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1966-04-14 第51回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十四日(木曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 濱田 幸雄君    理事 坂本 泰良君       鍛冶 良作君    唐澤 俊樹君       佐伯 宗義君    田中伊三次君       濱野 清吾君    稻村 隆一君       神近 市子君    小林  進君       西村 関一君    山田 長司君       横山 利秋君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    加治木俊道君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 四月十二日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として松  井誠君が議長指名委員選任された。 同日  委員青木正君が死去された。 同日  委員松井誠君が退職された。 同月十四日  委員早川崇君、神近市子君及び山口シヅエ君辞  任につき、その補欠として鍛冶良作君、小林進  君及び西村関一君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員鍛冶良作君、小林進君及び西村関一辞任  につき、その補欠として早川崇君、稻村隆一君  及び山口シヅエ君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第一二  七号)  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 法務大臣並びに津田刑事局長にお伺いするのですが、私どもはかねて本委員会で再度にわたって法務大臣に決断をお願いいたしまして、このいわゆる新潟問題につきまして政治的圧力のないこと、並びに現地の地検、あるいは県民の要望をくんで、十分にこの処理の適正、厳正ならしむることを要望いたしましたところ、法務大臣は先般私の質問に答えて、あらゆる政治的な圧力がないこと、並びに検察陣を十分信頼してその方向になびかせること等を申されたのであります。それにもかかわりませず、先般高検はこれを不起訴決定をいたしました。いかなる理由で不起訴になったのか、まことにこれは県民はもちろん、政界はもちろん、全国民があれほど大騒動になりました新潟の問題について不起訴になったということについては、全く解釈に苦しんでおる次第であります。その不起訴になりました理由をまず詳細に承りたいと思います。
  4. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいま横山さんからお話がありましたとおりのことを私はお答え申し上げました。そしてそのとおりに行なわれたと信じておるわけでございます。ただいまのお尋ねの、どういうふうにしてそういう決定をしたかという問題につきましては、この事件選挙運動報酬授受で行なわれたものと断定することは、この金の授受決定するには証拠が不十分であり、そして公訴を提起してこれを維持するに足るだけの証拠がないとの結論に達したのでございます。そういたしまして、嫌疑不十分という理由で不起訴処分にしたのでございます。これが今度の事件の始末でございます。これがどういうわけでそういうふうにしたかということのお話は、できるだけの範囲のことをひとつ刑事局長から申し上げます。
  5. 津田實

    津田政府委員 本件につきましては、御承知のとおり、ある程度公知の事実とされる部分もございます。したがいまして、本来不起訴理由につきましては、もちろん理由そのもの、嫌疑不十分であるということは公表もいたしますし、御説明を申し上げるわけでありますけれども、内容の詳細について御説明を申し上げることは、通常事件については差し控えておるわけでありますが、本件はさような経緯にありますので、できるだけ可能な限り詳しくこの内容を御説明いたします。  まず、本件被疑事実として検察庁が考えておりますのは、もちろんこれは容疑事実はございますが、それ以外に被疑事実として考えた事実を一応申し上げますと、その要旨は、被疑者塚田昭和三十六年十二月に新潟県知事になり、昭和四十年十一月十四日施行の同県知事選挙当選し、昭和四十一年三月二十八日辞任いたしたものでありますが、その余の被疑者らは、いずれも自民党所属の同県県会議員であったわけであります。  そこで、被疑者塚田昭和四十年十一月の選挙におきまして、自己当選を得る目的をもって立候補届け出前である同年七月十七日ころから同年八月下旬ころまでの間に四十二名の者に対しまして、これは県会議員でありますが、自己に有利な選挙運動依頼する趣旨のもとに、その報酬として各現金二十万円を供与被疑者鈴木太吉外四十一名、合計四十二名は被疑者塚田から前同趣旨のもとに金員供与するものであることの情を知りながら、各現金二十万円の供与を受けた、こういう事実を被疑事実として捜査をいたしたのであります。  そこで不起訴理由に入るわけでありますが、本件自民党系県会議員飯塚宗久ら九名が昭和四十一年十一月十四日の新潟県知事選挙を目前にいたしまして、同年十月二十日前新潟県知事塚田からかねて中元として受け取った現金二十万円について、時期的に選挙に関連し疑惑を招くおそれがあるということといたしまして、同知事に返金をいたし、直ちにその旨を新聞発表したのであります。次いで社会党新潟本部執行委員長杉山善太郎被疑者塚田を被告発人といたしまして告発に及ぶとともに、直ちにその旨を新聞発表を行なった。かようなことから端を発した事件であります。したがいまして、本件捜査に着手する前からすでに本件内容がある程度世上に喧伝されておりまして、半ば公然の事実となったために、本件関係者のうちには、これを政治的に利用しようと画策する者もありましたし、またしたがって、自然そのもの供述にも事実を秘匿、歪曲したところもあり、また誇張する疑いのある者もありまして、事案の真相の把握はきわめて困難であったわけです。それで検察庁といたしましては、自民党系議員全員について取り調べを進めますとともに、県会議員数名並びに自民党県連事務局員らを逮捕、拘留して取り調べましたほか、県庁知事室等十数カ所の押収、捜索を実施するなど鋭意真相の糾明につとめたわけであります。   〔発言する者多し〕
  6. 大久保武雄

    大久保委員長 静粛に願います。
  7. 津田實

    津田政府委員 そこで被疑者塚田が、先ほど申し上げました四十二名に対しまして、それぞれ現金二十万円を増与または提供した事実につきましては、これは関係者供述によって明白なところと検察庁は判断いたしております。しかしながらこの提供、贈与いたしました趣旨につきましては、いろいろの主張があるわけであります。そこで、その大体の主張と目されるものは、塚田知事知事選挙では独走的態勢にあったので、知事選挙目あて運動報酬などを出す必要はなく、またその意思もなかった。あくまでも党公認当選した党人知事として、党活動を通じて県政協力してくれた個々県会議員に対して、任期満了を間近に控えて中元の機会に四年間の締めくくりをつける意味において、党の慣例に従って党人たる県会議員贈与したものであるという主張が行なわれております。そこで、これらの弁解は当然厳密に検討する必要があるわけでありますが、これを積極、消極面において検討いたしたわけであります。  まず、これに関連のある問題としては、これは比較的簡単な事柄でありますが、まず塚田自身立候補決意の点でありますが、この点はもちろん詳細を取り調べておりますが、すでに昭和三十六年に知事当選した当時、再選挙を期していたということは諸般の事情より明白であり、また昭和四十年一月の定例年頭記者会見におきましても、現役のまま再出馬するということを表明しており、また七月初旬ころには県連幹事長に対しまして、その公認の手続を依頼しておるというような事実があるようでありまして、この点から立候補決意のあることはもちろん間違いはないところと言えるのであります。  そこで、先ほど申しました、いわゆる塚田関係主張といたしまして、塚田知事再選についての独走態勢にあったかどうかという点でありますが、当時県会をめぐります諸情勢を見まするに、七月九日から二十四日まで開会されました定例県議会では、与野党県会議員が近く行なわれる知事選挙を控えまして、塚田知事再選をめぐっていろいろないわゆる攻防戦というようなものが展開されたもののごとくであります。しかして、社会党は昨年七月上旬ごろから吉浦知事に対しまして知事選挙への立候補を促し、一方自民党国会議員の一部にも同調者がありましたために、七月中旬ごろには吉浦立候補するのではないかという風評県会内外に流れてまいりました。これが被疑者塚田の耳にも入っていることはおよそ推測されるところでございます。その後八月一日に至りまして社会党県本部吉浦を推薦する旨の新聞発表を行ないまして、続いて同月十日、吉浦党本部に受諾の意思を表明し、翌十一日吉浦もみずから立候補の意図を正式に表明するという経過をたどったことは明らかであります。以上のような県議会内外における動向によりまして、被疑者独走態勢が七月中旬ごろから動揺し始めた状況推測されるのでありますが、本件金員贈与選挙を目標にして行なわれたかどうか、この点が非常に問題になっている点の一つであります。  そこで、この点につきましてはいろいろな見方がありますが、塚田自身の主観的な考え方はどうであるかということでありますが、昭和三十六年当選以来、塚田自身は、みずから県政相当実績をあげたというふうに判断しておるようでありまして、保守党系から対立候補があらわれず独走態勢が続くものとの確信を強めておったようであります。そこで七月中旬から吉浦立候補風評が流れまして動揺し始めた点に関しましては、本人はいかに考えていたかということが問題になるわけです。しかしながら、本人といたしましては、自己県政に対する実績から、再選につきましては絶対の自信を持っており、現に自己の直属の部下である吉浦知事が、知事選挙に関する限りまさか出馬することはあるまいと判断しておりますし、吉浦知事の接触のあるそれぞれの方面においても、吉浦知事立候補には必ずしも賛成でないという空気を察知していたもののごとくであります。  一方、この点に関しまして、吉浦自身は七月初旬から社会党より立候補を促された事実、漸次立候補決意を固めておった事実は推測されるのでありますが、相手方吉浦自身決意を表明したような事実は当時はなかった。それで、八月五日日活国際会館における会合——これは与野党国会議員団会合でありますが、その席における立候補要請に対しても確答を与えなかったというような事実が認められるのであります。その後吉浦は、八月九日、いろいろ各方面に相談いたしました結果、同月十一日立候補の声明をしたということはすでに申し上げたとおりであります。そこで、さらにこの関係におきまして吉浦立候補をあるいはとどめようとするような動きも県会あるいは県会付近にあったようであります。  なお、塚田自身は、吉浦が七月二十日自治省参事官に任じられ、二十九日に赴任し、八月十一日に正式立候補を声明するまでその地位にとどまっておった事実というものを認識しておるようでありまして、これらの点を考えますと、塚田独走態勢を信じておった塚田が、吉浦立候補があっても問題にしなかった、あるいは立候補はないものと考えておったということは、この塚田自身主張は、必ずしもこれを排斥することがむずかしいのであります。本件に関して、四十二件中四件を除きまして、この八月九日以前に授受されたことは明らかな事実であります。   〔発言する者多し〕
  8. 大久保武雄

    大久保委員長 お静かに願います。
  9. 津田實

    津田政府委員 そこで、次に現金供与の態様について考えてみますと、被疑者塚田は、新潟県知事就任以来、県費で支出する儀礼的なせんべつなどは別といたしまして、多数の県会議員に、一律に現金中元、歳暮として贈ったという事実はないのであります。しかしながら、本件現金供与につきましては、相手方知事公舎または知事室等に呼び、手軽にハトロン封筒に入れた現金を手渡す方法をとっていることは、通常の儀礼的な中元としましてはいささか異例と見られるのであります。その反面、塚田自身も、党活動に関する党人同士間の贈答であったので、きわめて気軽な気持ちで手渡しをしたと推測することもできるのであります。  また、かりに選挙目的があったとしましても、塚田自民党県会議員全員に、一律に、半ば公然と、みずから直接渡したということは、これは選挙経験の豊富な者の所為としてはきわめて不自然でありまして、この供与の形態から見て、一がい選挙目的であったと断ずることは困難であります。  次に、供与を受けた者について考えてみますと、供与を受けた者のうちの相当多数は、塚田知事県政協力に対する謝礼意味のほか、選挙の際の運動依頼でくれたものと思ったというふうに供述しておる者もそれはございます。しかしながら、立候補をめぐる選挙情勢を考えますと、これは選挙目的ではなかったという、疑う余地はそれは十分ある。そこで金員授受に関する供述信憑性等を検討いたしますに、これらの供述取り調べの過程におきまして相当変遷があり、かつ主観的な推測を述べたものが多く、裏づける補強証拠はきわめて乏しいのであります。  元来本件金員贈与は、被疑者塚田が、終始全く単独で行なったものであり、その状況を判断する資料としては、塚田と各受供与者供述以外には補強するものが存在しないのであります。塚田は、個々県会議員本件現金贈与する際、お中元ですという程度のあいさつをし、また、これを受け取った議員も、深くその意味をせんさくせず、簡単に礼を述べただけであった。知事選挙のことに触れる話があったとか、選挙運動をする依頼があったとかいうような、それに関する言動があったというような証拠はほとんど存在しません。本件証拠を判断いたします上で、その点はきわめて看過しがたいことでありまして、もし本件選挙目的授受されたのが真相であるとすれば、被疑者塚田とその余の四十二人という多人数の被疑者らの間で、知事選挙のことに触れた話題が出るのが自然だと思われるのに、さような話のあったことの証拠は見当たらないのであります。  しかして一方、さきに述べましたように、受供与者被疑者らが選挙運動報酬を含めた趣旨であった旨供述しているのは、前記のような立候補をめぐる選挙情勢などよりして、塚田知事意思をそんたくした結果にすぎないと認められるのであります。いわば一方的な推測であり、これをもって直ちに被疑者塚田金員供与趣旨を判断するきめ手にすることは適切でないと考えられるのであります。  ことに本件は、冒頭に申し上げましたように、半ば事情が世間にわかってから捜査が始められましたので、受供与者の中でもことさら趣旨をあいまいにする者がある反面、その供述の中には誇張ないし粉飾があるのではないかと疑われる節が多々あるのでありまして、補強証拠の乏しいこれらの供述は、直ちにそのまま信用することは困難であります。  そこで、次に本件党人同士間の金員贈与であるかどうかという問題であります。  塚田主張は、そういう趣旨に沿う主張になっておりますが、党人同士間のこのような主張金銭贈与が具体的に慣例があるかどうかという点は、きわめてこれをつまびらかにすることは困難でありますが、一般的に党人同士の交際を通じて選挙の際の陣中見舞い地盤培養のための資金、あるいは盆暮れに必要な資金など、党人間において、ある程度の金銭贈与が事実上行なわれてあることはこれは想像にかたくないのであります。たとえばある県会議員は、塚田知事が党の親分として、自己地盤培養のため、その配下にあるわれわれ党人議員に対し随時党活動資金を与えていたというような証拠もあるわけであります。したがって、本件の場合、このような党活動の一環という意味金銭授受が行なわれたという主張は一がいに排斥することができないのであります。したがいまして、……   〔発言する者多し〕
  10. 大久保武雄

    大久保委員長 静かに聞いてください。——静かに願います。
  11. 津田實

    津田政府委員 次に、本件県政謝礼であるという問題点であります。  被疑者塚田は、すでに申し述べましたように、本件金員県政協力謝礼贈与したというような主張をいたしております。大部分関係被疑者らもこれに照応する供述をしているのであります。県知事県会議員に対して金銭贈与する行為は、その趣旨いかんによりましては刑法上の贈収賄罪を構成することが考えられるわけであります。しかしながら被疑者党人知事として、党活動を通じて県政協力してもらった謝礼として、慣例に従って党人贈与をしたという主張をいたしており、これはすでに述べました党人同士間の関係弁解と同一に帰するのでありまして、その弁解をくつがえすに足る証拠は存在しません。依然として党人知事県政に関する党活動に対する謝礼意味で、党や党活動資金意味贈与したと解する余地が存在しているのであります。  また一面、かりにそれが党と無関係県会議員に対して贈られたものといたしましても、具体的に県会のいかなる議事の運営に関していかなる協力をしたかは証拠上必ずしも明らかでありません。県会議員のような広範な職務を有する者に対する贈収賄罪趣旨としてはきわめて不明確であるということによりまして、この贈収賄罪について問擬することは困難であります。  以上申しましたように、塚田については種々の観点からしさいに検討いたしましたが、本件金員贈与選挙運動報酬趣旨で行なわれたと疑う余地がないではありませんが、これを裏づける明確な証拠に乏しく、他面党人同士間の一般党活動に関連する金銭贈与にすぎないとの弁解をくつがえすに足りる的確な証拠もなく、とうてい公訴を維持するに足る証拠がないと判断するほかはなく、結局嫌疑不十分と認めるのが相当であると判断した結果であります。  供与者塚田につきまして、以上のような関係で嫌疑不十分であります以上、供与を受けた者につきましては、その授受個々事情金員趣旨に対する認識のいかんを論ずるまでもなく嫌疑不十分と裁定せざるを得ないのであります。  以上をもちまして、本件の不起訴理由を御説明申し上げた次第であります。
  12. 横山利秋

    横山委員 私は、いまのその不起訴理由を聞きまして、全くここが司会であること、傍聴者諸君がおることが恥ずかしい。私自身がばかばかしい、腹が立つのであります。こういうことで不起訴になった。逆説的にいえば、独走態勢であるから金をやってもいいんだ、それが一つの判断のめどになっておる。こんなばかげたことがありますか。独走態勢を維持するためにやったんで、相手候補が出ないように、初めからシラミつぶしにつぶそうとするために銭を出したということはわかり切っている。あなたの言う独走態勢理論だとしたら、そうだ。こんなことなら、どこでも全部、独走態勢を維持するために金をばらまくことが許される。  それから、県政協力謝礼だ、しかも慣例だというんですね。そういうことが公然として行なわれていることを認めて、ああそれならいいと、こう言われる。それなら、総理大臣や、法務大臣や、あるいは県知事や、市長や、あるいは村長に至るまで全部やっているかのごとき印象を与える。言語道断だと私は思う。てんとしてそのことについて、いまの不起訴理由には何ら恥ずることがないというような考えらしい。まことに私は、これはもう法律以前の道義の問題としても、検察陣は一体良心が麻痺しているのではないか、みずから政治を正すべき責任のあることをてんとして考えていないのではないかと痛感をされる。  内容について私はいろいろ伺いたいのでありますが、伺う前に、前提として、今日の検察陣のあり方について、一々具体的な引用をもって、法務大臣が十一時半でお帰りだそうでありますから、まず法務大臣に聞いてもらいたい。  第一の、岐阜の問題であります。岐阜の問題を私が言うわけには——時間がございません。しかし、新潟にしろ岐阜のあの共済組合関係の問題にしろ、あるいは先般来、私が津田刑事局長お話ししております宇都宮の飯塚事件に対する検察陣のとっている態度にいたしましても、最近検察陣は、事、政治的な問題になりますと、良心が麻痺してしまうのではあるまいか。新潟地検諸君は、もしもこれが不起訴になるなら、もう自分たちは職に全責任を持つことができないとすら言っておったものに対して、上から圧力で、しかも何とも話のしようもないようなこんなばかな理由で不起訴にするというのは、私は言語道断だと思う。  この際、同僚西村委員から、さらに具体的な検察陣非違行為につきまして発言を求められておりますから、いまの不起訴理由につきましては私はあとで質問することにいたしまして、西村委員発言をひとつ許していただくようにお願いします。
  13. 大久保武雄

  14. 西村関一

    西村(関)委員 いま新潟知事選挙のことが問題になっておりますが、私のところに四月五日付で投書が参っております。私はこういうものを本委員会で発表することをはなはだ残念に思うものであります。日本の検察当局は、国民信頼が厚い。検察当局だけは間違いないというふうに思われておるのであります。しかるに、こういうようなことがもし事実であるといたしますならば、私は非常に悲しむべきことだと思うのでございます。これは党利党略のために私は申し上げ、お尋ねをするのではございません。一国民の代表として、国会議員として、これは捨ておくことはできないという見地に立ってお伺いをするのでございます。ただ単なる投書であるならば、私はこれを国会にまで持ち出すことはいたしません。しかしここに証拠をもって訴えてまいっております。これをあえて問題にしたいと思うのでございます。  これは仙台の高等検察庁において行なわれておる事実であるかのようでございます。「検察事務官常習賭博国会で取り上げてください」こういう表題でございます。以下これを読み上げてみます。   「犯罪悪と戦う公務員として検察事務官国民からの信頼と期待とを持たれているにもかかわらず、現在部内にあっては全く綱紀粛正どころではない、昼休みになればレクリェーションに名をかりてかけマージャンにふける。負けた同僚は午後の仕事も頭にきているからぼやっとなり、退庁時になればその負けを取り返えそうと憤怒して、血相を変えて退庁後の数時間、ときには酒を飲み飲み、マージャンで遊び暮らす。公務員の自覚を忘れたかのように、博徒にひとしいものがある。上司はこのことを知りつつも見て見ぬふりをし、定年退職まではわが身の安泰ばかりに気を向けて、部下のきげんをとりとり注意もしない。これでよいのだろうか。とにかく昼休みに来て見てください。三階の廊下を歩いてみてください。がらがらの音が聞こえるはず。」この証拠はいまここで私はお見せしますが、これは三月三十日現在のものです。「彼らの弁解は、一時の娯楽に供するものをかけていると言うだろうが、月給日にはそれぞれ現金精算をしているのです。小生万一この投書者であることがわかった場合には首になるからこの書いたものは見せないでください。」  こういう投書が私のところへ来ているのでございます。この証拠は、私はよくわかりませんが、かけマージャンの点取り表のようであります。この破ったものをつないでみますると、どうやら勝ったものがだれ、負けた者がだれ、何ぼ勝った、何ぼ負けた、こういう名前を明記いたしまして、しかも仙台高検の印刷のある用紙でこういうものをやっておる。これをつなけばわかるわけなんであります。  私はこの投書を見まして、非常に心を痛めました。信頼を裏切られたという感じを受けたのであります。こういうことが許されていいだろうか。ばく徒の常習賭博をあげるのにきゅうきゅうとして、部内のこういう常習賭博をほったらかしておく。高検の検事長は一体何しているのだろうか。見て見ぬふりをしているというのであるならば、これは許されないと思う。まず足元から清めてかかるということをしなければ、犯罪悪とまっ向から戦っていくところの、公正を期すべき法律の番人であるところの検察当局がこういうていたらくでは、一体国民信頼をつなぐことができるとお考えでしょうか。私はこういうことをやっているから、仕事もろくろく手につかないと思う。まあこれには、検事がこれに加わっておるとは書いてございませんけれども、しかもこれは仙台高検だけの問題ではなくて、あなたの部下の役所においてこういうことが行なわれていないということは断言できないと思う。これは氷山の一角ではないかと思う。こういう綱紀が紊乱し、規律が弛緩しておる状態において、公正な検察行政ができるとお考えでしょうか。  委員長、私はこれを法務大臣にお見せしたいと思いますが、お許しをいただきます。
  15. 大久保武雄

    大久保委員長 どうぞ。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  16. 大久保武雄

    大久保委員長 速記を始めて。
  17. 西村関一

    西村(関)委員 そういう次第でございますから、この際法務大臣の御所信のほどを承っておきたいと思います。
  18. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいま数字を書いたものを見せていただきました。どういう関係でどういうことを書いてあるか私はわかりませんが、かけマージャンの数字だということでありますから、そうでございましょう。そういうことがはたしてそういうところで行なわれておるものであるか、そういう投書でございますからそういうことかとも思うのでございますが、これはなお調べなければわかりませんでございますが、そういうことがかりに問題にされるということだけでも非常に気をつけなくてはならぬ問題でございます。しかし、事実ありとすれば、これは厳重に取り締まらなければならぬ問題でございます。ひいてこれが検察陣営の信用にかかわるというような問題になると問題でございます。それだから、この問題につきましては非常に戒心をいたさなければならぬ問題として、いまの問題は一応おっしゃったことをお預かり申しておきます。
  19. 西村関一

    西村(関)委員 私はいまの法務大臣の御答弁だけでは十分満足いたしません。いま申し上げましたように、これがたとえ検察庁の役所の外でやっておるものといたしましても、これは問題であることは言うまでもございません。しかも、役所の中でそういうことをやっているということで、一体ばく徒の常習賭博をあげることができますか。その点私はもう少し誠意のある御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  20. 石井光次郎

    石井国務大臣 その数字を見せていただいただけで、どこで行なわれたということを前提として御答弁するわけにもいかないのでございますから、もしそういうふうなことがあれば、これは気をつけなくちゃならぬことはもう当然のこと、おっしゃるまでもないことでございます。私どもそういう声が起こるようなことにならぬように、かねてから気をつけなくちゃならぬという意味において、私は非常に大事にこの問題を扱って、決していいかげんなことにはいたさないということを申し上げておきます。
  21. 横山利秋

    横山委員 私はこの新潟の不起訴の問題に端を発しまして、もう岐阜の問題から、あるいは兵庫の問題から、あるいは飯塚事件から、いままでたまっておった検察陣に対する不満が爆発をするような気がいたします。またいままで日ごろ一生懸命やっておるのだろうから、まあまあこのくらいはと思っておりますることが、全く信頼を裏切られたような気がするわけであります。  しかしその前に、大臣が時間でありますから、退席なさるようでありますから、一言先ほどの不起訴理由の一端について大臣の所見を伺いたいと思いますのは、まず第一に県政協力だから、第二番目に独走態勢であったから、それから第三番目にその渡した金、もらった金に対する選挙に頼むということの証拠がなかったからというようなところが不起訴理由のおもな柱になっておりますが、それでは大臣、あなたにもうずばりと聞きますけれども、国務大臣が、あるいは県知事が、市長が、村長が、それぞれの国会県会、市会、村会の御協力に対してお金を出すということが適当であり、適法であるとあなたはお考えでありますか、最高責任者として伺いたい。
  22. 石井光次郎

    石井国務大臣 政治家が自分の……
  23. 横山利秋

    横山委員 首長ですよ。総理大臣であり、知事であり、市長であり、村長である首長です。
  24. 石井光次郎

    石井国務大臣 首長である者が——総理大臣であっても政治家でございます。総理大臣は総裁でございます。部下の者に金をあげるというようなことがあることは当然だと思っております。
  25. 横山利秋

    横山委員 出すことが当然だ……。
  26. 石井光次郎

    石井国務大臣 出すことはよくあることだと思っております。それから村長さんだとか、あるいは市長さんとかが、まあその中に許された金をその人が自由に使うのは自由でございましょうが、許されない金をかってに使うことは許されないと思います。私はどういうことだか、どういう金をどう使うのだかわからないのでありますが、市長さんの金を使うことを一々禁ずるわけにもいかぬでございましょうし、市長さんは使っていい金がございましょうから、市長さんの使っていい金は市長さんが自由に使っていいことでございますし、村長さんの自由に使っていい金は村長さんが自由に使っていい。それ以外のものを不法に使うことはもちろんいかぬにきまっておるわけでございます。そういうことに使うことはこれはしょうがないと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 これはきわめて、うかつかどうか知りませんが、法務大臣、重大なことをおっしゃるのだが、使っていい金を県政、市政、村政の協力費だとして出して差しつかえないといまおっしゃるわけですね。
  28. 石井光次郎

    石井国務大臣 たとえば市には市長の自由になる金があるだろうと思います。県には県知事が自由に使っていい金もあるでありましょう。そういうものはその人が自由に使っていいだろうという意味のことばでございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 そんな金がどこにあるのです。そんな、二十万円、四十人、これは最低ですよ。八百万円も自由に使っていい金って、どんな金ですか。県知事や市長や何かが、県政協力のためだといって自由に使う金がどこにあります。
  30. 石井光次郎

    石井国務大臣 あなたが市長やら村長やらというようなお話でありますから、そういう一般論を申し上げたのであります。たとえば今度塚田君の場合に、金がどうだということになればその御説明——塚田の使った金というものは、私はここで、ここへ出てきて聞いたのでありますが、これは塚田君が塚田君の個人の金を使ったということであります。役所のお金でも何でもないということだそうでございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 そうすると、先ほどのおことばは取り消しなさるわけですか。地方自治体の金を県知事や市長や村長が、県政、市政、村政に対する協力として出してはいかぬ、こういうふうに訂正なさるわけですね。
  32. 石井光次郎

    石井国務大臣 私の申しますのは、一般論として申しましたが、たとえば市長とか町村長とかが自由に使っていい金があれば、その金はその人が使っていいという意味で、一般論でございます。これはなければ使えないというだけの話で、そういう一般論を言うておるのです。塚田君の場合で申しますと、塚田君が、塚田君の交際費というものが知事にあれば、それを使うのは自由でございましょう。ところが、なければ使えないわけでございます。それでこの金は、それじゃそういうものから出たのかというと、そういうものじゃないわけでございまして、これは塚田君の金だそうでございますから、これは……   〔発言する者多し〕
  33. 横山利秋

    横山委員 二つに問題を分けますが、第一は、あなたはいま逃げようとされておりますけれども、知事やあるいは村長が自由に使う金があればという前提があるのですが、あなたは政治家としてしろうとじゃあるまいし、県政協力、村政協力のためにといった場合に、自由に使う金、議員にばらまく金があると思っているのですか、思っていないのですか。
  34. 石井光次郎

    石井国務大臣 私は議員にばらまく金があるかというてお聞きになったとは思うておりません。首長や首長になる者が金を使うのはどうだとおっしゃるから、その人の使い得るものになっておるものを使うのは自由だと申した。いまの塚田君のような金の場合とは全然考えずに一般論を申しております。
  35. 横山利秋

    横山委員 はっきりしてくださいよ、いまあなたは非常に重要なことを言っているのですからね。一般論であろうとも自由に使う金があるかのごときお考えのようだ。私はいま県知事県会議員に出すその間の金を言っておるのですよ。それについて一般的に県知事が自由に使う金、県政協力費として議員にばらまくような金があるのか。あなたはあたかもあるような錯覚か、あると思っていらっしゃるかしれませんけれども、それはいいという考え方をお持ちらしいから、問題が少しはずれておるようだからあくまで追及しておるのですよ。そういうことは、自由に使う金があっても議員県政協力として金を出すことが妥当であり適法であると思っているのですか。
  36. 石井光次郎

    石井国務大臣 たとえば、各県におきまして知事の交際費を持っておるところもあるだろうと思うのであります。私はよく知りませんが、ないところもあるでしょう。あれば使い得るのでありまして、なければ使い得ないと思うわけでございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 それじゃはっきりいたしましょう。あなたは、理論として言いますと、県知事が自分で自由に使う金、たとえば知事の交際費、交際費ですからつけが要らぬという議論が成り立つ。そいつを県会議員に自由に県政協力として金をやっても、交際費の範囲内だったら適法であり適当である、問題はないということを、法務大臣としておっしゃるわけですか。
  38. 石井光次郎

    石井国務大臣 変にこんぐらかるといけませんからはっきり申しておきますが、たとえば塚田君の場合に、知事がかってに県会議員にやっていいと申しましても、どんなことでも、どんな場合でもやっていいというわけではないのでございます。たとえば、問題があるような場合にはやらぬほうがいいにきまっておるわけでございます。今度のような場合に、かりにそういう金があってもやらなかったほうがよかったと私は思います。法に触れるか触れぬかは別問題といたしまして、やらぬほうがよかったというようなケースもあるでございましょう。あるいはやってもよかったという場合もある。
  39. 横山利秋

    横山委員 あなたは、やらぬほうがいいかもしれぬけれども、根底として、知事が交際費の中から自分が自由にできる金であるならば、あなたの理論によれば問題さえなければ県会議員に適当に県政協力費としてばらまいても差しつかえないという根底がある。これは私はきわめて重大だと思う。何の根拠があってあなたはそういうことがいいと言われるか。あなたは逃げて、問題があればやらぬほうがいい、けれども問題がないならば、知事が交際費の中から県会議員に交際費をばらまいてもよろしいのだ、そんなことを法務大臣として言うのですか、公式の議事録の中で。とんでもない話です。
  40. 石井光次郎

    石井国務大臣 あなたがそうおっしゃるところに問題があるわけじゃないですか。問題があるからそういうものはやるべきものじゃない。そういうことは、そういう金を使う人がみずからを非常にりっぱに持して、県の税金とかその他で集まった金でございますから、間違いのないように使うという良心的な行動をしなきゃならぬという責任は、どんなに自由に使うということはあってもあることは当然だと思います。
  41. 横山利秋

    横山委員 これは一ぺん議事録を整理しまして聞きますが、法務大臣のお考えはきわめて清潔でないお考えだと思う。ほかの政治家が、そのくらいのことならいいだろうかと言うならともかくとして、法務大臣として、交際費を県会議員に問題さえなければばらまいてもいいのだというようなことを基礎にしてお考えになるとするならば、あなたを見直します。しかし、次の問題に移りますがね。これはあなたは今後に問題を残すことばだと思います。次に進みますが……。
  42. 石井光次郎

    石井国務大臣 ちょっと待ってください。私は、かって気ままに知事県会議員に金をばらまいても、何も法に触れなければよろしい、やってもいいのだということを言っておるわけじゃないのであります。それはさっき申したような制限でやる場合もあり得るでありましょう。しかしそれは、そういうだけの理由があって、この人にはこうやってどういうふうなためにやるんだというような必要な場合にやる場合はありましょう。たとえば外国に出かけていくようなために、特にある調査を依頼するから調査費として渡すというような例等もちょっと考えられるわけでございます。そういういろいろなケースはあるだろうと思いますが、渡すことは何でもかでも悪いということは私は言えない。しかし何でもかでもいいということを私は言っておるわけじゃないのです。そこが非常に大事に考えなくちゃならぬわけです。
  43. 横山利秋

    横山委員 あなたは問題をどんどんはずしてしまって、そうしていかにも自分の最初に言ったベースからはずれようとなさっているけれども、私が言ったのは、県政協力という柱がある。この県政協力という名義のために県知事県会議員にばらまくことが適法であり適正であるかということから始まったのですよ。そいつをあなたはいつの間にかずるずるといって、個人の金ならいい、それから公的な金であっても問題がないならいい、そうして海外旅行ならい、問題をずらしていっているんじゃないですか、あなた自信が。私は、県政協力という名前で、その公職の金を、交際費なら交際費をばらまくということは適当でないという立場に立っておるのですよ。しかし、これはあと一ぺん議事録を整理してもう一ぺん聞きます。  次は、独走態勢ということです。独走態勢であるならば、金をやっても選挙に頼んだことにはならぬというがごときことが不起訴理由の大きな柱になっておる。で、この吉浦という人が公式に立候補宣言をする前に金をばらまいた。その当時は独走態勢であった。公式ということ、いよいよおれが立候補するということ、その前にどういう経緯があるかということは、政治家だったらだれだって知っておる。庶民だって知っておる。一体そのいつをもって独走態勢とするかという問題がある。  第二番目には、その浮き沈みしている人の名前、安定候補になるかしれない人の名前が浮き沈みしておる段階においては独走態勢だ。そのときに、その浮き沈みしている、だれか知らない不特定多数の人をつぶすためにあらゆる人間に金をばらまく、そうして自分の協力態勢にするということ、それが一体独走態勢ならば金をばらまいても選挙違反にならぬのかということを法務大臣はどうお考えですか。
  44. 石井光次郎

    石井国務大臣 独走態勢ということそのものだけでこの問題は言えない。そのときの情勢の判断の一つとしてそういうふうなものも考えられたということをさっき刑事局長から述べたわけでございます。それも判断の一つ証拠を固める上においてのこれは一つのものだということを申し上げたわけでございます。
  45. 横山利秋

    横山委員 だから私は、不起訴理由は幾つもある、その中で、津田さんがまず過半数のことばを使ったのは独走態勢だという、そうでしょう。その独走態勢論というものがあるから金をやっても選挙を頼んだことにならない、こういう理論だ。そうでしょうが。そうであるならば独走態勢論とは何だ。相手候補立候補をして、立候補決意表明をしてからは独走態勢論じゃないらしい。決意をする以前は、これは名前が公式に出なければだれでも独走態勢独走態勢ならば銭をやってもいい、こういう理論をあなたは御承知か、それでいいと思いますかと聞いておるのです。
  46. 石井光次郎

    石井国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
  47. 津田實

    津田政府委員 独走態勢のことにつきまして、私が多くの言を費やしたということを一つの論拠にされた御質問のように思いますが、独走態勢については、検察庁の認定する事実を申し上げたわけでありまして、この態勢いかん、つまり塚田をめぐる一般政治情勢というものについては、個々の人の供述なりその他の事象を基盤として考える上にきわめて重要な事柄でありますので、それを申し上げたわけでございます。したがいまして、独走態勢たからすぐこの金は選挙に結びつかないのだということを申し上げておるわけではございません。また検察庁はそういうふうに判断しているわけではございません。ただし多くを申し上げましたのは、具体的事実の羅列を申し上げたから多くを費やしただけのことにすぎないわけでございます。
  48. 横山利秋

    横山委員 逃げたってだめですよ。しかし、かりにあなたの言うことを聞いても、なおかつ独走態勢論というものが不起訴の重要な理由一つになっておることをあなたは認めるでしょう、どうなんですか。
  49. 津田實

    津田政府委員 名証拠を判断する上の基盤としては重要な事柄であるというように考えております。
  50. 横山利秋

    横山委員 重要な事柄であるから独走態勢論について聞いておる。   〔発言する者多し〕
  51. 大久保武雄

    大久保委員長 お静かに願います。
  52. 横山利秋

    横山委員 それ以前なら、独走態勢の段階ならば、金をばらまいても差しつかえないかと聞いておる。
  53. 津田實

    津田政府委員 金をばらまいてもいいかということは、結局金の趣旨いかんの問題に帰着するわけです。金の趣旨いかんが問題であるということでありまして、常にばらまいていいとも言えないことは当然であります。
  54. 横山利秋

    横山委員 そうすると、あなたの理由は一たんくずれて、独走態勢であっても目的いかんによってはいかぬ、こういうことをあなたは明言できるわけですね。
  55. 津田實

    津田政府委員 理論的にはまさにそのとおりでございます。
  56. 横山利秋

    横山委員 そうすると、先ほど来のあなたの話の一角がここでくずれたわけですね。今度はいかなる目的であったかということです。大臣もお聞きのように、知事室ないしは知事公舎で二十万円ずつ全員にばらまいた、そのときに、選挙を頼むと言ったか言わなかったか確たる証拠がないと、こうおっしゃる。ここが問題の一つの焦点ですね。知事を呼んで、あなた、選挙をよろしくと言ったかといえば、言わぬと言うにきまっておる。もらった人に、選挙をよろしく頼まれたかと聞けば、頼まれぬと言うにきまっておる。同じ穴のムジナですからね。しかし、そのときをめぐる客観情勢の分析がここで第一に問題になってくる。その分析の中であなたは独走態勢論を持ち出した。その独走態勢論はくずれたわけですよ。選挙を直前にして相手候補が浮き沈みしているときに、県政協力として、まあウィスキーの一本ならあるいはということもできるが、二十万というまとまった金を全員にばらまくということが、御苦労さまでしたということで律しられるのか。そんなばかな常識がこの世の中で通るのか。いまやかっかとなって、吉浦が立つかだれが立つかというときに、知事室に呼んで、全員並ばせるならともかく、一人ずつ肩をたたいて、御苦労さまでした、今後もよろしく頼むよということでしょう。それが選挙と結びつかぬと判断できますか。一人一人呼んで、あなたは頼まれたか、頼まれませんでした、それじゃ不起訴です、そんなばかな理由がありますか。そんなことで検察陣がつとまるのですか。どうなんですか。   〔発言する者多し〕
  57. 大久保武雄

    大久保委員長 お静かに願います。
  58. 津田實

    津田政府委員 独走態勢の一角がくずれたと仰せられますが、私はさようには考えません。それはあくまでも当時の政治情勢の基盤を判断して、諸般の証拠の価値を判断する場合の必要性をもってお答えをしたわけです。そういう意味でありますから、独走態勢の一角がくずれたとかくずれないとかいう問題は関係がないと私は思います。  それから具体的に、それではどういう金を渡したらどうなるということは、これはまさに証拠の判断の機微に属することであります。したがいまして、具体的の証拠を見なければそれができないということは当然のことでありますけれども、しかしながら、これは先ほど申しましたように、疑わしいということは確かに言えます。しかしながら、きめ手になる証拠がない、つまり公訴を維持するに足りる証拠がない、裏づけをする補強証拠がないということを先ほど申し上げたのです。そういう意味において本件は嫌疑不十分であるということを申し上げたのでございます。
  59. 横山利秋

    横山委員 そうすると私の主張をいれられて、本人たちを調べたところ、選挙に頼んだ、頼まれたということを言うた、中には運動依頼でもらったと思ったという人があるということをあなたは認められた。けれども、それは小人数であって、一般的には選挙を頼んだ、頼まれたという証拠は得られなかった。しかし、あなたのほうは、だからといってこれが選挙運動で出さなかったということは信頼し得なかった、し得なかったけれども、確たる証拠がなかったということですね、正確にあなたのことばを整理しますと。
  60. 津田實

    津田政府委員 本件につきましては、ただいま御指摘のようないわゆる積極証拠と申しますか、そういうものもございます。しかしながら、諸般の情勢、並びに消極証拠もございます。そこでその証拠の価値判断の問題になる。証拠として検祭官が確信を持って有罪判決を得られるというものであれば、当然起訴すべきであるという結論に達するわけです。しかしながら、有罪の判決を得る確信のないものについて検察官がこれを起訴することは、現在の検察方針としては許されていないわけです。そういう一点にみなかかるわけであります。
  61. 横山利秋

    横山委員 わかりました。一応そこである程度整理ができたと思うのです。私の判断によれば、選挙を頼んだ、頼まれたということの本人たちの事情聴取においては、頼まれなかった、頼まなかったと言ったらしい。検察陣はそれに対して、ほんとうに選挙を頼んだであろうと思われるけれどもそれに対する積極的な証拠がなかった。ということは、裏を返して言えば、あるいは選挙で頼み、頼まれたかもしれないという問題は残しておるわけですね。
  62. 津田實

    津田政府委員 本件の容疑は、運動のための報酬として出されたという容疑をもって捜査を開始しておるわけです。そこで、その容疑の罪ということが一番問題になることは当然であります。そこで、先ほど申しましたように、積極証拠もあり、消極証拠もある、しかしながら、いずれも補強証拠に乏しいというようなことから、結局有罪の判決を得るだけの確信を検察官が持つことができないという結論に達した意味で、嫌疑不十分ということになっておるわけであります。
  63. 横山利秋

    横山委員 そうすると、大臣、いまお聞きのとおり、まさにこれは紙一重ですよ。私どもがお互いに政治を担当する者として、そのときの雰囲気なり、そのときの客観的な情勢は、容易に承知し得る。検察陣とはまた違って、われわれは容易にそのときの零囲気が承知し得る。県知事が、知事室や知事公舎で、一人一人呼んで、選挙前に二十万出すという心理は、単にうしろ向きにいままで県政に御協力を願ったからといって、しかも再選をする決意を持っておる知事が、うしろ向きの問題で長らくありがとうと言うはずがない。前向きにどうぞひとつよろしくお願いしますというのは、言わず語らずとして政治家の当然の雰囲気である。そこで検察陣がある者は起訴にし、ある者はこんなものは罪ではないということはないけれども、しかしながら、十分な証拠がないというときの判断として、内閣総理大臣以下全閣僚が、この国会において地方政治を粛正しなければいかぬ、あるいは選挙の清潔を維持しなければならぬという場合においては、一罰百戒の精神をもってこれは起訴に踏み切るべきではなかったか、こういうふうに私は判断をするのですが、法務大臣はどうお考えですか。あなたがかねがね言っていらっしゃる選挙の公明、政界の粛正、李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れずという心境であるならば、当然、こういう問題については起訴にして、そうしてやるべきではなかったかと考えられるのですが、御意見を伺いたい。
  64. 石井光次郎

    石井国務大臣 私は、この問題に対して、お尋ねのたびに私の心境を至るところで申し上げましたように、私はこれは検事当局が厳正な態度で、どこからも指図を受けないで、どこからも影響されないで判断をして決定をしてくれることを期待いたしております。私は、何にもほんとうにこの問題に触れておりません。この間、参議院のほうでこの問題についてもう少しあなたは積極的に進んで何か言ったほうがいいじゃないかとさえ言うた方があったのでありますが、早くやれということを催促することも一つの指揮をするようなことになるんじゃないか、それもしないほうがいいと思っておる。検察当局信頼して、その決定を静かに待っておるのが一番いいと私は思っておるんだ。いろいろな声があるだけに、この際は、なおそうしておることがいいんだということを申したのであります。決定がこういうふうになりました。そうすると、あなた方は、これはどうもおかしいんじゃないか。逆のほうにしたほうが、いまのように、選挙を公正、厳正にやるという将来のために、一つの押えになるのじゃないかとおっしゃいますが、検察当局は、そういうふうな政治的な考慮を払うところではないのであります。これをどうやって、これから先の選挙の上に、こういう問題が起こってはいけない、もっともっと厳正な態度で臨まなくちゃならぬというふうに指導していくのは政治家としてのわれわれの心がまえでございます。検察当局としては、証拠を十分検討し、その判断によって決定することが一番正しかったこういうふうに思います。
  65. 小林進

    小林委員 関連質問。
  66. 大久保武雄

    大久保委員長 小林委員に申し上げますが、大臣、出席の約束時間がたいへん経過いたしております。多数質疑通告者もありますから、御協力願います。
  67. 小林進

    小林委員 そのお話はいま理事間でお話がされておりますから、理事間で話がつくまで、私は関連質問をいたします。お許しを願いたいと思います。  先ほどの刑事局長お話を聞いておりますと、大臣、これはわが検察行政の上における重大なるポイントが幾つも含まれております。幾つも含まれておりますから、これは大臣もひとつ将来のわが日本の大きなポイントになる問題でありますから、私は、第一番にひとつお尋ねいたします。  先ほどのお話しのように、四十二名の県会議員がお金をもらった。その中の大半は、——これは検事正を呼んでいただけば一番よくわかります。大半は、選挙運動の金としてもらったんだ、こういうことを新潟で発表されておりますよ。ことばの節々に若干ありますが、大半——(「違う、違う」と呼ぶ者あり)私は、検事正と会って聞いているんだから、私は、質問しているんだから、私は、新潟でテレビ、ラジオの発表も聞いておる。(「うそだ」と呼び、その他発言する者あり)うそだと思うなら、あとで検事正を呼んで聞いてください。鍛冶君、三百代言を言ってはだめだ。検事正を呼んではっきりさせよう。検事正が言っておるんだから。
  68. 大久保武雄

    大久保委員長 質問を続けてください。
  69. 小林進

    小林委員 質問を続けますが、その自供をされておるのが、いまも言うように証拠にならないとおっしゃる。いいですか。自供は証拠にならないという。これは今日の検事行政の上では——委員長、そのうしろで笑っているのはどなたですか。笑った者を出してください。われわれはまじめに質問しているにかかわらず、うしろで笑っているのはけしからぬ。あなたは、どなたですか。
  70. 加治木俊道

    ○加治木説明員 失礼いたしました。大蔵省の加治木調査官です。   〔発言する者多し〕
  71. 大久保武雄

    大久保委員長 静粛に願います。
  72. 小林進

    小林委員 いいですか、何で笑う必要があるのだ。(「政府委員として呼んでいるのだ」と呼ぶ者あり)出るのはいいけれども、おれの質問をなぜ笑う必要があるか、失敬千万だ。   〔発言する者多し〕
  73. 大久保武雄

    大久保委員長 静粛に願います。
  74. 加治木俊道

    ○加治木説明員 たいへん不謹慎でありました。陳謝いたします。
  75. 小林進

    小林委員 だからその理由を言ってください。
  76. 大久保武雄

    大久保委員長 質問を続けてください。
  77. 小林進

    小林委員 自供は、県会議員四十二名の中の大方の者は、選挙運動として金をもらったのだ、こう思いますと言っているけれども、自供は証拠にならないとしている。いいですか。それで私は新潟検事正に自供は証拠にならぬとは一体何事ですかと言ったら、いや、私は司法研修所の教官もやっておって、自供というものを偏重するのは間違いを起こすから、自供というものを偏重するなということが私の信念である、私は自供というものは証拠にならないということを私の信念にしていると言われた。私は時間がなかったからそのときは言わなかったけれども、自供を偏重するなというのは、なぐったり、けったり、いままでの刑事行政でやられたでしょう。気の毒なわれわれの仲間のように権力のない者になぐったり、けったり、強制してあなた方は自白をさした。自白の強制をやった。そういうものの自白を唯一の証拠がかりにするということは、それは検察行政、事実、真実の追求において間違いがある。そういう強制や権力に基づく暴力なんかで白状をさせた。その白状は尊重しないという考え方はいいだろうけれども、今度の四十二名のいわゆる県会議員には強制は行なわれていませんよ。われわれの仲間がなぐられているような強制、暴行は行なわれていません。彼らは任意の気持ちで、すなおな気持ちで、みずから自主的に大半の者が選挙運動の金としてもらったんだから、不浄の金だから私どもは返します、危険な金ですから返しますと、良心のある者は十四名です、その十四名のうち、もらってすぐ返した者もおりますれば、それぞれ話し合って、どうわれわれが良心的に判断してみてもこれは選挙運動の不浄の金だから返します、こう言って九名の者が一緒になって返している。その自供はどうして証拠にならないのですか。もしこんな理屈が通るとするならば、いままでの証拠裁判における自供の信憑性などというものは——全部いままでの検察はやり直しをしなければならないということになる。これは問題が一つある。いいですか、法務大臣、自供は証拠にならない、任意の自供です、自主的な自供も証拠にならないわけですよ。この問題は、あなたひとつ明確にお答えをいただきたい。  それから大臣に申し上げますけれども、さっき横山さんは、独走だから金をやってもよろしいのだということを言われたが、これはいけないのではないかと質問しておったら、吉浦君が——独走だから金を出しても選挙違反にはならないのだということを言われた。これは別個の場合です。事実の問題であなたは非常にごまかしをしていらっしゃる。いいですか、先ほどの問題で。私はいつも言います。吉浦君が立候補意思を内定いたしましたのはもはや七月十日なんですよ。けれどもあなたがおっしゃるように、副知事知事部下であるかどうか、私はああいう説明には非常に疑問を持っております。疑問を私は持っておりますが、その部下ということばが許されるにしても、同じ知事と副知事として働いていた新潟県において、七月の四日に塚田さんから首を切られた、俗なことばでは首を切られて、自治省にやられることが決定した。これは新聞に出た。その七月の十日に、首を切られたから私は知事立候補しますというのは、いかにも復讐的で、道義的に県民の納得するところではないから、一応自治省へ赴任をさしてもらって、八月の一日には赴任するんだ。七月の二十二日には新潟県を去るんだ、一応自治省へ赴任をさしていただいて、自治省で執務をして、そこで新たに決意を固めたという、そういう形でひとつ立候補をさしていただきたい。その回答は、八月の十三日に——特にあなたが先ほど言われたように、その日にちは二日狂いました。二日狂って八月の十一日でした。この事実は塚田さんのところに全部入っています。それをあなたが先ほど言われるように、塚田さんは七月の末、八月の初句に至るまでも、まさか副知事が私のライバルとして立候補するとは思わなかった。あなたはそういうことを言われた。実に検察庁みずから事実を被疑者のために調子よくつくってきた、捏造したと私は考えざるを得ない。そういう事実の調査は、実にあなた方は本人の都合のいいようにやっている。私はあえて言いますと、ちょうどこの事実を知っている人がいる。私だけじゃない。こういう事実を知っている国会議員はまだいる。必要なら私も証人になります。あなたにも私は言っている。こういう大きな事実を本人の都合のいいように隠して——それからまだ言いましょう。いま一つ立証するとして、何も吉浦君がまさか塚田さんの対抗馬として立候補すると思わなかったと言っている。それを思わせるような理由がありますよ。なぜ思うか。その前に行なわれた参議院の選挙のときに、吉浦君は地元の財界や多くの人から推薦を受けて、参議院に立候補する姿勢を見せた。準備をした。その準備がすっかりでき上がったときに、塚田君が吉浦君をつかまえて、色をなしておこった。おれは自民党県知事である。自民党公認候補の全国区の参議院議員があるにもかかわらず、君がここで立候補するというのは、おれの立場がなくなる。だから君は断じて立つな。一切の準備はやめて、立つな。吉浦吉浦周辺の者をして言わせれば、まさに首をねじ切るような形で立候補を押えつけられた。私は、このせつなさやうっぷんは男としてわかります。そういう事実が四月にあって、その旬月をたたない七月の四日の日には、自治省に——本人新潟県で総務部長から副知事を七年もやっておる。私は新潟県で骨を埋めたい、こう言っている者を、七月の四日に、彼は自治省へ発令して、自治省本省に返す。その返す理由は、いわゆる副知事が参議院選挙立候補する。この問題にからんで、彼がねじり伏せて、そして反逆のおそれあり、こういって自治省へ帰した。そういう経緯の中から、吉浦君がまさに私を裏切って私のライバルで知事に出るなどというのは、八月の十日本人が発表するまで知らなかったなんという、そんな事実が調査の過程に考えられますか。あなた方にそんな事実の証明ができますか。私は、そういう全く人を小ばかにしたあなた方のさっきの言い方は、弁護士の言い方じゃないですか。そういうことをひとつ、私は二番目として、この事実に間違いないかということを——そういうようなことを大衆の前でごまかすようなことはできませんよ。それをひとつ明らかにして、そのために必要な証人はだれでも出ますというのを、なぜ真相を知っている者を一体その捜査の過程において、こっちから申し上げているにもかかわらず、証人に呼ばなかったのか。なぜ一体参考人に呼ばなかったのか。  それから、二十万円は均一であるとおっしゃったが、間違いございませんか。二十万円は県会議員全部に均一にやったのであるという、これは間違いありませんか。そういうようなことは、もう新潟県全般、社会党県会議員自民党の県議会議員も知っている。知事は四段階に分けて金をばらまいたということは、県下周知の事実だ。検察庁だけがそういうことを言っている。その点をどの程度に調査されたのか、事実をお知らせ願いたい。あまりにも事実とは——事が巧みにつくられ過ぎている。その三点を私は明らかにしていただきたいと思います。  それから私はまだ一つ申し上げます。吉浦君が七月十日には出ますというその事実は、塚田さんの耳に旬日を経ずして通っている。そこで彼は、七月二十日ごろから、同じ保守系の副知事、しかも吉浦君のほうが県会議員四十二名の中には圧倒的に人気がある、圧倒的に県会議員の支持者がある、塚田さんは孤立している、そこでたいへんだというので、二十万円をばらまいた、こういうだれもが知っている事実を、あなた方は塚田さんは何も知らなかったということを言明された。単なる党人党人に金を授受するのはあたりまえだ。だから、これは中元だ、謝礼だとおっしゃるならば、同じ四十二名の県会議員の中で、同じく塚田県政に最も忠誠な自民党県会議員で一人入院しておるのがいた。その入院していた県会議員だけに一銭の金もくれなかったという事実は、どうなんです。これは一体どういうことなんですか。その人には見舞い金ひとつやらない、それを一体どういうふうに反証されるのですか。三名のうちの二人の県会議員は、行き違いだ、やろうと思ったけれども、知事とはどうも行き違いになってもらえなかった。しかし、一人は行き違いじゃない。ちゃんと病院に入院している。知事がばらまいて、その入院している県会議員にだけ金を一銭もくれなかったというこの事実は、一体どういうふうに証明されるのですか。それは選挙運動ができないから、活動ができないから、だからくれなかったのです。いいですか。こういう問題を一体どういうふうに解釈をされるのか。  それから、まだ一つ法務大臣にお伺いします。塚田さんは、六月の五日には参議院選挙で、自分が監査役をやっておりました鹿島建設のお婿さん、平泉さんを呼んできて、消防協会の会長であるという地位を利用いたしまして、新潟県下の消防関係の役員を全部集めて、そこへ、平泉参議院議員候補を連れていって、どうかこれの参議院選挙をお願いします、この秋に行なわれる知事選挙には、どうかこの塚田をひとつ推していただきたい、こういう運動をやっている。これも県民見るに見かねて告発をいたしました。そうしたら、新潟検察庁においては、これは犯罪事実あり、選挙違反の事実あり、事前運動である、けれども、知事であるからということで起訴猶予にされた。起訴猶予ということは、犯罪事実ありでしょう。犯罪事実はあるけれども起訴に至らず、これは俗なことばで言えば、刑法上は前科でなくて、起訴猶予でも形は一応前科の形がある。それがわずか三カ月もたたないうちに、また同じような、こういう選挙のいわゆるあなた方のいう灰色の事件、あなた方はそういう一つ選挙運動の前科が三カ月前にあるような人の、これに類似する最も大げさな選挙運動に対して、不起訴とは何だ。一般の人がこういう選挙のような前科があれば、白を黒とも言い含めて全部検察庁起訴をするにもかかわらず、これほど明らかなる起訴猶予になった選挙違反のある者を、なぜ一体こういうふうにして処理されたのか。あまりにも庶民に対する求刑や起訴内容と事実がかけ離れ過ぎているじゃないですか。だれが考えても、あまりにも不公平過ぎる。この問題はどうでありますか。  私は、いま一点また申し上げましょう。これはあなた方だってそうじゃないか。選挙後、全部知事室から自民党の本部から調査されましたでしょう。そして塚田さんのいわゆる愛人の邸宅も調査されましたでしょう。そしてそこに隠している資料も、全部追及されましたでしょう。そこから出てきた何千万円という多くの選挙に関する証拠書類を、全部おとりになったはずです。それはいわゆる知事の費用超過、選挙違反の費用超過の問題はどうなっているのですか。なぜそれをおやりにならないのですか。その問題をひとつ。これはそういう問題も一つも出てこないじゃないですか。そのために、自民党の県連の事務局員が二人、こういう選挙費用の費用超過の問題、いわゆる費用を通じての選挙違反の問題で、二人も起訴されている。それはみんな塚田さんの選挙にからんだ問題じゃありませんか。その費用超過の問題、選挙運動のいわゆる買収、供応の問題、至るところに起きているこの問題について、これを取り上げようとされないというのは、一体どういうことですか。この問題が一つ。これは石井さん、いいですか。もう刑事局長に聞いてもだめだ。前に聞いたが、さっぱり返事をしないからだめだ。  いま一つ、最後に言います。これは先ほども横山さんが言われましたけれども、いわゆる首長が議員——行政府と立法府です。首長が議員に金をやって、そして協力を願うというこのことが、あなたのおっしゃるように、特定の問題について依頼することでなければその協力は可能であるとおっしゃるならば、行政府の人たちが立法府の、あるいはさっきもいわれた市長、町長、村長あるいは県知事が、議員に、よろしく協力してくれてありがとう、こう言って金をくれることがよろしいというならば、議会政治の根底をなす均衡抑制の原則、立法府と行政府が相抑制し合って、そして均衡を保ちながら民主政治というものを、人民の、国民の利益というものを守っていくという、これが議会政治の根本です、その均衡抑制の原則は、一体どうなんです。これが失なわれたら、議会政治は成り立ちません。民主政治は成り立ちません。それを同じ政党の所属議員だからといって、いわゆる行政府の首長が全部議員に金をくれて、おい、おれに協力してくれ、協力ありがとうといったら、事実上議会は要りません。行政府の言うなりの議員ができ上がり、県知事や市長や町長の言うなりの議員ができ上がってしまったら、議会は要りません。この議会の根本を成立せしめる、民主政治の根幹をなす均衡抑制の原則を、あなた方はいま否定された。協力の金なら、特定の問題でなければ、幾らでも、交際費でもよろしい、どこからかっぱらってきた金でもよろしい、その金をやってもよろしいというあなたの説明からするならば、議会政治は成り立ちません。こういう問題こそ贈収賄だ。行政府が立法府にこういう金をばらまくのは、民主政治を守る立場から断固として贈収賄だ。これこそ私は証拠をあげていかなければならぬと思うのでありますけれども、こういう大きな問題を明らかにしなければならぬ問題がまだございますけれども、以上法務大臣に御質問をいたしておきます。この点をひとつお聞かせ願いたい。
  78. 津田實

    津田政府委員 事実関係についてのお尋ねがありますから、それを私が最初に申し上げます。  自供の信憑性ということでありますが、これはもちろん証拠になることは当然であります。したがいまして、それらについては証拠としてやはり十分判断をいたしておるということであります。しかしながら、本件につきましての受供与者の自供、あるいは供述ともいえると思いますが、こういうものにつきましては、先ほども申し上げましたように、種々の変遷、粉飾、歪曲もあると想像される面があるわけです。そこで、何か形式的にこういう供述資料があるということだけでは、判断することができない。そういう意味におきまして、あらゆる証拠なり状況を判断して、その具体的証拠の信憑性を決するということが、検察の態度であり、さようにいたした結果でございます。  それから、立候補の時期の時日については違うという御意見がございました。それは御意見としてはもちろんございましょうが、証拠として判断いたしたところは、先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、事実事実ということを世の中でよくいわれますが、これは検察庁がその証拠に基づいて判断する必要がある。したがいまして、その証拠に基づいて判断した結果を申し上げたわけでございます。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕  それから、渡した金員が二十万円であるかどうかということは、二十万円であると私どもは判断いたしております。  なお、ただいまお尋ねになりました、検察庁は暴力をもって自白を強要しているような事実があるというようなお話でございましたが、新憲法下にさような事実は全然ございません。あらゆる事件についてもございません。
  79. 石井光次郎

    石井国務大臣 最後の首長が議員に金をやる問題、誤解があるといけませんから、私の心持ちをもう一ぺん重ねて申し上げます。  首長が議員に金をやって協力を求める、こういうような政治的な意味において協力を求めるために金をやるという問題は、これは影響するところが非常にさまざまにある問題でございますから、さっきも申しましたように、私は、かりに出すにいたしましても、これは非常に慎重な態度でやらなければならない問題だと思うのであります。特に県知事県会議員等にやる場合においては、なおさらこれは大事に考えなければならない問題である。また、その時期等においては、なおさら重大な影響があると思うのであります。私は、金をやってもいいじゃないかと言ったのは、さっきも一例として申し上げましたように、自由に使っていいという金であるならば、それをあるいは外国旅行とかなんとかいうようなときに援助するというような、平たい場合のようなことを考えて申しておったのでございますが、政治意味の場合とすれば、何でもそれはかまわないのだというような意味で申しておるのではないのであります。これは非常に大事な問題でございまして、そう簡単に政府のほうで……(「絶対にやってはいけないと言え」と呼ぶ者あり)そう言うわけにいかない。たとえば総理大臣が金をやることは、やってはいかぬということをきめるわけにはいかない。首長と言われれば総理大臣も入るわけでございますから、そういうわけでございます。その場所場所の人によってそういうことはみずから厳重に考えなければならぬと同時に、私どももそういう問題については十分な注意を払っていかなければならぬと思うのであります。
  80. 小林進

    小林委員 それじゃ、われわれ社会党もやりますよ。あした選挙だという前の日に、これは党員ですから、日ごろの協力ありがとうといって金を全部やっていいですな。党員間の金銭授受だから、よろしゅうこざいましょうね。それだけ聞きましょう。
  81. 津田實

    津田政府委員 それは具体的の事実に基づくものであります。   〔「大臣、答弁せぬか」と呼び、発言する者多し〕
  82. 石井光次郎

    石井国務大臣 刑事局長から答えた以上のことを、私から答えられません。
  83. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 稲村君。
  84. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 今度の新潟塚田問題は、まことにこれは奇々怪々な事件だと思うのです。   〔発言する者多し〕
  85. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 御静粛に願います。
  86. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それで、いま新潟のいろいろな問題については小林委員から質問がありましたから、私は省略しますが、新潟検察庁は、高検と最高検と二回の打ち合わせをやっている。そして、高検の指摘された補充捜査を二月に終わっているのです。それを知事選の直前に発表したというのは、私はこれは全く政治的じゃないかと思うのです。この点どうですか。
  87. 津田實

    津田政府委員 時期の関係は、私が申し上げます。高検と二回協議をいたしたことは事実でございますが、最高検と協議はいたしておらぬと私は思っております。それから、さような会合によって協議をいたすことはもちろんありますが、電話その他の方法による協議というものも、これは幾らもございますので、別にそのことは、直接本件についての内容の相談でありまして、それがどうであるという問題ではないと私は考えております。  それから、この事件の処分時期の問題でございますが、一日も早く処分することを各方面から要望されておることは、私も承知いたしております。また、国会におきましても、できるだけすみやかに処分をするということを申しております。しかしながら、補充捜査の時期等、検討の時点がございますし、また、さらに起訴裁定書を作成するにつきましては、やはり相当の日数を要するわけです。そういうような問題を勉案いたしたわけでありますが、結局、本件知事選挙の告示があった後に処分するということは適当でないというのが、一般の常識であると私どもは考えております。したがいまして、その選挙までには必ず結論を出すべきものというふうに私どもは期待しておりましたし、検察庁当局もさような考えであの時期に処分をいたしたということでありまして、それは何ら政治的ではなく、むしろこれを選挙期間に入って、あるいは投票後に処分をするということになれば、あるいはそれは政治的だというような御批判を受ける可能性があるかもしれませんけれども、さようなことはないわけでございます。
  88. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それで、補充捜査ということは、高検が考えているのです。地方検察庁はそんなことは考えていなかったのです。地方検察庁は、補充捜査なしに起訴するつもりでおったのだ。これは明瞭なんです。高検のほうで、これは不十分だから補充捜査をやれと言っているのです。地方検察庁は、すでに補充捜査なしにもっと早く起訴するつもりでおったのです。そうでしょう。そうじゃないですか。
  89. 津田實

    津田政府委員 二月上旬に検事正その他が上京いたしまして、高等検察庁で協議をいたしておりますが、その際は、別に処分意思はきまっておりません。中間報告的な処分でありますが、いままでの捜査経過並びに証拠関係を詳細に説明して協議をした。その結果、補充捜査を要するということになったわけです。これは、本件に限りませず、相当事件につきましてはすべてあることでございまして、高検へ行きまして、やはりいろいろ第三者としての批判を受けて、なるほどということになって補充捜査をやることは当然であります。これはまた、検察官の中でそうやっておって、さらに裁判所でもう一つ批判を受けることになるわけでありますから、そういう意味におきまして慎重を期しておるのは、当然のことだと私は考えます。
  90. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 補充捜査は、高検の意見なんでしょう。そうでしょう。地方検察庁が指揮を仰いで相談したところが、補充捜査をしろ、これでは不十分だ、こういうのでやったのでしょう。第一線に当たっている検事は、あの当時は起訴十分だと考えていたのです。われわれはしばしば伊尾検事正や丸物次席検事に会っておった。それを現地の実際を知らないものが補充捜査をしろなんと言うことは、だれが見たっておかしいと思うのです。
  91. 津田實

    津田政府委員 検察庁は全国組織でございまして、検事総長を頂点とする指揮系統になっておるわけです。そこで、現地でいろいろ証拠を集めまして、問題点を検討いたしまして、それにつきまして高等検察庁に相談、協議をするということは、当然であります。その協議の際に、高等検察庁が何が何でも補充捜査を命ずるというようなことは、これは検察庁慣例としていたしておりません。いろいろ論議を戦わしておるわけです。これはいずれも法律家が集まりまして——高等検察庁の検事長だけが集まっておるという性質のものではございません。高等検察庁の各検事が集まりまして、いろいろ証拠を検討いたしまして、法律的にこれは問題だということになれば、証拠の信憑力その他につきまして法律的に問題であるという意味において補充捜査を命ずるということになるわけですが、結局協議の結果、補充捜査はすべきであるなという結論になったということになるわけであります。
  92. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 補充捜査とは、一体どういう内容なのですか。補充捜査なんというものは、実際上検討してみて、これじゃ公訴維持はむずかしい、だからもっと補充捜査をしろ、こういうのでしょう。その補充捜査は、具体的にいってどういうのですか。あの事件に対して、具体的にどういうものであるかということを言ってください。そんな変な議論ではしょうがない。
  93. 津田實

    津田政府委員 補充捜査につきましては、どの点、この点ということは、協議の結果出たわけでありますが、どういう補充捜査を命じたかということは、申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  94. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それで、伊尾検事正も、われわれが会ったときも言っているし、新聞記者にも、この事件は黒でも白でもなく灰色だ、こういうことを言っている。これは全く検事としては白だなどということは考えておらない。上のほうから言われたからしかたがない、おかしくなっちゃった。それから、いろいろな、公判維持が不可能だなんということは、検察庁が言うべきじゃないのだ。すでにこれだけ十分な容疑がある。法律上は常識なんだ。あなたの言うのは——末梢的な法律技術の問題じゃないのだ。社会悪や政治悪を除去することが、司法権の立場でしょう。どんな理由があろうとも、選挙の直前に金を八百万もばらまく。それは悪にきまっている。そんなものは、知事の月給や交際費から出るはずがない。どこかから持ってきた、そういう悪い金なんだ。だから、こういう社会悪や政治悪を除去するという正義感が検察庁になければ、こんな仕事はできない。そこで、先ほど小林委員あるいは横山委員の質問に対して、証拠がないと言っているが、これは常識から考えて証拠十分じゃないか。しかも、調べられた県会議員のうちでは、選挙を頼むといってもらったと言っているのがずいぶんおる。いわゆる主流派といわれる知事派の者でも、そう言っている者がおる。反主流派だってもらったということで、反主流派であろうがだれだろうが、これは政治的な対立関係やそんなものは問題じゃない。あなたは先ほどそれは説明したけれども、とにかく選挙を頼むといってもらったと言っている者がたくさんいるじゃないか。それをさっき小林委員が言うように、何も強制されてあれしたんじゃない。それなら、検察庁起訴理由が十分あるんだ。それを公訴維持が不可能であるというようなことを言うて、裁判官みたいなことを言っているじゃないか。白黒は裁判所につけてもらうのが検察庁のあれじゃないか。十分容疑があるにかかわらず、これを起訴しないで、裁判官のようなことを言っている検察庁が、一体どこにあるんだ。それはどうだ。
  95. 津田實

    津田政府委員 本件につきましては、先ほど来申し上げておりますように、犯罪の嫌疑が不十分であるということによる不起訴であります。したがいまして、それを社会的に見ればあるいは灰色だという議論になるかもしれません。しかしながら、検察官が起訴するのは、有罪の判決を求め得る確信のあるものについてのみ起訴をするというたてまえをとっておる。そこで、検察官が現在まで行なってまいりましたあれは、九九・六%程度の有罪率なんです。無罪率は〇・四という程度であります。世人はそういう意味起訴というものを評価いたしておるわけであります。なるほど疑わしきは起訴すればいいじゃないかという考え方がございますが、これは……   〔発言する者多し〕
  96. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 お静かに願います。
  97. 津田實

    津田政府委員 しかしながら、現在のわが国の検察は、さような立場はとっておりません。九九%の有罪率をもって——これは刑法犯についてでありますが、その他の者を入れますと、十万人に二人くらいは無罪率であります。さような立場をとっておることは、すなわち本件につきまして、その有罪の判決を得る確信が検事に得られなかったということによる嫌疑不十分である、こういうことでございます。検察庁は、なるほど法律に違反し、有罪判決を得られる者につきましては、これは起訴するのが当然だと思います。しかしながら、本件はさようでないという意味において、嫌疑不十分で起訴できなかったということであります。しかしながら、事件政治悪であり、あるいは社会悪であるということからいって、この標準を検察庁が変えることは、それはまさに政治的な判断になるわけであります。そういうことはやるべきことではないと思います。  なお、金の出所につきましては、本人の借り入れ金によっておるものでありまして、公金等とは全然関係はありません。
  98. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そういう理屈でこういう重大な問題を起訴しないなら、さっき小林委員が言ったように、今後市長が市長選挙の前に、市会議員が功労があるといって金をばらまく。われわれだって、今度選挙になって、これは党に功労があるといって金をばらまく。そういうふうな大がかりな違反を検挙しないということになれば、全く買収選挙というものは検挙できなくなるじゃないか。ビラまきとか酒一升というものは検挙して、そういうものは全然検挙できなくなる。そうなれば全くやみじゃないか。公職選挙法なんかなくたっていいじゃないか。そういう重大な問題を、いろいろな枝葉末節な、法律的な技術論をここへ持ち出して、塚田君を擁護するようなことを言って、こういう重大な事件起訴しないで——起訴して社会的に見せしめにすることが絶対に必要なんだと私は思う。世論も味方するんだ。公判が維持できないなんということは、これは全く三百代言的な理屈にすぎない。こういうことをやったら、司法権の権威は一体どこにあるんだ。幾ら買収をやったって、理屈をつければ買収にならぬ。しかし、これは明瞭な買収ですよ。ただ言いのがれをうまくすれば、こういう事件というものは一切ひっかからないことになるんだ。私もしばしば刑事事件にひっかかっておる。選挙違反事件や治安維持法で監獄に行ったこともある。だが、こういうものは一人や二人の犯罪ではないのだから、公判に出れば必ず口が合わなくなるし、その事件が暴露して、これは公判が維持できなくなるなんていうものじゃない。三人か四人なら別だけれども……。だから、こういうものは思い切って起訴すべきだ。起訴しなければ、みんな塚田流で弁解しておれば、これは幾ら買収しても、何千万円まこうが無罪だということになる。これは全く司法権の放棄だということになる。司法権の権威のために、私は実に痛嘆にたえない。そんなことで検事がつとまるか。一体何のために司法権が独立しているのだ。検事も行政官だから上の命令もあるだろうけれども、だれが見たってこれは政治的ですよ。すでに不起訴であるという評判がずっと立つ。現に、ある自民党の最高幹部は、ある会合に行って不起訴だと言っているのだ。心配ない、塚田君の辞職によって必ず不起訴にするということを言っておるのだから……。私どもはまさかそれをほんとうだとは思わなかった。こういう話があるがどうですかと、しばしば最高検あるいは高検に行って話をしてきた。ところが、そういうことは絶対ないと言っている。ないと言うが、事実ちゃんと不起訴になっているじゃないか。こんな事件を不起訴にしたら、今後選挙違反、あらゆる買収による違反は、何千万円まこうが、へ理屈をつけて合法的な言いのがれをすれば、全部不起訴になりますよ。なぜ起訴しないか。起訴すれば公判維持ができないなんていうものじゃないのだ。大ぜいだから必ずぼろが出てきて、そこでこれはあれするのだ。それを裁判所の立場をとって、白黒を裁判所につけてもらうのをやめて、検挙する検事局が裁判官のようなことを言って、公判維持にどうも確信かないから不起訴にしたなんて、そんなばかな理屈が一体常識的に成り立つか。実に司法権の権威のために悲しまざるを得ない。石井法務大臣、どう考えますか。そう思わないですか。
  99. 石井光次郎

    石井国務大臣 この問題につきまして、私は幾たびも申しておりますように、法律の上におきまして、検事局がこの問題を検討いたしまして、これはいままで長いことかかったじゃないかと、言われるほど時間をかけて掘り下げてやった結果が、このとおりであります。私はこれを……   〔発言する者多し〕
  100. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 静粛に願います。
  101. 石井光次郎

    石井国務大臣 しかし、この結果、政治的に及ぼす影響というものはどうあるか、今後はどうあるべきかという問題は、政治上の問題として残ると思っております。そういう問題は、私ども政治家として別に考えなくてはならないし、これはどうしてもそういうふうな問題を起こすような行政を来たさないように、われわれも戒めていかなくてはならぬし、そういう指導もしていかなければならぬ、そういうふうに思っております。
  102. 坂本泰良

    ○坂本委員 この問題については私も通告をして、まだほかにたくさんあるわけであります。しかもいまの刑事局長の不起訴理由については、まだ足らない点があると思う。これは速記録をよく調べて、われわれも法律専門家ですから、ごまかされはしませんよ。だから、この点は検事正をぜひ参考人に呼んで、この委員会で調べなければ、永久に禍根を残すものだと思う。こういう八百万円の金が選挙のいわゆる事前運動の期間内に行なわれている。それを証拠不十分というので不起訴にするということは、日本の検察庁に対する信頼感が非常に薄らいだと思う。また、この不起訴理由を聞きますと、いかにも塚田その他四十数名を不起訴にするための擁護の理由にしかならないと思う。この点については、今後さらに大きくこの問題を究明し、その真実を究明するためには、新潟地検の検事正を参考人に出てもらわなければならぬと思う。だから、この点については、委員長において得段の御配慮を願いたいと思うのであります。
  103. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 理事会において協議いたしますから、御了承いただきたいと思います。  本日の調査はこの程度にとどめます。      ————◇—————
  104. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 この際、連合審査会開会の件についておはかりいたします。  すなわち、ただいま審査中の商法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会より連合審査会開会の申し入れがあります。この申し入れを受諾し、本案について大蔵委員会と連合審査会を開催するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、連合審査会は来たる二十一日に開会いたしますから御了承願います。      ————◇—————
  106. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 次に、商法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  107. 横山利秋

    横山委員 私は商法の審議の課程におきまして、先般請願書を一通受け取りました。この請願言は、まあ国会にも真摯な請願書が来るのでありますが、しかし特に私はこの請願書を見まして、この請願者中島君の真摯なる努力、そして精密きわまる検討に実は一驚を喫したわけであります。この請願書は、先般私が問題にいたしました商法改正案二百八十条ノ二の二を中心にいたしまして、中島君が体験をいたしました歴史的事実並びに論理を実に精密に展開をいたしておるのであります。そこで私は、煩をいとわず、長時間かかるかもしれませんけれども、この真摯な努力をくんで、請願書を朗読しつつ、質問を続けたいと思います。     請願の趣旨  政府が今国会に提出した商法の一部を改正する法律案中  一 第二八〇条の二第一項に第八号を加える。「株主以外ノ者ニシテ之ニ対シ得ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スベキモノ並ニ之ニ対シ発行スル株式ノ額面無額面ノ別、種類及発行価額」  二 第二八〇条ノ二第二項中「新株ノ引受権ヲ与フル」を「対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スル」に、「与フルコトヲ得ベキ引受権ノ目的タル」を「其ノ者ニ対シ発行スルコトヲ得ベキ」に改める。  右一、二の法律案は、之を否決するとの御議決を仰ぐ。     請願の理由  一 請願人は、三〇年改正商法(現行商法)が第二八〇条の二第一項に第五号を追加し、取締役会の権限の拡大を図ったこと、及び同条に新たに第二項を設け、株主以外の者に新株の引受権を付与する場合株主の利益保護のために取締役会の権限乱用の防止の二つの規定が、どのように運用されるかについては常に重大な関心を有しつつ見守ってきた。それは右二つの規定が立法理由に則って、即ち、資本調達の機動性を発起し、かつ、株主の利益が完全に保護されつつ、資本調達市場が公正明朗化されつつ繁栄するか否かにあった。ところが実際面上は前者の取締役会の権限は飛躍的に拡大されたものの、後者の株主利益保護のための取締役会の権限乱用防止の規定は全く等閑に付せられたばかりか、該規定を潜脱違反することが公然の如く盛んに行われるに至り、遂に第二八〇条の二第二項の株主保護の厳重なる規定は全くの空念仏に期してしまった。そしてその事実は、たんに実際界ばかりでなく、法務、大蔵両当局も、又、それと共通の方向にあった。    即ち、昭和三五、六年頃俄かに買取り引受け方法なるものがクローズアップし、新株発行の一部(公募分と称して)を株主以外の者である証券業者に一括して新株の引受権付与、新株発行が行われた。勿論、第二八〇条の二第二項の手続きを履践することなく専ら第二八〇条の二第一項第五号の規定に基づき取締役会の決議のみで行われた。面してこのような買取り引受け方法による新株発行は上場会社の殆んどに及んだ。請願人は、法治国家の国民として以上のような法令に違反の新株発行に対してはどうしても黙視することができず、昭和三六年、東京芝浦電機株式会社外六会社に対し新株発行無効確認請求の訴を提起し、証券会社に対する一括買取り引受け方法に対する判断を求めたところ、左記の判決を受けた。即ち、該判決こそが本請願の趣旨記載の如き商法の一部を改正する法律案提出の直接の原因となった。  註 請願人が左記の如く、敢て、多数の訴を提起した所以のものは、買取り引受け方法による証券会社に一括して新株を引受けさせることの意義の極めて重大なることを痛感したからである。即ち、多数の発行会社(相手方)と会社法に精通する在野法曹界(相手方代理人)の訴訟上の、いわゆる、攻撃防禦用兵作戦の妙が展開され、又、その上に多数の裁判官の一致した判断こそより正しいもので、最も信をおけるものと思料したからである。     左 記  (イ) 横浜地裁  昭和三六年(ワ)第八七三号            (37・12・17判決言渡)  (ロ) 東京地裁八 昭和三六年(ワ)第一一二号      王子支部  (38・8・30判決言渡)  (ハ) 東京高裁  昭和三八年(ネ)第三五八号            (39・5・6判決言渡)  (ニ)同      同    (ネ)第三六〇号            (39・5・6判決言渡)  (ホ)大阪高裁   昭和三八年(ネ)第六三〇号            (39・6・11判決言渡)  (ヘ)同      同    (ネ)第六三一号            (40・8・6判決言渡)  (ト)最高裁    昭和三九年(オ)第九五四号            (40・10・8判決言渡)  (チ)同      同    (オ)第九五五号            (40・10・8判決言渡)  (1) 右(イ)乃至(ヘ)の判決中には全部次の(A)(B)(C)の趣旨の判断がなされている。  (A) 買取り引受け方法による新株発行の場合の証券会社の地位は、第二八〇条の二第二に定められてある株主以外の者である。従って証券会社は、発行会社の新株発行上の株式募集の代行者でもなく、又、委託募集の引受け人でもない。  (B) 証券会社に公募分を一括して買取り引受けさせる場合、第二八〇条の二第二項の手続きを履践することなく買取り引受け契約による新株の引受権付与は商法に違反するものである。  (C) 買取り引受け方法は、増資の方法に関する商慣習を形成しているから、これについて株主総会の特別決議の必要がないと主張するが、仮に慣習が存在するとしても、それは商法第二八〇条の二第二項の規定に違反すること明らかであって、慣習法としての効力を認められない。  (2) 右(ハ)乃至(ヘ)の高裁判決には右に(A)(B)(C)にプラス次の趣旨の判断がなされてある。「商法第二八〇条の二第二項の注意は新株発行価額の公正を保証するものであるから、公正な発行価額で売り出される場合には同条の適用がないのでないかという疑問もあるが、同条は右のほか、第三者に優先的に新株の引受権を有しない従前の株主の利益を侵害する(当該新株の発行を受けることから排除される)結果を生ずるのでこれを保証することも目的せとするものであるから売出し価額が公正であるか否によってただちに同条の適用がないものとすることはできない。」  (3) 右(1)の(ト)(チ)の最高裁の判断は「新株引受権を株主以外の者に付与することについて株主総会の特別決議を要するのである。」  (4) 第二二国会衆議院法務委員会議録第七号抜萃   「株主に新株引受権を与える場合には、取締役会の決議によるものといたしましても、少しも弊害はないのでありますが、株主以外の者に新株引受権を与える場合には、これを取締役会の決議によるものといたしますと、取締役会がその権限を乱用して不当に新株引受権を縁故者等に付与し、その結果、株主の利益を害するおそれがあります。「中略する」この法律案におきましては、株主以外の者に新株引受権を与えるについては、取締役会の決議によるのみならず、株主総会の特別決議をもって、その新株引受権の目的となる株式の額面無額面の別、種類、数及び最低発行価額を定めなければならないものとしたのであります。」  註 以上が商法第二八〇条の二第二項の立法理由となった。 この点は間違いないか、あとで伺います。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕  二 本請願の趣旨記載の商法の一部を改正する法律案が今国会に提出に至るまでの経緯  (1) 一の(イ)の横浜地裁の判決は、とくに経済界、証券界にとっては、いわゆる晴天の霹靂に比する一大衝激であった。なぜならば、彼等は新株発行に際し新株の一部を証券会社に一括買取り引受けさせる行為は合法的であるという満々たる自信を有し、かつ、それを社会に豪語していたからであった。即ち、一(1)(A)(B)(C)の如き判断が下されることは夢想だにしていなかったからである。とくに経団連、日本商工会議所、日本証券業協会は、周章狼狽し、その対策を樹立した。即ち、政府にいわゆる圧力をかけ、請願の趣旨記載の商法の一部を改正する法律案国会に提出するよう強く要望した。  (2) 政府は、財界の要望に動き昭和三七年末頃から商法第二八〇条の二第二項の改正に着手した。即ち、法制審議会(会長、賀屋法相)の簡法部会(部会長、鈴木竹雄東大教授)で現行商法の問題点を検討し、改正を必要とする点のあるとの結論に達しせめた。即ち、商法第二八〇条の二第二項にいう株主総会の特別決議は、買取り引受けの場合は不要である旨の規定を設けようというものであった。  (3) ところが、昭和三九年一月二五日開かれた商法部会において、まとめた商法改正案要項中には「買取り引受け」の規定の新設はもりこまれなかった。その理由は、横浜地裁の判決は誤りで最高裁判決を待つべきであるなど商法改正に対する慎重意見もみられ遂に一票の差で改正は見送りとなった。  (4) 経団連を中心とする財界は、商法部会において「買取り引受け」の新設が見送られたことに大きな不満を表現した。即ち、昭和三九年二月一七日、一八日にわたって開かれた法制審議会総会の席上で植村経団連副会長、桜田委員が「買取り引受け」の新設を要望したが、その目的は水泡に帰した。  (5) 昭和三九年一二月九日開かれた商法部会において遂に「新株発行の場合、株主総会の決定を経なくとも、公募分を証券会社などに一括買取り引受けさせることができるようにする。」という結論を見、昭和四〇年一月早々開かれた法制審議会総会にはかって答申をした。  (6) 法務省は右(5)の答申に基づいて今国会に請願の趣旨記載の商法の一部を改正する法律案を提出するに及んだものである。  (7) 請願人は、昭和三九年一月一六日、及び、昭和三九年一〇月一八日の二回に渉り商法部会に対し商法第二八〇条の二第二項の改正は、いわゆる改悪であるから「買取り引受け」の新設は之をとどめべきであるという趣旨の上申書を提出した。  (8) 以上の事由を敢て申し述べた所以のものは、否決の議決を仰がんとする法律案を提出するについては経団連を中心とする財界の強力なる要望によって政府が敢て動いたこと及び、一般株主の利益を完全に無視したものであることの二つの御確認を御願いしたいからである。  三 以下否決の議決を仰がんとする法律案に対し順を追って反駁の矢を放ち、もって請願の理由とする。  (1) 請願の趣旨一の追加条項第八号に対して反駁する。  (イ) 追加法案によれば「株主以外ノ者ニシテ之ニ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スベキモノ」及びその新株発行の目的となる諸条件は取締役会が之を決することになる。  (ロ) この事実は、現行商法(二八〇ノ二ノ一ノ五)に定められてある取締役会の権限を超飛躍的に拡大せしめんとするものである。この超飛躍的権限拡大の及ぼすところは不当に株主の利益を害する取締役会の権限乱用を大幅に是認することになる。もっとも、本法案の提出原因が前二各号に示した如く経団連を中心とする財界の強い要望を全幅に取り入れたものであることから考えれば、やむを得なかったといえるかも知れない。けだし、財界の意に支配されるような立法思想は、いわゆる政治腐敗の兆を表わしたものといえるべく極めて憂慮すべきことで、引いては挽回不可能な事態を招来する原因にならないとも保し難い。勿論財界のわがまま、かつ、高慢な方向は絶対的に排除しなければならないが、他方、財界の強要に支配されて法案を作成するような責任者は神聖かつ厳正でなければならない法治国家の立法部の座に存在させておくことは許されない。  (ハ) 法案中「株主以外ノ者ニシテ之ニ対シ」と、ことさらに、ひねくった語字を使用しているが、その法意は現行商法「株主以外ノ者」と解される。だが、その語字を使用したことには特別の意が含有せしめてあるというのであれば格別、この点は反駁しない。  (ニ) それならば「株主以外ノ者ニシテ」とは、だれを対象として立案したか、いやしくも法律案は推理小説であってはならない。勿論、架空、仮想は許さるべきでない。しからば「株主以外ノ者ニシテ」とは、一体だれを対象としていたか、このことは本法案中の重要な一点をなすものであるから、少くとも提案理由中には之を明らかにしなければならない。勿論、読んで字の如く「株主以外の者だ」といえば、一応はお茶をにごせるかもしれない。だが、本案の場合はそんな漠然たる説明では国民は絶対に満足しない。なぜならば、本案提出の原因は前二の各号に示してあるが如く経団連を中心とする財界の強い要望によったものである。故に「株主以外ノ者ニシテ」に、かぶせてあるベールを取り除けば、そこには当然「証券会社による一括買取り引受けは、株主総会の特別決議を不要とし取締役会の決議」によって罷り通れると大見えを切って証券会社が、桃から生れた桃太郎の如く飛び出す。勿論、他にも取締役会と通じて会社支配権獲得を意図する株主以外の者及び会社に貢献した役員、社員、従業員等、又は特種の技術、特許権等を有する者が株主になれば、会社にそれ等を提供する場合等である。しかし、そのような者は、いわゆる雀の涙に比する極めて少数に限られている。他方理論上は株主以外の者を特定人に断定することは誤りであるという説を解くものがあろうが、本件の場合は上述の通りで、そのような説をさしはさむ余地はない請願人の以上の合理的反駁に対し他に納得できる反論が成立するとすれば、失礼な申し上げ方であるが、西からおてんとうさまを出してごらんに入れる。要するに本法案こそは、経団連を中心とする財界の圧力に屈し、ぺてん的、八百長的苦策を敢て採用したものと反駁する。  (ホ) 「特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スベキモノ」とある。この「特ニ有利ナル発行価額」とは、一体その限度を那辺に求めいるのか、法案は作文だけであってはならない。とくに本案は、株主の権利を株主以外の証券会社が奪うことを許し、かつ、有利に奪わしめるという法条上の「有利」である。けだし、株主としては「有利」の限度を明らかにされなければ不安至極である。もしも提案理由中に「有利」の限度を明らかにしなければ一般株主は不安に堪えかね、遂には証券市場から手を引くようになる。政府は自然の水は低きに流れるという天則を無視して法案を作成している傾向が強い。それで本法案理由にかかげてあるが如き株式会社の資金調達が容易に達成されると思っているか、そうだとすれば余りに視界のせまい、因果関係を知らない、いわゆるざる法案であると反駁する。  他方、環のはしを指示しているが如き不定見な本法案が不幸にして成立するとすれば、実際界には当然的に水かけ論的問題が発生する。その意味においても「有利」の限度を提案理由中に明らかにしておくことこそ問題解決に有効な役割を果す親切さがある。  もしも政府が敢て提案理由中に「有利」の限度を明らかにしないとすれば、それは経団連を中心とする財界の要望に完全に支配されている実証である。  そもそも彼等が政府をして、本改正案の提出に至らしめた一つは、彼等は証券会社に一括買取り引受け方法上に現われている買取り引受け価額が時価(上場会社の場合は証券取引所に現われた価額)より一〇%ないし二〇%引は慣習法が形成しているという自論を固執していた。ところが、一(イ)ないし(ヘ)の判決は、それを認めなかった。そこで該判決に対する一つのコンブレーションで、即ち、商法を改正し、法の裏づけによって慣習法が形成していると同様の目的を達成しようとした魂胆であった。して入れば「特ニ有利ナル発行価額」にかけてあるべールを取り除けば、証券会社に対し時価より一〇%ないし二〇%引の有利な発行価額で発行できるという生態が現われてくる。まさに本法案こそは株主の利益をふみにじった甚しい限りといわざるを得ないとともに、国民を徹底的に軽視、蔑視した法案であると切歯して反駁する。  (2) 請願の趣旨二の改正法案について反駁する。  (イ) 現行商法第二八〇条の二第二項は「株主以外ノ者ニ新株ノ引受権ヲ与フルニハ定款ニ之ニ関スル定メアルトキト雖モ与フルコトヲ得ベキ引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数及最低発行価額ニ付第三百四十三条〔特別決議〕ニ足ムル決議アルコトヲ要ス。(以下略す)  (ロ) 改正法案第二八〇条ノ二第二項「株主以外ノ者二対ジ特二有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スルニハ定款二之ニ関スル定メアルトキト雖モ其ノ者ニ対シ発行スルコトヲ得ベキ引受権ノ目的タル(以下現行法と同じであるから省略する)  (ハ)右の〇印を付した部分が改正される点である。  (ニ) 会社は、いわゆる利益社会である。そして、株式会社は、株主である個人が、その営利目的を遂げるために便宜上設立したものである。だから会社は、営利の一手段の実体を有するものであることは之を認めないわけにはいかない。この意味からして、会社法は株主の営利目的を遂行するための内外のルールを定めたものと解し得られる。  そして株主は会社を通じ営利目的を遂行する手段として右のルールに則って取締役を選任し業務執行の権限を委任している。ここに取締役は、職務執行上会社を通じ株主に対して忠実義務(商法第二五四ノ二)を負わなければならない根本事由が発生している。  他方、取締役は商法第二六六条によって、会社に対する損害賠償の責及び、同法二六六条の三によって、第三者に対して会社と連帯して損害賠償の責のあることが規定されている。更に又、商法第四八六条によって、取締役が自己芳しくは第三者を利し又会社を害せんことを図りて其の任務に背き会社に財産上の損害を加えたるときは七年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処せらる。(特別背任罪)  (ホ) 請願の趣旨記載の一は既に申し述べた通り、「株主以外ノ者ニシテ之ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スベキ」権限を取締役会に与えることの規定を新設せんとするにある。(ヘ) この事実は、取締役は右(ニ)の如く会社を通じ株主の利益保護を図ることこそ絶対的使命であるに対し、改正法案は株主以外の者である証券会社に、とくに有利な発行価額で新株を発行することを決する権限を取締役会に与えようとするにある。そしてこの法律案の裏をかえせば、株主に特別大きな損を与え証券会社にそれに相当する特別の利益を与え新株を発行するという結論に達する。まさに、会社法の根本原則を真向うから、ふみにじって株主に公然と損を与えようとすることを敢て立法化せんとする暴挙に外ならない。いかに経団連を中心とする圧力に屈したといえ、立法当局の真摯の程を著しく疑わざるを得ない。かてて加えて(ニ)の会社に対する責任の規定、第三者に対する責任の規定、特別背任に関する規定等をして、いよいよ複雑混迷に追込むものである。不幸にしてこの法案が成立するとすれば、わが司法史上に一大汚点を残すこと火を見るより明らかである。即ち、否決を仰がんとする一大理由が以上にある。  (ト) 請願の趣旨記載の一の追加法案では、「株主以外ノ者ニシテ之ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行」する場合は、株主総会の特別決議を不要とし、取締役会の決議だけで新株発行ができる。  (チ) 請願の趣旨二記載の改正法案では「株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル発行価額ヲ以テ新株ヲ発行スル」場合は、現行商法をそのまま維持し、株主総会の特別決議及び取締役の理由開示を要求してある。  (リ) 元より、右(ト)(チ)は、関連し表裏一体をなすものである。そして(チ)ば(ト)の取締役会の権限拡大から生ずることの恐れある取締役会の権限乱用を防止して、もって株主の利益保護のために万全の措置を規定してある現行商法を尊重維持し敢て改正すべきでない。ところが改正法案は、現行第二八〇条の二第二項を政て改正し、同法をして完全に骨抜きとしようと意図している。ここに改正法案は、おとぼけ的とか、マジック的であるという批難を湧出せしめる泉を敢て作っている。されば、右の国民の轟々たる批難及び将来に至っての疑義等を解消せしむる等の意味においても、本改正法案提案理由において右の(ト)(チ)の場合の「株主以外ノ者」及び「特三有利ナル発行価額」を定義づけなければならない。  (ヌ) 而して、(ト)の「株主以外ノ者」の正体は、三(1)(ニ)で詳述してあるが如く、証券会社を主体とするものである。又(ト)の「特ニ有利ナル発行価額」とは三(1)(ホ)に詳述した如く、いわゆる闇慣習に由来した証券会社に一括買取り引受けさせる場合の、時価より一〇%〜二〇%低い発行価額である。  (ル) してみれば、(チ)の場合の「株主以外ノ者」及び「特ニ有利ナル発行価額」とは、右じ(ヌ)の「株主以外ノ者」及び「特ニ有利ナル発行価額」を除いた以外のものであると断定せざるを得ない。果してそうだとすれば一体そのような「株主以外ノ者」が法律上は兎角、実在しているかである。勿論本件に関する限り実在しない。果してそうだとすれば、(チ)の「株主以外ノ者」は、いわゆる亡者であるといえるべく、即ち、改正法案は亡者を対象として立案したことになる。まさに言語道断の最たるものといえる。又、「有利ナル発行価額」は前述の如く、時価より一〇%〜二〇%以上高い価額を指摘しているものといえる。著しく株主の利益を侵害する改正法案であるといわざるを得ない。なぜならば改正法案の裏をかえせば時価より二〇%まで株主に損害を与えても、法はこれを是認するという結論に到達するからである。又、一(2)の高裁判決は、「商法第二八〇条の二第二項の法意は、新株発行の公正を保証するものであるとともに当該新株の発行を受けることから排除されることによって蒙る株主の損害をも保証する趣旨の判断をなされている」。要するに本改正法案は、判例の法源をも完全に無視して立案して提出した暴挙という外はない。かてて加えて取締役をして商法第四八六条の特別背任を暗に助長する結果を招来している。本改正法案こそは、まさに改悪の二字に尽きると反駁する。  四 立法理由中「株式会社の資金調達を容易にし、その方法を適正にするため」と誇示しているが、誓願人は、しからずと否定し、その理由を次の如く明らかにする。  (1)証券会社に一括買取り引受け方法は極めて非なるものである。  (イ) 先づ、左記の立法理由に逆行している。「以上の如く、株主以外の者に対し、新株の引受権の付与に関する規定(註、二八〇条の三第二項)を厳正に定めた所以のものは、法律上当然には株主は、新株引受権か有しなくなった代償としての株主保証の措置で、又、株主以外の者に新株の引受桁を付与する場合を極力牽制し、かつ、包括的(註、一折買取り引受け)に新株引受権を与えるようになるおそれを除こうという趣旨で、会社の真の利益のために特別に必要である者に限って、株主以外の岩に新株の引受権を与えることとした。即ち、節二八〇条の二第二項中に取締役が、株主総会における理由開示を要するの趣旨も、又、実に以上にある。」  (ロ) 「親引け」をする機会を与える。「親引け」とは、新株発行に当り、発行会社と証券会社間に買取り引受け契約を締結する際の裏の密約の一つである。例えば株主以外の分、三〇〇万株を証券会社に対し時価より一〇%〜二〇%、低い発行価額で買取り引受けさせる、そして、そのうちの一〇〇万株につき時価と買取り引受け価額の差額(一〇%〜二〇%)を発行会社の取締役にリベートする内容ののである。そして、この密約は現在の株式譲渡方法では絶対という字を使用してもよい程露見しない。そして、その金は勿論、脱税の対象物である。そしてその金は、或いは、取締役の旧株式の払込金に充当されることもあろうし、他に、贅沢な生活費の財源をもまかなわれよう。更に又、闇の政党献金等に提供する等の、いわゆる悪事のできる温床を与えることになる。  註 経団連を中心とする財界が、敢て確定判決に挑戦し、執拗に商法を改正して買取り引受けの立法化を意図するところは、或いは、買取り引受けの妙味を、なお続けたいという所存であるとも憶測できる。  (ハ) 一般株主は買取り引受けを甚だしく敬遠している。即ち、  (A) 日本経済新聞(36・6・14)投資相談中に、「ただ、大量公募したり株主の不利益になるようなことを堂々とやっている会社だと、会社の成長性とは別に、株価のうえでは、あまり大きな値上りに期待することはむづかしい。」  (B) ビール三会社のうち、キリンビールは買取り引受けを行ったことは、かつてない。専ら株主額面割当の方法てある、他の三社は買取り引受けを行った。この事実は価額の上で次の如く開きをつけているしこの事史は、買取り引受けを一般株主は敬遠している実証である。   キリンビール  三四八円   朝日ビール   二〇二円   サッポロビール 二一〇円   昭和四一年三月三一日東京証券取引所に現れた価額  (C) 株式の需給のアンバランスを招来し株価の暴落の因を作る。即ち、大衆証券投資家の快具合を無視して取締役会の決議のみで行うことができるため、厖大なる過剰新株の発行となり、それが原因して株価の暴落を引き起し、遂に共同証券等を設立し、株式のたなあげ措置を講じ、かつは増資新株発行を制限する等をして、かろうじて経済危機を救った事例は生々としている。立法理由は、この事実を正視しないで「株式会社の資金調達を容易にし」とは、人を喰った弁にも程があると反駁する。  (ニ) 買取り引受け方法は、株価の好況のとき、即ち、証券会社か買取り引受ければ必ず儲かるという見透しのついたときだけに行われるもので、株価の低調な場合の増資新株発行の場合は発行会社の直接募集に委せ、高見の見物をしている。この事実は、買取り引受けは、証券会社の利益目的のために考えた、日本独特の新株発行の方法である。だから株主にとっては百害あっても利なしというのである。  (ホ) 一般株主が、買取り引受け方法を敬遠る根本理由   日本軍国主義円発の根源を除去する一手段として占領軍は日本国民の生活水準を連合国軍の最下位であるインドの下に置こうとし、財閥解体等極めて不自然な政策を強行し、満々としてその実行か進められた。ところかその後米ソの対立はいよいよ表面化し、遂に日本を直接占領していた米国は当初の占領政策(ポツダム宣言)を、いわゆる百八十度転換し、アジヤにおける強力な、協力国たらしめんとして、日本経済の復興促進を計画した。即ち、経済界、産業界は、機到来と奮起した。けれども人の血液にも比する資金は財閥解体等によって皆滅し、一つに大衆の保有する資金を資本市場に導入する以外になかった。これが資本調達市場が大変化した始まりである。    そしてパチンコ、競輪、競馬等のいわゆる賭事を嗜好する大衆を株式投資出湯に導入する方向を考え、それが成功した。即ち、株主に額面価額と時価の差益金(プレミアム)獲得の妙味を味わせつつ、資本調達市場に導入した。これが、又、日本の資本調達市場が投機の場として発展するようになった。勿論これが事実たる慣習となって厳存するに至った。けだし現在の株価構成原因は右のプレミアムに由来するようになった。故に株主にとっては新株引受権は、日とも取りかえてもよい程貴重な存在である。即ち、この新株引受権を株主以外の者に持っていかれることは投資の目的を真向うから裏切るもので、株主にとっては堪えがたい苦痛である。即ち買取り引受け方法を敬遠する原因は実にここにある。  五 買取り引受けに、はるかに勝る阪田方法がある。  (イ) 阪田方法とは、大阪の、インキ製造会社阪田商会が昭和三六年中に行った新株発行の一つの方法である。即ち、株式割当以外の分の中の六〇万株を一株一五〇円(額面価額五〇円)で株主平等割当(二八〇ノ四)を行ったもので、買取り引受方法の場合に一証券会社に時価より一〇%〜二〇%儲けさせる分を直接株主に与える方法である。  (A) 右に対し鈴木竹雄教授はジュリスト第二三三号、株式公募の問題点で   「鈴木 この前の共同研究のときに、いろいろな形の公募が出つつある情勢を見て、私どもの大体の考え方としては、株主に割当る場合必ず額面で発行する必要はない。むしろ若干のプレミアムをつけた発行価額で、株主に割当てる方向にいくのが法律的にも、疑義がないし、また実際の取り扱いの上でも簡単で費用も要らないから、あらゆる意味で妥当じゃないかと考えたのでしたが、それに一番近い形が今最後にいわれた阪田商会のやり方だろうと思います。というのは、証券業者に引き受けをさせるという段階を省略して、引受権を株主に直接与えるという形なので、そこにはほかのものと非常な違いがあるわけです。これについて証券業界にいろいろ批判かあるということをただいまおっしゃいましたが、証券会社では、どのような批判をしているのですか。  竹中 現状では時期尚早というわけです。ちょっと法律論からはずれるかと思うのですけれども。  三戸岡 阪田方式のときは、証券会社に相談する余地はなかったというので、証券会社は非難するということですか。  竹中 非難というと強く聞こえ過ぎるのですけれども、やや、時期尚早ではないかという批判をいいますが。  三戸岡 額面価額を超える発行価額によって株式を、株主に引受け権を与えて割当てる方式がどうして時期尚早なのか判らない。」   (以上のうちに「竹中」とあるは、山一証券の社員、「三戸岡」とあるは、当時の日魯漁業総務部次長のこと。)  (B) 右竹中氏の発言から見ても、証券会社が阪田方式を批判する理由は、阪田方式にされてしまえば、発行価額と時価の差額一〇%〜二〇%及び高率の手数料(横河の場合は一株につき九円)の獲得の原因を失うからである。この事実こそ買取り引受け方法は証券会社の利益追求の手段であることがはっきりしている。  (C) 米国でも時価発行の場合阪田方式に等しい株主割当を採用している。一九五二年中に行ったアメリカン・カン社の増資新株発行の場合は、発行済株式九八九、五九九株に対して一〇%の新株発行を行った。そして時価より一五・三%低い発行価額で株主割当をした(日本の商法第二八〇条の四)  註 アメリカン・カン社の場合の、特価より一五・三%低い発行価額を見て、 ややもすれば日本の場合の買取り引受け方法上、特価より一五・三%低いことが恰も合理的発行価額のように錯覚を招くこともある。けれども日本の買取り引受けの場合は、株主以外の者の証券会社が一五・三%利することで、換言すれば、株主は一五・三%の損を蒙ることになる。ここに問題がある。アメリカン・カン礼の場合は、株主割当であるから、株主が一五・三%時価より低い発行価額で株式を取得し、株式上の直接の利益を得ようが、時価に相当する払込みをし、株式分割上の利益を得ようが五十歩百歩で、このような場合は、会社と株主の利害は原則として対立しないからである。  六 結 論  (1) 請願の趣旨記載の商法の一部を改正する法律案は、経団連を中心とする財界の強い要望により、いわゆる政府に圧力をかけ政府を動かし、面して、提出に至った事情は既に申し述べた通りである。  (2) 請願人は、経団連を中心とする財界であろうとも、名もない一国民であろうとも、要望する事案が誓って公共の利益にあてはまるものであれば、堂々と政府に要望し、時には圧力をかけて政府を動かすことも、むしろこのようなことは、民生々義政治の常道であると思料する。この意味からして経団連を中心とする財界が政府に圧力をかけたそれ自体に批難攻撃をするものでない。  (3) しかしながら、経団連を中心とする財界、いわゆる彼等が政府を通して商法の一部を改正する法律案を提出せしめた根本は、彼等が永年に渉って強行してきた買取り引受け方法は慣習法が形成されているのだから、商法第二八〇条の二第二項の手続きを履践する必要はないと主張するにあった。ところが、既に詳述した如く、判決は彼等の主張をしりぞけ、即ち、第二八〇条の二第二項の手続き履践しない買取り引受け方法は商法に違反するものであると判断された。  (4) 一体法治国家の国民、とくに経団連を中心とする財界の方々こそは、総てにおいて国民の師表たるべき位置にある。その者が、四つの高裁、しかも同一趣旨の判決に対し、一応は服し、かつ、反省すべきである。  (5) ところが彼等は、彼等の主張を誤りであるが如く解せられる法律は、直ちに改正してしまえ、即ち、法律を改正して、彼等の主張を合理化せんとする意図のもとに要望したことか、本改正法案提出の、そもそもである。  (6) それならば、経団連を中心とする財界が商法の一部を改正するの一要望自体、誓ってて公共の利益に叶っているものか、否否それは既に詳述した如く、証券会社たる株主以外の者に特に有利な発行価額で新株の発行を認め、株主に大きな不利を蒙らしめるうえに、発行会社の取締役に「親引け」の機会を与えることになる。  (7) 又、一般株主が買取り引受け方法をいかに敬遠しているかは、既に詳述した如くで、その事実は株価の低落によって実証されるもので、この点極めて重視すべきことである。  (8) 立案理由「株式会社の資金の調達を容易にし、」とあるが、株主の犠牲において、かつ、証券会社の利益と、発行会社の取締役の、いわゆる私利を満すことを前提として株式会社の資本の調達を期せんとするが如きは、前述株式会社の設立の本義からして到底許されるものでない。  (9) 現行商業を現有し、即ち、買取り引受け方法によらなくても、前述阪田方式を採用すれば、株主の満足する株式会社の資本調達が極めて容易、しかも明朗化されつつ資本市場は繁栄する。政府はこの際すべからく阪田方式を奨励するよう行政指導をすべきである。  (10) 阪田方式の利点   マルイ商法第二八〇条の二第二項の手続きを要しない。マルロ証券会社に有利な価額で発行する分を株主に与える。マルハ証券会社に支払うべき高額の手数料を支払う必要はない。マルニ手続きも極めて簡素化される。即ち、株主額面割当の分の株式申込証と、プレミアム分(公募)の株式申込証とを同封して株主に送付する。マルホ株主は、発行価額に相当する申込証拠金を、申込証提出と同町に取扱金融機関に支払う。この事実は、申込期日(支払期日前)に事実上増資は成立する。マル買取り引受け方法の場合は、買取り契約成立と払込期日までの間が大体三週間ある。そして買取り引受け契約上は申込証拠金を条件としない。また払込期日までの間に不可抗力の事態が発生すれば、買取り引受け契約は破棄してもよい条件か付されてある。このことは証券会社が現実に払込を済すまでは心配なことで、万一そのような事態か発生した場合は、増資は一頓挫を招く。即ち、以上が買取り引受けの欠点の一つである。  (11) 請願人は、声なき大衆株主の意を敢て買ってでて、買取り引受け方法の排除のために、前述の如く、昭和三六年から現在に至るまで実に足かけ六年、裁判所に提出した正副書類実に五十万字、又口頭弁論に立会うこと百五十回に及ばんとしております。どうか請願人が今回の商法の一部改正案に思いつきの如き簡単な考えで本請願に及んだものでないことを御了察下されまして、充分な御審議を賜り、請願の越皆の如き御議決を仰がんとするものである。  時間がかかってはいかぬと思いまして早口で言いまして、諸兄には十分に御了察願わなかったかしれませんけれども、私はこの請願書を再三熟読玩味したわけであります。もちろん、てにをは足らざるところ、多少自分の体験上感情的ではないかと思われるところなきにしもあらず、しかし全文を一貫いたします点は、はからずも私がこの請願書を見る前に本委員会で政府にただした二百八十条ノ二第二項の欠陥を余すことなく摘出をいたしておるわけであります。こういうことを考えますと、私は先般も申し上げましたが、政府からいただきました商法の一部改正案についての政府に対して要望のあった団体、株主の意見、この種の人たちの意見というものは、だれかどういうところでくみ取られたのか、判断に苦しんでおる次第であります。まず最初に政務次官に、この中島徹君の真摯なる請願に対しまして所見を伺いたいのであります。
  108. 山本利壽

    山本(利)政府委員 ただいま桃山委員から読み上げられました請願書について、細部にわたっては私は把握することができなかったわけでありますか、さらに後に速記録を検討いたし致して、省内の専門の係官においてもよく吟味してみなければならぬ点が多々あるのではないか。ところどころの部分におきましては、横山委員も仰せられましたように、いささか感情的なこともありますし、単に経団連を中心とした経済団体の圧力に屈して政府が提案したように述べてあったように思うのでございますけれども、いやしくも国家の法律として立案いたします際には、そういうような点はないと考えますけれども、十分吟味した法案にいたしましても、各方面の意見というものは十分に考えなければならぬことと思いますので、きょうの読み上げられました請願書につきましても、すでに係官において答弁できます点もございましょうし、もしできない点かございましたら、十分に研究いたしたい、かように考えるのであります。
  109. 横山利秋

    横山委員 大蔵省に伺いたのですか、この中島君の主張の親引けについて先般ここで質問いたしましたところ、だれも満足すべき答弁をする人かなかったのであります。中島君の主張によれば、「「親引け」とは、新株発行に当り、発行会社と証券会社間に買取り引受け契約を締結する際の裏の密約の一つである。例えば、株主以外の分、三〇〇万株を証券会社に対し特価より一〇%〜二〇%低い発行価額で買取り引受けさせる。そしてそのうちの一〇〇万株につき特価と買取り引受け価額の差額(一〇%〜二〇%)を発行会社の取締役にリベートする内容のものである。そして、この密約は現在の株式譲渡方法では絶対という字を使用してもよい程露見しない。そして、その金は勿論、脱税の対象物である。そしてその金は、或いは、収締役の旧株式の払込金に充当されることもあろうし、他に、賛沢な生活費の財源をもまかなわれよう。更に又、闇の政党献金等に提供する等の、いわゆる悪事のできる温床を与えることになる。「この点についてどうですか。
  110. 加治木俊道

    ○加治木説明員 正確に親引けとは何かということが、通説もないようでございます。社債の場合、あるいは国債の場合、あるいは株の場合、いろいろ違うようでありますが、いまそこで指摘されているようなことを親引けというかどうか、私は確信を持ってお答えすることはできませんか、社債にしても、株式にしても、発行会社の意向に従って一般公募する株、ないし社債のうち、特定の、この者に刷り当ててくれないかというようなことがあるわけであります。そういうことをどうも親引けというようでありますが、一番問題になりましたのは、新株公開の際に、売り出しの一ともありますし、新たに増資しまして募集することもありますが、その募集する新株あるいは既発行の株で、これは特定の株主が大部分を狩っておる、それを一般に公開することによって上場基準に該当するということで、上場を希望する場合に、既発行の株の一定割合を売り出して公開にする。公開株が一定の基準に達すると上場が認められるという前段階に売り出しということがあるわけであります。当時公開価額あるいは募集価額を上回って上場の初めの値段ができて、このことが問題になったようでありますが、これはあくまで当該発行会社の取締役、あるいは売り出しの場合ですと、会社が売り出すわけではなくて、その会社の大株主が売り出すわけでありますけれども、その売り出しの募集をする発行会社なり、あるいは売り出しをやります株主との間で証券会社が値段をきめて売り出しないし募集をするわけであります。その売り出し価額、募集価額はいずれの場合も均一の価額で行なわれております。特定の者に特に安い値段で、公開価額と違った値段でもって募集または公開をすることはないように承知いたしております。いま、その価額が均一であっても差額をリベートするのではないかということでありますけれども、公開なり募集の際には、募集価額、公開価額の、会社との間あるいは株主との間で仕切った価額と、公開する価額あるいは募集する価額は同一の場合が大部分のようであります。そのほかに証券会社のほうが手数料としてもらう。したがって、百円で募集する、あるいは百円で公開する場合には、一般応募者には百円で渡しているわけであります。したがって、引き受け価額と募集価額、あるいは売り出し価額との間の差額を証券会社がリベートするという形の引き受けは、私はあまり聞いておりません。それは同一の価額で売り出しまたは募集いたしまして、別個に手数料を証券会社がもらっておるようであります。したがって、この特価との開きの部分をリベートするということは、そういう形でありますとあり得ないことになるのでありますが、しかし絶対そういうことが行なわれていないかどうかということについて、私は承知いたしていないということは申し上げられますけれども、絶対にないかどうかということは私は十分承知いたしておりません。
  111. 横山利秋

    横山委員 そんなことをあなたはどういうつもりでおっしゃっているのか知らぬけれども、私のようなしろうとでも、あるのが普通であると思っております。それはこの間、某地の証券会社のお家騒動ではしなくも摘発をされた。結局はやみからやみへ葬られたのですが、財務局がどういうつもりでそれを処理したか私も知りませんけれども、低い発行価額で請け負って、それをなるべく一般公募に回さないで、そして社長以下証券会社の身内がなるべく多数とって、また発行会社のほうへもそれをやって、そしてすぐにそれを支払う、そういうことなんですよ。だからぼくはその意味で、公募というのは何かということをこの間質問したのです。公募というのは不特定多数の人に売るのだ、ただしその不特定多数の中に証券会社の人たちやあるいは発行会社の人たちが入っていけないということではなかろう、けれども圧倒的部分をそれからの人がもらってしまって、そして一般大衆投資家には出さないということがそこの証券会社で起こって、お家騒動になったわけです。私はその体験をもってしましても、またこの中島君の親引け云々をもっていたしましても、そういうことになる要素、原因、温床というものは、この買い取り引き受けから始まるという説にぼくも賛成をするわけであります。  それから民事局長にお伺いをしたいのですが、この中島君の調査したものによりますと、二十二国会の法務委員会で政府答弁は、「この法律案におきましては、株主以外の者に新株引受権を与えるについては、取締役会の決議によるのみならず、株主総会の特別決議をもって、その新株引受権の目的となる株式の額面無額面の別、種類、数及び最低発行価額を定めなければならないものとしたのであります。」と、きわめて明白なんですね。それにもかかわりませず、この法の運用に際して裁判ざたになる。裁判ざたになった場合に、政府のそれに対する説明その他があいまいではなかったか。この間の私の質問に対してもやや明確さを欠いておるという感じを受けたのですが、この第二十二国会衆議院法務委員会議録第七号による解釈はいまもなおかつ変わりはないでしょうね。
  112. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 商法二百八十条ノ二の規定の改正に際しましての答弁だと思いますが、これは当初、昭和二十五年に改正いたしましたときには、定款によって新株引き受け権を与え得るものを定めることができるわけでありまして、そういう場合には、その定款の規定に基づいて取締役会で自由にきめることができるという簡単な規定だったわけでございます。ところがいろいろの意見もありましたため、株主保護という観点から、もう少しその権限を制約すると申しますか、全く自由の形にしないで、もう少しく株主総会の決議なり何なりにかけるのが相当ではあるまいかというので、二十五年に改正されまして、現行法のように「引受権ノ目的タル株式ノ額面無額面ノ別、種類、数」そういうものを特に明らかにするということのほかに、特別手続が必要であるということになったわけでございます。したがいまして、この規定の形式を見ますと、株主に新株引き受け権を与えることはむろん取締役会の自由でございますけれども、それ以外の第三者に与えます場合には株主総会の決議が必要であるということは、形式論としても当然のことであります。したがいまして、二十二国会におきましてそのような趣旨の答弁がなされたこともまた当然のことであろうと私は考えるわけであります。
  113. 横山利秋

    横山委員 それではなぜかくむ明白なる問題か三十六年以来約五年近くにわたって裁判で争われるのか。その隙に、法務省の見解ないしは立法の趣旨その他を聞かれたことではないかと思うのですが、明白にいまあなたがおっしゃたようなことを裁判所へ言うたのですか。
  114. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 そのように申した事実はないようでございます。
  115. 横山利秋

    横山委員 照会もありませんでしたか。
  116. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 なかったと思います。
  117. 横山利秋

    横山委員 大蔵省はこの範三者に対する買い取り引き受け等について、その三百八十条ノ二の二項の解釈について、法務省と見解の相違はありませんでしたか。
  118. 加治木俊道

    ○加治木説明員 地方裁判所の判決か出ましたときに——まだ判決か確定しなかったと思うのですが、いろいろ学説上の争いがあるというふうにわれわれは承知いたしておったのであります。大蔵省として統一見解を出すべき筋合いのものでもありませんが、大蔵省事務当局で検討しましても、いろいろな相反する学説等は、それぞれ理由があるような気もしたわけであります。しかし、いずれにしましても、そういう問題のあるやり力はしないようにということで業界を指導いたしております。大蔵省として法務省との間で見解を統一したことは私はないと思いますが……。
  119. 横山利秋

    横山委員 見解を統一する、しないの問題でなくて、この立法趣旨並びに提案理由が明白に株主総会の議決を求めるということになっておるのですから、何か大蔵省が第三者のごとき顔をして、そういう学説があるからあまり問題のあるようなことをするな、つまりなるべく株主総会の議決を経るようにしろという行政指導をしておったとすれば、それは怠慢ではありませんか。
  120. 加治木俊道

    ○加治木説明員 買い取り引き引き受けならば、特別決議がない以上は買い取り引き受けの形での契約をしないように、こういう指導でございます。
  121. 横山利秋

    横山委員 それにもかかわりませず、株主総会の特別決議を経ないで買い取り引き受けをしたところはずいぶんあったわけでございますね。それに対してどういう措置をとりましたか。
  122. 加治木俊道

    ○加治木説明員 そういうことをやりました例は、判決後はおそらくないと思います。それまでにはあったと思いますが……。これは学説をここで御披露するつもりはありませんが、いろいろ学説が分かれておったように承知いたしております。
  123. 横山利秋

    横山委員 学説に関係なくて、法務省の見解はきわめて明白で、法律もきわめて明白な言い方をしておるのですから——私も先般、大蔵委員的な感覚と法務委員的な感覚とにときどき矛盾を感ずると言ったのですけれども、こういう法律論争になってきた場合には、法務省の見解はきわめて明白、大蔵省は行政官庁としてまあまあ商慣習を尊重するというようなあり方というものは、これは許されぬ。現にこういうことで紛争が起きておるとするならば、学説がどうのこうのという問題ではなくて、政府の見解として明白なのだから、それはきちんとした態度をとらなければいかぬ。とらぬからこういう裁判ざたになって、そしてあげくの果ては、中島君の言うように、そんなことなら法律を改正してやったろか、実際きめた法律がか間違っておった、実際に合わぬ、だから実際に合うように法律を変えてやろう、こういうことになったのではありませんか。
  124. 加治木俊道

    ○加治木説明員 買い取り引き受けという形でも実質上は募集の取り扱いと変わらないので、当時慣習に従ってやっておりますことを、違法であるということを積極的に大蔵省できめつけるだけの自信がなかったということでございます。しかし、あの判決が出ましたあとは、そういう違法の取り扱いにならないようにという指導をいたしつつあるわけでございます。
  125. 横山利秋

    横山委員 二時から本会議だそうでありますから私やめますけれども、そういうきわめて違法性がある問題を、大蔵省としてはまあほかっておくといったような態度をとられるから、ここに法律と実際の矛盾が起こって、そうして中島君が言うように経団連が圧力をかけて、実際はどうにもならぬ、どうにもならぬから法律を改正してくれ、それならそうしましょうか、そういうことでは法の信頼感というものは浮かばぬ。  時間もありませんから、きょうはこの程度で……。
  126. 大久保武雄

    大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、明十五日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十三分散会