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淡谷委員 大臣としては、そういう御
答弁をするのはしかたがないと思いますけれども、あれを冷静に読んでみますと、かなり無理が生じているのです。たとえば農家の数を減らす
計画などもつくってきておりますし、それから適正規模の問題なども相当直さなければならない。これは当面ここで御
答弁をと言っても無理でしょうから、課題としてひとつ残しておきたいと思うのであります。
それから、試験場の方に参考までに申し上げておきますけれども、いま大臣からございました水銀剤よりも、
果樹の場合は有機燐剤のほうが大きな毒物なんですね。有機燐剤の問題で困っているのです。有機燐剤の中でもポリドールなどを強く使い出したのは、アカダニの発生のためなんです。アカダニは、害虫発生の歴史を見ますと、戦争前にはそんなにひどくなかった。戦後DDTを使ってからアカダニが非常に発生したという。むしろ、新しい農薬によって新しい害虫がはびこったという最もいい事例なんです。これを生物学的にいろいろ調べた学者がございまして、このアカダニ発生の原因として、あの小さなアカダニに寄生するごくこまかいカブトムシがあったのが、DDTでこれをせん滅している。したがって、害虫を殺す農薬が新しい害虫を生じさせて、その上、また害虫の農薬を使わなければならないという、非常に悪循環を生じているわけですから、この際、
一つの
方向として、生物学的な害虫駆除の方法などもお考えおき願いたいと思うのであります。
こういうことを申し上げますのは、実はこの
法案の中にもございますが、第二条の二、「
果実の
需給事情、農業事情その他の経済事情の変動により必要があるときは、
果樹農業振興基本方針を変更するものとする。」ということが非常に私は気になるのです。これは変更しないのも困ったものです。一ぺん出した農業
基本法をいつまでも持っていくということは、これは世の中の進歩にふさわしくないから、変更するのはいいですが、ここで大きく問題になるのは、
果樹というのは、一般の作物と違った永年性の作物だということです。さっきからしばしば言われておりますとおり、一たんこれを切ったり品種を変更したりする場合には、非常に大きな動揺と犠牲を持つ。したがって、ほんとうの話が、変更などもされちゃかなわないのです。これは
見通しの正しさ、方針の正しさがあれば、そんなにひどい変更はないだろうと思う。いまの品種の問題などでも、その当時はみんな見込みがあるつもりで入れた品種が相当あるわけです。いま一番余されております旭なんという品種も、実は販売上から出ておりました。祝という品種の青味、色がちょっと問題になりますので、その祝と紅玉との間をねらって出した旭が、非常に一時有望品種としてかなり奨励されたことがある。紅玉なども、一ころは非常に弱い木として、つくりにくい木として、これは切ったほうがいいという話もあったのですが、これはまた新しく加工やなんかの面ではライトを浴びてきているわけです。非常に好みの
変化というものも激しいのです。一定の
見通しを持たず、遠い方針を立てませんと、また途中で植えては切り、植えては切りというふうに、いたずらに混乱を招くようなおそれもございます。これはようやくライトを浴びてまいりました
果樹振興の農政の
方向に水をぶっかける意思は毛頭ございませんから、前向きに慎重に御研究を願いたい。たとえばくだものの味の
変化でも、非常に不規則みたいなものですけれども、
変化をしていく
一つの筋は立っているのです。甘い
リンゴがあまり出ますと、ちょっと酸味のある
リンゴをほしくなってくる。味も、インド、国光のようなクラックリングというか、ばりばりっとした味と、デリシャス系統のメルティングというか、溶けるような味と、この
二つの味が交互に流行の波に乗る。インドなども、一時は非常に好評を博した
リンゴでありますけれども、もうだめです。ですから、流行の移り変わりもいろいろあるので、青の次には何がはやるという色の流行の変遷さえも
一つの筋があるのですから、国民並びに輸出上の嗜好の問題なども、科学的に検討すれば、その筋が発見されないことはないのです。これはやはり本気になってお取り組みになって——この
振興法だけで私は満足できませんけれども、出さないよりはけっこうですから、賛成いたしますけれども、ひとつこれを
機会に、場合によっては農業
基本法と抵触する面が出てきたら、やはり大胆に
改正を考えるくらいまでいって、いま非常に迷っている
果樹産業ですから——やっと芽を出したが、さっき大臣の御
答弁のように
果樹界は心配がないことはないのです。もうどんどん切っておこうかという傾向がかなり出ておりますので、それを立て直すために、今後とも十分な御配慮をお願い申し上げたいと思うのであります。
私はこの要望を申し上げて、質問を終わります。