○新谷
政府委員 ただいまの御質問は夫が韓国人でない朝鮮人で、その妻子が日
本人の場合にその国籍
関係はどうなるかという御質問でございます。これは
法律問題としましても、また実際上の取り扱いとしましても、私
ども事務担当者としましては非常にむずかしい問題でございます。いろいろ配慮を加えておるつもりではございまするけれ
ども、いろいろな矛盾があるいはお気づきになるかとも思うのでございます。そこで、これをまず理論的にこうなるということをひとつ申し上げてみたいと思うのであります。
夫が韓国人でない朝鮮人、端的に言いかえますれば、北鮮の人ということになるわけでございます。北鮮には北鮮で、やはり韓国と同じようにその地域に行なわれております国籍法規というものがあるようでございます。これは私
どもまだ正式に確認はできませんが、非公式に私
どものほうで入手いたしております資料によりますと、北鮮の国籍法によりますと、韓国の国籍法とはだいぶん
事情が違っておるわけでありまして、たとえ北鮮の人が外国人と婚姻いたしましても、ことにその妻が外国人の場合に、当然にその外国人が北鮮の公民資格を取縛するということにはなっていないわけでございます。この点が韓国の場合と非常に大きな違いであろうと思います。韓国の場合でございますれば韓国人になるのでございますけれ
ども、北鮮の場合には、日
本人の女が朝鮮人と婚姻いたしましても、
法律上は北鮮の公民資格は取得しない。したがいまして、その場合にあくまでも日
本人としてとどまるということになるわけでございます。しかし、その北鮮の国籍法規によりましても、帰化に相当する処分があるようでございます。申請すれば許可を受けて北鮮の公民となることができるという規定がございますので、その手続を踏めば向こうの国籍を取得する。そうなりますと、日本の国籍法上、
自分の志望によりまして外国の国籍を取得した場合に該当いたしますので、そういう場合には日本の国籍も当然失ってしまう、こういうことになるわけでございますが、しかし、実際問題として、そういう手続がとれるかどうかということが、まず第一に問題でございます。
それから、ただいま申し上げましたように、婚姻というものは、これは国際私法上の問題でございまして、一応国籍法規とは
関係なしに、北鮮人が夫でありますれば、向こうの法規によって婚姻が行なわれるわけでありまして、行なわれました結果、依然として日
本人であるということになりますと、先ほど申し上げましたように、これは日本の単一国籍でございます。これは日本の国籍が離脱できないわけでございます。日本の国籍法上は、二重国籍を持っております場合に、日本の国籍を離脱できるということになっておりますので
法律論から申しますならば、ただいまのような場合には国籍の離脱が許されないことになるわけです。しかし、せっかくそういった人と婚姻して北鮮国籍を取得したい、こう言っている人でございますので、そこのところを何とかうまい理屈はつかないかというので、
事務当局としましてはいろいろ腐心をしたわけでございます。そこで、ただいまのように、特にこれは北鮮だということを明確にされますと、理屈の面から言いますと国籍の離脱はできなくなりますので、私
どもの実際の扱いとしましては、そこは区別しない。朝鮮人ということでもう少しおおらかに考えてみたらどうか。せっかく国籍を離脱して北鮮へ行きたいという人があるわけでございますので、これについては南北というふうなことをそれほどせんさくしないで、おおらかに考えてもいい。同時に、その先方の国籍法規はどうしたらいいかということになるわけでございますが、北鮮だということを言いますれば、北鮮の国籍法規ということになるのでございますけれ
ども、そこは一応目をつぶってし、まおうということになりますれば、韓国の国籍法規が適用があるものだと一応こちらで観念いたします。そういたしますと、二重国籍になっておるような形になるもんですから、それなら日本の国籍の離脱を認めましょう、こういうことになるわけでございます。ただしかし、韓国の国籍法規によりましても、先ほど御説明申し上げましたように、六カ月という問題があるわけでございまして、六カ月以内に日本の国籍を離脱いたしませんと、向こうの国籍を失ってしまうという矛盾が出てくるわけでございます。そこで本来ならば、北鮮の国籍法によれば国籍の離脱はできないのでございますけれ
ども、便宜そういうふうに考えまして、離脱ができるようにという扱いをしておるわけでございます。この扱いの中で、たまたま韓国の国籍法に六カ月というあの問題がひっかかってまいりますので、その場合にはこれはいかんともいたしがたい。むしろ北鮮の人と婚姻いたしました日
本人女子につきましては、そこまで私
どもとしては有利に解釈して取り扱いをしておるつもりなんでございますけれ
ども、六カ月という問題がある以上は、これは北鮮の人でありましょうとも、あるいは本来の韓国人と婚姻いたしました者でありましょうとも、い
ずれにいたしましてもこれは
法律上不可能になるのではないか。もともと北鮮の人については、理屈の上では国籍離脱ということは認められないということになりますので、そこは私
どもとしましては、扱い上は
本人の希望、あるいは
立場を十分考慮してやっておるつもりではございますが、ただ六カ月というのがいかにも目につくように御理解なさるのじゃないかと思うのでございますけれ
ども、それはそういう趣旨ではございません。ただいま申し上げましたように、これは本来理論上は不可能なことじゃないかと思うのでございますけれ
ども、そういう扱いをしておるということをひとつ御理解いただきたいと思います。