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1965-12-23 第51回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十三日(木曜日)    午前十一時九分開議  出席委員    委員長 濱田 幸雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君 理事 横山 利秋君       唐澤 俊樹君    小金 義照君       四宮 久吉君    濱野 清吾君       井伊 誠一君    神近 市子君       長谷川正三君    田中織之進君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         法務政務次官  山本 利壽君         検     事         (大臣官房経理         部長)     勝尾 鐐三君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         検     事         (矯正局長)  布施  健君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      矢崎 憲正君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局給         与課長)    武居 二郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      岩野  徹君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第五号)      ————◇—————
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより会議を開きます。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。桃山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 久しぶりに本委員会大臣をお迎えをしたのですけれども、私は実は御存じのように前国会であなたの不信任の提案理由を行ないまして、残念なことに私の提案が一体どうなっておるのかわけがわからぬのです。わけがわからぬうちに、大臣法的地位もわからぬうちにこれから質問をするというのは、まことにどうもおかしなことでありますが、しかしそういう気持ちを持っておることを、私の提案がまだケリがついていないことを御承知の上に、ひとつ十分心していただきたいと思うのであります。  四十一年度予算に関連をいたしまして大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、本委員会はしばしば最高裁並び法務省関係予算が他の経済庁予算に比べますと、金額としてはもちろんでありますけれども歴代予算折衝の中においてまことにボリュウムがない。そして、いろいろ説明を承る数字も何百万円とか、まことにみみっちい数字が羅列をされて、しかもその項目はきわめて重要事項に書いてある。まさに重要事項には違いはないけれども、私は大蔵その他の委員会を回ってまいりまして、本委員会でこの数字を見まして、まことにさびしい気がするわけでございます。現在はまだ予算要求段階でありますから、特に大臣に要望をいたしたいのでありますが、過ぐる国会におきまして、歴代大臣のうちで、その経歴、閲歴、それから、申せば派閥の関係等からいって、最も大ものな大臣を法務大臣として迎えた今日において、一番最初にあなたがこの明年度予算に取っ組まれる御所信のほどを伺いたいのであります。  かつて私は、こまかい事例ではありますが、人権問題をとらえ、あるいは同僚諸君がそれぞれその専門をとらえまして、いかに法務省最高裁関係予算が少ないものであるかということは口をきわめて言うておるのであります。説明を受けておりますこの概算要求それ自身につきましても、決して十分だとは私は思いません。思いませんが、歴代要求と、それから決定との経過を見ますときに、この予算をもってしてもずたずたに切られるのではないかということを感ずるわけであります。そういう意味におきまして、お差しつかえない範囲でけっこうでございますが、現在の予算折衝経過並びに大臣所信のほどを伺いたいと思うのであります。
  4. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまお話しになりました来年度予算の問題に関連して、法務省予算がいかに少ないかという問題、これは私もかねてからそういう感があるのでございますが、中に入ってみますと、もっと予算をつけてもらってもいいのではないかと思うものがたくさんあるわけでございまして、今度の予算要求にいたしましても、非常につつましやかな要求と申しますか、非常に遠慮深い要求のように思うのでございます。大蔵省のほうと申しますか、政府方針が、今度は収入が非常に詰まっておるという状態で、支出をできるだけ控えるというような心持ちもありますので、それの心持ちを含んだ点もあることでございますが、しかし、やらなければならぬものは、せひやらなければならぬということは当然でございます。私どもは、いま要求しておりますものは、できるだけこれを通してもらうということで、大蔵省との折衝を、いま事務段階においての話を進めておるわけであります。私と大蔵大臣の間では、もう少しいたしまして、一番先に話を進めようということに話はいたしておるわけでございます。まだ補正に追われておるような大蔵大臣の忙しさの状態でありますから、話が進む段階に至っておりませんが、補正が済み次第、迅速に話を進めていきたい、そうして、できるだけのことをいたしたい、こういうふうに思っております。
  5. 横山利秋

    横山委員 一、二の例をあげて聞きたいのですが、まず最高裁に聞きます。  私の承知したところによりますと、四十年度の、たとえば人員要求はたしか八百名ぐらいだったと思うのです。それがたしかゼロですね。何か簡易裁判所判事の十六名かなんかの増員が認められただけであって、あとは全部ゼロであった。それで本委員会は、何をしておったかといってずいぶんおこったわけであります。それに比べますと、本年度要求は昨年と比べて少ないような感じを受けるのですが、正確に言って、四十年度人員要求は何名で、実績はどうだった、本年度要求は何名であるか、それをひとつお聞きしたい。
  6. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員からお話のございました昨年度要求と本年度要求定員関係の問題でございますが、ただいま横山委員からお話がございましたように、昨年はかなり大きな数、千人程度の数を要求いたしまして、遺憾ながら簡易裁判所判事十六人ということにとどまらざるを得なかったわけでございます。昨年そういうことになりました原因は、これはいろいろございまして、むろん国家財政の全般的な考慮というようなものもございますけれども、同時に一番大きいと申しますか、私どもで考えておりました施策一つとして、臨時司法制度調査会意見に基づきまして、簡易裁判所事物管轄拡張して、そうして簡易裁判所判事なり、簡易裁判所書記官増員する、こういう施策を臨司の意見に基づきまして実施する予定で、予算要求もいたし、法案としても準備いたしておったわけでございますが、これが弁証士会等関係その他で今後なお一そうの検討を要するということで、これに関する施策が行なえないというようなことになりましたことも、予算要求に対して増員が不十分であったことの一つ原因でございます。むろんこれがすべてではございませんが、一つ原因でございます。  そこで、本年度でございますが、本年度におきまして、その後引き続き、これは法務省はもちろんでございますが、さらに、日本弁護士会連合会等ともこの事物管轄拡張等の問題もお話し合いを進めている段階でございまして、最近におきましては、弁護士会においていろいろな面においてかなり話し合いが順調に進んでおります。これはごく一例を申し上げますれば、たとえば司法修習委員会というようなものについても近く発足できるような見通しになってまいっているわけでございますが、遺憾ながら、先ほど申し上げました簡易裁判所事物管轄拡張ということにつきましては、まだその規模あるいはやり方等について話し合いができておらないわけでございます。そういう関係で、たとえばそういう簡易裁判所事物管轄拡張に伴う簡易裁判所判事九十人あるいは書記官二百七十人の増員というものは、今度の予算においては要求できないことになったわけでございます。そういうことも一つ原因で本年度要求数が昨年より下回っておりますが、これは今後とも十分弁護士会等とも話し合いまして、そうしてそういう施策を実現する方向に努力いたしたい、かように考えているわけでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 法務省関係で伺いたいのでありますが、一例をあげますけれども、先般九州地方新聞宮崎少年院長が、おれのところの少年院はもう収容施設が一ぱいであるから少年院送りはやめてくれぬかというて関係家庭裁判所等へ手紙を出したという話を伺ったのでありますが、もしそうであるとするならば、少年院長のやったこともきわめておかしいことだと思うし、また、事実そうであるならば、この少年院——この要求を見ますと、関係人員は増加の要求が出ておるようでありますが、少年院施設については、施設整備充実の中に出ていないという感じがいたします。宮崎少年院の問題は新聞に出たから御存じだと思うのですが、それが事実であるか。なぜ少年院がそういうことになってくるのか、御説明を伺いたい。
  8. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 宮崎の件は私も承知いたしております。御承知と思いますが、少年院収容定員でございますが、予算上九千二百名という数を踏んでいるのでございますが、全国的に収容の現状を見ますと、おおむね一万名前後という状況になっているわけでございます。ただ地域によりまして、いわゆる収容対象少年の、施設に比較いたしまして多い施設と少ない施設というのが、現実問題としてあるわけでございまして、これをいかに解決するかということにつきましては、少年院配置自体について全国的に再検討を加える必要があるのではないか。なお、その検討結論が出るまでの間におきましては、その近辺の少年院を総合的に調整をとって現場の急をしのいでいきたい、このように考えております。  なお、少年院につきましては、その教化活動内容充実いたしたいということで、来年度は特に寮の担当教官、これは二十四時間じゅう少年と接するわけでございますが、寮の担当教官増員を八十一名と職業補導教官増員を三十四名ということで、こまかい処遇の充実をはかってまいりたいと考えておりますが、施設面の全国的な調整につきましては、再検討を進めているかたわら、地域別過剰少年院と余っている少年院との間に何らか調整をとりたい、このように考えております。  なお、施設につきましては、御承知のように、ただいま申されましたように、少年院施設少年法ができました当時、旧軍の施設等を手に入れてやったものが多くて非常に不備であるということは、担当者といたしましても十分これを承知いたしまして、頭を悩ましているわけでございますが、来年度におきましては、刑務所関係もさることながら、少年院施設の改善について担当者といたしましては、重点的に各種新営等の費用を振り向けまして、強化をはかっていく、このような決意でおります。
  9. 横山利秋

    横山委員 世間に与えている影響は、あなたの説明と違って、少年院満員だからおれのところへ送ってくれるなと言うことによって、家庭裁判所の審決を左右をしておる、そういう感じを与えておるのです。庶民は、ばかなことだ、少年院満員だから少年院送りを、おれのところへ送るのをやめてくれ、別なきめ方をしてくれ、そういう印象新聞によって、九州はもちろん、他の地方にも与えておるのです。あなたのほうは、あちらが満員だからこちらへやるということであるなら、何も宮崎少年院長が余分なことを言わなくても、あなたがやればいい。法務本省でやればいい。宮崎少年院長がどういう文書か、公式文書かかってな文書か知りませんが、そういうことを出すこと自身がそういう印象を与えてもやむを得ないところであって、これはもう根本的に考えると同時に、宮崎少年院長のとった態度も私はよくないことだと思う。  それから、大臣に聞いておいてほしいのですけれども、この法務省要求の中に「登記事務適正化迅速化」ということがあります。この説明を見ますと、全くもっとも千万で「登記等事件は激増し、職員事務負担量は限界を超え、部外応援年間四十九万三千人の多きにのぼり、その結果、国民に対して不当な負担と不便をかけることとなっている」とある。これだけ知っておれば言うことはないのですけれども、ごうごうたる非難ですよ。区役所に行けば印鑑証明は二時間かそこらでくれるのです。ところが、登記所に行きますと、法務局に行きますと、全くごった返すようなことで、もう日にちがかかって、そうしてもうつっけんどんだという意見はまさに天の声、地の声です。どうして今日までこんなにほかっておくのか。法務省が一番民衆と接触するところはこの登記事務なんですね。しかも最近非常に激増しておる。ここに書いてあるとおりです。非常に激増しておるのですが、役所の中で一番渋滞し、一番不便して、一番サービスが悪いと言われておるのはここです。私は、職員諸君をおこる気持ちはありません、だって、これだけの仕事解決区役所のように一時間、二時間でできるはずはないのですから。これは職員諸君は気の毒だと思うが、どうしてここまで放置しておくのか。本年の要求を見ますと、事務官六百八十四名、事務能率器具整備費とありますが、六百八十四名が一つのところに何人になるか知りませんが、この六百八十四名も要求するほどいまごった返しておるとするならば、いままで一体どうしておったのか。なぜこんなことをほかっておったのか。われわれは、裁判所のことも確かに問題になっています。けれども国民がいま一番法務省と接触するところはここなんですからね。ここが一番ウィークポイントになっておるのです。大臣はそれは御存じでございましょう。これは何としても、ここは民衆サービスのために解決をしなければならぬめどだと思うのです。御意見を伺いたい。
  10. 石井光次郎

    石井国務大臣 いま少年院の問題からお話がありましたが、全般的についてのお話、私もそういう点がありはせぬかと少し心配もいたすわけでございまして、たとえば登記関係仕事をやっておりますところは、商売に関連するような問題で一日を争そうというような問題もあるのに、いろいろな書類を写すのに、建物等が非常に不自由等のために何日も何日も行かないと仕事ができないというような例等も私は聞いたことがあります。そういうのを順次直しつつはあるわけでございますが、それもさっきお話の点に返っていくわけでございますけれども予算が足りなくて今日まできたのが、設備が不十分であり、人が不十分であるというようなこと等に返っていくわけでございまして、そういうふうなこと等はできる限りのことをしなくちゃならぬ。しかしそういうものは、いますぐ言うてできないものであれば、できるいまの状態においてどうやったらもっと能率的にいくかという問題に、それは何としてもあなたの言われるような方向に進まなくちゃならぬと思うのでございます。この問題についてはできるだけの考慮を払って、またそれを実際に移していきたい、こういうふうに私も思っております。
  11. 横山利秋

    横山委員 ことしは国会が非常におそくまであるときですから、御都合ができるかできぬかわかりませんけれども法務省というところが大体性格上ちゃんとすわってちゃんとやるというところで、登記所だとかそういう前線の、庶民と接触するところというものは、裁判所法務省ぺースが違うような感じがするものですから、一ぺん大臣もおひまを見つけて、この一番年末で法務省の中でごった返しそうなところをごらんになって、人員要求をどうしても行なわなければならぬし、同時に、人員要求以外に超過勤務だとか、事務簡素化だとか、いろいろなやり方があると思うのです。大臣は直接にこの種の問題を一ぺんごらんになって善処していただきたい。  それから裁判の問題でちょっとお伺いしたいのでありますが、この春全電通大量処分を受けました。全国で十四万二千九百十七名というのですから、まさに前古未曽有です。こういうような不当な解雇、停職、減給、戒告等を受けたのですから、組合員個々諸君が非常におこって、あくまで黒白を争うというわけで、たしかいま一万六千人くらいの人が法廷訴訟を提起しておるわけです。これは国民権利ですから当然なことであり、裁判所としてもこれを受けて、個々権利がいかに正当に行使されるか、保障されるかについては何ら妙な判断をすることなく、正当に処理をしなければならぬ。この点について、私の承知するところによりますと、あるところではたくさんの人の中でかってに裁判所が一人だけ選んで、そいつだけやってあとはほうりつぱなしにしておくとか、あるところでは一緒にやろうということだそうであります。私はいま、一緒にやるとかなんとかいう意味でなくして、何か裁判所のほうで人手不足だとか、あるいはこれが一つの正当なものでないとかいう印象をかりに邪推をしまして、この訴訟というものを、国民権利を正当に行使されないようなしかけなり運営なりなさっては言語道断だと思うのです。そういう点について何か御相談をされたことがあるのか。指示をすることがあるのか。この問題について御意見を伺いたい。
  12. 石井光次郎

    石井国務大臣 その点につきまして、私はまだ相談を受けておりません。
  13. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 ただいま横山委員お話のございました問題は、現に裁判所に係属いたしております具体的事件でございますので、私どもの申し上げますことも、その限りでお聞き取りいただきたいわけでございますが、私ども、いまお話しのございましたとおり、実際に出てまいりました事件を、それが乱訴と申しますか、そういうようなことは毛頭考えておりません。いやしくも裁判所に提起されました事件につきましては、裁判所としては誠心誠意できる限りすみやかに結論を得るように努力することは当然でございます。  ただその具体的な処理の方法でございますが、これは結局御承知のとおり、それぞれの裁判官訴訟法あるいは訴訟規則の定めるところに従って処理されるわけでございまして、それをたとえば最高裁判所事務当局といえども、こういう方針でやれということを命じ得るものでないことは、これはつとに御承知のとおりでございます。ただ一般的な問題としては、同時に、一体こういう訴訟をどういうふうに扱うかということについては、平素から裁判官としても十分検討しておかなければいけない問題であることはもとよりでございまして、そういう点についてのある程度意見を交換するということも許されないことではないだろうと思いますけれども、いまのところ別にさようなことを考えておるわけでもないのでございます。結局、ごく一般的な問題として申し上げますと、たとえば訴訟法では選定当事者というような制度もございまして、つまりほんとうに大ぜいが法廷にお入りになるという施設も必ずしも十分でもございませんし、むしろ相当利益が共通しておる、同じような法律関係においでになる方は、たとえば一人代表者を選んで、むろん権利は全部の権利を行使するわけでございますが、実際の法廷での訴訟活動はその代表者がやるという制度もあるわけでございます。もっともこれは御本人のほうでそれを御希望にならなければ強制することはできないだろうと思いますが、そういうような制度もございますし、あるいは訴訟代理人でもおつけになればその点は非常に円滑でございますが、いまお話し事件については、訴訟代理人おつけになっておらないように伺っておりますけれども、そういうようないろいろな問題が法律的にございまして、これは結局はそれぞれの裁判官が、法規の命ずるところに従って迅速適正に処理される、こういうことに帰するわけで、お話のとおりまた先般訴えが起こったばかりでございまして、いままだ第一回の期日指定も——開かれておるものもあるかもしれませんが、まだその程度のように承知いたしておりますので、今後どういうふうな進行になりますか、私どもとしては、要するにいま横山委員お話しのとおり、誠心誠意をもって迅速に処理するようにと希望しておる次第であります。
  14. 横山利秋

    横山委員 裁判を中央で統制するつもりはない、それはけっこうであり当然のことであります。ただ一万数千人の人が訴訟を起こした。訴訟を起こすについて、あなたのお話によれば典型当事者というやり方があるというのだけれども、それぞれ処分を受けたのは、おそらく私は、電電公社としてもめっちゃくちゃに数をそろえたわけではなく、一人一人審査されてやったのだと思う。だからそれぞれの理由が違う。それぞれなぜそういうことの処分を受けたかということについては、電電公社として個々に違った理由をもって、結果としては同じ減俸なら減俸という処置をしたに違いありませんから、典型当事者説はとられない。しかしいまあなたの言うように、本人がそれを希望しなければそういうやり方はされないであろうということであるならば、それは了承いたします。その点はいいですね。  それから、それだけの人がやるについて、裁判所ただでさえいま人が足りないとかなんとかというのであるから、第一回の期日指定さえまだされない。しかし訴訟をしたほうの人たちは、もう一刻も早くこの問題について裁判所の判決を得たいのですから、この点については最高裁として、そういうような裁判内容に立ち入って、法廷指揮の問題に立ち入ってやることはいかぬけれども、それらの人が少ないとか予算が足りないとかいう点については措置をしなければならぬと思うのですが、その点はどうですか。
  15. 岩野徹

    岩野最高裁判所長官代理者 いまおっしゃいましたように設備を多く整え、あるいは人をふやして裁判処理するということは、訴訟迅速の要請に対して当然つとめなければならないことでございます。ただ承知のとおり、裁判官増員は、事件が起きた翌日に一挙に募集して直ちに増員できるわけでもございません。いままで裁判所訴訟の遅延を防止いたしますために、裁判官増員等も実はしばしば要求してまいりましたけれども裁判官に関する限りは給源の問題ということがしばしば指摘されまして、やはり結果においてその給源を得られなかったために実質上増員ができなかったこともしばしはでございます。結局は判事補から養成し、あるいは弁護士会等の御協力を得て裁判官充員をはかる以外にない。裁判官充員ができれば、それに伴ってその補助機構増員もまた可能かと思います。このほうはそれほど充員に関して困る問題はございません。裁判官につきましては、先ほど申し上げましたように、なかなか一挙に直ちに翌日から対策を講ずるというわけにはまいらないわけでございます。
  16. 坂本泰良

    坂本委員 ちょっと関連して。裁判の問題ですが、最初労働組合が仮処分なんか出す場合は、組合長とか代理者でやっていた。それを裁判所のほうで文句を言って、これは各組合個々委任状を出してやらなければだめだ、そういうふうにやってきて、その当時は、仮処分あるいはその他刑事の問題等もあると思うのですが、最初は組合としてやる場合は、組合長が代表で仮処分の申し立てなんかやっていた。それを数年前と思うのですが、これは確実な資料を私調べて、確実にあらためて質問したいと思うのですが、その労働組合のそういう正しい主張を打ち切るために、させないために、今度は千人なり二千人なりの各組合員の委任状がなければだめだというので、弁護士は非常に苦労して、そして委任状だけでこんなにたくさん、何千通と委任状を集めて、そうして仮処分の申請とか、あるいは資本家側から仮処分をした場合に対して異議申し立てをする。そういう不便を裁判所のほうからわざわざやらしていたわけです。そうすると今度は一万、二万と同じような訴訟が出る場合でも、そういうことになっていますから、それじゃ各人でやらなければできないだろうということで、訴訟がいま一万数千件、あるいは二万件でしょうか、あの打切りの問題だけについて、その不当を唱えて十何万の訴訟が起こるということになれば、裁判所は機能ができないわけでしょう。だから代表当事者とかあるいは代表代理人とかいう問題もそこに起きてくるわけですから、裁判所は自分のほうのかってなときはそういうことをやらしておいて、そして今度の問題が出てくると、何ら対策を持たない。そういうふうなことで何か少し検討したことはないですか。ただ放任しておるのかどうか。
  17. 寺田治郎

    寺田最高裁判所長官代理者 いまお話の点は、民事訴訟法の解釈の問題でございますし、また私どもここにおります者の直接の所管でもございませんので、一応の意見というような意味でお聞き取りいただきたいわけでございますが、先ほど坂本委員お話の点は、おそらくは労働組合の当事者適格の問題を御指摘になったのであろうかと存じます。それに対しまして私先ほど申しましたのは、選定当事者ということを申し上げましたわけでございまして、これらいずれも法律解釈の問題でございますので、いずれがいい、いずれが悪いということは私どもも簡単に考えておるわけでもございません。坂本委員お話のように労働組合として弁護士に委任することができないとすれば、これは各人が弁護士に御委任になるよりしかたがない。委任状はたくさんになるのでありましょうけれども、それでも弁護士に御委任になれば委任状はたくさん要るけれども、弁護士さんだけが法廷へおいでになればいいわけで、今度の場合のようにそれぞれの方がおいでになるのに比べれば弁護士さんの委任状が何万枚積み重ねられようとも、各人がおいでになるよりは当事者のほうもよほどお楽でございましょうし、裁判所のほうとしてもスムーズだというような面もあるということもあるわけでございます。これはいずれにしても、それならそうと弁護士をつけなければならぬかといえば、現在の法律では弁護士強制にはなっておりませんから、これは御自分でおやりになることもむろん法律上少しも差しつかえないわけでございます。  それで対策云々というお話もございましたが、しかしながら、これは先ほど来いろいろ横山委員からもお話がございましたけれども、具体的な事実はそれぞれの方がそんなに違うわけではないと思うわけでございますので、件数が多いからといって証拠調べがそんなにたくさんになるということでもないと思います。これは私どもの想像でございます。あるいはそれぞれの力に非常に違う事情があって、証拠調べに一件々々非常にかかるのかもしれません。しかし、かりに同じようなケースであれば、件数が多くても証拠調べにそうかからないということもあろうかと思います。これはもう少し審理の進行を見なければわかりませんけれども、ここで具体的事実について私どもの立場であれやこれやと申し上げることは、非常に差し控えなければならぬ立場にあるということをひとつ御了解いただきたいわけでございます。
  18. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、今度は検察庁でも裁判所でも同じですが、自分たちの都合のいいときは民事訴訟法だ、刑事訴訟法だというたてまえをとって、こうだ、ああだといって、それでは今度の全電通の問題でも、権力をわがものにして多数の首切り、減給等をやっておる。そうしてそれに対しては当然憲法上、さらに法律権利があるから、この不法に対しての損害賠償あるいは減給に対しての復活要求は当然なことなんです。ですから、今度は各人が、自分が首切られたのはどういう理由か、——権力者はかってにやっておる。だから国民がここに法に基づいて訴訟を提起する。その場合はあなたのような御意見であるならば、それは早急に訴訟の運用というものが困難ならば、この際裁判官を三百人でも五百人でもふやしてやらなければならぬ。そういうふやすようなことはしない。そこにわれわれは非常な不信があるわけです。ただ裁判所あるいは検察庁のかってなときは、てまえたちのかってなふうに解釈をして、そうして国民権利を侵害しておきながら、今度は国民がその権利の擁護のためにやむを得ずその訴訟行為に出ておる、それに対しては期日もきめずにほったらかしておる。それでは権利擁護ができないのです。ですからそういう問題もすでにもうだいぶ前のことだから、今度の予算要求とかそういうような場合には、それこそ十分考えてその対策を出すべきが至当だと思うのです。それについての対策その他のいわゆる一般国民権利の擁護のための考え方が、少しもこの予算上あらわれていないというところにわれわれ非常に不満を持ち、これでは国民権利の擁護はできぬのじゃないか。だからここに質問するわけです。ただ司法権の独立の陰に隠れるというのですが、それは裁判官が具体的の裁判をする場合において、だれの権力にも侵されない独自の国民のための裁判をするというのが司法権の独立でしょう。いまの裁判官は何です。訴訟進行ということに基づいてかってなことを言っておる。それがわれわれは不満なんです。ですからこういう十何万件も出ると予想されるようなこういう事態が発生した以上は、これは逆に国民のための裁判を迅速かつ公正にやるために対策を講じなければならぬ。それを今回の予算要求、このときよりほかにないと私は思うのです。だからこの十何万件の訴訟が起きたならば、そのときはどうしようかという構想のもとにこの予算要求その他人員の増加あるいは施設充実等を考えなければならぬと私は思う。その考え方があるかないかということをお聞きして、もしもそれがないならばこれは裁判の運用上、裁判行政上重大な問題と思うからここにお聞きしておるわけですが、何らそういうことはないということならばその点をお聞きしておきたいと思います。
  19. 岩野徹

    岩野最高裁判所長官代理者 ただいまの御指摘のように迅速に処理いたしますためには、施設裁判官増員とで処理いたさなければならないことはよくわかっております。  来年度裁判官増員は判事で四十七名と簡易裁判所の判事二十四名を要求しておりますが、この判事の増員のうち、ただいままでで来年の四月一日現在で考えまして確実に充員の見込みがありますのが、現在判明しておりますところで三十名でございます。したがいましてあと十七名の増員に関しましては、これはただいま弁護士会から四十一年度は極力裁判官の希望者を推薦して裁判所充員にこたえたいということで御尽力願っておる状況でございます。ただ、いまおっしゃいました事件地方裁判所にかかっておりまして、しかも重要な事件だとしますと合議で処理されるかもわかりませんし、あるいは単独で裁判されるとすれば判事の資格をお持ちの方々がおやりになると思います。そうしますと判事補を現在直ちに採用いたしましても、現在の法制のもとでは単独では裁判できない状況でございますので、判事補増員したところでこの急場にも間に合わない。そうしますとやはり判事の増員をはかる以外にはございません。しかし現在のところ三十名は確保いたしておりまして、あと十七名を極力増員いたしたい。その実質を獲得するための努力中でございます。  施設に関しましては、特に大都市の裁判所の狭隘さが目立っておりまして、特に東京、大阪等の裁判所では、増員をする、ないしは地方から、かりに多少でもひまなところがあって、そのひまな裁判所から裁判官を転任さして東京、大阪等に充員しようといたしましても、建物、法廷裁判官室、こういったものが現在狭隘をきわめておりまして、いまの状況ではもはや増員を入れる余地がないということから、四十一年度におきましては、東京、大阪、名古屋等の重要な裁判所の狭隘さを早急に解消いたしたいということで、造改築の費用を要求いたしております。その金額は約七億円。そのほか全国の裁判所の庁舎の整備も要求いたしております。ただ人員に関しましては、それだけの制約がございますので、十分その点を御理解願いたいと思っておるわけであります。
  20. 横山利秋

    横山委員 私が全電通の問題を取り上げましたのは、二つの理由があるわけです。  一つは、いま約五百件、一万六千人の人が訴えを起こしておる。おれは自分でやる、こう言っておる。これは国民の正当な権利である。少なくとも、国民が弁護士の手によらずに、自分で年次休暇をとって裁判所に行って、そうして自分の主張を明らかにしたいということで、一万六千人——まだふえるかもしれませんか、いま一万六千人の人が、職場のサラリーマンが年次休暇をとってもやるという腹をきめるということは、そう簡単にできるものじゃないということを考えてもらわなければいかぬですよ。一般国民の心理からいって、裁判をやるということは、大体日にちもかかって、手数もかかって、金もかかって、だからなるべく、という気持ちがある。それをこれだけの人がやる以上は、それぞれ一人一人が自己の責任において腹をきめて、ひとつ弁護士のごやっかいにならずに、自分で出て、自分でやるということをきめたということをよく認識をしてもらわなければいかぬ。ところがあなたのほうは、全国的にそれをどうしろというような指示はしないということは、それはいい。訴訟の問題の内容に立ち入らないということは、それはいい。裁判官のあり方について制肘をしない、また指導しないということもいい。けれども裁判所の機能というものがそれによってどんなに業務量がふえるか、それによってどういう影響を受けるか。裁判が人、金、物によって制肘がされないようにするだけの責任はあなたのほうにあるのだから、その手配が何もできないと、いまおっしゃるようなことではいかぬ、それでは無責任だということを私は追及をしておるわけであります。  法務大臣、お聞きのとおりなんです。あなたも御存じだったかどうか知りませんけれども、まさに裁判史上類例のない膨大なマンモス裁判がいま現実に始まっておるわけです。そして第一回の期日の指定もないままに、そのままになっておるわけです。そして何か聞くところによれば、裁判官電電公社の御都合を聞いて、電電公社は、いやみんな一緒なら年次休暇はやりません、欠勤扱いにしますとか、私のほうはなかなか出ませんとか、こういう公社側の御都合を聞いて裁判を進めようとしておるような雰囲気もあるわけです。それでは困るのですから、そういうような裁判を遅延させる、ないしは裁判の円滑な運営を阻害するというようなことがあるならば、それは法務大臣として電電公社に対して、裁判の促進の意味からいってもこれはひとつ協力してもらわなければ困る、こういうふうに言っていただかなければならぬ。それからいま最高裁側の言うように、金、人、物の問題でこの訴訟が円滑にできないとするならば、主管大臣として何らかの措置をしてもらわなければならぬ、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  21. 石井光次郎

    石井国務大臣 承っておきまして、研究いたします。
  22. 横山利秋

    横山委員 承っておきますというのは、善処してくださるということですね。
  23. 石井光次郎

    石井国務大臣 いや、承っておいて、研究いたします。
  24. 横山利秋

    横山委員 私、まだ予算関係にはたくさんあるのですが、まだほかの質問もありますので、同僚諸君予算関係の御質問があるならば、ちょっとここで聞いてください。
  25. 田中織之進

    ○田中(織)委員 いま横山坂本両委員から質問していることに関連して、法務省のほうに伺いたいと思います。  「昭和四十一年度予算重点事項」のうちで、「公安対策の確立」という予算が、増加率の点から見れば、「治安対策の充実強化」という中でも一番大きいのではないかと思う。九億三千六百万円の増加のうちで、四億八千九百万円が公安対策の確立という関係予算要求をされております。しかもこの一ページの下の段から、「日韓条約、ベトナム問題等国の内外の治安に重大な影響を及ぼす多くの要因が存在するので、左右過激団体の実体を解明して施策に反映せしめるため公安調査機能を充実し、」云々ということで理由を書いております。政府与党は、日韓条約は正当に国会で承認されて批准の交換を行なったのだ、こういう主張をされておりますけれども、われわれは国会の審議の状況から見て、これは無効であるという立場をとっておるのでありまするけれども、現実に政府の形式的な法律的な見解から見るならば、すでに批准交換をして実施の段階に入っておるのです。もちろんその意味から見たら、現実的な問題として日韓条約反対といういわゆる革新陣営のこの条約に反対する立場の運動というようなものは、質的には一つ段階を過ぎているということは、私、現実の問題だと思うのです。ところが、来年度予算要求理由の中にこれを掲げるという点について、もちろん政党内閣制のもとではありまするけれども、あまりにも私はこの問題が政治的過ぎると思う。われわれは、先ほど横山さんなり坂本さんが言われるように、法務省関係予算は、やはり司法権の独立、広い意味における治安対策の確立、こういうような観点から増額することについては支援を送ることにやぶさかではないのでありますけれども、しかしこういうような項目を掲げられている限りにおいては、われわれはこの限りにおいてはそれをぜひ法務省要求のとおりやりなさいというわけにはいかないのです。しかも、二ページの上から三行目でありますけれども、「検察庁における公安労働事件処理迅速化を図る。」次に、「(採証器具費、調査活動費)」というのがございます。調査活動費はわかりますけれども、採証器具費というのは一体具体的にどういうものをさしておるのか。私はこういうものは——もちろんこれは理事会で私どもは内示を受けておるという立場にありますので「一つの前提でありますが、もしこういうようなものが国民の前に明らかになるということになれば、やはりかつての警察国家的な方向に向かって日本の法務行政の、特に予算の問題というようなものが進みつつあるということについて、国民に非常に疑惑を与えること、また不安を与えることになると思うのでありますが、こういう意味で、これは幸い法務大臣御出席になっておられますから、来年度予算要求にあたって、私はこの治安対策の確立、暴力事犯あるいは青少年犯罪、精神障害者等の犯罪防止というような関係のことについてはわかりますけれども、こういう関係で、公安事件に最重点を置いて、ある意味から見れば警察国家的な方向へ法務行政を持っていくというようなことについては、私ども賛成するわけにはまいらないのです。この方針というものをお考えをし直さなければいけない問題だと私は思うのです。特に、そういう形で進まれるならば、幸い国会はわれわれの譲歩によって正常化しておりますけれども、今後あるいは選挙法の改正問題であるとか、あるいは憲法改正問題であるとか、こういうような問題が具体的に日程にのぼってまいりますならば、やはり国会の審議の問題についても、政府のそういう基本的な考え方というものが出てくる、私はそういう心配を持っておるのでありますが、この点については、特にこれからの予算折衝の中で再考をしていただかなければならぬ問題だし、特に、理由の中でこういう点をあげられている点は、私は国民に疑惑を招くことだと思うので、特に法務大臣に御留意を願いたいと思うのでありますが、御所信を承りたいと思います。
  26. 石井光次郎

    石井国務大臣 経理部長から御説明いたさせます。
  27. 勝尾鐐三

    勝尾政府委員 一応積算の事務的な御説明を申し上げます。  労働事件等とございますが、これは御承知のように、労働事件に関連して発生する刑法犯等のいわゆる刑事事件をさすものでございまして、そういう刑事事件が過去五年間の統計を見ますと、昭和三十五年が六千百七十七件でございましたものが、三十九年に六千七百六十二件と、刑法事件が増加をしているという傾向にありますので、この種の事件の適正を期していきたい。採証器具費と申し上げますのは、現場検証の際に写真をとるのに必要なカメラ、これが採証器具費の内容でございます。  それから、なお、日韓条約、あるいはベトナム紛争という表現がございますが、これは日韓条約あるいはベナトム事件に対する御意見を対象とするものではございませんで、日韓条約あるいはベトナム事件等を契機としての過激活動というものに対しての対策でございまして、御承知のように、現在公安調査庁の破壊活動の容疑団体として、左右十幾つかの団体が対象になっておりますが、そういう破壊容疑対象の団体の数が最近ふえておりますので、そういった面についての調査活動機能を充実していきたい、こういう趣旨で掲げたものでございます。
  28. 田中織之進

    ○田中(織)委員 採証器具の設置の問題等は、公安調査庁で特に共産党関係あるいは左翼団体の関係等に隠しマイクをつけたとか、そういういろいろ国民の人権にかかわるようなこともやっている。それは昔の特高警察時代と——ある意味から見れば、近代的な科学性を持ってきて、もっと悪質化していると私は思うのです。そういう問題を、これは見る者の立場から見たら、すぐ連想されるのです。私は、そういう意味で実地検証のときのカメラ云々という問題もありますけれども、ある死刑囚のいわゆる現場検証には、とにかく被疑者である本人を連れていかないで、八ミリカメラでとったという事件が、いま東京の高裁で係属しています。例の狭山のいわゆる善枝ちゃん殺しといっている石川少年の浦和の地裁の現場検証の問題です。非常に問題を投げかけておるのでありますが、一審で死刑判決をされて、本人がびっくりしていま高裁で争っている事件であります。現場検証に死刑の判決の下る本人を連れていかないで、裁判所、検察庁が現場検証をやっているという事実が、いま高裁で暴露されておるのであります。それはもちろん証拠の採集のためにカメラの必要もあるでしょう。しかし、その八ミリのカメラが死刑囚の現場検証について、本人を連れていかないために使われているというようなことになれば、この採証器具の問題というようなものは、やはり簡単に見のがすわけにはいかないのです。  公安労働事件の検察庁にかかっている問題、きのうも私と同じ無所属の志賀義雄君から質問をされたと思いますけれども、大阪の新東洋硝子の争議の問題についても、そうです。これもあなたたちの立場から見れば公安労働事件というのでありますけれども、会社の不当解雇に対して、会社で雇うた暴力団と争議団との間に、暴力団のほうから傷害事件を引き起こしておっても、現在の検察当局の立場から見れば、やはりその問題はあなたたちはいわゆる公安事件という立場で取り上げておるではありませんか。そういうところに、私はこの予算の中に、ことに過ぎ去った日韓条約の問題、いまのベトナムの問題、ベトナム問題なんかについても、これは私は別の機会に法務大臣にも——法務大臣関係している団体の問題が参議院でも問題になっておるから、別の機会にも伺いますけれども、ベトナム問題についても、いわゆる公安調査庁や検察庁が考えているような立場で国民はこのベトナム事件というものを見ているわけじゃない。そういうところに、やはり法務省予算要求理由に日韓条約の問題であるとかベトナム問題というような、こういう社会的な事件を取り上げて、いわゆる治安対策、公安対策を強化するというような形の予算要求というものについては、われわれは法務省予算が、できるだけあなた方が適正な公正な活動ができるような立場においてバックアップしたいという立場でありますけれども、こういうものを表から出されてまいります限りは、賛成するわけにはいかない。これは当然、法務省に必要な予算国民的な支持の上で確保したいということになれば、法務大臣、やはり大蔵省折衝する場合においても、こういうことについてはお考え直しされなければ実現ができない問題ではないかということを私は警告を申し上げているのですが、この点について、法務大臣としての高い立場の御見解を伺っておきたいと思います。
  29. 石井光次郎

    石井国務大臣 いまの御注意はよく承っておりました。治安対策というものが大事なことは、申すまでもないことでございます。行き過ぎがあってはならないことでございます。違った方向に走ってもならないことでございます。十分考えます。また、名前の問題等、ここに出ております問題等についても、十分また考えてみます。
  30. 神近市子

    ○神近委員 関連して。私は、きのう法務省予算をもっとふやすべきだということで一度申し上げたので、繰り返しになりますけれど、きょうは大臣がおいでになっているから繰り返させていただきたいと思います。  いま治安対策という話が出ましたけれど、全体として国民の生活が——これは犯罪を犯す人は別ですけれど、普通の良民であれば裁判というものがはっきりとして、そして自分たちの正当あるいは正しいということを認めてもらうということがたいへん安定を与えると思うのです。ところが日本の裁判というものは、長いときにはたとえば吉田石松の件のように五十年、あるいは松川事件のように十七年ですか、そういうような裁判が一体世界にあるものかどうかということを私は考えるのです。聞くところによりますと、アメリカなんかでは早い場合は半年くらいで片がつく。そして長くても一年そこらで最終的に裁判が決定するということを聞いておりますけれど、日本は二年とか三年とか、まだ終戦直後の問題で片がつかないものがたくさんある。私はそういうようなばかな話はないと思うのです。ですから法務省予算が一%以下、一%というのはいいほうで、昨年は〇・七%余りというようなこと、それが三権の一つをかかえている司法の予算だということは、これはとんでもない話だと私は思うのです。ある検事さんの何かのお話が出ておりましたけれど、裁判にあたっての調査には朝八時から夜の八時ごろまで自宅に引きこもって読まなくちゃならない。私はこういうようなことが裁判の遅延を起こしていると思うのです。私それには優秀な助手、これを読んではっきりとわかって、そして検事さんなり裁判官の判断の基礎になるような助手、そういうものをつけるべきだと思うのです。いま国家予算が非常に窮屈だから人員はふやさない。ふやさないといえばほかの省には、建設とかあるいはそのほかのところには、要らない者がいるかもしれない。だけれど、法務省にはそういうような人をふやすということを考えなければ、裁判がやはり二十年、三十年というようなあほうなことが私は起こると思うのです。その点を大臣がはっきりとよく御認識になって——本会議でそういうような問題を私どもは持ち出してもいいと考えております。総理大臣にもあるいはそのほかの大臣にも裁判がどんなに停滞しているのか、三十年、五十年というようなことがあってならないということをよく説得するようなチャンスをつくるべきだと考えております。私は今度の法務大臣は長い間の御経験で強くこの要求をお出しになるべきだと考えるのです。国家予算が窮屈だから、ああ金が足りないからというようなことで負けていないで、ともかくもここで裁判制度、司法制度を改革するというくらいの意気をもってぜひこれは——大体四兆何千億というような予算の中の一%以下というような予算をもらって恥ずかしいとお考えにならないかどうか。司法の方々がみんなお集まりになっていますから、それはよく皆さまの御納得が私はいくと思うのです。判事補を八十人ほしいと思うときに三十何人ぐらいしか志望者がない。そういうようなことは、制度そのものに皆さんのやり方がまずいところがある。弁護士の給料なんかを聞きますと、きのうもあとでいろいろ聞きましたけれど、だれだって研修所を出たらば弁護士になる。どういうわけかということになれば、給料が非常に低い。その上に労働が非常に激しい。そういうようなことを考えれば、どうしてもこの予算をふやして、公務員法の制限もありますけれど、特別な付加的な、たとえば調査費とかあるいは助手の手当とか、そういうような形でこの給料も高く上げてあげるというようなことを私はお考えになるべきだと思うのです。もう三権分立なんて言っていばっていられないときだと思うのです。私は裁判の遅延ということをぜひひとつ今度やり直して、さっさと片づけることを考えていただきたい。そのためには、大臣がからだを張って、いままでの少なくとも数倍の予算をとるという腹をおきめになったほうがいいと思うのですが、その点で大臣はどんなふうにお考えになりますか。
  31. 石井光次郎

    石井国務大臣 どうも御注意ありがとうございます。人権擁護という問題は、私どもとしては一番考えなくちゃならない問題でございます。あらゆる場合にそういう問題を取り上げておるわけでございます。裁判の延びておるというようなことも、その点から考えましても決していいことでないことは申すまでもないことであります。一日も早く裁判が片づいていくことは裁判当局の方々もみな考えておられますし、私どももそれを考えておるわけでございます。これには予算の問題が伴います。また人の問題、設備の問題等がぜひ必要だということは、さっき裁判所側からも説明のあったとおりでございます。これを獲得するためには一ぺんになかなかいけないのが役所のならわしでございます。政府のならわしでございますけれども、できるだけのことをいたしましてそれを打ち破っていくことに努力をいたしたい、こういうふうに思っております。また実際におきまして、いまのような心持ちからいたしまして、裁判がだんだんと日にちを少なくして行なっていくような方向に向かっておるということを聞いておるわけでございます。これは裁判所のほうから御説明を願いたいと思います。
  32. 岩野徹

    岩野最高裁判所長官代理者 いろいろ御指摘を受けて、まことに私どももみずからさように考えておるわけでございます。多岐の点にわたって御指摘を受けましたが、裁判の長期化、これは私どもも一刻も早くこれを短くいたしたいと考えておるわけでございます。ただ一言つけ加えさせていただきますと、日本ほど裁判が慎重に、当事者の言うことをあらゆる点に至るまで聞いた上で裁判をしている国というのは世界に例がないという点でも、逆に言いますとこれだけ丁重に裁判をしておるところはまず少ないと言われている点でございます。これは制度によりましては非常に形式的な証拠を定めたり、あるいはある金額以上の訴訟になると、書証がなければ取り扱わないというようなことで制限を加えている国もございます。その点では訴訟促進をはかるためには、むしろ慎重に、逆に影響するという面もあるかと思いますが、おっしゃる点はいまのような十分微に入り細をうがって、当事者の国民のための裁判をするということを前提として増員をしろとおっしゃるのだと思いますので、その点には努力いたしたいと思っております。  それから宅調廃止の問題でございますが、これは四十年度予算でも、まず裁判所で庁舎を整備し、部屋を充実し、図書、書架等を充実して、そこで十分に仕事ができるようにしろということで、これは臨時司法制度調査会意見でございますが、その意見に従って庁費の獲得に四十年度予算では努力いたしました。引き続きまして、庁舎の整備を四十一年度予算要求いたしております。これは御指摘の宅調廃止のために、すみやかに重要な大都市の裁判所で実現したいからにほかなりません。  次が補助職の問題でございますが、実は補助職に裁判事務でおろせますものは非常に限度がむずかしい問題でございます。やはりちゃんと資格のあるすぐれた能力を持った裁判官が、みずから全責任を負って裁判をしているというところに、日本の裁判のまた特異性もあるかと思います。裁判所は許せる限りの仕事は補助職におろしたいと考えておりますが、やはり大部分のことは裁判官がみずからの責任において処理いたしておるわけでございます。補助職につきましては、家庭裁判所調査官あるいは書記官、その他地方裁判所等におきましても、特殊の税法その他の特殊事件に関しましては、調査官を置いて裁判官を補助させるということは裁判所も考えて、これは予算要求いたしているわけでございます。  その次は判事補の志望の問題でございますが、やはり裁判官の給与の低さということの御指摘かと存じます。これはしばしば努力してきた結果でもございますし、また臨時司法制度調査会意見といたしましては、裁判官の給与については独自の体系を確立すべきである。ただし、現在直ちに独自の体系ができないとすれば、いままでの給与法の体系と申しますか、これに可能な限りの是正を加えながら、将来は独自の体系をつくるべきだという指摘がされております。それに従って努力を重ねているわけでございます。
  33. 神近市子

    ○神近委員 慎重に調査をして判決を下すということを自慢していらっしゃるけれども、私はそれはちょっと自慢にならないように思うのです。それで、慎重にしたから十五年かかったとか二十年かかったとかいうようなことは、私はちょっと頭の働きがどうかと思う。裁判に当たる方はそんなにかからないでもできるはずだと思うのです。そのことはともかく、疑わしきは罰せずということは日本ではあまり使われていないようですけれども、その慎重という意味では疑わしいものは最終までそれを洗う。私はその点であなたの自負はちょっと誤りではないかと考えております。私はそれよりも、やはり疑わしきは罰せずという一つの原則でお進みになって、なるべく早くやる。いま補助員の問題もよくわかりました。そして特別の給与ということも考えていらっしゃる。私はごもっともだと思います。それで大臣に皆さんで——大臣の前に行くと何か口があけないというようなことでなく、大臣に皆さんがそろって予算要求をし、ぜひ獲得なさるように、何といっても四兆何千億の中の一%なんというようなあほうなことはない。日本の裁判制度の停滞というものはそこらに原因があるというふうに私は考えます。私はいろいろ材料を持っておりますけれども、きょうは関連でございますからまた別にいたします。私は大臣が今日の予算の編成状態で非常に困惑なさるということはわかりますけれども、ともかく司法権の確立、そして国民の人権の擁護、生活の安定を促進するために、ぜひ——私は実は一%以下の予算と聞いたときにあきれたのです。一体それが三権分立の一つ権利をお持ちになる人たち予算なのか。私はその点でこの恥をそそぐつもりで要求を強くやって獲得していただいて、そして裁判制度の立て直し、われわれがこんなに困っている裁判をもっと迅速にやっていくというような方向にぜひ向けていただきたいと思います。
  34. 濱野清吾

    ○濱野委員 ちょっと関連して。私は予算説明のときには大胆率直に、与野党に関係なく御答弁を願うほうがすっきりしていいと思うのです。  そこで、ちょっと聞きたいのでありますが、公安対策の確立という項目の中で、四億八千九百万円増の要求をしておる。その理由とするところは、「日韓条約、ベトナム問題等国の内外の治安に重大な影響を及ぼす多くの要因が存在するので」、こういうことに前提を置きまして、「左右過激団体の実体を解明して施策に反映せしめるため公安調査機能を充実」する。そのために増員、公安調査官百五十名、調査活動費が必要だ、こういうのです。これは正直に言って、野党から考えると気に食わないことなんです。いま日本の外交政策から見ても、あるいは自由主義国家としての日本の立場からいっても、どうも社会主義化されることは自民党としては困るのです。純粋な資本主義なんというものは世界のどこをとらまえてもあるはずがないんだけれども、しかし理論の上においてはやっぱり自由主義国家と社会主義国家というものが二つに分かれておる。そういう立場で社会党は日韓条約は粉砕するんだ、阻止するんだ、こういう前提をまずきめておいて、御承知のようなああいう事件を引き起こしておる。議長がやめなければならぬというような状況でして、このことは法務省といえどもわかっておるはずなんです。それをどうしてベトナム問題、あるいはまた日韓関係というようなものをその理由一つにおいて考えるか。これは正直な一面であるけれども、正直の上に何かかついているのではないかと実際私どもは考えているわけなんです。あまりに政治性がない。そこでこれを突き詰めて伺いたいのでありますが、一体最近の左右の過激団体の動きというようなもの、これは一体どうなっているのか。そしてこの左右団体の動きがベトナムや日韓関係においてどういうふうに刺激されて、そしてどういうような方向に向かおうとしているのであるか、これが一つ、これは経理部長に聞いてもわからぬかもしれないが、公安調査庁がおいでにならぬようでありますから、公安調査庁長官が次の機会にはっきりと答弁したがいい、これは鮮明にしたがよろしい。われわれの聞くところによると、外国からある程度の金が来ている。その金がある団体の資金源にされているというようなことさえも世間では流布されている。むしろ政府が、調査庁というようなものがあってそういうものを世間に発表しないところに、大体真実を隠蔽して、そうしてただ予算獲得のためにそういう文字を使っているという印象を与党には与える。野党は、反対の立場でありますからなお反対の印象を強く受けるわけであります。ですから調査庁長官を次には呼んでいただいてその実態を鮮明にしたがいい。それらは国家機密に関することだといってあるいは逃げるかもしらぬが、そういうことは逃げる必要はない。私は法務委員のわれわれ同僚の中には外国の金を使っているような人はおよそあるまいと思います。そう信じております。しかし世間はそうは言っていない。私はこのことを委員長にひとつ引き受けていただいて、そして次の機会に調査庁長官に、一体資金源やその他ベトナム問題、朝鮮問題でどういうことが心配なのか、そしてしかもその思想的背景に立って左右の過激暴力団のどういうふうな活動がいま行なわれ、将来政府はどういうことを予想をしているのか、そのためにここへ要求しました人員増とそれから調査費というようなものを合わせて、そして四億八千九百万というような膨大な予算要求をしている、こう説明してくれませんと、これはちょっと議会の質疑応答にはなりません。やはり正直におっしゃったがよろしい。その点を経理部長、公安調査庁に次の機会に十分資料を持って出てくるようにお伝えを願いたい。そうでないと、田中さんのように、われわれもこの予算要求につきましては、どんな査定をするかわからぬけれども、協力するわけにもいきませんし、これはわれわれ与党として反対するかもしれません。  それからもう一つ。これは大臣一つお願いしておくのですが、公安調査庁がどういう資料を持って法務委員会に答弁するか、それはわかりません。しかし、ただ調査、調査だけしておって、その調査に対する対策の法律やその他の問題につきましては一向に考えられておりません、いまの法制においては。これは暴力団になってくれば刑事局長が、あるいはまた検察庁が、あるいは警視庁がそれぞれ活動するわけでありますけれども、調査だけにとどまって、それ以上には、暴力行為に出なければほとんどこれは問題にならぬ。いまの法体系にはございません。これは法務大臣もそのとおりだと思う。そういうむだな金を使って、動きはわかった、危険性はわかった。しかし、これが武力革命とか、あるいは左右両翼の暴力団とか、そういうふうにならなければ日本の現在の法制のもとでは政府はどうにもならない。これは法務大臣も御承知のとおりでありましょう。高度の立場からそういうことを将来どうしようとするか。私は国家警察をつくれというのじゃありません。どういうふうにしたらいいかというような考えがあらかじめ国務大臣にはなければならぬはずです。もっと高度の立場からなければならぬと思う。それはかりに野党が反対しようが、与党が反対しようが、とにかく自由主義を守る、自由主義の国家として日本が生きたいものだという法務大臣の党籍が自足党にある限りにおいては、何らかの具体的な法制というものが心のうちになければならぬ。そういうこともないのに、むやみに調査だ、調査だといって何かしらぬけれども、変な雑誌を私どもも受け取っております。変な報告書を受け取っております。しかしそれ以外には何にもない。社会党の内閣ができ、共産党の内閣ができれば、これは共産党は共産党の主義主張や、あるいはそういう社会機構のもとに、いろいろな機関をつくらねばなりません。これはわれわれ了承できる。また同僚の社会党の諸君が天下を取れば、平和革命の後に社会党の高邁な政策というものを立てる、それはわかる。その立場から、その政権の高等政策というものがあるはずなんです。ただ調べておっただけで金を使っておっただけで、その他のことに対する高度の対策というようなものがなければ私はいかぬと思うのです。私はかつて鈴木茂三郎君と同僚であった。鈴木茂三郎君は東京市会に議席を持っておった。同じところで私もやっておった。そして鈴木茂三郎君は国会に来た。そして彼は委員長になった。彼が委員長になったことばの中に、一体われわれが政権を取ったらどうするかということをはっきりと世間に表示しております。非常に勇気あるやり方であります。また私は、鈴木君とは東京市会以来仲間であったが、思想的には別なんです。反対党、反対党であって、鈴木君が少なくとも社会党の委員長の時代には、もし社会党が政権を取ったならば、こういうことをすると言って、われわれが最もきらいなことをはっきりと言っておるのです。大体自民党には勇気がない。何をおそれる、世界は全然二つに割れておるし、わが国だって三十八度線こそはっきりないが、思想的にははっきり二つに分かれておる。ですからうまくいったって、主義主張、政策というものは野党においては変わりはない。与党においても変わりはない。したがって私は、予算要求等の場合には、もっとはっきりした立場で堂々と行くべきだと思う。国会は物理的な力を使わないということを社会党も約束をしたそうであります。ですから何もおそれることはないじゃありませんか。社会党を信頼して、そして自民党の政策というものをはっきりと打ち出して、そしてこの調査の結果、何かがある場合にはこういう態度をとるという、そういう勇気を出した政治というものがいまは必要である。いまはぜひとも必要である。特に法務大臣は必要である。最後の治安は法務省にある。その法務省がぐだぐだ予算を取るときばかり調子のいいような、ただ表面をつくろったような、そういう予算説明では私は相ならぬと思います。勇気一番、思い切ったことを言いなぐって、そして反対は反対、賛成は賛成とすることが私はいいことではないか、それが実は議会政治なんです。勝尾君、君ひとつこの点を公安調査庁長官にすぐ調査をしてもらって、そして高度の態度でひとつ大臣も腹をきめてもらいたい。野党おそるるに足らず、野党が天下を取ったらこっちが今度は野党、そのときには大いにやじも言うし、実力行使はしませんけれども、堂々と戦う。これを私は法務省諸君に強く要請をしておきます。答弁者がいないのでそれだけあとでひとつお願いします。
  35. 濱田幸雄

    濱田委員長 答弁は要らないそうでありますから……。横山君。
  36. 横山利秋

    横山委員 お待たせして恐縮ですが、もう一つだけ大事なことを伺いたいのです。実は九月一ばい、大竹委員と鍛冶委員と三人で、法曹一元化を調査してまいりました際、イギリスで死刑廃止の法律が通ったという機会に恵まれました。そこで、大使館で三人を含めて、おりました大使も含めてまた論争をし、わが国においてはどうかという議論をかわした次第であります。きのう理事会でお願いいたしましたところ、あしたはクリスマスイブでありますが、拝見いたしますと七十二人の死刑確定者が現在それぞれの拘置所におるようであります。この統計によりますと、三十七年確定者十三名、三十八年十七名、三十九年九名、四十年七名、それらの確定君は全員がまだ未執行の模様でありますが、これは三十七年以来の確定人員は一人もまだ執行をされていないという表でございますか。
  37. 津田實

    ○津田政府委員 そのとおりでございます。
  38. 横山利秋

    横山委員 それでは、本年に入りましてから執行されたのはおりますか。
  39. 津田實

    ○津田政府委員 本年に入りましては三件であります。
  40. 横山利秋

    横山委員 私どもの調介したところによりますと、イギリスの死刑廃止——もちろんこれは完全な死刑廃止とはいいがたいのでありますが、それにしても長年かかってイギリスが死刑廃止に踏み切ったということはきわめて意義深いことでありまして、すでに二十年になんなんとする議論を経て慎重なイギリスが死刑廃止に踏み切ったということによって、国際的にもまた日本の社会的にも死刑そのものに対する関心が非常に強まっています。  いま明白に法律をもって廃止をいたしておりますところを念のためにあげますと、アルゼンチン、オーストラリア、これはその一州であります。オーストリア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、デンマーク、ドミニカ、エクアドル、西独、フィンランド、グリーンランド、アイスラント、イタリア、メキシコ——メキシコは二十九州のうち二十五州、ノルウェー、オランダ、ニュージーランド、ポルトガル、サンマリノ、スウェーデン、スイス、米国——ミシガン州など九州、ウルグァイ、ベネズエラ。事実上の廃止をいたしておりますのがベルギー、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、バチカン。ほとんど完全廃止をいたしておりますのがオーストラリアのニュー・サウスウェールズ州、米国のノースダコタ州、ニューヨーク州、ロードアイランド州、ニカラグア、そして英国等まさに三十数ヵ国に及んでいます。  このような死刑廃止の現況について日本としてもきょうがきょうというわけではありますまいけれども、国際的な傾向について一考をする必要があるのではないかと私は思うのであります。すでに発表されております刑法の改正草案を見ますと、一部死刑になる基準というものが緩和といいますか、前進をしておるようには見えますけれども、これはこのような国際的な傾向、特にイギリスの死刑廃止の状況を加味していない一般論からきておると思うのであります。この際ひとつこの死刑廃止について、単に学究的立場といっては恐縮でありますが、学究的立場から一歩出て、政治的判断、近代諸国としての判断からわれわれが考えるべき時期にきておるのではあるまいか、こう考えるのであります。この点について法務大臣の——何かいま承れば本年すでに三件の死刑の執行がなされたそうであります。これは石井さんが判こを押されたのかどうか知りませんけれども、この死刑というものの持つ意義というものについても御所見を伺いたいと思います。
  41. 石井光次郎

    石井国務大臣 人の命は山よりも重いということばがあるのでございます。死刑を執行するということはたいへんな問題であります。また、死刑を宣告するということがその前段にあるわけでございますが、死刑を廃止するかどうかという問題が、イギリスの今度の死刑廃止論議から死刑廃止に至った道程において、日本においても各方面で盛んに論議されつつあるようでございます。日本においてはたしていまの時点において死刑を廃止すべきかどうか、そこまでいっておる社会情勢かどうかということは相当研究をしなければならぬ問題だろうと思うのでございますが、少なくもそういうことは絶対に必要ない、死刑は当然だと言い切れるものではないと私は思うのでございます。これはこういうふうなところでいま横山君がちょっと声を上げられたことも一つの声でございますが、日本の中で至るところで声が上がって、そしてそういうものがだんだんと取り上げられるというような空気ができてくることが一番大事じゃないか、私はこういうふうに思っておるわけでございます。私どももこれはいいかげんには見ていないのでございまして、私自身の考え方といたしましては、死刑は軽々しくやるべきものではないというふうに考えております。
  42. 横山利秋

    横山委員 おっしゃるとおりでありまして、死刑廃止につきましては、やはり盛り上がる世論というものをある程度待たなければならぬという点はお説のとおりであります。ただしかし、盛り上がる世論といいましても、自然発生的に地からわいてくるわけでもありますまいし、天から降ってくるわけでもないのであります。やはりそれはそれなりにいろいろと国会での議論が行なわれ、それが社会的に反響し、そしてまた社会から国会にはね返り、そして死刑を廃止すべきかどうかということについて議論に議論を重ねていく、そういう措置がなければ、だれかがその措置をとらなければだめだと思うのであります。いかなる国といえども、死刑を廃止することが満場一致、初めから世論が納得するということはあり得ないことだと私は思うのであります。なるほどイギリスは下院で満場一致いたしましたけれども、これもやはり二十年の歴史があって、そして最後に納得をし、上院で多少の修正はいたしましたけれども、これはそんなに意味のある修正ではないのであります。いま私どもが死刑を廃止すべきかどうかという点で、あなたのおっしゃるような世論の醸成を待つということだけではわれわれ政治を担当する者としてはいかがなものかと思う。イギリスだって死刑廃止が通ったからこれをすぐにやるというのじゃなくて、調査、それから猶予期間、そういうものをつけてさらに慎重にいたしておるのでありますが、その出発点になっておりますものは、やはり下院のある人が長年にわたって叫び続け、それがだんだん動かしてきたということであります。すでに国会におきましても、参議院において提案をされた歴史を持っています。この参議院において提案をする際に、私ずっと熟読をしておるのでありますが、膨大な資料が調製され、実に熱意を込めて参議院の同志諸君が超党派で死刑を廃止すべきだという努力をされた。また、一般のちまたの中におきましても、各方面の有力な人たちが死刑廃止の先頭に立って運動を続けておる。起伏がある程度あるけれども、しかしながら、運動は長年にわたって続けられておるわけであります。したがいまして、これらのとうとい運動、死刑を廃止すべきでないというふうに断定をする人ならばともかく、理論的には、できるならば、そうありたいというふうにあなたがお考えになるならば、この運動を好意を持ってささえる、そして、イギリスがいま行ないつつありますような死刑についての調査をする、そういうささえが必要ではないか、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  43. 石井光次郎

    石井国務大臣 いまお話の中にもありましたように、これが世間の大きな声として上がるというか、論議の種になるには、衆参同院の方々が声を上げて訴えられ、それが新聞その他において論議されるというようなことが、世間にこの問題を強く取り上げられることになるのじゃないか。さまざまな議論が出るでございましょう。そういうことは死刑を廃止すべきかどうかということに、国全体が強い関心を持つ問題になるわけでございまして、私はこの問題に対する非常に大きな前進だと思うのでございます。ぜひそういう方向に進んでいただきたいと思います。  それから私どもの役所といたしましては、いろいろな調査機関も持っておるわけでございます。それはそれといたしまして、外国において現実に取り上げられたそういうふうな問題もありますが、これを一つの問題として研究してもらうということにいたしたいと思います。
  44. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げているのは、そういう民間の運動なり、あるいは参議院の諸君が非常に熱意を込めた運動を直接政府がささえるとなると、あるいは議論があるかもしれませんが、少なくとも日本においても一応の世論はあるのですから、是非論は別としても、その世論にこたえて、法務省が死刑廃止についての調査を、それに限って専門的に進めたらどうか、こういうことを申し上げておるのですが、御賛成を願っておるわけでございますか。
  45. 石井光次郎

    石井国務大臣 それはその方向ですでにやっておるわけでございますが、法制審議会のほうでも問題にしておるわけでございます。  なお、あなたのおっしゃった心持ち法務省は取り上げていくつもりであります。
  46. 横山利秋

    横山委員 それでは津田さんが御存じのようですから、津田さんに伺いますが、いま大臣のおっしゃる法制審議会で、私の申し上げておるような意味で取り上げて、どういう経過をたどっていますか。
  47. 津田實

    ○津田政府委員 御承知のように、法制審議会におきましては三年前に刑法の全面改正についての法務大臣の諮問がございまして、それ以来刑事法特別部会というものを設けまして、審議をいたしております。さらに、刑事法特別部会におきましては、五つの小委員会を置きまして、こまかく審議をいたしておるわけであります。先ほど御指摘がありました刑法改正準備草案というものは、法制審議会とは別に世に公示されておるわけでございます。そういう案は別にございますが、法制審議会としてはさらに独自の考え方を持って、いま立案をするという段階になっております。  その小委員会におきましては、刑の問題についてもいろいろ論議がございます。したがいまして、いずれこれは小委員会結論が出、さらに法制審議会の刑事法特別部会の議にのぼる、こういうことになるわけであります。したがいまして、刑の問題といたしましては、第一に大きな問題は、ただいま仰せになりました死刑の存置の有無という問題、あるいは刑につきまして禁固刑と懲役刑とを一本化するかどうかという問題が取り上げられて、目下盛んに論議が行なわれておるという段階でございます。
  48. 横山利秋

    横山委員 私の手元に、死刑についてのイギリスにおける賛成論、反対論を要約したものがございますが、賛成論としては、誤判により無実の者に死刑が宣告された実例がある。第二番目に、謀殺した者の三分の一はその直後に自殺しており、死刑の存在が犯行を思いとどませられるとは考えられない。三番目に、経験上死刑は死刑囚に何らの犯罪予防になっていない。第四として、同じ謀殺でも、その方法により死刑に当たる場合とそうでない場合との矛盾がある。  反対論としては、第一に国民の約八割が全面的死刑を望んでいない。第二番目に、法案提出まで武器を使った犯罪がふえる傾向にある。第三番目に、警察官、看守及び家族の身の安全が保障されない。第四に、犯罪者に配慮を与え過ぎ、被害者を無視している。罪のない被害者の人間生活の尊厳を保つためには死刑は必要である。  この英国における賛成論、反対論は、日本の実情と若干違うような点があります。それは賛成論のうちで、謀殺した者の三分の一はその直後に自殺しておるということであり、反対論のうちで、警察官、看守及び家族の身の安全が保障されないという点につきましては、若干違った状況があると思うのですが、日本における今日までの死刑問題について、政府部内ではどういう議論が行なわれているのか、その点をちょっと伺いたい。
  49. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお話でございますが、行なわれている議論の一々は、必ずしも私がここで申し上げるわけにまいらないのですけれどもただいま仰せられたようなことは、もちろん十分論議にのぼっておりますし、日本でも著名な死刑廃止論を唱える学者もおられるわけです。そういう学者も法制審議会の委員になっておられまして、ありとあらゆる面におきまして、その論議を戦わしておるということが申し上げられるわけでございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 いずれ機会を見て、この死刑廃止論の賛成、反対の問題について、一ぺん十分に御意見を伺いたいと思うのでありますが、石井法務大臣はスポーツマンで、体育協会の会長をやっておられて、特にお人柄からいっても、歴代大臣の中で死刑廃止問題については最も御協力を願えるような経歴があると私は思っておるわけです。なぜそういうことを申し上げるかというと、つまらない例でありますが、ここに新聞紙上にあらわれた死刑に関する世論というものが、参議院の審議の際にずっと列挙されています。「執行を待つ六十二名」という記事の中にこういうことが書いてあります。差しさわりがあるかもしれませんけれども、一ぺん読んでみます。「死刑を執行する場所は現在六ヵ所ある。札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡で、東京は例の巣鴨プリズンにあるが、これは駐留軍に接収されているので、東京の死刑囚はすべて仙台送りになる。  四国の高松にないのは同地方に死刑に該当する犯罪が少ないからだといわれている。  死刑が確定すると法務省刑事局総務課で記録を検討する。たとえ裁判所が膨大な日数をかけ、全知をしぼった判決を下したとはいえ、こと死刑に関する以上、念には念をいれて調べねばならない。このため記録の検討に当っても単に書類を見るだけではなく、ときには犯罪現場の再調査までも行われることがある。こうして事件に間違いないということを確めてから法務大臣に死刑執行の決裁を求めるのである。  ところで死刑は法務大臣の命令により、命令のあった日から五日以内に行われるのだが、死刑執行の判を押すのはどの大臣でも寝覚めが悪いらしい。「大臣一つ判を……」と書類を出されても「イヤちょっと……」とかなんとかいって、そのまま机の奥深くしまいこまれ、あとはナシのつぶてということが多い。  もちろんこのためばかりではないが、いまや死刑囚ブームである。昨年一月の八十三名、今年の一月で七十八名と、戦前の二十名前後にくらべるとまさに四倍近い数字だった。ところがこの数字がこの三月で一挙に六十二名までに減った。  判を押さなかった一方の旗頭が例の犬養指揮権発動大臣であったのに対し、花村大臣は弁護士出身だけにこの問題をきわめて簡単に割切って事務的に処理したものとみられる。  この中には唯一の女死刑囚である大阪の山本広子や七人の婦女を暴行殺害した栗田源蔵などがいる。また死刑が確定していないが帝銀事件の平沢貞通、三鷹事件の竹内景助被告、松川事件の鈴木信、杉浦三郎、本田昇、佐藤一被告などが、」これは記事がちょっと古いのですが、「春に背いて冷たい獄舎につながれている。山本広子は死刑が確定してからもう四年越し。最近では死の恐怖に気も狂い、訪れる人に足をすり、手を合せて涙を流すなど悲惨な状態にあるという。平沢被告は今なお無実の罪を主張し、死刑を求刑した高木検事に心を改めよと獄中から訴え、竹内被告はバイブルを手に、家庭に残した子供の行く末を案じているという。」これは三十年の「読売」の記事でありますから、若干内容が違うところがありますが、歴代の法務大臣によって判こをおれは押さぬという人もあれば、どんどん、弁護士だからというのはちょっと記事がおかしいのでありますが、お医者さんでもどんどん押された人があるそうであります。承れば、その書類を一晩借りて仏壇に供えて自分でお経を読んでから、あくる日の朝判こを押された大臣もあると聞き及んでいるわけであります。私は大臣の印鑑が最後に人間の命を奪うというこのことの仕組みに非常に法務大臣という職に対してお気の毒だとは思う。お気の毒だとは思うけれども大臣によってどんどん押す、それからおれの就任中は押さぬという大臣もある。それはどちらがいいか悪いかは別といたしましても、一人の人間の命が最終的に大臣の人間性、あるいは人生観、それによってその寿命が伸びたり縮んだりするということに何というか、表現する方法を知らない何かを感ずるわけでありますが、私は死刑をイギリスではいろいろと議論をし、そして実は先般機会がありまして東京拘置所へ行き、所長に会いましていろいろ死刑囚の話を聞きまして、許されて三鷹事件の竹内景助被告に会い、竹内君の心境などもこういう質問をする機会に一ぺん聞いてみたわけであります。別にその内容をいまお話しするのが私の目的ではありません。しかしながら、彼もまた真剣に自分は無実であると言うておるわけであります。無実であるかどうか、まさに客観的にいえば神さまよりこれは知るよしもないのであります。しかも世界における死刑の誤判事件というものは実に多いのであります。あとになってから、死んでしまってから誤判であったということがわかった例もあるわけであります。そうなりますと、裁判で死刑と確定をする。それもまた神ならぬ身の裁判官が、真に間違いない判決をしたかどうかについても疑問がある。けれども、それはまだ死刑じゃない。判決があっただけであります。すると、今度は法務大臣が最後に判こを押すことによって抜き差しならぬ、取り返しのつかない最後の問題がそこへ来るということについては、私はこれは、これよりしかたがないといえばいうものの、大臣としては常に慎重でなければならず、犬養さんのおれは一つも判こを押さぬということを決して私はそれがいいと言い切るだけのことはないのですけれども、それにしても何かそこに一つの目的というものがあるような気がするわけであります。  妙な質問のしかたでなんでございますが、あなたの経験、あなたの体験、いままでのあなたの人生観からいって、私はあなたはそんなに簡単に判こを押すんじゃない、また死刑の廃止のことについて御賛成が願える人じゃないかという期待をつなぐわけでありますが、御心境をひとつ伺いたい。
  51. 石井光次郎

    石井国務大臣 いまのあなたのお話はまことに大事な問題でございます。これは慎重の上にも慎重に処置をしていくつもりでございます。それ以上のお答えのしょうがございません。それでお含み願います。
  52. 横山利秋

    横山委員 処置していくということは、こういうことを聞いて恐縮なんですが、本年ありました、つまりあなたが三つ判こを押されたということなんですか、慎重に……。
  53. 石井光次郎

    石井国務大臣 まだこれから先の問題でございますから、どうするか、私の、問題にぶつかってどうするかということはまだきめておりません。
  54. 横山利秋

    横山委員 大臣お答えにくいらしいのですけれども刑事局長、本年三件の執行は、石井法務大臣の在任中に執行されたということですね。
  55. 津田實

    ○津田政府委員 死刑執行は具体的に事実がいつあったかということは、外部に公表いたしておりません。したがいまして、どの大臣の決裁によりその死刑の執行が行なわれたということは、外部にはわかっていないわけでございますので、これは申し上げることを差し控えさせていただきます。
  56. 横山利秋

    横山委員 私は弁護士でもなければ、法律家でもないものですから、この資料の中にある世界じゅうの誤判事件というものをずっと読んでみると、こういうことがやはり日本にないとどうしても断じられないのであります。ここに列挙されておりますのはアメリカのブラウン事件、「シドニー者」事件、イギリスのブラッドフォード事件、ハアブロン事件、ピガダイク夫人事件、フランスのドレーフユス事件、フラマン事件、ドイツのブーセ=チーゲンマイエル事件、ジャクボウスキー事件、サッコ=ヴァンゼッチ事件、その他ハンガリーのトムカ事件、オランダのチュウニッセン=クルンダアト事件、おそらくここは著名なものだけ列挙されたのではないかと思いますけれども、日本におきましても先般の吉田石松老人の判決といい、それから最高裁で無罪確定いたしましたけれども、松川事件といい、それからいま続いております八海事件といい、まさに有罪か無罪かというのが百八十度変わる。これは裁判が公正に行なわれたのだから、そこで終局的な真実というものが明るみに出たんだ、それで終わりなんだ、もうあらゆる真実の一切がそこで突き詰められたんだ、法律上はそういうことになる。しかしほんとうにそうであろうかということは裁判官が目の前にある証拠を、目の前にある証拠にすぎないのですが、目の前にある証拠から慎重に努力をして得た結論にすぎないのであって、事態の全貌というものは、神ならぬ身の知るよしもないのではないか。そうなりますと、十年が五年になり、五年が十年になったということはまだまだ許されても、人間の命を最終的に奪い切ってしまったのでは、これは何としても取り返しのつかないことになる、そういうふうに痛感をされるわけであります。  廃止運動を進める人々には正木亮弁護士、東大総長であった矢内原君、大内兵衛君、あるいは牧野博士、中島健蔵、死なれた吉川英治等々、著名な人が廃止運動に歴年全力をあげて続けております。こういう点から考えますと、この際先ほどお話がありましたように、この審議会において一般の問題と並列的に——そう言っては恐縮でありますが、いままでの議論を積み重ねていく意味においての死刑廃止の問題、死刑是非論の問題ではなくて、この際あらためて、この英国の死刑廃止されたことを機会に、死刑問題についてひとつ大臣がお考えを新たにして指示をしていただくということを望みたいと私は思うのですが、重ねて御意見を伺いたいと思います。
  57. 石井光次郎

    石井国務大臣 刑法問題に取っ組んでおる諸君は、このイギリスの死刑廃止問題は百も承知のことであるばかりでなく、それに非常な関心を持ってこれを見、その成り行きについて十分研究もし、自分たちの考えもいろいろまとめておられると思うのであります。そうしてその方向で自分たちのまとめた考えでいろいろ話もされておると思うのであります。いま私はこの問題を取り上げて特にこれをやってくれという必要は毛頭ないと思うのでありますが、何かの機会を得まして関係者の方にこういう問題もひとつお考え願うということを申したい。わざわざ言う必要はないと思っております。  同時に私はこの問題を、さっきから申しますように、私の役所の中、また審議会というようなところでいろいろ研究し、そして進んでいくということで、ちょうどイギリスの問題が起こったときに日本の新聞の幾つかにもどんどん書かれ、社説に書いたものもあったように思います。ああいうふうに声がどんどん上がって、そうしてその方向にいろいろな話が進んでいくことがやはり一番大事なことだと私は思うのであります。さっきから申しますように、あなた方この委員会諸君なんかがひとつ中心になって、どうなるかしらぬがひとつ話し合いをどんどん進めていただくというようなことで声を上げていただくということを私のほうから特にお願いいたしたいと思うのであります。
  58. 横山利秋

    横山委員 最後に伺いたいのでありますが、先はど申しましたように先般三鷹事件の竹内景助被告に会いまして——私は三鷹事件内容を調べに行ったのではなくして、死刑廃止の問題に非常に関心を持ちましたがゆえに、だれに会おうかと思いまして——もっとも私が国鉄の出身者であるという意味もありまして、わざと用件なくして竹内被告に会ったわけであります。約三、四十分了解を得て彼のいま考えておること、並びに何が言いたいかということをいろいろの角度から聞いてみたのです。彼が言いたいことは、要すれば私は無実であるということ、それから同時にいま恩赦のお願いをしておるということ。無実である者が恩赦の要求をするということにはもちろん矛盾があります。矛盾がありますけれども、少なくとも再審を要求しておるけれどもなかなか取り上げてもらえない。しかし自分はもう死刑が、判決が確定をして、このままでいけばいつ法務大臣の著名があって行なわれるかもしれない。いまや十数年になんなんとして拘置所生活を暮らしておる者にとっては、矛盾はあるけれども、獄外の皆さんの恩赦とそれから再審の署名、助命運動が七十万人くらい集まったそうでありますが、この部外の励ましを受けて、ともあれ生き抜かなければ、自分の主張も達成されないということで、矛盾はあるけれども、部外の人の激励を受けて恩赦のお願い心しておる、こう言うのであります。  まあ、これはその運動の中で一つのことばとしていわれるのは、三十年六月でありましたか、最高裁判所法廷で一回の弁論も許されないで、何と七対八という一票の差で死刑が宣告された。この七対八ということも、一票の違いなら判決が疑わしいかというとそうではありません。もちろん、それはそういう取りきめになっておるのですけれども、しかし庶民の立場からいうと七対八、つまり七人の人がこの判決に反対をしたということは、庶民的には非常に大きな影響を与えておるのであります。庶民、一般の国民の中にも、七対八であろうと、一票であろうと何であろうと、それがそういう仕組みになっているのだからそれはしようがないと思う。思うけれども、それにしても一票の差で死刑の判決が行なわれたということについて、人間的感情として気の毒だ。何かそこに、やはり七人の人の反対があるということは、何かわれわれによくわからないけれども最高裁裁判官であるから理由があるのではあるまいか。だからこの際ひとつ恩赦を、そしてまた再審を自分たちも協力してやろうという声が七十万人あ人になったと思うのであります。その内容に入るのはきょうは避けたいと思うのでありますが、そういう意味において彼は五人の家族をかかえて、まあ面会人もあまりなくて、ひたすらに手紙を書いたり、あるいはいろいろなものを人に送ったりして、何としてもという主張を続けておるわけであります。  ただ、ここで余談でございますけれども、少し御検討願わなければならぬと思いますのは、この死刑囚について、何といいますか統一した獄中における取り扱いというものはないのでございますね。所長なり何なりのかなりの配慮といいますかがあって、死刑囚に対する格別の取り扱いというものは私はどうもないように思うのですが、彼が多少不満を訴えましたのは、国鉄の新聞等を購読しょうと思ったけれども、それはいかぬと言われたというようなことで不満を訴えておりました。この竹内被告の再舞並びに恩赦の問題について考えてやることはできないものか。私は私なりに、恩赦の場合の法律的な条件というものをいろいろ調べてみましたが、理屈を言えばなかなか困難だとは思われる。困難だとは思われるけれども、そういう困難を通り越して、七十万の人たちの署名が集まっておる。その七十万人の人たちが署名をするという機縁になったものは、七十万の人たちは自分が三鷹事件を見たわけではない、裁判をやったわけではない。しかし平凡な言い方でありますが、七対八という一票の差ということが、何としても大衆の中に疑問を残しておるということなんです。きわめて常識的といいますか、庶民的な感覚というのですか、そう考えられる。この表を見ますところによりますと、ここ三年間死刑確定した人で執行された人はないようでありますし、竹内君も十何年でございますか、判決というのは長いのでありますから、いま直ちにあなたがそういう判こをおつきになるようなことはないと、統計的な感覚からいうとないと思うのでありますが、この点竹内君のことにつきまして、いまるる申し上げましたことについて御所見を伺いたい。
  59. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまの恩赦の関係は、昭和三十三年一月八日に出願をし、三十三年一月二十三日に上申をされております。それからまた再審の関係は、昭和三十一年二月三日に請求されておりまして、東京高等裁判所事件が係属しておりますが、再審開始の決定はまだございません。現在はそういう状況になっておるわけであります。一般論として申します場合に、再審あるいは恩赦の係属中には、執行ということがないというのが一般論としては申せるわけでありますが、それは絶対ということは、法律上それをとめるということはございませんが、一般の例といたしまして、特定の例外を除きましては、さような恩赦あるいは再審の係属中には死刑の執行の命令が出されないという例になっております。
  60. 横山利秋

    横山委員 再審の申請をしたあとはという意味ですか、再審が受理されてからという意味ですか。
  61. 津田實

    ○津田政府委員 もちろんそれは開始決定と関係はございません。請求がされた後でございます。例外と申しましたのは、再審理由が全く同じ理由で数回再審請求をしておるというような場合には、死刑の執行が行なわれたこともありますが、これは全く同じ理由による再審の場合であります。
  62. 横山利秋

    横山委員 先ほど「読売」の記事の中で読み上げたのですが、判決が確定をしておる、未決におる。大臣が死刑執行の承認を与える前に、大臣は部下に命じてもう一度調査をさせるということのようですが、何を調査させるのか、調査の結果これに何かがあったとすれば、一体だれがどうするのかという点についてお伺いいたします。
  63. 津田實

    ○津田政府委員 死刑の判決が確定いたしますと、執行すべき長から法務大臣に死刑の判決の確定したことの上申があります。それによりまして記録が法務省に送付されてまいりますので、それによって死刑判決が確定し、その記録の内容がわかるわけであります。先ほども仰せがございましたが、法務省の刑事局におきまして、この死刑判決の内容、したがって記録の内容を全部検討をいたします。その結果執行相当という結論に達しましたものについて決裁を受ける、こういうことになる。ただその場合に、もちろん法務省内の保護局あるいは、矯正局の意見を聞くわけでありまして、つまり恩赦ということについての必要性の有無というようなもの、それから刑事局であります場合には、刑事局で、もちろん再審、非常上告の理由の有無ということは検討いたす。そこで、いままでさような例はございませんが、再審相当あるいは非常上告相当というような判断をいたしました場合には、これは当然最高検察庁に連絡をして、その方向検討させるということになると思うのでありますが、いままでさような事件は私の知っている限りではございません。
  64. 横山利秋

    横山委員 この場合、内容裁判の記録並びにその証拠内容に触れて検討し、内容において、裁判の判決について疑義がありという場合もあり得るのですか。
  65. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げましたように、再審、非常上告に該当する理由がありやいなやということは当然検討いたしますから、したがって、当然裁判の形式だけではなくして、裁判内容すなわち実質、つまり罪責の有無、刑の適正かどうかという問題、そういう問題をひっくるめまして検討いたすわけでございます。
  66. 横山利秋

    横山委員 長くなりましたから一応また機会を選んでいろいろと死刑の問題について質問いたしたいと思いますけれども、いま私は竹内君に限っての最後の問題を提起いたしましたけれども、死刑囚に会ってみまして、まことに感慨を禁じ得なかったのであります。再度申し上げますが、だれが一体人をさばき得るのか。ほんとうにその人がやったのか。一体抜き差しならない証拠があって、どこからどうころんでも、まさにその人であったのかという点になりますと、私は全く裁判というものの合理性の限界を痛感せざるを得ないのであります。またかりに本人が間違いなくやったといたしましても、一体それは人間が人間の命を奪い去ってしまうということが適当なのかどうなのかということを感じます。もしもそういうことが許されるならば、すべてのことについても言い得るのでありまして、これは精神論になりますかどうかわかりませんけれども、結局暴力を人間が許すということになる。先ほどあなたもおっしゃいましたように、一人の命が全地球の重さよりも重いということがわれわれの民主政治の中における最高の原理であるといたしますならば、これはもう問答無用に死刑はなくならなければならない。あやまちを犯してもいい、しかし、取り返しのつかないあやまちを犯すことはできない、こう考えるわけでありまして、法務大臣御在任中に、ひとつぜひこの死刑執行については慎重の上にも慎重に、端的に言えば判こを押さないようにお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  67. 濱田幸雄

    濱田委員長 この際暫時休憩いたします。    午後一時三十分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕