運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-06-10 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月十日(金曜日)    午前十一時開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 倉成  正君 理事 田口長治郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    金子 岩三君       小枝 一雄君    坂村 吉正君       笹山茂太郎君    田邉 國男君       高見 三郎君    綱島 正興君       中川 一郎君    丹羽 兵助君       野原 正勝君    長谷川四郎君       藤田 義光君    森田重次郎君       卜部 政巳君    江田 三郎君       川俣 清音君    兒玉 末男君       千葉 七郎君    西宮  弘君       森  義視君    湯山  勇君       玉置 一徳君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 坂田 英一君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (園芸局長)  小林 誠一君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         検     事         (民事局参事         官)      香川 保一君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      木戸 四夫君         農林事務官         (林野庁林政部         調査課長)   高須 儼明君         農林事務官         (林野庁林政部         森林組合課長) 片山  充君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整課長) 安福 数夫君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      降矢 敬義君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月十日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として川  俣清音君が議長指名委員に選任された。 同日  委員川俣清音辞任につき、その補欠として山  本幸一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第一四五号)  野菜生産出荷安定法案内閣提出第一三一号)  入会林野等に係る権利関係近代化助長に関  する法律案内閣提出第一一一号)  農林水産業振興に関する件(降ひょうによる  農作物被害状況)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  先般の降ひょうによる農作物被害状況について、政府委員から報告を聴取いたします。大口官房長
  3. 大口駿一

    大口政府委員 去る六月六日、七日の降ひょうによりまする被害状況について、現在までわかっておりまする中間報告をいたします。  お手元に刷りものをお配りいたしておりますが、ひょうが降りましたのは、六月の七日の十七時から二十一時ころまでの間に、関東地方に激しい雷雨を伴った大粒の降ひょうがございまして、各地の農作物被害が生じたのでございます。  なお、その前日の六月の六日に、青森県、岐阜県、鳥取県等にやはり降ひょうがあったという報告がございますので、結局降ひょうによる被害はその二日間あったわけでございます。  そこで、お手元にお配りをいたしております書きものに被害金額を記載いたしてございますが、これはとりあえず被害があった県庁から報告を求めました被害金額でございまして、現在農林省といたしましては、これらの諸県について、統計調査部を通じまして実被害金額調査を急いでおるわけでございまして、いずれその最終調査がまとまり次第、今後の対策を至急講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それから、先ほど冒頭に申し上げましたように、お手元の紙には茨城、栃木、群馬、埼玉、青森鳥取の諸県だけしか記載されておりませんが、降ひょうがありました県としては、さらにそのほかに岐阜、福島、千葉東京等がございますが、これらの諸県からまだ報告がまいっておりませんので、この印刷物には含ませなかった次第でございます。  以上、簡単でございますが、とりあえず中間的な御報告を申し上げます。      ————◇—————
  4. 中川俊思

    中川委員長 次に、農業災害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案について、政府委員から補足説明を聴取いたします。森本農林経済局長
  5. 森本修

    森本政府委員 農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。  第一に、引き受け方式改善について申し上げます。  現行家畜共済制度は、立法当時一戸一頭飼養が支配的であったという事情により、家畜一頭ごと加入の諾否を決定するいわゆる一頭引き受け方式がとられております。しかしながら、その後乳牛中心として多頭飼養化が進むに伴い、主として農家掛け金負担関係から多頭飼養者ほど飼養家畜のうち一部のみを加入させる傾向が強く、事故率、ひいては掛け金率にも影響を及ぼすという好ましくない現象を見るに至っております。  かかる現状にかんがみ、改正法案におきましては、種雄牛種雄馬以外の家畜については、家畜種類ごとに一農業者飼養するすべての家畜が一体として共済に付されることとなる包括共済関係、いわゆる農家単位引き受け方式を創設し、原則的にこの方式によることといたしました。他方、農家単位加入する者に対しては、事故選択制新設及び国庫負担の拡充の方途を講ずることといたしておりますので、現行制度より容易に全頭加入が可能となるのみならず、逆選択防止による将来の事故率、ひいては掛け金率の低下が期待される次第であります。  なお、包括共済関係においてその農業者飼養する家畜に異動が生じた場合には、新たに飼養せられることとなった家畜も当然に共済に付せられることとなる旨を規定いたしますとともに、死廃事故の発生した際のてん補率影響を生じないようその者が共済金額の増額を申し出ることもできることとしたわけであります。  第二に、共済事故選択制新設について申し上げます。  現行制度は、死廃事故及び病傷事故について事故選択を認めないいわゆる死廃病傷一元化共済となっております。これは、疾病傷害共済普及徹底とこれによる家畜診療普遍化を目途として昭和三十年度以来実施せられたものであります。  しかしながら、一方、この間、特に近年におきましては、わが国畜産事情の変貌は地域的にも階層的にもまことに著しく、一部には飼養管理技術の向上、飼料条件等外部条件変化に基づく経営方式地域的分化等により死廃病傷事故のすべてについて給付を必要としない者が見られるに至っております。これらの者は、自己の必要としない共済事故に対応する部分掛け金まで納めなければならないため、必然的に掛け金割り高と感じ、制度から遠ざかる結果となり、多頭飼養農家の未加入ないし一部加入の要因となっております。  かかる現状にかんがみ、改正法案におきましては、客観的に見て死廃病傷すべての事故につき給付を必要としないと認められる者は、それぞれ自己の必要に見合った給付選択できるように措置いたしました。選択し得る事故種類につきましては、農家需要に応じ、病傷事故の全部を除くもの、繁殖障害関係廃用及び病傷事故を除くものあるいは病傷事故の全部及び繁殖障害関係廃用事故を除くものの三種類のうち定款等で定めたものとする予定であります。また、事故選択がさきに述べました趣旨に沿って行なわれるよう、事故選択は、飼養管理技術水準の高い者及び主として自給飼料以外の飼料により乳牛飼養する、いわゆる都市近郊搾乳専業型の経営を営む者に限り認めることとし、それぞれの要件については政令規定することといたしました。  第三に、掛け金国庫負担方式改善について申し上げます。  現行制度におきましては、掛け金死亡廃用に対応する部分の二分の一だけが国庫負担対象とされ、病傷に対応する部分国庫負担対象外とされておりましたので、掛け金全体としてみれば国庫負担は二割強となっております。これは農家零細飼養が支配的であった時代においては、農家にとって死廃事故が全損として重要な意味を持っていたこと、病傷については事故率が著しく不安定であったこと等の理由に基づくものでありますが、多頭飼養者にとっては死廃が全損であり病傷が分損であるという考え方は経営実態にそぐわないと考えられますので、包括加入方式の創設、病傷給付方式合理化等制度的措置を講じ、病傷危険率の安定をはかるとともに、病傷部分死廃部分を通じて国庫負担対象とすることといたしました。  国庫負担の割合につきましては、現行国庫負担割合を勘案して三分の一を下限とし、特に牛については多頭飼養化の進行と多頭飼養者の一部加入という実態に対処して、その加入を促進するという見地から飼養頭数区分に応じ五分の二、二分の一と国庫負担を逓増せしめることといたしました。この頭数区分は、畜産事情の急速な変化に弾力的に対応させるため政令に譲ることといたし、農家負担力加入実績等を勘案して定める所存でありますが、現在のところ、乳牛につきまして三頭から五頭まで五分の二、六頭から二十九頭まで二分の一とすることを予定しております。  なお、主として自給飼料以外の飼料により乳牛飼養する者につきましては、その経営実態等から見て国庫負担割合を一律十分の三といたしました。また、飼養管理技術水準の高いという理由によって事故選択の適格が与えられた者につきましては、その者がみずからの判断によって必要のないと認めた事故を除外することによって相当大幅な掛け金負担の軽減が期待されることでもあり、国庫負担割合は十分の三とすることといたしました。  なお、肉用牛につきましては、基本的には右に述べましたような原則を適用することといたしますが、現在その多頭化が進行していないこと、及び肉用牛飼養の低収益性等にかんがみ、肉用牛の多頭化につき乳牛と同様な実態が成熟するまで当分の間、事故選択を行なった者を除き、一律に五分の二の国庫負担を行なうことといたしました。  第四に、異常事故に対する政府の再保険責任強化について申し上げます。  現行制度におきましては、政府連合会とは農作物共済および蚕繭共済の場合と異なり歩合により責任を分担しております。これは、家畜損害農作物蚕繭のそれと異なり年次変動が少ないという両者の性格の差異に基づくものと考えられます。しかしながら、伝染病風水害等により特定地域集中的に発生いたします災害につきましては、歩合保険の仕組みによりますと連合会等負担力をこえた不足が発生し、しかも往々これが固定化する結果となります。よって、伝染病風水害等異常事故による損害につきましては全額政府の再保険に付することとし事業安定的運営が確保できるよう措置するため、保険料及び再保険料保険金及び再保険金額等につき所要改正を加えることといたしました。  第五に、家畜共済損害防止事業強化について申し上げます。  わが国畜産経営は、その多頭化の過程において一般に事故多発傾向が見られるのみならず、農作物蚕繭と比較して各経営間の技術水準の格差が著しく、ために適期診療がおくれ事故が拡大する場合が多いかに見受けられます。一方、農業共済団体等はその組合員等に対し自己費用負担において損害防止事業を指示することができるよう現行法規定されておりますが、主として経営収支のいかんによってその実施状況に格差を生じているのが現状であります。  かかる現状にかんがみ、繁殖障害等農家の立場からも事業収支の立場からも重要と認められる特定疾病事故につき、予防診療計画的に実施することを内容とする損防事業を全国統一的な基準に基づき強力に推進するため、国が農業共済組合連合会に対し財政的措置を講ずることとし、その法的根拠を明定することといたしました。この損害防止事業農林大臣の承認に基づき農業共済組合連合会の指示によって行なうものとし、その実務は農業共済団体家畜診療所開業獣医師双方に担当せしめることを予定しております。  なお、本事業は、家畜保健衛生行政部分的に重複する面も生じてまいるおそれなしといたしませんので、国、都道府県それぞれの段階におきまして保健衛生行政主管部局と緊密な連絡を保ちつつ、その協力のもとに効率的に事業実施いたしてまいる所存であります。  本事業強化によって、事業収支改善が期待されることはもとより、早期診療による事故拡大防止によって農家の受ける利益も大きいものと予想されます。  第六に、病傷給付方式合理化について申し上げます。  現行制度におきましては家畜ごと共済金額に応じて一事故ごと限度が課せられておりますが、このため農家にとって特に重要と認められ、一般的に長期化する傾向のある繁殖障害等病傷事故につき診療給付が徹底せず、かつ、家畜ごと限度が課せられるため、特に多頭飼養者が全頭加入していた場合不合理と感ずる場合が多く見られました。  かかる現状にかんがみ、これを家畜種類ごと農家単位に年間妥当な水準に設定するよう改善いたしました。なお、との限度現行料率への影響農家診療費分布等を勘案し、料率に急激な変更を与えることなく、相当部分農家自己負担なしに診療を受けられるような水準に設定する方針であります。  この結果、重点的な病傷につき手厚い給付が受けられることとなりますが、特に多頭飼養者については限度農家飼養する家畜全体を通じて利用できるよう設定されることとなりますので、その効果が大きいものと考えられます。  その他、最近の急速な畜産事情変化を直ちに料率に反映させるため、料率改訂期間を四年から三年に短縮すること、共済金早期支払いを促進するため農作物共済および蚕繭共済を除き損害評価会事前審査義務を排除すること、多頭飼養者包括加入を容易ならしめるため掛け金分納の道を開くこと等のため所要措置を講ずることといたしました。また、利用状況が著しく低く、制度を設けておく意味の乏しいと考えられる生産共済は廃止するとともに同様な趣旨において山羊、めん羊共済目的から除外することといたしました。  最後に、現行加入奨励金は、国庫負担方式の変更を機会に廃止することといたしました。  以上今回の改正は、制度の全般にわたりますため、相当の準備期間を置くことが必要と考えられましたので、四十二年四月一日から施行することといたしました。  簡単でございますが、以上をもちまして本法律案についての補足説明を終わります。
  6. 中川俊思

    中川委員長 以上で補足説明は終わりました。      ————◇—————
  7. 中川俊思

    中川委員長 野菜生産出荷安定法案議題といたします。  質疑申し出もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  8. 中川俊思

    中川委員長 これより本案討論に付するのでありますが、別に討論申し出もありませんので直ちに採決いたします。  野菜生産出荷安定法案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  9. 中川俊思

    中川委員長 起立多数。よって、本案は原案どおり可決いたしました。     —————————————
  10. 中川俊思

    中川委員長 この際、倉成正君外二名から、自由民主党日本社会党及び民主社会党の三派共同提案にかかる本案附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  趣旨説明を求めます。兒玉末男君。
  11. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、ただいま議決されました野菜生産出荷安定法案に対し、自由民主党日本社会党民主社会党党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議提出いたします。  案文を朗読いたします。    野菜生産出荷安定法案に対する附帯決議   政府は、本法実施にあたり特に次の諸事項実現を期すべきである。  一、野菜指定産地指定生産出荷近代化計画の樹立と実施については、系統農業協同組合の活用をはかるとともに、十分その意見を徴すること。また、本法による「指定野菜」の対象に、六品目に次いで消費量の多いもの及び将来需要の増加が予想されるものを加えること。  二、本法目的達成のための重要な事項である生産出荷近代化計画効率的実施をはかるため、構造改善事業指定を行なう等積極的に措置すること。  三、流通の合理化中間経費の節減をはかる観点から、大口需要者との直接取引の場合においても、数量、価格の確認が行なわれた場合は、価格補てん事業対象とすること。  四、野菜特殊性を考慮し、計画的な近代化推進事業に基づき生産出荷を行ない、過剰が生じた場合は、適正な処理に努め補償措置についても検討すること。  五、生産出荷計画的に行ない、価格の安定をはかるために、生産出荷団体相互間の生産出荷調整が十分に行なわれるよう適切な措置を講ずること。  六、生食用以外に、加工需要の多い野菜価格と供給の安定をはかるために所要措置を講ずること。   右決議する。  以上が決議案文でございますが、これを出しました理由は、この法案の審議を通じまして、特に法律条項の中からあるいは質疑応答の中から、今後の野菜の出荷安定と同時に、農家経営の安定あるいは消費者保護、こういう諸般の情勢から勘案いたしまして、以上申し上げました六項目は、この法律実施にあたりまして、特に政府当局責任を持ってこれの実現のために御努力を願いたい。  以上が提案趣旨でございますが、申し上げました各項につきまして、各位の御賛同を得られますようお願い申し上げまして、趣旨説明にかえる次第であります。(拍手)
  12. 中川俊思

    中川委員長 おはかりいたします。  ただいまの倉成正君外二名提出動議賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  13. 中川俊思

    中川委員長 起立多数。よって、本案附帯決議を付するに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、政府所信を求めます。坂田農林大臣
  14. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨に沿って十分検討の上、善処いたしたいと思います。     —————————————
  15. 中川俊思

    中川委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 中川俊思

    中川委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  17. 中川俊思

    中川委員長 入会林野等に係る権利関係近代化助長に関する法律案議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許可いたします。森義視君。
  18. 森義視

    ○森(義)委員 先日、入り会い林野近代化の問題について、二班に分かれて現地調査してまいりまして、今日までいろいろと御審議いただいている問題点のほかに、多くの新しい現地の要請を承ってまいりまして、この際、そういう問題について、政府所信をただしておきたい点が数点ございますので、前回の質問に引き続いて、特に現地問題点になった点を中心にしながらお尋ねいたしたいと思います。  まず最初に、今度の入り会い林野整備につきまして、山村僻地の実情から申し上げまして、古い封建的ないろいろな権利関係があって、ややもすると、弱い階層が犠牲をしいられるおそれが多分にあるわけでございますが、特に今度の法案の中で、旧慣使用林野については、これの整備にあたって、単に旧慣使用権利者意見を聞くというふうに法文上では規定されているわけでございますが、この点については、実際の取り扱いにおいては、先般の質問の中で、入り会い権と同じように全員同意を得るような、そういう措置をするというふうな御回答をいただいておるわけでございますが、この点について、さらにきょうは大臣が御出席でございますので、大臣のほうから、旧慣使用林野整備にあたっても、入り会い林野整備と同じように、全員同意を得て実際の整備に当たる、こういうふうな明確な御答弁をいただきたいものだと思います。
  19. 坂田英一

    坂田国務大臣 旧慣使用林野整備につきましては、特に旧慣使用権者の意思を尊重し、これを十分に計画に反映させるために、それらの者の意見を聞かなければならないことといたしておりますが、さらにその実施にあたりましては、入り会い林野整備における全員同意方式に応じて、すべての旧慣使用権者から意見を聴取し、これを十分尊重して整備を行なわせるよう指導する考えでございます。
  20. 森義視

    ○森(義)委員 たいへん明確な答弁をいただきましたので、その答弁を了解いたしたいと思います。  次に、第二の問題でございますが、実は入り会い林野の場合においては、整理されたあと個人集中することを排除する規定が法第六条の二項三号に明確に規定されているわけでございますが、旧慣使用林野の場合においてもそういうおそれが多分にあると思うわけです。ところが、旧慣使用林野整備にあたりましては、特定個人権利集中することを排除する規定が明確に出ておらないわけですが、その点について、旧慣使用林野の場合においても権利集中を排除する規定を設ける必要があると考えるわけでございますが、その点についても、大臣から所信のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  21. 坂田英一

    坂田国務大臣 整備計画の認可にあたりましては、一部の者に対して権利集中その他不当な利益をもたらすものでないことが条件となっておるが、この条件に準じまして、集中等防止について十分な配慮がなされるのでありますが、さらに権利関係近代化後にそのような事態の生ずることがないよう、極力生産森林組合等による共同経営に移行することを主眼として指導、助成につとめてまいる考えでございます。
  22. 森義視

    ○森(義)委員 生産森林組合に移行することによって権利集中化を防ぐ、こういう方針は、今日までの質疑の中でも明らかにされておるところでありますが、生産森林組合現状は、全国的に見まして、必ずしも所期の成果をあげておらないわけです。したがって、この際、入り会い林整備して協業化の方向へ指導する場合において、生産森林組合が今日までどういう点に問題点があり、その点をこの機会にどういうふうに改め、指導するか、そういう方針を明確に出していただきたいと思います。
  23. 坂田英一

    坂田国務大臣 重要な点でございます。生産森林組合につきましては、現在林業構造改善事業における機械導入に対する補助農林漁業金融公庫からの長期低利資金融資法人税についての特例措置等を講じておりますが、さらに生産森林組合が健全なる協業体として発展するため、経営計画を編成して、保続的な森林経営を行なうことができますよう、技術的及び資金的な援助を強化していきたいと存じます。
  24. 森義視

    ○森(義)委員 さらに生産森林組合の今日の段階における問題点として、いま大臣から御答弁がありましたのは、生産森林組合に対するこれからの補助融資の問題について格段の配慮をしていきたい、こういう答弁でございますが、これは長官にお尋ねしたいわけですが、税制上の問題について、これは今日まで現地ではいろいろと問題点があったわけです。その点について林野庁からの指導が一貫してないように思うわけですが、この点について今後どういう配慮をするか、その点についての所信をお聞かせ願いたいと思います。
  25. 田中重五

    田中(重)政府委員 生産森林組合税制上の問題につきましては、すでに生産森林組合についての法人税の問題であるとか、あるいは従事分量配当についての問題であるとか、いろいろ論議がございましたが、そこで、現在の段階では、この山林所得の場合に発生する所得についての優遇措置につきましては、先生御承知のとおり、一律二三%ということになっておるのをこの実態に合わせて改善することには、税体系の面でなかなかむずかしい問題があると思います。しかしながら、先般も大蔵省からの御答弁にもございましたが、十分に生産森林組合特殊性考えながら、その発展がはかれるような税制上の改善をぜひとも考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  26. 森義視

    ○森(義)委員 前回の大蔵省の答弁の中で、いま長官がお話しになりましたように、従事分量配分によれば、三十万円まで税の対象から所得が免除される、そういう形になれば、実際問題として法人税の二三%基礎控除を加えますと、事実上税金の問題については、個人経営の分離課税の五分五乗方式とあまり変わらない、こういう結果になるようにあとからの説明では承ったわけでございますが、計算しますと実際にそういう形になりますか。
  27. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点は森林組合課長から申し上げます。
  28. 片山充

    ○片山説明員 生産組合に対します課税は、現在は先ほど長官答弁にもございましたように、従事分量配当という制度がございます。従事分量配当という制度を利用いたしますと、従事分量配当いたしました金額につきましては、その生産法人の、生産組合の所得にはならないわけでございます。その面への課税はありませんで、それと反対に、従事分量配当を受けました組合員につきましては、個人で山を持っております場合と同じように分離、五分五乗が適用されるわけでございます。大体先生のおっしゃったとおりになると思います。
  29. 森義視

    ○森(義)委員 これは入り会い林野整備後のいわゆる農林業上の利用の増進という方針の中で、協業化の方向を打ち出しておられるわけでありますが、入り会い林野整備するそもそもの根本的な考え方は、いわゆる農林業上の利用が、非常に粗放な形態のままで放置されて阻害されておる、これをよくするんだ、こういうことでこの整備考えられて、手続法としてこの法律提案をされておるわけです。したがって、この法律による整備後のいろいろな、いわゆる基盤整備中心とした農林業上の利用を増進するような政府の抜本的な施策について、いま農林大臣から所見を承ったわけでございますが、それではこの法案が通りまして、実際問題としてそういう入り会い林野整備後の運用について、これは農林業上の利用を増進するための融資なり、あるいは補助なり、あるいは林道の優先採択なり、そういう問題についてどういうふうな予算的な措置考えておられるのか。口ではそういう問題について格段の配慮をしたいという御答弁でございましたけれども、今後どういうふうに——まず初年度の予算として、この法案が通って整備を進行していく中で、どのくらいの規模の補助融資を予算的に考えておられるのか、その点を大臣からお聞かせ願いたい。
  30. 坂田英一

    坂田国務大臣 入り会い林野等の権利関係近代化においては、言うまでもなく、これは造林事業あるいは林業構造改善事業をはじめ、草地改良事業あるいは開拓パイロット事業等も積極的に進めてまいり、入り会い林野等の高度利用をはかってまいる所存であることは申すまでもございません。このための造林補助改善、林道事業の優先採択のほか、農林漁業金融公庫による長期低利資金融資の円滑化等についても十分配慮してまいる考えでございますが、予算は、現在これについては目下作業中でございますが、積極的に要求したいと考えております。
  31. 森義視

    ○森(義)委員 入り会い林野整備につきましては、整備後のいま申し上げました事業が非常に重要であると同時に、その点についてはまたこれから積極的に前向きの姿勢で予算的措置考えていきたい、こういうことで、私たちは、整備後の大臣のいまの確約がどういうふうに実現されるか、注目していきたい、このように思います。  さらに、入り会い林野整備にあたって、実は法律では事務費の二分の一の補助、こういうふうになっておるわけでございますが、現地へ参りますと、測量なりあるいは境界の区分なり、そういう問題についてたくさんな事業費がかかるわけですが、その点について、場所によって違いますけれども、林野庁のほうでは一ヘクタール当たりの事業費は大体どのくらいに考えておられるのか、この点について、長官からでけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  32. 田中重五

    田中(重)政府委員 一ヘクタールの単価につきましては、いますぐ資料を申し上げたいと思いますが、全額で二千二百万円余りを予定いたしております。
  33. 森義視

    ○森(義)委員 千百七十事業体に対して二千万円、これだけの補助で、実際問題として入り会い林野整備の作業がスムーズに進む、こういうふうにお考えですか。
  34. 高須儼明

    ○高須説明員 ただいま長官からお答え申し上げましたことについて、若干補足させていただきたいと思います。  ただいま申し上げました二千二百万と申しますのは、昭和四十一年度、今年度におきます規模でございまして、四十二年度については、まだ現在詳細な計算をいたしておる段階でございまして、予算要求の細目につきましては、目下検討中でございますので、まだ内部におきましても結論を得ておりませんので、御了承いただきたいと思うわけでございます。
  35. 森義視

    ○森(義)委員 高知県の馬路村の千ヘクタールに対する入り会い林整備事業費として、高知県のコンサルタントの御意見を聞きますと、約二億かかると言っているわけです。これは資料要求をしてまいりましたけれども、それはちょっと過大な見積もりかもわかりませんけれども、要するに、千ヘクタールについて二億近い事業費がかかる、こういうことになりますと、いま四十一年度の予算で二千万円で、国が全体の約二分の一、千百七十事業体の整備に対する事業費の補助として考えておるのは、全く数字は月とスッポンのような大きな違いがあるわけだ。実態をつかまずして事務費の二分の一の補助、これだけでは実際この事業がスムーズに進まないのじゃないか、私はこう思うわけです。したがって、この点については、さらに十分な予算を組んで、少なくとも山村僻地入り会い林野整備作業について、地元に大きな負担をかけないような格段の配慮を願いたいと思うわけでございますが、ひとつ大臣からその点御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  36. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの森委員の御質問は、私も同感でございまして、御趣旨をよく検討してそういう方向でまいりたい、かように思います。
  37. 森義視

    ○森(義)委員 さらに、事務費の二分の一の内訳につきましては、いただきました林野庁の資料、「入会林野等に係る権利関係近代化助長に関する法律案参考資料」の例の指導方針案の中の二十三ページに、こういう経費を補助するのだということが書いてあるわけです。この補助の内容を拾ってみますと、一番金がかかるのは調査測量に要する経費だと思うわけです。これは事務費として補助されるのですか。この中では補助対象になっていますか。
  38. 高須儼明

    ○高須説明員 ただいま御質問のございました調査測量に要する経費につきましては、大体一ヘクタール四千円くらいの事業費に相なるかと計算いたしておるわけでございます。構造改善地区におきましてはその二分の一、他の一般地域におきましてはその三分の一を現在補助することを考えて、四十一年度予算においては考えておるわけでございます。
  39. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、四十一年度の予算で二千万円のうち、どれだけが調査測量費の分の予算ですか。
  40. 高須儼明

    ○高須説明員 現在の二千二百万のうち、市町村にまいります補助金は約その半数の一千万でございますが、その大部分を占めておりますのは調査測量費でございます。それからなお、先ほど総額二千二百万と申しましたが、これは入り会い林野整備促進事業のために特に設けられた予算でございまして、そのほかにも、林業構造改善事業の中の入り会い林野整備事業ということで、一つのメニューとして林業構造改善事業の中に入っておるわけでございます。これは現地で林道事業とかそのほかの事業と組み合わせて出てまいります関係上、実績で申し上げたいと思うわけでございますが、第一年度、第二年度の状況を見ましても、計画はほぼ三万ヘクタールずつ、合計六万ヘクタール程度になっておるわけでございます。したがいまして、それに所要といたします経費が各年度ごとそれぞれ平年度ベースになってまいりますと、かなりの金額になってくるのではないかと思うわけでございます。その金額と先ほど申しました二千二百万と合計いたしますと、平年度ベースになってまいりますと、おそらく一億に近いような金になってくるのではないか。現在の積算方法だけでもその程度になってくるのではなかろうかと推定いたしておりますが、何ぶんにも現実に事業がまだ動き始めておりませんので、実際の状況を見まして逐次検討いたしたい、かように存じておるわけでございます。
  41. 森義視

    ○森(義)委員 林業構造改善事業計画の中に現在の入り会い集団がどの程度含まれていますか。
  42. 高須儼明

    ○高須説明員 林業構造改善事業の中とそれから一般地域の割り振りにつきましては、いまだ抽象的な計算方法でございますが、大体全国に対象となりますような事業体数が二万三千から四千ぐらいの程度出てくるのではなかろうか。全事業体を申しますと、全国に約十一万事業体ぐらいございますが、非常に規模が零細なものもございますので、五ヘクタール以上をとってまいりますと、約二万四千くらいということになってまいります。予算の積算上ではこれを十年間に均等に分割いたしまして、そうして年間二千三百から四百くらいが対象になってくる。そのうちで半分と申しますよりももう少し多く、約六〇%程度のものが林業構造改善地域、その残が一般地域になるのではなかろうかという前提で、予算を積算いたしまして、構造改善事業の分は構造改善事業の予算の中に、一般地域の分は一般予算として計上いたしておるわけでございます。
  43. 森義視

    ○森(義)委員 先ほどの説明で、あなたは、入り会い林野整備の予算が少ない、そういうことで、林業構造改善事業計画の中の予算を組んで約一億ほど充当できるのだ、こういう説明がいまあったわけです。そうすると、入り会い林野の中でどれだけの部面が、今度のこの一億の予算の中で、林業構造改善事業計画の中に含まれておるのか、こういう質問を私はしておるわけです。だから、入り会い林野の中で、今度の構造改善事業計画の中にこれだけは含まれておる、したがって、それと入り会い林野整備の特別な予算と合わせて一億になるのだ、こういう説明だから、その内容について聞かしてくれ、こういう質問をしているわけです。
  44. 高須儼明

    ○高須説明員 先ほど一億と申し上げましたのは、将来平年度ベースになった場合における金額でございまして、現在まで林業構造改善事業の中には、具体的な計画が進んでおりませんので、現在まで含まれておるものはまだないわけでございます。
  45. 森義視

    ○森(義)委員 そうだと思うんですよ。現在入り会い林野整備の予算としては、正直いって、この二千万だけだと思うのです。だから、これでは実際問題として、先ほど申しましたように、地元に大きな負担をかけないと整備が促進されない。そういうことで、大臣から小さい声でぼそぼそと答弁されましたので、聞き取りにくかったわけでありますが、おそらく大臣は実情に応じた経費で地元に負担をかけないように努力する、そういう答弁であったというふうに了解しておるのでございますが、大臣、そうでございますね。
  46. 坂田英一

    坂田国務大臣 御説のとおり努力いたしたいと存じております。
  47. 森義視

    ○森(義)委員 大臣の時間の都合もございますので、次に、入り会い林野から今日まで上がっておる収益のうちの大体七〇%近くが部落費やあるいは公共事業費に使われておる、こういう資料が林野庁から出された資料の中にあるわけですが、これが整備されますと、部落費や公共事業費というものは、そういう入り会い林野からの収益でまかなっていただけに、なくなるわけですね。そういうものに対して、国のほうであるいは地方自治体のほうで、何らかの見返りの資金を準備する必要があるのではないか。と申しますのは、現に山村僻地のそういう地域における部落というのは非常に貧しいわけです。たまたま入り会い林野からの収益によってそういうものがまかなわれておったが、なくなった、こういうことになりますと、ますます貧困の度合いが深まっていく。これは大蔵大臣が本会議場における私の質問に対する答弁の中で、それぞれ私権化されていくと、収益がふえて負担力が大きくなっていくので、その心配はない、こういう答弁でございましたけれども、私権化されたあと、それじゃ直ちにそういう負担に耐えられるように個人の収益がふえていくか、事実問題としては、そういう形に私はならないと思う。だから、入り会い林野の収益におんぶされておったところの部落費や部落の公共事業費というものは、たちどころにその年から困ってくる。したがって、ほんとうにそれが収益を上げて個人の負担能力ができるような段階までの間、最小限度何らかの措置をする必要がある、こういうふうに考えるわけでございますが、その点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  48. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、かねてからお答え申し上げておりますように、この入り会い権近代化をされまして、そうしてそれぞれの創意なり意欲によって土地利用の高度化がはかられる、その結果といたしまして、固定資産税あるいは所得税その他の税制上の改善がなされることによって、市町村財政の改善に資するというような考え方でございますけれども、しかしまた一方、大蔵大臣が本会議でお答えいたしましたように、山村僻地等の地帯の財政上の優遇措置については、でき得る限り善処したいというふうにも答弁をいたしておりますので、その点は関係各省とでき得る限り協議の上、農林省といたしましても、ただいま先生の御指摘のようなことにならないように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  49. 森義視

    ○森(義)委員 従来まで入り会い林野から上がっておる年間の収益は、概算してどのくらいですか。
  50. 高須儼明

    ○高須説明員 入り会い林野から収益が上がっておりますものと申しますのは、全体のごく一部の入り会い林野でございまして、したがいまして、全般のパーセントから見ますれば、きわめて少ないものでございます。したがいまして、平均値を出しましても、現実の姿がなかなかわからないと思うわけでございます。中にはかなり、年間一千万も二千万も収益を上げておるようなものもございますが、それは全国の入り会い林野のうちのごく一部のものでございまして、大部分はほとんど収益が皆無である、このように申してもよろしいかと思うわけでございます。残念ながら、入り会い林野に関します調査というものは、一九六〇年センサス以外のものはあまりないわけでございまして、確実にお答えできるような資料を私ども残念ながら持ち合わせていないわけでございます。——若干追加させていただきます。これは実態的な一九六〇年センサスだけのことで申し上げますと、最近一カ年の総収入は、全官公共有林とセンサスでは申しておりますが、入り会い林野では八十四億円、総面積に対します単純な一ヘクタール当たりでは五千円、それから一事業当たりでは八万円、かような計数になっておるわけでございます。
  51. 森義視

    ○森(義)委員 その全国のトータルの八十四億という一九六〇年のセンサスの入り会い林野の収益の中には、実際の木材を切って橋をつくったとか学校を建てたとか、そういうものを金に換算しておりますか。
  52. 高須儼明

    ○高須説明員 この入り会い林野からの収入として具体的に出てまいっておりますのは、ほぼ主として販売されたものでございまして、大体販売が八割くらいの程度になっておると思います。そのほか、現物で若干薪炭、原木等の配分をしたもの等も含まれているかとも思われます。
  53. 森義視

    ○森(義)委員 いわゆる八割くらいが大体八十四億に当たる、こういうことですが、これはたいへんあいまいな答弁だと思うのです。現実に現物で、たとえば橋をつくったり、公会堂を建てたり、学校を建てたり、修理をしたり、そういうときに出しておる木材というのは相当多額にのぼると思うわけです。したがって、現金収入だけで大体八十四億、そしてあとの現物によるところの、公共費なりあるいは部落費等のそういう問題についての出資額は、実際つかめないのじゃないか。そうすると、大臣、これは現金収入だけで八十四億、それに現物でかなり多くの金が出されておる。それによって、入り会い林野を持っておる山村の実際の公共的ないろいろな事業がまかなわれておる、こういうことになるわけです。それが今度の整備によって、現金はおろか、現物も全部出てこない、こういうことになりますと、これはかなり地域によっては打撃をこうむる、こういうふうに私は考えるわけなんです。したがって、そういう問題については、実情に応じて——入り会い林野を持っておるものは、この中にはかなり裕福な部落もありますけれども、入り会い林がなくなって個人になってしまうと、なかなか個人からそれを納めることはできない。こういうことになりますと、たいへん問題点がある地域もあると思いますので、そういう点については、国なりあるいは地方公共団体なりで、適当な資金的な援助なり補助なりをする、こういう態度を明確にしておいていただきたい、こういうふうに思うのです。
  54. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い林野の総収入は、ただいま調査課長が申しましたように、調査によれば、総額で八十四億円程度ということになっておりますが、一方、先生のお話しの公共費に使われているというような場合は、その入り会い林野が団体直轄利用の場合であるかと存じます。それ以外の入り会い林野におきましては、必ずしも公共費的に使用されるような仕組みになっていないという意味におきましては、いま先生のお話のございました、この全部が公共的使途に向けられているのだというふうにきめることには問題があろうか、こう思うわけでございます。いずれにいたしましても、この団体直轄利用によって経営され、そうしてそれからあがるところの収益が公共的に使われてきたという事態が少なくない、過去のそのような経費の使途について、財源について問題があるということは、確かにお説のとおりでございますけれども、先ほどもお答えを申し上げましたような考え方で、その不利をこうむらないような努力を政府としてはいたしてまいりたい、こういう考えでございます。
  55. 森義視

    ○森(義)委員 いまの長官答弁ですと、いわゆるとめ山地域の問題として、とめ山地域においてはそういう公共費や部落費は出されておる、割り山地域においてはそういう部落費や公共費に使われておらない。そうしますと、全入り会い林野の収益の中で大体七〇%近い——政府の資料によると六一・九%ですか、これだけ公共費とか部落費に使われておるという数字は、とめ山地域の問題だけをトータルしたのですか。そういう考え方ですか。私はそうじゃないと思うのです。割り山地域においても、そういう部落の公共費としてのとめ山地域を一定地域どの地域でも確保しておるわけです。分割形態をとっておりましても、これはいわゆる割り山から入る収益の一部は部落費として使うのだ、こういうふうにどこの地域でも確保しているはずです。それをトータルしたものの収益の中の七〇%近くが部落費や公共費に使われており、こういうふうな数字になってあらわれるということを考えるわけですが、その点は長官答弁によると、いわゆる割り山地域の収益というものは、部落費や公共費に使われておらないから、八十四億の中の収益の大部分は部落費に使われておらない、こういう言い方ですが、その点いかがですか。
  56. 高須儼明

    ○高須説明員 ただいま先生がおっしゃいました、部落、公共事業等に使用いたしております金額につきましては、残念ながら資料がないわけでございますが、この六一・九%という比率は、事業体の数のことでございまして、十一万事業体の中で、大体このような事業収入があがっているというふうに見られるのが二万八千六百二事業体でございまして、先ほど申し上げました五町歩以上の事業体の数よりやや上回っているかと思うわけでございます。したがいまして、主として部落、公共事業費に使っている事業体が、その二万八千のうちの六一・九%で、約一万七千七百になっているわけでございます。この一万七千七百は、ほとんど大部分がとめ山ではなかろうかというふうに考えるわけであります。そのほかに、造林事業にしようとか、町村権利者への分配といったようなものも、収益をあげているのは大体とめ山が中心になるかと思います。割り山の場合には、各人がそれぞれ収益いたしておりますので、そのつどそのつどの収益というものは、素材販売とか立木処分をやったとかいう具体的なものでないと、なかなか統計的にもあるいは把握しておらないかとも思うわけでございます。大部分はとめ山と考えていただいていいと思います。
  57. 森義視

    ○森(義)委員 時間の関係もありますので、その問題を追究しておっても限りがないわけでありますが、ちょっとその点について御要望を申し上げておきたいわけであります。  整備計画作成の過程で、それが整備されることによって、従来その部落が入り会い林野から得ておった収益がどのくらい収益が得られなくなったか、その数字を出してもらいたいのです。その中で、部落が負担する分と、公共事業費として町村が負担する分、こういうものが出ると思うのであります。それについては、国なり地方公共団体がその財源について配慮する、こういう形に整備計画の中でそれを明らかにしてもらえば、大体どのくらいの費用が必要だということが出てくると思うのです。そういう問題を整備計画の中でぜひ出していただくように御要望を申し上げ、さらに、大臣が先ほどおっしゃいましたように、入り会い林野の収益がなくなった部落に対して、特にこの地域に対してはそれぞれ国なり地方公共団体で考える、こういう点の御答弁をいただきましたので、それを確認しておきたい、こう思います。
  58. 高須儼明

    ○高須説明員 整備計画の付属書類というものがございまして、農林省令等でその詳細をきめてまいることになっておるわけでございますが、そのような場合に、従来の入り会い山の歴史と申しますか、過去の経緯と申しますか、そういったようなものも把握してまいりたいと思っております。
  59. 森義視

    ○森(義)委員 さらに、大臣の先ほどの答弁の中で、今度整備される生産森林組合には、造林なり林道なり、そういういろいろな総合的な施策を積極的に前向きの姿勢で考えていきたい、こういう御答弁をいただいたわけでございますが、大臣も御承知のように、最近の民有林の造林というものは、木材価格の低迷あるいは外材の輸入、そういういろいろなことに影響を受けて、造林が非常におくれている。こういう状態で停滞しておるわけでございますが、そういう中で、特に今度の入り会い林整備に伴って造林を推進する場合に、従来の町村有造林あるいは水源林造林というような官行造林をさらに一歩前進させて、生産森林組合に対する官行造林を実施する意向はないのかどうか。地元では官行造林に対してかなり大きな期待を持っておるわけです。これは高知でも、あるいは私たちが行きました奈良県でも、現地ではそういう希望を強く持っておりますが、今度は入り会い林整備になった林野に対する官行造林の復活ということを考えておるかどうか、この点についての御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  60. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い林野の地帯におきます今後の土地利用の高度化のために必要な問題といたしまして、いろいろありますけれども、やはり資金の問題、労働力の問題等があるかと考えます。そういう面につきましては、資金の問題についてはこれを造林の面にとらえた場合には、農林漁業金融公庫等の長期低利の融資等についてさらにその積極的な導入がはかり得るように措置をいたしたいと考えております。また、最近において活発にその成立を見ております造林公社等の制度上の措置等も考え、これが入り会い林野等に対する資金と労力の面でのにない手、その土地利用高度化のにない手というふうに考えていく必要をもって考えております。  なお、官行造林をする考えはないかどうかという御趣旨でございますけれども、官行造林につきましては、御承知のとおりに、昭和三十六年でございますか、一応公有林野等官行造林法は廃止をされたわけでございます。そのうち、対象団地になっておりました林地の中で、保安林あるいは保安林予定地の地帯に対して森林開発公団の造林が行なわれております。将来の問題といたしまして、前の官行造林そのままの復活かどうかは別といたしましても、国の技術と資金あるいは組織労働力によるところの造林の推進は、十分に検討に値するものではないかという考え方もございますので、なおこの点については御趣旨もございますし、十分にその検討を進めてまいりたい、こう考えております。
  61. 森義視

    ○森(義)委員 今度の入り会い林野整備によって、山村の林業に従事しておる労働者、山村林業労働者にどういう影響が出てくるのか。たとえば最近農山村から都市への流出が非常に多いということがたいへん大きな問題になっているわけですが、今度の入り会い林野整備とその労働力の流出との関係はどういう形になるとお考えですか。
  62. 田中重五

    田中(重)政府委員 農山村からの労働力の流出はお説のとおりでございます。そこで、林野庁といたしましても、昭和四十年度からこの山村の労働者の確保対策といたしまして、具体的には林業労働者の就労動向台帳であるとか、あるいはその就労動向台帳に基づいた雇用者の打ち合わせ会、そういうもので通年雇用をはかることによって、でき得る限りそれを確保する方向へ進めていくとかという対策を考えております。  なお、林業構造改善事業におきましても、森林組合その他協業体に対する機械の助成を通じてその協業体の活動の促進をはかっておりますけれども、その際に、やはり作業班の結成、そういうことで労働者の雇用の確保、雇用の安定、通年化という面を積極的に努力をしている次第でございますけれども、今後もさらにそれを拡大の方向へ持っていくように考えたい、こう存じている次第でございます。
  63. 森義視

    ○森(義)委員 確かにいま長官の御答弁は、山村労働力をどう確保していくかということについていろいろと御配慮、御苦心いただいている点はよく理解できるわけですが、この入り会い林整備と山村労働力という問題がどういう関連性があるか、この点をお尋ねしているわけです。たとえば入り会い林整備なることによって、労働者が自分のものになるということで、自分の山を経営するという意欲が起きて、そこで固定化するという形の現象が出てくるのか、あるいはまたその権利をあるところに売ってしまって、そのかわりに都市へ流出しようという考え方に拍車をかける結果になるのか、そういう点はどういうふうに考えておられますか。
  64. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、先ほども大臣がお答えいたしましたように、権利近代化の形といたしましては、生産森林組合等協業体等を積極的に指導をいたしまして、分解しないような方向で持ってまいるという点が一つ。それから生産森林組合の場合には、先生も御承知のとおりに、みずから山を出資し、またその労働力を提供するということで、一つのまとまった山の経営者としてこれを管理するわけでございますから、先生のお話のように、権利関係近代化されたということで、さらに山村からの労働力の流出に拍車をかけるというようなことにはならないと考えておりますし、またそうあってはならない。そのためには、あくまでも生産森林組合等方針を主体に権利関係の切りかえを考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  65. 森義視

    ○森(義)委員 正直言って、入り会い林野整備に伴って山村労働力がどうなるかというようなことはあまり検討しておられないのじゃないですか。いま私の質問によって答弁しておられると思うのです。その点は、私は、これからの林業施策というものが労働力にどう影響するかということを常に鋭敏にとらまえてほしいと思うのです。どういう林業施策を講ずることにしましても、それに稼働する労働力の確保というのがあらゆる計画を達成するにとっては大切な要素なのですね。したがって、たとえば入り会い林野整備が山村労働力の流動にどういう影響があるか、山村労働力を固定化する方向に入り会い林野整備が役立つような、そういう観点で労働問題というのを常に意識し、とらまえていただかなければならないと思うわけです。そういう点から特に申し上げたいわけでございますが、民有林の場合においては労働組合の組織化が非常におくれておるわけです。労働条件も、国有林の労働者に比べて、いわんや都会の労働者に比べては、非常に差別されているわけです。こういう問題についてはさらにいまいろいろと御検討いただいておるようでございますけれども、林業基本法がせっかくできた今日、はっきりと労働者のそういう労働条件の問題について格段のやはり施策を具体的に講じていただきたいと同時に、そういう施策が浸透する一つのパイプとして、これは組織化がされて権利意識が生まれてこないとだめなんです。幾らやろうといたしましても、そこで働いておる労働者が組織化をされ、それに権利意識が生まれてくるというパイプができないと、これは無理なんです。したがって、私は、労働者の労働条件を向上させ、労働者が引き続いて山村にとどまって林業労働に従事しようという意欲をつくり上げるためには、組織化がまず優先する、そしてそういう施策が通ずるパイプをつくる、その中で初めて、あらゆる労働条件の向上、引き上げの条件がみずからの権利意識として生まれてくる。そういう考え方をぜひこの際——り会い林野の整備、あらゆる施策を大きな林業施策として講ずる場合においては、常にそれを念頭に置きながら御検討、御勘案を願いたい、こういうことを切に要望しておきたいと思います。
  66. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点はお説のとおりだと存じます。また、入り会い林野権利関係近代化自体が、いまお話しの個人権利意識の自覚につながる問題だ、こういうふうに考えますし、そういうことは近代化後の所得の向上につながっていく、所得の向上は山にとどまるということにもつながる、そういう考え方に立つこともできるのじゃないか、こういうふうに考えますが、一方また、山村における特に入り会い林野近代化に伴うところの労働者のもろもろの労働条件改善については、林業基本法趣旨に沿ってすでに、まだわずかでありますけれども、その改善措置に取りかかっております。今後さらに積極的に進めてまいるように努力をしたい、こう考えておる次第でございます。
  67. 森義視

    ○森(義)委員 この問題は何回聞いても、どこから聞いても、林野庁は、民有林労働者、山村労働者の組織化という問題については、明確な答弁をいただいておらないわけなんです。労働条件を引き上げるとか、向上させるとか言うけれども、それは組織化を通じてしかできないのです。たとえば山村労働者の退職金の問題にいたしましても、これは森林組合なり林産組合なり、地方自治体と交渉する母体がなければそれはできないのです。組織のないところにできないわけです。だから、労働条件を向上しようという場合においては、それを受け入れる母体というものが、あるいは林業家と交渉をする母体というものがなければ、これは幾ら言われても実際はできないわけなのです。ところが、その肝心の組織化するというパイプの問題については、一切触れられないわけなのです。その点はどういう意図ですか。どこからかブレーキがかかっているのですか。これは戦後の日本の労働者の組織化については、労働省が音頭をとって、各県の労政課が労働者の組織化を一時やった段階があったわけです。それで、日本の労働組合が戦後あれだけの急速な勢いで組織化されてきた。ある段階に来たら、これは国や県の力でそういうものを促進するのじゃなくして、自主的にその組織化をはかるべきである、こういうことで引きました。ところが、林業の場合においては、いま、終戦直後に日本の労働省が各県の労政課を使って組織化を進めた、それの段階にきているわけなのです。私は、それがなければ、日本の林業労働力を確保できるような要素というのは、なんぼ言ったって具体的には前進しない、こういうふうに思うのですが、その点についてもう一回、たいへんむずかしい質問ですが、長官の見解をお聞かせ願いたい。
  68. 田中重五

    田中(重)政府委員 労働者の組織化ということばをたとえば労働組合の結成というような意味にとりました場合には、これはあくまでも労働者の自発的な、自立的なものでそれが発生していくということであろうかと思いますし、またそれは個人権利意識の自覚、それからスタートする問題であろうかと存じます。一方、この山村労働者の処遇の改善、福祉の向上等につきましては、先ほども申し上げました林業労働力対策事業——熟練した山村の労働者を確保する、そうしてその安定をはかっていくということのための労働力対策事業を進めておりますが、その中で、労働者としての自覚等についてのPR、講習等もメニューの中の一環として考えておるということでございます。
  69. 森義視

    ○森(義)委員 この問題については本論を離れておりますので、機会を得てさらに私どもの見解なりをぜひ聞いていただきたい、こう思います。  次に、最後に一つだけ、もう一度お願いしたいのですが、今度の現地調査で、実際に入り会い林整備をずっと進めてきた段階の中で、一部の人が反対をしてなかなか整備が進まない。ところが、今度の入り会い林整備の問題については、全員同意、こういうことになっている。実際、これは全員同意というものはほんとうに得られにくい状態にある。たとえば魚屋さんをしているとか、または散髪屋さんだとか、権利は持っておるけれども、実際に収益の配分にだけあずかっておって、何ら林業についての意欲も何も持っていない、こういう人たちがおる場合に、そういう人たちがいろいろ整備計画について反対をする。そういう場合に、なかなかこれは進まない。したがって、三分の二ぐらいの賛成でというわけにいかないだろうかという意見が実は出ておったわけです。私はそれは困るということを言ってきたわけですが、これについて、そういう一部の人の反対を全員同意の方向へ持っていくための行政的な指導といいますか、そういう問題についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  70. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権は、御承知のとおりやはり物権でございます。したがって、この権利の主体である一人、一人の同意は、やはり現在の森林法のもとでは必要かと存じますし、そういう意味全員の合意ということで、その権利関係近代化、あるいは近代化後の計画、その他規約等について、すべて合意が必要であるというふうに考えざるを得ないわけでございますが、そういうふうに持っていくための措置といたしましては、県知事の調停制度をきめておりますので、でき得る限りその制度を活用いたしまして、合意に持っていくようにいたしたいと考えておりますほか、農林業上の利用について、コンサルタント等の意見によりまして、土地の高度利用がいかに入り会い権者の利益になるかという点についても十分にPRをいたしまして、合意の方向へ持ってまいるという考えでございます。しかしながら、あくまでも合意が必要でございますから、無理にこれを反対を押し切って進めてまいるということはできないという考え方で、できるところから近代化を始めてまいるということでございます。しかし、いずれにいたしましても、その近代化することのプラスを十分に理解をさせることをじみちに努力するという考え方でまいりたい、こう考えている次第でございます。
  71. 森義視

    ○森(義)委員 全員同意考え方を貫いていく、こういうことですね。  それからもう一つ、施設森林組合と、今後入り会い林野整備法、行政指導でつくられる生産森林組合との関係について、林野庁ではどういう考え方を持っているか。御承知のように、地方では施設森林組合の加盟単位にしてほしいとか、あるいは林業経営をやる意思のない人たちを集めて、施設森林組合にそういうものを団地化して経営を委託する、そういうふうに、施設森林組合が、新市町村の強化に伴った組織の改編をやっておるわけですが、その中で、今度生まれてくる生産森林組合あるいは入り会い林整備なり個人権利、そういうものに対してかなり強い関心を示して、そういう働きかけを行なっておるわけですが、林野庁としては、これに対してどういう見解を持っておりますか。
  72. 田中重五

    田中(重)政府委員 生産森林組合につきましては、これは法人としての林業経営者というつかまえ方でいるわけでございます。そこで、施設森林組合の場合におきましても、林業経営者としての立場から申しますと、これはその組合員という考え方でとらえて差しつかえないのではないかという考え方でいるわけでございます。施設森林組合のほうは、林業経営について所有者から委託あるいは信託を受けて、そうしてその施業を行なう。それから一方、生産森林組合については、林業経営を行なうということでございまして、やはりそういう林業経営者の組合、片一方は一つの事業体としての法人としての林業経営者、そういう理解でございます。
  73. 森義視

    ○森(義)委員 最後に——最後が続きますが、この入り会い林整備で、いろいろと実際に指導要綱に基づいてコンサルタントを配置して、ずいぶん努力していただいた、しかし、いかに努力していただいても、なかなかこの整備の網にひっかかってこない、そして引き続いてその地域で入り会い集団として、いわゆるとめ山方式共同経営をやっていきたい、こういう地域がある場合に、それに対する施策は、今度制定された生産森林組合と同じような形で、いろいろな面においていろいろな援助を与える方法は考えられないか。これは私権化されて整備されて、そういう形になれば、融資あるいは補助の問題、援助の問題はいろいろやれます。しかし、その地域によって、どうしても従来からのそういうとめ山方式で、部落共有の形で運営されておる形のままに残しておく、そういうふうな場合に、それに対して生産法人と同じような取り扱いが考えられないものだろうか、それについてどういうふうにお考えか、見解を聞かせていただきたい。
  74. 田中重五

    田中(重)政府委員 その問題は、なかなかむずかしい問題でございますが、権利関係近代化されないところに問題があるから、そこで、その権利関係近代化をはかって、個人権利意識を高め、土地の利用高度化をはかっていく、そういう方向である場合に、いまのままでということは、そういう方向に矛盾するといいますか、そういう権利の目ざめにまだ達していないということでございますので、やはりこれに対してはいろいろな方法によるPRも進めてまいりたいと思いますが、そういうとめ山状態の山に補助融資等を行なおうといたしましても、権利の主体が明確でないということで、いままでこれがなかなか行ない得なかったという面がまずございます。それから一方、この前もお答え申し上げましたように、実際には権利関係をそのままにしておいて、看板だけ生産森林組合に切りかえたというような生産森林組合が多いところに、生産森林組合の不活発な真の原因があるというような点からいいましても、このままでその発達、改善を期待していくということには無理があるのじゃないかというような考え方でございます。
  75. 森義視

    ○森(義)委員 まあ先祖から伝わった財産で、これから子孫に引き継ぐ財産なんです。現在の人間だけでこれを私権化してばらばらにしてしまうということは、みな抵抗がある。そういう考え方で、土地そのものは不動ですが、人間は常に変わるわけです。だから、先祖から受け継がれた財産、しかも子孫に継承すべき財産、それを現在の人間だけで私権化してばらばらにしてしまうということに抵抗を感ずる。そういう地域は何らかの形で、現状のままこれをやはり活用していく地域も残ると思うのです。そういう点は、確かに、この法律ができたのは、そういう地域の能率をあげさせるためにできたわけですけれども、しかし、それには私は一理があると思う。そういう問題について、やはり生産森林組合と同じようないろいろな国の助成なり補助なりが行なわれるという道を部分的には考える必要があるのじゃないか、そういう問題についても御検討をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  76. 中川俊思

    中川委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  77. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  入会林野等に係る権利関係近代化助長に関する法律案議題とし、質疑を続行いたします。湯山勇君
  78. 湯山勇

    ○湯山委員 先般来引き続いて森委員から詳細にわたって質疑がございましたので、私は、入り会い権に関する係争の問題について、この法律との関連を若干お尋ねいたしたいと思います。  現在、入り会い権について係争中の事件の件数については、林野庁のほうにも資料をお持ちでないようでございますが、大きく分けて、ケースとしてはどういうケースのものがあるかということをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  79. 高須儼明

    ○高須説明員 入り会い関係に関します訴訟の類型にどのようなものがあるか、かようなお尋ねでございますが、これは時代とともに形が変わってまいっております。明治の初年におきましては、入り会い山対入り会い山の境界紛争等を中心といたしまする徳川時代以前と同じような形の訴訟がきわめて多かったわけでございます。その後、そうした訴訟よりは、そういったなわ張り関係が固定化してまいりまして、むしろ権利関係の不明確に伴う訴訟が徐々に多くなってまいりました。明治の末年から大正、昭和にかけまして、主として公簿上の名義人対実際の権利者との間の争い、あるいは権利者間の争い、権利者の資格をめぐっての争い、かような訴訟が多くなってきておるわけでございます。大体大きく分けますと、そのような形になろうかと思います。
  80. 湯山勇

    ○湯山委員 いま御指摘になったようなケースが代表的なものだということはよく理解できましたが、それと同時に、入り会い権の問題だけではなくて、他の諸法律、そういうことによって法秩序がだんだん整備されるにつれて、入り会い権権利関係あるいは利用関係が、いまお話にもありましたけれども、若干変質してきているということも事実だろうと思います。それらを林野庁のほうでお持ちになっている最高裁の判例等の資料について見てみますと、一々についてこまかく検討したわけじゃありませんけれども、だんだん法体系が、法秩序が整備されるにつれて、入り会い権あるいは慣行利用権というようなものは不明確な形できているものが多いものですから、それらの入り会い権者、そういうものがだんだん不利な扱いを受けている、権利関係が後退してきているというような印象を受けますが、その点についてどうごらんになっておられますでしょうか。
  81. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権は、御承知のとおりに歴史的な沿革を持っておりまして、いわゆる共同利用形態という古典的な形から始まっておりますが、この山の利用の必要性の変化に応じても、この入り会い権は変貌をしてきておるというのが実態でございます。  それから明治維新以後、市制、町村制の施行、それ以前の土地官民有区分、そういう制度の進展の中で公有林野に組み入れられていくという政策がとられたことは明らかであるという意味においては、入り会い権者がその立場から見れば不利な扱いということは歴史考証的にはいえるかと思います。そういう意味では、権利関係の変貌がそういう契機のもとに進んでまいったということがいえると思います。
  82. 湯山勇

    ○湯山委員 いま長官からも御説明がありましたように、その中の一つ、これは非常に大きな慣例だと思いますが、国有林野に対する入り会い権の問題で大正四年に大審院から出ておる判決、これで見ますと、こういうことによって国有林の入り会い権というものはないのだという説明がなされております。これは明治初年の地租改正によって官民有林が区分された。その場合に、一つは培養、つまり、入り会い林に対してその住民が培養していない。栽培あるいはそれに対して労力を提供していない。したがって、そういうものは、かりにいわゆる入り会いの形態があったにしても、入り会い権、そんなのはなくてもいい。それから、もしそういう場合に、そのとおりの表現で言えば「甚シク人民ニ痛苦ヲ与フル場合ニ於テハ事情ニ依リ」払い下げまたは貸し渡しをしてもいい、こういう注意があります。したがって、いまのでいえば、何ら費用もかけていない、労力もかけていない、それを、入り会い権をなくしたためにその関係者にはなはだしく苦痛を与えない場合、そういう場合は、これは国有林に関する入り会い権というものはなくていいのだというような判決になっております。しかし私は、その当時の入り会い権を持った人たちが訴訟を提起してここまできたというのには、かりに培養という労力の提供はなくても、あるいは費用の提供はなくても、あるいはまた、それによってはなはだしく痛苦はなくても、やはりある意味で慣行利用をやっておったのか、あるいは正規の入り会いをやっておったのか、何らかの理由があったと思います。こういうものが、たとえば地租改正によって官民有林の区分、こういうことによって取り上げられている。それが根拠になって取り上げられているというような過去の事実から徴しまして、今回のこの入り会い権整備、それが順調に進んでいった場合に、将来、たとえばダムをつくるとか、あるいはその他のことによって係争が起こった、そういう場合に、昭和四十一年にこれこれでこのような法律によって入り会い権整備ということが行なわれている、にもかかわらず、そのときにそれを放置しておった、そのときに当然手続できる状態にありながら、何の手続もしていない、整備もしていない、こういうことで不利な扱いを受けるというような場合があっては、これは困るのではないかというように考えます。と申しますのは、いま申しました官民有林区分、この地租改正によるやり方というようなものは、こういうようなことをこうやらしておるんだ、こういうものについてこういう注意をしておる、にもかかわらず、それに対してそういう措置がとられていない、したがって、入り会い権はないんだ、こういったような論法での入り会い権の排除が他の例にもございます。したがって、今回の入り会い権整備について、整備をされなかったもの、してなかったもの、それらの扱いを不利にするような懸念はないかどうか。このことは過去に、もちろん大きく日本の憲法まで変わったわけですから、それ以前、戦前のものが必ずしも基準になるとは思いませんけれども、今後においてそういう事態が起こらないかどうか、そういう懸念はありはしないかどうか、それについてひとつ明確にしていただきたいと思います。
  83. 高須儼明

    ○高須説明員 この法律は、今日入り会い権の存在いたしております地域について、すべてに直ちに強制的に適用されるものではございません。そこで、できるところから入り会い権を近代的な権利に切りかえていく手続だけを定める法律でございますので、現段階におきましてこの整備に乗ってこなくとも、将来いつの時代におきましても、権利意識がある程度成長してまいりました段階において、この法律を活用して近代的な権利に切りかえていくということが常時できるたてまえでございまして、恒久立法の形をとっておるものでございますので、将来においても不利な取り扱いをなされるというようなことは考えられないかと思われます。
  84. 湯山勇

    ○湯山委員 現在のところ、支障なく、状態の安定しておるところにおきましては、できる、できないということよりも、そういう入り会い権近代化する、そういうことの必要、不必要、こういうことが先行するのではないだろうか。できる、できないということよりも、そうする必要があるかどうかということが、私は、いまの段階では非常に大事なのではないかというような感じがいたします。できる条件にあったとしても、その必要がなければ、別段痛痒を感じないわけですから、そのまま放置される可能性がかなり大きいと思います。そこで、どういうところにその必要性を啓蒙していくかということになりますと、一つは、森委員のほうからいろいろ御質問があって御答弁があった点で、これはよくわかりました。しかし、係争の問題についても、こうしておくほうが有利だとか、こうしておくほうが将来、いま御指摘になったような係争の場合にやはり有利なんだというような点も、またこれを進めていくための一つの手がかりになるんじゃないだろうかということを考えまして、あえてお尋ねしたいのですが、そういう点で有利だというような材料はございませんか。
  85. 高須儼明

    ○高須説明員 係争の点で有利であるかどうかという御質問と承ったわけでございますが、この法律は、いまのようなあいまいな状態にしておけば、いずれ将来は係争のもとになりかねない、かような考え方、心配を持っておるわけでございますので、あまり複雑にならないうちに、いまのうちにはっきりした権利関係に切りかえておく、かような意味でございますので、むしろ将来の係争を予防するというような意味合いも十分持っておるわけでございます。
  86. 湯山勇

    ○湯山委員 ただいまの御説明は、たいへんよくわかりました。  そこで、若干心配になりますのは、せっかくそういうふうに係争を起こさないようにするための権利関係近代化だと思いますけれども、そういうことを進めていく中で、いろいろなケースを考えてみますと、この法律によって権利関係を明確にしていく、近代化していく、そういう中で係争の起こる可能性もないとはいえないと思うのですが、そういう点について御配慮になっておられるかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  87. 高須儼明

    ○高須説明員 大部分のところにおきましては、意欲のあるところ、そういう必要性のあるところ、そういったものを中心にこの権利関係近代化を進めてまいります。したがいまして、あそこの部落の問題は手を触れるのは若干心配があるというようなところは、やはりじみちに時期を待つというような形で、絶対強制的な適用というものは避けるということを一番の基本的な考え方にいたしておるわけでございます。安心してできるところと思って手がけたところが、そこでいろいろな問題が発生してまいるというような場合も皆無ではないと思われますが、そういったような場合には、県知事の調停制度あるいは事実上のあっせんというようなことで、県知事等がその中に入りまして、さような紛争がめんどうな事態にならないように指導してまいる予定でございます。
  88. 湯山勇

    ○湯山委員 そういう場合に、さらに知事なり何なりがあっせんなり調停なりして、それで一応いった、しかし、そのことについて、調べてみると、どうもやはり不満だというような場合に、そういう知事なりあるいは自治体が相手方となって訴訟を提起されるというような場合も、ひょっとするとできるのではないかというようなことを心配しておるのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  89. 高須儼明

    ○高須説明員 現段階におきましては、どのような場合に、さような都道府県知事を対象といたしましてどのような訴えが出てくるか、なかなか推測に困難でございます。千差万別の従来の慣習がございますので、なかなかむずかしいことと思われるわけでございますが、たとえば入り会い権者が、現在の集団以外に入り会い権を主張する人がおりまして、今回の入り会い林野整備が無効であるというような主張で行政訴訟を起こすといったようなことも可能性としてはあるわけでございます。さような場合には、最終的な問題は入り会い権の確認という問題につながる問題でございますので、それは訴訟以外に解決の方法がないものと考えておるわけでございます。
  90. 湯山勇

    ○湯山委員 御趣旨はよくわかりましたが、実は私がいまのような点をお尋ねするのは、従来の判例等から見まして、入り会い権というものは公法上の権利というのではなくて、私権として処理されている。ところが、今回の改正によって入り会い権というものが整備された場合には、公法上の権利に移行するような——私も法律専門ではありませんから、言い方はそういうふうに言うのが正しいかどうかわかりませんけれども、いま申し上げましたように公法上の権利というような性格が強まってくるように思いますが、従来の扱いからいえば、これは大審院の判例等から見て、入り会い権というものは公法上の権利というよりも、むしろ私権というような立場がとられている。今度の法律によって整備された場合は、その性格が変わるんじゃないだろうかということを感じております。断定はできないのですが、ばく然とそういう感じがするわけです。そうすると、いま申しましたようなケースもあり得るんじゃないだろうかということを感じましてお尋ねしておるわけです。
  91. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの御質問趣旨は、この入り会い権近代化の施行によって、公法上の慣行使用権というような形のものがふえてくるのではないかというような御趣旨であったかと思いますけれども、そういうことは全然考えておりませんし、予想もいたしていないわけでございます。それで先生御承知のとおり、民法第三章第三節の共有のところに整備されております入り会い権、それから地方自治法における公有財産として整備されておる旧慣使用権というものの二つのたてまえを前提といたしまして、そうしてそれぞれについての手続をきめたのがこの法案趣旨でございます。経過的には、先ほども申し上げましたように、市制、町村制、あるいはまた、最近では町村合併促進法その他によって公有財産となった入り会い林野があるにしても、それはこの法案とは関係のない問題である、こういうふうに考えている次第でございます。そうして一方、入り会い林野というものについての公権論、私権論は、学説としては、それはたとえば私権であるというような見解はいろいろございます。判例もまたそういうような見解が示されているとしましても、その問題には触れないで整備をしておるのがこの法案趣旨でございます。
  92. 湯山勇

    ○湯山委員 私も不勉強で、いまの御答弁、半分くらいしか理解できないのですが、つまり、この法律によって入り会い権というものが整備されて、そこで明確化された場合に公法的な性格を持つという、そういう解釈は間違いなんでしょうか。
  93. 田中重五

    田中(重)政府委員 この入り会い林野あるいは旧慣使用林野がこの法律権利関係近代化された場合には、それはすべて近代市民法上の私権になる、こういうふうにお考えいただいてけっこうではないかと存じます。
  94. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、いまそういうふうに解釈せよということであれば、それでよくわかりました。  そうすると、その点については、法律の解釈はどこでするのかわかりませんけれども、この立法過程において、起案の過程において、法務省ともよくお打ち合わせになられたと思いますが、法務省の見解は、その点についてはどういう見解でございましょうか。
  95. 高須儼明

    ○高須説明員 今回の法律を作成いたします過程におきまして、自治省、法務省、大蔵省、法制局等、各関係省において話し合った結果、いずれも意見は一致いたしておるわけでございますが、入り会い権は民法上に規定された私権である、旧慣使用権は地方自治法に規定された公法上の権利である、かような解釈でございます。
  96. 湯山勇

    ○湯山委員 その点は、一応法律のたてまえはよくわかりました。ただ実際の場合、入り会っているものが一体どちらであるかという区別をして必ずしもやっていないのが相当あるのじゃないかという感じがいたしますが、その点はいかがでしょうか。
  97. 高須儼明

    ○高須説明員 確かに先生のおっしゃいますように、現地におきまして、これが入り会い権であるか旧慣使用権であるかという解釈につきましては、なかなか判断がむずかしい点もあるわけでございます。そこで、この取り扱いにつきまして、三省間において申し合わせをつくっておるわけでございますが、大体公有財産であるならば、その上にあります権利は、原則として旧慣使用権と考えてまいることが、地方自治法のたてまえにも沿うであろうと考えるわけでございます。それ以外のものは入り会い権である。しかしながら、その間におきまして、何が公有財産であるかという問題もまたございますので、大体市町村有林あるいは財産区有林、処方自治法上において公法人とされておりますところのものが所有いたしております山野は公有財産である。その公有財産をまず区別いたしまして、その上にある場合には、これを原則として旧慣使用権として取り扱ってまいる、かような考え方でございます。
  98. 湯山勇

    ○湯山委員 このことをお尋ねするのは、かつて経過的に見ますと、従来、入り会い共有ということと入り会いということ、これはいまのことばでいえば、土地を第三者が持っていて、ただ利用だけをする場合が入り会いであって、土地もともに持っている場合は、それは入り会いじゃなくて共有だという解釈がずっとなされておりました。これが大正九年には解釈が変わりまして、これは共有の入り会いと地役の入り会い、両方とも入り会いだというふうに解釈が変わった前例もございます。そこでいまのところは、いま直ちにそれがどうというわけではありませんけれども、裁判等によって、いまおっしゃった原則がくずれる場合には、また問題が起こるのではないかということを感じまして、いまの質問をしたわけです。  そこで、公有財産に対する利用、そういうものは、これはいまおっしゃったように区別する、こういうことになれば、この地域は旧慣使用だ、このものは入り会いだという区分ですね、これの区分を、いまの段階で地元にはっきりさせる必要があるのではないだろうか、そういう措置をおとりになっておられるかどうか。
  99. 高須儼明

    ○高須説明員 現段階におきまして、具体的な部落の山に対して、ここが共有的入り会いあるいは地役的入り会いである、またここは旧慣使用権的なものである、このような区別を全体にわたって立てるということは非常に困難であろうかと思いますが、具体的なこの法案の適用される地域につきましては、この入り会い林野整備あるいは旧慣使用林野整備を始めます場合に、住民の納得した、一致した見解が生まれることが必要でございます。そこで、これが入り会い権であるか旧慣使用権であるかということを、まず住民全体あるいは関係者の間で統一をする。その統一基準と申しますのは、先ほど申し上げましたような基準でございまして、具体的に事業が始まりますところにおきましては、これが明確になるわけでございます。
  100. 湯山勇

    ○湯山委員 こういうケースはないでしょうか。たとえばダムをつくる、そのためにこの区域は水没する、そういうことが明らかになって、その地域でたきぎをとっておった人たちが、これが公有地であるか私有地であるかは別として、従来そこでたきぎをとっている、あるいはキノコをとっていた、ワラビをとっていた、水没するということになったときに初めて、それじゃ、これの補償というような形で、入り会い権あるいはそれに類する要求が出てくるというようなケースは考えられないでしょうか。
  101. 高須儼明

    ○高須説明員 入り会い権そのものが長い間放置されておりまして利用がなされていないといったような場合には、しばしば入り会い権というものが明確に認識されないで、かくれておるような状態の、いわゆる眠っている状態になっておる場合がままあると聞いております。
  102. 湯山勇

    ○湯山議員 そこで、この機会近代化していくというときに、あるいは市町村等で調べていけば、これはどういう入り会いだとか、いろいろなケースが具体的に出てくるのじゃないだろうか。全国的にそういう調査をしておくことが、近代化のためのトラブルもなくするし、それから今後いろいろなそういう事業を開始するにあたって、休火山が吹き出すような、そういったような係争もなくしていくということのためには必要ではないだろうかということを考えますが、そういう必要はないでしょうか。
  103. 高須儼明

    ○高須説明員 一九六〇年センサスにおきまして、各事業ごとに全部調査してございます。その前には実態調査的なもので、これは全般的ではございませんが、いたしております。古くは明治時代以降の入り会いにつきましては、全国に膨大な入り会い慣行調査というものがございまして、私どものところに資料は保存してあるわけでありますが、一番現在に近い状態で調査いたしましたのは、冒頭に申し上げました一九六〇年センサスでございます。このときにはかなり明確なデータが残っておるわけでございます。また、現在この法律実施いたしますための予備調査といたしまして、昭和三十九年度におきましては全国各県二カ町村ないし三カ町村を選び出しまして徹底的な調査実施いたしておるわけでございます。
  104. 湯山勇

    ○湯山委員 その中には、いまのように権利関係が眠っているというようなものも入っておるのでしょうか。
  105. 高須儼明

    ○高須説明員 ここで調査いたしました場合に、入り会い権がある、そういった共同的な利用形態が残存しておるというところは、くまなく入れておるわけでございます。
  106. 湯山勇

    ○湯山委員 今度、私はあっちこっち回ってみまして、ばく然と松の木を植えてあるところで、松の落ち葉をたきものにとる、それから枯れておる枝、枯れておる木、そういうものについて自由にとる、それはやはり入り会い権じゃないだろうか、何だかわからない、とにかく昔からやっておることで、これは民有林でどの家のでもいいわけです。そういう場合、はたして入り会い権かどうかということでいろいろ議論してみたのですが、結局はっきりしなかったのですが、そういうような場合のものはどう処理されておるのでしょう。
  107. 高須儼明

    ○高須説明員 今回のこの法律案の目的は、土地の高度利用の問題でございますので、この利用を安定させるために、何よりも地番所有権の規則が最も問題になるわけでございます。したがいまして、主として登記薄の所有権の整備というようなことが中心課題になってこようかと思うわけでございまして、ただ公有林には旧慣使用権的な、地番所有権と関係のない、民法でいえば地役の性質を有する入り会い権ごときものもございます。その中には、いま先生のおっしゃいましたような、落ち葉だけを拾う入り会いとか、キノコだけをとる入り会い、かようなものも残存しておるわけでございますが、このようなものは、その形に応じて地上権設定なりあるいは賃借権なり、そういった近代的な権利に切りかえていく、あるいは契約関係を明確化いたしまして、一種の賃貸借の契約等に切りかえていきたい、かように考えております。
  108. 湯山勇

    ○湯山委員 予定の時間がまいりましたので終わりたいと思うのですが、実はこういう係争のケースをいろいろ調べてみたのですが、これはとても短時間に類型的なものを集めてお尋ねする資料をこちらもつくりかねましたので、非常に大ざっぱなことをお尋ねしたのですが、一つは、とにかくこの法律ができたために不利な扱いを受けるようなことのないように御留意願いたい。というのは、従来権利関係が明確化するに従って不利な扱いを受けている例が非常に多いということからの配慮でございまして、その点についての十分の御配慮を願いたいのと、それから、そういう権利を持っている者自身が自覚していないというケースもあるように見受けられます。しかし、権利というものは自覚がなければ本来ないようなものでございますから、むしろ近代化していくための前提条件としては、ここのところはこういう形の、こうなっているものだということをよく当事者に知らせるような御努力を願う必要があるのではないだろうか、そしてさらに、これは森委員の御指摘になったのと表裏一体の関係にありますけれども、そのためには全部が理解するということ、逆にいえば全部の人の承諾を得るというような方法をとっておいていただかなければ、新しい形の、先ほどお示しになったような形じゃなくて、新しい訴訟が提起される懸念もなきにしもあらずですから、それらの点に対する御配慮を十分なさった上で実施に移していただきたいということを御要望申し上げようというのが、私の質問趣旨でございました。つきましては、長官なり大臣なりから、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  109. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの御趣旨はまことにごもっともな御趣旨だと存じます。それで、この法案機会に、入り会い権とは何かというような点についても、またその近代化しなければならない意味についても十分にPRの努力をいたしたいと思います。  その次は、この法案にもございますように、あくまでも、入り会い林野については入り会い権全員の合意が必要というふうにしてございますし、旧慣使用林野につきましても、それに準じて扱うというふうに進めてまいる考えでございますから、あくまでもこれは一つの強制力をもって進めるというような考え方はとらないところでございます。しかしながら、権利関係近代化がその入り会い権者の近代的な権利意識への目ざめになり、また、本来活動さるべき権利の行使になるのだという点についてのPRは十分に進めなければならぬ、こういうふうに考えております。
  110. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣はいかがですか。
  111. 坂田英一

    坂田国務大臣 長官がいまお答えしたとおりでございます。御了承願います。
  112. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 この際暫時休憩いたします。    午後三時二分休憩      ————◇—————    午後三時三十七分開議
  113. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  入会林野等に係る権利関係近代化助長に関する法律案議題とし、質疑を続行いたします。川俣清音君。
  114. 川俣清音

    川俣委員 入り会い林野等にかかる権利近代化については、多年要望されたところでございますが、これをどのように解決するかということはなかなか困難な問題であるということで敬遠されてきた問題でございます。それだけに、よく踏み切ったともいえないわけではございませんけれども、こういうことではたして目的が達成されるのかどうかということになりますと、長い慣習であると同時に、また地方的に範囲が非常に林野以外にも関係する点もございますので、この法律ではたして妥当であるかどうかということについては、一点の疑問がございますので、これを究明していって、この法律案が施行される場合、何といいましても関係者が非常に多いのでありますから、どういう審議内容であったかということが、この法律に基づいて事業する上に非常に役立つと思うのでございます。大体、総意で問題を解決しようというのでありますから、特別な人だけがこの法律を理解し、理解できない者があるということになりますと、この法律のほんとうの意味の運用はできなくなる。こういう意味で、私はあえてお尋ねをするという点で御了解願いたいと思います。  そこで第一は、こういう法律は、五年とか十年で整備するという時限があっていいのではないか、こう思うのでございます。近代化する計画の特典があるのでありますから、この有効期間が何年であるかということがあってしかるべきじゃないか、これは私の見解ですが、林野庁はどういうふうにお考えになりますか。
  115. 田中重五

    田中(重)政府委員 この入り会い林野関係事業体は、調査によりますと約十一万事業体ございますが、そのうち、五百ヘクタール以上の事業体であって、将来土地利用の高度化が期待し得るものというものを想定しますと二万六千事業体ある。それを、一応の計画といたしまして十年くらいの間に権利関係近代化をはかりたい、こういう考え方でございます。
  116. 川俣清音

    川俣委員 そこで農林省にお尋ねをしたいのですが、この法律が定めるところによりますと、入り会い林野でございますが、しかも、入り会い権につきましては林野ばかりではなしに、もっと広範な入り会い権が存するわけでございます。付帯して存する点がたくさんあると思いますが、まず林野を先に整備して、その他の関係部分についてはあとで整備するという考え方でございますかどうか、私はそうでないように理解をするのでございます。第二条によりますると、この法律に定めるところに従い「入会権を消滅させること及びこれに伴い入会権以外の権利を設定し、移転し、又は消滅させることをいう。」となっておりますが、いわゆる入り会い権の中には漁業の入り会い権、入漁権というものもございます。これは一応漁業法で整備いたしましたが、湖沼の、淡水魚の入り会い権についてはまだ未解決でございます。いま林野庁長官の答えるところによりますと、入り会い権というものの林野に関係する面積及び関係者については説明がありましたけれども、漁業権についても同様、かなり多数の入漁権が存在するわけでございますが、この方面についてはどのように解決しようといたしておりますか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  117. 高須儼明

    ○高須説明員 この法律近代化をはかろうといたしております入り会い権は、確かに先生のおっしゃいましたように、普通入り会いといわれるものにはたくさんございます。たくさんございますが、その中で、取り立てて木竹の成育あるいは採草、家畜の放牧、こういったものに関連する入り会い権のみをここで取り上げておるわけでございます。したがいまして、その他の、たとえばいまおっしゃいました漁業入り会いあるいは温泉入り会い、その他の入り会いというものは当面問題にはなってまいらないわけでございます。
  118. 川俣清音

    川俣委員 そうするとおかしいですね。入り会い権に付帯をして、その他の権利も消滅させるという二条の二項ですか、この法律に定めるところに従い「入会権を消滅させること及びこれに伴い入会権以外の権利を設定し、移転し、又は消滅させることをいう。」こうある。対象以外の、入り会い権以外の権利、この意味の場合は、林野の入り会い権以外の権利、これは一応非常に圧制的に整理されている例がございます。戦争中に、陸軍が特に馬産奨励の意味指定牧場等をつくりまして、軍の入り会い権を無視した管理が行なわれたわけであります。その中には、湖沼、わき水と申しますか、湖沼ということばが一番適切だと思いますが、こうしたものが放牧としてはぜひ必要な部分でございます。こういうものも軍は整備いたしたことがございます。圧制的に入り会い権を無視して整備したことがございます。こういうものは生きてくるのか、あるいは軍の整備でやむを得ないとするのか、この点はどうですか。
  119. 高須儼明

    ○高須説明員 過去の種々の施策に基づきます種々の整備の方向もあったかと思われますが、今回考えておりますその他の権利の中には、漁業入り会いなどに基づく権利もあるいは入っておるかもわかりません。しかし、この法律は、そういった権利整備することを中心といたしますのではなく、付帯してまいるものは利害関係というようなことで、あるいは今回の整備計画の中に入ってくる場合もあろうかと存ずるわけでございます。
  120. 川俣清音

    川俣委員 そこで、非常に整備について問題になるのは、私、これを論ずると長くなるから省略しますけれども、一体公権なのか私権なのかという議論から分かれてこなければならないと思いますが、いま私は取り上げません。時間がかかるし、なかなか問題は大きいと思いますから取り上げませんけれども、御承知のとおり、いま明治以来訴訟事件になっておる件数としては、種類別に分けますと、入り会い権に関する訴訟が非常に多いのです。しかも、長年月かかっておるという事案が非常に多い。これに伴いまして刑事事件もまた発生しておるわけです。盗伐であるとか不当侵入であるとかあるいは水源地の水の汚染であるとか、いろいろな問題の刑事事件も起こっております。それだけに明確にしておきませんと、単なる民事上の権利の争いばかりではなしに、刑事事件も幾多起こっておる点から見まして、もう少し正確にしておかなければならないのではないか。これは警察官やあるいは中には検察庁などでもこの問題に触れまいとつとめておるところもございますし、あるいは積極的に法益を害するものとして盗伐の扱いをしておるところもございます。あるいは不当な侵略だということで処理しておるところもございます。したがって、これはかなり明確にしておかないと、林野庁が火中のクリを拾うような結果になるのではないか。あるいは多くの判例を見ましても、判例の大部分は、内務省が入り会い権に対して干渉したものが不当だという判例が非常に多いわけであります。行政の行き過ぎを批判しておる判例が非常に多いわけです。この大審院の判例を林野庁はどう理解されるか、判例は判例として、別に法律ができたのだから、判例に反するようなことがあってもいいのだという理解なのか、それとも、判例については一応妥当なものとして従おうという考え方なのか、林野庁はどういう考え方なのか、この点をひとつ明らかにしておいてほしいと思うのです。これは法務省にもお尋ねしておかなければならぬ。
  121. 高須儼明

    ○高須説明員 この法律を作成する過程におきまして、幾多の入り会いに関する判例の調査実施いたしておるわけでございます。判例の精神はできるだけ取り入れましてこの法案を作成いたしておるわけでございますが、相反する判例がございます場合には、なかなか解釈に困難なところも出てまいりますので、法律のていさいといたしましては、現在の法律体系に矛盾しないような形で取りまとめた次第でございます。判例は、特殊な条件下におきますある特定地域特定事件についての判決でございますので、これらの中から一般的な基準を見出すということは、明治の民法を制定する際にも入り会い権についてはできなかった状態でございますので、今日も民法の解釈にゆだねておる。民法で解釈されるように、この法律でも入り会い権というものは解釈してまいる、かような立場でございます。
  122. 川俣清音

    川俣委員 御答弁のとおりなんです。民法の改正のときに一番問題になったのが、この入り会い権の問題並びに水利権の問題です。これが一番問題になった。とうとうこれを解決できずに見送ったというのが過去の法制上の例です。それをひとつ勇敢に踏み切られた、その努力は大いに多とするのですよ。決してこれをもって非難するというつもりはないのですよ。ないんだけれども、長年の慣習でありまするものを規定をする場合でございまするだけに、一体どこに根拠を置くのかという根拠がないと、かえって紛争を激化するものではないか。整備するという考え方自体は悪いのでなくて、こういう考え方によってかえって係争事件を多くするおそれがあるのじゃないかという観点に立って、あえて私はお尋ねをしておる、こういうことなんですから、御答弁願いたいのです。
  123. 高須儼明

    ○高須説明員 この法律は、入り会い権を確認するための法律ではございませんので、入り会い権が確実に存在している場合にのみ適用があるわけでございます。したがって、入り会い権の存在の有無についての争いのあるようなところは、この法律対象にはいたさないつもりでございます。
  124. 川俣清音

    川俣委員 そこが問題なんです。入り会い権があるのかないのか、どういう範囲であるのか、権限はどこまであるのかということが係争になっている。はっきりあるものについては、係争事件になりましても問題は片づくと思う。いままで地方裁判所等において十数年も争っておるというのは、権利関係がはっきりしないからなんです。係争事件が多いということは、事犯の内容がなかなかつかみにくいというところが原因だと私は思うのです。ですから、あなた方が言われるように、入り会い権が明確にあるものについては、問題の解決はこのような方向でやられることもそう困難ではないと思う。また、そういう指示を与えることのほうがより適切かもしれません。問題は、より正確でないものであるだけに、長い歴史を持っておるだけにいろいろな見方が出てくる。権利関係が明確でないというところに、この利用が活用されない。指摘されるような土地の利用や効用が起こっていないということも事実ですが、それは権利関係があまりはっきりしないからなんです。明確でないからなんです。そういうふうに理解されませんか、この点をお尋ねいたします。
  125. 高須儼明

    ○高須説明員 私どもは、入り会い権というものは生々発展するものであると考えておるわけでございます。したがいまして、あいまいな状態にあるということ自体が今日の利用をはばんでおりますので、関係者一同相寄って今後の方針をここで確認する、新しい出発を起こすことをお手伝いする、これがこの法律趣旨でございます。
  126. 川俣清音

    川俣委員 その意図は非常に私はいいと思いますよ。その意図は悪いとは言いません。意図のように一体運用できるかできないかという点が問題だと思うのです。それだけに、いろいろな疑問の点を明らかにしておいて、この運用がスムーズに行なわれることを私どもは期待をするわけです。別に頭から反対をするとかということではないわけです。権利関係がはっきりしないために起こる紛争であると同時に、利用度の低下があるんだ、これは私どもも認めるところです。だから私どもも、林業基本法におきましても、これを何とか近代化して利用度を上げていかなければならないという考え方には異存はないのです。かくあるべきだと思う。それだけに、これを正確に教え込まなければならない、理解させなければならない、こういう点でお尋ねをしておるんだから、明確にひとつ御答弁願いたい。
  127. 田中重五

    田中(重)政府委員 この法案は、いま調査課長が申しましたように、入り会い権について必ずしも明確でないとかあるいは係争があるとか、そういうところで、これの権利関係近代化をする以前のもろもろの問題がある場合には、この法案趣旨からいいましても取り上げることはできない段階にあるわけでございます。入り会い権者が旧来の慣行によって使用、収益してきた、そういう一つの集団としての行為を各人が認識し合えるような状態にあるもの、そういうものであって、この権利関係近代化をはかっていこうという全員の合意が成り立つ場合に、この法律によって優遇措置が与えられるということでございますから、いま先生のお話しのような場合は、この法案の取り上げる段階以前の問題だと思います。その点については、いま先生のお話しのように、係争その他そういう問題があるにいたしましても、近代化対象にはなり得ない、こういうふうに考えております。
  128. 川俣清音

    川俣委員 軍が一応整備したようなことは、これはさかのぼった入り会い権が存在したにかかわらず、軍の威力で整備したことがございます。秋田県の雄勝郡にその例があるわけですが、これはごく少数の部落の者が、先祖代々入り会い権として利用し、その湧水地から自宅まで飲用水を引いた、そこで、飲用水の水源地であるから、馬を入れられては困る、馬に飲ませる水は別に引き水をしてほしいということであったのですが、軍は軍の必要上、馬の育成に力を入れなければならぬからということで、共同の飲用水を断ち切ってしまった、こういう例がございます。長い慣習で飲用水にしてきた、この飲用水を、軍の必要上ですよ。軍だって別に戦争に直接の馬じゃない。馬産奨励の意味から、人間よりも馬を主体にした整備が行なわれた。これは明らかに慣行に基づく入り会い権の、しかも飲用水源を断ち切ってしまった。これは復活できるのでありますか、この法律によってできないのでありますか、この点をお尋ねすれば具体的に答弁ができると思います。
  129. 高須儼明

    ○高須説明員 過去において、種々の理由によりまして解体いたしまして、今日別の形のものになっているもの、それは今日もはや入り会い権ではございませんので、現在の時点における入り会い権対象といたしますこの法律のたてまえ上、すでに消滅いたしました権利を回復するというような作用は持っておらないわけでございます。
  130. 川俣清音

    川俣委員 そこが問題だと思うのです。過去に強圧によって入り会い権が変動しておったものは救済の対象にはならない、こういうことです。ある特別な権力者のために権利が衰微したものについては消滅はいたしておりませんけれども、非常に権利が希薄になってきたものはこの対象にはならないということになると、これは近代化じゃないと思うのです。後退していくことをあらためて承認するということになる。ここではっきり後退したことを承認するという結果になるんじゃないでしょうか。近代化じゃない、後退化を承認するということになるのじゃないでしょうか、この点はどうでしょう。
  131. 田中重五

    田中(重)政府委員 いま先生が提起されておられます問題は、入り会い権が過去において不当に消滅させられた場合であるとか、あるいは弱化させられた場合であるとか、そういう場合をどのように解釈し、どのように改善するとすればその考え方があるか、そういうような御質問趣旨かと思いますけれども、この法案といたしましては、そういう権利関係の復活ないし是正等については、直接の対象のケースとしては考えていないわけでございます。先ほども申し上げましたように、いわゆる通常の入り会い権あるいは慣行使用権というものの権利関係近代化するという、その権利者の自発的な意思の合意の上に、初めてこの法案の優遇措置が講ぜられるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  132. 川俣清音

    川俣委員 私もそう理解をしたいんですが、しかし、二条の二項によりますると、この法律の定めるところに従い「入会権を消滅させること及びこれに伴い入会権以外の権利を設定し、移転し、又は消滅させることをいう。」こうありますから、そこで問題が出てくるわけです。長官説明は一応の説明なんです。そうだと私はいままで理解しておったが、どうも二項を読むと、そうでなく受け取られるものですから、この点はどうですかというお尋ねをしておる、こういうことなんです。
  133. 高須儼明

    ○高須説明員 二条の定義のところに書いてございますその他の「入会権以外の権利」、これで現在考えておりますのは、地役の性質を有する入り会い権の場合に出てくる場合だと思いますが、地役の性質を有する入り会い権の場合は、所有名義人は通常第三者でございます。その第三者は所有権を持っておるわけでございます。したがいまして、その地番所有権をさらに第三者、たとえば金融機関に地上権を設定させて金融を受けるとか、あるいは担保権を設定させておる、かような場合、抵当権、地上権その他現在近代的な権利が所有権の上に設定されておるような場合がしばしば見受けられるわけでございます。かような入り会い集団あるいは所有者以外の第三者の持っておりまするような権利、これをその他の権利というふうに私どもは理解いたしておるわけでございます。
  134. 川俣清音

    川俣委員 さらに、もう一度お尋ねをしたいのですが、これは法務省もおいでになっておるのでお尋ねをしたい。  かつて秋田県にその例を見るのでございます。明治初年の地租設定時代に、何々様組頭以下何名という所有、これは総有でございましょうが、そういう権利があった。それに対して入り会い権的活用をしておる。入り会い権的活用というのは、そこに動員された者が収益をするというのが入り会い権的活用と私はこう呼ぶわけでございます。何々外何名、ところが、登記所の登記人が、いまで言うと登記所長が胸を痛めて入院中であったわけです。見舞い金を持っていって、一週間後にその方はなくなった。その危篤状態にあるときに、何々外何名というものであったのを、見舞い金を持ってきた人の名前だけで登記をしたわけです。これを病院で調べますると、執行能力がなかったということです。法務局は、すでに登記してあるのであるから変更はできない、こういうことです。これは私、かつて問題にしたことがあるのです。執行官が危篤状態で、医者から言うとその能力がなかった状態、しかも、その登記を完了してから六日目に病死しておる、こういう整理のしかたもあるんですね。入り会い権の整理のしかたにこういう整理のしかたもある。いい悪いは別にして、現実にあるのです。したがって、入り会い権の整理というものはどのようにも整理できるという不安を抱くわけです。昔からの台帳を見ると、何々外十二名、十二名には変わりはないけれども、六十年前の当時の十二名がはたしていまの十二名だか、相続の変更もあるでしょう、いろんな変更もあるはずだ。それをはなはだ不当に、見舞いを差し上げた人の名前に、偶然かどうかわかりませんけれども、むしろそういう人たちは率先して見舞いをしたということになるかもしれませんけれども、ちょうど病気見舞いに来た人と同じうちが登記の対象になって、それ以外の者は対象になっていない。実際を調べますると、植林をしたのも部落全員で植林をしておる、経費の負担も全員で負担をしておる、しかも、これは共有地でありまするから、税の負担も共同でしておる、こういう入り会い権的存在を整理すると称して——これは登記所は別に近代化という名前を使ったんじゃないでしょう、権利の存在を明らかにするということでございましょうけれども、とにかく、なくなっているのですから調べようがございませんが、少なくとも、なくなる六日前に個人に登記が完了したという事実があるわけです。したがって、入り会い権の整理については、あとでもいろいろな紛争が起こるであろうからして、よくこの法律を理解さしておかないと、悪用をされて権利が確定するようなことがあってはならないのだということを指摘しておきたいのであります。総員の同意を得ればいい、そのとおりでございます。同意ということは、みな理解をした上の同意であればよろしいけれども、こういう山間僻地におきましては、こういうものだということで教え込まれてしまって、捺印をした、同意をしたという、形式はできておるけれども、真実の理解がないままに権利の移動等が行なわれるような近代化であってはならないのじゃないかということを、あえて指摘をしたいのですが、長官ひとつ御答弁を願いたい。
  135. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの見舞い金を出したということが契機になって所有の名義人となったという場合は、異例の場合だろうと思いますけれども、普通明治の初めの官民有区分当時においては、地租の付されることを免れるというようなことで、ともかくだれかの名義にしたとか、あるいはまた所有が不明であるということで、官有になることを避けるために特定の名義人にした、しかしながら、実態的には、旧来の慣行によって使用、収益が行なわれておるという場合、これはきわめてこの例が多いわけでございます。そういう場合に、その入り会い林野のその権利関係近代化していくということにつきましては、もちろんその所有名義人との話し合い、これは当然必要になってまいります。また、その所有名義人にいたしましても、この前の小繋事件等に見られますように、おそらく、当初はいまのような意味での名義人がきまって、そしてそれが実質の所有者のような土地の所有権の行使が行なわれて、そうして善意の第三者に所有権が移っていった。そこで実体的な入り会い権者との間の紛争が発生しておるという場合もあるわけでございます。その点については、あくまでも名義人の異議のないように、また、そういう場合に異議の申し立てをする機会がこの法案においては与えられているわけでございます。したがって、あくまでもその点については全員の合意とともに、そのような第三者の名義人を払底する上において、十分な話し合いがまず前提にならなければならないというふうに考えているわけでございます。その点は、近代化を進めていく場合にコンサルタントその他の法律上の指導も十分に行なわれるものと考えておりますし、円滑な手続の進行が行なわれるように指導をいたしたい、こう考えている次第でございます。
  136. 川俣清音

    川俣委員 ここで法務省にお尋ねしたいのですが、こういう権利の移動というような場合には、こういう行政指導的な役割りに対して、不服の者が提訴してくるということが起こるのではないか、そういう事案があるのではないかと私は思うのです。そこで、そういう争いが農村に常に存在するということは、農村の平和のためにもあまりよろしくないと思います。どこかでけじめをつける必要があるということになりますと、裁判所が関与して調停事件として取り扱って確定をさせるほうが、あとの紛争を助けることができるのではないか、私はそう考えるのですが、法務省の見解をお尋ねしたい。どうも行政的指導だけでは、不服があった場合に係争の対象になる。そこで、むしろこれは調停事件として最終決定をしておくほうが事件に終結を見、納得するのではないか。再び係争事件にはならないということになるのではないか。私は、農村の平和の上から、紛争が絶えないということはできるだけ避けたい、こういうところからのお尋ねでございます。
  137. 香川保一

    ○香川説明員 お説のように、入り会い関係につきましては、非常に千差万別の内容でございまして、行政的に話をつけて合理化をはかるということは非常にむずかしいことだろうと思うのであります。その場合に、やはりできる限り行政指導あるいはその関係の人に理解をしていただいて話し合いがつくということが一番望ましいことだと思うのであります。それがその面におきまして非常に内容の把握が困難だとか、紛争があるということになりますれば、お説のように裁判所に調停の申し立てをむしろさせて、そこで話をつけるということも確かに一つの方法だろうと思うのであります。しかし、すべて裁判所の調停によってきめるということでは、やはり調停は御承知のとおり話し合いがつかなければ法律関係が形成されませんので、話し合いがつかなければそれまでだということになりましても、一面この法律案のねらっております近代化が十分達成できないという面もあろうかと思うのであります。したがいまして、できるだけ行政の運用よろしきを得る面と、他方、調停の制度によって、両々相まって推進していくのが最も合理的ではないだろうかというふうに考えております。
  138. 川俣清音

    川俣委員 私も、調停は普通の裁判と違って、行政と普通裁判の間くらいのものだというふうな理解をしている。単なる行政だけでは権力に押し切られるようなことがあるでしょうが、調停の場合は、個人権利の主張というものがわりあい認められるであろう、そうすると、あとで紛争が少ないであろうという見解です。しかし、これは裁判所としては非常にやっかいだと思います。小作調停事件が非常にやっかいだったことはわかりますが、そのくらいの勇気をふるってやってもいい事案ではないか。いままでの入り会い権の紛争、いわゆる民事紛争が非常に多いことは御承知のとおり。いまだに非常に多い。しかも、長年月かかっておる。裁判所の能力を非常に削減しておる事案でございますだけに、調停の労を積極的にとるような制度をこの中に入れてもいいのではないか。それには法務省の予算がいまのところ不十分だということもあり得るかもしれませんけれども、やはりこの中に入れて、調停事件として取り扱うことができるように——取り扱うことによって、より完全になるのじゃないか、権利関係もそこで一応明確化するのじゃないか、それによってさらに利用度も高まる結果になるのじゃないか。常に農村に紛争が絶えないことは、私は、できるだけ避けたいという意味で、一ぺんで解決をして、あとに問題を残さないような解決が望ましいという意味での提案なんですが、法務省、考えられませんか。
  139. 香川保一

    ○香川説明員 調停ができますれば、先生のお説のように、まことに望ましい。あとでさらに紛争が起こるということがないわけでございますから、非常に権利関係は明確になりまして、けっこうなことだと思うのであります。ただ、入り会い関係の調停の問題は、やはり調停の衝に当たられる調停委員なりあるいは裁判所が、その実態を十分把握いたしませんと、いろいろ当事者の主張も合理的に調整して調停に持っていくというふうにする努力がなかなかできない。実態がわからぬままで強引にその調停を成立させるということはいかがかと思いますので、同じ行政指導でやる場合の実態の把握の困難さということが、そのままやはりいきなり調停に持ち込まれました場合に、調停委員なり裁判所の実態把握の困難さという面がそのまま出てくると思うのであります。したがいまして、やはりこれは運用の問題かと思うのでありますけれども、ある程度行政指導等によりまして煮詰まってきましたところで、この点は調停で解決をしておいたほうがいいというふうな程度に煮詰まってまいりますれば、その点だけを調停に付するというふうな運用もくふうしてみるべきだろうと思うのであります。ただ、御説のように、現在、御承知のとおり、裁判所の調停事件が非常に多うございまして、これを一手に引き受けて調停ですべて解決するというには、現在の調停制度ではちょっと無理じゃないか。そのためにいろいろの予算措置のみならず、調停委員のあり方、人選あるいは機構の問題にも関連してくるかと思うのでありまして、そういう点、十分検討しなければならぬと思うのでありますが、おそらく、この法律ができ上がりまして実施されるようになりますれば、大なり小なり調停の問題も起こってこようかと思いますので、最高裁判所ともよくその点相談いたしまして、運用に遺憾のないようにいたしたい、かように考えております。
  140. 川俣清音

    川俣委員 この法案政府提案として提出される際に、法務省も御意見を述べられたはずですが、なぜそこまで進んで提案をなさらなかったかということに私は疑念を持つ。疑念ではないけれども、検討が足らなかったのじゃないか。これほど係争事件が起こっておるのですから、わりあいにいまでは判例等もありますだけに、裁判所のほうが理解が深いのではないか。これを一般の行政にまかせる、ある程度煮詰めさせるというが、煮詰めさせるような場所はないのですよ。みんなしろうとです。町村長といい、町村会議員といい、みなしろうとです。調停委員が得られないというけれども、それらの人が行政指導をするということになっておるのですから、そうすると、適当な調停委員を得られないということは、行政指導もできないということになるのじゃないかと思う。村におる人の中で、そういう調停委員となることができないという人でありますならば、行政指導もまたできないということになるだろうと思う。そういうことでございますので、これはほんとうは法務省もかなり事件を取り扱っておって、このために相当な困難を感じ、裁判行政上非常に苦労しておられるのを十分お知りになっていながら、意見を加えないでこの法案賛成された。しかし、意見はいろいろ出たようでございますが、むしろ末端の意見が出て、本質論的な意見が出なかったのは、私は、司法行政としてこれに関与するに不十分であったということを感ずるのでございますから、もう一度、ひとつ新たなる角度で検討してほしいということを申し上げて、大体私の質問を終わるのですが、もう一点だけ、水産庁見えていますから、水産庁にひとつ……。  海水面の漁業権の整備は終わっていますが、内水面の整備は十分な整備が行なわれていないと思うのです。特に内水面については、川は別にいたしまして、湖沼についての内水面漁業権については、かなりの入り会い漁権というものが存在することは、すでにお認めだと存じます。これはそのままになっておるのですが、水産庁は、この入り会い林野近代化について、漁業のほうは近代化しなくてもいいという考え方でおられたのかどうか、あるいはそういう入り会い入漁権というものはないということで無視したのかどうか、この点ひとつお尋ねしたいと思います。
  141. 安福数夫

    ○安福説明員 戦後制定されました漁業法では、海も内水面も同じフォームで整理されております。したがいまして、内水面関係も漁業権があったわけでございます。観念的には入漁権もあったかと思います。あれで整理されました内水面の漁業権につきまして、現在入漁権があるかどうかということは、必ずしも私つまびらかにしておりませんが、私の承知している範囲では、内水面の湖沼についての入漁権はないというふうに理解しております。入漁権につきましては、現在の新しい戦後の漁業法につきましては、漁業権というものを、古い慣行を断ち切りまして、できるだけ近代法になぞらったような内容にいたしております。同時に、漁業権を持っている本権者と入漁する入漁権者との間には、設定契約というもので入漁権の設定をやっております。したがって、それにつきましては、入漁権の登録もあります。問題のあるところは、海区のあるところは海区漁業調整委員会、内水面の場合は内水面漁場管理委員会がトラブルを裁定する、こういうふうなシステムになっております。
  142. 川俣清音

    川俣委員 表向きはそのとおりです。海水面については漁業調整委員会が相当活動して、これを調整あるいは整理されているということは事実です。この点は認めます。大体整理が終わったということも統計上明らかです。これは問題ない。内水面についても同様であったというけれども、件数をあげてごらんなさい。出ていないじゃないですか。金額からいいましても、問題の件数からいいましても、統計に出ていないじゃないですか。
  143. 安福数夫

    ○安福説明員 入漁権の件数でございますか——。入漁権は、現在ございますのは設定行為、当事者間の契約で、入漁権は設定されるわけでございます。いわゆる行政庁がその計画を立てるというたてまえになっていないわけでございます。したがって、当事者間で入漁権を設定するというケースがあれば、設定契約に基づいて入漁権を設定しまして、それの申請に基づいて登録する、こういうことになっておりますが、現在、内水面について、純粋な湖沼についての入漁権の設定は、私の承知している範囲では、ないということでございます。
  144. 川俣清音

    川俣委員 そこなんですよ、問題は。入り会い漁業権であるために、あえて漁業権は設定していないかもしらぬけれども、慣習上、放魚をいたしましたりして、実際は淡水魚の育成をはかっておる。これが慣習上行なわれておる。したがって、これが入り会い権的に、所有権は別にしても——あるいは所有権が県にある場合、あるいは村にある場合も、湖沼によりましてはありましょうが、漁業権の申請場所は都道府県ですね。ところが、府県にも届け出ないで放魚が行なわれ、漁獲が行なわれておる。これは漁業権とは言わないかもしらぬけれども、実際上の漁業権。ほかの者を立ち入らせないので、一般の者には自由な漁獲の権利が持てない。明らかに制限された制限漁業権なんです。これはないということ。それが私は慣行による漁業権だと見ておる。いわゆる漁業法上申請されたものではなしに、善良な慣習上の権利で、これが入漁権だ、こう理解すべきじゃないかと思う。ことに、淡水面といいましても、かなり面積の大きいものもあり、ごく小さいものもあるわけです。そこに権利を設定して、いわゆる税の対象になるほどの大きなものでもないということになると、慣習上の入漁権、あるいは養魚するという犠牲が払われて、その犠牲に伴う入漁権と申しましょうか、漁獲権が発生してきている。この事実はあるでしょう。これに対して林野のほうは、それも含めて整備できるような印象を与える説明になっておるが、それについて水産庁は一体どのようにお考えになっておるか、この点をひとつお伺いします。
  145. 安福数夫

    ○安福説明員 先ほどの私の御答弁で、あるいは入漁権ということばと漁業権ということば、それの認識が違っていたかと思うので訂正いたしますと、漁業権は旧漁業法の間では四千件ばかりございましたが、それがあと約二千件、半分くらいになっております。内水面について漁業権として保護して、特権的な権利を与える、そこまで保護する必要があるかないかという一つの基準があったと思うのです。したがって、そういう形で漁業権が整理された、こう思います。  それから、確かにいま御指摘になりましたように、事実上の行為としまして、内水面の特定の水面についての利用が漁業権と離れて利用されている、こういった形態もあると思います。その場合に、これが私的な関係で、それほど公共的な面に広くなっていないような形、むしろプライベートに近いような漁業形態もあるわけです。その所有権者との契約に基づく管理、そういう形で漁業するということも、ケースによりましてやっているかと思います。それを漁業権という公な権利として、よりパブリックな角度から漁業権として取り扱う必要はないであろう、こういう角度から整理されているんだろうと思います。われわれはそういうふうに理解していますので、それを水産庁の立場で、現在出されております林野庁法律との間の調整いかんという御質問でありますが、私どものほうは、漁業権のサイドから内水面の利用を考えておりますので、現在のところ、その関係はどうかと申されましても、ちょっと答弁いたしかねるのですが…。
  146. 川俣清音

    川俣委員 だから私は、漁業権とまでははっきりしないけれども、入って魚をとる権利、入漁権というほうがむしろ適切な表現かもしれぬ。それじゃ、入漁業と漁業権とどこが違うかというと、海水面のようなものの場合も問題がありますが、入漁権の場合は、おもに魚ではなくて、いそについたものをとるのが入漁権の本質のようでございます。内水面の場合は、むしろ漁業権なんというほどの膨大な権利でなくして入漁権、お互いに魚をとる権利、他人にはとらせない、制限はあるけれども、独占的なものではなくして、その湖沼の護岸を整備するのに、共同で労力提供をして護岸整備をするような中に含まれる湖沼、県がすでに護岸工事をするようなところになると、これは漁業権ということになるでしょうけれども、部落の中に存在する湖沼で、しかも、その湖沼の護岸をときおり共同で労力提供で整備をしていく、あるいは石を買う場合の金銭的支出もあるかもしれませんけれども、そういう労力提供で、共同で共有で管理しておる地域内の入漁権というものがあるのじゃないか。これにあらためて漁業権など設定されると非常に困るという問題も出てきます。そこで、近代化ということになりますと、もっと設備をかえて、漁業権を正確なものにしたほうがいいということになりかねないのではないか。近代化が最近の流行語のごとく、県やあるいは水産庁がみずから積極的に進んでそういう設備をしてくれるなら、新しい漁業権が出てもいいでしょうが、小さな湖沼で、部落の人たちの労力によって保護されておるようなものの中には、漁業権など発生する余地はない。入漁権というものはあるであろう。しかしながら、生活共同体として、ことに海水面の漁業から遠ざかっておるところでは、淡水魚の育成等によってたん白資源を補給するという長い慣習の中で生活共同体が営まれておるものを、やはり保護育成していく必要があるのじゃないか。単なる近代化などということでこういう整備対象になっては困るじゃないか、こういう意味で水産庁の方針をお尋ねしたいというのが基本なんです。これ以上は質問しませんから答弁願いたい。   〔田口(長)委員長代理退席、倉成委員長代理着席〕
  147. 安福数夫

    ○安福説明員 現在の内水面の漁業権をどういう形で取り上げるか、先ほど私が抽象的なことばで、よりパブリックな角度の漁業権として位置づけて申し上げましたが、具体的に申し上げますと、遊漁規則をつくりまして、だれかが魚をとる、その場合に料金を支払ってそこへ入漁する。そこでどういう増殖計画があるか、コストがいろいろかかるというような、かなり積極的な増殖をやる。一定レベル以上の積極性をもって、その水面をよりパブリックに、より広い範囲に使う利用形態、そういう実態のあるところを内水面の漁業権として、制度としてつかまえておるわけであります。したがいまして、ただいま先生のほうから御質問がありましたが、そういう部落共同体的なところについての漁業権のつかみ方、これをいささか近代化という角度で混乱させちゃ困るという質問であったかと思いますが、現在私の考えておる漁業権は、そういった形のかなり高度のものを現在の漁業法の体系では漁業権として取り扱っておる。これはせんだっての改正のときも、そういう制度を打ち出しておるわけでございまして、それをさらにいじると申しましょうか、漁業サイドからそれを改正する、そういう考え方は現在ございません。
  148. 川俣清音

    川俣委員 もう一つで終わります。  最近、関東から東北にかけて、かなり冷水のところに、内水面の漁業育成のために、いわゆるニジマスと申しますか、冷水に耐えるような魚の育成が盛んに行なわれておる。この場合の水の問題について、入り会い権の中を通ってくるような場合は、通す通さないというような問題も起こってくるわけです。相当長い距離でありますならば、これは問題が起きるでしょう。十メーターか五メーターくらいな水を引くために、紛争が起きるというようなことがありまして、入り会い権の地域——入り会い権の地域だからこそできるのですね。個人所有のところでは、権利を買って導水をするなんということはなかなか困難じゃないか。そんなことではとても淡水魚の育成にはならない。そこで、部落有地と申しますか、いわゆる部落としての、地方自治体で持っておる部落有地じゃなくして、入り会い権的な部落管理の中の土地を利用して、導水路をつくるというような場合に、最近紛争が絶えない。そこで、私はこの問題を提起したわけです。これは法律上の問題よりも、むしろ指導の問題だろうと思います。日本の海水面がだんだんと制限を受けて、たん白資源として内水面の活用が盛んになってまいりますときに、こういう問題もあえて解決しておかなければならないのじゃないか、こういう意味で検討をお願いすることにいたしまして、この入り会い権に対して無関心であってはならないということ、いずれあなた方のほうにも関係することが多いのだということで、御検討願いたいということを申し添えて、私の質問を終わりたいと思います。
  149. 倉成正

    倉成委員長代理 芳賀貢君。
  150. 芳賀貢

    ○芳賀委員 法案の内容の問題点並びに先般の国会派遣の現地調査における幾つかの問題点につきまして、政府の見解を明らかにしてもらいたいと思うのであります。  第一の点は、この法案が林業基本法の第十二条の「林業経営の健全な発展」の事項の中にうたわれておることは、これは言うまでもないわけでありますが、特に農業基本法第二十二条との関係というものに対して政府はどう考えておるか、これは政務次官、あるいは長官からでもいいですが、お答え願いたいと思います。
  151. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い林野近代化は、いまお話しのとおり、林業基本法の第十二条の、入り会い林野近代化その他、要するに、小規模林業経営の規模の拡大というところに、一応足がかりを持っておりますけれども、しかしながら、入り会い林野の土地利用の高度化をはかっていく場合には、あえて林業のみではないわけでございまして、農業の、特に畜産関係近代化におきましては、この経営の基盤整備、そういう面で十分に活用されなければならない、こういうふうに考えております。
  152. 芳賀貢

    ○芳賀委員 林業基本法の十二条の規定については、これは長官の言われたとおりとしても、特にこの法律の目的が、土地の農林業上の利用を増進するためということが前提になっておるわけですから、林業基本法の持つ一面からだけでなくて、一方においては、農業基本法趣旨というものがこの近代化法にどういうふうに反映しておるかという点も大事であると思うわけであります。したがって、農業基本法第二十二条の規定、いわゆる農業構造改善と林業の条文規定についてどういう理解に立っておるかですね。
  153. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点は御承知のとおりであります。
  154. 芳賀貢

    ○芳賀委員 御承知と言っても、私が質問したわけですから、それに対して政府としての農業政策的な面から、この入り会い権近代化法をどのように施策上取り扱うかという点を少し明らかにしてもらいたい。
  155. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 入り会い林野近代化というものは、未開発のままにほうられておるその地区の開発をしていこうということに、一つの大きなねらいがあるわけでありまして、したがって、その地区に適合したいろいろな整備計画が立てられるはずであります。その整備計画が、農業基盤を整備して、さらに積極的に進めていこうという、たとえば畜産振興のための放牧場をつくるとか、あるいは草地改良をやるとか、そういったものに利用される、そういう面の整備計画ができる場合もあり得ると思います。要するに、その地区の整備計画に基づきまして、そうしてそれが農業基本法のいわゆる基盤整備対象となり、それが必要となることならば、それに対して積極的にわれわれはこの法律趣旨に基づいて援助をし、あるいは協力をしなければいかぬ、あるいは指導を進めていかなければならぬ、そういうふうに考えておるわけであります。
  156. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特に先日現地調査をしました結果から見ても、入り会い林野並びに旧慣使用林野経営実態というものは、言うまでもなく、これは農業上の立場から林野の有効利用をやっておるという形態が多いわけですね。専業的な林業者が入り会い林野を共同で経営しておるというような形でなくて、農業的な立場にある従事者が入り会い林野あるいは旧慣使用林野を活用しておる。これが歴史的な経過であると考えるわけです。したがって、その基礎は、やはり農業の立場から見た林野の活用ということになれば、これはやはり農業政策上の見地から、この法案の取り扱いは相当慎重に講ぜられておるのではないかとわれわれは推測しておるわけです。ですから、この点をできるだけ明らかにすることが、内容的にも整備計画あるいは土地の利用計画を立てる場合に重要な点になると思うのですね。
  157. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 おっしゃるとおりでありまして、そういう方針で進まなければならぬと思います。
  158. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、整備計画実施の問題でありますが、まず順序としては、入り会い権を消滅させるということが前提作業になるわけですが、この消滅の手続は当然全員の合意によって行なわれることになるが、その消滅された後の権利というものをどういう形態で生かしていくかということが、説明の中にも尽くされておるわけですが、従来の入り会い林野等の経営の形を見ると、大きく区分すると、共同的な利用、直轄利用の形、それから分割利用の形ということに区分されると思うわけですね。その形態が歴史的にずっと継承されておるということになると、現在の経営形態あるいは利用形態というものを、権利の消滅によって新しい権限を取得させて高度に活用するということになれば、おのずから新たなる経営の形というものを予測されるわけです。この点については、従来の経営の形というものをあまり大きく変革させないで移行させるということが最も無難な道であるというふうに考えるが、しかし、政府においてもせっかくこのような法案提出されて、これが成立した暁においては、一定の方針に基づいて、その指向されるべき方向に今後の入り会い権近代化というものは進むことでなければならぬと思うのです。ですから、主要なる形態あるいは政府として期待する方向というものがおおよそどういうものであるかということを明確にしてもらいたいわけです。
  159. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い林野の利用形態は、いまお話がございましたように、古典的な共同利用形態から漸次団体の直轄利用形態、あるいは個別分割利用形態に変遷を遂げております。  こういうような利用の権利近代化していってどういうふうに持っていくかということは、あくまでも整備計画の内容の問題でございます。それからその内容については、あくまでも全員の合意が必要であるということでございますから、入り会い権者の一致した意思によってきまってくるということになるかと思います。  そこで、直轄利用形態の場合には、やはり自然の勢いとして生産森林組合等に移行するというような形が多くなるというふうに考えられます。一方また、分割利用形態の場合には、個別分割というようなことになるであろうというふうに一応は考えられるわけでございます。しかしながら、一方におきまして、この近代化された権利関係の一部への集中あるいはまたはなはだしい分散、そういうことを避ける意味合いにおきまして、でき得る限り協業化の方向に持ってまいりたい。林業の経営の場合には、それが生産森林組合である場合が主として考えられるわけです。農業の場合には農業生産法人というような形が望ましいということは、かねてから繰り返し申し上げてまいりましたので、そこで、コンサルタント等が入り会い林野近代化をはかり、相談に乗っていく場合にも、そういうような考え方で相談の相手になる。また知事の認可の基準といたしましても、そういうような考え方を優先し、そういうふうにやはり認可の段階において知事として指導もしながら、また旧慣使用林野の場合には、市町村長としてそういうように指導しながらやってまいりたい。要するに、協業化の方向にやってまいりたいというふうな考え方でいるわけでございます。
  160. 芳賀貢

    ○芳賀委員 法案によると、入り会い林野整備計画が完全に策定されて、それが法的な認定をされた時点で、従来の入り会い権というものは消滅するということになるわけですが、しかし、事実上の手続としては、まず関係権利全員現状入り会い権の形態を消滅させるということに対して合意しなければならぬと思いますね、第一段階においては。そうして次の段階で、整備計画の策定についてまた全員が合意しなければならぬ。合意は一つの時点で行なわれるわけでありますが、しかし、段階的には、現在の入り会い権の形態を解体させ、権利の消滅を前提とした合意があり、また実行面においては、整備計画の決定について全員が合意する、こういうことになると思いますが、いかがですか。
  161. 田中重五

    田中(重)政府委員 それはお説のとおりでございます。
  162. 芳賀貢

    ○芳賀委員 林業基本法においても、所有形態が零細な林業の経営に対して、これはやはり近代性が多分に失なわれておるわけですからして、結局共同的あるいは協業の経営のほうになっていくということは、入り会い林野だけでなくて、一般の私有林においてもその方向が大きく期待されておるわけです。ですから、入り会い林野だけが解体されて、共同あるいは協業の方向にいくべきだということには——そういう狭い視野で考えるのでなくて、全体の小規模の林業経営というものは自立性がないわけですからして、やはり方向としては、共同的あるいは協業の形に移行させる、それを政府として政策的に、あるいは行政的に強力に指導するということだと思いますが、いかがですか。
  163. 田中重五

    田中(重)政府委員 それもお説のとおりでございまして、林業基本法に基づいて林業構造改善指導をしておりますが、これはやはり小規模林業経営の規模の拡大であると同時に、それはもう一つの側面から見ますと、協業化の促進という方法で指導をしているわけでございます。入り会い林野権利関係近代化の場合におきましても、やはり基本的な方向というか、方針は、その趣旨で進めてまいるように指導の指針もきめてまいりたい、そういうふうに考えております。
  164. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先日来の質疑の中においても、入り会い権の消滅に伴って個別私権化をするということがたびたび繰り返されておるわけですが、その内容、意図するものが、ややもすると権利の分割というふうに先入的にとられておるわけですね。そういうことではないと思うのです。入り会い権の消滅に伴って新たなる権利の取得あるいは設定を行なうということがこの法案趣旨であるわけですからして、必ずしも個別化とか分割化ということがねらいではないわけでしょう。移行される権限の所在というものをこの際明らかにしておく必要があると思うのです。
  165. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権という権利が、民法上認められた物権であるということは言うまでもないと思います。ただし、それは法律の面でも、たとえば共有の性質を有するとか、あるいは旧来の地方の慣習に従うとかいうふうに簡単に規定をされておるだけでございます。そこで、そういう入り会い権を新しい権利に変えていくという場合に、変えられた権利が、どのような協業体あるいは法人に出資されるにいたしましても、ひとまず個人権利——それが所有権の場合もごさいましょうし、地上権の場合もございましょうけれども、その個人の持ち分を明らかにする意味におきましても、私権に一応改変される必要がある。そういうことが、権利関係近代化、まずその土地利用の高度化をはかっていくという前提として必要だということを言っているわけでございます。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その点が、この法案の第四条の三項の規定の中で、当該の土地利用に関する計画においては、特に森林法に基づくところの生産森林組合、それから農地法によるところの農業生産法人に出資という形で移行される場合にも、計画の一部にこれを入れることができるということになっておるわけですが、この場合の森林法に基づく生産森林組合あるいは農地法に基づく農業生産法人というこの人格と、いま長官の言われた個人としての人格というものを並べて、これに私権を帰属させるという場合に、その私権上の人格というものは差異がないとわれわれは考えておるわけですが、政府としては区別があるというふうに考えておるわけですか。
  167. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権者が、たとえば生産森林組合に出資するにいたしましても、その出資する人格としての入り会い権者の私権をまず近代化する必要がある、そういう意味でございます。その私権として取得したものを生産森林組合なら生産森林組合に出資する、こういう順序になるかと思います。
  168. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは森林法並びに農地法をよく勉強してもらえばわかるわけですが、この両法律にいうところの出資というものは、必ずしも土地、林野という現物の出資をさしているのではないのです。ただ、この両法人とも組合員たる者は必ず出資しなければならぬという規定の上に立っているわけですから、当該農地とかあるいは林地を現物の形で必ず出資しなければならぬというわけではないのですよ。その点はわかっているわけですか。
  169. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点は承知はしておりますけれども、この生産森林組合に森林あるいはその他の権利を出資して、そうして森林組合という法人に対する出資者となるためには、いま申し上げましたように、権利の明確化がまず前提となるというふうに理解しているわけでございます。
  170. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この生産法人の関係はあとでまたよくお尋ねしますが、ただ、手続上の問題として、入り会い権を解体して、それを直ちに全員の合意によって生産森林組合あるいは農業生産法人に移行させるということは、これは四条三項の規定によって土地利用計画の中で策定できるわけですから、その場合には、個々に分割するという手続は必要ないと思うのですよ。
  171. 高須儼明

    ○高須説明員 補足して御説明申し上げます……。
  172. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ちょっとお待らください。あなたが勉強していることはわかるが、しかし、国会法や衆議院規則をよく読めば、国会において政府提案した法案についての説明とか答弁というのは、これは大臣とか政務次官とか政府委員が行なわなければならぬということになっているのですよ。そのために、毎国会において、総理大臣が、たとえば林野庁長官政府委員に任命したということを衆議院においては衆議院議長報告しているでしょう。だから、だれでも立って、わかっている者が政府を代表して答弁したり、説明していいということであれば、政府委員の任命という手続は要らないですよ。だから、政府法案を策定する作業の過程において、担当の課長が十分調査あるいは勉強して作業を進めるという労苦はわれわれわかるが、一たん国会に提出されて、委員会あるいは本会議の場で質疑を行なうというような場合には、当然大臣は主要な問題に対して政府を代表して答弁すればいいが、担当委員会においては法案の内容については当該の局長とか長官がやるのが通例ですよ。局長や長官答弁できないというときは、それは局長たる資格、長官たる資格が欠除しているということになるわけです。数年来田中長官政府委員をつとめているが、長官として答弁ができないとか、これは無能であるというふうにわれわれは感じたことはないわけです。だから、それを脇のほうから、林政部長も差しおいて、かってに立ち上がって発言するというのは、これは国会法とか衆議院規則をよく知らぬから、悪意はないと思うが、やはりそういう点も十分認識して国会に出てきて、長官の隣にすわる場合も、メモくらいを書いて渡すとか、資料をそこへ差し出すことくらいは必要だと思いますが、みだりに立ち上がって発言するというのは慎んでもらわなければならぬと思う。そういうことをやると、本人がいかにも博識であって、勉強家であるということはわかるが、常識を逸しているという非難とか、そういう判断が、こちらから見れば行なわれるわけです。極端に言えば、これはいなか者じゃないかということになると思うのですよ。林野庁というのは、現場がおもですから、それでいいと思うが、ここへ出てきて行動する場合には、これはよく慎んでもらいたいと思うのです。長官大臣も部下をよく指導しておくべきだと思うのです。これは長官から、そうであるかどうかはっきりしておいてもらいたい。変ですよ、こっちから見ていても。けじめだけつけてください。
  173. 田中重五

    田中(重)政府委員 いま御指摘の点につきましては、きわめてごもっともでございますので、その趣旨で御答弁を申し上げていきたいと思います。  それで、先ほどの御質問に関連して申し上げるわけでございますけれども、出資する場合に、まず権利関係の近代法上の私権化が必要だということをいま申し上げたわけでございますけれども、その意味が、ひとまず土地まで分けてしまうのだということではないわけでございまして、やはり私権としての持ち分を明らかにする、出資を可能にし得るようにその権利関係を明確にするということが趣旨でございまして、そのように御理解をいただきたいと思います。
  174. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえば、当該入り会い林野の面積が一千ヘクタールある、そうして権利者が百人あるという場合は、平均的にこれを面積で分割するということになれば、一権利者当たり十ヘクタールということになるわけですね。それは百に分割して、分割した土地に対して個々の権利者に帰属すべき地番とか面積を区分するということではないでしょう。千ヘクタールというものを入り会い権の解体によって、今度は生産法人の形態に移行させる、しかし、全員の合意によって百人が全部生産法人のいわゆる構成員になったという場合の持ち分というものは、個々にこれを配分した場合にはどうなるかという場合に、これは平均に配分すれば、結局十ヘクタールが一口の持ち分ということになれば、一人が十ヘクタールに分ずつの持ち分である、こういうことになるでしょう。そうじゃないですか。測量して区画割りをして、田中重五の持ち分はこの山のこの場所の十ヘクタールなら十ヘクタール、芳賀貢の場合はここというような、そういうことをやるという意味ではないのでしょう、長官答弁は。
  175. 田中重五

    田中(重)政府委員 もともと、この入り会い権というものは平等である。そういう意味では、いま先生のお話の、百人おればその持ち分としては百分の一というようなことが、入り会い権の本質上まず言えるかと思います。しかし、入り会い権は、沿革的には、やはり本家と分家との関係とか、あるいはまたある入り会い権者はまきをとってくる場合に三束とれる、ところが、ある入り会い権者は一束しかとれないというような、いろいろ持ち分が不平等になってきております。そこで、たとえば、これを生産森林組合に出資をするというような場合には、そういう持ち分をやはり、そういう慣行に従って評価をした上で決定される。でその持ち分として出資をされる。したがって、いま例としてお話が出ましたように、土地として出資をするのではあるけれども、一応私権化するのだから、AならAの部分は測量してこの場所、あるいはBはこの場所というような分割のしかたを一たんするということでは全然ございません。
  176. 芳賀貢

    ○芳賀委員 じゃ、具体的に当該土地の分割をするわけではない、しかし、その出資あるいは持ち口の形態というものは、従来の慣行等があって、必ずしも平等ではないという意味ですか。
  177. 田中重五

    田中(重)政府委員 それはいまも申し上げました入り会い林野の利用のしかたの変化にもよりますし、また、その入り会い権者相互間の規約にもよりますし、それは入り会い権者の間で認められた入り会い権というものであるはずでございますから、そこで、入り会い慣行によって、必ずしもその入り会い権者各人の持ち分は平等とは限らないわけであります。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀委員 現実にそれぞれの入り会い林野における持ち分の状態というものは一致しておらぬとしても、全部が不平等であるということでもないと思うのです。そうじゃないですか。これは生産法人に移行した場合、結局それを森林として利用するか、あるいは農地として利用するかは、利用計画の中で明らかにされるわけですが、その土地を利用した結果のあげられた収益というものは、当然所得として組合員に配分されることになるわけですね。配分の形は、一つは、経営に直接労力を提供した、いわゆる従事した分量とか日数に対する配分ですね。もう一つは、出資に対する、持ち分に対する利益の配分ということになるわけなんですよ。ですから、これはいわゆる従事分量による配分と、現物出資であっても金額による出資であっても、やはり出資に対する配分というものは、経営上これは当然あるべきわけですから、これが完全に行なわれなければ、生産法人にしても個人経営にしても、その経営を通じて期待された所得が上がらない、配分されないということになれば、これは経済的に意味がないということになるわけですね。したがって、その出資とか持ち分の移行された場合の形態ですね、あるいは分量というか、その点が長官答弁ではどうも納得できないのですよ。もう少し明快にこの点は説明してもらいたいと思う。
  179. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまもお答えしましたように、もともと、入り会い権自体が平等だというのがたてまえでございますけれども、いまも申し上げましたようないろいろな沿革をたどっている結果、必ずしもそうでない場合がある。そういう入り会い権の持ち方については、これは入り会い権者相互の間では、つまり、入り会い集団として認め合ったものでなければならない、それはこの整備計画の原則であるところの合意に基づくものでなければならぬ。そういう意味合いからいいまして、全員平等という場合ももちろんあり得るわけでございます。   〔倉成委員長代理退席、本名委員長代理着席〕 それからいま申し上げましたような経緯から、それなりの根拠を持った、それぞれの持ち分の差のある場合もあるということを申し上げているわけでございます。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、この点は、先ほどから申し上げましたとおり、従来の入り会い林野の使用形態というものが三様に——これを分けた場合に、長官は古典的な共同利用形態と言われましたが、いわゆる共同利用の形、それから直轄利用ですね、いわゆるとめ山と称する直轄利用、それから分割利用、割り山と称するものです。ですから、三様に分類することができると思うのです。第一の共同的利用という場合とか、あるいは集団の直轄利用ということになれば、これを生産法人に移行する場合は、その権利は、その権利者の平等になると思うのですよ。一と二の場合、そうじゃないですか。これが不平等でなければならぬということになれば、これは問題があると思うのです。第三の分割利用とか、分割して使用しておったという場合には、この個々の権利者の経営上の努力とか意欲によって、現況が違ってくるわけですから、それを生産法人に移行するという場合には、全員がそれを適正な評価を行なって、出資についても差異が生ずるのはあたりまえだと思うのです。そうじゃないですか。一、二の場合には、これは平等ということになると思いますが……。
  181. 田中重五

    田中(重)政府委員 それはお説のとおりでございます。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、冒頭に私が言ったとおり、共同あるいは協業に移行させることが望ましいとしても、これは現存する入り会い林野の場合には、そう簡単に政府やわれわれが期待するようなわけにはいかぬわけです。しかし、その場合、この共同化の方向に移行させるとすれば、一と二の形態の場合には、これはできるわけなんですね。そうしてまた、この持ち分の算定についても、平等に権限を持たせることができるということにこれは当然なるから、これは生産法人に移行しやすい、させやすい。第三の、いわゆる分割利用しておった割り山形態の入り会い林野というものは、簡単に生産法人のほうへ全員の合意で移行させ得るかどうかということは、現地調査の結果を見ても、なかなか困難性があるわけなんです。そういうことじゃないですか。
  183. 田中重五

    田中(重)政府委員 それはそのとおりでございまして、それで、共同利用形態あるいは直轄利用形態の場合には、これは言うまでもなく、その持ち分としては平等というふうに考えていいと思いますし、それからそういうような形のものが、生産森林組合等協業体に一番移行しやすいということも言えると思います。
  184. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、第三の分割利用形態の場合は、これはどうしても個々に分割され、実際に分割して使用しておるわけですからして、その現地についての測量とか評価とか、これはどうしてもやらなければならぬと思うのですよ。こういう形態の場合には、全員同意で直ちに生産法人に全体を含めて移行するということはなかなかむずかしいと思う。直ちに全員同意でそうなるということも困難だと思うのです。ですから、こういう場合には、若干の不同意がある場合には、段階として、どうしてもまずそれを分割するということにしなければならぬでしょう。どうですか。
  185. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権としての持ち方については、いまもお話し申し上げたようなことから、それぞれ規約によってきまっているはずでございますし、そこで、分割利用形態の場合には、現に土地そのものの区分まで明確で利用しておる。しかし、割りかえということがございまして、またある一定の年数を経過いたしますと、場所が変わるというようなところにいわゆる入り会い権入り会い権たるところがあるのだ、こういうふうに思うのでありますけれども、そういうものはやはり方針としては、生産森林組合等の共同、協業体に持っていくように、これは基本的には指導をいたしたい、こう考えているわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、そのような入り会い権の行使のしかたに置かれている場合には、土地そのものまでも個別私権化の方向を全員合意の意思としてきめる場合が多いだろうということを申し上げたわけでございますけれども、その点については国の指導方針としては、やはり零細分割化しないで、生産森林組合にそれぞれその分割利用形態の形で持ち分を持っていく。そういう出資という形で、やはり一体として経営されるように指導したい、こういうふうに考えております。
  186. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それと、全体を生産法人に移行させる方法と、もう一つは、個別私権化を実行する、こういう解体の方法を通じての整備計画樹立、こういうことになるのですね。ですから、方法論的には、この二様のいずれかになるということですか。
  187. 田中重五

    田中(重)政府委員 そのいずれもやはり全員の合意、これに基づくわけでございますが、どのような入り会い権の行使がなされていたといたしましても、その整備計画全員の合意で作成する場合に、その一つの団地に対して、ある部分については生産森林組合経営でいく、ある部分については個別分割というようなことについて全員の合意があるといたしますれば、やはりそれも一つの入り合い林野の権利関係近代化の類型だろうというふうには考えられるわけでございます。
  188. 芳賀貢

    ○芳賀委員 しかし、それは手続上から見ても問題があるのじゃないか。方法としては、全体を直ちに生産法人に移行させるという形と、もう一つは、完全に個別私権化を行なった後に、それぞれの権利者の意思に基づいて、そうして生産法人に加入するとか、あるいは生産法人を設立するとか、農業生産法人を形成するとかいうことは、これは単に入り会い権関係権利者だけが行なう行為ではないわけですね。たとえば、その近隣に農業生産法人あるいは森林生産組合法人がある。それに個別私権化した林業者あるいは農業者がその法人に加入するということは、法律は拒んでいないわけですからね。そういう段階でこれは扱うべきじゃないですか。整備計画とか土地利用計画の中で、一集団が二つに分かれて、一つは生産法人にいく、残りは個別私権化でやるというような形は、これは実際問題としてできないし、そういうことはとるべきじゃないと思うのですが、どうですか。
  189. 田中重五

    田中(重)政府委員 いま最後にお話のございました、とるべきでないという考え方、これは私も十分によくわかるわけでございます。また、とらないような方針指導をしていきたい。また、知事が認可をする場合の方針としても、そういう考え方でその整備計画を認可するように、知事の方針として指導していくことを期待しております。こういう考え方で、ある意味においては、先生がおっしゃっている考え方と全く一致しているわけでございますけれども、ただ、この入り会い権近代化への過程においてあり得る類型というものを考えた場合には、そういう場合もあり得るのではないかということを申し上げておるわけでございます。
  190. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は、現地調査の場合においても、まず現地関係者の意見の中に、冒頭に述べる点は、全員の合意ということに対して、これがなかなか実行が困難であるということを主張するわけなんです。しかし、私権尊重の立場から見ても、それじゃ三分の二以上とか五分の三以上の多数の意思によって、少数の不同意者を押えるということは絶対にできないわけですから、そういうことはとるべきでない。また、法律としてもそういうことは意図しておらぬことは説明してきたわけですが、しかし、いま長官の言われたとおり、一集団の中において、一部の者は、これを生産法人に移行すべきであるという意見を持っておる、そして若干の者は、個別私権化を主張するという場合、そういう方法毛あるが、整備計画の中でそれは容認できるということになれば、全員の集団の意思というものを努力してまとめて、一定の方向に持っていくということはできないということになるのです。本人の意思によって、共同化の方向へいきたい者はいける、それからあと、個別化を希望する者はそうしてもいいのだということの一つの方法を示した場合においては、全員がその一定の方向にいくということが、これはやれるものもできなくさせるということになると思うのです。これは問題があると思うのですよ。そういう道もあるということは、これは全員の合意というものはむずかしいということをもう最初から頭に入れて、そうして一集団が二つの道にそれぞれ分かれていってもかまわない、そういう形態というものを整備計画の中で認めるということは、非常に問題があると思うのです。これは一番安易な道ということになるのですよ。そうじゃないですか。これをあいまいにして法律を通して、この道もあるということで指導するということになれば、これは後日問題が惹起するですよ。
  191. 田中重五

    田中(重)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、ある部分生産森林組合としての経営、ある部分は個別分割としての経営全員の合意があった場合、そういう権利関係の改変に全員の合意があった場合ということを申し上げているわけでございます。それで、たとえば、こういう例について申し上げますとおわかりになっていただけると思いますけれども、この入り会い林野の土地の高度利用は農林業、こういうふうになっているわけでございますから、ある一つの団地につきましての全部が林業用地として使われるとは限らない。一部は林業用地になります。一部は放牧採草地になるかもしれない。あるいはまた果樹園になるかもしれない。林業経営でいこうという部分については、生産森林組合でいこう、それから果樹でいこうという部分については、個別分割するというような場合もあるいはあるかもしれない。そういう場合のことを申し上げますと、ただいま先生のお話にもございました個別分割か共同体の二つのうちいずれかだというほかに、いま申し上げたような一つの整備のしかたがあり得るのではないかということを申し上げておるわけでございます。
  192. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういう場合は、先ほどの長官答弁と違うのです。私の聞いているのは、百人なら百人の集団をなしておる権利者が、五十人は生産法人のほうへ移行するという意思を明らかにした、あとの五十人はそれに同調しないで、個別私権化を主張しているという場合、これは一定の方向じゃないですよ。そういうような整備計画というものはあり得ないし、指導して行なうべきでないということを指摘しておる。いま長官の言われたのは、それは全体の土地利用計画を立てる場合に、林野として活用する部分については百人全員がそれを生産法人の形で経営する、残りの農地としてあるいは果樹園として活用する分については、全員がそれぞれに利用地を区分して、そうして個別化して果樹園の経営をするという場合に、森林経営のほうは百人が全員参加しておるわけですね。それから果樹園の経営をするという場合は、これはみんな果樹園の土地というものを分割して高度にこれを使用するということだからして、さきの問題とは違うんですよね。集団が分かれ分かれになって別々の道を歩くというような、そういう整備計画というものは、これはとるべきでない。そういうことをこの近代化法でうたっているんじゃないかということを言ったわけです。後段に長官の言われたような形態があるということ、そういうことは差しつかえないと思うのですね。そうじゃないですか。
  193. 田中重五

    田中(重)政府委員 もちろんあとのほうで、いま先生が言われましたように、その土地の経営のしかたとして、入り会い権者の半分の人間はこうしたいと言い、あとの半分はこうしたいと言い、意見の一致を見ないという場合は、これは言うまでもなく、全員の合意が得られていない状態を生ずるわけでございますから、したがって、そういう入り会い林野については整備計画はできないということになるわけでございます。
  194. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それを早く言ってもらえば、時間がかからなかったのですが、わかりました。  次に、問題は、土地の利用計画をやる場合に、先ほど言ったとおり、農地法に基づく農業生産法人と森林法に基づく生産森林組合と、これはいずれを選んでもいいわけですね。これは農林業上の利用とかあるいは発展ということになるわけですから、いずれを選んでいけないということはないわけですね。その点はどうですか。
  195. 田中重五

    田中(重)政府委員 それは仰せのとおりに、この近代化法は農林業の近代化に資するわけでございますから、いずれを選ぶかは入り会い権者の自由な意思によってきまるということになるわけであります。
  196. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合、二つの生産法人は、この内容を十分検討すると、基本をなすものは共通しておるが、実態の面においては相当異なっている点があるわけなのです。ですから、農業生産法人を選んだ場合と森林生産組合を選んだ場合によって、将来ある程度の変化とか相違というものは生じてくるわけなのですけれども、そういう点をどういうふうに検討しておられますか。
  197. 田中重五

    田中(重)政府委員 確かに生産森林組合の場合、農業生産法人の場合、それぞれ取り扱いを異にしております。生産森林組合の場合には、これを設立する場合には認可という手続が必要であるし、それから農業生産法人の場合には、農事組合法人などは届け出でいいというふうに簡素化されているし、あるいはまたその従事義務においてそれぞれ限度がある、差があるというようなことはございます。また税制においてもそれぞれ若干の差があるかもしれません。そういう面については、農業に比べてどうだからということよりも、これを生産森林組合としてとらえた場合には、その生産森林組合の運営ができる限りうまくいくように制度上の改正なり不利の是正なり、要するに、生産森林組合として活発な活動、したがってその生産の基盤となったところのその土地の利用の高度化が真に行ない得るような形に生産森林組合を持っていくために、制度上の改善考えていくべきではないか、こういうふうに考えます。
  198. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど解体後の現物出資の問題が述べられたので、これに関係して、ちょっと農地法による農業生産法人の場合のいわゆる構成員資格ですね、組合員資格、これを一点だけ申しますと、農地法の第二条七項の規定で「この法律で「農業生産法人」とは、農事組合法人、合名会社、合資会社又は有限会社で、左の各号に掲げる要件のすべてをみたしているものをいう。」、次に一号で、「その法人の事業が農業(これとあわせ行なう林業及び農事組合法人にあっては農業とあわせ行なう農業協同組合法第七十二条の八第一項第一号の事業を含む。)及びこれに附帯する事業に限られること。」、したがって、農事組合法人の場合にも、この農林業をあわせて行なうということが明確にされておるわけですね。ですから、入り会い権の解体後の生産法人の場合、当然これは農業生産法人の形でやれるわけなのですね。これは法案にも述べてあるから、あえて繰り返しませんが、その次の組合員資格で、第一に「その法人の組合員又は社員は、すべて、その法人に農地若しくは採草放牧地について所有権若しくは使用収益権」使用収益権とは、「(地上権、永小作権使用貸借による権利又は賃借権をいう。以下同様とする。)」この「所有権若しくは使用収益権を移転した個人」これは第一の構成員ということになるわけです。この形は現物出資というわけじゃないのですね。これは農業生産法人では所有権、それから使用収益権ということで、権利が転移された場合の構成員ということをうたっておるが、これは現物出資という場合とは非常に違ってくるわけですね。森林生産組合の場合にはこの規定は明らかにされていないわけです。これは非常に重要な事項ですから、両法人の相違点の中でどういうふうにこれは判断して運営するかを明らかにしてもらいたい。
  199. 田中重五

    田中(重)政府委員 この出資という場合、いま先生のお話では、現物出資というおことばがございましたけれども、先ほど私が申し上げましたように、所有権の場合のほか、地上権等の出資によってその法人が形成されるという場合もあり得るわけでございますから、そのように御理解をいただきたいと思います。
  200. 芳賀貢

    ○芳賀委員 じゃこの農業法人の場合と森林組合法人の場合の扱いは、構成員の内容についても差異はない、こういう解釈でいくというわけですか。
  201. 田中重五

    田中(重)政府委員 生産森林組合の場合におきましては、これは森林法にございますように、御承知のとおりに、この組合の地区内に住居を有する個人、それからこの組合の地区内にある森林に現物出資あるいはその森林について持っている権利を有する個人、そういうのがこの組合員の資格ということになっております。それから農業生産法人の場合には、たとえば農事組合法人の場合に、みずから農業を営む個人、農業に従事する個人、有限会社の場合には出資の金額を限度責任を負うというふうになっておる点においては、必ずしも全然同じではないということは言わざるを得ないと思います。
  202. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は長官答弁ではまだ不満足です。林野庁長官だから、農業も林野関係と同じだけに知っておるということのほうが無理かもしれませんが、これは実際に解体後生産法人に移行する場合、農業法人でいくか、森林組合法人でいくかという選択の場合、その地域の実情とか将来性というものを考えた場合に、やはり将来この道のほうが妥当である、有利であるということを、これは政府責任において十分選定指導する必要があると思うのですよ。そう思わぬですか。
  203. 田中重五

    田中(重)政府委員 それは仰せのとおりでございまして、そこで、かねがね申し上げておりますように、この入り会い権の解体と新しい権利の設定についての法律上のコンサルタントのほか、農業あるいは林業についてそれぞれのコンサルタント、専門の人を置きまして、そうして具体的な入り会い林野近代化についての相談相手になるというふうに予算措置を講じてまいることにいたしておりますし、また、その点については、県知事としても遺憾のないように指導をするという考えでいるわけであります。
  204. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、加入、脱退あるいは持ち分の払い戻しの関係についてですが、生産森林組合の場合には、これは施設組合の場合もそうですか、加入、脱退は自由になっておるわけですね。これは原則的な規定です。それから生産森林組合の場合は、生産組合の区域内の居住者が加入の意思がある場合には加入できるということになるわけです。これは非常にばくとした規定ですが、いまの森林法ではそういう規定づけが行なわれておるわけです。だから、加入、脱退は自由という原則に立った場合、入り会い権が解体されて全員の合意で生産森林組合を形成した場合、その地域の居住者が加入さしてくれと言った場合に、いやこれは計画が違うからだめだということはできないわけですね。生産法人は、登記によって初めて第三者に対抗することができるということになっておるわけだから、いかなる計画があっても、いやあなたは入れるわけにはいかぬというわけにはいかぬと思うのですよ。その点はどう考えておられますか、特に生産森林組合の場合ですね。
  205. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点は、生産森林組合の協同組合原理に基づいて行なわれるわけでございますから、言うまでもなく、加入、脱退の自由は認めなければならない。その資格がある場合に、入ってきたいという者を拒むわけにはいかない、そういうふうに考えております。
  206. 芳賀貢

    ○芳賀委員 したがって、脱退も自由であるということになりますし、脱退する場合には当然持ち分の払い戻しをしなければならぬということになれば、この場合の持ち分の払い戻しは、特に入り会い権関係の組合員に対する脱退の場合の持ち分の払い戻しはどういう形でやりますか。
  207. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権の場合を考えますと、普通、センサスによった調査によりますと、脱退といいますか、これを離村という形で脱退というふうに考えますと、八割ぐらいまでは入り会い権を失うというのが規約にあり、慣行になっておるということでございますけれども、しかし、生産森林組合に移行してしまった場合は、これはやはり脱退した場合は、それなりの脱退金を要求する資格があるというふうに考えなければならないと思います。
  208. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうことが予測されるわけです。ですから、結局整備計画あるいは利用計画を立てる場合、生産森林組合あるいは農業生産法人に移行させるという計画が認定され、それが実行されて入り会い権は解体するわけですから、その場合、定款とか規約あるいは指導要綱等において、出資した持ち分についてどういうような方法で払い戻しをするかということは明らかにしておかなければならぬと思うのですよ。法案にちゃんと森林組合の生産法人並びに農業生産法人の道があることを明示しておるわけですから、そういう場合どうするということはあらかじめ用意しておると思うのです。
  209. 田中重五

    田中(重)政府委員 脱退についての自由は、いま申し上げましたとおりでございますけれども、脱退する場合の払い戻しの方法等については、定款できめられるべき問題でございますので、そういう定款の作定にあたって、いま先生が懸念されるような面ができるだけ払拭されるように指導してまいる必要があるというふうには考えるわけでございます。
  210. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはそう簡単なものじゃないと思うのですよ。たとえば農業協同組合法をつくる場合でも、定款の場合には模範定款例というのをちゃんと法案審議と同時に用意して審議に供しておるわけですから、こういう近代化法を出した場合、生産法人に移行することが好ましいと言っておきながら、しかし、その場合に、法人化した場合の権利の尊重とか、あるいは持ち分の払い戻しの方法をどうやるかということは、その組合員の自由な意思できめるというわけにはいかないのですよ。定款も認可事項になるわけですからね。そういうものが全然準備されていないというのはおかしいじゃないですか。
  211. 田中重五

    田中(重)政府委員 生産森林組合の定款についての模範定款は準備してあるわけでございます。
  212. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その模範定款では、払い戻しの場合にどうなっているのですか。
  213. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまも申し上げましたように、模範定款で、払い戻しの規定については、一応出資以後の成長資産にまでは及ばないというふうな考え方を打ち出しておりまして、いずれにいたしましても、脱退金のきめ方としては定款にゆだねるということで、認可事項として規定しておるということでございます。
  214. 芳賀貢

    ○芳賀委員 森林法の九十九条に、脱退者の持ち分の払い戻しの規定があるわけなんですけれども、これは法律規定ですが、組合員が脱退した場合は、定款の定めるところに従い、その持ち分の全部または一部の払い戻しを組合員の権限として要求することができるということになっておるわけです。だから、通常の一口幾らという出資をした場合は払い戻しが容易であるが、政府側で主張しておられるいわゆる現物出資という意味が、結局入り会い権が解体して平等に分けた場合に、それに相当するものがいつまでも現物の形で出資されておるという場合ですね。現物出資だから、現物を払い戻しの形で返してもらいたいという請求があった場合、どうするわけですか。これが最初から問題なわけなんです。
  215. 田中重五

    田中(重)政府委員 その出資されたものを返却するというような場合は、やはり出資されたものに見合って換価された額で返却する、払い戻すということにならざるを得ないと思います。
  216. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうであれば、農地法の生産法人と同じで、出資の形の場合、その農地というものを適正な評価をして、法人に権利を移転するわけですね。しかし、それはあくまでもその組合員の持ち分として権利が保存されるわけだからして、脱退の場合は、その持ち分というものは当然これは払い戻しをするということになる。しかし、長官説明によると、その入り会い権の一部分をそれぞれの現物として出資するのだということになれば、出資した後においても、個々の持ち分を現物の形で保存されておるということになれば、脱退の場合は、払い戻しの形でその現物を返還しなければならぬということに当然なると思うのですよ。
  217. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権近代化して、そうしてそれを持ち分として出資するという場合の額のきめ方は何によるかということになりますと、これはやはり貨幣価値に換算をされた、換価されたものとしてきめるというふうに考えていただきたいと思います。
  218. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから出資の時点における価格というものを基礎にして、脱退時においては、それに見合う額を払い戻すということであるが、しかし、これを林野として経営する場合、解体したときは、全く放置されたままの林地であった。それが今度は十分改良をして造林地にした。そして、それは相当の資金とか労力を加えて毎年育成する。やはり三十年あるいは四十年たたぬと主伐期に入らないわけです。しかし、一年一年でその財産は生長しているわけですね。ですから、たとえば、二十年たった時点で脱退するという場合、全く造林してないような状況において評価された持ち分というものが、当時の時点では払い戻しの対価の計算が行なわれるということになると、これは大きな矛盾が出るのではないですか。財産の生長については、やはり毎年度なら毎年度の生長に見合った財産の評価を行なうとか、それに基づいた組合員の持ち分を計算するということがやはり必要なことになるのじゃないですか。生きものですからね。木を植えた場合、これが生長しないのであれば、何十年たっても変わりはないが、それは全く無価値な状態のときに評価した対価に基づいて、何十年たっても払い戻しをするというようなことは、これは不合理なことになるのじゃないですか。
  219. 田中重五

    田中(重)政府委員 そういう点も、やはり定款にゆだねられる問題でございますけれども、普通は払い込み済みの出資額に応じて算定されるというのが通例で、その払い戻しの額が生長資産に及ぶというようなことはないというのが通例でございます。
  220. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはものによりけりじゃないですか。森林生産法人なんかにそれが通例だなんていうのは、これはおかしいですよ。そういう考えは、現在の入り会い権のそういう思想の上に立っておるのですか、いわゆる出損、入り得というような……。それじゃ何も近代化する必要はないじゃないですか。これはここで結論を出すことはできないとしても、今後の生産法人における加入、脱退の自由の原則の上に立った場合、脱退の自由が正当である場合、これに制裁とか罰則を加えるわけにはいかないですからね。しかも現物出資ということを繰り返して政府は強調されておるわけですからして、そこから矛盾が発展していくわけなんです。これはまあ後日、この点を明らかにしてもらいたいと思う。同時に、模範定款例についても早急に提出してもらいたいと思います。  次に、もう時間の関係もありますので、旧慣使用林野整備計画について、簡単にお尋ねしておきたいわけですが、これは入り会い林野の場合は、権利者の自発的な意思に基づいて整備計画が立てられるということになっておるが、この旧慣使用林野の場合は、権利者の自発的意思に基づいて整備計画を立てるとか、土地利用計画を立てるということはできないわけですね。市町村の意思に基づいて、公共団体の意思に基づいて、しかも、これは市町村として必要である、あるいは国として必要であるという場合に、限定された整備計画ということに法案ではうたっておるわけです。その旧慣使用権の実際の権利者が整備計画を立てて近代化したいというような意思のある場合、どうしてこれをやらせないか。この点が入り会い林野の場合との大きな相違点になるわけです。これはどう解釈するのですか。
  221. 田中重五

    田中(重)政府委員 これは、入り会い林野というものとして民法に規定してある考え方と、それから地方自治法に公有財産として定義されておる考え方と二通りあるために、この法案におきましても、二通りの整備のしかたを考えておるということでございまして、使用収益の実態としては、先生も御承知のとおりに、昔からのいわゆる入り会い林野的使用ではあったけれども、たまたまそれが市町村名義の公有財産ということになった以上は、この公有財産の権利関係の消滅あるいは改変については、市町村長が市町村議会の議決を経てきめることができる、こういうふうになっておりますから、その慣行の消滅あるいは権利関係の改変については、旧慣使用権者はその表面には出てとないというのが地方自治法の整理のしかたでございます。しかしながら、御承知のとおりに、旧慣使用林野といい、入り会い林野といい、歴史と実態は同じであるということでございますから、そとで、入り会い林野近代化全員の合意によるということを前提とする以上、旧慣使用林野についても、旧慣使用権者意見を聞いて、そうして市町村長がその手続を運んでいくという、地方自治法に基づいたそういうしかたを考えたわけでございます。しかしながら、その意見の聞き方についても、入り会い林野における取り扱いに準じて、その旧慣使用権者全員の合意の上に進めるように持ってまいりたいというふうに先ほども大臣から答弁があったわけでございます。
  222. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは法案の第二十条の規定がそうなっておるのですよ。入り会い権の場合は、これは全員の合意によるけれども、旧慣使用権の場合は、市町村長が権利者の意見を聞くということで、これは私権論と公権論の分かれるところでもありましょうが、私の聞いているのは、第十九条において「旧慣使用林野整備は、市町村長が、当該市町村又は当該市町村にある財産区の所有に属する旧慣使用林野につき、」ここからが大事なんですよ。「その農林業上の利用を増進するための他の事業で国若しくは都道府県の行なうもの又はこれらの補助に係るものの効率的な実施を促進するため、」云々ということになっておるわけですね。ですから、旧慣使用林野整備というものは、権利者の意思に基づいて整備計画を立てるという、そういう取り上げ方ではないのですね。あくまでも公共団体が、市町村長が必要と認めたときということになるわけですね。この辺が問題があるのではないですか。権利者がぜひこれは整備計画対象にしてやってもらいたいという、その権利者の発意に基づいて、あるいはその権利者の意思を受けて、そして市町村長が当該地域の整備計画を立てるという道が、当然これは必要だと思うのですよ。ただ市町村長が自分がやろうという意思があるとき以外できないということになるわけですね。二十条の規定にも問題がありますが、十九条の整備計画の立て方に、権利者の自発的意思あるいは積極的にその意思を受けて立つというかまえが、旧慣使用林野整備の場合においては全然ないわけですね。これじゃたいした意味はないじゃないですか。どうして、権利者の意思とか意欲がある場合は、それを受けて——条件が満たされない場合は、これはできませんが、それが可能である場合には、受けて立つという根拠規定というものがあってしかるべきだと思うのですよ。
  223. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、いまも申し上げましたように、旧慣使用林野といいながら、それは法律上公有財産であるということ、そしてその所有権を持っておるのは市町村である。そこで、その処分権は、市町村長が議会にはかってすることができる権能を持っておるという地方自治法のたてまえを受けて、そしてその整備近代化をはかっていきたいというふうにしてあるわけでございます。それはあくまでも公有財産であって、地方自治法の趣旨にそうあるからということで、そういう整理をしたわけでございます。
  224. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは論議すれば相当長時間を要するし、今後の問題点として、近代化は手続法的なものであるからして、これで終わるというわけにはいかぬので、今後むしろいろいろな問題がこれに基づいてまた次々に生ずるわけですからして、その実態論的な立場からの取り組みというものがむしろ大事だと思うのですよ。  次に、伺っておきたい点は、今回の現地視察の場合においても各地の強い要望であったわけですが、ぜひ官行造林の制度というものを復活すべきではないか。単にこれは復元という形の復活ではなくて、いまの経済事情あるいは農林業の実態に合致したそういう官行造林制度を十分復活して活用してもらいたい。特にこの生産森林組合等に対して施策を進めるべきではないかという意見が各地から出されております。官行造林法が廃止された場合に、もちろんわれわれは、廃止すべきではない、こういう一番喜ばれている制度を無理やりに理由なく廃止するということは、後日大きな悔いを残すということを指摘して、将来を予見しながら、われわれは反対したのですが、ついに、与党の諸君が将来の展望を誤ったせいもあるし、農林省として大きな過誤をおかして廃止してしまった。これについてはどう考えていますか。これはぜひ大臣からお答え願いたい。
  225. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの御質問でございまするが、官行造林の問題につきましては、入り会い権整備の問題と関連いたしまして、十分この点については積極的に検討いたしたいと存じております。
  226. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大臣の御答弁は、積極的に検討するということでやむを得ませんが、林野庁長官として、その検討の中身というものは、どういう検討を行なうか、あるいは現在までいかなる検討をすでに行なったか、具体的にしてもらいたい。
  227. 田中重五

    田中(重)政府委員 ただいま大臣からもお答えがございましたが、この広大な入り会い林野の土地利用の高度化を林業的利用という面からつかまえた場合に、これの林相の改良と造林の推進には、相当な資金と労働力、また、高度の造林技術、こういうものが必要であろうというふうに考えるわけでございます。そういう面からいいまして、そういう造林の推進者として国がこれを行なういわゆる官行造林という方式をあらためて再検討するということは、大臣からもお話がございましたように、大いに検討に値する問題だと思います。これまでの官行造林は、公有財産としての市町村有林野の基本財産の造成あるいは国土の保全という面でとらえられてまいりましたが、最近の山村振興法等の趣旨に基づくところの山村の経済力の高度化、振興、そういう面から考えましても、国がその技術と労働力、組織力というものあるいは資金をもって、一つの面の推進者となるということは必要であるかと存じ、十分に検討をいたしたいと考えておるわけでございます。
  228. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今回の調査の結果の中においても、非常に要望が強いわけです。現在官行造林は完全になくなっているわけじゃなくて、いま行なっている事業は分収事業だけが行なわれておるわけでありますし、もう一つは、特に西日本の関係においては、国が国有林事業として、たとえば、民有林の奥地林の買い上げとか、そういう個人経営では十分の成果をあげることのできない、あるいは経済的な利益をあげることができないというような林地については、これはむしろ国が買い上げして、高度に利用してもらいたい、これは林業基本法の中にも明確にうたわれておるわけです。しかも大阪営林局の管内等については、官行造林を行なうために設置された営林署等も相当の個所あるわけです。そういう各個に行なった政策上の成果が中断されてしまったということは、これはわれわれが見てもまことに残念なことですからして、この旧来の官行造林制度そのままを復活するということでなくて、やはり生産法人等が行なう私有林等についても、積極的に国が事業についてこれを助長する、事業を行なうという道が講ぜられないと、今後の林業の発展とか、国民経済への寄与とかいうことは期待することができないと思うのです。そういう意味からも、一部に国有林開放論等がまだ部分的には主張されておるようでありますが、結局全体をながめた場合においては、この民有林経営の状態の中では、森林資源の蓄積を増すこともできないし、高度の活用をすることもできない。現地においては、基幹労働力はほとんどもう枯渇して、自分の持ち山の経営さえもどうしたらいいかというような、そういう困難な事情が展開されておるわけです。そういう中において、この国有林の立木だけを当てにしたような形で開放論が横行しておるということは、これまた遺憾なことなんですよ。ですから、この点もあわせて、農林大臣から、政府方針として、一方においては、むしろ民有林を国が買い上げて高度利用してもらいたいという希望が非常に強いが、また一部においては、国有林を開放すべきであるというような主張も述べられておるわけですから、これについて、政府として明快な態度というものを打ち出しておく必要があると思うわけです。いままではどうやら農林大臣中心になって、そういう無法な開放論に対しては同調しないという態度を示してきた。その誠意は多とするが、なかなかこれで心配がないというわけではないと思う。ですから、かつての官行造林制度の廃止の轍を踏まないように、この際、政府としての明らかな方針というものを国民の前に披瀝しておく必要があると思うのです。この際、大臣から明快な答弁を願いたいのであります。
  229. 坂田英一

    坂田国務大臣 入り会い林野近代化機会に際しまして、この官行造林という件については、この利用という面を考えまして、積極的に検討したいということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  230. 芳賀貢

    ○芳賀委員 開放のほうはどうですか。
  231. 坂田英一

    坂田国務大臣 現在も、国有林の問題については、いわゆる林業基本法あるいは農業基本法等によって活用するために、これはやはり売り払いをいたしておることは御存じのとおりです。そのほか、各種のいわゆる法律その他の手続によりまして、それぞれの必要なものに売り払いをするということは現在もやっており、そういう点については、もちろん将来といえども考えてまいるわけでございますから、特別にどうするという問題については、もちろんさらに一段と考えてまいりまするが、いま申しましたように、農業基本法あるいは林業基本法等によりまして、それぞれに対してどうしても売却するという問題は現在もやっておるわけでございます。そういう問題については、もちろん引き続いてそれぞれの目的に沿うように処分はいたしていくということでございます。
  232. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは現在の行政的な措置によって、国有林の活用というものは、農業者利益にも合致するように適正に行なっておるので、特に法律等を設けてやる必要は認めておらぬということを述べたわけなんですか。
  233. 坂田英一

    坂田国務大臣 さように進めてまいりたいと思います。
  234. 本名武

    ○本名委員長代理 次会は来たる十四日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十九分散会