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1966-06-25 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月二十五日(土曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 倉成  正君 理事 田口長治郎君    理事 舘林三喜男君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君    理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       金子 岩三君    小枝 一雄君       坂村 吉正君    笹山茂太郎君       田邉 國男君    高見 三郎君       綱島 正興君    中川 一郎君       丹羽 兵助君    野原 正勝君       長谷川四郎君    藤田 義光君       松田 鐵藏君    森田重次郎君       兒玉 末男君    千葉 七郎君       西宮  弘君    松浦 定義君       森  義視君    稲富 稜人君  出席国務大臣         農 林 大 臣 坂田 英一君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君  委員外出席者         農林事務官         (畜産局参事         官)      太田 康二君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月二十五日  委員中村時雄辞任につき、その補欠として稻  富稜人君議長指名委員に選任された。 同日  委員稲富稜人君辞任につき、その補欠として中  村時雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一一五号)(参議院送付)  農林水産業振興に関する件(乳価の問題)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許可いたします。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 昨日の乳価問題について、残余の質問を行ないます。  昨日の質問の終わりで申し上げたのは、五月六日に畜産局長から中央酪農会議会長あてに「飲用原料乳価格形成等について」という回報が行なわれておるわけでありますが、その内容について、製造販売費用についておおよそ標準的なものを示しておるわけであります。それを普通牛乳加工牛乳に区分してあるわけですが、この点については、局長といたしましても、相当自信を持った調査の結果である、標準的なものとしてこれは確信があるというような発言が行なわれたわけでありますが、この内容について、若干の説明を加えてもらいたいわけであります。
  4. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 五月六日の私の名前による中央酪農会議会長あて回報の別紙で、「飲用牛乳製造販売費用等について」という参考資料を出したのでございますが、その内容について簡単に御説明申し上げますと、不足払い法案の審議の過程でもお答えを申し上げ、御説明を申し上げましたように、用途別取引を確立をいたしますためには、加工原料乳についての基準取引価格のほかに、飲用牛乳についての価格形成考え方と、その考え方に基づいて乳価形成をはかるための資料を必要とするというふうに考えましたので、このような資料を作成いたしたわけでございます。かねて私のほうで飲料乳工場二十六工場について製造販売経費調査をいたしておったのでございますが、その結果を見ますと、若干基準的な、平均的な経費を算出する工場としては不適当であるというものがございまして、これはきのうも申し上げましたように、飲用乳製造本数が過少であるというような工場、並びに調査いたしました結果の製造販売経費が結局企業として成り立ち得ないような数字が出てきたものがございますので、こういうものはとるわけにまいらないというわけで、これを排除いたしましたものについて、普通牛乳加工牛乳に分けまして、製造販売経費をはじいたのでございます。との製造販売経費は、原資料から昭和四十一年の物価動向を織り込みました修正経費でございます。普通牛乳につきましては、その結果出ましたものが、全平均で百八十ccたり三円三十三銭という平均製造販売費が出たのでございます。この平均点中心にいたしまして上下フレがあるわけであります。フレ全部を認めますと、何のことかわからぬようになりますので、フレの幅から標準偏差を求めまして、その標準偏差上下三十八銭ということに相なるわけでございます。でございますので、最も安い製造販売経費工場は二円九十五銭ということに相なります。高い工場は三円七十一銭ということになるわけでございます。これに平均的な利潤を考えなければなりませんので、加工原料乳についての基準取引価格を算定するときに用いました製造業一般の最近年における平均売り上げ利益率というものを用いまして、利益率二・五%というもの、これを東京卸売り価格基準にして算定いたしますと、二十九銭ということに相なりますので、これを加えますと、中心費用は三円六十二銭ということになり、一シグマに当たります。上下の幅は三十八銭そのままということになるわけであります。次に、加工牛乳についても同様の算定をいたしまして、製造販売費として平均経費が三円七十四銭、上下変動幅四十八銭ということで、これに普通牛乳と同様な考え方平均的利潤を求めますと、三十二銭ということに相なりまして、合計平均処理費用は四円六銭、これに上下幅四十八銭というものが求められるわけであります。  私どもこれだけの資料を出したのでございますが、現実には普通牛乳加工牛乳シェアといいますか、割合地区ごとに非常に違うわけでありまして、普通牛乳の非常に高いところは、九六%普通牛乳であるというようなところもございます。少ないところは三七%程度普通牛乳で、加工牛乳が逆に六二・三%というような地域もあるわけでございます。これの加重平均を求めましたものが、私どもは交渉の手がかりとすべき平均的な処理経費であるというふうに考えているわけでございます。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 これはあくまでもメーカー段階における卸売りまでに至る経費であると考えられるわけですが、ここで従来から問題になっています卸から末端小売り価格までの適正な経費は、なかなか把握しがたいわけでありますが、この点に対する調査はどの程度進んでおるのですか。
  6. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私どものほうでも、地域ごと市乳卸売り価格の建て値というのは把握ができておるのでございますけれども小売り段階におけるコストといいますか、費用実態はなかなかむずかしいのでございます。ともかく販売業者もたしか一万をこえる数でございますしいたしますので、完全な調査はむずかしいのでございますが、牛乳小売りに関する調査をやっておりまして、昨年度の分が最近でき上がりたところでございます。  結局、卸売り建て値から末端までどういう値段で流れておるかということでございますが、東京では普通牛乳を取り上げますと、卸売り価格は十一円五十銭で、家庭配達末端価格は十八円ということになっておりますが、現実売り上げ高平均価格は十八円を割っております。わずかに十八円を割っておるという状況でございます。したがって、小売り段階における費用は六円五十銭弱ということに相なるわけでございます。そのうち、非常に金がかかりますのは配達費でございまして、通常の形、平均的に申せば、一人の配達員が配達し得ます限度の数量は、大体一日三百本ということに相なるわけでございます。現在の労働事情のもとでは、現在のような家庭配給一合、百八十ccのびんを毎日配達することにいたしますと、一本当たり配達コストが、よほど安いところで三円五十銭、高いところでは四円五十銭ぐらいかかっておるということで、大部分配達コストになっておるのが実態でございます。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、生産者側としては、政府から示されました経費の標準的なものを一応よりどころにして、最近メーカー側と折衝しておることは、局長も御存じのとおりであります。  そこで、たとえば一例を東京乳圏に求めると、これは経費部面についても、設備が非常に近代化しておるわけですから、畜産局で示したこの製造販売費平均利潤を加えた普通牛乳三円六十二銭よりも下回った経費でまかなえるということは予測されるわけです。そうしますと、標準偏差がプラス、マイナス三十八銭ということになると、その下限は三円二十四銭の経費ということになるわけですから、これを農林省が策定しました、いわゆる乳製品指標価格から販売製造経費あるいは適正利潤を逆算して加工牛乳基準取引価格をきめたやり方と同様の方法を用いると、卸価格であるところの普通牛乳については、十一円五十銭から一番下限経費三円二十四銭を除くと、八円二十六銭がいわゆる原料乳代ということになるわけです。それから加工牛乳の場合には、卸価格が十二円七十銭ですからして、これの下限経費三円五十八銭を除くと、九円十二銭、こういう計算ができるわけです。これは当然なことでありますが、最近における普通牛乳加工牛乳販売割合というものがありますので、いまでは両者の割合からいうと、普通が四四・六%、加工牛乳が五五・四%というようなことで、加工牛乳のほうがむしろ消費率が多いということになっておるわけです。そのほか、若干の牛乳を加えた乳飲料というのがあって、これが相当メーカーとしては高度の利潤を追求しておるわけであります。この点については、農林省としても的確な把握ができているかどうかということは資料にもありませんので、あと説明してもらいたいと思いますが、結局普通牛乳加工牛乳においては、経費あるいは利潤の幅が違うわけですからして、結局手取りになる乳代普通牛乳加工牛乳平均的なものを求めるということになれば、加重平均方式でこれは計算しなければならぬと思うわけであります。そういうことでやると、結局飲用乳におけるいわゆる生産者乳価というものは、この逆算方式によって答えが出てくるわけであります。この計算方法については、畜産局としてこれを指導方針として進められると思うわけでありますが、その点はいかがですか。
  8. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 結論から先に申し上げますと、私ども指導方針は、ただいま芳賀先生がおっしゃったとおりに考えておるわけでございます。東京につきましては、比較的加工乳比率の高い地域でございまして、私どもの手元にある資料によりますと、加工乳が五七・九%ということに相なっております。そういう比率に基づく加重平均ということが、原料乳の理論的な価格というものを誘導する場合の方式であることは申すまでもないことでございます。ただ、あまり申し上げますと、また乳業者のほうは自分に有利な部分を利用するおそれがあるのでございますが、この調査の結果を見ますと、下限に近い処理経費工場は、総体的に申しまして中小乳業に多いのでございます。そういうような事情もございますし、なお、中央酪農会議でも、独自の方法処理経費を推算いたしておるようなものもあるわけでございます。それが大体私どものこの資料とそう食い違いはないという事情にありますので、具体的な価格というものは、申すまでもなく当事者間でやるわけでございますが、よりどころとしては、十分活用し得るものであると考えるのでございます。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 従来から問題になっている加工牛乳の場合、いわゆる原料乳の場合の脂肪率関係は、これは三・二%が省令で定める規格ということになっておるから、取引上問題はありませんが、乳製品原料乳ではなくて、飲用牛乳の場合は、やはり普通牛乳取引は、脂肪率三・二%が取引の建て値になっておるわけです。ところが、普通牛乳製造の場合は、これは食品衛生法の定めるところによりまして、脂肪率三%ということになっておる。それで、この三%をこえる脂肪分は、普通牛乳製造する場合には抽出しているわけですね。それは決して無価値なものではありません。この三%の規格普通牛乳をつくった場合は、それをこえる脂肪率というものは、メーカーにおいて別途抽出して、これは脂肪として、価値のあるものとして処分しておるわけですから、この分の金額加算は当然行なわれるべきだと思うわけです。いままでこれが解決されておらぬわけでありますから、せっかく畜産局として標準的な経費というものを示されたわけでありますが、この脂肪スライドの問題についても、同時的にその処理方針を明らかにしたほうがいいのじゃないか。
  10. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私どもが標準的な原料乳取引価格というものを示す、あるいは建て値をきめるという場合には、三・二%という脂肪率基準にいたしておるわけでございます。したがって、脂肪の多寡というのは、当然価格スライドすべきものでございまして、私ども一つ考え方としては、加工乳については必ずしも脂肪抽出をしないという例があるわけでございますが、普通牛乳については脂肪率が多ければ、その部分バターとして一部抽出分離するということをいたしておるわけでございますので、少なくとも普通牛乳部分については、脂肪率スライドをこういう経費計算の中でも考えるべきであるというふうに思われるのでございます。それについては、脂肪率一%について一キログラム当たり九十銭というのが、私ども調査をした脂肪率取引における慣行基準価格でございますので、これを百八十ccに戻しますと、十七銭というものが一%について加算され、あるいは減額されるべきものであろうということで、この点は中央酪農会議事務当局に対しまして、口頭をもって指導をいたしております。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 これはぜひこの際実現するようにしてもらいたいと思います。いま局長の言われた一%九十銭ということになると、二%で一円八十銭、それから百八十ccということになると、二%超過のものは三十四銭ということになって、これは一升に換算すると、三円四十銭違うということになるわけです。ですから、これは決して少額のものではない。しかし、この全体が一〇〇%普通牛乳でなくて、むしろ加工牛乳のほうが消費割合が多いわけですから、全体の飲用乳乳代にそれを当てはめることはできないとしても、少なくともこの半分は価格に加算されるということになるわけでありますから、こういう点はぜひ的確に積極的な指導を全国的に徹底するようにしてもらいたいと思うわけです。  この点は大体これでわかりましたが、最近の全国的な飲用乳取引価格等を見ても、東京乳圏において一番高い取引をしているのは全酪連ですね。これは全酪の性格からいって、それがあたりまえだと思いますけれども全酪連系統が比較的高い。その次は中小メーカー、大メーカーで、いま局長が言われたとおり、大メーカーが一番取引価格が安い。こういうことは非常に不合理だと思うわけです。それから特に九州における九州乳業が、全国的に見ると、乳価取引価格が一番高いわけですね。これもやはり特徴を持った経営が行なわれておるわけです。そうなると、経営規模の大小というよりも、経営主体が持っておる性格が、乳価取引とか決定についても大きく反映をしておるということもいえるわけですから、そうなると、乳業設備とか取引というものは、必ずしも独占的な大メーカーでなければならぬということに規定づけることはできないと思うわけです。不足払い制度が発足した直後でありますけれども、今後これらの施設はどういうあり方がいいかということについても、明確な方針を打ち出す必要があると思うわけです。この点は局長としてどう考えておりますか。
  12. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御質問の中に出ました全酪連あるいは九州乳業生乳に対する支払い価格が高水準であるということは御指摘のとおりでございます。これは多少理由があるわけでありまして、いずれの工場農民資本によってできておるものでございます。九州乳業については、そのほかに政府出資があるわけでございます。そういう関係から利益金配当を極度に押えておるのでございます。これはちょっといろいろ問題があるわけでございます。乳価支払いの場合と利益金配当の場合には、税法上の扱いの差異があるというようなことも関係をしておるかと思うのでありますが、事実そうなっておるわけであります。それにいたしましても、これらの工場については、製造販売経費等が比較的正確に私どもとしてもつかめるという点も一つ利点でございます。また、中小乳業はそれぞれの地域的な特性に応じた活動をいたしております。また、自家労力の活用という点のウェートもかなりあるようなこともございまして、総体で見ますれば、事、飲用乳に関します限りは、中小企業の有利さもあるわけでございます。こういうことを考えますと、お話しのように、少なくとも飲用乳については、巨大資本による処理加工でなければ効率は上がらないという事実はないのでございます。大企業は安定的な取引相手としては私はやはり利点はあると思いますけれども、すべて傾向として大企業に集中させるべきであるという理屈は出てこないというふうに考えますので、大企業大手メーカー集乳シェアが偏重しているという傾向は警戒すべきであると私は考えております。でございますので、今後地域事情に応じまして、中小乳業保護育成策をとっていくということも必要であり、また、条件が整えば、農民資本による処理加工施設を整備していくことも、検討に値する事柄であるというふうに考えております。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 飲用牛乳関係はこの程度にして、二、三不足払い制度関係で明らかにしてもらいたい点だけを申し上げます。  一つは、最近の乳製品市況は相当上昇傾向をたどっておるわけでありまして、この市況政府が告示しました指定乳製品のいわゆる指標価格との差というものは、相当大きな隔たりを示しておるわけです。この市況指標価格の差というものは、これは当然加工乳取引価格に反映しなければならぬわけであります。これは昨日も局長から答弁があった点でありますが、具体的に最近の乳製品市況指標価格との格差というものは、品目別にしてどの程度の懸隔があるか、これを参考までに示してもらいたいわけです。
  14. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 最近の乳製品市況動向は、四、五、六月の初めにかけまして高騰の傾向をたどったのでございますが、その後、畜産振興事業団乳製品調整機能も影響をしてまいりまして、ごく最近は漸次安定傾向に入りつつあるのでございますが、最近の市況を一般的にとらえますのは相当時期がおくれなければわからないのでございまして、最も正確といいますか、具体的にわかりますことは、畜産振興事業団一般競争入札によって売り渡しました脱脂粉乳なりバター平均価格というものが、一種の市況を示すものとして利用できるのではないかと思うのでございますが、六月十四日に放出をいたしました脱脂粉乳加重平均価格トン当たり三十九万九千八百三十円ということでございまして、指標価格に四%の幅を置きまして事業団が売り出動をいたします限度価格というのが、トン当たり三十五万一千八百五十三円ということでございますので、トン当たり四万八千円ばかりの差があるわけでございます。でございますので、このあれから見ますと、一二、三%は安定指標価格中心とする安定帯の外へはみ出ておるということに相なると思います。それからバターにつきましては、六月二十二日に放出したのが最近の事例でございます。そのときの加重平均価格トン当たり六十万九千八百七十円ということでございまして、同じく指標価格に四%の幅を置きました限度価格トン当たり六十万円でございますので、バターについてはこの差というものは非常に少ないということでございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 これは内容的にまた議論をしておると相当時間がかかりますから、あとで最近における市況をとらえて、そして安定指標価格から加工乳価格を逆算した方式と同じような形式を用いて計算したものを出してもらいたい。それはいいですか。
  16. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 一つの前提を置きました形式的な計算なら可能かと思います。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、最近までいろいろ問題になっておるいわゆる原料乳取引についての受け渡し場所問題等について、従来の集乳施設工場と認めるかどうかという問題もあるわけですが、それとは別に、集乳施設というものは、一体従来のようにメーカー側主体になって設置すべきものであるか、そうではなくして、生産者団体が当然の施設として集乳施設を持つべきであるか、この点については農林省としてはどう考えておりますか。
  18. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 加工原料乳の不足払い制度の中では、これは乳製品からの市価逆算方式をとります関係で、取引場所は、制度上の取引場所、つまり、価格を算定するための取引場所は、工場とせざるを得ないのであります。したがいまして、指定生乳生産者団体集乳及び送乳の機能を持つことが最も適当なタイプであると思うのでありまして、現実には急速に整備をするということも困難が伴いますし、また既設の施設があるわけでございますので、問題はございますが、将来の方向としては、集送乳に関する施設は、指定生乳生産者団体、つまり、生産者側において整備するのが私は望ましい方向であるというふうに考えております。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 その方針を明確にしてもらわぬと、基幹工場以外は受け渡し場所として認めがたいとか認めないということを農林省が強調すると、それが結局従来農協等設備しておった集乳施設も、これは経済上必要がないとかいうようなことになりかねないわけですよ。そうなると、極端になると、今度は生産者団体集乳施設は全然持っておらぬというようなことになると、ますますメーカー側に、法律があっても一方的に支配的な力を与えるということになるわけであって、これを完全に実施するまでには相当の期間が必要であると思いますが、とにかく今回の法律の精神というものは、あくまでも生産者団体生産者が生産したなま乳を一元的に集荷する、そういう体制にいかなければならぬわけでありますから、そうなれば、当然集送乳の設備の全部というものは生産者側施設すべきであるということは、議論の余地がないわけです。ですから、この点は農林省としても明らかにすると同時に、現在乳業者側で設けておる集乳施設等についても、これはできるだけすみやかに生産者側にそれが移譲されるような形が望ましいと思うわけです。この点についてはどうお考えですか。
  20. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私は、ただいま申し上げましたように、集送乳の施設は、将来の方向として生産者側によって整備されるべきであるというふうに考えておりますので、指定生乳生産者団体が集送乳設備を運営する力を持つに応じて、現在メーカー側が所有、運営をいたしております集送乳の施設も、もちろんとれは双方の合意がなければいけないわけでございますが、順次譲渡されていくという方向を推進をいたしたいと思っております。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 あわせて、生産者団体経営するいわゆる調製工場設備も重要だと思うのです。調製工場がないことによって、たとえば加工乳にいたしましても、先ほど来論議しました飲用乳処理についても、生産者側としてはきめ手がないのですね。ですから、これは生産者側の力がだんだん強くなれば、自然に工場設置というところまで発展することは言うまでもないわけですが、やはり長期の国の酪農近代化計画を進める場合におきましても、やはり国の方針として、生産者団体が積極的に調製工場設備できる、こういう点を大いに助長する必要があると思うわけです。そのためには、必要があれば、畜産振興事業団等が、適当な地域生産者団体調製工場等を設置する場合には助成を行なうとか、国の資金を積極的に投入するとか、そういう道を開けば、これは急速に設備が拡大されていくと思うわけです。いよいよの場合には、生産者調製工場とか施設によって毎日毎日生産されるなま乳は処理するという体制ができないと、幾ら農林省が適切な乳価交渉の指導をしても完全なきめ手にはならぬと思うわけです。ですから、この際、調整工場等の設置に対する農林省としての指導方針を速急に打ち出してもらいたいと思いますが、その点はいかがですか。
  22. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 大メーカーの寡占状態による優位性、相対的には生産者団体の不利な条件というものを改善をしていきます方法として、中小乳業の育成と並んで生産者団体による広域の調製施設調製工場というものも、検討に値する事柄であると考えております。先年、九州乳業に出資をいたしまして、調製工場的な施設を設けたのでございますが、私ども九州乳業の運営の実際を見まして、その影響がどう出るだろうかということを慎重に見守ってまいったのでございますが、九州乳業設置の意義は十分に認められる段階になりましたので、調製工場を置きますには、単に集乳のみの問題ではなく、販売経路といいますか、販売の問題があわせて問題ではございますが、それらの条件の整っておる地域、または整い得る地域につきまして、農民資本による調製工場等を設置するにつきましては、私どももその方向をバックアップしたい、また、要すれば畜産振興事業団による出資等も考えてまいりたいというように考えております。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、国産牛乳の学校給食の問題でありますが、これは先般五カ年計画が公表されて、この点はわれわれとしても非常に意を強うしておるわけであります。そういうことになると、当然生産者団体のになうべき役割りというものはおのずから開けてくるわけでありまして、これは先ほども言いましたとおり、生産者団体が適当な地域集乳施設等を合理的に設置すれば、あわせてプラントの施設等も行なうわけでありますからして、当然学校牛乳処理あるいは供給はあげて生産者団体が行なえる体制にこれはなると思うのです。そういう意味で、私は先ほど集乳処理施設等はすみやかに生産者団体が確保するようにすべきであるということを申したわけでありますが、学校牛乳関係とあわせてこれに対する見解を明らかにしていただきたい。
  24. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お話のように、学校給食のなま乳の消費というのは、法律に基づきまして、今後毎年計画的に伸ばしていくということに相なっておりますし、また、その飲用乳の中に占めるウエートは相当高いものになるわけでございます。この学校給食の制度化に伴いまして、新しく設置されました指定生乳生産者団体の位置づけというものを実は検討をいたしておるのでございますが、少なくとも都道府県におきまして学校給食の配分なりあるいは工場選定なりというような問題につきましては、新指定生乳生産者団体の意見を聞かせるということにいたしたいと思っております。  なお、現状におきましては、これは三十九年度でございますが、学校給食をやっております事業主体を類別してみますと、中小乳業が約五〇%、農協が二〇%、それから大手メーカーが三〇%というような比率になっておるのでございます。学校給食のような特定用途につきましては、これは特別な販売経路等を必要としないわけでございますので、集送乳施設あるいは処理施設の整備等も伴うことでございますが、中小乳業なりあるいは農業団体による供給なりという点に優先的なウエートを持たせるように指導してまいりたいというふうに思っております。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、生乳の遠距離輸送の点でありますが、これは政府が示した酪農近代化計画においても、今後強力に新市乳化政策を進めるわけでございますから、そうなると、市乳化を完全に行なっていくということになれば、主要ななま乳の生産地帯から大消費地に向かっての遠距離輸送というものはもう不可欠なことになるわけです。この点は調査がいま相当進められておるが、実行段階ということになると、やはり輸送経費関係等も伴って、なかなか一挙に解決はできない条件もあるわけですが、これはやはり政府として強力にこの遠距離輸送の問題を解決しなければいけないじゃないかと思うわけです。現段階でどの程度この遠距離輸送に対する国の施策というものは進められ、用意されてきたか、その点をお尋ねいたします。
  26. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 生乳市乳化を促進いたします場合には、お話のように、乳の遠距離輸送を当然考えなければならないわけでございます。現段階におきましては、北海道からの生乳輸送という問題は、北海道開発庁において、その方法なり経済性なりという問題について調査を進めておる段階でございます。一方、私ども農林省としましては、本年の春、畜産振興事業団の出資と都道府県並びに農業団体の出資によりまして、牛乳輸送施設リース法人という社団法人をつくりまして、輸送施設を所有いたしまして、農業団体に貸し付ける仕事を開始をしたところでございます。現段階におきましては、長野県の乳を中京地区へ輸送する場合と、それから宮崎県の乳を北九州へ輸送する場合に、とのリース法人の施設が活用されることに相なっております。今後、中国の山陰地域の乳を京阪神に運ぶとか、あるいは四国の乳を運ぶ場合、岩手、青森等の乳を東京に運ぶ場合、そういう場合に、順次地元の要請に応じまして内容を充実してまいりたいというふうに考えております。  なお、北海道につきましては、まだ結論が出ておりませんが、場合によっては、明年度あたりからは試験輸送について考えてみたいというふうに思っております。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 リース法人の事業の計画とか内容等について、あと資料をお出し願いたいと思います。  その次に、不足払い対象の加工原料乳の扱いの問題について、一点だけお尋ねしておきたいのですが、北海道の場合、ホクレンが指定団体になっておるわけですから、ホクレンと北海道内にある乳業者の間において取引契約が締結されておるわけです。したがって、これは交付金の対象になる。その対象になる生乳を、たとえばAという乳業者末端の単協が集乳したものを引き渡す、数量を毎日供給しておる、そのAなる乳業会社が受け入れをした生乳を、今度はBという会社に、会社間で販売するというようなことが一部行なわれておるわけですが、これは農林省として、事務的に見た場合、どういうふうに判断しますか。Aという会社に対してホクレンが年間契約で、末端の協同組合から毎日数量を供給しておる、Aなる乳業会社が供給を受けた分から、今度はBという乳業会社に毎日その乳の一部を販売しておる、こういう現象が見受けられるわけですが、これはわれわれから見ると、どうもおかしいじゃないかと思うのです。せっかく交付金の対象になる生乳の供給を契約を通じて受けながら、別の会社に販売するということは、その会社はそれだけの生乳を必要としないということにもなるわけです。それであれば、最初からそれだけ要らないと断わればいいのであって、受け入れをして、今度は他の会社に販売する。ただし、乳代の清算については、これは当然契約に基づいた数量を毎日受け入れしておるわけですから、全数量の販売代金はA会社からホクレンに納入することになる。こういう事例があるわけです。これはどうも理解に苦しむのであります。これは会社間において何らかの事情があるのかもしれませんが、行政的に見ても、ちょっと不合理なやり方じゃないかと思うのです。ですから、この機会に、この点の取り扱いを、そういうことは差しつかえないということで畜産局が認めて指導しておるのか、この点を明確にしてもらいたい。
  28. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 Aなる会社が農業団体から乳を受け入れて、それをB会社に売り渡すというのは、非常に異例なものであると思うのでございますが、ざっくばらんに見ますと、私どもは、どうもそういう乳の流れ方は適切ではないというふうに思うのであります。制度上、会社間の転売にかかる乳は不足払いの対象にしないことにいたしておりますというような事情もございますので、実態をよく調査いたしたいと思いますが、せっかく一元集荷、多元販売の機構もできたことでございますので、そういう不必要な乳の流通、不合理な流れ方は是正をしてまいりたいというふうに思います。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 これはあくまでも交付金の対象になっているのです。それは形式的には、ホクレンからA会社に契約に基づいて末端の農協が毎日供給しておるわけですから、乳代はA会社が全額ホクレンに納入するわけです。その乳の一部が明らかにB会社に毎日販売されておるという事実があるわけです。販売されたものは交付金の対象にならぬということになれば、それでもわかりますが、しかし、表面的には、対象になるように代金の納入も報告も出ているわけです。しかし、農林省とか道がやはり数量の確認をする場合、明らかにA会社にいった数量の一部がB会社へ販売されておるわけですから、製品の数量はそれによって変化があるということは予測されるわけです。これは全国的には数ある実例ではないかもしれませんが、どうも私も明快にこれはいいとか、悪いとか断じかねておる実情にある。これは本元の畜産局が、それはかまわぬと言ってやらしておるかどうかを確かめて、今後の問題処理に当たっていきたいと思うのです。もう一度そこをはっきりしてください。
  30. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 乳業会社が買い取った乳を他の乳業会社に売ってはならないということはございません。そういう売買をして何ら法律上不都合があるとかいう問題ではございませんが、二点の観点から私は適当でないと思うのでございます。  第一点は、不足払いの制度運用で、いま芳賀先生は不足払いの対象にしておるんだということでございますが、不足払いの対象となる乳量は、当該工場処理されました乳製品からの逆算数量、それと乳業施設、または通りました経路を追及して数量を確認するわけでございますから、生乳の他へ販売したものは対象になり得ないのであります。また、B会社にいきましてかりに乳製品に変わっておりましても、搬入された乳は、指定生乳生産者団体から搬入された乳について確認するわけでございますから、A会社から流れてきた乳について確認の数量が戻ってこないわけでございます。でございますので、御当人たちは不足払いはもらえると思っておりましても、私のほうからは払うわけにはまいらないのでございます。そういう観点からも、非常に不都合ではなかろうかというふうに思いますし、また、乳業者間を通る間にやはり何らかのコストがかかるに違いないわけでございまして、そういうことは乳の流れとして適切でないと私は思うのでございます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に、これは昨日東海林委員からも指摘がありましたが、今年の保証乳価をきめる場合、いろいろ議論がありました。生産者の自家労賃の算定の問題について、実は四月十二日に、農林大臣、局長も出席しない席で、太田参事官から最終的な告示価格内容説明があったわけです。そのとき、大臣あるいは畜産局長が出席しておれば、きょう、またここで私が発言する必要はないのですが、われわれとしてあくまでも是認できがたいことは、当時の告示価格というものは、審議会に示した政府原案から見ると、キロ当たり六十八銭、一升当たり一円二十八銭、原案が修正されて告示価格になっておるわけです。このわずかキロ六十八銭、あるいは一升一円二十八銭は、これは昨年来法律の審議で議論を行ない、また、価格決定の前の当委員会において、約一週間、自家労賃の算定についての基本的な政府方針、あるいは法律に対する理解という点に対して議論をしたわけでありまして、われわれとしては、若干ではあるが、政府の用意した自家労賃に対してこれだけが加算された。それは生乳の主要なる生産地域の他産業労賃に一歩接近するという熱意を示したものであるというふうに当時理解しておったのが、太田参事官の説明によると、そうではない。労賃計算は、あくまでも農林省の当初の原案どおり、これは農業の日雇い労賃で計算したものである。このわずかな修正部分というものは、資本利子の中で、当初農林省は、自己資本利子を四分と計算しておったものを、米価計算と同様に、自己資本利子の分を五分五厘に修正した結果、この金額が生じたのであるというような、こういう説明が行なわれたのです。そうなると、せっかく委員会で議論をして、坂田農林大臣もようやく、赤城精神を継承します、法律の精神としては、自家労賃はあくまでも他産業との均衡を旨とした労賃でなければならぬということを明確にしたわけです。これをようやく明らかにしたその直後に、事務当局としては、あくまでも日雇い労賃によらなければならぬ、こういうことになると、せっかくわれわれが国会で真剣に法律を制定しても、その運用というものは、法律の精神と全く背反した運用が事務当局において行なわれるということになると、これはゆゆしい問題であると思うわけなんです。単に金額の問題ではないわけです。ですから、この際、畜産局長として、不足払い法にあくまでも抵抗を示して、あるいは委員会におけるたびたびの論議に反抗を示して、そういう気持ちで、このわずかの価格修正部分というものは、労賃部分ではない、自己資本利子の一部修正であるということで行なったということになると、われわれとしては、これは絶対容認することができないわけです。あなたが局長をかわっても、次の局長がどういう人物になるかわからぬが、こういう考え方事務当局が常に踏襲する、歴代の農林大臣は法律の精神を十分守って、それを継承するということでいき、事務当局は別な考えの精神を踏襲するということになれば、この法律は全く適正な運用ができないということになると思うわけですよ。これは金額の問題というよりも、あくまでも法律運用上の事務当局としての考え方に問題があるわけですからして、この際、明確にしてもらいたい。
  32. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 昭和四十一年度の加工原料乳についての保証価格の決定の結果は、ただいま芳賀先生からお話のありましたとおりでございます。私どもも、審議会の答申並びに当委員会における各種の御意見等をいただきましたので、審議会に審議を願いました原案についてさらに再検討をいたし、政府内部におきましては、最高の責任者間において慎重な検討をしていただきました上で、その御指示に従って作業をいたしたわけでございます。  農産物の行政価格を決定するにあたりまして、自家労賃をいかに評価するかは、価格政策上きわめて重要な問題でございまして、これらの決定をいかにするかということは、一畜産局長において左右できる問題でもございませんので、私ども、できる限りこの法律の趣旨が貫徹できますような価格の決定の方式、算定というものが行なわれるように努力いたしたいと思っておりますが、ただいまの点につきましては、私は、上司の指示を受けて、その指示のもとに作業を進めるのが事務当局のとるべき態度であろうというふうに考えておるのでございます。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの局長の答弁は、局長の意思に基づいて行なった自家労賃の決定ではないというわけですね。つまり、一時間当たり九十九円八十九銭、一日八時間で七百九十九円十二銭というのが昭和四十一年度の保証乳価における自家労賃の算定の根拠になっているわけです。この二十九日から四十一年度の産米に対して米価審議会を通じて論議が行なわれ、おそらく七月の五日までには今年度の生産者米価が決定されると思いますが、この場合は都市均衡労賃に基づいて計算するわけ  でありますから、少なくとも一時間二百円ですね。すると、一日千六百円、あるいは一時間二百五十円であれば、一日二千円の自家労賃というものが計算されるようなことになると思うわけです。   〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕 そうなれば、この政府のきめた加工乳に対する自家労賃は、その二分の一にも満たないという結果が、一週間足らずで出てくるわけですから、その場合、またこれは論議の対象にもなることでありますが、この価格決定時におけるキロ当たり六十八銭、一・八七五キロ当たり一円二十八銭のわずかな修正部分を自家労賃に加えることをことさらにしないで、自己資本利子に加えたということに対して、これは多分に作為的なものであるとわれわれは考えているわけです。きょう、これでこの問題に片をつけるという考えはありませんし、これは問題が解決するまで、将来にわたってわれわれは関心を失わないつもりでいるわけですが、きょうは、これは局長の意思でそうしたわけではないと言われたわけでありますから、この点を再度明らかにしてもらって、本日の質問を終わりたいと思うわけです。局長の意思であったかなかったかだけを明らかにしてもらいたい。
  34. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 この点については、東海林委員からの御質問がありまして、私からも実は御答弁申し上げたわけでありますが、若干経緯を申し上げますと、確かに、価格修正そのものが先生方の御意見でなくして、やはり行政の一つの筋を通すべきであるという議論であることも、十分私たちは承知いたしておったのであります。したがいまして、あの問題を最終的に修正するのには、率直に申し上げまして、局長が事務的にやったわけでも絶対ございませんし、与党・政府最高幹部が集まりまして、あれだけのものを修正するためには、大蔵省とも折衝いたしまして、結局ああいう結論が出たわけでありますが、もちろん、その場合に、自家労賃の修正という点でいくということがほんとうは筋でありましたけれども、時間的にも非常に切迫いたしておりまして、事務的にも技術的にもそこまで持っていける余裕というものもないほど切迫した時期でもございまするし、結論的にいって、あの修正を御承知のとおりの経緯にいたしたわけでございまして、私どもは、決して議会であれだけ論議された問題をそのまま等閑視いたしておるわけではありませんし、次年度においては、ああした意見を十分に尊重して、今後の決定に反映せしめなければならない、こういう考え方のもとに、本年度は切迫した事情上、ああいう形で結論が出ましたということを、これはぜひ御了承いただくより方法はないと思って、実は昨日も正直に御答弁申し上げたわけでございます。決して事務的に単に局長の一存で決定いたしたことではないということだけは、当時私がいろいろ折衝に携わった者として、答弁できることであります。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば畜産局長は、農林省の最高責任者でもないし、政府を動かす権限がないことはわかっておるわけです。しかし、指導的な役割りを桧垣畜産局長がやったというふうにいままでわれわれは信じておるわけですからね。それが局長の答弁によると、いや、そうではない、まだ上のほうで、政府並びに与党自民党の最高首脳の方針であるので、局長としてもいかんともしがたく、わずかながら修正部分というものを、自家労賃に加えるということでなくて、自己資本利子の部分に加えた、こういうことを言われておるわけですから、その点が何とも −この問題を局長個人を相手にして蒸し返すことはわれわれとしても好ましいことではありませんし、政府対われわれとか自民党対社会党というようなことは相当長期に続く問題ですが、しかし、桧垣徳太郎君がたまたま畜産局長をやっておるわけですね。これはあと何年も畜産局長にとどまっておるわけではないでしょう。あるいは内閣改造が行なわれれば、今度は違うポストにかわる予測もあるわけです。しかし、桧垣君が局長在任当時、あくまでも自分が熱心に誠実に努力した法案の精神を自分からじゅうりんしたとか、国会や委員会の意思というものに抵抗を示したというようなことが歴史的に残るということは、桧垣君自身も望んでおるところでもないし、またあとを継ぐ畜産局長とか農林省の幹部職員としても、こういう精神とかやり方というものが前例にあったとか、これはやれるのだということになると、これは取り返しのつかない汚点になるわけです。だから、この点は、くどいようでありますが、局長指導的な役割りをしたのでないという点は、これは局長自身から明確にしておいてもらいたい。
  36. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 保証価格決定の件については、政務次官からお話のあったとおりでありまして、私どもは事務的な作業にはもとより従事をいたして、またその責任は私の負うところでございますが、基本的な方針の決定につきましては、最終段階では、私どもはその場所にも居合わせませんで決定されたのでございますから、私が指導的に動いたということは全くございません。      ————◇—————
  37. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。千葉七郎君。
  38. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対しまして、若干の質問をいたしたいと思います。  この改正案は、その内容におきましても幾つかの問題点を包蔵しておりますけれども、それにも増しまして、今日このような改正案を政府当局が提案しなければならなくなったというその経過なり事態なりは、日本の畜産政策、さらには農業政策全般に重大な問題が発生をしておる証左だと私は思います。つきましては、私は、まず、きのう説明のありました本改正案の提案の理由につきままして、順次お伺いをいたしたいと思います。  そこで、提案理由の説明によりますと、初めに国民の所得の向上、国民の食生活の高度化に伴って牛肉の需要が着実に伸びておる。しかるに、肉用牛の飼養頭数が、農業機械化の進展による役畜の需要の減退あるいは肉用牛の飼養基盤の脆弱等の事情から、急速に減少してきた。そのために牛肉の供給不足が漸次顕在化するに至って、最近牛肉の価格が非常に高騰しておる、こういう説明であります。この説明によりますと、肉用牛の飼養頭数が急激に減少した、こういう説明であります。しかし、私は、急激に減少したというこの説明は、どうしても納得することができないのであります。なぜかと申しますと、御承知のように、現在の農業政策なりあるいは畜産政策は、もちろん昭和三十六年に制定されました農業基本法に基づいて、いまの政策が立てられておると承知をいたしておるわけであります。そこで、農業基本法の第二条の第一項の一にはどういうことが書いてあるかと中しますと、これは私が申し上げるまでもなく、次官も局長も御存じのところと思うのでありますが、こういうふうに規定をされております。すなわち、「需要が増加する農産物の生産の増進」をする、さらに「需要が減少する農産物の生産の転換」をする、こういう基本が定められておるわけであります。したがいまして、この農業基本法の規定から考えますならば、制定当時の説明によりますれば、将来日本においては穀菽農業はだんだん減退をするんだ、農業生産物の増進は、畜産なり果樹なりの需要が非常な増加をするのであるから、したがって、畜産、果樹の方面をどんどん増進をしなければならぬ、そういう方向に日本の農業を発展させるという説明であったわけであります。したがって、農業基本法のこのような方向に忠実に日本の畜産政策なり農業政策を進めてまいったといたしましたならば、こういう事態は起きないはずであると私は考えるわけであります。しかるに、配付されましたいろいろな資料によって検討いたしますと、牛肉の需要は、昭和三十七年ごろまでは大体十二、三万トンから十四万トン程度のようであります。昭和三十八年に至りまして十九万トンに急激に増加しておるのであります。さらに、三十九年に至りましては二十三万トン。大体三十七年以降今日まで、一年間に五万トン程度、四〇%程度牛肉の需要が増加しておる。さらにまた屠殺の頭数を検討いたしましても、三十四年から三十七年までは大体八十万頭程度の屠殺数量であったものが、三十八年には一躍百八万頭、三十九年には百二十九万頭、さらに四十年には多少減りましたけれども、百十六万頭程度の牛が屠殺されておる、こういう状態であります。この数字を検討いたしますと、去年やことしになって急に牛肉の需要がふえたのでもないし、また屠殺の頭数も去年やことしになって急激にふえたのではなくて、三十六、七年からすでにその徴候が顕著にあらわれつつあったということは、これは否定できない事実だと思うのであります。したがいまして、その当時におきまして、それに対する対策を樹立いたしておったならば、今日このような問題は発生しなかったのではないか、かように考えられるわけであります。政府におきましては、その点についてどういう対策を立てられたか。三十六年、七年ごろからすでに牛肉に対する需要の増加あるいは屠殺頭数の増大ということが当然見通されたわけだと思うのでありますが、その点をどういうふうにお考えになって、どういう対策を立てられたのか、あるいは立てられなかったのか、その点をまず最初にお伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  39. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御指摘のように、わが国の肉牛の飼養頭数は、昭和三十一年の二百七十二万頭をピークにしまして、年々減少してまいったのでございますが、農業基本法制定当時の肉牛飼養の状態は、大体二百三十万頭程度で横ばいに推移をいたしておりまして、昭和三十八年にはわずかではございますが、頭数がふえた数字が出ておったのでございます。当時農林省といたしましては、食肉の需要は総体としては増大をするということはもちろん見通しておりまして、昭和三十七年に公表いたしました農産物の需要と生産の長期見通しにおきましても、食肉の増量の見通しを立てまして、これに対する対応の方策を考えておったのでございます。その中で、役肉牛は昭和四十六年にはおおむね二百三十万頭程度の頭数になるだろうという見通しをいたしておったのでございまして、これが見通しとして全く間違ってしまったということが現実の姿でございます。食肉の需要総体が伸びます場合に、当時の考え方としましては、肉牛の生産量の大きな増大ということはなかなか困難であるので、豚もしくは鶏肉というようなものの増大によって対処をしていくという考え方を基本的に持っておったのでございます。そういう意味から、肉牛につきましては、むしろ生産の維持政策あるいは肉牛についての改良の方策というようなことに着目いたしました施策はとっておったのでございますけれども、積極的増産施策、飼養増大施策というものは、正直に申し上げてとられていなかったのでございます。ざっくばらんに申し上げまして、日本の畜産政策の中で、肉牛政策が最も手薄であり、政策らしい政策がなかったというふうに私どもも認めざるを得ないと思っております。
  40. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 そこで、続いてお伺いをいたしますが、ただいま御答弁によりますと、三十七年に二百三十三万頭程度の飼養頭数であった。それが三十八年にわずかながらも伸びた。わずかながら伸びたと言うのですけれども、実際にはほとんど伸びていないようであります。三十八年の二月一日現在の肉牛の飼養頭数は、前年の三十七年とほとんど変わりがない。二百三十三万頭であります。ところが、三十七年の牛肉の需要量、消費量は十四万トンであります。三十七年の飼養頭数が二百三十三万頭で、三十七年の牛肉の需要量が十四万トン、これに対しまして、三十八年にも同じ二百三十三万頭で、三十八年の牛肉の需要量が十九万トン、ここで一躍五万トンも牛肉の需要量がふえておるわけでありますから、したがって、当然この三十八年で肉牛の増産計画というものは立てられなければならなかったんじゃないか、かように考えられるわけなんであります。しかし、ただいまの御答弁によりますと、肉牛の増産政策は、現状を維持する程度にとどめるという基本に立って、何ら政策を講じなかった、こういうのでありますけれども、私はそういう考え方は非常に間違っておるのじゃないかと思うのであります。現状にとどめるということは、結果においては後退をするという結果になるわけでありまして、これは肉牛の問題ばかりではなくて、あらゆる問題に通ずるのでありますが、そういう点を十分推察をして、政策、対策を立てなければならなかったのではないかと思うわけであります。そういう点から考えますならば、今日このような状態を招来したということは、まさに畜産担当当局の怠慢のそしりを免れないと思うのであります。しかし、その点を責めてもどうにもならないことでありますが、そういう点は十分反省すべきだと思います。  岩手県の例を申し上げますが、岩手県におきましては、昭和三十七年には役肉牛の飼養頭数が六万一千五百六十頭であったのであります。昭和三十八年に現在の千田知事が就任をいたしまして、肉牛の増産計画を立てまして、それを実施したことは、政府御当局も御承知だと思うのでありますが、私も知事からそういう方針を聞きまして、いろいろ御相談にあずかったこともありますが、そういう方針を立てました結果、昭和三十九年には六万九千百四十頭に肉牛の飼養頭数が増大をいたしております。全国的には昭和三十七年と昭和三十九年を比較いたしますと、昭和三十七年で二百三十三万頭あったものが、昭和三十九年には二百二十万頭に減少をしておる。約十三万頭も減っておる。岩手県の場合におきましては、大体八千頭、一三%程度の増大をしておる、こういう結果が出ておるわけであります。もちろん、三十九年と四十年を比較をいたしますと、三十九年よりは四十年のほうが多少減っております。五千頭、四千四百頭ほど減っておるのでありますが、しかし、全国的な減少のパーセントから見ますと、岩手の減少のパーセントが非常に少ないのであります。三十九年には全国の飼養頭数が二百二十万頭、四十年には百八十八万頭、約百九十万頭でありますから、三十万頭も減っておる。したがって、減っておる全国の率は、一五%近く減っておる。岩手の場合にはたった七%しか減っていない。こういうことでありまして、したがって、現状を維持するというような方策では、現状維持ができないという結果を来たすわけでありまして、そういう点につきましても十分政府当局は反省をして、今後の施策に万全を期してもらわなければならぬと思うわけであります。  さらにお伺いをいたしたいのでありますが、この屠殺数の内容を見てみますと、役肉牛の屠殺の頭数は、昭和三十四年から三十七年までは大体五十万頭台、それに対しまして乳牛の屠殺頭数は十万頭であります。三十八年には役肉牛が六十八万頭、それに対して乳牛が十五万頭であります。三十九年は八十万頭に対して二十万頭、四十年は六十八万頭に対して二十三万頭程度の乳牛が屠殺をされておるわけであります。この数字を見ますと、乳牛の屠殺頭数が年々飛躍的に多くなっておるのでありますが、この屠殺された乳牛はすべて老廃牛であるかどうか、搾乳ができなくなった乳牛であるかどうかという点でありますが、その点はどういう状態でありましょう。
  41. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御指摘のように、乳用牛の屠殺頭数は、三十八年から急激にふえておるのでございますが、これは二つ理由があると思われるのでございます。  一つは、三十八年に一時的でございましたが、生乳の生産過剰状態があらわれた時期があるのでございます。それがいわゆる三十八年の秋、乳価の引き下げというようなことで、非常に問題になったのでございますが、この時期が、ある意味で零細な乳牛飼養農家、酪農家の生産意欲を減退させたということになってあらわれたのでございます。そこで、零細な一、二頭飼いの酪農家が牛を手放すという傾向が出た。その手放したものが、一部は規模拡大をする酪農家に、一部は屠場へ流れていったということであります。  なお、三十八年、三十九年と順次肉の価格が上昇をいたしてまいりまして、肉需要の側から屠殺をプッシュする力が加わってきたという点があると思われるのであります。  屠殺されました乳牛はすべてが老廃牛であるというふうには私は言い切れないと思います。大部分はやはり低能率牛の淘汰という形で進んだのでございますが、元来、日本の乳牛の合理的といいますか、自然な形の屠殺率というものは、大体七年ぐらいの耐用年数が平均的でございますから、一五%程度の屠殺率が正当な屠殺率と言えるかと思うのでございます。当時、百十万程度の飼養頭数でございましたから、ここへあらわれました三十九年の十九万七千頭というのは、過剰屠殺の傾向を示しておると言わざるを得ないと思うのであります、でございますので、大部分は老廃牛ないし低能率牛であるが、中には、なお搾乳牛としての機能を持ったものが屠場へ出てきたというものも加わっていることは否定できないと思います。
  42. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 ただいまの御答弁によりますと、昭和三十八年、三十九年、四十年、この期間の乳用牛の屠殺の中には、必ずしも全部が老廃牛とは言えない、したがって、まだ耐用年数の残っておる牛も屠殺をされたのではないか、そういう御答弁でございますが、ただいまの御答弁によりますと、大体、牛の耐用年数は七、八年、七産ないし八産程度だという御答弁でございまして、したがって、その現に搾乳しておる牛を基準として計算をすれば、大体その一五%程度が老廃牛になるわけと解釈されるわけであります。大体現在の乳用牛の飼養頭数の約半数程度が搾乳牛のようでありますが、それを全体の飼養頭数に対して乳用牛の屠殺頭数のパーセントに引き直してみますと、大体総飼養頭数の一〇%程度が老廃牛として搾乳をやめるパーセントになるように計算されるわけであります。そう計算をいたしてみますと、昭和三十七年の乳用牛の飼養頭数は百万頭でありますが、それに対して乳用牛の屠殺頭数は十万頭でありますから、三十七年ごろはちょうど老廃牛のみが屠殺をされた、かように推察されるわけであります。ところが、三十八年になりますと、百十四万頭に対して屠殺頭数十五万頭でありますから、屠殺の頭数は乳用牛の全飼養頭数に対して二二%を示しております。三十九年は乳用牛百二十三万頭に対して屠殺頭数二十万頭でありまして、二八%、四十年は百二十九万頭の飼養頭数に対して二十三万頭程度が屠殺をされておりますから、その屠殺の比率は一八%という高率を示しておるわけであります。この老廃牛の標準のパーセントは、総頭数の一〇%が大体標準だと私は思う。それに対して四十年は一八%もの屠殺頭数の率にのぼっておるということは、これはまさに異常な事態ではないか、私はそのように考えられるわけなんであります。こういう状態が今後続くか続かないかわかりませんけれども、もしこういう状態が続くとするならば、役肉牛の問題ばかりではなくて、日本の酪農全体が壊滅をするのではないか、かようなことが心配されるわけなんであります。この点に対してはすでに十分対策を立てられておるとは思いますけれども、もし対策を立てられておいでになるとするならば、その点もひとつお伺いをしておきたいと思うのであります。
  43. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 乳牛の屠殺の増大の理由は、先ほど申し述べたようなことでございますが、御指摘のように、四十年までの傾向が継続いたしますならば、日本の酪農の将来は全く暗いものになってしまうおそれがあるのでございます。昨年成立をいたしました加工原料乳の不足払い制度も、このような傾向を生む一つの理由として、加工原料乳の相対的な交易条件の不利というととが働いているというふうにも考えられた次第でありまして、これを補整する方法として不足払い制度をとることにいたしましたのでございます。そのほかに、やはり牛肉に対する対策を講じませんと、乳牛の屠殺の傾向は防止できないことに相なるわけでございまして、したがって、四十一年度から初めて本格的に肉牛の生産対策に力を入れることにいたしてまいったのでございます。昭和四十一年度になりましてから今日までの足取りを見ますと、乳牛の屠殺の数は、前年に比較しまして約二割減少いたしまして八〇%程度になっております。和牛のほうは前年度に対して約四割の屠殺頭数の減少でございまして、六〇%程度ということでございまして、これは乳牛については、やはり価格政策等の整備が酪農の規模拡大、頭数増大ということに誘導機能を発揮しだしたのではないかというふうに思われるのでございまして、和牛につきましては、これはもはや屠殺すべき資源が枯渇——枯渇といいますか、非常に限られてきたということが激減の理由であって、また牛肉の価格が異常に高いということから、消費そのものも停滞をしておるということにあろうかと思うのでございます。これらとの関係におきましても、牛肉の需要がございます限り、それに対応する牛肉の供給を考えざるを得ないわけでございまして、今回御審議を願っております畜安法の改正も、どうしても不足な牛肉の輸入というものはやらざるを得ない、またそれをやるについては、国内の生産に悪影響のないように需給の調整をする必要があるという観点から、この法案の御審議を願っておるという次第でございます。
  44. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 酪農関係につきまして、もう一点だけお伺いをいたしておきたいと思うのでありますが、乳牛の飼養頭数はただいま申し上げましたが、三十七年には百万頭、三十八年百十四万頭、三十九年百二十三万頭、四十年百二十九万頭という数字になっておりまして、非常に伸び率が低い、こういうふうに感じられるわけであります。百万頭の乳用牛からは、言うまでもなく、大体五十万頭程度の子牛が生まれるわけでありまして、その半分、牝牡半々と見まして、大体二十五万頭程度の牝犢が生まれるわけなんでありまして、それが一〇〇%育てば二十五万頭ずつふえる、こういう計算になってくるわけでありますが、中には幼牛のうちに死亡するものもありましょうから、そういう計算どおりにはまいらないといたしましても、いずれにいたしましても、このふえ方が非常に少ない。これは何に原因するかと申しますと、配付されました資料によりますと、子牛の屠殺頭数が非常にふえておるというところに原因があるのではないか、かように考えられるわけであります。昭和三十八年には子牛の屠殺頭数は二十五万頭に達しておる。三十五年、六年、七年の子牛の屠殺頭数が十五万頭から十八万頭であったのでありますが、これが三十八年になりますと、一躍二十五万頭となっている。これは先ほど御説明のありましたように、三十八年は乳価が非常に低落をして、そうして小規模酪農家の生産意欲の減退がこういう結果をもたらしたのかもしれませんけれども、ところが、乳価が回復をした三十九年にも子牛の屠殺頭数が非常にふえておる。二十九万頭を示しております。四十年には二十五万七千頭、約二十六万頭に減っておりますけれども、こういうことでは私は——農業基本法によって畜産物の需給見通しが発表されたのでありますが、その発表によりますと、牛乳の生産量が昭和四十五年には六百三十万トンを見込んでおる。ことしの生産量は大体三百三十万トン、四十五年には六百三十万トンを見込んでおるというのでありますが、はたして四十五年に六百三十万トンの生産を実現するだけの乳用牛の飼養頭数をふやすことができるかどうかということが、非常に疑問視されてくるわけであります。その点に対しましてはどういうお見通しであるか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  45. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 牡犢、子牛の屠殺頭数も、御指摘のように、三十八年以降三十九年と続いて、非常に増大をいたしたのでございますが、四十年にはやや落ちつきまして、前年に比べますと、八九%程度の屠殺数に変わっておる。さらに本年に入りましてからは、子牛の屠殺頭数は前年に比べて半減をいたしております。これは牛肉の価格の上昇がございましたために、われわれもその指導をしてまいっておるのでございますが、乳用牡犢の肉資源としての活用が始まったということを示しておると思うのであります。このことは、また乳用牛自身の頭数の増大なり、あるいは国内肉供給力の増大ということに好影響を及ぼすというふうに考えておるのであります。大体乳用牛については、先ほど来申しましたような各種の事情によりまして、過剰屠殺が進んだのでございますが、本年に入りまして牡犢の過剰屠殺傾向は一巡をしたということでありまして、乳自身は、一頭当たりの泌乳量というものは、頭数の伸びの鈍化に比較いたしますと、商いのでございまして、高能率の牛がこれからふえていくはずであるというふうに考えておるのでございます。昭和四十六年を目標に、私ども酪農近代化の目標ということで、国内生産量を七百九万トン程度に引き上げたいという目標をもって、現在各都道府県において県ごとの目標の策定をいたしておる段階でございますが、御承知のように、ここ一、二年の乳牛の飼養頭数の伸びの鈍化に従って、生乳生産の伸びも鈍化をしておるという現実に立ちますと、これらの目標を達成することは非常に困難な課題であるというふうに考えております。家畜の改良増殖の可能な限度としては、私はこの数字は必ずしも不可能ではないというふうに思っておるのでございますが、現に進めております各施策をさらに充実して、酪農振興方策、またそれを裏打ちする牛肉対策というものを講じてまいらなければ、安易にこの目標を達することはできないというふうに考えております。
  46. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 いろいろお伺いをいたしたわけでありますが、御答弁から推察をいたしますと、一そうの勇断をもって対策を樹立しなければ、牛肉の需給問題、さらには牛乳の需給の問題等は予定どおりの数量を達成することがなかなか困難だというふうに考えられるわけであります。ことに牛肉の国内供給の問題は、私から申し上げるまでもなく、急速に増大させるということはなかなか困難と思うわけでありますので、その点に対しては、政府におかれましては一そうの強力な施策を講じていただきたい。  この説明によりますと、役畜需要の減退、肉用牛の飼養基盤の脆弱性が原因になって、このような急速な減少を来たしたのだと、こう書いてあります。農業基本法制定以来、農業の機械化が進展をするということもとうにわかっておったはずでありますし、そうなれば、役牛が減少するということも当然わかっておったはずであります。それからまた肉用牛の飼養基盤の脆弱性、こういう点もいま急にわかったのではなくて、前々からそういう点が当然わかっておったはずでありまして、したがって、この肉用牛の飼養基盤を強固なものにするという対策もとうに立てられていなければならなかったはずでありまして、そういう対策が次々と手おくれになって、そうしてどろぼうを見てからなわをなうような対策しか立てなかったということは、何としても当局は怠慢のそしりを免れないと思うのであります。毎年発表になります農業の動向に関する年次報告、これを見ましても、三十九年度の報告書には肉牛のことは一言も触れていないのですね。四十年になってようやく気がついたように、肉牛の問題を取り上げている。こういうことであっては、これは手おくれになるのは当然なわけであります。その点十分反省をされまして、そして飼養基盤の強化に十分な力を尽くしていただきたいと思うのであります。  さらにお伺いをいたしたいのでありますが、説明によりますと、将来も牛肉の需要が増大をする見通しである。いわゆる「強い潜在需要を有することは看過し得ないところであります。」こういう説明であります。大体農業基本法によれば、この農産物の需給の長期見通しを当然立てなければならぬわけでありますが、この牛肉の需要の見通しは、大体今後毎年何%くらいずつふえていく見込みであるか、その点をひとつお聞かせしていただきたいと思います。その需要の見通しが立たなければ、増産の計画も立たないと思いますので、大体牛肉の需要は、従来の傾向から推算をして、今後一カ年に何%くらいずつふえる見通しであるか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  47. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 牛肉の需要の増大を予測いたしますことは、実はそれ個別には非常にむずかしいのでございます。つまり、食肉全体としての需要の予測は、ある程度データによって推測ができるのでございまして、昭和四十六年における食肉の需要量の幅は、長期見通しにおきましては、たしか食肉全体で百十三万トンないし百四十八万トンという幅で予測をいたしておるはずでございますが、私どもその後の推移に基づいて推算をいたしますと、四十六年度には大体食肉全体では約百五十万トンになるであろう、つまり、予測の最高限をやや上回る程度になるのではないかというふうに考えられます。さらに十年後の昭和五十年には、食肉の需要量は二百万トンないし二百二十万トン程度になるのではないかというふうに予測をいたしておるのでございます。その際、牛肉がどのようなウェートを持つかということは非常に予測が困難でございますが、食肉間のある程度の代替性というものは、これは確かにあるのでございますけれども、一定の限界までいきますと、どうしても代替しきれない線が出てくる。どうもその代替しきれない線というのは、食肉全体において牛肉のウエートが二〇%程度を割るということはなかなかむずかしいのではないかというふうに推測をされるのでございまして、そのような前提をとりますと、昭和四十六年ころには大体牛肉の需要は少なくとも三十万トン程度になるのではなかろうか。さらに五十年には四十万トンないし四十五万トン程度の牛肉の需要があるのではなかろうか。また、その程度の需要を予測して、供給の措置を考えておくことが適切ではないかというふうに考えておるのでございます。
  48. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 御答弁によりますと、五年後には三十万トン程度に需要増加の見通しである。現在の需要は大体二十二万トン程度でありますから、八万トンの増加ということになりますと、大体三五%くらいの増加、こういうことになるわけですね。なかなかこの需要の増加に伴うような肉牛の増産対策というものは容易ではないような感じがするわけであります。その点も十分御検討の上に対策を立てていただきたいと思うわけであります。  次にお伺いいたしたいのは、牛肉の需要供給関係は国際的にも逼迫基調である、こういう説明がなされておるわけであります。現在二十二、三が程度の牛肉の需要に対して、昭和四十六年には二十万程度の需要になるということになり、その増加分を国内でまかなうということができないとすれば、これは当然輸入にたよらなければならぬ。といたしますと、この輸入量は相当の量に達するのではないかというふうに考えられるわけであります。ところが、説明によりますと、国際的にも逼迫基調だ、こういうことなんでありますが、国際的な牛肉の需要の状態が現状においてはどういうふうになっておるか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  49. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 牛肉の需給を世界的な規模で観察をいたしますと、先進諸国におきます所得水準の上昇というものが牛肉の需要の増大を誘導しており、また、未開発国あるいは発展途上国の経済的な進展というものがまた牛肉の需要を増大させるということで、需要増大は広範に起こっておるのでございます。これに対しまして、肉牛の生産というものは、肉牛それ自身の持っております生理的な増殖限界というような問題もございまして、急速にはふえない。また、牛肉の生産主産地というものは比較的きまっておるというような事情もございまして、現在牛肉につきましては逼迫基調であるわけであります。また、将来にわたって国際的にも需給逼迫の状態がかなり続くのではないかと見通されるのでございます。現在、世界の牛肉の枝肉生産量は約三千万トンでございます。そのうち、国際間の貿易に供せられておりますものが約百五十万トンございます。総生産量のうち、五%程度が国際商品として貿易にのぼっておるということでございます。しかも、その供給される地域は比較的限られておるのでございまして、最も大きい輸出国がアルゼンチンでございまして、最近の数字では年間約五十万トン、それに続きましてオーストラリアでございまして、オーストラリアが約二十六、七万トン、続いてニュージーランドが十三万トン程度、両国の合計が四十万トン程度の貿易でございます。その他若干の国が輸出をいたしておるわけでございますが、生産の最も大きい国はアメリカでございまして、ここは飼養頭数約一億頭という数でございますが、一億頭の牛を飼いながら、かつ輸入国でございます。続いてソ連、それからフランス、英国、西ドイツというような国が主要な肉牛の飼養国であるわけでございます。
  50. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 国際的な牛肉の需給状況も逼迫基調であるということでありまして、したがって、四十六年の三十万トンの需要に対応する供給を確保することがどうか、これは容易ならざるものだと思うのであります。というのは、この役肉牛の増殖の見通し、農基法の第八条に基づく長期見通しによりますと、四十六年に二百二十万頭を確保する、こういう発表であります。といたしますと、昭和三十八年の飼養頭数程度までもいかないので、ちょうど昭和三十九年の飼養頭数程度に回復をするという見通しになっておるわけであります。三十八年二百三十三万頭の飼養頭数でありまして、それに対して百八万頭の屠殺頭数になっておって、そして昭和三十八年の牛肉の需要量が十九万トンでありますから、したがって、昭和四十六年に二百二十万頭に飼養頭数を回復したとしても、大体十九万トン程度の内地における牛肉の需要量しか満たさない。これはもちろん牛の種類等の改良をいたしまして、そして一頭当たりの肉の生産高が高くなるようなこともありましょうから、それを上回るとは思いますけれども、大体そういう三十八年の程度に、この長期見通しの発表によると、四十六年に回復をするということになりますと、十九万から二十万トン程度の肉しか内地では供給できない、こういうことになるわけであります。したがって、この二百二十万頭の確保では、全力をあげてもなお牛肉の需要量を十万トン前後満たすことができないという結果になるわけでありますから、その点も十分ひとつ検討されまして、対策を立てていただきたいと思います。  それからまた、家畜改良増殖法の第三条の二に基づく昭和四十六年の増殖の見通しは、二百五十万頭を確保するのだ、こういう発表になっておるようであります。農基法の第八条に基づく見通しでは二百二十万頭、家畜改良増殖法に基づく公表によると二百五十万頭、三十万頭の差があるのですね。一体どちらがほんとうなのか。二百五十万頭を確保するということになれば、大体三十万トンの昭和四十六年の需要量を満たすのに近づいてくるわけなんでありますが、同じ農林省で発表するのに、二百二十万頭と二百五十万頭の二つが、これは別々の法律に基づいての公表でありますから、あるいはそういう関係から違うのだというのかもしれませんけれども、どういう関係でこういう差が出ているのか、ひとつ御説明願っておきたいと思います。
  51. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 農基法に基づきます農産物の需要と生産の長期見通しにおきます数字は、これはいわゆる単純見通しの数字でございまして、この発表当時における現実に基づいて、自然の成り行きをたどるならばこういう数字になるだろうということで、すべての需要並びに生産の数字をまとめたものでございます。家畜改良増殖法におきましては、立案当時の条件をもとにいたしまして、単なる見通しではなくて、生産の目標を可能な限り高い線に置いて努力してみようという努力目標の数字を掲げたのでございます。そういう意味で性質の違いがあるのでございますが、実は正直に申さざるを得ないのでございますが、長期見通しの四十六年の飼養頭数も、家畜増殖改良法の目標も、今日の段階までなりますと、とうてい実現できないと言わざるを得なり羽目に陥っているのでございます。昭和四十一年二月一日現在の和牛の飼養頭数はまだ集計が終わりませんで、未公表でございますが、私どもの内報を受けたところは、どうも百六十万頭を割っておるということでございますので、この資源をもとにいたしまして生産の維持をまずはかり、これをさらに増殖の方向に持っていくためには相当の時間がかかるということでございまして、先ほどおしかりを受けたことをさらにおしかりを受けることに相なるわけでございますが、この二つの数字は四十六年にはとうてい実現できないということを率直に申し上げざるを得ないのでございます。
  52. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 この数量はとうてい実現ができない、こういうお話でありますが、そこで、できないとすれば、ここに種類の改良というものが必要になってくるのではないかと思うのであります。現在の日本の牛肉の供給源になっておるのは、私から申し上げるまでもなく、黒毛和種がほとんど大部分だ。褐毛和種もたくさんありますが、ほとんど八〇%程度は黒毛和種であります。御承知のように、従来日本の牛肉の供給源は肉専用ではなかったわけでありまして、役畜を兼ねて増殖をしてまいったという経過があるわけであります。したがって、今後の肉用牛の繁殖は、肉専門の種類に変えていかなければならぬ、かように考えられるわけでありますが、改良の方向はどういう方向に求めていかれる見通しであるか、その点をひとつお伺いいたしておきたいと思うのであります。
  53. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 わが国の和牛は、千葉先生も御指摘になりましたように、元来、農耕用に使ったその野上げの牛を肉用に供給するという目的の家畜であったわけでございます。でございますので、従来の改良の目標は、肉用の目的として改良をしておりませんので、肉用牛としていろいろな欠陥を持っておるのでございます。その欠陥を直すということが改良の目標でございまして、その第一は産肉の能力が低いという点でございます。特に体形で申せば、後駆の肉づきが非常に悪い、いわば柳腰の牛をつくり上げてきたのでございます。後塵の一そう発達した体形の牛に改良していく必要がある。もう一つは、役用でございますから、ある程度足が長くなければいけなかったのでございますが、体高については、体重に比較して相対的に低い品種をつくり上げていくということが一つの目標でございます。さらに和牛は成長期間が他の肉専用種に比べますと相当かかるわけでありまして、さらに成長度の早い、早熟性の牛に変えていくということが必要であるというように、それらの問題を改良目標にいたしておるわけでございます。
  54. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 この説明によりますと、肉用牛の対策を積極的に推進してまいることとして、昭和四十一年度においては肉用牛繁殖育成センターを設置した、こういうことをうたっておるわけでありますが、おそまきながらこの種の施設を実施することになって、私もたいへんけっこうだと思うわけであります。ところが、この内容を見ますと、はたして十分な機能を発揮することができるであろうかというような点をはなはだ懸念せざるを得ないのであります。というのは、この肉用牛の繁殖育成センターのいろいろな計画を見ますと、経営内容は、四十ヘクタールの圃場で成牛を八十頭、それから育成牛を十一頭、子牛を六十二頭飼うことになっておるわけでありますが、それに対する職員はわずか一人しか見ていない。しかも、その給料は月三万円ということになっておるわけであります。こういう職員一人というような経常の状態で、はたしてその機能が十分発揮できるかどうかという点、それからまた、経営の状況でありますが、経営内容を検討しますと、一年目には赤字が百十九万円できる、二年目には二百七十四万、三年目三百十四万、こういう赤字が累積するんだ、そして四年目になってようやく経営が常態になりまして、四年目から黒字になるんだ、こういう内容のようであります。こういうことであっては、この肉用牛の繁殖育成センターの経営に当たるところに大きな犠牲をしわ寄せするのではないかというような感じもいたすわけでありますが、その点はどうなっておるか、ひとつ詳細に説明をしていただきたいと思います。
  55. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 肉用牛繁殖育成センターにつきましては、ただいま千葉先生がおっしゃったような規模で考えておるのでございますが、その経営収支の試算は、これはちょっと私どもも、こういう形の試算が適当であったかどうか、いま疑問に思っておるのでございますが、まず、飼養管理の主任者一名で足りるかということでございますが、私どもも国立の種畜牧場を持ちまして、一人で肉用牛の管理能力がどのくらいかということは経験的にわかっておるのでございますが、八十頭の基礎牛とあと育成牛を若干期間持つというような程度でございますれば、主任技術者としては一名あれば十分であるというのが私どもの専門家の見解でございます。ただ、一時的には臨時雇用の形の人手を必要といたしますので、これは別途賃金の形で計上をいたしておるわけでございます。  それから収支の関係でございますが、ここに収支として掲げておりますのは、現金収支の計数でございまして、和牛の肉牛の生産及び育成は、現金が入りますのに相当の期間がかかることは避けがたいのでございまして、どうしても現金収支に関する限り、三年間程度の赤字が出るのは避けがたいのでございます。その点も考慮いたしまして、赤字の出ます年次の間は、一頭につき一万円の運営費補助を地方競馬全国協会の畜産振興費で助成をしようとしておるのもそのためでございます。この間は、もっぱら家畜の付加価値が蓄積される時期でございますので、厳密な意味の経営収支ということになりますと、また違った姿になるはずでございますが、この資料に関します限りは、三年間はどうしても現金収支上の赤字が避けがたいということに相なっておるわけでございます。そういう観点から、この事業は個人的な形ではとうてい耐えられないということに相なりますので、助成の主体も市町村あるいは農業協同組合またはその連合会というようなものに限りまして、ある意味で公的な施設性格を持たしておるということも、それらの配慮からでございます。
  56. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 しかし、この内容を見ますと、子牛の出産率は八〇%を見込んでおるようですね。いままでの実績では、大体六五、六%ぐらいじゃないかと私覚えておるのですけれども、相当出産率を高く見ておるようですが、もしこの計画の出産率の実績が予定に達しないということになれば、もっと赤字がふえる、こういうことになるわけですね。その点はどうなんですか、この出産率の予定と実績との差、だいじょうぶこの予定どおり出産率をあげることができる見込みですか。
  57. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 繁殖育成センターの出産率でございますが、このセンターは、元来牝牛に対して全頭種つけをいたしまして、もっぱら子牛の生産に当たるという機能で構想ができておるものでございまして、一〇〇%の種つけに対して出産率八〇%というのは、ある程度安全度を見込んだ数字でございまして、平均的には間違いはないというふうに思うのでございますが、何らかの事故で八〇%の出産率がなければ、お話のようにこの試算はまた狂ってくるということに相なるのでございます。わが国全体としての繁殖素牛に対する出産率は、これは御指摘のとおり六四、五%であったと存じますが、この場合は種つけ率自身が八〇%くらいしかありませんので、それに対して出産率は六四、五%ということでございますので、著しく無理をした計画ではないということだと思います。
  58. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 よくわかりました。  そこで、この法案の内容について今度は御質問を申し上げたいと思うのでありますが、畜産振興事業団に輸入牛肉の買い入れ及び売り渡しの業務を行なわせるというのがこの法案の内容のわけであります。この法律の改正案の説明の文章から判断をしますと、牛肉の輸入は畜産振興事業団以外の何らかの機構が輸入をして、そしてその輸入をした牛肉の買い入れ及び売り渡しを畜産振興事業団にやらせるんだ、こういうふうに解釈されるのでありますが、その点はどうなんですか。
  59. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 法律の解釈問題としては、ただいま千葉先生のおっしゃったとおりでございます。多少ふえんして御説明を申し上げますと、輸入ということは、財貨を外国からわが国の領土内に持ち込むことでございまして、その業務自身をだれがやるかということは、畜産振興事業団がみずからやるという場合も考え得られるのでございますが、この法律がねらいといたしておりますことは、国内における牛肉の需給の調整、価格の安定をはかる、また、そのことが国内生産に悪影響を及ぼすことのないように弾力的に行なうことが必要であるというたてまえになっておるのでございまして、財貨の外国からの持ち込み自身を事業団がやらなければならないという理由はないと私どもは思っておるのでございます。でございますので、やり方としましては、農林大臣の輸入に関する基本方針に従いまして、農林省から畜産振興事業団に発注内示書を交付をいたすわけでございます。発注内示書の交付を受けた畜産振興事業団は、入札方式等によりまして輸入商社に発注をいたすわけでございます。その発注を受けたものが、通産大臣から輸入の許可を受けて牛肉を輸入する。そして畜産振興事業団は、契約に基づく手数料を払って肉を引き取るという形をとるのでございまして、常識的に言えば、畜産振興事業団が輸入するといって差しつかえないのでございますが、正確に法律上の表現をいたしますと、ここに書いてありますように、「輸入に係る牛肉」の買い入れ、売り渡しを行なうという表現に相なるわけでございます。
  60. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 内容的には畜産振興事業団が直接輸入するのと同じだ、こういうわけなんですね。それならば、こういう回りくどい規定にしないで、畜産振興事業団が直接輸入をするという方法にしたほうが、かえって簡潔でいいのではないかという感じがするのですが、そういうことはできないのですか。
  61. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お話のように、畜産振興事業団が輸入そのものからやるというふうに書いて書けないものではないのでございます。ただ、現実に現在の国際貿易の方向を考えますと、貿易は、民間による自由貿易ということが近代の国際貿易の方向に相なっておるわけでございます。政府内部におきましても、政府機関あるいは政府自身が直接輸入をするという場合には、何らかの国内的な重要なジャスティフィケーションと申しますか、正当性がある場合に限られるということにしぼっておるわけでございまして、この際に政府機関が直接輸入をするということの説明は、国際的にもなかなかむずかしい点がある。そのことについて国際機関の了承を取りつけるということは容易ではないというような観点もございまして、法律でも、実際上支障がない形で需給機能を持たせれば足りるということで、いろいろ議論の結果、ただいま御審議を願っておりますような条文に相なったのでございます。
  62. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 牛肉は自由化されていないわけですね。自由化されていないのだから、政府機関が直接輸入するということも、私は基本的には必ずしも不可能ではない、正しいのではないかというふうな感じがする。自由化されていないということは、政府の管理貿易だということになるのですから、政府が管理をしている貿易は、政府の機関が輸入をしてもいいのではないかという感じがするのですが、国際間のいろいろな関係があってむずかしいということです。政府機関が直接輸入するということになれば、国際的にはどういう関係が出てくるのでしょう。
  63. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 なかなかこの説明は簡単にはできかねるのでございますが、現在日本はガットの条約に加盟をいたしておるのでございまして、政府−貿易あるいは国家貿易をやるという場合には、ガットに対する報告の義務と、それに対する異論が出ました場合にはコンサルテーションに応ずる義務があるわけでございます。また、OECDに加盟をいたしておる関係からも、国家貿易については議論の種になり得るわけでございまして、国際通商政策といいますか、そういう関係では、必ずしも容易にそのことの実現はできかねる事情があるわけでございます。私の説明だけでは御理解いただきかねるかと思いますが、非常にむずかしい問題があるということだけ申し上げておきたいと存じます。
  64. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 畜産振興事業団の直接の輸入はなかなかむずかしいというのでありますから、やむを得ないと思いますが、ここ三、四年の輸入しておる牛肉の量はどの程度になっておりますか。それからまた、今後輸入する量の見通しはどの程度か。そして今後輸入した牛肉をどの程度畜産振興事業団に取り扱いをせしめるか、その点をひとつお伺いしておきます。
  65. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 従来の牛肉の輸入量は、昭和三十九年までは大体五千トンないし六千トンの量で許可をしてまいったのでございますが、昨年は御案内のように非常に牛肉の価格が高騰いたしまして、需給の逼迫が見られましたので、一万トンの輸入をいたしております。本年度は、本法律案が御承認いただけるということに相なりますれば、私どもとしては、需給の推算からは二万トンないし三万トンの不足が考えられるのでありますが、外国の輸出余力等の事情を考慮いたしますと、大体二万トン程度の輸入をするということに相なろうかと思います。民間輸入と事業団輸入の二本立てでございますので、民間輸入については、過去の実績の程度を勘案いたしまして輸入許可をいたしたい。事業団については、一万トン程度の操作量を持たすようにいたしたいというふうに考えております。
  66. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 四十一年には大体二万トンの輸入の見込み、そして事業団はそのうち一万トンを取り扱う、こういう方針であるというお答えであります。輸入の肉の買い入れ価格販売価格の差は相当開きがあると思いますが、実態はどういうことになっておりますか。
  67. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 外国の牛肉の価格も年々上昇を続けておりまして、この傾向はさらに続くものと思われます。外国の牛肉価格もピンからキリまであるわけでございまして、先般畜産振興事業団が試験輸入をいたしました事例を見ますと、最もすそものの牛肉の場合には国内での商社渡し価格は三百五十円程度というものから、高いのはキログラム当たり七百九円というような幅があるわけでございます。これを通じて中肉程度のものを輸入をしたということにいたしますと、国内の現在の市価を基準にしてものを考えますと、キログラム当たり六十円ないし八十円程度の差益といいますか、差額が出るというふうに理解してよいのではないかと思っております。
  68. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 この六十円ないし八十円程度の差益が出る、その差益の処分はどういうことになりますか。
  69. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 事業団が取り扱います牛肉についての差益については、法律でも明らかにいたしておりますように、事業団の輸入牛肉の勘定におきまして、差益の一部を将来の欠損補てんのために積み立てる、一定額まで積み立てるということにいたしまして、他の部分事業団の助成勘定に繰り入れまして、肉牛の生産増強対策等を中心に畜産振興のための助成資金に使いたいというふうに考えておるのでございます。過去におきまして、民間輸入につきましても、市場実勢の価格と非常に差があるという場合には、自主的に差益の積み立てを行なわせる、そうして畜産局長の承認にかかる事業に限って、公的な意味を持つ使途に充てることを許してきたという経過でございます。
  70. 千葉七郎

    ○千葉(七)委員 事業団が大体一年間に一万トン程度の牛肉を取り扱うとすれば、その差益は六億から八億くらいの差益が出るわけでありまして、その一部は欠損に充てるために積み立てをする、残余は肉牛の増殖の事業にその金を支出する、こういう答弁でありますが、六億ないし八億程度の金でありますから、ごく少ないわけであります。私が申し上げましたように、昭和四十六年二百二十万頭の肉牛の増殖ということは容易でないように思いますので、これは国内の牛肉の需要供給を円滑ならしめる、そして価格の高騰も防ぐという立場から考えますならば、肉用牛の増殖対策は抜本的な施策を講じなければならないわけでありまして、国としてぜひその点は十全の対策を立てていただきたいと存じます。  その点を強く要望いたしまして、だいぶ時間もたちましたので、まだまだお伺いしたいことはたくさんあるのですけれども、はしょって、私の質問はこの程度にとどめたいと存じます。
  71. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。    午後一時二十六分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  72. 中川俊思

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。東海林稔君。
  73. 東海林稔

    ○東海林委員 午前中、同僚の千葉委員からも質問があり、なお、あと芳賀委員質問を予定しておりますので、私は、ごく簡単に一、二の点について御質問をしたいと思います。  今度の法案が、先ほどもお話がありましたように、国民生活の高度化に伴ってだんだんと牛肉の利用がふえていくが、一方、生産面においては、農業の機械化の問題あるいは肉用牛の飼養基盤の脆弱等の問題からして、なかなか計画どおりに出産が進んでおらない、そこで、やむを得ず、当分の間相当量を国外からの輸入に仰がなければならないので、その間の調整をはかり、国内の需給の安定、さらには価格の安定等をはかるために、畜産事業団に外国から輸入させる、こういうようなことが内容のように考えるわけでございます。そこで、いままでいろいろと質問の中で需給関係の問題につきましては御回答があったわけでありますが、私は、特にこの価格の安定の問題に限定して、御質問申したいと思うわけでございます。  一応この価格の安定の問題になりますと、まず一つには、素牛の価格の問題、それから肉の問題、さらに、それに先立って子牛の価格の安定の問題があろうと思うのですが、今後は、午前中にもお話がありましたように、役用牛という形が非常に少なくなってまいりますので、肉牛として、初めからそういう目的で専門的に育てていくというような面を非常に重要視しなければならないと思うわけです。  そこで、一つには、和牛の肉用牛という形での生産の奨励と同時に、もう一つは、乳用牛の子牛の中で雄として生まれたものを肉用に育てるという問題もあると思いますが、いずれにいたしましても、この問題を考えた場合に、肉の価格の安定には牛の価格の安定が必要であり、その前に、また子牛の価格の安定が必要であろう、こう思うわけでございますが、そういう価格安定という面について、政府としてはどのように考えておるか、同時に、今回のこの法律改正との関連はどのようになっておるか、そういう点について御説明をいただきたいと思います。
  74. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 お話しのように、国内の生産を遂行してまいります立場、また、国内における牛肉の価格を、消費者の立場からも安定を必要とするということであろうと思うのでございます。現行の価格安定法のもとでは、政令による指定食肉については、安定下位価格とそれから安定上位価格との間に安定帯を設けまして、下限を割ります場合には買い出動をいたし、それから上限を割ります場合には手持ちの食肉を放出するという形で価格安定をはかるたてまえになっておるのでございます。現在、指定食肉が豚肉になっておるのでございますが、牛肉につきましては、これは提案理由の補足説明でも申し上げましたように、整形方法が非常に不統一でありますとか、あるいは品質のばらつき等がございまして、規格ごとに具体的な価格を定めることが非常に困難なのでございます。この点は、今後もさらに検討を進めていくべき課題でございますが、私ども、この段階で最も必要であると思いますことは、やはり子牛が安定的に生産をされていくということでなければ、日本の肉資源の拡大はできないわけでございますので、現在のところ、制度化されておりませんが、私どもの考えとしては、昭和四十二年度以降、子牛の価格安定制度を創設してまいりたいというふうに考えておりまして、肉牛の主産県あるいは主産地域の都道府県で、それぞれ具体的な方法についての検討をしてもらっておる段階でございます。  現行法と今回の改正法案との関係におきましては、この法案では、牛肉の輸入をいたします場合の価格水準という問題が、指定食肉になっておりませんのでとれないわけでございますので、法律の形式的な関係で、指定食肉になり得る食肉としては、牛肉をその範囲から除いておるのでございます。しかし、この点については、今後さらに検討を進めていく必要があるだろうというふうに考えておる次第でございます。
  75. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの答弁の中の第一点の問題として、子牛の価格の安定制度を設けるという考え方で検討を進めている、こういうことでございますが、この制度というのは法律制度の意味でございますか、それとも、ほかの何かの制度でございますか、その点、ちょっとお伺いしたいと思います。
  76. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 私ども現在考えておりますのは、特に法律によることなく、肉牛の主産地域あるいは主産県におきまして、地方公共団体、生産者団体、国、三者の出資による子牛安定基金というようなものを設けて、それによって、子牛価格が相当の水準以上である場合には、一部出産者の受け取り代金の中から積み立てを行ない、一定基準以下に下落をいたしました場合には、その基準取引市場での現実価格との差額を補てんするというようなことが最も効果的ではなかろうかという基本的な考え方で検討を進めておるのでございます。
  77. 東海林稔

    ○東海林委員 第二点として、いまの畜産物価格安定法のこの指定食肉の中に牛肉が入っておらぬ、これは規格が非常に不統一であり、なかなかきめにくい、しかし、その問題についてはまあ検討するということでございますが、この問題が解決しますと、相当価格の問題がはっきりすると私は思うのであります。しかし、さしあたってそれが困難だ。そこで、それに関連してお伺いしたいことは、輸入したこの牛肉を事業団で売り出す場合の価格は、何を基準として売り出すように一体考えておられるのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  78. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 事業団が放出をいたします場合は、これは農林大臣の定める指示に従うことに相なっておるわけでございまして、その指示において、国内の牛肉の価格の一定水準以上の場合に限るということにいたしたいと思っておるのでございます。その一定水準という場合には何をメルクマールにするかという問題があるわけでございますが、一般的に牛肉の価格水準の指標となりますものは、去勢牛の上の肉の相場をメルクマール、指標にするというかっこうに相なっておりますので、去勢上の枝肉一キログラム当たり価格水準を、おおむねキログラム当たり五百五十円程度の水準を指示する、それ以下の場合には、事業団は放出をしないということにいたしたいと考えておるのでございます。  ちなみに、現在去勢上の牛肉の芝浦における建て値は、キログラムあたり五百五十五円程度でございます。
  79. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、ひとつお尋ねしたいのですが、その去勢牛の牛肉の価格を一応基準として、それ以下では放出しない、こういうことでございますが、そうすると、何かそこに矛盾を感ずるのは、先ほど、牛肉の問題については、いろいろと規格が不統一でなかなか一定の価格指示は困るのだというお話と、一応去勢牛肉というものを基準として、輸入の牛肉でもいろいろとまた品等があるわけですから、それでもって放出する、しないということをきめるというところが、私はちょっとわかりにくいのですが、その点を御説明願いたい。
  80. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 牛肉の価格が上がった下がったということの指標を求めるのに、特定の規格をつかまえて見ることが可能なのでございますが、指定食肉ということにいたしますと、たとえば、去勢牛にいたしましても上、中、下、それに極上というような区分があるわけでございます。しかも、その区分は、市場ごとに必ずしも統一されたものではないのでございまして、指標として見る場合には、大阪市場とかあるいは東京芝浦相場とかいう特定の地域をつかまえる以外にはないと思うのでございます。さらに牛肉なんかには、去勢でございませんで普通の雄牛のものがございますし、また乳牛がございますし、子牛がございますし、雌の肥育のものがございますし、雄についても、早期肥育の牛もおりますし、現実に新聞等でごらんいただきましても、牛肉は現在の段階でも安いものはキログラム二百七、八十円のものから八百円をこえる千円に近いようなものまで、厳密に申せば十数段階のものがある。一体それをどうやってきめるのか、あるいは基準価格を割ったとか、あるいは上限価格を越したとかいうのは何をもってそう判断するかという、買い出動と売り出動の基準が、それぞれ価格ごとに明確でなければできないわけでございまして、それが現段階では非常に困難なのでございます。
  81. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、最後にお伺いしたいのですが、いまの去勢牛の価格が一定価格以下である場合には売り出しはしない、その一定価格というものは何をもって基準にするか、そこをひとつ説明していただきたい。
  82. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 何をもってするか、実は私ども非常にむずかしい問題であると思っておるのでございますが、現在の農林省調査によります生産費調査等、資料がまだ不備な状態でございますので、理論的な形での指示水準というものは非常にむずかしいのでございます。むずかしいのでございますが、一応私ども今日まで検討いたしました段階では、今後可能とされる子牛生産の合理的な規模、それから肥育牛の合理的な規模、そういうものをある程度想定をいたしました想定標準経営のようなもので考えますと、大体タチ、生体で去勢牛が二百八十円前後であるならば生産の拡大は可能であるという観点に立ちまして、それが枝肉に変わりました場合の粗経費、また肉歩どまりからくる比率、そういうものを考慮いたしますと、五百五十円程度の水準を維持するならば、和牛子牛の生産並びに肥育の段階も拡大的な条件が与えられるのではないかという観点で、五百五十円程度ということを考えておるのでございます。なお、現在の市況が五百五十五円の程度でございますが、現段階におきますタチのキログラム当たり単価は大体二百七、八十円の水準にございまして、子牛の種つけの実も相当上がっておるというような事情から見まして、実際的にも、その水準であれば無理はなかろうというふうに考えておるのでございます。
  83. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、ただいまの御説明は一口で申せば、去勢牛の一定価格という意味は、要するに、生産奨励の面から見て、農家の生産意欲を積極的に高揚するところまでいかなくても、生産意欲をなくしないような価格ということが一応基準というようなふうに理解されるのですが、その点、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  84. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 仰せのとおりでございます。
  85. 東海林稔

    ○東海林委員 そういたしますと、食肉は御承知のように豚肉、牛肉が中心でございますが、かりに豚の生産が非常に上がりまして、現在一応下位の底入れ価格があるわけでございますが、これが、ある状況によって非常に下がるというような場合に、需給といいますか、それと価格との関連において豚肉というものの需要が非常に進んで、牛肉に対する需要が非常に少なくなってくる形、いまの御説明でいく場合に、豚肉のほうにおいても相当な価格というものが維持されている段階においてはそのことが私は可能だと思うのですが、そこらの関連がちょっと私の疑問になるわけです。牛肉と豚肉との代替性の問題もありますが、そこらの関連をどういうふうに理解したらいいのか、ひとつ御答弁を願いたい。
  86. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 豚肉と牛肉との代替性の問題は、実は諸外国においてもあまり判然とした判定基準がないようでございます。わが国は、食肉の需要が非常に急激に増大をしておる激動期でございますから、一そう判定がむずかしいということでございますが、御質問にございましたように、豚肉の価格安定に支障を及ぼすような牛肉の放出があってはならないわけでございますので、先ほど申し上げました農林大臣の指示の中には、少なくとも、豚肉価格基準価格を割っておるような状態のときには牛肉の放出は一切しないということにいたしたいと思っております。
  87. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの点はある程度わかりましたが、そこでもう一つは、輸入の牛肉は、いま御答弁のように、去勢牛の価格が一定価格以下の場合には放出しない、それ以上の場合に放出するということですが、具体的に、それじゃどの程度価格で放出するか。これは輸入の買い入れ価格というものが基準になるのか、あるいはまた、いまの去勢牛の価格と輸入牛肉の価格、品質というようなものを考えて、そこから現実的な売り出し価格というものが出てくるのか、そういう関係。実際に輸入した価格が、放出する場合には、その各品等別の売り出しの価格というものはどういう形で出てくるのか、あるいはこれは競売に付するなら競売に付するということで、そのときの問題になってきますけれども、そこらの考え方をひとつ……。
  88. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 事業団の輸入牛肉の放出は、原則として中央卸売市場における線によって売りたいというふうに考えております。ただその場合にも、先ほど申し上げました国内牛肉への安全弁をつける必要もございますので、一定のさし値をきめたいというふうに思っておりますが、そのさし値につきましては、輸入牛肉の品質に従いまして、去勢上価格との品質格差あるいは冷凍格差その他のものを考えまして、五百五十円の去勢上の牛肉との相対的価格関係を乱さないようなさし値をしたいというふうに思っております。
  89. 東海林稔

    ○東海林委員 いまのような売り出し価格考え方をした場合に、この法律にあるような差益金というものは常に出てくるような見通しになるわけですか。その点はどうですか。
  90. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 現段階におきましては、おそらくキログラム当たり六十円ないし八十円の差益が出ると見込まれるのでございます。ただ、諸外国の食肉需給の関係も非常に逼迫を続けておりますので、漸次国際価格が高騰の傾向にあります。したがって、将来は差益の額は私はだんだん縮まるのではなかろうかというふうに思いますが、当分の間は、まず差益が出ることは間違いなかろうというふうに思います。
  91. 東海林稔

    ○東海林委員 いままでの審議でもって、一応子牛の価格安定というものを検討中だ、これは具体的にならぬと実はちょっと議論しにくいのですが、そこで一つの安定が出てきた。それから、輸入牛肉の売り出し価格というのが、いまのような考えでいくと、ある程度そこに一つの安定が考えられるわけですが、そうするとその中間の——先ほどの問題に戻るわけですが、規格がいろいろあるけれども、国内産の肉に一定の価格基準がないということが、私は何だかおかしいような気がするわけなのです。これは先ほどの御答弁の中でも、困難ではあるが、その問題は重要問題として研究するのだということではございます。これでは、何か初めと終わりのほうはあるような気がするけれども、一番大事な、まん中の大部分のところが抜けているような感じがしまして、私は、価格の安定という点について何となく不安があるような気がするわけなのです。そういう点、最後に総括的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  92. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 国内牛肉の価格水準について、安定点というものが現在制度的にないということについての御質問でございますが、私どもも、今後日本の肉資源をふやしていこうという期間に、牛肉の価格の安定ということも当然考慮をしなければならないと思っておるのでございます。しかし、技術的に現段階においてまだ解明がされ尽くしていないという点と、少なくとも、近い将来において牛肉の価格が暴落をするというようなことはおよそ考えられないという点、若干私どもにも時間的な余裕を持っていいのではないかという甘い点があるかもしれませんが、そういうことも考えられるわけでございます。牛肉価格の安定の前提として、牛肉の規格取引の推進を現在やっておりまして、牛肉の価格安定への前提の要件としての格づけ等を今後整備をしてまいりたい。それに従ってそれぞれの規格による価格水準というものをどうきめるかということを検討したいと思っておる次第でございます。
  93. 東海林稔

    ○東海林委員 以上で質問を終わります。
  94. 中川俊思

  95. 芳賀貢

    芳賀委員 今回の改正点について、主要な点の質問をいたします。  第一の点は、法律改正のねらいが、将来にわたって国産の肉用牛を中心とするいわゆる指定食肉としての牛肉を、法律の条文には現在ありませんが、政令等においてもこの改正によって除外するということが一つの目的になっておるわけです。これはわれわれとして了承できない点である。畜産物安定法は、生乳あるいは乳製品が今度は別途の法律に移行されておるわけでして、残った主要なものということになれば畜肉が主体になって、あとは鶏卵等ということになると思いますが、法律上国産の牛肉を除外する、しかも、政令においてもこれを除外するという考え方は一体何を根拠にしているか、明確にしていただきたい。
  96. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 今回の改正は、畜産振興事業団に、輸入にかかる牛肉の買い入れ、売り渡しのできる権能を付与することが中心でございます。畜産振興事業団が牛肉の買い入れができます条文の旧来の根拠としては、いわゆる指定食肉として上限価格並びに基準価格というものを設けまして、上限価格を越えた場合に初めて輸入ができるという法律構成になっておるわけでございます。ところが、提案理由の補足説明でも御説明申し上げましたように、現段階で牛肉の規格ごとの基準価格あるいは上位価格をきめるということは非常に技術的に困難があるわけでございまして、その段階におきましては、農林大臣の指示する方針に従って輸入牛肉を取り扱えるという規定を置かざるを得ないわけでございます。そういたしますと、現行法における輸入を限定するという規定がひっかかってくるわけでございますので、法律的に整備をいたしますために、今回の改正のねらいを、この方式をとる限り指定食肉の範囲から離すということにせざるを得ないわけでございまして、指定食肉にすることができ得る段階に相なりますれば、これが方式を現行法に返して運営をするということにする予定でございます。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 現在の法律においては、法文上は豚肉は明記されてあって、あとは政令にまかしてあるわけですね。それをこの改正は、政令からも除くという意味ですね。政令にまかしてあるというその中から将来とも除いてしまうということになれば、一体政令にゆだねる食肉というのは豚肉以外に何かということになる。
  98. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 法律上観念的に考えられますのは綿羊肉あるいは馬肉等が残るわけでございますが、事の必要性から考えますと、綿羊肉あるいは馬肉等を指定食肉とするという考え方は当面持っておりません。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 それで、今後将来にわたって畜産物の対象から牛肉を除くということになれば、これは法律の目的にも関係があると思われます。ですから、最近の需給事情に対応するために、どうしても一定の期間は牛肉を輸入しなければならぬという事情はわかるわけですよ。しかし、その輸入というものは、将来にわたって牛肉については国外に依存するという考えの上に立つのか、国内における肉用牛の増殖政策等を通じて、将来資源が開発、確保されるまでの間、補完的な施策として一定の期間牛肉を輸入するというのか、その点はどうなんです。
  100. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 およそ、食肉に関しましては世界各国とも自国自給主義をとっておるのでございまして、わが国も豚肉はもちろん牛肉につきましても、自国における自給をたてまえとして政策を展開してまいりたい、また、そうすべきものと心得ておるのでございます。ただ、牛肉の増産をはかりますためには相当の期間をどうしても必要とするわけでございまして、その間における補完的な対策として牛肉輸入ということを考えておるということでございます。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 あらためて畜安法の第一条の目的をここで明らかにすれば、「この法律は、主要な畜産物価格の安定を図るとともに乳業者等の経営に必要な資金の調達を円滑にし及び畜産の振興に資するための事業に助成等のみちを開くことにより、畜産及びその関連事業の健全な発達を促進し、あわせて国民の食生活の改善に資することを目的とする。」とある。したがって、主要な畜産物価格の安定あるいは畜産の振興に資するということならば、この法律からも政令からも牛肉を除くということになれば、いわゆる資源の確保とか、たとえば肉用牛の積極的な増殖というものは畜安法からは必要がないということになるのですね。
  102. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御案内のように、畜産物価格安定等に関する法律のねらいは、国内生産の食肉のうち、重要なものについて一定の価格帯の間に価格を安定させるということによって、畜産生産の安定的な振興をはかろうという趣旨のものでございます。牛肉につきましては、先ほど申し上げましたように、指定食肉制度がとれるということに和なりますれば、法律の改正は今回とは違った形になるのが可能なわけでございます。ところが、牛肉を現段階において指定食肉にいたしますためには、技術的な難点がいかにも多いということと、さらに、現段階におきましては、少なくとも、牛肉の暴落事情等は予想されないわけでございまして、そういう段階におきまして国内の牛肉の需給事情を安定させるために、指定食肉制度以外の方法をもって価格の安定をはかろうとするのが今回の改正の考え方でございます。したがいまして、将来諸準備が整いまして牛肉を指定食肉にすることが可能になりますれば、今回の改正を旧に復して、指定食肉制度によって価格の安定をはかり、かつ、必要な牛肉の輸入及び放出の規定を働かせるようにしたいというふうに考えておるのでございます。
  103. 芳賀貢

    芳賀委員 需給関係で牛肉が供給不足傾向ということは言うまでもないが、しかし、そういう状態の中においても、国民経済的に見た場合、国産であろうと輸入牛肉であろうと、一定の価格水準を維持するということは制度的にも必要ではないですか。絶対に足らないのだから下がりっこはない。では、どの価格から以下が下がるというのか、どの価格水準以上が国民経済とか生活に影響を与える価格というのかという、この価格的な基準が今度は全然なくなってしまうのじゃないですか、法律に根拠もなくなるというのですから。ですから、国民生活上から見た場合の牛肉の価格水準は、当然生産者側の立場からまず見るということが、順序としては先決だと思うわけです。それから、外国から入れる場合には、質の良悪は別として、いまの国内の牛肉価格よりも相当大幅に安いものが入ってくることも明らかになっておるわけですから、その場合、国産牛肉と輸入牛肉というものを需給面においても調整する、価格面においても、これは調整しないといっても、結果は当然するということになるわけです。しかも、その場合の標準的な安定的なその価格というものが、将来急速に国内の肉資源を増大させるに足る刺激的な価格でなければならぬことは言うまでもないわけです。その場合に、法律の中から根拠になるものを全部はずしてしまうというのはおかしいじゃないですか。そうしなければ牛肉の輸入ができないというわけじゃないでしょう。
  104. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先ほどから申し上げておりますように、牛肉の輸入を、この畜安法の規定の本旨に従って輸入できる場合は、これは安定上位価格を設けた場合に、それを越えた時期に初めて可能であるというたてまえになっておるわけでございます。これは豚肉の場合にはそういうことで十分でございますが、牛肉は牛肉として若干事情の違う点もあるのでございます。というのは、わが国が輸入いたします牛肉の輸入ソースというのは南半球の豪州、ニュージーランドでございますが、日本の牛肉の価格はほぼ定型的に春安秋高の形をとるわけでございまして、したがって、秋高のときに備えた牛肉の輸入は、春の国内価格の安いときに入れておかざるを得ないというケースが多いわけでございます。でございますから、そういう観点からも、かりに牛肉を指定食肉にしました場合でも、若干の弾力的運用をせざるを得ないという特色があるわけでございます。指定食肉にいたしますことは、現段階において技術的な準備がございませんので、とうていわれわれとしても自信がない状態でございます。それで、規格の設定について現在準備を取り進めておるのでございまして、規格による安定価格水準というものについてわれわれに見通しが得られるようになりますれば、再び法律を改正して、牛肉を指定食肉にし得る本法に回復するということを考えざるを得ないと思っておるのでございます。
  105. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば、現在の法律のように政令で牛肉を指定食肉にした場合においても、これは買い上げ発動の必要は当分ないわけですね。したがって、食肉の生産者団体においても、この調整、補完上の必要もまたないということになるわけですね。供給可能数量は全部迅速に市場へ出さなければ足らぬわけですから。そうなると、これは政令で生かしておいても、技術上支障があるとか、できないというような事態がいますぐこないのじゃないですか。全部はずしておいて、事業団だけに国外の牛肉を扱わせるというのはますますおかしいじゃないですか。本法の対象にできる根拠を置いて、そして現時点においては、国産牛肉が不足であるから事業団を通じて最小限度の必要量を輸入するということであれば筋が通るが、国産の牛肉は全部法律からもう余地のないほどはずしてしまって、輸入牛肉だけを事業団の対象にするというのは、これは法律のたてまえから見てもおかしいじゃないですか。だから、先ほど言ったとおり、将来にわたって国産牛肉というものは資源的な振興の必要がない、外国からどんどん輸入に仰げばそれでいいという、そういう国の方針を進める場合においては、これは一応改正の趣旨はわかるが、しかし、国内の資源が拡大されるまでの間の補完的な措置として必要限度を輸入するということであれば、やがてまた国産牛肉が主体となって国民に供給できるという時期がくるわけです、そうでしょう。それはあなたが局長をやっているうちはこないかもしれないが、国の政策としては必ず到来させなければいけないわけじゃないですか。世界的な肉事情というものは、外国に依存して十分国民の需要にこたえられるというものじゃないでしょう。そういう場合に、畜産振興の対象にしないというのはおかしいじゃないですか。
  106. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先ほどから申し上げておりますように、牛肉に関しまする輸入の調整の規定を新たに設けようとすることでございますので、指定食肉の範囲にとどめておきますと、法律が独自の制度を設けたのに対して、政令によって別の規定の発動が可能になるという法律上の矛盾を避けるために、法律として牛肉を指定食肉の範囲からはずしたのでございまして、牛肉の価格安定を通して畜産の振興をはかるべきであるという芳賀先生の御意見には、私どもももちろん異論はないところでございますが、指定食肉となし得るような条件が熟しました際には、ただいま申し上げておりますように今回の改正規定を廃止いたしまして、指定食肉制度によって国内の価格安定並びに輸入の調整をはかるということにいたしたいと考えておるのでございまして、少なくとも、私どもが出しておりますような輸入牛肉の取り扱いを畜産振興事業団にやらせるという独自の制度を開く限り、法律論として指定食肉の範囲から牛肉を除かざるを得ないという立法技術上の観点でかようなことに相なっておるのでございます。
  107. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから法律上は、豚肉は最初から明記されておる、それ以外は政令にまかせておるわけでしょう。今度政令で食肉を指定する場合にも牛肉は除くことになっておるわけですから、牛肉は政令でも指定できない、法律にはもちろん書いてないということになるわけじゃないですか、この改正は。そうじゃないですか。何もそういう必要はないのじゃないですか。政令にまかされておれば、必要でないときは指定しておかなくて弔いい、必要が生じた場合には指定食肉として指定すればいいわけじゃないですか。それをどういうわけで政令においても指定してはならぬということにするわけですか。
  108. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 同じことを繰り返すようでございますが、政令で指定食肉に指定することができる規定を残しておきますと、同じ法律の中で輸入調整の規定が二つできてしまうわけでございます。でございますので、現在私どもが提案を申し上げておりますような輸入調整方式をとっております限りは、政府として指定食肉制度によって二つの輸入調整方式が出るということを法律的に整理せざるを得ないということで除外をいたしておるのでございまして、政令で指定をして運用ができるというような体制になりましたときには、現在提案しておりますような輸入調整方式をやめなければいけないということでございます。ただいま申し上げましたように、法律上の観念整理で牛肉を廃止せざるを得ないということでございます。
  109. 芳賀貢

    芳賀委員 局長の言っておるのは、おそらく、政令で指定できることになっておると、今回の事業団の輸入措置を事業として認めるということになれば、これは明らかに指定しなければならぬ。そうしなければできない。現行法においては、指定しない食肉を事業団が入れることはできないですからね。入れる場合の理由としては、国内の牛肉の価格が安定価格の上位価格を越えて暴騰しておる、あるいはそのおそれがある、そういう場合には事業団が緊急輸入できる道がすぐ開けるわけですね。これは価格上の問題です。もう一つは、豚肉でも何でもそうですか、国内価格が安定上位価格を上回るような現象というのは、需給面において供給不足という場合に必ずこれは生ずる現象なのです。それ以外の場合はなかなかそういう現象がないわけです。ですから、そういう場合は指定食肉に指定する、そうなれば、国外から輸入したい場合は、まず安定基準価格というものを定めなければならぬ、それを異常に上回っておるということを理由にして事業団が国外から牛肉を買い入れる、問題は、こういうことをやるのがいやなんでしょう。できないとか、できるとかいうことじゃなくて、その点は率直に言ってもらいたいのです。人間のやることで、できないなんということは絶対ないですよ。月旅行さえできるのですからね。こんな、たかが家畜の肉くらいの値段をきめるとか、流通機構をどうするなんということは、いまの時代でできませんなんということはないですよ。そういうものができないというのは、これは能力がないということだけですよ。
  110. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 牛肉を指定食肉に絶対にできない、未来永劫にできないと私どもは考えていないのでございます。本法の二条の三項にありますように、指定食肉というのは「政令で定める食肉であって、農林省令で定める規格に適合するものをいう。」ということで、指定食肉となるためには、農林省としては、まず行政的に統一的な規格の設定をせざるを得ないわけです。それについては先ほども東海林先生の御質問にお答えをいたしたのでございますが、現段階においては各種の牛肉があるわけでございまして、価格から見ましても、現段階で二百七、八十円くらいの価格水準から千円に近いような価格水準まで、十数階級の取引価格があらわれておるわけであります。しかもその価格は、等級別されておるものは何ら全国的に統一のとれたものではないということでございますので、私どもも、現在規格を定めてその格づけを実行しようとしておるのでございます。これも相当の経験を経ませんと全国的な規格たり得ない性質のものでございますので、それらの問題の準備が整いますれば、私どもとしても、牛肉を指定食肉に一切しないという考え方ではなく、間違いのない形で実行する時期を待ちたい、待つといいますか、なるべく早くということが望ましいのですが、やっていきたいと考えておるのでございます。絶対にできないというものではございませんけれども、現段階ではとうてい可能性は薄いということでございます。
  111. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、これは昭和三十六年に政府案として出した法律ですが、その場合、法律の条文にはないが、その当時の政府説明は、政令で定める指定食肉の中にはまず牛肉を入れるということを明確にしておるわけですね。政府が提案当時やれるというからわれわれはこれに賛成して通したのですよ。どういうわけでその当時はこれはやれるという説明をしたのですか。   〔委員長退席、本名委員長代理着席〕
  112. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 おそらく、提案当時におきましては、牛肉もまた重要な食肉でございますから、指定食肉に指定するという必要性と、その体制が完備すればやりたいという意欲を持っておったものと思われるのでございます。その点については現段階においても必ずしも変化があるわけではございませんが、当面する牛肉の需給の調整をはかる、また、それが国内の肉牛生産に悪影響を及ぼさないような措置をとりたいということで、今回の改正案を提出いたしたのでございます。この体制を未来永劫に続けていきたいという考え方ではございませんで、準備ができますれば、本法の基本的な考え方によって運営をしていくということに改める時期があるというふうに考えておるのでございます。
  113. 芳賀貢

    芳賀委員 とにかく、このような改正が行なわれた場合は、国産の牛肉等についても標準的な価格、安定的な価格というものを定める根拠は、少なくも畜安法においては全然ないわけですからね。これは重要な点じゃないですか。今後肉用牛の積極的な増殖計画を進め、それに農民がこたえても、生産者が満足できるような安定的な価格というのはどこに根拠を置くかという場合に、畜安法にはその根拠はなくなるわけなんですよ。
  114. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 消極的といいますか、一面の問題として、輸入牛肉の放出をする際に、少なくとも、国内の価格が一定の価格水準以下の場合には放出をしないということはきめる必要があると思うのでございまして、今回の改正案に基づきます農林大臣の指示する方針の中でそれを明確にいたしたい。先ほども東海林先生の御質問に対してお答え申し上げたのですが、現在私ども、牛肉の価格水準の指標となっておりますのは去勢上の枝肉価格が用いられておりますので、その価格水準がおおむねキロ当たり五百五十円以下の場合には放出はしないということだけは明確にいたしておるのでございます。なお、肉牛ないし牛肉の全体の価格安定の最も効果的な方法は、私どもの検討した限りにおいては、子牛の価格を安定させる、その子牛の生産に価格上の不安定を与えないということが一番大事であるというふうに思っておりますので、昭和四十二年度には、ぜひとも子牛の価格安定の措置をとるようにいたしたいというふうに考えております。引き続き牛肉の安定、指定食肉としての価格安定制度の検討を進めていきたいというふうに思っておるのでございます。
  115. 芳賀貢

    芳賀委員 繰り返すようですが、政令指定の場合においても、牛肉は指定しないというような改正はあくまでも改悪で、われわれとしては了承できないということを特に指摘しておきます。  次に、二十八条の役員の欠格条項が大きく改まっておりますね。現行法では国会議員、国家公務員、地方公共団体の議員等は役員になることはできないということになっておるわけですが、これを、政府または地方公共団体の職員だけが役員になれないということに改めたわけですね。そのことは、この法律がこのように改正されれば、国会議員あるいは地方議会の議員はすべて事業団の役員になる資格が生じたということになるわけですね。
  116. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御質問のとおりでございます。この改正をいたしましたのは、昭和四十年二月十九日の自民党総務会長、政調会長と内閣法制局との協議の結果、国会議員及び地方公共団体の議会の議員は、特別の必要がある場合を除きまして特殊法人の欠格条項中には掲げないということの結論が出まして、既往の法律につきましては、最近の改正の機会に該当条項を改めるということにいたしまして、この種の法律については改正のたびに同様の整理をしてまいっておりまして、私どもの今回の改正案も、ちょうどこの決定に従うべき時期に当たりましたので、この整理をしておるのでございます。
  117. 芳賀貢

    芳賀委員 これは農林大臣にお伺いしますが、少なくとも、農林省関係事業団あるいは公団等においては、ことごとく、特に国会議員等は欠格条項に列挙されておるわけです。これを今度は改めて、国会議員はなれる、優先的になれる、しかも、与党の自民党の国会議員等は、必要な場合にはいつでもなれるという道を開いたと思うのですね。いま局長の言ったのは、自民党の総務会とか政調会の首脳部が、こうしたほうがいいということをきめて、政府にこうやることが適当であると言った。これはどういうわけなんですか、当然利権が伴うわけなんですよ。しかも一方的に、政府・与党の関係の間におかれておる有力な、あるいは無力であっても、国会議員はこれらの理事長や総裁になれるという道を、ことさらに法律の改正までして開かなければならぬということになると、これはわれわれとしては、特にこの牛肉の輸入とか最近の膨大にのぼるような事業をやらせるのに先立って、これは自民党の国会議員を理事長にするとか理事にするという考えがなければ、こんな改正をするわけはないと思うのですが、これは一体どういうわけなんですか。国民生活を思って改正するつもりであるか、特定の政党とか人物が事業団の首脳部におさまって利権をむさぼるために改正をする考えであるか、これは重大な点だと思うのです。いままでの法律で何も支障がなかったのじゃないですか。これは大臣から言ってください。
  118. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いまの点につきましては、国会の要求によりましてそういうふうに変わったわけでございまして、現実の問題としては、これを適用するかしないかということは、これは別問題でございます。そういうことできまったわけでございます。
  119. 芳賀貢

    芳賀委員 国会議員をこういう政府機関の理事長とか総裁とか、そういうものにしなければならぬという必要性というのは、一体大臣として考えておるわけなんですか。その人物でなければならぬ場合においては、国会議員をやめてから任命するとか選定すればいいじゃないですか。これは農業団体だって幾多弊害があるんですよ。たとえば農協の連合会の会長ぐらいの者が、これは衆議院にはあまりないが、主として参議員の与党議員におさまっておる。国政の上で一体どれだけの利点があるのですか。こういうものは、やはり厳密にいえば兼職禁止をすべきなんですよ。法律で禁止しなくても、これは自分で判断して自粛しなければならぬのに、今度はその道を開くというようなことはとんでもない話じゃないですか。これはあと質問しますが、最近の牛肉輸入の状態等にしても、どういうような輸入機関とか受け入れ体制というものがあるわけなんですか。そういうものにも国会議員が参画しておるとか、その長になっておるというようなことが、はたして国民全体から見ても望ましい状態であるかどうかということは、これは政府自身としても十分に反省してもらわなければならぬと思うのですよ。何か牛肉の足りぬのに便乗して国会議員が——国会議員といっても、社会党も民社党もあろうが、こういうものになる場合には、政府与党である自民党の議員しかならないのですよ。これは大臣から明らかにできなかったら、総理大臣を出席さして明確にしていただきたいのです。いままでに欠格条項があって、今度新たにこういう法律ができるという場合には、これはまた審議の必要もあるが、従来これを除外していたものを、今度は国会議員でなければならぬというような法律にするのは、これは一体どういうわけなんです。そうしなければ改正できないのですか。これは与党首脳部の条件つきなんですか。これは大臣から明らかにしてくださいよ。——事務官僚が何もそんなことわかるはずないじゃありませんか。保証乳価の問題じゃ、あなたは指導的な役割りを果たせなかった。大事な法律の改正にまで何も役割りなんか果たせるものじゃない。
  120. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 事務的に御説明する必要があると思いまして立ったのでございますが、特殊法人における兼職禁止の規定の本来の趣旨は、これは一般国家公務員に類する位置の者であるという観念で整理をしておるのでございます。でございますので、国会議員あるいは地方議会の議員が法律上当然に排除されなければならないという理由に乏しいということで、欠格条項にはあげないということを、政府として統一的に法律の扱いとしてきめたわけでございます。最近の八郎潟新農村建設事業団法あるいは公害防止事業団法、農地管理事業団法案、すべて国会議員、地方議会の議員を欠格条項にあげてないのでございます。そういう形式的な扱いを整えるために、この法律についてはただいまのような成案になったわけでございます。
  121. 芳賀貢

    芳賀委員 八郎潟新農村建設事業団法は、最初からそういう国会議員を除くなんということは書いてないわけでしょう。いまの法律は、これは除くということが明らかになっておるわけだから、われわれもこれは別にふしぎに思わぬで、そのほうが弊害がなくていいということを認めてきておるわけなんですよ。この改正にあたって——特にこの改正は、外国から安い牛肉をたくさん入れるわけでしょう。膨大な利益が上がるわけでしょう。それを目ざして今度は国会議員がなれるという改正をやるのは、ちょっと正直といえば正直ですけれども、これは何もあわてる必要ないじゃないですか。まだ欠格条項のある法律がたくさんあるわけですからね。改める場合は、利権の伴わない機関から先にこの欠格条項を排除するような改正をやったほうがいいのじゃないですか。これは大臣から責任のある答弁をしてください。
  122. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 これは、こういう問題は全般的になにしておりますけれども、それは国会議員の特別の地位という点から見ての考え方でありますが、この法案に関する限りは絶対入れません。その点を御了承願います。任命はいたしません。
  123. 芳賀貢

    芳賀委員 これは統一的に整理する必要があるとすれば、去る十七日、衆議院の内閣委員会で、審議会等の整理に関する法律案というのが強行採決で通っておるでしょう。だから、統一的に欠格条項というのは、これは法律上は行き過ぎである。しかし、実際には、そういう者は資格があるとしても、国会議員等の場合には、政府機関の役員等にはならない、政府としても選定しないということが明らかになれば、これは権利の問題ですから、むしろないほうがいいかもしらぬが、そういうへ理屈を言うのであれば、これは各法律全部に対してこれを整理する法律を出せばいいじゃないですか。これはもうかる事業団だけは改正するということになれば、当然に利権に関係があるということになるわけですからね、笑いごとじゃないですよ。この次の次元では、ほかのこの種の法律の欠格条項ということについては、全部一斉に政府として改正する方針でおるかどうか、これをまず明らかにしてもらいたいのと、もう一つは、改正が行なわれた場合においても、断じて国会議員が理事長とか理事等に就任するようなことはしない、そういうことを政府の責任で言明できるかという、との二点を明らかにしてもらいたい。
  124. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 この場合において、国会議員を任命しないということだけをはっきりと私から言明いたします。
  125. 芳賀貢

    芳賀委員 ほかの法律はそのまま残すわけですか。
  126. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 私は、いま一つ一つについては何ですけれども、そういう点については、全部かような方向へ進めたいと思います。
  127. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、せっかく法律を改正して、牛肉については事業団がこれを輸入するということになれば、当然今後輸入牛肉は一元的に事業団が扱うというふうに解釈されるが、この点はいかがですか。
  128. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 外貨割当制度が存続したもとでの輸入でございますので、法律上の一元輸入ということは私ども考えていないのでございますが、国内の需給安定に必要な牛肉の量は畜産振興事業団に買い入れさせ、需給調整のために売り出すようにさせたいと思っておりますが、国内の需給安定あるいは国内の生産の振興に支障のない範囲では民間輸入も認めてまいりたいというふうに思っ  ております。
  129. 芳賀貢

    芳賀委員 二本立てでやるということであれば、これは行政的な指導、運営がよろしきを得れば、事業団は何もやらぬでもいいんじゃないですか、そういうことになるでしょう。これは一元的にやるというのであれば意味があるが、従来のはそのまま認める、あと事業団も少しやるということであれば、それほど大きな意味はないじゃないですか。
  130. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 通商貿易の原則は、民間の自由な活動によってその創意くふうをいたしていくというのが経済運営の根本であると私どもは理解をいたしておるのでありますが、ただ、牛肉の場合は、相当大量のものを民間輸入にゆだねました場合には、その放出の時期なり数量なりというものを、単なる行政措置によってはとうてい指導しきれないというふうに考えられますので、年間の需給の調整上必要な牛肉だけは畜産振興事業団をして取り扱わせたいということにいたしたのでございます。  それといま一つは、先ほども触れましたように、日本の輸入をいたすことのできます輸出ソースというのは、主たるところは南半球にあります豪州、ニュージーランドでございまして、これは日本の牛肉の需要最盛期と相手国の屠殺の時期とがずれておるのでございまして、必要な量を春から夏の初めの間に買いつけをいたしますと、それを最盛需要期であります秋に放出するということは、民間活動によっては期待できにくいという点もございますので、まず安定的な確保という観点からも、事業団、国の機関が輸入の取り扱いをするという必要性が強いわけでございます。
  131. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは具体的に従来の民間ベースによる輸入と、改正された場合の事業団輸入と、その割合というか、それはどういう区分でやるわけですか。
  132. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 さしあたり四十一年度は、トータルで二万トン程度の牛肉の輸入を必要とすると考えております。そのうち、過去におきまして民間輸入が五千トンないし一万トンという程度でございますので、この数量の範囲内で民間輸入を認める、畜産振興事業団の取り扱い量は一万トン以上を扱わせるようにいたしたいという考え方を持っております。なお、将来にわたりまして一定の比率ということは、私どもとしては考えたくないというふうに思っております。
  133. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、二本立て輸入ということに相なるわけでありますが、事業団が賢い入れる場合も、事業団直接に買い付けの業務をやるわけではないわけですね。輸入商社等が輸入したものを事業団が買い入れるということは、これは外米輸入等と大体同じやり方だと思うわけであります。  そこで、商社の選定あるいは指定等は一体どうやるかという問題と、従来民間輸入をやっている商社の数は大体十六ということも聞いておるわけですが、これらの関係と、今後事業団が扱う場合の選定さるべき商社というものはどういうふうに区別されるのか、実績主義に基づいてこれだけを指定してやるのか、そういう点はどういうふうに考えているのか。
  134. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 御指摘のとおり、事業団がいわゆる法律上の輸入そのものをやるわけではございませんで、農林大臣から発行いたします発注内示書に基づきまして、事業団が商社に指名競争入札によって輸入契約するという形をとるということになるわけでございます。その際、輸入商社をどう選定するかは今後の検討問題でございますが、現段階においては、過去において牛肉の輸入の実績のあるものを指名競争の範囲としてやりたい。数量が一万トン程度ということでございますが、あまり数多くなりますことも問題でありますし、また特殊の商品でございますから、扱いの経験のあるものでありませんと、円滑な輸入、品質の変化の防止等についての手当の方法等もございますので、当面は実績のあるものの範囲で指名競争させたいというふうに思っております。
  135. 芳賀貢

    芳賀委員 私の尋ねておるのは、現在民間べースで行なっておる、これは日本食肉協議会というのがあって、この会員たる商社が主として牛肉の輸入業務をやっておるわけですね。今度事業団が行なうということになれば、法律的に何ら根拠のない日本食肉協議会というのは、今後どういうような役割りを果たすことになるか。
  136. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 日本食肉協議会は、国内における食肉業界並びに食肉の生産、流通に関係いたします農業団体でもって構成されておる社団法人でございます。でございますので、輸入商社は日本食肉協議会の会員ではございません。ただ、民間輸入の組合につきましても、実需者が食肉協議会のメンバーとなっておりますので、民間輸入の引き合い会議等のあっせん等の機能については関係をすることに相なると思いますが、事業団輸入に関しましては、日本食肉協議会とは全く無関係に事務を進めることに相なるわけであります。
  137. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。牛肉輸入の窓口が日本食肉協議会であるということは、これはもう天下周知のことですよ。これは参議院の農林委員会でも、もうすでにこの日食協というのは俎上に載って、相当の時間議論の対象になったのではないか、そういうことには絶対になっていないのですか、参議院と衆議院において説明や答弁の態度が違うというのはおかしいですよ。
  138. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 日本食肉協議会が、牛肉輸入なりあるいは国内における食肉流通の関係でいかなる役割りを果たしておるか、またそれの構成がどういうことになっておるか等は、参議院で論議をされましたことは、先生の御指摘のとおりでございます。それぞれの輸入商社は正会員として入っているのではない。輸入商社は別に業者によって構成をいたしております食肉輸入協議会が、団体として賛助会員になっておるのでございます。
  139. 芳賀貢

    芳賀委員 これは時間が非常にかかるからあとに譲りますが、「農業協同組合」の二月号、これは局長も読んでおると思いますが、これは相当きびしく「牛肉の高騰と輸入をめぐる諸問題」ということで掲載されておるわけです。こういうものは、特に全国でも農村等においては、あるいは関心を持っておる者はみんな承知しておるわけです。疑点は、日本食肉協議会というものに対しては相当集中されておると思うわけですよ。いままではこれは民間貿易でやっておった関係もあるし、政府としても、差益金の積み立て等について、直接ではないが、指示を与えて、その差益金のうちの一部の積み立て金等の有効な使用等についても指導されておると思いますが、こういう内容についてはまだ後刻明らかにしてみたいと思います。今度事業団が表面に出て輸入業務を行なうということになれば、当然、日食協というものの存在を一体どうするかということも、これは解明しなければならぬ時期が直ちにくると思うわけです。これはそのときにわれわれとしてはまた関心を持って論議をしたいと思います。これをあいまいにすることは絶対に許されぬと思うのです。そうじやないですか。
  140. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 参議院におきまして、相当詳しく日食協に対する御説明を申し上げてまいったのでございますが、日食協も法律に基づく公益法人でございますので、私たち、その運営なりあるいは運営にかかわる差益金の積み立て及び指導等については、監督官庁として、責任を持って間違いないように指導してまいりたいというふうに思っております。
  141. 芳賀貢

    芳賀委員 ではあと二点だけ質問をいたします。  その一つは、今後外国から牛肉を買い入れる場合も、従来の実績国だけでは不十分だと思うわけです。将来のことでありますが、たとえば隣国の中共等が供給余力があるというような場合には、これは共産圏であろうと、自由圏であろうと、その相手国の政治政体が違うから肉があっても買わぬというわけにはいかないでしょう。しかし、いまの佐藤内閣というものは、得てしてそういうことをやりたがるわけです。しかし、国民が食生活上どうしても外国から牛肉を輸入してでも食したいという場合に、それじゃ中国が供給力があるということになれば、国民の意思からいっても、中国からは買わぬとか、政経分離だなんというわけにはいかないでしょう。そういう場合に一体どうするわけですか。佐藤総理の考えどおりにやるか、国民生活に重点を置いて、供給できる国があればそこから適正な取引を行なうという考え方か、これはいかがですか。
  142. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 一般的に輸入ソースをできるだけ広げたほうがよいと私は思っております。ただ、中国については、法定疫の常発地域で、過去はそういうところでありましたので、家畜衛生保健の関係で輸入禁止をいたしておるのでございます。ただ、この問題も、一九六二年以来法定疫が発生していないということを中国側が主張いたしておりますので、昨年と本年と二回にわたりまして専門家を派遣しておりまして、実情を調査しております。本年参りました調査員からは文書の報告がきておりますので、これを目下検討中でございまして、近いうちにこまかい諸対策等も考えました上で、基本的な方針をきめたいというふうに考えております。
  143. 芳賀貢

    芳賀委員 その点は、十分検疫関係は必要だと思うわけですが、そこで、中共からもし入れることができるという場合の貿易方式は、現在LT貿易とか友好貿易という二つのルートがあるわけですからして、これはいずれの道であっても、どれがいいとか、どれがいけないという差別はできないわけでしょう。簡単に答えてください。
  144. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 中国との貿易方式は、わが国の立場だけで主張するわけにもまいりませんで、相手国もあることでございますから、これは両国の商社関係で相互によく連絡をとりました上で、合意された形の輸入の形態をとるということにならざるを得ないかと思うのでございます。いずれがいずれというようなことを前もって言うべき問題ではなかろうというふうに思います。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 なかなか明快じゃないですか。むしろあなたが外務大臣ぐらいになったほうが、日中問題は解決すると思うのです。  最後に、もう一問ですが、これは、特に事業団が輸入した牛肉については、中央卸売り市場を通じての売り渡しの方法と、それから農林大臣等が必要と認めた場合の随意契約による特別の売り渡しの方法と、法律上もこれは二様あるわけですね。そこで、卸売り市場を通じての売り渡しについても、これは適正にやってもらわなければならぬと思うのです。むしろ事業団が放出する輸入牛肉が、民間ベースで入る輸入牛肉の消流とか価格というものを指導する、事業団指導性を持ってやるということでなければ、事業団がわずかな利益を追求するために扱うということにしかならぬわけですから、この点は、政府としても、十分運営上事業団指導して、明らかに、市場においても流通過程においても、指導性を発揮できる体制と役割りを果たせるようにしてもらいたいと思います。  もう一つは、特別売却等をする場合、いわゆる畜産物価格安定法に基づく食肉の生産者団体ですね。牛肉をはずせば、主として豚肉ということになるわけですが、とにかく生産者団体というのは、法律でも明らかなとおり、生乳生産者団体にしても、食肉の生産者団体も、これは生産者が直接構成員になっておる農業協同組合です。その協同組合が構成員になっている中央あるいは都道府県の連合会というものが生産者団体ということになっておるわけです。ですから、これらの団体等に対しても、国内における全体の総合的な肉事情とか、肉の生産とか、消流というものを十分考えた場合においては、この法律や政令からはずした牛肉であって、やはり生産者団体等についても、必要の場合には売り渡しができるという道を明らかにして、公明な態度でこれは扱うべきではないかと思うわけであります。  この二点について、農林省としての明確な方針を聞かしてもらいたい。
  146. 桧垣徳太郎

    桧垣政府委員 先生御指摘のとおり、畜産振興事業団は利益追求のために輸入牛肉を扱うわけではございませんので、御趣旨を体しまして、牛肉の消費流通のリーダーシップをとるような態勢で運営されるよう指導いたしたいと思います。  第二点の、農業団体による農村還元の問題につきましては、必要に応じまして随意契約等の方法で売り渡すということを考慮してまいりたいと思っております。
  147. 本名武

    ○本名委員長代理 他に質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  148. 本名武

    ○本名委員長代理 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  149. 本名武

    ○本名委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  150. 本名武

    ○本名委員長代理 この際、東海林稔君外二名から、自由民主党、日本社会党及び民主社会党、三派共同提案にかかる本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。東海林稔君。
  151. 東海林稔

    ○東海林委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表し、ただいま議決となりました畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、本法の施行に当たり左記の事項について万全の措置を講ずべきである。      記  一、肉用牛資源の維持拡大を図るため、肉用牛の改良増殖等の生産対策を積極的に推進するとともに国及び地方公共団体の肉用牛試験研究体制を整備拡充すること。  二、本法の運用に当たつては、国内肉用牛資源の維持拡大を阻害することなく、かつ、牛肉価格を適正な水準に保つことを基本として、牛肉の輸入の数量は必要最小限度にとどめるよう慎重な配慮のもとに行なうこと。  三、輸入牛肉を売り渡す場合、本法に基づく食肉等の生産者団体に対し特別に売渡しができるよう措置すること。  四、民間輸入に係る牛肉により生ずる差益積立金については、事業団の助成業務と適切な関連を保ちつつ、肉用牛の生産振興及び流通合理化等のため計画的かつ効果的に使用するよう指導監督の徹底を期すること。 右決議する。  附帯決議の各項目の内容につきましては、本委員会における質疑等を通じてすでに明らかでございますので、詳細の説明を省略いたします。  何とぞ全員の御同意をお願いいたします。
  152. 本名武

    ○本名委員長代理 以上で趣旨説明は終わりました。  これより採決いたします。  ただいまの東海林稔君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  153. 本名武

    ○本名委員長代理 起立総員。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。坂田農林大臣。
  154. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ただいまの御趣旨を尊重いたしまして、善処いたしたいと存じます。     —————————————
  155. 本名武

    ○本名委員長代理 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 本名武

    ○本名委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  157. 本名武

    ○本名委員長代理 次会は来たる二十七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十三分散会