○村山政府
委員 いわゆる青蓮院の国宝、重文の問題というのはいろいろな刑事事件、
文化財保護法上の問題、それから宗教行政ないし宗務行政上の問題がからみ合った一連の問題でございます。これが世間ににわかに取りざたされた動機は、青蓮院に国宝が一件、それから重要文化財が十九件あるわけでありますが、そのうちの重要文化財の大手鑑と申すものが詐欺横領事件の証拠品として、容疑者が上野署に逮捕され、それから品物が上野署にとめ置かれたということから世間に伝えられるに至ったものでございます。
まずそれにつきまして御
説明申し上げますと、この四月ごろ、現在はこの大手鑑は大阪の個人の方の所有になっておるようでありますが、それを売りたいということで京都の美術商が預かりまして、東京に買い手があるということで出てまいりました。それをまた売ってやるからということで二人の者が品物を預かってそのまま所在をくらました。大阪の所有者から預かった京都の美術商が上野署に訴え出て、上野署で捜査の結果持ち逃げをした者二人が上野署につかまり、品物が上野署にとめ置かれた、こういうことになったわけであります。上野署のほうからの照会で、
文化財保護委員会に品物の確認を求められましたので、書蹟の担当官が実物を見ましたところ、重要文化財に指定された大手鑑に間違いがないということになりました。この事件はそういうことで刑事事件でございますので、以後引き続き上野署において捜査中でございます。
これに
関連して青蓮院の国宝、重文がかなり世間に散逸しておるのではないかということになったわけでありますが、この点につきましては実は
文化財保護委員会におきましても、数年前からそういううわさも耳にいたしておりましたし、また実は買い取った方から買い取ったという届け出には接したわけであります。ところが
文化財保護法では、国宝、重要文化財の売買それ自体は悪でもなければ不当事項でもございませんが、必要な手続をしなければならないことになっております。資り渡し側がまず有償で譲渡する場合には国に買い取りの申し出をし、国が買い取らないという返事をした後において有償譲渡をするということが定められておりますし、買い取り側においては買い取った後二十日以内に届け出ることになっております。買い取り側の届け出がなされたわけでありますが、売り渡し側の手続がなされておらないということになりまして、手続が不備でございますので、買い取り側にもその旨を伝え、それから
文化財保護委員会並びにこれを地方で担当しております京都府の
教育委員会を通じまして、所有者である青蓮院にも成規の手続をとるように連絡をいたしましたが、その当時は、青蓮院の責任者はそういう件については関知しない、
自分が知らないうちに出たのではないかということを申しまして、手続がとられないままで今日に至っております。
この種の品物は現在十件
程度ございまして、
文化財保護委員会、京都府
教育委員会並びに最近は刑事事件が起こりましたので警察においても捜査中であります。
それから三番目に刑事事件が実はもう
一つあるわけでありまして、これは
昭和三十七年七月のできごとでございますが、青蓮院にこれも重要文化財の指定を受けております浜松図というふすま絵がございます。これが未指定のふすま絵二件とともにそのうちの一枚が観光客によって切り取られ盗まれたという事件がございます。これは寺側の届け出によりまして所轄の松原署におきまして捜査をいたしましたが、犯人もつかまらず、確たる手がかりも得られないままに、今日に至っております。そういう経緯がございますので、松原署においては、今回の事件を契機といたしまして、その四年前の事件の再捜査をやっております。
それから問題の第四点は、これは青蓮院は申すまでもなく宗教法人でございますし、天台宗の一寺でございますので、寺の財産を処分するには、それぞれ所定の宗務行政上の手続が要るわけであります。寺としても、そのようなことは責任役員の間で所定の手続が要りますし、また天台宗を総括しております天台宗務庁における所定の手続も必要でありますが、私
どもが聞いた範囲では、そういう手続もとられておりません。天台宗務庁においても何とかしなければならぬということを検討中でございます。
以上が事件の概要でございまして、現段階におきましては、その四つの問題がからみ合いましてそれぞれの
立場で真相の究明、それからその続く問題としては、善後策をどうするかということをやらなければならぬ段階でありますが、
文化財保護委員会といたしましては、現段階では所在の確認につとめておりまして、善後策までにまだ立ち至らない状態であるというのが現状でございます。