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1966-06-10 第51回国会 衆議院 法務委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月十日(金曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 濱田 幸雄君    理事 井伊 誠一君 理事 坂本 泰良君       鍛冶 良作君    四宮 久吉君       田中伊三次君    登坂重次郎君       馬場 元治君    濱野 清吾君       早川  崇君    森下 元晴君       落合 寛茂君    畑   和君       藤田 高敏君    横山 利秋君       志賀 義雄君    田中織之進君                 畑   和君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         法務政務次官  山本 利壽君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      伊藤 榮樹君         検     事         (刑事局公安課         長)      蒲原 大輔君         農林事務官         (農地局管理部         長)      中野 和仁君         自治事務官         (行政局行政課         長)      松浦  功君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月十日  委員佐伯宗義君、千葉三郎君、神近市子君、山  ロシヅエ君及び山田長司辞任につき、その補  欠として鍛冶良作君、登坂重次郎君、落合寛茂  君、藤田高敏君及び畑和君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員鍛冶良作君、登坂重次郎君、落合寛茂君、  畑和君及び藤田高敏辞任につき、その補欠と  して佐伯宗義君、千葉三郎君、神近市子君、山  田長司君及び山口シヅエ君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。坂本泰良君。
  3. 坂本泰良

    坂本委員 私は、茨城県の、吉原三郎という岩井町長に対する背任収賄事件並びに選挙違反事件につきまして、これは、岩井町政刷新議員連盟町政刷新協議会から告発が本年の三月の二十四日に提出されておるわけでありますが、いまだにその捜査が完了していない、そういう点に関しまして、質問したいと思いますが、この背任収賄事件につきましては、町村に対する工場誘致の問題ともからんでおりますから、そのことについて質問を申し上げたいと思います。  この岩井町長に対しまする背任収賄告発の事実は、大体三つになっております。  第一は、茨城県猿島郡岩井大字鵠戸聯合紙器株式会社利根川工場に対する問題でありますが、これは大阪に本社がありまして、岩井町に利根川工場をつくったわけであります。紙器会社は、皆さま方御案内のように、水が非常に必要であります。一日に三万六千トンの水が必要でありまして、この鵠戸沼土地改良区、これの管理をしておりまする水を三万六千トン使う。こういうような関係がございまして、この水利に関しましては、改良区がございまして、農民のかんがい水に対する重要な関係があるわけであります。そこにこのかんがい水の一部を利用する工場誘致したわけであります。そこでその誘致をするについては、契約が成立しておるわけでありますが、そのことはあとにいたしまして、昭和三十六年からこの工場が始まったわけですが、昭和三十六年度から昭和四十年度にわたりまして、前記聯合紙器株式会社鵠戸沼土地改良区に支払うべき動力費が年間百七十万円で、四十年度までの合計が八百五十万円、これを、あと契約を明らかにしますが、会社改良区に支払うべきのを、岩井町の財産からこれを支出をしておるわけであります。  第二は、会社改良区に支払うべき——サンドポンプ船、こういうのがありまして、その施設費が二百一万二千二百五十円、これを昭和三十六年度及び三十七年度にわたって、会社が支払うべきを岩井町の財産から町長が不法に支出をしておる。  第三は、同じく会社負担すべき施設新設及び補修等費用を、昭和三十六年度と昭和三十八年度に合計九百十二万一千八百八十二円を、会社が出さずに岩井町の財産から町長支出しておる。すなわち、昭和三十六年度から昭和四十年度にわたって、合計一千九百六十三万四千百三十二円、約二千万円を、町長岩井町の財産から支出しているわけです。これが業務上の背任になる、こういう容疑であります。  さらに、この町長は、会社支出すべき金を町から出しておりながら、この会社顧問ということになりまして、毎月月額五万円ずつを顧問料名義会社から町長が受け取っておる、こういう容疑でありますが、これについては、会社利根川工場を設立するにあたりまして、昭和三十六年の九月の十三日に鵠戸沼土地改良区の理事長藤井嘉一郎、それから聯合紙器株式会社取締役社長本田恒、この人の間に契約ができておりまして、立ち会い人として茨城県の県会議員中村喜四郎岩井町長吉原三郎、さらに境土地改良事務所長上野秀雄、こういう人が契約をいたしております。この契約書によって、いま申し上げましたような金は、会社改良区のほうに出す、こういう契約が取りかわされておるわけであります。ところが、この岩井町長は、この契約書を隠しておいて表面に出さずに、この会社契約前は補助金その他が町から出されておったと思いますが、その点はまだよく調査をしておりませんが、町から約二千万の金を出しておる。そうしてその陰には、顧問料名義月額五万円の金を町長個人が受け取っておる。どうもおかしいというので調べますと、その五万円については税金が払われておる。まあそういう点が明らかになって町で騒ぎ出しましたから、その隠されていた契約書表面に出まして、それで町が、これはもちろん町民のために、改良区のことですから出しておるのであろう、こう思っていたら、この工場誘致によって契約書が出てきた。そうすると、この契約書によれば、聯合紙器から土地改良区のほうに払うんだ、こう書いてある。こういうふうな契約書がわかりましたものですから、ここに背任、さらに毎月五万円町長がもらっているのは収賄ではないか、この容疑告発をしたわけであります。  もう一つ選挙違反関係は、この町長選挙は本年の三月二十八日告示ですから、投票日は一週間後の四月四日だろうと思うのですが、この吉原町長は五選、五回目の選挙でありまして、十二月から本年の一月、二月にかけまして、吉原町長後援会というのをだいぶ開きまして、表があるわけですが、自分は今度の選挙には四千本の酒を配っておるから当選は間違いないのだ、対立候補が出ても心配要らぬ、こういうことを豪語しておりまして、いよいよ選挙になりますと、二千票の差で五選に当選しておるわけであります。  そこでこの町におきましては、こういう大っぴらな選挙運動をされたのではこれはいかない、腐敗堕落選挙になるというので、告示がいま申し上げました三月二十八日でありますから、告示前の三月二十四日に告発状がさきの町政刷新議員連盟有志町政刷新協議会有志九名から出されまして、そうしてこれは事前運動である、厳重にこういうのを取り調べてもらわなければ公正な町長選挙は履行できないのだというので、告発が出されておるわけであります。これが現在に至るまで警察調べておるかどうかわからない。この町長は五選ですからもう十六年になるわけですが、非常な勢力者であって、警察なんかは何でもない、また中央のえらい人に頼んでおるから、そんな告発なんか出してもものにならない、上から押えていくのだ、こういうようなことを言われておるわけでありますが、先日調査に参りますと、警察でも相当捜査が進められておるようでありますが、まず最初に、その捜査の状況を承りたいと思います。
  4. 日原正雄

    日原政府委員 お話のような町政刷新議員連盟から三月二十四日に二件の告発がございまして、お話の後にあります選挙違反関係につきましては、被供応被疑者百三十三名、供応被疑者二名ということで、合計百三十五名を買収事犯で六月八日検察庁に送付をいたしました。  それからお話の前にあります聯合紙器株式会社関係刑法背任罪並びに事後収賄罪告発につきましては、現在捜査を行なっておる最中でございます。近く結論を出したいと思っています。
  5. 坂本泰良

    坂本委員 もうちょっとその捜査内容を承りたいと思うのですが、背任収賄のほうですね、これの捜査はどうなっておりますか。被疑者である吉原町長自身、その他どういう関係者捜査が進められておるか、もう少し承りたいと思います。
  6. 日原正雄

    日原政府委員 現在までこの事件関係につきましては、関係者三十一名の取り調べを行なっておりますが、内容については結論が出ますまで申し上げかねるのでございます。
  7. 坂本泰良

    坂本委員 被疑者吉原町長自身についての調べはもちろん強制捜査にはなっていないようですが、六月一日から二日ですか、家宅捜査はやったようでありますが、そういう点はいかがでございますか。
  8. 日原正雄

    日原政府委員 吉原三郎町長につきましては、選挙違反のほうでは被疑者としてこれは立件いたしております。こちらの背任事後収賄の点については、捜査の点は聞いておりません。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 これは両方捜査ではないかと思ったのですが、そうじゃないですか。
  10. 日原正雄

    日原政府委員 この関係では強制捜査はやっていないというふうに聞いておるのでございますが……。本人が両方関係しているわけでございますので、その間での調べはしておりますけれども強制捜査はやっておりません。
  11. 坂本泰良

    坂本委員 そういたしますと、この背任収賄のほうはまだ捜査中ということですが、被告発人としての捜査ですか、すでに背任収賄被疑者としての捜査を進められておるのですか、どちらですか。
  12. 日原正雄

    日原政府委員 私どもどういう意味かわかりませんが、告発、告訴が出て、それで被告発人被告訴人ということになりますと、そういう意味では被疑者になるわけでございます。もともとこれは告発で進められてきた捜査でございますので、そういう意味では被疑者であります。
  13. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、自治省のほうにお伺いしたいのですが、これは、岩井町の工場誘致条例か何かができての誘致ですか、それとも、任意の誘致になっておりますか、その点いかがでありますか。
  14. 松浦功

    松浦説明員 急な御質問でございますので、誘致条例があるかどうか、最終的にはつまびらかにはいたしておりません。地方課のほうの連絡を受けましたところでは、誘致条例はないというふうに聞いております。
  15. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、これは誘致に関する契約書になっているわけですが、これが隠されていまして、それが昨年ですか、五万円の顧問料の問題が税金関係からわかりまして、そうしてどうもおかしいというので、契約書あとで出たわけですが、先ほど申し上げましたように、昭和三十六年の九月十三日に契約が成立して、吉原三郎町長立ち会い人になっているわけです。それを隠しておいて、町の財産から改良区に対する動力費とかサンドポンプ船施設費、それから工場新設及び補修等費用、こういうのが出ているわけです。契約書によりますと、第六条に「経費負担」というものがございまして、これには施設新設及び補修等経費全額会社負担する、こういうことになっております。それからやはり第六条に、動力費として年額百七十万円を負担する。毎年七、九、十二月に改良区に会社のほうから納入する、こういうことになっております。それからその第六条の第二号に、幹線自然排水路内沼低地排水路第一第二揚水機場に関連する施設改築、更新、災害復旧工事等における経費のうち、地元負担金の二分の一を負担し、昭和三十六年度から適用する契約で、この事件に関連する条項は、ほかにもいろいろ関連するのがありますが、直接関連するのはこの第六条とさらに第十一条二、乙というのは会社のほうですが、「乙は前項の事業を円滑に維持するため次の備品を常時整備しておくものとする。」というので、「サンドポンプ船一般」「ブルトーザ一台」こういうふうになっておるわけです。そこで、この契約どおり聯合紙器支出すべき経費を町から出しておる。これは明らかになっておりまして、町の予算には、経常に負担すべきであるというので計上して、全部かどうが知りませんが、議会承認は受けておるものがあるそうです。しかし、その承認を受けるについて、この契約書を出せば町が支出する必要がないものですから、隠しておいて、従来のようにあたかも町がその支出をするように予算計上をして、承認を得て出しておる。こういうことになっておりますから、その点が背任になる、こういうことで告発になっておるわけです。  さらにまた、現職町長であって、その管理する営利会社で、しかも工場誘致するについてはたぶんたくさんの水を使わなければならぬから、いろいろの施設についての費用会社が出すべきである。それを隠しておいて町から出す、そのかわりに毎月五万円の顧問料を取っておる。これは収賄になるじゃないか、こういう容疑でありますが、刑事上の問題は警察庁検察庁におまかせしなければならぬわけですが、地方自治関係町長がこういうことをやってよろしいかどうか、その点についての自治省の御見解を承っておきたい。
  16. 松浦功

    松浦説明員 地方公共団体が、どのような団体に、あるいはどのような人に補助金を出すか、あるいは助成をするかということについては、地方自治法上のたてまえは、法律的に申し上げますと、一切制限はございません。したがって、どのような形で当該土地改良区に補助金を出そうとも、議会の議決を得て正式に地方財政のベースの上に乗せたものである以上、法律的には問題にならないかと存じます。  さらに顧問料にいたしましても、現職町長が、どのような会社でございましょうとも、請負の関係に直接立たない会社でございます限り、そこの役員に就任して報酬を受けるということは、別に地方自治法上禁止はされておりません。ただいま申しましたのは、あくまで法律的な考え方の問題でございまして、その両者の間にいろいろの関係があり、あるいは先生が御指摘のように、会社土地改良団体との間に経費支払い契約があるにかかわらず、それを隠して地方公共団体支出をするというようなことは、公選の地方行政をあずかる者の立場としていろいろと疑惑を招く問題でもございますので、当然に慎んでいただかなければならぬ問題であろうと思います。要は、その立場にある者の姿勢の問題でございまして、これが具体的に問題になるかどうかにつきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、司直の手によって黒白を明らかにしていただくべきでありまして、私どもはそれが背任に該当するか、あるいは収賄に該当するかという問題につきましては、言明を避けさせていただきたいと考えます。
  17. 坂本泰良

    坂本委員 農林省のほうにお聞きいたしたいと思うのです。  これは畑委員から御質問もあると思いますが、鵠戸沼土地改良区は関東平野の茨城県の穀倉地帯ですから、相当改良区になっておると思うのです。これは直接農林省のほうでも御存じと思うのです。これは警察に聞いてもわからぬことですから聞くのですが、改良区は岩井町から予算支出されたものはそのものとして経理に受け入れておるかどうか。昭和三十六年九月十三日には、直接この改良区は聯合紙器との契約をいたしておりますから、この契約書に基づくところの金をいかように受け入れておるか。あるいは会社から受け取ってさらに町から受け取るというと二重取りというようなことも想像できるわけですが、そういう関係についての農林省監督のほうですね。農林省としては、三万六千トンの水を使う会社が来るということになれば、かんがい水に対しては相当関係があるから、こういうような会社が来たような場合は、当然改良区に対してそのかんがい水に万遺憾ないかどうか、そういう点について十分調査もされるし、さらにまた改良区のほうからも上申があっておる、こういうふうに考えられますが、その点お聞きしたいと思います。
  18. 中野和仁

    中野説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生お話のこの地帯利根川のそばでありまして、国営干拓をかつてやりまして昭和三十一年に完了したわけでございます。面積が大体五百町歩、それから組合員が千六百名くらいおるところでございますが、この施設国営でありましたものですから、排水機なり、排水路堤防等は国のものでございます。それを大体全部、原則としまして土地改良法によりまして地元土地改良区に管理を委託するということできておるわであります。ところが、先ほどお話のございましたように、三十六年でございますか、聯合紙器工場誘致されまして、そこに水が必要だということで、先ほど先生お話のありました契約土地改良区と会社とが結んでおるわけであります。これは、われわれのほうに参りました関係で申し上げますと、この国の財産につきまして改築なり補修をやるわけでありますから、農林大臣承認が要るということになっておるわけであります。そこで当時、いまは関東農政局でございますが、当時は東京農地事務所というものの所管になっておりましたものですから、そこを通じまして農林大臣追加工事承認申請をする、それは現地土地改良区を経まして知事を通じて来たわけであります。土地改良区は契約がありましたように農業上には支障がないというふうに判断してこの申請書を出したわけでありますが、知事もそれに意見をつけておりまして、取水いたしますのは土地改良区の使います残水でございますので、農業への影響、あるいは土地改良財産の本来の目的の使用に障害はないというふうに判断されますという意見書をつけてまいりましたので、農林省としてはこれを承認したわけであります。  そこで、いまお話しの土地改良区がその契約に基づきまして百七十万円なりの費用をどういうふうにやっておるかということになりますと、実は土地改良区の指導監督、あるいは検査というものは、県知事の権限になっております。そこで急なお話でございますので、ただいま県庁に連絡しましてその辺を調査しておりますが、私ここへ参りますまでにその返事が来ておりませんので、具体的に土地改良区の経理内容がどうであるかということになりますと、やはり県庁の職員が現地に参りまして検査をしてみませんとはっきりしたことはわからないわけでございます。そういうような段階でございます。
  19. 畑和

    畑委員 関連して質問いたします。  私も実は岩井町のことに関しましては、ついこの間坂本議員と一緒に調査をいたしてまいりました。すでに坂本議員からいろいろ質問をなさったのでありますけれども、私も行ってみまして、こういう町が日本の国にもあるのかと思った。非常に独裁的な町政を施行しているようであります。かつて消防長も兼任しておった当時、消防長という職務を利用して、自分の言うことを聞かない人のところへ、わざとその屋敷に放水をして問題を起こした。町長であり、消防長である吉原氏という人が、消防ポンプでそのうちに放水をしたということ、このことは暴力行為等処罰ニ関スル法律かなんかで最高刑の二万何千円の罰金を払ったそうでありますが、しかもこれが罰金刑で済むという段階になりますと、このくらいで済んだ、何でもなかったのだということで、また祝賀の宴を大々的にやった。こういった種類の人で、しかもこれがかつては日教組の茨城県の役員であったことがあるそうでありまして、やはりインテリの仲間である。それがこういうこともやるわけです。その人がずっと十五年も町長をやっておるわけです。しかも聞いてみますと、助役も置かない、それから収入役も置かない、こういうような町政、そうしてあそこは合併して相当地域が広いので、工場等誘致をすれば相当入ってくる余地がございます。それをどんどん自分誘致をすることをやる、しかも誘致をすれば、そのことは労働力の吸収にもなるので、一応町民の歓心を買ったことも事実でありますが、その後そういった工場への就職を希望いたしましてその工場就職希望を出しましても、その工場が必ず町長のところを通してこい、こういうことだそうでありまして、町長が、自分の言うことを聞かないような子弟はこれを推薦をしない、通さない、そういう点でたしか職安法違反にもなるくらい、その他これはいろいろな方面に関係があると私は思うのであります。私も行ってびっくりしたわけであります。こういうことがまかり通っておるのでありまして、しかもこの人はヒットラーの「マインカンプ」、わが闘争を信条といたしておる、まさに独裁者であるわけです。これによって十五年もこの町政が毒されておるということを私聞いてまいりまして公憤にたえなかったわけです。そして保守とか革新とかいうことでなく、もう民主主義以前の問題だというので、最近うつぼつとして反町長の気運が盛り上がっておる。もちろんその町議会の中には自民党の代議士の、別の関係代議士の秘書さんも町会議員として刷新連盟の一人に加わっておる、こういうことでありまして、東京から比較的近いのであますが、交通の便もちょっとよくないところのせいかまことにおくれたところです。  前置きがだいぶ長くなりましたけれども、そういうきわめて言語道断な町政をやっていると思うのです。この点で、刑事問題といたしましては警察のほうで調べ、ちょうど私が参りましたらその日に送検したということでありまして、われわれが行くということがわかったので大急ぎでやったということもあるかもわかりませんけれども一つ選挙違反は一応送検した。もう一つ背任事後収賄のほうは、ちょっと書類が不備だから、それに判こを押すということだけでおくれておるのだ、こういうことでございました。検察庁に行きましたら、検察庁も一応やる気でありましたことは私は認めてまいりましたのですが、そもそも最初から検察庁告発が出ましたが、検察庁のほうで県警のほうと打ち合わせた上、県警が担当して捜査警察庁に送った、こういうことのようであります。いろいろ巧妙なやり方でやっておりますので、刑事問題として証拠問題、法律解釈問題等について相当困難な点もあると思います。今後は検察庁段階でありますけれども、そういった刑事問題はともかくといたしまして、それは司直の手にゆだねるといたしまして、自治体の問題として私考えてみたいと思います。  先ほど坂本委員のほうから質問がございましたが、そうした助役も置かぬ、収入役も置かぬ、しかもそのような、いま坂本さんの言われたような背任的な事実があるわけです。先ほど自治省のほうの御答弁では、法律的には、行政的には一応合法である、しかし、実質的にそういうことであるとすればまことに遺憾である、しかしそういった刑事問題については司直の手にゆだねざるを得ない、その結論を待つほかない、こういうことでございました。ただ、自治省としてはこういった世にも珍しい町政を、そのまま何にも調査その他もなしでいままで過ごしてきたのか、そういうことを大体県等から報告を受けておるのかどうか。これは自治体だから、おれのほうの関係は直接指導したり監督することはできない、自治体だから、いまの法律がそうなっているからだめだ、こういうことかもしれない。私は自治法のことはあまり詳しくないのですが、自治省として、いまの坂本委員からの話や私の話も総合いたしまして、いままでその辺がわからなかったということであれば、今後自治法の許す限り最大限の干渉というか、指導というか、監督というか、そういう道があるのかどうか、その辺どういう考えであるか承りたい。
  20. 松浦功

    松浦説明員 ただいまの御質問でございますが、現在の地方自治体に対します指導助言と申しますか、あるいは監督と申しますか、そういうことにつきましては、法律上は一般的に市町村に対しましては県知事指導助言をすることができるようになっております。そして監督と申しますか、指揮命令と申しますか、あるいは若干強制力を持った措置ということになりますと、市町村が法律にたがったことをやっておる場合、この場合についてのみ、市町村については一次的に知事、二次的には自治大臣に権限が与えられておる形になっております。  今度の、ただいま御指摘をいただきましたようなそれぞれの事実につきましても、個々の問題について明確に法律違反をしておるという事実は私どもとしても考えられないわけであります。たとえば自分の気に食わない者に放水をしたというのは、これは町長としてやったことというよりは、個人の犯罪の問題でありましょうし、助役収入役を置かないことは、地方自治法の規定によって条例で置かないということを定めれば、これも合法であるわけでございます。そういうことでありまして、明確な違反事実が私どもにはっきりいたしますれば、県の地方課を通じてこれを矯正させるという道はございますけれども、そうでない限りには指揮監督権を発動するというような形の行動には出れないということを御了承いただきたいと思います。  なお岩井町の問題につきましては、私ども申しわけございませんでしたが、不敏にしてこれまでこういう町政が行なわれているという事実は存じませんでした。御質問があるということを通じて地方課のほうにどういう問題があるのだということを聞いて知ったわけでございます。ただいまの御質問の中にもございましたように、いろいろと為政者としての姿勢の上について批判をさるべき点も少なくないようでございますので、助言指導という形で、県の地方課を通じて、健全な町政が運営されるように今後力を尽くしてまいりたい、そのように考えております。
  21. 畑和

    畑委員 いまのはお役所的な御答弁と思いますが、違法なことをやった場合にはもう少しいろいろなやり方があるが、一応合法のワクによってやった場合には、ただ助言という形で県を通じてやるほかない、こういう御答弁であります。しかし先ほど坂本委員からもお話がございましたように、これはおそらく事実でありますが、隠された契約書というものがございました。聯合紙器が取水、水を取ることにつきまして、全部施設その他は聯合紙器がやって経費負担をするということになっております。その中に吉原町長立ち会い人として、もう一人の県会議員、現在は参議院議員になっておりますが、その人と一緒に連署をして立ち合い人になっておる。その文面によればいま言ったようなことで、経費はすべて聯合紙器が払うという土地改良区との契約になっておる。立ち会い人になったその町長が、その経費に当たるものを町の財政から支出をしておる。そしてそれを土地改良区への助成というような形で、いろいろありましょうけれども、大体そんな形で出しておるようです。しかもそれは、そのときそのときについては議決はしてはあるのです。ところが、これが相当圧力を加える式な議会運営のようでありまして、しかしともかく巧妙に、具体的な一つ一つ支出についての議決はあるようでありますが、しかしそれが結局改良区のほうへ払われておる。改良区の整理項目としては聯合紙器から受け入れたようなかっこうになっておる。これは明らかに違法だと思う。私は形式的に整っていないと思う。私はこういう点に相当疑問を持っておりますから、もっと詳しく自治省のほうで調べて、単なる県を通じての助言ということでなくして、違法の支出がある、違法支出であるというような疑いの観点から、ひとつさらに調査をやってもらいたい。どうもその辺がおかしい土地改良区のほうの整理は、それが聯合紙器から契約に従ってもらったような整理になっておるが、こんなばかなことはない。しかも立ち会い人で、現に判を押しておるのですから、私は明らかに違法であると思う。この事実がすなわち背任罪になろうと思うのです。背任罪になる、ならぬは別として、自治省立場からしても、違法な支出だと思うのでありまして、その点をもっと調査して、そういった職権の発動をやることがあるかどうかということについてさらに伺いたいと思います。
  22. 松浦功

    松浦説明員 ただいま御指摘の点でございますが、その法律違反というものが私ども背任罪の問題だと思っております。これは司直の手で明白にしていただけると思います。ただ土地改良区のほうで受け入れておるものが、町から受け入れたのではなくて聯合紙器のほうから受け入れた形で経理がなされておる、町から出ておる支出の科目がそれぞれ契約内容と全く同じくするような支出科目で出ておる。こういうようなことになりますと、先ほど坂本先生から御指摘がございましたが、全く肩がわりをするために単に土地改良団体の助成金という名目をかりて議会を通過させようとしておる、そういう意図が十分うかがわれることになります。そういうことになれば背任罪という問題が当然起こってくると考えていいと思います。もちろんただいま御指摘がございましたように、県の地方課を通じてこの事実関係についてはさらに調査をし、指導をすべきことは指導をするようにいたしたいと思います。
  23. 畑和

    畑委員 そのことの事実が背任になるかどうかということ、背任になれば違法だ、こういうお考えのようでありますけれども背任罪にならなくても、起訴されなくても、起訴猶予で済んだり証拠不十分ということになったとしても、たとえ刑事問題として成立しないということがあっても、自治法上違法ということはあり得ると私は思う。刑事問題として、証拠関係その他によって成立をしないということがあっても、自治法上は違法な支出だということはあり得るはずだ。だからいまの課長さんの言われるような言い方は、ちょっと即断だと思うのですよ。そういう責任のがれみたいなことは言わないで、やはり自治省として、自治省立場で、背任になろうとなるまいと、こういう事実を聞いたからには積極的に調査をします、調査をして、それだけの処置を講じます、こう返事しなければ私はいかぬと思うのですが、どうですか。
  24. 松浦功

    松浦説明員 その点は、おことばを返すようで申しわけございませんが、自治法上、支出が違法であるかどうかという問題は、これは自治法のどの条文に抵触をするかということでございます。坂本先生の当初の御質問にお答えを申し上げましたように、土地改良団体にサンドポンプの購入費を助成をする、あるいは維持経営費を助成をする、これ自体は何ら法律で禁止をされておりません。したがって、私どもは違法の疑いはこの支出自体については法律上はない。しかも議会の議決を経ておるわけでございます。その議決が脅迫によってなされたものか、どういうふうになされたものか、その問題は別にいたしまして、合法であると考えざるを得ないわけであります。ただそれが、坂本先生から御指摘がございましたように、聯合紙器支出すべき契約を結んでおいて、支出すべきだということを知りながら、それを議会に提案をしたということになると、どの条項にひっかかるかということになれば、これは可能性として刑法の背任ではないかと申し上げておるわけであります。そういう政治の姿勢というものについて、私どもはもっと厳正に為政者としてやっていかなければいかぬという指導は強力にいたしますけれども法律のどの条項に違反しているじゃないかということについて調査をするということは、現在の段階で、私どもが報告を受けておる限りにおきましては、非常に無理ではないかというつもりでお答えを申し上げたわけでございます。したがって、私どもといたしましては、御指摘もございました、私ども地方課の報告についての調査が不十分な点もあるいはあるかもしれません。その点はなお、先ほども申し上げましたように、もっと慎重に検討いたしました上で、指導すべきものは適正な指導をいたしたい、こうお答えを申し上げておるわけであります。
  25. 横山利秋

    ○横山委員 関連して。さっきから伺っているのですが、何か学者的判断をあなたから伺った。であれば、とすればということなんで、あなた自身が事実について十分な調査が済んでないし、それからいままでの御調査はワンクッションを置いて入手し得る限りの判断である。それからもう一つは、もしも犯罪であるならば、私の所管ではない、これは検察庁の所管であるという責任のがれのようなことになっていると思うのです。くつの裏から足をかくようなやりとりで、まことにたよりがないのです。  まず第一にあなたに考えてもらいたいことは、もっとひとつ具体的な事実というものを把握をして御答弁が願いたい。第二番目に、刑法その他に違反するかどうかは、確かに検察庁の問題ではあるけれども、同僚諸君があなたに質問をしているのは、地方行政の担当者として、運営上いかにあるべきか。最も焦点になっていますのは、議会の議決はした、しかもきわめて合法的である、けれどもどうしても納得できないものを感ずるということですね。どうしても納得できないものとは何だ。一つには政治責任である。もう一つは、たくみに法律の網をくぐってやっているごまかしである。その二つが指摘をされておるわけです。それらの問題は、必ずしも検察庁の所管ではない。形の上では合法ではあるけれども、どうにも納得できないものをお互いに感ずるというのであるならば、どうしてそういうことが行なわれるのか。今後そういうことが随所に行なわれるとするならば、自治省としては考えなければならぬ問題であるという点だと思うのです。そこをあなたにひとつしっかりしてもらいたいということを申し上げておるのであるから、ここまできておるのであるから、あなたのほうとしても、単に人まかせに報告を聞いて、推察的判断を学者的になさるよりは、実地に自治省として現地調査をして、——私の調査という意味は、必ずしもあなたが危惧されるような監督立場以前に、まず事実を正確に把握する、そういう意味合いにおいて実施調査をされ、明白な事実の証拠の上に立ってわれわれに答弁をなさらぬとどうもいかぬ、進行しない、こう考えるのですが、どうですか。
  26. 松浦功

    松浦説明員 先ほども申しましたように、これ以上必要な調査茨城県の地方課を通じて十分いたします。
  27. 横山利秋

    ○横山委員 地方課を通じてが気にくわぬ。
  28. 松浦功

    松浦説明員 この点は御承知いただきたいのでございますが、三千有余の町村に対して、自治法のたてまえ上は、県の地方課が県知事の権限でお調べを願うというたてまえにいたしております。そのように御了解をお願いいたしたいと思います。
  29. 坂本泰良

    坂本委員 自治省の行政指導は、やはりぜひ県知事を通じなければいかぬというルートになればそうでしょうが、しかしながらやり方によって違いますから、これはひとつ強力にやっていただかないと、これは日本の自治の破壊になる、こういうふうにも考えるわけであります。  それから農林省のほうは、この受け入れが、私がさっき申しましたように会社のほうからも受け入れておる、その他の何から受け入れておるか、そういう点を、これは重大な改良区の問題だからぜひ調査をお願いしたいと思います。  そこで警察庁刑事局長にお伺いしたいのは、選挙違反のほうは送検されている。これは何月何日にどこで何人集まって、そうして酒が一斗、ジュースが何本、サイダーが二ダース、こうちゃんと明瞭に出ているわけです。これに対する調査が、私はその町長の威力に押されて警察では不十分じゃないかと見ておるわけでありますから、この点はあと刑事課長にお願いしておきたいと思いますが、これはそういうわけで証拠が明らかであります。  それで問題は背任収賄の点ですが、これは警察としても改良区はどういう金を町から受け取っておるか。さらにまた聯合紙器から受け取っておるか、これを十分に捜査しないことには、私は捜査が十分にできておる、こういうふうに思われないわけなんです。でありまするから、この点についてはまだ捜査中のことでありますから、さらに慎重にこれは第一線の警察捜査を遂げてやってもらいたい、こう思いますが、いかがでございますか。
  30. 日原正雄

    日原政府委員 酒のほうの点は、選挙違反のほうの点は、私どものほうでも二級の清酒四百四十三本、サイダー百四十本というように証拠のはっきりした分は送ったつもりでございますが、なおさらに検察庁調べ直していただくことにいたします。  それから片一方の背任の問題につきましては、やはり先ほど来いろいろお話がありましたように、わいろならわいろとして、わいろの趣旨をどういうふうにするかという立証の問題があるわけでございます。それから背任の点につきましては、当然お話のような点は調べなければならぬと思います。なお、さらに調査させるようにいたしたいと思います。
  31. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、刑事局長にお尋ねし、お願いしておきたいのは、この告訴は検察庁県警両方に出されたわけですね。そして県警のほうで水戸地検のほうに来られて、やはり警察のほうが先に捜査したいという希望があったから、警察捜査を待って検察庁捜査する、こういうようなことをお聞きしたわけですが、選挙違反の問題はこれはひとつ十分捜査をして、さらに独自の検察庁の見解で捜査をしてもらう。ただ、いま刑事局長のお答えにありましたように、酒四百四十三本、ジュース百四十本ですか、こういうのは明瞭になっておるわけでありますから、ひとつこれは十分な捜査を遂げて、あの新潟の知事選挙みたようにならぬように——あれは二十万円が二十数名に渡っていることは明らかであるけれども、これは云々と言って、先般刑事局長は三つの不起訴の理由をあげられているのですが、そういうのでは国民が納得しない。やはりこの町長選挙も新潟の選挙の小版なんですよ。この小版を無視しておると堕落の選挙になって、ほんとうの地方の自治の開発というものはできなくなると私は思うのです。ですから、県知事が不起訴になったから町長も不起訴になるということになったのでは国民が納得しないし、町民も納得しないと思いますから、これは下妻支部に送検されておるそうですか、独自の見解で特にその審理をやっていただきたい。  さらにまた背任横領の問題ですが、これは町長町長の地位を利用して、威嚇的に議会を通して補助金を出す、その陰には自分個人が顧問になって顧問料を取る、これは明らかに収賄になると思うのです。こういう点は、他の町長その他の見せしめのためにも徹底的に捜査を進めて、そうして起訴して、処置してもらわなければならぬと思うのです。私は水戸の地検にも参りまして、検事正は会同で東京においででしたから、次席検事にお目にかかりまして、いまの点を強く要望しておきましたが、この点はなぜ強制捜査に出られないのかわれわれは問題なんです。お隣の鹿島町の町長選挙では、当選した町長がやはり選挙違反で逮捕されておる。岩井町長は何で逮捕されないのだろうか。よっぽどボスであれは力があるのだろうというような批判も出ておるわけであるから、これは検察庁段階において、町長被疑者としての捜査いかんによってはやはり強制捜査に乗り出して、そうして徹底的に究明してもらいたいと思うわけですが、御所見いかがですか。
  32. 伊藤榮樹

    ○伊藤説明員 御趣旨よくわかりました。検察庁へも伝えまして徹底した事犯の究明をいたしたいと思います。
  33. 大久保武雄

    ○大久保委員長 藤田高敏君。藤田委員に申し上げますが、おおむね十二時ごろで終わりたい予定でありますから、そのおつもりで御質問をお願いいたします。政府委員におかれましてもどうぞ簡単に御答弁いただきたいと思います。
  34. 藤田高敏

    藤田(高)委員 委員長のせっかくの何でありますけれども、失礼ですが、十五分ではせっかく発言の機会を与えてもらっても私自身の質問はできがたいと思いますので、もしどうしても本日の日程の関係で都合がつかない場合は、後日の委員会において継続して質問させていただくことをひとつ要望しておきたいと思います。  そこで、時間も非常に少ないようでありますから、そのものずばりでお尋ねをしていきますが、富山県の高岡市にあります般若鉄工が当初三十六年の十一月に九千万円の不渡りを出して一度倒産をし、その後会社更生法の適用を受けて、いわゆるよき意味における労使協力といいますか、お互いの立場において協力をしてその再建につとめてきておったわけでありますけれども、三十九年の九月でありましたか、再び倒産のうき目にあった。この事業所において、賃金、退職金、労働者の社内預金、いわゆる預かり金、こういうものの不払い問題で現在紛争状態が続いておるわけであります。そうしてわれわれの労働常識から申しますと、こんなことがあってもいいのだろうかと思うような状態になっておりまして、この問題が富山の検察庁に告訴告発事件として発展をしておるわけであります。  この問題について、その直接の所管省である労働省及び告訴告発に至ったこの問題を処理した検察庁自身、あるいは法務省として、今日までこの問題について基準法にいわれておる労働者の基本的な権利を擁護するために、どのような努力あるいは善処がなされてきたか、その経過の概要をひとつそれぞれの立場からお聞かせを願いたいと思うわけです。
  35. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 本件は、当該会社の従業員から告訴告発が出まして、高岡の労働基準監督署で労働基準法違反ということで捜査をいたしまして、それを検察庁で受理いたしまして鋭意捜査をいたしましたけれども、結局最後は嫌疑不十分ということで不起訴になっておるのが現状でございます。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 労働基準局のほうは……。
  37. 大久保武雄

    ○大久保委員長 基準局長は見えておりません。課長もおりません。   〔委員長退席、小島委員長代理着席〕
  38. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは昨日からも言っておるように、基準局長がいなくても基準局長にかわるべき者は出してもらわなければ、事前に質問の項目まで言っておる何がないじゃないですか。
  39. 小島徹三

    ○小島委員長代理 基準局長はいま商工委員会です。それから課長は病気で休んでおるのだそうです。
  40. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それはでたらめだ、法務委員会ともあろうものが。私のところに連絡があったのは、基準局長についてはこうだということであったから、私はきのうも基準局長については商工委員会との関連でできるだけ時間の都合をつけてもらう、いかぬ場合は課長なりだれか、かわるべき者を出してもらいたいと言ってあるのです。出してもらわなければ質問自体ができないじゃないですか。合法的な拒否権の発動みたいになってこれは許せませんよ。
  41. 小島徹三

    ○小島委員長代理 まあ病気なんですからそれはひとつかんべんしていただいて、出席者に対する質問を続行願います。
  42. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これはたいへん失礼な言い方ですけれども、本来的にはこれはむしろ労働省の基準局が中心になるべき問題でして、検察庁自身がこの問題を不起訴にしたという点については、われわれ不起訴処分はたいへん不都合じゃないかというのがこの筋ですから、やはり基準局からだれか出してもらわなければちょっと——それはやれと言われれば質問検察庁自身に対してやりますよ。
  43. 小島徹三

    ○小島委員長代理 いま交渉しておりますから……。
  44. 坂本泰良

    坂本委員 ちょっと関連して。蒲原公安課長、これはあなたのほうの段階で不起訴にしたのですか、検察庁に回って不起訴になったのですか、その点いかがです。
  45. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 検察庁捜査を遂げた結果、嫌疑不十分ということで不起訴にいたしました。
  46. 坂本泰良

    坂本委員 この賃金不払いの問題は、労働基準法に基づいて基準局からやったら、検察庁のほうではその処分については制約があるんじゃないか、こういうふうに考えますが、刑事課長いかがでございますか。
  47. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 私の所管と思いますので、私からお答えいたします。  この事件は、労働基準法違反という一つ刑事事件でございまして、捜査は全く刑事訴訟法にのっとって行ないますので、刑事訴訟法どおりの処分をいたすわけでございまして、特別の制約というものはございません。
  48. 坂本泰良

    坂本委員 もう一つ、労働基準法違反として労働基準局長が本件は告発をした、こういう事件にはなっていないのですか。その点いかがです。
  49. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 労働基準監督官というのは、特別の司法警察官でございまして、これ自体が捜査機関でございます。したがいまして、告訴告発を受けたのが労働基準監督署でございまして、労働基準監督署で告訴告発を受けたものでございますから、捜査官として捜査をいたしまして、刑訴の規定に従って検察官に送付した、こういう段取りでございます。
  50. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではお尋ねしますが、検察庁がこの事件を不起訴にした理由ですね。その内容というものを明らかにしてもらいたいと思う。労働者の立場からいけば、労働賃金の不払い額は、現在の段階においても約九千万あるわけであります。そして法にいう解雇予告手当と称するものが約四千五百万、社内預金的な預かり金が約三千六百万、退職金が一億六千万程度、こういうものが、明らかに労働者の権利として当然もらうべきものがあることは事実なんです。労働基準法の二十三条、二十四条からいけば、当然労働者の権利として会社からもらわなければならない、受ける権利のあるものが事実問題としてあるわけです。こういう生きた事実があるにかかわらず、それが不起訴にされるということは、検察庁の処置としては非常に不当であり、不適当ではないかと思われますが、なぜ不起訴にしたのか、それを聞かしてもらいたい。
  51. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 不起訴の理由を簡単に申し上げます。御承知のとおり、この会社は三十六年十一月に倒産いたしました。三十七年の三月十日に更生手続開始ということになって、会社更生法による更生会社ということで操業をしておったわけでございます。そこで更生会社として再発足するとともに、更生管財人というものもきまりまして、それが経営に当たっておったわけでございます。そこでこの会社は三十九年七月分以降の賃金を支払わず、九月に至って更生会社自体がまた倒産したということでございまして、不払いの直接の原因は何かということを調べてみますと、端的にいいますと、運転資金が枯渇しておった、こういうことになるわけでございまして、三十九年の五月ごろには、資金欠乏によって経営の困難が明瞭になっておった。そこで野村管財人は、何よりも賃金の支払いを優先させねばならないということで、主たる取引銀行でございます北陸銀行に対して再再融資の交渉を重ねて、何とか破局を回避したいということで努力いたしておったのでございますが、客観情勢としては、会社がここまで窮境におちいっては、何びとが努力しても、どうもいかんともすべからざる状態ではないかということでございます。会社の更生計画によりますと、更生債権あるいは更生担保権をある程度債権者の協力を得て切り捨てまして、ある程度たな上げして再建をはかろうということであったのでありますが、不幸にして債権者側の協力が十分得られなかったというようなこともございまして、野村管財人としては、債権者を説得、協力させて一あいにくまた一般の産業界が不況に直面いたしましたものですから、これを克服して、何とか更生計画を遂行し、会社の業績を向上させたいと努力したのでありますが、それは客観情勢としてきわめて困難であったということで、結局、野村管財人については嫌疑十分でない、したがって会社についても嫌疑不十分だということで、不起訴にいたしたわけでございます。
  52. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、この問題の内容をやや詳しく知っておる者としては、検察庁の御答弁は非常に通り一ぺんでありまして、基準法の精神に沿った、社会立法の趣旨を尊重するという、そういう立場からの検察行政なり検察当局としての機能を果たしていないというふうに、私はたいへん遺憾でありますけれども、考えざるを得ないわけであります。  そこで、やや具体的になりますが、それでは今日段階における会社の資産状況はどういうことになっておるか、それに対して債権と称するものはどういうことになっておるか、その内容をひとつお聞かせ願いたいのと、時間の関係質問点を集約して申しますが、北陸銀行に対して賃金支払いのために融資交渉を積極的にやった、こういうのですけれども会社がそういう賃金支払いに対しての努力をしたというよりも、むしろ、御承知のように、北陸銀行自身が管理人になって入っておるわけですね。北陸銀行から麻地という重役が、しかも経理担当の重役として入っておる。そして会社更生法の適用を受けて会社を再建すべき、いわば中心役割りを果たすべき重役が、どうも情勢が悪くなってきたということを判断したせいか、三十九年の五月に——これは、北陸銀行の派遣重役で入ったのが三十八年の末だと聞いておりますけれども、三十九年の五月には、一億三千万の金ですね、北陸銀行の債権に見合うべきものを根抵当として押えておるわけです。これは、福田工場というものを押えておる。一種のかげ込み抵当権の設定といいますか、そういうことがなされておるわけです。そこらの事情を検察当局としては当然お調べになっておると思うのですが、その間の事情をやや詳しく説明してください。
  53. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 会社のただいまの経理状況などは、実はよくつかんでおりません。ただ会社は、現在もうすでに破産宣告を受けまして破産の手続が進行しておるということでございまして、現在の会社の一般的な経理状況というものはつかんでおらないわけでございます。
  54. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは、会社更生法の適用を受けた段階における経理状況、あるいは破産だったら、破産処分をする段階における会社の債権なり債務の状態というようなものを検察庁自身が握らずして労働者の基本権に関する問題を不起訴にするというようなことは、どこからそんな判断材料が出てくるのですか。そんな内容を知らずに、破産状態になっておるから経理内容を知りませんなんということで、検察庁としての機能を果たすことができるのですか、どうです。
  55. 小島徹三

    ○小島委員長代理 藤田君、これは、現地は知っておるかもしらないが、こちらの法務省当局はよく知らぬかもしれないから、調査させてみたらどうです。いまここで答弁を求めてもできないんじゃないかと思うのですが。   〔「不起訴の理由がはっきりしない」と呼ぶ者あり〕
  56. 藤田高敏

    藤田(高)委員 その点、いま横山先生のほうから助言が入っておりますが、不起訴の内容が非常に不明確ですね。せっかく委員長が言われることですから、わからないものはわからないなりに調べることもいいでしょう。しかし、そういうことであれば、それなりの、それに見合った御答弁がなされるべきだと思うのです。ことばじりをとらえてたいへん恐縮でありますけれども、課長の答弁は、破産状態になっておるから経理内容は知りません、こういうのです。知りませんということと、現地から事情を的確に把握いたしておりませんので、その点についてはこうこうしてくれぬかというのとは事情が違いますね。これはどうですか。
  57. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 たいへん恐縮でございますが、われわれが被疑事実として受理いたしました事件は、三十九年の七月分の賃金不払い四千八百万円ですか、それから八月分のやはり賃金不払い、同じく四千八百万円余りという、この二カ月分の事実を被疑事実として受理いたしまして、これを捜査したわけでございまして、これは更生会社の時代、つまり破産宣告前の事件でございます。そのころのことを念頭に置いて検察官は調べたわけでございまして、破産宣告後はかなり事情は変わっておると思いますので、そこまではおそらく調べてないと思います。
  58. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私ども特に問題にしたいのは、いま答弁のありましたように、この基準法に基づく賃金の支払い、あるいは預かり金、退職金等についての支払いの義務、責任は、いま御答弁にあったとおり、むしろ破産になる以前の会社更生法の適用を受けて経営をやっておるその経営責任者に対して、この義務を履行しないじゃないかということを何しておるのですから、いま御答弁になったとおり、そのときの事情が中心になると思うのです。そのことが明らかにならないで不起訴にしましたなんということで答弁になりますか。しかも、法律では、私らしろうとからいえば、法務省といったら法律はたて横十文字に知っておって一番詳しいところだ、そういうところがそんな子供だましというか、しろうとだましみたいな答弁で、しかも労働者の基本的な権利に何して刑事罰を科するような、二十三条、二十四条の問題に関連してそのような御答弁では、いささか職務怠慢というか、われわれの立場からいうと、たいへん失礼だけれどもそういうような態度でこの種の問題を扱われては困りますね。時間の関係もありますから、現地の事情をもっと調べなければわからぬというのであれば、そういうふうにしてもらいますし、理事先生方にもお願いし、委員長にも特別のお取り計らいを願いたいと思うのですけれども、この問題の推移いかんによっては、大蔵省の方は見えておりませんが、実質的には北陸銀行がこの問題については相当頭を入れておりますので、北陸銀行の責任者なり、あるいは労働組合の責任者なりをここへ参考人で呼んでもらって、ある場合にはこの問題の真相を明らかにして、適切な当委員会としての行政指導の方針といいますか、結論を出していただきたい。と申しますのは、私がいま短時間の中で調査しておるだけでも、一つの全国産別の中で、わずか十組合で約十億からの賃金不払い問題があるのです。これは中小企業の倒産の問題と関連して、労働者のこういう基本的な権利に帰属すべき事柄が、今日法律があって法律がなきがごとし、まさにそういう意味の無権利状態になっておる。これは社会的にも非常に大きな問題でありますし、この般若鉄工のような問題がいま言われたような非常に通り一ぺんの形で処理されることは、この種賃金不払いが一面慢性化しておるような状態を助長さすことにもなりかねない。そういう点から、私は私なりにかなり資料を持ってきておりますが、先ほど質問しましたように、会社更生法の適用を受けておった段階会社の債権債務の状態、そういうものぐらいは適切な資料として当局側もお出しになって、そうして、この問題の取り扱いについて御検討願わなければ適切な結論が出ないと思うのですが、委員長、どうでしょうか。
  59. 小島徹三

    ○小島委員長代理 理事会を開いてよく相談しますけれども検察庁の手元にあるいろんな資料を出せとおっしゃっても、おそらくそれは出せないかもしれません。しかし、とにかく法務省のほうに、調べられることができるならその範囲内でできるだけ答弁願うようにいたしましょう。よく相談いたしましょう。
  60. 坂本泰良

    坂本委員 関連して。会社更生法時代の賃金不払いですから、そのときにそれを払わなかったらやはり犯罪を構成すると思うのですよ。ですから、その点を明瞭にしてもらわぬと、普通の犯罪と違いますから、ひとつ次回にそういう点を準備してもらっておきたいと思うのです。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 関連して。そとのところがはがゆいと思うのですが、会社更生法の時代の賃金ということである。あなたは、いや破産になっているから、金もないからしようがないじゃないかというような御答弁であって、まず次元が違う。もしも会社更生法時代における資産状態が、それだけの資産がないと私は言わせぬけれども、それをお調べになって御報告になるわけですが、その当時、資産はあるということが明瞭になれば一体どういうことになるのですか、その辺の解釈を承っておきたい。
  62. 蒲原大輔

    ○蒲原説明員 私のことばが多少足らなかったかもしれませんが、先ほどの御質問で、会社の現在の資産状況はどうであろうかという御質問と承りましたので、現在はすでに破産手続を進行中であって、現在の事情は必ずしもわれわれ把握しておらない、われわれが被疑事実として調べたのは、その前の更生手続時代の三十九年七月、八月ごろのことである、こういうことを申し上げたわけでございます。したがいまして、本件を捜査するにあたりましては、当然そのころの資産状態は調べておると思います。ただし、私その詳しい資料を手もとに持ちませんのでよくわかりませんが、おそらく当然調べておるはずであると思います。そこで、資産状態をにらみ合わせた結果こういう結論を出したものとわれわれ思うのであります。
  63. 小島徹三

    ○小島委員長代理 藤田君、基準局長をこちらに貸してくれと言っても、質問者が許さぬと言うものだから来れぬようでありますから、御了承願います。
  64. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それで私は、委員長のお取り計らいを含めまして、ぜひ後日の委員会で質問を継続さしていただきたいと思うわけですが、いま私から要望しましたように、ひとつ理事会で御相談いただきまして、必要な場合、参考人を出すようなことについても御検討をいただきたい。決してこれは私どもその責任だけを追及するという形でなくて、いまその労働界に及ぼす影響というのが大きいわけです。そういうことも含めて、きょうは時間もありませんので、私自身は、私なりにかなり材料を持ってきておるわけですけれども、それは留保します。ですから当局としてもぜひひとつ実態を、出先から事情をお調べになっていただいて、次回にはひとつ適切な結論が出ますように、格段の御検討をわずらわしたい。
  65. 小島徹三

    ○小島委員長代理 理事会でよく相談してみます。
  66. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それといま一つ、冒頭申し上げましたように、これはもう基準局自身が第一義的には労働者の権利を守ってもらわなければならない部署ですから、そこの見解というものと、法務省ないし検察庁の見解というものも、私ども将来の問題としてぜひ参考に知りたいと思いますので、次回はぜひ万難を排して基準局長ないし責任ある労働省の代表者にひとつ御出席願うように、これもお願いしておきたい。
  67. 小島徹三

    ○小島委員長代理 次に、志賀義雄君。簡単に願います。
  68. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先ほど社会党の委員のほうから、茨城県猿島郡岩井町の吉原町長選挙に関する違反事件、この取り調べが緩慢過ぎるということですが、そのすぐあとに今度は茨城県鹿島郡鹿島町の町長選挙にからむ選挙違反事件を水戸地検の土浦支部が取り調べておりまして、去る五月二十八日午前十時、永野町長の任意出頭を求めて、これを三時間あまり後に、直ちに土浦拘置所に拘置した事件があります。   〔小島委員長代理退席、大竹委員長代理着席〕 これはかなり大規模に、先ほどの事件とは反対に、かなり大量の人が取り調べられ、拘置されている人もかなりの人数にのぼっております。町長は金銭を選挙運動のために与えたことは、絶対にないこういうふうに言っているのでありますが、この地検の土浦支部から拘置所まではわずか三十メートルくらいなんです。その場所を、おそらく日本の選挙で、自治体の長が、三十メートルくらいの距離を手錠をかけられて拘置所に入ったというのは、この事件が初めてであろうと思います。どうしてそういう監獄法施行規則でいう五つの戒具のうちの一つの手錠をかけてやらなければならなかった理由があるのですか。刑事局のほうから、まずお答え願いたいと思います。
  69. 伊藤榮樹

    ○伊藤説明員 先生指摘選挙違反事件についての報告を、私どものほうでも受けております。ただ、本日資料を持ってまいりませんでしたので、詳細は申し上げることができないのでありますが、その際逮捕いたしまして、拘置所までどのような方法で護送したか、こういった点につきましては、報告書がまだまいっておりません。そこで、いつどのような方法で護送しましたか、いま先生指摘の新聞の写真によって初めて拝見したわけでございますが、およそ身柄を逮捕しまして護送する場合には、やはり原則は手錠をかけて、逃走あるいは自殺等のおそれを防止しながら行なうのが原則でございます。ときとして全くそれらのおそれがないような場合に、たとえば俗に片手錠と申しますような形で護送する場合もございますが、もし先生指摘のような状況で護送したとしますならば、護送の原則に従って護送したのではないか、かように考えます。
  70. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いままで自治体の長が選挙違反事件でやられたときに、こういうところを徒歩で行って、地検の支部のようなところから拘置所まで、わずか三十メートル——たとえば地検から拘置所に送る場合にどういう場合に手錠をかけられるのですか。
  71. 伊藤榮樹

    ○伊藤説明員 検察庁で人を逮捕いたしまして拘置所に持ってまいりますときは、いつも手錠をかけて持っていっておるようでございます。
  72. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 検察庁に来るときは手錠というのでしょう、あなたのいまの答弁は。検察庁で拘引状、勾留状を発せられて、三十メートルある拘置所に三人の諸君がつき添っていっておるのです。拘置所から検察庁に出頭するとか、裁判所に出頭するとか、よくその往復には手錠をかけます。これはまだ拘置所に入る前のことです。拘置所に入る前にこういう手錠、警察官の持っている簡単な手錠でなくて、私ら昔さんざん経験したがんじょうな手錠ですね。見たらすぐわかるのだが、十九世紀からあった手錠なんだ。これをかけられた。どうしてそういう必要があったのか、その点報告がありますか。あるいは一般的事例として、あなたが課長としてそういうことはどういう場合にやるというふうに考えておられるか、それを伺いたいのです。
  73. 伊藤榮樹

    ○伊藤説明員 具体的な場合、本件の場合に、なぜ手錠をかけないで連れていこうとしなかったかという点は、報告を受けておりませんから存じません。ただ、私個人の経験でございますが、過去十年前後東京地検の特捜部におりまして、もっぱら検察官引致の事件を取り扱ってまいりまして、その間しばしば検察庁被疑者を逮捕したことがございますが、検察庁から拘置監のありますところまで連れてまいります場合に、原則としてやはり手錠をかけて連れていっておりました。人を逮捕しました以上、自殺あるいは逃亡のおそれを防止する、特に有名人になりますと自殺事故等が一番おそれられるわけでございまして、そういう意味で手錠をかけるということが原則で、よほど戒具の必要がないという場合に、初めて手錠を片方だけかけるとか、そういうことを私実務の経験としてはやっておりました。
  74. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 たとえば東京などの場合、裁判所なり、検察庁なり拘置所から行く場合に、非常に繁華なところを通るとか、距離が近いとか——これは非常に短距離であり、——しかも、いやしくも自治体の長ですよ。それを、なぜ特別こういうことをしなければならなかったか。この新聞の記事によりますと、「うす茶の背広上下を身につけた永野町長は終始落ち着いた表情で昼食のざるそばもきれいにたいらげる余裕を見せ、報道陣のかまえるカメラの前を手錠をかけられたままゆう然と拘置所に入っていった。」どうも逃亡するおそれも自殺するおそれもないような人物のように見受けられました。これをあえて手錠をかけたのは、何かほかに理由があったんじゃありませんか。
  75. 伊藤榮樹

    ○伊藤説明員 先生のお尋ねにおことばを返すようですが、先生のお尋ねの前提が私どもとちょっと違うのじゃないか。手錠をかけるのが原則なんで、何か先生のお尋ねを伺っておりますと、なぜ特別手錠をかけたかというようなお尋ねと存じますが、むしろ手錠をかけるのが当然なんで、手錠をかけなかった場合におきまして、なぜ手錠をかけなかったのかという御質問が出るのでございますと、私ども非常にお答えしやすいのでございますが、原則に基づいてかけたまでのことであろうかと存ずるわけでございます。
  76. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私も長い間刑務所で暮らしました。未決も長いです。市ケ谷に未決があって、そこの数え歌に、「三つとせ未決の長いは共産党、二年三年上り坂」というのがあった。私はその倍以上いたのです。だからずいぶん多くの人が出たり入ったりするのを見ていますが、大体こういう人たちに対しては手錠をなるべくかけないようにすること。その人の名誉のために、たとえば私が東京から北海道の監獄へ送られるときでも、途中はどうか。編みがさをかぶる。当時編みがさというものがあった。それから、手錠をかけると目につき過ぎるからというので、かえってそれを付き添いの看守が隠したくらいですよ。それくらいに配慮しているのです。この場合はそれと全然逆だ。私がお尋ねしようとするのは、例の鹿島町というのは、コンビナートの問題でずっともめ続けているのです。今度、町長に対してこういう処分をしたのも、新聞社のカメラマンの大ぜいかまえているところでやったのも、町民に対して、コンビナートに反対する町長はこういう目にあわせるのだぞということを、地検のほうが意識的にやっているとしか思えないですよ。  そこで、政務次官に伺いますが、はなはだ悪いたとえを申し上げますが、かりに万一間違って、あなたがいわれのない嫌疑を受けて、こういう場合に手錠をかけられるという場合があったら気持ちがいいかどうか。手錠をかけられないほうがいいか、その点、いかがですか。これはあなたを例に出すと悪いから、他の同僚の場合でもいい。どちらがいいですか。
  77. 山本利壽

    ○山本(利)政府委員 まことに気持ちの悪いことでございますから、できるだけ手錠をかけないで行きたいものだと思います。
  78. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうでしょう。だから、刑事課長の心情とあなたの心情とは違うのです。一つ事件でもそういうように違うのですよ。そこであなたは、たいへん失礼な質問をしたようですが、あなたの御心情を伺いましたから、ひとつ責任を持ってどういうことなのか、これにはだいぶ裏の裏があるようでありますから、ひとつよくお調べいただくようにお願いしたいです。いかがでしょうか。
  79. 山本利壽

    ○山本(利)政府委員 係官からお答えいたしましたように私も思っておったわけでございます。規則に従って手錠をかけて送ったのであって、他意はなかったものと思います。そのときに、いろいろな地位その他を考えて、できるだけ目につかないようにして送ってあげたら御本人も喜ばれたであろうということは十分推察をいたします。だけども、その係の者がそういうようなはからいをしたことは、別にほかの深いしさいがあって、みせしめのためにわざわざしたようには思いませんけれども、あなたのいまの御質問のお気持ちも、また社会に相当な地位を持った人の心情もよくわかりますから、この点については調べまして、そうして不必要なときには、できるだけそうしない取り計らいもあり得るのではないかというような観点から、ひとつ調べてもらうことにいたします。現在においては私はその地元の係官が不法にそういうことをしたようには思いませんけれども、繰り返すようでございますが、御趣旨はよくわかりました。
  80. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 最後に一点、これは刑事訴訟法及び刑事訴訟規則を幾ら見ても、勾留ですね、拘引の場合、手錠をかけるのが原則だとは書いてないです。監獄法施行規則に戒具というものが出ております。監獄法施行細則に初めて戒具の種類が五つあげられております。一、鎮静衣。鎮静衣というのは、騒ぎを静めるために首だけ出してやられる。これをかけられると、ほんとうに身動きができない。息が詰まるようなものです。それから防声具といって、皮で、鼻のところだけあけたものがあります。これをびじょうでもってここでとめるやつです。第三が、手錠。第四が聯鎖。鎖でつなぐやつです。それから捕縄、この五つになっておる。これは刑務所の中で、必要なときにこういう戒具を使用するものです。いいですか。拘置所へ入れる場合、これは警察から送るときには、警察にはまた警察の戒具というものがありますが、そうではないのです。地検から送る場合です。それは警察、あるいは刑務所において使うもの、あえてそういうことをやれということ、それが原則でございますと課長は言われるけれども、そんなことはどこにも書いてない。あるいは逃亡のおそれがあるとか、証拠隠滅のおそれがあるとかいうことについては、関連事項の記載がありますけれども、戒具として、これは初めて出てきておるのです。そういうものが、いまの課長のように当然のことだとお考えのようでは、これは困るということです。まして逃亡のおそれもない、そういう人に対して、新聞に出ておるとおり何人も取り囲んで送っておる、わずか三十メートルの距離を。町長がその町から逃げ出すというようなことはめったにないことです。確かにある外務大臣の選挙のときには、選挙を主宰した人が逃げて、追っかけてもつかまらなかったようなことがありますがね。これはどうも私どもから見ると、逃がしておるのだという感じがするのです。この場合は、逃がすものかというふうに力んでおる。どうも事件によって検察庁の力み方が違う。これではいけないということです。まして、いまコンビナートの反対の先頭に立った人です。違反事実がどういうことか、私もまだよく調べておりませんけれども、こういうことはよけいに検察庁に対する疑いを濃くする、そういうことはおやめになったほうがよろしい、だから、いまのような監獄法施行細則まで申し上げました。あなたにも気持ちの悪い質問をして失礼でしたけれども、あなたの御心情はよくわかりましたから、お調べの上、そういう行き過ぎのないようにしていただきたい。  これを申し上げて私の質問を終わります。
  81. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 次会は来たる十四日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会