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清水参考人 ただいま
佐々木理事長から御
説明になりました点と若干ダブる点があるかもしれませんけれ
ども、事務的なことについて申し上げてみたいと思います。
私の申し上げたいことは、昨年度
私学共済の
法律改正が行なわれまして、いわゆる
標準給与の
引き上げとか、あるいは
長期給付の
内容改善、
福祉事業の
事業内容の拡大というような
改善を行なう
法律改正がございました際、
衆議院並びに参議院で
附帯決議をつけていただいておるのであります。この
附帯決議に対して、
共済組合としてはどういうような
努力をしてまいったか、また今後についての
考え方というか方針はどうか、またこれに伴う
私学共済の現状はどうかというような点について、その概要を申し上げたいと思います。
その際の
衆議院の
附帯決議は、第一は、ただいま
理事長のお話にございましたように、「
私立学校教職員共済組合法制定の
趣旨にのっとり、本法が全
私立学校に
適用されるよう考慮すること。」ということでございます。それで、大体
大学から幼稚園、
各種学校等に至る
学校のうち、百十数校、が現在
適用除外でございまして、
私学共済の
適用を受けないで、
厚生年金もしくは
健康保険を選択いたしております。その
教職員の数はおよそ二万四千何がしでございます。これらの
適用除外を受けている
学校の中には、たとえば
早稲田とか
慶応とか、あるいは
キリスト教系の
大学のように、
学校法人を設置経営する
学校の
教職員全部が
適用除外を受けている、こういう
種類のものがあります。それから
大学だけは
適用除外を受けているが、同一
学校法人の中で
高等学校以下は全部
私学共済の
適用を受けている、こういう
学校があります。実例で申し上げますと、
東京における実践女子
大学あるいは明治
大学あるいはまた関西における天理
大学、立命館
大学、
同志社大学等の
学校は、
大学だけは
適用除外されておりますが、
高等学校以下は全部
私学共済に入っておるわけであります。それから当初は
学校法人が全部
適用除外を受けましたが、二十九年以後にその
学校法人が新しい
学校をつくったために、二十九年以後できた
学校だけは
私学共済に入っているという
種類の
学校がございます。たとえて申しますと、
東京の
東邦医科大学、
東邦医科大学は入っておりませんけれ
ども、その付属の
高等学校はその後にできたものでございますのでこちらに入っておるとか、
福知山短期大学は入っておりませんが、その後にできた
高等学校並びに
中学校はこちらに入っているというような例がございます。こういうようないろいろな
種類が
内容的にはあるのでございますが、そのうちで、同一
学校法人でありながら一部は
適用除外を受けて、一部は
私学共済に入っておる、こういう
学校は、その人事その他の編成上非常な困難を来たしておる。たとえば
大学の
教務を担当している
職員が
高等学校の
教務を担当するようになると、
厚年をやめて
私学共済に入らなければならない。
高等学校の
先生が
大学の
先生になるとまたそちらをやめて
厚年に入らなければならぬということで、非常な不自由を来たしておる。そこでぜひ
私学共済に加盟してもらいたいという熱心な要望があるわけでございます。それからまた
学校法人全部が入っておらない
学校、たとえば
早稲田とか
慶応とかいう
学校におきましては、
厚生年金プラス学内年金というのをつくっています。この
学内年金は無
拠出制と申しまして、
教職員からは
掛け金をとらないで、
学校が全部積み立てておる、こういう
方法と
厚生年金の両方に入っておるわけです。こういう
学校にとりましては、
私学共済に入ると一体その
学内年金の取り扱いがどうなるか、あるいはこういう
学校は
健康保険組合を持っておりまして、
健康保険組合のすでに所有しておる財産の帰属がどうなるか、こういう
点等につきまして、実は
私学内部におきましていろいろ現在
対策委員会等で
検討をいたしておりますが、その結論がまだ十分ついておらない、こういうような
事情がございます。先ほど
佐々木理事長の
ことばにもありましたように、いま直ちにこれを全部加入させるというわけにはまいらない。そこでまず
私学共済の
内容をできるだけ
改善していって、その後に
法制定の
趣旨にのっとって全
私学がこの法の中に含まれるような方向に向かって
努力してまいりたいということで、いま進めておる
実情でございます。
それから
附帯決議の第二番目の問題は、「
私立学校とその
教職員の
実情にかんがみ、
掛金負担の
軽減を図るため国の
補助率の
引き上げに努めること。」この点につきましても、ただいま
理事長からの
説明がありましたけれ
ども、実は
私学共済はその
給付内容、
方法につきましては
政府並びに
先生方の御
高配をいただきまして、
国共済とほぼ均衡するような
内容を持っておるのであります。しかしながら
財源の措置につきましては、これは
国家公務員ではございませんので、どうしても
厚生年金もしくは
健康保険の方式を
採用せざるを得ない、こういうような
実情でございます。これを具体的に申しますと、
掛け金につきましては、
私学共済は総
所得が
掛け金の対象になっております。
公務員は
本俸だけであります。また
整理資源と申しますいわゆる将来支払われるであろう不足する
財源につきましては、
公務員の場合は
公費負担ということが
法律に書かれておりますが、
私学といたしましては大
部分は
自己負担をしなければならない。また
掛金の
負担方法につきましても、
国公共済のほうは、たとえば
長期について申しますと
本人は百分の四十二である。それから
使用主と申しますか国は五十八であるという
ぐあいに掛金の
負担割合に差がついておりますが、
私学のほうは
厚年、健保と同じように
折半負担であります。また
事務費につきましてもおよそ三〇%
内外国の
補助はいただいておりますが、残りの七〇%は
掛金の中から
負担しなければならない、あるいは施設についても自分でこれをつくっていかなければならないというような
ぐあいに、
財源措置については
厚生年金並びに
健康保険の
方法を
採用いたしております。したがいまして現在
長期給付の
掛金率は千分の七十六、
短期給付の
掛金率は千分の七十という
ぐあいになっております。
国家公務員の
本人の
掛金は千分の四十二であり、
私学共済は七十六の半分だから
本人の
負担は三十八である、こういう数字だけ見ると
公務員の
掛金のほうが高いように思えますけれ
ども、これは先ほど申しましたように、
私学は総額についての
掛金を取られ、
公務員は
本俸だけについて取られるわけで、もし
公務員が
本俸だけでなくて総
所得に対して
私学共済と同じように
掛金をかけて金額をならせばどうなるかというと、むしろ三十八より下回った三十六
程度の
掛金率になるというような
実情でございます。どういうわけでこのような開きがあるか、同じ
給付をしていながらなぜ差がなければならぬかというと、先ほど申し上げましたように、
事務費の
負担は
掛金の中から
負担しなければならないということがございますので、そういう差額が生じてくるわけでございます。また
私立学校教職員の
給与の
全国平均は総
給与で三万五百四十七円であるのに対して
公立学校の
給与の
本俸だけの
全国平均は四万七百四十五円、こういうことでございますので、総
所得と
本俸を比較しても全国の教員の
平均では一万円以上の差がありまして、総
所得ということになると一万五千円以上の差があるわけでございます。
そこで先ほど
理事長の
ことばにもございましたように、私
どもとしましては
厚生年金の
補助率が百分の二十に
引き上げられた以上、同じような
財源措置を講じておる
私学共済に対しても同率の百分の二十をお願いできないだろうか、こういうことで実は
政府を通じてお願いをいたした次第でございます。あるいはまた
厚生年金は
給付が非常に悪い、
私学共済は
給付がいいんだから、同率の
補助をする必要はないという
ことばもございますけれ
ども、御案内のとおり
厚生年金の
標準給与は七千円が
最低で
最高が六万円でございます。
私学共済は
最低が一万二千円で
最高が十一万円でございます。
掛金率は
厚生年金が千分の五十五に対して
私学共済は千分の七十六でございます。こういう
ぐあいに給付自体が
違い掛金も違うのでございますので、この点につきましては将来さらに御
検討をいただいて御
高配をいただければたいへんありがたいというのが
共済組合の基本的な
考え方であります。
次は
短期給付について申しますと、
健康保険の
標準給与の
最低が三千円、
最高が十万四千円であります。
私学共済の場合は
最低が一万二千円で
最高が十一万円であります。
掛金率につきましては健保はきわめて最近に
改正されまして千分の六十五になった。
私学は昨年から千分の七十を徴収しております。つまり
標準給与が非常に高くて
掛金率も高いにもかかわらず、
給付のほうはどうかというと、
短期給付の大
部分を占める
医療費は全く同じでありまして、
付加給付を行なうことができない。これは先ほど申しましたとおり
公務員と比べて
給与がきわめて低いためでございます。
かような
事情から実は四十一年度の予算にあたりまして、
組合といたしましては
短期給付の
不足財源についておよそ二億七千万円、
長期給付につきましては百分の二十相当の二億四千万円
程度の予算と
事務費の
補助をお願いしたのでございますが、先ほど申しましたとおり
事務費は若干の増額をちょうだいいたしました。また
長期につきましてはいろいろの
事情がありまして百分の十六が予算的には認められたということでございます。しかしながらやはり
共済組合並びに
私学振興の面から考えれば、将来とも
私学共済の健全な運営のために御
高配をいただきたいということを熱願いたしておる次第でございます。
附帯決議の第三は、
年金スライド制の問題でございます。インフレによる
貨幣価値の下落とかあるいは
国民生活水準の上昇とかあるいは老後の
生活保障とかいうようなことで、この
年金スライド制の問題は今日各制度において非常に取り上げられまして、幸いにいたしまして現在
大蔵委員会において他の
法律によって
私学共済の
スライド制の
原則の
法改正も行なわれるということを伺っておるのでございますが、これが法定をされた後に来たるものはその具体的な
方法ではなかろうかと思うのであります。これにつきましてはいまいろいろな資料を集めて、どういう
方法が一番いいかということについて
検討し、あわせて
監督官庁等の御指導もいただくと同時に、またこの
財源についてどうすればいいかということについてもやはりある
程度の
国庫補助の増額をお願いしなければならないのではないかということで、目下
検討中でございます。
それから第四番目は、
女子組合員と
高齢者組合員に対する
給付について、
実情に合わせて
改善をするようにという御
決議をちょうだいいたしております。
この点につきましては、恐縮でございますが先ほどお手元へ提出いたしました資料の六ページをちょっとごらんいただきたいと思います。ちょっと統計が古くて申しわけございませんが、そこに三十九年度の
組合の現況の報告を掲載いたしております。その
総合計だけを申し上げますと、三十九年度の人員は十二万九千三百五十一人、これは現在より相当下回っております。そのうち男子が六万四千五十八人で女子が六万五千二百九十三人ということになっております。つまり
私学共済の構成はおよそ五一%が女子で四九%が男子であるという
ぐあいに、女子が非常に多い構成になっておるわけであります。次にもう
一つおそれ入りますが九ページをごらんいただきたいのですが、この男子と女子は
全国平均でどのくらいの
給与を取っておるかということでございます。そういたしますと、三十九年度について申し上げますと、男子の
全国平均は三万五千六十四円であります。女子の
全国平均は一万九千四百九十一円でございまして、男子と女子では非常に大きな開きがあるわけでございます。これをもとにいたしまして
掛金をいただいて
給付を行なっているわけでございますので、わかりやすく申し上げますと、
短期給付におきましては女子が非常に多いために俸給の
平均額が非常に低いということから、男子の高い
掛金が相当女子の
医療費に回っていくということが一般論として推定がされるわけでございます。
ところが
長期給付におきましては、先般の国会で御指摘になったように、女子の人は
年金までいないじゃないか、一時金になる人が多いじゃないか、こういうような問題があるわけで、むしろ女子が損をして男子がもうけているんじゃないか、これを考えろという御
決議だと思うのであります。しかしながら女子が五一%を占めておるということになりますので、やはりこれらの点についてどういう
ぐあいにすればいいかということについて十分
検討をいたしまして、将来の方向としてはやはりその対策を考えていかなければならない。それにいたしましても女子の
平均が三十九年度一万九千四百九十一円であるということは、非常に低額の
所得であると言うことができる。この面につきましても、将来
短期給付に対して国の
補助をお願いをすることによって、国会の
決議に沿うような方向に向かっていくべきではないかというような
ぐあいに考えておる次第でございます。
また
高齢者の問題でございますが、現在
共済組合約十四万三千人の
組合員のうち、六十五歳以上の
教職員が七千四百六十六人ございます。そのうちの大体三百五十人というものが、すでに二十年以上、あるいは三十年以上つとめて、やめれば当然
年金をもらえる資格のある方々であります。それから残りの方々は、近いうちにそういう境遇になる方々であります。それから、七十歳以上という
教職員が三千七十二人おります。このことは、
私学の特色と申しますか、まず
公務員には見られないことでございまして、大体
公務員でもって七十過ぎの人、あるいは六十五歳過ぎの人というのは、いないとは申しませんけれ
ども、きわめてわずかである。
ところが、
私学では、六十五歳以上は七千四百六十六人もおる。この点は、
厚生年金の年齢の構成と非常に類似しておるわけでございます。したがいまして、先ほど
理事長の
ことばもございましたように、そういったようないわゆる生涯教育につとめる、また、これらの教育者の中には、私財をなげうって、育英事業に全財産を投じて経営しておる人たちもあるのでございますから、やはり在職中の
高齢者年金という問題も、これは十分
検討しなければならない、かように考えておる次第でございます。
以上、
共済組合の現況と、国会の
附帯決議につきまして
共済組合がどういう配慮をしているかということについて申し上げた次第でございますが、先ほどの
ことばにもありましたように、今回の
法改正によって、少なくとも十四万三千の
組合員のうち、
昭和三十六年以前から就職しておる人、つまり五年以上就職しておる
教職員の数は八万ないし九万名でございますが、これらの方々は、いずれの日かやめますときに、五年が三年になり、五万二千円の
頭打ちがはずされるということによって、有利な条件が得られるのであります。また、先ほど
理事長のお
ことばの中で、ちょっと数字が一けた違っておりましたが、実は
年金をもらっている人は、先ほど
理事長は二万八千と申したと思いますが、これは現在設立日が浅いものでございますから、現在もらっておる人は二千八百四十二人でございます。その二千八百四十二人のうち、七百二十二人の方が旧
私学恩給財団の例による
昭和二十七年九月以前にやめて
年金をもらっている方々でございます。この方々の
年金額は、現在
最低が四万五千円で、
最高が五万六千二百五十円でございますから、一人も六万円まで達しておりません。したがって、この七百二十二人の方が、今回
法改正によって全部
利益を享受するわけでございます。また残りの二千百何人かの方々は、五年が三年の計算になり、あるいはまた五万二千円の
頭打ちがとられるということによって、これもそれぞれの
利益を受けるわけであり、現在現職に立って活躍をしておる八万ないし九万の
教職員は、将来に対して大きな
希望が持てる、こういう
改正内容でございますので、実は相当年配の方々は、まだ
法律改正にならないか、まだ
年金が上がらないのかと、非常に待望をしておるのでございますので、何とかこれが御成立を見ていただくことは、
共済組合ばかりでなくて、
私学関係者にとって大きな福音ではないかと思う次第でございます。
以上でございます。