○菅野最高
裁判所長官代理者 この
借地事件を非
訟事件として
裁判所が行ないますにつきまして、まあ迅速に処理することが
一つの要件であろうかと思いますが、それと同時に、適正な
裁判ができませんと、せっかくこの制度ができてもその
効果は薄いということに相なろかと思うのでございます。そこで、この
手続が、その結論において適正な結果を得られるかどうかということにつきまして、御指摘の
鑑定委員に人を得られるかどうかということに
裁判所としても非常に重点を置きまして、ここに人を得たいという気持ちでおるわけでございますが、御指摘のようにこの
鑑定委員に対する報酬と申しますかそういうものが、この
法律の上では日当を払うということになっておるわけでございまして、しかしてこの日当は、その
鑑定委員の仕事にふさわしいだけの日当ということが
考えられるわけでございますが、従来も似たような制度に
調停委員であるとか参与員であるとか
司法委員であるとかいうような制度がございまして、これとこの
鑑定委員の日当にどれだけの差がつけられるか、差をつけていいものかどうかというような点がございます。そこで、そうなりますとこの
鑑定委員の日当も
調停委員等に比して高いものになるか、あるいは同等のものになるか、高いものになるとしてもどのくらいの差がつけられるかということになりますと、見通しといたしましては、それほどの差はつけられないということになりますと、結局現行で
調停委員の日当が九百円でございますので、この程度の日当で
調停委員としてりっぱな人を迎えることができるかということになりますと、
相当の問題があるところでございますが、私どもは、りっぱな人を迎えたいわけでございますけれども、そういう予算上の制限もございますし、それから
土地の
鑑定ということになりますれば先年新しく制度ができました
鑑定士の方々が、何と申しましても不動産
鑑定についての一番の専門家であろうかと思うのでございますが、しかしながら、
鑑定士の数というものは、一昨年と昨年でございますか、いままでまだ二回しか試験が行なわれておりませんので、その数から見ましてもまだ六百人程度ということでございますし、それから、その
鑑定士の方々の全国的な分布の状況を見ましても、やはり大都市に集中されているようなことでございまして、今度の
借地法の
改正が施行されました場合に、こういう方々だけを平均的に全国的に
鑑定委員会の中に来ていただけるかどうかということについても問題があるわけでございます。
それから、この
鑑定委員の方のこの
手続における職務と申しますか、お仕事は、実は不動産の価格の
鑑定そのものではないわけでございます。八条ノ二でございますか、九条ノ二でございますか、ああいう条件にはまっておるかどうか、それから八条ノ二、九条ノ二の付帯
条項、つまり
一定の何か給付をするについて、給付をさすべきかどうか、その額はどうかというようなことを
裁判所が判定いたしますにつきましての意見を聞くというようなわけでございまして、
鑑定委員の構成が三人以上ということになっておりますので、その中の一名ぐらいは、いわゆる不動産の価格の
鑑定の専門家を入れておくのが適当かと思われますけれども、しかし、それだけでは
鑑定委員会の構成としては不十分で、むしろ
一般常識、それからそういう不動産の価格、名義料というようなことにつきましての
事情に非常に詳しい、しかも公正な
考えをお持ちの方々ということになりますと、やはり弁護士の方々であるとか、その他の知識人を
鑑定委員の中に入れまして、いろいろほかの方で三人を構成するということに相なろうかと思うのでございます。専門的な不動産の価格の
鑑定ということになりますれば、これは御指摘のように、いわゆる
鑑定でございますので、それにつきましては日当などという金額ではとてもまかなえない、いわゆる
鑑定料を支払って、そうしてその
鑑定に対する対価といたさなければならないかと思うのでございます。でございますから、
事件によりましては、単に
鑑定委員の方の常識的な意見を聞くだけでは足りなくて、いわゆる
鑑定をしなければならない
事件もあろうかと思いまするが、常識的な意見を伺うための
鑑定委員といたしましては、
鑑定料ほどの日当を要しないのではないか、かように
考えておるわけでございます。