運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-03-04 第51回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月四日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君    理事 濱田 幸雄君 理事 井伊 誠一君    理事 坂本 泰良君 理事 細迫 兼光君       鍛冶 良作君    佐伯 宗義君       四宮 久吉君    田中伊三次君       濱野 清吾君    神近 市子君       山口シヅエ君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         警察庁長官   新井  裕君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      秦野  章君         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         文部事務官         (管理局長)  天城  勲君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         専  門  員 高橋 勝好君     ――――――――――――― 三月四日  委員賀屋興宣辞任につき、その補欠として鍛  冶良作君が議長指名委員に選任された。 同日  委員鍛冶良作辞任につき、その補欠として賀  屋興宣君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  裁判所司法行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件並び法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 法務省並び警察庁の責任の方に承りたいのですが、近来いわゆる暴力団狩りというものが相当行なわれましたので、国民もたいへん安心しておるようでございます。それまでにはわれわれもずいぶん見かねることがあって、いろいろ建議もしたことがあったですが、なかなかうまくいかなかったが、近ごろは相当やってもらうので、たいへんいいことだと心得ております。ところが、どうもこの暴力というものは、物理的の暴力、腕の暴力に対しては相当厳格にやっておられるようでありまするが、われわれは腕の暴力以外に筆の暴力というもの、ペン暴力というものがあると思う。見方によっては、腕の暴力よりもより一そう大きな被害を及ぼしておるものがあると思うのですが、かようなものに対して警察庁及び法務省においてどう見ておられるか。また、かようなものがあるとお認めになるならば、これをどうして取り締まっておられるのであろうか、まずその点からひとつ承りたいと思います。
  4. 日原正雄

    日原政府委員 暴力団は、一昨年以来強力な取り締まりをいたしてまいっておるわけでございますが、私どもとしては、むしろこれからいよいよ本腰を入れて取り締りにかからなければならないというぐらいに考えて、強い態度で臨んでおるわけであります。お話のとおり、必ずしも腕の暴力ばかりでございません。これと同等、あるいはそれ以上に、ペン暴力というものもあるわけでございまして、いわゆる暴力団の中で申しますと、新聞ゴロ、あるいは会社ゴロというようなものが、暴力団として把握されておるわけでございます。それで新聞雑誌等のそういう報道機関公共性を利用すると申しますか、悪用して、会社銀行などの経営内容や、あるいはそれらの役員やら個人の弱点につけ込んで、そしてこれを記事として発表するというふうに言って、広告料あるいは寄付金名前もとに金品を喝取するというふうな不法行為常習としておるものを、会社ゴロとして私ども把握しておるわけでございますが、できるだけその実態を把握して、立証可能な限り検挙してまいっております。また今後もそういう方針でおります。  新聞ゴロは、現在私どもの把握しておりますのは八十三団体、五百名ばかりでございます。昨年中に五十三人ばかり検挙をいたしております。ただこの新聞ゴロ取り締まりで非常に私ども苦労しておりますのは、何分これは人の弱点につけ込んで、いろいろな不法行為を行なうことでございますので、被害者のほうではスキャンダルとなるのをむしろ恐れて、被害を受けても積極的に被害申告をしない場合が多いように感ぜられるわけであります。私どものほうで積極的に探知をして、そして被害申告を求めても、なかなか応じてもらえないような場合もあるのでございます。そういう隘路があるわけでございまして、なかなか検挙等がむずかしい面もございますが、警察としてはできるだけ被害者の発見、あるいは立証につとめまして、検挙の徹底をはかってまいりたい、かように考えております。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 相当捜査につとめ、検挙につとめておるというお話でございますが、いま刑事局長言われたように、被害者に直接当たられるものですから、被害者後難をおそれてほんとうのことを言わない。そのために検挙の実績があがっておらぬと思うのです。この点をひとつ詳しくあなた方のほうで説明を願いたいと思うのですが、どうも筆の暴力に対しては――言論の自由ということが世に叫ばれておる。そこでへたにやると、言論の自由を侵害したと言われるので、手をつけることをおそれておられるのではあるまいか。これがわれわれの第一番に感ずるところでございます。  その次は、ほんとうにやろうと思えば私はもっとやり方があると思うのだが、どうもいきなりおまえは恐喝で金を取られたか、そんなことはありません。――みな片はしから集めて調べてみたが、どうもそういう証拠が出なかったから。こういうことで手をつけられないものがたくさんある。しかし、そんなことは調べぬでも、当該被疑者の日常の行動を見ておるならば、そんなこと言わぬでもみんなはわかっておるのだ。いわんや警察においてわからぬ道理はない。しかるにかかわらず、どうもそういうことでいまあなたが言われたように、何ぶんにもどうも被害者がというようなことが私は気になるのだが、どうですか、そういう意味で一般の者もおそれて、なるべく後顧の憂いのないようにというので、被害状況を述べないと同時に、あなた方もこんなものに手をつけてあとでかみつかれては困るというので、敬して遠ざけておるのではないか。この点をひとつ明瞭にしていただきたい。
  6. 日原正雄

    日原政府委員 もしそういうふうに誤解されておるとすると、私ども非常に遺憾なのでございまして、私ども新聞ゴロ等に対しておそれておる気持ちは毛頭ございません。むしろこれを取り締まりたくてしかたがないわけでございます。声の暴力と申しますか、そういう公共報道機関影響力が大きい現在の世の中でございますから、こういうものを徹底的にやっていきたい。したがって暴力団取り締まり対策の一環に入っておるわけでございまして、私どもはむしろ取り締まっていきたいわけでございますが、何ぶんにも私ども多少わかっておりましても、やはり立証ということが必要なわけなのでございまして、この点は警察がそういう情報を聞いておるというだけでは証拠にならない。あくまでも被害者に立ち上がっていただかないと、現在の刑事訴訟法の仕組みでは不可能なわけでございます。そういう意味で、もちろん被害者後難をおそれるということがございますれば、幾らでも私どもはこれを保護するだけの手段をとります。いろいろお申し出があれば、それだけの保護をする措置をとっていいと思いますけれども、やはり何といっても実際に被害にかかった方が証言してくれませんと、あるいはそのほかの事項でこれが立証できるようなものならばそれでもけっこうなのでございますが、直接の金銭の授受、あるいは脅迫を受けたというようなことにつきましては、直接被害にあったという立証がありませんと取り上げられないわけでございまするので、私ども、それについていろいろ説得をして、立証してもらうというかっこうをとっておるわけでございます。わかっておるんだから、われわれ直接関与しないでもやってもらいたいという気持ちはわかるのでございますけれども、いまの訴訟法のたてまえから申しますと、やはり被害者立証ということが必要なわけでございます。その点御了承いただいて、しかしまた、その被害者保護のためには万全の措置をとりたいと考えております。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 われわれのところへいろいろの訴えが出ておるのでございまするが、一、二にとどまりません。これはおそらく全国、小都市といわれるようなところには、全部こういうものが巣くっておるのではないかと思うのです。そこで、われわれのところへきておる情報のうち、最も恐ろしいというもの一、二をあげてひとつ具体的に聞いてみたいと思うのでありますが、広島県呉市に「東洋新報並びに「中国真相ニュース」、こういうものがあるそうであります。これは大日本愛国党総裁と称する近藤禎弘なる者が「東洋新報」というものを発刊しておって、そこの編集に当っておる岡峰一人という者が「中国真相ニュース」というものを出しておるそうでありますが、近藤禎弘なる者は前科十何犯あるそうであります。そうして本職は、この新聞を武器として恐喝その他不法行為をなすことを常習としておる者だということであります。実に目に余る行為をしておる。現に執行猶予中であり、かつまた見るに忍びないというので、地方の一有志がこれと戦って、恐喝並び脅迫にあっておるにもかかわらず事実をあげて告訴しておる、こういうことを報告してきておるのですが、かような事実がございますか。ございましたらできるだけ詳しく説明していただきたい。
  8. 日原正雄

    日原政府委員 十二月四日に告訴状が提出されまして、お話のように広島県呉市で「東洋新報」という新聞を発行しておる者が、同市所在洋裁学校園長Hにこの新聞購読料及び賛助金名下に五万円を要求したところ、断わられたので、昨年の十月三十日づけの「東洋新報」に同園長を誹謗した記事を掲載して、約一万部を呉市及びその周辺に配布をして名誉毀損したほか脅迫した、こういう事件でございます。十二月四日に告訴状が提出されましたので捜査いたしまして、二月十日づけで名誉毀損罪、それから暴力行為等処罰に関する法律違反ということで事件検察庁に送付して、現在検察庁捜査中でございます。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 告訴というのは、浜口静雄という者であるかと思われますが……。
  10. 日原正雄

    日原政府委員 被害者のほうでございますのでHと申し上げましたのですが、お話しのとおりでございます。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それから、前科十何犯あるというのはいかがですか。
  12. 日原正雄

    日原政府委員 前科は全部いつもお話ししない形になっておりますが、相当従来の前科がございます。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは明らかに言われぬでもいいが、二犯や三犯と十何犯とではたいへんなことでございますが、私がいま言うようなことは大体そのようなものでございますか、いかがです。
  14. 日原正雄

    日原政府委員 ここでいろいろ申し上げるのはどうかと思いますが、大体そのとおりとお考えになってけっこうと思います。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ところで、こういう事実について、これは法務委員長のほうへ上申書として「新聞等発行資格の規整について立法に関する陳情書」というものが出ておるのでありますが、その陳情書につけられておる被害者及び被害状況を見まするとたいへんなものです。これはおそらくすべてを出しておるのではなかろうと思うが、ここへあらわれておるものだけでも恐喝被害として出ておるものが三十五件あります。いまあなたのおっしゃったのは浜口静雄に対する名誉毀損でございましょうか。この名誉毀損内容を見ましても、実にどうも恐るべき内容のものを書いておるのですが、どうでしょう、かような大きな被害のあることは警察でおわかりでしょうか。  それから、これは告訴して検察庁へも出ておるのですから、法務省のほうでもある程度おわかりだろうと思うから、両方からお答えを願いたい。
  16. 日原正雄

    日原政府委員 三十数件というのは私どものほうも聞いておりませんのですが、一応十二件ばかりほかにこういうような違法行為があるということで御報告を受けておりますのですが、ただ、そのうちで、私ども裏づけ捜査を現在捜査中でございますので、なかなかこれは事実がないのか、先ほどのような証言してもらえないのか、どうも事実がつかめないのがたくさんございまして、現在なお捜査継続中でございます。
  17. 津田實

    津田政府委員 ただいまお話近藤禎弘――これは本名は禎弘というようでありますが、これに対しましてはすでに現在公判継続中のものがあります。これは、近藤禎弘ほか数名とともに、自己の長男が生徒である山陽高等学校職員に対して共同して暴行を加えたという事実。それからこの近藤が乗っております乗用車に他の会社の車が衝突したのでありますが、それにつきまして損害が約四万四千円であったのを、因縁をつけまして五十万円の交付を受けて恐喝したという事実がございます。この事件につきましては、昭和四十年の一月及び二月に公判請求をいたしておりまして、現在、公判継続中であります。大体検察官側立証は終了して、今後弁護人側立証に入ることになっております。  そういう事件がありますほか、ただいまお尋ね浜口某からの告訴事件、これに関連いたしまして、さらに「東洋新報」関係の購読を拒否したことについて、背戸なる者から名誉毀損告訴されておりましたが、この事件検察官におきまして捜査中に告訴取り消しがありまして、不起訴になっております。さらに逆に、今度は、岡峰という者から背戸に対する誣告の告訴がございましたが、これも告訴取り消しになっておりまして、不起訴になっております。  そのほか恐喝的なものが四件というような容疑があったわけでありますが、これにつきましては、捜査の結果、立件送致するに至っていないものがございますが、いずれも証明不十分でございます。  大体そういうような事件検察庁としてはわかっておるわけでございます。
  18. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そのほか、私の手元に来ておるものによりますと、熊本市に「革新時報」なる新聞と称するものがあるようですが、――いまのはどうも右翼ばり暴力団で、これは名前を見ると左翼ばり暴力団ですが、これも、編集発行人として福永勝旗、こういう者がいま呉で申し上げたと同様の手段によっていろいろの方面を恐喝しておる。ことに教育の任に当たっておる者に対していろいろのことを書き立てる。これは教育の任に当たっておる者としては耐え切れないというので、現にノイローゼになって入院しておる被害者まであるということでございますが、これは御承知でございましょうか。
  19. 津田實

    津田政府委員 ただいまお尋ねの件は熊本市におきます福永勝旗にかかるものと思われますが、福永勝旗につきましては、熊本市の第一工業高等学校校舎増改築工事を請け負っております株式会社建吉組代表者笹原弘から名誉毀損等告訴されておる事件があります。その告訴は本年の二月二日、熊本地方検察庁において受理いたし、目下捜査中でございます。その告訴事実の要旨はこの福永なる被告訴人は、旬刊紙革新時報」の編集人発行人でありますが、熊本市私立第一工業高等学校校舎増改築費に関し、同校理事及び職員請負業者建吉組との間に不正事実ありと憶測し、昭和四十一年二月十七日の同紙上に「熊本教育界一大不祥事を摘発」と題し、建吉組に関し、「建吉組は常に土建暴力と共謀して各種の手抜き工事をしている。この学校本館建築はずさんきわまる建吉組と契約した彼らの搾取が永遠に続く危機にある。」というような記事を掲載し、相当部数を市内の読者に頒布している。公然事実を摘示し、かつ虚偽の風説を流布し、告訴人建吉組及びその代表者笹原の名誉及び信用を傷つけ、その業務を妨害した。かような事件告訴をされているわけであります。熊本地検におきましては、三月二日現在まで告訴人及び参考人の取り調べを終わっておりますが、まだなお捜査中でございます。
  20. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはいまの法務省からの御報告によりますと、告訴せられておる事件について、おそらく相当数のものを今日までやっているものと思うが、警察へ入っている情報はどのようなものであるか、ひとつわかった限りを聞かしていただきたい。
  21. 日原正雄

    日原政府委員 現在まだ、この事件そのものは、検察庁のほうに告訴が出ております。それから、私どものほうでいろいろ内偵している事項もございますが、お話し申し上げるような段階に至っておりません。
  22. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこで私は、一般的なことに対して御注意を願いたい点を申し上げてみたいのですが、先ほど、被害者弱みにつけ込んで、こう言われたが、何か弱みがありまして、そうしてそれを摘発されたとか、するとかいうなら、これだって名誉毀損になりますよ。なりますが、これはまだある程度やむを得ないと思うところがあるが、全然事実も何もないものを、この者にこういうことを言えばこれは痛がるということを知っておって、事実を捏造して出す。われわれから言わせれば、何でもないものは何でもないといって党々と歩いたらいいじゃないかというが、人によってはさようなことでは済まぬものが多い。その一番大きなものは教育家です。教育家に対して破廉恥的な行為があったと活字にして頒布せられたら、これはたいへんな影響があります。その次は金融家です。銀行その他信用金庫等、これもあることないことを書いて出されたのではたいへん信用を傷つけられるものですから、これはいやでも恐喝に乗らざるを得ないと思うのです。それは社会的に最も弱いものですから、こういうことがわかったら、特に警察ではこれに対して相当の手を打ってやられなくてはたいへんだと思うが、それらの点に対してどうお思いですか。また手を打っておいでになりますか、いかがですか。
  23. 日原正雄

    日原政府委員 お話しのとおり教育者、それからやはり金融機関、こういうものはお話しのような状況で、この広島事件みたいに事実無根の事柄を流布される。その流布されたことは、もうもとに戻らないという状況にあるわけです。また金融機関などはそれで相当損害も受けるということになるわけでございます。ただ一方、また逆に、もとに戻らないのだから、告訴をしてもよけい流布されるだけでもとに戻らないという考え方で、結局泣き寝入りされるという状態になると、ますますこういう声の暴力がばっこするわけでございますので、警察独自で立証できるような刑訴のたてまえならよろしいわけでございますけれども、いまのたてまえから申しますと、やはりどうしてもだれかが敢然として戦ってもらわなければよけいばっこする。金融機関状況も同じでございまして、それでいろいろいざこざを起こし告訴をすれば、またさらに損害を受けるというような事情がございまして、これもなかなか届け出なり被害申告をしてもらえない場合が従来多かったのでございます。しかし最近は、やはりそういうことでは逆にむしろ彼らの横行を許すということから、徐々に届け出をされる方向に向かっておるように私ども考えるのでございまして、やはり自分だけのことを考えれば泣き寝入りというような形で事を済ますという消極的な態度になりがちでございますけれども、やはりこういうような新聞ゴロのようなものに対しては、敢然として戦っていただいて、そうして立証していただく。それによって処罰を加えることによって、こういうものをだんだんなくしていくという努力を積み重ねていかなければならないのじゃないか。そういうために、私どもはそういう話を聞きますれば、現在は、積極的に説得をして立証してもらうというような状況でございます。この事件でも、先ほど公判中の事件などにつきましても、やはり被害事実をよそから聞き込みまして、そうして暴力行為等処罰に関する法律違反の事実を立証してもらって、それがために検挙が半年ばかり延びたような事案もございます。これは同じ被疑者についての事件でございますが、そういうことで非常に手数をかけましてでも、とにかくこういうものに対して被害者を探し出し、被害立証をしてもらって検挙をするという方向で進んでおるわけでございます。そういう意味では、やはり被害を受けた方々に、積極的な協力をしてもらうということがどうしても必要だ。そういうことさえございますれば――私どもは決しておそれているのじゃありません。敢然としてどしどし検挙していきたい、こういう方針でございます。
  24. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この告訴状の写しを私、手に持っておるのですが、これを読んでみるとまことにりつ然たるものがございますよ。あなた方のほうでおわかりだと思うが、この前に市役所で浜口近藤と顔を合わせたら、このやろう、きさま、よくおれと戦うやつだ、こういうことを言った。おまえは消されることは覚悟だろうな、こう言って、廊下でつかまったが、浜口は幸いにして庶務課か何かの部屋に入ったので、ようやく事なきを得た。その次は、今度はそれで足らなんで筆の暴力をふるったのは、どえらいことです。その内容を読んでみますと、浜口は呉の女子美専高等学校か何か経営しておるのですね、教育者です。そこで「呉美専経営者。戦前は海軍水兵。戦後某氏にひろはれたが使ひ込みで警察ザタあとはブローカー。進駐軍と組んで増岡を脅し増岡の弱味でドレメ校舎建築をやらしたとか、教師の資格もないがハッタリと大ボラで誇大宣伝。在校生の綺麗な子に手を出すのが癖と評判。マズイ面だがこれで女の子がかゝるのが不思議。」こういうものを書いて出しておる。おそれ入るのほかはございません。これは女子高等学校経営者です。かようなことを出されると、ここへ出しておる父兄は何とこれを心得るでしょう。ここの生徒はどのように考えるでありましょう。またこういうものは、この告訴状にも書いてありますが、学校ですから一つの競争があります。そこで他の女子教育をやっておる、生徒の来ない学校は、えたりかしこしとしてこれを利用して、この学校の悪宣伝をしておる。これはどうもそう言われると、そのとおりです。それから、こういうことはあることならいいが、ここに書いてあるとおり、実に、よくもこういうことをつくり出した。この中に書いてある。呉美専経営者というだけがほんとうだが、そのほかはことごとくうそだと言っておる。かようなことを流布せられたら、これはどうもたいへんなことです。それから熊本にいたしましても、いまノイローゼになっておるが、これはあなた方のほうでどのような保護をしておられるか知らぬが、その手段方法いかんによっては、ますます次第に恐怖を増して病気をつのらせるものだと思うのですが、さようなことは、どうです、思い当たりませんか、いかがです。
  25. 日原正雄

    日原政府委員 もし被害者が届出したことによって何らか被害をこうむるような状況にありますれば、私どものほうで十分万全の保護対策を講じてまいりたいと思います。
  26. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私も実際において被害をこうむったことがありますが、こういうものと戦って、告訴します。それで訴訟の期間が相当あります。その間ほっておきますと、これはもうますます彼に筆の暴力をふるわせる機会を与えておるようなものです。やらぬのならいいが、やるのですから。やるにもかかわらずほっておかれるのです。これじゃ、あなた、ますます筆によって人を傷つけることを認めておると同じことだ。こういうものがあらわれて出て、被害者が訴えて出たとすれば、しかも、もうほっておけば必ずやるということがわかった以上は、私はこういう事件に対しては特別の取り扱いをせなければならぬと思う。大体身柄をそのままにしておくということがいかぬ。被害がない、あるかないかわからぬというのならいいが、あることはわかっておるのですから。それにもかかわらず、どうもやっておられないようだ。だからつかまって、きさま消されることは覚悟だろうなんて、どえらいことを言われるようになるんだが、これは私自身も経験があるからそのように言うのだが、なかなか思うようにいかない。あとで、最後に、しかたがないからやられたようだが、私は、こういうものは特に捜査当局として打つべき手を打ってやられなければいかぬものだと思うが、いかがですか。
  27. 日原正雄

    日原政府委員 この事件は、告訴状が十二月四日に提出になっておりますので、お話し脅迫事実のあとだと思いますが、一般的に申しますと、やはりそれを外に置いておくことによってさらにまた同じような被害が出るというような状況にありますれば、身柄の拘束というような処置も考えなければならない場合もあろうと思います。
  28. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あろうと思うじゃありませんよ。ほうっておけばやることがきまっている。現にやっているのだ。そういうときにぴしゃっと打つべき手を打ってもらわなければならぬ。それでなければ、暴力団狩りにはなりませんよ。  その次に、もっと大きなことを申し上げますが、これはここで、先ほど申しました上申書に出ておることでまことにもっともだと思うことは、「新聞等発行資格の規整について立法に関する陳情書」としてこういう申し立てをしておる。現にこういう筆の暴力によって恐喝をすることを生業とし、のみならず、現に執行猶予中であるとか、現に起訴せられて裁判中であるとか、こういう者に保釈で出てきたら相変わらずこの新聞の発行を許すということになれば、これはまたやることがきまっておる。こういうものをやれば社会に害毒を流すということがわかったらなぜ発行をとめないのか、発行をとめる立法を出してもらいたい、こういうのがこの陳情書趣旨でございます。これはしろうとだからこういうことを書いておるが、われわれからいわせれば一言で常習者なんです。常習者じゃ、あなた、出てきてまた同じことの発行を許せば、もう一ぺん常習を続けよというのとひとつも変わりはないので、かようなことは許すべからざるものだと思う。立法をやらぬでも、私は行政処分なり警察処分なりでやれると思うのだが、もしもいかないものならば、立法してでもよろしゅうございますが、これは必ずやらなくちゃいかぬと思うが、あなたどうでしょう、これは警察庁からと法務省からお答えを願いたい。
  29. 日原正雄

    日原政府委員 先ほど「あろうと思います。」と答えたのですが、私どもの逮捕の場合には証拠隠滅、逃亡のおそれという場合が中心でございますので、予防という意味で逮捕の権限がないものですから、さような形で申し上げたわけでございます。  ただいまのお話の立法の問題になるわけでございますので、私どものほうから政策的な面はかれこれ申し上げたくないのでございますが、ひとつやはり考えていただきたいのは、言論の自由というものとどういう関係になるか、言論の自由の乱用にはなると思いますが、それをどういう形で調和させていくかということが非常に問題であろうと思います。  それからまた、私ども取り締まりの面から申しますと、その新聞がとめられましても、今度はほかの形でまた出てくるという形を、立法するにしてもやはり考えていっていただかなければならない。家族の名前なりほかの名前で出す場合を考えて――それを次々つぶしていけばそれでもいいわけでございますが、そういう点も考えていただきたいと思うわけでございます。ただ言論の自由という面でなかなかむずかしい面があろうと思います。また私どもの現在の法律ですぐにどうこうと――明らかに何らか犯罪になって、名誉毀損なら名誉毀損の要件がそろえば押収するということは考えられるわけでございますが、差しとめというような形は現在のところ私ども権限がないわけでございます。そういうことで、私どもさらに考えますのは、こういうような事案に対しては非常な影響力を持つものであるからもっと刑罰は重くしてもいいのじゃないか、あるいは民事のほうの関係の問題ももう少し簡単に、しかもこれはもともと金をとるためにやっておる行為でございますので、こういう行為をやれば逆に非常な損害を受けるというようなことになるような民事上の手続なども考えていただいたらどうかというふうに考えておるわけでございます。これらのことは立法的な問題でございますので、以上だけ申し上げておきます。
  30. 津田實

    津田政府委員 ただいま警察庁のほうから申し上げましたが、私どもの考えもやはり言論の自由との関係におきまして、予防的な措置ということについては非常に問題があるのと、もう一つは、何と申しましても脱法的な形でこれを――かりに各個に編集人相当の期間再発行を認めないといたしましても、やはり脱法的に他の名前で同じことをやるというようなことになってまいりますと、なかなか予防措置も困難ではないかというふうに考えるわけであります。要は、名誉毀損あるいは恐喝というようなものあるいは脅迫というようなものがありました場合に、やはり被害にかかった方がき然たる態度をもって法的措置を要求していただくということが一番必要であります。現にかような事件につきましては、往々にして告訴の取り下げがある。告訴の取り下げということは一向かまわないのでありますが、同時に今度はかりに公判請求いたしましても、公判におきましての供述というものが、捜査官への供述と非常に変わってくるというようなことがありまして、その結果無罪になるというようなことが間々あるわけであります。そういたしますと、かえって彼らにとっては、それが有力な武器になるというような面もありますので、なかなかかような問題については困難な面があるということを御了承いただきたいと思います。  要は、被害者の方々のき然たる態度、これは刑事につきましても民事につきましても同じでありまして、それによってかようなものが割りに合わない仕事であるということを厳に身にしみさせる必要があると私どもは考えております。したがって、被害者の方々にき然とした態度をおとりいただく限りにおきましては、捜査官におきまして、これを厳重に処分するということは全くやぶさかではないわけでありますが、さような面においてしばしば問題に遭遇するということをお認めいただきたいと思います。  なお、立法的措置といたしましては、御承知の証人等の被害についての給付に関する法律というようなものもできておりますので、あるいは警察のほうの証人に対する警備措置というようなことも十分考えられておりますので、立法的にはほとんど万全の姿になっておると思うのです。要は、国民がこれを断行することに協力をされるかどうかということに帰着する問題ではないかというふうに私どもは考えておる次第であります。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 別にあなた方に不平を言うわけじゃありませんが、なるほど被害者がき然としてくれればいい、き然としなければやむを得ぬというように聞こえるが、まことに私は情けないことだと思う。なぜ、被害者はき然としなければいけないですか。後難をおそれるからですよ。そうしてみると後難をおそれるような現状にあるのを、そのままにしておかれるから被害者がおそれるんですよ。私はき然たる態度警察にあると思う。き然としていかなることがあってもさようなことはやらせぬというこの態度であるならば、かようなことはないものだと思うのです。どうもやってみても、目こぼしをしておる。いや、いつもそこについておらぬものでというようなことになるからやるのです。いやしくも、わが日本警察というものがある以上は、さようなことはやらせない。わが日本検察庁というものがあったら、そんなことは許さないのだ、これでいってもらわなければ、被害者にしっかりせいとおっしゃっても、しっかりするのはけっこうだけれども、おれはしっかりせぬが、おまえしっかりしてやってみよというように聞こえる。現にまた出てきて悪いことをしたにもかかわらず、言論の自由がありますので弱りますというようなことで一体警察はつとまるのか。現実に被害があらわれておるにもかかわらず、言論の自由があるからというようなことを言っておれるもんじゃないと思うが、もう一ぺんお聞かせ願いたい。
  32. 日原正雄

    日原政府委員 私ども昔の検閲のような形の権限はないわけでございまして、そういう意味で一つ一つ犯罪として立件をし、検挙をして、そうしてこれに強い処罰を加えていくということが、こういう事犯に対する根絶対策だと考えておるわけでございます。それじゃ、その立件をするのに、現在の手続はどうなっておるかと申しますと、警察が、これはこうだからといっても、やはり立証をしなければ、逮捕状からして出ないわけでございますし、また処罰も加えられないわけでございます。そこにどうしても証拠というものが必要なわけでございまして、特にこういう金の授受、それから脅迫されたかどうかというような事案につきましては、その点の立証ということになりますると、どうしても証人ということになってくるわけであります。そこで私どものほうは、検挙したくてしかたがないのでありまして、これは誤解を受けると非常に遺憾なわけでございますが、事案それぞれわかっておりますので、何とかして検挙したいのでございます。それで先ほども申しましたとおり、被害者にどうか証人になってくれということを説得をして、ここで戦ってください、そうじゃないと、警察は自分で武器を持っておりますればこれをやります。やりますが、やはり立証という手段を持たなければ正当な処罰が加えられない。現在の手続ではやむを得ないので、非常に手数をかけて説得をして、被害届けを出してもらっておるという状況でございますので、警察としてもこれはむしろ非常に手間のかかる方法でしかやれないというところにむしろ遺憾な点があるわけであります。しかし、私どもとしてそういう労をいとっておるわけではありません、被害者の立場もいろいろわかりまするので。しかしここで戦ってもらうという意味でいろいろお願いをし、説得もしておるわけでございます。そういう意味で、現在の手続の上でそうなっておりますので、手続法が別になりますれば別問題でありますが、私ども気持ちとしては十分これらと対決して、そうしてこれを根絶していくという覚悟でおりますので、その点は誤解のないように、大いに被害届けをいまの手続だと出していただかなければならないということで御了解を願いたいと思います。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 裁判のときはそうですが、あなたたち治安を守っておられるのでしょう。そんな不安な状態に置いて何ともならぬとなったらたいへんですよ、これほど治安を乱すものはないと思うのですが、その点を私は言うのです。もっと治安を守る責任がある。そんなことで後顧の憂いをおそれてやらぬようなものをおいてはいかぬ。警察がある以上はそんなことは決してないのだ、そういうことを聞かしてやり、また自信を持たしてやらなければいかぬと思うのです。裁判のときはこれはまた別です。とにかくあなた方治安を守って第一線にある方が、どうあってもわれわれがおる以上はそんなことはさせない、こうそれこそき然たる態度に出てもらわなければ困る。それでいかぬというならひとつ立法を考えてください、これはたいへんですよ。これはいま言う立法のことを書いて出しておりますから、これは検察庁警察に御参考におあげしておきます、見てください。そして現実にあらわれたところの被害がこれに三十五書いてあるのです、まだまだあると思うのです。これでひとつ一応御研究願って、国民に不安のないようにやっていただきたい。  それから委員長に申し上げたいのですが、これは警察でもこういうことを言われるが、実際においてそれほど困難なものか、またどこかに手落ちのないものか、われわれがこれだけ聞いた以上は、法務委員会として責任を持ってこれらの点を明らかにして、方法があるならば方法をひとつ献言するということに出なければならぬのじゃないかと思うのです。その意味において願わくはこういう被害を届けられた、いろいろな問題を届けられたところへ、委員なり調査委員なりを派遣して、実情を調べてもらって、警察及び検察庁等と相協力し、またはこちらからいろいろな方法を献言して、そのようなことを根絶するようにつとめたほうがいいと思うが、ひとつ委員長のほうでとくと御考慮の上で御決定を願いたいと思います。  これで一応私の質問を終わります。
  34. 大久保武雄

    大久保委員長 ただいま鍛冶委員からの発言は、理事会にはかりまして善処いたしたいと考えております。  次に、坂本泰良君。
  35. 坂本泰良

    ○坂本委員 私は、先般来早稲田大学の紛争がありまして、その紛争についてはいろいろな問題が内蔵しておると思います。ただ私は、大量の学生が検挙され、また今回若い学生が非常に危惧の念を持っておる、こういう関係でございますから、本日は早大の紛争についての取り締まり並びに刑事問題として取り扱っておられるようでありますが、そのことについて、法務大臣、警察庁長官に特においでを願いまして、これは今後の収拾の問題についても、特に学問の自由に対する、また若い学生に対する非常に重大な問題でありますから、今後の方針等も承り、若干御質問を申し上げたいと存じます。  新聞あるいは週刊雑誌、すべての週刊雑誌が、このころのは全部取り扱っておりまして、そこに掲げられておることは、「早稲田戒厳下の入学試験」、「警官隊町ぐるみ封鎖作戦」、「早大を埋める警官隊」、「警官隊警棒を手に学生を追い出す」、こういう大きい見出し等がございまして、先般来の警察取り締まり並びに二月二十二日には、学生二百三人が逮捕される、これは未曽有の逮捕事件でありまして、これについてお聞きしたいと存じますが、まずこの二月二十二日の学生二百三人の逮捕について、その後の経過について、警察並び法務省検察庁の経過を承りたいと思います。
  36. 秦野章

    ○秦野政府委員 二十二日の事案のことを申し上げるために、若干その前の経過も御説明を申し上げて御質問にお答えしたいと思います。  早大事件は御案内のとおり、昨年の十二月ころから学生会館の管理権をめぐって、学生と大学当局との間に意見が対立をして紛争を続けておったのであります。本年に入りまして、学費の値上げ問題が起こりまして、そのことで結局一月二十一日から全学ストに入ったわけでございます。ところが、ストに突入してあと、一部の学生は各学部の建物内にふとんを持ち込んで泊まり込みを始め、入り口に机とかいすなどのバリケードを構築して抵抗態勢を固めたというような状況になっているわけであります。二月の十二日には、大学占拠に反対する体育部の学生との間にトラブルが起きたりなどしたのでありますけれども、さらにその間何とか学園の問題ということで、いろいろ調停をされるような方々も出てきたりして、われわれの側から見て非常に心配をしておったのでありますが、学園の問題でありますので、学園自体の中で解決することを気持ちの土では期待しておったのでありますけれども、入学試験が二月二十四日から始まる、その準備ということについて、大学当局としてはいろいろ教室その他準備のための施設の問題でやることが出てきて、入学試験を何とか円滑にやらなければならないという問題が出てきたのであります。そこで、この紛争がどうしても解決しないということになると、占拠の学生に対してこれを退去してもらわなくちゃならぬというようなことで、二月の十六、十七日には学校当局から最後的な退去要求が出たのであります。  ところが、このことが功を奏せずに、結局警察のほうには二月の十九日に警視総監あてに警備部隊の出動要請がございました。そこで、警察としましてもかねがねこの状態を検討しておって、犯罪的な事実というものもある程度認められておるので、学園であるということでかなり慎重にしなければならぬ、そういうぎりぎりの立場で研究しておった。そこへ警備隊の出動の要請がありましたので、警察としては警察自体の判断で、警備隊の出動はやむを得ないということで、二十一日の朝、この占拠学生の排除、それからまた犯罪行為を行なっている者の検挙ということで、約二千五百名の警察官を動員いたしまして学内に立ち入ったのでございます。このときに大体千三百くらいの学生がこの朝学園の中におり、建物の中には大体三百名くらいおったのですけれども、やはり警察が入ってくるだろうというようなことで若干ふえたようであります。いずれにしましても、この二十一日の朝警官が出動しまして、ここで三名逮捕した。そのときには逮捕者は少なかったのですけれども、この二十一日の警備隊の出動で排除いたしましたあと、その日に再びまたこの建物に入ってしまった。この二十一日の警備隊の出勤によって排除したそのあと、われわれとしては学校当局にも、あとまた再び建物に入ってしまうというようなことがないように、十分ひとつ管理をしてください、――警察もそこにすっととどまって学園の中で警備するといったようなことは必ずしも欲しない、そういう気持ちも実はあるわけでございます。そこで学校当局にいろいろお願いしたところ、学校も大体三百名くらいのみずからの力をもって管理のほうに力を入れておったようであります。学校の正門にもさくを設けたりして、そうして入学試験の準備にいろいろ努力されておったようでありますが、警察自体が引いたその直後に、一時間もたたないうちに、また再びさくをこわし、――ある程度施錠などを施したようでありますけれども、こわして中に入ってしまった。この場合には、かなり乱暴な、窓ガラスをこわして中へ入る、それから中へ入った者が机とかいすでバリケードをつくって、五寸くぎでそれを打ちつけるといったような状況で、また再び占拠してしまった。これに対しまして大学当局からもさらに要請がございまして、警察といたしましてもこの状態ではやはりさらに出動しなければならぬということで、これが二十二日の朝の出動になったわけでございます。このときに、建物を占拠している者の排除、それから悪質な者の検挙ということで臨んだのであります。この日には、建物を占拠している者が、警察部隊が出ていきますと、大部分出てしまった。大部分出てしまったのですけれども、さらに立ち入り禁止をしておりました文学部のほうの構内に入ってしまった。そこで学校当局も再三にわたって、入学試験の準備があるので立ちのいてくれということを警告をし、注意を喚起したのですけれども、立ちのかない。警察も十分事前の警告をしたのですけれども、がんとしてそこを立ちのかないという状況がありましたので、これはやむを得ないということで、しかもそこには大体八百から千ぐらいの人数がおったようでありますけれども、この者は前夜大学の本館その他に再侵入をした者がほとんどのものでございますので、警察も断固たる処置に出なければならぬという方針になって、ここで排除活動に入ったわけであります。結局この日のことで、二百三名の者をこの日に逮捕したということになったわけであります。むろん、警察は、この逮捕にあたっては、悪質な者を中心に検挙活動をしたことは当然でございます。その後若干の逮捕者がありますけれども、いずれにしましても、御質問の二十二日の逮捕というものは、確かに人数からいけばかなりの多数にのぼったわけですけれども、以上の経過で、その前日あるいはその前からの経過で、つまり真にやむを得ないということでこれだけの逮捕者を出し、警察としては逮捕者を身柄と同時に検察庁に送致したというのがあらましの状況でございます。
  37. 坂本泰良

    ○坂本委員 警察がやむを得ないとして大量に出動して、ああいう新聞に書いてあるようなことをやった。装甲車を正門前にとめる。警官隊が町ぐるみ捜査作戦をする。警棒片手に学生を追い出す。このやむを得ないと言われるいまの御答弁については、われわれとしては、これはほんとにやむを得なくやったかどうかということについては、まだ非常な疑問を持っております。結論を申せば、やるべきものではないというふうに考えておりますが、この点については後日に譲りまして、二百三名の逮捕者、それからその後若干逮捕者を出しておるとおっしゃるが、これに対してどういう処置をとっておられるか、この処置について、さらにこれは法務当局のほうにも関係すると思いますから、あわせて御説明願いたいと思います。
  38. 秦野章

    ○秦野政府委員 二月の十日の事件以後、今日まで逮捕者は二百二十名でございます。そしてこれは全部身柄とともに検察庁に送致いたしまして、それぞれ検察庁の係のほうで処置をされているわけでございます。この二百二十名の逮捕者のほかに、なお若干名の……(坂本委員「何名ぐらいですか」と呼ぶ)なお捜査中でございますのではっきりした人数は申し上げられませんが、指名手配をした者が三名ございます。そのほか若干名、なお捜査を続けておりますから、逮捕者の出るということもあり得ると考えられます。
  39. 津田實

    津田政府委員 ただいま警察庁のほうから申し上げました二月二十二日の事件に関しましては、二百三名を現行犯として逮捕しまして、二十四日全員を身柄のまま送致してまいったのであります。同日検察官のほうで取り調べをいたしまして、そのうち六十八名に対しましての勾留請求をいたしました。その結果、勾留状が発付されました者が五名、勾留請求が却下された者が六十三名であります。この却下されました六十三名のうち七名に対しまして準抗告の申し立てをいたしましたところ、二名につきましてその申し立てがいれられまして、勾留状が発付されまして、現在合計七名勾留中でございます。現在勾留いたしております者も、その他の者につきましても、事件送致いたしました後鋭意調査をいたしておるわけでございます。
  40. 坂本泰良

    ○坂本委員 そうすると二百二十名ですから、六十八名の勾留請求があって、そのほかは全部当日釈放になったのですか。
  41. 津田實

    津田政府委員 全体から申しますと、二月十日の事件と二月二十一日の事件につきまして、三人勾留状が発付されております。それからただいま申し上げました二月二十二日の事件につきまして、七人勾留状が発付になっておる、こういう状況であります。
  42. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこでそのほかは全部送検になって釈放をされたわけですね。その点をお聞きしたい。
  43. 津田實

    津田政府委員 家庭裁判所に送致された者が十三名ありますが、そのほかは全部釈放になっております。
  44. 坂本泰良

    ○坂本委員 重ねてお聞きしますが、これの起訴の問題ですね。これはまだきまっておりませんかどうか、その点……。
  45. 津田實

    津田政府委員 その点は目下捜査中でありますので、まだ何とも将来の処分につきましては、現在は予想できない状態であります。
  46. 坂本泰良

    ○坂本委員 そこで、二十二日に二百三名逮捕されたということを聞きましたから、私ども社会党の中央執行委員の二人で警視庁に参りまして、公安部長にお目にかかって、こんなに大量の逮捕というのは初めてだ。この中にはそこにいたがために逮捕されたというような、そういう者もたくさんおると思うのだから、ひとつ至急に釈放してもらいたい、こういう要求をいたしたわけなんです。その際公安部長は、いや、それはもうすぐ調べて、きょうのうちにも釈放するようにやりたいということだから、ぜひひとつ、学生のことであるから、調べられれば、調べ官はエキスパートだからできると思うのだから、夜の十二時あるいは夜中になっても、ぜひ調べて釈放できる者がたくさんおると思うので、釈放してもらいたい、こういう要望をいたしまして、公安部長もそういうふうにするからということでわれわれ帰ったわけなんです。  その翌日に、今回は二百三名全部送検する、こういう新聞を見て驚いたわけなんです。そういう経過もあるわけなんですが、二百三名全部送検をする、あるいは新聞ですから……いま二百二十名ということですか、全部送検された、そのいきさつはどういう関係にあるのでしょうか。
  47. 秦野章

    ○秦野政府委員 先ほど申し上げましたように、二十二日の早大の文学部周辺における検挙と申しますのは、その中の大部分の者は早稲田大学の本館に侵入しておって、それが出てきた人たちであり、しかも文学部のさく内の立ちのきについては何べんも警告をしている。とにかく試験の準備ができないからそこを立ちのいてくれということで、学校当局もまた警察も協力して十分警告をし、注意を喚起したのにがんとしてのかないという、刑法の住居侵入もしくは不退去罪の要件としてはきわめて明確な現行犯の状況にあったわけでございます。そこで、そういう状況であったので、勢い逮捕者も多かったわけでございますけれども、これを身柄とともに全員送致したというゆえんのものは、これは刑事訴訟法の上からも、逮捕した事件については全部送致することになっております。身柄とともに送ったということは、これはほとんどの者が黙秘権を行使しておったということで、私どもとしては黙秘権を行使したから身柄を送るのだと必ずしもいうわけではございませんが、何にしてもこういった事案の真相を明らかにし、この検挙の場所になった早稲田大学の文学部の前の事件のみならず、その前の事件もございますので、そういうようなことで、真相を明らかにするためにはやはり身柄を拘束する必要があるということで、身柄とともに送致をしたというのが経過でございます。
  48. 坂本泰良

    ○坂本委員 その点について、われわれは警察当局に非常に不信を持っている。二百三名を、逮捕したからこれを全部送検するのが正しいというのは言いのがれであって、しかもこの学生運動というのは――公安部長に会ったとき、バリケードをやっている写真もあるとか、ガラスを割っている写真もあるとかいうから、それは二千名も三千名もの学生が集まったのだから、そういう写真もありましょう。しかしながら学生というのは、学園は学問をやるところであり、しかも校舎はその学問をするところであるから、やはり学生は自分のうちのように考えているのです。ことに北海道、九州あたりから来た者は、下宿はしておりますけれども、やはり学問しに来ておる、勉強しに来ておるのである。その学生が、その校舎を占拠しておるからといって、直ちに不退去罪とか日本刑法を用いるべきものではないのだ。だから検挙したならば、その告発を検察庁にまかせぬでも、それは警察庁、警視庁でわかっておるはずです。だから学生を一晩とめるのは、それは多数の中だからいろいろ悪質な者もあるでしょう。しかしながら、あの学校騒動の渦中に入った学生の中にはそうでない者もおる。やはり学問を愛し、その学問をする学園を愛するがためにそこに入っておる者もあるのだから、そういうのはひとつ警察にとめることをせず釈放しなければならない。警察にとめること自体が、純真な学生についてはそれがまたどういう悪影響を及ぼしてくるかもわからない。だから警察はその点等も考慮して、やはり警察に留置するという方法をとらずに、でき得るものならば、二千名も三千名もの警察官が出動しておるところであるから、だから調べて釈放するがしかるべきであろう。そうするのが、いかに取り締まりといって写真をとり、不退去罪その他の証拠を集めたにしろ、二百三名全部がそんなことをしたわけではないから、釈放すべきがしかるべきで、そうわれわれも思うし、公安部長にも要望してきたわけです。それを翌日にまで警察にとめておいて、検察庁に送って、検察庁の調べを受ける。そういう点について、この早稲田の紛争に対しては、一片の日本刑法違反の事実をもって、不当な学費の値上げをするという学校当局に一方的に味方ををしたじゃないか。声なき声で、学生の親たちはいろいろ考えておるのです。そういう点についての考慮を払わなかったかどうか、長官の御答弁をお聞きします。
  49. 新井裕

    ○新井政府委員 ただいま警備局長から経過を御説明いたしたとおりでございまして、反復占拠をいたしておりますし、学生がいかに学問を愛し学校を愛するといえども、ほかの学校まで行って泊まり込んで、外から人を入れないような状態まで許されるとは考えておりません。そういう反復をしておるということ、それから何回も警告をしたということ、これらを考慮いたしましてそのような措置をいたしたわけでございます。
  50. 坂本泰良

    ○坂本委員 そういう点はわれわれも承知しておるけれども、逮捕して警察の留置場にぶち込むわけでしょう。その点についてもう少し考えなかったかというわけです。形式的にはそうでしょう。しかしながら、検察庁に送った即日百何名の者が釈放されておるのです。わざわざ検察庁、検事の手をかりずに、もっと夜通しでも調べて釈放することはどうして配慮しなかったか、その点について承っておきたい。
  51. 新井裕

    ○新井政府委員 いま坂本委員は、ことばの走りでおっしゃったと思いますけれども、夜通し調べるということは、私どもは原則として禁止をいたしておりますので、そういうことについてはいたしかねるのでありますけれども、前に申しましたように、あのような形で学校を占拠するということはあまりございませんし、事柄がたいへん重要であり、しかも先ほどからるる御説明いたしましたように、反復常習的に学校側の指示なり意思を無視してやっておるということ、しかもまた逮捕された者の大半が黙秘をして姓名すら告げないというような状態でありますので、これは全部の身柄を検察庁に送って検察庁の判断を仰ごうということでやったわけでございます。
  52. 坂本泰良

    ○坂本委員 あなたたちの言いのがれはそうでしょうけれども、何も私は責任を追及するわけじゃないのですよ。特に大量の学生を朝逮捕した。私たちが警視庁に行ったのは、午後の二時か三時ごろたったと思います。それからでも――夜通しなんということは、私は早くやってもらいたいということを粉飾したことになるけれども、逮捕したのは学生だから調べる。その中には黙秘権を行使しても、警視庁ではちゃんと名前がわかっているのがおるでしょう。しかしながら、黙秘をしていても、純真な学生で、ほんとうに値上げに反対しておる。六割の値上げをして試験を強行しようとするのは、これは学校当局が間違っておるじゃないか。警察官が二千名から二千五百名出動して守って、新聞なんかのいう戒厳令下の入学試験をやらせないような方法を講ずるのが、取り締まり当局としての配慮しなければならないことではないかと思う。それを、あなたたちのほうでもいろいろ理堀はあるでしょうけれども、最後の逮捕という、しかも逮捕した上においては、やはりこれは学生としての配慮をすべきだと思うのです。ことに一年、二年の学生が多いのでしょう。高等学校を出て、そうして多数の受験者の中から選ばれて合格した純真な学生ですから、学園に警察官が踏み込んで逮捕して、そうして一晩置け、こいつらまたやるだろうから入試はだめになるだろうということで、そういう一方的な学校当局側の取り締まりということを考えてやられたから、そういうような結果になったのじゃないか。その点いかがですか。
  53. 秦野章

    ○秦野政府委員 ただいまの御質問でございますが、最初にございました警棒の問題とか戒厳令下云々の問題とか、新聞記事のあったことは私も承知いたしております。しかしながら、警棒の問題につきましては、これは腰にいたしましたけれども、全然用いておりません。それから戒厳令下云々ということも、確かにそういう記事もございましたけれども、私どもとしては今度の場合非常に気をつかいまして、なるべくなら警察官をかりに出動させても、陰に隠れて待機させるとか、やむを得ない場合に表に出るとかいうようなことで神経をつかったわけでございます。  それからまた装甲車の問題等につきましても、これは一部の半生がデモをもって、特に試験が始まった後でございますけれども、妨害をするというような状況もございました。そういうようなことで試験の妨害ということになれば、これは一つの業務妨害的な状況も出てくるわけで、これに対しては警戒をしなければならぬというようなことで、警察官がパトロールするとかいうこともやったわけでございますけれども、これもなるべく学園の中に入らない、外回りでやるというようなことで、事前の状況をできるだけとって、行き過ぎがないようにという気持ちでやってまいったわけでございます。  それからまた、大量検挙の場合には巻き添えで無実の者がつかまってしまう危険があることはお説のとおりで、私どもはその点も非常に気をつかいまして、二十二日の大量検挙の分につきましては、これは明らかに不退去、何べん要求しても退去しない、それからまた学校当局も立ち入り禁止の札を立てたり、とにかく試験の準備があるからそこを出てくれという管理上の注意も学校当局はずいぶんしたわけであります。警察もその線に沿って事前に十分警告をし、注意を与え、何とか――確かに大量検挙というのは私どもとしては好ましいと思っておりません。そういう事態はなるべくないほうがいいのであります。特におっしゃるように、若い学生でもありますし、そういう事態でありますので、なるべくそういう結果を招かぬような気持ちでやっておったのでありますけれども、現状は住居侵入ないしは不退去の現行犯として明らかな状況でございましたので、やむを得ず検挙した。そしてまた重ねて申し上げるようでありますけれども、大半の者が黙秘権を使うという状況であるし、地検のほうともわれわれ連絡をとって捜査を進めておるわけでございますが、中には首謀者もおります。そういう状況でありますので、きわめて明らかな住居侵入、もしくは不退去罪の現行犯であるというようなことで、身柄を逮捕し、そして身柄を送った。そして送致送検の問題でございますけれども、これも先ほど申し上げましたように、法律のたてまえ上、現行犯で逮捕した者は必ず検察庁に送らなければならぬことになっておりますので、全員を送致したわけであります。
  54. 坂本泰良

    ○坂本委員 これ以上弁解を聞いてもしようがないと思うのです。  そこで長官に、お急ぎですから最後にお聞きしておきたいのは、二百三名の逮捕者があるし、さらに若干と言われるけれども、若干というのは二、三名もあるし二、三百名もあると思いますが、また逮捕をする、そういうことになりますと、実は早稲田の学生、それは全部でもないでしょうが、やはり何かのことで逮捕されはしないかということで――逮捕しなきゃならぬ人物も証拠上あるかもわからないけれども、しかしながら、大体のところは私はもう終わっておるのじゃないかと思う。そこで今後さらに逮捕を拡大する方針であられるかどうか、その二つの点を承っておきたい。
  55. 新井裕

    ○新井政府委員 第一点は、何名ぐらいやるかという御質問かと思いますが、坂本委員が例示されました数百名なんということはもちろん考えておりません。数名の者でございます。将来、これをもっとうんと拡大していくかということでございますが、そういうことも考えておりません。要するに非常に悪質な少数の者によって扇動されておるというふうにわれわれとして見ざるを得ない。三万五千名もいるようなああいう学校で、連日やっておる人というのは数百名にすぎないわけであります。その人たちの中には、先ほど御指摘に相なりましたような純真な学生も相当数おるわけであります。そういうことを考えまして、最も悪質な、あるいは常習的な者に重点を向けて捜査をしていくということでございます。
  56. 坂本泰良

    ○坂本委員 いま御答弁のように、ひとつ今後も――それは悪質なものは、もうあなたのほうでわかっておるのですから、やはりそこにいたとか、一晩、二晩泊まったとかいうぐらいの程度で逮捕を拡大するということになると、全部の学生が恐々として、やはり学問することもできなくなりますから、そういう点は、ひとつでき得べくんば――現在で二百三名も逮捕したのは大量過ぎるのじゃないか。というのは、検察庁で調べられても、三分の二は拘留請求されたのに釈放されておる。そういう点もあるから、長官にはその点を特に警視庁のほうに連絡をとられて、安心してほかの学生は勉強ができるように、また大学に入って行けるように、そういうふうに配慮せられたいことを御要望申し上げておきます。  次に、ちょっと検察庁に伺います。検察庁のほうでは、先ほどお聞きしましたように、結局六十八名の拘留請求で五名が認められて、六十三名は却下になり、そのうちで検察庁として七名の準抗告、それも二名拘留になったわけであります。ですから、この特殊な事件学校の、ことに純真な学生の事件については特に配慮していただきたい、やはり起訴自由の原則が刑事訴訟法にあるから、そういうふうの配慮をぜひしていただきたい、こういうふうに思いますが、大臣の御所見を承りたい。
  57. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 本件の被疑者たちの学生であるという身分を特に考慮いたしまして、それは十分頭に入れておるわけでございます。拘留中の者はもちろんでございますが、在宅扱いの者などもあわせまして、全員の扱いにつきまして十分な調査の上に注意をいたし、慎重にやりまして、適切な処置をするように今後気をつけてまいりたいと思います。
  58. 田村良平

    ○田村(良)委員 関連して御質問申し上げますが、ただいま質疑応答されました早稲田大学の学生に対しての逮捕事件といいますか、紛争事件は、単に早慶野球戦で両方の学生がけんかしたということではありません。したがいまして、逮捕事件そのものずばりについては、後ほど関係当局に御質問申し上げますが、その前に、私はこうした事件を起こした教育の根底について文部省当局の御見解を承りまして、早大紛争事件の真相について知らしていただきたいと思います。  それについて、まず最初に私が承知いたしましたのは、一月の十三日に早稲田大学が正式に学校当局として声明いたしましたのは、昭和三十七年度以降、すなわち過去四年間学費の値上げをストップしている、しかし教職員のいわゆるスタッフの強化、施設の充実をはかるのには当然多くの資金を必要とするというので、やむなく学費の値上げを声明いたしております。そしてこれに端を発して、学生会館の管理運営をめぐって、また学生の要求がからんでだんだん混乱が起きてきたのであります。  そこでお伺いしておきますが、私立大学経営の実態について文部省当局はどういうふうに御認識されているか、御参考までに伺いたいと思います。
  59. 天城勲

    ○天城政府委員 たいへん大きな問題でございまして、全貌を簡単にお答えしかねるかもしれませんが、現在私立大学の経営上の問題から見てまいりますと、従来持っておりました基金とかあるいは寄付金というようなものの占める率が非常に下がってまいりまして、全体として学生授業料その他の学生納付金に依存する率が非常に高まってまいりました。大ざっぱに申し上げまして、これはならしての話でございますけれども、大学収入の約半ばは学生からの納付金の率が非常に高まってまいりました。それから先ほど申し上げましたように、寄付金ないし納付金の率が下がる一方、借り入れ金の率が非常に上がってまいりまして、全体の二割ないし二割五分が借り入れ金になってきているという状態でございます。一方大学が設備の充実あるいは教育の質の向上等をはかるために、たとえば新しい校舎の建設あるいは教職員の給与の引き上げ、研究費の引き上げ等をやってまいろうといたしますと、必然的にいまの学生の納付金にはね返ってくるという関連が強く見えてまいっております。この辺に特色が出てきてまいっておりますが、同時に学生納付金の値上げというものが、実態から見ましても、あるいは社会感情から見ましても、もう限界にきているのではないかという認識が強いのではないか、そのために収入と支出の関係、特に教育の質を高めるということと収入を確保するというで、非常にジレンマに立っているというのが一つの見方ではないか、こう考えております。
  60. 田村良平

    ○田村(良)委員 そこでお伺いしたいのですが、英国の例をお聞きしますと、ほとんど施設運営に対しては国から全額の助成をしている、そして非常に私学の育成に協力する体制にありますが、日本の現状では文部省として、私学の振興育成に対しましては、資金的その他の方法でどういう規模になっておりましょうか、御参考までにお聞かせ願いたい。
  61. 天城勲

    ○天城政府委員 現在国が私学の財政助成としてとっております措置は、大きく分けて二つございます。  一つは、私学振興会という特殊法人を設置いたしまして、ここに国が出資をいたしまして、ここから低利の融資を私立学校にいたしております。これは土地の購入ないし建物の建設という施設を中心とした融資でございます。今年度で二百二億の財投並びに出資を予定しておるわけでございます。それから別途私学の教育において、特に経費的にも大きな負担になりますし、また科学技術者の養成という要請もございますので、理工系の学部に対しまして一定の設備費の補助をいたしております。それから私立大学の研究水準を高めるために必要な研究設備費の、これも補助をいたしております。この両者合わせまして、本年度大体三十五億予定しております。そのほか私立学校に対しましては中学校高等学校に対しますものもございますし、また幼稚園教育に関する、特に幼稚園課程の補助等、こまかいものがいろいろございますが、大学を中心にして申し上げますと、いまの理工系統の教育設備、それから研究設備の補助、そのほかに私学振興会を通じての施設拡充の融資、この三本でございます。
  62. 田村良平

    ○田村(良)委員 それをもう一ぺんまとめてお願いしたいのですが、財投並びに出資が二百二億と、それから理工系に対して施設並びに研究施設の補助等三十五億、これは私立大学が、たとえば四十年度必要とするこれらのいわゆる要求所要額に対して、この助成は何%くらいになっておりますか。
  63. 天城勲

    ○天城政府委員 これは私学の現在持っております理工系の設備と、それから国立大学で一応設備基準というものを持っておりますので、それを一応基準に考えまして、その差額を年次的に埋めるという考え方をとっております。したがいまして、いま、そのこまかい基準の数字をちょっと持っておらないのでございますが、考え方はそういう形できめておりますので、学校によってはその基準に近いところもあるし、学校によっては基準に非常に遠いところもございますので、実際の配分につきましては学校の要求に基づいて措置をいたしておるわけでございます。こまかい数字を、ちょっと積算の基礎を持っておりませんので、恐縮でございますが……。
  64. 田村良平

    ○田村(良)委員 それで、いままで融資いたしました部分の金利とか償還期限、そういうことはおわかりですか。
  65. 天城勲

    ○天城政府委員 振興会の融資はいろいろな事項に分かれておりますが、一般の施設設備の融資につきましては六分五厘でございまして、償還期限十二年――二年据え置き十年でございますから十二年でございます。ただ、このほかに理工系の学生増募というものが大いに計画が進められておりますので、理工系の施設の拡充につきましては二年据え置き十五年、五分五厘で融資いたしております。そのほか中身で申しますと、災害復旧の場合の応急融資でありますとか、あるいは高等学校に対するものであるとか、あるいは学校の宿舎を建てるための融資であるとか、こまかいものがいろいろございますが、主体はいま申し上げました一般の校舎の拡充、土地の購入、それから理工系の拡充ということでございます。  それから、いままでの資金でございますけれども、出資で四十年度まで百三十一億でございます。四十一年度において十二億の予算要求をお願いして目下御審議をいただいておるわけであります。それから財政投融資につきまして、現在までのところ百六十億でございますが、四十一年度につきましては百九十億の要求をお願いして御審議を進めていただいておるわけでございます。
  66. 田村良平

    ○田村(良)委員 私立大学の施設費並びに研究施設に対します国が現在融資ないしは助成したもの、それが私立大学の要求いたします総額のどの程度ということがわかりませんので、後ほど資料をいただきたいと思います。  それではひとつ観点をかえますが、国立大学と私立大学の学生の数はトータルにおいてどういう比率になっておりますか。
  67. 天城勲

    ○天城政府委員 四年制大学の数で申しますと、三百十七校中、私立大学が二百九校でございますから六六%でございます。それから学生数で申しますと、八十九万五千に対しまして私立大学の占める率が六十四万六千でございますから七二・二%でございます。それから短期大学につきましては、三百六十九校のうち私立短期大学が三百一校でございますので八一・六%でございます。学生数で申しますと、短期大学十四万五千、そのうち十二万四千が私立短期大学でございますので、比率で八五・四%でございます。
  68. 田村良平

    ○田村(良)委員 承りますと、大学数にして三百十七校、うち六割六分を占める二百九校が私立、学生数で申しますと八十九万五千人で、このうち私立が七二・二%、六十四万六千人、これだけのはっきりした数字から申し上げますと、私立大学の育成あるいはその施設の充実について、少なくとも日本の最高学府を出られていく学生諸君、社会に出られましても、それぞれ民族の将来をリードする教養を身につけるべき、非常に責任の重い大学生だと思いますが、そういった意味から申しましても、私学に対しましてはできる限りの強力な助成と育成をして、少なくとも現在の日本の国家社会の先頭に立つこれらの人々の七割二分以上の学生を私立大学で育成しておるということは、国家、民族の文化事業から申しましても、私はきわめて意義が深いと思う。いままでは、つまり一高、東大秀才コースというので、中央官庁にはこういった方々がいわゆる特殊エリートのかっこうで入っておる。そういったことで官尊民卑という弊風がいまだに官僚組織の中にもしあるとするならば、私学軽視ではないかということを私自身が考えざるを得ません。国家の予算の割りにいたしましても、七割二分というような勢力を占めるグループに対しては十分な予算的措置が講ぜられるはずであります。私は、これだけの大ぜいを持っております私学の教育内容を将来充実することは、来たるべき日本の国家、社会の文化教養を高める上においてはきわめて重大であると思います。したがいまして、最後に文部省当局にお願いしたいことは、これからの私学の育成、助成は、従来のようにあなた方担当官が大蔵省の査定官と話をして要求をして、二割とか三割とか天引きされてしかたなく帰ってくるというのではなくて、将来の日本の教育文化の向上からいっても、国立大学は国民の税金の責任において、まるきり天と地の違いのようなありがたい恩恵に浴しております。しかるに、私学出身者でありましても、申し上げたように重大な社会の木鐸として働くのでありますから、この意味において、私はひとつ行政的な面から私学振興に対する強力な助成、育成対策をとってもらいたい。これについてどういうような御見解をお持ちか、承ってみたいと思います。
  69. 天城勲

    ○天城政府委員 ただいま数字で申し上げましたように、また先生御指摘のように、日本の高等教育におきまして量的な分野から見ましても七割からの分担を私学がいたしているということは非常に大きな問題でございまして、日本の大学問題を考えるときに国立大学だけを考えるということは当然許されない問題で、私たちもこの点は強く意識いたしております。これに対しまして国家の助成、公の助成が不十分だという御批判が非常に出ておりまして、数字的に見ましても、過去の実績から見ましてもわれわれもそのことを痛感いたしております。去年ちょうどやはり慶應の授業料の値上げ問題がございまして、同じようにいろいろ御意見が内外から出てまいったのを契機といたしまして、抜本的に私学の振興方策を考えるという前提で、去年の国会で臨時私立学校振興方策調査会を設置する法律の御審議をいただきまして、昨年の八月からこの調査会を発足させております。ここで私学の代表者、その他学識経験者にお集まりいただきまして、現在、私学の問題点、日本の高等教育に持っている私学の使命、こういうようなことから基本的な問題を検討いたしておりますので、私たち十分この調査会の積極的な御検討を期待すると同時に、必要な資料その他を調査会にも提供して目下鋭意検討中でございます。究極的にはこの調査会の御意見が出ることを期待しておりますが、この委員会は法律的に二年間ということになっておりまして、明年の六月までに検討を終わるという形になっております。しかし最近の事件から、この委員会が二年後では答申を出すのがおそいのじゃないかというような御意見も出ているくらいでございまして、さらに調査会にも審議について促進を期待しているわけでございますが、これらのものをあわせまして、私たちも今後私学の本質を十分踏まえながら、日本の高等教育における私学の立場を考えて、国の助成問題を前向きに、積極的に考えたい、こう考えておるわけでございます。
  70. 田村良平

    ○田村(良)委員 それじゃ文部省は終わります。  次に、この問題につきまして、警察当局に対する若干の御質問をいたしますが、私は原則として、大学の問題につきましては大学当局また学生自身で解決すべきだと考えます。それが残念ながら解決できなかった。それが非常に長く尾を引いて非常にもつれ、紛争が大きくなり、ついにやむを得ず警察官の導入をなされたということでありますが、機動部隊が逮捕に踏み出しましたリーダー格と申しますか、それは全部検挙されておりますかどうかお伺いいたしたい。
  71. 秦野章

    ○秦野政府委員 いま捜査中でございますので明確なことを申し上げられませんが、必ずしも全部が全部処理ができたという状況ではございません。
  72. 田村良平

    ○田村(良)委員 そうすると、当然逮捕に値する者で現在逃亡中の者がおるわけでしょうか。
  73. 秦野章

    ○秦野政府委員 おるわけでございます。
  74. 田村良平

    ○田村(良)委員 そういう問題につきましては、ひとつ適正な処置といいますか、私は明らかにしていただきたいと思います。  それからそれに関連いたしますが、先般のテレビを見ますと、早稲田大学の学生でない者が入っておるということでありますが、これはインチキ学生というのですか、早稲田の問題に名をかりてよそから入り込んできて、いかにも早稲田の学生が起こしたかのごとくしてとんでもない騒ぎを演じておるグループ、こういうスト屋と申しますか、こういうインチキ学生をどういうふうに処置されますか。またどこの何者が入っておるかということは明らかにされておりませんが、こういう点でひとつ明確におわかりのところをお知らせいただきたいと思います。
  75. 秦野章

    ○秦野政府委員 逮捕した者の中で、いままでわかっておる者は十数名でございます。なお、この問題は捜査中でございますので、これにつきましてはもう少し時間がかかると思いますから、お許しをいただきたいと思います。
  76. 田村良平

    ○田村(良)委員 私自身が外から見ておっておかしく感じますのは、共闘会議というものがありますが、この共闘会議については警察庁はどういうようにお調べになっておるか、あるいはどういうように見ておられるか。私の考えでは、早稲田大学の問題は学生諸君がクラス会を開いて真剣にこの学費の値上げについて討論をする、またこれを直接に支払います父兄が、はたしてこの学費の値上げはやむを得ないのかどうかということを真剣に考えるべきだと思いますが、そういう問題に対してよその学生が入り込んだり学生でない者が入り込んだりして扇動的な一つの闘争を展開しておる。それがもし共闘会議という名において行なわれるとするならば、学園の自由がすでにそれ自体乱されたということを考えてまことに残念に存じますが、共闘会議の正体は何でありますか。何のためにこういうところに入っておるかということをお調べになっておりますか。
  77. 秦野章

    ○秦野政府委員 犯罪捜査に関連して、私どもとしては、そういった事態がある程度わかるということでございます。  この共闘会議は、早稲田の学生の中の、いわゆる学生の自治組織の中でできておるものでありまして、共闘組織そのものにはほかの大学は入っていないのではないかと思います。ただ実際問題として共闘会議がいろいろな闘争を盛り上げるという段階において横の連絡といいますか、ほかの大学の学生諸君も、そういった会合とかいうものに入ってくるということはあるのではないかというふうに見ております。
  78. 田村良平

    ○田村(良)委員 私は現在七人勾留中と聞いておりますが、全部早稲田の学生でしょうか、家庭裁判所に十三人ですか送致したということでありますが、全部早稲田の学生ですか、他の者が入っておりますか。
  79. 津田實

    津田政府委員 現在勾留中の七名につきましては、一応判明しておるところでは早稲田の学生が五名、あと二名は他の学校の学生でございます。それから家庭裁判所に送致した者につきましても若干そういう者がおるようでございます。
  80. 田村良平

    ○田村(良)委員 早稲田の学生でない学生がこういう事件を起こした場合に、早稲田の学生が同じケースで逮捕された場合と、そうでない場合と、どういうような処置をされるのでありますか、参考に伺っておきます。
  81. 津田實

    津田政府委員 これは目下捜査中でございまして、犯罪事実そのものは変わっていないわけでございます。法律的に評価すれば変わらない場合もあると思いますが、そこにおりました、あるいは不退去あるいは侵入した事情というものにつきましては、まだはっきりいたしておりませんので、それらすべての情状を勘案いたしまして処分がされるというふうに考えております。
  82. 田村良平

    ○田村(良)委員 まだ捜査中でありますから、それ以上深く追いませんが、私は取り調べ当局にひとつお願いしておきたいことは、まじめな純真な学生運動というものは、社会が見る特権的に扱われている大栄生につきまして、その人権を尊重することは必然でありましょうが、このような事件に少なくとも早稲田の学籍のない人間が入っておるということは、早大紛争事件として一括されることは迷惑千万だと思います。したがいまして、取り調べ当局におきましても、この問題は、私は明確に国民に示してもらいたい。早稲田の学生の何年のだれがどうした、そして他の人間はどういう理由でこれに入っておったか、その入っておった関連、そういうものをこの際ひとつお調べの途中ではっきりしていただきたい。そうでないと、大学の自由とか学園の自治に名をかりまして、外部からの勢力が入って、いろんな問題の先頭を切っていくということについては、私はこれからの社会に巣立ちゆく大学生、それら全体の大きな迷惑にもなろうかと思います。そういった意味で、私はいま承ると、非常に遺憾であり、意外に感じますことは、早大紛争という名において、その紛争に名をかりて、ある意味の目的を達成せんがためよその学生がまぎれ込んでいるということは、私としては非常に残念でありゆゆしい問題であると考えます。したがいまして、ただいままだ黙否権を使っているそうでありますが、もってのほかのことであります。純粋な学生ならば、学生らしく言えばいい。一人前の黙否権なんかを使うということは、まことに常識ではわかりません。しかし現在捜査の過程でありますから、これ以上深くお尋ねすることは御迷惑と思いますが、大学の将来の明朗な学園生活を建設する意味におきましても、私はやはり信賞必罰、悪は敢然として排除してもらわなくてはならぬと思います。そうでないと、善良な学生が迷惑です。そういった意味で、私はいわゆる厳正なる取り調べをしてもらう、そして全貌を明らかにしてもらうということをお願いいたしまして、私の関連質問を終わります。
  83. 大久保武雄

    大久保委員長 神近市子君。
  84. 神近市子

    ○神近委員 私は裁判というもののあり方について少しお尋ねしたいと思います。  裁判というものは国民の良心の光でなければならないものだと思うのです。ところがいろいろ勉強してみますと、それが何か感情的なものが入ったり、あるいは利害が入ったり、あるいは情実が入ったりというようなことで、非常に曲げられているというような印象を与えられているのです。私は弁護士でありませんから実態というものはよく存じませんですが、訴追委員会、あるいは法務委員会というようなところで見聞したにすぎないのですけれど、今度の新しい法案によって人数がふえる、あるいは給料が上がる、手当が上がるというふうなことは、私自身としては裁判をよりよくするもとにこれがなるならば、私は個人としてはいいのかなというようなことを考えているのです。  第一にお伺いしたいことは、国民の人権というようなもの、いままでもずいぶん人権の問題が出ておりましたけれど、憲法の十三条とそれから三十七条の二項、これが裁判で一番基本的な考えを持ってやっていただかなければならないというのですが、この憲法の条項はどの程度裁判官というものは理解していらっしゃるのか、あるいはこれを頭に始終持って事に当たっていらっしゃるのか、それを教育というか、あるいは申し合わせというか、そういうものがあるかどうか、ちょっと伺わしていただきたいと思います。
  85. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 ただいま神近委員からお尋ねのございました点、裁判の基本に触れる問題であると心得るわけでございます。お示しのとおりの憲法の条文は、裁判の最も基本的な心がまえと申しますかあり方をうたっておるものでございまして、私ども裁判官あるいは裁判所に職を奉じております者は、日夜これを拳々服膺というのは非常に古いことばで恐縮でございますが、十分それを勉強いたしまして、その精神にたがわないように心がけておるつもりでございます。そして特段にそういうことについての何らかの指示というようなこと、あるいは教育というようなことをいたしませんでも、私どもが日常会議なり、会同なり、あるいは協議会なり、その他やっておりますことすべてそういう気持ちでやっておるつもりでございます。
  86. 神近市子

    ○神近委員 これは訴追委員会で一昨年だったか、弁護士それから大学の先生方、そういう方々をお呼びして御意見を聞いたんですけれど、この条項がいかにもありそうに思えますのでこれをちょっと申し上げますと、裁判官というものは、個人差はありますけれど、大体において非常に世情にうとい。忙しいからということもあると思います。昼書類を見て家に帰ってまたそれを見なくちゃならぬ、だから、世間に何があるかというようなことがあんまりわかっていないということ、それから頭のよしあしは別として、非常に感情的だということ、それから裁判にあたりまして、これは実例がありますけれど、これは他日法務大臣にお尋ねする案件ですからきょうは出しませんが、裁判をやるときに検事に引きずられることが非常に多いということ、それからエリート意識が非常に強いということ、人扱いが非常にまずいということ、それから汚職も思ったよりもあるというような意見が出ておりました。これは弁護士の考え方で、お名前もちゃんとわかっておりますし、それから訴追委員会に記録がありますからごらんになればわかる。私はちょっと一部をメモしただけで、エリート意識が非常に強いということ、そして世情にうといということ、それから正義感が非常にないということ、いまお話しの早稲田大学の問題を伺っていてもわかるように、経営者のほうの言うことはよく聞くけれど、正義感に燃えて何かやっているという学生は無視されるということで、よくわかるのですけれど、そういうような案件が列記されているはずであります。私はそういうような人が裁判をするということに非常に不安を感じるのです。国民の良識で、あるいは良心のシンボルでなければならないものが、そういうような考え方を持っていらっしゃる方が非常に多いということ、これは私はあなた方の官僚意識というか、あるいは同志意識というか、そういうものが非常に強いためにこういうことになるんじゃないかと思うのです。もう一つあとの質問がありますけれど、その点あなたは自分の部下を並べてみて、どういうようにお考えになりますか。それはないとあなたはおっしゃるでしょう。だけれど、実際にあると弁護士あるいはそのほかの学者方は見ているということはどういうふうにお考えになりますか。
  87. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 私ども裁判官に対しまして、たいへん手きびしい御批判を受けたわけでございまして、ただいま神近委員お話のいろいろな欠点といいますか、問題点につきまして、そのうち数点は私どももしばしばそういう批判を受けておる問題でございます。たとえばその中の典型的と申しますか、世情にうといということは、実はこれは少しあれでございますが、戦前、裁判官化石論というようなものがございました。これはいろいろ問題になったケースでございますが、つまり裁判官というものはたいへん世情にうといものだというようなことを議論され、そうしてまた実際においてそういう点を私どももある程度認めざるを得ない。この点は、実は臨時司法制度調査会等でも相当議論になりました点は、坂本委員等よく御存じのところでございますが、一般に裁判官は世間知らずだといわれるわけでございます。これはしかしながら一面では美点といってはおこられるかもしれませんけれども、つまりわれわれがあまりいろいろな人とつき合う、そういたしますと、そこで何か不正をやっているのじゃないかという誤解を受ける。そういう点で実は昨日の委員会でもちょっと私申し上げたわけでございますが、裁判というものは公正であるだけでは足りないので、公正であるという信頼を得なければならない。これはいろいろ報告等を聞いておりますと、たとえばいま同期生で裁判官と弁護士とが一緒に車に乗った。それをたまたまその事件の関係の人が見て、あの弁護士とあの裁判官とはなれ合いじゃないかというふうに投書をしてきたというようなケースが間々ございます。これは全然そういうことはないのですけれども、たまたま同じ車に乗ったということから誤解を受けたわけです。そういうことになりがちでございますから、どちらかと申しますと、私は平生は弁護士さんと一緒に飲んだりなんかいたしておりますけれども、その弁護士さんの事件が私なら私の法廷にかかりますと、そのかかっております間は一切酒の席をともにしない、あるいは車を同じくしないというくらいに気をつけておるわけでございます。そういうことがひいては世情にうといということをいわれるもとをなしておるのではないかということでございまして、これは実にかね合いのむずかしいところであろうと思います。しかし結論的にはある程度世情にうといということを認めざるを得ない面はあろうと思います。  それからまた、たとえば人扱いがまずいというような点も、あるいは若干認めざるを得ない点もあろうと思います。しかしながらそれ以外の、たとえば汚職があるとか、あるいは正義感がないとか、あるいは検事に引きずられるとかいうようなことは、私どもとしては全くいわば心外な批判と感ずるわけでございまして、常に私どもとしては最も公正に誠実に仕事をしておるというつもりであるわけでございます。  なおそのほかの、たとえば感情的ということはどういう場合のことかよくわかりませんけれども、あるいはそういう人も中にはあるかもしれませんが、一般的にはどちらかというと裁判官というのは理知的な人間が多いので、感情的であるよりはむしろ理知的、理屈っぽい方が多いのじゃないかという気持ちもいたしますが、これも御批判として十分反省いたしたいと思います。  それからエリート意識というような点も、これはあるいは何と申しましても社会全体から見れば一応学問もやり、試験も通っているというようなことで、おのずからそういうプライドがエリート意識に通ずるのかもしれませんので、そういう点も十分心得て慎まなければならないと考えておるわけでございますが、そういう点についてもし具体的なケース等で御批判を受けるべきものがございますれば御指摘をいただきたいと思うわけでございます。  それからなお最後に、お話のございました官僚意識ということでございます。これもしばしば問題になる点でございますけれども、官僚的というのはどういうことかということをよく弁護士さんなんかとの話し合いの機会にも申し上げるわけでございますが、たとえば弁護士さんの場合は、いわば事件さえふえれば収入もふえるという面がございます。それに対して何といっても役人でございますから、お上、つまり政府、国家から月給をもらう。その昇給というものは一定の基準で段階的に上がっていく。そういう点は確かに官僚的になっております。また全国に裁判所がございますから、方々の任地へ赴任しなければならない。その場合に、むろん絶対にそれに従わないことが、できないというわけではございませんけれども、全体の体制を考えればやはり北海道にも赴任しなければならないし、九州にも赴任しなければならない。そういう点では他の自由職業者と違って官僚的な面を持っております。しかしいやしくも事裁判に関しましてはわれわれは常に自由に発言しておるつもりでございまして、そういう結果がともしますと――たとえば私どものような者は、現在まさに官僚と申しますか、事務組織でございますが、こういうところへ参りましても、どちらかといえばほかの省の局長、課長、あるいは事務官というのと違いまして、課長でも平気で局長にものを言う、事務官でもどんどん局長に議論をふっかけるという点は、むしろ官僚的でなくて非常に自由であり、場合によってはそれがあるいは統制を乱すおそれがあるのではないかと懸念されるほど、はつらつと議論しておるというつもりでございます。しかし、その点もいろいろ御批判を受ける面はあると思いますので、十分拝聴いたしまして今後の指針といたしたいと考える次第でございます。
  88. 神近市子

    ○神近委員 その官僚意識というのは私がちょっと言い間違ったかもしれません。同志意識のことです。たとえば再審の問題があって、自分の知り合いの人が判決を下した場合、それをやり直すということはほとんどできないというようなことが世間にいわれているのです。これはあとで再審の問題を申し上げますからそのときに出ると思うのですけれども、ともかくそれは私ども政党の仲間のことを何か言い立てるということとは違いまして、裁判ですから、どうも友だちが間違った裁判をしているというときならどうしても勇気をふるってそれをやり直すということをしなければならない。ところが絶対にそれはないのです。これは再審の問題になりますけれども、それを何とか打破するということをお考えにならなければならないということです。  それから年代的にどういう年代が――大体終戦前の人はいないでしょう。その後の年齢の組み合わせばどういうふうになっていますか。
  89. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 同志意識ということでございますが、これも外部から御批判を受ければ、あるいは裁判官同士親しくしているというような面もあろうかと思います。しかしながら、それによって裁判の内容影響を与えるというようなことはごうまつもないというふうに私どもとしては確信いたしておるわけでございます。いずれ再審問題の御質問があるということでございますが、再審問題についてはかねがね神近委員からたびたびお話を伺っておるわけでございますけれども、再審については法律相当厳格な要件がございます。なぜそういう要件があるかということはまた順々にお尋ねでもあれば御説明も申し上げたいと思いますが、どこの国の法律でも再審ということについては相当厳格な要件がございまして、そう簡単に審査が通らないような仕組みになっておる面があるわけでございます。そのこと自体にもいろいろ議論はあろうかと思いますけれども、そういう点から再審が立つ事件というのは比較的少ないわけでございますが、それも絶無ではございません。数件はあるわけでございます。そういうことでございまして、その点はあるいはあとで御質問があれば御説明申し上げたいと思います。  最後にお話のございました年齢層でございますが、これは御承知のとおり判事の定年は一般的には六十五歳、最高裁判所と簡易裁判所が七十歳ということになっております。したがいましていま一番先輩の高等裁判所の裁判長クラスは、六十四なり六十三、つまり六十五に近い方が相当おられるわけでございますし、地方裁判所にまいりますれば、大体五十前後からそれより若い方というようなことでございます。そしてこれは大体においてまんべんなく各年齢層に広がっておりますが、ただ戦争等の関係で非常に減りました層は若干少のうございますが、一般的には大体六十五から三十前後のところまで広がっておる、こういう形でございます。
  90. 神近市子

    ○神近委員 そうすると、若い人が、地方裁判所、それからだんだん上がっていくようになっておるのですか。それから判事と検事との年齢の差、そういうものがありますか。
  91. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 まず、上がっていくかどうかという問題でございますが、これはある程度複雑でございまして、つまり、高等裁判所の裁判長と地方裁判所の裁判長と比較いたしますれば、大体において高等裁判所の裁判長が先輩でもあり、年長者でもございます。しかしながら、高等裁判所は三人で構成をいたしますが、われわれ俗に右陪席、左陪席と申しておるわけでありますが、その左陪席の方は判事補の方もおられますし、判事も非常に若い方がおられるわけです。そういう方がまた次いで地方裁判所の裁判長になられるというような、一般的にはそういうことでございます。そしてまた、これも東京といなかと申しますか、地方のほうとでは、相当年齢層も事実上は差があるというようなことが実情でございます。  それから判事と検事の問題は、法務省刑事局長おいでになりますから、あるいはそちらからお答えいただくのが筋かと思いますが、便宜私のほうから一言申し上げますれば、検事さんは定年が六十三というふうに承知いたしておりますので、そこに終着点のところで二つばかり差があるわけでございますが、それ以外のところは大体まんべんなく広がっているという点では、そう差がないのではないかと心得ておるわけであります。
  92. 神近市子

    ○神近委員 同志の裁判したことをやりたがらない、あるいはやらないというのは、ここで再審制度小委員会ができたときに、後藤さんという人が言っているのですけれど、吉田石松事件ですね。あれを取り上げた、裁判長は小林登一、それから判事は成田薫、斉藤寿という人、三人がおりますね。この小林という人は裁判が済むとすぐに弁護士になっていますよ。結局あれは五十年も再審を願っていて、この人は人道的な気持ちからあれを取り上げて無罪にしてくだすったと私は思うのです。五十年ですよ。それを見かねてこの人は裁判をやった。裁判をやると結局いづらくなったということじゃないですか、弁護士におなりになったということは。これは私の推測かもしれませんよ。たけれど、私もこのごろいろいろなものをたくさん読んでみると、裁判のあり方というものは、私は次官もぜひ御研究願いたいと思うのですけれど、大臣にもこの間、お願いするつもりで、いろいろいま資料を提出しておいたのですけれど、吉田石松の裁判をして無罪にした。そうすると、全国の国民から感謝のはがきがいっているようです。そして正しいことを求めるというような詩だの歌だの書いたものが返事にきているのを見せてくれた方があったのです。私はこの一例を見ても、いまの裁判のあり方について、国民が不安、あるいは不満を持っている、そしてたった一例でもあれが出たということに国民があっというような気持ちを持っていたということがわかると思うのです。これはどうお考えになるか、小林さんがおられなくなったか、あるいは北海道かどこかへやられたんじゃないですか、裁判のあとで。
  93. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 神近委員お話しの、同僚意識、あるいは同志意識で、同じ裁判官のやった判決はくつがえしたがらない、なるべくなら維持しようとするということでございますが、これは再審の問題まで参ります前に、すでに上訴の問題で同じことがあり得るわけでございます。つまり、簡易裁判所なり地方裁判所でやりました事件を、高等裁判所でひっくり返すかどうかという問題があるわけでございます。そしてこれは御承知のとおり、かなりな取り消し率といいますか、ひっくり返しておるわけであります。そういう場合に、われわれむろん、地方裁判所の判事のときに、高等裁判所の判事とも非常に親しい人がおられますから、一緒に酒を飲む場合もないとはいえませんけれども、そういう席でも、いやしくも自分のやった裁判のことにはお互いに触れないというのが裁判官同士の仁義、というとこれはことばが古うございますが、心がまえでございます。裁判官弁解せずというのは、決して部外に対してだけでなくて、部内に対しても励行されておりまして、お互い親しい裁判官同士でも、自分のやった裁判については話し合わない。したがってまた、高裁でそれがひっくり返っても、そういうことは淡々としてやるというのが、これが裁判官同士の心がまえでございまして、また事実そう行なわれておるわけでございます。たまたま再審のほうは、法律上の要件が非常にかとうございますから、なかなか再審の立つ事件は少のうございますが、控訴でひっくり返り、上訴でひっくり返るということは、神近委員御承知のとおり、しばしばあるわけでございますが、それは同志意識がないということの一つのあらわれではないかと私どもとしては思うわけでございます。  それから、なお小林裁判官の問題でございますが、お話しの小林登一判事、あるいは成田薫判事、斉藤寿君、いずれも私、個人的にも非常に親しい方ばかりでございますし、その関係で、私、直接の責任者ではございませんが、ある程度存じあげておるわけでありますが、小林判事は弁護士におなりになったのではありませんで、前々からいろいろ御希望もありまして、公証人におなりになったということでございます。公証人というのは、結局法務省のほうの御命令でそういうポストにつくわけでございますが、そういう一つのある程度の公の地位、弁護士さんももちろんそうでありますが、より一そう公の地位におつきになったということでございまして、弁護士さんにおなりになったわけではないわけであります。そしてまたその動機は、別にあの事件とは直接にも間接にも関係がない、全く一身上の御都合というように承知しておるわけでございます。
  94. 神近市子

    ○神近委員 それはあなたの立場ではそうおっしゃるでしょう。だけれど、第三者的な公平な考え方をすれば、なるほどいづらくなったというようなことは、これは、何とあなたがおっしゃったって、それこそ民衆の間の直観です。だから、それは幾らことばをお使いになっても、私たちはあり得ることだなというほうの感じ方が強いわけです。  それで、いま再審の問題をお出しになったのですけれど、ずいぶんだくさん再審が出ているようですけれど、三十七年の再審が全部で九件のうち七件が無罪になっているというのが出ている。それはその後はずっと減っていきます。無罪になったのは三十七年が一番率が高くて、あとは減っていくということは事実であります。それはあなたの書類にも出ているでしょう。だけれど、この九件取り上げたうちの七件が無罪になったということは、そのあとの再審があまり親切でなかったというような批判も出るわけなんです。三十七年はよくおやりになったために七件の無罪が出たということになるんじゃないかと思うのですけれど、その再審の問題で一番私どもがいま頭にくるのは、決して取り上げないということです。再審法を読んでごらんになれば、あなた方の解釈のやり方が非常に窮屈なんです。それこそ親切が欠けているということ、そのために再審は――ごらんなさい、大逆事件の坂本清馬というのは何十年間再審を願い出て、もう九十歳近い人が一生懸命やっている。そういうときに、少し人間的なものをあなた方はお持ちになることができないのかどうかというように考える。再審が排撃された近い例は徳島のラジオ商殺し事件でしょう。あれをここで森本さんがお話しになった事実を考えると、調査に行っていろいろな妨害が行なわれたということをお話しになっております。委員会でお話しになったことだから私はうそだとは考えない。そういうようなことを考えると、再審の問題は刑訴法を早く改正していただかなければならないので、それをみんな期待しているわけですけれども、その前にも解釈のしかたによって国民の利益、あるいは正義の立場から、もうちょっと考えることはできないかということが、私があなたにお尋ねしたいことです。私が感情、あるいは仲間の情愛というようなことを言うのは、この再審の問題がずいぶんむずかしいからであります。
  95. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 いやしくも無辜の者を罰してはならないということは刑事裁判の大原則でございます。そのことは、かりに判決が確定した後におきましても同様でございまして、私どもとしてはそういうものがあります場合に、それを救わなければならないということは当然の心がまえとして持っておるわけでございます。ただ先ほど来お話のございました再審の具体的な件数なり事案ということになってまいりますと、実は冒頭にも申し上げましたように、再審の現在の規定からまいりまして、その適用を受けるケースというものが実際上非常に少なくならざるを得ない立法になっておるわけでございます。その解釈が間違っておるという御指摘でございますが、これは民事と刑事で少しずつ違いますけれども、たとえば刑事におきましても前の判決の起訴証拠になった証拠書類や証拠物が偽造であったということでは再審の要件にはならないので、偽造であったことが確定判決によって証明されたとき、こういうしぼりまでかかっておるわけでございます。したがって、そういう要件がございませんと再審を開始することができないという規定になっておるわけで、これはおそらく解釈でも確定判決によりとなっているのを判決がなくてもいいのだというふうには読めないわけでございます。したがってそれならそれを改正するかということで、そうなってまいりますれば、それは法務省なり国会の問題でございますが、現在の法律ではそうなっておるわけでございます。それにもかかわらず再審で救われるものが若干ございますのは、実は略式命令の事件が大部分でございます。民事のほうでは再審が立ちます事件が非常に少ないのでございますが、刑事のほうで先ほど来御指摘の数件ございますのは、大部分が略式命令の事件でございまして、したがって、これは決して年代なりあるいは裁判所によって適用が甘いとか、からいということではございませんで、年代にかかわらず、あるいは裁判所にかかわらず、略式命令の事件についてはわりあい再審の立つ可能性が多いが、一般の判決については比較的少ないというのが実情でございます。そういう点は、むろん私どもとしても立法論あるいは運用論を通じまして将来とも検討し、そして人権保護に誤りのないように努力しなければならないことは神近委員お話しのとおりでございまして、絶えずその点の検討を重ねておるわけでございますが、現在のところはそういう実情でございます。
  96. 神近市子

    ○神近委員 ともかく、この間司法研修所の鈴木さんが、社会党の言うことは三百代言のようなことを言うじゃないかということをおっしゃった。まあお取り消しになったけれど、言ったことは事実ですよ。腹にあることがちょっと出たので、取り消したほうが三百代言なんです。その腹がおありになるから私どももこうやってお尋ねするわけです。いまの確定裁判で偽証であるということがきまらなければ再審を許さないという問題ですけれど、この間、ラジオ商殺し事件のあの子供たちを起訴してくれといって願い出ても起訴なされなかった。それは再審をいやがるからでしょう。あの和歌山の刑務所に入っておる女の人の無罪を立証するために、その証言をした少年たちを裁判してくれといって願い出てもお取り上げにならなかった。私、そういうところがとても変だと思うのです。まあ問題をたくさん持っておりますが、時間がちょっと過ぎましたから、また大臣にもお願いしてみたいことをかかえておりますので、別の日に御質問しようと思いますが、今日はそういうことで、裁判のあり方についてどういうようにお考えになっているか。それから私どもの要望としては、また三百代言的と言われるかもしれませんが、ともかく大岡越前守を考えていただけばいいのです。知能だけでなく、人間的なものを多分に持っていた人で、名裁判官と言われる歴史的な人なんです。私はみんなが大岡越前守になってほしいとは言わないのですけれど、少なくとも憲法にうたわれている人権の問題は、もっと尊重していただきたいということです。そしていま申し上げたとおりに、裁判官あるいは検事についての批判がたくさんございますので、部内の教育、あるいは再認識するような機会というか、そういう教育的効果をぜひお願いいたしたいのでございます。
  97. 山本利壽

    ○山本(利)政府委員 ただいま神近委員からいろいろ御発言がございまして、正しい者が勝つように、また裁判官も人間でございますから、そのときの事情によっていろいろ判定に誤りがあったような場合には、再審が行なわれて、それが正しく判定されるように、特に先ほど来のおことばから、裁判官というものがとかく世情にうとくて、ほんとうに血の通った裁判のできないようなことがありはしないか、また同僚意識から、一度きまったことはくつがえしにくいのではないかといったようなお気持ちの御発言のありましたことは十分私も了承いたしまして、全部がそうだとは私は思いませんけれども、再審でたくさん無罪になる判決が出たのが、必ずしも正しくない場合もありましょうが、ほんとうに再審でやはりこれは犯罪であるということが明瞭であれば、そのとおりの判決になるのが正しいことだとは思いますけれども、いまの法を扱う者も、人間社会の秩序を維持するという意味において、血も涙もある扱いをすべきだという観点については全く同感でございますので、きょうは神近委員は大臣から直接のことばをお求めになっておられたと思いますけれども、他の会議に出られまして私がかわって参りましたが、そのお気持ちはまた伝えます。やはり法は正義感に基づいて正しく扱われるべきものである、そういう方針に立って、法務省に勤務しております者、あるいはまた裁判所に勤務しております人々にも指導が必要だということも十分に了承いたします。
  98. 大久保武雄

    大久保委員長 次会は来たる八日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十一分散会