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春野参考人 主婦連合会の副
会長をいたしております
春野でございます。きょうのこういう
会議に、貴重なチャンスを与えていただいたことを感謝いたしております。
ことしに入りましてから、
物価対策を何とかしなければいけないという気がまえにおなりになったようでございまして、内閣のほうでも
閣僚協議会、それから
中央官庁の
各省の
連絡会、さらに
衆参両院にも
物価対策の
特別委員会、それからその流れの
一環でございましょうか、
経済企画庁に
物価問題懇談会というものが設けられまして、一月から発足されました。私などもその末席に連なっているのでございますけれども、この上がり続けてきた
物価を何とかしなければいけないというので、いままでになく本格的な姿勢が各方面でとられているということは、私ども喜んでおります。けれどもおそきに過ぎた、非常にその点が残念でございます。でも、まあぐちってみてもしかたがございませんから、この時限からでもけっこうでございます。各方面が総立ちになって、全
国民が損をする高い
物価退治ということを本気になってやっていただきたい。いただきたいだけでなくて、私ども自身はもう数年前から、
物価対策は、
物価運動は全
国民運動でやるべきだ、そうでもしなければ、
政府だけ力まれても、あるいはどこかの官庁だけ背伸びをされても、また
消費者運動だけがわいわいと声を上げても、全身に広がったガンのような症状を呈しておりますので、どこから手をつけていいのか一向にわからないのと同様に、ある部分だけが一生懸命になってもこの
物価対策のきめ手がない、そういうふうに思わざるを得ないのでございます。
ごく最近、藤山
経済企画庁長官が、これまでの経済のあり方は、経済に奉仕する生活であった、それを置きかえて、生活に奉仕する経済であらねばならぬと言われましたが、もう
一つ、私なりのことばをつけ加えますならば、生活に奉仕する経済であり、政治であらねばならぬ、これは私ども
主婦連の創立以来からの願いでございます。いま、ようやくこういうことばを経企庁長官の口からはっきり聞けるようになったということは、十数年の歳月も流れておりますけれども、よくぞそこに気がついていただいたと思って喜んでおります。がしかし、その方針に基づいて、その目標に基づいて、
国民も国もあげてそういった姿の経済市場をつくり出すまでには、たいへんな歳月を要するであろうと思います。私どももようやくその糸口へきたわけでございますから、そういう目標に向かっての協力は、
消費者運動を通じて惜しまないつもりでおります。
大体三十五年の所得倍増、
生産倍増計画が動き始めて以来、六年にわたって毎年毎年
消費者物価が平均約六%上がり続けた。そうしていまなおこれがどうにもならずに、困った困ったとながめられているという例は、世界各国にも少なかろうと思うのです。経済の成長計画、
生産倍増計画、これには、
政策の上できわめて計画的な手厚い施策がなされたわけでございます。であるならば、それと並行して経済成長に伴う
消費者物価の上昇というものが、どんなにか
国民の暮らしを日にち毎日脅かす、あるいは大きな影響を与えるわけでございますから、そのほうも重視していただいて、経済の成長とともに所得もふえ、並びに
物価も絶えず安定しつつ進んでいくというその手がなぜ打たれなかったか、これが現在に至るまで、私ども非常に残念に思っている点でございます。
三十五年の十月に、私ども、なまいきのようでございますが、奥
会長を先頭にいたしまして、いま申し上げたような願いを池田総理に直接訴えたのでございます。産業育成といいましょうか、経済の成長のほうのみをいたずらにお急ぎになっていたのでございましょうか、そこから、大きく影響されてあらわれてくる
物価対策については、一向に御配慮がなかったわけでございます。経済の成長と
物価の安定施策は車の両輪のごとく並行して進めてほしい、こう奥
会長が池田さんに再三再四その席で願ったのでございますけれども、しろうとながらこちらの念願のほうが、今日
考えてみれば当を得ていた。少なくともそれぐらいのことを並行してそのときから対策を立てていってくださったならば、そんなに目ざましい経済の成長がなくとも、
国民生産のほうも成長しつつ
国民の所得もじんわりとふえつつ、しかも
物価がある程度安定しつつうしろから上昇が追いかけてくる、こういうことでありますならば、
国民の暮らしは、今日ほど繁栄の陰に貧乏があるという片びっこな状態は生まなかったであろうし、かつまた、全
国民が総立ちになって騒ぎ続けるような
消費者物価の値上がりというのは押えられたんではないかと、返す返すも残念でございます。願わくば、
体制の整った今日の状態から先、どうぞひとつ
生産する人も物を売る人も、そのすべての物が
家庭に入ってきて、大きな喜びになり、あるいは大きな悲しみになり、あるいは
家庭を苦しめる素因にもなるのでございますから、
国民の暮らしの中に時の政治、経済の動きが、あるいは商
業界、
生産界の動きが、あるいは新しく生まれる商品の
一つ一つが、あるいは便利だ、科学的だといわれる商品類も、すべて
家庭に入ってその真価を発揮して、よかった、悪かった、危険な商品であった、安いわりには非常に性能がよかった、こういう評価を得て初めて商
業界、
生産界の大きな価値を発揮するのだと私は信じます。ですから、
生産対策あるいは産業対策、産業育成、それとともにそこから生じてくるものが、集約的には
家庭において決算されるのですから、品質、
価格、これをどこまでも重視していただく政治の姿勢、あるいは角度を持っていただきたいと、切に願う次第でございます。
それで、
物価問題懇談会が一月に開かれましたときにも、期せずして各
委員の
先生方から御
意見が出たのですけれども、
物価対策の知恵をかせという、わかりやすく言えばそういうことでございますが、それはいいけれども、一方では、ことしに入りまして早々に
消費者米価が上がり、私鉄
値上げ許可、国鉄もよろしい、それからやがて東京、横浜、大阪、こういうところの市営の電車、バス、これも
値上げ、いま
家庭が最も苦しんでおりますのが授業料、入学金、そういうものの
値上げ、小包はもうすでに上がりましたが、やがて追いかけてはがき、封書の
値上げも待っております。それから電信電話が次には控えている。こういうような一連の公共料金の
値上げはやむを得ない、許す、こういう態度をおとりになりつつ、一般的には上がり続ける
物価を何とかしよう、
物価対策をやろうというその矛盾、そのジレンマを、
委員を受けた
先生方もどう解釈すればいいのかというようなことで、たいへん論議が沸騰しつつ今日に及んでいるようなわけでございます。いまここでその
政府の態度を責めましても前進いたしませんので、私どももそういう矛盾を胸に持ちながら、二十数品目とりあえずお取り上げになった個々の
物価に対して取り組みつつ、
物価問題懇談会に非常な精力を集中して、何とか安定の方向へ進める知恵が出ないものか、方策はできないものかということに苦心しているわけでございます。
ことしの一月に、私どもは二千枚のはがきを佐藤総理に持ち込みました。これは
全国のテレビで呼びかけまして、「拝啓 総理
大臣殿」ということで呼びかけたのでございますが、意外にもいろいろな
組織に属していらっしゃらない普通の庶民の方々が、このときとばかりにお書きになった文面を見ると、それが切々とわかったわけでございます。大体夫婦子供二人という御
家庭で三万五千円、四万二千円、四万五千円、この程度の収入の御
家庭がいかに多いか、そして、いかに食べるということのために苦しんでいらっしゃるか、それがわずかな文面の中に側々と察することができました。この階層が多いということを、絶えず念頭に置いていただきたいのです。表面はいかにもレジャーを楽しみ、所得も相当ふえ、けっこう平和の中にしあわせを楽しんでいるじゃないかというようにすぐ指摘されるのでございますけれども、それは表面のみでございまして、その陰にある暮らしのつらさに悩む階層の人々がどんなに多いか、いろいろな家計
調査をいたしてみましても、食料費の高騰というのは悩みの種でございます。大体四万円から五万円、六万円ぐらいまでの所得階層では、半額に近い二万一千円、二万四、五千円、そこら辺まで食費に使っております。年々食費のふくらみが二割ずつぐらいふくらんできております。その中でも、特に
生鮮食料品の値の安定しないこと、高騰するかと思うと暴落することもありますけれども、暴落した場合だって、
生産地がうんと安いわりには
消費者のほうにそう安い
値段としてはあらわれない、こういう奇現象がよく見られるのでございます。高い、安いを平均いたしましても、この
生鮮食料品の値上がり、これはずっと続いております。でありますがゆえに、食べることに一ぱい、食費に収入の半分をとられざるを得ない、こういう状態が五、六年続いてきております。これに対しては、もう各方面から
流通機構がどうとかこうとかいうことでしきりに論が出尽くしているごとく、どこをどう改善すればいいかということは、ポイントは押えられていると思うのです。その
一つの証拠に、さらばしからば東京あたりに総合食品市場を
一つつくろう、こういうふうに農林省でしたか、
国会のほうでもお動きになったんですけれども、既存の市場が、さあ自分
たちをつぶす気かということで総立ちになってたたきつぶしてしまわれる。省のほうでは、これこそが
生鮮食料品を一応引き下げ、あるいは適正な基準になる売買の場である、その見本をつくりたいのだ、こう言われたんですけれども、中央卸売市場あるいは従来の市場の方々が、お家の一大事というようなことでつぶしてしまわれる。つくるだけつくらせて、そうして自分
たちもうんと
企業努力をしようという気がまえはないのでございます。あるいは東京都の食肉市場の公正明朗な取引のしかたをしたい、そでの下取引とかなんとかでなく、
生産から消費まで、あるいは市場の中の
機構が非常に複雑だ、不明朗だ、それを明朗にしようというそのよきねらいが、十年かかってもまだ解決されていない。これも、従来各方面の
業界の方々がいろいろなことを言い立てて、なかなかスムーズにいかないということ。最近では魚等についてコールドチェーン、こういうことでいけばどうだという研究なり
調査なりも大いに進もうとしておりますけれども、概して、何か
一つの新しい姿あるいは
企業努力の姿が出てこようとすると、悪いことには、大
企業は大
企業の一連の結束があり、それから中小の皆さん方も、それ負けるなという意味合いで、
中小企業団体法その他のみが悪いのではございませんけれども結束し、
労働組合もあのとおり結束し、大
企業は大
企業で力をふるって政治を動かしている、さらば自分
たちも、という傾向が最近やたらに強くなったように私どもには見えるのです。しかも、その中小の方々と接触するのは、これは
消費者でございまして、
消費者に最も関連の深い
小売り関係あるいは市場、そういうようなところには存外近代化、合理化方策あるいは能率化していく手だてが、
政府からも少なかったし、かつ商業者、その
業界の皆さん方の
企業努力への意欲が非常に少ないように思うのです。ただいたずらに商業
協同組合的チームをおつくりになって、そしてそのボスの人は、融資をとればいい、何とか減税に成功すれば鼻が高いという態度です。
消費者とともに、
消費者のほうを向いて、
消費者と肩を組んで、ともどもによい道を発見していこう、薄利多売の道をさがしていこう、
消費者に信頼されるよいお店になろう、であるから、その店に仕入れるには、勇気をもって、正しくよきものを、大メーカーから相当な選択をして仕入れてこようということよりも、
リベート本位であったり、あちらからもこちらからも、零細でございます。云々でございますということを看板にしつつ、
国会参りあるいは
法律参り、融資さえもらえばいい、一にも二にも大
企業には手厚い保護がいくけれども、自分
たちを見捨てる気か、いや、選挙のときにはというふうに、何か商業本来の目的からはずれたところに狂奔しておられて、
企業努力あるいは
自由競争でお互い同士が互いに高まっていこうという努力が非常に少ない。
その
一つ二つの例でございますけれども、たとえば、おとうふの世界に十円どうふというチャンピオンが出てまいりました。それが非常に
消費者に受けて、現在でも一日約三万丁ぐらい売れております。これがずっと広がってくれればいいなと私ども思うのですが、中には二十円のがあり、三十円のとうふがあってもかまいません、
消費者は選択して買いますから。ところが、量目はまちまちだし、大体おとうふ組合の大部分の二千数百軒のところは、そのままその中に温存しておって量がたくさん売れませんから、二十円にする、二十五円にする、三十円にするという行き方で、その日暮らしの中にあぐらをかいていらっしゃる。それで、これではいけない、もっと需要を喚起しなければいけないというので、ある青年
たちが踊り出ました。これは
消費者に受けるものですから、どんどんいま
工場も伸びて、自己資本で
工場をつくり、かつ製品も売れまして、
消費者にも愛されるようになった。今度は、それをたたきつぶせという常識外の圧迫が平然として行なわれている。むしろ私は、こういうときこそ、これはよくお調べになる必要もございましょうけれども、
企業努力賞というふうな
一つのおほめがあってもけっこうじゃないか、こういうふうに思うのです。これは端的な言い方ですけれども。
いま
一つの例は、これはあまりに有名でございますけれども、クリーニングの世界で、北九州のこれもある青年のチーム、この人
たちが、これではいけない、もっと安くできるし、もっと効率的なやり方をして、そうして
家庭から洗たくものをたくさん出していただく、いわゆる薄利多売、これができるということで、環衛法の甘いワクの中に閉じこもっている世界から飛び出してやりました。ところが、これに対する圧迫もまた一方ならぬものがあります。だがしかし、大ぜいの
消費者方がこれを支持します。たとえば、いまオーバーでしたら、普通のお店に頼みますと五百円から六百円いたします。ところが、その青年
たちのやり方は、決してダンピングでなくて二百五十円でできるのです。あるいはそれ以下でできるのです。さらに勢いづいて、その人
たちは、ごく最近大阪その他に進出をいたしました。機械を買い入れてやればもっと安くできるという、そこに目標を置いて、これは計算から何から、厚生省がやかましいものですからきちっとやっております。そうしましたところが、お客さんのほうは待ってましたというので、とても
一つの
工場では処理し切れないくらいの品物が出たわけであります。ところが、驚きました大阪のクリーニング組合、いわゆる環境衛生同業組合、この大きな
一つの組合が機械
会社に話をつけまして、あの
工場に機械を入れるのだったら、組合員が君の
会社からたくさん月賦で買っている機械の月賦を以後払わないと、こういう陰の圧力を加えているのです。それはきのう、きょうの話であります。ですから、せっかくのそういう
企業努力が片っ端からつぶされて、それを乗り越えて組合の不当な圧力に負けないで、しかも
消費者とともに前進しようという人々がありますと、それが一にも二にもたいへんな圧力を加えられ、保健所のほうからもやたらなにらみを受けるということなのです。
特に私は、十年来、環境衛生関係のパーマ、理髪、クリーニング、こういうものの
値段あるいは営業のあり方というものを直視してまいっているのですが、私どもといえども、大
企業の発展ぶりに比べて、理髪、クリーニング、パーマ、そういういわば零細な業者の人
たちがいつまでも安くて、お店も薄ぎたなくて、そこに働く人々の収入が低くてもかまいません、それよりも
消費者は安くありさえすればよい、そういうばかな
考えは決して持ちません。大
企業の発展はある程度押えても、低いところこそぐっと上げていってほしい。また
国民、
消費者のほうも、ぐっと所得の低いほうこそいろいろの形で底上げがあってほしい、喜びは公平に受けていきたい、こういうふうに念願するものなんです。だがしかし、その目で見てもこの環衛関係のパーマ、理髪、クリーニング等の値の上がり方は異常でございます。不当でございます。というのは、三十五年に基準
価格を取りきめました。基準
価格を取りきめるときには、私どももその審議会に参画をしておりました。現在でも御一緒しておりますが、その当時の基準
価格は、これはもう政治
価格でも何でもない、原価から人件費から何から織り込んではじき出した
価格でありますけれども、その当時の理髪料金は
全国平均百五十円でございました。パーマが大体五百円見当でございました。計算
カルテル方式ではじき上げまして、大体六百円のお
値段でスタートいたしました。これは
独禁法除外でございます。ところが現在は、パーマは千円をはるかに突破いたしております。
値上げはもう自由自在に幾らでもよろしい。しかし値下げしてはいけない。八百円か七百円くらいでお客さまに多く来ていただく、こうしようというお店が出てきますと、組合のほうからいろいろな意味の圧迫があります。小さなお店のパーマネント屋さん、理髪屋さんは、とにかく組合がうるさい、組合がうるさい、こういうことでございます。私ども何かその協定の事実をとらまえようとすると、もう書類も何もあの人
たちはおつくりにならないで、じょうずな協定の形で、いつしか行くたびに理髪料金が五十円上がり、また五十円上がる、そういう状態で、大幅な諸
物価値上げの中でも最高の
値上げ率を見せていらっしゃる。最近、これにさらにまた他業種と同じように金融がほしい。厚生省のほうは、金融を多少してやれば
値上げを押えることができるであろうというふうなことで、これをめぐってまた審議会が開かれておりますけれども、これとても審議会の場だけでございまして、私どもうっかりいたしますと値下げはチェックされる。罰則があって、組合の許可を得なければ値下げはできない、
値上げは野放しにしておいてさらに金融がほしいと、おんぶにだっこというふうな、そういう甘やかした中で成長するということは、これは何業種に限らずいけないことだと思うのです。その反面、私ども
消費者のほうに立って
考えますと、たとえば五万円の収入があるとします。所得がふえるというのはきわめて微々たるものでございますのに、年々三%、六%、八%というような
値上げがなされたとするなら、その分だけ所得は削られていっているのです。その削られた分は、いつ
消費者のためにといって助成がなされましたか。保護がありますか。せめて
消費者行政くらいのものなんです。
業界のほうは一まとまり一まとまりになっていて、さあ外国から資本がくる、それに対抗して輸入するものも、あれもストップこれもストップで、大豆なんかも、いま
中林さんがちょっとお触れになりましたけれども、もしきわめて自然に、平和な中に、豊富にあるところから豊富に輸入できるとするならば、おとうふやみそや
パン、そういうものの値下りは目に見えてあり得る。だけれども、そこには国内の農家を保護し、あるいは農業
政策とかいうようなこともあろうから、私どもは一がいに、バナナの関税は一気に下げなさいとか、あるいは何が何んでもいいから
消費者のほうのお
値段さえ下がればいいのだから、外国からどんどん入れなさいとか、そういうむちゃなことをいわないでじっとがまんはしてきているつもりなんです。ところが、そのがまんしている間に、
業界の皆さま方がほんとうの意味の自由公正な競争に立たれて、自分
たちの力を増して、この喜びを
消費者とともに分けていこうというような
企業努力がほとんどなされないで、一にも二にも
法律参り、
国会参り、官庁参りという傾向が非常に強いということを残念に思います。この点、
国会の
先生方は特に冷静、公正なお
立場に立たれて、各方面の問題点はすでにとらまえていらっしゃると思うのでございますが、公正な施策を進めようとされればされるほど、そういった意味合いの抵抗、反抗というものが不幸にして多いのではないか。そのわりには、
消費者がこうあればと願っていることを
中心にお取り上げくださる向きが比較的少ない。率先して保護してくださろうとする
消費者行政も、世界各国に比べて
日本ではまだ立ちおくれている。いま
国民生活局長がここにいらっしゃいますけれども、いろいろな意味で大いに努力していただいていると思いますが、
消費者行政というものは、あちこちの省で看板は掲げました。だけれども、真の意味での力強い御活躍というには、まだまだほど遠い片すみにいらっしゃって、予算もなく力も弱い。
物価問題を、たとえば
中西さんがお持ち出しになると、むしろ通産省なり農林省のほうがいだけだかになって、いま
業界は苦しいのだと、
物価問題はいかにも
業界発展の敵のごとくお
考えになっている向きもあるのじゃないか。
各省ばらばら、不統一、そういったことでは、全身ガン的に広がったおそるべき筒
物価というものの対策は一歩も進まないのじゃないか、こう思います。
最後に、これは二月に私どもがふと願いを込めて呼びかけたことが、
一つ実現したのでございます。これは、いままで申し述べたような
主婦連で願う
国民運動の
一つだ、こう思って呼びかけたものであります。それは、御承知のような東京で実現しました野菜の日、肉の日、鳥肉の日、卵の日、あるいはとうふの日、
パンの日でありまして、これは大体十業種でございます。ついこの間、四月の七日に鳥肉の日が五分引きでスタートをいたしました。これは十品目が並んで実現したとした場合に、家計のほうにどれくらいの喜びがあるか、とりあえず計算してみると、
家庭によってちょっと違いますけれども、この十品目をじょうずに買いものをしたとして、二百円そこそこでございます。ですからある方面では、たったこれくらいの喜びしか家計の中にないのか、こうひやかされる向きもあるのです。だが、これが逆転しまして、各品目が五分上がった、一割上がったということになったらどういうことになるか。それがあべこべに各
業界が自発的に、
消費者とともに、
消費者に愛されるお店、それからまた需要を喚起する薄利多売の、利益は少ないだろうけれどもお客さんが喜んで買いにくる、こういう
一つの方便として
主婦連が願ったわけでございます。幸い東京都の消費経済部が力を入れてくれまして、各
業界もそれに踏み切っていただいたようでございます。これは
物価安定のための
国民運動の
一つとして、私どもは喜んでいるのです。これで大成功をおさめているとはまだ言えませんけれども、このやり方をともどもに肩を組みながら、
消費者、
業界あるいは大小のものがそれぞれ肩を組みながら、自分
たちの
業界でかく努力すれば安定の方向にいけるのだ、もっと能率が上げられるのだというような、そういう方策を各方面でやっていただきたい。その
国民の姿、どんなにか大ぜいの者が、わずかとうふ五円の値下げ、あるいは鳥肉の五分引き、その日を待ち受けて買いものをしようとしているか、その台所の願いというものを、政治の上でも直視してくださいまして、政治の上でできますことを、一刻も早く的確な施策をお進めいただきたい、こういうふうに念願しているものでございます。
時間をオーバーしまして失礼いたしました。(拍手)