなくて、大体一般的にも、そういう会社設立に関していろいろな操作が行なわれておることは、御存じのとおりでございます。そういたしますと、商法上の、たとえば商法の百七十七条に関する問題であるとか、あるいは払い込み金額過大になっておれば、二百八十五条ノ六の問題だとか、いろいろな問題が出てくるわけです。しかし、実際上粉飾決算の問題でさえも、刑事犯罪と違いまして、商法上のこういう問題は、刑事事件民事事件、いわゆる犯罪要素を確定するということは、なかなか困難になってくるわけです。ましてこういう会社設立発行、その前後に行なわれる株の操作、大株主や何か等に対するこういう操作というのは、的確にとらえることは絶無と言っていいほど、これは困難なしわざでございます。しかし、実際上はそういうことが行なわれておるやに私は聞いております。この問題も、もう少し私は時間をかけて明らかにしてまいりたいとは思っておりますけれども、法務省のほうにおいて、株の発行当時にこういう違法行為等があったというようなことを、いままで探知されたことがあるかどうか、あるいはそういう問題についていままで監視をされたか。何か不正な行為が行なわれたか。これは言いますように、刑事事件やほかの民事事件と違って、犯罪構成要因というものを見出すことは、なかなか困難でございますけれども、一般的な株主保護という立場からいうならば、そういうこともきわめて微妙なことではございますけれども、重要な問題でございますので、お聞きをしておきたいと思いますが、いかがですか。何かありますか、こういう事件が。
  13. 津田實

    津田政府委員 ただいまお尋ね会社につきましては、昨日御質問があることを承知いたしまして、若干のことは証券局その他から資料を得ておりますけれども、検察庁の系統におきましては、ただいま何らこの事件についての問題はございません。御承知のとおり、会社のかような事件につきましては、よほど確実な捜査をし得る端緒がなければ、この捜査に着手するということについては、いろいろの反響もありますので、慎重を要する問題だと考えております。したがいまして、確実な捜査端緒を得れば、当然これは捜査すべきものと考えておりますが、現段階におきましては、この会社については、何ら検察庁の問題とはされておりません。
  14. 只松祐治

    只松委員 この会社だけでなくて、一般的に株の発行当時にいろいろなこういう操作があるやに聞いておるわけなんですが、そういう点で、いままで事例がございますかどうか。あれば教えていただきたい。なければ、こういったものはむずかしくて全然できないということでもけっこうでございますが、ひとつお教えをいただきたいと思います。
  15. 津田實

    津田政府委員 一般的に申しまして、預け合いに関する事件でございますとか、目論見書に関する不実記載事件、これは従来もやった例がございます。したがいまして、さようなものが他の事件捜査の間に端緒を得れば、当然にこれはやるべきことでありますし、そうでなくても、端緒さえ得れば当然やることでありますが、全然そのような事件をやっていないということではございません。預け合いの事件は、過去においてしばしばやった例がございます。
  16. 只松祐治

    只松委員 そこで、仮定のことになりましておそれ入りますけれども、要するに五百円株券をたとえば千二百五十円で払い込んだ、こういうことになりますと、これは当然にいま私が条令を一、二引用いたしましたような商法問題が出てくると思うのです。したがって、こういう点に関しまして、私も調べますけれども、いろいろ大蔵省から出ております大蔵省管掌のやつや、会社自体から出しております報告書等を見ましても、なかなかあちこちつじつまの合わない、納得のいかない問題がありますので、ひとつ御調査をお願いしておきたいと思います。  それから、この会社監査報告書を見ましても、この監査された方々がいろいろ否認をされておられます。たとえばここにあがっておるやつだけを見ましても、幾つかありますが、「売上高計上について」「売上高二億一千四百万円中約三千三百万円の繰上計上分が含まれており、この結果、当事業年度の財務諸表は次のような影響を受けている。イ、売上高過大表示約三千三百万円、ロ、売掛金の過大表示約三千三百万円、ハ、売上原価過大表示約一千八百万円」等々のように、この経理内容を、なかなか公認会計士さんは——いま別室で大蔵委員会がありまして、公認会計士の問題が論議されておりますが、もう少し公認会計士の力を強くしよう、こういうことの趣旨でございます。強くしようというくらい、現在公認会計士さんの立場は弱いわけですが、その弱い公認会計士さんが、こういうこの会社の不正を堂々と指摘をしておるわけであります。この弱い公認会計士さんが指摘するくらいですから、中はもっと複雑怪奇といいますか、あるいは不正なものがあるだろう。したがって、私は八千円からした株がいま二百五十円に下がったり、五百円に下がっておる、こういうことになると思うのです。直接監督に当たられておる大蔵省のほうにおいて、この会社内容、したがって、また株がどうしてこんなに暴騰したり、暴落したか、何かそこに操作されたような要因があるのではないか。あるかないか、ひとつお知りの限りお答えをいただきたいと思います。
  17. 加治木俊道

    加治木説明員 株価変動の原因は、私から的確に実は御説明申し上げる能力を持ち合わせておりませんが、確かに当初かなり高く、五百円株ではありますけれども、評価されたわけで、最近は五百円前後という、そういう変遷を示しておるようであります。まあ会社内容等があるいは当初相当大きく期待されておった、あるいは需給関係から一般に売り出された株式数が少なくて、大きな期待でもって需要はかなり殺到しているということでありますと、会社内容以上に評価されることもあるわけでありますが、その間に不当不正ということが行なわれておりますれば、これは当然証取法の問題になるわけでありますが、ただいまのところ、そういう意味での不正が介在しておったという事実は把握されておりません。会社内容について粉飾があるかどうか、実は私のところでは、現在のところまだ粉飾の事実は把握されておりません。また、かりにそういういろいろな情報あるいは報告書数字等から、不審な点があれば取り調べてみたいと思っておりますが、まだその辺のところもはっきりきめかねております。
  18. 只松祐治

    只松委員 これは、こういうときにはあなたのほうに出ると思うのでありますが、「新株式発行目論見書」というのが会社から出た。これによって公認会計士がいろいろ忠告している、こういうことやなんか、全然御存じなかったですか。
  19. 加治木俊道

    加治木説明員 三十六年の八月から三十七年の一月について、御指摘のような公認会計士意見が付された報告書が出ております。こちらで証取法上の増資手続をする際の目論見書段階では、一応不審な点はそのとき発見されなかったということだと思うのであります。これは直接財務局でやっておりますけれども、もしそういうことがありますれば、当然所定の手続をとって訂正させるなり、あるいは届け出書効力発生をとどめるなりするはずでありますけれども、増資が行なわれているという実績を示しておりますので、不審の点が当時は発見されなかったのではないかと思うのであります。
  20. 只松祐治

    只松委員 この株式は、三十七年の三月に公開されているのですね。そのとおりですか。
  21. 加治木俊道

    加治木説明員 ちょっと公開の時日ははっきりいたしませんが、三十七年五月二十八日に増資届け出書効力が発生いたしておりますので、その以前に公開されておらなければならないので、多分そういうことだったと思います。
  22. 只松祐治

    只松委員 三月に公開して、これは三十七年一月三十一日の決算でございますが、結局公開の前にこういう粉飾決算会社側が出してきたわけですね。それで、その弱い公認会計士さんでさえも、あまりにも粉飾の度が過ぎるということで警告を発しておるわけなんです。それで、そのときの株価をどんどんつり上げておる。関係しておる会社は金十証券ですが、ここで操作をやったわけですね。そういう株価操作するというのはここの一社だけではございませんけれども、非常に微妙で、単に一般論でなくて、時期というものがきわめて重要になってくる。それと粉飾した時期というものが問題になってくるわけですね。一般論で、何でもないときに粉飾したというのと、そういう売り出しとかあるいは何か株価をつり上げるというときに粉飾したのとでは、たとえばこれは六百名からの株主に与える影響というのは、全然違ってくるわけですね。こういう一般論で論じましたり、事実を抜きにして論じても、なかなかぴんと討論に焦点が合ってこないのですが、したがって、ほんとうは当事者を連れてきて、何月何日に株を買ってどうしたということでないと、なかなかぴんと論が合ってこないと思いますけれども、そういうことはなかなかできませんから、私は一般論的なことを言っているわけですが、いまこの決算と株の発行時期、そういうものの一点だけを見ましても、それで証券会社等のことをいろいろ私が聞いておる範囲のことを考えても、きわめて悪質な、と申しますか、操作粉飾というものが行なわれておる。こういうことになって、そして第三者の善良な株主に、いま私が冒頭に読み上げましたように、たいへんな迷惑を及ぼしておる。百株買った人でも、七十五万円で買っているわけですね。それがいまわずか五万円ぐらいにしかならない、こういう形になりますと、これはへたなそこいらのどろぼうや何かよりよっぽど悪いんですよ。そういうことが巧みに株式市場を通じ、あるいは商法を悪用して行なわれておる。こういうところに、私たちは、一番最初に言いましたように、資本主義を否定しますけれども、憤りを感じる。こういうことは、ほんとうは社会党の私でなくて、自民党の方が質問されるのが、本来ならば健全な資本主義を育成するために当然じゃないか、私たち質問するのは多少場違いかと思いますけれども、あまりにもこういうことが公然と行なわれ過ぎておるということで、私も多少憤りを感じまして、この一例を引いて——先ほどから申しますように、もっと悪質なものを私は持っております。それは金融機関も加わった問題で、完全な粉飾決算を行なっているのがありますが、それはもう影響が大きいので、私はきょう出さないわけですが、まあ千円が五百円に下がったというなら、経済の変動でいろいろな、社会党が指摘をしておるように経済成長政策の失敗で、それはなるほどということはありますけれども、八千円のものが二百五十円まで落っこちるということは、あまりにも操作がひど過ぎる。こういうことを全然証券局も知らなければ、どこも知らない、やみからやみへ葬られるというのでは、あまりにも日本の資本主義社会というものは不健全過ぎやしないか、こういうことを私は思うわけです。  そこで、まあきょうあなたのほうも詳しく調べてきておいでにならなければ、また他日でもけっこうでございますけれども、この株の発行時期、それからその当時の会社経理内容粉飾決算、そういうものについて、お知りならば教えていただきたいし、知らなければまた他日教えていただきたいと思います。
  23. 加治木俊道

    加治木説明員 私のほうは、証取法上の手続をとられた三十七年、その後の計数を把握しているだけでございまして、当初設立の当時にどういうことが行なわれましたか、あるいはまた増資の際に、ちょうどまあそのころ、三十七年でございますが、公認会計士から指摘されておるような事項があるのでありますが、その報告書が参ったのはだいぶあとになっておりますので、その段階ではそういう事実は承知していなかったということでございます。お尋ねの的確な資料は、ただいま持ち合わせがございません。
  24. 只松祐治

    只松委員 法務省のほうとして、まだこれは捜査もされておりませんし、あれですが、ぼくはまた特にこの会社だけに限るわけではございませんが、これが事実といたしまして、こういう悪質なものがあれば、私は当然に、一般の健全な資本主義社会における会社経営と違って、やはりこういうものは取り締まっていかなければならないと思いますけれども、それに対する御方針なり、具体的にこういうものがありとするならば、どういうふうにされるか、お考えを聞いておきたい。
  25. 津田實

    津田政府委員 かような会社の計算をめぐる諸般の犯罪は、もちろん商法に規定されておりますし、その他証券取引法にも規定されておるわけでございます。御承知のとおり、山陽特殊鋼につきましては、これにつきまして捜査をし、起訴もしろということになったわけでございます。先ほども申し上げましたようにやはりかようなものにつきましては、株主債権者その他の保護のために十分徹底的な取り締まりを行なわなければならぬことは、私どもとして十分考えておるところでございます。しかしながら、問題のむずかしさというものはやはり一般の犯罪に比べるべくもない点が多々ありますし、ことに捜査に着手してからの諸般の影響ということを考えますと、相当慎重を期せざるを得ない面も多々にあるわけであります。したがいまして、先ほども申し上げましたように、確実な捜査端緒があれば、当然これは捜査に着手するわけで、そうでなくもと、常時諸般の情勢あるいは犯罪等からかような問題の捜査端緒を得ることに努力すべきことは当然であると考えておるわけでございますが、現段階におきましは、さような意味におきまして、大蔵省証券局等ともある種の連絡をとっておる次第でございます。山陽特殊鋼以後、これらの問題が少しずつ出てまいっておりますので、それらにつきましても、十分できるだけのことはいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  26. 只松祐治

    只松委員 まあ私はさきにも申しましたが、こういう粉飾決算の問題とうらはらをなすのは、税務署、国税庁関係でございまして、したがって、こういうふうに赤字でありながら黒字のように出したりして、証券局に報告をする。証券局監修という名のもとに、いろいろ会社報告書というものが出されておる。一方、国税庁のほうには、赤字だということで税金は一銭も納めない。こういうことが公然と行なわれているので、もう少し、いかに証券局の問題あるいは国税庁のほうで秘密事項があるといっても、そういう問題については連絡し合ったらどうか。これは徴税上の問題もありますけれども、株主保護なりそういう面からもあるわけです。一般論的にもぜひひとつの国税庁のほうでそういう点をお願いいたしますが、この会社のいままでの、発足以来たいしてたっておりませんが、発足以来の納税状況等おわかりになりますか。わからなければ、後日資料としていただきたいと思います。
  27. 泉美之松

    泉政府委員 お尋ね法人につきましては、最近は赤字のようでございまして、三十九年六月以降は、決算上も赤字でありますし、申告所得もわずか四千円程度であります。それ以後は、決算申告も赤字のようでございます。それ以前の、お尋ねの三十七年一月当時につきましては、あいにく手元に資料がございません。もし御必要がございますれば、後ほど調査いたしたいと存じます。
  28. 只松祐治

    只松委員 資料としてひとつお願いをいたしておきたいと思います。  堀委員もお見えになりましたので、次の問題に移りたいと思いますが、まあ名前をあげた会社だけが悪いのじゃなくて、こういう類似の会社はたくさんあるわけでございまして、名前をあげた会社にはたいへん申しわけなく思っておりますけれども、一般投資家保護という立場から見るならば、もっと直接の証券局あるいは国税庁、あるいは間接的でございますけれども、法務省等において、ぜひこういう問題について、一般の、いわばどうしようもないのだろうか、こういって株主が投書をいたしますように、救いようのない問題であるだけに、ひとつ慎重であるとともに、きびしい態度をもって臨んでいただきたいことを要望いたしまして、この問題の質問を終わりたいと思います。  次に、同じようにやはり弱小株主なり、あるいは弱小といわなくても、この場合は株主の力が弱いために、今度は大蔵省法務省等の中においても、同じような問題が出てきております。これは決算時期の確定の問題でございますが、国税通則法の十五条の二項ですか、そうすると、これは決算日に確定をすることになっております。それから商法上も、これは昭和十三年の改正商法施行法四十九条の命令という形のようでございますが、決算日という説をとっております。ところが、法人税法上は株主総会の日という形になって、日本の国内法でも税の確定日が違っておるわけなんです。この前私は大蔵委員会で一ぺん質問をして、できるだけすみやかに統一をしたい、こういう御返事があったわけであります。いま、実際はこの決算日が徴税上の問題としては適用されておるわけですね。ところが、ほんとうは株主の力が強ければ、決算日以後株の配当の問題あるいはいろいろな問題について株主総会で変更されることがある。変更されることがあるとするならば、当然変更されることのある株主総会の日ということが理論上は正しい、こういうことになると思います。これはアメリカあるいはドイツ等々によって学説上もそれぞれ違い、実際上の問題もあって、その国によって違っておるようでありますけれども、ただ国内において、日本においてそれを別々にしておくというのは、いかがかと思うのです。まあ説がいろいろありますけれども、法規は一本化しなければならない、こう思うのです。ひとつそれぞれ国税庁なり法務省の御見解を聞きたい。
  29. 泉美之松

    泉政府委員 先般大蔵委員会におきましてお答え申し上げましたように、国税通則法第十五条の第二項におきましては、法人の納税義務は事業年度終了のときに成立するということをいっておるわけでございますが、問題は、納税義務はそこで成立するわけでございますが、その税額の確定はどうかというと、通則法の十六条のほうにおきまして、申告納税方式と賦課課税方式とある。法人税は、御承知のとおり、申告納税方式をとっておりますので、申告納税方式におきましては申告によって確定するのだ、こういうことをいっているわけでございます。問題は、法人利益というのは、事業年度開始の日から事業年度終了の日までの間の損益の取引がありまして、それが集積した結果、事業年度末において幾らの利益がある、あるいは幾らの欠損があるということになるわけでありまして、自後に株式総会におきまして決定いたしますのは、その事業年度中のそういった取引について、事後的に事業年度末において幾らの利益がありあるいは幾らの欠損であったかということを確認する行為であるというふうに考えられるわけでございます。したがって、事業年度が過ぎて何日——最高限二カ月になるわけでございますけれども、その間の収支というものがそれに影響するわけではない。もちろん会社経営者が作成いたしました決算の確定案が、株主総会においてくつがえされるということはあり得るわけでございますが、そうした場合におきましても、それは事業年度末のその法人の収益または欠損の状態を確認するのに、経営者のつくった決算確定案が適正でなかったということに基づいてそういうことになるわけでありまして、あくまでも事業年度末におけるその法人の収益あるいは欠損の状態によってきまるということになるものと考えております。ただ、御承知のとおり、法人税におきましては、現在租税特別措置法によりまして、配当分に対する法人税率が軽減されております。したがいまして、株主総会において配当金額がきまらないと、その配当分に対する軽減税率の適用所得金額がきまりません。したがって、現実の問題といたしますと、その配当金額がきまった後、初めて適用税率の区分とその対象金額がきまるということになるわけでございます。しかし、事柄はあくまでも事業年度末において客観的に生じておるところの法人の収益あるいは欠損というものを基礎にいたしまして、それから配当可能利益というものが出てまいりまして、それに基づいて税率の適用区分に応じて納付すべき税額というものが確定してまいる、このように考えておるのでございます。
  30. 新谷正夫

    新谷政府委員 商法上の決算と申しますのは、各会社の営業年度の最終日におきまして、その営業年度中の損益を見まして、その結果を締めくくって決算という形になるわけでございます。これが、その後若干の日のズレはございますけれども、株主総会におきまして承認されて確定する、こういう段取りになるわけでございます。したがいまして、決算はあくまで営業年度の末日であります決算日当日を基準にいたしまして決算が行なわれるということになるわけであります。先ほどの国税庁長官税法上の問題につきましても、課税の対象は、決算日におけるその決算額を基準にして行なわれるのでございまして、商法上の決算税法上の決算の間に食い違いはないと考えるわけであります。ただ、先ほどのお話のように、利益配当金につきましての税法上の扱いについては、これは決算日以後にそういう問題が起きてまいりますので、これは税法上の特別の問題であろうかと思うわけでございます。決算そのものにつきましては、商法あるいは税法上の食い違いはない、このように考えております。
  31. 只松祐治

    只松委員 しかし、これは株の配当もそれになるわけですが、仕事上というか、事業上というか、その決算の確定はその事業年度の終了の日ということですが、それも株主の力が強いというか、意見が相当反映されるということになれば、株主が否認する場合もあるわけですね。そういうものは認めないということになれば、株主総会で——たとえば政治献金が八幡製鉄で争いが起こりましたね。これは負けましたけれども、株主総会で、その政治献金はだめだ、あるいはこの交際費はだめだ、こういう形で株主がそれを否定したとします。そういたしますと、これはその日まで確定をしないということも言い得ると思うのです。そういう説をドイツの場合はとっておるようでございますね。だから、どちらがいいかということを私はここで申し上げておるわけではございませんけれども、法人税法上は、十八条あるいは二十一条、七十四条それから税法上の基本通達の三百十四、三百十五、三百十七等では——私もこれは全部見たわけではありませんが、大体株主総会という説をとっておるわけです。だから、私が言っておるのは、どちらが正しいということよりも、国内法をそういう解釈によって、あるいはそういう法令を違わせないで一本化すべきじゃないか。法務省は、いまおっしゃったような見解のようです。それから通則法上もそういう説をとっておりますが、法人税法上はそうでない。株主総会にウエートを置いた通達ではないかと見ておる。それを一本化すべきではないかということです。したがって、法務省もそうだし、あるいは国税庁もそうだというならば、国税庁長官としてそれを一本化すべきではないか、こういうことを私は言っておるわけです。税理士さん等の中にもいろいろ勉強しておる人がおってどっちをとったらいいかということでけんけんごうごうの論があるように聞いておるわけです。したがって、ここではどちらがいいということよりも、一本化をするということをお答えいただけば、私は、それで目的を達するわけです。いかがなものでしょう。
  32. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、法人税法ももちろん通則法と同様に、ある事業年度の課税標準であります所得は、その事業年度開始の日から事業年度終了の日までにおける損益取引の集積の結果、事業年度末の状態においてそれがきまる、これは商法におきましても、税法におきましても同じでございます。ただ、繰り返して申し上げますけれども、現在租税特別措置法におきまして、配当軽課措置をとっておりますので、その配当軽課措置の適用対象となる配当分の所得、これが株主総会によって決算が承認を得られ、配当金額がきまらないと、そこに配当分の税額はきまらないということになるだけでございまして、課税標準である所得そのものは、事業年度末の状況においてきまる、ただ、その所得適用する税率の区分が、その株主総会によって配当金額がきまらないとそこに出てこない、こういうだけでございまして、私どもは、そういう意味では、本来は一本化されているけれども、現在そういう配当軽課措置がとられているために、税額の計算の際に、そこに問題がある、このように考えておるわけでございまして、私どもは、一本化されておるというふうに考えておるのでございます。
  33. 只松祐治

    只松委員 いま私が言いますように、民間では、それぞれの説が述べられておりますので、いま法務省あるいは国税庁のほうでは、一本化されておるという明確なお答えがありましたので、そういう解釈なり、あるいは通達の必要があれば通達を出すなりして、ひとつその明確化をお願いしておきたいと思います。  以上、私は、株主が株を買って、株を操作する、金もうけをする、そういう者もありますけれども、そういうものに終わって、実際上の資本の大きな——経営労働資本という一つの構成要素としての資本の力というものがきわめて減殺されている、減殺されておるだけでなくて、ある意味では、さっきから申し上げておりますように、悪用されておる面もある、こういうことが非常に多いわけでございます。しかもこれが犯罪要因として取り上げるということがきわめて困難だ、こういう状況下にあることをひとつお考えいただきまして、今回の商法改正等におきましても、そういう面について、さらに意のある御考慮をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  34. 大久保武雄

    大久保委員長 堀昌雄君。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、この商法の一部改正に関する法律案について質問をいたします前に、最初に法務大臣にお伺いをしたいのですのですけれども、今度のこの商法改正というのは一体だれのためにされるのか、それからちょっとお伺いをしたい。
  36. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これは経済界各方面の要望がございまして、こういうことをいたしますれば、経済活動が豊かになるというのが主眼でございます。同時に、こういう改正をいたすにつきましては、株主利益も十分考慮しながら、経営者だけでなく、零細株主もあることを念頭に置いて、これらのものを守るということを考えていかなければならぬというつもりで考えた法律でございます。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣も御承知のように、昨年の七月まで証券市場が非常に低迷をいたしました。そのために実は多数の株主が多くの被害を受けた事実があるわけであります。その善意なる株主、そういう人たち、その中にはいろいろ問題がありましょうけれども、そういうときに、その人たちに被害を与えた側というのは、それではどこかというと、ある意味ではやはり発行会社である企業の側と証券会社側の適切でない指導とか、いろいろな問題があったと思います。私は、やはり健全な資本市場の発展ということを考えるときは、いま大臣のおっしゃったように、経済界の要望が常に正しいと限らないと思っているのです。健全な資本市場の育成は、健全な投資家の側に立ってものを考えたときに、初めて健全な資本市場ができるのだ、私はこう考えているのですが、いまの大臣のお話を聞きますと、どうも経済界の要望とは、いわゆる発行会社である企業側と証券会社との要望が先にある、そうして株主に不利益にならない範囲でと、こうおっしゃっておりますけれども、私は、これをずっと全体としてながめて見ますと、やはりものの姿勢によって防ぎ得るものと防ぎ得ないものがあるのではないか。ですから、基本的なものの考え方としては、このようなものの姿勢は、まず株主利益を最大に守り、なおかつ、その中で経済界側としての問題のあるところを調整する、こうならないと、少しこの問題の考え方が主客転倒しているのではないか。それがこの前の証券市場あるいは資本市場の問題につながっているのではないか。株主を真剣に考えないから、過剰な株式発行が行なわれた。あるいは証券会社は、推奨販売とかいろいろな形によって利益を得ようという目的が先行したために、不測の被害を多数の大衆に与えた。そのことがあの長い証券市場の低迷の大きな原因であった。ですから、そういう反省の上に立って商法を考えるとするならば、何はさておき、まず第一に株主利益を守るという前提商法改正されなければ、私は、これまでのわだちをまた踏む方向に問題を発展させるおそれがなきにしもあらずではないかという心配をしているわけであります。あとで個々に具体的に問題を提示してお伺いいたしますけれども、もう一ぺんその点について大臣の——この中でどうも納得のしかねる点がありますけれども、しかし、一番根本的な問題は、やはりそういう心がまえによってこれは、変わってくることでありますので、その点をもう一ぺん確認をさせていただきたい。
  38. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 御説は全然賛成でございます。私が申しました心持ちも、そういうところにあるわけでございます。この商法改正するに至った動機はどこにあるかということを申したのでございまして、そうしてこれを改正するにあたりましては、日本の国の現状を考えまして、どういうふうな商法の規定がいまの日本の経済界に一番適したものであるかという立場で考うべき問題である。それはいまおっしゃったように、私もさっきも申しましたように、経済界の経営の面も考えなくてはならないが、株主利益ということもしっかり考えなくてはならない。両面とも考え、経済をみんなうまく運営するということを考えていく。それにはどうやっていくか。いままでのいろいろな間違いの点があったものは間違いのないようにしていかなくてはならないし、それから、不自由であったものはできるだけ不自由を除いて、そうして経済界の運行がうまくスムーズにいくように、できるだけ法の上で助けてやるというようなことであって、話のもとはどこにありましても、われわれが取り上げるときは、皆さんと一緒に御相談申し上げて、国としてはどうやったら一番いいかという立場で考えていかなければならぬ。どこに偏してということを考えてはならないことは、そのとおり、あなたと同じ考えでございます。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣のお気もちはわかりましたから、それでは、そのお気もちとこの法案とのやや食い違いがあるような感じのするところを少し明らかにしてまいりたいと思います。  現行法の二百四条は「株式ノ譲渡ハ定款ノ定ニ依ルモ之ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得ズ」と、きわめて明らかに株式の譲渡というものは自由であるということを現行法はうたっておるわけです。これは一体何を意味しておるかといいますと、株式の譲渡が自由であるということは、株主の意思をここで全体として明らかにしておるわけでありまして、要するに経営権というものは株主の意思は拘束できないという、これは近代的な資本経営の分離の鉄則をここで明らかにしたわけですね。これは原則論として考えると非常に重要な問題なのです。ですから、ことばの表現をごらんになって明らかなように、「株式ノ譲渡ハ定款ノ定ニ依ルモ之ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得ズ」という非常に簡明、明確な表現になっておるのです。それが今度は「株式ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得」、これはどうですかね。「譲渡スルコトヲ得」というのは、してもよろしい、しかし原則はしなくてもいいんだという感じなのですよ、ここへ来ると。その先へ進む前に、まずそれが、「株式ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得」というのと「制限スルコトヲ得ズ」という法律上のことばの扱いからわれわれが受ける印象なのですが、これはこれまでと完全に反対になってくるわけです。経営権株主を拘束することがたてまえであって、しかし例外として譲渡してもよろしい。私は、商法にこういう規定をするなどということはもってのほかだと思うのです。いま資本主義ですから、資本主義というものは、少なくとも株式会社というものが主体となって企業は運営をされておる。その株式会社株主権をこのように低く見て、経営権に全権を与えたような法律の書き方というものは、私はけしからぬと思うのです。あなたのいまおっしゃったことは、ここでは全然違うのですよ。そうじゃありませんか。まず株主利益を考えるということが現在の資本主義社会なら当然のことなのです。にもかかわらず、「株式ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得」というのは、してもよろしいということですよ。してもよろしいということは、しないのが原則だということの裏側の意味に了解できるわけです。大臣どうですか。これはもってのほかだと私は思う。
  40. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これが今度の改正の問題点の一つであり、また大きな点だとおっしゃるとおりだと私も思います。しかし、この改正法がいまのように自由に動かしていいというように直る前におきまして会社状態はどうであったかということは、御承知と思いますが、約八五%からの会社が譲渡制限の定めをしておったということを私は承知しておるわけでございます。株式はたてまえとしては自由にしたほうがよろしいという法則に従っていまの法律によってそうなったわけでございます。しかし、わが国の実情から見ますと、どうも株式会社、同族会社その他閉鎖的なものが相当多い、株式の譲渡を制限して運営の安定をはかりたいというものが相当強いという実情も私ども考えなくてはならないというようなことを考えまして、今度のような改定を考えて皆さん方の御了承を得たいということで提案したわけでございます。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣は同族会社がたくさんある、こうおっしゃっておりますね。なるほど、いまの日本の実情は、株式会社の数というものは非常にたくさんありますし、同族会社も確かにあると思います。あると思いますけれども、法律のたてまえが、その一部のごく小範囲の、経済行為の比重としてはごく小さな部分にあるもののために原則が曲げられるということでいいのでしょうか。  これは、法務省の事務当局でも証券局でもいいですが、日本の株式の総発行株数の中に占める同族の法人の株数のウエートを言ってください。
  42. 新谷正夫

    新谷政府委員 日本の株式会社の数が大体六、七十万あるわけでございます。この中で同族会社がどのくらいあるかということは、私ども的確な数字はつかみ得ません。これは資本金の大小によって必ずしも同族会社であるとかないとかいうこともいえませんし一がいに同族会社という基準も立てにくいわけでございます。したがいまして、先ほど大臣がお話しになりましたように、昭和二十五年の改正以前、譲渡制限を認めておりました当時に八〇%あるいは八五%ぐらいの会社がこの譲渡制限の定めを設けておったという事実から考えますと、大体その程度のものが同族的な会社であったのではあるまいか、このことは申し上げられると思いますけれども、数字といたしまして、どのくらいの株式会社が同族会社であるということは、申し上げる資料がございません。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは一体、昭和二十五年の当時の経済状態株式会社の数はその当時幾らであって、その当時の八五%は一体どれだけの——株式会社の数で八五%でなくて、私のいっているのは株主の問題ですから、株主の数としては、その条件は、当時と今日とはどういうふうになったのかを明らかにしてもらいたい。ともかく、根拠のないことでこういうことを改めてもらっては困る。こういう規定を変更しなければならぬについては、少なくとも計数的に、そのほうが株主が多数で、そうでない者が少数だというのなら、私はこの変更を認めますよ。ごく少数の者のために原則を改めるなんということが民主主義の世の中にありますか。大臣どうでしょう、まずそれからいきましょう。もしこの問題についていまあなたのほうの手元になければ、その資料を正確に出していただいてから私は議論をいたします。いたしますけれども、少なくとも大臣に原則でお伺いをしたいのは、これほどの、原則を表から裏に百八十度変えるのには、その対象になっておる株主、それによって利益を受ける株主と不利益を受ける株主が出てくるわけですから、このことによって利益を受ける株主のほうが、日本における株主総数の過半数をこえておるという、そういう立証があれば私も考えましょう。しかし、少数者のために多数の者が原則を曲げられるというようなことが、民主主義の今日あっていいものでしょうか。大臣、その原則論についてちょっとお伺いしたい。株主利益を守るについては私と同感だとおっしゃった……。
  44. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 原則どおり考えております。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 原則は御同感でありましたら、それではひとつ昭和二十五年における制限をしておった八五%の要するに法人株主数は当時は幾らであって、制限をされていなかった一五%の株式会社株主数は幾らであったのか、それからひとつ明らかにしていただきたい。
  46. 新谷正夫

    新谷政府委員 二十五年当時の譲渡制限をしておりました会社の数は、大臣が先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、その会社株主の数が幾らであったかということは、現在材料がございませんので、残念ながら調べる方法がないように思います。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 まことに私は、この問題の処理が、そういう科学的、客観的に緻密さを欠いておると思う。少なくとも、八五%の会社と一口におっしゃいますけれども、それではその八五%の昭和二十五年における株式会社資本金別の分布総数、八五%の株式会社の分布のあり方ですね。まず数でいきましょう。資本金と数の割合でいけば、御承知のように株主数はわかりませんけれども、株式発行数に応じて大体昭和二十五年当時における株主の平均株所有額というものはあると思いますから、最近のものは証券局は知っておると思います。一体、最近の日本の株主数がどのくらいあってというようなことは、当然証券局はわかっておると思います。わかっていなければ、何にもわからぬことについて話を前へ進めようとするということなら、これはもう私、坂本さん、そういう挙証がなければ審議できないと思うのですよ。だから具体的な納得のできる資料が出てこなければ、私は少数者のための利益を多数の犠牲において法律を百八十度変えるわけにいかぬ、こう思います。ひとつその点説明のできる範囲でいま説明してください。
  48. 加治木俊道

    加治木説明員 昭和二十五年当時の資料をたまたまいま手元に持っておりませんし、また、うちに正確な御期待のような資料があるかどうかわかりませんが、同族法人ということではわかりませんけれども、昭和三十九年一月末現在で資本金別の会社の数と資本金額がたまたまいま手元にございます。お尋ねの点は、むしろ資本金額で申し上げたほうがよろしいと思うのでありますが、先に全法人でいきますと——法人でございますので株式会社ばかりじゃないのでありますが、このとき現在で六兆一千二百億……。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと待ってください。六兆一千二百億……。
  50. 加治木俊道

    加治木説明員 資本金です。そのうち一億以上の会社資本金額、これが約四兆六千億でございます。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 証券局に伺いますけれども、一億以上の資本金会社で同族法人というのはありますか。
  52. 加治木俊道

    加治木説明員 同族法人というものをどういうふうにつかまえるかでござますが……。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 税法ではちゃんと同族会社の規定がございますから……。
  54. 加治木俊道

    加治木説明員 ちょっと私のほうでは……。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは国税庁でも主税局でも……。
  56. 中橋敬次郎

    ○中橋説明員 株式会社の中で同族会社は、総体といたしまして、私どものほうの税法で申します同族会社は、総体の約九五%程度だと思いますが、その中で一億円以上ないしは一億円超の法人が約四千ございますけれども、その中で同族会社のウエートを、ただいま手元に資料は持っておりませんが、ただいま申しましたような九五%のウエートよりは低いということは言えると思います。御必要であれば直ちに資料を取り寄せます。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと大臣が同族会社とおっしゃいましたけれども、私は、資本金一億以上の会社がこの問題ではメリットを受ける可能性はないと思っておるのです。非常に中小な問題であろうと思います。  かりにいまここで出されました資本金の数でいきますと、全法人資本金六兆一千二百億の中で四兆六千億が一億円以上の資本金会社である。そうすると株主の総体の数から言えば、これだけで大体明瞭なんではないですか。こういうことの制限を必要とするものはごく少数なんだ。現実の大多数のものは、ここで皆さんの規定されたようなことのできることはないと思うのです。どうですか、大臣。一億円以上の法人で、その株主総数の半分が出席をしてその三分の二が賛成をするようなことは考えておられるのでしょうか。その点からひとつ考えておられるのかどうか、この適用に入るのかどうか。
  58. 新谷正夫

    新谷政府委員 ただいまの御質問は、譲渡制限の定款の変更決議についての問題であろうと思います。これは一億円以上でございましょうとも、以下でございましょうとも、株主総数の過半数が出席するということを要件とはいたしておりません。規定の上にもその趣旨は明確にあらわれておると思います。ただ株主総数の過半数が賛成をすればよろしいということでございまして、出席の定足数を定めたものではございません。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 三百四十八条の「定款ヲ変更シテ株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ノ定ヲ設クル場合ニ於テハ其ノ決議ハ第三百四十三条ノ規定ニ拘ラズ総株主ノ過半数ニシテ発行株式ノ総数ノ三分ノ二以上ニ当ル多数ヲ以テ之ヲ為ス」ということは、これは株主がたとえば一万人いても十人でもできる、こういうことですか。
  60. 新谷正夫

    新谷政府委員 十万人の株主がおりまして十人の者が賛成したらいいかということでございますれば、総株主の過半数になりませんので、定款変更の決議は成り立たないことになります。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、この規定はやはり株主の半分以上が賛成しなければいかぬということでしょう。
  62. 新谷正夫

    新谷政府委員 そのとおりでございます。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 だから、少なくとも株主の半数ということと、同時に発行済み株式総数の三分の二以上譲っておる条件と二つダブっているわけでしょう。そういう条件があるわけですから……。そうすると、いまのように一億円以上の株式会社で、それは少数者が譲っておるところもあり得るのでしょう。クローズのところならそうでしょう。しかし、上場されておるところならそういうことはあり得ないですね。不特定多数が相当譲っているわけですから、相当多数になると思うのです。だから私は、いまの問題を考えてみると、実際にこれをやり得るものはやはりかなり限られて、だから一億というとちょっとやりにくい。範囲が少し下になっているから問題もあるかと思うのでありますが、私はいまの株主の側の数というものから見て、経営権株主権に、経営権の優先を認めようというような株主は原則としてはないのじゃないかと思うのです。それは、同時に株主も同族であるような場合、あるいは非常に限られた範囲である場合ということならわかりますよ。しかし、その他の者が持っておるいまの株式会社に対する概念は、株主というものは会社利益についてはともかくその請求権があるのだということで、会社の言いなりになって、自分の持っておる株式の譲渡すらも制限されるというようなことを欲するのは私は例外のほうだろうと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  64. 新谷正夫

    新谷政府委員 一般的には堀委員のおっしゃるとおりだと思います。この株式の譲渡制限は、同族的な閉鎖的な会社につきまして、その会社経営の安定をはかりたいというふうな場合に、株主総会の特別の決議によりまして譲渡制限をしようということでございますので、いま仰せのように、上場会社のような大きな会社になりますと、株式の譲渡制限をすべきものでもございませんでしょうし、上場というたてまえを通す以上は、譲渡制限は当然できないものになるはずでございます。したがいまして、この三百四十八条の規定によりまして、特別決議によって譲渡制限を認めるというのは、おそらく小さな会社だけに限られるだろう、このように考えるわけでございます。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣もお聞きになったように、小さな会社に限られる。しかし、小さな会社と大きな会社商法では同一待遇ではないですか、大臣。そうすると、私がさっきから展開しておる議論は、少数のために多数が原則を曲げられるということなんですよ。民主的にいっては、民主主義の原則に逆行をしてこの商法の規定をきめよう、こういうことなんですが、大臣はそうお考えになりませんか。いまの「譲渡スコトヲ得」というやつの問題ですよ。
  66. 新谷正夫

    新谷政府委員 少数経営者のために多数の株主が犠牲になるということはあり得ないわけでございます。この譲渡制限の場合に、特別に三百四十八条の規定を設けまして、一般の特別決議よりもさらに要件を厳重にいたしております。厳重にいたしました趣旨は、「総株主ノ過半数ニシテ」というふうにいたしまして、少なくとも総株主の半数以上の者がこれに賛成しなければ定款変更はできないということにいたしておりますので、たとえ少数会社経営者が定款変更をして、譲渡制限をしようとしましても、株主の多数の者がこれに賛成をしなければ実現できないわけでございます。そういう関係で、ただいま仰せのように、少数者のために多数の善良な株主が犠牲になるということはあり得ないと考えるわけであります。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、犠牲になる、犠牲にならないの議論の前を言っているのですよ。一体だれのために法律改正をしているのかというところから言っているわけですよ。あなた方は今度これで原則を変えたのですよ。原則を変えたでしょう。これまでは、「株式ノ譲渡ハ定款ノ定ニ依ルモ之ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得ズ」、ここに株式の譲渡は自由であるという大原則が掲げてあるわけです。いいですか。それを今度は逆になるのだから……。要するに、譲渡することもできます。今度は、譲渡することは自由ではないぞ。逆に、完全に裏返してあなた方は書いているわけです、「株式ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得」と。「得」という表現は、私は法律家じゃないけれども、しろうとの常識で感ずるのは、何々することを得というのは、してもよろしいけれども、原則としてはしないほうがいいのだという場合に、それを得じゃないですか。それじゃ、これがたてまえなんですか。私はそこをこだわっているんだから、譲渡は自由なんだ、しかし、例外として取締役会のあれで定めることができる、そっちが例外だというなら話は別なんです。私はこれをそう読んでないんだから……。
  68. 新谷正夫

    新谷政府委員 二百四条の改正規定は、「株式ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得但シ定款ヲ以テ取締役会ノ承認ヲ要スル旨ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ」と規定しております。したがいまして、何が原則かと申しますと、譲渡自由であるということが原則でございます。この株式の譲渡性を否定するということはできませんので、従前の二十五年の改正以前におきましても、改正後におきましても、また、今後改正されました後におきましても、株式の譲渡性ということは当然前提にしなければならないわけであります。この株式の譲渡が自由であるということを前提にいたしまして、特別の場合には取締役会の承認を要する旨を定めることができる、こういうふうにただし書きで書いてございますので、原則は譲渡が自由であるということでございます。この「譲渡スコトヲ得」と書いてあるのは、原則をうたったのではないという御意見のようでございますけれども、われわれはそのつもりでこの規定を書いたのじゃございません。当然のことをまず原則でうたって、ただし書きで特別の場合の譲渡制限の規定をここに置いたわけでございます。現行法では、「株式ノ譲渡ハ定款ノ定ニ依ルモ之ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得ズ」とありまして、譲渡が自由であるということは前提になっておりまして、当然のことといたしまして、それはのんだ上で禁止、制限ができないということだけを現行法では書いておるわけでございます。したがいまして、今回の改正は、そこを逆に書いてまいりますために、ただし書きのほうでもって特別の場合を書きますために原則を本文のほうに置いた、こういうことでございます。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 いま、これは別ですが、一般論として何々することを得という法律的解釈というのは、そうすると、それは原則をあらわすのですか、他の法律の場合においても……。
  70. 新谷正夫

    新谷政府委員 何々することを得と法律に書いてございます場合には、原則をあらわすこともございます。それから、特定の場合にある一定行為をなすことができるというふうに用いる場合もございます。それはその規定の趣旨によりまして、そこは解釈はいろいろなってくる場合があるわけでございます。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この二百四条は原則をあらわした。私ども原則をあらわしているように読めないのです。何か原則は、今度は譲渡制限が原則で、しかし、譲渡することはできますと、その次にもう一ぺん例外というか、その法律が書いてある。これを読むと、何かそういう感触がするのです。これは私だけがするのかどうか、それは別だけれども、私はこの法律をぱっと読んだときに、下の法律とを比べてみると、どうしてもそういう感じがするからどうもおかしい。だから、趣旨として非常に小さなものが、そういう経営権の安定の問題があって、私はあとで、いま株式の乗っ取りその他の事実というのが一体どれだけあるのか伺いますが、ごく少数の事例しかないのだろうと思うけれども、そういう少数の事例のためにこういうことをやったというのは——商法というのは非常に大きな全体を律する法律ですから、大きな法律の中で、つめの先ほどのことのために大原則が変わるというようなことは、私は非常に望ましくないから、それならそういう規定の形で明らかに書けばいい。ところが、これは原則のところに書いてあるところに私は非常にひっかかっているわけですから、その点をひとつ……。
  72. 新谷正夫

    新谷政府委員 繰り返して申し上げますが、株式の譲渡が自由であるということは、これは株式会社株式というものの性質上も当然でございますし、そのたてまえは変えたつもりはございません。二百四条のただし書きにおきまして、「定款ヲ以テ取締役会ノ承認ヲ要スル旨ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ」とございますので、定款の規定がなければ、もういかなる会社株式の譲渡は当然自由でございます。ただ、必要がある場合に、定款の定めをいたしました場合にのみこの譲渡の制限ができるという趣旨でございますので、これはあくまで例外の趣旨でございます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、どうもいまのこれは例外規定だと言われても、例外規定、これはやり方によってはいろいろ広がるから問題があると思いますが、私も時間の都合がありますからこの点はちょっとあれしますが、その次に、それでは、これが目的としておることは、おそらく株の買い占めとかその他によって会社を乗っ取られたりすることが経営権の安定を阻害すると、こういうことになるんではないかと思うのですが、その点はどうですか。経営権の安定というのは、経営者株主利益を考えずに好きなことをやっていいということじゃないはずですが、どうですかそれは。
  74. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡制限を必要とする理由は、堀委員の仰せのように、会社の乗っ取り等によりまして会社経営が安定を害されるということを防止する必要がある、個々の会社の必要性に応じて定款の定めによってこのようにしよう、こういう趣旨でございます。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは過去五年間において、この事実に該当して会社を乗っ取られたものの、そういう法人数なり、その様態なり、その方法なりをつまびらかにしていただきたい。
  76. 新谷正夫

    新谷政府委員 いわゆる乗っ取りというものが、どの程度のものが乗っ取りということになりますのか、そういった問題もございますが、明らかに乗っ取り件数が何件あったということは遺憾ながら資料がございません。大蔵省のほうでもその点はつまびらかでないようでございます。ただ、譲渡制限をしないために現実に起きております弊害というものがございます。いまの乗っ取りといえるかどうかは別問題といたしまして、それを若干申し上げてみます。  たとえば、いずれもこれは刑事事件になった問題でございますが、甲乙丙という三人の者が共謀いたしまして、特定……。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 説明してください。どうせ判決が出ているんですから、判決も出ていないようなものは問題にならないのだから……。
  78. 新谷正夫

    新谷政府委員 事実を申し上げ、特定の名前をあげるのはいかがかと思いまして……。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 だけれども、判決が出ているんなら、事実を言ったっていいんですよ。事実なんだから言ってください。何件で、ともかく相当数がなければ、ごく少数の者のために私はこんな法律改正をすべきではないと思っておりますから、その事実を言ってください。
  80. 新谷正夫

    新谷政府委員 一応事案だけを申し上げまして、特定の会社のことはまたあとで申し上げます。  三人の者が共謀いたしまして、会社株券を大量に買い集めて株価をつり上げ、その会社の大量の株主であることを利用いたしまして、株券発行会社経営者やその会社関係関係先に対しまして、その買い集めた株券を高価に売りつけて利ざやをかせごう、こういうことを計画いたしまして、昭和三十四年にあるAという会社株価が八十円台の時期からその会社株券の買い集めを始めまして、四月ごろに名義書きかえの停止期間中であるにもかかわりませず、甲名義の六万九千五百十株、甲、丁外九十九名名義の各人の百株ずつ、合計一万株の名義書きかえ手続を求めまして、その後持ち株全部を一株につき三百円の割合で買い取ることを承諾させ、その会社株券九万八百二十株を売却するという名義のもとに現金千七百二十四万六千円、金額にいたしまして一千万円の小切手一通の交付を受けてこれを喝取した、恐喝したという事案であります。  それから、昭和三十五年の六月にXという銀行に対しまして、甲名義の二万二百株、B会社の名義の五千株、甲、戊外九十九名名義の各人百株あて、合計一万株、総計いたしまして三万五千二百株の名義書きかえ請求をいたしまして、同年の九月に、もし融資の申し出に応じなければその銀行を誹謗する内容のビラを飛行機で散布して、その銀行業務の妨害をするという態度を示して脅迫しましたが、その銀行が融資を拒否しましたためにその目的を遂げなかったという事実がございます。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話しになっているのは、これは刑事事犯になったものですね、刑事事犯になるようなことをすれば、商法の規定がなくても罰せられるのですよ。それは刑事事件として罰せられるようなことをやるのを未然に防ぐために商法改正しなければいかぬのですか。商法なんというものは、そんなものでしょうか。すでに片一方に罰則があって、そんなことをしてはいかぬということをするのを、それを一々商法でそれまでかばう、事前に防止するなんて必要があるのでしょうか、一般的にいって。一般論として、刑事的に処分されるぞということを明らかにされておるものに、その他の法律で事前にそれをかばってやるような法律というものがありますか、一般論として。
  82. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡制限の規定を設けようとする趣旨は、先ほど御説明申し上げましたように、閉鎖的な会社における経営の安定をはかる必要がある場合にこれを認めようというわけでございます。ただ、その数字が幾らかという御質問に対して、残念ながらどこにもその資料がございませんので、乗っ取りの例というふうなものは数字を把握できませんのでお答えできません。ただ、こういう事例もあるという趣旨で先ほども申し上げたわけでございまして、そのために譲渡制限をしようという意味ではございません。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 いまおあげになったのは、前段のほうは、これは何か上場されている会社の株じゃないのですか。八十円とか三百円とかいろいろ価格がついている以上は、それはオーバーザカウンターでやっているか何か、かなりの株が出ているのでなければ最初の件数はおかしいのではないかと思いますが、これはどうなんですか。第二部上場株式ですか、あるいはオーバーザカウンターですか。
  84. 新谷正夫

    新谷政府委員 ただいまのは上場株ではないそうでございます。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 上場株でなくても、八十円であったものを三百円に価格をつり上げたという以上は、これはオーバーザカウンターで相当取引があるので、いまの議論になる、閉鎖的な同族法人というのとややかかわりが何かおかしいように思いますが、その次のやつは銀行ですから、これは明らかに恐喝事件ですね。これはいまの株主株主権の行使に関係ないのじゃないのですか。銀行で株主権の行使によって乗っ取られているのは、これは別の角度ですよ。銀行が銀行を支配しようとしておる、例の三重県における相互銀行の事件のような問題、それなら話は別ですよ。しかし、いまのここで規制しようという出題とは別建ての問題ですから、あなたのいまの設例なさったのは、私はこの法律とはやや無縁のものではないのかという感じがしてなりません。そうすると、いまの、そういう乗っ取られるおそれがあるから、それを防ぎたいのだということをあなたはここでお答えになった、それでは乗っ取られるということはどれだけあったかということなくして、乗っ取られるおそれがあるから、こういう法律の改正をするというのはちょっとおかしいのではないですか。やはり私は、法律の改正というものは、ある一つの現行法としてやっていて、これだけこれだけこういう事例がございました、こういう事例は非常に問題がありますから、これを未然に防ぐためにはこうしたいという挙証の責任が私はあなた方のほうにあると思うのですよ。それもなくして、そういうことがどうもあるらしいと、いまの場合そうですよ、あるらしいでしょう。あったという数をあなた方出さない以上は、挙証していないのだから、あなたのほうは、挙証できないものについて、こんな重要な法律改正をここに持ってくるというのは、私は政府としてはまことに無責任な法律に対する安易な態度だと思うのですが、大臣、どうでしょう、私の言っていることがおかしいですか。
  86. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 そういうふうなことは、私どもよく聞くのでありますけれども、それならどういうものがあるかとおっしゃられると、どうも、こういうものがございまして、このとおり間違いございませんと言うて、一々並べ立てるようなものは私はいまここに持ち合わせておりませんけれども、しかし、そういう話を、私としてはあまり実業界の内情、会社の内情はよく知りませんけれども、聞くことは相当聞くのでございますから、こういうことはあり得ると私は思うのでございます。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 あり得ると思うくらいのことが法律改正の根拠になるのでしょうかね、法務大臣。そんなあいまいなことが……。
  88. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私にどうだとおっしゃるから、私だけの経験を申し上げたのでございまして、法務省としては、十分いろいろの点から研究したもの、だと思います。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 法務省としてはとおっしゃるけれども、あなたが法務大臣だから聞いている。それでは事務当局でいいですけれども、さっき伺ったところの実例については、ここで中身はいいとしても、何年にどういう事例が何件ありましたということは、ひとつ出してもらいたいですね。
  90. 新谷正夫

    新谷政府委員 先ほども申し上げましたように、この乗っ取りというのがどういうものをいうのかという的確なものもございませんし、経営の安定を害するというのも必ずしも乗っ取りのみには限りません。いろいろ会社の内部の問題のために経営の安定を害するというようなこともございましょうし、いろいろのケースがあり得ると思うわけでございます。現行法では御承知のように株式の譲渡は自由だというたてまえになっておりますので、私どもとしましては、自由だという前提で、いままで特にこういうことについて、会社の乗っ取りが幾ら行なわれているということを調査するすべもなかったわけでございまして、完全に株式の譲渡は自由なんでございますから、そういう法制のもとにおきまして、年々乗っ取りがあるかないかということを調査することもできなかったわけであります。ただ、経済界におきまして、いろいろそういう弊害があるから、二十五年の当時のところまでいかなくても、ある程度の譲渡の制限を認めるようにしたらどうかということで、今回の改正に踏み切ったわけでございます。譲渡を制限すると申しましても、従前のように絶対に禁止するという趣旨ではございません。ただ、相手方を会社側の指定した者に限って、最終的には投下資本の回収を必ず保障できるという道を開いてあるわけでございます。絶対禁止という趣旨ではむろんないわけでございます。その点は、従前の譲渡制限とはかなり趣旨が違う、このように考えております。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 これは、最初から申し上げておるように、モメントとしては企業側の要請で出てきていると、こういうふうに一番最初にお話が出ているわけですけれども、私は、本来ものの考え方としては、株主利益の側から商法は書かれるべきだ、こう考えておると、こうやってきたわけですね。そこらに来られた方は、初めからおられぬ方もあるから、前段の議論を御承知ないと思うんだけれども。そこで私は、あとずっと個々に詰めますが、結局いまの問題というのは、私はどうもごく少数の範囲の問題のような気がしてしかたがないのですよ。経営者がきちんとしておれば——いまの乗っ取りの問題以外に、安定を阻害されるようなら、それは経営者がぼんくらで、そんな経営者は引退すればいいんですよ。しっかりした経営者にかわればいい。大体いまの日本の経営者はどうかしているのが多過ぎるくらい多いと思うんです。だから、その点問題はあるけれども、私はやはり主たるものは、乗っ取りというのはこれはちょっと困るでしょう。実際にどんどん買い集めて、そうして経営権を取られる。そうすると営々としてこれまでやってきたものが、やはり商法の定めで株主の過半数によってきめられればどうしようもないということになりますから、だからそのことを、私はわからぬではないけれども、そういうことならば、私はやはり、こういうふうに非常に網がかけてあるわけですよ。可能性については、法律上はどこでもできるということになるわけです。だから、そういうことではなくて、可能性にも限界があっていいのではないか。そういう特定のものに対してものを考えるときには、限界があっていいのだ、そこを私は言いたいわけなのです。可能性としてはどこでもできることになっている。ただ、手続上、現実にはできるかできないかは別として、法律のたてまえは、たとえ八百億の八幡製鉄といえどもできますよ。それだってやろうと思えばできるのです。これは法律は八幡製鉄はしてはならないのだとは書いていない。どこでもできるのだ。それをこういう制度になぜ書かなければならないか。そうではなくて、むしろ特定のものにしぼったかっこうで書くのが、これは商法のような原則法ですから、原則法はそうあるのが私は正当なのではないか、こういう議論をしておるわけです。だから、こういうことを一切してはならぬと私は言っているのじゃないけれども、法律の書き方に第一問題がある。  そこで、ちょっと中身に入りますけれども、ここで私がひとつ株を前段としては制限することができることにきめたとしましょう。そうすると、ここで問題になってくるのは、要するにその株主たちは、株式の譲渡については取締役会の恣意的な処置にまかされるということです。私がAという人に株を売りたい、私はいまの会社の株を持っておって、将来的に見通しのあるいい会社だ、そこでこの株は私は三百円ぐらいに売れると思っている。そこでそのAという人に話をしたら、よろしい、三百円で買いましょう。で私は取締役会に書類で請求をした。取締役会は、そのAという人間はだめですと——だめですと言う以上は、なせどういうことでだめだということはここには何も書いてないのです。ただだめだと言ったらそれでおしまいなのです。これはもう恣意的に取締役会が好きなようにできるわけです。そうして、まずそこのところに非常に問題がある。無制限に取締役会が相手を選択できるということです。限界がない。それからもう一つは、この中で株式の価額が、総純資産額を発行済み株式数で割ったもので共託をして、原則としてはそれでもう払うのだ——ちょっと調査官に聞きますが、一体株式の価額というのは、純資産額を発行済み株式数で割ったものが常に株式の価額ですか。株式の価額というのはそんなものではないと私は思っておるのだけれども、ここにはそう書いてあるわけだ。それだけの共託をして、それでもし異議がなかったらそのままだし、異議があったら裁判所へ行け、そして裁判所は裁判によって株の価額を決定するのだ、一体株の価額は本来裁判所が決定できるようなものですか。ちょっとそこらを聞きたい。
  92. 加治木俊道

    加治木説明員 時価がありますときには、当然時価が——裁判所はどういう判断をするか、これは私たちがきめるわけにはまいりませんけれども、時価が基準になると思います。基準となるべき時価がないような場合に問題が発生するのだろうと思います。そういう場合に、会社の純財産額というものが一応の基準になると思いますが、それが公正な株価であるということには必ずしもならないと思います。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお聞きのように、まず純資産額を発行済み株式数で割った価額を共託するという発想は、これはどういうことでしょうか。これは法務省のほうでお答えを願いたい。
  94. 新谷正夫

    新谷政府委員 できるだけ的確にその株価を把握することはできないかもしれませんけれども、最小限度考えられるものは、最終の貸借対照表に載っております純資産額というものはつかまえられ得るわけであります。したがいまして、これを基礎にいたしまして、発行済み株式総数で割ったものを単価にしまして、譲渡の株数を乗じたもの、一応それを共託しておく、こういう措置を講じたわけでございます。譲渡代金につきまして、当事者の間で話がつきますればもちろんそれでけっこうなのでございますけれども、つかない場合の措置でございますので、最小限度この程度は共託させる必要はあろう、こういうことでございます。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これは下限値を一応きめたということですね。下限値はここだ。それが上限値にそれがなるかどうかは別としても、下限値はまずこれだ、こういうことですか。
  96. 新谷正夫

    新谷政府委員 代金が話し合いなりあるいは裁判で確定いたしますまでの聞こういうふうな供託という形になるわけでございます。供託は代金の支払いを確保するためでございまして、そのために供託させるというわけでございますので、それが直ちに株価になるというふうな問題ではございません。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ここで三百四十九条に「第一項ノ決議ヲ為スベキ株主総会ニ先チ会社ニ対シ書面ヲ以テ同項ノ定ノ設定ニ反対ノ意思ヲ通知シ且総会ニ於テ之ニ反対シタル株主会社ニ対シ自己ノ有スル株式ヲ決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格ヲ以テ買取ルベキ旨ヲ請求スルコトヲ得」こういうことがあるのですね。そこで、このことはどういうことであるかというと、要するにこの決議が行なわれることによって株式の価格は下がるということですよ。そうでしょう。「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格ヲ以テ買取ル」、だから決議のある前にある一つの株の水準がある。決議があったらもう株主権の行使が自由でないから株の価格が下がるのだ、こうなっているわけです。そうして下げておいて、今度買い取りをしてもらうときにはそれじゃその価格、これが公正な価格という一つの基準がここにあるとするならば、その価格で当然、それは時間が非常にたっていれば別ですけれども、しかし、ある一つのそういう損害に対するものは、売買の問題としてはそこまでは私は認められていいのではないか。だから一体この「其ノ有スベカリシ公正ナル価格」というのはどういうことできめるのか、三百四十九条のここについてちょっと伺いたいのですが。
  98. 新谷正夫

    新谷政府委員 三百四十九条は定款を変更いたしまして、譲渡制限の定めを設けようという場合におきまして、その段階でその定款の変更に反対をした株主保護する必要がございます。そういう意味で反対株主に対しまして買い取りの請求権を認めたわけであります。この「公正ナル価格」、もし譲渡制限の決議がなかったとすれば「有スベカリシ公正ナル価格ヲ以テ」買い取れということでございますが、この価格は、結局当事者の話し合いがつきますれば、それでよろしいわけですけれども、話し合いがつきませねばこれは裁判所できめることになるわけであります。現在も営業譲渡の場合とかあるいは会社の合併の場合でございますか、こういう場合に、同様の規定がございまして、これも裁判所でやはり価格を決定することになっております。これと同じような方法で裁判所によって公正なる価格をきめられる、こういうことになろうと思います。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この「公正ナル価格」というのは常に裁判だということですね。
  100. 新谷正夫

    新谷政府委員 公正なる価格をもって買い取れという申し出をしますと、それに乗って売買契約は成立いたします。したがいまして、契約そのものは成立いたしますので、価格を幾らにするかということはその当事者の問で話し合いでもちろんきめ得ることでございます。そこで、この話し合いがきまればそれで決済されますけれども、もし話し合いがつかなければ裁判所にその価格の決定を求める、こういうことになるわけでございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 私はずっといまのこれを一覧しながら感じますことは、だからここにこういう規定があることは、私は少しこれが拡大的に使用されてきますと、これは私は必ずそういう点で問題が起きてくるのではないかと思う。いまのあなた方は常に善意なる取締役を考えておられるようですが、善意なる会社の取締役と、あと善意なる者たちの過半数で問題が処理されるというたてまえでしょう。しかし私は常に株式会社経営者が善意であり、その経営者と一種の結びつきをしておる過半数の株主——この過半数というところはちょっとまた問題がありますからあとでもう少し議論しますが、どこまでそういうことを含めて理解をして、自分の持っている株の値段が下がるんですよということまでが周知徹底されてそれに参加するかどうかの手続上の問題が残っているわけですけれども、まあまあ取締役に頼まれた、まあともかく何とかしてくれというようなことだけで、中身はあまりよく知らないけれども賛成をする。ところがそれが善意でなかった場合にはこれは一体どうなるのか。これは問題があると思うんですよ。あなた方のほうは善意を前提としているようですけれども、悪意の場合に対して何かそれをチェックする部分がこの法律はありますか。善良な株主のほうの代表が、そういう悪意である取締役会のいろいろな処置及びそういう操作ですね。全部の株主がつまびらかに、こういう事実があってこうなってあなたは将来こういう条件になりますよと、ここの規定は、それが行なわれなければ公正な株価があったんだから、それは取締役の決議が行なわれた以後ではこれは裏返していったら公正な価格にならないわけですよ。その公正な価格にならないことを含めてあなたは了承していますかなんということを全部の株主に言って、賛成する株主というものは、これこそ私はごく小さな同族法人だけであって、現在の株式会社というようなものの考え方の発想からすれば、まことに例外的なものにしかならぬのではないか。ですから、その悪意の取締役会及びその操作に対抗する何らかの措置がこの法律の中でありますか。あったらひとつお教え願いたい。
  102. 新谷正夫

    新谷政府委員 特にこの定款変更の決議あるいは悪意の会社理事者に対して善良なる株主がどのように対抗していくかという問題でございますので、これはこの譲渡制限の場合のみに限らないと思うわけでございます。会社の決議の方法に瑕疵があれば、この取り消しとか無効の問題も出てまいりましょうし、いろいろございますし、また特に取締役が故意に第三者に損害を与える目的で一定行為をしたという場合に、これまた損害賠償の規定がございます。いろいろのそういった商法の救済規定はあることはございますけれども、譲渡制限につきまして特別にその点を措置したかと言われますと、それは実のところいたしておりません。ただ株主総会の特別決議、しかも特別に要件を加重いたしまして株主の意向を、特に少数株主の意向も十分反映できるようにという趣旨で総株主の過半数の賛成が特に必要である、こういうふうにいたしましたので、株主の、定款変更について考慮をめぐらす余地は十分そこに与えられておる、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 株主総会を招集するための取締役会が出す文書ですね。これはそうしたらこの場合はどれだけ書けばいいのですか。次期に株主総会をやります、そこでは定款の変更をして譲渡制限をします、そういうふうに書くのですか。そこらのところはどうですか。要するに、株主総会という、きわめて重大な株主総会において、いまの日本の一般的な慣行では残念ながら株主は非常に無関心なんです。株主はもっと株式会社内容について熟知すべきであるし、株主総会には必ず出席をして、そこでやはり株主としてのいろいろな意見を述べる権利があるのですから、権利を行使すべきだと思うのですが、残念ながら、そういう訓練が十分されておりません。アメリカのそういう株式会社のいろんな事例を見てみますと、非常に多数の株主がそこに集まって、二日間くらいにわたって株主総会が開かれて、その中では社長なり会長が長時間にわたって、株式会社のいろいろな業績なり問題点についてつまびらかにする。そういう点で、株式会社というもののあり方は、アメリカにおいてはかなりあるべき姿に近い。日本の場合には、ほとんどが委任状を持って処理をされておって、株主総会といえども、ごく少数のものが出てくるだけである。そこで総会屋などというものが横行するということになっておるわけで、私は非常に遺憾だと思うのですが、そういう日本の客観的な情勢を踏まえて、この問題が処理をされるときに、出席できない者は委任状を出してくれ。——委任状は過半数の要件を満たしますね。同時に三分の二の株主の要件も委任状で満たし得るでしょう。だから、実際には、十億の会社で十人というのは、場合によっては出席株主は十人で処置されるかもしれない。形式的にはこの要件は満たされるという場合が考えられるのじゃないですか。そこのところをちょっと。
  104. 新谷正夫

    新谷政府委員 確かに、お話のように、現在の株式会社の運営上、株主のその経営に対する関心の度合いというものは非常に低いものというふうに見られておりますし、またそれが現実でございます。これは、ほんとうに株式会社を健全に運営していくためには、株主みずからが会社の平素の業務の運営状況とか、あるいは財産状況について深い関心を持ってながめていくということが大切であることは申すまでもないことでございますが、遺憾ながら、現実は、堀委員のいま仰せのとおりでございます。  そこで、株主総会の招集の通知をして、無関心な株主が委任状に判を押して送ってしまえばそれ切りじゃないか、こういう御心配がございます。それもごもっともでございます。十万人の株主のうち十人だけが出席しても議案が成立する場合があり得るじゃないか。——これ委任状を持って十人に集中した場合のことをおっしゃっておると思いますが、これもむろん、委任状によって議決権を行使することが許されております限りにおいては、そういうことももちろん可能でございます。ただ、普通の場合には、会社経営に十分関心を持っておる株主でございますれば、議案についての賛成、反対の意思表示を委任状でいたしておるわけでございます。無関心であれば、何も書かないで白紙で委任をするかもしれませんけれども、現実に、これは非常に重要な事柄であるというふうにその株主が意識いたしますれば、賛成であるとか反対であるとかいう趣旨のことを委任状に明らかにしてございますので、そこが株主の責任において委任するかしないかという問題とも関連してまいりますけれども、要するに、委任によって議決権を行使いたします限りにおいては、ただいまのように、ごく少数の者だけが受任者として株主総会に出席してやる場合もあり得るわけでありますので、そういう場合には、その出席した受任者である少数の者だけで議決権が左右されるということはむろんあり得ると思います。しかし、関心の十分ある株主が、委任の方法いかんによっては、受任者が自由に議決権を行使するようにはできないことももちろん可能でございます。これはやはり最初の根本論に戻るわけでございますけれども、株式会社株主というものの、会社の事業経営に対する関心の度合いということにつながってくる問題でございます。これは非常に根本的な問題でございますので、大事な問題であろうとは考えるわけでございます。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 この取扱い上の問題で、そういう善意の株主が、そういう事の重大性を十分認識できて、そうしてそれに対して明らかに意思表示ができるような——さっきのお話しのように、多少悪意のある者に対抗できないわけですからね。だから、いまの株主の無関心の問題があるから、おまえが悪いのだと言われればそれまでありますけれども、そういう客観的事実があるときに、これは法律の定めによって何かの特例を設けるときには、そういう客観的事実の判断の上において、善意なる株主を守る何らかの処置というものがもう少しあっていいのではないかと思います。これは取り扱い上の問題ですけれども、これについての株主総会はかくかくしかじかの事項が書かれて、その先は、譲渡制限というのは、法律のこういうことでこうなりますよ、そうして、そうなったときには、あとは最終的に異議があれば裁判所でやらなければならぬですよというようなことが少し明らかに明示をされておれば、それを読んだ人は、これはちょっと一ぺん行って、これは反対だと言っておかなければいかぬ。もしあなたが反対だと言えば、そこで公正な価額で買い取り請求もできますよ、それができないときには、その場合における買い取り請求の最終は裁判ですよというようなことが株主につまびらかであれば、これはいいと思うのですよ。しかし、おそらくそんなことは書かないで、形式的に、要するに譲渡制限について、取締役会に一任してもらいたいというような式の、通り一ぺんの株主総会の通知状が出されるということになると、これは善意なる株主保護されないのではないか。そこらについては、何も法律で書かなくても、あとは施行規則なり政令なり何かで、これについてはこういうことだということぐらいは、——株主総会における記載要件なりいろいろなことを、もう少しそういう善意の株主保護立場に立って処置する必要があるのではないかと思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  106. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡制限の決議をしようといたします場合に、善意の株主保護するために、できるだけ、譲渡制限の行なわれた後の行く末のこともわかるように株主に知らせる必要があろう、こういう御趣旨でございます。ごもっともだと思います。ただ、実際の会社の運営について、行政指導といいますか、やっておられます各主務官庁においても、その点については十分の配慮は加えられるものと思うわけでございます。ただ、上場会社以外の会社につきまして、はたしてこれがどの程度徹底できますか、こういったことも、それぞれの所管の庁におきまして今後の問題として検討されるべきではあるまいかと考えます。私といたしましては、なるべくそういった株主の不利益にならないような方法で株主総会の招集の通知をなされることが望ましいということは申し上げられますけれども、どの程度それに書くべきであるということにつきましては、いまはっきりしたことをお答えするわけにはちょっとまいりません。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと、そちらの理事の方、この部分ですね、これは、私はやはり、政令か何かに委任してもらって、この場合における株主総会の株主の通知とは、少なくともこれだけのものを周知しなければならぬということはここに書いてあってもちっともかまわないと思うのです。株主総会におけるいろいろの書式は政令で定めるところによるとして、政令に書くなり何かして、その程度のことは法律の施行規則なりどこか——省令でも何でもいいけれども、それに違反したものは無効だということで、あとで裁判ができる程度のことにしておいてやったほうがいい。これだけの重大なことをやるときに、それくらいのことは取締役会としてやっていいし、善意の人ならやる。ちっともかまわない。その程度のことはあってもいいと私は思うのですけれども、法務大臣、どうでしょうか。
  108. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいま堀さんが、法律に書かないでもと初めのところでおっしゃったのですが、私もそう思いながら聞いておったのですが、これは実際にみんな株主が注意をして聞いて、なるほどこんなものだ、それなら意見を一応述べよう、自分も考えようという機会を持つことは非常に大事だと思います。これは法律上の問題というよりは、それを知ることが必要だ、行政上の措置で私はやれると思う。これは通産省と私よく話し合いまして、各会社等に対して指導をやりまして、そういうふうな場合にはこういうふうにやってもらいたいというようなことにやるように要望をいたしまして、必ず実現するようにいたしたいと思います。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 法務大臣、実現するようにしたいとおっしゃることでありますから、法務大臣の答弁を尊重いたしますけれども、やはり一つ規定か何かないと、あとで不利益を受けた者が非常に気の毒な条件になりますから、これは重大な改正ですから、私は何かそういう——善意なる取締役会、善意なるそれに同調した株主という場合には問題ありません。しかし常にそれは善意だけでないということは、これはやはり考えておかなければならぬことですから、それの対抗措置を何らかの点で明らかにして、あとの最終的判断は株主の判断だからいいですけれども、株主がやはりそれを知る機会がないと、われわれはここで法律を議論していますから、われわれは知っていますけれども、通知の来た株主は、あと一体どうなるのかなんということはちっともわからぬです。だから、その点はひとつ大臣、ここで法律を変えるといったってたいへんなことでもありましょうし、それは法律で書かなくても処置のできる範囲のことですから、ひとつその点は特に要望しておきます。  最後に、新株引き受け権証書というものが今度出ることになりますね。この新株引き受け権証書というものの売買が今度できることになるのですが、これの売買のあり方は、実際にはどういう形で売買が行なわれるようになるのか。現在でもイフ・イシューという制度がありますから、イフ・イシューという制度によって現実には新株の発行日取引というものが行なわれておりますね。ところが今度の新株引き受け証書というものの売買はどういう形になるのか、そこのところをちょっと、ここは証券局のほうでお答え願いたい。
  110. 加治木俊道

    加治木説明員 いま取引所に検討させておりますけれども、これは上場を認めなくてはならないということになるわけです、新株引き受け権証書自体は。アメリカではたしかこれを上場を認めておると思うのであります。それで現在発行日取引という形で、プレミアム分だけでなくて新株そのものの取引が認められております。それから、一体この引き受け権証書というものが、現実に権利落ちしたとたんに出てくるようになるものかどうか。非常にブランクがあるということになりますと、発行日取引を締めてしまう、引き受け権証書が出るからといって発行日取引を認めないということも、株主権利保護立場からいって、これもまたむずかしい。したがって、組み合わせのいかんによっては、場合によれば発行日取引と新株引き受け権証書の売買が並行的に行なわれるようなことも、あるいは認めなくてはならぬかもしれぬ。しかし、それで株価が分裂するということがないかどうかということを考えますと、ちょっといま私、こういうふうにしたい、こういうふうにする方針だということを答えるだけの用意はございませんが、慎重に検討いたしまして、この上場関係をどういうふうにするか、それから発行日取引との関係をどうするか、実際のこの新株引き受け権証書の出方がどうなるかということも関連がありますので、その上でお答えを出したい。さしあたりは取引所でいま鋭意研究させております。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 研究はいいけれども、これは法律が実施されたら、すぐ新株請求できるようになっているわけですよ。出すようになっているわけですね。それで売れるのだ、こうなるのだから、こんな法律が出ることがわかっていたら、これはもっと早くやっておかなければいかぬことじゃないですか。法律の施行と同時に取引所はどうしますということを、取引所の規定なり何なりに明らかにしてやらないと、結局、いまあなたが自分で言われたけれども、これと発行日取引が並行になったりしておかしなことが起きますよ、明瞭に。そこのところは、この商法改正なんてだいぶ前からごてごて言っている法律だから、証券局は当然これを予想されたと思うのだけれども、いつごろになったらコンクリートになりますか。その間ブランクがありますよ。そのブランクの間これはどうやって取引するのですか。
  112. 加治木俊道

    加治木説明員 できるだけ結論を急がせるつもりでおりますが、引き受け権証書が具体的にどういうふうな出方になるか、ちょっとまだ見当つきませんが、株主懇談会等の話も聞きまして、結論はできるだけ急がなくてはならないと思います。  それから、さっき言い落としましたが、場合によれば引き受け権証書の出方が非常におそいということになりますと、引き受け権証書のまた発行日取引というようなことも、組み合わせのいかんによっては考えられるわけであります。この問題は、検討を始めたのはきのうきょう始めたわけでは実はございませんで、だいぶ前から検討さしておるのでありますが、至急結論が得られるようにわれわれも努力しますし、取引所側にも検討させます。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもこの法律は、私きょうここへ来て少し議論をしてみて、何だかいろいろな点に不十分な点のある法律の感じがします。  委員長、どうですか、あなたも前に大蔵政務次官であったからよく御存じだと思うけれども、私は法律論者じゃないけれども、われわれ実態のいろいろな面からものを見ますと、確かにもうちょっと慎重にやらなければならぬ問題が少しあれされているような気がしてしかたがないのです。  最後にもう一つだけ。二百五条に「株券ノ占有者ハ之ヲ適法ノ所持人ト推定ス」と、こうなっていますね。「株式ヲ譲渡スニハ株券ヲ交付スルコトヲ要ス」、それは当然のことですが、「株券ノ占有者ハ之ヲ適法ノ所持人ト推定ス」——「推定ス」というのはどういうことですか。これは法律的に少し教えてもらいたい。
  114. 新谷正夫

    新谷政府委員 二百五条におきまして「株券ノ占有者ハ之ヲ適法ノ所持人ト推定ス」と書きましたが、これは改正以前におきましては裏書き制度をとっておりましたので、裏書きの連続を証明できる限りにおきましては、その株券を持っておる者が裏書きの連続のある限りには適法の所持人と推定する、権利者と推定するということになっておるわけでございます。今回譲渡方式を改正いたしまして、裏書き交付ということの中の裏書き制度をやめまして、譲渡契約に加えまして株券の交付ということを要件としてつけたわけでございます。そういたしますと、問題は、外形的にあらわれますのは、従前の裏書きという形にかわりまして株券の所持占有ということになるわけでございます。したがいまして、株券を占有しております限りは、一応その者が適法にその株券を取得したものというふうに見るというのが、この二百五条の二項の趣旨でございます。しかし、これは法律でそうきめつけてしまうわけではございません。推定でございますので、反対の証拠がございますればそうじゃないということになるわけでありまして、株券を持っておる限りは、その者が絶対に適法な株券の所持人であるというふうに法定してしまう趣旨ではもちろんございません。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 これまでの二百五条は「記名株式ノ譲渡ハ株券ノ裏書ニ依リ又ハ株券及之ニ株主トシテ表示セラレタル者ノ署名アル譲渡ヲ証スル書面ノ交付ニ依リテ之ヲ為ス」「記名式ノ株券ノ占有者ガ第一項ノ譲渡ヲ証スル書面ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と、こうなってはっきり書かれているわけです。今度は、株券の占有者は適法の所持人と推定する、なんといったら、持っている側は、私は実は株券を持っているけれども、一応推定なのですね。それじゃ私が株主であるということが常に何か証明なければ、株券なんか持っていたってこれは意味がない、こう書いてあるような気がしてしかたがないです。あなたは逆の意味で言われたけれども、私は逆に。だからそれならば株券なんか出さなければいいということです。裏返しに言うと、何のために「株式ヲ譲渡スニハ株券ヲ交付スルコトヲ要ス」なんということを前段に書かなければならぬのか、交付の条件というのは、株を持っていることだ、しかし、あなたは持っているというけれども、それは推定の範囲で、挙証しなければだめですよ、この法律の書き方はこういうことでしょう。違いますか。
  116. 新谷正夫

    新谷政府委員 「推定ス」と書いてございますので、所持人はそれをみずから挙証する必要はないわけでございます。所持しておれば一応正当な所持人であるというふうに法律上は見られるわけでございます。ただ、しかし、これは一応そう見るというだけでございまして、もし反対の者が反対の証拠をあげてきますれば、これはくつがえし得るという余地が残されております。現行法におきまして、この点を「適法ノ所持人ト看做ス」と書いてございます。「看做ス」と現行法ではっきり言っているのを今回の改正で「推定ス」と書いたのはおかしいじゃないかという御疑念も確かに出ようと思います。しかし、現行法で「看做ス」と書いてございますのは、これは一般の法律用語と違いまして、この「看做ス」というのは推定の意味であるというのは、もう確定した解釈でございまして、一般にこの「看做ス」と書いた場合には法律上そういうふうに確定してしまうわけでございますけれども、この商法の二百五条に関する限りは、これは推定の意味であるという趣旨で立法の当初も説明されておりますし、現在の解釈もそういうふうになっておるわけでございます。その点は変わりはございません。実質的には変わりはないのであって、ただ「看做ス」と書いて推定の意味に読むというのは、かえってこれはおかしいのじゃないかというので、今回は特にそこをその趣旨のままに「推定ス」、こういうふうに表現いたしたわけであります。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもさっきからいろいろ「得」だとか「看做ス」とかいろいろなやつが——何かこの法律だけは常に特別なことになって、私どものいわゆる一般常識と違うことが書いてあるというのはどういうことでしょうか。そういう商法がこれまでまかり通っておったのも妙なものだと思うのですが、法律用語というのは、一つの普遍性がないと、それは法律をつくったときはそうでしたなんといっても、一般的にこれを見ればそうは読めないのですよ。だから、そこらは、私は何か法律学者じゃないからわからぬけれども、しろうとの私でもそういう感じがしてならぬのです。さっきからこの「得」は原則だとか、ここは推定だとか、これに関してだけしょっちゅういろいろなことが起こるというのは、どうも私は非常に問題があると思います。  もう一つは、確かにこれは手数がかかることですが、これをこうやるくらいだったら、小切手だって手形だって同じことじゃないですか、そういうことなら、こういうものの動きは。ほかはみな小切手でも手形でも裏書きが必要ですよ、現状では、法律で規定していますよ。なぜ株券だけはそれを例外にしようというんですか。流通性においては、株券も現状においては相当高いですね。それが、裏返して言えば、煩瑣だという問題があるのかもしれませんけれども、また、これは小切手だって手形だって流通性があって、ずいぶん裏書きがあるわけですから、だから株券に限ってだけこういうことをして、手形や小切手は現行どおり、こうなっておることになるのですが、これをどうしてもしなければならぬ積極的な理由というのは何でしょうか。
  118. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式の譲渡につきまして、現在裏書きあるいは株式の譲渡証書を添付して株券を交付するという二つの仕組みになっておりますが、大部分は裏書き方式で行なわれるわけであります。ただ、この裏書きの場合に、記名と捺印あるいは署名ということが必要なわけでございます。実質は記名捺印で行なわれているのが多いわけでありますけれども、その中でも特にその捺印の問題でございます。これは現行法におきましては、会社に届けてあります印鑑と裏書きに使います印鑑が一致しなくてもよろしいわけでございます。これは現行法でそうなっておるわけであります。したがいまして、会社に届け出た印鑑以外の印鑑を使っても差しつかえない、極端に言えば、その株主の意思に基づいて押された判であればありあわせ印でも差しつかえないということになっておるわけであります。したがいまして、この捺印をするということ自体が非常に形式的な問題でございますし、かえって記名捺印を要件とすることによって事務的にもいろいろ繁雑な問題も出てまいります。また、株主の側にしましても、自分の判こが押してないんだから絶対安全だというふうに思っておられる株主の方もおありだろうと思うのでございますが、これは実際は違うわけでございます。商法上は株券がかりに盗まれて転々し、善意の取得者がそれを取得いたしますれば、盗んだ者が偽造の判こを使って捺印いたしておりましても、善意取得者に渡りました限りにおいては、もとの株主権利を失って善意取得者が取得するということになるわけでありまして、その捺印ということがあまり意味がないことになってしまっておるというのが実情でございます。そこで、それならむしろ、この際裏書きというものをやめて、裏書きして交付するということのかわりに、譲渡の意思表示はむろん必要でございますけれども、それに加えて株券を渡すということをもって株式譲渡の要件としたらいいのではあるまいか、こういうことからこの改正に至ったわけでございます。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、数年前に証券会社の事故の問題を相当長期間にわたって取り上げました。そこで一番問題になったのは何かというと、この印鑑の問題なんです。株式の売買だけでなくて、売買の請求書とか、いろいろなものがあるのですが、ともかくそれに三文判を押して事故が非常に起きておるわけです。本人は売ると言ってないのに売ったとか、あるいは信用取引の証拠の株式に入れてあるものがいつの間にか売られておるとか、非常に事故が多いのです。その経過を調べた結果、やはりこれはすべて届け出印鑑によって処置をしなければならぬという規制をするのが正しいという方針できておるわけであります。だから、商法がいまのその問題について届け出印鑑制度をとっていないのなら、届け出印鑑制度をとるのが他との法律の権衡上当然だと思うんですよ、これは逆行ですよ。そうしてあとのほうを見たら、会社に委託とか、信託会社に委託していろいろと、こうなるのですが、そんな複雑な手数は、普通は実際の株主はやらないんですよ。その問題はどうなっておるかというと、大体株券会社に委託しておるのが多いわけです。委託をしておるやつは、今度はそれがどうなっておるかは、いまの話ではないですけれども——よろしゅうございますか、気がついたときには善意のところに渡っておる。自分は証券会社に預けてあるからだいじょうぶだと思っておる。ところがあにはからんや、とうの昔に売られていて、さあ増資の払い込みも何も来ないからと思って会社に行ってみたら、いや、それはとうの昔に売られて、あなた、何もありませんよ、こうなるわけです。そうしてそれはどこかへいって、ちゃんと善意なる取得者が持っておる。そういうやつはチェックしようがないんですよ。ここに書いてある、形式的には、いや、心配なら委託しなさいとかなんとかありますが、株式の売買をやっておる連中は、実際には銀行や信託やなんかには委託しないんですよ。だから、そうではなくて、証券事故を防ぐためにも、こんなことをしてはいかぬと私は思うのです。だから、これは届け出印鑑によって処理する以外には売買ができないというぐらいにして初めて事故の防止ができるんですよ。これは証券局は、過去における事故——最近だって事故はあるわけだけれども、ずいぶん私はこの事故の問題を大蔵委員会でやってきたわけです。そうして取引所にも事故防止のための処置をさせ、いろいろやってきているけれども、その盲点は何かといったら、ここにあるんですよ。三文判で適当に処理ができるということにあるんだから、それは手数がかかるかもしれないが、しかし、投資家保護を考えるのは証券会社の当然の姿勢ですよ。だから私は、これまでそれがルーズであったので少なくとも、どうしても届け出印鑑の制度にしろということを証券会社に対して要求しておる際に、こっちがこんなことになったんでは、これはどうにもならぬことになるわけです。これは株式流通上における非常な重大問題で、皆さんが法律でここへ書いておられるようなことは形式論としては成り立つかもしれませんよ。しかし、実際の中で、いろいろな事故がこれから起きることを防ぐ措置はないではないか。いまのように盗難にあったというのは非常にはっきりわかるわけですよ。多くの株主は、たいてい自分の株を買ったら会社に預けておる。いまは、あなたの株を幾らお預かりしておりますという報告を出させて、とらせるようになっていますよ。なっていますけれども、それは何ケ月かに一回のことですから、その間にそういう不良なる証券会社の職員が自由にやって——過去ずいぶん私はそれを手がけてきた。そうしてその結果は、善意なる人がほとんど報われないわけです。会社側では、知りません、その職員のやったことで会社の責任ではありません、こういうかっこうで逃げてしまう。実際にはそうなっていない。特に最近はどうか知りませんが、その当時は、証券会社の幹部の諸君が、これは文書になっておるから明らかでありますけれども、事故が少々起こるのはあたりまえなんだ、そんなのは、もうけて返せばいいという言い方をしておる証券会社経営者が実際におるんです。それが正会員の中にあるんですよ。そういう証券会社の実態を踏まえて、あなた方はあまりに善意にこの問題を簡単に考え過ぎておる。私は、こっちはそっちの方向ではなくて、裏書きをきちんとして届け出印鑑以外は売買は無効であるということに規制をしてこそ、正常な証券市場の発達が望まれるんですよ。私が大蔵委員会で、証取法から、公認会計士制度から、監査基準から、いろいろと議論をして、今日それが法律化されてきておるのも、あげて投資家をいかにして保護するかということで、それなくして株式のいろいろな問題というのは発展しないですよ。あるいは、発行会社なり証券会社利益のために考えられておって、これによって株主は何ら利益するところはないと私は思う。その点について、どうでしょうか、大臣。私が言っておることは、私の大蔵委員会における長い証券問題に対するいろいろなかかわり合いの中から出してきた一つの結論なんです。学者や何かではわからないことなんです。この点どうでしょう、法務大臣。
  120. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ただいまのような意見のあることもよく承知いたしております。この問題を取り上げてからもそういう意見がいろいろ私の耳にも入りました。私も、そういうふうなことを考えるべきじゃないかというサイドからも考えてみたのであります。しかしまた、私のいろいろ——私のというのは、乏しいそういうふうな経験でございますが、実際の、これは昔のことでございますが、私の友だちなんかでぶつかった例を見ますると、もう判こまで預けてしまって、そうしてそのまま消えてなくなったという例もあるのでございます。やはり、非常に用心深くやっても、いまのお話のように、証券会社の番頭か何か知らぬが、そういう人たちがいろいろ悪かれかしとやっているのじゃないけれども、うまくいかないで、穴埋めしよう、穴埋めしようとしているうちになくなしてしまう。そのうちよくしてやろうと思って、ついいけなくなったということだと思うのです。言いわけはいつもそういうふうな話を何人からも聞いたことがあります。そういうことであります。非常にきちんとやっておったときでも、そうだったと思うのであります。いまそういうふうなことから判こまで自由なことを——私はそれもこのごろまで知らなかったぐらいでございますが、三文判でもいいというようなところまできておるのでありますが、いまのように、これは証券会社がやっておるというのは、大衆がそういうふうなことを求めてきて、株価が大きく動き出した、これは大きな会社が動かしているのもあるでしょうが、大衆も株をどんどん買っておったということもあるのでありますが、いまのような大きく株価が動いているときに、どっちにいくかということになると、この方向にいくことが経済の動きからすると同じじゃないか、同じじゃないかというか、危険度ということにすると、いまおっしゃったことはもっともでありますが、大事に大事にして、もう銀行か何かにしまい込んでおくよりほか安全度はないと私は思うのであります。こうやって経済が動くからには、ここいらまでやるのはやむを得ぬじゃないかというのが、私の——そうしたならばそれがどんどん動くというなら、これに従うべきじゃないかというような心持ちが私のいまの心持ちでございます。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの大臣の御答弁を聞いていますと、消極的賛成というか、まあやむを得ないじゃないか。——法務大臣が、やむを得ないじゃないかというようなものを法律に出してもらっては困るのですね。確信を持って、これはどうしてもこうしなければならぬからやってくれというならわかりますよ。いまおっしゃるように、印鑑まで預けているなら、どんなことが起きたってその人間の責任ですよ。私は、印鑑まで預けた人間を事故の問題で取り上げた例はありません。そんなのはどうなろうと、相手を信用した人間が悪いのですからね。資本主義というのは自己責任ですからね。そんなものまでかばおうなんて私は一回も考えたことはない。しかし善意な者が、全然そんなことでない諸君が、これはともかく保護預かりとして預かってくださいと言って、株券を買ってそのまま帰りに預けて帰った。そうしたら、その保護預かりだというのが、中のやつが、保護預かりではなくて信用代行の担保だ、こういうふうなところにぺたっとまるを入れて、そうしてそれがぽんと売られちゃって、半年目に行ったら、ともかく、アメリカで長年働いて金をつくって帰ってきて、そうして証券会社で株でも買っておこうと思った人が、まるまるいかれてしまった。その人が私に言ったのは、日本の証券会社というのは、アメリカと同じように私は信用があるものだと思いましたが、こんなおそろしいところだとは思いませんでしたと言っておるのですよ。そういう例が枚挙にいとまがないほどあったから、私は国会でずいぶん取り上げて、この問題で処置してきておる。   〔大久保委員長退席、大竹委員長代理着席〕  だからいまおっしゃるような、判を預けるなんというのはもってのほかなんです。そんなことは、その本人が悪いのです。しかしそうでないのが、事実はたくさんあるのです。だから私がいま申し上げておるのは、そういうことの——証券会社が、私は全部が悪いと言うのじゃないのですよ。要するに判がそうやって届け出印鑑でなければできないとなれば、そういうことを起こさないのですよ。これが白紙のものになってくれば自由ですからね。株券保護預かりをやっておるやつが、ちょっと金庫をあけて、何かのついでに持って出ればどうでもなるようなことにしてはならぬ。しかしいまのように「推定ス」ですからね、これは違いますよといって、だれかが出てこない限りは、その人間のものになって今度はどんどん流通していくわけですよ。そんな危険を——要するにどっちかといえば、証券会社の人間に、これからは事故がやりやすくなりましたよというような制度を設けていいのかどうかということですよ、問題点は。そうではなくて、届け出印鑑制度だからこれはできないのだ、そういうことはもうできないということになるほうが、私は、証券市場の発展のために必要だと考えておるのですよ。政治的にどうですか、そのほうが大事じゃないですか。要するに、安心して株主証券会社へでも株を預けておける。そんな信託や何かに預けておいたら、一々売買できないじゃないですか、そうでしょう。株式というものは、私は、安定投資として皆さんゆっくり持ってくれと言っていますよ。しかしやはり値上がりがあれば、売りたくなるのは人情でしょう。だから、そこで売って、また安くなったら、買えばいいのですよ、その自由は妨げないことになっているわけですから。だからそういう流通の問題を考えると、現状では保護預かりというかっこうが非常に利用されておるという実態がある。それがそういうかっこうで、何も書いていないのだから、持っているものが適法な占有者と推定をするのだということになっていれば、ともかくそういう表現は適当ではないけれども、誘惑を前に置くようなものですよ。そうではなくて、これは絶対にだめだということにすることが、少なくとも商法趣旨ではないですか。いいほうに改正するのじゃなくて、悪い可能性を拡大する可能性のほうに改正する。法務大臣もいまどうもやむを得ないと言うが、やむを得ないくらいなら、この一項だけはやめてもらいたいですね。どうですか。
  122. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私がやむを得ないと言うたのは、最も安全だ、安全だというて大事がっておることよりは、商売がどんどん動き、また経済の流通という点からすると、こういうことをとるのもやむを得ぬじゃないかというような意味でございまして、これはいかぬけれども、目をつぶろうというようなほどまでのやむを得ぬじゃございません。それはまあ言いわけでございますがそれとして、結局いたしますと、いまのような状態でやっておりますのと、今度改正いたしますのと、たとえば証券会社の例をいろいろおっしゃいましたが、証券会社に、預けて持ってもらうということと同じじゃないですか。その人を信用するか信用せぬかの問題、その人を信用できなかったら、いままでのものだって預けるわけもありませんし、これから先のものは、なおさら預けるわけはないのであります。それからそれが信用できないならば、自分が持っていて、金を持っておるようにして、大事にして、自分がこれを動かすというような方法をとらなくちゃならぬということになるのでありますけれども、そうせぬでもいくというところの信用取引というようなところから、お互いの信用がどこまで持っていけるかという問題でありまして、幾らかの問題は起こってくるか知らぬが、それならば前の場合でも起こっておったわけでございますし、私は、これによってひどく悪くなるとはどうも思えぬように思うのですが、いかがでございましょう。あなたのほうが詳しいようですが……。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 こういうことです。私は、現行のままでいいと言っておるのじゃないのです。改正をするなら届け出印鑑で処置をしなければ売買できないという方向に改正しなさいと言っておるのです。現行より一歩前に出て——これは一歩後退なんですよ。よろしいですか、現行があいまいなところに確かにこれは問題があるのですよ。だから届け出印鑑にすればどういうことが起こるかというと、保護預かりで預けてありますね。電話一本で売ってくれ、そうしたらそれを売り渡すときには、証券会社は一応その株券を持ってこなければ、判を押してなければ売れないわけですから、そうすれば確実にいけるわけですね。同時に判がない限りは持ち出しても売れないわけですよ。信用の問題をおっしゃっていますが、みんなが会社を信用しているのですよ。しかし四大証券といえども事故が起こるのですよ。いいですか、あなた、野村証券を信用しないかといまここで聞いてみましたら、だれでも、私は野村証券を信用しますと言うでしょう。しかし野村証券だって過去に事故が起きている。表に出していないだけであって、どんな証券会社だって事故が起きておる。しかし、会社を信用しているのですよ。中で動いている人間一人一人を法務大臣信用できますか。過去に事故が起きている会社——みんなその人たちは家に持っておりなさいなんて、そんなわけにはいかない。それは経済の実態ですから。だから会社を信頼する。しかし中における事故を防ぐにはこうすべきだというのが私の提案なんです。私は専門的に過去にやってきたのだから、当然のことなんですよ。だから、そういう専門的な立場からそういうことを言っているので、裏返して言えば、会社におけるいろいろなそういう事故は、全部会社が無限責任で負います、全部払いますということになれば話は別ですよ。よろしいですか。財務調査官、現在の法律はそんなことにはなっておらぬでしょう。職員が中でこうやって売って善意のある投資家に迷惑をかけた、無限責任で全部その分を負いますとなっておらぬでしょう。ちょっとはっきりしてください。
  124. 加治木俊道

    加治木説明員 発行会社がそういう株式の売買についてトラブルが起きた場合に責任を負うという制度はないと思います。証券会社については、今度の新証取法によって、善意の取得者に対して証券会社はたといセールスが起こした事故であっても責任を負わなければならないということになっております。無限責任という意味ではございません。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 一応今度は証取法の中で責任を負うことにしましたけれども、それは限度があるのです。だから、そういうことを起こさないようにする問題が前提にあったほうが、証券会社も不測の損害を受けなくて済むわけですよ。個人がやっても証券会社が責任を負うということになるのは事実はおかしなことなんです。しかしやむを得ないから、そういう規定までも証取法に設けてきたわけですから、私は、それは商法の規定の中できちんとして——だってそうでしょう。ほかのものだってそういうふうになっている。手形だって小切手だって、ほかのものをみんなはずしますというなら、私も賛成します。しかし手形や小切手は全部裏書きをして判を押しなさいと、こうなっているわけですよ。それなら株式のような重大な、価額も大きいものを、それもはずしてしまえということは、単に証券会社の手数の煩瑣を省くというだけのことで、その逆の側における投資家に対するデメリットというものは無視されておるのではないか、それに対しては何らかの保障があるかどうか。保障はありますか。
  126. 新谷正夫

    新谷政府委員 堀委員の仰せは、前の会社に届け出た判こで、すべて裏書きが行なわれるようにすべきである。こういう御意見であることはよくわかります。ただ現在の株式発行状況が、昔と比べますと非常に多くなっております。それと、従前の額面五十円の株式というのが依然として残っております現状下におきまして、一々その届け出印鑑と裏書きに使われました印鑑を対照するということは、発行会社としては、とてもこれはやりきれないというふうな実情にあるようでございます。そこで、そういう形に戻せれば、それはそれが最も確実な方法であるとは思いますけれども、現状から考えますと、どうもそこまで戻すのは非常に困難である。それでは現在の裏書き方式がいいのか、それとも今回の改正のような交付方式によるのがいいのかということが、残された問題になるわけであります。これは先ほど申し上げましたような理由によりまして、現在の裏書き制度を維持することが、実質的にもうその意味を喪失しておるということになりますれば、交付方式によるというのが一番適当ではあるまいか、ここにこの改正の理由があるわけであります。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 時間もありませんから、もうこれで終わりますが、法務大臣、私はこういう法律の改正については、その点はもうちょっと慎重な配慮があってしかるべきだと思うのです。私に言わしたら、証券局も少しだらしがないと思う。ともかく証取法の中であそこまで書いたのは、しかしそれだから証券会社が損をしていいということじゃあれはないのですよ。そうでしょう。そういう事故を未然に防ぐという措置が十分講じられるということが前提でなければ、私は証取法のあの書き方というものは間違っておると思うのです。いいですか。それなら証券局としては、当然この問題については、要するに過去にこういう事例があって、大蔵委員会では累次それが取り上げられて、そして証取法にあそこまで書きました。それを書いた以上は、会社側に不測の損害を与えないためにも、それの可能性については届け出印鑑で処置をするぐらいのことは当然行なってしかるべきだ、こういう処置を事前に法務省と協議をしてやるべきであった。それをやらなかったということは、あなた方は証券会社に対して、その点は不測のそういう損害を与える道をさらに大きく開くことに協力をした、証券行政としてまことに大きな汚点を残すことになる、こういうふうに私は思いますが、まあこれは法務委員会のことでありますから、本日の質問はこれまでといたします。
  128. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 関連。いま議論を聞いていると、三百五十条ですか、この意味がわからないので、ちょっと局長説明してください。
  129. 新谷正夫

    新谷政府委員 三百五十条の規定は、三百四十八条の譲渡制限の特別決議をいたしますときの手続でございますが、譲渡制限の決議をいたしましたときは、会社はそのことと同時に、ある一定の期間内に株券会社に提出されたいという趣旨、さらにその期間内に提出されない株券は無効となるということを公告いたしますと同時に、株主株主名簿に記載のあります質権者には、それぞれ個別的にそのことを通知しなければならない。しかもその期間は一カ月を下ってはならないということにいたしてあるわけでございます。これによって株券を回収しまして、株券にその譲渡制限の旨を記載する手続を書いたわけであります。  三百四十八条一項の譲渡制限の定款の定めは、ただいまの三百五十条第一項の期間が満了したときにその効力を生ずるといたしましたのは、その手続がすべて終わったときにはじめて譲渡制限の効力が生ずる、こういうふうにいたしたわけでございます。  それから、三百七十八条の規定を準用いたしておりますのは、旧株券を提出することができない場合に、新株券を交付する手続がここに定められたわけでございます。
  130. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その提出させて何かそこに書かなければならぬというのはどこにあるか。その規定はあるのですか。二百四条から以下読んでみたのだが……。
  131. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡制限をいたしますと、これを株券の記載事項にいたしております。その関係で提出させるわけであります。
  132. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはどこに書いてある。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
  133. 新谷正夫

    新谷政府委員 第二百二十五条に、——二百二十五条は株券の記載事項の規定でございます。その第八号を新設いたしまして、「株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ヲ定メタルトキハ其ノ規定」、こう追加いたしまして、株券にそれを書く、こういうことにいたしたわけであります。
  134. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうなると、これは忘れてやらなかったりすると無効になるのだが、無効にされたら何か賠償してやるのですか。それとも、おまえ無効だと、それきりほっぽり返すのですか。
  135. 新谷正夫

    新谷政府委員 株券は無効になりますけれども、株主権を失うわけじゃございません。したがいまして、そのもとの株券を持っていけば、会社は新しい株券を交付するということになります。
  136. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それをはっきりしておいてもらいたい。  その次は、三百四十八条の決議ですが、これは譲渡制限するときの決議ですね。それをやめて譲渡をかってにしようということをやるときには、どういう決議でやれるのですか。
  137. 新谷正夫

    新谷政府委員 譲渡制限しようというときには、株主に非常に利害が影響いたしますので、一般の特別決議よりもさらに要件を加重いたしまして、三百四十八条の規定を設けたわけでございます。これをもとへ戻そうということでございますれば、一般の定款変更の決議でよろしいわけでございます。三百四十三条の決議によるわけでございます。
  138. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 特にそれは規定を設けぬと、疑問がありませんか。三百四十八条はあるのですからね。
  139. 新谷正夫

    新谷政府委員 三百四十八条は、定款変更をしまして譲渡制限の定めを設ける場合には特別にこの決議によれ、こういうふうに書いてあるわけであります。それ以外は一般の定款変更の手続によるのが当然のことでございますので、それをもとに戻すときには特に規定を置きませんでした。
  140. 大久保武雄

    大久保委員長 これにて本連合審査会の議事は終了いたしました。散会いたします。    午後一時二十二分散会