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1966-06-01 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月一日(水曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 大石 武一君 理事 倉成  正君    理事 田口長治郎君 理事 舘林三喜男君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       金子 岩三君    小枝 一雄君       坂村 吉正君    笹山茂太郎君       高見 三郎君    綱島 正興君       中川 一郎君    野原 正勝君       野呂 恭一君    長谷川四郎君       藤田 義光君    松田 鐵藏君       森田重次郎君    淡谷 悠藏君       江田 三郎君    兒玉 末男君       西宮  弘君    華山 親義君       湯山  勇君    中村 時雄君       玉置 一徳君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 坂田 英一君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (園芸局長)  小林 誠一君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 久宗  高君         中小企業庁次長 金井多喜男君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 鶴見 清彦君         文部事務官         (体育局学校給         食課長)    吉田 寿雄君         通商産業事務官         (通商局次長) 原田  明君         通商産業事務官         (通商局農水産         課長)     平井 清士君         日本国有鉄道常         務理事     今村 義夫君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 六月一日  委員森義視君及び山本幸一辞任につき、その  補欠として華山親義君及び淡谷悠藏君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員淡谷悠藏君及び華山親義辞任につき、そ  の補欠として山本幸一君及び森義視君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一二八号)      ————◇—————
  2. 大石武一

    大石委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、委員長指名によりその職務を私が行ないます。  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西宮弘君。
  3. 西宮弘

    西宮委員 果樹振興法について若干お尋ねをいたしますが、法案内容に入る前に、第一に、今度の法案形式がずいぶんこっけいなんじゃないかと思うのですが、どうなんですか。この程度の大幅な追加、ないしは修正などをするならば、むしろ全文改正をすべきじゃなかったかと思うのだけれども、それはどういうわけですか。
  4. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 今回の法改正は、法律題名を変更しておりません。果樹農業振興特別措置法の一部を改正するという形式をとっております。従来からの果樹振興特別措置法といいます意味は、特別果樹農業振興するという意味公庫法特例を設けるという二つ意味があったかと存ずるのでございます。果樹農業につきましては、最近、ものによっては将来需給バランスについて心配されるものもございますけれども、全体といたしましては、やはり果樹農業振興するということにつきましては依然として従来と方向は変わらないわけでございますし、それから、その公庫法特例の問題につきましても、やはり公庫からこれを融資するという規定をそのまま存続させておりますので、題名の変更をいたさなかった次第であります。
  5. 西宮弘

    西宮委員 題名が変わらなくても、全文改正している例は幾らでもあると思う。従来十四条あったのに新たに八条を加えて、十四条に対する八条ですから、相当大幅に加わっておる。それに目次を加えましたり、章を分けたり、ずいぶんでいさいを改めているわけです。あるいは、特にその中でも五条の二なんというのはずいぶんていさいが悪いのじゃないかという感じがするわけです。たとえば章がまたがっておって、しかも、その五条五条の二というのは全く関係のない条文なわけですが、そういうのが章をまたがって盛り込まれておる。こういうのははなはだ不ていさいだ。とにかく全体を通して、そういう点、きわめて法律ていさいを整えていないと思うのですが、もう一ぺんお伺いしたい。
  6. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 章をまたがりまして条文二つの違った見出しがついておりますが、実は、これは法制局でもいろいろ検討いたしましたけれども、こういうふうな整理で形式上は不都合がないということでございますので、そのような改正条文を設けたわけでございます。
  7. 西宮弘

    西宮委員 形式上は、別にそれで違法だとか何とかいう問題はないと思うのです。ただ、せっかくこれだけ大幅な改正をするのであれば、その機会に非常に見やすく、だれが見てもすぐわかるようにすべきだと思うのですが、こういう点が非常に配慮が足らないのではないかという気がまず第一にするわけです。しかし、その問題は、その程度にとどめておきましょう。ぜひ、この次またあらためて直す機会でもあったら、もう少し普通の人が見てもすぐわかるようなていさいにしてもらいたいということを要望しておきます。  ところで、この法律昭和三十六年にできたわけですが、この法律ができたことによって、どれだけ果樹農業振興したということが言えるか。つまり、この法律制定によって、日本果樹農業がどれだけ進歩したということが言えるのでしょうか。
  8. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この法律によりまして、どれだけ果樹農業振興したかということにつきまして、計数的に申し上げることは非常に無理だと思いますが、果振法が制定されまして以来、果樹農業経営計画認定というものと、その認定を受けました果樹園経営計画に基づきます公庫融資というものを軸に、相当大きく果樹農業発展に寄与したものと考えております。三十七年以降、大体毎年七百地域くらいの計画認定をいたしまして、その中の植栽につきましての融資公庫から相当行なわれることによりまして、永年作物に対します所要資金農家負担というものを軽減したものと考えておるわけでございます。
  9. 西宮弘

    西宮委員 いまの御答弁のとおり、確かに融資はふえておると思うのですよ。計画にしても、件数にしても、毎年毎年ふえておるということは、この間もらった資料で明らかであります。にもかかわらず、果樹園面積の拡大なり、あるいは生産量の増強なり、そういう点では、むしろ昭和三十六年以前のほうが成績は毎年毎年あがっておった。それはどういうわけですか。
  10. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 昭和三十七年以降に植栽いたしました果樹につきましては、まだ成木になっておりません。そういう意味におきまして、面積では、全体におきまして、三十七年に見通しを立てました面積が終わっておるわけですが、生産量におきましては、見通しどおり生産が上がっていないのは御案内のとおりでございます。これにつきましては、御存じのとおり相当災害がありまして、そういう関係から、本年と申しますか、四十年の生産も、九月の二回にわたる台風によりましてリンゴミカン等に相当大きな被害があったということももちろんございますので、そういうことから生産テンポがおそいということは言われると存じます。
  11. 西宮弘

    西宮委員 要するに、この果樹農業振興法なるものは、内容的にきわめて貧弱だ、つまり、実際上の効果をおさめるほど、そう強力なものでないということが内容だと思うのです。それがために、現行法審議の際に、つまり昭和三十六年の審議の際に、これは与党野党を問わず、その点が指摘されておった。要するに、内容がきわめて貧弱だったという一語に帰着すると思うのです。  そこで、それならば今度の新しい法律は、そういう欠点を十分補っているかということが私どもの知りたい点なんで丈か、その前にちょっとお尋ねをしますが、つまり、この前の法律によれば——この前といっても、現行法ですね、現行法によれば、認定は五年で終わる、つまり昭和四十一年の三月で締め切る、こういうことになっているわけですね。それは当時の法律としては、どういう意図のもとにそうしたわけですか。つまり、五年たてばもう満度に達する、飽和状態になる、だからその辺で打ち切ってしまうのだ、こういう趣旨だったのですか。
  12. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 果樹園認定請求期間を五年間に限る規定が三十六年の法律にはあるわけでございます。その当時といたしましては、毎年大体七百地区で、三千五百ぐらいの地区についてやってみようじゃないかという計画で行なったわけでございます。そういうことで、大体その地域について、地区と申しますか団地につきまして、認定が順調に進んでおるわけでございますが、現在の段階で、五年たって、そのときにもう一回考え直してみようじゃないかということが当初の立法の趣旨ではなかったかと考えるわけでございますが、いまその現状を見ました場合には、やはり今後も果樹園経営計画認定を進め、低利、長期融資をすることによって、果樹農業を全体として振興していかなければならぬという基調は変わらないという結論に達しましたので、この際、その期限を十年間延長いたしまして、五十一年までこれを延長するということにいたしたわけでございます。
  13. 西宮弘

    西宮委員 つまり、あれですか、いま三千何百とか言いましたね、その予定した地区が消化できなかった、したがって、それが消化できるまでやるのだ、こういう意味ですか。
  14. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 毎年おおむね七百地区ぐらいを認定するという計画でございまして、おおむねその目標を達成しております。達成しておりますが、その達成しております現状におきまして、さらに果樹園経営計画認定なりあるいは公庫融資を継続する必要があるかどうかということを検討いたしまして、その必要があるという結論に達しましたので、その点を延長した次第でございます。
  15. 西宮弘

    西宮委員 昭和三十六年の法律審議の際の速記録等を見ると、その点について非常に不明確な説明がなされておるわけです。私もそれを非常に疑問に思うのだけれども、そういうふうに毎年七百地区、したがって三千五百、それが目標であって、しかも、それが着々と行なわれておるというならば、それでよかったはずなんです。だから、それにもかかわらず、五年たったらもう一ぺんそのとき考え直してみようというのは、当時のお見通しとして、まことに無定見だといわざるを得ないと思うのです。三千五百の目標を立てて、それが半分しか消化できない、だから、さらにあと五年延ばすということであれば、りっぱに計画性があると言えると思うのですが、その目標を完全に達しながら、なおかつその時点がきたら、またもう一ぺん考え直してみようというのは、少しおかしいのじゃないですか。
  16. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 毎年の七百というのは、目標ではございませんで、大体予定としまして七百ぐらい五年間やってみようということでございまして、決してそれが目標というものではございません。
  17. 西宮弘

    西宮委員 それは目標と言っても、予定と言っても同じだと思うのだけれども、要するに、その辺までやろうというつもりでやったので、それじゃ、法律は五年たてば、その認定の申請の期間は切れたわけですね。したがって、今日この法律はどうなっておるのですか。現行法はあるのですか、ないのですか。
  18. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 その規定そのものは残っております。で、現在のところ、その認定請求期間は、本年の三月末をもって切れたのでございますけれども、それに対しまする融資は、依然として続いておるわけでございます。で、法形式上も果振法はそのまま残っておるわけでございます。
  19. 西宮弘

    西宮委員 法律が残っておるというお話だけれども、いわゆる農業小六法に載っていないのは、どういうことですか。
  20. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 農業小六法は、編集は会社のほうでやっております関係上、その中から落ちたのだと思います。で、これに載っておりませんから、果樹振興法がなくなったのだということではございません。
  21. 西宮弘

    西宮委員 会社がつくった、いわゆる商業政策でつくった本でしょうけれども、しかし、開巻第一ページには、農林大臣坂田英一さんの序文が書いてある。その全体については、農林省官房文書課の名前において解説が載っておるのですよ。そういうのは、政府と全然無関係だということになるわけですか。
  22. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 確かに文書課がその中に参画いたしておりますけれども、実は、これは園芸局と打ち合わせて、園芸局が決して落としていいということを言ったわけではございませんで、その点につきましては、まことに残念でございまして、当然果振法は重要法律であるべきものでございますから、その中に載せるべきものだと確信いたしております。
  23. 西宮弘

    西宮委員 まあ、それ以上言いませんけれども、重要法律が載っていないなんというのは、まことにけしからぬと思うのです。  それでは、いままで五年だったやつを、今度十年にしたのはどういうわけですか。
  24. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 実は、この十年間にするか、十五年にするか、あるいは五年にするかという問題は、いろいろ意見があったわけでございますけれども、あまりに長期見通しですと、これはなかなか将来の方向が予測できないということもございますし、それからあまり短期では、果樹植栽、その影響があらわれる年というものとの間の期間が短過ぎるという関係上、私たちが、将来この生産ないし植栽目標を立てます期限を大体十年後に置いておるものでございますから、それと平仄を合わせまして、十年たちましたら、またその点についていろいろ検討をいたしたいということで、十年間延長したわけでございます。
  25. 西宮弘

    西宮委員 それじゃあれですね、十年たったら、またもう一ぺんそのときに考え直す、こういうことですね。  ところで、時間がありませんから先にまいりますが、三十六年の法律制定のときのいわゆる提案理由書には、果樹農業の健全な発展に寄与するためとうたわれておるわけであります。今度は、果樹農業及びこれを取り巻く諸情勢変化のためというふうに書いてあるのですが、この果樹農業とそれを取り巻く諸情勢変化というのはどういうことを言うわけですか。
  26. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 果樹農業とそれを取り巻く諸情勢変化でございますが、果樹農業におきましては生産が順調に進んでおりますが、その中におきましても果樹労働を投下する量がほかの作目に比べて非常に多いわけでございまして、最近の農村の労働力逼迫状況から、その経営合理化していかなければならないということが考えられるわけでございます。  また、果樹農業を取り巻く問題といたしましては、現在の段階におきまして、果樹に対します需要は非常に堅調でございまして、四十年の価格を見てみました場合に、それぞれの果実価格はわりあいに強含みで推移しておるわけでございます。しかしながら、その生産テンポあるいは海外からの果実輸入情勢とその消費支出状況というものを勘案いたしました場合に、ものによりましては、将来需給バランス上問題が出てくるものも予想されるということから、これについては計画的な植栽生産というものをいまのうちから立案し、これを推進していく必要があるのじゃないかということを考えまして、今回の法改正を行なったわけでございます。
  27. 西宮弘

    西宮委員 そうすると、その言うところの諸情勢変化というのは、労働力不足したということと需要が堅調である、こういうことですか。
  28. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 需要なり海外からの輸入という問題もあります。それからまた、海外におきますミカンかん詰めその他の輸出の状況というもの、こういういろいろな情勢変化というものは現在もございますし、将来も起こるのではないかということでございます。
  29. 西宮弘

    西宮委員 それでは、いわゆる労力不足、それからもう一つは、海外の問題も含めて需要供給変化というか、そういうことだと思いますが、まず第一に、労働力不足に対して、今度の法律ではどういう対策を講じているか伺いたい。
  30. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この労働力不足は、最近、日本農業の中で非常に大きな問題になっておりますが、とりわけ果樹農業につきましては、その問題が非常に大きな問題になっております。したがいまして、土地の生産性を上げると同時に、労働生産性を上げていくということを考えていかなければならない情勢だと存じます。したがいまして、国が果樹農業振興基本方針におきまして近代的な果樹園経営計画指標というものを立てるわけでございます。そこでは一定の園地の集団化というものを前提といたしまして、そこに高性能の機械を導入して、共同作業というものを前提といたしました近代的な経営を推進いたしたいと考えておるわけでございまして、県もそれに即しまして、県の果樹農業振興計画を立てます。それから果樹園経営計画というその三つの線、つまり国基本方針、県の果樹農業振興計画、それから二人以上の農業者が行ないます果樹園経営計画という線を通じまして、その労働生産性を高めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  31. 西宮弘

    西宮委員 いま、いわゆる国が立てる基本方針あるいは県が立てる振興計画に非常に重点を置いた説明をしておったのだが、これは、むろんないよりはあったほうがいいのだろうと思いますけれども、それにどの程度の期待をかけてそれを重視しているわけですか、ちょっともう一ぺん……。私の質問の意味が通じませんかな。今度の改正案は、さっき言ったように、諸情勢変化ということで、それに対応するためにやろうとしているのは三つですね。一つは、基本方針なり振興計画をつくるということ、二番目には、加工原料果実について、いわゆる団体ができるということ、三番目には、経営計画に関する規定所要改正ということ、これはつまり期間を延長するという問題だろうと思うのです。その三つしかないわけですね。その中で、国の基本方針なりあるいは県の振興計画なりにどういうウエートを置いているかです。
  32. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 国の基本方針におきましては、この法律にもございますように、一つは、果実需要長期見通しに即しまして植栽果実生産目標というものを立てたいというふうに考えておるわけでございます。従来は、果実は、果樹植栽生産見通しというものでございましたが、それを、今後国の施策方向あるいは県の施策方向を示す一つ目標目安になるものを立てるということを考えておるわけでございます。それで、その次に、植栽に関します自然的条件におきましては、これは従来からも果樹園経営計画一つ条件といたしまして、降雨量でございますとかあるいは温度というものにつきましての規定はあったわけでございますが、やはり今後は、適地につきまして果樹植栽していくという方向を打ち出しますために、傾斜地の労働生産性にも関係いたします条件基準をひとつ定めたいというふうに考えておるわけでございます。それから近代的な果樹園経営計画基本的指標でございますが、これは先ほども申し上げましたような集団的な一つの単位でその生産性を上げていくという意味におきまして、その最低限度というようなものを打ち出しまして、その中におきます反当たり労働量でございますとか、あるいは反当たり生産量というものについての一つ指標を示していきたいというふうに考えておるわけでございます。そのほか、流通機構というものにつきましても、それぞれ合理化をはかる基本的な指標を定めていき、県もその県の実態に応じました県の計画を国の基本方針に即して立てていただく、そして、その計画に基づきまして県が果樹農業者をいろいろ指導する、国、県、果樹農業者が一体となりまして好ましい方向に進みたいというふうに考えておる次第でございます。
  33. 西宮弘

    西宮委員 局長答弁、作文としてはまことにりっぱだと思うのですが、私は、いままで各種の法律を見ると、要するに、いわばそのものずばりで、対策がないという場合に、こういう国の基本方針とか県の計画とか、そういうものをつくらせることになっているわけです。たとえば例をあげてみると、山村振興法の第八条とか、積雪寒冷地帯のいわゆる積寒法の四条とか、酪農振興法の三条とか、農山漁村電気導入促進法の二条とか、甘味資源の第九条とか、いずれも国及び県がこういう計画を立てるということは、法律できめているのであります。こういう法律は、どれをとってみても、そのものずばりの対策がないわけですよ。それで、いわばこういうものをつくってお茶を濁す、そういう傾向が多分にあるわけです。私は、どうも果樹振興法についてもそういう感じがしてならないわけです。果樹農業は、ことに昭和三十六年にこれが提案された当時は、いわゆる選択的拡大で、まさに時代の寵児だったと思うのです。全く花形であったと思うのですが、そういうところで基本法関連法としてこの法律制定されたのだと思うのですけれども、それにしては内容がほとんどない。この点は三十六年の国会、あのときの記録を読まれるとよくわかると思うのだが、これは与党野党を通じて、だれも例外なしにそのことをいわば酷評しておったのですが、そのことは今度の新しい法律でもほとんど改正されておらない。そして新たに出てきたのは、いまの国あるいは県の振興計画、こういうことで、いわばこれでお茶を濁すのだというような感じが非常に強いわけです。そのことを私は非常に不満に思うのですけれども、しかし、これ以上論議しても、局長はまた別な答弁をするに違いないと思いますから、あえて申しません。  そこで、いわゆる基本方針の中にいろいろな問題が盛り込まれるわけですけれども、たとえば全国的に適地というようなものを、主要果樹について計画の中で、基本方針の中で指定をすることになりますか。
  34. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 適地を、いわゆる地図の上に落として示すということはございません。自然的な条件といたしまして、一つ気象条件といたしまして、その降雨量でございますとか、あるいは温度というような基準をひとつ示したいと思っております。それからまた、傾斜度というものも必要がございますれば、これを示すということによりまして、そういう意味一つ条件は示しますけれども、この地域、この地域というように地図の上にそれを落とすということはございません。
  35. 西宮弘

    西宮委員 それでは各果樹別に、種類別生産目標を示す、何ぼ生産するのだというその目標を示すということはやるわけですか。
  36. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 生産の十年後の目標を示したいというふうに考えております。
  37. 西宮弘

    西宮委員 十年後の目標、いわゆる長期見通しは立てますね。長期見通しとは別個に、十年後に幾らつくるという生産量を決定するわけですね。
  38. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 生産量を決定いたしますと申しますと非常にきつくなりますが、十年後の生産量はこの程度目安にするのが適当であるという数量を示したいというふうに考えておるわけであります。
  39. 西宮弘

    西宮委員 そこでお尋ねしますが、たとえば昭和三十九年の十月九日に農林省園芸局が発表しておる見通し等があるわけですが、それで見ると、これは例の答申の際にいろいろ審議会のほうから添えられた意見だけれども、それを見ると、ミカンナツミカンリンゴブドウ日本ナシ、桃、クリ、これだけあがっております。しかし、どれをとってみても、もう満度にきているのではないかというふうな表現がなされている。特にミカンなどは、むしろ多過ぎて困るのではないかというような見解、ナツミカンリンゴブドウ等においても、むしろ供給が一〇〇%をこえるというようなことです。桃の場合は逆で、新値面積が伸びない原因を検討する必要があるといっている。その他はほとんどそういう見通しだけれども、それについて一般的な見通しはどうなんですか。
  40. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 三十九年に三十八年までの情勢を考慮しまして、この見通しについての検討を行なったのでございますが、結論から申しますと、三十七年の見通しを改定する必要はないということでございます。トータルにおきましては、やはり需要が供給をオーバーして過剰ぎみになるということではございますが、ただミカンの新植の点とか、相当急速であるから、やはりその点については今後考える必要があるのではないかというふうな意見だったかと思います。ナツミカンあるいはリンゴ等については、昭和三十七年に立てました見通しのときも、四十六年には需要に対して供給が若干過剰ぎみではなかろうか、そのままのテンポで進みますれば過剰ぎみではなかろうかという見通しを、すでに三十七年に立てている次第でございます。
  41. 西宮弘

    西宮委員 それはいずれにしても非常に重要な問題であるけれども、こまかい問題になりますから……。  それでは、そういう見通しのもとに、あるいはそういう目標を立ててそれに従って生産をコントロールしていくという場合には、コントロールの方法は何によるわけですか。
  42. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この法律は、作付統制とかそういうようなコントロールをするものではございません。ただ、国が一つ需要見通しに即します生産目標というものを立てまして、これを公表いたすことによりまして、現在の比較的高水準の価格の点について、将来はどうなるだろうかということについて果樹農業者が将来の方向についての一つ目安を得るということが考えられるわけでございます。そういう意味におきまして、この基本方針はそのような役割りを果たしますとともに、この基本方針に即しまして果樹園経営計画までつながります国、県、農業者という一つのルートを通じまして、政策的に融資なりあるいはその他の指導によりまして農家の御納得をいただいて、好ましい方向にこれを誘導していくという考え方でございます。もっとも、この果樹園経営計画認定を受けない方々につきましても、やはりその方向に即して生産が行なわれますように県を通じました指導を行なっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  43. 西宮弘

    西宮委員 いまのおことばのように、いわゆる作付統制などを強権的にやろうという意図のないことは法律を見て明らかですが、そういう点は、たとえば融資その他の指導によって云々という話だったんだけれども、それではその融資の面ですが、融資でもそういう目的を達する。つまりコントロールをしていくということなんだけれども、今日まで果樹が伸びてきておる実績の中で、融資、いわゆる制度金融によって伸びたというのは、大体どのくらいの割合を占めていますか。
  44. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 果樹植栽融資でございますが、これはいろいろの制度があるわけでございまして、一つは、果樹園経営計画に基づきます果樹園経営改善資金というのがございます。それから農業構造改善推進資金というのもございます。また農業近代化資金、これは前二者と違いまして、系統の資金を利用する近代化資金でございますが、それと無利子の農業改造資金がございます。これの実績を全部積み上げてみますと……。
  45. 西宮弘

    西宮委員 発言中たいへん恐縮ですが、実は、私もそういう資料を持っておるわけです。ですから、いわゆる制度金融がたくさんあるのは承知なんだけれども、ただ、そういう制度金融でやってきたのは、今日まで伸びてきた植栽あるいは生産、その大体半分程度なんですよ。だから、私は、融資でコントロールすると言うならば、それはせいぜい半分にしか及ばないんじゃないかということを言いたかったわけです。それに対するお答えをお願いします。
  46. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 融資は、大体お話のように、約半分くらいの面積になっております。新値面積の半分でございます。そういうことで、あとのものはどうするのかというお話でございますが、果樹園経営計画認定というものと融資というものとは、直接の結びつきはないわけでございまして、自己資金で果樹植栽される方につきましても、なるべく果樹園経営計画を立ててもらって、効率的な経営をやっていただくということで、それを推進したいというふうに考えておる次第でございます。
  47. 西宮弘

    西宮委員 私が言うのは、コントロールの手段として、たとえば知事が計画をつくって、それによってチェックしていくということになるんだろうと思うんだが、それならば、なぜ知事が計画をつくるというのが任意にまかされておるわけですか。これは義務じゃないわけですね。
  48. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この改正案におきましては、農林大臣の認定という制度を県の果樹農業振興計画についてとっておりません。それは知事の判断にまかされておるわけでございます。ただ、この問題につきましては、それぞれほとんど全国、果樹については終わっておるわけでございますし、その大部分の県がこの振興計画を立てられることを期待しておるわけでございます。重要な県につきましては、その県の農業振興上必要なものでございますので、任意な規定にいたしましても、当然この振興計画が立てられるものというふうに考えておるわけでございまして、いずれにいたしましても、この法律を運用いたしますには、国、県というものが一つの統制とかあるいは命令というような関係ではなくて、同じ基盤に立ちまして、好ましい方向に進むべきだというたてまえをとっておりますので、その意味におきまして、これは立てなければならないというような規定にはしなかったわけでございます。もっとも、この計画が立てられない場合は、その県内の果樹園経営計画というものの認定も行なわれなくなるわけでございますし、またそのために、それによります公庫からの融資の道もこれが行なわれないということに将来はなるわけでございますので、そういう意味におきまして、やはり果樹農業者というものを育成していくという立場に立ちますと、県の当局におきましては当然その計画を立てるものというふうに考えておる次第でございます。
  49. 西宮弘

    西宮委員 時間がないので、大事なことがお聞きできないで残念なんですけれども、あと二、三点だけ簡単にお尋ねしたい。  知事が認定をした場合、金融機関がこれに拘束されるのですか。この法律の第五条にある、これこれの場合には「資金の貸付けを行なうものとする。」という、その字句の読み方はどういうものですか。
  50. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この「資金の貸付けを行なうものとする。」という規定でございますが、これは果樹園経営計画認定が行なわれました農家に対します資金の融通は、公庫が行なうのをたてまえとするということでございまして、公庫といたしましては、認定いたしました場合にも、いろいろこの農業者について、金融機関としての観点から当然審査をしなければならないという点があろうかと思います。したがいまして、この「ものとする。」というのは、公庫から行なわれるのをたてまえとするんだということでございます。
  51. 西宮弘

    西宮委員 そうすると、実際には、融資をする場合も、しない場合もあるというわけですね。
  52. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 これは、この規定によりまして公庫融資を義務づけるということではございませんが、この認定が行なわれましたものにつきましては、県知事が認定したものでございますから、それを尊重しまして、ほとんど大部分の場合融資が行なわれておりまして、そのために問題が生じたというような例はございません。
  53. 西宮弘

    西宮委員 その金融機関は、当然に自分の責任においてリスクをしょわなくちゃならぬと思うのですが、その関係はどうなりますか。
  54. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 公庫のリスクの問題につきましては、これは公庫一般の貸し付けのリスクと同じことだと考えておりまして、これは滞貸償却の積み立て金という制度があると思いますので、その焦げつきました場合は、それによりまして処理されるものと考えております。
  55. 西宮弘

    西宮委員 この法律の解釈として、いわゆる「行なうものとする。」というのは、これはどう考えてみても、金融機関が金融機関の立場で当然判断をすべきであって、それを行政機関が強要するということはとうていできない。いまの答弁でも、従来もそのとおりにいっていないものもあるという話ですが、第四条にも同じようなことばづかいがあるわけです。知事はこれこれのものが出てきた場合には「認定をするものとする。」というのがある。この場合も、認定する場合もあるし、しない場合もある、こういうことですか。
  56. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 これは知事が認定する立場にあるんだということを規定しておると思います。したがいまして、県の計画に沿いました計画書が出てきました場合は、当然認定をするということになるものと考えております。
  57. 西宮弘

    西宮委員 その辺が、ことばづかいとしてきわめてあいまいだと思うのですね。第四条のほうは、次の各号の要件のすべてを満たしたときには「認定をするものとする。」というんだから、これは当然に、次の各号の要件のすべてを満たしたときには認定をしなければならぬという意味ですよ。これは、だれがどう考えてもそのとおりだと思う。それ以外には例外はないと思う。それには、金融機関を拘束するであろう第五条の場合は、判断は金融機関にまかされているということだと思う。ところが、ことばづかいとしては、どっちも「するものとする。」ということばで表現をしている。これはまことに矛盾でもあるし、こういう使い方ははなはだけしからぬと私は思うのです。この点は明らかにことばを使い分けて——これは日本語が非常に不鮮明なので、こういうことになるのだろうが、その日本語の融通性をいわば利用して、あるいは逆用してこういうふうに使うというのは、まことにけしからぬと思う。しかし、時間がないから、この程度にして、それでは一つだけお尋ねして終わります。  金融機関の立場からいうと、その貸し出しをする前に、行政機関、つまり知事が認定をする。認定をしないものには貸し出しができない。あるいは認定したものは、いまお話しのとおりの拘束を受ける。こういうことはほかに例がありますか。
  58. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 これにつきましては、自作農維持創設資金融通法が同じようなスタイルをとっておると思います。これはむしろ公庫が貸すという規定になっております。
  59. 西宮弘

    西宮委員 貸すということを義務づけているならば、それはまた話が別だと思うのです。そういう判断は公庫にまかされている。しかし、その前提として、行政機関の認定が必要だ。たとえば、同じようなものに住宅金融公庫というようなものがあるわけです。しかし、これは知事の認定も何も要らない。住宅金融公庫の判断で貸し出しをしている。これは当然どっちかにすべきだと思う。非常にあいまいで、責任の所在をきわめて不明確にしているという点が、私は問題だと思うのです。  さらに知事の場合には、この点も私は問題だと思う。基本方針のほうにはないのだけれども、知事の計画の場合には、生産の拡大及び流通の合理化ということを条件にしているわけです。だから、そういう見通しが立たない流通面まで知事に責任を負わせるというのは重大問題ですよ。その見通しあるいは責任を負わせるということは非常に重大問題だと思うのですけれども、時間がないので、残念ですが終わりますから、その一点だけ答えてください。
  60. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お尋ねの点は、二条の三の三項の関係だと思いますが、これは、都道府県知事が、その県の主要な果樹、自分の県でいま一番重要だと思う果樹の中で、その生産の安定的な拡大をはかり、それから流通の合理化を推進するというために、一つの団地をつくる必要があるというふうに認めましたときは、その団地についての形成の方針をこの計画に盛り込みなさいということを書いておるのでございまして、そういう意味におきまして、流通の合理化を推進しなければならぬ。もっとも、これは当然、都道府県知事としましては、生産から流通に至ります果樹農業振興ということをはからなければならぬと思うわけでございますけれども、それを義務づけてはいないわけでございます。
  61. 大石武一

  62. 森田重次郎

    ○森田委員 まず最初に、本法案に関連いたしまして、農林大臣の御所見をお伺いいたしておきたいと思います。  これは大きい根本方針についてであります。いま果樹振興に関連して日本の実情を見ますと、果樹相互間の競争が相当激烈である。それから最近貿易自由化の関係で、バナナの輸入が相当多量にある。それから労働力が減っているという点と、そして将来に備えるために、いまリンゴ一つとってみましても、品種の更新をしなければならないというようなことで、生産業者としては、前途に必ずしも明るい見通しが立てられないような立場に置かれていると考えるのであります。  そこで、まずわれわれとして大ざっぱに考えて、果樹の将来について、本法案を通過せしむることによって、農林省生産者の将来にどういう見通しと夢を与えるつもりであるか、また与え得るのであるか、そういう点について、大臣の御所見を最初に承っておきたいと思います。
  63. 坂田英一

    坂田国務大臣 森田委員の御質問でございますが、これらの問題については、農林省としても十分検討を加えておることは申すまでもないのでございます。たとえば労働力の減少その他による経営上の面でございますが、それらにつきましては、でき得る限り労働生産性を上げる、特に果樹経営についてはその必要があるのではないかということでございますので、そういう面に向かって特に重視してまいりたい。したがって、これらについては、構造改善の点においても、果樹経営は構造改善に取り入れられる部面が非常に多いということも、その点であろうかと思うのでございます。  それから一番大きないわゆるバナナの輸入等の問題についてでございますが、これらの問題については、もちろん、現在七〇%の関税を継続しております。ただ、かようなことにいたしましても、バナナの輸入は相当ふえております。これらの関係を十分見てまいらなければならないのでございますが、全般的に果樹需要は相当伸びると見ております。もっとも、果樹の面においても、かんきつ類など非常に伸びるものと、リンゴのような、ある意味においては相当すでに伸びておるということが原因であるか知りませんが、伸び方が非常に少ないというもの、これらに対して、バナナの輸入というものも相当影響するのではないかという関係がございますので、それらの輸入の規制の意味合いにおける関税を、現状のまま多額の関税をもって進めてまいる、こういう方向にいかなければならぬと存じております。  なお、リンゴにつきましての大きな問題は、先ほど申されましたとおりに、品種の更新という問題を特に重要視してまいりたいと存じます。要するに、現在の果実に対する需要は非常に進んでいることは言うまでもございません。したがいまして、いままで四十六年までの需給見通しをやりましたわけでございまするが、大体においてやはり需要が非常にふえておるのでございまして、それらに即応して、生産の面は、果樹類全般として需要の伸び方よりも、生産の伸び方が現実においては少ないわけでございます。したがいまして、まだまだその点については心配はないと思うのでございますが、しかし、将来の面からいきますと、無限にこれは増強するものでもない。もちろん、需要はさらに私どもは増強するには違いないと思います。思いますけれども、これに即応して生産のほうとのつり合いがどうなるかという問題については、三十六年にこれらの法律制定いたしました当時よりも、その点については、ものによっては相当考えていかなければならぬものもある。これはいますぐではございませんけれども、長い十年の後の状態を見ると、そうだと思います。そういう点においては、特にリンゴの面においてはその点が考えられますので、私どもといたしましては、リンゴの品種の更新という問題に相当力を入れていかなければならぬのではないか。こういうふうに、まことにざっぱくでございますけれども、一応の方針として、さような見通しを持って進めてまいりたい、こう考えております。
  64. 森田重次郎

    ○森田委員 それではいまの方針で、ぜひひとつ生産者に夢を持たせるような政策をしていただきたいと思います。  そこで、次の問題は、リンゴの輸出の問題でございまして、これは通産省の方あるいは外務省の関係の方に御答弁をお願い申し上げたいのでありますが、その前に、局長のところで、旧来どの方面へどの程度の数量を輸出しているか、最近の年度でけっこうでございますが、その数量並びに外貨獲得の総額など、ひとつ簡単に結論だけ御答弁いただきたいと思います。
  65. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 リンゴの輸出でございますが、これはおもに東南アジア地域でございまして、三十五年、六年とも約一万五千トンでございますが、三十七年には一万七千トンになりまして、三十八年は一万四千トン、三十九年は一万五千トン、おおむね一万五千トンくらい輸出をしております。四十年はフィリピンとソ連が増加しまして、合わせまして二万トンをこえまして、金額では約十億一千万円ぐらいになっております。
  66. 森田重次郎

    ○森田委員 大体東南アジアが中心のような御報告でございましたが、そこで、私は、新しい領域として、ソ連をどう見ておるかということについて、実はお伺いいたしたいのであります。一昨年、私は藤山先生にお供をしてソ連へ渡りまして、フルシチョフ首相にも面会いたしまして、当時フルシチョフ首相から、何か希望はないか、希望があれば、大体何でも聞いてやるからというようなお話もありましたので、特にこの首相から紹介されて、貿易関係をつかさどっておる最高の責任者に面会をいたしまして、リンゴ輸入、つまり、ソ連側の輸入についてどう考えておるか、特にシベリア地方は果実が非常に不足しておるように聞いておる、われわれ青森県としては、リンゴが非常に多く生産をされて、その輸出先を求めておると同時に、ソ連のほうでとれておるニシンがあるから、このニシンとバーターすることによって、将来この領域を拡張していきたいものだという希望を申し入れたのでありまして、その後、だれへ連絡すればいいかというようなお話でしたから、青森県知事に連絡をしてもらいたいと申しましたら、県事知に連絡があったそうです。そうして県知事がわざわざ、ほかにも用件はあったのでしょうが、ソ連を訪問しまして、その際、この問題に触れて、ごく少量の貿易関係、ニシンとのバーター等の問題が取り行なわれるようになったというのでありますが、この問題は、私は、将来リンゴの貿易先としてはきわめて重要な場所ではないかと実は考えておるのであります。ソ連へ参りまして、ソ連のリンゴ等も至るところの席で拝見いたしましたが、われわれ青森県のリンゴと比べて、必ずしも質のいいものとは考えられないような実情であります。そこで、これを一体どういう方法でソ連へ売り込むことができるか、この問題について、通産省の責任のある方並びに外務省の方から、特に経済外交を銘打っておる現内閣でありますから、これらの問題をもっとお世話願えないかということに対して、いままでの御経験なり、また将来の見通しなりについてお伺いいたしておきたいと思います。
  67. 原田明

    ○原田説明員 まことに先生御指摘のとおりでございまして、私ども、リンゴのような消費物資がソ連圏その他の地域にどんどん輸出をされまして、特に日本で名高い青森県あたりのリンゴが、そういうおいしいリンゴを食べたことのないようなソ連の方々に食べていただいて、喜んでいただいて、消費がふえるようにするのが非常に望ましいことだと考えております。ところが、日ソ間の貿易は、従来貿易協定の交渉をいたしまして、できるだけ私どものほうからは、そういう日本が売りたい品物を買ってもらいたいということを申し入れております。またソ連のほうからも、ソ連の売りたいものを売り、ソ連の買いたいものを買いたいという話し合いがございまして、双方の希望をまとめて、大体こういうところでいこうという取りきめを結んでおる次第でございます。ただ、ソ連側では、どうしても工業化政策でございます結果、機械プラントの輸入といったようなものに重点を置きがちでございまして、そういうものに輸入の外貨をよけいに使ってしまいますので、消費物資みたいなものにはなかなか順番が回ってこないというきらいがございます。それで、一般の貿易協定のほうかに、沿岸貿易の協定と一般に俗称されておりますような書簡の交換を双方でいたしまして、双方の間で消費物資、特に極東地方の特産品といったようなものを中心にしまして、消費物資の交換をしようではないかという話し合いを進めまして、これが一応実を結びまして、大体最初のうちは五百万ドル程度にしかならないかもしれないが、五年間くらいの間には倍くらいにしようじゃないかということで、お互いにどういうものが売れるか、買えるかというような品物を並べまして、検討いたしまして、その中にはこちらももちろんリンゴを掲げまして、ぜひこういうものを買っていただきたいと向こうへお話をして、申し入れたわけなんです。向こうもその点は了承いたしまして、買える限りにおいてできるだけ買うようにしようということで、リンゴというものがその取引の表の中に入っております。したがいまして、現在のところでは、一応道だけは開かれたという形になっております。  ただ、日本側のほうでは、リンゴは全然輸出の規制をしないどころか、輸出は奨励したい品目でございますので、どなたでも売りたいという国へ幾らでもお売りになればいいという体制になっています。ところが、ソ連側のほうは、これはソ連の貿易のたてまえといたしまして、できるだけ売った範囲で買うといったような、いわゆるバーターというような形をとりたがっております。しかし、今度の場合にも、私どものほうは、必ずこちらが買わなければ売れないという形で、たとえば信用状でございますとか、そういうもので結びつけるということは好ましくない、売るものはどんどん売れるようにしたいということでございますので、形式上は、リンゴも何らの規制なくどんどん向こうに売れるという形式にはなっているわけでございます。したがいまして、今後はそういう仕組みを通じまして、できるだけこちらの商談を向こうに持ちかけまして、リンゴをたくさん向こうに買ってもらうように努力するという方向でまいりたい、こういうふうに考えております。
  68. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 ただいま通産省の原田次長からお話しがございましたとおりでございまして、対ソ向け、昨年におきましては、すでに先生御存じだと思いますが、約二千六百八十トン、金額にいたしまして約三十万ドルというものが、ソ連向けにリンゴは輸出されておるわけでございます。それで、そのソ連との間の貿易のやり方あるいは形態ということにつきましては、ただいま通商局の原田次長が言われたとおりでございまして、沿岸貿易のほうの品目の中にリンゴというものがあがっておるわけでございますので、今後とも引き続き、日ソ間の貿易の協定の検討というものを毎年行なっておりますが、そういう際に、さらに沿岸貿易の伸長、その一環としてリンゴを買ってもらうという形で、引き続き先方に申し入れをしていきたいというふうに考えております。
  69. 森田重次郎

    ○森田委員 その問題は、時間の制約もありますので、この程度にいたしておきますが、もう少し外務省なり通産省なりで、私はお世話を願いたいと思うのです。こっちから民間使節といったかっこうで向こうへ行きましても、常駐するわけにはまいりませんし、私は、外交上の機関、あるいは通産省のほうの方も向こうへ駐在しておいでになるはずでありますから、これらのあっせんをもっと積極的にやってほしい、こういうふうに考えておりますので、これを希望いたしておきます。  次に、リンゴの輸出につきまして、南洋方面へ輸出する場合は、輸出の検査の規定か何かがあって、青森県のリンゴでも神戸を通らなければならないように制約されているように聞いているのですが、ソ連に輸出するにいたしましても、あるいは南洋方面へ輸出するにいたしましても、これはやはり青森港も貿易港として認められているのでありますから、あそこで簡易に——簡易にというのは、ほかへ持っていかないという意味での簡易に取り扱うことのできるようなたてまえにしてもらいたいと地元では考えているのですが、この見通しについてお伺いいたしておきます。
  70. 森本修

    ○森本政府委員 リンゴの輸出の関係で、検査らしいものは、輸出品の検査ということと、それから植物防疫上の検査というのがございます。また、横浜とか神戸とか、そういうところに検査所がございまして、常時検査をする体制になっておりますが、青森のほうは常時輸出をする荷がないというふうなことで、残念ながら、現在まで検査所を設置するというところまで至っておりません。ただ、青森のほうから、青森港から出したい、その際に青森港で検査をしてくれという御要望がございまして、少し前から横浜の検査所から係官を青森に出張させまして、一定の期間常駐をして、青森県で検査をして、そこから輸出できるようにということで、配慮をいたしておるわけでございます。  なお、そういう問題につきまして、円滑にいくという問題があれば、十分青森県と連絡をいたしまして善処をしていきたい、そういうふうに考えております。
  71. 森田重次郎

    ○森田委員 いま簡便な方法を取り計らっておるという御答弁でございますが、それは簡単に行なわれるようになっておりますか。何かしら手続なり、実際上なかなか困難なようなふうにも伝え聞いているのですが、その辺どんなふうになっておりますか。
  72. 森本修

    ○森本政府委員 先ほど申し上げましたように、従来は多少問題がありましたけれども、最近は出張をいたしまして検査をし、かつまた、検査の手続についてもできるだけ簡便にするということで、打ち合わせをいたしておるわけでございます。もしまた不十分な点がありますれば、今後十分打ち合わせていくようにしたい、こういうふうに考えます。
  73. 森田重次郎

    ○森田委員 それでは次の問題に移りたいと思います。  そこで、二十年後の生産数量の目標と品種の問題でございますが、この間青森県へ参りました。これは長野県は長野県で県の計画を立てているでしょうし、青森県は青森県で立てているように見えるのです。これはいまここに資料を持ってきておりますが、いま国光と紅玉は青森では総生産量の八〇%になっておる。それを二十年後には国光が二三%、紅玉が七%、それからいま最もはでにやっておりますスターキング、これとゴールデンは現在は一〇%に満たないはずであります。それが将来スターキングは三〇%、ゴールデンが七%、さらに新品種としてフジが一五%、陸奥が八%、レッドゴールドが三%、インドが三%、その他というふうになっているのであります。  〔大石委員長代理退席、舘林委員長代理着席〕 そこで、私は、まず本法案の眼目になるものだと考えて、きわめてこれを重視しているものであります。と申しますのは、もう議論するまでもなく、一ぺん品種更新をやりますと、それが育成して成果を上げるのには十五年、二十年の歳月を要する。その後になってこれを切りかえるというようなことは、とてもそれは耐え得るものではない。そういう点から考えて、一ぺんこういうふうな方針をきめたということは、これはもう生産者にとって絶対的な性格を持つものと私は考えるのであります。  そこで、先ほどの御答弁を聞いておりますと、何かこれは知事に大体まかせるというようなことのようでありますが、そんな程度のものかしらということなんですがね。というのは、国が全体を見て、国民の二十年後の果実に対する需要はどの程度になるだろう、他品種との調和をどうせなければならないかという大所高所から見た上でなければ、こういう方針というものはきめられるものでないはずなんです。そこで、こういうふうなきめ方を一たんしてしまうのですから、これに対して、県知事がきめたんだから県知事のほうで責任持てばいいだろうでは、国として私は責任がなさ過ぎるという感を持つのであります。はたして、こういうふうに青森県できめた、それに対して国のほうが一体どれだけの関与をしておったものであるか、また、こういう品種をきめる科学的根拠というようなものは一体どういうことなのか、これがあいまいであってはならないはずだと私は思うのでありまして、どの程度の検討を加えて、その根拠に基づいてこういうふうにきめたのだという理論的根拠というようなものと、国の責任というものをここで明確にしておいていただきたいと思うのであります。この点に対して御答弁を願います。
  74. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 最近、紅玉あるいは国光等の需要が伸び悩みでございまして、それを反映いたしまして、先ほどお話のございましたような新品種あるいは優良品種というものが植栽されておるわけでございまして、これをどうきめるかということにつきましては、最終的にはその農家の御判断にまかせるわけでございますけれども、新品種の対策といたしましては、国におきまして試験研究機関で育成されました新しい品種、優良品種というものにつきましては、農林番号を付しましてそれを公表いたしておるわけでございます。また、民間でもいろいろ新しい品種が出てくるわけでございますが、それは農産種苗法に基づきまして設置されました農業資材審議会というのがございます。その中に種苗部会というのがございます。そこで専門家が集まりまして慎重に審議いたしまして、優良品種とみなされるものに対しては種苗登録というような制度をとっておるわけでございます。そういう意味におきまして、その登録されたものの品種の周知徹底ということを通じまして、生産者の品種選択に役立てたいというふうに考えておるわけでございます。また、需要見通しにつきましては、これはリンゴ一本で出しておりますけれども、その中におきましては、今後新しい品種に対しまする需要がどういうふうに伸びるかということは、技術的に可能な限り、現在の流通量なり、あるいは各家庭に入っております消費量なりというものを分析いたしまして、それらの点につきましても、これは見通しなりあるいはその目標というものの中に織り込んでいきたい、それを各県ともいろいろ御相談申し上げまして、将来にわたって需要が伸び得る品種が植栽されますように指導いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  75. 森田重次郎

    ○森田委員 そこで、この問題は非常に大事な問題でございますから、ひとつ十分慎重な態度で御決定を願いたいと思うのであります。  次に、品種の更新についてでございますが、これは先ほど御答弁にもありましたとおり、われわれの県では、ほんとうは国光、紅玉などは私らはそう劣っているとも考えないのです。食べる時期がよくわからないので、いろいろ批判はされているようでありますけれども、たとえば国光のようなものは、甘味などからいって、決してほかのものに劣るものだとは考えない。独特の風味を持っている。ただ、これを早くまだほんとの味が出ないときに食べるとか、あるいはまたおくれ過ぎるというところに問題があるのだと考えているわけであります。しかし、とにかく一定の方針でこれらのものの更新をやる。七、八〇%ある紅玉あるいは国光などがやめになって、先ほど申し上げたパーセントに切り下げられるということなのであります。  そこで、それなら、今度こういう切りかえをやるということになると、どういう問題が起こってくるかということになれば、苗木の供給が即時問題になってまいります。青森県の計画等を見ますと、一期五ヵ年分として百万本を供給しようという計画のようであります。しかし、これは圃場整備の問題などでも相当の困難を感ずるものと考えさせられます。なお、苗木のほかに、高つぎ法による増植の方針も考えられているようでありますが、これもまた優良品種に限って特にウイルス病という病気にかかりやすいというような欠点を持つ。そういうようなことから、圃場整備あるいは病気の発生を防除する等で相当の費用がかかるわけであります。  なお、新しく全然切りかえるということになりますと、まだ必ずしも樹勢の衰えていない木を伐採して、そこに新しい苗木を植えようという、ここにリンゴ生産者の非常に大きい悩みがございます。一ぺん切りかえると、十五年、二十年たたないとほんとうの成果はあげられない。しかし、これらの整備は絶対的な力でいまの現実から圧迫されている。やむを得ないから、泣く泣くいまのような方向に出ざるを得ない。そして相当の資金をこれに投入せなければならないかっこうになるわけであります。そこで問題は、その生産があがるまでの間、これらの生産者の負担というものは——切りかえというと、ことばは簡単でありますけれども、これは実にむずかしい問題だと考えるのでありまして、これらの助成あるいは低金利の融資等、相当大幅に助成の道を講ずるのでなければ、とても切りかえなどということはできないものだ、こう私は考えておるのでありますが、こういう場合における農林省の方針を承っておきたいと思います。
  76. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 品種更新には相当多額の金を要しますし、一定の期間その資金が寝るということはお説のとおりでございます。そういう意味におきまして、品種更新事業につきましては、これを三年ぐらいの間圃場で共同育苗いたしまして、すぐそれを圃場に植えました場合に、それから実がなりますまでの期間をなるべく短縮いたしたいということから、助成措置を講じておるわけでございます。  また、品種を更新いたしまして、新しく別に圃場をつくって、そこで新品種を植えて、そのあとで古い品種を切るということからいいますと、その間は非常に作付面積も多くなるということになりますし、あるいはそこで土地を取得する必要も出てくると思います。そういうようなものにつきましては、当然果樹園経営計画に基づくいろいろの融資制度もできます。また、未墾地取得資金につきましては、据え置き期間を延長される措置も考えておりますので、それらによりまして、できるだけ融資を通じたことによりまして、農家の負担を軽減いたしたいということを考えておるわけでございます。また、改植のための土地基盤整備につきましては、三十八年にブルドーザーの補助等も行なっております。そういうことで、できるだけ果樹農業者の負担を軽減する方向でわれわれとしては対処いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  77. 森田重次郎

    ○森田委員 そこで、これは品種更新についての私の意見でありますが、しかし、どういう方針で農林省がやっているか、その点をひとつお伺いいたしておきたい。  先ほど申し上げました、いまリンゴ界の寵児であるスターキングが青森県では三〇%、ゴールデンが七%というように、相当最高の立場を占めている。これは、私らもむろんこれでいいのだという感がするのであります。しかし、これは御存じのとおり大玉で、とても一つは一人で食い切れないほどの大玉なんです。きれいで、味がよく、大きくて、高くてというのがねらいなんです。これが盛んに生産業者の間に競争になって、新品種、新品種と出ていっているというのが実情であります。私は、この傾向は、一つ生産者の収入の点等から考えまして、まことにけっこうな方針だとは考えますが、しかし、これは一般大衆がなかなか手を出せないというところに、私は一つの欠陥があるような気持ちがするのであります。もしリンゴの将来というものを考えますと、どこの家庭でも食後には必ず一つぐらいのリンゴが子供らの口へ入るような形の食生活に将来入るものだ、そこでリンゴが大衆化されていく、こういうふうに私は考える。つまり、片一方はリンゴの貴族化的傾向だと名をつけるなら、片一方はリンゴの大衆化の傾向と私は名をつける。しかし、大衆化だからまずいものでいいという意味ではない。やはり味がよくて、しかも安くて、そして長もちする、こういうようなことになる。そこで、私のきょう議論したいのは、小玉でいったらどうだろうという議論なんです。小さいもので、食後に一つ一人が食べれば、ちょうど手ごろな食生活になるのだというような意味の小玉を奨励する必要があるのではないかということが、しろうとではありますけれども、私は直観的にそういうような考え方をしておるのでありまして、あちこちの場所へ行ってこの議論をしてみます。そうすると、理想論としては、先生の意見に必ずしも反対ではないが、生産者の現実としては、やはりいまの時点に立てば、金がよけい入るということが必要なんだから、その意味で、どうしても大玉のほうへいくことは押え切れないものだというような議論をいたしておるのであります。しかし、これはリンゴの将来について、私は、大きい問題として、農林省ではっきりした信念を持って指導していくのでなければいけないような感がする。新品種もまたそれに沿うような資格のものをつくるのでなければならないという感が私はいたしておるのでありますが、これに対してひとつ大臣、どんな御見解をお持ちになりますか、お伺いしておきたい。
  78. 坂田英一

    坂田国務大臣 実はずっと以前のことですが、私も関係しておったときに、輸出向きに一口で入る小さいものがないかという問題がございました。それで、その当時、輸出向きの小さいリンゴ、デザートにもそれが必要だということで、その当時非常にその問題を持ち上げてやったこともございますが、これは実際そういうことでございますので、いまおっしゃったように、安くて長もちができて、小玉でうまい、こういう品種ができますならば、これは国内のみならず、輸出向きとしても非常に重要である、こう思います。私もその点については御同感でございますので、そういう点を技術の方面に私からも申しておきたいと思っております。
  79. 森田重次郎

    ○森田委員 そこで、次は、労力を省力する問題について質問いたしたい。  要するに、バナナが入ってくるから云々というようなことで恐怖を感ずるようなことではしょうがないのであって、われわれはこれらと競争しても優にリンゴの将来性はあるものだという方向へ持っていくのが当然だと実は考える。それには、何としても省力の中心となる機械化ということが基本になることは、これは明らかなことだと思うのであります。そこで、スピードスプレヤー、これは平坦地で行なわれているものでございます。それから傾斜地においては、固定した設備で、スピードスプレヤー同様の薬液散布の役割りを果たしている。リンゴの栽培経営というものは、何としても薬液散布が中心でありますから、ここを相当重視して、これに対して政府の政策の重点を置くことが私は必要だと思うのです。そこで問題は、時間がないので、私のほうから若干内容を申し上げてみます。  これは青森県のある農村における実情であります。三十五馬力のスピードスプレヤー、これがフルに活躍すると、二十町歩のリンゴ経営にちょうど適応する力を持っておる、こういうのです。ところが、そこの部落でやっていた結果を聞きますと、大体十二町歩で一ぱいだという。そこに八町歩の差が出てくるわけなんです。なぜ八町歩の差が出てくるのかというと、そのスピードスプレヤーを利用する組合員の持っているリンゴ園がばらばらなところにあるので、つまり、一ところになくて、ところどころに散在しているので、それをぐるぐる回って歩いたロスといいますか、それが八町歩に相当する、こういうのであります。そこで、こういうような経営の方針では徹底した合理化にはならないのだ、だから、何としてもそのスピードスプレヤー一台を中心として、その周囲にある二十町歩のリンゴ園の持ち主は、全部その一台のスピードスプレヤーの利用組合員になるということを前提にすれば、これは一つの想定でありますけれども、そうすると、そのスピードスプレヤーの能力は二十町歩に十分活躍ができるのだという結果になる。この方向へ私は農林省で指導の方針というものをきめてもらいたい、そしてこれを励行してもらえないかということを考えているのでありますが、これに対する政府の御見解をお伺いいたしておきたい。
  80. 坂田英一

    坂田国務大臣 いま申されたとおりでございます。私らもそのとおりに考えまして、特に構造改善の面については、やはり薬剤散布の機械化という問題を重点的に私どもとしては指導しておるのであります。その際において、いま実情から申しまして、十町歩程度よりも小さくないということを標準にしておるわけでございますが、実際二十町歩ということになれば一番理想的じゃないかと思う。いまのところは、いろいろの実態も考えながら、十町歩以上というところをねらいにいたしておるわけでございます。
  81. 森田重次郎

    ○森田委員 それは農林省の迷いだと私は思います。つまり、自立経営で十町歩あたりがちょうど適当だなどという考え方は、小さなただのスプレヤーというか、薬液散布機を使ってやる時代の話なんです。いまはもうそんな時代をとうに飛躍してしまって、一台の機械を精一ぱい使うために協業化していくという時代にもう入ってきたのだと思う。ところが、農林省がその自立経営論を捨てがねて、協業化を徹底させるということをどうしてもやりたがらないような傾向にあるので、私は質問をいたしております。もう五反歩持っていようと、一町歩持っていようと、三反歩持っていようと、そのスピードスプレヤー一台に集団的に加入すれば、それでもうけっこう全部うまくいくのだというのが私の見通しですが、だから、農林省が旧来の自立経営というようなことをもう清算してもらう時代が来たのだ、ここを私は聞いているのです。大臣、どうですか。
  82. 坂田英一

    坂田国務大臣 私どものほうとしても、共同作業的にそれをやっていこうというので、いま最低を十町歩以上と考えておりますが、二十町歩になればなおいいのでありまして、でき得る限りそういう方向に進みたい、こう存じているわけでございます。ただ、いま二十町歩以上といたしますと、もっと下でも少しやりたいという程度のものが落ちても困るものですから、もちろん、二十町歩以上ということならばなおよろしいわけでございますが、いまのところ、十町歩以上ということにいたしておって、実際はもっと広い意味、仰せのような方向にいけばなおさらけっこうであろう、こう考えているわけであります。
  83. 森田重次郎

    ○森田委員 そこで、もう一つ、これに関連して質問いたしたいことは、いよいよスピードスプレヤーを入れようということになりますと、これは相当重い機械ですから、これがぐんぐん入っていかなければならぬ、したがって、農道の問題がすぐ起こってくる。それと同時に、湿地帯が相当ある。この湿地帯のところではこの機械は入れない。ですから、どうしても土地改良をしてもらって、暗渠排水のようなものを徹底的に奨励して、湿地を非常にいい畑にして、そうしてこの機械が入れるようにしてもらわなければならない、こういうことが一つの問題なのです。この辺の調査は一体農林省で相当やっているものでしょうか。この点をひとつ……。
  84. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 御説のとおりでございまして、高性能の機械を入れますためには、農道その他生産基盤の整備に関します事項が必要でございます。したがいまして、県計画においてその点についての計画を立てるということになっているわけでございますが、ことに濃密生産団地ということで、流通なりあるいは生産の面から、濃密的にこれが団地を形成する必要があるという場合には、やはりそこの中の具体的なと申しますか、いま申しましたような基盤整備の計画が県において立てられるものということを期待しておる次第でございます。
  85. 森田重次郎

    ○森田委員 そこで、青森県では、この点にはだいぶ力を入れまして、奨励しているようです。しかし、昭和二十九年以来、湿地面積並びに低地についてスピードスプレヤーを盛んに共同防除のためにやれ、こう言っておりますが、これだけ努力しても、全面積のうちの三〇・八%しか進んでいない。これを早く全面積に及ばせるようにするというところに、私はきわめて重要なねらいがあるのだ、こう考える。これは水田などの基盤整備の構造改善などと同じようなことなのです。何か特殊な奨励方法を考えるのでなければ、これを全面的に普遍化することは困難だと思う。そこで、これは水田などの場合の構造改善と同じように、機械化していくためには、やはり機械などに対しても半額の助成をするというくらいの、思い切った政策をとらなければならないと考えるのですが、これに対する農林省の見解を承っておきたいと思います。
  86. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お説のとおりでございまして、果樹が重要な地域につきましては、農業構造改善事業として基幹作目として取り入れられている地区が相当あるわけでございまして、そこにおきましては、この機械の導入に対して五〇%の助成が行なわれますし、また共同利用施設につきましては、農業構造改善推進資金が活用されるわけでございます。さらにまた、農業近代化資金においても長期低利の融資の道が開かれておりますので、それらを活用いたしまして、なるべく早く労働節約的な高性能の機械が導入されますことを期待している次第でございます。
  87. 森田重次郎

    ○森田委員 次に、今度は輸送対策について、国鉄にお伺いしたいのですが、国鉄のほうでは、なるべく品物がいたまないで、冷蔵設備で中央に送るというようなことについて、現在どの程度の設備をしているのか、また将来の見通しについて、簡単にお伺いしておきたいと思います。
  88. 今村義夫

    ○今村説明員 国鉄といたしましては、リンゴの輸送に対しては、大事なお客さまでございますので、非常に重点的な輸送をやっているわけでございますが、いま先生のお話の冷蔵車による輸送というのは、まだ本格的にはやっておりません。と申しますのは、冷蔵車はやはり魚と競合いたしますので、魚のほうに重点がいっておりまして、リンゴの輸送については、大体普通の有蓋車でやっているということでございます。冷蔵車の数量としては、現在五千両余り持っておりますけれども、魚と両方をやるということになりますれば、必ずしも十分ではないという状態でございます。
  89. 森田重次郎

    ○森田委員 これは秋から冬季にかけては、必ずしも冷蔵車でなければならぬということはないと思いますけれども、もうそのあとのあたたかくなった時期になりますと、やはり冷蔵庫から出したものをすぐ市場へ送らなければならないのでありますから、これに対してひとつ特別な御考慮を払っていただきたい。もしこれを国鉄が怠るということになりますと、民間の自動車のほうが相当多くなるのではあるまいかと考える。いずれにしても、業者としてはどっちでもいいのでありますが、特にこの点を御考慮願いたい。  そこで、もう一つお伺いいたしたいのは、貨車の配給の遅延の問題であります。これは、この間も私は現場で実地に調べてみますと、盛岡の局のほうの三戸地方への配車はわりにうまくいっているということであります。ただ問題は、五能線から津軽、弘前を中心とした貨車の配給というものは、毎年のように問題になるわけであります。どういうわけでこの貨車の配給がこう不手ぎわになっているのか。御存じのとおり、倉庫から出して駅に山積みにして、一日も早く貨車の来るのを待っている。その間にリンゴの品質がいろいろの影響を受けて損傷するようなことが出て、また市場へ送るタイミングを失う、こういうようなことで、生産者としては非常に困っている。これに対して配車の円滑にいかない理由は一体どこにあるのか、まず先にその原因を承っておきたい。
  90. 今村義夫

    ○今村説明員 五能線その他の地区につきまして、配車が円滑にいっていないという事情があることを私どもも承知をいたしまして、できるだけ円滑な配車に努力をしているわけでございます。実はあの地帯は、到着の車が非常に少ないために、関東地方なり、あるいは新潟地帯、あるいは秋田、山形地帯の空車を入れまして、その空車でまかなわなければならない状態でございます。これは去年でございますと、大体一日二百五十両くらいの平均で空車を入れておるわけです。たまたまいろいろ雪害でございますとか、あるいは去年は秋田の操車場が少し混乱いたしましたために、かなり御迷惑をかけたように思っておりますけれども、ことしは秋田の操車場も十分機能的に回復できますので、また空車その他の計画につきましても、万全の措置をとってまいりたいというふうに考えております。ただ問題は、盛岡から青森まで、あそこはまだ単線でございまして、いま鋭意工事を進めておるわけでございますが、これが完成いたしませんと、なかなか空車を入れにくいというような状況もございまして、目下御承知の第三次計画におきましては、東北本線なりあるいは羽越本線におきましても、複線化の工事を進めておりまして、こういうものができますと、だんだんよくなってくるというふうに考えております。
  91. 森田重次郎

    ○森田委員 そこで、山形あたりへ参りますと、貨車が空車になって、そしてすぐ新潟あたりのほうへ配車になる。したがって、なかなか弘前方面へは回らない、こういうことなんです。これは要するに、国鉄のほうでどっちへやったほうがそろばん多くとれるかというところからくるのではないかと実は思うのでございます。そういうようなことでは、非常に大きい問題があると私は考える。これは御存じのとおり、もと青森には鉄道管理局というものがあったのです。その時代にはこういうことはなかったのです。ところが、これはどういう理由かわからないが、函館、秋田、盛岡に三分断されて、いまほとんど権限のない出張所みたいなものがあって、これらの配車等には口出しができないようなかっこうになっているらしく聞くのです。しかもその上に、何かここに指令室というものがあって、ある程度権限を持っていたものまで、今度は廃止するのだというような国鉄の方針だなどと聞いているのでありますが、われわれとしては、少なくとも青森県の管内においては、秋田管理局あるいは盛岡の管理局とも十分相談して、この出張所に県内の車を操作させるだけの権限を与えるのが当然じゃないかと考えるのです。とにかくわれわれリンゴ県といたしましては、国鉄にとってもいいお客さまなはずだと考えているわけで、それをこういうふうにどうも捨てられているということになれば、地元の方の憤慨するのも私は無理がないと考えます。これらのことにつきまして、将来どういうふうなことになるのか、ひとつ御答弁を得たいと考えておる次第です。
  92. 今村義夫

    ○今村説明員 先生のお話のとおりに、私どもといたしましては、青森県の重要なる特産物でございますし、また私どもにとりましても非常ないいお得意さんでございますので、私ども、リンゴの輸送につきましては、決してないがしろにするようなことはやっておりません。毎年地元の方々と協議もいたしまして、輸送計画を組み、先ほど申し上げましたように、毎日二百両からの空車をはるばる関東地帯なり新潟あたりから入れて送っておるような状況でございます。そういうことで、私どもといたしましては、このリンゴの季節には、この地帯におきましては、もうリンゴに最重点を置いて配車をやっておるわけです。お話の青森の出張所につきましては、現在二十名近くの人間がおりますけれども、そのほか、盛岡の駐在にも配車指令がおりますが、これは私どもとしては、通信の技術の開発もございますし、また要員の合理化というような面から、指令は一応局のほうに統合する、これは実はほかの地区ではずいぶんやっている問題でございます。しかし、青森の出張所に権能を持たせるということでございますが、これは地元の荷主さんなりあるいはお客さまなりに十分折衝をして、その意向を十分にくみ取って局に連絡をして、直ちにその希望どおりのあれをやらせるというたてまえになっておりますので、権限はないとおっしゃいますけれども、これは出張所の職員が十分地元の御意向をくんで、その御意向を業務の上に反映させ得ると私どもは考えておるわけでございます。
  93. 森田重次郎

    ○森田委員 そこで、この問題は、きわめて重要な問題である。つまり、あなた方のほうから見ると、合理的に配車していると、こうおっしゃるが、ほんとうに合理的と言うのならば、青森市ほど管理局を設けるに適当なところは、全国どこを見たって私はないと思う。片一方は北海道を控えておる。片一方は奥羽線、片一方は東北本線、そのかなめじゃないですか。そこからそれぞれの管理局をみなほかのほうに分散してしまって、からにしておいて、そうして今日地元の人にいま申し上げたような迷惑をかけているということになると、これは政治問題として、私はきわめて重要な問題だと思うのです。ですから、それらの点を十分御考慮くださって、今後ひとつ地方に配車する点については真剣にひとつお考えくださいまして、地元の要望にこたえるように願いたいと思いますが、これについての御高見を拝聴したいと思います。
  94. 今村義夫

    ○今村説明員 機構問題につきましては、これは非常に全国的に関連する問題でございますので、いまここで私が答弁することはできませんけれども、配車の問題につきまして、先ほどから繰り返し申し上げましたように、私どもとしては最重点を置いてやっておるつもりでございます。しかし、おっしゃるように、いろいろ荷主さんの方々に御迷惑をかけている問題もあることは承知しておりますので、今後は最重点を置いて、御不便のかからないように努力をいたしたい、かように考えております。
  95. 森田重次郎

    ○森田委員 最後の問題でありますが、リンゴの加工の問題について、これはいろいろ私のほうにも疑問がありますけれども、時間がないようでありますから、結論だけひとつお願いしたい。  文部省の方おいででしょうか。
  96. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 文部省から学校給食課長が出席しております。
  97. 森田重次郎

    ○森田委員 リンゴの加工品の販路の問題あるいはリンゴのなまのままの販路の問題、これが一つの重要な政策だ、こう考える。そこで、何とかリンゴのジュースを学校給食のほうに回してもらえないかということが一つ。それから、私が先ほど提唱いたしました、小玉でうまいリンゴ、こういうようなものを学校給食のほうで取り上げてもらえないか。これは地元ではぜひそうしてもらいたいという要望があるわけであります。また、もう一つ考えますと、たとえば日本人はあまり牛乳を飲まない時代があった。ところが、学校給食をやってから、がぜん国民が牛乳の方向に向いた。パン食もまた同様である。そういう点から考えますと、やはりリンゴを学校の生徒に食べさせるということは、リンゴの将来にとってきわめて重要な問題だ、こう考えますので、文部省の方から、これらの問題について取り扱っておる現状と将来の見通しをひとつ伺っておきたいと思います。  なお、もう一つ、中小企業庁の方おいででしょうか。——われわれリンゴ生産地なんですが、これはなかなか需要供給関係で、これを工業化するということについては、いろいろの問題があるようであります。このために、リンゴのジュースをつくりたいということで、地方の個人の研究所等を設けまして、そして研究で破産、倒産した方々が何人もあるのです。国家はこれをめんどうを見てくれていない。私は、こういうような試験研究というようなものは、やはり国家としてこれを取り上げて、そしてある一定の成果を得て、市販のできるような力を持たせるまでは、やはり国家の助成というものは絶対に必要だと考えるのだが、この点についてはどうもうまくいっていないように思います。  それと、もう一つ。それはリンゴの加工業者というものは、わりあいに小さい企業が多いのです。これがリンゴの供給のしかたがなかなかうまくいかなかったり、またせっかくつくったものの、ジュースなどの販路が安定していないという点で、これまた非常に困っているのであります。こういうような点等を考えますと、私はへ中小企業庁ではこれらの加工業者をもっとめんどうを見てもらわなければいけないと思う。どうも中小企業庁という銘を打った庁でありながら、必ずしも下のほうのそういう点にはめんどうを見ていてくださらないような感じがしてならない。また、これらの業者の間へ参りますと、そういうような声を至るところで聞くのです。そこで、これらの販路の点、あるいは工場経営としてどの程度まで旧来めんどうを見てくださったのか、また、将来これらについては、中小企業庁の使命にかんがみて、どういう方向にこれを持っていこうとするのであるか、それらの点もあわせて御答弁を願いたいと思います。
  98. 吉田寿雄

    ○吉田説明員 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げます。  リンゴあるいはミカンその他の果実なり、あるいはその加工品を学校給食の中で適宜使用することにつきましては、従来から文部省といたしまして、都道府県の教育委員会を通じて指導してまいったところでございます。悉皆調査ではございませんが、昭和四十年度で、これらの果実の使用量は、推計ですが、およそ四万トン程度に達しているものと私ども考えております。なお、最近における傾向を見ますと、相当大きな伸び率で、この使用量がふえるのではなかろうかというふうに私ども推察している次第でございます。  ただ、御承知のとおり、現在の各学校におきます給食費の単価でございますが、わりあいと低い単価でございます。昨年の全国平均で申しますと、小学校の場合一食当たり三十円余り、中学校の場合一食当たり三十八円余りでございます。こういう単価で、しかもパンとミルクとおかず、これを全部そろえなければならないという現状でございますので、その中で果実を相当多くとる、たとえば毎日とるというようなことは、実際問題といたしまして相当困難が伴うということも、また否定できないと思うのでございます。  しかしながら、最近におけるわが国の果実生産の進展状況、あるいは各家庭におきます食生活の内容の向上、あるいはまた学校給食の内容を子供たちにとって魅力のあるものにしていく、こういうような観点を考えるわけでございまして、私どもとしては、給食費との関連はございますが、適宜この果実あるいはその加工品の摂取をふやすような方向で指導していただきたいということで、都道府県のほうへ指導しているわけでございます。最近におきましては、先月、四月の十九日付で主管課長名をもちまして、各都道府県教育委員会の主管課長あてに、リンゴあるいはミカン、こういう果実なりその加工品を学校給食の中で適宜使用するようにということで、再度通達を出しております。  こういう状況でございますので、ただいまの先生の御趣旨をよく体しまして、今後ともそういう方向で前向きに各都道府県を指導してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  99. 金井多喜男

    ○金井政府委員 私ども中小企業に携わる者といたしましては、中小企業の設備の近代化とか、あるいは協業化というようなことによって、中小企業のレベルアップをするというような観点から、すでに従来とも中小企業の近代化資金助成法とか、あるいは近代化促進法というような法律に基づきまして、たとえば前者の関係につきましては、国から五〇%の補助金を出し、府県も同額の金を出していただいて、所要設備の二分の一については無利子で近代化あるいは協業化をやりまして、レベルアップをする。あるいはまた一方、業種別の振興といたしまして、中小企業金融公庫から低利の資金を供給するというようなことで、業者自体もみずからのそういう近代化とか、あるいは設備の高度化、協業化という点につきましては、年々予算等もふやしまして、相当これについては利用していただく道を開いておるというふうに確信いたしておるわけでございます。  それからもう一つ、試験研究の件につきましては、中小企業の技術改善費補助金という制度が、ごく近年におきまして中小企業のために特に設けられまして、これは従来からございました工業技術研究費補助金というものとは別の観点から、特に中小企業のために力を注いでおるわけでございます。ただ、実際問題として、それあたりがほんとうに農産物の加工という点にうまく使われておるかどうかという点につきましては、率直な話、先生の御指摘のように、御疑問があろうかと思います。この点につきましては、十分私どものほうも改善すべき点は改善を心がけまして、とかく中小企業庁というものは、製造工業、たとえば金属機械だとかあるいは繊維工業だとか、そういったようなものに多少重点が注がれておる向きもありはしないかというような反省もいたしますので、その点十分食料加工関係につきましても、そういう制度に自主的に乗っかれるように改善をして進めたい、このように思っております。  それから販路の拡大の問題という御質問でございましたが、この辺、私ども中小企業行政全般といたしまして、製造業に比べまして、流通段階における施策がややおくれておるのじゃないかという批判を、率直に言いまして受けておるわけでございます。この点につきましては、特に物価問題等の関係もございまして、われわれ先年あたりから、流通段階における中小企業の近代化なり振興という点については、手をつけかけておりますけれども、この点につきましても、十分今後また相当やるべき点があろうかと思いますので、より積極的に考えてみたい、このように思っております。
  100. 森田重次郎

    ○森田委員 もう終わりになる約束なんですが、一点だけ落としておったところがありますので、追加いたします。  それは試験場の問題です。これはリンゴの新品種を創成するということは、試験場においてきわめて重要なねらいでなければならない、当然のことだと思うのです。はたしていままでのリンゴの試験場がそれにこたえているかどうか、私はそれに相当の疑問を持っているものであります。これは行ってみますと、試験場があって、職員がそろってはいるが、どうも試験の設備が不十分で、とてもそこでやれないとかなんとかというようなことがひどく多いように考える。青森県などでも、試験場などへ行ってみますと、昭和二十九年の時代と比べ、今日パーセントからいって、費用などがほとんど半分以下になっている。私は、試験場というようなものをもっと重要視すべきだ、こう考える。その点について、旧来の実績、つまり、新品種の創成ということに限ってきょう聞いておる。ほかにむろん試験場の使命がありましょうが……………。たとえば藤坂という試験場があって、田中稔博士があそこの試験場長をやって、今日冷害に耐え得る品種を創成して、北海道あたりの相当の寒冷地帯でも稲作ができるようになってきた。かくのごとき画期的な新品種の創成というところに、私は学問の偉大さを考えさせられる。ソ連へ参りましたら、ソ連のある方面へもこの品種が行って、いまはほとんど世界的になっていると言うても過言でないような実情であります。つまり、私が先ほど申し上げました、大玉で貴族化してうまいものも一方立てるのだが、一方小玉でうまくて長持ちして安いもの、こういう新品種をつくることに試験場などが全力をあぐべきものじゃないかと思うのですが、どうも寡聞にして、そういう報告を得ていない。私はあるいは間違っているかもしれませんから、この問題に関して過去の試験場の実績はたしていかん、これが一点、将来のこれに対する農林省の方針がはたしてどうなるか、こういう点をお伺いしておきたい。
  101. 久宗高

    ○久宗政府委員 品種というような生産の一番基本的な問題につきまして御質問いただきまして、非常にありがたいわけでございます。育種関係は特に時間がかかりまして、たまたまある時期になりませんと開花いたしませんので、この努力が非常に表に出ないわけでございます。特に果樹のほうに長い年月がかかりますので、これは釈迦に説法でございますけれども、品種それ自体が確立いたしますのに約二十年、それがさらに検定というふうな問題を考えますと、さらに五年という長期間にわたるわけでございます。したがいまして、先ほど、そういう時間がかかるから、品種の決定については非常に慎重であるというお話がございましたが、技術者といたしましても、品種の改良にあたりまして、どこをねらうかというのがいつも悩みの種になるわけでございます。  そこで、きょうのお尋ねは、品種に限定いたしまして、国の園芸の試験場でいかなる成果があるかというお話でございますので、先ほどもお話の中に出ておりました例のフジでございます。これは藤崎のほうにごやっかいになりました当時、その翌年から、昭和十四年に手がけたわけでございます。実際にこれが動き出しましたのは三十三年からになっているわけでございます。しかし、これは先ほどお話の中にも出ましたような小玉と大玉の中間をねらったものでございます。おくてでございまして、かつ、貯蔵力に非常に富んでおる、こういうことでございます。私ども具体的な成果としては、これが品種の上では一つの大きなものであると考えております。ただ、これはたまたまその時期に頭を出したわけでございます。これに相当するようなものがまだこんとん状態の中でずっと努力が続けられておるわけでございます。さような意味におきまして、やはり相当の時間をかけてやらなければならないというふうに考えております。  ただ、御指摘のような、そのための施設が十分であるかどうかという点につきましては、やはり盛岡支場を中心にいたしまして、先ほど来生産の問題についてお話が出ました病虫害その他含めまして、検討しておりますけれども、なおかつ、県の試験場との関連、そういうことが園芸関係におきましては非常に緊密な調整を要する問題と考えております。青森県の試験場と指定試験の関係、あるいは相互助成の関係におきまして、緊密な連絡をとりまして処理をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。施設といたしましては必ずしも十分でないというふうに私どもも考えておるわけでございます。
  102. 森田重次郎

    ○森田委員 それでは最後に、大臣の御意見をお伺いいたします。  試験場に金を入れないということですよ。ずいぶん農林省も多くの予算を取っているのでありますが、どうして試験場などを軽視するのか。近代化ということは科学化ということになるのです。科学化ということは試験場ということになるのです。それなら、試験場に相当な重点を置くというのが近代政治の根幹になるのだという考え方なんです。  そこで、青森県における実情を簡単に申し上げます。昭和三十四年にはリンゴ試験場の総費用が二千九百万円のうち、試験研究費七百九十五万円、その比率は約二六%、こうなっております。ところが、これを三十九年度の予算に照らしてみると、リンゴ試験場総予算六千九百七十六万円、試験研究費が七百六十七万円で、これはちっともふえていない。したがって、その比率は、前には二六%であったのが、三十九年度にはわずか一一%ということになっております。まるで時代に逆行しておる。青森県のような貧乏なところでは、県営の試験場で一生懸命努力していてこんな程度なんです。しかも国全体から見ても、試験場をあまり優遇していないというふうに私は聞いております。  大臣、はたしてそれでいいでしょうか。坂田農林大臣に、今後試験場に相当な重点を置いて、来年度の予算はうんと取ってもらうように御努力あらんことを私はお願いしたいと思います。これに対する大臣の答弁をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  103. 坂田英一

    坂田国務大臣 森田委員からいろいろお述べいただいて、たいへんありがとうございました。確かに重要なことであると思います。なお、詳細なことであれば局長からもお話し申し上げたいのでございますが、試験場全般としては、まあ最近は相当伸びてはおるのでございます。しかし、これで十分とは私も絶対考えておりません。特に園芸関係はさようなことであろう。これはどうしても農業行政は、やはり科学技術を行政の上にのせることであるということを私は強く感じておりますので、試験場の重要な研究費等については全力を注ぎたい、かように考えておるのでございます。
  104. 森田重次郎

    ○森田委員 これで私の質問を終わります。
  105. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 松田鐵藏君。
  106. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 簡単にお伺いいたします。  ここにあるパンフレット資料に「果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案政令規定見込み事項」というものがある。この中の第二の項に、「改正後の果樹農業振興特別措置法第二条第二項の政令規定事項」、これは現在の規定されておる種目からふえておりますが、ある場所において私は小林局長に梅の話をした。ところが、長野県の主要なる作物にアンズがあります。このアンズがこの中へ入っていない。梅とアンズとは種類が違うことになっておるのか、同一として考えておるのか、この点をまずお聞きしたい。
  107. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お尋ねの点でございますが、この法律の対象となります果樹をどう選定しましたかということでございますが、これは生産量が非常に大きくて、したがいまして、作付面積も当然大きいわけでございますので、そういう意味で、果樹植栽、栽培そのものも集団的に行なわれておる。したがいまして、果樹園経営計画で、その経営合理化をはかっていく必要があるというような樹種を取り上げるという観点から、これを見ておるわけでございまして、したがいまして、これまでその対象になっておりますかんきつほか八種類の果樹のほかに、梅は一万ヘクタールも栽培面積があるわけでございますので、これを対象にいたしたわけでございます。  アンズにつきましては、これは販売数量でございますが、千四、五百トンということで、生産量におきましてもそれだけの大きなものを占めていないという点と、それからもう一つは、やはりこのアンズにつきましては、むしろ一県の中で、その県の果樹振興の対象として取り上げられるということが適当ではなかろうかというふうな観点で、これはこの法律の対象とはいたさない予定にしておるわけでございます。もっとも、そう申しましても、それの振興をはかる必要がないということを申し上げておるわけでは毛頭ございませんので、農業構造改善事業でございますとか、あるいは近代化資金でございますとか、いろいろ助成措置はございますので、その地域の農業の振興の一環として振興されることを期待しておるわけでございます。
  108. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 農林省と大臣は特に考えておかれなければならぬ。アンズというものは世界的な作物です。フランスの農民というものは、アンズを主体としてやっておる。また、東南アジアにおいても、アンズというものが非常な長寿の食物として考えられておる。アメリカは、またほとんどアンズというものに主力を置いておる。そこで、そういう世界的な重要な果樹であることを御認識されておるかどうか。長野県のような寒いところ、北海道のような寒いところの農民というものは、構造改善の中で融資の道もあると、ただいまの御答弁でありますけれども、もっともっと積極的にこういうことを考えられる必要性があるのじゃないだろうか。私は四、五年前からこれに非常に興味を覚えた。たとえば長野県において反当三十万なり二十万なり上がっておる。また営々として苦労もされておるけれども、あの気候と北海道の気候というものを比べたとき、また満州においてもそのとおりだ。東洋民族としても西洋民族としても、非常に嗜好されるこのくだものを、もっと積極的に農林省振興していく必要があるのではないかと思う。北海道の根室にさえあるのです。まさか私はあんなところにあるものじゃないだろうと思った。ハルビンにもりっぱなアンズ園があるということで、寒地作物としてのたてまえからいったならば、ほんとうに重要なものである。ただ、作付がないから、生産が足らないという現在の立場ということと、世界的な果樹であるという点と、北海道のような寒冷地においてさえこれが相当の収穫があるということを考え合わせれば、梅と同様にこれを振興していく方法を考えるべきじゃなかろうかと私は思うのだが、この点大臣の御答弁を願いたいと思います。
  109. 坂田英一

    坂田国務大臣 これは、アンズの問題についても、できる限りの努力はもちろん払うべきものであると思うのでございますが、いまのところ、先ほど局長からもお答えいたしましたように、ただいまの法律案としては、数量の非常に大きなものというものから一応は取り上げていくわけでございます。もちろん、これは先ほども申しましたように、その地帯地帯に重要なる構造改善等の施設によりまして、単に融資だけでなしに、その他の助成ということもできるわけでございます。そういう方向で進んでまいるわけでございます。もっとも、これはいまさしあたりの問題でございまして、将来の問題といたしましては、これらの重要性が認められ、全体的にこれらをどうするかという問題にくると思うのでございます。いまのところ、そういうことで、全体としてはこれはこの法律案の中には入れないわけでございます。
  110. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 いまこうしたときにおいて、現在の立場においてものを判断していって、農林行政をやっていこうという考え方と、さなきだに北海道の農民は冷害に困り、そうして内地と違って、ほとんど二十町歩もなければ営農は立っていかぬというようなときにおいて、救う道を考えるのに簡単な方法があるとするならば、それを政治の上において実行していくことが、少しくらいの無理があったところでやっていこうというお考えを持つことが、大臣としての考え方でなかろうかと思う。ただ事務的にものを処理するということからいったならば、いつまでたってもその域を脱しないことになる。私は、栄養の上からいっても、また世界的な果樹としてあるものに、北海道、いな日本農林省がこれを振興していこうという考え方を持ってないということであれば、単なる事務的な考え方にすぎないと思うのです。こういう点をあなたの実力をもって打破してもらうことが、農民が期待しておる坂田農政であろうと思う。そういうようにものごとを高度に考えて持っていく方針をとっていかなければ、私はりっぱな農政とは言われないんじゃないかと思うのです。事務的にのみこだわらずに、世界的な果樹であり、北海道のあの寒いところに適する果樹であるということからいったならば、いま少し考えなければならぬ。構造改善によって行なわれるものは、内地のほうの各府県の村と北海道とは違う。香川県一つくらいの町が幾つもある。それで、一ヵ町村には幾らという構造改善のワクはきめられておるのです。しからば、その構造改善のみでやっていかれるかどうかということを考えられるならば、幸いにしてこの法律が出て、私はこれはりっぱないい法律だと思う。改正されたりっぱなものだと思う。前には、果樹を植えて三年据え置きで、十年年賦なんて、植えるなということと同じことになる。それを今度は十年据え置きで、育ててから金を返せというのだから、坂田農政というものは、私は、非常に画期的なりっぱな、農民に恩恵を与えておる改正法案だと思うのです。そういう面からいったならば、いま一歩じゃございませんか。いままで言った議論からいったならば、いまここでもって大臣が大いにやるべきだといって、局長に対して命令されるのが坂田農政でなければならぬと私は思う。まあ時間がないからあまり言いませんが、ひとつ十分考えて善処されんことを希望いたします。実は、私は四、五年前から一年に五万本ずつ農民に与えた。ところが、残念ながら、管理のいいものは成長しておるけれども、あとはほとんど全部ウサギに食われちゃった。そのウサギに食われたというころはどうしてかというと、何せ山の傾斜面にみんなが植えたんだ。そこへウサギが出てきて、ウサギに食われちまって、非常な損害を受けた。しかし、それはまあ自分の管理が悪いから、そこに金網を張ってやる装置をして保護しなければならない。そういう面からいったならば、構造改善でもってわずかの金を借りてやっていったって、金網代でなくなってしまう。そういう点からいって、こういうものに対して、寒地農業を振興するというたてまえから、いま少しそういう法律が出ていったならば、これによってその道が開かれていくのではなかろうかと私は考える。こういう点をよくお考えあって、ただいま御答弁を願わなくてもいいが、よく御研究されて、この法律案が通った暁において善処されることを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  111. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 午後二時再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時二十四分休憩      ————◇—————    午後二時十四分開議
  112. 中川俊思

    中川委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。華山親義君。
  113. 華山親義

    華山委員 先ほど森田委員が御質問になりましたことと関連いたしまして、日ソ間の沿岸貿易とリンゴ関係についてお聞きいたしたいと思います。  いわゆる沿岸貿易につきまして、リンゴのことを具体的に考えますと、リンゴと、これは貿易のリストに載っておりますけれども、抱卵ニシンとのバーターを考える、ほかの魚類もありましょうが、これが普通考えやすい。日本でカズノコが珠玉のように高いのでありますから、考えられる。それで、バーターも国と国との間のバーターであるならば、私はいろいろ解決の道があるかと存じますけれども、あちらで魚類を出す——資料を持っておりませんので、ことばはあるいは正確を欠くかもしれませんが、そういうふうな産業団体とこちらの団体がバーターで行なう。したがって、こちらから出したリンゴというものは、これはシベリアならシベリアの一般市場に流れるのではない。そういうふうな経済組織にあちらはなっていない。こちらから出したリンゴというものは、あちらの漁民に配給されるだけだという組織です。したがって、あちらの漁業関係の組合といいますか、団体といいますか、そういうのは、リンゴよりも、むしろ雨がっぱとかあるいはゴム長ぐつとか、そういうものをほしがる、こういうところがあるのではないか。それで、この点につきまして、昨年夏、私がソ連に参りましたときに、極東貿易事務所長にこの問題についてお聞きいたしまして、御要望もいたしましたけれども、この問題は絶対に解決しなくてはいけないという印象を私は受けてきました。この問題の解決のできない限り、リンゴのシベリア輸出ということは非常に困難があるのではないか、こういうふうに考えますが、これについての御見解を伺いたい。
  114. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 ただいま先生御指摘のように、沿岸貿易というものは、わがほうとソ連側のシベリア地域の極東貿易事務所、それとがバーターの形で行なっております。したがいまして、ただいま先生御指摘のとおり、先方の漁業組合がニシンその他を出しまして、そうしてその見返りということになりますと、確かに雨がっぱとか長ぐつとか、あるいは場合によりましてはくつ下などというものもあるかと思いますが、こういうものを向こう側が希望しているようでございます。しかしながら、一応向こうの窓口が極東貿易事務所でございます。今後とも毎年ソ連との間で日ソ貿易協定の実績検討、タイアップ、そういう場合に、そういう点の是正方を引き続き先方に対して申し述べていきたいというふうに考えます。
  115. 華山親義

    華山委員 御答弁きわめて簡単でございますが、あちらのほうでは漁業組合というものがリンゴ輸入いたしましても、それを一般市場に出してもうけをとるという組織ができないのですね。そういうふうなことは、ソ連と日本との間の経済の組織の相違なんであって、私は打開ができないと思うのでございまして、なかなか困難だと思うのでございます。いまの御答弁でございますと、打開ができるような印象を受けますが、そういうふうな方向に向かっておりますか、お聞きいたします。
  116. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 ただいま先生御指摘のとおり、非常にむずかしいことでございまして、先ほど先生もお聞きになりましたし、私からもお答えいたしましたが、漁業組合が魚を輸出した見返りには、自分たちの好きなものというと、必ずしもリンゴに結びついてこないわけでありますが、しかし、政府レベルで話し合いをします場合には、一応向こうの沿岸貿易につきましての窓口は極東貿易事務所というものがございます。先方から輸出した代金をプール——プール計算という形で極東貿易事務所のほうでさらにもっと努力をしてもらいたい。それが容易に実現するとは必ずしも申し上げられないと思います。また、従来の経験からも非常に困難だと思いますが、引き続きそういった方向で毎年の貿易の検討会議をして、先方の注意を喚起して努力してまいりたいというふうに考えるわけであります。
  117. 華山親義

    華山委員 そういうプール制ということを私も言いました。なかなか困難なようでございます。非常に気にかかることは、ソ連の事務所長が、その際に、とにかくソ連の魚類を日本に出したんだから、その漁民がおいしいリンゴを食べたってあたりまえじゃないか、ほかの人はやっておらぬのだ、こういうお答えでございます。そういうところに非常に困難があると思うのでございますが、私のお願いいたしたいことは、先ほど森田委員に対しての御答弁で、困難であるということをおっしゃらなかった。こういう困難があるんだということをおっしゃらなかったものですから、非常に有望であるかのごとき印象を受けまして、そして現地なりあるいは果実団体なり、そういうものがむだな努力をしたり、むだな金を使ってみたり、そういうことがあるのではないか。これは相手のあることですから、政府は、困難なことは困難だ、こういうところに隘路があるんだということは、やはりきちんとおっしゃっていただきたいと思うのでございます。今後もいろいろなことにつきまして話がありました際にも、おっしゃっていただきたい。これは外国が相手のことでございますから、楽観論的なことばかり言っておりますと、かえって現地を困惑させると思いますので、一言お願いいたしておきます。  関連といたしましてはそれだけでございます。  次に、かん詰めの問題につきまして、重点をしぼりましてお尋ねをいたしたいと思いますが、現在、各地の果実生産はおのおの特色を持っております。たとえば白桃を考えましても、岡山の桃は生食用として出荷される、そういうことでございますが、これは伝統なり市場なり、そういう関係があろうかと思います。しかし、たとえば山形県のようなところになりますと、これは生食用でなくて、かん詰め用に主点が出てきた。そういうふうに産地、産地によって販売先がみな特色をだんだん持ってきておるようでございますが、その点いかがでございますか。
  118. 中川俊思

    中川委員長 鶴見君に申し上げますが、前段に対する御答弁はありませんか。
  119. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 先ほど先生の仰せられましたように、困難な点が多分にあることは事実でございます。それを十分肝に銘じまして、今後も毎年毎年の際に努力をしてまいりたいと思いますが、それがすぐに実現するかどうかにつきましては、もちろん、先ほどの先生の御指摘のとおり、困難だということをわきまえてやりたいと思います。
  120. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 先生のお話のように、果実の中には原料専用につくられておる果実がございます。たとえば桃の中では、缶桃種という種類もございます。また洋ナシの中でも、山形ではかん詰め用が多いという場合もあるわけでございます。ミカン、白桃につきましては、生食用、それからかん詰め用、それぞれの用途があるわけでございまして、白桃の場合でございますと、これは両方に使われておるわけでございますが、立地条件関係上、山梨の白桃に比べましては、山形の白桃がむしろかん詰め用に使われておるというような関係で、地域によってそのウエートは違っておるものと考えております。
  121. 華山親義

    華山委員 そういうふうな関係がございます。私、山形県のことを特に知っておりますので、自分の国のことを申しまして恐縮でございますが、果物のかん詰め業者は山形に非常に多いのでございまして、全国的に比率も高いのでございますが、取引先がもうそれに限らなくなってきた。全国の業者が山形に集まってきて、そして山形の原料を買っていく、こういうふうな傾向が昨年あたりからだんだん強まってきておるわけでございます。したがって、今度の法律によりまして、県というものを主体にし、あるいは県の農協を主体に考えていられるようでございますけれども、県、農協の及ぶ範囲、あるいはそれに助力するところの県知事の力は、自分の県の栽培者あるいはパッカーには及ぶことができましても、各県からばらばらに入ってくるそういうものにつきまして、うまくその間を仲介することができるかどうか、非常に疑問に思うわけでございます。したがって、今度の法律のように県を主とするほかに、やはりもっと中央の機関——全国の果実栽培者、それから果実を買うパッカー、そういうものの間に立つところの機構が必要なのではないか、こんなふうに考えますが、いかがでございますか。
  122. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お説のように、たとえば山形の白桃でございますが、これは山形のみならず、静岡、宮城、福島、秋田、千葉というような数県にこれが出荷されておるわけでございます。県内の取引のみならず、数県にまたがる取引が行なわれるわけでございます。したがいまして、今回の法改正におきまして考えておりますパッカーと出荷者側の協定の問題も、その実態に応じまして、県内あるいは数県にまたがる協定が取りつけられますことによって、その原料取引の安定が期されるものというふうに考えておる次第でございます。
  123. 華山親義

    華山委員 しかし、このたびの法律によって、生産者は本県の者でございますけれども、買うほうがほかの県の者であるということになりますと、それは非常に困難なものではないだろうかと思いますが、いかがでございますか。
  124. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 出荷者側とパッカーとの間の協定は、これは両者の合意によって行なわれるわけでございます。したがいまして、なかなかその利害が一致しないという面はあるかと思いますが、そういうふうに広い地域にわたって取引が行なわれます場合は、その協定がその範囲外にまで及ぶような当事者が参加することによって、初めて安定が期し得るものと思います。当初の出発点におきましては、全取引業者が協定を結ぶことはなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、今後そういう方向に従いまして協定が結ばれるように指導いたしたいと考えておる次第でございます。
  125. 華山親義

    華山委員 現在農林省の中に桃加工原料流通改善協議会というものがございますか。
  126. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この件につきましては、青果物の流通改善という問題につきまして、これが数県にまたがる品目につきましては、農林省がそういう場を設けまして、それぞれの関係者の御参集を求めまして、そこでお話し合いの機会をつくっておる次第でございます。
  127. 華山親義

    華山委員 世の批判によれば、あまりにもサロン的であって困るということがありますけれども、これを強化いたしまして、そして全国的なパッカーと生産者との間に適正な値段をきめるような機能を与えるというふうなお考えはございませんか。
  128. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 たとえば白桃の問題でございますが、これは生食用並びにかん詰め用と両方にまたがっておるわけでございます。そういう意味におきまして、価格問題が農家の側から見ましても、どれだけの生産費でなければならぬかという点が共用でございます関係上、非常にむずかしい問題がございます。またパッカー側におきましては、これは御存じのとおり、くだもののかん詰めというのは、一年のうちで数ヵ月を行なうわけでございまして、魚あるいは肉類その他の野菜というもので年間操業をやっております。その一環として行なわれるわけでございまして、そういう意味で、その原価を出しますこともまた非常にむずかしい問題がございます。そういう意味で、価格が幾らであるかという点について、有権的にこれをきめるということは非常にむずかしい問題でございますが、先ほども申しましたように、農林省が中心となりまして、そういう話し合いの場を通じまして、お互いの間に長期的な利益というのはどこにあるかということを気長にやっていくことによりまして、その取引の安定をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
  129. 華山親義

    華山委員 大体かん詰めというものは、山形県あたりでパッカーがつくっております。相当大きな工場もございますけれども、小さな工場もある。大きな工場の直轄した工場もありますけれども、そうでない限り、大体山形県でできたものということは一つも書いてない。全部、たとえば国分商店であるとか、あるいは日東であるとか、そういうふうな名前で出ているわけでございます。ただそのレッテルを張るだけなんです。かんに印刷しているものを使ってやっているだけの話なんです。そういうふうな大きな会社、大きな販売の実権を握っておる会社、そういうものは、一体日本に何社あって、そのシェアはどのくらいのものですか。
  130. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 そのシェアの数字はいまここにございませんけれども、トータルで申しますと、大体くだもののかん詰めを製造いたします工場が千工場くらいあるかと推定されます。そのほとんど大部分は中小企業でございまして、その資本装備の上からも非常に零細である、また従業員も非常に少ないという企業が多いのでございます。先ほどもお話がございましたように、ほとんど大部分のものは小さい企業でつくられていまして、そのブランドが大会社のブランドが張られておるということがあろうかと思いますが、そういう意味で、実際に製造いたしますのは中小企業のものがほとんど大部分であるというふうに考えておる次第でございます。
  131. 華山親義

    華山委員 おわかりにならなければ、あとから教えていただいてけっこうなんですが、何社くらいがいわゆるそのブランドの会社なんであって、そのシェアというものは一体どのくらい占めておるのか。私は非常に少ないもののような気がしますが、どうでございますか。
  132. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 ほとんど大部分が中小企業によって生産されておる。ブランドは、むしろ大きな企業といいますか、問屋のブランドが張られておるというのが実際だというふうに承知しております。
  133. 華山親義

    華山委員 私が聞いておるのは、その問屋というものは一体何社くらいあるのかということなんです。そういう問屋がこのかん詰めの価格を支配しているのですよ。ですから、私はお聞きしておる。ただブランドのマークを貸しておるというだけじゃないのです。全部そこに集中されて、そこで価格が決定されて、市場が決定するという仕組みになっておりますので、そこでは自由競争が行なわれない、ほとんど協定によって行なわれておる実態があるように思われるのです。たとえば国分商店であるとか、あるいは日東であるとか、あるいは北洋漁業であるとか、そういうふうな、日本のかん詰め界、したがって中小企業パッカーを牛耳っておるところの会社というものは非常に少ないのではないか。そうしてそれが大部分の市場のシェアを握っておるのではないか。そういうような実態をお調べになっておると思いますので、その実態をお聞きいたしたい、こういうことなんでございますが、わからなければわからないでしかたがありません。
  134. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 的確な数字を持ち合わせておりません。
  135. 華山親義

    華山委員 私は、農民を保護する立場に立たれる農林省のお答えといたしまして、非常に残念です。そういうふうにもうかん詰め用の果実というものは指を屈するほどの大きな商店によって握られておるということを認識しておいていただきたいと思います。よく調べて、あとででも、あしたというわけにもいかぬでしょうけれども、教えてください。  それから伺いますが、このかん詰めというものは、一体どのくらいの値段がいいのかということは別にいたしまして、大体かん詰めのコストというものは、これはものによって違いますが、桃なら桃、そういうものに限定してよろしゅうございますが、かん詰めのコスト、その内容をお調べになっておると思いますので、お聞かせ願いたい。
  136. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 かん詰めのコストでございますが、全体的に申しまして、原料代が非常に大きなウェートを占めておるということがいえるのでございます。例を桃にとりまして申し上げますと、これは三十七年に調査いたしましたところ、輸出向けの白桃におきましては原料代が四一・五%、それから黄桃におきましては三五%でございます。そういう数字が出ております。同じ時期におきまして、ミカンにつきましては、大体四〇%くらいの数字が原料代によって占められております。
  137. 華山親義

    華山委員 その原料代というのは、一体かんも入ったり、砂糖が入ったりなんかする全部でございますか。
  138. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 主原料でございまして、くだものでございます。
  139. 華山親義

    華山委員 それはあとでまた出所なんか教えていただきたいのでございますが、私が山形県におきまして実地にいろいろな工場について調べたところによりますと、昨年、一昨年あたり、一昨年が主でございますけれども、それによりますと、大体三分の一がくだものの代金でございます。三分の一がかんの代金、あとの三分の一がいろいろの労賃とか営業費とか、そういうふうなもの、営業費なんかの占める割合は驚くほど少ない。そういうふうな実態なんです。私は、その点ひとつよく調べておいていただきたいと思うのでございますけれども、そういたしまして、かんというものは絶対に下がらない。いまのような鉄鋼業界で鉄鋼が下がってきても、かんというものだけは下がらないのです。むしろ上がりぎみなんです。労賃というものは、わりあい占める割合は少ないけれども、これはほとんど動かすことができない。きわめて低賃金で、女の人なんかが働いております。運搬賃は変わらない。利子もほとんど変わらない。それで、普通の場合、この三分の一というものが農民の人に渡るのでございますけれども、一たん相場が下落いたしますと、ほかのものには影響がなくて、全部がくだもの、原材料にかぶってくるわけです。そういうことは、コストの割合が正確におわかりにならないといたしましても、そういう状態にある、そういうふうな経済の機構にあるということはお認めになれますでしょうか。
  140. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お説のように、かん代が大体三三%から三四、五%を占めております。そういう実態でございます。それからミカンにつきましては、そう大きな変化がないのでございますけれども、白桃の場合でございますと、相当大きな原料の価格の変動があるわけでございまして、私たちのほうでもそれを調査いたしたのがございますけれども、高いときには五十円をこしたということもございます。安いときには十円台での取引も場所によって行なわれたという実態でございます。お説のように、固定経費が変わりませんために、この原料代の価格が下がるというようなこともあろうかと思いますが、むしろ、この桃の問題につきましては、高くなりました場合は、かん詰め工場が自分の操業度を高めなければならぬ。ほかにつくるものがないということで買いあさりが行なわれ、またほかに有利なものがあった場合には、その桃のかん詰めをつくらないということで、いわゆる工場の経営の中において、その桃に対する需要が変わっておるというようなところにも大きな原因があろうかと思います。ところが、白桃の場合でございますと、かん詰め用にいたします場合と、それから生食用に出します場合で、これは袋をかけるかかけないかというような違いがあるわけでございますので、そういう意味におきまして、相当事前にかん詰め会社が買ってくれるかどうかということが決定されなければならぬような状況でございます。したがいまして、私たちは、事前に、そういう取引につきまして、数量でございますとか、できますれば価格まで、あるいは価格が無理でも、数量について一つの取引が事前にきまるということが好ましい方向だと思いますので、そういう方向で指導いたしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  141. 華山親義

    華山委員 ただいまおっしゃったように、年によって、白桃あるいはかん桃につきまして非常に格差が大きいわけでございます。それはなぜか。いまお聞きすると、何かパッカーのほうにも責任があるようなふうにも聞こえますが、そうじゃないと思うのです。これは先ほど言いましたとおり、四つ、五つ、あるいはもっと多いかもしれませんが、それらの大手商社が実権を握っているのです。そうして、その商社が実際上はほとんど協約をしてやるのです。ですから、ことしは桃は売れない、ことしは桃の輸出が少ないと思えば、桃は買わない、そういうふうなことができるのであって、パッカーの責任でもないし、農民の責任でもない。むしろ、大商社が市場を握っておるところに問題があるのじゃないか、こういうふうに私は思われます。それで、この前も、私ここでお願いをいたしたことがございますが、これは県の方針が間違っておったのかもしれませんけれども、洋ナシなどはおととし一キロ五円に下がった。その前の年は三十円くらいしておったのですよ。私は三十円じゃ高過ぎるような気がします。しかし、五円に下がったのです。それから県のほうで、あそこの特産物なものですから、少し力を入れて、そして六円とか七円でとにかく取引させた。それも取引するときには、くさりますから、もうあとで値段をきめるということで、それで六、七円にきめたというふうな惨たんたる状況があるわけです。これは私は、何と言っても、行政上でそういうふうなでこぼこのひどいのは是正されなければいけない、こういうふうに思われるのでございますが、これを是正するところの方針というものはございますでしょうか、あるいはこの方針は守られておりますか。
  142. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お説のように、パッカー側の工場の操業というもの以外に、輸出向け、内需等もございますけれども、在庫がどのくらいあるかということが、その工場の生産計画に影響を及ぼすものでございまして、したがいまして、それがまた原料価格にはね返るという問題もあるというふうに考えます。したがいまして、その点につきましては、本年度くだもののかん詰めの在庫量をどのくらい各会社が持っておるかということについて、在庫量調査を実施いたします予算措置もとっておるのでございまして、それらを活用いたしまして、できるだけ在庫量を把握しまして、その生産計画なり、あるいは白桃の場合でございますれば、生食用に出せばいいか、あるいはかん詰めに向けるべきかというような点にも役立てたいというふうに考えておる次第であります。
  143. 華山親義

    華山委員 私は、私の言うことが間違っておったならば御訂正願いたいのでございますが、その年にたとえば白桃をある単位、幾らで買うということは大商社がきめるのですよ。これでつくりなさい、そういうのだったら買いますということを、いまおっしゃった千何百かのパッカーに言うわけですよ。そうすると、その値段に合わせるようにパッカーがつくる。そして、ほかのものは、先ほどおっしゃったように、かんなんかは三分の一を占めておるのだが、それは変わらない。何と言ったって、くだものの値段にいくのじゃありませんか。在庫を調べると言ったって、そんなパッカーなんか調べようがない。値段をきめてくるのは大商社なんです。しかもその大商社が協定してきめてくる。ことしは桃のかん詰めばこれこれで買います、それではいやですと言えば、つぶれるほかはない。たたくところは農民だけです。農民のほうは桃を貯蔵しておくわけにいきませんから、ただでも出す、こういうふうな結果になって、そのやり方といいますか、やり方のことは別ですけれども、あまりにも組織がひど過ぎるのじゃないか、こういう印象を受けますが、私の言ったことに、そういうふうなシステムなんだということに、何か違う点がございますか。
  144. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 大商社がお互いにかん詰めの買い入れ価格というものの協定を結びました場合は、これは当然独禁法の適用になると思います。現実の問題としてそういうことが行なわれておるかどうかということにつきましては、私ここでそれを存じ上げないのでございますけれども、いずれにいたしましても、生産者の側もかん詰めの製造業者の側も、お互いに話し合いをして、そこで協定を結ぶということによって、抜けがけの販売あるいは購買というものがない方向で指導していくことによって、価格の安定ということもはかられるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  145. 華山親義

    華山委員 法律違反のような協定になっておるかどうか、それは私も証拠があるわけでないからわかりせんが、しかし、関係しておる商社が何社かということを初めにお聞きしたのですけれども、とにかく相場というものは、ことしはこのくらいのものであるならばうちの会社はもうかるのだという相場があるわけです。これは大体各社に共通していて、それで、それよりも高くちゃ買わぬという線が出てくるのですから、そうすれば、もう自由になるところの農民のつくったものにしわ寄せが全面的にかぶさってくる、これはあたりまえです。しかも現在、大きなかんをつくる会社が資本的に小さなパッカーを握っている。たとえばかん詰めをつくる機械というものは、一体どこから買っているのか。これはだんだん新しくなってまいりまして、能率のあがるものもありますけれども、それを買う資本がない。それを買う資本がないときにこれを貸しているのは、かんをつくる東洋製罐とかいうようないろいろな会社がありますけれども、そういうところが機械を貸すのです。したがって、かんというものについて文句は一つも言えない、そういうふうな実態なのです。パッカーも苦しいし、しわは全部農民が背負わなければならない、こういうふうな状態です。  それで、お聞きいたしますが、大体酪農につきましてはこのごろ不足払いという制度ができました。米につきましてもあるわけでございますが、一つの例を申しますと、白桃というものは、かん詰めに出すという前提のもとに、一体幾らであるならばこれは適正な値段でございますか、御計算になっていると思いますが、お聞きいたしたい。
  146. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 先ほども申し上げましたように、この白桃のコストというものをどう計算するかということは、非常にむずかしい問題でございまして、かん詰め用と生食用というふうに用途が二つに分かれておるわけでございますので、そういう面でコストが幾らであるべきかという点については、私のほうでも計算はいたしたことはございませんし、非常にむずかしい問題だというふうに考えておる次第でございます。
  147. 華山親義

    華山委員 大臣にお聞きいたしますが、農業基本法だって、価格の安定ということをいっている。どのくらいが一番適当な価格であるかということを計算もしないで、安定も何もないじゃないですか。桃ならば桃というものはこのくらいのものならば適当な値段であろう、こういうふうな計算ぐらいはしてみたっていいじゃないですか。そんなことがわらないで、安定も何もできないと思うのですが、どうです、大臣、そういうことでいいものですか。
  148. 坂田英一

    坂田国務大臣 それは白桃の例で申すならば、やはり農家から考えた場合は、生産費が償わなければいかぬ。また工場のほうからいいますと、工場の生産費、それから原料代を包含して、そしてその年における相場という問題等をにらみ合わせて、これはきまるわけでございます。したがって、この問題は、やはり最後のところへまいりますと、生産者のほうと工場のほうとの取引における双方の交渉という問題にならざるを得ないと思います。
  149. 華山親義

    華山委員 最後はそうでしょうけれども、とにかく農家がそういうかん詰め用の桃をつくって暮らしていくには、どのくらいの値段がいいものであるか、そういうふうなことを試算もしてみないというのはおかしいじゃないですか。そうでなくて価格安定も何もできないでしょう。どのくらいが標準としていい、しかしそこまでは近づけられないとか、あるいはそこよりもばかに飛び抜けて農家がもうけ過ぎたとすると、そういうふうなことを是正するとかいう方向をとるにしても、一体どのくらいがスタンダードとして適正なものであるかということがわからなくて、果実農政はとれないと思う。どのくらいかわかりませんか。わからないならわからないでけっこうです。
  150. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 桃の生産費につきましては、反当の生産費は農林省で調査いたしておりますけれども、三十九年におきましては生産費が反当五万三千七百五十一円になっております。そういうことから考えまして、他の農作物に比べて、いわゆる農家所得の面から見まして、不利なものではない、価格もいまの生産費をまかなっているというふうにわれわれは考えておるのでございます。
  151. 華山親義

    華山委員 その生産費を聞いているのです。生産費をあなた計算なさったのでしょう。その生産費が幾らかということを聞いているのです。
  152. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 生産費は、先ほど申し上げましたように、反当五万三千七百五十一円ということになっております。
  153. 華山親義

    華山委員 五万三千七百五十一円で、キロ当たりに直した場合に、それが適正であろう、生産費としてはそうだということでございますね。そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  154. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 いま申し上げましたのは、反当生産費でございます。この反当生産費の収量で、いまここに正確な資料を持っておりませんけれども、桃につきましても、他の農作物に比較しまして、その生産費を償わないというふうな状況になっていないというふうに考えておる次第でございます。
  155. 華山親義

    華山委員 それは年によって償う年も償わない年もありますよ。こんな高いくだものの値段でいいだろうかと思う年もある。こんなに農民というものは甘やかされていいものだろうかと思うような高い年もありますし、先ほど言ったように、一キロ当たり五円なんという値段が出ることもある。それじゃ価格の安定も何もないじゃないか。価格の安定ということに努力されるのは、これは農業基本法にきまっているところなのです。選択的拡大の要素として価格の安定ということがあるわけです。しからば、今日のこのかん詰め等につきましては、商業的なものが多うございますから、できなくても、この程度まではひとつかん詰め業者に買わせるようにしようじゃないか、これ以上高くなった場合にはもうけ過ぎているのだから、そういうものは一たん貯蓄しておいて、下がったときにはそれで償っていくというような方法をとったらいいじゃないか。そういう対策があっていいと思うのです。この適正な値段というもの——値段が上がるか下がるかということによって、そこに政策が生まれてきて、低かったならば借金でもさせる、高くなったならばそれをとっておいて、それで償ってやる、それはまた桃を買うほうについても、そういうふうなことで資金的な協力をさせる、そういうふうな方向があっていいのじゃないか。今日のように野放しで、数社のほとんど数えるほどしかない商社がかん詰め業界を握っているという段階では、どうしてもそういうふうなことが必要なのじゃないだろうかと私は思うのでございますが、その点につきまして、技術論として局長の御意見を伺いたいし、政治論として大臣の御意見を伺っておきたい。
  156. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お話のような点がなきにしもあらずとわれわれも考えておりますので、今後かん詰め業の実態あるいはかん詰め原料生産農家の実態というものを十分調査いたしまして、改善すべき点につきましては改善の方向で努力いたしたいと存じます。
  157. 坂田英一

    坂田国務大臣 果実のほうは、要するに、価格問題としては、畜産よりも真剣なところ少しおくれておると思うのは、いままでは果実生産農家からの生産としては、時期的には問題がありますけれども、とにかく需要が非常に伸びておって、生産がそれに伴わないということがいままでの実態でありましたので、果樹園芸家としては、価格の点の心配もそうあまりなかったということで、それらを現在政策的にもそう価格の問題を心配せずに、栽培の問題まで進め得たというのが実態だと思います。ところが、加工の問題になりますと、たとえば、加工に用いるところのものになりますと、この白桃の場合は、生食用と加工用とがほとんど半々になりまして、生食用というのは一般の果実と同じでございます。やはりあまり加工の方面が安ければ、生食のほうへはとにかく行き得る能力を持っておる。黄桃となりますと、これは加工が大部分でございます。これはちょっと白桃とまた違った意味において問題が出てくると思いますが、いわゆる果実のうち、加工専門の果実になりますと、これはいままでのところは問題でございませんけれども、将来となりますと、特に加工に向かうところの果実——あるいは乳製品も同様のことでございますが、非常に問題が起こってまいると思います。これはあまり高くなりますと、製品が問題になる。その製品はまた国内以外の問題も関連してまいる。あまり高くなっては、それは加工業そのもの発展しないというような問題がありまして、牛乳の場合においては、いわゆる不足払いの制度が皆さんの御協賛によって昨年からできて、本年から実行しておるわけでございますが、いままではくだものの関係においてはそれほどのシビアーな問題はなかったということだと私は思います。しかし、将来としては、加工に向かうところの問題は、そういうぐあいに需給関係が相当生産がふえてまいりますときにおいては、これは牛乳と同じような関係の問題を考えなければならぬようなことになろうかと思うのです。そういう方向に向かっての問題は起こると思いますが、いままでのところは、大ざっぱに申しまして、そう心配がなかったということでございます。したがって、これはそういう現在の実態のもとにおいては、取引の面を注意し、そしてこの法案で見ておる程度のもので、両々交渉を進めていくということによって目的を達するのじゃないかと思っておりますが、これは永久にそういうこととは思いませんので、この問題はやはり研究すべき問題である、こう考えております。
  158. 華山親義

    華山委員 くどいようでございますが、申し上げますけれども、これはもう商品でございます。ほかのものも商品には違いありませんが、これは最も商品的色彩の強いものでございます。そういうふうなことで、かん詰め用の桃につきましては、商業投機の対象になる、こういうふうな現象さえございますので、私は先ほど申し上げましたとおり、農民がもうけ過ぎるようなときには取ったらいい、安いときにはそれで補ってやる、そのことにつきましては、生産者も政府も府県もかん詰めパッカーも、あるいは大手商社も全部協力して、とにかく先ほどおっしゃったようなある程度の値段に毎年一応近づけるような方向をとっていただきたいと思うのでございます。山形県では、このごろ洋ナシなんかはもうみな切っております。せっかく植えた洋ナシをもうどんどん倒しているんですよ。今度の法律によってどういうふうに洋ナシがなるか、きわめて悲観的な見解が出るだろうと思います。私はそれは当然だと思いますけれども、とにかくいま倒しているのです。そういうふうな実態であります。それはなぜかと申しますと、洋ナシは生食に向かない、単なるかん詰め用としてのみ商業の対象になったから、そういう結果が起きた。そういう意味で、非常に大企業の商社によって牛耳られているという特色をよく認識してくださって、価格の安定ということに努力していただきたい、こういうことだけ申し上げまして、質問を終わります。
  159. 中川俊思

  160. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いま華山委員の質問を聞きまして、非常に重大な問題になってきておると思うのであります。特に今回の果振法の一部改正法案とは密接な関係があると思うのであります。大臣の御答弁を聞いておりましたが、あらためて若干お尋ねしたいと思うのであります。  御承知のとおり、くだものは、生食用として出る場合と加工されて出る場合とでは、その流通過程においても、価格的構成においてもたいへん違いがある。さっき大臣は、華山委員に対して、いままではシビアーな問題は出ていないようだがと言われておりますけれども、昨年、一昨年と私は山形県の実況を見てまいりました。一キロ三十円のかん桃が五円に下がったということはシビアーな問題ではないか。これくらいシビアーな問題はないと思う。これをさほどシビアーな問題ではないと明らかにされたのでは、私はとても納得がいかない。ことに生鮮食料品の価格は一番値上がりがひどいということをよく言われていますが、この生鮮食料品の中でも、農産物は、生産価格が横ばいなんでありまして、消費者価格が一番高く上がっておる。そこに販売流通の過程に非常に大きな悩みがあると私は思うのであります。生食用のくだものですと、農家が販売する自由を持っているが、しかし、加工段階になりますと、農家は価格づけの自由も持っていなければ、販売の自由も持っていないのであります。それが今度の改正案の第五条の二です。「生産者がその構成員となっている農業協同組合その他果実の販売事業を行なう者(その組織する団体を含む。)及び果実を原料として使用する加工又は製造の事業(以下「果実加工業」という。)を行なう者は、その双方又はいずれか一方がそれぞれ共同して、締結の日の二十日前までに農林大臣に届け出て、果実の売買に係る数量、価格又は取引方法について、取決めを締結することができる。」これがねらいだろうと思います。これについて「果樹農業又は果実加工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。」というのがこの取りきめの重要な一番最初の条項になっておりますが、この果樹農業果実加工業は本来利害が一致すべきものなんですが、現実の過程では必ずしも一致しない。さっき大臣の引用にもございましたけれども、今日牛乳をしぼっている農家と牛乳を加工している会社との利害関係は、それほどしっくりしていないと思う。酪農家はもう牛が養い切れなくて、これを倒していっているのに、加工する会社は一割以上の配当をしているという実態が残っておるのであります。したがって、この条項の扱い方いかんによっては、逆に農家から販売加工の自由を奪って、ちょうど山形県のかん桃にあらわれたような値段のつけほうだい、協定のしほうだいという形になって、逆に独占価格を生むような形になると思う。したがって、この「果樹農業又は果実加工業の健全な発展に支障を与えるもの」というのは、具体的にはどういう場合をさすのか、大臣の御答弁を伺いたいと思うのであります。
  161. 坂田英一

    坂田国務大臣 先ほどお答えした中に、ことばが足らぬために誤解があったと思いますが、もちろんシビアーなことは、山形の西洋ナシ、これはたいへんなことは私もよく存じておる。そういうのでございますが、先ほど申しましたのは、牛乳の加工となま牛乳との関連ほどではない。全般的に見て、いままではそういうことなしに発展したことであるということを言っておるのでございますが、将来の問題としては、これらの問題は相当重視して考えていかなければならない、こう思うことは、これは言うまでもないことでございます。ことばが足りませんために、いろいろお話がございましたおりに、その点をつけ加えて申し上げたいと思うのでございます。  それから今度、果実加工業の健全な発達をはかることをねらいとするものであることは、これは言うまでもございません。そういう意味合いからして、現状のように取引関係が著しく不安定で、年によっ取引価格、数量が大幅に変動することは、その年限りでは、加工業者あるいは生産者のいずれかが不利となるといった形で、利害が相反すると言えるのでございますが、結論においては、やはり取引が安定してそんなに動揺しない——動揺しないというのは、高低のないということに進めてまいりたいということが、われわれの進むべき道であろうかと思う。そういう点から、いわゆる取引の安定の方向に話し合いを進めていきたいという念願から、こういう問題を律してまいりたいというのが本旨でございます。
  162. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この果実生産者と加工業者との間にトラブルの生ずるのは、おそらくは価格に関してだろうと思うのであります。この価格に関しては、さっき華山委員から非常に注目すべき質問があったのですが、大きなメーカーがほとんど値段の申し合せをして、買いたたくといったような事情が具体的にはあらわれておったようであります。かん詰めも別段下がったのじゃないのだけれども、ただ販売が思うように伸びないからという理由で、かん桃の値段を下げてしまった。こういう場合が、また別のミカンリンゴその他の果実にもあらわれかねないのでございますが、この場合に処する方法は一体何か。あるいは不足払い制度でもとるか。強制的にこの経済価格をあっせんする必要はないだろうと思う。牛乳に準ずるならば、政府不足払いでも考えなければならないだろうと思うのですが、その点に対する配慮はどうなされますか、お伺いしたいと思います。
  163. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お話しのように、原料価格が非常に暴落、暴騰するということは、先ほど大臣からもお話がございましたように、両者にとって不利益なことでございます。長い目から見まして、やはりそういう不安定な状況が続きますと、買った側にも生産者側にも非常に悪い影響を及ぼすことでございます。そういう意味で、やはり両方の利益になるように、長い目でお互いの立場を考えて協定をしていくということによって、その価格の安定をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、原料価格が幾らであるべきかという問題につきましては、たとえばミカンの例をとってみますと、生果用の価格に引きずられるわけでございます。また白桃の問題につきましては、生食用の価格にやはり引きずられるという問題もあるわけでございます。先ほどお話しのように、専用のかん桃の地域の桃とか洋ナシの問題、これは加工用しか使えないという問題がありまして、価格問題については、ほかの果実価格と違いまして、相当大きな問題が出ておりますことは、私たちも承知しておるわけでございまして、これらの問題につきましては、その両者の話し合いによりまして正当な価格が出ますことを指導いたしますとともに、その動きにつきましては、われわれとしましても始終注目して注意を怠らないようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  164. 淡谷悠藏

    淡谷委員 さっき園芸局長は、メーカーが価格の申し合わせをして大幅に買いたたいた場合は、これは独禁法の適用も行なわれるという答弁がたしかございました。しかし、今度のこの改正案では独禁法適用の除外がありますね。だから、これはかん桃あるいは黄桃のかん詰めばまだいいのですけれども、たとえばミカンにおけるオレンジジュースその他のかなり大きな取引があった場合に、はたして農林省の勧告や警告でこれらの大手メーカーの営利主義を押えるだけの力がございましょうか。独禁法でもあればこれはできましょうけれども、もう現実にも独禁法はだんだん実力を失ってきている場合、ことさらにこの適用除外をうたったのは、一体どういう御意思なんですか。
  165. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この問題につきましては、現実の問題といたしまして、果実の加工業者、先ほども申し上げましたように、これは相当数が多くて、その規模は零細でございます。また出荷者側も、小生産者が出荷するわけでございまして、出荷組合あるいは農協ということになっておりまして、その数も多いわけでございます。したがいまして、その売り手と買い手の側がそれぞれ共同いたしまして、お互いに納得のいく価格あるいは取引数量というものをきめる協定を結びますことは、かん詰め業の発展、それからかん詰めの原料を生産する農家の所得を保障するという面からも、必要だと考えまして、これについては独禁法の適用除外をし、またその内容につきまして、先ほどお話がございましたような果樹農業あるいは果実の加工業の健全な発展に支障を及ぼすというふうに認めました場合は、その締結の禁止あるいは内容の変更ということを規定いたしておるわけでございますので、十分その点につきましては監視をいたしまして、一方の側、ことに先ほどのお話では、メーカー側の力が強くなるということによって、生産者側が非常に圧迫されるということのないように処置をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  166. 淡谷悠藏

    淡谷委員 業者の営利観念というものをあまりに甘くお考えになっておるのじゃないかと思う。特になまの果実が加工対象である場合は、ほんとうの話、生産者の側には力がない、買わぬと言えば腐らして嘆くだけです。ほかの工業用品の原料とは違う。したがって、かん詰め業者その他の加工業者が一致してこれを買わぬと言われた場合は、これはもう農林省のあっせんを待つうちに腐敗していく、これは牛乳と同じような弱味を持っているのです。したがって、独占禁止法の適用は、幾ら生産者の側ががんばりましても、独占はできないような形になってしまっている。逆にこれは加工業者の不当な買いたたきを押えるために役立つ場合があると思うのですが、やはり独禁法の適用除外をしたほうがこの場合の交渉には役立つとお考えですか。私は、非常にこのために加工者側のほうが強くなると思うのです。牛乳なんかの場合で考えてみましても、会社の配当などが上がっておるにもかかわらず、買いたたくという形——少しでも上げようとするためには、非常な苦労をしているのです。果樹にも同じような現象が起こりはしないかということを心配するのです。
  167. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 実はかん詰め工業、加工業の実態を調べたことがあるわけでございますが、その実態から申しますと、収益性が低く、総資本に対する営業利益率が五%以下のものが大部分で、そのうちの相当部分が一%以下であるというような状況でございまして、その実態調査の結果が正確かどうかということは疑問があるとは思いますが、そういう調査もあります。現実の問題といたしまして、かん詰めの生産者は非常に零細でございまして、やはりそこで年間操業を考えなければならないということから、いろいろ無理が出てきておるようでございます。場合によりますと、ミカンの原料価格がほとんど採算の合わない価格でも、操業を続けるために買わなければならないというような状態に置かれて、買いあさるというような現象も出ているのでございます。そういう意味におきまして、必ずしも加工業者が非常に大きな力を持って生産者を圧迫するという事態はないのではないだろうか。むしろ、生産者とかん詰めの加工業者がお互いにそういう取りきめを行ないますことによって取引秩序が安定するということは、生産者のためにもなり、また加工業者の両方のためにもなるというふうに考えておる次第でございます。
  168. 淡谷悠藏

    淡谷委員 果振法は、大体将来の見通しを立てて、それを農民に理解させ、これを補助、育成していくという立場に立つ法律でございますから、そういう見通しを持つことはよろしいのですが、見通しが違った場合には、やはり責任というものをはっきりさせておかなければならないと思うのです。特にくだものの生産に関して見通しを立てる場合に、大きな関心を持たなければならないのは加工の問題なんです。生食の伸びというのも考えなければならぬのですが、時間的にも長く貯蔵ができ、また販売の自由を得るためには、何といっても加工を考えなければならない。現実に見ましても、加工のできるくだものはずっと伸びているわけですね。ミカンにいたしましても、リンゴは多少横ばいでありますけれども、加工のできないナシなどは窮境に立っておる。今日加工の問題は、果樹育成に関しては非常に大きな関心を払わなければならない問題だと私は思うのであります。その場合、加工業者のほうから言わせますと、原料がその年によって、あるときは多くなり、あるときは不足になる。生食用のくだものの値段が高くなればできなくなる、安いときは出てくるというような形で、事業のもくろみが立たないから、できるだけ波状じゃなく、非常に平均した出荷が望ましいということをしばしば言われるのです。これはもっともです。ただ、この場合には、やはり生産者の指導にも、将来加工用にするくだものか、生食用のくだものかということです。これは品種選択はむろんのことですが、栽培技術等においてもこれは十分注意する必要があると思う。今日においては、生食用のくだものの外見の悪いものとか、多少欠点のあるものを加工に回すというような形がございます。いわゆるくずものの加工という形が多いのでございますが、そうじゃなくて、本来の目的にかなった加工用の品種というものをはっきり選ぶ必要があると思う。これを誤りますと、誤らないまでも、処置が悪ければ、かん桃のように、農民が自由に生食用として売れるものを、会社に買ってもらわなければもう手も足も出ないというようなところに落ち込んでくる。これはジュースの生産もそうでしょうが、地元のかん詰め工場は零細かもしれぬけれども、将来、やはり加工業者というものは、かなり大きな資本で大々的にやるという傾向が出てくる。したがって、この加工業の扱い方というものは、将来のくだものの伸展に非常に大きな影響を与えることになると思いますが、その点の御配慮をさらにお伺いしたいと思います。
  169. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お説のように、将来加工向けの果実生産というものは伸びてくると存じます。と申しますのは、ミカンの例をとりますと、これは当然一定の生産がありますれば、生食用として売れないものもあります。また桃の場合ですと、やはりそれぞれの栽培の方法が違う。また袋かけをするかしないか、いろいろの問題があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、加工業が健全に発展しなければ、その加工原料の処理というのは、農家の面から見まして非常に困るわけでございますので、その点につきまして、健全な加工業の発展が望ましいわけでございます。したがいまして、そのくだものを加工いたしておりますかん詰め業全般につきまして、中小企業の近代化促進法に基づく業種指定が行なわれておるわけでございまして、それによりましていろいろの計画を立て、またそれに基づく近代化のための低利融資が行なわれることによりまして、その経営内容あるいはコストの低減というようなことを考えていかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  170. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それについて大事な問題は、今度の改正案の広域の濃密生産団地計画ということなんでありますが、この濃密生産団地というものの構想にはいろいろ入っていると思うのです。特に機械が大型になってきますと、これは勢いいまの零細自営農家ではやっていけない。したがって、さっき森田委員の質問にもありましたが、この範囲を十町歩にするか二十町歩にするかといったような問題が出てきたようであります。さしあたり十町歩という大臣の御答弁でございました。しかし、これはあくまでも現在の農作業機械の大きさにおいて決定すべきものなんで、そう一律に十町歩とか二十町歩とかいう限定はできない。特にミカンの場合、リンゴの場合、桃の場合などさまざまございましょうが、団地の中核をなす施設は一体何をお選びになりますか。
  171. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 広域的な濃密生産団地でございますが、こればわれわれがいま頭の中で考えております団地と申しますか、それは大体二、三町村から一郡くらいになるのではないだろうかと思っておるわけでありますが、それは先ほどお話がございましたように、その中核となる施設といたしましては、選果施設でございますとか、あるいは貯蔵施設というものが中核になると思うのでございます。そういう選果施設あるいは貯蔵施設というのは、やはり市場との関係から見まして、長期間にわたりましてなるべく計画的に出荷するという出荷の幅を広げていくということが、これが価格を安定させる面からも、また収穫でございますとか、あるいは選別でございますとか、そういう労働力不足を切りくずす上からも、必要なことだと思うわけでございます。また加工業の面から見ましても、やはり固定施設の減価償却というような面から見て、あるいは加工労働力というようなものも平準化しなければならぬというようなことがございますので、そういう観点で、一つの範囲がきまってくるだろうと思うわけでございます。またもう一つの観点からいたしますれば、そういうような選果、荷づくりの施設が開発されて、収穫、出荷の労働ピークというものが緩和されるということになりました場合に、やはりそれを効率的に利用できるだけの生産量がなければならない。そういう意味におきまして、わせと中生を組み合わせて、やはりそういう大量的なものを供給できるだけの面積が確保されるものでなければならぬというふうにも考えるわけでございますし、またそういうような大きな団地になりますと、一つの流通面におきまして道路問題、これは大きな問題になってくると思います。またかんがい施設というような問題も大きな問題になってくると思います。そういうものもいろいろ組み合わせまして、一つの団地を都道府県知事が設定することをこの法律では考えておるわけでございます。
  172. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうもこの生産団地というものは、共同販売の団地というような御説明なんですが、もう一歩突っ込んでこれを生産団地にするようなお気持ちはございませんか。特に、いま果樹の面では薬剤散布が非常に大きな仕事になっております。この薬剤散布の機械の発達によって、結局規模が変わってきたというのは事実なんです。噴霧器もなく、ほうきの先にボルドー液をつけて振りまいた時代も見ておりますけれども、それが手押しポンプになり、機械ポンプになり、電力が入り、スピードスプレヤーが入るというふうに、だんだん経営規模が広がりませんと、零細農が落ちていくという経験があるわけでございます。したがって、この生産団地というものは、とったものを集めて売るだけでは意味をなさぬと思う。やはりとり方に中心を置いた団地を育成する必要がある。そのためにはかなり綿密に計画いたしませんと、これは県あたりでは知っておりますからやりましょうけれども、思わざる欠点がやはりできてくると思うのです。いま非常にやかましくいわれております農薬の問題、特にリンゴミカンの場合はさらにたくさん使うのですが、リンゴの場合で申し上げましても、有機燐剤がかなり大きな害を及ぼしているのです。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕 有機燐剤を散布した場合は、畑の中に入るなという赤いきれをつるします。ところが、団地になりますと、枝を張っていますから、畑に入らぬでも、道路を通ったものはやはりその危険をおかしているわけなんです。しかも大きな団地になりますと、そういうような配慮も必要になってまいりますし、したがって、この団地には個々の農家の施設に待つことなく、これはむしろ国が一歩進んで、新しい果樹園芸のモデルとしまして、これはむろん農道もりっぱにつくらなければならないし、特に薬剤散布の場合は水の貯蔵も十分考えなければならないし、そうした農薬の危険から守るような措置もしなければならないし、さまざまな農地の施設をまず整えて、そしてそこに団地をつくるという構想を持ちませんと、従来の零細果樹農家が雑然と集まったような形になる、その集まった形の中で果実を出すのでは、共同販売の施設にはなっても、共同生産の施設にはならないと思います。特に濃密生産団地という盾板のもとに、てんでんばらばらな生産管理が行われますと、選果の上にも非常に大きな手間ができてくる。むしろ、これは一緒の生産方法をし、一緒の管理をした場合に、出てくる品物の品質も一定されますから、これは選果の技術においても非常に手間が省けるという利益がある。すなわち、団地としての、しかも生産団地としての利益が十分あがるような近代化を考えませんと意味がないと思いますが、そういう御準備があるかどうか。
  173. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この濃密生産団地の場合に、これは先ほど申しましたように、流通面を中心に一つのことを考えております。先ほども申し上げましたように、出荷期間を長くするという場合には、当然早中晩の組み合わせということが、出荷の面でも必要になってまいりますし、農家の労働力のピークをくずす面からも必要になってまいります。したがいまして、そういう組み合わせが当然農家の生産の面で関係するわけでございます。  それから、先ほどいわゆる生産の団地をつくる必要があるのではないかというお話でございます。これは果樹園経営計画ということでいまわれわれが考えておりますのは、十町歩以上の団地というものについて果樹園経営計画を立てまして、これは大型機械を導入しました共同作業前提といたしまして、そこで共同作業前提といたしました近代的な経営が行なわれるということを期待しているわけでございます。したがいまして、そういうような果樹園経営計画が立ちますと、団地が幾つか集まりまして、この濃密生産団地が形成されるということになると思います。
  174. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはどうもライスセンターの果樹農業版といったような感じもするのですが、やはり流通は非常に大事ですけれども、この流通過程に最も有利に生産物を乗せるためには、生産のかなりな変化を起こしませんと、これはだめだろうと思うのです。たとえば加工専門の果実をつくる場合は、いまの生食用の果実をつくるような手間は要らないわけですね、外観の問題はないから。それを偶然にできたくずではなくて、初めから計画的にこの生産団地に取り入れれば、生産団地自体が加工用のものと生食用のものとをはっきり分業してやり得るわけです。この団地の構想あるいは結局生産の構想でかまいませんけれども、一体共同の形をどこまでお進めになるつもりなんですか。単なる技術共同だけで終わるのか、もう一歩進んだ経営共同まで進むのか、現在のこの構想ではどこらまで進めるおつもりですか。
  175. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 この団地と申しますか、果樹園経営計画として私たちが想定しておりますのは、共同作業もありましょうし、中には共同経営もあるかと思います。しかしながら、少なくも数人の果樹農業者が——二人以上果樹農業経営者が集まって、いわゆる共同作業なりはやる必要があるというふうに考えておるわけでございます。もっとも、その作業の種類についてはいろいろあるかと思いますけれども、おもなるものにつきましては、リンゴの場合でございますれば、おそらくスピードスプレヤーというような防除機が、一番その中心になるのではないかというように考えておる次第でございます。
  176. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは非常に大きな問題をはらんでいますから、急激には変化を起こすべきものでないし、また農民の意識からしましても、先走りをするようなことはないものですから、ゆっくり急ぐよりしかたがないとは思いますけれども、この流通過程でも、いまの消費地における生鮮食料品の値上がりが非常にひどいという実情から照らしましても、この際、振興法を改めるのですから、ほとんど意味がない法案じゃないかと最初いわれましたけれども、だんだん形をとっていかれるでしょうから、その場合、消費地における貯蔵の設備などのあり方を少し考えていただきたいと思う。  この共同出荷の場合でも一番問題になるのは、プール計算いたしませんと、相場に変動がありますから、この出荷者の品物が高く売れ、あの出荷者の品物は安く売れるというようなわけで、非常に問題が起こるのです。随時共同出荷はプール計算に移りつつありますけれども、特に輸送の問題で頭にきますのは、ちょうど相場の高いときには輸送力が不足するし、安いときは輸送力が余るといったようなことを毎年繰り返している。したがって、輸送、販売の対策につきましても、遠隔地に生産地があるものですから、輸送と販売とを分離して考えるという考え方ですね。輸送すなわち販売となってきますと、これは非常に弾力がなくなる。したがって、生産地から出したものをある場合には一たんこれをプールしておくような貯蔵施設を考えるということ、そして市場への出荷の調節をはかるといったようなこともお考えになりませんと、これは私は結局よしとしても、相当問題が出てくると思うのです。  それから、生産団地をつくる場合にも、新しい機械も入ってくるでしょう。新しい農薬も入ってくるでしょう。特に、長い間課題になっておりました病害対策は薬品によらなければならないのだが、害虫駆除の方針を益虫の問題とからめて生物学的に検討してはどうかという問題が、だいぶ前から言われておりまして、昨年あたりから本格的に出てきたようですが、これはやはり将来大きな意味を持つだろうと思うのです。一切の害虫、益虫を殺してしまうといったような薬剤から、益虫を残しておくような方法をとりますと、かなりこれはいけると思う。これは試験場のほうでも大体お取り組みになっておるだろうし、また別な林野などの段階でも益虫の問題は研究に入っているようであります。  そこで、この試験の形ですが、試験というものは金がかかるものなんです。むだに見えるものです。しかし、これは一定の年限をやっておると、成果は必ずあがってくる。さっきも森田委員の質問にありましたが、この試験研究に対する態度をはっきり農林省は改めまして、この比重を高く置かれたほうがいいのじゃないかと思うのです。特に私が非常に残念に思うのは、青森県にありましたヘリコプターの米の直播の問題です。あれをやった当初は非常に評判が高くなりまして、これは機械化にヘリコプターまで登場するのじゃないかというような風潮がありましたが、さっぱり音が絶えてしまったでしょう。この真意は、技術そのものの失敗じゃないのです。これは試験段階ですから、収穫の高い年もあるだろうし、低いときもあるでしょう。技術の改良も必要でしょう。しかし、その試験による収穫減の負担を農民にかぶせたことからきらわれているのです。その差額を国が見てやるくらいの配慮でもあれば、あの試験はなお続けられたと思う。これは試験場側のお考えはどうですか。あの問題の結末はさっぱり出てきてない。お伺いしたいと思います。
  177. 久宗高

    ○久宗政府委員 いまお話のございました点につきましては、私実は詳しくのみ込んでおらないのでございます。  確かに御指摘のように、試験の結果の欠陥であるのか、他の要因であるのかといった問題は、さような試験の運用と関連して厳密に吟味してみる必要があると思います。ただ、お話の中に出ました試験の結果の負担と申しますか、リスクを試験研究の過程でどう考えるかという問題がございまして、特に農家の圃場を使いましてやりたいような試験の問題で、なかなか踏み切りがつけられないでいるわけでございます。果樹のほうでもそうでございますし、他の分野でも、やや大きな形で、しかも農家の現場に移してやったほうがいいような問題が多くなっておりますので、このような場合におきます試験の結果と、そのような実験のリスクというものにつきまして、さらに突っ込んで吟味をいたしたいと考えております。
  178. 淡谷悠藏

    淡谷委員 果樹栽培の歴史を見ておりますと、国の力もむろんかりましたろうけれども、個人の研究、苦心が非常に大きくものを言っていままで進歩してきた。誤りのない指導をされ、誤りのない配慮をされることは一番いいのですが、へたな指導やへたな見通しを立てられるよりも、農民にまかしたほうがいいことがあります。この法案なども、少し出過ぎますと、作付統制が入りそうなきらいが十分にある。取引の面でもある。これについてはやっぱり農民の感覚は非常に鋭い。そういう点に関してはおそらくはもう十分に知っていると思う。ただ農民の意思を助けてやり、補助するのだという、この限度は守ったほうが私はいいと思う。  特に、農林大臣も率直に言ってお考えでしょうが、もうあの政府のお出しになった農業基本法というものも、手直しの段階にきているのじゃないですか。自民党の委員森田重次郎さんが、明らかにこれは自営農家だけじゃ立っていかないから、協業でいったほうがいいという発言をされるようでは、自民党内部にも、そろそろあの農業基本法は手直しをしてもいいのじゃないかと思われている先生方がたくさんおられると思う。特に熱心な農林委員会の諸先生方は内々はそう思っているだろうと思いますが、大臣は一体どうお考えになりますか。あのグリーンレポートなんかを見ておりましても、基本法ができたころに比べてみると、だんだん調子が下がってきている。委員長、そうでしょう。ことしあたりのグリーンレポートは非常に調子が下がっている。何かおどおどして、自信のないようなレポートが出ている。この際、果振法などとも関係がありますが、ことしとは言いませんが、あの基本法をもう一ぺん検討し直す御意思はありませんか。
  179. 坂田英一

    坂田国務大臣 淡谷委員のいろいろ申されたことは、非常に私ども参考になるのみならず、たいへんけっこうだと思います。いわゆる益虫の問題のごとき、全くそのとおりに思いまするし、農薬の問題につきましても、水銀剤をできる限り早く有効なものにかえてまいりたいという点についても、淡谷委員の非常な力強い発言がございまして、感謝をいたしておるのであります。  なお、輸送、すなわち、販売から貯蔵法まで、そこへ加えてその上で販売のほうへ向かっていくという場合もあるじゃないかという示唆を受けておるようなわけで、これも私どもこの面に向かって検討を加えていくべきものである、かように存ずるのでございます。  それから農業基本法の問題でございますが、もっとも将来にわたってどうという問題ではございませんが、現在の農業基本法をそのままにいたしましても、いまいろいろ考えられておることについては、運営によってちっとも別に差しつかえはないように私は思うのでございます。将来の問題としては、それはもう決定的なものとはもちろん考えませんけれども、現在のところ、現在のこの農業基本法によって、その運営によってその精神を十分生かし得るものである、かように考えておるので、いま直ちに改正をするということは必要がなかろう、こういうふうに存じておるわけでございます。
  180. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大臣としては、そういう御答弁をするのはしかたがないと思いますけれども、あれを冷静に読んでみますと、かなり無理が生じているのです。たとえば農家の数を減らす計画などもつくってきておりますし、それから適正規模の問題なども相当直さなければならない。これは当面ここで御答弁をと言っても無理でしょうから、課題としてひとつ残しておきたいと思うのであります。  それから、試験場の方に参考までに申し上げておきますけれども、いま大臣からございました水銀剤よりも、果樹の場合は有機燐剤のほうが大きな毒物なんですね。有機燐剤の問題で困っているのです。有機燐剤の中でもポリドールなどを強く使い出したのは、アカダニの発生のためなんです。アカダニは、害虫発生の歴史を見ますと、戦争前にはそんなにひどくなかった。戦後DDTを使ってからアカダニが非常に発生したという。むしろ、新しい農薬によって新しい害虫がはびこったという最もいい事例なんです。これを生物学的にいろいろ調べた学者がございまして、このアカダニ発生の原因として、あの小さなアカダニに寄生するごくこまかいカブトムシがあったのが、DDTでこれをせん滅している。したがって、害虫を殺す農薬が新しい害虫を生じさせて、その上、また害虫の農薬を使わなければならないという、非常に悪循環を生じているわけですから、この際、一つ方向として、生物学的な害虫駆除の方法などもお考えおき願いたいと思うのであります。  こういうことを申し上げますのは、実はこの法案の中にもございますが、第二条の二、「果実需給事情、農業事情その他の経済事情の変動により必要があるときは、果樹農業振興基本方針を変更するものとする。」ということが非常に私は気になるのです。これは変更しないのも困ったものです。一ぺん出した農業基本法をいつまでも持っていくということは、これは世の中の進歩にふさわしくないから、変更するのはいいですが、ここで大きく問題になるのは、果樹というのは、一般の作物と違った永年性の作物だということです。さっきからしばしば言われておりますとおり、一たんこれを切ったり品種を変更したりする場合には、非常に大きな動揺と犠牲を持つ。したがって、ほんとうの話が、変更などもされちゃかなわないのです。これは見通しの正しさ、方針の正しさがあれば、そんなにひどい変更はないだろうと思う。いまの品種の問題などでも、その当時はみんな見込みがあるつもりで入れた品種が相当あるわけです。いま一番余されております旭なんという品種も、実は販売上から出ておりました。祝という品種の青味、色がちょっと問題になりますので、その祝と紅玉との間をねらって出した旭が、非常に一時有望品種としてかなり奨励されたことがある。紅玉なども、一ころは非常に弱い木として、つくりにくい木として、これは切ったほうがいいという話もあったのですが、これはまた新しく加工やなんかの面ではライトを浴びてきているわけです。非常に好みの変化というものも激しいのです。一定の見通しを持たず、遠い方針を立てませんと、また途中で植えては切り、植えては切りというふうに、いたずらに混乱を招くようなおそれもございます。これはようやくライトを浴びてまいりました果樹振興の農政の方向に水をぶっかける意思は毛頭ございませんから、前向きに慎重に御研究を願いたい。たとえばくだものの味の変化でも、非常に不規則みたいなものですけれども、変化をしていく一つの筋は立っているのです。甘いリンゴがあまり出ますと、ちょっと酸味のあるリンゴをほしくなってくる。味も、インド、国光のようなクラックリングというか、ばりばりっとした味と、デリシャス系統のメルティングというか、溶けるような味と、この二つの味が交互に流行の波に乗る。インドなども、一時は非常に好評を博したリンゴでありますけれども、もうだめです。ですから、流行の移り変わりもいろいろあるので、青の次には何がはやるという色の流行の変遷さえも一つの筋があるのですから、国民並びに輸出上の嗜好の問題なども、科学的に検討すれば、その筋が発見されないことはないのです。これはやはり本気になってお取り組みになって——この振興法だけで私は満足できませんけれども、出さないよりはけっこうですから、賛成いたしますけれども、ひとつこれを機会に、場合によっては農業基本法と抵触する面が出てきたら、やはり大胆に改正を考えるくらいまでいって、いま非常に迷っている果樹産業ですから——やっと芽を出したが、さっき大臣の御答弁のように果樹界は心配がないことはないのです。もうどんどん切っておこうかという傾向がかなり出ておりますので、それを立て直すために、今後とも十分な御配慮をお願い申し上げたいと思うのであります。  私はこの要望を申し上げて、質問を終わります。
  181. 倉成正

    ○倉成委員長代理 兒玉末男君。
  182. 兒玉末男

    ○兒玉委員 まだきのうの質問が若干残っておりますので、その点を二、三ただして、最終的に大臣の御所見を承りたいと存じます。  まず第一点は、園芸局長にお伺いしたいのでありますけれども、これからの果樹農業の健全な発展ということを考えますと、何と申しましても、国内における果樹類の消費の拡大ということが、きわめて重要なポイントではなかろうかと考えているわけであります。しかも今回の法案の策定が、いわゆる計画的な生産を通じて安定せさる、こういう点から考えますと、やはり価格の安定ということには、それだけ需要の増大ということがきわめて重要な問題ではなかろうかと私は考えます。いわゆる消費拡大ということについて、一体現在までの施策だけにおいてはたして十分であるかどうか。たとえば先般牛乳関係におきましても、学校給食等の面において、これが配慮されるような法的裏づけもなされたわけでありますが、同様に、私たち国民生活の上において、果実類の摂取ということは、西洋先進国に比較しましても、その摂収量というものは非常に少ないわけでありまして、こういう点から考えますと、そういうふうな学校給食等の問題を含めて、国内消費の拡大ということを考えるべきだと思うのでありますが、この点について、局長は、この法案の改定にあたり、どのような考え方をお持ちであるか、お聞かせいただきたいと思います。
  183. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 お説のように、果実の消費の拡大をはかりますことは非常に重要なことでございます。したがいまして、やはり果実製品につきまして、国民の皆さんに安心してこれを食べていただく、あるいは飲んでいただくということが必要でございます。そういう意味におきまして、農林物資規格法に基づきますJASマークの貼付ということをいたしまして、それによりまして消費者に内容の保証を行なうということを、これは将来も推し進めていきたいと思うわけでございます。  また一方、この果実の製品、ジュースでございますが、果汁入り清涼飲料でございますとか、あるいは果汁飲料というものについて、物品税がかかっておったのでありますけれども、JASマーク、日本農林規格適格品につきましては、免税措置ということになりましたので、その点におきましてメーカーの負担の軽減、あるいは消費者に安く売るということもできますので、その点がまた消費の拡大に役立つのではないかというふうに考えておる次第でございます。  また、学校給食につきましては、ミカンジュースにつきまして文部省、大蔵省といろいろ交渉いたしまして、そのミカンジュースを県の学校給食会が取り扱います場合に、これを収益事業として見ないという法制の改正も行なわれたわけでございまして、またリンゴジュースにつきましても、そういう方向でいま折衝しておるのでございます。小さいときからこういうジュース類に国民の皆さん方がなれていただくことによって、将来そのジュースの伸びというものにも相当大きな働きをするのではないかというようなことから、先ほど申しましたようないろいろの点につきまして措置いたしておる次第でございます。
  184. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ただいまの点、私は非常に大事な問題だと思うのですが、せっかく大臣もおいででございますので、特に未来をしょって立つ小学校なり中学校の学校給食ということは、非常に重大な課題でありまして、家庭におけるいわゆる偏食的な傾向から国民の健康状態を守るということについて、この前どの新聞でありましたかわかりませんけれども、そういうふうなことが指摘されておりますが、特にいま局長が申されましたように、一般的に果実から直接とりましたジュース等の摂取ということは、経済的にもなかなか不可能である。こういう点から、せっかく今回の果樹振興法を通じて、しかも国内における消費の増大という点からも、こういうふうな学校給食等を含めた集団的なところの消費機構を拡大していくということが、私はきわめて大事じゃなかろうかと思うのです。この点に関して、政府として、国の施策によって積極的に消費の拡大というものをはかる必要があるのではなかろうかと私は考えますが、この点について、特にこの際、大臣の御所見を承りたいと存じます。
  185. 坂田英一

    坂田国務大臣 兒玉委員のおっしゃるとおりであります。この果樹関係の消費を拡大することがきわめて重要であります。これはいわゆる栄養上の問題であるのみならず、農村の面から言いましても、あらゆる面から見て、その増大をはかる必要がありますので、先ほど園芸局長から申し上げましたとおりに、学校給食等についても十分検討を加えてまいりたい、こう存じます。そのほか、生食以外に、先ほど問題になっておりまする加工の問題、その他全般についての検討もあわせて進めて、消費の増大をはかってまいりたい、かように存じております。
  186. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、これは日本の非常に長い伝統と歴史のある果樹園芸に従事している皆さん方の要望として、やはり国内の消費の拡大と同時に、輸出の振興ということが、私は非常に大事じゃなかろうかと考えているわけであります。そのためには、やはり相手があるわけでありますから、品質の改善なり、また常に一定量の輸出を確保するなり、こういうような基本的な点がきわめて大事でありますが、たとえば現在ミカン等生産過剰の傾向というものが非常に危惧されているわけでありますけれども、たとえば四十年度の輸出ミカンのかん詰めの生産は、その目標が大体五百万ケースに対して、いわゆる原料ミカン価格の高騰によって、実績が大体その九割しかなかった。こういうようなことでございますが、この点、価格の安定、さらには原料価格の安定ということについて、生産農民が現在の農林省の指導方針に対して十分な信頼がないところに、せっかくの計画が達成されないのも基因するのではないかと思うのですが、今後の日本の、特にミカンを中心とするかん詰めをはじめとするところの輸出振興について、もう少し積極的な取り組みが必要ではなかろうかと考えるわけでありますが、この振興対策についてはどういうふうな御所見を持っておるのか、この点をお伺いしたいと存じます。
  187. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 輸出の振興につきましては、これは果樹農業発展の上で非常に重要なところでございます。私たちとしましても、力を注がなければならぬと考えておる次第でございまして、ジェトロを通じましていろいろ果実の宣伝をやっておるわけでございますが、一方また、その原料を確保するということもたいへん重要なことになってまいりますので、県、かん詰め業者、国が資金を出し合いまして、その原料取引について保証を行なう基金制度を設置いたしておるわけでありまして、それによりまして加工業者が安定的にその原料が取得できるような方途を講じておるわけでございます。いずれにいたしましても、やはり外国におきまして外国産のくだものあるいはかん詰めというものと競争いたしますためには、そのコストを下げていく必要がございますので、生産段階におきましても、またかん詰め製造の段階におきましても、その点につきまして、今後合理化を進めますことによりまして、外国市場への競争力をもっとつけていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  188. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣にこの際お伺いしたいのですが、今回のこの法案改正、特に問題のポイントとなるのは、いわゆる計画的な生産ということが非常に強調されておるわけであります。しかし、今後の果樹関係振興にあたって多くの問題点が指摘されておるのでありますが、何と言いましても、一番そのポイントになるのは、現在の農村の状態等見ておりますと、いわゆる農村の労働力というものが非常に不足をいたしております。農林省から発表されておるこの資料によりましても、果樹振興の中に示されておるいろいろな内容を見てまいりますと、これだけの目的、いわゆる国民の需要と供給の関係を完全にバランスを保っていくためには、果樹園芸に対する相当積極的な施策というものがなければ、この法律の効果をあげることはきわめて困難だと思うのですが、その第一点として、いわゆる労働力の流出に対して、一体どうしたならば、今後の農村における後継者を確保できるのか。しかもこの資料によりましても、やはりここ十年間に、ミカンをはじめ一九四%の作付面積植栽面積といいますか、増加しておりますけれども、これは一つの限界ではなかろうかと私は思うのです。こういう点から、果樹類の価格の安定、労働力の流出をどうして防ぐか、さらにまた、この点はあとでも大臣にお伺いしたいのでありますが、やはり需給関係価格の安定という基本的な問題の解決なくしては、この法律の目的を達成することは困難であると思うのですが、このような基本的な点について、まず大臣の御所見を承りたいと存じます。
  189. 坂田英一

    坂田国務大臣 御説のとおりでございます。価格の安定の必要なことは言うまでもございませんし、また、需給関係でございますが、いまのところ、物によっては若干需要の伸びの少ない果樹もありますけれども、全体としては、とにかく御存じのとおり、非常な需要の増大であります。したがって、現在のところは、それに沿うだけの生産が伸びないという程度のものであると思います。非常に近づいてはきておりますが、しかし、将来の問題としては、これらの需給関係が十分心配なしにいくかという問題もあるわけでございますので、それらの点について根本的にいろいろ考えなければならない。現在のこの法律によりまして、これは先ほど来申し上げておりますように、基本方針を立て、また各県においても、これに基づいての計画をそれぞれ立ててまいるわけでございます。全国的によくそれらの行き方を検討いたしまして、進めてまいるわけであります。これらのいわゆる根本方針に即応して果樹の増植といったようなものを行なわしめて進めてまいること、これは御了承のとおりでございまして、そういう方向に進むことは言うまでもございません。  なお、この際において、労働力不足等については、いろいろの問題があるわけでございますが、それらにつきましては、でき得る限り合理的な経営、いわゆる構造改善その他の施策を通じて、特に防除関係の機械の導入といったようなことによって、労働力の緩和をはかり、それらの労働不足に対応して進めてまいらなければなりませんし、なおでき得る限り価格の安定をはかっていく必要があるのでございますが、また一面、どうしても消費を増強させる意味において——やはり価格が高くなることによって生産が維持されるということは、これは考えなければなりませんので、十分これらを安い生産費で利益の上がるようにということは、これは平凡なことですけれども、さらに一そう将来これの必要性が加わってまいると思いますので、これは経営の近代化、裁判の近代化を十分進めてまいる。そういう意味で、団地にしても、十町歩以上、できるだけ共同作業によってそれを進めていくということによって、経営合理化あるいは労働力の節減、また生産費の節減ということによって、利益を得て、しかも生産が伸びていくというようなこと、これは申すまでもないのでありますが、そういう方向にも力を入れて進めてまいるといったようなことでございます。  要するに、将来にわたって需要はずっと伸びるのでございますので、それに即応して生産の増強が必要でございますが、あまりでき過ぎて困るということになってもこれは問題でございますので、それらの点については、将来の見通しをよく十分立てまして、そしてそれに即応してそれぞれ進んでいくようにいたしたい、こういう考え方でございます。
  190. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣にお伺いしたいのでありますが、私ども宮崎県におきましても、県が、選択的拡大ということで、ミカン植栽を非常に奨励しておるわけです。しかし、私は、いままでの農林省なり県の指導の状況というものを見ておりますと、需給関係ということよりも、ミカンがいいからミカンをつくれ、こういうことで、国全体の視野に立った方針でなくて、その地域の若干の気象条件なり地理的な条件が適合であれば、できたそのものが安かろうが高かろうが、つくることに対する奨励は非常に積極的にやるけれども、流通機構等なりあるいは共同出荷体制なり、価格の保証という面に対する指導というものが非常におくれている、バランスがとれてない、こういう感を非常に強くするわけであります。でありますから、今後の増産計画にあたりましても、地理的なり自然的条件等も十分考慮しながら、同時に、そのような販売機構におけるところのいわゆる流通面の強化ということを、並行的にしかも積極的に指導していかなければ、常に農民は自然現象に支配される。豊作、凶作の差の激しい、このような自然的条件と戦っていかなければいけない生産農民の立場ということと、真剣に取り組んでいく必要があろうと思うのであります。そういう点から考えますならば、このような条件の整備と同時に、流通面、特に生産者保護という点を慎重に私は配慮する必要があると思うのですが、これについて大臣の御所見を承りたいと存じます。
  191. 坂田英一

    坂田国務大臣 ごもっともでございまして、さような関係から、先ほど申しましたように、十ヵ年の需給見通しを立てて、各県とも相協力してその方向に進んでまいるということが一つ。それからまた、一面においては、先ほど申しましたように、学校給食ができればそういう方向に進むとかいう、いわゆる需要の増強という問題も必要でございます。それと同時に、価格の問題は、いま言われましたとおりに、価格についてのいわゆる安定をはかってまいるという問題もきわめて重要であると存じます。ただ、現在のところ、一部のものについては、その価格問題が、若干その点において心配の点もなきにしもあらずでございますが、いまのところ、全般的には、これはもう兒玉委員もよく御存じでございましょうが、まあほかの農産物に比較いたしますならば、そう心配もないと思うのでございますが、しかし、結論においては、やはりこれは将来非常に重要な問題でございますので、価格問題についても十分検討を加えておかなければならぬ、こう思います。
  192. 兒玉末男

    ○兒玉委員 そこで、さらに大臣にお伺いしたいのでありますが、昨日、局長にも質問したのでありますけれども、果樹農業振興計画の策定によって、県知事は振興計画書を農林大臣に提出することになっております。これはもちろん大臣の認可、認定にはなっておりませんけれども、やはり果実類の生産状況のいわゆる地理的条件と客観的な諸情勢から勘案しました場合に、やはりブロック的な、広域的な立場から、全体の生産調整ということ等を考えていかなければいけない。そういうことになりますと、やはり農林省の積極的な指導というものが必要ではなかろうかと私は考えます。  これは昨日仮定の問題として申し上げましたけれども、たとえば、大洋漁業等が一万羽、二万羽というような集中的な養鶏をやって、そうして地域の千羽程度の養鶏を営んでおる農民に致命的な打撃を与えている事例もあるわけであります。今後、果樹園芸の場合においても、同様な危惧が生まれてくる危険性があるわけでありますが、特にこの振興計画は、単に県知事がそれを提出することだけによって十分の目的を達成することは非常に困難であり、同時にまた、県の計画等によってその生産に参加いたしましても、これに全く無関係の他の食品工場等のこのような計画を無視した進出を十分警戒をするわけでございます。ですから、この振興計画の提出にあたっては、これに関係なく進出する民間企業等との関連ということを十分配慮する必要があろうと思うのであります。ですから、これは認定ではなくても、積極的な指導あるいは広域的なこれに対するところの審議会等の設置ということが必要ではなかろうかと思うのでありますが、この点、特に私は重大な問題であろうかと存じますので、大臣の御所見を承りたいと存じます。
  193. 坂田英一

    坂田国務大臣 ごもっともでございます。したがいまして、先ほども申しましたように、今度の場合の需給見通しというのは非常に重要でございまして、これは各方面の意見を十分聴取して、この見通しをきめるというのが一つでございます。  それから、もちろん、民間の企業をどうするということはできませんが、各県の具体的な問題につきましても、農林省及び各県とも十分話し合いを進めて、合理的なところに話を進めてまいるということはもちろんのことでございます。
  194. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いま大臣の御答弁で、私が心配しておるような点は、大体今後の指導によって解消できるものと信頼をいたしたいと存じます。  次に、生産されましたところの果実類の取引の取りきめということでございます。今回特に加工部門の合理化、この事項が本案改正のポイントになろうと思うのですが、何と言いましても、生産する農民とこれを買い取るところのいわゆる果実加工業者、こういう立場から考えますと、売り手よりも買い手のほうがいかなる場合においても強いわけであります。でありますから、いままで大臣が再三答弁されましたように、価格が暴騰暴落ということでなくして、安定した中において、この生産に従事する生産農民といたしましては、特に加工業者等との価格の取りきめということがきわめて重大な要素をなすわけであります。そういう点から考えますと、今後このような取引におけるいわゆる販売に関するところの数量なり価格、その取引の方法ということがきわめて重要な問題であります。そういう点から考えますと、これはこの果樹農業振興計画の策定にあたりましても、大体その中心は府県単位になっておりますが、この取引の策定にあたりまして、一体、これは国全体の、いわゆる全国的な規模における取引の一つの原則というものを確立するのか、または府県単位にこれをなされるものか、それが第一点。  それから、やはり流通機構は今日非常に不備であります。少なくともこのような正規の市場を通じて行なう場合は別といたしましても、民間が経営する市場等の場合においても、やはりこの規制外のいわゆるアウトサイダー的な生産を行なっている場合においては、とにかく市場価格という本のが非常に混乱におちいる場合も予測されるわけでございますが、この果実取引の取りきめについてどのような配慮をなされているのか、この点明らかにしていただきたいと存じます。
  195. 坂田英一

    坂田国務大臣 加工部門の価格その他の取引の面が非常に重要でございます。したがいまして、これらについては、今度の法律におきましても、農林大臣が取り消しあるいは変更を命ずることもできるような仕組みにいたしまして、適当に、また妥当な線でこれらの取引が行なわれまするように十分注意をいたしておるような次第でございます。  なお、これらについては園芸局長から詳しく御返事申し上げます。
  196. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 取りきめの範囲でございますが、これは取引の実態から見まして、大体一府県の中あるいは数県にまたがる協定になるかと思います。その内容といたしましては、数量でございますとか、価格でございますとか、その他の取引方法でございますとか、その内容果樹農業の健全な発達、また果実加工業の健全な発達に支障があると思いますれば、先ほど大臣のお話がございましたような処分もできるのでございまして、したがいまして、そういうことによりまして協定が公正に行なわれますことを指導もし、また監督もいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  197. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ただいまの局長答弁には非常に不満であります。特に過去においても幾多の例があるわけですけれども、このような価格体系というものと、それから特に加工業者というのは非常にどん欲でありまして、とにかく生産農民の足もとを見すかしたようなやり方をやるわけであります。たとえば、具体的な一つの例と申しますならば、こういう人たちが、たとえば肥料なりあるいはこの果樹園芸に関する農薬なり農機具なり、こういうものを売り込んで、そして生産農民を搾取するという幾多の例があるわけであります。こういうことで、特に果樹等の場合は、過去の歴史から見ましても、いわゆる自力によって自分の長年の経験によって、この果樹園芸というものが営まれておるわけでありまして、国の積極的な保護政策なりあるいは生産組合等強力な組織的な力というものが、農協その他に関して、他の農作物の関係に比較しまして、非常に弱いのではないかと私は懸念いたしております。というのは、長年の親子何代かにわたる伝統によってこのような経営がなされたという点から、果実類のこのような生産についても、またその技術についても、なかなかよその人には教えない、こういう一つの、何といいますか、封建性が非常に強いわけであります。こうい点から考えましても、私はやはりもう少し積極的な取り組みが必要であろうと思うのですが、こういうふうな弊害から生産農民を保護するということが、価格安定にもきわめて重要であり、今後の生産をふやす面においても、農民が安心して生産に従事できるという重大な問題でございますので、再度大臣の前向きの御答弁を私は要求いたすわけであります。
  198. 坂田英一

    坂田国務大臣 実はこの加工問題については、生産農民が加工する形にまで進むことが、非常に理想的であり、またそうすべきものであると私は思うのですが、この前、愛媛県のごときは、ミカンについて、ミカン生産業者が、生食のミカンのいろいろの出荷の問題、選果の問題、それらのこと以外に加工の面にも大きく進出しております。これは一番理想的の形ではないかと思う。またそう進むべきものではないかと思うくらいであります。しかし、これは急激にそこまで行きませんし、また事実、現在、別の加工業者の進んでおるところにおいては、また別の形が進んでおるのでございますので、これは一がいにそういうことをいま強行するという考え方はもちろんございませんが、生産者としてはそこまでいくということでいくのが進むべき一番理想的な形ではないか、こう私は思うのでございます。しかし、現状はそうはいきませんところも相当多いのでございます。それらにつきましては、加工業者と生産業者との間の取引については、十分これが妥当に結ばれてまいる、そして共存共栄に進み得るように進めてまいりたい。ただし、現在のところ、どうかと申しますと、それはところによっては例外はございますが、一応、牛乳とかその他のものに見られるような著しい不安はないように思います。そういう現在でございますけれども、将来の問題をよく考えまして、そういう点について十分検討も加え、将来そういう方向に進むべく努力を払いたい、かように存じておるわけでございます。
  199. 兒玉末男

    ○兒玉委員 その次に、果実並びにかん詰め類の輸入対策でございます。この点は、先ほど淡谷委員華山委員からも話があったと思うのですが、特にバナナ等の輸入の自由化によって、年々輸入量は増加の一途をたどっております。そうしてまた、最近はフィリピンを中心としてパイナップルの伸びが非常に強いわけでございますが、やはりこれからの国内の果樹園芸というものを展望する場合に、自由化の影響によっておくれている生産形態、技術の革新、または労働力の停滞、そういうふうなもの、また地域的あるいは自然的条件経営の規模、流通機構、こういう客観的な諸情勢から対処した場合に、どうしても価格の面においては非常な立ちおくれがあるわけであります。しかし、これは日本の置かれている諸般の客観情勢というものを判断する場合に、やはり輸入対策についても、関税その他、国内の果樹園芸に従事する生産者、また消費者、この全体を含めて、私は、積極的な保護政策をとりながら、最終的に輸入対策についても対等の競争ができるような保護政策をとっていかなければならないと考えるわけであります。こういう点から考えますと、特にバナナなりパイナップル等においても、この生産をしているところの地域の、いわゆる諸外国の労働条件というものを比較しますと、たいていが後進国であり、しかも労働条件というのも非常に劣悪な条件のもとに、このような競争がなされているという事実をわれわれはやはり十分見通して、対策を立てる必要があろうかと考えるわけであります。そういう点から、今後のこの輸入対策については、国内における果樹園芸に従事する生産農民の立場を考え、同時にまた、安定した需給関係というものを考えます場合に、やはり国内の果実あるいはかん詰め類等の生産維持と同時に、拡大ということに積極的な施策が必要であろうかと考えますが、この輸入対策等、国内における保護、維持、生産拡大という点に対する大臣並びに局長の御所見を承りたいと存じます。
  200. 坂田英一

    坂田国務大臣 ごもっともでございまして、加工のみならず、生果でもそうでございますが、最終の目標としては、生産性の向上をはかるということによって、それらの輸入品とも十分な競争のできる方向に、構造改善その他技術的な面においても改善を加えてまいることが必要でありますけれども、現実の場合としては、やはりにわかにそう理想的なこともいきませんので、御説のとおり、たとえばバナナにいたしましても、七〇%の関税をいまかけてそれらの関係をよく見ておりますし、またパイナップルも五五%、多少これはやはり考えていかなければならぬとは思うけれども、そういうことで、御説のとおりに、過渡期としてこれらの問題を十分考えて、国内の生産にできる限り支障なからしめるという方向に向かって検討を加えておるのでございます。また過渡期においてはやむを得ないのでございます。お説のとおりの問題を十分考えてまいりたい、こういうように考えております。
  201. 小林誠一

    小林(誠)政府委員 大臣が先ほどお答えになりましたとおりでございまして、輸入対策並びにそれに伴います国内保護対策につきましては、あくまでも十分力を注いでいきたいというふうに考えております。
  202. 兒玉末男

    ○兒玉委員 最後に、大臣にお伺いしたいのでありますが、何と申しましても、今後の果実に対する需要というものは増大の方向にあろうと存じます。しかし、再三申し上げますように、この増大には、いわゆる供給をする生産者と、それから消費者との関係において、明日から始まる野菜法案関係においても、特に問題の重点は、需給バランスということと同時に、流通機構の積極的な改革ということが非常に大事であります。再三申し上げますが、たとえば芝浦屠場の問題等についても、あらゆる機会にあれだけやかましく主張しましても、なかなか問題の解決ができない。今日の各種物価のその基本をなすもの、価格の底流をなすものは、抜本的な流通機構の改革ということについて、関係大臣が積極的に、しかも勇断をふるわなければ、私はこの解決はできないというふうに考えます。この点は、特に果実の場合においても例外ではございません。こういう点から、この法案制定を通じ、生産者、消費者ともにこの法律の恩恵に浴するために、特にこの法案全体を通じ、また農林省自体が指摘しておりますように、流通の改革なくして、生産者も消費者も保護できないという立場から、最後に大臣の御所見をひとつお聞きしまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  203. 坂田英一

    坂田国務大臣 ただいまの兒玉委員のおっしゃるとおりでございます。いまこういうふうにいろいろやっておるのでございますが、農業流通機構の改善の必要なことは言うまでもございません。今日もいろいろそういう点については、並行して検討を加えておるようなわけでございます。申し上げるまでもないのでございます。御説のとおりでございます。
  204. 倉成正

    ○倉成委員長代理 他に質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。      ————◇—————
  205. 倉成正

    ○倉成委員長代理 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  206. 倉成正

    ○倉成委員長代理 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 倉成正

    ○倉成委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕
  208. 倉成正

    ○倉成委員長代理 次会は明二日開会することにし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会